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特表2025-504075遅延部を備える偏光ダイバースレシーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】遅延部を備える偏光ダイバースレシーバ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20250130BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H04B10/67
H04J14/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545763
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 US2023012442
(87)【国際公開番号】W WO2023150364
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/307,588
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519011669
【氏名又は名称】アヤー・ラブス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AYAR LABS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィ-ニ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キーロ・アナトール
(72)【発明者】
【氏名】サン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】バルガバ・パヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラママーシー・チャンドラセカラン
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AD01
5K102PA00
5K102PC04
5K102PH21
5K102PH22
5K102PH37
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB01
5K102RB16
5K102RD05
5K102RD11
(57)【要約】
【解決手段】入射光の第1部分および入射光の第2部分が、第1光導波路内で反対方向に伝搬する。入射光の第1部分および入射光の第2部分がリング共振器内で反対方向に進むように、リング共振器が、第1光導波路から入射光の第1部分および入射光の第2部分をインカップリングする。入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器から離れて第2光導波路内で反対方向に進むように、リング共振器から入射光の第1部分および入射光の第2部分をインカップリングするために、第2光導波路が配置されている。1または複数の光検出器が、第2光導波路から入射光の第1部分および入射光の第2部分を受信するように光学的に接続されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学レシーバであって、
第1光導波路と、前記第1光導波路は、前記第1光導波路を通して第1方向に入射光の第1部分を伝達するように光学的に接続され、前記第1光導波路はまた、前記第1光導波路を通して第2方向に入射光の第2部分を伝達するように光学的に接続され、前記第2方向は、前記第1方向とは逆向きであり、
リング共振器と、前記リング共振器は、前記入射光の第1部分および前記入射光の第2部分が、前記第1光導波路から前記リング共振器内へ結合し、前記入射光の第1部分および前記入射光の第2部分が、前記リング共振器内で反対方向に進むように、前記第1光導波路のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置され、
第2光導波路と、第2光導波路は、前記入射光の第1部分および前記入射光の第2部分が、前記リング共振器から前記第2光導波路内へ結合し、前記入射光の第1部分および前記入射光の第2部分が、前記リング共振器から離れて前記第2光導波路内で反対方向に進むように、前記リング共振器のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置され、
前記第2光導波路の第1端および前記第2光導波路の第2端の両方へ光学的に接続されている光検出器と、
を備える、電気光学レシーバ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学レシーバであって、さらに、
前記リング共振器内に配置されているヒータを備え、前記ヒータは、共振波長の周りの狭帯域内の光のみが前記リング共振器の内外へ結合できるように、前記リング共振器の前記共振波長を制御するために制御可能である、電気光学レシーバ。
【請求項3】
請求項1に記載の電気光学レシーバであって、さらに、
前記リング共振器と前記光検出器との間の位置に前記第2光導波路に沿って配置されている光信号タイミング遅延セクションを備え、前記光信号タイミング遅延セクションは、前記光信号タイミング遅延セクションを通る光信号に、制御された量の時間遅延を与えるよう構成されている、電気光学レシーバ。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学レシーバであって、前記光信号タイミング遅延セクションは、光導波路セクションとして形成されている、電気光学レシーバ。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学レシーバであって、前記光導波路セクションは、中心位置に向かって、折り返し形状、渦巻き状、らせん状、ループ状、および、ジグザグの形状、の内の1または複数の形状で、並んで延伸する入力光導波路および出力光導波路を含み、前記入力光導波路および前記出力光導波路は、前記中心位置で光学的に接続されている、電気光学レシーバ。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学レシーバであって、前記入力光導波路および前記出力光導波路は、単一の光導波路構造として一体的に形成されている、電気光学レシーバ。
【請求項7】
請求項3に記載の電気光学レシーバであって、前記光信号タイミング遅延セクションは、入力光導波路と、出力光導波路と、前記入力光導波路へ光学的に接続されている入力を有し前記出力光導波路へ光学的に接続されている出力を有する共振デバイスと、を備える、電気光学レシーバ。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学レシーバであって、前記入力光導波路および前記出力光導波路は、或る距離にわたって並んで延伸して、前記共振デバイスと光学的に接続している、電気光学レシーバ。
【請求項9】
請求項3に記載の電気光学レシーバであって、前記光信号タイミング遅延セクションは、前記リング共振器と前記第2光導波路の前記第1端との間の位置に配置されている第1光信号タイミング遅延セクションであり、前記電気光学レシーバは、さらに、前記リング共振器と前記第2光導波路の前記第2端との間の位置に配置されている第2光信号タイミング遅延セクションを備え、前記第2光信号タイミング遅延セクションは、前記第2光信号タイミング遅延セクションを通る光信号に、制御された量の時間遅延を与えるよう構成されている、電気光学レシーバ。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学レシーバであって、前記第1光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の前記制御された量は、前記第2光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の前記制御された量とは異なる、電気光学レシーバ。
【請求項11】
請求項9に記載の電気光学レシーバであって、前記光検出器は、前記第2光導波路の前記第1端から前記光検出器の第1端に入る光と、前記第2光導波路の前記第2端から前記光検出器の第2端に入る光とを別個に検出するよう構成されている光検出器である、電気光学レシーバ。
【請求項12】
請求項1に記載の電気光学レシーバであって、さらに、
入射光を受信するように光学的に接続されている入力を有する偏光スプリッタ・ローテータを備え、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータは、前記入射光の第1部分を提供するために、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの第1出力へ、第1偏光を有する入射光の第1部を方向付けるよう構成され、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータは、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの第2出力へ、第2偏光を有する前記入射光の第2部を方向付けるよう構成され、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータは、さらに、前記入射光の第2部分を提供するために、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの前記第2出力へのルート内で、前記入射光の第2部の偏光を第2偏光から前記第1偏光へ回転させるよう構成され、前記第1光導波路の第1端が、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの前記第1出力へ光学的に接続され、前記第1光導波路の第2端が、前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの前記第2出力へ光学的に接続されている、電気光学レシーバ。
【請求項13】
請求項12に記載の電気光学レシーバであって、さらに、
光ファイバから前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの前記入力へ前記入射光を伝達するよう構成されている光結合デバイスを備える、電気光学レシーバ。
【請求項14】
請求項12に記載の電気光学レシーバであって、さらに、
前記偏光ビームスプリッタ・ローテータの前記第1出力と前記リング共振器との間の位置に前記第1光導波路に沿って配置されている光信号タイミング遅延部を備える、電気光学レシーバ。
【請求項15】
請求項14に記載の電気光学レシーバであって、前記光信号タイミング遅延部は、前記リング共振器への前記入射光の第1部分の到達時間に時間遅延を与えるよう構成されており、前記時間遅延は、前記リング共振器への前記入射光の第2部分の到達時間が、前記リング共振器への前記入射光の第1部分の前記到達時間と実質的に等しくなるように設定される、電気光学レシーバ。
【請求項16】
電気光学レシーバであって、
第1端および第2端を有する光導波路と、
前記光導波路に沿って配置されている複数の波長分割多重(WDM)デマルチプレクサと、を備え、前記複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、第1インカップリング光信号として第1方向に前記光導波路を通して伝搬する複数の波長の内のそれぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成され、前記複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、さらに、第2インカップリング光信号として第2方向に前記光導波路を通して伝搬する前記複数の波長の内の前記それぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成され、前記第2方向は、前記第1方向の逆向きであり、前記複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、さらに、前記第1インカップリング光信号を第1光検出器へ方向付け、前記第2インカップリング光信号を第2光検出器へ方向付けるよう構成されている、電気光学レシーバ。
【請求項17】
請求項16に記載の電気光学レシーバであって、前記複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、所与の入射光信号に対応する前記第1インカップリング光信号および前記所与の入射光信号に対応する前記第2インカップリング光信号の両方が、実質的に同時に前記第1光検出器および前記第2光検出器へそれぞれ到達することを保証するよう構成されている光信号タイミング遅延セクションを実装するよう構成されている、電気光学レシーバ。
【請求項18】
請求項17に記載の電気光学レシーバであって、前記複数のWDMデマルチプレクサの内の所与のWDMデマルチプレクサの前記光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量は、前記光導波路に沿った前記所与のWDMデマルチプレクサの位置に依存する、電気光学レシーバ。
【請求項19】
請求項17に記載の電気光学レシーバであって、前記複数のWDMデマルチプレクサは、前記光導波路の前記第1端に対して順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第1半分と、前記光導波路の前記第1端に対して順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第2半分と、を含み、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第1半分は、前記第1光検出器に到達する前に第1インカップリング光信号を遅延させるために、前記光信号タイミング遅延セクションを実装し、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第2半分は、前記第2光検出器に到達する前に前記第2インカップリング光信号を遅延させるために、前記光信号タイミング遅延セクションを実装している、電気光学レシーバ。
【請求項20】
請求項19に記載の電気光学レシーバであって、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第1半分内の前記光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量および前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第2半分内の前記光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量が、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第1半分と前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第2半分との間の中間点の位置に対して対称である、電気光学レシーバ。
【請求項21】
請求項19に記載の電気光学レシーバであって、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第1半分内の前記光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量は、前記中間点の位置からの対応するWDMデマルチプレクサの距離の増大と共に増大し、前記順に配置されている前記複数のWDMデマルチプレクサの第2半分内の前記光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量は、前記中間点の位置からの対応するWDMデマルチプレクサの距離の増大と共に増大する、電気光学レシーバ。
【請求項22】
請求項16に記載の電気光学レシーバであって、前記第1光検出器は、光検出器の第1部分であり、前記第2光検出器は、前記光検出器の第2部分である、電気光学レシーバ。
【請求項23】
請求項16に記載の電気光学レシーバであって、前記第1光検出器および前記第2光検出器は、互いに別個に実装されている、電気光学レシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【0002】
開示されている実施形態は、光データ通信に関する。
【0003】
【背景技術】
【0004】
光データ通信システムは、デジタルデータパターンを符号化するためにレーザ光を変調することによって動作する。変調レーザ光は、光データネットワークを通して送信ノードから受信ノードへ送信される。受信ノードに到達した変調レーザ光は、元のデジタルデータパターンを取得するために復調される。したがって、光データ通信システムの実装および動作は、光信号の伝達、光導波路の間の光信号の結合、光信号の変調、および、光信号の受信のための信頼性の高い効率的なデバイスを有することに依存する。開示されている実施形態は、この文脈で生まれたものである。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態例において、電気光学レシーバが開示されている。電気光学レシーバは、第1光導波路を備え、第1光導波路は、第1光導波路を通して第1方向へ入射光の第1部分を伝達するように光学的に接続されている。また、第1光導波路は、第1光導波路を通して第2方向へ入射光の第2部分を伝達するように光学的に接続されている。第2方向は、第1方向とは逆向きである。電気光学レシーバは、さらに、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、第1光導波路からリング共振器内へ結合し、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器内で反対方向に進むように、第1光導波路のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されているリング共振器を備える。電気光学レシーバは、さらに、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器から第2光導波路内へ結合し、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器から離れて第2光導波路内で反対方向に進むように、リング共振器のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されている第2光導波路を備える。電気光学レシーバは、さらに、第2光導波路の第1端および第2光導波路の第2端の両方へ光学的に接続されている光検出器を備える。
【0006】
一実施形態例において、電気光学レシーバが開示されている。電気光学レシーバは、第1端および第2端を有する光導波路を備える。電気光学レシーバは、さらに、光導波路に沿って配置されている複数の波長分割多重(WDM)デマルチプレクサを備える。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、第1インカップリング光信号として第1方向に光導波路を通して伝搬する複数の波長の内のそれぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成されている。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、第2インカップリング光信号として第2方向に光導波路を通して伝搬する複数の波長の内のそれぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成されている。第2方向は、第1方向とは逆向きである。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、さらに、第1インカップリング光信号を第1光検出器へ方向付け、第2インカップリング光信号を第2光検出器へ方向付けるよう構成されている。
【0007】
開示されている実施形態のその他の態様および利点については、開示されている実施形態を例示した添付図面を参照しつつ行う以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】いくつかの実施形態に従って、波長分割多重(WDM)マルチプレクサを備えた波長分割多重電気光学レシーバにおける光学レシーバ列の一部を示す図。
【0009】
図1B】いくつかの実施形態に従って、入射光の第1部分(例えば、TE偏光)が、(太い破線で表されている)経路に沿って、図1Aに示した光学レシーバ列の部分とWDMデマルチプレクサとを通して伝搬する様子を示す図。
【0010】
図1C】いくつかの実施形態に従って、入射光の第2部分(例えば、TM偏光から回転されたTE)が、(太い破線で表されている)経路に沿って、図1Aに示した光学レシーバ列の部分とWDMデマルチプレクサとを通して伝搬する様子を示す図。
【0011】
図1D】いくつかの実施形態に従って、光信号タイミング遅延セクションの一例を示す図。
【0012】
図1E】いくつかの実施形態に従って、共振デバイスを組み込んだ光信号タイミング遅延セクションを示す図。
【0013】
図1F】いくつかの実施形態に従って、スルーポート出力を備えた単一のリング共振器としての共振デバイスの実装例を示す図。
【0014】
図1G】いくつかの実施形態に従って、ドロップポート出力を備えた単一のリング共振器としての共振デバイスの別の実装例を示す図。
【0015】
図1H】いくつかの実施形態に従って、複数の結合されたリング共振器をスルーポート出力と共に備えた共振デバイスの実装例を示す図。
【0016】
図1I】いくつかの実施形態に従って、複数の結合されたリング共振器をドロップポート出力と共に備えた共振デバイスの実装例を示す図。
【0017】
図1J】いくつかの実施形態に従って、スルーポート出力を伴って、複数のリング共振器が光信号遅延を増すようにカスケード接続されている共振デバイスの実装例を示す図。
【0018】
図1K】いくつかの実施形態に従って、特別に設計された周期構造が共振空洞を構築するように光バンドギャップ材料から形成されている共振デバイスの実装例を示す図。
【0019】
図2】いくつかの実施形態に従って、光検出器の一例を示す上面図。
【0020】
図3】いくつかの実施形態に従って、フォトニック集積回路(PIC)内に実装された電気光学レシーバの構成例を示す図。
【0021】
図4A】いくつかの実施形態に従って、偏光スプリッタ・ローテータ(PSR)の構成例を示す図。
【0022】
図4B】いくつかの実施形態に従って、図4Aの矢視線A-Aにおける図4AのPSR例を示す垂直断面図。
【0023】
図5A】いくつかの実施形態に従って、PSRの構成例を示す図。
【0024】
図5B】いくつかの実施形態に従って、図5Aの矢視線A-Aにおける図5AのPSR例を示す垂直断面図。
【0025】
図5C】いくつかの実施形態に従って、図5Aの矢視線B-Bにおける図5AのPSR例を示す垂直断面図。
【0026】
図6】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列の一例を示す図。
【0027】
図7】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列の一例を示す図。
【0028】
図8A】いくつかの実施形態に従って、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の光パワーの時間プロットの一例を示す図。
【0029】
図8B】いくつかの実施形態に従って、差分時間遅延(τAB)を緩和するために遅延Dまたは遅延DかつDを実装した場合の、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の光パワーの時間プロットの一例を示す図。
【0030】
図9A】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を示す図。
【0031】
図9B】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を示す図。
【0032】
図10A】いくつかの実施形態に従って、8個のWDMデマルチプレクサ(8チャネル)を備えたWDMレシーバ列を示す図。
【0033】
図10B】いくつかの実施形態に従って、図10AのWDMレシーバ列の一部を示す拡大図。
【0034】
図10C】いくつかの実施形態に従って、図10AのWDMレシーバ列の一部を示す拡大図。
【0035】
図10D】いくつかの実施形態に従って、図10AのWDMレシーバ列の一部を示す拡大図。
【0036】
図11A】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を構成する際に用いるレシーバ回路ユニットセルのフロアプランを示す図。
【0037】
図11B】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を構成する際に用いる別のレシーバ回路ユニットセルのフロアプランを示す図。
【0038】
図11C】いくつかの実施形態に従って、図11Aおよび図11Bのレシーバ回路ユニットセルを用いて実装されたWDMレシーバ列の第1半分を示す図。
【0039】
図11D】いくつかの実施形態に従って、図11Cの第1半分と、第1半分の反転構成として実装された第2半分とを含む完全なWDMレシーバ列を示す図。
【0040】
図12】いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を動作させるための方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、開示されている実施形態を理解できるように、多くの具体的な詳細事項について説明する。ただし、当業者にとって明らかなように、開示されている実施形態は、これらの具体的な詳細事項の一部または全部がなくとも実施可能である。また、開示されている実施形態が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略している。
【0042】
半導体チップ上にフォトニック構成要素を集積することには、多くの利点がある。しかしながら、集積されたフォトニック構成要素は、しばしば、高い偏光感度を有し、一方、集積されたフォトニック構成要素へおよび/または集積されたフォトニック構成要素から変調光信号としてデジタルデータを伝達するために用いられる標準的な単一モード光ファイバは、しばしば、非偏光保持である。光学データ通信システムにおいて、デジタルデータを伝達する変調光信号が、偏光成分の未知かつ制御されていない混合でフォトニックレシーバデバイスの光ファイバに到達することが一般的である。これらの状況において、フォトニックレシーバデバイスが、高偏光感度の集積フォトニック構成要素と共に効率的に入力変調光信号を処理することは困難である。本発明は、この文脈で生まれたものである。
【0043】
光データ通信システムは、電気ドメイン内のデジタルデータパターンを光ドメイン内の変調光信号として符号化するためにレーザ光を変調することによって動作する。変調光信号は、光ファイバを通して電気光学レシーバへ送信され、そこで、変調光信号は検出され、電気ドメインにおいて元の符号化デジタルデータパターンを取得するために復号される。多くの光データ通信システムでは、光ファイバ内での光の偏光状態は制御されず、システムの動作中に光ファイバの小さい動きおよび/または周囲温度の変化によって摂動されうる。これらのシステムにおいて、電気光学レシーバは、時間と共に変化する任意の偏光を有する入射光信号を扱う必要がある。
【0044】
電気光学レシーバシステムは、フォトニック集積回路(PIC)に組み込まれ、光ファイバから入力として受信された変調光信号のコンパクトかつ高性能な検出を可能にしてきた。光ファイバからPICへ光を光結合するには、光ファイバのいずれかの偏光(横電気(TE)または横磁気(TM))から入力光を受け入れ、それをPIC上の1または複数の光導波路へ出力して、しばしば好ましい偏光状態にすることができる光結合構成が必要である。本明細書で開示されているいくつかの実施形態において、光結合構成が提供されており、その構成では、入射光が二重偏光垂直グレーティングカプラまたはエッジカプラのいずれかを通して受信され、PIC偏光スプリッタへ搬送され、偏光スプリッタが、2つの入力光ファイバ偏光(TEおよびTM)からの入射光を分割して、第1偏光および第2偏光の入射光をPIC上の2つの別個の光導波路へそれぞれ出力する。また、いくつかの実施形態において、第1偏光または第2偏光のいずれかは、PIC上の2つの別個の光導波路へのルート内で他方の偏光へ回転され、その結果、同じ偏光を有する光が、PIC上の2つの別個の光導波路の各々へ搬送される。いくつかの実施例において、偏光に基づいてこのように分割された光信号を効率的に検出できる光学デバイスを用いることにより、重要な利点が得られる。また、いくつかの実施例において、入射光の2つの偏光モード成分の別個の検出を提供するためにフォトダイオードの数を2倍にするのではなく、入射光の偏光モード成分の両方に対して1つのフォトダイオードを(例えば、光検出器内で)用いることによって得られるさらなる利点があり、ここで、かかるさらなる利点は、光学回路の複雑性の低減、チャネルあたりの検出器キャパシタンスの低減、および、フォトダイオード/光検出器の感度の上昇につながる暗電流の低減を含む。
【0045】
電気光学レシーバについての様々な実施形態が、本明細書で開示されている。電気光学レシーバは、単一の光検出器または光検出器セットで任意の入力偏光の光信号の検出を可能にする。電気光学レシーバは、デジタルデータパターンに復号可能な信号を搬送する任意の(制御されていない)偏光を備えた入射光(変調光)を伝送する入力光ファイバを備える。電気光学レシーバは、さらに、入力ファイバからPICへ入射光を転送する光結合装置を備える。電気光学レシーバは、さらに、任意の入力偏光状態を受信し、それをPICの2つの別個の光導波路に分割する偏光ビームスプリッタを備えており、ここで、2つの別個の光導波路の各々は、入射光の入力偏光状態の直交成分の1つ(おそらくは、別の偏光状態に変換されている)を含む。電気光学レシーバのいくつかの実施形態において、偏光ビームスプリッタの機能は、二重偏光グレーティングカプラの形態の光結合装置と組み合わせられる。電気光学レシーバのいくつかの実施形態において、PICの2つの光導波路は、他の空間モード(他の偏光状態など)から伝搬定数が良好に分離されている単一の偏光モードをサポートして、それを動作上は単一モード、単一偏光にする。電気光学レシーバは、さらに、PICの2つの光導波路が同じ光検出器または光検出器セットへルーティングされる光ルーティングシステムを備える。いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、さらに、PICの2つの光導波路と光検出器または光検出器セットとの間の時間遅延の不一致から生じる信号の劣化を補正するタイミングスキュー管理システムを備える。
【0046】
本明細書で開示されている電気光学レシーバは、PIC内に実装された電気光学レシーバが、偏光の制御されていない入力光ファイバから光を検出する用途で特に有用である。電気光学レシーバは、例えば波長分割多重(WDM)を用いて、異なる波長で入力光ファイバ上の複数のデータチャネルを符号化する用途において、および、偏光ダイバーシティWDM電気光学レシーバアーキテクチャがタイミングスキューを有する場合に、特に有利である。このタイミングスキューは、典型的には周知の方法で、チャネルによって異なりうる。制御されていない入力偏光を扱うことのできるいくつかの既存の電気光学レシーバは、信号を結合するために、膨大なデジタル信号処理と共に、2つの別個の電気光学レシーバ(各直交偏光状態に対して1つ)を必要とする。本明細書で開示されている電気光学レシーバ実施形態は、任意の波長チャネルの2つの偏光状態からの信号を結合して検出するために、単一のコンパクトかつ電力効率のよい電気光学レシーバを提供することを理解されたい。本明細書で開示されているいくつかの実施形態において、双方向偏光ダイバース電気光学レシーバシステムが提供されており、そのシステムにおいて、WDMレシーバ列が複数のWDMデマルチプレクサを備え、各WDMデマルチプレクサは、いずれかの方向に共通の光学バスに沿って伝搬する光信号をインカップリグし、インカップリグされた光信号を同じ光検出器または整合された光検出器のペアのいずれかへ方向付けるよう構成されている。
【0047】
本明細書で開示されている電気光学レシーバのいくつかの実施形態は、異なる波長チャネルの入射光の偏光状態が波長チャネルの間でおおよそ同じであり、異なる波長チャネルの入射光の偏光状態が未知である状況で、特に有用である。本明細書で開示されている電気光学レシーバのいくつかの実施形態は、所与の波長チャネルの入射光の偏光状態が未知であり、所与の波長チャネルの入射光の偏光状態が、入射光のその他の波長チャネルと比較して遅くかつ制御された方法で(例えば、単調に)変化する状況で、特に有用である。例えば、これらの状況は、WDMポイントツーポイントリンクの場合と同様に、WDM信号波長チャネルすべてが同じソースに由来し、同じ光ファイバを通り、一緒に受信される場合に起こりうる。本明細書で開示されている電気光学レシーバのいくつかの実施形態は、入射光の各波長チャネルが完全に異なる未知の偏光を有し、入射光の異なる波長チャネルの偏光状態に相関関係がないより一般化された状況で有用である。例えば、これらの状況は、異なるWDMチャネルが異なる場所に由来し、入射光のそれぞれのソースから電気光学レシーバへの伝搬経路全体にわたって同じ光ファイバを共有しえない場合に起こりうる。本明細書で開示されている電気光学レシーバは、偏光状態が未知であり、時間的に静的でありまたは時間的に動的に変化している入射光信号を扱うよう構成されている。本明細書で開示されている電気光学レシーバの様々な実施形態は、偏光状態が高速で(例えば、ギガヘルツ(GHz)レジームに、より典型的には、キロヘルツ(kHz)(またはミリ秒)もしくはさらに遅いレジームに)変化する場合でも、未知の偏光状態を有する入射光信号の受信を提供する。
【0048】
電気光学レシーバで受信された入力光信号(変調光信号)内の異なる偏光成分(TEおよびTM)に対する効果的なタイミング差の補償を提供するそれぞれの所定の光信号タイミング遅延の大きさ(光導波路長)を有する光信号タイミング遅延セクションの配置を含む電気光学レシーバについての様々な実施形態が本明細書で開示されている。様々な信号タイミング遅延セクションの配置および構成は、より大きい電気光学レシーバシステム全体のチップフロアプランへの影響を最小化するように規定される。いくつかの実施形態において、2つの偏光成分の光信号タイミングが、それぞれ所定の光信号タイミング遅延の大きさ(光導波路長)の1または複数の光信号タイミング遅延セクションを光学レシーバ列に沿って配置することによって等化された状態で、電気光学レシーバで受信された入力光信号(変調光信号)の偏光成分(TEおよびTM)が、それぞれ、反対方向に光学レシーバ列へ供給される偏光ダイバース電気光学レシーバが開示されている。様々な光信号タイミング遅延セクションの配置および光信号タイミング遅延の大きさ(光導波路長)は、低い光信号遅延障害、低い光信号導波路損失、および、チップレイアウトの利点を提供する。
【0049】
図1Aは、いくつかの実施形態に従って、WDMマルチプレクサ100を備えた波長分割多重電気光学レシーバにおける光学レシーバ列の一部を示す。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ100は、入射光信号のTM偏光が、偏光スプリッタ・ローテータ(PSR)などによって、TE偏光に対して回転されていることを前提として、単一偏光WDMレシーバ列に配置される。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ100を備えた光学レシーバ列の部分は、PIC内に実装される。光学レシーバ列の部分100は、光導波路101を備える。WDMデマルチプレクサ100は、リング共振器103と、リング共振器103のそばを通って伸びるよう構成されている光導波路105と、を備える。光導波路105は、リング共振器103を通る光が光導波路105にエバネッセント光結合されるように、リング共振器103のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されている。光導波路105は、第1光信号タイミング遅延セクション107の入力へ光学的に接続されている第1端を有する。光導波路105は、第2光信号タイミング遅延セクション109の入力へ光学的に接続されている第2端を有する。いくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション107および第2光信号タイミング遅延セクション109の各々は、それぞれの所定の長さの光導波路として構成されている。第1光信号タイミング遅延セクション107は、光導波路111の第1端へ光学的に接続されている出力を有する。同様に、第2光信号タイミング遅延セクション109は、光導波路113の第1端へ光学的に接続されている出力を有する。光導波路111は、光検出器115の第1入力へ光学的に接続されている第2端を有する。同様に、光導波路113は、光検出器115の第2入力へ光学的に接続されている第2端を有する。いくつかの実施形態において、光検出器は、整合された光検出器のペアとして実装され、整合された光検出器のペアにおける第1光検出器の光入力は、光導波路111の第2端へ光学的に接続され、整合された光検出器のペアにおける第2光検出器の光入力は、光導波路113の第2端へ光学的に接続されている。
【0050】
いくつかの実施形態において、光導波路111および光導波路105は、第1光信号タイミング遅延セクション107を通して伸びる同じ光導波路として一体的に形成されている。これらの実施形態において、光導波路105は、光導波路105の第1端が光検出器115の第1入力に接続されるように、第1光信号タイミング遅延セクション107を通して伸びている。また、いくつかの実施形態において、光導波路113および光導波路105は、第2光信号タイミング遅延セクション109を通して伸びる同じ光導波路として一体的に形成されている。これらの実施形態において、光導波路105は、光導波路105の第2端が光検出器115の第2入力に接続されるように、第2光信号タイミング遅延セクション109を通して伸びている。
【0051】
光導波路101、105、111、113、および、リング共振器103の各々は、それを通して光をインカップリング、アウトカップリング、および、ガイドできる材料で形成されている。光導波路101、105、111、113、および、リング共振器103の各々は、光導波路101、105、111、113、および、リング共振器103を通して光をガイドすることを可能にするために、周囲材料とは十分に異なる屈折率を有する。いくつかの実施形態において、光導波路105、111、113、ならびに、光信号タイミング遅延セクション107および109は、同じ連続的な光導波路構造のそれぞれの部分として形成される。いくつかの他の実施形態において、光導波路105、111、113、ならびに、光信号タイミング遅延セクション107および109、の内の1または複数は、図1Aに示すように、光導波路105、111、113、ならびに、光信号タイミング遅延セクション107および109、の内の他のものへ光学的に結合されている別個の光導波路構造として形成される。
【0052】
いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ100を備えた光学レシーバ列は、光ファイバ(偏光保持ではない単一モード光ファイバなど)から入射光を受信する。いくつかの実施形態において、入射光は、デジタルビットパターンを伝達する変調光である。入射光は、光ファイバを通して電気光学レシーバに到達する時、偏光制御されていない。したがって、光ファイバから受信された入射光の偏光は、電気光学レシーバに到達した時には未知である。いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、光ファイバから入射光を受信し、WDMデマルチプレクサ100を備えた光学レシーバ列の光導波路101に入射光を方向付けるよう構成されている光カプラを備える。いくつかの実施形態において、光カプラは、入射光の2つの偏光(TEおよびTM)を分割する二重偏光グレーティングカプラとして(エッジグレーティングカプラまたは垂直グレーティングカプラのいずれかとして)構成されている。いくつかの実施形態において、二重編波グレーティングカプラは、第1偏光(TEまたはTMのいずれか)を有する入射光の第1部分を光導波路101の第1端へ方向付けるよう構成されている。二重偏光グレーティングカプラは、さらに、第1偏光を有する入射光の偏光回転された第2部分を提供するために、入射光の第2部分の偏光を第1偏光と反対の第2偏光(例えば、第1偏光がTEの場合、第2偏光はTMであり、その逆も同様である)から第1偏光へ回転させるよう構成されている。二重偏光グレーティングカプラは、入射光の偏光回転済みの第2部分を光導波路101の第2端へ方向付けるよう構成されている。
【0053】
光導波路101は、第1端から第2端まで連続的なループ状の構成で伸びるよう構成されている。このように、第1偏光を有する入射光の第1部分は、矢印117で示すように、第1光伝搬方向に光導波路101を通して伝搬し、入射光の偏光回転済みの第2部分(これも第1偏光を有する)は、矢印119で示すように、第1光伝搬方向とは逆向きの第2光伝搬方向に光導波路101を通して伝搬する。したがって、入射光の第1部分(例えば、TE偏光)および入射光の偏光回転済みの第2部分(例えば、TE偏光へ回転されたTM偏光)は、光導波路101を通して逆の光伝搬方向に伝搬する。
【0054】
リング共振器103は、光導波路101に沿って光導波路101のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されている。リング共振器103は、特定の共振波長で動作するよう構成されている。いくつかの実施形態において、リング共振器103が動作する特定の共振周波数は、狭い波長範囲である。記載の簡単のために、本明細書で開示されている任意のリング共振器(例えば、103)は、特定の共振波長が、実際には、その他の異なる共振波長範囲から区別できる狭い波長範囲であるという理解の下で、特定の共振波長で動作するものとして記載されている。このように、所与のリング共振器(例えば、103)は、特定の共振波長の(特定の共振波長の周りの狭い波長範囲内の)光をエバネッセント結合するよう構成されている。いくつかの実施形態において、ヒータ104が、リング共振器103の共振波長を熱的に調整するために実装されている。いくつかの実施形態において、ヒータ104は、電流を熱エネルギに変換する抵抗加熱装置である。これらの実施形態において、ヒータ104は、制御回路によって制御される。いくつかの実施形態において、制御回路は、光検出器115からフィードバック信号を受信するように接続されており、ここで、フィードバック信号は、光検出器115によって検出された光の量を示す。フィードバック信号は、光検出器115へ伝達されて光検出器115によって検出される光の量を最大化する目的で、リング共振器103の共振波長を最適化するようヒータ104を制御するために制御回路によって用いられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、リング共振器103は、周回構成(例えば、円形、楕円形、レーストラック形状、または、別の任意の周回形状)を有する環状の導波路として実装される。いくつかの実施形態において、リング共振器103は、約50マイクロメートル未満の外径の環形状またはディスク形状を有するよう構成されている。いくつかの実施形態において、リング共振器103は、約10マイクロメートル未満の外径の環形状またはディスク形状を有するよう構成されている。
【0056】
図1Bは、いくつかの実施形態に従って、入射光の第1部分(例えば、TE偏光)が、(太い破線で表されている)経路121に沿って、図1Aに示した光学レシーバ列の部分とWDMデマルチプレクサ100とを通して伝搬する様子を示す。図1Cは、いくつかの実施形態に従って、入射光の第2部分(例えば、TM偏光から回転されたTE)が、(太い破線で表されている)経路123に沿って、図1Aに示した光学レシーバ列の部分とWDMデマルチプレクサ100とを通して伝搬する様子を示す。リング共振装置103は、特定の共振波長と実質的に等しい波長を有する入射光の第1部分が、第1伝搬方向(反時計回りの方向)にリング共振器103へ光学的に結合し、特定の共振波長と実質的に等しい波長を有する入射光の偏光回転済みの第2部分が、第1伝搬方向と逆向きの第2伝搬方向(時計回りの方向)にリング共振器103へ光学的に結合するように、特定の共振波長で動作するよう構成および制御されている。入射光の第1部分および入射光の偏光回転済みの第2部分の両方が、光導波路101、リング共振器103、光導波路105、111、113、ならびに、光信号タイミング遅延セクション107および109内で同じ偏光状態を有することを理解されたい。したがって、特定の共振波長で動作するリング共振器103は、特定の共振波長を有する入射光の第1部分および入射光の偏光回転済みの第2部分の両方を光学的にインカップリングして検出することができる。
【0057】
PSRおよびPSR(例えば、導波路、ファイバカプラ、など)に先行する光構成要素におけるTE偏光およびTM偏光の光ルーティングのアンバランスおよび異なる遅延のために、(矢印117で示す)入射光の第1部分および(矢印119で示す)入射光の対応する偏光回転済みの第2部分は、同時にリング共振器103に到達しえない。入射光の第1部分および入射光の対応する偏光回転済みの第2部分が、入射光内で伝達される光信号の回復を提供するために実質的に同時に光検出器115に到達するように、第1光信号タイミング遅延セクション107および第2光信号タイミング遅延セクション109の一方または両方が、リング共振器103への入射光の第1部分および入射光の対応する偏光回転済みの第2部分の到達時間の時間差を補償するために提供されている。いくつかの実施形態において、リング共振器103への入射光の第1部分および入射光の対応する偏光回転済みの第2部分の到達時間の差は、光導波路101を通ってリング共振器103へ至る光学経路長の差によって、ならびに/もしくは、偏光スプリッタ・ローテータ(PSR)および/または光カプラから(例えば、二重偏光グレーティングカプラから)入射光の偏光回転済みの第2部分を出力する際の入射光の第1部分に対する遅延によって、引き起こされうる。「入射光」は、PSRの入力または出力における光ではなく、光ファイバにおける光であることを理解されたい。いくつかの実施形態において、PSRに向かう途中で、光は、TE光およびTM光として、ファイバからチップへのカプラと導波路の或る部分とを通して伝搬する。チップ上のTE光およびTM光の伝搬速度は異なるので、PSRの入力における2つの偏光(TEおよびTM)の間には時間遅延が存在する。本明細書で開示されているシステムおよび方法は、適切に構成された光遅延ラインの実装を通して、2つの偏光(TEおよびTM)の間の時間遅延を補償するよう少なくとも部分的に機能する。
【0058】
第1光信号タイミング遅延セクション107および第2光信号タイミング遅延セクション109は、それぞれ、入射光の第1部分および入射光の対応する偏光回転済みの第2部分を光検出器115へ伝達する際の遅延を等化するよう規定されている。いくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション107および/または第2光信号タイミング遅延セクション109は、リング共振器103から光検出器115への光のルーティングに必要な最小限の光導波路長を越えてさらなる光導波路長を提供するよう構成されている。
【0059】
図1Dは、いくつかの実施形態に従って、光信号タイミング遅延セクションの一例125を示す。いくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション107および第2光信号タイミング遅延セクション109の一方または両方が、光信号タイミング遅延セクション例125と同様の方法で実装されてよい。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延セクション125は、光導波路127の長さLとして構成されている。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延セクション125内の光導波路127の長さLは、光伝搬の特定量の時間遅延を提供するよう規定されており、ここで、時間遅延は、光信号タイミング遅延セクション125の入力129から光信号タイミング遅延セクション125の出力131まで光が進むのにかかる時間によって規定される。光信号タイミング遅延セクション125内の光導波路127の長さLおよびそれに対応する光伝搬の時間遅延は、光信号タイミング遅延セクション125を通る光の群速度(V)を通して関連している。例えば、光信号タイミング遅延セクション125内の光導波路127の長さLは、約(L/V)に等しい光伝搬の時間遅延に寄与する。光の群速度(V)は、パラメータの中でも特に、光導波路127のタイプ、光導波路127の幅、伝搬光の波長、および、伝搬光の偏光など、複数の要因に依存する。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延セクション125内の光導波路127の長さLは、PIC内で光信号タイミング遅延セクション125にコンパクトなフットプリントを与えるために、特に、折り返し形状、渦巻き状、らせん状、ループ状、および、ジグザグの形状、の内の1または複数で形成されている。
【0060】
様々な実施形態において、光導波路の長さ(例えば、光信号タイミング遅延セクション125内の光導波路127の長さL)に加えてまたはその代わりに、第1光信号タイミング遅延セクション107および第2光信号タイミング遅延セクション109の一方または両方が、共振デバイス(例えば、全域通過リング共振器フィルタ)、低速光構造、および/または、光信号伝搬の時間遅延を与えるその他のフォトニックデバイスなど、様々な他のフォトニックデバイスを備えるように実装されてもよいことを理解されたい。例えば、図1Eは、いくつかの実施形態に従って、共振デバイス135を組み込んだ光信号タイミング遅延セクション125Aを示す。光信号タイミング遅延セクション125Aは、図1Dの光信号タイミング遅延セクション125の変形例である。光信号タイミング遅延セクション125Aは、光信号タイミング遅延セクション125Aの入力129から共振デバイス135の入力135Iまで伸びる第1長さLを有する入力光導波路セクション137を備える。タイミング遅延セクション125Aは、さらに、共振デバイス135の出力135Oから光信号タイミング遅延セクション125Aの出力131まで伸びる第2長さLを有する出力光導波路セクション139を備える。タイミング遅延セクション125Aによって提供される光遅延は、入力光導波路セクション137、出力光導波路セクション139、および、共振デバイス135の光遅延の合計である。
【0061】
様々な実施形態において、共振デバイス135は、異なる方法で実装されてもよい。例えば、図1Fは、いくつかの実施形態に従って、スルーポート出力143を備えた単一のリング共振器141としての共振デバイス135の実装例を示す。図1Gは、いくつかの実施形態に従って、ドロップポート出力147を備えた単一のリング共振器145としての共振デバイス135の別の実装例を示す。図1Hは、いくつかの実施形態に従って、複数の結合されたリング共振器149-1~149-N(ここで、Nは1より大きい)をスルーポート出力151と共に備えた共振デバイス135の実装例を示す。図1Iは、いくつかの実施形態に従って、複数の結合されたリング共振器153-1~153-N(ここで、Nは1より大きい)をドロップポート出力155と共に備えた共振デバイス135の実装例を示す。いくつかの実施形態において、個々の共振器は、光信号遅延を増すようにカスケード接続される。例えば、図1Jは、いくつかの実施形態に従って、スルーポート出力159を伴って、複数のリング共振器157-1~157-N(ここで、Nは1より大きい)が光信号遅延を増すようにカスケード接続されている共振デバイス135の実装例を示す。また、いくつかの実施形態において、共振デバイス135は、フォトニック結晶空洞を用いて実装される。例えば、図1Kは、いくつかの実施形態に従って、特別に設計された周期構造161-1~161-N(ここで、Nは1より大きい)が共振空洞を構築するように光バンドギャップ材料から形成されている共振デバイス135の実装例を示す。
【0062】
図2は、いくつかの実施形態に従って、光検出器の一例200を示す上面図である。いくつかの実施形態において、光検出器200は、図1Aの光検出器115に用いられる。光検出器200は、Pドープ領域201、固有領域203、および、Nドープ領域205を備えたPINタイプの光検出器として示されている。固有領域203は、Pドープ領域201とNドープ領域205との間に配置されている。いくつかの実施形態において、Pドープ領域201およびNドープ領域205は、入れ換えられる。いくつかの実施形態において、固有領域203は、検出される光を方向付けるための光導波路である。いくつかの実施形態において、Pドープ領域201の少なくとも一部およびNドープ領域205の少なくとも一部が、光導波路内に形成される。動作中、光検出器200は、固有領域203内で光吸収によって生成された電荷キャリアが、光検出器200の長さに沿って接続されている電気接点207にスイープされるように、逆バイアスされる。
【0063】
光検出器200は、各偏光からの入射光を独立的に検出することを可能にする。より具体的には、第1偏光を有する入射光の第1部分は、光検出器200の第1端を通して入力され、第1偏光を有する入射光の偏光回転済みの第2部分(ただし、第2偏光を有する入射光に対応する)は、光検出器200の第2端を通して入力される。光検出器200の長さに沿った光吸収に起因して、光検出器200の第1端を通して入力された第1偏光を有する入射光の第1部分の強度は、矢印209で示すように、光が光検出器200の長さに沿って第1方向に伝搬するにつれて、光吸収係数に従って指数関数的に減衰する。同様に、光検出器200の第2端を通して入力された第1偏光を有する入射光の偏光回転済みの第2部分の強度は、矢印211で示すように、光が光検出器200の長さに沿って第2方向に伝搬するにつれて、光吸収係数に従って指数関数的に減衰する。したがって、第1偏光を有する入射光の第1部分のほとんどが、光検出器200の第1半分213で吸収され、第1偏光を有する入射光の偏光回転済みの第2部分のほとんどが、光検出器200の第2半分215で吸収される。いくつかの実施形態において、光検出器200の第1半分213に沿った電気接点207はセグメント化されて、第1逆バイアス回路および第1受信回路に接続されており、光検出器200の第2半分215に沿った電気接点207はセグメント化されて、第2逆バイアス回路および第2受信回路に接続されている。これらの実施形態において、入力信号の偏光回転済みの第2部分が、実際には、入射光信号内の第2偏光に対応することを考慮すると、第1受信回路によって測定された光電流および第2受信回路で測定された光電流を比較することで、入射光信号内の異なる偏光の間で分割された相対光パワーを決定することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、図1A図1Eに関して記載したように、WDMデマルチプレクサ100を実装する。これらの実施形態において、電気光学レシーバは、第1光導波路(例えば、101)を備え、第1光導波路は、第1光導波路を通して第1方向へ入射光の第1部分(例えば、117)を伝達するように光学的に接続されている。また、第1光導波路は、第1光導波路を通して第2方向へ入射光の第2部分(例えば、119)を伝達するように光学的に接続されており、ここで、第2方向は、第1方向の逆向きである。電気光学レシーバは、さらに、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、第1光導波路からリング共振器内へ結合し、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器内で反対方向に進むように、第1光導波路のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されているリング共振器(例えば、103)を備える。電気光学レシーバは、さらに、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器から第2光導波路内へ結合し、入射光の第1部分および入射光の第2部分が、リング共振器から離れて第2光導波路内で反対方向に進むように、リング共振器のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されている第2光導波路(例えば、105)を備える。電気光学レシーバは、さらに、第2光導波路の第1端および第2光導波路の第2端の両方へ光学的に接続されている光検出器(例えば、115)を備える。いくつかの実施形態において、光検出器は、図2に関して記載したように、第2光導波路の第1端から光検出器の第1端に入る光と、第2光導波路の第2端から光検出器の第2端に入る光とを別個に検出するよう構成されているダブルエンド(双方向式)光検出器である。
【0065】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、リング共振器内に配置されているヒータ(例えば、104)を備える。ヒータは、共振波長の周りの狭帯域内の光のみがリング共振器の内外へ結合できるように、リング共振器の共振波長を制御するために制御可能である。狭帯域という用語は、波長の帯域が光の所与のチャネル波長に対応すると見なされるように、光の所与のチャネル波長に関して規定された波長の帯域を意味する。狭帯域の波長範囲は、光の隣接するチャネル波長がリング共振器103の内外への標的波長の光の共振結合に関して互いに区別可能であることを保証するように規定される。
【0066】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、リング共振器と光検出器との間の位置に第2光導波路に沿って配置されている光信号タイミング遅延セクション(例えば、107および/または109)を備える。光信号タイミング遅延セクションは、光信号タイミング遅延セクションを通る光信号に、制御された量の時間遅延を与えるよう構成されている。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延セクションは、形状の中でも特に、折り返し形状、渦巻き形状、らせん形状、ループ形状、および、ジグザグ形状、の内の1または複数を有する光導波路セクションとして形成される。いくつかの実施形態において、光導波路セクションは、中心位置に向かって並んで伸びる入力光導波路および出力光導波路を含み、入力光導波路および出力光導波路は、中心位置で光学的に接続されている。例えば、光信号タイミング遅延セクション125は、入力129から螺旋形状の中心位置に向かって伸びる入力光導波路と、出力131から螺旋形状の中心位置に向かって伸びる出力光導波路とを有しており、入力光導波路および出力光導波路は、螺旋形状の中心位置で光学的に接続されている。いくつかの実施形態において、入力光導波路および出力光導波路は、単一の光導波路構造として一体的に形成されている。
【0067】
いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延セクションは、入力光導波路と、出力光導波路と、入力光導波路へ光学的に接続されている入力を有し、出力光導波路へ光学的に接続されている出力を有する共振デバイス(例えば、135)と、を備える。例えば、図1Eは、入力129から共振デバイス135に向かって伸びる入力光導波路と、出力131から共振デバイス135に向かって伸びる出力光導波路とを有する光信号タイミング遅延セクション125Aを示している。いくつかの実施形態において、入力光導波路および出力光導波路は、或る距離にわたって並んで伸びて、共振デバイスと光学的に接続している。いくつかの実施形態において、入力光導波路および出力光導波路は、共振デバイスが配置されている位置に向かって、特に、折り返し形状、渦巻き状、らせん状、ループ状、および、ジグザグの形状、の内の1または複数で、並んで伸びている(図1Eの例で示すらせん状など)。
【0068】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、リング共振器(例えば、103)と光検出器115における第2光導波路の第1端との間の位置に配置されている第1光信号タイミング遅延セクション(例えば、107)、および、リング共振器(例えば、103)と光検出器115における第2光導波路の第2端との間の位置に配置されている第2光信号タイミング遅延セクション(例えば、109)の両方を含む。第1光信号タイミング遅延セクション(例えば、107)と同様に、第2光信号タイミング遅延セクション(例えば、109)は、第2光信号タイミング遅延セクション(例えば、109)を通る光信号に、制御された量の時間遅延を与えるよう構成されている。いくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション(例えば、107)によって与えられる時間遅延の制御された量は、第2光信号タイミング遅延セクション(例えば、109)によって与えられる時間遅延の制御された量とは異なる。
【0069】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、入射光を受信するように光学的に接続されている入力を有する偏光ビームスプリッタ・ローテータ(例えば、401/501)を備える。偏光ビームスプリッタ・ローテータは、第1光導波路(例えば、101)の第1端へ入射光の第1部分を提供するために、偏光ビームスプリッタ・ローテータの第1出力へ、第1偏光を有する入射光の第1部分を方向付けるよう構成されている。また、偏光ビームスプリッタ・ローテータは、偏光ビームスプリッタ・ローテータの第2出力へ、第2偏光を有する入射光の第2部分を方向付けるよう構成されている。また、偏光ビームスプリッタ・ローテータは、第1光導波路(例えば、101)の第2端へ入射光の第2部分を提供するために、偏光ビームスプリッタ・ローテータの第2出力へのルート内で、入射光の第2部分の偏光を第2偏光から第1偏光へ回転させるよう構成されている。このように、第1光導波路(例えば、101)の第1端は、偏光ビームスプリッタ・ローテータの第1出力へ光学的に接続され、第1光導波路(例えば、101)の第2端は、偏光ビームスプリッタ・ローテータの第2出力へ光学的に接続されている。いくつかの実施形態において、光学電気レシーバは、光ファイバから偏光ビームスプリッタ・ローテータの入力へ入射光を伝達するよう構成されている光結合デバイス(例えば、153)を備える。
【0070】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、偏光ビームスプリッタ・ローテータ(例えば、401/501)の第1出力とリング共振器(例えば、103)との間の位置に第1光導波路(例えば、101)に沿って配置されている光信号タイミング遅延部(例えば、DA)を備える。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部(例えば、DA)は、リング共振器(例えば、103)への入射光の第1部分(例えば、117)の到達時間に時間遅延を与えるよう構成されており、ここで、時間遅延は、リング共振器(例えば、103)への入射光の第2部分(例えば、119)の到達時間が、リング共振器への入射光の第1部分(例えば、117)の到達時間と実質的に等しくなるように設定される。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部(例えば、DA)は、偏光ビームスプリッタ・ローテータ(例えば、401/501)の第1出力から出る入射光の第1部分(例えば、117)と、偏光ビームスプリッタ・ローテータ(例えば、401/501)の第2出力から出る入射光の第2部分(例えば、119)との間の時間遅延を補償するよう構成されている。
【0071】
図3は、いくつかの実施形態に従って、PIC302内に実装された電気光学レシーバ300の構成例を示す。いくつかの実施形態において、電気光学レシーバ300は、一連のN個のデマルチプレクサ311-1~311-Nを備えたWDMレシーバであり、ここで、N個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの各々は、それぞれ、光データバス157から光検出器305-1~305-Nへその波長帯域(それぞれ、λ~λ)の光を光学的に結合する。いくつかの実施形態において、一連のN個のデマルチプレクサ311-1~311-Nは、デマルチプレクサ列313に沿って配置されている。双方向偏光ダイバースシステムにおいて、光入力信号が、光カプラ153を通して光ファイバ/導波路152から受信され、偏光分割回転(PSR)デバイス156によって2つの光入力信号に分割される。次いで、2つの分割された光入力信号は、矢印158および159で示すように、反対方向にデマルチプレクサ列313の光データバス157へ送信される。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延補償が、N個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの光検出器305-1~305-Nの各々で提供される。また、いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部315が、デマルチプレクサ列313のいずれかの端部で光データバス157上に提供されている。光信号タイミング遅延部は、(元々の光入力信号の2つの異なる偏光に対応する)2つの分割された光入力信号の対応する部分が、実質的に同時にN個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの各々の所与の光検出器305-1~305-Nに到達することを保証するよう構成されている。さらに、いくつかの実施形態において、電気光学レシーバ300の光カプラ153に戻る(元々の光入力信号が受信される際に通った光ファイバ/導波路152に戻る)光(より大きいシステムにおける光リターンロスとして現れ、レーザ動作を不安定化させるなどシステム動作上の課題を提示しうる)を管理するために、可変光減衰器163が光データバス157上に提供されている。
【0072】
電気光学レシーバ300は、矢印154で示すように、光カプラ153を通して光ファイバ/導波路152から入射光信号を受信する。入射光信号は、光カプラ153から光導波路155を通してPSR156の光入力156Aへ搬送される。PSR156は、PSR156の第1光出力156Bを通るように、第1偏光を有する入射光の第1部分を方向付けるよう構成されている。また、PSR156は、入射光の第2部分が入射光の偏光回転された第2部分になるように、入射光の第2部分の偏光を第2偏光から第1偏光へ回転させるよう構成されている。PSR156は、PSR156の第2光出力156Cを通るように、入射光の偏光回転済みの第2部分を方向付けるよう構成されている。いくつかの実施形態において、光データバス157は、PIC302内の光導波路として実装されている。光データバス157の第1端157Aは、PSR156の第1光出力156Bへ光学的に接続されている。光データバス157の第2端157Bは、PSR156の第2光出力156Cへ光学的に接続されている。光データバス157は、光がインカップリング、アウトカップリング、および、ガイドされうるような材料で形成されている。光データバス157は、光データバス157内で光をガイドすることを可能にするために、光データバス157とは十分に異なる光屈折率を有する周囲の材料の中に形成されている。光データバス157は、連続的なループ状構造を有する。このように、入射光の第1部分は、矢印158で示すように、PSR156の第1光出力156Aから光データバス157を通して第1方向に伝搬する。また、入射光の偏光回転済みの第2部分は、矢印159で示すように、PSR156の第2光出力156Cから光データバス157を通して第1方向と逆向きの第2方向に進む。
【0073】
N個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの各々は、それぞれ、光データバス157に沿って光データバス157のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されている対応するリング共振器301-1~301-Nを備える。様々な実施形態において、電気光学レシーバ300は、リング共振器301-1~301-Nおよび関連する信号処理回路が、PIC302を備えたチップ上に空間的および電気的に収容されうる限りは、光データバス157に沿って配置されている任意の数(N個)のデマルチプレクサ311-1~311-Nおよび対応するリング共振器301-1~301-Nを備えてよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、リング共振器301-1~301-Nは、周回構成(例えば、円形、楕円形、レーストラック形状、または、別の任意の周回形状)を有する環状の導波路として実装される。いくつかの実施形態において、リング共振器301-1~301-Nは、円板として実装される。リング共振器301-1~301-Nは、光がインカップリング、アウトカップリング、および、ガイドされうるような材料で形成されている。リング共振器301-1~301-Nの各々は、リング共振器301-1~301-N内およびリング共振器301-1~301-Nの各々によって規定されている周回経路の周りで光を導くことを可能にするために、リング共振器301-1~301-Nとは十分に異なる光屈折率を有する周囲の材料の中に形成されている。いくつかの実施形態において、リング共振器301-1~301-Nの各々は、約50マイクロメートル未満の外径の環形状またはディスク形状を有するよう構成されている。いくつかの実施形態において、リング共振器301-1~301-Nの各々は、約10マイクロメートル未満の外径の環形状またはディスク形状を有するよう構成されている。
【0074】
複数のリング共振器301-1~301-Nの各々は、それぞれの共振波長λ~λで動作するよう構成されている。このように、複数のリング共振器301-1~301-Nの内の所与の1つに対応する共振波長と実質的に等しい波長を有する入射光の第1部分が、第1伝搬方向(例えば、反時計回り)に複数のリング共振器301-1~301-Nの内の所与の1つへ光学的に結合し、複数のリング共振器301-1~301-N内の所与の1つに対応する共振波長と実質的に等しい波長を有する入射光の偏光回転済みの第2部分が、第1伝搬方向と逆向きの第2伝搬方向(例えば、時計回り)に複数のリング共振器301-1~301-Nの内の所与の1つへ光学的に結合する。例えば、特定の波長λを有する入射光の第1部分は、光データバス157を通して矢印158で示す方向に進み、特定の波長λで動作するリング共振器301-x(ここで、xは、1~N)へ光学的に結合し、リング共振器301-x内で反時計回りの方向に伝搬する。特定の波長λを有する入射光の偏光回転済みの第2部分は、光データバス157を通して矢印159で示す方向に進み、特定の波長λで動作するリング共振器301-xへ光学的に結合し、リング共振器301-x内で時計回りの方向に伝搬する。
【0075】
N個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの各々は、それぞれ対応するリング共振器301-1~301-Nのエバネッセント光結合距離の範囲内にそれぞれ配置されている出力光導波路303-1~303-Nを備える。出力光導波路303-1~303-Nの各々は、それぞれ、結合セクション303A-1~303A-Nを備える。複数の出力光導波路303-1~303-Nの各々は、それぞれ、短尺セクション303B-1~303B-Nを備える。複数の出力光導波路303-1~303-Nの各々は、それぞれ、長尺セクション303C-1~303C-Nを備える。結合セクション303A-1~303A-Nの各々は、それぞれ、リング共振器301-1~301-Nの内の対応する1つからの光をエバネッセントにインカップリングするよう配置されている。このように、リング共振器301-1~301-Nの各々は、それぞれ対応する特定の波長λ~λの入射光の第1部分および入射光の偏光回転済みの第2部分を光データバス157から出力光導波路303-1~303-Nの内のそれぞれ対応する1つへ転送するよう動作する。リング共振器301-1~301-N内で反時計回りの方向に伝搬する入射光の第1部分は、それぞれ対応する結合セクション303A-1~303A-Nを通って、それぞれ、矢印307-1~307-Nで示すように、それぞれ対応する長尺セクション303C-1~303C-Nへ光学的に結合される。リング共振器301-1~301-N内で時計回りの方向に伝搬する入射光の偏光回転済みの第2部分は、それぞれ対応する結合セクション303A-1~303A-Nを通って、それぞれ、矢印309-1~309-Nで示すように、それぞれ対応する短尺セクション303B-1~303B-Nへ光学的に結合される。
【0076】
出力光導波路303-1~303-Nは、光がインカップリング、アウトカップリング、および、ガイドされうるような材料で形成されている。出力光導波路303-1~303-Nの各々は、出力光導波路303-1~303-N内で光を導くことを可能にするために、それぞれ、出力光導波路303-1~303-Nとは十分に異なる光屈折率を有する周囲の材料の中に形成されている。いくつかの実施形態において、出力光導波路303-1~303-Nは、レーストラック型の形状を有するように実装されている。ただし、他の実施形態において、出力光導波路303-1~303-Nは、それぞれ対応する結合セクション303A-1~303A-Nと、それぞれ対応する短尺セクション303B-1~303B-Nと、それぞれ対応する長尺セクション303C-1~303C-Nと、を備える限りは、任意の形状を有するように実装されてよいことを理解されたい。
【0077】
N個のデマルチプレクサ311-1~311-Nの各々は、それぞれ対応するリング共振器301-1~301-Nに関連付けられたそれぞれ対応する光検出器305-1~305-Nを備える。出力光導波路303-1~303-Nの短尺セクション303B-1~303B-Nは、それぞれ対応する結合セクション303A-1~303A-Nの第1端からそれぞれ対応する光検出器305-1~305-Nへそれぞれ伸びている。出力光導波路303-1~303-Nの長尺セクション303C-1~303C-Nは、それぞれ対応する結合セクション303A-1~303A-Nの第2端からそれぞれ対応する光検出器305-1~305-Nまでそれぞれ伸びている。いくつかの実施形態において、光検出器305-1~305-Nの各々は、図2に関して記載した光検出器200などの光検出器である。これらの実施形態において、出力光導波路303-1~303-Nの内のそれぞれ対応する導波路の短尺セクション303B-1~303B-Nが、光検出器の第1端へ光学的に接続され、出力光導波路303-1~303-Nの内のそれぞれ対応する導波路の長尺セクション303C-1~303C-Nが、光検出器の第2端へ光学的に接続されている。
【0078】
出力光導波路303-1~303-Nの内の所与の1つ内のそれぞれ対応する長尺セクション303C-1~303C-Nの長さおよび短尺セクション303B-1~303B-Nの長さは、それぞれ対応する光検出器305-1~305-Nへの入射光の第1部分および入射光の偏光回転済みの第2部分の到達時間の差を低減するように規定されている。光データバス157の第2端157Bからリング共振器301-1~301-Nの各々までの光データバス157に沿った距離が異なるため、長尺セクション303C-1~303C-Nの長さは、出力光導波路303-1~303-Nの各々について異なっている。いくつかの実施形態において、長尺セクション303C-1~303C-Nの長さは、それぞれ対応するリング共振器301-1~301-Nと、光データバス157の中間点との間の距離が減少するにつれて減少し、ここで、光データバス157の中間点は、光データバス157の第1端157Aおよび第2端157Bの間のおよそ中間にある。
【0079】
いくつかの実施形態において、電子光学レシーバ300は、さらに、光検出器305-1~305-Nの内の任意の所与の1つへの入射光の第1部分および入射光の偏光回転済みの第2部分の到達時間の差によって引き起こされる、光検出器305-1~305-Nの内の所与の1つによる光電流発生の時間差を電子的に補償するよう構成されているタイミングスキュー管理システム165を備える。タイミングスキュー管理システム165が、光検出器305-1~305-Nの各々による光電流発生の時間差を電子的に補償するよう動作した後、光検出器305-1~305-Nの各々によって生成された光電流は、光電流を入射光信号によって搬送されたデジタルデータパターンに復号するために、光電流処理回路167へ伝送される。異なる偏光からの光が、同じ偏光を有するようにされ、同じ光検出器305-1~305-Nへ方向付けられるいくつかの実施形態において、各偏光状態からの光信号の間に時間遅延の差(タイミングスキュー)が存在しうる。結合された光信号を光検出器305-1~305-Nで電気信号に変換した後、タイミングスキューは、ベースバンド信号の電気高周波成分周辺のノッチフィルタとして現れる。ノッチフィルタの中心周波数は、タイミングスキューの大きさに依存し、ノッチフィルタの深さは、2つの偏光状態の間の光パワーの相対分割によって決定される。デジタル通信用途では、このノッチフィルタは、符号間干渉(ISI)の増大につながる。タイミングスキュー管理システム165は、タイミングスキューの存在を検出し、タイミングスキューの大きさを決定し、光電流処理回路167へ伝送される光電流ベースの信号におけるタイミングスキューを補償するよう構成されている。
【0080】
図4Aは、いくつかの実施形態に従って、PSR401の構成例を示す。PSR例401は、PSR156および/または本明細書で言及されているPSRのいずれかに利用できることを理解されたい。また、PSR401は例として提供されており、PSR156および/または本明細書で言及されているPSRのいずれかが様々な実施形態においてどのように構成されうるのかを決して限定しないことを理解されたい。PSR401は、第1光導波路403および第2光導波路405を備える。図4Bは、いくつかの実施形態に従って、図4Aの矢視線A-AにおけるPSR例401を示す垂直断面図である。いくつかの実施形態において、第1光導波路403は、窒化シリコン光導波路であり、第2光導波路405は、シリコン光導波路である。いくつかの実施形態において、PSR401は、基板409上に配置されている埋め込み酸化膜(BOX)層407上に形成されている。いくつかの実施形態において、第1光導波路403および第2光導波路405は、光クラッド411内に形成されている。いくつかの実施形態において、光クラッド411は、二酸化シリコンである。第1光導波路403は、矢印413で示すように、光クラッド411の層によって第2光導波路405から垂直に分離されている。
【0081】
第1光導波路403は、TE偏光およびTM偏光の両方を含む入射光を受信するために接続されている入力セクション403Aを備える。いくつかの実施形態において、入力セクション403Aは、入射光のスポットサイズを第1光導波路403の光モードに変換するために逆テーパとして構成されている。(光伝搬方向に関して)入力セクション403Aの後ろに、第1光導波路403は、回転/分割セクション403Bを備える。いくつかの実施形態において、回転/分割セクション403Bは、略直線形状を有する。回転/分割セクション403Bの後ろに、第1光導波路403は、PSR401の第1光出力403Dへ光学的に接続されている出力セクション403Cを備える。第1光導波路403は、第1偏光(TEまたはTM)を有する入射光の部分が実質的に変化することなしに第1光導波路403を通してPSR401の第1光出力403Dへ伝搬するよう構成されている。PSR例401は、入射光のTE偏光が実質的に変化することなしに第1光導波路403を通してPSR401の第1光出力403Dへ伝搬する様子を示している。
【0082】
第2光導波路405は、第1光導波路403の回転/分割セクション403Bからの入射光のTM偏光をエバネッセントにインカップリングすると同時にインカップリングされたTM偏光をTE偏光へ回転させるよう構成されている回転/分割セクション405Aを備える。これを達成するために、第2光導波路405の回転/分割セクション405Aは、第1光導波路403の回転/分割セクション403Bに対して偏心は位置された(光伝搬方向と垂直な方向に横方向オフセットを有する)逆テーパ構成を有する。第1光導波路403の回転/分割セクション403Bに対する第2光導波路405の回転/分割セクション405Aの横方向オフセットは、第1光導波路403の回転/分割セクション403BにおいてTM0モードを回転させて回転済みTE0モードにして、この回転済みTE0モードを第2光導波路405の回転/分割セクション405Aへ結合するために、水平および垂直の対称性を破るよう機能する。回転済みTE0モードは、第2光導波路405の出力セクション405Bを通してPSR401の第2光出力405Cへ伝達される。PSR例401は、入射光のTE偏光が実質的に変化することなしに第1光導波路403を通してPSR401の第1光出力403Dへ伝搬する様子を示すと共に、入射光のTM偏光がPSR401の第2光出力405Cへのルート内でTE偏光へ回転される様子を示しているが、PSR401の他の実施形態は、PSR401の第2光出力405Cへのルート内で入射光のTE偏光をTM偏光へ回転させつつ、実質的に変化することなしに第1光導波路403を通してPSR401の第1光出力403Dへ入射光のTM偏光を伝搬させるよう構成される。
【0083】
図5Aは、いくつかの実施形態に従って、PSR501の構成例を示す。PSR例501は、PSR156および/または本明細書で言及されているPSRのいずれかに利用できることを理解されたい。また、PSR501は例として提供されており、PSR156および/または本明細書で言及されているPSRのいずれかが様々な実施形態においてどのように構成されうるのかを決して限定しないことを理解されたい。PSR501は、リブ型光導波路を実装する広帯域PSRである。PSR501は、第1ブランチ503および第2ブランチ505を備える。PSR501は、第1ブランチスラブ導波路507、第1ブランチリブ導波路509、第2ブランチスラブ導波路511、および、第2ブランチリブ導波路513を備えた光導波路システムとして構成されている。図5Bは、いくつかの実施形態に従って、図5Aの矢視線A-AにおけるPSR例501を示す垂直断面図である。図5Cは、いくつかの実施形態に従って、図5Aの矢視線B-BにおけるPSR例501を示す垂直断面図である。いくつかの実施形態において、第1ブランチスラブ導波路507、第2ブランチスラブ導波路511、第1ブランチリブ導波路509、および、第2ブランチリブ導波路513は、モノリシック光導波路構造として一体的に形成されており、そこで、第1ブランチスラブ導波路507、第2ブランチスラブ導波路511、第1ブランチリブ導波路509、および、第2ブランチリブ導波路513は、モノリシック光導波路構造の異なる部分を形成している。いくつかの実施形態において、モノリシック光導波路構造は、シリコン光導波路として形成されている。いくつかの実施形態において、モノリシック光導波路構造は、窒化シリコン光導波路として形成されている。いくつかの実施形態において、PSR501は、基板517上に配置されているBOX層515上に形成されている。いくつかの実施形態において、第1ブランチスラブ導波路507、第2ブランチスラブ導波路511、第1ブランチリブ導波路509、および、第2ブランチリブ導波路513を備えたモノリシック光導波路構造は、光クラッド519内に形成されている。いくつかの実施形態において、光クラッド519は、二酸化シリコンである。
【0084】
第1ブランチリブ導波路509は、略直線形状を有する入力セクション509Aを備え、(PSR501における光伝搬方向に関して)その後ろにテーパ状セクション509Bが続き、その後ろに出力セクション509Cが続いている。第1ブランチスラブ導波路507は、テーパ状入力セクション507Aを備え、その後ろにテーパ状セクション507B(リブテーパ状セクション509Bに対応する)が続き、その後ろに出力セクション507C(リブ出力セクション509Cに対応する)が続いている。第2ブランチリブ導波路513は、テーパ状セクション513Aを備え、(PSR501における光伝搬方向に関して)その後ろに出力セクション513Bが続いている。第2ブランチスラブ導波路511は、テーパ状セクション511A(リブテーパ状セクション513Aに対応する)を備え、その後ろに出力セクション511B(リブ出力セクション513Bに対応する)が続いている。いくつかの実施形態において、第1ブランチリブ導波路509と第2ブランチリブ導波路513との間に配置されている第2ブランチスラブ導波路511の出力セクション511Bの一部は、出力光導波路を分離する目的で、第1ブランチ503および第2ブランチ505の出力の容易な光ルーティングを提供するために光伝搬方向に沿って増大する幅を有する。
【0085】
第1ブランチリブ導波路509の入力セクション509Aおよびテーパ状セクション509B、ならびに、第1ブランチスラブ導波路507のテーパ状入力セクション507Aおよびテーパ状セクション507Bは、集合的に偏光ローテータとして機能する。第1ブランチリブ導波路509の出力セクション509Cおよび第1ブランチスラブ導波路507の出力セクション507C、ならびに、第2ブランチリブ導波路513のテーパ状セクション513Aおよび第2ブランチスラブ導波路511のテーパ状セクション511Aは、集合的に偏光スプリッタとして機能する。このように、入射光のTE0偏光は、第1ブランチ503を通してPSR501の第1光出力521へ実質的に変化することなしに伝送される。入射光のTM0偏光は、入射光のこの部分が第1ブランチ503を通して伝送される間に、TE1偏光へ回転され、次いでTE0偏光へ回転され、PSR501の第2光出力523へのルート内で第2ブランチ505へ光学的に結合される。あるいは、いくつかの他の実施形態において、PSR501は、実質的に変化させることなしに入射光のTM偏光を通過させ、入射光のTE偏光を出力TM偏光へ回転/分割させるよう構成されている。
【0086】
PSR401およびPSR501は、本明細書に記載のPSRが、いくつかの実施形態例においてどのように実装されうるのかを示す例として提供されていることを理解されたい。また、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のPSRはいずれも、二重偏光グレーティングカプラとして実装可能であることを理解されたい。PSR例401およびPSR例501は、本明細書に記載の様々なPSRが、様々な実施形態でどのように実装されうるのかを決して限定しないことを理解されたい。本明細書に記載のPSRはいずれも、PSRによって受信された入射光の2つの入力偏光の一方(TEまたはTM)が、他方の偏光へ回転され、PSRの2つの出力の一方へ方向付けられ、入射光の非回転偏光がPSRの2つの出力の他方へ方向付けられる限りは、異なる方法で実装されてもよい。
【0087】
図6は、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列の一例600を示す。WDMレシーバ列600は、光導波路602のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されているN個のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nを備える。光導波路602は、WDMレシーバ列600内で光データバスとして機能する。いくつかの実施形態において、数Nは、1以上の整数の値である。いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列600は、複数のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nを備え、ここで、数Nは、2以上の整数の値である。いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列600は、複数のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nを備え、ここで、数Nは、2以上の偶数の整数の値である。いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列600は、複数のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nを備え、ここで、数Nは、1より大きい奇数の整数である。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々は、図1A図1Eに関して記載したWDMデマルチプレクサ100と同じ方法で構成されている。特に、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々は、光導波路602のエバネッセント光結合距離の範囲内に配置されているそれぞれ対応するリング共振器103-1~103-Nを備える。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々は、それぞれ対応するリング共振器103-1~103-N内に配置されているそれぞれ対応するヒータ104-1~104-Nを備える。ヒータ104-1~104-Nは、それぞれ対応するリング共振器103-1~103-Nの共振波長λか~λと、それぞれWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの対応する動作波長範囲との制御を提供する。
【0088】
WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々は、それぞれ対応する光導波路105-1~105-Nの反対側の端部へ光学的に接続されている、それぞれ対応する第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nおよびそれぞれ対応する第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nを備える。光導波路105-1~105-Nは、リング共振器103-1~103-N内を伝搬する光が、それぞれ対応する光導波路105-1~105-Nに結合するように、それぞれ対応するリング共振器103-1~103ーNのエバネッセント光結合距離の範囲を通るように伸びている。第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nは、第1ポートAから光導波路602を通ってそれぞれ対応するWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nへ移動する第1光信号に、それぞれ対応する光信号遅延D1A~DNAを提供する。図1Bに関して記載したように、波長λを有する第1光信号は、光導波路602から共振波長λで動作するリング共振器103-xに結合し、リング共振器103-x内で反時計回りに進んで、光導波路105-xへ光学的に結合し、第1光信号タイミング遅延セクション107-xへ進む(ここで、xは、1~Nのいずれか)。第1光信号は、それぞれ、第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nから、光導波路111-1~111-Nを通して、それぞれ対応する光検出器115-1~115-Nのそれぞれ対応する第1入力115A-1~115A-Nへ進む。
【0089】
第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nは、第2ポートBから光導波路602を通ってそれぞれ対応するWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nへ移動する第2光信号に、それぞれ対応する光信号遅延D1B~DNBを提供する。図1Cに関して記載したように、波長λを有する第2光信号は、光導波路602から共振波長λで動作するリング共振器103-xに結合し、リング共振器103-x内で時計回りに進んで、光導波路105-xへ光学的に結合し、第2光信号タイミング遅延セクション109-xへ進む(ここで、xは、1~Nのいずれか)。第2光信号は、それぞれ、第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nから、光導波路113-1~113-Nを通して、それぞれ対応する光検出器115-1~115-Nのそれぞれ対応する第2入力115B-1~115B-Nへ進む。いくつかの実施形態において、第1ポートAから進む第1光信号および第2ポートBから進む第2光信号は、WDMレシーバ列600を備えた電気光学レシーバによって受信されるのと同じ元々の入力信号の反対方向に偏光した部分であり、ここで、同じ元々の入力信号の2つの偏光(TEまたはTM)の一方が、他方の偏光へ回転されている。例えば、いくつかの実施形態において、第1ポートAは、PSR(図4Aおよび図4BのPSR401、もしくは、図5A図5CのPSR501、など)の第1出力ポートであり、第2ポートBは、PSRの第2出力ポートである。所与のWDMデマルチプレクサ601-x(ここで、xは、1からNまでの範囲内の整数)内に光信号タイミング遅延部DxAおよび光信号タイミング遅延部DxBの両方を実装することは、光導波路105-xを通して光検出器115-xへ進む光信号に対する単一の差分光信号タイミング遅延部を実装することと等価である。したがって、いくつかの実施形態において、所与のWDMデマルチプレクサ601-x内に光信号タイミング遅延部DxAおよび光信号タイミング遅延部DxBの両方を実装することなしに、光信号タイミング遅延部DxAまたは光信号タイミング遅延部DxBのいずれかが、所与のWDMデマルチプレクサ601-x内に実装される。
【0090】
さらに、いくつかの実施形態において、1または複数の光信号タイミング遅延部が、光導波路602に沿って実装される。例えば、いくつかの実施形態において、第1WDMデマルチプレクサ601-1に到達する前に、第1ポートAから進む第1光信号を受信して遅延させるために、光信号タイミング遅延部Dが、光導波路602の第1端に実装される。光信号タイミング遅延部Dは、第1ポートAから第1WDMデマルチプレクサ601-1への第1光信号の伝搬に、制御された量の時間遅延を導入するよう構成されている。いくつかの実施形態において、第N WDMデマルチプレクサ601-Nに到達する前に、第2ポートBから進む第2光信号を受信して遅延させるために、光信号タイミング遅延部Dが、光導波路602の第2端に実装される。光信号タイミング遅延Dは、第2ポートBから第N WDMデマルチプレクサ601-Nへの第2光信号の伝搬に、制御された量の時間遅延を導入するよう構成されている。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部Dおよび光信号タイミング遅延部Dは、光導波路602の反対側の端部に実装されている。光信号タイミング遅延部Dおよび光信号タイミング遅延部Dの両方を実装することは、光導波路602を通して進む光信号に対する単一の差分光信号タイミング遅延部を実装することと等価である。したがって、いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部Dまたは光信号タイミング遅延部Dのいずれかが、光導波路602の一端に実装される。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部Dおよび光信号タイミング遅延部Dの各々は、同じ量の光信号タイミング遅延を提供する。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部Dおよび光信号タイミング遅延部Dは、異なる量の光信号タイミング遅延を提供する。
【0091】
WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nは、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの内の隣接して配置されているものが、光導波路602のそれぞれ対応する長さL~LN-1だけ互いに分離されるように、光導波路602に沿って配置されている。光導波路602の長さLは、それぞれ対応するWDMデマルチプレクサ601-mおよび601-(m+1)のリング共振器103-mおよび103-(m+1)の光結合位置の間に伸びており、ここで、mは、1から(N-1)までの範囲の整数である。例えば、それぞれ対応するWDMデマルチプレクサ601-1および602-2のリング共振器103-1および103-2の光結合位置は、光導波路602の長さLだけ分離されている。同様に、それぞれ対応するWDMデマルチプレクサ601-(N-1)および601-Nのリング共振器103-(N-1)および103-Nの光結合位置は、光導波路602の長さLN-1だけ互いから分離されている。いくつかの実施形態において、所与のリング共振器103-1~103-Nの光結合位置は、所与のリング共振器103-1~103-Nと光導波路602との間の最小距離が存在する光導波路602に沿った位置である。WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの隣接して配置されているものの間の光導波路602の様々な部分の長さL~LN-1は、WDMレシーバ列600に沿った様々なWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの間に固有の光信号遅延を決定する。
【0092】
上述のように、WDMレシーバ列600のいくつかの実施形態において、(N+1)個の差分光信号タイミング遅延制御パラメータ(D/DおよびD1A/D1B~DNA/DNB)と、差分光信号タイミング遅延が等化されることを必要とするWDMレシーバ列600を通して進むN個の光信号が存在する。したがって、WDMレシーバ列600によれば、すべてのWDM波長チャネルλ~λに対して差分光信号タイミング遅延を等化することが可能である。いくつかの実施形態において、光信号タイミング遅延部Dおよび/または光信号タイミング遅延部Dは、様々なWDMデマルチプレクサ601-1~601-N内の他の光信号タイミング遅延部D1A/D1B~DNA/DNBを最小化するために、光導波路602上に実装されている。いくつかの実施形態において、第1ポートAと第2ポートBとの間(例えば、PSRの第1および第2出力ポートの間)の差分時間遅延τABが決定される。一般に、第1ポートAでの光信号遅延および第2ポートBでの光信号遅延は、電気光学レシーバの光カプラ(例えば、エッジカプラ)の偏光依存光信号遅延、PSRの光信号遅延、ならびに、それぞれ第1ポートAおよび第2ポートBにつながるすべてのその他の光学素子の光信号遅延を含む。光信号タイミング遅延Dおよび/またはDを知っていることと併せて、差分時間遅延τABが既知であれば、WDMデマルチプレクサ601-1~601-N内の差分光信号タイミング遅延D1A/D1B~DNA/DNBは、WDM波長チャネルλ~λに対する光検出器115-1~115-Nでの差分光信号タイミング遅延を等化するように決定される。
【0093】
図7は、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列の一例700を示す。WDMレシーバ列700は、図6のWDMレシーバ列600の変形例である。WDMレシーバ列700は、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nを備える。しかしながら、WDMデマルチプレクサの第1半分601-1~601-(N/2)の各々は、それぞれ対応するリング共振器103-1~103-(N/2)と、それぞれ対応する光検出器115-1~115-(N/2)のそれぞれの第2入力115B-1~115B-(N/2)との間に配置されている光信号遅延部D1B~D(N/2)Bを備えていない。代わりに、WDMデマルチプレクサ601-1~601-(N/2)の各々において、光導波路105-1~105-(N/2)は、それぞれ対応するリング共振器103-1~103-(N/2)に近接する位置から、光検出器115-1~115-(N/2)のそれぞれの第2入力115B-1~115B-(N/2)まで伸びている。同様に、第2半分のWDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-Nの各々は、それぞれ対応するリング共振器103-[(N/2)+1]~103-Nと、それぞれ対応する光検出器115-[(N/2)+1]~115-Nのそれぞれの第1入力115A-[(N/2)+1]~115A-Nとの間に配置されている光信号遅延部D[(N/2)+1]B~DNBを備えていない。代わりに、WDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-Nの各々において、光導波路105-[(N/2)+1]~105-Nは、それぞれ対応するリング共振器103-[(N/2)+1]~103-Nに近接する位置から、光検出器115-[(N/2)+1]~115-Nのそれぞれの第1入力115A-[(N/2)+1]~115A-Nまで伸びている。また、第1ポートAと第1WDMデマルチプレクサ601-1との間の光信号タイミング遅延部Dは実装されているが、第2ポートBと第N WDMデマルチプレクサ601-Nとの間には、光信号タイミング遅延Dが実装されていない。
【0094】
光が光導波路602を進むのに必要な時間のため、第1ポートAに最も近いWDMデマルチプレクサの第1半分601-1~601-(N/2)は、第2ポートBから伝搬する第2光信号を受信する前に、第1ポートAから伝搬する第1光信号を受信する。換言すると、第1ポートAに最も近いWDMデマルチプレクサ601-1~601-(N/2)は、光導波路602に沿ったそれぞれのリング共振器103-1~103-(N/2)の位置において、第2ポートBから伝搬する第2光信号と比較して、第1ポートAから伝搬する第1光信号においてより短い遅延を有する。したがって、それぞれの光信号遅延部D1B~D(N/2)Bを実装することなしに、それぞれの光信号遅延部D1A~D(N/2)Aのみを実装することによって、光検出器115-1~115-(N/2)において、(第1ポートAから伝搬する)第1光信号および(第2ポートBから伝搬する)第2光信号の到達タイミングを実質的に等化することができる。第1ポートAに最も近いそれぞれのWDMデマルチプレクサ601-1~601-(N/2)に光信号遅延部D1B~D(N/2)Bを実装しないことにより、チップ上でのWDMレシーバ列700のフットプリントが削減され、WDMレシーバ列700の全体の複雑さおよびコストが削減されることを理解されたい。
【0095】
同様に、光が光導波路602を進むのに必要な時間のため、第2ポートBに最も近い第2半分のWDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-Nは、第1ポートAから伝搬する第1光信号を受信する前に、第2ポートBから伝搬する第2光信号を受信する。換言すると、第2ポートBに最も近いWDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-Nは、光導波路602に沿ったそれぞれのリング共振器103-[(N/2)+1]~103-Nの位置において、第1ポートAから伝搬する第1光信号と比較して、第2ポートBから伝搬する第2光信号においてより短い遅延を有する。したがって、それぞれの光信号遅延部D[(N/2)+1]A~DNAを実装することなしに、それぞれの光信号遅延部D[(N/2)+1]B~DNBのみを実装することによって、光検出器115-[(N/2)+1]~115-Nにおいて、(第1ポートAから伝搬する)第1光信号および(第2ポートBから伝搬する)第2光信号の到達タイミングを実質的に等化することができる。第2ポートBに最も近いそれぞれのWDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-Nに光信号遅延部D[(N/2)+1]A~DNAを実装しないことにより、チップ上でのWDMレシーバ列700のフットプリントが削減され、WDMレシーバ列700の全体の複雑さおよびコストが削減されることを理解されたい。
【0096】
WDMレシーバ列600、700における光検出器115-1~115-Nの内の所与の光検出器115-kでの光信号タイミング遅延等化条件は、式1によって与えられる。
【0097】
【数1】
【0098】
差分時間遅延τABは、ポートAへの第1光信号の到達とポートBへの第2光信号の到達との間の時間差である。したがって、差分時間遅延τABは、ポートAを出る第1光信号とポートBを出る第2光信号との間に存在する差分時間遅延である。項Dは、第1光信号がポートAからWDMレシーバ列600、700まで伝搬するのに必要な時間である。項Dは、第2光信号がポートBからWDMレシーバ列600、700まで伝搬するのに必要な時間である。項Lは、WDMデマルチプレクサ601-xとWDMデマルチプレクサ601-(x+1)との間のWDMレシーバ列600、700に沿った長さである。したがって、項Lは、WDMデマルチプレクサ601-xのリング共振器103-xの基準光結合位置とWDMデマルチプレクサ601-(x+1)のリング共振器103-(x+1)の基準光結合位置との間の光導波路602の長さであり、ここで、所与のリング共振器601-1~601-Nの基準光結合位置は、所与のリング共振器601-1~601-Nが光導波路602に最も近い光導波路602に沿った位置である。項DkAは、ポートAから伝搬している第1光信号が、第1光信号が第k WDMデマルチプレクサ601-kのリング共振器103-kに結合する点から、第k WDMデマルチプレクサ601-kの光検出器115+kまで伝搬するのに掛かる時間である。項DkBは、ポートBから伝搬している第2光信号が、第2光信号が第k WDMデマルチプレクサ601-kのリング共振器103-kに結合する点から、第k WDMデマルチプレクサ601-kの光検出器115+kまで伝搬するのに掛かる時間である。
【0099】
式1は、ポートAを通して伝搬する第1光信号およびポートBを通して伝搬する第2光信号が第k WDMデマルチプレクサ601-kの光検出器115-kへ実質的に同時に到達する条件を表している。ポートAを通して伝搬する第1光信号およびポートBを通して伝搬する第2光信号は、同じ元々の入射光信号のそれぞれの部分に対応するので、式1は、同じ元々の入射光信号の各部分が、第k WDMデマルチプレクサ601-kの光検出器115-kへ実質的に同時に到達する条件を表している。式1は、第k WDMデマルチプレクサ601-kに対する光信号タイミング遅延等化条件を定義しているので、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々について式1を考慮すれば、WDMレシーバ列600、700の遅延等化条件を記述するN個の式の線形系が定義される。
【0100】
式2は、第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)に対する式1から第k WDMデマルチプレクサ601-kに対する式1を減算することによって得られる。式2は、式3に示すように書き直し可能である。式3は、式4に示すように書き直し可能である。
【0101】
式2:L/V+D(k+1)A-DkA=-L/V+D(k+1)B-DkB
【0102】
式3:(D(k+1)B-D(k+1)A)-(DkB-DkA)=2L/V
【0103】
式4:ΔD(k+1)-ΔD=2L/V
【0104】
項ΔD(k+1)は、(リング共振器103-(k+1)の基準光結合位置から光検出器115-(k+1)まで)第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)を通る第2光信号および第1光信号の伝搬時間の差であり、ここで、第2光信号はポートBから伝搬し、第2光信号はポートAから伝搬している。項ΔDは、(リング共振器103-kの基準光結合位置から光検出器115-kまで)第k WDMデマルチプレクサ601-kを通る第2光信号および第1光信号の伝搬時間の差であり、ここで、第2光信号はポートBから伝搬し、第1光信号はポートAから伝搬している。
【0105】
式4は、第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)の光検出器115-(k+1)における光信号タイミング遅延等化を達成するためには、第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD(k+1))が、第k WDMデマルチプレクサ601-k内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD)よりも、リング共振器103-(k+1)の基準光結合位置およびリング共振器103-kの基準光結合位置を分離する光導波路602の部分を通る光信号伝搬に必要な時間の2倍の量だけ長いべきであることを示している。換言すると、ポートAから伝搬している第1光信号およびポートBから伝搬している第2光信号を第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)の光検出器115-(k+1)へ実質的に同時に到達させるためには、第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD(k+1))が、第k WDMデマルチプレクサ601-k内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔDk)よりも、第(k+1)WDMデマルチプレクサ601-(k+1)を第k WDMデマルチプレクサ601-kから分離する光導波路602の部分を通して光が伝搬するのに必要な時間の2倍の量だけ長いべきである。例えば、WDMレシーバ列600において、ポートAから伝搬している第1光信号およびポートBから伝搬している第2光信号をWDMデマルチプレクサ601-2の光検出器115-2へ実質的に同時に到達させるためには、WDMデマルチプレクサ601-2内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D2B-D2A)が、WDMデマルチプレクサ601-1内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D1B-D1A)よりも、WDMデマルチプレクサ601-2のリング共振器103-2の基準光結合位置をWDMデマルチプレクサ601-1のリング共振器103-1の基準光結合位置から分離する光導波路602のL部分を通して光が伝搬するのに必要な時間の2倍の量だけ長いべきである。また、例として、WDMレシーバ列700において、ポートAから伝搬している第1光信号およびポートBから伝搬している第2光信号をWDMデマルチプレクサ601-2の光検出器115-2へ同時に到達させるためには、WDMデマルチプレクサ601-2内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D2A)が、WDMデマルチプレクサ601-1内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D1A)よりも、WDMデマルチプレクサ601-2のリング共振器103-2の基準光結合位置をWDMデマルチプレクサ601-1のリング共振器103-1の基準光結合位置から分離する光導波路602のL部分を通して光が伝搬するのに必要な時間の2倍の量だけ長いべきである。
【0106】
いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列600、700は、実質的に対称に形成されている。例えば、いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの数Nは、偶数値であり、WDMデマルチプレクサ601-1~601-(N/2)がWDMレシーバ列600、700の第1半分に沿って配置され、WDMデマルチプレクサ601-[(N/2)+1]~601-NがWDMレシーバ列600、700の第2半分に沿って配置されており、ここで、隣接して配置されているWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの間の間隔は、WDMレシーバ列600、700の第1半分および第2半分の間で実質的に対称にされている。また、例として、いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの数Nは、1より大きい奇数値であり、WDMデマルチプレクサ601-1~601-[(N-1)/2]がWDMレシーバ列600、700の第1半分に沿って配置され、WDMデマルチプレクサ601-[(N+1)/2]がWDMレシーバ列600、700の中心に配置され、WDMデマルチプレクサ601-[(N+3)/2]~601-NがWDMレシーバ列600、700の第2半分に沿って配置されており、ここで、隣接して配置されているWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの間の間隔は、WDMレシーバ列600、700の第1半分および第2半分の間で実質的に対称にされている。
【0107】
WDMレシーバ列600、700が実質的に対称に形成されているかかる実施形態において、光導波路602に沿った距離Lは、光導波路602に沿った距離LN-1と実質的に等しく、光導波路602に沿った距離Lは、光導波路602に沿った距離LN-2と実質的に等しい、などである。これらの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの光検出器115-1~115-Nの各々における光信号タイミング遅延等化を達成するために、WDMデマルチプレクサ601-1~601-N内に実装された光信号タイミング遅延差は、WDMレシーバ列600、700の第1半分および第2半分の間で実質的に対称にされている。例えば、WDMレシーバ列600に関して、WDMデマルチプレクサ601-1内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD=D1B-D1A)は、WDMデマルチプレクサ601-N内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD=DNB-DNA)と実質的に等しく、WDMデマルチプレクサ601-2内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD=D2B-D2A)は、WDMデマルチプレクサ601-N内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、ΔD(N-1)=D(N-1)B-D(N-1)A)と実質的に等しい、などである。また、例として、WDMレシーバ列700に関して、WDMデマルチプレクサ601-1内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、(D1A)は、WDMデマルチプレクサ601-N内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、DNB)と実質的に等しく、WDMデマルチプレクサ601-2内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D2A)は、WDMデマルチプレクサ601-N内に実装された光信号タイミング遅延差(すなわち、D(N-1)B)と実質的に等しい、などである。
【0108】
図8Aは、いくつかの実施形態に従って、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の光パワーの時間プロットの一例を示す。曲線801は、ポートAから伝搬する第1光信号の時間の関数として光パワーを表している。曲線803は、ポートBから伝搬する第2光信号の時間の関数として光パワーを表している。ポートAから伝搬する第1光信号801およびポートBから伝搬する第2光信号803は、電気光学レシーバデバイスで受信される同じ元々の光信号のそれぞれの部分である。いくつかの実施形態において、第1光信号801および第2光信号803は、元々の光信号内に含まれる光の異なる偏光に対応する。いくつかの実施形態において、元々の光信号内の光の第1偏光が、元々の光信号から分けられ(分離され)、第1偏光を維持する第1光信号801として第1ポートAを通して伝送される。また、これらの実施形態において、元々の光入力信号内の光の第2偏光が、元々の光から分けられ(分離され)、第2ポートBを通して伝送される第2光信号803を生成するために第2偏光から第1偏光へ偏光回転される。したがって、これらの実施形態において、ポートAから伝搬する第1光信号801およびポートBから伝搬する第2光信号803は、同じ偏光(第1偏光)を有する。これは、WDMレシーバ列600、700内のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nが、第1偏光を有する光を操作するために構成および最適化されることを可能にし、それにより、第2偏光を有する光を処理する必要なしに、元々の光信号の全体を集合的に表す第1光信号801および第2光信号803の両方の処理が提供される。しかしながら、元々の光信号から第1光信号801および第2光信号803を分離して生成するためになされる光分割および偏光回転は、ポートAを出る第1光信号とポートBを出る第2光信号との間に存在する差分時間遅延(τAB)を導入する。
【0109】
図8Bは、いくつかの実施形態に従って、差分時間遅延(τAB)を緩和するために遅延Dまたは遅延DかつDを実装した場合の、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の光パワーの時間プロットの一例を示す。式1に関して論じたように、遅延Dは、第1光信号801がPSRのポートAからWDMレシーバ列600、700へ伝搬するのに必要な時間であり、遅延Dは、第2光信号803がPSRのポートBからWDMレシーバ列600、700へ伝搬するのに必要な時間である。遅延Dの大きさは、PSRの第1ポートAとWDMレシーバ列600、700との間の光伝搬経路上に光遅延を追加することによって制御される。同様に、遅延Dの大きさは、PSRの第2ポートBとWDMレシーバ列600、700との間の光伝搬経路上に光遅延を追加することによって制御される。遅延Dと遅延Dとの間の差が差分時間遅延(τAB)と実質的に等しい時、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号は、実質的に同時にWDMレシーバ列600、700へ到達する。この条件が、式5によって表されている。
【0110】
式5:D-D=τAB
【0111】
遅延DおよびDの大きさは、PSRのそれぞれ対応するポートAおよびBにおける第1光信号および第2光信号の間の差分時間遅延(τAB)をオフセットするために設定および利用されうる。PSRのそれぞれ対応するポートAおよびBにおける第1光信号および第2光信号の間の差分時間遅延(τAB)をオフセットするために遅延DおよびDの設定および利用することは、特にWDMレシーバ列600、700が実質的に対称に構成されている場合に、第1光信号801および第2光信号803を、第k WDMでマルチプレクサ601-kの光検出器115-kへ実質的に同時に到達させるために、第k WDMデマルチプレクサ601-k内に実装される必要のある光信号タイミング遅延差ΔD(ここで、ΔD=DkB-DkA)の最小化を提供する。式5の条件が成り立つ時、式1は、式6によって示される光信号タイミング遅延等化条件へ単純化される。式6は、式7に示すように書き直すことが可能であり、これは、第k WDMデマルチプレクサ601-k内に必要な光信号タイミング遅延差ΔDが、ポートAからの第1光信号が光導波路602に沿って遅延Dから第k WDMデマルチプレクサ601-kへ伝搬するのに必要な時間と、ポートBからの第2光信号が光導波路602に沿って遅延Dから第kWDMデマルチプレクサ601-kへ伝搬するのに必要な時間との間の差と実質的に等しいことを表している。一般に、第k WDMデマルチプレクサ601-k内で必要とされる光信号タイミング遅延差ΔDは、第2光信号がPSRの第2ポートBから第k WDMデマルチプレクサ601-kに到達する際の累積遅延から、第1光信号がPSRの第1ポートAから第k WDMデマルチプレクサ601-kに到達する際の累積遅延を引いたものに等しい。
【0112】
【数6】
【0113】
【数7】
【0114】
WDMレシーバ列600、700の中心付近に配置されているWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの内の所与の1つ(第k WDMデマルチプレクサ)内で必要とされる光信号タイミング遅延差ΔDは、WDMレシーバ列600、700の端部付近に配置されているWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの内の所与の1つ(第k’ WDMデマルチプレクサ)内で必要とされる光信号タイミング遅延差ΔDk’より小さい。これは、遅延Dから第k WDMデマルチプレクサ601-kまでの光導波路602に沿った長さLからL(k-1)の合計と、遅延Dから第k WDMデマルチプレクサ601-kまでの光導波路602に沿った長さLからL(N-1)の合計との差が、第k WDMデマルチプレクサ601-kがWDMレシーバ列600、700の中心付近に配置されている場合に小さくなるからである。また、いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの数Nは、奇数値(奇数の整数値)である。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの数Nが、1より大きい奇数の整数であり、WDMレシーバ列600、700が、実質的に対称に構成されている場合、中心に配置されるWDMデマルチプレクサ601-[(N+1)/2]は、基本的にゼロの光信号タイミング遅延差ΔD[(N+1)/2](すなわち、D[(N+1)/2]B=D[(N+1)/2]A=0)を有するように実装される。
【0115】
図9Aは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列900を示す。WDMレシーバ列900は、PSRのポートAから伝搬する第1光信号およびPSRのポートBから伝搬する第2光信号の両方がWDMレシーバ列900の同じ側901から入るように、光導波路602がU字型を有するよう、図7のWDMレシーバ列700と同様の方法で実装されている。具体的には、光導波路602は、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の両方が入るWDMレシーバ列900の側901とは反対側のWDMレシーバ列900の側903に、U字型セクション905を備える。このように、PSRのポートBから伝搬する第2光信号は、U字型セクション905を通るのを含め、光導波路602を通して距離Lacrossを進み、WDMレシーバ列900の第N WDMデマルチプレクサ601-Nに到達する。WDMレシーバ列900において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-Nは、U字型光導波路602の片側で一直線に配列されている。いくつかの実施形態において、光信号遅延Dの大きさは、差分時間遅延(τAB)と実質的に等しく設定され、ここで、差分時間遅延(τAB)は、ポートBから伝搬する第2光信号が光導波路602の距離Lacrossを通して進むのに必要な遅延を含む。より具体的には、光信号遅延Dは、差分時間遅延(τAB)と実質的に等しく設定され、ここで、差分時間遅延(τAB)は、(Lacross/Vg)を含む。これらの実施形態において、光信号遅延Dは、WDMレシーバ列900にわたって光導波路602を通して光が伝搬するのに要する時間とほぼ同じである。したがって、これらの実施形態において、光信号遅延Dが、光導波路遅延ラインとして実装される場合、光信号遅延Dを構成する光信号遅延ラインの長さが長くなり、特に、光導波路の光パワー損失、非線形光パワー損失、配線の過密に著しく寄与することになる。この場合、PSRのポートBからWDMレシーバ列900を横切ってU字型セクション905へ第2光信号を搬送する光導波路602の部分は、戻り導波路と呼ばれ、光信号遅延DからそれぞれWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nのリング共振器103-1~103-Nの各々を通り過ぎる光導波路602の部分は、主要光信号バスと呼ばれ、戻り導波路および主要光信号バスは、光導波路602のU字型セクション905によって光学的に接続されている。いくつかの実施形態において、戻り導波路は、主要光信号バスと平行に伸びている光導波路602の実質的に真っ直ぐな部分である。
【0116】
図9Bは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列950を示す。WDMレシーバ列950において、光導波路602は、U字型であり、第1線形セクション602A、U字型セクション602B、および、第2線形セクション602Cを備える。第1線形セクション602Aは、U字型セクション602Bを通して第2線形セクションへ光学的に接続されている。WDMレシーバ列950は、WDMデマルチプレクサの半分601-1~601-(N/2)が光導波路602の第1線形セクション602Aに沿って配置され、WDMデマルチプレクサの半分601-[(N/2)+1]~601-Nが光導波路602の第2線形セクション602Aに沿って配置されるように、折り返されている。いくつかの実施形態において、WDMデマルチプレクサの数Nは、奇数の整数であり、中央のWDMデマルチプレクサ601-[(N+1)/2]は、U字型セクション602Bに沿って配置され、WDMデマルチプレクサ601-1~601-[(N-1)/2]は、光導波路602の第1線形セクション602Aに沿って配置され、WDMデマルチプレクサ601-{[(N+1)/2]+1}は、光導波路602の第2線形セクション602Cに沿って配置されている。WDMレシーバ列950では、PSRのポートAから伝搬する第1光信号およびPSRのポートBから伝搬する第2光信号の両方がWDMレシーバ列950の同じ側から入る。いくつかの実施形態において、PSRのポートAから伝搬する第1光信号およびPSRのポートBから伝搬する第2光信号の両方が、PSRに最も近いWDMレシーバ列950の側に入る。WDMレシーバ列950において、光信号遅延Dは、PSRのポートAを出る第1光信号とPSRのポートBを出る第2光信号との間の差分時間遅延(τAB)と実質的に等しく設定される。したがって、WDMレシーバ列950に実装される光信号遅延Dは、図9AのWDMレシーバ列900の光信号遅延Dに含まれるよりも短い光信号遅延ラインを備えるため、特に、光導波路の光パワー損失、非線形光パワー損失、配線の過密にあまり寄与しない。
【0117】
図10Aは、いくつかの実施形態に従って、8個のWDMデマルチプレクサ601-1~601-8(8チャネル)を備えたWDMレシーバ列1001を示す。図10Bは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列1001のセクション1007を示す拡大図である。図10Cは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列1001のセクション1009を示す拡大図dせある。図10Dは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列1001のセクション1011を示す拡大図dせある。WDMレシーバ列1001は、PSRのポートAから伝搬する第1光信号およびPSRのポートBから伝搬する第2光信号の両方がWDMレシーバ列1001の同じ側から入るように、光導波路602がU字型を有するよう、図7のWDMレシーバ列700と同様の方法で実装されている。光導波路602は、ポートAから伝搬する第1光信号およびポートBから伝搬する第2光信号の両方が入るWDMレシーバ列1001の側とは反対側のWDMレシーバ列1001の側に、U字型セクション1002を備える。このように、PSRのポートBから伝搬する第2光信号は、U字型セクション1002を通るのを含め、光導波路602を通して距離Lacrossを進み、WDMレシーバ列1001の第8WDMデマルチプレクサ601-8に到達する。WDMレシーバ列1001において、WDMデマルチプレクサ601-1~601-8は、U字型光導波路602の片側で一直線に配列されている。
【0118】
WDMレシーバ1001は、PSRのポートAからの第1光信号が第1WDMデマルチプレクサ601-1に到達する前に光信号遅延Dを通して伝搬するように配置されている光信号遅延Dを備える。いくつかの実施形態において、光信号遅延Dの大きさは、差分時間遅延(τAB)と実質的に等しく設定され、ここで、差分時間遅延(τAB)は、ポートBから伝搬する第2光信号が光導波路602の距離Lacrossを通して進むのに必要な遅延を含む。より具体的には、光信号遅延Dは、差分時間遅延(τAB)と実質的に等しく設定され、ここで、差分時間遅延(τAB)は、(Lacross/Vg)を含む。WDMレシーバ列の例1001において、光信号遅延Dは、光導波路602の一部を形成するかまたは光導波路602へ光学的に接続されている光導波路1005の長さとして構成されている。また、WDMレシーバ列の例1001において、光信号遅延Dは、光信号遅延Dによって占有されるチップエリアを削減/最小化するために、形状の中でも特に、折り返し形状、渦巻き形状、らせん形状、ループ形状、および、ジグザグ形状、の内の1または複数を有するよう構成されている。
【0119】
WDMデマルチプレクサの第1半分601-1~601-4は、それぞれ対応する第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-4を備えるが、それぞれ対応する第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-4は備えていない。第2半分のWDMデマルチプレクサ601-5~601-8は、それぞれ対応する第2光信号タイミング遅延セクション109-5~109-8を備えるが、それぞれ対応する第1光信号タイミング遅延セクション107-5~107-8は備えていない。WDMデマルチプレクサの第1半分601-1~601-4および第2半分のWDMデマルチプレクサ601-5~601-8は、WDMレシーバ列1001が、(光信号遅延Dを除いて)その中間点に関して対称になるように、対称に構成されている。具体的には、第1光信号タイミング遅延セクション107-1および第2光信号タイミング遅延セクション109-8は、実質的に同じ構成を有し、実質的に同じ量の光信号タイミング遅延を提供する。また、第2光信号タイミング遅延セクション107-2および第2光信号タイミング遅延セクション109-7は、実質的に同じ構成を有し、実質的に同じ量の光信号タイミング遅延を提供する。また、第3光信号タイミング遅延セクション107-3および第2光信号タイミング遅延セクション109-6は、実質的に同じ構成を有し、実質的に同じ量の光信号タイミング遅延を提供する。また、第4光信号タイミング遅延セクション107-4および第2光信号タイミング遅延セクション109-5は、実質的に同じ構成を有し、実質的に同じ量の光信号タイミング遅延を提供する。
【0120】
さらに、第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-4の各々および第2光信号タイミング遅延セクション109-5~109-8の各々は、自身が占有するチップエリアを削減/最小化するために、形状の中でも特に、折り返し形状、渦巻き形状、らせん形状、ループ形状、および、ジグザグ形状、の内の1または複数を有するよう構成されている。第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-4によって提供される光信号タイミング遅延の量は、WDMレシーバ列1001の外側からWDMレシーバ列1001の中間点へ伸びる方向に単調減少している。WDMレシーバ列1001の中間点は、WDMデマルチプレクサ601-4のリング共振器103-4とWDMデマルチプレクサ601-5のリング共振器103-5との中間の光導波路602に沿った位置である。同様に、第2光信号タイミング遅延セクション107-5~107-8によって提供される光信号タイミング遅延の量は、WDMレシーバ列1001の外側からWDMレシーバ列1001の中間点へ伸びる方向に単調減少している。WDMレシーバ列1001において、第1光信号タイミング遅延セクションの内の第k遅延セクション107-kによって提供される光信号タイミング遅延の量は、N=8について式7で与えられる光信号タイミング遅延差ΔDの大きさ(絶対値)と実質的に等しい。また、WDMレシーバ列1001において、第2光信号タイミング遅延セクションの内の第k遅延セクション109-kによって提供される光信号タイミング遅延の量は、N=8について式7で与えられる光信号タイミング遅延差ΔDの大きさ(絶対値)と実質的に等しい。
【0121】
いくつかの実施形態において、フォトダイオードが、オンチップレシーバ回路(トランスインピーダンス増幅器(TIA)など)に接続されている。フォトニクスおよび回路を密に集積する場合、金属の引き起こす光損失(光吸収または光散乱など)を避けるために、フォトニック導波路およびフォトニックデバイスを回路配線(導電構造)から遠ざけるべきであるという課題がある。また、いくつかの状況では、長い光遅延ラインの利用が、回路配線に利用できた広いチップエリアを潜在的にブロックする。WDMレシーバ列1001は、第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-4の各々をそれぞれに対応する光検出器115-1~115-4から外側に配置させると共に、第2光信号タイミング遅延セクション109-5~109-8の各々をそれぞれ対応する光検出器115-5~115-8から外側に配置させることによって、上述の課題に対処する。具体的には、光検出器115-1~115-4の各々は、左側(WDMレシーバ列1001の中間点に対して外側)に配置されているそれぞれ対応する第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-4へ接続されている。そして、光検出器115-5~115-8の各々は、右側(WDMレシーバ列1001の中間点に対して外側)に配置されているそれぞれ対応する第2光信号タイミング遅延セクション109-5~109-8へ接続されている。いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列1001内で、最も外側の第1光信号タイミング遅延セクション107-1および最も外側の第2光信号タイミング遅延セクション109-8は、主要回路エリアの外側に配置されており、これは、回路配置への光信号遅延ラインの影響を最小化する。
【0122】
図11Aは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を構成する際に用いるレシーバ回路ユニットセル1101のフロアプランを示す。レシーバ回路ユニットセル1101のフロアプランは、集積回路の実装に利用可能なエリア1101(網掛けエリア)を含む。いくつかの実施形態において、TIA回路105が、エリア1101内に実装される。レシーバ回路ユニットセル1101のフロアプランは、さらに、フォトニック部品の実装に利用可能なエリア1107(影なしエリア)を含む。エリア1107内への電子回路の配置は、フォトニック部品と電子部品との間の光学的相互作用が許容範囲であることを保証するように制限される。
【0123】
図11Bは、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を構成する際に用いるレシーバ回路ユニットセル1109のフロアプランを示す。レシーバ回路ユニットセル1109のフロアプランは、レシーバ回路ユニットセル1101のフロアプランを水平に返した(反転)バージョンである。レシーバ回路ユニットセル1109のフロアプランは、集積回路の実装に利用可能なエリア1111(網掛けエリア)を含む。いくつかの実施形態において、TIA回路105が、エリア1111内に実装される。レシーバ回路ユニットセル1109のフロアプランは、さらに、フォトニック部品の実装に利用可能なエリア1113(影なしエリア)を含む。エリア1113内への電子回路の配置は、フォトニック部品と電子部品との間の光学的相互作用が許容範囲であることを保証するように制限される。
【0124】
図11Cは、いくつかの実施形態に従って、それぞれ図11Aおよび図11Bのレシーバ回路ユニットセル1101および1109を用いて実装されたWDMレシーバ列1115の第1半分1115Aを示す。図11Dは、いくつかの実施形態に従って、第1半分1115Aおよび第2半分1115Bを含む完全なWDMレシーバ列1115を示す。WDMレシーバ列1115の第2半分1115Bは、WDMレシーバ列1115の中間点に関してWDMレシーバ列1115の第1半分1115Aを反転させたバージョンである。いくつかの実施形態において、WDMレシーバ列1115におけるレシーバ回路ユニットセル1101/1109の一部が、互いに関して反転されることが有利である。また、いくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nおよび第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nの光遅延ライン(光導波路)は、WDMレシーバ列1115の外側に向かって配置される。また、いくつかの実施形態において、最も外側の第1光信号タイミング遅延セクション107-1および最も外側の第2光信号タイミング遅延セクション109-Nの光遅延ライン(光導波路)は、WDMレシーバ列1115全体の外側に配置される。いくつかの実施形態において、TIA回路は、レシーバ回路ユニットセル1101/1109のより外縁の方に配置される。
【0125】
WDMレシーバ列1115のいくつかの実施形態において、それぞれWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各リング共振器103-1~103-Nは、それが接続されているそれぞれ対応する光検出器115-1~115-Nに対してWDMレシーバ列1115の外側に近くなるように配置されている。また、WDMレシーバ列1115のいくつかの実施形態において、それぞれWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nは、(存在する場合)、それが接続されているそれぞれ対応する光検出器115-1~115-Nに対してWDMレシーバ列1115の外側に近くなるように配置されている。また、WDMレシーバ列1115のいくつかの実施形態において、第1光信号タイミング遅延セクション107-1~107-Nの1または複数は、それが接続されているレシーバ回路ユニットセル1101/1109の外側に配置されている。また、WDMレシーバ列1115のいくつかの実施形態において、それぞれWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nは、(存在する場合)、それが接続されているそれぞれ対応する光検出器115-1~115-Nに対してWDMレシーバ列1115の外側に近くなるように配置されている。また、WDMレシーバ列1115のいくつかの実施形態において、第2光信号タイミング遅延セクション109-1~109-Nの1または複数は、それが接続されているレシーバ回路ユニットセル1101/1109の外側に配置されている。様々な実施形態において、WDMレシーバ列1115内のフォトニック部品の対称性は、WDMレシーバ列1115内のレシーバ回路ユニットセル1101/1109の対称性とは異なる。しかしながら、WDMレシーバ列1115の様々な実施形態において、フォトニック部品は、同様の要素および機能を有するセルの列として構成される。
【0126】
図12は、いくつかの実施形態に従って、WDMレシーバ列を動作させるための方法を示すフローチャートである。方法は、PSRの第1出力からWDMレシーバ列へ第1光信号が伝達され、PSRの第2出力からWDMレシーバ列へ第2光信号が伝達される工程1201を備え、ここで、差分時間遅延(τAB)が、PSRの第1および第2出力において第1光信号および第2光信号の間に存在する。方法は、さらに、PSRの第1および第2出力において第1光信号および第2光信号の間に存在する差分時間遅延(τAB)と実質的に等しい時間(D)だけ、WDMレシーバ列へのルートにおいて第1光信号を遅延させる工程1203を備える。方法は、さらに、第1光信号および第2光信号を実質的に同時に所与のWDMデマルチプレクサ(601-k)内の光検出器(115-k)に到達させるために、所与のWDMデマルチプレクサ(601-k)内に光信号遅延(ΔD)を実装する工程1205を備える。工程1205は、WDMレシーバ列内の複数(N個)のWDMデマルチプレクサ601-1~601-Nの各々に対して実行される。WDMレシーバ列313、600、700、900、950、1001、115に関して本明細書に記載されている原理および概念はいずれも、図12の方法と併せて利用するのに適切であることを理解されたい。また、図1A図1Eおよび図2のWDMデマルチプレクサ100に関して本明細書に記載されている原理および概念はいずれも、図12の方法と併せて利用するのに適切であることを理解されたい。
【0127】
いくつかの実施形態において、電気光学レシーバは、光導波路(例えば、602)と、光導波路に沿って配置されている複数のWDMデマルチプレクサ(例えば、601-1~601-N)を備えると開示されている。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、第1インカップリング光信号として第1方向に光導波路を通して伝搬する複数の波長の内のそれぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成されている。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、さらに、第2インカップリング光信号として第2方向に光導波路を通して伝搬する複数の波長の内のそれぞれの波長の光信号をインカップリングするよう構成され、ここで、第2方向は、第1方向の逆向きである。複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、さらに、第1インカップリング光信号を第1光検出器(例えば、115-1~115-N)へ方向付け、第2インカップリング光信号を第2光検出器(例えば、115-1~115-N)へ方向付けるよう構成されている。いくつかの実施形態において、第1光検出器は、光検出器の第1部分であり、第2光検出器は、同じ光検出器の第2部分である。いくつかの実施形態において、第1光検出器および第2光検出器は、互いに別個に実装される。
【0128】
いくつかの実施形態において、複数のWDMデマルチプレクサの各WDMデマルチプレクサは、所与の入射光信号に対応する第1インカップリング光信号および所与の入射光信号に対応する第2インカップリング光信号の両方が、実質的に同時に第1光検出器および第2光検出器へそれぞれ到達することを保証するよう構成された光信号タイミング遅延セクション(例えば、107-x/109-x、ここで、xは、1からN)を実装するよう構成されている。複数のWDMデマルチプレクサの内の所与のWDMデマルチプレクサの光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量は、光導波路に沿った所与のWDMデマルチプレクサの位置に依存する。
【0129】
いくつかの実施形態において、複数のWDMデマルチプレクサは、光導波路の第1端に対して順に配置されている複数のWDMデマルチプレクサの第1半分(例えば、601-1~601-(N/2))と、光導波路の第1端に対して順に配置されている第2半分の複数のWDMデマルチプレクサ(例えば、601-[(N/2)+1]~601-N)と、を含む。順に配置されている複数のWDMデマルチプレクサの第1半分は、第1光検出器に到達する前に第1インカップリング光信号を遅延させるために、光信号タイミング遅延セクション(例えば、107-1~107-(N/2))を実装している。順に配置されている第2半分の複数のWDMデマルチプレクサは、第2光検出器に到達する前に第2インカップリング光信号を遅延させるために、光信号タイミング遅延セクション(例えば、109-[(N/2)+1]~109-N)を実装している。いくつかの実施形態において、順に配置されている複数のWDMデマルチプレクサの第1半分内の光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量および順に配置されている複数のWDMデマルチプレクサの第2半分内の光信号タイミング遅延セクションによって与えられる時間遅延の量は、複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第1半分と複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第2半分との間の中間点の位置に対して対称になっている。いくつかの実施形態において、順に配置されている第1半分の複数のWDMデマルチプレクサ内の光信号タイミング遅延セクション(例えば、107-1~107-(N/2))によって与えられる時間遅延の量は、複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第1半分と複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第2半分との間の中間点の位置からの対応するWDMデマルチプレクサの距離の増大と共に増大する。また、いくつかの実施形態において、順に配置されている第2半分の複数のWDMデマルチプレクサ内の光信号タイミング遅延セクション(例えば、109-[(N/2)+1]~109-N)によって与えられる時間遅延の量は、複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第1半分と複数のWDMデマルチプレクサの順に配置されている第2半分との間の中間点の位置からの対応するWDMデマルチプレクサの距離の増大と共に増大する。
【0130】
以上の実施形態の記載は、例示および説明を目的としたものであり、包括的であることも限定的であることも意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、適用可能であれば、置き換え可能であり、特に図示も記載もない限りは、選択された実施形態で利用できる。このように、本明細書で開示されている1または複数の実施形態からの1または複数の特徴を、本明細書で開示されている1または複数の他の実施形態からの1または複数の特徴と組み合わせることで、本明細書で明示的に開示されていないが本明細書で暗示的に開示されている別の実施形態を形成することができる。この他の実施形態も、多くの方法で変形されてよい。かかる実施形態の変形例は、本開示からの逸脱と見なされず、すべてのかかる実施形態の変形例および変更例が、本明細書で提供されている開示の範囲内に含まれると意図されている。
【0131】
いくつかの方法工程は、本明細書で具体的な順序で記載されている場合があるが、方法工程の処理が、方法の実施が成功するような方法で実行される限りは、他のハウスキーピング工程が、方法工程の合間に実行されてもよく、および/または、方法工程が、若干異なる時刻または同時に実行されるように調整されてもよく、または、処理に関連する様々な間隔で処理工程が実行されることを許容するシステムに分配されてもよいことを理解されたい。
【0132】
本実施形態は、理解しやすいように、或る程度詳しく説明されているが、添付の特許請求の範囲内でいくらかの変更および変形を行ってもよいことは明らかである。したがって、本明細書で開示されている実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、そのため、本明細書に示した詳細のみに限定されず、添付の特許請求の範囲の範囲および等価物の中で変形されてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
【国際調査報告】