(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】スクロールポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20250130BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F04C18/02 311Z
F04C29/00 D
F04C29/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545997
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 GB2023050824
(87)【国際公開番号】W WO2023187377
(87)【国際公開日】2023-10-05
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キネアード
(72)【発明者】
【氏名】ベッドウェル デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB08
3H039BB15
3H039CC03
3H039CC22
3H039CC25
3H129AA02
3H129AA18
3H129AB05
3H129BB16
3H129BB33
3H129CC05
3H129CC17
(57)【要約】
非接触式スクロールポンプ(100)は、ハウジング(110)と、ハウジングの中に配置された旋回スクロール(130)と、旋回スクロールを軸方向に支持するためにハウジングの中に配置されたスラスト軸受組立体(170)とを備える。スラスト軸受組立体は、旋回スクロールに固定された第1のプレート(171)と、第1のプレートから離間した第2のプレート(172)と、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置されたボール軸受(174)であって、ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されているボール軸受と、ハウジングと第2のプレートとの間に軸方向に延在し、ハウジングを第2のプレートに結合する結合構造体(175)とを備え、結合構造体は、第2のプレートと係合し、結合構造体は、結合構造体を第2のプレートに押し付けるように配置されたばね(175d)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式スクロールポンプであって、
ハウジングと、
前記ハウジングの中に配置された旋回スクロールと、
前記旋回スクロールを軸方向に支持するために前記ハウジングの中に配置されたスラスト軸受組立体と、
を備え、前記スラスト軸受組立体は、
前記旋回スクロールに固定された第1のプレートと、
前記第1のプレートから離間した第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置されたボール軸受であって、前記ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に前記第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている、ボール軸受と、
前記ハウジングと前記第2のプレートとの間に軸方向に延在し、前記ハウジングを前記第2のプレートに結合する結合構造体と、
を備え、
前記結合構造体は、前記第2のプレートと係合し、前記結合構造体は、前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備える、非接触式スクロールポンプ。
【請求項2】
前記結合構造体はナットを含み、前記ナットは、前記ナットを緩めると前記ばねが前記結合構造体を前記第2のプレートに向かって押し進め、前記ナットを締めると前記結合構造体を前記第2のプレートから離れる方向に引っ張るように配置されている、請求項1に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項3】
前記ばねは、500Nと2000Nの間の力で前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されている、請求項1又は2に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項4】
前記非接触式スクロールポンプは3つのスラスト軸受組立体を備え、
前記3つのスラスト軸受組立体の各々は、
前記旋回スクロールに固定された第1のプレートと、
前記第1のプレートから離間した第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置されたボール軸受であって、前記ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に前記第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている、ボール軸受と、
前記ハウジングと前記第2のプレートとの間に軸方向に延在し、前記ハウジングを前記第2のプレートに結合する結合構造体と、
を備え、
前記結合構造体は、前記第2のプレートと係合し、前記結合構造体は、前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備え、
前記3つのスラスト軸受組立体は、前記旋回スクロールの回転軸の周りに三角構成で均等に角度方向に分散配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項5】
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟まれた第1のボール軸受ケージと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟まれた第2のボール軸受ケージと、
をさらに備え、
前記第1及び第2のボール軸受ケージは、前記ボール軸受を収容して前記ボール軸受の動きを制限する、請求項1から4のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項6】
前記第1のボール軸受ケージは前記第1のプレートに固定され、前記第2のボール軸受ケージは前記第2のプレートに固定されている、請求項5に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項7】
前記第1及び第2のボール軸受ケージの各々は、穴を有し、前記第1のボール軸受ケージの前記穴は、前記第2のボール軸受ケージの前記穴と重なっており、
前記ボール軸受は、前記ボール軸受ケージの前記重なった穴の中に収容されている、請求項5又は6に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項8】
前記結合構造体はピンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項9】
前記結合構造体は、前記旋回スクロールの軸方向位置を調整するためのものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項10】
複数の真空ポンプを備える真空ポンプシステムであって、前記真空ポンプのうちの1つが、請求項1から9のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプである、真空ポンプシステム。
【請求項11】
流体をポンプ送給するための請求項1から9のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプの使用。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプに対してユーザが行う方法であって、
前記結合構造体のナットを緩めて、前記ばねが前記旋回スクロールの螺旋壁を前記非接触式スクロールポンプの固定スクロールに押し付けて接触するようにさせるステップと、
前記ナットを締めて、前記結合構造体を前記固定スクロールから引き離し、それによって旋回スクロールを固定スクロールから離れて軸方向に移動させるステップと、
前記ナットを締めている間、センサを使用して軸方向移動距離量を追跡するステップと、
所望の軸方向距離量に達すると、前記ナットの締め付けを停止するテップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールポンプは、流体をポンプ送給するために様々な異なる産業で使用される既知のタイプのポンプである。スクロールポンプは、2つの噛み合うスクロール(固定スクロール及び旋回スクロールとして知られている)の相対運動を利用して流体をポンプ送給することで作動する。固定スクロール及び旋回スクロールの各々は、基部から延びる螺旋壁を含む。
【0003】
スクロールポンプの1つのタイプは、非接触式スクロールポンプである。非接触式スクロールポンプでは、固定スクロール及び旋回スクロールの各々の先端(すなわち、螺旋壁の端部)と、他方のスクロールとは接触しない。さらに、非接触式スクロールポンプでは、固定スクロール及び旋回スクロールの各々の先端と他方のスクロールとの間には先端シール(tip seal)が存在しない。従って、非接触式スクロールポンプでは、固定スクロール及び旋回スクロールの各々の先端と他方のスクロールとの間に、例えば10-20ミクロンの小さな隙間(又は間隙(clearance))がある。この隙間を維持するために、非接触式スクロールポンプは、通常、スクロールの一方に係合するスラスト軸受組立体を含み、スクロールを他方のスクロールに対して正しい軸方向位置に維持する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様では、非接触式スクロールポンプが提供され、非接触式スクロールポンプは、ハウジングと、ハウジングの中に配置された旋回スクロールと、旋回スクロールを軸方向に支持するためにハウジングの中に配置されたスラスト軸受組立体とを備える。スラスト軸受組立体は、旋回スクロールに固定された第1のプレートと、第1のプレートから離間した第2のプレートと、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置されたボール軸受とを備え、ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている。スラスト軸受組立体は、ハウジングと第2のプレートとの間に軸方向に延在し、ハウジングを第2のプレートに結合する結合構造体をさらに備え、結合構造体は、第2のプレートと係合し、結合構造体は、結合構造体を第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備える。
【0005】
結合構造体はナットを含むことができ、ナットは、ナットを緩めるとばねが結合構造体を第2のプレートに向かって押し進め、ナットを締めると結合構造体を第2のプレートから離れる方向に引っ張るように配置されている。
【0006】
ばねは、500Nと2000Nの間の力で結合構造体を第2のプレートに押し付けるように配置することができる。
【0007】
非接触式スクロールポンプは、3つのスラスト軸受組立体を備えることができる。3つのスラスト軸受組立体の各々は、旋回スクロールに固定された第1のプレートと、第1のプレートから離間した第2のプレートと、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置されたボール軸受とを備え、ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている。3つのスラスト軸受組立体の各々は、ハウジングと第2のプレートとの間に軸方向に延在し、ハウジングを第2のプレートに結合する結合構造体をさらに備え、結合構造体は、第2のプレートと係合し、結合構造体は、結合構造体を第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備える。3つのスラスト軸受組立体は、旋回スクロールの回転軸の周りに三角構成で均等に角度方向に分散配置することができる。
【0008】
非接触式スクロールポンプは、第1のプレートと第2のプレートとの間に挟まれた第1のボール軸受ケージと、第1のプレートと第2のプレートとの間に挟まれた第2のボール軸受ケージとをさらに備えることができ、第1及び第2のボール軸受ケージは、ボール軸受を収容してボール軸受の動きを制限する。
【0009】
第1のボール軸受ケージは第1のプレートに固定すること、及び第2のボール軸受ケージは第2のプレートに固定することができる。
【0010】
第1及び第2のボール軸受ケージの各々は穴を備え、第1のボール軸受ケージの穴は第2のボール軸受ケージの穴と重なり、ボール軸受はボール軸受ケージの重なった穴の中に収容されている。
【0011】
結合構造体は、ピンとすることができる。
【0012】
結合構造体は、旋回スクロールの軸方向位置を調整するためのものとすることができる。
【0013】
本発明の別の態様では、複数の真空ポンプを含む真空ポンプシステムが提供され、真空ポンプの1つは、上記の態様の非接触式スクロールポンプである。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、流体をポンプ送給するための上記のいずれかの態様の非接触式スクロールポンプの使用が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、上記のいずれかの態様の非接触式スクロールポンプに対してユーザが行う方法が提供され、この方法は、結合構造体のナットを緩めて、ばねが旋回スクロールの螺旋壁を非接触式スクロールポンプの固定スクロールに押し付けて接触するようにさせるステップと、ナットを締めて、結合構造体を固定スクロールから引き離し、それによって旋回スクロールを固定スクロールから離れて軸方向に移動させるステップと、ナットを締めている間、センサを使用して軸方向移動距離量を追跡するステップと、所望の軸方向距離量に達すると、ナットの締め付けを停止するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】非接触式スクロールポンプの断面図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【
図2】非接触式スクロールポンプのスラスト軸受組立体の拡大断面図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【
図3】非接触式スクロールポンプの複数のスラスト軸受組立体の斜視図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【
図4】非接触式スクロールポンプのスラスト軸受組立体の一部の拡大斜視図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、非接触式スクロールポンプ100の断面図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【0018】
スクロールポンプ100は、ハウジング部分110と、固定スクロール120と、旋回スクロール130と、駆動シャフト140と、アクチュエータ150と、主軸受組立体160と、複数のスラスト軸受組立体170とを備える。
【0019】
この実施形態では、ハウジング部分110及び固定スクロール120は、一緒になってスクロールポンプ100の全体ハウジングを画定し、その中にスクロールポンプ100の他の構成要素が配置されている。しかしながら、他の実施形態では、固定スクロール120は、スクロールポンプ100の全体ハウジングのいずれも画定せず、代わりに、全体ハウジング内に完全に配置できることを理解されたい。この実施形態では、旋回スクロール130は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置される。
【0020】
旋回スクロール130は、固定スクロール120と噛み合わされて、作動中にスクロールポンプ100が流体(例えばガス)をポンプ送給するために使用される空間(又は流路)を画定する。旋回スクロール130は、固定スクロール120に対して旋回して、スクロールポンプ100の入口(図示せず)からスクロールポンプ100の出口(図示せず)まで流体をポンプ送給するように構成されている。固定スクロール120に対する旋回スクロール130の旋回によって流体がポンプ送給される正確な物理的機構はよく理解されており、簡潔にするために本明細書では説明しない。
【0021】
固定スクロール120は、第1の基部122及び第1の螺旋壁124を備える。旋回スクロール130は、第2の基部132及び第2の螺旋壁134を備える。第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134は互いに噛み合う。さらに、第1の螺旋壁124は、第1の基部122から第2の基部132に向かって垂直に延びており、第1の螺旋壁124の端面(先端とも呼ばれる)は、第2の基部132の対向面に近接するが接触していない(例えば10-20ミクロンだけ離れている)。第2の螺旋壁134は、第2の基部132から第1の基部122に向かって垂直に延びており、第2の螺旋壁134の端面(又は先端)は、第1の基部122の対向面に近接するが接触していない(例えば10-20ミクロンだけ離れている)。従って、第1及び第2の螺旋壁124、134の端面と第1及び第2の基部122、132のそれぞれの対向面との間には隙間又は間隙が存在する(例えば10-20ミクロンの)。第1の螺旋壁124の端面と第2の基部132の対向面との間の距離は、第2の螺旋壁134と第1の基部122の対向面との間の距離と同じである。隙間は、隙間内に物体又は他のスクロールポンプ部品が配置されていないという意味で空である。例えば、隙間内に先端シールは存在しない。従って、第1及び第2の螺旋壁124、134の端面は、何らかの物体又は他のスクロールポンプ部品と接触しない。
【0022】
この実施形態では、第1の基部122と第1の螺旋壁124は互いに一体的に形成され、第2の基部132と第2の螺旋壁134は互いに一体的に形成されている。しかしながら、他の実施形態では、螺旋壁124、134の一方又は両方は、それぞれの基部122、132と一体的に形成されていない。
【0023】
駆動シャフト140は、旋回スクロール130に結合され、旋回スクロール130の旋回駆動のために回転するように構成されている。駆動シャフト140は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置され、駆動シャフト140の回転を助ける主軸受組立体160を介して取り付けられている。この実施形態では、駆動シャフト140は、固定スクロール120と旋回スクロール130の両方を貫通して延びており、旋回スクロール130は、駆動シャフト140の端部に取り付けられている。
【0024】
アクチュエータ150(例えば電気モータ)は、駆動シャフト140に結合され、駆動シャフト140を作動させて、駆動シャフト140が回転して旋回スクロール130を旋回駆動させるように構成されている。アクチュエータ150は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置され、駆動シャフト140の周囲に取り付けられている。
【0025】
主軸受組立体160は、駆動シャフト140を旋回スクロール130及びスクロールポンプ100の全体ハウジングに機械的に結合し、駆動シャフト140は、スクロールポンプ100内で回転して旋回スクロール130を駆動できるようになっている。この実施形態では、主軸受組立体160は、駆動シャフト140の第1の端部とスクロールポンプ100の全体ハウジングとの間に配置された(機械的に結合された)軸受と、旋回スクロール130と第1の端部とは反対側の駆動シャフト140の第2の端部との間に配置された(機械的に結合された)軸受と、固定スクロール120と駆動シャフト140との間に配置された(機械的に結合された)軸受とを備える。
【0026】
複数のスラスト軸受組立体170の各々は、旋回スクロール130と、旋回スクロール130から軸方向に離間したハウジング部分110との間に配置されている。各スラスト軸受組立体170は、固定スクロール120に対する旋回スクロール130の軸方向の位置を制限及び/又は制御するために、旋回スクロール130に結合(及び係合)されている。この実施形態では、3つのスラスト軸受組立体170は、旋回スクロール130に安定した軸方向の力を与えるために、旋回スクロールの中心回転軸の周りに三角構成で均等に角度方向に分散配置されている(これは
図3にさらに示されている)。各スラスト軸受組立体の正確な構造は、
図2を参照して以下により詳細に説明する。
【0027】
図2は、非接触式スクロールポンプ100のスラスト軸受組立体170の拡大断面図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。
【0028】
スラスト軸受組立体170は、第1のプレート171と、第2のプレート172と、第1のボール軸受ケージ173aと、第2のボール軸受ケージ173bと、複数のボール軸受174と、調整ピン175と、ケーシング176とを備える。これらの構造体により、以下により詳細に説明するように、スラスト軸受組立体170は、旋回スクロール130に軸方向の支持を提供すると同時に、作動中の旋回スクロール130の旋回を助ける。
【0029】
第1及び第2のプレート171、172の各々は、旋回スクロール130に面する第1の側面と、旋回スクロール130から外方に面する第1の側面とは反対側の第2の側面とを有する。同様に、第1及び第2のボール軸受ケージ173a、173bの各々は、旋回スクロール130に面する第1の側面と、旋回スクロール130から外方に面する第1の側面とは反対側の第2の側面とを有する。第1のプレート171の第1の側面は、旋回スクロール130の裏面に固定され、第1のプレート171の第2の側面は、第1のボール軸受ケージ173aの第1の側面に固定されている。第1のボール軸受ケージ173aの第2の側面は、ボール軸受174によって第2のボール軸受ケージ173bの第1の側面から離間し、それによって第1及び第2のボール軸受ケージ173a、173bの相対運動が可能になる。第2のボール軸受ケージ173bの第2の側面は、第2のプレート172の第1の側面に固定されている。第2のプレート172の第2の側面は、調整ピン175の端部と係合している。
【0030】
第1及び第2のボール軸受ケージ173a、173bの各々は、内部に複数のボール軸受174が配置される複数の穴を備える。第1のボール軸受ケージ173aの各穴は、第2のボール軸受ケージ173bの対応する穴と部分的に重なり、複数の穴のペアを形成する。各穴のペアは、単一のボール軸受174を収容する。穴の部分的な重なりにより、第1及び第2の軸受ケージ173a、173bは、ボール軸受174の動きを制限しながら、動作中の旋回スクロール130の旋回運動に対応することができる。これは、
図4にさらに示されている。
【0031】
複数のボール軸受174は、第1及び第2のプレート171、172の各々がボール軸受174と接触するように、第1及び第2のプレート171、172の間に挟まれている。複数のボール軸受174のうちの各ボール軸受174は、第1及び第2のボール軸受ケージ173a,173bのそれぞれの穴のペアの中に収容されている。複数のボール軸受174は、鋼又はセラミックから形成することができる。
【0032】
作動中、旋回スクロール130の旋回を助けるために、複数のボール軸受174は、第1及び第2のボール軸受ケージ173a、173bの穴のペアの中で第1及び第2のプレート171、172に対して転動する。スクロールポンプ100の作動中、第1のプレート171及び第1のボール軸受ケージ173aは、互いに固定されると共に旋回スクロール130に固定され、旋回スクロール130と一緒に移動する。従って、作動中、第1のプレート171、第1のボール軸受ケージ173a、及び旋回スクロール130は全て、複数のボール軸受174上の第2のプレート172及び第2のボール軸受ケージ173bに対して一緒に移動する。
【0033】
調整ピン175は、スクロールポンプ100のハウジング部分110と第2のプレート172との間を軸方向に延在する。調整ピン175の第1の端部175aは、ハウジング部分110に取り付けられ、調整ピン175の第1の端部175aとは反対側の第2の端部175bは、第2のプレート172の第2の側面に係合される。調整ピン175の第1の端部175aにはねじ山が付けられており、対応するねじ付きナット175cを介してハウジング部分110に結合されている。ねじ付きナット175cは、調整ピン175の第1の端部175aにあり、調整ピン175の軸方向位置を調整するために第1の端部175aのねじ山上で回転可能であり、それによって、スラスト軸受組立体170の残りの部分を介して旋回スクロール130の軸方向位置の制御を容易にする。調整ピン175は、ばね175dをさらに備え、ばね175dは、調整ピン175を第2のプレート172に押し付けるように作用する。調整ピン175を第2のプレート172に押し付けるために、ばね175dは、第2のプレート172に面するハウジング部分110の表面と、第2のプレート172から外方に面する調整ピン175の表面との間に延在する。ばね175dの一端は、第2のプレート172に面するハウジング部分110の表面を押圧し、ばね175dの他端は、第2のプレート172から外方に面する調整ピン175の表面を押圧する。この構成により、後述するように、ユーザは、固定スクロール120及び旋回スクロール130の先端と他方のスクロールとの間の間隙を制御するために、固定スクロール120に対する旋回スクロール130の軸方向の位置を簡単かつ再現可能な方法で設定することができる。
【0034】
調整ピン175の第2の端部175bは、第2のプレート172の第2の側面に設けられたテーパー状凹部172aに位置する。テーパー状凹部172aは、略円錐形状を有する。より具体的には、調整ピン175の第2の端部175bは、テーパー状凹部172aを画定する第2のプレート172の第2の側面の表面と係合する丸い面を備える。このように、調整ピン175の第2の端部175bの丸い面と、テーパー状凹部172aを画定する表面とが一緒になってボール及びソケット継ぎ手を形成し、これにより、第2のプレート172及び第2のボール軸受ケージ173bは、調整ピン175の第1の端部175b上で関節接合する/回転することができる。
【0035】
ケーシング176は、調整ピン175を取り囲み、ボール軸受174、第1及び第2の軸受ケージ173a、173b、並びに第1及び第2のプレート171、172に使用される潤滑剤(例えば、オイル又はグリース)の流出を防止するバリアとして機能する。この実施形態では、ケーシング176は蛇腹形状を有する。
【0036】
固定スクロール120に対する旋回スクロール130の軸方向位置を設定するために、ユーザは、最初にナット175cを緩め、これにより、ばね175dが旋回スクロール130の先端を一定の力(すなわち、毎回同じ力)で固定スクロール120に押し付けて接触させる。次に、ユーザは、スクロールポンプ100のハウジング110全体のポート(図示せず)を通して深さゲージを配置する。次に、ユーザは、深さゲージを使用して、調整ピン175の第1の端部175aが取り付けられているハウジング部分110と旋回スクロール130との間の軸方向距離を測定する。次に、ユーザは深さゲージをゼロにする。次に、ユーザはナット175cを締め、調整ピン175を固定スクロール120から軸方向に引き離し、これにより、主軸受組立体160からの予圧力によって、旋回スクロール130が固定スクロールから離れる。ナット175cを締めている間、ユーザは深さゲージを使用して移動距離を追跡し、所望の軸方向距離に達するとナット175cの締め付けを停止する。上記の手順は、旋回スクロール130の全域で軸方向距離を均一にするためにスクロールポンプ100の他の全てのスラスト軸受組立体170について繰り返す。
【0037】
ばね175dの操作力は、旋回スクロール130上のガス圧と主軸受組立体160からの予圧力との組み合わせによる力よりも有意に大きくなるように選択される。これは、スクロールポンプ100の作動中に調整ピン175が押しやられないことを保証する。また、ばね175dの操作力は、設定操作中に主軸受システム160に何らかの損傷を引き起こすことになる力を下回るように選択される。例えば、ばねの操作力は、500Nと2000Nの間(例えば、1000N)とすることができる。有利には、ばね175dは、軸方向距離の設定中に一貫した既知の力を使用することを可能にし、これは、ユーザが誤って過度の力を加えてスクロールポンプ100の他の構成要素を損傷するリスクを低減する傾向がある。また、ばね175dの一貫した力は、設定プロセス中に使用される深さゲージに一貫したゼロ位置を提供する傾向がある。
【0038】
図3は、非接触式スクロールポンプ100の複数のスラスト軸受組立体170の斜視図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。図示のように、この実施形態では、スクロールポンプ100は、3つのスラスト軸受組立体170を備え、これらは旋回スクロール130に安定した軸方向の力を与えるために、旋回スクロールの中心回転軸の周りに三角構成で均等に角度方向に分散配置されている。
【0039】
図4は、非接触式スクロールポンプ100のスラスト軸受組立体170の一部の拡大斜視図を示す概略図である(正確な縮尺ではない)。具体的には、
図4は、スラスト軸受組立体170の第1及び第2のボール軸受ケージ173a、173bの拡大図を示す。図示されるように、第1のボール軸受ケージ173aの各穴は、第2のボール軸受ケージ173bの対応する穴と部分的に重なって、複数の穴のペアを形成する。ボール軸受174の各々は、それぞれの穴のペアの中に配置されている(
図4では1つだけが表記されている)。
【0040】
上述の非接触式スクロールポンプ100は、複数のポンプ及び/又は他の構成要素を含む真空ポンプシステムの一部として使用することができる。
【0041】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に様々な修正/変形を加えることができることを理解されたい。
【0042】
上述した実施形態では、設定プロセス中に軸方向距離を測定するために深さゲージが使用される。しかしながら、他の実施形態では、異なるタイプの適切な距離測定センサが使用される。
【0043】
上述の実施形態では、スクロールポンプは、3つの別個のスラスト軸受組立体を備える。しかしながら、他の実施形態では、スクロールポンプは、異なる数のスラスト軸受組立体、例えば、1つだけ、2つだけ、又は4以上のスラスト軸受組立体を備える。
【0044】
上述の実施形態では、スラスト軸受組立体は、複数のボール軸受を備える。しかしながら、他の実施形態では、スラスト軸受組立体は、1つのボール軸受だけを備える。
【0045】
上述の実施形態では、スラスト軸受組立体は、ボール軸受の動きを規制するボール軸受ケージを備える。しかしながら、他の実施形態では、ボール軸受ケージは省略される。
【0046】
上述の実施形態では、ハウジングを第2のプレートに結合するために細長い調整ピンが使用される。しかしながら、他の実施形態では、異なるタイプの結合構造、例えば、異なるタイプの細長い部材を使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100 非接触式スクロールポンプ
110 ハウジング
120 固定スクロール
122 固定スクロールの基部
124 固定スクロールの螺旋壁
130 旋回スクロール
132 旋回スクロールの基部
134 旋回スクロールの螺旋壁
140 駆動シャフト
150 アクチュエータ
160 主軸受組立体
170 スラスト軸受組立体
171 第1のプレート
172 第2のプレート
172a 凹部
173a 第1のボール軸受ケージ
173b 第2ボール軸受ケージ
174 ボール軸受
175 調整ピン
175a 調整ピンの第1の端部
175b 調整ピンの第2の端部
175c ナット
175d ばね
176 ケーシング
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式スクロールポンプであって、
ハウジングと、
前記ハウジングの中に配置された旋回スクロールと、
前記旋回スクロールを軸方向に支持するために前記ハウジングの中に配置されたスラスト軸受組立体と、
を備え、前記スラスト軸受組立体は、
前記旋回スクロールに固定された第1のプレートと、
前記第1のプレートから離間した第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置されたボール軸受であって、前記ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に前記第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている、ボール軸受と、
前記ハウジングと前記第2のプレートとの間に軸方向に延在し、前記ハウジングを前記第2のプレートに結合する結合構造体と、
を備え、
前記結合構造体は、前記第2のプレートと係合し、前記結合構造体は、前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備える、非接触式スクロールポンプ。
【請求項2】
前記結合構造体はナットを含み、前記ナットは、前記ナットを緩めると前記ばねが前記結合構造体を前記第2のプレートに向かって押し進め、前記ナットを締めると前記結合構造体を前記第2のプレートから離れる方向に引っ張るように配置されている、請求項1に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項3】
前記ばねは、500Nと2000Nの間の力で前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されている、請求項
1に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項4】
前記非接触式スクロールポンプは3つのスラスト軸受組立体を備え、
前記3つのスラスト軸受組立体の各々は、
前記旋回スクロールに固定された第1のプレートと、
前記第1のプレートから離間した第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置されたボール軸受であって、前記ボール軸受は、旋回スクロールの旋回中に前記第1及び第2のプレートに対して転動するように構成されている、ボール軸受と、
前記ハウジングと前記第2のプレートとの間に軸方向に延在し、前記ハウジングを前記第2のプレートに結合する結合構造体と、
を備え、
前記結合構造体は、前記第2のプレートと係合し、前記結合構造体は、前記結合構造体を前記第2のプレートに押し付けるように配置されたばねを備え、
前記3つのスラスト軸受組立体は、前記旋回スクロールの回転軸の周りに三角構成で均等に角度方向に分散配置されている、請求項
1に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項5】
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟まれた第1のボール軸受ケージと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に挟まれた第2のボール軸受ケージと、
をさらに備え、
前記第1及び第2のボール軸受ケージは、前記ボール軸受を収容して前記ボール軸受の動きを制限する、請求項
1に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項6】
前記第1のボール軸受ケージは前記第1のプレートに固定され、前記第2のボール軸受ケージは前記第2のプレートに固定されている、請求項5に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項7】
前記第1及び第2のボール軸受ケージの各々は、穴を有し、前記第1のボール軸受ケージの前記穴は、前記第2のボール軸受ケージの前記穴と重なっており、
前記ボール軸受は、前記ボール軸受ケージの前記重なった穴の中に収容されている、請求項
5に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項8】
前記結合構造体はピンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項9】
前記結合構造体は、前記旋回スクロールの軸方向位置を調整するためのものである、請求項1から
7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプ。
【請求項10】
複数の真空ポンプを備える真空ポンプシステムであって、前記真空ポンプのうちの1つが、請求項1から
7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプである、真空ポンプシステム。
【請求項11】
流体をポンプ送給するための請求項1から
7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプの使用。
【請求項12】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の非接触式スクロールポンプに対してユーザが行う方法であって、
前記結合構造体のナットを緩めて、前記ばねが前記旋回スクロールの螺旋壁を前記非接触式スクロールポンプの固定スクロールに押し付けて接触するようにさせるステップと、
前記ナットを締めて、前記結合構造体を前記固定スクロールから引き離し、それによって旋回スクロールを固定スクロールから離れて軸方向に移動させるステップと、
前記ナットを締めている間、センサを使用して軸方向移動距離量を追跡するステップと、
所望の軸方向距離量に達すると、前記ナットの締め付けを停止するテップと、
を含む方法。
【国際調査報告】