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特表2025-504108貫通穴を備える多層ブランクを製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】貫通穴を備える多層ブランクを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20250130BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20250130BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20250130BHJP
   A61C 13/09 20060101ALI20250130BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20250130BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20250130BHJP
   C04B 35/486 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
B28B1/30
A61C13/083
A61C5/77
A61C13/09
B32B18/00 A
B32B3/24 Z
C04B35/486
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546051
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023012314
(87)【国際公開番号】W WO2023150295
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】17/592,677
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】フェッシェル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フォルクル,ローター
(72)【発明者】
【氏名】ギース,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲブハルト,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C159
4F100
4G052
【Fターム(参考)】
4C159GG04
4C159GG15
4C159RR02
4C159SS01
4C159TT02
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA18A
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA27A
4F100AD00A
4F100AD00B
4F100AD03A
4F100AD03B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DC11A
4F100DC11B
4F100DC12A
4F100DC12B
4F100DD05A
4F100DD09B
4F100EJ172
4F100EJ17A
4F100EJ17B
4F100EJ482
4F100EJ483
4F100GB66
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、第1のセラミック材料をモールドに充填するステップと、可動ピンを下側プレスプランジャの上面からキャビティ内に延出するステップと、第1の層を通る貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が可動ピンと接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、第1の上側プレスプランジャを第1のセラミック材料に対してプレスするステップと、異なる組成の第2のセラミック材料をモールドに充填するステップと、可動ピンを第1の層の上面から第1の開口キャビティ内に延出するステップと、ブランクを形成するべく、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを第2の層に対してプレスするステップとを含む方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、
可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、
第1のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、第1の層を形成するべく前記第1のセラミック材料が注入可能な状態で前記モールドに充填されるステップと、
前記第1の層を形成するべく前記第1のセラミック材料を前記モールドに充填する前、充填している間、又は充填した後に、前記可動ピンを前記下側プレスプランジャの上面から前記キャビティ内に延出するステップであり、前記可動ピンが前記キャビティ内に少なくとも部分的に延出され、前記第1の層が形成されると、前記可動ピンの少なくとも一部が前記第1の層を通って延び、これにより、前記第1のセラミック材料に囲まれ、前記第1の層を通る貫通穴が形成されるステップと、
前記第1の層を通る前記貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が前記可動ピンと接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、前記第1の上側プレスプランジャを前記第1の層に対してプレスするステップと、
異なる組成の第2のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、第2の層を形成するべく前記第2のセラミック材料が注入可能な状態で前記第1の開口キャビティに充填されるステップと、
前記第2の層を形成するべく前記第2のセラミック材料を前記モールドに充填する前、充填している間、又は充填した後に、前記可動ピンを前記第1の層の上面から前記第1の開口キャビティ内に延出するステップであり、前記可動ピンが前記第1の開口キャビティ内に少なくとも部分的に延出され、前記第2の層が形成されると、前記可動ピンの少なくとも一部が前記第2の層を通って延び、これにより、前記第2のセラミック材料に囲まれ、前記貫通穴が前記第2の層を通るように延長されるステップと、
前記ブランクを形成するべく、前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを前記第2の層に対してプレスするステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記下側プレスプランジャは可動であり、前記第1の層、前記第2の層、又はその両方のプレスを支援する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の上側プレスプランジャの少なくとも一部は、前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴を維持するべく前記可動ピンと接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可動ピンは、前記それぞれの第1の層又は第1及び第2の層を通る前記貫通穴の維持を支援するべく、前記それぞれのプレスステップ中に前記第1の上側プレスプランジャ又は前記第2の上側プレスプランジャの下端部と接触するテーパ付きの自由端を備える概して円筒形の形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記可動ピンの上端部は、各層を通る前記貫通穴の維持を支援するべく、前記それぞれのプレスステップ中に前記第1の上側プレスプランジャ又は前記第2の上側プレスプランジャと接触したままである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の上側プレスプランジャは、前記第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく前記第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、前記第2の上側プレスプランジャの下部は、前記ブランクの前記貫通穴の表面に沿って回転防止機能を付与する形状の上側着座部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記可動ピンの上端部は、前記第2の上側プレスプランジャの前記下部の遠位端と対応する形状を有し、前記可動ピンの上端部と前記第2の上側プレスプランジャの前記下部の遠位端は、前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴の維持を支援するべく、前記プレスステップ中に互いに連通する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の上側プレスプランジャは、前記第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく前記第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、前記第2の上側プレスプランジャの前記下部は、前記ブランクの前記貫通穴の表面に沿って上側円錐部分及び下側円筒端部分を付与する形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ブランクの貫通穴の上側円錐部分は、前記ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、前記着座部分は、前記取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記可動ピンの上部は、前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴の維持を支援するべく、前記下側円筒部分と対応する形状を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ブランクを部分的に又は完全焼結するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記可動ピンを前記第2の開口キャビティ内に延出するステップと、
前記第2のセラミック材料とは異なる組成の第3のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、前記第1、第2、及び第3の層の前記貫通穴を維持しながら第3の層を形成するべく、前記第3のセラミック材料が注入可能な状態で前記第2の開口キャビティ内に及び前記可動ピンの周りに充填されるステップと、
前記ブランクを形成するべく前記第1、第2、及び第3の層を通って延びる前記貫通穴と連通する第3の開口キャビティが形成されるように、第3の上側プレスプランジャを前記第3の層に対してプレスするステップであり、前記第3の上側プレスプランジャが、前記第3の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく前記第3のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、前記可動ピンと連通する前記第3の上側プレスプランジャの下部が、前記ブランクの前記貫通穴に上側円錐部分及び下側円筒端部分を概して画定する形状を付与する、ステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ブランクの前記貫通穴の前記上側円錐部分は、前記ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、前記着座部分は、前記取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、
可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、
前記可動ピンを前記下側プレスプランジャの上面から前記キャビティ内に延出するステップと、
第1のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、貫通穴を有する第1の層を形成するべく、前記第1のセラミック材料が注入可能な状態で前記モールド内に及び前記可動ピンの周りに充填されるステップと、
前記第1の層の前記貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が前記可動ピンと接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、前記第1の上側プレスプランジャを前記第1の層に対してプレスするステップと、
前記可動ピンを前記第1の開口キャビティ内に延出するステップと、
異なる組成の第2のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、前記第1及び第2の層の両方の前記貫通穴を維持しながら前記第2の層を形成するべく、前記第2のセラミック材料が注入可能な状態で前記第1の開口キャビティ内に及び前記可動ピンの周りに充填されるステップと、
前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを前記第2の層に対してプレスするステップであり、前記第2の開口キャビティ及び前記貫通穴が前記ブランクのねじ穴を画定し、前記ねじ穴が、概して円筒形の下部と、回転防止機能を備えたねじ着座部を有する上部とを有する、ステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記下側プレスプランジャは可動であり、前記第1の層、前記第2の層、又はその両方のプレスを支援する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブランクを部分的に又は完全焼結するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、
可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、
前記可動ピンを前記下側プレスプランジャの上面から前記キャビティ内に延出するステップと、
第1のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、貫通穴を有する第1の層を形成するべく、前記第1のセラミック材料が注入可能な状態で前記モールド内に及び前記可動ピンの周りに充填されるステップと、
前記第1の層の前記貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が前記可動ピンの上部と接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、前記第1の上側プレスプランジャを前記第1の層及び前記可動ピンの上部に対してプレスするステップであり、前記第1の層の前記第1のセラミック材料が前記第1の上側プレスプランジャによって圧粉されている状態で、前記可動ピンが前記第1の上側プレスプランジャのプレス移動によって前記下側プレスプランジャ内へ部分的に後退するステップと、
前記形成された第1の開口キャビティの少なくとも一部を露出させるべく、前記第1の上側プレスプランジャを除去するステップと、
前記可動ピンを前記第1の開口キャビティ内に延出するステップと、
前記第1のセラミック材料とは異なる組成の第2のセラミック材料を前記モールドに充填するステップであり、前記第1及び第2の層の両方の前記貫通穴を維持しながら前記第2の層を形成するべく、前記第2のセラミック材料が注入可能な状態で前記第1の開口キャビティ内に及び前記可動ピンの周りに充填されるステップと、
前記ブランクを形成するべく、前記第1及び第2の層を通って延びる前記貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを前記第2の層及び前記可動ピンの上部に対してプレスするステップであり、前記第2の上側プレスプランジャを前記第2の層及び前記可動ピンの上部に対してプレスする際に、前記第2の上側プレスプランジャのプレス移動によって前記可動ピンの少なくとも一部が前記下側プレスプランジャ内へ後退している間に前記第1及び第2のセラミック材料が圧粉されるステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記第2の上側プレスプランジャは、前記第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく前記第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、前記可動ピンと連通する前記第2の上側プレスプランジャの下部は、前記ブランクの前記貫通穴に上側円錐部分及び下側円筒端部分を概して画定する形状を付与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ブランクの前記貫通穴の前記上側円錐部分は、前記ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、前記着座部分は、前記取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ブランクを部分的に又は完全焼結するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この国際特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる2022年2月4日に出願された米国特許非仮出願第17/592,677号の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、とりわけ、セラミック材料の多層ブランク、特に、歯科修復物の製作に用いられるブランクを製作するための方法に関するものであり、この方法では、貫通穴が設けられたダイに第1のセラミック材料、次いで、異なる組成の第2のセラミック材料が充填され、これらの材料がプレスされ、随意的に焼結される。
【0003】
本発明はまた、歯科用フレームワーク、クラウン、部分クラウン、キャップ、アバットメント(例えば、ツーピースアバットメント)、Tiベース(又はTiベース用のアダプタ)、及び/又は、特に二酸化ジルコニウムを含有するセラミック材料で構成され、異なる組成の領域を有し、貫通穴が設けられた、特にクラウン又は部分クラウンなどの、予め形成されたねじ穴を備える予備焼結又は完全焼結された歯科修復物の製作に用いられるブランクに関する。
【背景技術】
【0004】
US8936848B2は、歯の代替物の製作に用いられ、異なる化学組成のいくつかの層で構成される、二酸化ジルコニウムのブランクを開示している。これに関して、個々の層は異なる割合の酸化イットリウムを有する。
【0005】
二酸化ジルコニウム体は、L色空間で直線に沿って色度の減少又は増加を呈する(US2014/0328746A1)。
【0006】
WO2014/062375A1に係る、歯科オブジェクトを製作するための二酸化ジルコニウムのブランクは、正方晶相と立方晶相の割合が異なる、少なくとも2つの材料領域を有し、一方の領域では比率が1よりも大きく、他方の領域では比率が1よりも小さい。
【0007】
EP2371344A1は、表面から所望の深さまで分解防止剤が豊富に含まれているセラミック体に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
歯科修復物を製造するためのセラミック材料として二酸化ジルコニウムが用いられる。例えば、二酸化ジルコニウムのブランクからフレームワークがミリングされ、次いで、焼結されることがある。次の加工段階で、フレームワークにベニアが手作業で貼り付けられ、その場合、少なくとも1つの切縁材料が貼り付けられ、融合される。これらのプロセス手段はすべて時間がかかり、そのうえ、歯科修復物が要件を満たすことを保証しない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を回避する、特に、いくつかの追加の後処理ステップを減らしながら、面倒な仕上げをすることなく、審美的要件を満たし、さらには、患者の口内での歯科修復物の取り付けを簡素化しながら、強い負荷がかかる領域で強度の高いセラミック材料から歯科修復物を製造できる様態で上述のタイプの方法を開発することである。
【0010】
この目的を達成するために、とりわけ、ダイ内に及び可動ピンの周りに第1のセラミック材料の層を充填することが提案され、この場合、貫通穴が延びている第1の(又は唯一の)層が形成され得る。1つ以上のさらなる層が望まれる場合、第1のセラミック材料の第1の層の露出面に沿って、第1の開口キャビティが形成され得る。第1の開口キャビティ内に及び可動ピンの周りに第2のセラミック材料が充填され、第1の材料と第2の材料が一緒にプレスされ、随意的に熱処理されている間、貫通穴は、第1の材料と第2の材料(例えば、第1の層と第2の層)の両方を通るように維持され得る。
【0011】
本発明によれば、最初に、ダイに注入可能な材料の層が充填され、この場合、可動ピンがダイのキャビティ内に延出している。この材料は、例えば、1g/cmから1.4g/cmの間の、特に1.15g/cmから1.35g/cmの間の範囲のかさ密度を有する二酸化ジルコニウムの粒状材料を使用することによって、天然歯の切縁のような色合いにすることができる。好ましくは40μmから70μmの間の粒径D50を有する粒状材料を充填した後に、例えばプレスプランジャによって、材料を通る貫通穴と、材料の露出面に沿った開口キャビティが形成される。これは、例えば、可動ピンが後退している間に第1のセラミック材料の一部を押し出す及び/又は軽く圧粉することによって行われる。したがって、特に実質的に円錐状の幾何学的形状を有する、そのように形成された凹部又はキャビティにおいて、可動ピンは、材料を一緒にプレスする準備としてキャビティに充填されている第2のセラミック材料に囲まれるようにキャビティ内に延出している。随意的に、プレスされた第1及び第2の材料(例えば、プレスされたセラミックブランク)が部分的に又は完全に/最終的に熱処理され得る。部分的及び/又は完全な熱処理は、プレスされた材料がダイ/モールド内にとどまっている状態で又はそこから取り出された後に行われ得る。ブランクからクラウン又は部分クラウン又はキャップが製造される場合、貫通穴は、円錐状に形状設定された凹部又はキャビティと概して位置合わせされ、これは、残根、アバットメント、又はTiベースの幾何学的形状とも概して位置合わせされ得ることが理解される。
【0012】
また、第1の開口キャビティに充填された第2のセラミック材料に第2の開口キャビティが設けられ得るように1つ以上のさらなる層を形成することも可能である。同様に、可動ピンが、第2のキャビティ内に延出し、最終的に貫通穴を維持しながら第2のキャビティを充填することになる第3のセラミック材料に囲まれる。このステップはすべての材料の同時プレスを付随することができる。
【0013】
材料の圧粉はそれとは独立して行われる。
【0014】
圧粉は、好ましくは2バールから20,000バールの間の圧力で行われ得る。好ましくは、1つ以上の内部層を形成する圧粉は、2バールから100バール(例えば、5バールから50バール)の範囲の圧力で行われ、一方、ブロック(例えば、すべての層)の最終的な圧粉は、500バールから20,000バール(例えば、1000バールから10,000バール)の範囲の圧力で行われ得る。およそ3g/cmの密度が達成され得る。
【0015】
次いで、プレスされたセラミックブランクの脱バインダ及び予備焼結が、700℃から1100℃の間、特に850℃から1050℃の間の範囲の温度で、100分から150分の間の時間にわたって行われ得る。
【0016】
脱バインダ及び予備焼結は、ISO6872に従って測定される、10MPaから60MPaの間、特に15MPaから45MPaの間の曲げ強さが達成されるような様態で行われ得る。
【0017】
第2のセラミック材料に第2の開口キャビティが形成され、それに第3のセラミック材料が充填される場合、この組成は、特に第2/第1の材料よりも低い透光性及び/又は高い曲げ強さを有するという点で、第2のセラミック材料の組成とは異なり得る。
【0018】
特に、本発明によれば、ダイの1つ以上のプレスツールに可動ピンが設けられ得る。可動ピンは、貫通穴を形成及び/又は維持するべく、第1のセラミック材料及び第2のセラミック材料の種々の層に設けられ得るいくつかの第1の開口キャビティ内に(例えば通って)延出し得る。それにより、いくつかの別個の分離されたブランク区域、いわゆるネストがもたらされ、したがって、予備焼結後に、特にミリング及び/又は研削を通じて、このようなブランクの区域からいくつかの歯科修復物を得ることができ、歯科修復物は、そのようなブランクのミリング及び/又は研削の前にブランクに予め形成されたねじ穴(例えば、貫通穴)を有する。これに関して、ブランク区域の寸法を互いに異なるようにして、異なる幾何学的形状の修復物を得ることが可能であり、それぞれの根側/象牙質側の材料領域の幾何学的構成も異なるようにすることができる。したがって、ブランクの後処理ステップを簡素化/削減し、及び/又は予め形成されたねじ穴を備える歯科修復物の取り付けを支援しながら、ネスト/ブランク区域の数及びそれらの幾何学的形状に応じて、1つのブランクから様々な形状の歯を得ることが可能になる。既に述べたように、必須ではないが、第2の領域(例えば、第2のさらなる層/材料)から象牙質コアが形成され、第1の領域(例えば、第1の層/材料)から切縁が形成され得ることが理解される。
【0019】
本発明は、特に、第1のセラミック材料の熱膨張係数よりも0.2μm/mK~0.8μm/mK高い、第2のセラミック材料の熱膨張係数を提供する。材料の熱膨張係数が異なる結果として、第1の材料、すなわち切縁材料に圧縮応力が生じ、これは、ブランクから得られる歯科修復物の強度の増加につながる。
【0020】
さらに、特に、第1の領域について、第2のセラミック材料に比べてより透光性が高く着色が少ない切縁材料が使用されるように、セラミック材料を所望の程度に着色することが可能である。
【0021】
ねじ穴を備える歯科修復物又は他の成形体が、貫通穴を備える予備焼結されたブランクから得られることが好ましい場合、当然のことながら、貫通穴を備えるブランクを最初に部分焼結又は完全焼結し、次いで、特にミリング又は研削によって成形体を形成するべくさらに加工することも可能である。
【0022】
貫通穴を備えるブランクがいつ焼結されるかに関係なく、特に、1300℃から1600℃の範囲内の温度で10分から250分の間の時間にわたって行われる完全(又は全)焼結が提供される。焼結は僅かにより高い温度で行うこともできる。
【0023】
焼結が、例えば出発原料の製造業者が指定した温度より100℃高い温度で、製造業者が完全又は十分な焼結のために推奨する時間を超えて行われる場合、これは過焼結と呼ばれる。
【0024】
これらの値は、出発原料が特に80wt%を超える二酸化ジルコニウムを実質的に含有するときに特にあてはまる。
【0025】
二酸化ジルコニウムに、特に酸化イットリウムを添加することができるが、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び/又は酸化セリウムも添加することができる。
【0026】
セラミック材料を着色する場合、特に、Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、及びMnの群から選択された元素からの色付与酸化物、好ましくは、Tb、Fe、Er、Co、及び/又はそれらの混合物を使用することができる。
【0027】
したがって、本発明はまた、使用するセラミック材料が二酸化ジルコニウムを含有し、これに酸化イットリウム(Y)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び/又は酸化セリウム(CeO)、特に酸化イットリウムが添加され得ることを特徴とし、第1のセラミック材料は、色及び/又は室温で安定化した結晶形態に関して、第2のセラミック材料の材料とは異なる。
【0028】
さらに、第2の材料中の酸化イットリウムの割合が4.5wt%~9.5wt%の範囲内である及び/又は第1の材料中の割合が4.5wt%~10.5wt%の範囲内であるような第1及び/又は第2のセラミック材料が提供され、第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの割合は、第2の材料中の割合と等しいか又はそれよりも高くされ得る。
【0029】
これにより、第1の領域の材料、そしてまた第2の領域の材料は、予備焼結後の両方の領域の二酸化ジルコニウムの正方晶相と立方晶相の比率が≧1になるように選択され得る。
【0030】
第1及び第2のセラミック材料の基本材料として、以下のwt%の組成が好ましい:
【表1】
【0031】
さらなる結合剤を添加することも可能である。これは上記の重量パーセントの記載では考慮されていない。
【0032】
本発明の教示によれば、完全焼結後に、ねじ穴を備えるモノリシック歯科修復物が得られ、原則としてベニアを付ける必要はないが、もし付けたとしても本発明から逸脱することはない。
【0033】
貫通して延びるねじ穴を有する歯科用フレームワーク、クラウン、部分クラウン、キャップ、アバットメント(例えば、ツーピースアバットメント)、Tiベース、特にクラウン又は部分クラウンなどの、ねじ穴を備える歯科修復物の製造に用いるための貫通穴を備える予備焼結又は完全焼結されたブランクは、特に二酸化ジルコニウムを含有し、異なる組成の領域を有するセラミック材料を含み、第1の領域は第1のセラミック材料からなり、少なくとも1つの第2の領域は第2のセラミック材料からなり、これらの領域は互いに隣接し、貫通穴が少なくとも1つの第2の領域を通って延び、第2の領域は、第1の領域がベース領域からテーパする外側の幾何学的形状を有するように第1の領域内に延びることを特徴とする。これに関して、貫通穴がベース領域を通って延び、ベース領域は、第1の領域の外面の領域に延び、好ましくは、貫通穴が両方の領域を通って延びるように、第1の領域の外面の領域と合流する。
【0034】
ベース領域から延びる第2の領域にキャビティを設けることも可能である。
【0035】
これとは独立して、第2の領域は、その外側の幾何学的形状において、円錐状に延びる幾何学的形状を有し得る。
【0036】
第2の領域内に第3の領域が延びることも可能であり、前記第3の領域は、第2のセラミック材料の組成から逸脱する及び/又はそれとは異なる組成の第3のセラミック材料で構成される。
【0037】
本発明によれば、いくつかの第2の領域は第1の領域に囲まれていることが強調され、特に、複数の第2の領域のうちのいくつかはそれらの外側の幾何学的形状が異なり、貫通穴は好ましくは各領域を通って延びる。
【0038】
したがって、例えば、象牙質領域の強度が切縁領域の強度よりも高い、ねじ穴を有する異なる幾何学的形状のクラウン又は人工歯を製造することができる。この目的のために、貫通穴を有するブランクからねじ穴を備える歯科修復物を得る際に、貫通穴が種々の領域を通って延びる状態で、ブランクの第2の領域の区域で象牙質が形成され、第1の領域の区域から切縁領域が形成される。
【0039】
本発明は、ブランクは酸化イットリウムが添加されている二酸化ジルコニウムを含み、第2又は第3のセラミック材料中の酸化イットリウムの割合は4.5wt%から9.5wt%の間であり、第1のセラミック材料中の割合は4.5wt%から10.5wt%の間であることをさらに特徴とし、第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの割合は、第2のセラミック材料中の割合と等しいか又はそれよりも大きくされ得る。
【0040】
第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの割合が、第2のセラミック材料中の割合よりも大きい場合、第2の領域の材料中のイットリウムの含有量がより低いことで、第1の領域と比較して強度がより高くなり得る。
【0041】
さらに、第2の領域のセラミック材料を着色し、第1の領域を、より低い度合いに着色する又はまったく着色しないことで、第2の領域よりも高い透光性をもつようにすることが可能である。
【0042】
予め形成されたねじ穴を有する歯科修復物、特に、それぞれ予め形成されたねじ穴を有する歯、クラウン又は部分クラウン、又はキャップは、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴を備え、第1の材料の第1の層は切縁側に延び、第2のセラミック材料からなる第2の層は根側に延び、第1の層は、第2の層よりも高い透光性及び/又は低い強度を有すること、及び、第1の層は、第2の層よりも約0.2μm/mK~0.8μm/mK低い熱膨張係数を有することを特徴とする。
【0043】
本発明は、歯科デバイス、及び歯科デバイスを製造するための方法に向けられている。一態様では、本開示は、セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、第1の層を形成するべく注入可能な状態の第1のセラミック材料をモールドに充填するステップと、第1の層を形成するべく第1のセラミック材料をモールドに充填する前、充填している間、又は充填した後に、可動ピンを下側プレスプランジャの上面からキャビティ内に延出するステップであり、可動ピンがキャビティ内に少なくとも部分的に延出され、第1の層が形成されると、可動ピンの少なくとも一部が第1の層を通って延び、第1のセラミック材料に囲まれ、これにより、第1の層を通る貫通穴が形成されるステップと、第1の層を通る貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が可動ピンと接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、第1の上側プレスプランジャを第1の層に対してプレスするステップと、異なる組成の第2のセラミック材料をモールドに充填するステップであり、第2の層を形成するべく第2のセラミック材料が注入可能な状態で第1の開口キャビティに充填されるステップと、第2の層を形成するべく第2のセラミック材料をモールドに充填する前、充填している間、又は充填した後に、可動ピンを第1の層の上面から第1の開口キャビティ内に延出するステップであり、可動ピンが第1の開口キャビティ内に少なくとも部分的に延出され、第2の層が形成されると、可動ピンの少なくとも一部が第2の層を通って延び、第2のセラミック材料に囲まれ、これにより、貫通穴が第2の層を通るように延長されるステップと、ブランクを形成するべく、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを第2の層に対してプレスするステップと、を含む方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本開示は、セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、可動ピンを下側プレスプランジャの上面からキャビティ内に延出するステップと、第1のセラミック材料をモールドに充填するステップであり、貫通穴を有する第1の層を形成するべく、第1のセラミック材料が注入可能な状態でモールド内に及び可動ピンの周りに充填されるステップと、第1の層の貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が可動ピンと接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、第1の上側プレスプランジャを第1の層に対してプレスするステップと、可動ピンを第1の開口キャビティ内に延出するステップと、第1のセラミック材料とは異なる組成の第2のセラミック材料をモールドに充填するステップであり、第2のセラミック材料が、第1の層と第2の層の両方の貫通穴を維持しながら第2の層を形成するべく、注入可能な状態で第1の開口キャビティ内に及び可動ピンの周りに充填されるステップと、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを第2の層に対してプレスするステップであり、第2の開口キャビティ及び貫通穴がブランクのねじ穴を画定し、ねじ穴が、概して円筒形の下部と、回転防止機能を備えた成形部(例えば、アバットメント又はTiベース接続/嵌合部)を有する上部とを有する、ステップと、を含む方法を提供する。
【0045】
別の態様では、本開示は、セラミック材料の多層ブランクを形成するための方法であって、可動ピンを有する下側プレスプランジャを囲んでキャビティを形成する少なくとも1つの側壁を含むモールドを提供するステップと、可動ピンを下側プレスプランジャの上面からキャビティ内に延出するステップと、第1のセラミック材料をモールドに充填するステップであり、第1のセラミック材料が、貫通穴を有する第1の層を形成するべく、注入可能な状態でモールド内に及び可動ピンの周りに充填されるステップと、第1の層の貫通穴を維持するべく第1の上側プレスプランジャの少なくとも一部が可動ピンの上部と接触している状態で、第1の開口キャビティが形成されるように、第1の上側プレスプランジャを第1の層及び可動ピンの上部に対してプレスするステップと、第1の層の第1のセラミック材料が第1の上側プレスプランジャによって圧粉されている状態で、可動ピンが第1の上側プレスプランジャのプレス移動によって下側プレスプランジャ内へ部分的に後退するステップと、形成された第1の開口キャビティの少なくとも一部を露出させるべく、第1の上側プレスプランジャを除去するステップと、可動ピンを第1の開口キャビティ内に延出するステップと、モールドに第1のセラミック材料とは異なる組成の第2のセラミック材料を充填するステップであり、第2のセラミック材料が、第1の層と第2の層の両方の貫通穴を維持しながら第2の層を形成するべく、注入可能な状態で第1の開口キャビティ内に及び可動ピンの周りに充填されるステップと、ブランクを形成するべく、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴と連通する第2の開口キャビティが形成されるように、第2の上側プレスプランジャを第2の層及び可動ピンの上部に対してプレスするステップと、第2の上側プレスプランジャを第2の層及び可動ピンの上部に対してプレスする際に、第2の上側プレスプランジャのプレス移動によって可動ピンの少なくとも一部が下側プレスプランジャ内へ部分的に後退している間に第1及び第2のセラミック材料が圧粉されるステップと、を含む方法を提供する。
【0046】
また別の態様では、本発明の態様のいずれかは、以下の特徴の1つ又は任意の組み合わせによってさらに特徴付けられ得る:下側プレスプランジャは可動であり、第1の層、第2の層、又はその両方のプレスを支援する;上側プレスプランジャの少なくとも一部は、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴を維持するべく可動ピンと接触する;可動ピンは、第1の層又は第1の層と第2の層を通る貫通穴の維持を支援するべく、それぞれのプレスステップ中に第1の上側プレスプランジャ又は第2の上側プレスプランジャの下端部と接触するテーパ付きの自由端を備える概して円筒形の形状である;可動ピンの上端部は、各層を通る貫通穴の維持を支援するべく、それぞれのプレスステップ中に第1の上側プレスプランジャ又は第2の上側プレスプランジャと接触したままである;第2の上側プレスプランジャは、第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、第2の上側プレスプランジャの下部は、ブランクの貫通穴の表面に沿って回転防止機能を付与する形状の上側着座部を含む;可動ピンの上端部は、第2の上側プレスプランジャの下部の遠位端と対応する形状を有し、可動ピンの上端部と第2の上側プレスプランジャの下部の遠位端は、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴の維持を支援するべく、プレスステップ中に互いに連通する;第2の上側プレスプランジャは、第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、第2の上側プレスプランジャの下部は、ブランクの貫通穴の表面に沿って上側円錐部分及び下側円筒端部分を付与する形状を有する;ブランクの貫通穴の上側円錐部分は、ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、着座部分は、取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む;可動ピンの上部は、第1及び第2の層を通って延びる貫通穴の維持を支援するべく、第1の上側プレスプランジャ又は第2の上側プレスプランジャの下側円筒部分と対応する形状を有する;ブランクを部分焼結又は完全焼結するステップ;(i)可動ピンを第2の開口キャビティ内に延出するステップ;(ii)第2のセラミック材料とは異なる組成の第3のセラミック材料をモールドに充填するステップであり、第1、第2、及び第3の層の貫通穴を維持しながら第3の層を形成するべく、第3のセラミック材料が注入可能な状態で第2の開口キャビティ内に及び可動ピンの周りに充填されるステップ;(iii)ブランクを形成するべく、第1、第2、及び第3の層を通って延びる貫通穴と連通する第3の開口キャビティが形成されるように、第3の上側プレスプランジャを第3の層に対してプレスするステップであり、第3の上側プレスプランジャが、第3の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく第3のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、可動ピンと連通する第3の上側プレスプランジャの下部が、ブランクの貫通穴に上側円錐部分及び下側円筒端部分を概して画定する形状を付与するステップ;ブランクの貫通穴の上側円錐部分は、ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、着座部分は、取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む;第2の上側プレスプランジャは、第2の開口キャビティの少なくとも一部を画定するべく第2のセラミック材料の少なくとも一部へプレスされる下部を含み、可動ピンと連通する第2の上側プレスプランジャの下部は、ブランクの貫通穴に上側円錐部分及び下側円筒端部分を概して画定する形状を付与する;ブランクの貫通穴の上側円錐部分は、ブランクから形成された修復物をアバットメントに固定するための取り付け器具を受け入れるべく着座部分を画定し、着座部分は、取り付け器具の回転を防止するための回転防止機能を含む、又はこれらの任意の組み合わせ。
【0047】
本明細書に示され説明されているように、本発明と共に他も存在するため、上記で言及した態様及び例は限定するものではないことを理解されたい。例えば、本発明の上記で言及した態様又は特徴のいずれかを組み合わせて、本明細書に記載された、図面に示された、又は他の様態で他の独自の構成をなすことができる。
【0048】
本発明のさらなる詳細、利点、及び特徴は、請求項及びそこに開示された特徴のみ及び/又はそれらの組み合わせからだけでなく、図面に示されている例示的な実施形態の以下の説明からも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A】デバイスを使用して実施される本発明の方法に係るデバイスの断面図である。
図1B】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図1C】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図1D】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図2A】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図2B】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図2C】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図2D】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係るデバイスの断面図である。
図2E】デバイスを使用して実施される本発明の方法の代替的なステップに係るデバイスの断面図である。
図3】異なる材料特性の領域を備える、本発明に係る予め形成された貫通穴を有するブランクを示す図である。
図4A】本発明に係る予め形成された貫通穴を有するブランクと、そこから得られる前歯の概略図である。
図4B】本発明に係る予め形成された貫通穴を有するブランクと、そこから得られる臼歯の概略図である。
図5】異なる材料特性の領域を備える、本発明に係る予め形成された貫通穴を有する別のブランクを示す図である。
図6A】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係る代替的なデバイスの断面図である。
図6B図6Aに示されている代替的なデバイスの別の断面図である。
図7A】デバイスを使用して実施される本発明の方法の別のステップに係る別の代替的なデバイスの正面図である。
図7B図7Aに示されている代替的なデバイスの拡大正面図である。
図7C図7Aに示されている代替的なデバイスの拡大上面図である。
図8】異なる材料特性の複数の領域を備え、各領域は予め形成された貫通穴を有する、本発明に係るブランクの上面図である。
図9】本発明の方法に係る予め形成された貫通穴を有する複数のブランクをマウントするための保持デバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の教示が図面を参照して説明され、図面において同じ要素には基本的に同じ参照符号が付けられており、特に、歯科修復物は、完全焼結後にすぐに使用可能なモノリシック歯の代替物が入手可能となるようにモノリシック構造を有するセラミック材料から製造される。
【0051】
この目的のために、本発明は、異なる組成、したがって特性を備えるセラミック材料の領域を有する、製造する修復物に応じて所望の光学的及び機械的特性を有するブランクの製作を提供し、これにより、前述のように、例えば手作業で切縁材料を貼り付ける必要なしに、完全焼結後にモノリシックに製作された歯の代替物をすぐに使用することが可能となる。
【0052】
さらに、高負荷が生じる領域で特に望ましい強度値を達成することができる。所望の光学特性を実現することができる。
【0053】
図面を参照して、例示的な実施形態ではクラウン又はアバットメントクラウン(例えば、アバットメント又はTiベースに取り付けるためのもの)である歯科修復物を製造することができる、ブランクの製造を説明する。
【0054】
この方法は、プレスツールを囲んで開口キャビティを画定する少なくとも1つの壁11を有するダイ(モールド)10を提供するステップを含む。プレスツールは、1つ以上の可動プレスツール(プランジャ)と、随意的に1つ以上の据置プレスツールを含み得る。1つ以上の可動プレスツールは、少なくとも1つの壁に沿って及び/又は対向する可動プレスツール又は据置プレスツール(含まれるとき)に対して移動可能であり得ることが理解される。1つの具体例では、プレスツールは、少なくとも1つの下側プレスツールと少なくとも1つの上側プレスツールを含み、下側プレスツールと上側プレスツールのうちの少なくとも一方が移動可能である。好ましくは、必須ではないが、プレスツールは、(必要な場合)互いに独立して作動的に移動するように構成された少なくとも1つの可動下側プレスツール(プランジャ)と少なくとも1つの可動上側プレスツール(プランジャ)を含み得る。
【0055】
プレスツールはさらに、1つ以上の可動又は据置プレスツールに対して独立して移動可能(及び/又はプレスする)少なくとも1つの可動ピン23を含み得る。可動ピン23は、1つ以上の可動又は据置プレスツールから延出するときにキャビティ13の一部を占有できるように任意の形状及び/又はサイズで提供され得る。1つの例示的な実施形態では、可動ピン23は、結果として得られるブロックが貫通穴を含み得るように、概して円筒形(例えば、棒形)の形状を有し得る。
【0056】
前述のように、プレスツールは少なくとも1つの可動ピン23を含み得る。したがって、可動ピン23は、1つ以上の可動プレスツール及び/又は随意的な1つ以上の据置プレスツール(含まれるとき)のうちの少なくとも一方に設けられ得ることが理解される。例えば、プレスツールは、可動ピン23を備えた据置下側プレスツールと、据置下側プレスツールに向かう又は離れる方に独立して移動するように構成され得る可動上側プレスプランジャを含み得る。好ましくは、必須ではないが、プレスツールは、下側プレスプランジャと上側プレスプランジャなどの複数の可動プレスプランジャを含み、これらは、互いに対して(例えば、互いに向かう又は離れる方に)独立して移動可能であるように構成され得る。この例では、必須ではないが、下側プレスプランジャは可動ピン23を含み得る。しかしながら、1つ以上の可動プレスプランジャ及び/又は随意的な1つ以上の据置プレスツールの他の組み合わせ/配向が様々な構成で提供され得ることがさらに理解され、1つ以上の可動プレスプランジャと随意的な1つ以上の据置プレスツールのうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの可動ピン23を含み得る。
【0057】
図1Aを参照すると、可動下側プレスプランジャ16を囲んでキャビティ13を画定する少なくとも1つの壁11を含み得るダイ10の断面が提供されており、下側プレスプランジャ16は可動ピン23を独立して含み得る。下側プレスプランジャ16は、可動ピン23の上部27(第1の位置、例えば、非延出位置にある)に加えて、結果的に形成されるブロックの少なくとも1つの表面を画定する上面17を有する。この具体例では、上面17と、非延出位置にある可動ピン23の上部27は、概して平坦な表面を画定し得る。しかしながら、下側プレスツール(可動又は据置のいずれにしても)の上面は、任意の形状又はトポロジカルな幾何学的形状を有し得ることが理解される。
【0058】
前述のように、可動ピン23は、下側プレスプランジャ16から延出したときに(第1の延出位置)、キャビティ13の一部が可動ピン23の延出した部分によって占有されるように、概して棒形状で提供され得る(図1B)。可動ピン23が第1の延出位置に配置されると、第1の層25(図1D)を形成するべく、可動ピン23を囲む状態でダイ10のキャビティ13内に第1のセラミック材料14の形態の注入可能な粒が充填される。好ましくは、可動ピン23の上部27は、下側プレスプランジャの上面17から、第1の材料14がキャビティ13内に充填されるレベルを超える距離まで延出し得る。しかしながら、可動ピン23の上部27は、キャビティ13の一部の充填後に、第1の材料14の高さよりも低い延出位置まで移動し得ることが理解される。さらに、可動ピン23を(例えば、下側プレスツールの上面17の周囲の部分と概して水平/面一である非延出位置から)キャビティ13内に延出する前に及び/又は延出している間に、キャビティ13に第1のセラミック材料14が充填され得ることが企図される。
【0059】
図6A~6Bに示すような別の例では、本発明に係る可動ピン90が提供され得る。可動ピン90は、概して平坦な端27を有する可動ピン23とは異なる、テーパ付きの端92を含み得る。含まれるとき、下側プレスプランジャ16の方に延びる下側延長部95を有する代替的な第2の上側プレスプランジャ94も提供され得る。下側延長部95は着座部40と遠位端96を有する。代替的な第2の上側プレスプランジャ94の遠位端96は、好ましくは、ブランクの形成中に可動ピン90及び/又は代替的な第2の上側プレスプランジャ94のいずれかの移動を支援するべく、可動ピン90のテーパ付きの端部92と対応(嵌合)する。この対応する構成は、移動中に遠位端27をテーパ付きの端92と係合した状態に保って、可動ピン90と代替的な第2の上側プレスプランジャ94との間の(例えば、水平方向又は他の方向の)係合解除を低減する又はなくすのに役立つことが理解される。代替的な第2の上側プレスプランジャ94の遠位端27と可動ピン90のテーパ付きの端92において、他の同様の対応する構成が提供され得ることが理解される。
【0060】
特に酸化イットリウムで安定化された二酸化ジルコニウムである、第1のセラミック材料14は、以下のwt%の組成を有することができる:
【表2】
【0061】
結合剤も添加され得るが、上記の重量パーセント値に考慮に入れられていない。
【0062】
しかしながら、特に、第1のセラミック材料14が切縁材料として用いられる際に、高い透光性が望まれるため、着色酸化物が少量だけ含まれる又はまったく含まれない、例えば≦0.5wt%である組成が提供される。酸化イットリウムの割合が比較的高くなることで、製造された成形パーツ、すなわち歯科修復物の切縁領域において、正方晶相は50~60%のみとなり、残りは立方晶と単斜晶の結晶相となり得る。
【0063】
図1C図1Dに示すように、第1の上側プレスプランジャ18によって、材料14に又はこの材料から形成された層に、開口キャビティ19が形成される。第1の上側プレスプランジャ18によって、可動ピン23が下側プレスプランジャ16の上面17の方に押され(又は独立して後退し)、材料14が変位又は僅かに圧粉される。そうすることで、キャビティ19と連通する貫通穴21が形成される。第1のキャビティ19を形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で2バールを超える、好ましくは7バールを超える圧力で行われ得る。さらに、第1のキャビティ19を形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で100バール未満、好ましくは50バール未満の圧力で行われ得る。第1のキャビティ19を形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で2~100バール、好ましくは7~50バールの範囲の圧力で行われ得ることが理解される。第1の層の形成中に行われたのと同様の圧力で任意の中間層(最後の層を除く)が圧粉/プレスされ得ることが理解される。
【0064】
第1の層25が形成された(例えば、圧粉/プレスされた)後に、材料14が貫通穴21に入るのを防ぐために可動ピン23の少なくとも一部が第1の層25内にとどまっている状態で、第1の上側プレスプランジャ18がキャビティ19から除去され得る(図1D)。随意的に、又は第1の上側プレスプランジャ18のプレス移動に加えて、可動下側プレスプランジャ16が、第1の上側プレスプランジャ18の方に移動することによって第1の材料14の圧粉を支援し得る。下側プレスプランジャ16の移動中に、貫通穴21が確実に維持されるように、可動ピン23は下側プレスプランジャ16とは独立して移動するように構成されることが理解される。例えば、下側プレスプランジャ16が第1の上側プレスプランジャ18の方に移動している間、可動ピン23は、それ自体の独立した移動を通じて、及び/又は下側プレスプランジャ16の方に移動する際の第1の上側プレスプランジャ18の移動を通じて、下側プレスプランジャ16の移動に対して反対方向に後退し(及び/又は押され)得る。さらに、可動ピン23は、第1の上側プレスプランジャ18及び/又は下側プレスプランジャ16とは独立して、又は組み合わせて、又は第1の上側プレスプランジャ18及び下側プレスプランジャ16のうちの少なくとも一方の移動(又は接触)によって移動可能であることが企図される。可動ピン23がキャビティ19から下側プレスツールの上面17の方に後退している間、第1の材料14が貫通穴21に入るのを防ぐ又は実質的に防ぐために、可動ピン23の上部27と第1の上側プレスプランジャ18との間の少なくともいくらかの接触が維持される。別の限定ではない例では、第1の上側プレスプランジャ18が第1の材料14を(下側プレスツールの方に)変位させる/圧粉する際に、可動ピン23の上部27を押して、キャビティ19を画定するように可動ピン23を下側プレスツールの第1の表面17の方に後退させてもよい。
【0065】
第1の材料14の圧粉と可動ピン23の(部分的)後退を通じて第1の層が形成されると、第1の上側プレスプランジャ18がキャビティ19から除去(又は部分的に除去)され得る。キャビティ19を露出するべく第1の上側プレスプランジャ18を除去している間又は除去した後に、可動ピン23が、キャビティ19の一部を占有するように第1の層25から上方に延出し得る(図2A)。随意的に、第2のセラミック材料20が、延出した可動ピン23を囲む状態でキャビティ19内に充填され、第2の層29の形成が開始され得る(図2B)。可動ピン23は、第2のセラミック材料20をキャビティ19内に充填するときに、可動ピン23の最上部27が第2の材料20の少なくとも一部の表面31のすぐ上(又は同じ高さ)に位置し得るような距離だけキャビティ19内で延出し得ることが理解される。代替的な実施形態では、可動ピン23の最上部27は、圧粉された第1の層25の露出面26と概して同じ高さのままであり、キャビティ19に第2の材料20を充填した後に、可動ピン23は、可動ピン23の上部27が第2の材料の表面31を突き通るまで延出し、第2の層29(図示せず)を通る貫通穴21が延長及び維持され得る。
【0066】
第2の材料20は、以下のwt%の組成のうちの1つを有し得る:
【表3】
【0067】
それに関して、製造される歯の象牙質は第2のセラミック材料20から形成されるので、1つ又は複数の着色酸化物が、所望の歯の色をもたらす量で存在し得る。さらに、Yの割合が比較的低いため、完全焼結された歯の代替物の象牙質は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%の高い正方晶相含有量を有することになり、したがって、高い強度が得られる。
【0068】
好ましくは、可動ピン23は、キャビティ19の充填前に延出される。可動ピン23を囲む状態でキャビティ19に第2のセラミック材料20を充填した後に、材料14、20、又はこれらから形成された層又は領域が、第2の可動上側プレスツール(プランジャ)30(図2C)をさらに含み得るプレスツールによって、ダイ10内でプレスされる。第2の上側プレスプランジャ30は、任意のサイズの任意の一般的な形状に構成され得る下面32を含み、圧粉の結果として第2の層内に形成される第2のキャビティ36を画定する。好ましくは、第2のキャビティ36は貫通穴21と連通し、したがって、貫通穴21が第2の層29内にさらに延長され得る。これは、第2の上側プレスプランジャ30の一部が可動ピン23と概して接触したままの状態で第2の上側プレスプランジャ30による第2の材料のプレスを通じて達成され得る(図2D)。より具体的には、第2のプレスプランジャ30が下側プレスツールの方に移動する際に、第2のプレスプランジャ30は可動ピン23を下側プレスツールの上面17の方に押し(又は可動ピン23が独立して後退し)、したがって、貫通穴21が、プレス/圧粉ステップ中に第1の層25と第2の層29の両方において概して維持されている状態で第2の層29内に延び得る。
【0069】
第2の材料20が第2の上側プレスプランジャ30によって(可動又は据置であり得る下側プレスツールの助けとともに)圧粉されると、上側プレスプランジャ30の下面32の形状と延出した可動ピン23により、第2の層29に第2のキャビティ36が形成され得る。図2Cに示されている1つの具体例では、第2の上側プレスプランジャ30は、第2の上側プレスプランジャ30の下面32によって画定される延長部33を含み得る。ここで、延長部33は、下側円筒部38と上側着座部40を有する概して「ねじ」形状の輪郭/プロファイルを画定し得るが、前述のように、下面32の部分を画定するための他の形状及びサイズが企図される。好ましくは、下側円筒部38の遠位端35は、可動ピン23の上部27の形状/サイズと相補的である(及び/又はそれと嵌合する)ように構成され、したがって、遠位端35と上部27の連通/接触により、貫通穴21が第1の層25から第2の層29の少なくとも一部まで続くのを支援する。第2の上側プレスプランジャ30の下面32の残りの部分は、本発明の立方体様の形状のブロックの概して平坦な外壁の形成を支援するべく概して平坦であり得ることが理解される。
【0070】
図2D及び代替的な図2Eに示されているように、第2の上側プレスプランジャの下部38は、様々な長さにすることができ、したがって、第2のプレスステップが完了又は実質的に完了したときに、下部38の遠位端35は、図2Dに示すように第1の層25及び第2の層29の一部のみを通って(例えば、第2の層のみを通って)延び得るか、又は図2Eに示すように第1の層25と第2の層29の両方を通って延び得る。いずれの場合も、又は下部38の遠位端35がモールド内で異なる深さまで延びる場合、可動ピン23は、第1及び第2のセラミック材料を通る貫通穴を維持するためにプレスステップ中に可動ピン23の上端部が第2の上側プレスプランジャ30の下部38の遠位端35と接触したままであることを保証するべく、モールド内で適宜位置決めされる。
【0071】
第2の上側プレスプランジャ30の上側着座部40は、ねじなどの取り付け器具の上部、又はツーピースアバットメント(例えば、Tiベース)の下側区域の上部(金属)部分を受ける幾何学的形状を画定し得ることが理解される。好ましくは、必須ではないが、上側着座部40(例えば、着座部及び/又はねじ着座部)は、アバットメント又はツーピースアバットメント(例えば、Tiベースの金属部分を囲むジルコニア部分)が互いに対して回転するのを防ぐために、ブランク(例えば、貫通穴を備えるジルコニアブロック)の接続する幾何学的形状に設けられる回転防止機能を形成するように構成された外形を含む。
【0072】
図7A図7Cに示すような1つの限定ではない例では、代替的な第2の上側プレスプランジャ70は、回転防止機能部74を有する円錐形及び/又は円筒形に形状設定された延長部72を含み得る。回転防止機能部74は、図7Cに示すように、第2の上側プレスプランジャ70の外面76から外方(例えば、半径方向)に延び得る。図7Bに示すように、回転防止機能部74はさらに、第2のプレスプランジャ70の延長部72の上部78に沿って下方に延び得る。回転防止機能部74は、アバットメント又はツーピースアバットメント(例えば、Tiベースの金属部分を囲むジルコニア部分)が互いに対して回転するのを防ぐために任意の形状及び/又はサイズで構成され得る。回転防止形状の他の限定ではない例は、六角形及び/又は他の形状などの多角形の形状を含み得るが、これらに限定されない。
【0073】
前述のように、第2の上側プレスプランジャ30は、ダイ10内に導入され、下側プレスツールと協働して圧粉を行い、これにより、既に形成された第1の層25に加えて第2の層29を形成し得る。プレス後に、ブランク44は、およそ3g/cmの密度を有し得る。結果として得られるブロックを形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で500バールを超える、好ましくは100バールを超える圧力で行われ得る。さらに、結果として得られるブロックを形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で20,000未満、好ましくは10,000バール未満の圧力で行われ得る。結果として得られるブロックを形成するための圧粉/プレスは、ダイ内で500~20,000、好ましくは1000~10,000バールの範囲の圧力で行われ得ることが理解される。
【0074】
結果として得られるブロックは、概して立方体様の形状を有し得るが、必須ではない。含まれるとき、結果として得られるブロックは、5mmを超える、好ましくは8mmを超える長さを有し得る。さらに、結果として得られるブロックは、75mm未満、好ましくは60mm未満の長さを有し得る。結果として得られるブロックは、5~75(例えば30)mm、好ましくは8~60(例えば20)mmの長さを有し得ることが理解される。さらに、結果として得られるブロックは、5mmを超える、好ましくは8mmを超える幅を有し得る。さらに、結果として得られるブロックは、75mm未満、好ましくは60mm未満の幅を有し得る。結果として得られるブロックは、5~75(例えば30)mm、好ましくは8~60(例えば20)mmの幅を有し得ることが理解される。最後に、結果として得られるブロックは、2mmを超える、好ましくは5mmを超える高さを有し得る。さらに、結果として得られるブロックは、55mm未満、好ましくは45mm未満の高さを有し得る。結果として得られるブロックは、2~55(例えば30)mm、好ましくは5~45(例えば21)mmの高さを有し得ることが理解される。
【0075】
セラミック材料14、20に関して、それらは1g/cmから1.4g/cmの間のかさ密度を有し得ることにも留意されたい。プレス後に、密度はおよそ3g/cmであり得る。
【0076】
図1C図1Dに示すように、キャビティ19は、上側プレスプランジャ18によって第1のセラミック材料14内に形成され、材料を含む第1の層25と、可動ピン23から形成された貫通穴21で構成され得ることが理解される。ダイ10のベース側の壁11は、下側プレスプランジャ16によって制限され得る。
【0077】
図2Dから分かるように、第2の材料20に第2のキャビティ36が形成され、プレスプランジャ16、18による圧粉後に貫通穴21が延び続けて、貫通穴を備えるブロックが形成され得る。その後、ブロックは、随意的に予備焼結及び/又は完全焼結及び/又は随意的にミリングされ得る。
【0078】
第2のキャビティ36が存在するか否かに関係なく、ブランクの予備焼結は、(すなわち、プレス後に)特に850℃から1050℃の範囲内の温度で100分から150分の時間にわたって行われ得る。最初に脱バインダが行われ、次いで、予備焼結が行われる。予備焼結後のブランクの密度はおよそ3g/cmであり得る。予備焼結されたブランク28の曲げ強さは15MPaから45MPaの間であり得る。
【0079】
図4を参照して説明するように、予め形成された貫通穴42を備えるブランク44から歯49などのねじ穴48(図示せず)を備える歯科修復物を得るために、ブランク44にはさらに、固定された(又は取り外し可能に固定された)ホルダ46(図3)が設けられていてもよく、したがって、予め形成された貫通穴42を備えるブランク44を例えばミリング又は研削マシンで加工できるようになる。これにより、製造される歯は、切縁領域が第1のセラミック材料14によって形成された領域52に延び、象牙質領域が第2のセラミック材料20によって形成された第2の領域54に部分的に延びるように、予め形成された貫通穴42を備えるブランク44に少なくとも仮想的に配置され得る。次いで、このデータを考慮に入れて、予め形成された貫通穴42を備えるブランク44が加工され得る。
【0080】
図4Aに示すように、本発明に係るねじ穴を備える歯科修復物、例示的な実施形態では歯62が、ブランク44から得られる。この目的のために、第1のセラミック材料14からの第1の領域63及び第2のセラミック材料20からの第2の領域65の遷移の知識により、製造される歯62のブランク44の領域63、65を、切縁60が第1の領域63に延び、象牙質66が第2の領域65に延びるように、仮想的に配置することができる。
【0081】
そのように仮想的に配置された歯62をブランク44から取り外した後に、原則として直接使用することができる、特にベニアを必要としない、歯の代替物が利用可能となる。本発明の教示に基づいて、ねじ穴64を備えるモノリシック歯62を製作することができる。この場合、第1の領域63及び第2の領域65に、随意的にインプラント(図示せず)に接続するためのねじ穴64が既にあるため、ブランク44からの製作がより容易になる。
【0082】
図4Bに示すように、本発明に係るねじ穴を備える歯科修復物、例示的な実施形態では臼歯62’が、ブランク44から得られる。この目的のために、第1のセラミック材料14からの第1の領域63’及び第2のセラミック材料20からの第2の領域65’の遷移の知識により、製造される歯62’のブランク44の領域63’、65’を、切縁52が第1の領域63’に延び、象牙質54が第2の領域65’に延びるように、仮想的に配置することができる。
【0083】
そのように仮想的に配置された臼歯62’をブランク44から取り外した後に、原則として直接使用することができる、特にベニアを必要としない、歯の代替物が利用可能となる。本発明の教示に基づいて、ねじ穴42を備えるモノリシック歯62’を製作することができる。この場合、第1の領域63’及び第2の領域65’に、随意的にインプラント(図示せず)に接続するためのねじ穴42が既にあるため、ブランク44からの製作がより容易になる。
【0084】
図5は、第1のキャビティ19に第1のセラミック材料14を充填し、キャビティ19に第2のセラミック材料20を充填した後に、随意的に本発明に従ってそのように形成された第2のキャビティ22に、組成が第2のセラミック材料とは異なる第3のセラミック材料が充填され得ることを例示しており、これにより、特により高い強度を達成することができる。本明細書で説明されるように、第3のセラミック材料24を通る貫通穴48が同様に形成され得る。
【0085】
本発明の教示は、異なる幾何学的形状の対応する歯を形成できるように、第2のセラミック材料及び随意的に第3のセラミック材料で作製され、各領域52、54、56(図8)を通って延びる貫通穴53を備える異なる幾何学的形状を有する複数の領域52、54、56を有するブランク58を形成できることを紹介する。それぞれ貫通穴53を有する第2のセラミック材料20から形成された、いわゆる第2の領域52、54、及び56は、特に図面からもわかるように、第1のセラミック材料14に埋め込まれ、すなわち、囲まれ得る。第2の領域52、54、及び56は、ベース側では覆われていない。
【0086】
特に図2D図3、及び図8からわかるように、第2の領域は、底部から、すなわち、貫通穴が通って延びるベース領域からテーパし始める外側の幾何学的形状を有する。これは円錐状の幾何学的形状と言ってもよく、外側の輪郭は自由曲面を表す。
【0087】
ベース領域67は、下側に限定されるベース面であり、第1の領域25のベース面61の下側と合流する(図3)。
【0088】
貫通穴53を備えたネストとも呼ばれるブランク区域52、54、56を製作するために、図1A図1Dを参照して説明したように、第1の材料14で作製され、第1の領域50として表される層内に対応する開口キャビティを設け、注入可能な第2のセラミック材料20を前述の様態でキャビティに充填し、次いで、材料14、20を一緒にプレスする、すなわち、圧粉することが必要になる場合がある。
【0089】
セラミック材料14、20の物理的特性に関しては、透光性及び強度特性の差に加えて、異なる熱膨張係数を有することがさらに有利又は好ましい場合があることに留意されたい。特に、本発明は、完全焼結後の熱膨張係数が、第2のセラミック材料20から形成された第2の領域52、54、56よりも0.2μm/mK~0.8μm/mK低い、第1のセラミック材料14を提供する。この結果として、第1の領域50、すなわち、切縁材料に圧縮応力が生じ、これは強度の増加につながる(図5)。
【0090】
ブランクに関して、これらは、本発明の教示に影響を及ぼすことなく、例えば、寸法が18×15×25mmの立方体様の形状、又は例えば直径が100mmのディスク形状を有することができることに留意されたい。これにより、特に図6を参照して説明したように、例えば、ディスク形状のブランク内に複数の第2の領域52、54、56、いわゆる象牙質コアを形成して、異なる幾何学的形状であるが透光性及び強度に関して好ましい層遷移を有する修復物を得ることができるという利点がもたらされる。
【0091】
随意的に異なる幾何学的形状の、1つ以上の第2の領域52、56、すなわちネストの位置がわかっているので、それらをデータレコードに格納することができる。次いで、ミリング及び/又は研削によってブランクから歯の代替物を得ることができるように、CADデータセットとして利用可能な製造される修復物が、ブランク区域に対して及びブランク区域内に配置される。
【0092】
図9では、本発明に係る、貫通穴84が予め形成されている複数のブランク82(取り外し可能に固定されている)を含むホルダ80が提供される。複数のブランク82は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれのブランク82を通って延びる予め形成された貫通穴を備える異なる組成の複数の層を含み得ることが理解される。例えば、複数のブランク82のうちの1つ以上のブランクは、同じ又は異なる形状及び/又はサイズを有し得る。さらに、1つ以上のブランクは、層ごとに又はブロックごとに異なる組成をもつ複数の層を有し得る。ブランク82は、マウント80に取り外し可能に取り付けることができ、マウント80はまた、ミリング及び/又は研削マシン(図示せず)に取り外し可能に取り付けることができることがさらに理解される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
【国際調査報告】