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特表2025-504126口腔投与のための組成物、システム、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】口腔投与のための組成物、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/22 20060101AFI20250130BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20250130BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K8/22
A61C19/06 A
A61K8/04
A61K8/58
A61K8/81
A61K8/89
A61K8/892
A61K8/36
A61Q11/00
A61K8/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546148
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 US2023061839
(87)【国際公開番号】W WO2023150610
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/305,766
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/163,060
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399128493
【氏名又は名称】ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリタニー シェプラー
(72)【発明者】
【氏名】アンディ カワモト
【テーマコード(参考)】
4C052
4C083
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052MM05
4C083AB172
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC681
4C083AC682
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD06
4C083DD41
4C083DD47
4C083EE35
(57)【要約】
本開示は、流動性状態から硬化または半硬化状態に移行する口腔送達組成物に関する。歯および/または歯肉を含む口腔組織に対して、直接的、またはバリアストリップもしくはトレー状装置を使用して、流動性硬化性組成物を送達してもよい。組成物をマルチパート系として構成して、反応性材料(たとえば、触媒および反応性樹脂)を使用まで別個に維持してもよい。硬化した組成物内の粘性担体中の薬剤を分散させることにより、所望の薬剤を徐放し、特定の薬剤(たとえば、歯科用ホワイトニング剤)によって引き起こされる可能性のある知覚過敏の軽減または除去を可能にする。硬化した送達組成物は、口腔組織の反転像を含んでもよく、1回の使用中に複数回にわたる取り外しおよび再配置を可能とし、使用者に処置中の融通性を与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトニング剤、ならびに、触媒および開始剤の少なくとも1種を含む第1パートと;
第1パートと別個であり、反応性モノマー、オリゴマー、ポリマーの少なくとも1種を含む第2パートと
を含む歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項2】
ホワイトニング剤が過酸化水素または過酸化カルバミドであることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項3】
第1パートがキャリア材料をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項4】
キャリア材料が、ポリアクリル酸またはポリビニルピロリドンの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項3に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項5】
ホワイトニング剤および触媒がキャリア材料中に分散されていることを特徴とする、請求項3に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項6】
第1パートが、少なくとも1種の追加の処置剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項7】
少なくとも1種の追加処置剤が減感作剤を含むことを特徴とする、請求項6に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項8】
反応性ポリマーが、少なくとも1種のシラン末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサンと、少なくとも1種のシラン架橋剤とを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項9】
第1パートが二重バレルシリンジの一方のバレルに配置され、第2パートが二重バレルシリンジの他方のバレルに配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項10】
触媒が、スズ化合物または白金化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項11】
触媒が有機金属触媒を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項12】
有機金属触媒が、ジメチルスズジネオデカノエート、スズビス(ネオデカノエート)、スズビス(2-エチルヘキサノエート)、ジ-n-ブチルジラウリルスズ、またはジメチルスズヒドロキシ(オレエート)の少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項11に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の歯科用ホワイトニングシステムを提供する工程と;
第1パートおよび第2パートを組み合わせて硬化性組成物を形成する工程と;
硬化性組成物を使用者の歯の少なくとも一部の上に載置する工程と;
硬化性組成物を硬化させて、使用者の歯の少なくとも一部の上に硬化したホワイトニング組成物を形成する工程と
硬化したホワイトニング組成物が、歯の美容的ホワイトニング効果を提供する工程と
を含むことを特徴とする、美容的に歯をホワイトニングする方法。
【請求項14】
使用者の歯から硬化したホワイトニング組成物を除去する工程と;
硬化したホワイトニング組成物を使用者の歯に再適用し、歯の美容的ホワイトニングを再開する工程と
をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
キャリア材料中に分散されたホワイトニング剤を含む第1パートと;
反応性モノマー、オリゴマー、およびポリマーの少なくとも1種を含む第2パートと;
第1パートおよび第2パートの少なくとも一方に配置された触媒または開始剤と
を含むことを特徴とする歯科用ホワイトニング材料。
【請求項16】
キャリア材料が水溶性ポリマーであることを特徴とする、請求項15に記載の歯科用ホワイトニング材料。
【請求項17】
キャリア材料が、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドとの共重合体、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルカプロラクタム、グリセリン、および/またはポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の歯科用ホワイトニング材料。
【請求項18】
アーチ形状を有し、チャネルを画定するトレーと;
トレー中への配置のための歯科用ホワイトニング材料と
を含む歯科用ホワイトニングシステムであって、
歯科用ホワイトニング材料は、縮合触媒およびホワイトニング剤を含む第1パートと、シロキサンおよび架橋剤を含む第2パートとを含む
ことを特徴とする、歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項19】
シロキサンは、少なくとも1種のシラノール末端ポリジメチルシロキサンまたはヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする、請求項18に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項20】
架橋剤は、少なくとも1種の官能性シランを含むことを特徴とする、請求項18または19に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔送達用組成物、ならびに関連するシステムおよび方法に関する。当該組成物は、キャリア中に機能剤と組み合わせた硬化性材料を含んでもよく、硬化状態に硬化する前の流動可能な状態で、歯、歯肉および/または頬組織を含む任意の口腔組織に導入されてもよい。
【背景技術】
【0002】
軟質組織および歯を含む口腔組織への処置剤の送達は、口腔洗浄液、歯磨き粉、ゲル、ワニス、錠剤を含む種々のシステムを用いて行うことができる。
【0003】
たとえば、美容目的の歯科用ホワイトニング製品は、慣用的には、トレーまたは使い捨てストリップを使用する流動性ゲルによって提供される。このようなホワイトニングゲルは、多くの場合に粘着性を有し、典型的には使用後に歯を洗浄する必要がある。再使用可能なカスタム品のトレーを使用して製品を歯に塗布する場合、トレーも使用後に洗浄しなければならない。さらに、トレー(カスタム品または非カスタム品)のフィットが悪い場合、使用者は処置プロセス中に不快感を経験する可能性があり、ホワイトニングゲルがトレーから使用者の歯肉または他の軟質口腔組織上にこぼれ、不快感を悪化させる可能性がある。この不快感は数日間にわたって続くことがある。これらの問題は、製品の使用を不便にし、一部の使用者のコンプライアンスを阻害する恐れがある。
【0004】
使い捨てのストリップのようないくつかのホワイトニングシステムは、比較的簡単に適用することができ、店頭で購入することができる。しかしながら、多くの場合、それらシステムは比較的低濃度のホワイトニング成分を有し、短期間かつ1回限りの使用を想定しているに過ぎない。ストリップの使用は、多くの使用回数および頻度を伴う、より長いホワイトニングプログラムが必要になるなどの欠点をもたらす。また、ホワイトニングストリップを使用してホワイトニングを行った後も、歯に残留物が残ることがあり、依然としてストリップを取り外した後に歯を清掃する必要がある。また、使い捨てストリップは、1回の使用中に滑ることがある。これにより、使用者の歯肉がホワイトニング剤(典型的には過酸化物)にさらされ、歯肉の過敏性の増大をもたらす恐れがある。また、ストリップの脱落は、ストリップを使用する目的である歯のホワイトニングが最適に行われないことを意味する。
【0005】
歯周ポケットのような歯肉障害の処置は、口腔洗浄液、または歯周ポケットに留置される溶解可能なポケット内装置を用いて行われてもよい。しかし、口腔洗浄液はポケットに効果的に届かないおそれがあり、ポケット内装置は不快感を引き起こし、効果的な処置時間に達する前に溶解する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結局、口腔組織への薬剤の送達を成功させるための主な障害は、使用者が所定の処置計画を適切に完了できないことである。処置器具の装着が不快であったり、使用および装着が困難であったり、および/または使用者の歯からの早期に脱落しやすかったりすると、使用者は単に諦めて、所定の処置計画を早期に中止してしまう可能性がある。したがって、特定の処置器具または処置方法を用いて歯科処置が可能であっても、処置器具または処置方法の不十分さによって所望の結果が得られる前に使用者が興味を失うと、歯科処置が適切に完了する可能性が低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、慣用の装置の前述の欠点を克服し、簡便、迅速、安価、均一、および再使用可能な適用を提供する口腔送達のための、機能剤を歯および/または口腔組織に送達するための改良された組成物およびシステムに関する。
【0008】
一般的に、組成物は、硬化系(hardening or curing system)に分散された、水溶性ポリマーキャリアのような、機能剤のための流体または粘性キャリアを含み、硬化系は、エラストマー印象材(たとえば、ポリビニルシロキサン)および硬化性樹脂系(たとえば、アクリレート、メタクリレート、エポキシおよびポリウレタン)のようなものである。たとえば、処置組成物は、マルチパート(たとえば、2パート)組成物であってもよく、ここで、一方のパートは、1種または複数種の機能剤および1種または複数種の触媒および/または開始剤を含み、他方のパートは、たとえばシリコーンベースの縮合化学成分または反応性モノマーのような、反応性成分を含む。
【0009】
機能剤(たとえば、歯科用ホワイトニング剤、歯の減感作剤、および/または口腔処置剤)とともに触媒を保存し、触媒または開始剤を反応性の硬化性成分から隔離することは、時期尚早の硬化を防止し、したがって、これら成分の安定性を維持する新しい方法である。たとえば、本発明の組成物は、数ヶ月から1年またはそれ以上にわたって安定性を維持することができる。いくつかの実施形態では、ホワイトニング剤は粘性のキャリア材料と一緒に含まれる。キャリア材料中に機能剤を分散させることにより、硬化後の組成物中での薬剤の移動を容易にし、それによって所望の組織への薬剤の効率的な送達が可能になる。機能剤およびキャリア材料を薬剤と組み合わせる前に混合して、組成物内で薬剤の少なくとも一部がキャリア材料内に分散したままになるようにしてもよい。
【0010】
使用時に、硬化性材料内の成分を混合する際に、それら成分は硬化 (curing or setting)プロセス(たとえば、化学的または物理的な硬化プロセス)を受ける。たとえば、当該材料は、触媒または開始剤および/または水分の存在下で架橋して、硬化を開始する反応性樹脂を含んでもよい。マルチパートシステムにおいては、反応性樹脂を、触媒から隔離して維持してもよい。有利なことには、マルチパートシステムのそれぞれのパートを流動性として、硬化性処置材料を形成するための混合を容易にしてもよい。ひとたび形成されたならば、硬化性材料は、歯および/または軟質口腔組織への送達に十分な時間にわたって流動性を維持することができる。有利なことには、このようにして、硬化性組成物は、2つのパートが混合されて硬化(cure and/or harden)に十分な時間が与えられた後に、単一の固体または半固体の凝集性の塊となる。
【0011】
開示された組成物、方法、およびシステムは、少なくとも慣用製品と同程度に安定かつ効果的であると同時に、より便利で快適に使用できる口腔ケア製品および歯科ケア製品を提供する。いくつかの実施形態において、口腔用または歯科用組成物は、混合および口腔組織への適用後に化学的硬化プロセスを経てエラストマー性固体に変化するゲルとして形成される。いくつかの実施形態において、組成物を、歯または他の口腔組織に直接適用することができる。他の実施形態において、硬化前に、裏当てストリップまたはトレー様装置のような支持体または送達装置内またはそれらの上にゲルを配置してもよい。このようなトレー状装置は、慣用の歯科用ホワイトニングトレーであってよく、これは、カスタム品であっても、非カスタム品であってもよい。ゲルを載置した送達装置を、歯および/または歯列弓のような使用者の口腔組織上に配置してもよい。ゲルを硬化させて、ゲルと接触する使用者の歯および/または歯列弓の部分の印象または圧痕を有するエラストマーとしてもよい。たとえば、エラストマーは、使用者の歯列および/または歯列弓の反転像を含む半透明または透明な膜であってもよい。有利なことには、硬化したエラストマーゲルは、単一の使用中において複数回にわたる取り外しおよび再装着が可能であり、歯の処置中に使用者に対して大きな融通性を提供する。
【0012】
たとえば、2パート縮合硬化シリコーン化学を用いて、処置ゲルの硬化または硬化挙動を達成してもよい。水と触媒または開始剤との存在下で、処置組成物中に存在する反応性シリコーン材料は加水分解を受け、架橋を開始する。これにより、ゲル成分がエラストマー性固体に変化する。
【0013】
シリコーン系硬化送達組成物の非限定的な例示的配合は以下の通りである:
パートA:
シラノール末端シリコーンポリマー(たとえば、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)、官能性シラン(たとえば、シリケートエステル)、および任意選択的な添加剤(たとえば、充填剤、界面活性剤など)。
パートB:
縮合触媒(たとえば、有機スズ化合物)、機能剤または処置剤(たとえば、歯科用ホワイトニング剤、減感作剤、および再石灰化剤、および/または歯周処置剤)、キャリア材料(たとえば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなど)、添加剤(たとえば、充填剤、界面活性剤など)。
【0014】
マルチパート組成物の複数のパートの配合は、実用的かつ安定な製品を維持する上で重要な役割を果たしてもよい。反応性材料(すなわち、シリコーンポリマーおよび架橋剤)を触媒または開始剤から隔離することにより、組成物の時期尚早な硬化を防止し、長期保存およびその後の使用が可能になることが実証されている。たとえば、上記の例示的配合のパートAおよびパートBを流動性の組成物として配合することができ、両者を容易に混合して流動性のゲル状組成物を形成することができる。パートAをパートBと混合して硬化反応を開始させ、流動性ゲル組成物を硬化した処置組成物(有利なことには、依然として柔軟性かつ弾力性を有する)に変換することができる。2つのパートは、たとえば、二重バレルシリンジ(たとえば、並列または同心)のような2つのチャンバを含む送達システムに装填することができる。混合チップを通して2つのパートを絞り出して、成分を一緒に混合し、反応化学全体にわたって処置剤およびキャリア材料が実質的に均質に分散されているゲルを生成することができる。
【0015】
未硬化または部分的に未硬化の状態において、混合物は、流動性を有し、口腔組織に直接適用されてもよく、または裏打ち材、口腔処置装置、または歯科処置トレーなどの送達装置を用いて歯または他の口腔組織に適用されてもよい。使用時には、未硬化または部分的に未硬化の混合物を含む歯科用トレーを歯(および任意選択的に歯肉組織)の上に載置するか、あるいは、未硬化または部分的に未硬化の混合物を担持した口腔ストリップを歯および/または他の口腔組織の領域に載置し、ゲルを硬化させる。組成物中の反応性成分が硬化した状態まで硬化する際に、エラストマー材料は塗布された場所の反転像または印象を形成する。除去された際に、硬化した組成物は、歯科用シリコーン印象材と同様の方法で、歯および/または周囲組織の形状を反映および維持する。硬化した組成物のエラストマー性挙動により、使用者は、それを容易にかつ清潔に除去し、残留物をほとんど残さず、引き続いてそれを適用部位に再適用し、後日、処置(たとえば、美容的な歯のホワイトニング、歯の減感作、または歯肉処置)を再開することができる。硬化した組成物は、典型的には除去および/または再装着時に変形するが、エラストマー性であるため、変形力が除去されると元の成形形状に復帰する。
【0016】
硬化性処置組成物または硬化した処置組成物は、減感作またはホワイトニング用ゲルのような慣用の口腔処置組成物と比較して、組み合わされたシリコーンおよびポリマー系からの機能剤または処置剤の徐放を可能にする。このような薬剤の徐放は、所与の時間において歯およびその周囲の軟質口腔組織に接触するホワイトニング剤の量および/または濃度を減少させることによって、歯科用ホワイトニング剤(過酸化物など)によって引き起こされる知覚過敏のような、知覚過敏の減少を可能にすると同時に、ホワイトニング剤が活性を維持する時間を延長することを可能にする。硝酸カリウムまたはフッ化物歯科用減感作剤のような、これらおよび他の薬剤の徐放は、改善された結果をもたらす。当該薬剤の長期間の放出により、使用者は、食事または歯磨きなどの行為を行うために一時的に組成物を取り外し、その後、追加量の組成物を使用する代わりに、同じ組成物を使用して処置を再開することも可能になる。
【0017】
シリコーンベースの化学は、本発明で採用できるポリマー系の非限定的な例である。他の硬化性化学物質を使用することもできる。たとえば、硬化性メタクリレート送達組成物の処方は以下の通りである:
パートA:
メタクリレート樹脂、および任意選択的な添加剤(たとえば、アミン相乗剤、光活性化開始剤、充填剤、界面活性剤など)
パートB:
重合開始剤(たとえば、有機過酸化物開始剤)、機能剤または処置剤(たとえば、歯科用ホワイトニング剤、減感作剤および再石灰化剤、ならびに/または歯周処置剤)、キャリア材料(たとえば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなど)、添加剤(たとえば、充填剤、界面活性剤など)。
【0018】
ポリアクリル酸および/またはポリビニルピロリドンのような水溶性ポリマーも、キャリア材料として含むことができる。キャリア材料は、増粘剤またはレオロジー調整剤として機能し、系の成分の均一な混合を促進することができる。キャリア材料を添加しない場合、処置剤と触媒または開始剤との両方を含む成分は、均質かつ機能可能な硬化性ゲルを作製するために望まれるように、シロキサン材料を含む他の成分と容易に混合しない恐れがある。非効率的または不完全な混合は、処置剤が過酸化水素などの液体である場合に、特に改善される可能性がある。また、シロキサン材料よりも親水性の高いキャリア材料の添加は、処置剤の保持性および徐放性を向上させることができる。
【0019】
有利なことには、ひとたび硬化したならば、処置剤は凝集塊内に分散され、歯に対する薬剤の安定した放出を提供する。所望の時間後に硬化した送達材料を除去するために、使用者は、付着した組成物または組成物を担持したバリア材料の角または一部を単に把持し、歯から引き剥がすことができる。一般的に、硬化した送達材料は、典型的には、単一の凝集片として引き剥がされ、慣用の歯科処置用ゲルと比較して除去を大幅に単純化する。典型的には、除去後に使用者の歯および組織に付着した残留材料はほとんど残らないか、または全く残らない。また、硬化した送達材料が単一の凝集材料片のままである能力は、それを再適用および再使用することを可能にする。
【0020】
加えて、有利なことには、マルチパート組成物は、最初の接触および/または混合と、組み合わされた組成物が硬化(setting)プロセスを完了するときとの間に、遅延時間(lag time)を示してもよい。このような遅延時間は、組成物が歯科用トレー中またはストリップ上にある場合、流動性で操作可能な状態のまま組成物を歯および/または他の口腔組織上に配置するのに十分な時間を使用者に提供して、完全に硬化する前に、歯に塊を押圧して印象を形成することを可能にする。
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に述べる本発明の実施によって理解することができるであろう。
【0022】
この概要は、詳細な説明において後述する概念の一部を簡略化して紹介するために提供される。この要約は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を示すものとして使用することを意図したものでもない。
【0023】
本発明の前述および他の利点および特徴をさらに明確にするために、添付の図面に例示されているその特定の実施形態を参照することにより、本発明をより具体的に説明する。これらの図面は、本発明の例示された実施形態のみを描いており、したがって、その範囲を限定するものとみなされないことが理解される。添付図面の使用により、本発明をさらに具体的かつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】その中に硬化可能なホワイトニング組成物を有し、上部歯列弓または下部歯列弓の少なくとも一部にフィットするように構成された歯科用トレーを含む歯科用送達システムの実施形態の透視図である。
図2】硬化性ホワイトニング組成物を歯科用トレーに適用して、図1に示す歯科用送達システムを形成する実施形態を示す図である。
図3】硬化性ホワイトニング組成物を歯に適合させるために、歯列弓の歯の上に配置された後の歯科用送達システムを示す図である。
図4】硬化性組成物を歯列弓の歯に適合させるために歯列弓の歯にかぶせた後の、カスタム品の歯科用トレーを利用した歯科用送達システムを示す図である。
図5A】歯を覆う歯科用送達システムの断面図である。
図5B】歯を覆う歯科用送達システムの断面図である。
図6】硬化したホワイトニング組成物を有する歯科用送達システムを示す図である。
図7図7は、二重バレル混合シリンジから裏打ち材に分注される硬化性処置組成物の例を示す図である。
図8A】裏打ち材を用いて硬化性処置組成物を口腔組織に適用して、1つまたは複数の機能剤を口腔組織に送達する例を示す図である。
図8B】裏打ち材を用いて硬化性処置組成物を口腔組織に適用して、1つまたは複数の機能剤を口腔組織に送達する例を示す図である。
図8C】裏打ち材を用いて硬化性処置組成物を口腔組織に適用して、1つまたは複数の機能剤を口腔組織に送達する例を示す図である。
図9】硬化性処置組成物を歯と歯肉の間の歯肉縁に適用した例を示す図である。
図10】本開示の硬化性処置組成物を適用してもよい口腔軟質組織の領域の例を示す図である。
図11A】例示的な2成分歯科用処置組成物の硬化挙動、およびその後の柔軟性および弾力性の例を示す図である。
図11B】例示的な2成分歯科用処置組成物の硬化挙動、およびその後の柔軟性および弾力性の例を示す図である。
図11C】例示的な2成分歯科用処置組成物の硬化挙動、およびその後の柔軟性および弾力性の例を示す図である。
図12A】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
図12B】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
図12C】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
図13A】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
図13B】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
図13C】硬化したホワイトニング組成物材料の使用者の歯への適用、除去、および使用者の歯への再適用の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、口腔組織に機能剤を送達するのに使用するのに適した硬化性(hardening or curable)な口腔処置組成物に関する。当該組成物は、たとえば、キャリア材料中に分散された少なくとも1つの機能剤を含む硬化性組成物を含んでもよい。キャリア材料は、ポリマー、溶媒、またはそれらの組み合わせであってもよい。組成物に使用される硬化性(hardening)材料は、硬化性(curable or setting)材料であってもよく、一方、キャリア材料は、粘性を維持する材料であってもよい。
【0026】
開示された組成物、方法、およびシステムは、口腔組織への薬剤の多用途かつ簡便な送達を提供する。本明細書で使用される場合、「口腔組織」とは、口腔、咽頭、および咽喉の組織を意味および包含する。それら組織は、歯、歯肉(gingiva)(または歯肉(gums))、頬(buccal)組織(たとえば、頬(cheek)組織)、舌、骨、血管、神経、および唾液腺を含むが、それらに限定されない。非限定的な例として、硬化性組成物は、複数(たとえば、2つ)のパートを含む化学硬化性組成物であってもよく、第1パートは、触媒とともに機能剤(単数または複数)を含み、他方のパートは、残余の硬化化学物質を含んでもよい。いくつかの実施形態において、触媒または開始剤を機能剤と組み合わせて保存し、触媒を反応性材料および/または架橋剤から隔離することは、混合および硬化の前に成分の安定性を維持するための改善されたアプローチの1つの例である。いくつかの実施形態において、処置剤は、水溶性ポリマーのようなキャリア材料と組み合わされる。
【0027】
たとえば、硬化性(hardening or curing)組成物は、慣用の製品と少なくとも同程度に安定かつ効果的であると同時に、より多用途かつ利便性の高い、美容的な歯のホワイトニング組成物、口腔減感作組成物、または歯周処置組成物とすることができる。具体的には、開示される硬化性組成物は、後片付けおよび使用者のミスを低減または排除し、より快適な使用経験を提供し、そしてひとたび硬化した組成物の再使用を可能にすることによって、使いやすさを改善する。このような利点は、所定の処置計画の遵守を促進する。比較すると、慣用のホワイトニング剤、減感作剤および歯周処置剤は、一般的に、粘性担体中に分散された処置剤を含む非硬化性(non-curable, non-hardening)ゲルである。対照的に、本明細書に開示する発明は、混合して歯および/または他の口腔組織(複数可)に適用した後に、硬化(curing or setting)プロセスを受けて固体または半固体の材料に変化する処置組成物に関する。処置組成物は、それ自体として口腔組織または歯に直接接触させることができ、あるいはまた、硬化前にトレー状装置などの担体によって接触させることができる。また、硬化した処置組成物は、1回の使用サイクル中に1回または複数回にわたる取り外しおよび再装着を可能とし、慣用の処置ゲルを使用する場合のように、処置材料を無駄にしたり、新しい処置組成物を再配置したりすることなしに、歯の処置中に使用者に融通性を提供する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「硬化(harden)」および「硬化性(hardening)」という用語は、粘性および/または流動性の材料または組成物が、少なくとも部分的に固体化または固結した材料または組成物に移行して、「硬い(hard)」または「硬化した(hardened)」材料または組成物を形成することを指示してもよい。このような硬化した材料または硬化した組成物は、実質的に非流動性または固体材料であってもよく、および/または外部からの支持を必要とすることなく、その三次元形状を実質的に保持してもよい。たとえば、硬化性材料または硬化性組成物は、硬化状態に硬化(cured or set)することができる任意の材料(依然として、可撓性および弾力性を維持する)であってもよい。
【0029】
硬化性材料は、架橋性または重合性のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの硬化性材料または樹脂、または固化性材料である。硬化性材料を、物理的作用(たとえば、光、熱または圧力)または化学的作用(たとえば、触媒、開始剤または溶媒)によって硬化(hardened (cured or set))させてもよい。架橋性または重合性材料の例は、シロキサンおよびポリシロキサン(たとえば、ポリビニルシロキサン(「PVS」)、ヒドロキシポリジアルキルシロキサン)、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルデヒド、酢酸ビニル、マレイン酸メチルビニルエーテル、アジリジン、ビニルエーテル、エポキシド、ポリオール、ポリアミン、ジイソシアネートおよびポリイソシアネート、シアノアクリレート、ポリエーテル、ポリエーテル-PVSハイブリッド、ポリスルフィド、ガラスアイオノマーフィラー、ガラスアイオノマーセメント、リン酸亜鉛セメント、カルボン酸セメント、環状アミド、環状エステル、シリケートセメント、シリコホスフェートセメント、シリコーン、シリコーンゴム、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。ポリスルフィド、ポリエーテル、縮合硬化型シリコーン(たとえば、α-ω-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン)、および付加硬化型シリコーン(たとえば、ポリビニルシロキサン(PVS)またはビニルポリシロキサン(VPS))などのエラストマー材料は、硬化性材料として特に有用である。固化性材料の例は、アルギネート、アルギン酸、寒天、カードラン、ゼラチン、コンニャクグルコマンナン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、デンプン、カラギーナン、ポルトランドセメント、および他のヒドロコロイド、ゲルおよびセメント、ならびにそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0030】
使用してもよい触媒および開始剤の例は、金属塩(たとえば、ジブチルスズカルボキシレートのような、白金およびスズのカルボン酸塩)、有機金属化合物(たとえば、有機チタネート)、アミン(たとえば、第3級アミン)、ジモルホリンジエチルエーテル、ラジカル開始剤(たとえば、過酸化ベンゾイルのような一般構造RO-ORを有する過酸化物、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、カンファーキノン)を含む。
【0031】
機能剤は、処置、治療的、および/または美容的な利点を有する物質のような、口腔組織に送達することが望ましい任意の物質であってもよい。たとえば、機能剤は、歯科用ホワイトニング剤、歯の石灰化剤または処置剤(たとえば、減感作剤および再石灰化剤)、治療剤(たとえば、化学療法剤)、う蝕抑制剤(たとえば、尿素、グリセロリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウム、シリコーンポリマー、植物抽出物など)、キレート剤(たとえば、EDTA、クエン酸、ピロリン酸アルカリ金属塩、ポリホスホン酸、塩酸、ホスホン酸塩など)、麻酔剤(たとえば、ベンゾカイン、リドカインなど)、美容剤、抗生物質、抗真菌剤(たとえば、イトラコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾールなど)、抗菌剤(たとえば、テトラサイクリン、トリクロサン、クロルヘキシジン、硝酸亜鉛、硝酸銀、銅、リモネン、抗菌性ペプチド(AMP)、セチルピリジニウム塩、安息香酸メチル、安息香酸プロピルなど)、歯垢・歯石防止剤(ピロリン酸塩、酸化防止剤、第4級アンモニウム化合物、フェノール類、銅塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アニオン性ポリマーなど)、鎮痛剤(たとえば、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エピネフリン、メントール、または他の鎮痛剤)、抗酸化剤およびビタミン(たとえば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンCなど)、口臭予防剤(たとえば、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、α-イオノンなど)、精油(たとえば、ユーカリプトール、メントール、サリチル酸メチル、チモールなど)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0032】
硬化性組成物は、(たとえば、美容的な歯のホワイトニングを提供するための)1種または複数の歯科用ホワイトニング剤を含む歯のホワイトニング組成物であってもよい。有用な歯科用ホワイトニング剤の例は、過酸化物、二酸化塩素、亜塩素酸塩および次亜塩素酸塩、過炭酸塩、亜塩素酸金属塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩などを含むが、それらに限定されない。好適な過酸化物の例は、過酸化水素、過酸化カルバミド、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物(たとえば、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、および過酸化バリウム)、有機過酸化物、ペルオキシ酸およびその塩、ならびにポリマー-過酸化物複合体(たとえば、Peroxydone(商標)複合体のようなポリビニルピロリドン-過酸化水素複合体)を含むが、それらに限定されるものではない。有機過酸化物は、たとえば、過酸化カルバミド(尿素過酸化水素としても知られている)、グリセリル過酸化水素、アルキル過酸化水素、ジアルキル過酸化物、アルキルペルオキシ酸、ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、モノペルオキシフタレートなどを含む。ペルオキシ酸およびその塩は、アルキルペルオキシ酸およびモノペルオキシフタレートのような有機ペルオキシ酸、ならびに過硫酸塩、二過硫酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過ホウ酸塩、およびリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムのようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属の過ケイ酸塩を含む無機ペルオキシ酸塩を含む。別の有用なペルオキシ化合物は、ピロリン酸ナトリウムペルオキシ水和物である。いくつかの実施形態において、ホワイトニング剤は、キャリア材料との複合体として含まれてもよい。たとえば、ポリビニルピロリドンと過酸化水素との複合体(たとえば、Peroxydone(商標)複合体)を硬化性組成物に使用してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、硬化性歯科用ホワイトニング組成物は、ポリビニルシロキサンエラストマーマトリックス中に歯科用ホワイトニング剤を含むマルチパート(たとえば、2パート)歯科処置システムとして配合してもよい。このような歯科処置組成物は、触媒(単数または複数)とともにホワイトニング剤および/または減感作剤(単数または複数)を含む第1パートと、残余の縮合化学成分を含む第2パートとを含んでもよい。本明細書で使用する場合、「残余の縮合化学成分」とは、たとえばシラノール末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサン(たとえば、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン)のような反応性シリコーンポリマー、架橋剤(たとえば、多官能性シランおよび/またはシリケートエステル)、および/または適切な他の成分を指す。
【0034】
1種または複数種の減感作剤または再石灰化剤を、さらに歯科用ホワイトニング組成物中に含んでもよい。好適な減感作剤および再石灰化剤は、硝酸イオン源(たとえば、硝酸カリウムおよび硝酸銀)、フッ化物イオン源(たとえば、フッ化ナトリウム、フッ化スズ(II)、フッ化カリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、およびモノフルオロリン酸ナトリウム)、カルシウムイオン源および塩(たとえば、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム)、カリウムイオン源および塩(硝酸カリウムおよびクエン酸カリウム)、リンイオン源および塩(たとえば、リン酸トリエチル、リン酸カルシウム、およびリン酸ナトリウム)、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、グルタルアルデヒド、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム六水和物、塩化ストロンチウム、クエン酸塩、シュウ酸カリウム、生体活性ガラス、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。フッ化物、カルシウム、リン酸塩のようないくつかの減感作剤は、歯を強化すること、および歯のエナメル質に対する過酸化物の潜在的な腐食作用を相殺することを補助することができる。2パート型組成物において、減感作剤を、組成物の約85質量%まで、好ましくは約50質量%まで、より好ましくは約20質量%まで、たとえば約0.001質量%から約10質量%の範囲の量で、一方のパートに含んでもよい。
【0035】
硬化(hardening or curing)挙動は、たとえば、縮合硬化シリコーン化学を使用して完了することができる。水と触媒または開始剤との存在下で、反応性シリコーンポリマーは加水分解を受け、架橋を開始する。これにより、液体ゲル状ホワイトニング材料は、少なくとも部分的に硬化(cured or set)したエラストマー材料(すなわち、エラストマー性固体)に変換される。たとえば、処置材料は、シラノール末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサン、架橋剤、触媒、および処置成分を含む硬化性ポリビニルシロキサン組成物であってもよい。
【0036】
好適なシラノール末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサンコポリマー、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。マルチパート(たとえば、2パート)組成物において、シロキサン材料を、組成物の約20質量%~約95質量%、好ましくは約40質量%~約95質量%、より詳細には約70質量%~約90質量%の範囲の量で、一方のパートに含んでもよい。
【0037】
好適な架橋剤は、たとえばビニル官能性シラン、ヒドリド官能性シラン、アルコキシ、アセトキシ、エステル、エノキシ、またはオキシムシランのような多官能性シラン、および/またはシリケートエステルを含んでもよい。ホワイトニング材料に使用してもよい架橋剤の例は、ビニルイソプロペノキシシラン(たとえば、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルメチルジイソプロペノキシシラン、ならびに、ビニルトリイソプロペノキシポリシロキサンのような、それらの部分加水分解縮合の生成物)、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリオキシムシラン、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。2パート型組成物において、架橋剤を、約50質量%までの量、好ましくは約20質量%までの量、より好ましくは約10質量%までの量、たとえば約3質量%~約15質量%、より詳細には約5質量%~約10質量%の範囲の量で、一方のパートに含んでもよい。
【0038】
好適な触媒または開始剤は、スズ化合物、白金化合物、および有機スズ錯体、白金錯体のような有機金属、過酸化物開始剤、およびチタネートを含む。非限定的な例として、触媒または開始剤は、ジメチルスズジネオデカノエート、スズビス(ネオデカノエート)、スズ(II)オクトエート(スズビス(2-エチルヘキサノエート))、ジ-n-ブチルジラウリルスズ、ジメチルスズヒドロキシ(オレエート)、ジ-n-ブチルスズビス(2-エチルヘキシルマレエート)、ジ-n-ブチルブトキシクロロスズ、ジブチルスズジアセテート(ジ-n-ブチルジアセトキシスズ)、ジ-n-ブチルスズビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジブチルスズジラウレート(ジ-n-ブチルジラウリルスズ)、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、スズ(II)アセテート、ジ-オクチルスズ-ビス、ジ-オクチルスズ-ビス、およびそれらの組み合わせの1種または複数種を含んでもよい。他のシリコーン触媒は、塩化物、アンモニウム、ヨードニウム、パラジウム、または過酸化物を含む。さらに別の触媒は、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、チタン、またはジルコニウムを含んでもよく、それらは、金属含有触媒となるように化合物または錯体として提供されてもよい。このような触媒は、シリコーンを含む湿気硬化性組成物に使用することができる。マルチパート(たとえば、2パート)組成物において、触媒または開始剤を、約0.001質量%~約10質量%の範囲、好ましくは約0.1質量%~約10質量%の範囲、より好ましくは約1質量%~約6質量%の範囲の量で、一方のパートに含んでもよい。触媒の最小濃度は、典型的には約500ppmであり、いくつかの場合には約0.05%~約0.5%の範囲の量が適している。
【0039】
本明細書で開示される組成物は、過酸化物ホワイトニング剤の存在下で効率的な硬化を示し、したがって、ポリマー系に過酸化物化合物を組み込むことに伴う硬化阻害の問題を解決する。好適なホワイトニング剤は、過酸化物化合物および過酸化物複合体を含んでもよい。ホワイトニング材料に使用できるホワイトニング剤の例は、過酸化水素、過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。2パート型組成物において、ホワイトニング剤を、約90質量%までの量で、好ましくは約5質量%~約70質量%の範囲で、より好ましくは約10質量%~約50質量%の範囲で、一方のパートに含んでもよい。
【0040】
処置剤、触媒または開始剤、および反応性成分に加えて、硬化性組成物はキャリア材料も含み、キャリア材料は、処置剤(液体または固体であってよい)の増粘剤または希釈剤として作用し、混合時に処置材料の成分の分散を促進する。いくつかの実施形態において、キャリア材料は、組成物中の硬化性材料が硬化(set or cured)した後も、組成物内で未硬化、流動性または流動可能な状態のままである。したがって、キャリア材料は、硬化性組成物全体にわたる流動性または流動可能な受動ネットワークを形成することができる。キャリア材料は、1種または複数種の水溶性ポリマーまたは粘度調整/増粘剤を含んでもよい。水溶性ポリマーまたは粘度調整/増粘剤は、ポリアクリル酸、ポリ(N-ビニルラクタム)(たとえば、ポリビニルピロリドン(架橋または未架橋))、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ワックス、プロピレングリコール、極性溶媒(たとえば、水)、充填剤(たとえば、ヒュームドシリカまたはヒュームドアルミナ)、セルロース誘導体(たとえば、カルボキシメチルセルロース)、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体、ポリウレタン増粘剤、またはポリアクリル酸およびポリアクリルアミドのポリアクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド(たとえば、POLYOX(商標)樹脂)、ポリビニルカプロラクタム、グリセリン、および/またはポリオキサゾリンコポリマー(たとえば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン))を含むが、それらに限定されるものではない。また、キャリア材料は、このような水溶性ポリマーと過酸化物化合物との複合体であってもよい。2パート型組成物において、キャリア材料を、約90質量%までの量で、好ましくは約50質量%までの量で、より好ましくは約1質量%~約40重量%の範囲で、最も特に好ましくは約2質量%~約25質量%の範囲の量で、一方のパートに含んでもよい。
【0041】
たとえば、処置組成物は、シラノール末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサン、および架橋剤を含む第1パート(パートA)と、触媒または開始剤、処置剤、およびキャリア材料を含む別個の第2パート(パートB)を含む2パート型エラストマー系として形成してもよい。さらに詳細に説明するように、パートAおよびパートB内の成分の配置は、実用的で安定した製品を維持する上で重要な役割を果たすことができる。
【0042】
別の例として、処置組成物は、メタクリレート樹脂を含む第1パート(パートA)と、開始剤、処置剤、およびキャリア材料を含む別個の第2パート(パートB)とを含む2パート型樹脂系として形成してもよい。メタクリレート系が光硬化系である場合、光活性化開始剤を系のパートAまたはパートBに含めることができる。
【0043】
任意選択的に、処置組成物は、充填剤、界面活性剤、緩衝剤、増粘剤、着色剤、香味料、および他の添加剤などの追加の添加剤を含んでもよい。たとえば、キャリア材料および/または充填剤のような粘度調整成分をパートBに添加して、保存および混合を補助してもよい。このようなキャリア材料および/または充填剤は、混合時に流体処置剤が剪断されるのを防ぎ、均一に混合された組成物を製造することを可能にする。
【0044】
2つの成分(パートAおよびパートB)は、それらを混合して硬化性処置組成物を形成するまで別々に貯蔵され、硬化性処置組成物が完全に硬化する前に、当該組成物を歯および/または他の口腔組織に適用してもよい。非限定的な例として、処置組成物を、二重バレルシリンジまたは同軸シリンジなどの複数(たとえば、2つ)のチャンバを含む貯蔵および送達システムに装填してもよい。いくつかの実施形態において、それら成分を混合チップを通して絞り出し、それらを混合して、実質的に均質な混合物を生成する。当該混合物を口腔組織に直接適用してもよいし、歯科用ホワイトニングトレーもしくは可撓性バリア材料(歯科用処置ストリップなど)などの送達装置に適用して、口腔組織への適用を容易にしてもよい。硬化性組成物を有する送達装置を歯および/または他の口腔組織上に配置し、組成物を硬化(cure and harden)させる。あるいはまた、複数のパートを混合し、手動で、または混合および/もしくは分注の他の既知の方法を使用して、歯または送達器具上に堆積させることもできる。
【0045】
処置組成物の化学がエラストマー材料のような硬化性材料を含むため、組成物は、それが適用される歯および/または口腔組織の反転像を有して硬化する。すなわち、処置組成物は、慣用の歯科用シリコーン印象材と同様の方法で、硬化過程で使用者の歯および歯列弓の固有の形状にカスタマイズされる。硬化性挙動により、慣用のホワイトニングおよび/または減感作ゲルの場合のように歯および口腔組織上に粘着性ゲルの残留物または残渣を残すことなしに、硬化したまたは部分的に硬化した処置材料を清潔かつ容易に(多くの場合1個または数個の塊として)除去することができる。加えて、所望される場合、硬化処理中に硬化性処置材料に形成された印象内に歯列が静止するように、単に適用部位の歯の上に再位置決めすることによって、硬化した処置材料を再使用できる。
【0046】
キャリア材料は、粘度調整添加剤(たとえば、増粘剤)、バインダー、および/または系内の成分の分散剤として作用して、成分間の均一な混合を促進し、使いやすさと一貫性を向上させてもよい。2成分系では、処置剤および縮合触媒の両方を含有する成分の流動性が高すぎて、他方の成分と容易に混合できず、均質かつ機能的な硬化性組成物が作製されないおそれがある。混合前に成分をキャリア材料に組み込むことで、最終的に混合された製品の均質性および一貫性が著しく改善される可能性がある。
【0047】
処置組成物は、歯科用ホワイトニング剤(たとえば、過酸化物ホワイトニング剤)および/または減感作剤(たとえば、硝酸カリウム)のような処置剤を含有し、これらは、組み合わされるシリコーンおよびポリマー(たとえば、ポリアクリル酸)系から徐放される。過酸化物ホワイトニング剤の徐放は、所定の時間に歯および/または軟質口腔組織に暴露されるホワイトニング剤の量および/または濃度を減少させることにより、慣用のホワイトニングにより引き起こされる可能性のある知覚過敏を減少させるだけでなく、使用者が硬化した処置組成物を歯から一時的に除去し、所望により、その後に再装着して同じ組成物を使用して処置を再開することを可能にする。
【0048】
特定の理論に束縛されるものではないが、硬化前のキャリア材料の組み込みは、キャリア材料を含まない純粋なシリコーン系と比較して、架橋の程度を低下させる方法でシリコーン反応を阻害すると考えられる。キャリア材料を含まないシリコーンのみを含む比較サンプルでは、活性剤(たとえば、過酸化物または減感作剤)の移動が減少または排除される。このように、本発明の組成物は、純粋なシリコーン系では観察されないような方法で組成物から過酸化物および減感作材料が物理的により容易に移動することを可能とし、効果的な処置を可能にする。
【0049】
組成物は、1種または複数の充填剤をさらに含んでもよい。充填剤は、シリカ材料(たとえば、ヒュームドシリカ)、アルミナ材料(たとえば、ヒュームドアルミナ)、石英、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、モンモリロナイト、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウムナトリウム、金属酸化物粉末(たとえば、アルミニウムもしくは亜鉛の酸化物またはそれらの混合酸化物)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、珪藻土、および/またはガラス材料(たとえば、シラン化ガラス)を含むが、それらに限定されない。ヒュームドシリカまたはアルミナ粒子もしくは粉末のような疎水性充填剤の使用は、硬化性ポリマー系へのホワイトニング剤の組み込みをさらに容易にすることができる。充填剤は、約85質量%まで、好ましくは約50質量%まで、最も好ましくは約20質量%まで、たとえば約0.5質量%から約15質量%、より詳細には約3質量%から約10質量%の範囲の量で組成物中に含んでもよい。
【0050】
組成物は、他の歯科用処置剤、添加剤、および補助剤を含んでもよい。それらの例は、可塑剤および保湿剤(たとえば、グリセリンおよびソルビトール)、安定化剤(たとえば、EDTA、アクリレートコポリマー、およびポリビニルピロリドン)、中和剤(たとえば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、およびトリエタノールアミン)、緩衝剤(たとえば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびクエン酸)、溶媒(たとえば、水)、界面活性剤(たとえば、ポリエチレングリコール)、増粘剤(たとえばポリアクリレート増粘剤、キサンタンガム、ジェランガム、グアー粉、アルギネート、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ベントナイト、ウェランガム、ローカストビーン粉、寒天、トラガント、アラビアガム、ペクチン、ポリオース、デンプン、デキストリン、ゼラチン、およびカゼイン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(ポリオキサマー)、およびラウリル硫酸ナトリウム)、保存料(たとえば、リン酸二カリウムおよび安息香酸ナトリウム)、その他の医薬品、香料、着色料、甘味料(たとえば、ソルビトール、キシリトール、およびスクラロース)などを含むが、それらに限定されるものではない。
【0051】
いくつかの実施形態において、ホワイトニング剤を、予備混合ホワイトニングゲル配合物として本発明のホワイトニング組成物に組み込んでもよい。たとえば、予備混合ゲル組成物を触媒または開始剤および任意の添加剤と組み合わせて、2パート型ホワイトニング組成物の触媒含有成分を形成してもよい。たとえば、予備混合ホワイトニングゲル配合物は、ホワイトニング剤およびキャリア材料(たとえば、水溶性ポリマー)、ならびに任意選択的に、1種または複数種の減感作剤および/または再石灰化剤、極性溶媒(たとえば、水)、緩衝剤、湿潤剤、甘味料、および/または香料を含んでもよい。非限定的な例として、配合物は、過酸化水素および/または過酸化カルバミド、ポリアクリル酸、グリセリン、水、シリカ、ソルビトール、キシリトール、香料、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(たとえば、ポリオキサマー)、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、スクラロース、キサンタンガム、および着色料の混合物を含んでもよい。別の非限定的な例として、予備混合配合物は、水素ポリビニルピロリドン、高分子量ポリエチレングリコール(たとえば、PEG-8およびPEG-6)、水、アクリレートコポリマー、水酸化ナトリウム、およびサッカリンナトリウムを含んでもよい。
【0052】
有利なことには、ホワイトニング剤は、ひとたび硬化した凝集性ポリマー塊内に分散され、所望の部位(たとえば、ホワイトニングのための歯)への処置剤の安定かつ持続的な供給を提供する。所望の時間後に硬化した歯科用処置組成物を除去するには、使用者は単に付着した組成物の角または部分を把持して歯から引き剥がす。一般的に、組成物は、単一の塊として引き剥がされるので、除去が非常に容易である。
【0053】
加えて、有利なことには、マルチパート硬化性組成物は、最初の接触および/または混合と、組み合わされた組成物が硬化を完了する時点との間に、遅延時間を示してもよい。そのような遅延時間は、流動可能で操作可能な状態のままで組成物を歯の上に配置して、使用者の歯および歯列弓に適合できるような時間を使用者に与える。組成物をトレー内またはストリップ上に提供する場合、完全に硬化する前に歯を塊に押圧することができる。たとえば、組成物の硬化時間の長さは、10秒から所望の用途に応じた時間までの範囲で変化させることができ、この時間を約10分から約24時間の範囲としてもよい。時間は予め決定されていてもよいし、たとえば、約30分~約10時間、約1時間~約5時間、または約2時間~約4時間の範囲であってもよい。
【0054】
図1は、歯科用ホワイトニングシステム100の実施形態を模式的に示す透視図である。歯科用ホワイトニングシステム100は、上部歯列弓または下部歯列弓(不図示)の少なくとも一部に適合するように構成された歯科処置トレー104を使用して送達される硬化性(hardening or curable)歯科用ホワイトニング組成物102を含む。図1図6に示される実施形態は歯科用トレーを使用する送達を例示する。しかしながら、同様に、歯科用組成物または口腔用組成物を送達するための任意の方法または装置を本発明にしたがって使用してもよいことを理解されたい。たとえば、送達装置は、慣用の歯科用ホワイトニングストリップにおいて利用されるような材料のストリップを含んでもよい。加えて、以下の実施形態で言及される材料102は、追加的または代替的に、1種または複数種の減感作剤を含む減感作組成物であってもよい。あるいはまた、トレーまたはストリップを用いることなしに、組成物を歯または他の口腔組織に直接適用することができる。
【0055】
任意選択的に、歯科処置トレー104は、ハンドル108を有する外骨格支持トレー106を含む。支持トレー106は、人間の歯列弓の形状に近似した湾曲形状を有してもよい。ライナー110の形態で示されるバリア材料が、外骨格支持トレー106上に配置される。いくつかの実施形態では、ライナー110は、支持トレー106によって提供される形状を有する可撓性材料または薄膜状(flimsy)材料であってもよい。たとえば、ライナー110は、約2mm未満、たとえば約0.3mm~約1mmの間の厚さを有して、支持トレー106が歯および口腔組織に適合することを可能にしてもよい。他の実施形態において、ライナー110は、支持トレー106内に適合するアーチ形状を有してもよい。支持トレー106(存在する場合)は、たとえば印象層(不図示)が形成された後にハンドル108を使用して、ライナー110から取り外されるように構成される。
【0056】
ライナー110のような送達装置を、ポリマー材料、熱可塑性エラストマー、ワックス、またはそれらの組み合わせから形成してもよい。たとえば、ライナー110は、水、唾液、および/またはホワイトニング材料102(たとえば、過酸化物活性剤)中の1種または複数種の材料に対して、実質的に不透過性である材料であってもよい。非限定的な例として、ライナー110をワックス系組成物から形成してもよく、ワックス系組成物は、1種または複数種のワックスと1種または複数種のポリマー(熱可塑性エラストマーポリマーのようなもの)との組み合わせを含む。好適なワックスは、微結晶性ワックス、パラフィンワックス、および/または中間ワックスなどの石油系ワックスを含むが、それらに限定されない。適切なポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性エラストマー、およびそれらの混合物、たとえば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性ポリオレフィン、プロピレン系エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、メタクリレート、アクリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ネオプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマー(たとえば、エチレン系、プロピレン系、ブチレン系エラストマーのようなオレフィン系エラストマー)を含むが、それらに限定されない。
【0057】
ライナー110は、トラフまたはチャネル114を有し、トラフまたはチャネル114は、ホワイトニング組成物102などの口腔処置組成物を受容するように構成された内側の印象受容面112を画定する。ホワイトニング組成物102を印象受容面112上に配置して、ホワイトニング組成物102が適用部位の歯に直接接触することを可能にしてもよい。図1に示すように、ホワイトニング(たとえば、美容的)が望まれる歯の領域を覆うのに十分な量、および/またはホワイトニング組成物102が硬化 (harden and cure)する際に歯または歯列の鏡像または印象を得るのに十分な量の粒状物または柱状物として、ホワイトニング組成物102を分注してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、ホワイトニング組成物102は、2パート型のシリコーンベースのホワイトニング組成物であり、第1パートは、縮合触媒とともにホワイトニング剤(単数または複数)を含み、第2パート(第1パートとは別個である)は、残余の縮合化学成分を含む。いくつかの実施形態において、歯科用ホワイトニング組成物102は、以下のような2つのパートを有する硬化性ポリビニルシロキサン系であってもよい。
パートA:
シラノール末端シロキサン、多官能性シラン(たとえば、シリケートエステル)、任意選択的添加剤(たとえば、充填剤、界面活性剤など)。
パートB:
縮合触媒(たとえば、有機スズ化合物)、キャリア材料(たとえば、ポリアクリル酸)、ホワイトニング剤(たとえば、過酸化水素、過酸化カルバミド)および/または減感作剤、キャリア材料(たとえば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドンなど)、および任意選択的添加剤(たとえば、充填剤、界面活性剤など)。
【0059】
このような2パート系において、第1パート(たとえば、パートA)と第2パート(たとえば、パートB)とを混合して、硬化性ホワイトニング組成物102を形成する。
【0060】
パートAは、約0質量%~約100質量%、より詳細には約25質量%~約90質量%の範囲の量のシロキサン材料と、約0.5質量%~約40質量%、より詳細には約2質量%~約25質量%の範囲の量の架橋剤とを含んでもよい。シロキサンおよび架橋剤材料の濃度を調整して、硬化(set)した材料の粘度、硬化(set)挙動、および硬度などの所望の材料特性を達成することができる。パートBは、約0.001質量%~約20質量%、より詳細には約0.05質量%~約10質量%の範囲の量の触媒と、約1質量%~約70質量%、より詳細には約10質量%~約60質量%の範囲の量のホワイトニング剤(および/または減感作剤)と、約1質量%~約100質量%、より詳細には約1質量%~約25質量%の範囲の量のキャリア材料とを含んでもよい。
【0061】
パートAまたはパートBに含まれてもよい任意選択的添加剤は、本明細書で前述したような、担体/充填剤、歯科用処置剤、添加剤、および補助剤を含む。たとえば、添加剤は、キャリア材料、充填剤、界面活性剤、および/または他の増粘剤、ならびに緩衝剤、着色剤、香料、および他の添加剤を含んでもよい。たとえば、充填剤は、約2.5質量%~約5質量%の範囲の量で、パートAおよび/またはパートBの一方または両方に含まれてもよく、一方、キャリア材料は、約5質量%~約20質量%の範囲の量で含まれてもよい。
【0062】
たとえば、図2に示すように、パートA(102a)およびパートB(102b)を二重バレルシリンジ200の別個のバレル202aおよび202bに別々に装填し、歯科用トレー104に分注される前に混合チップ204を通して絞り出して、それらを混合してもよい。バレル202aおよび202bの区画からシリンジ200の混合チップ204を通してパートAおよびパートBを絞り出す際に、パートAおよびパートBの成分が一緒に混合されて、実質的に均質なホワイトニング材料102が生成される。ホワイトニング組成物102は、所望されるようにトレー104に入れることができる。たとえば、図示のようにトレー104の内面112に、図1に示すように紐状またはビーズ状の構造として、またはトレー104の少なくとも一部を実質的に満たすように分注してもよい。
【0063】
別個のパートであるパートAおよびパートBは、所望の材料特性に応じて、種々の比率で混合することができる。たとえば、1:1、1:2、1:3、3:1、または2:1のような、1:10~10:1の範囲の比率で、パートAおよびパートBを組み合わせてもよい。
【0064】
ひとたび混合されたならば、トレー104に配置されたホワイトニング組成物102は硬化(harden and cure)を開始する。たとえば、ポリビニルシロキサン系では、水分およびパートB由来の触媒の存在下で、パートA由来の反応性シリコーン材料が加水分解を受けてシロキサン架橋の形成を開始する。硬化反応は、使用者が歯をホワイトニング材料102に押圧するのを妨げるほど速くはない。たとえば、ホワイトニング組成物102は、約10秒から約1時間の範囲の時間にわたって、歯を接触させるかまたはその中に沈めることができる流動性または半流動性の状態に留まってもよい。
【0065】
図3に示すように、分注されたホワイトニング組成物102を収容した歯科用トレー104は、使用者の口腔内で歯の上に載置される。未硬化または部分的に未硬化のホワイトニング組成物102と歯の少なくとも一部を接触させるために、トレー104の下面を歯に向けて押圧することなどにより、ホワイトニング組成物102を歯の表面と直接接触させてもよい。存在する場合は、外骨格支持トレー(不図示)を内側トレーまたはライナー110から取り外してもよい。ホワイトニング組成物102を収容したライナー110は、ホワイトニング組成物102の上に配置されたままであるか、またはホワイトニング組成物102に連結されたままであり、ホワイトニング組成物102に対する支持を提供し、ホワイトニング組成物102が周囲の口腔組織と接触するのを防止する。図3は、上の歯の上に配置された非カスタム品の歯科用トレー104を示す。しかしながら、上の歯にカスタマイズされた輪郭またはバリア材料を有するカスタム品の歯科用トレーを代替的に採用してもよいこと、およびこの方法が下の歯にも同様に使用してもよいことを理解されたい。歯科用トレー104は、その下にあるホワイトニング組成物102および歯を説明する目的で、透明であるように示されている。
【0066】
歯が接触するように歯列弓の上に歯科用トレー104を配置することにより、ホワイトニング組成物102が流動可能な状態にある間に、未硬化または部分的に硬化したホワイトニング組成物102が、歯の形状および輪郭に適合する。歯科用トレー100内のホワイトニング組成物102は、歯列弓および歯の上に配置された後も硬化を継続する。ホワイトニング組成物102が硬化を受ける際に、ホワイトニング組成物102中のシリコーンベースの材料の性質により、使用者の歯および歯列弓の部分の反転像が捕捉される。したがって、歯科用ホワイトニング組成物102は、ホワイトニング組成物102に接触させられた歯にカスタマイズされる。ホワイトニング組成物102の硬化が継続する際に、ホワイトニング剤はホワイトニング組成物102から持続的に歯に徐放される。
【0067】
図4に示すように、歯科処置システム400は、使用者の歯および歯列弓に対応する形状および輪郭を有するカスタム品の歯科用トレー404を使用してもよい。図1図3に関して説明したように、ホワイトニング組成物102は、歯の上に配置する前に、カスタム品の歯科用トレー404内で混合および配置されてもよい。
【0068】
図5Aおよび図5Bは、歯500上に配置することによって成形された、歯科用トレー104内の歯科用ホワイトニング組成物102を含む歯科用ホワイトニングシステム100の断面図を示す。たとえば、硬化時に、ホワイトニング組成物102は、歯500に適合した凝集性エラストマー材料を形成し、歯500に付着して接触状態に留まるネットワークまたは膜116として作用し得る。硬化した材料の膜116は、もはや流動性または流動可能な状態にない単一体または凝集体として挙動してもよい。図5Aおよび図5Bに示すように、膜116は、歯500の咬合面502および切歯面504の上のような、歯500の形状に重畳および適合する。
【0069】
ホワイトニング組成物102は歯500の表面に適合および接触して、ホワイトニング組成物102全体に分散されたホワイトニング剤が拡散して表面502および504に直接接触し、持続的なホワイトニング(たとえば、美容的ホワイトニング)を提供することを可能にする。ホワイトニング組成物102は、約0.5mm~約5mm、典型的には1mm~2mmの範囲の厚さを有してもよく、その厚さは変化してもよい。図5Aおよび図5Bに示すように、ホワイトニング組成物102は歯500の外側表面502および504を実質的に包囲してもよく、外側表面502および504に少なくとも部分的に接触してもよい。ひとたび硬化したならば、硬化したホワイトニング組成物102は、歯500に付着したその位置を維持する。トレー104は、硬化プロセス中およびプロセス後に、ホワイトニング組成物102に対する追加の支持を提供し、酸素、ホワイトニング剤、および/または減感作剤のような、ホワイトニング組成物102から拡散する化合物にさらされないように、周囲の組織(不図示)を保護する。
【0070】
ホワイトニング組成物102がエラストマー材料のネットワークまたは膜116に硬化する際に、ホワイトニング組成物102を伴うトレー104は、歯500の周囲に密着する。硬化前において、歯500への密着は、トレー104から使用者の歯肉および口腔組織へのホワイトニング組成物102(およびその中に含まれるホワイトニング剤)の漏出または絞り出しを低減させ、それに起因してホワイトニング剤が軟質組織と直接接触することによる潜在的な刺激を引き起こす危険性を低減させる。硬化後において、硬化したホワイトニング組成物102のネットワークまたは膜116は実質的に不動であり、トレー104の有無にかかわらず、所定の位置において歯に付着したままとなる。したがって、ホワイトニング組成物102は、処置中に歯科用トレーからの漏出および滲出の可能性のある慣用の非硬化性ホワイトニングゲルによって引き起こされる可能性のある刺激または損傷の危険性を低減または排除する。その位置を維持して、位置ずれした処置剤によって引き起こされる刺激の危険性を低減することによって、ホワイトニング組成物102は、慣用の歯科用ホワイトニングゲルと比較して、歯との接触の増加および装着時間の延長を提供する。
【0071】
ホワイトニング組成物102が縮合硬化を受ける際に、流動可能および/または流動性のゲル状状態と、固体および/またはゴム状の状態との間の遷移が起こる。流動性状態において、ホワイトニング組成物102は、歯および歯列弓の接触面の空間、空隙および輪郭に流れ込むことが可能であり、硬化中にそれら構造の反転像の形成を可能にする。ひとたび十分に硬化したならば、ホワイトニング組成物102は流動性ゲル状態から、ゴム状状態に遷移する。ゴム状状態は、歯および歯列弓構造を鏡面化および適合し、膜116を形成する、固結した単一体のシリコーンエラストマー材料である。以下にさらに詳細に説明するように、硬化した膜116は、架橋ポリマー材料全体にわたって未架橋材料の領域を有するマトリックスを含んでもよい。たとえば、その中に分散されたホワイトニング剤および他の成分を有するキャリア材料は、硬化したポリビニルシロキサン材料内に領域を形成してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、ホワイトニング組成物102の硬化時間の長さは、30秒から処置時間の長さまでの範囲であり、処置時間の所定の長さは、終夜(たとえば、10時間)であってもよい。いくつかの実施形態において、ホワイトニング材料102の硬化時間の長さは、1分~1時間、より詳細には3分~45分、さらに詳細には5分~30分の範囲で変動する。いくつかの実施形態において、ホワイトニング組成物102は、組成物から所望の量のホワイトニング剤が徐放されるまで硬化プロセスが完了しないように構成されてもよい。この実施形態において、使用者は、ホワイトニング組成物102が一体化されたネットワークまたは固体に硬化し終わった(たとえば、硬化状態に達した、または歯から容易に取り外し可能である)ときに、ホワイトニング処置が終了したことを知るであろう。いくつかの実施形態において、ホワイトニング組成物102の硬化(set)時間(すなわち、ホワイトニング組成物102が硬化(cure and harden)するのにかかる時間)は、ホワイトニング組成物102中に存在するホワイトニング剤(たとえば、過酸化物)および/または縮合触媒の少なくとも一方の濃度の関数である。
【0073】
任意選択的に、ひとたびホワイトニング組成物102が十分に硬化したならば、トレー104を取り外して、歯の上にホワイトニング組成物102だけを残すことができる。しかしながら、歯に接する歯科用ホワイトニング剤の維持を補助するため、化合物がホワイトニング組成物102から使用者の口内に拡散するのを防止するため、およびホワイトニング組成物102の除去および再配置を容易にするために、トレー104を所定の位置に維持することが望ましい可能性がある。
【0074】
図6を参照すると、ひとたびホワイトニング組成物102が十分に硬化したならば、歯(不図示)から容易に除去することができる。硬化したホワイトニング組成物102は、三次元マトリックスを含み、その中にホワイトニング剤および任意選択的な添加剤が分散し、そこからホワイトニング剤および任意選択的な添加剤が徐々に拡散する。いくつかの実施形態において、マトリックスは、たとえば、その中に分散された他の成分(たとえば、ホワイトニング剤、添加剤、キャリア材料など)を有するシリコーンマトリックスを含んでもよいポリマーマトリックスである。たとえば、ホワイトニング剤は、過酸化物系ホワイトニング剤であってよく、たとえば約6%と約60%の間、約10%と約50%の間、または約20%と約40%の間のような、約1%と約90%の間の濃度でホワイトニング組成物102中に存在してよい。いくつかの実施形態において、ホワイトニング剤は、過酸化水素および過酸化カルバミドの混合物であり、ホワイトニング組成物102中に、6%と50%との間の範囲の合計組み合わせ濃度で存在する。ホワイトニング剤の徐放は、慣用のホワイトニングゲルと比較して、高濃度のホワイトニング剤を組み込むことを可能にする。このような濃度の増加は、より少ない処置でより高いホワイトニング効果を可能にする。特に濃度を増加させた場合、硬化したホワイトニング組成物102からの過酸化物および分子状酸素の徐放は、慣用の過酸化物による歯のホワイトニングに付随する歯および組織の過敏性を実質的に低減または除去することを可能にする。また、エラストマーホワイトニング材料の1回または複数回にわたる取り外しおよび再装着を含む、延長された処置時間を提供する。
【0075】
硬化プロセスの結果としてマトリックスが形成される。ホワイトニング組成物102中のキャリア材料(たとえば、ポリアクリル酸)は、その成分の均一な混合を促進して、均一な重合、および均質な硬化性組成物を促進し、それによってマトリックス内の処置剤(たとえば、ホワイトニング剤、減感作剤または再石灰化剤)の均一な分布を促進する。キャリア材料は、シリコーンポリマーと比較して増大した親水性を有してもよく、それによってホワイトニング組成物102の硬化したマトリックスの親水性を増大させ、材料の硬化にともなって作成される印象の精度を向上させることができる。さらに、マトリックスは、より疎水性の高い架橋したポリビニルシロキサン材料内に、より親水性の高い未架橋のキャリア材料の領域(その中に配置されたホワイトニング材料を有する)を含んでもよい。ポリアクリル酸のようなキャリア材料が存在しない場合、硬化性ポリビニルシロキサン材料から配合された2パート型ホワイトニング組成物は、硬化したポリビニルシロキサンマトリックス内でのホワイトニング剤が不動化により、ホワイトニング剤を効率的に放出しない可能性があることが観察されている。これは、過酸化カルバミドのような固体ホワイトニング剤の場合に特に当てはまる。
【0076】
硬化したマトリックスにおいて、キャリア材料のより高い親水性の性質は、水(たとえば、唾液)の存在下で、マトリックスから歯上へのホワイトニング剤の拡散を促進することができる。したがって、ホワイトニング組成物102のホワイトニング剤は、経時的に徐放される。この挙動は、漂白剤が過酸化水素であるか、過酸化カルバミドであるか、またはこれらの組み合わせであるかにかかわらず存在してもよい。ホワイトニング組成物102が歯に接して硬化するにつれて、ホワイトニング剤および/または酸素はマトリックスからゆっくりと拡散して歯に接触し、ホワイトニング(たとえば、美容的ホワイトニング)を促進する。
【0077】
硬化されたホワイトニング組成物102を一時的に歯から除去して、後に処置組成物を廃棄することなく再配置してもよい。マトリックスによる歯科用漂白剤の徐放は、硬化したホワイトニング材料102中に高濃度の過酸化物が存在するにもかかわらず、マトリックスが存在しない場合に高濃度の過酸化物が迅速に放出されることによって生じる可能性がある過敏症のリスクを低減する。この拡散は、ホワイトニング組成物102の硬化が完了した後でさえも継続され、硬化したホワイトニング組成物102のマトリックスから漂白剤のかなりの部分が拡散されるまで継続する。徐放により、ホワイトニング材料102の有効性が低下し始めるまでに、使用者はホワイトニング組成物102をより長期間にわたって使用できる。いくつかの実施形態において、ホワイトニング組成物102は、エラストマー性固体に硬化するように構成される。硬化した組成物102は、口腔内の他の部分に拡散または移動することなく、あるいは時期尚早に吐出されることなく、処置が望まれる場所に留まる。
【0078】
ホワイトニング組成物102のエラストマー性挙動は、歯または他の口腔組織(単数または複数)に相当量の組成物または残留物を残すことなしに、硬化したホワイトニング組成物102を除去することを可能にする。驚くべきことには、ホワイトニング組成物102は、処置中に歯に良好に接着するが、ポリマー、ワックス、またはそれらの組み合わせから形成されたもののような慣用のトレーまたはバリア材料に優先的に接着することが見出された。ホワイトニング組成物102は、カスタム品または非カスタム品の歯科用トレーに優先的に接着する。したがって、歯科用トレー104のようなトレーまたはバリア材料の使用は、歯からの除去の間、ホワイトニング組成物102が付着した状態に留める支持材料を提供することによって、ホワイトニング組成物102の除去を容易にする。歯および歯列弓の印象を含む硬化したホワイトニング組成物102を、使用者によって元の適用部位に再適用してもよい。このようなホワイトニング組成物102の再使用または再適用は、単に硬化したホワイトニング組成物102を除去し、後で歯の上に再配置することによって、使用者が、ホワイトニング処置(たとえば、美容的ホワイトニング)を一時停止し、中断後にそれを継続することを可能にする。
【0079】
図7に示すように、硬化性組成物702が流動可能な状態にある間に、本明細書に記載の硬化性組成物702を裏打ち材またはストリップ704に適用することによって、口腔送達システム700を形成してもよい。裏打ち材704は、口腔組織に適用できるように硬化性材料を担持するのに適した任意の材料から形成してもよい。たとえば、裏打ち材704は、水、唾液、および/または硬化性組成物702中の1種または複数種の材料(たとえば、機能剤または活性成分)に対して実質的に不透過性である材料であってもよい。裏打ち材704に好適な材料の例は、図1に図示されたライナー110に関して記載されたものを含む。ライナー704を実質的に可撓性として、ライナーおよび組成物が塗布および硬化中に口腔組織に適合できるようにしてもよい。たとえば、裏打ち材704は、約0.3mmと約1mmとの間のような、約2mm未満の厚さを有してもよい。硬化性組成物702は、その中に粘性担体および機能剤を有する硬化(curable or hardening)系を含んでもよい。図7に示すように、硬化性組成物702は、一方のパートに触媒を含み、他方のパートに反応性ポリマーを含む2パート型組成物である。硬化性組成物702は、図2に関して記載したような二重バレルシリンジ706を使用することのような、任意の方法を使用して混合し、バリア材料704上に配置してもよい。ひとたび分注されたならば、硬化性組成物702を、流動性または半流動性の状態のまま口腔組織に適用してもよい。裏打ち材704は、硬化性組成物の支持体として機能し、硬化性組成物702を特定の口腔組織から隔離すると同時に、機能剤(単数または複数)の周囲の口腔組織への漏出を防止することができる。
【0080】
図8A図8Cに示すように、図7に関して説明した口腔送達システム700のような、裏打ち材804上に配置された硬化性組成物802を含む口腔送達システム800を、口腔組織808に取り外し可能に付着させてもよい。図8Aを参照すると、硬化性材料802は、その中の材料が完全には硬化していない流動性の状態にあってもよい。
【0081】
裏打ち材804は、口腔組織808の所望の部位へのシステム800の配置を容易にしてもよい。ひとたび配置されたならば、任意選択的に、硬化性材料802が少なくとも部分的に硬化するのに十分な時間にわたって、システム800を所定位置に保持してもよい。図8Bに示すように、硬化または部分的に硬化した組成物802は、口腔組織808に対する付着性を改善して、追加の支持なしに組成物802(および任意選択的な裏打ち材804)が口腔組織上に留まることができるようにしてもよい。
【0082】
図8Cに示すように、硬化性組成物802がまだ少なくとも部分的に流動可能な状態である時に、口腔送達システム800を口腔組織808の任意の領域(複数可)に配置して、ひとたび少なくとも部分的に硬化がなされた際に、硬化した組成物802を、容易かつ一般的に一体として除去してもよい。硬化した組成物802は、その中に口腔組織808の印象または刻印810を形成してもよい。さらに、システム800を取り外し、口腔組織の同じ部位または異なる部位上に再配置することにより、単一の組成物802を使用して、送達の遅延、断続的実施、および/または異なる部位での実施を可能にしてもよい。
【0083】
図9は、送達シリンジ906を用いて、歯肉908に対する本明細書に記載の硬化性組成物902の直接的な口腔送達適用のための方法の別の例を示す。適用後、組成物902は、口腔環境において形状および完全性を維持することができる状態に硬化し、使用者によって除去されるまで、歯肉906のような口腔組織に付着した状態に留まる。硬化した状態において、組成物902は、粘性または流動性の状態のままである組成物と比較して、改善された快適さ、容易さ、除去、および再付着を提供する。
【0084】
図10を参照すると、本明細書に開示されている口腔送達用組成物は、頬、頬組織、歯肉、唇、口蓋、歯などの口腔組織の任意の部位への送達に適している。
【0085】
本明細書の実施例は、混合送達シリンジを使用する2パート型硬化性組成物の送達を例示する。しかしながら、本明細書に開示される硬化性組成物は1パート型であってもよく、適切な手段を使用して混合および送達されてもよいことを理解されたい。さらに、本明細書に開示される機能性材料を含む硬化性組成物は、単に裏打ち材または硬化性材料自体を剥離することによって口腔組織から容易に除去することができ、後に再適用することができる。
【0086】
非限定的な例示として、図10は、任意の所望の機能性組成物を送達するために本発明の硬化性組成物を適用してもよい口腔組織の領域を示す。前述のように、口腔トレーまたはストリップのような任意の送達媒体を使用して、硬化性組成物を適用してもよい。
【0087】
本開示の範囲内の開示された歯科用ホワイトニング材料のパラメータをより明確に説明するために、以下の実施例を提供する。以下の実施例は例示的なものであり、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例
【0088】
(実施例1)
比較目的のために、第1A表および第1B表に示す成分を組み合わせて、キャリア材料を含まないホワイトニング剤を調製した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
(加工順序)
1. ジメチルスズドデカノエートおよびシラノール末端ポリジメチルシロキサンを組み合わせる.
2. ヒュームドシリカを添加する。
3. 50%過酸化水素水溶液を添加する。
4. ビニルトリイソプロペノキシシランを添加する。
【0092】
(結果)
十分な硬化時間の後、配合物Aおよび配合物B内の材料の物性および分布を観察した。配合物Aは適切な硬化状態まで硬化したが、過酸化水素が材料に十分に取り込まれなかったため、硬化した材料が湿り気を帯びていることが観察された。配合物Bは硬化状態まで硬化したが、過酸化カルバミドが材料全体に均一に分散または取り込まれていないことが観察された。このように、キャリア材料(たとえば、親水性ポリマー)がない場合には、液体または固体の活性剤/ホワイトニング剤(すなわち、過酸化水素水溶液および過酸化カルバミド)は、ポリビニルシロキサン系などの硬化性ポリマー系に容易に取り込まれないことが実証された。
【0093】
(実施例2)
機能性シラン流体(たとえば、シリケートエステル)と縮合触媒(たとえば、スズ系化合物)との相溶性を調べる研究を行った。シラン流体およびスズ系触媒の混合物を含有するサンプルゲルを調製し、それらの直接的な相溶性を測定した。触媒の濃度は1質量%から20質量%の範囲に含まれ、シランの濃度は80質量%から99質量%の範囲であった。混合後、サンプルゲルを室温(25℃)および40℃に配置した。
【0094】
96時間以内に、高濃度の触媒を含み、40℃に配置されたサンプルの変色が観察された。高濃度の触媒を有する2つのサンプルは96時間以内に重合した。残りのサンプルは、経時的に変色および重合を続けた。
【0095】
触媒濃度が高いサンプルゲルは、より速やかに硬化することが観察された。触媒濃度が高ければ高いほど、時期尚早な硬化が速やかであった。このように、組成物の硬化時間は縮合触媒の濃度の関数であり得ることが実証された。
【0096】
重合性材料(たとえば、官能性シランまたはシロキサン)および縮合触媒の両方を含む組成物は、経時的に自己触媒反応を起こし、したがって、室温および40℃の両方で不安定であることが観察された。シラン材料またはシロキサン材料のような重合性材料と触媒を一緒に保存すると、時期尚早な硬化が起こり、商業的実用性が損なわれると結論づけられた。本発明にしたがって重合性材料と触媒を別個の部分に分離することにより、これら2つの成分を含む組成物の安定性が実質的に改善され、商業的実用性を有する組成物が得られる。
【0097】
(実施例3)
第3表にしたがって実験配合物を作成して、過酸化物ホワイトニング剤を配合した比較2パート型ゲルシステムを再現した。
【0098】
【表3】
【0099】
コンポーネントAおよびコンポーネントBの成分を組み合わせて、比較ゲル系の2つのパートを形成し、2つのパートを経時的に観察した。コンポーネントAにおいて、確立された製造方法で成分を混合した直後に、ポリジメチルシロキサンと、水または水系溶液(たとえば、過酸化水素)とは混合物から分離した。コンポーネントBにおいて、シリケートエステルと縮合触媒との同一混合物への配置は、水分の存在下で時期尚早な硬化を発生させた。この時期尚早な硬化挙動は、周囲の水分または環境湿度と同程度に少量である水源の存在下で観察された。実験処方を有する2パート型ホワイトニングシステムは商業的に実用的ではないと結論づけられた。具体的には、硬化性ポリマー(たとえば、ポリジメチルシロキサン)およびホワイトニング剤の混合物を含む配合物は、キャリア材料の非存在下ではホワイトニング剤が混合物から分離して、安定でないことが実証された。また、架橋剤(たとえば、シリケートエステル)および触媒の混合物を含む配合物は、時期尚早な硬化のために安定でないことが実証された。このように、実験配合物のコンポーネントAおよびコンポーネントBの両方は、別個の理由により商業的に実用的な結果を得ることができなかった。本発明の硬化性組成物は、混合物から分離しやすい材料(たとえば、ホワイトニング剤)のためのキャリア材料を提供し、使用するまで触媒および重合性材料(たとえば、架橋剤)を別個の部分に隔離することによって、実証された安定性の問題を解決する。
【0100】
(実施例4)
図11A図11Cは、例示的な2成分系歯科用ホワイトニング材料の硬化挙動および実質的に均一な混合の試験を示す。開示された方法にしたがって、コンポーネントAおよびコンポーネントBのそれぞれを調製した。コンポーネントAおよびコンポーネントBの成分を第4表に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
図11A図11Cに示すように、2パート型歯科用ホワイトニング材の個々のコンポーネントを、2成分の混合物に対して別々に試験した。混合物を混合チップを通して絞り出し、図示するように、実質的に均質な方法で2つのパートを組み合わせた。図11Bに示すように、硬化プロセスの開始直後のため、個々のコンポーネントおよび混合物は依然として可鍛性であった。十分な硬化時間の後、個々のコンポーネントはまだ完全に可鍛性であったが、図11Cに示すように混合物はエラストマー性固体に変化した。
【0103】
(実施例5)
図12A図13Cは、適用のために異なるトレーの種類および材料を用いて、タイポドントに対する、硬化した歯科用ホワイトニングゲルの除去および再適用の例を示す。第5表に示す成分を用いて、2パート型硬化性ホワイトニングゲルを配合した。
【0104】
【表5】
【0105】
2つのパート間の混合の観察を可能にするために、歯科用ホワイトニングゲルの一方のパート(コンポーネントA)を染色した。歯科用ホワイトニングゲルは、混合チップを通して、使い捨てトレー(図12A)およびカスタムフィットしたトレー(図13A)の両方に別々の間隔で絞り出した。使い捨てトレーは、柔軟なワックスポリマー材料から形成され、取り外し可能な外側支持トレーを含む。一方、カスタム品のトレーは、より剛直なポリマー材料から形成された。図12Bおよび図13Bに示すように、歯科用ホワイトニングゲルを収容する使い捨てトレーまたはカスタム品のトレーをタイポドントの歯の上に載置し、5~10分の所定の硬化(setting)時間にわたって攪乱させることなしに、タイポドント上のホワイトニングシステムを放置することによって、歯科用ホワイトニングゲルをそれぞれのタイポドントに適用した。
【0106】
図12Cおよび13Cに示すように、硬化(setting)時間が経過した後に、タイポドントからトレーを取り外した。いずれの例でも、処置後の歯およびタイポドントにホワイトニングゲルは観察されず(図12C参照)、硬化したゲルがトレーに優先的に付着することが実証された。図12Cに示すように、ホワイトニングゲルはトレー材料に付着したままであり、除去後も歯の形状を維持した。すなわち、ホワイトニングゲルはタイポドントの形状を反映した。その後、トレーを歯磨き剤に再配置し、再び歯列に装着できることを確認した。どちらの場合も、ホワイトニングゲルは、以前に塗布した場所に再びフィットすることが確認された。硬化したホワイトニングゲルは歯から容易に剥離し(おそらく表面の水分に起因する)、ポリマー系およびワックス系のトレー材料に優先的に付着すると結論づけられた。さらに、硬化したホワイトニングゲルを含むトレーを容易に取り外して歯に再適用することができ、ホワイトニング材料の再利用が可能であることが観察された。
【0107】
(実施例6)
第6A表および第6B表は、開示されたシステムを用いた美容的ホワイトニング効果の1つの例を示す。ヒトの抜去歯を、赤ワインとブルーベリーおよびザクロ果汁の混合物を用いて人工的に染色した。歯を混合物に浸し、40℃で2週間および6週間にわたって保存した。染色後、歯を混合物から取り出し、ホワイトニングゲルを塗布する前に少なくとも1週間にわたって水中で再水和した。その結果、歯の染みは象牙質では暗紫色から褐色であり、エナメル質では灰色から赤褐色であった。以下に記載されるように、3つの比較試験を実施して、本明細書に記載される実施形態による硬化性ホワイトニングゲル、水、および慣用の非硬化性ホワイトニングゲルによる着色サンプル歯の処置の効果を比較した。歯のホワイトニング(シェード変化における美容効果)を評価するために、使用説明書にしたがってVITA(登録商標)シェードガイドを用いて歯を評価した。硬化性および非硬化性ホワイトニングゲルの一般的な配合を以下の第6A表および第6B表に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
最初の研究において、10質量%の過酸化カルバミドを含む硬化性ホワイトニングゲルを複数回適用した場合の歯の色調への影響を、対照標準の水と比較した。硬化性ホワイトニングゲルおよび水を、それぞれ異なる染色を施した再水和歯(それぞれ、歯Aおよび歯B)に、40℃において、8時間の間隔で、1本の歯あたり合計10回適用した。各10回の適用の間に、終夜にわたって歯を再水和した。色の変化が脱水によるものでないことを確認するため、シェード変化を評価する前に、最終塗布後24時間以上にわたって歯を再水和した。評価結果を第6C表に示す。
【0111】
【表8】
【0112】
第6C表に示すように、本発明の硬化性ホワイトニングゲルは、歯に影響を及ぼさない対照標準の水よりも、より効果的にホワイトニングを行うことがわかった。
【0113】
第2の研究において、同濃度の過酸化カルバミドを含む硬化性ホワイトニングゲルと慣用の非硬化性ホワイトニングゲルの複数回適用を比較した。硬化性ホワイトニングゲルおよび慣用のホワイトニングゲルは、ともに35重量%の過酸化カルバミドを含有し、異なる染色を施した再水和歯(それぞれ、歯Cと歯D)に、40℃で1時間の間隔で、1本の歯あたり合計10回適用した。各10回の適用の間に、少なくとも1時間にわたって歯を再水和した。色の変化が脱水によるものでないことを確認するため、シェード変化を評価する前に、最終塗布後24時間以上にわたって歯を再水和した。結果を第6D表に示す。
【0114】
【表9】
【0115】
第6D表に示すように、硬化性ホワイトニングゲルは、慣用の非硬化性ホワイトニングゲルと比較して、歯の美容的ホワイトニングにおいて同等またはそれ以上に効果的であることがわかった。
【0116】
第3の研究では、染色された再水和サンプル歯を、水、本明細書に記載の実施形態による硬化性ゲル、および慣用の非硬化性ホワイトニングゲルの1回の適用による処置を比較した。硬化性ゲルおよび慣用のホワイトニングゲルとして、35重量%および10重量%の過酸化カルバミドを含む配合物を使用した。この研究では、それぞれのホワイトニングゲルに対して、40℃で24時間にわたって、歯を暴露した。シェード変化を評価する前に、さらに24時間にわたって歯を再水和した。結果を第6E表に示す。
【0117】
【表10】
【0118】
第6E表に示すように、硬化性ホワイトニングゲルは、慣用のホワイトニングゲル、および歯の色調に影響を及ぼさなかった水と比較して、歯を美容的ホワイトニングするのに効果的であることがわかった。
【0119】
(実施例7)
硬化性ホワイトニング組成物および慣用の非硬化性ホワイトニング組成物の過酸化物放出挙動を、過酸化物分析を用いて明らかにした。未硬化組成物をフラスコに直接添加し、混合後に過酸化物の全濃度を測定した。溶出試験のために、組成物のサンプルを硬化(set)させた。ひとたび硬化したならば、固形組成物をフラスコに添加し、所定の時間にわたって溶出させた。開示されたホワイトニングゲルは、数時間の溶出において過酸化物の徐放を示した。過酸化物の放出挙動は、各組成物からの過酸化物の分散速度を測定することにより比較検討した。
【0120】
【表11】
【0121】
【表12】
【0122】
【表13】
【0123】
【表14】
【0124】
その結果、シリコーンのみの組成物の過酸化物放出挙動は、硬化中に不完全な放出または急速な放出のいずれかを示した。したがって、シリコーンのみの組成物は、歯のホワイトニングの目的には適さないおそれがある。本明細書で開示するように、シリコーンおよびポリアクリル酸を併用した硬化系において、両方の過酸化物のより緩やかな放出が観察された。このように、硬化性シリコーン系をポリアクリル酸のような非硬化性キャリアと組み合わせることによる相乗効果により、組成物の放出特性が予想外に緩やかになり、より良好なホワイトニング結果ならびに知覚過敏の低減が得られる可能性がある。
【0125】
(実施例8)
放出試験を行って、第12A表にしたがって処方した本発明の硬化性ホワイトニングゲルの重合したマトリックスから非ホワイトニング添加剤が動態化されるかどうかを決定した。例示的添加剤として、フッ化物イオン源であるフッ化ナトリウム(NaF)を使用した。すべての試験例において、溶出のための蒸留水内に配置する前に、硬化性ホワイトニングゲルを完全に硬化(set)させた。いずれの濃度および溶出時間においても、試験溶液中にフッ化物イオンが検出された。
【0126】
【表15】
【0127】
【表16】
【0128】
【表17】
【0129】
この結果は、本明細書に開示されている硬化性ゲルがフッ化物イオンを効果的に放出することを示しており、減感作剤のような処置剤で歯を処置することにおける、このゲルの適性を示している。
【0130】
(実施例9)
試験を行って、本明細書で開示する2パート型樹脂組成物の硬化挙動と、硬化後の当該樹脂系からの機能剤の放出を明らかにした。例示的な硬化性樹脂としてメタクリレート樹脂を使用し、第13表にしたがって組成物を配合した。
【0131】
【表18】
【0132】
等量の個々の成分を、実質的に均一になるまで混合した。この混合物は、硬化プロセスの初期には可鍛性であり、十分な硬化時間の後、半固体から固体の材料の形成を開始した。
【0133】
過酸化物放出挙動を評価する前に、歯科用硬化灯を用いて、例示的な硬化性ホワイトニング組成物を光硬化させた。混合物は、歯科用硬化灯に照射される前は可鍛性であり、照射後は固体に変化していた。硬化後、固形組成物を水の入った容器に加え、所定の時間にわたって溶出させた。開示されたホワイトニングゲルは、溶出後数時間にわたって過酸化物を徐放させた。
【0134】
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的形態に具体化することができる。記載された実施形態は、すべての点で例示としてのみ考慮され、制限的なものではない。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含される。
【0135】
(その他の用語および定義)
本開示の特定の実施形態について、特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などを参照して詳細に説明してきたが、これらの説明は例示であり、特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0136】
さらに、暗示的または明示的に別段の記載がない限り、記載された実施形態の任意の要素または構成要素について、一般的に、それら要素または構成要素について列挙された可能な代替案のいずれをも、個別にまたは互いに組み合わせて使用することができることを理解すべきである。
【0137】
加えて、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される量、構成要素、距離、または他の測定値を表す数値は、「約」またはその同義語によって任意に修正されるものと理解される。用語「約(about)」、「約(approximately)」、「実質的に(substantially)」などが、記載された量、値、または条件とともに使用される場合、それは、記載された量、値、または条件の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満の偏差を有する量、値、または条件を意味すると解釈され得る。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みではないが、各数値パラメータは、報告された有効数字の桁数を考慮し、通常の四捨五入技術を適用して解釈すべきである。
【0138】
本明細書で使用される表題および副表題は、整理の目的のみに使用されるものであり、本明細書または特許請求の範囲を限定するために使用されるものではない。
【0139】
また、特段の明確な指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数の参照元を除外しないことに留意されたい。したがって、たとえば、単数形の参照語(たとえば、「ウィジェット」)を参照する実施形態は、2つ以上のそのような参照語を含むこともある。
【0140】
また、本明細書に記載される実施形態は、1つまたは複数の別個の実施形態に記載される特性および/または特徴(たとえば、成分、構成要素、部材、要素、部分、および/または部分)も含んでもよく、必ずしもその特定の実施形態について明示的に記載される特徴に厳密に限定されないことが理解されるであろう。したがって、所与の実施形態の種々の特徴は、本開示の他の実施形態と組み合わせることができ、および/または本開示の他の実施形態に組み込むことができる。したがって、本開示の特定の実施形態に関する特定の特徴の開示は、当該特徴の特定の実施形態への適用または包含を限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態もそのような特徴を含み得ることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
【手続補正書】
【提出日】2024-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトニング剤、ならびに、触媒および開始剤の少なくとも1種を含む第1パートと;
第1パートと別個であり、反応性モノマー、オリゴマー、ポリマーの少なくとも1種を含む第2パートと
を含む歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項2】
ホワイトニング剤が過酸化水素または過酸化カルバミドであることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項3】
第1パートがキャリア材料をさらに含み、ホワイトニング剤および触媒はキャリア材料に分散されていることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項4】
第1パートが、少なくとも1種の追加の処置剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項5】
反応性ポリマーが、少なくとも1種のシラノール末端シロキサンまたはヒドロキシ末端シロキサンと、少なくとも1種のシラン架橋剤とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項6】
第1パートが二重バレルシリンジの一方のバレルに配置され、第2パートが二重バレルシリンジの他方のバレルに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項7】
触媒が、スズ化合物または白金化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項8】
触媒が有機金属触媒を含み、有機金属触媒が、ジメチルスズジネオデカノエート、スズビス(ネオデカノエート)、スズビス(2-エチルヘキサノエート)、ジ-n-ブチルジラウリルスズ、またはジメチルスズヒドロキシ(オレエート)の少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の歯科用ホワイトニングシステムを提供する工程と;
第1パートおよび第2パートを組み合わせて硬化性組成物を形成する工程と;
硬化性組成物を使用者の歯の少なくとも一部の上に載置する工程と;
硬化性組成物を硬化させて、使用者の歯の少なくとも一部の上に硬化したホワイトニング組成物を形成する工程と
硬化したホワイトニング組成物からホワイトニング剤を放出して、歯の美容的ホワイトニング効果を提供する工程と
を含むことを特徴とする、美容的に歯をホワイトニングする方法。
【請求項10】
使用者の歯から硬化したホワイトニング組成物を除去する工程と;
硬化したホワイトニング組成物を使用者の歯に再適用し、歯の美容的ホワイトニングを再開する工程と
をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キャリア材料中に分散されたホワイトニング剤を含む第1パートと;
反応性モノマー、オリゴマー、およびポリマーの少なくとも1種を含む第2パートと;
第1パートおよび第2パートの少なくとも一方に配置された触媒または開始剤と
を含むことを特徴とする歯科用ホワイトニング材料。
【請求項12】
キャリア材料が、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドとの共重合体、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルカプロラクタム、グリセリン、および/またはポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項11に記載の歯科用ホワイトニング材料。
【請求項13】
アーチ形状を有し、チャネルを画定するトレーと;
トレー中への配置のための歯科用ホワイトニング材料と
を含む歯科用ホワイトニングシステムであって、
歯科用ホワイトニング材料は、縮合触媒およびホワイトニング剤を含む第1パートと、シロキサンおよび架橋剤を含む第2パートとを含む
ことを特徴とする、歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項14】
シロキサンは、少なくとも1種のシラノール末端ポリジメチルシロキサンまたはヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする、請求項13に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【請求項15】
架橋剤は、少なくとも1種の官能性シランを含むことを特徴とする、請求項13に記載の歯科用ホワイトニングシステム。
【国際調査報告】