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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20250130BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61B5/11 230
G01B7/30 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546202
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2023080488
(87)【国際公開番号】W WO2024016681
(87)【国際公開日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】202210873140.4
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521104171
【氏名又は名称】シェンチェン ショックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デン ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ユイチア
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ヨンショアイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ フォンユン
(72)【発明者】
【氏名】チー シン
【テーマコード(参考)】
2F063
4C038
【Fターム(参考)】
2F063AA33
2F063BA29
2F063BB01
2F063DA02
2F063DA05
2F063GA03
4C038VA04
4C038VB11
4C038VB12
4C038VB13
4C038VB14
4C038VC20
(57)【要約】
ウェアラブルデバイス(100)は、装着本体と、導電線によって囲まれたインダクタンス構造を含む少なくとも1つのインダクタンスセンサー(120)と、を含み、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサー(120)は、前記装着本体における前記関節部位に対応する位置に取り付けられ、前記インダクタンス構造は、前記関節部位の変形に伴って変化するインダクタンスを発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの関節部位を被覆する装着本体と、
導電線によって囲まれたインダクタンス構造を含む少なくとも1つのインダクタンスセンサーと、を含み、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記装着本体における前記関節部位に対応する位置に取り付けられ、前記インダクタンス構造は、前記関節部位の変形に伴って変化するインダクタンスを発生させる、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記装着本体は、グローブを含み、ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーの少なくとも一部は、前記ユーザーの手部のモーション信号を収集するように、前記ユーザーの手部の関節に位置する、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記導電線は、前記関節部位の周りにスパイラルインダクタンスパターンを形成し、前記スパイラルインダクタンスパターンの表面に垂直な方向における前記導電線の厚さは、3mm以下である、請求項2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、90度±20度の範囲内にあり、前記スパイラルインダクタンスパターンの短軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、±20度の範囲内にある、請求項3に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記インダクタンス構造の抵抗は、100Ωよりも小さい、請求項2~4のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、それぞれ関節の内外両側に位置する2つのインダクタンス構造を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記インダクタンス構造は、
導電線のコイル数が2以上であるスパイラルインダクタンスコイルを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記スパイラルインダクタンスコイルにおける前記導電線は、紡績の方式で固定される伸縮可能な弾性導電性糸を含む、請求項7に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
前記スパイラルインダクタンスコイルにおける前記導電線の導電線幅は、2mm以下であり、前記導電線の導電線隙間は、2mm以下である、請求項7又は8に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置するための基板をさらに含み、前記基板は、前記スパイラルインダクタンスコイルの内層コイルを第1の信号引き出し端子に引き出すための貫通孔を含み、前記第1の信号引き出し端子と前記スパイラルインダクタンスコイルの外層コイルに接続された第2の信号引き出し端子とは、前記基板の同一の表面に位置する、請求項7~9のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置するための基板をさらに含み、前記スパイラルインダクタンスコイルは、少なくとも第1層のコイル及び第2層のコイルを含み、
前記第1層のコイル及び前記第2層のコイルは、前記基板に垂直な方向に積層して設置され、
前記第1層のコイルの電流方向と前記第2層のコイルの電流方向は、同じである、請求項7~10のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項12】
前記第1層のコイルと前記第2層のコイルは、前記基板の両側にそれぞれ設置される、請求項11に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項13】
前記基板には、貫通孔が形成され、前記第1層のコイルと前記第2層のコイルはそれぞれ、前記貫通孔を貫通する同一の導電線により形成される、請求項12に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手の甲に設置され、
前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部から離れた側を被覆する透磁薄膜をさらに含む、請求項7~13のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手のひらに設置され、
前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部に近接する側を被覆する透磁薄膜をさらに含む、請求項7~14のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項16】
前記透磁薄膜の厚さは、10~500μmである、請求項14又は15に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、
前記スパイラルインダクタンスコイルを封止する保護層をさらに含む、請求項7~16のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、
指関節の背部又は腹部に設置され、対応する指関節の屈曲角度を測定する指関節インダクタンスセンサー、
隣接する2本の指の接続位置に設置され、前記隣接する2本の指の開き角度を測定する指間隔インダクタンスセンサー、或いは
手首の背面、正面又は側面に設置され、手首の屈曲角度を測定する手首インダクタンスセンサーを含む、請求項2~17のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項19】
前記指関節インダクタンスセンサー及び前記手首インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、その対応する関節の回転軸に対して対称である、請求項18に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項20】
前記指関節インダクタンスセンサーにおけるスパイラルインダクタンスコイルの、対応する関節の回転軸に平行な方向に沿った寸法が5mmよりも大きく20mmよりも小さく、前記スパイラルインダクタンスコイルの、対応する関節の回転軸に垂直な方向に沿った寸法と対応する関節の回転軸に平行な方向に沿った寸法との比は、0.5よりも大きく10よりも小さい、請求項19に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項21】
前記指関節インダクタンスセンサー及び前記指間隔インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、リード線により直列接続された第1のサブインダクタンスコイル及び第2のサブインダクタンスコイルを少なくとも含み、
ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合、前記第1のサブインダクタンスコイルの電流方向と前記第2のサブインダクタンスコイルの電流方向は、同じである、請求項18~20のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項22】
前記第1のサブインダクタンスコイルと前記第2のサブインダクタンスコイルとは、構成が同じである、請求項21に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項23】
前記第1のサブインダクタンスコイルと前記第2のサブインダクタンスコイルとの寸法の相対的な差は、50%よりも小さく、かつ前記第1のサブインダクタンスコイル及び前記第2のサブインダクタンスコイルは、指間回転軸に対して対称に配置される、請求項21に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項24】
前記リード線が通過する領域の幅は、2mmよりも小さく、前記リード線の長さは、1cmよりも大きい、請求項21~23のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーによって収集されたモーション信号を読み取る1つ以上の読み取りユニットをさらに含み、各前記読み取りユニットは、少なくとも、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーのうちの1つに対応する、請求項2~24のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項26】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーによって収集されたモーション信号を処理し、前記グローブの手の甲に位置するプロセッサをさらに含む、請求項25に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項27】
前記ユーザーの手部に仮想触感を提供する振動フィードバックユニットをさらに含む、請求項26に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項28】
前記ウェアラブルデバイスの空間座標を位置決めする位置決めユニットをさらに含む、請求項27に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項29】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、取り外し可能な方式で前記装着本体に取り付けられ、前記インダクタンス構造の寸法又は形状は、調整可能である、請求項1~28のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ウェアラブルデバイスの分野に関し、特にウェアラブルデバイスに関する。
【0002】
[参照による援用]
本願は、2022年7月22日に提出された中国出願第202210873140.4号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
メタバース及びVR技術の継続的な進歩に伴い、実際の物理的世界とメタバースの仮想世界との間のインタラクション形式に対する要求がますます高まっている。人体の最も敏捷で最も重要な部位として、手部のモーションのリアルタイムキャプチャと仮想マッピングは、メタバースの没入感と体験感の向上に不可欠な部分である。しかしながら、従来のモーションキャプチャグローブには、多くの問題がある。例えば、多軸慣性センサーに基づくモーションキャプチャグローブのアルゴリズムが複雑であり、システムが邪魔になり、装着快適性が低く、コストが高い。また、例えば、従来の抵抗式又は静電容量式屈曲センサーに基づくモーションキャプチャグローブは、センサーの信頼性及び整合性が低く、温度、汗、圧力等の様々な外部要因の干渉を受けやすく、その応用シーンが非常に制限され、コストが高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、製造が簡単であり、コストが低く、装着が快適であり、耐干渉能力が高く、かつ高感度及び高信頼性を兼ね備えるモーションキャプチャグローブを設計する必要がある。
【0005】
本明細書の一実施例に係るウェアラブルデバイスは、ユーザーの関節部位を被覆する装着本体と、導電線によって囲まれたインダクタンス構造を含む少なくとも1つのインダクタンスセンサーと、を含み、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記装着本体における前記関節部位に対応する位置に取り付けられ、前記インダクタンス構造は、前記関節部位の変形に伴って変化するインダクタンスを発生させる。
【0006】
いくつかの実施例では、前記装着本体は、グローブを含み、ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーの少なくとも一部は、前記ユーザーの手部のモーション信号を収集するように、前記ユーザーの手部の関節に位置する。インダクタンスセンサーを利用してユーザーの手部のモーションをセンシングすることにより、温度、湿度、圧力、汗等の外部要因の干渉を受けにくくなる。
【0007】
いくつかの実施例では、前記導電線は、前記関節部位の周りにスパイラルインダクタンスパターンを形成し、前記インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における前記導電線の厚さは、3mm以下である。前記インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における導電線の厚さを該範囲内に設定することにより、ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合の快適性を向上させ、かつインダクタンスセンサーの感度を向上させることができる。
【0008】
いくつかの実施例では、前記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、90度±20度の範囲内にあり、前記スパイラルインダクタンスパターンの短軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、±20度の範囲内にある。
【0009】
いくつかの実施例では、前記インダクタンス構造の抵抗は、100Ωよりも小さく、それによりインダクタンスのQ値を向上させ、さらに測定の精度を向上させる。
【0010】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、それぞれ関節の内外両側に位置する2つのインダクタンス構造を含む。
【0011】
いくつかの実施例では、前記インダクタンス構造は、導電線のコイル数が2以上であるスパイラルインダクタンスコイルを含む。
【0012】
いくつかの実施例では、前記導電線は、紡績の方式で固定される伸縮可能な弾性導電性糸を含む。
【0013】
いくつかの実施例では、前記スパイラルインダクタンスコイルにおける前記導電線の導電線幅は、2mm以下であり、前記導電線の導電線隙間は、2mm以下である。
【0014】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置する基板をさらに含み、前記基板は、前記スパイラルインダクタンスコイルの内層コイルを第1の信号引き出し端子に引き出すための貫通孔を含み、前記第1の信号引き出し端子と前記スパイラルインダクタンスコイルの外層コイルに接続された第2の信号引き出し端子とは、前記基板の同一の表面に位置する。
【0015】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置する基板をさらに含み、前記スパイラルインダクタンスコイルは、少なくとも第1層のコイル及び第2層のコイルを含み、前記第1層のコイル及び前記第2層のコイルは、前記基板に垂直な方向に積層して設置され、前記第1層のコイルの電流方向と前記第2層のコイルの電流方向は、同じである。
【0016】
いくつかの実施例では、前記第1層のコイルと前記第2層のコイルは、前記基板の両側にそれぞれ設置される。
【0017】
いくつかの実施例では、前記基板には、貫通孔が形成され、前記第1層のコイルと前記第2層のコイルはそれぞれ、前記貫通孔を貫通する同一の導電線により形成される。
【0018】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手の甲に設置され、前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部から離れた側を被覆する透磁薄膜をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手のひらに設置され、前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部に近接する側を被覆する透磁薄膜をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施例では、前記透磁薄膜の厚さは、10~500μmである。
【0021】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを封止する保護層をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施例では、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、指関節の背部又は腹部に設置され、対応する指関節の屈曲角度を測定する指関節インダクタンスセンサー、隣接する2本の指の接続位置に設置され、前記隣接する2本の指の開き角度を測定する指間隔インダクタンスセンサー、或いは手首の背面、正面又は側面に設置され、手首の屈曲角度を測定する手首インダクタンスセンサーを含む。
【0023】
いくつかの実施例では、前記指関節インダクタンスセンサー及び前記手首インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、その対応する関節の回転軸に対して対称である。
【0024】
いくつかの実施例では、前記指関節インダクタンスセンサーにおけるスパイラルインダクタンスコイルの、対応する関節の回転軸に平行な方向に沿った寸法が5mmよりも大きく20mmよりも小さく、前記スパイラルインダクタンスコイルの、対応する関節の回転軸に垂直な方向に沿った寸法と対応する関節の回転軸に平行な方向に沿った寸法との比は、0.5よりも大きく10よりも小さい。
【0025】
いくつかの実施例では、前記指関節インダクタンスセンサー及び前記指間隔インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、リード線により直列接続された第1のサブインダクタンスコイル及び第2のサブインダクタンスコイルを少なくとも含み、ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合、前記第1のサブインダクタンスコイルの電流方向と前記第2のサブインダクタンスコイルの電流方向は、同じである。
【0026】
いくつかの実施例では、前記第1のサブインダクタンスコイルと前記第2のサブインダクタンスコイルとは、構成が同じである。
【0027】
いくつかの実施例では、前記第1のサブインダクタンスコイルと前記第2のサブインダクタンスコイルとの寸法の相対的な差は、50%よりも小さく、かつ前記第1のサブインダクタンスコイル及び前記第2のサブインダクタンスコイルは、指間回転軸に対して対称に配置される。
【0028】
いくつかの実施例では、前記リード線が通過する領域の幅は、2mmよりも小さく、前記リード線の長さは、1cmよりも大きい。
【0029】
いくつかの実施例では、前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーによって収集されたモーション信号を読み取る1つ以上の読み取りユニットをさらに含み、各前記読み取りユニットは、少なくとも、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーのうちの1つに対応する。
【0030】
いくつかの実施例では、前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーによって収集されたモーション信号を処理し、前記グローブの手の甲に位置するプロセッサをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施例では、前記ウェアラブルデバイスは、前記ユーザーの手部に仮想触感を提供する振動フィードバックユニットをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施例では、前記ウェアラブルデバイスは、前記ウェアラブルデバイスの空間座標を位置決めする位置決めユニットをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施例では、センサーは、取り外し可能な方式で前記装着本体に取り付けられ、前記インダクタンス構造の寸法又は形状は、調整可能である。
【0034】
本明細書の実施例では、インダクタンスセンサーをウェアラブル構造に集積することにより、モーションキャプチャ過程におけるモーション識別の正確性を向上させ、かつ装着が快適であり、ユーザー体験を向上させることができる。また、ウェアラブルデバイスは、構造が簡単であり、製造コストが低く、使用信頼性及びリサイクル性が向上する。
【0035】
例示的な実施例によって本明細書をさらに説明し、図面を参照してこれらの例示的な実施例を詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではなく、これらの実施例では、同じ符号は、同じ構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの構成ブロック図である。
図2A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なインダクタンスセンサーの概略上面図である。
図2B】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。
図3A】本明細書のいくつかの実施例に係る、自然状態にある例示的なインダクタンスセンサー及びその等価面積概略図である。
図3B】本明細書のいくつかの実施例に係る、屈曲状態にある例示的なインダクタンスセンサーの概略図である。
図3C】本明細書のいくつかの実施例に係る、屈曲状態にある例示的なインダクタンスセンサー及びその等価面積概略図である。
図4A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。
図4B図4Aにおけるウェアラブルデバイスの概略上面図である。
図4C図4Aにおけるウェアラブルデバイスの上面透視簡略化概略図である。
図5】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。
図6A】本明細書のいくつかの実施例に係る、透磁薄膜付きの例示的なインダクタンスセンサーの簡略化概略構成図である。
図6B】本明細書のいくつかの実施例に係る、透磁薄膜付きの例示的なインダクタンスセンサーの簡略化概略構成図である。
図6C】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的正規化インダクタンス変化曲線概略図である。
図7A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略図である。
図7B】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な指間隔インダクタンスセンサーの概略図である。
図7C図7Bに示す指間隔インダクタンスセンサーに対応する応用概略図である。
図8】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの構成ブロック図である。
図9】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な読み取りユニットの概略構成図である。
図10】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なインダクタンスセンサーの概略構成図である。
図11】本明細書のいくつかの実施例に係る、ユーザーが例示的なウェアラブルデバイスを装着する場合の概略図である。
図12】本明細書のいくつかの実施例に係る、非装着状態でインダクタンス構造の屈曲角度に伴って変化する、スパイラルインダクタンスパターンを有する例示的なインダクタンス構造のインダクタンス値の曲線概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本願のいくつかの例又は実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似するシナリオに応用することができる。言語環境から明らかではないか又は明記しない限り、図面において、同じ符号は同じ構造又は操作を表す。
【0038】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」及び/又は「モジュール」が、レベルの異なる様々なアセンブリ、部品、部材、部分又は組立体を区別する方法であることを理解されたい。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0039】
本願及び特許請求の範囲に示すように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「一」、「1つ」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を意味するものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は機器は、他のステップ又は要素を含む可能性がある。用語「基づく」は、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味する。用語「1つの実施例」は、「少なくとも1つの実施例」を示す。用語「別の実施例」は、「少なくとも1つの別の実施例」を示す。
【0040】
なお、本明細書の説明では、用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などは、説明のためのものに過ぎず、相対的な重要性を示したり示唆したりするか、又は示された技術的特徴の数量を黙示的に示すと理解すべきではない。そのため、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」で限定される特徴は、少なくとも1つの該特徴を含むことを明示的又は黙示的に示すことができる。本明細書の説明において、別に明確かつ具体的な限定がない限り、「複数」は、少なくとも2つを意味し、例えば2つ、3つなどである。
【0041】
本明細書において、別に明確な規定及び限定がない限り、用語「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきである。例えば、別に明確な限定がない限り、用語「接続」は、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、機械的な接続、又は電気的な接続であってもよく、直接的な接続であってもよく、中間媒体を介した間接的な接続であってもよく、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本明細書における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0042】
本明細書の実施例は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブル装置と呼ばれてもよい)を提供する。該ウェアラブルデバイスは、グローブと、グローブに固定された少なくとも1つのインダクタンスセンサーとを含んでもよい。ユーザーが該ウェアラブルデバイスを装着する場合、該インダクタンスセンサーの少なくとも一部は、該ユーザーの手部のモーション信号を収集するように、該ユーザーの手部の関節に位置してもよい。インダクタンスセンサーのインダクタンス値の変化を利用してインダクタンスセンサーの形状変化を測定することにより、各指の運動情報及び指間の相対位置の変化情報をリアルタイムにキャプチャすることができる。該ウェアラブルデバイスは、温度、湿度、圧力、汗等の外部要因による干渉を受けにくく、その製造が簡単であり、コストが低く、装着が快適であり、かつ高感度と高信頼性を兼ね備える。
【0043】
以下に図面を参照しながら本明細書の実施例に係るウェアラブルデバイスを詳細に説明する。
【0044】
図1は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの構成ブロック図である。図1に示すように、ウェアラブルデバイス100は、グローブ110及びインダクタンスセンサー120を含んでもよい。
【0045】
グローブ110は、インダクタンスセンサー120のキャリアとして機能することができる。いくつかの実施例では、グローブ110は、デミグラブであってもよく、フルフィンガーグローブであってもよい。いくつかの実施例では、グローブ110は、少なくとも1層の生地層を含んでもよい。例えば、グローブ110は、ライナー生地のみを含んでもよい。ライナー生地は、人の手の皮膚に直接的に接触することができ、インダクタンスセンサー120は、ライナー生地の表面に設置(例えば、接着又は縫合)することができる。また、例えば、グローブ110は、ライナー生地と外層生地を含んでもよく、より多くの層の生地を含んでもよい。例示的には、インダクタンスセンサー120は、グローブ110のライナー生地と外層生地との間に設置され、グローブ110のライナー生地及び外層生地に完全に包まれてもよい。なお、ライナー生地及び/又は外層生地は、実際の需要(例えば、快適性、美観性)に応じて設置されてもよく、ここでは、制限しない。
【0046】
インダクタンスセンサー120は、スパイラルインダクタンスコイル121と、基板122とを含んでもよい。いくつかの実施例では、ユーザーの手部関節の変形により、スパイラルインダクタンスコイル121及び基板122も変形し、かつ変形に基づいて電気信号を生成することができる。例示的な電気信号は、インダクタンス、回路インピーダンス、位相、共振周波数等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。例示的には、インダクタンスセンサー120は、スパイラルインダクタンスコイル121のインダクタンス値の変化を利用して、人体の手部関節の運動に伴うインダクタンスセンサー120(又はスパイラルインダクタンスコイル121)の形状変化を測定することにより、インダクタンスセンサー120に対応する手部関節の運動状況を決定することができる。例えば、ユーザーがウェアラブルデバイス100を装着する場合、インダクタンスセンサー120の少なくとも一部は、該ユーザーの手部のモーション信号を収集して、手部の指の運動を決定するように、該ユーザーの手部の関節に位置してもよい。具体的には、ウェアラブルデバイス100を装着したユーザーの手部関節が特定のモーションを行うと、インダクタンスセンサー120の形状の変化を引き起こすことができ、インダクタンスセンサー120におけるスパイラルインダクタンスコイル121のインダクタンス値がそれに応じて変化し、さらに、該インダクタンス値の変化によりユーザーの手部モーション情報(例えば、関節の屈曲角度、関節の屈伸状況)を取得することができ、ユーザーの手部(又は指)のモーションをキャプチャする。
【0047】
基板122は、スパイラルインダクタンスコイル121を載置することができる。いくつかの実施例では、基板122の材料は、PI、PET、シリカゲル、ゴム等のフレキシブル有機薄膜材料を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、基板122は、フレキシブル回路基板(FPC)を用いてもよい。いくつかの実施例では、基板122は、ユーザーがウェアラブルデバイス100を装着する時の快適性を向上させるように、直接的に紡績生地を用いてもよい。基板122の厚さは、ユーザーの快適性と実用性とを考慮して決定する必要があり、基板122が厚すぎると、ユーザーが感じた快適感が不十分である可能性があり、基板122が薄すぎると、基板にしわが発生し、インダクタンス値の読み取り精度に影響を与える可能性がある。いくつかの実施例では、基板122の厚さは、1um~500umであってもよい。
【0048】
いくつかの実施例では、スパイラルインダクタンスコイル121は、単層のコイルを含んでもよい。この場合、スパイラルインダクタンスコイル121における導線のコイル数は、2以上であってもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120の総インダクタンス値を増加させるために、スパイラルインダクタンスコイル121は、電流方向が同じである複数層のコイルを含んでもよい。電流方向が同じである複数層のコイルは、基板122に垂直な方向に積層して設置されてもよい。好ましくは、複数層のコイルの基板122に垂直な方向への投影は、部分的又は完全に重なってもよい。さらに、複数層のコイルの基板122に垂直な方向への投影の重なり程度を大きくすることにより、インダクタンスセンサー120のインダクタンス値をより大きくすることができ、それにより、インダクタンスセンサー120の信頼性を向上させることができる。いくつかの実施例では、スパイラルインダクタンスコイル121の形状(すなわち、導線を巻いて形成されたパターン(又はインダクタンスパターン)の全体形状)は、矩形、円形、楕円形等の規則的な幾何形状又は他の不規則な形状であってもよい。好ましくは、スパイラルインダクタンスコイル121の形状は、軸対称の幾何形状であってもよい。
【0049】
いくつかの実施例では、巻かれてスパイラルインダクタンスコイル121を形成する導線の材料は、金属/合金であってもよく、銀ペースト、カーボンペースト、ITO、液体金属等の導電材料であってもよい。導線のスパイラル巻き方向は、時計回り又は反時計回りであってもよい。ウェアラブルデバイス100に関するより多くの説明について、本明細書の他の箇所、例えば、図2A及び図2B図4A図4C図5等及びそれらの説明を参照してもよい。
【0050】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイス100は、インダクタンスセンサー120を利用してユーザーの手部のモーションをセンシングすることにより、温度、湿度、圧力、汗等の外部要因による干渉を受けにくくなる。また、基板122にスパイラルインダクタンスコイル121を設置することによりインダクタンスセンサー120を製造することができ、その製造が簡単であり、コストが低く、工業生産に適する。さらに、スパイラルインダクタンスコイル121のコイル数を増加させることによりインダクタンスセンサー120のインダクタンスを向上させることができ(小さい寸法でより高いインダクタンスを実現することができる)、それにより、センサーの感度を向上させ、センサーの小さい寸法という応用ニーズを満たすとともに、後続の読み取りシステムの設計を簡略化する。
【0051】
図2Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なインダクタンスセンサーの概略上面図である。図2Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。
【0052】
図2Aに示すように、ウェアラブルデバイス100は、インダクタンスセンサー120を含んでもよい。インダクタンスセンサー120は、スパイラルインダクタンスコイル121及び基板122を含んでもよい。スパイラルインダクタンスコイル121は、基板122に設置(例えば、接着又は縫合)されてもよい。巻かれてスパイラルインダクタンスコイル121を形成する導線(インダクタンス導線と呼ばれてもよい)の両端は、信号引き出し端子123(例えば、第1の信号引き出し端子1231及び第2の信号引き出し端子1232)を介して外部回路(例えば、読み取りユニット)に接続されてもよい。いくつかの実施例では、基板122に貫通孔1221及び1222を設置することにより、インダクタンス導線の両端を基板122の同じ側から引き出して、回路接続を容易にすることができる。例えば、図2A及び図2Bに示すように、第1の信号引き出し端子1231及び第2の信号引き出し端子1232は、同時に基板122の上側に位置してもよい。スパイラルインダクタンスコイル121の外側端子は、基板122の上側に位置する第2の信号引き出し端子1232に直接的に引き出されてもよい。スパイラルインダクタンスコイル121の内側端子は、貫通孔1221を介して基板122の下側に引き出され、さらに貫通孔1222を介して基板122の上側に引き出され、かつ第1の信号引き出し端子1231に引き出されてもよく、それにより、インダクタンス導線の両端は、それぞれ第1の信号引き出し端子1231と第2の信号引き出し端子1232から引き出される。
【0053】
いくつかの実施例では、図2Bに示すように、インダクタンス導線の厚さhは、0.1μm~100μmの範囲内にあってもよい。いくつかの実施例では、インダクタンス導線の幅wは、2mm以下であってもよい。インダクタンス導線の隙間dは、2mm以下であってもよい。さらに、インダクタンス導線の幅wとインダクタンス導線の隙間dとの比w/dは、0.5~5の範囲内にあってもよく、それにより、インダクタンスセンサー120の空間利用率を向上させ、より多くのコイルを形成することができ、さらに、より優れた感度及びインダクタンス値を取得することができる。本明細書では、インダクタンス導線の厚さhは、インダクタンス導線の基板122の上下方向に垂直な方向における寸法であってもよい。インダクタンス導線の幅wは、基板122の平面におけるインダクタンス導線の太さ寸法であってもよい。インダクタンス導線の隙間dは、基板122の平面における隣接する2つのインダクタンス導線の間の間隔であってもよい。
【0054】
いくつかの実施例では、図2Bに示すように、ウェアラブルデバイス100は、生地層111、生地層112及び保護層124をさらに含んでもよい。保護層124は、スパイラルインダクタンスコイル121及び/又は基板122の外側に密着して設置されてもよい。生地層111と生地層112は、それぞれインダクタンスセンサー120の上下両側に設置されてもよい。生地層111及び生地層112は、ウェアラブルデバイス100のグローブ110の一部である。
【0055】
保護層124は、インダクタンスセンサー(すなわち、スパイラルインダクタンスコイル121及び基板122)を保護することができ、それにより、防水保護の作用を果たし、インダクタンスセンサーの酸化、腐食又は摩耗等を防止する。いくつかの実施例では、保護層124は、PI樹脂、エポキシ樹脂、三防漆、シリカゲル等の性質が安定な材料を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0056】
図3Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る、自然状態にある例示的なインダクタンスセンサー及びその等価面積概略図である。図3Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る、屈曲状態にある例示的なインダクタンスセンサーの概略図である。図3Cは、本明細書のいくつかの実施例に係る、屈曲状態にある例示的なインダクタンスセンサー及びその等価面積概略図である。
【0057】
図3Aに示すように、インダクタンスセンサー120が自然状態にある場合、インダクタンスセンサー120におけるスパイラルインダクタンスコイル121の回路によって囲まれた面積(等価面積とも呼ばれている)は、最も大きく、この場合に、等価面積は、S0であってもよい。インダクタンスセンサー120がある関節(例えば、指関節)に配置されている場合、インダクタンスセンサー120(又はスパイラルインダクタンスコイル121)の形状は、関節の屈曲に伴って変化し、さらにスパイラルインダクタンスコイル121の等価面積を変化させる。図3Bに示すように、インダクタンスセンサー120の屈曲の程度が大きくなるに連れて、スパイラルインダクタンスコイル121の等価面積が徐々に小さくなる。
【0058】
電磁理論によれば、同一のインダクタンスコイルについて、そのインダクタンスは、電流回路によって囲まれた面積に比例する。したがって、インダクタンスセンサー120のインダクタンス値の大きさは、スパイラルインダクタンスコイル121の等価面積の減少に伴って略線形に減少し、以下の式(1)に示すとおりであってもよい。
【0059】
【数1】
【0060】
式において、ΔLは、インダクタンスセンサー120のインダクタンス値の変化量を示し、L0は、インダクタンスセンサー120の初期インダクタンス値を示し、ΔSは、スパイラルインダクタンスコイル121の等価面積の変化量を示し、S0は、スパイラルインダクタンスコイル121の初期等価面積を示す。
【0061】
いくつかの実施例では、インダクタンス値の変化の大きさと屈曲角度の変化との間は、厳密な線形変化ではなく、アルゴリズム、経験的マッピング関係、機械学習等の方式で校正することができる。
【0062】
上述したインダクタンス値と等価面積との関係は、インダクタンスセンサー120の形状及び寸法と相関してもよい。いくつかの実施例では、最適な感度を取得するために、ユーザーがウェアラブルデバイス100を装着する時に、インダクタンスセンサー120を対応する関節の回転軸に対して対称(又はほぼ対称)に配置することができる。つまり、インダクタンスセンサー120は、対応する関節の回転軸に対して対称(又はほぼ対称)であってもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、異なる関節に対して、インダクタンスセンサー120は、異なる寸法を有してもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120の対応する関節の回転軸に平行な方向(図3Aに示す方向Z)に沿った寸法(インダクタンスセンサー120の幅と呼ばれてもよい)は、1mmよりも大きく20mmよりも小さくてもよく、インダクタンスセンサー120の対応する関節の回転軸に垂直な方向(図3Aに示す方向X)に沿った寸法(インダクタンスセンサー120の長さと呼ばれてもよい)とインダクタンスセンサー120の幅との比は、0.5よりも大きく20よりも小さくてもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120(例えば、図7Aに示す指関節インダクタンスセンサー721、指間隔インダクタンスセンサー722等)におけるスパイラルインダクタンスコイル121の形状は、図3Aに示す長尺状(例えば、矩形、角丸矩形)であってもよい。インダクタンスセンサー120の長さ及びコイル数が一定である場合、長尺状のスパイラルインダクタンスコイルのアスペクト比が1:1に近ければ近いほど、感度が高くなる。しかしながら、人の手部の形状及び幅に制限があるため、長尺状のスパイラルインダクタンスコイルの長さ及び幅は、その位置の形態によって制限される。例えば、インダクタンスセンサー120が指関節インダクタンスセンサーである場合、インダクタンスセンサー120の感度をさらに向上させるために、指関節インダクタンスセンサーにおける長尺状のスパイラルインダクタンスコイルの幅aは、5mmよりも大きく20mmよりも小さくてもよく、指関節インダクタンスセンサーにおける長尺状のスパイラルインダクタンスコイル121のアスペクト比b/aは、0.5よりも大きく10よりも小さくてもよい。インダクタンスセンサー120は、指間隔インダクタンスセンサーである場合、2つの指の間に設置されるため、他のインダクタンスセンサーと比較して、その屈曲角度がより大きく、感度がより高く、その寸法に対する制限が緩和され、この場合に、指間隔インダクタンスセンサーにおける長尺状のスパイラルインダクタンスコイルの幅aは、1mmよりも大きく20mmよりも小さくてもよく、指間隔インダクタンスセンサーにおける長尺状のスパイラルインダクタンスコイル121のアスペクト比b/aは、0.5よりも大きく20よりも小さくてもよい。
【0064】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスは、指関節インダクタンスセンサーの位置(及び人の指関節に対する相対位置)、形状及び大きさを設定することにより、センサーのより優れた感度を取得することができる。
【0065】
図4Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。図4Bは、図4Aにおけるウェアラブルデバイスの概略上面図である。図4Cは、図4Aにおけるウェアラブルデバイスの上面透視簡略化概略図である。
【0066】
図4Aに示すように、いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス100のグローブ110は、生地層111及び生地層112を含む。ウェアラブルデバイス100のインダクタンスセンサー120は、スパイラルインダクタンスコイル121、基板122、信号引き出し端子123及び保護層124を含んでもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120の総インダクタンスを増大させて、さらにインダクタンスセンサー120の感度を向上させるために、スパイラルインダクタンスコイル121は、複数層のコイルを含んでもよい。例えば、図4Aに示すように、スパイラルインダクタンスコイル121は、少なくとも第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212を含んでもよい。また、例えば、スパイラルインダクタンスコイル121は、3層のインダクタンスコイル、4層のインダクタンスコイル又はより多くの層のインダクタンスコイルを含んでもよい。
【0067】
スパイラルインダクタンスコイル121が第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212を含むことのみを例とすると、第1層のコイル1211と第2層のコイル1212とは、電流が同じ電流方向を有する。好ましくは、複数層のコイルによって囲まれた面積の基板122に垂直な方向への投影は、部分的又は完全に重なってもよい。いくつかの実施例では、複数層のコイルによって囲まれた面積の基板122に垂直な方向への投影は、重ならなくてもよい。第1層のコイル1211のインダクタンスと第2層のコイル1212のインダクタンスとは、電流が反対方向に流れる場合、第1層のコイル1211のインダクタンスと第2層のコイル1212のインダクタンスとは、互いに相殺され、インダクタンスセンサー120の総インダクタンス値が低下する。第1層のコイル1211のインダクタンスと第2層のコイル1212のインダクタンスとは、電流が同じ方向に流れる場合、インダクタンスセンサー120の総インダクタンスLが第1層のコイル1211のインダクタンスL1と、第2層のコイル1212のインダクタンスL2と、第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212の相互インダクタンス値Mとを加算した総和であることを保証することができ、以下の式(2)に示すとおりである。
【0068】
L=L1+L2+2M。 (2)
【0069】
いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120の構造を簡略化し、インダクタンスセンサー120の引き出し端子の数量を低減してコストを低減するために、第1層のコイル1211と第2層のコイル1212は、それぞれ上記基板の両側に設置されてもよい。例えば、図4Aに示すように、基板122には、貫通孔1221が設置されてもよく、第1層のコイル1211は、貫通孔1221を介して第2層のコイル1212に接続される。つまり、第1層のコイル1211と第2層のコイル1212は、それぞれ、貫通孔1221を貫通する同一の導線を巻いて形成されてもよい。例えば、図4Bに示すように、基板122の上側に位置する第1層のコイル1211は、その外側からその内側へ巻かれ、さらに貫通孔1221を介して基板122の下側に導かれてもよい。基板122の下側に位置する第2層のコイル1212は、その内側からその外側へ巻かれてもよく、最終的に第1層のコイル1211の電流方向と第2層のコイル1212の電流方向を同じ方向(例えば、時計回り又は反時計回り)にする。
【0070】
いくつかの実施例では、第1層のコイル1211と第2層のコイル1212は、それぞれ、1本の導線を巻いて形成されてもよい。巻かれて第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212を形成する2本の導線の電流方向は、同じである(例えば、時計回り又は反時計回り)。例えば、基板122には、図4Aに示す貫通孔1221が設置されなくてもよい。基板122には、4つのリード線端子が設置されてもよい。各層のコイルは、2つのリード線端子に対応してもよい。基板122の上側に位置する第1層のコイル1211は、その対応する一方のリード線端子から出発してその外側からその内側へ巻かれ、内側から各層のコイルを貫通して第1層のコイル1211の対応する他方のリード線端子まで導かれてもよい。基板122の下側に位置する第2層のコイル1212もその対応する一方のリード線端子から出発してその外側からその内側へ巻かれ、内側から各層のコイルを貫通して第2層のコイル1212の対応する他方のリード線端子まで導かれてもよい。或いは、基板122の下側に位置する第2層のコイル1212もその対応する一方のリード線端子から第2層のコイル1212の内側まで導かれて、さらにその内側からその外側へ巻かれて第2層のコイル1212の対応する他方のリード線端子まで導かれてもよい。
【0071】
いくつかの実施例では、巻かれて第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212を形成する同一の導線の両端の信号は、それぞれ、基板122の両側から引き出されてもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120の引き出し端子の位置を柔軟に設定するために、基板122には、貫通孔1222がさらに設置されてもよく、貫通孔1222により、インダクタンス導線(巻かれて第1層のコイル1211及び第2層のコイル1212を形成する同一の導線)の両端の信号を基板122の同じ側から引き出すことができる。
【0072】
本明細書のいくつかの実施例に係るインダクタンスセンサー120は、基板122の上下両側に2層又は複数層のインダクタンスを設置することにより、インダクタンスセンサー120の総インダクタンスを増加させることができ、後続の読み取りシステムの安定性及び精度に役立ち、同時にインダクタンスセンサー120の感度を向上させることができ、かつプロセスが実現しやすい。
【0073】
図5は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略断面図である。
【0074】
いくつかの実施例では、図5に示すように、ウェアラブルデバイス100は、透磁薄膜125をさらに含んでもよい。
【0075】
透磁薄膜125は、高い透磁率を有する薄膜であってもよい。透磁薄膜125(例えば、透磁シート)をインダクタンスセンサー120の表面又は内部に設置することにより、インダクタンスセンサー120内の磁束を増加させ、さらにインダクタンスセンサー120のインダクタンスを増加させ、インダクタンスセンサー120の感度を向上させることができる。
【0076】
いくつかの実施例では、透磁薄膜125は、軟磁性粉末とシリカゲル又は樹脂とを混合して製造されてもよい。軟磁性粉末は、センダスト粉末、フェライト粉末等を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、透磁薄膜125の比透磁率は、10以上であってもよい。
【0077】
透磁薄膜125が薄すぎると、インダクタンスセンサー120内の磁束を増加させる効果が低くなり、インダクタンスセンサー120の感度を上手くに向上させることができない。透磁薄膜125が厚すぎると、ウェアラブルデバイス100の厚さ及び重量を全体的に増加させるだけでなく、ユーザーの手部の運動中に透磁薄膜のひび割れを引き起こし、ウェアラブルデバイス100の耐用年数を短縮する可能性がある。したがって、いくつかの実施例では、透磁薄膜の透磁効果と、ユーザーの快適性とウェアラブルデバイス100の耐用年数との間でバランスを取るために、透磁薄膜125の厚さは、10μm~500μmである。
【0078】
いくつかの実施例では、透磁薄膜125は、接着剤を用いてインダクタンスセンサー120の表面又は内部に直接的に接着されてもよく、塗布の方式でインダクタンスセンサー120の表面又は内部に塗布されてもよい。例えば、透磁薄膜125は、インダクタンスセンサー120の表面に設置(又は接着)されてもよく、それにより、インダクタンスセンサー120が所在する環境空間の有効透磁率μを増加させる。インダクタンスセンサー120が屈曲している場合、該有効透磁率μは、インダクタンスセンサー120の屈曲に伴って変化することができる。透磁薄膜125のインダクタンスセンサー120における配置位置が異なれば、インダクタンスセンサー120のインダクタンスに対する影響も異なる。
【0079】
図6Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る、例示的な透磁薄膜付きインダクタンスセンサーの簡略化概略構成図である。図6Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る、例示的な透磁薄膜付きインダクタンスセンサーの簡略化概略構成図である。
【0080】
本明細書では、インダクタンスセンサー120が下向きに屈曲することを例として、透磁薄膜125がスパイラルインダクタンスコイル121の上方(例えば、図6Aに示すように、透磁薄膜125が基板122の上側のスパイラルインダクタンスコイル121の表面)に設置される場合、スパイラルインダクタンスコイル121が下向きに屈曲した後に、スパイラルインダクタンスコイル121の左右両側の対応する導線間の左右方向における第1の接続線(すなわち、図6Aにおける破線)は、透磁薄膜125を通過せず、かつ屈曲角度が大きければ大きいほど、第1の接続線が透磁薄膜125から離れるため、有効透磁率が低下し、さらにスパイラルインダクタンスコイル121のインダクタンスが低下する。透磁薄膜125によるインダクタンス変化量ΔL透磁率とスパイラルインダクタンスコイル121の電流回路によって囲まれた平面の等価面積の低減によるインダクタンス変化量ΔL面積図3A及び図3Cを参照)とを加算して、インダクタンスセンサー120のインダクタンスの総変化量ΔL屈曲を取得することができる。この場合、インダクタンスの総変化量ΔL屈曲は、以下の式(3)に示すとおりであってもよい。
【0081】
ΔL屈曲=ΔL面積+ΔL透磁率。 (3)
【0082】
透磁薄膜125によるインダクタンス変化量ΔL透磁率とスパイラルインダクタンスコイル121の電流回路によって囲まれた平面の等価面積の低減によるインダクタンス変化量ΔL面積図3A及び図3Cを参照)とは、互いに相殺されるため、インダクタンスセンサー120のインダクタンスの総変化量ΔL屈曲が屈曲角度の増大に連れて増加してから減少することを引き起こす。この場合、インダクタンスの総変化量ΔL屈曲は、以下の式(4)に示すとおりであってもよい。
【0083】
ΔL屈曲=ΔL面積-ΔL透磁率。 (4)
【0084】
図6Cは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な正規化インダクタンス変化曲線概略図である。
【0085】
図6Cに示すように、曲線610、曲線620及び曲線630は、透磁薄膜125がスパイラルインダクタンスコイル121の上方に設置される場合、透磁薄膜125がない場合、透磁薄膜125がスパイラルインダクタンスコイル121の下方に設置される場合の正規化インダクタンスがインダクタンスセンサー120の屈曲角度に伴って変化する曲線をそれぞれ示す。図6Cから分かるように、透磁薄膜125がない場合(曲線620に対応する)又は透磁薄膜125をスパイラルインダクタンスコイル121の下方に設置する場合(曲線630に対応する)に対して、透磁薄膜125をスパイラルインダクタンスコイル121の上方に設置する場合(曲線610に対応する)、インダクタンスセンサー120の手部(例えば、指)の屈曲方向Nにおける感度を増大させるだけでなく、インダクタンスセンサー120に一定の方向選択性を持たせることができる。例えば、ユーザーが図6Aに示すインダクタンスセンサーを含むウェアラブルデバイスを装着する場合、手部が下向きに屈曲することを正方向屈曲と定義すると、この場合、インダクタンスセンサーのインダクタンスの総減少量は、式(3)に示すとおりである。手部が僅かに逆方向に屈曲する場合、インダクタンスセンサーのインダクタンスの総上昇量は、式(4)に示すとおりである。正方向に屈曲する場合と逆方向に屈曲する場合の総インダクタンスが異なるため、インダクタンスセンサー120は、一定の方向選択性を有する。
【0086】
いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー120は、ユーザーの手のひらの側に設置されてもよく、この場合、インダクタンスセンサー120の感度を向上させるために、透磁薄膜125は、スパイラルインダクタンスコイル121のユーザーの手部に近接する側を被覆してもよい。いくつかの実施例では、ユーザーの装着快適性を向上させるために、インダクタンスセンサー120は、ユーザーの手の甲に設置されてもよい。人体の指がモーションをする時には、通常、手のひらの方向に向かって屈曲するため、この場合、インダクタンスセンサー120の感度を向上させるために、透磁薄膜125は、スパイラルインダクタンスコイル121のユーザーの手部から離れた側を被覆してもよい。いくつかの実施例では、透磁薄膜125が被覆したスパイラルインダクタンスコイル121のユーザーの手部から離れた側は、図5に示すような上向きの側であってもよい。例えば、スパイラルインダクタンスコイル121は、基板122の上表面にあってもよく、透磁薄膜125は、上側保護層の上表面に直接的に貼り付けられてもよい。また、例えば、スパイラルインダクタンスコイル121は、基板122の下表面にあってもよく、透磁薄膜125は、基板122の上表面に直接的に貼り付けられてもよい。また、例えば、スパイラルインダクタンスコイル121は、基板122の上表面にあってもよく、透磁薄膜125は、スパイラルインダクタンスコイル121の上表面に直接的に設置されてもよく、つまり、透磁薄膜125は、スパイラルインダクタンスコイル121と上側保護層との間に設置されてもよい。また、例えば、スパイラルインダクタンスコイル121は、基板122の上表面にあってもよく、透磁薄膜125は、直接的に上側保護層を代替することができ、この場合、透磁薄膜125は、透磁性作用を果たすだけでなく、保護作用を果たすことができる。
【0087】
いくつかの実施例では、透磁薄膜125により被覆されたスパイラルインダクタンスコイル121は、基板122の片側に設置された単層のコイルを含むスパイラルインダクタンスコイルであってもよく、基板122の両側に設置された2層のコイルを含むスパイラルインダクタンスコイルであってもよく、2層以上のコイルを含むスパイラルインダクタンスコイルであってもよい。
【0088】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイス100は、基板122の上側又は下側に透磁薄膜125を設置することにより、インダクタンスセンサー120のインダクタンス絶対値を向上させ、インダクタンスセンサー120をより敏感にすることができる。同時に、インダクタンスセンサー120の磁界線の分布を制限することができ、それにより、外部金属等の環境干渉を遮蔽し、インダクタンスセンサー120の安定性を向上させる。また、インダクタンスセンサー120の屈曲感度に方向選択性を持たせることができる。
【0089】
図7Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの概略図である。
【0090】
図7Aに示すように、手部の異なる関節に対して、ウェアラブルデバイス700は、異なるインダクタンスセンサーを含んでもよい。例えば、ウェアラブルデバイス700におけるインダクタンスセンサーは、指関節インダクタンスセンサー721、指間隔インダクタンスセンサー722及び手首インダクタンスセンサー723を含んでもよい。指関節インダクタンスセンサー721は、指関節の背部及び/又は腹部に設置されてもよく、対応する指関節の屈曲角度を測定する。指間隔インダクタンスセンサー722は、隣接する2本の指の接続位置に設置されてもよく、隣接する2本の指の開き角度を測定する。手首インダクタンスセンサー723は、手首の背面、正面又は側面に設置されてもよく、手首の屈曲角度を測定する。インダクタンスセンサーの信号を読み取り、後続の処理を容易にするために、各インダクタンスセンサーは、導線(又はリード線)を介して読み取りユニットに接続されてもよい。読み取りユニット及び信号処理に関するより多くの説明については、図8又は図9及びそれらの説明を参照することができる。
【0091】
いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス700におけるインダクタンスセンサーに含まれた指関節インダクタンスセンサー721、指間隔インダクタンスセンサー722及び手首インダクタンスセンサー723には、差異があってもよい。また、指関節インダクタンスセンサー721のみについて、中手指節関節と指節間関節(近位指節間関節と遠位指節間関節を含む)に設置された指関節インダクタンスセンサー721同士には、差異があってもよい。具体的な差異は、インダクタンスセンサーの寸法差異、厚さ差異、屈曲可能な角度差異、感度差異等のうちの1つ以上を含んでもよい。例えば、中手指節関節に設置された指関節インダクタンスセンサー721の長さが長く、長さが小さすぎると、屈曲する時に屈曲した弧面を被覆することができないため、感度を大幅に低下させる。また、例えば、中手指節関節又は遠位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーに対して、近位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーが屈曲する時に被覆する必要がある面積が小さいため、近位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーの面積を大きくする必要がなく、長さを長くする必要がない。長さが長すぎると、遠位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーと、中手指節関節に設置された指関節インダクタンスセンサーとの間の隙間が小さすぎることを引き起こす可能性があり、限られた指長さの制限で、十分な指関節インダクタンスセンサーを配置することができないことを引き起こす可能性がある。
【0092】
指関節インダクタンスセンサー721及び手首インダクタンスセンサー723と比較して、指間隔インダクタンスセンサー722の屈曲角度がより大きい。したがって、指間隔インダクタンスセンサー722をより薄くて柔らかくする必要があり、例えば、その厚さが、2μm~20μmであってもよく、それにより、比較的自然に屈曲することができ、指間隔インダクタンスセンサー722の断裂及び人体の指間の不快感を引き起こすことがない。また、指間隔インダクタンスセンサー722は、より高い感度を必要とし、この感度は、非線形であってもよく(具体的には、図10及びその説明を参照)、かつ指間隔インダクタンスセンサー722の屈曲角度が大きくなるに連れて大きくなる。指間隔インダクタンスセンサーに関するより多くの説明については、図7B及び図7Cを参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0093】
プロセスについて、インダクタンスセンサーの基板の厚さを低減することにより、より薄く、より柔らかいインダクタンスセンサーを取得することができ、例えば、指間隔インダクタンスセンサー722の基板の厚さは、100μm以下(例えば、10μm、30μm、50μm、80μm等)に設定されてもよい。
【0094】
いくつかの実施例では、指関節インダクタンスセンサー721及び手首インダクタンスセンサー723は、薄すぎてはいけない。指関節インダクタンスセンサー721及び手首インダクタンスセンサー723が薄すぎると、人体の手の甲が伸びた時に、指関節インダクタンスセンサー721及び/又は手首インダクタンスセンサー723にしわが発生し、さらに指関節インダクタンスセンサー721及び/又は手首インダクタンスセンサー723の整合性に影響を与える可能性がある。例えば、指関節インダクタンスセンサー721及び手首インダクタンスセンサー723の基板の厚さは、200μm以上(例えば、250μm、300μm、350μm、400μm等)に設定されてもよい。
【0095】
いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス700におけるインダクタンスセンサーは、実際の需要(例えば、コストを低減すること)に応じて、図7Aに示すような一部のインダクタンスセンサーのみを含んでもよい。例えば、指関節インダクタンスセンサー721は、中手指節関節及び近位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーのみを含んでもよい。さらに、中手指節関節及び近位指節間関節に設置された指関節インダクタンスセンサーのモーション信号に基づいて、マッピングにより遠位指節間関節のモーション信号を推定して決定することができる。
【0096】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスにおいては、人の手部の異なる位置に寸法、厚さ、屈曲可能な角度及びインダクタンスがそれぞれ異なるインダクタンスセンサーを設置することにより、人の手のモーションをよりよく測定することができ、より優れた感度を有する。
【0097】
図7Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な指間隔インダクタンスセンサーの概略図である。図7Cは、図7Bに示す指間隔インダクタンスセンサーに対応する応用概略図である。
【0098】
いくつかの実施例では、隣接する指の間の夾角が非常に小さいため、指間隔インダクタンスセンサーの設置により装着不快感を必然的に引き起こす可能がある。したがって、指間隔インダクタンスセンサー722を2つのサブインダクタンスコイルL1及びL2に分割することにより、2つのサブインダクタンスコイルL1及びL2をリード線で直列接続することができ、それにより、装着快適性を向上させる。
【0099】
図7B及び図7Cに示すように、指間隔インダクタンスセンサー722は、リード線7223を介して直列接続された第1のサブインダクタンスコイル7221及び第2のサブインダクタンスコイル7222を含んでもよい。ユーザーが上記ウェアラブルデバイスを装着する場合、第1のサブインダクタンスコイル7221の電流方向と第2のサブインダクタンスコイル7222の電流方向は、同じである(例えば、いずれも時計回り又はいずれも反時計回りである)。
【0100】
第1のサブインダクタンスコイル7221のインダクタンスと第2のサブインダクタンスコイル7222のインダクタンスとは、電流が同じ方向に流れる場合、指間隔インダクタンスセンサー722の総インダクタンスLが第1のサブインダクタンスコイル7221のインダクタンスL71と、第2のサブインダクタンスコイル7222のインダクタンスL72と、第1のサブインダクタンスコイル7221及び第2のサブインダクタンスコイル7222の相互インダクタンス値Mとを加算した総和であることを保証することができ、以下の式(5)に示すとおりである。
【0101】
L=L71+L72+2M。 (5)
【0102】
Mは、指の夾角(指間隔)の変化に伴って変化し、指の夾角(指間隔)が大きければ大きいほど、Mの絶対値が大きくなり、それにより、総インダクタンスが変化し、さらに指の夾角(又は指間隔)の測定を実現する。
【0103】
いくつかの実施例では、指間隔インダクタンスセンサー722の総インダクタンスを増大させるために、第1のサブインダクタンスコイル7221及び/又は第2のサブインダクタンスコイル7222は、複数層のコイルを含んでもよい。
【0104】
いくつかの実施例では、第1のサブインダクタンスコイル7221及び第2のサブインダクタンスコイル7222の形状は、円形、矩形、正方形、正多角形等であってもよい。いくつかの実施例では、第1のサブインダクタンスコイル7221と第2のサブインダクタンスコイル7222とは、構成(形状、材質、寸法等を含む)が同じであってもよく、異なってもよい。例えば、第1のサブインダクタンスコイル7221と第2のサブインダクタンスコイル7222とは、形状及び材質が同じであってもよく、寸法(例えば、指に平行又は指に垂直な方向に沿った寸法)が異なってもよい。好ましくは、第1のサブインダクタンスコイル7221と第2のサブインダクタンスコイル7222とは、形状及び材質が同じであってもよく、寸法が同じであってもよい。いくつかの実施例では、指の寸法の差異によって異ならなければならない場合、第1のサブインダクタンスコイル7221と第2のサブインダクタンスコイル7222との寸法(指に平行又は指に垂直な方向に沿った寸法を含む)の相対的な差は、50%未満であるべきである。この場合、指間隔インダクタンスセンサーに高い感度を持たせるために、第1のサブインダクタンスコイル7221及び第2のサブインダクタンスコイル7222は、指間の夾角の頂点(指間回転軸と呼ばれてもよい)に対して対称に配置されてもよい。なお、指間の夾角の頂点は、指間接続位置の一定の領域範囲内にあってもよく、ある特定の点に限定されない。
【0105】
いくつかの実施例では、指の動きへの干渉を低減するとともに、ユーザーの装着快適性を向上させるために、リード線7223が通過する領域の幅は、2mmよりも小さくてもよい。好ましくは、リード線7223が通過する領域の幅は、1mmよりも小さくてもよい。
【0106】
リード線の長さは、指の寸法(異なるユーザーの指の寸法と同じユーザーの異なる指の寸法とを含む)に依存する。いくつかの実施例では、リード線7223の長さは、1cmよりも大きくてもよい。
【0107】
いくつかの実施例では、リード線7223は、直線、円弧線、折れ線、波線、曲線等の任意の適切なリード線であってもよい。いくつかの実施例では、リード線7223の設置位置は、図7B又は図7Cに示すインダクタンスコイルの下縁部であってもよい。いくつかの実施例では、リード線7223の設置位置は、インダクタンスコイルの上縁部、中間又は他の位置であってもよい。
【0108】
なお、上記分離型インダクタンスセンサーは、指関節インダクタンスセンサー721に適用することができる。例えば、指関節インダクタンスセンサー721は、リード線を介して直列接続された2つのインダクタンスコイルを含んでもよい。上記2つのインダクタンスコイルは、対応する指関節の両側にそれぞれ設置されてもよい。上記2つのインダクタンスコイルの指間の相互インダクタンス値は、指の屈曲角度の変化に伴って変化し、それにより、総インダクタンスが変化し、さらに指の屈曲角度の測定を実現する。
【0109】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスにおいては、ユーザーの指関節又は隣接する指の間に設置されたインダクタンスセンサーを、リード線を介して直列接続された2つのサブインダクタンスコイルに分割することにより、ユーザーの使用中の快適性を向上させることができ、細いリード線を用いて、リード線が通過する領域の幅を適当に設定することにより、指の動きへの干渉を低減するとともにユーザーの装着快適性をさらに向上させることができる。
【0110】
図8は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なウェアラブルデバイスの構成ブロック図である。図9は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な読み取りユニットの概略構成図である。
【0111】
図8に示すように、ウェアラブルデバイス800は、装着本体810と、インダクタンスセンサー820と、読み取りユニット830と、プロセッサ840とを含んでもよい。いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800は、直接的に人体に装着され、吊り下げられ、配置されるものであってもよく、ユーザーの衣服又はアクセサリに内蔵される携帯デバイスであってもよい。
【0112】
装着本体810は、ユーザーの特定の部位(例えば、関節部位、臓器位置等)を被覆するためのアセンブリであってもよい。例えば、装着本体810は、ユーザーの身体に密着するグローブ(例えば、グローブ110)、スポーツウェア、スポーツパンツ、膝サポータ、腕サポータ、肘サポータ、アームカバー等であってもよい。本明細書では、装着本体810がユーザーの関節部位を被覆することを例として説明するが、装着本体810は、ユーザーのモーションをキャプチャすることができる任意の位置を被覆することができることを理解されたい。いくつかの実施例では、ユーザーの関節部位は、手部関節(例えば、指関節、手首関節等)、肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足首関節等であってもよい。単なる例として、ユーザーの関節部位は、ユーザーの手部の関節である。
【0113】
いくつかの実施例では、装着本体810は、ウェアラブルデバイス800の他のアセンブリを載置することができる。例えば、装着本体810には、インダクタンスセンサー(センサーと略称される)820、読み取りユニット(読み取りシステムと呼ばれてもよい)830及びプロセッサ(処理回路と呼ばれてもよい)840が取り付けられてもよい。いくつかの実施例では、装着本体810は、ユーザーの関節部位に密着するように、柔軟でフィットする生地で構成されてもよい。例示的な生地は、純絹材料、綿麻材料、合成材料等を含んでもよい。いくつかの実施例では、装着本体810は、人体のモーションの変化に基づいて対応する変形を発生させることができる。例えば、ユーザーがしゃがむと、装着本体810(例えば、スポーツパンツの膝部)は、ユーザーの屈曲モーションに伴って、膝関節の外側に沿って延在屈曲し、膝関節の内側に沿って収縮屈曲する変形を発生させることができる。
【0114】
インダクタンスセンサー820は、ユーザーの特定の部位の変形を検出して電気信号に変換することができるアセンブリである。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820は、装着本体810における関節部位に対応する位置に取り付けられてもよい。例えば、インダクタンスセンサー820は、ユーザーの指、手首、膝、肩、肘等に接触する装着本体810の内側及び/又は外側に取り付けられてもよいいくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820は、縫合、紡績、圧着、接着、バックル等の方式で上記装着本体810の関節部位に対応する位置に固定されてもよい。
【0115】
いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820は、導電線(導線と略称される)によって囲まれたインダクタンス構造(例えば、スパイラルインダクタンスコイル121及び基板122を含む)を含んでもよい。いくつかの実施例では、ユーザーの特定の部位(例えば、関節部位)の変形により、インダクタンス構造も変形し、かつ変形に基づいて電気信号を生成することができる。例示的な電気信号は、インダクタンス、回路インピーダンス、位相、共振周波数等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。インダクタンス構造の他の具体的な説明について、本明細書の他の箇所、例えば、図2A及び図2B図4A図4C図5等及びそれらの説明を参照してもよい。
【0116】
読み取りユニット830は、センサーが検出した電気信号を出力するアセンブリであってもよい。読み取りユニット830は、インダクタンスセンサー820が収集したモーション信号を読み取り、かつ読み取られたモーション信号を(例えば、伝送ユニットにより)プロセッサ840に伝送して分析処理することができる。プロセッサ840は、インダクタンスセンサー820が収集したモーション信号の変化を分析処理し、かつインダクタンスセンサー820が収集したモーション信号を関節(例えば、指)の姿勢/角度等の情報に変換することができる。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820が生成した電気信号のタイプに基づいて、読み取りユニット830は、インダクタンス測定器、ボルタメーター、オシロスコープ、マルチメータ等の任意のデバイス又は組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、読み取りユニット830は、読み取りリード線を介してインダクタンスセンサー820のインダクタンス構造に接続されてもよい。いくつかの実施例では、装着本体810がグローブである場合、ユーザーの装着快適性のために、読み取りユニット830及びプロセッサ840は、グローブの手の甲に位置してもよい。いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800が複数のインダクタンスセンサーを同時に含む場合、読み取りユニット830は、1つ以上の読み取りユニットを有してもよい。各読み取りユニットは、少なくとも1つのインダクタンスセンサーのデータを読み取ることができる。例えば、各読み取りユニットは、1つのインダクタンスセンサーのデータを読み取ることができる。また、例えば、1つの読み取りユニットは、複数のインダクタンスセンサーのデータを同時に読み取ることができる。
【0117】
いくつかの実施例では、読み取りユニット830は、インピーダンス測定法を用いてインダクタンスセンサー820のインダクタンスデータを読み取ることができる。具体的には、読み取りユニット830は、LCRブリッジ回路又はインピーダンス測定回路を用いて、インダクタンスセンサー820のインピーダンス値又はインダクタンス値を直接的に測定してもよい。読み取りユニット830がインピーダンス測定回路を用いてインダクタンスセンサー820のインダクタンスデータを取得する場合、インピーダンスアナライザによって対応するインピーダンス変化を測定し、さらにインダクタンスセンサー820のインダクタンス値を推定し、その測定は、寄生容量による影響を回避することができる。
【0118】
いくつかの実施例では、読み取りユニット830は、共振測定法を用いてインダクタンスセンサー820のインダクタンスデータを読み取ることができる。共振測定法は、間接的な測定方法であり、インダクタンスセンサー820に1つのコンデンサを並列接続してLC共振システムを形成し、さらにLC共振システムに励起信号を送信し、該LC共振システムの共振周波数を測定することにより、インダクタンスセンサー820のインダクタンス値を推定することができる。いくつかの実施例では、励起信号とLC共振システムの共振周波数は、同じであってもよく、ほぼ同じであってもよい。励起信号とLC共振システムの共振周波数が近ければ近いほど、共振周波数の値を読み取りやすくなり、例えば、LC共振システムの共振周波数が100kHzである場合、10MHzの励起信号を送信すると、共振周波数と励起信号の周波数との差が大きすぎる(例えば、1桁より大きい)ため、LC共振システムの発振の振幅が小さすぎることを引き起こす可能性があり、LC共振システムの共振周波数を安定して正確に測定することができない。
【0119】
いくつかの実施例では、寄生容量のLC共振システムの共振周波数に対する影響を低減して耐干渉能力を向上させるために、インダクタンスセンサー820に並列接続されるコンデンサは、固定値が大きい(例えば、50pFよりも大きい)コンデンサであってもよい。単なる例として、図9に示すように、読み取りユニット830は、読み取りチップ(例えば、FDC2214チップ)及び電気容量C0を含んでもよい。読み取りチップは、LC共振システムに励起信号を送信し、LC共振システムの共振周波数を読み取り、インダクタンスセンサー820のインダクタンス値を推定することができる。コンデンサC0は、インダクタンスセンサー820に並列接続され、容量値がC0の固定値が大きいコンデンサである。この場合、該LC共振システムの共振周波数f0は、以下の式(6)に示すとおりであってもよい。
【0120】
【数2】
【0121】
式において、Lsは、インダクタンスセンサー820のインダクタンスであり、Csは、インダクタンスセンサー820の容量である。
【0122】
なお、共振測定法において、結果の安定性及び精度を向上させるために、並列接続容量値とLC共振システムのQ値(読み取りチップに依存する)を考慮する必要がある。並列接続容量値は、LC共振システムのQ値に反比例する。並列接続容量値が大きければ大きいほど、LC共振システムが受けた外部の容量干渉(例えば、人の手がインダクタンスセンサーに接触することによる寄生容量)が小さくなり、インダクタンスセンサーの信頼性が高くなる。しかしながら、Q値が小さければ小さいほど、測定された共振周波数の正確性が低くなる。いくつかの実施例では、並列接続容量値は、100pF~10nFの範囲内にあってもよく、対応するLC共振システムのQ値は、2~100の範囲内にあってもよい。
【0123】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスは、インダクタンスセンサー820に固定値が大きいコンデンサを並列接続し、さらに共振測定法によってLC共振システムの共振周波数を測定することにより、寄生容量のインダクタンスセンサー820の共振周波数に対する影響を低減し、耐干渉能力を向上させることができるとともに、並列接続容量値とLC共振システムのQ値を考慮することにより、ウェアラブルデバイスの耐干渉能力及び共振周波数の測定正確性を両立させることができる。いくつかの実施例では、プロセッサ840は、上記読み取りユニット830によって測定されたインダクタンス値又はインダクタンス変化を特徴づけることができる他のパラメータを受信して処理することができる。例えば、プロセッサ840は、インダクタンスセンサー820が生成した電気信号を、関節運動を反映するパラメータに変換するアセンブリであってもよい。いくつかの実施例では、関節運動を反映するパラメータは、関節の屈曲角度、関節の屈伸状況等を含んでもよい。本明細書における関節の屈曲角度は、関節の変形過程において、関節の両側の皮膚表面が形成した夾角であってもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820が生成した電気信号と関節運動情報との間には、対応関係があってもよく、プロセッサ840は、インダクタンスセンサー820が生成した電気信号の変化に基づいて、対応する関節部位にどのようなモーションが発生したかを判断することができる。センサーが生成した電気信号と関節運動情報との間の対応関係に関する具体的な説明について、図12及びその関連説明を参照することができる。いくつかの実施例では、プロセッサ840は、端末デバイスに接続されてもよい。例えば、プロセッサ840は、ナットワーク、データ線(データインタフェース)等を介して端末デバイスに接続されてもよい。プロセッサ840は、インダクタンスセンサー820が生成した電気信号(例えば、インダクタンス値、回路インピーダンス等)を処理して、関節運動を反映するパラメータを生成し、かつ端末デバイスに送信することができる。端末デバイスは、携帯電話、コンピュータ、又は他のスマートデバイスであってもよい。
【0124】
いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800は、振動フィードバックユニット(図示せず)をさらに含んでもよい。振動フィードバックユニットは、ユーザーの手部に仮想触感を提供することができる。例えば、振動フィードバックユニットは、プロセッサ840の処理結果を受信し、かつ処理結果に基づいてユーザーの手部に触感(例えば、振動、押圧等)を提供することができる。いくつかの実施例では、振動フィードバックユニットは、振動モータであってもよい。
【0125】
いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800は、位置決めユニット(図示せず)をさらに含んでもよい。位置決めユニットは、仮想空間へのアクセスを容易にするために、ウェアラブルデバイス800(例えば、グローブ)全体の空間座標(例えば、位置、傾斜角度)を位置決めすることができる。いくつかの実施例では、位置決めユニットは、多軸慣性センサー、磁気センサー等を含んでもよい。例示的な多軸慣性センサーは、3軸加速度計、3軸ジャイロスコープ、3軸磁気センサー等を含んでもよい。
【0126】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイス800は、振動フィードバックユニット及び位置決めユニットを用いることにより、メタバースにおいて人と仮想世界とのインタラクションフィードバックを実現する。
【0127】
なお、図8及び図9に関する以上の説明は、説明の目的のためのものに過ぎず、本願の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて様々な変更及び修正を行うことができる。例えば、いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800は、動作に必要な電圧をウェアラブルデバイス800に提供する電源モジュールをさらに含んでもよい。また、例えば、ウェアラブルデバイス800は、無線伝送ユニットをさらに含んでもよい。無線伝送ユニットによりウェアラブルデバイス800と外部デバイス(例えば、コンピュータ、携帯電話及びAR/VRホスト又はスマートグラス等のデバイス)とのデータインタラクションを実現する。いくつかの実施例では、無線伝送ユニットは、ブルートゥース(登録商標)通信を含んでもよく、wifi又は5G等の他の無線通信方式であってもよい。これらの変更及び修正は、本願の範囲から逸脱しない。
【0128】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイス800により、ユーザーの関節モーションを変化する電気信号に変換することができ、さらに関節運動を反映するパラメータを生成し、ユーザーのモーションを正確にキャプチャし、また、インダクタンスセンサー820は、装着本体810に直接的に集積されることにより、ウェアラブルデバイス800は、快適性及び通気性を持ち、製造コストが低い。また、インダクタンス構造からなるインダクタンスセンサー820は、形状の変化のみに応答し、モーションキャプチャ過程が温度、圧力、発汗等の要因による干渉を受けないようにし、モーションキャプチャの正確性、信頼性及びウェアラブルデバイス800のリサイクル性を向上させる。
【0129】
図10は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的なインダクタンスセンサーの概略構成図である。図10に示すように、インダクタンスセンサー820は、導電線1210によって囲まれたインダクタンス構造と、第1の読み取りリード線1225と、第2の読み取りリード線1227とを含んでもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820は、縫合、紡績、圧着、接着、バックル等の方式で装着本体810に固定されてもよい。
【0130】
いくつかの実施例では、導電線1210の材料は、導電線1210が関節の運動に伴って対応する変形を発生させることを保証するように、小さい応力の作用で弾性変形又は塑性変形を発生させることができる。例示的な導電線1210の材料は、銀、銅、アルミニウム、合金材料、複合材料等又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0131】
いくつかの実施例では、上記導電線1210は、紡績の方式で固定される伸縮可能な弾性導電性糸を含んでもよい。例えば、導電性糸は、装着本体の関節部位(例えば、指関節)に直接的に編むことができる。いくつかの実施例では、導電性糸は、装着本体の関節部位の内側及び/又は外側に編むことができる。伸縮可能な弾性導電性糸を紡績して固定することにより、ユーザーが装着する時の異物感を減少させ、ユーザー体験を向上させるとともに、固定の強固さを向上させ、センサーの脱落を回避することができる。インダクタンスセンサー820は、縫合、圧着、接着、バックル等の他の方式で装着本体に固定されてもよく、本明細書では、これを限定しないことを理解されたい。
【0132】
いくつかの実施例では、導電線1210の外部短絡を回避するとともに、導電線1210を保護する作用を果たすために、上記導電線1210の表面に少なくとも1層の絶縁材料を被覆することができる。例示的な絶縁材料は、ポリ塩化ビニル、架橋ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素プラスチック、絶縁生地、絶縁コロイド等の材料を含むことができる。絶縁材料は、接着、コーティング等又は他の方式で導電線1210を被覆することができる。
【0133】
いくつかの実施例では、導電線1210は、関節部位の周りにスパイラルインダクタンスパターンを形成してもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスパターンは、平面スパイラルインダクタンスパターンであってもよい。例えば、インダクタンスパターンの形状は、正方形、長方形、円形、多角形、半円形、円形、楕円形等の平面図形を含んでもよいが、これらに限定されない。そのスパイラル巻き方向は、時計回り又は反時計回りであってもよい。いくつかの実施例では、インダクタンス構造のインダクタンスは、以下の式(7)によって計算することができる。
【0134】
【数3】
【0135】
式において、Lは、インダクタンスであり、φは、磁束であり、μは、透磁率であり、Nは、コイル数(巻回数)であり、Sは、インダクタンスパターンにおいて磁力線が通過する有効面積であり、lは、コイルの長さである。上記式から分かるように、関節が伸びている時、インダクタンスパターンは、全面展開状態にあり(すなわち、インダクタンスパターンが装着本体に平らに広がっている)、この場合、有効面積Sが最も大きく、対応するインダクタンスLも最も大きい。関節が屈曲している時、インダクタンスパターンが屈曲状態になり(すなわち、インダクタンスパターンが部分的に変形する)、この場合、有効面積Sが減少し、対応するインダクタンスLも減少する。いくつかの実施例では、インダクタンスパターンが屈曲状態にある場合、インダクタパターンには、部分的な重なり、しわ、盛り上がり等が発生する可能性があるため、有効面積の変化は、非線形である。また、ユーザーに対して装着本体がフィットしないと、有効面積を非線形に変化させる可能性もある。したがって、ユーザーの関節が屈曲して変形する時、インダクタンスは、有効面積Sの変化に伴って非線形に変化する。
【0136】
いくつかの実施例では、上記スパイラルインダクタンスパターンは、1よりも大きい巻回数を有する。例えば、スパイラルインダクタンスパターンの巻回数は、2周、5周、10周、50周等であってもよい。好ましくは、スパイラルインダクタンスパターンの巻回数は、2周よりも大きい。
【0137】
いくつかの実施例では、上記スパイラルインダクタンスパターンは、長軸及び短軸を含んでもよい。本明細書では、対称のスパイラルインダクタンスパターンについて、上記長軸とは、スパイラルインダクタンスパターンの対称軸のうちの最も長い対称軸であってもよく、非対称のスパイラルインダクタンスパターンについて、上記長軸とは、スパイラルインダクタンスパターンの外周上の、最大距離を有する2点間の接続線であってもよい。対称のスパイラルインダクタンスパターンについて、上記短軸とは、スパイラルインダクタンスパターンの対称軸のうちの最も短い対称軸であってもよく、非対称のスパイラルインダクタンスパターンについて、上記短軸とは、スパイラルインダクタンスパターンの外周上の、最小距離を有する2点間の接続線であってもよい。いくつかの実施例では、長軸方向は、短軸方向に垂直であってもよい。いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820における長方形のスパイラルインダクタンスパターンの長軸方向及び短軸方向は、図10に示すとおりであってもよい。いくつかの実施例では、上記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、90度±20度の範囲内にあってもよく、短軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、±20度の範囲内にある。例えば、上記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、80度~100度の範囲内にあり、短軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、±10度の範囲内にある。また、例えば、上記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、85度~95度の範囲内にあり、短軸方向と関節の屈曲軸線との夾角は、±5度の範囲内にある。また、例えば、上記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向は、関節の屈曲軸線に垂直であり、短軸方向は、関節の屈曲軸線に平行である。いくつかの実施例では、関節の屈曲軸線とは、関節が変形する過程において全ての固定点が位置する直線であってもよい。
【0138】
いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820の感度を最適化するために、スパイラルインダクタンスパターンの形状は、長軸又は短軸に応じて対称に設計することができる。例えば、スパイラルインダクタンスパターンは、長軸及び短軸を対称軸とする矩形、円形、楕円形等であってもよい。
【0139】
いくつかの実施例では、インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における導電性糸の厚さが大きければ大きいほど、ユーザーが装着する時に生じる異物感が強くなり、大きい厚さは、導電性糸の変形に必要な応力を向上させ、関節が小さい幅のモーションをする時に、導電性糸がそれに応じて変形しにくい。ユーザーが上記ウェアラブルデバイス800を装着する時の快適性を向上させ、かつインダクタンスセンサー820の感度を向上させるために、インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における上記導電性糸の厚さは、3mm以下であってもよい。例えば、インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における導電性糸の厚さは、2.5mm、2mm、1.5mm、1mm等であってもよい。好ましくは、インダクタンスパターンの表面に垂直な方向における導電性糸の厚さは、2mmであってもよい。
【0140】
いくつかの実施例では、上記スパイラルインダクタンスパターンの内周と外周には、上記インダクタンス構造と読み取りユニット830とを接続する読み取りリード線がそれぞれ設置されてもよい。上記読み取りユニット830は、インダクタンス値を測定するか又はインダクタンス変化を特徴づけることができる他のパラメータ(例えば、回路インピーダンス、位相、共振周波数等)を計算することができる。いくつかの実施例では、図10に示すように、スパイラルインダクタンスパターンの内周は、導電線における第2の読み取りリード線1227に接続された部分であってもよい。スパイラルインダクタンスパターンの外周は、導電線における第1の読み取りリード線1225に接続された部分であってもよい。
【0141】
読み取りリード線は、導電線の一部(例えば、上記導電線の端部)であってもよい。図10に示すように、読み取りリード線は、第1の読み取りリード線1225及び第2の読み取りリード線1227を含んでもよい。いくつかの実施例では、読み取りリード線は、読み取りユニット830に接続されてもよい。例えば、読み取りリード線は、データインタフェースを介して読み取りユニット830に接続されてもよい。
【0142】
いくつかの実施例では、インダクタンスのQ値を向上させて、さらに測定の精度を向上させるために、インダクタンス構造の抵抗は、100Ωよりも小さくてもよい。例えば、インダクタンス構造の抵抗は、80Ωよりも小さくてもよい。また、例えば、インダクタンス構造の抵抗は、50Ωよりも小さくてもよい。また、例えば、インダクタンス構造の抵抗は、30Ωよりも小さくてもよい。また、例えば、インダクタンス構造の抵抗は、10Ωよりも小さくてもよい。
【0143】
図11は、本明細書のいくつかの実施例に係る、ユーザーが例示的なウェアラブルデバイスを装着する場合の概略図である。図11に示すように、ウェアラブルデバイスにおけるインダクタンスセンサー820は、上記装着本体の肩関節310、肘関節320及び膝関節330に対応する位置にそれぞれ取り付けられてもよい。
【0144】
いくつかの実施例では、インダクタンスセンサー820は、取り外し可能な方式で上記装着本体810に取り付けられてもよい。例えば、インダクタンスセンサー820は、接着、結束、バックル、マジックテープ(登録商標)等の他の形式で装着本体810に取り付けられてもよい。いくつかの実施例では、上記インダクタンス構造の寸法又は形状は、調整可能である。例えば、ユーザーの関節部位、例えば、腕の幅、肩の幅、膝の幅の大きさに応じて、インダクタンス構造の寸法は、関節部位の全ての可動位置を被覆するように適応的に調整することができる。いくつかの実施例では、インダクタンス構造の寸法は、余分なインダクタンス構造部分が押圧、ねじれ、重なり等により変形することによりインダクタンスの変化に対して誤差を与えることを回避するために、関節部位の大きさよりも僅かに小さくてもよい。
【0145】
いくつかの実施例では、同一の関節で、上記インダクタンスセンサー820は、それぞれ関節の内外両側に位置する2つのインダクタンス構造を含んでもよい。例えば、肘関節320について、インダクタンスセンサー820は、装着本体に対応する肘関節の外側に取り付けられた外関節インダクタンス構造と、装着本体に対応する肘関節の内側に取り付けられた内関節インダクタンス構造とを含んでもよい。いくつかの実施例では、同一の関節の外側に位置するインダクタンス構造の寸法は、ユーザーの関節の運動変形に適応するように、同一の関節の内側に位置するインダクタンス構造の寸法よりも僅かに大きくてもよい。いくつかの実施例では、少なくとも2つのインダクタンス構造が同一の関節のインダクタンス値を測定する場合、その最終的な測定結果は、上記2つのインダクタンス構造がそれぞれ測定した測定結果に基づく計算値(例えば、平均値、加重平均値等)であってもよい。例えば、膝が1回屈曲する場合、膝の外側のインダクタンス構造が外側インダクタンス値を測定し、膝の内側のインダクタンス構造が内側インダクタンス値を測定し、最終的な測定結果は、外側インダクタンス値と内側インダクタンス値との平均値又は加重平均値であってもよい。いくつかの実施例では、測定の精度を向上させるために、同一の関節に複数のインダクタンス構造を設置してもよい。少なくとも2つのインダクタンス構造が同一の関節のインダクタンス値を測定する場合、出力された複数のインダクタンス値をそれぞれ読み取りユニット830及びプロセッサ840によって処理して、複数の関節屈曲度数を取得し、上記複数の関節屈曲度数に対して平均値又は加重平均値を求め、上記平均値又は加重平均値を最終的な測定結果とすることができる。いくつかの実施例では、測定の正確性を向上させるために、インダクタンス構造の寸法、形状、密着位置等を変更して、インダクタンスセンサー820を校正又はテストすることができる。例えば、同一の関節に対して、長方形のスパイラルインダクタンスパターンのインダクタンス構造と楕円形のスパイラルインダクタンスパターンのインダクタンス構造とを使用して測定を行い、異なる関節屈曲角度で測定結果をそれぞれ校正することができる。
【0146】
なお、説明を容易にするために、図11は、装着本体810がスポーツウェア及びスポーツパンツである場合の例示的な概略構成図であり、また、装着本体810は、グローブ、腕サポータ、肘サポータ、膝サポータ、肩サポータ等の他の形態のアセンブリであってもよく、その機能及び原理は、スポーツウェア及びスポーツパンツに類似し、当業者は、本明細書の解決手段を理解する前提で、該解決手段を任意の適切なシーンに適用することができる。
【0147】
図12は、本明細書のいくつかの実施例に係る、非装着状態でインダクタンス構造の屈曲角度に伴って変化する、スパイラルインダクタンスパターンを有する例示的なインダクタンス構造のインダクタンス値の曲線概略図である。図12に記載のインダクタンス構造の屈曲角度は、非装着状態で、インダクタンス構造が短軸方向(例えば、図10における短軸方向)に沿って折り畳まれる過程において、インダクタンス構造の2つの表面が形成する夾角である。図12に示すように、インダクタンス構造に1Vの電圧を印加し、1kHzの交流電流を通電する場合、インダクタンス構造の屈曲角度が逓増することに伴って、スパイラルインダクタンスパターンを有するインダクタンス構造のインダクタンス値は、非線形に逓増する。さらに、インダクタンス構造の屈曲角度が30°である場合、インダクタンス値は、3.99μHである。インダクタンス構造の屈曲角度が60°である場合、インダクタンス値は、4.52μHである。インダクタンス構造の屈曲角度が90°である場合、インダクタンス値は、4.79μHである。インダクタンス構造の屈曲角度が120°である場合、インダクタンス値は、4.94μHである。インダクタンス構造の屈曲角度が150°である場合、インダクタンス値は、5.02μHである。インダクタンス構造の屈曲角度が180°である場合、インダクタンス値は、5.05μHである。いくつかの実施例では、インダクタンス構造のリサイクル性をテストするために、同一のインダクタンス構造に対して繰り返し測定を複数回(例えば、N回)行ってもよい。図12に示すように、複数回の測定の結果から分かるように、異なる測定過程において、同じインダクタンス構造の屈曲角度は、同じインダクタンス値に対応し、N回屈曲した後のインダクタンス値-屈曲角度の関係曲線は、常に一致する。したがって、上記インダクタンス構造のインダクタンス値は、材料の複数回の使用又は温度等の要因によってシフトせず、優れたリサイクル性を有する。
【0148】
いくつかの実施例では、スパイラルインダクタンスパターンを有するインダクタンス構造のインダクタンス値は、装着状態で関節屈曲角度に応じて同様に一対一の対応関係を有する。例えば、肘関節の運動については、肘に対するセンサーを用い、インダクタンス構造に1Vの電圧を印加し、1kHzの交流電流を通電する場合、関節屈曲角度が180°である(すなわち、手部が平らに伸びる)場合、インダクタンス値は、3.91μHである。関節屈曲角度が90°である場合、インダクタンス値は、2.91μHである。関節屈曲角度が50~60°である場合、インダクタンス値は、2.03μHである。
【0149】
いくつかの実施例では、装着後にウェアラブルデバイス及びインダクタンスパターンの変形を引き起こすため、同じインダクタンス構造に対して、装着及び非装着状態で、同じ屈曲角度(例えば、非装着状態でのインダクタンス構造の屈曲角度が装着状態での関節屈曲角度に等しい)が異なるインダクタンス値に対応する可能性がある。したがって、運動状態をより正確に測定するために、ユーザーが運動状態を測定する前に、まずインダクタンス構造を校正し、上記ユーザーに対応する関節屈曲程度及びインダクタンス値の変化曲線を取得することができる。例えば、ユーザーに異なる関節屈曲角度でそれぞれ関節を屈曲させ、それに対応するインダクタンス値を測定し、カーブフィッティングを行って、上記ユーザーの関節屈曲程度及びインダクタンス値の変化曲線を取得する。いくつかの実施例では、体型が異なるため、異なるユーザーが同じインダクタンス構造を装着する場合、同じ関節屈曲角度が異なるインダクタンス値に対応する可能性がある。したがって、異なる人の運動状態をより正確に測定するために、各ユーザーが運動状態を測定する前に、まずインダクタンス構造を校正して、各ユーザーに対応する関節屈曲程度及びインダクタンス値の変化曲線を取得することができる。例えば、各ユーザーに異なる関節屈曲角度でそれぞれ関節を屈曲させ、それに対応するインダクタンス値を測定し、カーブフィッティングを行って、上記ユーザーの関節屈曲程度及びインダクタンス値の変化曲線を取得する。後続の該ユーザーの運動状態の測定過程において、上記関節屈曲程度及びインダクタンス値の変化曲線に基づいて正確な運動状態の測定を実現することができる。
【0150】
差異性を有する異なる関節部位での運動状態を測定するために、いくつかの実施例では、異なる関節部位でのインダクタンス構造の屈曲角度とそれに対応するインダクタンス値との対応関係(すなわち、非線形変化関係)は、異なってもよい。例えば、膝関節の運動状態をより正確に測定するために、肘関節と比較して、膝関節部位でのインダクタンス構造と肘関節部位でのインダクタンス構造とは、異なる巻回数、有効面積、及び/又はコイル長さを有してもよく、それにより、膝関節部位でのインダクタンス構造は、肘関節部位でのインダクタンス構造と比較して、同じ関節屈曲角度でより大きいインダクタンス値を生成する。
【0151】
いくつかの代替可能な実施例では、処理を容易にして、処理回路又は処理装置の処理負荷を低減するために、異なる関節部位でのインダクタンス構造は、同じ関節屈曲角度で等しい又はほぼ等しいインダクタンス値を生成することができる。例えば、膝関節部位でのインダクタンス構造を大きな有効面積と少ない巻回数を有するように設計し、肘関節部位でのインダクタンス構造を小さな有効面積と大きい巻回数を有するように設計することにより、膝関節と肘関節部位でのインダクタンス構造の屈曲角度とそれに対応するインダクタンス値が同じ又はほぼ同じ非線形変化関係を呈するようにすることができ、処理回路又は処理装置の後続の処理を容易にする。
【0152】
本明細書のいくつかの実施例には、上記ウェアラブルデバイス800及び処理装置を含むセンシングシステムがさらに開示されている。上記処理装置は、上記ウェアラブルデバイス800に無線接続され、関節運動を反映するパラメータを生成することができる。いくつかの実施例では、処理装置は、ウェアラブルデバイス800における読み取りユニット830によって読み取られた情報をさらに処理することができる。例えば、同一の関節の内外両側を測定するインダクタンスセンサー820が測定した複数のインダクタンス値の平均値又は加重平均値を計算し、かつ算出されたインダクタンス値に基づいて、関節運動を反映するパラメータ等を決定する。いくつかの実施例では、関節運動を反映するパラメータは、関節の屈曲角度、関節の屈伸状況等を含んでもよい。いくつかの実施例では、処理装置が関節運動を反映するパラメータを生成する過程は、ウェアラブルデバイス800におけるプロセッサ840が関節運動を反映するパラメータを生成する過程と同様であってもよい。いくつかの実施例では、ウェアラブルデバイス800におけるプロセッサ840は、読み取りユニット830が読み取られた情報に対して前処理(例えば、同一の対応に対応するインダクタンス値の平均値又は加重平均値を求める)を行ってから、前処理結果を処理装置に送信して、関節運動を反映するパラメータを決定することができる。
【0153】
本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスによって達成され得る有益な効果は、以下を含むが、これらに限定されない。(1)本明細書のいくつかの実施例に係るウェアラブルデバイスにより、ユーザーの関節モーションを変化する電気信号に変換することができ、さらに関節運動を反映するパラメータを生成して、ユーザーのモーションを正確にキャプチャする。(2)基板にスパイラルインダクタンスコイルを形成することによりインダクタンスセンサーを製造することができ、ウェアラブルデバイスは、製造しやすく、コストが低い。(3)フレキシブル材質を用いることにより、薄膜式フレキシブルインダクタンスセンサーを製造することができ、装着が快適である。(4)インダクタンスセンサーは、形状の変化のみに応答するため(例えば、その検出結果は、そのインダクタンス値のみに関連してもよい)、ウェアラブルデバイスの温度、湿度、圧力、汗等の外部要因に対する耐干渉能力を向上させ、モーションキャプチャの正確性、信頼性及びウェアラブルデバイスのリサイクル性を向上させる。(5)インダクタンスセンサーにおけるスパイラルインダクタンスコイルのコイル数、及びスパイラルインダクタンスコイルによって囲まれた領域の寸法を調整し、透磁薄膜を追加することにより、ウェアラブルデバイスの感度を向上させることができる。
【0154】
以上、基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記詳細な開示は、単なる例として提示されているものに過ぎず、本願を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本願に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本願によって示唆されることが意図されているため、依然として本願の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【符号の説明】
【0155】
100 ウェアラブルデバイス
110 グローブ
120 インダクタンスセンサー
121 スパイラルインダクタンスコイル
123 信号引き出し端子
1231 第1の信号引き出し端子
1232 第2の信号引き出し端子
124 保護層
125 透磁薄膜
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの関節部位を被覆する装着本体と、
導電線によって囲まれたインダクタンス構造を含む少なくとも1つのインダクタンスセンサーと、を含み、前記インダクタンス構造は、導電線のコイル数が2以上であるスパイラルインダクタンスコイルを含み、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記装着本体における前記関節部位に対応する位置に取り付けられ、前記インダクタンス構造は、前記関節部位の変形に伴って変化するインダクタンスを発生させ
前記装着本体は、グローブを含み、ユーザーがウェアラブルデバイスを装着する場合、前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーの少なくとも一部は、前記ユーザーの手部のモーション信号を収集するように、前記ユーザーの手部の関節に位置し、
前記インダクタンス構造の抵抗は、100Ωよりも小さい、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記導電線は、前記関節部位の周りにスパイラルインダクタンスパターンを形成し、前記スパイラルインダクタンスパターンの表面に垂直な方向における前記導電線の厚さは、3mm以下である、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記スパイラルインダクタンスパターンの長軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、90度±20度の範囲内にあり、前記スパイラルインダクタンスパターンの短軸方向と対応する関節の屈曲軸線との夾角は、±20度の範囲内にある、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記スパイラルインダクタンスコイルにおける前記導電線は、紡績の方式で固定される伸縮可能な弾性導電性糸を含む、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記スパイラルインダクタンスコイルにおける前記導電線の導電線幅は、2mm以下であり、前記導電線の導電線隙間は、2mm以下である、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置するための基板をさらに含み、前記基板は、前記スパイラルインダクタンスコイルの内層コイルを第1の信号引き出し端子に引き出すための貫通孔を含み、前記第1の信号引き出し端子と前記スパイラルインダクタンスコイルの外層コイルに接続された第2の信号引き出し端子とは、前記基板の同一の表面に位置する、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記スパイラルインダクタンスコイルを載置するための基板をさらに含み、前記スパイラルインダクタンスコイルは、少なくとも第1層のコイル及び第2層のコイルを含み、
前記第1層のコイル及び前記第2層のコイルは、前記基板に垂直な方向に積層して設置され、
前記第1層のコイルの電流方向と前記第2層のコイルの電流方向は、同じである、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記第1層のコイルと前記第2層のコイルは、前記基板の両側にそれぞれ設置され、前記基板には、貫通孔が形成され、前記第1層のコイルと前記第2層のコイルはそれぞれ、前記貫通孔を貫通する同一の導線により形成される、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手の甲に設置され、
前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部から離れた側を被覆する透磁薄膜をさらに含む、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、前記ユーザーの手のひらに設置され、
前記スパイラルインダクタンスコイルの前記ユーザーの手部に近接する側を被覆する透磁薄膜をさらに含む、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項11】
前記透磁薄膜の厚さは、10~500μmである、請求項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのインダクタンスセンサーは、
指関節の背部又は腹部に設置され、対応する指関節の屈曲角度を測定する指関節インダクタンスセンサー、
隣接する2本の指の接続位置に設置され、前記隣接する2本の指の開き角度を測定する指間隔インダクタンスセンサー、或いは
手首の背面、正面又は側面に設置され、手首の屈曲角度を測定する手首インダクタンスセンサーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項13】
前記指関節インダクタンスセンサー及び前記手首インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、その対応する関節の回転軸に対して対称である、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項14】
前記指関節インダクタンスセンサー及び前記指間隔インダクタンスセンサーのうちの少なくとも1つは、リード線により直列接続された第1のサブインダクタンスコイル及び第2のサブインダクタンスコイルを少なくとも含み、
ユーザーが前記ウェアラブルデバイスを装着する場合、前記第1のサブインダクタンスコイルの電流方向と前記第2のサブインダクタンスコイルの電流方向は、同じである、請求項12に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項15】
前記リード線が通過する領域の幅は、2mmよりも小さく、前記リード線の長さは、1cmよりも大きい、請求項14に記載のウェアラブルデバイス。
【国際調査報告】