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特表2025-504158CMC縫合懸垂関節形成術のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】CMC縫合懸垂関節形成術のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
A61B17/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546299
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 US2023012518
(87)【国際公開番号】W WO2023150386
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/267,655
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520075627
【氏名又は名称】エクソームド コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EXSOMED CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】シャンペイン,ロイド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】エームケ,ラリー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL37
4C160LL59
(57)【要約】
親指関節炎を治療するための外科用キットシステム及びそれを使用する方法が本明細書で提供される。外科用キットシステムは、スペーサと、ストランドと、第1の固定機構と、第2の固定機構とを含む。スペーサは、親指中手骨と人差指中手骨との間の衝突を予防するために、親指中手骨と人差指中手骨との間に配置されるように構成される。ストランドは、親指中手骨を懸架するために、それぞれ第1及び第2の固定機構によって第2及び第1中手骨に固定されるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指関節炎を治療する方法であって、
ストランドの第1の部分を人差指中手骨に固定することと、
前記ストランドに沿ってスペーサを配置することと、
前記ストランドの第2の部分を親指中手骨に固定することと、
を含み、
前記スペーサが、前記親指中手骨と前記人差指中手骨との間に配置されて、前記親指中手骨と前記人差指中手骨との間の衝突を予防する、方法。
【請求項2】
前記親指中手骨に孔を開けることと、
前記ストランドの第2の部分を前記親指中手骨の前記孔に通すことと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストランドの前記第1の部分及び/又は前記ストランドの前記第2の部分の前記固定が、1つ又は複数の固定機構を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストランドに少なくとも1つの結び目を作ることをさらに含み、前記少なくとも1つの結び目が、前記親指中手骨と前記人差指中手骨との間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ストランドの前記第1の部分に結び目を作ることと、
前記結び目を前記人差指中手骨の孔に挿入することと、
固定機構を前記人差指中手骨の前記孔に挿入することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2のストランドの第1の部分を、前記ストランドの前記第1の部分が固定される第2の位置の上方の第1の位置で、前記人差指中手骨に固定することと、
前記第2のストランドの前記第2の部分を前記親指中手骨に固定することと、
をさらに含み、
前記人差指中手骨、前記スペーサ及び前記第2のストランドが、三角形の形状を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサが、プラスチック材料、金属材料、織縫合糸、織物及び生体学的材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ストランドが、その厚さよりも大きい幅を有するテープを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スペーサが結び目を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記結び目が、オーバーハンドノット、本結び及び外科結びのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
親指関節炎を治療するための外科用キットシステムであって、
親指中手骨と人差指中手骨との間に配置されるように構成されたスペーサと、
前記人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と前記親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分とを有するストランドと、
前記ストランドの前記第1の部分を前記人差指中手骨に固定するように構成された第1の固定機構と、
前記ストランドの前記第2の部分を前記親指中手骨に固定するように構成された第2の固定機構と、
を具備する、外科用キットシステム。
【請求項12】
前記第1の固定機構及び/又は前記第2の固定機構が縫合糸アンカーを具備する、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項13】
前記第1の固定機構及び/又は前記第2の固定機構がフリップボタンである、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項14】
前記ストランドが縫合糸材料を含む、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項15】
前記ストランドが、その厚さよりも大きい幅を有するテープを含む、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項16】
前記スペーサが、プラスチック材料、金属材料、織縫合糸、織物及び生体学的材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項17】
前記スペーサがカニューレ状である、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項18】
前記人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と、前記親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分と、を有する第2のストランドをさらに具備し、
前記人差指中手骨、前記スペーサ及び前記第2のストランドが三角形の形状を形成するように、前記第2のストランドの前記第1の部分は、該ストランドの前記第1の部分が固定される第2の位置の上方の第1の位置で前記人差指中手骨に固定されるように構成される、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項19】
前記スペーサが結び目を含む、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【請求項20】
前記スペーサの形状が、円柱、立方体、直方体、球体、楕円体、円錐、トーラス及び八面体のうちの1つである、請求項11に記載の外科用キットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2022年2月7日に出願された米国仮特許出願第63/267,655号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
手根中手骨(CMC)関節は、親指の基部を形成し、第1中手骨としても知られる親指の中手骨が大菱形骨に付着する場所である。軟骨は骨の基部に見られ、クッションとして作用し、骨が互いに滑らかに滑ることを可能にする。親指の関節炎又はCMC関節炎は、軟骨がCMC関節の骨の端部から摩耗するときに生じる一般的な問題である。軟骨がないと、親指中手骨と大菱形骨が互いに直接擦れ合い、重度の痛み、腫脹、及び、親指の強度の低下を引き起こす可能性がある。
【0003】
CMC関節炎の治療は、空間を作り出し、親指中手骨と大菱形骨との間の骨と骨との相互作用を防止する、大菱形骨切除術と呼ばれる処置における大菱形骨の除去を含むことができる。しかしながら、大菱形骨の除去は、他の問題を引き起こす可能性がある。第1に、親指中手骨は舟状骨上に陥没することがあり、これは親指中手骨沈下と呼ばれる。この問題を改善するために、外科医は、大菱形骨の代わりに天然又は合成材料を移植することができる。しかしながら、現在の方法は、親指中手骨の近位移動を引き起こし、親指中手骨と人差指中手骨とを互いに擦れ合わせることがあり、これは衝突として知られている。親指関節炎を治療し、衝突及び沈下の両方を防止する装置又は方法は、現在のところ存在しない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、親指関節炎を治療し、親指中手骨と人差指中手骨の間の衝突を予防するための新規かつ革新的な外科用キットシステム及びそれを使用するための方法を提供する。いくつかの例では、患者の親指関節炎を治療及び/又は予防する方法が提供される。この方法は、ストランドの第1の部分を人差指中手骨に固定することと、ストランドに沿ってスペーサを配置することと、ストランドの第2の部分を親指中手骨に固定することとを含む。スペーサは、親指中手骨と人差指中手骨との間の衝突を予防するために、親指中手骨と人差指中手骨との間に配置される。方法は、親指中手骨にストランドを固定する前に、親指中手骨を貫通する孔を開けて、ストランドの第2の部分を親指中手骨の孔に通すことをさらに含むことができる。
【0005】
いくつかの例では、外科用キットシステムが提供される。外科用キットシステムは、スペーサと、ストランドと、第1の固定機構と、第2の固定機構とを含む。スペーサは、人差指中手骨と親指中手骨との間に配置されるように構成される。ストランドは、第1の部分と第2の部分とを含む。ストランドの第1の部分は、第1の固定機構によって人差指中手骨に固定されるように構成され、ストランドの第2の部分は、第2の固定機構によって親指中手骨に固定されるように構成される。
【0006】
開示された外科用キットシステム及び方法の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面に記載され、それらから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【0008】
図2図2は、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【0009】
図3A図3Aは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【0010】
図3B図3Bは、図3Aの外科用キットシステムのストランドの第1の部分の拡大図であり、ストランドの第2の部分が第1の部分の孔を通して供給される。図3Bでは、図3Aの外科用キットシステムのスペーサは、説明のために省略されている。
【0011】
図4A図4Aは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
図4B図4Bは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【0012】
図5A図5Aは、本開示の一例による例示的な方法を示す図である。
図5B図5Bは、本開示の一例による例示的な方法を示す図である。
図5C図5Cは、本開示の一例による例示的な方法を示す図である。
【0013】
図6図6は、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
【0014】
図7A図7Aは、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
図7B図7Bは、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
図7C図7Cは、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
【0015】
図8A図8Aは、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
図8B図8Bは、本開示の別の例による例示的な方法を示す図である。
【0016】
図9図9は、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【0017】
図10A図10Aは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
図10B図10Bは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
図10C図10Cは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、親指関節炎を治療し、第1中手骨と第2中手骨との間の衝突を予防するためのシステム及び方法を対象とする。本開示によるシステム及び方法はまた、親指中手骨沈下を防止することができる。
【0019】
図1は、本開示の一例による例示的な外科用キットシステム100を示す。本開示の外科用キットシステム100は、スペーサ110及びストランド120を含むことができる。いくつかの例では、スペーサ110は、第1(親指)中手骨10と第2(人差指)中手骨20との間に介在を提供するように構成されてもよい。
【0020】
ストランド120は、大菱形骨の除去後に第1中手骨10が舟状骨30上に陥没するのを防止するために、スペーサ110を定位置に保持し、第1中手骨を懸架するように構成されてもよい。ストランド120は、第1の部分と第2の部分とを含み得る。いくつかの例では、ストランド120の第1の部分は、第2中手骨20に固定されるように構成されてもよく、一方、ストランド120の第2の部分は、第1中手骨10に固定されるように構成されてもよい。
【0021】
ストランド120は、任意の適切な長さであってよく、ストランド120の所望の長さ及び所望の張力に応じて、処置中にトリミングすることができる。ストランド120の張力は、親指の外転又は親指が指の正中線からどれだけ広がることができるかなど、親指の動きを変えることができる。いくつかの例では、ストランド120の長さは、すべての外科用キットシステムを通して同じであってもよい。他の例では、ストランド120の長さは、外科用キットシステムが設けられる特定の患者に合わせて調整することができる。
【0022】
ストランド120の非限定的な例は、紐、糸、ロープ、ワイヤ、テープ、ロッド及び縫合糸を含むことができる。ストランド110は、任意の適切な生体適合性/医療グレードの材料で構築することができ、又は、それを含むことができる。例えば、ストランド120は、(非吸収性)縫合糸材料などの可撓性材料で作られてもよく、又は、可撓性材料を含んでもよい。縫合糸材料の非限定的な例は、ナイロン、プロレン、シルク、ポリエステル又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0023】
いくつかの例では、ストランド120は、厚さよりも幅が大きいテープの形態であってもよい。いくつかの例では、テープの幅と厚さとの比は、約2:1~約10:1、例えば、約2:1~約4:1、約4:1~約6:1、約6:1~約8:1又は約8:1~約10:1の範囲であってもよい。他の例では、テープの幅と厚さとの比は、任意の他の適切な範囲を有してもよい。ストランド120がテープの形態である場合、ストランド120は、紐/ワイヤの形態のストランド120よりも、骨(例えば、第1/第2中手骨)、骨の周囲の組織、及び/又は、スペーサ110を通して、切断しにくい可能性がある。
【0024】
いくつかの例では、ストランド120の幅は、約1mm~約10mm、例えば、約1mm~約3mm、約3mm~約5mm、約5mm~約7mm又は約7mm~約10mmの範囲であってもよい。いくつかの例では、ストランド120の厚さは、約0.1mm~約2.0mm、例えば、約0.1mm~約0.5mm、約0.5mm~約1.0mm、約1.0mm~約1.5mm、約1.5mm~約2.0mmの範囲であってもよい。他の例では、ストランド120は、任意の他の適切な幅及び/又は長さを有することができる。
【0025】
ストランド120は、親指の動きに関連付けられた力に耐えるのに十分な引張強度を有することができる。いくつかの例では、ストランド120の引張強度は、約10N~約880N、例えば、約10N~約110N、約110N~約220N、約220N~約330N、約330N~約440N、約440N~約550N、約550N~約660N、約660N~約770N又は約770N~約880Nの範囲内であってもよい。他の例では、ストランド120は、任意の他の適切な引張強度を有してもよい。
【0026】
スペーサ110は、スペーサ110が第1中手骨と第2中手骨との間に位置するように、ストランド120に沿って配置されてもよい。この配置は、2つの骨の間に介在及び緩衝を提供することができ、第1中手骨と第2中手骨との衝突を予防することができる。
【0027】
いくつかの例では、スペーサ110は、ストランド120がスペーサ110の貫通孔115を貫通するようにカニューレ状であってもよい。他の例では、スペーサ110は、ストランド120に結び付けられてもよい。例えば、ストランド120は、スペーサ110の外面の周りに巻き付けられてもよい。
【0028】
スペーサ110の形状の非限定的な例は、円柱、プリズム、立方体、直方体、球体、楕円体、円錐、トーラス、八面体及び円盤を含むことができる。他の例では、スペーサ110は、定義された形状を有さなくてもよく、又は、任意の他の適切な形状を有してもよい。スペーサ110は、その長さに沿って対称又は非対称であってよい。
【0029】
いくつかの例では、スペーサ110は、硬質プラスチック、金属又はそれらの任意の組み合わせなどの剛性材料で作製されてもよく、又は、それらを含んでもよい。例えば、スペーサ110は、適切な金属(例えば、コバルト、ノチノール(ニッケルチタン)、ステンレス鋼)及び/又は適切なプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸コポリマー、ポリグリコール酸コポリマー)で作製されてもよく、又は、それらを含んでもよい。
【0030】
他の例では、スペーサ110は、織物のような軟質材料で作製されてもよく、又は、それを含んでもよい。テキスタイル材料は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は任意の他の適切な生体適合性グレードの材料或いはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、スペーサ110は、生物学的材料で作製されてもよく、又は、それを含んでもよい。生物学的材料は、コラーゲン、(同種移植)腱、筋肉、脂肪、皮膚、又は、任意の他の適切な関節介在材料又はそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、スペーサ110は、ポリウレタンウレア、シリコーン及びパイロカーボンなどの任意の他の適切な移植可能な材料から作製されてもよい。スペーサ110は、本明細書に記載の材料の組み合わせから作製することができる。いくつかの例では、スペーサ110は、(織られた)縫合糸で作製されてもよい。
【0031】
いくつかの例では、スペーサ110はすべての患者のサイズに対応するものであってもよい。他の例では、スペーサ110は、第1及び第2中手骨のサイズ及びそれらの間の空間などの患者の解剖学的構造に基づくカスタムサイズであってもよい。医師又は外科医は、X線などの任意の適切な手段によって患者の解剖学的構造を決定することができる。
【0032】
いくつかの例では、スペーサ110の幅は、約1mm~約10mm、例えば、約1mm~約3mm、約3mm~約5mm、約5mm~約7mm又は約7mm~約10mmの範囲の長さであってもよい。他の例では、スペーサ110は、任意の他の適切な長さを有することができる。
【0033】
いくつかの例では、外科用キットシステム100は、ストランド120を骨に固定するための1つ又は複数の固定機構をさらに含むことができる。1つ又は複数の固定機構は、例えば、ストランドを引き裂いたり損傷させたりすることなく、ストランド120を骨に固定するように構成されてもよい。固定機構の非限定的な例は、ねじ(例えば、腱固定ねじ)、(ねじ付き)縫合糸アンカー、ボタン、フリップボタン又はストランド120を骨に固定することができる任意の他の適切な構成要素/装置などの締結具(例えば、ストランド120を切断/損傷することなくストランド120を骨に固定することができる任意の締結具)を含む。いくつかの例では、固定機構は、適切な金属、プラスチック又はそれらの組み合わせから作製されるか、それらを含むことができる。他の例では、固定機構は、縫合糸材料などの任意の適切な生体適合性/医療グレードの材料から作製されるか、又は、それを含むことができる。固定機構は、本明細書に記載の材料の組み合わせから作製することができる。
【0034】
いくつかの例では、1つ又は複数の固定機構は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨に固定するように構成された第1の固定機構と、ストランド120の第2の部分を第1中手骨に固定するように構成された第2の固定機構とを含み得る。第1及び第2の固定機構は、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
いくつかの例では、第1の固定機構は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨20の橈骨側又は第2中手骨20の尺骨側に固定することができる。他の例では、第1の固定機構は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨20の任意の他の適切な部分に固定してもよい。
【0036】
いくつかの例では、第1中手骨10は、ストランドを受け入れるように構成された孔15を含んでもよい。いくつかの例では、ストランド120の第2の部分は、図1に示すように、第1中手骨10の孔15に貫通されてもよい。いくつかの例では、ストランド120の第2の部分を孔に通す代わりに、ストランド120の第2の部分は、第1中手骨10の下に吊り下げられ、第1中手骨10の下のスリングとして機能し、第1中手骨10の橈骨側に固定されてもよい。
【0037】
図2は、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステム200を示す。外科用キットシステム200は、スペーサ210及びストランド220を含むことができる。図2に示すように、いくつかの例では、ストランド220を第2中手骨20の周りに巻き付けることによって、ストランド220を第2中手骨20に固定することができる。このようにしてストランド120を固定すると、ストランドの2つの部分(第3の部分222及び第4の部分224)が第2中手骨20の橈骨側から突出することになり得る。いくつかの例では、ストランド120の第3及び第4の部分222、224の両方は、図2Aに示すようにスペーサ110に通されてもよい。他の例では、ストランド220の第3及び第4の部分222、224の両方を使用して、スペーサ210をストランド220に結び付けることができる。
【0038】
いくつかの例では、ストランド220の第3の部分222は、第1中手骨10の孔15に通されてもよく、ストランド120の第4の部分224は、孔15に通されなくてもよい。他の例では、ストランド220の第3及び第4の部分222、224の両方は、第1中手骨10の孔15に通されても通されなくてもよい。
【0039】
いくつかの例では、ストランド220の第3及び第4の部分222、224は、例えば、第1中手骨10の周りに第3及び第4の部分222を巻き付けることによって、又は、1つ又は複数の固定機構を使用することによって、第1中手骨10に固定されてもよい。
【0040】
図2の外科用キットシステム200の他の構成/特徴/特性は、図1の外科用キットシステム100に関して上述したもの(例えば、材料、形状、サイズ、機能など)と同様及び/又は同一であってもよく、したがって重複する説明は省略することができる。
【0041】
図3は、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステム300を示す。外科用キットシステム300は、スペーサ310及びストランド320を含むことができる。図3A及び図3Bに示すように、いくつかの例では、ストランド320を第2中手骨20の周りに巻き付けることによって、ストランド320を第2中手骨20に固定することができる。いくつかの例では、ストランド320は、第1の部分322に孔322を含んでもよい。ストランド320の第2の部分324は、図3に示すように孔321を通して供給されてもよく、これにより、ストランド320を自己締め付けさせることができる。
【0042】
いくつかの例では、ストランド320の第2の部分324は、スペーサ310及び/又は第1中手骨10の孔15を貫通されてもよい。いくつかの例では、ストランド120は、第2の部分324に孔325を受け入れる固定機構を含んでもよく、第2の部分324は、固定機構340によって第1中手骨10に固定されてもよい。
【0043】
図3の外科用キットシステム300の他の構成/特徴/特性は、図1の外科用キットシステム100に関して上述したもの(例えば、材料、形状、サイズ、機能など)と同様及び/又は同一であってもよく、したがって重複する説明は省略することができる。
【0044】
図4A及び図4Bは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステム400を示す。外科用キットシステム400は、スペーサ410及び第1のストランド420を含むことができる。図4Aの外科用キットシステム400は、図4Bの外科用キットシステム400と同様である。図4Aの外科用キットシステム400と図4Bの外科用キットシステム400との間の1つの違いは、図4Aのスペーサ410が剛体(例えば、硬質プラスチック又は金属)を有することができる一方で、図4Bのスペーサ410が軟体(例えば、織物)を有することができることである。
【0045】
いくつかの例では、外科用キットシステム400は、第2のストランド430を含んでもよい。第2のストランド430は、第1の部分432と第2の部分434とを含んでもよい。第2のストランド430の第1の部分432は、第2中手骨20に固定されるように構成されてもよく、第2の部分434は、第1中手骨10に固定されるように構成されてもよい。
【0046】
いくつかの例では、第2のストランド430の第2の部分434及び/又は第1のストランド420の第2の部分424は、第1中手骨10の孔15に貫通されてもよい。いくつかの例では、第2のストランド430の第1の部分432は、第2中手骨10、スペーサ410及び第2のストランド430が三角形形状(又は実質的に三角形の形状)を形成することができるように、第1のストランド420の第1の部分422が固定される第2の位置22の上方の第1の位置21で第2中手骨10に固定されるように構成されてもよい。第2のストランド430は、第1中手骨10の懸架のため追加の支持を提供し得る。
【0047】
いくつかの例では、スペーサ410と第2のストランド430との間に形成される角度435は、約10°~約80°、例えば、約10°~約30°、約30°~約50°、約50°~約70°、約70°~約80°の範囲であってもよい。他の例では、角度435は、任意の他の適切な角度を有してもよい。
【0048】
図4A及び図4Bの外科用キットシステム400の他の構成/特徴/特性は、図1図2図3A及び図3Bの外科用キットシステム100、200、300に関して上述したもの(例えば、材料、形状、サイズ、機能など)と同様及び/又は同一であってもよく、したがって重複する説明は省略することができる。
【0049】
いくつかの例では、本開示による外科用キットシステム(例えば、本明細書に記載の外科手術システム)の構成要素は、滅菌包装で一緒に包装されてもよい。いくつかの例では、外科用キットシステムは、任意の患者に適合するように標準化されてもよい。他の例では、外科用キットシステムは、患者の解剖学的構造に応じてカスタムメイドされてもよい。
【0050】
いくつかの例では、本開示による本明細書に開示される外科用キットシステムを使用して親指関節炎を治療する方法が提供される。本方法は、第1及び第2中手骨の衝突及び親指の舟状骨への沈下の両方を回避しながら、親指関節炎又はCMC関節炎を治療することができる。本明細書に提示されているステップは、任意の適切な順序及び組み合わせで実行されてもよく、本明細書の他の箇所に開示されている他の手順及び特徴のいずれかによって修正又はいずれかと組み合わせられてもよい。
【0051】
いくつかの例では、親指関節炎を治療する方法は、大菱形骨を除去することを含み得る。大菱形骨の除去は、CMC関節の軟骨が劣化した患者において、第1中手骨と大菱形骨との間の骨と骨との相互作用を停止させることができる。本明細書に開示される方法は、まだ所定の位置にある大菱形骨を用いて実施することもできる。
【0052】
図5A図5C図を参照すると、本方法は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨20に固定することを含むことができる。ストランド120は、任意の適切な固定機構によって第2中手骨に固定されてもよい。いくつかの例では、外科医は、ストランド120を第2中手骨20の橈骨側に固定することができ、これにより、2つではなく1つの切開のみで処置を行うことができる。いくつかの例では、外科医は、ストランド120を第2中手骨20の尺骨側に固定することができる。ストランド120は、第2中手骨20の下半分、第2中手骨20の基部、又は、例えば位置22に固定することができる。外科医は、本明細書で説明する固定機構を使用してストランド120を第2中手骨20に固定することができる。例えば、ストランド120の第1の部分は、(腱固定)ねじ、ボタン又は縫合糸アンカーなどの締結具を使用して第2中手骨に固定することができる。
【0053】
いくつかの例では、図2に示すように、ストランドを第2中手骨20の周りに巻き付けることによって、ストランドを第2中手骨20に固定することができる。いくつかの例では、図3に示すように、ストランドの第1の部分を第2中手骨20の周りに巻き付け、ストランドの第2の部分をストランドの第1の部分上の孔に通すことによって、ストランド120を第2中手骨20に固定することができる。
【0054】
いくつかの例では、本方法は、例えば、ストランド120を第2中手骨20に固定する前に、第2中手骨20に孔を開けることを含んでもよい。第2中手骨20に開けられた孔の深さは、固定機構の長さ(例えば、ねじ又は縫合糸アンカーの長さ)と実質的に同じであってもよい。ストランド120の第1の部分は、固定前に第2中手骨20上の孔に入ることができる。
【0055】
いくつかの例では、結び目は、ストランド120を第2中手骨20の孔に通す前に、ストランド120の第1の部分に結び付けられてもよい。例えば、図7A図7Cを参照すると、結び目121をストランド120の第1の部分に形成し、例えばプッシャ/ドライバ160を使用して第2中手骨20の孔25に挿入することができる。次いで、固定機構140(例えば、腱固定ねじ)を孔25に挿入することができる。いくつかの例では、ストランド120の第1の部分の第1の部は、固定機構140と第2中手骨20の孔25との間に配置されてもよい。いくつかの例では、孔25の直径は、ストランド120で結ばれた結び目121の直径とほぼ同じであってもよい。
【0056】
図8A及び図8Bを参照すると、いくつかの例では、固定機構140はカニューレ状であってもよい。この場合、ストランド120の第1の部分の第2の部は、固定機構140を骨に設置した後に、固定機構140の孔内に配置されてもよい。
【0057】
いくつかの例では、方法は、第2中手骨20の直径を貫通する孔を開けることを含んでもよい。いくつかの例では、固定機構は、第2中手骨20を通して配置されてもよい。孔は、第2中手骨20の掌側から背側、背側から掌側、尺骨側から橈骨側又は橈骨側から尺骨側に開けられてもよい。いくつかの例では、ストランド120は固定機構に固定されてもよく、固定機構及びストランド120は、第2中手骨20の孔を通して押し込まれてもよい。固定機構は、孔を通してストランド120を第2中手骨20に固定することができる。いくつかの例では、ストランド120は固定機構に固定されてもよく、ストランド120のみが、第2中手骨20の孔を通して押し込まれてもよい。いくつかの例では、本方法は、スペーサ110をストランド120に沿って配置することを含むことができる。スペーサ110は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨20に固定する前に、又は、ストランド120の第1の部分を第2中手骨20に固定した後に、ストランド120に沿って配置されてもよい。
【0058】
スペーサ110は、任意の適切な方法によってストランド120に沿って配置されてもよい。例えば、図1を再度参照すると、いくつかの例では、スペーサ110は、ストランド120の第2の部分がスペーサ110の孔115を貫通することができるようにカニューレ状であってもよい。他の例では、スペーサ110は、ストランド120に結び付けられてもよい。
【0059】
いくつかの例では、第1中手骨10は懸架されている。第1中手骨は、任意の適切な方法によって懸架されてもよい。例えば、図5B及び図5Cを再度参照すると、いくつかの例では、方法は、第1中手骨10の直径を貫通する孔を開けて、骨を貫通するチャネル15を作成することを含んでもよい。いくつかの例では、図5B及び図5Cに示すように、孔15は、第1中手骨10の尺骨側から橈骨側又は橈骨側から尺骨側に開けられてもよい。他の例では、図6に示すように、第1中手骨10の底部から橈骨側に孔を開けられてもよい。
【0060】
孔15が開けられた後、方法は、第1中手骨10のチャネル15にストランド120の第2の部分を通すことを含んでもよい。ストランド120の第2の部分は、任意の既知の技術を使用してチャネル15を通すことができる。例えば、フックを有する工具170をチャネル15に挿入し、ストランド120を引っ掛け、ストランド120をチャネル15を通して引き戻すことによって、ストランド120をチャネルに通すことができる。いくつかの例では、孔15は第1中手骨10に開けられず、ストランド120は、第1中手骨10の下のスリングとして機能して第1中手骨10の下に吊り下げられる。
【0061】
図5Cに示すように、ストランド120がチャネル15を通されるか、又は、第1中手骨の下に吊り下げられると、外科医はストランド120をきつく引っ張って第1中手骨10を懸架することができる。ストランド120の張力付与は、処置後に親指の適切な外転及び可動性を確保するために重要であり得る。いくつかの例では、本方法は、適切な親指懸架を確実にするためにストランド120の張力を調整することをさらに含むことができる。ストランド120の張力を調整することは、ストランド120を第1中手骨10に固定する前、又は、ストランド120の固定中に行うことができる。
【0062】
ストランド120の第2の部分がチャネル15を貫通するか、又は、第1中手骨10の下に吊り下げられた後、本明細書に記載の任意の適切な固定方法を使用して、ストランド120の第2の部分を第1中手骨10に固定することができる。例えば、ストランド120の第2の部分は、固定機構140を使用して第1中手骨10の橈骨側に固定されてもよい。他の例では、ストランド120を第1中手骨10の周りに巻き付けることによって、ストランド120を固定することができる。いくつかの例では、図5Cに示すように、ストランド120の第2の部分は、ストランド120が通されるチャネル15内に固定されてもよい。
【0063】
いくつかの例では、チャネル15の上方又は下方の第1中手骨10に第2の孔が開けられる。第2の孔の深さは、固定機構の長さと実質的に同じであってもよい(例えば、ねじ又は縫合糸アンカーの長さ)。いくつかの例では、ストランドは第2の孔内に固定されてもよい。いくつかの例では、結び目(第1の部分の結び目121と同様)をストランド120の第2の部分に作り、結び目を第2の孔に挿入し、固定機構を第1中手骨10の第2の孔に挿入することができる。
【0064】
図4A及び図4Bに戻ると、いくつかの例では、本方法は、第1のストランド420の第1の部分422が固定される第2の位置22の上方の第1の位置21で第2のストランド430の第1の部分432を第2中手骨20に固定することと、第2のストランド430の第2の部分434を第1中手骨10の孔15に通すことと、第2のストランド430の第2の部分434を第1中手骨10に固定することとを含むことができる。第2中手骨20、スペーサ410及び第2のストランド430は、図4A及び図4Bに示すように三角形形状を形成してもよい。
【0065】
図2に戻ると、いくつかの例では、親指関節炎を治療する方法は、ストランド220の第3の部分222及び第4の部分224が第2中手骨20の橈骨側から突出するように、ストランド220を第2中手骨20の周りに巻き付けることと、ストランド120の両方の部分222、224に沿ってスペーサ210を配置することと、ストランド210の両方の部分222、224を第1中手骨10に固定することとを含み得る。
【0066】
スペーサ210は、スペーサ210のカニューレボアにストランド220の両方の部分222、224を通すことによって、ストランドに沿って配置することができる。他の例では、ストランド220の一方の部分をスペーサ210の一方の側面に沿って配置することができ、ストランド220の他方の部分をスペーサ210の他方の側面に沿って配置することができ、ストランド220の両方の部分を互いに結び付けてスペーサ210を所定の位置に保持することができる。
【0067】
スペーサ210が所定の位置にあると、いくつかの例では、ストランド220の一方の部分222を第1中手骨10のチャネル15に通すことができると同時に、ストランド120の他方の部分224を第1中手骨10の基部の下に配置することができる。他の例では、ストランド220の両方の部分は、第1中手骨10内のチャネルを貫通してもよい。ストランド220の2つの部分は、本明細書で論じるように、ストランドの2つの部分を一緒に巻き付けることによって又は固定機構を使用することによって、第1中手骨10に固定することができる。
【0068】
図9は、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステム500を示す。外科用キットシステム500は、スペーサ510及びストランド520を含むことができる。図9に示すように、いくつかの例では、ストランド520を第2中手骨20の周りに巻き付けることによって、ストランド520を第2中手骨20に固定することができる。このようにしてストランド520を固定すると、ストランド520の2つの部分(第3の部分522及び第4の部分524)が第2中手骨20の橈骨側から突出することになり得る。
【0069】
いくつかの例では、ストランド520の第3の部分522及び第4の部分524は、スペーサ510として機能し得る結び目を形成するように結ばれてもよい。いくつかの例では、結び目は、オーバーハンドノット、外科結び又は本結びであってもよい。他の例では、結び目は任意の他の適切な結び目であってもよい。
【0070】
いくつかの例では、ストランド520の第3の部分522は、第1中手骨10の孔15に通されてもよく、ストランド520の第4の部分524は、孔15に通されなくてもよい。他の例では、ストランド220の第3及び第4の部分522、524の両方は、第1中手骨10の孔15に通されても通されなくてもよい。
【0071】
いくつかの例では、ストランド520の第3及び第4の部分522、524は、例えば、第1中手骨10の周りに第3及び第4の部分522を巻き付けることによって、又は、1つ又は複数の固定機構を使用することによって、第1中手骨10に固定されてもよい。他の例では、ストランド520の第3及び第4の部分522、524は、ストランド520を第1中手骨10に固定するために別の結び目を形成するように結ばれてもよい。
【0072】
図9の外科用キットシステム500の他の構成/特徴/特性は、図1図2図3A図3B図4A及び図4Bの外科用キットシステム100、200、300及び/又は400に関して上述したものと同様及び/又は同一であってもよく(例えば、材料、形状、サイズ、機能など)、したがって、重複する説明を省略することができる。
【0073】
いくつかの例では、外科医は、スペーサ(例えば、図1図2図3A図3B図4A及び図4Bに関して説明したスペーサ110、210、310及び/又は410)に加えて、第1中手骨と第2中手骨との間に配置されるように、ストランド内に1つ又は複数の結び目(結び目510と同様)を作ることができる。この場合、ストランド内の1つ又は複数の結び目は、スペーサの長さに加えて、第1中手骨10と第2中手骨20との間に余分な空間を作り出すことができる。このようにして、例えば、すべてのサイズに対応するスペーサを使用する場合、1つ又は複数の結び目を使用して、第1中手骨10と第2中手骨20との間の距離を調整することができる。例えば、スペーサが特定の患者にとって小さすぎる場合、1つ又は複数の結び目は、スペーサをストランド上に配置する前又は後に作成されてもよい。
【0074】
図10Aは、本開示の別の例による例示的な外科用キットシステム700を示す。外科用キットシステム700は、スペーサ710及びストランド720を含むことができる。スペーサ710は、第1中手骨10と第2中手骨20との間に配置されるように構成された第1の部712と、第1中手骨10と舟状骨30との間に配置されるように構成された第2の部714とを含んでもよい。いくつかの例では、スペーサ710は湾曲又は屈曲していてもよい。
【0075】
図10B及び図10Cを参照すると、いくつかの例では、ストランド720は、固定機構740を介して第1中手骨10及び/又は第2中手骨20に固定されてもよい。例えば、固定機構740はフリップボタンであってもよく、ストランド720はフリップボタンに結び付けられてもよい。フリップボタン740は、骨30(第1中手骨10及び/又は第2中手骨20)の孔35を通って第1の方向に押されるように構成されてもよく、孔35から出ると、フリップボタン740は第1の方向に垂直に(及び骨に平行になる)フリップされてもよい。
【0076】
いくつかの例では、ストランド720は、フリップボタン740から突出する第3の部分722及び第4の部分724を有することができる。いくつかの例では、スペーサ710は、スペーサ710のカニューレボアにストランド720の両方の部分722、724を通すことによって、ストランド720に沿って配置することができる。他の例では、ストランド720の一方の部分722をスペーサ710の一方の側面に沿って配置することができ、ストランド720の他方の部分724をスペーサ710の他方の側面に沿って配置することができ、ストランド720の両方の部分を互いに結び付けてスペーサ710を所定の位置に保持することができる。
【0077】
いくつかの例では、固定機構740はボタンであってもよく、ストランド720はボタンに結び付けられてもよい。ボタンは、骨の一方の側(第1中手骨10及び/又は第2中手骨20)に配置されてもよく、ストランド720がボタンを有する側とは反対側の骨の他方の側から突出するように、ストランド720は骨のチャネルに貫通されてもよい。
【0078】
いくつかの例では、スペーサ710は、スペーサ710のカニューレボアにストランド720の両方の部分722、724を通すことによって、ストランド720に沿って配置することができる。他の例では、ストランド720の一方の部分722をスペーサ710の一方の側面に沿って配置することができ、ストランド720の他方の部分724をスペーサ710の他方の側面に沿って配置することができ、ストランド720の両方の部分を互いに結び付けてスペーサ710を所定の位置に保持することができる。
【0079】
いくつかの例では、スペーサがストランド720に沿って配置されると、ストランド720は、第1及び/又は第2中手骨10、20に固定される。ストランド720は、ボタンを使用することによって第1及び/又は第2中手骨10、20に固定されてもよい。ストランド720は、第1及び/又は第2中手骨10、20の孔に通されてもよく、ストランドは、ストランド720を骨に固定するように機能するボタンに結び付けられてもよい。
【0080】
図10Aの外科用キットシステム700の他の構成/特徴/特性は、図1図2図3A図3B図4A及び図4Bの外科用キットシステム100、200、300及び/又は400に関して上述したもの(例えば、材料、形状、サイズ、機能など)と同様及び/又は同一であってもよく、したがって、重複する説明は省略することができる。
【0081】
さらに詳述することなく、当業者は、特許請求される発明を最大限に利用するために前述の説明を使用することができると考えられる。本明細書に開示された例及び態様は、単なる例示として解釈されるべきであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。説明した基本原理から逸脱することなく、上述の例の詳細に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。換言すれば、上記の説明で具体的に開示された例の様々な修正及び改善は、添付の特許請求の範囲内にある。例えば、記載された様々な例の特徴の任意の適切な組み合わせが企図される。
【0082】
(実施形態)
本明細書に記載の主題の様々な態様は、以下の番号付けされた実施形態に記載されている。
【0083】
実施形態1親指関節炎を治療する方法であって、ストランドの第1の部分を人差指中手骨に固定することと、ストランドに沿ってスペーサを配置することと、ストランドの第2の部分を親指中手骨に固定することと、を含み、スペーサは、親指中手骨と人差指中手骨との間に配置されて、親指中手骨と人差指中手骨との間の衝突を予防する、方法。
【0084】
実施形態2親指中手骨に孔を開けることと、ストランドの第2の部分を親指中手骨の孔に通すことと、をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0085】
実施形態3ストランドの第1の部分及び/又はストランドの第2の部分の固定が、1つ又は複数の固定機構を用いて行われる、実施形態1~2のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態4ストランドに少なくとも1つの結び目を作ることをさらに含み、少なくとも1つの結び目が、親指中手骨と人差指中手骨との間に配置される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態5ストランドの第1の部分に結び目を作ることと、結び目を人差指中手骨の孔に挿入することと、固定機構を人差指中手骨の孔に挿入することと、をさらに含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施形態6第2のストランドの第1の部分を、ストランドの第1の部分が固定される第2の位置の上方の第1の位置で、人差指中手骨に固定することと、第2のストランドの第2の部分を親指中手骨に固定することと、をさらに含み、人差指中手骨、スペーサ及び第2のストランドが三角形の形状を形成する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態7スペーサが、プラスチック材料、金属材料、織縫合糸、織物及び生物学的材料のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態8ストランドが、その厚さよりも大きい幅を有するテープを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態9スペーサが結び目を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態10結び目が、オーバーハンドノット、外科結び及び本結びのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態11親指関節炎を治療するための外科用キットシステムであって、外科用キットは、親指中手骨と人差指中手骨との間に配置されるように構成されたスペーサと、人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分とを有するストランドと、ストランドの第1の部分を人差指中手骨に固定するように構成された第1の固定機構と、ストランドの第2の部分を親指中手骨に固定するように構成された第2の固定機構と、を具備する、外科用キットシステム。
【0094】
実施形態12第1の固定機構及び/又は第2の固定機構が縫合糸アンカーを具備する、実施形態11に記載の外科用キット。
【0095】
実施形態13第1の固定機構及び/又は第2の固定機構がフリップボタンである、実施形態12に記載の外科用キットシステム。
【0096】
実施形態14ストランドが縫合糸材料を含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載の外科用キットシステム。
【0097】
実施形態15ストランドが、その厚さよりも大きい幅を有するテープを含む、実施形態11~14のいずれか1つに記載の外科用キットシステム。
【0098】
実施形態16スペーサが、プラスチック材料、金属材料、織縫合糸、織物及び生物学的材料のうちの少なくとも1つを含む、実施形態11~15のいずれか1つに記載の外科用キットシステム。
【0099】
実施形態17スペーサがカニューレ状である、実施形態11~16のいずれか1つに記載の外科用キットシステム、請求項11に記載の外科用キット。
【0100】
実施形態18人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と、親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分と、を有する第2のストランドをさらに具備し、人差指中手骨、スペーサ及び第2のストランドが三角形の形状を形成するように、第2のストランドの第1の部分は、該ストランドの第1の部分が固定される第2の位置の上方の第1の位置で人差指中手骨に固定されるように構成される、実施形態11~17のいずれか1つに記載の外科用キットシステム。
【0101】
実施形態19スペーサが結び目を含む、実施形態11~18のいずれか1つに記載の外科用キットシステム。
【0102】
実施形態20スペーサの形状は、円柱、立方体、直方体、球体、楕円体、円錐、トーラス及び八面体のうちの1つである、実施形態11~19に記載の外科用キットシステム。
【0103】
本明細書で使用される場合、「約(about)」、「およそ(approximately)」及び「実質的に(substantially)」は、例えば、参照された数字の-10%~+10%、好ましくは参照された数字の-5%~+5%、より好ましくは参照された数字の-1%~+1%、最も好ましくは参照された数字の-0.1%~+0.1%の範囲などの数字の範囲内の数字を指すと理解される。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数又は数のサブセットを対象とする請求項の支持を提供すると解釈されるべきである。例えば、1から10の開示は、1から8、3から7、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9などの範囲を支持すると解釈されるべきである。
【0104】
本明細書全体を通して、「様々な態様」、「いくつかの態様」、「いくつかの例」、「他の例」、「いくつかの場合」又は「1つの態様」への言及は、その態様に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の箇所における「様々な態様では」、「いくつかの態様では」、「特定の実施形態」、「いくつかの例」、「他の例」、「特定の他の実施形態」、「いくつかの場合」又は「1つの態様では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ態様を指しているわけではない。さらに、一例に関連して図示又は説明された特定の特徴、構造又は特性は、全体的又は部分的に、1つ又は複数の他の態様の特徴、構造又は特性と組み合わせることができるが、これらに限定されない。
【0105】
「上」、「上方」、「下方」、「下」及び「次」などの用語を使用して2つの部品間の位置関係を説明する場合、用語が「直ちに」又は「直接」と使用されない限り、1つ又は複数の部品が2つの部品の間に位置づけられてもよい。同様に、本明細書で使用される場合、「取り付け可能」、「取り付けられた」、「接続可能」、「接続された」という用語又は任意の同様の用語は、直接的又は間接的に取り付け可能、直接的又は間接的に取り付けられた、直接的又は間接的に接続可能及び直接的又は間接的に接続されたことを含み得る。
【0106】
本明細書の図及び説明の少なくとも一部は、本開示の明確な理解のために関連する要素を示すために簡略化されており、明確にするために他の要素を排除していることを理解されたい。しかしながら、当業者は、これら及び他の要素が望ましい場合があることを認識するであろう。しかしながら、そのような要素は当技術分野で周知であり、それらは本開示のより良い理解を容易にしないので、そのような要素の説明は本明細書では提供されない。
【0107】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを意図しており、本開示を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特に明記しない限り、複数形も含むことが意図される。「具備する(comprises)」及び/又は「具備する、具備している(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。本明細書で使用される場合、「X又はYの少なくとも1つ」又は「X及びYの少なくとも1つ」という用語は、X、Y、又は、X及びYと解釈されるべきである。
【0108】
さらに、本開示のシステムの構成要素を説明する際に、第1、第2、第3及び第4のように使用される用語があり得る。これらの用語は、一方の成分を他方の成分から区別する目的で使用され得るが、成分の物質、順序、配列又は数を暗示又は示唆するものではない。
【0109】
本明細書に記載の例に対する様々な変更及び修正が当業者には明らかであることを理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を損なうことなく行うことができる。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
【手続補正書】
【提出日】2024-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指関節炎を治療するための外科用キットシステムであって、
親指中手骨と人差指中手骨との間に配置されるように構成されたスペーサと、
前記人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と前記親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分とを有するストランドと、
前記ストランドの前記第1の部分を前記人差指中手骨に固定するように構成された第1の固定機構と、
前記ストランドの前記第2の部分を前記親指中手骨に固定するように構成された第2の固定機構と、
を具備する、外科用キットシステム。
【請求項2】
前記第1の固定機構及び/又は前記第2の固定機構が縫合糸アンカーを具備する、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項3】
前記第1の固定機構及び/又は前記第2の固定機構がフリップボタンである、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項4】
前記ストランドが縫合糸材料を含む、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項5】
前記ストランドが、その厚さよりも大きい幅を有するテープを含む、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項6】
前記スペーサが、プラスチック材料、金属材料、織縫合糸、織物及び生体学的材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項7】
前記スペーサがカニューレ状である、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項8】
前記人差指中手骨に固定されるように構成された第1の部分と、前記親指中手骨に固定されるように構成された第2の部分と、を有する第2のストランドをさらに具備し、
前記人差指中手骨、前記スペーサ及び前記第2のストランドが三角形の形状を形成するように、前記第2のストランドの前記第1の部分は、該ストランドの前記第1の部分が固定される第2の位置の上方の第1の位置で前記人差指中手骨に固定されるように構成される、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項9】
前記スペーサが結び目を含む、請求項に記載の外科用キットシステム。
【請求項10】
前記スペーサの形状が、円柱、立方体、直方体、球体、楕円体、円錐、トーラス及び八面体のうちの1つである、請求項に記載の外科用キットシステム。
【国際調査報告】