(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】放射線治療システムおよび関連方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20250130BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250130BHJP
【FI】
A61N5/10 M
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547217
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2023053332
(87)【国際公開番号】W WO2023152306
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519087240
【氏名又は名称】コングスベルグ ビーム テクノロジー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】クレーヴェン,ペール ホーヴァル
(72)【発明者】
【氏名】アチョウ,ヤピ ドナティエン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァゴス,マルシア
(72)【発明者】
【氏名】リッテルヴォルド,マリ エンゲブレツェン
(72)【発明者】
【氏名】リーデン-アイラーツェン,カーステン
【テーマコード(参考)】
4C082
5L096
【Fターム(参考)】
4C082AC01
4C082AE01
4C082AJ08
4C082AJ20
4C082AP08
4C082AP12
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA05
5L096DA01
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
放射線治療システム(100)で使用するための放射線治療患者(200)の解剖学的領域(202)の生体力学的モデル(300)を確立する方法が開示される。本方法は、モデル化された解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースのモデルを確立するステップと、静的および/または動的特徴を、点ベースまたはメッシュベースのモデルの点またはメッシュノード(302)に紐づけるステップであって、これらの特徴は、点またはメッシュノードのワールド-空間座標と、解剖学的領域の空間時間的変位を表す状態変数と、各点またはメッシュノードについて、解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴を含むステップと、モデルをグラフニューラルネットワークシステム(500)におけるグラフとして表すステップと、解剖学的領域の周期的または半周期的運動についてモデルを訓練するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療システム(100)において用いるための、放射線治療患者(200)の解剖学的領域(202)の生体力学的モデル(300)を確立する方法であって、前記方法は、
(a)前記解剖学的領域(202)の点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)を確立するステップと、
(b)静的および/または動的特徴を、前記点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)の点またはメッシュノード(302)に紐づけるステップであって、前記特徴は、前記点またはメッシュノード(302)のワールド-空間座標
【数63】
と、前記解剖学的領域(202)の空間-時間的変位を表す状態変数
【数64】
と、さらに、各点またはメッシュノード(302)について、前記解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴とを含むステップと、
(c)前記モデル(300)をグラフニューラルネットワークシステム(500)におけるグラフとして表すステップと、
(d)前記解剖学的領域(202)の周期的または半周期的運動について前記モデル(300)を訓練するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴は、前記解剖学的領域(202)と電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの変数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解剖学的領域(202)と前記電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの特徴は、線阻止能と、相対阻止能と、放射線濃度と、放射線不透過度とのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデル(300)をグラフニューラルネットワークシステム(500)におけるグラフとして表すステップは、グラフノードと、グラフエッジと、前記生体力学的モデル(300)の静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを確立することを含み、
前記グラフネットワークシステム(500)は、入力(502)と、グラフ処理ニューラルネットワーク(504)と、更新器(506)と、出力(508)とを備え、前記グラフ処理ニューラルネットワーク(504)は、エンコーダ(510)と、プロセッサ(512))と、デコーダ(514)とを備え、
前記エンコーダ(510)は、前記入力(502)から前記メッシュベースの生体力学的モデル(300)の現在状態(M
t)を受け取り、前記生体力学的モデル(300)の前記現在状態(M
t)から入力グラフ(G
0)を符号化するように構成され、
前記プロセッサ(512)は、前記入力グラフ(G
0)を処理し、更新したノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフ(G
M)を提供するように構成され、
前記デコーダ(514)は、前記生体力学的モデル(300)の前記静的変数および動的変数に対応する出力特徴を抽出する前記出力グラフ(G
M)を復号化するように構成され、
前記更新器(506)は、前記出力特徴を更新して前記メッシュベースの生体力学的モデル(300)の推定した未来状態(M
t+1)を生成し、前記推定した状態(M
t+1)を前記出力(508)に提供するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記解剖学的領域(202)の周期的または半周期的運動について前記モデル(300)を訓練するステップは、前記更新器(506)によって提供される前記推定した状態(M
t+1)と、前記モデル化した解剖学的領域(202)に対応する、解剖学的領域の現実のデータセットとに、損失関数を適用することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記現実のデータセットは、4次元コンピュータ断層写真撮影(4D-CT)スキャン、4次元磁気共鳴映像法(4D-MRI)および超音波イメージングのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記現実のデータセットは、呼吸サイクル中の、前記モデル化した解剖学的領域(202)をカバーする画像の展開を含む、請求項5および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記点ベースまたはメッシュベースのモデルは、前記解剖学的領域(202)の前記物理的特性に採用される線形弾性モデルおよび超弾性モデルのうちの少なくとも1つを組み込む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記解剖学的領域(202)を、物理的特性の第1の集合を表示する第1の解剖学的サブ領域(202a)と、前記物理的特性の第1の集合とは異なる物理的特性の第2の集合を表示する第2の解剖学的サブ領域(202b)とに分割するステップと、
前記第1の解剖学的サブ領域(202a)について、前記点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)に、前記物理的特性の第1の集合に採用される第1の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てるステップと、
前記第2の解剖学的サブ領域(202b)について、前記点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)に、前記物理的特性の第2の集合に採用される第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てるステップとを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2の解剖学的サブ領域は、共通の境界を共有し、前記方法は、前記第1および前記第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルに、前記共通の境界における共通の境界条件を割り当てるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射線治療患者(200)の解剖学的領域(202)に対して実行される放射線治療処置の少なくとも一部を計画するコンピュータ実装方法であって、
請求項1~10のいずれか1項に従って前記解剖学的領域(202)の生体力学的モデル(300)を確立することと、
各点またはメッシュノードに、計画線量および最大許容線量のうちの少なくとも1つを割り当てることとを含む、方法。
【請求項12】
解剖学的領域(202)内に位置する照射標的(204)に電離放射線ビーム(104)を提供するように配置された少なくとも1つのビーム源(102)と、
前記少なくとも1つのビーム源(102)の位置および/またはアラインメントを制御するように構成されたビーム監理システム(106)と、
前記解剖学的領域(120)を監視するように配置された監視システムと、
を備える放射線治療システム(100)であって、
前記解剖学的領域(202)の周期的または半周期的運動について訓練済みの、前記解剖学的領域(202)のモデル(300)が実装されるコンピュータ実装グラフネットワークシステム(500)を備える制御システム(110)とを含み、
前記グラフネットワークシステム(500)は、前記監視システム(120)から受け取った、前記解剖学的領域(202)の、空間内の現在位置および/または現在の向きに関するデータに基づいて、前記訓練済みモデル(300)の現在状態(M
t)を確立するように構成され、さらに、前記現在状態(M
t)に基づいて前記訓練済みモデル(300)の推定した未来状態(M
t+1)を確立するように構成され、
前記制御システム(110)は、前記推定した未来状態(M
t+1)に基づいて前記少なくとも1つのビーム源(102)の前記電離放射線ビーム(104)を制御することを前記ビーム監理システム(106)に指示するように構成されている、放射線治療システム(100)。
【請求項13】
前記制御システム(110)は、前記推定した未来状態(M
t+1)に基づいて前記少なくとも1つのビーム源(102)の前記電離放射線ビーム(104)を制御し、前記少なくとも1つのビーム源(102)に前記照射標的(204)を追跡させることを、前記ビーム監理システム(106)に指示するように構成されている、請求項12に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項14】
前記制御システム(110)は、前記推定した未来状態(M
t+1)に基づいて前記少なくとも1つのビーム源(102)の前記電離放射線ビーム(104)を制御し、前記推定した未来状態(M
t+1)が、前記照射標的が前記電離放射線ビーム(104)の軌道の外側に出てしまいそうであることを示す場合には、前記少なくとも1つのビーム源(102)の前記電離放射線ビーム(104)を遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源(102)を停止することを、前記ビーム監理システム(106)に指示するように構成されている、請求項12および13のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項15】
前記制御システム(110)は、前記推定した未来状態(M
t+1)に基づいて前記少なくとも1つのビーム源(106)の前記電離放射線ビーム(104)を制御し、前記推定した未来状態(M
t+1)が、前記電離放射線ビーム(104)の軌道がリスク臓器と交差する危険性があることを示す場合に、前記少なくとも1つのビーム源(102)の前記電離放射線ビーム(104)を遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源(102)を停止することを、前記ビーム監理システム(106)に指示するように構成されている、請求項12~14のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項16】
前記訓練済みモデル(300)は、点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)であり、前記点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)は、前記点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)の点またはメッシュノード(302)に紐づけられた静的および/または動的特徴を備え、前記特徴は、前記点またはメッシュノードのワールド-空間座標
【数65】
と、前記解剖学的領域(202)の空間-時間的変位を表す状態変数
【数66】
とを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項17】
前記グラフネットワークシステム(500)は、前記訓練済みモデル(300)を、グラフノード(402)と、グラフエッジ(404)と、前記訓練済みモデル(300)の静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを含むグラフ(400)として、表すように構成されている、請求項12~16のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項18】
前記グラフネットワークシステム(500)は、前記訓練済みモデル(300)の前記確立した現在状態(M
t)を、前記監視システム(120)から受け取ったデータと関連づけるように構成されている、請求項12~17のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項19】
前記監視システム(120)は、前記解剖学的領域(202)の境界領域(206)の、空間内の位置および/または向きと、前記解剖学的領域(202)内の基準マーカー(208)の、空間内の位置および/または向きとのうちの少なくとも1つを監視するように構成されている、請求項18に記載の放射線治療システム。
【請求項20】
前記変数は、前記解剖学的領域(202)と電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの変数と、計画放射線量と、最大許容放射線量と、蓄積放射線量とのうちの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つの変数とを含み、
前記訓練済みモデル(300)の各推定した未来状態(M
t+1)について、前記グラフネットワークシステム(500)は、前記蓄積放射線量を特徴付ける前記変数を更新するように構成され、
前記制御システム(110)は、前記解剖学的領域(202)の他の部分に対して前記最大許容放射線量を超えることなく前記照射標的(204)が計画放射線量を受け取るように、前記少なくとも1つのビーム源の位置および/またはアラインメントを制御することを、前記ビーム監理システムに指示するように構成されている、請求項12~19のいずれか1項に記載の放射線治療システム。
【請求項21】
前記監視システム(120)は、前記ビーム監理システム(106)を監視するように構成されている、請求項12~20のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項22】
前記解剖学的領域(202)の前記訓練済みモデル(300)は、請求項1~10のいずれか1項に従って確立される、請求項12~21のいずれか1項に記載の放射線治療システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電離放射線ビーム監理システムを制御するための制御システムを備える放射線治療システムに関する。特に、本開示は、解剖学的領域の動き、特に周期的または半周期的な動きを予測して、線量投与の精度を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
外部ビーム放射線治療を用いる疾患の治療、例えば、癌治療は、放射線エネルギーが患者の身体の悪性細胞内に蓄積されるように、患者に電離放射線を当てることを含む。十分な量のエネルギーが蓄積されれば、DNAの破壊およびその後の被照射細胞の死という結果が起こり得る。
【0003】
電離放射線は、直接電離または間接電離であってよい。直接電離放射線は、荷電粒子、例えば、電子、陽子、α粒子、および重イオンを利用する。間接電離放射線は、中性粒子、例えば、光子(X線およびγ線)および中性子を利用する。本開示は、両方のタイプの外部ビーム放射線治療、すなわち、直接電離放射線または間接電離放射線のいずれかを用いる外部ビーム放射線治療に適用可能である。特に、本開示は、X線または陽子放射線治療に適用可能である。
【0004】
陽子および他の荷電粒子は、放射線治療に適した深部線量曲線を表示する。その比較的大きな質量のために、陽子および他の荷電粒子は、組織内の側方散乱がほとんどなく、結果として、粒子ビームは、悪性の組織に焦点を合わせ、周囲の健康な組織への線量副作用を最小化することができる。粒子ビームはまた、ブラッグピーク効果、すなわち、荷電粒子が、粒子ビームの軌道のまさに最後の領域においてそのエネルギーの大半を蓄積する傾向、を用いて、より正確に悪性組織を狙うことができる。
【0005】
特許文献1は、陽子線治療計画を作成する方法を開示し、この方法は、関心体積をサブ体積に分割するステップと、とりわけ、患者の動きに基づいて、サブ体積に線量拘束値を適用するステップと、陽子線治療システムの1つ以上の実現可能な構成を見出すステップと、陽子線治療の1つ以上の態様を改善または最適化する陽子ビーム構成を選択するステップとを含む。
【0006】
しかしながら、特許文献1の陽子線治療システム、および他の従来技術の外部ビーム放射線治療システムに関連する問題は、治療中の患者の動きにより、システムが照射標的内の意図した位置に放射線量を正確に投与することが困難になることである。実際に、患者が拘束されていたとしても、呼吸や不随意の筋肉活動、例えば心拍、に起因する動きのような患者の体内の臓器の動きにより、依然として、従来技術の放射線治療システムでは放射線量を正確に投与することが困難になるおそれがある。
【0007】
したがって、従来技術のシステムを用いて治療計画を作成するとき、治療中の、患者および/または臓器の動きにともなう不確実性を、線量投与を計画するときに考慮する必要がある。実際には、この不確実性は、システムのオペレータが、健康な組織を損傷することを回避するために、より低い全体量を投与するようにシステムを設定するという結果をもたらしてしまう。このことは、不確実性が存在しない場合よりも効率の劣る治療をもたらしてしまう。
【0008】
特に、現在の放射線治療実務では、腫瘍線量投与に対する呼吸運動の影響を補償するために、比較的大きなマージンが胸部および上部腹腔内の腫瘍体積に加えられる。これは、処方された腫瘍線量ならびに治療計画に対する妥協をもたらし、これにより治療結果に悪影響を及ぼし、放射線誘発性罹患の発生率を増加させるおそれがある。
【0009】
特許文献2は、医療用画像走査中に患者の動きを追跡および補償するための動き補償システムを開示している。このシステムは、光学的可視パターンを含む光学マーカーと、それぞれ第1および第2の視線に沿って光学的可視パターンをデジタル的に撮像するように配置された第1および第2の光検出器とを備える。このシステムは、第1および第2の光検出器からの画像を分析することによって、6つの自由度における物体の姿勢を決定するように構成された追跡エンジンと、姿勢に基づいて追跡情報を生成し、追跡情報をスキャナコントローラに電子的に送信して、医療用画像スキャナ内での物体の動きの補償を可能にするように構成されたコントローラインタフェースとをさらに備える。特許文献2は、患者の動きを追跡するための開示された方法が、周囲の健康な組織を回避しつつ治療用放射線ビームを病変組織領域に向けるために、例えば、呼吸によるなどの患者の動きを追跡するために、治療の背景において適用され得ることを示唆している。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示されたシステムは、光学マーカーを追跡し、光学マーカーの動きを患者の動きに割り当てるシステムによって、患者の動きをある程度追跡することができるかもしれないが、このシステムは、光学マーカーが取り付けられる組織領域の動的な変形や反りを考慮していない。
【0011】
患者の動きを予測する生体力学的モデルは、従来知られている。例えば、そのような生体力学的モデルは、非特許文献1および非特許文献2などの論文に論じられている。しかしながら、既知の生体力学的モデル、例えば上記論文に論じられているものは、計算に時間がかかり、放射線治療線量投与中にリアルタイムで用いるには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0144201号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/116868号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Patient-Specific Biomechanical Model for the Prediction of Lung Motion From 4-D CT Images (2014) Fuerst et al., IEEE transactions on medical imaging 34. 10.1109/TMI.2014.2363611
【非特許文献2】Sensitivity of tumor motion simulation accuracy to lung biomechanical modeling approaches and parameters (2015), Tehrani et al., Phys Med Biol. 2015 Nov 21;60(22):8833-49. doi: 10.1088/0031-9155/60/22/8833. Epub 2015 Nov 4. PMID: 26531324; PMCID: PMC4652597
【非特許文献3】Learning to Simulate Complex Physics with Graph Networks, Sanchez-Gonzalez et al., arXiv:2002.09405v2 [cs.LG] 14.09.2020 (https://arxiv.org/abs/2002.09405)
【非特許文献4】Learning mesh-based simulation with Graph Networks, Pfaff et al., arXiv:2010.03409v4 [cs.LG] 18.06.202 (https://arxiv.org/abs/2010.03409)
【非特許文献5】Relational inductive biases, deep learning, and graph networks, Battaglia et al., arXiv:1806.01261v3 [cs.LG] 17.10.2018 (https://arxiv.org/abs/1806.01261)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の問題を念頭に置いて、本開示の目的は、少なくとも上述の問題を緩和し、および/または、線量投与中の標的位置決めにおける不確実性を低減することができる放射線治療システムおよび関連システムならびに方法を提供することである。
【0015】
本開示の別の目的は、照射標的への正確な線量投与を可能にするビーム監理システムを含む放射線治療方法およびシステムを提供することである。
【0016】
本開示の別の目的は、照射標的を正確に追跡することができるビーム監理システムを備える放射線治療システムを提供することである。
【0017】
本開示のさらに別の目的は、リスク臓器の照射を回避することができる放射線治療システムを提供することにある。
【0018】
本開示のさらなる目的は、ビーム監理システムの遅延時間(レイテンシ)が少なくとも部分的に補償されることを可能にする放射線治療システムを提供することである。
【0019】
本開示のさらに別の目的は、放射線治療システムで使用するための、放射線治療患者の解剖学的領域のモデルを確立する方法を提供することである。
【0020】
また、本開示の目的は、放射線治療患者の解剖学的領域に対して実行される放射線治療処置の少なくとも一部を計画する、コンピュータ実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
特許請求される発明は、本出願の独立請求項において特定される。特許請求される発明の有利な改良や変形は、独立請求項において特定される。
【0022】
前述したように、解剖学的領域の動きは、生体力学的モデルを用いてモデル化されてよい。そのようなモデルの基礎となる偏微分方程式は、有限要素解析、有限差分または有限体積法などの、数値計算方法を用いて空間および時間において解かれてよい。計算は、モデル状態の展開を得ることを可能にするタイムステップ法を用いて反復的に実行されてよい。しかしながら、前述のように、そのような計算は低速であり、かなりの計算リソースを必要とし、したがって、放射線治療線量投与中にリアルタイムで用いるには適していない。
【0023】
非特許文献3の論文には、グラフネットワークベースのシミュレータ(GNS)が論じられ、流体、剛性固体、および変形可能な材料が互いに相互作用する広範囲の物理的システムを正確にシミュレートすることができるものとして確認されている。
【0024】
上記の論文において、物理的システムの粒子ベースの表現が採用され、ここでは、粒子の各々がシステムの状態を表す。物理的動力学は、粒子間の相互作用により、例えば、隣接粒子間でエネルギーおよび運動量を交換することによって近似される。粒子ベースのシミュレーションは、グラフ上のメッセージパッシングと見なされ得る。ノードは粒子に対応し、エッジは粒子間のペアワイズ関係に対応し、それらに対して相互作用が計算される。学習可能なシミュレータは、パラメータ化された関数近似器dθを用いて動力学情報を計算し、そのパラメータは、何らかの訓練目的のために最適化され得る。パラメータ化された関数近似器は、3つの手段、すなわち、エンコーダ、プロセッサ、デコーダを有する。
【0025】
エンコーダは、粒子ベースの状態表現を入力グラフとして埋め込み、ここで、ノード埋め込みは、粒子の状態の学習済み関数であり、有向エッジが、何らかの潜在的相互作用を有する粒子ノード間の経路を作成するために追加され、グラフレベルの埋め込みが大域的特性(global properties)を表すために追加され得る。
【0026】
プロセッサは、学習済みメッセージパッシング(learned message-passing)のステップを介してノード間の相互作用を計算して、出力グラフを生成する。
【0027】
デコーダは、出力グラフのノードから動力学情報を抽出する。
【0028】
非特許文献4の論文において、エンコーダ-プロセッサ-デコーダ構造とそれに続く積分器を実装するグラフニューラルネットワークを用いてメッシュベースのシミュレーションを学習するためのフレームワークが開示されている。
【0029】
論じられたフレームワークにおいて、時間tにおけるシステムの状態は、メッシュエッジによって接続されたノードを有するシミュレーションメッシュを用いて記述される。各ノードは、シミュレーションメッシュに広がる基準メッシュ-空間座標と、モデル化されるべき追加力学量とに紐づけられる。メッシュが、移動し変形する表面または体積を表すシステムでは、メッシュは、固定メッシュ-空間座標に加えて、3次元空間におけるメッシュの動的状態を記述する追加のワールド-空間座標を含む。
【0030】
フレームワークは、現在のメッシュ、すなわち、時間tでのメッシュが与えられると、時間t+1でのメッシュの力学量の順方向モデルを学習する。
【0031】
エンコーダは、現在のメッシュをマルチグラフに符号化する。メッシュノードはグラフノードになり、メッシュエッジはグラフ内の双方向メッシュエッジになる。外部動力学を学習することを可能にするために、ワールドエッジがグラフに追加される。ワールドエッジは、メッシュエッジによって既に接続されているノードペアを除いて、空間的に密接したノード間に作成されたエッジである。ワールドエッジは、隣接するメッシュノード間だけでなく、ワールド空間において空間的に近接ししかもメッシュ空間において離間したノード間の、連結度をモデル化することを可能にする。特徴は、グラフノードおよびエッジに符号化される。
【0032】
相対変位ベクトルは、メッシュ空間において符号化され、そのノルムはメッシュエッジに符号化される。相対ワールド-空間変位ベクトルとそのノルムは、メッシュエッジおよびワールドエッジの両方に符号化される。残りの動的特徴ならびにノードタイプを示すワンホットベクトルが、ノード特徴として提供される。
【0033】
プロセッサは、複数個の同一のメッセージパッシングブロックからなる。各ブロックは、ネットワークパラメータの別個の集合(set)を含み、前のブロックの出力に順次適用され、メッシュエッジとワールドエッジとノード埋め込みとを更新する。
【0034】
プロセッサの最終処理ステップの後、潜在的ノード特徴は、デコーダにおいて1つ以上の出力特徴に変換される。出力特徴は、動的特徴の(高次の)導関数として解釈され、次段の力学量を計算するために積分される。補助的な量の直接予測を行うために、追加の出力特徴を用いてよい。
【0035】
最後に、出力メッシュノードを更新して時間t+1に対するメッシュを生成する。
【0036】
本開示は、グラフネットワークシステムが、もし採用され正しく実装された場合には、放射線治療線量投与中にリアルタイムで、照射標的を含む解剖学的領域の周期的または半周期的運動や動き、特に呼吸運動や動き、をモデル化し予測するためのベースとして用いられてよいという発見に基づいている。
【0037】
解剖学的領域の、予測された周期的または半周期的運動や動きを、解剖学的領域における所望の線量投与が実現されるように、放射線治療セッション中に電離放射線ビームを制御するために用いることができる。例えば、ビームのアラインメントを、照射標的が連続的に追跡されるように、予測された運動や動きに基づいて制御することができる。追加的にまたは代替的に、解剖学的領域の予測された運動や動きが、照射標的が電離放射線の範囲または軌道の外側に出てしまいそうであることを示すとき、および/または、予測された運動または動きが、電離放射線ビームがリスク臓器と交差しそうであることを示すとき、ビームを遮断または停止することができる。したがって、本開示は、電離放射線ビームのアラインメントを制御できる放射線治療システム、ならびに、電離放射線ビームのアラインメントを制御できない放射線治療システムに適用可能であり、前者のケースでは、ビームトラッキング機能および/またはビーム遮断またはビーム停止機能を用いることができ、後者のケースでは、ビーム遮断またはビーム停止機能のみを用いることができる。
【0038】
第1の態様によれば、本開示は、放射線治療システムにおいて用いるための、放射線治療患者の解剖学的領域のモデルを確立する方法を提供し、この方法は、
(a)前記解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルを確立するステップと、
(b)静的および/または動的特徴を、前記点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルの点またはメッシュノードに紐づけるステップであって、前記特徴は、前記点またはメッシュノードのワールド-空間座標と、前記解剖学的領域の空間-時間的変位を表す状態変数と、さらに、各点またはメッシュノードについて、前記解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴とを含むステップと、
(c)前記点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルをグラフニューラルネットワークシステムにおけるグラフとして表すステップと、
(d)前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動について前記点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルを訓練するステップと、
を含む。
【0039】
前記解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルを確立するステップは、典型的には、前記解剖学的領域を相互接続された点として、または、相互接続されたメッシュノードを備えるメッシュとして、モデル化することを含み、前記点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルをグラフニューラルネットワークシステムにおけるグラフとして表すステップは、典型的には、粒子またはメッシュノードの各々が前記システムの状態を表し、物理的動力学が、前記粒子またはメッシュノード間の相互作用によって近似されるように、前記解剖学的領域の前記粒子ベースまたはメッシュベースの表現を採用することを含む。
【0040】
前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動上について前記点ベースまたはメッシュベースの表現またはモデルを訓練するステップは、典型的には、前記解剖学的構造の周期的または半周期的運動について前記グラフニューラルネットワークシステムを訓練すること、すなわち、前記グラフニューラルネットワークシステムを訓練して、前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動を予測することを含む。
【0041】
前記解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴は、有利には、前記解剖学的領域と電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの変数を含んでよい。特に、前記解剖学的領域と前記電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの特徴は、線阻止能と、相対阻止能と、放射線濃度と、放射線不透過度とのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0042】
前記グラフをグラフニューラルネットワークシステムにおけるグラフとして表すステップは、グラフノードと、グラフエッジと、前記生体力学的モデルの静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを確立することを含んでよい。
【0043】
前記グラフネットワークシステムは、入力と、グラフ処理ニューラルネットワークと、更新器と、出力とを備えてよく、前記グラフ処理ニューラルネットワークは、エンコーダと、プロセッサと、デコーダとを備えてよい。
【0044】
前記エンコーダは、前記入力から前記メッシュベースのモデルの現在状態を受け取り、前記モデルの前記現在状態から入力グラフを符号化するように構成されてよい。また、前記プロセッサは、前記入力グラフを処理し、更新したノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフを提供するように構成されてよい。
【0045】
さらに、前記デコーダは、前記生体力学的モデルの前記静的および動的変数に対応する出力特徴を抽出する前記出力グラフを復号化するように構成されてよく、前記更新器は、前記出力特徴を更新して前記メッシュベースの生体力学的モデルの推定した未来状態を生成し、前記推定した状態を前記出力に提供するように構成されてよい。
【0046】
前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動について前記モデルを訓練するステップは、前記更新器によって提供される前記推定した状態と、前記モデル化した解剖学的領域に対応する、解剖学的領域の現実のデータセットとに、損失関数を適用することを含んでよい。
【0047】
前記現実のデータセットは、4次元コンピュータ断層写真撮影(4D-CT)スキャン、4次元磁気共鳴映像法(4D-MRI)および超音波イメージングのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0048】
前記現実のデータセットは、呼吸サイクル中の、前記モデル化した解剖学的領域をカバーする画像の展開を含んでよい。
【0049】
前記点ベースまたはメッシュベースのモデルは、前記解剖学的領域の前記物理的特性に採用される線形弾性モデルおよび超弾性モデルのうちの少なくとも1つを組み込んでよい。
【0050】
本方法は、
前記解剖学的領域を、物理的特性の第1の集合を表示する第1の解剖学的サブ領域と、前記物理的特性の第1の集合とは異なる物理的特性の第2の集合を表示する第2の解剖学的サブ領域とに分割するステップと、
前記第1の解剖学的サブ領域について、前記点ベースまたはメッシュベースのモデルに、前記物理的特性の第1の集合に採用される第1の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てるステップと、
前記第2の解剖学的サブ領域について、前記点ベースまたはメッシュベースのモデルに、前記物理的特性の第2の集合に採用される第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てるステップとを含んでよい。
【0051】
前記第1および前記第2の解剖学的サブ領域は、共通の境界を共有してよく、前記方法は、前記第1および前記第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルに、前記共通の境界における共通の境界条件を割り当てるステップを含んでよい。
【0052】
このような前記グラフネットワークシステムは、上記非特許文献3および非特許文献4の論文のいずれかにしたがって実装されてよい。
【0053】
第2の態様によれば、本開示は、放射線治療患者の解剖学的領域に対して実行される放射線治療処置の少なくとも一部を計画するコンピュータ実装方法を提供し、本方法は、
前記第1の態様の方法に従って前記解剖学的領域(202)の生体力学的モデルを確立することと、
各点またはメッシュノードに、計画線量および最大許容線量のうちの少なくとも1つを割り当てることとを含む。
【0054】
第3の態様によれば、本開示は、放射線治療患者の解剖学的領域内に位置する照射標的上に電離放射線ビームを照射するために配置された少なくとも1つのビーム源を備える放射線治療システムを提供する方法を提供する。この方法は、
前記解剖学的領域の生体力学的モデルを確立するステップと、
前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動について前記モデルを訓練するステップと、
前記放射線治療システムの制御システムに実装されるグラフネットワークシステムに、前記訓練済みモデルを実装するステップと、
前記グラフネットワークシステムにおいて、前記解剖学的領域の、空間内の現在の位置および/または現在の向きに関するデータに基づいて、前記訓練済みモデルの現在状態を確立するステップと、
前記グラフネットワークシステムにおいて、前記訓練済みモデルの前記現在状態に基づいて、前記訓練済みモデルの推定した未来状態を確立するステップと、
前記推定した未来状態に基づいて、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御するステップとを含む。
【0055】
前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御するステップは、前記電離放射線ビームが前記推定した未来状態に基づいて前記照射標的を追跡するように、前記少なくとも1つのビーム源のアラインメントを制御することを含んでよい。
【0056】
追加的または代替的に、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御するステップは、前記推定した未来状態が、前記照射標的が前記電離放射線ビームの軌道の外側に出てしまいそうであることを示す場合に、前記電離放射線ビームを遮断すること、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止することを含んでよい。
【0057】
追加的または代替的に、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御するステップは、前記推定した未来状態が、前記電離放射線ビームの軌道がリスク臓器と交差する危険性があることを示す場合に、前記電離放射線ビームを遮断すること、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止することを含んでよい。
【0058】
前記放射線ビームを遮断することは、ビーム監理システムに、すなわち、前記少なくとも1つのビーム源を制御する、前記放射線治療システムのサブシステムに、ゲーティング関数を適用することによって実現されてよい。
【0059】
前記周期的または半周期的運動は、典型的には、呼吸運動であってよい。
【0060】
前記生体力学的モデルを確立するステップは、前記解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースのモデルを確立することと、静的および/または動的特徴を、前記点ベースまたはメッシュベースのモデルの点またはメッシュノードに紐づけることとを含んでよい。前記特徴は、前記点またはメッシュノードのワールド-空間座標と、前記解剖学的領域の空間-時間的変位を表す状態変数とを含んでよい。前記状態変数は、変位場、すなわち、ある状態から別の状態に変位した、前記解剖学的領域内のすべての点またはメッシュノードに対する変位ベクトルの割り当てであってよい。
【0061】
前記グラフネットワークシステムにおいて前記訓練済みモデルを実装するステップは、グラフノードと、グラフエッジと、前記訓練済みモデルの静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを確立することによって、前記訓練済みモデルを前記グラフネットワークシステムにおけるグラフとして表すことを含んでよい。
【0062】
前記訓練済みモデルの現在状態を確立するステップは、前記解剖学的領域を監視するように構成された、前記放射線治療システムの監視システムによって提供される、前記解剖学的領域の、空間内の前記現在の位置および/または向きに関するデータに、前記現在状態を関連づけることを含んでよい。
【0063】
前記監視システムは、前記解剖学的領域の境界領域の、空間内の位置および/または向き、および、前記解剖学的領域内の基準マーカーの、空間内の位置および/または向きのうちの少なくとも1つを監視するように構成されてよい。
【0064】
前記変数は、前記解剖学的領域と電離放射線ビームとの間の相互作用、例えば線阻止能および/または放射線不透過度、を特徴付ける少なくとも1つの変数、を含んでよい。前記変数は、追加的または代替的に、計画放射線量、最大許容放射線量、および蓄積放射線量のうちの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つの変数を含んでよい。
【0065】
前記訓練済みモデルの前記推定した未来状態を提供するステップは、前記蓄積放射線量を特徴付ける前記変数を更新することを含んでよく、前記少なくとも1つのビーム源の位置および/またはアラインメントを制御しおよび/または前記電離放射線ビームを遮断するステップは、前記解剖学的領域の他の部分に対して前記最大許容放射線量を超えることなく前記照射標的が前記計画放射線量を受け取るように、前記少なくとも1つのビーム源を位置決めし位置合わせすることを、前記放射線治療システムのビーム監理システムに指示するステップを含んでよい。
【0066】
第4の態様によれば、本開示は、放射線治療システムを提供し、前記放射線治療システムは、
解剖学的領域内に位置する照射標的に電離放射線ビームを提供するように配置された少なくとも1つのビーム源と、
前記少なくとも1つのビーム源を制御するように構成されたビーム監理システムと、
前記解剖学的領域および、任意選択的に、前記ビーム監理システムを監視するように配置された監視システムと、
前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動について訓練済みの、前記解剖学的領域のモデルが実装されるコンピュータ実装グラフネットワークシステムを備える制御システムとを含み、
前記グラフネットワークシステムは、前記監視システムから受け取った、前記解剖学的領域の、空間内の現在位置および/または現在の向きに関するデータに基づいて、前記訓練済みモデルの現在状態を確立するように構成され、さらに、前記現在状態に基づいて前記訓練済みモデルの推定した未来状態を確立するように構成され、
前記制御システムは、前記推定した未来状態に基づいて前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御することを前記ビーム監理システムに指示するように構成されている。
【0067】
前記制御システムは、前記推定した未来状態に基づいて前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御し、前記少なくとも1つのビーム源に前記照射標的を追跡させることを、前記ビーム監理システムに指示するように構成されてよい。
【0068】
代替的または追加的に、前記制御システムは、前記推定した未来状態に基づいて前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御し、前記推定した未来状態が、前記照射標的が前記電離放射線ビームの前記軌道の外側に出てしまいそうであることを示す場合には、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止することを、前記ビーム監理システムに指示するように構成されてよい。
【0069】
代替的または追加的に、前記制御システムは、前記推定した未来状態に基づいて前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御し、前記推定した未来状態が、前記電離放射線ビームの軌道がリスク臓器と交差する危険性があることを示す場合に、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止することを、前記ビーム監理システムに指示するように構成されてよい。
【0070】
前記訓練済みモデルは、点ベースまたはメッシュベースのモデルであってよく、このモデルは、前記点ベースまたはメッシュベースのモデルの点またはメッシュノードに紐づけられた静的および/または動的特徴を備え、前記特徴は、前記点またはメッシュノードのワールド-空間座標と、前記解剖学的領域の空間-時間的変位を表す状態変数とを含む。
【0071】
前記グラフネットワークシステムは、前記訓練済みモデルを、グラフノードと、グラフエッジと、前記訓練済みモデルの前記静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを含むグラフとして、表すように構成されてよい。
【0072】
前記グラフネットワークシステムは、前記訓練済みモデルの前記確立された現在状態を、前記監視システムから受け取ったデータと関連づけるように構成されてよい。
【0073】
前記監視システムは、前記解剖学的領域の境界領域の、空間内の位置および/または向きと、前記解剖学的領域内の基準マーカーの、空間内の位置および/または向きのうちの少なくとも1つを監視するように構成されてよい。
【0074】
前記変数は、前記解剖学的領域と電離放射線ビームとの間の相互作用を特徴付ける少なくとも1つの変数と、計画放射線量と、最大許容放射線量と、蓄積放射線量とのうちの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つの変数とを含んでよい。前記訓練済みモデルの各推定した未来状態について、前記グラフネットワークシステムは、前記蓄積放射線量を特徴付ける前記変数を更新するように構成されてよく、前記制御システムは、前記解剖学的領域の他の部分に対して前記最大許容放射線量を超えることなく前記照射標的が計画放射線量を受け取るように、前記少なくとも1つのビーム源の位置および/またはアラインメントを制御することを、前記ビーム監理システムに指示するように構成されてよい。
【0075】
第5の態様によれば、本開示は、放射線治療システムを提供し、前記放射線治療システムは、
照射標的を含む解剖学的領域に電離放射線ビームを送出するように配置された少なくとも1つのビーム源と、
前記少なくとも1つのビーム源の位置および/またはアラインメントを制御するように構成されたビーム監理システムと、
前記解剖学的領域の、空間内の位置および/または向きに関する更新された現在データを提供するように配置された監視システムと、
前記解剖学的領域の周期的または半周期的運動について訓練済みの前記解剖学的領域のモデルが、ノードと、エッジと、グローバル要素とを含み、且つ、前記解剖学的領域の静的特徴を反映する静的属性と前記解剖学的領域の動的特性を反映する動的属性とを含むグラフとして表されるコンピュータ実装グラフネットワークシステムを含む制御システムとを備え、前記制御システムは、
前記監視システムから受け取った情報に基づいて、前記解剖学的領域の現在表現または状態を提供し、
前記グラフネットワークシステムにおける前記現在表現または状態を処理して、前記解剖学的領域の少なくとも1つの推定した未来表現または状態を提供し、
前記解剖学的領域の前記少なくとも1つの推定した未来表現または状態に基づいて、前記少なくとも1つのビーム源の前記電離放射線ビームを制御するように構成される。
【0076】
したがって、前記放射線治療システムは、前記解剖学的領域の前記動的特徴の予測した未来値を前記制御システムに提供し、前記ビーム監理システムが、前記解剖学的領域の予測した動きおよび変形、特に、前記放射線治療患者の呼吸活動による前記解剖学的領域の動きおよび変形を考慮するためにビームのアラインメントを採用することを可能にする。これにより、前記放射線治療システムが、周囲の組織、特にリスク臓器をじゅうぶん考慮して前記照射標的を正確に追跡することが可能となる。このことはまた、前記ビーム監理システムの遅延時間、特に、前記ビーム監理システムのビームガイドサブシステムの遅延時間が、少なくとも部分的に補償されることを可能にする。
【0077】
追加的または代替的に、前記解剖学的領域の前記動的特徴の前記予測した未来値が、前記電離放射線ビームがリスク臓器と交差し得ることを示す場合には、前記制御システムは、前記電離放射線ビームを遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止するように構成されてよい。
【0078】
追加的または代替的に、前記解剖学的領域の前記動的特徴の前記予測した未来値が、例えば前記照射標的を前記少なくとも1つのビーム源の範囲の外側に出すような前記解剖学的領域の動きに起因して、前記照射標的が前記電離放射線ビームの軌道の外側に出てしまいそうであることを示す場合には、制御システムは、前記電離放射線ビームを遮断するか、または、前記少なくとも1つのビーム源を停止するように構成されてよい。
【0079】
前記グラフネットワークシステムは、好ましくは、前記解剖学的領域の少なくとも1つの推定した未来表現または状態を、線量投与中に反復的に、好ましくは20~100msの範囲内、例えば50msの周期で、提供するように構成されてよい。
【0080】
前記グラフネットワークシステムは、前記解剖学的領域の前記現在表現から入力グラフを符号化するように構成されたエンコーダと、1つ以上のグラフネットワークブロックを備え、前記入力グラフを処理してグラフエッジに沿ったメッセージパッシングを実行し、更新されたノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフを提供するように訓練されたプロセッサと、前記出力グラフから少なくとも1つの出力特徴を抽出する出力グラフを復号するように構成されたデコーダと、を備えてよい。
【0081】
このような前記グラフネットワークシステムは、上記非特許文献3および非特許文献4の論文のいずれかにしたがって実装されてよい。
【0082】
前記特徴は、有利には、前記解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける特徴を含んでよい。前記組織特徴は、線または相対阻止能および/または放射線濃度または放射線不透過度を含んでよい。
【0083】
前記特徴はまた、各点またはメッシュノードに紐づけられた計画線量、蓄積線量、および最大許容線量のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0084】
前記ビーム源の位置および/またはアラインメントに関する情報は、前記制御システムに提供されてよい。撮像システムから受け取った情報に基づくことに加えて、前記解剖学的領域の前記現在表現はまた、前記ビーム源のアラインメントに関する情報に基づいてもよい。それゆえ、前記動的特徴が吸収線量を含む場合、前記解剖学的領域の前記推定した未来表現は吸収線量の空間分布に関しても更新され、線量投与とビームアラインメントが計画線量と吸収線量との間の差に基づいて制御されることを可能とする。
【0085】
前記解剖学的領域の表現は、メッシュノードおよびメッシュエッジを含むメッシュとして提供されてよく、ここで、前記静的および動的属性は、前記メッシュノードの静的および動的特徴を反映してよい。
【0086】
第6の態様によれば、本開示は、電離放射線ビーム監理システムを制御して、線量投与中に放射線治療患者の解剖学的領域内の照射標的を追跡し、および/または、電離放射線ビームがリスク臓器と交差する危険性がある場合または前記照射標的が前記電離放射線ビームの軌道の外側に出てしまいそうである場合に前記電離放射線ビームを遮断する、コンピュータ実装制御システムを提供し、前記制御システムは、前記照射標的を表すデータを処理するためのコンピュータ実装ニューラルネットワークシステムを備え、ここで、前記解剖学的領域(前記照射標的を含む)は、メッシュエッジE
Mによって接続されたノードVを含むシミュレーションメッシュM
t = (V, E
M)を用いて前記ニューラルネットワークシステムにおいてモデル化され、各ノード
【数1】
は、
現在状態M
tおよび、任意選択的に、前記シミュレーションメッシュの少なくとも1つ前の状態M
t-1を受け取るように構成された入力と、
前記シミュレーションメッシュに広がる基準メッシュ空間座標
【数2】
と、
少なくとも1つの力学量q
iと、
3次元空間における前記シミュレーションメッシュの前記動的状態を記述するワールド-空間座標x
iと、に紐づけられ、
前記ニューラルネットワークシステムは、
グラフ処理ニューラルネットワークと、
更新器と、
前記シミュレーションメッシュの少なくとも1つの推定した動的状態M
t+1を前記ビーム監理システムに提供するように構成された出力と、を備え、
前記グラフ処理ニューラルネットワークは、
現在のシミュレーションメッシュM
tから入力グラフG
0を符号化するように構成されたエンコーダと、
1つ以上のグラフネットワークブロックを備え、入力グラフG
0を処理して、メッシュエッジおよびワールドエッジに沿ってメッセージパッシングを実行し、更新したノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフG
Mを提供するように訓練されたプロセッサと、
前記少なくとも1つの力学量q
iに対応する少なくとも1つの出力特徴p
iを抽出する前記出力グラフG
Mを復号するように構成されたデコーダとを備え、
前記更新器は、前記少なくとも1つの力学量
【数3】
を更新して前記少なくとも1つの推定した動的状態M
t+1を生成するように構成されている。
【0087】
第7の態様によれば、本開示は、照射標的を含む解剖学的領域の周期的または半周期的運動をモデル化するコンピュータ実装方法を提供し、本方法は、
前記解剖学的領域を記述するメッシュエッジE
Mによって接続されたノードVを含むシミュレーションメッシュM
t = (V, E
M)を提供するステップであって、各ノード
【数4】
は、前記シミュレーションメッシュM
tに広がる基準メッシュ空間座標
【数5】
と、3次元空間における前記シミュレーションメッシュM
tの前記動的状態を記述するワールド空間座標
【数6】
と、任意選択的に、少なくとも1つの追加力学量
【数7】
とに紐づけられるステップと、
前記シミュレーションメッシュにおいてまだ接続されておらず、所定の値
【数8】
未満の空間的近接度を有するノードの各ペアについて、ワールドエッジE
wを作成するステップと、
グラフネットワークシステムのエンコーダにおいて、相対メッシュ-スペース変位ベクトル
【数9】
とそのノルム
【数10】
を各メッシュエッジ
【数11】
に符号化し、さらに、相対ワールド-空間変位ベクトル
【数12】
とそのノルム
【数13】
を各メッシュエッジ
【数14】
と各ワールドエッジ
【数15】
に符号化することによって、現在のシミュレーションメッシュM
tをマルチグラフG = (V, E
M, E
W)に符号化し、各ノード
【数16】
に対して、前記任意選択の少なくとも1つの追加力学量
【数17】
をノード特徴として提供するステップと、
複数個の同一メッセージパッシンググラフネットブロックを備えた前記グラフネットワークシステムのプロセッサにおいて、あらかじめ定められた数(M)の、学習済みメッセージパッシングのステップを介してノード間の相互作用を計算し、更新した潜在グラフ
【数18】
のシーケンスを生成し(ただし、G
m+1 = GN
m+1(G
m))、最終更新グラフG
M = PROCESSOR(G
0)を返送することにより、各メッシュエッジと、各ワールドエッジと、各ノード埋め込み
【数19】
を更新するステップと、
前記グラフネットワークシステムのデコーダにおいて、前記ノード特徴v
iを1つ以上の出力特徴
【数20】
に変換するステップと、
前記グラフネットワークシステムの更新器において、前記出力特徴
【数21】
を積分することにより次段力学量
【数22】
を計算し、前記次段力学量
【数23】
を用いて出力メッシュノードを更新して前記少なくとも1つの推定した動的状態M
t+1を生成するステップと、を含む。
【0088】
第8の態様によれば、本開示は、訓練済みのグラフネットワークシステムにおいて周期的または半周期的運動について訓練される、照射標的を含む解剖学的領域の生体力学的モデルを提供する。
【0089】
上記に説明した態様のうちのいずれか1つの特徴を、前記他の態様のうちのいずれか1つの特徴と組み合わせてもよい。
【0090】
開示されたシステムおよび方法は、患者の内部状態を表しシミュレートする解剖学的生体力学的モデルと、シミュレートした生体力学的データについて訓練されて前記患者の内部状態を学習するグラフニューラルネットワークとを含む。
【0091】
前記生体力学的モデルは、呼吸中の内部臓器の動きおよび変形をシミュレートするために用いられ得、このシミュレーションは、放射線治療または手術中に患者の前記内部状態を予測するために用いられ得る。
【0092】
前記生体力学的モデルは、各々が単一の解剖学的構造を表す、空間内の3次元(3D)であるメッシュの集合、または、臓器および組織などの様々な物理的ドメイン(メッシュフリー)を定義する点群(point clouds)の集合に依存してよい。
【0093】
前記生体力学的モデルは、動的および構成的方程式の集合、ならびに、境界条件と、パラメータと、初期値とによって数学的に規定されてよい。
【0094】
前記生体力学的モデルは、解剖学的構造の動的内部運動を表す3次元変形場の一連の推定値を生成するために空間および時間において解かれてよく、これは、放射線蓄積の位置を予測するために用いられ得る。
【0095】
前記生体力学的モデルを、有限要素分析、有限差分または有限体積法などの数値計算方法を用いて、空間および時間において解いてよい。
【0096】
計算は、放射線送出中のモデル状態のほぼリアルタイムの展開を得ることを可能にするタイムステップ法を用いて反復的に実行されてよい。ここで、リアルタイムとは、前記モデル状態が十分に高い頻度で更新され、内部解剖学的構造における変化が十分な分解能で捕捉され記録されることを可能にすることを意味する。
【0097】
高分解能シミュレーションは、しばしば非常に遅く、本開示によれば、より高速の予測を提供するために、学習済みモデルを代わりに用いてよい。生体力学的モデリング(メッシュベースまたは粒子ベース)を、ニューラルネットワークを訓練するためのデータを生成するために用いてよく、これは、さらにまた、患者組織の生体力学のリアルタイム計算において用いられてよい。
【0098】
前記計算モデルは、ミリ秒から数秒にわたる、未来における要求されたタイムステップtで、標的組織およびリスク組織の3次元空間座標、ならびに、ハウンスフィールド単位(HU)および/または相対阻止能(RSP)などの空間的に変化する組織パラメータを予測してよい。HUおよびRSPなどの空間的に変化する量は、シミュレーションに先立って、患者の基準CT画像から抽出され、前記3次元解剖学的モデル内のそれぞれのノードに割り当てられてよい。前記メッシュまたは点群の空間的分解能は、元のCT画像よりも低い可能性があるため、各データノードは、値の近傍を表してよい。
【0099】
この文脈における「モデル」なる用語は、1組の入力パラメータおよびシステムダイナミクスの記述が与えられると、空間および時間に対する変位をシミュレート(および予測)することができるモデルを指す。「3次元解剖学的モデル」なる用語は、解剖学的構造または患者全身の幾何学的表現を指してよい。前記解剖学的領域は、胸部、腹部、頭部および頸部または脳であってよい。前記解剖学的構造は、固形癌性または非癌性腫瘍、臓器、組織、またはそれらの組み合わせであってよい。提案された動き予測方法は、周期的または半周期的移動、回転、および/または変形が起きる任意の構造に適用することができる。
【0100】
[生体力学モデリング]
物理ドメインの動的モデルは、ソース項f、境界条件gおよびh、ならびにモデルパラメータpをもつ偏微分方程式Fの系によって広義に規定され得る。このモデルはまた、構成的方程式および中間媒介変数の集合を含んでよい。モデル状態変数
【数24】
は、ドメインΩの空間-時間的変位を表すために用いられてよい。tは、時間次元を表す。
【数25】
【0101】
開示されたシステムおよび方法において、状態変数
【数26】
は、有利には、変位場、すなわち、ある状態から別の状態に変位した、ドメイン内のすべての点に対する変位ベクトルの割り当てであってよい。変位ベクトルは、原点または以前の位置を基準として点または粒子の位置を特定する。したがって、開示されたシステムおよび方法において、解剖学的領域(照射標的を含む)に対する変形の影響を記述するために変位場を用いてもよい。
【0102】
上記の数学的モデルは、特定の精度範囲内で物理ドメインの関連動力学(この場合、
【数27】
として数値化される)を再現するように規定され、境界条件と、物理的特性および潜在変数の両方を表すモデルパラメータとの集合とによって規制される。
【0103】
各個別の物理ドメインは、異なる方程式集合によってモデル化されてよく、したがって、そのようなモデルの構築は、対応するドメインの物理学および力学の専門知識を必要としてよい。要件は、モデルが、ドメインノードの空間的および時間的に分解された変位を生成できることである。境界を共有するドメインには、同一の境界条件が適用されてよい。
【0104】
前記生体力学的モデルは、上記の数学的モデル、または時間tからt+1までの状態変数
【数28】
を積分する順方向マップとして公式化される任意の動的モデルに基づいてよい。
【0105】
-弾性モデル-
材料の挙動を記述する多数の数学的モデルが存在し、これには下記が含まれる。
線形弾性モデル:線形弾性材は、外部または内部負荷の下での物体の変形を、負荷に線形に比例するものとして表す。フックの法則は、材料の挙動を表し、未知の応力と歪みを関連付ける。
超弾性モデル:このような材料は、非線形材料の挙動を示すだけでなく、大変形および応力-歪み関係も歪みエネルギー密度関数から導出される。超弾性材料モデルの例は、ネオフッキアン(Neo-Hookean)およびムーニーリブリン(Mooney-Rivlin)モデルである。
【0106】
前記生体力学的モデルは、これらの数学的モデルのいずれかを組み込んでよい。
【0107】
-メッシュベースおよびメッシュレス方法-
生体力学的3次元解剖学的モデルは、四面体メッシュまたは点/粒子の群のいずれかとして表されてよく、偏微分方程式の基本的な系を解くために異なる数値的方法を用いてよい。
【0108】
-メッシュレス/粒子ベース法-
メッシュレス法は、空間離散化のための非構造化点群を利用してよい。ドメイン内のノードのコロケーションは、任意であるか、または、例えばドメインの一部がより高いノード密度を含むことを保証し、そのサブドメインにおいてより高い解精度を可能にする特定の規則にしたがうものでよい。
【0109】
-メッシュベース法-
生体力学における数値シミュレーションは、通常、有限要素法(FEM)によって解決される。独立した臓器/組織のドメインは、相互接続されたノードおよびセルの有限集合に離散化されてよく、これらに対して有限要素解析の解が計算されてよい。メッシュは、構造を小さな連結四面体要素に分割する、臓器および腫瘍分割から生成されてよい。
【0110】
-ドメイン-
ドメインは、方程式、パラメータ、および制約の同じ集合によって記述され得る物理的連続体と見なされてよい。生体力学的モデルの物理的ドメインは、典型的には治療されるべき腫瘍と、腫瘍が形成された臓器と、周囲のリスク臓器(OAR)とを含む、対象の解剖学的構造であってよい。また、それらは非OARおよび身体の外表面を含んでもよい。
【0111】
ドメインは、有限数のセルまたはノードに区分されてよく、結果として、メッシュまたは点群のいずれかをもたらし、これらは、生体力学的モデルを数値的に解く方法におけるモデル離散化の基礎として働いてよい。
【0112】
-境界条件-
境界条件は、生体力学的モデルを一意解に規制するために、シミュレーションに先立って規定されてよい。メッシュベースモデルの場合、境界条件は、各ドメイン(境界)のファセット上で規定されてよい。境界条件は、境界上の状態変数の所望値(ディリクレ境界条件)、または、状態変数の勾配(ノイマン境界条件)、または、両方の組合せ(ロビン、混合、コーシー境界条件)のいずれかを規定してよい。状態変数はベクトル量である変位であるため、境界条件もベクトル量となる。そこで、1つの画像(基準画像)から他の画像(移動画像)への変形を計算することにより、境界条件を求めることができる。したがって、画像から境界条件を得るために、同じ画像検査からの、異なる時刻に撮影された少なくとも2つの患者画像を必要とする。
【0113】
境界条件はまた、イメージング以外の代替データソースから、例えば、監視センサから取得されてもよく、その場合、境界条件は、典型的には、境界のサブ領域を規制するために用いられる。
【0114】
境界条件は、患者特有であってよく、すなわち、患者自身の画像データから導出されてよく、または、その他の、患者のデータから導出されてよい。
【0115】
-体内の力-
例えば筋肉運動、呼吸、ボーラス(急速静注)、および膀胱注入などによって駆動される、内臓での力および圧力は、強制項(ソース項とも呼ばれる)を微分方程式に含めることによって、生体力学的モデルに埋め込まれてよい。これらの力は、生理学的な(ならびに患者特有の)様式で挙動するようにモデルにさらなる制約を課すために用いられ得、したがって、用途に合わせて調整されてよい。
【0116】
-生体力学的モデルを解く-
生体力学的モデルは、任意の適切なFEMソフトウェアを用いて解かれてよい。
【0117】
[グラフネットワークフレームワーク]
本開示による方法およびシステムは、グラフネットワークフレームワークまたはシステムを用いて生体力学的モデルの未来状態を予測する。例えば、非特許文献5の論文の教示に基づくフレームワークを用いる。
【0118】
本開示による方法およびシステムはまた、グラフネットワークフレームワークまたはシステムを用いて、生体力学的モデルの動力学を学習する。
【0119】
グラフネットワークフレームワークまたはシステム内で、グラフは、一般に、3要素からなる
【数29】
として規定されてよく、ここで、エンティティはグラフのノードVによて表され、関係はグラフのエッジEによって表され、システムレベル特性はグローバル属性
【数30】
によって表される。
【0120】
グラフネットワークフレームワークまたはシステムにおける計算の主要な単位は、グラフネットワークブロック(GNブロック)である。グラフネットワークブロックは、グラフを入力として取り込み、構造に対して計算を実行し、グラフを出力として返す「グラフ対グラフ」モジュールである。
【0121】
グラフネットワークブロックは、3つのサブ関数(エッジEと、ノードVと、グローバル属性
【数31】
の各々について1つずつ)を含んでいる。サブ関数は、任意のクラスのニューラルネットワークを潜在的に用いることによって実装され得る。これらの関数の各々は、例えば、多層パーセプトロン(MLP)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、長・短期記憶(LSTM)再帰型ニューラルネットワーク、または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等を用いて実装されてよい。
【0122】
サブ関数の実装は、DeepMindのソネットライブラリ(https://github.com/deepmind/sonnet)に基づいてよい。
【0123】
もし3次元生体力学的モデルがメッシュに基づく場合、グラフのノードおよびエッジは、それぞれ、メッシュのノードおよび頂点を表すように特定されてよい。系の力学量、すなわち、状態変数およびそれらの導関数は、グラフのエッジに埋め込まれてよい。グラフネットワークブロックのプロセッサは、入力グラフを取り込み、エッジ上で規定された力学量を更新して、出力グラフを生成する。
【0124】
各エッジが受け取った特徴は、ネットワークにおいて符号化される、生体力学的モデルからの物理的相互作用および特性を決定する。
【0125】
グラフエッジは、相対変位場
【数32】
およびそのノルム
【数33】
を埋め込む。加えて、モデル内の体内の力は、2つの隣接するノード間の方向性エッジ特徴として符号化されてよく、1つのノードにより隣接するノード上に加えられる力を表す。
【0126】
微分演算子は、サブ関数(f
M)としてグラフのエッジに埋め込まれた、隣接するノード間のメッセージパッシングによって近似されてよい。これらの関数は、エッジ特徴(例えば、導関数および力)ならびに送信側および受信側ノード特徴(座標、材料特性など)を入力として取り込み、ノードの高次導関数を出力する。これらは、次に、動的変数
【数34】
を積分するために用いられる。
【0127】
グラフノードはまた、グラフノード間で渡されるメッセージとは無関係に、グラフノード特徴についての演算、例えば材料特性の変換、を表す関数(f
v)を埋め込んでよい。
【数35】
ここで、
【数36】
および
【数37】
は、それぞれ、メッシュエッジおよびワールドエッジである。
【0128】
【0129】
下記の表は、本開示の一態様による、システムおよび方法のグラフの特徴を説明する。
【0130】
【0131】
一次モデルについて、時間t+1での力学量x
iは、時間tでの導関数を次式に従って積分することによって得られる。
【数38】
【0132】
したがって、一次モデルについて、力学量xiは、グラフネットワークによって出力される、一次導関数を用いて更新される。
【0133】
二次モデルについて、時間t+1での力学量x
iは、次式に従って得られる。
【数39】
【0134】
二次モデルについて、x'iがノード特徴として埋め込まれ、x"iが力学量xiを積分するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1】本開示による放射線治療システムの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本開示による放射線治療システムの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】放射線治療患者の解剖学的領域を示す図である。
【
図4】
図3による解剖学的領域のメッシュベースモデルを示す図である。
【
図5】
図4によるメッシュベースモデルから符号化されたグラフを示す図である。
【
図6】グラフネットワークシステムを示す図である。
【
図7】グラフネットワークブロックを示す図である。
【
図8】放射線治療システムに用いられる、放射線治療患者の解剖学的領域の生体力学的モデルを確立する方法の一実施形態を示す図である。
【
図9】放射線治療患者の解剖学的領域に対して実行される放射線治療処置の少なくとも一部を計画するコンピュータ実装方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
以下、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0137】
本開示による放射線治療システムの実施形態、および、そのようなシステムがどのように提供されるかについて、放射線治療システム100が線量投与中の放射線治療患者の呼吸運動を予測し補償するように構成されるという設定において、以下、より詳細に説明する。ただし、以下の教示は、任意の種類の周期的または半周期的運動を予測し補償するために適用されてよいことを理解されたい。
【0138】
図1および
図2は、本開示による放射線治療システム100の一実施形態を概略的に示す図である。放射線治療システム100は、放射線治療患者の解剖学的領域における照射標的を照射するように構成されている。
図3は、解剖学的領域202、この場合は胸部、を有する放射線治療患者200を示す図であり、その中には照射標的204がある。
図1および
図2において、解剖学的領域および照射標的は、それぞれ参照番号202および204によって概略的に示されている。
【0139】
解剖学的領域202は、異なる組織特性を有する異なる解剖学的構造を含み、そのうちのいくつかは、リスク臓器OAR、すなわち、好ましくは放射線治療中に照射されるべきではない構造または臓器である。照射標的204は、典型的には、腫瘍であってよい。
【0140】
放射線治療システム100を提供することは、放射線治療セッションに先立って、メッシュノードおよびメッシュ頂点を含む解剖学的領域202の3次元メッシュベースの生体力学的モデルを確立することと、各メッシュノードを、そのメッシュノード内またはそのメッシュノードで、解剖学的領域202の特性を特徴付ける静的変数及び動的変数に紐づけることとを含み、したがって、解剖学的領域202の状態を、解剖学的領域202の空間の局所領域内の特性を符号化するメッシュノードの集合によって表すことが可能となる。
【0141】
図4は、メッシュノード302およびメッシュ頂点304を含む、
図3に開示された解剖学的領域202の生体力学的モデル300を示し、各メッシュノード302は、複数個の静的変数および動的変数に紐づけられる。静的変数および動的変数は、メッシュノード302のワールド-空間座標
【数40】
を含む。静的変数および動的変数はまた、解剖学的領域202の空間-時間的変位を表す状態変数
【数41】
を含む。状態変数
【数42】
は、有利には、変位場、すなわち、ある状態から別の状態に変位した、解剖学的領域202内のすべてのメッシュノード302に対する変位ベクトルの割り当てであってよい。一般に、変位ベクトルは、原点または以前の位置を基準として、点または粒子の位置を特定する。したがって、変位場
【数43】
は、解剖学的領域ひいては照射標的に対する変形の影響を記述するために用いられてよい。
【0142】
有利には、静的変数および動的変数はまた、解剖学的領域202と、各メッシュノード302またはボクセル内あるいはそれらでの電離放射線ビームとの間の相互作用、例えば、線阻止能または放射線不透過度(例えば、ハウンスフィールド単位として表現される)を特徴付ける少なくとも1つの変数を含んでもよい。静的変数および動的変数はまた、各メッシュノード302内または各メッシュノード302での計画放射線量および/または最大許容放射線量を特徴付ける変数を含んでもよい。静的変数および動的変数はまた、各メッシュノード302内または各メッシュノード302での蓄積放射線量を特徴付ける変数を含んでもよい。
【0143】
生体力学的モデル300は、原則として、解剖学的領域202内の臓器および組織の動きおよび変形をシミュレートすることを可能にする、解剖学的領域の任意の数学的モデルに基づくものでよい。生体力学的モデルは、動的および構成的偏微分方程式の集合、ならびに境界条件、パラメータ、および初期値によって数学的に規定されてよく、これらの方程式は、解剖学的領域202の動的内部運動を表す3次元変形場の一連の推定値を生成するために空間および時間において解かれ得る。典型的には、そのような解は、有限要素解析、有限差分または有限体積法などの数値計算方法を用いて、空間および時間において方程式を解くことを含む。そのような計算方法はタイムステップ法を用いて反復的に実行されてよく、タイムステップ法は、十分に高い頻度で更新されるモデル状態の展開を得ることを可能にし、内部解剖学的構造における変化を十分な分解能で捕捉し記録することを可能にする。解剖学的領域202の異なるサブ領域は、異なる数学的モデルを用いてモデル化されてよい。特に、異なるサブ領域は、生体力学的モデル300に存在する異なる組織の種類を考慮して、方程式の異なる集合によってモデル化されてよい。
【0144】
例えば、生体力学的モデル300を確立することは、解剖学的領域202を、物理的特性の第1の集合を表示する少なくとも第1の解剖学的サブ領域202aと、物理的特性の第1の集合とは異なる物理的特性の第2の集合を表示する第2の解剖学的サブ領域202bとに分割することを含むことでよい(
図1参照)。第1の解剖学的サブ領域202aについて、メッシュベースのモデル300は、物理的特性の第1の集合に採用される第1のメッシュベースのサブモデルが割り当てられてよく、第2の解剖学的サブ領域202bについて、メッシュベースのモデル300は、物理的特性の第2の集合に採用される第2のメッシュベースのサブモデルが割り当てられてよい。
【0145】
第1および第2の解剖学的サブ領域202a、202bは共通の境界を共有してよく、生体力学的モデル300を確立する方法は、第1および第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルに、共通境界における共通境界条件を割り当てるステップを含んでよい。
【0146】
材料の挙動を記述する多数の数学的モデルが存在する。これらのモデルは、線形弾性モデルを含み、線形弾性材は、外部負荷または内部負荷の下での物体の変形を、負荷に線形に比例するものとして表す。これらのモデルにおいて、フックの法則は、材料挙動を表し、未知の応力と歪みを関連付ける。既知の数学的モデルはまた、超弾性モデルを含み、ここでは、材料が非線形材料挙動だけでなく、歪みエネルギー密度関数から導出される大変形および応力-歪み関係を示す。超弾性材料モデルの例には、ネオフッキアンモデルおよびムーニーリブリンモデルが含まれる。
【0147】
前記生体力学的モデル300は、これらの数学的モデルのうちのいずれか1つを組み込んでよい。
【0148】
一般に、生体力学的モデル300は、ソース項f、境界条件gおよびh、ならびにモデルパラメータpを有する偏微分方程式Fの系によって規定され得る。
【数44】
【0149】
モデル状態変数
【数45】
は、ドメインΩの空間-時間的変位を表す変位場であり、tは、時間次元を表す。
【0150】
放射線治療システム100を提供することは、さらに、周期的または半周期的運動についてモデルを訓練することを含み、放射線治療システム100は、本実施形態においては呼吸運動を予測および補償するように構成される。
【0151】
好ましくは、この訓練は、モデル300をグラフネットワークシステムにおけるグラフとして表すことと、グラフネットワークシステムによって提供される推定した未来状態に損失関数を適用することとを含む。
【0152】
モデル300をグラフネットワークシステムにおけるグラフとして表すことは、グラフノードと、グラフエッジと、生体力学的モデル300の静的変数および動的変数を反映する特徴を有するグラフグローバル要素とを確立することを含む。
【0153】
グラフネットワークは、例えば、前述の非特許文献3および非特許文献4の論文により知られ、放射線治療システム100に係るグラフネットワークは、これらの論文のいずれかの教示を出発点として、有利に実装されてよい。
【0154】
図5は、
図4に示す生体力学的モデル300を表すグラフ400を概略的に示す図であり、このグラフは、グラフノード402およびグラフエッジ404を含む。本実施形態において、グラフノード402およびグラフエッジ404は、それぞれ、メッシュノード302およびメッシュ頂点304を表すものとして特定されてよく、例えば変位場
【数46】
として表される、解剖学的領域202の空間-時間的変位を表す状態変数は、グラフエッジ406に埋め込まれてよい。さらに、生体力学的モデル300内の体内の力は、2つの隣接するグラフノード間の方向性グラフエッジ特徴として符号化されてよく、これは、1つのメッシュノードにより、隣接するメッシュノードに加えられる力を表す。
【0155】
図6は、放射線治療システム100の本実施形態の中で実装されるグラフネットワークシステムすなわちフレームワーク500の主要な構成要素を概略的に示す図である。
【0156】
グラフネットワークシステム500は、入力502と、グラフ処理ニューラルネットワーク504と、更新器506と、出力508とを備える。グラフ処理ニューラルネットワーク504は、エンコーダ510と、プロセッサ512と、デコーダ514とを備える。
【0157】
エンコーダ510は、入力502からメッシュベースの生体力学的モデル300の現在状態Mtを受け取り、生体力学的モデル300の現在状態Mtから入力グラフG0を符号化するように構成される。
【0158】
プロセッサ512は、入力グラフG
0を処理し、更新したノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフG
Mを提供するように構成される。プロセッサ512は、グラフを入力として取り込む1つ以上のグラフネットワークブロック516(
図7を参照)を含み、グラフ構造上で計算を実行し、グラフを出力として返す。各グラフネットワークブロックは、3つのサブ関数(グラフエッジ、グラフノード、およびグラフグローバル要素の各々に対して1つずつ)を含む。サブ関数は、任意のクラスのニューラルネットワークを潜在的に用いることによって実装され得る。各サブ関数の各々は、例えば、多層パーセプトロン(MLP)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、長・短期記憶(LSTM)再帰型ニューラルネットワーク、または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて実装されてよい。
【0159】
サブ関数の実装は、ディープマインド(DeepMind)のソネットライブラリ(https://github.com/deepmind/sonnet)に基づくものでよい。
【0160】
デコーダ514は、生体力学的モデル300の静的変数および動的変数に対応する出力特徴を抽出する出力グラフGMを復号するように構成される。
【0161】
更新器506は、出力特徴を更新して、メッシュベースの生体力学的モデル300の推定した未来状態Mt+1を生成し、推定した状態Mt+1を出力508に提供するように構成される。
【0162】
生体力学的モデル300を訓練することは、好ましくは、更新器により提供される推定した状態と、モデル化した解剖学的領域202に対応する、解剖学的領域の現実のデータセットとに対して損失関数を適用することを含む。現実のデータセットは、モデル化した解剖学的領域202に対応する、解剖学的領域の4次元コンピュータ断層写真撮影(4D-CT)スキャンに基づくものでよい。この目的のために、X線に対する組織材料の不透過度を与えるハウンスフィールド単位が、好ましくは、モデル300において変数として含まれるべきである。代替的または追加的に、訓練は、4次元磁気共鳴映像法(4D-MRI)または超音波イメージングから取得されたデータセットに基づいてよい。
【0163】
呼吸運動を訓練するために、データセットは、好ましくは、呼吸サイクル中の、モデル化した解剖学的領域202をカバーする画像の展開に基づくものでよい。モデルを訓練するために、各々が異なる呼吸パターンを捉えた、同じ患者の2つの画像データセットのうちの最小値を用いることができる。しかしながら、好ましくは、異なる呼吸パターン(患者間および患者内変動)を示す、より大きな患者集団からの画像を用いることができる。
【0164】
ここで
図1および
図2に戻って、放射線治療システム100は、電離放射線ビーム104を提供するように配置された少なくとも1つのビーム源102を備える。放射線ビーム104は、例えば、粒子ビーム、例えば陽子ビーム、または、光子ビーム、例えばX線ビームであってよい。
【0165】
放射線治療システム100は、各ビーム源102の空間内の位置およびアラインメントを制御するように構成されたビーム監理システム106をさらに備える。この制御は、好ましくは、例えば、デカルト座標x、y、zによって表される、各粒子ビーム源の位置を規定する3つの変数、および/または、例えば、
図1および
図2に概略的に示されるように、直交するピッチ軸、ヨー軸、および/またはロール軸について測定された回転角度によって表される、ビーム源のピッチ、ヨー、および/またはロールを規定する変数を制御することを含むことでよい。
【0166】
放射線治療システム100はまた、照射標的204を追跡するようにビーム監理システム106を制御するように構成された制御システム110を備える。この目的のために、制御システム110は、上述の訓練済み生体力学的モデル300が実装されるコンピュータ実装グラフネットワークシステムすなわちフレームワーク500を備える。グラフネットワークシステム500は、有利には、モデル300を訓練するために用いられるものと同じ種類であってよい。
【0167】
放射線治療システム100はまた、解剖学的領域202を監視して解剖学的領域202の現在状態の少なくとも1つの態様に関する更新したデータを受け取るように設けられた監視システム120を備える。ここで「更新したデータ」は、解剖学的領域202の現在状態に関する情報を提供するのに十分な最新のデータを指す。したがって、更新したデータは、好ましくはリアルタイムまたはほぼリアルタイムのデータであるべきであるが、ゆっくりと展開する状態を有する周期的またはほぼ周期的な運動については、それほど最新ではないデータを更新したデータと認めてよい。
【0168】
監視システム120は、例えば、解剖学的領域202の境界領域206、例えば、放射線治療患者の胸部のエンベロープ、すなわち、例えば皮膚マーカーによって示される胸部の外側輪郭(体表面)、の、空間内の位置および/または向きを監視するように構成されてよい。しかしながら、監視したデータは、追加的にまたは代替的に、解剖学的領域の内部構造の、空間内の位置および/または向き、例えば、1つまたは複数個の基準マーカー208の、空間内の位置および/または向きを含んでよい。このデータは、撮像システム122、例えば、可視電磁スペクトル内で動作するカメラ、または、超音波撮像システムから、監視システム120によって受け取られてよい。代替的または追加的に、2D画像、例えばMRIまたはX線投影画像は、患者内のランドマークを、基準マークであるかその他の解剖学的ランドマークであるかどうかにかかわらず、追跡することによって取得されてよい。しかしながら、3D-MRIまたは3D-CTシステムは、通常、比較的長い取得および再構成時間、例えば、高いデータ遅延時間を伴うため、更新したデータを提供するために用いるにはあまり適さないかもしれない。しかしながら、ゆっくりと展開する周期的または半周期的運動については、3D-MRIおよび3D-CTシステムは、代替的に、または追加的に、更新したデータを提供するために用いられてよい。
【0169】
好ましくは、監視システム120はまた、ビーム源102を監視して、少なくとも1つのビーム源102の現在の位置および/またはアラインメントに関する更新したデータを受け取るように配置される。このデータは、ビーム監理システム130から監視システム120によって低遅延で受け取られてよい。
【0170】
前述のように、解剖学的領域202の生体力学的モデル300は、メッシュノード302およびメッシュ頂点304を含み、各メッシュノード302は、メッシュノード302のワールド-空間座標
【数47】
および解剖学的領域202の空間的-時間的変位を表す状態変数
【数48】
に関連付けられ、状態変数
【数49】
は、変位場であってよい。
【0171】
したがって、制御システム110内に実装されるグラフネットワークシステム500において、訓練済み生体力学的モデル300は、グラフ400として表されてよく、ここで、グラフノード402およびグラフエッジ404は、それぞれ、メッシュノード302およびメッシュ頂点304を表すように特定され、変位場
【数50】
によって表される状態変数は、グラフエッジに埋め込まれてよい。さらに、前述したように、生体力学的モデル300内の体内の力は、1つのメッシュノードにより隣接するメッシュノードに加えられる力を表す、2つの隣接するグラフノード間の方向性グラフエッジ特徴として符号化されてよい。
【0172】
したがって、グラフ400のノード、エッジ、およびグローバル要素は、下記の特徴を有してよい。
【0173】
【0174】
システムの力学量、すなわち、状態変数
【数51】
およびその導関数は、グラフエッジに埋め込まれる。プロセッサ512において、各グラフネットワークブロック516は、入力グラフを取り込み、エッジ上で規定された力学量を変換して出力グラフを生成する。
【0175】
各グラフエッジによって受け取られた特徴は、ネットワークにおいて符号化される、生体力学的モデルからの物理的相互作用および特性を決定する。
【0176】
グラフエッジは、相対変位場
【数52】
およびそのノルム
【数53】
を埋め込む。加えて、モデル内の体内の力f
ijは、2つの隣接するノード間の方向性エッジ特徴として符号化され、1つのノードによって隣接するノードに加えられる力を表す。
【0177】
微分演算子は、サブ関数(f
M)としてグラフエッジに埋め込まれた、隣接するグラフノード間のメッセージパッシングによって近似されてよい。これらの関数は、エッジ特徴(例えば、導関数および力)ならびに送信側および受信側ノード特徴(座標、材料特性など)を入力として取り込み、ノードの高次導関数を出力する。これらは、次に、動的変数
【数54】
を積分するために用いられる。
【0178】
グラフノードはまた、グラフノード間で渡されるメッセージとは無関係に、グラフノード特徴に関する演算、例えば、材料特性の変換、を表す関数(f
v)を埋め込んでもよい。
【数55】
ここで、
【数56】
および
【数57】
は、それぞれ、メッシュエッジおよびワールドエッジである。
【0179】
グラフ処理ニューラルネットワーク504は、グラフノード特徴、グラフエッジ特徴、およびグローバル特徴を処理し、以下を出力してよい。
【0180】
【0181】
更新器506において、それから、時間t+1での力学量x
iは、時間tでの導関数を積分することによって得られる。
【数58】
または、
【数59】
にしたがって、一次モデルについて、力学量x
iは、グラフ処理ニューラルネットワーク504によって出力された一次導関数を用いて更新され、二次モデルについて、x'
iはノード特徴として埋め込まれ、x"
iは力学量x
iを積分するために用いられ、出力508で、推定した特徴
【数60】
すなわちモデル300のメッシュノード302の予測した未来位置を有するモデルの推定した未来状態M
t+1を提供する。
【0182】
放射線治療システム100の動作において、訓練済みモデル300の現在状態Mtが確立される。好ましくは、現在状態Mtを確立することは、現在状態Mtを、解剖学的領域202の、空間内の現在の位置および/または向きに関するデータ、すなわち現実のデータに関連づけることを含む。このデータは、好ましくは、監視システム120によって提供されてよく、例えば、解剖学的領域202の境界領域、例えば、放射線治療患者の胸部のエンベロープ、すなわち、胸部の外部輪郭(体表面)の、空間内の位置および/または向き、および/または解剖学的領域の内部構造の、空間内の位置および/または向き、例えば、1つまたは複数個の基準マーカーの、空間内の位置および/または向きに関する、更新したデータに基づいてよい。
【0183】
もし現在状態Mtが、監視システム120によって提供される現実のデータと関連づけられない場合、モデル300の現在状態Mtは、現実のデータをよりよく表すように調整または更新されてよい。もし現在状態Mtと現実のデータとの間の相関が不十分である場合、例えば、所定の限界未満である場合、放射線治療セッションを中断してよい。
【0184】
もし現在状態Mtが現実のデータを表すことが見出された場合、訓練済みモデルの推定した未来状態Mt+1が、グラフネットワークシステム500によって提供され、少なくとも1つのビーム源102の位置および/またはアラインメントは、訓練済みモデル300の推定した未来状態Mt+1に基づいて照射標的204を追跡するように制御される。
【0185】
放射線治療システム100は、モデル300の推定した未来状態Mt+1を、20ms~100msの範囲の周期、例えば50msごとに、断続的に提供するように構成されてよい。
【0186】
上述の実施形態によれば、現在状態Mtは、訓練済みモデル300の現在状態Mtが確立されるたびに、現実のデータに関連づけられる。このような場合、監視システムの更新レートは、モデルの更新レート、例えば50msごと、よりも低くなければならない。代替的な実施形態によれば、現在状態Mtは、例えば、現実のデータに、より低い頻度で、例えば、現在データMtが確立される2回目または3回目に、関連づけられてよい。そのような実施形態では、現在状態Mtは、主に、モデルの過去の推定した状態、Mt-1、Mt-2、Mt-3の少なくとも1つに基づいてよい。
【0187】
本開示による放射線治療システム100は、照射標的204の未来位置、アラインメント、および/または変形を予測することを可能にし、照射標的204の状態変化に反応する時間をビーム監理システム106に与える。また、放射線治療システム100は、照射標的204の位置、アラインメント、および/または変形についての更新した現実のデータが利用可能ではないにもかかわらず、照射標的204を正確に追跡することを可能にする。
【0188】
また、解剖学的領域202は、照射標的204を囲む臓器および組織を含むようにモデル化されるため、リスク臓器の動きおよび変形も予測することができ、したがって、制御システム110が、そのような臓器の照射を回避または少なくとも最小化することができるようにビーム源102を位置決めし位置合わせすることを、ビーム監理システム106に指示することが可能となる。追加的または代替的に、もし推定した未来状態が、放射線ビームがリスク臓器と交差する危険性があることを示す場合、制御システム110は、放射線ビームを遮断するかまたは対応するビーム源を停止することをビーム監理システム106に指示するように構成されてよい。放射線ビームを遮断することは、ビーム源にゲーティング関数を適用することによって実現されてよい。
【0189】
追加的または代替的に、制御システム110は、例えばビーム源のアラインメントシステムの最大範囲が予測された照射標的の動きに適応できない可能性があるという状況に起因して、もし推定した未来状態が、照射標的が電離放射線ビームの軌道の外側に出てしまいそうであることを示す場合、放射線ビームを遮断するか、または、対応するビーム源を停止することをビーム監理システム106に指示するように構成されてよい。
【0190】
前述のように、訓練済みモデル300は、有利には、各メッシュノード302またはボクセル内または各メッシュノード302またはボクセルでの計画放射線量および/または最大許容放射線量を特徴付ける変数と、また、各メッシュノード302内または各メッシュノード302での蓄積線量を特徴付ける変数とを含んでよい。ビーム源の位置およびアラインメントに関する更新した情報、ひいては、訓練済みモデル300のどこに放射線エネルギーが蓄積されたかを示す情報を受け取ることによって、制御システム110は、訓練済みモデルの各推定した未来状態Mt+1について、各メッシュノード302内または各メッシュノード302での蓄積放射線量を更新することができ、したがって、制御システム110が、ビーム監理システム106に、解剖学的領域202の他の部分に対する最大許容放射線量を超えることなく照射標的204が計画放射線量を受け取るようにビーム源102を位置決めし位置合わせすることを、指示することを可能にする。
【0191】
図8は、放射線治療システムで用いるための、例えば上述の放射線治療システム100で用いるための、放射線治療患者の解剖学的領域の生体力学的モデルを確立する方法の実施形態を示す図である。
【0192】
この方法は、モデル化した解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースのモデルを確立するステップ802を含む。点ベースまたはメッシュベースのモデル(300)は、例えば、上述のメッシュベースのモデル300であってよい。
【0193】
本方法は、静的および/または動的特徴を、点ベースまたはメッシュベースのモデルの点またはメッシュノードに紐づけるステップ804をさらに含む。点ベースまたはメッシュベースのモデルの点またはメッシュノードは、たとえば、メッシュベースのモデル300の上述のメッシュノード302であってよい。静的および/または動的特徴は、点またはメッシュノードのワールド-空間座標を含む。たとえば、点またはメッシュノードのワールド-空間座標は、メッシュノード302の上述したワールド-空間座標
【数61】
であってよい。静的および/または動的特徴はまた、解剖学的領域の空間-時間的変位を表す状態変数を含む。例えば、解剖学的領域の空間-時間的変位を表す状態変数は、解剖学的領域202の空間-時間的変位を表す上述の状態変数
【数62】
であってよい。
【0194】
各点またはメッシュノードについて、静的および/または動的特徴はまた、解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴を含む。解剖学的領域内の身体組織を特徴付ける少なくとも1つの特徴は、解剖学的領域と電離放射線ビームとの間の相互作用、例えば、線阻止能、相対阻止能、放射線密度および放射線不透過度のうちの少なくとも1つ、を特徴付ける少なくとも1つの変数を含んでよい。
【0195】
本方法は、モデルをグラフニューラルネットワークシステムにおけるグラフとして表すステップ806をさらに含む。例えば、ステップ806は、上述のモデル300をグラフニューラルネットワークシステム500におけるグラフとして表すことを含んでよい。
【0196】
本方法はまた、解剖学的領域の周期的または半周期的運動についてモデルを訓練するステップ808を含む。例えば、ステップ808は、前述したように、解剖学的領域202の周期的または半周期的運動についてモデル300を訓練することを含んでよい。
【0197】
モデルをグラフニューラルネットワークシステムにおけるグラフとして表すステップ806は、グラフノードと、グラフエッジと、生体力学的モデルの静的変数および動的変数を反映する特徴、例えば上述のモデル300の特徴、を有するグラフグローバル要素とを確立することを含んでよい。
【0198】
例えば、上述のモデル300が上述のグラフニューラルネットワークシステム500におけるグラフとして表される場合、グラフネットワークシステム500は、前述したように、入力502と、グラフ処理ニューラルネットワーク504と、更新器506と、出力508とを含むように構成されてよく、グラフ処理ニューラルネットワーク504は、エンコーダ510と、プロセッサ512と、デコーダ514とを含んでよい。エンコーダ510は、入力502からメッシュベースの生体力学的モデル300の現在状態Mtを受け取り、生体力学的モデル300の現在状態Mtから入力グラフG0を符号化するように構成されてよい。プロセッサ512は、入力グラフG0を処理し、更新したノードおよびエッジ埋め込みを有する出力グラフGMを提供するように構成されてよい。デコーダ514は、生体力学的モデル300の静的変数および動的変数に対応する出力特徴を抽出する出力グラフGMを復号するように構成されてよく、更新器506は、出力特徴を更新して、メッシュベースの生体力学的モデル300の推定した未来状態Mt+1を生成し、推定した状態Mt+1を出力508に提供するように構成されてよい。
【0199】
解剖学的領域の周期的または半周期的運動についてモデルを訓練するステップ808は、更新器506によって提供される推定した状態Mt+1と、モデル化した解剖学的領域に対応する、解剖学的領域の現実のデータセットとに対して、損失関数を適用することを含んでよい。現実のデータセットは、4次元コンピュータ断層写真撮影(4D-CT)スキャン、4次元磁気共鳴映像法(4D-MRI)および超音波イメージングのうちの少なくとも1つを含んでよい。現実のデータセットは、呼吸サイクル中の、モデル化した解剖学的領域をカバーする画像の展開を含んでよい。
【0200】
点ベースまたはメッシュベースのモデルは、解剖学的領域の物理的特性に採用される線形弾性モデルおよび超弾性モデルのうちの少なくとも1つを組み込んでよい。
【0201】
モデル化した解剖学的領域の点ベースまたはメッシュベースのモデルを確立するステップ802は、解剖学的領域を、少なくとも、物理的特性の第1の集合を表示する第1の解剖学的サブ領域と、物理的特性の第1の集合とは異なる物理的特性の第2の集合を表示する第2の解剖学的領域に分割する第1のサブステップ802aと、第1の解剖学的サブ領域について、点ベースまたはメッシュベースのモデルに、物理的特性の第1の集合に採用される第1の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てる第2のサブステップ802bと、第2の解剖学的サブ領域について、点ベースまたはメッシュベースのモデルに、物理的特性の第2の集合に採用される第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルを割り当てる第3のサブステップ802cとを含んでよい。第1および第2の解剖学的サブ領域が共通の境界を共有する場合、サブステップ802bおよび802cは、第1および第2の点ベースまたはメッシュベースのサブモデルに、共通の境界における共通の境界条件を割り当てることを含んでよい。
【0202】
放射線治療患者の解剖学的領域に対して実行される放射線治療処置の少なくとも一部を計画するコンピュータ実装方法の実施形態が、
図9に示されている。この方法は、
図8を参照して上述した方法に従って解剖学的領域の生体力学的モデルを確立する第1のステップ902と、各点またはメッシュノードに、計画線量および最大許容線量のうちの少なくとも1つを割り当て、モデルが、続く放射線治療セッション中に、異なる点またはメッシュノードにおける吸収線量を計画線量または最大許容線量と比較することを可能とする、第2のステップ904とを含む。前述したように、モデルが実装された放射線治療システムは、それから、計画線量と吸収線量との差に基づいて、解剖学的領域の他の部分に対して最大許容放射線量を超えることなく、照射標的が、計画放射線量を受け取るように、線量投与およびビームアラインメントを制御することができる。
【0203】
前述の説明では、本発明による装置の様々な態様を、例示的な実施形態を参照して説明した。説明の目的で、装置およびその働きの完全な理解を提供するために、特定の数、システムおよび構成を記載した。しかしながら、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。例示的な実施形態の様々な修正および変形、ならびに装置の他の実施形態は、開示された主題が関係する分野の当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされる。
【国際調査報告】