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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】MR電気特性断層撮影
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
A61B5/055 376
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547263
(86)(22)【出願日】2023-04-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2023059351
(87)【国際公開番号】W WO2023202902
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】22169164.5
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】カッチャー ウルリッヒ ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB44
4C096AD06
4C096AD13
4C096BA06
4C096BA26
4C096BA27
4C096BA41
4C096DB07
4C096DB20
4C096DC35
(57)【要約】
本発明は、MRシステムの検査ボリューム内に配置された対象物のMR撮像方法に関する。本発明の目的は、MREPTにおいて、異常/悪性組織と高い含水比を有する組織との間の改善された区別を可能にすることである。RFパルス及びスイッチ磁場傾斜を含む撮像シーケンスに物体を当てることによってMR信号を生成するステップと、MR信号を取得するステップと、物体内の所与の視野に対するMR信号からマグニチュードMR画像及び位相マップを再構築するステップと、位相マップは視野内のRFパルスによって誘導される空間RF磁場分布に関連する、導電率マップを位相マップから導出するステップと、導電率マップは視野内の導電率の分布の測定を表し、マグニチュードMR画像からさらなる導電率マップを導出するステップと、さらに、導電率マップは視野内の水の分布に起因する導電率の推定を表し、2つの導電率マップの偏差を識別するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRシステムの検査ボリューム内に配置された物体のMR撮像方法であって、前記方法は、
RFパルス及びスイッチングされた磁場傾斜を有する撮像シーケンスに前記物体を曝すことによってMR信号を生成するステップと、
前記MR信号を取得するステップと、
前記物体内の所与の視野に対する前記MR信号からのマグニチュードMR画像及び位相マップを再構成するステップであって、前記位相マップは、前記視野内のRFパルスによって誘導される空間RF磁場分布に関連する、ステップと、
前記位相マップから導電率マップを導出するステップであって、前記導電率マップは、前記視野内の導電率の分布の測定値を表す、ステップと、
前記マグニチュードMR画像からさらなる導電率マップを導出するステップであって、前記さらなる導電率マップは、前記視野内の水の分布からもたらされる導電率の推定を表す、ステップと、
前記2つの導電率マップの偏差を識別するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記撮像シーケンスは、定常状態傾斜エコーシーケンス、好ましくは平衡高速フィールドエコーシーケンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記さらなる導電率マップの導出は、前記マグニチュード画像の再スケーリングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記再スケーリングは較正に基づいており、前記較正は、異なる視野に対する測定された導電率マップに経験的再スケーリング関数をフィッティングするステップを含み、前記測定された導電率と水の分布からもたらされる導電率との間の偏差は推定されない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの導電率マップの偏差を識別するステップは、前記2つの導電率マップを減算するステップを含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記視野内のRFパルスによって誘導されるRF磁場の大きさの分布を表す前記RFパルスのB1マグニチュードマップによって誘導されるRF磁場を取得するステップをさらに有し、前記導電率マップは、前記位相マップ及び前記B1マグニチュードマップから導出される、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
コンピュータ実装方法であって、
RFパルス及びスイッチングされた磁場傾斜を有する撮像シーケンスに物体を曝すことによって生成されるMR信号からの所与の視野に対するマグニチュードMR画像及び位相マップを提供するステップと、
前記位相マップから導電率マップを導出するステップであって、前記導電率マップは、前記視野内の導電率の分布の測定値を表す、ステップと、
前記マグニチュード画像からさらなる導電率マップを導出するステップであって、前記さらなる導電率マップは、前記視野内の水の分布からもたらされる導電率の推定を表す、ステップと、
前記2つの導電率マップの偏差を識別するステップと
を有する、方法。
【請求項8】
検査ボリューム内に均一な静磁場を生成するための少なくとも1つの主磁石コイルと、前記検査ボリューム内の異なる空間方向において、スイッチングされた磁場傾斜を生成するための複数の傾斜コイルと、前記検査ボリューム内にRFパルスを生成するための、及び/又は前記検査ボリューム内に配置された物体からMR信号を受信するための少なくとも1つのRFコイルと、前記RFパルスの時系列及びスイッチングされた磁場傾斜を制御するための制御ユニットと、再構成ユニットとを含むMRシステムであって、前記MRシステムは、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法を実行するように構成される、MRシステム。
【請求項9】
プログラムがコンピュータによって、好ましくはMRシステムの再構成ユニットによって実行されるとき、前記コンピュータに請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)イメージングの分野に関する。本発明は、対象物のMR撮像方法に関する。本発明はまた、MRシステムと、MRシステム上で実行されるコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元又は3次元画像を形成するために磁場と原子核スピンとの間の相互作用を利用する画像形成MR方法は軟組織の画像形成のために、多くの点で他の画像形成方法よりも優れており、電離放射線を必要とせず、通常は侵襲的ではないため、特に医学診断の分野において、今日広く使用されている。
【0003】
導電性を含む誘電特性としても知られる電気特性(EP)は、材料の基本的な特性である。導電率は、媒体内で電流を伝達する能力を特徴付ける。生体組織において、EPは、含水比、イオン濃度、分子組成、細胞内空間の割合、細胞膜の透過性、細胞構造などのような、組織の基本的な生物物理学的特性によって決定される。導電率は、臨床用途における組織の健康状態を示すバイオマーカーとして潜在的に使用することができる。以前の研究は、様々な疾患が健康な近傍組織と比較してEPの局所的変化を引き起こすことを示している。様々な癌の中で、乳癌組織は、正常な乳房組織と比較して最も異なるEPを有することが示されている。良性乳房組織は、悪性乳癌と比較して有意に異なる伝導性を示す。
【0004】
磁気共鳴電気特性トモグラフィー(MREPT)は組織の導電率を調査するためにMR画像を使用する技術である(例えば、Katscherら, NMR Biomed., 2017, 30を参照されたい)。導電率は単純で共通の撮像シーケンス(例えば、いわゆる平衡高速電界エコーシーケンスbFFE)から得ることができる。磁気共鳴の励起は、空間的RF(磁場)分布に関連する。高周波電界分布は、従来のB1マッピング技術を用いて直接的に測定することができる。未知の導電率は取得された位相マップからのマックスウェル方程式の枠組みにおけるRF磁場分布の後処理によって計算することができ、位相マップは、物体内のRFパルスによって誘導される空間RF磁場分布に関連する。
【0005】
信頼できる診断に関しては、高い導電率が必ずしも異常な組織を示すわけではなく、逆に、組織の高度に異常な状態が必ずしも高い導電率と関連していないことを考慮することが重要である。導電率は、組織の異常の程度ではなく、検査される組織の含水量によって主に決定される。したがって、従来のMREPT技術では高い導電率の領域が病理として直感的に誤解される可能性があり、一方、領域は実際には高い含水比しか有さず、完全に健康であることが問題である。その結果、誤診が起こりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記から、改善されたMREPTイメージング方法が必要であることが容易に理解される。したがって、本発明の目的は、MREPT中の高い含水比のみを有する組織と異常/悪性組織との間の改善された区別を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、MRシステムの検査ボリューム内に配置された物体のMR画像の方法が開示される。方法は、
RFパルス及びスイッチングされた磁場傾斜を有する撮像シーケンスに前記物体を曝すことによってMR信号を生成するステップと、
前記MR信号を取得するステップと、
前記物体内の所与の視野に対する前記MR信号からのマグニチュードMR画像及び位相マップを再構成するステップであって、前記位相マップは、前記視野内のRFパルスによって誘導される空間RF磁場分布に関連する、ステップと、
前記位相マップから導電率マップを導出するステップであって、前記導電率マップは、前記視野内の導電率の分布の測定値を表す、ステップと、
前記マグニチュードMR画像からさらなる導電率マップを導出するステップであって、前記さらなる導電率マップは、前記視野内の水の分布からもたらされる導電率の推定を表す、ステップと、
前記2つの導電率マップの偏差を識別するステップと
を有する。
【0008】
言い換えれば、本発明はMREPTによって実際に測定された導電率マップを「正規化」するために、含水量に関連する推定導電率マップを使用することを提案する。結果として得られる正規化された組織伝導度は、2つの導電率マップの偏差によって示される組織異常の程度として直接解釈することができる。本発明の実施は位相画像から「測定された」導電率を再構成し、マグニチュードMR画像(すなわち、プロトン密度、したがって、含水量を示す)から組織の含水量に関連する導電率を推定することである。これは、例えば、2つの導電率マップを減算することによって、単一のMRスキャンからの正規化された導電率の直接ボクセル毎の計算を可能にする。組織異常は、このように正規化された導電率マップ内の非ゼロ(正又は負)ボクセル値によって識別することができる。
【0009】
一実施形態では、撮像シーケンスが定常状態傾斜エコーシーケンス、好ましくは平衡高速フィールドエコー(bFFE)シーケンスである。一般に、定常状態撮像シーケンスは、短い繰り返し時間TRを有する傾斜エコー撮像シーケンスに基づく。定常状態シーケンスは、重複する多次スピンエコー及び刺激エコーからの横方向コヒーレンストモグラフィを含む。これは、通常、位相積分(又は傾斜モーメント)を一定に保つために、各繰り返し間隔において位相符号化傾斜をリフォーカシングすることによって達成される。完全に平衡化された定常状態撮像シーケンスは、すべての撮像傾斜を再焦点合わせすることによって、ゼロの位相を達成する。位相マップはB1のみに関連する場合にはMREPTに適しており、主磁場B0の不均一性の影響を受けない。従来、スピンエコーベースの撮像シーケンスを使用することによって、B0不均一性のいかなる望ましくない影響も回避される。しかしながら、位相マップへのB0 不均一性の影響は、位相が撮像系列の通過帯域(1/TRに対応する周波数領域)内のオフ共鳴に対してほとんど変化しないので、定常状態取得では無視できる。B1関連位相マップは再構成された複雑なMR画像位置ごとに、それぞれのボクセル値の実部及び虚部から直接的に導出することができる。
【0010】
別の実施形態では、さらなる導電率マップの導出がマグニチュード画像の再スケーリングを含む。したがって、本発明は、マグニチュードMR画像のボクセル値とそれぞれの位置における導電率との間の関係が単純な経験的再スケーリング関数を使用してパラメータ化され得ることを利用する。次いで、再スケーリングは較正に基づくことができ、この較正は経験的再スケーリング関数を、異なる視野、すなわち、MREPTによって測定された導電率と水の分布から生じる導電率との間の偏差が予想されない健康な組織についての測定された導電率マップにフィッティングすることを含む。
【0011】
さらに別の実施形態では該方法が視野内のRFパルスによって誘導されるRF場の大きさの分布を表すB1マグニチュードマップを取得するステップをさらに含み、ここで、導電率マップは位相マップ及びB1マグニチュードマップから導出される。マックスウェルの式に従って導電率を厳密に算出するためには、B1の大きさと位相の両方が必要である。したがって、位相マップに依存するだけでなく、追加のB1マッピングステップを実行して、B1 の大きさの分布も利用可能にすることが好都合であり得る。しかしながら、導電率の十分に良好な近似値はほとんどの場合、位相マップのみを使用し、B1の大きさが一定であると考えることによって得られる。この近似は、B1マグニチュードマップの時間のかかる計測を節約するので、実際に使用することができる。
【0012】
本発明の方法は、必ずしもMR信号の取得と直接的に組み合わせて実行される必要はない。それは、取得され、再構成された画像データの純粋な後処理段階として、MRシステムの外部で独立して実行することもできる。この点において、本発明は、さらなる態様として、
所与の視野に対するマグニチュードMR画像及び位相マップを提供するステップと、
前記位相マップから導電率マップを導出するステップであって、前記導電率マップは、前記視野内の導電率の分布の測定値を表す、ステップと、
前記マグニチュード画像からさらなる導電率マップを導出するステップであって、前記さらなる導電率マップは、前記視野内の水の分布からもたらされる導電率の推定を表す、ステップと、
前記2つの導電率マップの偏差を識別するステップと
を有する、コンピュータ実施方法に関する。
【0013】
これまでに記載された本発明の方法は、検査ボリューム内に均一な静磁場を生成するための少なくとも1つの主磁石コイルと、検査ボリューム内の様々な空間方向にスイッチングされた磁場傾斜を生成するための複数の傾斜コイルと、検査ボリューム内にRFパルスを生成するため、及び/又は検査ボリューム内に配置された物体からMR信号を受信するための少なくとも1つのRFコイルと、RFパルスの時系列及びスイッチングされた磁場傾斜を制御するための制御ユニットと、再構成ユニットとを含むMRシステムによって実行することができる。本発明の方法は例えば、MRシステムの再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラムによって実施することができる。
【0014】
本発明の方法は、現在、臨床的に使用されているほとんどのMRシステムにおいて有利に実施することができる。この目的のために、MRシステムが本発明の上述の方法ステップを実行するように制御されるコンピュータプログラムを利用することが単に必要である。コンピュータプログラムはMRシステムの制御ユニットにインストールするためにダウンロードされるように、データ担体上に存在してもよいし、データネットワーク内に存在してもよい。コンピュータプログラムはまた、MRシステムとは独立して、例えば市販のパーソナルコンピュータ上で実行可能であってもよい。
【0015】
添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を開示する。しかしながら、図面は説明のみを目的として設計されており、本発明の限界を定義するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の方法を実施するためのMRシステムを示す。
図2】本発明の方法をフローチャートとして例示する。
図3】本発明によるマグニチュードMR画像の再スケーリングのための較正を示す図を示す。
図4】本発明の正規化アプローチを示す導電率マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、MRシステム1が示されている。この装置は検査ボリュームを通してz軸に沿って実質的に均一な時間的に一定の主磁場が生成されるように、超伝導又は抵抗性の主磁石コイル2、2’を備える。
【0018】
磁気共鳴生成及び操作システムは一連のRFパルス及びスイッチングされた磁場傾斜を適用して、核磁気スピンを反転又は励起し、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴をリフォーカシングし、磁気共鳴を操作し、空間的に、及びそうでなければ磁気共鳴を符号化し、スピンを飽和させるなどして、MR撮像を実行する。
【0019】
より具体的には、傾斜パルス増幅器3が検査ボリュームのx、y、及びz軸に沿って全身傾斜コイル4、5、及び6のうちの選択されたものに電流パルスを印加する。デジタルRF送信器7はRFパルス又はパルスパケットを送信/受信スイッチ8を介して全身ボリュームRFコイル9に送信し、RFパルスを検査ボリューム内に送信する。典型的なMR撮像シーケンスは互いに一緒に取られた短い持続時間のRFパルスセグメントのパケットから構成され、任意の印加された磁場傾斜は核磁気共鳴の選択された操作を達成する。RFパルスは、共振を飽和させる、共振を励起する、磁化を反転させる、共振をリフォーカシングさせる、又は共振を操作するために使用され、検査ボリューム内に配置された本体10の一部分を選択する。MR信号はまた、身体ボリュームRFコイル9によってピックアップされる。
【0020】
身体10の限られた領域のMR画像を生成するために、1組のローカルアレイRFコイル11、12、13が、撮像のために選択された領域に隣接して配置される。アレイコイル11、12、13は、ボディコイルRF送信によって誘導されるMR信号を受信するために使用され得る。
【0021】
得られたMR信号は、全身ボリュームRFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によってピックアップされ、好ましくは前置増幅器(図示せず)を含む受信器14によって復調される。受信器14は、送受信スイッチ8を介してRFコイル9,11,12,13に接続されている。
【0022】
ホストコンピュータ15は、傾斜パルス増幅器3及び送信器7を制御して、平衡高速フィールドエコー(bFFE)撮像シーケンス等の複数のMR撮像シーケンスの何れかを生成する。選択されたシーケンスについて、受信器14は、各RF励起パルスに続いて、単一又は複数のMRデータラインを迅速に連続して受信する。データ収集システム16は受信信号のアナログデジタル変換を実行し、各MRデータラインをさらなる処理に適したデジタルフォーマットに変換する。最新のMRシステムでは、データ収集システム16が生の画像データの収集に特化した別個のコンピュータである。
【0023】
最終的に、デジタル生画像データは、フーリエ変換又はSENSE、SMASH、又はGRAPPAなどの他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。MR画像は、患者を通る平面スライス、平行平面スライスのアレイ、三次元ボリュームなどを表し得る。次いで、画像は画像メモリに記憶され、そこで、画像表現のスライス、投影、又は他の部分を、例えば、結果として得られるMR画像の人が読めるディスプレイを提供するビデオモニタ18を介して、視覚化のための適切なフォーマットに変換するために、画像メモリにアクセスされ得る。
【0024】
引き続き図1を参照し、さらに図2乃至図4を参照して、本発明の方法の実施形態を以下に説明する。
【0025】
ステップ21(図2)において、本体10は、定常状態bFFE撮像シーケンスを受ける。生成されたエコー信号は取得され、所与の視野(2D又は3D)の複雑なMR画像に再構成される。複雑なMR画像からマグニチュードMR画像が導出され、それぞれの複雑な画像値Scの実部及び虚部から、再構成MR画像内の各位置にB1関連位相マップは、
【0026】
Φ(r)=atan2(Im (Sc), Re(Sc))
により直接的に導出される。
【0027】
この位相情報は、従来の位相ベースEPT法によるステップ22において、視野内の導電率σmeasの分布の計測値を表す導電率マップを計算するために使用される。ステップ23では異なる視野、すなわち、画像化された解剖学的構造内の「健康である」領域が識別され、そこでは導電率異常が予想されない。異なる視野は例えば、ステップ21及び22においてマグニチュード画像及び導電率マップが既に導出されている、所与の視野内の異なる画像スライス又はサブ領域であってもよい。視野内の水の分布から生じる導電率を推定するために、ステップ24において再スケーリング関数が決定される。経験的には、bFFEマグニチュードMR画像、各位置における健常組織の推定導電率σestとの関係は例えば、
によってパラメータ化されることができる。
【0028】
σestとSmは共に含水量に関係している。この関係の例を図3の図に示す(bFFE位相対bFFEの大きさから再構成された導電率の散布図)。パラメータa、b、及びcはシステム設定に依存し、各MR撮像スキャンに対して個別に調整されなければならない(a:導電率スケーリングの調整、b:関数の曲率の調整、c:bFFEマグニチュードMR画像の範囲の調整)。再スケーリング関数の較正のために、最小二乗適合が実行されて、マグニチュードMR画像と、識別された健康な領域における測定された導電率との間のベストマッチを見つける。図3の実線は、Smとσmeasの関係を可視化した上で、上記の式に基づく適合を示している。示されたインビボの例について、調整された最適パラメータは、a = 1.14、b = 40.0、c = 211であった。このようにして最適パラメータa、b、及びcが見つかると、(疑わしい、潜在的に異常な組織部位も含む)所与の視野全体に対するマグニチュードMR画像、ステップ25における再スケーリング関数を用いて再スケーリングされ、所与の視野内の水分の分布から生じる推定導電率σestが得られる。最後に、ステップ26において、
のように推定された導電率σestが、所与の全視野にわたって測定された導電率σmeasから減算され、正規化された導電率σnormが得られる。σnormは負又は正であり得、推定された導電率σestからの測定された導電率σmeasの偏差を示し、したがって、異常領域を示す。ステップ24において一定a、b、cを調整するために使用された(健康であると想定される)領域において、結果として得られるσnormは、したがって、ほぼ0であるべきである。
【0029】
これは、脳腫瘍の例を示す図4に概略的に示されている。所与の視野は「腫瘍を通るスライス」と呼ばれ、一方、異なる視野、すなわち、再スケーリング関数の較正に使用される健全な領域は、「較正スライス」と呼ばれる。上段は、2つの切片(左側:健康な組織のみを含む、右側:腫瘍を含む)のEPT再構成導電率マップσmeasを示す。脳脊髄液(CSF)は所与の視野の中心において最も高い導電率を示すが、これは視野内の病理学的領域ではない。下の行は、同じ2つのスライスについての正規化された導電率σnormを示す。正規化は「健全である」較正スライス(左側)に基づくので、このスライスの正規化された導電率σnormは0である。腫瘍スライスにおける正規化は導電率が正常よりも低い健康な領域においてゼロを示し、腫瘍コアにおいて非ゼロを示し、導電率が正常よりも高い腫瘍周囲の浮腫においてゼロを示す。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】