(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】超吸収性物質を含む身体装着型医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547507
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2023052913
(87)【国際公開番号】W WO2023152103
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】ロッシャー,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】フォン カンペンハウゼン,ハラルト
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF04
(57)【要約】
本発明は、身体装着型医療機器であって、身体装着型医療機器の使用中に挿入部位で患者の身体に少なくとも部分的に挿入されるように構成された経皮的要素を含む医療機器ハウジングと、使用中に身体装着型医療機器を患者の皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されたベース部と、を備え、ベース部は、身体装着型医療機器の使用中に患者の身体に向きかつ身体装着型医療機器を患者の皮膚に接着するための接着剤を含む第1の面を備える、身体装着型医療機器に関する。挿入時の損傷から流出する体液により汚れる可能性を低減するために、ベース部は第1の面に、超吸収性物質と、少なくとも1つの流体チャネルとをさらに備え、少なくとも1つの流体チャネルは、体液を挿入部位から超吸収性物質に導くように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体装着型医療機器(1)であって、
前記身体装着型医療機器(1)の使用中に挿入部位(4)で患者の身体(3)に少なくとも部分的に挿入されるように構成された経皮的要素(2)を含む医療機器ハウジング(18)と、
使用中に身体装着型の前記医療機器ハウジング(18)を患者の皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されたベース部(5)と、を備え、
前記ベース部(5)は、前記身体装着型医療機器(1)の使用中に前記患者の身体(3)に向きかつ前記身体装着型医療機器ハウジング(18)を前記患者の皮膚に接着するための接着剤(7)を含む第1の面(6a)を備え、
前記ベース部(5)は第1の面(6a)に、超吸収性物質(8)と、少なくとも1つの流体チャネルとをさらに備え、前記少なくとも1つの流体チャネル(9)は、体液を前記挿入部位(4)から前記超吸収性物質(8)に導くように構成されていることを特徴とする、身体装着型医療機器。
【請求項2】
前記超吸収性物質(8)が前記経皮的要素(2)を少なくとも部分的に囲むことを特徴とする、請求項1に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項3】
前記超吸収性物質(8)が、前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)に囲み部を形成し、前記超吸収性物質(8)が前記経皮的要素(2)を囲むことを特徴とする、請求項1または2に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項4】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)の前記超吸収性物質(8)が、第1の仮想囲み部(12)に沿って互いに変位する複数の囲み部セグメント(10)を有することによって、不連続性の囲み部を形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項5】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)の前記超吸収性物質(8)が、連続または不連続性の内側囲み部と、連続または不連続性の外側囲み部とを形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項6】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)の前記超吸収性物質(8)が、複数の内側囲み部セグメント(10)を有する不連続性の内側囲み部と、複数の外側囲み部セグメント(11)を有する不連続性の外側囲み部とを形成し、前記複数の内側囲み部セグメント(10)および前記複数の外側囲み部セグメント(11)が、第1の仮想囲み部(12)に沿って、および第2の仮想囲み部(13)に沿って、前記経皮的要素(2)に対する角度位置に対して交互に配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項7】
前記ベース部(5)が、前記身体装着型医療機器(1)の使用中に前記経皮的要素(2)によって穿刺されるように構成された隔壁(13)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項8】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)が、前記経皮的要素(2)から外方に向く前記超吸収性物質(8)の面で前記超吸収性物質(8)を囲む外側シール要素(14)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項9】
前記外側シール要素(14)が、前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)から少なくとも部分的に突出し、および/または前記ベース部の前記第1の面(6a)に一体化された、シリコーン構造によって形成されるかまたは含み、それにより、前記身体装着型医療機器(1)の使用中に、前記シリコーン構造が前記ベース部(5)および前記ユーザの前記皮膚と接触することを特徴とする、請求項8に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項10】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)が、前記経皮的要素(2)に向く前記超吸収性物質(8)の面に内側シール要素(15)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項11】
前記内側シール要素(15)が、前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)から少なくとも部分的に突出し、および/または前記ベース部の前記第1の面(6a)に一体化された、シリコーン構造によって形成されるかまたは含み、それにより、前記身体装着型医療機器(1)の使用中に、前記シリコーン構造が前記ベース部(5)および前記ユーザの前記皮膚と接触することを特徴とする、請求項10に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項12】
前記ベース部(5)の前記第1の面(6a)が、前記身体装着型医療機器(1)を患者の身体(3)に取り付けるための前記接着剤(7)を担持するプラスター(17)を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【請求項13】
内側囲み部セグメント(10)および外側囲み部セグメント(11)の各々は、前記少なくとも1つの流体チャネル(9)のうちの少なくとも1つに接続されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の身体装着型医療機器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体装着型医療機器であって、身体装着型医療機器の使用中に挿入部位で患者の身体に少なくとも部分的に挿入されるように構成された経皮的要素を含む医療機器ハウジングと、使用中に身体装着型医療機器を患者の皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されたベース部と、を含み、ベース部は、身体装着型医療機器の使用中に患者の身体に向きかつ身体装着型医療機器を患者の皮膚に接着するための接着剤を含む第1の面を備える、身体装着型医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
使用中、従来知られている身体装着型医療機器は、接着剤によって挿入部位で患者の皮膚に解放可能に取り付けられ、経皮的要素が、患者の体内に、少なくとも部分的に挿入される。経皮的要素を少なくとも部分的に患者の体内に挿入するか、または身体装着型医療機器の使用中に、例えば血液、創傷滲出液または間質液などの体液が、経皮的要素によって引き起こされた挿入時の損傷から流出し得る。体液の流れは、患者の衣服を汚すだけでなく、身体装着型医療機器自体も汚す場合がある。体液は、身体装着型医療機器を汚す場合に、特にセンサ素子または電子機器を覆う場合、または身体装着型医療機器に入る場合に、身体装着型医療機器の誤動作を引き起こす場合があり、また衛生的なリスクをもたらす場合がある。さらに、挿入時の損傷から流出した体液は、身体装着型医療機器のベース部の第1の面の接着剤の接着性を低下させ得る。したがって、身体装着型医療機器が患者の身体から意図せずに外れる機会がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、従来技術から知られている医療機器に関連する問題の少なくとも1つを回避する身体装着型医療機器を提供することである。特に、本発明の目的は、挿入時の損傷から流出した体液により汚れることによって生じる不具合が起こりにくく、および/または患者の身体から意図せずに外れる傾向が少ない身体装着型医療機器を提供することである。
【0004】
上記の目的の少なくとも1つは、特許請求の範囲および明細書全体において開示された主題を提供することによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、身体装着型医療機器が提供される。身体装着型医療機器は、身体装着型医療機器の使用中に挿入部位で患者の体内に少なくとも部分的に挿入されるように構成された経皮的要素を含む医療機器ハウジングと、その使用中に身体装着型医療機器を患者の皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されたベース部とを含む。ベース部は、身体装着型医療機器の使用中に患者の身体に向きかつ身体装着型医療機器を患者の皮膚に接着するための接着剤を含む第1の面を含む。ベース部はその第1の面に、超吸収性物質と、少なくとも1つの流体チャネルとをさらに含み、少なくとも1つの流体チャネルは、体液を挿入部位から超吸収性物質に導くように構成される。
【0006】
ベース部の第1の面の接着剤によって患者の皮膚に取り外し可能に取り付けられると、ベース部の第1の面は患者の身体に向く。接着剤の例の非網羅的な列挙には、アクリル系、デキストリン系、ウレタン系、ゴム系、ポリビニルエーテル系の接着剤、ならびに天然および合成エラストマーに基づく他の接着剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
ベース部の第2の面は、第1の面の反対側に配置される、すなわち、身体装着型医療機器の使用中に患者の皮膚から外方を向くベース部の面を形成する。第2の面は、身体装着型医療機器の使用中に医療機器ハウジングがベース部を介して患者の皮膚に取り外し可能に取り付けられるように、医療機器ハウジングに取り付けられる。例えば、医療機器ハウジングは、接着剤または超音波溶接によって第2の面に取り付けられる。
【0008】
ベース部の第1の面に含まれることにより、超吸収性物質および少なくとも1つの流体チャネルはまた、したがって、経皮的要素によって引き起こされる挿入時の損傷から流出し得る体液が、少なくとも1つの流体チャネルによって超吸収性物質に導かれるように、患者の身体に向く。体液を挿入部位から超吸収性物質に導くことによって、流体チャネルは、超吸収性物質が体液を吸収することを促進し、体液が超吸収性物質を迂回するのを防ぐのに役立つ。実施形態によれば、流体チャネルは、シリコーン、方向的に整えられた繊維、方向的に整えられた毛細管、セルロース、もしくは発泡体、または前述の組み合わせによって形成される。特定の理論に束縛されるものではないが、本発明の実施形態では、毛細管力が体液を挿入部位から超吸収性物質に導く。例として、少なくとも1つの流体チャネルは、挿入部位から超吸収性物質まで体液を導くように構成された、シリコーン構造によって形成され得る。シリコーン構造は、身体装着型医療機器の使用中にシリコーン構造がユーザの皮膚およびベース部と接触するように、ベース部の第1の面から少なくとも部分的に突出し、および/またはベース部の第1の面に少なくとも一体化することができる。シリコーン構造は、ベース部および皮膚と共に、挿入部位から超吸収性物質への体液の流れを導くトンネル形の流路を形成する。
【0009】
体液は、超吸収性物質まで導かれた後、少なくとも一部が超吸収性物質に吸収される。したがって、超吸収性物質は、経皮的要素によって引き起こされる挿入時の損傷から流出する体液を吸収するように構成される。これは、超吸収性物質によって吸収された体液がその中に保持され、したがって、身体装着型医療機器および/または患者の衣服をもはや汚す可能性がないという利点に関連する。さらに、吸収および保持された体液は、接着剤の接着に悪影響を及ぼさず、したがって、身体装着型医療機器が患者の身体から意図せずに外れることを防止する。
【0010】
本発明の意味において、超吸収性物質は、水溶液の大量の水を吸収して保持することができる。本発明の意味における超吸収性物質は、例えば、親水性であり、水に対して高い親和性を有する変性デンプン、重合ポリビニルアルコール(PVA)およびポリエチレンオキシド(PEO)である。これらの超吸収性物質は、化学的または物理的に架橋されると、水膨潤性となるが、水溶性とはならない。実施形態では、超吸収性物質は、粒状粒子、繊維、またはそれらの混合物の形態の超吸収性ポリマーである。さらなる変形例では、超吸収性ポリマーは、開始されたポリアクリル酸ナトリウム塩の存在下で、水酸化ナトリウムとブレンドされたアクリル酸の重合によって作製される。あるいは、超吸収性ポリマーは、エチレン無水マレイン酸コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、およびポリアクリロニトリルのデンチグラフトコポリマーであり得る。超吸収性ポリマーは、ゲル重合、懸濁重合または溶液重合などの標準的な方法によって作製され得る。
【0011】
本発明の実施形態によれば、身体装着型医療機器は、インスリンポンプなどの薬物送達機器、または患者の体液を分析するように構成された医療機器、特に連続グルコースモニタリング機器などの分析物を測定するための医療機器の1つである。
【0012】
本発明の実施形態では、経皮的要素は、カニューレ、例えばソフトカニューレもしくはスチールカニューレ、体液を回収するように構成されたプローブ、または体液を分析するように構成されたセンサである。経皮的要素の存在は、追加の要素の存在を排除しない。例えば、経皮的要素がそれぞれ薬物送達機器またはインスリンポンプのカニューレである場合、薬物送達機器またはインスリンポンプは、例えば上で概説した種類のプローブまたはセンサなどの追加の経皮的要素をさらに含んでもよい。同様に、連続グルコースモニタリング機器の場合、経皮的要素は、上で概説したタイプのプローブまたはセンサであり、連続グルコースモニタリング機器は、上で概説したタイプの追加のプローブまたはセンサまたはカニューレをさらに含んでもよい。
【0013】
実施形態によれば、身体装着型医療機器は薬物送達機器またはインスリンポンプであり、経皮的要素はカニューレ、例えばソフトカニューレまたはスチールカニューレである。別の実施形態では、身体装着型医療機器は、連続グルコースモニタリング機器であり、経皮的要素は、上で概説したタイプのプローブまたはセンサ、すなわち体液を回収するように構成されたプローブ、または体液を分析するように構成されたセンサである。
【0014】
接着剤を含むこととは別に、実施形態では、ベース部は、身体装着型医療機器の使用中に接着剤によって患者の身体に接着されるパッドをさらに含む。身体装着型医療機器の取り扱いを改善し、接着剤が意図せずにはげるのを防ぐために、身体装着型医療機器の使用前に接着剤から剥がされなければならない1つまたは複数の裏打ち層によって、接着剤を覆うことができる。パッドは、滅菌不織布、セルロース、ティッシュまたは紙の1つまたは複数を含むことができる。
【0015】
追加的または代替的に、実施形態では、ベース部は蒸気浸透性であり、および/または蒸気がベース部および/または蒸気浸透性膜を通って流れることを可能にするように構成された蒸気浸透性膜を含む。身体装着型医療機器の使用中にベース部の中または下に蓄積する傾向がある場合がある水分は、ベース部および/または蒸気浸透性膜を通して少なくとも部分的に蒸発することができる。ベース部および/または蒸気浸透性膜を通る蒸気の蒸発は、挿入部位の周りおよび身体装着型医療機器の下に、創傷治癒の環境および/または皮膚に害のない環境を設けるのに寄与する。さらに、水分の蒸発は、身体装着型医療機器の下の水分の蓄積を減少させるのに役立ち、したがって、身体装着型医療機器が意図せず外れるのを防ぐのに役立つ。
【0016】
実施形態では、超吸収性物質は、経皮的要素を少なくとも部分的に取り囲む。本発明の意味において、少なくとも部分的に取り囲むとは、超吸収性物質が、経皮的要素に対して少なくとも2つの異なる角度位置でベース部の第1の面に配置されたセグメントを含むことを意味する。超吸収性物質は、連続性の構造または不連続性の構造を形成し得る。本発明の意味において、連続性の構造は、ベース部の第1の面に沿って挿入部位から流出する体液が超吸収性物質を湿らせることなく超吸収性構造を通ることができるようにする間隙を内部に有することなく経皮的要素を取り囲む構造である。
【0017】
実施形態では、超吸収性物質は、ベース部の第1の面に囲み部を形成し、超吸収性物質は経皮的要素を取り囲む。経皮的要素を取り囲む囲み部は、経皮的要素を取り囲む連続性の構造である。超吸収性物質は、体液を吸収して保持するように構成され、また、体液が超吸収性物質によって囲まれた領域を越えて流れるのを防止するバリアを形成し得る。実施形態によれば、囲み部は、経皮的要素を囲むリングを形成する。
【0018】
身体装着型医療機器の実施形態によれば、ベース部の第1の面の超吸収性物質は、医療機器ハウジングの周りの第1の仮想囲み部に沿って互いに変位する複数の囲み部セグメントを有することによって、不連続性の囲み部を形成する。囲み部は、第1の仮想囲み部に沿ってそれぞれから変位する複数の囲み部セグメントによってベース部の第1の面に不連続に形成される。第1の仮想囲み部は、幾何学的形状に沿って経皮的要素を囲む。幾何学的形状の非網羅的なグループは、例として、リング、楕円、長方形、および多角形を含む。第1の仮想囲み部に沿って互いに変位することにより、隣接する囲み部セグメント間に間隙が存在している。隣接する囲み部セグメント間で間隔をあけることは、超吸収性物質によって形成された構造を挿入部位の身体形状にいっそう柔軟に適合させることを可能にするのに寄与する。実施形態では、複数の囲み部セグメントは、第1の仮想リングに沿って互いに変位するリングセグメントである。実施形態では、各セグメントは、少なくとも1つの流体チャネルのうちの少なくとも1つに接続され、別の実施形態では、各セグメントは、1から4つの流体チャネル、または1から3つの流体チャネル、または1から2つの流体チャネル、または1つの流体チャネルに接続される。
【0019】
実施形態では、ベース部の第1の面の超吸収性物質は、連続または不連続性の内側囲み部と、連続または不連続性の外側囲み部とを形成する。内側および外側囲み部は両方とも、身体装着型医療機器の使用中に挿入時の損傷から流出する体液を吸収および保持するためのバリアを形成する。内側および外側囲み部は経皮的要素を少なくとも部分的に取り囲むので、「内側」および「外側」という用語は、バリアの第1の面に沿った経皮的要素からのそれぞれの内側囲み部および外側囲み部の半径方向距離を指す。実施形態によれば、内側囲み部は、第1の仮想囲み部に沿って連続的に形成され、外側囲み部は、第2の仮想囲み部に沿って不連続的に形成される。実施形態では、挿入部位と内側囲み部の最遠部との間の距離は、挿入側と外側囲み部の最近部との間の距離よりも短い。実施形態では、内側および外側囲み部は、中心に経皮的要素を備えて同心円状に配置される。内側囲み部および外側囲み部は、2つの同心リングを形成することができる。実施形態では、内側囲み部は、第1の仮想囲み部に沿って不連続的に形成され、外側囲み部は、第2の仮想囲み部に沿って連続的に形成される。さらに別の実施形態では、内側囲み部は、第1の仮想囲み部に沿って連続的に形成され、外側囲み部は、第2の仮想囲み部に沿って連続的に形成される。別の実施形態では、内側囲み部は、第1の仮想囲み部に沿って不連続的に形成され、外側囲み部は、第2の仮想囲み部に沿って連続的に形成される。
【0020】
実施形態では、ベース部の第1の面の超吸収性物質は、複数の内側囲み部セグメントを有する不連続性の内側囲み部と、複数の外側囲み部セグメントを有する不連続性の外側囲み部とを形成し、複数の内側囲み部セグメントおよび複数の外側囲み部セグメントは、第1の仮想囲み部に沿って、また第2の仮想囲み部に沿って、経皮的要素に対する角度位置に対して交互に配置される。内側囲み部および外側囲み部は共に、経皮的要素によって引き起こされる挿入時の損傷から生じる体液を吸収および保持するためのバリアを形成する。複数の内側囲み部セグメントおよび複数の外側囲み部セグメントは、それぞれ第1の仮想囲み部および第2の仮想囲み部に沿ってベース部の第1の面に配置され、内側囲み部セグメントおよび外側囲み部セグメントは、経皮的要素に対して異なる角度位置に交互に配置される。実施形態では、内側囲み部セグメントおよび外側囲み部セグメントは、リングセグメントによって形成される。
【0021】
実施形態によれば、ベース部は、身体装着型医療機器の使用中に経皮的要素によって穿刺されるように構成された隔壁をさらに含む。身体装着型医療機器の使用中、ベース部の隔壁は経皮的要素によって横断される。実施形態によれば、隔壁は自己シール隔壁である、すなわち、経皮的要素(例えば、カニューレ、センサなど)が隔壁を通して挿入され、その後除去されると、隔壁は閉じ、微生物および体液のバリアを形成する。自己シール隔壁は、例えば、シリコーン、プラスチック、ポリウレタンフォームまたはそれらの組み合わせで作製され得る。
【0022】
実施形態では、ベース部の第1の面は、経皮的要素から外方を向く超吸収性物質の面に、超吸収性物質を囲む外側シール要素をさらに備える。外側シール要素は、外側シール要素によって囲まれた領域の内部に体液を保持するのに役立つ。外側シール要素は、体液のための第1のバリアを形成する超吸収性物質に加えて、バリアを形成する。超吸収性物質とは対照的に、本発明の意味における外側シール要素は、超吸収性物質と比較して、体液を著しく吸収しない。実施形態では、外側シール要素は、疎水性材料によって形成される。シール要素は、超吸収性物質の外側、すなわち、経皮的要素から外方に向く超吸収性物質の面に配置されることにより、経皮的要素の視点から見たときに外側の境界を形成する。
【0023】
実施形態によれば、ベース部の第1の面は、経皮的要素に向く超吸収性物質の面に、内側シール要素をさらに備える。シール要素は、内側シール要素によって囲まれた領域の内部に体液を保持するのを助ける内側バリアを形成する。内側シール要素は、経皮的要素に向く超吸収性物質の面に配置され、内側バリアを形成する。内側シール要素は、経皮的要素を収容するベース部の第1の面の領域を取り囲む。超吸収性物質は、超吸収性物質の経皮的要素に向いている面に配置されたシールによって囲まれた領域の外側に配置される。
【0024】
実施形態では、内側シール要素および/または外側シール要素は、存在する場合、内側シール要素が、不連続性のベース部の不連続性の第1の面から少なくとも部分的に突出し、および/または不連続性のベース部の不連続性の第1の面に一体化された、シリコーン構造によって形成されるかまたは含み、それにより、不連続性の身体装着型医療機器の使用中に、不連続性のシリコーン構造が不連続性のベース部および不連続性のユーザの不連続性の皮膚と接触する。例として、内側シール要素および/または外側シール要素は、身体装着型医療機器の使用中に、ベース部の第1の面からユーザの皮膚に向かって少なくとも部分的に突出するか、またはユーザの皮膚と接触しているリップまたは構造から作製されるか、またはそれを含むことができる。リップまたは構造は、例として、体液がバリアを通るのを妨げる物理的バリアを形成するシリコーン製リップまたはシリコーン構造であり得る。
【0025】
実施形態では、ベース部の第1の面は、身体装着型医療機器を患者の身体に取り付けるための接着剤を担持するプラスターを含む。プラスターは、挿入面で身体装着型医療機器を身体形状に接着するのを助けることができる。
【0026】
本発明のさらなる利点、特徴および技術的効果は、以下の実施形態の説明および添付の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による身体装着型医療機器の断面を示す。
【
図2】
図1の実施形態による身体装着型医療機器の上面図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による身体装着型医療機器の上面図を示す。
【
図4】本発明の実施形態による身体装着型医療機器の断面を示す。
【
図5】本発明の実施形態による身体装着型医療機器の断面を示す。
【
図6】本発明のさらに別の実施形態による身体装着型医療機器の断面を示す。
【
図7】本発明のさらなる実施形態による身体装着型医療機器の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および
図2は、本発明の第1の実施形態による実施形態を示し、
図1は、身体装着型医療機器1の断面を示し、
図2は、身体装着型医療機器1の上面図を示す。身体装着型医療機器1は、医療機器ハウジング18と、経皮的要素2とを備える。経皮的要素2は、身体装着型医療機器1の使用中に挿入部位4で患者の身体3の皮膚に、少なくとも部分的に挿入されるように構成される。ここで、経皮的要素2は、例としてカニューレである。あるいは、経皮的要素2は、体液を回収するように構成されたプローブまたは体液を分析するように構成されたセンサとすることができる。
【0029】
図1では、例として身体装着型医療機器1の意図された使用を説明するために、患者の身体3および挿入部位4が示されている。
【0030】
身体装着型医療機器1は、ベース部5をさらに備える。ベース部5は、身体装着型医療機器1の使用中に患者の身体3に向く第1の面6aを有する。使用中に身体装着型医療機器1を患者の皮膚に接着するために、ベース部5の第1の面6aは接着剤7をさらに含む。ベース部5は、第1の面6aに対向し、使用中に患者の身体から外方に向く第2の面6bをさらに備える。第2の面6bは、医療機器ハウジング18に連結されている。
【0031】
経皮的要素2は、患者の身体3に少なくとも部分的に挿入されると、患者の皮膚に開口部を形成する。この開口部から流出する体液は、身体装着型医療機器1を汚すか、その機能性に悪影響を及ぼす場合がある、または患者の衣服を汚す場合がある。しかしながら、身体装着型医療機器1の使用中に経皮的要素2に起因する開口部から流出し得る体液を吸収および保持するために、超吸収性物質8および流体チャネル9が、身体装着型医療機器1のベース部5の第1の面6aに設けられる。流体チャネル9は、体液を挿入部位4から超吸収性物質8に導く。
【0032】
図2の上面図に示すように、超吸収性物質は、例として、身体装着型医療機器1の経皮的要素2を囲む連続性の構造を形成する。身体装着型医療機器1を患者の皮膚に接着するための接着剤7は、身体装着型医療機器1の第1の面6aに設けられたプラスター17によって担持される。上面視において、プラスター17は、身体装着型医療機器1のベース部5の突出部を超えて延びている。
【0033】
図3は、本発明のさらなる実施形態による身体装着型医療機器1の上面図を示す。
図3の実施形態は、流体チャネル9をさらに備えることによって、
図1および
図2に示すような身体装着型医療機器1の実施形態とは異なる。流体チャネル9は、体液を挿入部位4から超吸収性物質8に導くように構成されている。ここで、流体チャネル9は、十字を形成し、経皮的要素2の挿入部位4から超吸収性物質8に体液を注ぐ4つのアームを備える。
【0034】
図4は、異なる形状の超吸収性物質8を有するという点で、
図1および
図2による実施形態とは異なる、身体装着型医療機器1の断面を示す。ここで、超吸収性物質8は、共にベース部5の第1の面6aに沿って経皮的要素2を囲む、連続性の内側囲み部および連続性の外側囲み部を形成する。連続性の内側囲み部および連続性の外側囲み部は、2つの同心円を形成し、2つの円の共通の中心は、経皮的要素2によって形成される。
【0035】
図5は、本発明による身体装着型医療機器1のさらなる実施形態の断面を示す。
図5の実施形態による身体装着型医療機器1は、外側シール要素16を有することによって、
図1による実施形態とは異なる。外側シール要素16は、経皮的要素2の外方に向く超吸収性物質8の面で、超吸収性物質8を囲む。したがって、超吸収性物質8ならびに経皮的要素2は、外側シール要素16によって囲まれ、したがって、外側シール要素16によって囲まれたベース部5の第1の面6aの領域の内部に配置される。
【0036】
図6は、本発明による身体装着型医療機器1のさらに別の実施形態の断面を示す。
図6の身体装着型医療機器1は、内側シール要素15をさらに有することによって、
図5の身体装着型医療機器1とは異なる。内側シール要素15は、経皮的要素2に向く超吸収性物質8の面で経皮的要素2を囲み、したがって、超吸収性物質8よりも経皮的要素2からより短い半径方向距離に配置される。
図6による身体装着型医療機器1のベース部5の第1の面1は、隔壁14をさらに追加的に備える。隔壁14は、身体装着型医療機器1の使用中に経皮的要素2によって穿刺されるように構成される。
【0037】
図7は、本発明のさらなる実施形態による身体装着型医療機器1の上面図を示す。
図7の身体装着型医療機器1は、不連続性の内側囲み部および不連続性の外側囲み部を形成する超吸収性物質8を有することによって、
図1による身体装着型医療機器1とは異なる。不連続性の内側囲み部は、複数の内側囲み部セグメント10によって形成され、不連続性の外側囲み部12は、複数の外側囲み部セグメント11によって形成される。複数の内側囲み部セグメント10は、第1の仮想囲み部12に沿ってベース部5の第1の面6aに配置され、複数の外側囲み部セグメント11は、第2の仮想囲み部13に沿ってベース部5の第1の面6aに配置される。内側囲み部セグメント10および外側囲み部セグメント11は、経皮的要素2に対して異なる角度位置に交互に配置される。各内側囲み部セグメント10および各外側囲み部セグメント11は、流体チャネル9に接続されており、各流体チャネル9は、挿入部位から流出する体液をそれぞれのセグメント10、11の超吸収性物質8に導くように構成されている。
【符号の説明】
【0038】
1 身体装着型医療機器
2 経皮的要素
3 患者の身体
4 挿入部位
5 ベース部
6a ベース部の第1の面
6b ベース部の第2の面
7 接着剤
8 超吸収性物質
9 流体チャネル
10 内側囲み部セグメント
11 外側囲み部セグメント
12 第1の仮想囲み部
13 第2の仮想囲み部
14 隔壁
15 内側シール要素
16 外側シール要素
17 プラスター
18 医療機器ハウジング
【国際調査報告】