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特表2025-504261コードレスバッテリ駆動手持ち式超音波歯科用スケーリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-07
(54)【発明の名称】コードレスバッテリ駆動手持ち式超音波歯科用スケーリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/07 20060101AFI20250131BHJP
   A61C 3/03 20060101ALI20250131BHJP
   A61C 17/20 20060101ALI20250131BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20250131BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20250131BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20250131BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20250131BHJP
   B06B 1/08 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
A61C1/07 A
A61C3/03
A61C17/20
A61C19/00 C
H10N30/20
H10N30/30
H10N30/853
B06B1/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547058
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 US2023012507
(87)【国際公開番号】W WO2023150383
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/307,418
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522398359
【氏名又は名称】パスキ・ウルトラソニックス・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】PASCHKE ULTRASONIX LLC
【住所又は居所原語表記】4580 Mark Court, Missoula, Montana 59803 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】パスキ・リチャード・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ブライト・チャールズ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】パスキ・ノエル・エス
【テーマコード(参考)】
4C052
5D107
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA13
4C052AA15
4C052BB07
4C052GG09
4C052GG24
4C052LL07
5D107AA03
5D107AA13
5D107BB07
5D107BB11
5D107CC07
(57)【要約】
コードレス超音波歯科用スケーラーシステムは、手持ち式に構成されたエンクロージャと、少なくとも部分的にエンクロージャ内に配置された超音波音響アセンブリと、超音波音響アセンブリの音響トランスフォーマの結節領域で音響トランスフォーマに結合された回転可能グリップと、エンクロージャ内に配置され、超音波音響アセンブリに通電するように構成された電子制御システムと、エンクロージャ内に配置され、電子制御システムに電力を供給するように構成されたバッテリと、エンクロージャ内に配置され、流体を収容する流体源と、を含む。流体源からの流体の流量は調整されており、調整された流量は、電子制御システムによって制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードレス超音波歯科用スケーラーシステムであって、エンクロージャと、超音波音響アセンブリと、回転可能グリップと、電子制御システムと、バッテリと、流体源とを有し、
前記エンクロージャは、手持ち式に構成され、
前記超音波音響アセンブリは、少なくとも部分的に前記エンクロージャ内に配置され、振動波を生成するように構成され、トランスデューサと、音響トランスフォーマと、先端部とを有し、
前記トランスデューサは、前記トランスデューサの第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定し、
前記音響トランスフォーマは、接合部において前記トランスデューサに接続され、そこから延び、
前記先端部は、前記音響トランスフォーマの遠位端に着脱可能に接続され、
前記回転可能グリップは、前記音響トランスフォーマの結節領域において前記音響トランスフォーマに結合されており、前記超音波音響アセンブリを前記エンクロージャに対して回転させるように構成され、
前記電子制御システムは、前記エンクロージャ内に配置され、前記超音波音響アセンブリに通電するように構成され、
前記バッテリは、前記エンクロージャ内に配置され、前記電子制御システムに電力を供給するように構成され、
前記流体源は、前記エンクロージャ内に配置され、流体を収容し、前記流体源からの前記流体の流量は、調整されており、調整された前記流量は、前記電子制御システムによって制御される、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、テルフェノール-D(Terfenol-D)トランスデューサである、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、50GPa未満の弾性率を有する、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、n=1であるnλ/4トランスデューサとして動作するように構成され、共振周波数fは、前記トランスデューサの前記固定長さによって規定される、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記先端部は、前記音響トランスフォーマの前記遠位端にねじによって着脱可能に連結される、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップは、前記エンクロージャに対して少なくとも約360度の回転範囲を有する、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップを前記エンクロージャに対して回転させるのに必要なトルクは、約10インチオンス未満である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップを前記エンクロージャに対して回転させるのに必要なトルクは、約1インチオンスから約5インチオンスの範囲内である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記バッテリは、充電式である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記電子制御システム及び前記バッテリは、前記エンクロージャから着脱自在に取り外し可能である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記電子制御システムと前記バッテリとを収容する前記エンクロージャの第1の部分は、前記エンクロージャの第2の部分に対して着脱可能である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源は、前記流体を収容する取り外し可能なポッドである、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体は、無菌流体及び薬剤の少なくとも1つを含む、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量は、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の出力振幅に対応(proportional)する、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量と、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の前記出力振幅との対応関係(proportionality)は、線形である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量と、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の前記出力振幅との対応関係(proportionality)は、非線形である、
コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に対し、略均一な圧力が加えられる、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に加えられる圧力は、約2psi~約10psiの範囲内である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に加えられる圧力は、約3psi~約5psiの範囲内である、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のコードレス超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記エンクロージャ内に配置されたバネをさらに備え、前記バネは、前記流体源内に収容された前記流体に圧力を加えるように構成されている、コードレス超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項21】
超音波歯科用スケーラーシステムと共に使用するように構成された超音波音響アセンブリであって、振動波を生成するように構成され、トランスデューサと、音響トランスフォーマと、キー付き部品とを有し、
前記トランスデューサは、前記トランスデューサの第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定し、
前記音響トランスフォーマは、接合部において前記トランスデューサに接続され、そこから延び、
前記トランスデューサは、前記音響トランスフォーマと前記キー付き部品との間で圧縮された状態で維持され、前記キー付き部品と前記音響トランスフォーマとは、圧縮の間、前記トランスデューサの相対的な回転運動を抑制するように構成されている、超音波音響アセンブリ。
【請求項22】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約18kHz~約55kHzの範囲内である、音響アセンブリ。
【請求項23】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約20kHz~約30kHzの範囲内である、音響アセンブリ。
【請求項24】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記キー付き部品は、前記圧縮の間、前記トランスデューサの相対的な軸方向の運動を抑制する、音響アセンブリ。
【請求項25】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記音響トランスフォーマは、軸方向及び回転方向の双方について拘束されている、音響アセンブリ。
【請求項26】
請求項25に記載の音響アセンブリにおいて、
前記音響トランスフォーマは、前記音響アセンブリの結節領域において拘束される、音響アセンブリ。
【請求項27】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、テルフェノール-Dトランスデューサである、音響アセンブリ。
【請求項28】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、n=1であるnλ/4トランスデューサとして動作するように構成され、共振周波数fは、前記トランスデューサの前記長さによって規定される、音響アセンブリ。
【請求項29】
請求項21に記載の音響アセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、50GPa未満の弾性率を有する、音響アセンブリ。
【請求項30】
超音波歯科用スケーラーシステムであって、エンクロージャと、超音波音響アセンブリと、回転可能グリップとを備え、
前記エンクロージャは、手持ち式に構成され、
前記超音波音響アセンブリは、少なくとも部分的に前記エンクロージャ内に配置され、振動波を生成するように構成され、トランスデューサと、音響トランスフォーマと、先端部とを有し、
前記トランスデューサは、前記トランスデューサの第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定し、
前記音響トランスフォーマは、接合部において前記トランスデューサに接続され、そこから延び、
前記先端部は、前記音響トランスフォーマの遠位端に着脱可能に接続され、
前記回転可能グリップは、前記音響トランスフォーマの結節領域において前記音響トランスフォーマに結合され、前記超音波音響アセンブリを前記エンクロージャに対して回転させるように構成されている、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項31】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約18kHz~約55kHzの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項32】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約20kHz~約30kHzの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項33】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記音響トランスフォーマは、前記超音波音響アセンブリの結節領域に拘束される、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項34】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、テルフェノール-Dトランスデューサである、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項35】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、n=1であるnλ/4トランスデューサとして動作するように構成され、共振周波数fは、前記トランスデューサの前記長さによって規定される、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項36】
請求項30に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、50GPa未満の弾性率を有する、超音波歯科用スケーラーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2022年2月7日に出願された、米国特許出願第63/307,418号の利益と優先権とを主張し、当該出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、歯科用スケーラーに関し、より具体的には、オンボード流体送達を含む、コードレスでバッテリ駆動の手持ち式超音波歯科用スケーリングシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在の超音波歯科用スケーラーは、超音波振動エネルギーの発生を可能にするために、ハンドピース内のトランスデューサに電力を供給する制御モジュールに繋がれている必要があるため、制限がある。さらに、超音波歯科用スケーラーの電子制御システムの改良により、効率は向上したが、そのような改良は、通常、必要な電力を増加させ、及び/又は複雑化させ、それにより製造コストを増加させる。
【0004】
現在の超音波歯科用スケーラーは、歯と作業ツールとの界面と、場合によってはハンドピース内のトランスデューサとに、クーラントを供給するために、制御モジュールに繋いでおく必要があることによっても制限されている。さらに、このような超音波歯科用スケーラーは、歯科処置に必要な大量のクーラントによって制限されている。例えば、現在の超音波歯科用スケーラーでは、低出力設定で超音波エネルギーを利用する場合、歯と作業ツールとの界面に対して毎分約10ミリリットルのクーラント流量が必要である。したがって、20分間の処置で、超音波の平均オン時間が10分である場合、最低100ミリリットルの量のクーラントが必要となる。より高い出力レベルを必要とする処置には、少なくとも200ミリリットルのクーラントが必要となることがある。この200ミリリットルのクーラント(例えば、水)の重さは200グラム(g)、つまり約7オンスである。
【0005】
少なくとも、電子部品、制御部、電源、及びクーラント(例えば、水)のサイズ及び重量のために、これらのコンポーネントのすべてをハンドピースに組み込むことは重量的に不可能であるため、現在の超音波歯科用スケーラーには、繋がれた制御モジュールが依然として必要である。例えば、現在の超音波歯科用スケーラーのハンドピースは、ピエゾ式スケーラーの約56.5g(2オンス)からマグネト式スケーラーの約72.2g(2.5オンス)である。クーラントの重量を加えるだけで(クーラント容器、電子部品、電源を考慮しないで)、ハンドピースの重量は3倍以上になる。例えば、バッテリのような電源を含めると、重量はさらに約135g増加し、電子部品を加えるとさらに約300g増加する。その結果、ハンドピースの重量は約830g(1.8ポンド)となる。
【0006】
さらに、現在の超音波スケーリングシステムでは、クーラント流量の調整が課題となっている。クーラントの流量調整には標準化がなく、これが現場での混乱を招いている。現在の多くの設計では、正確な流量制御ができない。さらに、クーラントレギュレーターのないシステムも、導入されるクーラント圧力の変化による流量変動の影響を受ける。
【0007】
例えば、米国特許第7,255,290号、8,113,179号、8,418,676号、8,683,982号、及び9,385,300号は、高い機械的出力密度で耐久性のある電気機械式の/メカトロニクスアクチュエーターを提供する合金を開示している。テルビウム(周期律表の元素番号65)は、磁気的効果と機械的効果とを不可分に結びつけている。磁歪と呼ばれるこの珍しい現象は破壊不可能で、テルビウム原子自体の量子力学に由来するため、永久に劣化することはない。テルビウムは、ジスプロシウム(元素番号66)及び鉄と組み合わされた、テルフェノール-D(Terfenol-D)と名付けられた有用な合金でこの効果を提示している。テルフェノール-Dは、磁気入力を機械的出力に変換する最もよく知られた結合材のひとつである。
【0008】
一般に、磁歪材料は磁気入力を機械的出力に変換し、その逆もまた同様である。磁気入力を機械的出力に変換するアクチュエータに関しては、ソレノイドコイルが磁歪テルフェノール-D素子を取り囲んでいる。電気入力がソレノイドコイルに通電し、磁界を発生させる。磁歪テルフェノール-D素子は、その磁気入力を機械的出力に変換する。テルフェノール-Dは、印加された磁場の強さに対してほぼ直線的に機械的膨張する。電界強度の低下は膨張を抑える。さらに、テルフェノール-Dが膨張又は収縮する時間的速度は、印加された磁場の時間的変化率に概ね比例する。このように、テルフェノール-Dは機械的出力を継続的に制御することができる。単一のアクチュエータの動作範囲内で、電気入力を連続的に制御することにより、高速で小さな機械的出力と、低速で大きな機械的出力との双方を可能にし、その中間の所望の出力も可能である。
【0009】
連続的な制御に加えて、磁歪効果の量子力学的な起源は、テルフェノール-Dに厳しい環境にも耐えうる固有の耐久性を与えている。磁歪がテルフェノール-Dを消耗させることは観察されておらず、高温がテルフェノール-Dを回復不能に劣化させることもない。通電ソレノイドコイルは、アクチュエータの磁歪テルフェノール-D素子を取り囲むが接触しないため、磁場は直接接触することなく印加され、あらゆる部品の消耗を避けることができる。
【0010】
ピエゾセラミックスがニッケル合金に代わって多くの電気機械式トランスデューサに使用されていることは、当技術分野で知られている。さらに、ピエゾのエネルギー密度はニッケル合金のそれを上回ることが知られており、ピエゾトランスデューサは、ニッケル合金、例えばパーマニッケルよりも大きな出力対重量比を提供する。対照的に、テルフェノール-Dは電気機械式トランスデューサとしては最も高いエネルギー密度を提供するため、より小型の装置で同じ機械的出力を得ることができる。
【0011】
米国特許第7,255,290号は、ピエゾ式とGMM(テルフェノール-Dとして知られる巨大磁歪材料)とを比較した海軍の試験データを強調している。このデータは、エネルギー結合がピエゾ式と同等であることを示しているが、応力限界エネルギー密度がほぼ3倍違うことを示している。これは、ヤング率の差がほぼ3倍であることの結果である。これに加えて、テルフェノール-Dは、表に示された比較的低い-41MPaよりもはるかに高い予荷重バイアスでも、消耗のような寿命を短縮させるような問題が発生することなく安全に動作させることができ、さらにエネルギー密度を高め得る。さらに、過剰な磁場はテルフェノールDの膨張を単に飽和させるだけであるのに対し、ピエゾ式では過剰な電場を受けると絶縁破壊を起こし得る。
【0012】
米国特許第6,619,957号には、手持ち式スケーラーとして、テルフェノール-Dを使用した超音波スケーラーが記載されている。しかし、この装置のすべてのバージョンは、ハンドピースが繋がれているため、携帯性が制限されている。
【発明の概要】
【0013】
本明細書で使用される「約(about)」、「略(substantially)」等の用語は、プラスマイナス10%までの製造、材料、環境、使用、測定、及び/又はその他の公差及びばらつきを考慮することを意味する。さらに、矛盾しない範囲で、本明細書に記載された態様のいずれかを、本明細書に記載された他の態様のいずれか又はすべてと組み合わせて使用することができる。さらに、「振幅(amplitude)」及び「ストローク(stroke)」という用語は、装置の出力レベルに関して互換的に使用される。本明細書では、「角(angular)及び回転(rotational)」という用語も、組立中のトランスデューサの圧縮に関して互換的に使用される。
【0014】
本開示の目的は、従来技術の装置の限界を克服した、完全に携帯可能な超音波スケーリング装置を提供することである。
【0015】
本開示の他の目的は、着脱自在に取り外し可能な(そしてある態様において、再生可能な)電源、一体型(そしてある態様において、自己調節可能な)流体供給システム、及び着脱自在に取り外し可能な電子制御システム(例えば、電子駆動回路)を提供する超音波スケーリング装置を提供することである。
【0016】
本開示のさらに別の目的は、(例えば、超音波スケーリング装置の)音響アセンブリに回転防止部材を設けることであり、それにより、特に音響アセンブリのトランスデューサの圧縮中における機械的完全性を高めることである。
【0017】
本開示の他の目的、態様及び特徴は、本明細書の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
【0018】
本開示の態様に従って提供されるのは、手持ち式に構成されたエンクロージャと、少なくとも部分的にエンクロージャ内に配置された超音波音響アセンブリとを有するコードレス超音波歯科用スケーラーシステムである。超音波音響アセンブリは、振動波(例えば、0.2~5.0milの振幅成分)を生成するように構成され、トランスデューサを有し、トランスデューサは、その第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定する。超音波音響アセンブリは、音響トランスフォーマをさらに有する(ここで、音響トランスフォーマの長さは、部分的に共振周波数fを規定する)。音響トランスフォーマは、接合部においてトランスデューサに接続されてそこから延びており、先端部は、音響トランスフォーマの遠位端に着脱可能に接続されている。回転可能グリップは、音響トランスフォーマの結節領域において音響トランスフォーマに結合され、エンクロージャに対して超音波音響アセンブリを回転させるように構成されている。電子制御システムは、エンクロージャ内に配置され、超音波音響アセンブリに通電するように構成されている。バッテリは、エンクロージャ内に配置され、電子制御システムに電力を供給するように構成されている。流体源も、エンクロージャ内に配置され、流体を収容している。流体源からの流体の流量は、調整されており、調整された流量は、電子制御システムによって制御される。
【0019】
本開示の一態様では、トランスデューサは、テルフェノール-Dトランスデューサである。
【0020】
本開示の別の態様では、トランスデューサは、50GPa未満の弾性率を有する。
【0021】
本開示の別の態様では、先端部は、音響トランスフォーマの遠位端に対し、ねじによって着脱可能に接続されている。
【0022】
本開示の別の態様において、回転可能グリップは、エンクロージャに対して少なくとも約360度の回転範囲を有する。
【0023】
本開示のさらに別の態様において、回転可能グリップをエンクロージャに対して回転させるのに必要なトルクは、約10インチオンス未満であり、ある態様において、約1インチオンス~約5インチオンスの範囲内である。
【0024】
本開示のさらに別の態様では、バッテリは、充電式である。
【0025】
本開示のさらに別の態様では、電子制御システム及びバッテリは、エンクロージャから着脱自在に取り外し可能である。
【0026】
本開示の別の態様において、電子制御システム及び電池を収容するエンクロージャの第1の部分は、エンクロージャの第2の部分に対して着脱可能である。
【0027】
本開示の別の態様において、流体源は、クーラント(例えば、水)、無菌流体、及び/又は薬剤を含み得る流体を収容する取り外し可能なポッドである。
【0028】
本開示のさらに別の態様において、流体源からの流体の調整された流量は、音響アセンブリによって生成される振動波の出力振幅に対応(proportional)する。対応関係(proportionality)は線形又は非線形であり得る。
【0029】
本開示のさらに別の態様において、略均一な圧力が、流体源内に収容される流体に加えられる。加えられる圧力(ある態様において、略均一な圧力)は、ある態様において、約2psi~約10psiの範囲内であり、ある態様において、約3psi~約5psiの範囲内とすることができる。
【0030】
本開示の別の態様において、バネは、エンクロージャ内に配置され、流体源内に収容される流体に圧力を加えるように構成される。
【0031】
超音波音響アセンブリは、本開示に従って提供され、コードレス超音波歯科用スケーラーシステムと共に使用するように構成される。音響アセンブリは、振動波(例えば、0.2~5.0milの振幅成分)を発生するように構成され、トランスデューサ、音響トランスフォーマ、及びキー付き部品を含む。トランスデューサは、トランスデューサの第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定する。音響トランスフォーマは、接合部においてトランスデューサに接続され、そこから延びている。キー付き部品は、音響トランスフォーマとキー付き部品との間で圧縮された状態に維持されたトランスデューサに設けられている。キー付き部品と音響トランスフォーマとは、圧縮中のトランスデューサの相対的な回転運動を抑制するように構成されている。
【0032】
本開示の一態様では、音響アセンブリの動作周波数は、約18kHz~55kHzの範囲であり、又は、ある態様では約20kHz~30kHzの範囲である。
【0033】
本開示の別の態様では、キー付き部品は、圧縮中のトランスデューサの相対的な回転(rotational)(角(angular))運動を防止する。さらに、音響トランスフォーマは、角度方向と軸方向との双方について、例えば音響アセンブリの結節領域で拘束され得る。
【0034】
本開示の一態様では、トランスデューサは、テルフェノール-Dトランスデューサである。
【0035】
本開示のシステムは、完全に持ち運び可能であり、それにより、オフィス内での使用のためのコード回りの乱雑さ、危険性、及び人間工学的問題を低減し、例えば、遠隔地の人々、処置のために歯科医院又は診療所まで移動することができない患者、遠隔歯科処置用途、軍事用途、清潔な水又は信頼できる電力のない地域等のために、歯科処置へのアクセスを広げる。
【0036】
ある態様において、本開示のスケーラーシステムのいずれかは、装置のオンオフ操作、電力出力、及び/又はクーラント流量の遠隔制御を可能にするために、制御装置への遠隔(例えば無線)接続を含み得る。
【0037】
ある態様において、本開示のスケーラーシステムのいずれかは、装置のオンオフ操作、電力出力、及び/又はクーラント流量の遠隔制御を可能にするために、制御装置への遠隔(例えば音声制御)接続を含み得る。
【0038】
ある態様において、本開示のシステムのいずれかは、コンパートメント内に配置された、例えば可撓性パケットの形態の、補充可能又は交換可能な流体チャンバを含み得る。そのような態様において、構成要素(又はその中の構成要素)は、流体の流れを制御するように構成され得る(例えば、流体チャンバを加圧又は減圧すること、及び/又はソレノイドのような弁を開閉することによって)。流量は0~75%のデューティサイクルで制御され得る。これらの態様において、交換可能な流体パケットは、着脱可能なキャップを有するコンパートメント内に配置することができ、キャップは、流体パケットの交換を可能にし、流体パケットに圧縮力を与えて流体パケット内に圧力を生じさせる。キャップは、ねじ切りにより取り付けられ、及び/又は圧縮力により、流体パケット内に約2psiから約10psi、又は、ある態様においては、約3psiから約5psiの圧力を生じさせることができる。
【0039】
ある態様において、本開示のシステムのいずれかは、従来技術のシステムよりも実質的に複雑さを低減した電子駆動回路を含み得、したがって、携帯可能なバッテリ駆動システムでの使用を容易にする。特に、駆動回路は、最適な動作点を選択するための駆動電圧及び電流のサンプリングを不要とする。このような態様において、電源は、作動時に振動エネルギーを生成する態様でトランスデューサに電気的に接続され、音響トランスフォーマは、プレストレス条件下でトランスデューサと接続し、着脱可能な歯科用ツールのための結合手段を提供する。電子回路が超音波トランスデューサの周波数及び振幅を制御し、あらかじめ選択された固定周波数が、所定の動作範囲にわたってユーザーが選択可能な出力振幅レベルを維持する。
【0040】
ある態様において、本開示のシステムのいずれかが、作業ツールに流体の流れを提供し、加圧下での流体の流量を制御することによって、必要な流体の量を最小限にすることができる。流量は、処置中のツールの振幅レベルによって決定される。すなわち、出力流量は出力振幅に基づいて制御され得る(ある態様において、流体の流量は、振幅に対応(proportional)する)。制御コンポーネントは、システム内にローカルに取り付けることも、外部コントローラにリモートで取り付けることもできる。いずれの構成においても、流体効率に影響を与えることなく、処置中に必要な流体量の総量を最小限に抑えることができるため、ハンズフリー操作が可能となり、流量の手動調整に伴う誤差をなくすことができる。
【0041】
態様において、本開示のシステムのいずれかのトランスデューサには、テルフェノール-Dトランスデューサを利用することができる。テルフェノール-Dトランスデューサが破壊されることなく最適に圧縮されるように、予荷重の間のテルフェノール-Dトランスデューサの横方向又は回転方向の動きを安定させ、最小にする1つ以上の調整部品が設けられ得る。
【0042】
ある態様では、テルフェノール-Dトランスデューサは100~20,000psiの間の予荷重をかけられる。さらに、あるいは代替的に、テルフェノール-Dトランスデューサは、共振長を規定し得る。ある態様において、トランスデューサは、nが1又は2のnλ/4トランスデューサであり、動作周波数は約18kHzから約55kHzの範囲、又は、ある態様において、約20kHzから約30kHzの範囲である。
【0043】
本開示のシステムのいずれかのトランスデューサは、0.2~5.0milの範囲の出力振幅を、フィードバック及びトランスデューサの磁気バイアスがない場合に提供し得る。
【0044】
本開示のいずれのシステムも、歯並びの角度への適応を改善するために、器具グリップ及びツールの360度までの回転(場合によっては、無制限の回転)を可能にするようにさらに構成され得る。このような回転は、約10インチオンス未満及び/又は1インチオンスから5インチオンスの範囲のトルクで提供することができる。
【0045】
追加的又は代替的な態様では、1つ以上のバッテリ及び電子部品は、ハンドピースに着脱自在に接続されたパワーパック内に支持される。このような態様では、コンパクトな構成を提供するために、1つ以上のバッテリは、電子部品(駆動回路)に囲まれ得る。さらに、クーラントの流量を調整するソレノイドも、パワーパック内に配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本開示の様々な態様及び特徴を、図面を参照して以下に説明する。
【0047】
図1】本開示に係る超音波音響システムの振幅プロットである。
【0048】
図2】本開示に係るノードピンを有する超音波音響システムの超音波音響システムプロファイルを示すグラフである。
【0049】
図3】本開示に係る超音波音響システムの応力グラフである。
【0050】
図4A】超音波音響システムについて、図2の枠付き数字にしたがった線形設計パラメータを提供するチャートである。
【0051】
図4B】超音波音響システムの設計パラメータと出力データとを示すチャートである。
【0052】
図5】超音波音響システムの縦断面図である。
【0053】
図6】超音波音響システム、流体システム、バッテリ、及び電子制御システムを含む、本開示に係るコードレス超音波歯科用スケーラーシステムの縦断面図である。
【0054】
図7】本開示に係るコードレス超音波歯科用スケーラーシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1及び図2を参照すると、図1は、本開示に係る超音波音響システム又は超音波ドライバ2(図2)の出力振幅のグラフ1を示し、図2は、組立軸を対称線として半分の形状として示された超音波ドライバ2を示す。超音波ドライバ2の近心端における振幅は約0.25ミクロンであり、超音波ドライバ2の遠位端における出力振幅は約1.0ミクロンである。図2に示す超音波ドライバ2の出力振幅は、発生する超音波振動波が主に縦波である音響システム構成を表している。
【0056】
引き続き図2を参照すると、超音波ドライバ2は、システムが2つの結節領域を有する完全なλ構成を定義することが示されている。第2の結節領域には貫通孔3があり、これにより、超音波ドライバ2はグリップ16(図6)に取り付け可能である。
【0057】
図3を参照すると、グラフ4は、超音波ドライバ2(図2)に沿った応力を示しており、応力値の符号は、アセンブリに沿った結節領域に対する相対位置によって決定される。簡単のため、出力振幅が約1.0ミクロンの場合の値を示している。実際の応力値は、グラフ値に実際の出力振幅の大きさを乗じることで推定することができる。
【0058】
図4Aは、設計における様々なセクションのパラメータを含む超音波ドライバ2(図2)の例示的な設計パラメータを示し、セクションの長さ、直径、及び遷移半径を含み、図2の枠付き数字の各々は、図4Aのチャート内で特定された面に対応する。各セクションの材料(「MAT」)も、図4Bのチャートと組み合わせて参照される。
【0059】
図4Bは、図4Aのチャートに記した材料の設計パラメータを、前側スパナ穴と呼ばれるノード支持穴の位置、直径、深さと、計算された出力値と、とともに一覧にしたチャートである。これらの値には、動作周波数と、共振器ゲインと、超音波ドライバ2(図2)における最大の応力の位置及び値とが含まれる。
【0060】
図5は、超音波音響システム又はハウジング7に取り付けられた超音波ドライバ2を示し、トランスデューサ13はテルフェノール-D結晶トランスデューサであり、音響トランスフォーマ9と端塊(end mass)12との間で圧縮された状態に維持されている。トランスデューサ13は、トランスデューサ13の第1端と第2端との間に延びる固定長さを有する。音響トランスフォーマ9は、接合部においてトランスデューサ13に接続され、そこから延びている。音響トランスフォーマ9は、例えば、音響トランスフォーマ9とハウジング7との相補的な機械的特徴の係合を介して、結節領域11でハウジング7によって(回転方向、及び、ある態様においては軸方向にも)拘束される。負荷塊12とトランスデューサ13との間に配置されたキー付き部品10は、圧縮中(組立時)にトランスデューサ13の回転(角)運動を制限し、よってトランスデューサ、例えばテルフェノール-D結晶を破壊する危険性を低減し、また、トランスデューサ13の軸方向運動も制限する。コイル8は、トランスデューサ13の周囲に配置され、それにより、電子制御システム、例えば、電子制御システムのトランスデューサドライバ33(図7)からコイル8に付与される駆動信号が磁場を生成し、その結果、超音波ドライバ2に沿って振動波が発生し、超音波ドライバ2の作業ツール(例えば、先端部15(図6))において結果としての出力振幅1(図1)が生じる。このようにして、超音波ドライバ2の様々な構成部品は、動作可能に結合され、少なくとも部分的にハウジング7内に保持される。
【0061】
図6は、本開示に係るコードレスでバッテリ駆動の超音波歯科用スケーラーシステム18を示す。システム18は、例えば、樽型構成、ピストル型構成(図示のとおり)等の任意の適切な構成を画定する手持ちエンクロージャとして構成されるエンクロージャ5を含む。システム18には、加圧部材22と協働するキャップ23を有する流体源(例えば、インライン冷却システムの一部として)と、流体チャンバ21(ある態様において、再生可能又は交換可能である)とが組み込まれている。システム18は、さらに、超音波音響アセンブリ又は超音波ドライバ14(これは、超音波ドライバ2(図1図5を参照)の特徴のいずれか又は全てに類似していてもよく、これらを含んでもよい)と、電子部品及びバッテリコンパートメント20と、流体流量コントロール19(例えば、ソレノイド)と、エンクロージャ5に対して超音波ドライバ14を回転させるために支持体17によって回転可能であり得る回転可能グリップ16と、超音波ドライバ14に取り付けられ、回転可能グリップ16から延びる作業ツール又は先端部15とを有する。先端部15は、例えばねじ係合を介して、超音波ドライバ14の音響トランスフォーマ9(図5)に対し、着脱可能に接続され得る。電子部品及びバッテリコンパートメント20(ある態様において、エンクロージャ5の一部を形成する)は、エンクロージャ5(又はエンクロージャ5の別の部分)から取り外し可能であってもよく、及び/又は、電子部品及びバッテリ(図6で不図示)は、システム18の滅菌を容易にするために、コンパートメント20から取り外し可能であり得る。回転可能グリップ16は、超音波ドライバ14をエンクロージャ5に対して相対的に回転させるために低トルクで回転するように構成されてもよく、最大360度の可動範囲を通して回転してもよい。他の態様では、無制限の回転が許容される。低トルクとは、約10インオンス未満及び/又は、ある態様では、約1インオンスから約5インオンスの範囲であり得る。
【0062】
引き続き図6を参照すると、流体流量コントロール19(例えば、ソレノイド)は、不図示の適切な流体導管を介して流体チャンバ21と、エンクロージャ5内に画定されたリザーバ24とに結合される。流体流量コントロール19は、バッテリにより電力供給され、電子部品29(図7)により制御されて、流体チャンバ21からの流体流量を測定するように、すなわち、流体チャンバ21からリザーバ24内へ、回転可能グリップ16を通って、超音波ドライバ14周辺を、作業ツール(例えば、先端部15)の歯との界面への送達のために、及び/又は超音波ドライバ14の冷却のために、流体を選択的に送達することを可能にするように構成されている。1つ以上のシール25が設けられてもよく、これにより、リザーバ24を画定し、及び/又は流体の流れを誘導する一方で、流体が、例えば電子部品、バッテリ、トランスデューサ(テルフェノール-D結晶)のようなダメージを受け易い構成要素に到達したり、及び/又はグリップとの接続部分において漏れたりすることを抑制する。流体チャンバ21は、再生可能なパケット又はポッドとして示されているが、代替的にリザーバの形態であってもよいことが考えられる。これら又は他の態様のいずれかにおいて、流体チャンバ21内の、例えばクーラント、無菌流体、薬剤等の流体は、キャップ23によって保持されるバネ22(又は他の適切な付勢部材)を介して加圧保持される。キャップ又は加圧キャップ23は、例えば、ねじ係合を介して流体チャンバ21(及び/又はその中の流体)の交換と、キャップ23の再係合時の加圧とを可能にするために、システム18のエンクロージャ5に取り外し可能に係合し得る。ある態様において、流体チャンバ21は、少なくとも50mlの流体を保持するように構成されてもよく、歯科処置中に必要に応じて、容易に再充填されるか、又は新しい流体チャンバ21(例えば、流体ポッド又はパケット)と交換され得る。
【0063】
図7を参照すると、コードレスでバッテリ駆動の超音波歯科用スケーラーシステム18(図6)の機能的構成要素のシステム26を示す、簡略化されたブロック図が示されている。システム26は、周波数制御回路28を含み、この周波数制御回路28は、振幅制御回路29に結合され、この振幅制御回路29はトランスデューサドライバ回路33に結合される。システム26は、例えば、不図示のワイヤレスフットスイッチのような1つ以上の外部コントローラと通信するように構成された遠隔制御モジュール27をさらに有し得る。オンオフ、出力振幅レベル、適用可能な場合のモード選択、流体コントロール、及び当技術分野で理解されている他のモードを含むすべての機能を制御するために、単純な音声コマンドを使用する音声制御モジュールが含まれ得ることも考えられる。外部コントローラの有線接続用に、不図示のケーブルポートを設けてもよい。手動コントロール、例えばエンクロージャ5(図6)上のコントロールは、上述の特徴のいくつか、又はすべてについて代替的に考えられる。
【0064】
ある態様において、少なくとも周波数制御回路28、振幅制御回路29、及びトランスデューサドライバ回路33は、電子制御システムを形成するが、他の制御も考えられる。電子制御システムは、追加的又は代替的に、遠隔制御モジュール27及び/又は流体又はクーラント制御回路31(以下で詳述)を有し得る。バッテリ、バッテリパック30等の電源は、例えば電子制御システムの電子部品等に電力を供給するために設けられる。バッテリパック30の1つ以上のバッテリ(バッテリパック30として集合的に、又は個別に)は、再充電可能(充電式)及び/又は交換可能であり得る。
【0065】
振幅制御回路29は、流体又はクーラント制御回路31にも接続されており、出力振幅に基づいて流体又はクーラントの流量を変化させるように構成され、これによりハンズフリーでクーラントの流量制御が行われる。クーラント制御回路31は、クーラントモジュール35(例えば、流体チャンバ21(図6))に接続されており、例えば、ソレノイド19(図6参照)を動作させることにより、クーラントのオンオフ機能を制御する。加圧システム36は、バネ22(図6)に加えて又は代替として、加圧キャップ23(図6参照)に関連する能動的加圧装置を介して、クーラントモジュール35を、例えば、約2psiから約10psiまで、又は他の態様において、約3psiから約5psiまでの圧力又は圧力範囲で加圧する。ある態様において、圧力又は圧力範囲は、予め決められた及び/又は略均一である。
【0066】
超音波音響システム、超音波ドライバ、又は音響システム34(例えば、本明細書で詳述したのと同様)は、超音波動作中、トランスデューサドライバ回路33(バッテリパック30によって給電される)から信号を受信し、クーラントモジュール35からクーラントを受け取る。システムはまた、超音波動作の有無にかかわらずクーラントを供給するように構成することもでき、それによって洗浄オプションを可能にする。音響システム34は、次に、超音波歯科用スケーラーチップであり得る作業ツール(先端部)32に、振動波振幅を発生させる。流体の流量を調整するためのソレノイド19又は他の適切な流量コントローラは、作業ツール(先端部)32における振動波の出力振幅に比例した速度で調整してもよく、対応関係(proportionality)は線形又は非線形である。
【0067】
本明細書に開示された態様や特徴には、様々な変更が加えられ得ることが理解されよう。したがって、上記の説明は限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に様々な態様や特徴の例示として解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波歯科用スケーラーシステムであって、エンクロージャと、超音波音響アセンブリと、回転可能グリップとを有し、
前記エンクロージャは、手持ち式に構成され、
前記超音波音響アセンブリは、少なくとも部分的に前記エンクロージャ内に配置され、振動波を生成するように構成され、トランスデューサと、音響トランスフォーマと、先端部とを有し、
前記トランスデューサは、前記トランスデューサの第1端と第2端との間に延びる固定長さを画定し、
前記音響トランスフォーマは、接合部において前記トランスデューサに接続され、そこから延び、
前記先端部は、前記音響トランスフォーマの遠位端に着脱可能に接続され、
前記回転可能グリップは、前記音響トランスフォーマの結節領域において前記音響トランスフォーマに結合されており、前記超音波音響アセンブリを前記エンクロージャに対して回転させるように構成されている、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項2】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
さらに、電子制御システムと、バッテリと、流体源とを有し、
前記電子制御システムは、前記エンクロージャ内に配置され、前記超音波音響アセンブリに通電するように構成され、
前記バッテリは、前記エンクロージャ内に配置され、前記電子制御システムに電力を供給するように構成され、
前記流体源は、前記エンクロージャ内に配置され、流体を収容し、前記流体源からの前記流体の流量は、調整されており、調整された前記流量は、前記電子制御システムによって制御される、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、テルフェノール-D(Terfenol-D)トランスデューサである、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、50GPa未満の弾性率を有する、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記トランスデューサは、n=1であるnλ/4トランスデューサとして動作するように構成され、共振周波数fは、前記トランスデューサの前記固定長さによって規定される、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記先端部は、前記音響トランスフォーマの前記遠位端にねじによって着脱可能に連結される、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップは、前記エンクロージャに対して少なくとも約360度の回転範囲を有する、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項8】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップを前記エンクロージャに対して回転させるのに必要なトルクは、約10インチオンス未満である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項9】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記回転可能グリップを前記エンクロージャに対して回転させるのに必要なトルクは、約1インチオンスから約5インチオンスの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項10】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記バッテリは、充電式である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項11】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記電子制御システム及び前記バッテリは、前記エンクロージャから着脱自在に取り外し可能である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項12】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記電子制御システムと前記バッテリとを収容する前記エンクロージャの第1の部分は、前記エンクロージャの第2の部分に対して着脱可能である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項13】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源は、前記流体を収容する取り外し可能なポッドである、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項14】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体は、無菌流体及び薬剤の少なくとも1つを含む、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項15】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量は、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の出力振幅に対応(proportional)する、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項16】
請求項15に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量と、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の前記出力振幅との対応関係(proportionality)は、線形である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項17】
請求項15に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源からの前記流体の調整された前記流量と、前記音響アセンブリによって生成される前記振動波の前記出力振幅との対応関係(proportionality)は、非線形である
音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項18】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に対し、略均一な圧力が加えられる、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項19】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に加えられる圧力は、約2psi~約10psiの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項20】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記流体源内に収容された前記流体に加えられる圧力は、約3psi~約5psiの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項21】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記エンクロージャ内に配置されたバネをさらに備え、前記バネは、前記流体源内に収容された前記流体に圧力を加えるように構成されている、超音波歯科用スケーラーシステム。
【請求項22】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
さらに、キー付き部品を有し、
前記トランスデューサは、前記音響トランスフォーマと前記キー付き部品との間で圧縮された状態で維持され、前記キー付き部品と前記音響トランスフォーマとは、圧縮の間、前記トランスデューサの相対的な回転運動を抑制するように構成されている、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項23】
請求項1に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約18kHz~約55kHzの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項24】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記超音波音響アセンブリの動作周波数は、約20kHz~約30kHzの範囲内である、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項25】
請求項22に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記キー付き部品は、前記圧縮の間、前記トランスデューサの相対的な軸方向の運動を抑制する、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項26】
請求項22に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記音響トランスフォーマは、軸方向及び回転方向の双方について拘束されている、超音波歯科用スケーラーシステム
【請求項27】
請求項に記載の超音波歯科用スケーラーシステムにおいて、
前記音響トランスフォーマは、前記音響アセンブリの結節領域において拘束される、超音波歯科用スケーラーシステム
【国際調査報告】