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特表2025-504301独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537825
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2023011297
(87)【国際公開番号】W WO2023141307
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,693
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521105662
【氏名又は名称】デクステリティ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】DEXTERITY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メノン・サミア
(72)【発明者】
【氏名】サン・チョウエン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS10
3C707CY31
3C707HS27
3C707KS22
3C707KT01
3C707KT06
3C707LU01
3C707LU03
3C707MT02
3C707MT05
3C707NS02
(57)【要約】
【解決手段】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムが開示されている。ロボットアームを構成するエンドエフェクタが移動されるべき軌道の指示が受信される。1または複数のモータを用いて、第1間隔中にロボットアームを構成する1または複数の要素へトルクを印加し、1または複数のエネルギ除去装置を用いて、第1間隔の開始後に始まる第2間隔中に要素の内の1または複数からエネルギを除去することを含む、エンドエフェクタが軌道を通して移動されるように、ロボットアームを構成する1または複数の要素を運動させるために、1または複数のモータと1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する計画が決定される。計画を実行するためのコマンドが、通信インターフェースを介して送信される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
通信インターフェースと、
前記通信インターフェースに接続されているプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
ロボットアームを構成するエンドエフェクタが移動されるべき軌道の指示を受信し、
第1間隔中に1または複数のモータを用いて前記ロボットアームを構成する1または複数の要素へトルクを印加し、前記第1間隔の開始後に始まる第2間隔中に1または複数のエネルギ除去装置を用いて前記要素の内の1または複数からエネルギを除去することを含む、前記エンドエフェクタが前記軌道を通して移動されるように、前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素を運動させるために、前記1または複数のモータと前記1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する計画を決定し、
前記通信インターフェースを介して前記計画を実行するためのコマンドを送信するよう構成されている、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記軌道は、より長い軌道の区間を含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサは、前記軌道を決定するよう構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記計画を実行するための前記コマンドは、前記1または複数のモータに、前記第1間隔中に前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素へトルクを印加させるための第1セットのコマンドを含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記第1セットのコマンドは、前記通信インターフェースを介して対応するモータコントローラへそれぞれ送信される1または複数のコマンドを含む、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記計画を実行するための前記コマンドは、前記1または複数のエネルギ除去装置に、前記第2間隔中に前記要素の内の1または複数からエネルギを除去させるための第2セットのコマンドを含む、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記第2間隔は、前記第1間隔の終了前に始まる、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記第2間隔は、前記第1間隔と重複しない、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記エネルギ除去装置は、制動システムまたは装置を含む、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記エネルギ除去装置は、前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素の速度を直接的に制御する、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記エネルギ除去装置は、前記エンドエフェクタの速度を直接的に制御する、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記ロボットアームを構成する1または複数の要素を運動させるために、1または複数のモータと1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する前記計画は、前記ロボットシステムの状態を推定することなしに決定される、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記ロボットアームを構成する1または複数の要素を運動させるために、1または複数のモータと1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する前記計画は、前記ロボットシステムの導関数の状態を推定することなしに決定される、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記ロボットアームを構成する1または複数の要素を運動させるために、1または複数のモータと1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用することは、前記1または複数のモータのみが用いられる場合に必要な時間よりも短い時間で、前記エンドエフェクタが前記軌道を通して移動されることを可能にする、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、前記ロボットアームを構成する1または複数の要素を運動させるために、1または複数のモータと1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用することは、前記1または複数のモータのみが用いられる場合に達成されるスループットと比べて、前記ロボットシステムのスループットを増大させる、システム。
【請求項16】
ロボットシステムを制御するための方法であって、
ロボットアームを構成するエンドエフェクタが移動されるべき軌道の指示を受信し、
1または複数のモータを用いて、第1間隔中に前記ロボットアームを構成する1または複数の要素へトルクを印加し、1または複数のエネルギ除去装置を用いて、前記第1間隔の開始後に始まる第2間隔中に前記要素の内の1または複数からエネルギを除去することなどによって、前記エンドエフェクタが前記軌道を通して移動されるように、前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素を運動させるために、前記1または複数のモータと前記1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する計画を決定し、
通信インターフェースを介して前記計画を実行するためのコマンドを送信すること、
を備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記計画を実行するための前記コマンドは、前記1または複数のモータに、前記第1間隔中に前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素へトルクを印加させるための第1セットのコマンドを含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記第1セットのコマンドは、前記通信インターフェースを介して対応するモータコントローラへそれぞれ送信される1または複数のコマンドを含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記計画を実行するための前記コマンドは、前記1または複数のエネルギ除去装置に、前記第2間隔中に前記要素の内の1または複数からエネルギを除去させるための第2セットのコマンドを含む、方法。
【請求項20】
コンピュータプログラム製品であって、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体内に具現化され、
ロボットアームを構成するエンドエフェクタが移動されるべき軌道の指示を受信するためのコンピュータ命令と、
1または複数のモータを用いて、第1間隔中に前記ロボットアームを構成する1または複数の要素へトルクを印加し、1または複数のエネルギ除去装置を用いて、前記第1間隔の開始後に始まる第2間隔中に前記要素の内の1または複数からエネルギを除去することなどによって、前記エンドエフェクタが前記軌道を通して移動されるように、前記ロボットアームを構成する前記1または複数の要素を運動させるために、前記1または複数のモータと前記1または複数のエネルギ除去装置とを組み合わせて利用する計画を決定するためのコンピュータ命令と、
通信インターフェースを介して前記計画を実行するためのコマンドを送信するためのコンピュータ命令と、
を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【他の出願への相互参照】
【0001】
本願は、2022年1月21日出願の「ROBOTIC SYSTEM WITH INDEPENDENTLY CONTROLLABLE HIGHER DERIVATIVES」と題する米国仮特許出願第63/301,693号に基づく優先権を主張し、当該出願は全て目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ロボット(ロボットアームおよびエンドエフェクタ(例えば、吸着ベース、グリッパなど))は、モータ、空気作動ピストン、真空/吸着、および、その他のアクチュエータを用いて作動される。ロボットアームまたはその他のロボットは、制御システムの制御下で動作されてよく、制御システムは、ロボットを動かすために(例えば、物体を把持して移動させるため、など)、アクチュエータの動作を制御するようコマンドを送信する。ロボット制御システムは、ロボットおよび/またはその一部(エンドエフェクタなど)の位置、速度、加速度、または、動きのその他の高次導関数、ならびに/もしくは、アクチュエータによって/へ印加されるトルクおよび/または電流、の内の1または複数を制御しうる。
【0003】
臨界制御(高速上昇、臨界減衰、非オーバーシュート)は、位置、速度、トルク、電流などのいずれを制御するかに関わらず、正確な減衰を必要とする。正確な減衰は、制御された状態の導関数、または、システムが二次を超え、変わったダイナミクスを有する場合には、さらに高次の導関数、の推定を必要とする。
【0004】
これらの高次導関数の瞬時値を見出すのは非常に困難である。センサは、状態の導関数ではなく、おそらく状態を測定している。センサはデジタルであり、アルゴリズムがCPU上で実行しており、固有の待ち時間を有する。高次導関数の状態推定は困難であり、エラーを起こしやすく、システム(ロボットシステムなど)の制御を試みている時に、不安定性および誤ったエネルギ注入を引き起こす。こうして、即時測定は常に遅れ、センサは常にノイズがあり、ノイズの微分が非常にノイズの多い結果を生み、フィルタリングを必要として不正確な推定値を生み出し、CPUジッタおよび待ち時間が、大きさおよび位相の両方でさらに大きいエラーを生む。
【0005】
最終的に、その高次導関数の制御は最も困難である。直接的に制御できるレベルは、高次導関数にはないので、導関数状態を制御するために適切な時にエネルギを注入する必要がある。注入されたエネルギの量またはタイミングが不適切であった場合、予期せぬ結果(例えば、不安定性、不十分なセトリング時間、非最適な制御、など)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の詳細な説明および添付の図面において、本発明の様々な実施形態を開示する。
【0007】
図1A】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図。
【0008】
図1B】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図。
【0009】
図2】ロボットシステム制御要素の一実施形態を示す図。
【0010】
図3】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図。
【0011】
図4A】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するための処理の一実施形態を示すフローチャート。
【0012】
図4B】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するための処理の一実施形態を示すフローチャート。
【0013】
図5A】従来のロボットの速度プロファイルと独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの速度プロファイルとの比較を示す図。
【0014】
図5B】独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するためにアクチュエータおよび制動要素によって印加されたエネルギを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、処理、装置、システム、物質の組成、コンピュータ読み取り可能な格納媒体上に具現化されたコンピュータプログラム製品、および/または、プロセッサ(プロセッサに接続されたメモリに格納および/またはそのメモリによって提供される命令を実行するよう構成されたプロセッサ)を含め、様々な形態で実施されうる。本明細書では、これらの実施例または本発明が取りうる任意の他の形態が、技術と呼ばれうる。一般に、開示されている処理の工程の順序は、本発明の範囲内で変更されてもよい。特に言及しない限り、タスクを実行するよう構成されるものとして記載されたプロセッサまたはメモリなどの構成要素は、或る時間にタスクを実行するよう一時的に構成された一般的な構成要素として、または、タスクを実行するよう製造された特定の構成要素として実装されてよい。本明細書では、「プロセッサ」という用語は、1または複数のデバイス、回路、および/または、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するよう構成された処理コアを指すものとする。
【0016】
以下では、本発明の原理を示す図面を参照しつつ、本発明の1または複数の実施形態の詳細な説明を行う。本発明は、かかる実施形態に関連して説明されているが、どの実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本発明は、多くの代替物、変形物、および、等価物を含む。以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細事項が記載されている。これらの詳細事項は、例示を目的としたものであり、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全てがなくとも特許請求の範囲に従って実施可能である。簡単のために、本発明に関連する技術分野で周知の技術事項については、本発明が必要以上にわかりにくくならないように、詳細には説明していない。
【0017】
導関数状態自体の推定の有無に関わらずロボット状態の導関数(例えば、速度、加速度)を制御するための技術が開示されている。様々な実施形態において、1または複数の電気的、電磁気的、および/または、電気機械的な構成要素が、導関数状態を制御するのに適切な時にエネルギを注入するために提供および利用される。いくつかの実施形態において、パッシブ要素が、保証された安定性でシステムの動態を制御するために用いられる。
【0018】
様々な実施形態において、状態推定を必要とせず、高次導関数のレベルに直接的に作用するロボット制御アクチュエータが用いられる。例えば、いくつかの実施形態において、様々なタイプの制動機の内の1または複数が、速度を直接的に低減するために用いられてよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、推定を必要としうるが、制御を試みている状態において真にパッシブであるアクチュエータが用いられるので、それらは、安定したままであることが保証される。例は、抵抗器、キャパシタ、および、その他のエネルギ貯蔵素子を含むが、それらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されている高次導関数制御技術を組み込んだ制御システムを有するモータが構築される。従来のドライブトレインアセンブリは、システムを突然停止させまたは再生制動エネルギを取り除くためにのみ制動機を利用する。様々な実施形態において、制動は、制御システムの一体的な部分として用いられ、アクチュエータ自体(例えば、ロボット関節モータ)がシステムを減速またはエネルギを除去する必要性を低減する。
【0021】
いくつかの実施形態において、制動機および純粋にパッシブな素子(制動抵抗器など)の組み合わせが、アクチュエータの最適な利用のために、時間および状態の異なる瞬間に作動をスケジュールするために用いられる。これらの高次導関数制御素子は、アクチュエータよりもはるかに高い能力を有しており、運動が即座に減衰されることを可能にし、制御を単純化し、目標状態に到達するのに必要な時間を短縮する。
【0022】
様々な実施形態において、速度(またはその他の高次導関数レベル)制御が、少なくとも部分的には、2022年3月24日に米国特許出願公開2022-0088778号公報として公開された、2021年9月22日出願の「Velocity Controlled-based Robotic System」と題する米国特許出願第17/482,162号に記載されたように実行され、その出願の内容全体が、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
様々な実施形態において、制動機または同様のエネルギ除去システムが、エネルギを追加できない構造を用いてエネルギを除去することによって速度を直接的に制御するために用いられる。従来、逆モータトルクが、ロボットアームの動きを減速および停止するために用いられてきた。しかしながら、測定を行う際の待ち時間または信号ノイズ(特に低速時)が、速度の推定時の誤差につながりうる。ロボット/その構成要素が推定されたのと反対の方向に動いているように運動が振動した場合、運動を減速することを意図されたトルクの印加は、むしろエネルギを加えて運動を大きくする可能性があり、その結果、システムが振動を調整して減衰させるのに伴って、不安定性および遅れを生じうる。制動機、もしくは、エネルギの除去しかできない同様のデバイスまたはシステムを利用することが、かかる結果または条件が起きないことを保証する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されている制動システムは、制動力をモータまたはモータシャフトへ印加する。いくつかの実施形態において、モータおよびモータシャフトは、関節を駆動する減速ギアボックスを駆動し、本明細書で開示されている制動力は、ギアボックスの出力側で印加され、(例えば、モータを用いて、エネルギを除去するために逆トルクを印加するのに比べて)ギアボックスの摩耗および断裂を低減する。
【0025】
図1Aは、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図である。図の例において、ロボットシステムおよび環境100は、吸着タイプのエンドエフェクタ104を有するロボットアーム102を含む。ロボットアーム102は、関節102a、102b、および、102cによって接続されている複数のセグメントを備える。いくつかの実施形態において、ロボットアーム102は、6自由度(DOF)の産業用ロボットを含む。いくつかの実施形態において、ロボットアーム102は、6より多いまたは少ない自由度を備える。モータおよび関連モータコントローラが、例えば、モータに電圧および電流を供給してトルクを印加することで、6(または6より高い)自由度の内の1つの自由度において関連セグメントを運動させることによって、ロボットアーム102の関連セグメントを屈曲または回転させるために、関節102a、102b、および、102cの各々に備えられている。
【0026】
図の例において、ロボットアーム102およびエンドエフェクタ104は、制御コンピュータ106と無線通信する。いくつかの実施形態において、制御コンピュータ106は、ロボットアーム102内に一体化および/またはロボットアーム102と一体化されている。例えば、制御コンピュータ106は、ロボットアーム102を構成する内部プロセッサ、もしくは、ロボットアーム102と同じシャーシの上または中に取り付けられたプロセッサまたはコンピュータであってよい。
【0027】
図1Aに示す文脈において、ロボットアーム102およびエンドエフェクタ104は、制御コンピュータ106の制御下で、コンベヤ108からアイテムをピックしてパレット110上にプレースするために利用されるよう構成されている。カメラ112からの三次元(または二次元)画像/深度データが、制御コンピュータ106によって受信され、図1Aに示す作業空間の三次元ビューを生成するために利用される。様々な実施形態において、制御コンピュータ106は、かかるビューを構築するよう構成されているコンピュータビジョンサブシステムを備える。画像データは、様々な実施形態において、アイテム(図の例におけるアイテム114など)を、ピック/プレースされる次のアイテムとして識別するために、制御コンピュータ106によって用いられる。画像データおよび/またはその他のセンタデータおよび/または格納済みデータは、アイテム114の1または複数の属性(サイズ、形状、重量、材料、剛性、など)を決定するために用いられてよい。かかる属性は、アイテム114を把持、移動、および/または、プレースするための戦略を決定するために用いられてよい。アイテム114が把持されると、重量および把持の質(例えば、圧力センサによって測定される吸着力)など、さらなる属性が決定されてよい。
【0028】
様々な実施形態において、制御コンピュータ106は、アイテム(アイテム114など)を把持するための計画および戦略を決定する。図1Aに示すように、エンドエフェクタ104は、エンドエフェクタ104の近くから出ている矢印によって示されるように、アイテム114の方向へ移動されている。様々な実施形態において、ロボットアーム102は、関節102a、102b、および、102cの内の1または複数に、各かかる関節における各自由度に対して、ロボットアーム102を構成する関連構成要素を第1方向(例えば、前方)へ動かすトルクを印加するためのモータおよび関連制御部と、第1方向とは反対の(逆)方向へエネルギを印加するよう構成されている制動装置またはその他のエネルギ除去装置(および関連アクチュエータ)と、を備える。制御コンピュータは、ロボットアーム102ならびにそのモータおよび制動装置のモデルを用いて、軌道に沿ってアイテム114を把持できる位置までエンドエフェクタ104を移動させるように関節モータまたはそのサブセットを作動させるための一連の制御コマンドを決定して実行する。エンドエフェクタ104は、比較的高速で(例えば、最高速度または最高速度に近い速度で)、アイテム114に比較的近い位置へ移動され、続いて、オーバーシュートも振動もなしに、アイテム114の比較的近くでエンドエフェクタ104の速度をゼロまで低減されることを可能にするために、制動(または他のエネルギ除去)システムが正確なタイミングで作動される。
【0029】
アイテム114が、例えば、をアイテム114と接触または近傍するようにエンドエフェクタ104の下側にある吸着カップ移動させ、アイテム114を把持するように吸着力を印加することによって、把持されると、アイテム114は、アイテム114がプレースされる移動先位置までの軌道に沿って移動される。様々な実施形態において、アイテム114およびエンドエフェクタ104が作業空間を通して移動される最高速度が、例えば、ロボットアーム102、エンドエフェクタ104、および/または、アイテム114の1または複数の属性または制限に基づいて、決定される。例えば、最高速度は、アイテム114が重い場合、または、把持が強くないことを圧力センサが示す場合、より遅くてよい。
【0030】
図1Bは、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図である。図1Bに示す例および状態において、アイテム114は、すでに把持されており、パレット110の上面の上に破線で示された輪郭によって示されている決定済みの移動先位置へ移動されている。エンドエフェクタ104の近くから出ている矢印は、アイテム114が移動先位置へ移動されている時に従うベクトルを示している。様々な実施形態において、アイテム114は、最高速度(ロボットアーム102の最高速度、または、図に示す条件においてアイテム114を移動するために決定された最高速度、など)または最高速度近くで移動される。
【0031】
様々な実施形態において、アイテム114を移動先位置へ移動させるための軌道および関連する計画済みの制御信号は、第1間隔の少なくとも一部の間に、関節102a、102b、および/または、102cに関連付けられている1または複数のモータへトルクを(最大または最大近くで)印加し、第1間隔の開始後に始まる第2間隔中に、制動装置またはその他のエネルギ除去装置を作動させることを含む。制動装置またはその他のエネルギ除去装置は、速度を直接的に制御し、速度を測定または推定する能力の有無に関わらず、ロボットアーム102およびエンドエフェクタ104が最高速度または最高速度近くで移動され、速度が比較的迅速に減少されることを可能にする。
【0032】
図2は、ロボットシステム制御要素の一実施形態を示す図である。図示の例において、制御コンピュータ106は、モータ204を制御するモータコントローラ202へ(例えば、デジタル)制御信号206を送信する。例えば、関節102a、102b、および、102cの各々は、1または複数のモータ204を有してよく、各それらモータは、関連モータコントローラ202を有してよい。モータコントローラ202は、モータ204に、制御された間隔にわたって動作させ、および/または、制御された量のトルクを印加させるために、電圧、電流、および/または、その他のアナログまたは低レベル入力をモータ204へ提供する。モータ204は、任意選択的に、位置、温度、速度、または、その他のフィードバック210をコントローラ202に提供し、コントローラ202は、任意選択的に、関連フィードバック信号212を制御コンピュータ106へ提供する。
【0033】
フィードバック210、212は、様々な実施形態において、状態を推定するために利用可能である位置またはその他の情報を含んでよい。しかしながら、上述したように、測定された情報は、不正確である場合があり、特に速度または位置のその他の高次導関数については、測定された状態情報をロボットおよび/またはその構成要素の推定状態に変換するために、常に或る程度の待ち時間がある。様々な実施形態において、状態の高次導関数を(必ずしも)推定することなしに、本明細書で開示されているように速度制御が提供され、速度(またはその他の高次導関数)制御を用いてロボットを制御することなどによって、より効率的かつ最適化されたロボットの利用を可能にする。
【0034】
図3は、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの一実施形態を示す図である。図の例において、図2に示した制御および駆動要素に加えて、制御コンピュータ106は、エネルギ除去装置304を作動させるために、低レベル信号308を送信し、および/または、電圧、電流、空気圧などを印加することによって、エネルギ除去装置304(例えば、1または複数の制動システムまたは装置)を作動させるよう構成されているエネルギ除去装置コントローラ302へ、制御信号306を提供するよう構成されている。
【0035】
図の例において、エネルギ除去装置310は、測定された情報310をエネルギ除去装置コントローラ302へ提供し、次に、エネルギ除去装置コントローラ302は、状態情報312を制御コンピュータ106へ提供してよい。情報310、312は、様々な実施形態において、エネルギ除去装置304の動作を監視および制御するために用いられてよい。
【0036】
ロボット要素(エンドエフェクタまたは関節など)の速度の計算は困難であり、その制御はさらに困難である。ロボットシステムから速度を除去するために、様々な実施形態において、ロボット/関節の動きの反対方向に力が印加される。
【0037】
速度が振動している場合、力の印加は、タイミングが正確でなければならず、位相がずれて印加すると、速度を減少させる代わりに速度を増加させることになる。したがって、例えば、関節モータのみを有する従来のロボットにおいて、特に、振動している場合には、モータに電流を印加するだけで、正確にロボットを減速させることは難しい。本明細書で開示されている解決法は、いくつかの実施形態において実施されるように、制動システム、もしくは、速度を取り除くためのその他のエネルギ除去システムまたは装置を有することである。様々な実施形態において、除去される速度の量に正比例する制御入力が決定され、制動システムに適用される。かかる制動システムまたは装置の例は、渦電流ブレーキ、制動抵抗器、および、その他の非接触ブレーキ、ならびに、ディスクブレーキおよびその他の摩擦ブレーキを含むが、それらに限定されない。
【0038】
いくつかの実施形態において、渦電流ブレーキが、ロボットアーム素子(関節モータによって駆動される関節など)からエネルギを除去するために用いられる。渦電流ブレーキ(誘導ブレーキ、電気ブレーキ、または、電気リターダとしても知られる)は、渦電流を発生させることによって、動いている物体を減速または停止させるために用いられる装置である。いくつかの実施形態において、非強磁性導電ディスクが、トロイダル磁場を垂直に貫くように回転する。ディスクが回転すると、渦電流を誘導する。次いで、電力が、ディスク全体にわたって消散されて、制動トルク力を生み出す。
【0039】
様々な実施形態において、本明細書に記載の制動システムは、それらの係合が速度/エネルギを直接的に除去するので、速度の推定を必要としない。様々な実施形態において、制動システムは、アクチュエータ(モータなど・・・)がモータの制御における減衰項を除去するためにエネルギを加えている間に、選択的に係合され、それにより、速度推定ステップと、モータ電流が減衰する必要性とを取り除く。様々な実施形態において、これらの制動システムの正確に制御されたバージョンは、単なる一般的な「制動機」の代わりに、正確に速度/エネルギ除去を制御するために用いられる。
【0040】
エネルギを除去するがそれでもパッシブであるその他の方法は、モータ上の制動抵抗器を含む。モータは、磁場内部で回転するコイルを有し、磁場内部で回転するコイルは、起電力(EMF)を誘導する。このEMFは、「逆EMF」としても知られており、第一にモータを回転させている印加電圧に抗して作用し、モータのコイルを流れる電流を減少させる。モータ逆EMF電圧は、モータ速度に正比例する。様々な実施形態において、抵抗が、エネルギを除去して速度を減少させるために、モータ配線にわたって選択的に係合される。
【0041】
図4Aは、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するための処理の一実施形態を示すフローチャートである。様々な実施形態において、図4Aの処理400は、制御コンピュータ(図1Aおよび図1Bの制御コンピュータ106など)によって実施されてよい。図の例において、工程402で、軌道の次の区間が決定される。例えば、図1Aを参照すると、図に示す位置からアイテム114と隣接する把持位置へエンドエフェクタ104を移動させるための軌道が決定されてよい。工程404で、計画された軌道を通してエンドエフェクタ104を移動させるために、例えば、ロボットアーム102を構成する1または複数のモータおよび/または関節の各々について、モータトルクおよび制動を印加するための組み合わせおよび順序が決定される。様々な実施形態において、ロボットアーム102およびそのモータ、コントローラ、制動システムのモデルが、決定された軌道/区間に沿ってエンドエフェクタ104を移動させるように協調的にロボットアーム102の要素を運動させるためのモータトルクおよび制動を印加するために、少なくとも局所的に最適および/または実行可能な順序を決定するために用いられてよい。工程406で、決定された軌道/区間を通してエンドエフェクタ104を迅速に移動させるように、同期的に、トルクを印加すると共に制動によってエネルギを除去するために、決定された順序のモータおよび制動システムの制御が実施される。
【0042】
図4Bは、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するための処理の一実施形態を示すフローチャートである。様々な実施形態において、図4Bの処理は、図4Aの工程406を実施する。図の例において、工程420で、1または複数のモータの各々に対して、指示された量で指示された時間にわたってトルクを印加するための対応する信号が、関連モータコントローラに送信される。工程422で、所定の時間におよび/または所定のプロファイルに従ってエネルギを除去するために、制御信号が制動システム(もしくは、その他のエネルギ除去システムまたは装置)へ送信される(例えば、エネルギ除去の程度または量を時間と共に変化させ、例えば、どれだけの制動力が印加されるのかを時間と共に変化させる)。様々な実施形態において、制動力は、対応するモータトルクが、例えば、指示されまたは計算された間隔にわたって、印加された後に、印加され始める。工程424で、軌道/区間を完成させるために、必要に応じて/必要な場合に、最終調整がなされてよい。例えば、制動が、エンドエフェクタを最終位置のちょうど手前で停止させた場合、エンドエフェクタ104をさらに完全に所定位置に移動させるために、少量のトルクが、短い間隔にわたって印加されてよい。プレースの場合、力制御が、アイテム(アイテム114など)を適所に(例えば、以前にプレースされた1または複数のアイテムに隣接して)ぴったり収めるために用いられてよい。
【0043】
図5Aは、従来のロボットの速度プロファイルと独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムの速度プロファイルとの比較を示す。x軸は、時間に対応し、y軸は、速度(エンドエフェクタ104の速度、もしくは、関節アクチュエータ(例えば、モータまたはギアボックス出力シャフト)、もしくは、関節を構成しまたは関節に機械的に結合された構造の速度、など)を示している。水平線「Vmax」は、最高速度を示しており、最高速度は、ロボットアーム102の物理的制限、ならびに、移動されるアイテムの1または複数の属性(重量など)および/または動的に測定/決定された要因(把持の質など)を前提としてエンドエフェクタ104(またはその他の構造)が移動されるべき最高速度、の内の1または複数を反映してよい。破線で示されている曲線502は、本明細書で開示されているエネルギ除去システム/装置を利用せずに、速度制御(またはその他の制御)を用いて、アイテムを出発位置{x0,y0,z0}から到着位置{x1,y1,z1}まで移動させるための速度の例を経時的に示している。図の実例において、エンドエフェクタ104(またはその他の構造)は、エンドエフェクタ104がこの例における時刻に到着位置{x1,y1,z1}に到達する時にゼロ速度が達成されることを可能にするために減速し始める必要が生じる前に、その最高速度Vmaxに達することがない。
【0044】
実線の曲線504は、本明細書で開示されているエネルギ除去システム/デバイスを利用しつつ、速度制御(またはその他の制御)を用いて、同じアイテムを出発位置{x0,y0,z0}から到着位置{x1,y1,z1}まで移動させる際に実現されうる速度プロファイルを示している。図の例において、同じアクチュエータ(例えば、モータ)が利用されているので、エンドエフェクタ(またはその他の構造)は、曲線502に示すのと同じように加速するが、構造は、制動システム(またはその他の直接的なエネルギ除去装置/システム)の作動によって速度が迅速かつ直接的に低減される前に、最高速度Vmax/最高速度Vmax付近の速度を達成するように加速し続ける(速度は、様々な実施形態において、或る間隔にわたって持続されうる)。本明細書で開示されている技術の利用は、曲線502に示すように、制動/エネルギ除去が利用されない場合よりもはるかに速やかに、アイテムを時間tnewまでに到着位置{x1,y1,z1}に到達させることを可能にする。
【0045】
図5Bは、時間(または位置)の関数として、独立制御可能な高次導関数を備えるロボットシステムを制御するためにアクチュエータおよび制動要素によって印加されたエネルギを示す。様々な実施形態において、図5Bは、図5Aに示した速度プロファイルに関連するエネルギ追加および除去のプロファイルを示している。図の例において、曲線522は、第1(左の/エネルギ追加)部分522aおよび第2(右の/エネルギ除去)部分522bを含む破線として示されており、図5Aの速度プロファイル502を達成するために本明細書に記載されている制動機またはその他のエネルギ除去システムを用いた直接的なエネルギ除去を利用しない場合のトルクの印加を示している。部分522aは、例えば、関節モータを用いてトルクを印加することによって追加されたエネルギを示し、部分522bは、反対方向にトルクを印加することなどによるエネルギの除去を示している。
【0046】
曲線524は、エネルギ除去(例えば、制動)を通してエンドエフェクタの速度を直接的に減少させることによって、図5Aの曲線504で表される速度プロファイルを達成するために、曲線526によって表されるように、例えば制動によるエネルギの直接除去と同期したトルクの印加を示している。エネルギは、曲線524および曲線部分522aの一致によって示されるように、同様に追加されるが、本明細書で開示されている制動機またはその他の直接エネルギ除去システムを利用することで、オーバーシュートまたは誤差のリスクなしに、はるかに直接的かつ迅速にエネルギを除去し、時間tnewまでに完全なエネルギ除去を達成することができる。
【0047】
図5Bにおいて、制動機は、曲線524によって表されるように、制動がトルクの印加と重複するように、時間tbrakeで適用されるように示されているが、様々な実施形態において、トルク印加間隔は、制動印加間隔と重複しても重複しなくてもよい。
【0048】
本明細書で開示されている技術を用いると、ロボットシステムの状態および/または導関数(速度など)の状態を必然的におよび/または迅速/正確に推定することなしに、速度制御を実行できる。様々な実施形態において、アクティブおよび/またはパッシブな要素が、ロボットを構成する要素(任意のモータまたは関節など)からエネルギを除去するために利用され、速度またはその他の導関数の状態を推定しても推定しなくても、速度を直接的に制御することを可能にする。状態推定に依存しない速度(または高次導関数)のかかる直接制御は、速度および高次導関数の制御を実施することを可能にし、エネルギ除去システムがエンドエフェクタを減速/停止させるために利用される前に、より高いエンドエフェクタ速度の達成を可能にすることなどによって、ロボットアームまたはその他のロボットをより効果的および/または最適に利用することを可能にし得るものであり、ひいては、より高いスループットおよび利用の達成を可能に得るる。様々な実施形態において、本明細書で開示されている制御構造および技術は、かかるシステムを正確に制御することを可能にするため、非常に強力、高性能、かつ、高利得のシステムの提供が可能になる。
【0049】
上述の実施形態は、理解しやすいようにいくぶん詳しく説明されているが、本発明は、提供されている詳細事項に限定されるものではない。本発明を実施する多くの代替方法が存在する。開示されている実施形態は、例示であり、限定を意図するものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】