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特表2025-504316集合分子、それを含む単一構造及び多量体構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】集合分子、それを含む単一構造及び多量体構造
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250204BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250204BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20250204BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20250204BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20250204BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250204BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250204BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
A23L33/17
A61K47/65
A61P31/20
A61P31/14
A61K38/02
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539418
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2023070015
(87)【国際公開番号】W WO2023126009
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202210773393.4
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210114482.8
(32)【優先日】2022-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210968998.9
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111668011.3
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520037016
【氏名又は名称】康碼(上海)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】KANGMA-HEALTHCODE (SHANGHAI) BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】BUILDING 12, 118 FURONGHUA ROAD, PUDONG NEW AREA, SHANGHAI 201321,PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 敏
(72)【発明者】
【氏名】徐 麗▲チオン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 章
(72)【発明者】
【氏名】張 俊
(72)【発明者】
【氏名】伍 志
(72)【発明者】
【氏名】于 雪
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD94
4B018ME09
4B018ME14
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C076BB24
4C076CC35
4C076EE41
4C076EE59
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA03
4C084BA08
4C084BA23
4C084BA41
4C084MA17
4C084MA58
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、集合分子、それを含む単一構造及び多量体構造、並びに関連製品、製造方法及び使用を提供し、集合分子の集合作用により受容体との結合を阻害する多量体を形成することにより、ウイルスへの結合能を効果的に向上させることができ、集合分子は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する複数の結合阻害分子単位を集合して集合構造になることを特徴とする。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する複数の結合阻害分子単位を集合して集合構造になる、ことを特徴とする集合分子。
【請求項2】
前記集合分子は、単一結合部位と集合部位を有し、
前記単一結合部位は、前記結合阻害分子単位と結合して少なくとも集合分子と結合阻害分子単位を有する単一構造を形成するように用いられ、複数の前記単一構造は、前記集合部位により集合して集合構造になされ、
好ましくは、前記集合分子がペプチド又はタンパク質である場合、前記単一結合部位は、前記集合分子のN末端にある、ことを特徴とする請求項1に記載の集合分子。
【請求項3】
前記集合構造は、数量が2~10からいずれか一つの前記単一構造を集合してなされる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の集合分子。
【請求項4】
前記集合分子は、表1のいずれか一つから選択される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項5】
前記集合分子は、ストレプトアビジンであり、
好ましくは、前記ストレプトアビジンは、SEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の集合分子。
【請求項6】
前記集合分子と前記結合阻害分子単位が、リンカー分子を介して結合され、
前記リンカー分子は、蛍光タンパク質、ヒト免疫グロブリンG4、Fc及びHSAのうちのいずれか1種又は複数種を含み、例えば、前記リンカー分子は、eGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、eGFPに対して一部のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、或いは、
前記リンカー分子は、SEQIDNO:2~6のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:2~6のいずれかとの同一性が少なくとも少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、eGFPに対してその1~228位のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、好ましくは、前記リンカー分子のN末端は、前記結合阻害分子単位に連結され、前記リンカー分子のC末端は、集合分子のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項6に記載の集合分子。
【請求項7】
前記結合阻害分子単位は、前記ウイルスが前記細胞受容体に結合する部位と結合することにより、前記ウイルスと前記受容体との結合を阻害し、及び/又は
前記結合阻害分子単位は、前記細胞受容体と結合することにより、前記ウイルスと前記細胞受容体との結合を阻害する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項8】
前記結合阻害分子単位は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する少なくとも1つの阻害分子を含み、
好ましくは、前記阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、さらに、複数の阻害分子を含む場合、前記阻害分子は、N末端からC末端まで順に連結され、より好ましくは、前記結合阻害分子単位と前記集合分子が前記リンカー分子を介して連結される場合、前記リンカー分子のN末端は、最後の前記阻害分子のC末
端に連結され、前記リンカー分子のC末端は、前記単一結合部位に連結され、
さらに好ましくは、前記阻害分子は、ナノ抗体である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項9】
前記細胞受容体は、ACE2である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項10】
前記結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:8及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記結合阻害分子単位は、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子を含み、より好ましくは、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子は、一方のN末端が他方のC末端に連結され、
さらに好ましくは、前記結合阻害分子単位は、前記第1阻害分子及び前記第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子と前記第2阻害ペプチド断片は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、より好ましくは、前記第2阻害分子のN末端は、前記第1阻害分子のC末端に連結される、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の集合分子。
【請求項11】
前記単一構造は、リーダーペプチドをさらに含み、
前記リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記リーダーペプチドは、C末端を介していずれかの前記阻害ペプチド断片のN末端に連結される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項12】
前記単一構造は、前記酸性構造をさらに含み、前記酸性構造は、負に荷電したアミノ酸短鎖ポリマーであり、さらに、前記酸性構造は、
(1)前記酸性構造は、C末端に設置され、
(2)前記短鎖ポリマーのアミノ酸の数は、0~50、2~40、3~30、2~20、又は2~10であり、
(3)前記負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸であり、
好ましくは、前記酸性構造は、前記集合分子のC末端に連結される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項13】
前記単一構造は、タグタンパク質をさらに含み、
前記タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記タグタンパク質は、C末端を介して前記結合阻害分子単位のN末端に連結され、前記結合阻害分子単位が阻害ペプチド断片である場合、前記タグタンパク質のC末端は、いずれかの前記阻害ペプチド断片のN末端に連結され、
より好ましくは、前記単一構造が前記リーダーペプチドをさらに含む場合、前記リーダーペプチドは、前記タグタンパク質を介して前記結合阻害分子単位に連結される、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項14】
前記ウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HVP及び新型コロナウイルスの
うちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の集合分子。
【請求項15】
単一構造であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の集合分子を含み、
好ましくは、前記単一構造の大きさは、30~80KDであり、
また好ましくは、前記単一構造は、請求項2~14のいずれか一項に記載の単一構造である、ことを特徴とする単一構造である。
【請求項16】
複数の請求項15に記載の単一構造を集合してなる、ことを特徴とする集合構造。
【請求項17】
前記集合構造は、数量が2~10のいずれかの前記単一構造を集合してなり、
好ましくは、前記集合構造は、4つの前記単一構造を集合してなる、ことを特徴とする請求項16に記載の集合構造。
【請求項18】
前記阻害構造単位の結合力は、ナノ抗体の1000~1M倍である、ことを特徴とする請求項16又は17に記載の集合構造。
【請求項19】
前記集合構造は、可溶性である、ことを特徴とする請求項16~18のいずれか一項に記載の集合構造。
【請求項20】
集合分子、単一構造又は集合構造をコードする核酸であって、
前記集合分子は、請求項1~15のいずれか一項に記載の集合分子であり、
前記単一構造は、請求項15に記載の単一構造であり、
前記集合構造は、請求項16~19のいずれか一項に記載の集合構造である、ことを特徴とする核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項22】
請求項20に記載の核酸又は請求項21に記載のベクターを含み、単一構造又は集合構造の細胞内発現、細胞分泌性又はインビトロ無細胞合成発現に用いられ、
前記単一構造は、請求項15に記載の単一構造であり、
前記集合構造は、請求項16~19のいずれか一項に記載の集合構造である、真核宿主細胞。
【請求項23】
請求項15に記載の単一構造及び/又は請求項16~19のいずれか一項に記載の多量体構造の製造方法における、請求項20に記載の核酸又は請求項21に記載のベクターの使用。
【請求項24】
ウイルス治療薬、ウイルス検出診断、医学用途、ウイルスに対する消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品、及び洗浄製品における、集合分子、単一構造及び集合構造のうちのいずれかの使用であって、
前記集合分子は、請求項1~14のいずれか一項に記載の集合分子であり、
前記単一構造は、請求項15に記載の単一構造であり、
前記集合構造は、請求項16~19のいずれか一項に記載の集合構造であり、
好ましくは、前記集合構造を無細胞でインビトロ合成して得られた未精製の生成物をそのまま用いて前記使用を行う、使用。
【請求項25】
集合分子、単一構造及び集合構造のいずれか1種又は複数種を含み、
前記集合分子は、請求項1~14のいずれか一項に記載の集合分子であり、
前記単一構造は、請求項15に記載の単一構造であり、
前記集合構造は、請求項16~19のいずれか一項に記載の集合構造である、ことを特徴とする消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品又は洗浄製品。
【請求項26】
集合分子、単一構造及び集合構造のうちの1種又は複数種と、医薬的に許容されるキャリア、希釈剤又は賦形剤とを含み、
前記集合分子は、請求項1~14のいずれか一項に記載の集合分子であり、
前記単一構造は、請求項15に記載の単一構造であり、
前記集合構造は、請求項16~19のいずれか一項に記載の集合構造である、ことを特徴とする薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に属し、具体的には、集合分子、それを含む単一構造及び多量体構造、並びにそれらに関連する製品、製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスの細胞受容体は、ウイルスが標的細胞に侵入する入口であり、ウイルスと特異的に結合することにより、ウイルスの感受性宿主細胞への侵入を媒介して、ウイルスの複製プロセスを開始し、宿主に危害を及ぼすことができる。例えば、
新型コロナウイルスは、人体のACE2受容体によりヒト細胞に感染し、新型コロナウイルスにとって、人体細胞上の受容体ACE2は、「ドアノブ」に相当し、ウイルス上のスパイクタンパク質でそれに結合することにより、人体細胞に感染する入口を開ける。
【0003】
『Nature』に発表された「Structural insights into hepatitis C virus receptor binding and entry」という研究において、米国国立衛生研究所における米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の研究者は、構造からC型肝炎ウイルスが細胞に侵入するメカニズムを開示し、HCVエンベロープ糖タンパク質E2とCD81との間の相互作用過程である、HCVがヒト細胞に侵入して感染する過程を明確に記述した。科学者は、酸性条件下で、HCV E2がCD81受容体と容易に結合し、ウイルスと受容体が相互作用を始めると、HCV E2の形状が変化し(CD81と結合した後、HCV E2における残基418~422が移動し、これにより、残基520~539からなる内環が伸びるようになる)、これにより、ウイルスが細胞膜により密接に接触して、細胞への侵入を促進することを発見した。
【0004】
B型肝炎ウイルス(HBV)及びそのサテライトウイルスであるD型肝炎ウイルス(HDV)は、細胞表面の受容体分子に結合することにより、宿主細胞への感染を実現する必要がある。
【0005】
狂犬病ウイルス(Rabies Virus、RV)は、ラブドウイルス科狂犬病ウイルス属のメンバーであり、高い好神経性を有し、致命的な脳炎を起こすことができる。現在、有効な治療方法がなく、病死率は、ほぼ100%である。狂犬病ウイルスは、5種類のタンパク質をコードし、Gタンパク質は、ウイルスの宿主範囲、好神経毒性、ウイルスの免疫原性及び宿主細胞表面の受容体分子との相互作用などを決定する上で重要な役割を果たす。RVが神経筋接合部に侵入する際、シナプス後膜にあるnAchRと、シナプス前膜にあるNCAMは、重要な媒介作用を果たす。神経栄養因子受容体P75は、同様に狂犬病ウイルスの受容体の1つであり、ウイルスがニューロン細胞に侵入すると、P75は、狂犬病ウイルスのGタンパク質と結合してウイルスを細胞質に侵入させて逆方向に伝達することができる。
【0006】
現在、これらのウイルスに対して、一般的には、高分子抗体又はナノ抗体などのタイプで予防及び治療を行い、例えば、
抗体系薬物について、現在、新型コロナウイルス肺炎を治療するには、主に、以下のいくつかの方法がある。1、Sタンパク質に対する中和抗体であり、ウイルス粒子の表のSタンパク質に結合して、Sタンパク質とACE2との結合を阻害することにより、ウイルスの細胞への侵入を阻害する。2、ACE2タンパク質に対する中和抗体であり、ウイルスの受容体ACE2に結合することにより、ウイルスの細胞への侵入を阻害する。3、ACE2類似物であり、肺細胞表面ACE2と競合してウイルス粒子表面のSタンパク質に結
合することにより、ウイルスと受容体との結合を阻害する。4、サイトカインストームに対する抗体であり、サイトカインストームを抑制することにより、新型コロナウイルス肺炎を治療する目的を達成する。
【0007】
しかし、抗体薬物の生産コストは、小分子薬物よりもはるかに高く、生物学的製薬方法に依存して製造する必要があり、時間と資源を消費するため、小分子薬物と競争することは困難である。
【0008】
また、現在、一般的に、一価又は二価の抗体であり、比較的にウイルスを捉える能力は、まだ不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、集合分子、それを含む単一構造及び多量体構造、並びに関連製品、製造方法及び使用を提供し、集合分子の集合作用により受容体との結合を阻害する多量体を形成することにより、ウイルスへの結合能を効果的に向上させることができる。
【0010】
このために、本発明は、以下の技術的手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る集合分子によれば、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する複数の結合阻害分子単位を集合して集合構造になる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、集合分子は、単一結合部位と集合部位単一結合部位を有し、前記単一結合部位は、前記結合阻害分子単位と結合して、少なくとも集合分子と結合阻害分子単位とを有する単一構造を形成するように用いられ、複数の単一構造は、集合部位により集合して集合構造になされ、好ましくは、集合分子がペプチド又はタンパク質である場合、単一結合部位は、前記集合分子のN末端に設置される、という特徴を有する。
【0013】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記集合構造は、数量が2~10のいずれかの前記単一構造を集合してなる、という特徴を有する。
【0014】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、集合分子は、表1のいずれかから選択される、という特徴を有する。
【0015】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、集合分子は、ストレプトアビジンであり、好ましくは、前記ストレプトアビジンは、SEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む、という特徴を有する。
【0016】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記集合分子と前記結合阻害分子単位は、リンカー分子を介して結合され、
前記リンカー分子は、蛍光タンパク質、ヒト免疫グロブリンG4、Fc及びHSAのうちのいずれか1種又は複数種を含み、例えば、前記リンカー分子は、eGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、eGFPに対して一部のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、或いは、
前記リンカー分子は、SEQIDNO:2~6のいずれかと同一性を有し、又は同一性がSEQIDNO:2~6のいずれかと少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、eGFPに対し
てその1~228位のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、
好ましくは、前記リンカー分子のN末端は、前記結合阻害分子単位に連結され、前記リンカー分子のC末端は、集合分子のN末端に連結されている、という特徴を有する。
【0017】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、結合阻害分子単位は、ウイルスが細胞受容体に結合する部位に結合することにより、ウイルスと受容体との結合を阻害し、及び/又は結合阻害分子単位は、細胞受容体に結合することにより、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する、という特徴を有する。
【0018】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記結合阻害分子単位は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する少なくとも1つの阻害分子を含み、好ましくは、前記阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、さらに、複数の阻害分子を含む場合、前記阻害分子は、N末端からC末端まで順に連結され、より好ましくは、前記結合阻害分子単位と前記集合分子が前記リンカー分子を介して連結される場合、前記リンカー分子のN末端は、最後の前記阻害分子のC末端に連結され、前記リンカー分子のC末端は、前記単一結合部位に連結され、さらに好ましくは、前記阻害分子は、ナノ抗体である、という特徴を有する。
【0019】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、細胞受容体は、ACE2であり、好ましくは、阻害ペプチドは、ACE2類似物である、という特徴を有する。
【0020】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:8及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記結合阻害分子単位は、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子を含み、より好ましくは、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、さらに好ましくは、前記結合阻害分子単位は、前記第1阻害分子及び前記第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子と前記第2阻害ペプチド断片は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、より好ましくは、前記第2阻害分子のN末端は、前記第1阻害分子のC末端に連結される、という特徴を有する。
【0021】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記単一構造は、集合構造が細胞発現によって得られること、細胞分泌によって得られること、又は無細胞インビトロ発現によって得られることを促進するリーダーペプチドをさらに含み、前記リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、リーダーペプチドは、C末端を介していずれかの阻害ペプチド断片のN末端に連結される、という特徴を有する。
【0022】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記単一構造は、前記酸性構造をさらに含み、前記酸性構造は、負に荷電したアミノ酸短鎖ポリマーであり、さらに、前記酸性構造は、(1)前記酸性構造は、C末端に設置され、
(2)前記短鎖ポリマーのアミノ酸の数は、0~50、2~40、3~30、2~20、又は2~10であり、
(3)前記負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸であり、
好ましくは、前記酸性構造は、前記集合分子のC末端に連結される、という特徴を有する。
【0023】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、単一構造は、タグタンパク質をさらに含み、前記タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、タグタンパク質は、C末端を介して結合阻害分子単位のN末端に連結され、結合阻害分子単位が阻害ペプチド断片である場合、タグタンパク質のC末端は、いずれかの阻害ペプチド断片のN末端に連結され、より好ましくは、単一構造がリーダーペプチドをさらに含む場合、リーダーペプチドは、タグタンパク質を介して結合阻害分子単位に連結される、という特徴を有する。
【0024】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、ウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HVP及び新型コロナウイルスのうちの1種又は複数種である、という特徴を有する。
【0025】
本発明によれば、単一構造であって、前述の集合分子を含み、好ましくは、単一構造の大きさは、30~80KDであり、単一構造は、前述の単一構造である、ことを特徴とする単一構造をさらに提供する。
【0026】
本発明によれば、前述の単一構造を複数集合して前述の集合構造になる、ことを特徴とする集合構造をさらに提供する。
【0027】
本発明に係る集合構造によれば、さらに、集合構造は、少なくとも4つの単一構造を集合してなり、好ましくは、集合構造は、4つの単一構造を集合してなる、という特徴を有する。
【0028】
本発明に係る集合構造によれば、さらに、阻害構造単位が阻害ポリペプチドである場合の結合力は、ナノ抗体である場合の1000~1M倍である、という特徴を有する。
【0029】
本発明に係る集合構造によれば、さらに、集合構造は、可溶性である、という特徴を有する。
【0030】
本発明に係る集合構造によれば、さらに、集合構造の熱安定温度は、45℃以上である、という特徴を有する。
【0031】
本発明によれば、集合分子、単一構造又は集合構造をコードする核酸であって、集合分子は、前述の集合分子であり、単一構造は、前述の単一構造であり、集合構造は、前述の集合構造である、ことを特徴とする核酸をさらに提供する。
【0032】
本発明によれば、前述の核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0033】
本発明によれば、前述の核酸又は前述のベクターを含み、単一構造又は集合構造の細胞内発現、細胞分泌性又はインビトロ無細胞合成発現に用いられ、単一構造は、前述の単一構造であり、集合構造は、前述の集合構造である真核宿主細胞をさらに提供する。
【0034】
本発明によれば、単一構造及び/又は多量体構造の製造方法における前述の核酸又は前述のベクターの使用をさらに提供する。
【0035】
本発明によれば、ウイルス治療薬、ウイルス検出診断、医学用途、ウイルスに対する消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品、及び洗浄製品における、集合分子、単一構造及び集合構造のうちのいずれかの使用であって、集合分子は、前述の集合分子であり、単一構造は、前述の単一構造であり、
集合構造は、前述の集合構造であり、好ましくは、集合構造を無細胞でインビトロ合成して得られた未精製の生成物をそのまま用いて使用を行う、使用をさらに提供する。
【0036】
本発明によれば、集合分子、単一構造及び集合構造のうちのいずれか1種又は複数種を含み、前記集合分子は、前述の集合分子であり、前記単一構造は、前述の単一構造であり、前記集合構造は、前述の集合構造である、ことを特徴とする消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品又は洗浄製品をさらに提供する。
【0037】
本発明によれば、集合分子、単一構造及び集合構造のうちの1種又は複数種と、医薬的に許容されるキャリア、希釈剤又は賦形剤とを含み、集合分子は、前述の集合分子であり、単一構造は、前述の単一構造であり、集合構造は、前述の集合構造である、ことを特徴とする薬品をさらに提供する。
【0038】
本発明によれば、無細胞でインビトロ合成して発現することにより得られる前述の集合構造の製造方法であって、反応により得られた集合構造を含む生成物に対してタンパク質精製を行う場合、硫酸アンモニウム沈殿法を用いる、ことを特徴とする製造方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0039】
(1)本発明に係る集合分子は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する複数の結合阻害分子単位を集合構造に効果的に集合することができ、このように、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する阻害作用方式を実現し、集合分子の集合作用により、各集合構造における結合阻害分子単位の個数を増加させ、ウイルスと細胞受容体との結合を複数部位で阻害するとともに、複数の結合阻害分子単位により、複数のウイルスに同時に結合することができ、複数の集合構造が協働して、架橋作用が発生され、ウイルスと細胞受容体との結合をより効果的に阻害することができ、実験によれば分かるように、集合前に比べて、集合後、ウイルスに対する阻害効果が向上し、かつ結合力がナノ抗体の1000~1M倍であり、これにより、このような方式は、単一部位結合に比べて、必要な結合分子の量も少なく、生産コストも低い。
【0040】
(2)さらに、少なくとも4つの前述の集合分子を含む単一構造がそれぞれの集合分子により互いに集合して集合構造となる場合、各集合構造が少なくとも4つの単一構造を有し、少なくとも四面体の構造を形成するため、架橋効果がより効果的に発生され、上記阻害作用をさらに向上させることができ、好ましくは、4つの単一構造が集合した集合構造である場合、4つより多い集合構造に比べて、集合構造の大きさが適切であり、かつ十分な阻害作用能を保証し、空間結合部位及び空間の浪費がない。
【0041】
(3)さらに、本発明に係るストレプトアビジンは、単一構造を集合分子によって集合させることができ、90%以上は、4つの単一構造が集合して形成された集合構造である。
【0042】
(5)さらに、結合阻害分子は、ペプチド断片の形態でウイルスと細胞受容体との結合阻害を行うことができ、抗体類に比べて、単一構造又は集合構造全体の大きさがより小さく、かつ構造がより単一であり、細胞内発現、細胞分泌又はインビトロ発現により好適に得られる。
【0043】
(6)さらに、阻害分子は、複数であり、ウイルスと細胞受容体との結合を複数部位で阻
害する機会を増やすことができ、さらに、第1阻害分子及び/又は第2阻害分子は、ウイルスと細胞受容体との結合に対する阻害効果がより高い。
【0044】
(7)さらに、単一構造は、集合構造が細胞発現、細胞分泌、又は無細胞インビトロ発現によって得られることを促進するリーダーペプチドをさらに含む場合、細胞発現、細胞分泌、又は無細胞インビトロ発現の方式により、前述の単一構造又は前述の集合構造を生産することに有利である。
【0045】
(8)さらに、前記結合阻害分子単位と集合分子が蛍光タンパク質である又はそれで改造されたリンカー分子によって連結される場合、ウイルス阻害効果を向上させることができ、さらに、単一構造は、酸性構造をさらに含み、該酸性構造の存在により、ウイルスに対する阻害効果を向上させることができ、集合構造の熱安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図2】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図3】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図4】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図5】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図6】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図7】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図8】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図9】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図10】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図11】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図12】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図13】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図14】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図15】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図16】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図17】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図18】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図19】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図20】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図21】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図22】実施例2に係る偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の抑制実験結果を示す図である。
図23】実施例2における偽型ウイルスに対するウイルス阻害タンパク質の作用前後の電子顕微鏡写真である。
図24】実施例1における集合構造の斜視図である。
図25】実施例1における集合構造のウイルスに対する架橋作用の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。実施例に用いられる具体的な方法又は材料について、当業者は、本発明の技術的思想に基づいて、既存の技術により通常の置換選択を行うことができ、本発明の実施例の具体的な記載に限定されない。
【0048】
実施例で使用される方法は、特に断らない限り、いずれも通常の方法であり、使用される材料、試薬などは、特に断らない限り、いずれも商業的に入手可能である。
【0049】
本発明における「コロナウイルス」とは、コロナウイルスが系統分類でニドウイルス目(Nidovirales)コロナウイルス科(Coronaviridae)コロナウイルス属(Coronavirus)に属し、かつACE2を結合受容体とするコロナウイルスであり、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2などを含むが、これらに限定されない。
【0050】
スパイクタンパク質、つまりSタンパク質は、ウイルス表面の標的膜貫通タンパク質であり、S1とS2の2つのサブユニットを有し、受容体結合部位(RBD)は、S1サブユニットにある。三量体の形態でウイルス粒子外膜表面のスパイクを構成し、その主な機能は、宿主細胞表面の受容体を認識し、宿主細胞との融合を媒介することである。
【0051】
本発明のACE2は、ACEHとも称され、アンジオテンシン変換酵素2と称される。ACE2は、805個のアミノ酸からなり、単一の細胞外触媒ドメインを持つI型膜貫通糖タンパク質である。ACE2は、SARS-Cov-2などのコロナウイルスがヒト細胞に感染した受容体タンパク質である。
【0052】
本発明において、インビトロ無細胞発現、即ち無細胞タンパク質合成系は、原核又は真核細胞に基づく転写-翻訳カップリング系であり、生物抽出物及び/又は決定された試薬を含む反応混合物におけるポリペプチド又は他の高分子の合成を指す。
【0053】
本発明における「D2P」系は、IVTT反応(インビトロ転写翻訳反応)を含むが、これらに限定されない。本発明において、IVTT反応が好ましい。IVTT反応は、IVTT系に対応し、インビトロでDNAをタンパク質(Protein)に転写翻訳する過程であるため、このようなインビトロタンパク質合成系は、D-to-P系、D_to_P系、DNAto-Protein系とも呼ばれ、対応するインビトロタンパク質合成方法は、D2P法、D-to-P法、D_to_P法、DNA-to-Protein法とも呼ばれ、「インビトロ無細胞タンパク質合成系」、「インビトロ発現系」、「インビトロタンパク質合成系」、「インビトロタンパク質合成反応系」、「無細胞タンパク質合成系」などの表現と同じ意味を有する。タンパク質インビトロ合成系、インビトロタンパク
質合成系、無細胞系、無細胞タンパク質合成系、無細胞インビトロタンパク質合成系、インビトロ無細胞タンパク質合成系、インビトロ無細胞合成系、CFS系(cell-free system)、CFPS系(cell-free protein synthesis system)などの記述方式がある。インビトロ翻訳系、インビトロ転写翻訳系(IVTT系)などが含まれる。インビトロタンパク質合成系を「タンパク質合成工場」(Protein Factory)とも呼ぶ。インビトロタンパク質合成反応とは、インビトロ無細胞合成系においてタンパク質を合成する反応であり、少なくとも翻訳過程を含む。
【0054】
本発明のインビトロ無細胞タンパク質合成系に必要なタンパク質成分(例えば、RNAポリメラーゼ)は、内因性方式で提供されてもよく、外因性方式で添加されてもよい。内因性方式で提供する場合、文献CN108690139A、CN109423496A、CN106978439A、CN110408635A、CN110551700A、CN110093284A、CN110845622A、CN110938649A、CN111378708A、CN111484998A、「Molecular andCellular Biology、1990、10(1):353-360」などを含むが、これらに限定されない従来文献及びその引用文献によって提供された遺伝子組み換え法を参照することができ、具体的には、コード配列を細胞内の遊離プラスミドに挿入し、コード遺伝子を細胞ゲノムに組み込むこと、及びその組み合わせ方式を含むが、これらに限定されない。外因性方式で提供する場合、使用量は、系の必要に応じて制御及び調節することができる。
【0055】
宿主細胞は、本分野でよく知られているものであり、大腸菌、CHO細胞、チャイニーズハムスター卵巣、NS0、SP2細胞、ヒーラ細胞(HeLa cell)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、HEK-293細胞及び多くの他の細胞系、ツマジロクサヨトウ・スポドプテラ(Spodoptera frugiperda)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusiani)、両生動物細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞を含むが、これらに限定されない。真菌細胞は、酵母及び糸状菌細胞を含み、糸状菌細胞は、例えば、ピキア・パストリス、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィア(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタ・エミヌタ(Ogataeaminuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピキア・ピペリ(Pichia
pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichiastiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア属種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenulapolymorpha)、クリベロマイセス属種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyceslactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium s
p.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrellapatens)、及びアカパンカビ(Neurospora crassa)を含む。
【0056】
さらに、インビトロ無細胞タンパク質合成系は、大腸菌インビトロタンパク質合成系、細菌インビトロタンパク質合成系、哺乳動物細胞(例えば、HF9、Hela、CHO、HEK293)インビトロタンパク質合成系、植物細胞インビトロタンパク質合成系、酵母細胞インビトロタンパク質合成系、昆虫細胞インビトロタンパク質合成系を含むが、これらに限定されない。酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、クルイベロミセスのうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせから選択される。クルイベロミセスは、例えば、クルイベロミセス・ラクティスである。
【0057】
本発明のインビトロタンパク質合成系、テンプレート、プラスミド、標的タンパク質、インビトロタンパク質合成反応(インキュベート反応)、各種の調製方法、各種の検出方法などの技術要素は、それぞれ独立して下記文献から好適な実施形態又は実施方法を選択することができ、CN111484998A、CN106978349A、CN108535489A、CN108690139A、CN108949801A、CN108642076A、CN109022478A、CN109423496A、CN109423497A、CN109423509A、CN109837293A、CN109971783A、CN109988801A、CN109971775A、CN110093284A、CN110408635A、CN110408636A、CN110551745A、CN110551700A、CN110551785A、CN110819647A、CN110845622A、CN110938649A、CN110964736Aなどの文献を含むが、これらに限定されない。本発明の目的と矛盾しない限り、これらの文献及びその引用文献は、その全体が、かつ全ての目的で本明細書に組み込まれる。
【0058】
本発明において、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害するとは、前記ウイルスを不活性化させることを指し、例えば、以下の方式であってもよい。
【0059】
一態様では、ウイルスと細胞受容体との結合を減少させ、以下の2種類がある。
【0060】
第1種:競合的阻害に属し、即ち、受容体の類似物を用いてウイルスに結合し、ウイルスが受容体細胞に結合する機会を減少させるか、又は受容体に結合する分子により、ウイルスに結合可能な細胞受容体を減少させ、ウイルスが受容体細胞に結合する機会を減少させ、
第2種:異なるウイルス間で結合阻害分子単位を媒介として形成される架橋作用の阻害により、ウイルスと細胞受容体との結合機会を減少させる。
【0061】
別の態様では、抗体を用いて細胞受容体に結合する機能領域を破壊することにより、阻害の目的を達成する。
【0062】
本明細書における「集合分子」とは、例えば、分子間力、又は特定のドメインなどの自聚集の作用により、一緒に集合することができる分子を指す。
【0063】
本明細書における「単一構造」とは、集合分子が集合する前の単一の構造、即ち、少なくとも結合阻害分子単位と集合分子を有する構造であり、モノマーとも呼ばれる。
【0064】
本明細書における「集合構造」とは、集合分子同士の結合により、複数の単一構造が集合してなる構造であり、多量体とも呼ばれる。
【0065】
実施例1
本実施例は、本発明の内容を具体的に説明するためのものである。
【0066】
本実施例は、ウイルスと細胞受容体との結合を上記の阻害を行う結合阻害分子単位を集合して集合構造になる、ことを特徴とする集合分子を提供する。ここでの結合阻害分子単位は、細胞受容体又はウイルスに結合する結合分子を有するため、ウイルスと細胞受容体との結合を競合的に阻害することができる。
【0067】
説明の便宜上、本明細書における集合分子をAで示し、本明細書における結合阻害分子単位をBで示す。
【0068】
集合分子の集合作用により、複数の結合阻害分子単位を集合し、各集合構造における結合阻害分子単位の個数を増加させ、即ち、競合阻害の部位を増加させ、ウイルスと細胞受容体との結合を複数部位で阻害するとともに、複数の結合阻害分子単位により、複数のウイルスに同時に結合することができ、架橋作用が発生され、ウイルスと細胞受容体との結合をより効果的に阻害することができる。
【0069】
具体的には、本実施例の集合分子は、単一結合部位と集合部位を有する。
【0070】
単一結合部位は、結合阻害分子単位と結合して単一構造を構成するように用いられ、複数の単一構造は、集合部位により集合して集合構造になされ、即ち、異なる単一構造の間の集合部位は、互いに結合することができる作用を有し、例えば、分子間力などによって、自聚集のような結合を発生する。好ましくは、集合分子がペプチド又はタンパク質である場合、単一結合部位は、集合分子のN末端に設置され、即ち、結合阻害分子単位のC末端により集合分子のN末端に連結される。具体的には、該単一構造の基本構造は、式1で示される。
【0071】
B-A(式1):好ましくは、単一結合部位は、集合分子のC末端に設置される。
【0072】
好ましくは、集合構造は、少なくとも4つの単一構造を集合してなり、少なくとも4つの前述の集合分子を含む単一構造がそれぞれの集合分子により互いに集合して集合構造となる場合、各集合構造が少なくとも4つの単一構造を有し、少なくとも四面体の構造を形成するため、架橋効果がより効果的に発生され、上記阻害作用をさらに向上させることができるが、好ましくは、4つの単一構造が集合した集合構造である場合、4つより多い集合構造に比べて、集合構造の大きさが適切であり、かつ十分な阻害作用能を保証し、空間結合部位及び空間の浪費がない。
【0073】
図24は、実施例1における集合構造の斜視図である。
【0074】
図25は、実施例1における集合構造のウイルスに対する架橋作用の斜視図である。
【0075】
図24に示すように、図における集合構造は、3つの単一構造を集合してなり、中間部分は、集合部位が集合してなり、各結合阻害分子単位は、3つの点に分布し、四面体の構造を形成する。
【0076】
図25に示すように、図における集合構造は、単一構造を集合してなり、各集合構造は、2つの結合阻害分子がそれぞれ同一のウイルスに結合する以外、もう1つの結合阻害分子が他のウイルスに結合し、これにより、2つのウイルスの間は、結合阻害分子により架橋を形成し、細胞受容体への他のウイルスの接触を絶え間なく阻害し、阻害作用を向上させ
ることができる。
【0077】
本実施例において、集合分子は、表1のいずれかから選択される。
【表1】
【0078】
一例において、集合分子は、ストレプトアビジンであり、又はSEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。このような集合分子により、集合によって得られたテトラマー構造(4つの単一構造が集合してなる)は、80%以上、さらには90%以上となる。
【0079】
一例において、集合分子と結合阻害分子単位は、リンカー分子を介して結合されてもよく、説明の便宜上、リンカー分子は、Dで示される。
【0080】
一例において、リンカー分子は、蛍光タンパク質、ヒト免疫グロブリンG4、Fc及びHSAのうちのいずれか1種又は複数種を含み、例えば、リンカー分子は、eGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、改変とは、eGFPに対して一部のアミノ酸を削除することによって得られ、例えば、EGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、eGFPに対してその1~228位のアミノ酸を削除することによって得られる。
【0081】
好ましくは、リンカー分子は、SEQIDNO:2と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ
酸配列、又はSEQIDNO:3と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:4と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:5と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:6と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
一例において、リンカー分子のN末端は、結合阻害分子単位に連結され、リンカー分子のC末端は、集合分子のN末端に設置される単一結合部位に連結され、この場合、単一構造の構造は、式2で示される。
【0083】
B-D-A(式2):好ましくは、BのC末端は、DのN末端に連結され、DのN末端は、AのC末端に連結される。
【0084】
一例において、結合阻害分子単位は、ウイルスの受容体結合領域に結合する少なくとも1つの阻害分子を含む。つまり、1つの阻害分子を含んでもよく、複数の阻害分子を含んでもよく、複数の阻害分子を含む場合、これらの阻害分子のアミノ酸配列は、同じであってもよく、異なってもよい。
【0085】
阻害分子が複数である場合、ウイルスと細胞受容体との結合を複数部位で阻害する機会を増やし、前述の阻害作用を向上させることができる。
【0086】
一例において、阻害分子が複数である場合、阻害分子は、C末端からN末端へ順に連結され、即ち、1つ前のC末端が1つ後のN末端に連結され、具体的には、B1-B2-B3…Bn(nは、1より大きい正の整数である)であり、より好ましくは、結合阻害分子単位と集合分子とがリンカー分子を介して連結される場合、リンカー分子のN末端は、最後の阻害分子のC末端に連結され、リンカー分子DのC末端は、集合分子に連結され、具体的には、B1-B2-B3…Bn-D-Aである。
【0087】
一例において、阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。具体的に説明すると、
結合阻害分子単位に含まれる各阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19に示されるいくつかのアミノ酸配列のいずれか1種を含むか、或いはSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれか1種との同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
例えば、阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有するアミノ酸配列を含み、また例えば、阻害分子は、SEQIDNO:7との同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列である。
【0089】
SEQIDNO:16~19
SEQIDNO:16(Pep170):
STIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLGGGGSGGGGSTSGGVTGGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMA
YAAQPFLLRN;
SEQIDNO:17(Pep180):
STIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALGGGGSGGGGSTSGGVTGFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRN;
SEQIDNO:18(Pep190):
STIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQGGGGSGGGGSTSGGVTGRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRN;
SEQIDNO:19(Pep200):
STIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQGGGGSGGGGSTSGGVTGGHAGGTVDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRN。
【0090】
一例において、阻害分子は、ペプチド断片又は抗体であってもよい。抗体を用いる場合、好ましくは、ナノ抗体であり、単一構造全体の大きさを低減することができる。
【0091】
阻害ペプチドを用いて阻害する場合、抗体類に比べて、構造全体の大きさがより小さく、かつ構造がより単一であり、細胞内発現、細胞分泌又はインビトロ発現により好適に得られる。具体的には、阻害ペプチド断片を用い、単一構造全体の大きさの範囲は、30~80KDである。
【0092】
阻害ペプチド断片が複数である場合、ウイルスと細胞受容体との結合を複数の場所で阻害する機会を増やし、前述の阻害作用を向上させることができる。
【0093】
一例において、細胞受容体は、ACE2である。
【0094】
一例において、結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子(第1阻害ペプチド断片、説明の便宜上、B1で示す)及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子(第2阻害ペプチド断片、説明の便宜上、B2で示す)を含む。前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。第1阻害分子及び/又は第2阻害分子は、それぞれペプチド断片であり、ナノ抗体に比べて、ウイルスと細胞受容体との結合に対する阻害効果が特に優れている。
【0095】
一例において、結合阻害分子単位は、2つの第1阻害分子又は2つの第2阻害分子を含み、より好ましくは、2つの第1阻害分子又は2つの第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、即ち、例えば、B1-B1又はB2-B2であり、
一例において、結合阻害分子は、第1阻害分子及び第2阻害分子を含む場合、第1阻害分子と第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、即ち、第1阻害分子のN末端が第2阻害分子のC末端に連結されるか、又は第2阻害分子のN末端が第1阻
害分子のN末端に連結される。
【0096】
好ましくは、第2阻害分子のN末端は、第2阻害分子のC末端に連結され、この場合、単一構造の構造は、例えば、式3又は式4で示される。
【0097】
B1-B2-A(式3):好ましくは、該構造の連結方式は、B1のC末端がB2のN末端に連結され、B2のC末端がAのN末端に連結され、即ち、1つ前のC末端が1つ後のN末端に連結され(以下同様)、
B1-B2-D-A(式4):好ましくは、該構造の連結方式は、B1のC末端がB2のN末端に連結され、B2のC末端がDのN末端に連結され、DのC末端がAのN末端に連結される。
【0098】
一例において、単一構造は、集合構造が細胞発現によって得られること、細胞分泌によって得られること、又は無細胞インビトロ発現によって得られることを促進するリーダーペプチド(説明の便宜上、Cで示す)をさらに含み、リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、この場合、単一構造の構造には、結合阻害分子単位及び集合分子に加えて、リーダーペプチドが追加され、単一構造の1つの構造は、例えば、式5で示される。
【0099】
C-B-A(式5):好ましくは、CのC末端は、BのN末端に連結され、BのC末端は、AのN末端に連結される。
【0100】
2つの阻害分子がある場合、好ましくは、リーダーペプチドは、いずれか1つの阻害分子のN末端に連結され、この場合、単一構造の構造は、例えば、式6で示される。
【0101】
C-B1-B2-A(式6):該構造式の連結は、好ましくは、CのC末端がB1のN末端に連結され、B1のC末端がB2のN末端に連結され、B2のC末端がAのN末端に連結される。
【0102】
リンカー分子がある場合、単一構造の構造は、例えば、式7で示される。
【0103】
C-B1-B2-D-A(式7):該構造式の連結は、好ましくは、1つ前のC末端が1つ後のN末端に連結され、即ち、CのC末端がB1のN末端に連結され、B1のC末端がB2のN短鎖に連結され、B2のC末端がDのN末端に連結され、DのC末端がAのN末端に連結される。
【0104】
一例において、酸性構造は、少なくとも2つの連続したアスパラギン酸アミノ酸(説明の便宜上、dで示す)、及び/又は少なくとも2つの連続したグルタミン酸アミノ酸(説明の便宜上、eで示す)、及び/又は少なくとも1組のアスパラギン酸アミノ酸とアミノ酸の組み合わせを含む。例えば、酸性構造は、10個の連続したアスパラギン酸(10dで示す)、10個の連続したグルタミン酸(10eで示す)、8つの連続したアスパラギン酸及び8個の連続したグルタミン酸(8d8eで示す)、5つのd-e(5de、1つのd及び1つのeを1組として合計5組である)を含む。
【0105】
一例において、安定分子は、集合分子のC末端に連結され、この場合、単一構造の基本構造は、式8で示される。
【0106】
B-A-E(式7):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0107】
これに基づいて、前述のC、Dのうちのいずれか1つ又は複数を組み合わせて、異なる構造式を得て、例えば、式9~式11で示される。
【0108】
C-B-A-E(式9):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結され、
B-D-A-E(式10):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結され、
C-B-D-A-E(式11):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0109】
Bは、B1及びB2を含む場合、例えば、式12で示される。
【0110】
C-B1-B2-D-A-E(式12):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0111】
一例において、単一構造は、タグタンパク質(説明の便宜上、Fで示す)をさらに含み、タグタンパク質は、前述の単一構造又は前述の集合構造の精製のために使用され、一例において、タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
好ましくは、タグタンパク質は、C末端を介して結合阻害分子単位のN末端に連結され、即ち、タグタンパク質のC末端は、結合阻害分子単位のN末端側にあり、この場合、単一構造の基本構造は、式13で示される。
【0113】
F-B-A(式13):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0114】
これに基づいて、前述のC、D及びEのうちのいずれか1つ又は複数を組み合わせて、異なる構造式を得て、例えば、式14~式16で示される。
【0115】
F-B-D-A(式14):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0116】
C-F-B-A(式15):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【0117】
F-C-B-D(式16):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結され、この場合、FのC末端は、BのN末端に直接連結されていないが、Cを介して連結され、即ち、FのC末端は、BのN末端の一方の側に位置する(他は同様である)。
【0118】
一例において、単一構造がリーダーペプチドをさらに含む場合、リーダーペプチドは、タグタンパク質を介して結合阻害分子単位に連結され、式17で示される。
【0119】
C-F-B-D-A(式17):好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結され、同様に、この場合、リーダーペプチドは、結合阻害分子に直接連結されず、タグタンパク質を介して連結される。
【0120】
以上の異なる構造式において、阻害ペプチド断片がB1及び/又はB2である場合、B1
とB2が同時に現れ、この場合、前の構造式において、B1とB2の位置は、B1-B2であってもよく、B2-B1であってもよく、この2つのいずれか1つのみが現れてもよく、この場合、Bは、B1又はB2で示される。
【0121】
一例において、前述のウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HVP及び新型コロナウイルスのうちのいずれか1種又は複数種である。
【0122】
一例において、本実施例に係る単一構造の大きさは、30~80KDである。
【0123】
一例において、阻害構造単位が阻害ポリペプチドである場合の結合力は、ナノ抗体又は抗体である場合の1000~1M倍である。
【0124】
一例において、集合構造は、可溶性であり、例えば、水溶液に溶解可能である。
【0125】
一例において、前述の集合分子が単一構造に集合した後、集合構造が有する熱安定温度を70℃に近づけることができ、好ましくは、80℃以上である。
【0126】
本実施例は、前述の単一構造をコードするか、又は前述の集合構造をコードする核酸をさらに提供する。
【0127】
本実施例は、前述の核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0128】
本実施例は、前述の核酸又はベクターを含み、前述の単一構造又は前述の集合構造の細胞内発現、細胞分泌性又はインビトロ無細胞合成発現に用いられる真核宿主細胞をさらに提供する。
【0129】
本実施例は、単一構造及び/又は多量体構造の製造方法における前述の核酸又は前述のベクターの使用をさらに提供する。
【0130】
前述の集合分子が単一構造を集合して集合構造を形成することによる阻害優位性により、本実施例は、以下の使用又は製品において、阻害作用をよりよく発揮することができ、それにより、特定のウイルスに対する予防、治療又は検出などの作用をよりよく実現することができる。
【0131】
(1)本実施例は、ウイルス治療薬、ウイルス検出診断、医学用途、ウイルスに対する消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品、及び洗浄製品における、前述の集合分子、前述の単一構造及び前述の集合構造のうちのいずれかの使用をさらに提供する。
【0132】
(2)本実施例は、前述の集合分子、前述の単一構造及び前述の集合構造のうちのいずれか1種又は複数種を含む、ことを特徴とする消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品又は洗浄製品をさらに提供する。
【0133】
(3)本実施例は、前述の集合分子、前述の単一構造及び前述の集合構造のうちの1種又は複数種と、医薬的に許容されるキャリア、希釈剤又は賦形剤とを含む薬品をさらに提供する。
【0134】
上記消毒製品は、例えば、空気の消毒、水の消毒、食品の消毒、衣類の消毒、家庭用具及び各種工具又は施設などの消毒が必要とされるところ、食べ物又は場所に用いられ、工具は、例えば、乗り物であり、施設は、例えば、バス停であり、
上記スキンケア製品は、例えば、フェイスクリーム、保湿スプレー、化粧水、アイクリー
ムなどの皮膚表面をコーティングする製品であり、
上記化粧品は、例えば、リキッドファンデーション、チークなどであり、
上記ケア製品は、例えば、ウイルスに感染しやすい表面や補助用品用のケア液、ケアクリーム、スプレーなどであり、例えば、点眼液、コンタクトレンズのような補助用品用のケア液などであり、
上記洗浄製品は、例えば、クリーナー、シャンプー、ボディソープ、衣料用液体洗剤などである。
【0135】
本明細書の集合構造は、ウイルス阻害タンパク質、阻害タンパク質とも呼ばれる。
【0136】
好ましくは、阻害タンパク質は、康碼(上海)生物科技有限公司のD2P技術で生産され、例えば、D2Pシステム、D2P技術で生産され、例えば、該遺伝子をコード最適化してpD2Pベクターにクローニングするステップを含む。プラスミドは、Ampiシステムを用いて増幅した後、タンパク質工場の高速反応システム(康碼(上海)生物科技有限公司)に添加し、体積比は、1:30である。これにより、反応混合物を30℃で4時間インキュベートした後、遠心分離により精製した。無細胞混合物の上澄み液と磁性His
Monster Beads(Kangma Healthcode(Shanghai)Biotech)を4℃で1時間回転させた。洗浄緩衝液(50mMのTris-HCl、pH8.0、500mMのNaCl、10mMのイミダゾール)、及び溶出緩衝液(50mMのTris-HCl、pH8.0、500mMのNaCl、250mMのイミダゾール)を用いた。
【0137】
Ampi系は、最終濃度が20~30μMのランダムプライマー、0.05~0.15μg/mLのプラスミドテンプレート、0.5~1mMのdNTP、2×BSA、0.05~0.1mg/mLのphi29DNAポリメラーゼ、1×phi29反応緩衝液(成分は、50mMのTris-HCl、10mMのMgCl、10mMの(NHSO、4mMのDTT、pH7.5)である。
【0138】
実施例2
本実施例において、ウイルスが新型コロナウイルスであり、細胞受容体がACE2であることを例とする具体的な実験により、様々な構造の集合構造の阻害優位性を説明する。
【0139】
1.実験例に係るウイルス阻害タンパク質の調製、IVTT反応:
最適化された標的タンパク質の遺伝子配列(前述の各種ウイルス阻害タンパク質構造をコードする遺伝子配列を含む)をプラスミドに挿入した後、自製のクルイベロミセス・ラクティスのインビトロ無細胞タンパク質合成系に添加し、クルイベロミセス・ラクティス(KluyveromyceslactisNRRL Y-1140)によってインビトロで調製した。本実施例に用いられるインビトロ無細胞タンパク質合成系(総体積30μL)は、50%(v/v)のクルイベロミセス・ラクティス細胞抽出物、22mMのトリスヒドロキシメチルアミノメタン(pH8)、90mMの酢酸カリウム、4.0mMの酢酸マグネシウム、3.0mMのヌクレオシド三リン酸混合物、0.16mMのアミノ酸混合物、22mMのリン酸カリウム、0.003mg/mLのアミラーゼ、3%(w/v)のポリエチレングリコール(PEG-8000)、340mMのマルトデキストリン(グルコース単位で計量し、約55mg/mLに対応する)、0.04mg/mLの外因性方式で添加されたRNAポリメラーゼ、及び15ng/μLの目標タンパク質DNAなどを含む。蛍光タンパク質DNAの種類が1より大きい場合、ここでの15ng/μLは、各蛍光タンパク質DNAの総濃度である。上記反応系を22~30℃の環境に置き、静置して約20hインキュベートした。
【0140】
IVTT反応後、His電磁ビーズ(康碼生物からの製品)を用いて精製し、タンパク質
を溶出した後、限外濾過遠心分離によりPBS緩衝液に置換した。0.22μmのシリンジフィルターで濾過した後、精製タンパク質を得て、4℃で保存して使用に備えた。
【0141】
1.以下、本実施例の各実験に係る、調製されたウイルス阻害タンパク質の構造式を説明する。
【表2】
【0142】
表2に関する配列の説明を表3に示す。

【表3】
【0143】
2.予備実験により偽型ウイルスと細胞を試験する
使用された新型コロナウイルスの偽型ウイルスの表面にSタンパク質が発現し、内部にルシフェラーゼ遺伝子がパッケージングされている。細胞感染後、細胞内でルシフェラーゼタンパク質を発現させることができ、その基質を添加することにより、ルシフェラーゼ基質の発光値を検出し、偽型ウイルスの細胞感染効率を得ることができる。
【0144】
まず、偽型ウイルスの細胞感染に対して予備実験による試験を行い、偽型ウイルスの希釈度を決定する。偽型ウイルスを30倍の勾配で段階的に希釈し(具体的には、表4を参照する)、HEK293T又はHEK293T-ACE2(ACE2過剰発現のHEK293T細胞)にそれぞれ感染し、各感染に対して2つの並列実験を行い、最後に、ウイルスが細胞に感染した場合、ルシフェラーゼ検出の線形ウィンドウがS3~S7の範囲内(270~21870倍希釈)にあることを発見した。偽型ウイルスの供給者が540倍の希釈度で細胞に感染することを提案するため、その後の実験で使用された偽型ウイルスの希釈度は、540倍である。
【0145】
野生型新型コロナウイルス株の、野生型及びACE2過剰発現のHEK293T細胞に対する感染実験により、ACE2過剰発現細胞において、ウイルス感染の効率が野生型細胞株よりも明らかに高いことを発見したため、後続の実験において、ACE2過剰発現のHEK293Tを試験細胞株として選択した。
【表4】
【0146】
3.Kd評価
表面プラズモン共鳴(SPR)実験SPRは、Biacore T200バイオセンサー(GE Healthcare、米国)を用いて行った。アミンカップリングによりウイルス阻害タンパク質をSシリーズセンサーチップCM5(GE Healthcare、米国)に固定した。His-tagged RBDの参照菌株及びOmicron変異体(Sino Biological Inc、北京、中国)は、6種類の濃度(0.25、0.5、1、2、4及び8nM)に希釈され、Delta変異体のRBD(Sino Biological Inc、北京、中国)は、(0.5、1、2、4、8及び16nM)に希釈された。25℃でシングルサイクル動力学分析を行った。10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.05%のTweenにおいて、結合相を120s及び30μL/minに設定し、解離相をそれぞれ300s及び30μL/min-20に設定してランニングバッファとした。分析サイクルを9回繰り返し、分析物濃度を昇順に並べた。Biacore T200評価ソフトウェア(2.0バージョン、GE Healthcare、米国)を用いて解離定数(Kd)の値を算出した。
【0147】
結果から分かるように、本発明の表2に提供される構造を試験すると、全ての3種類のウイルス株のRBDドメインと強い相互作用を有し、即ち、オリジナル、Delta及びOmicron変異体と強固な結合親和力を有する。オリジナル、Delta及びOmicron変異体の解離定数(Kd)の値は、それぞれ1.25nM、0.837nM及び0.656nMに達することができる。
【0148】
要するに、Omicron変異体は、より高い健康リスクと驚くべき免疫回避能を有するが、本発明のウイルス阻害タンパク質は、依然としてこれらの変異体のRBDドメインに
結合する能力を有する。
【0149】
4.表2に提供される異なる構造に対して、偽型ウイルスに対するウイルス阻害実験を行い、実験ステップは、以下のとおりである。
【0150】
ステップ(1)では、感染対象のHEK293T-ACE2細胞を48ウェル細胞培養プレートに接種した。接種量は、1ウェルあたり1.5×10個の細胞であり、翌日に偽型ウイルス感染実験を行った場合、細胞密度は、約30%であった。
【0151】
ステップ(2)では、翌日、SARS-CoV-2(2019-nCoV)Sタンパク質偽型ウイルスを-80℃から取り出し、氷上で融解させるか又は4℃の条件下で自然融解させた。完全に融解させた後、完全培地(DMEM、10%ウシ胎児血清、1%Penicillin-streptomycin、0.75μg/mLピューロマイシン)で270倍希釈して偽型ウイルス希釈液とした。
【0152】
ステップ(3)では、KMds阻害剤の元の濃度は、1μMであり、10倍勾配で完全培地で連続希釈した。勾配希釈したKMds阻害剤と偽型ウイルス希釈液を1:1体積で混合して偽型ウイルス感染液とし、偽型ウイルス感染液を室温で1時間インキュベートした。
【0153】
ステップ(4)では、1時間後、HEK293T-ACE2細胞を予め敷いた48ウェルプレートをインキュベーターから取り出し、細胞密度及び状態を確認した後、上層培地を吸引除去した。ウェル壁に沿って200μLの偽型ウイルス感染液を各ウェルに入れ、細胞を押し流すことを避けた。48ウェルプレートをインキュベーターに入れて6時間インキュベートした。
【0154】
ステップ(5)では、6時間後、偽型ウイルス感染液を注意深く吸引除去し、新鮮な完全培地300μLを交換した。引き続き、インキュベーター中で48時間インキュベートした。
【0155】
ステップ(6)では、48時間後、培地を吸引除去し、各ウェルに200μLの1×PBSを注意深く添加して細胞を洗浄し、細胞を押し流すことを避けた。PBSを注意深く吸引除去し、各ウェルに65μLの1×細胞溶解液を添加し、室温で15~20分間インキュベートした。15~20分間後、直ちにルシフェラーゼの活性を検出するか、又は-20℃で保存する。
【0156】
ステップ(7)では、5μLの細胞溶解液と5μLのルシフェラーゼ基質(Promega E1501ルシフェラーゼアッセイシステム)を混合し、混合液を384ウェルプレートに入れ、直ちにPerkin Elmer EnVision 2102マルチマイクロプレートリーダーでルシフェラーゼの活性を検出し、KMds阻害剤の抑制効率を判定した。
【0157】
実験結果を図1図23に示す。
【0158】
図中の横軸は、使用するウイルス阻害タンパク質の濃度を示し、図中の縦軸は、阻害実験後の抑制効果(抑制率)を示し、抑制率は、以下のように算出される。
【数1】
【0159】
V0は、ウイルスのみを添加した対照RLU示度であり、V1は、ウイルス阻害タンパク質及びウイルスを添加したサンプルのRLU示度である。
【0160】
縦軸の数値が高いほど、効果が高いことを示す。
【0161】
Deltaは、Delta株の偽型ウイルスに対する抑制試験を示し、Originalは、野生型新型コロナウイルスの偽型ウイルスに対する抑制試験を示し、Omicronは、オミクロン株の偽型ウイルスに対する抑制試験を示す)。
【0162】
図における各群のヒストグラムは、それぞれ左から右への順序で、図の例又はタイトルに表示された構造名称の結果図に対応し、例えば、図4において、図の例は、左から右へそれぞれKmds008、Kmds007、Kmds001及びKmds009-2であり、各群のヒストグラムの順序もそれぞれこの順序で対応する構造の結果に対応する。
【0163】
結果:
I.集合前後の効果:
図1~3から分かるように、集合前(Kmds009)は、集合後(Kmds009-2)よりも効果が低く、集合前Kmds042は、集合後(Kmds003)よりも効果が低く、集合前Kmds043は、集合後(Kmds012)よりも効果が低い。
【0164】
II.異なる阻害分子の阻害効果:実験によれば分かるように、本発明の阻害分子は、新型コロナウイルスのSタンパク質と特異的な結合能を有し、
(1)図4に示すように、異なる阻害分子は、いずれも低い濃度で新型コロナウイルスとデルタを抑制でき、
(2)図5に示すように、052における集合分子とリンカー分子を除去しても、低い濃度で抑制効果を有する。
【0165】
III.酸性構造の付加
(1)酸性構造の付加効果は、付加しない方よりも高く、図6に示すように、Kmds003、Kmds002及びKmds006にそれぞれ酸性構造を付加し、効果は、酸性構造を付加しないKmds001よりも高く、
(2)8d8e、10eを付加する方は、付加しない方よりも効果が高く、図6に示すように、Kmds006は、Kmds003とKmds002よりウイルスに対する阻害効果が高く、図7に示すように、Kmds012とKmds014は、Kmds011とKmds013より効果が高い。
【0166】
IV.リンカー分子:
(1)図8に示すように、異なるリンカー分子を用いると、KMds104、KMds105、KMds121、KMds112の効果が近く、
(2)eGFPを一部改変し、改変しない前と比較すると、KMds003、KMds012、KMds104を改変した後、それぞれKMds045、KMds046、KMds109が得られ、結果をそれぞれ図9~11に示し、改変前後の効果が近く、
(3)リンカー分子を削除し、削除した後、依然としてウイルスに対して抑制作用を果たすことができ、結果を図12~14に示し、KMds003、KMds012、KMds104のTramが削除された後、それぞれKMds036、KMds038、KMds108が得られる。
【0167】
V.リーダーペプチド:
KMds003、KMds006、KMds012、KMds014、KMds044を
基にleading peptide配列を削除し、KMds030、KMds031、KMds032、KMds033、KMds104をそれぞれ得て、結果は、それぞれ図15~22に示すとおりであり、結果によれば、リーダーペプチドは、ウイルス阻害タンパク質のウイルスに対する抑制性に影響を与えない。
【0168】
VI.架橋作用:
ウイルス阻害実験における集合分子を有する構造に対して、ウイルスを処理する前後に電子顕微鏡観察を行い、図23に示すように、図23におけるAは、ウイルス阻害タンパク質で処理されていないものであり、他はウイルス阻害タンパク質で処理された後の異なる倍率の図であり、図から分かるように、電子顕微鏡にて、集合分子でウイルスを処理した後、画像に大きなプラークが現れ、つまり、本発明の構造は、ウイルスに対する架橋凝集を実現でき、それによりウイルスに対する架橋阻害抑制作用を向上させることができる。
【0169】
VII.偽型ウイルスIC50結果:
試験結果から分かるように、全ての試験において、同じ阻害分子に対して、
酸性構造、集合分子及びリンカー分子を有すると、IC50値が最低で42.4pMに達し、ピコモルレベルに達し、酸性構造が存在しないと、IC50値が0.222nM程度に達し、
リンカー分子がないか、又は集合分子がないか、又はリンカー分子及び集合分子がいずれもないと、偽型ウイルスに対する抑制作用が相対的に低下し、IC50値がそれぞれ1.054、2.404及び1.032nMに達することができる。
【0170】
5.生ウイルス試験
表2におけるウイルス阻害タンパク質の異なるSARS-CoV-2ウイルス株に対する抑制能を研究し、元のウイルス株、Alpha、Beta、Delta及びOmicron変異体を含む。
【0171】
結果:
元の菌株は、ウイルス阻害タンパク質により強く抑制され(IC50は108.6pMである)、
また一方で、ウイルス阻害タンパク質は、極めて低い濃度(IC50がそれぞれ92.8、121.9、61.0及び121.9pMである)でAlpha、Beta、Delta及びOmicron変異体に対する効果的な抑制能を示すことができ、
元のSARS-CoV-2を中和する能力に比べて、ウイルス阻害タンパク質がDelta変異体を抑制する能力は、約1.8倍増加し、他の菌株を抑制する能力は、ほぼ同じである。
【0172】
生ウイルスに対する試験から分かるように、スパイクタンパク質には、大量の変異が存在するが、本発明のウイルス阻害タンパク質は、異なるSARS-CoV-2変異体において依然としてピコモルレベルの強力な抑制能を保持する。
【0173】
6.動物実験
SARS-CoV-2野生型(WT)ウイルス株(IVCAS 6.7512)は、中国科学院武漢ウイルス研究所国立ウイルス資源センターから提供された。ヘテロB6/JGpt-H11em1Cin(K18-ACE2)/Gptマウス(K18-hACE2KIマウス)は、南京GemPharmatechから購入した。
【0174】
特定の無病原体(SPF)環境において、個別換気式ケージ(IVC)でマウスを飼育し繁殖させた。動物実験は、武漢大学動物実験センターの認証者が実行し、動物実験委員会(AUP#WP2021-0602)によって承認された。バイオセーフティーレベル3
実験室における伝染性SARS-CoV-2ウイルスのプロトコル及び手順は、国際生命倫理委員会(IBC、協議#S01322010A)の承認を得た。
【0175】
全てのサンプルの不活化は、IBCにより承認された標準手順に従って行い、サンプルを高度なコントロールから取り出すために用いた。各マウスは、2.5×102PFU SARS-CoV-2に感染した。陰性対照群については、SARS-CoV-2と対照緩衝液を30分間予混合した。
【0176】
0.25nMのウイルス阻害タンパク質予混合治療群について、SARS-CoV-2と0.25nMのウイルス阻害タンパク質を30分間予混合した。
【0177】
25nMのウイルス阻害タンパク質予混合治療群について、SARS-CoV-2と25nMウイルス阻害タンパク質を30分間予混合した。
【0178】
その後、予備混合物を用いて鼻腔内経路によりK18-hACE2マウスに接種した。
【0179】
組織を秤量し、Tissue Cell-destroyer 1000機器(NZK LTD)において1000μLのPBSでホモジネートした。5,000rpmで40秒間遠心分離して組織ホモジネートを清澄し、100μLの上澄み液と400μLのTrizol LSを混合してウイルスRNAを抽出した。
【0180】
pCMV-NプラスミドとSARS-CoV-2N遺伝子プライマー(Fプライマー:ATGCTGCAATCGTGCTACAA、Rプライマー、GACTGCCGCCTCTGCTC)を用いてSARS-CoV-2N遺伝子検量線を構築し、ウイルスコピー数を算出した。Prismバージョン7(GraphPadソフトウェア)を用いて、スチューデントt検定によりデータを解析した。P値<0.05は、統計的に有意であると考えられる。
【0181】
マウスモデルにおけるウイルス阻害タンパク質の作用を測定するために、SARS-CoV-2とウイルス阻害の予備混合物でK18-hACE2マウスに感染した。感染後2日目及び5日目(dpi)にマウスを殺した。5日内に、マウスの体重変化及び死亡率を毎日326モニタリングした。
【0182】
SARS-CoV-2を鼻腔内に接種したK18-hACE2マウスは、感染後3~4日目に体重が減少し始め、4dpiに死亡し、
対照マウスに比べて、ウイルス阻害タンパク質とSARS-CoV-2予備混合物を接種したマウスは、体重減少が著しく軽減し、生存率が著しく向上し、特に高投与量のウイルス阻害タンパク質を使用する場合に顕著である。
【0183】
SARS-CoV-2に感染したK18-hACE2の肺組織から、高レベルのSARS-CoV-2RNAが検出されたが、SARS-CoV-2及び低投与量のウイルス阻害タンパク質混合物ウイルスRNAに感染したマウスにおいて、ウイルスRNAレベルが低く、高投与量のウイルス阻害タンパク質及びSARS-CoV-2予備混合物に感染したマウスの肺組織から検出されなかった。要するに、これらのデータは、高投与量のウイルス阻害タンパク質が顕著に体重減少を軽減し、マウスの生存率を向上させ、マウスのウイルスコピー数を抑制できることを示す。
【0184】
7.毒性実験
毒性試験は、『消毒技術標準』(2002年版)第2部分、『消毒製品検査技術標準』における2.3.1急性経口毒性試験に従って行った。異常毒性試験は、『中華人民共和国
薬局方』2020年版(第4部分)、『通則』、『生物製品原則、検査方法』に従って行った。
【0185】
ICRマウスは、南京医科大学動物センターから提供された。
【0186】
Sprague Dawley(SD)ラットは、▲ヒ▼州東方繁育有限公司から購入した。
【0187】
ニュージーランドホワイトは、益正安里茂生物科技有限公司から提供された。動物を20℃~26℃で飼育し、局所バリアシステム内の相対湿度は、40%~70%である。
【0188】
表2に係る構造について、以下の毒性実験を行った。
【0189】
(1)急性経口毒性
20匹のSPF ICRマウス(18.0~22.0g)と20匹のSPF SDラット(180-220g)を急性経口毒性試験に用いた。雄と雌の数は、等しい。一晩絶食したマウスとラットに、表3における構造式に対応して調製したウイルス阻害タンパク質を投与し、投与量が5000mg/kg・bwであり、胃挿管を用いて単回投与した。次に、14日間に、動物の毒性及び死亡率の臨床症状を毎週モニタリングした(0日目、7日目及び14日目)。行動、死亡数、体重をそれぞれ評価し、観察期間終了時に解剖した。
【0190】
試験結果によれば、投与量が5000mg/kg・bwのウイルス阻害タンパク質の投与は、一晩絶食したマウス及びラットの発症を引き起こすことなく、体重が正常であった。ウイルス阻害タンパク質のマウス及びラットに対するLD50値は、いずれも5000mg/kg・bw以上であった。観察期間に中毒及び死亡の兆候は、認められなかった。
【0191】
(2)急性吸入毒性試験
20匹のSPF ICRマウス(18.0~22.0g)を急性吸入毒性試験に用いた。雄と雌の数は、等しい。表3における対応して調製した2.2gのウイルス阻害タンパク質を220Lの有毒物質暴露キャビネットに入れ、濃度を10,000mg/mと仮定した。吸入の暴露時間を2時間とした。マウスの症状及び死亡は、14日間の観察期間(0日目、7日目及び14日目)で記録した。
【0192】
実験記録によると、雌マウス及び雄マウスにおいて、2h暴露下でのウイルス阻害タンパク質LC50値は、いずれも10,000mg/mより高い。マウスは、異常兆候を示さず、現体重が安定的に増加することは、正常であった。したがって、現在の実験条件では、ウイルス阻害タンパク質は、法規に適合し、無毒であると考えられる。
【0193】
(3)急性眼刺激試験
雄性ニュージーランドホワイト3匹(2.5~3.5kg)を急性眼刺激試験に用いた。表3における対応して調製した0.1mLのウイルス阻害タンパク質原液をウサギの右目の結膜嚢に滴下し、左目に生理食塩水を滴下して対照とした。4s閉眼させ、30s後に生理食塩水で洗い流した。ウサギ結膜、虹彩及び角膜の損傷及び回復状況を21日間観察した(1時間目、24時間目、48時間目、72時間目、7日目、14日目及び28日目)。角膜損傷、虹彩損傷、結膜充血及び結膜浮腫の重症度を評価した。
【0194】
試験結果によれば、供試したウイルス阻害タンパク質は、ウサギに眼刺激の兆候を示さなかった。表1に示すように、24h、48h及び72hにおける3匹のウサギのスコアは、いずれも1より小さい。したがって、本発明のウイルス阻害タンパク質の刺激性は、刺激性なしに分類される。
【0195】
(4)マウス骨髄多染性赤血球(PCE)小核試験
50匹のICRマウスをマウス骨髄多染性赤血球小核試験に用いた。男性と女性の数は、等しい。動物を5群に分け、各群5匹の雌マウスと5匹の雄マウスとした。試験群に、それぞれ5000、2500及び1250mg/kg・bwの投与量で、表3における対応して調製したウイルス阻害タンパク質をそれぞれ1回投与した。一方群を陰性対照として溶媒である精製水で処理した。他方群を陽性対照として40mg/kg・bwのシクロホスファミド(CP)を腹腔内注射した。試験群は、0時間目及び24時間目に経口投与によってウイルス阻害タンパク質に曝露した。ウイルス阻害タンパク質に2回暴露した後、6時間目にマウスを殺し、骨髄塗抹標本を製造した。各動物の1000個の多染性赤血球(PCE)における小核の出現を算出した。200個のPCEが計数されると、PCEと正色素性赤血球(NCE)の比率を決定した。U検定により統計解析を行った。陰性対照に比べて、実験群の小核形成の発生率が顕著に増加した場合、試験剤が体内の染色体に有害であると判断し、投与量-反応相関性で判断すべきである。
【0196】
表2に示すように、小核試験について、雌マウス及び雄マウスの小核形成率は、3つの実験群において、陰性群に比べて有意差がなく(P<0.05)、陽性対照群に比べて有意差がある(P<0.05)。また、いずれかの実験群と陰性対照とのPCE/NCE比の差は、20%以内であった。
【0197】
(5)異常毒性実験
10匹の雌SPF ICRマウス(18.0~22.0g)と4匹の標準雌モルモット(250~350g)を異常毒性試験に用いた。
【0198】
10匹のマウスをランダムに試験群と対照群に分け、各群5匹とした。試験群に0.5mLのサンプルを腹腔内注射し、対照群に0.5mLの塩化ナトリウムを腹腔内注射した。2組の体質状況を7d観察した。4匹の雌モルモットをランダムに試験群と対照群に分け、各群2匹のモルモットとした。試験群に0.5mLのサンプルを腹腔内注射し、対照群に0.5mLの塩化ナトリウムを腹腔内注射した。2組の体質状況を7d観察した。
【0199】
いずれの試験においても、本発明に係るウイルス阻害タンパク質は、観察可能な毒性作用を起こさなかった。
【0200】
8.ウイルスタンパク質の熱安定性の試験
Unchained社のUncleデバイスを用いて、いくつかのタンパク質の熱安定性を試験した。Tmaggは、タンパク質が加熱過程において高凝集する温度を示し、結果を表5に示す。
【表5】
【0201】
同時にB1+B2を含有するKmds001のTmagg値は、50度より低いが、8D8E(Kmds006)酸性構造を付加した後、Tmagg値は、付加しない方(Kmds001)より大幅に高く、ほぼ1倍増加した。つまり、この酸性構造は、タンパク質の安定性を高めることができる。
【0202】
また、試験したところ、表2における各構造のウイルス阻害タンパク質の平均Tmは、80℃に近く、本発明に係るウイルス阻害タンパク質が極端な温度の影響を受けないことを示した。
【0203】
9.加速安定試験
安定性研究は、2つの異なる温度で同時に行い、4℃と37℃(三連で行い、100uLの10nMウイルス阻害タンパク質)である。
【0204】
他方群にウイルス阻害タンパク質を添加せず、陰性対照(NC)とした。90日以内(0日目、15日目、30日目、45日目、60日目、75日目及び90日目)に、それらを15日毎に3回サンプリングした。偽型ウイルス中和試験により抑制率を評価し、抑制率=(NC-サンプル)/NC(RFU)という式で算出される。
【0205】
試験結果から分かるように、4℃又は37℃で90日を超えて貯蔵した後、ウイルス阻害タンパク質の抑制効率がほとんど損なわれず(>99.9%)、本発明のウイルス阻害タンパク質が超安定なSARS-CoV-2阻害剤であることを示した。
【0206】
以下の実施例は、フィルム剤の実施例であり、言及されたウイルス阻害タンパク質は、実施例1における方法で言及された各構造を参照して製造されたウイルス阻害タンパク質であり、各配合成分に用いられるウイルス阻害タンパク質の原液濃度は、2mg/ml程度
である。
【0207】
以下の実施例における吸湿実験方法は、以下のとおりである。
【0208】
デバイスが加湿器で、型番がKW-AD01で、パワーが5Wで、容量が100mlである。
【0209】
加湿器に水を満たし、製造されたフィルム剤を加湿器の霧化ノズルの上方に5~10cm置き、フィルム剤の吸湿変化状況を観察し、実験温度は、室温であった。
【0210】
10.表3に提供される構造のIVTT反応液を硫酸アンモニウム沈殿処理した後、偽型ウイルスとの結合能を試験した。
【0211】
IVTT反応後の溶液を硫酸アンモニウムで沈殿処理する:4000rpm、4℃で10min遠心分離した。上澄み液に5%(w/v)の硫酸アンモニウム粉末を添加し、十分に撹拌して溶解し、4000rpm、4℃で10min遠心分離した。上澄み液に25%(w/v)の硫酸アンモニウム粉末を添加し続け、徐々に添加し、添加しながら撹拌して溶解させた。12000rpm、4℃で10min遠心分離した。上澄み液を捨て、沈殿を30%(w/v)の硫酸アンモニウム溶液で1回洗浄した。12000rpm、4℃で10min遠心分離した。沈殿をPBSで再懸濁し、十分に溶解した。12000rpm、4℃で10min遠心分離し、0.22μmのシリンジフィルターで濾過した後、4℃で保存して使用に備えた。
【0212】
硫酸アンモニウムでKmds012のIVTT反応液を沈殿させた後のサンプルの活性は、Kmd012の純粋なタンパク質(電磁ビーズによって精製されたタンパク質)よりやや低い。
【0213】
これから分かるように、本発明に係る集合構造を精製することは、簡単で便利な硫酸アンモニウム沈殿法で行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
2025504316000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一構造であって、
集合分子と結合阻害分子単位を有し、
前記集合分子は、単一結合部位と集合部位を有し、
前記単一結合部位は、前記結合阻害分子単位と結合して少なくとも前記単一構造を形成し、前記集合部位は前記単一構造が集合されるように用いられ、
好ましくは、前記単一構造の大きさは、30~80KDであり、
好ましくは、前記集合分子がペプチド又はタンパク質である場合、前記単一結合部位は、前記集合分子のN末端にある、ことを特徴とする単一構造
【請求項2】
前記結合阻害分子単位は、ウイルスが細胞受容体に結合する部位と結合することにより、ウイルスと受容体との結合を阻害し、及び/又は
前記結合阻害分子単位は、前記細胞受容体と結合することにより、前記ウイルスと前記細胞受容体との結合を阻害する、ことを特徴とする請求項1に記載の単一構造
【請求項3】
前記集合分子と前記結合阻害分子単位が、リンカー分子を介して結合され、
前記リンカー分子は、蛍光タンパク質、ヒト免疫グロブリンG4、Fc及びHSAのうちのいずれか1種又は複数種を含み、例えば、前記リンカー分子は、eGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、eGFPに対して一部のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、或いは、
前記リンカー分子は、SEQIDNO:2~6のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:2~6のいずれかとの同一性が少なくとも少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記リンカー分子のN末端は、前記結合阻害分子単位に連結され、前記リンカー分子のC末端は、集合分子のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項4】
前記結合阻害分子単位は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する少なくとも1つの阻
害分子を含み、
好ましくは、前記阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、さらに、複数の阻害分子を含む場合、前記阻害分子は、N末端からC末端まで順に連結され、より好ましくは、前記結合阻害分子単位と前記集合分子が前記リンカー分子を介して連結される場合、前記リンカー分子のN末端は、最後の前記阻害分子のC末端に連結され、前記リンカー分子のC末端は、前記単一結合部位に連結され、
さらに好ましくは、前記阻害分子は、ナノ抗体である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項5】
前記結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:8及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記結合阻害分子単位は、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子を含み、
好ましくは、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子は、一方のN末端が他方のC末端に連結され、
好ましくは、前記結合阻害分子単位は、前記第1阻害分子及び前記第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子と前記第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、より好ましくは、前記第2阻害分子のN末端は、前記第1阻害分子のC末端に連結される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項6】
前記集合分子は、表1のいずれか一つから選択される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項7】
前記集合分子は、SEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項8】
前記細胞受容体は、ACE2である、ことを特徴とする請求項1又は2単一構造
【請求項9】
前記単一構造は、リーダーペプチドをさらに含み、
前記リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記リーダーペプチドは、C末端を介していずれかの前記阻害分子のN末端に連結される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項10】
前記単一構造は、前記酸性構造をさらに含み、前記酸性構造は、負に荷電したアミノ酸短鎖ポリマーであり、さらに、前記酸性構造は、
(1)前記酸性構造は、C末端に設置され、
(2)前記短鎖ポリマーのアミノ酸の数は、0~50、2~40、3~30、2~20、又は2~10であり、
(3)前記負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸であり、
好ましくは、前記酸性構造は、前記集合分子のC末端に連結される、ことを特徴とする請
求項1又は2に記載の単一構造
【請求項11】
前記単一構造は、タグタンパク質をさらに含み、
前記タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記タグタンパク質は、C末端を介して前記結合阻害分子単位のN末端に連結され、前記結合阻害分子単位が阻害ペプチド断片である場合、前記タグタンパク質のC末端は、いずれかの前記阻害ペプチド断片のN末端に連結され、
好ましくは、前記単一構造が前記リーダーペプチドをさらに含む場合、前記リーダーペプチドは、前記タグタンパク質を介して前記結合阻害分子単位に連結される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項12】
前記ウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HPV及び新型コロナウイルスのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一構造
【請求項13】
集合構造であって、
前記請求項1又は2に記載の単一構造が集合部位によって集合されることによってなされる、ことを特徴とする集合構造。
【請求項14】
前記集合構造は、数量が2~10からいずれか一つの前記単一構造を集合してなされ、
好ましくは、前記集合構造は、4つの前記単一構造を集合してなされ、
好ましくは、前記阻害構造単位と前記ウイルスとの結合力は、ナノ抗体と前記ウイルスとの結合力の1000~1,000,000倍であり、
好ましくは、前記集合構造は、可溶性である、ことを特徴とする請求項13に記載の集合構造。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の単一構造又は請求項13又は14に記載の集合構造をコードすることを特徴とする核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸又は請求項16に記載のベクターを含む、真核宿主細胞。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の単一構造及び/又は請求項13又は14に記載の集合構造の製造方法においての、請求項16に記載の核酸又は請求項17に記載のベクターの使用。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の単一構造及び請求項13又は14に記載の集合構造のうちのいずれかが、ウイルス治療薬、ウイルス検出診断、医学用途、ウイルスに対する消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品、及び洗浄製品における使用であって
好ましくは、前記集合構造を無細胞でインビトロ合成して得られた未精製の生成物をそのまま用いて前記使用を行う、使用。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の単一構造及び請求項13又は14に記載の集合構造のいずれか1種又は複数種を含む、ことを特徴とする消毒製品、化粧品、スキンケア製品、ケア製品、食品又は洗浄製品。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の単一構造及び請求項13又は14に記載の集合構造のうちの1種又は複数種と、医薬的に許容されるキャリア、希釈剤又は賦形剤とを含む、ことを特徴とする薬品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
現在、これらのウイルスに対して、一般的には、高分子抗体又はナノ抗体などのタイプで予防及び治療を行い、例えば、
抗体系薬物について、現在、新型コロナウイルス肺炎を治療するには、主に、以下のいくつかの方法がある。1、Sタンパク質に対する中和抗体であり、ウイルス粒子の表のSタンパク質に結合して、Sタンパク質とACE2との結合を阻害することにより、ウイルスの細胞への侵入を阻害する。2、ACE2タンパク質に対する中和抗体であり、ウイルスの受容体ACE2に結合することにより、ウイルスの細胞への侵入を阻害する。3、ACE2類似物であり、肺細胞表面ACE2と競合してウイルス粒子表面のSタンパク質に結合することにより、ウイルスと受容体との結合を阻害する。4、サイトカインストームに対する抗体であり、サイトカインストームを抑制することにより、新型コロナウイルス肺炎を治療する目的を達成する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、集合分子は、単一結合部位と集合部位有し、前記単一結合部位は、前記結合阻害分子単位と結合して、少なくとも集合分子と結合阻害分子単位とを有する単一構造を形成するように用いられ、複数の単一構造は、集合部位により集合して集合構造になされ、好ましくは、集合分子がペプチド又はタンパク質である場合、単一結合部位は、前記集合分子のN末端に設置される、という特徴を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記集合分子はSEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む、という特徴を有する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記集合分子と前記結合阻害分子単位は、リンカー分子を介して結合され、
前記リンカー分子は、蛍光タンパク質、ヒト免疫グロブリンG4、Fc及びHSAのうちのいずれか1種又は複数種を含み、例えば、前記リンカー分子は、eGFP蛍光タンパク質であり、又はそれで改造されたものであり、好ましくは、eGFPに対して一部のアミノ酸を削除することにより得られたものであり、或いは、
前記リンカー分子は、SEQIDNO:2~6のいずれかと同一性を有し、又は同一性が
SEQIDNO:2~6のいずれかと少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み
好ましくは、前記リンカー分子のN末端は、前記結合阻害分子単位に連結され、前記リンカー分子のC末端は、集合分子のN末端に連結されている、という特徴を有する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記結合阻害分子単位は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する少なくとも1つの阻害分子を含み、好ましくは、前記阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含み、さらに、複数の阻害分子を含む場合、前記阻害分子は、N末端からC末端まで順に連結され、より好ましくは、前記結合阻害分子単位と前記集合分子が前記リンカー分子を介して連結される場合、前記リンカー分子のN末端は、最後の前記阻害分子のC末端に連結され、前記リンカー分子のC末端は、前記単一結合部位に連結され、さらに好ましくは、前記阻害分子は、ナノ抗体である、という特徴を有する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:8及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記結合阻害分子単位は、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子を含み、より好ましくは、2つの前記第1阻害分子又は2つの前記第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、さらに好ましくは、前記結合阻害分子単位は、前記第1阻害分子及び前記第2阻害分子を含み、前記第1阻害分子と前記第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、より好ましくは、前記第2阻害分子のN末端は、前記第1阻害分子のC末端に連結されるという特徴を有する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、前記単一構造は、集合構造が細胞発現によって得られること、細胞分泌によって得られること、又は無細胞インビトロ発現によって得られることを促進するリーダーペプチドをさらに含み、前記リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、リ
ーダーペプチドは、C末端を介していずれかの阻害分子のN末端に連結される、という特徴を有する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、単一構造は、タグタンパク質をさらに含み、前記タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、タグタンパク質は、C末端を介して結合阻害分子単位のN末端に連結され、結合阻害分子単位が阻害ペプチド断片である場合、タグタンパク質のC末端は、いずれかの阻害ペプチド断片のN末端に連結され、より好ましくは、単一構造がリーダーペプチドをさらに含む場合、リーダーペプチドは、タグタンパク質を介して結合阻害分子単位に連結される、という特徴を有する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本発明に係る集合分子によれば、さらに、ウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HPV及び新型コロナウイルスのうちの1種又は複数種である、という特徴を有する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本発明に係る集合構造によれば、さらに、阻害構造単位が阻害ポリペプチドである場合の結合力は、ナノ抗体である場合の1000~1,000,000倍である、という特徴を有する。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
(1)本発明に係る集合分子は、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する複数の結合阻害分子単位を集合構造に効果的に集合することができ、このように、ウイルスと細胞受容体との結合を阻害する阻害作用方式を実現し、集合分子の集合作用により、各集合構造における結合阻害分子単位の個数を増加させ、ウイルスと細胞受容体との結合を複数部位で阻害するとともに、複数の結合阻害分子単位により、複数のウイルスに同時に結合することができ、複数の集合構造が協働して、架橋作用が発生され、ウイルスと細胞受容体との結合をより効果的に阻害することができ、実験によれば分かるように、集合前に比べて、集合後、ウイルスに対する阻害効果が向上し、かつ結合力がナノ抗体の1000~1,000,000倍であり、これにより、このような方式は、単一部位結合に比べて、必要な結合分子の量も少なく、生産コストも低い。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
(3)さらに、本発明に係る集合構造は、単一構造を集合分子によって集合させることができ、90%以上は、4つの単一構造が集合して形成された集合構造である。さらに、本発明に係る集合構造は、SEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、集合分子は、単一構造が集合部位によって集合されることによってなされ、90%以上の多量体構造は、4つの単一構造が集合してなされる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
宿主細胞は、本分野でよく知られているものであり、大腸菌、CHO細胞、チャイニーズハムスター卵巣、NS0、SP2細胞、ヒーラ細胞(HeLa cell)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、HEK-293細胞及び多くの他の細胞系を含む。前記他の細胞系は、例えば、ツマジロクサヨトウ・スポドプテラ(Spodoptera frugiperda)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusiani)、両生動物細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞を含むが、これらに限定されない。真菌細胞は、酵母及び糸状菌細胞を含み、糸状菌細胞は、例えば、ピキア・パストリス、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィア(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタ・エミヌタ(Ogataeaminuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピキア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichiastiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア属種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenulapolymorpha)、クリベロマイセス属種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyceslactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrellapatens)、及びアカパンカビ(Neurospora crassa)を含む。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
第1種:競合的阻害に属し、即ち、受容体の類似物を用いてウイルスに結合し、ウイルスが受容体細胞に結合する機会を減少させるか、又は受容体に結合する分子により、ウイルスに結合可能な細胞受容体を減少させ、ウイルスが受容体細胞に結合する機会を減少させ、
第2種:異なるウイルス間で結合阻害分子単位を媒介として形成される架橋作用による阻害することによって、ウイルスと細胞受容体との結合機会を減少させる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
別の態様では、抗体を用いてウイルスと細胞受容体結合する機能領域を破壊することにより、阻害の目的を達成する。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
図25に示すように、図における集合構造は、複数の単一構造を集合してなり、各集合構造は、2つの結合阻害分子がそれぞれ同一のウイルスに結合する以外、もう1つの結合阻害分子が他のウイルスに結合し、これにより、2つのウイルスの間は、結合阻害分子により架橋を形成し、細胞受容体への他のウイルスの接触を絶え間なく阻害し、阻害作用を向上させることができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
本実施例において、集合分子は、表1のいずれかから選択される。
【表1】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
一例において、集合分子はSEQIDNO:1と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。このような集合分子により、集合によって得られた多量体構造(4つの単一構造が集合してなる)は、80%以上、さらには90%以上となる。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
好ましくは、リンカー分子は、SEQIDNO:2と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミ
ノ酸配列、又はSEQIDNO:3と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:4と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:5と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列、又はSEQIDNO:6と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
一例において、阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかと同一性を有し、又はSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれかとの同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。具体的に説明すると、
結合阻害分子単位に含まれる各阻害分子は、SEQIDNO:7~9及び16~19に示されるいくつかのアミノ酸配列のいずれか1種を含むか、或いはSEQIDNO:7~9及び16~19のいずれか1種との同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列を含む。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
例えば、阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有するアミノ酸配列を含み、また例えば、阻害分子は、SEQIDNO:7との同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%又は99%を有するアミノ酸配列である。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
一例において、結合阻害分子単位は、少なくとも1つの第1阻害分子(第1阻害ペプチド断片、説明の便宜上、B1で示す)及び/又は少なくとも1つの第2阻害分子(第2阻害ペプチド断片、説明の便宜上、B2で示す)を含む。前記第1阻害分子は、SEQIDNO:7と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、前記第2阻害分子は、SEQIDNO:8及び16~19のいずれかと同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。第1阻害分子及び/又は第2阻害分子は、それぞれペプチド断片であり、ナノ抗体に比べて、ウイルスと細胞受容体との結合に対する阻害効果が特に優れている。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
一例において、結合阻害分子単位は、2つの第1阻害分子又は2つの第2阻害分子を含み、より好ましくは、2つの第1阻害分子又は2つの第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、即ち、例えば、B1-B1又はB2-B2であり、
一例において、結合阻害分子は、第1阻害分子及び第2阻害分子を含む場合、第1阻害分子と第2阻害分子は、一方のN末端を介して他方のC末端に連結され、即ち、第1阻害分子のN末端が第2阻害分子のC末端に連結されるか、又は第2阻害分子のN末端が第1阻害分子の末端に連結される。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
好ましくは、第2阻害分子のN末端は、第1阻害分子のC末端に連結され、この場合、単一構造の構造は、例えば、式3又は式4で示される。
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
一例において、単一構造は、集合構造が細胞発現によって得られること、細胞分泌によって得られること、又は無細胞インビトロ発現によって得られることを促進するリーダーペプチド(説明の便宜上、Cで示す)をさらに含み、リーダーペプチドは、SEQIDNO:10と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含み、この場合、単一構造の構造には、結合阻害分子単位及び集合分子に加えて、リーダーペプチドが追加され、単一構造の1つの構造は、例えば、式5で示される。
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
C-B1-B2-D-A(式7):該構造式の連結は、好ましくは、1つ前のC末端が1つ後のN末端に連結され、即ち、CのC末端がB1のN末端に連結され、B1のC末端がB2のN末端に連結され、B2のC末端がDのN末端に連結され、DのC末端がAのN末端に連結される。
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
一例において、酸性構造は、少なくとも2つの連続したアスパラギン酸アミノ酸(説明の便宜上、dで示す)、及び/又は少なくとも2つの連続したグルタミン酸アミノ酸(説明の便宜上、eで示す)、及び/又は少なくとも1組のアスパラギン酸アミノ酸とグルタミ
ン酸アミノ酸の組み合わせを含む。例えば、酸性構造は、10個の連続したアスパラギン酸(10dで示す)、10個の連続したグルタミン酸(10eで示す)、8つの連続したアスパラギン酸及び8個の連続したグルタミン酸(8d8eで示す)、5つのd-e(5de、1つのd及び1つのeを1組として合計5組である)を含む。
【手続補正29】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
一例において、酸性構造は、集合分子のC末端に連結され、この場合、単一構造の基本構造は、式8で示される。
【手続補正30】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
B-A-E(式):式中、好ましくは、1つ前のC末端は、1つ後のN末端に連結される。
【手続補正31】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
一例において、単一構造は、タグタンパク質(説明の便宜上、Fで示す)をさらに含み、タグタンパク質は、前述の単一構造又は前述の集合構造の精製のために使用され、一例において、タグタンパク質は、SEQIDNO:15と同一性を有し、又は同一性が少なくとも50%、60%、70、80%、85%、90%、95%若しくは99%を有するアミノ酸配列を含む。
【手続補正32】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
一例において、前述のウイルスは、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、HPV及び新型コロナウイルスのうちのいずれか1種又は複数種である。
【手続補正33】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0123
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0123】
一例において、阻害構造単位が阻害ポリペプチドである場合の結合力は、ナノ抗体又は抗体である場合の1000~1,000,000倍である。
【手続補正34】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
1.以下、本実施例の各実験に係る、調製されたウイルス阻害タンパク質の構造式を説明する。
【表2】
【手続補正35】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0146
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0146】
3.Kd評価
表面プラズモン共鳴(SPR)実験SPRは、Biacore T200バイオセンサー(GE Healthcare、米国)を用いて行った。アミンカップリングによりウイルス阻害タンパク質をSシリーズセンサーチップCM5(GE Healthcare、米国)に固定した。His-tagged RBDの参照菌株及びOmicron変異体(Sino Biological Inc、北京、中国)は、6種類の濃度(0.25、0.5、1、2、4及び8nM)に希釈され、Delta変異体のRBD(Sino Biological Inc、北京、中国)は、(0.5、1、2、4、8及び16nM)に希釈された。25℃でシングルサイクル動力学分析を行った。10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.05%のTweenにおいて、結合相を120s及び30μL/minに設定し、解離相をそれぞれ300s及び30μL/min 0.05%のTween-20に設定してランニングバッファとした。分析サイクルを9回繰り返し、分析物濃度を昇順に並べた。Biacore T200評価ソフトウェア(2.0バージョン、GE Healthcare、米国)を用いて解離定数(Kd)の値を算出した。
【手続補正36】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0161
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0161】
Deltaは、Delta株の偽型ウイルスに対する抑制試験を示し、Originalは、野生型新型コロナウイルスの偽型ウイルスに対する抑制試験を示し、Omicronは、オミクロン株の偽型ウイルスに対する抑制試験を示す
【手続補正37】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0171
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0171】
結果:
元のウイルス株は、ウイルス阻害タンパク質により強く抑制され(IC50は108.6pMである)、
また一方で、ウイルス阻害タンパク質は、極めて低い濃度(IC50がそれぞれ92.8、121.9、61.0及び121.9pMである)でAlpha、Beta、Delta及びOmicron変異体に対する効果的な抑制能を示すことができ、
元のSARS-CoV-2を中和する能力に比べて、ウイルス阻害タンパク質がDelta変異体を抑制する能力は、約1.8倍増加し、他のウイルス株を抑制する能力は、ほぼ同じである。
【手続補正38】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
マウスモデルにおけるウイルス阻害タンパク質の作用を測定するために、SARS-CoV-2とウイルス阻害の予備混合物でK18-hACE2マウスに感染した。感染後2日目及び5日目(dpi)にマウスを殺した。5日内に、マウスの体重変化及び死亡率を毎日モニタリングした。
【手続補正39】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0189
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0189】
(1)急性経口毒性
20匹のSPF ICRマウス(18.0~22.0g)と20匹のSPF SDラット(180-220g)を急性経口毒性試験に用いた。雄と雌の数は、等しい。一晩絶食したマウスとラットに、表3における構造式に対応して調製したウイルス阻害タンパク質を投与し、投与量が5000mg/kg・bwであり、胃挿管を用いて単回5000mg/kg・bwの量を投与した。次に、14日間に、動物の毒性及び死亡率の臨床症状を毎週モニタリングした(0日目、7日目及び14日目)。行動、死亡数、体重をそれぞれ評価し、観察期間終了時に解剖した。
【手続補正40】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0195】
(4)マウス骨髄多染性赤血球(PCE)小核試験
50匹のICRマウスをマウス骨髄多染性赤血球小核試験に用いた。オスとメスの数は、等しい。動物を5群に分け、各群5匹の雌マウスと5匹の雄マウスとした。試験群に、それぞれ5000、2500及び1250mg/kg・bwの投与量で、表3における対応して調製したウイルス阻害タンパク質をそれぞれ1回投与した。一方群を陰性対照として溶媒である精製水で処理した。他方群を陽性対照として40mg/kg・bwのシクロホスファミド(CP)を腹腔内注射した。試験群は、0時間目及び24時間目に経口投与によってウイルス阻害タンパク質に曝露した。ウイルス阻害タンパク質に2回暴露した後、6時間目にマウスを殺し、骨髄塗抹標本を製造した。各動物の1000個の多染性赤血球
(PCE)における小核の出現を計算した。200個のPCEが計数されると、PCEと正色素性赤血球(NCE)の比率を決定した。U検定により統計解析を行った。陰性対照に比べて、実験群の小核形成の発生率が顕著に増加した場合、試験剤が体内の染色体に有害であると判断し、投与量-反応相関性で判断すべきである。
【手続補正41】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0204
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0204】
他方群にウイルス阻害タンパク質を添加せず、陰性対照(NC)とした。90日以内(0日目、15日目、30日目、45日目、60日目、75日目及び90日目)に、それらを15日毎に3回サンプリングした。偽型ウイルス中和試験により抑制率を評価し、抑制率=(NC-サンプル)/NCいう式で算出され、なお、サンプルが表5のサンプル欄に表示される各種のタンパク質であり、RFUがNCとサンプルの各試験による結果の単位である
【国際調査報告】