(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】積層薄板エンドプレート
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20250204BHJP
F16H 33/02 20060101ALI20250204BHJP
H02K 1/28 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
H02K7/14 Z
F16H33/02 A
H02K1/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539473
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 US2022053997
(87)【国際公開番号】W WO2023129517
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515050068
【氏名又は名称】アンバー キネティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AMBER KINETICS, INC.
【住所又は居所原語表記】32920 Alvarado-Niles Rd.,Suite 250 Union City,CA 94587 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー カイル ビー
(72)【発明者】
【氏名】サンダース セス アール
(72)【発明者】
【氏名】ホロウェー マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ローデヴァルト キーナン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ライト キアナ
【テーマコード(参考)】
5H601
5H607
【Fターム(参考)】
5H601AA04
5H601DD01
5H601HH04
5H601JJ05
5H607EE42
(57)【要約】
互いに積層された、多くの隣接する薄板を備えるロータ用積層薄板エンドプレートであって、各薄板は、中心軸に対して対称な中央領域と、各スポークが中央領域から半径方向外側に広がる、複数のスポークと、を含む同一形状であり、各スポークは、その先端に貫通孔を有し、薄板は、互いに積層されて整合されることで、各スポークに対して、各薄板の対応する貫通孔にボルトの挿入を可能とする、エンドプレート。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された、複数の隣接する薄板を備えるロータ用積層薄板エンドプレートであって、
それぞれの前記薄板は、同一形状であって、前記同一形状は、
中心軸に対して対称な中央領域と、
前記中央領域から半径方向外側に広がり、その先端に貫通孔を有する、複数のスポークと、を含み、
前記薄板は、互いに積層されて整合されることで、それぞれの前記スポークに対して、それぞれの前記薄板の対応する前記貫通孔にボルトの挿入を可能とする、エンドプレート。
【請求項2】
ねじナットは、それぞれの前記スポークの前記貫通孔に挿入されている、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項3】
8本のスポークを有する、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項4】
前記中央領域の軸方向中心を通る貫通孔がない、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項5】
前記薄板は、鋼、プラスチック、炭素繊維、複合材、およびセメントからなる群より選択される材料で作られている、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項6】
それぞれの前記薄板は、単一の材料片から形成されている、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項7】
薄板の前記スポークは、前記中央領域の外側の隣接したスポーク間の領域から材料を除去することにより形成される、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項8】
前記同一形状は、隣接したスポークの各対間に1つ以上の中間貫通孔をさらに有する、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項9】
前記中央領域は、略円形の形状であり、前記中間貫通孔は、前記中央領域の円周外側に位置する、請求項8に記載のエンドプレート。
【請求項10】
前記薄板の少なくとも1つは、タグを含み、タグは、複数の隣接する各薄板を整合させるために、製造プロセスの間に使用される、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項11】
前記同一形状は、前記中央領域に、前記エンドプレートをスタブシャフトに接合するために使用され得るボルトサークルをさらに有する、請求項1に記載のエンドプレート。
【請求項12】
製造プロセスの間に、各薄板に接着剤が塗布される、請求項1に記載のエンドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、ロータ用エンドプレートの設計に関する。具体的には、フライホイールロータと連携して使用することに好適な、積層薄板からなるエンドプレートの設計に関係する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置(UPS)設定などの短時間の電力用途においてだけでなく、長時間のユーティリティ規模の用途においても適用される最新のエネルギ貯蔵ロータは、通常、複合繊維巻線ロータで、または鋼からのどちらかで構築される。一部の商用/工業用設定においてと同様に、このようなユーティリティ用途において生じる長時間の放電用途に取り組む際、ロータのコストを最適化することは、主要な目標である。
【0003】
フライホイールロータのコストは、製造されるシステムコストの50%の範囲を構成し得る。したがって、他のフライホイール部品は、システムコストの残り半分を構成する。また、これらのシステムコストの多くは、ロータの体積および/または質量に比例する。したがって、ロータの体積および質量を減少することは、フライホイールエネルギ貯蔵システムにおいて最大の関心事である。
【0004】
モノリシック鋼ロータは、標準的な鋼の加工プロセス(一次溶融、二次再溶融精製ステップ、鍛造、焼入れ、および焼戻し)を利用することによって、達成可能な設計範囲内で設定された所望の形状と材料の機械的特性の到達が可能となる。一般に、ロータの形状は、「形状係数」kによって特徴付けられることができる。
k=E/σV ・・・(式1)
ここで、Eは蓄積された運動エネルギ、Vはロータの総体積、σはロータのピーク応力である。形状係数は0~1の範囲である。概略的に、形状係数は、ロータの材料利用の有効性を示す指標である。高い形状係数は、応力がロータ体積全体にわたって満遍なく分布しているため良好な材料利用に相当する、という指標である。形状係数の定義からもわかるように、蓄積されたエネルギはロータのピーク応力に直接比例する。したがって、実用的に使用可能なピーク応力は、ロータにどのくらいエネルギを貯蔵できるかを定義する。最大ピーク応力は、材料の降伏応力または極限応力に関する破壊基準によって限定され得る、または繰り返しの疲労制約によって限定され得る。
【0005】
一般に、6~20インチの実質的な軸方向厚さを有する大型のマルチトンモノリシック中実円筒状ロータの形状係数は、0.55の範囲である。2次元平面応力(軸方向応力ゼロ)を想定して分析された非常に薄いディスクについては、形状係数が0.6をわずかに超えると評価され、モノリシックロータと比較してこのような薄いディスクにおいて約10%の改善を表している。
【0006】
適正なエネルギ容量を備えたロータを製造するには、ロータの総体積(または質量)を適切に設定する必要がある。ロータの積層薄板構成の使用によって、ロータのサイズは、個々の薄板の製造プロセスから分離される。中心軸に対して対称な円筒状ロータのサイズは、その軸方向長さおよびその直径、または、その横方向長さによって定められる。この直径は、材料ストックの利用可能な供給幅、つまりコイル幅によってのみ定められる。また、積層薄板ロータの軸方向寸法は、薄板の積層数によって定義される。したがって、実質的にロータの任意の軸方向寸法を実現することができる。積層薄板アプローチで達成することができるロータの寸法は、比較的制約がなく、中実ロータの製造で使用される代替的アプローチである中実鍛造を用いて実現可能な寸法とは対照的である。
【0007】
冷間圧延は、概して、前もって熱間圧延された板材料の厚さをさらに薄くする、標準的な熱間圧延プロセスに続くプロセスである。冷間圧延という用語は、そのプロセスで許容される温度が、金属表面にスケールが形成される温度よりも低いことを指す。冷間圧延は、コイルまたはシート形式で販売されている製品、および多数の金属の組合せに用いられる多くの合金、処理、仕上げ条件とともに、金属製造産業全体で広く使用されている。材料の例としては、バンパや構造パネルで使用される高強度部品と同様に、成形が容易な車体パネル部品など、自動車製造の多くの部品で使用されているものである。変圧器、モータ、および発電機を構築するために電気産業で使用されるケイ素鋼材も冷間圧延され、所望の厚さ、均一性、および仕上げを達成する。
【0008】
自動車のバンパや構造パネルといった主要部品用の冷間圧延鋼材は、例えば最大2000Mpaの非常に高い引張強度で容易に利用できる。このような材料は、概して、世界を先導する供給業者から約0.5mm~2.0mmの厚さで提供されている。自動光学検査システムで容易に検査が行われ、材料の品質は概して、優れている。したがって、概して、大きなパネル内で欠陥は見当たらない。さらに、このような薄い材料のための焼入れステップは、適正な冷却速度を可能にし、低合金鋼の完全な硬化でさえも容易に達成されるため、非常に基本的な炭素鋼合金を使用して、非常に高い強度を達成することができる。
【0009】
すでに述べたように、ラミネート鋼ロータには、モノリシック鍛造鋼ロータよりもコストと性能においていくつかの利点がある。(1)冷間圧延鋼の連続加工は、モノリシックロータに求められる個別加工よりも経済的である。基本的に、広範囲で連続的な圧延プロセスが1回限りの鍛造ステップに代替される。(2)モノリシックロータの厚さは、使用される鋼合金の焼入れ性によって定められる。厚さ6インチのロータが厚さ2mmの薄板と同じ強度レベルを達成するには、著しくより高価な鋼合金を使用しなければならない。モノリシック鍛造品は、焼入れ性の限界により最大厚さの限界に達するが、冷間圧延薄板で構成されるロータは、各薄板が個別に焼入れおよび焼戻しされるため、必要な厚さで組立ロータに積み重ねられることができる。(3)ラミネート鋼ロータは、鋼に存在する欠陥の点でも利点がある。上記のように、冷間圧延プロセスおよび検査プロセスにより、非常に高品質の材料が生産される。また、フライホイールロータにおいて、最大の応力は面内の半径方向およびフープ(円周)方向にある。半径方向またはフープ方向に垂直に配向した欠陥は、き裂を形成し、フープ方向および半径方向に平行な欠陥よりも速く進展する。圧延プロセスは、粒子および任意の欠陥を圧延方向と平行に配向させるが、これは、疲労亀裂進展の観点から最適である。モノリシック鍛造ロータは、ロータ軸に平行に配向した欠陥を有し得、これは、そのような構造での疲労亀裂進展において最も脆弱な配向である。
【0010】
中実鍛造品の検査は、通常、体積による超音波(UT)検査、および表面検査のための磁粉探傷検査および/または染色浸透探傷検査によって行われる。これらは標準化された試験プロセスであるが、検査誤差は大きく変動し得るため、実質的に必要とされている。これに対し、冷間圧延された材料の検査は、生産現場で大幅に自動化されており、検査のコストと最終製品の品質の点で有利な結果を得ている。
【0011】
それぞれがフライホイールエネルギ貯蔵システムの完全深度サイクルに対応する、10,000回あまりの完全振幅の応力サイクルを意図する用途においては、応力振幅は通常、繰り返し疲労によって実用的に定められる。繰り返し疲労寿命は、欠陥の存在(または不在)と、亀裂として、破壊を促進する限界寸法へのその後の進展によって規定される。亀裂進展は、所定の最小レベルと最大レベルの間での応力を繰り返した直接的な結果である。冷間圧延薄板は、それら固有の残留欠陥が好適に配置されているため、薄板は繰り返し疲労に対して優れた弾力性を示す。
【0012】
Seth R.Sandersらによる、2020年2月11日に出願された米国特許第11,362,558号においては、互いに積層された、隣接するいくつかの薄板から形成されるフライホイールロータが開示されている。当該発明では、薄板の積層体の一方または両方の端のエンドプレートも開示されている。米国特許第11,362,558号において、エンドプレートの各種実施形態が開示されている。しかしながら、さらなる研究開発により、当該特許に開示された鋼ロータに用いられた積層薄板アプローチは、鋼エンドプレートにも有益であり得ると示されている。
【0013】
本発明がなされたのは、これらの検討事項および他の検討事項に対してである。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、積層薄板を使用して、フライホイールロータ用エンドプレートを製造することを目的とする。
【0015】
特定の実施形態は、ロータを形成する薄板の積層体をいずれかの端部で支えるエンドプレートの設計を目的とする。エンドプレートの実施形態は、中央領域と、中央領域から半径方向外側に広がる複数のスポークとを含む。一実施形態において、各スポークは、ボルトを受ける孔を有する。特定の実施形態において、ボルトは、各ロータ薄板を貫通し、薄板をエンドプレートに固定する。一実施形態において、エンドプレート自体は、いくつかの薄板から構築され、各薄板は、ロータ薄板の孔に整合した孔を有する。
【0016】
他の実施形態は、互いに積層された、いくつかの隣接する薄板を備えるロータ用積層薄板エンドプレートであって、各薄板は、中心軸に対して対称な中央領域と、各スポークが中央領域から半径方向外側に広がる、いくつかのスポークと、を含む同一形状であり、各スポークは、その先端に貫通孔を有し、薄板は、互いに積層されて整合されることで、各スポークに対して、各薄板の対応する貫通孔にボルトの挿入を可能とする、エンドプレートを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図面を参照して説明される。図面において、同様の参照符号は、別段の定めがない限り、様々な図の全体にわたって同様の部分を指す。
【0018】
【
図1】
図1は、フライホイールユニットとも呼ばれるフライホイールエネルギ貯蔵システムの一実施形態の概略断面図である。
【0019】
【
図2A】
図2Aは、スカラップ状の円と呼ばれる薄板形状を示し、これは、貫通孔が挿入され得る外周近くに低応力領域を有する。
【0020】
【0021】
【
図3A】
図3Aは、エンドプレートがスポークを有するように、外径の周りから材料を除去するエンドプレートの一実施形態を示す。
【0022】
【0023】
【0024】
【
図4B】
図4Bは、スタブシャフトおよび整合タグの取付機構を備える
図4Aのエンドプレートの一実施形態を示す。
【0025】
【
図5】
図5は、エンドプレートに取り付けられるスタブシャフトの一実施形態を示す。
【0026】
【
図6】
図6は、フライホイールエネルギ貯蔵システムにおける使用に好適な完全組立ロータの実施形態を示す。
【0027】
これらの図は、例示のみを目的として、本発明の実施形態を示している。以下の議論から、本明細書に記載の本発明の趣旨から逸脱することなく、本明細書に示す構造および方法の代替的な実施形態を使用できることは、当業者にとって容易に認められるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一部を形成し、例示として、本発明を実施することができる特定の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が当業者に本発明の範囲を確実にかつ完全に、詳細に伝えるように提供される。とりわけ、本発明は、方法、プロセス、システム、または装置として具体化することができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0029】
緒言
ラミネートロータまたはラミネートエンドプレートは、多くの薄板を積層することによって構築されるものであり、積層体の各薄板は、同じ形状と中心軸に対して同じ配向を持つ。例えば、300mmの厚さのロータは、それぞれ2mmの厚さの薄板が150枚必要である。24mmの厚さのエンドプレートは、2mmの厚さの薄板が12枚必要である。以下で説明するように、エンドプレートの厚さは、接着剤が薄板間に用いられる場合には、24mmを僅かに超える。現在進行中のより大型の設計についての厚さは、実質的により大きく、あるいは、これまで計画された最大のものについて、最大で約75mmである。
【0030】
単一の点欠陥に対する弾力性においては、単一の点欠陥である場合に隣接する薄板が余分な荷重を支えるように全体の積層設計を組織して、壊滅的な破壊を回避する設計が可能である。
【0031】
一般に、積層鋼薄板で構成されるロータは、モノリシック鍛造鋼ロータよりも安価とすることができ、モノリシック鍛造鋼ロータよりも大きい応力振幅を提供できる。これは、ロータの単位コストあたりの性能の向上に直接つながり、その結果、フライホイールのシステムバランスの向上にもつながる。
【0032】
薄板は、打ち出し、レーザ切断、または他の任意の好適なプロセスによって製造することができるので、積層薄板ロータの形状は円形である必要はないことが理解され得る。任意の形状を作成するためにこのようなプロセスを使用することで、薄板は、任意の形状に作成され得る。したがって、積層薄板で作られたロータは、円形の輪郭または円筒形状に限定されない。積層薄板ロータとして有利な形状を達成し、関連するサポート要素を提供することが、本発明の主な目的である。
【0033】
定義
本明細書で使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0034】
本明細書で使用されるエネルギ貯蔵システムは、エネルギを貯蔵および放出するシステムを指す。エネルギ貯蔵システムは、概して、電力グリッドに連結されており、グリッドにより、必要に応じてエネルギの貯蔵および引き出しが可能である。
【0035】
本明細書で使用される、フライホイールエネルギ貯蔵システム、フライホイールユニットまたはフライホイール装置、またはフライホイールは、フライホイールロータに運動エネルギを貯蔵するエネルギ貯蔵システムである。1つ以上のフライホイールユニットは、互いに連結する場合、エネルギ貯蔵システムを構成する。フライホイールユニットとは、フライホイール筐体に収容され、かつ取り付けられてもよいパワーエレクトロニクス要素と同様に、フライホイールハウジングまたは筐体、およびそれが収容する任意のロータ、モータ/オルタネータ、その他の要素を指す。
【0036】
本明細書で使用されるフライホイールロータまたはロータは、概して、スピンする、シリンダやディスクなどの回転対称質量体である、エネルギ貯蔵システムの主要部品である。ロータは、それ自体がコンバータに電気的に連結されたモータ/オルタネータに対して直接または間接的に物理的に連結されている。コンバータは、モータ/発電機をdcバスにインターフェースする単一のインバータであってもよい。これにより、共通の高出力インバータを用いた複数のフライホイールをdcバス上で集約することが可能となる。
【0037】
貯蔵のための動力が受容されると、ロータが駆動され、フライホイールロータの回転速度を上昇させる。フライホイールロータが高速にスピンするほど、より多くのエネルギが貯蔵される。動力が抽出される際に、フライホイールロータは、モータ/オルタネータを駆動させる。
【0038】
本明細書で使用される薄板は、通常、冷間圧延プロセスによって製造される薄くて滑らかな平らな材料片、概して鋼を指す。冷間圧延鋼は、薄板に使用され得る材料の明白な例であり、他のタイプの材料、とりわけプラスチック、アルミニウム、セメント、ガラス、炭素繊維複合材、他の複合材、鋼(冷間圧延以外)が使用され得る。本明細書で使用される薄板は、ある形状に切断され、上面と底面の2つの面を有する。別段の定めがない限り、本明細書において、薄板は、円形、または、主として円形の形状であり、軸方向寸法、および、半径方向または幅方向の寸法の2つの寸法で特徴付けることができる。
【0039】
本明細書で使用される薄板積層体は、ロータまたはエンドプレートなどの、一方が次の薄板上に積層された複数の隣接する薄板から構築された3次元物体をいう。薄板積層体は、上端部と底端部の2つの端部を有する。概して、薄板は同じ形状であり、互いに隣接して位置決めされ、中心軸に対して同じ回転配向を有し、ともに接合または保持される。例えば、複数の円形の薄板は、シリンダのように見える。複数の長方形の薄板は、長方形の直方体のように見える。本明細書に記載の薄板積層体の主な用途は、フライホイールエネルギ貯蔵のためであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、モータおよび他の機械装置で使用されるロータおよびエンドプレートが、本発明を利用し得る。
【0040】
本明細書で使用される積層薄板ロータは、すなわち、一方が次の薄板上に積層された複数の隣接する薄板として、薄板積層体から構築されたロータを指す。
【0041】
本明細書で使用される積層薄板エンドプレートは、すなわち、一方が次の薄板上に積層された複数の隣接する薄板として、薄板積層体から構築されたエンドプレートを指す。
【0042】
フライホイールエネルギ貯蔵システム
図1は、フライホイールユニット100とも呼ばれるフライホイールエネルギ貯蔵システムの一実施形態の概略断面図である。フライホイールユニット100は、フライホイールロータアセンブリ130または単にフライホイールロータ130、モータおよびオルタネータ140(両方の機能が概して、単一のサブシステムによって行われるため、モータ/オルタネータ140とも呼ばれる)、フライホイールハウジングまたは筐体110、パワーエレクトロニクスユニット120を含む。
【0043】
エネルギをフライホイールロータ130内に貯蔵できる、またはそれから引き出せるように、モータ/オルタネータ140は、電気エネルギと機械エネルギとの間で変換を行う。モータ/オルタネータ140は、モータおよびオルタネータの機能を兼ね備えているため、モータおよびオルタネータ140と呼ばれることもある。ある実施形態において、モータ/オルタネータ140は、フライホイールロータ130の下部ジャーナルに連結されて下部サポート軸受にも接続される下部スタブシャフト134を介して、間接的にフライホイールロータ130に連結される。上部スタブシャフト132は、フライホイールロータ130と上部軸受に連結する。他の実施形態において、フライホイールロータ130は、モータ/オルタネータ140に連結するシャフトを組み込んでいる。モータ/オルタネータ140は、概してフライホイール筐体110から真空フィードスルーを通るワイヤまたは他の電気的連結を介して、パワーエレクトロニクスユニット120に連結される。
【0044】
フライホイールユニット100は、フライホイールロータ130の質量を少なくとも部分的に浮揚する、磁気アンローダとも呼ばれるリフティングマグネット150をさらに備える。リフティングマグネット150は、フライホイールロータ130の上方に配置されている。
【0045】
パワーエレクトロニクスユニット120は、DCまたはACのいずれかの入力電流をモータ/オルタネータ140に受け入れ可能な交流に変換するための電力コンバータを含む電気部品を取り囲んで収容するハウジングを有する。パワーエレクトロニクスユニット120は、また、必要に応じて、センサ、プロセッサ、メモリ、コンピュータストレージ、およびネットワークアダプタを含み、フライホイールユニット100の通信、制御、および状態監視を行ってもよい。
【0046】
フライホイールハウジング110は、単一のフライホイールロータ130および単一のモータ/オルタネータ140を取り囲むように示されているが、他の実施形態においては、単一の筐体が、複数のロータおよび複数のモータ/オルタネータを取り囲んでもよい。
【0047】
ロータ薄板形状
円ディスク形状の薄板は、ロータとして自然な選択であり、最も一般的な対称性を提供するが、他の形状も実用的であり、実質的に有利である。冷間圧延薄板材料は通常、コイル形式で製造業者から供給されるため、戦略的に形状を選択して、薄板材料の利用率を向上させることができる。例えば、供給されたままのコイル幅と一致する少なくとも2つの辺または縁部を有する正多角形は、従来の円よりも高い割合の薄板材料を使用する。
【0048】
図2Aは、積層薄板ロータを形成するために用いられる薄板の形状の一実施形態を示す。本実施形態において、各薄板は同一の形状であり、その形状は、中心軸の周りで対称である。この形状は、回転対称とも呼ばれ得る。薄板形状は、略円形であるが、その外周または円周に沿って突出部を有する。突出部は、薄板形状の円周に沿った突出部内に挿入されるための、締結ボルトまたは接合ボルトの配置を目的とした貫通孔を有することができ、これは、貫通孔に関連する応力を最小限に抑える。
【0049】
薄板積層体は、締結機構によって互いに結合される。特定の実施形態において、締結機構は、貫通孔を通過する2つ以上のタイロッドまたはボルトを有する。締結機構は、薄板が締め付けられる際、積層体の各薄板が中心軸に対して同じ向きになることを確実にする。エンドプレートは、積層体の一方または両方の軸方向端部で積層体をさらに固定する。本明細書に開示される形状の実施形態は、すべて回転対称であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転対称ではない形状も本発明の範囲内に入ることとする。
【0050】
参考までに、内接する正方形を基準とした円は、利用可能な材料のπ/4または約0.785の割合を消費する。提供された正方形の各縁部の一部分を共有する正八角形は、利用可能な材料の約0.83の割合を消費する。
【0051】
積層薄板製造および接合方法
薄板積層体において薄板を互いに接合し、スタブシャフト(またはシャフト)に接合して、軸受による支持を提供することは、形状設計に重要な制約を課す。非円形の薄板形状を使用は、以下に説明するように、接合技術の有利な利用を可能にする。
【0052】
薄板は、多くの可能手段によって互いに接合され得る。これらには、接着剤による結合、多くの電気機械ロータアセンブリで行われるような中央シャフトへの締まり嵌め、多くの可能な溶接プロセスの1つによる溶接、および軸方向ボルトの保持が含まれる。
【0053】
薄板の結合には、アクリル系金属接着剤、シアノアクリレート、無酸素性金属接着剤、およびエポキシ樹脂を含む、種々な接着剤を用いてもよい。金属に対する接着力が最も強いとされているのが、エポキシ樹脂、一般に単にエポキシともいう。
【0054】
場合によっては、外周の溶接は実現可能であり得るが、溶接は一般に、溶接部の熱の影響を受ける領域に起因して、材料の劣化を強いる。レーザ溶接は通常、小さな電磁鋼の薄板積層体で使用されるが、これらの軽量溶接は、基本的な構造溶接を意図していない。
【0055】
中央シャフトまたは軸方向保持ボルトを使用するには、貫通孔、つまり、薄板積層体の各薄板を軸方向に通過する孔が必要である。一般に、フープ応力と半径方向応力がほぼ等しいロータの中心近くの領域(2軸応力条件)については、必要な貫通孔におけるフープ応力は、いずれかの一般的な主応力の2倍になる。中央領域から離れた領域、例えば円ディスクの外周上において、応力は、フープ(円周)方向に単軸である。単軸応力では、円形の貫通孔により、一般的な応力の3倍の局所的な応力集中が起こる。したがって、円形薄板の形状における貫通孔は、円形薄板では一般に実用的ではない。
【0056】
しかしながら、薄板形状は、厳密に円形である必要はないため、
図2Aおよび
図3Aに描かれるような、薄板の大部分における全体的な通常の応力に比べて、応力が大幅に増加することなく貫通孔が導入され得る外周近くの低応力領域を許容する、多くの非円形の形状がある。
【0057】
図2Aは、本明細書においてスカラップ状の円と呼ばれる、貫通孔を導入し得る外周近くに低応力領域を含む、薄板形状200の一例である。形状200は、突出した「スカラップ」202を有し、それぞれが円形の外周または円周からわずかに突出している。形状200は、等間隔の8つのスカラップ202を有するが、他の実施形態においては、スカロップの数はこれより多くても少なくてもよい。遠心荷重下において、スカラップ202は、一般的なフープ応力から効果的に保護される領域であるため、非常に低い応力に維持される。したがって、応力集中の問題を起こすことなく、1つ以上のスカラップに1つ以上の貫通孔204を簡単に導入することができる。この方式により、軸方向に配向したボルトによって薄板を接合できる。さらに、軸方向ボルトは、完全組立ロータの上部および底部にあるそれぞれのスタブシャフトとの相互接続を容易にする終端の上部エンドプレートおよび下部エンドプレートに接合または締結され得る。
【0058】
形状200の突出部は、互いに等距離にあり、スカラップの形状を有しているが、本発明はこれに限定されない。他の実施形態において、突出部は互いに等距離になくてもよく、突出部の形状はスカラップ以外の形状を有していてもよい。
【0059】
形状200は、各スカラップ202に貫通孔204を有する。概して、製造プロセス時、構造維持ボルトが、各貫通孔204から挿入されて、結果として得られる組み立てられた薄板積層体に3次元の剛性を与える。このようなアセンブリにおける課題の1つは、温度を変化させるなどの操作条件全体と同様に、可変負荷条件下においてずれを回避することである。ずれがあるとバランスが崩れる可能性があり、さらに悪いことに、このずれが回転フレームに大幅な減衰を与える場合、動的な不安定性につながる可能性がある。ずれに関連した結果はいずれも、事実上破壊モードである。このずれを防ぐために、スカラップまたは頂点内の貫通孔の近位領域において積層体全体にわたって適正な圧縮面の接触荷重を保つように、保持する貫通ボルトの寸法と張力を特定すべきである。ずれに対する摩擦を考慮し、求められる圧縮面の接触応力を計算した後、貫通ボルトの直径、材料、および張力レベルを計算する。
【0060】
ボルトの張力レベルを確認する便利な方法は、ボルトに張力がかかっているときのボルトの長さの伸びを単に測定することである。これにより、従来のボルトトルク仕様の使用とは対照的に、ボルトのひずみと応力状態を直接測定できる。
【0061】
もう1つの考慮事項は、許容される貫通孔スロットライナを使用して、ボルトの挿入中および動作中におけるボルトおよび薄板インターフェースの摩耗を軽減することである。繰り返し遠心荷重が作用すると、貫通ボルトは、(繰り返しで)それぞれのクリアランス孔内で偏り、遠心負荷がかかるとクリアランス孔の側壁によって支持されるようになる場合がある。繰り返し遠心荷重の負荷および除荷により、側壁とのこの繰り返しの相互作用が摩耗プロセスを構成し、表面の摩耗とそれに続くボルトの信頼性の低下を引き起こす可能性がある。スロットライナは、アルミニウムや真鍮のようなより柔らかい金属、または有機材料から製造され得る。スロットライナは、一体型管またはスロット付き管として製造されることができる。後者は、例えば、厚さ0.1~1.0mmのアルミニウムストックのシートからスロットライナを曲げ形成することによって製造され得る。
【0062】
図2Bは、薄板形状200の円形の円周206を破線で示す。形状200は、突出したスカラップ202により完全に円形ではないが、形状200は、いずれのスカラップ202からの材料を含まない形状200内の最大の内接円である、薄板の円周206を有すると理解されてもよい。本実施形態において、各貫通孔204は、全体として円周206の外側に位置するが、全体として対応するスカラップ202の内側に位置する。
【0063】
エンドプレート設計
特定の実施形態において、動作、休止、または輸送中に2つ以上の機械軸受によって拘束される回転系について、積層薄板ロータは、軸受とインターフェースするために一対のスタブシャフトに接合されなければならない。以下では、積層薄板ロータのいずれか、または両方の端部に同様の接合アプローチが使用され得るという理解のもと、積層薄板ロータの一端に焦点を合わせて説明する。
【0064】
上述したものと同様の構造用貫通ボルトは、エンドプレートに接続され得る。本明細書で使用されるエンドプレートという用語は、とりわけ、単一の中実部品であってもよく、複数の薄板から形成されてもよく、またはいくつかの部品から組み立てられるものであってもよい。エンドプレートの目的の一つは、ロータを通る軸方向の貫通ボルト間におけるロータの外周近くにおける構造的に十分な連結を提供することである。第2の目的は、中央スタブシャフトがロータに接続または接合する方法を提供することである。
【0065】
特定の実施形態において、中実の円形エンドプレートが使用される。回転するディスクにおけるピーク相当応力は中央で発生する。円筒シャフトまたは他の戦略的に設計されたスタブシャフトを平板に接合するために使用されるいくつかの方法は、このピーク応力領域に応力集中を生成する。さらに、薄板形状の設計を考慮して上述したように、外周近くの円形エンドプレートに貫通孔を導入すると、深刻な局所応力集中が発生する。中心および/または外周におけるこの応力集中は、ロータの最大速度、したがってエネルギ貯蔵容量を制限する。ロータの上部エンドプレートおよび底部エンドプレートの形状は、シャフト接続、および構造用貫通ボルトへの接続に対する応力を軽減するような形状にしなければならない。
【0066】
特定の実施形態において、本明細書でリフティングマグネット150と呼ばれる、磁石ベースの除荷システムは、系の軸受に課されるであろうその重力負荷を打ち消すためにロータに磁気浮上力を与える。リフティングマグネット150と相互作用するために、フライホイールロータ130用の強磁性の上部鋼エンドプレートの領域を全密度および円対称に維持することが望ましい。したがって、磁気浮上を使用すると、上部エンドプレートの設計に1つの制約が課せられる。
【0067】
図3Aは、プレートがスポーク310を有するように、外径の周りから材料を除去するエンドプレート300の一実施形態を示す。エンドプレート300においては、材料が除去されて、中央領域320から半径方向外側に延在するスポーク310が作成される。エンドプレート300の外周において質量を減少することによって、中央領域320の応力を効果的に減少させ、下部スタブシャフト134への取り付けを可能にする。エンドプレート300は、とりわけ、中心孔330、ボア、ボルトサークル、またはシャフトに接続するための溶接を含む、様々なメカニズムによってスタブシャフト132、134に取り付けられてもよい。この設計において、使用するスポークは任意の数であってもよい。特定の実施形態において、スポーク310の端部は、前述した貫通ボルトに直接接続することによって、隣接する薄板積層体に接続される。特定の実施形態において、薄板積層体は上部エンドプレートおよび底部エンドプレートにより支えられる。他の実施形態において、薄板積層体の上部または底部に単一のエンドプレートのみがあってもよい。
【0068】
中央領域330は、通常、リフティングマグネット150のような中実の強磁性鋼で作られ、リフティングマグネットと相互作用する。リフティングマグネット150はロータ130の上部に位置しているため、この制約は、ロータ130上方のエンドプレートにのみ必要である。したがって、特定の実施形態において、下部エンドプレートの中央領域は、強磁性鋼で作られなくてもよい。
【0069】
スポーク310は、スポークの長さ沿いよりもスポークの端部に質量がより多くなるように、外側に向かって先細になってもよく、またはドッグボーン形状であってもよい。スポーク310の端部は、外径の周りのリムを介して接続されてもよい。スポークの端部に質量を追加することによって、スポークの端部が遠心荷重を受けた際に隣接する円形の板と同等の半径方向の変位を経験するように設計でき、これによって、貫通ボルト接合に対してスポークでの応力集中を防ぐ。スポーク310の長さおよび幅は、プレートの中心における最大許容応力およびロータを持ち上げるために使用される除荷磁石の面積によって決定される。
【0070】
特定の実施形態において、エンドプレート300は、上記以外の特性を有してもよい。例えば、Seth R.Sandersらによる、2020年2月11日に出願された米国特許第11,362,558号は、いくつかの実施形態のエンドプレートが開示している。
【0071】
モノリシック中実鋼のエンドプレート、つまり単一の鋼片から作られたエンドプレートを使用することは、材料コスト、機械加工コスト、および応力パターンの点で最適でない場合もある。中実鋼で作られたエンドプレート300の実施形態では、円形または長方形のいずれかである他の中実プレートから、製造において実質的な量の材料の犠牲、すなわち除去を必要とする。また、製造には、かなりの機械加工ステップと仕上げステップを必要とする。また、一体型の中実鋼のスポークを保持している部品であるため、残留遠心荷重によって依然として中央領域に応力制限が課され得る。
【0072】
特定の実施形態において、中央領域320は、略円形である。
図3Bは、中央領域320の円形の円周340を破線で示している。中央領域320は、スポーク310が突出しているため、完全な円形ではないが、中央領域320の内側に適合し、スポーク310のいずれの材料を含まない最大の内接円である円周340を有すると理解してもよい。
【0073】
積層薄板エンドプレート
図4Aに示すように、複数の積層薄板405からなる積層薄板エンドプレート400は、エンドプレート400とも呼ばれ、上述した多くの課題を回避する。最も重要なこととして、エンドプレート400の機械加工コストが、同じ形状の中実鋼エンドプレートに比べて大幅に低減されることが経験的に知られている。例えば、スポークは、廉価なレーザ加工装置を用いて作成できる。なお、エンドプレート400において、各薄板405は、一体的に、すなわち、単一の鋼片または他の材料の片から作られる。また、各薄板405は、同一形状であり、中心軸Aに対して回転対称である。各薄板405は、8本のスポーク410および中央領域420を有する。他のエンドプレートの実施形態において、スポークの数は、これより多いまたは少ない。
【0074】
薄板405は、各スポーク410の先端に貫通孔430を有する。製造プロセス時、薄板405は、スポーク410について、薄板405のそれぞれの対応する貫通孔430が整合するように、互いに積層されて、ボルトを各薄板の対応する貫通孔430に通すことを可能にする。特定の実施形態において、各薄板405の各貫通孔430を貫通するボルトは、ロータ薄板積層体も通過する。特定の実施形態において、貫通孔430は、ねじ込まれている。
【0075】
特定の実施形態において、エンドプレート400は、1つ以上の中間貫通孔440を有する。エンドプレート400には、スポーク410の各対の間に、中間貫通孔440がある。他の実施形態において、中間貫通孔440は、これより多くまたは少なくてもよい。特定の実施形態において、中間貫通孔440は、ねじ込まれており、アイボルトが挿通される。これにより、例えば設置および保守の際の浮上を可能とする。孔440のそれぞれを通すためのねじを作成するプロセスを簡略化するために、製造プロセスの間に、孔440の内部にナット445を挿入して結合させておいてもよい。
【0076】
一実施形態においては、中間貫通孔440を構成する一部の薄板で、標準六角ナットを受け入れるようにパターンが切断される。ナットは、エンドプレート300の各層の間に置かれた接着剤を硬化させながら、適切に結合される。12枚の厚さ2mmのシートの積層体を用いて、5枚程度のシートにレーザ切断された六角形のパターンが存在し得、浮上時にナットを確実に固定する。
【0077】
図4Bは、エンドプレート400に組み込まれ得る追加の特徴を示す。ボルトサークル450は、エンドプレート400を隣接する構造物、またはスタブシャフト等の装置に接合するための方法を提供する。例えば、ボルトサークル450は、エンドプレート400を、上部スタブシャフト132または下部スタブシャフト134等のスタブシャフト、または後述するスタブシャフト500に接合するために用いられてもよい。この目的のためには、ボルトサークル以外の他の接合機構を用いてもよく、とりわけ単一のボルトを含む。
【0078】
また、エンドプレート400は、タグ460を備えてもよい。タグ460は、製造プロセス時に、エンドプレート薄板405のそれぞれを互いに整合するために用いられてもよい。シートの作成に用いられる圧延製造プロセスにより変動する、厚みのバラツキおよび他の性質を補うために、アラインメントが使用され得る。タグ460は、例えばレーザ切断によってもたらされる1つ以上の薄板405の不可欠な部分であってもよい。あるいは、とりわけ、1つ以上の薄板405に貼着されてもよい。特定の実施形態において、各シートは、厚み等の性質のうち8本のスポークにわたって均一性を維持するように、隣接するシートに対して回転される。
【0079】
既述のように、積層薄板エンドプレート400の製造は、大きさおよび深さが同等の、同一形状の固体エンドプレートの製造よりも費用対効果が高い。
【0080】
製造工程
エンドプレート400を製造するプロセスの一例として、以下の主要工程が挙げられる。
【0081】
各薄板は、矩形状またはその他の形状に圧延された平板状の鋼板から切断される。圧延プロセスにより、材料の厚さにわずかなムラがある。例えば、シートの中心は、縁部よりもやや厚くなっていてもよい。いくつかの薄板から単一の結合したエンドプレートを作成するために、これらの厚さのムラを、その後の製造工程にて補う必要がある。以下に、受け入れ可能な結果を得る積層薄板エンドプレートを作成するためのプロセスを1つ示す。
【0082】
1.この圧延鋼のストックコイルから、それぞれがエンドプレート薄板に収まるのに十分な大きさの正方形のシートを1枚以上切り出す。切断には、とりわけレーザ打ち抜きおよびせん断を含む、種々の方法を使用してもよい。
【0083】
2.エンドプレート300の形状など指定された形状に、各エンドプレート薄板をレーザ切断または打ち出す。この形状は、タグを任意選択で含んでいてもよい。
【0084】
3.各薄板にエポキシなどの接着剤を塗布する。特定の実施形態においては、フィルム状接着剤を用いる。これは、硬化剤を混合済みのエポキシ(プリプレグの繊維ガラスおよびカーボン繊維材料と同様)であり、使用直前まで低温保存される。フィルム状接着剤は、形状切断され、鋼薄板シートに積層され、均一なボンドライン特性が得られる。(ボンドラインが結合層の厚さである。)そして、各薄板は、互いに、タグを整合させて、積層される(
図4B参照)。フィルム状接着剤、または、他の接着剤は、積層体に各薄板を追加した後に塗布してもよい。
【0085】
4.各中間貫通孔440にナット445を組み込む。
【0086】
5.薄板積層体における最上段および最下段の貫通孔430および中間貫通孔440に、Peek、Teflon、Delrin、その他の好適なプラスチック製のプラグ、またはその他の種類のプラグを適用する。これにより、その後の工程時に孔にエポキシが入ることを防止する。また、peekなどのポリマを用いることは、鋼よりも温度膨張係数が大きいことから有利である。温度上昇でのプラテンプレスにおいてエポキシを硬化する際、プラグが孔をしっかりと埋めるように膨張し、エポキシの進入を防止する。冷却すると、プラグは縮んで元に戻り、容易に除去できる。Peekは、強度、摩擦特性、エポキシと結合しないという点でも有利な材料の一つである。上記のように、TeflonおよびDelrinのような他のポリマ材料もこの目的のために好適である。
【0087】
6.プラテンプレスを用いて、接着剤硬化のための指定された圧力および温度プロファイルを適用する。プレスにより適用されるプロファイルまたはプログラムは、接着剤の供給業者によって提供されるガイドラインに従って温度を制御する。プラテンプレスにおいて冷却が行われる。
【0088】
7.貫通孔430、440からプラグを抜く。必要に応じて、外周の余剰な接着剤を除去する。
【0089】
一般化エンドプレート設計
最も一般的には、エンドプレート300および400は、既に述べた理由により、スポークを有する。一般的に、本発明は、回転対称なエンドプレートであって、中央領域を有し、中央領域から半径方向外側に広がるスポークを有するエンドプレートを包含する。様々な、スポークの形状および中央領域への締結機構が使用されてもよい。さらに、スポークは、中央領域と同様に、とりわけ鋼、プラスチック、ならびに、炭素繊維、ケブラー、および繊維ガラスを含む複合材等を含め、種々の材質で作られていてもよい。さらに、エンドプレートは、中央領域にボルトを通すための孔を1つ以上有していてもよい。さらに、スポークの先端には、ロータ薄板積層体にエンドプレートを締結するボルトを通すための貫通孔を有していてもよい。
【0090】
図5は、エンドプレート400などのエンドプレートと連結される、または取り付けられるスタブシャフト500の一実施形態を示している。スタブシャフト500は、フライホイール130と回転対称である。スタブシャフト500は、上部に円筒状のセクション510、および、エンドプレートに取り付けるための、連結セクション515と呼ばれる底端部を有する。
【0091】
連結セクション515は、1つ以上のフランジ530と、中央領域520とを有する。スタブシャフト500の底部で、フランジ530は、ボルトサークル450のようなボルトサークル、溶接、または単一のねじボルト等の他の形態の機械的な取り付けを介して、エンドプレートに接続される。特定の実施形態において、中央領域520は円錐形状であるため、中央領域520を撓ませることが可能であり、十分な軸方向の剛性を維持しながらフランジ530を半径方向に移動させることを可能にする。この設計は、エンドプレートとの接続におけるロータ130の半径方向の膨張および収縮に適応させる。
【0092】
スタブシャフト500は、幅方向の曲げコンプライアンスを付与されてもよい。このような曲げコンプライアンスは、フライホイールユニット100におけるサスペンション機能として、共振モードを管理するために用いられてもよい。このようなモーダル周波数を、作動速度範囲よりも低く設計することは、通常の運転時におけるこのような共振の励起を避けるための戦略であることが多い。
【0093】
図6は、フライホイールエネルギ貯蔵システムにおける使用に好適な完全組立ロータ600の実施形態を示す。組立ロータは、スタブシャフト610と、2つのエンドプレート620と、積層薄板ロータ640とを含む。エンドプレート620は、積層薄板ロータ640の上部と底部に連結される。積層薄板ロータ640は、
図2Aに示すように、各々がスカラップ状の円形状である複数の薄板で形成される。各エンドプレート620は、8本のスポークを有し、各スポークは、先端にボルトが挿通される対応する貫通孔を有する。モータ/発電機650の一部は、積層薄板ロータ640の下端に連結されている。
【0094】
この開示を読むことで、当業者は、本明細書に開示された趣旨を通じて、さらに追加の代替の構造的および機能的設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態および応用を例示および説明したが、開示した実施形態は、本明細書に開示した正確な構造および構成要素に限定されないことが理解されるべきである。当業者に明らかである様々な修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲で定義される精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法および装置の配置、操作および詳細においてなされ得る。
【国際調査報告】