(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】香料の制御放出のためのマイクロセルシステム
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20250204BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
B32B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539586
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022082000
(87)【国際公開番号】W WO2023129836
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, レイ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CC00D
4F100DC11B
4F100DJ00B
4F100DJ00C
4F100GB90
4F100JL11E
4F100JL12C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
複数の香料が要求に応じて放出され得る香料送達システムが開示される。香料送達システムは、複数のマイクロセルを含み、複数のマイクロセルのそれぞれには、香料組成物が充填されている。複数のマイクロセルのそれぞれは、開口部を含み、開口部は、多孔質シーリング層にまたがられている。香料送達システムは、香料送達システムの付近に、カスタマイズ可能な嗅覚効果を送達するためのツールを提供する。本出願の発明は、香料が要求に応じて放出され得る送達システムを提供することによって、香料の制御放出の必要性に対処する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料送達システムであって、
バッキング層;
複数のマイクロセルを含むマイクロセル層であって、前記複数のマイクロセルの各マイクロセルが、開口部を有し、前記複数のマイクロセルが、複数の第1の種類のマイクロセルを含み、前記複数の第1の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第1の濃度の第1の香料を有する前記第1の香料の組成物を含む、マイクロセル層;
前記複数のマイクロセルの前記開口部にまたがる多孔質シーリング層であって、前記多孔質シーリング層が、多孔質シーリング層平均細孔径を有し、前記多孔質シーリング層平均細孔径が、0.2nm~1mmであり、前記多孔質シーリング層が、複数のシーリングスライスを含み、各シーリングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、多孔質シーリング層;ならびに
第1の剥離シート
を含む、香料送達システム。
【請求項2】
前記第1の香料の前記組成物が、第1の水性キャリアまたは第1の非水性キャリアを含む、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項3】
前記第1の香料の前記組成物が、液体またはゲルである、請求項2に記載の香料送達システム。
【請求項4】
前記複数のマイクロセルが、複数の第2の種類のマイクロセルおよび複数の第3の種類のマイクロセルを含み、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第2の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第3の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記複数の第2の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の前記一部が、第2の厚さを有し、前記複数の第3の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の一部が、第3の厚さを有し、前記第2の厚さが、前記第3の厚さと異なる、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項5】
前記複数のマイクロセルが、複数の第4の種類のマイクロセルをさらに含み、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第4の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記複数の第4の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の前記一部が、第4の厚さを有し、前記第4の厚さが、前記第2の厚さおよび前記第3の厚さと異なる、請求項4に記載の香料送達システム。
【請求項6】
前記複数のマイクロセルが、複数の第5の種類のマイクロセルおよび複数の第6の種類のマイクロセルを含み、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第5の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第6の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記複数の第5の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の前記一部が、第5の平均細孔径を有し、前記複数の第6の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の前記一部が、第6の平均細孔径を有し、前記第5の平均細孔径が、前記第6の平均細孔径と異なる、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項7】
前記複数のマイクロセルが、複数の第7の種類のマイクロセルを含み、前記多孔質シーリング層の一部が、前記複数の第7の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがっており、前記複数の第7の種類のマイクロセルの前記開口部にまたがる前記多孔質シーリング層の前記一部が、第7の平均細孔径を有し、前記第7の平均細孔径が、前記第5の平均細孔径および前記第6の平均細孔径と異なる、請求項6に記載の香料送達システム。
【請求項8】
前記複数のマイクロセルが、複数の第8の種類のマイクロセルおよび複数の第9の種類のマイクロセルを含み、前記第8の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第8の体積を有し、前記第9の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第9の体積を有し、前記第8の体積が、前記第9の体積と異なる、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項9】
前記複数のマイクロセルが、複数の第10の種類のマイクロセルを含み、前記第10の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第10の体積を有し、前記第10の体積が、前記第8の体積および前記第9の体積と異なる、請求項8に記載の香料送達システム。
【請求項10】
前記複数のマイクロセルが、複数の第11の種類のマイクロセルおよび複数の第12の種類のマイクロセルを含み、前記第11の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第11の濃度の前記第1の香料を有し、前記第12の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第12の濃度の前記第1の香料を有し、前記第11の濃度が、前記第12の濃度と異なる、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項11】
前記複数のマイクロセルが、複数の第13の種類のマイクロセルをさらに含み、前記複数の第13の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第2の香料の組成物を含み、前記第2の香料が、前記第1の香料と異なる、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項12】
前記複数のマイクロセルが、複数の第14の種類のマイクロセルをさらに含み、前記複数の第14の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第3の香料の組成物を含み、前記第3の香料が、前記第1の香料および前記第2の香料と異なる、請求項11に記載の香料送達システム。
【請求項13】
前記剥離シートが、複数の剥離シートスライスを含み、各剥離シートスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項14】
トップコーティング層をさらに含む請求項1に記載の香料送達システムであって、前記トップコーティング層が、前記多孔質シーリング層と前記剥離シートとの間に配置され、前記トップコーティング層が、トップコーティング層細孔径を有し、前記トップコーティング層平均細孔径が、0.1nmよりも大きく、前記トップコーティング平均細孔径が、前記多孔質シーリング層平均細孔径よりも小さく、前記トップコーティング層が、複数のトップコーティングスライスを含み、各トップコーティングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、香料送達システム。
【請求項15】
前記バッキング層に隣接する接着層をさらに含み、前記バッキング層が、前記接着層と前記マイクロセル層との間に配置されている、請求項1に記載の香料送達システム。
【請求項16】
前記接着層に隣接する第2の剥離シートをさらに含み、前記接着層が、前記第2の剥離シートと前記バッキング層との間に配置されている、請求項15に記載の香料送達システム。
【請求項17】
香料送達システムから香料を送達する方法であって、前記香料送達システムは、
(a)バッキング層;(b)複数のマイクロセルを含むマイクロセル層であって、前記複数のマイクロセルの各マイクロセルが、開口部を有し、前記複数のマイクロセルが、複数の第1の種類のマイクロセルを含み、前記複数の第1の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第1の濃度の第1の香料を有する前記第1の香料の組成物を含む、マイクロセル層;(c)前記複数のマイクロセルの前記開口部をスキャンする多孔質シーリング層であって、前記多孔質シーリング層が、多孔質シーリング層平均細孔径を有し、前記多孔質シーリング層平均細孔径が、0.2nm~1mmであり、前記多孔質シーリング層が、複数のシーリングスライスを含み、各シーリングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、多孔質シーリング層;(d)トップコーティング層であって、前記トップコーティング層が、トップコーティング層平均細孔径を有し、前記トップコーティング層平均細孔径が、0.2nm未満であり、前記トップコーティング層が、複数のトップコーティングスライスを含み、各トップコーティングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、トップコーティング層;(e)複数の剥離シートスライスを含む第1の剥離シートであって、各剥離シートスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、第1の剥離シートを含み、前記方法が、
(1)前記剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを除去するまたは収縮させること;
(2)前記トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを除去するまたは収縮させること;および
(3)前記シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを除去するまたは収縮させること
を含む、方法。
【請求項18】
(4)前記シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを再付着させるステップをさらに含む、請求項17に記載の香料を送達する方法。
【請求項19】
(5)前記トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを再付着させるステップをさらに含む、請求項18に記載の香料を送達する方法。
【請求項20】
(6)前記剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを再付着させるステップをさらに含む、請求項19に記載の香料を送達する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月3日出願の米国仮特許出願第63/295,961号に対する優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願は、本明細書に開示されるすべての他の特許および特許出願と一緒に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
有益な作用物質の制御放出および持続放出のための方法論の開発は、過去数十年の間、大きく注目されている。このことは、医薬、栄養補助剤、農業に関する栄養素および関連する物質、化粧品剤、香料、空気ケア剤、バイオサイド、肥料、ならびに各種の分野における多くの他の有益な作用物質を含む、多種多様な有益な作用物質について言える。制御放出および持続放出送達システムは、異なる場所への、および異なる条件下での、固体、液体およびガスなどの異なる形態のさまざまな有益な作用物質の送達を含み得る。
【0003】
有益な作用物質の送達を要求に応じて提供する各種の送達システムが過去数十年の間に開発されてきた。例えば、Chrono Therapeutics(Hayward、CA)は、ニコチンを送達するための、マイクロポンプが可能にしたスマート経皮パッチを試験している。それにもかかわらず、対応するデバイスは大きく、かなり大きな突起として衣類を通して目に見える。そのため、要求に応じて有益な作用物質を送達するための、小さく、単純で、安価で、多目的で、かつ安全な送達システムに対する必要性が依然としてある。
【0004】
香料のための送達システムは市販されている。例えば、空間をリフレッシュするシステムは、香料を吸収する材料を含む。そのような吸収性材料としては、綿、ゲル、および微孔質フィルムが挙げられる。これらの製品は、経時的に、空間において香料を放出する。しかしながら、同じシステムからの制御された手法での1つより多くの香料の送達は困難である。本発明の発明者らは、驚くべきことに、多孔質層を有するマイクロセルデバイスが、制御された手法で、同じシステムから複数の香料を送達し、一定期間にわたってカスタマイズ可能な香気を提供することができることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本出願の発明は、香料が要求に応じて放出され得る送達システムを提供することによって、香料の制御放出の必要性に対処する。加えて、下記のように、本発明は、異なる時間に制御された速度で同じ送達システムから種々の量の香料を送達するため、および同じまたは異なる時間に制御された速度で同じ送達システムから複数の香料を送達するためのシステムを提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、バッキング層、マイクロセル層、多孔質シーリング層、および第1の剥離シートを含む香料送達システムである。マイクロセル層は、複数のマイクロセルを含む。複数のマイクロセルの各マイクロセルは、開口部を有する。多孔質シーリング層は、複数のマイクロセルの開口部にまたがる。多孔質シーリング層は、平均細孔径を有し、平均細孔径は、0.2nm~1mmである。多孔質シーリング層は、複数のシーリングスライスを含み、各シーリングスライスは、独立して、除去可能または収縮可能である。複数のマイクロセルは、複数の第1の種類のマイクロセルを含み、複数の第1の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第1の濃度の第1の香料を有する第1の香料の組成物を含む。第1の香料の組成物は、第1の水性キャリアまたは第1の非水性キャリアを含んでいてもよい。第1の香料の組成物は、液体であってもゲルであってもよい。
【0007】
複数のマイクロセルは、複数の第2の種類のマイクロセルおよび複数の第3の種類のマイクロセルを含んでいてもよい。多孔質シーリング層の一部は、複数の第2の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。多孔質シーリング層の一部は、複数の第3の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。複数の第2の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第2の厚さを有する。複数の第3の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第3の厚さを有する。第2の厚さは、第3の厚さと異なっていてもよい。複数のマイクロセルは、複数の第4の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。多孔質シーリング層の一部は、複数の第4の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。複数の第4の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第4の厚さを有する。第4の厚さは、第2の厚さおよび第3の厚さと異なっていてもよい。
【0008】
複数のマイクロセルは、複数の第5の種類のマイクロセルおよび複数の第6の種類のマイクロセルを含んでいてもよい。多孔質シーリング層の一部は、複数の第5の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。多孔質シーリング層の一部は、複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。複数の第5の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第5の平均細孔径を有していてもよい。複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第6の平均細孔径を有していてもよい。第5の平均細孔径は、第6の平均細孔径と異なっていてもよい。複数のマイクロセルは、複数の第7の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。多孔質シーリング層の一部は、複数の第7の種類のマイクロセルの開口部にまたがる。複数の第7の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第7の平均細孔径を有していてもよい。第7の平均細孔径は、第5および第6の平均細孔径と異なっていてもよい。
【0009】
複数のマイクロセルは、複数の第8の種類のマイクロセルおよび複数の第9の種類のマイクロセルを含んでいてもよい。第8の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第8の体積を有していてもよい。第9の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第9の体積を有していてもよい。第8の体積は、第9の体積と異なっていてもよい。複数のマイクロセルは、複数の第10の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。第10の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第10の体積を有していてもよい。第10の体積は、第8および第9の体積と異なっていてもよい。
【0010】
複数のマイクロセルは、複数の第11の種類のマイクロセルおよび複数の第12の種類のマイクロセルを含んでいてもよい。第11の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第11の濃度の第1の香料を有していてもよい。第12の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第12の濃度の第1の香料を有していてもよい。第11の濃度は、第12の濃度と異なっていてもよい。
【0011】
複数のマイクロセルは、複数の第13の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。複数の第13の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第2の香料の組成物を含む。第2の香料は、第1の香料と異なる。複数のマイクロセルは、複数の第14の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。複数の第14の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第3の香料の組成物を含む。第3の香料は、第1の香料および第2の香料と異なっていてもよい。
【0012】
香料送達システムの剥離シートは、複数の剥離シートスライスを含んでいてもよく、各剥離シートスライスは、独立して、除去可能または収縮可能である。
【0013】
香料送達システムは、トップコーティング層を含んでいてもよい。トップコーティング層は、多孔質シーリング層と剥離シートとの間に配置されていてもよい。トップコーティング層は、0.2nm未満の平均細孔径を有していてもよい。トップコーティング層は、0.2nmよりも大きい平均細孔径を有していてもよい。トップコーティング層の平均細孔径は、多孔質シーリング層の平均細孔径よりも小さい。トップコーティング層は、複数のトップコーティングスライスを含んでいてもよく、各トップコーティングスライスは、独立して、除去可能または収縮可能である。
【0014】
香料送達システムは、バッキング層に隣接する接着層をさらに含んでいてもよく、バッキング層は、接着層とマイクロセル層との間に配置される。
【0015】
香料送達システムは、接着層に隣接する第2の剥離シートをさらに含んでいてもよく、接着層は、第2の剥離シートとバッキング層との間に配置される。
【0016】
別の態様では、本発明は、香料送達システムから香料を送達する方法であって、香料送達システムが、(a)バッキング層;(b)複数のマイクロセルを含むマイクロセル層であって、複数のマイクロセルの各マイクロセルが、開口部を有し、複数のマイクロセルが、複数の第1の種類のマイクロセルを含み、複数の第1の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第1の濃度の第1の香料を有する第1の香料の組成物を含む、マイクロセル層;(c)複数のマイクロセルの開口部をスキャンする多孔質シーリング層であって、多孔質シーリング層が、0.2nm~1mmの平均細孔径を有し、多孔質シーリング層が、複数のシーリングスライスを含み、各シーリングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、多孔質シーリング層;(d)トップコーティング層であって、トップコーティング層が、0.1nmよりも大きい平均細孔径を有し、トップコーティング層が、複数のトップコーティングスライスを含み、各トップコーティングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、トップコーティング層;(e)複数の剥離シートスライスを含む第1の剥離シートであって、各剥離シートスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、第1の剥離シート、を含み;前記方法が、(1)剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを除去するまたは収縮させること;(2)トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを除去するまたは収縮させること;および(3)シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを除去するまたは収縮させることを含む、方法である。
【0017】
香料を送達する方法は、(4)シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。香料を送達する方法は、(5)トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。香料を送達する方法は、(6)剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、いかなる表面上にも付着していない、活性化前の本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0019】
【
図1B】
図1Aは、表面上に付着している、活性化前の本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0020】
【
図2】
図2は、剥離シートまたは剥離シートの一部を除去することによって活性化されつつある、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0021】
【
図3A】
図3Aは、剥離シートの除去によって活性化された、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0022】
【
図3B】
図3Bは、活性化された本発明の香料送達システムの例の側面図およびその上からの部分図を図示し、香料送達システムは、2つの剥離シートスライスを含む。
【0023】
【
図4】
図4は、部分的に除去されたトップコーティング層を有する、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0024】
【
図5】
図5は、部分的に除去されたシーリング層およびトップコーティング層を有する、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示する。
【0025】
【
図6】
図6は、活性化されたマイクロセルを有する、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示し、1つのマイクロセルは開いており、1つのマイクロセルは除去されたトップコーティングを有しており、1つのマイクロセルは依然として、シーリング層およびトップコーティング層を有している。
【0026】
【
図7】
図7は、活性化されていない、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示し、香料送達システムは、第1の香料を含むマイクロセルおよび第2の香料を含むマイクロセルを含む。
【0027】
【
図8】
図8は、活性化されていない、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示し、香料送達システムは、異なる平均細孔径のシーリング層を有する3種類のマイクロセルを含む。
【0028】
【
図9】
図9は、活性化されていない、本発明の香料送達システムの例の側面図を図示し、香料送達システムは、異なる体積を有する3種類のマイクロセルを含む。
【0029】
【
図10】
図10は、4つのマイクロセル種類を含む、本発明の香料送達システムの例の上面図を図示し、各種類は異なる香料を含む。
【0030】
【
図11】
図11は、ロールツーロールプロセスを使用する、本発明のためのマイクロセルを作製するための方法を示す。
【0031】
【
図12AB】
図12Aおよび12Bは、熱硬化性前駆物質でコーティングされた導体フィルムのフォトマスクを通したフォトリソグラフィー露光を使用する、香料送達システムのためのマイクロセルの生成の詳細である。
【0032】
【
図12CD】
図12Cおよび12Dは、香料送達システムのためのマイクロセルがフォトリソグラフィーを使用して製造される、代替の実施形態の詳細である。
図12Cおよび12Dでは、上部露光および底部露光の組合せが使用され、これにより、1つの横方向の壁を上部のフォトマスクの露光によって硬化すること、および、別の横方向の壁を非透過性のベース導体フィルムを通して底部の露光で硬化することが可能になる。
【0033】
【
図13】
図13A~13Dは、香料送達システムで使用されるマイクロセルのアレイに充填し、シーリングするステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本発明は、香料を要求に応じて放出することができ、かつ/または各種の香料を、制御された速度で同じシステムから送達することができる、香料送達システムを提供し、カスタマイズされた嗅覚効果を送達する柔軟性をユーザーに提供する。本発明の香料送達システムは、表面上に設置されても付着させられてもよい。香料送達システムは、人間または動物の皮膚または衣類上に付着させられ得るパッチであってもよい。香料送達システムは、空間において嗅覚効果を提供するために、表面上に設置されても付着させられてもよい。香料送達システムはまた、嗅覚効果を提供するために、所望の場所に吊るされてもよい。
【0035】
「香料」という用語は、本明細書で使用される場合、香気を発する物質を指す。香料は、化合物の組合せであってもよい。香料を形成する化合物(1つまたは複数)は、天然または合成であり得る。所望の嗅覚効果を提供するために、香水は、人間の鼻内の嗅受容器に達するように、いくらかの揮発性を有していなければならない。
【0036】
典型的には、「香水」という用語は、香料(1つまたは複数)、および他の成分の組成物を指す。典型的には、そのような組成物は、水性または非水性キャリアも含む。本明細書では、本発明者らは、そのような組成物を指す「香料組成物」という用語を使用する。さまざまな製品のための香料組成物は、香料(1つまたは複数)の効果を増強する、香料モジュレーターおよび他の添加物を含んでいてもよい。本明細書では、香料(1つまたは複数)の効果を増強する、香料モジュレーターおよび他の添加物は、そのような成分がそれ自身無臭である場合であっても、「香料」という用語に分類される。
【0037】
本発明の香料送達システムからの「香料の送達の速度」は、単位時間あたりの香料送達システムから送達される香料の量である。例えば、送達の速度は、1時間あたりmgの単位で表され得る。
【0038】
「シーリングスライス」は、香料送達システムのシーリング層の一部分である。システムのシーリング層は、複数のシーリングスライスを含んでいてもよい。「除去可能シーリングスライス」は、香料送達システムから完全に除去され得るシーリング層の一部分である。「収縮可能シーリングスライス」は、スライスによってシールされるマイクロセルから完全にまたは部分的に収縮させられて、開いたマイクロセルをもたらし得るシーリング層の一部分である。「収縮可能シーリングスライス」の場合、スライスは、香料送達システムから完全に除去されるわけではない。
【0039】
「剥離シートスライス」は、香料送達システムの第1の剥離シートの一部分である。システムの第1の剥離シートは、複数の剥離シートスライスを含んでいてもよい。「除去可能剥離シートスライス」は、香料送達システムから完全に除去され得る第1の剥離シートの一部分である。「収縮可能剥離シートスライス」は、剥離シートスライスの下部に位置するマイクロセルから完全にまたは部分的に収縮させられて、活性化されたマイクロセルをもたらし得る第1の剥離シートの一部分である。「収縮可能剥離シートスライス」の場合、スライスは、香料送達システムから完全に除去されるわけではない。
【0040】
「トップ剥離シートスライス」は、香料送達システムの第1の剥離シートの一部分である。システムの第1の剥離シートは、複数の剥離シートスライスを含んでいてもよい。「除去可能剥離シートスライス」は、香料送達システムから完全に除去され得る第1の剥離シートの一部分である。「収縮可能剥離シートスライス」は、剥離シートスライスの下部に位置するマイクロセルから完全にまたは部分的に収縮させられて、活性化されたマイクロセルをもたらし得る第1の剥離シートの一部分である。「収縮可能剥離シートスライス」の場合、スライスは、香料送達システムから完全に除去されるわけではない。
【0041】
香料送達システムの「マイクロセルまたはマイクロセルのセットまたは複数のマイクロセルの活性化」という用語は、マイクロセルまたはマイクロセルのセットまたは複数のマイクロセルが、マイクロセル(またはマイクロセルのセット中または複数のマイクロセル中)の香水(1つまたは複数)の検出可能な量が、香料送達システムから出て行き得る状態であることを意味する。
【0042】
香料送達システムの「接着層」は、システムの2つの他の層の間の接着接続を確立する層である。接着層は、200nm~5mm、または1μm~100μmの厚さを有していてもよい。
【0043】
「多孔質シーリング層」は、0.2nmよりも大きい平均細孔径を有する、香料送達システムの層である。
【0044】
「トップコーティング層」は、0.1nmよりも大きい平均細孔径を有する、香料送達システムの層であり、トップコーティング層の細孔径は、多孔質シーリング層の細孔径よりも小さい。
【0045】
一態様では、本発明は、香料送達システムを提供する。香料送達システムは、複数のマイクロセルを含む。各マイクロセルは、香料組成物を含む。マイクロセルは、開口部を含む。マイクロセル開口部の最大寸法は、30μm~5mm、または30μm~500μm、または80μm~150μmであってもよい。多孔質シーリング層は、複数のマイクロセルの各マイクロセルの開口部にまたがる。複数のマイクロセルには、異なる香料(または香料の組合せ)が装填されていてもよく、それによって、要求に応じて、異なるまたは好意的な香料を送達するメカニズムを提供する。
【0046】
香料送達システム100の例を、
図1Aに示す。香料送達システム100は、複数のマイクロセル103を含み、各マイクロセルは、香料組成物104を含む。香料組成物104は、香料105を含む。
図1は、香料組成物104中の暗いドットとして香料105を示し、香料105が別の相に存在することを暗に示しているが、香料105は、香料組成物媒体104中に(分子形態で)溶解していてもよい。
図1Aに図示される香料送達システム100は、マイクロセル層に隣接するバッキング層101を含む。香料送達システム100は、複数のマイクロセルの開口部103にまたがるシーリング層106も含む。香料送達システム100は、シーリング層106に隣接するトップコーティング層107を含んでいてもよい。第1の剥離シート108は、トップコーティング層107に隣接して位置する。第1の剥離シート108の除去は、複数のマイクロセル103を活性化する。すなわち、第1の剥離シート108が除去されると、香料105は、マイクロセル103から出て行ってもよく、香料送達システム100から外へ移動してもよい。第1の剥離シート108は、複数の第1の剥離シートスライスを含んでいてもよい(
図1に図示せず)。複数の第1の剥離シートスライスは、お互いから独立して、除去され、または収縮させられ得る。除去可能または収縮可能な第1の剥離シートスライスの存在は、所与のときに、ユーザーが、マイクロセルの一部を活性化すること、および他のマイクロセルを活性化しないままにすることを可能にする。香料送達システム100は、バッキング層および第2の剥離シート118に隣接する接着層101を含む。
【0047】
第2の剥離シート118は、香料送達システム100から除去されてもよく、露出した接着層102は、
図1Bの香料送達システム150に図示されるように、表面110上に香料送達システムをしっかりと付着させるために使用され得る。
【0048】
各マイクロセルは、以下でより詳細に説明する、ポリマーマトリックスから形成されるマイクロセルのアレイの一部である。香料送達システムのバッキング層は、構造支持、ならびに湿気進入および物理的相互作用に対する保護を提供する。バッキング層は、1μm~5mm、または25μm~300μmの厚さを有していてもよい。
【0049】
マイクロセルは、少なくとも1μmの高さの壁によって画定されるが、それらは、マイクロセルの所望の深さに応じてさらに高くし得る。マイクロセルは、正方形、ハニカム、円形などとして配置されてもよい。
【0050】
多孔質シーリング層106は、各種の天然または非天然ポリマー、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アモルファスナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレンから構築されていてもよい。多孔質シーリング層は、500nm~3mm、または1μm~100μmの厚さを有していてもよい。
【0051】
香料送達システム200の第1の剥離シート108の除去または収縮は、
図2に示されるように、対応するマイクロセルを活性化する。これは、香料105が、多孔質シーリング層106およびトップコーティング層107を通して、香料送達システム200から外へ移動することを可能にする。
【0052】
図2の香料送達システム200からの第1の剥離シート108の完全な除去は、
図3Aに示される完全に活性化された香料送達システム300をもたらす。
【0053】
本発明の香料送達システムは、複数の剥離シートスライスを含む第1の剥離シートを含んでいてもよい。各剥離シートスライスは、独立して、除去可能であっても収縮可能であってもよい。これは、香料送達システムのユーザーが、香料送達システムのマイクロセルの全部ではなく一部を活性化することを可能にする。
図3Bの下部分は、表面110上に付着している香料送達システム350の側面図を図示する。香料送達システム350は、接着層102、バッキング層101、複数のマイクロセル105を含むマイクロセル層、多孔質シーリング層106、およびトップコーティング層107を含む。香料送達システム350は、2つの剥離シートスライス308aおよび308bも含む。すなわち、香料送達システム350のある数の剥離シートスライスが除去されて、対応するマイクロセルが活性化される。しかしながら、香料送達システム350は、依然として2つの剥離シートスライス308aおよび308bを含む。2つの剥離シートスライス308aおよび308bの下に位置するマイクロセルは、活性化されず、将来に活性化され得る。
図3Bの上部分は、香料送達システムの一部分の部分的上面図を図示する。これは、複数のマイクロセル105、ならびに剥離シートスライス308aおよび308bを示す。剥離シートスライス308aおよび308bの下部にあるマイクロセルは、まだ活性化されていない。これら活性化されていないマイクロセルの間に位置するマイクロセルは、これらのマイクロセルがそれらの上に剥離シートスライスを有していないので、活性化される。
【0054】
図4は、接着層402、バッキング層401、複数のマイクロセルを含むマイクロセル層、多孔質シーリング層406、およびトップコーティング層407を含む香料送達システム400を図示する。多孔質シーリング層406およびトップコーティング層407はどちらも、香料分子405が透過可能である。すなわち、香料分子405は、多孔質シーリング層406およびトップコーティング層407を通って移動して、香料送達システム400から送達されて、近くの空間に嗅覚効果を提供し得る。トップコーティング層407の平均細孔径は、シーリング層408の平均細孔径よりも小さい。システムの第1の剥離シートは、除去されている。そのため、香料送達システム400のすべてのマイクロセルは、活性化される。さらにまた、トップコーティング層407は、部分的に収縮させられている。
図4は、3つのマイクロセル403a、403bおよび403cを示すシステムの側面図を図示する。香料送達システム400の構造、ならびに多孔質シーリング層406およびトップコーティング層407の配置は、マイクロセル403aおよび403bからの異なる放出プロファイルに寄与する。具体的には、3つのマイクロセルすべてが同じ香料組成物を含むと仮定すれば、多孔質シーリング層406のみによって覆われているマイクロセル403a中の香料分子405は、多孔質シーリング層406およびトップコーティング層406の両方によって覆われているマイクロセル403bおよび403cの香料分子405の速度よりも高い速度で送達される。
【0055】
図5は、接着層502、バッキング層501、複数のマイクロセルを含むマイクロセル層、多孔質シーリング層506、およびトップコーティング層507を含む香料送達システム500を図示する。多孔質シーリング層506およびトップコーティング層507はどちらも、香料分子505が透過可能である。すなわち、香料分子505は、多孔質シーリング層506およびトップコーティング層507を通って移動して、香料送達システム500から送達されて、近くの空間に嗅覚効果を提供し得る。トップコーティング層507の平均細孔径は、シーリング層508の平均細孔径よりも小さい。システムの第1の剥離シートは、除去されている。そのため、香料送達システム500のすべてのマイクロセルは、活性化される。さらにまた、トップコーティング層507および多孔質シーリング層は、部分的に収縮させられている。
図5は、3つのマイクロセル503a、503bおよび503cを示すシステムの側面図を図示する。マイクロセル503aは、開いている。すなわち、マイクロセル503aの開口部にまたがる多孔質シーリング層は存在しない。そのため、香料が、香料送達システムから出て行くために多孔質シーリング層を通って移動する必要がないので、マイクロセル503aに含まれる香料は、高い送達の速度でマイクロセル503aから送達され得る。それに対し、マイクロセル503bおよび503cからの香料505の送達の速度は、マイクロセル503aからの送達の速度よりも低い。
【0056】
図6は、接着層602、バッキング層601、複数のマイクロセルを含むマイクロセル層、多孔質シーリング層606、およびトップコーティング層607を含む香料送達システム600を図示する。多孔質シーリング層606およびトップコーティング層607はどちらも、香料分子605が透過可能である。すなわち、香料分子605は、多孔質シーリング層606およびトップコーティング層607を通って移動して、香料送達システム600から送達されて、近くの空間に嗅覚効果を提供し得る。トップコーティング層607の平均細孔径は、シーリング層608の平均細孔径よりも小さい。システムの第1の剥離シートは、除去されている。そのため、香料送達システム600のすべてのマイクロセルは、活性化されている。
図6は、同じ香料組成物606が入っている3つのマイクロセル603a、603bおよび603cを示すシステムの側面図を図示する。トップコーティング層607および多孔質シーリング層は、部分的に収縮させられている。トップコーティング層607および多孔質シーリング層の部分的収縮の結果、マイクロセル603aは、開いており、マイクロセル603bは、多孔質シーリング層606によって覆われている。これは、マイクロセル603aからの香料605の送達の速度が、マイクロセル603bからの香料605の送達の速度よりも高く、マイクロセル603bからの香料605の送達の速度が、マイクロセル603cからの香料605の送達の速度よりも高いことを意味する。マイクロセル603aは、開いている。すなわち、マイクロセル603aの開口部にまたがる多孔質シーリング層は存在しない。そのため、香料が、香料送達システムから出て行くために多孔質シーリング層を通って移動する必要がないので、マイクロセル603aに含まれる香料は、高い送達の速度でマイクロセル603aから送達され得る。それに対し、マイクロセル603bおよび603cからの香料605の送達の速度は、マイクロセル603aからの送達の速度よりも低い。
【0057】
本発明の香料送達システムは、異なる種類のマイクロセルを含んでいてもよく、マイクロセルの各種類は、異なる香料組成物を含む。本発明の香料送達システムの一例を、
図7に図示する。香料送達システム700は、接着層702、バッキング層701、複数のマイクロセル703を含むマイクロセル層、多孔質シーリング層706、トップコーティング層707、および第1の剥離シート708を含む。
図7は、第1の種類のマイクロセル703aおよび第2の種類のマイクロセル703bのマイクロセルを有する香料送達システム700の一部の側面図を図示する。第1の種類のマイクロセル703aは、香料705を含む第1の香料組成物を含み、第2の種類のマイクロセル703bは、香料715を含む第2の香料組成物を含み、香料705は、香料715と異なる。香料送達システムは、香料Fを含む第3の香料組成物を含む第3の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよく、香料Fは、705および715と異なる。
【0058】
本発明の香料送達システムは、異なる種類のマイクロセルを含んでいてもよく、マイクロセルの各種類は、異なる香料組成物を含む。例えば、本発明の香料送達システムは、濃度C1の香料Aの組成物を含む第1の種類のマイクロセル、および濃度C2の香料Aの組成物を含む第2の種類のマイクロセルを含んでいてもよく、C1は、C2と異なる。香料送達システムは、濃度C3の香料Aの組成物を含む第3の種類のマイクロセルも含んでいてよく、C3は、C1およびC2と異なる。
【0059】
本発明の香料送達システムは、複数のマイクロセルを含む。各マイクロセルは、香料組成物を含む。香料組成物は、香料または香料の組合せを含む。香料組成物は、キャリアをさらに含んでいてもよい。香料は、キャリア中に溶解していても分散していてもよい。キャリアは、水性であっても非水性であってもよい。キャリアは、水であってもよく、必要に応じて、緩衝液、有機化合物、有機化合物の組合せ、または水および1つまたは複数の有機化合物の組合せを含む。有機化合物は、アルコール、エステル、アミド、エーテル、カルボン酸、または他の有機化合物であってもよい。有機化合物は、有機溶媒であってもよい。使用され得る有機溶媒の非限定的な例としては、DMSO、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、クエン酸トリエチル、炭酸エチレン、および炭酸ジメチルが挙げられる。
【0060】
香料組成物におけるキャリアの含量は、香料組成物の重量の、0.01重量パーセント~99重量パーセント、または0.1重量パーセント~95重量パーセント、または1重量パーセント~90重量パーセント、または5重量パーセント~85重量パーセントのキャリアであってもよい。香料組成物はまた、ポリマー材料を含んでいてもよい。一例では、香料組成物は、ポリマー材料中に分散した香料を含んでいてもよい。
【0061】
香料組成物は、香料組成物の重量の1重量パーセント~99.99重量パーセント、または香料組成物の重量の5重量パーセント~98重量パーセント、または香料組成物の重量の10重量パーセント~97重量パーセント、香料組成物の重量の25重量パーセント~95重量パーセント、香料組成物の重量の30重量パーセント~92重量パーセント、または香料組成物の重量の40重量パーセント~90重量パーセントのキャリアを含んでいてもよい。香料組成物は、香料組成物の10重量パーセント超、または20重量パーセント超、または30重量パーセント超、または40重量パーセント超、または50重量パーセント超、または60重量パーセント超、または70重量パーセント超、または80重量パーセント超、または90重量パーセント超、または95重量パーセント超、または98重量パーセント超、または99重量パーセント超、または99.5重量パーセント超、または99.9重量パーセント超の含量のキャリアを含んでいてもよい。
【0062】
香料組成物は、液体であってもよい。香料組成物は、ゲルであってもよい。同じ香料送達システムが、液体組成物を含む第1の種類のマイクロセル、およびゲル組成物を含む第2の種類のマイクロセルを有していてもよい。第1の種類のマイクロセルは、第2の種類のマイクロセルと異なる香料または香料の異なる組合せを含んでいてもよい。第1の種類のマイクロセルは、同じ香料または香料の同じ組合せを含んでいてもよい。マイクロセル中の組成物の形態(水性液体、非水性液体、ゲル)は、特に、開いているマイクロセル(多孔質シーリング層も、トップコーティング層も、剥離シートも有していない)の場合、システムからの対応する香料の送達の速度に影響を及ぼす場合がある。
【0063】
本発明の香料送達システムは、複数のマイクロセルを含んでいてもよい。複数のマイクロセルのそれぞれは、開口部を有する。複数のマイクロセルのそれぞれは、香料組成物を含む。香料送達システムは、複数のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層を含み、複数のマイクロセルは、複数の第2の種類のマイクロセルおよび複数の第3の種類のマイクロセルを含む。複数の第2の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第2の厚さを有し、複数の第3の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第3の厚さを有する。第2の厚さは、第3の厚さよりも厚い。複数の第2の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部の平均細孔が、複数の第3の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部と同じである場合、第2の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度は、第2の種類のマイクロセルの多孔質シーリング層のより厚い部分に起因して、第3の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度よりも低い。複数のマイクロセルは、複数の第4の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。複数の第4の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第4の厚さを有する。第3の厚さは、第4の厚さよりも厚い。複数の第4の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部の平均細孔が、複数の第3の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部および複数の第2の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部と同じである場合、第3の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度は、複数の第3の種類のマイクロセルの多孔質シーリング層のより厚い部分に起因して、第4の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度よりも低い。
【0064】
本発明の香料送達システムは、複数のマイクロセルを含んでいてもよい。複数のマイクロセルのそれぞれは、開口部を有する。複数のマイクロセルのそれぞれは、香料組成物を含む。香料送達システムは、複数のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層を含み、複数のマイクロセルは、複数の第5の種類のマイクロセルおよび複数の第6の種類のマイクロセルを含む。複数の第5の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第5の平均細孔径を有し、複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第6の平均細孔径を有する。第5の平均細孔径は、第6の平均細孔径よりも小さい。複数の第5の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部の厚さが、複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部と同じである場合、第5の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度は、第5の種類のマイクロセルの多孔質シーリング層のより小さい平均細孔径に起因して、第6の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度よりも低い。複数のマイクロセルは、複数の第7の種類のマイクロセルをさらに含んでいてもよい。複数の第7の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部は、第7の平均細孔径を有する。第6の平均細孔径は、第7の平均細孔径よりも小さい。複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部の厚さが、複数の第6の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部および複数の第5の種類のマイクロセルの開口部にまたがる多孔質シーリング層の一部と同じである場合、第6の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度は、複数の第6の種類のマイクロセルの多孔質シーリング層の一部のより低い平均細孔に起因して、第7の種類のマイクロセルからの香料の送達の速度よりも低い。
【0065】
図8は、接着層802、バッキング層801、同じ香料組成物804を含む複数のマイクロセルを含むマイクロセル層、多孔質シーリング層806、トップコーティング層807、および第1の剥離シート808を含む香料送達システム800の一部分の側面図を図示する。多孔質シーリング層806およびトップコーティング層807はどちらも、香料分子805が透過可能である。すなわち、香料分子805は、多孔質シーリング層806およびトップコーティング層807を通って移動して、香料送達システム800から送達されて、近くの空間に嗅覚効果を提供し得る。香料送達システム800の3つのマイクロセル803a、803bおよび803cの開口部は、多孔質シーリング層806によってシールされている。マイクロセル803a、803bおよび803cの開口部にそれぞれまたがっている、シーリング層の一部806a、806bおよび806cは、同じ厚さであるが、異なる平均細孔径を有する。一部806aの平均細孔径は、一部806bの平均細孔径よりも小さく、一部806bの平均細孔径は、一部806cの平均細孔径よりも小さい。シーリング層806の一部806a、806bおよび806cの異なる平均細孔径に起因して、マイクロセル803aからの香料の送達の速度は、マイクロセル803bからの香料の送達の速度よりも低く、マイクロセル803bからの香料の送達の速度は、マイクロセル803cからの香料の送達の速度よりも低い。
【0066】
異なるマイクロセル中のシーリング層の異なる多孔性は、異なるポリマー材料およびマイクロインジェクションを使用すること、例えば、シーリングプロセスの間にインクジェットを使用することによって、達成され得る。そのようなシステムは、単一の送達システムが、ある期間にわたって、種々の濃度の同じまたは異なる香料を投与することを可能にする。例えば、本発明のシステムは、3つの異なる濃度の香料を有する3種類のマイクロセルを含んでいてもよい。しかしながら、投与時間は、シーリング層の多孔性によって制御され得る。
【0067】
周辺の空間において、香料送達および嗅覚効果に影響を与えるために使用され得る本発明の香料送達システムの別の特徴は、マイクロセル体積である。本発明の香料送達システムは、複数のマイクロセルを含む。複数のマイクロセルは、複数の第8の種類のマイクロセルおよび複数の第9の種類のマイクロセルを含んでいてもよい。第8の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第8の体積を有する。第9の種類のマイクロセルの各マイクロセルは、第9の体積を有する。第8の体積は、第9の体積よりも大きい。さまざまなマイクロセル体積を有する複数の異なる種類のマイクロセルを有するシステムを設計することによって、マイクロセル中の香料組成物の量を制御することができる。そのため、別のマイクロセル中の香料の枯渇の時間および/または期間に関連するマイクロセル中の香料の枯渇の時間および/または期間は、システムの嗅覚効果をカスタマイズするための別のツールを提供する。
【0068】
複数のマイクロセルの各マイクロセルは、0.01nLよりも大きい、0.05nLよりも大きい、0.1nLよりも大きい、1nLよりも大きい、10nLよりも大きい、または100nLよりも大きい、または1μLよりも大きい、または10μLよりも大きい体積を有していてもよい。
【0069】
異なる体積を有するマイクロセルは、異なる深さを有するマイクロセルを形成することによって達成される。可変のマイクロセルの深さは、マイクロセルの底部で、ポリマーの量を増加させることによって構築され得る。これは、所望の深さを有する型、および以下に説明するエンボス加工技法を使用することによって、容易に達成される。他の例では、マイクロセルの幅は、所与のマイクロセル内に入れられていることが望まれる香料を含む溶液の体積に応じて、より大きいまたはより小さい可能性がある。
【0070】
図9は、接着層902、バッキング層901、同じ香料組成物904を含む複数のマイクロセルを含むマイクロセル層、多孔質シーリング層906、トップコーティング層907、および第1の剥離シート908を含む香料送達システム900の一部分の側面図を図示する。多孔質シーリング層906およびトップコーティング層907はどちらも、香料分子905が透過可能である。すなわち、香料分子905は、多孔質シーリング層906およびトップコーティング層907を通って移動して、香料送達システム900から送達されて、近くの空間に嗅覚効果を提供し得る。香料送達システム900のマイクロセル層は、マイクロセル903a、903bおよび903cを含む。
図9に示されるように、マイクロセル903aの体積は、マイクロセル903bの体積よりも大きく、マイクロセル903bの体積は、マイクロセル903cの体積よりも大きい。マイクロセル903a、903bおよび903cが、同じ香料組成物を含む場合、同じ期間での3つのマイクロセルの類似の活性化は、マイクロセル903aおよび903bからの香料の枯渇よりも速い、マイクロセル903c中の香料の枯渇をもたらす。
【0071】
本発明の香料送達システムは、多くの種類のマイクロセルを含んでいてもよい。マイクロセルの各種類は、異なる香料を含んでいてもよい。例えば、
図10は、香料組成物を含む複数の4種類のマイクロセル1001、1002、1003および1004を有する香料送達システム1000を図示し、香料組成物は、それぞれ、香料1、香料2、香料3および香料4を含む。この特徴は、複雑なおよびカスタマイズされた嗅覚効果を提供し得る精巧なシステムの設計を可能にする。異なるマイクロセル種類の配置は、システム中に均一に分布していなくてもよい。むしろ、マイクロセルは、集団で充填されていてもよく、これにより、充填およびシーリングがより簡単になる。他の実施形態では、より小さいマイクロセルアレイには、同じ媒体、すなわち、同じ濃度の同じ香料を有する媒体が充填されていてもよく、次いで、より小さいアレイは、本発明の送達システムを作製するためにより大きいアレイへと組み立てられる。
【0072】
別の態様では、本発明は、香料送達システムから香料を送達する方法を提供する。香料送達システムは、(a)バッキング層;(b)複数のマイクロセルを含むマイクロセル層であって、複数のマイクロセルの各マイクロセルが、開口部を有し、複数のマイクロセルが、複数の第1の種類のマイクロセルを含み、複数の第1の種類のマイクロセルの各マイクロセルが、第1の濃度の第1の香料を有する第1の香料の組成物を含む、マイクロセル層;(c)複数のマイクロセルの開口部をスキャンする多孔質シーリング層であって、多孔質シーリング層が、0.2nm~1mmの平均細孔径を有し、多孔質シーリング層が、複数のシーリングスライスを含み、各シーリングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、多孔質シーリング層;(d)トップコーティング層であって、トップコーティング層が、0.2nm未満の平均細孔径を有し、トップコーティング層が、複数のトップコーティングスライスを含み、各トップコーティングスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、トップコーティング層;(e)複数の剥離シートスライスを含む第1の剥離シートであって、各剥離シートスライスが、独立して、除去可能または収縮可能である、第1の剥離シート、を含む。
【0073】
香料を送達する方法は、(1)剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを除去するまたは収縮させるステップ;(2)トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを除去するまたは収縮させるステップ;および(3)シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを除去するまたは収縮させるステップを含む。
【0074】
香料を送達する方法は、(4)シーリング層または1つもしくは複数のシーリングスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。
【0075】
香料を送達する方法は、(5)トップコーティング層または1つもしくは複数のトップコーティングスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。
【0076】
香料を送達する方法は、(6)剥離シートまたは1つもしくは複数の剥離シートスライスを再付着させるステップをさらに含んでいてもよい。
【0077】
マイクロセルを構築するための技法。マイクロセルは、バッチ式プロセス、または米国特許第6,933,098号に開示されている連続式ロールツーロールプロセスのいずれかで形成され得る。後者は、香料送達および電気泳動ディスプレイを含む各種の用途における使用のためのコンパートメントの生成のための、連続的で、低コストで、ハイスループットの製造技術を提供する。本発明による使用に好適なマイクロセルアレイは、
図11に図示されるように、マイクロエンボス加工を用いて作り出すことができる。雄型1100は、
図11に示されるように、ウェブ1104の上、またはウェブ1104の下(図示せず)のいずれかに設置され得るが、代替の配置が可能である。米国特許第7,715,088号を参照されたい。この米国特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。伝導性基材は、デバイスのバッキングになるポリマー基材上で導体フィルム1101を形成することによって構築されてもよい。次いで、熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはその前駆物質を含む組成物1102を、導体フィルム上にコーティングする。熱可塑性または熱硬化性前駆物質層は、ローラー、プレートまたはベルトの形状の雄型によって、熱可塑性または熱硬化性前駆物質層のガラス転移温度よりも高い温度でエンボス加工される。
【0078】
マイクロセルの調製のための熱可塑性または熱硬化性前駆物質は、多官能性のアクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシド、およびそれらのオリゴマーまたはポリマーなどであってもよい。多官能性エポキシドおよび多官能性アクリレートの組合せはまた、所望の物理的機械的性質を達成するために非常に有用である。柔軟性を付与する架橋可能なオリゴマー、例えば、ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートは、エンボス加工マイクロセルのたわみ耐性を改善するために添加されてもよい。組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマーおよび添加物を含有していてもよく、またはオリゴマー、モノマーおよび添加物のみを含有していてもよい。このクラスの材料についてのガラス転移温度(またはTg)は、通常、約-70℃~約150℃、好ましくは、約-20℃~約50℃の範囲である。マイクロエンボス加工プロセスは、典型的には、Tgよりも高い温度で行われる。加熱された雄型、または加熱された収容基材(この収容基材に対して雄型を押し付ける)を使用して、マイクロエンボス加工の温度および圧力を制御し得る。
【0079】
図11に示されるように、前駆物質層が硬化して、マイクロセル1103のアレイが現れる間にまたはその後に、型が除かれる。前駆物質層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、照射による架橋、熱または水分によって達成され得る。熱硬化性前駆物質の硬化がUV照射によって達成される場合、UVは、2つの図に示されるように、ウェブの底部または上部から透過性導体フィルム上に照射され得る。あるいは、UVランプが、型の内側に設置され得る。この場合、型は、UV光が熱硬化性前駆物質層上の事前にパターン化された雄型を通して照射されることを可能にするように透過性でなければならない。雄型は、任意の適切な方法、例えば、ダイヤモンド旋削プロセスまたはフォトレジストプロセスとそれに続くエッチングもしくは電気メッキによって調製されてもよい。雄型用のマスターテンプレートは、任意の適切な方法、例えば電気メッキによって製造されてもよい。電気メッキにより、ガラスのベースは、クロムインコネルなどのシード金属の薄層(典型的には3000Å)を用いてスパッタリングされる。次いで、型は、フォトレジストの層でコーティングされ、UVに曝露される。マスクは、UVとフォトレジストの層との間に設置される。フォトレジストの露光領域は、硬化状態になる。次いで、非露光領域は、適切な溶媒を用いてそれらを洗浄することによって、除去される。残りの硬化したフォトレジストは、乾燥させられ、シード金属の薄層を用いて再びスパッタリングされる。マスターは、次いで、電鋳法の準備が完了する。電鋳法のために使用される典型的な材料は、ニッケルコバルトである。あるいは、マスターは、電鋳法または無電解ニッケルメッキによって、ニッケルから作製され得る。型の床は、典型的には、約50~400ミクロンである。マスターは、"Replication techniques for micro-optics", SPIE Proc. Vol. 3099, pp. 76-82 (1997)に記載される、e-ビームライティング、ドライエッチング、ケミカルエッチング、レーザーライティングまたはレーザー干渉を含む他のマイクロエンジニアリング技法を使用して作製され得る。あるいは、型は、プラスチック、セラミックまたは金属を使用するフォトマシニングによって作製され得る。
【0080】
UV硬化性樹脂組成物を適用する前に、型は、離型プロセスを支援する離型剤で処理されてもよい。UV硬化性樹脂は、分注する前に脱気されてもよく、必要に応じて、溶媒を含有していてもよい。溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。UV硬化性樹脂は、雄型の上に任意の適切な手段、例えばコーティング、浸漬、または注入などによって、分配される。ディスペンサーは、移動してもよく、固定されていてもよい。導体フィルムは、UV硬化性樹脂で覆われる。必要な場合には、圧力が加えられて、樹脂とプラスチックとの間の適切な結合を確実にし、マイクロセルの床の厚さを制御し得る。圧力は、積層ローラー、真空成形、プレスデバイス、または任意の他の類似手段を使用して加えられ得る。雄型が金属製で非透過性である場合、プラスチック基材は、典型的には、樹脂を硬化するために使用される化学線に対して透過性である。反対に、雄型が透過性であり得、プラスチック基材が化学線に対して非透過性であり得る。移動シート上の成型特徴の良好な移動を得るために、導体フィルムは、UV硬化性樹脂に対する良好な接着性を有する必要があり、これは、型表面に対する良好な剥離性を有していなければならない。
【0081】
フォトリソグラフィー。マイクロセルは、フォトリソグラフィーを使用して生成することもできる。マイクロセルアレイを製造するためのフォトリソグラフィープロセスを、
図12Aおよび12Bに図示する。
図12Aおよび12Bに示されるように、導体電極フィルム1202上に公知の方法によってコーティングされた放射線硬化性材料1201aを、マスク1206を通したUV光(または、放射線、電子ビームなどの代替の他の形態)に曝露して、マスク1206を通して投射される画像に対応する壁1201bを形成することによって、マイクロセルアレイ1204が調製されてもよい。ベース導体フィルム1202は、好ましくは、支持基材ベースウェブ1203上に載せられ、これは、プラスチック材料を含んでいてもよい。
【0082】
図12Aにおけるフォトマスク1206では、暗い四角124は、非透過性領域を表し、暗い四角間の空間は、マスク1206の透過性領域1205を表す。UVは、透過性領域1205を通して放射線硬化性材料1201a上に照射される。露光は、好ましくは、放射線硬化性材料1201a上に直接行われ、すなわち、UVは、基材1203またはベース導体1202を通過しない(上部の露光)。この理由により、基材1203も導体1202も、用いられるUVまたは他の放射線の波長に対して透過性である必要はない。
【0083】
図12Bに示されるように、露光領域1201bが硬化し、次いで、非露光領域(マスク1206の非透過性領域1204によって保護されている)が、適切な溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル1207を形成する。溶媒または現像剤は、放射線硬化性材料を溶解させるか、またはその粘度を低減するために一般に使用されるもの、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、またはイソプロパノールなどから選択される。マイクロセルの調製は、導体フィルム/基材支持ウェブの下部にフォトマスクを設置することによって、同様に達成され得、この場合、UV光は、底部からフォトマスクを通して照射され、基材は、放射線に対して透過性である必要がある。
【0084】
像様露光(imagewise exposure)。像様露光による本発明のマイクロセルアレイの調製のためのさらに別の代替方法を、
図12Cおよび12Dに図示する。非透過性導体線が使用される場合、導体線は、底部からの露光のためのフォトマスクとして使用され得る。耐久性のあるマイクロセル壁は、導体線に対して垂直の非透過性線を有する第2のフォトマスクを通した上部からの追加の露光によって形成される。
図12Cは、本発明のマイクロセルアレイ1200を生成するための上部および底部両方の露光の原理の使用を図示する。ベース導体フィルム1202は、非透過性で、線パターン化されている。ベース導体1202および基材1203上にコーティングされる放射線硬化性材料1201aは、第1のフォトマスクとしての役割を果たす導体線パターン1202を通して底部から露光される。第2の露光は、導体線1202に対して垂直の線パターンを有する第2のフォトマスク1206を通して「上」側から行われる。線1204間の空間1205は、UV光に対して実質的に透過性である。このプロセスでは、壁材料1201bは、1つの横方向において下から上へ硬化され、そして垂直方向において上から下へ硬化され、つながって、統合マイクロセル1207を形成する。
図12Dに示されるように、次いで、未露光領域が、上記した溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル1207が現れる。
【0085】
マイクロセルは、熱可塑性エラストマーから構築されてもよく、これは、マイクロセルとの良好な適合性を有し、電気泳動媒体と相互作用しない。有用な熱可塑性エラストマーの例としては、ABA、ならびに(AB)n型の二ブロック、三ブロックおよび多ブロックのコポリマーが挙げられ、ここで、Aは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレンまたはノルボルネン(norbonene)であり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサンまたはプロピレンスルフィドであり、AおよびBは、式中で同じではあり得ない。数nは≧1、好ましくは1~10である。スチレンまたはox-メチルスチレンの二ブロックまたは三ブロックコポリマー、例えば、SB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン))、ポリ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ((α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレンスルフィド-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)が特に有用である。市販のスチレンブロックコポリマー、例えば、Kraton DおよびG series(Kraton Polymer製、Houston、Tex.)が特に有用である。結晶性ゴム、例えば、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-5-メチレン-2-ノルボルネン)またはEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)ゴム、例えば、Vistalon 6505(Exxon Mobil製、Houston、Tex.)およびそれらのグラフト化コポリマーも非常に有用であることが見出されている。
【0086】
熱可塑性エラストマーは、溶媒または溶媒混合物中に溶解していてもよく、これは、マイクロセル中のディスプレイ流体と非混和性であり、ディスプレイ流体の比重よりも低い比重を示す。低表面張力溶媒は、マイクロセル壁および電気泳動流体に対するそれらの良好な湿潤性に起因して、組成物をオーバーコーティングすることに対して好ましい。35dyne/cm未満の表面張力を有する溶媒または溶媒混合物が好ましい。30dyne/cm未満の表面張力がより好ましい。好適な溶媒としては、アルカン(好ましくは、C6-12アルカン、例えば、ヘプタン、オクタンまたはExxon Chemical Company製のIsopar溶媒、ノナン、デカンおよびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくは、C6-12シクロアルカン、例えば、シクロヘキサンおよびデカリンなど)、アルキルベンゼン(好ましくは、モノC1-6アルキルベンゼンまたはジC1-6アルキルベンゼン、例えば、トルエン、キシレンなど)、アルキルエステル(好ましくは、C2-5アルキルエステル、例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチルなど)およびC3-5アルキルアルコール(例えば、イソプロパノールなどおよびそれらの異性体)が挙げられる。アルキルベンゼンおよびアルカンの混合物が特に有用である。
【0087】
ポリマー添加物に加えて、ポリマー混合物はまた、湿潤剤(界面活性剤)を含んでいてもよい。湿潤剤(例えば、3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤(fluorosurfactants)、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロ置換長鎖アルコール、パーフルオロ置換長鎖カルボン酸、およびそれらの誘導体、ならびにOSi(Greenwich、Conn.)製のSilwetシリコーン界面活性剤)も、マイクロセルへのシーラントの接着を改善するためおよびより柔軟なコーティングプロセスを提供するために、組成物に含まれていてもよい。架橋剤(例えば、4,4’-ジアジドフェニルメタンおよび2,6-ジ-(4’-アジドベンザール)-4-メチルシクロヘキサノンなどのビスアジド)、加硫剤(例えば、2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド)、多官能性モノマーまたはオリゴマー(例えば、ヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート)、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロリル(dilauroryl peroxide)、過酸化ベンゾイル)および光開始剤(例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)、Ciba-Geigy製のIrgacure 651およびIrgacure 369)を含む他の成分も、オーバーコーティングプロセスの間またはその後に、架橋または重合反応によってシーリング層の物理的機械的性質を増強するのに非常に有用である。
【0088】
マイクロセルを生成した後、それらには、香料の適切な混合物が充填される。マイクロセルアレイ1300は、上記方法のいずれかによって調製されてもよい。
図13A~13Dの断面に示されるように、マイクロセル壁1301は、基材1003から上向きに伸びて、開いたセルを形成する。マイクロセルは、混合物を不動態化し、香料1305を含有する混合物との相互作用からマイクロセル材料を保つために、プライマー層1003を含んでいてもよい。充填する前に、マイクロセルアレイ1300は、香料が使用前に損なわれないことを確実にするためにクリーニングおよび滅菌されてもよい。
【0089】
マイクロセルには、次に、香料1305を含む混合物1304が充填される。マイクロセルの充填は、インクジェットまたは他の流体システムを用いるピコリットル注入を使用することによって達成され得る。個々のマイクロセルは、各種の異なる香料が香料送達システムに含まれることを可能にするように充填され得る。
図13Bに示されるように、異なるマイクロセルは、異なる香料を含んでいてもよい。マイクロセル1300は、好ましくは、香料の意図しない混合およびオーバーフローを防止するために、部分的に充填される。疎水性香料を送達するためのシステムでは、混合物は、生体適合性油または一部の他の生体適合性疎水性キャリアに基づいていてもよい。例えば、混合物は、植物油、果実油、または堅果油を含んでいてもよい。他の実施形態では、シリコーン油が使用されてもよい。親水性香料を送達するためのシステムでは、混合物は、水、またはリン酸緩衝液などの別の水性媒体に基づいていてもよい。混合物は、液体である必要はない、しかしながらそれは、ヒドロゲルおよび他のマトリックスとして、香料1305を送達することが好適であり得る場合である。
【0090】
マイクロセルは、各種の技法を使用して充填され得る。一部の実施形態では、多数の隣接しているマイクロセルに同一の混合物が充填されるべきである場合、ブレードコーティングを使用して、マイクロセル壁1301の深さまで、マイクロセルに充填してもよい。他の実施形態では、各種の異なる混合物が、各種の近くのマイクロセルに充填されるべきである場合、インクジェット型マイクロインジェクションを使用して、マイクロセルに充填することができる。さらに他の実施形態では、マイクロニードルアレイを使用して、正しい混合物をマイクロセルのアレイに充填してもよい。充填は、1ステップまたは複数ステップのプロセスで行われ得る。例えば、セルのすべてに、ある量の溶媒を部分的に充填してもよい。部分的に充填されたマイクロセルには、次いで、送達されるべき1つまたは複数の香料を含む第2の混合物が充填される。
【0091】
図13Cに示されるように、充填後、マイクロセルは、多孔質シーリング層になるポリマー66を適用することによってシールされる。一部の実施形態では、シーリングプロセスは、熱、乾燥熱空気、またはUV照射への曝露を含み得る。ほとんどの実施形態では、ポリマー1306は、混合物1304と融和性であるが、混合物1304の溶媒に溶解しない。ポリマー1306はまた、生体適合性であり、マイクロセル壁1301の側面または上面に接着するように選択される。多孔質シーリング層のための好適な生体適合性接着剤は、フェネチルアミン混合物であり、例えば、「Method for Sealing Microcell Containers with Phenethylamine Mixtures」と題する2016年10月30日出願の米国特許出願第15/336,841号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものである。したがって、最終のマイクロセル構造は、漏れに対してほぼ耐性であり、多孔質シーリング層の層間剥離なく、屈曲に耐えることが可能である。
【0092】
代替の実施形態では、各種の個々のマイクロセルには、反復フォトリソグラフィーを使用することによって、所望の混合物が充填され得る。このプロセスは、典型的には、空のマイクロセルのアレイをポジで働くフォトレジストの層でコーティングすること、ポジ型フォトレジストを像様露光することによってある特定の数のマイクロセルを選択的に開くこと、それに続いて、フォトレジストを現像すること、開いたマイクロセルに所望の混合物を充填すること、およびシーリングプロセスによって充填されたマイクロセルをシールすることを含む。これらのステップを繰り返して、他の混合物を充填したシールされたマイクロセルを作り出してもよい。この手順は、所望の比の混合物または濃度を有するマイクロセルの大きなシートの形成を可能にする。
【0093】
マイクロセル1300に充填した後、シールされたアレイは、好ましくは、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、水分もしくは放射線硬化性接着剤であり得る接着層で仕上げ層68を事前コーティングすることによって、香料に対して多孔性でもある仕上げ層1308で積層されてもよい。積層接着剤は、後者が放射線に対して透過性である場合、上面の導体フィルムを通してUVなどの照射によって事後に硬化され得る。一部の実施形態では、生体適合性接着剤1307は、次いで、部品に積層される。生体適合性接着剤1307は、ユーザーにおいてデバイスを移動可能であるように保ちながら、香料が通過することを可能にする。好適な生体適合性接着剤は、3M(Minneapolis、MN)から入手可能である。
【0094】
本発明は、複数のマイクロセルを含む香料送達システムを提供する。マイクロセルは、多孔質シーリング層にまたがられている開口部を含む。香料送達システムは、さまざまな種類のマイクロセルを含んでいてもよい。異なる種類のマイクロセルは、異なる香料または香料の組合せ、異なる濃度の同じまたは異なる香料を入れていてもよい。異なる種類のマイクロセルは、異なる多孔質シーリング部分(異なる厚さ、平均細孔径)を有していてもよい。同じシステムの異なる種類のマイクロセルは、異なる体積を有していてもよく、異なる香料組成物の形態(液体またはゲル)を入れていてもよい。意義深いことに、香料送達システムは、(a)剥離シート、(b)トップコーティング層および(c)多孔質シーリング層の、収縮可能または除去可能なスライスを含んでいてもよい。結果として、香料の送達の速度は、各マイクロセル種類についてさまざまなレベルで制御され得る。
【0095】
本開示は、記載された例および変形形態に限定されるものではなく、当業者に自明な実施形態および他の改変を含む。
【国際調査報告】