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特表2025-504343ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20250101AFI20250204BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250204BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/09 110
C12N15/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 T
A61K39/395 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539790
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022143615
(87)【国際公開番号】W WO2023125860
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111652734.4
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111652757.5
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111657691.9
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111657717.X
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520272880
【氏名又は名称】重▲慶▼精准生物技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING PRECISION BIOTECH COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.38 Hanxing Rd, Hangu Town, Jiulongpo District Chongqing 400038 China
(71)【出願人】
【識別番号】522456165
【氏名又は名称】重▲慶▼精准生物産業技▲術▼研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING PRECISION BIOLOGICAL INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】5th Floor, Building A,High Tech Entrepreneur ship Park No.101-109,Erlang Chuangye Road,Jiulongpo District,Chongqing,China
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウーリン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、イェンミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チュンチエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA05
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
ユニバーサルCAR-T細胞の調製方法及びその使用。ユニバーサルCAR-Tを調製するときのRNP複合体は、Cas9タンパク質及びsgRNAからなるRNP複合体を含む。前記sgRNAは、CD4のsgRNA及び/又はCD8のsgRNAである。このユニバーサルCAR-T細胞又はT細胞のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子は、ノックアウト及び/又は不活性化されたものである。前記CAR-T細胞発現CD44及び/又はCD62Lは、CAR-T細胞の活性を増強し、CAR-Tの有効性を向上させ、CAR-T細胞の表現型を改善し、疲弊発現を低減し、腫瘍標的細胞に対するCAR-T細胞の殺傷を向上させることができ、腫瘍の標的療法及び同種他家CAR-T療法に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cas9タンパク質及びsgRNAを含んでなるRNP複合体を含むRNP複合体であって、
前記sgRNAは、CD4のsgRNA及び/又はCD8のsgRNAであることを特徴とする、RNP複合体。
【請求項2】
前記RNP複合体は、CRISPR/Cas9細胞内動作形式であり、細胞外送達手法は、プラスミド送達手法、ウイルス送達手法、タンパク質(Cas9)と(RNA)gRNA送達手法、mRNA(Cas9)とgRNA送達手法、mRNA(Cas9)とプラスミド(gRNA)送達手法、ウイルス(Cas9)とgRNA送達手法、ウイルス(Cas9)とプラスミド(gRNA)送達手法、プラスミド(Cas9)とウイルス(gRNA)送達手法、プラスミド(Cas9)とgRNA送達手法、及びそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のRNP複合体。
【請求項3】
前記CD4遺伝子は、ヒト12番染色体上のCD4遺伝子:6,789,528-6,820,799(正方向ストランドに位置する)であり、前記CD8遺伝子は、ヒト2番染色体上のCD8A遺伝子:86,784,610-86,808,396(逆方向ストランドに位置する)及びヒト2番染色体上のCD8B遺伝子:86,815,339-86,861,924(逆方向ストランドに位置する)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のRNP複合体。
【請求項4】
前記CD4のsgRNAの配列は、配列番号1-6又は配列番号14-24のいずれか1つに示され、前記CD8のsgRNAの配列は、配列番号7-11又は配列番号25-33のいずれか1つに示されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のRNP複合体。
【請求項5】
同種他家CAR-T細胞中のインターフェロン-γ因子の分泌レベル促進剤としての請求項1から4のいずれか1項に記載のRNP複合体の使用。
【請求項6】
治療性T-細胞又はCAR-T細胞の製造における、細胞増殖剤、活性増強剤、表現型分布改善剤、疲弊マーカー発現阻害剤としてのCD4遺伝子の阻害剤、ノックアウト剤及び/又はCD8遺伝子の阻害剤、ノックアウト剤の使用。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のRNP複合体を用いて目的部位をノックアウトしたT細胞。
【請求項8】
前記T細胞のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子がノックアウト及び/又は不活性化されたことを特徴とする、請求項7に記載のT細胞。
【請求項9】
前記T細胞は、CD44及び/又はCD62Lを発現することを特徴とする、請求項7又は8に記載のT細胞。
【請求項10】
前記CD44のアミノ酸配列は、配列番号12に示され、前記CD62Lのアミノ酸配列は、配列番号13に示されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項11】
前記T細胞は、遺伝子編集により得られたものであることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項12】
前記T細胞は、天然分離により得られたものであることを特徴とする、請求項7から11のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項13】
前記T細胞のβ2-ミクログロブリン、及び/又はHLAクラスI分子の共通サブユニット、及び/又はCIITAの遺伝子は、機能しない又は欠失したことを特徴とする、請求項7から12のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項14】
前記T細胞は、同種他家T細胞であることを特徴とする、請求項7から13のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項15】
前記T細胞は、HLA-E及び/又はHLA-G及び/又はHLA-Fも発現することを特徴とする、請求項7から14のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項16】
請求項7から15のいずれか1項に記載のT細胞の調製方法であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載のRNP複合体を用いて遺伝子編集技術によりTリンパ球中のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子をノックアウト及び/又は不活性化することを特徴とする、調製方法。
【請求項17】
(1)新鮮又は凍結保存に由来のT細胞を使用し、遺伝子編集によりCD4及びCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化し、CD4及びCD8遺伝子を同時にノックアウト又は不活性化してもよく、CD4又はCD8をノックアウト又は不活性化してからCD8又はCD4をノックアウト又は不活性化してもよく、最後に目的細胞を得る方法;
(2)CD4陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る方法;
(3)CD8陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る方法;及び
(4)CD4陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化し、CD8陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化し、最後に遺伝子編集によりCD4遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞と、遺伝子編集によりCD8遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞とを混合して目的細胞を得る方法;
のいずれか1つの方法により目的細胞を得ることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
前記T細胞は、活性化及び/又は非活性化のTリンパ球であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の調製方法。
【請求項19】
前記T細胞中のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化するタイミングは、T細胞の増幅後又はT細胞の増幅前であることを特徴とする、請求項16から18のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
前記遺伝子編集技術は、エレクトロポレーション法又は非エレクトロポレーション法によりT細胞を改造するものであることを特徴とする、請求項16から19のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
前記遺伝子編集技術は、CRISPR、ZFN又はTALENのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項16から20のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項22】
請求項16から21のいずれか1項に記載の調製方法により得られたT細胞。
【請求項23】
請求項7から15のいずれか1項又は請求項22に記載のT細胞を用いて調製されたCAR-T細胞。
【請求項24】
CAR-T細胞中のCARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする、請求項23に記載のCAR-T細胞。
【請求項25】
前記CAR-T細胞は、同種他家CAR-T細胞であることを特徴とする、請求項23又は24に記載のCAR-T細胞。
【請求項26】
前記CAR-T細胞は、膜結合型IL15をさらに発現することを特徴とする、請求項23から25のいずれか1項に記載のCAR-T細胞。
【請求項27】
前記CAR-T細胞は、分泌サイトカインをさらに発現し、前記サイトカインは、IL2、IL7、IL12、IL21又はIL15のうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項23から26のいずれか1項に記載のCAR-T細胞。
【請求項28】
前記CAR-T細胞は、腫瘍微小環境における分子の融合タンパク質をさらに発現して認識することができ、前記融合タンパク質の細胞外構造は、PD1、PDL1、SIRPγ、SIRPδ又はTIGITのうちの1種又は複数種を認識することを特徴とする、請求項23から27のいずれか1項に記載のCAR-T細胞。
【請求項29】
前記CAR構造は、制御により活性化又は不活性化することができ、活性化又は不活性化を制御する構造は、ペプチドネオエピトープ(PNE)、フルオレセイン(FITC)、10アミノ酸(5B9タグ)、FITC-HM-3二機能性分子(FHBM)とscFv、抗体に結合したロイシンZipFv又はストレプトアビジン2(mSA2)ビオチン結合ドメインのうちの1種又は複数種。ことを特徴とする、請求項23から28のいずれか1項に記載のCAR-T細胞。
【請求項30】
前記CAR-T細胞は、固形腫瘍、血液系腫瘍細胞/組織を認識することができ、前記CAR-T細胞の抗原認識領域は、抗原:CD19、CD20、CD22、CD33、CLL-1(CLEC12A)、CD7、CD5、CD70、CD123、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、Mesothelin、MUC1、CLDN18.2、CDH17、Trop2、BCMA、NKG2D、PDL1、EGFR、EGFRVIII、PSCA、PSMA、MUC16、CD133、GD2、IL13R2、B7H3、Her2、CD30、SLAMF7、CD38、GPC3、WT1又はTAG-72のうちの1種又は複数種を認識することができることを特徴とする、請求項23から29のいずれか1項に記載のCAR-T細胞。
【請求項31】
(1)T細胞を収集して取得し、CAR構造のウイルスに感染させ、CAR構造が感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る方法;或いは
(2)T細胞を収集して取得し、エレクトロポレーション法によりRNPを前記T細胞に導入した後、さらにCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る方法;
のいずれか1つの方法により目的細胞を得ることを特徴とする、請求項23から30のいずれか1項に記載のCAR-T細胞の調製方法。
【請求項32】
(1)T細胞を収集して取得し、CD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はCD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、CAR構造が感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る方法;或いは
(2)T細胞を収集して取得し、エレクトロポレーション法によりRNPを前記T細胞に導入した後、さらにCD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はCD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る方法;
のいずれか1つの方法により目的細胞を得ることを特徴とする、請求項31に記載の調製方法。
【請求項33】
(1)T細胞を収集して取得した後、CD62L、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、CAR構造が感染した後のT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る方法;或いは、
(2)T細胞を収集して取得した後、エレクトロポレーション法によりRNPを前記T細胞に導入した後、さらにCD62L、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る方法;
のいずれか1つの方法により目的細胞を得ることを特徴とする、請求項32に記載の調製方法。
【請求項34】
エレクトロポレーション法によりRNPを導入する過程において、RNP複合体は、請求項1に記載のRNP複合体であることを特徴とする、請求項31から33のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項35】
前記Cas9タンパク質とsgRNAとのモル比は1:2であることを特徴とする、請求項31から34のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項36】
請求項23から30のいずれか1項に記載のCAR-T細胞又は請求項31から35のいずれか1項に記載の調製方法により調製された前記CAR-T細胞に感染させた組換えベクターであって、
前記組換えベクターは、CAR構造を含むことを特徴とする、組換えベクター。
【請求項37】
前記組換えベクターは、CD44遺伝子機能断片及び/又はCD62L遺伝子機能断片を含むことを特徴とする、請求項36に記載の組換えベクター。
【請求項38】
前記組換えベクターは、
(I)CD44及びCAR構造、
(II)CD62L及びCAR構造、又は
(III)CD62L、CD44及びCAR構造
を含むことを特徴とする、請求項36又は37に記載の組換えベクター。
【請求項39】
前記組換えベクターに使用される発現ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、逆転写ウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、アデノ随伴ウイルス発現ベクター、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項36から38のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項40】
請求項7から15のいずれか1項、又は請求項22に記載のT細胞及び/又は請求項23から30のいずれか1項に記載のCAR-T細胞、又は請求項31から35のいずれか1項に記載の調製方法により調製された前記CAR-T細胞を含む細胞組成物。
【請求項41】
前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で90%、80%、70%又は60%以上であることを特徴とする、請求項40に記載の細胞組成物。
【請求項42】
前記細胞組成物は、活性化誘導されたCIK細胞又はNKT細胞であることを特徴とする、請求項40又は41に記載の細胞組成物。
【請求項43】
請求項7から15のいずれか1項、又は請求項22に記載のT細胞及び/又は請求項23-30のいずれか1項に記載のCAR-T細胞、請求項31-35のいずれか1項に記載の調製方法により調製された前記CAR-T細胞及び/又は請求項36-39のいずれか1項に記載の組換えベクター及び/又は請求項40-42のいずれか1項に記載の細胞組成物の、細胞治療薬物の調製における使用。
【請求項44】
前記使用は、請求項7から15のいずれか1項又は請求項22に記載のT細胞及び/又は請求項23-30のいずれか1項に記載のCAR-T細胞、又は請求項31-35のいずれか1項に記載の調製方法により調製された前記CAR-T細胞及び/又は請求項36-39のいずれか1項に記載の組換えベクター及び/又は請求項40-42のいずれか1項に記載の細胞組成物の、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、前立腺がん、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん及び/又は皮膚がんを治療する薬物の調製における使用であることを特徴とする、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
CAR-T細胞の活性増強剤の調製におけるCD62L及び/又はCD44の使用。
【請求項46】
CAR-T細胞の活性増強剤の調製におけるCD44とCD62Lとの組み合わせの使用。
【請求項47】
CAR-T細胞が分泌するPD-1及びLAG-3因子の阻害剤の調製におけるCD62L及び/又はCD44の使用。
【請求項48】
CAR-T細胞の調製における、腫瘍細胞殺傷の促進剤としてのCD62L及び/又はCD44遺伝子の使用であって、
前記CAR-T細胞は、通常CAR-T細胞、CD4及び/又はCD8遺伝子を発現しないCAR-T細胞又はユニバーサルCAR-T細胞である、使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本発明は、2021年12月30日に提出された中国特許出願第202111652734.4号(発明の名称:ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用)の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、2021年12月30日に提出された中国特許出願第202111652757.5号(発明の名称:ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用)の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、2021年12月30日に提出された中国特許出願第202111657691.9号(発明の名称:ユニバーサルCAR-T細胞の調製方法及びその使用)の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本発明は、2021年12月30日に提出された中国特許出願第202111657717.X号(発明の名称:ユニバーサルCAR-T細胞の調製方法及びその使用)の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0005】
本発明は、細胞生物学、分子生物学、創薬の技術分野に属し、具体的には、ユニバーサルCAR-T細胞の調製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0006】
CAR-T免疫療法は、遺伝子工学によって患者自身のTリンパ球を改変してそれにキメラ抗原受容体を発現することにより、腫瘍細胞がMHC分子の発現をダウンレギュレーションすること及び抗原提示を低下させることなどの免疫逃避を効果的に克服することによって腫瘍細胞を逃避できなくなるようにすることができる。現在、中国で承認されているキメラ抗原受容体(CAR)を有する2種類のT細胞製品は、いずれも自家T細胞に由来するものであり、これらの臨床使用に承認された自家CAR-T細胞は、カスタマイズに基づいて産生されなければならない。しかし、高価な生産コストと長い生産過程により、このような自家T細胞生産プラットフォームは依然として大規模な臨床応用の重要な制限要素であり、また生産失敗などのリスクも存在する。同時に、個性化、カスタマイズされた自家CAR-T細胞の生産過程も異なる腫瘍タイプでの幅広い応用を制限した。そのため、ユニバーサルCAR-T細胞を調製するために、ユニバーサルの同種他家T細胞を使用する必要があり、これらの細胞は「既製」の即時使用可能な治療剤として大規模な臨床応用に使用することができる。ユニバーサルCAR-T細胞は、治療周期を著しく短縮するとともにコストを低減することができ、移植片拒絶関連反応及び治療効果の問題も、遺伝子編集技術と幹細胞移植ドナー由来T細胞などの戦略によって徐々に解決することができるため、将来の市場競争もより優位である。
【0007】
ユニバーサルCAR-T細胞は、健常ドナーの末梢血から抽出されたT細胞を出発サンプルサンプルとし、遺伝子編集技術により同種他家間の免疫拒絶問題を解決するとともに、T細胞にがん標的を特異的に標的とするCAR構造を装着し、最終的に同種他家がん患者の体内に戻して腫瘍細胞を特異的に標的とする他家移植生細胞薬剤である。
【0008】
ゲノム編集技術は、ZFN(亜鉛フィンガーヌクレアーゼ)、TALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)及びCRISPR関連技術を含み、ユニバーサルT細胞の調製に用いられる。現在、業界における通常の操作方法は大体同じであり、いずれも遺伝子編集の形式で同種の他家T細胞において強い免疫拒絶反応を引き起こすTCR分子及び/又はMHC関連分子をノックアウトすることにより免疫拒絶の問題を解決する。また、多くの機構は治療効果又は安全性を向上させるために、このような遺伝子編集をもとに、さらにPD-1、CTLA-4、CD52をノックアウトし又はCAR自殺遺伝子スイッチなどを導入している。
【0009】
このような操作形式は理論的に実行可能であるが、現在、TRC又はMHC分子を欠損した後のT細胞の細胞生存及び機能上の影響を詳細に解析する関連文献はない。これも、業界が現在大きなチャレンジに直面している原因の1つである。
【0010】
現在、業界において直面している大きなチャレンジは、生産されたユニバーサルCAR-T細胞は、インビボでの存続期間が比較的悪く、再注入用量や再注入回数を増加させても、理想的な治療効果を達成することが困難であるのに対し、自家CAR-T細胞は、再注入用量が比較的低く、緩和率がより高い。このような結果をもたらす可能な原因が多くある。TCRは、T細胞が免疫に関連する各種機能を発揮する重要な遺伝子として、T細胞の他の機能においても重要又は決定的な補助作用を果たすか否かについては、明確に指摘されている関連研究はまだない。しかし、ユニバーサルCAR-T細胞によって実現可能な即時使用可能、既成、低治療コストなどの利点は、自家CAR-T細胞によって実現できないものである。したがって、インビボでの存続時間が長いユニバーサルCAR-Tを調製する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
前記の事情に鑑み、本発明は、ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用を提供する。
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、下記の技術的手段を提供する。
【0013】
本発明の第一の目的は、T細胞の目的部位のノックアウトに使用され得るRNP複合体を提供することにある。
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0015】
Cas9タンパク質及びsgRNAを含んでなるRNP複合体であって、前記sgRNAはCD4のsgRNA及び/又はCD8のsgRNAであるRNP複合体。
【0016】
さらに、前記RNP複合体は、CRISPR/Cas9細胞内動作形式である。細胞外送達手法は、プラスミド送達手法、ウイルス送達手法、mRNA(Cas9)とgRNA送達手法、mRNA(Cas9)とプラスミド(gRNA)送達手法、ウイルス(Cas9)とgRNA送達手法、ウイルス(Cas9)とプラスミド(gRNA)送達手法、プラスミド(Cas9)とウイルス(gRNA)送達手法、プラスミド(Cas9)とgRNA送達手法を含む。
【0017】
さらに、前記RNP複合体において、前記CD4遺伝子はヒト12番染色体上のCD4遺伝子:6,789,528-6,820,799(正方向ストランド(forward strand)に位置する)であり、前記CD8遺伝子はヒト2番染色体上のCD8A遺伝子:86,784,610-86,808,396(逆方向ストランド(reverse strand)に位置する)及びヒト2番染色体上のCD8B遺伝子:86,815,339-86,861,924(逆方向ストランドに位置する)である。
【0018】
さらに、前記CD4のsgRNAの配列は、配列番号1-6又は配列番号14-24のいずれか1つに示される。前記CD8のsgRNAの配列は、配列番号7-11又は配列番号25-33のいずれか1つに示される。
【0019】
本発明の第二の目的は、CAR-T細胞のさらなる調製に使用され得る、インビボでの存続期間が長いT細胞を提供することにある。
【0020】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0021】
CD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子がノックアウトされ及び/又は不活性化されるT細胞。
【0022】
本発明で使用される標的配列の一部は、配列番号1-11で示される。その配列は、ここで挙げられる配列に限定されず、ヒト12番染色体上のCD4遺伝子:6,789,528-6,820,799(正方向ストランドに位置する)、ヒト2番染色体上のCD8A遺伝子:86,784,610-86,808,396(逆方向ストランドに位置する)及びヒト2番染色体CD8B遺伝子:86,815,339-86,861,924(逆方向ストランドに位置する)を含む。遺伝子編集標がある位置表1(table 1)には、含まれるいずれか1つの領域内における遺伝子自体に欠失を引き起こせる標的配列が示される。
【0023】
さらに、前記T細胞は、遺伝子編集により得られたものである。
【0024】
さらに、前記T細胞は、天然分離により得られたものである。
【0025】
さらに、前記T細胞は、β2-ミクログロブリン、及び/又はHLAクラスI分子の共通サブユニット、及び/又はCIITAの遺伝子を機能がしなくなるようにするか又は欠失させる。
【0026】
さらに、前記T細胞は、同種他家T細胞である。
【0027】
さらに、前記T細胞は、HLA-E及び/又はHLA-G及び/又はHLA-Fタンパク質も発現する。
【0028】
さらに、前記T細胞は、CD44を発現する。
【0029】
さらに、好ましくは、前記T細胞は、CD62L遺伝子も発現する。
【0030】
さらに、前記T細胞において、CD62L遺伝子のアミノ酸配列は、配列番号13-17に示される。
【0031】
さらに、前記T細胞において、前記CD44のアミノ酸配列は、配列番号12に示され、前記CD62Lのアミノ酸配列は、配列番号13に示される。
【0032】
さらに、前記T細胞において、前記T細胞のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子は、ノックアウト及び/又は不活性化される。前記CD44遺伝子のアミノ酸配列は、配列番号12に示される。前記CD4遺伝子及びCD8遺伝子の標的配列の一部は、配列番号1-11に示され、この配列は、ここで挙げられる配列に限定されず、ヒト12番染色体上のCD4遺伝子:6,789,528-6,820,799(正方向ストランドに位置する)、ヒト2番染色体上のCD8A遺伝子:86,784,610-86,808,396(逆方向ストランドに位置する)及びヒト2番染色体CD8B遺伝子:86,815,339-86,861,924(逆方向ストランドに位置する)を含む。遺伝子編集標的がある位置表1、表3-表5には、含まれるいずれか1つの領域における遺伝子自体に欠失を引き起こせる標的配列が示される。さらに、ノックアウト効率を向上させるために、標的配列における最初の塩基がGではない配列の前に、1つのグアニンGを導入することができる。
【0033】
前記CD62L天然アミノ酸配列は、配列番号13に示される。
【0034】
天然の又は天然配列で発現したCD62Lは、特定の生理状況(活性化程度が比較的高い場合)で発生する自己切断により分解又は加水分解を引き起こすモードが存在するため、そのアミノ酸の置換、削除又は他の短縮などによりそれを下記の非分解モード配列に変異させることでその存続性を向上させることができる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
本発明の第三の目的は、前記T細胞の調製方法を提供することにある。この方法は、持続性が長い細胞を提供するために調製イディアを提供する。
【0038】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0039】
前記RNP複合体を用いて遺伝子編集技術によりTリンパ球中のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子をノックアウト及び/又は不活性化する。
【0040】
前記T細胞の調製方法では、下記のいずれか1つの方法により目的細胞を得る。
【0041】
(1)新鮮又は凍結由来のT細胞を用いて、遺伝子編集によりCD4及びCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化する。CD4及びCD8遺伝子を同時にノックアウト又は不活性化してもよく、CD4又はCD8のノックアウト又は不活性化を完成させてからCD8又はCD4のノックアウト又は不活性化を行ってもよい。最後に目的細胞を得る。(2)CD4陽性のT細胞を選択し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る。(3)CD8陽性のT細胞を選択し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る。(4)CD4陽性のT細胞を選択し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化し、CD8陽性のT細胞を選択し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化し、最後に遺伝子編集によりCD4遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞と、遺伝子編集によりCD8遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞とを混合して目的細胞を得る。
【0042】
さらに、前記T細胞は、活性化及び/又は非活性化のTリンパ球である。
【0043】
さらに、前記T細胞中のCD4遺伝子及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化するタイミングは、T細胞の増幅後又はT細胞の増幅前である。
【0044】
さらに、前記遺伝子編集技術は、エレクトロポレーション法又は非エレクトロポレーション法によりT細胞を改造するものである。
【0045】
さらに、前記遺伝子編集技術は、CRISPR/(Cas9又はCpf1)、ZFN、TALENを含む。
【0046】
本発明の第四の目的は、インビボでより持続的なユニバーサルCAR-T細胞であって、CD44及び/又はCD62Lを発現できることを特徴とするユニバーサルCAR-T細胞を提供することにある。
【0047】
CD44遺伝子によってコードされたタンパク質は、細胞間の相互作用、細胞接着及び遊走に関与する細胞表面糖タンパク質である。それは、ヒアルロン酸(HA)の受容体であり、他のリガンド(例えば、オステオポンチン、コラーゲン、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP))と相互作用することもできる。このタンパク質は、リンパ球活性化、再循環とホーミング、造血と腫瘍転移を含む様々な細胞機能に関与する。現在、CD44に対する研究は、主にがん幹細胞におけるその役割と、細胞接着におけるその様々な変異体の役割に焦点を当ており、極めて少ない研究では、CD44をCAR-T細胞療法の標的としており、それをCAR-T治療に直接使用する研究についてまだ関連報告はない。
【0048】
L-セレクチン(CD62L)遺伝子は、接着/ホーミング受容体ファミリーに属する細胞表面接着分子をコードし、通常T細胞活性化のマーカーとしてT細胞が継続的に活性化されている間、自己スプライシング機構の起動により、細胞上での発現はダウングレードし続ける。研究により分かるように、ダウングレード現象があっても、CD62Lを発現する細胞毒性Tリンパ球(CTL)の抗腫瘍能力もCD62Lを発現しないCTL(doi:10.1172/JCI24480doi:10.1073/pnas.0503726102)よりも顕著に高い。これはCD62Lのホーミング能力によるものと考えられる。しかし、いくつかの研究では、L-セレクチンはホーミングと関係がなく、腫瘍内の治療用T細胞の活性化に関連することも示されている(doi:10.3389/fimmu.2019.01321)。文献(doi:10.3389/fimmu.2019.01321)の研究では、養子免疫療法のマウスモデルを使用し、野生型マウスCD8Tを対照とし、CD62L膜近位加水分解切断部位の一部の配列を削除することにより変異型CD62L遺伝子改変マウスを生成し、この変異型遺伝子改変マウスは、その加水分解断片を変異させることによりマウスCD8T細胞上のL-セレクチンの発現を増強する。研究結果から分かるように、変異型CD62L遺伝子改変マウスは、CD8T細胞が固形腫瘍の増殖を制御する能力を向上させるが、從來技術において、T細胞又はCAR-T細胞上でCD62Lが過剰発現して最後に達成する効果及び具体的な機序はまだ不明である。
【0049】
本発明の第五の目的は、長期間生存能力が高いCAR-T細胞及びその調製方法を提供する。前記細胞は、商業的に応用可能であり、前記方法の再現性も良好である。
【0050】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0051】
前記T細胞により調製されたCAR-T細胞。
【0052】
さらに、CAR-T細胞中のCARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0053】
さらに、前記CAR-T細胞は、同種他家CAR-T細胞である。
【0054】
さらに、前記CAR-T細胞は、膜結合型IL15も発現する。
【0055】
さらに、前記CAR-T細胞は、分泌サイトカインも発現する。前記サイトカインは、IL2、IL7、IL12、IL21、IL15を含む。
【0056】
さらに、前記CAR-T細胞は、腫瘍微小環境における分子の融合タンパク質も発現して認識することができる。前記融合タンパク質の細胞外構造は、PD1、PDL1、SIRPγ、SIRPδ、TIGITを認識する。
【0057】
さらに、前記CAR-T細胞における前記CAR構造は、制御によって活性化又は不活性化することができる。制御によって活性化又は不活性化する前記構造は、ペプチドネオエピトープ(PNE)、フルオレセイン(FITC)、10アミノ酸(5B9タグ)、FITC-HM-3二機能性分子(FHBM)とscFv、抗体に結合したロイシンZipFv、ストレプトアビジン2(mSA2)ビオチン結合ドメインを含む。これらの分子は、CARに結合した抗体又はZipCAR構造によって認識されることによりCAR-T細胞のシグナル経路の誘導及び活性化を引き起こすことができる。このようなシステムは、抗体に結合したスイッチ分子の数を変更することによってCAR-T細胞の活性を制御する。
【0058】
さらに、前記CAR-T細胞は、固形腫瘍、血液系腫瘍細胞/組織を認識することができる。前記CAR-T細胞の抗原認識領域は、CD19、CD20、CD22、CD33、CLL-1(CLEC12A)、CD7、CD5、CD70、CD123、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、Mesothelin、MUC1、CLDN18.2、CDH17、Trop2、BCMA、NKG2D、PDL1、EGFR、EGFRVIII、PSCA、PSMA、MUC16、CD133、GD2、IL13R2、B7H3、Her2、CD30、SLAMF7、CD38、GPC3、WT1又はTAG-72を含む抗原を認識することができる。
【0059】
本発明の第六の目的は、前記CAR-T細胞の調製方法を提供することにある。前記調製方法は、下記2つの方法のいずれか1つにより目的細胞を得る
【0060】
(1)T細胞を収集して取得し、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はCD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、CAR構造に感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る;或いは
(2)T細胞を収集して取得し、エレクトロポレーション法によりRNPをこのT細胞に導入した後、さらにCD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はさらにCD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る。
【0061】
さらに、前記調製方法は、下記2つの方法のいずれか1つにより目的細胞を得る。
【0062】
(1)CD4及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化したT細胞を活性化した後、CD62L、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、CAR構造が感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る;或いは
【0063】
(2)CD4及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化したT細胞を活性化した後、エレクトロポレーション法によりRNPをこのT細胞に導入した後、さらにCD62L、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る。
【0064】
さらに、前記調製方法において、CD4及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化する際にCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によりT細胞を改造する。前記CRISPR/Cas9遺伝子編集技術に係るRNP複合体は、具体的にCD4sgRNA、CD8sgRNA及びCas9タンパク質を含むRNP複合体である。
【0065】
さらに、前記調製方法において、前記Cas9タンパク質とsgRNAとのモル比は1:2である。
【0066】
CAR-T細胞の調製は、
1)目的遺伝子断片(異なるプロモーターで開始させる特定の腫瘍標的に対するCAR構造配列及びCD62L遺伝子断片を含む)を含むウイルスベクターを構築するステップと、
2)ウイルスベクターをT細胞に感染させて目的細胞を得るステップと、
を含む。
【0067】
さらに、前記方法では、前記ステップ2)において、レンチウイルス感染、遺伝子ターゲティング、リポフェクション、エレクトロポレーション法などによりCD62L遺伝子の発現を強化する。
【0068】
本発明の第七の目的は、細胞組成物を提供することにある。この組成物には、多くの機能細胞が集まる。この細胞組成物は、治療作用を有する。
【0069】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0070】
前記T細胞及び/又は前記CAR-T細胞を含む細胞組成物。
【0071】
さらに、前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で90%、80%、70%又は60%以上である。
【0072】
さらに、前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で60%以上である。
【0073】
さらに、前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で70%以上である。
【0074】
さらに、前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で80%以上である。
【0075】
さらに、前記細胞組成物に含まれる前記T細胞又は前記CAR-T細胞の割合は、個数基準で90%以上である。
【0076】
さらに、前記細胞組成物は、活性化誘導されたCIK細胞又はNKT細胞であってもよい。
【0077】
さらに、前記細胞組成物における、CD4遺伝子及びCD8遺伝子が不活性化したTリンパ球は、キメラ抗原受容体を発現する。
【0078】
本発明の第八の目的は、前記T細胞、前記組換えベクター、前記CAR-T細胞、又は前記細胞組成物の使用を提供することにある。前記使用は、臨床に優れた治療アイデアを提供する。
【0079】
前記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は下記である。
【0080】
細胞治療薬物の調製における前記T細胞、前記CAR-T細胞、前記組換えベクター、及び/又は前記細胞組成物の使用。
【0081】
さらに、前記使用は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、前立腺がん、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん及び/又は皮膚がんを治療する薬物における前記T細胞、前記CAR-T細胞、前記組換えベクター、及び/又は前記細胞組成物の使用である。
【0082】
腫瘍治療に使用される細胞治療薬における本発明に記載のRNPの使用。
【0083】
治療性T-細胞又はCAR-T細胞の調製における、CD4遺伝子の阻害剤、ノックアウト剤及び/又はCD4遺伝子の阻害剤、ノックアウト剤は、細胞増殖剤、活性増強剤、表現型分布改善剤、疲弊マーカー発現阻害剤としてのCD4遺伝子の阻害剤、ノックアウト剤としての使用。
【0084】
CAR-T細胞の活性増強剤の調製におけるCD62L及び/又はCD44の使用。
【0085】
さらに、CAR-T細胞の活性増強剤の調製におけるCD44とCD62Lの組み合わせの使用。
【0086】
CAR-T細胞が分泌するPD-1及びLAG-3因子の阻害剤の調製におけるCD62L及び/又はCD44の使用。
【0087】
用語説明
CAR-T細胞の調製における、腫瘍細胞殺傷促進剤としてのCD62L及び/又はCD44遺伝子の使用。前記CAR-T細胞は、通常CAR-T細胞、CD4及び/又はCD8遺伝子を発現しないCAR-T細胞、又はユニバーサルCAR-T細胞である。
【0088】
本発明に記載のCAR構造は、通常の第一世代、第二世代、第三世代のCARであってもよく、改良された二重CAR、調整可能なCAR構造(例えば、FRB/FKBP12調整)などの新しいCAR構造であってもよい。
【0089】
本発明に記載のCAR構造は、ナチュラルキラー細胞受容体(NKR)の1種又は複数種の成分を含むため、NKR-CARを形成する。NKR成分は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)(例えば、KIR2DL1、KIR2DL2/L3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、DIR2DS5、KIR3DL1/S1、KIR3DL2、KIR3DL3、KIR2DP1及びKIR3DP1)、天然細胞毒性受容体(NCR)(例えば、NKp30、NKp44、NKp46)、免疫細胞受容体のシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリー(例えば、CD48、CD229、2B4、CD84、NTB-A、CRA、BLAME及びCD2F-10);Fc受容体(FcR)(例えば、CD16及びCD64)、及びLy49受体(例えば、LY49A、LY49C)のうちのいずれかのナチュラルキラー細胞受容体に由来する膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン又は細胞質ドメインであってもよい。前記NKR-CAR分子は、アダプター分子又は細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、DAP12)と相互作用することができる。
【0090】
本発明に記載のレンチウイルスベクターは、基本的にヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ・マエディウイルスウイルス(visna-maedi virus,VMV)、山羊関節炎・脳炎ウイルス(CAEV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)、牛免疫不全ウイルス(BIV)及びサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群より選択される。
【0091】
本発明のCAR-Tは、特許出願201710305078.8、201710613317.6、201710618293.3、201510304389.3、201510648252.X、201810207761.2、201810934637.6、201811125906.0、201910407001.0、202010257762.5、202010259458.4、202010260805.5、202010260849.8、202010559366.8、202110556147.9に記載のCAR-T構造及び他の公開されたCAR-T構造を使用することができる。このようなダブルネガティブユニバーサルCAR-T細胞療法の使用は、任意のCAR構造又は標的に適用でき、CAR標的、構造により制限されず、CD4及びCD8遺伝子を発現しないT細胞は、全て任意CAR構造の発現に影響を与えない。
【0092】
本発明で使用される遺伝子編集技術は、CRISPRシリーズ技術(Cas9、Cpf1)、ZFN、TALENを含むが、これらに限定されない。本明細書に記載のダブルネガティブユニバーサルT細胞は、任意の遺伝子編集技術により得られることができる。
【0093】
本発明の同種他家T細胞とは、遺伝子編集技術によりCD4及びCD8遺伝子を不活性化するとともに同種他家に使用して特定の適応症を治療できるT細胞を指す。
【0094】
本発明の薬物組成物は、化学療法類薬物、他の腫瘍標的モノクローナル抗体類薬物、抗体-薬物カップリング複合体(ADC)、免疫チェックポイント阻害剤類薬物、低分子薬物のうちの1種又は複数種と併用することができる。
【0095】
本発明に記載のCAR-T構造におけるヒンジ領域配列は、IgG、CD8、CD7、CD4に由来することができる。
【0096】
本発明に記載のCAR-T構造における膜貫通領域配列は、CD8、CD28、CD3ε、CD4、CD16、CD137、CD80及びCD86に由来することができる。
【0097】
本発明に記載のCAR-T構造における細胞内シグナル伝達領域は、CD3、CD137、CD28、CD27、OX40、ICOS、GITR、CD2、CD40、PD-1、PD1L、B7-H3、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ICAM-1、CD7、NKG2C、CD83、CD86及びCD127に由来することができる。
【0098】
本発明に記載の抗原認識領域は、標的抗原を認識できるリガンド/受容体であってもよい。ScFvは、マウス抗体、完全ヒト抗体、又はヒト-マウスキメラ抗体のScFvであってもよく、サメ、アルパカ、ラクダ抗体などの単一ドメイン抗体であってもよく、二重特異性抗体であってもよく、人工的に設計された、特定の標的を認識する標的特異性フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインとの組み合わせであってもよい。
【0099】
本発明におけるCAR-Tは、特許出願201710305078.8、201710613317.6、201710618293.3、201510304389.3、201510648252.X、201810207761.2、201810934637.6、201811125906.0、201910407001.0、202010257762.5、202010259458.4、202010260805.5、202010260849.8、202010559366.8、202110556147.9に記載のCAR-T構造及び他の公開されたCAR-T構造を使用することができる。このようなダブルネガティブユニバーサルCAR-T細胞療法の使用は、CD44標的を除くいずれか1つのCARに適用でき、CARの他の標的、構造によって制限されない。
【0100】
本発明で開示された調製方法において、活性化したT細胞は、ウイルスによりCAR構造に感染してもよく、トランスポゾンシステムを使用してもよい。
【0101】
本発明におけるDU-CAR-Tとは、CD4及び/又はCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化したユニバーサルCAR-T細胞を指す。
【0102】
本発明における44-19CARとは、自己免疫細胞により調製されたCD44発現CAR-T細胞を指す。
【0103】
本発明におけるL-19CARとは、自己免疫細胞により調製されたCD62発現CAR-T細胞を指す。
【0104】
本発明で開示された調製方法において、活性化したT細胞は、ウイルスによりCAR構造に感染してもよく、トランスポゾンシステムを使用してもよい。
【0105】
本発明において、同種他家細胞を用いて調製された、CD44を発現する從來のユニバーサルCAR-Tは、CU-44-CAR-Tであり、同種他家細胞を用いて調製された、CD44を発現するユニバーサルCAR-Tは、DU-44-CAR-Tである。
【0106】
本発明において、同種他家細胞を用いて調製された、CD62Lを発現する從來のユニバーサルCAR-Tは、CU-62-CAR-Tであり、同種他家細胞を用いて調製された、CD62を発現するユニバーサルCAR-Tは、DU-62-CAR-Tである。
【0107】
本発明の有益な効果
1)本発明で提供されるダブルネガティブユニバーサルCAR-T細胞は、効果的にTリンパ球に発現できるだけでなく、CAR-T細胞の活性を強化し、CAR-Tの有効性を向上させ、CAR-T細胞の表現型を改善し、疲弊発現を低減し、腫瘍標的細胞に対するCAR-T細胞の殺傷を向上させることができ、腫瘍の標的療法に適用することができる。
2)本発明は、インビボおよびインビトロで腫瘍標的細胞を効果的に殺傷できるだけでなく、腫瘍の標的療法にも使用できるとともに、從來の自家CAR-T細胞及び從來のユニバーサルCAR-T細胞の抗腫瘍効果よりも高い選択可能なユニバーサルCAR-T細胞候補細胞を提供する。
3)本発明で提供されるユニバーサルCAR-T細胞は、從來のユニバーサルCAR-T細胞と同様に、インビトロで低いGVH応答のみが発生し、同種他家CAR-T療法に適用でき、CAR-Tの臨床応用及び腫瘍の併用治療の新しい戦略の開発に対して重要な指導意義を持っている。
4)本発明で提供される方法により調製されたDU-CAR-Tは、從來のユニバーサルCAR-T細胞と同じレベルの低GVH反応を実現するとともに、本発明の44-CAR、L-CAR及びユニバーサルDU-CARは、あらゆる面で自家CAR細胞よりも優れているか、劣っていない。
5)本発明で提供される方法により調製されたDU-CAR-T細胞は、天然のDN-T又はそれを用いて調製されたDN-CAR-T細胞と比較して、本発明のDU-CAR-Tの増殖能力がより強く、活性がより高く、表現型分布がより良く、疲弊マーカー発現がより低く、インビトロでの有効性がより優れ、極めて顕著な統計的有意差がある。また、本発明の細胞は、より入手しやすく、同じ出発量のPBMCであっても、最終的に得られる有効な細胞は、DN-CAR-T細胞よりも遥かに多い。これによって、生産コストが大幅に削減され、その臨床応用に対してより多くの可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】ノックアウト率の検出結果を示す。
図2】CAR陽性率の検出結果を示す。
図3】インビトロ薬力学の検出結果を示す。
図4】表現型(phenotype)の検出結果を示す。
図5】疲弊マーカー(exhaustion marker)の検出結果を示す。
図6】活性(vitality)の監視結果を示す。
図7】GVH強度の検出結果を示す。
図8】19CAR、DU-19CAR及びCU-19CARのインビボでの抗腫瘍検出結果の比較を示す。
図9】19CAR及び44-19CARのインビボでの抗腫瘍検出結果の比較を示す。
図10】DU-44-19CAR及び19CARのインビボでの抗腫瘍検出結果の比較を示す。
図11】CAR陽性率の検出結果を示す。
図12】インビトロ薬力学の検出結果を示す。
図13】フローサイトメーターの検出結果を示す。
図14】疲弊マーカーの検出結果を示す。
図15】GVH強度の検出結果を示す。
図16】フローサイトメトリーの検出結果を示す。
図17】フローサイトメトリーの検出結果を示す。
図18】インビトロ薬力学の検出結果を示す。
図19】因子の検出結果を示す。
図20】増殖と活性の検出結果を示す。
図21】表現型の検出結果を示す。
図22】疲弊マーカーの検出結果を示す。
図23】活性化マーカーの検出結果を示す。
図24】フローサイトメーターの検出結果を示す。
図25】インビトロ薬力学評価の結果を示す。
図26】表現型の検出結果を示す。
図27】疲弊物の検出結果を示す。
図28】増殖と活性の検出結果を示す。
図29】GVH強度の検出結果を示す。
図30】インビボでの薬効の検出結果を示す。
図31】RT-PCRマウス血液中のCAR-Tコピー数の結果を示す。
図32】遺伝子ノックアウトの効率図である。
図33】DU-19CAR、CD4シングルネガティブ4N-19CAR、CD8シングルネガティブ8N-19CARのインビトロ殺傷図である。
図34】同割合で混合したCD4シングルネガティブとCD8シングルネガティブとの混合細胞のGVH強度測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明は、ユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用を開示する。当業者は、本明細書の内容に基づいてプロセスパラメータを適宜に修正して実現することができる。なお、すべての置換及び変更は、当業者にとって自明のものであり、いずれも本発明に含まれるものとみなされる。本発明の方法及び使用は、好ましい実施例により説明されている。当業者は、本発明の内容、思想及び範囲から逸脱しない限り本明細書に記載の方法及び使用を修正又は適宜に変更及び組み合わせを行うことで本発明の技術を実現、応用することができる。
【0110】
本発明で保護されるダブルネガティブT細胞は、任意の標的及び構造のキメラ抗原受容体(CAR)と組み合わせて本発明で開示された技術的効果を得ることができる。ここで、CD19を標的とするキメラ抗原受容体を例として具体的に説明する。同様に、前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、逆転写ウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、アデノ随伴ウイルス発現ベクター、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドのうちのいずれか1種である。ここで、レンチウイルスベクターを例として説明する。前記調製スキームは、エレクトロポレーション法及び非エレクトロポレーション法を使用することができるが、本実施例においてエレクトロポレーション法を例として説明する。
【0111】
本発明において、磁気ビーズ選別は、ビオチンで標識されたCD4及びCD8抗体と、抗生物質が結合したマイクロビーズを使用するか、又はCD4及びCD8陽性磁気ビーズを使用してカラムにかけて選別する。さらに、フローソーターを用いるか又は必要な部分を得ることができる手法により選別してもよく、最後に必要な部分を選択すればよい。フローサイトメトリーによりノックアウト効率及び選別純度を検出するのに使用される抗体は、CD3:PE-CY7、CD4:FITC、CD8:BV510である。本発明において、前記ダブルネガティブCAR-T細胞の調製方法は、下記である。即ち、1、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後又は活性化せずにCAR及び/又はCD44及び/又はCD62L構造を含むウイルスに感染させ、数時間培養した後、CAR構造が感染したT細胞に対してRNPエレクトロポレーションを行い、引き続き培養し、目的細胞を選別する。2、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後又は活性化せずにRNPをエレクトロポレーション法によりT細胞に導入した後、数時間培養した後、CAR及び/又はCD44及び/又はCD62L構造を含むウイルスに感染させ、引き続き培養し、目的細胞を選別した。3、凍結保存又は新鮮な単核細胞を取得し、数時間活性化した後又は活性化せずにエレクトロポレーション法によりRNPを細胞核に導入し、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を選別して取得し、さらにエレクトロポレーション法によりRNPを細胞核に導入し、CD4及びCD8ダブルネガティブのT細胞を選別して取得する。4、凍結保存又は新鮮な単核細胞を取得し、数時間活性化数した後又は活性化せずにエレクトロポレーション法によりRNPを細胞核に導入し、CD4及びCD8ダブルネガティブのT細胞を選別して取得し、CAR構造及び/又はCD44及び/又はCD62Lを含むウイルスに感染させ、引き続き培養して目的細胞を得る。
【0112】
本発明で使用されるCARの構造は、細胞外認識領域(抗CD19ScFv)-CD8由来ヒンジ-CD8由来膜貫通領域-細胞内シグナル伝達領域(CD137-CD3)であり、アミノ酸配列は配列番号12に示される。
【0113】
【化1】
【0114】
本発明で提供されるユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用に用いられる原料及び試薬は、いずれも市販されている。以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0115】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0116】
実施例1:T細胞中のCD4遺伝子及びCD8遺伝子のノックアウト結果
【0117】
Lonzaエレクトロポレーターを用いて、エレクトロポレーション法によるT細胞の導入に適したエレクトロポレーションプログラムを選択する。Cas9タンパク質:sgRNAのモル比は1:2であり、又は他の適切な比でもよい。RNPをインビトロで5-15分間インキュベートする必要がある。その後、エレクトロポレーション緩衝液で再懸濁した適量のT細胞と均一に混合してエレクトロポレーションカップに移し、エレクトロポレーションを行う。エレクトロポレーションを完成した後、適量の培地を含む培養フラスコに移して引き続き培養する。エレクトロポレーションの72h後に、検出可能な蛍光標識を有するCD4又はCD8フローサイトメトリー抗体をインキュベートしてノックアウト効率を検出することができる。図32は、表6に示される使用される標的のうち、一部のノックアウト効率を示す。異なる条件では、他の標的は、比較的高いノックアウト効果又はより高いノックアウト効果を示すこともできる。CD4及びCD8がノックアウトされた遺伝子領域における、遺伝子自体に欠失を引き起こさせる任意の標的配列でもよい。
【0118】
本発明において、遺伝子編集標的がある位置表1及び表3-表5には、含まれるいずれか1つの領域における遺伝子自体に欠失を引き起こせる標的配列が示される。結果を図1に示す。使用される標的配列の一部は、配列番号14-33に示されてもよい。この配列は、ここで示される配列に限定されず、CD4及びCD8をノックアウトした遺伝子領域における遺伝子自体に欠失を引き起こさせる任意の標的配列であればよく、かつヒト12番染色体上のCD4遺伝子:6,789,528-6,820,799(正方向ストランドに位置する)、ヒト2番染色体上のCD8A遺伝子:86,784,610-86,808,396(逆方向ストランドに位置する)及びヒト2番染色体上のCD8B遺伝子:86,815,339-86,861,924(逆方向ストランドに位置する)を含む。遺伝子編集標的位置を表6及び表7に示す。以下、含まれる任意の領域における遺伝子自体に欠失を引き起こさせる標的配列を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
実施例2:DU-19CARの調製
本発明の技術方法により調製されたDU-19CARの取得方法
出発サンプルは健常人の末梢血であり、磁気ビーズ又はフローサイトメトリー技術によりそれぞれCD4/CD8シングルポジティブT細胞を選別した。CD3、CD28の抗体を含むDynabeadsにより持続的に刺激して通常の陰性対照群CT/CD4、シングルポジティブ対照群4P-CT/CD8、シングルポジティブ対照群8P-CTを取得した。CARを含むレンチウイルスに感染させて通常のCAR-T/CD4シングルポジティブ4P-CAR-T/CD8シングルポジティブ8P-CAR-Tを得た。
【0125】
或いは、エレクトロポレーション法によりCD4及び/又はCD8を標的とするsgRNAとCas9タンパク質のRNP複合体を導入し(具体的な実施形態は実施例1をご参照)、エレクトロポレーション後、フローサイトメトリー又は磁気ビーズによりCD4/CD8ダブルネガティブDU-CAR-T及び/又はCD4/CD8シングルネガティブ4N-CAR-T/8N-CAR-T細胞を選別し、培養液に適量の因子、又はT細胞の培養に適した任意の培地とサイトカインの組み合わせを加えてもよい。ここで、CAR-T細胞調製過程における他のステップは、本社の前の特許出願に記載されたステップに従う。
【0126】
実施例3:CD4とCD8ダブルネガティブDU-19CARの評価
1、CAR陽性率の検出方法
PEで標識されたPL抗体。図11から分かるように、19CAR上のCD4及びCD8に対して遺伝子編集を行い、磁気ビーズにより高純度のダブルネガティブCAR-T細胞を選別した。非遺伝子編集群のCD4及びCD8の割合はそれぞれ53.46%及び43.43%であり、遺伝子ノックアウト後、DTの割合は89.93%にも達し、磁気ビーズにより選別した後に純度が99.94%と高いダブルネガティブCAR-T細胞を得た。このような操作は、CAR構造のT細胞上の発現に影響を与えなかった。DU-19CAR群及び19CAR群の陽性発現量はいずれも約85%であるのに対し、從來のユニバーサルCU-19CAR発現量は76%であり、他の2群よりもやや低かった。
【0127】
2、インビトロ薬効、殺傷の評価方法
特定のエフェクター対ターゲット比(E:T=CAR-T:腫瘍細胞)でプレーティングし、1640完全培地中で所定時間培養し、ルシフェラーゼ溶解法により標的細胞の生存率を検出し、細胞毒性効率を算出した。インターフェロン-γ因子の分泌レベルの検出は、この因子レベルに適用できるキットを使用すればよい。詳細は各製造業者のキットの説明書を参照することができる。
【0128】
図12に示されるインビトロ薬力学評価の結果から分かるように、DU-19CARインビトロ殺傷は、從來のユニバーサルCU-19CARに相当し、比が1:4、殺傷時間が24hである場合、その殺傷効率はいずれも約90%に達するのに対し、本発明の新しいユニバーサルDU-19CAR群は、因子分泌レベルが從來ユニバーサルCU-19CAR群の2倍であり、これは、本発明の方法は、その腫瘍殺傷能力を向上させ、腫瘍細胞をより強力に攻撃するのに有利であることを示している。
【0129】
3、表現型の検出方法
フローサイトメーター検出
抗体:CCR7:APC、CD45RA:BV421、CD45RO:Percp5.5
表現型の分類標準
Tメモリー幹細胞:TSCM(CD45RA+CD45RO-CCR7+)、類Tメモリー幹細胞:TSCM-Like(CD45RA+CD45RO+CCR7+)、エフェクターメモリーT:TEM(CD45RA-CD45RO+CCR7-)、セントラルメモリーT:TCM(CD45RA-CD45RO+CCR7+)、エフェクターT:TE(CD45RA+CD45RO-CCR7-)、その他(100%-TSCM-TSCM-Like-TEM-TCM-TE)
図13に示すように、表現型検出の結果から分かるように、從來の自家19CARと比較して、ユニバーサルDU-19CAR各群は、サブタイプ分布が比較的近く、TSCMがやや低いが、TEがやや高く、腫瘍細胞の瞬時殺傷に有利である。
【0130】
4、疲弊マーカー検出方法
フローサイトメーター検出
抗体:PD-1:APC、LAG-3:BV421、TIM-3:Percp5.5
図14に示すように、疲弊マーカー検出の発現量データ結果から分かるように、2群のCARはいずれもTIM-3を発見させないが、從來の自家19CARと比較して、本発明のユニバーサルDU-19CAR上のPD-1及びLAG-3の発現はいずれもより低く、これは、本発明のユニバーサルDU-19CARがより長い持続性を有し、抗腫瘍能力の向上に有利であることを示している。
【0131】
5、GVH強度の測定方法
ミクロスフェア絶対計数の方法により混合リンパ球反応(MLR)を測定し、特定の比でドナー細胞(CAR-T):レシピエント細胞(ドナー細胞と異なるHLAサブタイプの健常人PBMC)の混合系を調製し、1640基礎培地で8日間培養し、それぞれ0日目及び8日目にフローサイトメトリーにより細胞の絶対計数を検出し、細胞数の変化によりGVHの相対強度を算出した。
【0132】
図15に示される検出結果から分かるように、本発明のダブルネガティブDU-19CARによって引き起こされるGVH反応の強度は從來のユニバーサルCAR-T細胞CU-19CARに相当し、いずれも対照群の自家CAR-T細胞19CAR及びCT群よりも低かった。この結果は、本発明の方法により調製されたDU-19CARが從來のユニバーサルCAR-T細胞と同様に同種他家CAR-T免疫療法に適用できることを示している。
【0133】
6、インビボでの薬力学評価方法
11dayにマウスを導入し、マウスに対して検疫などの一連の検査作業を行った後、試験に組み入れることができる。-3dayに5e5Nalm6-Luc-GFP標的細胞尾静脈注射を行い、day0にランダムに群分けした後、CAR-T有効細胞数が2e6となるようにCAR-T細胞を再注入し、その後、7日ごとに生体イメージングを行ってマウスのインビボでの腫瘍除去状況を観察した。
【0134】
図8に示されるインビボでの薬効結果から分かるように、19CAR群、DU-19CAR群及びCU-19CAR群は、Control T群と比較してインビボで顕著な腫瘍抑制作用を有した。DU-19CAR群及びCU-19CAR群の蛍光値曲線データ分析から分かるように、DU-19CAR群と比較してCU-19CAR群はインビボでの薬効が顕著に優れており、本発明のDU-19CARインビボでの薬効は自家群19CARよりもやや優れており、これは、本発明の新しいユニバーサルCAR-T細胞のインビボでの抗腫瘍効果が從來のユニバーサルCAR-T細胞よりも遥かに高いとともに、從來の自家CAR-T細胞よりも高いことを示している。これも本発明の予想外の発見の一つである。
【0135】
前記をまとめると、本発明で設計されたDU-19CARに対してインビトロ・インビボ薬効学評価、表現型検出、疲弊マーカー検出を行った結果、本発明のDU-19CARはあらゆる面で從來のユニバーサルCAR-T細胞よりも優れている。ミクロスフェア絶対計数の方法により混合リンパ球反応(MLR)を測定した結果、本発明で設計された新しいユニバーサルDU-19CARによって引き起こされるGVH反応の程度は、從來のユニバーサルCAR-T細胞(CU-19CAR)に相当し、同種他家の再注入治療に使用できる。
【0136】
実施例4:CD4シングルネガティブ、CD8シングルネガティブ、及びCD4シングルネガティブとCD8シングルネガティブとの組み合わせのDU-19CARの評価
【0137】
1、インビトロ薬力学評価
図33に示されるインビトロ薬力学評価結果から分かるように、DU-19CAR、CD4シングルネガティブ4N-19CAR、CD8シングルネガティブ8N-19CARのインビトロ抗腫瘍能力は、対照群自家19CARに相当し、その殺傷効率はいずれも80%以上に達した。K562-Luc-GFPに示される非特異的な殺傷は正常現象である。これは、本発明のDU-19CAR又はCD4陰性及びCD8陰性19CARからなるDU-19CARのインビトロ抗腫瘍能力は遺伝子編集により低下しないことを示している。
【0138】
2、GVH強度の測定
混合リンパ球反応(MLR)及びフローサイトメトリー検出の方法により測定し、特定の割合で調製した。具体的には、まず、レシピエント細胞(ドナー細胞と異なるHLAサブタイプの健常人PBMC)をマイトマイシンCで処理してその成長を抑制し、干渉を排除し、次に、ドナー細胞及び/又はレシピエント細胞を異なる色の染料(CTV及び/又はCFSE)で染色して区別し、ドナー細胞(活性化したT細胞):レシピエント細胞を特定の割合で混合した。ここで、ドナー細胞がCD4陽性/陰性及びCD8陽性/陰性T細胞からなるDU-CT及びCTでは、各群の細胞の成分比を表8に示す。混合した直後、直ちにフローサイトメトリーにより検出してそれぞれの割合を区別し、1640基礎培地で培養し、それぞれ所定の時間にフローサイトメトリーによりそれぞれの割合の変化状況を検出し、細胞割合の変化によりGVHの相対強度を計算した。
【0139】
図34では、4日間共培養した後、ドナー細胞の宿主PBMCに対する拒絶作用による細胞増殖比率から分かるように、DU-CT群は対照群CTよりも顕著に低かった。これらの結果は、本発明の方法により調製されたダブルネガティブCAR-T細胞が同種他家CAR-T免疫療法に使用できることを示している。
【0140】
【表8】
【0141】
実施例5:ナチュラルDNT又はそれを用いて調製されたDN-CAR-T(DN-19CAR:天然のCD4CD8T細胞)と、本発明の技術により調製されたユニバーサルDU-CAR-T(DU-19CAR:遺伝子編集により得られたCD4CD8T細胞)の比較結果
【0142】
ナチュラルDNTとは、ヒト末梢血中の天然のCD4及びCD8を発現しないダブルネガティブT細胞を指す。このような細胞は、抗原提示経路がMHCによって制限されず、同種他家の使用に同種拒絶を引き起こす確率が極めて低い(末梢血中の総リンパ球の1-5%)が、ヒト末梢血におけるこの細胞の存在割合が極めて低く、インビトロ増幅が非常に困難であり、適応症に対する治療効果が良くない。本発明の技術により調製されたユニバーサルダブルネガティブ細胞は、最初ヒト末梢血中のCD4シングルポジティブ又はCD8シングルポジティブT細胞に由来し(末梢血中の総リンパ球の40-80%)、このような細胞は、抗原提示過程がMHCによって制限され、同種他家用途に直接使用できず、同種拒絶反応を回避するためにさらなる操作が必要である。本発明は、遺伝子編集技術によりCD4及びCD8を不活性化してCD4CD8ダブルネガティブのT細胞を得た。本発明において、このような細胞は從來のユニバーサルT細胞と同様に同種他家治療に適用できる必要な条件を有することを示している(GVH関連データを参照)。
【0143】
1、ナチュラルDNTの取得方法
出発サンプル:健常人末梢血
(1)磁気ビーズでCD4/CD8SPT細胞(CD4又はCD8細胞)を除去し、CD3、CD28を含む抗体で24-48h持続的に刺激し、次に、IL2及びIL4(及び/又は)IL7(及び/又は)IL15(及び/又は)IL21を含む培地で集積培養した。(2)フローサイトメトリーによりCD3CD4/CD8T細胞を選別し、CD3、CD28を含む抗体で24-48h持続的に刺激し、次に、IL2及びIL4(及び/又は)IL7(及び/又は)IL15(及び/又は)IL21を含む培地で集積培養した。
【0144】
DN-19CARの取得方法:ナチュラルDNTを取得し、24h培養し、CAR含有レンチウイルスに感染させた。
【0145】
異なる供給源からの健常人の末梢血を6バッチ収集し、そのPBMCを分離し、検出によりDNT含有量が最も高い3バッチを選択した(選別指標:CD3CD4CD8)。DU-19CARの調製に使用する必要がある出発細胞はSPTであった(選別指標:CD3、CD4/CD8)。結果を表9に示す。
【0146】
【表9】
【0147】
それぞれ出発量1e8で計算し、細胞活性化の6日目に取得したCAR-T細胞数の統計を表10に示す。表のデータから分かるように、同じ出発量のPBMCの場合、DNT割合が比較的高いバッチを選別した後、得られたDU-19CAR細胞は、少なくともDN-19CAR細胞の3倍であり、最大35倍以上にも達した。活性化の6日目に監視し始めた増殖データについては、図23に示すように、後期の増殖において、DN-19CAR細胞はDU-19CAR細胞よりも遥かに低かった。前記の結果から分かるように、DU-19CAR細胞の応用範囲はより広く、様々な用途、特に臨床応用のように細胞量に対する要求が高い分野のニーズを満たすことができる。図16から分かるように、DU-CAR-T細胞のCAR陽性率は60%以上であり、N-DN-CAR-T細胞の25.4%よりも遥かに高く、つまり、有効細胞の割合が高く、腫瘍細胞の殺傷により有利である。
【0148】
【表10】
【0149】
3、DU-19CARの取得方法
調製は前と同じ、磁気ビーズにより選別し、ビオチンで標識されたCD4及びCD8抗体、並びに抗生物質が結合したマイクロビーズを用いてカラムにかけて選別した。図17に示すように、陰性部分を選択すればよい。フローサイトメトリーによりノックアウト効率及び選択純度を選択するのに使用される抗体は、CD3:PE-CY7、CD4:FITC、CD8:BV510であった。
【0150】
図17から分かるように、DU-19CAR細胞の純度は100%にも達し、選別純度が高く、DN-CAR-T細胞のDNT割合が96.6%であった。これは、集積により得られたDNTの純度が比較的高いが、本発明の方法よりもやや低いことを示している。これは、安全性の面では、本発明の方法により得られたDU-CAR-T細胞はより大きな優位性を有することを示している。
【0151】
4、インビトロ薬力学評価
図18に示すように、エフェクター対ターゲット比が1:8である場合、殺傷結果は、本発明のDU-19CARと從來の自家19CARとの間に統計学的有意差があり、本発明のDU-19CARと天然DNTによるDN-19CARとの間に極めて顕著な統計学的有意差がある。これは、本発明のDU-CAR-T細胞の殺傷能力がDN-CAR-T細胞より顕著に高く、自家CAR-T細胞群よりやや優れたことを示している。
【0152】
5、因子検出結果
図19に示されるから分かるように、検出インターフェロンγの検出に使用できる任意のキットを用いて検出すればよく、殺傷後の上清培地を検出し、方法は各試薬の説明書を参照することができる。結果から分かるように、本発明のDU-19CARは、從來の自家19CARとの間に顕著な統計学的有意差があり、本発明のDU-19CARは、天然DNTによるDN-19CARとの間に極めて顕著な統計学的有意差がある。これは、因子分泌のレベルから本発明のダブルネガティブユニバーサルCAR-T細胞がより高いインビトロ薬効を有することを示している。
【0153】
6、増殖と活性の監視
磁気ビーズにより高純度のダブルネガティブDU-19CARを選別したとき(活性化後のday5又はday6)から監視し始めた。監視方法については、各群から所定の同じ出発量(例えば、1e6)の細胞を取って監視し、その後、2-3日ごとに監視し、ある群の細胞が増殖しなくなりかつ活性が低下し始めたのを観察すると、監視を停止した。監視プロセス全体を通じてセルを破棄してはならない。図20に示すように、本発明のユニバーサルDU-CAR-Tは、増殖能力と細胞活性がいずれもナチュラルダブルネガティブDN-Control T又はそれによるダブルネガティブDN-19CAR細胞よりも顕著に優れている。これは、本発明の調製方法により得られたユニバーサルDU-19CAR細胞は、増殖及び活性がいずれも影響を受けず、意外な効果もあるのに対し、ナチュラルDNTは増殖が悪く、治療に必要な量に迅速に応えることが難しく、製造コストも大幅に高くなるため、臨床応用への推進が困難である。
【0154】
7、表現型、疲弊マーカー、活性化マーカーの検出
1)表現型の検出結果:図21に示すように、本発明のDU-19CAR群は、TE割合がDN-19CAR群よりも顕著に高かった。CAR-Tの作用時間が短く、瞬時殺傷能力が薬効の重要な指標であるため、本実施例の殺傷結果は本発明のDU-19CARの殺傷能力がより高いことを示している。
【0155】
2)疲弊マーカーの検出結果:図22に示すように、本発明のDU-19CARにおいて、3種類の疲弊分子の発現量がいずれもDN-19CARよりも低かった。この結果から分かるように、本発明のDU-19CARは、より高い持続性を有し、アポトーシスの速度がより遅いため、その抗腫瘍薬効をより良く発揮することができる。
【0156】
3)活性化マーカーの検出方法:フローサイトメーター検出
抗体:CD25:FITC、CD44:BV421、CD95:BV4711
図23に示される活性化マーカーの検出結果から分かるように、CD25に小さな違いが見られた以外、CD95及CD44はいずれも類似の発現を示している。
【0157】
実施例6:CD44発現T細胞と44-19CAR(キメラ抗原受容体T細胞)細胞の調製
CD44は、任意の標的及び構造のキメラ抗原受容体(CAR)と組み合わせて本発明で開示された技術的効果を得ることができる。ここで、CD19を標的とするキメラ抗原受容体を例として具体的に説明する。同様に、前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、逆転写ウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、アデノ随伴ウイルス発現ベクター、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドのうちのいずれか1種であってもよい。ここで、レンチウイルスベクターを例として説明する。
【0158】
1)CD44発現ベクターの構築
配列番号12に示されるCD44アミノ酸配列に対応する遺伝子断片のように、前記目的断片とベクター断片とをT4リガーゼ(Promega社から購入)により結合してキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターを得た。プラスミド抽出キット(Invitrogen社)によりプラスミドを抽出した(具体的な方法は説明書を参照)。前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、逆転写ウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、アデノ随伴ウイルス発現ベクター、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドのいずれか1種であってもよい。具体的な調製方法を説明するために、ここでレンチウイルスベクターを例として説明する。
【0159】
得られたCD44分子をコードする遺伝子配列を制限酵素NheI及びXhoI(Thermo社から購入)を二重消化し、また、制限酵素NheI及びXhoIをレンチウイルス発現ベクターpRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPREプラスミドを酵素消化し(http://www.addgene.org/12252/)、制限酵素NheI及びXhoIでpRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPREプラスミドを同時に酵素消化した(酵素消化反応は説明書を参照)。酵素消化物をアガロースゲル電気泳動により分離した後、アガロースゲルDNA断片回収キットによりDNA断片を回収し、その後、合成したNheI及びXhoI制限酵素部位を有するCD44配列断片を制限酵素NheI及びXhoIで同時に酵素消化した後、回収して得られた前記のDNA断片に結合し、CD44発現ベクターを得た。
【0160】
2)CD44を発現し及び腫瘍のCAR遺伝子を特異的に認識するベクターの構築
抗ヒトCD19抗原を含む一本鎖抗体ScFv、ヒンジ領域、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達セグメントを含むキメラ抗原受容体配列を合成した。
【0161】
その後、キメラ抗原受容体配列及びCD44分子をそれぞれテンプレートとしてPCR増幅を行った。反応系については、KOD FX NEO DNAポリメラーゼ(TOYOBO社から購入)の説明書に従って注入し、PCR反応条件は、95℃、5min予備変性;95℃、10s変性;55℃、15sアニーリング;68℃、30s伸長;30サイクルであった。増幅産物を1%アガロースゲル(w/v)で同定した。その後、回収キット(Promega社)によりDNA断片を回収した(具体的な方法は説明書を参照)。回収してキメラ抗原受容体及びCD44分子断片を取得し、DNA回収断片をシーケンシングした。
【0162】
(2)キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターの構築:CD19CAR-結合ペプチド(ポリシストロニック構造)-CD44を標的とした。
【0163】
前記CAR分子とCD44分子とをポリシストロニック構造により結合した。前記ポリシストロニック構造は、自己切断ペプチド又は内部リボソーム進入部位IRESであった。前記自己切断ペプチドは、T2A、P2A、E2A又はF2Aであった。ここで、P2Aを例としてCD19CAR-P2A-CD44を標的とする発現ベクターを得た。
【0164】
酵素消化反応は、説明書に従って行った。酵素消化物をアガロースゲル電気泳動により分離した後、アガロースゲルDNA断片回収キットでDNA断片を回収し、その後、目的断片とベクター断片とをT4リガーゼ(Promega社から購入)結合し、キメラ抗原受容体及びCD44分子を発現するレンチウイルスベクターを得た。レンチウイルスベクターを5μL取って大腸菌TOP10を形質転換し、30℃で16h培養した後、モノクローナル抗体を選択し、選択されたモノクローナル抗体を30℃の条件下で12h培養した後、プラスミド抽出キット(Invitrogen社)でプラスミドを抽出した(具体的な方法は説明書を参照)。抽出されたプラスミドを制限酵素HindIIIにより酵素消化して電気泳動で同定した。
【0165】
3)ステップ2)及び3)でベクターを得てレンチウイルスを調製
(1)レンチウイルスのパッケージング
本実施例において、レンチウイルスのパッケージングはリン酸カルシウム法を使用した。具体的なステップは下記である。即ち、10%FBS(w/v)を含むDMEM培地で293T細胞を好適な状態に培養し、その後、293T細胞を1×10/cmの密度で1つの75cmの培養フラスコに移して22h培養し、トランスフェクションするときの細胞コンフルエントが70-80%であることを保証した。さらに、予熱した2%FBS(w/v)を含むDMEM培地で培養液を交換し、2h培養してバックアップとした。680μLのddH2O、20μgレンチウイルスベクター(ステップ1)及び2)に記載のベクター)、100μLの2.5mM CaClを15mL遠沈管に入れ、均一に混合した後、ピペットを用いて混合液に2×HBSを滴下し、10mLピペットでピペッティングして均一に混合し、その後、室温で15min静置し、次に、混合液を調製された前記細胞に滴下し、引き続き12-16h培養した後、10%FBS(w/v)を含むDMEM培地で培養液を交換した。細胞を48h、72h培養した後、それぞれ細胞上清を収集してウイルス精製に使用した。
【0166】
(2)レンチウイルスの精製
ウイルス上清を50ml遠沈管に収集し、3000r/minで10min遠心分離した後、0.45μm濾過膜で濾過し、濾液を3000r/minで10min遠心分離した後、新しい50mL遠沈管に移した。ウイルス上清の量に応じてそれぞれ50%PEG6000(w/v)、4MNaClを加え、さらに医療食塩水で総体積35mL(PEG6000最終濃度8.5%、NaCl最終濃度0.3M)に定容し、4℃冷蔵庫に90min静置し、30min/回で転倒混和し、サンプルを4℃、5000r/minの条件下で30min遠心分離し、上清を全部捨て、200μLの10%FBSを含むDMEM培地でウイルスを再懸濁し、40μL/管で1.5mLのEP管に分注し、-80℃で保存してバックアップとした。
【0167】
(3)レンチウイルス力価の測定
A、ウイルス感染293T細胞
12h前に293T細胞を10%FBS(w/v)DMEM培養液を含む24ウェルプレートにプレーティングし、ウイルス感染前の細胞コンフルエントが40%-70%でありかつ細胞状態が良好であることを確保した。各ウェルに1μLの6g/mLポリブレン溶液を加え、その後、精製したレンチウイルスベクター1μLを取り、医療用生理食塩水で10倍希釈して作動液を調製してそれぞれ対応するウェルに加え、24h後に10%FBS(w/v)を含むDMEM培地で培養液を交換し、72h感染した後、1000r/minで5min遠心分離して細胞を収集し、遺伝子群を抽出した。
【0168】
B、ゲノムの抽出
収集した細胞をPBSで再懸濁し、1000r/minで5min遠心分離し、上清を完全に捨て、1回繰り返し、さらに200μLのPBSで細胞を再懸濁し、20μLプロテアーゼK、200μLのAL溶解液を加え、ピペッティングで均一に混合し、56℃で10minインキュベートし、その後、200μLの予冷したエタノールに加え、上下に転倒混和し、溶液を濾過カラムに移し、室温で1min静置し、8000r/minで1min遠心分離し、上清を完全に捨て、次に、700μLのAW1溶液を加え、8000r/minで1min遠心分離し、上清を完全に捨て、さらに500μLのAW2溶液を加え、8000r/minで1min遠心分離し、上清を完全に捨て、濾過カラムを新しい1.5mLのEP管に移し、エタノールを揮発させるために蓋を開けたまま1min静置した。50μL滅菌ddH2O(60℃で予熱)を加え、2min静置し、12000r/minで1min遠心分離した。(ゲノム抽出キットはQiagen社から購入されたQIAamp DNA Blood Mini Kitである)。
【0169】
C、qRT-PCRによるウイルス力価の測定
反応系は、SYBR(R)Premix Ex TaqTM(商標)II(2×)10μL、上流プライマー(GAG up)1μL、下流プライマー(GAG dn)1μL、抽出したゲノム1μL、RNase-Free dH2O 7μLであった。各サンプル、標準品について少なくとも3つの重複ウェルを設けた。その後、下記のプロセスで増幅を行った。即ち、95℃、30s予備変性;,95℃、5s変性;60℃、30sアニーリング;72℃、30s伸長。反応終了後、解析ソフトウェアでデータを分析し、標準曲線によりウイルス力価を計算した。結果をTU/mLで示す。
【0170】
4)レンチウイルス感染T細胞
(1)ヒト末梢血単核細胞の分離
抗凝固剤を加えた採血管で正常ヒト末梢血を約60mL採血し、2つの50mL遠沈管に分注し(30mL/管)、それぞれ7.5mLヒドロキシエチルデンプンを加えて希釈した。遠沈管を室温で静置して約30min自然沈降させ、上層血漿を収集し、その後、1400r/minで15min遠心分離した後、生理食塩水で再懸濁して沈殿させた。細胞懸濁液を体積比1:1でリンパ球分離液に慎重に加え、400gで15min勾配遠心し、遠心機減速度DECを5に設定した。遠心分離した後、遠沈管を上から下まで血漿層、環状乳白色末梢血リンパ球(PBMC)層、透明分離液層及び赤血球層の4層に分けた。第2層のPBMCを新しい遠沈管に慎重に吸い取って生理食塩水で2回洗浄し、1回目400gで10min遠心分離し、2回目1100r/minで5min遠心分離し、次に、生理食塩水で細胞を再懸濁し、ピペットでPBMC細胞懸濁液を吸い取って培養フラスコに移し、10%FBS(w/v)を含むRPMI 1640完全培地で培養した。
【0171】
(2)レンチウイルスベクター感染Tリンパ球
10%FBSを含むRPMI 1640完全培地で新たに調製された単核細胞PBMCを培養し、1日目に抗CD3モノクローナル抗体を加えて活性化し、前の3日間にレンチウイルス感染を行った。それぞれ2感染多重度(MOI)の1)及び2)に記載のレンチウイルスベクターを加え、未感染の末梢血リンパ球(PBMC)をブランク対照とした。24h後に培地を500IU/mL組換えヒトIL-2を含むRPMI 1640完全培地に交換し、引き続き10-20日間培養した。
【0172】
いくつかの実施例において、CD44及びCARを共発現するT細胞は、下記のスキームで調製することもできる。
A、前記ステップ1)のスキームでCD44発現T細胞を調製し、CD44発現T細胞を得た後、さらに、CD44のT細胞にCAR遺伝子を形質導入し、CD44及びCARを同時に発現するT細胞を得た。
B、前記ステップ2)と類似のステップによりCAR発現T細胞(CAR-T細胞)を得た。相違点として、CAR発現ベクターがCD44の遺伝子を含まず、さらに得られたCAR-T細胞をもとにCD44遺伝子を形質導入し、CD44及びCARを同時に発現するT細胞(44-19CAR)を得た。
CD44及びCARの発現を図2に示す。CD44とCARは、いずれもT細胞で正常に発現することができる。
【0173】
実施例7:DU-44-19CARの調製
1、遺伝子ノックアウト実験
実施例1を参照してCD4とCD8が同時にノックアウトされたDU-T細胞を調製した。
【0174】
2、DU-44-19CARの取得方法
出発サンプルは、健常人末梢血であった。磁気ビーズ又はフローサイトメトリーによりCD4/CD8シングルポジティブT細胞を選別し、CD3、CD28の抗体を含むDynabeadsで持続的に刺激し、CARを含むレンチウイルスに感染させ、エレクトロポレーションによりCD4及びCD8を標的とするsgRNAとCas9タンパク質のRNP混合物を導入し、エレクトロポレーションした後、フローサイトメトリー又は磁気ビーズによりDU-CAR-T細胞を選別し、培養液に適量の因子、又はT細胞の培養に適した任意の培地とサイトカインの組み合わせを加えた。
【0175】
DU-44-19CARの取得方法(以下の2つの方法はいずれも利用可能である)
1、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、数時間培養した後、感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入し、引き続き培養して目的細胞を選別した。
2、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後、エレクトロポレーション法によりRNPをこのT細胞に導入した後、数時間培養した後、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、引き続き培養して目的細胞を選別した。
【0176】
44-19CARの取得方法の調製順序:CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後、CD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、引き続き培養すればよい。
【0177】
実施例8:DN-44-19CAR及び44-19CARの評価
1、CARの発現
44-19CAR細胞上のCD4及びCD8に対して遺伝子編集を行い、磁気ビーズで高純度のダブルネガティブCAR-T細胞を選別した。このような操作は、CAR構造のT細胞上の発現に影響を与えない。図2から分かるように、44-19CAR及びDU-44-19CAR細胞上のCAR発現量はいずれも55%以上であった。DU-19CAR選別後、ダブルネガティブCAR-Tの割合は99%以上と高かった。
【0178】
2、インビトロ殺傷
特定のエフェクター対ターゲット比E:T=CAR-T:腫瘍細胞でプレーティングし、1640完全培地中で所定時間培養し、ルシフェラーゼ溶解法により標的細胞の生存率を検出し、細胞毒性(cytotoxicity)効率を算出した。インターフェロン-γ因子の分泌レベル検出は、この因子レベルの検出に使用可能なキットを使用することができる。詳しい操作は、各製造業者製のキットの説明書を参照することができる。
【0179】
図3及び表11~表14に示すように、インビトロ薬力学評価結果として、44-19CARインビトロ薬効は、自家19CARに相当し、エフェクター対ターゲット比が1:4、殺傷時間が24hである場合、その殺傷効率は90%以上にも達し、同様にDU-44-19CARは、19CARと比較して、殺傷能力も相当した。因子分泌の結果として、44-19CAR及びDU-44-19CARは、いずれも19CARよりも低かった。これは、同等の殺傷能力の場合では、本発明の44-19CAR及びDU-44-19CARがより少ない因子を分泌してもその殺傷能力に影響を与えなかったことを示している。これによって、サイトカインストームのリスクが低減され、CAR-T治療の安全性が向上する。ここで、IFN-γについては、IFN-γはTH1類分子であり、現在CAR-T細胞が特異性機能を発揮するものである一方、IFN-γ分泌が高すぎると、CAR-T治療に発生する副作用サイトカイン「ストーム」(CRS)に関係するため、IFN-γの高分泌には利点も欠点もある。図3に対応するデータを以下に示す。
【0180】
表11:44-19CARの殺傷データ
【表11】
【0181】
表12:DU-44-19CARの殺傷データ
【表12】
【0182】
表13:44-19CARのIFN-γ(pg/ml)分泌のデータ
【表13】
【0183】
表14:DU-44-19CARのIFN-γ(pg/ml)分泌のデータ
【表14】
【0184】
3、表現型結果及び疲弊マーカー
フローサイトメーターによる検出;抗体:CCR7:APC、CD45RA:BV421、CD45RO:Percp5.5;表現型の分類標準:Tメモリー幹細胞:TSCM(CD45RA+CD45RO-CCR7+)、類Tメモリー幹細胞:TSCM-Like(CD45RA+CD45RO+CCR7+)、エフェクターメモリーT:TEM(CD45RA-CD45RO+CCR7-)、セントラルメモリーT:TCM(CD45RA-CD45RO+CCR7+)、エフェクターT:TE(CD45RA+CD45RO-CCR7-)、その他(100%-TSCM-TSCM-Like-TEM-TCM-TE)。
疲弊マーカーの検出方法:フローサイトメーターによる検出;抗体:PD-1:APC、LAG-3:BV421、TIM-3:Percp5.5。
【0185】
図4及び表15~表16に示すように、表現型の検出結果として、自家19CARと比較して、44-19CAR及びユニバーサルDU-44-19CARは、各群のサブタイプ分布が比較的近く、TSCMがやや高く、TEがやや低いが、殺傷結果の比較はその腫瘍細胞の殺傷能力に影響を与えなかった。また、図5及び表17~表18から分かるように、疲弊マーカー検出発現量のデータ結果から分かるように、3群のCARはいずれもTIM-3を発現しないが、自家19CARと比較して、本発明の44-19CAR及びユニバーサルDU-44-19CAR上のPD-1及びLAG-3の発現はいずれもより低く、これは、本発明のユニバーサル44-19CAR及びDU-44-19CARがより長い持続性を有することで抗腫瘍能力の向上に有利であることも示唆している。図4に対応するデータを以下に示す。
【0186】
表15:44-19CARの表現型データ
【表15】
【0187】
表16:DU-44-19CARの表現型データ
【表16】
【0188】
図5に対応するデータは下記である。
表17:44-19CARの疲弊マーカー
【表17】
表18:DU-44-19CARの疲弊マーカー
【表18】
【0189】
4、活性検出
エレクトロポレーション法によりRNPを導入した後、選別により目的細胞を精製する必要がある。この時点は、一般的に活性化後の5-7日目に行われる。選別当日に細胞活性を監視し始める。主な実施形態は、細胞計数装置により計数する方式により所定時点での細胞活性を得ることである。実験の一貫性を保持するために、19CARと44-19CARを選別する必要がないが、いずれもDU-44-19CARと同じ時点で監視する。
【0190】
活性の監視結果について、図6及び表19~表20に示すように、本発明の44-19CAR及びユニバーサルDU-44-19CARは、選別後の最初の数日間に、活性が19CARに相当した。しかし、7日後に、本発明のCAR-T細胞の活性は依然として80%以上に維持するのに対し、自家19CAR群は顕著に低下した。図6に対応するデータを以下に示す。
【0191】
表19:44-19CARの活性値
【表19】
【0192】
表20:DU-44-19CARの活性値
【表20】
【0193】
5、GVH強度の検出
ミクロスフェア絶対計数の方法により混合リンパ球反応(MLR)を測定した。特定の比でドナー細胞(CAR-T):レシピエント細胞(ドナー細胞と異なるHLAサブタイプの健常人PBMC)の混合系を調製し、1640基礎培地で8日間培養し、それぞれ0日目及び8日目にフローサイトメトリーにより細胞の絶対計数を検出し、細胞数の変化によりGVHの相対強度を算出した。
【0194】
GVH強度の検出結果を図7及び表21に示す。本発明のユニバーサルDU-44-19CARは、8日目に引き起こせるGVH反応強度は、從來のユニバーサルCAR-T細胞CU-44-19CARに相当し、いずれも対照群自家19CAR、44-19CAR及びCT群よりも弱かった。この結果から分かるように、本発明の方法により調製されたDU-44-19CARは、從來のユニバーサルCAR-T細胞と同様に、同種他家CAR-T免疫療法に使用することができる。図7に対応するデータを以下に示す。
【0195】
表21:DU-44-19CARの抗GVH値
【表21】
【0196】
7、インビボ薬効実験2(19CARと44-19CAR、DU-44-19CARと19CARの比較)
-11dayにマウスを導入し、マウスに対して検疫などの一連の検査作業を行って初めて実験に組み入れることができる。-3dayに5e5Nalm6-Luc-GFP標的細胞尾静脈注射を行い、day0にランダムに群分けした後、CAR-T有効細胞数が2e6となるようにCAR-T細胞を再注入し、その後、7日ごとに生体イメージングを行ってマウスのインビボでの腫瘍除去状況を観察した。
【0197】
図9に示すように、インビボ薬効の結果として、19CAR群及び44-19CAR群は、Control T群と比較してインビボで顕著な腫瘍抑制作用を示した。インビボでの抗腫瘍効果のデータは、19CAR群が44-19CAR群に相当することを示している。しかし、CAR-Tの存続結果から分かるように、44-19CARの存続がより多く、これは、本発明の44-19CARがCAR-T細胞のインビボ存続を向上できるため、腫瘍を持続的に殺傷できることを示している。
【0198】
DU-44-19CAR群及び19CAR群の蛍光値曲線データを分析した結果、図9に示すように、DN-44-19CARの抗腫瘍効果は、19CAR群よりも顕著に優れている。これは、本発明のユニバーサルCAR-T細胞DU-44-19CARは、ユニバーサルを実現するとともに、從來の自家CAR-T細胞と比較してより高い薬効を有することを示している。
【0199】
上記をまとめると、本発明で設計されたDU-44-19CAR-Tに対してインビトロ薬力学評価、GVH強度検出及びインビボ抗腫瘍検出などを行った結果、サイトカインストームのリスクの低減、インビボ存続の改善、及び抗腫瘍効果のいずれにおいても從來のCAR-Tよりも優れている。
【0200】
実施例9:CD62L発現T細胞及びL-19CAR(キメラ抗原受容体T細胞)細胞の調製
【0201】
CD62L分子は、任意の標的及び構造のキメラ抗原受容体(CAR)と組み合わせて本発明で開示された技術効果を得ることができる。ここで、CD19を標的とするキメラ抗原受容体を例として具体的に応用して説明する。同様に、前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、逆転写ウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、アデノ随伴ウイルス発現ベクター、DNAベクター、RNAベクター、プラスミドのいずれか1つであってもよい。ここで、レンチウイルスベクターを例として説明する。具体的な調製ステップは実施例1を参照する。
【0202】
CD62Lのアミノ酸配列に対応する遺伝子断片は、配列番号13に示される。
【0203】
いくつかの実施例において、CD62L及びCARを共発現するT細胞は、実施例6に記載の方法により調製することもできる。CD44の代わりにCD62Lを使用すればよい。
【0204】
CD62L及びCARの発現を図24に示す。CD62L及びCARは、いずれもT細胞で正常に発現することができた。
【0205】
実施例10:DU-L-19CARの調製
1、遺伝子ノックアウト実験
実施例1を参照してCD4及びCD8が同時にノックアウトされたDU-T細胞を得た。
【0206】
2、DU-L-19CARの取得方法
出発サンプルは健常人の末梢血であった。磁気ビーズ又はフローサイトメトリーによりCD4/CD8シングルポジティブT細胞を選別し、CD3、CD28の抗体を含むDynabeadsを用いて持続的に48h刺激し、24hにCARを含むレンチウイルスに感染させ、48hにCD4及びCD8を標的とするsgRNAとCas9タンパク質のRNP混合物をエレクトロポレーションにより導入し、エレクトロポレーションの72h後にフローサイトメトリー又は磁気ビーズによりDU-CAR-T細胞を選別し、培養液に1640で適量の因子(IL2及びIL4(及び/又は)IL7(及び/又は)IL15(及び/又は)IL21)、又はT細胞の培養に適した任意の培地と細胞因子の組み合わせを加えてもよい。
【0207】
DU-L-19CARの取得方法
1、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後、CD62L及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、数時間培養した後、感染したT細胞に対してRNPエレクトロポレーションを行い、引き続き培養して目的細胞を選別した。
2、CD4及び/又はCD8シングルポジティブT細胞を取得し、数時間活性化した後、RNPをエレクトロポレーション法によりT細胞に導入した後、数時間培養した後、CD62L及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、引き続き培養して目的細胞を選別した。
【0208】
実施例11:DN-L-19CAR及びL-19CARの評価
1、CARの発現
L-19CAR細胞上のCD4及びCD8に対して遺伝子編集を行い、磁気ビーズにより高純度のDU-19CAR細胞を選別した。このような操作は、CAR構造のT細胞上での発現に影響を与えない。図24から分かるように、CARの発現量は、いずれも70%より高く、DU-L-19CAR選別後に、そのダブルネガティブCAR-T細胞の割合は100%にも達した。
【0209】
2、インビトロ殺傷
【0210】
特定のエフェクター対ターゲット比でプレーティングした。詳細は各製造業者のキットの説明書を参照されたい。
【0211】
インビトロ薬力学評価の結果を図25及び表22~表25に示す。L-19CAR及びDU-L-19CARのインビトロ薬効は、自家19CARに相当し、エフェクター対ターゲット比が1:4、殺傷時間が24hである場合、その殺傷効率は90%以上に達し、因子分泌の検出結果は違いがないことを示している。図25に関するデータを下表に示す。
【0212】
表22:L-19CARの殺傷データ
【表22】
【0213】
表23:DU-L-19CARの殺傷データ
【表23】
【0214】
表24:L-19CARのIFN-γ(pg/ml)の分泌データ
【表24】
【0215】
表25:DU-L-19CARのIFN-γ(pg/ml)の分泌データ
【表25】
【0216】
3、表現型の結果
フローサイトメーター検出
表現型の検出結果を図26及び表26~表27に示す。自家19CARと比較して、L-19CARとユニバーサルDU-L-19CAR群は、それぞれのサブタイプの分布が比較的近く、TSCMがやや低いが、TEやや高かった。これは、CAR-T瞬時殺傷能力の向上に有利である。図26に関するデータを下表に示す。
【0217】
表26:L-19CARの表現型データ
【表26】
【0218】
表27:DU-L-19CARの表現型データ
【表27】
【0219】
4、疲弊マーカー
疲弊マーカーの検出方法:フローサイトメーター検出
抗体:PD-1:APC、LAG-3:BV421、TIM-3:Percp5.5
【0220】
疲弊マーカーの発現量検出データ結果について、図27から分かるように、各群のCARはいずれもTIM-3を発現しないが、自家19CARと比較して本発明のL-19CAR及びユニバーサルDU-L-19CAR上でのLAG-3及びPD-1の発現量がいずれもより低かった。これも、本発明のL-19CAR及びユニバーサルDU-L-19CARがより長い持続性を有し、アポトーシスまでの時間がより長いことを示している。そのため、CAR-T細胞の持続的な抗腫瘍能力の向上に有利である。
【0221】
5、増殖と活性の検出
RNPをエレクトロポレーション法により導入した後、選別により目的細胞を精製する必要がある。この時点は、一般的に活性化後の5-7日目である。選別当日に細胞活性を監視し始める。主な実施形態は、細胞計数装置で計数することにより特定時点での細胞活性を得ることである。実験の一貫性を保持するために、19CARとL-19CARを選別する必要がないが、DU-L-19CARと同じ時点で監視する。
【0222】
増殖と活性の監視結果を図28及び表28~表29に示す。結果から分かるように、本発明のユニバーサルDU-L-19CARは、増殖能力及び細胞活性が自家19CARよりも優れている。そのうち、増殖の倍数では、本発明のDU-L-19CARは、他の2群との間に大きな差があり、増殖速度が自家19CAR群よりも顕著に優れており、細胞活性も自家19CAR群よりも高かった。これは、本発明の調製方法は、CAR-T細胞の増殖能力を顕著に向上させる作用を有することを示している。そのため、この方法は、さらに治療用途に使用できる。
【0223】
図28に関するデータを下表に示す。
表28:DU-L-19CARの活性値
【表28】
【0224】
表29:DU-L-19CARの増殖数
【表29】
【0225】
6、GVH強度検出
GVH強度検出の結果を図29及び表30に示す。本発明のダブルネガティブDU-L-19CARによって引き起こされるGVH反応の強度は、いずれも從來のユニバーサルCAR-T細胞CU-L-19CARよりも低く、かつ対照群自家CAR-T細胞L-19CAR、19CAR群及びCT群よりも顕著に低かった。この結果は、本発明の方法により調製されたDU-L-19CARが從來のユニバーサルCAR-T細胞と同様に同種他家CAR-Tによる免疫療法に適用されることを示している。
【0226】
図29に関するデータを下表に示す。
表30:DU-L-19CARの抗GVH値
【表30】
【0227】
7、インビボ実験(DU-L-19CAR、L-19CAR及び19CARの比較)
【0228】
11dayにマウスを導入し、マウスに対して検疫などの一連の検査作業を行って初めて試験に組み入れることができる。-3dayに5e5Nalm6-Luc-GFP標的細胞の尾静脈注射を行い、day0にランダムに群分けし、CAR-Tの有効細胞数が2e6となるようにCAR-T細胞を再注入し、その後、7日ごとに生体イメージングを行ってマウスのインビボでの腫瘍除去状況を観察した。
【0229】
インビボでの薬効結果について、図30に示すように、19CAR群、DU-L-19CAR群及びL-19CAR群は、Control T群と比較してインビボで顕著な腫瘍抑制作用を示した。DU-L-19CAR群、L-19CAR群及び19CAR群の蛍光値曲線データを分析した結果、DU-L-19CAR群及びL-19CAR群は、19CAR群と比較してより高いインビボでの薬効を有する。これは、本発明の方法により調製されたL-19CAR群は、より高い薬効を有することを示している。本発明のユニバーサルDU-L-19CARは、ユニバーサルを実現するだけでなく、從來の自家CAR-T細胞と比較してより高い薬効を有する。これは、ユニバーサルCRA-T細胞の治療分野に対して強い啓発作用を有する。
【0230】
さらに、RT-PCRマウス血液中のCAR-Tコピー数を検出した結果、図31に示すように、本発明のL-19CARは、インビボで存続するCAR-T細胞が從來の自家19CAR群の2倍以上である。これは、本発明の方法によりCAR-Tのインビボ存続が改善されることで、CAR-Tのインビボでの持続的な抗腫瘍能力がさらに改善されることを示すのに十分である。
【0231】
以上をまとめると、本発明で設計されたDU-L-19CAR-Tに対してインビトロ薬力学評価、増殖と活性監視、及びGVH強度検出などを行った結果から分かるように、抗腫瘍効果、細胞増殖能力、細胞活性及びインビボ存続などの全ての面において從來のCAR-Tよりも優れている。
【0232】
以上、本発明で提供されるユニバーサルCAR-T細胞の調製技術及びその使用を詳しく説明した。本明細書では、具体的な実施例により本発明の原理及び実施形態を説明したが、前記の実施例の説明は、本発明の方法及びその趣旨を理解するためのものに過ぎない。なお、当業者であれば、本発明の原理から逸脱しない限り、本発明に対して若干の改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の特許請求の範囲に含まれる。
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【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞療法に使用される医薬組成物であって、CD4-CD8-二重陰性T細胞を含み、
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞は、CRISPR/Cas9システムを用いてTリンパ球の目的部位をノックアウトすることを含む方法により得られたものであり、
前記CRISPR/Cas9システムはCas9タンパク質sgRNAとからなり、前記sgRNAはCD4のsgRNA及び/又はCD8のsgRNAであり、
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞は同種他家の再注入により投与されるものである、医薬組成物
【請求項2】
前記CD4のsgRNAの配列は、配列番号1-6又は配列番号14-24のいずれか1つに示され、前記CD8のsgRNAの配列は、配列番号7-11又は配列番号25-33のいずれか1つに示される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞は、CD44及び/又はCD62Lを発現する、請求項に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記CD62Lのアミノ酸配列は、配列番号13に示され、前記CD44のアミノ酸配列は、配列番号12に示される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記Tリンパ球は、天然分離により得られたものである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞はCD4-CD8-二重陰性CAR-T細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記方法は、
(1)新鮮又は凍結保存に由来のT細胞を使用し、遺伝子編集によりCD4及びCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化し、CD4及びCD8遺伝子を同時にノックアウト又は不活性化してもよく、CD4又はCD8をノックアウト又は不活性化してからCD8又はCD4をノックアウト又は不活性化してもよく、最後に目的細胞を得る方法;
(2)CD4陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る方法;
(3)CD8陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化して目的細胞を得る方法;及び
(4)CD4陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD4遺伝子をノックアウト又は不活性化し、CD8陽性のT細胞を選別し、遺伝子編集によりCD8遺伝子をノックアウト又は不活性化し、最後に遺伝子編集によりCD4遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞と、遺伝子編集によりCD8遺伝子がノックアウト又は不活性化されたT細胞とを混合して目的細胞を得る方法;
を含む、請求項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞は、活性化及び/又は非活性化のTリンパ球である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記CRISPR/Cas9システムは、エレクトロポレーション法又は非エレクトロポレーション法により前記リンパ球の改造に使用される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記CD4-CD8-二重陰性T細胞は、固形腫瘍、血液系腫瘍細胞/組織を認識することができ、前記CD4-CD8-二重陰性T細胞の抗原認識領域は、抗原:CD19、CD20、CD22、CD33、CLL-1(CLEC12A)、CD7、CD5、CD70、CD123、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、Mesothelin、MUC1、CLDN18.2、CDH17、Trop2、BCMA、NKG2D、PDL1、EGFR、EGFRVIII、PSCA、PSMA、MUC16、CD133、GD2、IL13R2、B7H3、Her2、CD30、SLAMF7、CD38、GPC3、WT1又はTAG-72のうちの1種又は複数種を認識することができる、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記方法は、
(1)T細胞を収集して取得し、CAR構造のウイルスに感染させ、CAR構造が感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る方法;或いは
(2)T細胞を収集して取得し、エレクトロポレーション法によりRNPを前記T細胞に導入した後、さらにCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る方法;
を含む、請求項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記方法は、
(1)T細胞を収集して取得し、CD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はCD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、CAR構造が感染したT細胞にエレクトロポレーション法によりRNPを導入して目的細胞を得る方法;或いは
(2)T細胞を収集して取得し、エレクトロポレーション法によりRNPを前記T細胞に導入した後、さらにCD44及びCAR構造を含むウイルスに感染させ、又はCD62及びCAR構造を含むウイルスに感染させて目的細胞を得る方法;
を含む、請求項に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記細胞療法は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、前立腺がん、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん及び/又は皮膚がん療に使用される、請求項1から12のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記方法は、前記Tリンパ球の細胞増殖剤、活性増強剤、表現型分布改善剤又は疲弊マーカー発現阻害剤としてのCD4遺伝子の阻害剤もしくはノックアウト剤および/またはCD8遺伝子の阻害剤もしくはノックアウト剤を提供する、請求項1から12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
腫瘍細胞殺傷の促進剤を調製する方法であって、
CAR-T細胞のCD62L及び/又はCD44遺伝子の発現促進剤を提供し、
前記CAR-T細胞は従来のCAR-T細胞であり、前記CAR-T細胞又はユニバーサルCAR-T細胞はCD4及び/又はCD8遺伝子を発現しない、方法。
【国際調査報告】