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特表2025-504355光駆動エレクトロクロミックディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】光駆動エレクトロクロミックディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20250204BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20250204BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250204BHJP
   G02F 1/153 20060101ALI20250204BHJP
   G02F 1/157 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
G02F1/155
G02F1/15
G09F9/30 380
G09F9/30 349D
G09F9/30 349Z
G02F1/153
G02F1/157
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540032
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2023050773
(87)【国際公開番号】W WO2023135270
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】22151896.2
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024018
【氏名又は名称】フレシェイプ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クン、イェン - チェン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ユハン
【テーマコード(参考)】
2K101
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB06
2K101DB27
2K101DB43
2K101DB63
2K101DB71
2K101DC04
2K101DC24
2K101DC25
2K101DC33
2K101EA02
2K101EA13
2K101EB71
2K101EC02
2K101EC24
2K101EC46
2K101EE22
2K101EG01
2K101EG05
2K101EG09
2K101EG52
2K101EG76
2K101EJ16
2K101EJ32
5C094AA08
5C094AA13
5C094AA44
5C094BA52
5C094CA19
5C094DA12
5C094DA13
5C094EB02
5C094ED01
5C094ED11
5C094ED13
5C094ED20
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB12
5C094GA01
(57)【要約】
本発明は、第1の電極層及び第2の電極層と、前記電極層の間に設けられ、赤外線光に対して高感度である材料を含む光導電体層と、エレクトロクロミック材料層と、を含む光駆動式ディスプレイ、反射ディスプレイに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光アドレス方式のディスプレイ(110)であって、
- 第1及び第2の電極層(11、12)と、
- 前記電極層の間に設けられ、赤外線(IR)光に対して高感度である材料を含む光導電体層(20)と、
- 前記導電体層(20)と前記第1の電極層(11)との間に設けられた、エレクトロクロミック材料(41~43)及び/又はエレクトロクロミック材料層(40)と
を備える、光アドレス方式のディスプレイ(110)。
【請求項2】
可視スペクトラムの全ての光及び/又はほぼ全ての光を反射し、前記ディスプレイ上に表示される情報及び/又は画像に対する、好ましくは明るい及び/又は鮮やかな背景を提供する可視光反射材料及び/又は可視光反射層(68、60)をさらに備え、前記可視光反射材料及び/又は前記可視光反射層は、IR光の少なくとも一部の波長に対して透過性である、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
別個の層(60)内に設けられる、又は前記エレクトロクロミック材料層(40)内に設けられる、1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料(61)を含む、請求項1又は2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック材料層(40)は、前記エレクトロクロミック材料層(40)内の第1、第2及び第3の空間的に隔てられた領域(44~46)内に設けられた第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料(41~43)を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料は、前記第1の電極層(11)と前記第2の電極層(12)との間に生じる電流及び/又は電圧に依存して、RGB混色を可能にするという条件で、それぞれに電流及び/又は電圧を加えると、赤(41)、緑(42)及び青(43)にそれぞれ変化することができる、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料(61)は、第1のIRフィルタリング材料又は第1の複数のIRフィルタリング材料であり、前記ディスプレイは、第2のIRフィルタリング材料又は第2の複数のIRフィルタリング材料(62)並びに第3のIRフィルタリング材料又は第3の複数のIRフィルタリング材料(63)をさらに含み、前記第1、第2及び/又は第3の複数のIRフィルタリング材料は、それぞれの複数のIRフィルタリング材料内に存在する少なくとも1つのIRフィルタリング材料に対して異なっている、請求項3から5までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記第1、第2及び/又は第3のIRフィルタリング材料及び/又は前記複数のIRフィルタリング材料(61~63)は、第1、第2及び/又は第3の異なるエレクトロクロミック材料(41~43)をそれぞれ含む、前記第1、第2及び/又は第3の空間的に隔てられた領域(44~46)内に設けられる、請求項4から6までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記第1、第2及び/又は第3のIRフィルタリング材料及び/又は前記複数のIRフィルタリング材料(61~63)は、別個のIRフィルタ層(60)内に設けられ、前記IRフィルタ層は、空間的に隔てられた領域内に前記第1、第2及び/又は第3のIRフィルタリング材料及び/又は前記複数のIRフィルタリング材料を含む、請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記第1、第2及び/又は第3のIRフィルタリング材料及び/又は前記複数のIRフィルタリング材料(61~63)は、前記エレクトロクロミック材料層(40)の第1、第2及び/又は第3の領域(44~46)と整列される、及び/又はそのような領域と実質的に重なる、請求項6から8までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記エレクトロクロミック材料層(40)と前記光導電体層(20)との間に設けられた、異方性導電材料層(70)を備える、請求項1から9までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記エレクトロクロミック材料層(40)内に、前記1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料(61)を含む層(60)内に、又は別個の層内に設けられた白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)を含み、前記白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)は好ましくは、前記ディスプレイ上に表示される情報及び/又は画像のための背景を提供する、請求項1から10までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)は、前記光導電体層(20)と前記エレクトロクロミック材料層(40)との間に、又は前記エレクトロクロミック材料層内に設けられる、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)は好ましくは、IR光を許容する、請求項11から12までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記光導電体層(20)は、赤外線光(IR)に対して高感度である前記材料を含む1つ又は複数の電荷発生層と、電子輸送材料及びホール輸送材料から選択された材料を含む1つ又は複数の電荷輸送層とを含めた複数の層を備える、請求項1から13までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記光導電体層(20)は、有機無機灰チタン石フォトダイオード、シリコンフォトダイオード、及び別の光活性化材料を含むNIR高感度フォトダイオードから選択された1つ又は複数を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記第1の電極(11)と前記第2の電極(12)との間にバイアス電圧を提供するためのバイアス電圧印加ユニット(95)をさらに備える、請求項1から15までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項17】
後方基板(92)をさらに備え、前記第2の電極(12)は、前記後方基板によって支持される、及び/又はその上に堆積され、前記後方基板(92)は、可視光に対して不透明である、請求項1から16までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項18】
透明の後方基板(93)をさらに備え、前記第2の電極(12)は、前記透明の後方基板(92)によって支持される、及び/又はその上に堆積される、請求項1から16までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項19】
透明の前方基板(91)をさらに備え、前記第1の電極(11)は、前記透明の前方基板(11)によって支持される、及び/又はその上に堆積され、前記透明の前方基板(91)は好ましくは、IR光を許容する、請求項1から18までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項20】
IR光を放出する、好ましくは3つ以上の異なる波長又は波長範囲のIR光を放出するように構成された光照射ユニットをさらに備える、請求項1から19までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項21】
前記光照射ユニットは、パターン形成されたIR光の供給源である、請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項22】
前記エレクトロクロミック材料層(40)は、その上に1つ又は複数のエレクトロクロミック材料(41~43)が堆積されるメソ多孔性層及び/又はナノ粒子(47~49)を含み、前記エレクトロクロミック材料層(40)は、電解質(50)を備える、請求項1から21までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項23】
白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)は、前記エレクトロクロミック材料層(40)内に設けられ、好ましくは前記メソ多孔性層及び/又はナノ粒子(47~49)と、前記光導電体層(20)との間、或いは存在するならば、前記異方性材料層(70)との間、より好ましくは前記電解質(50)内に設けられる、請求項11から22に記載のディスプレイ。
【請求項24】
1つ又は複数のエレクトロクロミック材料(41~43)は、前記エレクトロクロミック材料層(40)内で自由に拡散する、及び/又は拘束されないように設けられ、好ましくは、堆積しない、及び/又は非重合体材料の形態で、好ましくは小及び中サイズの分子から選択される材料の形態で設けられる、請求項1から21までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項25】
前記1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料(61)は、前記エレクトロクロミック材料層(40)内に設けられる、請求項3から24に記載のディスプレイ。
【請求項26】
前記1つ又は複数のIRフィルタリング材料(61)は、別個の層内に、又は前記光導電体層(20)又は存在するならば前記異方性材料層(70)と、前記第1の電極(11)との間、好ましくは前記光導電体層(20)又は存在するならば前記異方性材料層(70)と、前記エレクトロクロミック材料層(40)との間のフィルム内に設けられる、請求項3から24までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項27】
透明の後方基板(93)を備え、前記第2の電極(12)は、前記透明の後方基板(92)よって支持される、及び/又はその上に堆積され、白色光を反射し、白の背景を提供するための白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料(80)は、存在せず、前記光導電体層(20)は好ましくは、可視光の少なくとも一部に対して透明である、請求項1から26までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項28】
IR光に対して透明であり、任意選択で可視光に対して不透明である後方基板(94)を備え、前記第2の電極(12)は、前記透明の後方基板(94)よって支持される、及び/又はその上に堆積され、前記1つ又は複数のIRフィルタリング材料(61)は、前記後方基板(94)上に堆積され、前記後方基板(94)上の別個の層内に設けられる、及び/又は前記第2の電極層(12)と前記後方基板(94)との間に設けられる、請求項1から26までのいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項29】
白色光及び/又は全ての光の散乱材料及び/又は反射材料(81)が、前記エレクトロクロミック材料層(40)と前記光導電体層(20)との間に、又は前記エレクトロクロミック材料層(40)内に、好ましくは前記1つ又は複数のエレクトロクロミック材料(41~43)と前記光導電体層(20)との間に設けられる、請求項28に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ディスプレイの分野に関し、詳細には、光駆動ディスプレイ、パッシブディスプレイ、反射ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ及び上記に挙げたカテゴリのうちの2つ以上に属するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの現在普及しているアクティブディスプレイの代替として、パッシブディスプレイを提供しようと努力している。そのような従来技術のディスプレイは、光を放出し、それによって人の目を疲れさせること、比較的狭い視野角を有すること、高いエネルギー消費を有すること、低いコントラストを有すること、例えば屋外条件では、変化する環境の光に適合されないという欠点を有する。パッシブスクリーンでは一方、画像は、発光ピクセルなどの光の放出によって生み出されるのではなく、スクリーン上又はスクリーン内での環境の光の反射によって生み出される。パッシブディスプレイを見ることは、光度ベースのスクリーンを利用するよりも、プリント媒体を見ることにより該当する。パッシブスクリーンは、上記に挙げた欠点を呈示することがなく、よって、屋外スクリーン(直接の日射の下でのより高いコントラスト)にとって、及びスクリーンベースの読み取り(高いコントラスト、人の目をあまり疲れさせない)にとってとりわけ有利であるとみなされてよい。パッシブディスプレイはまた、電子ペーパー、e-ペーパー又はインクディスプレイと呼ばれることもある。
【0003】
現在、商業的に利用可能なパッシブスクリーンは少なく、出願人の知る限りは、競合するフルカラーのパッシブディスプレイは、今のところ市場にはない。フルカラーのe-ペーパーが考案されているが、その性能は総じて、色の純度及び/又は色のコントラストの点において低い。アクティブマトリックスをベースとした全てのスクリーンに適用可能な欠点は、ディスプレイ面が一般に、アクティブマトリックスのサイズに制限されることである。そのようなディスプレイの既存の技術での課題は、製造コスト、ディスプレイサイズに適応性がないこと、一般に低速の切り替え時間及びフルカラーディスプレイを達成しにくいことに関する。
【0004】
特許文献1は、光アドレス方式のディスプレイ及び光適用ユニットを備えるディスプレイのための駆動装置を開示する。ディスプレイの機構は、液晶を備える光調節層と、アドレス光を吸収し、電荷担体を生成し、液晶上で作用するための2つの電極の間の電流の流れを可能にすることが可能な有機感光層とを備える。電流の流れがアドレス光によってトリガされると、電極被覆面にわたるクロストークがこのデバイスではどのように阻止されるかは開示されていない。加えて、このデバイスは、単色デバイスである。最終的に、デバイスは、ディスプレイを駆動するのに背面照明を必要とし、そうでなければ、アドレス光が、画像ディスプレイと干渉することが予測される。
【0005】
非特許文献1は、液晶に基づく同様の原理を開示しているが、フルカラー特性を負うためには、複雑で多層の機構を有する。このデバイスでは、2つの電極対デバイスが、互いの上に積み重ねられ、この場合、RGB混色によるフルカラーディスプレイを可能にするために、上のデバイスは、青色と緑色のための2つの積み重なった液晶層を備え、下のデバイスは、赤色のためである。このデバイスは、製造するのが複雑であり、2つの積み重なった電極対の要件のためにより多くの電力を消費する。特許文献1と同様に、背面照明が必要である。
【0006】
特許文献3は、プロジェクタ、LED又はレーザからの光で前方からアドレスすることができる反射カラーディスプレイを開示する。このデバイスは、カラーフィルタアレイ(CFA)、双安定のディスプレイ媒体、及び光導電体材料(一対の電極間に挟まれている)を備える。双安定媒体は、画像が、迅速にアップデートされなかったとしても、表示される画像が、特定の時間の間表示され続けることを意味する。双安定媒体は一般に、回転するバイクロマル球体又はシリンダの形態で、とりわけ電気泳動粒子の形態で提供される。この文献は、このデバイスにおいて使用される連続電極に沿ったクロストークの回避に関しては何も語っていない。デバイスはまた、時間依存性波形の形態で加えられる電位を必要とし、これは、複雑な回路設計でのみ達成可能な可能性がある。ディスプレイ側で使用されるカラーフィルタアレイ(CFA)は、スクリーンによって表示される画像の鮮明度及び/又は明るさに影響を与える場合がある。
【0007】
特許文献2は、各々が一対の電極、光導電体層及びエレクトロクロミック(EC)層を有する、積み重なった層を備えるフルカラー光書き込みディスプレイを開示する。フルカラー特性のために、異なるスペクトラム感度を有する異なる光導電体が使用され、そのため一部の光導電体を異なる駆動光によってアドレスすることができる。別の作動モードでは、所望の色を有するEC材料を含むEC層に対して作用するこのような電極にバイアス電圧が選択的に加えられる。
【0008】
特許文献3は、電気光学媒体を駆動するために、2つの電極の間に配置された光導電材料を利用する光駆動反射ディスプレイに関する。この開示は、バイクロマル球体などの粒子の形態で電気光学媒体を利用して、画像を生成する。特許文献4は、それが、背面駆動ディスプレイに関する点において特許文献3とは異なる。フルカラーディスプレイにおいて、異なる感度を有する光導電材料の粒子が使用され、この場合、異なる材料の異なる移動行動又は異なる電気泳動特性は、適切な色を表示するサブピクセルをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,547,313号明細書
【特許文献2】米国特許第7,116,309号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0004098号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/00776576号明細書
【特許文献5】国際公開第2014/180780号
【特許文献6】米国特許第6,592,783号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Haruo Harada et al, "Full-color photo-addressable electric paper using cholesteric liquid crystals and organic photoconductors", Journal of the SID 16/12, 2008
【非特許文献2】Hsin-Wei Chen et al, "A Switchable High-Sensitivity Photodetecting and Photovoltaic Device with Perovskite Absorber", J. Phys. Chem. Lett. 2015, 6, 1773-1779
【非特許文献3】Thomas Moehl etv al., "Strong Photocurrent Amplification in Perovskite Solar Cells with a Porous TiO2 Blocking Layer under Reverse Bias", J. Phys. Chem. Lett. 2014, 5, 3931-3936
【非特許文献4】Alesanco et al, "All-in-One Gel-Based Electrochromic Devices: Strengths and Recent Developments", Materials, 2018, 11, 414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術で見られる制限を回避する、パッシブディスプレイを提供することである。本発明の目的はよって、大型の、屋外ディスプレイを含め、全ての所望されるサイズにおいて容易に、コスト効率的に実現することができるディスプレイを提供することである。フルカラーディスプレイを提供するために使用することもできる技術を提供することが目的である。さらに、ディスプレイ上での迅速な消去及び/又は新しい画像の迅速な生成を含め、表示される画像の迅速な変更を可能にする、高速の切り替え時間を有するディスプレイを提供することが目的である。本発明の目的は、光アドレス可能なディスプレイを提供することである。
【0012】
本発明によって対処されるさらなる目的及び問題は、以下の発明の態様及び実施例の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者等は、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料に基づいており、その色状態は好ましくは、一対の電極の助けを借りて制御することができる、光アドレス可能な、好ましくは反射ディスプレイを提供する。
【0014】
一態様において、本発明は、第1の電極層及び第2の電極層と、その導電性を電磁照射を加えることによって調節することができる導体層とを備えるフォトアドレスディスプレイ及び/又はフォトアドレス可能ディスプレイを提供する。この層は、光導電体層と呼ばれ、電極層の間に設けられる。本発明のディスプレイはさらに、前記光導電層と前記第1の電極層との間に設けられるエレクトロクロミック材料層を備える。
【0015】
一態様において、本発明は、第1の電極層及び第2の電極層と、前記電極層の間に設けられ、赤外線光(IR)に対して高感度な材料を含む光導電体層と、前記光導電体層と前記第1の電極層との間に設けられたエレクトロクロミック材料層と、別個の層内に、又は前記エレクトロクロミック材料層内に設けられた1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料とを備えるフォトアドレスディスプレイ及び/又はフォトアドレス可能ディスプレイを提供する。
【0016】
一態様において、本発明は、第1の電極層及び第2の電極層と、前記電極層の間に設けられ、赤外線光(IR)に対して高感度である材料を含む光導電層と、前記光導電層と前記第1の電極層との間に設けられるエレクトロクロミック材料層と、可視光反射材料及び/又は可視光反射材料層であって、好ましくは、可視スペクトラムの全ての光及び/又はほぼ全ての光を反射し、前記ディスプレイ上に表示される情報及び/又は画像のための背景を提供する可視光反射材料及び/又は可視光反射材料層とを備えるフォトアドレスディスプレイを提供する。
【0017】
一態様において、発明は、発明のディスプレイと、例えばプロジェクタ、LED、レーザなどの光源とを備える組立体を提供する。
【0018】
好ましい一実施例において、発明のディスプレイは、前記エレクトロクロミック材料層内に、前記赤外線(IR)フィルタ材料を含む層内に、又は別個の層内に設けられる白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料を備え、この場合、前記白色光散乱材料及び/又は前記白色光反射材料は好ましくは、前記ディスプレイ上に表示される情報及び/又は画像のための背景を提供する。
【0019】
発明のさらなる態様及び好ましい実施例は、以下で、及び添付の特許請求の範囲において定義される。発明のさらなる特徴及び利点は、以下に提供される好ましい実施例の記載から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】単色ディスプレイのために提供された、発明の第1の実施例によるディスプレイの機構を概略的に示す図である。
図1B】フルカラーディスプレイのために提供された、発明の第2の実施例によるディスプレイの機構を概略的に示す図である。
図2A】発明の一実施例による、ディスプレイの光駆動動作の動作を概略的に示す図である。
図2B】発明の一実施例による、ディスプレイの光駆動動作の動作を概略的に示す図である。
図3】発明の一実施例による、フルカラー、前方光駆動式ディスプレイの機構をより詳細に概略的に示す図である。
図4】発明の別の実施例による、フルカラー、前方光駆動式ディスプレイをより詳細に概略的に示す図である。
図5】発明のさらに別の実施例による、フルカラーディスプレイをより詳細に概略的に示す図である。
図6A】発明のさらなる実施例による、フルカラー、背面光駆動式ディスプレイを概略的に示す図である。
図6B】発明のさらなる実施例による、フルカラー、背面光駆動式ディスプレイを概略的に示す図である。
図7A】発明のさらなる実施例による、フルカラー透明ディスプレイを概略的に示す図である。
図7B】発明のさらなる実施例による、フルカラー透明ディスプレイを概略的に示す図である。
図8A】発明の一実施例によるデバイスの、概略的な図を示す図である。
図8B】発明の一実施例によるデバイスの、写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以後、発明のデバイスの好ましい実施例は、本発明の範囲を限定するいかなる意図もない状態で、発明を例示するために記載される。
【0022】
本発明は、フォトアドレス方式のディスプレイ又はフォトアドレス可能ディスプレイに関する。発明のディスプレイでは、画像は好ましくは、電磁放射でディスプレイを照射することによって、好ましくは、赤外線(IR)、UV及び/又は可視スペクトラムの光で、好ましくはIR光でディスプレイを照射することによって生成される。好ましい一実施例において、前記IR光は、近IR光を含む。別の実施例では、前記IRは、近IR光は除外する。好ましい一実施例において、ディスプレイをアドレスするための光は、700~1000nmの範囲内の波長を有する。
【0023】
一実施例において、発明のディスプレイは、IR光を放出する、好ましくは3つ以上の異なる波長又は波長範囲のIR光を放出するように構成された光照射ユニットを備える。
【0024】
好ましくは、ディスプレイは、例えば好適なプロジェクタ、レーザ、レーザプロジェクタ、LCDプロジェクタ及びLEDなどの照射源を経由して照射される。好ましくは、照射源は、画像を投影する、及び/又はパターン形成された画像を、好ましくはIR光で生成するのに適している。
【0025】
用語「画像」は、本明細書では、いかなる限定もなしに、図式的な、また文書の視覚的に表示された内容を指すのに使用される。それをディスプレイ上で人の目に見えるようにすることができる限り、それは、画像、テキスト、数字、シンボル、情報を含む。
【0026】
この明細書中で使用される用語「ディプレイ」は、上記で定義した画像を目に見えるようにするのに適した好ましくは連続する表面を備える全ての種類の対象物を含むことが意図されている。ディスプレイの実例は、e-ペーパー、フラットスクリーン、ボード、板紙タイプの表面、可撓性及び堅固な物体、ウィンドウ、壁、プロジェクタ面などを含む。ディスプレイは、可撓性であっても、剛性であってもよい。さらに、ディスプレイは、平坦である、湾曲している、又はそれ以外の方法で構成されてもよい。好ましくは、ディスプレイは、電子式に記憶された情報、例えばコンピュータ可読ファイルの形態の情報などに基づいた前記画像を生成するのに適している。
【0027】
本発明のディスプレイは好ましくは、「反射」及び/又は「パッシブ」である。これらの用語は、ディスプレイ上に示される画像が、本、雑誌などの印刷媒体での場合、環境光の反射を通して見ることができること、及び好ましくは、例えば、LEDディスプレイ、OELDディスプレイ、背面発光LCD及びプラズマディスプレイなど、可視光放出ユニットによっては生成されないことを意味することが意図されている。したがって、ディスプレイは好ましくは、異なる屋外条件で比較的大きな視野角、高いコントラスト及び優れた可視性を提供する。
【0028】
好ましい実施例では、発明のディスプレイは、前方駆動式であり、これは、(画像を生成するために)ディスプレイを駆動するのに使用される照射が、ディスプレイに向かって放出され、ディスプレイの視る側でディスプレイに進入することを意味している。別の実施例では、発明のディスプレイは、後方駆動式であり、ディスプレイを駆動するのに使用される照射が視る側の反対側の側に向かって放出されることを好ましくは意味している。後方駆動式ディスプレイでは、画像の生成を推進する光は、背面からデバイスに進入する。
【0029】
発明のディスプレイは、図1Aから図7Bに関して記載されており、これらの図面中、同様の構造及び/又は機能は同様に番号付けされている。
【0030】
図1Aは、第1及び第2の、前方電極及び後方電極11、12をそれぞれ備えるディスプレイ110を示す。少なくとも前方電極11は、ディスプレイの視る側に向かって設けられており、好ましくは、少なくとも可視光に対して透明であり、好ましくはIR光にも透明である。前方電極11は好ましくは、前方基板91と対応付けられており、これもまた好ましくは、少なくとも可視光及びIR光に対して透明である。
【0031】
好ましい実施例では、ディスプレイは、透明の前方基板91を備え、この場合、前記第1の電極11は、前記透明の前方基板11上で支持される、及び/又はその上に置かれ、前記透明の前方基板91は好ましくは、IR光を許容する。
【0032】
ディスプレイ又はディスプレイ110の視る側は、参照番号15で指示されており、視る側は、これにより、第1の電極11の側に設けられる、及び/又は透明基板91と対応付けられている。
【0033】
後方電極12は好ましくは、後方基板92と対応付けられている。後方電極及び後方基板は、透明である必要はない。好ましくは後方基板92は、可視光に対して不透明であり、好ましくは全ての可視光を吸収する、及び/又は反射する。示される実施例では、後方基板92は、デバイスの背面側16を形成し、背面側は、ほとんどの実施例においてディスプレイ側15に向かい合っている。
【0034】
図7A及び図7Bに例示される一実施例において、ディスプレイは、透明の後方基板93を備え、前記第2の電極12は、前記透明の後方基板92上によって支持される、及び/又はその上に置かれる。
【0035】
好ましくは、一方又は両方の電極11、12は、連続電極であり、前方基板及び/又は後方基板を好ましくは連続するやり方で覆っている。好ましくは、一方又は両方の電極は、デバイスの複数のピクセル及び/又はサブピクセルを覆って、より好ましくは、デバイスの全てのピクセル及び/又はサブピクセルを覆って連続して延在する。好ましくは、一方又は両方の電極は、ディスプレイ面の全体又はその大半の部分にわたって連続して延在する。好ましくは、一方又は両方の電極は、1つの単一電極として(又は一対の対向する電極として一緒に)それぞれアドレス可能であり、複数の別個の電極で構成されてはいない。好ましくは、電極は、アクティブマトリックスの一部ではない。
【0036】
好ましくは、発明のディスプレイには、3つ以上の電極のスタック、及び/又は各ディスプレイ部材が、エレクトロクロミック層及び光導電体層を含む複数のエレクトロクロミックディスプレイ部材のスタックがない。
【0037】
一実施例において、ディスプレイは、前記第1の電極11と前記第2の電極12との間にバイアス電圧を提供するためのバイアス電圧印加ユニット95を備える。
【0038】
ディスプレイ110は好ましくは、光導電体層20と、エレクトロクロミック材料層40とを備える。
【0039】
本明細書の目的のために、用語「層」は、複数の形式の「層」を含み、よって、対応する層は、いくつかの層を備える、及び/又はいくつかの層で基本的に成り立つことを包含する。さらに、1つの層は、図面中に別個の層として示される異なる構成要素を備えてもよい。したがって、図面中に別個の層として示されるものは、必ずしもそうである必要はないが、単一の識別可能な層又は単一の区別可能な層に組み込まれる場合もある。例えば、一部のケースでは、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック材料層40はさらに、IRフィルタリング材料、白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料及び異方性層から選択された1つ又は複数を含んでもよく、これらの層及び材料は、一部の実施例ではまた、層40とは別個の層及び/又は層40とは区別できる層の形態で提供されてもよい。単一のIRフィルタリング材料の代わりに、複数のIRフィルタリング材料が存在してもよい。
【0040】
好ましい一実施例では、前記光導電体層20は、複数の層、例えば、2~10又は2~5の層を備え、これには、赤外線光(IR)に対して高感度な前記材料を含む1つ又は複数の電荷発生層、並びに電子輸送材料及びホール輸送材料から選択された材料を含む1つ又は複数の電荷輸送層が含まれる。
【0041】
本明細書の目的のために、「光導電体」層は、事前定義された波長又は波長範囲を有する電磁照射に、好ましくはIR光に層を曝すことによってその導電性を調整することができる層である。
【0042】
好ましい一実施例では、光導電体層20は、フォトダイオードを備える、及び/又はフォトダイオードとして機能する。
【0043】
好ましくは、光導電体層20は、好適な光、とりわけIR光で照射すると、電極間の電流の流れ及び/又は電圧を可能にする、及び/又はトリガする機能を有する。光導電体層は、特許文献1に記載されるように提供されてよく、2つの電荷発生層の間に挟まれた電荷輸送層を備える。特許文献1は、参照により本明細書に全体が組み込まれる。電荷発生層は好ましくは、感光性材料を含み、この材料は、アドレス放射を吸収すること、励起子を生成すること、及び電荷発生層内で、又は電荷発生層と電荷輸送層との間の境界面において自由電荷に効果的に切り離すことを可能にする。電荷輸送層は、放射によって発生した電荷担体が注ぎ込まれ、バイアス信号が適用された電場内で浮遊する機能を有する層である。本発明によって使用され得る光導電体層は、特許文献3においても参照され、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
好ましい一実施例では、光導電体層20は、灰チタン石材料を含み、好ましくは有機無機灰チタン石フォトダイオード層、とりわけ有機向き灰チタン石フォトダイオードを備える。一実施例では、フォトダイオードは、IR領域において100%を超える、好ましくは1000%を超える外部量子効率を有する。
【0045】
好ましい一実施例では、光導電体層20は、有機アンモニア金属ハロゲン化物灰チタン石を含み、金属は、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Zn2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、Bi3+及びSb3+から選択されてよく、好ましくは、例えば鉛及び/又はスズカチオンから選択されてよい。一実施例では、光導電体層20は、特許文献5に開示されるように、有機無機灰チタン石材料を含む。灰チタン石材料は、混合アニオンであってよく、例えば、混合ハロゲン化物及び/又は混合カチオン灰チタン石であってもよい。
【0046】
そのような灰チタン石材料は、IR光に対して高感度であり、IR光で照明されると電荷担体を発生させるように報告されてきた。典型的には有機無機灰チタン石材料は、電子伝導層とホール伝導層との間に挟まれる。
【0047】
好ましい一実施例では、光導電体層20は、有機無機灰チタン石フォトダイオード層を備え、とりわけ、IR領域において>100%の外部量子効率を呈する、より好ましくは>500%の外部量子効率、及び最も好ましくは>1000%の外部量子効率を呈する有機無機灰チタン石フォトダイオードを備える。
【0048】
好適な灰チタン石フォトダイオードは、非特許文献2及び非特許文献3に開示される。いくつかの実施例において、光導電体層20は、メソ多孔性層、例えば多孔性TiOを備える。
【0049】
いくつかの実施例において、NIR高感度光導電体層20は、シリコン材料又は別の光活性化材料に基づくフォトダイオードを備える。上記に記載したシリコン及び灰チタン石以外の光活性化材料は、例えばGaAs、Ge、InP、PbS、PbSe、AgS、AgSe、CuS、CuO、チタニルフタロシアニンから選択されてよい。NIR高感度光導電体層は、2つ以上の異なる光活性化材料の組み合わせを含んでもよい。
【0050】
一実施例では、光導電体層20は、感光性pn接合を備える。
【0051】
本発明のディスプレイは好ましくは、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料を含む。エレクトロクロミック材料は好ましくは、エレクトロクロミック材料層40内に設けられる。
【0052】
エレクトロクロミック材料は、酸化状態に応じて、とりわけ、酸化還元反応を受けるようにエレクトロクロミック材料を誘導するのに適した印加電圧に依存して、その色を変化させる材料である。発明のディスプレイは好ましくは、1つ又は複数の、例えば2つ、3つ又は4つのエレクトロクロミック材料層を備え、これらは好ましくは、異なるエレクトロクロミック材料を含む。好ましくは、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料は好ましくは独立して、印加電圧に応じて、少なくとも実質的に透明の状態と、色がついた状態とを有することが可能である。色がついた状態では、エレクトロクロミック材料は好ましくは、暗色(暗い青、暗い緑、暗い赤又は暗い黒)或いは例えば黄色、シアン、マゼンタ及び黒から選択された色を示す。図1Aに示されるような特定のディスプレイは好ましくは、単色ディスプレイであり、ある状態では暗色を有し、別の状態では実質的に透明であるエレクトロクロミック材料を含む。
【0053】
エレクトロクロミック材料層40は、オールインワン(AIO)層の形態で提供されてよく、そこでは、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料は好ましくは、少なくともある程度可動であることが可能であり、例えば、電極に向かって、及び/又は電極から離れるように移動することが可能である。この実施例では、エレクトロクロミック材料は好ましくは、少なくともある程度エレクトロクロミック層40内に拡散することが可能である、及び/又は好ましくは、拘束されていない。拡散は好ましくは、溶媒を含むマトリックス内又は電解質内で生じる。この実施例によると、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料は好ましくは、小又は中サイズの分子である、及び/又は重合体ではない。好ましくは、AIO構成において、エレクトロクロミック材料は、堆積しない。
【0054】
好ましくは、本明細書で使用される際、用語「小又は中サイズの分子」は、5000Da未満の、好ましくは4000未満の、より好ましくは3000未満及び最も好ましくは2500Da未満の分子重量を有する物質又は化合物を指す。好ましい一実施例では、小又は中サイズの分子は、≦2000Daの分子質量を有する。典型的には、小又は中サイズの分子は高分子、タンパク質、ポリペプチド又は核酸ではないが、それらはアミノ酸、ジ-及びオリゴマーを含んでもよい。「小分子」は、一般に、≦800Daの分子質量を有する分子である。
【0055】
別の実施例では、エレクトロクロミック材料は、堆積され、エレクトロクロミック材料層40全体の中に1つの層を好ましくは形成し、エレクトロクロミック層を形成する。この場合は、エレクトロクロミック材料は好ましくは、不動であり、拡散によって移動することはできず、重合体であってもよい。この場合、エレクトロクロミック材料は好ましくは、電極上、又はそれ自体が堆積され電極に対して不動であるメソ多孔性材料の上など、基板上に堆積される。
【0056】
エレクトロクロミック材料層40は好ましくは、1つ又は複数の溶媒、1つ又は複数の塩、任意選択の高分子及び場合によっては他の層、例えばイオン貯蔵層、及び機能的エレクトロクロミックユニットを提供するのに必要とされる添加剤及び/又は酸化還元種を含む。エレクトロクロミック材料層40は好ましくは、例えばゲル化電解質などの電解質を含む。
【0057】
ディスプレイ110は好ましくは、光反射材料及び/又は光フィルタリング層68を備える。層68の1つの機能又は主要な機能は、全ての可視光又は大半の可視光を反射すること、及び好ましくは、少なくとも一部のIR光を通過させることである。可視光を反射することによって、反射層68は好ましくは、明るい、及び/又は鮮やかな、好ましくは淡色の、例えば明るいグレーの、又は好ましくは白色背景層を提供する。好ましくは、光反射材料及び/又は光反射層68は、情報及び/又は画像を引き立たせ、これにより、前記ディスプレイ上で人である観察者にとって見えるようにする背景を提供する。好ましくは、層68は、白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料を含む。
【0058】
好ましくは、前記光反射材料及び/又は前記光反射層68は、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料によって表示される画像のための背景を提供する。したがって、反射層68は好ましくは、白色光及び/又は可視スペクトラムのほとんど全ての光を散乱させる。
【0059】
好ましい一実施例では、反射層68は、全てのIR光を反射及び/又は吸収するわけではない。
【0060】
好ましい一実施例では、前記可視光反射材料及び/又は前記可視光反射層68は、IR光の少なくとも一部の波長に対して透過性である。
【0061】
一実施例では、反射層68は、IR光を選択的に反射する、吸収する、又はフィルタに通し、IR光の特有の通過させる波長に対して透過性である。
【0062】
一実施例では、反射層68は、例えば、他の実施例に関して本明細書の他の場所に記載されるように、微粒子、又はナノ粒子などの粒子の形態で設けられる。
【0063】
好ましい一実施例では、前記白色光散乱材料及び/又は前記白色光反射材料80或いは白色光散乱層又は白色光反射層68は、前記光導電体層20と前記エレクトロクロミック材料層40との間に、又は前記エレクトロクロミック材料層の中に設けられる。
【0064】
一実施例では、ディスプレイは、1つ又は複数のIRフィルタリング材料を含み、これは、別個の層内に、又は前記光導電体層20と前記第1の電極11との間に、好ましくは前記光導電体層20と前記エレクトロクロミック材料層40との間のフィルム内に設けられる。導電性の異方性層が存在する場合(さらに以下を参照されたい)、1つ又は複数のIRフィルタリング材料が、前記異方性層と前記第1の電極11との間に、好ましくは前記異方性層と前記エレクトロクロミック層40との間に設けられてもよい。
【0065】
単一の色のデバイスでは、ディスプレイは好ましくは、1つのIRフィルタリング材料を含む、又はIRフィルタリング材料を全く含まない。図3及び図4に関して記載されるように、複数の異なるIRフィルタリング材料61、62、63は例えば、必須ではなく、好ましくは存在しない。
【0066】
好ましい一実施例では、発明のディスプレイは、異方性導電層70を備える。この層の機能は、クロストークを抑えること、並びに照射されるディスプレイの特定の領域において電流の流れを制限する、及び/又は通すことである。上記で言及したように、第1の電極及び/又は第2の電極は好ましくは、ディスプレイエリアによって被覆されるエリア全体にわたって連続して設けられる。導電異方性層70は、電流の流れが、アドレス照射が光導電体層20に突き当たる、ディスプレイのそのようなエリアのみに局所的に生じる、又はそのようなエリアに局所的に制限されることを確実にする。導電異方性層70は好ましくは、前記エレクトロクロミック材料層40と前記光導電体層20との間に設けられ、より好ましくは前記反射及び/フィルタリング層68と前記光導電体層20との間に設けられる。
【0067】
異方性導電層及びそれらを生成するための材料は市販されており、例えば特許文献6に記載される手順に従って製造されてよい。
【0068】
異方性導電層70は好ましくは、より優れた画像品質及び/又は解像度を提供するのに適している。しかしながら、発明はまた、そのような層なしで実行される場合もあるため、異方性導電層は必須ではない。
【0069】
図1Aに見ることができるように、光導電体層20は、前記電極層11と12との間に設けられる。エレクトロクロミック材料層40は好ましくは、前記光導電体層20と前記第1の電極層11との間に設けられ、すなわち、層40は、光導電体層20よりも視る側15により近い。光フィルタ層及び/又は光反射層68は好ましくは、層20と40との間に設けられる。好ましくは可視光反射材料及び/又は可視光散乱材料は好ましくは、エレクトロクロミック材料と光導電体層との間に設けられ、そのため視る側15から進入する可視光が光導電体層20に到達するのを阻止する。
【0070】
好ましい一実施例では、発明のディスプレイは、第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料41、42、43を含む。第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料は好ましくは、活性化されたとき、異なる第1、第2及び第3の色を有する。用語「活性化された」、「活性化」及びその種々の文法上の形態は、エレクトロクロミック材料の文脈において、エレクトロクロミック材料の色のついた状態を指すことが意図されている。前記第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料の色の状態は好ましくは、前記第1の電極層11と前記第2の電極層12との間の電位差及び/又は電流の流れに依存する。他の場所で言及したように、電極11、12は、フォトダイオード20内の局所的に変化した導電性に起因して、局所的に制限された、及び/又は局所的に規定された電流の流れ及び/又は電圧を有するように設けられる。
【0071】
異なるエレクトロクロミック材料は好ましくは、多色ディスプレイ及び/又はフルカラーディスプレイを提供するために設けられる。異なるエレクトロクロミック材料は好ましくは、第1、第2、及び第3の空間的に別個の領域44、45、46内に設けられる。例えば、第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料は、上下の3つの別個の層で設けられてもよい、例えば、3つの積み重ねられた、及び/又は3つの重ね合わされた層で設けられてもよい。
【0072】
図1Bに示されるディスプレイ110は、第1、第2及び第3の空間的に隔てられた領域44~46を備え、これらはここでは、エレクトロクロミック材料層40の実質的に同一平面上の領域又はエリアとして並置される、及び/又は設けられる。好ましい一実施例では、第1、第2及び第3の領域は、水平軸及び/又は視る側15に平行な軸、若しくはディスプレイの第1の基板91の軸上で隔てられている、及び/又は離間されている。好ましくは、第1、第2及び第3の領域44~46は、視る側15に対して直角に延在する軸上で、垂直に整列される(すなわち、それらは、同じ垂直位置に設けられる)。したがって、示されるように、第1、第2及び第3の領域は、視る側15に平行して延在する。
【0073】
空間的に隔てられた領域44~46は好ましくは、ディスプレイのピクセル又はサブピクセルを形成する。それらはまた、第1、第2及び第3のエレクトロクロミック領域44~46とも呼ばれる。
【0074】
一実施例では、前記空間的に隔てられた領域44~46は各々、約10μmから約100mm、好ましくは約50μmから約50mm、最も好ましくは約100μmから約20mmの表面を独立して被覆する。
【0075】
一実施例では、前記第1、第2及び第3の異なるエレクトロクロミック材料41、42、43は、RGB又は加法混色の他の形態を可能にするという条件で、その色のついた状態において着色されて、赤、緑及び青をそれぞれ有するエレクトロクロミック材料を含む。発明はまた、CMY及びCMYK(シアン、マゼンタ、黄色、黒)及び減法混色の他の形態など他のタイプの混色も包含する。
【0076】
図1B及び他の図面に例示されるディスプレイは、3つの異なるエレクトロクロミック材料を含むが、発明は、4つ以上の異なるエレクトロクロミック材料で実現されてもよく、この場合、ディスプレイは、4つ以上の空間的に隔てられた領域を備えてもよいし、備えなくてもよい。
【0077】
さらに、図面は、近傍の、及び/又は隣接する領域41~43間のはっきりとした分離を示すが、発明は、領域が部分的に重なる、及び/又は部分的に融合することで、隔てられた領域の間に輪郭のはっきりとした分離ラインが存在しない場合も包含する。
【0078】
好ましい一実施例では、発明のディスプレイは、1つ又は複数の赤外線(IR)フィルタリング材料を含む。IRフィルタリング材料は、エレクトロクロミック材料層40内、フィルタリング層及び/又は反射層68内に設けられてよい、或いは本明細書の他の場所に詳細に記載されるように、別個の層内に設けられてもよい。好ましい一実施例では、IR材料は、化合物、好ましくは小又は中サイズの分子である。
【0079】
好ましい一実施例では、IRフィルタリング材料は、一部のIR放射を選択的にフィルタに通す、及び/又は一部のIR放射に対して選択的に透過性である。
【0080】
一実施例では、IRフィルタリング材料は、少なくとも一部のIR光を吸収する、及び/又は反射する。好ましくは、IRフィルタリング材料は、特定の波長又は特定の波長範囲によって特徴付けられるIR光をフィルタに通す、吸収する、及び/又は反射する。
【0081】
好ましい一実施例では、ディスプレイは、第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料及び/又は第1、第2及び第3の複数のIRフィルタリング材料を含む。好ましくは、これらの異なるIRフィルタリング材料は、IR光の異なる波長及び/又は異なる波長範囲に対して透過性である。
【0082】
本明細書の目的のために、「複数のIRフィルタリング材料」は、2つ以上の異なるIRフィルタリング材料が、所望のIRフィルタリング効果を得るために組み合わせる状況を包含する。「複数のIRフィルタリング材料」は、2つ、3つ又はそれ以上の異なるIRフィルタリング材料を含む「組み合わせ」、「グループ」及び/又は「組成物」を包含する。複数のIRフィルタリング材料には、10までの異なるIRフィルタリング材料、好ましくは5つまでの、最も好ましくは3つまでの異なるIRフィルタリング材料が存在してもよい。とりわけ、「複数のIRフィルタリング材料」中のIRフィルタリング材料は、一部のIR光を阻止する、例えば吸収するが、対応する領域及び/又はエリアに対応付けられた電極を作動させることが意図された特定の波長及び/又は特定の波長範囲のIR光は通過させるように選択される。
【0083】
第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料及び/又は適用可能であれば複数のIRフィルタリング材料は好ましくは、空間的に隔たった領域内にそれぞれ設けられる。例えば、図1Bに示されるディスプレイ110に関して、第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料及び/又は異なる複数のIRフィルタリング材料は、前記第1、第2及び第3の隔てられた領域41~43内に、又は図4及び図5に示される実施例に関してより詳細に記載されるように別個の層60内に、それぞれ設けられてよい。
【0084】
一実施例では、前記第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料及び/又は異なる複数のIRフィルタリング材料は、図4及び図5に示される実施例に関して記載されるように、互いに対して同一平面上の異なる領域内に設けられる。
【0085】
前記第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料及び/又は複数のIRフィルタリング材料は好ましくは、デバイス内の規定のエリア、領域及び/又は位置を有するように被覆する、及び/又は制限されるように堆積される。第1の領域には、第1のIR材料又は第1の複数の異なるIRフィルタリング材料が設けられてよい。第2の領域には、第2のIR材料又は第2の複数の異なるIRフィルタリング材料が設けられてよい。第3の領域には、第3のIR材料又は第3の異なる複数のIRフィルタリング材料が設けられてよい。したがって、一部の領域に関しては単一のIR材料で十分であってよく、他の領域は、独立して1つ、2つ又はそれ以上の異なるIRフィルタリング材料を含んでもよい。異なる領域は、異なるIRフィルタリング材料及び/又はIRフィルタリング材料の異なる組み合わせを含む。
【0086】
図1A及び図1Bに示される実施例の構成要素が記載されてきたが、発明のディスプレイの動作原理は、図1Bのフルカラーディスプレイの実例において図2A及び図2Bを参照して次に記載される。
【0087】
図2Aでは、矢印1は、前面側15からディスプレイ120に突き当たる環境電磁放射を表している。前方基板91及び第1の電極11は透明であり、光がディスプレイに進入し、フィルタリング層及び/又は反射層68に到達するようにする。この段階では、エレクトロクロミック材料は活性化されていないとみなされるため、全ての可視光は、妨げられずにフィルタリング層及び/又は反射層68まで進む。
【0088】
可視スペクトラムの全ての光又はほとんど全ての光は好ましくは、矢印2によって例示されるように、フィルタリング層及び/又は反射層68で反射される。しかしながら層68は、IRスペクトラムの少なくとも一部の光を透過するため、層68の特性に応じて、特定の波長を有するIR光は、層68を通過し、光導電体層20に進入する。環境放射におけるIR含有量は一般に、フォトダイオード20を作動させるのに十分な強度を持たない、また逆に言えば、フォトダイオードは、環境IR放射に対して高感度であるように設計されていないことに留意されたい。
【0089】
矢印3.1、3.2及び3.3は、アドレス光の供給源、例えば、先に列挙したようなプロジェクタによって放出されたIR光を例示する。示される実施例では、光源は、IR光の波長又は波長範囲を選択的に放出することが可能である。
【0090】
示される実施例では、第1のアドレス光3.1は、700~750nmの範囲の波長を有し、第2のアドレス光3.2は、750~800nmの範囲の波長を有し、第3のアドレス光3.3は、800~850nmの範囲の波長を有する。この実施例では、前記第1、第2及び第3のIRフィルタリング材料61~63は、約700~約750nm、約750~約800nm、及び約800~約900nmのIR光をそれぞれ許容する。一般に、第1、第2及び第3のIRフィルタリング材料は、異なる波長又は異なる波長範囲のIR光を許容し、重なりは好ましくは回避される。例えば、750nmの波長を有するIR光は、1つのフィルタリング材料のみを通過するが、他の2つ以上のIRフィルタリング材料によってはフィルタに通される、吸収される、及び/又は反射される。相補的なフィルタリング特性は、この実例による類似のやり方で他のフィルタリング材料に適用される、すなわち例えば800nmの波長を有するIR光は、1つのフィルタリング材料のみを通過するが、他の2つ以上のIRフィルタリング材料によってフィルタに通される、吸収される、及び/又は反射される。別のIR波長に関しても、すなわち第3の、及び場合によっては第4のIR波長のアドレス光に対しても同じことが言える。
【0091】
アドレスIR光は、エレクトロクロミック層40の中を通り、さらに、選択的にフィルタリング層及び/又は反射層68の中を通って貫通する。ディスプレイは、第1、第2及び第3のIR光フィルタリング材料を含み、これらは、局所的に隔てられる、及び/又は第1、第2及び第3のエレクトロクロミック材料を含む第1、第2及び第3の領域44~46と対応付けられる。
【0092】
本明細書の目的のために、表現「対応付けられる」は、1つ又は複数の特定の領域を含む文脈において使用されるとき、対応する材料、化合物又は複数の材料が、空間的に分散される、及び/又は特定の領域の内部にあるように限定される、或いはディスプレイの視ている面15に対して直角の方向で見たときに、それぞれの領域と重なるように、又は実質的に重ね合わされるように、その領域と整列されることを意味することが意図されている。
【0093】
図2Aにおいて光導電体層20における数字によって指示されるように、第1のIRフィルタリング材料は、700~750nmの範囲内に位置する波長を有するIR光に対して透過性である。第1のIRフィルタリング材料は、第1のエレクトロクロミック領域44内に、層68の別個の区画内に、又は別個の層内に設けられてよい。しかしながら、前記第1のIRフィルタリング材料は、第1のエレクトロクロミック領域と大部分が重なる、及び/又はそのような領域と空間的に実質的に一致する。好ましくは、これは、視ている面15に対して直角の方向に適用され、この方向は、アドレス光3.1及び3.2及び3.3がディスプレイに進入する主要な方向に対応している。
【0094】
同様に第2及び第3のIRフィルタリング材料は、750~800nm及び800~850nmの範囲内に位置する波長を有するIR光に対してそれぞれ透過性であり、この場合、前記第2及び前記第3のIRフィルタリング材料は、視ている面15に対して直角の方向で、それぞれ前記第2及び前記第3のエレクトロクロミック領域と空間的に実質的に一致するように設けられる。
【0095】
参照番号4の矢印によって例示されるように、アドレス光3.1は、第1のエレクトロクロミック領域44において局所的に規定されるやり方でフォトダイオード20を作動させるのに十分であるように生成される。フォトダイオードによって生成された自由電荷担体は、第1及び第2の電極11、12を通る電流の流れ4をトリガし、この電流の流れは、第1のエレクトロクロミック材料の領域44に集められる。電流の流れを局所的に制限することによってクロストークを抑えるために異方性導電層70が設けられる。
【0096】
エレクトロクロミック層40を通る電流の流れ4は、エレクトロクロミック材料にとって典型的であるように、層内に含まれるエレクトロクロミック材料の色の変化を誘発する。矢印4によって図2Aにおいて例示されるように、電流の流れが第1のエレクトロクロミック領域44内で誘発された場合、第1のエレクトロクロミック領域44内の第1のエレクトロクロミック材料は、透明から色付きに色の状態を変化させる。前面側15からディスプレイに進入する環境光1は、第1のエレクトロクロミック材料の色を反射し、この色はここでは、赤であると例証されている。その結果、赤色、又はより一般的には赤色成分を有する色が、このエリアにおいて、すなわちアドレス光3.1で照射されたピクセル及び/又はサブピクセルにおいてディスプレイを見ているユーザにとって見えるようになる。
【0097】
図2Bは、前面側から突き当たるIR光によってアドレスされたフルカラーのパッシブ(反射)画像をどのように生成することができるかを例示する。第1、第2及び第3のエレクトロクロミック領域44~46は協働して、前面側から、及び/又は視る側15からディスプレイに進入する対応するアドレスIR波長範囲の強度の結果としての混色によって特定の色を生成する。
【0098】
エレクトロクロミック領域44~46は、RGB混色によって特定の色を協働して生成するサブピクセルとみなすことができ、そのため図2Bに示される3つの領域は1つの色を有する1つのピクセルを形成し、この場合、この色は、光源によって放出され、且つ特定のエリア又は特定のピクセルに向かうように誘導されたアドレス波長又はアドレス波長範囲の各々の光のパーセンテージに依存する。パーセンテージx%、y%及びz%は、ピクセルの色の生成に寄与する異なる波長の分量又は強度を反映する。例えば、ピクセルに突き当たる全ての3つの波長範囲が同じ強度を有する場合、電流の流れは、全ての領域44~46において誘発され、全ての赤、緑及び青のエレクトロクロミック材料が、色のついた状態になり、この場合、RGB混色によって生成される暗色又は黒のピクセルを一緒に表示する。例えば、750~900nmの範囲内のIR光が光源によって放出されず(y及びzがゼロである)、第1のエレクトロクロミック領域44と対応付けられた光導電体を活性化する光導電体を作動させるIR光のみが放出される場合、第1の領域内又はサブピクセル44における第1のエレクトロクロミック材料のみが、透明から色付きに変化することで、ピクセル全体が赤の光を反射する。白色光を反射する層68に起因して、白の背景又は少なくとも明るい又は鮮やかな背景68に対するピクセルカラーのコントラストによって、ピクセルカラーを見ることができるようになる。理解することができるように、ピクセルは、ディスプレイの視る側に投影される特定のIR波長又はIR波長範囲を制御することによって、この実例ではRGB混色によって獲得可能ないかなる色も有するようにアドレス光3によって作動させることができる。さらに、アドレス光の供給源は、ディスプレイ全体及びそのピクセルに突き当たるように、パターン形成された光を放出する、及び/又は光を投影するように設けられる。したがって、ディスプレイに投影された光の組成及びパターン形成を利用して、ディスプレイ上に画像を生成することができる。投影される光は好ましくは、不可視IR光であり、これは、デバイス内のエレクトロクロミック材料によって反射されるような光と干渉することがなく、これにより画像ディスプレイとも干渉することはないことに留意されたい。
【0099】
記載されるようにピクセルによって表示される画像を取り去るために、エレクトロクロミック材料のブリーチが行われ、これは好ましくは、電圧印加ユニット95を介して制御される。例えば、電圧源は、11と12との間を単に短絡してよい、又は逆の電位が加えられる場合もあり、その結果、エレクトロクロミック材料は、酸化還元反応を受け、ディスプレイ表面全体にわたって透明状態へと変化することになる。
【0100】
全てのIRアドレスIR光でディスプレイ全体を照射することも可能であり、その結果、アドレス光は、各サブピクセルにおいて全てのフィルタリング材料を通過し、これによりRBG混色によってディスプレイ上の白の表面を生成することになる。
【0101】
発明のディスプレイは、多くの異なる方法で実現されてよく、本発明は、特許請求される主題を機能させるためのいかなる特定の方法に関しても限定されることは意図されていない。図3から図6Aは、アドレス光が背面から提供される実施例(図6A及び図6B)及びディスプレイが少なくとも部分的に透明である実施例(図7A及び図7B)を含めた、異なる特定の実施例に関する。
【0102】
デバイスの作製に関して、層及び/又は構成要素は好ましくは、図面に示されるようにデバイスの下から上に堆積され、第2の電極12を備える後方基板92が、例えば導電性基板の形態で、最初に設けられて、追加の構成要素がその後のステップにおいて導電性基板の上に堆積される。最後に、透明の第1の電極11を備える透明の第1の基板91が、好ましくは導電性の透明基板の形態で、エレクトロクロミック層40の頂部に配置される。或いは、エレクトロクロミック層のいくつかの構成物質又は全ての構成物質を含む電解質が、好ましくは透明の導電性基板内の開口を通る浸透によって、透明の導電性基板11、91の堆積の後に加えられる。
【0103】
以下の実施例の記載では、ディスプレイの異なる層及び異なる構成要素は、ディスプレイの作製中に対応する層を加える順番に必ずしも一致しない順番で考察される。
【0104】
図3に示される実施例のディスプレイ130は、別個のオールインワン層として堆積されたエレクトロクロミック層40を備える。この層では、エレクトロクロミック材料は堆積しないが、好ましくは、オールインワン(AIO)マトリックス内の少なくともある程度まで拡散することが可能な小及び中サイズの分子から選択される。
【0105】
AIO組成の構成要素として堆積され得る例示の青、緑及び赤のエレクトロクロミック材料が、以下で本明細書において提供される。例示の化合物1は、1-エチル-1’-(2-ホスホノエチル)-[4,4’-ビピリジン]-1,1’-ジイウムカチオンであり、これは、クロムの部分である1,1’-ジエチル[4,4’-ビピリジン]-1,1’-ジイウムを有する。化合物1は、活性化すると青になる。例示の化合物2は、1-フェニル-1’-(4-(2-ホスホノエチル)フェニル)-[4,4’-ビピリジン]-1,1’-ジイウムカチオンである。化合物2のクロム部分は、1,1’-ジフェニル-[4,4’-ビピリジン]-1,1’-ジイウムを含む。化合物2は、活性化すると緑になる。例示の化合物3は、1-エチル-4-(4-(1-(2-ホスホノエチル)ピリジン-1-イウム-4-イル)フェニル)ピリジン-1-イウムカチオンであり、クロム核として4,4’-(1,4-フェニレン)ビス(1-エチルピリジン-1-イウム)を含む。化合物3は、活性化すると赤に変わる。溶液中、これらの化合物は、好適な塩、例えば、ハロゲン化物アニオンの形態で加えられてよい。これらの化合物は、活性化されないとき、好ましくは実質的に透明である。
【0106】
エレクトロクロミック領域44~46を形成するAIO組成は好ましくは、溶媒、1つ又は複数の塩、少なくとも1つのエレクトロクロミック材料、好ましくは1つ又は複数の追加の酸化還元活性種を含み、これはエレクトロクロミックであっても、そうでなくてもよい。好適な溶媒は、例えばプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリルを含む溶媒から選択されてよい。好ましくは、AOI組成は、堆積後の組成を増粘するために、ポリマー、又はモノマー及び開始剤などの増粘剤をさらに含む。
【0107】
好ましくは、AIO組成は、液体、ゲル、又は半固体電解質を含む、及び/又は形成する。エレクトロクロミックデバイスに基づくAIOに関する一般的な意味及び情報は、非特許文献4において言及されている。
【0108】
図3に示される実施例では、異なる領域44~46は、同一平面上にある、及び/又は並置されている。一実施例では、異なるエレクトロクロミック材料を含む異なる領域は、互いに隣合わせで設けられる、及び/又は横並びで、好ましくは同一平面上で、実質的に同一平面で配列される。示される実施例では、異なるエレクトロクロミック領域は、垂直に整列される。異なるエレクトロクロミック領域は、例えばインクジェットプリント、又は1つの表面の異なる位置に異なる組成を堆積するのに適した他の堆積手段デバイスによるプリント技術によって異なるAIO組成として堆積されてよい。異なる領域に含まれる異なるエレクトロクロミック材料は、これにより、異なる組成(異なるインク)内に含まれてよく、各々は、異なる組成が異なる領域を形成するように堆積される。或いは、単一の最初の組成が、いくつかのサブピクセルを覆うエリアにわたって、例えば、ディスプレイによって覆われるエリア全体にわたって、事前に堆積されてもよく、異なる領域は、別個のステップにおいて形成され、そこでは、異なるエレクトロクロミック材料は、異なる領域において事前堆積された組成に対して堆積される。事前に堆積された組成全体に対する特定の構成要素のそのような別々の堆積は、事前に堆積された組成の事前に定義された位置で特定の構成要素を堆積させることが可能な好適な整列デバイスで行われてよい。領域間の物理的な分離は、選択的硬化によって生成されてよく、これは、異なるエレクトロクロミック材料の別々の堆積の前又は後に行われてよい。
【0109】
一実施例では、異なる領域44~46の隣接する及び/又は横並びの配置は、隣接する領域の部分的な重なりを伴う場合がある。一部の実施例では、重なりは存在しないが、特定の領域がなおも、隣接する近傍の領域のうちの1つ又は複数と接触している場合もある。さらに別の実施例では、領域は、横方向に離間される、例えば、隙間によって、及び/又は分離壁によって隔てられる。
【0110】
好ましい一実施例では、前記1つ又は複数のIRフィルタリング材料61は、前記エレクトロクロミック材料層40内に設けられる。
【0111】
図3に示される実施例では、異なるIRフィルタリング材料及び/又は異なるIR吸収材料が、異なる領域の内部に、とりわけ異なる領域の異なるAIO組成内に設けられる。とりわけ、第1のIRフィルタリング材料61は、第1のエレクトロクロミック領域44内に含まれ、第2のIRフィルタリング材料62は、第2のエレクトロクロミック領域45内に含まれ、第3のIRフィルタリング材料は、第3のエレクトロクロミック領域46内に含まれる。この実施例では、IRフィルタリング材料は、エレクトロクロミック領域を形成するAIO組成内に、分子又は粒子として含まれ、好ましくは小又は中サイズの分子の形態で含まれる。
【0112】
異なるIRフィルタリング特徴を有するIRフィルタリング材料の例示の化合物は、以下に提供される化合物から選択される。
【0113】
アルミニウム1,8,15,22-テトラキス(フェニルチオ)-29H,31H-塩化フタロシアニン(CAS番号167093-23-4)は、752~759nmの範囲内のIR光を吸収する(化合物4)。バナジル2,11,20,29-テトラ-tert-ブチル-2,3-ナフタロシアニン(CAS番号105011-00-5)は、805~811nmのIR光をフィルタに通す(化合物5)。銅(II)5,9,14,18,23,27,32,36-オクタブトキシ-ナフタロ-シアニン(CAS番号155773-67-4)は、850~856nmのIR光をフィルタに通す(化合物6)。
【0114】
図2Aに示される例示の実施例を参照すると、領域44は、750nmのIR光で活性化され、化合物5及び6の組み合わせと対応付けられてよい。領域45は、805nmのIR光で活性化され、化合物4及び6の組み合わせと対応付けられてよい。領域46は、850nmのIR光で活性化され、化合物4及び5の組み合わせと対応付けられてよい。
【0115】
IRフィルタリング材料及び/又はIR吸収材料は、異なるエレクトロクロミック材料に関して上記に記載したように、異なる並置された位置に堆積される異なる組成の一部として、又は最初の組成全体の堆積後に別個のステップにおいて加えられる化合物としてのいずれかで、異なるエレクトロクロミック材料に関して記載したように対応するAIO組成に加えられてよい。一実施例では、第1のIR反射材料61及び第1のエレクトロクロミック材料41は、別個のステップにおいて事前に堆積された最初の組成物に堆積される溶液中に含まれる。同じことが、第2及び第3のIR反射材料及びエレクトロクロミック材料42、62及び43、63にもそれぞれ適用される。
【0116】
図3に示される実施例は、白色光散乱材料又は白色光散乱層80をさらに備え、これは、好ましくは異方性導電層70の頂部に、又は後者が存在しない場合、光導電体層20の頂部に別個の層として堆積される。好ましくは、光散乱材料又は光散乱層80は、白色光散乱ナノ粒子を含むペーストの形態でスクリーンプリントによって堆積され、その後に、粒子を堆積させるために使用される溶媒の蒸発が続く。例示の粒子は、本明細書の他の場所で開示される。
【0117】
第1の電極11は好ましくは透明であり、好ましくは例えば、透明の導電性酸化物及び透明の導電性ポリマーから選択された、透明の導電性材料を含んでよく、又は基本的に透明の導電性材料で構成されてよい。例えば、導電性電極材料は、SnO、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アルミニウム酸化亜鉛及びPEDOTから選択されてよい。第1の基板91及び第1の電極11は、上記に挙げた導電性材料のうちの1つが堆積される透明ガラス又は透明プラスチックなど透明の導電性基板の形態で設けられてよい。
【0118】
図3に示される実施例の第2の電極12及び第2の基板92は、第1の電極及び基板でのように設けられてよく、違いはそれらが透明である必要がないことである。したがって、第2の電極12はまた、例えば金属フィルムによって形成されてもよい。
【0119】
光導電体層20及び異方性導電層70は既に、上記で図1A及び図1Bを参照して記載されている。
【0120】
図3に示されるデバイスの独自性は、エレクトロクロミック層40が、異なる非堆積の、及び/又は拡散するエレクトロクロミック材料を含む異なるAIO組成の形態で設けられていること、及び異なるIRフィルタリング材料が、エレクトロクロミック層の異なる領域のAIO組成に含まれることである。さらに、白色光散乱層80が、異方性層70に隣接するように、例えばエレクトロクロミック材料層の下方部分又は底部に向かって堆積され、この場合、「下方」及び「底部」は、ディスプレイの第2の基板12及び/又は裏側16により近い、層40の側を意味する。
【0121】
図3におけるIRフィルタリング材料61~63及び白色光散乱層及び/又は白色光反射層80は、図1A図2Bにおける光反射材料層及び/又は光フィルタリング層68であるように指示されるものに対応することに留意されたい。この場合、全ての材料は、垂直に隔てられた層として設けられる代わりに、エレクトロクロミック層40の内部に統合されてよい。
【0122】
図4は、異なるIRフィルタリング材料61~63(又は複数のフィルタリング材料)が別個のIRフィルタリング層60として堆積され、これにより好ましくは、エレクトロクロミック層40内で拡散する又は消散した化合物としてはもはや含まれない点において、図3に示される実施例とは異なるディスプレイ140を示す。
【0123】
異なるIRフィルタリング材料、第1、第2及び第3の異なるIRフィルタリング材料61~63のような異なるIRフィルタリング材料は、空間的に隔てられるやり方で堆積される。好ましくは、それらは、エレクトロクロミック材料層40の第1、第2及び第3の領域44~46と整列される、及び/又はそれらと実質的に重なる。したがって、別個のIRフィルタリング材料層60では、第1のIRフィルタリング材料61は、第1の領域44の垂直方向に下に設けられ、第2のIRフィルタリング材料62は、第2の領域45の垂直方向に下に設けられ、第3のIRフィルタリング材料63は、第1の領域46の垂直方向に下に設けられる。さらに、層60内で異なるIRフィルタリング材料によって被覆される表面は好ましくは、エレクトロクロミック層40の異なる領域の対応する表面と実質的に同様である、又は同一である。したがって、対応する(例えば、第1、第2又は第3の)IRフィルタリング材料を通過することができるそれぞれのIR波長及び/又はIR波長範囲は、対応するIRフィルタリング材料によって画定されたエリア内でのみ光導電体層20を有効に活性化させ、これにより、対応するIRフィルタリング材料より垂直方向に上に位置するそれぞれの(第1、第2又は第3の)エレクトロクロミック材料を活性化することになる。
【0124】
図4に示される実施例では、IRフィルタリング層60は、異方性導電層であるため導電性である。商業的に利用可能な異方性層には一般に、絶縁層が備わっており、しかしながらこの層は、異方性層に含まれる導電線を伸張することによって導電性にすることができる。異なるIRフィルタリング材料を絶縁層内に設けることができ、図4における異なるIRフィルタリング材料によって画定される各領域において複数の垂直の導電線横断層60及び70によって示されるように、導電線によって導電性にすることができる。
【0125】
図5は、エレクトロクロミック層40が、上記で引用した非特許文献4においてもたらされた特異性による層状タイプであるディスプレイ150を示す。そのような層状デバイスでは、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料は、拡散材料とは対照的に、1つの層の形態で堆積される、及び/又は設けられる。層状デバイスにおけるエレクトロクロミック材料は、ポリマー及び堆積した粒子を包含する。
【0126】
層状エレクトロクロミックデバイス機構は一般に、より高速の切り替え時間を有する。ディスプレイ150、165及び175(図5図6B及び図7B)は、比較的構造の切り替え時間が重要であるディスプレイにとって好ましい場合がある。
【0127】
一実施例において、前記エレクトロクロミック材料層40は、メソ多孔性層及び/又はナノ粒子47~49を含む。好ましくは1つ又は複数のエレクトロクロミック材料41~43は、前記メソ多孔性層及び/又は前記ナノ粒子上に堆積される。別の一実施例では、1つ又は複数のエレクトロクロミック材料41~43は、メソ多孔性の形態で、及び/又はナノ粒子の形態で提供される。
【0128】
一実施例において、前記エレクトロクロミック材料層40は、電解質50を含む。
【0129】
図5に示される実施例では、エレクトロクロミック層40内の異なる領域44~46は、離間した、空間的に別々のやり方で、異なる粒子47~49の形態で堆積した異なるエレクトロクロミック材料41~43によって、又は好ましくはナノ粒子47~49から形成された、例えばメソ多孔性TiO層などのメソ多孔性層上に堆積された、又はそこに固定された異なる(例えば第1、第2及び第3の)エレクトロクロミック材料41~43によって画定される。異なるエレクトロクロミック材料41~43及び/又はメソ多孔性層は、適切であれば、透明電極上のナノ粒子をアニールするための焼結ステップを含めて、従来のように、好ましくは、第1の電極11を備える透明の導電性基板上で、第1の電極11上に堆積されてよい。
【0130】
一実施例において、前記ナノ粒子47~49は、前記エレクトロクロミック材料層40内で不動化され、例えば、永久的なやり方で、別の層に、及び/又は別の電極層に堆積される。好ましくは、ナノ粒子は、例えばディスプレイの作動中、それらがエレクトロクロミック材料層40内で移動することを可能にするようなやり方では提供されない。例えば、第1の電極上でのナノ粒子の堆積に続けてアニーリングすることは、ディスプレイ内でのナノ粒子の永久的、非可動の構成をもたらす。
【0131】
一実施例において、白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料80は、前記エレクトロクロミック材料層40内に設けられ、好ましくは前記メソ多孔性層及び/又はナノ粒子47~49と、前記光導電体層20との間に、或いは、存在するならば、前記異方性材料層70との間に、より好ましくは前記電解質50との間に設けられる。
【0132】
白色光散乱材料及び/又は白色光反射材料層80は好ましくは、異なるエレクトロクロミック材料41~43上に堆積した粒子の形態で設けられる。層80のための粒子は好ましくは、100nm~5μm、好ましくは150~2000nm、より好ましくは200~1000nmの直径を有するナノ粒子又は微小粒子から選択される。それらは、TiO,SiO,Alから、或いは好ましくは例えば白色ナノ粒子の形態の他の、及び/又は関連する微粒子金属酸化物材料から選択されてもよい。
【0133】
電解質50がエレクトロクロミック層40内に設けられ、電解質は好ましくは、エレクトロクロミックデバイスを機能的にするために、1つ又は複数の塩と、任意選択で酸化還元活性種とを含む。イオン貯蔵層は図5には具体的に示されていないが、同様にエレクトロクロミック層内に設けられてもよく、好ましくは、例えばIRフィルタリング層60の近傍で、デバイスの裏側16に向かって配向される、層40の側に設けられてよい。
【0134】
ディスプレイ150のIRフィルタリング層60及び異方性層70は、好ましくは図4に示されるデバイス140に関して記載したとおりである。
【0135】
図6A及び図6Bは、背面駆動式ディスプレイ160及び165をそれぞれ示す。これらのディスプレイでは、背面16にある後方基板94は好ましくは、IR光に対して透過性であり、可視光に対して不透明である、或いは可視光に対して部分的に透明(半透明)である。
【0136】
一実施例では、ディスプレイは、後方基板94を備え、これはIR光に対して透明であり、任意選択で可視光に対して不透明であり、この場合、前記第2の電極12は、前記後方基板94によって支持される、及び/又は前記後方基板94上に堆積され、この場合、前記1つ又は複数のIRフィルタリング材料61は、前記後方基板94上に堆積される、前記後方基板94上の別個の層内に設けられる、及び/又は前記第2の電極層(12)と前記後方基板94との間に設けられる。
【0137】
一実施例において、ディスプレイは、白色光及び/又は全ての光散乱材料及び/又は光反射材料81を含む。白色光及び/又は全ての光散乱層は、例えば、前記エレクトロクロミック材料層40と前記光導電体層20との間に設けられてよい、又は前記エレクトロクロミック材料層40内に設けられてもよい。好ましくは、白色光及び/又は全ての光散乱材料及び/又は光反射材料81は、前記1つ又は複数のエレクトロクロミック材料41~43と前記光導電体層20との間に設けられる。散乱層はまた、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間のいずれか、或いはさらには前記第1の電極層及び/又は前記第2の電極層の外側のいずれかなど他の場所に設けられてもよい。
【0138】
図6A及び図6Bに示される実施例では、好ましくは異なるIR反射材料を含むIR反射層60は、後方基板94上に堆積される。(フル)カラーデバイスの場合、異なるIR反射材料は、例えば図4及び図5に関して記載したように、IR反射層60内で空間的に隔てられている。
【0139】
図6Aでは、エレクトロクロミック層40は、図3及び図4に関して記載したようなAIOタイプであるのに対して、図6Bでは、エレクトロクロミック層は、図5に関して記載したような層状タイプである。したがって白色光散乱層及び/又は白色光反射層80はそれぞれ、図6Aではエレクトロクロミック層の底部において底部に向かって堆積され、図6Bでは、エレクトロクロミック材料41~43を含むメソ多孔性層上にそれぞれ堆積される。
【0140】
ディスプレイ160及び165は好ましくは背面駆動式である。換言すると、アドレスIR光は、ディスプレイの背面側16を経由してデバイスに進入する、とりわけ光導電体層に進入する。この実施例では、ここでは前面側とみなされるディスプレイ側15は、背面側16である光アドレス側に対向している。
【0141】
図6A及び図6Bに示されるような背面駆動式ディスプレイ160及び165はそれぞれ、例えば、プロジェクタがディスプレイの裏側に配置することができる屋外での使用に関して有益である。或いは、ディスプレイ160及び165は、アドレス光源が、デバイス内に直接統合される、及び/又は背面側16で若しくは背面側16に向けてディスプレイに剛性に装着されたデバイスに統合されるディスプレイも包含する。
【0142】
図7A及び図7Bは、少なくとも一部の可視光に対して透明であり、これにより透明又は半透明とみなされる場合があるディスプレイ170及び175を示す。そのようなディスプレイは、透明性が望まれる場合、例えば、部分的に透明な壁及び/又は窓など、建物に一体化されて使用されてもよい。
【0143】
ディスプレイ170及び175は、図4及び図5に示されるディスプレイ140及び150とは、後方基板93が、IR光に対して透明であることに加えて、可視光に対して透明である点において、それぞれ異なる。さらに、光導電体層20は好ましくは、可視光に対して透明であるが、他の場所に記載されるようにIR光によってなおも駆動することが可能である。ディスプレイ170及び175は、可能な限り透明であるように努めるため、白色光散乱層80は好ましくは存在しない。
【0144】
ディスプレイ170及び175は好ましくは、前面駆動式であるため、アドレスIR光は好ましくは、図2A及び図2Bに関して記載したように前面側16から光に進入する。
【0145】
ディスプレイ170及び175は、エレクトロクロミック層40に関して互いと異なっており、それぞれ図4及び図5に関して上記で本明細書に記載したように、図7Aでは、この層はAIOタイプであり、図7Bでは、層状タイプである。
【0146】
図8Aは、一実例に従って作製された単一色ディスプレイ180の機構を示す。図8Bは、この例示のデバイスの写真を示す。
【0147】
デバイスを準備するために、図8Aを参照すると、2つのフッ素をドープした酸化スズ(FTO)電極111及び112が、ガラス基板191及び192上にそれぞれ堆積される。光導電体層20は、コンパクトな二酸化チタン(TiO)層、メソ多孔性TiO層、有機-無機ハロゲン化物灰チタン石層及びホール輸送層によって、底部FTO電極112上にこの順番で堆積されて形成される。
【0148】
EC層140は、電極111上に堆積したビオロゲン担持メソ多孔性TiO層141及び液体電解質150で構成される。Alナノ粒子180で構成された反射材料が、ビオロゲン担持メソ多孔性TiO層141の上に堆積される。異方性導電中間層170が、光導電ダイオード120とEC層との間に加えられた。デバイスは、好適な光源で駆動される。
【0149】
本発明の好ましい一実施例の特定のものが、上記に記載され、具体的に例証されているが、発明はそのような実施例に限定されることは意図されていない。種々の修正が、以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくそれに対して行われてもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】