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特表2025-504368ディスパッチ可能な分散型の拡張可能な太陽光発電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ディスパッチ可能な分散型の拡張可能な太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250204BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250204BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02J3/38 130
H02J3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540826
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 US2023060226
(87)【国際公開番号】W WO2023133501
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/297,422
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】ディバン,ディーパック エム.
(72)【発明者】
【氏名】スネ,ジョセフ ベンザケン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ツェン
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA13
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770CA06
5H770CA08
5H770CA10
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770JA17Z
5H770KA01Y
5H770KA03Z
(57)【要約】
本開示の例示としての実施形態は、変圧器、第1の回路、および第2の回路を具備する電流源コンバータを提供する。変圧器は、第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を具備し得る。第1の回路は、第1の巻線および第2の巻線に電気的に結合され得る。第1の回路は、バッテリポートおよび太陽光発電(PV)ポートを具備し得る。バッテリポートは、1つ以上のバッテリとインターフェース接続するように構成され得る。PVポートは、1つ以上のPVモジュールとインターフェース接続するように構成され得る。第2の回路は、第3の巻線に電気的に結合され得る。第2の回路は、交流(AC)負荷とインターフェース接続するように構成されたACポートを具備し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を有する変圧器と、
前記第1の巻線および前記第2の巻線に電気的に結合された第1の回路であって、
1つ以上のバッテリとインターフェース接続するように構成されたバッテリポートと、
1つ以上の太陽光発電(PV)モジュールとインターフェース接続するように構成されたPVポートと、を有する第1の回路と、
前記第3の巻線に電気的に結合され、交流(AC)負荷とインターフェース接続するように構成されたACポートを有する第2の回路と、を備えた電流源コンバータ。
【請求項2】
前記コンバータは、前記バッテリポート、前記PVポート、および前記ACポートのうちの1つ以上のポートと、前記バッテリポート、前記PVポート、および前記ACポートのうちの別のポートとの間に電気エネルギーを流す複数のモードで動作するように構成されている、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項3】
前記複数のモードは、電気エネルギーが前記PVポートから前記バッテリポートに伝達される第1のモードを有する、請求項2に記載の電流源コンバータ。
【請求項4】
前記複数のモードは、電気エネルギーが前記PVポートから前記ACポートに伝達される第2のモードを有する、請求項2に記載の電流源コンバータ。
【請求項5】
前記複数のモードは、電気エネルギーが前記バッテリポートから前記ACポートに伝達される第3のモードを有する、請求項2に記載の電流源コンバータ。
【請求項6】
前記複数のモードは、電気エネルギーが前記ACポートから前記バッテリポートに伝達される第4のモードを有する、請求項2に記載の電流源コンバータ。
【請求項7】
前記バッテリポートは、約48V以下の電圧レベルで動作するように構成されている、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項8】
前記ACポートは、単相ACポートである、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項9】
前記ACポートは、3相三線ACポートである、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項10】
前記ACポートは、3相四線ACポートである、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項11】
前記第1の回路は、複数の双方向スイッチをさらに有する、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項12】
前記双方向スイッチは、炭化ケイ素スイッチ、ケイ素スイッチ、窒化ガリウムスイッチ、またはそれらの組み合わせである、請求項11に記載の電流源コンバータ。
【請求項13】
前記双方向スイッチは、逆阻止モードで動作するように構成されている、請求項10に記載の電流源コンバータ。
【請求項14】
前記複数の双方向スイッチは、第1の変圧器巻線および前記バッテリポートに直列に接続された第2の双方向スイッチを有し、前記コンバータは、前記第2の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーを前記バッテリポートから前記第1の巻線に流すように構成されている、請求項10に記載の電流源コンバータ。
【請求項15】
前記複数の双方向スイッチは、前記第2の変圧器巻線および前記バッテリポートに直列に接続された第1の双方向スイッチを有し、前記コンバータは、前記第1の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーを前記第2の変圧器巻線から前記バッテリポートに流すように構成されている、請求項10に記載の電流源コンバータ。
【請求項16】
前記複数の双方向スイッチは、前記第1の変圧器巻線および前記PVポートに直列に接続された第3の双方向スイッチを有し、前記コンバータは、前記第3の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーを前記PVポートから前記第1の巻線に流すように構成されている、請求項10に記載の電流源コンバータ。
【請求項17】
前記第1の回路は、前記変圧器からの漏れエネルギーを放電するように構成されたクランプ回路をさらに有する、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項18】
前記クランプ回路にシャント接続されたエネルギー回収回路をさらに備え、当該エネルギー回収回路は、前記放電された変圧器からの漏れエネルギーを回収し、前記放電された漏れエネルギーを前記バッテリポートに供給するように構成されている、請求項17に記載の電流源コンバータ。
【請求項19】
前記第2の回路は、複数のハーフブリッジ分岐路をさらに有し、当該ハーフブリッジ分岐路の各々は、第1の逆阻止スイッチおよび第2の逆阻止スイッチを有する、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項20】
前記第2の回路は、前記ACポートと並列に出力容量性フィルタをさらに有し、当該出力容量性フィルタは、前記ACポートが前記AC負荷とインターフェース接続するように構成されている、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項21】
前記変圧器は、前記第1の巻線と前記第2の巻線と前記第3の巻線との間の比がN1:N1:N2である、請求項1に記載の電流源コンバータ。
【請求項22】
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を有する変圧器と、前記第1の巻線および前記第2の巻線に電気的に結合され、バッテリポートおよび太陽光発電(PV)ポートを有する第1の回路と、前記第3の巻線に電気的に結合され、交流(AC)ポートを有する第2の回路と、を備えた電流源コンバータを動作させる方法であって、
電気エネルギーを前記バッテリポートから前記ACポートに伝達する工程と、
電気エネルギーを前記PVポートから前記ACポートに伝達する工程と、
電気エネルギーを前記PVポートから前記バッテリポートに伝達する工程と、を含む方法。
【請求項23】
電気エネルギーを前記ACポートから前記バッテリポートに伝達する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
電気エネルギーを前記バッテリポートから前記ACポートに伝達する工程は、前記バッテリポートと前記第1の巻線との間に直列に接続された第2の双方向スイッチを閉じることを含むスイッチングサイクルを実施する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
電気エネルギーを前記PVポートから前記ACポートに伝達する工程は、前記PVポートと前記第1の巻線との間に直列に接続された第3の双方向スイッチを閉じることを含むスイッチングサイクルを実施する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
電気エネルギーを前記PVポートから前記バッテリポートに伝達する工程は、前記PVポートと前記第1の巻線との間に直列に接続された第3の双方向スイッチを閉じることと、前記バッテリポートと前記第2の巻線との間に直列に接続された第1の双方向スイッチを閉じることと、を含むスイッチングサイクルを実施する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記変圧器からの漏れエネルギーを前記第1の回路のクランプ回路を用いて放電する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
放電された前記変圧器からの漏れエネルギーをエネルギー回収回路を用いて回収する工程と、前記放電された漏れエネルギーを前記バッテリポートに伝達する工程と、をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年1月7日付で出願された米国仮出願第63/297,422号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が以下に完全に記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示の様々な実施形態は、一般的に太陽光発電システムに関し、より詳細には、ディスパッチ可能な分散型の拡張可能な太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0003】
グリッド(送電系統)において太陽光エネルギーが普及するにつれて、グリッド連系型の太陽光発電(PV)システムの設置や作動が容易になり、グリッドサービスやディスパッチ可能性を通じてより高い価値を提供できるようになることが重要である。現在の構成要素は、通常、定格300~500ワットのシンプルなPV太陽光パネルであり、これを相互接続して様々なDC電圧レベルを実現している。ストリングは現場で直列に接続され、最大1500ボルトのDC電圧を実現する。これらのPVストリングは、より高い電流および電力レベルを実現するためにコンバイナボックスを用いて相互接続され、DC/ACインバータでグリッドに接続される。システム全体はカスタム設計であり、システム設計、土木費、人件費、保護、絶縁、センシングを含む「周辺機器」のコストは、電力インバータ(および場合によってはPVパネル自体)のコストよりも大幅に高くなる。加えて、PVインバータは、ディスパッチ可能な電力を扱うものではない。ディスパッチ可能性を実現するためには、エネルギー貯蔵をさらなるインバータ(または絶縁型dc/dcコンバータ)とともに追加し、保護器および制御器の位置決めおよび調整を行う必要がある。高度なグリッドサービスやグリッド運用者との調整は、通信、サイバーセキュリティ、および必要なプロトコルへの準拠を含むさらなる複雑な作業を意味する。最後に、センシング、解析、メンテナンスサポートの必要とされる作業が追加される。これらすべての要素が、このような大規模システムの拡張性および迅速な展開を大きく制限している。それにもかかわらず、PVシステムの展開およびエネルギー貯蔵を連系したシステムは、年間100GWを超える電力需要で爆発的に増加しているが、プロジェクトは3~4年も遅れている。さらに、既存のソリューションでは、慣性サポート、ブラックスタート、グリッド形成機能等のグリッド運用者との詳細な調整を現在必要とし得る高度なグリッドサービスを提供することは困難である。このことは、費用対効果が高くあらゆるレベルまで迅速に拡張可能で、かつディスパッチ可能で拡張可能な、PVに基づいた発電資源を実現する別のアプローチの機会があることを示唆している。
【0004】
上述の複雑性およびカスタマイズが、迅速な展開拡張能力を制約している。上述したように、これによって設計およびグリッド相互接続検証の順番待ちをすることになるプロジェクトの巨大なパイプラインが形成され、数年単位で待たされることが一般的になっている。技術自体の学習速度が速く、通常2年周期で非常に速いスピードで進んでいることを考慮すると、複数の技術世代をユニット間およびグリッド間の調整という観点から連系する必要があるため、システム実装の複雑性が増すばかりであることは明らかである。幅広い用途に対して複数の技術世代や年数にわたる相互運用性が保証され、設置、作動、数多くの異なる稼働環境での安全なメンテナンスが容易な、ディスパッチ可能なPV発電資源に対するプラグアンドプレイのソリューションが必要とされている。このような能力は、現在利用できないものであり、脱炭素化という世界的な目標を達成するためには望ましいものである。
【0005】
旧世代のインバータは、一般的にプラグアンドプレイであると考えることができ、なぜここで説明されている要件を満たさないのかという疑問が生じる。屋上パネルは、大規模なPV発電所と同様、インバータを用いてグリッドに接続されていた。金銭的な対価は供給されたエネルギー(ワット時)に基づいていたため、初期世代のインバータは通常、あらゆる稼働条件下で最大限の電力をグリッドに供給するように、時として最大電力点追従(MPPT)制御戦略を用いて動作していた。このような場合、各インバータは他のインバータから独立して動作し、単にグリッドを「テンプレート」として用いて所望の周波数および単一力率で電力を押し出していた。グリッドにおいてインバータが普及するにつれて、インバータは過渡状態や故障状態でもグリッドとの接続を維持することが求められるようになり、その結果、VARサポート、低電圧ライドスルー(LVRT)、不平衡運用、およびゼロ電圧ライドスルー(ZVRT)等の新たな要件が現れてきた。屋上に展開されたものを含め、展開されているインバータの大半は、このような「グリッド追従」モードで動作するため、「自律的」に動作しているように見える。しかし、その機能は非常に制限されており、グリッドが存在して健全な状態にあるときにのみ稼働し、電力をグリッドに供給することができる。
【0006】
グリッドにおいてインバータがさらに普及するにつれて、グリッド運用者はインバータを用いてグリッドのバランスをとり、VAR、周波数調整、および慣性サポート等のグリッドサービスを提供しようとした。混雑時には、グリッド運用者はPV電力を削減しようとした。また、その瞬間にPVパネルが供給できる電力以上の追加電力が必要な場合、それを実現する方法はなかった。これには、バッテリ等のエネルギー貯蔵や追加のインバータが必要であった。また、安全な接地を確保し、パネルの劣化を最小限に抑えるために、ガルバニック絶縁が望まれていた。グリッド形成とブラックスタート機能を提供するために、これらのインバータはグリッド形成可能であることが望ましいが、これらの技術は広く普及していないか展開されていない。グリッド資源として機能するPV発電所(規模は問わない)には、PV、エネルギー貯蔵、これらのDC機器をACグリッドに接続するインバータ、故障メカニズムを管理する安全性および能力を確保するためのガルバニック絶縁、グリッド運用者との通信、すべての過渡現象や故障を自律的に管理する能力、一連のグリッドサービスを提供する能力が必要であった。さらに、再生可能エネルギーが豊富な将来のグリッドには、大量のエネルギー貯蔵が必要となるため、エネルギー貯蔵はこのパズルの重要なピースとなった。図1は、エネルギー貯蔵を含む、可能な20MWの従来型PV発電所のレイアウトを示している。これは、大規模PV発電所の建設がいかに複雑かを示している。
【0007】
現在、エネルギー貯蔵機能には一般的にバッテリが用いられる。リチウムイオンバッテリは、EV分野での急速な普及により、価格が経済的に実行可能なレベルに急速に近づいたため、許容可能な代替手段を提供してきた。開発されるバッテリとパッケージは、車載要件を満たすために軽量かつコンパクトである必要があり、そのためにはアクティブ冷却や機械的ブレースの使用、DC急速充電に対応する必要があった。同じバッテリ構造を地上での用途にも応用した。バルクシステムで必要とされる蓄電レベルを実現するために、100メガワットを超えるエネルギー貯蔵が、大規模PV発電所に展開されることもあった。これはPVおよび4時間の貯蔵を含めて32ドル/MW時のシステムを用いて広く行われている。当該コストは、通常の化石燃料に基づいた発電コストをはるかに下回るものである。エネルギー貯蔵システムは通常、空調された温度制御コンテナ内に実装され、高密度のフォームファクタで最大1MW時のエネルギーを貯蔵する。バッテリはDC600~1000Vで直列に接続され、個々のセル電圧がそれを超えないように、また個々のセルが過熱しないようにする大規模なバッテリ管理システムを備えている。典型的な1MWシステムには、モニタリングが必要なセルが40,000個存在する場合もあるが、実際にモニタリングを行うことは困難である。その代わりに行われるのが、サブパックレベル、例えば12ボルトでのモニタリングで、すべてのセルの状態がわかっているという前提で行われる。密なパッケージングならびに必要とされる高い電力およびエネルギー密度により、これは局所的な過熱を引き起こす可能性がある。これによって、せいぜい、バッテリ容量が絞られることになる(検出された場合)。最悪の場合、熱暴走を引き起こし、管理が困難なバッテリ火災につながる。特に混雑した都市部に展開された場合、安全上の問題を引き起こし、重大な悪評を呼ぶ蓄電池火災が数多く発生している。
【0008】
その結果、システム全体の複雑性およびコストが非常に高くなり、重大な問題を引き起こし、拡張性が制限されることになるとわかる。実施には、施設の設計、建設、作動、稼働、メンテナンスにかなりの技術的専門知識が必要で、これがコスト全体を押し上げる。これらのプロジェクトの多くは、20年のライフサイクルに基づいた経済性を有するため、隠れたコスト、つまりシステムを運用するための専門知識や、故障した要素を交換するための旧式の部品やコンポーネントを維持するためのコストも発生する。また、2年サイクルの旧式システム(パワーエレクトロニクス、通信、制御)の継続も必要となる。急勾配の学習速度によって、類似の競合ソリューションのコストが低くなるにつれて、プロジェクトの経済的実行可能性が問われ、座礁資産(「尖頭負荷」ガスプラント等)につながる可能性がある。これは、導入の複雑性とコストに甚大な影響を与え、経済的価値が完全に実現されるかどうかの不確実性を生む。別のアプローチが必要なことは明らかである。
【0009】
したがって、事実上どのようなレベル(数キロワットから100メガワット超まで)のPV太陽光システムでも拡張性のメリットを実現するには、どのような規模でもすべてのグリッドサービスを実装できる、モジュール式のプラグアンドプレイの構成要素が望まれる。これには、完全なディスパッチ可能性、グリッドに追従またはグリッドを形成する能力、マイクログリッドに接続またはマイクログリッドを形成する能力、通常時、過渡時、故障時のグリッドをサポートする能力等が含まれる。モジュールは、展開が容易で、可用性が高く、急速な技術移行に対応できる高い相互運用性を持つことが望ましい。モジュールは自律的に動作し、グリッド連系モードまたはマイクログリッドモードですべてのリアルタイム動作要件を満たし、利用可能な場合は低遅延通信を通じてシステムレベルの性能を調整や最適化できることが望ましい。また、モジュールが故障や不具合を検出してそれらから保護する能力を持ち、故障したモジュールがシステムに与える影響を最小限に抑え、高度な訓練を受けた技術者なしでシステムを迅速に修理して作動できることが望ましい。最後に、モジュールおよびシステムが本質的に安全であることが望ましく、保守や修理にあたる作業員がアクセスする可能性のある危険な電圧の問題や、多くの高出力バッテリに基づいたシステムで生じている熱暴走や大規模火災の問題がないことが必要である。
【0010】
PVシステムの様々な要素を連系する試みは、これまでにもいくつか行われてきた。PVパネルに取り付ける定格200ワット程度のマイクロインバータは、何年も前から市販されており、ユニバーサルな接続性という基本的なニーズを満たしている。マイクロインバータは、パネルから得られるDC電圧を受けてそれをAC電圧に変換するものであり、AC送電線に直接接続することができる。マイクロインバータはこれまでグリッド追従モードでのみ動作してきたが、最近のマイクロインバータはPVパネルレベルで利用可能な余剰電力を利用したグリッド形成機能を主張している。PVパネルレベルでエネルギー貯蔵を連系するという課題は、商業的に実行可能であると考えられる解決策には至っていない。その結果、現在入手可能なマイクロインバータは、上記の要件を満たすことができない。しかし、これではエネルギー貯蔵と連系できないため、真の拡張性および経済性の鍵となる高度な機能を提供できない。
【0011】
中央プラントレベルのエネルギー貯蔵コンセプトから離れ、サブプラントレベルでより分散した3ポート構成のアイデアも提案されている。図2は、300kWのDC1000VのPVストリングに接続する中電圧ストリングインバータを利用し、エネルギー貯蔵モジュールを連系したPVハイブリッド発電所の構成を示している。図1の集中型コンセプトよりは単純だが、それでもかなりのレベルのカスタマイズおよびDC集電システムが必要で、プラントの寿命まで交換部品が利用可能である必要がある。さらに、これは、より小型のシステムに容易に縮小することはできない。したがって、本開示によって提供される、さらに単純なアプローチが望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本開示の例示としての実施形態は、変圧器、第1の回路、および第2の回路を具備する電流源コンバータを提供する。変圧器は、第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を具備し得る。第1の回路は、第1の巻線および第2の巻線に電気的に結合され得る。第1の回路は、バッテリポートおよび太陽光発電ポートを具備し得る。バッテリポートは、1つ以上のバッテリとインターフェース接続するように構成され得る。PVポートは、1つ以上のPVモジュールとインターフェース接続するように構成され得る。第2の回路は、第3の巻線に電気的に結合され得る。第2の回路は、交流(AC)負荷とインターフェース接続するように構成されたACポートを具備し得る。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、コンバータは、バッテリポート、PVポート、およびACポートのうちの1つ以上のポートと、バッテリポート、PVポート、およびACポートのうちの別のポートとの間に電気エネルギーを流す複数のモードで動作するように構成され得る。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数のモードは、電気エネルギーがPVポートからバッテリポートに伝達される第1のモードを具備し得る。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数のモードは、電気エネルギーがPVポートからACポートに伝達される第2のモードを具備し得る。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数のモードは、電気エネルギーがバッテリポートからACポートに伝達される第3のモードを具備し得る。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数のモードは、電気エネルギーがACポートからバッテリポートに伝達される第4のモードを具備し得る。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、バッテリポートは、約48V以下の電圧レベルで動作するように構成され得る。
【0019】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、ACポートは、単相ACポートであり得る。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、ACポートは、3相三線ACポートであり得る。
【0021】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、ACポートは、3相四線ACポートであり得る。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の回路は、複数の双方向スイッチをさらに具備し得る。
【0023】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、双方向スイッチは、炭化ケイ素スイッチ、ケイ素スイッチ、窒化ガリウムスイッチ、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0024】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、双方向スイッチは、逆阻止モードで動作するように構成され得る。
【0025】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数の双方向スイッチは、第1の変圧器巻線およびバッテリポートに直列に接続された第2の双方向スイッチを具備し得、コンバータは、第2の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーをバッテリポートから第1の巻線に流すように構成され得る。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数の双方向スイッチは、第2の変圧器巻線およびバッテリポートに直列に接続された第1の双方向スイッチを具備し得、コンバータは、第1の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーを第2の変圧器巻線からバッテリポートに流すように構成され得る。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、複数の双方向スイッチは、第1の変圧器巻線およびPVポートに直列に接続された第3の双方向スイッチを具備し得、コンバータは、第3の双方向スイッチが閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーをPVポートから第1の巻線に流すように構成され得る。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の回路は、変圧器からの漏れエネルギーを放電するように構成されたクランプ回路をさらに具備し得る。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の回路は、クランプ回路にシャント接続されたエネルギー回収回路をさらに具備し得る。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の回路は、放電された漏れエネルギーをバッテリポートに回収するように構成されたエネルギー回収回路をさらに具備し得る。
【0031】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の回路は、複数のハーフブリッジ分岐路をさらに具備し得、当該ハーフブリッジ分岐路の各々は、第1の逆阻止スイッチおよび第2の逆阻止スイッチを具備し得る。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の回路は、ACポートと並列に出力容量性/誘導性(「CL」)フィルタをさらに具備し得、当該出力容量性フィルタは、ACポートがAC負荷とインターフェース接続するように構成され得る。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、変圧器は、第1の巻線と第2の巻線と第3の巻線との間の比がN1:N1:N2であり得る。
【0034】
本開示の別の実施形態は、電流源コンバータを動作させる方法を提供する。電流源コンバータは、第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を有する変圧器と、第1の巻線および第2の巻線に電気的に結合され、バッテリポートおよび太陽光発電ポートを具備する第1の回路と、第3の巻線に電気的に結合され、ACポートを具備する第2の回路と、を具備し得る。本方法は、電気エネルギーをバッテリポートからACポートに伝達する工程と、電気エネルギーをPVポートからACポートに伝達する工程と、電気エネルギーをPVポートからバッテリポートに伝達する工程と、を具備し得る。
【0035】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、当該方法は、電気エネルギーをACポートからバッテリポートに伝達する工程をさらに具備し得る。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電気エネルギーをバッテリポートからACポートに伝達する工程は、バッテリポートと第1の巻線との間に直列に接続された第2の双方向スイッチを閉じることを具備するスイッチングサイクルを実施することを具備し得る。
【0037】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電気エネルギーをPVポートからACポートに伝達する工程は、PVポートと第1の巻線との間に直列に接続された第3の双方向スイッチを閉じることを具備するスイッチングサイクルを実施することを具備し得る。
【0038】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電気エネルギーをPVポートからバッテリポートに伝達する工程は、PVポートと第1の巻線との間に直列に接続された第3の双方向スイッチを閉じることと、バッテリポートと第2の巻線との間に直列に接続された第1の双方向スイッチを閉じることと、を具備するスイッチングサイクルを実施することを具備し得る。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、当該方法は、変圧器からの漏れエネルギーを第1の回路のクランプ回路を用いて放電することをさらに具備し得る。
【0040】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、放電された変圧器からの漏れエネルギーをバッテリポートに伝達する工程は、エネルギー回収回路を実装することを具備し得る。
【0041】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」および添付の図面に記載されている。実施形態の他の態様および特徴は、特定の例示としての実施形態に関する以下の説明を図面と併せて検討することにより、当業者には明らかになるであろう。本開示の特徴は、特定の実施形態および図面に関連して記載されることがあるが、本開示のすべての実施形態は、本明細書に記載される特徴の1つ以上を含み得る。さらに、1つ以上の実施形態が特定の有利な特徴を有するものとして記載されることがあるが、そのような特徴の1つ以上を、本明細書に記載される様々な実施形態とともに用いることもできる。同様に、例示としての実施形態は、デバイス、システム、または方法の実施形態として以下で記載されることがあるが、そのような例示としての実施形態は、本開示の様々なデバイス、システム、および方法において実施され得ることを理解されたい。
【0042】
本開示の特定の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本開示を説明する目的で、特定の実施形態が図面に示されている。しかしながら、本開示は、図面に示された実施形態の正確な構成および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るハイブリッド太陽光発電所を示す模式図である。
【0044】
図2図2は、本開示の一実施形態に係る中電圧複数ポートストリングインバータを実装したハイブリッド太陽光発電所を示す模式図である。
【0045】
図3A図3Aは、本開示の一実施形態に係る例示的な太陽光発電デバイスACアーキテクチャの説明図である。
図3B図3Bは、同実施形態に係るデイジーチェーンを用いる例示的な太陽光発電デバイス3ポートコンバータを示す説明図である。
【0046】
図4図4は、本開示の例示としての実施形態に係る太陽光発電デバイス3ポートコンバータを示す説明図である。
【0047】
図5A図5Aは、デュアルアクティブブリッジHFリンクを備えた従来の複数コンバータの実装を示す模式図である。
図5B図5Bは、デュアルアクティブブリッジHFリンクを備えた従来の複数コンバータの実装を示す模式図である。
【0048】
図6図6は、本開示の例示としての実施形態に係る3ポートコンバータの機能を示す単線図である。
【0049】
図7図7は、PVポート、バッテリポート、およびACポート構成を備えた従来の中電圧複数ポートソフトスイッチング半導体変圧器を示す模式図である。
【0050】
図8A図8Aは、本開示の例示としての実施形態に係る単相出力を備えた太陽光発電デバイス3ポートコンバータを示す模式図である。
図8B図8Bは、本開示の例示としての実施形態に係る3相出力を備えた太陽光発電デバイス3ポートコンバータを示す模式図である。
【0051】
図9図9は、本開示の例示としての実施形態に係る太陽光発電デバイス3ポートコンバータ制御スキームを示す図である。
【0052】
図10A図10Aは、本開示の例示的な太陽光発電デバイス3ポートコンバータの特性波形を示すプロット図である。
図10B図10Bは、本開示の例示的な太陽光発電デバイス3ポートコンバータのシミュレーション波形を示すプロット図である。
【0053】
図11図11Aおよび図11Bは、本開示の例示的な太陽光発電デバイス3ポートコンバータの特性単相AC波形およびシミュレーション単相AC波形をそれぞれ示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本開示の原理および特徴の理解を容易にするために、様々な例示としての実施形態を以下に説明する。本明細書に開示される実施形態の様々な要素を構成するものとして以下に説明される構成要素、工程、および物質は、例示としてのものであり、制限的なものではないことが意図される。本明細書に記載される構成要素、工程、および物質と同一または同様の機能を果たすことになる多くの適切な構成要素、工程、および物質は、本開示の範囲内に包含されることが意図される。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素、工程、および物質としては、本明細書に開示される実施形態の開発後に開発された同様の構成要素または工程が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
高度なグリッドサポート、グリッド形成、およびマイクログリッド機能を備えたディスパッチ可能な分散型太陽光発電システム(本明細書では「太陽光グリッド」と呼ぶ)を開示する。当該太陽光グリッドは、複数(数台から数千台)の「太陽光発電(Solar Gen)」デバイスを用いて構築することができ、数キロワットから数百メガワットの定格システムを実現するものである。「太陽光発電デバイス」は、PVパネル、連系エネルギー貯蔵、3ポートコンバータ、通信、および制御を連系することができるPVパネルレベルの拡張可能な構成要素であり、高度に拡張可能で迅速に展開可能かつ容易に保守可能な、技術にとらわれないプラグアンドプレイシステム設計を可能にする高度な機能を実現する。太陽光グリッドシステムの目標は、大規模システムの実装に通常必要とされる、プラントレベルでの電気システム設計および構築のカスタマイズを排除/削減することである。モジュラーシステムは、そのアーキテクチャおよびインターフェース仕様とともに、技術の移行に直面しても高度な相互運用性を提供し、再生可能エネルギーが豊富な未来のグリッドのための多種多様な新たなニーズを満たす柔軟な構成要素を提供する。
【0056】
所望の太陽光グリッド機能を実現するために、「太陽光発電デバイス」を基本構成要素として用いることができる。各太陽光発電デバイスは、PVパネル、および(好ましくは日陰となるパネルの裏側において)PVパネルに取り付けられるかPVパネルと一体化される単一の3ポートコンバータボックスを含むことができ、3ポートコンバータボックスは、所望の機能性および柔軟性を実現するために、通信要素、制御要素、保護要素だけでなく、エネルギー貯蔵バッテリを含むことができる。これらのパネルの目標電力は250~500ワット程度と予想されるが、本開示はそれほど限定されるものではなく、当業者であれば理解できるように、本明細書に開示するシステムは多くの異なる電力レベルに変更可能である。以下でより詳細に説明する3ポートコンバータは、PVパネルおよびバッテリに接続される少なくとも2つのDCポートを有することができ、利用可能なAC電圧(240ボルト単相または480ボルト3相等)でACグリッドに第3のポートを直接接続することができるACインバータ機能を備えている。さらに、制御器は、PVパネルとバッテリとグリッドとの間の双方向の電力フローを自律的かつリアルタイムに制御する機能を有することができる。制御器は、グリッド形成モード、グリッド接続時の電力ディスパッチモード、フォルトライドスルー、グリッドサポート、グリッドとの自己同期、必要に応じて様々なレベルの慣性サポートの提供、グリッド非依存のマイクログリッドとして動作する際の自律的な電力周波数垂下モード等の高度な制御を行うこともできる。ACパネルの例示的な定格は、350ワット、277ボルトのAC単相または480ボルトの3相、および1.3kW時のエネルギー貯蔵であるが、本開示の実施形態の範囲内で他の多くの定格が想定される。各グリッド接続3ポートは、DC側と同様にAC側でも完全に保護することができる。
【0057】
従来のPV発電所では、電力は、高圧変電所から中電圧送電線を用いて変圧器(セントラルインバータは1~4MW、ストリングインバータは150kW)に配電される。一般的に効率のために最適化されるDC/ACインバータは、PVパネルからのDC1000VからDC1500VをAC480ボルトに変換し、中電圧変圧器で昇圧する。PVストリングからのDCは、DCコレクターバス、コンバイナ、センシング、および保護で特別にレイアウトされる。上述したように、これはすべて非常にカスタマイズされた高価なものである。例を図1および図2に示す。
【0058】
太陽光グリッドは、より伝統的な放射状のAC配電グリッドアーキテクチャに従うことができ、カスタム要素を伴わない場合がある。中電圧の電力は、高圧変電所から電柱および架線(または埋設ケーブル)を用いて配電することができる。住宅用または商業用フィーダの場合と同様に、定格50~150kWの電柱(またはコンクリートパッド)上の変圧器は、ヒューズ式断路器でMV送電線に接続し、電圧を標準AC電圧(AC240、480、または575ボルト)に降圧することができる。これは、多くの地点に大量の電力を配電するための拡張性および費用対効果が非常に高い方法である。太陽光グリッド配電のための配置の一例を図3Aに示す。
【0059】
いくつかの実施形態において、太陽光グリッドシステムは、(図3Bに示すような)取り付けブラケットに掛けられた複数の太陽光発電デバイス(図4参照)ユニットを用いて、当技術分野で知られるコスト効率の良い全天候型接続プラグソケットや他の配置を備えたデイジーチェーン接続プロセスにより各ユニットをAC送電線に並列接続して構築することができる。別のアプローチとして、各太陽光発電デバイスに給電するためのタップ付きACケーブルを用いることもできる。例としては、PVストリング1本あたり25kWの最大連続出力が得られる480ボルト3相ACで30アンペアが挙げられる。このようなストリングが6本あれば150kWを発電することができ、PV発電所の「拡張可能なセル」を形成することができる。13kVのフィーダに250アンペアの制限があると仮定すると、1線あたりの最大電力は5MWを超え、この数値は、導体の数を2倍にしたり許容電流を増やしたりすることによって倍増させることができる。この「標準セル」は必要に応じて複製することができ、システムの拡張が容易であることを示している。
【0060】
上述したように、太陽光発電デバイスのいくつかの実施形態におけるパネルレベルでのエネルギー貯蔵要素の連系は、多くの従来の集中型システムとは大きく異なる点である。集中型バッテリ貯蔵システムは、複雑なモニタリング、熱管理、およびアクティブ冷却を必要とすることがあり、これらすべてがコストを増加させる。太陽光発電デバイスが提供できる分散型フォームファクタは、高出力高電圧のDCバッテリシステムを構築する必要性をなくすことができ、保護、熱暴走、火災危険の懸念もなくすことができる。また、高電圧バッテリストリングを用いたBMSプロセスでは、急速充放電条件下で通常20%ものエネルギーが失われるため、エネルギー戻り効率も向上させることができる。現場での安全性を実現するために、バッテリおよびPVパネルは両方ともDC48ボルトのような本質的に安全な電圧で動作し、低電圧側に接続することができる。集中型システムのようにスペースが厳しく制約されないため、太陽光発電デバイスで用いることができる48ボルトの1.5kW時セルのエネルギー散逸は最小で済み、受動的に管理することができる。ローカルインテリジェンスおよびバッテリモニタリングシステム(BMS)により、連系されたバッテリを管理し、設計仕様の範囲内で稼働させることができる。また、バッテリ電圧が低いため、バッテリにかかる熱負荷を均一にすることも容易で、BMSの必要性を簡素化し、高電圧バッテリパックの急速充放電時に従来のBMSに起因する損失を劇的に減らすことが可能であり、プラント全体のエネルギー処理能力が向上する。また、バッテリおよびPVパネルの電圧が低いため、必要に応じて習熟度の低い技術者が現場でバッテリを交換できるようにモジュールを設計することもできる。PVパネルも低電圧化することで、従来のようにDC1500Vに耐えられるように設計する必要がなくなり、主な劣化メカニズムを排除することができる。このアプローチは、バッテリの信頼性および寿命も向上させることができる。バッテリおよびPVパネルをともに3ポートコンバータと組み合わせることで、グリッドサービス、グリッドサポート、グリッド形成のためのすべての機能を提供することができる。
【0061】
上記の機能を実現するために、2つの異なるアプローチが考えられる。1つは、PVからグリッドへの電力フロー制御機能にマイクロインバータを用い、バッテリ、高周波絶縁を備えた双方向DC/DCコンバータ、グリッド接続用のDC/ACインバータを含む第2の「ボックス」を追加することである。例を図5Aおよび図5Bに示す。同図は、デュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータがHF絶縁に用いられ、DC/ACインバータがグリッド接続に用いられている様子を示す。このアプローチは、PVインバータに加えて、さらなるHF絶縁のための別のインバータを用いることになるため、システムのコストが大幅に増加する可能性がある。
【0062】
したがって、PVパネルとバッテリとグリッドと間の電力フローを同時に管理でき、上述の他の動作要件をすべて満たしながらそれを実現できる連系型3ポートコンバータは、魅力的なソリューションとなる。従来の実装方法はあまりに高価で実行不可能なため、従来のシステムではこのようなソリューションは提供されていない。
【0063】
図6は、DC側で48ボルトのPVパネルおよび48ボルトのバッテリに接続し、AC側で1相または3相ACに接続する例示的な3ポートコンバータを示す単線結線図である。上述したように、これは複数のコンバータを用いて行うことができ、全てのコンバータは、バッテリおよびPVパネルをインターフェース接続するDC/DCコンバータ、低電圧を高DC電圧に変換する、ガルバニック絶縁された別のDC/DCコンバータ、そして最後にDCをACに変換しグリッドに接続するインバータ(典型的には電圧源インバータ)を備えている。保護、同期化、およびフォルトライドスルーに加えて、フィルタリングおよびEMI抑制が用いられる。このようなVSIの安定動作は、よく知られておらず変化しやすいマルチコンバータ環境において、完全には解決されていない課題であり続けている。
【0064】
S4T(AC-Cube実装を含む)のような最近のマルチポートコンバータ(図7参照)は、連系された3ポート機能および電流源特性により、並列コンバータの制御性向上を約束する有望な代替案を提供している。その一方で、スイッチ数が多くなり、低電圧側での実装が困難な2つの共振スイッチおよびタンクが必要になることもある。
【0065】
本開示の様々な実施形態は、所望の3ポート機能を実現しながら、これらの欠点に対処する電流源コンバータを提供する。例示的なコンバータを図8Aおよび図8Bに示す。図8Aは、単相AC出力回路を備えた電流源コンバータを示す図であり、図8Bは、3相AC出力回路を備えた電流源コンバータを示す図である。
【0066】
電流源コンバータは、変圧器105、第1の回路110、および第2の回路115を具備し得る。変圧器105は、当該技術分野で公知の多くの変圧器であり得る。変圧器105は、複数の巻線を具備し得る。例えば、図8Aおよび図8Bに示すように、変圧器は、第1の巻線106、第2の巻線107、および第3の巻線108を具備し得る。巻線106と巻線107と巻線108とは、様々な巻線比を有し得る。いくつかの実施形態において、変圧器105は、第1の巻線と第2の巻線と第3の巻線との間の比が1:1:Nであり得る。
【0067】
第1の回路110(DC回路または入力回路と呼ばれることもある)は、変圧器105に電気的に結合され得る。図8Aおよび図8Bに示すように、第1の巻線106および第2の巻線107は、第1の回路110に電気的に結合され得る。第1の回路110および第2の回路115は、1つ以上のポート(すなわち、バッテリ、PV、発電機、負荷、ネットワーク等の電気インターフェース電気機器/システム)を具備し得る。図8Aおよび図8Bに示すように、第1の回路110は、バッテリポート120およびPVポート125を具備し得る。バッテリポート120は、1つ以上のバッテリとインターフェース接続するように構成され得る。PVポート125は、1つ以上のPVモジュールとインターフェース接続するように構成され得る。
【0068】
PVポート125およびバッテリポート120は、1つ以上のスイッチ111、112、113を介して変圧器105に電気的に結合され得る。スイッチは、当該技術分野で公知の様々なスイッチであり得る。いくつかの実施形態において、スイッチは、双方向スイッチであり得る。いくつかの実施形態において、双方向スイッチは、逆阻止モードで動作するように構成され得る。双方向スイッチは、シリコン、または炭化シリコンおよび窒化ガリウム等を含むがこれらに限定されないワイドバンドギャップ半導体で実現することができる。ワイドバンドギャップデバイスは、電圧スパイク、過大消費、寿命短縮につながる逆回復電流の可能性を最小限に抑えることができる。低電圧(LV)側では、例示的なシリコンMOSFETデバイスの定格は100ボルト、RDは1~2ミリオーム程度で、損失は0.1ワットレベルである。
【0069】
第2の回路115(AC回路または出力回路と呼ばれることもある)は、変圧器105の第3の巻線108に電気的に結合され得る。第2の回路115は、交流(AC)負荷とインターフェース接続するように構成されたACポート130を具備し得る。本明細書で用いられるところの「AC負荷」は、電気ユーティリティグリッド、発電機、モータ等の任意の交流電流源、負荷、またはネットワークを指す。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、ACポート130は、単相ACポート、3相三線ACポート、3相四線ACポート、または他のAC構成であり得る。図8Aおよび図8Bに示すように、第2の回路115は、複数のハーフブリッジ分岐路をさらに具備し得、当該ハーフブリッジ分岐路の各々は、第1の逆阻止スイッチおよび第2の逆阻止スイッチを具備し得る。図8Aおよび図8Bに示すように、第2の回路115は、ACポート130と並列に出力CLフィルタ140をさらに具備し得る。出力CLフィルタ140は、ACポート130がAC負荷とインターフェース接続するように構成され得る。
【0070】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、コンバータは、バッテリポート、PVポート、およびACポートのうちの1つ以上のポートと、バッテリポート、PVポート、およびACポートのうちの別のポートとの間に電気エネルギーを流す複数のモードで動作するように構成され得る。例えば、複数のモードは、電気エネルギーがPVポート125からバッテリポート120に伝達される第1のモード、電気エネルギーがPVポート125からACポート130に伝達される第2のモード、電気エネルギーがバッテリポート120からACポート130に伝達される第3のモード、および電気エネルギーがACポート130からバッテリポート120に伝達される第4のモードを具備し得る。
【0071】
制御器は、コンバータ内の様々なスイッチのオン/オフ時間や順序付けを制御するスイッチングサイクルによって、上述の様々なモードを実装し得る。コンバータは、あるサイクル中に電力を供給する電源から変圧器105の磁化インダクタを「充電」し、次にそのサイクル中に電力を受け取る電源にインダクタのエネルギーを「放電」することによって動作し得る。スイッチング順序は、スイッチング損失およびdv/dtを低減し、変圧器の漏れインダクタンスに閉じ込められたエネルギーを管理するために制御し得る。漏れエネルギー管理の原理は、当業者にはよく知られている。
【0072】
例えば、図8Aおよび図8Bに示すように、第1の回路110は、バッテリポート120と第2の巻線107との間に直列に接続された第1の双方向スイッチ111、バッテリポート120と第1の巻線106との間に直列に接続された第2の双方向スイッチ112、およびPVポート125と第1の巻線106との間に直列に接続された第3の双方向スイッチ113を具備し得る。コンバータは、第2の双方向スイッチ112が閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーをバッテリポート120から第1の巻線106に流すように構成され得る。コンバータは、第1の双方向スイッチ111が閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーを第2の変圧器巻線107からバッテリポート120に流すように構成され得る。コンバータは、第3の双方向スイッチ113が閉位置にあるとき、スイッチングサイクル中に電気エネルギーをPVポート120から第1の巻線106に流すように構成され得る。
【0073】
図8Aおよび図8Bに示すように、第1の回路は、変圧器105からの漏れエネルギーを放電するように構成されたクランプ回路145をさらに具備し得る。これは、例えば、放電プロセス中に第1の回路内の双方向スイッチ111、112、113を開く(すなわち、オフにする)ことによって実行することができる。
【0074】
図8Aおよび図8Bに示すように、第1の回路は、放電された変圧器105からの漏れエネルギーをバッテリポート125に最小限の損失で回収するように構成されたエネルギー回収回路150をさらに具備し得る。このような回路の実装は、フライバックコンバータで実現され得る。
【0075】
図9は、図8Aおよび図8Bに示す太陽光発電デバイス3ポートコンバータの例示的な高レベルの基本制御図を示す。制御器は、各ポートの充電時間を割り当てるために、ローカル測定に加えて、AC電圧およびアクティブ電力を基準として利用することができる。その後、各スイッチングデバイスのゲート信号を専用の状態機械で判定することができる。図10Aは、例示的な太陽光発電デバイス3ポートコンバータの2つのスイッチングサイクルにおける、磁化電流(iii)、バッテリ電流(ibat)、PV電流(i)、デカップリングコンデンサ電流(idpl)、および高周波変圧器巻線の電圧(vL1、vL2、およびvL3)の特性波形を示し、図10Bは、これらのシミュレーション波形を示す。最後に、図11Aおよび図11Bは、単相構成を採用した場合のコンバータのACポートからの電圧電流特性およびシミュレーション波形を示す。
【0076】
さらに、いくつかの実施形態において、太陽光発電デバイスパネルは、安全なRFまたは他の通信リンク(GAMMAを用いる等)を介して接続することができ、診断および解析情報をクラウドに提供することができ、システムレベルの最適化を可能にし、環境または消耗や破損によるバッテリおよびパネルの劣化に関するメンテナンス情報を提供することができる。また、グリッド運用者からの指示を各3ポートコンバータに中継し、グリッドサービスとしてディスパッチ、周波数調整、VAR、慣性等を可能にすることもできる。連系されたPV発電所レベルでは、これにより「発電所」がエネルギー市場全体に参加できるようになり、付加価値の流れを解き放つことができる。また、PV発電所は尖頭負荷発電所としても機能し、運転予備力を提供し、この機能を提供するためにガスプラントを連続稼働する必要性を打ち消すことができる。サービスコールは、クラウド上のメンテナンスログに基づいて通知され、開始することができる。バッテリの交換は、パネル自体からトリガーすることができ、システムが稼動している間のサービスコールの際に、簡単なプロセスで行うことができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、各3ポートコンバータの保護は各コンバータ内で連系することができる。例えば、コンバータ側の故障が検出されたときに作動できる単純なリレーおよび/またはインテリジェントヒューズであってもよい。3ポートの状態はクラウドに中継することができる。各PVストリングからの電線は、例えば配電網の電柱(または電柱の根元に設置されたパッド)に取り付けられてヒューズ断路器を介して中電圧送電線に接続(現在の標準的な慣行)される中電圧変圧器に直接接続することができる。中電圧変圧器もGAMMAタイプのセンサでモニタリングすることができ、下流の電線の健全性を評価でき、クラウドへのRF中継点としても機能する。これにより、PVパネルおよびインバータのコストを継続的に下げる必要があるため、以前は法外に高価であると考えられていた個々のパネルまでの可視性および制御が可能になる。
【0078】
本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、その適用において、本明細書に記載され図面に示された構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。むしろ、本明細書および図面は、想定される実施形態の例を提供するものである。本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、さらに他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施および実施されることが可能である。また、本明細書で採用される表現および用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0079】
したがって、当業者であれば、本出願および特許請求の範囲の基礎となる着想は、本出願に提示された実施形態および特許請求の範囲のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、およびシステムの設計の基礎として容易に利用できることが理解できるであろう。したがって、特許請求の範囲は、このような同等の構成を含むものとみなされることが重要である。
【0080】
さらに、要約書の目的は、米国特許商標庁および特に特許や法律の用語や表現に精通していない当業者を含む一般公衆が、一読するだけで本出願の技術開示の内容および要旨を迅速に把握できるようにすることにある。要約書は、本出願の特許請求の範囲を定義するものではなく、また、特許請求の範囲をいかようにも限定するものでない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
【国際調査報告】