(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】心房細動の回数及び持続期間を減少させるための薬物療法による脳卒中のリスクを低減するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20250204BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K31/343
A61P9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541099
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 US2023060238
(87)【国際公開番号】W WO2023133510
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524256295
【氏名又は名称】ザイラ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ドラツガラ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェラード ミルナー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086BA06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
(57)【要約】
AFib患者の心臓リズムをモニターすることで、長期AFibエピソードの存在及び/又は数、並びに所望によりAFib負荷の程度を求めることによって、AFib患者を治療する方法が開示される。閾値要件を満たす患者がブディオダロンの投与によるAFibの治療に適格とされる。患者のモニタリングを継続することで、ブディオダロン療法に患者が反応性であること、及びその反応性が維持されていることが確認され、それには、ブディオダロン療法を達成するために患者に用量調整を行うことも含まれる。その後、モニタリングを継続することで、患者が反応性のままであることが確認される。これらの方法は、AFibの治療を可能にし、それに応じて、治療された患者における脳卒中及び/又はうっ血性心不全のリスクを低減又は遅延する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発作性又は持続性心房細動(AFib)を患う患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価する方法であって、
a)発作性又は持続性AFibを患う患者を選抜すること;
b)前記患者に以下を備えるウェアラブルを装着すること:
i)前記ウェアラブルが前記患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に前記患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方;
ii)前記モニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
iii)前記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素;
c)長期AFibエピソードがあること、長期AFibエピソードがないこと、長期AFibエピソードの回数、及び所望によりAFib負荷の程度、のうちの少なくとも1つを示す前記データを、前記第2コンピューティングデバイスへ送信させること;並びに、
d)前記データが長期AFibエピソードの閾値回数及び/又は閾値AFib負荷の少なくとも1つを満たすという判定に基づいて、前記患者をブディオダロン療法に適格とすること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1コンピューティングデバイスが、前記保存された心臓リズムデータを評価して、長期AFibエピソードが存在すること、及び長期AFibエピソードの回数、を決定し、それによって前記心臓リズムデータに基づいたデータを決定するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価が連続的である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価が半連続的である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1コンピューティングデバイスが、前記データに基づいて、前記臨床医又は前記患者の少なくとも一方に、前記患者を脳卒中のリスクに曝す長期AFibエピソードが検出されたことを警告するようにプログラムされている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者をブディオダロン療法に適格とすることが、前記データに基づいて、前記患者が以下の評価基準のうちの少なくとも1つを満たすことを確認することを含む、請求項1に記載の方法:
a)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回、又は30日間の間に少なくとも1時間のエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;
b)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回、又は30日間の間に少なくとも1時間のエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷;
c)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;
d)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷;
e)30日間の間に少なくとも1時間のAFibエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;又は、
f)30日間の間に少なくとも1時間のAFibエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷。
【請求項7】
前記ウェアラブルが、装着された場合に身体に付着するパッチ、腕時計、リストバンド、ストラップ、リング、又はデバイスのうちの1又は複数であり;
前記ウェアラブルが、心臓リズムを測定し、心臓リズムデータを直接的又は間接的に前記第2コンピューティングデバイスに送信するように構成されている;
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、AFibを治療する1又は複数の他の方法に対して不応性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
発作性心房細動又は持続性心房細動(AFib)と診断された患者を治療する方法であって、
ブディオダロンを前記患者に投与すること;
を含み
前記患者が、
前記患者にウェアラブルが装着され、前記ウェアラブルが、
前記ウェアラブルが前記患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に前記患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方;
前記患者のモニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
前記第1コンピューティングデバイス内の前記患者の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素;
を備えること;
前記患者のデータが前記第2コンピューティングデバイスに送信され、前記データが長期AFibエピソードがあること、いかなる長期AFibエピソードもないこと、長期AFibエピソードの回数、及び所望によりAFib負荷の程度、のうちの少なくとも1つを示すこと;並びに、
前記データが長期AFibエピソードの閾値回数及び/又は閾値AFib負荷の少なくとも1つを満たすというデータに基づいて、前記患者がブディオダロン治療の対象として識別されること;
によってブディオダロン治療の対象として識別され;
前記ブディオダロン治療の対象として識別された患者を、ブディオダロン反応性AFibを有すると判定する;
方法。
【請求項10】
前記ブディオダロンの対象として識別された患者が、AFibを治療する1又は複数の他の方法に対して不応性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ブディオダロン療法の適格患者が、ブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又は、ブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価する方法であって、
a)前記適格患者を選抜することであって、前記適格患者が、
ある用量のブディオダロン又はブディオダロンを含む医薬組成物による治療を含むブディオダロン療法を受けており;
以下を備えるウェアラブルを装着されること:
i)前記ウェアラブルが装着された場合に、連続的又は半連続的に前記適格患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方;
ii)前記モニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
iii)前記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素;
c)前記第2コンピューティングデバイスへと心臓リズムデータを収集及び送信させることであって、前記第2コンピューティングデバイスが、前記心臓リズムデータを、長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について評価するように構成されていること;
d)所望により、前記患者に適切な用量を評価するために、ブディオダロンの用量を調整すること;並びに
e)前記収集された心臓リズムデータから、前記患者がブディオダロン療法に対して反応性であるか、部分的反応性であるか、又は反応性ではないかを評価すること;
を含み、
前記療法を、反応性患者の場合は維持し、部分的反応性患者の場合は調整し、非反応性患者の場合は終了させる、
方法。
【請求項12】
前記ブディオダロンの用量が少なくとも約200mgを1日2回である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ブディオダロンの用量が約200mgを1日2回~約800mgを1日2回である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブディオダロンの用量が約200mgを1日2回、約400mgを1日2回、600mgを1日2回、及び約800mgを1日2回から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ブディオダロンが医薬組成物として投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ウェアラブルによるモニタリングが、反応性患者の場合に維持されて、前記患者が反応性のままであることが確認される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
最初はブディオダロンに反応性であるが、後に非反応性になる前記患者が、ブディオダロンの用量調整を受け、ただし、前記用量調整が前記患者をブディオダロン反応性の状態に戻せなかった場合、前記患者はブディオダロンによる治療から除外される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応性患者が、前記患者をブディオダロンによる治療に適格と識別するレジストリに登録され、前記レジストリ内にリストアップされることがブディオダロン投与のための要件である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記ウェアラブルによって生成されたデータが、長期AFibの有無、及び所望により前記患者に対するAFib負荷の程度を評価することができる臨床医に直接的又は間接的に送信される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記データが最初に遠隔実験室に送信され、そこで適格な医療従事者が前記データを解析する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記適格医療従事者が、前記患者がブディオダロンによる治療に適格であることを確認して担当情報(attending information)に情報を提供し、情報が、
前記患者が適格であることを前記従事者が確認したこと;及び、
前記従事者によって作成されたデータ、又はなされた解析のうちの1又は複数;
を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記適格医療従事者が、所与の用量のブディオダロンによる治療に反応する患者が反応性のままであるかどうかを判定し;
前記適格医療従事者が前記患者が現在は非反応性であると判定したことに基づいて、前記従事者が、
前記患者の反応性を回復させるために前記患者に用量調整を受けさせることの推奨;又は、
前記非反応性となった患者が最大処方量で治療されている場合、前記患者のブディオダロンによる治療を終了させることの推奨;
のうちの1又は複数と共に、前記判定を担当臨床医に提供する、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記収集された心臓リズムデータの評価が、ブディオダロン投与開始又はブディオダロン用量調整開始の少なくとも3日後に収集を始めた心臓リズムデータを評価することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記収集された心臓リズムデータの評価が、ブディオダロン投与開始又はブディオダロン用量調整開始の少なくとも14日後に収集を始めた心臓リズムデータを評価することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
患者が発作性AFibから持続性AFibへ、又は持続性AFibから永続性AFibへ進行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを前記患者にある用量で投与すること;
前記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて前記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その用量調整の結果、発作性AFibから持続性AFibへの、又は持続性AFibから永続性AFibへの進行のリスクを低減させること;並びに、
前記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【請求項26】
発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における心不全のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを前記患者にある用量で投与すること;
前記用量の投与の有効性をモニターし、所望により前記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、前記患者における心不全のリスクを低減させること;並びに、
前記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【請求項27】
発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における脳卒中のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを前記患者にある用量で投与すること;
前記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて前記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、前記患者における脳卒中のリスクを低減させること;並びに、
前記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【請求項28】
AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である、発作性又は持続性AFibを有する患者を治療する方法であって、
a)AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である患者を選抜すること;
b)前記患者における長期AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度を特定すること;
c)前記長期AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度に基づいて、前記患者をある用量におけるブディオダロン治療に適格とすること;
d)前記患者に以下を備えるウェアラブルを装着すること:
i)前記ウェアラブルが前記患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に前記患者の心臓リズムをモニターする、電極又は光センサの少なくとも一方;
ii)前記患者のモニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
iii)前記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信できるように構成された送信構成要素;
e)前記心臓リズムデータに基づいたデータの収集及び送信を、前記第2コンピューティングデバイスに対して行い、そこで、前記データを、長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について評価すること;
f)所望により、前記患者に適切な用量を評価するために、前記患者に対するブディオダロンの用量を調整すること;並びに
g)前記心臓リズムデータに基づく収集されたデータが、前記患者がブディオダロン療法に対して反応性であること、又は非反応性であることを示しているかどうかを評価すること;
を含み、
前記療法を、反応性患者の場合は維持し、非反応性患者の場合は終了させる、
方法。
【請求項29】
発作性AFibを有する患者が持続性AFibに移行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを前記患者にある用量で投与すること;
前記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて前記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、前記患者における前記移行のリスクを低減させること;並びに、
前記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【請求項30】
持続性AFibを有する患者が永続性AFibに移行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを前記患者にある用量で投与すること;
前記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて前記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、前記患者における前記移行のリスクを低減させること;並びに、
前記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月7日に出願された米国特許出願第63/297,426号;及び2022年4月26日に出願された米国特許出願第63/334,852号;及び2022年11月1日に出願された米国特許出願第17/978,835号に基づく優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によってその全体が本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0002】
患者が心房細動(AFib)エピソードの回数及び/又は持続期間を減少させる薬物療法に適格であるかどうかを判定した後、その薬物療法により患者を治療することによる、発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における脳卒中及び/又はうっ血性心不全のリスクを低減するための方法及びデバイスが開示される。
【0003】
従来技術
AFibは、心拍数の増加を伴うことが多い、心臓リズムの異常を特徴とする重篤な医学的状態である。AFibを未治療のままにすると、脳卒中、うっ血性心不全、及び死亡のリスクが著しく増加することとなる。
【0004】
AFibは少なくとも3つのグループに分類されている。自然に又は治療により正常に戻るまでに7日間より長くは持続しない、間欠的なAFibエピソードを有する患者は、発作性AFibを有すると定義される。正常に戻るまでに7日間よりも長く持続する間欠的なAFibエピソードを有する患者は、持続性AFibを有すると定義される。そして、絶えずAFibを経験している患者は、永続性AFibを有すると定義される。
【0005】
AFibの根底にある心臓リズムの不規則さは、心臓上室における血液の蓄積をもたらす。血液が上室内に長く残るほど、当該部分の血液が凝血し血餅を形成する可能性が高くなる。これらの血餅が心臓を離れると、脳に侵入して脳卒中を引き起こし得る。場合によっては、これらの血餅は患者に一過性脳虚血発作(TIA)を引き起こす。このようなTIAは、患者に、性質的には一過性の、身体の片側の脱力感、不明瞭言語、又は視覚障害を感じさせることがある。他の場合では、これらの血餅は衰弱性の脳卒中を引き起こし、それが発声や運動性などの機能性の喪失から完全昏睡状態又は死に至るまでのいずれかを結果としてもたらし得る。
【0006】
また、AFibは、脳卒中のリスク増加だけでなく、うっ血性心不全のリスク増加とも関連付けられており、うっ血性心不全は深刻な衰弱性状態であり、長期的な観点では末期的な状態である。AFibを有する患者における脳卒中及び/又はうっ血性心不全のリスクは、正常な心臓リズムを有する者よりも有意に高くなり、このリスクは各AFibエピソードの持続期間及び回数(まとめてAFib負荷)と共に増加する。例えば、最近のENGAGE臨床試験では患者の脳卒中のリスクが評価されているが、それを下記の表1に記載する。
【表1】
【0007】
最近の研究によると、脳卒中及び/又はうっ血性心不全のリスク増加は、患者のAFibが症候性であるか無症候性であるかとは無関係であることが示されている。例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される、Flaker, et al., “Asymptomatic Atrial Fibrillation: Demographic Features and Prognostic Information from the Atrial Fibrillation Follow-Up Investigation of Rhythmic Management (AFFIRM) Study,” AMERICAN HEART JOURNAL, April 2005, pages 657-663を参照されたい。言い換えると、患者が周期的なAFibエピソードを認識していることは、脳卒中又はうっ血性心不全のリスクが減少したり、取り除かれたりしたことを意味するものではない。
【0008】
また、長期AFibエピソード(すなわち、1時間以上持続するAFibエピソード)は脳卒中のリスクを増加させ、脳卒中のリスクはこれらのエピソードの持続期間が増加するのに伴い増加すると認識されている。エピソードの持続期間が長くなるほど、脳卒中のリスクは高くなる。そこで、1時間を超えるAFibエピソードを「長期」エピソードと称する。またさらに、このような長期エピソードは2つのサブセットに分けられる:持続期間が約1時間~約24時間又はそれよりも短い「中長期」エピソード、及び持続期間が約24時間よりも長いが、永続性AFibではない「超長(longer)期」エピソード。しかし、発作性AFib又は持続性AFibを患う全ての患者が長期AFibを示すわけではない。実際のところ、AFib負荷は、中長期AFibや超長期AFibに関連してはいるが、別個のものである。例えば、AFib負荷が低い患者が、頻度は低いが、長期AFibエピソードを経験する場合がある。同様に、AFib負荷が高い患者が、複数回の短期AFibエピソードを経験する一方で、長期エピソードはほとんど、あるいは全く経験しない場合もある。AFib負荷と長期AFibとを区別できることは、脳卒中、うっ血性心不全などのリスクに取り組むために必須となる。これは、AFibエピソードの回数及び持続期間を減少させるように設計された薬物療法の有効性を評価しなければならない担当臨床医にとっては特に重要なことである。
【0009】
またさらに、AFibレートコントロールとリズムコントロールを比較した初期の研究では、転帰に差はほとんど確認されなかった(例えば、Hohnloser SH, Kuck KH, Lilienthal J, PIAF investigators. Rhythm or rate control in atrial fibrillation-Pharmacological Intervention in Atrial Fibrillation (PIAF): a randomised trial. The Lancet. 2000 Nov 25;356(9244):1789-94, Wyse DG, Waldo AL, DiMarco JP et. al. A comparison of rate control and rhythm control in patients with atrial fibrillation. New England Journal of Medicine. 2002 Dec 5;347(23):1825-33)。しかし、AFibの早期診断の増加と、最新の抗不整脈薬(その多くはQT延長などの重篤な副作用がある)、ライフスタイルの変化の推奨、及びカテーテルアブレーションを含む治療戦略の進展とによって、早期のリズムコントロールが可能であり、患者の転帰における長期的な改善と関連していることが示されている(Kirchhof P, Camm AJ, Goette A, Brandes A, Eckardt L, Elvan A, Fetsch T, van Gelder IC, Haase D, Haegeli LM, Hamann F. Early rhythm-control therapy in patients with atrial fibrillation. New England Journal of Medicine. 2020 Oct 1;383(14):1305-16, Packer DL, Piccini JP, Monahan KH, Al-Khalidi HR, Silverstein AP, Noseworthy PA, Poole JE, Bahnson TD, Lee KL, Mark DB, CABANA Investigators. Ablation versus drug therapy for atrial fibrillation in heart failure: results from the CABANA trial. Circulation. 2021 Apr 6;143(14):1377-90)。しかしながら、このようなアプローチは、そのような現代の治療に対し不応性の患者を含むAFib後期の患者の治療や、特にAFibが無症候性である場合に、反応性患者と比較して非反応性患者をどのように識別するかという課題の解決には取り組んでいなかった。
【0010】
いくつかの薬剤がAFibを治療するように設計されており、それらの例としてβ遮断薬及びカルシウムチャネル遮断薬が挙げられる。これらの薬剤の多くが、心臓リズムをコントロールするのではなく、心拍数をコントロールするように設計されている。しかし、脳卒中のリスクは、AFibエピソードの長期化に関係しているのであって、基礎となる心拍数に関係しているのではない。近年、ブディオダロン(全体が参照によって援用される、米国特許第9,549,912号で開示)が、心臓リズムをコントロールし、長期AFibエピソードを有意に減少させることが示された。しかしながら、全てのAFib患者が長期AFibエピソードを示すわけではないため、AFibを経験している患者にこのような心臓リズム薬を無差別に投与することは推奨されない。ブディオダロンによる治療を受けている、中長期及び/又は超長期AFibエピソードを有する患者の場合でさえ、AFibエピソードの減少の程度は用量依存的であり、年齢、性別、体重、疾患増悪の程度、及び当該技術分野において公知の他の要因が原因で患者によってばらつきがある。加えて、他の薬物療法と同様に、反応しない患者も一定数存在する。
【0011】
患者におけるAFibの存在を診断できる利用可能なウェアラブルは、腕時計、心臓ホルターモニター、パッチなどを含んで多く存在するが、単に診断する能力と、発作性又は持続性AFibを患う患者における長期AFibの存在を連続的に評価する能力とは別のものである。現在、患者の心臓リズムの連続的なモニタリングは、パッチ及び/又はデバイスなどのウェアラブルにより可能である。後者としては、患者の心臓リズムデータのシームレスな収集を可能にする、無線送信デバイス(フィリップス・バイオサイエンス社(ベスト、オランダ)により販売されているMCOT(mobile cardiac outpatient telemetry)など)が挙げられる。現在までのところ、このようなデバイスはAFibを有することが疑われる未治療患者に主に使用されており、したがって、主に診断に使用されている。現在のところ、長期AFibエピソードを減少させるように設計された薬剤に対する反応性患者及び非反応性患者を評価するために、これらのデバイスを薬物療法と併用すべき、あるいは併用できた例は存在しない。これには、臨床医が治療された患者における疾患の増悪及び/又は後退をモニターすることを可能にすることと、初期の治療効果を達成するために薬剤の量を用量調整すること、又は、可能な限りの最低用量で治療効果を回復もしくは維持するために患者に用量調整を行うこと、が含まれる。
【0012】
そのため、臨床医には、典型的には、最長2週間程度の、この期間の患者の心臓リズムに関する、最小限の短期データしか残されず、このデータは、典型的には、中長期AFibエピソード及び超長期AFibエピソードを低減する薬剤の有効性を評価するためではなく、診断目的にしか使われない。また、このような限定されたデータは、臨床医に、短期データだけ使用していると見落としやすい、孤発性AFibエピソードがまれに起こるが長期的である状態を見えなくする可能性がある。さらに、おそらくはより深刻なこととして、多くの診断デバイスが、モニタリング及び/又は薬物療法に適合しない。これは、診断が短期モニタリングを必要とするのに対し、薬物療法は、処方薬が長期AFibエピソードの回数を低減することと、患者のAFib負荷を低減することの両方において有効であるかどうかを評価するために、臨床医による患者の連続的な長期モニタリングを必要とするためである。
【0013】
このため、現在進行形の難題がある。臨床医が患者におけるAFib負荷及び長期AFibエピソードのいずれかの長期的な値を把握していない場合、臨床医は、AFib負荷及び長期AFibエピソードの両方を低減するためのブディオダロンなどの薬剤による薬物療法をどうしたら考慮できるのであろうか。さらに、臨床医がこの薬剤を処方したとして、臨床医は、この薬剤の投与が長期AFibエピソードのエピソードを効果的に減少させているかどうかをどうしたら知ることができるのだろうか。このような情報が無い場合、臨床医は、たいてい、AFibに起因する凝固を低減するリバーロキサバン(Xarelto(登録商標))などの抗凝血剤を処方することで、患者を保護することとなる。しかし、このような抗凝血剤の使用には代償がある。例えば、マーケットインサイダー(Market Insider)は、Xareltoの使用によって、2016だけで15,000超の有害事象が発生したと報告した。例えば、Report: More than 15,000 Adverse Events Linked to Xarelto in 2016, https://markets.businessinsider.com/news/stocks/report-more-than-15-000-adverse-events-linked-to-xarelto-in-2016-1002203317(最終アクセス:2022年10月28日)を参照されたい。
【0014】
以上のことから、臨床医が患者における長期AFibエピソードの回数及び持続期間、並びにAFib負荷を正確に定量化できるように、患者のモニタリングを改善する必要性が絶えず存在している。それら患者を、ブディオダロンによる治療が適切であるとして中長期AFib又は超長期AFibを含む長期AFibと関連付け、潜在的には、そのような患者のレジストリを作成する必要性も存在している。またさらに、臨床医がブディオダロンの投与が有効であるかどうかを直接的又は間接的に判定できるようにし、それによって臨床医が適宜投薬を調整できるようにするか、又は非反応性患者をブディオダロン療法から除外できるようにする必要性も存在している。
【発明の概要】
【0015】
症候性又は無症候性の発作性又は持続性AFibを有する患者を、ブディオダロンなどの抗不整脈薬による治療に適格とする際に有用な方法及びデバイスが開示される。このような治療は、長期AFibエピソードと閾値レベルのAFib負荷を示す患者における脳卒中又はうっ血性心不全のリスクを低減又は排除するように設計される。特に、本明細書に記載の方法及びデバイスは、このような患者の心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターし、このような患者のAFib負荷、及びこのようなエピソードの持続期間を評価することを可能にする。これにより、臨床医が、そのようにモニターされた患者が必要な長期AFibエピソードの回数及び閾値レベルのAFib負荷を有するかどうかを判定するために患者を評価することが可能になる。このような評価基準を満たす患者が、ブディオダロン療法を開始するのに「適格な」候補と見なされる。
【0016】
ホルターモニターなどの常法により、長期AFibエピソード及び上記閾値レベルのAFib負荷を有することが確認済みの患者は、長期AFibエピソードのベースラインの回数及び持続期間、並びにAFib負荷を評価して、後の薬物療法が効果的であるかどうかを判定するために、ブディオダロンを服用する前に上記のようにモニターすることが好ましい。いずれにしても、ブディオダロン療法下に置かれた適格な患者は全て、治療法の開始後もモニタリングが継続される。このような継続的なモニタリングにより、臨床医が当該患者に対する上記薬剤の有効性を評価することが可能になる。要するに、本明細書で開示される方法は、個別化医療の一形態としてブディオダロンによる薬物療法を提供するものであり、この方法では、適格な患者における疾患の重症度を、当該患者にとって最低限に有効であるブディオダロンの適切な用量と対応させ、あるいは、患者が非反応者である場合、当該患者をブディオダロン療法に不適格とする。本明細書で開示される方法は、AFibの治療に際し過剰量のブディオダロンの使用を避ける一方で、一部の患者が治療を達成するために他の患者よりも多くのブディオダロンを必要とすることに理解を示すものである。さらにまた、非反応者を治療法から除外できることは、反応者である患者に治療法を限定することによる、治療の新たなパラダイムを示すものである。
【0017】
1つの実施形態では、治療効果を示す患者への薬剤の継続的投与を制限することにより、1又は複数の患者におけるブディオダロンの全体的有効性を改善することができる。一例では、適格な患者とは、識別済みであった、又は最小閾値を満たすことが確認された患者である。最初から、及び/又は用量調整後にブディオダロンによる有効性を示す適格な患者は治療法が継続され、一方、係る有効性を欠く患者(非反応者)は治療法から除外される。患者コホートにおける基礎となるAFib負荷や長期AFibエピソードの回数の変動性を考慮すると、ブディオダロンは多くの患者において有効であるが、全ての患者において有効であるとは限らない。ブディオダロン療法と組み合わせて本明細書に記載の方法及びデバイスを用いることで、臨床医は、所与の患者がブディオダロン療法に適格であるかどうか、及び/又は、当該療法が効果的な結果を提供しているかどうか、を確認することができ、これによって臨床医は、ブディオダロン治療から利益を得る患者に対してのみ、且つ、有効な結果を達成するために必要な最低用量で、治療法を維持することできる。
【0018】
上記は、長期AFibエピソードを有する可能性も有さない可能性もあり、且つ/又は、ブディオダロンにより有効な結果を得られる可能性も得られない可能性もある患者における、症候性及び無症候性の発作性又は持続性AFibの治療における、大きな前進を表している。このようなことは、上記のデバイスを診断のみに使用することに限定したプロトコルでは不可能である。
【0019】
本明細書に記載のウェアラブルを使用することで、臨床医は、閾値レベルの長期AFibエピソード及び/又はAFib負荷を示す発作性及び/又は持続性AFibを有する患者のみを、ブディオダロンによる治療に適格とすることができる。さらに、臨床医は、その後にこれらの患者をモニターすることで、患者のAFibがそのような治療に反応性であるかどうかや、ブディオダロンの用量調整が正当であるかどうかを評価することができる。そして、臨床医は、非反応性患者をそのような治療法から取り除くこともできる。これは、当該技術分野における長年の課題、すなわち、脳卒中やうっ血性心不全のリスクを低減するために長期AFibを如何にコントロールするか、を解決するものである。
【0020】
所望により、このような適格患者は、ナショナルレジストリに載せることができ、これにより、臨床医が、このように登録された患者のみにブディオダロンを処方できるようになる。最初から、及び/又は用量調整後にブディオダロンによる有効性を示す患者はレジストリ上に保持され、一方、係る有効性を欠く患者はレジストリから除外される。
【0021】
本明細書に記載のデバイス(ウェアラブル)は、臨床医が患者の長期心臓リズムを適切に評価できるようにするための情報、特に、ブディオダロン療法の開始前及び/又は開始後に、患者のAFib負荷、並びに長期AFibエピソードの回数及び持続期間を評価することに関連する情報、を生成する上での重大なギャップに取り組むものである。さらに、このような治療開始後の情報の継続的な有効性により、臨床医は、有効量を減らして(例えば、最小有効量で)望ましい治療効果を達成するように、投与されるブディオダロンの量を用量調整できるようになる。またさらに、これらの方法及び/又はデバイスは、自己モニタリングを通じて患者の参加を引き出すものであり、これは患者の投薬計画のコンプライアンスを向上させる広く受け入れられている方法である。これは、ひいては、脳卒中の長期リスクを低減又は排除する際の、あらゆる抗不整脈薬治療の長期的な有効性を強化するものである。
【0022】
1つの実施形態では、ウェアラブルは、発作性AFibもしくは持続性AFibと診断される可能性がある、又は、発作性AFibもしくは持続性AFibに関する評価を受けている患者によって装着可能であり且つ解除可能である。上記ウェアラブルは、ウェアラブルが装着された場合に、連続的又は半連続的に患者の心臓リズムをモニターする少なくとも1つの電極及び/もしくは光センサを備える場合があり、且つ/又は、上記少なくとも1つの電極及び/又は光センサからデータを受信するように構成されている場合がある。また、上記ウェアラブルは、代わりに、長期AFibエピソードの存在及び/又は回数を判定するために、心臓リズムデータを収集し、所望により評価するように構成された、処理装置(例えば、プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コンピューティングデバイスなど)を備えてもよい。上記処理装置は、代わりに、心臓リズムデータを保存するように構成されていてもよい。また、上記ウェアラブルは、代わりに、処理装置内のデータに(例えば、無線で、及び/又は送信構成要素と処理装置とを接続する回路網を介して)アクセスするように構成された送信構成要素(例えば、送信デバイス)を備えてもよい。上記送信構成要素は、患者及び/又は臨床医及び/又は患者の別の介護者がアクセス可能なコンピューティングデバイスへの直接的又は間接的な通信を開始することが可能な場合があり、この通信は、心臓リズムデータ、及び/又は心臓リズムデータの評価により得られたデータを提供し得る。
【0023】
別の実施形態では、AFib治療を受けた患者を1又は複数の長期AFibエピソードについてモニターする方法は、装着・解除可能なウェアラブルを装着することを含む場合がある。ウェアラブルは、心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターすることができる、少なくとも1つの電極又は光センサを備えていてもよい。ウェアラブルは、送信デバイス、及び/又は少なくとも1つの電極もしくは光センサと送信デバイスとを連絡する回路網を備えていてもよい。あるいは、ウェアラブルは、心臓リズムデータを収集し、長期AFibエピソードの存在について当該データを評価し;当該データを保存することができるCPUを備えていてもよい。上記方法は、患者及び/又は患者の介護者に心臓リズムデータを伝達することをさらに含む場合があり、この心臓リズムデータにより、介護者は1又は複数の長期AFibエピソードを解析することが可能となり得る。
【0024】
別の実施形態では、方法は、発作性AFib患者における発作性AFibから持続性AFibへの移行;持続性AFib患者における持続性AFibから永続性AFibへの移行;又は、AFib患者における脳卒中のうちの1又は複数のリスクを低減するための方法であり、患者はブディオダロン治療を受けているものであり、その治療により長期AFibエピソードが低減及び/又は阻害されていてもよい。上記方法は、患者が装着したウェアラブルによって収集された心臓リズムデータを評価することを含む場合がある。ウェアラブルは、心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターすることができる、少なくとも1つの電極又は光センサを備えていてもよい。ウェアラブルは、送信デバイス、及び/又は少なくとも1つの電極もしくは光センサと送信デバイスとを連絡する回路網を備えていてもよい。あるいは、ウェアラブルは、心臓リズムデータを収集し、長期AFibエピソードの存在について当該データを評価し;当該データを保存することができるCPUを備えていてもよい。上記方法は、ブディオダロンの用量を調整することで、さらなる長期AFibエピソードを低減(例えば、臨床医によって必要と見なされるような低減)し、それによって、a)発作性AFibから持続性AFibへの移行、b)持続性AFibから永続性AFibへの移行、c)及び/又は、脳卒中のうちの1もしくは複数のリスクを低減することをさらに含む場合がある。
【0025】
別の実施形態では、システムは、発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者から心臓リズムデータを収集するウェアラブルと、上記ウェアラブルと通信し、上記データを収集及び/又は保存することができるCPUと、上記CPUと通信することができ、上記データを1又は複数の指定の受信者に送信することができる送信デバイスと、を備える場合がある。
【0026】
別の実施形態では、方法は、医薬品による治療を受けている、発作性AFibを有する患者及び/又は持続性AFibを有する患者における脳卒中又はうっ血性心不全のリスクを低減するためのものである場合がある。上記方法は、上記患者に装着されたウェアラブルから上記患者の心臓リズムデータを入手することを含む場合があり、上記ウェアラブルは、心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターすることができる少なくとも1つの電極又は光センサ、データの送信を開始可能な送信デバイス、上記少なくとも1つの電極又は光センサと上記送信デバイスとを連絡する回路網、及び上記心臓リズムデータを収集し保存するように構成されたCPUを備えていている場合がある。1つの実施形態では、上記ウェアラブルを、上記医薬品(例えば、ブディオダロン)による治療の前に使用することで、AFibエピソードの回数及び持続期間に関するベースラインデータを入手する。入手したベースラインデータを用いて、上記患者を上記医薬品による治療に適格又は不適格とする。別の実施形態では、上記ウェアラブルは上記医薬品による治療中に使用され、上記方法は、上記心臓リズムデータを評価し、上記医薬品の有効性を評価することを含む、又はさらに含み、この評価は、長期AFibエピソードの存在及び/又は非存在を上記医薬品の用量に相関させ、上記医薬品の用量が上記患者における長期AFibエピソードを低減又は排除する上で有効か無効かを判定することによるものであり;無効である場合、上記用量が有効となって、脳卒中又はうっ血性心不全のリスクを低減するまで、上記用量を1回以上増加する。
【0027】
1つの実施形態では、ウェアラブルはプログラム可能(例えば、臨床医により)である。1つの実施形態では、ウェアラブルは全ての心臓リズムデータ及び/又は長期AFibエピソードのデータのみを送信するようにプログラムされる。
【0028】
本開示の目的上、少なくとも1時間の持続期間を有するあらゆるAFibエピソードが、「長期」エピソードと見なされる。しかし、明確さのために、長期エピソードには、「中長期」のエピソードとしてさらに定義されるエピソードのサブセットも含まれる。このような中長期エピソードは、少なくとも約1時間から最大約24時間までの範囲である。約24時間を超えるが永続ではない範囲のAFibエピソードは超長期エピソードとして分類される。これらのサブセットは、例えば、長期間AFibエピソードの病歴を有する患者の、超長期間エピソードではなく中長期エピソードを経験する割合が増えるような移行の場合など、臨床医がブディオダロン療法の利点をより良く評価することを可能にする。
【0029】
1つの実施形態では、中長期AFibエピソードは約1時間から約24時間までの範囲であり、別の実施形態では、このような中長期AFibエピソードは持続期間が、少なくとも5時間から最大約24時間の範囲である。
【0030】
1つの実施形態では、最初の一連の収集データが中央処理装置(CPU)などの、コンピューティングデバイスから送信されると、新しいデータを収集できるように当該データはCPUから破棄される。
【0031】
1つの実施形態では、発作性又は持続性AFibを有する患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価する方法であって、
a)一定期間に亘るAFib負荷が未知であり、及び/又は長期AFibエピソードの回数が未知である、発作性又は持続性AFibを患う患者を選抜すること;
b)
i)ウェアラブルが装着された場合に、患者の心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターする、少なくとも1つの電極及び/又は光センサと、
ii)上記心臓リズムデータを収集し保存するCPUと、
iii)上記CPU内の上記データに接続する送信構成要素と、を含み、
上記送信構成要素が、上記データが所望により保存される臨床医に対して直接的又は間接的に通信を開始することができる、
ウェアラブルを上記患者に装着すること;
c)中長期AFibエピソード及び/又は長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について上記データを評価する上記臨床医に直接的又は間接的に心臓リズムデータを収集及び送信すること;
d)上記データが必要な長期AFibエピソードの回数及び必要なAFib負荷を示す場合に、上記患者をブディオダロン療法に適格とすること;
を含む、方法が提供される。
【0032】
1つの実施形態では、CPUは、中長期AFibエピソード及び/又は超長期AFibエピソードの存在及び回数を決定するために、保存されたデータを評価することも可能である。CPUによる評価は、連続的とすることも周期的とすることもできる。別の実施形態では、CPUは、中長期AFibエピソード及び/又は超長期AFibエピソードを臨床医及び/又は患者に警告するようにプログラムすることができる。
【0033】
1つの実施形態では、患者は、身体に付着し、上記のように作動することができる、パッチ、腕時計、リストバンド、ストラップ、リング、又は任意の他のデバイスであり得るウェアラブルを装着される。ウェアラブルは、シャワー、水泳、バッテリー交換の場合などの一時的な解除期間以外は、患者に装着されるべきである。
【0034】
1つの実施形態では、ブディオダロン療法に適格な患者が用量調整を受けるべきか、又は不適格とされるべきかを評価する方法であって、
a)臨床医によってブディオダロン療法に適格とされ、ブディオダロン療法を処方された患者を選抜し、
i)ウェアラブルが装着された場合に、患者の心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターする、少なくとも1つの電極及び/又は光センサと、
ii)上記心臓リズムデータを収集し保存するCPUと、
iii)上記CPU内の上記データに接続する送信構成要素と、を備え、
上記送信構成要素が、上記データが所望により保存される臨床医に対して直接的又は間接的に通信を開始することができる、
ウェアラブルを上記患者に装着すること、
b)上記臨床医に直接的又は間接的に心臓リズムデータを収集及び送信し、長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について上記データを評価させること;
c)所望により、ブディオダロンの用量を調整することで、上記患者に適切な用量にアクセスすること;並びに、
d)上記患者がブディオダロン療法に対して反応性である、又は反応性ではないことを、上記収集されたデータが示すかどうかを評価すること;
を含み、
上記治療法を、反応性患者の場合は維持し、非反応性患者の場合は終了させる、
方法が提供される。
【0035】
さらに別の実施形態では、ブディオダロン療法に最初反応性である患者を、連続的又は周期的にモニターすることで、上記患者のそれぞれが上記ブディオダロン用量に反応性のままであることを確認する。反応性でない場合、臨床医は、必要に応じて、上記ブディオダロン用量を調整するか、又はブディオダロン療法を中止することができる。
【0036】
上記方法の1つの実施形態では、上記データは、中長期AFib及び/又は超長期AFibの存在又は非存在、並びに所望によりAFib負荷の程度を評価することができる臨床医に直接的又は間接的に送信される。データは、「クラウド」ラボラトリー又は類似の場所(コアラボラトリーなど)などの中央解析センターで保存及び/又は解析することができ、そこで、適格な医療従事者が、データを解析し、患者の反応と推奨される治療法への調整に関して担当臨床医に助言することができる。要約すると、これらの好ましい方法によって、遠隔患者モニタリング(RPM)が可能となり、患者は解析のためのパッチを郵送したり通院したりするなどの責任がなくなる。
【0037】
1つの実施形態では、ブディオダロン薬物療法に適格とするための必要な長期AFibエピソードの回数及び必要なAFib負荷の程度は、ある期間に亘り(例えば、2週間、1か月間、2か月間などに亘り)、1以上の最小長(例えば、少なくとも1時間、少なくとも5時間、少なくとも24時間など、及び、1時間から24時間の間の任意の1時間の期間)の、1回以上の長期AFibエピソード(例えば、少なくとも閾値回数)を含む場合がある。例示として、必要な長期AFibエピソードの回数は、1か月間に亘って5時間を超えて持続する少なくとも1回のAFibエピソード、及び/又は1か月間に亘って1時間を超えて持続する少なくとも2回のAFibエピソードを含む場合がある。必要なAFib負荷の程度は、少なくとも最小限度のAFib負荷(例えば、0%(必要なAFib負荷なし)、1%、2%、など)としてよい。必要な長期AFibエピソードの回数及び必要なAFib負荷の程度は、適切であるように設定してよい。具体例を、非網羅的な一覧の一部として下記の表2に示す。
【表2】
【0038】
1つの実施形態では、ウェアラブルは、収集されたデータを保存するための記憶装置を備えていてもよく、上記記憶装置は、保存されたデータを評価し、臨床医又は中央解析センターに潜在的に有害な心臓リズムの不整を警告するようにプログラムすることができる。収集及び/又は評価されたデータは、連続的又は周期的に、臨床医又は医療従事者によって再検討される場合がある(例えば、連続的又は周期的に、臨床医がアクセス可能なコンピューティングデバイスにプッシュされる場合があり、且つ/又は、臨床医がアクセス可能なコンピューティングデバイスによるリクエストに基づいてプルされる場合がある)。周期的な評価は、例えば、1日1回、週1回、月2回、月1回などとすることができる。データ収集プロセスは無期限に、例えば、患者の心臓リズムデータが必要な長期AFibエピソードの回数及び/又は必要なAFib負荷の程度を満たしている、又は満たせていないことを、臨床医が判定するまで、継続されてよい。好ましくは、データ収集は、少なくとも14日間、30日間、45日間、2か月間、もしくは少なくとも12週間、又は患者の病歴及び危険因子に基づき担当臨床医の自由裁量で、継続される。適格性評価のための確立された評価基準を満たせない患者はブディオダロン療法に含まれない。
【0039】
1つの実施形態では、適格患者はブディオダロン療法下に置かれる。このような治療法は、約200mgを1日2回から約800mgを1日2回の範囲の量で、1日2回の、ブディオダロン又はブディオダロンを含む医薬組成物の投与を含む。好ましい投与は、ブディオダロンの量を増やしていくことを含み、患者には最初に200mgのブディオダロンが1日2回投与される。反応性の患者はその用量のままにされるが、非反応性の患者は、患者が反応性になるか、又は患者が全ての被験用量レベルで非反応性となるまで、200mgの増分で用量調整を受ける。後者の場合、患者はブディオダロン療法に不適格とされる。1つの実施形態では、このように治療された適格患者は、AFibを治療するための1又は複数の他の方法に対して不応性であり、本明細書に記載の方法が残された治療選択肢である。
【0040】
ブディオダロンの血清半減期は投与後約6~7時間である。通例、定常状態の薬剤濃度は血清半減期の約5倍である。この場合、定常状態は約30~35時間となるだろう。定常状態が達成され、薬剤が作用するための時間が与えられると、その後の任意の時点で、患者の心臓リズムのモニタリングを開始することができ、その後の任意の時点としては、治療開始の約3日後、好ましくはブディオダロン療法開始の少なくとも14日後が挙げられる。後者は、薬剤が有効となるのに充分な時間が与えられるため好ましい。
【0041】
1つの実施形態では、ウェアラブルは、腕時計、ストラップ、リストバンド、リング、又はストラップであることがある。1つの実施形態では、腕時計はスマートウォッチである。
【0042】
1つの実施形態では、患者が発作性AFibから持続性AFibへ、又は持続性AFibから永続性AFibへ進行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
上記患者にブディオダロンの初回量を投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて少なくとも1回、患者のブディオダロンの用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における発作性AFibから持続性AFibへの、又は持続性AFibから永続性AFibへの進行のリスクを低減させること;並びに、
上記モニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法が提供される。
【0043】
1つの実施形態では、発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における心不全のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
上記患者にブディオダロンの初回量を投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて少なくとも1回ブディオダロンの用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における心不全のリスクを低減させること;並びに、
上記モニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法が提供される。
【0044】
1つの実施形態では、発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における脳卒中のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
上記患者にブディオダロンの初回量を投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて1回以上ブディオダロンの用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における脳卒中のリスクを低減させること;並びに、
上記モニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法が提供される。
【0045】
別の実施形態では、医薬品による治療を受けている、発作性AFib又は持続性AFibを有する患者における脳卒中又はうっ血性心不全のリスクを低減するための方法であって、
臨床医が、患者が装着したウェアラブルから、上記患者の心臓リズムデータを入手すること、を含み、
上記ウェアラブルは以下を備え:
a)連続的又は半連続的に心臓リズムをモニターする少なくとも1つの電極又は光センサ;
b)データ送信を開始可能な送信デバイス;
c)上記2つを接続する回路(circuity);及び、
d)上記心臓リズムデータを収集し保存するCPU;
上記臨床医は、長期AFibエピソードの存在又は非存在を使用された医薬品の用量に関連付けることによって、上記医薬品の有効性を判定するために、上記データの評価を行い;
上記臨床医は、上記医薬品の用量が長期AFibエピソードを低減又は排除するのに有効又は無効であることを確認し;
無効である場合に、上記臨床医は、上記用量が有効となって、脳卒中又はうっ血性心不全のリスクを低減するまで、上記医薬品の用量を1回以上増加させ、ただし、上記医薬品の最高用量に達した場合でも上記医薬品が無効のままである場合、上記患者は上記医薬品による治療から除外される、
方法が提供される。
【0046】
別の実施形態では、AFibと診断され、患者における長期AFibエピソードを阻害するブディオダロンによる治療を受けた患者における脳卒中又は心不全のリスクを低減するための方法であって、
ウェアラブルによって収集され、上記患者が装着したウェアラブルから上記臨床医へ送信された患者の心臓リズムデータを評価することであって、上記ウェアラブルは以下を備え:
a)連続的又は半連続的に心臓リズムをモニターする少なくとも1つの電極又は光センサ;
b)送信デバイス;
c)上記2つを接続する回路;及び、
d)
i)心臓リズムデータを収集し、長期AFibエピソードの存在について上記データを評価してもよく;且つ、
ii)上記データを保存する;
CPU;
長期AFibエピソードの存在又は非存在を使用された医薬品の用量に関連付けることによって、上記医薬品の有効性を判定するために、上記データを評価すること;
上記医薬品の用量が長期Aibエピソードを低減又は排除するのに有効又は無効であることを確認すること;並びに、
長期AFibエピソードをさらに低減することで、脳卒中又は心不全のリスクを低減するために、担当臨床医によって必要と見なされた通りにブディオダロンの用量を調整すること;又は、上記患者がブディオダロン療法に非反応性と見なされる場合に、ブディオダロンによる上記患者の治療を中止すること;
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、患者のAFibデータが、ブディオダロンによる治療とどのようにして併用されるかを示す図である。
【0048】
【
図2】
図2は、間欠的なAFibを有する患者の心拍動曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、心房細動(AFib)と診断された患者の心臓リズムをモニターするための方法を対象とする。このようなモニタリングにより、脳卒中及び/又は心不全のリスクを低減する治療のエンドポイントを達成するための、使用される医薬品の投与を調節できる能力と一体となった治療介入が可能となる。しかし、本開示をより詳細に論じる前に、まず以下の用語を定義することとする。定義されていない用語は、文脈中に定義が与えられているか、あるいは、医学的に許容可能な定義が与えられている。
【0050】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明示していない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0051】
定義
本明細書で使用される場合、「所望による」又は「所望により」という用語は、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、さらに、その記載が上記の事象又は状況が起こる場合と、上記の事象又は状況が起こらない場合とを包含することを意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、範囲を含む、数値の表示(例えば、温度、時間、量、濃度、及びその他)の前に使用される場合、±15%、±10%、±5%、±1%、又は任意の部分範囲及び/もしくは間にある値だけ変動し得る近似値を示す。好ましくは、投与量に関して使用される場合の「約」という用語は、用量が±10%だけ変動し得ることを意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、組成物又は方法が列挙された要素を含有し、他の要素を排除しないことを意味することが意図される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物及び方法を定義するために使用される場合、記載された目的のための組み合わせにおいて本質的な重要性をもつ他の要素を排除することを意味するものとする。すなわち、本明細書で定義されるような要素から本質的になる組成物、又は本明細書で定義されるような工程から本質的になる方法は、特許請求される発明の主題の基本的且つ新規な特徴に重大な影響を与えないものであれば、他の材料を排除しない。
【0055】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語は、微量要素を超える他の成分又は実質的な方法工程を排除することを意味するものとする。これらの移行句の各々により定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「AFib」や「心房細動」という用語は、永続性AFib以外の、全ての心房細動の変種を指す。このような変種としては、発作性AFib、持続性AFib、並びに、CHA2DS2-VAScスコアが低い(2以下)発作性AFib及び持続性AFib、並びに、CHA2DS2-VAScスコアが高い(3以上)発作性AFib及び持続性AFibが挙げられるが、これらに限定はされない。CHA2DS2-VAScスコアは、うっ血性心不全、高血圧症、75歳以上(2倍)、糖尿病、脳卒中(2倍)、血管疾患、65~74歳、及び性別のカテゴリー(女性)を表し、非リウマチ性心房細動(AF)を有する人における脳卒中のリスクを推定するための臨床予測ルールである。CHA2DS2-VAScスコアは、上記構成危険因子毎の1点から構成され、2点は(2倍)と表した。
【0057】
本明細書で使用される場合、「長期AFib」という用語は、患者においてAFibエピソードが持続する時間の長さに関する。この長さは脳卒中及び/又は心不全のリスクに関連する。明らかなこととして、患者がAFibの状態である時間が長くなるほど、上記リスクは高くなっていく。そのため、1つの実施形態では、長期AFibは1時間を超えて持続するあらゆるAFibエピソードであるが、ただしこのAFibは永続性ではない。また、長期AFibは、持続期間が約24時間以下(すなわち、1時間を超え、且つ最長24時間)である「中長期」AFibと、24時間を超えるが永続性AFibではないAFibエピソードを含む「超長期」AFibと、のサブセットによってさらに分類される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「連続的な」又は「連続的に」という用語は、患者がウェアラブルを装着している間にモニタリングが絶えず行われることを言う。「連続的な」又は「連続的に」という用語には、ウェアラブルが、装着され駆動された際に心臓リズムを常にモニターするが、限定された期間(例えば、バッテリー交換、入浴など)は解除されてもよいことも包含される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「半連続的な」又は「半連続的に」という用語は、患者がウェアラブルを起動せずとも、設定されたスケジュール(例えば、15秒毎、30秒毎、毎分など)で、ウェアラブルにより周期的且つ自動的にモニタリングが行われることを言う。設定されたスケジュール AFibエピソードを検出し、及び/又は、長期AFibエピソードの長さを決定できるようにするのに充分な時間分解能で、心臓リズムをモニターできるように設計されたスケジュール。
【0060】
本明細書で使用される場合、「装着可能な」という語は、担当医療従事者から補助を受ける必要なく、患者がウェアラブルを自身の身体に付け外しでき、モニタリングを開始できることを意味する。そのため、装着可能なウェアラブルには、ペースメーカーなどの埋込型(浸潤的)デバイスは含まれない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「心臓リズムをモニターすること」という用語は、脈拍数、患者の心臓の電界の様相などを含む、患者の心臓リズムに対してなすことのできるあらゆる評価を意味し、ただし、このようなモニタリングは患者がAFibを経験しているときを確認することができるものである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「モニタリングを開始する」という用語は、自動的な開始と身体による開始の両方を包含する。「自動的な開始」は、ウェアラブルが、患者に装着後すぐに、患者がそれ以上の行動を起こさずとも、モニタリングを自動的に始める場合に生じる。「身体による開始」は、患者が、ウェアラブルと身体又は口頭で相互作用する(例えば、ボタンを押す、音声コマンドを与えるなど)ことによってモニタリングをアクティベートすることを求められることを意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「送信デバイス」という用語は、ウェアラブルからデータを送信することが可能なあらゆるデバイスを意味する。送信デバイスはウェアラブルに含まれていてもよく、あるいは、ウェアラブルと通信状態にある別々のデバイスであってもよい。別々のデバイスは、スマートフォン、パッド型、ラップトップ型、デスクトップ型などのコンピューターとすることができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「臨床医」という用語は、患者の心臓リズムデータが洞調律、心房細動、又は他の種類の不整脈に相関しているかどうかを確認するために適格な医療専門家を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「担当臨床医」という用語は、AFib患者の治療を行っている医療専門家を指す。そのような担当臨床医は、典型的には、医師やナースプラクティショナーである。
【0066】
「直接的に」という用語は、患者の心臓リズムデータの送信に関連している場合、送信がクラウドサイトに預けられたものであるかどうかや、いくつものサーバーを通じたものであるかどうかなどは関係なく、送信が評価のために担当臨床医によって受け取られることを言う。
【0067】
「間接的に」という用語は、患者の心臓リズムデータの送信に関連している場合、データを評価する臨床医に送信され、その臨床医がデータ又はそのデータに関し得られた結論を担当臨床医又は医療提供者に提供することを言う。このような場合、臨床医は、心臓リズムデータを評価し、継続的に、又は患者の状態に変化があって連絡を取る必要がある場合に、担当臨床医に指示を与える、中央解析センターや担当臨床医などにより雇用された医療専門家とすることができる。1つの実施形態では、臨床医は中央解析センターに雇用されており、この施設は施設の機器によって生成されたデータを再調査し、診断及び/又は推奨を行い、これが担当臨床医に送信される。中央解析センターは、上記機器、生成されたデータ、及びそのデータを解析する能力の専門知識を有する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「ブディオダロン療法に反応性」である患者は、長期AFibエピソードの回数及び/又は持続期間における減少を示す。この減少は、長期AFibエピソードのエピソード回数及び/又は長期AFibエピソードの持続期間のうちの1又は複数の、少なくともある特定の割合(例えば、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%など)の減少であってよい。1つの実施形態では、反応性患者は、12週間に亘って測定された場合に、以下のうちの少なくとも1つにおいて少なくとも10%の減少を示す患者である:
a)適格性評価中に求められた回数と比較した場合の、24時間に亘り持続する長期AFibエピソードの回数;
b)適格性評価中に求められた回数と比較した場合の、5時間に亘り持続する長期AFibエピソードの回数;
c)適格性評価中に求められた回数と比較した場合の、1時間に亘り持続する長期AFibエピソードの回数;又は、
d)適格性評価中に求められた負荷と比較した場合の、AFib負荷における減少。
さらに他の実施形態では、この反応性患者は、12週間に亘って、上記a~dのうちの1又は複数において少なくとも20%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも50%の減少、及び/又は少なくとも60%の減少を示す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「非反応性患者」又は「ブディオダロン療法に対し非反応性」の患者は、ブディオダロン療法による治療を受けたことがあり、上記で定義されたような反応性患者の定義を満たさない、患者である。患者は、最大許容用量に対して非反応性であることにより、ブディオダロン療法に対して非反応性である場合があり、治療が中止される場合がある。
【0070】
本明細書で使用される場合、「AFibを治療する他の方法」は、1又は複数の抗凝血剤、並びに/又は他の血餅予防手段、心拍数コントロール手段、及び/もしくは心臓リズムコントロール手段を含む場合がある。このようなAFibを治療する方法の例としては、β遮断薬(例えば、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール)、カルシウムチャネル遮断薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、抗凝血剤(ワルファリン、クマリン、ヤントベン、アスピリン、アピキサバン、ダビガトラン、エノキサパリン、ヘパリン、リバーロキサバン)、ナトリウムチャネル遮断薬(例えば、フレカイニド、プロパフェノン、キニジン)、カリウムチャネル遮断薬(例えば、アミオダロン、ドフェチリド、ソタロール)を挙げることができる。
【0071】
患者は、AFibを治療するための1又は複数の前方法及び/又は他の方法(例えば、上記で定義されたような、AFibを治療するための他の方法)で治療を受け、AFibが非反応性である、及び/又は反応性不充分である、及び/又は1もしくは複数の方法に対する反応性が減少しつつあると見なされた場合に、「AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である」又は「AFibを治療する1又は複数の他の方法に対して不応性である」と見なされ得る。「1又は複数の前治療法」は、進行中であってもよく、及び/又は終了済みであってもよい。
【0072】
本明細書で使用される場合、「スマート」という用語は、デバイスの計算能力を指す。本明細書で議論されているスマートデバイスの計算能力は、ユーザーインタラクション(例えば、タッチスクリーンを介した)及び/又はスマートデバイス上のアプリケーションの実行を可能にし得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「少なくとも2.5%のAFib負荷」という用語は、本開示の治療法(例えば、ブディオダロン及び/又は他の心臓リズム薬による治療)が行なわれていない場合において、患者がAFibエピソードを有し、設定された期間中の各エピソードの持続期間の累計が、上記設定された期間の総時間量の少なくとも2.5%であることを意味する。そのため、20日間(すなわち480時間)モニターされた患者の場合、少なくとも2.5%のAFib負荷とは、患者が1又は複数のAFibエピソードを経験する総(累積)期間が、少なくとも12時間(480時間の2.5%)であることを意味する。このAFib負荷は、たとえあったとしても、長期AFibエピソードの回数とは無関係であり得る。したがって、総計で少なくとも12時間になる1又は複数のAFibエピソードは、1つのエピソードであることもあれば、あるいはそれぞれ1時間未満の多くのエピソードであることもある。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ブディオダロン」という用語は、(S)-sec-ブチル2-(3-(4-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)-3,5-ジヨードベンゾイル)ベンゾフラン-2-イル)酢酸塩、及びその製薬上許容される塩を指す。ブディオダロンは下記の式で表され、
【化1】
さらには、その製薬上許容される塩、例えば、ブディオダロン酒石酸塩又はブディオダロンクエン酸塩である。ある実施形態では、上記製薬上許容される塩は他のポリカルボン酸塩である場合がある。当該技術分野で理解されているように、塩は体内では遊離塩基から解離する。したがって、ブディオダロンの血清中レベルを算出する際、遊離塩基の分子量を用いてモル濃度が求められる。また、酒石酸塩以外の塩が投与される場合、本明細書で使用されるブディオダロン酒石酸塩の用量は、塩の違いによる分子量の変化を反映するように変化させる必要がある。
【0075】
「ウェアラブル」という用語は、例えば、アクセサリーとして、衣服として、及び/又は衣服に埋め込まれるなど、使用者が着用可能なあらゆるデバイスを指す。一実施形態では、本明細書におけるウェアラブルデバイスは、埋め込み(外科的埋め込み及び/又は皮下埋め込みなど)なしでその使用者の心臓リズムを測定することが可能であり得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、ウェアラブルが、患者の心臓リズムを測定することができるように、患者に着用されている、又は患者に別の方法で固定されている場合、患者は「ウェアラブルを装着している」。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ベースライン」という用語は、AFibを有し、ブディオダロン治療の前に設定された期間に亘ってAFib負荷の程度及び長期AFibエピソードの回数を求めるためにモニターされた患者を指す。このような場合、設定された期間に亘って治療前にベースラインを測定することにより、現在の疾患状態が得られる。全てとは言えないにしてもほとんどの場合で、ベースラインの疾患状態は担当臨床医にとっては未知であり、その後のブディオダロン治療が有効であるかどうかを判定するために必要な情報である。
【0078】
計装
本明細書に記載の方法で使用される計装は、単に診断のためだけに使用されることとは対照的に、本明細書に記載されるような薬物療法に使用される場合がある。ウェアラブルを単に診断のために使用することは、従来から行われていることであり、患者がAFibを有するか否か、及び/又は、患者がAFibを有している場合には、患者のAFib負荷及びAFibエピソードの回数に関する情報を臨床医に知らせることを目的としている。このような診断解析は、薬物治療の適合性、有効性、及び/又は用量を扱うことができず、これらは診断を逸脱している。本明細書に記載の薬物治療法は、薬物療法に適格な患者を識別すること、及び/又は、適格とされた患者を薬物療法による治療中にモニターすることで、薬剤の有効性(例えば、長期AFibエピソードの回数を減少させることにおける有効性)を評価すること、を含む。このモニタリングにより、患者が治療法に反応性であると見なされるまで、又は、反応できないことを原因として薬物療法に不適格とされるまで、患者に用量調整を行うことが可能になり得る。本明細書に記載の薬物治療法は、薬剤介入に対する適格性評価を確立し、並びに/又は、患者が反応性であること、及び/もしくは反応性のままであることを確認するための、限定された(例えば、約2週間、約4週間、又は約6週間などの個別の期間からなる1又は複数の期間)、及び/又は無期の(例えば、事前に設定された終了日なし)患者のモニタリングを可能にし得る。したがって、本明細書に記載のウェアラブルは、長期間の使用のために頑丈であり、且つ/又は快適であり、且つ/又は患者が使用し易いように、設計及び/又は選択される。
【0079】
実際には、ウェアラブルは、患者の心臓リズムを測定するための、アシスト型要素であっても非アシスト型要素であってもよい、心臓モニタリング要素を備える場合がある。ウェアラブルは、患者によって装着可能且つ解除可能である場合があり、ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)などの非ウェアラブルに共通している侵襲的手法を伴わない。ウェアラブルに使用される特定の心臓モニタリング要素は、ウェアラブルが心臓リズムを正確に測定できるのであれば、不可欠なものではない。ウェアラブルは、(例えば、1週間、1か月間など、目的の期間に亘って)検出されたAFib期間の時間を示すデータを生成及び/もしくは送信すること、並びに/又は、検出された長期AFibエピソードの回数を示すデータを生成及び/もしくは送信することなどにより、測定された心臓リズムデータを報告することが可能であり得る。また、あるいは代わりに、ウェアラブルは、(例えば、目的の期間に亘って)AFibを検出し、及び/又は検出されたAFib期間の時間及び/もしくは長期AFibエピソードの回数を決定するように構成されたデバイスに、心臓リズムデータを送信するように構成され得る。ウェアラブルは、アメリカ食品医薬品局(FDA)などの1又は複数の規制機関に承認されている。
【0080】
アシスト型要素
アシスト型の心臓モニタリング要素は、心拍数及び心臓リズムを検出するためにフォトプレチィスモグラフィ(PPG)を使用する場合がある。PPGは、標準的なオキシメーターに見られる従来技術であり、組織における光反射を測定することで、動脈の脈動と、それに応じて、心臓リズムパターンとを検出する。しかし、連続的及び/又は半連続的に心臓リズムを測定するためには、患者の移動中に生成されたPPGシグナルはしばしば歪んでおり、弱く、ノイズが多いという事実を考慮しなければならない。そのような欠陥を考慮するため、信頼できるシグナルを提供するのに充分な量の歪み及び/又はノイズを低減するアルゴリズムが使用される場合がある。1つの実施形態では、PPGセンサ及び加速度計の両方が、適切な (例えば、充分なシグナル・ノイズ比)を可能にするアルゴリズムと共に使用される。そのようにアシストされた場合、PPGは、心拍数及び心臓リズムの両方の信頼できる検出を可能にし得る。例えば、全体が参照により本明細書に援用される、Wojcikowski, et al., Photoplethysmographic time-domain heart rate measurement algorithm for resource-constrained wearable devices and its implementation, SENSORS 20, no. 6 (2020): 1783を参照されたい。
【0081】
いくつかの実施形態では、心臓モニター要素は、血流を検出することで間接的に心臓リズムを測定するために、圧電材料及び/又はリズム電場応答性高分子を用いる。
【0082】
いくつかの実施形態では、測定の特異性を高めるために、PPG及び/又は圧電測定値の組み合わせと、単極ウェアラブル(iECG、従来の多電極心電図を指すECGに対立するもの)からの心電図データとを、組み合わせることができる。iECGとPPGデータ又は圧電データは、送受信機(例えば、アームバンド及びスマートウォッチ)を介して通信している2つの別々のデバイスから生じるものであることもあれば、あるいは、単一のデバイス(例えば、リストバンド+スマートウォッチ(例えば、Kardia Band+iWatch)から生じるものであることもある。PPGデータで不整脈が検出されると、対応する(例えば、時間的に一致する)iECGデータがアルゴリズムによって解析され得る。
【0083】
非アシスト型要素
別の実施形態では、ウェアラブルは、携帯用心電図などの非アシスト型心臓モニター要素を備える場合がある。携帯用心電図要素は、患者により随意に着用可能、装着可能であり、且つ/又は、例えば内蔵アンテナなどを介して、データを送信可能であり得る。非アシスト型心臓モニター要素を備えるウェアラブルは心拍数及び心臓リズムを測定することができる。ウェアラブルは、観察期間(例えば、約2週間又はそれ以上の観察期間)に亘ってAFib負荷及び/又は長期AFib(エピソード)(LEAF)を検出し記録するように構成される場合がある。非アシスト型心臓モニター要素は直接測定を採用しているが、これは、このデバイスが心臓によって生成された電気信号を読み取っていることを意味する。直接測定は、ノイズや歪みによる影響がPPG測定などの間接測定よりも少なくなる場合があり、これにより、アルゴリズムを使用せずに、且つ/又は、アルゴリズムやデータ処理の使用を減らして、臨床医に測定データを送信することが可能になり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、ウェアラブルは、電極を介して心臓リズムを含む心臓の電気的活動を検出できる、心臓モニターデバイスなどの、専門化した付属品を備える場合がある。専門化した付属品は、送信を開始することが可能な場合もあれば、且つ/又は、送信デバイスを備え、且つ/もしくは、送信デバイスに接続されている場合もある。
【0085】
いくつかの実施形態では、心臓モニターデバイスは、スマートウォッチなどの単一ウェアラブルデバイスの、不可欠部分の要素であり得る。使用者が装着可能であり、使用者の心臓の電場をモニターすることが可能な単一デバイスを提供することにより、数日間、さらには数か月間など長期の期間に亘って、心臓の電気的活動を連続的にモニターすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、心臓モニターデバイスは、送信するために測定された電場データ(例えば、測定された電位差データ)をデジタル化でき、且つ/又は、測定されたデータをデジタル化されたデータとしてメモリに保存できる、アナログデジタル変換器を備える場合がある。心臓モニターデバイスは、肢体間の電位差に関する情報を運ぶ信号を外部回路に送信できるアウトプットを備えることがある。このアウトプットは様々な形態を取り得る。ある場合では、アウトプットは、別のユニット(例えば腕時計又はタブレット)内の別の送受信機/受信機に通信する送受信機であり得る。1つの実施形態では、中央解析センター(例えば、コアラボなどの遠隔ラボ及び/又は遠隔データ解析センター及び/又はサーバー)が、AFibデータ及び/又はLEAFデータの解釈及び/又は総括を行う場合がある。中央解析センターは、治療を行う臨床医に用量調整勧告を送信する場合もあり、患者が(例えば、患者モニタリングプログラムの一環として)自身の医師を訪問する必要がない。追加といて、又は代替として、人工知能アルゴリズムが、用量調整を決定するために使用される場合があり、医師に用量調整勧告を送信する場合がある。
【0087】
さらなる態様
1つの実施形態では、ウェアラブルは、小型家電機器、例えば、腕時計、アームバンド、リング、ストラップ、及び/又はリストバンドであり得る。ウェアラブルは、心臓モニター要素、関連する回路網、CPUなどを搭載するハウジングを備える場合がある。ウェアラブルは、使用者の他の部位に装着することもでき、手首、脚、首、及び/又は胴体が挙げられるが、これらに限定はされない。ウェアラブルは、タブレット、ラップトップコンピューター、デスクトップコンピューター、及び/又は他の類似のデバイスなどの別の電子デバイスと通信可能な専門化した付属品を備える場合があり、これが次にクラウドネットワークに通信して、当該デバイスから臨床医に情報を送信することができる。追加として、又は代替として、専門化した付属品は、直接的に、及び/又はネットワークを介して、臨床医に情報を送信できる場合がある。
【0088】
心臓リズム用ウェアラブル及びiECG用ウェアラブルは、Bluetooth、Z-Wave、Zigbee、及び/又はアドバンスド・ネットワーク・テクノロジー及びアダプティブ・ネットワーク・テクノロジー(ANT)が使用可能であり得る。例えば、iECGデバイス、並びに/又は心臓リズムモニタリング及び/もしくは記録デバイス(例えば、PPG式又は圧電式心臓リズムモニタリング及び/又は記録デバイス)は、iECGデバイス並びに/又は心臓リズムモニタリング及び/もしくは記録デバイスからのデータに基づいてAFibを自動的に検出するように構成されていてもよいアプリケーションとペアリングされてもよい。iECGデバイス、並びに/又はリズムモニタリング及び/もしくは記録デバイスは、データをアプリケーションに送信するように構成されていてもよい。データは、Bluetoothプロトコル、Z-Waveプロトコル、Zigbeeプロトコル、又はANTプロトコルのうちの1又は複数を用いて送信されてもよい。アプリケーションは、プロプライエタリソフトウェアを用いてデータを解析するように構成されていてもよい。iECGデバイス、並びに/又は心臓リズムモニタリング及び/もしくは記録デバイスからのデータに基づいて、アプリケーションは、90%を超える感受性と80%を超える特異性でAFibを解釈及び/又は検出することができてもよい。
【0089】
本明細書に記載されているようなウェアラブルを有する患者は、心臓リズムを記録しAFibを検出するためにウェアラブルを使用することができる。記録は、連続的及び/又は半連続的とすることができる。記録の仕様は、直接的又は間接的に(例えば、遠隔で)、デバイスにプログラムすることができる。AFibデータは、安全性の高いプロトコルを用いるクラウドベースのデータリポジトリになど、安全に保存されてもよい。
【0090】
市販のアシスト型ウェアラブル及び非アシスト型ウェアラブルの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
フィリップス・バイオサイエンス社(ベスト、オランダ)によって販売されるMCOT(登録商標)ウェアラブル。このデバイスは、iECGデータを自動的に、ワイヤレス接続を介して、中央解析センター(例えば、コアラボ)に送信することができるウェアラブルパッチである。このシステムは、臨床医が投与量増加及び/又は投薬中止が適正であるかどうかを判断できるようにするのに充分なデータを提供するように構成される。
フィリップス・バイオサイエンス社(ベスト、オランダ)によって販売されるePatch長期装用ホルターモニタリングシステム。このデバイスは、AFib及び/又は長期AFib(エピソード)(LEAF)を示すデータを記録するように構成されている。このデバイスは、iECGデータを連続的に記録及び/又は保存するように構成されている。このデータは、その後アーカイブされ、中央で解析される。
他のウェアラブルがいくつも存在しており、そのうちのいくつかはFDAに認可されたものであり、上記のものの代わりに使用することができ、単なる例として、いくつか挙げると、アイリズム・テクノロジーズ社(サンフランシスコ、カリフォルニア州、米国)によるZio;フォース・フロンティア社(オースティン、テキサス州、米国)によるFrontier X2、ビバリンク・メディカル社(キャンベル、カリフォルニア州、米国)によるウェアラブルが挙げられる。本明細書で論じられた上記及び他のウェアラブルは、本明細書に記載の方法で使用するのに適したウェアラブルの非包括的列挙である。使用されるべき具体的なウェアラブルは、心臓リズムを測定すること(例えば、心臓リズムを求めることができるシグナル及び/又はデータを生成すること)が可能である限り、重要ではない。使用されるウェアラブルは、本明細書に記載されているような必要な期間(例えば、ベースラインを求めるのに必要な期間、薬物療法中のモニタリングに必要な期間など)、連続的又は半連続的に、当該ウェアラブルを装着した患者の心臓リズムを測定することが可能であるべきである。さらに、ウェアラブルは、患者が当該ウェアラブルを必要な期間着用及び/又は装着するのに充分に小さく、且つ/又は、充分に快適であるべきである。
【0091】
方法論
本開示の方法により、担当臨床医は、適格患者を識別し、及び/又は適格患者を薬物療法で治療することができ、さらに、一定期間に亘ってモニターされた心臓リズムデータに基づいて当該治療法の有効性を評価することができる。期間は長期の期間であってもよく、数週間単位で、数か月間単位で、及び/又は数年間単位で測定される場合がある。モニタリングは、心臓リズムデータをモニターすること、及び/又は、上記心臓リズムデータを用いて患者のAFibの状態を決定すること、を含む場合があり、AFibの状態は、上記期間に亘る、患者のAFib負荷、又はAFibエピソードの回数もしくは持続期間(例えば、AFibエピソード及び/又は長期AFibエピソードの頻度)のうちの1又は複数に基づいて決定される場合がある。これは、臨床医が以下のうちの1又は複数を行えるようになることから、AFib治療における新しいパラダイムである:
患者における疾患の程度を評価する;
患者が薬物療法に適格であるかどうかを判定する;
短期的(1~6か月間)及び/もしくは長期的(6か月以降)に治療法の有効性を評価する;
治療効果を達成及び/もしくは維持するために患者に用量の調整を行う;並びに/又は
患者が上記治療に非反応性である場合、薬物療法から患者を除外する。
【0092】
それとは対照的に、従来の患者のモニタリングは、典型的には診断的な性質を有しており、例えば、典型的には2週間を超えない単一の短期間の間にホルターモニター又は等価物を用いて実施される。このような診断法では、臨床医が、せいぜい、AFibの存在を確認できるようになる程度である。ほとんどの場合、臨床医は、その後、患者に抗凝血剤を投与することとなる。あるいは、臨床医は診断された患者に薬物療法を実施することがあるが、この薬物療法はβ遮断薬及び/又はカルシウムチャネル遮断薬を用いた心拍数減少を含み得る。それでもやはり、一度診断がなされたら、従来のモニタリングは終了されるのが典型である。
【0093】
臨床研究目的でAFibの臨床評価が行われる場合、通常、外科的な挿入と、その後の外科的な除去を必要とする植込み型(侵襲的)デバイスを使用する。そのような研究は、典型的には、AFib負荷及び/又はAFib持続期間に関連した、脳卒中及びうっ血性心不全の潜在的リスクを理解するために実施される。例えば、Turakhia M.P. et al., Circ Arrhythm Electrophysiol., 2015, 8(5):1040-7などを参照されたい。場合によっては、患者をモニターするための非侵襲的な手段が使用されることもあったが、モニタリングは短期間であるのが典型である。例えば、Go, et al., JAMA Cardiology, 2018, 3(7):601-608を参照されたい。しかしながら、このような臨床評価では、ブディオダロンを患者に送達した後、長期間に亘ってこの薬剤の患者のAFib負荷又は長期AFibエピソードに対する効果を評価し、所望により、望ましい治療効果を達成するように患者の用量を調整する方法の検討を行うことができなかった。
【0094】
患者の心拍数を限定する薬剤を使用するAFibを治療するための従来のプロトコルとは異なり、本明細書に記載の方法は、脳卒中及び心不全が引き起こされる理由となっているものを低減するために、患者の心臓リズムを治療することに向けられている。心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターする能力を、長期AFibエピソードの回数と程度を制限する適切な薬剤と組み合わせることで、臨床医は、脳卒中やうっ血性心不全のリスクを著しく低減することができる。さらにまた、薬物療法開始後に患者をモニターすることにより、臨床医は、今では、薬剤の有効性を評価し、必要に応じて用量を調整することで全体的有効性を増強する、又は、そのような治療法に対して非反応者である患者を識別し、その患者を治療法から除外することができる。
【0095】
このアプローチの1つの実施形態が
図1に示されており、
図1は、患者を評価し、患者をブディオダロン療法に適格とし、適格な患者を治療するための反復プロセスを図式化している。
図1では、例示的な、発作性及び/又は持続性AFibと診断された患者コホートが、AFib負荷について評価を受けている。適切なAFib負荷を示している者(星印の判定点で「はい」)、この場合では5%以上、 しかし、このAFib負荷は2.5%などの異なる閾値であってもよく、且つ/又は、適格性評価プロセスを続行するために患者及び/もしくはコホートに特有の閾値が選択されてもよく、一方、この閾値を満たせない者は除外される(星印の判定点で「いいえ」)。患者は、AFibエピソードの持続期間について評価されてもよい。この特定の実施形態では、患者はさらに、1か月間の期間中に5時間より長く続くAFibエピソードを少なくとも1回、及び/又は、1か月間の期間中に1時間より長く続くAFibエピソードを2回以上、示しているならば、ブディオダロン療法に適格であるとされる(星印の判定点で「はい」)。これらの評価基準をいずれも満たせない患者は、脳卒中やうっ血性心不全のリスクが非常に低いと思われるため、除外される(星印の判定点で「いいえ」)。適格な患者にはブディオダロンの漸増用量レジメンが実施され、このレジメンは、長期AFibエピソードを含むAFibエピソードを顕著に低減することが示されており、定義によれば、AFib負荷が低減されている。ブディオダロンの代わりに、及び/又はブディオダロンに加えて、ブディオダロンに類似した挙動を示す他の薬剤が本明細書に記載の方法で使用されてもよい。
【0096】
図1の反復的プロセスでは、ブディオダロンが、長期AFibエピソードの治療において効果的であるかどうか、及び/又は、どの用量で効果的であるかを評価するために、漸増レジメンが採用されている。AFib負荷並びに/又は長期AFibエピソードの回数及び持続期間が患者によって異なることを考えると、ブディオダロンの用量が異なると、それが効果的である患者も異なり得る。しかし、これまでは、初回投与にブディオダロンを処方する臨床医は、その用量が効果的であるかどうかが分からなかった。
図1及び下記の実施例に従って、本明細書に記載の方法により、臨床医は、初回投与における有効性を評価し、並びに/又は、治療効果が達成されるまで、及び/もしくは、患者が非反応者であると見なされるまで、反復的プロセスの漸増及び/もしくは漸減プロトコルで、用量を調整することができる。このような非反応者については、ブディオダロン療法から除外される。
【0097】
漸増レジメンでは、患者はまず低い用量で投与され、患者が非反応性である、且つ/又は、反応が不充分である(例えば、プラス印で「いいえ」)場合、用量が増加され得る。患者は、最大用量に対し反応しないならば、非反応性と判定してよい。漸減レジメンが、追加として、又は代替として、採用されることがあり、漸減レジメンでは、最も高い用量のブディオダロンが患者に投与され、有効性が決定されて、用量の漸減が行われる。漸減プロトコルの1つの利点は、非反応者を、最後にではなく、最初の反復で判定できる点である。しかし、漸増プロトコルには、最初に最低有効薬量を見つけ、及び/又は、副作用のリスクを低減できるという利点があり得る。
【0098】
1つの実施形態では、ブディオダロンによる患者の治療は、長期AFibエピソードの回数及び/もしくは頻度の減少をもたらす場合があり、且つ/又は、AFib負荷の低減をもたらす場合がある。これは、心拍数を減少させるが、AFibエピソード 持続期間及び/又はAFib負荷をほとんど低減できない薬剤とは対照的である。AFib負荷及び長期AFibエピソードは別個のものである。AFib負荷に関しては、患者における各AFibエピソードの回数及び持続期間が測定されて、AFib負荷が求められる。非常に短期間であっても充分な回数のAFibエピソードを有する患者は、頻度の低い長期AFibエピソードを有する患者よりも、より高いAFib負荷に割り当てられる場合がある。それ故、所与の24時間の期間中に持続期間がそれぞれ45分間である8回のAFibエピソードを有する患者は、AFib負荷25%(6時間/24時間)に割り当てられるだろう。それと対照的に、24時間の期間中に5時間持続するAFibエピソードを1回有する患者は、AFib負荷20.8%に割り当てられるだろう。しかし、後者の1回のAFibエピソードを有する患者は、前者の患者よりも脳卒中のリスクが高い場合がある。したがって、2.5%未満のAFib負荷を有する患者は、長期AFibを有する可能性が非常に低く、そのため、ブディオダロン治療に不適格と判定され得る。
【0099】
またさらに、患者を発作性AFibから持続性AFibへ、又は持続性AFibから永続性AFibへ移行させることは、不要な疾患増悪を示す場合があるため、望ましくない場合がある。ブディオダロンは長期AFibの程度及びAFibエピソードの回数を低減するため、これらの低減の組み合わせは、当該疾患の進行を阻止し、場合によっては、このような移行が元に戻ることがある。
【0100】
比較として、抗凝血剤によるAFibの治療は、AFibの原因に対処してはおらず、AFib負荷に伴う、並びに/又は、中期間AFibエピソード及び超長期AFibエピソードに伴う潜在的な懸念を減らしていない。さらに、抗凝血剤の使用は、患者の、発作性AFibから持続性AFibへの進行、又は持続性AFibから永続性AFibへの進行を抑制しない。またさらに、抗凝血剤の使用は、死に至る出血などの、出血に伴う別の一連の問題をもたらす。
【0101】
以上のことから、本開示によれば、このような長期エピソードを調節することが意図された薬剤の有効性を評価するために、患者の心臓リズムが長期間に亘ってモニターされる場合がある。ホルターモニターなどのデバイスを使用することで、短期間(例えば、1日間、2日間、又は3日間、最大で14日間)に亘って患者の心臓リズムをモニターすることができるが、このようなモニタリングでは、長期間(例えば、数週間又はそれ以上)に亘る、患者のAFib、及び/又は、薬剤治療のAFibエピソードの回数及び持続期間に対する影響についての包括的且つ常時の解析を達成することはできない。このような短期解析では、診断的解析が達成されるのみであり、治療的解析が達成されることはなく、患者の心臓の健康状態に関する全体像を把握することができない。AFibの不規則に変化し続ける性質と、患者ごとのばらつきにより、患者のAFibの正確な測定は、1か月間超、3か月間超などの長期間に亘ってモニターすることによってのみ得ることができる。
【0102】
薬物療法
担当臨床医が、有意義な長期的な平均を表す静的な数字に基づくことで、患者を評価できる状態は多く存在する。例えば、糖尿病では、3か月間のヘモグロビンA1C値(HbA1C検査とも称され、これは血液検査である)が、1日平均血糖値の優れた指標となる。また、肝機能、前立腺の健康状態、甲状腺の健康状態なども全て、臨床医に有意義な情報を与える特定の数字に基づいて評価することができる。
【0103】
発作性及び/又は持続性AFibの治療を行っている臨床医は、ECG(心電図)及び/又はホルターモニターなどの、患者の心臓リズムの短期間モニタリングに頼らなければならなかった。しかし、そのような短期間モニタリングでは、より長い期間に亘ってモニターすることでしか得られない重要なデータポイントを見逃すおそれがある。これにより、臨床医は、患者における薬剤の有効性をモニターするための手段がない薬物療法を避ける場合がある。むしろ、AFibと診断された患者は、抗凝血剤などの、症状及び/又はリスクを低減する治療を受ける場合がある。しかし、抗凝血剤は血餅が関連した脳卒中のリスクを低減する(例えば、AFibから生じる血餅)一方、それに対応して、出血を制御できないリスクが増大し、これは死に至る可能性がある。
【0104】
AFibの治療には、ソタロール、並びにβ遮断薬及びカルシウムチャネル遮断薬などの医薬品が用いられてきた。カルシウムチャネル遮断薬の例としては、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、及びベラパミルが挙げられる。β遮断薬の例としては、アセブトロール、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、及びプロプラノロールが挙げられる。アミオダロンなどの、複合的な作用機序をもつ薬剤も存在する。アミオダロンは長い半減期を有しており、慢性使用後のアミオダロンの蓄積は、肺、肝臓、及び眼球作用を含む様々な毒性と関連しており;アミオダロンの使用には、不可逆的で潜在的に致死性の合併症の早期徴候を検出するために、レシピエントの厳重な監督が必要とされる(例えば、Wolkove N, Baltzan M., “Amiodarone pulmonary toxicity,” Canadian Respiratory Journal 16(2): 43-8 , 2009を参照されたい)。
【0105】
ブディオダロンは、複合的な作用機序をもつ薬剤であるが、QT間隔の著しい増加を引き起こすことなく、長期AFibエピソードを減少させることが示されている。ブディオダロンには、意図的にアミオダロンに似せた、心臓イオンチャネル作用パターンがあり、後期Na+チャネル遮断が強化されている。ブディオダロンの意図的に変更された代謝は、半減期をアミオダロンよりもかなり短くしているが、アミオダロンに見られる蓄積に関連した毒性の回避と、中止の数時間から数日以内での完全な不活性化及び身体からの排出と、を可能にしている。半減期が短くされてることで、投薬開始の2~3日間以内に定常状態の血中レベルを速やかに達成することができ、有効性に関する利用可能なリアルタイム情報(例えば、AFib負荷及び/又は長期AFibエピソードにおける変化及び/又は低減)があれば、必要に応じて用量を効率的に調整し、対象ごとに最小有効量を確立することができる。実際に、長期AFibエピソードは脳卒中及び/又はうっ血性心不全に繋がるおそれがある血餅形成の実質的な原因であることから、ブディオダロンはAFibの治療における重要な進展である。しかし、AFibは一様ではない疾患であり、患者ごとに異なり、一部の患者は、他の患者と比較した場合に、治療上有効であるために異なる用量のブディオダロンを必要とする。
【0106】
所望の結果を達成するための薬剤
前述したように、薬剤の有効性を評価できるような方法で患者をモニターできないことが、薬剤介入の大きな欠点であった。このことで、臨床医は、率先した薬剤介入の代わりに、抗凝血剤及び/又はリスク低減処置の使用を選ぶようになっていた。
【0107】
本明細書に記載のウェアラブル及び方法は、発作性AFib及び持続性AFibの治療における薬剤の長期間の有効性を求めるのに充分なデータを臨床医に継続的に提供する。したがって、長期AFibを制御し、且つ/又は、AFib負荷を低減できる薬剤を用いて、ウェアラブルによって生成されたデータを統合する方法は、当該技術分野における長年のニーズである、AFibのより効果的な治療が可能になり得る。さらに、薬剤の長期の有効性を決定できると、長期AFibエピソードに対する効果的な制御を達成するために患者の用量を調整することも可能になる。
【0108】
ブディオダロンを使用する治療レジメン
ブディオダロンは、患者の長期AFibエピソードを減少させることで、脳卒中及びうっ血性心不全のリスクを低減することが示されている。しかし、ブディオダロンを用いて、長期AFibエピソードの回数及び持続期間の頻度が異なる幅広い患者に対し治療を達成するには、臨床医が所与の用量における有効性についてそれぞれの患者をモニターすることが必要となる。このようなものは、ブディオダロンで治療可能な疾患に対する個別化医療アプローチを示している。
【0109】
患者がその用量で非反応性である場合、投与量の増加が正当とされ、患者が所与のより高い用量では反応性である、又は非反応性であることが判定されるまで、そのプロセスは繰り返される。試験された全ての用量で非反応性である患者はブディオダロン療法から除外される。
【0110】
またさらに、発作性又は持続性AFibのいずれかを有し、且つ、疾患を治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である患者が、本明細書に記載の方法及び手順の候補であってもよい。そのような患者は、ベースラインAFib負荷並びに/又は長期AFibエピソードの回数及び程度を求めることによって、治療のためのスクリーニング(適格性評価)を受けてもよい。患者のベースラインはまた、ブディオダロン療法に基づいたこれらの症状における相対的な低減及び/もしくはこれらの症状の完全な消失を評価するために、並びに/又は、患者をブディオダロン療法に対する非反応者として識別するために、使用されてもよい。したがって、発作性又は持続性AFibを有し、AFibを治療するための1又は複数の前治療法に不応性である患者を治療する方法は、
a)AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である患者を選抜すること;
b)長期AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度を特定することであって、特定された回数及び程度は、臨床医が上記患者をブディオダロン治療に適格とするための基準を満たす;
c)上記患者にウェアラブルを装着することであって、上記ウェアラブルは以下を備える:
i)ウェアラブルが装着された場合に、患者の心臓リズムを連続的又は半連続的にモニターする、少なくとも1つの電極及び/又は光センサ;
ii)上記心臓リズムデータを収集し保存するCPU;及び、
iii)上記CPU内の上記データにアクセスするように構成された送信構成要素であって、臨床医に対して直接的又は間接的に通信を開始することができる、送信構成要素;
d)臨床医に直接的又は間接的に心臓リズムデータを収集及び送信し、長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について上記データを評価させること;
e)所望により、上記患者に適切な用量を決定するために、ブディオダロンの用量を調整すること;並びに
f)上記患者がブディオダロン療法に対して反応性である、又は反応性ではないことを、上記収集されたデータが示すかどうかを評価すること;
を含む場合があり、
上記治療法を、反応性患者の場合は維持し、非反応性患者の場合は終了させる。
【0111】
治療された患者における長期AFibエピソードの回数を減少させるために処方された所与の用量の薬剤の有効性を確かめるのに充分な情報がないため、臨床医は、特に患者や疾患それ自体にばらつきがあることを考えると、そのような薬剤投与を必然的に避けることになる。さらに、多くの臨床医は、心拍数を治療する(減少させる)ことが、適切なAFibの治療法であると考えており、所望により抗凝血剤が併用される。例えば、Atrial Fibrillation-Treatment, https://www.nhs.uk/conditions/atrial-fibrillation/treatment/ where, in 2021を参照されたい。この著者は、AFibを治療するための適切なアプローチの一部として心拍数の調節を行っていた。総じて、長期間に亘る所与の用量のブディオダロンに対する患者の反応に関するデータを生成できるウェアラブルの使用は想定されていなかった。今では、本明細書に記載の方法により、臨床医は、患者の心臓リズムデータを、少なくとも2週間に亘って、少なくとも1か月間に亘って、少なくとも3か月間に亘って、及び/又は少なくとも6か月間に亘って、さらに、潜在的には患者の残りの人生の間、評価し、長期AFibエピソードの回数及び/又は持続期間を決定することができ;その決定に基づき、当該患者にブディオダロン療法を行うべきかどうかを評価することができ;行なうべきである場合、様々な用量のブディオダロンに対する患者の反応を評価することができる。
【0112】
1つの実施形態では、実施例及び
図1で説明されているが、例えば、臨床医は、ブディオダロンの投与を約200mg、1日2回(bid)という最小値で開始した後、当該用量が長期AFibエピソードをなくすのに有効であるかどうかを評価してもよい。臨床医は、初期投与レベルにおけるデータを精査し、用量調整を1回以上、例えば、患者から、長期AFibエピソードが実質的になくなる、及び/又は、長期AFibエピソードがなくなる用量に到達するように必要に応じて、行うことができる。通常、投薬における増分は、約200mgの1日2回であり得る。そのため、このアプローチでは、投薬は、約200mg、1日2回から、約400mg、1日2回まで、又は約600mg、1日2回までなど、最大約800mg、1日2回まで変更することができ、可能性として、担当臨床医が用量を高くすることに利益があると判断すれば、さらに高くすることもできる。
【0113】
システム
本明細書に記載の方法は、心臓リズムデータを記録し、保存し、送信することができるウェアラブルなどの単一式デバイスで行うことができる。しかし、複数のデバイスからなるシステムも使用することができ、ただし、そのようなシステムは以下を備えるものである:
a)発作性心房細動及び/又は持続性心房細動のいずれかと診断された患者から心臓リズムデータを収集するウェアラブル;
b)上記データを収集し保存する上記ウェアラブルと通信しているCPU;並びに、
c)上記CPUと通信し、上記データを1又は複数の指定の受信者に直接的及び/又は関節的に送信する送信デバイス。
【実施例】
【0114】
下記の実施例において、また本明細書において、以下の略語は以下の意味を有する。略語が未定義である場合、その通常の医学的意味を有するものとする。
AFib又はAF=心房細動
Bid又はb.i.d=1日2回
bpm=拍/分
hrs=時間
mg=ミリグラム
PPG=フォトプレチィスモグラフィ
SD=標準偏差
【0115】
実施例1は、ウェアラブルの使用により、患者の連続的なモニタリング中にAFibエピソードを検出できることを示すために提供される。
【0116】
実施例2~7は、本明細書に記載の方法におけるブディオダロンの有用性を確立するものである。これらの実施例において、患者は全て外科的に埋め込まれたペースメーカーを有したため、それに関連するいくつものリスクを抱えていた。例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される、Pacemaker, https://www.mayoclinic.org/tests-procedures/pacemaker/about/pac-20384689(最終アクセス:2022年10月26日)を参照されたい。
【0117】
実施例1:継続的に患者におけるAFibを検出するウェアラブル
本実施例では、非永続性AFibを患う男性患者は、フィリップス・バイオサイエンス社(ベスト、オランダ)によって販売され、合衆国における法規により市販されている、MCOTウェアラブルデバイスを装着される。このMCOTデバイスは、心臓リズム及びAFibを評価するためのアルゴリズムと組み合わされたPPGを採用している。MCOTデバイスは専用のコンピューターに心臓リズムとAFibのデータを無線且つシームレスに提供するように構成される。
【0118】
患者は23.5時間の期間に亘って連続的にモニターされた。期間全体に亘って、MCOTデバイスは患者の心臓リズムと心拍数を測定した。
図2は、モニタリング期間中に得られた心拍動曲線を提供している。注目すべきことに、33の分離したAFibエピソードが検出及び記録され、それぞれは洞調律の期間又は他の不整脈の期間によって隔てられていた。心拍動曲線の解析の具体的詳細は以下の通りである:
AFibエピソードの回数 33回
最長のAFib期間 3時間2分
心拍数(最小値/最大値) 48/94拍/分
AFib負荷 36%
上記データにより、本明細書に記載されているようなウェアラブルが、患者の心臓リズムを連続的にモニターすることが可能であり、AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度の詳細な解析を提供したことが示された。
【0119】
実施例2:ブディオダロンによる長期AFibの除去
本実施例は、長期AFibエピソード(24時間超)を以前に示した発作性又は持続性AFibを有する6人の患者を治療する場合の、ブディオダロンの臨床試験評価である。本実施例では、患者の心臓リズムがペースメーカーで2週間の期間に亘り連続的にモニターされ、様々な用量のブディオダロンで治療された。本実施例の目的は、ブディオダロンが24時間を超えて持続する長期AFibを低減するかどうかを確認することである。様々な用量とこの評価の結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0120】
上記の結果は、ブディオダロンが、全ての投与量レベルにおいて、ベースラインと比較して、24時間より長く持続する長期AFibエピソードの70%超を排除し、200mgを1日2回、600mgを1日2回、及び800mgを1日2回の処置レベル間の差異はわずかであったことを示している。対照的に、ベースラインの結果と休薬の結果は共に、24時間より長く持続する長期AFibエピソードの存在を示している。これらの結果は、AFib負荷(2週間に亘ってのエピソードの回数 エピソードの平均持続期間)における顕著な低減(64%超の低減)も示している。この低減は、患者が発作性AFibから持続性AFibへ移行する、又は持続性AFibから永続性AFibへ移行するリスクの低減とよく相関している。
【0121】
実施例3:12週間に亘っての超長期AFib(24時間超)の除去
本実施例は、長期AFibエピソード(24時間超)を以前に示した発作性又は持続性AFibを有する6人の患者を治療する場合の、ブディオダロンの臨床試験評価である。本実施例では、患者の心臓リズムが(外科的侵入手法)ペースメーカーで12週間の期間に亘り連続的にモニターされ、様々な用量(各2週間)のブディオダロンで治療された。加えて、本試験の間、患者は、連続的なモニタリングと、臨床医による常時監視の下に置かれた。
【0122】
本実施例の目的は、ブディオダロン治療が、臨床試験設定において、心臓リズムを評価するためにペースメーカー使用して、超長期間AFib(24時間より長く持続するAFibエピソード)を低減できるかどうかを確認することである。本解析の結果を下記の表4に示す。
【表4】
【0123】
「回数」は、超長期AFibエピソード(すなわち、24時間を超える持続期間を有する)の回数を示している。「持続期間」は、2週間の間で、上記超長期間に費やされた時間量を、時間単位とベースライン測定値に対する割合単位で示している。上記の結果に従って、200mg、1日2回は、24時間を超えて持続するAFibエピソードの回数を排除することによる本試験で全ての患者を治療するのに充分であった。この場合、200mg、1日2回のブディオダロンという用量がこれらの長期AFibエピソードを排除するのに充分であったため、用量漸増は患者の有効性を改善するために不要であった。
【0124】
実施例4:12週間に亘っての長期AFib(5時間超)の低減
本実施例は、長期AFibエピソード(5時間超)を以前に示した発作性又は持続性AFibを有する6人の患者を治療する場合の、ブディオダロンの臨床試験評価である。本実施例では、患者の心臓リズムが(外科的侵入手法)ペースメーカーで12週間の期間に亘り連続的にモニターされ、様々な用量(各2週間)のブディオダロンで治療された。加えて、本試験の間、患者は、連続的なモニタリングと、臨床医による常時監視の下に置かれた。
【0125】
本実施例の目的は、ブディオダロン治療が、心臓リズムを評価するためにペースメーカー使用する臨床試験設定において、5時間より長く持続する長期間AFibを低減するかどうかを確認することである。本解析の結果を下記の表5に示す。
【表5】
【0126】
「回数」は、5時間を超える持続期間を有する長期AFibエピソードの回数を示している。「持続期間」は、2週間の間で、5時間を超える持続期間のAFibに費やされた時間量を、時間単位とベースライン測定値に対する割合単位で示している。本実施例では、全ての用量のブディオダロンが、5時間を超えるAFibエピソードの回数及び持続期間の両方を低減することにおいて、共に200mg、1日2回により、大きな利益をもたらし、600mg、1日2回は同様の結果をもたらしたが、400mg、1日2回の結果は、投薬なし条件よりは格別に良好であったものの、200mg、1日2回及び600mg、1日2回よりは劣っていた。そして、800mg、1日2回は最良のパフォーマンスであった。全ての用量において、5時間を超えるAFibエピソードの低減は85%以上であり、対応するAFib負荷の低減は90%以上であった。
【0127】
以前に議論された長期AFibエピソードと脳卒中及び心不全のリスクの増加との間の関連性を踏まえて(例えば、Singer, et al., Temporal Association Between Episodes of Atrial Fibrillation and Risk of Ischemic Stroke, JAMA Cardiology, 6(12):1364-1369 (2021)を参照)、次の比較例では、1時間以上のAFibエピソードの低減を測定した。
【0128】
実施例5:12週間に亘っての長期AFib(1時間超)の低減
本実施例は、長期AFibエピソード(1時間超)を以前に示した発作性又は持続性AFibを有する6人の患者を治療する場合の、ブディオダロンの臨床試験評価である。本実施例では、患者の心臓リズムが(外科的侵入手法)ペースメーカーで12週間の期間に亘り連続的にモニターされ、様々な用量(各2週間)のブディオダロンで治療された。加えて、本試験の間、患者は、連続的なモニタリングと、臨床医による常時監視の下に置かれた。
【0129】
本実施例の目的は、ブディオダロンが、心臓リズムを評価するためにペースメーカーを使用する臨床試験設定において、長期AFib(1時間を超える持続期間)を低減するかどうかを確認することである。本解析の結果を下記の表6に示す。
【表6】
【0130】
本実施例では、2週間の期間に亘る長期AFibエピソード(1時間超)の回数における大幅な減少が示される。上記のように、「回数」は2週間の期間中の長期AFibエピソードの回数を示しており、「持続期間」は長期AFibエピソードに投入された2週間の期間中の時間数を示す。
【0131】
実施例6:12週間の期間中の6分間を超えるAFibエピソードの低減
本実施例は、発作性又は持続性AFibのいずれかを有し、長期AFibエピソード(1時間超)を以前に示した6人の患者における、AFib負荷及び6分間(0.1時間)を超えるAFibエピソードの両方を低減することにおける、ブディオダロンの頑健性を示すものである。本実施例では、患者の心臓リズムがペースメーカーで2週間の期間に亘り連続的にモニターされた。患者は様々な用量(それぞれ2週間)のブディオダロンで治療された。加えて、本試験の間、患者は、連続的なモニタリングと、臨床医による監視の下に置かれた。
【0132】
本実施例の結果は表7にまとめられており、ブディオダロンが、心臓リズムを評価するためにペースメーカーを使用する臨床試験設定において、1時間より長く持続する長期AFibを低減するだけでなく、6分間(0.1時間)超のエピソードも有意に低減することを確認している。
【表7】
【0133】
「回数」は、試験期間(ベースライン(based line)として4週間、実験期間として2週間)中の、全ての試験された患者における、6分間を超えるAFibエピソードの回数を示している。「持続期間」(時間単位)は、被験患者が6分間を超えるAFibエピソードの状態にあると測定された、試験期間中の累積的な持続期間(時間単位)を示している。上記の結果は、ブディオダロンが、長期AFibエピソードの回数を減少させるだけでなく、短期AFibエピソードも減少させることで、脳卒中及び心不全に対するさらなる保護をもたらし、AFib負荷を有意に低減することを示している。
【0134】
高いCHA2DS2-VAScスコア(3以上)を有する発作性AFib患者及び持続性AFib患者の場合、6分間を超えるAFibエピソードは、脳卒中及び/又はうっ血性心不全のリスク増加に繋がる可能性がある。表7のデータは、試験された全ての用量のブディオダロンにおいて、6分間よりも長いAFibエピソードの回数が有意に減少したことを示しており、600mg、1日2回又は800mg、1日2回という高濃度では、これらのエピソードは80%超減少した。
【0135】
表8は、患者が持続期間中に6分間を超えるAFibエピソードの状態にあった、時間の分数及び1週間当たりの時間数の平均を要約したものである。AFibの状態にあった時間の割合は、600mg、1日2回及び800mg、1日2回の用量のブディオダロンの場合で、90%減少した。
【表8】
【0136】
患者における、AFibの状態にあった時間(パーセント)は、特に高いCHA2DS2-VAScスコアを有する患者の場合で、脳卒中及び/又はうっ血性心不全の危険因子に直接関連する重要なパラメーターである。表8では、200mgのブディオダロン、1日2回を使用した患者の場合で、AFib状態の時間(パーセント)に、76.7%の減少があったが、このAFib状態の時間(パーセント)は、600mgのブディオダロン、1日2回を使用した患者の場合では90%にさらに減少し、800mgのブディオダロン、1日2回を使用した患者の場合ではまたさらに94.8%に減少している。
【0137】
実施例7:12週間中の最長AFibエピソードの測定
本実施例は、6人の患者を、異なる用量のブディオダロンでそれぞれ2週間治療して、各用量で経験された、AFibエピソードの最長持続期間を測定した、臨床試験評価である。本実施例では、患者の心臓リズムがペースメーカーで2週間の期間に亘り連続的にモニターされた。様々な用量とこの評価の結果を以下の表9に示す。
【表9】
【0138】
上記の結果は、各種用量のブディオダロンで治療された患者における長期AFib(5時間以上の場合)にばらつきがあることを示している。対象4と対象5では、200mgのブディオダロン、1日2回による治療だけで、これらの患者における全ての長期AFibエピソード(5時間超)を排除するのに充分であった。しかし、対象1は、全ての長期AFibエピソード(5時間超)を排除するのに800mg、1日2回のブディオダロンを必要とし、一方、対象6は、ブディオダロンのエピソードを全て排除するのに600mgのブディオダロン、1日2回を必要とした。このデータは、長期AFibエピソードを示す発作性又は持続性AFibを有する患者を適切に治療するために、ブディオダロンの用量調整と組み合わせた患者のモニタリングが、どの程度長い期間必要となるかを確立するものである。
【0139】
実施例2~7の結果から、適切な用量のブディオダロンを使用し、それと併せて治療された患者の心臓リズムをモニターすることで、5時間を超える長期AFibエピソードの全てを低減でき、併せてAFib負荷全体を低減できることが確かめられた。この後者の結果は、患者の発作性AFibから持続性AFibへの進行又は持続性AFibから永続性AFibへの進行を、低減又は抑制できることを示している。
【0140】
本方法に従ったブディオダロンの投与は、約1%~99%のブディオダロンと、コーンスターチ、セルロース、ステアリン酸、水などの薬剤的に許容できる賦形剤、又は他の成分である残りとを含む、医薬組成物を使用して行ってもよい。医薬組成物はいかなる形態にも製剤化することができ、単なる例として、錠剤、カプセル剤、散剤、及び/又は別の経口投与用製剤;静脈内投与、筋内投与などのうちの1又は複数に好適な液剤などの非経口投与;坐剤及び/又は浣腸;皮膚用製剤及び/又は経皮製剤などのうちの1又は複数を挙げることができる。
【0141】
実施例8:ウェアラブルのプログラミング
ある実施形態では、ウェアラブルは、プログラム可能(例えば、臨床医によって、患者によって、且つ/又は、遠隔で、例えば中央解析センターによって)である場合がある。ウェアラブルは、患者の心臓リズムデータを捕捉するようにプログラムされる場合がある。そのようにして生成されたデータは、ウェアラブル上のCPUによって問い合わせ及び/もしくは解析が行われることがあり、且つ/又は、別のデバイスに送信されて、問い合わせ及び/もしくは解析が行われることがある。ウェアラブルのプログラミングの一例は、ウェアラブルを用いて、患者の心臓リズムをモニターし、そのデータを、例えば臨床医に、以下の通りに直接的及び/又は間接的に中継することを可能にし得る。
A.ユーザーインターフェース:ウェアラブルを含むAFibモニタリングシステムをプログラミングし、担当臨床医へのネットワークを介した情報に頼るためのステップ関数。
B.収集されたデータは、臨床医及び他の許可された個人がアクセスできる読み取り可能な表示形式で提供される。
C.読み取り可能な表示は、常に許可された臨床医が利用できるようにする必要があり、認可された臨床医のみが、以下のステップ1~15のうちの1又は複数を経た後の、データの保存及び/又はモニタリングシステムのリセットを許可されるべきである。
D.薬物曝露、投与量、及び患者に投与される他の薬剤は、例えばモニタリングシステムを患者の診療記録(例えば、電子医療記録)と統合することによって、必要に応じて臨床医が患者の診療記録から検索することができる。
E.手動入力が必要とされるのはステップ1~14だけであるが、ステップ14は任意(optimal)であり、臨床医が単にステップ15 手動リセットを押すことで無効にすることができる。
F.全てのデータは、担当臨床医によって閲覧後に保存されてもよく、担当臨床医は、ブディオダロンを含むAFib治療薬の投与中か休薬中かにかかわらず、過去の観察期間の統合(ステップ17)をプログラムすることの権限が与えられてもよい。
G.当該システムはユーザーフレンドリーであり、担当臨床医は毎回4つのことを行うだけで済む:1)データにアクセスするために患者又はコードを入力する、2)データ表示を閲覧する、3)所望により、ステップ14におけるブディオダロンの用量を入力する、4)手動リセットとデータ保存を押す。
H.異なる用量のブディオダロン又は薬物なしでのAFibの特性を比較するために、担当臨床医は保存されたデータにアクセスし、観察期間を統合する(ステップ17)。
【0142】
【0143】
ステップ4~13のそれぞれは、ウェアラブルのプログラミングに含めても含めなくてもよい(例えば、臨床医の自由裁量で)が、ただし、これらのステップのうちの少なくとも1つは含める。1つの実施形態では、ステップ4~7が実行され、対応するデータが収集される場合があり、ステップ8~13のうちの1又は複数は除外される場合がある。別の実施形態では、ステップ4、5、8、及び9が含められる場合があり、ステップ5、6、及び10~13が除外される場合がある。別の実施形態では、ステップ4、5、10、及び11が含められる場合があり、ステップ6、7、8、9、12、及び13が除外される場合がある。ステップ4、5、12、及び13が含められる場合があり、ステップ6~11が除外される場合がある。
【0144】
さらなる別の実施形態では、担当臨床医は、ステップ4~13のうちの1又は複数に従ってウェアラブルをプログラムする場合がある。
【表11】
【0145】
実施形態
以下に提供されるのは、ある特定の実施形態である。
【0146】
実施形態I-1
発作性又は持続性心房細動(AFib)を患う患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価する方法であって、
a)発作性又は持続性AFibを患う患者を選抜すること;
b)
i)上記ウェアラブルが上記患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に上記患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方と、
ii)上記モニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイスと、
iii)上記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素と、
を備えるウェアラブルを上記患者に装着すること;
c)長期AFibエピソードがあること、長期AFibエピソードがないこと、長期AFibエピソードの回数、及び所望によりAFib負荷の程度、のうちの少なくとも1つを示す上記データを、上記第2コンピューティングデバイスへ送信させること;並びに、
d)上記データが長期AFibエピソードの閾値回数及び/又は閾値AFib負荷の少なくとも1つを満たすという判定に基づいて、上記患者をブディオダロン療法に適格とすること;
を含む、方法。
【0147】
実施形態I-2
上記第1コンピューティングデバイスが、上記保存された心臓リズムデータを評価して、長期AFibエピソードが存在すること、及び長期AFibエピソードの回数、を決定し、それによって、上記心臓リズムデータに基づいたデータを決定するように構成されている、実施形態I-1に記載の方法。
【0148】
実施形態I-3
上記評価が連続的である、実施形態I-2に記載の方法。
【0149】
実施形態I-4
上記評価が追加として、又は代替として、半連続的である、実施形態I-2又は実施形態I-3のいずれかに記載の方法。
【0150】
実施形態I-5
上記第1コンピューティングデバイスが、上記データに基づいて、上記臨床医又は上記患者の少なくとも一方に、上記患者を脳卒中のリスクに曝す長期AFibエピソードが検出されたことを警告するようにプログラムされている、実施形態I-1~I-4のいずれかに記載の方法。
【0151】
実施形態I-6
上記患者をブディオダロン療法に適格とすることが、上記データに基づいて、上記患者が以下の評価基準のうちの少なくとも1つを満たすことを確認することを含む実施形態I-1~I-5のいずれかに記載の方法:
a)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回、又は30日間の間に少なくとも1時間のエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;
b)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回、又は30日間の間に少なくとも1時間のエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷;
c)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;
d)30日間の間に少なくとも5時間のAFibエピソードが少なくとも1回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷;
e)30日間の間に少なくとも1時間のAFibエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも2.5%のAFib負荷;又は、
f)30日間の間に少なくとも1時間のAFibエピソードが少なくとも2回に加えて、30日間の間に少なくとも5%のAFib負荷。
【0152】
実施形態I-7
上記ウェアラブルが、装着された際に身体に付着するパッチ、腕時計、リストバンド、ストラップ、リング、又はデバイスのうちの1又は複数であり、上記ウェアラブルが心臓リズムを測定し、心臓リズムデータを直接的又は間接的に上記第2コンピューティングデバイスに送信するように構成されている、実施形態I-1~I-6のいずれかに記載の方法。
【0153】
実施形態I-8
上記患者が、AFibを治療する1又は複数の他の方法に対して不応性である、実施形態I-1~I-7に記載の方法。
【0154】
実施形態II-1
発作性心房細動又は持続性心房細動(AFib)と診断された患者を治療する方法であって、
ブディオダロンを上記患者に投与すること;
を含み、
上記患者が、
識別されるべき患者にウェアラブルが装着され、上記ウェアラブルが、
上記ウェアラブルが上記識別されるべき患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に上記識別されるべき患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方;
上記識別されるべき患者のモニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
上記第1コンピューティングデバイス内の上記識別されるべき患者の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素;
を備えること;
上記識別されるべき患者のデータが上記第2コンピューティングデバイスに送信され、上記データが長期AFibエピソードがあること、いかなる長期AFibエピソードもないこと、長期AFibエピソードの回数、及び所望によりAFib負荷の程度、のうちの少なくとも1つを示すこと;並びに、
上記データが長期AFibエピソードの閾値回数及び/又は閾値AFib負荷の少なくとも1つを満たしたという判定をなすこと;
に基づいてブディオダロン治療の対象として識別され:
上記ブディオダロン治療の対象として識別された患者を、ブディオダロン反応性AFibを有すると判定する、
方法。
【0155】
実施形態II-2
上記ブディオダロンの対象として識別された患者が、AFibを治療する1又は複数の他の方法に対して不応性である、実施形態II-1に記載の方法。
【0156】
実施形態III-1
ブディオダロン療法の適格患者が、ブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又は、ブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価する方法であって、
a)上記適格患者を選抜することであって、上記適格患者が、
ある用量のブディオダロン又はブディオダロンを含む医薬組成物による治療を含むブディオダロン療法を受けており;
以下を備えるウェアラブルを装着されること:
i)上記ウェアラブルが装着された場合に、連続的又は半連続的に上記適格患者の心臓リズムをモニターするように構成された、電極又は光センサの少なくとも一方;
ii)上記モニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
iii)上記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信するように構成された送信構成要素;
c)上記第2コンピューティングデバイスへと心臓リズムデータを収集及び送信させることであって、上記第2コンピューティングデバイスが、上記心臓リズムデータを、長期AFibエピソードの存在及び回数、並びにAFib負荷の程度について評価するように構成されていること;
d)所望により、上記患者に適切な用量を評価するために、ブディオダロンの用量を調整すること;並びに
e)上記収集された心臓リズムデータから、上記患者がブディオダロン療法に対して反応性であるか、部分的反応性であるか、又は反応性ではないかを評価すること;
を含み、
上記療法を、反応性患者の場合は維持し、部分的反応性患者の場合は調整し、非反応性患者の場合は終了させる、
方法。
【0157】
実施形態III-2
上記ブディオダロンの用量が少なくとも約200mgを1日2回である、実施形態III-1に記載の方法。
【0158】
実施形態III-3
上記ブディオダロンの用量が約200mgを1日2回~約800mgを1日2回である、実施形態III-1~III-2のいずれかに記載の方法。
【0159】
実施形態III-4
上記ブディオダロンの用量が約200mgを1日2回、約400mgを1日2回、600mgを1日2回、及び約800mgを1日2回から選択される、実施形態III-3に記載の方法。
【0160】
実施形態III-5
ブディオダロンが医薬組成物として投与される、実施形態III-1~III-4のいずれかに記載の方法。
【0161】
実施形態III-6
上記ウェアラブルによるモニタリングが、反応性患者の場合に維持されて、上記患者が反応性のままであることが確認される、実施形態III-1~III-5のいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態III-7
最初はブディオダロンに反応性であるが、後に非反応性になる上記患者が、ブディオダロンの用量調整を受け、ただし、上記用量調整が上記患者をブディオダロン反応性の状態に戻せなかった場合、上記患者はブディオダロンによる治療から除外される、実施形態III-6に記載の方法。
【0163】
実施形態III-8
上記反応性患者が、上記患者をブディオダロンによる治療に適格と識別するレジストリに登録され、上記レジストリ内にリストアップされることがブディオダロン投与のための要件である、実施形態III-1~III-7のいずれかに記載の方法。
【0164】
実施形態III-9
上記ウェアラブルによって生成されたデータが、長期AFibの有無、及び所望により上記患者に対するAFib負荷の程度を評価することができる臨床医に直接的又は間接的に送信される、実施形態III-1~III-8に記載の方法。
【0165】
実施形態III-10
上記データが最初に遠隔実験室に送信され、そこで適格な医療従事者が上記データを解析する、実施形態III-9に記載の方法。
【0166】
実施形態III-11
上記適格医療従事者が、上記患者がブディオダロンによる治療に適格であることを確認して担当臨床医に情報を提供し、情報が、
上記患者が適格であることを上記従事者が確認したこと;及び、
上記従事者によって作成されたデータ、又はなされた解析のうちの1又は複数;
を示す、実施形態III-10に記載の方法。
【0167】
実施形態III-12
患者が所与の用量のブディオダロンによる治療に対し反応性 かどうかを上記適格医療従事者が判定し;
上記患者が現在は非反応性であると上記適格医療従事者が判定した場合、上記従事者が、
上記患者の反応性を回復させるために上記患者に用量調整を受けさせることの推奨;又は、
上記非反応性となった患者が最大処方量で治療されている場合、上記患者のブディオダロンによる治療を終了させることの推奨;
のうちの1又は複数と共に、上記判定を担当臨床医に提供する、
実施形態III-10~III-11のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態III-13
上記収集された心臓リズムデータの評価が、ブディオダロン投与開始又はブディオダロン用量調整開始の少なくとも3日後に収集を始めた心臓リズムデータを評価することを含む、実施形態III-1~III-12のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態III-14
上記収集された心臓リズムデータの評価が、ブディオダロン投与開始又はブディオダロン用量調整開始の少なくとも14日後に収集を始めた心臓リズムデータを評価することを含む、実施形態III-1~III-13のいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態IV-1
患者が発作性AFibから持続性AFibへ、又は持続性AFibから永続性AFibへ進行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを上記患者にある用量で投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて上記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その用量調整の結果、発作性AFibから持続性AFibへの、又は持続性AFibから永続性AFibへの進行のリスクを低減させること;並びに、
上記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【0171】
実施形態IV-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれかに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-14のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること、
のうちの1又は複数を含む、実施形態IV-1に記載の方法。
【0172】
実施形態V-1
発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における心不全のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを上記患者にある用量で投与すること;
上記用量の投与の有効性をモニターし、所望により上記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における心不全のリスクを低減させること;並びに、
上記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【0173】
実施形態V-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれか1つに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-14のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること;
のうちの1又は複数を含む、実施形態V-1に記載の方法。
【0174】
実施形態VI-1
発作性AFib又は持続性AFibと診断された患者における脳卒中のリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性又は持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを上記患者にある用量で投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて上記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における脳卒中のリスクを低減させること;並びに、
上記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【0175】
実施形態VI-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれか1つに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-15のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること;
のうちの1又は複数を含む、実施形態VI-1に記載の方法。
【0176】
実施形態VII-1
AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である、発作性又は持続性AFibを有する患者を治療する方法であって、
a)AFibを治療するための1又は複数の前方法に対して不応性である患者を選抜すること;
b)上記患者における長期AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度を特定すること;
c)上記長期AFibエピソードの回数及びAFib負荷の程度に基づいて、上記患者をある用量におけるブディオダロン治療に適格とすること;
d)上記患者に以下を備えるウェアラブルを装着すること:
i)上記ウェアラブルが上記患者に装着された場合に、連続的又は半連続的に上記患者の心臓リズムをモニターする、電極又は光センサの少なくとも一方;
ii)上記患者のモニターされた心臓リズムに基づいて心臓リズムデータを収集し保存するように構成された第1コンピューティングデバイス;及び、
iii)上記第1コンピューティングデバイス内の心臓リズムデータに基づいたデータを、臨床医がアクセス可能な第2コンピューティングデバイスに送信できるように構成された送信構成要素;
e)上記心臓リズムデータに基づいたデータの収集及び送信を、上記第2コンピューティングデバイスに対して行い、そこで、上記データを、長期AFibエピソードの存在及び数、並びにAFib負荷の程度について評価すること;
f)所望により、上記患者に適切な用量を評価するために、上記患者に対するブディオダロンの投与を調整すること;並びに
g)上記収集された心臓リズムデータが、上記患者がブディオダロン療法に対して反応性であること、又は非反応性であることを示しているかどうかを評価すること;
を含み、
上記療法を、反応性患者の場合は維持し、非反応性患者の場合は終了させる、
方法。
【0177】
実施形態VII-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれか1つに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-15のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること;
のうちの1又は複数を含む、実施形態VII-1に記載の方法。
【0178】
実施形態VIII-1
発作性AFibを有する患者が持続性AFibに移行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、発作性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを上記患者にある用量で投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて上記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における上記移行のリスクを低減させること;並びに、
上記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【0179】
実施形態VIII-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれか1つに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-15のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること;
のうちの1又は複数を含む、実施形態VIII-1に記載の方法。
【0180】
実施形態IX-1
持続性AFibを有する患者が永続性AFibに移行するリスクを低減するための方法であって、
少なくとも2.5%のAFib負荷を有すると共に、4週間の間に少なくとも1回の長期AFibエピソードがある、持続性AFibを有する患者を識別すること;
ブディオダロンを上記患者にある用量で投与すること;
上記投与の有効性をモニターし、所望により、必要に応じて上記用量を調整することで、AFib負荷及び長期AFibのいずれか又は両方の低減を達成し、その結果、上記患者における上記移行のリスクを低減させること;並びに、
上記患者のモニタリングを維持し、ブディオダロンの有効性の継続を確認すること;
を含む、方法。
【0181】
実施形態IX-2
追加として、又は代替として、
実施形態I-1~I-8のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法に適格であるかどうかを評価すること;
実施形態II-1~II-2のいずれか1つに従って、上記患者を治療すること;又は、
実施形態III-1~III-15のいずれかに従って、上記患者がブディオダロン療法の用量調整を受けるべきか、又はブディオダロン療法に不適格とされるべきかを評価すること;
のうちの1又は複数を含む、実施形態IX-1に記載の方法。
【国際調査報告】