(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】MUC16キメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250204BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250204BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250204BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250204BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250204BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250204BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250204BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250204BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20250204BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250204BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20250204BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250204BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250204BHJP
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A61P 1/02 20060101ALI20250204BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20250204BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20250204BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20250204BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20250204BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20250204BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250204BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250204BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250204BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20250204BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K35/17
A61K45/00
A61K35/768
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P21/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P5/14
A61P13/12
A61P1/18
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P11/00
A61P17/00
A61P1/16
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/10
C07K14/705
C07K16/30
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/0783
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541179
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 US2023010518
(87)【国際公開番号】W WO2023133358
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ, ジェフリー ブラックバーン
(72)【発明者】
【氏名】ディリロ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アルバーシャート, ティナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB092
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4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C087AA01
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4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA67
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、MUC16を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞、及び癌を治療するためのこれらの組成物の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトMUC16ポリペプチドの一つ又は複数のエピトープに結合する抗MUC16抗体又はその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン、一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記MUC16抗体又はその抗原結合断片が、全長MUC16ポリペプチドのタンパク質分解切断後に、細胞表面上に残っているMUC16の膜近位断片に結合する、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
タンパク質分解切断後に前記細胞表面上に残っているMUC16の前記断片が、配列番号151を含む、請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
前記全長MUC16ポリペプチドが、N末端からC末端まで1~16と番号付けされた16のウニ精子、エンテロキナーゼ及びアグリン(SEA)ドメインを含み、MUC16の前記断片がSEAドメイン12~16を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項5】
前記ヒトMUC16ポリペプチドに結合する前記抗MUC16抗体又は抗原結合断片が、Fab’断片、F(ab’)2断片、二重特異性Fab二量体(Fab2)、三重特異性Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ラクダIg、VHH、Ig NAR、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)又はその断片からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項6】
前記ヒトMUC16ポリペプチドに結合する前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片がscFvである、請求項1~5のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項7】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項8】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号47、59、71、83、95、107、119、133、もしくは145のいずれか一つにおいて示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項9】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項10】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号48、60、72、84、96、108、120、134、もしくは146のいずれか一つにおいて示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項11】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号1~3のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項12】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、(a)配列番号41~43、(b)配列番号53~55、(c)配列番号65~67、(d)配列番号77~79、(e)配列番号89~91、(f)配列番号101~103、(g)配列番号113~115、(h)配列番号127~129、又は(i)配列番号139~141のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項13】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号4~6のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項14】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、(a)配列番号44~46、(b)配列番号56~58、(c)配列番号68~70、(d)配列番号80~82、(e)配列番号92~94、(f)配列番号104~106、(g)配列番号116~118、(h)配列番号130~132、又は(i)配列番号142~144のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項15】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号7と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変軽鎖アミノ酸配列を含む、又は配列番号7を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項16】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号47、59、71、83、95、107、119、133、もしくは145のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変軽鎖アミノ酸配列を含む、又はそれらのいずれか一つを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項17】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号8と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変重鎖アミノ酸配列を含む、又は配列番号8を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項18】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号48、60、72、84、96、108、120、134、もしくは146のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変重鎖アミノ酸配列を含む、又はそれらのいずれか一つを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項19】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドからである、請求項1~18のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項20】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD45、PD1、及びCD154からなる群から選択されるポリペプチドからである、請求項1~18のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項21】
前記膜貫通ドメインがCD8αからである、請求項1~18のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項22】
前記膜貫通ドメインが、配列番号154の配列を含む、請求項21に記載のCAR。
【請求項23】
前記一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からである、請求項1~22のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項24】
前記一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、CD134、及びCD137(4-1BB)からなる群から選択される共刺激分子からである、請求項1~22のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項25】
前記一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインがCD137(4-1BB)からである、請求項1~22のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項26】
前記共刺激シグナル伝達ドメインが、配列番号155の配列を含む、請求項25に記載のCAR。
【請求項27】
前記一次シグナル伝達ドメインがCD3ζからである、請求項1~26のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項28】
前記一次シグナル伝達ドメインが、配列番号156の配列を含む、請求項27に記載のCAR。
【請求項29】
ヒンジ領域ポリペプチドをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項30】
前記ヒンジ領域ポリペプチドが、CD8αのヒンジ領域を含む、請求項29に記載のCAR。
【請求項31】
前記ヒンジ領域ポリペプチドが、配列番号153の配列を含む、請求項30に記載のCAR。
【請求項32】
シグナルポリペプチドをさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項33】
前記シグナルポリペプチドが、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体2(GM-CSFR2)シグナルポリペプチド、Igκシグナルポリペプチド、又はCD8αシグナルポリペプチドを含む、請求項32に記載のCAR。
【請求項34】
前記シグナルポリペプチドがCD8αシグナルポリペプチドを含む、請求項33に記載のCAR。
【請求項35】
前記シグナルポリペプチドが配列番号152の配列を含む、請求項34に記載のCAR。
【請求項36】
前記可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項37】
前記可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間の前記ポリペプチドリンカーが、配列番号14~25のいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項36に記載のCAR。
【請求項38】
前記可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間の前記ポリペプチドリンカーが、配列番号24において示される3xG4Sアミノ酸リンカーを含む、請求項37に記載のCAR。
【請求項39】
前記膜貫通ドメインと一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項40】
前記膜貫通ドメインと一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインの間の前記ポリペプチドリンカーが、LYCの配列を含む、請求項39に記載のCAR。
【請求項41】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域ならびに配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含み;前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD45、PD1、及びCD154からなる群から選択されるポリペプチドからであり;前記一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、CD134、及びCD137(4-1BB)からなる群から選択される共刺激分子からであり;ならびに前記一次シグナル伝達ドメインがCD3ζからである、請求項1~40のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項42】
前記抗MUC16抗体又はその抗原結合断片が、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域ならびに配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含み;前記膜貫通ドメインがCD8αからであり;前記一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインがCD137(4-1BB)からであり;ならびに前記一次シグナル伝達ドメインがCD3ζからである、請求項1~40のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項43】
配列番号9もしくは配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又は配列番号9もしくは配列番号11を含むアミノ酸配列を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項44】
配列番号49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又はそれらのいずれか一つを含むアミノ酸配列を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項45】
ヒトMUC16ポリペプチドの一つ又は複数のエピトープへの結合について、請求項1~44のいずれか一項に記載のCARと競合する、CAR。
【請求項46】
請求項1~45のいずれか一項に記載のCARをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項47】
CARをコードするポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号10もしくは配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するポリペプチドをコードする、又は配列番号10もしくは配列番号12を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項48】
CARをコードするポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号9、11、49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又はそれらのいずれか一つを含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項49】
請求項46~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項50】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
前記ベクターがエピソームベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項52】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項53】
前記ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項54】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項55】
前記ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項56】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1);ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択される、請求項54に記載のベクター。
【請求項57】
左(5’)レトロウイルスLTR、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルスエクスポートエレメント;請求項26又は請求項27に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;及び右(3’)レトロウイルスLTRを含む、請求項49~56のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項58】
異種ポリアデニル化配列をさらに含む、請求項57に記載のベクター。
【請求項59】
前記5’LTRの前記プロモーターが異種プロモーターで置換される、請求項58のいずれかに記載のベクター。
【請求項60】
前記異種プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、又はサルウイルス40(SV40)プロモーターである、請求項59に記載のベクター。
【請求項61】
前記5’LTR又は3’LTRがレンチウイルスLTRである、請求項57~60のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項62】
前記3’LTRが一つ又は複数の修飾を含む、請求項57~61のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項63】
前記3’LTRが一つ又は複数の欠失を含む、請求項57~62のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項64】
前記3’LTRが自己不活化(SIN)LTRである、請求項57~63のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項65】
請求項47~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結された前記プロモーターが、サイトメガロウイルス即時初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1-α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1プロモーター(PGK)、ユビキチン-Cプロモーター(UBQ-C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β-ACT)、サルウイルス40プロモーター(SV40)、及び骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ネガティブコントロール領域欠失型、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターからなる群から選択される、請求項57~64のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項66】
請求項46~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結された前記プロモーターが、MNDプロモーターである、請求項65に記載のベクター。
【請求項67】
請求項49~66のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項68】
請求項1~45のいずれか一項に記載のCARを含む、細胞。
【請求項69】
前記細胞が免疫エフェクター細胞である、請求項67又は68に記載の細胞。
【請求項70】
前記免疫エフェクター細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、又はヘルパーT細胞である、請求項69に記載の細胞。
【請求項71】
前記細胞がT細胞である、請求項67又は68に記載の細胞。
【請求項72】
前記細胞が、αβ T細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項67又は68に記載の細胞。
【請求項73】
請求項67~72のいずれか一項に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項74】
請求項67~72のいずれか一項に記載の細胞及び生理学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項75】
請求項46~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項49~66のいずれか一項に記載のベクターを免疫エフェクター細胞中に導入することを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載のCARを含む免疫エフェクター細胞を生成する方法。
【請求項76】
それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、請求項73に記載の組成物又は請求項74に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項77】
前記癌が固形癌であり、場合により、前記固形癌がMUC16を発現する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記固形癌が、肉腫、前立腺癌、子宮癌、甲状腺癌、精巣癌、腎癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸部、中皮腫、食道癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、黒色腫、肝細胞癌、頭頸部癌、胃癌、子宮内膜癌、卵管癌、結腸直腸癌、胆管癌、乳癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記固形癌が、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、中皮腫、NSCLC、及びSCLCからなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記固形癌が卵巣癌である、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記組成物が、追加の治療剤との組み合わせにおいて投与される、請求項76~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
治療剤を受けた、又は受けている対象において癌を治療する方法であって、請求項73に記載の組成物又は請求項74に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項83】
前記組成物及び治療剤が、連続的に又は同時に投与される、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍溶解性ウイルス、又は共刺激性抗体である、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1;PDCD1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)、T細胞免疫グロブリン及び免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、ICOS、ICOSL、OX40、B7-H3、B7-H4、CD47、4-1BB、CD27、ならびにCD70からなる群から選択されるチェックポイントタンパク質又は対応するリガンドに結合する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤である、請求項84又は85に記載の方法。
【請求項87】
前記PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤が、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記PD-1阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、及びセミプリマブからなる群から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記共刺激性抗体が二重特異的抗体である、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記二重特異的抗体が腫瘍関連抗原(TAA)及びCD3に結合する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記二重特異的抗体がTAA及びCD28に結合する、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記TAAが、AFP、ALK、BAGEタンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水酵素IX、カスパーゼ8、CCR5、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリンB1、CYP1B1、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、Fra-1、FOLR1、GAGEタンパク質(例、GAGE-1、-2)、GD2、GloboH、グリピカン3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MART-1、ML-IAP、Muc1、Muc2、Muc3、Muc4、Muc5、Muc16、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PRLR、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、サバイビン、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、ウロプラキン3、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(また、fmc様チロシンキナーゼ 3;FLT3として公知である)、CD138、CD171、癌胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子 1(CLL-1)、CD2サブセット 1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、癌/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞により認識される黒色腫抗原1(MelanA又はMART1)、メソテリン(MSLN)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌/精巣抗原 1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1)、黒色腫において優先的に発現される抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、栄養膜糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ならびにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、請求項90又は請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記TAAがMSLNである、請求項90又は請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記TAAがアルファ葉酸受容体(FRα)である、請求項90又は請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記TAAがMUC16である、請求項90又は請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記治療剤が血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤である、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記VEGF阻害剤がベバシズマブである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記治療剤がサイトカインである、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記サイトカインがIL-2又はマスクドIL-2である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記治療剤が腫瘍溶解性ウイルスである、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、VSV(Voyager V1)、HSV、アデノウイルス、マラバウイルス、麻疹ウイルス、NDV、ピコルナウイルス、レオウイルス、又はワクシニアウイルスからなる群から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記腫瘍溶解性ウイルスがVoyager V1である、請求項100に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月10日に出願された米国仮特許出願第63/298,141号に対する優先権を主張する。前述の出願の全内容が、参照により本明細書中に明示的に組み入れられる。
本発明は、抗MUC16(ムチン16、細胞表面関連)抗体又はその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体(CAR)、これらのCARを発現するように遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞、及び固形腫瘍を効果的に治療するためのこれらの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ムチン16(MUC16)は、また、癌抗原125(CA-125)として公知であり、固形腫瘍、例えば卵巣癌などにおいて過剰発現される単一の膜貫通ドメインである。癌細胞上のMUC16の発現は、免疫系から腫瘍細胞を保護することが示されている(Felder,M.et al.2014,Molecular Cancer,13:129)。MUC16を標的化する抗体(例、オレゴボマブ及びアブゴボマブ)が研究されてきたが、それらは、限定される臨床的成功を有した。したがって、この抗原を標的化する追加の治療が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Felder,M.et al.2014,Molecular Cancer,13:129
【発明の概要】
【0004】
本開示は、少なくとも部分的に、MUC16ポリペプチドについて特異的なキメラ抗原受容体(CAR)の発見に基づく。具体的には、本明細書中に記載されるCARは、全長MUC16ポリペプチドのタンパク質分解切断後に細胞の表面上に存在するMUC16の断片又は部分について特異的である。本明細書中で実証されるように、開示された抗MUC16 CARは、驚くべき予想外の特性を含む。実施例においてより詳細に考察されるように、本開示のCARは、IFN-ガンマ放出、高い形質導入効率、及び高い発現により評価される強力な抗原依存的な活性を示す(例、実施例2を参照のこと)。また、本明細書中に開示される抗MUC16 CARは、用量依存的な様式において、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%の細胞傷害性で抗原依存的な細胞傷害性を示す(実施例3)。さらに、本明細書中に開示される特定の抗MUC16 CARは、マーカー、例えばCD62L及びCD45RAなどの増加発現を示し(実施例4)、より大きなインビボでの持続性についての潜在能を伴う、より大きなナイーブ様表現型を指している。最後に、本明細書中でテストされた特定の抗MUC16 CARは、驚くべきことに、インビボでMUC16を発現する癌細胞の数の低下を含む、インビボで優れた抗腫瘍活性を実証した(実施例6及び7)。
【0005】
したがって、一部の態様では、本開示は、以下を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する:ヒトMUC16ポリペプチドの一つ又は複数のエピトープに結合する抗MUC16抗体又はその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン、一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメイン。一部の態様では、MUC16抗体又はその抗原結合断片は、全長MUC16ポリペプチドのタンパク質分解切断後に細胞表面上に残っているMUC16の膜近位断片に結合する。一態様では、タンパク質分解切断後に細胞表面上に残っているMUC16の断片は、配列番号151を含む。一部の態様では、全長MUC16ポリペプチドは、N末端からC末端まで1~16と番号付けされた16のウニ精子、エンテロキナーゼ及びアグリン(SEA)ドメインを含み、MUC16の断片はSEAドメイン12~16を含む。
【0006】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、ヒトMUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16抗体又は抗原結合断片は、Fab’断片、F(ab’)2断片、二重特異的Fab二量体(Fab2)、三重特異的Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ラクダIg、VHH、Ig NAR、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)又はその断片からなる群から選択される。一部の態様では、ヒトMUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16抗体又はその抗原結合断片はscFvである。
【0007】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号47、59、71、83、95、107、119、133、又は145のいずれか一つにおいて示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号48、60、72、84、96、108、120、134、又は146のいずれか一つにおいて示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1~3のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号41~43、(b)配列番号53~55、(c)配列番号65~67、(d)配列番号77~79、(e)配列番号89~91、(f)配列番号101~103、(g)配列番号113~115、(h)配列番号127~129、又は(i)配列番号139~141のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号4~6のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号44~46、(b)配列番号56~58、(c)配列番号68~70、(d)配列番号80~82、(e)配列番号92~94、(f)配列番号104~106、(g)配列番号116~118、(h)配列番号130~132、又は(i)配列番号142~144のいずれか一つにおいて示される一つ又は複数のCDRを含む。
【0008】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変軽鎖アミノ酸配列を含む、又は配列番号7を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号47、59、71、83、95、107、119、133、もしくは145のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変軽鎖アミノ酸配列を含む、又はそれらのいずれか一つを含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号8と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変重鎖アミノ酸配列を含む、又は配列番号8を含む。一部の態様では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号48、60、72、84、96、108、120、134、もしくは146のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する可変重鎖アミノ酸配列を含む、又はそれらのいずれか一つを含む。
【0009】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドからである。一部の態様では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD45、PD1、及びCD154からなる群から選択されるポリペプチドからである。一部の態様では、膜貫通ドメインはCD8αからである。一部の態様では、膜貫通ドメインは、配列番号154の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号154の配列を含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号154と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは配列番号154を含む。
【0010】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からである。一部の態様では、一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD134、及びCD137(4-1BB)からなる群から選択される共刺激分子からである。一部の態様では、一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)からである。一部の態様では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号155の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号155の配列を含む。一実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号155と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは配列番号155を含む。
【0011】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、一次シグナル伝達ドメインはCD3ζからである。一部の態様では、一次シグナル伝達ドメインは、配列番号156の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号156の配列を含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、配列番号156と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは配列番号156を含む。
【0012】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、CARはヒンジ領域ポリペプチドを含む。一部の態様では、ヒンジ領域ポリペプチドは、CD8αのヒンジ領域を含む。一部の態様では、ヒンジ領域ポリペプチドは、配列番号153と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号153の配列を含む。一実施形態では、ヒンジ領域ポリペプチドは、配列番号153と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ヒンジ領域ポリペプチドは配列番号153を含む。
【0013】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、CARはシグナルペプチドを含む。一部の態様では、シグナルペプチドは、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体2(GM-CSFR2)シグナルポリペプチド、Igκシグナルポリペプチド、又はCD8αシグナルポリペプチドを含む。一部の態様では、シグナルポリペプチドはCD8αシグナルポリペプチドを含む。一部の態様では、シグナルポリペプチドは、配列番号152の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号152の配列を含む。一実施形態では、シグナルポリペプチドは、配列番号152と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、シグナルポリペプチドは配列番号152を含む。
【0014】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、CARは、可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間に第一のポリペプチドリンカーをさらに含む。一部の態様では、可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間のポリペプチドリンカーは、配列番号14~25のいずれか一つにおいて示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインの間のポリペプチドリンカーは、配列番号24において示される3xG4Sアミノ酸リンカーを含む。
【0015】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、CARは、膜貫通ドメインと一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインの間に第二のポリペプチドリンカーをさらに含む。一部の態様では、膜貫通ドメインと一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインの間のポリペプチドリンカーは、LYCの配列を含む。
【0016】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域、ならびに配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含み;膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD45、PD1、及びCD154からなる群から選択されるポリペプチドからであり;一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD134、及びCD137(4-1BB)からなる群から選択される共刺激分子からであり;ならびに一次シグナル伝達ドメインはCD3ζからである。
【0017】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7において示される可変軽鎖アミノ酸配列内にCDRL1、CDRL2、及びCDRL3領域、ならびに配列番号8において示される可変重鎖アミノ酸配列内にCDRH1、CDRH2、及びCDRH3領域を含み;膜貫通ドメインはCD8αからであり;一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)からであり;ならびに一次シグナル伝達ドメインは CD3ζからである。
【0018】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、CARは、配列番号9もしくは配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又は配列番号9もしくは配列番号11を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CARは、配列番号9のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CARは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CARは、配列番号49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又は配列番号49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つを含むアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の態様では、本開示は、ヒトMUC16ポリペプチドの一つ又は複数のエピトープへの結合について、本明細書中に開示されるCARと競合するCARを提供する。
【0020】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるCARをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の態様では、CARをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号10もしくは配列番号12において示される。一部の態様では、本開示は、配列番号10を含むポリヌクレオチドを提供する。一部の態様では、本開示は、配列番号12を含むポリヌクレオチドを提供する。一部の態様では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号9、11、49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、又は配列番号9、11、49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149、もしくは150のいずれか一つを含むポリペプチドをコードする。
【0021】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。一部の態様では、ベクターは発現ベクターである。一部の態様では、ベクターはエピソームベクターである。一部の態様では、ベクターはウイルスベクターである。一部の態様では、ベクターはレトロウイルスベクターである。一部の態様では、ベクターはレンチウイルスベクターである。一部の態様では、レンチウイルスベクターは、以下からなる群から選択される:ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1);ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)。一部の態様では、ベクターはアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0022】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、ベクターは、左(5’)レトロウイルスLTR、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルスエクスポートエレメント;本明細書中に記載されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;及び右(3’)レトロウイルスLTRを含む。一部の態様では、ベクターは異種ポリアデニル化配列を含む。一部の態様では、5’LTRのプロモーターは、異種プロモーターで置換される。一部の態様では、異種プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、又はサルウイルス40(SV40)プロモーターである。一部の態様では、5’LTR又は3’LTRはレンチウイルスLTRである。一部の態様では、3’LTRは一つ又は複数の修飾を含む。一部の態様では、3’LTRは一つ又は複数の欠失を含む。一部の態様では、3’LTRは自己不活性化(SIN)LTRである。一部の態様では、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、サイトメガロウイルス即時初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1-α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1プロモーター(PGK)、ユビキチン-Cプロモーター(UBQ-C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β-ACT)、サルウイルス40プロモーター(SV40)、及び骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ネガティブコントロール領域欠失型、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターからなる群から選択される。一部の態様では、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、MNDプロモーターである。
【0023】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるベクターを含む細胞を提供する。一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるCARを含む細胞を提供する。一部の態様では、細胞は免疫エフェクター細胞である。一部の態様では、免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、又はヘルパーT細胞である。一部の態様では、細胞はT細胞である。一部の態様では、細胞は、αβ T細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0024】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載される細胞を含む組成物を提供する。一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載される細胞及び生理学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチド又はベクターを免疫エフェクター細胞中に導入することを含む、本明細書中に記載されるCARを含む免疫エフェクター細胞を生成する方法を提供する。
【0026】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載される組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。一部の態様では、癌は固形癌であり、場合により、固形癌はMUC16を発現する。一部の態様では、固形癌は、肉腫、前立腺癌、子宮癌、甲状腺癌、精巣癌、腎癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸部、中皮腫、食道癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、黒色腫、肝細胞癌、頭頸部癌、胃癌、子宮内膜癌、卵管癌、結腸直腸癌、胆管癌、乳癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。一部の態様では、固形癌は、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、中皮腫、NSCLC、及びSCLCからなる群から選択される。一部の態様では、固形癌は卵巣癌である。
【0027】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、組成物は、追加の治療剤との組み合わせにおいて投与される。
【0028】
一部の態様では、本開示は、本明細書中に記載される組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、治療剤を受けた、又は受けている対象において癌を治療する方法を提供する。
【0029】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、組成物及び治療剤は、連続的に又は同時に投与される。
【0030】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍溶解性ウイルス、又は共刺激性抗体である。一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、以下からなる群から選択されるチェックポイントタンパク質又は対応するリガンドに結合する:プログラム細胞死タンパク質1(PD-1、PDCD1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、バンドTリンパ球減衰因子(BTLA)、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、T細胞免疫グロブリン及び免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、ICOS、ICOSL、OX40、B7-H3、B7-H4、CD47、4-1BB、CD27、ならびにCD70。一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤である。一部の態様では、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤は、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片である。一部の態様では、PD-1阻害剤は、以下からなる群から選択される:ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、及びセミプリマブ。
【0031】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、共刺激性抗体は二重特異的抗体である。一部の態様では、二重特異的抗体は、腫瘍関連抗原(TAA)及びCD3に結合する。一部の態様では、二重特異的抗体はTAA及びCD28に結合する。一部の態様では、TAAは、AFP、ALK、BAGEタンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水酵素IX、カスパーゼ8、CCR5、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリンB1、CYP1B1、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、Fra-1、FOLR1、GAGE タンパク質(例、GAGE-1、-2)、GD2、GloboH、グリピカン3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MART-1、ML-IAP、Muc1、Muc2、Muc3、Muc4、Muc5、Muc16、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PRLR、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、サバイビン、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、ウロプラキン3、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(また、fmc様チロシンキナーゼ3;FLT3として公知である)、CD138、CD171、癌胎児性抗原(CEA)、クローディン 6(CLDN6)、C型レクチン様分子1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、癌/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞により認識される黒色腫抗原1(MelanA又はMART1)、メソテリン(MSLN)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1)、黒色腫において優先的に発現される抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、栄養膜糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ならびにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される。一部の態様では、TAAはMSLNである。一部の態様では、TAAはアルファ葉酸受容体(FRα)である。一部の態様では、TAAはMUC16である。
【0032】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、治療剤は血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤である。一実施形態では、VEGF阻害剤はベバシズマブである。一実施形態では、治療剤はサイトカインである。一実施形態では、サイトカインはIL-2又はマスクドIL-2である。一実施形態では、治療剤は腫瘍溶解性ウイルスである。一部の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、VSV(Voyager V1)、HSV、アデノウイルス、マラバウイルス、麻疹ウイルス、NDV、ピコルナウイルス、レオウイルス、又はワクシニアウイルスからなる群から選択される。一実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはVoyager V1である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、MUC16ポリペプチドの概略図である。
【
図2】
図2は、示されるMUC16 CARベクターの各々で形質導入された健常なドナーT細胞からのベクターコピー数(VCN)を示すグラフである。
【
図3】
図3は、示されるMUC16 CARベクターの各々で形質導入された健常なドナーT細胞上のCAR発現を示すグラフである。
【
図4A】
図4Aは、MUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示すグラフである。
【
図4B】
図4Bは、MUC16を発現するOVCAR3細胞の存在において共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示すグラフである。
【
図4C】
図4Cは、MUC16を発現しないJurkat細胞の存在において共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示すグラフである。
【
図4D】
図4Dは、MUC16を発現しないPANC-1細胞の存在において共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示すグラフである。
【
図5】
図5は、抗原陰性腫瘍細胞株(Jurkat、PANC-1、HUH7、K562、A549、及びRD)の存在において共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示す。
【
図6A】
図6Aは、高レベル、中レベル、又は低レベルのMUC16外部ドメインを安定的に発現するRD細胞におけるMUC16外部ドメイン発現を示す。
【
図6B】
図6Bは、高レベル、中レベル、又は低レベルのMUC16外部ドメインを安定的に発現するRD細胞と共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示す。
【
図7A】
図7Aは、滴定量のMUC16 nub mRNAでエレクトロポレーションされたK562腫瘍細胞におけるMUC16 nub mRNAコピー数を示す。
【
図7B】
図7Bは、滴定量のエレクトロポレーションされたMUC16 nub mRNAを発現するK562腫瘍細胞と共培養されたMUC16 CAR T細胞からのIFNγ放出を示す。
【
図8A】
図8Aは、10:1、5:1、及び2.5:1のエフェクター対T細胞(E:T)比率で、高レベル、中レベル、又は低レベルのMUC16外部ドメインを安定的に発現するRD細胞と共培養されたMUC16 CAR T細胞の細胞傷害性を示す。
【
図8B】
図8Bは、2.5:1のエフェクター対T細胞(E:T)比率で、高レベル、中レベル、又は低レベルのMUC16外部ドメインを安定的に発現するRD細胞と共培養されたMUC16 CAR T細胞の細胞傷害性を示す。
【
図9】
図9は、MUC16 CAR T細胞のフローサイトメトリーを介した表現型マーカーの分析を示す。
【
図10A】
図10A及び10Bは、MUC16-nub外部ドメイン(
図10A)又はCA125(
図10B)の存在において培養された抗MUC16 CAR発現細胞によるIFNγ産生を示すグラフを提供する。
【
図11】
図11は、ルシフェラーゼ発現における低下により示されるように、MUC16及びルシフェラーゼ発現OVCAR3.FP腫瘍細胞の低下を示すグラフである。マウスをOVCAR3.FP細胞で接種した後の14日に、抗MUC16 CAR T細胞で処置されたマウスは、ルシフェラーゼにおける低下を示した。マウスを、抗MUC16 CAR T細胞を投与した後の28日に、OVCAR3.FP腫瘍細胞で再チャレンジし、腫瘍細胞が低下し、抗MUC16 CAR T細胞の持続を示している。対照は、非形質導入細胞(UTD)、未処置マウス(OVCAR3.FP)、及び溶媒のみ(溶媒)で形質導入された細胞であった。
【
図12A】
図12A、12B、及び12Cは、OVCAR3腫瘍細胞で接種されたNGSマウスにおいて、示された抗MUC16 CAR構築物で形質導入されたMUC16 CAR T細胞の抗腫瘍活性を示す。
【
図13A】
図13A、13B、及び13Cは、OVCAR3.FP IP腫瘍モデルにおいて、示された抗MUC16 CAR構築物で形質導入されたMUC16 CAR T細胞の抗腫瘍活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1~3は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号4~6は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのヌクレオチド配列を示す。
配列番号11は、本明細書中で企図される例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号12は、本明細書中で企図される例示的な抗MUC16 CARのヌクレオチド配列を示す。
配列番号13は、ヒトMUC16のアミノ酸配列を示す。
配列番号14~25は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARにおける使用のために適切な例示的なリンカーのアミノ酸配列を示す。
配列番号26~35は、例示的な2A切断部位のアミノ酸配列を示す。
配列番号36~38は、例示的な切断部位のアミノ酸配列を示す。
配列番号39は、myc-myc-hisタグを含むタンパク質分解切断後のヒトMUC16断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号40は、nub外部ドメイン抗原(CA125)を欠くヒトMUC16のアミノ酸配列を示す。
配列番号41~43は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号44~46は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号47は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号48は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号49は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号50は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号51は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号52は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号53~55は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号56~58は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号59は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号60は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号61は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号62は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号63は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号64は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号65~67は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号68~70は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号71は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号72は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号73は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号74は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号75は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号76は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号77~79は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号80~82は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号83は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号84は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号85は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号86は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号87は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号88は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号89~91は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号92~94は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号95は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号96は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号97は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号98は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号99は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号100は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号101~103は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号104~106は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号107は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号108は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号109は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号110は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号111は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号112は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号113~115は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号116~118は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号119は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号120は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号121は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号122は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号123は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号124は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号125は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号126は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号127~129は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号130~132は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号133は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号134は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号135は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号136は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号137は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号138は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号139~141は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号142~144は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
配列番号145は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号146は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARについての抗MUC16 scFvの例示的な重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号147は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号148は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号149は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを欠く例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号150は、本明細書中で企図されるシグナルペプチドを含む例示的な抗MUC16 CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号151は、myc-myc-hisタグを欠くタンパク質分解切断後のヒトMUC16断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号152は、本明細書中で企図される例示的なシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号153は、本明細書中で企図される例示的なヒンジ領域ペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号154は、本明細書中で企図される例示的な膜貫通領域ペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号155は、本明細書中で企図される例示的な共刺激ペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号156は、本明細書中で企図される例示的なシグナル伝達領域ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0035】
詳細な説明
A.概説
一部の実施形態では、本開示は、MUC16についての結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。MUC16はまた、癌抗原125、癌腫抗原125、糖抗原125、又はCA-125として公知であり、高度にグリコシル化された一体型膜糖タンパク質である。MUC16は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、肝内胆管癌-腫瘤形成型、子宮頸部の腺癌、及び胃管の腺癌を含む癌において、ならびに炎症性腸疾患、肝硬変、心不全、腹膜感染、及び腹部手術を含む疾患及び状態において過剰発現される。(Haridas,D.et al.,2014,FASEB J.,28:4183-4199)、及び癌細胞上のMUC16の発現は、癌細胞を免疫系から保護することが示されている(Felder,M.et al.,2014,Molecular Cancer,13:129)。一部の実施形態では、MUC16についての結合ドメインを含むCARを発現する免疫エフェクター細胞は、驚くべきことに、癌細胞と共培養された場合に、非形質導入エフェクター細胞と比較して、増加した免疫応答及び細胞傷害性を示す。
【0036】
MUC16は、三つの主要ドメイン:細胞外N末端ドメイン、ウニ精子、エンテロキナーゼ、及びアグリン(SEA)ドメインが散在する大きなタンデムリピートドメイン、ならびに膜貫通領域のセグメント及び短い細胞質テールを含むカルボキシル末端ドメインからなる単一の膜貫通ドメインを含む。
図1は、MUC16のドメインを示す概略図を提供する。MUC16のタンパク質分解切断時に、細胞外部分の大部分が血流中に脱落する。MUC16の断片は、細胞の表面上に残る。一部の実施形態では、MUC16は、N末端からC末端まで1~16と番号付けられた、ポリペプチドのC末端に16のSEAドメインを含む。一部の実施形態では、細胞の表面上に残っているMUC16断片は、SEAドメイン12~16を含む。一部の実施形態では、本明細書中に記載されるCARは、MUC16のSEAドメイン12~16に選択的に結合する。一部の実施形態では、本明細書中に記載されるCARは、MUC16のSEAドメイン1~11に結合しない。
【0037】
組み換え(即ち、操作された)DNA、ペプチド及びオリゴヌクレオチド合成、免疫アッセイ、組織培養、形質変換(例、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製ならびに関連する技術及び手法が、本明細書を通じて引用され、考察されるように、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学及び免疫学における様々な一般的及びより具体的な参考文献において記載されるように一般的に実施されてもよい。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月に更新);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley&Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびに学術誌、例えばAdvances in Immunologyなどにおける研究論文を参照のこと。
【0038】
B.定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により普遍的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと類似の又は均等の方法及び材料を、特定の実施形態の実施又は検証において使用することができるが、組成物、方法、及び材料の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。本開示の目的に対し、以下の用語を下に定義する。
【0039】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、当該冠詞の文法上の対象の一つ又は複数(即ち、少なくとも一つ、あるいは一つ又は複数)を指すために本明細書中で使用される。例示として、「エレメント(an element)」は、一つのエレメント、あるいは一つ又は複数のエレメントを意味する。
【0040】
選択肢(例、「又は」)の使用は、いずれか一つ、両方、又はその選択肢の任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0041】
用語「及び/又は」は、いずれか一つ、又はその選択肢の両方を意味すると理解されたい。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに対し、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%までも変化する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さを指す。一実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに関し、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%又は±1%の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さの範囲を指す。
【0043】
一部の実施形態では、範囲、例えば、1~5、約1~5、又は約1~約5は、この範囲により包含される各数値を指す。例えば、一つの非限定的かつ単に例証的な実施形態では、範囲「1~5」は、表現1、2、3、4、5、又は1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0、又は1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0と同等である。
【0044】
本明細書中で使用するように、用語「実質的に」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」は、基準の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さとほぼ同じである効果、例えば、生理学的効果を産生する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。
【0045】
本明細書全体を通じて、文脈が別段要求しない限り、言葉「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含むこと」は、述べられている工程もしくは要素又は工程もしくは要素の群の包含を暗示するが、任意の他の工程もしくは要素又は工程もしくは要素の群の除外を暗示しないことが理解されるであろう。「~からなる」により、語句「からなる」に続くもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。このように、語句「~からなる」は、列挙される要素が要求される又は義務であり、他の要素は存在しないであろうことを示す。「本質的に~からなる」は、当該語句の後に列挙される任意の要素、及び列挙される要素に関して本開示中に特定される活性もしくは作用に干渉しない、又は寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。このように、語句「本質的に~からなる」は、列挙される要素が必須又は義務であり、しかし、列挙される要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼす他の要素は存在しないことを示す。
【0046】
本明細書全体を通じて「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態(a particular embodiment)」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態(a certain embodiment)」、「追加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造又は特徴が、少なくとも一つの実施形態において含まれることを意味する。このように、本明細書全体の様々な箇所での前述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の性質、構造、又は特徴は、一つ又は複数の実施形態において任意の適切な様式において組み合わされ得る。また、一実施形態でのある性質の肯定的な列挙は、特定の実施形態では当該性質の除外の根拠として機能することを理解されたい。
【0047】
C.キメラ抗原受容体
一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を、MUC16発現細胞に対して向け直す、改善された、遺伝子操作された受容体が提供される。これらの遺伝子操作された受容体は、本明細書中では、キメラ抗原受容体(CAR)として言及される。CARは、所望の抗原(例、MUC16)についての抗体ベースの特異性を、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特異的な抗MUC16細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書中で使用される場合、用語「キメラ」は、異なる起源からの異なるタンパク質又はDNAの部分で構成されていることを記載する。
【0048】
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、MUC16に結合する細胞外ドメイン(また、結合ドメイン又は抗原特異的結合ドメインとして言及される)、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARの抗MUC16抗原結合ドメインの、標的細胞の表面上のMUC16との会合によって、CARのクラスター化がもたらされ、CAR含有細胞に活性化刺激が伝達される。CARの主な特徴は、免疫エフェクター細胞の特異性を向け直させるそれらの能力であり、それにより、増殖、サイトカイン産生、ファゴサイトーシス、又は標的抗原発現細胞の細胞死を、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)非依存的な様式において媒介し得る分子の産生が誘発され、モノクローナル抗体、可溶性リガンド又は細胞特異的コレセプターの細胞特異的標的化能力が引き出される。
【0049】
一部の実施形態では、CARは、ヒト抗MUC16特異的結合ドメインを含む細胞外結合ドメイン;膜貫通ドメイン;一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;及び一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0050】
一部の実施形態では、CARは、ヒト抗MUC16抗体又はその抗原結合断片を含む細胞外結合ドメイン;一つ又は複数のヒンジドメイン又はスペーサードメイン;膜貫通ドメイン;一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;及び一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0051】
1.結合ドメイン
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、標的細胞(例、癌細胞)上に発現されるヒトMUC16ポリペプチドに特異的に結合する抗MUC16抗体又はその抗原結合断片を含む細胞外結合ドメインを含む。用語「MUC16」は、本明細書中で使用される場合、非ヒト種(例、「マウスMUC16」、「サルMUC16」など)からであるとして特定されない限り、ヒトMUC16タンパク質を指す。MUC16は、三つの主要なドメイン:細胞外N末端ドメイン、ウニ精子、エンテロキナーゼ、アグリン(SEA)ドメインが散在する大きなタンデムリピートドメイン、ならびに膜貫通領域のセグメント及び短い細胞質テールを含むカルボキシル末端ドメインを含む。ヒトMUC16タンパク質は、配列番号13において示されるアミノ酸配列を有し、及び/又はNCBI受入番号NP_078966において示されるアミノ酸配列を有している。myc-myc-hisタグを有するヒトMUC16膜近位ドメイン(P13810-P14451)(MUC16“nub”)を、配列番号39として示す。myc-myc-hisタグを欠くヒトMUC16膜近位ドメイン(P13810-P14451)(MUC16“nub”)を、配列番号151として示す。用語「CA125」は、本明細書中で使用される場合、配列番号40として示されるMUC16膜近位ドメイン(MUC16“nub”)を欠くヒトMUC16ポリペプチドを指す。
【0052】
本明細書中で使用される用語「MUC16-nub」、「nub」、「MUC16外部ドメイン」、「MUC16-nub外部ドメイン」、及び「外部ドメイン」は互換性があり、切断後に細胞表面上に残っている膜近位MUC16ポリペプチドドメイン又は断片を指す。一部の実施形態では、MUC16-nub外部ドメインはSEAドメイン12~16を含む。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」、及び「細胞外抗原特異的結合ドメイン」は互換的に使用され、目的の標的抗原、例えば、MUC16に特異的に結合する能力を伴うCARを提供する。結合ドメインは、天然、合成、半合成、又は組み換えの供給源のいずれかから由来し得る。
【0054】
本明細書中で使用される用語「特異的結合親和性」又は「特異的に結合する」又は「特異的に結合した」又は「特異的結合」又は「特異的に標的化する」は、バックグラウンド結合よりも大きな結合親和性での、MUC16への抗MUC16抗体又はその抗原結合断片(又は同を含むCAR)の結合を記載する。結合ドメイン(又は結合ドメインもしくは結合ドメインを含む融合タンパク質を含むCAR)は、それが、例えば、約105M-1より大きい又はそれと等しい親和性又はKa(即ち、1/Mの単位を伴う特定の結合相互作用の平衡会合定数)でMUC16に結合又は会合する場合、MUC16に「特異的に結合」する。特定の実施形態では、結合ドメイン(又は融合タンパク質)は、約106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1、1012M-1、又は1013M-1より大きな又はそれと等しいKaで標的に結合する。「高親和性」結合ドメイン(又はその一本鎖融合タンパク質)は、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも1013M-1又はそれより大きいKaを有する結合ドメインを指す。
【0055】
あるいは、親和性は、M単位(例えば、10-5M~10-13M、又はそれ未満)での特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義されてもよい。本開示による結合ドメインポリペプチド及びCARタンパク質の親和性は、従来の技術を使用して、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、又は結合会合、もしくは標識リガンドを使用した置換アッセイにより、又はBiacore、Piscataway、NJから入手可能な表面プラズモン共鳴装置、例えばBiacore T100など、又はCorning及びPerkin Elmerからそれぞれ入手可能な光学バイオセンサ技術、例えばEPICシステム又はEnSpireなどを使用して容易に決定することができる(また、例えば、Scatchard et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660;及び米国特許第5,283,173号;第5,468,614号、又は等価物を参照のこと)。
【0056】
一部の実施形態では、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合より約2倍大きい、バックグラウンド結合より約5倍大きい、バックグラウンド結合より約10倍大きい、バックグラウンド結合より約20倍大きい、バックグラウンド結合より約50倍大きい、バックグラウンド結合より約100倍大きい、又はバックグラウンド結合より約1000倍大きい、又はそれ以上である。
【0057】
一部の実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、抗体又はその抗原結合断片を含む。「抗体」は、抗原のエピトープ、例えばペプチド、脂質、多糖類、又は抗原決定基を含む核酸など、例えば免疫細胞により認識されるものなどを特異的に認識し、結合する軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドである結合剤を指す。
【0058】
「抗原(Ag)」は、動物中へ注射又は吸収される組成物(例、癌特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物において抗体産生又はT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、異種抗原、例えば開示される抗原などにより誘導される産物を含む、特異的な液性免疫又は細胞性免疫の産物と反応する。一部の実施形態では、標的抗原は、MUC16ポリペプチドのエピトープである。
【0059】
「エピトープ」又は「抗原性決定基」は、結合剤が結合する抗原の領域を指す。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングにより並置される連続アミノ酸又は非連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露で保持される一方で、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒を用いた処理で失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間構造に少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5つ、約9つ、又は約8~10のアミノ酸を含む。
【0060】
抗体は、その抗原結合断片、例えばラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)など、及び抗原結合について関与する全長抗体の部分を含む。この用語はまた、遺伝子操作された形態、例えばキメラ抗体(例、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ共役抗体(二重特異的抗体など)、及びその抗原結合断片などを含む。また、Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.、イリノイ州ロックフォード);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997を参照のこと。
【0061】
本明細書中で使用される場合、表現「二重特異的抗体」は、少なくとも第一の抗原結合ドメイン及び第二の抗原結合ドメインを含む抗体を意味する。二重特異的抗体内の各抗原結合ドメインは、単独で、あるいは一つ又は複数の追加のCDR及び/もしくはFRとの組み合わせにおいて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも一つのCDRを含む。
【0062】
当業者により理解されるであろうように、及び本明細書の他の箇所に記載されるように、完全抗体は、二つの重鎖及び二つの軽鎖を含む。各重鎖は、可変領域と、第一、第二、及び第三の定常領域からなる一方で、各軽鎖は、可変領域及び定常領域からなる。哺乳動物の重鎖はα、δ、ε、γ、及びμに分類される。哺乳動物の軽鎖はλ又はκに分類される。α、δ、ε、γ、及びμ重鎖を含む免疫グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)A、IgD、IgE、IgG、及びIgMに分類される。完全抗体は“Y”形状を形成する。Yの幹は、一緒に結合された二つの重鎖の第二及び第三の定常領域(またIgE及びIgMについては、第四の定常領域)から成り、ジスルフィド結合(鎖間)がヒンジに形成される。重鎖γ、α及びδは、三つのタンデム(列中)Igドメインで構成される定常領域、追加の柔軟性のためのヒンジ領域を有し;重鎖μ及びεは、四つの免疫グロブリンドメインで構成される定常領域を有する。第二及び第三の定常領域は、それぞれ「CH2ドメイン」及び「CH3ドメイン」として言及される。Yの各アームは、単一の軽鎖の可変領域及び定常領域に結合された単一の重鎖の可変領域及び第一の定常領域を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。
【0063】
軽鎖及び重鎖可変領域は、また、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる、三つの超可変領域により中断される「フレームワーク」領域を含む。CDRは、従来の方法、例えばKabatらに従った配列(Wu,TT and Kabat,E.A.,J Exp Med.132(2):211-50,(1970);Borden,P.and Kabat E.A.,PNAS,84:2440-2443(1987);(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照のこと。それは、参照により本明細書により組み入れられる)、又はChothiaらに従った構造(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J Mol.Biol.,196(4):901-917(1987)、Chothia,C.et al,Nature,342:877-883(1989))などにより定義又は同定することができる。
【0064】
異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種、例えばヒトなどの内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成軽鎖及び重鎖の結合フレームワーク領域であり、三次元空間においてCDRを位置付け、整列させる役割を果たす。CDRは、抗原のエピトープへの結合を主に担う。各鎖のCDRは、典型的には、CDR1、CDR2、及びCDR3として言及され、N末端から連続的に番号付けされ、また典型的には、特定のCDRが位置付けられる鎖により特定される。このように、抗体の重鎖の可変ドメインに位置するCDRは、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3として言及されるのに対し、抗体の軽鎖の可変ドメイン内に位置するCDRは、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3として言及される。異なる特異性を有する抗体(即ち、異なる抗原に対する異なる結合部位)は、異なるCDRを有する。抗体ごとに異なるのはCDRであるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。本明細書中で企図される抗MUC16 CARを構築するために適切である軽鎖CDRの例証的な例は、限定されないが、配列番号1~3において示されるCDR配列を含む。本明細書中で企図される抗MUC16 CARを構築するために適切である重鎖CDRの例証的な例は、限定されないが、配列番号4~6において示されるCDR配列を含む。
【0065】
軽鎖CDRを予測するための規則の例証的な例は、以下を含む:CDR-L1は、約残基24で開始し、Cysにより先行され、約10~17残基であり、Trp(典型的には、Trp-Tyr-Gln、しかし、また、Trp-Leu-Gln、Trp-Phe-Gln、Trp-Tyr-Leu)が続き;CDR-L2は、CDR-L1の末端後に約16残基で開始し、一般的にIle-Tyr、しかし、また、Val-Tyr、Ile-Lys、Ile-Pheにより先行され、7残基であり;及びCDR-L3は、CDR-L2の末端後に約33残基で開始し、Cysにより先行され、7~11残基であり、Phe-Gly-XXX-Gly(XXXは任意のアミノ酸である)が続く。
【0066】
重鎖CDRを予測するための規則の例証的な例は、以下を含む:CDRH1は、約残基26で開始し、Cys-XXX-XXX-XXXにより先行され、10~12残基であり、Trp(典型的にはTrp-Val、しかし、また、Trp-Ile、Trp-Ala)が続き;CDR-H2は、CDR-H1の末端後に約15残基で開始し、一般的にLeu-Glu-Trp-Ile-Gly、又は多数のバリエーションにより先行され、16~19残基であり、Lys/Arg-Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala-Thr/Ser/Ile/Alaが続き;CDR-H3は、CDR-H2の末端後に約33残基で開始し、Cys-XXX-XXX(典型的にはCys-Ala-Arg)により先行され、3~25残基であり、Trp-Gly-XXX-Glyが続く。
【0067】
一部の実施形態では、軽鎖CDR及び重鎖CDRは、Kabat方法に従って決定される。一部の実施形態では、軽鎖CDRならびに重鎖CDR2及びCDR3は、Kabat方法に従って決定され、重鎖CDR1は、Kabat方法及びClothia方法の間に含まれるAbM方法に従って決定され、例えば、Whitelegg N&Rees AR,Protein Eng.2000 Dec;13(12):819-24及びMethods Mol Biol.2004;248:51-91を参照のこと。CDRを予測するためのプログラムは、例えば、AbYsis(www.bioinf.org.uk/abysis/)において公的に利用可能である。
【0068】
「VH」又は「VH」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab又は本明細書中に開示される他の抗体断片を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」又は「VL」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab又は本明細書中に開示される他の抗体断片を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0069】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンにより、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞により産生される抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞の融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することにより、当業者に公知の方法により産生される。モノクローナル抗体はヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0070】
「キメラ抗体」は、一つの種、例えばヒトなどから由来するフレームワーク残基、及び別の種、例えばマウスなどから由来するCDR(一般的に、抗原結合を付与する)を有する。特に好ましい実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、キメラ抗体又はその抗原結合断片である抗原特異的結合ドメインを含む。
【0071】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、マウス、ラット、又は合成)免疫グロブリンからの一つ又は複数のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。
【0072】
特定の実施形態では、抗MUC16抗体又はその抗原結合断片は、限定されないが、ラクダIg(ラクダ科抗体(VHH))、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)を含む。
【0073】
本明細書中で使用される場合、「Camel Ig」又は「ラクダ科VHH」は、重鎖抗体の最小の公知の抗原結合単位を指す(Koch-Nolte、et al、FASEB J.、21:3490-3498(2007))。「重鎖抗体」又は「ラクダ科抗体」は、二つのVHドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.et al、J.Immunol.方法231:25-38(1999);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。
【0074】
「免疫グロブリン新規抗原受容体」の「IgNAR」は、一つの可変新規抗原受容体(VNAR)ドメイン及び五つの定常新規抗原受容体(CNAR)ドメインのホモ二量体からなるサメ免疫レパートリーからの抗体のクラスを指す。IgNARは、最も小さい公知の免疫グロブリンベースのタンパク質足場の一部を表し、高度に安定であり、効率的な結合特性を持つ。固有の安定性は、(i)マウス抗体にみられる従来の抗体VHドメイン及びVLドメインと比較して、かなりの数の荷電及び親水性表面曝露残基を表す基礎となるIg足場、ならびに(ii)ループ間ジスルフィド架橋を含む相補性決定領域(CDR)ループにおける構造的性質、及びループ内水素結合のパターンの安定化の両方に起因し得る。
【0075】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位、及び名称が容易に結晶化するその能力を反映する、残存「Fc」断片を有する、「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗原結合断片を産生する。ペプシン処理は、二つの抗原結合部位を有し、なおも抗原を架橋することができるF(ab’)2断片を生成する。
【0076】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、緊密な非共有結合の会合における一つの重鎖可変ドメインと一つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、一つの重鎖可変ドメイン及び一つの軽鎖可変ドメインが柔軟なペプチドリンカーにより共有結合的に連結され、軽鎖及び重鎖が、二本鎖Fv(scFv)2種におけるものと類似の「二量体」構造において会合することができる。この構成では、各可変ドメインの三つの超可変領域(HVR)が相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を画定する。まとめると、六つのHVRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な三つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し結合する能力を有するが、結合部位全体よりも低い親和性である。
【0077】
Fab断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基を付加することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書中の名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合がまた、公知である。
【0078】
用語「ダイアボディ」は、二つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の二つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアになり、二つの抗原結合部位を作製することが強制される。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO 1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,PNAS USA 90:6444-6448(1993)においてより完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディがまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)において記載されている。
【0079】
「単一ドメイン抗体」又は「sdAb」又は「ナノボディ」は、抗体重鎖の可変領域(VHドメイン)又は抗体軽鎖の可変領域(VLドメイン)からなる抗体断片を指す(Holt,L.,et al,Trends in Biotechnology,21(11):484-490)。
【0080】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中、及びいずれかの配向(例えば、VL-VH又はVH-VL)中に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによって、scFvは、抗原結合のための所望の構造を形成することができる。scFvのレビューについては、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、Rosenburg and Moore編、(Springer-Verlag,New York,1994)、pp.269-315を参照のこと。
【0081】
一部の実施形態では、抗原特異的結合ドメインはscFvである。一本鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングされてもよい。そのようなハイブリドーマの産生は、ルーチンとなっている。可変領域重鎖(VH)及び可変領域軽鎖(VL)をクローニングするために使用することができる技術は、例えば、Orlandi et al.,PNAS,1989;86:3833-3837において記載されてきた。
【0082】
一部の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16ポリペプチドに結合するscFvである。本明細書中で企図される抗MUC16 CARを構築するために適切である可変重鎖の例証的な例は、配列番号8において示されるアミノ酸配列である。本明細書中で企図される抗MUC16 CARを構築するために適切である可変軽鎖の例証的な例は、配列番号7において示されるアミノ酸配列である。
【0083】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0084】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号48のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号47のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号48のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号47のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0085】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号60のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。
【0086】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号59のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号60のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号59のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0087】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号72のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号72のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号71のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号72のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号71のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0088】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号84のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。
【0089】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号83のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号84のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号83のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0090】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号96のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号96のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号95のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号95のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号96のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号95のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0091】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号107のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号107のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号107のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0092】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号120のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号120のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号120のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0093】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号134のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号134のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号133のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号133のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号134のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号133のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0094】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号146のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号146のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号145のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号145のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号146のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び配列番号145のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0095】
本明細書中で提供されるMUC16特異的結合ドメインはまた、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つのCDRを含む。そのようなCDRは、軽鎖のCDRL1、CDRL2及びCDRL3ならびに重鎖のCDRH1、CDRH2及びCDRH3から選択される非ヒトCDR又は改変された非ヒトCDRであり得る。一部の実施形態では、MUC16特異的結合ドメインは、(a)軽鎖CDRL1、軽鎖CDRL2、及び軽鎖CDRL3を含む軽鎖可変領域、ならびに(b)重鎖CDRH1、重鎖CDRH2、及び重鎖CDRH3を含む重鎖可変領域を含む。
【0096】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号1~3の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号4~6の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号1~3の軽鎖CDR及び配列番号4~6の重鎖CDRを含む。
【0097】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号41~43の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号44~46の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号41~43の軽鎖CDR及び配列番号44~46の重鎖CDRを含む。
【0098】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号53~55の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号56~58の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号53~55の軽鎖CDR及び配列番号56~58の重鎖CDRを含む。
【0099】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号65~67の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号68~70の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号65~67の軽鎖CDR及び配列番号68~70の重鎖CDRを含む。
【0100】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号77~79の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号80~82の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号77~79の軽鎖CDR及び配列番号80~82の重鎖CDRを含む。
【0101】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号89~91の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号92~94の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号89~91の軽鎖CDR及び配列番号92~94の重鎖CDRを含む。
【0102】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号101~103の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号104~106の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号101~103の軽鎖CDR及び配列番号104~106の重鎖CDRを含む。
【0103】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号113~115の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号116~118の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号113~115の軽鎖CDR及び配列番号116~118の重鎖CDRを含む。
【0104】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号127~129の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号130~132の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号127~129の軽鎖CDR及び配列番号130~132の重鎖CDRを含む。
【0105】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号139~141の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号142~144の重鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号139~141の軽鎖CDR及び配列番号142~144の重鎖CDRを含む。
【0106】
追加の抗MUC16抗体及びその抗原結合断片は、当技術分野において公知である。例えば、2018年3月29日に公開されたWO2018/058003を参照のこと。各々の全内容が、参照によりそれらの全体において本明細書中に明示的に組み入れられる。
【0107】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16の一つ又は複数の五つの膜近位SEAドメイン内のヒトMUC16に結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16の、N末端からC末端まで番号付けされた、SEAドメイン12~16に結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号13の残基13791~14451において示されるヒトMUC16のSEAドメインに結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号13の残基13810~14451内に結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16のN末端からC末端まで番号付けされた、SEAドメイン1~11に結合しない。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号13の残基1~13790内で結合しない。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号13の残基1~13809内で結合しない。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号39内で結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号151内で結合する。一部の実施形態では、抗MUC16 CARの抗原特異的結合ドメインは、配列番号40内で結合しない。
【0108】
2.リンカー
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、様々なドメイン間のリンカー残基を含み得る、例えば、分子の適した間隔及び立体構造のために加えられ得る。一部の実施形態では、リンカーは可変領域連結配列である。「可変領域を結合させる配列」は、VH及びVLを繋げるアミノ酸配列であり、二つの下位結合ドメインの相互作用と適合可能なスペーサー機能を提供し、得られたポリペプチドは、同じ軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対する特異的結合親和性を保持する。他の実施形態では、リンカーは、膜貫通ドメインと一つ又は複数の細胞内ドメインの間の連結配列である。
【0109】
本明細書中で企図されるCARは、一つ、二つ、三つ、四つ、又は五つ以上のリンカーを含み得る。一部の実施形態では、リンカーの長さは、約1~約25のアミノ酸、約5~約20のアミノ酸、又は約10~約20のアミノ酸、又はアミノ酸の任意の介在長である。一部の実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個、又はそれ以上のアミノ酸長である。
【0110】
リンカーの例証的な例は、グリシンポリマー(G)n;グリシン-セリンポリマー(G1-5S1-5)n、式中、nは、少なくとも1、2、3、4又は5の整数である;グリシン-アラニンポリマー;アラニン-セリンポリマー;及び当技術分野において公知の他の柔軟なリンカーを含む。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは比較的構造化されていなく、従って、融合タンパク質、例えば本明細書中に記載されるCARなどのドメイン間の中性テザーとして機能することができる。グリシンは、アラニンよりも有意に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照のこと)。当業者は、CARの設計が、全て又は部分的に柔軟であるリンカーを含むことができ、リンカーは、柔軟なリンカーならびに所望のCAR構造を提供するためにそれほど柔軟性ではない構造を付与する一つ又は複数の部分を含むことができるようにすることを認識するであろう。
【0111】
他の例示的なリンカーは、限定されないが、以下のアミノ酸配列を含む:GGG;DGGGS(配列番号14);TGEKP(配列番号15)(例、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照のこと);GGRR(配列番号16)(Pomerantz et al.1995、上記);(GGGGS)n、式中=1、2、3、4又は5(配列番号17)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号18)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号19)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号20);LRQRDGERP(配列番号21);LRQKDGGGSERP(配列番号22);LRQKd(GGGS)2ERP(配列番号23)。一部の実施形態では、リンカーはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号24)である。あるいは、柔軟なリンカーを、DNA結合部位及びペプチド自体の両方をモデル化することが可能なコンピュータプログラムを使用して(Desjarlais&Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994)、又はファージディスプレイ方法により、合理的に設計することができる。一部の実施形態では、リンカーは以下のアミノ酸配列を含む:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号25)(Cooper et al.,Blood,101(4):1637-1644(2003))。一実施形態では、リンカーはLYCの配列を含む。
【0112】
3.スペーサードメイン
一部の実施形態では、CARの結合ドメインには、一つ又は複数の「スペーサードメイン」が続き、それは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して移動させ、適当な細胞/細胞接触、抗原結合及び活性化を可能にする領域を指す(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、又は組み換えの供給源のいずれかから由来し得る。特定の実施形態では、スペーサードメインは、一つ又は複数の重鎖定常領域、例えば、CH2及びCH3を含む、免疫グロブリンの部分である。スペーサードメインは、天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域、又は改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0113】
一部の実施形態では、スペーサードメインは、IgG1又はIgG4のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。
【0114】
4.ヒンジドメイン
一部の実施形態では、CARの結合ドメインには、一つ又は複数の「ヒンジドメイン」又は「ヒンジ領域」が続き、それは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して配置し、適当な細胞/細胞接触、抗原結合及び活性化を可能にする際に役割を果たす。一部の実施形態では、CARは、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)の間の一つ又は複数のヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、又は組み換えの供給源のいずれかから由来し得る。ヒンジドメインは、天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域、又は改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0115】
「改変されたヒンジ領域」は、(a)30%までのアミノ酸変化(例、25%、20%、15%、10%、又は5%までのアミノ酸置換又は欠失)を伴う天然ヒンジ領域、(b)少なくとも10アミノ酸(例、少なくとも12、13、14、又は15アミノ酸)長であり、30%までのアミノ酸変化(例、25%、20%、15%、10%、又は5%までのアミノ酸置換又は欠失)を伴う天然ヒンジ領域の部分、又は(c)コアヒンジ領域を含む天然ヒンジ領域の部分(それは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15、又は少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸長であり得る)を指す。一部の実施形態では、天然免疫グロブリンヒンジ領域中の一つ又は複数のシステイン残基は、一つ又は複数の他のアミノ酸残基(例、一つ又は複数のセリン残基)により置換されてもよい。改変免疫グロブリンヒンジ領域は、代替的に又は追加的に、別のアミノ酸残基(例、セリン残基)で置換された野生型免疫グロブリンヒンジ領域のプロリン残基を有してもよい。
【0116】
本明細書中に記載されるCARにおける使用のための適切な他の例証的なヒンジドメインは、1型膜タンパク質の細胞外領域、例えばCD8α、CD4、CD28及びCD7などから由来するヒンジ領域を含み、それらは、これら分子からの野生型ヒンジ領域であってもよく、又は改変されてもよい。一実施形態では、ヒンジドメインはCD28ヒンジ領域を含む。別の実施形態では、ヒンジドメインはCD4ヒンジ領域を含む。別の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。
【0117】
様々な実施形態では、修飾されたヒンジ領域は、本明細書中で企図される、及び/又は当技術分野において公知の適切なヒンジドメイン/領域と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書中で企図されるヒンジ配列を含む、修飾されたヒンジ領域は、4つ又はそれ以下、3つ又はそれ以下の、又は2つ又はそれ以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を有する。
【0118】
特定の実施形態では、天然ヒンジ領域/ドメインにおける一つ又は複数のシステイン残基は、修飾されたヒンジドメインを産生するために一つ又は複数の他のアミノ酸残基により置換され得る。一部の実施形態では、修飾されたヒンジドメインは、セリン又はアラニンで置換された一つ又は複数のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾されたヒンジドメインは、セリンで置換された一つ又は複数のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾されたヒンジドメインは、アラニンで置換された一つ又は複数のシステイン残基を含む。
【0119】
特定の実施形態では、修飾されたヒンジ領域は、別のアミノ酸残基(例えば、セリン残基)によるプロリン残基の置換を含む。
【0120】
一部の態様では、ヒンジ領域は、配列番号153と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号153の配列を含む。一実施形態では、ヒンジ領域ポリペプチドは、配列番号153と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ヒンジ領域ポリペプチドは配列番号153を含む。
【0121】
5.膜貫通(TM)ドメイン
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、膜貫通ドメインを含む。「膜貫通ドメイン」又は「TMドメイン」は、細胞外結合部分及び細胞内シグナル伝達ドメインを融合させ、CARを、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定するCARの部分である。TMドメインは、天然、合成、半合成、又は組み換えの供給源のいずれかから由来し得る。TMドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1から由来する(即ち、それらの少なくとも膜貫通領域を含む)ことができる。特定の実施形態では、TMドメインは合成であり、主に疎水性残基、例えばロイシン及びバリンなどを含む。
【0122】
一部の態様では、本明細書中で企図されるCARは、CD8αから由来するTMドメインを含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号154と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号154の配列を含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号154と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは配列番号154を含む。
【0123】
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、CD8αから由来するTMドメイン、ならびにTMドメイン及びCARの細胞内シグナル伝達ドメインを連結する、好ましくは 1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸長の間の短いオリゴ又はポリペプチドリンカーを含む。一部の実施形態では、リンカーはグリシン-セリンベースのリンカーである。他の実施形態では、リンカーはLYCリンカーである。
【0124】
別の態様では、本明細書中で企図されるCARは、CD28から由来するTMドメインを含む。別の態様では、本明細書中で企図されるCARは、CD4から由来するTMドメインを含む。
【0125】
6.細胞内シグナル伝達ドメイン
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、ヒトMUC16ポリペプチドに結合する有効なMUC16 CARのメッセージを、免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖及び細胞傷害活性(CAR結合標的細胞への細胞傷害性因子の放出を含む)、又は細胞外CARドメインに結合する抗原で誘発される他の細胞応答を誘発する際に関与するCARの一部を指す。
【0126】
用語「エフェクター機能」は、免疫エフェクター細胞の専門的な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルプ又は活性であってもよい。このように、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを形質導入し、細胞に専門化機能を実施するように向けるタンパク質の部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができる一方で、多くの場合では、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される程度まで、そのような切断部分は、それがエフェクター機能シグナルを形質導入する限り、ドメイン全体の代わりに使用され得る。用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを形質導入するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0127】
TCR単独を通じて生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化のために不十分であり、二次的又は共刺激性シグナルがまた要求されることが公知である。このように、T細胞活性化は、二つの異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン:TCR(例、TCR/CD3複合体)を通じて抗原依存的な一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメイン、及び抗原依存的な様式において作用して二次的又は共刺激性シグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインにより、媒介されると言うことができる。好ましい実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、一つ又は複数の「共刺激シグナル伝達ドメイン」及び「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0128】
一次シグナル伝達ドメインは、刺激方法又は阻害方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ又はITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0129】
本発明において特に使用される一次シグナル伝達ドメインを含むITAMの例証的な例は、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dから由来するものを含む。一部の実施形態では、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン及び一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。細胞内一次シグナル伝達ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに、膜貫通ドメインのカルボキシル末端に連結され得る。
【0130】
本明細書中で企図されるCARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性及び増殖を増強するための一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書中で使用される場合、用語「共刺激シグナル伝達ドメイン」又は「共刺激ドメイン」は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激分子は、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要とされる第二のシグナルを提供する、抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子である。そのような共刺激分子の例証的な例は、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70を含む。一部の実施形態では、CARは、CD28、CD137、及びCD134、ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインからなる群から選択される一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0131】
一部の実施形態では、CARは、CD28及びCD137共刺激シグナル伝達ドメインならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0132】
一部の実施形態では、CARは、CD28及びCD134共刺激シグナル伝達ドメインならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0133】
一部の実施形態では、CARは、CD137及びCD134共刺激シグナル伝達ドメインならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0134】
一部の実施形態では、CARは、CD134共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0135】
一部の実施形態では、CARは、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0136】
一部の実施形態では、CARは、CD137共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0137】
一部の態様では、一つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)からである。一部の態様では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号155の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号155の配列を含む。一実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号155と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは配列番号155を含む。
【0138】
前述の又は関連する態様のいずれかでは、一次シグナル伝達ドメインはCD3ζからである。一部の態様では、一次シグナル伝達ドメインは、配列番号156の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む、又は配列番号156の配列を含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、配列番号156と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは配列番号156を含む。
【0139】
D.例示的なキメラ抗原受容体
一部の実施形態では、CARは、MUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16 scFv;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0140】
一部の実施形態では、CARは、MUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16 scFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びCD8αヒンジからなる群から選択されるヒンジドメイン;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0141】
一部の実施形態では、CARは、MUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16 scFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びCD8αヒンジからなる群から選択されるヒンジドメイン;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:TMドメインをCARの細胞内シグナル伝達ドメインに連結させる、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸長の、短オリゴリンカー又はポリペプチドリンカーと、ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0142】
一部の実施形態では、CARは、MUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカーを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0143】
一部の実施形態では、CARは、配列番号39又は151内に結合する抗MUC16 scFv;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0144】
一部の実施形態では、CARは、配列番号39又は151内に結合する抗MUC16 scFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びCD8αヒンジからなる群から選択されるヒンジドメイン;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0145】
一部の実施形態では、CARは、配列番号39又は151内に結合する抗MUC16 scFv;IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びCD8αヒンジからなる群から選択されるヒンジドメイン;T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドから由来する膜貫通ドメイン:場合により、TMドメインを、CARの細胞内シグナル伝達ドメインに連結する、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸長の間の短いオリゴ又はポリペプチドリンカー;ならびにCARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの一つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0146】
一部の実施形態では、CARは、配列番号39又は配列番号151内に結合する抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0147】
一部の実施形態では、CARは、配列番号1~3において示される軽鎖CDR及び配列番号4~6において示される重鎖CDRを含む抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカーを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0148】
一部の実施形態では、CARは、(a)配列番号41~43において示される軽鎖CDR及び配列番号44~46において示される重鎖CDR;(b)配列番号53~55において示される軽鎖CDR及び配列番号56~58において示される重鎖CDR;(c)配列番号65~67において示される軽鎖CDR及び配列番号68~70において示される重鎖CDR;(d)配列番号77~79において示される軽鎖CDR及び配列番号80~82において示される重鎖CDR;(e)配列番号89~91において示される軽鎖CDR及び配列番号92~94において示される重鎖CDR;(f)配列番号101~103において示される軽鎖CDR及び配列番号104~106において示される重鎖CDR;(g)配列番号113~115において示される軽鎖CDR及び配列番号116~118において示される重鎖CDR;(h)配列番号127~129において示される軽鎖CDR及び配列番号130~132において示される重鎖CDR;又は(i)配列番号139~141において示される軽鎖CDR及び配列番号142~144において示される重鎖CDRを含む抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0149】
一部の実施形態では、CD8αシグナルポリペプチド、CARは、配列番号1~3において示される軽鎖CDR及び配列番号4~6において示される重鎖CDRを含む抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0150】
一部の実施形態では、CD8αシグナルポリペプチド、CARは、(a)配列番号41~43において示される軽鎖CDR及び配列番号44~46において示される重鎖CDR;(b)配列番号53~55において示される軽鎖CDR及び配列番号56~58において示される重鎖CDR;(c)配列番号65~67において示される軽鎖CDR及び配列番号68~70において示される重鎖CDR;(d)配列番号77~79において示される軽鎖CDR及び配列番号80~82において示される重鎖CDR;(e)配列番号89~91において示される軽鎖CDR及び配列番号92~94において示される重鎖CDR;(f)配列番号101~103において示される軽鎖CDR及び配列番号104~106において示される重鎖CDR;(g)配列番号113~115において示される軽鎖CDR及び配列番号116~118において示される重鎖CDR;(h)配列番号127~129において示される軽鎖CDR及び配列番号130~132において示される重鎖CDR;又は(i)配列番号139~141において示される軽鎖CDR及び配列番号142~144において示される重鎖CDRを含む抗MUC16 scFv;ならびにCD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0151】
一部の実施形態では、CARは、配列番号7において示される可変軽鎖及び配列番号8において示される可変重鎖を含む抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0152】
一部の実施形態では、CARは、(a)配列番号47において示される可変軽鎖及び配列番号48において示される可変重鎖;(b)配列番号59において示される可変軽鎖及び配列番号60において示される可変重鎖;(c)配列番号71において示される可変軽鎖及び配列番号72において示される可変重鎖;(d)配列番号83において示される可変軽鎖及び配列番号84において示される可変重鎖;(e)配列番号95において示される可変軽鎖及び配列番号96において示される可変重鎖;(f)配列番号107において示される可変軽鎖及び配列番号108において示される可変重鎖;(g)配列番号119において示される可変軽鎖及び配列番号120において示される可変重鎖;(h)配列番号133において示される可変軽鎖及び配列番号134において示される可変重鎖;又は(i)配列番号145において示される可変軽鎖及び配列番号146において示される可変重鎖を含む抗MUC16 scFv;ならびにCD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0153】
一部の実施形態では、CD8αシグナルポリペプチド、CARは、配列番号7において示される可変軽鎖及び配列番号8において示される可変重鎖を含む抗MUC16 scFv;CD8αポリペプチドを含むヒンジドメイン;場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0154】
一部の実施形態では、CD8αシグナルポリペプチド、CARは、(a)配列番号47において示される可変軽鎖及び配列番号48において示される可変重鎖;(b)配列番号59において示される可変軽鎖及び配列番号60において示される可変重鎖;(c)配列番号71において示される可変軽鎖及び配列番号72において示される可変重鎖;(d)配列番号83において示される可変軽鎖及び配列番号84において示される可変重鎖;(e)配列番号95において示される可変軽鎖及び配列番号96において示される可変重鎖;(f)配列番号107において示される可変軽鎖及び配列番号108において示される可変重鎖;(g)配列番号119において示される可変軽鎖及び配列番号120において示される可変重鎖;(h)配列番号133において示される可変軽鎖及び配列番号134において示される可変重鎖;又は(i)配列番号145において示される可変軽鎖及び配列番号146において示される可変重鎖を含む抗MUC16 scFv;ならびに、場合により、約3~約10のアミノ酸のポリペプチドリンカー、例えばLYCなどを含むCD8α膜貫通ドメイン;CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0155】
一部の実施形態では、CARは、配列番号9において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号9と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0156】
一部の実施形態では、CARは、配列番号49において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号49と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号49と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号49と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0157】
一部の実施形態では、CARは、配列番号51において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号51と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号51と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号51と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0158】
一部の実施形態では、CARは、配列番号61において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号61と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号61と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号61と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0159】
一部の実施形態では、CARは、配列番号63において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号63と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号63と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号63と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0160】
一部の実施形態では、CARは、配列番号73において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号73と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号73と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号73と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0161】
一部の実施形態では、CARは、配列番号75において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号75と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号75と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号75と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0162】
一部の実施形態では、CARは、配列番号85において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号85と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号85と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号85と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0163】
一部の実施形態では、CARは、配列番号87において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号87と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号87と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号87と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0164】
一部の実施形態では、CARは、配列番号97において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号97と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号97と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号97と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0165】
一部の実施形態では、CARは、配列番号99において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号99と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号99と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号99と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0166】
一部の実施形態では、CARは、配列番号109において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号109と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号109と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号109と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0167】
一部の実施形態では、CARは、配列番号111において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号111と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号111と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号111と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0168】
一部の実施形態では、CARは、配列番号121において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号121と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号121と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号121と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0169】
一部の実施形態では、CARは、配列番号123において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号123と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号123と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号123と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0170】
一部の実施形態では、CARは、配列番号125において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号125と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号125と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号125と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0171】
一部の実施形態では、CARは、配列番号135において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号135と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号135と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号135と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0172】
一部の実施形態では、CARは、配列番号137において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号137と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号137と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号137と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0173】
一部の実施形態では、CARは、配列番号147において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号147と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号147と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号147と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0174】
一部の実施形態では、CARは、配列番号149において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号149と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号149と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号149と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0175】
一部の実施形態では、CARは、配列番号11において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号11と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号11と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号11と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0176】
一部の実施形態では、CARは、配列番号50において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号50と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号50と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号50と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
一部の実施形態では、CARは、配列番号52において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号52と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号52と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号52と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0178】
一部の実施形態では、CARは、配列番号62において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号62と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号62と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号62と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0179】
一部の実施形態では、CARは、配列番号64において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号64と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号64と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号64と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0180】
一部の実施形態では、CARは、配列番号74において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号74と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号74と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号74と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0181】
一部の実施形態では、CARは、配列番号76において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号76と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号76と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号76と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0182】
一部の実施形態では、CARは、配列番号86において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号86と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号86と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号86と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0183】
一部の実施形態では、CARは、配列番号88において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号88と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号88と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号88と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0184】
一部の実施形態では、CARは、配列番号98において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号98と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号98と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号98と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0185】
一部の実施形態では、CARは、配列番号100において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号100と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号100と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号100と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0186】
一部の実施形態では、CARは、配列番号110において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号110と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号110と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号110と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0187】
一部の実施形態では、CARは、配列番号112において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号112と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号112と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号112と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0188】
一部の実施形態では、CARは、配列番号122において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号122と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号122と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号122と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0189】
一部の実施形態では、CARは、配列番号124において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号124と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号124と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号124と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0190】
一部の実施形態では、CARは、配列番号126において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号126と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号126と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号126と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0191】
一部の実施形態では、CARは、配列番号136において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号136と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号136と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号136と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0192】
一部の実施形態では、CARは、配列番号138において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号138と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号138と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号138と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0193】
一部の実施形態では、CARは、配列番号148において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号148と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号148と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号148と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0194】
一部の実施形態では、CARは、配列番号150において示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号150と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号150と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号150と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0195】
さらに、本明細書中で企図されるCARの設計は、非修飾T細胞又は他のCARを発現するように修飾されたT細胞と比較して、CARを発現するT細胞における改善された増殖、長期持続性、及び認容できる細胞傷害性を可能にする。
【0196】
E.ポリペプチド
本開示は、部分的には、CARポリペプチド及びその断片、それを含む細胞及び組成物、ならびにポリペプチドを発現するベクターを企図する。一部の実施形態では、配列番号9において示される一つ又は複数のCARを含むポリペプチドが提供される。一部の実施形態では、配列番号11において示される一つ又は複数のCARを含むポリペプチドが提供される。
【0197】
「ポリペプチド」「ポリペプチド断片」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、反対であることが明記されない限り、従来的な意味、即ち、アミノ酸配列として互換的に使用される。ポリペプチドは特定の長さに限定されず、例えば、それらは、全長タンパク質配列又は全長タンパク質の断片を含んでもよく、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化及び同様のもの、ならびに当技術分野において公知の天然及び非天然の両方の他の修飾を含んでもよい。様々な実施形態では、本明細書中で企図されるCARポリペプチドは、タンパク質のN末端にシグナル(又はリーダー)ポリペプチド配列を含み、それは、翻訳時又は翻訳後にタンパク質の転移を指示する。本明細書中に開示されるCARにおいて有用な適切なシグナルポリペプチド配列の例証的な例は、限定されないが、IgG1重鎖シグナルポリペプチド配列、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体2(GM-CSFR2)シグナルポリペプチド配列、Igκシグナルポリペプチド配列、又はCD8αシグナルポリペプチド配列を含む。ポリペプチドは、様々な周知の組み換え技術及び/又は合成技術のいずれかを使用して調製され得る。本明細書中で企図されるポリペプチドは、本開示のCAR、又は本明細書中に開示されるCARの一つ又は複数のアミノ酸からの欠失、付加、及び/又は置換を有する配列を詳細には包含する。
【0198】
「単離ペプチド」又は「単離ポリペプチド」及び同様のものは、本明細書中で使用される場合、細胞環境からの、及び細胞の他の成分との会合からの、ペプチド分子又はポリペプチド分子のインビトロでの単離及び/又は精製を指す。即ち、それは、インビボの物質と有意に関連付けられていない。同様に、「単離細胞」は、インビボ組織又は臓器から得られ、細胞外基質を実質的に含まない細胞を指す。
【0199】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、一つ又は複数の置換、欠失、付加、及び/又は挿入により、天然発生型ポリペプチドとは異なっている場合がある。そのようなバリアントは、天然であってもよく、又は例えば上のポリペプチド配列の一つ又は複数を修飾することにより合成的に生成されてもよい。例えば特定の実施形態では、一つ又は複数の置換、欠失、付加及び/又は挿入を結合ドメイン、ヒンジ、TMドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン又はCARポリペプチドの一次シグナル伝達ドメインに導入することにより、CARの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本発明のポリペプチドは、それに対する少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含むことが好ましい。
【0200】
ポリペプチドには「ポリペプチド断片」が含まれる。ポリペプチド断片は、天然又は組み換え産生ポリペプチドのアミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、及び/又は内部欠失もしくは置換を有する、単量体又は多量体であり得るポリペプチドを指す。特定の実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。特定の実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、又は450アミノ酸長である。特に有用なポリペプチド断片は、抗原結合ドメイン又は抗体の断片を含む機能的ドメインを含む。マウス抗BCMA抗体の場合、有用な断片は、限定されないが、以下を含む:CDR領域、重鎖又は軽鎖のCDR3領域;重鎖又は軽鎖可変領域;二つのCDRを含む抗体鎖又は可変領域の部分;及び同様のもの。
【0201】
ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製、又は同定の容易さのために、又は固体支持体へのポリペプチドの結合を増強するために、インフレームで融合されてもよく、又はリンカーもしくは他の配列に結合されてもよい。
【0202】
上に記述されるように、本発明のポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法において改変され得る。そのような操作のための方法は、当技術分野において一般的に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異により作製され得る。変異誘導及びヌクレオチド配列改変のための方法は、当技術分野に公知である。例えば、Kunkel(1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkelら、(1987、Methods in Enzymol、154:367-382)、米国特許第 4,873,192号、Watson、J.D.ら、(Molecular Biology of the Gene、Fourth Edition、Benjamin/Cummings、Menlo Park、Calif.、1987)、及びそれらにおいて引用される参照文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない、適したアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見出され得る。
【0203】
一部の実施形態では、バリアントは保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似した特性を有する別のアミノ酸について置換される置換であり、ペプチド化学分野の当業者は、ポリペプチドの二次構造及び疎水親水的性質が実質的に不変であると予測するであろう。修飾は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの構造において作製され得るが、依然として望ましい特徴を伴うバリアント又は誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子を得る。ポリペプチドのアミノ酸配列を改変し、等価の、又はさらには改善されたバリアントポリペプチドを作ることが望まれる場合、当業者は、例えば、表1に従い、コードDNA配列のコドンの一つ又は複数を変化させることができる。
【表1】
【0204】
生物学的活性を消失させることなく、どのアミノ酸残基を置換、挿入、又は欠失させることができるかを決定する際の指針は、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えばDNASTARTMソフトウェアなどを使用して見出すことができる。好ましくは、本明細書中に開示されるタンパク質バリアント中のアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸変化、即ち、類似した荷電アミノ酸、又は非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖で関連付けられているアミノ酸ファミリーの一つの置換を含む。天然発生型アミノ酸は一般的に以下の四つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、合わせて芳香族アミノ酸として分類される場合もある。ペプチド又はタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、一般的に、結果として得られる分子の生物学的活性を改変させることなく作製することができる。当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換が、生物学的活性を実質的に改変させないことを認識している(例、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。例示的な保存的置換は、米国仮特許出願第61/241,647号において記載されており、その開示は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0205】
そのような変化を作製する際には、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する上での疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般的に理解されている(Kyte and Doolittle,1982、参照により本明細書中に組み入れられる)。各アミノ酸には、その疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている(Kyte and Doolittle,1982)。これらの値は、以下である:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(‐0.4);トレオニン(‐0.7);セリン(‐0.8);トリプトファン(‐0.9);チロシン(‐1.3);プロリン(‐1.6);ヒスチジン(‐3.2);グルタミン酸(‐3.5);グルタミン(‐3.5);アスパラギン酸(‐3.5);アスパラギン(‐3.5);リジン(‐3.9);及びアルギニン(‐4.5)。
【0206】
特定のアミノ酸は、類似の疎水性親水性指標又はスコアを有する他のアミノ酸により置換され得るが、依然として類似の生物学的活性を伴うタンパク質をもたらすこと、即ち、依然として生物学的に機能的に等価なタンパク質を得ることが当技術分野において公知である。そのような変化を作製する際には、疎水性親水性指標が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1内のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸がさらに特に好ましい。類似のアミノ酸の置換は親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野において理解される。
【0207】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0)、トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換することができ、それでも生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なタンパク質を得ることができることが理解される。そのような変化において、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1内のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸がさらに特に好ましい。
【0208】
上に概説されるように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び同様のものに基づいてもよい。
【0209】
ポリペプチドバリアントにはさらに、グリコシル化形態、他の分子との凝集コンジュゲート、及び無関係な化学部分(例えば、ペグ化分子)との共有結合コンジュゲートが含まれる。共有結合バリアントは、当技術分野において公知であるように、アミノ酸鎖中、又はNもしくはC末端残基で見出される基に機能性を連結することにより調製することができる。バリアントにはまた、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及びムテインを含む。タンパク質の機能的活性に影響を及ぼさない領域の切断又は欠失がまた、バリアントである。
【0210】
一部の実施形態では、二つ又はそれ以上のポリペプチドの発現が望まれる場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書中の他の箇所で考察されるように、IRES配列により分離されることができる。別の実施形態では、二つ以上のポリペプチドは、一つ又は複数の自己切断ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現され得る。
【0211】
本開示のポリペプチドは、融合ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、融合ポリペプチド及び融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供され、例えば、CARである。融合ポリペプチド及び融合タンパク質とは、少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ又は10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。融合ポリペプチドは、典型的には、C末端からN末端に連結されているが、それらは、C末端からC末端に、N末端からN末端に、又はN末端からC末端に連結されてもよい。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序又は指定された順序であってもよい。融合ポリペプチド又は融合タンパク質はまた、融合ポリペプチドの所望の転写活性が維持される限り、保存的に修飾されたバリアント、多型バリアント、対立遺伝子、変異体、部分配列、及び種間相同体を含むことができる。融合ポリペプチドは、化学合成法により、又は二つの部分の間の化学的結合により作製されてもよく、又は他の標準的な方法を使用して一般的に調製されてもよい。融合ポリペプチドを含む連結されたDNA配列は、本明細書の他の箇所で論じるように適切な転写又は翻訳制御エレメントに作動可能に連結される。
【0212】
一実施形態では、融合ポリペプチドは、天然の組み換えタンパク質よりも高い収率でタンパク質を発現する際に補助する配列(発現エンハンサー)を含む。他の融合パートナーは、タンパク質の溶解性を増加させるように、又はタンパク質が所望の細胞内区画に標的化されることを可能にするように、又は細胞膜を通じて融合タンパク質の輸送を促すように選択され得る。
【0213】
融合ポリペプチドは、本明細書中に記載されるポリペプチドドメインの各々の間のポリペプチド切断シグナルをさらに含み得る。なお、ポリペプチド部位は、任意のリンカーペプチド配列に入れることができる。例示的なポリペプチド切断シグナルは、ポリペプチド切断認識部位、例えばプロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、及び自己切断ウイルスオリゴペプチドなどを含む(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照のこと)。
【0214】
適切なプロテアーゼ切断部位及び自己切断ペプチドは、当業者に公知である(例、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722;Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照のこと)。例示的なプロテアーゼ切断部位は、限定されないが、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えばタバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(ワイカウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子、及びエンテロキナーゼの切断部位を含む。その高い切断ストリンジェンシーに起因して、TEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位が一実施形態において好ましく、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号36)、例えば、ENLYFQG(配列番号37)及びENLYFQS(配列番号38)であり、式中、Xは、任意のアミノ酸を表す(TEVによる切断は、QとG又はQとSの間で生じる)。
【0215】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ペプチドである。
【0216】
一部の実施形態では、自己切断ペプチドは、アフトウイルス、ポティウイルス、及びカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス、及びブタテッショウウイルスから得られたポリペプチド配列を含む。
【0217】
一部の実施形態では、自己切断型ポリペプチド部位は、2A又は2A様部位、配列又はドメインを含む(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。2A部位の例証的な例を表2中に提供する。
【表2】
【0218】
好ましい実施形態では、本明細書中で企図されるポリペプチドは、CARポリペプチドを含む。
【0219】
F.ポリヌクレオチド
一部の実施形態では、一つ又は複数のCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供され、例えば、配列番号10及び12である。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、又は組み換えDNAを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドとは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、もしくは少なくとも15000又はそれ以上のヌクレオチドの長さのヌクレオチドの多量体形態を指し、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、又はいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態、ならびに全ての中間長を指す。「中間長」は、本文脈において、例えば6、7、8、9など、101、102、103など;151、152、153など;201、202、203などの引用されている値の間の任意の長さを意味することが、容易に理解されるであろう。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される参照配列(例、配列表を参照のこと)のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド又はバリアントが含まれ、典型的には、バリアントは、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持する。様々な例証的な実施形態では、本開示は、部分的に、発現ベクター、ウイルスベクター、及び転移プラスミドを含むポリヌクレオチド、ならびに同を含む組成物、ならびに細胞を企図する。
【0220】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドの少なくとも約5、10、25、50、100、150、200、250、300、350、400、500、1000、1250、1500、1750もしくは2000又はそれ以上の連続アミノ酸残基、ならびに全ての中間長をコードするポリヌクレオチドが、本開示により提供される。「中間長」は、本文脈において、例えば6、7、8、9など、101、102、103など;151、152、153など;201、202、203などの引用されている値の間の任意の長さを意味することが、容易に理解されるであろう。
【0221】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」及び同様のものは、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を呈するポリヌクレオチド、又は本明細書中で後に定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、一つ又は複数のヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチドに比べて、付加もしくは欠失もしくは異なるヌクレオチドで置換されたポリヌクレオチドを含む。この点において、当技術分野において、変異、付加、欠失、及び置換を含む特定の改変又は修飾が、参照ポリヌクレオチドに対して作製されることができ、それにより、改変又は修飾されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能又は生物学的活性を保持することが、十分に理解される。用語「ポリヌクレオチド断片」は、少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%の天然ポリペプチド活性を保持するポリペプチドをコードする、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700又はそれ以上のヌクレオチド長のポリヌクレオチドを指す。
【0222】
「配列同一性」、又は例えば「~に対して50%同一の配列」を含む、という文章は、本明細書中で使用される場合、比較ウィンドウ上で配列が、ヌクレオチド毎で同一である、又はアミノ酸ごとで同一である程度を指す。このように、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウにわたる二つの最適アライメント配列を比較すること、同一核酸塩基(例、A、T、C、G、I)又は同一アミノ酸残基(例、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が、両方の配列中に生じる位置の数を決定して、一致する位置の数をもたらすこと、一致する位置の数を、比較のウィンドウ中の位置の総数(即ち、ウィンドウサイズ)により割ること、及びこの結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを算出すること、により算出されてもよい。含まれるのは、本明細書中に記載される参照配列のいずれかと少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド及びポリペプチドであって、典型的には、ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を維持する。
【0223】
二つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列関係を記載するために使用される用語は、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」を含む。「参照配列」は、少なくとも12、しかし、頻繁には15~18、しばしば、少なくとも25の単量体単位、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む、の長さである。二つのポリヌクレオチドは、各々が、(1)二つのポリヌクレオチド間で類似する配列(即ち、完全なポリヌクレオチド配列の部分のみ)、及び(2)二つのポリヌクレオチド間で発散する配列を含んでもよく、二つ(又はそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を同定し、比較するために、二つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」で比較することにより実施される。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6つの連続する位置、通常は、約50~約100、より一般的には約100~約150の概念セグメントを指し、配列は、二つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続する位置の参照配列と比較される。比較ウィンドウは、二つの配列の最適なアライメントのため、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列するための配列の最適なアラインメントは、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおけるアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータ化実行により、又は選択された様々な方法のいずれかにより生成される検査及び最良のアラインメント(即ち、比較ウィンドウにわたり最も高い相同性をもたらす)により行われ得る。例えば、Altschulら、1997、Nucl.Acids Res.25:3389により開示されるプログラムのBLASTファミリーを参照のこと。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons Inc,1994-1998,Chapter 15のユニット19.3に見ることができる。
【0224】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号10において示されるヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号10と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、配列番号9のアミノ酸配列を含む抗MUC16 CARは、配列番号10と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。
【0225】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号12において示されるヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号12と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、抗MUC16 CARは、配列番号12と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。一部の実施形態では、配列番号11のアミノ酸配列を含む抗MUC16 CARは、配列番号12と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる。
【0226】
一部の実施形態では、本明細書中に開示されるのは、配列番号49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149又は150のいずれか一つの配列を含む抗MUC16 CARをコードするヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、本明細書中に開示されるのは、配列番号49、50、51、52、61、62、63、64、73、74、75、76、85、86、87、88、97、98、99、100、109、110、111、112、121、122、123、124、125、126、135、136、137、138、147、148、149又は150のいずれか一つと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する抗MUC16 CARをコードするヌクレオチド配列である。
【0227】
本明細書中で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」は、自然状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常では当該断片と隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。「単離ポリヌクレオチド」はさらに、自然界では存在せず、ヒトの手により作製された相補的DAN(cDNA)、組み換えDNA、又は他のポリヌクレオチドも指す。特定の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチド、半合成ポリヌクレオチド、又は組み換え供給源から得られた、もしくは由来するポリヌクレオチドである。
【0228】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書中で企図されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。特定の実施形態では、mRNAは、キャップ、一つ又は複数のヌクレオチド、及びポリ(A)テールを含む。
【0229】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書中で使用される場合、用語「コドン最適化」は、ポリペプチドの発現、安定性、及び/又は活性を増加させるためにポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換することを指す。コドン最適化に影響を及ぼす因子は、限定されないが、以下の一つ又は複数を含む:(i)二つ以上の生物体又は遺伝子又は合成構築されたバイアステーブルの間のコドンバイアスの変動、(ii)生物体、遺伝子又は遺伝子セット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)コンテキストを含むコドンの体系的変動、(iv)その解読tRNAに伴うコドンの変動、(v)三つ組全体又は三つ組の一つの位置のいずれかのGC%に伴うコドンの変動、(vi)参照配列、例えば、天然配列などに対する類似性における変動、(vii)コドン頻度のカットオフにおける変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的性質、(ix)コドン置換セットの設計のベースとなるDNA配列の機能に関する予備知識、(x)各アミノ酸に対するコドンセットの合成的変動、及び/又は(xi)誤った翻訳開始位置の分離された除去。
【0230】
ポリヌクレオチドの方向性を記載する用語には、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)及び3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の配向又は3’から5’の配向で注釈付けされ得る。DNA及びmRNAについて、5’から3’の鎖は、その配列が、プレメッセンジャー(プレmRNA)の配列と同一であるために、「センス」鎖、「プラス」鎖、又は「コード」鎖と指定される[DNA中のチミン(T)の代わりに、RNA中のウラシル(U)を除く]。DNA及びmRNAについては、RNAポリメラーゼにより転写された鎖である相補的な3’から5’鎖は、「鋳型」、「アンチセンス」、「マイナス」、又は「非コード」鎖として指定される。本明細書中で使用される、用語「逆方向」は、3’から5’の方向に書かれた5’から3’の配列、又は5’から3’の方向に書かれた3’から5’の配列を指す。
【0231】
用語「相補的」及び「相補性」は、塩基対形成規則により関連付けられるポリヌクレオチド(即ち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’AGTCATG3’の相補鎖は、3’TCAGTAC5’である。後者の配列は、しばしば、左に5’末端及び右に3’末端、5’C A T G A C T 3’を伴う逆相補体として書かれる。その逆相補鎖と等しい配列は、パリンドローム配列であると言われる。相補性は、核酸塩基の一部のみが塩基対合規則に従って一致する、「部分的」であり得る。又は、核酸間には、「完全」又は「総合的な」相補性が存在する。
【0232】
さらに、当業者は、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書中に記載されるポリペプチド又はそのバリアント断片をコードする多くのヌクレオチド配列があることを認識するであろう。これらポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して、最小の相同性を担持する。それにもかかわらず、コドン使用における差に起因して変動するポリヌクレオチドが、本発明により具体的に企図され、例えば、ヒト及び/又は霊長類のコドン選択について最適化されているポリヌクレオチドである。さらに、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子がまた、使用され得る。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加及び/又は置換など、一つ又は複数の変異の結果として改変される内在性遺伝子である。
【0233】
本明細書中で使用される用語「核酸カセット」又は「発現カセット」は、RNA、及びその後にタンパク質を発現することができるベクター内の遺伝子配列を指す。核酸カセットは、目的の遺伝子、例えば、目的のポリヌクレオチドを含む。核酸カセットは、一つ又は複数の発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、及び目的の遺伝子、例えば、目的のポリヌクレオチドを含む。核酸カセットは、ベクター内で位置的に及び連続的に配向され、それにより、カセット中の核酸はRNAに転写されることができ、必要な場合には、タンパク質又はポリペプチドに翻訳され、形質転換細胞中での活性のために要求される、適した翻訳後修飾を受け、適した細胞内区画に標的化されることにより、生物学的活性のための適した区画へと移行され、又は細胞外区画中に分泌されることができる。一部の実施形態では、カセットは、ベクター中への容易な挿入のために適合されたその3’末端及び5’末端を有し、例えば、それは、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。一部の実施形態では、核酸カセットは、キメラ抗原受容体の配列を含む。カセットは取り出され、単一ユニットとしてプラスミド又はウイルスベクター中に挿入されることができる。
【0234】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、少なくとも一つの目的のポリヌクレオチドを含む。本明細書中で使用される場合、用語「目的のポリヌクレオチド」は、発現されることが望まれる発現ベクター中に挿入された、ポリペプチド(即ち、目的のポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを指す。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の目的のポリヌクレオチドを含んでもよい。一部の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、疾患又は障害の治療又は防止において治療効果を提供するポリペプチドをコードする。目的のポリヌクレオチド、及びそれからコードされるポリペプチドは、野生型ポリペプチド、ならびに機能的バリアント及び断片をコードする両方のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、機能的バリアントは、対応する野生型参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態では、機能的バリアント又は断片は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を有する。
【0235】
本開示のポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書中の他の箇所に開示される、又は当技術分野において公知である、他のDNA配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、Kozak配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、マルチクローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例、LoxP、FRT、及びAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、及び自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどと組み合わされてもよく、それらの全体的な長さが大幅に変動し得るようにする。従って、ほぼ任意の長さのポリヌクレオチド断片が用いられ得ること、全長は、好ましくは、調製の容易さ、及び意図される組み換えDNAプロトコルにおける使用により限定されることが企図される。
【0236】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを保有する細胞は、直接的な毒性及び/又は非制御増幅のリスクを減少させるための誘導性自殺遺伝子をはじめとする自殺遺伝子を利用する。一部の実施形態では、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチドを保有する宿主、又は細胞に対して免疫原性ではない。使用され得る自殺遺伝子の特定の例は、カスパーゼ-9又はカスパーゼ-8又はシトシンデアミナーゼである。カスパーゼ-9は、二量体化の特定の化学誘導物質(CID:chemical inducer of dimerization)を使用して活性化され得る。
【0237】
一部の実施形態では、ベクターは、本発明の免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞を、インビボでネガティブ選択されやすいようにする遺伝子セグメントを含む。「ネガティブ選択」により、注入細胞が、個体のインビボ状態における変化の結果として除去されることができることを意味する。ネガティブ選択可能な表現型は、投与薬剤、例えば、化合物に感受性を付与する遺伝子の挿入から生じ得る。ネガティブ選択可能な遺伝子は当技術分野において公知であり、とりわけ、以下を含む:ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al.,Cell 11:223,1977);細胞ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、及び細菌シトシンデアミナーゼ、(Mullen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:33(1992))。
【0238】
一部の実施形態では、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞、例えばT細胞などは、インビトロでネガティブ選択可能な表現型の細胞の選択を可能にするポジティブマーカーをさらに含むポリヌクレオチドを含む。ポジティブ選択可能なマーカーは、宿主細胞中に導入された際に、優性表現型を発現する遺伝子であってもよく、遺伝子を担持する細胞のポジティブ選択を可能にする。この種類の遺伝子は当技術分野において公知であり、とりわけ、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するハイグロマイシン-Bホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質G418に対する耐性をコードするTn5からのアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo又はaph)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、及び多剤耐性(MDR)遺伝子を含む。
【0239】
一部の実施形態では、ポジティブ選択可能なマーカー及びネガティブ選択可能なエレメントは、ネガティブ選択可能なエレメントの喪失が必ず、また、ポジティブ選択可能なマーカーの喪失により伴われるように連結される。一部の実施形態では、ポジティブ及びネガティブ選択可能なマーカーは、一つの喪失が他の喪失に義務的に導くように融合される。発現産物として、上に記載される所望のポジティブ選択性質及びネガティブ選択性質の両方を付与するポリペプチドをもたらす融合ポリヌクレオチドの例は、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼチミジンキナーゼ融合遺伝子(HyTK)である。この遺伝子の発現は、インビトロでのポジティブ選択のためのハイグロマイシンB耐性、及びインビボでのネガティブ選択のためのガンシクロビル感受性を付与するポリペプチドをもたらす。Lupton S.D.,et al,Mol.及びCell.Biology 1 1:3374- 3378,1991を参照のこと。一部の実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドは、融合遺伝子、特にインビトロでのポジティブ選択のためのハイグロマイシンB耐性、及びインビボでのネガティブ選択のためのガンシクロビル感受性を付与するものを含むレトロウイルスベクター、例えば、Lupton,S.D.et al.(1991)、上記において記載されるHyTKレトロウイルスベクター中にある。また、優性ポジティブ選択可能なマーカーをネガティブ選択可能なマーカーと融合することから由来する二機能的な、選択可能な融合遺伝子の使用を記載する、S.D.LuptonによるPCT US91/08442及びPCT/US94/05601の刊行物を参照のこと。
【0240】
一部の実施形態では、陽性選択可能なマーカーは、hph、nco、及びgptからなる群から選択される遺伝子から由来し、陰性選択可能なマーカーは、シトシンデアミナーゼ、HSV-I TK、VZV TK、HPRT、APRT、及びgptからなる群から選択される遺伝子から由来する。一部の実施形態では、マーカーは、二機能的な、選択可能な融合遺伝子であり、ポジティブ選択可能なマーカーはhph又はneoから由来し、ネガティブ選択可能なマーカーはシトシンデアミナーゼ又はTK遺伝子又は選択可能なマーカーから由来する。誘導性自殺遺伝子
【0241】
G.ベクター
ポリヌクレオチドは、当技術分野において公知であり利用可能な様々な確立された技術のいずれかを使用して調製され、操作及び/又は発現されてもよい。所望のポリペプチドを発現させるために、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適したベクター中に挿入されてもよい。
【0242】
用語「ベクター」は、別の核酸分子を転移又は輸送することが可能な核酸分子を指すために本明細書中で使用される。転移された核酸は、一般的に、ベクター核酸分子に連結され、例えば、その中に挿入される。ベクターは、細胞内で自己複製に向ける配列を含んでもよく、又は宿主細胞DNA中への組込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。
【0243】
例示的なベクターは、限定されないが、自律複製配列、mRNA、プラスミド(例、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)など、バクテリオファージ、例えばラムダファージ又はM13ファージなど、及び動物ウイルスを含む。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリーの例は、限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例、SV40)を含む。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現用のpClneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性の遺伝子転移及び発現用のpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、及びpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)である。一部の実施形態では、本明細書中に開示されるキメラタンパク質のコード配列は、哺乳動物細胞におけるキメラタンパク質の発現用のそのような発現ベクター中に連結することができる。
【0244】
一部の実施形態では、ベクターは、エピソームベクター、又は染色体外で維持されるベクターである。本明細書中で使用される場合、用語「エピソーム」は、宿主染色体DNA中への組込みを伴うことなく複製することができるベクターであり、分裂する宿主細胞からの徐々の喪失を伴わないことはまた、当該ベクターが染色体外で、又はエピソーム的に複製することを意味している。ベクターは、リンパ増殖性ヘルペスウイルス又はガンマヘルペスウイルス、アデノウイルス、SV40、ウシパピローマウイルス、又は酵母からのDNA複製の起点又は「ori」をコードする配列、具体的には、EBVのoriPに対応するリンパ増殖性ヘルペスウイルス又はガンマヘルペスウイルスの複製起点を保持するように操作されている。特定の態様では、リンパ増殖性ヘルペスウイルスは、エプスタインバールウイルス(EBV)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)、ヘルペスウイルスサイミリ(HS)、又はマレック病ウイルス(MDV)であり得る。エプスタインバールウイルス(EBV)及びカポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)がまた、ガンマヘルペスウイルスの例である。典型的には、宿主細胞は、複製を活性化するウイルス複製トランスアクチベータータンパク質を含む。
【0245】
発現ベクター中に存在する「制御エレメント」、「調節配列」は、ベクターの非翻訳領域-複製起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列又はKozak配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’及び3’の非翻訳領域-であり、それらは、宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写及び翻訳を行う。そのようなエレメントは、それらの強度及び特異性において変動し得る。利用するベクター系及び宿主に応じて、ユビキタスプロモーター及び誘導性プロモーターをはじめとする任意の数の適切な転写因子及び翻訳因子を使用してもよい。
【0246】
一部の実施形態では、ベクターは、限定されないが、発現ベクター及びウイルスベクターを含み、外因性、内因性、又は異種制御配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーなどを含むであろう。「内因性」制御配列は、ゲノム中で所与の遺伝子と自然に連結される配列である。「外因性」制御配列は、その遺伝子の転写が、連結されたエンハンサー/プロモーターにより向けられるように、遺伝子操作(即ち、分子生物学的技法)を用いて遺伝子と並立に配置されるものである。「異種」制御配列は、遺伝子操作される細胞とは異なる種から由来する外因性配列である。
【0247】
本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNA又はRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを開始及び転写する。一部の実施形態では、哺乳動物細胞において作動的なプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置付けられるAT-リッチ領域、及び/又は転写の開始から70~80塩基上流に見出される別の配列であるCNCAAT領域を含み、Nは任意のヌクレオチドであり得る。
【0248】
用語「エンハンサー」は、転写の強化を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指し、一部の場合では、別の制御配列に対する方向性に関係なく機能することができる。エンハンサーは、プロモーター及び/又は他のエンハンサーエレメントと協働的に又は相加的に機能することができる。用語「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0249】
用語「操作可能に連結した」は、記載される成分が、それらの意図される様式において機能することを可能にする関係にある並置を指す。一実施形態では、用語は、核酸発現制御配列(プロモーター及び/又はエンハンサーなど)と第二のポリヌクレオチド配列、例えば、目的のポリヌクレオチドの間の機能的結合を指し、ここで、発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0250】
本明細書中で使用される場合、用語「構造的発現制御配列」は、操作可能に連結された配列の継続的な、又は連続的な転写を可能にするプロモーター、エンハンサー、又はプロモーター/エンハンサーを指す。構造的発現制御配列は、様々な細胞型と組織型での発現を可能にする「ユビキタス」なプロモーター、エンハンサー、プロモーター/エンハンサーであってもよく、又は限定的な細胞型及び組織型での発現を可能にする、それぞれ「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞株特異的」、又は「組織特異的」なプロモーター、エンハンサー、又はプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0251】
本発明の特定の実施形態における使用のために適切な、例証的なユビキタス発現制御配列は、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例、初期又は後期)、モロニ-マウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルスからのH5、P7.5及びP11プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1a)プロモーター、初期成長応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、ヒートショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、ヒートショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、ヒートショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター及び骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ネガティブコントロール領域欠失型、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,J Virol.69(2):748-55(1995))を含む。
【0252】
一部の実施形態では、ベクターはMNDプロモーターを含む。一部の実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを含むEF1aプロモーターを含む。一部の実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを欠くEF1aプロモーターを含む。
【0253】
特定の実施形態では、T細胞特異的プロモーター由来のCARを含むポリヌクレオチドを発現させることが望ましい場合がある。
【0254】
本明細書中で使用される場合、「条件付き発現」は、限定されないが、誘導性発現;抑制性発現;特定の生理学的状態、生物学的状態もしくは疾患状態を有する細胞又は組織における発現などをはじめとする任意の種類の条件付き発現を指し得る。この定義は、細胞型特異的又は組織特異的な発現を除外することを意図しない。一部の実施形態では、目的のポリヌクレオチドの条件付き発現、例えば、発現が、細胞、組織、生物体などを、ポリヌクレオチドを発現させる、又は目的のポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現における増加もしくは減少を起こす処理又は条件に供することにより制御される。
【0255】
誘導性プロモーター/系の例証的な例は、限定されないが、ステロイド誘導性プロモーター、例えばグルココルチコイド受容体又はエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーター(対応するホルモンの処理で誘導可能)、メタロチオネインプロモーター(様々な重金属の処理で誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンで誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン調節可能系(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸塩(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存的な調節系などを含む。
【0256】
条件付き発現はまた、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することにより達成されることができる。本発明の特定の実施形態によれば、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼにより媒介される組み換えのために少なくとも一つの(典型的には二つの)部位を含む。本明細書中で使用される場合、用語「リコンビナーゼ」又は「部位特異的リコンビナーゼ」は、一つ又は複数の組み換え部位(例、二つ、三つ、四つ、五つ、七つ、10、12、15、20、30、50など)を含む組み換え反応において含まれる切除的又は組込みタンパク質、酵素、補助因子又は関連タンパク質を含み、それは野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照のこと)、又は変異体、誘導体(例、組み換えタンパク質配列又はその断片を含む融合タンパク質)、断片、及びそのバリアントであってもよい。適切したリコンビナーゼの例証的な例は、限定されないが、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、及びParAを含む。
【0257】
ベクターは、多種多様な部位特異的リコンビナーゼのいずれかのための一つ又は複数の組み換え部位を含み得る。部位特異的リコンビナーゼのための標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターの組込みのために要求される任意の部位への追加であることが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、用語「組み換え配列」、「組み換え部位」、又は「部位特異的組み換え部位」は、リコンビナーゼが認識及び結合する特定の核酸配列を指す。
【0258】
例えば、Creリコンビナーゼのための一つの組み換え部位は、8塩基対コア配列に隣接する二つの13塩基対逆位リピート(リコンビナーゼ結合部位としての役割を果たす)を含む34塩基対配列であるloxPである(Sauer,B.,Current Opinion in Biotechnology 5:521-527(1994)の
図1を参照のこと)。他の例示的なloxP部位は、限定されないが、lox511(Hoess et al.,1996;Bethke and Sauer,1997)、lox5171(Lee and Saito,1998)、lox2272(Lee and Saito,1998)、m2(Langer et al.,2002)、lox71(Albert et al.,1995)、及びlox66(Albert et al.,1995)を含む。
【0259】
FLPリコンビナーゼのための適切な認識部位は、限定されないが、FRT(McLeod,et al.,1996)、F1、F2、F3(Schlake and Bode,1994)、F4、F5(Schlake and Bode,1994)、FRT(LE)(Senecoff et al.,1988)、FRT(RE)(Senecoff et al.,1988)を含む。
【0260】
認識配列の他の例は、attB、attP、attL、及びattR配列であり、それらはリコンビナーゼ酵素のλインテグラーゼ、例えば、phi-c31により認識される。φC31 SSRは、ヘテロタイプ部位attB(34bp長)とattP(39bp長)の間でのみ組み換えを媒介する(Groth et al.,2000)。attB及びattPは、それぞれ細菌ゲノム及びファージゲノム上のファージインテグラーゼの付着部位について名付けられたが、両方が、φC31ホモ二量体により結合されている可能性が高い不完全な反転リピートを含む(Groth et al.,2000)。産物部位、attL及びattRは、さらにφC31媒介性組み換えに対して効果的に不活性(Belteki et al.,2003)であり、反応を不可逆的にする。挿入を触媒するために、attP部位がゲノムattB部位に挿入するよりもattB担持DNAのほうが容易にゲノムattP部位に挿入されることが見出されている(Thyagarajan et al.,2001;Belteki et al.,2003)。このように、典型的な戦略は、相同組み換えにより、attP担持「ドッキング部位」を、定義された遺伝子座中に位置付け、それは次に、挿入のためのattB担持incoming配列とパートナーとなる。
【0261】
本明細書中で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」又は「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)の開始コドン、例えばATGなどに内部リボソームが直接侵入することを促進し、遺伝子のキャップ非依存的な翻訳に導くエレメントを指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)及びJackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照のこと。一部の実施形態では、ベクターは、一つ又は複数のポリペプチドをコードする一つ又は複数の目的のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、複数のポリペプチドの各々の効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、自己切断ポリペプチドをコードする一つ又は複数のIRES配列又はポリヌクレオチド配列により分離されることができる。
【0262】
本明細書中で使用される場合、用語「Kozak配列」は、リボソーム小サブユニットへのmRNAの初期結合を大きく促進し、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスKozak配列は(GCC)RCCATGGであり、式中、Rはプリン(A又はG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、及びKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。一部の実施形態では、ベクターは、コンセンサスKozak配列を有し、所望のポリペプチド、例えば、CARをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0263】
1.ウイルスベクター
一部の実施形態では、細胞(例、免疫エフェクター細胞)は、CARをコードするウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターで形質導入される。例えば、免疫エフェクター細胞は、MUC16ポリペプチドに結合する抗MUC16抗体又はその抗原結合断片を含み、CD3ζ、CD28、4-1BB、Ox40、又はそれらの任意の組み合わせの細胞内シグナル伝達ドメインを伴うCARをコードするベクターで形質導入される。このように、これらの形質導入細胞は、CAR媒介性細胞傷害性応答を誘発することができる。
【0264】
本明細書中で企図される特定の実施形態での使用のために適切なウイルスベクター系の例証的な例は、限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、及びワクシニアウイルスベクターを含む。
【0265】
アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要求しない。そのようなベクターを用いて、高力価及び高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生されることができる。大半のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、及び/又はE3遺伝子を置き換えるように操作され、その後、トランスで欠失した遺伝子機能を供給するヒト293細胞において、複製欠損ベクターが増殖される。Adベクターは、非分裂細胞、分化細胞、例えば肝臓、腎臓及び筋肉中に見出される細胞などを含む、複数の種類の組織にインビボで形質導入することができる。従来的なAdベクターは、大きな運搬能力を有している。
【0266】
複製能力を欠く現在のアデノウイルスベクターの作製と増幅は、293と呼ばれるユニークなヘルパー細胞株を利用する場合がある。この細胞株は、ヒト胚腎臓細胞からAd5 DNA断片により形質転換されたものであり、E1タンパク質を構造的に発現している(Graham et al.,1977)。E3領域は、アデノウイルスゲノムには不必要であるため(Jones&Shenk,1978)、現行のアデノウイルスベクターは、293細胞を利用して、E1、D3、又は両方のいずれかの領域に外来DNAを運搬する(Graham&Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核細胞遺伝子の発現(Levrero et al.,1991;Gomez-Foix et al.,1992)及びワクチン開発(Grunhaus&Horwitz,1992;Graham&Prevec,1992)に使用されている。組み換えアデノウイルスを様々な組織に投与する際での試験は、気管滴下(Rosenfeld et al.,1991;Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈注射(Herz&Gerard,1993)、及び脳内への定位性接種(Le Gal La Salle et al.,1993)を含む。臨床試験におけるAdベクターの使用例には、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫を目的としたポリヌクレオチド療法が含まれる(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0267】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARをコードするポリシストロニックメッセージをコードする一つ又は複数のポリヌクレオチドは、一つ又は複数のポリヌクレオチドを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)で細胞を形質導入することにより、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞中に導入される。
【0268】
AAVは、小さな(約26nm)複製欠損、主にエピソームの、非エンベロープ型ウイルスである。AAVは、分裂細胞及び非分裂細胞の両方を感染させることができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノム中に組み入れ得る。組み換えAAV(rAAV)は、典型的には、最小で、導入遺伝子及びその調節配列、ならびに5’及び3’のAAV逆位末端リピート(ITR)で構成される。ITR配列は約145bp長である。一部の実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、又はAAV10から単離されたITR及びカプシド配列を含む。
【0269】
一部の実施形態では、キメラrAAVが使用される。ITR配列は、一つのAAV血清型から単離され、カプシド配列は別のAAV血清型から単離される。例えば、AAV2由来のITR配列及びAAV6由来のカプシド配列を含むrAAVは、AAV2/AAV6として言及される。特定の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9又はAAV10のいずれか一つから由来するカプシドタンパク質とを含み得る。一部の実施形態では、rAAVは、AAV2から由来するITR配列及びAAV6から由来するカプシド配列を含む。一部の実施形態では、rAAVは、AAV2から由来するITR配列及びAAV2から由来するカプシド配列を含む。
【0270】
一部の実施形態では、操作と選択の方法をAAVカプシドに行って、それらが目的の細胞に形質導入される確率を高くしてもよい。
【0271】
rAAVベクターの構築、その産生、及び精製は、例えば、米国特許第9,169,494号;第9,169,492号;第9,012,224号;第8,889,641号;第8,809,058号;及び第8,784,799号において開示されており、その各々が、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
【0272】
様々な実施形態では、CARをコードする一つ又は複数のポリヌクレオチドは、単純ヘルペスウイルス、例えばHSV-1、HSV-2で細胞を形質導入することにより免疫エフェクター細胞中に導入され、一つ又は複数のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、CARをコードするポリシストロニックメッセージをコードする一つ又は複数のポリヌクレオチドは、単純ヘルペスウイルスで細胞を形質導入することにより、免疫エフェクター細胞中に導入され、例えば、HSV-1、HSV-2、一つ又は複数のポリヌクレオチドを含む。
【0273】
成熟HSVビリオンは、152kbである直鎖二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを含むエンベロープで覆われた二十面体カプシドからなる。一実施形態では、HSVベースのウイルスベクターは、一つ又は複数の必須又は非必須HSV遺伝子において欠損している。一実施形態では、HSVベースのウイルスベクターは、複製欠損である。大半の複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために一つ又は複数の最早期、早期、又は後期HSV遺伝子を除去するための欠失を含む。例えばHSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される最早期遺伝子が欠損であり得る。HSVベクターの利点は、長期間のDNA発現をもたらし得る潜伏期に入る能力、及び25kbまでの外因性DNAを収容し得るその大きなウイルスDNAゲノムである。HSVベースのベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、第5,846,782号及び第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637及びWO99/06583において記載されており、それらは、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0274】
レトロウイルスは、遺伝子送達のための一般のツールである(Miller,2000,Nature.357:455-460)。特定の実施形態では、レトロウイルスは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを細胞に送達するために使用される。本明細書中で使用される場合、用語「レトロウイルス」は、そのゲノムRNAを直鎖二本鎖DNAコピーに逆転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノム中に共有的に組込むRNAウイルスを指す。一度、ウイルスが宿主ゲノム中に組込まれると、それは、プロウイルスとして言及される。プロウイルスは、RNAポリメラーゼIIのための鋳型としての役割を果たし、新たなウイルス粒子を産生するために必要とされる構造タンパク質及び酵素をコードするRNA分子の発現に向ける。
【0275】
特定の実施形態での使用のために適切な、例証的なレトロウイルスは、限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV))、ならびにレンチウイルスを含む。
【0276】
本明細書中で使用される場合、用語「レンチウイルス」は、複合レトロウイルスの群(又は属)を指す。例証的なレンチウイルスは、限定されないが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型及びHIV2型を含む);ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)を含む。一実施形態では、HIVベースのベクター骨格(即ち、HIVシス作用性配列エレメント)が好ましい。一部の実施形態では、レンチウイルスが、CARを含むポリヌクレオチドを細胞に送達するために使用される。
【0277】
レトロウイルスベクター、より具体的にはレンチウイルスベクターは、本開示の特定の実施形態を実行するために使用され得る。したがって、用語「レトロウイルス」又は「レトロウイルスベクター」は、本明細書中で使用される場合、それぞれ「レンチウイルス」及び「レンチウイルスベクター」を含むことが意味される。
【0278】
当業者には明白であるように、用語「ウイルスベクター」は、典型的には核酸分子の転移又は細胞のゲノム中への組込みを促進するウイルス由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例、転移プラスミド)又は核酸転移を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すために広く使用される。ウイルス粒子は、典型的には、核酸に加えて、様々なウイルス成分、及び時折、また、宿主細胞成分を含む。
【0279】
用語「ウイルスベクター」は、核酸を細胞中に転移させることが可能なウイルスもしくはウイルス粒子、又は転移された核酸自体のいずれかを指し得る。ウイルスベクター及び転移プラスミドは、主にウイルスから由来する構造的及び/又は機能的遺伝子エレメントを含む。用語「レトロウイルスベクター」は、主にレトロウイルスから由来する構造的及び機能的遺伝子エレメント、又はそれらの部分を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。用語「レンチウイルスベクター」は、主にレンチウイルスから由来するLTRを含む、構造的及び機能的遺伝子エレメント、又はそれらの部分を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。用語「ハイブリッドベクター」は、レトロウイルス配列、例えば、レンチウイルス配列、及び非レンチウイルス配列の両方を含むベクター、LTR、又は他の核酸を指す。一実施形態では、ハイブリッドベクターは、逆転写、複製、組込み、及び/又はパッケージングのためのレトロウイルス配列、例えば、レンチウイルス配列を含むベクター又は転移プラスミドを指す。
【0280】
一部の実施形態では、用語「レンチウイルスベクター」、「レンチウイルス発現ベクター」は、レンチウイルス転移プラスミド及び/又は感染性レンチウイルス粒子を指すために使用され得る。参照が、エレメント、例えばクローニング部位、プロモーター、調節エレメント、異種核酸などに対して本明細書中でなされる場合、これらのエレメントの配列は、レンチウイルス粒子中でRNA形態において存在し、DNAプラスミド中でDNA形態において存在することが理解されるべきである。
【0281】
プロウイルスの各末端で、「長い末端リピート」又は「LTR」と呼ばれる構造がある。用語「長い末端リピート(LTR)」は、レトロウイルスDNAの末端に位置付けられる塩基対のドメインを指し、それらの天然配列の状況においては、ダイレクトリピートであり、U3、R及びU5領域を含む。LTRは、一般的に、レトロウイルス遺伝子の発現(例、遺伝子転写物の促進、開始、及びポリアデニル化)ならびにウイルス複製に基本的な機能をもたらす。LTRは、転写調節エレメント、ポリアデニル化シグナル及びウイルスゲノムの複製及び組込みのために必要とされる配列を含む多数の調節シグナルを含む。ウイルスLTRは、U3、R、及びU5と呼ばれる三つの領域に分けられる。U3領域は、エンハンサーエレメント及びプロモーターエレメントを含む。U5領域は、プライマー結合部位とR領域の間の配列であり、ポリアデニル化配列を含む。R(繰り返し)領域は、U3領域及びU5領域が隣接している。LTRは、U3領域、R領域及びU5領域から構成され、ウイルスゲノムの5’末端と3’末端の両方に存在する。5’LTRに隣接するものは、ゲノムの逆転写(tRNAプライマー結合部位)及び粒子へのウイルスRNAの効率的なパッケージング(Psi部位)に必要な配列である。
【0282】
本明細書中で使用される場合、用語「パッケージシグナル」又は「パッケージ配列」は、レトロウイルスゲノム内に位置付けられる配列を指し、それらは、ウイルスカプシド又はウイルス粒子中へのウイルスRNAの挿入のために要求される。例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照のこと。いくつかのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのキャプシド形成のために必要とされる最小パッケージングシグナル(また。psi[Ψ〕配列として言及される)を使用する。このように、本明細書中で使用される場合、用語「パッケージング配列」、「パッケージングシグナル」、「psi」及び記号「Ψ」は、ウイルス粒子形成中のウイルスRNA鎖のキャプシド形成のために要求される非コード配列への参照において使用される。
【0283】
様々な実施形態では、ベクターは、修飾された5’LTR及び/又は3’LTRを含む。LTRのいずれか又は両方が、限定されないが、一つ又は複数の欠失、挿入、又は置換を含む、一つ又は複数の修飾を含んでもよい。3’LTRの修飾が、しばしば、ウイルスを複製欠損にすることによりレンチウイルス系又はレトロウイルス系の安全性を改善させるために作製される。本明細書中で使用される場合、用語「複製欠損」は、感染性ビリオンが産生されないように、完全で、有効な複製が可能ではないウイルスを指す(例、複製欠損レンチウイルスの子孫)。用語「複製能力のある」は、ウイルスのウイルス複製が、感染性ビリオン(例、複製能力のあるレンチウイルスの子孫)を産生することが可能であるように、複製が可能である野生型ウイルス又は変異ウイルスを指す。
【0284】
「自己不活化」(SIN)ベクターは、複製能力を欠いたベクターを指し、例えば、右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域は、U3領域として公知であるが、(例、欠失又は置換により)修飾されて、ウイルス複製の最初のラウンドを超えたウイルス転写が防止される、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスのベクターである。これは、右(3’)LTR U3領域がウイルス複製中に左(5’)LTR U3領域の鋳型として使用され、このように、ウイルス転写物は、U3エンハンサープロモーターを伴わずに作製することができないためである。本発明のさらなる実施形態では、3’LTRは、U5領域が、例えば、理想的なポリ(A)配列で置換されるように修飾される。LTRに対する修飾、例えば3’LTR、5’LTR、又は3’LTR及び5’LTRの両方に対する修飾などがまた、本発明中に含まれることに注意すべきである。
【0285】
追加的な安全性の強化は、5’LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を誘導する異種プロモーターと置き換えることで提供される。使用されることができる異種プロモーターの例は、例えば、サルウイルス40(SV40)(例えば初期又は後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば前初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)のプロモーターを含む。典型的なプロモーターが、Tat非依存的な様式において高レベルの転写を駆動することができる。この置換によって、複製能力のあるウイルスを生成する組み換えの可能性が低下する。なぜなら、ウイルス産生系において完全なU3配列がないためである。特定の実施形態では、異種プロモーターは、ウイルスゲノムが転写される様式を制御する際に追加の利点を有する。例えば、異種プロモーターは、ウイルスゲノムの全て又は一部の転写が、誘導因子が存在する場合にのみ生じるように、誘導性であることができる。誘導因子は、限定されないが、一つ又は複数の化学的化合物、又は生理学的条件、例えば宿主細胞が培養される温度もしくはpHなどを含む。
【0286】
一部の実施形態では、ウイルスベクターはTARエレメントを含む。用語「TAR」は、レンチウイルス(例、HIV)LTRのR領域中に位置付けられる「トランス活性化応答」遺伝子エレメントを指す。このエレメントは、レンチウイルスのトランスアクチベーター(tat)遺伝子エレメントと相互作用して、ウイルス複製を増強する。しかし、このエレメントは、5’LTRのU3領域が異種プロモーターにより置換される実施形態において要求されない。
【0287】
「R領域」は、キャッピング基の開始(即ち、転写の開始)で始まり、ポリAトラクトの開始直前に終わるレトロウイルスLTR内の領域を指す。R領域はまた、U3領域及びU5領域に隣接しているとして定義される。R領域は、逆転写中に、ゲノムの一つの端から他への新生DNAの移行を可能にする際に役割を果たす。
【0288】
本明細書中で使用される場合、用語「FLAPエレメント」、又は「cPPT/FLAP」は、それらの配列が、レトロウイルス、例えば、HIV-1又はHIV-2のセントラルポリプリントラクト(central polypurine tract)及びセントラル終結配列(central termination sequences)(cPPT及びCTS)を含む核酸を指す。適切なFLAPエレメントは、米国特許第6,682,907号において、及びZennou,et al.,2000,Cell,101:173において記載されている。HIV-1逆転写中、セントラルポリプリントラクト(cPPT)でのプラス鎖DNAの中央開始及びセントラル終結配列(CTS)での中央終結は、三本鎖DNA構造:HIV-1セントラルDNAフラップの形成に導く。任意の理論により拘束されることを望まないが、DNAフラップは、レンチウイルスゲノム核インポートのシス活性決定因子として作用し得る、及び/又はウイルスの力価を増加させ得る。特定の実施形態では、レトロウイルス又はレンチウイルスのベクター骨格は、ベクター中の目的の異種遺伝子の上流又は下流に一つ又は複数のFLAPエレメントを含む。例えば、特定の実施形態では、転移プラスミドはFLAPエレメントを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、HIV-1から単離されたFLAPエレメントを含む。別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT及び/又はCTSエレメント中に一つ又は複数の変異を伴うFLAPエレメントを含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT又はCTSエレメントのいずれかを含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT又はCTSエレメントを含まない。
【0289】
一部の実施形態では、レトロウイルス又はレンチウイルスの転移ベクターは、一つ又は複数のエクスポートエレメントを含む。用語「エクスポートエレメント」は、細胞の核から細胞質へのRNA転写物の輸送を調節する、シス作用性の転写後調節エレメントを指す。RNAエクスポートエレメントの例は、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のrev応答エレメント(RRE)(例、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053;及びCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照のこと)及びB型肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(HPRE)を含む。一般的に、RNAエクスポートエレメントは、遺伝子の3’UTR内に配置され、一つ又は複数のコピーとして挿入されることができる。
【0290】
一部の実施形態では、ウイルスベクター中での異種配列の発現は、転写後調節エレメント、効率的ポリアデニル化部位、及び、場合により、転写終止シグナルをベクター中に組み入れることにより増加する。様々な転写後調節エレメントが、タンパク質での異種核酸の発現を増加させることができ、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886);B型肝炎ウイルスにおいて存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864);及び同様のもの(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)である。一部の実施形態では、ベクターは、転写後調節エレメント、例えばWPRE又はHPREなどを含む。
【0291】
一部の実施形態では、ベクターは、転写後調節エレメント(PTE)、例えばWPREもしくはHPREなどを欠く、又は含まない。なぜなら、一部の事例では、これらのエレメントは、細胞形質転換のリスクを増加させる、及び/又はmRNA転写物の量を実質的にもしくは有意に増加させない、又はmRNA安定性を増加させるためである。従って、一部の実施形態では、ベクターはPTEを欠く、又は含まない。一部の実施形態では、ベクターは、追加の安全性測定としてWPREもしくはHPREを欠く、又は含まない。
【0292】
異種核酸転写物の効率的な終止とポリアデニル化を誘導する因子は、異種遺伝子の発現を増加させる。転写終止シグナルは、一般的に、ポリアデニル化シグナルの下流に見出される。特定の実施形態では、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリアデニル化配列3’を含む。本明細書中で使用される場合、用語「ポリA部位」又は「ポリA配列」は、RNAポリメラーゼIIにより、新生RNA転写物の終止及びポリアデニル化の両方に向けるDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、ポリAテールをコード配列の3’末端に付加することによりmRNA安定性を促進することができ、このように、増加した翻訳効率に寄与する。組み換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。なぜなら、ポリAテールを欠く転写物は不安定であり、迅速に分解されるためである。切断及びポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列により向けられる。哺乳動物プレmRNAのコアポリ(A)配列は、切断ポリアデニル化部位に隣接する二つの認識エレメントを有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAA六量体が、U残基又はGU残基が豊富な、より可変性であるエレメントの上流20~50ヌクレオチドに位置する。新生転写物の切断は、これら二つのエレメントの間で生じ、5’切断産物に250までのアデノシンの付加と共役される。本発明のベクターにおいて使用されることができるポリAシグナルの例証的な例は、理想的なポリA配列(例、AATAAA、ATTAAA、AGGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、又は当技術分野において公知の別の適切な異種もしくは内因性ポリA配列を含む。
【0293】
一部の実施形態では、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターは、一つ又は複数のインスレーターエレメントをさらに含む。インスレーターエレメントは、レンチウイルス発現配列、例えば、治療用ポリペプチドを、ゲノムDNA中に存在するシス作用エレメントにより媒介され、転移配列の調節解除発現に導き得る組込み部位効果から保護することに寄与し得る(即ち、位置効果;例えば、Burgess-Beusse et al.,2002,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,99:16433;及びZhan et al.,2001,Hum.Genet.,109:471を参照のこと)。一部の実施形態では、転移ベクターは、3’LTRの一つ又は複数のインスレーターエレメントを含み、宿主ゲノム中へのプロウイルスの組込み時に、プロウイルスは、3’LTRの重複により、5’LTR又は3’LTRの両方で一つ又は複数のインスレーターを含む。本発明中での使用のための適切なインスレーターは、限定されないが、ニワトリβ-グロビンインスレーターを含む(Chung et al.,1993.Cell 74:505;Chung et al.,1997.PNAS 94:575;及びBell et al.,1999.Cell 98:387を参照のこと。参照により本明細書中に組み入れられる)。インスレーターエレメントの例は、限定されないが、βグロビン遺伝子座、例えばニワトリHS4などからのインスレーターを含む。
【0294】
一部の実施形態では、ウイルスベクター骨格配列の大半又は全てが、レンチウイルス、例えば、HIV-1から由来する。しかし、レトロウイルス配列及び/又はレンチウイルス配列の多くの異なる供給源を使用することができる、又は組み合わせることができ、特定のレンチウイルス配列における多数の置換及び改変が、本明細書中に記載される機能を実施する転移ベクターの能力を損なうことなく適応され得ることが理解されるべきである。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当技術分野において公知である。Naldini et al.(1996a、1996b、及び1998);Zufferey et al.(1997);Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号;及び第5,994,136号を参照のこと。それらの多くが、ウイルスベクター又は転移プラスミドを産生するために適合され得る。
【0295】
一部の実施形態では、ベクターは、CARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む。ベクターは、一つ又は複数のLTRを有してもよく、LTRのいずれかは、一つ又は複数の修飾、例えば一つ又は複数のヌクレオチド置換、付加、又は欠失などを含む。ベクターは、形質導入効率(例、cPPT/FLAP)、ウイルスパッケージング(例、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、RRE)、及び/又は治療用遺伝子発現を増加させる他のエレメント(例、ポリ(A)配列)を増加させるためのより多くのアクセサリエレメントの一つをさらに含んでもよく、場合により、WPRE又はHPREを含んでもよい。
【0296】
様々な実施形態では、ベクターは組込みウイルスベクターである。
【0297】
様々な他の実施形態では、ベクターはエピソームベクター又は非組込みウイルスベクターである。
【0298】
様々な実施形態では、本明細書中で企図されるベクターは、非組込み又は組込み欠損レトロウイルスを含む。一実施形態では、「組込み欠損」レトロウイルス又はレンチウイルスは、ウイルスゲノムを宿主細胞のゲノム中に組込む能力を欠くインテグラーゼを有するレトロウイルス又はレンチウイルスを指す。様々な実施形態では、インテグラーゼタンパク質は、そのインテグラーゼ活性を特異的に減少させるために変異される。組込み不能レンチウイルスベクターは、インテグラーゼタンパク質をコードするpol遺伝子を修飾することにより得られ、組込み欠損インテグラーゼをコードする変異pol遺伝子がもたらされる。そのような組込み不能ウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834において記載されており、それは、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
【0299】
インテグラーゼ活性を低下させるために適切なHIV-1 pol遺伝子における例証的な変異は、限定されないが、H12N、H12C、H16C、H16V、S81R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263A、及びK264Hを含む。
【0300】
インテグラーゼ活性を低下させるために適切なHIV-1 pol遺伝子における例証的な変異は、限定されないが、以下を含む:D64E、D64V、E92K、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、W235F、及びW235E。
【0301】
特定の実施形態では、インテグラーゼは、アミノ酸D64、D116又はE152の一つ又は複数において変異を含む。一実施形態では、インテグラーゼは、アミノ酸D64、D116及びE152において変異を含む。特定の実施形態では、欠損HIV-1インテグラーゼはD64V変異を含む。
【0302】
「宿主細胞」は、本発明の組み換えベクター又はポリヌクレオチドを用いて、インビボ、エクスビボ、又はインビトロでエレクトロポレーション、トランスフェクト、感染、又は形質導入された細胞を含む。宿主細胞は、パッケージング細胞、産生細胞、及びウイルスベクターで感染された細胞を含み得る。特定の実施形態では、本発明のウイルスベクターで感染された宿主細胞は、治療を必要とする対象に投与される。特定の実施形態では、用語「標的細胞」は、宿主細胞と互換的に使用され、所望の細胞型のトランスフェクト細胞、感染細胞、又は形質導入細胞を指す。好ましい実施形態では、標的細胞はT細胞である。
【0303】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、個々の患者への投与により、典型的には、以下に記載されるように、全身投与(例、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内点滴)又は局所適用することによりインビボで送達され得る。あるいは、ベクターは、細胞、例えば個々の患者から外植された細胞(例、動員(mobilized)された末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検等)又はユニバーサルドナーの造血幹細胞などにエクスビボで送達されることができ、患者中への細胞の再移植が続く。
【0304】
一実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与する。投与は、限定されないが、注射、注入、局所適用、及びエレクトロポレーションを含む、血液又は組織細胞との最終接触に分子を導入するために通常使用される任意の経路による。そのような核酸を投与する適切な方法は、利用可能でかつ当業者に周知であり、一つを上回る経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、しばしば、別の経路よりもより即時的かつより有効な反応を提供することができる。
【0305】
大規模なウイルス粒子産生が、合理的なウイルス力価を達成するために、しばしば必要である。ウイルス粒子は、ウイルス構造遺伝子及び/又はアクセサリ遺伝子、例えば、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpr、vpu、vpx、もしくはnef遺伝子、又は他のレトロウイルス遺伝子を含むパッケージング細胞株中に転移ベクターをトランスフェクトすることにより産生される。
【0306】
本明細書中で使用される場合、用語「パッケージングベクター」は、パッケージングシグナルを欠き、一つ、二つ、三つ、四つ又はそれ以上のウイルス構造遺伝子及び/又はアクセサリ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター又はウイルスベクターを指す。典型的には、パッケージングベクターは、パッケージング細胞中に含まれ、トランスフェクション、形質導入、又は感染を介して細胞中に導入される。トランスフェクション、形質導入、又は感染のための方法は、当業者により周知されている。本発明のレトロウイルス/レンチウイルストランスファーベクターを、トランスフェクション、形質導入、又は感染を介してパッケージング細胞株中に導入して、産生細胞又は細胞株を生成することができる。本発明のパッケージングベクターは、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、又はエレクトロポレーションを含む標準的な方法により、ヒト細胞又は細胞株中に導入することができる。一部の実施形態では、パッケージングベクターは、優性選択可能なマーカー、例えばネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ブラストオシジン、ゼオシン、チミジンキナーゼ、DHFR、Glnシンテターゼ又はADAなどと一緒に細胞中に導入され、適した薬物の存在における選択及びクローンの単離が続く。選択可能なマーカー遺伝子は、パッケージングベクターにより、例えば、IRES又は自己切断ウイルスペプチドによりコードされる遺伝子に物理的に連結されることができる。
【0307】
ウイルスエンベロープタンパク質(env)は、細胞株から生成された組み換えレトロウイルスにより最終的に感染及び形質転換されることができる宿主細胞の範囲を決定する。レンチウイルス、例えばHIV-1、HIV-2、SIV、FIV、及びEIVなどの場合では、envタンパク質はgp41及びgp120を含む。好ましくは、本発明のパッケージング細胞により発現されるウイルスenvタンパク質は、以前に記載されているように、ウイルスgag及びpol遺伝子とは別々のベクター上でコードされる。
【0308】
本発明において用いられることができるレトロウイルス由来env遺伝子の例証的な例は、限定されないが、MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV-B、RD114、SSAV、エボラ、センダイ、FPV(家禽病ウイルス)、及びインフルエンザウイルスエンベロープを含む。同様に、RNAウイルス(例、ピコルナウイルス科、カルシウイルス科、アストロウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミキソウイルス科、ラボドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、レトロウイルス科のRNAウイルスファミリー)からの、ならびにDNAウイルス(ヘパドナウイルス科、シクロウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、アドノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポキシウイルス科、及びイリドウイルス科のファミリー)からのエンベロープをコードする遺伝子が利用され得る。代表的な例は、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、EIAVを含む。
【0309】
他の実施形態では、本発明のウイルスをシュードタイピングするためのエンベロープタンパク質は、限定されないが、以下のウイルスのいずれかを含む:インフルエンザA、例えばH1N1、H1N2、H3N2及びH5N1など(鳥類インフルエンザ)、インフルエンザB、インフルエンザCウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群の任意のウイルス、腸内アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス、リサウイルス、例えば狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1及び2ならびにオーストラリアコウモリウイルスなど、エフェメロウイルス、ベシキュロウイルス、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス、例えば単純ヘルペスウイルス1型及び2型など、水痘帯、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型及び8型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、例えば、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血性発熱ウイルス、坐骨関連出血性発熱ウイルス、ベネズエラ出血性発熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ブニヤウイルス、例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候群の原因ウイルスを伴う出血性発熱、リフトバレー熱ウイルス、エボラ出血熱及びマールブルグ出血熱を含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌル森林病ウイルスを含むフラビウイルス科、オムスク出血熱ウイルス、マダニ由来脳炎の原因ウイルス、ならびにパラミキソウイルス科、例えばヘンドラウイルス及びニパウイルスなど、大痘瘡及び小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルスなど、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)、ウェストナイルウイルス、任意の脳炎の原因ウイルスを含む。
【0310】
一実施形態では、本発明は、組み換えレトロウイルス、例えば、SVV-G糖タンパク質でシュードタイプ化されたレンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
【0311】
本明細書中で使用される場合、用語「シュードタイプ」又は「シュードタイプ化」は、そのウイルスエンベロープタンパク質が、好ましい特性を有する別のウイルスのエンベロープと置き換えられたウイルスを指す。例えば、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子にコードされる)は通常、CD4+提示細胞に対してウイルスを標的化するが、水泡性口炎ウイルスのG-タンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質でHIVをシュードタイプ化することで、広範な細胞にHIVが感染できるようになる。本発明の好ましい実施形態では、レンチウイルスエンベロープタンパク質は、VSV-Gでシュードタイプ化される。一実施形態では、本発明は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化された組み換えレトロウイルス、例えば、レンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
【0312】
本明細書中で使用される場合、用語「パッケージング細胞株」は、パッケージングシグナルを含まないが、しかし、ウイルス粒子の正確なパッケージングのために必要であるウイルス構造タンパク質及び複製酵素(例、gag、pol、及びenv)を安定的又は一過性に発現する細胞株への参照において使用される。任意の適切な細胞株を用いて、本発明のパッケージング細胞を調製することができる。一般的に、細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、パッケージング細胞株を産生するために使用される細胞は、ヒト細胞である。使用されることができる適切な細胞株は、例えば、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H 10T1/2細胞、FLY細胞、Psi-2細胞、BOSC 23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC 1細胞、BSC 40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、293T細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、及び211A細胞を含む。好ましい実施形態では、パッケージング細胞は、293細胞、293T細胞、又はA549細胞である。別の好ましい実施形態では、細胞はA549細胞である。
【0313】
本明細書中で使用される場合、用語「産生細胞株」は、パッケージング細胞株及びパッケージングシグナルを含むトランスファーベクター構築物を含む、組み換えレトロウイルス粒子を産生することが可能である細胞株を指す。感染性ウイルス粒子及びウイルスストック溶液の産生は、従来的な技術を使用して行ってもよい。ウイルスストック溶液を調製する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Y.Soneoka et al.(1995)Nucl.Acids Res.23:628-633、及びN.R.Landau et al.(1992)J.Virol.66:5110-5113により例示されている。感染性ウイルス粒子は、従来の技術を使用してパッケージング細胞から収集され得る。例えば、感染性粒子を、当技術分野で公知のように、細胞溶解、又は細胞培養の上清の収集により収集することができる。場合により、収集されたウイルス粒子を、望ましい場合、精製してもよい。適切な精製技術は当業者に周知である。
【0314】
トランスフェクションによるよりむしろ、ウイルス感染によりレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターを使用した遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列の送達は、「形質導入」として言及される。一実施形態では、レトロウイルスベクターは、感染及びプロウイルス組込みを通じて細胞中に導入される。特定の実施形態では、標的細胞、例えば、T細胞は、それが、ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを使用した感染により細胞に送達される遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列を含む場合、「形質導入」される。特定の実施形態では、形質導入細胞は、その細胞ゲノム中にレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターにより送達される一つ又は複数の遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列を含む。
【0315】
特定の実施形態では、一つ又は複数のポリペプチドを発現する、本発明のウイルスベクターで形質導入された宿主細胞は、疾患を治療及び/又は防止するために対象に投与される。遺伝子治療におけるウイルスベクターの使用に関する他の方法は、本発明の特定の実施形態に従って利用され得るが、例えば、Kay,M.A.(1997)Chest 111(6 Supp.):138S-142S;Ferry,N.and Heard,J.M.(1998)Hum.Gene Ther.9:1975-81;Shiratory,Y.et al.(1999)Liver 19:265-74;Oka,K.et al.(2000)Curr.Opin.Lipidol.11:179-86;Thule,P.M.and Liu,J.M.(2000)Gene Ther.7:1744-52;Yang,N.S.(1992)Crit.Rev.Biotechnol.12:335-56;Alt,M.(1995)J.Hepatol.23:746-58;Brody,S.L.and Crystal,R.G.(1994)Ann.N.Y.Acad.Sci.716:90-101;Strayer,D.S.(1999)Expert Opin.Investig.Drugs 8:2159-2172;Smith-Arica,J.R.and Bartlett,J.S.(2001)Curr.Cardiol.Rep.3:43-49;及びLee,H.C.et al.(2000)Nature 408:483-8において見出すことができる。
【0316】
H.遺伝子修飾された細胞
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中で企図されるCARを発現するように遺伝子修飾された細胞を提供する。一部の実施形態では、遺伝子修飾された細胞は、癌(例、MUC16を発現する癌)の治療における使用のためである。本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子操作された」又は「遺伝子修飾された」は、DNA又はRNAの形態の追加的な遺伝物質を、細胞中の総遺伝物質に加えることを指す。用語「遺伝子修飾された細胞」、「修飾された細胞」、及び「向け直された細胞」は、互換的に使用される。本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子治療」は、遺伝子の発現を回復、修正、もしくは修飾する細胞内の全遺伝物質へのDNA又はRNAの形態の余分な遺伝物質の導入、又は治療用ポリペプチド、例えばCARを発現する目的で、DNA又はRNAの形態の余分な遺伝物質を導入することを指す。
【0317】
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるCARは、それらの特異性を目的の標的抗原、例えば、MUC16ポリペプチドに向け直すように免疫エフェクター細胞において導入及び発現される。「免疫エフェクター細胞」は、一つ又は複数のエフェクター機能(例えば細胞傷害性の細胞殺傷活性、サイトカイン分泌、ADCC及び/又はCDCの誘導など)を有する免疫系の任意の細胞である。
【0318】
本発明の免疫エフェクター細胞は、自己/自家(“self”)又は非自己(“non-self”、例、同種、同系又は異種)であることができる。本明細書中で使用される場合、「自家」は、同じ対象から由来する細胞を指す。本明細書中で使用される場合、「同種」は、比較した細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書中で使用される場合、「同系」は、比較した細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞を指す。本明細書中で使用される場合、「異種」は、比較した細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、本発明の細胞は同種である。
【0319】
本明細書中で企図されるCARと使用される例証的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球を含む。用語「T細胞」又は「Tリンパ球」は、当技術分野において認識されており、胸腺細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)又はTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)のCD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL:CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、又はT細胞の任意の他のサブセットであってもよい。特定の実施形態における使用のために適切なT細胞の他の例証的な集団は、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞、Tメモリー幹細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、及びエフェクターT細胞(TEFF)を含む。
【0320】
当業者により理解され得るように、他の細胞がまた、本明細書中で記載されるように、CARを伴う免疫エフェクター細胞として使用され得る。特に、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、NKT細胞、好中球及びマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞は、エフェクター細胞の前駆体も含み、そのような前駆細胞は、インビボ又はインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するように誘導されることができる。このように、一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、免疫エフェクター細胞の前駆体、例えば臍帯血、骨髄又は動員末梢血から由来する細胞のCD34+集団内に含まれる造血幹細胞(HSC)などを含み、それらは対象における投与時に成熟免疫エフェクター細胞に分化する、又はインビトロで誘導されて成熟免疫エフェクター細胞に分化することができる。
【0321】
本明細書中で使用される場合、MUC16特異的CARを含むように遺伝子操作された免疫エフェクター細胞は、「MUC16特異的な、向け直された免疫エフェクター細胞」として言及され得る。
【0322】
用語「CD34+細胞」は、本明細書中で使用される場合、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。「CD34」は、本明細書中で使用される場合、しばしば、細胞-細胞接着因子として作用し、リンパ節中へのT細胞侵入において含まれる細胞表面糖タンパク質(例、シアロムチンタンパク質)を指す。CD34+細胞集団は、造血幹細胞(HSC)を含み、それは、患者への投与時に分化し、T細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、及び単球/マクロファージ系統の細胞を含む、全ての造血系に寄与する。
【0323】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中で企図されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を作製するための方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、免疫エフェクター細胞が、本明細書中に記載される一つ又は複数のCARを発現するように、個体から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクト又は形質導入することを含む。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、インビトロでのさらなる操作を伴わずに個体から単離され、及び遺伝子修飾される。そのような細胞を次に、個体に直接再投与してもよい。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、CARを発現するように遺伝子修飾される前に、インビトロで増殖するように最初に活性化及び刺激される。これに関して、免疫エフェクター細胞は、遺伝子修飾される(即ち、本明細書中で企図されるCARを発現するように形質導入又はトランスフェクトされる)前及び/又は後に培養され得る。
【0324】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される免疫エフェクター細胞のインビトロ操作又は遺伝子修飾の前に、細胞の供給源が対象から得られる。一部の実施形態では、CAR修飾された免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。T細胞は、限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍を含む多くの供給源から得られることができる。一部の実施形態では、T細胞は、当業者に公知の技術、例えば沈降など、例えばFICOLL(商標)分離などの任意の数を使用して、対象から収集された血液ユニットから得ることができる。一部の実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェリシスにより得られる。アフェレシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含む。一部の実施形態では、アフェレシスにより収集された細胞は、洗浄して、血漿画分を除去し、その後の処理のために細胞を適した緩衝液又は培地中に配置してもよい。細胞は、PBSで、又はカルシウム、マグネシウム、及び、他の全てではないにしても、大半の二価カチオンを欠く別の適切な溶液で洗浄することができる。当業者により理解されるであろうように、洗浄工程は、当業者に公知の方法により、例えば半自動フロースルー遠心分離器を使用することにより達成され得る。例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ、Baxter CytoMate、又は同様のもの。洗浄後、細胞は、緩衝液と共に、又は緩衝液なしで、様々な生体適合性緩衝液又は他の生理食塩水中に再懸濁されてもよい。一部の実施形態では、アフェレシスサンプルの望ましくない成分は、培養培地中で直接的に再懸濁された細胞において除去されてもよい。
【0325】
一部の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることにより、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。以下のマーカー:CD3、CD28,CD4、CD8、CD45RA、及びCD45ROの一つ又は複数を発現するT細胞の特定の部分集団は、ポジティブ又はネガティブ選択技術によりさらに単離されることができる。一実施形態では、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、及びCD45ROを発現するT細胞の特定の部分集団は、ポジティブ又はネガティブ選択技術によりさらに単離される。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択された細胞に固有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成されることができる。本明細書中での使用のための一つの方法は、ネガティブ選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、ネガティブ磁気免疫接着又はフローサイトメトリーを介した細胞選別及び/又は選択である。例えば、ネガティブ選択によりCD4+細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。フローサイトメトリー及び細胞選別はまた、本発明中での使用のために目的の細胞集団を単離するために使用してもよい。
【0326】
PBMCは、本明細書中で企図される方法を使用して、CARを発現するように直接的に遺伝子修飾されてもよい。一部の実施形態では、PBMCの単離後、Tリンパ球をさらに単離し、特定の実施形態では、細胞傷害性Tリンパ球及びヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子修飾及び/又は増殖の前又は後のいずれかに、ナイーブ、メモリー及びエフェクターT細胞部分集団に選別することができる。
【0327】
CD8+細胞は、標準的な方法を使用することにより得ることができる。一部の実施形態では、CD8+細胞は、CD8+細胞のそれらの種類の各々と関連付けられる細胞表面抗原を同定することにより、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞にさらに選別される。
【0328】
一部の実施形態では、ナイーブCD8+Tリンパ球は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD 127、及びCD45RAを含む、ナイーブT細胞の表現型マーカーの発現により特徴付けられる。
【0329】
一部の実施形態では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+及びCD62L-サブセットの両方において存在する。PBMCを、抗CD8抗体及び抗CD62L抗体での染色後、CD62L-CD8+画分及びCD62L+CD8+画分に選別する。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、及びCD127を含み、グランザイムBについて陰性である。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+T細胞である。
【0330】
一部の実施形態では、エフェクターT細胞は、CD62L、CCR7、CD28、及びCD127について陰性であり、ならびにグランザイムB及びパーフォリンについて陽性である。
【0331】
一部の実施形態では、CD4+T細胞は、部分集団中にさらに選別される。例えば、CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することにより、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞に選別することができる。CD4+リンパ球は、標準的な方法により得ることができる。一部の実施形態では、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+CD4+T細胞である。一部の実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L陽性及びCD45RO陽性である。一部の実施形態では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L及びCD45RO陰性である。
【0332】
免疫エフェクター細胞、例えばT細胞などは、公知の方法を使用した単離後に遺伝子修飾されることができる、又は免疫エフェクター細胞は、遺伝子修飾される前に、インビトロで活性化及び増殖される(又は前駆細胞の場合には分化される)ことができる。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞などは、本明細書中で企図されるキメラ抗原受容体で遺伝子修飾され(例、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターで形質導入され)、次にインビトロで活性化及び増殖される。様々な実施形態では、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;及び米国特許出願公開20060121005において記載される方法を使用して、CARを発現するための遺伝子修飾の前又は後に活性化及び増殖させることができる。
【0333】
一般的に、T細胞は、それに、CD3 TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが付着している表面との接触により増殖される。T細胞集団は、抗CD3抗体、もしくはその抗原結合断片、又は表面上に固定化された抗CD2抗体との接触により、あるいはカルシウムイオノフォアとの併用におけるタンパク質キナーゼCアクチベーター(例、ブリオスタチン)との接触により刺激され得る。T細胞の表面上でのアクセサリ分子の共刺激がまた、企図される。
【0334】
一部の実施形態では、PBMC又は単離T細胞は、一般的にビーズ又は他の表面上に付着された刺激剤及び共刺激剤、例えば抗CD3抗体及び抗CD28抗体などと、適したサイトカイン、例えばIL-2、IL-7及び/又はIL-15などを含む培養培地中で接触させる。CD4+T細胞又はCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例は、9.3、B-T3,XR-CD28(Diacione、Besancon、France)を含み、当技術分野において一般に公知の他の方法と同様に使用することができる(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977,1998;Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328,1999;Garland et al.,J.Immunol Meth.227(1-2):53-63,1999)。同じビーズに付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体は、「代替」抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。他の実施形態では、T細胞は、方法、例えばUS6040177;US5827642;及びWO2012129514において記載される方法などを使用して、フィーダー細胞ならびに適した抗体及びサイトカインで増殖するように活性化及び刺激され得る。
【0335】
一部の実施形態では、様々な共刺激分子及びサイトカインの安定な発現及び分泌に向けるようにK562、U937、721.221、T2、及びC1R細胞を操作することにより作製された人工APC(aAPC)。特定の実施形態では、K32 aAPC又はU32 aAPCを使用して、AAPC細胞表面上の一つ又は複数の抗体ベースの刺激分子の呈示に向けられる。aAPC上の遺伝子の様々な組み合わせの発現は、ヒトT細胞活性化要件の正確な決定を可能にし、aAPCは、特定の成長要件及び別個の機能を伴うT細胞サブセットの最適な増殖のために調整されることができるようにする。aAPCは、天然APCの使用とは対照的に、外因性サイトカインの添加を要求することなく、機能的ヒトCD8 T細胞のエクスビボ成長及び長期増殖を支持する。T細胞の集団は、限定されないが、CD137L(4-1BBL)、CD134L(OX40L)及び/又はCD80もしくはCD86を含む様々な共刺激性分子を発現するaAPCにより増殖させることができる。最終的に、aAPCは、遺伝子修飾されたT細胞を増殖させ、CD8 T細胞上のCD28発現を維持するための効率的なプラットフォームを提供する。WO03/057171及びUS2003/0147869において提供されるaAPCは、参照によりそれらの全体において本明細書により組み入れられる。
【0336】
一部の実施形態では、CD34+細胞は、本明細書中で企図される核酸構築物で形質導入される。一部の実施形態では、形質導入されたCD34+細胞は、対象、一般的に、細胞が本来単離された対象中への投与後に、インビボで成熟免疫エフェクター細胞に分化する。一部の実施形態では、CD34+細胞は、以前に報告された方法(Asheuer et al.,2004;Imren,et al.,2004)に従って、以下のサイトカイン:Flt-3リガンド(FLT3)、幹細胞因子(SCF)、巨核球成長及び分化因子(TPO)、IL-3、ならびにIL-6の一つ又は複数への曝露の前に、又はそれを用いて、本明細書中に記載されるCARで遺伝子修飾された後に、インビトロで刺激されてもよい。
【0337】
一部の実施形態では、本開示は、癌の治療のための、修飾された免疫エフェクター細胞の集団を提供し、修飾された免疫エフェクター細胞は、本明細書中に開示されるCARを含む。例えば、修飾された免疫エフェクター細胞の集団は、本明細書中に記載される癌と診断された患者(自己ドナー)から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から調製される。PBMCは、CD4+、CD8+、又はCD4+及びCD8+であってもよいTリンパ球の異種集団を形成する。
【0338】
PBMCはまた、他の細胞傷害性リンパ球、例えばNK細胞又はNKT細胞などを含み得る。本明細書中で企図されるCARのコード配列を担持する発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞、又はNKT細胞の集団中に導入されることができる。発現ベクターを担持する成功裏に形質導入されたT細胞は、フローサイトメトリーを使用してCD3陽性T細胞を単離して選別することができ、次に、抗CD3抗体及び又は抗CD28抗体ならびにIL-2あるいは本明細書中の他の箇所に記載されるような当技術分野において公知の任意の他の方法を使用した細胞活性化に加えて、これらのCARタンパク質を発現するT細胞の数を増加させるようにさらに増殖させることができる。標準的な手順は、ヒト対象で使用するための保存及び/又は調製のためのCARタンパク質T細胞を発現するT細胞の凍結保存に使用される。一実施形態では、T細胞のインビトロ形質導入、培養、及び/又は増殖は、非ヒト動物由来産物、例えば胎児仔ウシ血清及び胎児ウシ血清などの非存在において実施される。PBMCの不均一な集団が遺伝子修飾されるため、結果としての形質導入細胞は、本明細書中で企図されるようなCARを標的化するMUC16を含む、修飾された細胞の不均一な集団である。
【0339】
一部の実施形態では、例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又はそれ以上の異なる発現ベクターの混合物を、免疫エフェクター細胞のドナー集団を遺伝子修飾する際に使用することができ、各ベクターは、本明細書中で企図される異なるキメラ抗原受容体タンパク質をコードする。結果として生じる、修飾された免疫エフェクター細胞は、修飾された細胞の混合集団を形成し、二つ以上の異なるCARタンパク質を発現する、修飾された細胞の割合を伴う。
【0340】
I.T細胞製造方法
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に記載される抗MUC16 CARを発現するように遺伝子操作された細胞を製造するための方法を提供する。本明細書中で企図される方法により製造される細胞は、改善された養子免疫療法組成物を提供する。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、本明細書中で企図される方法により製造された細胞組成物は、増加した生存率、分化の相対的非存在における増殖、及びインビボでの持続性を含む、優れた特性を備えていると考えられる。
【0341】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に記載される抗MUC16 CARを発現するように遺伝子操作されたT細胞を製造するための方法を提供する。一部の実施形態では、T細胞を製造する方法は、細胞を、PI3K細胞シグナル伝達経路を調節する一つ又は複数の薬剤と接触させることを含む。一部の実施形態では、T細胞を製造する方法は、細胞を、PI3K/Akt/mTOR細胞シグナル伝達経路を調節する一つ又は複数の薬剤と接触させることを含む。一部の実施形態では、T細胞は、任意の供給源から得られ、製造過程の活性化及び/又は増殖段階の間に薬剤と接触させてもよい。結果として得られたT細胞組成物は、増殖する、ならびに以下のバイオマーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、及びCD38の一つ又は複数を発現する能力を有する発生的に強力なT細胞において濃縮される。一部の実施形態では、一つ又は複数のPI3K阻害剤で治療されたT細胞を含む細胞の集団は、以下のバイオマーカー:CD62L、CD127、CD197、及びCD38の一つ又は複数、あるいは全てを共発現するCD8+T細胞の集団について濃縮される。
【0342】
一部の実施形態では、維持された増殖のレベル及び減少した分化を含む、修飾されたT細胞が製造される。一部の実施形態では、T細胞は、一つ又は複数の刺激シグナル及びPI3K細胞シグナル伝達経路の阻害剤である薬剤の存在においてT細胞を刺激して活性化させ、増殖させることにより製造される。
【0343】
T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、T細胞は、しばしば、一回又は複数回の刺激、活性化、及び/又は増殖に供される。T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;及び第6,867,041号において記載される方法を使用して活性化及び増殖することができ、その各々が、参照によりその全体において本明細書中に組み入れられる。
【0344】
T細胞を次に修飾して、抗MUC16 CARを発現させることができる。一部の実施形態では、T細胞は、本明細書中で企図される抗MUC16 CARを含むウイルスベクターでT細胞を形質導入することにより修飾される。一部の実施形態では、T細胞は、PI3K細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在において、刺激及び活性化の前に修飾される。一部の実施形態では、T細胞は、PI3K細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在において、刺激及び活性化の後に修飾される。一部の実施形態では、T細胞は、PI3K細胞シグナル伝達経路の阻害剤の存在において、12時間、24時間、36時間、又は48時間の刺激及び活性化以内に修飾される。
【0345】
T細胞が活性化された後、細胞を培養して増殖させる。T細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、又は7日間、少なくとも2週間、少なくとも1、2、3、4、5、又は6ヵ月以上、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上のラウンドの増殖で培養されてもよい。
【0346】
一部の実施形態では、T細胞組成物は、PI3K経路の一つ又は複数の阻害剤の存在において製造される。阻害剤は、経路内の一つ又は複数の活性又は単一の活性を標的としうる。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、製造過程の刺激、活性化、及び/又は増殖期の間に、T細胞を、PI3K経路の一つ又は複数の阻害剤と治療又は接触させることによって、若いT細胞を優先的に増加させ、それにより、優れた治療用T細胞組成物が産生される。
【0347】
一部の実施形態では、操作されたT細胞受容体を発現するT細胞の増殖を増加させるための方法が提供される。そのような方法は、例えば、対象からT細胞の供給源を回収すること、PI3K経路の一つ又は複数の阻害剤の存在においてT細胞を刺激及び活性化すること、抗MUC16 CARを発現させるためのT細胞の修飾、及び培養中でT細胞を増殖させることを含み得る。
【0348】
一部の実施形態では、遺伝子修飾されたT細胞は、CD3 TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触により増殖される。
【0349】
一部の実施形態では、PBMC又は単離T細胞は、適したサイトカイン、例えばIL-2、IL-7、及び/又はIL-15などを伴う培養培地中で、刺激剤及び共刺激剤、例えば可溶性抗CD3抗体及び抗CD28抗体など、又はビーズもしくは他の表面上に付着された抗体と接触させる。
【0350】
一部の実施形態では、PBMC又は単離T細胞は、適したサイトカイン、例えばIL-2、IL-7、及び/又はIL-15など、ならびに/あるいはPI3K阻害剤を伴う培養培地中で、刺激剤及び共刺激剤、例えば可溶性抗CD3抗体及び抗CD28抗体など、又はビーズもしくは他の表面上に付着された抗体と接触させる。
【0351】
一部の実施形態では、以下のバイオマーカー:CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、及びCD38の一つ又は複数の発現について濃縮されたT細胞の集団を産生するための方法。一部の実施形態では、若いT細胞は、以下の生物学的マーカー:CD62L、CD127、CD197、及びCD38の一つ又は複数、あるいは全てを含む。一実施形態では、CD57、CD244、CD160、PD-1、CTLA4、TIM3、及びLAG3の発現を欠く若いT細胞が提供される。
【0352】
一部の実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)は、本明細書中で企図されるT細胞製造方法においてT細胞の供給源として使用される。PBMCは、CD4+、CD8+、又はCD4+及びCD8+であり得るTリンパ球の異種の集団を形成し、他の単核細胞、例えば単球、B細胞、NK細胞、及びNKT細胞などを含み得る。本明細書中で企図される操作されたTCR又はCARをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞、又はNKT細胞の集団中に導入されることができる。発現ベクターを担持する成功裏に形質導入されたT細胞は、フローサイトメトリーを使用してCD3陽性T細胞を単離して選別することができ、次に、抗CD3抗体及び又は抗CD28抗体ならびにIL-2、IL-7、及び/又はIL-15あるいは本明細書中の他の箇所に記載されるような当技術分野において公知の任意の他の方法を使用した細胞活性化に加えて、修飾されたT細胞の数を増加させるようにさらに増殖させることができる。
【0353】
本明細書中で使用される場合、用語「PI3K阻害剤」は、核酸、ペプチド、又はPI3Kの少なくとも一つの活性に結合し、かつ阻害する小さな有機分子を指す。PI3Kタンパク質は、クラス1のPI3K、クラス2のPI3K、及びクラス3のPI3Kの三つのクラスに分けることができる。クラス1のPI3Kは、四つのp110触媒サブユニット(p110α、p110β、p110δ、及びp110γ)の一つ、及び二つの調節サブユニットファミリーの一つとからなるヘテロ二量体として存在する。PI3K阻害剤は、好ましくはクラス1のPI3K阻害剤を標的化する。一実施形態では、PI3K阻害剤は、クラス1のPI3K阻害剤の一つ又は複数のアイソフォームに対する選択性を示す(即ち、p110α、p110β、p110δ、及びp110γ又はp110α、p110β、p110δ、及びp110γに対する選択性)。別の態様では、PI3K阻害剤はアイソフォーム選択性を示さず、「汎PI3K阻害剤」とみなされる。一実施形態では、PI3K阻害剤は、PI3K触媒ドメインへのATPとの結合について競合する。
【0354】
一部の実施形態では、PI3K阻害剤は、例えば、PI3KならびにPI3K-AKT-mTOR経路中の追加のタンパク質を標的化することができる。一部の実施形態では、mTOR及びPI3Kの両方を標的化するPI3K阻害剤は、mTOR阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかとして言及されることができる。PI3Kのみを標的化するPI3K阻害剤は、選択的PI3K阻害剤として言及することができる。一部の実施形態では、選択的PI3K阻害剤は、経路中のmTOR及び/又は他のタンパク質に関して、阻害剤のIC50よりも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、又はそれ以上低い、PI3Kに関して50%の阻害濃度を示す薬剤を指すと理解されることができる。
【0355】
一部の実施形態では、例示的なPI3K阻害剤は、約200nM又はそれ以下、好ましくは約100nm又はそれ以下、さらにより好ましくは約60nM又はそれ以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μM又はそれ以下のIC50(活性の50%を阻害する濃度)でPI3Kを阻害する。一実施形態では、PI3K阻害剤は、約2nM~約100nm、より好ましくは約2nM~約50nM、さらにより好ましくは約2nM~約15nMのIC50を伴ってPI3Kを阻害する。
【0356】
特定の実施形態に企図されるT細胞製造方法での使用に適したPI3K阻害剤の例証的な例は、限定されないが、BKM120(クラス1 PI3K阻害剤、Novartis)、XL147(クラス1 PI3K阻害剤、Exelixis)、(汎PI3K阻害剤、GlaxoSmithKline)、及びPX-866(クラス1 PI3K阻害剤、p110α、p110β、及びp110γアイソフォーム、Oncothyreon)を含む。
【0357】
選択的PI3K阻害剤の他の例証的な例は、限定されないが、BYL719、GSK2636771、TGX-221、AS25242、CAL-101、ZSTK474、及びIPI-145を含む。汎PI3K阻害剤のさらなる例証的な例は、限定されないが、BEZ235、LY294002、GSK1059615、TG100713、及びGDC-0941を含む。一部の実施形態、PI3K阻害剤はZSTK474である。
【0358】
一部の実施形態では、操作されたT細胞受容体を発現するT細胞の増殖を増加させるための方法が提供される。そのような方法は、例えば、対象からT細胞の供給源を回収すること、T細胞を刺激及び活性化すること、CARを発現させるためのT細胞の修飾、ならびに培地中でT細胞を増殖することを含み得るが、T細胞は、製造過程のより多くの工程のいずれか一つにおいて一つ又は複数のPI3K阻害剤の存在において製造される。
【0359】
本明細書中で企図される製造方法は、ヒト対象における使用のための保存及び/又は調製のための、修飾されたT細胞の凍結保存をさらに含んでもよい。T細胞は、解凍時に細胞が生存したままであるように凍結保存される。必要な場合、凍結保存され、形質転換された免疫エフェクター細胞を解凍し、成長させ、より多くのそのような細胞について増殖させることができる。本明細書中で使用される場合、「凍結保存」は、ゼロ以下の温度、例えば(典型的には)77K又は-196℃(液体窒素の沸点)などまで冷却することによる細胞の保存を指す。凍結保存剤は、しばしば、保存されている細胞を、低温での凍結又は室温への加熱に起因する損傷から防止するために、ゼロ以下の温度で使用される。凍結保存剤及び最適な冷却速度は、細胞損傷から保護することができる。使用することができる凍結保護剤は、限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock and Bishop、Nature、1959;183:1394-1395;Ashwood-Smith、Nature、1961;190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニルピロリジン(Rinfret、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1960;85:576)、及びポリエチレングリコール(Sloviter and Ravdin、Nature、1962;196:48)を含む。好ましい冷却速度は、1°~3℃/分である。少なくとも二時間後、T細胞は、-80℃の温度に達し、長期低温貯蔵容器など、永久保存のために液体窒素(-196℃)に直接配置することができる。
【0360】
J.組成物及び製剤
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中で企図されるような、一つ又は複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、同を含むベクター、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞などを含む組成物を提供する。組成物は、限定されないが、医薬組成物を含む。「医薬組成物」は、細胞又は動物への投与のための医薬的に許容可能な又は生理学的に許容可能な溶液中で、単独で、又は一つ又は複数の他の治療のモダリティとの組み合わせにおいて製剤化される組成物を指す。望ましい場合には、本開示の組成物は、他の薬剤も、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、低分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬物、抗体、又は他の様々な医薬的に活性な薬剤などとの組み合わせにおいて投与され得ることも理解されるであろう。実際に、また、組成物中に含まれ得る他の成分に限定はないが、追加の薬剤が、意図される治療を送達する組成物の能力に有害な影響を及ぼさないことを条件とする。
【0361】
語句「医薬的に許容可能な」を本明細書中で用いて、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触した使用のために適切であり、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、材料、組成物及び/又は投薬形態を指す。
【0362】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に又は生理学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤」は、限定されないが、ヒト又は家畜における使用のために許容可能であるとして米国食品医薬品局により承認されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、又は乳化剤を含む。例示的な医薬的に許容可能な担体は、限定されないが、糖、例えばラクトース、グルコース、及びスクロースなど;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなど;セルロース、ならびにその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなど;トラガカンス;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物及び植物性脂肪、パラフィン、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油など;グリコール、例えばプロピレングリコールなど;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなど;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウレートエチルなど;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、リン酸緩衝液、及び医薬製剤中で用いられる任意の他の適合性のある物質を含む。
【0363】
一部の実施形態では、組成物は、本明細書中で企図される量のCAR発現免疫エフェクター細胞を含む。本明細書中で使用される場合、用語「量」は、臨床結果を含む、有益又は所望の予防又は治療結果を達成するために、遺伝子修飾された治療用細胞、例えば、T細胞などの「有効な量」又は「有効量」を指す。
【0364】
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するために有効な遺伝子修飾された治療用細胞の量を指す。典型的には、しかし、必ずしもそうではないが、予防的投与量は、疾患の早期ステージの前の、又は早期ステージの対象において使用されるため、予防的有効量は、治療有効量よりも少ない。
【0365】
遺伝子修飾された治療用細胞の「治療有効量」は、因子、例えば個体の病態、年齢、性別、及び体重など、ならびに個体において所望の応答を引き出す幹細胞及び前駆細胞の能力に応じて変化し得る。治療有効量はまた、ウイルス又は形質導入された治療用細胞の任意の毒性又は有害な効果を、治療的に有益な効果が上回るものである。用語「治療有効量」は、対象(例、患者)を「治療する」のに有効である量を含む。治療量が示されている場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度、及び状態における個々の差を考慮し、医師により決定されることができる。
【0366】
一般的に、本明細書中に記載されるT細胞を含む医薬組成物は、102~1010細胞/体重kg、好ましくは105~106細胞/体重kgの投与量で、当該範囲内の全ての整数値を含み、投与され得ると言える。細胞の数は、組成物が意図される最終的な使用に依存し、その中に含まれる細胞の種類と同様である。本明細書中で提示される使用について、細胞は一般的に、リットル又はそれ以下の容積中であり、500ml又はそれ以下、さらには250mlもしくは100ml又はそれ以下であることができる。故に、所望の細胞の密度は、典型的には、106個細胞/mlを上回り、一般的には、107個細胞/mlを上回り、一般的には108個細胞/ml又はそれ以上である。臨床的に関連する免疫細胞数は、累積的には105、106、107、108、109、1010、1011又は1012個細胞と等しい、又はそれを超える複数回の注入に分けられてもよい。本発明の一部の態様では、特に全ての注入細胞が、特定の標的抗原に向け直されるため、より少ない数の細胞が、106/キログラム(患者当たり106~1011)の範囲中で投与され得る。CAR発現細胞組成物は、これらの範囲内の投与量で複数回投与されてもよい。細胞は、療法を受けている患者にとって同種、同系、異種、又は自己であってもよい。望ましい場合、治療はまた、本明細書中に記載されるようにマイトジェン(例、PHA)もしくはリンホカイン、サイトカイン、及び/又はケモカイン(例、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、及びTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含み、免疫応答の誘導を増強し得る。
【0367】
一般的に、本明細書中に記載されるように活性化及び増殖された細胞を含む組成物は、免疫不全状態の個体で生じる疾患の治療及び防止において利用されてもよい。特に、本明細書中で企図されるCAR修飾されたT細胞を含む組成物は、MUC16を発現する癌の治療において使用される。本発明のCAR修飾されたT細胞は、単独で、又は担体、希釈剤、賦形剤との、及び/又は他の成分、例えばIL-2もしくは他のサイトカインもしくは他の細胞集団などとの組み合わせにおける医薬組成物として投与されてもよい。一部の実施形態では、本明細書中で企図される医薬組成物は、一つ又は複数の医薬的に又は生理学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤との組み合わせにおける遺伝子修飾されたT細胞の量を含む。
【0368】
CAR発現免疫エフェクター細胞集団、例えばT細胞などを含む、本発明の医薬組成物は、緩衝液、例えば中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水及び同様のものなど;糖、例えばグルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトールなど;タンパク質;ポリペプチド又はアミノ酸、例えばグリシンなど;抗酸化物質;キレート剤、例えばEDTA又はグルタチオンなど;アジュバント(例、水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内もしくは動脈内)、腹腔内又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0369】
液体医薬組成物は、溶液、懸濁液、又は他の類似の形態であるかどうかにかかわらず、以下の一つ又は複数を含み得る:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、好ましくは生理食塩液、リンガー液、等張食塩水、固定油、例えば溶媒又は懸濁媒として役立ち得る合成モノ又はジグリセリドなど、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の溶媒など;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベンなど;抗酸化物質、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウムなど;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩など、及び等張性の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースなど。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、又はガラスもしくはプラスチックで作製された複数回用量バイアルに封入されることができる。注射用医薬組成物は、好ましくは、滅菌である。
【0370】
一部の実施形態では、本明細書中で企図されるT細胞組成物は、医薬的に許容可能な細胞培養培地中で製剤化される。そのような組成物は、ヒト対象への投与のために適切である。一部の実施形態では、医薬的に許容可能な細胞培養培地は、無血清培地である。
【0371】
無血清培地は、血清含有培地を上回る利点をいくつか有しており、シンプルでより定義された組成、低下した程度の汚染物、感染性病原体の潜在的な供給源の排除、及びより低いコストを含む。一部の実施形態では、無血清培地は動物質を含まず、場合により、無タンパク質であり得る。場合により、培地は、バイオ医薬品的に許容可能な組み換えタンパク質を含み得る。「動物質を含まない」培地は、成分が非動物供給源から由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物質を含まない培地中で天然動物性タンパク質を置き換え、その栄養素は合成、植物又は微生物の供給源から得られる。「タンパク質を含まない」培地は、対照的に、実質的にタンパク質を含まないと定義される。
【0372】
特定の組成物において使用される無血清培地の例証的な例は、限定されないが、QBSF-60(Quality Biological、Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、及びX-VIVO 10を含む。
【0373】
一部の実施形態では、本明細書中で企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、PlasmaLyte Aを含む溶液中で製剤化される。
【0374】
一部の実施形態では、本明細書中で企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、凍結保存培地を含む溶液中で製剤化される。例えば、凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、融解後の高い細胞活性成績を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地の例証的な例は、限定されないが、CryoStor CS10、CryoStor CS5、及びCryoStor CS2を含む。
【0375】
一部の実施形態では、本明細書中で企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、CryoStor CS10に対してPlasmaLyte Aを50:50で含む溶液中で製剤化される。
【0376】
K.キット
一部の実施形態では、本開示は、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞の集団、又はその医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、免疫エフェクター細胞の集団又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するための説明書を含む。一部の実施形態では、必要とする対象は、MUC16を発現する癌細胞を有する。
【0377】
一部の実施形態では、本開示は、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞の集団、又はその医薬組成物、及び細胞又は組成物を、免疫チェックポイント阻害剤を受けた、又は受けている、それを必要とする対象に投与するための説明書を含むキットを提供する。一部の実施形態では、本開示は、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞の集団、又はその医薬組成物、及び細胞又は組成物を、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、又はセミプリマブを受けた、又は受けている、それを必要とする対象に投与するための説明書を含むキットを提供する。
【0378】
一部の実施形態では、本開示は、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞の集団、又はその医薬組成物、及び細胞又は組成物を、腫瘍関連抗原について特異的な第一の結合ドメイン及びCD3について特異的な第二の結合ドメインを含む二重特異的抗体を受けた、又は受けている、それを必要とする対象に投与するための説明書を含むキットを提供する。一部の実施形態では、本開示は、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞の集団、又はその医薬組成物、及び細胞又は組成物を、腫瘍関連抗原について特異的な第一の結合ドメイン及びCD28について特異的な第二の結合ドメインを含む二重特異的抗体を受けた、又は受けている、それを必要とする対象に投与するための説明書を含むキットを提供する。
【0379】
L.治療方法
本明細書中で企図されるCARを発現する遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞は、癌の防止、治療、及び寛解における使用のための、又は癌に関連付けられる少なくとも一つの症状を防止、治療、もしくは寛解させるための養子免疫療法の改善された方法を提供する。
【0380】
一部の実施形態では、本明細書中で企図される遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞は、対象において癌細胞における細胞傷害性を増加させる際での、又は対象において癌細胞の数を減少させる際での使用のための養子免疫療法の改善された方法を提供する。
【0381】
一部の実施形態では、一次免疫エフェクター細胞の特異性は、本明細書中で企図されるように、一次免疫エフェクター細胞を抗MUC16 CARで遺伝子修飾することにより、特定の抗原、例えば、MUC16を発現する細胞に向け直される。一部の実施形態では、ウイルスベクターを使用して、抗MUC16 CARをコードする特定のポリヌクレオチドで免疫エフェクター細胞を遺伝子修飾する。
【0382】
一部の実施形態では、T細胞を遺伝子修飾して、MUC16発現癌細胞を標的化する抗MUC16 CARを発現させ、T細胞を、それを必要とするレシピエントに注入する種類の細胞治療が提供される。注入された細胞は、レシピエントにおいて疾患を起こす細胞を死滅させることができる。抗体治療とは異なり、T細胞治療は、インビボで複製することができ、持続的な癌治療に導くことができる長期持続性をもたらす。
【0383】
一部の実施形態では、抗MUC16 CARを発現するT細胞は、頑強なインビボのT細胞増殖を受けて、長期間にわたって存続することができる。一部の実施形態では、抗MUC16 CARを発現するT細胞は、任意の追加の腫瘍形成又は成長を阻害するために再活性化することができる特定のメモリーT細胞又は幹細胞メモリーT細胞に進化する。
【0384】
抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞を使用して治療する、防止する、又は寛解させることができる状態の例証的な例が、特定の実施形態において企図されている。一部の実施形態では、本開示は、癌を治療するための方法を提供し、それを必要とする対象に抗MUC16 CAR発現免疫エフェクター細胞又は同を含む組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、癌は、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵管癌、乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫、肝内胆管癌腫瘤形成型、子宮頸部の腺癌、及び胃管の腺癌から選択される。
【0385】
一部の実施形態では、抗MUC16 CAR又は同を含む組成物を発現する免疫エフェクター細胞の治療有効量を、単独で、又は一つ又は複数の治療剤との組み合わせにおいて、それを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、細胞は、癌細胞と関連付けられる状態を発生するリスクのある患者の治療において使用される。このように、特定の実施形態では、抗MUC16 CARを発現する修飾されたT細胞の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌の少なくとも一つの症状の治療、防止、又は寛解のための方法。
【0386】
本明細書中で使用される場合、用語「個体」及び「対象」はしばしば互換的に使用され、本明細書中で他の箇所で企図される遺伝子治療ベクター、細胞ベースの治療剤、及び方法で治療されることができる疾患、障害、又は状態の症状を示す任意の動物を指す。一部の実施形態では、対象は、本明細書中の他の箇所で企図されている遺伝子治療ベクター、細胞ベースの治療剤、及び方法で治療することができる、癌に関連する疾患、障害、又は状態の症状を示す任意の動物を含む。適切な対象(例、患者)は、実験動物(例、マウス、ラット、ウサギ又はモルモット)、家畜(farm animal、domestic animal)、又はペット(例、ネコ又はイヌ)を含む。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者も含まれる。典型的な対象は、癌もしくは癌と診断された、又はそのリスクのある、又は癌を有するヒト患者を含む。
【0387】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、遺伝子治療ベクター、細胞ベースの治療剤、及び本明細書の他の箇所で開示される方法を用いて治療されることができる特定の疾患、障害、又は状態と診断された対象を指す。
【0388】
本明細書中で使用される場合、「治療(treatment)」又は「治療すること(treating)」は、疾患又は病理学的状態の症状もしくは病理に対する、あらゆる有益な作用又は望ましい作用を含み、治療される疾患又は状態の一つ又は複数の測定可能なマーカーにおける最小の低下さえも含み得る。治療には、任意で、疾患もしくは病態の減少、又は疾患もしくは病態の進行の遅延のいずれかが含まれてもよい。「治療」は必ずしも、疾患もしくは状態、又はその関連症状の完全な排除又は治癒を示すものではない。
【0389】
本明細書中で使用される場合、類似の言葉、例えば「防止する」、及び例えば「防止される」、「防止すること」などは、疾患もしくは状態の発生もしくは再発の可能性を防止、阻害、又は低下するためのアプローチを示す。また、疾患もしくは状態の発生又は再発の遅延、又は疾患もしくは状態の症状の発生又は再発の遅延も指す。本明細書中で使用される場合、「防止」及びその類似の言葉がまた、疾患もしくは症状の発生又は再発の前の、疾患もしくは状態の強度、作用、症状、及び/又は負荷量の低下を含む。
【0390】
本明細書中で使用される場合、「~の少なくとも一つの症状を寛解させること」は、対象が治療されている疾患もしくは状態の、減少する一つ又は複数の症状を指す。一部の実施形態では、治療されている疾患又は状態は癌であり、寛解される一つ又は複数の症状は、限定されないが、衰弱、疲労、息切れ、あざ及び出血のしやすさ、頻繁な感染、拡大したリンパ節、膨張した又は疼痛のある腹部(拡張した腹部臓器に起因する)、骨又は関節の疼痛、骨折、計画外の体重減少、食欲不振、寝汗、持続する微熱、及び減少した排尿(腎機能障害に起因する)を含む。
【0391】
「増強する」もしくは「促進する」、あるいは「増加させる」もしくは「増殖させる」により、一般的に、溶媒又は制御分子/組成物のいずれかにより起こされる応答と比較して、より大きな生理学的応答(即ち、下流効果)を産生、誘発、又は起こす、本明細書中で企図される組成物、例えば、抗MUC16 CARを発現する遺伝子修飾されたT細胞の能力を指す。測定可能な生理学的応答は、とりわけ、T細胞増殖、活性化、持続性における増加、及び/又は癌細胞殺傷能力における増加を含み、当技術分野及び本明細書中の記載の理解から明白である。「増加された」又は「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、溶媒又は対照組成物により産生される応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30又はそれ以上(例、500倍、1000倍)(その間の及び1を上回る全ての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含み得る。
【0392】
「減少させる」、又は「下げる」、又は「低める」、又は「低下させる」、又は「弱める」により、一般的に、溶媒又は対照の分子/組成物により起こされる応答と比較して、小さな生理学的応答(即ち、下流効果)を産生する、誘発させる、又は起こす、本明細書中で企図される組成物の能力を指す。「減少」又は「低下された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、溶媒、対照組成物により産生される応答、又は特定の細胞株における応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30又はそれ以上(例、500倍、1000倍)(その間の及び1を上回る全ての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含み得る。
【0393】
「維持する」、又は「保存する」、又は「維持」、又は「変化がない」、又は「実質的な変化がない」、又は「実質的な減少が無い」は、一般的に、溶媒、対照の分子/組成物により起こされた反応、又は特定の細胞株における応答と比較して、細胞において類似の生理学的応答(即ち、下流効果)を産生する、誘発させる、又は起こす、本明細書中で企図される組成物の能力を指す。同等の応答は、参照応答と有意に違わない、又は測定可能なほど違わない応答である。
【0394】
一部の実施形態では、それを必要とする対象において癌を治療する方法は、例えば、本明細書中で企図される、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞を含む組成物の有効量、例えば、治療有効量を投与することを含む。投与の量ならびに頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類及び重症度といった因子により決定されるが、適した投与量は、臨床治験により決定されてもよい。
【0395】
一部の実施形態では、対象に投与される組成物において、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の量は、少なくとも0.1×105細胞、少なくとも0.5×105細胞、少なくとも1×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも0.5×107細胞、少なくとも1×107細胞、少なくとも0.5×108細胞、少なくとも1×108細胞、少なくとも0.5×109細胞、少なくとも1×109細胞、少なくとも2×109細胞、少なくとも3×109細胞、少なくとも4×109細胞、少なくとも5×109細胞又は少なくとも1×1010細胞である。
【0396】
一部の実施形態では、約1×107T細胞~約1×109T細胞、約2×107T細胞~約0.9×109T細胞、約3×107T細胞~約0.8×109T細胞、約4×107T細胞~約0.7×109T細胞、約5×107T細胞~約0.6×109T細胞、又は約5×107T細胞~約0.5×109T細胞が対象に投与される。
【0397】
一部の実施形態では、対象に投与される組成物における、抗MUC16 CARを発現する免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の量は、少なくとも0.1×104細胞/kg体重、少なくとも0.5×104細胞/kg体重、少なくとも1×104細胞/kg体重、少なくとも5×104細胞/kg体重、少なくとも1×105細胞/kg体重、少なくとも0.5×106細胞/kg体重、少なくとも1×106細胞/kg体重、少なくとも0.5×107細胞/kg体重、少なくとも1×107細胞/kg体重、少なくとも0.5×108細胞/kg体重、少なくとも1×108細胞/kg体重、少なくとも2×108細胞/kg体重、少なくとも3×108細胞/kg体重、少なくとも4×108細胞/kg体重、少なくとも5×108細胞/kg体重、又は少なくとも1×109細胞/kg体重である。
【0398】
一部の実施形態では、約1×106T細胞/kg体重~約1×108T細胞/kg体重、約2×106T細胞/kg体重~約0.9×108T細胞/kg体重、約3×106T細胞/kg体重~約0.8×108T細胞/kg体重、約4×106T細胞/kg体重~約0.7×108T細胞/kg体重、約5×106T細胞/kg体重~約0.6×108T細胞/kg体重、又は約5×106T細胞/kg体重~約0.5×108T細胞/kg体重が対象に投与される。
【0399】
当業者は、本明細書中で企図される組成物の複数回の投与が、所望の治療効果を発揮させるために要求され得ることを認識するであろう。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、1年、2年、5年、10年、又はそれ以上の期間にわたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上投与されてもよい。
【0400】
一部の実施形態では、活性化された免疫エフェクター細胞が対象に投与され、次に、その後に、再採血して(又はアフェレシスを実施し)、それから由来する免疫エフェクター細胞を活性化し、これら活性化及び増殖された免疫エフェクター細胞で患者に再注入することが望ましいであろう。この過程は、数週ごとに複数回実施されてもよい。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、10cc~400ccの採血から活性化されることができる。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、又は400cc又はそれ以上の採血から活性化される。理論により拘束されないが、複数回の採血/複数回の再注入のプロトコルを使用することで、免疫エフェクター細胞の特定の群を選択するために役立ち得る。
【0401】
本明細書中で企図される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植、又は移植を含む、任意の好都合な様式において行われ得る。一部の実施形態では、組成物は非経口的に投与される。本明細書中で使用される語句「非経口投与」及び「非経口的に投与」は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、通常は注射により、限定されないが、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内の、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び注入を含む。一部の実施形態では、本明細書中で企図される組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染の部位中への直接注射により対象に投与される。
【0402】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、対象におけるMUC16発現細胞又は腫瘍への細胞免疫応答を増加させるために有効量の組成物を投与する。免疫応答は、感染細胞を殺傷することが可能な細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、及びヘルパーT細胞応答により媒介される細胞免疫応答を含み得る。主にB細胞を活性化することが可能なヘルパーT細胞により媒介され、このように、抗体産生に導く液性免疫応答がまた、誘発され得る。様々な技術を、組成物により誘導される免疫応答の種類を分析するために使用してもよく、それらは、当技術分野において、例えば、Current Protocols in Immunology,Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober(2001)John Wiley&Sons,NY,N.Y.において十分に記載されている。
【0403】
一部の実施形態では、癌と診断された対象を治療する方法が提供され、対象から免疫エフェクター細胞を除去し、抗MUC16 CARをコードする核酸を含むベクターで当該免疫エフェクター細胞を遺伝子修飾し、それにより、修飾された免疫エフェクター細胞の集団を産生し、修飾された免疫エフェクター細胞の集団を同じ対象に投与することを含む。一部な実施形態では、免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。
【0404】
一部の実施形態では、対象において標的細胞集団に対する免疫エフェクター細胞媒介性の免疫調節応答を刺激するための方法が提供され、抗MUC16 CARをコードする核酸構築物を発現する免疫エフェクター細胞集団を対象に投与する工程を含む。
【0405】
特定の実施形態において企図される細胞組成物を投与するための方法は、対象において抗MUC16 CARを直接的に発現するエクスビボ遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞の再導入、又は対象中への導入時にCARを発現する成熟免疫エフェクター細胞に分化する免疫エフェクター細胞の遺伝子修飾された前駆細胞の再導入をもたらすのに有効な任意の方法を含む。一つの方法は、本明細書中で企図される核酸構築物を用いてエクスビボで末梢血T細胞を形質導入すること、及び形質導入細胞を対象に戻すこと、を含む。
【0406】
1.併用治療
一部の実施形態では、本明細書中で企図される組成物は、例えば、一つ又は複数の治療剤との併用治療において、CAR発現免疫エフェクター細胞の有効量を含む。本明細書中で使用される場合、「併用治療」は、組み合わせの有益な効果を提供するレジメンにおける各薬剤又は治療の連続的な様式における投与、及び実質的に同時の様式において、例えばこれらの活性薬剤の固定比率を有する単一のカプセル中で、又は各薬剤についての複数の別々のカプセル中で、など、これらの薬剤又は治療の同時投与を包含する。併用治療はまた、個々のエレメントが異なる時間で及び/又は異なる経路により投与されうるが、しかし、それらが、併用治療の各薬剤又は腫瘍治療アプローチの共作用又は薬物動態的効果及び薬力学的効果により有益な効果を提供するように組み合わせにおいて作用する組み合わせを含む。
【0407】
このように、CAR発現免疫エフェクター細胞組成物は、他の公知の癌治療、例えば放射線治療、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン治療、光力学的治療などとの組み合わせにおいて投与されてもよい。組成物は、抗生物質と併用して投与されてもよい。そのような治療剤は、例えば、本明細書中に記載される特定の疾患状態、例えば特定の癌などに対する標準治療として当技術分野において承認され得る。企図される例示的な治療剤は、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、治療用抗体、腫瘍溶解性ウイルス、又は他の活性薬剤及び補助薬剤を含む。
【0408】
一部の実施形態では、本明細書中に開示されるCAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤との併用において投与され得る。化学療法剤の例証的な例は、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))など;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メチルドパ、及びウレドパなど;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラミド、及びトリメチルロメラミンレジューム(trimethylolomelamine resume)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;窒素マスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニクリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;抗代謝剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモファー、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなど;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補充剤、例えばフロリン酸(frolinic acid)など;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhne-Poulenc Rorer、フランス、アントニー);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチンなど;ビンブラストン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオミチン(difluoromethylomithine)(DMFO);レチノイン酸誘導体、例えばTargretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)など;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラマイシン;カペシタビン;ならびに上のいずれかの医薬的に許容可能な塩、酸、又は誘導体を含む。また、この定義において含まれるのは、癌に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)-イミダゾールを阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲンなど;ならびに抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなど;ならびに上のいずれかの医薬的に許容可能な塩、酸、又は誘導体。
【0409】
様々な他の治療剤が、本明細書中に記載される組成物と併せて使用されてもよい。一部の実施形態では、CAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、抗炎症剤と投与される。抗炎症剤又は抗炎症薬物は、限定されないが、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF医薬、シクロホスファミド及びミコフェノール酸塩を含む非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)を含む。
【0410】
他の例示的なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、例えばVIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)及びCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)など、ならびにシアリル酸塩からなる群から選ばれる。例示的な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、オキシコドン、プロポルキシフェン(proporxyphene)塩酸塩のトラマドールからなる群から選ばれる。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンからなる群から選ばれる。例示的な生物学的応答修飾剤は、細胞表面マーカー(例、CD4、CD5など)、サイトカイン阻害剤、例えばTNFアンタゴニストなど(例、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ケモカイン阻害剤及び接着分子阻害剤に対して向けられた分子を含む。生物学的応答修飾剤は、モノクローナル抗体ならびに分子の組み換え型形態を含む。例示的なDMARDは、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)及びミノサイクリンを含む。
【0411】
本明細書中で企図されるCAR修飾されたT細胞との組み合わせのための適切な治療用抗体の例証的な例は、限定されないが、バビツキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン)、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、デュリゴツマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エロツズマブ(HuLuc63)、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ミラツズマブ、モキセツモマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、テプロツムマブ、及びウブリツキシマブを含む。
【0412】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される組成物は、サイトカインとの併用において投与される。本明細書中で使用される場合、「サイトカイン」は、一つの細胞群により放出され、別の細胞に対して細胞間メディエーターとして作用するタンパク質の総称を意味する。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び従来的なポリペプチドホルモンである。サイトカインの間に含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモンなど;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)など;肝成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子アルファ及びベータ;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF-ベータなど;血小板成長因子;形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF-アルファ及びTGF-ベータなど;インスリン様成長因子-I及び-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン-アルファ、ベータ、及び-ガンマなど;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF)など;顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);ならびに顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12など;IL-15、IL-21、腫瘍壊死因子、例えばTNF-アルファ又はTNF-ベータなど;ならびにLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。一実施形態では、用語「サイトカイン」は、限定されないが、マスクドIL-2を含む、「マスクド」サイトカインを含む。本明細書中で使用される場合、用語「サイトカイン」は、天然供給源からの又は組み換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0413】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される組成物は、免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせにおいて投与される。
【0414】
本明細書中で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、抗原のT細胞受容体認識の振幅及び品質を調節する共刺激シグナル及び阻害シグナルを指す。一部の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。一部の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害シグナルは、CD28結合を置換するためのCTLA-4とCD80又はCD86の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害シグナルは、LAG3分子とMHCクラスII分子の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害シグナルは、TIM3とガレクチン9の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害シグナルは、OX40とOX40Lの間の相互作用である。
【0415】
T細胞活性化及びエフェクター機能は、「免疫チェックポイント」として言及される共刺激シグナル及び阻害シグナルによりバランスが取られる。T細胞エフェクター機能を調節する阻害リガンド及び受容体は、腫瘍細胞上で過剰発現される。その後、共刺激受容体のアゴニスト又は阻害シグナルのアンタゴニストは、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす。腫瘍細胞を直接的に標的化する治療用抗体とは対照的に、免疫チェックポイント阻害剤は、内因性抗腫瘍活性を増強する。特定の実施形態では、本明細書中に開示される方法における使用のための適切な免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、又はTIM3を標的化する抗体である。これらのリガンド及び受容体は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012において概説されている。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CLTA4、GITR、ICOS、ICOSL、B7H3、B7H4、TIM3、LAG3、OX40、CD27、CD70、CD47、及びCD137からなる群から選択される分子を標的化する。
【0416】
本明細書中で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」は、一つ又は複数のチェックポイントタンパク質を完全に又は部分的に低下させる、阻害する、それと干渉する、又はそれを調節する分子を指す。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連付けられる阻害シグナルを防止する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連付けられる阻害シグナル伝達を破壊する抗体又はその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を破壊する小分子である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントブロッカータンパク質、例えば、PD-1とPD-L1の間の相互作用を防止する抗体、又はその断片の間の相互作用を防止する、抗体、その断片、又は抗体模倣物である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4とCD80又はCD86の間の相互作用を防止する抗体又はその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3とそのリガンド、又はTIM-3とそのリガンドの間の相互作用を防止する抗体又はその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、OX40とそのリガンドの間の相互作用を防止する抗体又はその断片である。チェックポイントブロッカーはまた、分子(又はそのバリアント)自体の可溶性形態、例えば、可溶性PD-Ll又はPD-L1融合などの形態であってもよい。
【0417】
本明細書中に開示されるのは、疾患、例えば癌などに罹患した対象を治療するための方法であって、この方法は、抗MUC16 CAR及び免疫チェックポイント阻害剤を発現するように遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞の集団を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を破壊又は阻害する抗体又はその抗原結合部分である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を破壊又は阻害する小分子である。
【0418】
一部の実施形態では、阻害性免疫調節因子(免疫チェックポイント阻害剤)は、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、癌に罹患した対象の免疫療法のための方法を提供し、この方法は、PD-1受容体とそのリガンドPD-L1の間の相互作用を破壊する治療有効量の抗体又はその抗原結合部分を対象に投与することを含む。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンド、PD-L1の間の相互作用を破壊し、抗腫瘍免疫応答を刺激する、当技術分野において公知の抗体が、本明細書中に開示される方法における使用のために適切である。特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。例えば、PD-1を標的化する抗体は、例えば、ニボルマブ(BMS-936558、Bristol-Myers Squibb)、ペムブロリズマブ(ラムブロリズマブ、MK03475、Merck)、及びセミプリマブ(REGN-2810、Regeneron)を含む。本明細書中に開示される方法における使用のための他の適切な抗体は、米国特許第8,008,449号において開示される抗PD-1抗体であり、参照により本明細書中に組み入れられる。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それにより、免疫活性を増加させる。PD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の間の相互作用を破壊し、抗腫瘍免疫応答を刺激する、当技術分野において公知の抗体が、本明細書中に開示される方法における使用のために適切である。例えば、PD-L1を標的化する抗体は、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb)及びMPDL3280A(Genetech)を含む。PD-L1を標的化する他の適切な抗体が、米国特許第7,943,743号において開示されている。PD-1又はPD-L1に結合し、PD-1/PD-L1相互作用を破壊し、抗腫瘍免疫応答を刺激する任意の抗体が、本明細書中に開示される方法における使用のために適切であることが当業者により理解されるであろう。
【0419】
本明細書中に開示される方法における使用のために適切な免疫チェックポイントを標的化する抗体は、上に記載されるものに限定されないことが理解されるべきである。さらに、他の免疫チェックポイント標的がまた、本明細書中に記載される方法においてアンタゴニスト又は抗体により標的化されることができることが、標的化が、例えば、T細胞増殖における増加、増強されたT細胞活性化、及び/又は増加したサイトカイン産生(例、IFN-g、IL-2)において反映される抗腫瘍免疫応答の刺激をもたらすことを条件として、当業者により理解されるであろう。
【0420】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される組成物は、腫瘍関連抗原(TAA)及び刺激分子について特異的な二重特異的抗体との組み合わせにおいて投与される。一部の実施形態では、二重特異的抗体は、TAA及びCD3について特異的である。一部の実施形態では、二重特異的抗体は、TAA及びCD28について特異的である。
【0421】
本明細書中で使用される場合、「腫瘍関連抗原」及び「TAA」は、腫瘍特異的抗原(即ち、癌細胞上でのみ見出される抗原)、及び健常な細胞と比べて癌又は腫瘍細胞上で上昇して発現される抗原を指す。腫瘍関連抗原の非限定的な例は、AFP、ALK、BAGE タンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水酵素IX、カスパーゼ8、CCR5、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリンB1、CYP1B1、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、Fra-1、FOLR1、GAGE タンパク質(例、GAGE-1、-2)、GD2、GloboH、グリピカン3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MART-1、ML-IAP、Muc1、Muc2、Muc3、Muc4、Muc5、Muc16、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PRLR、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、サバイビン、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、ウロプラキン3、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(また、fmc 様チロシンキナーゼ 3;FLT3として公知である)、CD138、CD171、癌胎児性抗原(CEA)、クローディン 6(CLDN6)、C型レクチン様分子 1(CLL-1)、CD2サブセット 1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、癌/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞により認識される黒色腫抗原1(MelanA又はMART1)、メソテリン(MSLN)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1)、黒色腫において優先的に発現される抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、栄養膜糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ならびにウィルムス腫瘍1(WT-1)を含む。
【0422】
本明細書中で引用される全ての刊行物、特許出願及び登録特許が、個々の公表文献、特許出願又は登録特許のそれぞれが、具体的に、及び個々に参照により組み入れられることが示されているように、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0423】
前述の発明は、明確性及び理解を目的として、図及び実施例により詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、特定の変化及び修飾が、添付の請求の範囲の主旨又は範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、例証のみのために提供され、限定のために提供されない。当業者は、本質的に類似した結果をもたらすために変化又は修飾されうる様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0424】
実施例1
抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)の初期設計
MUC16を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を、タンパク質分解切断後に細胞の表面上に残っているMUC16の断片を標的化するscFv結合剤を有するように生成した(MUC16断片配列番号39を参照のこと)。
図1は、MUC16ポリペプチドの概略図であり、切断後に細胞表面上に残っている断片(“nub”)を示す。具体的には、CARは、VH-VL(H-L)配向及びVL-VH(L-H)配向の両方、CD8αヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号1~12及び41~150)において抗MUC16 scFv結合剤を有するように設計された。公知のMUC16結合剤、それぞれ41BB又はCD28共刺激ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCAR BB4020及びBB4021がまた、設計された。
【表3】
【0425】
実施例2
抗MUC16 CARのインビトロ特徴の評価
10の抗体scFvを軽-重、重-軽配向においてCARに変換し、20の抗MUC16 CAR構築物をもたらした(表4)。各構築物は、レンチウイルスベクター(LVV)を介して、健常ドナーから由来するT細胞中に導入され、ベクターコピー数(VCN)(
図2)、CAR発現(
図3)ならびに抗原依存的及び非依存的活性(
図4A~4D)についてスクリーニングされた。抗原依存的活性は、抗原陽性(OVCAR3)又は陰性(Jurkat、PANC-1)腫瘍細胞とのCAR-T細胞の共培養中で放出されたIFNγにより評価されたのに対し、抗原非依存的活性は、T細胞のみの培養中で放出されたIFNγにより評価された。ベクターコピー数(VCN)を評価し、LVVの形質導入効率を評価した。スクリーニングされた20のCARのうち、6つの構築物は、優先順位を下げた:3つの構築物、最小限に形質導入されたT細胞(
図2:BB4009、BB4013、BB4014);及び十分に形質導入された構築物(即ち、VCN>1)のうち、三つのCAR-T産物が、低い(<30%)CAR発現を示した(
図3:BB4002、BB4003、BB4016)。残りの14のCARのうち、BB4010は、比較的高い抗原非依存的IFNγ放出に起因して、優先順位を下げた(
図4A)。残りの13のCARのうち、8が抗原依存的活性を示した。なぜなら、これらのCARは、Jurkat(
図4C)又はPANC-1細胞(
図4D)ではなく、OVCAR3(
図4B)細胞と共培養された場合にIFNγを放出したためである。これらの8つのCARから、BB4000、BB4011、及びBB4015を、それらのmAb親和性、結合エピトープ、及び抗原依存的反応性の範囲、>30% CAR発現、ほとんど又は全くない抗原非依存的反応性、及び>1 VCNに基づいて、追加のインビトロ及びインビボ特徴付けのために選択した。
【0426】
実施例3
MUC16発現に対する抗MUC16 CAR感受性の評価
BB4000、BB4011、及びBB4015の薬理学的感受性を、六つの抗原陰性腫瘍細胞(
図5:Jurkat、PANC-1、HUH7、K562、A549、及びRD)に対して評価し、抗原特異性を実証した。IFNγ放出を、CAR T又は対照非形質導入T細胞(UTD)の共培養物から収集された上清から、各抗原陰性腫瘍株と1:1の比率で24時間にわたり測定した。BB4015は、評価されたCARの全てのドナーにわたって最も低い緊張性活動を実証した。
【0427】
次に、BB4000、BB4011、及びBB4015を、共培養物中に放出されたIFNγによる抗原依存的活性について、高レベル、中レベル、又は低レベルのMUC16外部ドメインを安定的に発現する、操作されたRD腫瘍細胞に対して評価した(
図6A)。CAR T細胞又はUTD T細胞(三人のドナーから)を、MUC16発現RD腫瘍細胞と1:1の比率で24時間にわたり共培養した。BB4000が最も高いIFNγ放出をもたらし、BB4015及びBB4011が続いた。滴定可能な抗原依存的応答が、全ての抗原陽性条件にわたって観察された(
図6B)。
【0428】
抗原依存的活性を、滴定量のMUC16抗原を発現するK562腫瘍細胞との、CAR T細胞又は対照UTD T細胞の共培養中に放出されたIFNγによりさらに評価した。MUC16の外部ドメインをコードするmRNA(配列番号39)を、0.156μg~2.5μgのmRNAの範囲のK562腫瘍細胞中にエレクトロポレーションした(
図7A)。三人の健常なドナーからのCAR T細胞及びUTD T細胞を、トランスフェクトされたK562sと1:1の比率で24時間にわたり共培養した。K562sは、エレクトロポレーションされた腫瘍細胞条件に対して滴定可能なIFNγ放出を実証した(
図7B)。BB4000、BB4011、及びBB4015は全て、用量依存的な様式において抗原依存的IFNγ放出を示した。
【0429】
最後に、BB4000、BB4011、及びBB4015の抗原依存的細胞傷害性を、腫瘍細胞殺傷のパーセント(%)により評価した。三人の健常なドナーからのCAR T細胞又はUTD T細胞、及び上に記述される、操作されたRD腫瘍細胞を、インピーダンス分析器上で10:1、5:1、及び2.5:1のエフェクター対T細胞(E:T)比率で72時間にわたり共培養した。BB4015、BB4000、及びBB4011 CARは、RD培地又は高抗原陽性腫瘍細胞と全てのE:T比率にわたって培養された場合、>70%細胞傷害性を示した(
図8A)。BB4011及びBB4015は、RD低抗原陽性腫瘍細胞と2.5:1のE:T比率で培養された場合、<60%の細胞傷害性を示したのに対し、BB4000は>60%を示した(
図8B)。B4000、BB4011、及びBB4015は全て、用量依存的な様式において抗原依存的細胞傷害性を示した。
【0430】
実施例4
抗MUC16 CAR T細胞分化の評価
BB4000、BB4011、及びBB4015 CAR T細胞を、フローサイトメトリーを介して表現型マーカーについて特徴付けた。マーカーはCD3、CD4、CD8、CD62L、及びCD45RAを含んだ。BB4000は、平均45% CD4+T細胞及び平均36.4% CD8+T細胞;BB4011、47.1% CD4+T細胞及び38% CD8+T細胞;BB4015、60.9% CD4+T細胞及び29% CD8+T細胞をもたらした。UTD対照と比較した場合、BB4015は、CD62L及びCD45RAの増加発現を示し、より大きなインビボでの持続性についての潜在能を伴うより大きなナイーブ様表現型を指しているのに対し、BB4000及びBB4011の両方は、減少したCD62L発現を有した(
図9)。
【0431】
実施例5
MUC16外部ドメインへの抗MUC16 CAR結合
ヒト血液から抽出された末梢血単核細胞(PBMC)を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を使用して活性化させた。PBMCからの活性化細胞を次に、抗MUC16 CAR構築物BB4015をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入した(配列番号11及び12を参照のこと)。UTD細胞を対照条件として使用した。形質導入細胞及びUTD細胞を、IL2の存在においてT細胞成長培地中で10日間にわたり増殖させた。
【0432】
増殖後、抗MUC16 CAR形質導入細胞を、1.54ng/ml~1125ng/mlの間の範囲の濃度のMUC16-nub外部ドメイン抗原(配列番号39)又は1.37U/ml~10,000U/mlの間の範囲の濃度のCA125(nub外部ドメイン抗原を欠くヒトMUC16ポリペプチド;配列番号40)タンパク質でコーティングされた96ウェルプレート中で培養した。抗MUC16 CAR T細胞が、MUC16 nub外部ドメイン濃度に比例する増加レベルのIFNγを放出したのに対し(
図10A)、CA125タンパク質は、抗MUC16 CAR T細胞からいかなる機能的応答も誘発しなかった(
図10B)。UTD対照は、MUC16 nub又はCA125に対する任意の機能的応答を示さなかった。これは、脱落したCA125部分を上回る、MUC16外部ドメインへの抗MUC16 CARの特異性を例証する。
【0433】
実施例6
抗MUC16 CAR T細胞の抗腫瘍活性
健常なヒトPBMCを回収し、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を使用して活性化させた。細胞を次に、抗MUC16 CAR BB4015構築物をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入した(配列番号11及び12を参照のこと)。UTD細胞を対照条件として使用した。形質導入細胞及びUTD細胞を、IL2の存在においてT細胞成長培地中で10日間にわたり増殖させた。
【0434】
UTD細胞又は抗MUC16 CAR T細胞を、MUC16抗原を発現するOVCAR3腫瘍細胞と1:1の比率において共培養した。共培養後の24時間に、上清を回収し、Luminexを使用してIFNγ濃度について分析した。抗MUC16 CAR Tは、UTD対照条件と比較して、MUC16抗原特異的IFNγ放出を実証した(データは示さず)。
【0435】
インビボの雌NSGマウスに、20×10
6のルシフェラーゼ発現OVCAR3.FP細胞を腹腔内接種した。約14日後、腫瘍が1.5×10
8p/sの腫瘍量で平均化した場合、マウスに、溶媒、20×10
6UTD、又は20×10
6抗MUC16 CAR T細胞のいずれかで注射した。OVCAR3.FP腫瘍対照が、抗MUC16 CAR T細胞で注射された動物において、CAR T細胞注射後の約5日目までに観察された(
図11)。n=5の抗MUC16 CAR T群は、群の各動物当たりの個々のデータ点として表される。抗MUC16 CAR T注射後の28日に、マウスのn=5群を、OVCAR3.FP腫瘍細胞で再注射されたNSGマウスの対照ナイーブ群と共に、OVCAR3.FP腫瘍注射により再チャレンジした。腫瘍拒絶が再チャレンジ後に観察された。
図11は、群当たりの平均発光フラックスとして表される、n=5匹のマウスについての溶媒群、UTD群及びOVCAR3.FP群を呈する。
【0436】
実施例7
OVCAR3モデルにおける抗MUC16 CAR T細胞の抗腫瘍活性
インビボ試験を、ホタルルシフェラーゼでタグ付けされたOVCAR3腫瘍細胞で接種された雌NSGマウスにおいて実施し、インビボ撮像システム(IVIS(登録商標);PerkinElmer(登録商標))を介した腫瘍量モニタリングを可能にした。20×10
6個の腫瘍細胞を雌マウスの腹腔内腔中に注射し、適した腫瘍容積が、CAR T注射のために達せられるまでモニタリングした。BB4000、BB4011、BB4017、及びBB4015 T細胞を、尾静脈を介して0.4mLの総容積においてIV注射した。マウスを、試験の経過にわたってT細胞有効性についてモニタリングした。インビボで直接テストされた場合、BB4015は、BB4011(
図12A)、BB4000(
図12B)、及びBB4017(
図12C)よりも速く、より耐久性のある応答を実証した。
【0437】
次に、OVCAR3.FP IP腫瘍モデルを、上に記載されるように用いた。0日目に、動物を、20×10
6、10×10
6、又は3×10
6個のCAR+細胞/マウス、UTD細胞、又はRPMI溶媒(対照)での、BB4015及びBB4000の単回IV注射で処置した。溶媒単独及びUTD対照細胞は、腫瘍量に対する効果を有さなかった。BB4015は、全ての用量で、BB4000と比較された場合に、優れた用量依存的な抗腫瘍効力を示し、最高用量の20×10
6個のCAR+細胞/マウスによって、約6日目までに腫瘍が除去された(
図13A~13C)。全体的には、これらの結果は、BB4015が、他の構築物よりも大きな用量依存的な抗腫瘍効力を伴ってOVCAR3.FP腫瘍成長を制御することを実証する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【表4-11】
【表4-12】
【表4-13】
【表4-14】
【表4-15】
【表4-16】
【表4-17】
【表4-18】
【表4-19】
【表4-20】
【表4-21】
【表4-22】
【表4-23】
【国際調査報告】