(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】磁界調整可能なモータ及び車両
(51)【国際特許分類】
H02K 21/04 20060101AFI20250204BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
H02K21/04
H02K21/14 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542012
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022126188
(87)【国際公開番号】W WO2023216508
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】202210524253.3
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522311521
【氏名又は名称】無錫星駆動力科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI INFIMOTION PROPULSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 99, Beihui Road, Huishan Industrial Transformation Cluster District Wuxi, Jiangsu 214181 China
(71)【出願人】
【識別番号】522311532
【氏名又は名称】無錫星駆科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI INFIMOTION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 99, Beihui Road, Huishan Industrial Transformation Cluster District Wuxi, Jiangsu 214181 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】林 霄▲ジョー▼
(72)【発明者】
【氏名】譚 艶軍
(72)【発明者】
【氏名】于 海生
(72)【発明者】
【氏名】韓 韜
(72)【発明者】
【氏名】王 振
(72)【発明者】
【氏名】張 勝川
(72)【発明者】
【氏名】李 国俊
(72)【発明者】
【氏名】倪 良軍
(72)【発明者】
【氏名】管 良囲
(72)【発明者】
【氏名】熊 学波
(72)【発明者】
【氏名】景 云勇
(72)【発明者】
【氏名】方 亮
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB10
5H621GA01
5H621HH01
5H621PP10
(57)【要約】
磁界調整可能なモータ及び車両である。磁界調整可能なモータの励磁リングアセンブリは励磁リングと励磁巻線を備え、励磁リングは外環壁と内環壁を有し、励磁巻線は外環壁と内環壁との間に設けられ、磁界調整可能なモータの励磁回転子は回転子コアと複数の第1の永久磁石を備え、回転子コアに第1の磁極嵌合部、第2の磁極嵌合部及び周方向に沿って交互に設けられる第1の磁極形成領域および第2の磁極形成領域が設けられ、第1の磁極嵌合部は第1の磁極形成領域に対応し、第2の磁極嵌合部は第2の磁極形成領域に対応し、複数の第1の永久磁石は第1の磁極形成領域と第2の磁極形成領域に対応し、第1の磁極形成領域に第1の磁極を形成させ、第2の磁極形成領域に第2の磁極を形成させ、外環壁は第1の磁極嵌合部に対応し、第2のエアギャップが構造され、内環壁は第2の磁極嵌合部に対応し、第3のエアギャップが構造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界調整可能なモータであって、筐体、固定子、永久磁石回転子、励磁回転子及び励磁リングアセンブリを備え、前記固定子、前記永久磁石回転子、前記励磁回転子及び前記励磁リングアセンブリはいずれも前記筐体内に位置し、前記永久磁石回転子は前記固定子の径方向内側に設けられ、前記永久磁石回転子と前記固定子との間に第1のエアギャップを有し、前記励磁リングアセンブリは前記筐体の端壁に設けられ、前記励磁回転子は前記励磁リングアセンブリと前記永久磁石回転子との間に設けられ、
前記励磁リングアセンブリは励磁リングと励磁巻線を備え、前記励磁リングは外環壁と内環壁とを有し、前記励磁巻線は前記外環壁と前記内環壁との間に設けられ、
前記励磁回転子は回転子コアと複数の第1の永久磁石を備え、前記回転子コアに第1の磁極嵌合部、第2の磁極嵌合部及び周方向に沿って交互に設けられる第1の磁極形成領域と第2の磁極形成領域が設けられ、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域に対応し、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域に対応し、複数の前記第1の永久磁石は前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域に対応し、且つ前記回転子コアに設けられて、前記第1の磁極形成領域に第1の磁極を形成させ、前記第2の磁極形成領域に第2の磁極を形成させ、
前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部に対応し、第2のエアギャップが構造され、前記内環壁は前記第2の磁極嵌合部に対応し、第3のエアギャップが構造される、磁界調整可能なモータ。
【請求項2】
前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第2のエアギャップは前記外環壁の径方向外側面と前記第1の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記内環壁は前記第2の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第3のエアギャップは前記内環壁の径方向外側面と前記第2の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記第1の永久磁石は接線方向型永久磁石鋼を含み、前記接線方向型永久磁石鋼は前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域との間に設けられる、請求項1に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項3】
前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記内環壁は前記外環壁に対して前記回転子コアに向かって突出し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域の端面に設けられ、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域の径方向内側面に設けられる、請求項2に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項4】
前記外環壁と前記第1の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第2のエアギャップは前記外環壁の端面と前記第1の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記内環壁と前記第2の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第3のエアギャップは前記内環壁の端面と前記第2の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記第1の永久磁石は第1のラジアル型永久磁石鋼を含み、前記筐体の周方向において、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域は一々対応するように複数の前記第1のラジアル型永久磁石鋼で囲まれた領域の内側に位置する、請求項1に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項5】
前記第1の磁極形成領域の径方向の内側に磁気遮断構造が設けられ、前記第2の磁極形成領域の径方向内側に超磁性構造が設けられる、請求項4に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項6】
前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域の端面に設けられ、前記第2の磁極嵌合部は前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に設けられ、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域の径方向内側に位置する、請求項4に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項7】
前記第1の磁極嵌合部の端面は前記第2の磁極嵌合部の端面に面一であるか、面一ではなく、前記内環壁の端面は前記外環壁の端面に面一であるか、面一ではない、請求項6に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項8】
前記第1の磁極嵌合部は第1の磁極凸部を含み、前記第2の磁極嵌合部は第2の磁極凸部を含む、請求項3または6に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項9】
前記永久磁石回転子は永久磁石回転子コアと複数の第2の永久磁石を備え、複数の前記第2の永久磁石は周方向に沿って前記永久磁石回転子コアに順次設けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項10】
前記第2の永久磁石は第2のラジアル型永久磁石鋼を含み、隣接する前記第2のラジアル型永久磁石鋼の径方向外端の磁極が異なり、径方向内端の磁極が異なり、前記第2のラジアル型永久磁石鋼の径方向内端の第1の磁極と第2の磁極の位置にいずれも磁気遮断構造が設けられる、請求項9に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項11】
前記励磁リングアセンブリと前記励磁回転子はいずれも2つであり、前記永久磁石回転子は2つの前記励磁回転子の間に位置し、2つの前記励磁回転子は2つの前記励磁リングアセンブリの間に位置する、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両技術に関するが、これに限定されず、特に磁界調整可能なモータ及び車両である。
【背景技術】
【0002】
永久磁石モータは、高トルク密度、高効率、軽量小型化などの特点でますます重視され、様々な分野で広く応用されている。しかしながら、永久磁石モータのエアギャップ磁界(即ち回転子と固定子との間の第1のエアギャップの磁界)は永久磁石鋼から供給され、ほぼ一定であり、調整が困難であり、永久磁石モータのさらなる開発と応用が制限される。このため、国内外の多くの学者はエアギャップ磁界を調整できるモータについて広範かつ詳細な研究を展開した。
【0003】
ここ数年、学者らは、相次いで磁極分割型、組み合わせ回転子、独立磁気回路型、両突極などの多種の新型構造の磁界調整可能なモータを提案しており、モータの構造、作動原理、磁気回路の特徴などについて大量の深い研究を行った。
【0004】
磁界調整可能なモータは、エアギャップ磁界が調整可能であるため、低速で大きなトルクが必要な場合に、より高い出力トルクを提供することができ、高速動作領域で、永久磁石モータが磁界を調整するときに弱い磁電流を省くことができるため効率的であると同時に、磁界調整可能なモータは、より広い速度範囲内で定電力動作を実現することもできる。特に、定電力、広い調速駆動及び定電圧発電などの場合に適しており、航空宇宙、風力発電、電気自動車などの分野で幅広い見通しが期待されている。
【0005】
このため、磁界調整可能なモータは如何に低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点をより達成するかは、当業者が取り組んできた技術的な問題でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下、本開示に詳細に説明されるトピックの概要である。この概要は、請求の範囲の保護範囲を制限することを意味するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施例による磁界調整可能なモータは、筐体、固定子、永久磁石回転子、励磁回転子及び励磁リングアセンブリを備え、前記固定子、前記永久磁石回転子、前記励磁回転子及び前記励磁リングアセンブリはいずれも前記筐体内に位置し、前記永久磁石回転子は前記固定子の径方向内側に設けられ、前記永久磁石回転子と前記固定子との間に第1のエアギャップを有し、前記励磁リングアセンブリは前記筐体の端壁に設けられ、前記励磁回転子は前記励磁リングアセンブリと前記永久磁石回転子との間に設けられ、前記励磁リングアセンブリは励磁リングと励磁巻線を備え、前記励磁リングは外環壁と内環壁を有し、前記励磁巻線は前記外環壁と前記内環壁との間に設けられ、前記励磁回転子は回転子コアと複数の第1の永久磁石を備え、前記回転子コアに第1の磁極嵌合部、第2の磁極嵌合部及び周方向に沿って交互に設けられる第1の磁極形成領域と第2の磁極形成領域が設けられ、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域に対応し、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域に対応し、複数の前記第1の永久磁石は前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域に対応し、且つ前記回転子コアに設けられて、前記第1の磁極形成領域に第1の磁極を形成させ、前記第2の磁極形成領域に第2の磁極を形成させ、前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部に対応し、第2のエアギャップが構造され、前記内環壁は前記第2の磁極嵌合部に対応し、第3のエアギャップが構造される。
【0008】
一例示的な実施例において、前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第2のエアギャップは前記外環壁の径方向外側面と前記第1の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記内環壁は前記第2の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第3のエアギャップは前記内環壁の径方向外側面と前記第2の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記第1の永久磁石は接線方向型永久磁石鋼を含み、前記接線方向型永久磁石鋼は前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域との間に設けられる。
【0009】
一例示的な実施例において、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記内環壁は前記外環壁に対して前記回転子コアに向かって突出し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域の端面に設けられ、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域の径方向内側面に設けられる。
【0010】
一例示的な実施例において、前記外環壁と前記第1の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第2のエアギャップは前記外環壁の端面と前記第1の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記内環壁と前記第2の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第3のエアギャップは前記内環壁の端面と前記第2の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記第1の永久磁石は第1のラジアル型永久磁石鋼を含み、前記筐体の周方向において、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域は一々対応するように複数の前記第1のラジアル型永久磁石鋼で囲まれた領域の内側に位置する。
【0011】
一例示的な実施例において、前記第1の磁極形成領域の径方向の内側に磁気遮断構造が設けられ、前記第2の磁極形成領域の径方向内側に超磁性構造が設けられる。
【0012】
一例示的な実施例において、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域の端面に設けられ、前記第2の磁極嵌合部は前記回転子コアの前記励磁リングアセンブリに向かう側面に設けられ、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域の径方向内側に位置する。
【0013】
一例示的な実施例において、前記第1の磁極嵌合部の端面は前記第2の磁極嵌合部の端面に面一であるか、面一ではなく、前記内環壁の端面は前記外環壁の端面に面一であるか、面一ではない。
【0014】
一例示的な実施例において、前記第1の磁極嵌合部は第1の磁極凸部を含み、前記第2の磁極嵌合部は第2の磁極凸部を含む。
【0015】
一例示的な実施例において、前記永久磁石回転子は永久磁石回転子コアと第2の永久磁石を備え、前記第2の永久磁石は前記永久磁石回転子コアに設けられ、且つ前記第2の永久磁石は第2のラジアル型永久磁石鋼であり、前記第2のラジアル型永久磁石鋼の径方向内端の第1の磁極と第2の磁極の位置にいずれも磁気遮断構造が設けられる。
【0016】
一例示的な実施例において、前記励磁リングアセンブリと前記励磁回転子はいずれも2つであり、前記永久磁石回転子は2つの前記励磁回転子の間に位置し、2つの前記励磁回転子は2つの前記励磁リングアセンブリの間に位置する。
【0017】
本開示の実施例による車両は、上記のいずれかの実施例に記載の磁界調整可能なモータを備える。
【0018】
本願のその他の特徴と利点は、以降の本明細書に説明され、その一部は、本明細書から明らかになるか、または本願を実施することによって明らかになる。本願のその他の利点は、明細書と図面に記載された態様によって実現され、得られる。
【0019】
図面と詳細な説明を読んで理解した後、他の態様がわかる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一実施例による磁界調整可能なモータの断面構造模式図である。
【
図4】
図1の励磁リングアセンブリの構造模式図である。
【
図5】励磁回転子の主磁束の流れ方向の構造模式図である。
【
図6】励磁回転子の漏れ磁束の流れ方向の構造模式図である。
【
図7】永久磁石回転子の主磁束の流れ方向の構造模式図である。
【
図8】励磁回転子の着磁磁束の流れ方向の構造模式図である。
【
図9】励磁回転子の脱磁磁束の流れ方向の構造模式図である。
【
図10】本開示の他の実施例に記載の磁界調整可能なモータの断面構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願は、複数の実施例を説明したが、この説明は、制限ではなく、例示的なものであり、本発明の目的、技術的解決手段と利点をより明らかで理解しやすくするために、以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。説明する必要があるのは、衝突しない限り、本願における実施例及び実施例における特徴を互いに任意に組み合わせることができる。
【0022】
本開示の実施例による磁界調整可能なモータは、
図1~
図4に示すように、筐体、固定子、永久磁石回転子300、励磁回転子400及び励磁リングアセンブリ500を備え、固定子、永久磁石回転子300、励磁回転子400及び励磁リングアセンブリ500はいずれも筐体内に位置し、永久磁石回転子300は固定子の径方向内側に設けられ、永久磁石回転子300と固定子との間に第1のエアギャップ610を有し、励磁リングアセンブリ500は筐体の端壁に設けられ、励磁回転子400は励磁リングアセンブリ500と永久磁石回転子300との間に設けられ、励磁リングアセンブリ500は励磁リング510と励磁巻線520を備え、励磁リング510は外環壁511と内環壁512を有し、励磁巻線520は外環壁511と内環壁512との間に設けられ、励磁回転子400は回転子コア410と複数の第1の永久磁石を含み、回転子コア410に第1の磁極嵌合部、第2の磁極嵌合部及び周方向に沿って交互に設けられる第1の磁極形成領域および第2の磁極形成領域が設けられ、第1の磁極嵌合部は第1の磁極形成領域に対応し、第2の磁極嵌合部は第2の磁極形成領域に対応し、複数の第1の永久磁石は第1の磁極形成領域と第2の磁極形成領域に対応して回転子コア410に設けられ、第1の磁極形成領域に第1の磁極を形成させ、第2の磁極形成領域に第2の磁極を形成させ、外環壁511は第1の磁極嵌合部に対応し、外環壁511と第1の磁極嵌合部との間に第2のエアギャップ620を有し、内環壁512は第2の磁極嵌合部に対応し、内環壁512と第2の磁極嵌合部との間に第3のエアギャップ630が構造される。
【0023】
該磁界調整可能なモータは、励磁回転子400の第1の永久磁石と永久磁石回転子300が発生する主磁界が、励磁リングアセンブリ500の励磁巻線520の電流によって補助的な調整磁界を発生させ、励磁巻線520電流の大きさと方向(即ち調整磁界の大きさと方向)に応じて着磁と脱磁を決定し、主磁界の調整と制御を実現し、低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点を達成することができる。
【0024】
一例示的な実施例において、
図1、
図3及び
図4に示すように、外環壁511は第1の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、第2のエアギャップ620は外環壁511の径方向外側面と第1の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、内環壁512は第2の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、第3のエアギャップ630は内環壁512の径方向外側面と第2の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、第1の永久磁石は接線方向型永久磁石鋼420であり、接線方向型永久磁石鋼420は第1の磁極形成領域と第2の磁極形成領域との間に設けられる。第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630はいずれも径方向エアギャップである。筐体の周方向において、第1の永久磁石の一端は第1の磁極であり、他端は第2の磁極であり、且つ周方向に隣接する2つの接線方向型永久磁石鋼420は、N極とN極が対向し、S極とS極が対向するように配置され、即ち各磁極の両側の永久磁石極性が同様である。周方向、軸方向及び径方向はいずれも筐体を参照とする。
【0025】
一例において、
図3に示すように、第1の磁極形成領域は第1のボス411であり、第2の磁極形成領域は第2のボス412であり、第1のボス411と第2のボス412はいずれも回転子コア410の励磁リングアセンブリ500に向かう側面に位置し、内環壁512は外環壁511に対して回転子コア410に向かって突出し、第1の磁極嵌合部は第1の磁極凸部413であり、第2の磁極嵌合部は第2の磁極凸部414であり、第1の磁極凸部413は第1のボス411の端面に設けられ、第2の磁極凸部414は第2のボス412の径方向内側面に設けられる。第1のボス411と第2のボス412は軟磁性複合材料をプレス加工して作製することも、10号鋼等の透磁性材料を用いて加工作製することも、珪素鋼板を積層して作製することも、上記材料を複合重ね合わせて作製することもでき、いずれも製造が簡便で、コストが低い。回転子コア410は、10号鋼と珪素鋼板を重ね合わせて積層することによって作製され、接続して導通された3D軸方向磁気回路と2D軸方向磁気回路を形成するようにしてもよく、珪素鋼板の積層を十分に利用して渦電流効果を除去する。
【0026】
一例において、
図1に示すように、励磁リングアセンブリ500と励磁回転子400はいずれも2つであり、永久磁石回転子300は2つの励磁回転子400の間に位置し、2つの励磁回転子400は2つの励磁リングアセンブリ500の間に位置し、このように、励磁巻線520の電流によって補助的な調整磁界を発生させることができ、励磁巻線520の電流の大きさと方向に応じて着磁と脱磁を決定し、主磁界の調整と制御を実現し、低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点を達成することができる。
【0027】
一例において、
図2に示すように、永久磁石回転子300は永久磁石回転子コア310と複数の第2の永久磁石を備え、複数の第2の永久磁石は周方向に沿って順次に永久磁石回転子コア310に設けられ、且つ第2の永久磁石は第2のラジアル型永久磁石鋼320であり、隣接する第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向外端の磁極が異なり、径方向内端の磁極が異なり、且つ第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向内端の第1の磁極と第2の磁極の位置にいずれも磁気遮断構造640が設けられ、磁気遮断構造640は磁気遮断溝として設置されてもよい。第2のラジアル型永久磁石鋼320はV型永久磁石鋼、二重V型永久磁石鋼またはU型永久磁石鋼などとして設置されてもよく、永久磁石回転子コア310は珪素鋼板をプレスして積層することによって作製される。永久磁石回転子300は、二重V型永久磁石鋼構造を採用してもよく、このように、リラクタンストルクを十分に利用することができる。
【0028】
励磁回転子400の第1の永久磁石と永久磁石回転子300の第2の永久磁石が発生する主磁界が、励磁リングアセンブリ500の励磁巻線520の電流によって補助的な調整磁界を発生させ、励磁巻線520の電流の大きさと方向(即ち調整磁界の大きさと方向)に応じて着磁と脱磁を決定し、主磁界の調整と制御を実現し、低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点を達成することができる。
【0029】
一例において、
図1に示すように、筐体は、組立てられたケース110、第1のエンドカバー120及び第2のエンドカバー130を備える。固定子は固定子コア210と固定子コア210に設けられる第1の端部巻線220、固定子巻線230及び第2の端部巻線240を含む。永久磁石回転子300と励磁回転子400はいずれも回転軸710に設けられ、回転軸710と第1のエンドカバー120との間及び回転軸710と第2のエンドカバー130との間に軸受け720とウェーブスプリング730が設けられる。
【0030】
励磁リングアセンブリ500は、筐体内の固定子巻線230の両端のスペースを十分に活用し、作製された磁界調整可能なモータ構造がコンパクトであり、磁界調整可能なモータのスペース利用率を効果的に高め、最小の体積でより多くの出力を得ることを実現し、磁界調整可能なモータの電力密度とトルク密度の向上に役に立つ。また、励磁巻線520は励磁リング510に固定され、2つの励磁リング510は第1のエンドカバー120と第2のエンドカバー130に対応して固定され、ブラシやスリップリングが不要であるため、磁界調整可能なモータの信頼性が向上する。さらに、回転子コア410、励磁リング510は異なる材料とプロセスで製造されることができ、例えば、回転子コア410は、珪素鋼板を積層して作製され、珪素鋼板の低周波での鉄損が低く、励磁リング510は、軟磁性複合材料を用いて直接プレスして作られ、製造方式が簡単で、便利で、コストが低く、しかも、軟磁性複合材料の高周波での鉄損が低く、回転数区間全体の効率のバランスと改善に役立つ。
【0031】
以下、「第1の磁極をN極、第2の磁極をS極とする」を例として詳細に説明する。第1の磁極をS極、第2の磁極をN極にするとしても、本願の目的を達成することもでき、その主旨は、本開示の設計思想から逸脱ことなく、これ以上説明しなく、本願の保護範囲内に属する。
【0032】
励磁巻線520に通電していないときに、励磁回転子400上の接線方向型永久磁石鋼420が発生する永磁磁束の一部は、一側(N極)から第1のボス411を経由し、
図5に示すように、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610を経て、隣接する第2のボス412に到達し、その後、接線方向型永久磁石鋼420の他側(S極)に到達し、磁気回路閉ループを形成する。接線方向型永久磁石鋼420が発生する永磁磁束の他の部分は、その一側(N極)から、第1のボス411を経由し、磁束経路は、
図6に示すように、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414を経て、第2のボス412に到達し、その後、接線方向型永久磁石鋼420の他側(S極)に到達し、磁気回路閉ループを形成する。
【0033】
励磁巻線520に通電していないときに、永久磁石回転子300上の第2のラジアル型永久磁石鋼320が発生した磁束は、第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向外端の第1の磁極321から、
図7に示すように、一部が第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610を経て、隣接する第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向外端の第2の磁極322に到達し、その後、永久磁石回転子300の回転子ヨーク部を経て、磁気回路閉ループを形成し、他の部分は、第1のボス411、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414を経て、第2のボス412に到達し、その後、第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向内端の第2の磁極、永久磁石回転子300の回転子ヨーク部を経て、磁気回路閉ループ(図示せず)を形成する。
【0034】
第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束は漏れ磁束であるため、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束経路は漏れ磁束経路である。第1のエアギャップ610を通過する磁束は外部のエネルギー変換に関与し、外部にトルクを出力し、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束(即ち漏れ磁束)は外部のエネルギー変換に関与しなく、外部にトルクを出力しない。ここで、必要に応じて、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630の両方を第1のエアギャップ610より小さくするように設定を調整し、リラクタンスの最小原理に基づき、多くの部分の永磁磁束は漏れ磁束経路を通って閉じる。或いは、必要に応じて、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を第1のエアギャップ610以上にするように設定を調整し、当業者は必要に応じて合理的に設定することができる。該磁束調整可能なモータは、常開の漏れ磁束経路を提供することができ、励磁回転子400の接線方向型永久磁石鋼420が発生した永磁磁束及び永久磁石回転子300の第2のラジアル型永久磁石鋼320が発生した永磁磁束が該漏れ磁束経路を通って漏れる。
【0035】
励磁巻線520が正方向に通電し、外環壁511に第1の磁極を形成させると、励磁巻線520の励磁電流が発生した磁界は漏れ磁束経路を抑制し、常開の漏れ磁束経路の開通のサイズを制御して調整することに相当し、励磁電流が大きいと、この漏れ磁束経路が閉じる一方、
図8に示すように、励磁電流が発生した磁束は、外環壁511、第2のエアギャップ620、第1の磁極凸部413、第1のボス411、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610、第2のボス412、第2の磁極凸部414、第3のエアギャップ630、内環壁512を経て、外環壁511に到達し、磁気回路閉ループを形成する。このとき、第1のエアギャップ610の場合、励磁電流が発生した磁束は励磁回転子400における接線方向型永久磁石鋼420が発生した永磁磁束の磁界方向と同様であり、磁化作用であり、トルクの出力を大幅に向上させ、特に低速動作モードに適する。
【0036】
励磁巻線520に反対方向に通電し、外環壁511に第2の磁極を形成させると、励磁電流が発生した磁界は、漏れ磁束経路を広げ、拡張し、漏れ磁束経路の開通が大きくなり、より多くの永磁磁束が漏れ磁束経路を介して磁気回路閉ループを形成する一方で、
図9に示すように、励磁電流が発生した磁束は、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414、第2のボス412、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610、第1のボス411、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511を経て、内環壁512に到達し、磁気回路閉ループを形成する。このとき、第1のエアギャップ610の場合、励磁電流が発生(励磁巻線により発生した)した磁界は励磁回転子400における永磁磁束(接線方向型永久磁石鋼により発生した)が発生した永磁磁界方向と反対であり、脱磁作用であり、第1のエアギャップ610を通過する主磁束(即ち永磁磁束)をさらに低下させ、第1のエアギャップ610磁界のさらなる調整を実現し、特に超高速動作モードに適する。
【0037】
該磁界調整可能なモータは、励磁リングアセンブリ500の励磁巻線520に通電することによって、漏れ磁束経路の開通、切断及び開通のサイズの調整を実現し、第1のエアギャップ610の磁界の調整を間接的に実現する。低速で大きなトルク出力に必要があると、励磁電流は正方向電流であり、励磁電流は磁化を提供し、第1のエアギャップ610の磁界の強度を高め、さらに出力トルクを向上させ、高速時に、励磁電流がゼロであるなどの必要に応じて、漏れ磁束経路を常開させ、このとき、永久磁石回転子300の永磁磁束、励磁回転子400の永磁磁束は漏れ磁束経路を介して漏れ、第1のエアギャップ610を通過する磁束を低下させ、入力電流が不要である場合には、第1のエアギャップ610を通過する主磁束を弱めることによって、外部からの入力なしに第1のエアギャップ610を通過する永磁磁束の弱めが完了し、モータの動作効率(即ち励磁電流がセロであると、永久磁石回転子300の永磁磁束と励磁回転子400の永磁磁束が漏れ磁束経路を通過することで、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の分流を実現し、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の弱めを間接的に実現し、励磁巻線520の電流がゼロである条件下で磁気弱めを実現し、高速領域の動作効率向上に役に立つ)の向上に役に立ち、回転数がさらに上昇すると、励磁電流は逆方向の電流であり、励磁電流が脱磁を提供し、第1のエアギャップ610を通過する磁束を弱め、磁気弱めを実現し、モータの動作範囲を大幅に改善し、広い調速範囲内の定電力動作を実現する。
【0038】
該磁界調整可能なモータは、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する漏れ磁束の大きさを調整することによって第1のエアギャップ610を通過する主磁束を調整することを実現する。低速で大きなトルクに必要がある場合、励磁電流は着磁を提供することで、第1のエアギャップ610の主磁束が増加し、低速での大きなトルク出力を実現し、高速時に、励磁電流がゼロであり、漏れ磁束経路が開き、外部からの入力がない場合、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の弱めを実現し、超高速時に、励磁巻線520の励磁電流が反対方向の磁束を提供し、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の弱めを実現し、モータの動作回転数範囲を大幅に改善し、広い調速範囲内の定電力動作を実現する。
【0039】
他の幾つかの例示的な実施例において、
図10~
図12に示すように、外環壁511と第1の磁極嵌合部は筐体の軸方向において対向し、第2のエアギャップ620は外環壁511の端面と第1の磁極嵌合部の端面との間に位置し、内環壁512と第2の磁極嵌合部は筐体の軸方向において対向し、第3のエアギャップ630は内環壁512の端面と第2の磁極嵌合部の端面との間に位置し、第1の永久磁石は第1のラジアル型永久磁石鋼430であり、筐体の周方向において、第1の磁極形成領域は第2の磁極形成領域に一々対応して複数の第1のラジアル型永久磁石鋼430で囲まれた領域内側に位置する。且つ第1の磁極形成領域の径方向内側に磁気遮断構造640が設けられ、第2の磁極形成領域の径方向内側に超磁性構造650が設けられ、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630はいずれも軸方向エアギャップである。隣接する第1のラジアル型永久磁石鋼430の径方向外端の磁極が異なり、径方向内端の磁極が異なる。第2の磁極凸部414は回転子コア410の励磁リングアセンブリ500に向かう側面に設けられ、第1のボス411と第2のボス412の径方向内側に位置する。第2の磁極凸部414はリング状ボスとして設置される。
【0040】
該実施例による磁界調整可能なモータは、第1の永久磁石と第2のラジアル型永久磁石鋼320が発生した主磁界が、励磁リングアセンブリ500の励磁巻線520の電流によって補助的な調整磁界を発生させることができ、励磁巻線520の電流の大きさと方向に応じて着磁と脱磁を決定し、主磁界の調整と制御を実現し、同様に低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点を達成することができる。
【0041】
一例において、
図11に示すように、第1のラジアル型永久磁石鋼430の径方向内端の第1の磁極の位置に磁気遮断構造640が設けられ、第1のラジアル型永久磁石鋼430の径方向内端の第2の磁極の位置に超磁性構造650(即ち磁気遮断構造を設置しない)が設けられ、磁気遮断構造640は磁気遮断溝として設置されてもよく、第1のラジアル型永久磁石鋼430はV型永久磁石鋼として設置されてもよい。
【0042】
一例において、第1の磁極凸部413の端面は第2の磁極凸部414の端面に面一であるか、面一ではなく、内環壁512の端面は外環壁511の端面に面一であるか、面一ではない(
図11と
図12を参照して理解する)。
【0043】
以下、「第1の磁極をN極、第2の磁極をS極とする」を例として詳細に説明する。第1の磁極をS極、第2の磁極をN極にするとしても、本願の目的を達成することもでき、その主旨は、本開示の設計思想から逸脱ことなく、これ以上説明しなく、本願の保護範囲内に属する。
【0044】
励磁巻線520に通電していないときに、励磁回転子400上の第1のラジアル型永久磁石鋼430の径方向外端の第1の磁極が発生する永磁磁束の一部は、一側(N極)から、
図5に示すように、第1のボス411、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610を経て、隣接する第2のボス412に到達し、その後、接線方向型永久磁石鋼420の他側(S極)に到達し、磁気回路閉ループを形成し、永磁磁束の他の部分は、その一側(N極)から、
図6に示すように、第1のボス411、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414を経て、第2のボス412に到達し、その後、接線方向型永久磁石鋼420の他側(S極)に到達し、磁気回路閉ループを形成する(
図6を参照して理解する)。
【0045】
励磁巻線520に通電していないときに、永久磁石回転子300上の第2のラジアル型永久磁石鋼320が発生した磁束は、第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向外端の第1の磁極から、一部が第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610を経て、隣接する第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向外端の第2の磁極に到達し、その後、永久磁石回転子300の回転子ヨーク部を経て、磁気回路閉ループを形成し(
図7を参照して理解する)、他の部分は、第1のボス411、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414を経て、第2のボス412に到達し、その後、第2のラジアル型永久磁石鋼320の径方向内端の第2の磁極、永久磁石回転子300の回転子ヨーク部を経て、磁気回路閉ループを形成する。
【0046】
第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束は漏れ磁束であるため、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束経路は漏れ磁束経路である。第1のエアギャップ610を通過する磁束は外部のエネルギー変換に関与し、外部にトルクを出力し、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を通過する磁束(即ち漏れ磁束)は外部のエネルギー変換に関与しなく、外部にトルクを出力しない。ここで、必要に応じて、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630の両方を第1のエアギャップ610より小さくするように設定を調整し、リラクタンスの最小原理に基づき、多くの部分の永磁磁束は漏れ磁束経路を通って閉じる。或いは、必要に応じて、第2のエアギャップ620と第3のエアギャップ630を第1のエアギャップ610以上にするように設定を調整することができる。該磁束調整可能なモータは、常開の漏れ磁束経路を提供することができ、励磁回転子400の第1のラジアル型永久磁石鋼430が発生した永磁磁束及び永久磁石回転子300の第2のラジアル型永久磁石鋼320が発生した永磁磁束が該漏れ磁束経路を通って漏れる。
【0047】
励磁巻線520が正方向に通電し、外環壁511に第1の磁極を形成させると、励磁巻線520の励磁電流が発生した磁界は漏れ磁束経路を抑制し、常開の漏れ磁束経路の開通のサイズを制御して調整することに相当し、励磁電流が大きいと、この漏れ磁束経路が閉じる一方、励磁電流が発生した磁束は、外環壁511、第2のエアギャップ620、第1の磁極凸部413、第1のボス411、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610、第2のボス412、第2の磁極凸部414、第3のエアギャップ630、内環壁512を経て、外環壁511に到達し、磁気回路閉ループを形成する(
図8を参照して理解する)。このとき、第1のエアギャップ610の場合、励磁電流が発生した磁束は励磁回転子400における第1のラジアル型永久磁石鋼430が発生した永磁磁束の磁界方向と同様であり、磁化作用であり、トルクの出力を大幅に向上させ、特に低速動作モードに適する。
【0048】
励磁巻線520に反対方向に通電し、外環壁511に第2の磁極を形成させると、励磁電流が発生した磁界は、漏れ磁束経路を広げ、拡張し、漏れ磁束経路の開通が大きくなり、より多くの永磁磁束が漏れ磁束経路を介して磁気回路閉ループを形成する一方で、励磁電流が発生した磁束は、内環壁512、第3のエアギャップ630、第2の磁極凸部414、第2のボス412、第1のエアギャップ610、固定子ティース部、固定子ヨーク部、隣接する固定子ティース部、第1のエアギャップ610、第1のボス411、第1の磁極凸部413、第2のエアギャップ620、外環壁511を経て、内環壁512に到達し、磁気回路閉ループを形成する(
図9を参照して理解する)。このとき、第1のエアギャップ610の場合、励磁電流が発生した磁界は励磁回転子400における永磁磁束が発生した永磁磁界方向と反対であり、脱磁作用であり、第1のエアギャップ610を通過する主磁束(即ち永磁磁束)をさらに低下させ、第1のエアギャップ610の磁界のさらなる調整を実現し、特に超高速動作モードに適する。
【0049】
該磁界調整可能なモータは、励磁リングアセンブリ500の励磁巻線520に通電することによって、漏れ磁束経路の開通、切断及び開通のサイズの調整を実現し、第1のエアギャップ610の磁界の調整を間接的に実現する。低速で大きなトルク出力に必要があると、励磁電流は正方向電流であり、励磁電流は磁化を提供し、第1のエアギャップ610の磁界の強度を高め、さらに出力トルクを向上させ、高速時に、励磁電流がゼロであるなどの必要に応じて、漏れ磁束経路を常開させ、このとき、永久磁石回転子300の永磁磁束、励磁回転子400の永磁磁束が漏れ磁束経路を介して漏れ、第1のエアギャップ610を通過する磁束を低下させ、入力電流が不要である場合には、第1のエアギャップ610を通過する主磁束を弱めることによって、外部からの入力なしに第1のエアギャップ610を通過する永磁磁束の弱めが完了し、モータの動作効率(即ち励磁電流がセロであると、永久磁石回転子300の永磁磁束と励磁回転子400の永磁磁束が漏れ磁束経路を通過することで、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の分流を実現し、第1のエアギャップ610を通過する主磁束の弱めを間接的に実現し、励磁巻線520電流がゼロである条件下で磁気弱めを実現し、高速領域の動作効率向上に役に立つ)の向上に役に立ち、回転数がさらに上昇すると、励磁電流は逆方向の電流であり、励磁電流が脱磁を提供し、第1のエアギャップ610を通過する磁束をさらに弱め、磁気弱めを実現し、モータの動作範囲を大幅に改善し、広い調速範囲内の定電力動作を実現する。
【0050】
本開示の実施例による車両(図示せず)は、上記のいずれかの実施例に記載の磁界調整可能なモータを備える。
【0051】
該実施例による車両は、上記のいずれかの実施例で提供された磁界調整可能なモータのすべての利点を持ち、これ以上説明しない。
【0052】
以上のように、本願による磁界調整可能なモータは、第1の永久磁石と永久磁石回転子が発生した主磁界が、励磁リングアセンブリの励磁巻線電流によって補助的な調整磁界を発生させ、励磁巻線電流の大きさと方向に応じて着磁と脱磁を決定し、主磁界の調整と制御を実現し、低速トルクが高く、高速効率が高く、定電力動作範囲が広い利点を達成することができる。
【0053】
本発明の説明では、説明する必要がある点として、「上」、「下」、「一側」、「他側」、「一端」、「他端」、「辺」、「対向」、「四隅」、「周辺」、「「口」字構造」などの用語によって示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、単に本発明の説明を容易にして説明を簡略化するためのものであり、示される構造が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作する必要があることを明示又は示唆するものではないため、本発明を限定するものとして理解されない。
【0054】
本発明の実施例の説明では、特に明確に規定及び限定する場合を除き、「接続」、「直接接続」、「間接接続」、「固定接続」、「取付」、「組立」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定して接続されていてもよく、取り外し可能に接続されていてもよく、または一体に接続されていてもよい。「取付」、「接続」、「固定接続」という用語は、直接接続されていてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されていてもよく、2つの要素の内部の連通であってもよい。当業者にとって、本発明における上記の用語の具体的な意味は、状況に応じて理解され得る。
【0055】
本発明は以上のように実施形態を開示したが、前記内容は本発明を理解しやすくするために採用された実施形態であり、本発明を限定するためのものではない。当業者の誰ても、本発明が開示した精神と範囲から逸脱しない限り、実施の形式及び細部においていかなる修正と変化を行うことができるが、本発明の特許保護範囲は、添付の特許請求の範囲に規定されているものを基準にすべきである。
【0056】
[関連出願の相互参照]
本願は、2022年05月13日に中国特許局に提案された、出願番号が202210524253.3、名称が「磁界調整可能なモータ及び車両」の中国特許願の優先権を主張し、この願のすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0057】
110 ケース、120 第1のエンドカバー、130 第2のエンドカバー、210 固定子コア、220 第1の端部巻線、230 固定子巻線、240 第2の端部巻線、300 永久磁石回転子、310 永久磁石回転子コア、320 第2のラジアル型永久磁石鋼、321 第2のラジアル型永久磁石鋼の径方向外端の第1の磁極、322 第2のラジアル型永久磁石鋼の径方向外端の第2の磁極、400 励磁回転子、410 回転子コア、411 第1のボス、412 第2のボス、413 第1の磁極凸部、414 第2の磁極凸部、420 接線方向型永久磁石鋼、430 第1のラジアル型永久磁石鋼、500 励磁リングアセンブリ、510 励磁リング、511 外環壁、512 内環壁、520 励磁巻線、610 第1のエアギャップ、620 第2のエアギャップ、630 第3のエアギャップ、640 磁気遮断構造、650 超磁性構造、710 回転軸、720 軸受け、730 ウェーブスプリング。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界調整可能なモータであって、筐体、固定子、永久磁石回転子、励磁回転子及び励磁
リングアセンブリを備え、前記固定子、前記永久磁石回転子、前記励磁回転子及び前記励
磁リングアセンブリはいずれも前記筐体内に位置し、前記永久磁石回転子は前記固定子の
径方向内側に設けられ、前記永久磁石回転子と前記固定子との間に第1のエアギャップを
有し、前記励磁リングアセンブリは前記筐体の端壁に設けられ、前記励磁回転子は前記励
磁リングアセンブリと前記永久磁石回転子との間に設けられ、
前記励磁リングアセンブリは励磁リングと励磁巻線を備え、前記励磁リングは外環壁と
内環壁とを有し、前記励磁巻線は前記外環壁と前記内環壁との間に設けられ、
前記励磁回転子は回転子コアと複数の第1の永久磁石を備え、前記回転子コアに第1の
磁極嵌合部、第2の磁極嵌合部及び周方向に沿って交互に設けられる第1の磁極形成領域
と第2の磁極形成領域が設けられ、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域に対
応し、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域に対応し、複数の前記第1の永久
磁石は前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域に対応し、且つ前記回転子コア
に設けられて、前記第1の磁極形成領域に第1の磁極を形成させ、前記第2の磁極形成領
域に第2の磁極を形成させ、
前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部に対応し、第2のエアギャップが構造され、前記内
環壁は前記第2の磁極嵌合部に対応し、第3のエアギャップが構造される、磁界調整可能
なモータ。
【請求項2】
前記外環壁は前記第1の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第2のエアギャップは
前記外環壁の径方向外側面と前記第1の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記
内環壁は前記第2の磁極嵌合部の径方向内側に位置し、前記第3のエアギャップは前記内
環壁の径方向外側面と前記第2の磁極嵌合部の径方向内側面との間に位置し、前記第1の
永久磁石は接線方向型永久磁石鋼を含み、前記接線方向型永久磁石鋼は前記第1の磁極形
成領域と前記第2の磁極形成領域との間に設けられる、請求項1に記載の磁界調整可能な
モータ。
【請求項3】
前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励
磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記内環壁は前記外環壁に対して前記回転子
コアに向かって突出し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成領域の端面に設けら
れ、前記第2の磁極嵌合部は前記第2の磁極形成領域の径方向内側面に設けられる、請求
項2に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項4】
前記外環壁と前記第1の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第2のエ
アギャップは前記外環壁の端面と前記第1の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記内環
壁と前記第2の磁極嵌合部は前記筐体の軸方向において対向し、前記第3のエアギャップ
は前記内環壁の端面と前記第2の磁極嵌合部の端面との間に位置し、前記第1の永久磁石
は第1のラジアル型永久磁石鋼を含み、前記筐体の周方向において、前記第1の磁極形成
領域と前記第2の磁極形成領域は一々対応するように複数の前記第1のラジアル型永久磁
石鋼で囲まれた領域の内側に位置する、請求項1に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項5】
前記第1の磁極形成領域の径方向の内側に磁気遮断構造が設けられ、前記第2の磁極形
成領域の径方向内側に超磁性構造が設けられる、請求項4に記載の磁界調整可能なモータ
。
【請求項6】
前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域はいずれも前記回転子コアの前記励
磁リングアセンブリに向かう側面に位置し、前記第1の磁極嵌合部は前記第1の磁極形成
領域の端面に設けられ、前記第2の磁極嵌合部は前記回転子コアの前記励磁リングアセン
ブリに向かう側面に設けられ、前記第1の磁極形成領域と前記第2の磁極形成領域の径方
向内側に位置する、請求項4に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項7】
前記第1の磁極嵌合部の端面は前記第2の磁極嵌合部の端面に面一であるか、面一では
なく、前記内環壁の端面は前記外環壁の端面に面一であるか、面一ではない、請求項6に
記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項8】
前記第1の磁極嵌合部は第1の磁極凸部を含み、前記第2の磁極嵌合部は第2の磁極凸
部を含む、請求
項6に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項9】
前記永久磁石回転子は永久磁石回転子コアと複数の第2の永久磁石を備え、複数の前記
第2の永久磁石は周方向に沿って前記永久磁石回転子コアに順次設けられる、請求項1~
7のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項10】
前記第2の永久磁石は第2のラジアル型永久磁石鋼を含み、隣接する前記第2のラジア
ル型永久磁石鋼の径方向外端の磁極が異なり、径方向内端の磁極が異なり、前記第2のラ
ジアル型永久磁石鋼の径方向内端の第1の磁極と第2の磁極の位置にいずれも磁気遮断構
造が設けられる、請求項9に記載の磁界調整可能なモータ。
【請求項11】
前記励磁リングアセンブリと前記励磁回転子はいずれも2つであり、前記永久磁石回転
子は2つの前記励磁回転子の間に位置し、2つの前記励磁回転子は2つの前記励磁リング
アセンブリの間に位置する、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータ
。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の磁界調整可能なモータを備える、車両。
【国際調査報告】