(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】アスピリン及びその他のNSAIDの高透過プロドラッグによる心血管疾患の予防又は治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/60 20060101AFI20250204BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/603 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/618 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/621 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20250204BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250204BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20250204BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/625 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K31/60
A61P9/00
A61K31/616
A61K31/603
A61K31/618
A61K31/621
A61K9/70 401
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/20
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/10 101
A61P29/00
A61P9/12
A61P9/06
A61K31/625
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542395
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2023071973
(87)【国際公開番号】W WO2023134732
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/072270
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522368617
【氏名又は名称】テックフィールズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ チョンシ
(72)【発明者】
【氏名】スー リナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA13
4C076AA24
4C076AA25
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4C076AA72
4C076BB31
4C076CC03
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4C076CC42
4C076DD37
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4C076FF12
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4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086DA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
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4C086MA17
4C086MA28
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4C086MA34
4C086MA41
4C086MA63
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA15
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZB15
(57)【要約】
心血管疾患及び心血管病態の予防又は治療における使用及びその方法用の、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン及びその他のNSAIDのその他の高透過プロドラッグ、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩が提供される。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン及びその他のNSAIDのその他の高透過プロドラッグ、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物、治療キット、及びデバイス、並びに剤形、投薬量、及び局所投与によるそれらの使用方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患又は心血管病態の予防又は治療において局所的に使用される医薬組成物であって、式(I):
(式中、
R
Xは、H、2,4-ジフルオロフェニル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、
R
yは、H、置換及び非置換のアルキルカルボニル、置換及び非置換のアルコキシカルボニル、置換及び非置換のベンゾイル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、好ましくは、R
yは、2-アセトキシベンゾイル又は2-ヒドロキシベンゾイルであり、
L
1は、O、S、NH、O-CH(L
2)、O-(CH
2)
n、O-CH(L
2)-O-C(=O)、O-CH(L
2)-O、S-CH(L
2)-O、及び-O-C(=O)-から選択されるリンカーであり、ここで、nは、1~6から選択される整数であり、
L
2は、それぞれの場合、独立して、H、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアリール、置換及び非置換のヘテロアリール、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルキルチオ、並びに置換及び非置換のアルキルアミノから選択され、
Tは、プロトン化可能なアミン基、例えば、置換若しくは非置換の第一級アミン基、置換若しくは非置換の第二級アミン基、置換若しくは非置換の第三級アミン基、又はプロトン化可能な窒素を含む置換若しくは非置換のヘテロシクリルを含む輸送単位であり、Tは、構造W-1、構造W-2、構造W-3、構造W-4、構造W-5、及び構造W-6:
から選択することができ、
Rは、それぞれの場合、独立して、結合、置換及び非置換のアルキレン、置換及び非置換のシクロアルキレン、置換及び非置換のヘテロシクリレン、置換及び非置換のアルケニレン、置換及び非置換のアルキニレン、置換及び非置換のアリーレン、並びに置換及び非置換のヘテロアリーレンから選択され、ここで、R中のいずれのCH
2も、任意に、O、S、又はNR
3によって更に置き換えることができ、ここで、R
3は、水素、C
1~C
6アルキル、C
3~C
6シクロアルキル、又はC
6~C
10アリールであり、好ましくは、Rは、それぞれの場合、-CH
2-又は-CH
2-CH
2-であり、
R
1及びR
2は、独立して、H、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルキルオキシル、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、又は代替的に、R
1及びR
2は、これらが取り付けられている窒素原子と一緒になって、任意に置換されたヘテロシクリルを形成し、これは任意に、O、S、及びNから独立して選択される1個又は2個の追加のヘテロ原子を更に含み、
R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、結合、任意に置換されたC
1~C
4アルキレン、又は任意に置換されたC
2~C
4アルケニレンであり、ここで、前記アルキレン及び前記アルケニレンは、任意に、O、S、又はNR
3によって置き換えられた1つのCH
2基を有し、好ましくは、R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-CH
2-であり、
ここで、構造W-2、構造W-3、又は構造W-5中の前記R
1のいずれか及び隣接するR
11は、これらが取り付けられている窒素原子と一緒になって、任意に置換された複素環式環を形成することができ、これは任意に、O、S、及びNから独立して選択される1個又は2個の追加のヘテロ原子を更に含むことができ、
ここで、構造W-2、構造W-4、構造W-5、又は構造W-6中の前記R
11及び前記R
12又は前記R
11及び前記R
13は、任意に置換されたアルキレン架橋によって任意に接続され、かつ、
ここで、HAは、何も含まないこと、及び薬学的に許容可能な酸、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びパモ酸から選択される)
とその立体異性体及び薬学的に許容可能な塩を含む高透過プロドラッグ又はその薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物は、
又は、好ましくは塩酸塩若しくは臭化水素酸塩から誘導される薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項1に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項3】
経皮的な貼付剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、固体剤、スポンジ剤、テープ剤、チンキ剤、蒸気剤、滴剤、リンス剤、噴霧剤、及び液剤、好ましくは経皮的な滴剤、リンス剤、及び噴霧剤から選択される剤形における、請求項1又は2に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項4】
アルコール溶液、アセトン溶液、ジメチルスルホキシド溶液、アルコール水溶液、アセトン水溶液、及びジメチルスルホキシド水溶液、好ましくはエタノール水溶液、好ましくは5%(容量/容量)~50%(容量/容量)のエタノール水溶液、特に15%(容量/容量)のエタノール水溶液から選択される剤形における、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項5】
約10mg/mL~約200mg/mL、好ましくは約30mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約90mg/mL、特に約80mg/mLの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の濃度を有する溶液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項6】
約10mg/g~約200mg/g、好ましくは約50mg/g~約100mg/gの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の濃度を有する溶液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項7】
約0.01mL~約1mL、特に約0.03mL~約0.3mL、特に約0.04mL~約0.2mL、特に約0.05mL~約0.1mL、又は特に約0.1mLの単位用量において存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所的に使用される医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、被験体における心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療するキットであって、前記医薬組成物は、前記被験体の1つ以上の部位に1日当たり約1mg~約7200mg、特に1日当たり約100mg~約500mgの量で局所投与される剤形において存在する、キット。
【請求項9】
前記医薬組成物は、1回当たり約1mg~約700mg、好ましくは1回当たり約5mg~約350mg、約35mg~約280mg、又は約70mg~約180mgの量で、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、前記被験体に局所投与される剤形において存在する、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記医薬組成物は、部位ごとに1噴霧当たり約1mg~約200mg、好ましくは約1mg~約80mg、約1mg~約35mg、約3mg~約15mg、約1mg~約10mg、又は約1mg~約8mgの量で前記被験体に局所投与される剤形において存在する、請求項8又は9に記載のキット。
【請求項11】
前記医薬組成物は、部位ごとに皮膚1cm
2につき約5μg~皮膚1cm
2につき約7mg、好ましくは皮膚1cm
2につき約10μg~皮膚1cm
2につき約1400μg、皮膚1cm
2につき約70μg~皮膚1cm
2につき約560μg、又は皮膚1cm
2につき約140μg~皮膚1cm
2につき約280μgの量で前記被験体に局所投与される剤形において存在する、請求項8~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物を、治療を必要とする被験体に局所投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記局所投与は、首、胸、背中、腹部、頭、腕、手、脚、足、及びそれらの組合せから選択される部位で前記被験体の皮膚表面に前記医薬組成物を適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記局所投与は、前記被験体に前記医薬組成物を部位ごとに単回用量において適用することを含み、かつ1単位用量以上は、1単位用量~200単位用量、特に5単位用量~50単位用量、特に10単位用量~30単位用量である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記局所投与は、前記医薬組成物を、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、又は1日8回、好ましくは1日2回、前記被験体に適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記局所投与は、前記医薬組成物を、1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、4時間に1回、5時間に1回、6時間に1回、7時間に1回、8時間に1回、9時間に1回、10時間に1回、11時間に1回、12時間に1回、13時間に1回、14時間に1回、15時間に1回、16時間に1回、17時間に1回、18時間に1回、19時間に1回、20時間に1回、21時間に1回、22時間に1回、23時間に1回、又は24時間に1回、好ましくは12時間に1回、前記被験体に適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記局所投与は、前記医薬組成物を1日~生涯、特に1ヶ月~1年、特に1年~3年、特に1年~10年、特に1年~生涯の長さにわたって前記被験体に適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記心血管疾患又は心血管病態は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、及びその他の心血管疾患から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物、キット、又は方法。
【請求項19】
前記被験体は、ヒト、好ましくはヒト成人である、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物、キット、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用途の分野、特に、心血管疾患又は心血管病態の予防又は治療のための、殊に局所投与又は経皮投与による、アスピリン及びその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の高透過プロドラッグ、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アスピリンは100年以上もの間、ヒト及び動物に使用されてきた。鎮痛特性、消炎特性、解熱特性、抗炎症特性、又は抗血小板特性を有するアスピリン及びその他の既知のNSAIDは、様々な疾患、例えば、心血管疾患、炎症性疾患、及びリウマチ性疾患、頭痛、偏頭痛、歯痛、腰痛、筋肉痛、術後疼痛等のような疼痛に関連する症状の治療に広く使用されている。
【0003】
アスピリン及びその他のNSAIDは通常、経口投与によって投与されて、病態又は疾患の作用部位に到達する。残念なことに、アスピリン及びその他のNSAIDの使用は、胃十二指腸出血、胃潰瘍、胃炎、及びGI穿孔を含む重大な消化管(GI)毒性のリスク増加を伴う(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、及び非特許文献5を参照)。さらに、経口投与では或る特定の疾患の予防又は治療において有効性が限られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cohn SM, et al., J. Clin. Invest. 1997; 99(6):1367-1379
【非特許文献2】Tarnawski AS and Ahluwalia A., Curr. Med. Chem. 2012; 19(1):16-27
【非特許文献3】Fries JF, J. Rheumatol Suppl. 1991; 28:6-10
【非特許文献4】Garcia Rodriguez LA, et al., Arch. Intern Med. 1998; 158(1):33-9
【非特許文献5】Richardson C, Emery P., Drug Saf. 1996; 15(4):249-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、GI毒性を回避しながら、アスピリン及びその他のNSAIDの有効性を十分に実現することができる新しい代替送達経路等の方法を開発することが依然として要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、アスピリン及び/又はその他のNSAIDの高透過プロドラッグ(HPP)、その高透過組成物(HPC)、HPP又はHPCの使用、キット、治療システム、剤形、HPP又はHPCを使用する又はそれらを含むデバイス、並びに様々な心血管疾患及び心血管病態を治療する方法を提供することによって、上述の要求が満たされる。
【0007】
一の態様において、本開示は、リンカーを介して輸送単位に共有結合した官能基を含む、アスピリンまたはその類似体のHPPとしての式(I)の化合物とその立体異性体および薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
式中、
L1は、O、S、NH、O-CH(L2)、O-(CH2)n、O-CH(L2)-O-C(=O)、O-CH(L2)-O、S-CH(L2)-O、及び-O-C(=O)-から選択されるリンカーであり、ここで、nは、1~6から選択される整数であり、
L2は、それぞれの場合、独立して、H、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアリール、置換及び非置換のヘテロアリール、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルキルチオ、並びに置換及び非置換のアルキルアミノから選択され、
Tは、プロトン化可能なアミン基、例えば、置換若しくは非置換の第一級アミン基、置換若しくは非置換の第二級アミン基、置換若しくは非置換の第三級アミン基、又はプロトン化可能な窒素を含む置換若しくは非置換のヘテロシクリルを含む輸送単位であり、
【0009】
RXは、H、2,4-ジフルオロフェニル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、
Ryは、H、置換及び非置換のアルキルカルボニル、置換及び非置換のアルコキシカルボニル、置換及び非置換のベンゾイル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、
【0010】
式(I)の化合物は、プロトン化可能な輸送単位Tを介して酸と薬学的に許容可能な塩を形成することができ、この塩は1つ以上の生物学的障壁を透過することができる。
【0011】
一の態様において、本開示は、式(I)により特徴付けられるアスピリン又はその類似体のHPPと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、高透過組成物(HPC)を構成する。
【0012】
一の態様において、本開示は、従来の経口投与と比較して、他にも多数ある利点の中でも、GI毒性を総じて克服し、かつ予想外にも予防又は治療の有効性を改善することができる、簡便な局所投与を通じて様々な心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療するためのHPP又はHPCの使用を提供する。
【0013】
一の態様において、本開示は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、および末梢動脈疾患などの様々な心血管疾患または病態の予防または治療用の医薬品の製造におけるHPPの使用を提供する。
【0014】
一の態様において、本開示は、疾患または病態を予防または治療する方法を提供し、その方法は、本明細書に開示される治療有効量のHPPまたはHPCを被験体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、疾患または状態は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、およびその他の心血管疾患から選択される。
【0015】
一の態様において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含むキットを提供する。
【0016】
一の態様において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPP及び/又はアスピリンの関連の高透過プロドラッグ又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を含む治療システムを提供する。
【0017】
一の態様において、本開示は、心血管疾患の治療用の、或る特定の濃度の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む剤形を提供する。
【0018】
一の態様において、本開示は、或る特定の単位用量の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを、心血管疾患又は心血管病態を患っている被験体に投与することができるデバイスを提供する。
【0019】
本明細書に開示されるHPP又はHPCは、1つ以上の生物学的障壁を横断することができ、かつ局部的に(例えば、局所的又は経皮的に)投与し、病態が発生するが既存の薬物では十分に到達することができない場所に到達することができるため、出血エピソード、穿孔、又は胃出口閉塞等の薬物関連の消化管障害又は上部GI路潰瘍の合併症が回避され、予想外にも予防又は治療の有効性が経口投与と比較して改善される。本開示のこれらの利点及びその他の利点は、以下の詳細な説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲を考慮するとよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】中大脳動脈閉塞(MCAO)後14日目に2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩が脳梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である(平均±SEM、TTC染色により評価した)。
【
図2】2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの体重変化に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図3】ビヒクル群と比較した、毎日の評定による2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの神経学的欠損スコア(neurological deficit scores)に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図4】MCAO後14日目に2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩が脳梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である(平均±SEM、TTC染色により評価した)。
【0021】
【
図5】2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの体重変化に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図6】ビヒクル群と比較した、毎日の評定による2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの神経学的欠損スコアに対して及ぼす効果を示す図である。
【
図7】MCAO後14日目に(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩が脳梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である(平均±SEM、TTC染色により評価した)。
【
図8】(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの体重変化に対して及ぼす効果を示す図である。
【0022】
【
図9】ビヒクル群と比較した毎日の評定による、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの神経学的欠損スコアに対して及ぼす効果を示す図である。
【
図10】MCAO後14日目に(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩が脳梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である(平均±SEM、TTC染色により評価した)。
【
図11】(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩がMCAO後のラットの体重変化に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図12】ビヒクル群と比較した、毎日の評定による(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩がMCAO後のラットの神経学的欠損スコアに対して及ぼす効果を示す図である。
【0023】
【
図13】MCAO後14日目に(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩が脳梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である(平均±SEM、TTC染色により評価した)。
【
図14】(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの体重変化に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図15】ビヒクル群と比較した、毎日の評定による(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩がMCAO後のラットの神経学的欠損スコアに対して及ぼす効果を示す図である。
【0024】
【
図16】ビヒクル群及びアスピリン群と比較した、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がサルの神経学的欠損スコアに対して及ぼす効果を示す図である。
【
図17】ビヒクル群及びアスピリン群と比較した、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がサルの梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である。
【
図18】ビヒクル群及びアスピリン群と比較した、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がミニブタの梗塞体積に対して及ぼす効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一の態様において、本開示は、リンカーを介して輸送単位に共有結合した機能単位を含み、式(I)
とその立体異性体及び薬学的に許容される塩を特徴とするアスピリンまたはその類似体のHPPを提供する。
【0026】
式中、
RXは、H、2,4-ジフルオロフェニル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、
Ryは、H、置換及び非置換のアルキルカルボニル、置換及び非置換のアルコキシカルボニル、置換及び非置換のベンゾイル、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、好ましくは、Ryは、2-アセトキシベンゾイル又は2-ヒドロキシベンゾイルである。
【0027】
L1は、O、S、NH、O-CH(L2)、O-(CH2)n、O-CH(L2)-O-C(=O)、O-CH(L2)-O、S-CH(L2)-O、及び-O-C(=O)-から選択されるリンカーであり、ここで、nは、1~6から選択される整数であり、
L2は、それぞれの場合、独立して、H、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアリール、置換及び非置換のヘテロアリール、置換及び非置換のアルコキシ、置換及び非置換のアルキルチオ、並びに置換及び非置換のアルキルアミノから選択される。
【0028】
Tは、プロトン化可能なアミン基、例えば、置換若しくは非置換の第一級アミン基、置換若しくは非置換の第二級アミン基、置換若しくは非置換の第三級アミン基、又はプロトン化可能な窒素を含む置換若しくは非置換のヘテロシクリルを含む輸送単位であり、Tは、構造W-1、構造W-2、構造W-3、構造W-4、構造W-5、及び構造W-6:
から選択することができる。
【0029】
Rは、それぞれの場合、独立して、結合、置換及び非置換のアルキレン、置換及び非置換のシクロアルキレン、置換及び非置換のヘテロシクリレン、置換及び非置換のアルケニレン、置換及び非置換のアルキニレン、置換及び非置換のアリーレン、並びに置換及び非置換のヘテロアリーレンから選択され、ここで、R中のどのCH2も、任意に、O、S、又はNR3で更に置き換えることができ、ここで、R3は、水素、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又はC6~C10アリールであり、好ましくは、Rは、それぞれの場合、-CH2-又は-CH2-CH2-である。
【0030】
R1及びR2は、独立して、H、置換及び非置換のアルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のヘテロシクリル、置換及び非置換のアルキルオキシル、置換及び非置換のアルケニル、置換及び非置換のアルキニル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールから選択され、又は代替的に、R1及びR2は、これらが取り付けられている窒素原子と一緒になって、任意に置換されたヘテロシクリルを形成し、これは任意に、O、S、及びNから独立して選択される1個又は2個の追加のヘテロ原子を更に含む。
【0031】
R11、R12、及びR13は、それぞれ独立して、結合、任意に置換されたC1~C4アルキレン、又は任意に置換されたC2~C4アルケニレンであり、ここで、前記アルキレン及び前記アルケニレンは、任意に、O、S、又はNR3によって置き換えられた1つのCH2基を有し、好ましくは、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立して、-CH2-又は-CH2-CH2-である。
【0032】
ここで、構造W-2、構造W-3、又は構造W-5中の前記R1のいずれか及び隣接するR11は、これらが取り付けられている窒素原子と一緒になって、任意に置換された複素環式環を形成することができ、これは任意に、O、S、及びNから独立して選択される1個又は2個の追加のヘテロ原子を更に含んでいてもよく、
ここで、構造W-2、構造W-4、構造W-5、又は構造W-6中の前記R11及び前記R12又は前記R11及び前記R13は、任意に置換されたアルキレン架橋によって任意に接続される。
【0033】
ここで、HAは、何も含まないこと、及び薬学的に許容可能な酸、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びパモ酸から選択される。
ただし、その構造は共有結合の原理に違反することなく安定した化合物を形成するものとする。
【0034】
幾つかの実施形態において、HAが何も含まない場合、式(I)の化合物は遊離塩基である。
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、RXは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、又はNRaRbであり、ここで、Ra及びRbは、同一又は異なり、独立して、水素又はC1~C6アルキルである。
【0035】
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、Ryは、水素(H)、CH3CO-、CH3CH2CO-、2-ヒドロキシベンゾイル、及び2-アセトキシベンゾイルから選択され、ここで、2-ヒドロキシベンゾイル又は2-アセトキシベンゾイルのフェニル部分は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、フェニル、及びNRaRbから独立して選択される1つ~3つの置換基によって更に任意に置換されており、ここで、Ra及びRbは、同一又は異なり、独立して、水素又はC1~C6アルキルであり、ここで、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、及びNRaRbから独立して選択される1つ~5つ、時には好ましくは1つ~3つの置換基によって任意に置換されている。
【0036】
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、L1は、O、S、NH、又はO(CH2)n(nは、1、2、3、又は4である)である。
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、Rは、結合又はC1~C6アルキレンである。
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、Tは、構造W-1であり、ここで、R1及びR2は、それぞれ水素又はC1~C6アルキルである。
【0037】
幾つかの実施形態においては、式(I)の化合物において、Tは、構造W-2、構造W-3、構造W-4、構造W-5、又は構造W-6であり、ここで、Rは、結合又はC1~C4アルキレンであり、R1は、水素又はC1~C6アルキルであり、R11は、C1~C4アルキレンであり、R12及びR13は、独立して、結合、CH2、又はCH2CH2である。
【0038】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物において、Tは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、及びモルホリニルから選択されるヘテロシクリルである。
幾つかの実施形態において、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立して、CH2,CH2CH2、CH=CH、CH2CH2CH2、CH=CHCH2、CH2CH2CH2CH2、CH2CH=CH-CH2、CH2CH2CH2CH2CH2、CH2CH2CH2CH2CH2CH2から選択され、それぞれは任意に置換される。
【0039】
本開示は、式(I)の構造に関して本明細書に開示される実施形態のあらゆる妥当な組合せを包含する。例えば、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物において:
RXは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、又はNRaRbであり、ここで、Ra及びRbは、同一又は異なり、独立して、水素又はC1~C6アルキルである。
【0040】
Ryは、水素(H)、CH3CO-、CH3CH2CO-、2-ヒドロキシベンゾイル、及び2-アセトキシベンゾイルから選択され、ここで、2-ヒドロキシベンゾイル又は2-アセトキシベンゾイルのフェニル部分は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、フェニル、及びNRaRbから独立して選択される1つ~3つの置換基によって更に任意に置換されており、ここで、Ra及びRbは、同一又は異なり、独立して、水素又はC1~C6アルキルであり、ここで、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、及びNRaRbから独立して選択される1つ~3つの置換基によって更に任意に置換されており、
L1は、O、S、NH、又はO(CH2)n(nは、1又は2である)であり、かつ
Tは、構造W-1であり、ここで、Rは、結合又はC1~C4アルキレンであり、R1及びR2は、それぞれ水素又はC1~C6アルキルであり、または
Tは、構造W-2、構造W-3、構造W-4、構造W-5、又は構造W-6であり、ここで、Rは、結合又はC1~C4アルキレンであり、R1は、水素又はC1~C6アルキルであり、R11は、C1~C4アルキレンであり、R12及びR13は、独立して、結合、CH2、又はCH2CH2である。
【0041】
幾つかの実施形態において、本開示は、
から選択されるHPP化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びパモ酸から選択される酸と形成される。好ましい実施形態において、酸は塩酸である。
【0043】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物中の機能単位(アスピリンのサリチル酸部分)は、ジフルニサル、アセチルジフルニサル、サルサレート、及びアセチルサルサレート等のような別のNSAIDの部分によって置き換えられていてもよく、その際、NSAIDのカルボキシル基上のヒドロキシルが置き換えられる。
【0044】
一の態様において、本開示は、従来の経口投与と比較して、他にも多数ある利点の中でも、GI毒性を総じて克服することができる、簡便な局所投与を通じて様々な心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療するためのHPP又はHPCの使用を提供する。
【0045】
幾つかの実施形態において、本開示は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、及びその他の心血管疾患の予防又は治療のための、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩、2-(ピロリジン-2-イル)メチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、又はアスピリン及びその他のNSAIDのその他のHPP若しくはHPCの使用を提供する。
【0046】
一の態様において、本開示は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠状動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、及びその他の心血管疾患などの様々な心血管疾患または状態の予防または治療のための医薬品の製造におけるHPPの使用を提供する。
【0047】
一の実施形態において、本開示は、医薬品の製造における、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート及び/又はアスピリン及び/又はその他のNSAIDの関連する高透過プロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0048】
幾つかの実施形態において、本開示は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、及びその他の心血管疾患の予防又は治療用医薬品の製造における、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩、2-(ピロリジン-2-イル)メチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、及びアスピリンとその他のNSAIDのその他のHPP若しくはHPCの使用を提供する。
【0049】
幾つかの実施形態において、本開示は、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、及びその他の心血管疾患の予防又は治療用医薬品の製造における、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、またはアスピリンの他のHPPの使用を提供する。
【0050】
一の態様において、本開示は、アスピリンおよび/または他のNSAIDのHPPまたはHPCの局所投与による脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、冠状動脈疾患、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、および他の心血管疾患の予防または治療方法を提供する。
【0051】
一の態様において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含むキットを提供する。
【0052】
一の態様において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPP及び/又はアスピリンの関連の高透過プロドラッグ又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を含む治療システムを提供する。
【0053】
一の態様において、本開示は、心血管疾患の治療用の、或る特定の濃度の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む剤形を提供する。
【0054】
一の態様において、本開示は、或る特定の単位用量の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを、心血管疾患又は心血管病態を患っている被験体に投与することができるデバイスを提供する。
【0055】
幾つかの実施形態において、本開示は、被験体における心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療する方法であって、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり約1mg~約1000mg、特に1回当たり3mg~200mgの量で局所投与することを含む、方法を提供する。
【0056】
一の態様において、本開示は、被験体における心血管疾患又は心血管病態の予防又は治療において使用される、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPであって、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり約1mg~約1000mg、特に1回当たり3mg~200mgの量で局所投与される、HPPを提供する。
【0057】
幾つかの実施形態において、本開示は、心血管疾患又は心血管病態を予防又は治療する局所投与用の医薬品の製造における、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの使用であって、HPPは、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり約1mg~約1000mg、特に1回当たり3mg~200mgの量で局所投与される、使用を提供する。
【0058】
幾つかの実施形態において、本開示は、心血管疾患又は心血管病態を患っている被験体を予防又は治療するキットであって、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり約1mg~約1000mg、特に1回当たり3mg~200mgの量で局所投与される2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む、キットを提供する。
【0059】
幾つかの実施形態において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む組成物を含む、心血管疾患又は心血管病態を患っている被験体を予防又は治療する治療システムであって、HPPは、遊離塩基として又は薬学的に許容可能な塩として存在し、ここで、システムにおいて、HPPは、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり約1mg~約1000mg、特に1回当たり3mg~200mgの量で局所投与される、治療システムを提供する。
【0060】
幾つかの実施形態において、本開示は、被験体を予防又は治療する方法であって、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約3mg、特に皮膚1cm2につき5μg~皮膚1cm2につき3mgの量で、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、局所投与することを含む、方法を提供する。
【0061】
幾つかの実施形態において、本開示は、被験体の予防又は治療において使用される、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPであって、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約3mg、特に皮膚1cm2につき5μg~皮膚1cm2につき3mgの量で、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、局所投与される、HPPを提供する。
【0062】
幾つかの実施形態において、薬物が適用される皮膚面積は、約5cm2~15000cm2、特に25cm2~5000cm2、殊に100cm2~2500cm2である。
【0063】
幾つかの実施形態において、本開示は、医薬品の製造における、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの使用であって、医薬中のHPPは、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約3mg、特に皮膚1cm2につき5μg~皮膚1cm2につき3mgの量で局所投与される、使用を提供する。
【0064】
幾つかの実施形態において、本開示は、被験体を予防又は治療するキットであって、被験体の部位に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約3mg、特に皮膚1cm2につき5μg~皮膚1cm2につき3mgの量で局所投与される2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む、キットを提供する。
【0065】
幾つかの実施形態において、本開示は、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを有効成分とする組成物を含む、被験体を予防又は治療する治療システムであって、HPPは、遊離塩基として又は薬学的に許容可能な塩として存在し、ここで、システムにおいて、HPPは、被験体に、特に被験体の1つ以上の部位に、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約3mg、特に皮膚1cm2につき5μg~皮膚1cm2につき3mgの量で局所投与される、治療システムを提供する。
【0066】
幾つかの実施形態において、本開示は、剤形中の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの濃度が、約3mg/mL~約200mg/mL、特に10mg/mL~100mg/mL、又は約3mg/g~約200mg/g、特に10mg/g~100mg/gである、剤形を提供する。
【0067】
幾つかの実施形態において、本開示は、約0.1mg~約30mg、特に0.1mg~30mgの単位用量の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを被験体に投与することができるデバイスを提供する。
【0068】
幾つかの実施形態において、本開示は、約0.1mg~約30mg、特に0.1mg~30mgの単位用量の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを噴霧することができる噴霧剤を提供する。
【0069】
一の態様において、本開示は、心血管疾患を患う被験体において局所噴霧として皮膚に投与した場合の、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの有効性及び安全性を評定することを目的としている。
【0070】
幾つかの実施形態において、本開示は、生物学的障壁を透過することができる医薬組成物、並びにヒト及び動物の心血管疾患、特に脳卒中、心筋梗塞、心不全、狭心症、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患を予防又は治療するための上記医薬組成物の使用方法を提供する。
【0071】
特段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0072】
「心血管疾患」という用語は、心臓及び血管の障害の一群を指し、以下のものが含まれる。
冠状動脈性心疾患、すなわち、心筋に供給を行う血管の疾患、
脳血管疾患、すなわち、脳に供給を行う血管の疾患、
末梢動脈疾患、すなわち、腕及び脚に供給を行う血管の疾患、
リウマチ性心疾患、すなわち、連鎖球菌性細菌によって引き起こされるリウマチ熱による心筋及び心臓弁に対する損傷、
先天性心疾患、すなわち、生まれながらの心臓構造の奇形によって引き起こされる心臓の正常な発達及び機能化に影響を与える先天性欠損、並びに、
深部静脈血栓症及び肺塞栓症、すなわち、脚の静脈に血栓ができ、これが取れて心臓及び肺に移動し得る。
【0073】
「アルキル」という用語は、アルカンから1個の水素原子を除去することによって誘導される分岐状又は非分岐状の一価の脂肪族炭化水素基を指す。或る特定の実施形態において、アルキル基は1個~8個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、時には好ましくは、アルキル基は1個~6個の炭素を含み、或る特定の実施形態において、時にはより好ましくは、アルキル基は1個~4個の炭素を含む。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシル等が挙げられる。或る特定の実施形態において、アルキル基は1個~12個の炭素を含む。アルキル基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0074】
「アルケニル」という用語は、アルケンから1個の水素原子を除去することによって誘導されるあらゆる一価の脂肪族炭化水素基を指す。或る特定の実施形態において、アルケニル基は2個~12個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、アルケニル基は2個~8個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、時には好ましくは、アルケニル基は2個~6個の炭素を含み、或る特定の実施形態において、時にはより好ましくは、アルケニル基は2個~4個の炭素を含む。アルケニルの例としては、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル等が挙げられる。アルケニル基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0075】
「アルキニル」という用語は、アルキンから1個の水素原子を除去することによって誘導される一価の脂肪族炭化水素基を指す。或る特定の実施形態において、アルキニル基は2個~12個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、アルキニル基は2個~8個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、時には好ましくは、アルキニル基は2個~6個の炭素を含み、或る特定の実施形態において、時にはより好ましくは、アルキニル基は2個~4個の炭素を含む。アルキニルの例としては、限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル等が挙げられる。アルキニル基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0076】
「シクロアルキル」という用語は、シクロアルカンから1個の水素原子を除去することによって形成されるあらゆる一価の基を指す。或る特定の実施形態において、シクロアルキル基は3個~10個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、シクロアルキル基は3個~8個の炭素を含む。或る特定の実施形態において、時には好ましくは、シクロアルキル基は3個~6個の炭素を含む。シクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシルが挙げられる。シクロアルキルは任意に置換されているか、又は非置換であり得る。
【0077】
「ヘテロシクリル」という用語は、少なくとも1個の環原子が非炭素原子であるシクロアルキルを指す。非炭素環原子の例としては、限定されるものではないが、S、O、及びNが挙げられる。単環式ヘテロシクリルの代表的な例としては、限定されるものではないが、ピロリジル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、スルホモルホリニル、ホモピペラジニル等が挙げられる。
【0078】
「アルキレン」という用語は、親アルカンから2個の水素原子を除去することによって誘導される飽和の直鎖状又は分岐状の二価の脂肪族炭化水素基を指す。直鎖基又は分岐鎖基は、1個~12個の炭素原子(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、及び12個の炭素原子)を含み、好ましくは1個~8個の炭素原子、より好ましくは1個~6個の炭素原子、時にはより好ましくは1個~4個の炭素原子を含む。アルキレン基の非限定的な例としては、限定されるものではないが、メチレン(-CH2-)、1,1-エチレン(-CH(CH3)-)、1,2-エチレン(-CH2CH2-)、1,1-プロピレン(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチリデン(-CH2CH2CH2CH2-)等が挙げられる。アルキレン基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0079】
「アルケニレン」という用語は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する上記のように定義されたアルキレンを指し、好ましくはC2~12アルケニレン、より好ましくはC2~8アルケニレン、時にはより好ましくはC2~6アルケニレン、時には更により好ましくはC2~4アルケニレンである。アルケニレン基の非限定的な例としては、限定されるものではないが、-CH=CH-、-CH=CHCH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH=CHCH2-等が挙げられる。アルケニレン基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0080】
「アリール」という用語は、6員~14員の全炭素単環式環又は多環式縮合環(「縮合」環系とは、系内の各環が系内の別の環と隣接する炭素原子のペアを共有することを意味する)基を指し、完全に共役したパイ電子系を有する。好ましくは、アリールは、6員~10員であり、例えばフェニル及びナフチル、最も好ましくはフェニルである。アリール基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0081】
「ヘテロアリール」という用語は、環原子としてO、S、及びNから選択される1個~4個のヘテロ原子を有する5員~14員のアリール系を指す。好ましくは、ヘテロアリールは、5員~10員(5員、6員、7員、8員、9員、及び10員等)、より好ましくは5員又は6員であり、例えば、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-アルキルピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、イミダゾリル、テトラゾリル等である。ヘテロアリールは、アリール、ヘテロシクリル、又はシクロアルキルの環と縮合されている場合があり、ここで、親構造に結合される環はヘテロアリールである。ヘテロアリール基は置換されているか、又は非置換であり得る。
【0082】
「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等のいずれをも指す。
【0083】
「シクロアルコキシ」という用語は、-O-(シクロアルキル)、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を指す。
【0084】
「結合」という用語は、「-」の記号を使用する共有結合を指す。
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。
「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を指す。
「アミノ」という用語は、-NH2基を指す。
「アルキルチオ」という用語は、アルキル-S-を指す。
【0085】
「アルキルアミノ」という用語は、「アルキル-NH-」、又は時にはジアルキルアミノ(-NRaRb)を指し、ここで、2つのアルキル基(Ra及びRb)は同じであるか、又は異なっている場合もある。時には好ましくは、アルキル基は、C1~C6アルキルであり、時にはより好ましくは、アルキルは、C1~C4アルキルである。アルキルアミノの例としては、限定されるものではないが、CH3-NH-、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-NHCH2CH3、-N(CH3)(CH2CH3)、-NH-But、-N(CH3)(But)等が挙げられる。
【0086】
「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
「ハロアルキル」という用語は、1個以上のハロゲン原子によって置換されたアルキル基を意味し、ここで、ハロゲン原子は同じであるか、又は異なっている場合もある。
「ニトロ」という用語は、-NO2基を指す。
「オキソ基」という用語は、=O基を指す。
「カルボキシル」という用語は、-C(O)OH基を指す。
「アルコキシカルボニル」という用語は、-C(O)O(アルキル)基を指す。
「アルキルカルボニル」という用語は、-C(O)-アルキル基を指す。
【0087】
「任意の」又は「任意に」という用語は、続いて記載される事象又は状況が起こり得るが、必ずしも起こるわけではないことを意味し、その記載には、事象又は状況が起こり得る場合又は起こり得ない場合が含まれる。例えば、「アルキルによって任意に置換されたヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在し得るが、必ずしも存在するわけではないことを意味し、その記載には、ヘテロシクリル基がアルキルで置換されている場合と、ヘテロシクリル基がアルキルで置換されていない場合とが含まれる。
【0088】
「置換」という用語は、基中の1個以上の水素原子、好ましくは最大5個、より好ましくは1個~3個の水素原子が、対応する数の置換基で独立して置換されていることを指す。当業者であれば、実験又は理論によって過度の労力を費やすことなく、置換が可能であるか又は不可能であるかを判断することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシル基と不飽和結合を有する炭素原子(オレフィン等)との組合せは不安定となる場合がある。
【0089】
本明細書において使用される「共有結合原理」という用語は、当業者によって一般的に理解されるような有機化合物における共有結合の形成における基本的な規則及び原理を指す。例えば、炭素原子は四価であり、4つの共有結合(例えば、4つの単結合、又は1つの二重結合に加えて2つの単結合等)しか形成することができず、酸素は二価であり、2つの共有結合(-O-での2つの単結合、又は=Oでの1つの二重結合)しか形成することができない。
【0090】
「プロドラッグ」という用語は、血中での加水分解等によって、in vivoで変換されて、生理学的条件下で活性な親化合物を得ることができる化合物を指す。一般的な例としては、限定されるものではないが、カルボン酸部分を有する活性形態を有する化合物のエステル形態及びアミド形態が挙げられる。特に、本開示は、本開示において定義される独特な部類のプロドラッグ、いわゆる「高透過プロドラッグ」を提供する。
【0091】
任意のHPP構造中の任意の基が「置換」及び/又は「非置換」のいずれかであると示されている場合、これは、その基が、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリール、アルキルチオ、アルキルアミノ、アルキルスルホニル(アルキルスルホン)、アルキルスルホキシル(アルキルスルホキシド)、アシルオキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボキサミド基等から独立して選択される1つ以上の、好ましくは1つ~5つの、時にはより好ましくは1つ~3つの置換基によって任意に置換されている場合があることを意味する。アルキル基は、1個~10個の炭素原子数、時には好ましくは1個~6個の炭素原子数、時にはより好ましくは1個~4個の炭素原子数であり得る。エステルは、C1~C10アルコール、時には好ましくはC1~C6アルコール、時にはより好ましくはC1~C4アルコールのエステルであり得る。
【0092】
幾つかの実施形態において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基等、又はそれらの部分が置換されている場合、置換基(複数の場合もある)は、あらゆる利用可能な接続点(複数の場合もある)で置換されている場合があり、置換基は、C1~C6アルキル基、ハロゲン基、C1~C6アルコキシ基、C1~C6アルケニル基、C1~C6アルキニル基、C1~C6アルキルチオ基、C1~C6アルキルアミノ基、ジ-(C1~C6アルキル)アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C3~C6シクロアルキル基、5員~10員のヘテロシクリル基、C6~C10アリール基、5員~10員のヘテロアリール基、C3~C6シクロアルコキシ基、C1~C6シクロアルキルチオ基、5員~10員のヘテロシクリルチオ基、及びオキソ基から独立して選択される1つ以上、時には好ましくは1つ~5つ、時にはより好ましくは1つ~3つの基であり得る。幾つかの実施形態において、時には好ましくは、置換基は、C1~C6アルキル基、ハロゲン基、C1~C6アルコキシ基、C1~C6アルキルチオ基、C1~C6アルキルアミノ基、ジ-(C1~C6アルキル)アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、及びオキソ基から独立して選択される。幾つかの実施形態において、時にはより好ましくは、置換基は、C1~C4アルキル、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ、C1~C4アルキルアミノ、ジ(C1~C4アルキル)アミノ、チオール、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、及びアミノから独立して選択される。当業者であれば理解しているはずであるように、オキソ(=O)基は、アリール基若しくはヘテロアリール基の置換基又はあらゆる他の基における不飽和炭素での置換基となることはできない。
【0093】
本明細書及び特許請求の範囲(複数の場合もある)において使用される場合に、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等のあらゆる形態の「含む(comprising)」)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」等のあらゆる形態の「有する(having)」)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」等のあらゆる形態の「含む(including)」)、又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び「含む(contain)」等のあらゆる形態の「含む(containing)」)という言葉は、包括的、すなわちオープンエンドであり、更なる列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0094】
本発明を説明する文脈における(特に添付の特許請求の範囲の文脈における)用語("a"及び"an"及び"the")及び同様の指示は、本明細書において特段の定めがない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を対象に含めると解釈されるべきである。特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用される場合の言葉("a"又は"an")の使用は、「1つ(one)」を意味する場合があるが、「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、及び「1つ又は1つより多い(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0095】
複数形が化合物、塩等に使用される場合に、これは、単一の化合物、塩等も意味すると解釈される。
【0096】
本明細書において使用される「及び/又は(and/or)」という用語は、関連する列記された項目の1つ以上のあらゆる全ての可能な組合せを指し、それらを包含する。2つ以上の項目のリストにおいて使用される場合に、「及び/又は」という用語は、列記された項目のいずれか1つを単独で使用することができること、又は列記された項目の2つ以上のあらゆる組合せを使用することができることを意味する。例えば、組成物、組合せ、構成、並置、又は群が成分A、成分B、成分C、及び/又は成分Dを含む(including)(又は含む(comprising))と記載されている場合に、組成物は、A単独、B単独、C単独、D単独、AとBとの組合せ、AとCとの組合せ、AとDとの組合せ、BとCとの組合せ、BとDとの組合せ、CとDとの組合せ、AとBとCとの組合せ、AとBとDとの組合せ、AとCとDとの組合せ、BとCとDとの組合せ、又はAとBとCとDとの組合せを含み得る。
【0097】
本出願全体を通じて、「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、値が、値の決定に使用されるデバイス、方法についての誤差の固有の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すのに使用される。一の態様において、「約」又は「およそ」という用語は、通常、所与の値又は範囲の10%以内、特に9%以内、特に8%以内、特に7%以内、特に6%以内、特に5%以内、特に4%以内、特に3%以内、特に2%以内、特に1%以内、特に0.5%以内を意味する。
【0098】
本明細書において使用される「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、又は「治療(treatment)」という用語は、被験体における少なくとも1つの症状を緩和、低減、若しくは軽減するか、又は増殖性障害の進行の遅延をもたらす治療又は治療レジメンを含む。例えば、治療は、障害の1つ若しくは幾つかの症状の減少、又は脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患等の障害の完全な根絶であり得る。本開示の意味の範囲内で、「治療する(treat)」という用語はまた、発症(すなわち、障害の臨床所見の前の期間)を止めること、それを遅延させること、及び/又は障害を発生若しくは悪化させるリスクを低減することも意味する。
【0099】
幾つかの実施形態において、本明細書において使用される「用量」という用語は、個々の被験体によって毎回摂取される薬物又は活性成分の量、特に1つの部位について個々の被験体によって毎回摂取される薬物又は活性成分の総量を意味する。
【0100】
幾つかの実施形態において、本明細書において使用される「剤形」という用語は、活性作用物質の投与単位を意味する。剤形の例としては、錠剤、カプセル剤、注射剤、懸濁液剤、液剤、エマルジョン剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、吸入可能な形態、経皮形態等が挙げられる。
【0101】
幾つかの実施形態において、「単位用量」又は「投薬単位」という用語は、指定された量又は用量の組成物又はその成分を送達するように構成されている剤形を指す。局所投与用の剤形の例としては、限定されるものではないが、経皮的なパッチ剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、固形剤、スポンジ剤、テープ剤、チンキ剤、蒸気剤(vapor)、注射剤、滴剤、リンス剤、スプレー剤、及び液剤が挙げられる。「単位用量」又は「投薬単位」は、完全な単位用量又はその一部(例えば、1用量の1/2、1/3、又は1/4)を提供するように構成され得る。各単位用量における予め決められた量は、限定されるものではないが、活性化合物の独特な特性及び達成されるべき特定の治療効果、並びにそのような単位用量を作製及び投与する技術に固有の制限を含む要因に依存し得る。例えば、単位用量は、経皮的なパッチ剤、スプレー剤、すなわち、噴霧適用における1回の噴霧、滴下適用の一滴、或る特定の長さのテープ剤、米粒サイズ若しくは豆粒サイズの軟膏剤、又はひとすくい若しくはひとさじの軟膏剤であり得る。カップ、スクープ、注射器、スポイト、スプーン、又は灌注デバイス等の単位用量計測デバイスは、剤形、例えば、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、及び固形剤、完全な単位用量又はその一部(例えば、1用量の1/2、1/3、又は1/4)に匹敵する測定量の組成物を保持することができる。単一の投与用量において、単一の単位用量又は多数の単位用量が存在し得る。キットは、単位用量又はその一部のサイズに関する指示書を含み得る。
【0102】
「薬学的に許容可能な」という用語は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、及び他の問題のある合併症がなく被験体の組織と接触するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すものと定義される。
【0103】
「医薬組成物」という用語は、本明細書において、被験体を冒す特定の疾患又は病態を予防又は治療、特に治療するのに被験体に投与される少なくとも1つの治療剤を含む物質又は混合物又は溶液を指すものと定義される。
【0104】
本明細書において使用される「その他のNSAID」という用語は、アスピリン以外のあらゆるNSAID、特にサリチル酸、ジフルニサル、アセチルジフルニサル、サルサレート、及びアセチルサルサレートを指す。
【0105】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、被験体に投与するのに安全な本発明の化合物の塩を指す。薬学的に許容可能な塩に対する概要については、Berge, et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19(引用することにより本明細書の一部をなす)を参照のこと。
【0106】
なお、治療剤は、単一の単位用量若しくは多数の単位用量において毎日投与され、及び/又は単回用量において(1日1回、q.d.で)又は分割用量において(1日2回以上、例えば、1日2回、b.i.d.で)毎日投与され得ると理解される。
【0107】
本明細書において使用される「日」という用語は、任意のタイムゾーンにおける1暦日又は1つの24時間期間のいずれかを指す。
【0108】
「患者」又は「被験体」という用語は、温血動物を含む動物を含むことが意図される。患者の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、及びトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。幾つかの実施形態において、患者は、ヒト、例えば、疾患を患っている、疾患を患うリスクがある、又は疾患を患う可能性が潜在的にある、例えば、脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患を患っているヒトである。
【0109】
幾つかの実施形態において、「経皮投与」という用語は、経皮的な用量、単位用量、又は剤形の投与を意味する。「経皮投与する」という用語は、経皮的な用量、単位用量、又は剤形を投与することを意味する。「経皮投与される」という用語は、経皮的な用量、単位用量、又は剤形によって投与されることを意味する。患者及び/又は被験体が「経皮投与される」ことは、患者及び/又は被験体が「経皮投与」を受けることと同等である。患者及び/又は被験体に「経皮投与すること」は、患者及び/又は被験体に「経皮投与」を施すことと同等である。
【0110】
幾つかの実施形態において、(被験体の)「部位」という用語は、疾患が見つかったヒトの器官又は身体、例えば、それ自体が疾患を患っている、特に血流不良、血液凝固、組織炎症、及び/又は細胞死等、特に脳、心臓、肺、その他の器官及び/又はその他の組織等の血液凝固、血管炎症、及び/又は組織炎症、より詳細には脳卒中、心筋梗塞、及び/又はその他の心血管疾患を患っている、心臓、脳、肺、頭、首、胸、腕、脚、及び/又は背中等の近傍の皮膚及び/又は身体表面である。
【0111】
幾つかの実施形態において、相応して、(被験体の)「部位に投与する」という用語は、(a)その「部位」に対応する又はそれに近い近傍の皮膚及び/又は体表面上の場所、及び/又は(b)その「部位」に到達可能な経路を提供する近傍の皮膚及び/又は体表面上の場所に投与することを意味する。
【0112】
例えば、その部位は、脳、心臓、肺および/または他の器官などの疾患、より具体的には脳卒中、心筋梗塞、および/または他の心血管疾患などの症状に罹患している、罹患するリスクがある、または罹患する可能性がある箇所の近傍の皮膚であってもよい。その部位への投与は、その皮膚および/または体表面の近傍への投与であってもよい。その部位への投与は、特に脳、心臓、肺および/または他の器官などから約1cmから約20cm以内、特に約5cmから約15cm以内、特に、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm、約10cm、約11cm、約12cm、約13cm、約14cm、約15cmの距離、および/または環境から約1cm~約100cm、特に約5cm~約50cm、特に、脳、心臓、肺、および/またはその他の臓器などの周りのあらゆる方向から約5cm、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm、約30cm、約35cm、約40cm、約45cm、約50cm、約40cm、約45cm、約50cmから選択される距離であってもよい。
【0113】
幾つかの実施形態において、「近い」又は「~に近い」という用語は、部位、すなわち脳、心臓、肺、及び/又はその他の器官等の中心から約1cm~約100cm以内、特に約10cm~約50cm以内、特に約10cm、約15cm、約20cm、約30cm、約35cm、約40cm、約45cm、約50cmから選択される距離以内を意味する。
【0114】
幾つかの実施形態において、「症状」という用語は、疾患、炎症、胸痛、動悸、不定愁訴、発熱、息切れ、過度の疲労、狭心症、脚及び/又は腕の痛み、浮腫、倦怠感、失神、頭痛、腕及び/又は脚の衰弱、顔面筋の衰弱、発話障害、視力喪失、協調問題、めまい、意識喪失等のようなあらゆる症状を指す。特に、症状として、胸痛、息切れ、頭痛、めまい、腕及び/又は脚の衰弱、凝血に関連する意識喪失、特に脳卒中、心筋梗塞、及び/又はその他の心血管疾患を含めることができる。
【0115】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1回当たり約1mg~約1000mg、特に約3mg~約210mg、殊に約35mg~約140mgの量で、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、特に時には好ましくは1日2回投与される。
【0116】
例えば、1回あたり3.5mg,7mg,10.5mg,14mg,17.5mg,21mg,24.5mg,28mg,31.5mg,35mg,38.5mg,42mg,45.5mg,49mg,52.5mg,56mg,59.5mg,63mg,66.5mg,70mg,73.5mg,77mg,80.5mg,84mg,87.5mg,91 mg,94.5mg,98mg,101.5mg,105mg,108.5mg,112mg,115.5mg,119mg,122.5mg,126mg,129.5mg,133mg,136.5mg,140mg,143.5mg,147mg,150.5mg,154mg,157.5mg,161mg,164.5mg,168mg,171.5mg,175mg,178.5mg,182mg,185.5mg,189mg,192.5mg,196mg,199.5mg,203mg,206.5mg,および210mgを、1日1回または1日2回の量で投与することができる。
【0117】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1回当たり皮膚1cm2につき約5μg~皮膚1cm2につき約15mg、特に皮膚1cm2につき約10μg~皮膚1cm2につき約7mg、皮膚1cm2につき約30μg~皮膚1cm2につき約2mg、皮膚1cm2につき約50μg~皮膚1cm2につき約1.5mg、皮膚1cm2につき約70μg~皮膚1cm2につき約1mg、時には好ましくは皮膚1cm2につき約100μg~皮膚1cm2につき約700μg、時にはより好ましくは皮膚1cm2につき約150μg~皮膚1cm2につき約500μgの量で投与される。
【0118】
例えば、1用量あたり17.5μg/cm2、35μg/cm2、70μg/cm2、140μg/cm2、280μg/cm2、560μg/cm2、700μg/cm2、1mg/cm2、2mg/cm2、3.5mg/cm2、または7mg/cm2皮膚の量で投与することができる。
【0119】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は温血動物である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は哺乳動物である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は霊長類である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体はヒトである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は未成年者である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は未成年者であり、未成年者の年齢は16歳未満である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体はヒト成人である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、成人の年齢は16歳以上である。
【0120】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は、症状を患っている、症状を患うリスクがある、又は症状を患う可能性が潜在的にある被験体であり、及び/又は医薬は、症状を患っている、症状を患うリスクがある、又は症状を患う可能性が潜在的にある被験体用である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は、症状を患っている、症状を患うリスクがある、又は症状を患う可能性が潜在的にある被験体であり、特に、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患等のような心血管疾患若しくは心血管病態を患っている、それらを患うリスクがある、又はそれらを患う可能性が潜在的にある被験体であり、及び/又は医薬は、症状を患っている、症状を患うリスクがある、又は症状を患う可能性が潜在的にある被験体用、特に、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心不全、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患等のような心血管疾患若しくは心血管病態を患っている、それらを患うリスクがある、又はそれらを患う可能性が潜在的にある被験体用である。
【0121】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は、凝血(凝固)を患っている、凝血(凝固)を患うリスクがある、又は凝血(凝固)を患う可能性が潜在的にある被験体であり、及び/又は医薬は、凝血(凝固)を患っている、凝血(凝固)を患うリスクがある、又は凝血(凝固)を患う可能性が潜在的にある被験体用である。
【0122】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体は、疾患、炎症、胸痛、動悸、不定愁訴、発熱、息切れ、過度の疲労、狭心症、脚及び/又は腕の痛み、浮腫、倦怠感、失神、頭痛、腕及び/又は脚の衰弱、顔面筋の衰弱、発話障害、視力喪失、協調問題、めまい、意識喪失を患っている、それらを患うリスクがある、又はそれらを患う可能性が潜在的にある被験体であり、及び/又は医薬は、疾患、炎症、胸痛、動悸、不定愁訴、発熱、息切れ、過度の疲労、狭心症、脚及び/又は腕の痛み、浮腫、倦怠感、失神、頭痛、腕及び/又は脚の衰弱、顔面筋の衰弱、発話障害、視力喪失、協調問題、めまい、意識喪失を患っている、それらを患うリスクがある、又はそれらを患う可能性が潜在的にある被験体用である。
【0123】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体の部位としては、1つ以上の表面が挙げられる。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、被験体の部位としては、その首表面、胸表面、背中表面、腰表面、頭表面、頬表面、肩表面、腕表面、手表面、脚表面、及び/又は腹部表面が挙げられる。
【0124】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、その首表面、胸表面、背中表面、腰表面、頭表面、頬表面、肩表面、腕表面、手表面、脚表面、及び/又は腹部表面のうちの1つ以上の表面に局所投与される。
【0125】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、経皮投与によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、経皮的な貼付剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、固体剤、スポンジ剤、テープ剤、チンキ剤、蒸気剤、注射剤、滴剤、リンス剤、噴霧剤、及び液剤のうちの1種以上から選択される剤形によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、経皮的な滴剤、リンス剤、及び噴霧剤のうちの1種以上から選択される剤形によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、噴霧剤によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患に罹患している被験体に噴霧剤によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、滴剤によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患に罹患している被験体に滴剤によって局所投与される。
【0126】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1単位用量以上を含む剤形によって局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、経皮的な貼付剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、固体剤、スポンジ剤、テープ剤、チンキ剤、蒸気剤、注射剤、滴剤、リンス剤、噴霧剤、及び液剤のうちの1種以上から選択される剤形、及び1つまたは複数の単位用量を含む剤形が含んでもよい。
【0127】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は噴霧適用である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は、脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患に罹患している被験体への噴霧である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は複数回の噴霧であり、各1単位用量は、複数回の噴霧における1回の噴霧である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は複数回の貼付であり、各1単位用量は、複数回の貼付における1回の貼付である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は滴下適用である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は、脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患に罹患している被験体への滴下である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は複数回の滴下であり、各1単位用量は、複数回の滴下における1回の滴下である。
【0128】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを含む組成物は、被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を含む単位用量は、被験体に局所投与される。
【0129】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、溶液中に溶解して局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はアルコール溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はアセトン溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はジメチルスルホキシド溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はアルコール水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はアセトン水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はジメチルスルホキシド水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は、水及びアルコールを含む溶液であり、ここで、上記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、活性アミルアルコール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、メチルn-プロピルカルビノール、メチルイソプロピルカルビノール、及び3-ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種、少なくとも2種、又はそれより多種である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は、水と、エタノール及び/又はイソプロパノールとを含む溶液である。
【0130】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物はエタノール水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は0%(容量/容量)~75%(容量/容量)のエタノール水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は、10%(容量/容量)、15%(容量/容量)、20%(容量/容量)、25%(容量/容量)、30%(容量/容量)、35%(容量/容量)、40%(容量/容量)、45%(容量/容量)、50%(容量/容量)、55%(容量/容量)、60%(容量/容量)、65%(容量/容量)、70%(容量/容量)、又は75%(容量/容量)のエタノール水溶液である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物は15%(容量/容量)のエタノール水溶液である。
【0131】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの濃度は、約5mg/mL~約500mg/mL、特に5mg/mL~500mg/mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、HPPの濃度は、約30mg/mL~約150mg/mL、特に30mg/mL~150mg/mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、HPPの濃度は、約50mg/mL~約100mg/mL、特に50mg/mL~100mg/mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、HPPの濃度は、約60mg/mL~約90mg/mL、特に60mg/mL~90mg/mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、HPPの濃度は、約75mg/mL~約85mg/mL、特に75mg/mL~85mg/mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、組成物中、HPPの濃度は、約79mg/mL、特に79mg/mLである。
【0132】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、単位用量における組成物の容量は、約0.01mL~約1mL、特に0.01mL~1mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、単位用量における組成物の容量は、約0.03mL~約0.3mL、特に0.03mL~0.3mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、単位用量における組成物の容量は、約0.05mL~約0.2mL、特に0.05mL~0.2mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、単位用量における組成物の容量は、約0.05mL~約0.15mL、特に0.05mL~0.15mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、単位用量における組成物の容量は、約0.1mL、特に0.1mLである。
【0133】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、単位用量当たり約0.1mg~約20mg、特に0.1mg~20mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約1mg~約18mg、特に1mg~18mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約3mg~約16mg、特に3mg~16mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約5mg~約15mg、特に5mg~15mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約6mg~約12mg、特に6mg~12mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約7mg~約10mg、特に7mg~10mgの量で投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、単位用量当たり約7.5mg~約9mg、特に7.5mg~9mgの量で投与される。
【0134】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1つ以上の単位用量が単回用量で被験体に局所投与され、1以上の単位用量は、1単位用量、2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、6単位用量、7単位用量、8単位用量、9単位用量、10単位用量、11単位用量、12単位用量、13単位用量、14単位用量、15単位用量、16単位用量、17単位用量、18単位用量、19単位用量、20単位用量、21単位用量、22単位用量、23単位用量、24単位用量、25単位用量、26単位用量、27単位用量、28単位用量、29単位用量、30単位用量、31単位用量、32単位用量、33単位用量、34単位用量、35単位用量、36単位用量、37単位用量、38単位用量、39単位用量、40単位用量、41単位用量、42単位用量、43単位用量、44単位用量、45単位用量、46単位用量、47単位用量、48単位用量、49単位用量及び50単位用量からなる群から選択される。
【0135】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、5単位用量~30単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、10単位用量~20単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、10単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、15単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、20単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、25単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、30単位用量が単回投与で被験体に局所投与される。
【0136】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1噴霧当たり約0.1mg~約20mg、特に0.1mg~20mgのHPPを噴霧することができる噴霧剤によって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1噴霧当たり約0.5mg~約18mg、特に0.5mg~18mg、1噴霧当たり約1mg~約16mg、特に1mg~16mg、1噴霧当たり約2mg~約14mg、特に2mg~14mg、1噴霧当たり約3mg~約12mg、特に3mg~12mg、1噴霧当たり約4mg~約10mg、特に4mg~10mg、1噴霧当たり約5mg~約9mg、特に5mg~9mg、1噴霧当たり約7mg~約8mg、特に7mg~8mgを噴霧することができる噴霧剤によって投与される。
【0137】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は噴霧剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの組成物の容量は、約0.01mL~約1mL、特に0.01mL~1mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの組成物の容量は、約0.03mL~約0.3mL、特に0.03mL~0.3mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの組成物の容量は、約0.05mL~約0.2mL、特に0.05mL~0.2mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの組成物の容量は、約0.07mL~約0.15mL、特に0.07mL~0.15mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの組成物の容量は、約0.1mL、特に0.1mLである。
【0138】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの薬力価は、0.1mgから50mgの間の2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの遊離塩基である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1噴霧当たりの薬力価は、約1mg~約20mg、特に1mg~20mg、時には好ましくは3mg~10mg、例えば5mg~8mg、又は6mg~7mgの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPの遊離塩基である。
【0139】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1滴下当たり約0.05mg~約20mg、特に0.05mg~20mgのHPPを滴下することができる滴剤によって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1滴下当たり約0.1mg~約10mg、特に0.1mg~10mg、1滴下当たり約0.2mg~約7mg、特に0.2mg~7mg、殊に1滴下当たり約0.2mg~約1mg、特に0.2mg~1mgのHPPを滴下することができる滴剤によって投与される。
【0140】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は滴剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1滴下当たりの組成物の容量は、約0.01mL~約1mL、特に0.01mL~1mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1滴下当たりの組成物の容量は、約0.02mL~約0.3mL、特に0.02mL~0.3mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1滴下当たりの組成物の容量は、約0.03mL~約0.1mL、特に0.03mL~0.1mLである。
【0141】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1貼付当たり約1mg~約10g、特に1mg~10gのHPPを投与することができる貼付剤によって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1貼付当たり約50mg~約1g、特に50mg~1gを投与することができる貼付剤によって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1貼付当たり約100mg~約500mg、特に100mg~500mgを投与することができる貼付剤によって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1貼付当たり約200mg~約300mg、特に200mg~300mgを投与することができる貼付剤によって投与される。
【0142】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、剤形は貼付剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1貼付当たりの組成物の容量は、約0.01mL~約30mL、特に0.01mL~30mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1貼付当たりの組成物の容量は、約0.1mL~約10mL、特に0.1mL~10mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1貼付当たりの組成物の容量は、約0.2mL~約2mL、特に0.2mL~2mLである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1貼付当たりの組成物の容量は、約0.5mL~約1mL、特に0.5mL~1mLである。
【0143】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、1貼付当たりの薬力価は、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、220mg、240mg、260mg、280mg、300mg、320mg、340mg、360mg、380mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、200mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2g、2.1g、2.2g、2.3g、2.4g、2.5g、2.6g、2.7g、2.8g、2.9g、3g、3.1g、3.2g、3.3g、3.4g、3.5g、3.6g、3.7g、3.8g、3.9g、4g、4.1g、4.2g、4.3g、4.4g、4.5g、4.6g、4.7g、4.8g、4.9g、5g、5.1g、5.2g、5.3g、5.4g、5.5g、5.6g、5.7g、5.8g、5.9g、6g、6.1g、6.2g、6.3g、6.4g、6.5g、6.6g、6.7g、6.8g、6.9g、7g、7.1g、7.2g、7.3g、7.4g、7.5g、7.6g、7.7g、7.8g、7.9g、8g、8.1g、8.2g、8.3g、8.4g、8.5g、8.6g、8.7g、8.8g、8.9g、9g、9.1g、9.2g、9.3g、9.4g、9.5g、9.6g、9.7g、9.8g、9.9g及び10gからなる群から選択される2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエートなどのアスピリンまたは他のNSAIDのHPPの遊離塩基である。
【0144】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、若しくは1日6回、又は1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、若しくは7日に1回投与される。
【0145】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、又は1日8回投与される。幾つかの実施形態において、時には好ましくは、HPPは1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。
【0146】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1時間に1回、又は4時間~16時間に1回投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1時間に1回、又は8時間~12時間に1回投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1時間に1回、又は2時間に1回、3時間に1回、4時間に1回、5時間に1回、6時間に1回、7時間に1回、8時間に1回、9時間に1回、10時間に1回、11時間に1回、12時間に1回、13時間に1回、14時間に1回、15時間に1回、16時間に1回、17時間に1回、18時間に1回、19時間に1回、20時間に1回、21時間に1回、22時間に1回、若しくは23時間に1回投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1時間に1回、又は12時間に1回投与される。
【0147】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPは、1時間に1回から1日1回まで、7日に1回まで、または被験者の状態に応じてその間の任意の頻度、好ましくは1時間に1回から24時間に1回の間、またはその間の任意の頻度で投与される。例えば、2時間に1回、3時間に1回、4時間に1回、5時間に1回、6時間に1回、7時間に1回、8時間に1回、9時間に1回、10時間に1回、11時間に1回、12時間に1回、13時間に1回、14時間に1回、15時間に1回、16時間に1回、17時間に1回、18時間に1回、19時間に1回、20時間に1回、21時間に1回、22時間に1回、23時間に1回投与される。
【0148】
幾つかの実施形態において、時には好ましくは、上述の実施形態のうち、例えば2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエートまたは2-(ジエチルアミノ)エチル アセトキシベンゾエート塩酸塩のアスピリンまたは他のNSAIDのHPPは、2時間に1回、4時間に1回、6時間に1回、8時間に1回、12時間に1回、18時間に1回、または24時間に1回投与される。
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、HPPは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日に1回投与されてもよい。
【0149】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は1日~生涯にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~3650日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~1825日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~1095日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~730日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~365日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、112日間~224日間の連続日又は非連続日にわたって投与される。
【0150】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、少なくとも1日以上の連続日または非連続日、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、32日間、33日間、34日間、35日間、36日間、37日間、38日間、39日間、40日間、41日間、42日間、43日間、44日間、45日間、46日間、47日間、48日間、49日間、50日間、51日間、52日間、53日間、54日間、55日間、56日間、57日間、58日間、59日間、60日間、61日間、62日間、63日間、64日間、65日間、66日間、67日間、68日間、69日間、70日間、71日間、72日間、73日間、74日間、75日間、76日間、77日間、78日間、79日間、80日間、81日間、82日間、83日間、84日間、85日間、86日間、87日間、88日間、89日間、90日間、91日間、92日間、93日間、94日間、95日間、96日間、97日間、98日間、99日間、100日間、101日間、102日間、103日間、104日間、105日間、106日間、107日間、108日間、109日間、110日間、111日間、112日間、113日間、114日間、115日間、116日間、117日間、118日間、119日間、120日間、121日間、122日間、123日間、124日間、125日間、126日間、127日間、128日間、129日間、130日間、131日間、132日間、133日間、134日間、135日間、136日間、137日間、138日間、139日間、140日間、141日間、142日間、143日間、144日間、145日間、146日間、147日間、148日間、149日間、150日間、155日間、160日間、165日間、170日間、175日間、180日間、185日間、190日間、195日間、200日間、210日間、220日間、230日間、240日間、250日間、260日間、270日間、280日間、290日間、300日間、320日間、340日間、360日間、380日間、400日間、420日間、440日間、460日間、480日間、500日間、550日間、600日間、650日間、700日間、750日間、800日間、850日間、900日間、950日間及び1000日間から選択される1日以上の連続日または非連続日にわたって投与される。
【0151】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、局所投与は、少なくとも1年以上連続してまたは非連続して行われ、例えば、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年から選択される1年以上の連続年または非連続年にわたって、または被験体の生涯まで投与される。
【0152】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスとしては、経皮的な貼付剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、ペースト剤、粉剤、シェイクローション剤、固体剤、スポンジ剤、テープ剤、チンキ剤、蒸気剤、注射剤、滴剤、リンス剤、噴霧剤、及び液剤のうちの1種以上から選択される剤形が挙げられる。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスとしては、経皮的な滴剤、リンス剤、及び噴霧剤のうちの1種以上を含む経皮的な液剤から選択される剤形が挙げられる。
【0153】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスは、各投与において、約0.1mg~約10g、特に0.1mg~10gの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを投与することができるデバイスである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスは、各投与において、約0.1mg~約1g、特に0.1mg~1gのHPPを投与することができるデバイスである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスは、各投与において、約0.5mg~約500mg、特に0.5mg~500mgのHPPを投与することができるデバイスである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスは、各投与において、約1mg~約300mg、約10mg~約300mg、約50mg~約300mg、約50mg~約200mg、又は約200mg~約300mgのHPPを投与することができるデバイスである。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、本開示のデバイスは、各投与において、約0.5mg~約30mg、約1mg~約20mg、約3mg~約10mg、約5mg~約9mg、又は約6mg~約8mgのHPPを投与することができるデバイスである。
【0154】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各噴霧において、約0.1mg~約100mg、特に0.1mg~100mgの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを噴霧することができる噴霧装置(spray)である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各噴霧において、約0.2mg~約30mg、特に0.2mg~30mgのHPPを噴霧することができる噴霧装置である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各噴霧において、約0.5mg~約16mg、約1mg~約14mg、約2mg~約12mg、約3mg~約10mgのHPPを噴霧することができる噴霧装置である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各噴霧において、約4mg~約9mg、約5mg~約9mg、又は約6mg~約9mgのHPPを噴霧することができる噴霧装置である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各噴霧において、約7mg~約8mg、特に7mg~8mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート及び/又はアスピリン及び/又はその他のNSAIDの関連する高透過プロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を噴霧することができる噴霧装置である。
【0155】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、ノズルを備えた噴霧装置であり、このノズルは、ノズルを押すたびに、約0.1mg~約100mg、特に0.1mg~100mgの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを噴霧する。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、ノズルは、ノズルを押すたびに、約0.2mg~約30mg、約0.5mg~約16mg、約1mg~約14mg、約2mg~約12mg、3mg~約11mg、約4mg~約10mg、約5mg~約9mg、又は約6mg~約9mgのHPPを噴霧する。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、ノズルを備えた噴霧装置であり、このノズルは、ノズルを押すたびに、約7mg~約8mg、特に7mg~8mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート及び/又はアスピリン及び/又はその他のNSAIDの関連する高透過プロドラッグ又はそれらの薬学的に許容可能な塩を噴霧する。
【0156】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各滴下において、約0.01mg~約20mg、特に0.01mg~20mgの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを滴下することができる滴剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各滴下において、約0.02mg~約18mg、約0.05mg~約16mg、約0.1mg~約14mg、約0.2mg~約12mg、約0.3mg~約10mg、約0.4mg~約9mg、0.5mg~約8mg、0.7mg~7mgのHPPを滴下することができる滴剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各滴下において、約1mg~約6mg、約2mg~約5mg、約3mg~約4mgのHPPを滴下することができる滴剤である。
【0157】
上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各貼付において、約0.1mg~約20g、特に0.1mg~20gの2-(ジエチルアミノ)エチル2-アセトキシベンゾエート又は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩等のアスピリン又はその他のNSAIDのHPPを投与することができる貼付剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各貼付において、約0.5mg~約5g、約1mg~約1000mg、約2mg~約500mg、約5mg~約400mg、約10mg~約350mg、約20mg~約300mg、約30mg~約250mg、約40mg~約200mgのHPPを投与することができる貼付剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各貼付において、約50mg~約200mg、60mg~約200mg、約70mg~約200mgのHPPを投与することができる貼付剤である。上述の実施形態の幾つかの実施形態において、デバイスは、各貼付において、約100mg~約150mg、特に100mg~150mgのHPPを投与することができる貼付剤である。
【0158】
本発明の一の態様は、NSAIDの組織透過を高めることで、血漿薬物の診査(exploration)を減らして副作用を軽減し、組織薬物の診査を増やして薬物有効性を高めることである。
【0159】
一の実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0160】
一の実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0161】
一の実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0162】
一の実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0163】
一の実施形態において、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0164】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0165】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0166】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0167】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0168】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0169】
一の実施形態において、(ピロリジン-2-イル)メチル 2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩を含む組成物を以下の表に示す。
【0170】
一つの実施形態において、被験体は、脳卒中後の完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、首の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0171】
一つの実施形態において、被験体は、アテローム性動脈硬化症からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、首、胸、背中、腹部、頭、腕、手、脚、足、及びその他の部位の周囲の皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0172】
一の実施形態において、被験体は、心臓発作後の完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0173】
一の実施形態において、被験体は、心不全からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0174】
一の実施形態において、被験体は、冠動脈疾患からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0175】
一の実施形態において、被験体は、狭心症からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0176】
一の実施形態において、被験体は、心拍不良からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0177】
一の実施形態において、被験体は、心血管疾患からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸の周りの皮膚に5噴霧(例えば、15%のエタノール中35mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0178】
一の実施形態において、被験体は、脳卒中後の完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、首、背中、胸、脚、腕、腹部、手、足、頭、及びその他の部分の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0179】
一の実施形態において、被験体は、アテローム性動脈硬化症からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、首、胸、背中、腹部、頭、腕、手、脚、足、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0180】
一の実施形態において、被験体は、心臓発作後の完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0181】
一の実施形態において、被験体は、心不全からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、脚、腕、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0182】
一の実施形態において、被験体は、冠動脈疾患からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、脚、腕、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0183】
一の実施形態において、被験体は、狭心症からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、脚、腕、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0184】
一の実施形態において、被験体は、心拍不良からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、脚、腕、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【0185】
一の実施形態において、被験体は、心血管疾患からの完全な回復まで、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回、胸、首、背中、腹部、脚、腕、及びその他の部位の周囲の皮膚に10噴霧~30噴霧(例えば、15%のエタノール中70mg~210mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩)の薬液を噴霧することになる。
【実施例】
【0186】
以下の非限定的な実施例は、本発明の或る特定の態様を更に例示するものである。
【0187】
実施例1 2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(アスピリンのHPP)の調製
アセトキシベンゾイルクロリド(20g)を酢酸エチル(100ml)中に溶解した。混合物を0℃に冷却した。ジエチルアミノエタノール(14g)を反応混合物に加えた。混合物を室温で3時間撹拌した後、水(5×30ml)で洗浄した。エタノール(30ml)中3NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(90%の収率)。
【0188】
実施例2 2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩(サリチル酸のHPP)の調製
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水(3回)で洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(72%の収率)。
【0189】
実施例3 2-(ジエチルアミノ)エチル5-(2,4-ジフルオロフェニル)アセトキシベンゾエート塩酸塩(アセチルジフルニサルのHPP)の調製
5-(2,4-ジフルオロフェニル)アセトキシベンゾイルクロリド(2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボニルクロリド)(31g)を酢酸エチル(100ml)中に溶解した。混合物を0℃に冷却した。ジエチルアミノエタノール(14g)を反応混合物に加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。酢酸エチル混合物を水(5×30ml)で洗浄した。エタノール(30ml)中3NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(88%の収率)。
【0190】
実施例4 2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(ジフルニサルのHPP)の調製
2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水で(3回)洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(80%の収率)。
【0191】
実施例5 (ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(アスピリンのHPP)の調製
アセチルサリチル酸(18g)及びN-Boc-L-プロリノール(tert-ブトキシカルボニル-2-ピロリジンメタノール、20.1g)を1Lの丸底フラスコ中に入れ、混合物にアセトン(200ml)を加えた。1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI、19.2g)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、5g)、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、15g)を溶液に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液をほぼ乾燥するまで蒸発させた。混合物に酢酸エチル(500ml)を加えた。溶液を水(2×200ml)、20%のクエン酸(250mlの水中50g)(2×250ml)、及び水(3×300ml)で洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を酢酸エチル(3×50ml)で洗浄し、酢酸エチル溶液を蒸発乾涸させた。酢酸エチル(50ml)中3NのHClを加え、混合物を3時間撹拌した。固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(85%の収率)。
【0192】
実施例6 (ピロリジン-2-イル)メチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の調製
(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水で(3回)洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(80%の収率)。
【0193】
実施例7 (ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の調製
2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(31g)及びN-Boc-L-プロリノール(tert-ブトキシカルボニル-2-ピロリジンメタノール、20.1g)を1Lの丸底フラスコ中に入れ、混合物にアセトン(200ml)を加えた。1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI、19.2g)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、5g)、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、15g)を溶液に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液をほぼ乾燥するまで蒸発させた。混合物に酢酸エチル(500ml)を加えた。溶液を水(2×200ml)、20%のクエン酸(250mlの水中50g)(2×250ml)、及び水(3×300ml)で洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を酢酸エチル(3×50ml)で洗浄し、酢酸エチル溶液を蒸発乾涸させた。酢酸エチル(50ml)中3NのHClを加え、混合物を3時間撹拌した。固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(85%の収率)。
【0194】
実施例8 (ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の調製
(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水(3×100ml)で洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(80%の収率)。
【0195】
実施例9 2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(アセチルサルサレートのプロドラッグ)の調製
2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾイルクロリド(28g)を酢酸エチル(100ml)中に溶解した。混合物を0℃に冷却した。反応混合物にジエチルアミノエタノール(14g)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。酢酸エチル混合物を水(5×30ml)で洗浄した。エタノール(30ml)中3NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(91%の収率)。
【0196】
実施例10 2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(サルサレートのプロドラッグ)の調製
2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水(3×100ml)で洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(68%の収率)。
【0197】
実施例11 (ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の調製
2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシ安息香酸(28g)及びN-Boc-L-プロリノール(tert-ブトキシカルボニル-2-ピロリジンメタノール、20.1g)を1Lの丸底フラスコ中に入れ、混合物にアセトン(200ml)を加えた。1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI、19.2g)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、5g)、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、15g)を溶液に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液をほぼ乾燥するまで蒸発させた。混合物に酢酸エチル(500ml)を加えた。溶液を水(2×200ml)、20%のクエン酸(R0089、250mlの水中50g)(2×250ml)、及び水(3×300ml)で洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を酢酸エチル(3×50ml)で洗浄し、酢酸エチル溶液を蒸発乾涸させた。酢酸エチル(50ml)中3NのHClを加え、混合物を3時間撹拌した。固体を収集し、酢酸エチル(5×50ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(85%の収率)。
【0198】
実施例12 (ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の調製
(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(20g)を水(100ml)及び3NのHCl(10ml)中に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に酢酸エチル(300ml)を加え、固体のNaHCO3を用いて混合物のpHを8に調整し、酢酸エチル層を収集し、水(3×100ml)で洗浄し、酢酸エチル(100ml)中1NのHClを加え、固体を収集し、酢酸エチル(5×20ml)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(80%の収率)。
【0199】
実施例13 HPPの皮膚透過率
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(化合物-1)、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(化合物-2)、アスピリン(化合物-3)、2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩(化合物-4)、2(ピロリジン-2-イル)メチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩(化合物-5)、サリチル酸(化合物-6)、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(化合物-7)、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(化合物-8)、2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(化合物-9)、2-(ジエチルアミノ)エチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(化合物-10)、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩(化合物-11)、2’,4’-ジフルオロ-4-ヒドロキシル-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(ジフルニサル、化合物-12)、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(化合物-13)、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(化合物-14)、2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシ安息香酸(アセチルサルサレート、化合物-15)、2-(ジエチルアミノ)エチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(化合物-16)、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩(化合物-17)、及び2-(2-ヒドロキシベンゾイル)オキシ安息香酸(サルサレート、化合物-18)のウサギ皮膚を通じた透過率を、ウサギの背部皮膚組織(300μm~350μmの厚さ)から分離された改変フランツ細胞を使用することによってin vitroで測定した。10mlの純水からなる受容液を表1に示す。これらの結果により、輸送単位が膜及び皮膚障壁を渡る薬物通過において非常に重要な役割を果たしていることが示唆される。
【0200】
【0201】
実施例14 中大脳動脈閉塞症(MCAO)によって誘発された急性虚血を患うラットにおける2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の有効性
本研究の目的は、ラットにおける一時的MCAOによって誘発される脳虚血障害及び関連する神経学的欠損についての2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査することであった。
【0202】
雄のSDラット(258g~280g)を使用した。許容可能な臨床状態及び体重に基づいて、ラットを組み入れについて選択した。動物を無作為に7つの群に割り付けた(経皮2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩処置、経口アスピリン処置、MCI-186/エダラボン(静脈内)処置を含むMCAO手術、及びビヒクル群の場合は1群当たり25匹のラット、シャム手術群の場合は1群当たり8匹のラット)。全ての手法の前にラットを動物施設において1週間飼育させた。動物の識別番号を尻尾だけでなくケージのタグにもラベル表示した。表2に示される実験計画を参照のこと。
【0203】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン、エダラボン、及びビヒクルを、MCAO手術(0日目)の1時間後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、及び14日目に投与した。
【0204】
【0205】
MCAOの前、動物を一晩絶食させたが、水は自由摂取させた。麻酔下で、首の正中切開により右総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を露出させた。市販のモノフィラメント(シリコーンコーティング処理)を閉塞栓として使用し、CCAを介して挿入した。閉塞栓をCCA中で頸動脈分岐部から18±0.5mm先に進めた。軽い抵抗は、閉塞栓が前大脳動脈内に適切に留まったため、中大脳動脈(MCA)への血流を遮断していることを示した。1時間後、モノフィラメントを完全に引き抜くことによって再灌流が可能となった。手術過程の間には温熱パッド(heating pad)を用いて体温をおよそ36.5℃に維持した。閉塞後2時間の時点で、処置群を知らされていない観察者が臨床的徴候を検査して神経学的欠損を確認した。神経学的欠損(表3を参照)をその後14日目まで毎日評価した。MCAOの14日後、動物を安楽死させ、脳を5つの冠状切片(ラット用ブレインマトリックスを使用することにより2mmの厚さ)に切断した。新鮮な脳切片を37℃にて2%のトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色した後、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。全ての切片の写真をデジタルカメラで撮影した。これらのデジタル写真をコンピューターに移した。Image-Pro Plusソフトウェアを用いて各切片についての梗塞面積(%)を盲検測定した後、脳当たりの梗塞体積を取得した。梗塞面積(%)=(対側半球面積-同側非梗塞面積)/対側半球面積であり、その際、問題となる腫脹及び萎縮をこの式で補正した。
【0206】
【0207】
梗塞面積の分析では、一元配置分散分析(One-Way ANOVA)に続いてダネット多重比較検定を使用して、処置群とビヒクル群との間の差を比較した。t検定を使用して、ポジティブコントロール群とビヒクル群との間の差を比較した。P<0.05を群間に有意差があると見なした。データを平均±SEMとして表した。体重分析では、t検定を使用して、手術後の様々な日数における群間の差を比較した。
【0208】
全ての動物は研究前に良好な全身状態を示した。この実験中に、死亡率は、ビヒクル群において25匹中5匹(20%)、エダラボン処置群において25匹中6匹(24%)、経口アスピリン群において25匹中3匹(12%)、経皮2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群において25匹中1匹(4%)、経皮2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の中用量群及び高用量群において25匹中0匹、そしてシャム術群において8匹中0匹(0%)であった。動物の死亡の殆どは、MCAO手術の48時間後(6匹のラット)から72時間後の間に起こった。その他の全てのMCAO動物は、手術後1日目から4日目にかけて体重が減少し、その後、安楽死させるまで比較的安定した健康状態を維持した。シャム術群の動物は、シャム手術後の最初の2日間のみ体重が減少し、その後、徐々に正常レベルに戻った。
【0209】
手術中に明らかに出血している数匹の動物は断念した。手術の最終段階(閉塞栓の除去)後、意識が完全に回復するまで動物を注意深く監視した。
【0210】
経皮2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩で処置されたラットは、平均±SEMとして表して、静脈内エダラボン(38.07%±2.031)、経口アスピリン(36.27%±2.123)、及びビヒクル群(40.53%±2.378)と比較して、より少ない梗塞体積を示した:低用量群(32.07%±2.061、P<0.05)、中用量群(27.11%±1.658、P<0.01)、高用量群(25.15%±2.001、P<0.01)。低用量群、中用量群、及び高用量群の全ての群のビヒクル群に対する差は統計的に有意であった(P<0.05又はP<0.01)。対照的に、アスピリン処置ラット及びMCI-186/エダラボン処置ラットでは、梗塞体積の減少が殆ど示されなかった。シャム群におけるラットでは、不可避の測定変動(2.85%±0.779)が示された。ビヒクル処置群、アスピリン処置群、及びMCI-186/エダラボン処置群における梗塞の殆どは、典型的には中大脳動脈によって供給される線条体及び前頭頭頂皮質において併発したのに対し、低用量群、中用量群、及び高用量群における梗塞サイズはより小さく、線条体及び対応する皮質の併発はより少なかった。梗塞体積の詳細な分析結果を
図1に示す。
【0211】
MACOラットの体重は手術後最初の4日間で劇的に低下した後、その後は比較的安定した。一方、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群(P<0.05)、中用量群(P<0.01)、及び高用量群(P<0.01)の体重については5日目~14日目に増加し、t検定によりビヒクル群との有意差が示された。体重の評定に関する詳細な情報を
図2に示す。
【0212】
虚血性障害により、左側に運動機能障害の臨床的徴候が引き起こされた。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、中用量群、及び高用量群のビヒクル群に対する神経学的欠損スコアには有意差が示される。神経学的欠損スコアの評定に関する詳細な情報を
図3に示す。
【0213】
本研究は、ラットMCAOモデルにおける脳虚血に対する2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査した。ビヒクル群と比較して、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、中用量群、及び高用量群は、脳虚血障害に対する良好な神経保護効果を示した。
【0214】
実施例15 中大脳動脈閉塞症(MCAO)によって誘発された急性虚血を患うラットにおける2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の有効性
本研究を行って、ラットにおける一時的MCAOによって誘発される脳虚血障害及び関連する神経学的欠損についての2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエートの治療有効性を調査した。
【0215】
雄のSDラット(258g~275g)を使用した。許容可能な臨床状態及び体重に基づいて、ラットを組み入れについて選択した。動物を無作為に7つの群に割り付けた(経皮2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩処置、経口アスピリン処置、MCI-186/エダラボン(静脈内)処置を含むMCAO手術、及びビヒクル群の場合は1群当たり25匹のラット、シャム手術群の場合は1群当たり8匹のラット)。全ての手法の前にラットを動物施設において1週間飼育させた。動物の識別番号を尻尾だけでなくケージのタグにもラベル表示した。表4に示される実験計画を参照のこと。
【0216】
2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩、サリチル酸、エダラボン、及びビヒクルを、MCAO手術(0日目)の1時間後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、及び14日目に投与した。
【0217】
【0218】
MCAOの前、動物を一晩絶食させたが、水は自由摂取させた。麻酔下で、首の正中切開により右総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を露出させた。市販のモノフィラメント(シリコーンコーティング処理)を閉塞栓として使用し、CCAを介して挿入した。閉塞栓をCCA中で頸動脈分岐部から18±0.5mm先に進めた。軽い抵抗は、閉塞栓が前大脳動脈内に適切に留まったため、中大脳動脈(MCA)への血流を遮断していることを示した。1時間後、モノフィラメントを完全に引き抜くことによって再灌流が可能となった。手術過程の間には温熱パッドを用いて体温をおよそ36.5℃に維持した。閉塞後2時間の時点で、処置群を知らされていない観察者が臨床的徴候を検査して神経学的欠損を確認した。神経学的欠損(表3を参照)をその後14日目まで毎日評価した。MCAOの14日後、動物を安楽死させ、脳を5つの冠状切片(ラット用ブレインマトリックスを使用することにより2mmの厚さ)に切断した。新鮮な脳切片を37℃にて2%のトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色した後、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。全ての切片の写真をデジタルカメラで撮影した。これらのデジタル写真をコンピューターに移した。Image-Pro Plusソフトウェアを用いて各切片についての梗塞面積(%)を盲検測定した後、脳当たりの梗塞体積を取得した。梗塞面積(%)=(対側半球面積-同側非梗塞面積)/対側半球面積であり、その際、問題となる腫脹及び萎縮をこの式で補正した。
【0219】
梗塞面積の分析では、一元配置分散分析(One-Way ANOVA)に続いてダネット多重比較検定を使用して、処置群とビヒクル群との間の差を比較した。t検定を使用して、ポジティブコントロール群とビヒクル群との間の差を比較した。P<0.05を群間に有意差があると見なした。データを平均±SEMとして表した。体重分析では、t検定を使用して、手術後の様々な日数における群間の差を比較した。
【0220】
全ての動物は研究前に良好な全身状態を示した。この実験中に、死亡率は、ビヒクル群において25匹中5匹(20%)、エダラボン処置群において25匹中5匹(20%)、経口サリチル酸群において25匹中4匹(16%)、経皮2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群において25匹中3匹(12%)、経皮2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の中用量群において25匹中2匹(8%)、経皮2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の高用量群において25匹中1匹(4%)、そしてシャム術群において8匹中0匹(0%)であった。動物の死亡の殆どは、MCAO手術の48時間後(6匹のラット)から72時間後の間に起こった。その他の全てのMCAO動物は、手術後1日目から4日目にかけて体重が減少し、その後、安楽死させるまで比較的安定した健康状態を維持した。シャム術群の動物は、シャム手術後の最初の2日間のみ体重が減少し、その後、徐々に正常レベルに戻った。
【0221】
手術中に明らかに出血している数匹の動物は断念した。手術の最終段階(閉塞栓の除去)後、意識が完全に回復するまで動物を注意深く監視した。
【0222】
経皮2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩で処置されたラットは、平均±SEMとして表して、静脈内エダラボン(39.94%±2.256)、経口サリチル酸(37.47%±2.856)、及びビヒクル群(40.95%±2.567)と比較して、より少ない梗塞体積を示した:低用量群(37.01%±2.053、P<0.08)、中用量群(35.77%±1.875、P<0.07)、高用量群(34.56%±2.563、P<0.05)。高用量群のビヒクル群に対する差は統計的に有意であった(P<0.05)。対照的に、サリチル酸処置ラット及びMCI-186/エダラボン処置ラットでは、梗塞体積の減少が殆ど示されなかった。シャム群におけるラットでは、不可避の測定変動(2.12%±0.853)が示された。ビヒクル処置群、サリチル酸処置群、及びMCI-186/エダラボン処置群における梗塞の殆どは、典型的には中大脳動脈によって供給される線条体及び前頭頭頂皮質において併発したのに対し、低用量群、中用量群、及び高用量群における梗塞サイズはより小さく、線条体及び対応する皮質の併発はより少なかった。梗塞体積の詳細な分析結果を
図4に示す。
【0223】
MACOラットの体重は手術後最初の4日間で劇的に低下した後、その後は比較的安定した。一方、2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩(サリチル酸のプロドラッグ)の低用量群(P<0.11)、中用量群(P<0.08)、及び高用量群(P<0.05)の体重については5日目~14日目に増加し、t検定によりビヒクル群との有意差が示された。体重の評定に関する詳細な情報を
図5に示す。
【0224】
虚血性障害により、左側に運動機能障害の臨床的徴候が引き起こされた。2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の高用量群のビヒクル群に対する神経学的欠損スコアには有意差が示される。神経学的欠損スコアの評定に関する詳細な情報を
図6に示す。
【0225】
本研究は、ラットMCAOモデルにおける脳虚血に対する2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査した。ビヒクル群と比較して、2-(ジエチルアミノ)エチルヒドロキシベンゾエート塩酸塩の高用量群は、脳虚血障害に対する良好な神経保護効果を示した。
【0226】
実施例16 中大脳動脈閉塞症(MCAO)によって誘発された急性虚血を患うラットにおける(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の有効性
本研究の目的は、ラットにおける一時的MCAOによって誘発される脳虚血障害及び関連する神経学的欠損についての2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエートの治療有効性を調査することであった。
【0227】
雄のSDラット(255g~283g)を使用した。許容可能な臨床状態及び体重に基づいて、ラットを組み入れについて選択した。動物を無作為に7つの群に割り付けた(経皮(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩処置、経口アスピリン処置、MCI-186/エダラボン(静脈内)処置を含むMCAO手術、及びビヒクル群の場合は1群当たり25匹のラット、シャム手術群の場合は1群当たり8匹のラット)。全ての手法の前にラットを動物施設において1週間飼育させた。動物の識別番号を尻尾だけでなくケージのタグにもラベル表示した。表5に示される実験計画を参照のこと。
【0228】
(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン、エダラボン、及びビヒクルを、MCAO手術(0日目)の1時間後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、及び14日目に投与した。
【0229】
【0230】
MCAOの前、動物を一晩絶食させたが、水は自由摂取させた。麻酔下で、首の正中切開により右総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を露出させた。市販のモノフィラメント(シリコーンコーティング処理)を閉塞栓として使用し、CCAを介して挿入した。閉塞栓をCCA中で頸動脈分岐部から18±0.5mm先に進めた。軽い抵抗は、閉塞栓が前大脳動脈内に適切に留まったため、中大脳動脈(MCA)への血流を遮断していることを示した。1時間後、モノフィラメントを完全に引き抜くことによって再灌流が可能となった。手術過程の間には温熱パッドを用いて体温をおよそ36.5℃に維持した。閉塞後2時間の時点で、処置群を知らされていない観察者が臨床的徴候を検査して神経学的欠損を確認した。神経学的欠損(表3を参照)をその後14日目まで毎日評価した。MCAOの14日後、動物を安楽死させ、脳を5つの冠状切片(ラット用ブレインマトリックスを使用することにより2mmの厚さ)に切断した。新鮮な脳切片を37℃にて2%のトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色した後、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。全ての切片の写真をデジタルカメラで撮影した。これらのデジタル写真をコンピューターに移した。Image-Pro Plusソフトウェアを用いて各切片についての梗塞面積(%)を盲検測定した後、脳当たりの梗塞体積を取得した。梗塞面積(%)=(対側半球面積-同側非梗塞面積)/対側半球面積であり、その際、問題となる腫脹及び萎縮をこの式で補正した。
【0231】
梗塞面積の分析では、一元配置分散分析(One-Way ANOVA)に続いてダネット多重比較検定を使用して、処置群とビヒクル群との間の差を比較した。t検定を使用して、ポジティブコントロール群とビヒクル群との間の差を比較した。P<0.05を群間に有意差があると見なした。データを平均±SEMとして表した。体重分析では、t検定を使用して、手術後の様々な日数における群間の差を比較した。
【0232】
全ての動物は研究前に良好な全身状態を示した。この実験中に、死亡率は、ビヒクル群において25匹中5匹(20%)、エダラボン処置群において25匹中5匹(20%)、経口アスピリン群において25匹中3匹(12%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群において25匹中1匹(4%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の中用量群及び高用量群において25匹中0匹、そしてシャム術群において8匹中0匹(0%)であった。動物の死亡の殆どは、MCAO手術の48時間後(6匹のラット)から72時間後の間に起こった。その他の全てのMCAO動物は、手術後1日目から4日目にかけて体重が減少し、その後、安楽死させるまで比較的安定した健康状態を維持した。シャム術群の動物は、シャム手術後の最初の2日間のみ体重が減少し、その後、徐々に正常レベルに戻った。
【0233】
手術中に明らかに出血している数匹の動物は断念した。手術の最終段階(閉塞栓の除去)後、意識が完全に回復するまで動物を注意深く監視した。
【0234】
経皮(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩で処置されたラットは、平均±SEMとして表して、静脈内エダラボン(39.27%±2.513)、経口アスピリン(37.99%±1.985)、及びビヒクル群(41.78%±2.179)と比較して、より少ない梗塞体積を示した:低用量群(33.11%±2.212、P<0.05)、中用量群(27.03%±2.123、P<0.01)、高用量群(24.85%±2.376、P<0.01)。低用量群、中用量群、及び高用量群の全ての群のビヒクル群に対する差は統計的に有意であった(P<0.05又はP<0.01)。対照的に、アスピリン処置ラット及びMCI-186/エダラボン処置ラットでは、梗塞体積の減少が殆ど示されなかった。シャム群におけるラットでは、不可避の測定変動(3.12%±1.279)が示された。ビヒクル処置群、アスピリン処置群、及びMCI-186/エダラボン処置群における梗塞の殆どは、典型的には中大脳動脈によって供給される線条体及び前頭頭頂皮質において併発したのに対し、低用量群、中用量群、及び高用量群における梗塞サイズはより小さく、線条体及び対応する皮質の併発はより少なかった。梗塞体積の詳細な分析結果を
図7に示す。
【0235】
MACOラットの体重は手術後最初の4日間で劇的に低下した後、その後は比較的安定した。一方、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群(P<0.05)、中用量群(P<0.01)、及び高用量群(P<0.01)の体重については5日目~14日目に増加し、t検定によりビヒクル群との有意差が示された。体重の評定に関する詳細な情報を
図8に示す。
【0236】
虚血性障害により、左側に運動機能障害の臨床的徴候が引き起こされた。(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、中用量群、及び高用量群のビヒクル群に対する神経学的欠損スコアには有意差が示される。神経学的欠損スコアの評定に関する詳細な情報を
図9に示す。
【0237】
本研究は、ラットMCAOモデルにおける脳虚血に対する(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査した。ビヒクル群と比較して、(ピロリジン-2-イル)メチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、中用量群、及び高用量群は、脳虚血障害に対する良好な神経保護効果を示した。
【0238】
実施例17 中大脳動脈閉塞症(MCAO)によって誘発された急性虚血を患うラットにおける(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の有効性
本研究の目的は、ラットにおける一時的MCAOによって誘発される脳虚血障害及び関連する神経学的欠損についての(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の治療有効性を調査することであった。
【0239】
雄のSDラット(257g~281g)を使用した。許容可能な臨床状態及び体重に基づいて、ラットを組み入れについて選択した。動物を無作為に7つの群に割り付けた(経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩処置、アセチルジフルニサル処置、MCI-186/エダラボン(静脈内)処置を含むMCAO手術、及びビヒクル群の場合は1群当たり25匹のラット、シャム手術群の場合は1群当たり8匹のラット)。全ての手法の前にラットを動物施設において1週間飼育させた。動物の識別番号を尻尾だけでなくケージのタグにもラベル表示した。表6に示される実験計画を参照のこと。
【0240】
(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩、2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(アセチルジフルニサル)、エダラボン、及びビヒクルを、MCAO手術(0日目)の1時間後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、及び14日目に投与した。
【0241】
【0242】
MCAOの前、動物を一晩絶食させたが、水は自由摂取させた。麻酔下で、首の正中切開により右総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を露出させた。市販のモノフィラメント(シリコーンコーティング処理)を閉鎖栓として使用し、CCAを介して挿入した。閉塞栓をCCA中で頸動脈分岐部から18±0.5mm先に進めた。軽い抵抗は、閉塞栓が前大脳動脈内に適切に留まったため、中大脳動脈(MCA)への血流を遮断していることを示した。1時間後、モノフィラメントを完全に引き抜くことによって再灌流が可能となった。手術過程の間には温熱パッドを用いて体温をおよそ36.5℃に維持した。閉塞後2時間の時点で、処置群を知らされていない観察者が臨床的徴候を検査して神経学的欠損を確認した。神経学的欠損(表3を参照)をその後14日目まで毎日評価した。MCAOの14日後、動物を安楽死させ、脳を5つの冠状切片(ラット用ブレインマトリックスを使用することにより2mmの厚さ)に切断した。新鮮な脳切片を37℃にて2%のトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色した後、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。全ての切片の写真をデジタルカメラで撮影した。これらのデジタル写真をコンピューターに移した。Image-Pro Plusソフトウェアを用いて各切片についての梗塞面積(%)を盲検測定した後、脳当たりの梗塞体積を取得した。梗塞面積(%)=(対側半球面積-同側非梗塞面積)/対側半球面積であり、その際、問題となる腫脹及び萎縮をこの式で補正した。
【0243】
梗塞面積の分析では、一元配置分散分析(One-Way ANOVA)に続いてダネット多重比較検定を使用して、処置群とビヒクル群との間の差を比較した。t検定を使用して、ポジティブコントロール群とビヒクル群との間の差を比較した。P<0.05を群間に有意差があると見なした。データを平均±SEMとして表した。体重分析では、t検定を使用して、手術後の様々な日数における群間の差を比較した。
【0244】
全ての動物は研究前に良好な全身状態を示した。この実験中に、死亡率は、ビヒクル群において25匹中4匹(16%)、エダラボン処置群において25匹中5匹(20%)、経口アセチルジフルニサル群において25匹中3匹(12%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の低用量群において25匹中2匹(8%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の中用量群及び高用量群において25匹中1匹(4%)、そしてシャム術群において8匹中0匹(0%)であった。動物の死亡の殆どは、MCAO手術の48時間後(6匹のラット)から72時間後の間に起こった。その他の全てのMCAO動物は、手術後1日目から4日目にかけて体重が減少し、その後、安楽死させるまで比較的安定した健康状態を維持した。シャム術群の動物は、シャム手術後の最初の2日間のみ体重が減少し、その後、徐々に正常レベルに戻った。
【0245】
手術中に明らかに出血している数匹の動物は断念した。手術の最終段階(閉塞栓の除去)後、意識が完全に回復するまで動物を注意深く監視した。
【0246】
経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩で処置されたラットは、平均±SEMとして表して、静脈内エダラボン(40.35%±2.078)、経口アセチルジフルニサル(38.95%±2.176)、及びビヒクル群(41.08%±1.982)と比較して、より少ない梗塞体積を示した:低用量群(37.52%±2.789、P<0.12)、中用量群(35.02%±2.827、P<0.06)、高用量群(33.53%±1.986、P<0.05)。高用量群のビヒクル群に対する差は統計的に有意であった(P<0.05)。対照的に、アセチルジフルニサル処置ラット及びMCI-186/エダラボン処置ラットでは、梗塞体積の減少が殆ど示されなかった。シャム群におけるラットでは、不可避の測定変動(1.98%±0.751)が示された。ビヒクル処置群、アセチルジフルニサル処置群、及びMCI-186/エダラボン処置群における梗塞の殆どは、典型的には中大脳動脈によって供給される線条体及び前頭頭頂皮質において併発したのに対し、低用量群、中用量群、及び高用量群における梗塞サイズはより小さく、線条体及び対応する皮質の併発はより少なかった。梗塞体積の詳細な分析結果を
図10に示す。
【0247】
MACOラットの体重は手術後最初の4日間で劇的に低下した後、その後は比較的安定した。一方、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の低用量群(P<0.10)、中用量群(P<0.08)、及び高用量群(P<0.05)の体重については5日目~14日目に増加し、t検定によりビヒクル群との有意差が示された。体重の評定に関する詳細な情報を
図11に示す。
【0248】
虚血性障害により、左側に運動機能障害の臨床的徴候が引き起こされた。(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の高用量群のビヒクル群に対する神経学的欠損スコアには有意差が示される。神経学的欠損スコアの評定に関する詳細な情報を
図12に示す。
【0249】
本研究は、ラットMCAOモデルにおける脳虚血に対する(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の治療有効性を調査した。ビヒクル群と比較して、(ピロリジン-2-イル)メチル2’,4’-ジフルオロ-4-アセトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート塩酸塩の高用量群は、脳虚血障害に対する良好な神経保護効果を示した。
【0250】
実施例18 中大脳動脈閉塞症(MCAO)によって誘発された急性虚血を患うラットにおける(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の有効性
本研究の目的は、ラットにおける一時的MCAOによって誘発される脳虚血障害及び関連する神経学的欠損についての(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査することであった。
【0251】
雄のSDラット(255g~280g)を使用した。許容可能な臨床状態及び体重に基づいて、ラットを組み入れについて選択した。動物を無作為に7つの群に割り付けた(経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩処置、アセチルサルサレート処置、MCI-186/エダラボン(静脈内)処置を含むMCAO手術、及びビヒクル群の場合は1群当たり25匹のラット、シャム手術群の場合は1群当たり8匹のラット)。全ての手法の前にラットを動物施設において1週間飼育させた。動物の識別番号を尻尾だけでなくケージのタグにもラベル表示した。表7に示される実験計画を参照のこと。
【0252】
(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩、2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシ安息香酸(アセチルサルサレート)、エダラボン、及びビヒクルを、MCAO手術(0日目)の1時間後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、及び14日目に投与した。
【0253】
【0254】
MCAOの前、動物を一晩絶食させたが、水は自由摂取させた。麻酔下で、首の正中切開により右総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び外頸動脈(ECA)を露出させた。市販のモノフィラメント(シリコーンコーティング処理)を閉塞栓として使用し、CCAを介して挿入した。閉塞栓をCCA中で頸動脈分岐部から18±0.5mm先に進めた。軽い抵抗は、閉塞栓が前大脳動脈内に適切に留まったため、中大脳動脈(MCA)への血流を遮断していることを示した。1時間後、モノフィラメントを完全に引き抜くことによって再灌流が可能となった。手術過程の間には温熱パッドを用いて体温をおよそ36.5℃に維持した。閉塞後2時間の時点で、処置群を知らされていない観察者が臨床的徴候を検査して神経学的欠損を確認した。神経学的欠損(表3を参照)をその後14日目まで毎日評価した。MCAOの14日後、動物を安楽死させ、脳を5つの冠状切片(ラット用ブレインマトリックスを使用することにより2mmの厚さ)に切断した。新鮮な脳切片を37℃にて2%のトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色した後、4%のパラホルムアルデヒドで固定した。全ての切片の写真をデジタルカメラで撮影した。これらのデジタル写真をコンピューターに移した。Image-Pro Plusソフトウェアを用いて各切片についての梗塞面積(%)を盲検測定した後、脳当たりの梗塞体積を取得した。梗塞面積(%)=(対側半球面積-同側非梗塞面積)/対側半球面積であり、その際、問題となる腫脹及び萎縮をこの式で補正した。
【0255】
梗塞面積の分析では、一元配置分散分析(One-Way ANOVA)に続いてダネット多重比較検定を使用して、処置群とビヒクル群との間の差を比較した。t検定を使用して、ポジティブコントロール群とビヒクル群との間の差を比較した。P<0.05を群間に有意差があると見なした。データを平均±SEMとして表した。体重分析では、t検定を使用して、手術後の様々な日数における群間の差を比較した。
【0256】
全ての動物は研究前に良好な全身状態を示した。この実験中に、死亡率は、ビヒクル群において25匹中5匹(20%)、エダラボン処置群において25匹中5匹(20%)、経口アセチルサルサレート群において25匹中3匹(12%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の低用量群において25匹中2匹(8%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の中用量群において25匹中1匹(4%)、経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の高用量群において25匹中0匹、そしてシャム術群において8匹中0匹(0%)であった。動物の死亡の殆どは、MCAO手術の48時間後(6匹のラット)から72時間後の間に起こった。その他の全てのMCAO動物は、手術後1日目から4日目にかけて体重が減少し、その後、安楽死させるまで比較的安定した健康状態を維持した。シャム術群の動物は、シャム手術後の最初の2日間のみ体重が減少し、その後、徐々に正常レベルに戻った。
【0257】
手術中に明らかに出血している数匹の動物は断念した。手術の最終段階(閉塞栓の除去)後、意識が完全に回復するまで動物を注意深く監視した。
【0258】
経皮(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩で処置されたラットは、平均±SEMとして表して、静脈内エダラボン(41.33%±2.792)、経口アセチルサルサレート(39.25%±2.981)、及びビヒクル群(43.98%±2.256)と比較して、より少ない梗塞体積を示した:低用量群(36.87%±2.265、P<0.10)、中用量群(35.39%±2.479、P<0.07)、高用量群(32.98%±2.546、P<0.05)。高用量群のビヒクル群に対する差は統計的に有意であった(P<0.05)。対照的に、アセチルサルサレート処置ラット及びMCI-186/エダラボン処置ラットでは、梗塞体積の減少が殆ど示されなかった。シャム群におけるラットでは、不可避の測定変動(3.56%±1.257)が示された。ビヒクル処置群、アセチルサルサレート処置群、及びMCI-186/エダラボン処置群における梗塞の殆どは、典型的には中大脳動脈によって供給される線条体及び前頭頭頂皮質において併発したのに対し、低用量群、中用量群、及び高用量群における梗塞サイズはより小さく、線条体及び対応する皮質の併発はより少なかった。梗塞体積の詳細な分析結果を
図13に示す。
【0259】
MACOラットの体重は手術後最初の4日間で劇的に低下した後、その後は比較的安定した。一方、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の低用量群(P<0.10)、中用量群(P<0.08)、及び高用量群(P<0.05)の体重については5日目~14日目に増加し、t検定によりビヒクル群との有意差が示された。体重の評定に関する詳細な情報を
図14に示す。
【0260】
虚血性障害により、左側に運動機能障害の臨床的徴候が引き起こされた。(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の高用量群のビヒクル群に対する神経学的欠損スコアには有意差が示される。神経学的欠損スコアの評定に関する詳細な情報を
図15に示す。
【0261】
本研究は、ラットMCAOモデルにおける脳虚血に対する(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の治療有効性を調査した。ビヒクル群と比較して、(ピロリジン-2-イル)メチル2-(2-アセトキシベンゾイル)オキシベンゾエート塩酸塩の高用量群は、脳虚血障害に対する良好な神経保護効果を示した。
【0262】
実施例19 サルの中大脳動脈(MCA)血栓症モデルにおける神経学的欠損及び脳梗塞に対する2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の効果
本研究を実施して、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がサルの中大脳動脈(MCA)血栓症モデルにおける神経学的欠損及び脳梗塞を改善するかどうかを調査した。実施例14~実施例21における研究は、他の公開された研究とは大きく異なる。実施例14~実施例21の研究においては、血栓症(すなわち、血管内の血栓の形成)、脳卒中、及び心臓発作の1時間後~60日後から薬物による処置を開始した。すなわち、この処置は、脳卒中、心臓発作、心不全、又はその他の心血管疾患後の機能回復又は機能改善を目的とするものである。対照的に、他の公開された研究においては、薬物による処置を血栓症の前に開始した。すなわち、この薬物による処理は、血栓症の損傷からの回復又は改善を目的とするものではなく、予防を目的とするものである。
【0263】
製剤を毎週調製し、使用しないときは琥珀色のボトル内で2℃~8℃にて貯蔵し、7日以内に使用した。濃度を試験品の遊離塩基として表した。1.13の補正係数及び純度を使用して、遊離塩基を計算した。
【0264】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(15.82g)を量り取り、200ml容のフラスコに加えた。滅菌注射用水中15%(容量/容量)のエタノール(ビヒクル)の最終容量の約80%を容器に加え、得られた混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌した後、200mlの最終容量(70mg/mlの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート遊離塩基)になるまで更なる15%(容量/容量)のエタノールをフラスコに加えた。
【0265】
ローズベンガルの注射を開始してから3時間後に、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン、又はビヒクルの投与を開始した。翌日から27日目にかけて、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン、又はビヒクルを1日2回投与した。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩及びビヒクルを、使い捨て注射器を使用して背中に経皮投与した。アスピリンを使い捨て注射器付きの鼻カテーテルを使用して強制投与により経口投与した。カテーテルを、口を経由して胃に挿入した。処置はMCA血栓症の日(0日目)につき1回で、27日間にわたって1日2回であった。(表8に示される実験計画を参照のこと)。
【0266】
サルには毎日2回、1匹のサル当たり約50g~100gの食餌とともに、洗浄した後に消毒した果物又は野菜を与えた。研究期間中、水道水を自由に与えた。蛍光灯照明により1日当たりおよそ12時間照明を与えた。
【0267】
認証されたサル用食餌(Beijing Keaoxieli Feed Co., Ltd)を与えた。食餌の各バッチの栄養成分を分析した。食餌は中華人民共和国国家標準GB14924.3-2010及びGB14924.2-2001に準拠した飼料基準を満たすべきである。分析結果の写しを研究ファイルに保管した。
【0268】
認定された水道水を使用した。飲用水の外観及び微生物を毎月分析し、毒性学的指数(鉛及び水銀等)を毎年検出した。水は中華人民共和国国家標準GB5749-2006に準拠した飲用水基準を満たすものとする。分析結果の写しを研究ファイルに保管した。
【0269】
【0270】
実験群を24匹のサルの術前体重に基づいて最小化法に従って割り付けた。
【0271】
割り付けに関する情報を投与の担当者にのみ開示し、MCA血栓モデルの作製、神経学的欠損の評定、及び梗塞病変の測定についての責任者には開示しなかった。
MCA血栓症モデルの作製を盲検的に行った。作業者は群分け及び投与についての責任者ではなかった。
【0272】
少なくとも12時間絶食させたサルを塩酸ケタミン(20mg/kg)の筋肉内投与で麻酔し、手術用ベッドに寝かせた。麻酔をO2ガス中1.0%のイソフルランで30分まで継続した。吸入麻酔を麻酔器(SN23402、Hallowell engineering and manufacturing corporation、米国)及び人工呼吸器(SN23402、Hallowell engineering and manufacturing corporation、米国)を用いて行い、手術用ベッドに寝かせた。麻酔中、動物の体温(直腸温度)を温熱マットレス(XMTA-7000、Delixi Electric., Ltd.)によって37.0±0.5℃の間に制御した。
【0273】
麻酔下で、バイポーラ凝固デバイス(Valleylab社のForce 1C、米国)を使用して左眼を摘出した。次いで、左側の視神経の上外側で開頭術を行った。翌日、動物を塩酸ケタミン(20mg/kg)で麻酔し、硬膜及びクモ膜下膜を開いた。光化学的反応によってMCA血栓症を誘発した。MCA主幹の近位部を、キセノンランプ(GL532T3-100FC、Shanghai Laser & Optics Century Co., Ltd.)を使用することによって波長532nmの緑色光で照射した。マイクロマニピュレーターに取り付けられた3mm直径の光ファイバーによって照射を向けた。照射を開始し、ローズベンガル20mg/kgを静脈内注射した。光照射を30分間継続した。次いで、硬膜を湿ったゼラチンスポンジで覆った。
【0274】
ペニシリンGカリウム(動物当たり100000U)を手術後3日間毎日筋肉内注射して、術後感染症を予防した。
神経学的欠損(表3を参照)を、MCA血栓症の発症(0日目)から1日後、3日後、5日後、7日後、14日後、及び28日後に盲検的に評定した。神経学的欠損を意識、感覚系、運動系、及び骨格筋の協調に関してスコアリングし、意識、感覚系、運動系、及び骨格筋の協調のスコアを合計することによって、総神経学的欠損スコアを計算した。Kito G, et al. J Neurosci Meth, 2001, 105:45-53に記載されたスコアリング法を適応することによって、神経学的欠損スコアを測定した。
【0275】
生き残ったサルを、MCA血栓症の発症から28日後にペントバルビタールナトリウム(35mg/kg、静脈内)で深い麻酔にかけた。心臓の心房を切断した後、200mLのヘパリン化生理食塩水(10U/mL)を、総頸動脈を介して脳に灌流させ、続いて200mLの10%のホルマリン中性緩衝液を灌流した。脳全体を取り出した後、10%のホルマリン中性緩衝液が入った病理学試料保存パックに入れた。各脳試料について、部位ごとの冠状切片(厚さ:7μm~8μm)を10部位で4mm間隔にて作製した。部位ごとのスライスをそれぞれH&E試薬で染色した。
【0276】
脳梗塞病変の測定を盲検的に行った。虚血側の梗塞病変は、対側の梗塞病変と比較して壊死部分として定義される。左大脳半球の断面での梗塞面積(A)を、コンピューター画像解析システム(image J)を使用してトレースして測定した。
【0277】
2連続切片の梗塞サイズをD及びD’とすると、切片の厚さ(4mm)を使用した梗塞体積は、以下の式:
梗塞体積={(D+D’)×4}/2
で測定される。
【0278】
総梗塞体積は、10連続切片の梗塞体積を合計することによって計算される。
【0279】
評価項目:
1)神経学的欠損スコア(意識、感覚系、運動系、及び骨格筋の協調)及び総神経学的欠損スコア
2)梗塞病変の体積
【0280】
結果:
ビヒクル、アスピリン、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群の死亡率は、それぞれ7匹中4匹、5匹中1匹、5匹中0匹、及び7匹中0匹であった。したがって、動物の死後の神経学的欠損を死亡時のスコアで表した。MCA血栓症の3日後に、ビヒクル群において重度の神経学的欠損が観察された。これらの神経学的欠損は自発的な回復を示さなかった。アスピリン群における神経学的欠損は、MCA血栓症後28日まで僅かな回復を示す傾向があった。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群では、神経学的欠損が用量依存的に改善された(
図16を参照)。
【0281】
MCA血栓症後の28日目に測定された梗塞体積は、ビヒクル、アスピリン、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群においてそれぞれ2873mm
3、1901mm
3、945mm
3、及び988mm
3を示した(
図17を参照)。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群、及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群では、梗塞体積が大幅に減少した。
【0282】
梗塞領域においては、ビヒクル群において重度の液状化が観察されたが、アスピリン群及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群は中程度であり、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群は軽微であった。ペナンブラ領域においては、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群において多くの肥胖細胞性星細胞が観察されたが、ビヒクル群において少数の肥胖細胞性星細胞しか観察されなかった。アスピリン群ではペナンブラ領域において出血が示された。遠隔領域においては、全ての群において神経細胞死の遅延が観察されたが、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩では軽微に示された。
【0283】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩では死亡率及び梗塞体積が減少し、神経学的欠損が改善された。組織病理学的所見においては、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群において多くの肥胖細胞性星細胞が観察された。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩においては液状化及び神経細胞死の遅延が軽微であったため、多くの肥胖細胞性星細胞が残存した。結論として、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は、サルの中大脳動脈血栓症モデルにおいて虚血性脳障害を改善し、神経細胞死を遅延させることが実証された。
【0284】
実施例20 ミニブタにおける心筋梗塞に対する2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の効果の有効性研究
製剤の調製
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を15%のエタノール中に溶解して経皮投与用の規定濃度(7.91%)とし、アスピリンを0.5%のMC中に溶解して経口投与用の規定濃度(0.5%)とした。
【0285】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩及びビヒクルを、翌日から13日目にかけて1日2回、使い捨て注射器を使用して背中に経皮投与し、アスピリンを、使い捨て注射器付き鼻カテーテルを使用して強制投与により経口投与した。カテーテルを、翌日から13日目にかけて1日2回、口を経由して胃に挿入した。
【0286】
薬理学的効果レベルに基づいて、用量レベルを以下のように選択した:
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩:低用量:1回当たり15mg/0.215mL/kg(遊離塩基で、1回当たり10mg/kgのアスピリンに相当)、1日2回;高用量:1回当たり30mg/0.430mL/kg(遊離塩基で、1回当たり20mg/kgのアスピリンに相当)、1日2回;アスピリン:1回当たり20mg/4mL/kg、1日2回。
【0287】
投与製剤を毎週調製し、使用しないときは琥珀色の瓶内で2℃~8℃にて貯蔵し、7日以内に使用した。濃度を試験品の遊離塩基として表した。1.13の補正係数及び純度を使用して、遊離塩基を計算した。
【0288】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(15.82g)を量り取り、200ml容のフラスコに加えた。滅菌注射用水中15%(容量/容量)のエタノール(ビヒクル)の最終容量の約80%を容器に加え、得られた混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌した後、200mlの最終容量(70mg/mlの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート遊離塩基)になるまで更なる15%(容量/容量)のエタノールをフラスコに加えた。
【0289】
本研究には合計24匹の雄のミニブタを使用した。本研究の開始時に、ミニブタは約2週齢~3週齢であった。ミニブタは既に検疫され、飼育されていた。動物を飼育コロニーから移送する前に、身体検査を実施し、研究に対する動物の許容性を獣医が評価した。表9に示される実験計画を参照のこと。
【0290】
【0291】
実験群を24匹のミニブタの術前体重に基づいて最小化法に従って割り付けた。
心筋梗塞モデルの作製を盲検的に行った。作業者は群分け及び投与についての責任者ではなかった。
【0292】
少なくとも12時間絶食させたミニブタをペントバルビタール(25mg/kg~50mg/kg)の筋肉内投与で麻酔し、手術用ベッドに寝かせた。麻酔をO2ガス中1.0%のイソフルランで継続した。吸入麻酔を麻酔器(SN23402、Hallowell engineering and manufacturing corporation、米国)及び人工呼吸器(SN23402、Hallowell engineering and manufacturing corporation、米国)を用いて行い、手術用ベッドに寝かせた。麻酔中、動物の体温(直腸温度)を温熱マットレス(XMTA-7000、Delixi Electric., Ltd.)によって37.0±0.5℃の間に制御した。
【0293】
麻酔下で開胸術を行い、心臓の冠動脈回旋枝を露出させた。光化学的反応によって冠動脈回旋枝血栓症を誘発した。動脈を、キセノンランプ(GL532T3-100FC、Shanghai Laser & Optics Century Co., Ltd.)を使用することによって波長532nmの緑色光で照射した。マイクロマニピュレーターに取り付けられた3mm直径の光ファイバーによって照射を向けた。照射を開始し、ローズベンガル20mg/kgを静脈内注射した。光照射を30分間継続した。
【0294】
ペニシリンGカリウム(動物当たり100000U)を手術後3日間毎日筋肉内注射して、術後感染症を予防した。
心筋梗塞モデルを作製する前に、テレメトリー送信機(TL11M2-D70-PCT、Data Sciences International、米国ミネソタ州)をジャケット内に入れ、ECGリード線を右外側胸郭及び左外側腹部に皮下で配置した。ローズベンガルの投与後24時間以内で生理学的信号(ECG)を記録した。
【0295】
生き残ったミニブタを、冠動脈回旋枝血栓症の発症から14日後にペントバルビタールナトリウム(30mg/kg、静脈内)で深い麻酔にかけた。大腿動脈を切断した後、開胸術を行い、心臓を取り出した。心臓を5mm幅で5つのブロックに切断した後、これらのブロックを37℃のTTC試薬中に5分間浸漬した。TTC試薬で染色した後、心臓の5つのブロックの写真を撮影した。全てのブロックを10%のホルマリン中性緩衝液中に浸漬した。2番目のブロックには大きな壊死領域が見られ、これを切片(厚さ:7μm~8μm)に切断した。スライスをH&E試薬で染色した。
【0296】
心筋梗塞病変の測定を盲検的に行った。
梗塞病変は、TTC染色したブロックの壊死部分として定義された。2連続切片の梗塞サイズをD及びD’とすると、ブロックの厚さ(5mm)を使用した梗塞体積は、以下の式:
梗塞体積={(D+D’)×5}/2
で測定された。
【0297】
総梗塞体積は、5連続切片の梗塞体積を合計することによって計算された。
心筋梗塞の組織病理学的変化(壊死、炎症、肉芽形成等)をH&E染色したスライドを使用して検査した。
【0298】
評価項目
1)梗塞病変の体積
2)組織病理学的変化
【0299】
結果:
MCA血栓症の28日後に測定された梗塞体積は、ビヒクル、アスピリン、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群(中程度)、及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群においてそれぞれ379mm
3、431mm
3、177mm
3、及び138mm
3を示した。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群は中程度であり、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群では梗塞体積が減少した(
図18を参照)。
【0300】
ビヒクル群及びアスピリン群において、中程度の心筋変性及び心筋壊死が観察された。しかしながら、これらの組織病理学的変化は2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の低用量群(中程度)及び2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の高用量群において軽微であった。
【0301】
本研究の目的は、ミニブタにおける心筋梗塞に対する2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の効果を評価することであった。ECGの評定において、全ての群においてSTの立ち上がり及び異常なQ波が示されたため、照射後に心筋虚血の発症が認められた。MCA血栓症後の28日目に、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩群において心筋梗塞体積が減少した。したがって、この実験では、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を繰り返し投与することにより心筋梗塞が改善されることが実証された。
【0302】
実施例20 非臨床的な薬理学及び毒性学
早期の臨床試験を支持するのに、ラットにおけるGLP急性経皮最大耐量研究、ミニブタにおけるGLP急性経皮最大耐量研究、ラットにおける14日間の回復を伴う28日間のGLP反復経皮投与毒性及び毒物動態研究、ミニブタにおける14日間の回復を伴う28日間のGLP反復経皮投与毒性及び毒物動態研究、GLP細菌復帰突然変異アッセイ(Ames)、CHO-WBL細胞におけるGLP in vitro染色体異常アッセイ、ラットにおけるGLP in vivo骨髄小核アッセイ、機能観察総合評価法を使用したラットにおける行動的効果、ラットの呼吸器安全性薬理学研究、非拘束の意識のあるミニブタにおける心血管テレメトリー研究、ウサギにおける皮膚刺激研究、及びモルモットにおける感作試験を含む一連の薬理学研究及び毒性学研究を実施した。
【0303】
研究結果から、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は安全であり、概ね良好な忍容性であると考えられる。
【0304】
実施例21 第1相臨床研究
無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増研究を実施して、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の局所的噴霧適用として投与した単回用量及び多回用量を漸増させた後のその単回用量及び多回用量の安全性、忍容性、及びPKを評価した。
【0305】
4つの用量漸増コホートのそれぞれにおいて、8人の被験者を無作為化して治験実薬を与え、2人の被験者をマッチングプラセボに無作為化した。研究された用量レベルを表10に示す。
【0306】
表10.コホート別の総用量及び1用量当たりの噴霧回数
【0307】
各コホートは、コホートの研究スケジュールの1日目に治験薬の単回用量の投与から始まった。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩及び3種の2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の代謝産物、具体的には2-(ジエチルアミノ)エチル2-ヒドロキシベンゾエート塩酸塩、アスピリン(アセチルサリチル酸、ASA)、及びサリチル酸(SA)の血漿PK分析用の連続血液試料を投与後120時間の期間にわたって収集した。
【0308】
5日間のウォッシュアウト後、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の多回用量を7日間にわたり1日2回投与した(6日目~12日目、12日目は朝の用量のみを投与した)。12日目の朝に投与された2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩を最終的に投与した後に、PK分析用の血液試料を投与後120時間の期間にわたって収集した。
【0309】
コホート内で多回投薬を開始する前、及びより高い単回用量への用量漸増の前に、安全性データの再検討を行った。用量制限有害事象(AE)及び臨床検査毒性(laboratory toxicities)が見られない場合に、後続のより高用量のコホートを開始した。用量漸増及び多回投薬の決定は、安全性及び忍容性の評定に基づいており、Techfields Inc.、メディカルモニター、及び治験責任医師(PI)によって合意された。
【0310】
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の最大個別用量は1日2回で700mg(コホート4)であり、最大1日用量は1400mgであった。
【0311】
単回用量のPK分析では、1日目の投与後に次の時点で連続血液試料を収集した:投与0時間後(投与前)、投与0.25時間後、投与0.5時間後、投与0.75時間後、投与1時間後、投与1.5時間後、投与2時間後、投与2.5時間後、投与3時間後、投与4時間後、投与5時間後、投与6時間後、投与8時間後、投与10時間後、投与12時間後、投与18時間後、投与24時間後、投与48時間後、投与72時間後、投与96時間後、及び投与120時間後。多回用量のPK分析では、12日目の最後の朝の投与後に、単回用量のPK分析で使用したのと同じスケジュールに従って連続血液試料を収集した。さらに、7日目から11日目の朝の投与前に毎日のトラフPK試料を収集した。
【0312】
安全性の評定には、AE、バイタルサイン(血圧(BP)、脈拍数、呼吸数、及び口腔体温)、臨床検査所見、12誘導心電図(ECG)、皮膚刺激評定、及び身体検査(PE)所見のモニタリングが含まれていた。
スクリーニング時及び13日目に身体検査及び安静時12誘導ECGを実施した。スクリーニング時、-1日目の研究施設への入院時及び5日目、並びに各用量の投与前及び各用量の投与1時間後にバイタルサインを評定した。
【0313】
スクリーニング時、-1日目の入院時、並びに4日目、13日目、及び17日目に、臨床検査(化学、血液学、及び尿検査)を実施した。スクリーニング時及び17日目に研究終了の来院時に、便グアヤック検査を実施した。各用量の投与前及び各用量の投与30分後に皮膚刺激評定を実施した。
【0314】
結論:
安全性の結論:
1.本研究により、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は、研究された全ての用量レジメン:最大700mgの単回用量及び最大700mgの1日2回の多回用量で安全かつ良好な忍容性であることが実証された。用量とTEAEの発生率との間には明らかな関係は見られなかった。
2.被験者には、研究中止につながる重篤な有害事象(SAE)又はTEAEは見られなかった。
3.示されたTEAE以外に、臨床安全性パラメーター又は身体検査所見において、全体的に臨床的に意味のある又は意義のある変化は見られなかった。
【0315】
PKの結論:
1.70mg~700mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の単回用量又は多回用量を投与した後、TF0039及びASAの血漿濃度は定量可能限界を下回った。
2.70mg~700mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の単回用量又は多回用量を投与した後、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の最大血漿濃度は定量可能レベルの下限に近かった。
3.70mg~700mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の単回用量を投与した後、血漿中の主に存在するのはサリチル酸であり、サリチル酸のAUCt及びAUCτは両方とも、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の用量とともに増加した。サリチル酸のCmaxは、350mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の用量から700mgの用量まで増加した。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の多回用量を70mgから700mgまで投与した後、サリチル酸のTmaxは、単回用量処置から得られた値と有意差があった。SAのCmax及びAUCτにおいて用量に比例した増加が観察された。2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の単回投与又は多回投与のいずれかの後のサリチル酸の終末相半減期は23時間~36時間の範囲であった。
4.定常状態でのサリチル酸の蓄積(R_Cmax及びR_AUCτ)は、Cmaxについては1.5~2.6の範囲であり、AUCτについては2~8の範囲であった。
5.2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩及びサリチル酸の両方についてのPKパラメーターに大きなばらつきが観察された。
6.2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の局所噴霧後に容易にほぼ完全に(99%以上)サリチル酸に転化される。
【0316】
実施例22 第2相臨床研究
第2相臨床試験は、無作為化された全ての患者に対して16週目に二分化mRSスコア(0~2対2超)によって測定して、虚血性脳卒中を患う患者の機能改善における2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩噴霧対プラセボの有効性及び安全性を評価する、多施設、無作為化、二重盲検(用量内)、プラセボ対照、並行群間、用量範囲探索研究であった。さらに、この研究は、16週目及び32週目に2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩噴霧の多回投与の安全性及び忍容性、無作為化された全ての患者に対して32週目に二分化mRSスコア(0~2対2超)によって測定した虚血性脳卒中を患う患者の機能改善についてのプラセボと比較した2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩噴霧の有効性、及びベースラインから16週目及び32週目までの米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア又はバーセルインデックス(BI)の改善によって測定した虚血性脳卒中を患う患者の機能改善についてのプラセボと比較した2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩噴霧の効果も評定することになっていた。
【0317】
方法論/研究計画
群Aに登録された各患者には、脳卒中症状の発症(研究の1日目)の3日後から60日後の間に始めて16週間にわたって、二重盲検的に被験薬を投与した。患者又はその介護者が1用量当たり20噴霧の被験薬又はプラセボのいずれかを、被験薬の1日の総用量が280mgになるように1日2回(およそ12時間ごと)投与するように被験薬を正確に適用する方法を患者及び/又はその介護者に指導した。20噴霧の被験薬を次のように投与した:首の周りに4噴霧、左肩に2噴霧、右肩に2噴霧、胸に6噴霧、左脚に3噴霧、及び右脚に3噴霧。最大の吸収が達成されるように、各噴霧を皮膚の異なる領域に噴霧した。患者は最後の噴霧後、皮膚が完全に乾くよう服を着るのに少なくとも5分間待つこととなる。
【0318】
有効性及び安全性の評定のために、患者には4週目、8週目、12週目、及び16週目に研究施設に戻るよう求めた。16週目の評定を行った後、患者は翌日に研究のオープンラベル期間を開始し、32週目の研究終了(EOS)までオープンラベル方式で実薬処置を受ける。すなわち、実薬処置を受けていた患者は実薬処置を受け続けることとなり、プラセボを受けていた患者は研究の残りの16週間にわたり実薬処置に切り替えることとなる。16週目の来院日に患者には1用量の被験薬のみが投与されることとなる。有効性及び安全性の評定のために、患者は24週目及び32週目(EOS)に研究施設に戻ることとなる。患者が時期を早めて研究を取りやめた場合には、早期中止来院が行われることとなる。早期中止来院又は32週目の(EOS)来院のおよそ14日後に、患者はフォローアップ来院をすることとなる。
【0319】
試験製品、用量、剤形、及び投与方式:
試験製品は、15%のエタノール中の2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩の7.91%の溶液(2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエートの7%の溶液)又はプラセボであり、これを噴霧として経皮投与した。7.91%の経皮噴霧溶液は、20mLの15%のエタノール(容量/容量)中の1582mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩(1400mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート遊離塩基に相当)からなる。噴霧ボトルは、1噴霧当たり100mlの噴霧溶液及び7mgの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート遊離塩基を皮膚に付着させる。被験者は、無作為に割り当てられた用量レベルに基づいて、首、胸、脚、及び腕の周りの異なる皮膚領域に各噴霧を適用することとなった。
【0320】
用量及びレジメン:
患者を1:1:1の比率で群A、群B、又は群Cに無作為に割り付け、更に各処置群内で2:1の比率にて無作為化して、群Aにおいては2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩1用量当たり140mg(1用量当たり20噴霧)若しくはプラセボ、群Bにおいては1用量当たり70mg(1用量当たり10噴霧)若しくはプラセボ、又は群Cにおいては1用量当たり35mg(1用量当たり5噴霧)若しくはプラセボのいずれかを投与した。
【0321】
研究の1日目から16週目の来院まで、1日2回(およそ12時間ごと)処置を施した。最大の吸収が達成されるように、各噴霧を皮膚の異なる領域に噴霧した。
【0322】
16週目の来院時に、治験実施施設で1回目の用量を投与した。16週目の来院の翌日から開始して研究終了時(32週目)まで、オープンラベル方式で実薬処置を施した。すなわち、
患者群Aには、20噴霧の被験薬を次のように投与した:1日当たり合計40噴霧(280mg)となるように1日2回、首の周りに4噴霧、左肩に2噴霧、右肩に2噴霧、胸に6噴霧、左脚に3噴霧、及び右脚に3噴霧。最大の吸収が達成されるように、各噴霧を皮膚の異なる領域に噴霧した。
患者群Bには、被験薬を次のように投与した:1日当たり合計20噴霧(140mg)となるように1日2回、首の前に2噴霧、首の左側に1噴霧、首の右側に1噴霧、首の近くの胸に6噴霧。最大の吸収が達成されるように、各噴霧を皮膚の異なる領域に噴霧した。
患者群Cには、被験薬を次のように投与した:合計10噴霧(1日当たり70mg)となるように1日2回、首の前に1噴霧、首の左側に1噴霧、首の右側に1噴霧、胸に2噴霧。最大の吸収が達成されるように、各噴霧を皮膚の異なる領域に噴霧した。
【0323】
有効性の評価
主要有効性エンドポイント
主要有効性エンドポイントは、無作為化された全ての患者について16週目に「成功」(0~2)又は失敗(2超)として二分化された16週目のmRSスコアである。
【0324】
修正ランキンスケールスコア
mRSスコアを、スクリーニング時、1日目(ベースライン)、4週目、8週目、12週目、16週目、24週目、及び32週目、早期中止来院時(該当する場合)、並びにフォローアップ来院時に評定した。
【0325】
mRSスコアは患者の活動の機能レベルの測度であり、良好な転帰(スコア=0~2)対不良な転帰(2以上のスコア)に二分化される。mRSスコアは、以下のように0(症状なし)から6(死亡)までの範囲である:
0=全く症状がない
1=症状はあるが明らかな障害はなし;あらゆる通常の日常生活及び活動を実行することができる
2=軽微な障害がある;以前の活動を全て実行することはできないが、介助なしで自分のことを世話することができる
3=中程度の障害があり、幾らかの補助が必要であるが、介助なしで歩くことはできる
4=中程度から重度の障害があり、介助なしでは歩くことができず、介助なしでは自分の身体的なニーズを満たすことができない
5=重度の障害があり、寝たきりで失禁し、常に看護ケア及び世話を必要とする
6=死亡
【0326】
副次的エンドポイント
副次的有効性エンドポイントには、無作為化された全ての患者についての16週目及び32週目でのNIHSSスコア、BIスコア、及びGOS-Eスコアにおけるベースラインからの変化、並びに32週目でのmRSスコアにおけるベースラインからの変化が含まれる。NIHSSスコア及びBIスコアを、スクリーニング時、1日目(ベースライン)、4週目、8週目、12週目、16週目、24週目、及び32週目に評定する。もう一つの副次的エンドポイントは、ベースラインから16週目及び32週目までの超音波検査による頸部動脈におけるアテローム性動脈硬化症の改善である。
【0327】
追加の副次的有効性エンドポイントには、16週目及び32週目での頸部動脈における血流及びアテローム性動脈硬化症のベースラインからの変化が含まれる。これらの変数は1日目(ベースライン)並びに16週目及び32週目に測定されることになる。
【0328】
米国国立衛生研究所脳卒中スケール
NIHSSは神経学的欠損の経時的な測度であり、虚血性脳卒中の重症度を客観的に格付けするのに使用される。このスケールは、意識水準、LOC質問、最良の注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動、下肢の運動、四肢の運動失調、感覚、最良の言語、構音障害、消去現象及び注意障害(以前の無視)等の具体的な能力をまとめた11項目から構成されており、スコアは0から4までの範囲であり、数字が小さいほど患者の状態が正常であることを示している。
【0329】
バーセルインデックス
BIは、10個の個別の日常生活動作(ADL)における患者の能力を測定するのに使用される順序尺度である。各項目は5ポイント刻み(0、5、10、又は15)でスコアリングされ、個々の項目を合計して0から100の間の合計スコアが生成される。ここで、0は劣った能力であり、100は最良である。最下限のスコア0はADLを他者に完全に依存していることを示し、最大限のスコア100はADLが完全に自立していることを示している。スコアが高いほど、或る程度自立して自宅で生活することができる可能性が高いことと関連している。95以上のスコアは優秀と見なされる。
【0330】
評価:安全性
安全性の評定には、研究フローチャートにおいて示されるように、研究中の様々な時点でのAE、バイタルサイン(血圧、脈拍数、及び口腔体温)、臨床検査(clinical laboratories)、身体検査、皮膚刺激、及びECGが含まれていた。
【0331】
注目すべき有害事象には、処置された膝(複数の場合もある)の周囲の局部的な皮膚反応、上部胃痛、GI出血、重篤な心血管系の副作用(例えば、血栓性事象、心筋梗塞、又は脳卒中)、黄疸、肝機能検査値の上昇、及び吐き気が含まれる。
【0332】
臨床結果
臨床結果(主要エンドポイント及び副次的エンドポイント)を表11~表14に示す。
【0333】
表11.2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩対プラセボの修正ランキンスケールスコア(mRS)の変化
【0334】
mRSの結果は、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩が脳卒中後の機能回復を改善できることを示している。
【0335】
表12.2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩対プラセボの米国国立衛生研究所脳卒中スケールの変化
NIHSSの結果は、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩が脳卒中後の機能回復を改善し得ることを示している。
【0336】
表13.2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩対プラセボのバーセルインデックスの変化
BIの結果は、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩が脳卒中後の機能回復を改善し得ることを示している。
【0337】
表14.ベースラインから16週目及び32週目までの超音波検査による頸部動脈におけるアテローム性動脈硬化症の改善
【0338】
RCCA(近位壁):右総頸動脈(近位壁)の最大IMT、RCCA(遠位壁):右総頸動脈(遠位壁)の最大IMT、LCCA(近位壁):左総頸動脈(近位壁)の最大IMT、LCCA(遠位壁):左総頸動脈(遠位壁)の最大IMT、RICA(近位壁):右内頸動脈(近位壁)の最大IMT、RICA(遠位壁):右内頸動脈(遠位壁)の最大IMT、LICA(近位壁):左内頸動脈(近位壁)の最大IMT、LICA(遠位壁):左内頸動脈(遠位壁)の最大IMT。
【0339】
アテローム性動脈硬化症の改善の結果は、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩がアテローム性動脈硬化症を回復に向かわせ得ることを示している。
【0340】
安全性概要
2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエートの3つの全ての用量は安全であると考えられ、概ね良好な忍容性であった。上述のように、消化管障害は全てのNSAIDの主要な問題であるが、本研究においては非常に軽度の発病(6件の便秘、3件の下痢、1件の胃食道逆流症、2件の腹部不快感、1件の腹痛、1件の上腹部痛、及び1件の吐き気)が15件だけあり、いずれも薬物関連ではないと考えられた。発病率は3つの全ての処置群全体にわたって概ね同様であった。研究の間、顕著な上部GI路潰瘍の合併症(すなわち、出血エピソード、穿孔、又は胃出口閉塞)は起こらなかった。平均血圧及び中央血圧は不変のままであった。単純な製剤であることと、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエートが体外面にあるときには生物学的に不活性なプロドラッグであるという事実とにより、皮膚刺激(局所用薬物の一般的なAE)の発生率さえも非常に低く(合計6件の発病)、軽度であった。
【0341】
本開示の2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩並びにアスピリン及びその他のNSAIDの高透過プロドラッグは1つ以上の生物学的障壁を横断することができるため、これらを局部的に(例えば、局所的又は経皮的に)投与して、脳卒中による脳組織の損傷、心臓発作による心臓組織の損傷、心不全による心臓組織及び血管の損傷、リウマチ性心疾患、高血圧性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心内膜炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、並びにその他の心血管疾患等の病態が発生し、現行の薬物が十分に到達することができない場所に到達することができる。
【0342】
動物モデル研究及びヒト臨床試験の実施例における軽減によって示されるように、2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は、用量応答的に脳卒中、心筋梗塞、及び/又は心血管疾患の徴候及び症状を大幅に軽減することができる。
【0343】
35mg BID、70mg BID、及び140mg BIDの2-(ジエチルアミノ)エチルアセトキシベンゾエート塩酸塩は全て安全であると見られ、一般的に忍容性が良好であった。消化管障害は全てのNSAIDの主要な問題であるが、これらの試験においては薬物関連の消化管障害は見られなかった。これらの試験中に、顕著な上部GI管潰瘍の合併症(すなわち、出血エピソード、穿孔、又は胃流出路閉塞)は発生しなかった。平均血圧及び中央値血圧は不変のままであった。処方が簡単であるため、皮膚刺激(局所用薬物の一般的なAE)の発生率でさえ非常に低く、軽度であった。
【0344】
或る特定の実施形態が上記で詳細に説明されているが、それらは例示であるにすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において使用され得る。当業者であれば、特許請求の範囲の教示から逸脱することなく、特許請求の範囲において多くの変更が可能であることを明確に理解するであろう。そのような全ての変更及び均等物は、本発明の特許請求の範囲内に包含されることが意図されており、特許請求の範囲によって網羅される。本明細書に言及される全ての刊行物、特許、及び他の参考文献は、あらゆる目的のために、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【国際調査報告】