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  • 特表-節足動物防除組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】節足動物防除組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/14 20060101AFI20250204BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 47/06 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 35/10 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 37/38 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 35/04 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 43/08 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 43/22 20060101ALI20250204BHJP
   A01N 43/30 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A01N31/14
A01P17/00
A01N47/06 C
A01N35/10
A01N37/38
A01N35/02
A01N37/40
A01N35/04
A01N43/08 G
A01N43/16 A
A01N43/16 C
A01N43/22
A01N43/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542967
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2023050968
(87)【国際公開番号】W WO2023139053
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22152173.5
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ハラッカ
(72)【発明者】
【氏名】モード ライター
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン クロン
(72)【発明者】
【氏名】エリック フルロ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BA06
4H011BA07
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB05
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB12
(57)【要約】
発明は、節足動物防除組成物、節足動物を防除する方法および使用ならびに節足動物防除組成物を含む節足動物防除物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物をその立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形態で含む、節足動物防除組成物、好ましくは昆虫防除組成物。
【化1】
[式中、Rは水素原子、C1~3アルキル基もしくはC(=O)(O)’であり、nは0もしくは1であり、R’はC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アセチル基、ホルミル基、ニトリル基、メチル基もしくはメトキシ基であり、Rは水素原子、C4~7オキサシクロアルキルもしくはオキサシクロアルケニル基(C1~3アルキルもしくはメチレン基で各々任意に置換されていてもよい)、C1~5アルキルもしくはC2~5アルケニル基(オキソ基、COOH基、アセテート基、COOMe基、COOEt基もしくはOR’基により各々任意に置換されていてもよい)であり、R’は水素原子もしくはC1~10アルキル基もしくはC2~10アルケニル基であり、Rは水素原子もしくはC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、C2~3アルケニル基、ヒドロキシメチル基もしくはOR’基であり、R’は水素原子もしくはC1~3アルキル基であり、またはRおよびRは、一緒になった場合、CHC(=O)CH基、メタンジイル基もしくは2-オキソプロパン-1,1-ジイル基であり、
ただし、
- Rが水素原子である場合、R、RおよびRは水素原子ではなく、
- Rが水素原子であり、Rが水素原子またはメチル基であり、かつRがメチル基である場合、Rは非置換C1~5アルキルまたはC1~5アルケニル基ではなく、
- Rがホルミル基である場合、RおよびRはメチル基ではなく、Rは水素原子ではなく、
- Rが水素原子であり、かつRがメトキシ基である場合、Rはホルミル基、アセチル基または2-カルボキシビニル基ではなく、
- Rがメトキシ基である場合、Rはプロパ-1-エン-1-イル基ではなく、
4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、4-ブトキシメチル-2-メトキシフェノール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドおよび3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸は除外される]
【請求項2】
式(I)の化合物が、式
【化2】
[式中、R、R、R、RおよびR’は、請求項1で定義したのと同じ意味を有する]
の化合物である、請求項1記載の節足動物防除組成物。
【請求項3】
前記化合物が、2,6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン、1,2,3-トリメトキシ-5-メチルベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール、1-(2,3,4-トリメトキシフェニル)エタノン、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼン、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン、2,3,4-トリメトキシベンゾニトリル、3-エトキシ-4-メトキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリメトキシフェノール、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン、2-メトキシ-4-(4-メチリデンオキサン-2-イル)フェノール、4-(3,6-ジヒドロ-4-メチル-2H-ピラン-2-イル)-2-メトキシ-フェノールおよびそれらの混合物からなるリストから選択される、請求項1記載の節足動物防除組成物。
【請求項4】
前記化合物が、6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノールおよびそれらの混合物からなるリストから選択される、請求項3記載の節足動物防除組成物。
【請求項5】
節足動物が昆虫、好ましくは蚊である、請求項1から4までのいずれか1項記載の節足動物防除組成物。
【請求項6】
N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR3535)、パラ-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン(ピカリジン)、中国シダーウッド油、テキサスシダーウッド油、バージニアシダーウッド油、桂皮油、シトロネラ油、コーンミント油、分画水和環化キンボポゴン・ウィンテリアヌス(Cymbopogon winterianus)油、デカン酸、水和環化ユーカリプツス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)油、オイゲノール、ニンニク油、ゲラニオール、ゼラニウム油、ラベンダー、ラバンデュラ・ハイブリダ(Lavandula hybrida)油、ラバンジン油、レモン油、レモングラス油、インドセンダン抽出物、メトフルトリン、シス-およびトランス-p-メンタン-3,8-ジオールの混合物、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド、ノナン酸、ローズマリー油、タイム油、冬緑油、2,3,4,5-ビス(ブチル-2-エン)テトラヒドロフルフラール(MGK Repellent 11)、シネオール、シンナムアルデヒド、シトロネラール、シトロネロール、クマリン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、アントラニル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、エチルバニリン、ユーカリ油、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、ヒドロキシシトロネラール、ライム油、リモネン、リナロール、アントラニル酸メチル、ミント油、ミルセン、ニーム油、サビネン、β-カリオフィレン、(1H-インドール-2-イル)酢酸、アネトール、アニス油、バジル油、ベイ油、樟脳、サリチル酸エチル、常緑植物油(パイン油)、(1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,3-ジオキソ-2H-イソインドール-2-イル)メチル2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)シクロプロパンカルボキシレート(d-テトラメトリン)、3-アリル-2-メチル-4-オキソシクロペンタ-2-エニル-2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)-シクロプロパンカルボキシレート(d-アレスリン)、α-シアノ-3-フェノキシベンジル,3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(シペルメトリン)、2-メチル-4-オキソ-3-(プロパ-2-イニル)シクロペンタ-2-エン-1-イル2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)シクロプロパンカルボキシレート(プラレトリン)、アセタミプリド、アザジラクチン、ベンジオカルブ、ビフェントリン、ホウ酸、クロルピリホス、デルタメトリン、ダイアジノン、ジクロルボス、オイゲノール、フィプロニル、イミダクロプリド、リナロール、マラチオン、マルトデキストリン、メトフルトリン、ニコチン、ペルメトリン、ピレトリン、ピレスロイド、ロテノン、二酸化ケイ素(珪藻土)、S-メトプレン、スピノサド(スピノシンA)、スピノシンD、テトラメトリン、トランスフルトリン、1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン、3-ブチリデン-2-ベンゾフラン-1-オン、4-エテニル-2-メトキシフェノール、コニャックグリーン油、ラブダナム抽出物(シスタス属種)、5-ペンチルオキソラン-2-オン、クロメン-2-オン、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、2-メチル-5-プロパ-1-エン-2-イルシクロヘキサ-2-エン-1-オン、メンサ・スピカタ(Mentha spicata)油、6-ヘキシルオキサン-2-オン、5-メチル-2-プロパン-2-イルシクロヘキシル]アセテート、ニゲラ・ダマスケナ(Nigella damascena)油、2-フェニルエタノール、6-ペンチルオキサン-2-オン、(4-メトキシフェニル)酢酸メチル、シジギウム・アロマティクム(Syzygium aromaticum)油、3,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロクロメン-2-オン、3,7,7-トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エン、2-フェニルエチル2-メチルプロパノエート、メチル2-(3-オキソ-2-ペンタ-2-エニルシクロペンチル)アセテート、4-(2-メトキシプロパン-2-イル)-1-メチルシクロヘキセン、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)油、2-メトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール、2-メチル-3-(4-プロパン-2-イルフェニル)プロパナール、(4-メトキシフェニル)メタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される節足動物防除共成分をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の節足動物防除組成物。
【請求項7】
昆虫を、請求項1から6までに定義した組成物の蒸気と直接接触させるかまたは接触させることを含む、節足動物防除方法、好ましくは昆虫防除方法。
【請求項8】
節足動物、好ましくは昆虫を防除するための、請求項1から6までのいずれか1項に定義した組成物の使用。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載の節足動物防除組成物、好ましくは昆虫防除組成物を含む、節足動物防除物品、好ましくは昆虫防除物品。
【請求項10】
消費者製品である、請求項9記載の節足動物防除物品。
【請求項11】
液体もしくは固形の洗剤、衣類柔軟剤、液体もしくは固形の芳香促進剤、布地用リフレッシュ剤、アイロニングウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品等のファブリックケア製品;ヘアケア製品(例えばシャンプー、カラーリング用調製物またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪用製品)、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品等のボディケア製品;化粧品(例えばスキンクリームもしくはローション、バニシングクリーム、またはデオドラントもしくは制汗剤(例えばスプレーまたはロールオン)、除毛剤、日焼け剤もしくは日焼け止め剤もしくは日焼け後製品、ネイル製品、皮膚クレンジング、メイク用品);スキンケア製品(例えば石鹸、シャワーもしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生用品、またはフット/ハンドケア製品);家庭内空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/もしくは公共スペース(ホール、ホテル、モール等)において使用可能なエアフレッシュナーもしくは「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー等のエアケア製品;またはカビ除去剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば床、浴室、トイレまたは窓掃除用)洗剤等のホームケア製品;レザーケア製品;ポリッシュ、ワックスもしくはプラスチッククリーナー等のカーケア製品;キャンドル;スプレー;コイル、電気ディフューザー、ピエゾディフューザー、リキッド電気ディフューザー、ディフューザー、ゴム隔膜、リストバンド、パッチ、首輪、耳標、衣服、布地、紙、バイオ炭、ボール紙、セルロースパッド、蚊帳、網戸、カーテン、ニスまたは塗料である、請求項9または10記載の節足動物防除物品。
【請求項12】
エアケア製品、好ましくは電気ディフューザーである、請求項9から11までのいずれか1項記載の節足動物防除物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節足動物防除組成物、節足動物を防除する方法および使用ならびに節足動物防除組成物を含む節足動物防除物品に関する。
【0002】
背景
ヒトを含む多くの哺乳動物が、節足動物の活動に悩まされている。例えば蚊およびマダニ等の一部の節足動物は、刺咬し、その結果として、痒み、疾患および/もしくは病原菌の伝播を生じるか、または他の疾患および/もしくは病態の原因となる恐れがあるため、哺乳動物、特にヒト被験体等の脊椎動物にとって望ましくない。同様に、他の害虫は、食品、飼料または原料として使用される植物材料を摂食、寄生または破壊することにより、間接的に人間の活動または社会に影響を及ぼす。さらに、害虫は、人間が使用または建設する家具または建造物の破壊または弱体化に関与する。これらの損害は、節足動物に直接起因するか、またはそのような問題を引き起こす病原菌をまき散らすその能力による場合がある。
【0003】
節足動物防除組成物は、活性物質を含み、皮膚、衣服または他の表面に適用した場合に、節足動物がその表面にとまるかまたは登るのを阻止することができる。節足動物防除剤は、マラリア等の、節足動物が媒介する疾患の発生の予防および制御等に役立つ。
【0004】
しかしながら、既知の節足動物防除剤および組成物の幾つかは、負の効果、すなわち、匂いがないもしくは悪臭がするといった負の嗅覚特性を有するか、または弱い節足動物防除特性、特に節足動物忌避特性しか有しないといった特定の欠点を有する。
【0005】
良好な嗅覚特性、すなわち、良好な快楽効果と、良好な節足動物防除特性、特に節足動物忌避特性との両方を有する節足動物防除組成物を提供する必要がある。
【0006】
従来技術には、本発明による節足動物防除組成物は開示または示唆されていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】刺激物で処理したチャンバから経時的に逃げた蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)のパーセンテージを示す図である。4種類の刺激物は、溶媒のプロパン-1,2-ジオール(灰色の三角および点線)、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(中間の灰色の菱形)、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール(薄灰色の四角)および1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン(黒色の丸)であった。各刺激物は、蚊が入った処理チャンバに強制蒸発システムにより40分にわたって注入され、蚊が未処理の避難チャンバへと移動した。各点は、未処理のチャンバ内の蚊の平均数(それぞれn=57、6、4および4)±SDを10分間隔で表す。
【0008】
詳細な説明
本発明は、下式の化合物をその立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形態で含む、節足動物防除組成物、好ましくは昆虫防除組成物を提供する。
【化1】
[式中、Rは水素原子、C1~3アルキル基もしくはC(=O)(O)’であり、nは0もしくは1であり、R’はC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アセチル基、ホルミル基、ニトリル基、メチル基もしくはメトキシ基であり、Rは水素原子、C4~7オキサシクロアルキルもしくはオキサシクロアルケニル基(C1~3アルキルもしくはメチレン基で各々任意に置換されていてもよい)、C1~5アルキルもしくはC2~5アルケニル基(オキソ基、COOH基、アセテート基、COOMe基、COOEt基もしくはOR’基により各々任意に置換されていてもよい)であり、R’は水素原子もしくはC1~10アルキル基もしくはC2~10アルケニル基であり、Rは水素原子もしくはC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、C2~3アルケニル基、ヒドロキシメチル基もしくはOR’基であり、R’は水素原子もしくはC1~3アルキル基であり、またはRおよびRは、一緒になった場合、CHC(=O)CH基、メタンジイル基もしくは2-オキソプロパン-1,1-ジイル基であり、
ただし、
- Rが水素原子である場合、R、RおよびRは水素原子ではなく、
- Rが水素原子であり、Rが水素原子またはメチル基であり、かつRがメチル基である場合、Rは非置換C1~5アルキルまたはC1~5アルケニル基ではなく、
- Rがホルミル基である場合、RおよびRはメチル基ではなく、Rは水素原子ではなく、
- Rが水素原子であり、かつRがメトキシ基である場合、Rはホルミル基、アセチル基または2-カルボキシビニル基ではなく、
- Rがメトキシ基である場合、Rはプロパ-1-エン-1-イル基ではなく、
- 4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、4-ブトキシメチル-2-メトキシフェノール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドおよび3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸は除外される]
【0009】
好ましくは、Rは水素原子、C1~3アルキル基もしくはC(=O)(O)’であり、nは0もしくは1であり、R’はC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、ヒドロキシ基もしくはメトキシ基であり、Rは水素原子、C4~7オキサシクロアルキルもしくはオキサシクロアルケニル基(C1~3アルキルもしくはメチレン基で各々任意に置換されていてもよい)、C1~5アルキルもしくはC2~5アルケニル基(オキソ基、COOH基もしくはOR’基により各々任意に置換されていてもよい)であり、R’はC1~10アルキル基もしくはC2~10アルケニル基であり、Rは水素原子もしくはC1~3アルキル基であり、Rは水素原子、C2~3アルケニル基もしくはOR’基であり、R’はC1~3アルキル基であり、またはRおよびRは、一緒になった場合、CHC(=O)CH基、メタンジイル基もしくは2-オキソプロパン-1,1-ジイル基である。
【0010】
「任意に」という用語は、任意に置換される或る特定の基が、或る特定の官能基で置換されていてもまたは置換されていなくてもよいことであると理解される。
【0011】
「アルキル」および「アルケニル」という用語は、分岐および直鎖のアルキルおよびアルケニル基を含むと理解される。「アルケニル」および「オキサシクロアルケニル」という用語は、1つまたは2つのオレフィン性二重結合、好ましくは1つのオレフィン性二重結合を含むと理解される。
【0012】
「オキソ基」という用語は、式=Oの任意の基、すなわち、ケトンまたはアルデヒド等を含むと理解される。言い換えると、オキソ基によって任意に置換されたC1~5アルキル基は、1~5個の炭素を有するアルキル基であり、この炭素原子の1つ、さらには末端炭素が、2個の水素原子の代わりに=O基によって置換されていてもよい。
【0013】
「オキサシクロアルキルまたはオキサシクロアルケニル基」という用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、ヘテロ原子が酸素である複素環基、例えばピラニルまたはフラニル基を意味する。
【0014】
明確にするために、「その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物」または同様の表現は、当業者に理解される通常の意味、すなわち、式(I)の化合物が純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーであり得ることを意味する。言い換えると、式(I)の化合物は、1つまたは幾つかの立体中心を有することがあり、上記立体中心のそれぞれが、2つの異なる立体化学(例えばRまたはS)を有し得る。式(I)の化合物は、さらには純粋なエナンチオマーの形態であってもよく、またはエナンチオマーもしくはジアステレオ異性体の混合物の形態であってもよい。式(I)の化合物は、ラセミ体またはスケールミック(scalemic)体であってもよい。したがって、式(I)の化合物は、1つの立体異性体であっても、または様々な立体異性体を含むか、もしくはそれらからなる物質の組成物の形態であってもよい。
【0015】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、上記式(I)の化合物は、少なくとも1つの二重結合を有することができ、そのEもしくはZ異性体、またはそれらの混合物の形態であってもよく、例えば本発明は、同じ化学構造を有するが、二重結合の配置が異なる1つ以上の式(I)の化合物からなる物質の組成物を含む。特に、化合物(I)は、異性体EおよびZからなる混合物の形態であってもよく、上記異性体Eは、全混合物の少なくとも50%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも70%、あるいは少なくとも75%を占める(すなわち、75/25~100/0で含まれる混合物E/Z)。
【0016】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは、R’がC1~3アルキル基であるOR’基であってもよい。言い換えると、式(I)の化合物は、式
【化2】
[式中、R、R、R、RおよびR’は、上で定義したのと同じ意味を有する]
の化合物である。特に、R’はメチルまたはエチル基である。さらに詳細には、R’はメチル基である。
【0017】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは水素原子またはC1~3アルキル基であってもよい。特に、Rは水素原子、またはメチルもしくはエチル基であってもよい。さらに詳細には、Rは水素原子またはメチル基であってもよい。
【0018】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは水素原子であってもよい。
【0019】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rはメチルまたはエチル基であってもよい。さらに詳細には、Rはメチル基であってもよい。
【0020】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは水素、C4~5オキサシクロアルキルまたはオキサシクロアルケニル基(メチルまたはメチレン基で任意に置換されていてもよい)、C1~4アルキルまたはC2~4アルケニル基(オキソ基、COOH基またはOR’基により各々任意に置換されていてもよい)であってもよく、R’はC1~10アルキル基である。
【0021】
本発明者らの知る限り、本発明の第1の態様の組成物は、節足動物防除特性を有するものとして、これまで開示または推測されていない。さらに、本明細書で特許請求される組成物は、節足動物防除特性および望ましい快楽プロファイルの両方を有し、したがって、単一の組成物中で賦香特性および節足動物防除特性の両方を兼ね備える。
【0022】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、化合物は、2,6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール(CAS:20675-95-0)、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール(CAS:98954-35-9)、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン(CAS:487-12-7)、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン(CAS:41564-88-9)、1,2,4-トリメトキシベンゼン(CAS:135-77-3)、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール(CAS:6766-82-1)、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール(CAS:6638-05-7)、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸(CAS:90-50-6)、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸(CAS:306-08-1)、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート(CAS:148149-47-7)、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール(CAS:5653-67-8)、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド(CAS:2103-57-3)、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド(CAS:86-81-7)、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール(CAS:5595-79-9)、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール(CAS:71119-07-8)、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン(CAS:93-16-3)、1,2,3-トリメトキシ-5-メチルベンゼン(CAS:6443-69-2)、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール(CAS:6638-05-7)、1-(2,3,4-トリメトキシフェニル)エタノン(CAS:13909-73-4)、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン(CAS:28940-11-6)、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼン(CAS:82895-28-1)、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン(CAS:41564-88-9)、2,3,4-トリメトキシベンゾニトリル(CAS:43020-38-8)、3-エトキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(CAS:1131-52-8)、2,3,4-トリメトキシフェノール(CAS:19676-64-3)、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン(CAS:498-02-2)、2-メトキシ-4-(4-メチリデンオキサン-2-イル)フェノール(CAS:128489-04-3)、4-(3,6-ジヒドロ-4-メチル-2H-ピラン-2-イル)-2-メトキシ-フェノール(CAS:128489-02-1)およびそれらの混合物からなるリストから選択される。
【0023】
より好ましくは、化合物は、6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール(CAS:20675-95-0)、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール(CAS:98954-35-9)、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン(CAS:487-12-7)、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン(CAS:41564-88-9)、1,2,4-トリメトキシベンゼン(CAS:135-77-3)、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール(CAS:6766-82-1)、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール(CAS:6638-05-7)、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸(CAS:90-50-6)、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸(CAS:306-08-1)、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート(CAS:148149-47-7)、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール(CAS:5653-67-8)、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド(CAS:2103-57-3)、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド(CAS:86-81-7)、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール(CAS:5595-79-9)、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール(CAS:71119-07-8)およびそれらの混合物からなるリストから選択される。
【0024】
本発明の更なる態様は、2-ホルミル-5-メトキシフェニルアセテート[CAS:62536-84-9]を含む節足動物防除組成物、好ましくは昆虫防除組成物を提供する。
【0025】
本明細書で提供される本発明の実施形態の各々が、100%の本発明の組成物を含まない場合があることが理解され得る。そのような状況では、例えば、快楽プロファイルをさらに改善するか、または組成物の消費者による特定の用途に快楽プロファイルを適合させるための付加的な成分、本発明の組成物の送達を助けるための溶媒、組成物の完全性および保存性を改善するための安定剤および保存料を、消費者による予想される使用に対する必要性に応じて使用することができる。更なる成分としては、以下に提示するような付加的な節足動物防除共成分が挙げられる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、節足動物防除組成物は、良好な快楽プロファイルを有する。
【0027】
本発明者らは、節足動物防除組成物が許容可能な快楽プロファイルを有することが望ましい場合があることをよく理解している。これは、組成物が消費者にごく近接して使用されることがあり、理解され得るように、任意の不快な快楽プロファイルが組成物の使用を阻害する可能性があるためである。
【0028】
「節足動物」という用語は、当該技術分野の当業者にとって通常の意味を有する。節足動物には、体節性の体および関節肢を有する無脊椎動物、例えば昆虫、クモ形類および甲殻類が含まれる。節足動物は、通常、間隔をおいて脱皮するキチン質外骨格と、腹側の神経節鎖に接続する背側前部の脳とを有する。
【0029】
本発明を理解する上での節足動物は、望ましくない、すなわち、空気中、物品の表面、植物の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面上でのそれらの存在が望ましくない節足動物に関する。好ましくは、望ましくない節足動物は、植物および動物に影響を与える害虫節足動物、例えばアザミウマ、アブラムシ、甲虫、蛾、コナカイガラムシ、カイガラムシ等、より好ましくは動物に影響を与える害虫節足動物、例えばアリ、シロアリ、ゴキブリ、ハエ等、さらに好ましくは脊椎動物に影響を与える吸血節足動物、例えばサシバエ、トコジラミ、サシガメ、ノミ、シラミ、蚊およびマダニ、さらに好ましくは蚊およびマダニである。
【0030】
節足動物の存在が望ましくない理由は、空気中の節足動物の存在が被験体にとって不快であること、物品への節足動物の接触が疾患および/もしくは病原菌を移すこと、または節足動物が生物を刺咬し、痒み、疾患および/もしくは病原菌の伝播を生じさせること、または節足動物の摂食が他の疾患および/または病態の原因となる恐れがあることであり得る。
【0031】
特定の実施形態では、節足動物は昆虫またはクモ形類、好ましくは昆虫である。
【0032】
「昆虫」という用語は、当該技術分野の当業者にとって通常の意味を有する。昆虫は、明確な頭部、胸部および腹部、3対のみの脚、通例、1対または2対の翅によって説明される。
【0033】
特定の実施形態では、昆虫は蚊、サシバエ、トコジラミ、サシガメ、ノミ、シラミ、アリ、シロアリ、ゴキブリ、ハエ、アブラムシ、甲虫、アザミウマ、蛾、コナカイガラムシまたはカイガラムシ、より好ましくは蚊である。
【0034】
「クモ形類」という用語は、当該技術分野の当業者にとって通常の意味を有する。クモ形類は、2つの領域に分けられる体節性の体を有し、前方には4対の脚があるが、触角はない。
【0035】
特定の実施形態では、クモ形類はマダニ、ダニ、ツツガムシまたはクモ、より好ましくはマダニである。
【0036】
「防除」、「節足動物防除」、「昆虫防除」または「クモ形類防除」等の表現は、当該技術分野の当業者にとって通常の意味を有する。
【0037】
本発明の文脈における「防除する」は、節足動物を誘引、抑制、駆除または忌避し、好ましくは節足動物を抑制または忌避し、さらに好ましくは節足動物を忌避する、本発明による節足動物防除組成物の能力を定義するものである。
【0038】
本発明による「誘引する」は、節足動物誘引化合物または組成物が適用された、例えば空気中、物品の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物の表面上の節足動物誘引源、好ましくは捕獲装置等の物品において節足動物の接触または存在を増大または促進する、本発明による節足動物誘引組成物の能力を定義するものである。
【0039】
本発明による「忌避性」は、節足動物忌避化合物または組成物が適用された、例えば空気中、物品の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面上の節足動物忌避源において節足動物の接近または存在を最小化、低減、阻止または防止する、本発明による節足動物忌避組成物の能力を定義するものである。
【0040】
本発明による「抑制する」は、節足動物抑制化合物または組成物が適用された、例えば空気中、物品の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面上の節足動物抑制源において節足動物の接触または存在を最小化、低減、阻止または防止する、本発明による節足動物抑制組成物の能力を定義するものである。通例、節足動物抑制化合物または組成物の最初の味見後に、害虫のその後の摂食または産卵または物理的接触を妨げる摂食抑制物質として使用した場合に抑制効果が示される。
【0041】
本発明による「空間忌避性」は、節足動物忌避化合物または組成物が適用された、例えば空気中、物品の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面上の節足動物忌避源において節足動物の接近または存在を最小化、低減、阻止または防止する、本発明による節足動物忌避組成物の能力を定義するものである。通例、空間忌避効果は、空気または液体中に放出、噴霧、散布または拡散された空間忌避化合物または組成物が、空間忌避化合物または組成物が存在する区域に害虫が侵入するのを妨げる場合に示される。したがって、忌避は離れて起こり、害虫は必ずしも防御のために処理された物品または生物と直接接触して侵入するわけではない。
【0042】
本発明による「駆除する」は、節足動物駆除化合物または組成物が適用された節足動物駆除源、例えば空気中、物品の表面、または脊椎動物、例えばヒト被験体もしくは他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面上で節足動物を駆除する、本発明による節足動物駆除組成物の能力を定義するものである。節足動物駆除組成物を植物、動物またはヒト被験体に適用する場合、節足動物を駆除するが、被験体を殺傷しない量で適用される。
【0043】
特定の実施形態では、節足動物防除組成物は節足動物忌避組成物、好ましくは昆虫忌避組成物、より好ましくは蚊忌避組成物である。
【0044】
特定の実施形態では、節足動物防除源は、物品、好ましくはキャンドル、コイル、エアケア製品、好ましくは電気ディフューザー、リストバンド、パッチ、首輪、耳標、衣服、布地、紙、バイオ炭、ボール紙、セルロースパッド、蚊帳、網戸、カーテン、家具、壁、地面もしくは塗料の近傍の表面および/もしくは空気、または被験体の表面、好ましくは脊椎動物、例えばヒト被験体または他の哺乳動物、好ましくはヒト被験体の表面、すなわち、スプレー、エアロゾル、クリーム、ロールオン、リストバンド、ローション、石鹸、シャンプー、日焼け止め剤もしくはパッチ等の製品で処理されたヒト被験体の皮膚、または洗濯用粉末洗剤、液体洗剤、スプレー、ローション、パウダー等の製品で処理された布地である。
【0045】
本発明による節足動物防除効果は、Kroeber T, Kessler S, Frei J, Bourquin M, Guerin PM. An in vitro assay for testing mosquito controlling compounds employing a warm body and carbon dioxide as a behavioral activator. J Am Mosq Control Assoc. 2010; 26:381-386に定義されているような適合した温熱体アッセイ(Warm Body assay)を用いて蚊に対して決定される。更なる情報を添付の実施例に提示する。
【0046】
本発明による防除効果、忌避および空間忌避は、ネッタイシマカのアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)ロックフェラー株に対する温熱体アッセイを試験することによって決定される。A.アエジプティ(A.aegypti)は、防除試験のモデル生物であり、一般に節足動物防除化合物に対して低い感受性を示す、非常に攻撃的であり、好人性の蚊の一種であることから世界保健機関(WHO)によって推奨されるモデル生物の1つである。上述の文献で言及されているように選択した、宿主を求める5~10日齢の一様な日齢の雌に対して防除効力の観察を行った。試験した空腹の雌は、10%糖溶液にアクセスできたが、血液は与えなかった。更なる情報を添付の実施例に提示する。
【0047】
公表されているプロトコルは、とまった蚊を手作業ではなく、自動計数ソフトウェアを用いて自動的に計数するように適合されており、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)からA.アエジプティ(A.aegypti)に変更したことで、大きさの違いにより試験ケージに入れられる蚊の数が減少し(すなわち、50匹の代わりに30匹の蚊)、A.アエジプティ(A.aegypti)が昼行性の蚊であることから照明が増加した(すなわち、4ルクスの代わりに150ルクス)。更なる情報を添付の実施例に提示する。
【0048】
また、本発明による防除効果、忌避および空間忌避は、ヒト皮膚に対する蚊の忌避剤の効力試験のためのWHOガイドライン(WHO/CDS/NTD/WHOPES/2009.4)から採用したアームインボックス法(arm in the box method)に従って決定する。試験物質に対する100匹の空腹の雌の蚊のA.アエジプティ(A.aegypti)の態勢は、ケージ(40×40×40cm)に30秒間挿入した際の未処理の腕(陰性対照)と処理した腕との結果を3回比較することによって評価する。更なる情報を添付の実施例に提示する。
【0049】
マダニ等のクモ形類を忌避する物質の活性は、Kroeber T, Bourquin M, Guerin PM. 2013. A standardized in vivo and in vitro test method for evaluating tick repellents. Pestic. Biochem. Phys. 107(2):160-168に定義されているin vitro温熱プレートアッセイ(Warm Plate Assay)のプロトコルを用いて評価することができる。
【0050】
特定の実施形態では、物質の量および選択は、組成物の節足動物防除活性および快楽特性の両方に寄与、増強または改善するように行われる。
【0051】
一実施形態では、節足動物防除組成物は、節足動物防除共成分をさらに含んでいてもよい。「節足動物防除共成分」とは、本明細書に記載される組成物の節足動物防除効果に付加的な節足動物防除利益を付与することが可能な成分と理解される。
【0052】
一実施形態では、本明細書に記載される物質は、例えば組成物内の節足動物防除共成分の量を低減することによって、節足動物防除共成分の節足動物防除効果を改変、増強または改善することが可能である。このことは、節足動物防除共成分が或る特定の用量でヒト被験体にとって有害である場合、または節足動物防除共成分が或る特定の用量で負の嗅覚特性を有する場合に特に有益であり得る。
【0053】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載される物質と節足動物防除共成分との組合せは、相乗的な節足動物防除効果をもたらす。
【0054】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載される物質と節足動物防除共成分との組合せは、その単一成分と比較して、組成物全体の改変された、快適な、増強されたまたは改善された嗅覚印象をもたらす。
【0055】
一実施形態によれば、節足動物防除共成分は、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR3535)、パラ-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン(ピカリジン)、中国シダーウッド油、テキサスシダーウッド油、バージニアシダーウッド油、桂皮油、シトロネラ油、コーンミント油、分画水和環化キンボポゴン・ウィンテリアヌス(Cymbopogon winterianus)油、デカン酸、水和環化ユーカリプツス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)油、オイゲノール、ニンニク油、ゲラニオール、ゼラニウム油、ラベンダー、ラバンデュラ・ハイブリダ(Lavandula hybrida)油、ラバンジン油、レモン油、レモングラス油、インドセンダン抽出物、メトフルトリン、シス-およびトランス-p-メンタン-3,8-ジオールの混合物、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド、ノナン酸、ローズマリー油、タイム油、冬緑油、2,3,4,5-ビス(ブチル-2-エン)テトラヒドロフルフラール(MGK Repellent 11)、シネオール、シンナムアルデヒド、シトロネラール、シトロネロール、クマリン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、アントラニル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、エチルバニリン、ユーカリ油、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、ヒドロキシシトロネラール、ライム油、リモネン、リナロール、アントラニル酸メチル、ミント油、ミルセン、ニーム油、サビネン、β-カリオフィレン、(1H-インドール-2-イル)酢酸、アネトール、アニス油、バジル油、ベイ油、樟脳、サリチル酸エチル、常緑植物油(Evergreen oils)(パイン油)、(1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,3-ジオキソ-2H-イソインドール-2-イル)メチル2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)シクロプロパンカルボキシレート(d-テトラメトリン)、3-アリル-2-メチル-4-オキソシクロペンタ-2-エニル-2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)-シクロプロパンカルボキシレート(d-アレスリン)、α-シアノ-3-フェノキシベンジル,3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(シペルメトリン)、2-メチル-4-オキソ-3-(プロパ-2-イニル)シクロペンタ-2-エン-1-イル2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エニル)シクロプロパンカルボキシレート(プラレトリン)、アセタミプリド、アザジラクチン、ベンジオカルブ、ビフェントリン、ホウ酸、クロルピリホス、デルタメトリン、ダイアジノン、ジクロルボス、オイゲノール、フィプロニル、イミダクロプリド、リナロール、マラチオン、マルトデキストリン、メトフルトリン、ニコチン、ペルメトリン、ピレトリン、ピレスロイド、ロテノン、二酸化ケイ素(珪藻土)、S-メトプレン、スピノサド(スピノシンA)、スピノシンD、テトラメトリン、トランスフルトリン、1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン、3-ブチリデン-2-ベンゾフラン-1-オン、4-エテニル-2-メトキシフェノール、コニャックグリーン油、ラブダナム抽出物(シスタス属種)、5-ペンチルオキソラン-2-オン、クロメン-2-オン、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、2-メチル-5-プロパ-1-エン-2-イルシクロヘキサ-2-エン-1-オン、メンサ・スピカタ(Mentha spicata)油、6-ヘキシルオキサン-2-オン、5-メチル-2-プロパン-2-イルシクロヘキシル]アセテート、ニゲラ・ダマスケナ(Nigella damascena)油、2-フェニルエタノール、6-ペンチルオキサン-2-オン、(4-メトキシフェニル)酢酸メチル、シジギウム・アロマティクム(Syzygium aromaticum)油、3,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロクロメン-2-オン、3,7,7-トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エン、2-フェニルエチル2-メチルプロパノエート、メチル2-(3-オキソ-2-ペンタ-2-エニルシクロペンチル)アセテート、4-(2-メトキシプロパン-2-イル)-1-メチルシクロヘキセン、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)油、2-メトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール、2-メチル-3-(4-プロパン-2-イルフェニル)プロパナール、(4-メトキシフェニル)メタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
特定の実施形態では、節足動物防除共成分は、組成物の総重量を基準として0.02~80重量%の量、より好ましくは0.05~70重量%の量、さらに好ましくは0.1~60重量%の量で含まれる。それにより、組成物が組成物の総重量を基準として少なくとも0.02重量%、少なくとも0.05重量%または少なくとも0.1重量%の最小量、かつ80重量%以下、70重量%以下または60重量%以下の最大量で節足動物防除共成分を含むことが理解される。
【0057】
特定の実施形態では、上述のような組成物中の物質の量の限度内で、本発明の組成物中の物質および節足動物防除共成分は、90:10~10:90の重量範囲、好ましくは80:20~20:80の重量範囲、より好ましくは65:35~35:65の重量範囲、最も好ましくは60:40~40:60の重量範囲で組成物中に含まれる。本明細書において、物質および節足動物防除共成分が、90:10~20:80、好ましくは35:65、より好ましくは40:60、80:20~10:90、好ましくは35:65、より好ましくは40:60、65:35~10:90、好ましくは20:80、より好ましくは40:60、または40:60~10:90、好ましくは20:80、より好ましくは35:65等、以上で言及した任意の重量範囲の組合せで組成物中に含まれ得ることも理解される。
【0058】
一実施形態では、節足動物防除組成物は、香料成分をさらに含んでいてもよい。香料成分は、組成物の嗅覚特性に寄与、改変、増強または改善すると理解されるが、組成物の節足動物防除効果には寄与、増強または改善しない。そのような快楽効果をもたらし、本発明の組成物に使用するのに適した香料成分は、当該技術分野で既知であり、当業者はこれを容易に特定することができる。
【0059】
節足動物防除組成物は、担体をさらに含んでいてもよい。「担体」とは、処理すべき場所もしくは他の対象へのその適用、またはその保管、輸送および/もしくは取扱いを容易にするために活性化合物が混合または配合される材料と理解される。上記担体は、無機もしくは有機のもの、または合成した天然起源のものであってもよい。上記担体は液体であっても、または固体であってもよい。
【0060】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち、溶媒と界面活性剤との系、または香料で一般的に使用される溶媒を挙げることができる。一般的な溶媒の性質および種類の詳細な説明を網羅的にすることはできない。しかしながら、非限定的な例として、ブチレンまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、クエン酸トリエチル、2-メチルプロパ-1-エンおよび2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、またはそれらの混合物等の溶媒を挙げることができ、ジプロピレングリコール、2-メチルプロパ-1-エンおよび2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ならびにそれらの混合物が特に適している。
【0061】
担体の両方を含む組成物については、上で規定したもの以外の適切な担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくは他のテルペン、Isopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)の商標で知られているもの等のイソパラフィン、またはDowanol(商標) DPMA(グリコールエーテルアセテート)のようにDowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)の商標で知られているもの等のグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、またはAugeo(登録商標) Clean Multi(イソプロピリデングリセロール;供給元:Solvay)、またはCremophor(登録商標)RH 40(供給元:BASF)の商標で知られているもの等の水添ヒマシ油であってもよい。
【0062】
固体担体は、節足動物防除組成物また節足動物防除組成物のうちの一部の要素が化学的または物理的に結合することができる材料を指すことが意図されている。一般的に、そのような固体担体は、組成物を安定化させるために、または組成物もしくは一部の成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体の使用については、当該技術分野で現在使用されており、当業者は望まれる効果に到達させる方法を認識している。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸収性ガムまたはポリマーまたは無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木材系材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク、またはゼオライトを挙げることができる。
【0063】
固体担体の他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例には、単糖、二糖もしくは三糖、天然もしくは加工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質、もしくはペクチン等の壁形成材料および可塑化材料、または他のそのような材料を含めることができる。カプセル化は当業者に既知のプロセスであり、例えば噴霧乾燥、凝集、さらには押出し等の技術を使用することによって行うことができ、またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0064】
固体担体の非限定的な例としては、特に、任意にポリマー系安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーション、または全て一緒に行うことによって誘発される(上記技術は全て従来技術で説明されている)、相分離プロセスのような技術を使用する、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素もしくはポリウレタンタイプの樹脂、またはそれらの混合物(上記樹脂は全て当業者に既知である)を用いたコア-シェルカプセルを挙げることができる。
【0065】
樹脂は、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒド、およびそれらの混合物)と、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾール等、ならびにそれらの混合物等のアミンとの重縮合によって製造することができる。あるいは、商標Urac(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(供給元:BASF)で市販されているもの等の予備成形された樹脂であるアルキロール化ポリアミンを使用することができる。
【0066】
他の樹脂は、グリセロールのようなポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートの三量体のようなポリイソシアネートと、トリメチロールプロパンとの重縮合によって得られるもの(Takenate(登録商標)の商標で知られる;供給元:Mitsui Chemicals)であり、中でも、キシリレンジイソシアネートの三量体と、トリメチロールプロパンと、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとの重縮合によって得られるものである。
【0067】
アミノ樹脂の重縮合、すなわち、メラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合によるカプセル化に関する多くの論文が発表されている。そのような論文には、そのようなコア-シェルマイクロカプセルの調製に影響を及ぼす様々なパラメーターが既に記載されている。これらの文献は当業者に既知であり、その内容が本発明の分野で使用される。
【0068】
本発明は、節足動物、好ましくは昆虫を、以上に記載された組成物の蒸気と直接接触させるかまたは接触させることを含む、節足動物防除方法、好ましくは昆虫防除方法にも関する。
【0069】
明確にするために、本発明による節足動物防除組成物は、噴霧、塗布、着用または拡散のような当該技術分野で既知の通常の方法によって空気、物品の表面、物品の表面近傍の空気、または被験体の表面に適用することができる。
【0070】
特定の実施形態では、本発明による節足動物防除組成物は、物品の表面、物品の表面近傍の空気、または動物もしくは被験体の表面に適用される。
【0071】
特定の実施形態では、物品は、以下に記載される節足動物防除物品であってよく、特にキャンドル、コイル、エアケア製品、好ましくは電気ディフューザー、リストバンド、パッチ、首輪、耳標、衣服、布地、紙、バイオ炭、ボール紙、セルロースパッド、蚊帳、網戸、カーテン、家具、塗料、壁、地面、スプレー、エアロゾル、クリーム、ロールオン、リストバンド、ローション、石鹸、シャンプー、日焼け止め剤、洗濯用粉末洗剤、液体洗剤、スプレー、ローション、パウダーであってよい。
【0072】
特定の実施形態では、被験体の表面は、ヒトまたは動物被験体の表面であり、好ましくは、表面はヒト被験体、すなわち、ヒト被験体の皮膚である。
【0073】
本発明は、節足動物、好ましくは昆虫を防除するための、以上に定義した組成物の使用にも関する。
【0074】
本発明は、以上に記載した節足動物防除組成物を含む節足動物防除物品にも関する。
【0075】
「節足動物防除物品」とは、それが適用される表面または空間(例えば皮膚、毛髪、布地または住宅表面)に対して少なくとも節足動物防除効果をもたらす消費者製品を指すと理解される。言い換えると、本発明による節足動物防除物品は、機能的配合物と、任意に所望の消費者製品に対応する付加的な効果剤と、節足動物防除量の物質の少なくとも1つとを含む消費者製品である。明確にするために、上記消費者製品は食べられない製品である。
【0076】
消費者製品の構成要素の性質および種類は、本明細書でのより詳細な説明を必要とするものではなく、いずれの場合にも包括的ではなく、当業者は一般的な知識に基づき、上記製品の性質および所望の効果に応じてそれらを選択することができる。
【0077】
適切な消費者製品の非限定的な例としては、ファインパフューム、スプラッシュもしくはオードパフューム、コロン、もしくはシェーブもしくはアフターシェーブローションもしくはクリームもしくはジェル等の香水;液体もしくは固形の洗剤、洗濯用粉末洗剤、衣類柔軟剤、液体もしくは固形の芳香促進剤、布地用リフレッシュ剤、アイロニングウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品等のファブリックケア製品;ヘアケア製品(例えばシャンプー、カラーリング用調製物またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪用製品)、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品等のボディケア製品;化粧品(例えばスキンクリームもしくはローション、バニシングクリーム、またはデオドラントもしくは制汗剤(例えばスプレーまたはロールオン)、除毛剤、日焼け剤もしくは日焼け止め剤もしくは日焼け後製品、ネイル製品、皮膚クレンジング、メイク用品);またはスキンケア製品(例えば石鹸、シャワーもしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生用品、またはフット/ハンドケア製品);家庭内空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/もしくは公共スペース(ホール、ホテル、モール等)において使用可能なエアフレッシュナーもしくは「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー等のエアケア製品;またはカビ除去剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば床、浴室、トイレまたは窓掃除用)洗剤等のホームケア製品;レザーケア製品;ポリッシュ、ワックスもしくはプラスチッククリーナー等のカーケア製品;キャンドル;スプレー、コイル、エアケア製品、ピエゾディフューザー、リキッド電気ディフューザー、ディフューザー、ゴム隔膜、リストバンド、パッチ、首輪、耳標、衣服、布地、紙、バイオ炭、ボール紙、セルロースパッド、蚊帳、網戸、カーテン、ニスもしくは塗料、より好ましくはキャンドル、スプレー、コイル、電気ディフューザー、ピエゾディフューザー、リキッド電気ディフューザー、ディフューザー、ゴム隔膜、リストバンド、パッチ、首輪、耳標、衣服、布地、紙、バイオ炭、ボール紙、セルロースパッド、蚊帳、網戸、カーテン、ニスまたは塗料が挙げられる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、消費者製品はエアケア製品、好ましくは電気ディフューザーである。本発明のこの実施形態では、節足動物防除組成物、好ましくは昆虫防除組成物中の物質は、或る特定の量で存在する。
【0079】
上述の消費者製品の幾つかは、物質の構成要素にとって攻撃的な媒体となることがあるため、例えばカプセル化により、または酵素、光、熱もしくはpH変化等の適切な外部刺激によって本発明の成分を放出するのに適した別の化学物質と化学的に結合することにより、後者を早期の分解から保護することが必要な場合もある。
【0080】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに詳細に説明する。
【実施例
【0081】
1.本明細書で用いた実験プロトコルおよび方法
「温熱体アッセイ」は、T0において3~15濃度での蚊に対する忌避効力をスクリーニングするために用いられる小規模試験である。
【0082】
アエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)は、防除試験のモデル生物であり、一般に節足動物防除化合物に対して低い感受性を示す、非常に攻撃的であり、好人性の蚊の一種であることから世界保健機関(WHO)によって推奨されるモデル生物の1つである。アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)も、好人性であり、マラリアを媒介することからモデル生物である。
【0083】
本発明による防除効果は、Kroeber T, Kessler S, Frei J, Bourquin M, Guerin PM. 2010. J Am Mosq Control Assoc. 26:381-386に定義されているような適合した温熱体アッセイを用いて評価した。このin vitroアッセイでは、忌避効果を評価するために、試験刺激物で処理した魅力的な宿主を模擬する温熱体にとまる蚊の数を測定した。
【0084】
公表されているプロトコルは、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)からアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)に変更したことで、大きさの違いにより試験ケージに入れられる蚊の数が減少し(すなわち、50匹の代わりに30匹の蚊)、A.アエジプティ(A.aegypti)は昼行性の蚊であるため、照明が増加した(すなわち、4ルクスの代わりに150ルクス)ことから適合させた。
【0085】
「二重チャンバアッセイ」は、蚊に対する空間忌避効力を0~40分間、1濃度でスクリーニングするために用いられる小規模試験である。
【0086】
このアッセイの目的は、WHO(2013;ISBN 978 92 4 150502 4)に記載されている空間忌避剤の検証試験をより小規模で再現することであった。
【0087】
このアッセイは、白色の紙で覆われた透明なケージ(1200×755×700mm;約0.63m)からなる。このケージは、壁の中央に位置する正方形の開口部(200×200mm)を有する可塑化紙の壁によって等しい寸法の2つのチャンバに分割される。実験の開始時に、約40匹の2週齢の雌アエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)蚊を右側のチャンバに入れる。蚊がこのチャンバ内で落ち着いた後(5分超)、チャンバ間のドアを開ける。次いで、右側のプレキシガラス壁の中央に設置したL字型テフロンチューブ(40mm)を通して、蚊のチャンバに刺激物を導入する。刺激物は、強制蒸発システム(Chappuis et al, 2015, DOI: 10.1021/acs.est.5b00692)により、1L/分の窒素流中、0.1mL/分の速度で吐出され、9L/分の加湿空気流中で混合された後、L字型テフロンチューブに運ばれる。吸気システム(約150L/分)は、2つのチャンバ間の壁の開口部の上方に設置され(100mmφ)、未処理のチャンバが刺激物で汚染されるのを防ぎ、処理チャンバへの刺激物の蓄積を制限する。これにより、未処理のチャンバは、処理チャンバの刺激物から逃れる蚊の「避難所」を提供する。刺激物注入の開始から10、20、30および40分後に、未処理のチャンバに移動した蚊の数を手作業で計数する。
【0088】
「アームインケージ試験」は、蚊に対する忌避効力をヒトボランティアで評価するために用いられる大規模試験である。
【0089】
アームインボックス法は、ヒト皮膚に対する蚊の忌避剤の効力試験のためのWHOガイドライン(WHO/CDS/NTD/WHOPES/2009.4)から採用した。プローブに対する100匹の空腹の雌の蚊のA.アエジプティ(A.aegypti)の態勢は、ヒトボランティアの未処理の腕(陰性対照)をケージ(40×40×40cm)に30秒間挿入し、プロービング活動を決定することによって評価する。次いで、ヒトボランティアの前腕の皮膚に製品を塗布し(600cm当たり1mL)、5分後に、この腕をケージに挿入し、3分間曝露する。アッセイは、温度(27±2℃)および湿度(80±10%RH)が調節された部屋において3人の異なるヒトボランティアに対して行う。
【0090】
「フリーフライングルームアッセイ(Free Flying Room Assay)」は、蚊に対する空間忌避効力をヒトボランティアで評価するために用いられる大規模試験である。
【0091】
この大規模試験の目的は、防御空間における蚊の存在およびとまる/刺咬する回数を制限することにより、空気中に放出された刺激物がヒトボランティアを防御する傾向を評価することである。試験の実施に用いたプロトコルは、WHO(2013;ISBN 978 92 4 150502 4)に示されるガイドラインに従う。
【0092】
試験開始の1時間前に、25mの一方の部屋に50匹のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)蚊の雌の群を入れた。25mのもう一方の部屋(「処理した部屋」)に製品を適用し、30分間蒸発させた。2つの部屋を隔てる窓をチルトオン方式でさらに30分間開けることで試験を開始した。窓を開けてから20分後に、ボランティアが「処理した部屋」に入り、10分間座り、最後の3分間は前腕を露出することで、プロービング活動(防御効力)を決定した。次いで、連結窓を閉め、各部屋の蚊の数を計数した(空間忌避性)。陰性対照は、刺激物を適用せずに同じ手順に従って行った。各処理および陰性対照の3回の反復試験を3人の異なるボランティアで行った。
【0093】
「温熱プレートアッセイ」は、T0で様々な濃度のマダニに対する忌避効力をスクリーニングするために用いられる小規模試験である。
【0094】
様々な化合物の忌避効力を、細菌およびウイルスの両方の病原体を媒介し得るトウゴママダニ(castor bean tick)のイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)Lに対して評価した。I.リシヌス(I.ricinus)は、Guidance on the European Biological Products Regulation [Vol II, Efficacy - Assessment & Evaluation (Parts B+C), v. 3.0, April 2018]に記載されている推奨されるモデル生物の1つである。忌避効力の観察は、最終段階の若虫に対して行った。
【0095】
忌避効力は、Kroeber T, Bourquin M, Guerin PM. 2013. Pestic. Biochem. Phys. 107(2):160-168に定義されるin vitro温熱プレートアッセイのプロトコルを用いて評価した。
【0096】
2.節足動物に対する抑制および空間忌避効果の結果
温熱体アッセイ
温熱体(28.3cm)を覆うサンドブラスト処理したガラスペトリ皿に、エタノールで様々な濃度に希釈した100μLの化合物を塗布した。温熱体にとまった蚊の数を、各刺激物および対照としての純粋なエタノール(溶媒)について計数した。
【0097】
試験した全ての刺激物により、塗布量の増加に関連して、忌避の明らかな増加が引き起こされた(表1、2、3および4)。これは、蚊の行動に対する様々な製品の生物学的な忌避効果を実際に示している。
【0098】
表1:様々な濃度の様々な刺激物を仕掛けた温熱体にとまる蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)の忌避率。試験した9種類の刺激物は、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン[1123]、2,6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール[1124]、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール[1191]、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン[1975]、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール[1502]、1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-[2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)メチリデンアミノ]エチル]メタンイミン[1980]および(2-メトキシ-4-メチルフェニル)メチルカーボネート[1141]であった。各刺激物で12~15濃度を評価し、欠測データ点はn.d.と記載した。溶媒のみ(0mg/mL)で蚊がとまる平均回数は、2分間で58±3.3回に相当する。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示されるように、測定値に幾らかのばらつきがあるものの、7つ全ての化合物が、濃度により蚊がとまる回数の関連した減少を示した。実際、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンおよび2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノールは、0.0178%を超える全ての濃度で蚊がとまる回数を常に5回/分未満に制限した(表1)。4-アリル-2,6-ジメトキシフェノールは、評価した最低濃度から蚊がとまるのを50%以上減少させることができたため、非常に関連性が高い結果を示した(表1)。試験した最高濃度(1%)では、7種類全ての刺激物、すなわち、1,2,3-トリメトキシ-5-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-[プロパ-1-エニル]フェノール、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-プロピルフェノール、1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-[2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)メチリデンアミノ]エチル]メタンイミン、(2-メトキシ-4-メチルフェニル)メチルカーボネートが、とまる回数を90%超減少させることができた(表1)。
【0101】
表2:様々な濃度の様々な刺激物を仕掛けた温熱体にとまる蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)の忌避率。試験した8種類の刺激物は、2,6-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルフェノール[1127]、1,2,4-トリメトキシベンゼン[1201]、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール[1537]および3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸[1566]であった。各刺激物で9濃度を評価した。溶媒のみ(0mg/mL)で蚊がとまる平均回数は、2分間で52±2.1回に相当する。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示されるように、1,2,4-トリメトキシベンゼンは、試験した最低用量(0.00032%および0.0016%)から蚊がとまる回数を2倍減少させることができた。1%の用量では、試験した4種類全ての刺激物、すなわち、2,6-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルフェノール、1,2,4-トリメトキシベンゼン、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノールおよび3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸が、蚊がとまる回数を29回/分から1回/分未満に減少させることができた(表2)。
【0104】
表3:様々な濃度の様々な刺激物を仕掛けた温熱体にとまる蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)の忌避率。試験した49種類の刺激物は、7-プロピル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン[465]、1-(5-プロピル-1,3-ベンゾジオキソール-2-イル)エタノン[908]、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼン[1125]、1,2,3-トリメトキシ-5-プロパ-1-エニルベンゼン[1126]、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン[1195]、1,4-ジメトキシ-2-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン[1196]、2,3,4-トリメトキシフェノール[1204]、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン[1228]、イソプロピル-2H,4H-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン,7-[1232]、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール[1271]、2-エトキシ-4-メチルフェノール[1303]、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセトアルデヒド[1467]、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン[1468]、(2-エトキシ-4-ホルミルフェニル)2-メチルプロパノエート[1469]、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート[1472]、4-(3,6-ジヒドロ-4-メチル-2H-ピラン-2-イル)-2-メトキシ-フェノールと2-メトキシ-4-(4-メチリデンオキサン-2-イル)フェノールとのブレンド[1474]、2-メトキシ-4-(5-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イル)フェノール[1478]、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノール[1479]、2-メトキシ-4-(1-メトキシエチル)フェノール[1480]、2-メトキシ-4-(オキソラン-2-イル)フェノール[1481]、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール[1482]、4-{3-[(2,6-ジメチル-7-オクテン-2-イル)オキシ]-1-プロペン-1-イル}-2-メトキシフェノール[1519]、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール[1527]、8-ヒドロキシ-7-メトキシクロメン-2-オン[1551]、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸[1553]、2,4-ジメトキシアセトフェノン[1557]、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド[1558]、2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノン[1559]、3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸[1561]、2-(3,4-ジメトキシフェニル)酢酸[1564]、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸[1567]、1,2,3-トリメトキシ-5-プロパ-2-エニルベンゼン[1682]、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート[1698]、1,2,3-トリメトキシベンゼン[1822]、3,4,5-トリメトキシトルエン[1967]、(3,4,5-トリメトキシフェニル)メタノール[1968]、4-エチル-2,6-ジメトキシフェノール[2240]、2,6-ジメトキシフェノール[2244]、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-プロペニルアセテート[2247]、1,2,3-トリメトキシ-5-メチルベンゼン[2250]、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール[2263]、2,3,4-トリメトキシベンゾニトリル[2266]、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド[2267]、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド[2268]、1-(2,3,4-トリメトキシフェニル)エタノン[2269]、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸[2270]、3-エトキシ-4-メトキシベンズアルデヒド[2272]および2-エトキシ-1,3-ジメトキシベンゼン[2276]であった。各刺激物で3濃度を評価した。溶媒のみ(0mg/mL)で蚊がとまる平均回数は、2分間で59±8回に相当する。
【0105】
【表3-1】
【表3-2】
【0106】
最低濃度の0.0016%では、19種類の刺激物、すなわち、2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノン、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2,4-ジメトキシアセトフェノン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール、4-{3-[(2,6-ジメチル-7-オクテン-2-イル)オキシ]-1-プロペン-1-イル}-2-メトキシフェノール、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸、2-メトキシ-4-(1-メトキシエチル)フェノール、(2-エトキシ-4-ホルミルフェニル)2-メチルプロパノエート、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エテノン、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、1,4-ジメトキシ-2-[1-プロペン-1-イル]ベンゼン、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノール、8-ヒドロキシ-7-メトキシクロメン-2-オン、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、1,2,3-トリメトキシベンゼンおよび(2,3-ジメトキシフェニル)メタノールが、蚊がとまる回数を50%超減少させることができた(表3)。この濃度では、3種類の刺激物、すなわち、2,4-ジメトキシアセトフェノン、2,4-ジメトキシベンズアルデヒドおよび2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノンが、さらには80%を超える忌避効果を引き起こすことができた(表3)。
【0107】
中間濃度の0.04%では、22種類の刺激物、すなわち、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼン、2,3,4-トリメトキシフェノール、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセトアルデヒド、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート、4-(3,6-ジヒドロ-4-メチル-2H-ピラン-2-イル)-2-メトキシ-フェノールと2-メトキシ-4-(4-メチリデンオキサン-2-イル)フェノールとのブレンド、2-メトキシ-4-(5-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イル)フェノール、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノール、2-メトキシ-4-(オキソラン-2-イル)フェノール、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸、2,4-ジメトキシアセトフェノン、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノン、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール、2,3,4-トリメトキシベンゾニトリル、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドおよび3-エトキシ-4-メトキシベンズアルデヒドが、75%を超える忌避を引き起こすことができた(表3)。
【0108】
試験した最高濃度、すなわち、1%では、試験した30種類の化合物、すなわち、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、1-(2,3,4-トリメトキシフェニル)エテノン、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン、2-メトキシ-4-(1-メトキシエチル)フェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-メチルベンゼン、1,2,3-トリメトキシベンゼン、(3,4,5-トリメトキシフェニル)メタノール、2-エトキシ-4-メチルフェノール、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-プロペニルアセテート、2-エトキシ-1,3-ジメトキシベンゼン、2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノン、2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノール、2-メトキシ-4-(オキソラン-2-イル)フェノール、(2,3-ジメトキシフェニル)メタノール、2,4-ジメトキシアセトフェノン、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール、4-{3-[(2,6-ジメチル-7-オクテン-2-イル)オキシ]-1-プロペン-1-イル}-2-メトキシフェノール、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、(2-エトキシ-4-ホルミルフェニル)2-メチルプロパノエート、4-エチル-2,6-ジメトキシフェノール、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼン、2,3,4-トリメトキシフェノール、8-ヒドロキシ-7-メトキシクロメン-2-オン、1,2,3-トリメトキシ-5-プロパ-2-エニルベンゼンおよび1,2,3-トリメトキシ-5-プロパ-1-エニルベンゼンが、90%を超える忌避を引き起こすことができた。すなわち、いかなる刺激物も適用しなかった場合に1分間に29匹の蚊がとまったのと比べ、1分間に3匹未満の蚊がとまった(表3)。試験した10種類の刺激物、すなわち、メチル3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メチルプロパノエート、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、1-(2,3,4-トリメトキシフェニル)エテノン、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン、2-メトキシ-4-(1-メトキシエチル)フェノール、1,2,3-トリメトキシ-5-メチルベンゼン、1,2,3-トリメトキシベンゼン、(3,4,5-トリメトキシフェニル)メタノールおよび2-エトキシ-4-メチルフェノールは、実験の2分以内に蚊がとまる際の魅力的な刺激物を保つことができた(表3)。
【0109】
表4:様々な濃度の様々な刺激物を仕掛けた温熱体にとまる蚊のアノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)の忌避率。試験した8種類の刺激物は、1-(5-プロピル-1,3-ベンゾジオキソール-2-イル)エタノン(908)、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン(1228)、イソプロピル-2H,4H-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン,7-(1232)、2-(3,4-ジメトキシフェニル)酢酸(1564)、3,4,5-トリメトキシトルエン(1967)、(2-メトキシ-4-メチルフェニル)メチルカーボネート(1141)、2-エトキシ-4-(メトキシメチル)フェノール(1271)、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン(1468)であった。各刺激物で2~5濃度を評価した。n.d.はデータなしを意味する。溶媒のみ(0mg/mL)で蚊がとまる平均回数は、2分間で46±9.4回に相当する。
【0110】
【表4】
【0111】
試験した2つの最高濃度、すなわち、0.447%および1%では、全ての製品について2つの濃度の少なくとも一方で忌避率が75%を上回った(表4)。7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン、3,4,5-トリメトキシトルエンおよび(2-メトキシ-4-メチルフェニル)メチルカーボネートは、これら2つの濃度の少なくとも一方で蚊がとまらない魅力的な刺激物、すなわち、100%の忌避をもたらすことができ、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)に対する成分の高い忌避効力が示された(表4)。3,4,5-トリメトキシトルエンでは、試験した最低濃度、すなわち、0.0178%でも、忌避率は既に60%を超えていた(表4)。
【0112】
表5:様々な濃度の様々な刺激物を仕掛けた温熱体にとまる蚊のアノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)の忌避率。試験した3種類の刺激物は、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン(1228)、3,4,5-トリメトキシトルエン(1967)および1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼン(1975)であった。各刺激物で9濃度を評価した。n.d.はデータなしを意味する。溶媒のみ(0mg/mL)で蚊がとまる平均±SD回数は、2分間で51.3±5.8回に相当する。
【0113】
【表5】
【0114】
温熱体に塗布した刺激物の濃度が0.2%以上になると、マラリア蚊がとまる回数は、90%超減少した(表5)。3,4,5-トリメトキシトルエンは、さらには濃度が0.0178%以上になると50%超の忌避を示すことができ、濃度が0.2%以上になると全くとまらせなかった(表5)。1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンでは、温熱体に塗布される0.04%以上の全ての用量で90%超の忌避(repulsion)が得られた(表5)。
【0115】
二重チャンバアッセイ
図1に示されるように、蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)を入れたチャンバを、3種類の刺激物、すなわち、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノールおよび1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンの希釈に使用される溶媒、すなわち、プロパン-1,2-ジオールで処理することでは、未処理のチャンバへの強い移動は引き起こされなかった。すなわち、40分後に19.5%±4.8%の蚊しか避難チャンバに移動しなかった。予期せぬことに、DEETによる結果も同様であり、蚊を入れた処理チャンバへの注入の40分後に16.2%±7.3%しか避難チャンバに移動しなかった(図1)。一方、本特許の対象となる両製品は、迅速かつ強力な忌避効果を示し、注入後最初の10分以内に蚊の30%超を移動させ、注入の30分後には、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノールおよび1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンについて、それぞれ42%および54%に近いプラトーに達した(図1)。
【0116】
アームインケージアッセイ
表6:20%の1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンで腕を処理した3人のヒトボランティアについてのアームインケージの結果
【表6】
【0117】
表6に示されるように、1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンを塗布することで、蚊のアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)がとまる回数を99.4%±0.4%減少させることにより、3人全てのヒトボランティアの腕を防御することができた。
【0118】
表7:20%の7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オンで腕を処理した3人のヒトボランティアについての経時的なアームインケージの結果
【表7】
【0119】
表7に示されるように、7-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オンを塗布することで、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)に対して1.33時間の完全防御時間(とまるのが全く確認されない)を得ることができた。3時間の時点で、防御は依然として2人のボランティアで79.64%であった(表7)。一般に使用される忌避剤であるIR3535が、同じ濃度で同じプロトコルを用いると、0.17時間のCPTしか得られなかったことは注目に値する(データは示さない)。
【0120】
フリーフライングルームアッセイ
表8:大規模アッセイにおけるアエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)に対する3つの化合物の空中忌避効力。
【0121】
【表8】
【0122】
陰性対照試験では、すなわち、ボランティアのいる部屋を刺激物で処理していない場合、82.5±3.7%の蚊が、放出した部屋から窓を通ってボランティアのいる部屋へと移動した。ボランティアには3分間に60.7±2.5回とまり、部屋の蚊は、1.4±0.1回とまり、ボランティアを刺そうとした。表8に示されるように、試験した3つ全ての化合物が、ボランティアのいる部屋への蚊の侵入を顕著に減少させ、未処理の部屋の状況と比較して、潜在的な刺咬回数を60%超減少させた。2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノールでは、29.5±2.8%の蚊しか処理した部屋に侵入せず、14.7±2.5匹の蚊しかボランティアにとまらず、表8に挙げる防御値が得られた。3,4,5-トリメトキシトルエンでは、43.5±3.2%の蚊しか処理した部屋に侵入せず、22.3±3.2匹の蚊がボランティアにとまり、表8に挙げる防御値が得られた。1,2,3-トリメトキシ-5-プロピルベンゼンでは、46.3±7.5%の蚊しか処理した部屋に侵入せず、15.7±3.1匹の蚊がボランティアにとまり、表8に挙げる防御値が得られた。
【0123】
温熱プレートアッセイ
表9:3つの異なる濃度の刺激物を仕掛けた温熱プレート上でのマダニのイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)の忌避率。
【0124】
【表9】
【0125】
表9に示されるように、1,2-ジメトキシ-3-プロパ-1-エニルベンゼンは、用量に応じてマダニのイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)を忌避させることができ、1%の刺激物を適用して合計90%超の忌避に達した。
【0126】
表10:3つの異なる濃度の12種類の刺激物を仕掛けた温熱プレート上でのマダニのイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)の忌避率。試験した12種類の刺激物は、(2-メトキシ-4-メチルフェニル)メチルカーボネート[1141]、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール[1191]、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン[1195]、1,2,4-トリメトキシベンゼン[1201]、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート[1472]、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノール[1479]、2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノール[1482]、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール[1537]、2,4-ジメトキシアセトフェノン[1557]、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド[1558]、2-ヒドロキシ-4-メトキシアセトフェノン[1559]、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド[2267]であった。
【0127】
【表10】
【0128】
表10に示されるように、12種類全ての刺激物が、用量に応じてマダニのイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)を忌避させることができた。12種類全ての刺激物が、1%の試験した最高濃度で、試験したマダニの少なくとも2/3を忌避させた。さらに、1,2-ジメトキシ-4-プロパ-1-エニルベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン、(2-ホルミル-5-メトキシフェニル)アセテート、4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノールおよび2-エトキシ-4-(エトキシメチル)フェノールの5つの化合物は、この1%濃度で全てのマダニを忌避させることができた(表10)。4-[(アリルオキシ)メチル]-2-エトキシフェノールは、0.04%の試験した最低濃度で試験したマダニの2/3を既に忌避させ、続いて0.2%および1%のその後の2つの試験した濃度で全てのマダニを忌避させたため、最も有効な試験化合物であった(表10)。
図1
【国際調査報告】