(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】スチールコードの脆性介在物の制御方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/04 20060101AFI20250204BHJP
C21C 7/06 20060101ALI20250204BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20250204BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20250204BHJP
C22C 38/18 20060101ALI20250204BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C21C7/04 B
C21C7/06
C21C7/00 F
C21C7/00 H
C21C7/00 J
C21C7/04 J
C22C38/00 301Y
C22C38/18
B22D11/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543090
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022105198
(87)【国際公開番号】W WO2023151228
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】202210124343.3
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522115457
【氏名又は名称】張家港栄盛特鋼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522116856
【氏名又は名称】江蘇省沙鋼鋼鉄研究院有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521514565
【氏名又は名称】江蘇沙鋼集団有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】趙 家七
(72)【発明者】
【氏名】張 連兵
(72)【発明者】
【氏名】馬 建超
(72)【発明者】
【氏名】麻 ▲ハン▼
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013AA07
4K013BA14
4K013CB01
4K013CC02
4K013CD02
4K013EA15
4K013EA20
4K013EA28
4K013EA32
4K013FA05
(57)【要約】
本発明は、炉内一次製錬出鋼工程で合金を添加し、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素、合成スラグを添加してスラグを作り、精錬工程で合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、スラグ成分がCaO/SiO2=0.9~1.2、Al2O3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%を満たす、スチールコードの脆性介在物の制御方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%の化学成分を含み、残部がFe及び他の不可避的不純物であるスチールコードの脆性介在物の制御方法であって、
溶鋼を脱酸合金化し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に0.5~1kg/tの炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を0.5~1kg/t添加し、合成スラグを3~5kg/t添加してスラグを作る炉内一次製錬工程と、
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすように溶鋼の化学成分を調整するために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO
2=0.9~1.2、Al
2O
3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行う精錬工程と、
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成するビレット鋳造工程と、をこの順に含み、
前記合金は、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、前記フェロシリコン中のAl≦0.035%であり、前記金属マンガン中のAl≦0.015%であり、前記フェロクロム中のAl≦0.020%、C≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である、ことを特徴とするスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項2】
前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、前記マグネシアカーボン煉瓦中のAl
2O
3≦3%であり、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦中のAl
2O
3≦3%であり、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁に厚さ3~8mmのSiO
2被膜が塗布される、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項3】
前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、その中のAl
2O
3≦5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項4】
前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記マグネシウム質被膜中のAl
2O
3≦2%であり、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰中のAl
2O
3≦5%であり、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用し、前記マグネシアカーボン質ノズル中のAl
2O
3≦5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項5】
前記炉内一次製錬工程は、転炉又は電気炉で製錬を行い、製錬終点での溶鋼温度≧1650℃、C≧0.10%、O≦0.03%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項6】
前記炉内一次製錬工程において、出鋼初期及び合金化過程で、取鍋底吹き流量が100~200NL/minであり、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程で、取鍋底吹き流量が600~800NL/minであり、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程で、取鍋底吹き流量が300~500NL/minである、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項7】
前記精錬工程において、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程で、取鍋底吹き流量が100~150NL/minであり、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程で、取鍋底吹き流量が300~400NL/minであり、通電してスラグを溶融させる過程で、取鍋底吹き流量が200~300NL/minであり、ソフト撹拌過程で、取鍋底吹き流量が30~80NL/minである、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項8】
前記炉内一次製錬工程で出鋼を終了してから、前記精錬工程で溶鋼の化学成分の調整を完了するまで、取鍋のスラグ塩基度≦0.6とし、前記精錬工程において、取鍋のスラグ塩基度が0.9~1.2となるように、1~2kg/tの石灰、1~1.5kg/tの炭化ケイ素、及び8~15kg/tの合成スラグを添加する、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項9】
前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含み、前記合成スラグの化学成分は、質量パーセントでCaO 35~45%、SiO
2 45~55%、MgO 3~8%、Al
2O
3≦2%、及び他の不可避的不純物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項10】
前記ビレット鋳造工程において、タンディッシュの溶鋼中のAls≦0.0005%であり、溶鋼の介在物中のAl
2O
3介在物の含有量≦10%であり、Al
2O
3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物のサイズ<5μmであり、サイズが1~5μmのAl
2O
3介在物、及びマグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0005個/mm
2である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製錬の技術分野に属し、具体的にはスチールコードの脆性介在物の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、業界ではスチールコードは主に細線に引き抜くために用いられ、一般的には直径0.12~0.35mmの細線に引き抜かれて使用されており、ソーワイヤとして使用する場合には直径0.12mm以下に引き抜かれる必要がある。ソーワイヤは、切断ワイヤ、切断鋼線、切断線とも呼ばれ、分割用の特製線材であり、例えば太陽電池シリコンウエハ、石英材料、単結晶シリコン、多結晶シリコンの切断成形のように、消費材料としてエネルギー、航空、設備及び公共施設の分野に幅広く応用されている。さらにダイヤモンドの微粒子をソーワイヤに埋め込んで、ダイヤモンドカットワイヤ、ダイヤモンド切断線、ダイヤモンドワイヤとも呼ばれるダイアモンドソーワイヤとすることもできる。
【0003】
シリコン材料のような被切断材の切断過程での損失を減少させるために、ソーワイヤの性能には、直径がより細く、断線なしの長さがより長く、強度がより高いことが求められているが、現在業界で製造されたスチールコードが鋼材中の介在物により影響され、特にAl
2O
3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al
2O
3)等の脆性介在物は、スチールコードの製造加工と使用の過程での断線問題を非常に引き起こしやすいため、既存のスチールコードをソーワイヤに用いた際の性能は市場のニーズを満たすことができない。
図1から
図4に示すように、
図1には従来の製造プロセスで製造されたスチールコード中の介在物のSiO
2-MnO-Al
2O
3系三元相図における分布状況が示されており、
図2には従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材コア部のAl
2O
3介在物による細線破断面の形態が示されており、
図3には従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材エッジ部のAl
2O
3介在物による細線破断面の形態が示されており、
図4には従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材コア部のマグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al
2O
3)介在物による細線破断面の形態が示されている。
【発明の概要】
【0004】
上記技術的課題のうちの少なくとも1つを解決するために、本発明の目的は、スチールコードの脆性介在物の制御方法を提供することである。
【0005】
上記の目的の1つを実現するために、本発明の一実施形態は、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%の化学成分を含み、残部がFe及び他の不可避的不純物であるスチールコードの脆性介在物の制御方法であって、
溶鋼を脱酸合金化し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に0.5~1kg/tの炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を0.5~1kg/t添加し、合成スラグを3~5kg/t添加してスラグを作る炉内一次製錬工程と、
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすように溶鋼の化学成分を調整するために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO2=0.9~1.2、Al2O3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行う精錬工程と、
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成するビレット鋳造工程と、をこの順に含み、
前記合金が、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、前記フェロシリコン中のAl≦0.035%であり、前記金属マンガン中のAl≦0.015%であり、前記フェロクロム中のAl≦0.020%、C≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である、スチールコードの脆性介在物の制御方法を提供する。
【0006】
スチールコードの化学成分及びその質量パーセントを制御し、さらに炉内一次製錬工程で出鋼前に取鍋の底部に炭化ケイ素及び低窒素加炭剤を事前に敷設することによって、出鋼初期で取鍋の底部に低窒素加炭剤を添加することによる溶鋼の沸騰を穏やかにし、一次製錬工程で出鋼過程に追加される低窒素加炭剤の量を大幅に減少させ、大量の低窒素加炭剤がスラグ面に浮遊してスラグ面に炭素酸素反応が起こって大量のガスを生じてスプラッシュが発生することを回避し、それにより出鋼中の取鍋の底吹き流量及び底吹き撹拌時間を減少させ、耐火材料への侵食及び耐火材料の損失を減少させ、溶鋼の清浄度を高めることができるだけでなく、合金の脱酸による損失量を大幅に減少させて合金コストを削減することができ、また、従来の炭化カルシウムの代わりに炭化ケイ素を使用することで、迅速に脱酸でき、出鋼初期の取鍋中の溶鋼量が少なく、取鍋のクリアランスが高く、この場合、脱酸沸騰による溶鋼のスプラッシュが引き起こされないだけでなく、生成されたSiO2は取鍋のスラグ塩基度を低く抑えるのに役立つ。さらに、精錬工程でカーボンワイヤによって炭素粉末を増加し、炭素粉末を直ちに溶鋼に投入することで、取鍋底吹き撹拌を回避し、耐火材料への侵食を低減し、Al2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の発生を減少させることができ、また、溶鋼の化学成分を調整した直後に石灰、合成スラグを添加することで、スラグ塩基度を高め、Al2O3介在物及びSiO2介在物の吸着に寄与ことができる。さらに、ビレット鋳造工程において、注湯時に湯止め砂をスラグ受けに導入することによって、湯止め砂が溶鋼に混入して溶鋼中のAl2O3介在物が多くなることを回避する。さらに、合金中のAl含有量の制御により、溶鋼中のAl2O3介在物、及びSiO2-MnO-Al2O3複合介在物を減少させることができる。上記制御方法によって、耐火材料への侵食を低減することができるだけでなく、溶鋼中の酸可溶性アルミニウムAlsを低減し、ビレット鋳造工程で析出するAl2O3を減少させ、スチールコードにおけるAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物を効果的に制御し、スチールコードの製造加工及び使用の過程での断線率を低下させることができる。
【0007】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、前記マグネシアカーボン煉瓦中のAl2O3≦3%であり、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦中のAl2O3≦3%であり、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁にSiO2被膜が塗布され、前記SiO2被膜の厚さが3~8mmである。取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦、スラグライン煉瓦、通気性煉瓦及びロングノズル等の耐火材料の材質を限定し、且つその中のAl2O3含有量を制御するとともに、ロングノズルの内壁にSiO2被膜を塗布することで、高融点のSiO2被膜が鋳込み温度1500~1520℃の溶鋼に耐えることができ、大型取鍋のロングノズルへの侵食によりその中のAl2O3が溶鋼に混入してAl2O3介在物が形成されることが低減されて、製鋼中の取鍋耐火材料への侵食が低減され、溶鋼に混入するAl2O3、MgOが低減され、それにより最終的に製造されたスチールコードにおけるAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の発生が大幅に低減され、スチールコードの製造品質の安定性がさらに向上する。
【0008】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、その中のAl2O3≦5%である。注湯時に湯止め砂が溶鋼とともにタンディッシュに流入して溶鋼中の余分なAl2O3含有量が多くなりすぎることを低減し、最終的に製造されたスチールコードにおけるAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の発生を低減することができる。
【0009】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記マグネシウム質被膜中のAl2O3≦2%であり、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰中のAl2O3≦5%であり、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用し、前記マグネシアカーボン質ノズル中のAl2O3≦5%である。タンディッシュの材質を限定し、且つその中のAl2O3含有量を制御することで、製鋼過程でのタンディッシュ耐火材料への侵食を低減し、溶鋼に混入するAl2O3、MgOを低減し、それにより最終的に製造されたスチールコードにおけるAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の発生を大幅に低減することができる。
【0010】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記炉内一次製錬工程では、転炉又は電気炉で製錬を行い、製錬終点での溶鋼温度≧1650℃、C≧0.10%、O≦0.03%である。炉内一次製錬工程において高炭素、低酸素、高温で出鋼することにより、溶鋼と取鍋に事前に敷設された低窒素加炭剤との反応強度を低下させることができ、且つ取鍋に事前に敷設された炭化ケイ素により溶鋼を迅速に脱酸することができ、それにより溶鋼の沸騰程度を小さくし、溶鋼のスプラッシュを回避することができる。
【0011】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記炉内一次製錬工程において、出鋼初期及び合金化過程で、取鍋底吹き流量が100~200NL/minであり、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程で、取鍋底吹き流量が600~800NL/minであり、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程で、取鍋底吹き流量が300~500NL/minである。残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加する過程で取鍋底吹き流量を大きくすることで、低窒素加炭剤が溶鋼に巻き込まれ、一方、出鋼初期と合金化過程、スラグ作り過程でいずれも中低流量の底吹きにすることで、溶鋼の撹拌強度が低下し、スラグ巻き込みが回避され、耐火材料への侵食が軽減され、耐火材料の損失が減少し、さらに溶鋼の清浄度が高まり、溶鋼における大量のAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の形成が回避され、さらにその線材への侵入によるさらなる加工の引き抜き時の断線頻発が回避される。
【0012】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記精錬工程において、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程で、取鍋底吹き流量が100~150NL/minであり、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程で、取鍋底吹き流量が300~400NL/minであり、通電してスラグを溶融させる過程で、取鍋底吹き流量が200~300NL/minであり、ソフト撹拌過程で、取鍋底吹き流量が30~80NL/minである。精錬工程の全過程にわたって中低流量の底吹きにすることで、溶鋼の撹拌強度が低下し、スラグ巻き込みが回避され、耐火材料への侵食が軽減され、耐火材料の損失が減少し、さらに溶鋼の清浄度が高まり、溶鋼における大量のAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の形成が回避され、さらにその線材への侵入によるさらなる加工の引き抜き時の断線頻発が回避される。
【0013】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記炉内一次製錬工程で出鋼を終了してから、前記精錬工程で溶鋼の化学成分の調整を完了するまで、取鍋のスラグ塩基度≦0.6とし、前記精錬工程において、取鍋のスラグ塩基度が0.9~1.2となるように、1~2kg/tの石灰、1~1.5kg/tの炭化ケイ素、及び8~15kg/tの合成スラグを添加する。炉内一次製錬工程において出鋼過程で石灰を添加せず、少量の低塩基度の合成スラグのみを添加することで、取鍋の低いスラグ塩基度が保証され、且つ溶鋼とスラグの酸化性が低く、溶鋼中の溶解アルミニウムを極めて低いレベルに下げ、連続鋳造過程におけるAl2O3介在物の析出を低減することができるだけでなく、合金中のAlをAl2O3に酸化してスラグに浮上させて溶鋼から分離することができ、しかもスラグ量が少なく、取鍋の低い底吹き流量と組み合わせて、取鍋耐火材料への侵食を著しく弱め、さらにAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al2O3)等の脆性介在物の形成を低減することができ、精錬工程で、溶鋼成分を正確に調整した直後に石灰、合成スラグを添加してスラグ塩基度を0.9~1.2に高めることで、Al2O3介在物、SiO2酸性介在物の吸着に役立ち、また、精錬工程でこのような低いスラグ塩基度により取鍋の底吹き流量を通常の底吹き流量の50%以下に抑え、底吹き流量を大幅に低減し、さらに取鍋耐火材料への侵食を低減することができる。
【0014】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含み、前記合成スラグの化学成分は、質量パーセントでCaO 35~45%、SiO2 45~55%、MgO 3~8%、Al2O3≦2%、及び他の不可避的不純物を含む。高純度の炭化ケイ素により迅速な脱酸を実現することができるだけでなく、取鍋の底部に敷設された低窒素加炭剤による溶鋼の沸騰を穏やかにすることもでき、合成スラグの化学成分及びその含有量を限定することで、合成スラグの低い塩基度を保証することができ、それにより取鍋の底吹き流量を低減し、さらに取鍋耐火材料への侵食を低減することができる。
【0015】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記ビレット鋳造工程において、タンディッシュの溶鋼中のAls≦0.0005%であり、溶鋼の介在物のうちのAl2O3介在物の含有量≦10%であり、Al2O3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物のサイズ<5μmであり、サイズが1~5μmのAl2O3介在物、及びマグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0005個/mm2である。溶鋼中の酸可溶性アルミニウムAlsの含有量を制御することで、連続鋳造過程で析出したAl2O3を低減し、それにより最終的に製造されたスチールコードにおけるAl2O3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物等の脆性介在物の含有量、サイズ及び密度を小さくし、スチールコードの清浄度を高め、断線率を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の製造プロセスで製造されたスチールコード中の介在物のSiO
2-MnO-Al
2O
3系三元相図における分布状況を示す。
【
図2】従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材コア部のAl
2O
3介在物による細線破断面の形態を示す。
【
図3】従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材エッジ部のAl
2O
3介在物による細線破断面の形態を示す。
【
図4】従来の製造プロセスで製造されたスチールコードにおける、線材コア部のマグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al
2O
3)介在物による細線破断面の形態を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係るスチールコード中の介在物のSiO
2-MnO-Al
2O
3系三元相図における分布状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態は、スチールコードの脆性介在物の制御方法を提供する。この方法において、前記スチールコードの化学成分は、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%を含み、残部がFe及び他の不可避的不純物である。
【0018】
本発明に係る前記スチールコードの脆性介在物の制御方法は、多くの実験と研究を基にして得られたものであり、以下において、具体的な実施例により前記スチールコードの脆性介在物の制御方法についてさらに説明する。
【0019】
スチールコードの脆性介在物の制御方法は、次のステップ(1)、ステップ(2)、及びステップ(3)をこの順に含む。
【0020】
(1)炉内一次製錬工程
転炉又は電気炉で製錬を行い、溶鋼を脱酸合金化し、製錬終点での溶鋼温度≧1650℃、C≧0.10%、O≦0.03%であり、製錬終点でスラグを止めて出鋼し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に0.5~1kg/tの炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を0.5~1kg/t添加し、合成スラグを3~5kg/t添加してスラグを作る。
【0021】
好ましくは、前記合金は、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、ここで、前記フェロシリコン中のAl≦0.035%であり、前記金属マンガン中のAl≦0.015%であり、前記フェロクロム中のAl≦0.020%、C≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である。
【0022】
好ましくは、前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、前記マグネシアカーボン煉瓦中のAl2O3≦3%であり、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦中のAl2O3≦3%であり、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁にSiO2被膜が塗布され、前記SiO2被膜の厚さが3~8mmである。
【0023】
より好ましくは、前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦の使用回数の上限を35~45回とし、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦の使用回数の上限を15~25回とする。このように、取鍋の耐火材料の品質安定性を保証し、使用時間の推移に従って取鍋の耐火材料の侵食がますますひどくなり、取鍋の耐火材料中のAl2O3、MgOが大量に溶鋼に混入して最終的に製造されたスチールコードにおけるAl2O3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物等の脆性介在物が余計に増加してしまうことを回避することができる。
【0024】
好ましくは、出鋼初期及び合金化過程で、取鍋底吹き流量が100~200NL/minであり、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程で、取鍋底吹き流量が600~800NL/minであり、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程で、取鍋底吹き流量が300~500NL/minである。
【0025】
好ましくは、前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含み、前記合成スラグの化学成分は、質量パーセントでCaO 35~45%、SiO2 45~55%、MgO 3~8%、Al2O3≦2%、及び他の不可避的不純物を含む。
【0026】
(2)精錬工程
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすように溶鋼の化学成分を調整するために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO2=0.9~1.2、Al2O3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行う。
【0027】
ここで、[MnO+T.Fe]は、MnOとT.Feの質量パーセントの合計を表す。
【0028】
好ましくは、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程で、取鍋底吹き流量が100~150NL/minであり、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程で、取鍋底吹き流量が300~400NL/minであり、通電してスラグを溶融させる過程で、取鍋底吹き流量が200~300NL/minであり、ソフト撹拌過程で、取鍋底吹き流量が30~80NL/minである。
【0029】
好ましくは、前記炉内一次製錬工程で出鋼を終了してから、前記精錬工程で溶鋼の化学成分の調整を完了するまで、取鍋のスラグ塩基度≦0.6とする。
【0030】
好ましくは、前記精錬工程において、取鍋のスラグ塩基度が0.9~1.2となるように、1~2kg/tの石灰、1~1.5kg/tの炭化ケイ素、及び8~15kg/tの合成スラグを添加する。
【0031】
好ましくは、前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含み、前記合成スラグの化学成分は、質量パーセントでCaO 35~45%、SiO2 45~55%、MgO 3~8%、Al2O3≦2%、及び他の不可避的不純物を含む。
【0032】
(3)ビレット鋳造工程
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成する。
【0033】
好ましくは、前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、その中のAl2O3≦5%である。
【0034】
好ましくは、前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記マグネシウム質被膜中のAl2O3≦2%であり、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰中のAl2O3≦5%であり、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用し、前記マグネシアカーボン質ノズル中のAl2O3≦5%である。
【0035】
検出したところ、タンディッシュの溶鋼中の酸可溶性アルミニウムAls≦0.0005%であり、溶鋼の介在物中のAl2O3介在物の含有量≦10%であり、Al2O3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物のサイズ<5μmであり、サイズが1~5μmのAl2O3介在物、及びマグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0005個/mm2である。
【0036】
本発明の一実施形態の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下に、本発明の一実施形態による実施例1~2により、本実施形態のスチールコードの脆性介在物の制御方法についてさらに説明する。明らかに、説明される実施例1~2は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。
【0037】
実施例1
(1)炉内一次製錬工程
135tの転炉で製錬を行った。炉番号(1)~(4)の転炉の製錬終点での溶鋼温度、C含有量及びO含有量をそれぞれ表1に示す。
【表1】
【0038】
製錬終点でスラグを止めて出鋼し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を事前に敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を添加し、合成スラグを添加してスラグを作り、取鍋のスラグ塩基度≦0.6であった。ここで、炉番号(1)~(4)の転炉において取鍋の底部に敷設された炭化ケイ素、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に添加された炭化ケイ素、及び合成スラグの添加量を表2に示す。
【表2】
【0039】
出鋼の全過程にわたって取鍋底吹きを行った。炉番号(1)~(4)の転炉において、出鋼初期及び合金化過程、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程、及び出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程での取鍋底吹き流量をそれぞれ表3に示す。
【表3】
【0040】
(2)精錬工程
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、溶鋼の化学成分が、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P 0.007~0.015%、S 0.006~0.01%、Alt 0.0005~0.0008%、N 0.0015~0.0030%、O 0.001~0.002%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすようにするために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO
2=0.9~1.2、Al
2O
3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行った。ここで、炉番号(1)~(4)のLF炉に添加された石灰、炭化ケイ素、合成スラグの添加量及び取鍋内のスラグのスラグ塩基度を表4に示す。
【表4】
【0041】
炉番号(1)~(4)のLF炉において、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程、通電してスラグを溶融させる過程、ソフト撹拌過程での取鍋底吹き流量及びソフト撹拌時間をそれぞれ表5に示す。
【表5】
【0042】
ここで、前記合金は、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、そのうち、前記フェロシリコン、前記金属マンガン、前記フェロクロム中のAl含有量を表6に示す。また、前記フェロクロム中のC≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である。
【表6】
【0043】
そのうち、前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含む。前記合成スラグの化学成分及びその質量パーセントを表7に示す。
【表7】
【0044】
(3)ビレット鋳造工程
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成した。
【0045】
ここで、前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、使用回数が35~45回を超えず、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、使用回数が15~25回を超えず、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁にSiO2被膜が塗布され、前記SiO2被膜の厚さが3~8mmであり、前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用した。
【0046】
前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦、スラグライン煉瓦、通気性煉瓦、前記湯止め砂、前記タンディッシュのマグネシウム質被膜、堰、上部ノズル、浸漬ノズル中のAl
2O
3含有量を表8に示す。
【表8】
【0047】
タンディッシュの溶鋼サンプルをZeiss走査型電子顕微鏡により走査してサイズ>1μmの介在物をカウントした。走査面積1000mm2に対して、介在物中のAl2O3含有量≦8.5%であると測定され、5μm以上のAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル介在物が認められず、サイズが1~5μmのAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0004個/mm2であった。
【0048】
実施例2
(1)炉内一次製錬工程
100tの電気炉で製錬を行った。炉番号(1)~(4)の電気炉の製錬終点での溶鋼温度、C含有量及びO含有量をそれぞれ表9に示す。
【表9】
【0049】
製錬終点でスラグを止めて出鋼し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を事前に敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を添加し、合成スラグを添加してスラグを作り、取鍋のスラグ塩基度≦0.6であった。ここで、炉番号(1)~(4)の電気炉において取鍋の底部に敷設された炭化ケイ素、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に添加された炭化ケイ素、及び合成スラグの添加量を表10に示す。
【表10】
【0050】
出鋼の全過程にわたって取鍋底吹きを行った。炉番号(1)~(4)の電気炉において、出鋼初期及び合金化過程、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程、及び出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程での取鍋底吹き流量をそれぞれ表11に示す。
【表11】
【0051】
(2)精錬工程
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、溶鋼の化学成分が、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P 0.01~0.015%、S 0.008~0.01%、Alt 0.0005~0.0008%、N 0.0019~0.0030%、O 0.0011~0.0020%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすようにするために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO
2=0.9~1.2、Al
2O
3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行った。ここで、炉番号(1)~(4)のLF炉に添加された石灰、炭化ケイ素、合成スラグの添加量及び取鍋中のスラグのスラグ塩基度を表12に示す。
【表12】
【0052】
炉番号(1)~(4)のLF炉において、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程、通電してスラグを溶融させる過程、ソフト撹拌過程での取鍋底吹き流量及びソフト撹拌時間をそれぞれ表13に示す。
【表13】
【0053】
ここで、前記合金は、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、そのうち、前記フェロシリコン、前記金属マンガン、前記フェロクロム中のAl含有量を表14に示す。また、前記フェロクロム中のC≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である。
【表14】
【0054】
そのうち、前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含む。前記合成スラグの化学成分及びその質量パーセントを表15に示す。
【表15】
【0055】
(3)ビレット鋳造工程
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成した。
【0056】
ここで、前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、使用回数が35~45回を超えず、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、使用回数が15~25回を超えず、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁にSiO2被膜が塗布され、前記SiO2被膜の厚さが3~8mmであり、前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用した。
【0057】
前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦、スラグライン煉瓦、通気性煉瓦、前記湯止め砂、前記タンディッシュのマグネシウム質被膜、堰、上部ノズル、浸漬ノズル中のAl
2O
3含有量を表16に示す。
【表16】
【0058】
タンディッシュの溶鋼サンプルをZeiss走査型電子顕微鏡により走査してサイズ>1μmの介在物をカウントした。走査面積1000mm2に対して、介在物中のAl2O3含有量≦10%であると測定され、5μm以上のAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル介在物が認められず、サイズが1~5μmのAl2O3、マグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0005個/mm2であった。
【0059】
また、
図5は本発明の一実施形態に係るスチールコード中の介在物のSiO
2-MnO-Al
2O
3系三元相図における分布状況を示す。
図5と
図1を比較することで、本発明のスチールコード中の介在物は主にSiO
2-MnO介在物であり、従来の製造プロセスで製造されたスチールコードに比べて、Al
2O
3、マグネシア-アルミナスピネル(MgO・Al
2O
3)のような脆性介在物が著しく減少し、それにより脆性介在物による引き抜き断線率を大幅に低下できることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%の化学成分を含み、残部がFe及び他の不可避的不純物であるスチールコードの脆性介在物の制御方法であって、
溶鋼を脱酸合金化し、出鋼前に溶鋼を受ける取鍋の底部に0.5~1kg/tの炭化ケイ素及び40~60%の低窒素加炭剤を敷設し、出鋼中に合金を順次添加して合金化し、出鋼が75%になるまでに合金を全て添加し、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を200~300kg/minの速度で添加し始め、低窒素加炭剤が溶鋼に完全に溶解した後、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素を0.5~1kg/t添加し、合成スラグを3~5kg/t添加してスラグを作る炉内一次製錬工程と、
炉内一次製錬を経た溶鋼をLF炉に移して精錬を行い、質量パーセントでC 0.70~0.95%、Si 0.15~0.45%、Mn 0.25~0.80%、Cr 0.10~0.45%、P≦0.015%、S≦0.01%、Alt≦0.0008%、N≦0.003%、O≦0.002%で、残部がFe及び他の不可避的不純物であることを満たすように溶鋼の化学成分を調整するために、溶鋼の温度、化学成分及びその含有量を検出し、検出された溶鋼の化学成分及びその含有量に応じて前記合金を添加してカーボンワイヤを投入し、石灰、炭化ケイ素、合成スラグを添加して通電してスラグを溶融させ、溶鋼の温度を1510~1535℃に調整し、スラグ成分が、質量パーセントでCaO/SiO
2=0.9~1.2、Al
2O
3≦5%、MgO 4~8%、[MnO+T.Fe] 2~5%で、残部が他の不可避的不純物であることを満たすようにし、その後、取鍋底吹きをソフト撹拌モードに調整し、ソフト撹拌時間>20minとし、出鋼を行う精錬工程と、
精錬工程で出鋼された溶鋼を連続鋳造プラットフォームに移して15min以上静置し、大型取鍋の注湯時、湯止め砂をスラグ受けに導入し、溶鋼をタンディッシュに保護的に鋳込んで連続鋳造ビレットを形成するビレット鋳造工程と、をこの順に含み、
前記合金は、フェロシリコン、金属マンガン及びフェロクロムを含み、前記フェロシリコン中のAl≦0.035%であり、前記金属マンガン中のAl≦0.015%であり、前記フェロクロム中のAl≦0.020%、C≦0.15%であり、前記低窒素加炭剤中のN≦0.015%である、ことを特徴とするスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項2】
前記取鍋の底部煉瓦、溶融池煉瓦、取鍋口煉瓦は、いずれもマグネシアカーボン煉瓦を使用し、前記マグネシアカーボン煉瓦中のAl
2O
3≦3%であり、前記取鍋のスラグライン煉瓦、通気性煉瓦は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン煉瓦中のAl
2O
3≦3%であり、前記取鍋のロングノズルは、コランダムロングノズルを使用し、且つ前記ロングノズルの内壁に厚さ3~8mmのSiO
2被膜が塗布される、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項3】
前記湯止め砂は、シリコンクロム湯止め砂を使用し、その中のAl
2O
3≦5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項4】
前記タンディッシュの内壁にマグネシウム質被膜が塗布され、前記マグネシウム質被膜中のAl
2O
3≦2%であり、前記タンディッシュの堰は、マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰を使用し、前記マグネシウム-ジルコニウム-カーボン堰中のAl
2O
3≦5%であり、前記タンディッシュの上部ノズル、浸漬ノズルは、いずれもマグネシアカーボン質ノズルを使用し、前記マグネシアカーボン質ノズル中のAl
2O
3≦5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項5】
前記炉内一次製錬工程は、転炉又は電気炉で製錬を行い、製錬終点での溶鋼温度≧1650℃、C≧0.10%、O≦0.03%である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項6】
前記炉内一次製錬工程において、出鋼初期及び合金化過程で、取鍋底吹き流量が100~200NL/minであり、出鋼が80%になると残りの40~60%の低窒素加炭剤を添加し始める過程で、取鍋底吹き流量が600~800NL/minであり、出鋼を終了して取鍋のスラグ面に炭化ケイ素及び合成スラグを添加してスラグを作る過程で、取鍋底吹き流量が300~500NL/minである、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項7】
前記精錬工程において、溶鋼温度、化学成分及びその含有量を検出する過程で、取鍋底吹き流量が100~150NL/minであり、前記合金を添加してカーボンワイヤを投入する過程で、取鍋底吹き流量が300~400NL/minであり、通電してスラグを溶融させる過程で、取鍋底吹き流量が200~300NL/minであり、ソフト撹拌過程で、取鍋底吹き流量が30~80NL/minである、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項8】
前記炉内一次製錬工程で出鋼を終了してから、前記精錬工程で溶鋼の化学成分の調整を完了するまで、取鍋のスラグ塩基度≦0.6とし、前記精錬工程において、取鍋のスラグ塩基度が0.9~1.2となるように、1~2kg/tの石灰、1~1.5kg/tの炭化ケイ素、及び8~15kg/tの合成スラグを添加する、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項9】
前記精錬工程で添加される前記炭化ケイ素の化学成分は、質量パーセントでSiC≧99.3%、及び他の不可避的不純物を含み、
前記精錬工程で添加される前記合成スラグの化学成分は、質量パーセントでCaO 35~45%、SiO
2 45~55%、MgO 3~8%、Al
2O
3≦2%、及び他の不可避的不純物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【請求項10】
前記ビレット鋳造工程において、タンディッシュの溶鋼中のAls≦0.0005%であり、溶鋼の介在物中のAl
2O
3介在物の含有量≦10%であり、Al
2O
3介在物、マグネシア-アルミナスピネル介在物のサイズ<5μmであり、サイズが1~5μmのAl
2O
3介在物、及びマグネシア-アルミナスピネル介在物の密度≦0.0005個/mm
2である、ことを特徴とする請求項1に記載のスチールコードの脆性介在物の制御方法。
【国際調査報告】