(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】心臓弁用プロテーゼおよび植え込みデバイス内にこのプロテーゼを配置する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543183
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2023050578
(87)【国際公開番号】W WO2023144691
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】102022000001166
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516058377
【氏名又は名称】インノブハート エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リギーニ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ブレシアーノ,エンリコ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC14
4C097DD09
4C097DD10
4C097SB03
4C097SB09
(57)【要約】
経カテーテル手術で植え込まれる心臓弁用プロテーゼであって、拡張可能な中心本体(16)と、1つ以上の補助部品(22)を有する収容部(18)を備え、前記中心本体には、少なくとも1つの弾性的に柔軟なアーム(19)が設けられ、このアームには、前記収容部(18)のそれぞれの補助部品を前記中心本体(16)に接続するための接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)が固定され、前記アームは、それぞれのアームが何の制約もなく戻る拡張した構成と、経カテーテル手術で前記プロテーゼを配置するのを可能にするコンパクトな構成をとることができるように形成され、それぞれの接続ブロックには、相互結合機構(40a,40b,140a,140b,242,340)が設けられ、この相互結合機構は、この相互結合機構が固定される前記アームを前記コンパクトな構成に選択的に維持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経カテーテル手術で植え込まれる心臓弁用プロテーゼであって、拡張可能な中心本体(16)と、1つ以上の補助部品(22)を有する収容部(18)を備え、前記中心本体には、前記収容部(18)のそれぞれの補助部品を前記中心本体(16)に接続するための接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)で終わる少なくとも1つの弾性的に柔軟なアーム(19)が設けられ、前記アームは、それぞれのアームが何の制約もなく戻る拡張した構成と、経カテーテル手術で前記プロテーゼを配置するのに適したコンパクトな構成をとることができるように形成され、それぞれの接続ブロックには、対応する前記アームを前記コンパクトな構成に選択的に維持するのに適した結合機構(40a,40b,140a,140b,242,340)が設けられる、心臓弁用プロテーゼ。
【請求項2】
それぞれのアームは前記拡張した構成では湾曲しており、前記コンパクトな構成では前記プロテーゼの軸(A)にほぼ沿って並んでいる、請求項1に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項3】
前記結合機構は、それぞれの接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)を、前記心臓弁用プロテーゼに対して選択的に同軸的にスライド可能、または選択的に角度的に回転可能である細長い要素(50)と連結するのに適している、請求項1または2に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項4】
前記収容部は、少なくとも2つの補助部品(22)を備え、それぞれの接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)の前記結合機構は、相互結合機構であり、それぞれのブロックを少なくとも1つの他の接続ブロックと結合した状態に保つのに適している、請求項1、2または3に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項5】
それぞれの接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)の相互結合機構は、それぞれの接続ブロック上に形成されたスライド可能な細長い要素(50)用のハウジング座部(40a,40b,140a,140b,242,342)を備え、それぞれの接続ブロックの前記座部内に前記スライド可能な細長い要素が存在することで、接続ブロック間の結合と、前記コンパクトな構成での前記アーム(19)の配置が実現される、請求項4に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項6】
前記接続ブロック(220,320)が互いに同一である、請求項4または5に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項7】
それぞれの接続ブロック(20a,20b)のスライド可能な細長い要素(50)用の前記ハウジング座部は、貫通孔(40a,40b)を備える、請求項5に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項8】
それぞれの接続ブロック(120a,120b)のスライド可能な細長い要素(50)用の前記ハウジング座部は、チャネルを備え、このチャネルは、長手方向(B)を規定し、前記長手方向(B)にスライドさせることによってのみそれぞれの接続ブロックの前記チャネルに前記スライド可能な細長い要素を挿入することができるように形成されている、請求項5に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項9】
それぞれの接続ブロック(220,320)の前記それぞれのハウジング座部は、それぞれ溝(242,342)を備え、前記2つの接続ブロックの前記溝は、前記接続ブロックが互いに隣接しているときに前記スライド可能な細長い要素用のチャネルを形成し、前記チャネル自体の長手方向(B)にスライドさせるだけで前記チャネルに前記スライド可能な細長い要素を挿入することができるように形成されている、請求項5または6に記載の心臓弁用プロテーゼ。
【請求項10】
経カテーテル手術用の植え込みデバイスに請求項1に記載のプロテーゼを配置する方法であって、
・前記拡張可能な中心本体(16)を圧縮するステップ、
・前記少なくとも1つの弾性的に柔軟なアーム(19)を前記コンパクトな構成に配置するステップ、
・前記少なくとも1つの弾性的に柔軟なアーム(19)を前記コンパクトな構成に維持するために、前記それぞれの結合機構によってそれぞれの接続ブロック(20a,20b,120a,120b,220,320)を結合するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁用プロテーゼの分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、機能不全の心臓弁の生理学的機能を代替することを目的とした心臓弁用プロテーゼ、特に、房室心臓弁に関して開発されたものであるが、これに限定されるものではない。この心臓弁用プロテーゼは、経カテーテル植え込み手術による使用のために特別に開発された。
【0003】
本発明はさらに、経カテーテル植え込み手術で使用可能な植え込みデバイス内に心臓弁用のこのようなプロテーゼを配置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心臓弁は、人間の心臓の正しい機能を管理する複雑で繊細な部分である。その主な目的は、心腔内の血流を一方向にすることであり、心腔を満たす段階である拡張期と血液を排出する段階である収縮期の両方で必要とされる。
【0005】
血液のポンプ作用の効率を最適化するために、心臓は右の区画と左の区画の2つの異なる区画に分かれており、それぞれが心房と心室という2つの部屋に分かれている。右心房と右心室で構成される心臓の右の区画は、末梢循環から血液を戻し、酸素化のために肺循環に送る。同様に左心房と左心室に分かれている左の区画は、末梢循環に血液を供給し、酸素化された血液を肺循環から戻し、全身循環に送る。
【0006】
心臓内で血流を一方向にするために、各心室、各心房の出口に弁が配置されている。心房の出口に配置されている弁は、心臓の各側の心房と心室を接続するため、房室弁と呼ばれる。心臓の右側では、この弁は三尖弁とも呼ばれ、左側では通常、僧帽弁と呼ばれる。最後に、右心室の出口に配置されている弁は肺動脈弁と呼ばれ、左心室の出口にある弁は大動脈弁と呼ばれる。
【0007】
心臓弁の機能を変化させる病状は、心血管領域で最も深刻なものの一つである。その中でも、僧帽弁の機能不全、または僧帽弁が完全に閉じない状態は、全身の血液循環を担う心臓の左側のポンプ作用の効率を低下させるため、身体を非常に衰弱させる弁の病状である。
【0008】
現在の最先端技術では、重度の弁機能不全を治療するための標準的な治療法は、弁をインプラント型プロテーゼに置き換えることである。その他の場合、主に僧帽弁機能不全の場合、弁修復が行われる。どちらの場合も、機能不全の弁に直接アクセスできる心臓切開手術が行われる。この手術では、心臓を一時的に停止させ、適切なポンプと酸素交換器を使用して人工体外血液循環を生成する必要がある。心停止の管理技術の改良と体外循環システムの改善にもかかわらず、心臓切開治療は、その侵襲性と手術の継続時間に起因するリスクを伴う。実際、従来の手術で通常使用される修復用と交換用の両方のインプラント型プロテーゼは、通常、特定の縫合技術を使用してインプラント部位に固定するために長時間の手術を必要とする。場合によっては、患者の高齢や併発する病状など、患者の全般的な状態により、外科的治療が不可能なこともある。
【0009】
これらの制限を克服するために、最近、低侵襲性の介入手術、いわゆる経カテーテル手術が開発された。この目的のために、植え込み部位で自己固定できる放射状に折り畳み可能なプロテーゼが使用される。このプロテーゼは、血管系内を移動して例えば静脈や大腿動脈などの末梢血管に作られた遠隔アクセスから植え込み部位に到達して心臓プロテーゼを解放することができる、カテーテルによって植え込むことができる。これにより、心臓がまだ鼓動している状態で、外科手術を限定的に使用して、弁機能不全を矯正することができる。現在、経カテーテル技術は、大動脈弁の治療にのみ臨床的に使用されている。
【0010】
房室弁の機能不全の治療、特に僧帽弁閉鎖不全症の治療に関しては状況が異なる。弁とその周囲の構造の複雑な解剖学的構成、互いに大きく異なり、弁に直接的または間接的に影響を及ぼす病状の多様性により、経カテーテル経路による僧帽弁への安全で効果的な植え込みの要件を満たすことが極めて困難になる。
【0011】
近年、さまざまなアクセスおよび手術に従って植え込み可能な、房室弁用の経カテーテルプロテーゼが数多く開発されている。特に僧帽弁に適応される最初の植え込み方法は、左心室の心尖部を介して、置換される本来の弁へのアクセスを作成するものであり、この方法はすでに同じ出願人によって開発されている(WO2014/080338およびWO2014/080339)。この手術では、左心室の心尖部を露出させるために胸部切開を行う。心尖部を介して、心室への直接アクセスが外科的に得られ、これは、場合によっては、心尖部ポートを一時的に配置することで、つまり、手術の持続時間に限定して行われる。心尖部アクセスを介して、植え込み手術を実行するために必要なカテーテルが、その後、随時挿入される。
【0012】
同じ出願人によって開発された別の方法論(WO2021/014400)では、代わりに経中隔アクセスが提供される。「経中隔アクセス」という用語は、末梢大腿静脈から始まり、下大静脈を上って右心房まで上がる、置換される房室弁へのアクセスであると理解されることを意図している。僧帽弁の場合、介入法で2つの心房間の中隔に作成された開口部を介して左心房に到達することも必要である。左心房は、生来の僧帽弁への順行性アクセスを可能にする。このようにして、心室側から、つまり逆行性に僧帽弁へのアクセスを可能にする経心尖手術に関連する左心室の損傷、つまり穿孔が防止される。
【0013】
経カテーテル経路で植え込まれる弁プロテーゼは、最小の半径寸法の構成をとることができるように特別に研究されており、それによって患者の心血管系内をナビゲートするためのカテーテルに挿入することができる。同じ出願人による特許出願WO2015/118464には、例えば、この目的に特に適した経カテーテルプロテーゼが記載されている。このプロテーゼは、本来の弁との支持構造および接続構造と、その内部に固定された一群の柔軟なプロテーゼ弁葉とを有する。プロテーゼ構造は、特に、弁動作の中心本体、2つ以上の弓状セグメントによって形成された収容部、および中心本体の構造に固定結合された接続アームの端部に取り付けられた接続ブロックからなり、中心本体と弓状セグメントの間に機械的な連続性を提供する。アームは、中心本体の全体構造と同様に、超弾性特性を有する材料で作られているため、WO2021/014400に記載されているように、カテーテルの遠位端にプロテーゼが取り付けられている場合、一時的に変形して、大腿静脈や下大静脈などの人間の心臓血管系内を移動できる挿入構成にすることができる。プロテーゼを運ぶカテーテルが植え込み部位、または治療される本来の弁に到達すると、アームはバネによって戻り、プロテーゼを植え込むために必要な構成になる。特許出願WO2021/014400に記載されている経カテーテルシステムのリリースシステムに関しても、接続アームを変形した構成に維持するために採用された解決策は、圧縮された中心本体をすでに受け入れている遠位カプセル内にも接続アームを挿入することである。接続ブロックの向きを元に戻すには、カテーテルのカプセルを部分的に離脱させることによって行われ、これにより接続ブロックと接続アームの両方を露出させて解放することができる。
【0014】
この既知の解決策では、カテーテルの遠位カプセルが、変形した接続アームと接続ブロックを覆うのに十分な長さでなければならない。遠位カプセルはカテーテル全体の中で最も硬い部分であるため、その長さが長くなるほど、カテーテル自体のナビゲート能力は低下するが、これは、末梢アクセスから植え込み部位に到達するために存在する曲がりくねった解剖学的特徴を克服するのに適していないためである。さらに、カプセルの寸法はカプセル内の折り畳まれたプロテーゼの直径によって決まるため、接続ブロックに対して寸法が大きすぎ、その結果、遠位カプセル内では、接続ブロックはカテーテルの軸と完全には揃っておらず、したがって前進方向とも揃っていない。このずれにより、接続ブロックとその中でスライドするガイドワイヤとの間の摩擦が増加し、カテーテルの前進運動に対する抵抗が増加し、ブロック自体またはブロックがスライドするガイドワイヤから微粒子が放出されるリスクが増加する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的の1つは、従来技術の問題を解決することである。特に、折り畳み可能で、また、適切な植え込みカテーテルからの解放手順中に安全かつ安定した、心臓弁用プロテーゼを提供することを意図している。別の目的は、末梢血管アクセスから治療対象の本来の弁までカテーテル自体が前進する際に遭遇する曲がりくねった解剖学的特徴を制御された方法で克服するために、折り畳み可能なプロテーゼを運ぶ植え込みカテーテルの容易で制御されたナビゲーションを可能にすることである。別の目的は、経済的で、シンプルで、使用が確実で、安全なデバイスを提供することである。
【0016】
これらの目的および他の目的を達成するために、本出願は、添付の請求項1~9に記載のプロテーゼ、および請求項10に記載の経カテーテル手術用の植え込みデバイス内にプロテーゼを配置する方法に関する。
【0017】
特に、経カテーテル手術用のプロテーゼが記載されており、プロテーゼの中心本体と収容部との間のそれぞれの接続ブロックには、接続ブロック自体を、それらが固定されている接続アームと一緒にコンパクトな構成に選択的に維持するのに適した相互結合機構が設けられている。このコンパクトな構成では、接続ブロックは、遠位カプセル内の中心本体の全体的な半径寸法よりも小さい全体的な半径寸法を持つように配置されるのが好ましい。このコンパクトな構成では、接続ブロックは、植え込みカテーテルに対して実質的に同軸の向きになっているのが好ましい。このようにして、接続ブロックが患者の循環系内でのカテーテルの前進をいかなる形でも妨げたり干渉したりできないことが保証される。さらに、この相互連結機構は、植え込みを行う者が意図的に相互連結機構を解放するまでコンパクトな構成を安定に保つため、植え込みカテーテルの遠位カプセルの長さを、折りたたんだプロテーゼの中心本体の長さとほぼ等しくすることができ、つまり、従来技術よりも大幅に短くすることができる。このようにして、植え込みカテーテルはより柔軟になり、したがって、プロテーゼの植え込み部位に到達したときに遭遇する曲がりくねった解剖学的特徴を克服するのにさらに適したものになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
さらなる特徴および有利な効果は、純粋に非限定的な例として提供された添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について以下に詳細に説明することで理解され、
・
図1は、第1の実施形態による拡張された植え込み構成における本発明の心臓弁用プロテーゼを概略的に示す分解図であり、
・
図2は、中心本体のみが遠位カプセル内にあり、相互結合機構を備えたコンパクトな構成の接続ブロックを備え、植え込み準備完了の構成が破線で示された、
図1の心臓弁用プロテーゼを示し、
・
図3aおよび
図3bは、それぞれ第1の実施形態による相互結合機構を備えた2つの接続ブロックを示し、
・
図4は、
図3aおよび
図3bに示されたものと同様の2つの接続ブロックを示しており、コンパクトな構成を実現するために互いに接続されおり、
・
図5aおよび
図5bは、それぞれ第2の実施形態による相互結合機構を備えた2つの接続ブロックを示し、
・
図6は、
図5aおよび
図5bに示されたものと同様の2つの接続ブロックを示しており、コンパクトな構成を実現するために互いに接続されており、
・
図7は、第3の実施形態による対称な相互結合機構を備えた2つの接続ブロックのうちの1つを示し、
・
図8は、第4の実施形態による対称な相互結合機構を備えた2つの接続ブロックのうちの1つを示し、
・
図9は、
図8に示されたものと同様の2つの接続ブロックをコンパクトな構成を実現するために互いに接続された状態で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで図面を参照すると、
図1は、房室弁の機能を置き換えるために使用される植え込み型プロテーゼ10を示す。
【0020】
プロテーゼ10は、本来の弁を支持し、本来の弁と接続するためのプロテーゼ構造12と、その中に固定された柔軟なプロテーゼ弁14のグループを備える。プロテーゼ構造12は、特に、中心本体16、収容部18、および中心本体に固定接合された一連の接続アーム19を介して収容部18を中心本体16に機械的に接続するための接続ブロック20a、20bを備える。
【0021】
プロテーゼ構造12は、そのそれぞれの構成部分と同様に、心臓プロテーゼの安全性および機能性に悪影響を与えることなく折り畳み可能に構成されている。したがって、心臓プロテーゼの配置および植え込みのための経カテーテル手術によって、特に、三尖弁に典型的である経大腿アクセス、および経中隔アクセスによる経カテーテル手術によって、最小侵襲性を伴う外科的方法と互換性のある小さな血管アクセスを介して心臓腔内にプロテーゼ10を導入できるように、プロテーゼ10の半径方向の障害を一時的に軽減することが可能である。言い換えれば、最小侵襲性の末梢血管アクセスから心臓腔の内部、つまり植え込み部位付近までプロテーゼを搬送できる低半径プロファイルのカテーテル内に心臓プロテーゼを挿入し、その場所でプロテーゼの展開および植え込みを行って、本来の弁を機能的に置き換えることが可能である。
【0022】
より詳細には、中心本体16は、血液がこのデバイスを通過するための導管を区切るプロテーゼ構造の一部である。導管内で血液を一方向に流す柔軟なプロテーゼ弁14は、例えば、同じ出願人によるイタリア特許第20140204号で知られているように、中心本体16内に固定されている。
【0023】
中心本体16は、半径方向に折り畳み可能な弾性構造であり、スプリングバックの結果として、収容部18の直径よりもさらに大きな直径まで拡張する傾向がある。
【0024】
中心本体16にはアーム19が設けられ、その上に接続ブロック20a,20bが設けられている。接続ブロックは、安定して恒久的にアーム19に固定されている。固定は機械的であるのが好ましく、可逆的であるのが好ましいが、溶接などの異なる固定方法も排除されない。接続ブロックとアームが一体型であることも排除されない。
【0025】
収容部18は、中心本体16の自由な拡張に対抗してこれを制限し、中心本体16がプロテーゼ弁14間の接合の維持に適合する最大直径を超えることを防止する、プロテーゼ構造10の一部である。収容部18は、実質的に環状の形状を有し、縦方向には伸長不可能であり、つまり、中心本体16が外側に放射状の力を加えることによって内部で拡張した場合でも、その周辺の展開は大幅に変更されない。
【0026】
収容部18は、互いに分離され、実質的に弓形である2つの補助部品22に分割されるのが好ましい。それぞれの補助部品22は、接続ブロック20a,20bと選択的に結合することができ、最終的な植え込み構成では接続ブロック20a,20bに固定的に結合される。
【0027】
それぞれの補助部品22のそれぞれの端部24には、結合部26が備えられている。接続ブロック20a,20bには、結合部26にある軸方向の穴27に受け入れられるピン28が備えられている。ピン/穴接続機構は、代わりに補助部品22の端部のピンと、好ましくは円筒形の、接続ブロック20a,20bの穴で構成できることは明らかである。より一般的には、ピン/穴接続は、解決手段の一般的な性質に関する制限的な意図はなく、単に例示的な目的を有している。
【0028】
使用中、本来の弁の弁葉は、中心本体16と収容部18の間の接続部内に閉じ込められたままになる。
【0029】
ここで、
図2を参照すると、経カテーテル手術による植え込みを可能にするために、アーム19は柔軟である。特に、アームは弾性変形可能であり、プロテーゼの使用構成に対応する拡張した構成(
図2の破線)から、植え込みカテーテルの遠位端に取り付けられたプロテーゼの中心本体を患者の心臓血管系内に前進させることができるコンパクトな構成(実線で示す)に移動することができる。拡張した構成では、それぞれのアーム19は湾曲しており、プロテーゼの全体的な半径方向の障害が増加する。しかし、コンパクトな構成では、それぞれのアーム19はプロテーゼの軸Aとほぼ平行に配置される。アーム19は、ニチノールなどの超弾性特性を持つ材料で作られることが好ましく、それによって、制約がない場合には、スプリングバックによって拡張した構成になる。
【0030】
図2は、中心本体16のみを覆う植え込みカテーテルの遠位カプセル30内にコンパクトに作られたプロテーゼ構造12を示している。この実施形態による遠位カプセル30は、したがって、従来技術の遠位カプセルに比べて長さが短い。接続アーム19および接続ブロック20a,20bは、接続ブロック自体に直接形成された相互結合機構によって、カテーテルの軸と一直線に並ぶコンパクトな構成に維持される。この相互結合機構により、接続ブロックの構成をカテーテルの軸と平行に、したがって、カテーテルの前進に対する抵抗が最小限の最適な構成に選択的に維持することができる。この解決策により、カプセルの長さを最小寸法に短縮することもできる。この末端のカプセルはカテーテルの偏向に関して、特にそのすぐ直近の近位部分に関して最も硬い部分であるため、これにより、従来知られているカテーテルに比べて一般に柔軟性が高く、したがって、特に曲がりくねった解剖学的構造においてより高いレベルのナビゲーション性を特徴とするカテーテルが得られる。
【0031】
遠隔操作可能な適切な機構により、接続ブロックが接合された状態が維持され、接続ブロックを意図的に解放して再び拡張した構成をとることが可能となり、これはプロテーゼの植え込みの最終ステップを実行するために必要となる。
【0032】
接続ブロックに備えられた相互結合機構のいくつかの例を、
図3から
図8を参照して以下に説明する。この相互結合機構により、接続ブロック20a,20bを互いに接合して固定することができる。このようにして、ブロック自体とアーム19をコンパクトな構成に維持することができ、これは植え込み部位に到達するように患者の心血管系内でカテーテルをナビゲーション可能にするのに適している。
【0033】
図3a、
図3b、
図4に詳細に示されている第1の実施形態では、2つの接続ブロック20a,20bは互いに異なるように形成されている。接続ブロック20aには、上述のコンパクトな構成で接続ブロック20bに面する面36aに、突起38aが設けられている。同様に、接続ブロック20bには、コンパクトな構成で接続ブロック20aに面する面36bに、突起38bが設けられている。それぞれのブロックには、それぞれ貫通孔40a,40bが設けられており、貫通孔40a,40bは、より具体的には、結合機構を構成するそれぞれの突起38a,38bに位置している。2つの突起と孔は、2つの接続ブロックが互いに隣り合っているときに、それぞれの突起が互いに隣接し、それぞれの孔が互いに同軸になるように形成されている。この方法では、同じ接続要素、例えば非限定的な例として、ガイドワイヤ50を両方に挿入し、それによってブロックを並べて保持することが可能である。それぞれのブロックは、それぞれのアーム19によって等しく反対方向の弾性力を受けるため、ブロックは
図2bのコンパクトな構成のままである。この位置では、孔の軸は、プロテーゼの軸Aとほぼ一致している。
図4では、2つの接続ブロック20aと20bがガイドワイヤ50によって接合されているのが示されている。ガイドワイヤ50は、プロテーゼ自体と同軸で、カテーテル全体を通って延びている。ガイドワイヤ50が所定の位置にあると、接続ブロックは接合されたままになる。ガイドワイヤ50を取り外すと、代わりに接続ブロックが解放され、アームが元の構成に戻ることができる。当然ながら、ガイドワイヤの代わりに、接続要素として、好ましくは金属または他の適切な材料で作られた適切な直径のワイヤ、または他の細長い要素を使用することもできる。
【0034】
ここで、
図5a、
図5b、および
図6を参照すると、2つの接続ブロック120a,120bは、上述の接続ブロック20a,20bとほぼ同等の方法で形成されているが、唯一の違いは、貫通孔の代わりに開いたアイレットを有することである。接続ブロック120aには、コンパクトな構成で接続ブロック120bに面する面136aに、突起138aが設けられている。接続ブロック120bには、コンパクトな構成で接続ブロック120aに面する面136bに、突起138bが設けられている。突起138a,138bは、それぞれがガイドワイヤ50用の開いたチャネル140a,140bを有するように成形され、それぞれのチャネルは、長手方向Bを規定し、ガイドワイヤ50を長手方向Bにスライドさせることによってのみチャネルに挿入およびチャネルから取り外すことができるように形成されている。したがって、チャネル140a,140bの開口部142の幅Lは、ガイドワイヤの直径よりも小さい。2つの突起とそれぞれのチャネルは、2つの突起が隣接し、2つの互いに隣接する接続ブロックがそれぞれのチャネルを互いに同軸にするように形成されている。したがって、それらは相互結合機構を構成する。
図6では、2つの接続ブロック120a,120bがワイヤ50によって互いに接合されて示されている。
【0035】
この構成は、前述の構成に比べて、血液の流れの中でより容易に洗浄されることができ、貫通孔に血液または生物学的沈着物が蓄積するのを防ぐことができるという利点がある。この構成には、必ずしも接続要素を完全に取り外すことなく接続ブロックを解放できるという追加の利点もある。限定されない例示的な方法では、
図6を参照すると、ワイヤ50は、一般的に寸法Lよりも大きい直径の断面を有し、開口部142の幅Lよりも小さい直径の断面を有する中間部分を有するように描かれることができる。最初は、Lよりも大きい直径の断面を有する部分のチャネル140aおよび140bにワイヤ50を挿入することにより、2つの接続ブロックを接合したままにすることができる。接続ブロックを解放して、再び植え込みに適した拡張した構成にしたい場合は、ワイヤ50を軸方向にスライドさせて、Lよりも小さい直径の部分を開口部142と一直線に並べるだけでよく、植え込みカテーテルから完全に取り外す必要はない。このようにして、接続ブロックを解放した後でも、ワイヤ50を植え込みカテーテルのガイドワイヤとして引き続き使用することができる。別の変形例では、ワイヤ50の少なくとも一部に、長方形または楕円形の部分を構築することによって、またはいずれにしても、1つの直径が開口部142の寸法Lよりも大きく、もう1つの直径が開口部142の寸法Lよりも小さい、2つの直径を特徴とする部分を構築することによって、同じ結果を達成することができる。このように、ワイヤ50の大きい方の寸法が開口部142に干渉するように配置されると、接続ブロックは互いに結合される。ワイヤ50を回転させ、小さい直径の部分を開口部142に向けると、接続ブロックが解放され、アームが元の構成に戻ることができる。
【0036】
図7は、同じプロテーゼの2つの接続ブロック220が互いに同一である追加の変形例を示す。接続ブロック220には、コンパクトな構成で他の接続ブロック220に面する面236に突起238と凹部239が設けられている。突起238と凹部239は、1つのブロック220の突起が、その隣にある他のブロック220の凹部に完全に収まるようになっている。隣接する2つのブロックが一緒になって、軸B’を持つガイドワイヤ50用の孔を形成する。突起238に形成され互いに隣接するそれぞれの溝242によって、この孔は規定される。
【0037】
ガイドワイヤ50が溝242の間に挿入されると、前述の実施形態の結合機構について説明したのと同様に、ブロックの分離を防止する。しかし、追加の隣接するブロックがない場合、単一のブロック220上の単一の溝242では、ブロック220をコンパクトな位置に保持するのに十分ではない。この構成では、貫通孔がないため、堆積物の蓄積を防止することもできる。
【0038】
図8は、前述の変形例に類似したブロック320の追加の変形例を示す。この例でも、同じプロテーゼの2つの接続ブロックが互いに同一であり、コンパクトな構成で他の接続ブロック320に面する面336に突起338と凹部339を有する。隣接する2つのブロック320が一緒になって、ワイヤ50などの接続要素を収容するための孔340を形成し、突起338に形成され互いに隣接するそれぞれの溝342によって、この孔は規定される。前述の実施形態との相違点は、接続要素50が孔340に挿入されたときに、2つのブロックのプロファイルが機械的に干渉し、2つのブロック間の分離を防ぎ、接続要素50にかかる力を軽減するように、突起338と凹部339が形成されていることである。2つのブロック320間の干渉は、ワイヤ50によって互いに接続された2つの接続ブロック320を示す
図9に見ることができる。
【0039】
この構成は、
図6に示された構成と同様に、接続ブロックを解放する際に、接続ブロックを接続しているワイヤを完全に取り外す必要がないという追加の利点があり、このワイヤを、例えば、植え込みカテーテルのガイドワイヤとしてなど、他の目的に引き続き使用することができる。実際、ワイヤ50には、突起338を溝342から外し、2つの接続ブロックを互いに解放するのに十分な遊びを孔340に生成するほどの小さい断面積の部分があれば十分である。ワイヤ50を大きい断面積の部分から小さい断面積の部分に移動すると、植え込みカテーテルからワイヤ50を取り外す必要がなく、2つの接続ブロックが解放される。同様に、大きい寸法と小さい寸法を特徴とする長方形断面で描かれたワイヤ50は、大きい寸法の断面が、突起338が対応する凹部339に押し付けられたままになるように向けられているときに、接続ブロックを接続したままにすることもできる。ワイヤ50を回転させることにより、2つの結合プロファイルが切り離され、2つの接続ブロックが分離される。
【0040】
さらに、ブロックをガイドワイヤまたは他の同様の細長い要素と結合できるようにする他の構成も排除されるべきではない。単なる例として、接続ブロックに、縫合糸などの糸でも構築されたさまざまなタイプのアイレットを設けることが可能である。
【0041】
説明した様々な実施形態および類推によって導き出され得る他の変形による接続ブロックを有するプロテーゼは、例えば、特許出願WO2021/014400に記載されているような経カテーテル手術でプロテーゼを植え込むためのデバイスに配置するために、すべて同様の方法を必要とする。この方法では、拡張可能な中心本体を圧縮し、接続ブロックを互いに隣接させた状態でアームをコンパクトな構成に配置し、異なる方法で形成された適切な座部において接続ブロックにガイドワイヤ50を挿入することによって接続ブロックを互いに結合させる必要がある。プロテーゼが植え込み部位にあり、接続ブロックを拡張した構成にする必要がある場合、ガイドワイヤ50を接続ブロックから外れるのに十分な程度まで引き出すだけでよい。アーム19の弾性により、接続ブロックは自動的に拡張した構成になり、収容部の補助部品22に接続できるようになる。
【0042】
上述の実施形態では、
図1のプロテーゼの構成において、収容部の補助部品22の数に等しい2つの接続ブロックの存在を常に参照している。当然、プロテーゼは、異なる数の収容部の補助部品22、したがって異なる数の接続ブロックを備えてもよい。補助部品22が2つある説明したバージョンは、特許出願WO2021/014400に記載されているように、腱索に絡まったままになる可能性がある1本のガイドワイヤよりも正しく配置しやすい2本のガイドワイヤを使用できるため、好ましいバージョンである。ただし、収容部が1つの補助部品で構成され、つまりカットリングのように形成される可能性を排除すべきではない。この場合、単一の接続ブロックが
図1~6と同様の構成を有することが有利であり、その構成の結果として、単一の接続ブロックが存在する場合でも、長手方向の要素をそれぞれの孔40,140内に保持することができる。さらに、接続ブロックをプロテーゼに対して可能な限り同軸の位置に維持できるようにするために、ガイドワイヤ50の代わりに所定の末端側の剛性を有するバーを使用することが好ましい。
【0043】
主に三尖弁の置換を目的としたプロテーゼの場合、位置決め操作により高い複雑さが要求されるにもかかわらず、第3の補助部品を備えた解決手段も排除すべきではない。3つ以上の補助部品、つまり3つ以上の接続ブロックが提供される場合、それらのプロファイルを変更して、それらが3つからなるグループで互いに隣接できるようにし、それぞれの接続ブロックに貫通孔またはガイドワイヤ用の座部を確保して、隣接するそれぞれの接続ブロックの座部内でスライドできる細長い要素の存在によって接続ブロック間の結合が実現されるようにするだけでよい。
【0044】
最後に、上記の実施形態は、中心本体に固定して接合された接続アームに対して分離された接続ブロックなしで実施することもできる。上記のプロファイルおよび結合機構を接続アームの構造上に直接構築するだけでよい。
【0045】
本来の弁葉が中心本体16と収容部18の間に適切に閉じ込められたままであることを保証するために、弁葉を保持する収容部によって包囲されたプロテーゼ弁葉間の適切な接合を可能にする所定の最大直径まで拡張する中心本体を設けることも可能であることにも留意すべきである。このように構成されたプロテーゼには、上記で説明したものと同様に、中心本体と収容部の補助部品の間の接続ブロックも含まれていてもよい。
【0046】
当然、本発明の原理は同じままであり、実施形態の形態および構造の詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく、記載および図示されたものに関して広範囲に変形することができる。
【国際調査報告】