(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20250204BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20250204BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20250204BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20250204BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20250204BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/60
A61K8/19
A61K8/44
A61K8/36
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543469
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2023051641
(87)【国際公開番号】W WO2023139275
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリオール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ド トレネレ,モルガーヌ
(72)【発明者】
【氏名】レノー,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】スカンドレラ,アマディン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB271
4C083AB272
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC881
4C083AC882
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD202
4C083CC02
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD12
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD28
4C083DD31
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD34
4C083DD35
4C083DD41
4C083EE12
(57)【要約】
ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを低減させるのに有用な、化粧品活性剤および方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、化粧品活性剤:
(i)マンノース-6-リン酸とマンノースの混合物であって、マンノース-6-リン酸とマンノースのモル比が3:1~0.3:1である前記混合物;
(ii)銅イオン;
(iii)リシン、アルギニン、ヒスチジン、およびそれらの混合物からなる群から選択される第1のアミノ酸;
(iv)プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のアミノ酸;および
(v)乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピルビン酸、クエン酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、酒石酸、シュウ酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸。
【請求項2】
マンノース-6-リン酸とマンノースのモル比が、2:1~1:1、より好ましくは1.9:1~1.1:1、特に約1.5:1である、請求項1に記載の化粧品活性剤。
【請求項3】
マンノース-6-リン酸を、30~220mMの濃度で、より好ましくは60~170mMの濃度で、および最も好ましくは約120mMの濃度で含む、請求項1または2に記載の化粧品活性剤。
【請求項4】
0.5~5.0重量%のマンノース、より好ましくは0.8~3.0重量%のマンノース、および最も好ましくは約1.5重量%のマンノースを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項5】
銅イオンが、硫酸銅、リン酸銅、炭酸銅、塩化銅、酢酸銅、リンゴ酸銅、コハク酸銅、フマル酸銅、マレイン酸銅、ピルビン酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、グルクロン酸銅、ラクトビオン酸銅、ソルビン酸銅、酒石酸銅、シュウ酸銅、乳酸銅、ピログルタミン酸銅、プロリン酸銅、アスパラギン酸銅、グルタミン酸銅、およびそれらの混合物からなる群から選択される銅塩として、より好ましくは硫酸銅として提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項6】
銅イオンを、約10mM~約40mM、より好ましくは約12mM~約30mM、および最も好ましくは約12.5mM~約25mMの濃度で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項7】
第1のアミノ酸がリシンを含むかリシンからなり、および/または第2のアミノ酸がプロリンを含むかプロリンからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項8】
第1のアミノ酸と第2のアミノ酸を、モル比約3:5~約5:2、より好ましくは約9:10~約10:6、および最も好ましくは約93:100~約100:63で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項9】
酸を、化粧品活性剤のpHが約3.8~約6.0、より好ましくは約4.5~約5.3となる量で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項10】
さらに別のアミノ酸またはその塩もしくはエステルを含み、ここで該アミノ酸が、グルタミン、アスパラギン、グリシン、ヒドロキシプロリン、セリン、メチオニン、トレオニン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項11】
水酸化ナトリウム、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセロール、リン酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の化粧品活性剤。
【請求項12】
以下を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の化粧品活性剤:
【表1】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品活性剤および美容上許容し得る賦形剤を含む、化粧品組成物、特にスキンケア組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品活性剤または請求項13に記載の化粧品組成物を、ヒトの皮膚、特に顔の皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを低減させる方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品活性剤または請求項13に記載の化粧品組成物を、ヒトの皮膚、特に顔の皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚における不全角化症を軽減する化粧方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品活性剤または請求項13に記載の化粧品組成物を、ヒトの皮膚、特に顔の皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚の表皮の完全性を回復する化粧方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品活性剤または請求項13に記載の化粧品組成物を、ヒトの皮膚、特に顔の皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚におけるコラーゲン合成を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを低減させるのに有用な、化粧品活性剤および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魅力的に見られたいとの欲求は現代の消費者に自然に根付いている。魅力の理想は時代とともに変化するが、我々の皮膚の状態および外観が魅力的な外見に大きく影響するということは、広く認められている。
【0003】
今日の消費者には、皮膚のケアのための多数の化粧用製品が提供されている。一般にこれらの製品はクリームおよびローションの形態をしており、皮膚を保湿するための水分と、油分を補給するための脂肪および脂質を含有し、それらの効果は皮膚の最外層に発揮される。
【0004】
毛穴は、皮膚にある小さな開口部であり、汗および皮脂がそこを通って皮膚の表面に到達する。毛穴は、毛包の開口部である。各毛包内の皮脂腺は、潤滑油である皮脂を、毛穴を通して分泌する。皮脂の生成は、これが皮膚を保護して保湿するため、皮膚の健康にとって重要である。顔の毛穴は典型的には肉眼で見ることができ、直径は約250~500マイクロメートルの範囲である。通常のサイズ範囲は、皮膚の色合いおよび年齢などの要因によって異なる。拡大した毛穴とは、広がったように見え、肉眼ではっきり確認できる毛穴である。
【0005】
毛穴のサイズは主に遺伝によるが、皮脂または油分の過剰産生によっても、油分が皮膚の老廃物と混ざり合って毛穴が詰まり、目に見えて拡大された毛穴をもたらし得る。皮膚の老化および皮膚の弾力性の低下によっても、毛穴が拡大されて見えることがある。その他の要因としては、慢性的なニキビ、ホルモンの変化、日焼け、喫煙、放射線皮膚炎、およびビタミンA欠乏症などが挙げられる。
【0006】
従来、大きな毛穴は、皮脂生成の増加および皮膚の老化などの根本的な関連する原因を標的として、角質除去およびピーリングによって毛穴の詰まりを取り除くことで処置されてきた。
【0007】
大きな毛穴は、皮脂の生成を減らすかまたは調節し、皮膚の老化を防ぐことで、小さく見せることができる。角質除去は、詰まりを取り除き、拡張を軽減するのにも役立ち得る。レチノイドおよび抗老化溶液を用いて、皮膚の老化を防ぎ、ハリと弾力のある皮膚を促進することができる。スクラブ、クレンザー、およびフェイスマスクは皮膚を軽く角質除去するが、ケミカルピールは皮膚を深く角質除去し、皮脂の生成を減らすこともできる。
【0008】
局所用レチノイドはビタミンA誘導体であり、これは、皮膚の厚みと弾力性を高めコラーゲンの分解を遅らせることで、老化現象および日焼けによる皮膚の変化を回復させるのに役立つ。レチノイドは細胞のターンオーバーを促進し、余分な皮脂を毛穴から排出する。しかしレチノイドは、灼熱感、鱗屑化、皮剥け、赤み、および腫れなどの副作用を引き起こす場合があり、そのため使用するのが不快となり得る。
【0009】
ケミカルピールは、皮膚の外層を除去して再生する溶液であり、フェイススクラブおよびクレンザーよりもはるかに深い角質除去剤として作用する。この角質除去により、皮脂が毛穴から押し出されて毛穴内の量が減り、その結果毛穴の見た目が軽減される。ケミカルピールは、大きな毛穴の処置に効果があることが証明されている。しかしながら、酒さ、皮膚の色が濃い人、および敏感肌の人は、ケミカルピールの使用により多少の刺激を感じる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、皮膚刺激およびその他の不快な副作用を避けながら、大きな毛穴を効果的に処置する方法が、依然として必要とされている。
本発明は、第1の側面において、大きな毛穴を処置するための、化粧品活性剤を提供する。
【0011】
化粧品活性剤は、以下を含む:
(i)マンノース-6-リン酸とマンノースの混合物であって、マンノース-6-リン酸とマンノースのモル比が3:1~0.3:1である前記混合物;
(ii)銅イオン;
(iii)リシン、アルギニン、ヒスチジン、およびそれらの混合物からなる群から選択される第1のアミノ酸;
(iv)プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のアミノ酸;および
(v)乳酸および2-ピロリドン-5-カルボン酸からなる群から選択される酸。
【0012】
第2の側面において、本発明は、化粧品活性剤および美容上許容し得る賦形剤を含む、化粧品組成物を提供する。特に本発明は、スキンケア組成物に関する。
【0013】
第3の側面において、本発明は、化粧品活性剤または化粧品組成物をヒトの皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを低減させる方法を提供する。これは特に、顔の皮膚に有用である。
【0014】
第4の側面において、本発明は、化粧品活性剤または化粧品組成物をヒトの皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚における不全角化症を軽減する化粧方法を提供する。これは特に、顔の皮膚に有用である。
【0015】
第5の側面において、本発明は、化粧品活性剤または化粧品組成物をヒトの皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚の表皮の完全性を回復する化粧方法を提供する。これは特に、顔の皮膚に有用である。
【0016】
第6の側面において、本発明は、化粧品活性剤または化粧品組成物をヒトの皮膚に塗布するステップを含む、ヒトの皮膚におけるコラーゲン合成を促進する方法を提供する。これは特に、顔の皮膚に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、角質層中の核を示す、RHEのHE染色を示す。
【
図2】
図2は、不全角化症を模倣したRHEにおけるインボルクリン免疫染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
驚くべきことに、本発明の化粧品活性剤は、拡大した毛穴に対して非常に有効であり、毛穴面積を大幅に低減させることがわかった。同時にこれは、先行技術の活性剤から知られている望ましくない副作用を回避する。
【0019】
本発明の化粧品活性剤はいくつかの既知の構成成分を含み、これらは相乗的な様式で相互作用し、これまで知られていなかった毛穴縮小効果を提供する。この効果はこれまで、含有される構成成分のいずれとも関連付けられておらず、先行技術においてもこの点に関するいかなるヒントまたは示唆もなかった。
【0020】
本発明の化粧品活性剤は、マンノース-6-リン酸とマンノースの混合物を含み、ここでマンノース-6-リン酸とマンノースのモル比は3:1~0.3:1である。
このような混合物を含む化粧品活性成分は、抗老化に関連してWO 2020/201185にすでに記載されている。WO 2020/201185の内容は、特に成分の合成に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本発明の化粧品活性剤は、D-マンノース-6-リン酸、L-マンノース-6-リン酸、またはそれらの混合物を含んでもよい。好ましくは、これはD-マンノース-6-リン酸を含む。
同様に、本発明の化粧品活性剤は、D-マンノース、L-マンノース、またはそれらの混合物を含んでもよい。好ましくは、これはD-マンノースを含む。
本出願全体を通して、別途指定がない限り、「マンノース-6-リン酸」および「マンノース」という用語は、D型およびL型の両方、ならびにそれらの混合物を包含するものとする。
【0022】
本発明の化粧品活性剤において、マンノース-6-リン酸は、化粧品として許容し得る任意の形態で存在することができる。実例として、pHに応じて、マンノース-6-リン酸は、プロトン化形態または塩の形態で存在し得る。好適な対イオンとしては、これらに限定されないが、例えばナトリウム、カリウム、もしくはアンモニウムなどの一価カチオン;例えば銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、もしくはマンガンなどの二価カチオン;または例えばアルミニウムなどの三価カチオン;またはそれらの混合物が挙げられる。マンノース-6-リン酸は、1種以上の美容上許容し得る正電荷を帯びた物質と混合することもでき、および、前記美容上許容し得る正電荷を帯びた物質と塩を形成することもできる。
【0023】
本出願全体を通して、別途指定がない限り、「マンノース-6-リン酸」という用語は、遊離形態だけでなく、プロトン化形態、およびマンノース-6-リン酸の美容上許容し得る塩、ならびにそれらの混合物も包含するものとする。
【0024】
本発明の化粧品活性剤は、銅イオンをさらに含む。本発明の化粧品活性剤内では、これらの銅イオンは、主にまたは排他的に、Cu2+イオンの形態で存在する。しかしながら、化粧品活性剤の調製中に、銅イオンはCu2+イオンおよび/またはCu+イオンの形態で添加され、後者(の一部)は続いて酸化されてCu2+イオンを形成する場合がある。
【0025】
本発明の化粧品活性剤は、第1のアミノ酸および第2のアミノ酸をさらに含む。
理論に束縛されることなく、第1のアミノ酸および/または第2のアミノ酸は、おそらくはイオン結合、および/または複合体様構造の形成によって、銅イオンに会合すると考えられている。
【0026】
本出願全体を通して、「アミノ酸」という用語は、アミノ酸の遊離形態だけでなく、塩、エステル、アミド、N-アセチル化物、またはヒドロキサマートなどのその近似誘導体も包含するものとする。
【0027】
本発明の化粧品活性剤に用いられる第1のアミノ酸は、塩基性側鎖を有する。1つの態様において第1のアミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本発明の化粧品活性剤に用いられる第2のアミノ酸は、酸性側鎖を有する。代替的に第2のアミノ酸は、プロリンであってもよい。1つの態様において第2のアミノ酸は、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
本発明の化粧品活性剤は、酸をさらに含む。前記酸は、例えば、pHの調整および/または保湿特性など、いくつかの目的を果たし得る。1つの態様において、酸は、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピルビン酸、クエン酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、酒石酸、シュウ酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、酸は、乳酸および2-ピロリドン-5-カルボン酸からなる群から選択される。
【0030】
本発明の化粧品活性剤は、ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを大幅に低減させることができる。
本発明の化粧品活性剤はまた、不全角化症を軽減し、表皮の完全性を回復し、ヒトの皮膚におけるコラーゲン合成を促進することもできる。
これらの効果は、特に顔などの、皮膚の目に見える部分に特に有利である。
【0031】
マンノース-6-リン酸は、マンノースから酵素的リン酸化によって調製することができる。好適なリン酸化条件は、実例としてWO 2008/142155に記載されており、WO 2020/201185の例1には、マンノース-6-リン酸の可能な合成が詳細に記載されている。この点に関するこれら2つの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
酵素的リン酸化により、典型的にはマンノース-6-リン酸とマンノースの混合物が生成される。反応時間およびその他の条件に応じて、変換率、ひいてはマンノース-6-リン酸とマンノースの比率は変化し得る。したがって好ましくは、反応時間および条件は、所望のマンノース-6-リン酸とマンノースの比率が直接得られるように選択される。代替的に、生成物の一方または両方を追加または削除して、比率を調整することもできる。
【0033】
1つの態様において、マンノース-6-リン酸とマンノースのモル比は2:1~1:1であり、より好ましくは1.9:1~1.1:1であり、特に約1.5:1である。これらの比率は、特に有利であることが判明した。
【0034】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、マンノース-6-リン酸を30~220mMの濃度で、より好ましくは60~170mMの濃度で、および最も好ましくは約120mMの濃度で含む。
【0035】
特に、本発明の化粧品活性剤は、0.5~6.0重量%のマンノース-6-リン酸ナトリウム塩、より好ましくは2.0~4.0重量%のマンノース-6-リン酸ナトリウム塩、および最も好ましくは約3.0重量%のマンノース-6-リン酸ナトリウム塩を含み得る。代替的に、本発明の化粧品活性剤は、上に記載の任意の他の形態のマンノース-6-リン酸を、対応する量で含んでもよい。
【0036】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、0.5~5.0重量%のマンノース、より好ましくは0.8~3.0重量%のマンノース、および最も好ましくは約1.5重量%のマンノースを含む。
【0037】
本発明の化粧品活性剤中に存在する銅イオンは、化粧品活性剤の調製時に任意の好適な形態、例えばCu2+および/またはCu+塩の形態で提供され得る。好ましくは、それらはCu2+塩の形態で添加される。前記銅塩に使用される対イオンは、本発明の化粧品活性剤が調製された後にその化粧品活性剤中の銅イオンと直接会合してもよく、またはしていなくてもよい。
【0038】
したがって、1つの態様において、銅イオンは、硫酸銅、リン酸銅、炭酸銅、塩化銅、酢酸銅、リンゴ酸銅、コハク酸銅、フマル酸銅、マレイン酸銅、ピルビン酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、グルクロン酸銅、ラクトビオン酸銅、ソルビン酸銅、酒石酸銅、シュウ酸銅、乳酸銅、ピログルタミン酸銅、プロリン酸銅、アスパラギン酸銅、グルタミン酸銅、およびそれらの混合物からなる群から選択される銅塩として、より好ましくは硫酸銅として提供される。これらの銅塩は化粧品組成物に使用するのに特に適しており、安定した生成物の形成を可能にすることが見出されている。
【0039】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、約10mM~約40mM、より好ましくは約12mM~約30mM、および最も好ましくは約12.5mM~約25mMの濃度の銅イオンを含む。例えば、化粧品活性剤は、12.5mM~25.1mMの濃度の銅イオンを含み得る。
【0040】
1つの態様において、第1のアミノ酸はリシンを含むか、またはリシンからなる。
1つの態様において、第2のアミノ酸はプロリンを含むか、またはプロリンからなる。
好ましくは、第1のアミノ酸はリシンを含むかリシンからなり、第2のアミノ酸はプロリンを含むかプロリンからなる。
【0041】
本発明の化粧品活性剤は、第1のアミノ酸と第2のアミノ酸を、任意の好適な比率で含み得る。
【0042】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、第1のアミノ酸と第2のアミノ酸を、約3:5~約5:2、より好ましくは約9:10~約10:6、および最も好ましくは約93:100~約100:63のモル比で含む。例えば、本発明の化粧品活性剤は、リシンとプロリンを、約0.071:0.119~約0.120:0.049のモル比で、より好ましくは約0.0886:0.0955~約0.0958:0.0608のモル比で含み得る。
【0043】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、第1のアミノ酸を、約50mM~約120mM、より好ましくは約60mM~約100mM、および最も好ましくは約61mM~約96mM、例えば約78mMの濃度で含む。
【0044】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、第2のアミノ酸を、約50mM~約120mM、より好ましくは約60mM~約100mM、および最も好ましくは約61mM~約96mM、例えば約78mMの濃度で含む。
本発明の化粧品活性剤に含有される酸は、化粧品活性剤のpHを美容上許容し得るレベルに調整するために使用し得る。
【0045】
したがって、1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は、酸を、化粧品活性剤のpHが約3.8~約6.0、より好ましくは約4.5~約5.3となる量で含む。当業者は、必要な量を決定する方法を知っている。
本発明の化粧品活性剤は、所望の効果をサポートし、または他の利点をもたらすさらなる成分を含んでもよい。
【0046】
したがって、本発明の化粧品活性剤は、任意に、他の化粧用活性成分をさらに含有してもよい。ヒト皮膚における使用のための化粧品調製物の調製において一般的に使用されるあらゆる化粧用活性成分を、本発明において用いることができる。
【0047】
本発明の化粧品活性剤は、任意に、溶媒、賦形剤、および/または他のアジュバントをさらに含有してもよい。ヒト皮膚における使用のための化粧品調製物の調製において一般的に使用されるあらゆる溶媒、賦形剤、および/または他のアジュバントを、本発明において用いることができる。
【0048】
特に、本発明の化粧品活性剤は、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、および/またはグリセロールをさらに含んでもよい。それらは、実例として、防腐剤としての役割を果たし得る。
【0049】
代替的にまたは加えて、本発明の化粧品活性剤は、リン酸ナトリウムおよび/または水酸化ナトリウムをさらに含んでもよい。実例として、リン酸ナトリウムを緩衝剤として使用することができる。
【0050】
1つの態様において、本発明の化粧品活性剤は別のアミノ酸をさらに含み、該アミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、グリシン、ヒドロキシプロリン、セリン、メチオニン、トレオニン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
好ましい態様において、本発明の化粧品活性剤は以下を含む:
【表1】
【0052】
本発明の化粧品活性剤は、化粧品組成物、特にスキンケア組成物に有利に使用される。
【0053】
したがってさらなる側面において、本発明は、上記の化粧品活性剤および美容上許容し得る賦形剤を含む化粧品組成物、特にスキンケア組成物を提供する。好ましくは、化粧品組成物は、本明細書で概説した好ましい態様における化粧品活性剤を含む。
【0054】
典型的には、本発明の化粧品活性剤は、化粧品組成物中、約0.1~5.0重量%の濃度で使用され、より好ましくは約0.5~3.0重量%の濃度、例えば約1重量%の濃度で使用される。
本発明の化粧品組成物は、美容上許容し得る賦形剤を含む。
【0055】
本発明の化粧品組成物、特にスキンケア組成物は、1種以上の美容上許容し得る賦形剤を含有してもよい。ヒト皮膚における使用のための化粧品調製物の調製において一般に使用されるあらゆる賦形剤を、本発明において用いることができる。好適な賦形剤は、限定はされないが、本発明の化粧品活性剤の官能特性、皮膚への浸透、およびバイオアベイラビリティに影響し得る成分を包含する。より具体的に言うと、それらは、水、油または界面活性剤などの液体を包含し、それらは石油、動物、植物または合成由来のもの、たとえばこれらに限定されないが、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、エーテルスルファート、スルファート、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、ジギトニン等を包含する。
【0056】
皮膚へ局所的に適用するための製剤は、いかなる物理的形態をとってもよい。実例として化粧品組成物、および特にスキンケア組成物は、リポソーム組成物、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体-脂質ナノ粒子、ベシクル、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、ミクロスフェアおよびナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルションおよびナノエマルションの形態であってよく、これらは、本発明の化粧品活性剤のより高い浸透性を達成するために添加することができる。
【0057】
化粧品組成物、および特にスキンケア組成物は、局所的な皮膚への適用または経皮的な適用に有用なあらゆる固体、液体、または半固体形態で製造することができる。よって、局所的なまたは経皮的な適用のこれらの調製物は、これらに限定されないが、以下を包含する:クリーム、多数のエマルション、たとえばこれらに限定されないが、水中油および/またはシリコーン型エマルション、油および/またはシリコーン中水型エマルション、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルション、および油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルション、マイクロ-エマルション、エマルションおよび/または溶液、液晶、無水組成物、水性分散体、油、ミルク、バルサム、泡、水性または油性ローション、水性または油性ゲル、クリーム、ハイドロ-アルコール溶液、ハイドロ-グリコール溶液、ハイドロゲル、リニメント、セラ、石鹸、フェイスマスク、セラム、多糖類フィルム、軟膏、ムース、ポマード、ペースト、パウダー、バー、ペンシル、およびスプレーまたはエアロゾル(スプレー)、これらは、リーブオンおよびリンスオフ製剤を包含する。
本明細書に記載の有益な効果を達成するために、本発明の化粧品活性剤または化粧品組成物は、皮膚、特に顔の皮膚に有利に塗布される。
【0058】
この出願全体を通して、「皮膚」という用語は、特にヒトの皮膚を指す。
さらなる側面において、本発明は、ヒトの皮膚の毛穴の数および/またはサイズを低減する方法を提供する。
【0059】
毛穴形成の原因となる要因の1つは、不全角化症の刺激に関連する表皮の完全性の変化であり、表皮の再生が損なわれ、皮膚表面に死細胞が大量に蓄積して毛穴が塞がれる。
【0060】
本発明の化粧品活性剤または本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することにより、皮膚、特に顔の皮膚の毛穴面積を減少できることが判明した。
【0061】
さらに、本発明の化粧品活性剤または本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することにより、不全角化症を軽減できることも判明した。
さらに、本発明の化粧品活性剤または本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することにより、表皮の完全性を回復できることも判明した。
【0062】
さらに、本発明の化粧品活性剤または本発明の化粧品組成物を皮膚に塗布することにより、コラーゲンの合成を促進できることも判明した。
これらの効果は、以下の例に示すように、in vitro、ex vivo、および臨床研究によって確認されている。
【0063】
本発明はまた、本発明の化粧品活性剤または化粧品組成物を、上記目的のいずれかに使用することにも関する。
本発明は、以下の非限定例によりさらに説明される:
【0064】
例1:化粧品活性剤の調製
本発明による化粧品活性剤1.00kgを調製する手順は、以下の通りである:
撹拌かつ温度調節された反応器に、125gの脱塩水を導入した。水を軽く撹拌し、温度を18℃~28℃、好ましくは23℃に維持した。
9.4gのプロリン(C5H9NO2; 115.13 g/mol; CAS: 147-85-3)を反応器に導入し、軽く撹拌しながら完全に分散させた。
2.84gの硫酸銅(CuSO4; 159.61 g/mol; CAS: 7758-98-7)を反応器に導入し、軽く撹拌しながら完全に分散させた。
11.9gのリシン(C6H14N2O2; 146.19 g/mol; CAS: 56-87-1)を反応器に導入し、軽く撹拌しながら完全に分散させ、濃い青色の溶液を得た。溶液のpHは9.45であった(9.0~10.0の範囲、好ましくは9.3~9.6の範囲の値が許容し得ると見なされた)。
27.6gのマンノース-6-リン酸(C6H13O9P; 260.14 g/mol; CAS: 3672-15-9)と14.4gのマンノース(C6H12O6; 180.16 g/mol; CAS 3458-28-4)を、反応器に導入した。これらの物質は、水性溶液の形態で一緒に添加された(好適な混合物は、0.065kg/kg~0.098kg/kgの範囲の濃度のマンノース-6-リン酸と、0.031kg/kg~0.047kg/kgの濃度のマンノースを含む)。本例では、マンノース-6-リン酸の濃度が0.0813kg/kg、マンノースの濃度が0.0424kg/kgの水性溶液を使用したため、添加した溶液の量は339.5gであった。
14.9gの乳酸(C3H6O3; 90.08 g/mol; CAS: 79-33-4)を反応器に導入し、軽く撹拌しながら完全に分散させた。混合物のpHを測定したところ、3.25という値が得られた(2.9~3.6、好ましくは3.1~3.4の範囲の値が許容し得ると見なされた)。
pHを、2Nの水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム:CAS 1310-73-2)で4.65に調整した(4.2~5.1、好ましくは4.5~4.8の範囲の値が許容し得ると見なされた)。
混合物の重量は、脱塩水を加えて750gに調整した。
混合物の重量を、1,3-プロパンジオール(C3H8O2; 76.09 g/mol; CAS 504-63-2)を加えて1.00kgに調整した。
混合物は、栓をした滅菌ボトルに入れて冷温(4℃~10℃)で保存した。
【0065】
この方法により得られた化粧品活性剤は以下の組成を有し、pHは約5.06であった。
【表2】
【0066】
例2:化粧品活性剤を含むスキンケア組成物
以下の例9に記載の臨床研究のために、次の組成物を調製した。
【表3】
【0067】
以下の例10に記載の臨床研究のために、次の組成物を調製した:
【表4】
【0068】
例3:統計分析
以下に説明するin vitroおよびex vivo研究について、すべての結果は3つの独立した3重試験の平均±平均の標準誤差(SEM)として示される。
【0069】
すべての研究について、Shapiro Wilk検定を使用して、生データがガウスの法則に従っているかどうかを検証した。正規分布データの場合、平均値は、対応のないもしくは対応のあるt検定(≦2グループ)、または一元配置分散分析の後に事後検定(≧2グループ)のいずれかを用いて比較した。非正規分布データの場合、対応のあるデータにはWilcoxon検定(対応あり)を、対応のないデータにはKruskal-Wallis 検定に続いてMann-Whitney U検定(対応なし)を使用した。
結果は、次のように有意であると判断した: # p<0.1、* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
【0070】
例4:角化細胞のトランスクリプトーム研究
材料および方法
正常なヒト表皮角化細胞(NHEK)を、6ウェルプレートに1ウェルあたり300,000個の細胞で播種した。48時間の培養後、NHEKをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすぎ、刺激の前に因子を含まない培地に一晩放置した。
【0071】
細胞は、例1の化粧品活性剤0.5%で刺激した。刺激の24時間後、「TRIzol法」により全RNAを抽出した(Rio DC, Ares M Jr, Hannon GJ, Nilsen TW. Purification of RNA using TRIzol (TRI reagen). Cold Spring Harb Protoc. 2010 Jun; 2010(6): pdb.prot5439. doi: 10.1101/pdb.prot5439. PMID: 20516177.)。RNAの品質を制御し、逆転写を行ってcDNAを取得した。
【0072】
RT-qPCRは、NHEKの表皮生物学に関与するさまざまな遺伝子のトランスクリプトーム発現を研究するために設計された特別なプレート上で、ウェルあたり10ngのcDNAを使用して行った。
角化細胞で得た遺伝子発現の結果は、EIF2B1(真核生物翻訳開始因子2Bサブユニットアルファ)およびABL1(ABLがん原遺伝子1、非受容体チロシンキナーゼ)ハウスキーピング遺伝子に従って正規化した。
【0073】
結果
トランスクリプトーム解析は、剥離、分化、および幹細胞マーカーに関与する標的遺伝子を含むプレート上で、RT-qPCRにより実施した。結果は、陰性対照として未処理状態との比較で表し、最も安定したハウスキーピング遺伝子(EIF2B1およびABL1)の平均で正規化する。
【0074】
本発明の化粧品活性剤での処理による、7つの遺伝子の顕著な調節が観察された。結果を、以下の表に示す:
【表5】
【0075】
具体的には、化粧品活性剤は、皮膚の剥離プロセスに関与するKLK7遺伝子を著しく上方制御した。また、LOR、SPRR3、およびCDSNなど分化に関与する遺伝子の発現も減少させた。最終的に、化粧品活性剤は、幹細胞ニッチに関与するCTNNB1、ITGA6、およびITGB1を上方制御した。
【0076】
これらのさまざまな効果は、本発明の化粧品活性剤が、皮膚の再生および剥離プロセスが不十分なために角質層が蓄積する不全角化症の状況において、明らかな利益をもたらす可能性があることを示唆する。
【0077】
例5:不全角化症の評価
皮膚外植片の培養および処理
再構成されたヒト表皮(RHE)を気液界面で培養し、例1の化粧品活性剤1%で24時間前処理した。RHEに2.5%のオレイン酸で48時間ストレスを与え、不全角化症を模倣する表皮の変化を、例1の化粧品活性剤1%の有無において誘発した。RHEは、ホルムアルデヒド溶液で固定した。固定した試料は、パラフィンに包埋する前に、濃度が上昇するエタノール浴で連続的に脱水した。
【0078】
不全角化症の評価
横断切片はミクロトーム(厚さ5μm、スライドあたり2切片、RHEあたり1スライド)を使用して作製し、分析まで室温で保管した。組織切片は脱パラフィン処理し、HE染色の標準プロトコルに従って染色した:手短に言えば、切片をヘマトキシリンで染色し、すすぎ、エオシンで染色した。その後切片をすすぎ、水性媒体中に封入した。
不全角化症を評価するために、角質層内の核の数を、RHE切片の規定の長さでカウントした。
【0079】
インボルクリン免疫染色
組織切片を脱パラフィン処理し、アンマスキング溶液中95℃でインキュベートして、抗原抗体相互作用を最適化した。スライドは、同じ溶液中で室温まで冷却した。TBS-Tween-2%BSA(Tweenと2%の牛血清アルブミンを含有するTRIS BASE溶液)で飽和させた後、組織切片を目的のマーカー(インボルクリン)に対する一次抗体溶液で一晩インキュベートした。
【0080】
洗浄後、一次抗体によって認識される結合部位が、二次蛍光抗体(GAR-568)により明らかになった。標識された組織切片は、核の着色のためにDAPI(4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を含有するProlongRを用いて封入した。標識された組織切片は、ZEISS 710共焦点顕微鏡を使用して観察した。画像は、ZENソフトウェア(対物レンズx20)で撮影および処理した。
【0081】
不全角化症の評価結果
図1は、角質層内の核を示す、RHEのHE染色を示す。カウントされた核の数を次の表に示す:
不全角化症(角質層内の核の数)の低減
【表6】
【0082】
図1および2からわかるように、オレイン酸の処理により、不全角化症のマーカーである角質層の核の数が大幅に増加した。プラセボ対照ではこの現象は改善されなかったが、一方、本発明の化粧品活性剤1%では、核の数の減少によって観察されるように、不全角化症が53%有意に低減された。
【0083】
インボルクリン免疫染色の結果
図2は、不全角化症を模倣したRHEにおけるインボルクリン免疫染色を示し、次の表は、染色強度の定量化を示す。
過剰分化の制限(不全角化症の条件におけるインボルクリン発現%)
【表7】
【0084】
図3および4からわかるように、インボルクリンの免疫染色により、表皮の完全性の回復が確認され、これは本発明の化粧品活性剤1%でインボルクリンの発現が-38%減少したことにより示される。
【0085】
例6:真皮の脆弱性: 線維芽細胞のトランスクリプトーム研究
材料および方法
正常なヒト皮膚線維芽細胞NHDFを、6ウェルプレートに1ウェルあたり300,000個の細胞で播種した。48時間の培養後、200μMのH2O2処理を2時間行ったところ、基本状態と比較して早期老化が誘発された。NHDFをその後PBSで2回すすぎ、刺激の前にFCSを含まない培地で一晩放置した。
【0086】
細胞は、基本状態および早期老化(H2O2)状態で、例1の化粧品活性剤0.5%で刺激した。刺激の24時間後、「Extract-all法」により全RNAを抽出した。RNAの品質を制御し、逆転写を行ってcDNAを取得した。
【0087】
RT-qPCRは、NHDFの真皮生物学に関与するさまざまな遺伝子のトランスクリプトーム発現を研究するために設計された特別なプレート上で、ウェルあたり10ngのcDNAを使用して実施した。線維芽細胞で得られた遺伝子発現の結果は、基本状態ではPES1(Pescadilloリボソーム生合成因子1)およびGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)ハウスキーピング遺伝子に従って正規化し、早期老化状態ではHMBS(ヒドロキシメチルビラン合成酵素)およびGAPDHに従って正規化した。
【0088】
【0089】
基本状態において、本発明の化粧品活性剤は、コラーゲンおよびエラスチン繊維の組織化における役割を通して、真皮の構造に関与するCOL3A1およびLOXL4遺伝子を著しく上方制御することが判明した。また、MMP1、MMP13、およびMMP3などのマトリックス分解に関与する遺伝子の発現も減少した。
【0090】
早期老化後、本発明の化粧品活性剤はCOL3A1も上方制御し、この状態でも真皮の構造の改善を示し、またMMP1、MMP13、およびMMP8遺伝子の発現を減少させることによりマトリックスを劣化から保護した。加えて、本発明の化粧品活性剤はADAM2遺伝子を上方制御し、皮膚のホメオスタシスに関する利点を示した。
【0091】
これらの結果は、本発明の化粧品活性剤が、真皮を分解から保護することができ、毛穴形成に関与する要因である真皮の脆弱性から皮膚を保護するための、優れた活性剤となり得ることを示した。
【0092】
例7:コラーゲン刺激の評価:真皮脆弱性の後のex vivo刺激
皮膚外植片の培養および処理
ヒトの新鮮な皮膚外植片を、31歳のドナーから採取した。
皮膚外植片を、例1の化粧品活性剤1%(v/v)で3日間、局所的に前処理した。未処理状態は、ビヒクル(蒸留水)で処理した。
【0093】
真皮の弱化は一晩の酵素的分解により誘発し、皮膚外植片は3日間、後処理した。培地は1日おきに更新した。培養終了後、RNAを皮膚から抽出し、cDNAに逆転写した。COL1A1、COL5A1、COL7A1、COL17A1のmRNAの発現は、Applied Biosystems 7300 Real Time PCR Systemによる半定量PCRによって測定した。mRNAの発現レベルを計算し、参照遺伝子(GAPDH)で正規化した。
【0094】
結果
下の表からわかるように、酵素的コラーゲン分解はコラーゲンI、V、VII、およびXVIIの大幅な減少をもたらし、かつ、本発明の化粧品活性剤1%を局所塗布すると、コラーゲンI、V、VII、およびXVIIがそれぞれ+31%、+31%、+45%、および+35%、大幅に回復することが判明した。
【表9】
【0095】
例8:コラーゲン刺激の評価:コラーゲン繊維のin vitro組織化
材料および方法
細胞培養は、生検から単離された初代細胞で行った。正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を、96ウェル黒色プレートにウェルあたり10,000個の細胞で三通りに播種した。細胞は、10%ウシ胎児血清と1%の抗生物質を補充したDMEM培地中、37℃、5%CO2で48時間培養した。インキュベーションの終了時に、NHDFを、200μMのH2O2で37℃、5%CO2で2時間ストレスを与え、その後PBSで2回すすぎ、例1の化粧品活性剤1%に対して10ng/mlのTGF-β+ 20 μg/mlのビタミンCをプロコラーゲンI合成の陽性対照として含有する1%の抗生物質を補充した基本培地(FCSを含まないDMEM培地)中で、72時間インキュベートした。
【0096】
培養の最後に、細胞を2%パラホルムアルデヒド(PAF)溶液で5分間固定し、次に0.5%トリトンX100を補充した2%PAF溶液で15分間透過処理した。非特異的部位を、3%ウシ血清アルブミン(BSA)で飽和させ、コラーゲンIおよびデコリンを標的とする一次抗体を、4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞をすすぎ、コラーゲンIの場合はAlexa Fluor 488に結合した二次抗体、デコリンの場合はAlexa Fluor 568に結合した二次抗体とともにインキュベートした。蛍光写真および検出は、PICOツール(Molecular Devices)で自動的に撮影した。
【0097】
【0098】
本発明の化粧品活性剤1%は、線維芽細胞培養培地中のプロコラーゲンIの投薬量で以前に示されているように、加齢誘導状態におけるコラーゲンI合成を著しく刺激した。
【0099】
デコリンの発現も、加齢誘導状態で著しく改善され、本発明の化粧品活性剤1%が存在すると、コラーゲンの組織化に影響をもたらすことが実証された。
【0100】
例9:臨床評価:白人ボランティアにおける拡大した毛穴への影響
パネルの説明
臨床研究は、二重盲検およびプラセボ対照条件で、27~66歳(平均年齢44歳)のボランティア33名からなるグループ(20~30歳(17名のボランティア)と50歳以上(16名のボランティア)の2つのサブグループに分割)に対して実施した。33名のボランティアは、包括的なコホートの評価だけでなく年齢範囲による評価を行うために、年齢に応じて均一な分布の2つのグループに分けた。
【0101】
ボランティアは、目に見える毛穴を有し、肌の輝きに欠け、顔色がくすんでいるという試験対象患者基準に従って採用した。研究に参加したすべての対象は、研究開始時にインフォームドコンセントに署名した。この研究はヘルシンキ宣言の原則に従って行われ、これに準拠していた。
【0102】
ボランティアは、1日2回、例1の化粧品活性剤1%を含有する活性クリームを片方の顔面に、プラセボクリームをもう片方の顔面に塗布し、これを56日間続けた。これらのクリームの組成は上の例2に記載されている。
拡大した毛穴の低減は、VisioFaceRを使用し、総毛穴面積の定量化に基づいて分析した。
【0103】
VisioFaceRで測定した拡大した毛穴の低減
この技法は、3/4の顔面の高解像度写真を、完全に再現可能な照明条件、交差偏光、および拡散光で取得することからなる。
【0104】
取得は高解像度カメラで行う。使用したレンズは、フィルターを装着したNikkor 60mmである。照明は2つのフラッシュライトによって提供される。フラッシュヘッドには、偏光ジェル(HN32 Sarelec, France)を装着するためのフィルタースロットが取り付けられている。
【0105】
交差偏光を得るために、カメラのレンズのフィルターは、フラッシュのフィルターの偏光に対して90°に配置する。フラッシュから放射され、写真が撮影される瞬間に顔の皮膚で反射された偏光は、カメラのフィルターによって「カット」され、すなわち、これらの反射は写真には表示されない。
【0106】
拡散光の写真を取得するには、カメラのレンズのフィルターを、交差偏光の位置と比較して45°回転させる。
分析は、Spincontrolが開発した特定のソフトウェアにより実施する。
勾配を補正し、写真を二値化した後、閾値を使用して背景を削除する。
【0107】
分析は、調査の各時点において、同じ特定の領域に対して実施する。
次に写真から抽出した毛穴の総面積(mm2)を計算し、生成物の塗布後と時間の経過に伴う毛穴の減少を測定する。
【0108】
結果
包括的コホートの結果は表1に、20~30歳のボランティアの結果は表2に、50歳超のボランティアの結果は表3に示す。
【0109】
包括的コホートにおいて、本発明の化粧品活性剤が1%存在すると、15日後、28日後、および56日後に総毛穴面積がそれぞれ-11.9%、-19%、および-23.3%と大幅に減少したことが判明した。興味深いことに、プラセボ処方は毛穴の表面に何の効果も有さなかった。さらに、活性クリームはプラセボよりも大幅に優れていることが示され、すなわち15日後、28日後、および56日後にそれぞれ、プラセボと比較して毛穴の総面積の大幅な減少が観察された。
【0110】
若年のサブグループでは、本発明の化粧品活性剤が1%存在すると、15日後、28日後、および56日後に総毛穴面積がそれぞれ-10.3%、-19.5%、および-24.3%と大幅に減少したことが判明した。興味深いことに、プラセボ処方は15日後および56日後に毛穴の表面に何の効果も有さなかった。さらに、活性クリームはプラセボよりも大幅に優れていることが示され、すなわち15日後、28日後、および56日後にそれぞれ、プラセボと比較して毛穴の総面積の大幅な減少が観察された。
【0111】
高齢のサブグループでは、本発明の化粧品活性剤1%が存在すると、15日後、28日後、および56日後に総毛穴面積がそれぞれ、-13.6%、-18.7%、および-22.3%と大幅に減少したことが判明した。興味深いことに、プラセボ処方は毛穴の表面に何の効果も有さなかった。さらに、活性クリームはプラセボよりも大幅に優れていることが示され、すなわち15日後、28日後、および56日後にそれぞれ、プラセボと比較して毛穴の総面積の大幅な減少が観察された。
【0112】
概して、これらの結果は、本発明の化粧品活性剤が、ボランティアの年齢に関係なく、拡大した顔の毛穴に対して著しく効果的であることを実証した。実際、若年および高齢者両方のサブグループで毛穴総面積の大幅な減少が証明されており、この活性剤が、老化を含む、拡大した毛穴の形成のさまざまな原因に対して有効であることが実証されている。
【0113】
例10:臨床評価:アジア人ボランティアの拡大した毛穴への影響
パネルの説明
臨床研究は、二重盲検およびプラセボ対照試験で、2つのグループに分けた35歳以上(平均年齢42±10歳)のアジア人男性20名に対して実施し、10名のボランティアには活性クリームを塗布し、他の10名のボランティアには例2のプラセボクリームを塗布した。
【0114】
ボランティアは、顔に、目に見える拡大した毛穴があるという試験対象患者基準に従って採用した。研究に参加したすべての対象は、研究開始時にインフォームドコンセントに署名した。この研究はヘルシンキ宣言の原則に従って行われ、これに準拠していた。
【0115】
ボランティアは、1日2回、例1の化粧品活性剤1%を含有する活性クリームまたはプラセボクリームのいずれかを、顔全体に7日間塗布した。
拡大した毛穴の低減は、総毛穴面積の定量化に基づきColorFaceRによって分析した。
【0116】
ColorFaceRで測定した拡大した毛穴の低減
顔のデジタル写真は、ColorFaceR(Newtone)を使用してさまざまな時期に撮影した。ColorFaceRは、顔の多様かつ標準化された写真を撮影できる2D取得システムである。このデバイスには、24Mpixelのキャプターが搭載されている。様々な取得モードが存在する:紫外線(UV)画像、フィルターなし画像、交差偏光画像、45°標準画像、および60°標準画像。
ColorFaceRを使用して、D0および処置7日後の毛穴表面を分析した。
【0117】
結果
結果を下の表4に示す。
毛穴の総面積が、使用開始からわずか7日間で-30.2%と大幅に減少したのに対し、プラセボ処方ではそれよりも低い効果しか見られなかったことが判明した。実際、アジア人男性に7日間塗布した後、毛穴サイズの減少に対する活性性能は、プラセボよりも大幅に優れていることが判明した。
【0118】
したがって、本発明の化粧品活性剤は、アジア系男性の拡大した顔の毛穴に対して有効である。
【表11】
【表12】
【0119】
【国際調査報告】