(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】球状鉄合金粉末材料とその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20250204BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20250204BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20250204BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20250204BHJP
B22F 1/065 20220101ALI20250204BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20250204BHJP
B22F 10/00 20210101ALI20250204BHJP
H01F 1/36 20060101ALI20250204BHJP
H01F 1/14 20060101ALI20250204BHJP
H01F 1/20 20060101ALI20250204BHJP
H01F 1/44 20060101ALI20250204BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250204BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250204BHJP
【FI】
B22F9/04 E
C22C28/00 A
C22C38/00 303S
B22F1/00 Y
B22F1/065
B22F1/05
B22F10/00
H01F1/36
H01F1/14
H01F1/20
H01F1/44
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543990
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-18
(86)【国際出願番号】 CN2022128595
(87)【国際公開番号】W WO2023142563
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210086657.9
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/082504
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522359202
【氏名又は名称】趙 遠雲
【氏名又は名称原語表記】ZHAO, Yuanyun
【住所又は居所原語表記】Room 1401, Building 7, Shanhu Garden, No. 1 Kaide Road, Dalingshan Town Dongguan, Guangdong 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 遠雲
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E041
【Fターム(参考)】
4K017AA04
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5E041AA11
5E041AA19
5E041BB03
5E041BD07
5E041BD12
5E041CA02
5E041HB17
(57)【要約】
本発明は、球状鉄合金粉末材料ならびにその製造方法及びその使用に関する。FeとLaの主合金系を選択し、同時に特殊合金の球状化析出元素と耐食性元素を添加することにより、合金の凝固過程において、初期合金溶融物中にFeリッチで球状析出元素を固溶させた球状分散粒子相は、Laリッチマトリックス相中に分散析出が達成される。Laリッチマトリックス相を除去することにより、ナノメートルから数十ミクロンの粒径の球状鉄合金粉末材料が得られる。上記製造方法は、プロセスが簡単であり、ナノオーダー、サブミクロンオーダー、及びミクロンオーダーの異なるモルフォロジーのさまざまな球状鉄合金粉末を製造することができ、粉末冶金、金属射出成形(MIM)、3Dプリント、磁性材料、耐熱材料、高温合金、塗料、電熱材料、波動吸収材料、磁性流体材料などの分野で良好な応用の見通しがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状鉄合金粉末材料を製造する方法であって、
初期合金原料を選択し、前記初期合金原料を初期合金組成比に従って溶解し、均質な初期合金溶融物を得る工程1であって、前記初期合金溶融物の主組成は、La
xFe
yT
zM
aD
bであり、ここで、Tは、Cr、Vのうちの少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、Co、Siのうちの少なくとも1つを含み、Dは、Mo、W、Tiのうちの少なくとも1つを含み、x、y、z、a、bがそれぞれ対応する元素の原子百分率含有量であり、かつ18%≦x≦95.8%、4%≦y≦81.8%、0.1%≦z≦35%、0≦a≦40%、0≦b≦15%である工程1と、
前記初期合金溶融物を急速凝固技術によって初期合金固体に凝固させる工程2であって、前記初期合金固体の凝固組織はマトリックス相と分散粒子相を含み、前記マトリックス相は前記分散粒子相の融点より低い融点を有し、前記分散粒子相は前記マトリックス相に内包され、凝固組織中の前記マトリックス相の体積百分率含有量は40%以上であり、前記マトリックス相の平均組成は、主にLa
x1M
a1であり、前記分散粒子相の組成は、主にFe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2であり、ここで、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2が、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量であり、かつ45%≦x1≦100%、0%≦a1≦55%、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%であり、前記分散粒子相は、相当量の球状または球状に近い分散粒子相を含み、球状または球状に近い分散粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、前記分散粒子相の粒径は5nm~50μmである工程2と、
前記初期合金固体からマトリックス相を除去し、主に分散粒子相を保持し、Fe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2を主成分とする鉄合金粉末材料を得る工程3であって、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%であり、前記鉄合金粉末粒子は、相当量の球状または球状に近い粒子を含み、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、前記鉄合金粉末粒子の粒径は5nm~50μmである工程3と、
を含むことを特徴とする球状鉄合金粉末材料の製造方法。
【請求項2】
前記分散粒子相の形状が主として球状または球状に近い形状であることを特徴とする請求項1に記載の球状鉄合金粉末材料の製造方法。
【請求項3】
工程1における前記初期合金溶融物の組成は、非金属不純物元素をさらに含み、前記非金属不純物元素は、O、N、H、P、S、Clのうちの少なくとも1つを含み、前記非金属不純物元素は、初期合金溶融物中の原子百分率含有量が0より大きく10%未満であり、工程2における前記Feリッチ分散粒子相の形成中に、前記非金属不純物元素がLaリッチマトリックス相に富化され、それによりFeリッチ分散粒子相が精製され、すなわち、Feリッチ分散粒子相中の前記非金属不純物元素の原子百分率含有量は、初期合金溶融物中の前記非金属不純物元素の原子百分率含有量よりも低く、前記Feリッチ分散粒子相中の非金属不純物元素の原子百分率含有量が1.5%未満であり、また工程3における前記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子中の非金属不純物元素の含有量も、初期合金溶融物中の前記非金属不純物元素の含有量よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の球状鉄合金粉末材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の球状鉄合金粉末材料の製造方法により製造されることを特徴とする合金粉末であって、
前記球状鉄合金粉材料の一部の特徴は、以下を含み、
球状鉄合金粉材料の主組成は、Fe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2であり、ここで、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%であり、前記鉄合金粉末粒子は主に球状または球状に近い形状であり、一部の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子は特定の樹枝状特性を含み、前記鉄合金粉末粒子の粒径範囲は5nm~50μmであり、前記Tは、CrおよびVのうちの少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、CoおよびSiのうちの少なくとも1つを含み、Dは、Mo、WおよびTiのうちの少なくとも1つを含み、x1、a1、x2、y2、z2、a2およびb2は、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表す球状鉄合金粉末材料。
【請求項5】
Si含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の製造する方法であって、請求項1に記載の工程1~3で製造した主成分元素がFe-Crである球状鉄合金粉末材料、または主成分元素がFe-Cr-SiであるSi含有量が低い球状鉄合金粉末材料にSi浸透処理を施して、Si含有量が高いFe-Cr-Siを主成分元素とする球状粉末材料を得ることを特徴とするSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の製造する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の工程1および工程2に従って、請求項1における工程2に記載の初期合金固体が製造され、TはCrを含み、MはSiを含み、0<a≦40%であり、前記マトリックス相の平均組成は、主にLa
x1Si
a1であり、前記分散粒子相の組成は、主にSi含有量が低いFe
y2Cr
z2Si
a2D
b2La
x2であり、前記La
x1Si
a1マトリックス相中のSiは、金属間化合物によってLaと結合しており、0<a2≦8%であり、前記初期合金固体La
x1Si
a1マトリックス相中のLaは、元のLa
x1Si
a1マトリックス相中のSiを保持したまま、希酸溶液による脱合金化反応によって除去され、ナノ多孔質SiとSi含有量が低い前記Fe
y2Cr
z2Si
a2D
b2La
x2粒子の複合粉末を得、前記ナノ多孔質Siは、Si含有量が低いFe
y2Cr
z2Si
a2D
b2La
x2粒子にSiを浸透させるためのSi源として使用され、組成が主にFe
y3Cr
z3Si
a3D
b3La
x3である、Si含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料を得、x3、y3、z3、a3、b3は、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ、0<y3<y2、0<z3<z2、0<a2<a3、0≦b3≦b2、0<x3<x2であることを特徴とする請求項5に記載のSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の製造する方法。
【請求項7】
請求項5に記載のSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の製造する方法により製造されることを特徴とするSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料。
【請求項8】
請求項6に記載の方法により、ナノ多孔質SiとSi含有量が低いFe
y2Cr
z2Si
a2D
b2La
x2粒子の複合粉末を製造し、ナノ多孔質Siと球状Fe-Cr-Si粒子との複合粉末を得ることを特徴とする、ナノ多孔質Siと球状Fe-Cr-Si粒子との複合粉末。
【請求項9】
ニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の製造する方法であって、請求項1記載の工程1および工程2に従って、請求項1における工程2に記載の初期合金固体を製造し、TはCrを含み、MはNiを含み、0<a≦40%であり、前記マトリックス相の平均組成は、主にLa
x1Ni
a1であり、前記分散粒子相の組成は、主にNi含有量が低いFe
y2Cr
z2Ni
a2D
b2La
x2であり、前記La
x1Ni
a1マトリックス相中のNiは、金属間化合物によってLaと結合しており、0<a2≦12%である工程1と、
前記初期合金固体La
x1Ni
a1マトリックス相中のLaは、元のLa
x1Ni
a1マトリックス相中のNiの大部分が反応によって除去されないようにしながら、希酸溶液による脱合金化反応によって除去され、ナノ多孔質NiとNi含有量が低いFe
y2Cr
z2Ni
a2D
b2La
x2粒子の複合粉末を得る工程2と、
ナノ多孔質Niと前記Ni含有量が低いFe
y2Cr
z2Ni
a2D
b2La
x2粒子の複合粉末をプレス成形し、熱処理および焼結して、主成分組成がFe
y3Cr
z3Ni
a3D
b3La
x3のNi含有量が高いFeCrNi粉末冶金製品を得、x3、y3、z3、a3およびb3は、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、0<y3<y2、0<z3<z2、0<a2<a3、0≦b3≦b2、および0<x3<x2である工程3と、
を含むことを特徴とするニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載のニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の製造方法により製造されたことを特徴とするニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品。
【請求項11】
請求項9に記載の方法の工程1および工程2によって製造されたことを特徴とする、ナノ多孔質NiとNi含有量が低い鉄-クロム-ニッケル粒子との複合粉末。
【請求項12】
請求項4に記載の球状合金鉄粉末材料の一般粉末冶金、金属射出成形(MIM)、3Dプリント、磁性材料、耐熱材料、高温合金、塗料、波動吸収材料のうちいずれか一つの分野への使用。
【請求項13】
球状合金鉄粉末材料が、Fe-Cr-Alを主成分とすることを特徴とする請求項4に記載の球状合金鉄粉末材料の電熱材料分野への使用。
【請求項14】
請求項7に記載のSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の磁性材料への使用。
【請求項15】
請求項10に記載のニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の高温合金への使用。
【請求項16】
初期合金原料を選択し、初期合金組成比に従って初期合金原料を溶解し、均質な初期合金溶融物を得、前記初期合金溶融物の主成分は、La
xFe
yT
zM
aD
bであり、Tは、Cr、Vのうち少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、Dは、Mo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含み、x、y、z、a、bは、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ18%≦x≦95.8%、4%≦y≦81.8%、0.1%≦z≦35%、0≦a≦40%、0≦b≦15%である工程1と、
前記初期合金溶融物を急速凝固法により初期合金固体に凝固させ、前記初期合金固体の凝固組織は、マトリックス相および分散粒子相を含み、前記マトリックス相は、前記分散粒子相の融点よりも低い融点を有し、前記分散粒子相は、前記マトリックス相に内包され、前記凝固組織中のマトリックス相の体積百分率含有量は40%以上であり、前記マトリックス相の平均組成は主にLa
x1M
a1であり、前記分散粒子相の組成は主にFe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2であり、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2は、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ45%≦x1≦100%、0%≦a1≦55%、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%であり、前記分散粒子相は、相当量の球状または球状に近い分散粒子相を含み、球状または球状に近い分散粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、前記分散粒子相の粒径は5nm~50μmである工程2と、
を含み、
請求項1の工程1および工程2の初期合金固体を製造する方法によって製造されたことを特徴とする合金固体。
【請求項17】
請求項4に記載の球状鉄合金粉末材料の磁性流体分野への使用。
【請求項18】
前記球状鉄合金粉末をキャリア流体及び界面活性剤と均一に混合して磁性流体を得る工程を含み、
前記球状鉄合金粉末材料の一部の特徴は以下を含み、、
前記球状鉄合金粉材料の主成分は、Fe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2であり、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%であり、1%≦z2+b2<50%、前記鉄合金粉末粒子の形状は、主に球状または球状に近い形状であり、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、特定の樹枝状の特徴を含み、前記鉄合金粉末粒子の粒径は、5nm~100nmであり、TはCrおよびVのうち少なくとも1つを含み、MはAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、DはMo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含み、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2は、それぞれ対応する構成元素の原子含有率含有量を表すことを特徴とする請求項17に記載の磁性流体分野における球状合金鉄粉材料の使用。
【請求項19】
コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子であって、前記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主成分はFe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2であり、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%であり、TはCrおよびVのうち少なくとも1つを含み、MはAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、DはMo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含み、Laは希土類Laであり、Laは主にFe
y2T
z2M
a2D
b2La
x2の主成分を有するコロナウイルス形状の球状鉄合金粉粒子中に固溶して存在し、x1、a1、x2、y2、z2、a2およびb2はそれぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、前記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子は、本体部分と付属部分とを含み、本体部分は球形または球形に近い球体であり、付属部分は、本体部分の球体の表面上にその場で成長した複数の突起であり、球状鉄合金粉末粒子はコロナウイルスに類似する形状を有し、その付属部分の複数の突起はコロナウイルスの形状の複数の王冠突起に対応し、前記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の本体部分の直径は20nm~50μmであり、付属部分の突起の高さは本体部分球体の直径の0.3倍未満であることを特徴とするコロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末材料の技術分野に関し、特に球状鉄合金粉末材料とその製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Fe合金は最も広く使用されている金属材料である。マイクロナノ粒子サイズのFe合金粉末を原料として、粉末冶金、金属射出成形(MIM)、3Dプリンティングなどの積層造形技術によって、さまざまな特性を持つ多数のFe合金を製造することができる。例えば、Fe-Cr系フェライト系ステンレス鋼、Fe-Cr-Ni系オーステナイト系ステンレス鋼、Fe-Cr-Al系電熱合金、Fe-Cr-Co系永久磁石、Fe-Cr-Si系軟磁性材料などが挙げられる。
【0003】
球状または球状に近いFe合金粒子は、その優れた流動性、均質性、粉末積層高密度化により、粉末冶金、粉末コーティング、金属射出成形(MIM)、3Dプリンティング、磁性材料などの応用分野において重要な原料となっている。多くの場合、最終材料の望ましい適用効果を得るためには、球状または球状に近い粒子を原料として使用する必要がある。現在、球状Fe合金粉末材料は、主にアトマイズ法、すなわち高速流体を用いて液体金属または合金を直接粉砕して金属粉末を得る方法によって製造されている。しかし、アトマイズ法では微粒化能力に限界があるため、一般に粒径10μm~150μmの球状Fe合金粉末の製造にしか適していない。10μm未満、特にナノから数ミクロン(10μm以下)の粒径の球状Fe合金粉末材料では、アトマイズ法による製造は困難または不可能である。従って、ナノメートルから数マイクロメートルの粒径を持つ超微粒子球状鉄合金粉末材料の製造方法を開発することは、重要な意義を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに基づき、上記の技術的問題に対して、プロセスが簡単で、コストが低く、かつ操作が容易な球状鉄合金粉末材料の製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の技術問題を解消するために、以下の技術内容が提案されている。
【0006】
第1の態様、球状鉄合金粉末材料を製造する方法であって、以下の製造工程を含むことを特徴とする方法。
【0007】
工程1:初期合金原料を選択し、上記初期合金原料を初期合金組成比に従って溶解し、均質な初期合金溶融物を得る。上記初期合金溶融物の主組成は、LaxFeyTzMaDbであり、ここで、Tは、Cr、Vのうちの少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、Co、Siのうちの少なくとも1つを含み、Dは、Mo、W、Tiのうちの少なくとも1つを含み、x、y、z、a、bがそれぞれ対応する元素の原子百分率含有量であり、かつ18%≦x≦95.8%、4%≦y≦81.8%、0.1%≦z≦35%、0≦a≦40%、0≦b≦15%である。
【0008】
工程2:上記初期の合金溶融物を急速凝固技術によって初期合金固体に凝固させ、上記初期合金固体の凝固組織はマトリックス相と分散粒子相を含み、上記マトリックス相は上記分散粒子相の融点より低い融点を有し、上記分散粒子相は上記マトリックス相に内包され、凝固組織中の上記マトリックス相の百分率含有量は40%以上である。上記マトリックス相の平均組成は、主にLax1Ma1であり、上記分散粒子相の組成は、主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2であり、ここで、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2が、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量であり、かつ45%≦x1≦100%、0%≦a1≦55%、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%である。上記分散粒子相は、相当量の球状または球状に近い分散粒子相を含み、球状または球状に近い分散粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、上記分散粒子相の粒径は5nm~50μmである。
【0009】
工程3:上記初期合金固体からマトリックス相を除去し、主に分散粒子相を保持し、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2を主成分とする鉄合金粉末材料を得る。ここで、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%である。上記鉄合金粉末粒子は、相当量の球状または球状に近い粒子を含み、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、上記鉄合金粉末粒子の粒径は5nm~50μmである。
【0010】
上記工程1において、
さらに、上記TがCrを含み、さらにTがVを含む。
【0011】
さらに、上記MがAlを含み、さらにMがNiを含み、さらにMがCoを含む。
【0012】
さらに、上記MがSiを含む。
【0013】
さらに、0<a≦40%である。さらに、2.5%<a≦40%、18%≦x≦93.3%である。さらに、5%<a≦40%、18%≦x≦90.8%である。さらに、10%<a≦40%、18%≦x≦85.8%である。
【0014】
さらに、上記DがMoを含み、さらにDがWを含み、さらにDがTiを含む。
【0015】
さらに、0<b≦15%である。さらに、0.5%<b≦15%、18%≦x≦95%である。
【0016】
さらに、18%≦x≦93.8%、6%≦y≦81.8%である。 好ましくは、18%≦x≦89.8%、10%≦y≦81.8%である。
【0017】
さらに、18%≦x≦95%、0.5%≦z≦35%である。さらに、18%≦x≦94%、1%≦z≦35%である。好ましくは、18%≦x≦92%、3%≦z≦35%である。好ましくは、18%≦x≦90%、5%≦z≦35%である。
【0018】
さらに、18%≦x≦80%である。さらに、18%≦x≦70%である。さらに、18%≦x≦60%である。さらに、18%≦x≦50%である。
【0019】
希土類Laは大きな原子であるため、初期合金溶融物中の原子百分率含有量が低くても、大きな体積百分率含有量に相当し、これが分散粒子相の拡散分布の鍵となる。例えば、La20Fe75Cr5の原子百分率組成の合金の場合、元素の原子量と密度に基づくと、Laマトリックスの体積百分率含有量は44.35%と計算できる。マトリックス相の体積百分率含有量は、M元素の大部分もマトリックス相に入ると、さらに増加する。
【0020】
さらに、y>zである。すなわち初期合金溶融物中のFeの原子百分率含有量は、T元素の原子百分率含有量よりも高い。
【0021】
上記工程2において、
La-Fe、La-Cr、La-V、Fe-Cr、Fe-V、Cr-Vの各相図によれば、Fe、Cr、Vの融点はいずれもLaの融点より高く、Fe、Cr、VはLaと金属間化合物を形成せず、明らかに固溶しておらず、Fe-Cr、Fe-V、Cr-Vはいずれも無限固溶合金系である。従って、初期合金溶融物の凝固過程で、まずFe、Cr、Vを主体とする分散粒子相が合金溶融物から析出し、Laを主体とするマトリックス相が最後に凝固し、合金凝固組織はLaとFe、Cr、Vからなる金属間化合物を含まない。すなわち、急冷凝固法によって初期合金溶融物を初期合金固体に凝固させる工程において、初期合金固体の凝固組織は、Laリッチなマトリックス相と、Feリッチ、Crリッチまたは(および)Vリッチな分散粒子相とを含み、マトリックス相の融点が上記分散粒子相の融点よりも低く、分散粒子相が上記マトリックス相に内包されている。
【0022】
さらに、上記初期合金溶融物の凝固速度は20K/sより高く、好ましくは、上記初期合金溶融物の凝固速度は50K/sより高く、好ましくは、上記初期合金溶融物の凝固速度は100K/sより高く、好ましくは、上記初期合金溶融物の凝固速度は250K/sより高く;さらに好ましくは、上記初期合金溶融物の凝固速度は500K/sより高い。
【0023】
さらに、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が10mm未満である。好ましくは、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が5mm未満である。好ましくは、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が2mm未満である。好ましくは、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が1mm未満である。好ましくは、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が500μm未満である。好ましくは、上記初期合金固体の形状が、三次元スケール方向の少なくとも1つの寸法が100μm未満である。
【0024】
上記初期合金溶融物の凝固速度が速いほど、得られる初期合金固体の三次元方向の形状の最小スケールがより小さくなる。例えば、約25μm程度の厚さを有する初期合金固体の薄帯は、約106K/s~約107K/sの凝固速度で銅ロールフリングストリップ法により得ることができ、約5mmの直径を有する合金棒または約5mmの厚さを有する厚板は、約100K/sの凝固速度で銅モールド鋳造法により得ることができる。一般的に言えば、分散粒子相の粒径が、初期合金溶融物の凝固速度と負の相関があり、すなわち、初期合金溶融物の凝固速度が大きいほど、分散粒子相の粒径が小さくなる。しかしながら、異なる元素の異なる固溶体、または同じ元素の異なる固溶体量は、ある面において分散粒相の正常な成長を異なる方法で阻害する可能性があり、これによって法則にある程度の変化が生じる可能性がある。例えば、球状化の傾向により、凝固プロセス中に粒子相が融合して再球状化するか、核生成速度が阻害され、成長速度が増加する可能性がある。例えば、特定の元素を固溶させない場合、所定の冷却速度で得られる分散粒状相の平均粒径は1μmであるが、特定の元素を固溶させた後、同じ冷却速度で球状の分散粒状相を得ることができ、粒状相の平均粒径は5μmとなる。
【0025】
さらに、上記初期合金固体の形状は、ストリップ、帯状、フレーク、フィラメント、顆粒のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、上記初期合金固体の形状は、ストリップ、帯状、フレークのうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
さらに、上記初期合金溶融物の凝固方法には、溶融フライングベルト、急速凝結フライングシート、鋳造、連続鋳造、霧化粉末化、および溶融ポンピングのうちの少なくとも1つを含有する。
【0027】
さらに、上記初期合金固体はストリップ状であり、ストリップの厚さが5μm~5mmである。
【0028】
さらに、凝固中の上記マトリックス相の体積百分率含有量は45%以上であり、さらに、凝固中の上記マトリックス相の体積百分率含有量は50%以上である。
【0029】
さらに、0<x2<x<x1であり、すなわち初期合金溶融物の凝固過程において、Laはマトリックス相に富化され、Laは分散粒子相に少量存在する。
【0030】
Laはマトリックス相中の大きな原子であるため、マトリックス相中のLaの原子百分率含有量が45%と低い場合でも、Laの体積百分率含有量は50%をはるかに超えるため、マトリックス相は依然としてLaを主成分とする。
【0031】
さらに、50%≦x1≦100%、0%≦a1≦50%である。
【0032】
さらに、La元素はFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相中に固溶して存在する。
【0033】
さらに、0<x2≦3%である。
【0034】
さらに、0<y<y2であり、すなわち、初期合金溶融物の凝固過程において、FeはFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に富化される。
【0035】
さらに、50%≦y2≦95%である。さらに、50%≦y2≦90%である。さらに、50%≦y2≦85%である。さらに、50%≦y2≦75%である。
【0036】
さらに、0<z<z2であり、すなわち、初期合金溶融物の凝固過程において、T元素が Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に富化される。
【0037】
さらに、1%≦z2<50%である。さらに、3%≦z2<50%である。さらに、5%≦z2<50%である。さらに、10%≦z2<50%である。
【0038】
さらに、y2>z2であり、すなわち、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散微粒子相中のFeの原子百分率含有量は、T元素の原子百分率含有量よりも高い。
【0039】
さらに、T元素はFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相中に固溶して存在する。
【0040】
さらに、a=0の場合、a2=a1=0、0<a≦40%、0<a2<a1の場合、すなわち、初期合金溶融物の凝固過程において、M元素はLax1Ma1マトリックス相に富化され、同時に、M元素はFey2Tz2Ma2Db2Lax2拡散粒子相に一定の含有量を有する。
【0041】
さらに、1%≦a2≦30%である。さらに、3%≦a2≦30%である。さらに、5%≦a2≦30%である。さらに、10%≦a2≦30%である。
【0042】
さらに、M元素はFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相中に固溶して存在する。
【0043】
M元素は、初期合金溶融物の凝固過程において、M元素がLax1Ma1マトリックス相に富化され、同時に、M元素がかなりの量でFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に固溶することを特徴とする。
【0044】
さらに、b=0の場合、b2=b=0、0<b≦15%、0<b<b2の場合、すなわち、初期合金溶融物の凝固過程において、D元素がFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に富化される。
【0045】
さらに、0.5%≦b2≦35%である。さらに、1%≦b2≦35%である。さらに、5%≦b2≦35%である。
【0046】
さらに、D元素はFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相中に固溶して存在する。
【0047】
具体的には、0<a≦40%の場合、Al-Fe相図およびSi-Fe相図によれば、AlおよびSiはFeに対する固溶度が大きく、Fe-NiおよびFe-Coは完全に固溶するため、Feに富む分散粒相にM元素を固溶させることができる。Al-La相図、Ni-La相図、Co-La相図、およびSi-La相図によると、Al、Ni、Co、およびSiはすべて、LaとLaリッチ金属間化合物を形成することができる。Laリッチ金属間化合物の融点はFeリッチ分散粒子よりも低いため、初期合金溶融物凝固工程では、まずFeリッチ分散粒子相に一定量のM元素が固溶し、残りのM元素をLaと結合させてLaリッチ金属間化合物マトリックスを形成する。Laがまだ過剰に存在する場合、Lax1Ma1マトリックス相には、M元素とLaによって形成されたLaリッチ金属間化合物だけでなく、過剰なLa相も含まれる。
【0048】
0<b≦15%の場合、La-Ti、La-W、La-Moの各相図によれば、Ti、W、MoのいずれもLaと金属間化合物を形成せず、著しく固溶しないため、Ti、W、Moは初期合金溶融物の凝固中にLaリッチマトリックス相に入らない。Fe-Ti相図、Fe-Mo相図、Fe-W相図によると、TiとWのFeに対する固溶率は約10at.%であり、MoのFeに対する固溶率は約20at.%である。同時に、Cr-Ti相図、Cr-Mo相図、Cr-W相図によれば、CrとTi、Mo、Wは完全に相互固溶し、V-Ti相図、V-Mo相図、V-W相図によれば、VとTi、Mo、Wは完全に相互固溶する。したがって、D元素であるTi、WおよびMoとLaとの元素親和性は極めて悪く、Feとの親和性は良く、Cr、Vとの親和性は優れている。初期合金溶融物にD元素とFe、Cr、およびV元素が含まれている場合、初期合金溶融物の凝固プロセス中に、選択されたD元素がFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に富化される。
【0049】
なお、Ti、Zr、Hfは同族元素であり、Zr、HfはLaと金属間化合物を形成せず、著しく固溶することはないが、Tiと異なり、ZrとHfは同様にFe、Cr、Vにほとんど固溶しないため、ZrとHfは互いに金属間化合物を形成することしかできない。したがって、初期合金溶融物中にZrとHfが含まれている場合に、ZrとHfがFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に固溶することはほとんどなく、比較例3に示すように、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に加えて、ZrとHfとFe、Cr、Vとの樹枝状金属間化合物相が付加的に生成する。これらの金属間化合物はいずれも、本発明が焦点を当てている固溶合金を主体とする鉄合金相ではない。
【0050】
同様に、Nb、Ta、Vは同族元素であり、Nb、TaはLaと金属間化合物を形成せず、著しく固溶することはないが、Mo、W、Ti、Vと異なり、Fe、Cr、Vに対するNb、Taの固溶度が極めて低いため、Nb、Taは互いに金属間化合物を形成することしかできない。したがって、初期合金溶融物がNb、Taを含む場合、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相におけるNb、Taの固溶度は非常に低く、非常に少量しか存在しないか、または全く存在し得ない。比較例4に示すように、初期合金溶融物がより多くのNb、Taを含む場合、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相中のNb、Taは、非常に少量存在する可能性があることに加えて、Nb、TaとFe、Cr、Vとの樹枝状金属間化合物相が付加的に生成する。これらの金属間化合物はいずれも、本発明が焦点を当てている固溶合金を主体とする鉄合金相ではない。
【0051】
初期合金溶融物がLaとFeのみを含み、合金溶融物の凝固速度が106K/sより高い場合、デンドライトの成長が不十分なナノスケール(90nm以下)の球状に近いFe相粒子が一定量得られる。これは、このような高い冷却速度では、Fe相粒子がデンドライト化する傾向が強くても、成長するのが遅すぎるため、デンドライト成長が不十分な球状に近いFe相粒子としてナノスケールで凝固・析出するためである。しかし、LaもFeも酸化されやすいため、酸溶液との反応性が高く溶けやすい。そのため、90nm以下の球状に近いFe相粒子とLaマトリックスからなる初期合金固体を超高凝固速度で製造したとしても、酸溶液への反応溶解によってLaマトリックスとナノサイズの球状に近いFe相粒子を分離し、ナノサイズの球状に近いFe相粒子を保持する(ナノサイズのFe相粒子も溶解する)ことは困難である。
【0052】
一般に、単純なLa-Fe合金溶融物の凝固速度が106K/sより低い場合には、樹枝状のFe相粒子しか得られず、球状または球状に近いFe相粒子を得ることは困難である。例えば、La-Fe合金溶融物の凝固速度が105K/sと高く、100μm程度のLa-Fe合金帯が得られたとしても、分散粒子相の形状は依然として主として樹枝状である(比較例2を参照)。また、La-Fe合金溶融物の凝固速度が500K/sより低い場合には、分散粒子相は、十分に成長した粒径の大きな樹枝状相であり、マトリックス相が除去された後、樹枝状繊維状に絡み合って、樹枝状結晶の形態で得られるFe相が得られる(比較例1を参照)。
【0053】
初期合金溶融物がLaとFeを含み、同時に高融点のCr、V、Mo、W、Ti元素を含む場合、特にFeと完全な固溶体を形成できるCrまたは(および)Vを含む場合、初期合金溶融物は凝固過程でT元素と固溶したFeリッチな初晶を最初に析出する。T元素の特殊な固溶により、本来の結晶格子の形成規則が破壊され、特定の結晶面方位に沿ったFeリッチ樹枝状相の成長が阻害されるため、FeリッチでT元素を固溶した初晶粒子は球状化する傾向がある。Feリッチな初晶に固溶したT元素の含有量が多いほど、低い溶融冷却速度でより大きな球状または球状に近い分散粒子相を得ることができる。したがって、T元素は、特にFeリッチ分散粒子のサイズが大きい場合に、本発明で見出されるFeリッチな初晶粒子の球状化の鍵となる。
【0054】
さらに、T元素には耐食性のあるCrおよびVのうち少なくとも一方が含まれており、これらの元素とFeが固溶したものがステンレス鋼となる(Vの耐食性はCrよりもさらに高い)。したがって、T元素の固溶により、Feリッチ分散粒子相の耐食性が大幅に向上する。マトリックス相は高耐食性のLaを主成分とするため、その後、一定濃度の酸溶液と反応させることにより、マトリックス相を容易に反応腐食除去し、分散したFeリッチ相分散粒子が得られる。Feリッチ相分散粒子の耐食性が大幅に向上する場合、106K/sを超える冷却速度を使用して、T元素とD元素を含むナノFeリッチの球状粒子相を含む初期合金固体を製造できる。同時に、T元素とD元素を含むナノFeリッチの球状粒子相の高い耐食性を利用して、酸反応でLaリッチマトリックスから相を分離し、ナノスケールのFeリッチ球状粒子が得られる。
【0055】
M元素には、市販の鉄合金の主要元素であるAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含む。例えば、AlはFe-Cr-Al系電熱合金や溶射皮膜の主要元素の1つであり、Niはオーステナイト系ステンレス鋼Fe-Cr-Niの主要元素の1つであり、CoはFe-Cr-Co系永久磁石の主要元素の1つであり、SiはFe-Cr-Si系軟磁性材料の主要元素の1つである。実際の研究結果によると、初期合金溶融物の凝固プロセス中に、マトリックスもより多くのM元素で富化されているため、Feリッチ相分散粒子のSiの原子百分率固溶含有量は一般的に8%を超えず、達成するために初期合金溶融物中に多量のSiを添加する必要がある。Feリッチ相分散粒子中のNiの原子百分率固溶含有量は一般に12%を超えず、AlおよびCoはいずれもFeリッチ相分散粒子中にかなりの固溶体含有量を有し(実施例を参照)、原子百分率固溶含有量は20%を超えることさえある。上述した市販の鉄合金の多くは、M元素の含有量の要求が低いため、上述した関連成分を満たす市販の鉄合金粉末を製造することが可能である。
【0056】
初期合金溶融物中にM元素が含まれる場合、一部のM元素は固溶体を介してFeリッチ相分散粒子にも存在するため、一般にM元素はFeリッチ相分散性粒子の球状化にプラスの影響を与える(実施例13および実施例14参照)。さらに、M様元素およびLaは酸溶液と反応しやすいため、酸エッチング反応によりM元素およびLaをマトリックス相から除去し、自由に分散したFeリッチ相分散性粒子を得ることができる。また、LaとM元素の化学活性の違いを利用し、脱合金原理により、主にマトリックス相中のLaのみを適当な酸溶液により除去すれば、自由に分散したFeリッチ分散性粒子とナノ多孔質の複合粉末が得られる。
【0057】
D元素は、高融点Mo、W、Ti元素を含み、これらの元素はT元素ほどFeに固溶しないが(T元素はFeに完全に固溶する)、D元素のFeに対する固溶率は10~20%であり、T元素には完全に固溶する。したがって、初期合金溶融物に高融点のMo、W、Ti元素を適切に添加することにより、Feリッチ相分散粒子の真球性と耐食性を大幅に向上させることができ、同時にFeリッチ相分散粒子の融点と耐熱性を大幅に向上させることができる。例えば、市販のオーステナイト系ステンレス鋼1Cr18Ni9TiにおけるTiの役割や、市販の超高温Fe-Cr-Al-Mo電熱合金におけるMoの役割などである。
【0058】
要約すると、本発明では、La-Fe合金に基づいて、T元素、M元素、および D元素の種類は慎重な設計と選択の結果である。このような選択により、初期合金溶融物の凝固過程において、Fe、T元素、およびD元素はすべて、主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に存在し、M元素は部分的にFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相に存在し、La、およびM元素は主にLax1Ma1マトリックス相に存在することが保証される。同時に、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子相では、M元素もかなりの固溶度を有しており、Laは固溶度が低い。この独創的な設計により、T元素によって分散粒子の球状化傾向が保証されると同時に、耐食性が向上し、腐食反応による分散粒子相とマトリックス相の分離に役立つ。
【0059】
Feリッチ分散粒子相の球状化は、特殊元素の固溶合金化と、Feリッチ樹枝状相の生成・成長を抑制するための溶融物冷却速度の調節によって達成されるため、Feリッチ分散粒子相に固溶するT元素の含有量が多いほど、あるいはT元素を含む固溶元素の合計含有量が多いほど、あるいは溶融物の冷却速度が速いほど、球状または球状に近いFeリッチ分散粒子相が生成しやすくなる。したがって、同じ球状化効果を得るためには、Feリッチ分散粒子相の固溶体元素の含有量が多い場合には、より低い冷却速度を使用することができ、固溶体元素の含有量がより低い場合には、より高い冷却速度を使用することができる。実際には、パラメータを調整することにより、すべての分散粒子相のうち、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量を限りなく100%に近づけることができるが、100%に達することはできない。
【0060】
さらに、上記球状または球状に近い分散粒子相の真球度は50%を超える。
【0061】
さらに、上記球状または球状に近い分散粒子相の真球度は70%を超える。
【0062】
さらに、上記球状または球状に近い分散粒子相の真球度は85%を超える。
【0063】
さらに、上記球状または球状に近い分散粒子相の真球度は95%を超える。
【0064】
さらに、上記全分散粒子相中の球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は10%より大きい。
【0065】
注:表現の便宜上、「球状」と表記したり、「球状または球状に近い」と表記したりする場合がある。実際には、理想的な球体は存在しないため、本願において「球状」とは、球状および球状に近い形状を含むものとする。
【0066】
単純なLa-Fe合金では、上記の方法では球状の分散粒子相を得ることが困難であるか、90nm以下の球状に近いFe相粒子を得るには非常に高い冷却速度が必要であり、またLaマトリックスとの酸反応によってそのようなナノ粒子を排出することも困難である(Feナノ粒子も酸と反応して可溶化する)。したがって、合金設計により、耐食性元素であるCrまたは(および)Vを添加した後、あるいはより多くのD元素を同時に添加した後、全分散粒子相中の球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が10%を超える場合には、相当量の球状または球状に近い分散粒子相が得られていると考えられる。
【0067】
さらに、全分散粒子相中の球形または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が25%より大きい。
【0068】
さらに、上記分散粒子相は、主に球状または球状に近い形状である。
【0069】
さらに、全分散粒子相中の球形または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が50%より大きい。
【0070】
さらに、全分散粒子相中の球形または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が75%より大きい。
【0071】
さらに、全分散粒子相中の球形または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が90%より大きい。
【0072】
さらに、全分散粒子相中の球形または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が95%より大きい。
【0073】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が2%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が4%を超える場合、および溶融物の冷却速度が500K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の50%を超える。
【0074】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が4%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が8%を超える場合、および溶融物の冷却速度が250K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の50%を超える。
【0075】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が8%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が12%を超える場合、および溶融物の冷却速度が100K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の50%を超える。
【0076】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が12%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が18%を超える場合、および溶融物の冷却速度が50K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の50%を超える。
【0077】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が16%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が25%を超える場合、および溶融物の冷却速度が20K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の50%を超える。
【0078】
一般に、Feリッチ分散粒子相中の固溶T元素の含有量が16%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が25%を超える場合、および溶融物の冷却速度が100K/sを超える場合、球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量は、全分散粒子相の95%を超える。
【0079】
さらに、分散粒子相の平均粒子サイズが0.25μmを超える場合でも、真球度が85%を超える分散粒子相を得ることができる。
【0080】
さらに、分散粒子相の平均粒子サイズが0.25μmを超える場合でも、冷却速度と合金組成を調整することにより、真球度85%を超える分散粒子相を得ることができる。
【0081】
さらに、分散粒子相の平均粒子サイズが0.5μmを超える場合でも、冷却速度と合金組成を調整することにより、真球度85%を超える分散粒子相を得ることができる。
【0082】
さらに、分散粒子相の平均粒子サイズが1μmを超える場合でも、冷却速度と合金組成を調整することにより、真球度85%を超える分散粒子相を得ることができる。
【0083】
さらに、分散粒子相の平均粒子サイズが3μmを超える場合でも、冷却速度と合金組成を調整することにより、真球度85%を超える分散粒子相を得ることができる。
【0084】
さらに、上記部分球状または球状に近い分散粒子相は、特定の樹状突起の特徴を含み、これは、部分球状または球状に近い分散粒子相が短く突出した樹状を成長させ、球状または球状に近い分散粒子相全体に「コロナ」ウイルスの形状に類似した形状を与えることを意味する(球状または球状に近い分散粒子相に成長する隆起した樹状突起は、“コロナウイルス”の球上の冠状突起に対応する)。
【0085】
さらに、突出する短い樹状突起の数は1つ以上であり、球面から計算されるさらなる凸状の長さが球状粒子の半径未満である。具体的な形状については実施形態を参照。
【0086】
さらに、凸状の短い樹状突起の数が1つ以上であり、球面から計算されるさらなる凸状の長さが球状粒子の半径の半分未満である。
【0087】
このような十分に球状化されていない隆起樹状突起は、粒状相の球状化に何らかの影響を及ぼすが、隆起樹状突起が依存的に成長する球状粒状相は、それ自体が高い球状度を有し、隆起樹状突起が短く、粒子表面に一般的に対称的かつ均一に分布している。したがって、球状または球状に近い分散粒子相の一部に、十分に球状化されていない凸状の短い樹枝状結晶の特徴が含まれている場合でも、そのような粒子は依然として球形度の高い球状または球状に近い粒子であり、統計的には球状または球状に近い粒子のカテゴリーに属する。
【0088】
さらに、上記分散粒子相は主に球状または球状に近い形状である。これに加えて、分散粒子相は、少量の典型的な樹枝状粒子相を含む。上記樹枝状粒子は典型的な樹枝状形状であり、球状とは見られず、球状または球状に近い粒子の統計的カテゴリーには属さない。
【0089】
上記分散粒子相は、主に球状または球状に近い形状を有し、球状または球状に近い分散粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、同時に、分散粒子相は、少量の典型的な樹枝状の粒子相を含む。これら2種類の樹枝状形状特徴の存在は、本発明によって得られる鉄リッチ分散粒子相が有するユニークな特徴である。
【0090】
さらに、球状表面からさらに隆起した短い樹状突起の長さは、球状粒子の半径の3分の1以下である。
【0091】
さらに、球状表面からさらに隆起した短い樹状突起の長さは、球状粒子の半径の5分の1以下である。
【0092】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~40μmである。
【0093】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~30μmである。さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~20μmである。さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~10μmである。
【0094】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、100nm~50μmである。
【0095】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、250nm~50μmである。
【0096】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、500nm~50μmである。
【0097】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~100nmである。
【0098】
さらに、上記分散粒子相の粒径範囲が、5nm~50nmである。
【0099】
分散粒子相の粒径が、初期合金溶融物の凝固速度と負の相関があり、すなわち、初期合金溶融物の凝固速度が大きいほど、分散粒子相の粒径が小さくなる。したがって、分散粒子相の粒径が小さいほど、初期合金溶融物の凝固速度が速くなり、対応する分散粒子相の球状化速度も速くなり、全分散粒子相中の球状または球状に近い分散粒子相の体積百分率含有量が高くなる。
【0100】
さらに、上記粒子分散相中の単結晶粒子数が、粒子の総数の60%以上を占める。
【0101】
上記工程3において、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2を主成分とする鉄合金粉末材料は、上記初期合金固体からマトリックス相を除去し、分散粒子相を保持することによって得られるので、上記鉄合金粉末材料の特性(粒子形状を含む)は、工程2の分散粒子に対応する特性であり、詳細は工程2で説明する。
【0102】
さらに、上記マトリックス相を除去し、分散粒子相を保持する方法は、酸溶液溶解反応除去、マトリックス酸化粉末化除去のうち少なくとも1つを含む。
【0103】
酸溶液反応で除去する場合、適切な酸の種類と濃度を選択し、その選択の基準は、主にLax1Ma1の平均組成を有するマトリックス相が溶液中にイオンとなり、主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2の組成を有する分散粒子相が対応する酸とほとんど反応しないようにすることであり、それによってマトリックス相の除去を実現し、主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2の組成を有する鉄合金粉末材料が得られる。あるいは適切な酸の種類と濃度を選択し、その選択の基準は、主にLax1Ma1の平均組成を有するマトリックス相変化ナノ多孔質M(主にLaのみを腐食する)、主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2の組成を有する分散粒子相が対応する酸とほとんど反応しないようにすることであり、それによってナノ多孔質MとFey2Tz2Ma2Db2Lax2分散粒子の複合粉末が得られる。
【0104】
FeにCrとVが固溶する場合、フェライト系ステンレス鋼成分となり、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2を主成分とする粒子分散相は酸に対して非常に良好な耐食性を有し、La、M元素は酸溶液、元素と非常に反応しやすい。したがって、Laリッチマトリックス相を非常に容易に除去して、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2を主成分とする鉄合金粉末材料を得ることができる。
【0105】
Laは大気下で酸化粉末化されやすいため、Laリッチマトリックス相は、酸溶液溶解反応による除去に加えて、乾式プロセスによって初期合金固体から除去することができる。Laリッチマトリックスが酸化粉末化されると、Feリッチ分散粒子相が自動的に脱離し、その磁性を利用して磁場を通してFeリッチ粒子を回収することにより、Laリッチマトリックス相からの分離を達成することができる。
【0106】
さらに、初期合金固体のLaリッチマトリックス相の酸化粉末化プロセスは、熱処理の存在下で加速され、Laリッチマトリックス相は、熱処理加熱によって急速に酸化粉末化され、それによって分離効率が向上する。CrやVなどの元素の添加により、Feリッチ粒子相の耐酸化性が向上し、制御された加熱温度によりFeリッチ粒子の酸化が起こらない。
【0107】
さらに、上記熱処理温度は50℃~1000℃である。好ましくは、上記熱処理温度は50℃~600℃である。好ましくは、上記熱処理温度は50℃~200℃である。
【0108】
さらに、全鉄合金粉末粒子のうち、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、限りなく100%に近づくことができるが、100%に達することはできない。すなわち、上記鉄合金粉末粒子は、主に球状又は球状に近い形状であり、球状又はに近い鉄合金粉末粒子の一部には、球状化が不十分な樹枝状の特徴を含む。
【0109】
さらに、上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の真球度は50%を超える。
【0110】
さらに、上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の真球度は70%を超える。
【0111】
さらに、上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の真球度は85%を超える。
【0112】
さらに、上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の真球度は95%を超える。
【0113】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は10%より大きい。
【0114】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は25%より大きい。
【0115】
さらに、上記鉄合金粉末粒子は、主に球状または球状に近い形状である。
【0116】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は50%より大きい。
【0117】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は75%より大きい。
【0118】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は90%より大きい。
【0119】
さらに、上記全鉄合金粉末粒子中の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は95%より大きい。
【0120】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が2%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が4%を超える場合、および溶融物の冷却速度が500K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の50%を超える。
【0121】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が4%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が8%を超える場合、および溶融物の冷却速度が250K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の50%を超える。
【0122】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が8%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が12%を超える場合、および溶融物の冷却速度が100K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の50%を超える。
【0123】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が12%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が18%を超える場合、および溶融物の冷却速度が50K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の50%を超える。
【0124】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が16%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が25%を超える場合、および溶融物の冷却速度が20K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の50%を超える。
【0125】
一般に、鉄合金粉末粒子中の固溶T元素の含有量が16%を超える場合、またはT元素を含む固溶元素の合計含有量が25%を超える場合、および溶融物の冷却速度が100K/sを超える場合、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は、全鉄合金粉末粒子の95%を超える。
【0126】
さらに、上記部分球状または球状に近い鉄合金粉末粒子は、特定の樹状突起の特徴を含み、これは、部分球状または球状に近い鉄合金粉末粒子が短く突出した樹状を成長させ、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子全体に「コロナ」ウイルスの形状に類似した形状を与えることを意味する(球状または球状に近い鉄合金粉末粒子に成長する隆起した樹状突起は、“コロナウイルス”の球上の冠状突起に対応する)。隆起した樹状突起の具体的な形状は実施例に示されている。このような十分に球状化されていない隆起樹状突起は、鉄合金粉末粒子の真球度に何らかの影響を及ぼすが、隆起樹状突起が成長した鉄合金粉末粒子の真球度は高いので、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部に、凸状の短い樹枝状結晶の特徴が含まれている場合でも、そのような粒子は依然として真球度の高い球状または球状に近い鉄合金粉末粒子である。
【0127】
さらに、上記鉄合金粉末粒子は主に球状または球状に近い形状である。これに加えて、鉄合金粉末粒子は、少量の典型的な樹枝状粒子相を含む。
【0128】
上記鉄合金粉末粒子は、主に球状または球状に近い形状を有し、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、同時に、鉄合金粉末粒子は、少量の典型的な樹枝状の粒子相を含む。これら2種類の樹枝状形状特徴の存在は、本発明によって得られる鉄合金粉末粒子が有するユニークな特徴である。
【0129】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~40μmである。さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~30μmである。さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~20μmである。さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~10μmである。
【0130】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、100nm~50μmである。
【0131】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、250nm~50μmである。
【0132】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、500nm~50μmである。
【0133】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~100nmである。
【0134】
さらに、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲が、5nm~50nmである。
【0135】
さらに、鉄合金粉末粒子の平均粒径が0.25μmを超える場合、粉末粒子の形状は依然として主に球状である。
【0136】
さらに、鉄合金粉末粒子の平均粒径が0.5μmを超える場合、粉末粒子の形状は依然として主に球状である。
【0137】
さらに、鉄合金粉末粒子の平均粒径が1μmを超える場合、粉末粒子の形状は依然として主に球状である。
【0138】
さらに、鉄合金粉末粒子の平均粒径が3μmを超える場合、粉末粒子の形状は依然として主に球状である。
【0139】
さらに、上記鉄合金粉末粒子中の単結晶粒子の数は全粒子数の60%以上を占める。
【0140】
すべての希土類元素の中でLaは特別なケースであり、すべての鉄系元素Fe、Co、Niの中でFeもまた特別なケースである。鉄系元素と希土類元素の多くの組み合わせの中で、La-Fe合金だけが金属間化合物を形成せず、2つの元素が互いに著しく凝固することはないからである。この特徴を利用することが、本発明の初期合金固体の凝固組織において、Laリッチマトリックス相とFeリッチ分散粒子相を形成する基礎となる。これに基づいて、T元素、M元素、D元素の選択と含有量制御により、初期合金溶融物の凝固過程における元の樹枝状粒子相の成長パターンが、球状または球状に近い粒子相に変化させ、一般的な市販合金とほぼ同様の組成を持ちながら、粒径が大きく異なる(例えば、粒子サイズが小さい、酸素不純物が少ない、希土類元素が固溶しているなど)超微粒子球状鉄合金粉末を得ることができる、これが本発明の創意工夫の鍵となる。T元素、M元素、D元素の選択と含有量の制御、T元素の球状効果の発見と利用がなく、単にLa-Fe合金を通して、樹枝状で腐食しやすいFe樹枝状粉末を得るだけであれば、粒子の移動性がなく、粉末冶金の緻密性も低く、応用の価値が大幅に制限される。
【0141】
実際には、希土類元素原料として、La原料には少量の他の希土類元素も含まれていることがあるが、他の希土類元素の原子百分率含有量がLa原料の含有量の25%を超えない限り、法則にはほとんど影響しない。これらの他の希土類は、Laに固溶し、Laの役割の一部を置き換える。この時点で、本発明におけるLaの意味は、La希土類およびその他の希土類を表す。
【0142】
さらに、工程1における上記初期合金溶融物の組成は、非金属不純物元素も含み、上記非金属不純物元素には、O、N、H、P、S、およびClのうちの少なくとも1つが含まれる。上記非金属不純物元素は、初期合金溶融物中の原子百分率含有量が0より大きく10%未満である。工程2における上記Feリッチ分散粒子相の形成中に、上記非金属不純物元素がLaリッチマトリックス相に富化され、それによりFeリッチ分散粒子相が精製される。すなわち、Feリッチ分散粒子相中の上記非金属不純物元素の原子百分率含有量は、初期合金溶融物中の上記非金属不純物元素の原子百分率含有量よりも低く、上記Feリッチ分散粒子相中の非金属不純物元素の原子百分率含有量が1.5%未満である。また、工程3における上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子中の非金属不純物元素の含有量も、初期合金溶融物中の上記非金属不純物元素の含有量よりも低い。
【0143】
さらに、得られた鉄合金粉末粒子を、10μm以上の粉末、1μm~5μmの粉末、5μm~10μmの粉末、1μm以下の粉末などに分離する粒度分級を行い、粒径の異なる球状鉄合金粉末材料が得られ、様々な分野への応用が可能である。
【0144】
第2の態様、本発明はまた、その第1の態様に記載の球状鉄合金粉末材料の製造方法によって製造されることを特徴とする球状鉄合金粉末材料に関する。その特徴は、第1の態様で詳細に説明されている。
【0145】
上記球状鉄合金粉材料の特徴のいくつかは、以下を含む:球状鉄合金粉材料の主組成は、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2であり、ここで、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%である。上記鉄合金粉末粒子は主に球状または球状に近い形状であり、一部の球状または球状に近い鉄合金粉末粒子は特定の樹枝状特性を含み、上記鉄合金粉末粒子の粒径範囲は5nm~50μmである。
【0146】
さらに、上記球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の真球度は65%を超える。
【0147】
さらに、全鉄合金粉末中の上記球状に近い鉄合金粉末粒子の体積百分率含有量は25%より大きい。
【0148】
さらに、上記球状に近い鉄合金粉末粒子は、O、N、H、P、S、Clの元素の合計原子百分率含有量が1.5%未満である。
【0149】
さらに、上記Tは、Cr、Vのうち少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、Co、Siのうち少なくとも1つを含み、Dは、Mo、W、Tiのうち少なくとも1つを含み、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2は、それぞれ対応する構成元素の原子含有率含有量を表す。
【0150】
第3の態様、本発明はまた、Si含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料を製造する方法であって、その第1の態様に記載の工程1~3で製造した主成分元素がFe-Crである球状鉄合金粉末材料、または主成分元素がFe-Cr-SiであるSi含有量が低い球状鉄合金粉末材料にSi浸透処理を施して、Si含有量が高いFe-Cr-Siを主成分元素とする球状粉末材料を得ることを特徴とする方法に関する。
【0151】
その第1の態様に記載の工程1~3によって直接得られるFe-Cr-Si球状鉄合金粉末材料中のSiの原子百分率の固溶度は8%を超えることは困難であり、初期合金溶融物が多量のSiを含む場合にのみ達成可能である。一方、実際に市販されているFe-Cr-Si磁性鉄合金粉末中のSiの原子百分率は、一般に8%以上であることが必要である。より高いSi含有量を得るためには、その第1の態様に記載の工程1~3で製造されたFe-Crを主成分元素とする球状鉄合金粉末材料またはFe-Cr-Siを主成分元素とするSi含有量が低い球状鉄合金粉末材料にSi浸透処理を施すことにより、Si含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料を得ることができる。
【0152】
さらに、上記Si浸透処理は、固体Si浸透、液体Si浸透、およびガスSi浸透プロセスのうちの少なくとも1つを含む。
【0153】
さらに、固体Si浸透用のシリコン源は、SiまたはSiリッチ合金のうちの少なくとも1つを含み、液体Si浸透用のシリコン源は主にSi含有液体であり、ガスSi浸透用のシリコン源は主にSi含有ガスである。
【0154】
さらに、固体Si浸透の処理温度は、400℃~1200℃である。
【0155】
さらに、本発明は、改善されたSi浸透処理プロセスも提供する。
【0156】
さらに、その第1の態様の工程1および工程2に従って、その第1の態様の工程2に記載の初期合金固体が製造される。ここで、TはCrを含み、MはSiを含み、0<a≦40%である。上記マトリックス相の平均組成は、主にLax1Sia1であり、上記分散粒子相の組成は、主にSi 含有量が低いFey2Crz2Sia2Db2Lax2であり、上記Lax1Sia1マトリックス相中のSiは、金属間化合物によってLaと結合しており、0<a2≦8%である。上記初期合金固体Lax1Sia1マトリックス相中のLaは、元のLax1Sia1マトリックス相中のSiを保持したまま、希酸溶液による脱合金化反応によって除去され、ナノ多孔質SiとSi含有量が低い上記Fey2Crz2Sia2Db2Lax2粒子の複合粉末を得る。上記ナノ多孔質Siは、Fey2Crz2Sia2Db2Lax2粉末にSiを浸透させるためのSi源として使用できる。
【0157】
さらに、上記ナノ多孔質SiをSi源として使用して、Si含有量が低いFey2Crz2Sia2Db2Lax2粒子をSi浸透させ、それによってSi含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料を得る。
【0158】
さらに、ナノ多孔質SiおよびSi含有量が低いFey2Crz2Sia2Db2Lax2粒子の固体Si浸透方法は、固体Si浸透を直接行うか、またはまずプレスして緻密化し、その後固体Si浸透操作を行うことを含む。
【0159】
さらに、固体Si浸透の処理温度は、400℃~1200℃である。
【0160】
さらに、上記得られたSi含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料の組成は、主にFey3Crz3Sia3Db3Lax3であり、ここで、x3、y3、z3、a3、b3はそれぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ0<y3<y2、0<z3<z2、0<a2<a3、0≦b3≦b2、0<x3<x2である。
【0161】
さらに、5%<a3である。さらに、10%<a3である。
【0162】
さらに、上記Si含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料は、Si含有量が浸透処理によって増加し、それに応じて合金組成が自動的に調整されることを除いて、粉末材料の形態およびサイズは、基本的に浸透処理前と同じままである。
【0163】
さらに、Siは脆いため、シリコン浸透処理後のSi含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末材料は、分散・粉砕技術により再粉砕して緩い粒子とすることができる。Si含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉末の表面に完全に浸透していない残留ナノ多孔質Siが残留していることがあるが、それは有益に存在することがある。
【0164】
さらに、得られたSi含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉体粒子を、10μm以上の粉体、1μm~5μmの粉体、5μm~10μmの粉体、1μm以下の粉体などに分離する粒度分級を行い、異なる粒径のSi含有量が高い球状Fe-Cr-Si粉体材料が得られ、様々な分野への応用が可能である。
【0165】
第4の態様、本発明はまた、その第3の態様に記載のSi含有量が高い球状鉄-クロム-シリコン粉末材料の製造方法によって製造されることを特徴とするSi含有量が高い球状の鉄-クロム-シリコン粉末材料に関する。その特徴は、第3の態様で詳細に説明されている。
【0166】
第5の態様、本発明はまた、その第3の態様に記載の改良されたシリコン浸透プロセスによって、ナノ多孔質SiとSi含有量が低いFey2Crz2Sia2Db2Lax2粒子の複合粉末を製造し、ナノ多孔質Siと球状Fe-Cr-Si粒子の複合粉末を得ることを特徴とするナノ多孔質Siと球状Fe-Cr-Si粒子の複合粉末に関する。その特徴は、第3の態様の改良されたシリコン浸透プロセスで説明されている。
【0167】
第6の態様、本発明はまた、ニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品を製造する方法であって、以下の製造工程を含むことを特徴とする方法。
【0168】
工程1:その第1の態様の工程1および工程2に従って、上記その第1の態様の工程2に記載の初期合金固体を製造する。ここで、TはCrを含み、MはNiを含み、0<a≦40%である。上記マトリックス相の平均組成は、主にLax1Nia1であり、上記分散粒子相の組成は、主にNi含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2であり、上記Lax1Nia1マトリックス相中のNiは、金属間化合物によってLaと結合しており、0<a2≦12%である。
【0169】
工程2:上記初期合金固体Lax1Nia1マトリックス相中のLaは、元のLax1Nia1マトリックス相中のNiの大部分が反応によって除去されないようにしながら、希酸溶液による脱合金化反応によって除去され、ナノ多孔質NiとNi含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子の複合粉末を得る。
【0170】
工程3:ナノ多孔質Niと上記Ni含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子の複合粉末をプレス成形し、熱処理および焼結して、主成分組成がFey3Crz3Nia3Db3Lax3のNi含有量が高いいFeCrNi粉末冶金製品を得る。ここで、x3、y3、z3、a3およびb3は、それぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、0<y3<y2、0<z3<z2、0<a2<a3、0≦b3≦b2、および0<x3<x2である。
【0171】
その第1の態様に記載の初期合金溶融物の凝固中、マトリックス中のNi元素に富むため、Feリッチ相分散粒子中のNiの原子百分率固溶量は一般に12%を超えない。 一般に、Fe-Ni系高温合金中のNi含有量は30%~40%である必要があるため、本発明の方法によりNi含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子中のNi含有量を増加させることにより、高温合金の分野に適したNi含有量が高いFeCrNi粉末冶金製品を得ることができる。
【0172】
上記工程1において、
さらに、18%≦x≦85%、10%≦y≦81.8%、5%≦a≦40%、2%≦z≦35%、0%≦b≦15%、45%≦x1≦100%、0%≦a1≦55%、50%≦y2≦85%、4%≦z2<50%である。
【0173】
さらに、上記Lax1Nia1マトリックス相中のNiが金属間化合物を介してLaと結合する方法には、La3Ni金属間化合物、La7Ni3金属間化合物、およびLaNi金属間化合物のうち少なくとも1つが含まれる。
【0174】
上記工程2において、
LaとNiはどちらも酸と反応できますが、希土類Laの反応性が高く、金属間化合物は一般にLa含有量が多い。そのため、希酸の種類や濃度を調整することで、Laは脱合金反応により腐食除去され、Niは必然的に少量腐食溶解するが、脱合金反応によりNiの大部分をナノ多孔質Niに保持することができる。一方、Ni含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子相はCrを含み、耐食性に優れ、完全に保持することができる。
【0175】
さらに、上記ナノ多孔質Niストリップのサイズは200nm未満である。
【0176】
本発明の脱合金反応後、ナノ多孔質Niは著しく断片化し、そのままのマトリックスとして保持することができないため、得られたナノ多孔質NiとNi含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子との複合粉末において、Ni含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子自由に分離されており、ナノ多孔質Niフラグメントと混合されているだけである。
【0177】
上記工程3において、
さらに、上記プレス成形と熱処理焼結は、順次行ってもよく、同時に行ってもよく、同時はホットプレス焼結である。
【0178】
さらに、上記熱処理焼結温度は、Ni含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子の融点以下である。
【0179】
さらに、上記熱処理焼結温度が400℃~1400℃である。
【0180】
さらに、上記熱処理焼結温度が400℃~1100℃である。
【0181】
さらに、上記熱処理焼結温度が400℃~900℃である。
【0182】
さらに、上記熱処理焼結工程において、ナノ多孔質Niは、Ni含有量が低いFey2Crz2Nia2Db2Lax2粒子に入り込み、その中に固溶し、その結果、Ni含有量が増加する。
【0183】
さらに、10%<a3である。さらに、15%<a3である。さらに、20%<a3である。さらに、30%<a3である。
【0184】
第7の態様、本発明はまた、その第6の態様に記載のニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の製造方法によって製造されることを特徴とするニッケル含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品に関する。その特徴は、第6の態様で詳細に説明されている。
【0185】
第8の態様、本発明はまた、その第6の態様の工程1および工程2によって製造されることを特徴とするナノ多孔質NiとNi含有量が低い鉄-クロム-ニッケル粒子の複合粉末に関する。その特徴は、第6の態様で詳細に説明されている。
【0186】
第9の態様、本発明はまた、第2の態様に記載の球状鉄合金粉末材料の、通常の粉末冶金、金属射出成形(MIM)、3Dプリント、磁性材料、耐熱材料、高温合金、塗料、波動吸収材料などの分野のいずれかへの使用に関する。
【0187】
本発明の第1の態様および第2の態様に係る球状鉄合金粉末材料は、粉末冶金一般の分野において使用することができる。すなわち、上記粉末を圧縮して成形体にした後、焼結して対応する組成のバルク粉末冶金製品を製造するか、または上記粉末を他の粉末と混合してから圧縮して成形体にし、焼結して対応する配合組成のバルク粉末冶金製品を製造する。上記他の粉末としては、金属粉末、合金粉末、酸化物粉末、炭化物粉末、窒化物粉末、炭素粉末、セラミック粉末のうち少なくとも1つが挙げられる。
【0188】
金属射出成形(MIM)の分野において、MIM用粉末材料の理論的な最適粒径は0.5μm~10μmであるが、現在の技術的限界により、MIMに使用される粉末材料の粒径は一般的に10μm以上、あるいは50μm以上である。本発明に記載の方法は、0.5μm~10μmの粉末の製造に非常に適しており、粉末が微細であればあるほど、製造が容易である。したがって、本発明の第1の態様および第2の態様に関与する鉄合金粉末材料は、金属射出成形(MIM)の分野での使用に非常に適している。MIM技術と通常の粉末冶金技術との違いは、MIMは粉末と有機バインダーを使用して成形体を作成し、有機バインダーを除去した後、焼結して製品を得ることにより行われ、バインダーの除去により、焼結製品は成形体の体積に対して10%~20%収縮することである。
【0189】
3Dプリントの分野において、微粉末のレイアップ粉末を3Dプリントするには、粒径が15μm~53μm程度の球状粉末が必要である。本発明では、Feに固溶している元素の含有量が非常に多く、CrやVの含有量が非常に多い場合に、この粒径範囲の球状鉄合金粉末を得ることができ、さらに篩い分けすることにより、この粒径範囲の粉末を濃縮することができる。したがって、本発明の第1の態様および第2の態様に係る球状鉄合金粉末材料は、場合によっては3Dプリントの分野にも使用することができる。
【0190】
磁性材料の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係る球状鉄合金粉末材料は、軟磁性材料や硬磁性材料(永久磁石)にも使用することができる。例えば、Fe-Cr、Fe-Cr-Siを主成分とする粉末材料は軟磁性材料(例えば圧粉磁心)に、Fe-Cr-Coを主成分とする粉末材料は硬磁性材料に使用することができる。
【0191】
さらに、本発明に係るFe-CrおよびFe-Cr-Siを主成分とする粉末材料を軟磁性材料として使用する場合には、圧粉磁心としての用途も含まれる。
【0192】
さらに、上記圧粉磁心は、Fe-Cr、Fe-Cr-Siを主成分とする粉末材料に絶縁被覆材を塗布した後、一定の温度でプレスすることにより製造される。さらに、上記プレス温度は室温~800℃である。
【0193】
さらに、上記圧粉磁心中の絶縁被覆材の重量百分率が0.1%を超え15%未満である。
【0194】
さらに、上記絶縁被覆材は樹脂を含む。好ましくは、上記絶縁被覆材は、シリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、およびナイロンのうちの少なくとも1つを含む。
【0195】
耐熱材料の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係るV、W、Mo、Tiなどの高融点元素を含む球状鉄合金粉末材料、またはAlを含み、高温でアルミナを形成し得る球状鉄合金粉末材料、例えば、Fe-Cr-Al、Fe-Cr-Al-(V/W/Mo/Ti)を主成分とする球状鉄合金粉末材料から製造された粉末材料または粉末冶金製品またはMIM製品は、耐熱特性を大幅に向上させることができ、耐熱材料として使用することができる。加熱炉、熱交換器、ファイバーバーナー、高温ガス濾過システムなどの工業用途の様々な局面において、特に排ガス触媒用のメタルハニカム担体として、鉄-クロム-アルミニウム冶金合金製品は、従来のセラミックハニカム担体よりも明らかな利点を持っている。
【0196】
高温合金の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係るV、W、Mo、Tiなどの高融点元素を含む球状鉄合金粉末材料、例えば、Fe-Cr-Ni-(V/W/Mo/Ti)を主成分とする球状鉄合金粉末材料から製造された製品は、優れた耐高温性を有する。本発明の第1の態様および第2の態様に係るV、W、Mo、Ti等の高融点元素を含む球状鉄合金粉末材料の組成が、高温合金の組成と同一または近い場合には、高温合金の分野で使用することができる。
【0197】
塗料の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係る球状鉄合金粉末材料は、溶射塗料、樹脂系塗料、磁気遮蔽塗料を含む塗料の分野における主要成分として使用することができる。
【0198】
波動吸収材料の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係る球状鉄合金粉末材料は、波動吸収材料の分野における磁性金属粉末として使用することができる。
【0199】
第10の態様、本発明はまた、第2の態様に記載の球状鉄合金粉末材料の、電熱材料分野への使用に関する。上記球状鉄合金粉材料は、Fe-Cr-Alを主成分とする。
【0200】
電熱材料の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係るFe-Cr-Al、Fe-Cr-Al-(V/W/Mo/Ti)を主成分とする粉末材料は、粉末冶金技術によって製造に加工されると、優れた電熱材料となる。例えば、上記Fe-Cr-Al、Fe-Cr-Al-(V/W/Mo/Ti)を主成分とする粉末材料から製造された鉄-クロム-アルミニウム電熱合金素子は、使用温度が1400℃以上に達することができる。Fe-Cr-Alを主成分とする合金はアルミニウムを多く含むため、抵抗率が高く、最大値は1.6μΩ・mに達する。高い抵抗率により、電気エネルギーを効果的に熱エネルギーに変換できる。同時に、鉄クロムアルミ合金の価格は安く、ニッケルクロム合金の20%~25%しかないため、大量に使用できる条件が整っている。また、耐熱性が良く、比重が低く、耐高温酸化性に優れているため、生産や生活のあらゆる場面で幅広く使用されている。例えば、生活の分野では、FeCrAl粉末冶金合金が適用される発熱体には、電気ストーブワイヤー、電気ストーブロッド、調理プレート、ラジエーター、トースター、電子レンジ、給湯器、洗濯機、ボイラー、自動車の精密抵抗素子などがある。
【0201】
第11の態様、本発明はまた、第4の態様に記載のSi含有量が高い球状鉄-クロム-ケイ素粉末材料の、磁性材料への使用に関する。
【0202】
さらに、本発明の第4の態様に係るSi含有量が高い球状鉄-クロム-ケイ素粉末材料を軟磁性材料として使用する場合には、圧粉磁心としての用途も含まれる。
【0203】
さらに、上記圧粉磁心は、Si含有量が高い球状鉄-クロム-ケイ素粉末材料に絶縁被覆材を塗布した後、一定の温度でプレスすることにより製造される。さらに、上記プレス温度は室温~800℃である。
【0204】
さらに、上記圧粉磁心中の絶縁被覆材の重量百分率が0.1%を超え15%未満である。
【0205】
さらに、上記絶縁被覆材は樹脂を含む。好ましくは、上記絶縁被覆材は、シリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、およびナイロンのうちの少なくとも1つを含む。
【0206】
第12の態様、本発明はまた、第7の態様に記載のNi含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の、高温合金への使用に関する。
【0207】
高温合金には、主にニッケル基高温合金、鉄基高温合金、ニッケル-鉄基高温合金が含まれ、本発明の第7の態様に係るNi含有量が高い鉄-クロム-ニッケル粉末冶金製品の組成が高温合金の組成と同じか近い場合、高温合金の分野で使用することができる。
【0208】
第13の態様、本発明はまた、その第1の態様の工程1および工程2の初期合金固体を製造する方法によって製造されることを特徴とする合金固体に関する。その特徴は、第1の態様で詳細に説明されている。
【0209】
その具体的な特徴は、以下の工程によって製造されることを含む。
【0210】
工程1:初期合金原料を選択し、初期合金組成比に従って初期合金原料を溶解し、均質な初期合金溶融物を得る。上記初期合金溶融物の主成分は、LaxFeyTzMaDbであり、ここで、Tは、Cr、Vのうち少なくとも1つを含み、Mは、Al、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、Dは、Mo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含み。x、y、z、a、bは、対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ18%≦x≦95.8%、4%≦y≦81.8%、0.1%≦z≦35%、0≦a≦40%、0≦b≦15%である。
【0211】
工程2:上記初期合金溶融物を急速凝固法により初期合金固体に凝固させる。上記初期合金固体の凝固組織は、マトリックス相および分散粒子相を含み、上記マトリックス相は、上記分散粒子相の融点よりも低い融点を有し、上記分散粒子相は、上記マトリックス相に内包され、上記凝固組織中のマトリックス相の体積百分率含有量は40%以上である。上記マトリックス相の平均組成は主にLax1Ma1であり、上記分散粒子相の組成は主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2であり、ここで、x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2は、対応する構成元素の原子百分率含有量を表し、かつ45%≦x1≦100%、0%≦a1≦55%、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%である。上記分散粒子相は、かなりの量の球状または球状に近い分散粒子相を含み、球状または球状に近い分散粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、上記分散粒子相の粒径は5nm~50μmである。
【0212】
さらに、工程1における上記初期合金溶融物の組成は、非金属不純物元素も含み、上記非金属不純物元素には、O、N、H、P、S、およびClのうちの少なくとも1つが含まれる。上記非金属不純物元素は、初期合金溶融物中の原子百分率含有量が0より大きく10%未満である。工程2における上記Feリッチ分散粒子相の形成中に、上記非金属不純物元素がLaリッチマトリックス相に富化され、それによりFeリッチ分散粒子相が精製される。すなわち、Feリッチ分散粒子相中の上記非金属不純物元素の原子百分率含有量は、初期合金溶融物中の上記非金属不純物元素の原子百分率含有量よりも低く、上記Feリッチ分散粒子相中の非金属不純物元素の原子百分率含有量が1.5%未満である。
【0213】
第14の態様、本発明はまた、第2の態様に記載の球状鉄合金粉末材料の、磁性流体分野への使用に関する。
【0214】
上記球状鉄合金粉末材料の特徴は、その第1の態様および第2の態様で詳細に説明されている。上記球状鉄合金粉材料の特徴としては、以下のものが挙げられる:上記球状鉄合金粉材料の主成分は、Fey2Tz2Ma2Db2Lax2であり、ここで、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、0<x2≦5%である。上記球状鉄粉末粒子は、主に球状または球状に近い形状であり、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、特定の樹枝状の特徴を含む。上記鉄合金粉末粒子の粒径は、5nm~100nmであり、TはCrおよびVのうち少なくとも1つを含み、MはAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、DはMo、W、およびTiを含む。x1、a1、x2、y2、z2、a2、b2は、それぞれ対応する構成元素の原子含有率含有量を表す。
【0215】
好ましくは、上記球状鉄合金粉末粒子の粒径範囲は、5nm~50nmである。
【0216】
さらに好ましくは、上記球状鉄合金粉末粒子の粒径範囲は、5nm~25nmである。
【0217】
さらに、50%≦y2≦95%である。
【0218】
さらに、1%≦z2+b2<50%である。さらに、2%≦z2+b2<50%である。さらに、3%≦z2+b2<50%である。
【0219】
さらに、1%≦z2<50%である。さらに、2%≦z2<50%である。さらに、3%≦z2<50%である。
【0220】
磁性流体の分野において、本発明の第1の態様および第2の態様に係る鉄合金粉末粒子を使用することができる。具体的には、上記鉄合金粉末粒子を、キャリア流体および界面活性剤と混合して磁性流体を得ることを含む。
【0221】
さらに、上記キャリア流体は、水、エタノール、炭水化物、脂肪、二塩基性脂肪、水銀のうちの少なくとも1つを含む。
【0222】
さらに、上記界面活性剤は、オレイン酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0223】
磁性流体用磁性固体粒子として、その粒径は一般的にナノスケールであることが要求される。Feは最も優れた磁性材料の一つであるが、ナノFe粒子を磁性流体用磁性固体粒子として使用する場合、ナノFe粒子は非常に酸化されやすく、性能が不安定になり、うまく適用することが難しくなる。本発明は、製造された球状Fe合金粉末粒子の固溶体が一定量の耐食性Cr、V、Mo、W、Ti元素を含有する場合、この問題をよく解決し、球状化をより明確にするだけでなく、ナノFe合金粉末粒子の耐食性を著しく向上させる。この耐食性の向上により、ナノFe合金粉末粒子を保持したまま、酸腐食液により合金中のマトリックスを固体として除去することが可能となり、同時に耐食性ナノFe合金粉末粒子を磁性流体用磁性固体粒子として応用することが可能となる。
【0224】
第15の態様、本発明はまた、以下の特徴を含むコロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子に関する。上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主成分はFey2Tz2Ma2Db2Lax2であり、ここで、50%≦y2≦98%、0.2%≦z2<50%、0%≦a2≦30%、0%≦b2≦35%、および0<x2≦5%であり、TはCrおよびVのうち少なくとも1つを含み、MはAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、DはMo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含み、Laは希土類Laであり、Laは主にFey2Tz2Ma2Db2Lax2の主成分を有するコロナウイルス形状の球状鉄合金粉粒子中に固溶して存在し、x1、a1、x2、y2、z2、a2およびb2はそれぞれ対応する構成元素の原子百分率含有量を表す。上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子は、本体部分と付属部分とを含み、本体部分は球形または球形に近い球体であり、付属部分は、本体部分の球体の表面上にその場で成長した複数の突起であり、球状鉄合金粉末粒子はコロナウイルスに類似する形状を有し、その付属部分の複数の突起はコロナウイルスの形状の複数の王冠突起に対応する。上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の本体部分の直径は20nm~50μmであり、付属部分の突起の高さは本体部分球体の直径の0.3倍未満である。
【0225】
さらに、上記単一のコロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子上の突起の数は5を超える。
【0226】
さらに、上記単一のコロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子上の突起の数は10を超える。
【0227】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主本体部分球体の直径範囲は、50nm~15μmである。
【0228】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主本体部分球体の直径範囲は、200nm~10μmである。
【0229】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主本体部分球体の直径範囲は、200nm~5μmである。
【0230】
さらに、上記付属部分の任意の単一の突起は、一つ以下の結晶粒から構成されており、その結晶粒の結晶構造及び結晶面方位は、それに接続される球体部分の結晶構造及び結晶面方位と同じである。
【0231】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の主本体部分および付属部分は、いずれも大きな単結晶に属する。
【0232】
上記本体部分と上記付属部分との接合位置における結晶構造および結晶面方位は、上記本体部分と上記付属部分との両方において一致していることから理解できる。従って、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の本体部分球状体および複数の付属部分凹凸は、いずれも1つの大きな単結晶に属すると考えられる。
【0233】
さらに、付属部分の突起の高さは本体部分球体の直径の0.2倍未満である。
【0234】
さらに、上記突起は樹枝状突起である。すなわち、突起は球状粒子から樹枝状粒子への移行のための優先成長点である。あるいは、球状粒子がある段階まで成長した後、球状表面のある部分に優先成長点が現れ、その成長点の本来の結晶構造および結晶面方位に従って突起として優先的に成長し続けるようになると理解することができる。
【0235】
さらに、上記突起の付属部分の直径は、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の本体部分球体の直径の0.25倍未満である。
【0236】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末粒子の形態的特徴は、実施形態における
図3、
図11、
図12、および
図15に示すコロナウイルス形状の球状粒子の形状を参照することができる。
【0237】
さらに、上記コロナウイルス形状の球状鉄合金粉末材料は、その第1態様に記載の方法によって製造される。
【0238】
具体的に、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0239】
第一、Laリッチマトリックス相中の耐食性、耐酸化性の球状または球状に近いFeリッチ分散粒子相の析出とその後の分離は、T元素の添加設計によって達成される。T元素の選択には、いくつかの独創的な特徴がある。T元素は、Feと完全に混和性であり、大量に添加することができる。T元素は、Feと同様に、Laとの金属間化合物を生成せず、Laリッチ相にはほとんど進入せず、Feリッチ分散粒子相にのみ進入する。固溶体中にT元素が存在すると、Feリッチ分散粒子相は球状化する傾向があり、これが球状または球状に近いFe合金粉末を製造するための鍵となる。T元素とD元素は完全に混和性であり、FeへのD元素の固溶度が10-20%の場合、T元素の存在により、Feリッチ分散粒子相は、より多くのD元素をより容易に固溶させることができる。T元素のCr、VはFe合金中の耐食性元素であり、Feリッチ分散微粒子相に入ることにより、Feリッチ分散粒子相の耐食性と耐酸化性が大幅に向上し、酸腐食反応や酸化粉化分離によりLaリッチマトリックス相からFeリッチ分散粒子相を分離することが可能となる。そうでなければ、特に粒子相が比較的小さい場合、単純なFe相も酸と反応しやすく、酸化しやすい。
【0240】
第二、球状または球状に近いFe合金粉末は、有益な希土類元素を直接固溶している。Fe合金中の希土類元素の添加は、材料の性能にプラスの効果をもたらす。例えば、Fe-Cr-Al電熱合金に少量の希土類元素を添加すると、電熱合金の性能が向上する。工業的には、Fe合金に希土類元素を添加するが、希土類元素は酸化されやすいため、希土類元素を少量添加すると、一般に希土類元素は合金中の酸素などの不純物と結合し、酸化物粒子の形で合金中に不均一に存在するため、合金の性能向上には限界がある。しかし、本発明の初期合金溶融物は、Laを多量に含むため(Laリッチマトリックス相の体積百分率含有量が40%以上である)、合金溶融物中の酸素は主にLaリッチマトリックス相に存在し、少量のLaは球状または球状に近いFe合金粉末中に固溶する。このLaは、Fe合金粉末中に原子状態で均質に固溶しており、厳密に合金化された希土類元素であり、材料の特性により良い影響を与える。Fe合金粉末中に固溶した希土類元素(La)の存在は、本発明によって製造される鉄合金粉末材料の重要な特徴の1つである。
【0241】
第三、本発明は、球状または球状に近い粒子を主成分とする超微粒子Fe合金粉末材料を製造することを実現した。球状または球状に近いFe合金粒子は、流動性、均質性、緻密な粉末積層に優れるため、粉末冶金、粉末溶射、粉末塗料、金属射出成形(MIM)、3Dプリントなどの応用分野の主要原料となる。現在、球状Fe合金粉末材料は化学的方法では製造できず、主にアトマイズ法、つまり液体金属や合金を高速流体で直接粉砕して金属粉末を得る方法でしか製造できない。しかし、アトマイズ法の噴霧能力の限界のため、一般に10μm~150μmの球状Fe合金粉末の製造にしか適さない。10μm以下、特に1μm前後の球状Fe合金粉末材料に対しては、アトマイズ法の製造は困難または不可能である。本発明で提供される技術的解決策は、ナノスケールから数ミクロンの粒径の超微細球状Fe合金粉末材料の製造を達成し、そのような超微細球状Fe合金粉末材料を大規模かつ低コストで得ることができ、これは応用上明白な積極的な意義がある。
【0242】
第四、製造された球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部は、凸状の短い樹枝状特性を含む。粉末冶金、特にMIMの場合、粗製品の強度は通常の生産における重要な要素の1つである。例えば、金属射出成形によるMIMブランク製品は、金属粉末と有機バインダーを加圧し、有機バインダーを除去することによって得られる。MIMブランク製品は焼結時の収縮により高強度の製品となり、有機バインダーを除去した後、焼結する前に、MIMブランク製品の形状を維持するには、粒子間の機械的結合に依存する必要がある。金属粉末がすべて理想球形粒子である場合、理想球形粒子間の機械的摩擦結合力が非常に弱く、ブランク製品が崩れやすくなる。本発明では、球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部が、凸状の短い樹枝状特性を有しており、この特徴は粒子の球形度にはほとんど影響しないが、粒子間の機械的結合または摩擦を大きく向上させ、それによってブランク品の強度を高めることができる。すべての粒子がこの凸状の短い樹枝状特性を持っている場合、球状粒子の粉体流動性に影響を与えることになる。本発明で製造される鉄合金粉末粒子は、この凸状の短い樹枝状特性が、製造された球状または球状に近い鉄合金粉末粒子の一部の表面にのみ現れるという点で適している。したがって、一部の球状鉄合金粉末粒子上の突出した短い樹枝状は、本発明によって製造されたFe合金粉末のもう1つの重要な特徴である。
【0243】
第五、Feリッチ分散粒子相の形成過程で、同時にFeリッチ分散粒子相を精製される。O、N、H、P、S、Clなどの不純物元素を含む原料、またはそれより低い純度の原料で初期合金を製造した場合、または初期合金の製造中に上記の不純物が溶融物中に混入した場合、最終的に上記不純物の含有量の少ないFeリッチな分散粒子相を得ることには影響せず、さらに、上記不純物の含有量の少ない球状鉄合金粉材料を得ることができる。これは、原料中の上記不純物元素や合金溶融物の初期凝固過程で溶融物中に導入された上記不純物元素の大部分がLaリッチマトリックス相に捕獲された後、マトリックス相中に侵入するため、Feリッチ分散粒子相を精製することができるからである。
【0244】
第六、単結晶粒子を主体とする鉄合金粉末材料を得ることができる。多結晶粉末と比較して、単結晶粉末は多くの重要かつ有益な効果を持つことができる。初期の合金溶融物の凝固プロセス中に、各内因性粒子が溶融物中の特定の位置から核生成し、特定の原子配列に従って成長する。マトリックス相の体積百分率含有量を制御し、各内因性粒子を確実に分散させることにより、各内因性分散粒子同士の結合や絡み合いが困難になる。その結果、得られる各Feリッチ分散粒子相は、一般に単結晶相となる。また、球状粒子上でさらに凸状の短い樹枝状が成長したとしても、球状粒子表面の一定の結晶方向に従って成長する。つまり、球状粒子と凸状の短い樹枝状は1つの結晶粒となる。多結晶材料の場合、その粒界には一般に凝固時に結晶外に排出される不純物元素が含まれやすく、高純度の多結晶粉末材料を得ることは困難である。また、粉末材料が単結晶粒子を主成分とする場合、その純度は確実に保証される。さらに、単結晶粒子の表面の原子は(111)面配列などの特定の配列を有しており、この特定の配列により材料に特別な機械的、物理的、化学的特性が与えられ、有益な効果が得られる。
【0245】
従って、本発明は、La、Feを主成分とする合金溶融物にT元素、M元素およびD元素を精緻な設計によって取り込むことにより、球状または球状に近いFeリッチ分散粒子相にT元素、M元素、D元素およびLaの固溶合金化が達成され、球状または球状に近いFeリッチ分散粒子相の耐食性および耐酸化性が改善され、不純物含有量が低減された。Laリッチマトリックス相を除去することにより、数百ナノメートルから数マイクロメートルの粒径を有する超微粒子球状鉄合金粉末材料が得られ、粉末冶金、金属射出成形(MIM)、3Dプリント、磁性材料、耐熱材料、高温合金、塗料、電熱材料、波動吸収材料などの分野において良好な応用の見通しがある。
【0246】
説明:本発明の第1態様から第14の態様において、TはCrおよびVのうち少なくとも1つを含み、MはAl、Ni、Co、およびSiのうち少なくとも1つを含み、DはMo、W、およびTiのうち少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【
図1】本発明の実施例1に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図2】本発明の実施例1で製造された鉄合金粉末材料のSEM形態写真である。
【
図3】本発明の実施例2に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図4】本発明の実施例2に記載の初期合金凝固組織のマトリックスの後方散乱高倍率SEM形態写真である。
【
図5】本発明の実施例3に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図6】本発明の実施例3に記載の初期合金凝固組織のマトリックスの後方散乱高倍率SEM形態写真である。
【
図7】本発明の実施例4に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図8】本発明の実施例5に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図9】本発明の実施例6に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図10】本発明の実施例7に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図11】本発明の実施例8に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図12】本発明の実施例8で製造された鉄合金粉末材料のSEM形態写真である。
【
図13】本発明の実施例10に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図14】本発明の実施例11に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図15】本発明の実施例11で製造された鉄合金粉末材料のSEM形態写真である。
【
図16】本発明の実施例12に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図17】本発明の実施例13に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図18】本発明の実施例13で製造された鉄合金粉末材料のSEM形態写真である。
【
図19】本発明の実施例14に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図20】本発明の実施例15に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図21】本発明の実施例16に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図22】本発明の実施例16で製造された鉄合金粉末材料のSEM形態写真である。
【
図23】本発明の比較例1に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図24】本発明の比較例1に記載の鉄リッチデンドライトのSEM形態写真である。
【
図25】本発明の比較例2に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図26】本発明の比較例3に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図27】本発明の比較例4に記載の初期合金凝固組織の後方散乱SEM形態写真である。
【
図28】本発明の比較例4に記載の初期合金凝固組織の高倍率後方散乱SEM形態写真である。
【発明を実施するための形態】
【0248】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の理解を容易にすることを意図しているが、決して本発明を限定することを意図していない。
【0249】
実施例1
【0250】
市販のLa、FeおよびCr原料を用いて、公称組成La
50Fe
41Cr
9の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
41Cr
9の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約100K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約5mmの初期合金板を形成した。初期合金板の凝固組織は、
図1に示すように、Fe
79Cr
20La
1を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相を含み、マトリックス相の体積百分率含有量は65%以上であり、分散粒子相の中に、CrとLaが固溶しており、分散粒子相は、球状粒子相と樹枝状粒子相を含み、かつ球状粒子相の体積百分率含有量は50%以上であり、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~60μmであった。
【0251】
初期合金板中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe
79Cr
20La
1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、球状粒子および樹枝状粒子を含み、球状粒子の体積百分率含有量は50%以上であり、上記球状粒子の粒径は、
図2に示すように、15nm~60μmの範囲であった。球状または球状に近い粒子相の一部は、
図2の挿入図に示すように、球状粒子上に小さなデンドライト凸構造など、特定の樹枝状特徴を含む。製造された鉄合金粉末材料は、一般粉末冶金および金属射出成形(MIM)の分野で使用することができる。
【0252】
実施例2
【0253】
市販のLa、FeおよびCr原料を用いて、公称組成La
50Fe
41Cr
9の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
41Cr
9の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約500K/sの冷却速度で、フリングストリップ法により、凝固させて、厚さ約200μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、
図3に示すように、Fe
77Cr
22La
1を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は65%以上であり、分散粒子相のほとんどは球状粒子であり、球状粒子相の一部は、
図3の挿入図に示すように、球状粒子上に小さなデンドライト凸構造など、特定の樹枝状特徴を含む。上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~10μmであった。
図3のマトリックス相を拡大すると、
図4に示すように、内部にいくつかのナノ球状粒子も見られる。
【0254】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.5mol/L希硫酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe77Cr22La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、ほぼ全体が球状粒子であり、球状粒子相の一部は、特定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~10μmであった。製造された粉末材料は、一般粉末冶金および金属射出成形(MIM)の分野で使用することができる。
【0255】
実施例3
【0256】
市販のLa、FeおよびV原料を用いて、公称組成La
67Fe
30V
3の原子百分率に従って溶解し、La
67Fe
30V
3の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約1000K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約500μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、
図5に示すように、Fe
88.5V
9La
1.5を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相のほとんどは球状粒子であり、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~5μmであった。
図5のマトリックス相を拡大すると、
図6に示すように、内部にナノ球状粒子がいくつか見られ(ナノ球状粒子以外のものは実質的なマトリックス相である)、少数の粒子相は樹枝状粒子相であった。
【0257】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe88.5V9La1.5を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子であり、少数の粒子相のみが樹枝状粒子であり、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~5μmであった。
【0258】
実施例4
【0259】
市販のO不純物を多く含む低純度La、低純度Fe、低純度V、低純度Cr原料を用いて、公称組成La
67Fe
30Cr
3V
3の原子百分率に従って溶解し、La
65Fe
30Cr
3V
3O
2の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図7に示すように、Fe
82.3V
8Cr
8La
1.5O
0.2を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とする酸素不純物富化のマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状で、少量の樹枝状結晶を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~15μmであり、一部の球状粒子相には特定の樹枝状特徴が含まれた。
【0260】
初期合金厚帯中のLaリッチマトリックス相を0.2mol/L希硝酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe82.3V8Cr8La1.5O0.2を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料の形状は、主に球状であり、少量の樹枝状形状を含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~15μmであった。
【0261】
実施例5
【0262】
市販のLa、Fe、Cr、Mo原料を用いて、公称組成La
50Fe
40Cr
0.5Mo
9.5の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
40Cr
0.5Mo
9.5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図8に示すように、Fe
78Mo
20Cr
1La
1を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状であり、上記球状分散粒子相の粒径範囲は15nm~15μmであり、かつ一部の球状粒子相には特定の樹枝状特徴が含まれた。
【0263】
初期合金厚帯中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe78Mo20Cr1La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子形状であり、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~15μmであった。
【0264】
実施例6
【0265】
市販のLa、Fe、Cr、Si原料を用いて、公称組成La
34Fe
40Cr
2.5Si
23.5の原子百分率に従って溶解し、La
34Fe
40Cr
2.5Si
23.5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約100K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約5mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図9に示すように、Fe
85.2Cr
8Si
6La
0.8を主成分とする黒色分散粒子相と、La
64Si
36を主成分とする白色マトリックス相と、La
34Si
33Fe
33を主成分とする灰色マトリックス相とを含み、これら2つのマトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相の形状は主に球状に近いであり、上記球状に近い粒子相の粒径範囲は50nm~5μmであった。
【0266】
初期合金厚帯中のLa64Si36マトリックス相とLa34Si33Fe33マトリックス相を0.5mol/L希塩酸と1mol/Lフッ化水素酸混合溶液との反応腐食により除去し、Fe85.2Cr8Si6La0.8を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料の形状は主に球状に近いであり、上記球状に近い粒子の粒径範囲は50nm~5μmであった。製造された粉末材料は、圧粉磁心などの磁性材料の分野で使用することができる。
【0267】
実施例7
【0268】
市販のLa、Fe、Cr、Si原料を用いて、公称組成La
34Fe
40Cr
2.5Si
23.5の原子百分率に従って溶解し、La
34Fe
40Cr
2.5Si
23.5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約10
5K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約100μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、
図10に示すように、Fe
82.5Cr
8Si
8La
1.5を主成分とする黒色分散粒子相と、La
60Si
20Fe
20を主成分とする平均組成のマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に微細な球状であり、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~2μmであった。
【0269】
初期合金ストリップ中のLa60Si20Fe20を主成分とする平均組成のマトリックス相を0.5mol/L希塩酸と1mol/Lフッ化水素酸混合溶液との反応腐食により除去し、Fe82.5Cr8Si8La1.5を主成分とするSiを含む分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料の形状は主に球状に近いであり、上記球状に近い粒子の粒径範囲は15nm~2μmであった。製造された粉末材料は、圧粉磁心などの磁性材料の分野で使用することができる。
【0270】
実施例8
【0271】
市販のLa、Fe、Cr、Si原料を用いて、公称組成La
50Fe
40Cr
5Si
5の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
40Cr
5Si
5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図11に示すように、Fe
86Cr
12Si
1La
1を主成分とする分散粒子相と、La
92Si
8を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~40μmであった。
【0272】
初期合金ストリップ中のLaSiマトリックス相を0.5mol/L希塩酸、0.1mol/L希硝酸、0.5mol/Lフッ化水素酸(フッ化水素酸はSiを除去することができる)混合溶液との反応腐食により除去し、Fe
86Cr
12Si
1La
1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。
図12に示すように、上記分散鉄合金粉末材料は主に球状であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~40μmであった。
【0273】
実施例9
【0274】
市販のLa、Fe、Cr、Si原料を用いて、公称組成La50Fe41Cr4Si5の原子百分率に従って溶解し、La50Fe41Cr4Si5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約1000K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約500μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、Fe90.5Cr8Si0.5La1を主成分とする分散粒子相と、La94Si6を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~10μmであった。
【0275】
初期合金ストリップのLaSiマトリックス相中のLaを0.5mol/L希塩酸による脱合金反応により腐食除去し、同時に、Siの大部分は保持され(Siは一般に希塩酸と反応しない)、Fe90.5Cr8Si0.5La1を主成分とする鉄合金粉末とナノ多孔質Siの複合粉末を得た。上記ナノ多孔質Siは断片化された多孔質構造であり、鉄合金粉末材料は主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~10μmであった。
【0276】
球状鉄合金粉末とナノ多孔質Siの複合粉末をプレス成形した後、1000℃で4時間真空固体シリコン浸透を行い、粉末を分散させて約Fe82Cr7Si10La1の組成を有するSi含有量が高い鉄-クロム-ケイ素粉末を得た。
【0277】
製造されたSi含有量が高い鉄-クロム-ケイ素粉末は篩分けされ、粒径3μm~10μmに選別され、圧粉磁心などの軟磁性材料の分野で使用できる。
【0278】
実施例10
【0279】
市販のLa、Fe、Cr、Al原料を用いて、公称組成La
45Fe
27.5Cr
7.5Al
20の原子百分率に従って溶解し、La
45Fe
27.5Cr
7.5Al
20の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図13に示すように、Fe
72Cr
20A
l7La
1を主成分とする分散粒子相と、La
75Al
25を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~10μmであった。
【0280】
初期合金厚帯中のLa75Al25マトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe72Cr20Al7La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~10μmであった。製造された粉末材料は、電熱合金、耐熱合金、および耐熱塗料の分野で使用することができる。
【0281】
実施例11
【0282】
市販のLa、Fe、Cr、Al原料を用いて、公称組成La
45Fe
27.5Cr
7.5Al
20の原子百分率に従って溶解し、La
45Fe
27.5Cr
7.5Al
20の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約10
4K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約150μmの初期合金薄帯を形成した。初期合金薄帯の凝固組織は、
図14に示すように、Fe
71Cr
21A
l7La
1を主成分とする分散粒子相と、La
75Al
25を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状であり、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は5nm~5μmであった。
【0283】
初期合金厚帯中のLa
75Al
25マトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe
71Cr
21Al
7La
1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、
図15に示すように、ほぼ全体が球状であり、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、
図15の挿入図に示すように、上記球状粒子の粒径範囲は5nm~5μmであった。製造された粉末材料は、電熱合金、耐熱合金、および耐熱塗料の分野で使用することができる。
【0284】
実施例12
【0285】
市販のLa、Fe、Cr、Al、Mo原料を用いて、公称組成La
38Fe
25Cr
10Al
25Mo
2の原子百分率に従って溶解し、La
38Fe
25Cr
10Al
25Mo
2の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約500K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約1mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図16に示すように、Fe
60Cr
25Al
8Mo
6La
1を主成分とする分散粒子相と、La
50Al
50(灰色スレートおよび繊維状相)およびLa
75Al
25(白色相)を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相は主に球状であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~40μmであった。
【0286】
初期合金厚帯中のLa50Al50とLa75Al25マトリックス相を1mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe60Cr25Al8Mo6La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~40μmであった。製造された粉末材料は、電熱合金、耐熱合金、および耐熱塗料の分野で使用することができる。Moの存在により、上記粉末材料はより高い耐熱性と耐食性を有する。
【0287】
実施例13
【0288】
市販のLa、Fe、Cr、Co原料を用いて、公称組成La
27.5Fe
37.5Cr
10Co
25の原子百分率に従って溶解し、La
27.5Fe
37.5Cr
10Co
25の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図17に示すように、Fe
63Cr
19Co
17La
1を主成分とする分散粒子相と、La
60Co
40を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は50%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状であり、樹枝状形状は少数しか含まず、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~6μmであった。
【0289】
初期合金厚帯中のLa
60Co
40マトリックス相を1mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe
63Cr
19Co
17La
1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、
図18に示すように、主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~6μmであった。製造された粉末材料は磁性材料の分野で使用することができる。
【0290】
実施例14
【0291】
市販のLa、Fe、Cr、Ni原料を用いて、公称組成La
27.5Fe
37.5Cr
10Ni
25の原子百分率に従って溶解し、La
27.5Fe
37.5Cr
10Ni
25の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図19に示すように、Fe
70Cr
20Ni
9La
1を主成分とする分散粒子相と、La
50Ni
50およびLa
75Ni
25を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の総体積百分率含有量は50%以上であり、分散粒子相は主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子を含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~50μmであった。
【0292】
初期合金厚帯中のLa50Ni50およびLa75Ni25マトリックス相を1mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe70Cr20Ni9La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~50μmであった。
【0293】
実施例15
【0294】
市販のLa、Fe、Cr、Ni、Mo、Ti原料を用いて、公称組成La
35Fe
36Cr
10Ni
15Mo
1Ti
2の原子百分率に従って溶解し、La
35Fe
36Cr
10Ni
15Mo
1Ti
2の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約50K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ6mm、直径12mmのボタンインゴットを形成した。初期合金ボタンインゴットの凝固組織は、
図20に示すように、Fe
70Cr
20Ni
3Mo
2Ti
4La
1を主成分とする分散粒子相と、La
81Ni
19(La相とLa
3Ni相からなる)を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の総体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状であり、樹枝状形状は少数しか含まず、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~50μmであった。
【0295】
初期合金ボタンインゴット中のLa81Ni19マトリックス相を1mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、耐腐食性分散粒子相は保持され、Fe70Cr20Ni3Mo2Ti4La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~50μmであった。
【0296】
実施例16
【0297】
市販のLa、Fe、Cr、Ni原料を用いて、公称組成La
27.5Fe
37.5Cr
10Ni
25の原子百分率に従って溶解し、La
27.5Fe
37.5Cr
10Ni
25の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約5000K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約200μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、
図21に示すように、Fe
70Cr
20Ni
9La
1を主成分とする分散粒子相と、La
60Ni
40を主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の総体積百分率含有量は50%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状であり、樹枝状形状は少数しか含まず、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~6μmであった。
【0298】
初期合金ストリップ中のマトリックス相のLaを0.2mol/L希塩酸水溶液による脱合金反応により腐食除去し、同時に、ナノ多孔質Niの一部は保持され、Fe
70Cr
20Ni
9La
1を主成分とする分散鉄合金粉末とナノ多孔質Niの複合粉末を得た。
図22に示すように、球状粒子の外側のフロックはナノ多孔質Niであり、鉄合金粉末材料は主に球状粒子であり、少量の樹枝状粒子も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は15nm~6μmであった。
【0299】
Fe70Cr20Ni9La1を主成分とする球状鉄合金粉末材料とナノ多孔質Niの複合粉末を100MPaでビレットにプレス成形した後、保護雰囲気中で1300℃、4時間の熱処理を行い、約Fe52Cr15Ni33La1の検出組成を有するNi含有量が高い鉄-クロム-ニッケル高温合金製品を得た。
【0300】
実施例17
【0301】
市販のLa、Fe、Cr原料を用いて、公称組成La45Fe40Cr15の原子百分率に従って溶解し、La45Fe40Cr15の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約106K/s-107K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約20μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、Feリッチ分散ナノ粒子相(粒子は小さすぎて直接検出できない)とLaを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は60%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状に近い形状であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は5nm~200nmであった。
【0302】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe71Cr27La2を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た(Crの存在により、Fe71Cr27La2ナノ鉄合金粉末粒子は酸反応によって溶解しにくい)。上記分散鉄合金粉末材料は、ほぼ全体が球状粒子であり、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記ナノ鉄合金粉末材料の粒径範囲は5nm~200nmであった。
【0303】
実施例18
【0304】
市販のLa、Fe、Cr原料を用いて、公称組成La50Fe46Cr4の原子百分率に従って溶解し、La50Fe46Cr4の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約104K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約150μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、Fe91Cr8La1を主成分とする分散粒子相とLaを主成分とするマトリックス相とを含み、分散粒子相にはCrおよびLaが固溶しており、鉄リッチ分散粒子相は主に球状粒子を含み、少量の樹枝状粒子相も含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記鉄リッチ球状粒子相の粒径範囲は15nm~10μmであった。
【0305】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe91Cr8La1を主成分とする分散鉄合金粉末材料を得た。上記分散鉄合金粉末材料は、球状粒子と樹枝状粒子を含み、主に球状粒子を含み、かつ球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は15nm~10μmであった。
【0306】
上記で得られた鉄合金粉末材料を、塩化ケイ素(SiCl4、Si2Cl6、またはSiCl4とSi2Cl6の混合ガス)と水素の混合ガス中で、処理温度400℃~1000℃で気体シリコン浸透を行い、組成は約 Fe81.5Cr7Si10.5La1であるSi含有量が球状鉄合金粉末材料を得た。上記球状鉄合金粉末材料の形状はシリコン浸透処理前とほとんど変わらず、球状粒子と樹枝状粒子を含み、主に球状粒子からなり、かつ球状粒子の一部は特定の樹枝状特徴を含み、前記球状粒子の粒径は15nm~10μmであった。
【0307】
ふるい分け後、1μm-10μmのFe81.5Cr7Si10.5La1粉末を絶縁被覆用に選択し、圧粉磁心を製造した。
【0308】
実施例19
【0309】
市販のLa、Fe、Cr原料を用いて、公称組成La35Fe50Cr15の原子百分率に従って溶解し、La35Fe50Cr15の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約103K/s-106K/sの冷却速度でアトマイズ粉末化技術により凝固させて、粒径5μm~300μmの初期合金粉末を形成した。初期合金粉末の凝固組織は、Fe75.5Cr23La1.5を主成分とする分散粒子相とLaを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は50%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が球状粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は5nm~10μmであった。
【0310】
初期合金粉末中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe75.5Cr23La1.5を主成分とする分散した微細な鉄合金粉末材料を得た。上記分散した微細な鉄合金粉末材料は、ほぼ全体が球状粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子の粒径範囲は5nm~10μmであった。製造された粉末材料は、一般粉末冶金および金属射出成形(MIM)の分野で使用することができる。
【0311】
実施例20
【0312】
市販のLa、Fe、Mo、Cr原料を用いて、公称組成La50Fe49Cr0.5Mo0.5の原子百分率に従って溶解し、La50Fe49Cr0.5Mo0.5の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約107K/s-108K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約15~20μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、Feリッチ分散ナノ粒子相とLaを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は65%以上であり、分散ナノ粒子相はほぼ全体が球状に近いナノ粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は5nm~100nmであった。
【0313】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.25mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe97Cr1Mo1La1を主成分とするナノ鉄合金粉末材料を得た(CrとMoが存在するため、ナノFe97Cr1Mo1La1鉄合金粉末粒子は0.25mol/L希塩酸の反応では溶解しにくい)。上記ナノ鉄合金粉末材料は、ほぼ全体が球状粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記ナノFe97Cr1Mo1La1鉄合金粉末粒子の粒径範囲は5nm~100nmであった。
【0314】
得られたナノFe97Cr1Mo1La1鉄合金粉末粒子を磁性固体粒子として用い、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とオレイン酸を用い、キャリア流体としてエタノールを用いて磁性流体を製造した。
【0315】
実施例21
【0316】
市販のLa、Fe、Cr原料を用いて、公称組成La50Fe47Cr3の原子百分率に従って溶解し、La50Fe47Cr3の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約106K/s-108K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約15~20μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、Feリッチ分散ナノ粒子相とLaを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は65%以上であり、分散ナノ粒子相はほぼ全体が球状に近いナノ粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記球状粒子相の粒径範囲は5nm~50nmであった。
【0317】
初期合金ストリップ中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe93Cr6La1を主成分とするナノ鉄合金粉末材料を得た(Crが存在するため、ナノFe93Cr6La1鉄合金粉末粒子は0.5mol/L希塩酸の反応では溶解しにくい)。上記ナノ鉄合金粉末材料は、ほぼ全体が球状粒子であり、球状粒子相の一部は一定の樹枝状特徴を含み、上記ナノFe93Cr6La1鉄合金粉末粒子の粒径範囲は5nm~50nmであった。
【0318】
得られたナノFe93Cr6La1鉄合金粉末粒子を磁性固体粒子として用い、キャリア流体として水銀を用いて磁性流体を製造した。
【0319】
比較例1
【0320】
市販のLa、Fe原料を用いて、公称組成La
50Fe
50の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
50の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約250K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約3mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図23に示すように、Fe
99La
1を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相とを含み、マトリックス相の体積百分率含有量は70%以上であり、分散粒子相はほぼ全体が樹枝状であり、
図23上で規則的に配列した一見球状に見える部分は、実際には樹枝状枝の断面形態であり、断面枝の各列は実際には大きな樹枝状結晶に属した。
【0321】
初期合金厚帯中のLaマトリックス相を0.5mol/L希塩酸水溶液との反応腐食により除去し、Fe
99La
1を主成分とする分散鉄合金樹枝状粉末材料を得た。
図24に示すように、上記分散鉄合金樹枝状粉末材料は、主にデンドライトの形状であり、球状粒子は見られなかった。また、大きなデンドライトは、二次デンドライトの列を有し、これらの二次デンドライトの断面は、
図23に示す「ボール」(実際には棒状の断面)形状の断面形態の規則的な配列に対応することが明らかであった。したがって、La
50Fe
50合金は、徐冷によって十分な成長を伴う大きな鉄リッチ樹枝状粒子を得ることができるだけであり、鉄リッチ球状粒子を得ることはできない。
【0322】
比較例2
【0323】
市販のLa、Fe原料を用いて、公称組成La
50Fe
50の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
50の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約10
5K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約100μmの初期合金ストリップを形成した。初期合金ストリップの凝固組織は、
図25に示すように、Fe
99La
1を主成分とする分散粒子相と、Laを主成分とするマトリックス相とを含み、分散粒子相はほぼ全体が樹枝状であり、
図25で短い棒状に見える隣接する複数の鉄リッチな黒色相は、実際には1つまたは複数のデンドライトに属し、これらのデンドライトのサイズは約1~2μmであった。デンドライトのナノスケールの二次構造とFe
99La
1が酸腐食に耐性がないため、酸腐食を採用するとナノスケールの鉄リッチデンドライトも反応腐食され、原始的な鉄リッチ粒子を得ることが困難である。したがって、冷却速度が非常に速くても、初期合金溶融物がT元素とD元素を含まない場合、一方では球状の鉄リッチ粒子相を得ることが困難であり、他方では酸反応によって分離しやすい鉄リッチ粒子の耐食性を向上させることはできない。
【0324】
比較例3
【0325】
市販のLa、Fe、Hf原料を用いて、公称組成La
50Fe
40Hf
10の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
40Hf
10の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約500K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約1mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図26に示すように、約Fe
99La
1を主成分とする黒色分散樹枝状相、約Fe
64Hf
35La
1を主成分とする白色分散樹枝状相、およびLaを主成分とするマトリックス相とからなった。従って、初期合金溶融物中のHfは、溶融物の凝固中にFeリッチ相に固溶することができず、Fe
2Hf金属間化合物としてのみ析出することができる。一方、Feリッチ相は主にFe
99La
1の分散樹枝状相として析出し、両方の樹枝状相では、球状粒子相は得られない。したがって、La-Fe合金にHfを添加すると、Feリッチ球状粒子相は得られない。
【0326】
比較例4
【0327】
市販のLa、Fe、Ta原料を用いて、公称組成La
50Fe
40Ta
10の原子百分率に従って溶解し、La
50Fe
40Ta
10の主成分とする初期合金溶融物を得た。均質な初期合金溶融物を約500K/sの冷却速度で凝固させて、厚さ約1mmの初期合金厚帯を形成した。初期合金厚帯の凝固組織は、
図27に示すように、約Fe
99La
1を主成分とする黒色分散樹枝状相、約Fe
69Ta
30La
1を主成分とする白色凝集樹枝状相(
図28の矢印で示すように、Fe
7Ta
3金属間化合物である)、およびLaを主成分とするマトリックス相とからなった。従って、初期合金溶融物中のTaは、溶融物の凝固中にFeリッチ相に固溶することができず、Fe
7Ta
3金属間化合物としてのみ析出することができる。一方、Feリッチ相は主にFe
99La
1の分散樹枝状相として析出し、両方の樹枝状相では、球状粒子相は得られない。したがって、La-Fe合金にTaを添加すると、Feリッチ球状粒子相は得られない。
【0328】
以上に説明した実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせてもよい。説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明しなかったが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載される範囲と見なされるべきである。
【0329】
以上に説明した実施例は、本発明の幾つかの実施形態を示しているに過ぎず、その説明が比較的具体的及び詳細的であるが、これをもって発明の保護範囲を制限するものであると理解されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の構想を逸脱しない限り、幾つかの変形及び改進を行うことができ、これらは、いずれも本発明の保護範囲に属する。従って、本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に準ずるべきである。
【国際調査報告】