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特表2025-504539カリウムチャネル調節剤としての芳香環縮合複素環系化合物およびその製造と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】カリウムチャネル調節剤としての芳香環縮合複素環系化合物およびその製造と使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/04 20060101AFI20250204BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C07D217/04 CSP
A61K31/472
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544402
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2023073185
(87)【国際公開番号】W WO2023143386
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210089806.7
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518358228
【氏名又は名称】シャンハイ ジムン バイオファーマ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ZHIMENG BIOPHARMA INC.
【住所又は居所原語表記】Room A302, A304, Building 1, 1976 Gaoke Middle Road, China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone, Pudong New Area, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ボウ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヂァオジャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,モンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ファンミン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC32
4C086BC74
4C086BC75
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
(57)【要約】
本発明は、カリウムチャネル調節剤としての芳香環縮合複素環系化合物およびその製造と使用に関する。具体的に、本発明の化合物は式Iで表される構造を有し、ここで、各基および置換基の定義は明細書に記載された通りである。また、本発明は、前記化合物の製造方法およびカリウムチャネル調節剤としてのその使用を公開する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【化1】
(ただし、
A環は、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-7員ヘテロアリール基、飽和または不飽和のC3-6環状炭化水素基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基からなる群から選ばれる。
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、-OH、-COOH、ニトロ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、飽和または不飽和のC3-6環状炭化水素基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む5-14員ヘテロアリール基、C6-12アラルキル基、-N(R')(R')、-C(O)-R'、-C(O)-N(R')(R')、-C(O)-OR'、-N(R')-C(O)-R'、-S(O)-R'、-S(O)-N(R')(R')、-S(O)-OR'、-N(R')-S(O)-R'からなる群から選ばれ、前記置換とは、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C1-6ハロアルキル基、C3-6ハロシクロアルキル基、C1-6ハロアルコキシ基、C3-6ハロシクロアルキルオキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることである。
nは、0、1、2からなる群から選ばれる。
n'は、0、1、2からなる群から選ばれる。
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれるか、あるいはR'、R'は両者に連結したN原子と飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基を形成している。上記アルキル基、シクロアルキル基、複素環基は任意に、=O、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
mは、1、2からなる群から選ばれる。
Xは、C、CR、Nからなる群から選ばれる。
各Rは、独立に、H、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基は任意に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
Vは、-C(R)(R10)-、-N(R)-からなる群から選ばれる。
n''は、0、1からなる群から選ばれる。
、R10は、独立に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基からなる群から選ばれるか、あるいはR、R10は両者に連結したC原子とC3-6シクロアルキル基を形成している。
B環は、飽和または不飽和のC3-10環状炭化水素基、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基からなる群から選ばれる。
、Rは、独立に、水素、重水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C1-6ハロアルキル基、C3-6ハロシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
Yは、CR、Nからなる群から選ばれる。
Wは、CR11、Nからなる群から選ばれる。
11は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、-N(R')(R')からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
、Rは、独立に、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、-N(R')(R')からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
Uは、O、S、N(R')からなる群から選ばれる。
Zは、O、-(CH)-、-N(R')-からなる群から選ばれる。
qは、0、1、2からなる群から選ばれる。
は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基、アダマンチル基、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員ヘテロアリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-8員ヘテロシクロアルキル基、C3-6シクロアルケニル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、架橋環基、アダマンチル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルケニル基、アルキニル基は任意に、水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルキル-CO-基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6ハロアルコキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。)。
【請求項2】
A環は、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-7員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R、Rは、独立に、水素、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Xは、Cで、
Vは、CHで、
n''は、0、1からなる群から選ばれ、
B環は、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基で、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Yは、Nで、
Wは、CR11、Nからなる群から選ばれ、
11は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
、Rは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、O、CHからなる群から選ばれ、
は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、架橋環基、アルキニル基は任意に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルコキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されていることを特徴とする、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
A環は、C6-10アリール基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
Vは、CHで、
n''は、0、1からなる群から選ばれ、
B環は、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基で、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Yは、Nで、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、CHで、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されていることを特徴とする、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
n''は、0で、
B環は、
【化2】
【化3】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されていることを特徴とする、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
n''は、0で、
B環は、
【化4】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
UはOで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されていることを特徴とする、請求項4に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
Vは、-CH-で、
n''は、1で、
B環は、
【化5】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意に、ハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されていることを特徴とする、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記化合物は以下の群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項8】
一つまたは複数の薬学的に許容される担体ならびに安全有効量の一つまたは複数の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、薬物組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩物の使用であって、カリウムイオンチャネルに敏感な疾患を予防および/または治療する薬物の製造のためであることを特徴とする、前記使用。
【請求項10】
前記カリウムイオンチャネルに敏感な疾患は中枢神経系疾患であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物医薬の分野に関し、具体的に、カリウムチャネル調節剤としての芳香環縮合複素環系化合物およびその製造と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
Kv7カリウムチャネルは電位依存性カリウムイオンチャネルで、低閾値活性化、遅い活性化および非不活性化という特徴がある。Kv7カリウムチャネルは、五つのファミリーメンバー(Kv7.1-Kv7.5)があり、すべてのKv7カリウムチャネルのメンバーは類似するトポロジー構造を有し、すなわち、四つのサブユニットで一つの機能性チャネルを構成し、各サブユニットは六つの膜貫通セグメント(S1-S6)を含む。中では、S4は電位感知領域で、膜電位変化の感知および配座改変の制御などの面において重要な作用があり、S1-S6はチャネル孔領域の主要構成部分で、カリウムチャネル開口剤の主な組み合わせおよび作用領域である。KV7.1カリウムチャネルは非ニューロン経路で、末梢組織に分布し、心臓において発現され、心筋Iksを媒介し、その突然変異がLong Q―T症候群につながることがある。Kv7.2-Kv7.5カリウムチャネルはニューロンのM電流の基礎で、幅広く神経系に分布し、様々な生理活性を有する。Kv7.2およびKv7.3カリウムチャネルの遺伝子突然変異は、たとえば、良性家族性新生児痙攣(Benign familial neonatal convulsions、BFNC)のような様々な癲癇表現型につながることがあり、これらによってニューロンの興奮性の調節におけるM電流の作用が十分に示されている。Kv7.4カリウムチャネルは、蝸牛および脳幹聴覚核の外有毛細胞において高度に発現され、その突然変異は遺伝性難聴につながることがある。Kv7.5カリウムチャネルは骨格筋および脳において高度に発現され、その突然変異は網膜病変につながることがある。癲癇、不安症、難聴などの多くの疾患は、共通する特徴が高い膜興奮性で、Kv7カリウムチャネルはM電流の分子的基礎として、膜電位の変化を感知することによって開口し、抑制性カリウム電流を上方調節することで、膜興奮性を抑えることができるため、Kv7カリウムチャネルは高い神経興奮性を代表とする疼痛および精神疾患において重要な意義がある。
【0003】
レチガビン(Retigabine)は癲癇を治療する薬物で、現在、既に英国、独国、デンマークで市販を許可された。研究では、レチガビンの作用は電位開口型カリウムイオンチャネル(KCNQs)に関連し、ここで、KCNQ2/3チャネルに作用してM型カリウム電流を調節するのはその主な作用機序であることが実証された。
【0004】
レチガビン(RTG)は2011年に市販された、初めての成人の部分発作性癲癇の補助治療に使用される、Kv7カリウムチャネル開口剤である。抗癲癇作用以外、RTGは不安症、神経痛、神経変性疾患などの治療にも使用することができる。RTGは多くの癲癇モデルにおいてすべて有効に癲癇の発作を減少または阻止することができる。RTGは最大電気ショック(MES)モデルによる強直性発作にもPTZによって誘発される間代性発作にも有効な抗癲癇作用を示す。また、RTGはN-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-D-aspartate、NMDA)、ペニシリン、ピクロトキシン、カイニン酸(Kainic acid、KA)などによる癲癇発作を阻止することもできる。キンドリングモデルは多くの抗癲癇薬物のスクリーニングに適するが、RTGは当該モデルに対する效果がほかのモデルよりも強い。RTGはすべてのKv7カリウムチャネルのメンバーおよびほかのチャネルに対する幅広い作用のため、選択性が劣ることで、潜在的な不良作用がある。大量の文献で報告されたように、RTGは中枢神経系に関連する有害事象の発生率が高く、眩暈、疲労、失語、言語障害、平衡障害などにつながり、ほかの不良反応は腎結石、尿閉などの腎臓および泌尿器系の疾患、突然心停止、一時的な非持続性心室頻拍などの心臓関連疾患を含み、網膜色素変性症、皮膚や爪などの青/紫の色素沈着などにもつながる。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、式Iで表される化合物をおよびその製造方法とカリウムチャネル調節剤としての使用を提供することにある。
【0006】
本発明の第一の側面では、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(ただし、
A環は、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-7員ヘテロアリール基、飽和または不飽和のC3-6環状炭化水素基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基からなる群から選ばれる。
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、-OH、-COOH、ニトロ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、飽和または不飽和のC3-6環状炭化水素基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む5-14員ヘテロアリール基、C6-12アラルキル基、-N(R')(R')、-C(O)-R'、-C(O)-N(R')(R')、-C(O)-OR'、-N(R')-C(O)-R'、-S(O)-R'、-S(O)-N(R')(R')、-S(O)-OR'、-N(R')-S(O)-R'からなる群から選ばれ、前記置換とは、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C1-6ハロアルキル基、C3-6ハロシクロアルキル基、C1-6ハロアルコキシ基、C3-6ハロシクロアルキルオキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることである。
nは、0、1、2からなる群から選ばれる。
n'は、0、1、2からなる群から選ばれる。
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれるか、あるいはR'、R'は両者に連結したN原子と飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基を形成している。上記アルキル基、シクロアルキル基、複素環基は任意に=O、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
mは、1、2からなる群から選ばれる。
Xは、C、CR、Nからなる群から選ばれる。
各Rは、独立に、H、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基は任意にハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
Vは、-C(R)(R10)-、-N(R)-からなる群から選ばれる。
n''は、0、1からなる群から選ばれる。
、R10は、独立に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基からなる群から選ばれるか、あるいはR、R10は両者に連結したC原子とC3-6シクロアルキル基を形成している。
B環は、飽和または不飽和のC3-10環状炭化水素基、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基からなる群から選ばれる。
、Rは、独立に、水素、重水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C1-6ハロアルキル基、C3-6ハロシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
Yは、CR、Nからなる群から選ばれる。
Wは、CR11、Nからなる群から選ばれる。
11は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、-N(R')(R')からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
、Rは、独立に、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、-N(R')(R')からなる群から選ばれる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
Uは、O、S、N(R')からなる群から選ばれる。
Zは、O、-(CH)-、-N(R')-からなる群から選ばれる。
qは、0、1、2からなる群から選ばれる。
は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基、アダマンチル基、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員ヘテロアリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-8員ヘテロシクロアルキル基、C3-6シクロアルケニル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、架橋環基、アダマンチル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルケニル基、アルキニル基は任意に水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルキル-CO-基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6ハロアルコキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。)
もう一つの好適な例において、
A環は、C6-10アリール基、N、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む4-7員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R、Rは、独立に、水素、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Xは、Cで、
Vは、CHで、
n''は、0、1からなる群から選ばれ、
B環は、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基で、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Yは、Nで、
Wは、CR11、Nからなる群から選ばれ、
11は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
、Rは、独立に、水素、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、O、CHからなる群から選ばれ、
は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基、C2-6アルキニル基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、シクロアルキル基、架橋環基、アルキニル基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルコキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
もう一つの好適な例において、
A環は、C6-10アリール基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキルオキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
Vは、CHで、
n''は、0、1からなる群から選ばれ、
B環は、飽和または不飽和のN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子を1-3個含む3-10員複素環基で、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Yは、Nで、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、CHで、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
【0007】
もう一つの好適な例において、B環は、
【化2】
からなる群から選ばれる。
【0008】
もう一つの好適な例において、Rは、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、Rは、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基はハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記化合物は以下の化合物を含まない:
【化3】
【0010】
もう一つの好適な例において、
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
n''は、0で、
B環は、
【化4】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
Uは、Oで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
【0011】
もう一つの好適な例において、
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
n''は、0で、
B環は、
【化5】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
UはOで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
もう一つの好適な例において、
A環は、フェニル基で、
各R、Rは、独立に、置換または無置換の、水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルキニル基、-N(R')(R')からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されることで、
nは、0、1、2からなる群から選ばれ、
n'は、0、1、2からなる群から選ばれ、
各R'、R'は、独立に、水素、C1-6アルキル基からなる群から選ばれ、
Xは、Cで、
Vは、-CH-で、
n''は、1で、
B環は、
【化6】
からなる群から選ばれ、
、Rは、独立に、水素、重水素からなる群から選ばれ、
Wは、CHで、
、Rは、独立に、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基からなる群から選ばれ、上記アルキル基、アルコキシ基は任意にハロゲンからなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されており、
UはOで、
Zは、-CH-で、
は、C3-6シクロアルキル基、C5-8架橋環基からなる群から選ばれ、上記シクロアルキル基、架橋環基は任意に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基からなる群から選ばれる一つまたは複数の置換基で置換されている。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記化合物は以下の群から選ばれる:
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【0013】
本発明の第二の側面では、一つまたは複数の薬学的に許容される担体ならびに安全有効量の一つまたは複数の本発明の第一の側面に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬物組成物を提供する。
【0014】
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩物の使用であて、カリウムイオンチャネルに敏感な疾患を予防および/または治療する薬物の製造のための使用を提供する。
もう一つの好適な例において、前記カリウムイオンチャネルに敏感な疾患は中枢神経系疾患である。
【0015】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
具体的な実施形態
本発明者は、長期間にわたって深く研究したところ、構造を最適化することにより、意外に、優れたカリウムチャネル開口活性、薬物動態学(たとえば、脳対血漿中濃度比など)、体内薬効および安全性を有し、かつ新規な構造の式Iで表される化合物を製造した。これに基づき、発明者らが本発明を完成した。
【0017】
用語
本発明において、特別に説明しない限り、用いられる用語は、当業者に公知の一般的な意味を持つ。
本発明において、用語「ハロゲン」とは、F、Cl、BrまたはIである。
本発明において、「C1-6アルキル基」とは、炭素原子を1-6個有する直鎖または分岐鎖のアルキル基で、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、または類似の基が挙げられる。
【0018】
本発明において、用語「C2-6アルケニル基」とは炭素原子を2-6個有し、二重結合を一つ含有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基で、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基やヘキセニル基などを含むが、これらに限定されない。
本発明において、用語「C2-6アルキニル基」とは炭素原子を2-6個有し、三重結合を一つ含有する直鎖または分岐鎖のアルキニル基で、エチニル基、プロパギル基、ブチニル基、イソブチニル基、ペンチニルやヘキシニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本発明において、用語「C3-6環状炭化水素基」は、C3-6シクロアルキル基、C3-6シクロアルケニル基、C3-6シクロアルキニル基からなる群から選ばれる基を含む。
本発明において、用語「C3-6シクロアルキル基」とは、環に炭素原子を3-6個有する環状アルキル基で、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを含むが、これらに限定されない。
【0020】
本発明において、用語「C5-8架橋環基」とは架橋を有し、かつ炭素原子を5-8個有する環状アルキル基で、
【化8】
などを含むが、これらに限定されない。
本発明において、用語「C1-6アルコキシ基」とは、炭素原子を1-6個有する直鎖または分岐鎖のアルコキシ基で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などを含むが、これらに限定されない。好適にC1-4アルコキシ基である。
【0021】
本発明において、用語「複素環基」はN、O、Sから選ばれるヘテロ原子を1、2または3個含む4-8員複素環基で、
【化9】
のような基を含むが、これらに限定されない。
本発明において、用語「芳香環」または「アリール基」は同じ意味を持ち、好適に「C6-10アリール基」である。用語「C6-10アリール基」とは環にヘテロ原子を含まず、炭素原子を6-10個有する芳香族環基で、たとえば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0022】
本発明において、用語「芳香族複素環」または「ヘテロアリール基」は同じ意味を持ち、ヘテロ原子を1個または複数個含むヘテロ芳香族基をいう。たとえば、「C3-C10ヘテロアリール基」とは酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1-4個、そして炭素原子を3-10個含有する芳香族複素環である。非限定的な例は、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピラゾリル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基などを含む。前記ヘテロアリール環はアリール基、複素環基またはシクロアルキル環に縮合してもよいが、ここで、母体構造と連結した環はヘテロアリール環である。ヘテロアリール基は任意に置換のものまたは無置換のものでもよい。
【0023】
本発明において、用語「ハロ」とはハロゲンで置換されることである。
本発明において、用語「重水素化」とは重水素で置換されることである。
本発明において、用語「置換」とは特定の基における1個または複数個の水素原子が特定の置換基で置換されることをいう。特定の置換基は前記における相応する置換基、または各実施例に記載の置換基である。特別に説明しない限り、置換された基は当該基の任意の置換可能な部位に特定の群から選ばれる1つの置換基があってもよく、前記の置換基は各位置で同じでもよく異なってもよい。当業者にわかるように、本発明で想定される置換基の組み合わせは安定した組み合わせまたは化学的に実現可能な組み合わせである。前記置換基は、たとえば、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシ基(-COOH)、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、3-12員複素環基、アリール基、C1-C8アルデヒド基、C2-C10アシル基、C2-C10エステル基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C1-C10スルホニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明において、用語1-6とは1、2、3、4、5または6を指す。ほかの類似の用語はそれぞれ独立に類似の意味を持つ。用語「複数」とは2-6個、たとえば、2、3、4、5または6個である。
なお、ある基が同時に化合物の複数の異なる位置に存在する場合、各位置におけるその定義は互いに独立で、同様でもよく、異なってもよい。なお、用語「からなる群から選ばれる」と用語「各~は独立にからなる群から選ばれる」は同様の意味を持つ。
【0025】
化合物
本発明では、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化10】
(ただし、各基は上記で定義された通りである。)
【0026】
もう一つの好適な例において、前記の化合物では、R、R、R、R、R、R、R、A環、n、n'、X、V、n''、Y、B環、W、U、Zのいずれもそれぞれ独立に前記具体的な化合物における相応する基である。
もう一つ好適な例において、前記化合物は好適に各実施例で製造された化合物である。
【0027】
ここで用いられるように、用語「薬学的に許容される塩」とは本発明化合物と酸または塩基とで形成される、薬物として適切な塩である。薬学的に許容される塩は無機塩と有機塩を含む。一種類の好適な塩は、本発明の化合物と酸とで形成される塩である。塩の形成に適切な酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機酸、およびプロリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0028】
もう一種類の好適な塩は、本発明化合物と塩基とで形成される塩で、たとえばアルカリ金属塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(たとえばマグネシウム塩またはカリシウム塩)、アンモニウム塩(たとえば低級アルカノールのアンモニウム塩および他の薬学的に許容されるアミン塩)、たとえばメチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、t-ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ヒドロキシエチルアミン塩、ジヒドロキシエチルアミン塩、トリヒドロキシエチルアミン塩、およびそれぞれモルホリン、ピペラジン、リシンから形成されるアミン塩が挙げられる。
【0029】
もちろん、本発明の化合物は以下の実施例で示されたような方法によって製造することができ、本明細書に記載されたか、または本分野で既知の様々な合成方法を任意に組み合せて便利に製造するもでき、このような組み合せは当業者が容易にできることである。
【0030】
薬物組成物および施用方法
本発明の薬物組成物は、安全な有効量の範囲にある本発明の化合物または薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤または担体と含む。ここで、「安全有効量」とは、化合物の量が病状の顕著な改善に充分で、重度な副作用が生じないことを指す。通常、薬物組成物は、本発明の化合物を1-2000 mg/製剤で、好ましくは5-1000 mg/製剤で含有する。好ましくは、前記の「製剤」は、カプセルまたは錠である。
【0031】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、ヒトに適用でき、且つ十分な純度および充分に低い毒性を持たなければならない、一種または複数種の相溶性固体または液体フィラーまたはゲル物質を指す。「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の化合物と、またその同士の間で配合することができ、化合物の効果を顕著に低下させないことを指す。薬学的に許容されるビヒクルの例の一部として、セルロースおよびその誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(たとえば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(たとえばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(たとえばツインR)、湿潤剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0032】
前記の薬物組成物は、注射剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、または顆粒剤である。
本発明の薬物組成物の施用様態は、特に限定されないが、代表的な施用様態は、経口投与、腫瘍内、直腸、胃腸外(静脈内、筋肉内、または皮下)投与、および局部投与を含むが、これらに限定されない。
【0033】
経口投与に用いられる固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。これらの固体剤形において、活性化合物は通常、少なくとも一種の不活性賦形剤(または担体)、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムと混合されるが、あるいは、(a)フィラーまたは相溶剤、たとえば、でん粉、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトールやケイ酸、(b)バインダー、たとえば、ヒドロメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖やアラビアゴム、(c)保湿剤、たとえば、グリセリン、(d)崩壊剤、たとえば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯澱粉やタピオカ澱粉、アルギン酸、ある複合ケイ酸塩や炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、たとえばパラフィン、(f)吸収促進剤、たとえば、アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、たとえばセタノール、グリセリンモノステアレート、(h)吸着剤、たとえば、カオリン、また(i)潤滑剤、たとえば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物、のような成分と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤において、剤形に緩衝剤を含んでもよい。
【0034】
固体剤形、たとえば錠剤、ピル、カプセル剤、丸剤や顆粒剤は、コーディングやシェル剤、たとえば、腸衣および他の本分野で公知の材料で製造することができる。不透明剤を含んでもよく、且つこのような組成物において、活性物または化合物の放出は遅延の様態で消化管のある部分で放出してもよい。使用できる包埋成分の実例として、重合物質やワックス系物質が挙げられる。必要な場合、活性化合物も上記賦形剤のうちの一種または複数種とマイクロカプセルの様態に形成してもよい。
【0035】
経口投与に用いられる液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。活性化合物の他、液体剤形は、本分野で通常使用される不活性希釈剤、たとえば、水または他の溶媒、相溶剤および乳化剤、たとえば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油やゴマ油またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
これらの不活性希釈剤の他、組成物は助剤、たとえば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、矯味剤や香料を含んでもよい。
【0036】
活性化合物のほか、懸濁液は、懸濁剤、たとえば、エトキシ化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトールやソルビタンエステル、微晶質セルロース、メトキシアルミニウムや寒天またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
胃腸外注射用組成物は、生理的に許容される無菌の水含有または無水溶液、分散液、懸濁液や乳液、および再溶解して無菌の注射可能な溶液または分散液にするための無菌粉末を含む。適切な水含有または非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、水、エタノール、多価アルコールおよびその適切な混合物を含む。
【0037】
局所投与のための本発明の化合物の剤形は、軟膏剤、散剤、湿布剤、噴霧剤や吸入剤を含む。活性成分は、無菌条件で生理学的に許容される担体および任意の防腐剤、緩衝剤、または必要よって駆出剤と一緒に混合される。
本発明の化合物は、単独で投与してもよいし、あるいは薬学的に許容されるほかの化合物と併用して投与してもよい。
本発明の治療方法は、単独で施用してもよいし、あるいはほかの治療手段または治療薬と併用してもよい。
【0038】
薬物組成物を使用する場合、安全な有効量の本発明の化合物を治療の必要のある哺乳動物(たとえばヒト)に使用し、使用の際の用量は薬学上で効果があるとされる投与量で、体重60kgのヒトの場合、毎日の投与量は、通常1~2000mg、好ましくは5~1000mgである。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0039】
既存技術と比べ、本発明は以下の主な利点を有する。
(1)前記化合物はより優れた薬物動態学的性能、たとえば、より優れた脳対血漿中濃度比、半減期、曝露量、代謝安定性などの性能を有する。
(2)前記化合物はより優れたカリウムイオンチャネル開口活性、より優れたカリウムイオンチャネル励起率、より優れたイオンチャネル選択性、より優れた体内薬効およびより優れた安全性を有する。
(3)前記化合物はカリウムチャネルの活性に影響される疾患および障害の治療および/または予防に使用されることが期待されている。
【0040】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。
【0041】
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
以下、実施例で使用された実験材料および試薬は、特に説明しない限り、いずれも市販品として得られる。
【実施例
【0042】
実施例1 化合物3001の製造
【化11】
【0043】
工程1.化合物2
化合物1 (5.0 g, 37.3 mmol, 1.0 eq)をニトロメタン(45 mL)に溶解さえ、25℃において上記反応液に酢酸アンモニウム(3.4 g, 44.7 mmol, 1.2 eq)を入れ、加熱して4時間還流させた。反応終了後、温度を25℃に低下させて反応液を濃縮し、酢酸エチル(80 mL)を入れた。有機相を順に水(50 mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥しした。濃縮後の残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=100/1)によって精製して化合物2(3.0 g,46%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 178.1
【0044】
工程2.化合物3
化合物2 (2.0 g, 11.3 mmol, 1.0 eq)をテトラヒドロフラン (30 mL)に溶解させ、上記溶液をゆっくり水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液(1 M, 45 mL, 45 mmol, 4.0 eq)に滴下し、完了後、反応液を加熱して16時間還流させた。反応液を25℃に降温させて硫酸ナトリウム十水和物でクエンチングし、ろ過後、酢酸エチルで洗浄し、得られたろ液を濃縮して化合物3(1.6 g,95%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 150.1
【0045】
工程3.化合物4
トリホスゲン(1.3 g, 4.3 mmol, 0.4 eq)をジクロロメタン(10 mL)に溶解させて上記溶液をゆっくり化合物3 (1.6 g, 10.7 mmol, 1.0 eq)のジクロロメタン(10 mL)溶液に滴下し、0℃に冷却し、ゆっくりトリエチルアミン(2.2 g, 21.5 mmol, 2.0 eq)を滴下した。反応液を25℃で2時間撹拌した後、ろ過し、少量のジクロロメタンで固体を洗浄し、得られたろ液をゆっくり三塩化アルミニウム (5.7 g, 42.9 mmol, 4.0 eq)のジクロロメタン(25 mL)懸濁液に滴下した。続いて16時間撹拌した後、水を加えてクエンチングし、分層後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、得られた残留物をフラッシュリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=2/1)によって精製し、化合物4(0.6 g,32%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 176.1
【0046】
工程4.化合物5
化合物4 (200 mg, 1.14 mmol, 1.0 eq)をクロロホルム(2 mL)に溶解させて0℃に冷却し、硝酸カリウム(127 mg, 1.26 mmol, 1.1 eq)の濃硫酸(98%,3 mL)溶液を滴下した。反応は0℃で0.5時間撹拌した後、砕けた氷でクエンチングし、ろ過して得られた固体を水でトリチュレーションによって精製して化合物5 (213 mg,85%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 221.1
【0047】
工程5.化合物7
化合物5 (280 mg,1.27 mmol, 1.0 eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解させ、順に化合物6(339 mg, 1.53 mmol, 1.2 eq)、ヨウ化第一銅 (48 mg, 0.25 mmol, 0.2 eq)および炭酸カリウム(352 mg, 2.54 mmol, 2.0 eq)を入れた。反応液を窒素ガスの雰囲気において140℃に昇温させて6時間撹拌し、25℃に冷却した後、酢酸エチル(10 mL)で希釈した。反応液をろ過し、固体に酢酸エチルを浴びさせ、得られたろ液用を水(10 mL)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10/1)によって精製して化合物7 (145 mg, 36%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 315.1
【0048】
工程6.化合物8
化合物7 (530 mg, 1.69 mmol, 1.0 eq)をテトラヒドロフラン (70 mL)に溶解させ、上記溶液をゆっくり水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液(1M, 17 mL, 17 mmol, 10.0 eq)に滴下し、滴下完了後、昇温させて6時間還流させた。25℃に冷却した後、硫酸ナトリウム十水和物で反応をクエンチングし、ろ過後、酢酸エチルで洗浄し、得られたろ液を濃縮し、化合物8(423 mg,93%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 271.1
【0049】
工程7.化合物3001
化合物8(200 mg, 0.74 mmol, 1.0 eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(6 mL)に溶解させ、順に化合物9(102 mg, 0.89 mmol, 1.2 eq)、ピリジン(1170 mg, 14.8 mmol, 20.0 eq)および1-プロピルホスホン酸無水物(50%酢酸エチル溶液,4.8 g, 7.4 mmol, 10.0 eq)を入れ、50℃に昇温させて16時間撹拌した。25℃に冷却した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機相を順に水、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=2/1)によって精製し、化合物3001(139.1 mg,52%)を得たが、白色固体であった。
LCMS: [M+H] = 367.1
H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.03 (s, 1H), 7.08-7.06 (m, 4H), 6.88 (s, 1H), 4.16 (s, 2H), 3.42 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.86 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.22 (s, 2H), 2.11 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 1.16 (s, 3H), 0.56-0.54 (m, 2H), 0.34-0.31 (m, 2H).
【0050】
実施例2 化合物3002の製造
【化12】
【0051】
工程1.化合物3
化合物1(500 mg, 2.27 mmol, 1.0 eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解させ、順に化合物2(926 mg, 3.40 mmol, 1.5 eq)、炭酸カリウム(784 mg, 5.68 mmol, 2.5 eq)およびヨウ化第一銅(86 mg, 0.45 mmol, 0.2 eq)を入れ、反応液を140℃に昇温させて4時間撹拌した。反応液を25℃に冷却した後、水(50 mL)を入れて酢酸エチル(3×50 mL)で抽出し、合併後の有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し後、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10/1)によって精製して化合物3(400 mg、48%)を後得たが、白色固体であった。。
LCMS: [M+H] =365.1
【0052】
工程2.化合物4
化合物3 (200 mg, 0.548 mmol, 1.0 eq)をテトラヒドロフラン(2 mL)に溶解させ、0℃に冷却して水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液(1 M, 5.48 mL, 5.48 mmol, 10.0 eq)を滴下し、滴下完了後、反応液を60℃に昇温させて1時間撹拌した。反応液を0℃に冷却した後、硫酸ナトリウム十水和物でクエンチングした。ろ過後のろ液を濃縮し、化合物4(150 mg,85%)を得たが、白色固体であった。
LCMS: [M+H] =321.1
【0053】
工程3.化合物3002
化合物4(150 mg,0.468 mmol, 1.0 eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解させ、順に化合物5(64 mg, 0.561 mmol, 1.2 eq)、1-プロピルホスホン酸無水物(50%,3.5 g, 5.500 mmol, 11.7 eq)およびピリジン(740 mg, 9.36 mmol, 20.0 eq)を入れた。反応液を50℃に昇温させて2時間撹拌し、25℃に冷却した後、水(50 mL)を入れて酢酸エチル(3 × 50 mL)で抽出した。合併した有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、残留物をpre-HPLC(0.1%ギ酸/アセトニトリル/水)によって精製して化合物3002 (40 mg, 20 %)を得たが、白色固体であった。
LCMS: [M+H] =417.3
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 9.05 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.91 (s, 1H), 4.35 (s, 2H), 3.60 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 2.87 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.23 (s, 2H), 2.11 (d, J = 4.6 Hz, 6H), 1.16 (s, 3H), 0.56-0.54 (m, 2H), 0.34-0.31 (m, 2H).
【0054】
実施例A1 カリウムチャネル開口剤の活性テスト(FDSS/μCELL検出)
1. 実験方法:
1.1 実験手順
細胞の用意:CHO-KNCQ2細胞を175 cm培養瓶で培養し、細胞密度が60~80%になった時点で、培養液を捨て、7 mLのPBS(Phosphate Buffered Saline、リン酸塩緩衝液)で1回洗浄した後、3 mLの0.25%トリプシンで消化した。消化が完了した後、7 mLの培養液(90% DMEM/F12 + 10% FBS + 500 μg/mL G418)を入れて中和し、800 rpmで3分間遠心し、上清液を吸い取り、さらに5 mLの培養液を入れて再懸濁させ、細胞を計数した。
【0055】
細胞のプレートへの仕込み:細胞計数の結果から、密度が3×10個/ウェルになるように調整し、室温で30分間静置した後、37℃、COのインキュベーターで一晩培養し、16-18時間培養し、細胞密度が約80%になった。
蛍光染料のインキュベート:細胞培養液を捨て、80 μL/ウェルの仕込み緩衝液を入れ、室温で光を避けて60分間インキュベートした。
化合物のインキュベート:仕込み緩衝液を捨て、調製された化合物溶液を80 μL/ウェル入れ、室温で光を避けて20分間インキュベートした。
蛍光データの収集:FDSS/μCELL装置によってリアルタイムに蛍光信号を記録し、励起波長480 nm、発行波長540 nmで、毎秒1回記録し、10秒ベースラインを記録した後、20μL/ウェルの刺激緩衝液を入れ始め、さらに180秒まで記録し続けた。
【0056】
1.2 溶液の調製
仕込み緩衝液:10 mL/プレートで、調製の方法は以下の通りである。
【表A】
【0057】
テスト緩衝液:100 mL/プレートで、調製の方法は以下の通りである。
【表B】
【0058】
刺激緩衝液:5 mL/プレートで、調製の方法は以下の通りである。
【表C】
上記緩衝液は市販のキットからのもので、キットの名称はFluxOR potassium ion channel assayである。
【0059】
1.3 化合物の用意
20 mMのDMSO化合物母液を調製し、10 μLの20 mMの化合物母液を取って20 μLのDMSO溶液に入れ、3倍連続希釈で8つの中間濃度にした。さらに、それぞれ中間濃度の化合物を取ってテスト緩衝液に入れ、200倍希釈で必要なテストの最終濃度にし、80 μL取ってテストプレートに入れた。
最高テスト濃度は100 μMで、順にそれぞれ100、33.33、11.11、3.70、1.23、0.41、0.137、0.045 μMの計8つの濃度であった。各濃度に3つの重複ウェルを設けた。
最終テスト濃度におけるDMSO含有量は0.5%以下で、この濃度のDMSOはKCNQ2カリウムチャネルに影響がない。
【0060】
1.4 データ解析
実験データはExcel 2007、GraphPad Prism 5.0ソフトによって分析し、180秒の比を統計して励起効果を計算した。化合物の励起効果は以下のような公式によって計算した。
【数1】
【0061】
1.5 品質管理
環境:温度~25℃
試薬:FluxORTM検出キット(Invitrogen, Cat #F0017)
レポートにおける実験データはZ' Factor>0.5という基準に満たなければならない。
【0062】
2. 測定結果:詳細は表1を参照するが、ここで、EC50が小さいほど、相応する化合物の活性が高いことを示す。
表1.本発明に記載の一部の化合物のテスト結果
【表1】
【0063】
上記テスト方法の参考文献:
Zhaobing Gaoら. Journal of Biological Chemistry. 2010, 285(36): 28322-28332.
【0064】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【国際調査報告】