(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】熱延ストリップの異物混入防止装置
(51)【国際特許分類】
B21B 45/02 20060101AFI20250204BHJP
B21B 39/14 20060101ALI20250204BHJP
B21C 47/26 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
B21B45/02 330
B21B39/14 D
B21C47/26 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544411
(86)(22)【出願日】2023-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2023015199
(87)【国際公開番号】W WO2024136032
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0179013
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 キュンソク
(72)【発明者】
【氏名】ホン、 ワンキ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スクジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サンフイ
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026EA02
(57)【要約】
熱延ストリップの異物混入防止装置を開示する。一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置は、熱延工程で巻き取り機の入側にストリップの移動を案内するサイドガイドとストリップとの摩擦により形成される異物が前記ストリップに混入することを防止するためのもので、前記サイドガイドにより前記巻き取り機の入側に移動する前記ストリップに向かって前記ストリップの移動方向の逆方向に高圧水を噴射する逆方向噴射ユニットを含み、前記逆方向噴射ユニットは、前記ストリップの上面に高圧水を噴射するように前記ストリップの幅方向に沿って配列される複数の上部逆方向噴射ノズルを含み、複数の前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも狭い間隔を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱延工程で巻き取り機の入側にストリップの移動を案内するサイドガイドとストリップとの摩擦により形成される異物が前記ストリップに混入することを防止する熱延ストリップの異物混入防止装置において、
前記サイドガイドにより前記巻き取り機の入側に移動する前記ストリップに向かって前記ストリップの移動方向の逆方向に高圧水を噴射する逆方向噴射ユニットを含み、
前記逆方向噴射ユニットは、前記ストリップの上面に高圧水を噴射するように前記ストリップの幅方向に沿って配列される複数の上部逆方向噴射ノズルを含み、
複数の前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも狭い間隔を有する、熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項2】
複数の前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも多くの流量の高圧水を噴射する、請求項1に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項3】
前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも大きい直径を有する、請求項2に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項4】
前記サイドガイドとストリップの間に高圧水を噴射する側方向噴射ユニットをさらに含む、請求項1に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項5】
前記側方向噴射ユニットは、高圧水噴射流量の調整が可能に設けられ、鋼種による前記ストリップのスパークが発生する臨界温度に比例して噴射される高圧水の流量が増大される、請求項4に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項6】
前記サイドガイドは、前記ストリップの幅方向の一側を支持する第1のサイドガイドと、前記ストリップの幅方向の他側を支持する第2のサイドガイドとを含み、
前記側方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと前記ストリップの一側の間に高圧水を噴射する第1の側方向噴射ユニットと、前記第2のサイドガイドと前記ストリップの他側の間に高圧水を噴射する第2の側方向噴射ユニットとを含み、
前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットは、それぞれ高圧水噴射流量の調整が可能に設けられ、
前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように高圧水噴射流量が調整される、請求項4に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項7】
前記第1のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第1の感知部と、前記第2のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第2の感知部と、前記第1の感知部及び第2の感知部と第1の側方向噴射ユニット及び第2の側方向噴射ユニットと電気的に連結される制御部とをさらに含み、
前記制御部は、
前記第1の感知部を介して感知される摩擦力と前記第2の感知部を介して感知される摩擦力を比較し、比較結果、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように、前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットの高圧水噴射流量を調整する、請求項6に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項8】
前記サイドガイドの上流で前記ストリップの上面に向かって前記ストリップの移動方向に高圧水を噴射する正方向噴射ユニットをさらに含み、
前記サイドガイドは、前記ストリップの幅方向の一側を支持する第1のサイドガイドと、前記ストリップの幅方向の他側を支持する第2のサイドガイドを含み、
前記正方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのいずれか一方に高圧水の噴射流量を偏向させることができる、請求項1に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項9】
前記正方向噴射ユニットは、前記ストリップの上面に高圧水を噴射するように前記ストリップの幅方向に沿って配列され、それぞれ高圧水の噴射流量の調整が可能に設けられた複数の正方向噴射ノズルを含み、
複数の前記正方向噴射ノズルは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射流量が増大するように高圧水の噴射流量が調整される、請求項8に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【請求項10】
前記第1のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第1の感知部と、前記第2のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第2の感知部と、前記第1の感知部及び第2の感知部と複数の正方向噴射ノズルと電気的に連結される制御部とをさらに含み、
前記制御部は、
前記第1の感知部を介して感知される摩擦力と前記第2の感知部を介して感知される摩擦力を、比較結果、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように、複数の前記正方向噴射ノズルの高圧水噴射流量を調整する、請求項9に記載の熱延ストリップの異物混入防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された発明は、熱延工程の巻取区間でコイル状に巻き取られるストリップに異物が混入することを防止する熱延ストリップの異物混入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱延工場では、製鋼及び連鋳工場で製造されたスラブを加熱炉で一定温度に加熱した後、ロールの間を連続的に通過させて薄く圧延した後、コイル状に巻き取り、需要者が望む製品または後工程である冷延工程の素材となる熱延コイルを生産する。
【0003】
熱延工程で用いられる主な設備としては、加熱炉、粗圧延装置、仕上げ圧延装置、巻き取り機、サイドガイドなどがある。サイドガイドは、巻き取り機の入側にストリップの移動を案内する機能を果たす。
【0004】
一方、ストリップが一方に偏る場合、ストリップとサイドガイドの間では摩擦によってスパークが発生して異物が形成され、このような異物はストリップの表面に付着することがある。この状態のストリップが巻き取り機により巻き取られると、ストリップの表面に異物による圧入キズが形成され、ストリップの表面欠陥を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示された発明の一態様は、熱延工程の巻取区間でコイル状に巻き取られるストリップに異物が混入することを効果的に防止できる熱延ストリップの異物混入防止装置を提供する。
【0006】
開示された発明の一態様は、熱延工程の巻取区間でコイル状に巻き取られるストリップに異物が混入することを未然に防止できる熱延ストリップの異物混入防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示された発明の一態様による熱延ストリップの異物混入防止装置は、熱延工程において巻き取り機の入側にストリップの移動を案内するサイドガイドとストリップとの摩擦により形成される異物が前記ストリップに混入することを防止するためのもので、前記サイドガイドにより前記巻き取り機の入側に移動する前記ストリップに向かって前記ストリップの移動方向の逆方向に高圧水を噴射する逆方向噴射ユニットを含み、前記逆方向噴射ユニットは、前記ストリップの上面に高圧水を噴射するように前記ストリップの幅方向に沿って配列される複数の上部逆方向噴射ノズルを含み、複数の前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも狭い間隔を設けられてもよい。
【0008】
複数の前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも多くの流量の高圧水を噴射しうる。
【0009】
前記上部逆方向噴射ノズルは、前記配列方向に沿って中央部に位置するものが両端に位置するものよりも大きい直径を有してもよい。
【0010】
前記熱延ストリップの異物混入防止装置は、前記サイドガイドとストリップの間に高圧水を噴射する側方向噴射ユニットをさらに含んでもよい。
【0011】
前記側方向噴射ユニットは、高圧水噴射流量の調整が可能に設けられ、鋼種による前記ストリップのスパークが発生する臨界温度に比例して噴射される高圧水の流量が増大されてもよい。
【0012】
前記サイドガイドは、前記ストリップの幅方向の一側を支持する第1のサイドガイドと、前記ストリップの幅方向の他側を支持する第2のサイドガイドを含み、前記側方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと前記ストリップの一側の間に高圧水を噴射する第1の側方向噴射ユニットと、前記第2のサイドガイドと前記ストリップの他側の間に高圧水を噴射する第2の側方向噴射ユニットを含み、前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットは、それぞれ高圧水噴射流量の調整が可能に設けられ、前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうち、ストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように高圧水噴射流量が調整されてもよい。
【0013】
前記第1のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第1の感知部と、前記第2のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第2の感知部と、前記第1の感知部及び第2の感知部と第1の側方向噴射ユニット及び第2の側方向噴射ユニットと電気的に連結される制御部をさらに含み、前記制御部は、前記第1の感知部を介して感知される摩擦力と前記第2の感知部を介して感知される摩擦力を比較し、比較結果、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように、前記第1の側方向噴射ユニットと第2の側方向噴射ユニットの高圧水噴射流量を調整してもよい。
【0014】
前記熱延ストリップの異物混入防止装置は、前記サイドガイドの上流で前記ストリップの上面に向かって前記ストリップの移動方向に高圧水を噴射する正方向噴射ユニットをさらに含み、前記サイドガイドは、前記ストリップの幅方向の一側を支持する第1のサイドガイドと、前記ストリップの幅方向の他側を支持する第2のサイドガイドを含み、前記正方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのいずれか一方に高圧水の噴射流量を偏向させることができる。
【0015】
前記正方向噴射ユニットは、前記ストリップの上面に高圧水を噴射するように前記ストリップの幅方向に沿って配列され、それぞれ高圧水の噴射流量の調整が可能に設けられた複数の正方向噴射ノズルを含み、複数の前記正方向噴射ユニットは、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射流量が増大するように高圧水の噴射流量が調整されてもよい。
【0016】
前記第1のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第1の感知部と、前記第2のサイドガイドとストリップの摩擦力を感知する第2の感知部と、前記第1の感知部及び第2の感知部と複数の正方向噴射ノズルと電気的に連結される制御部をさらに含み、前記制御部は、前記第1の感知部を介して感知される摩擦力と前記第2の感知部を介して感知される摩擦力を、比較結果、前記第1のサイドガイドと第2のサイドガイドのうちストリップとの摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するように、複数の前記正方向噴射ノズルの高圧水噴射流量を調整しうる。
【発明の効果】
【0017】
開示された発明の一態様によれば、熱延工程の巻取区間でコイル状に巻き取られるストリップに異物が混入することを効果的に防止できる熱延ストリップの異物混入防止装置を提供しうる。
【0018】
開示された発明の一態様によれば、熱延工程の巻取区間でコイル状に巻き取られるストリップに異物が混入することを未然に防止できる熱延ストリップの異物混入防止装置を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置の側面構造を示すものである。
【
図2】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置の平面構造を示すものである。
【
図3】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置において、上部逆方向噴射ユニットの動作を図示した平面図である
【
図4】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置において、側方向噴射ユニットの動作状態を図示した平面図である
【
図5】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置において、正方向噴射ユニットの動作状態を図示した平面図である
【
図6】開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置に適用される鋼種別スパーク発生臨界温度を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
明細書全体にわたって同じ参照番号は同じ構成要素を指す。本明細書が実施形態のすべての要素を説明するものではなく、本発明が属する技術分野において一般的な内容または実施例において重複する内容は省略する。明細書において使用される「部、モジュール、部材、ブロック」という用語は、ソフトウェアまたはハードウェアで具現されてもよく、実施例によって複数の「部、モジュール、部材、ブロック」が1つの構成要素として具現されるか、または1つの「部、モジュール、部材、ブロック」が複数の構成要素を含むことも可能である。
【0021】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは直接的に連結されている場合だけでなく、間接的に連結されている場合を含み、間接的な連結は無線通信網を介して連結されることを含む。
【0022】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0023】
明細書全体において、ある部材が他の部材「上」に位置しているとするとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、2つの部材の間に他の部材が存在する場合も含む。
【0024】
第1、第2などの用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別するために使用されるもので、構成要素は前述した用語によって制限されるものではない。
【0025】
単数の表現は、文脈上明らかに例外がない限り、複数の表現を含む。
【0026】
各段階において、識別符号は説明の便宜のために使用されるもので、識別符号は各段階の順序を説明するものではなく、各段階は文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、明記された順序とは異なる方法で実施されてもよい。
【0027】
以下、添付図面を参照し、本発明の作用原理及び実施例について説明する。
【0028】
図1と
図2は、開示された発明の一実施例による熱延ストリップの異物混入防止装置10(以下、異物混入防止装置)が適用された熱延工程の巻取区間を示す。
【0029】
図1と
図2に示すように、異物混入防止装置10が適用される熱延工程の巻取区間には、ストリップ1の移動方向に沿ってサイドガイド2、3と、ピンチロール4と、巻き取り機5が配置されてもよい。
【0030】
熱延工程において巻取区間の上流には、ストリップ1の表面欠陥や幅を測定するための多数の計測器(図示せず)を備えていてもよい。
【0031】
参考として、図面において、矢印X1の方向はストリップ1の移動方向を指し、矢印X2の方向はストリップ1の移動方向の逆方向を指す。X1の方向は熱延工程ラインの下流方向となり、X2の方向は熱延工程ラインの上流方向になり得る。また、矢印Y1とY2の方向は、それぞれストリップ1の幅方向の一側と他側を示す。
【0032】
サイドガイド2、3は、ストリップ1の幅方向の一側を支持してガイドする第1のサイドガイド2と、ストリップの幅方向の他側を支持してガイドする第2のサイドガイド3とを含めて一対で設けられてもよい。
【0033】
ピンチロール4の上流には巻き取り機5に案内されるストリップ1を支持する複数の支持ロール6が設けられ、サイドガイド2、3は、支持ロール6に沿って移動するストリップ1の両側を支持してストリップ1が巻き取り機5に正しく案内されるようにすることができる。巻き取り機5は、ピンチロール4を介して案内されるストリップ1を巻き付けて熱延コイルを形成してもよい。
【0034】
一方、巻き取り機5に移動するストリップ1が一方に偏る場合、ストリップ1とサイドガイド2、3の間では摩擦によりスパークが発生して異物が形成されることがある。このような異物は、ストリップの表面に付着することがあり、この状態のストリップが巻き取り機により巻き取られると、ストリップの表面に異物による圧入キズが形成され、ストリップの表面欠陥を引き起こすことがある。
【0035】
一実施例による異物混入防止装置10は、このように発生した異物がストリップ1に混入することを防止するためのもので、サイドガイド2、3によって巻き取り機5の入側に移動するストリップ1に向かってストリップ1の移動方向の逆方向に高圧水を噴射する逆方向噴射ユニット100、200を備えていてもよい。
【0036】
逆方向噴射ユニット100、200によってストリップ1の表面に噴射される高圧水は、ピンチロール4を通過する前の状態のストリップ1の表面から異物を除去して巻き取り機5により巻き取られるストリップ1に異物が混入することを防止しうる。
【0037】
逆方向噴射ユニット100、200は、ストリップ1の上面に高圧水を噴射するためにストリップ1の移動経路の上部に位置する上部逆方向噴射ユニット100と、ストリップ1の下面で高圧水を噴射するためにストリップ1の移動経路の下部に位置する下部逆方向噴射ユニット200を含んでもよい。
【0038】
上部逆方向噴射ユニット100は、ストリップ1の上面に高圧水を噴射するようにストリップ1の幅方向に沿って配列される複数の上部逆方向噴射ノズル110を備え、下部逆方向噴射ユニット200は、ストリップ1の下面に高圧水を噴射するようにストリップ1の幅方向に沿って配列される複数の下部逆方向噴射ノズル210を含んでもよい。
【0039】
上部逆方向噴射ユニット100は高圧水が供給されるヘッダ120を備え、ヘッダ120は、ストリップ1をピンチロール4側に案内するために、サイドガイド2、3とピンチロール4の間の上部に位置するエントリーガイド7に設けられてもよい。複数の上部逆方向噴射ノズル110は、ストリップ1の上面に向かってストリップ1の移動方向の逆方向に高圧水を噴射するために所定の傾斜を有するように、ヘッダ120に下向きに傾斜して設けられてもよい。
【0040】
下部逆方向噴射ユニット200は、サイドガイド2、3の下流の支持ロール6の間に配置されるヘッダ220を備え、複数の下部逆方向噴射ノズル210は、ストリップ1の下面に向かってストリップ1の移動方向の逆方向に高圧水を噴射するために所定の傾斜を有するようにヘッダ220に上向きに傾斜して設けられてもよい。
【0041】
参考として、図面において噴射ノズルの前方の扇形は、当該噴射ノズルを通じて噴射される高圧水の噴射方向と噴射流量を示したものである。
【0042】
上部逆方向噴射ユニット100を介してストリップ1に噴射された高圧水の一部は、ストリップ1の上面に滞留されてもよい。そして、このような滞留水は時間が経つにつれてストリップ1の移動方向の逆方向に流れを形成し、巻取区間上流の計測器(図示せず)まで伝達されることにより、計測器(図示せず)の外乱を誘発しうる。
【0043】
これを防止するために、複数の上部逆方向噴射ノズル110は、
図3に示すように、その配列方向に沿って中央部に位置する上部逆方向噴射ノズル110が両端に位置する上部逆方向噴射ノズル110よりも狭い間隔を有するように配列されてもよい。
【0044】
このような上部逆方向噴射ノズル110の配列によれば、相互間の間隔が狭く配置される中央部の噴射ノズル110を通じて噴射される高圧水の噴射圧力は、相互間の間隔が広く形成される端の噴射ノズル110を介して噴射される高圧水の噴射圧力よりも相対的に大きくなり得る。
【0045】
したがって、滞留水をX2方向に押し出す高圧水の噴射圧力は、上部逆方向噴射ノズル110の中央領域のほうが両側の端領域よりも大きくなり、これにより滞留水は中央部を基準に両側がストリップ1の両側の幅方向に沿ってY1とY2方向に分かれてストリップ1上でスムーズに除去され、計測器(図示せず)に流れるおそれがなくなる。
【0046】
上部逆方向噴射ユニット100の中央領域が端領域よりも大きい高圧水の噴射圧力を形成できるように、各噴射ノズル110は、その配列方向の中央部に位置する噴射ノズル110が両端に位置する噴射ノズル110よりも多くの流量の高圧水を噴射するように設けられてもよい。このために、中央部に位置する上部逆方向噴射ノズル110は、直径t1が端に位置する上部逆方向噴射ノズル110の直径t2よりも大きいものが用いられてもよい。
【0047】
一例として、複数の上部逆方向噴射ノズル110は、配列方向に沿って両端から中央部に向かうにつれて噴射ノズル110間の間隔が連続的に小さくなり、噴射ノズル110の直径は端から中央部に向かうにつれて連続的に大きくなるように設けられてもよい。
【0048】
もちろん、上部逆方向噴射ノズル110がすべて同じ直径を有するようにして、それらの領域別間隔のみを異ならせるか、上部逆方向噴射ノズル110がすべて同じ間隔を有するようにして、それらの直径が領域別に異なるようにする場合でも、上部逆方向噴射ユニット100は、中央領域が端領域よりも大きい高圧水の噴射圧力を形成できるようになる。
【0049】
このように上部逆方向噴射ノズル110の間隔と直径を異にする方式によれば、上部逆方向噴射ユニット100は、ヘッダ120の形状や上部逆方向噴射ノズル110の長さを変更せずに、異物が含有された滞留水をストリップ1上で円滑に排出させることができ、エントリーガイド7を設計変更することなく、狭いエントリーガイド7の内部にスムーズに設けられてもよい。
【0050】
また、異物混入防止装置10は、サイドガイド2、3とストリップ1の間に高圧水を噴射する側方向噴射ユニット300、400を含んでもよい。
【0051】
図2に示すように、側方向噴射ユニット300、400から噴射される高圧水は、サイドガイド2、3とストリップ1の間を冷却してサイドガイド2、3とストリップ1の間でスパークが発生することを源泉的に遮断しうる。したがって、側方向噴射ユニット300、400によれば、巻き取り機5に案内されるストリップ1に異物が混入することを未然に防止しうる。
【0052】
側方向噴射ユニット300、400は、第1のサイドガイド2とストリップ1の一側の間に高圧水を噴射する第1の側方向噴射ユニット300と、第2のサイドガイド3とストリップ1の他側の間に高圧水を噴射する第2の側方向噴射ユニット400を含んでもよい。
【0053】
それぞれの側方向噴射ユニット300、400は、ヘッダ320、420と、ストリップ1の移動方向に沿ってヘッダ320、420に設けられる複数の側方向噴射ノズル310、410を備えていてもよい。
【0054】
側方向噴射ノズル310、410は、第1の側方向噴射ユニット300に設けられる第1の側方向噴射ノズル310と、第2の側方向噴射ユニット400に設けられる第2の側方向噴射ノズル410に区分されてもよい。
【0055】
第1の側方向噴射ユニット300は、第2のサイドガイド3の上部に配置され、対向する側の第1のサイドガイド2とストリップ1の間に高圧水を噴射しうる。そして、第2の側方向噴射ユニット400は、第1のサイドガイド2の上部に配置され、対向する側の第2のサイドガイド3とストリップ1の間に高圧水を噴射しうる。
【0056】
第1の側方向噴射ユニット300から噴射される高圧水と第2の側方向噴射ユニット400から噴射される高圧水が相互干渉を起こすことが抑制されるように、第1の側方向噴射ノズル310と第2の側方向噴射ノズル410は互いに交互に配置されてもよい。
【0057】
側方向噴射ユニット300、400の配置構造は前述した形態に限定されるものではない。各側方向噴射ユニット300、400は、直下方に高圧水を噴射するように設けられ、第1の側方向噴射ユニット300が第1のサイドガイド2の上部に位置し、第2の側方向噴射ユニット400が第2のサイドガイド3の上部に位置するように配置されてもよい。
【0058】
一方、サイドガイド2、3とストリップ1の摩擦時にスパークが発生する臨界温度は、ストリップ1の鋼種によって変わり得る。
【0059】
図6には、鋼種別にスパークが発生する臨界温度と時間との関係が示されている。
図6に示すように、軟鋼や炭素鋼よりもステンレスがより高い臨界温度でスパークを発生させることが確認できる。また、ステンレスの場合でも、その種類によってスパークを発生させる臨界温度は変わる。
【0060】
したがって、スパークの発生を抑制するために、ストリップ1とサイドガイド2、3の間を冷却させる高圧水の流量は、ストリップ1の鋼種に応じて変わり得る。
【0061】
側方向噴射ユニット300、400は、高圧水噴射流量の調整が可能であり、鋼種によるストリップ1のスパークが発生する臨界温度に比例して噴射される高圧水の流量が増大するように設けられ、スパークを抑制する高圧数の流量を効率的に用いられるようにすることができる。
【0062】
すなわち、側方向噴射ユニット300、400は、ストリップ1の鋼種がスパークが発生する臨界温度が低い場合より高い場合に相対的に高圧水の流量が増大するようにすることで、スパークを抑制する高圧水の流量が効率的に用いられるようにすることができる。
【0063】
図4に示すように、異物混入防止装置10は、制御部11と図示しない入力部を備えていてもよい。側方向噴射ユニット300、400は、側方向噴射ノズル310、410に供給される高圧水の流量調整のための流量調整弁330、430を備え、流量調整弁330、430は制御部11に電気的に連結されて制御部11によって制御されてもよい。流量調整弁330、430は、ヘッダ320、420に設けられてもよい。
【0064】
ストリップ1の鋼種は入力部(図示せず)を介して入力されてもよく、制御部11は入力部(図示せず)を介して入力されるストリップの鋼種に応じて側方向噴射ノズル310、410から噴射される高圧水流量が調整されるように流量調整弁330、430を制御してもよい。
【0065】
また、側方向噴射ユニット300、400は、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のいずれか一方に高圧水の噴射流量を偏向させることができるように設けられ、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のうちストリップ1と摩擦が大きい方に高圧水の噴射流量を増大させることができる。
【0066】
したがって、側方向噴射ユニット300、400は、両側のサイドガイド2、3でスパークが発生するおそれが相対的に高いサイドガイド2、3とストリップ1の間を高圧水によってより効果的に冷却されるようにすることができる。
【0067】
異物混入防止装置10は、ストリップ1と両側のサイドガイド2、3の間の摩擦力を測定するために、第1のサイドガイド2とストリップ1の摩擦力を感知する第1の感知部12と、第2のサイドガイド3とストリップ1の摩擦力を感知する第2の感知部13を備えていてもよい。
【0068】
第1の感知部12と第2の感知部13は、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3にそれぞれ設けられ、各感知部12、13は制御部11に電気的に連結されてもよい。第1の感知部12と第2の感知部13は、ストリップ1との摩擦時にサイドガイド2、3に発生する振動の大きさや、ストリップ1との摩擦によるサイドガイド2、3の温度変化を測定する方式でストリップ1と当該サイドガイド2、3の間の摩擦力の大きさを感知しうる。
【0069】
第1の感知部12と第2の感知部13は、当該サイドガイド2、3とストリップ1との摩擦力を常時感知し、制御部11は、第1の感知部12を介して感知される摩擦力と第2の感知部13を介して感知される摩擦力を比較しうる。摩擦力の比較結果、ストリップ1との摩擦の大きいサイドガイド2、3が確認されると、制御部11は、第1の側方向噴射ユニット300の噴射ノズル310と第2の側方向噴射ユニット400の噴射ノズル410を通じて噴射される高圧水の流量が異なるように流量調節弁330、430を制御し、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のうちストリップ1との摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大するようにすることができる。
【0070】
一例として、
図4は、第2のサイドガイド3とストリップ1の間の摩擦力が第1のサイドガイド2とストリップ1の間の摩擦力より大きい場合、第1の側方向噴射ユニット300において第1のサイドガイド2方向に噴射される高圧水の噴射流量よりも、第2の側方向噴射ユニット400から第2のサイドガイド3方向に噴射される高圧水の噴射流量が増大した状態を示している。
【0071】
また、異物混入防止装置10は、サイドガイド2、3の上流からストリップ1の上面に向かってストリップ1の移動方向に高圧水を噴射する正方向噴射ユニット500をさらに備えていてもよい。
【0072】
図1に示すように、正方向噴射ユニット500は、サイドガイド2、3を介して上部逆方向噴射ユニット100の対向側からストリップ1の上面に高圧水を噴射することにより、ストリップ1上の滞留水が、計測器(図示せず)が位置する巻取区間の上流に流れることをより確実に遮断しうる。
【0073】
正方向噴射ユニット500は、ヘッダ520と、ストリップ1の幅方向に沿ってヘッダ520に設けられる複数の正方向噴射ユニット510を備えていてもよい。
【0074】
ヘッダ520は、サイドガイド2、3の上流側にストリップ1の移動経路上部に配置され、複数の正方向噴射ユニット510は、ストリップ1の上面に向かってストリップ1の移動方向に高圧水を噴射するために所定の傾斜を有するように、ヘッダ520に下向きに傾斜して設けられてもよい。
【0075】
複数の正方向噴射ユニット510は、ストリップ1の幅方向に沿って配列され、それぞれの正方向噴射ユニット510は、個別に高圧水の噴射流量が調整されるように設けられてもよい。
【0076】
図5に示すように、正方向噴射ユニット500は、正方向噴射ユニット510に供給される高圧水の流量調整のための流量調整弁530を備え、流量調整弁530は制御部11に電気的に連結され、制御部11によって制御されてもよい。流量調整弁530はヘッダ520に設けられてもよい。
【0077】
正方向噴射ユニット500は、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のいずれか一方に高圧水の噴射流量を偏向させることができるように設けられ、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のうちストリップ1と摩擦が大きい方に高圧水の噴射流量を増大させることができる。
【0078】
したがって、正方向噴射ユニット500は、両側のサイドガイド2、3でスパークが発生するおそれが相対的に高いサイドガイド2、3とストリップ1の間を高圧水によりさらに効果的に冷却させることができる。
【0079】
制御部11は、第1の感知部12を介して感知される摩擦力と第2の感知部13を介して感知される摩擦力を比較しうる。摩擦力の比較結果、ストリップ1との摩擦の大きいサイドガイド2、3が確認されると、制御部11は、それぞれの正方向噴射ノズル510を介して噴射される高圧水の噴射流量が調整されるように流量調整バルブ530を制御して、第1のサイドガイド2と第2のサイドガイド3のうちストリップ1との摩擦が大きい方に高圧水の噴射量が増大されるようにすることができる。
【0080】
一例として、
図5は、第2のサイドガイド3とストリップ1の間の摩擦力が第1のサイドガイド2とストリップ1の間の摩擦力より大きい場合を示している。このとき、制御部11は、第2のサイドガイド3に隣接する正方向噴射ユニット510の高圧水噴射流量が第1のサイドガイド2に隣接する正方向噴射ユニット510の高圧水噴射流量より増大するように流量調節弁530を制御することにより、第1のサイドガイド2とストリップ1の間よりも第2のサイドガイド3とストリップ1の間の冷却性能が相対的にさらに大きくなるようにすることができる。
【0081】
前述したように、側方向噴射ユニット300、400と正方向噴射ユニット500がそれぞれ一方のサイドガイド2、3方向に高圧水の噴射流量を偏向させることができる異物混入防止装置10の構造では、側方向噴射ユニット300、400と正方向噴射ユニット500のいずれかを削除させる場合でも、高圧水を用いてストリップと1の摩擦が相対的に大きいサイドガイド2、3側の冷却性能を高める効果を発揮しうる。
【国際調査報告】