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特表2025-504552ミリング用ブランクおよび歯科用成形体を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ミリング用ブランクおよび歯科用成形体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/007 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
A61C13/007
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024544621
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2022087315
(87)【国際公開番号】W WO2023143838
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】102022101992.6
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 2, D-63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク-ウヴェ シュタンゲ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス メラー
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインツ レンツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ベアガー
(57)【要約】
本発明は、歯科用成形体を製造するためのミリング用ボディ(1)であって、ミリング用ボディ(1)は、生体適合性の第1の材料から成る中実体(2)を有しており、ミリング用ボディ(1)の上面には、流動性の重合可能なプラスチックを収容するための中空室(4)が配置されており、中空室(4)は、底部(6)を有しておりかつ中空室(4)は、底部(6)の縁部を起点として、側方を環状の壁(8)により画定されており、環状の壁(8)はリング形であり、第1の材料は底部(6)を形成しており、中実体(2)は、ミリング用ボディ(1)の上面とは反対側に配置された、ミリング用ボディ(1)の下面まで延びている、ミリング用ボディ(1)に関する。本発明は、このようなミリング用ボディ(1)を用いて歯科用補綴物を製造する方法、このような方法により製造されるセットおよび歯科用成形体にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用成形体を製造するためのミリング用ボディ(1,11)であって、当該ミリング用ボディ(1,11)は、第1の材料から成る中実体(2,12)を有しており、前記第1の材料は、生体適合性である、ミリング用ボディ(1,11)において、
当該ミリング用ボディ(1,11)の上面(21)には、流動性の重合可能なプラスチックを収容するための中空室(4,14)が配置されており、該中空室(4,14)は、底部(6,16)を有しておりかつ前記中空室(4,14)は、前記底部(6,16)の縁部を起点として、側方を環状の壁(8,18)により画定されており、該環状の壁(8,18)はリング形であり、前記第1の材料は前記底部(6,16)を形成しており、前記中実体(2,12)は、当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)とは反対側に配置された、当該ミリング用ボディ(1,11)の下面(19)まで延びていることを特徴とする、ミリング用ボディ(1,11)。
【請求項2】
前記環状の壁(8,18)は、最大20mm、好適には最大10mm、特に好適には最大5mmの壁厚さを有しており、かつ/または
前記環状の壁(8,18)の高さは、少なくとも5mm、好適には少なくとも15mmである、
請求項1記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項3】
前記環状の壁(8,18)の、前記中空室(4,14)を画定する少なくとも1つの内面に、前記中空室(4,14)内の充填レベルを測定するためのマーキング(9)が配置されており、好適には、該マーキング(9)は、等間隔の目盛り線および/または数値を備えたスケールを有しており、特に好適には、前記中空室(4,14)内の前記流動性の重合可能なプラスチックの充填高さまたは体積を測定するための縦型スケールを有している、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項4】
前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)は平らであり、かつ/または前記環状の壁(8,18)は、前記中空室(4,14)の内部に対して円筒形の表面を有しており、好適には、前記環状の壁(8,18)は管状である、請求項1から3までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項5】
当該ミリング用ボディ(1,11)の前記環状の壁(8,18)は、前記中実体(2,12)に固定された管片またはリング体により形成されており、好適には、当該ミリング用ボディ(1,11)は、前記第1の材料と、前記管片または前記リング体とから成るか、または
当該ミリング用ボディ(1,11)の前記環状の壁(8,18)は、前記第1の材料から成り、好適には、前記中実体(2,12)と前記環状の壁(8,18)とは一体に形成されており、これにより、当該ミリング用ボディ(1,11)は前記第1の材料から成っている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項6】
前記第1の材料は、第1のプラスチック材料であり、好適には、該第1のプラスチック材料は最終硬化させられており、かつ/または
前記第1の材料は、異なる色調の複数の層を備えた、積層された第1のプラスチック材料であり、前記層の層平面は、好適には前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)に対して平行に配置されているか、または前記環状の壁(8,18)に対して垂直に、特に前記環状の壁(8,18)の円筒形の内壁の基底面に対して平行に配置された平面に対して平行に配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項7】
当該ミリング用ボディ(1,11)は、円筒形の外周部を備えた円形ブランクであり、前記環状の壁(8,18)は、前記円筒形の外周部の部分領域を形成しており、好適には、前記円筒形の外周部の外面に、前記円形ブランクをCAM装置に固定するための保持部(10,20)が配置されており、特に好適には、該保持部(20)は、前記円筒形の外周部を包囲している突出したリングである、請求項1から6までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項8】
当該ミリング用ボディ(1,11)は、前記中空室(4,14)の外側の表面に、外部から見える少なくとも1つの位置マーキングを有しており、該位置マーキングは、CAM装置における当該ミリング用ボディ(1,11)の位置および向きの特定を可能にしており、前記少なくとも1つの位置マーキングは、好適には当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)および/または前記下面(19)の方向から見える、当該ミリング用ボディ(1,11)の少なくとも1つの縁部の領域に配置されており、特に好適には、当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)からも前記下面(19)からも見える少なくとも2つの位置マーキングが設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項9】
前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/2であり、好適には、前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/3であり、特に好適には、前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/5である、請求項1から8までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項10】
前記中実体(2,12)は、環状の段部を有しており、該段部に前記環状の壁(8,18)が被せ嵌められており、これにより、該環状の壁(8,18)は、内面で前記中実体(2,12)に面一に接触しており、好適には、前記環状の壁(8,18)は全面的に周方向において前記中実体(2,12)に接着されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)と、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックおよび/または少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを製造するための出発成分とを含む歯科用成形体を製造するためのセットであって、好適には、当該セットは追加的に、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを充填しかつ/または前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを製造しかつ混合する少なくとも1つの装置を有している、セット。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項記載のミリング用ボディ(1,11)を使用して、または請求項11記載のセットを使用して歯科用成形体を製造する方法であって、当該方法では、前記歯科用成形体を、当該方法において互いに結合される少なくとも2つの異なる材料から製造する、方法において、
当該方法は、以下の時系列的なステップ、すなわち:
A)前記歯科用成形体の外形および前記少なくとも2つの異なる材料の結合表面の形状の仮想三次元モデルに応じてサブトラクティブ式のCAM法により、前記ミリング用ボディ(1,11)の中空室(4,14)の底部(6,16)と、前記ミリング用ボディ(1,11)の第1の材料とに、前記少なくとも2つの異なる材料の間の前記結合表面と、製造しようとする前記歯科用成形体の表面の部分領域のネガ型(31)とを形成し、前記結合表面と前記ネガ型(31)とは相接しており、前記ミリング用ボディ(1,11)の環状の壁(8,18)は維持したままにするステップ、
B)少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)内と、ステップA)において除去した、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記底部(6,16)における容積内とに充填し、このとき、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、所定の充填レベルで前記中空室(4,14)内に充填し、これにより、前記環状の壁(8,18)が、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの、少なくとも最後に充填された、または外側に被着された流動性の重合可能なプラスチックと接触することになり、前記中空室(4,14)内および凹部内の前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを硬化させ、該少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの硬化時に、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)内に、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記第1の材料に固く面一に結合された、硬化させられたプラスチック材料を生ぜしめるステップ、
C)前記硬化させられたプラスチック材料を、前記ミリング用ボディ(1,11)の上面(21)の方向からCAM法により、前記歯科用成形体の仮想モデルの基底部表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、かつ前記第1の材料を、前記ミリング用ボディ(1,11)の下面(19)の方向からCAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの咬合表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、これにより、前記硬化させられたプラスチック材料と、該硬化させられたプラスチック材料に結合された前記第1の材料とから、前記歯科用成形体をサブトラクティブ式に製作するステップ
を特徴とする、方法。
【請求項13】
ステップA)において前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)と、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記第1の材料とに製造される、前記歯科用成形体の表面の部分領域の前記ネガ型(31)を、オフセットを備えて形成し、該オフセットは、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの体積を、前記歯科用成形体が前記第1の材料から成るべきではない領域において拡大する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記歯科用成形体は、ナイトガードであり、前記第1の材料は、前記硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度を有しているか、または
前記歯科用成形体は、歯科用の部分補綴物または総補綴物の形態の歯科用補綴物(22)であり、該歯科用補綴物(22)は、補綴物基部(24)と少なくとも1つの義歯(26)とを有しており、該少なくとも1つの義歯(26)は、前記第1の材料から製造され、かつ前記補綴物基部(24)は、前記硬化させられたプラスチック材料から製造され、前記第1の材料は歯色であり、前記硬化させられたプラスチック材料は歯肉色であり、好適には、前記第1の材料は、前記硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度および/または耐摩耗性を有している、
請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
ステップB)において、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックのうちの少なくとも1つが、充填時に少なくとも、ステップA)において前記第1の材料に形成された表面を全面的に濡らす、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ステップC)において、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記下面(19)の方向から前記CAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの前記咬合表面に応じて、前記第1の材料および前記硬化させられたプラスチック材料のサブトラクティブ加工を行い、かつ/または
ステップC)において、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)の方向から前記CAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの前記基底部表面に応じて、前記硬化させられたプラスチック材料および前記第1の材料のサブトラクティブ加工を行う、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ステップA)において、前記環状の壁(8,18)の、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)を画定する内面に、少なくとも1つのマーキング(9)を取り付け、特に該少なくとも1つのマーキング(9)を、サブトラクティブ式の前記CAM法により前記環状の壁(8,18)の前記内面に形成し、前記少なくとも1つのマーキング(9)の、前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)からの距離を、前記歯科用成形体の前記仮想モデルに応じて決定し、好適には、前記少なくとも1つのマーキング(9)は、少なくとも1つの目盛り線であり、
ステップB)において、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、前記中空室(4,14)内の前記少なくとも1つのマーキング(9)の高さまで充填する、
請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ステップA)の前に、またはステップB)の前かつステップA)の後に、リング体または管片を前記中実体(2,12)に取り付け、これにより、前記リング体または前記管片が前記環状の壁(8,18)を形成し、好適には前記リング体または前記管片を、ステップB)の後かつステップC)の前に再び除去する、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ステップC)の前に、ステップB)で形成された、前記硬化させられたプラスチック材料の表面の平面を確定するためにゼロ点シフトを計算し、ステップC)において、前記サブトラクティブ式の加工が前記硬化させられたプラスチック材料の前記表面の前記平面内で始まるように、前記ゼロ点シフトを考慮する、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
ステップC)において少なくとも一回、CAM装置内に固定された前記ミリング用ボディ(1,11)のポジションおよび位置を、前記ミリング用ボディ(1,11)に設けられた少なくとも1つのマーキングに基づき特定し、前記CAM装置の制御時に前記ミリング用ボディ(1,11)の前記ポジションおよび前記位置を考慮し、好適には、前記CAM装置内に固定された前記ミリング用ボディ(1,11)の前記ポジションおよび前記位置の特定を、全自動で特定する、請求項12から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
ステップA)の後かつステップB)の前に、ステップA2)を行い、
ステップA2)は、前記結合表面、または前記結合表面および前記ネガ型(31)、または前記結合表面および前記ネガ型(31)を含む、前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)における前記第1の材料の自由にアプローチ可能な表面全体を洗浄しかつ/または前処理し、好適には前処理時に、前記第1の材料の前記表面の化学処理を行い、特に好適には、モノマー液による前記第1の材料の前記表面の化学的膨張を行うステップであり、前記第1の材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有するか、またはPMMAから成るプラスチック組成物である、
請求項12から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
ステップB)における前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの前記充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に標準圧力を上回る圧力、好適には少なくとも150kPaの圧力、特に好適には少なくとも200kPaの圧力、極めて特に好適には少なくとも200kPaかつ最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、請求項12から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
ステップB)における前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの前記充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に最高1000kPaの圧力、好適には最高500kPaの圧力、特に好適には最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、請求項12から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
ステップB)における前記流動性の重合可能なプラスチックの前記硬化を、熱および/または圧力の作用により行い、好適には、前記硬化を10分~120分、特に好適には30分~60分の時間にわたり行う、請求項12から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
請求項12から24までのいずれか1項記載の方法により製造された歯科用成形体、特に歯科用補綴物(22)またはナイトガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用の部分補綴物もしくは総補綴物またはナイトガード等の歯科用成形体を製造するためのミリング用ブランク、ならびにこのようなミリング用ブランクを使用して歯科用成形体を製造する方法に関する。ミリング用ブランクは、サブトラクティブ加工用を想定されており、かつこれに適しており、ミリング用ブランクから製造された歯科用成形体は、歯科分野で適用するために、患者の口腔内に挿入可能でなければならない。
【0002】
手工業的な技術の他に、デジタル製造方法が、歯科分野でもますます重要性を増している。義歯および他の歯科用成形体、例えば歯科用補綴物、クラウン、ブリッジおよびナイトガード等は、数年来、CAD/CAM技術を用いてサブトラクティブ式に、ミリング法で製造されている(CAM:Computer-Aided Manufacturing、独語:rechnerunterstuetzte Fertigung、CAD:Computer-Aided Design、独語:rechnerunterstuetzte Konstruktion)。歯肉上および歯肉内に固定または配置された義歯を支持する補綴物基部を備えた歯科用の部分補綴物および総補綴物の製造および設計においても、CAD/CAM法がますます使用されるようになっている。
【0003】
補綴作業、特に部分補綴物または総補綴物のデジタル設計の枠内で、構造体は、「白色」または歯色の歯部分(義歯)と、歯肉色(「ピンク色」)の補綴ベース部分(補綴物基部)とに分けられる。したがって、歯科用補綴物は、歯肉色もしくはピンク色の基部と、歯色の部分(義歯または歯セグメント)とから成っている。
【0004】
歯科用の部分補綴物もしくは総補綴物をデジタル式に作成し、CAD/CAM法により製造する方法、例えば独国特許出願公開第102009056752号明細書または国際公開第2013/124452号から公知の方法等が存在している。独国特許発明第10304757号明細書から公知の、義歯を製造する方法では、歯を仮想モデルに仮想作成し、この仮想モデルに基づき補綴物基部の製造を行う。欧州特許出願公開第2742906号明細書に開示された方法では、歯列弓を印象材に結合し、この場合、印象材は、個別化された印象用トレーに含まれていて、患者の口腔状況の印象を含むことになる。歯列弓を含む型の表面をデジタル化し、次いで計算により、歯列弓の仮想モデルを可能な限り適合するように、補綴物基部の仮想モデルにおいて位置決めしかつ方向付ける。
【0005】
デジタル式の総補綴学または部分補綴学の枠内では、補綴物基部に一義的にかつ再現可能に接着され得る義歯または歯成形体が必要とされる。
【0006】
国際公開第2016/091762号に開示された歯科用補綴物を製造する方法では、モデルを形成し、このモデルを用いて、複数の義歯を互いに所望の位置および向きで補綴物基部に固定することができる。この場合、義歯を、頸部領域における基底部研削により短縮し、これにより、所望の咬合高径を生ぜしめる。国際公開第2016/110392号に開示された歯科用補綴物を製造する方法では、塑性変形可能な結合手段を補綴物基部の歯槽に挿入し、これにより、補綴物基部における義歯の位置調整の手動補正を可能にする。独国特許発明第102008019694号明細書からは、レーザを用いてセラミックから歯科用成形体を製造する方法および装置が公知である。欧州特許第2571451号明細書および欧州特許出願公開第2666438号明細書から公知の歯科用補綴物を製造する方法では、既製の義歯をホルダ内でワックスに埋め込み、次いでCAM法により頸部を削り出す。歯の高さを患者の顎に適合させるため、つまり歯科用補綴物の咬合高径を患者の要求に合わせて調整するためには、義歯を基底部(もしくは頸部)において短縮することが必要である。国際公開第2014/159436号には、補綴物基部に補強材を備えた、積層された歯科用補綴物が開示されており、補強材は、基底部の中空室に流し込まれる。歯科用補綴物の他に、ナイトガード等の別の歯科用成形体も、患者データに基づきデジタルで、サブトラクティブ式のCAM法により製造され得る。このようなナイトガードにおける欠点は、ナイトガードは十分な耐摩耗性を有していなければならないが、ただしこのことは、歯側では装着快適性を低下させることになる、という点にある。さらに、ナイトガードの審美的な変更の可能性が制限されている。
【0007】
アディティブ式の製造の場合も、サブトラクティブ式の製造の場合も、基部と歯色部分(義歯)との結合は、大きな課題である。結合は、通常、接着により行われ、この場合、極度に少ないまたは極度に多い接着剤の使用により、移行部の質、ならびに接着時の義歯の正確な位置決めに支障が生じる。同様に、使用可能な一体の二色(歯肉色および歯色)のミリング用ブランクは、確かに極めて良好な層結合部を有してはいるが、予め定められた相境界に基づき、審美性は常に妥協点であり、ひいては満足のいくものではない。
【0008】
米国特許出願公開第2013/0101962号明細書には、歯科用補綴物を製造する方法が開示されており、この方法では、複数の凹部を歯列弓に沿って1つのブロックにミリングし、このとき、凹部に複数のプラスチックを充填し、その間に凹部内で硬化したプラスチックから義歯を製造する。次いでブロックを十分に除去し、ブロックから補綴物基部を製造する。この方法は、多段階ミリング法である。米国特許出願公開第2013/0101962号明細書による方法では、材料損失が大きいこと、ブロックの材料除去に必要とされる時間、ならびにこのために必要とされる工具の摩耗が不都合である。欧州特許第2915503号明細書から公知の、歯科用補綴物を製造する逆の方法では、ミリング用ブランクを歯溶融材料からサブトラクティブ加工し、これにより、歯科用補綴物の補綴物基部用のネガ型として使用される中空室を形成する。次いで、歯科用補綴物の咬合側と基底部側とを、このようにして生ぜしめられた複合体からサブトラクティブ式に製造する。これも、多段階ミリング法である。欧州特許第2915503号明細書による方法における欠点は、歯科用補綴物を製造するために、極めて大量の比較的硬質の歯溶融材料を除去しなければならない点にある。これには大量の歯溶融材料の損失が伴うだけでなく、ミリング工具が集中的に負荷されることになると共に、この方法を実施するためには比較的長い時間がかかる。さらに、補綴物基部の外面(咬合側および口腔側)から歯溶融材料が完全に除去されなかった場合には、審美性に支障をきたす白色もしくは歯色の残留物が残留することがあり、残留物は引き続き歯科技工士により手動で除去されねばならない。これによりやはり、補綴物基部の材料厚さが不都合に薄くなる場合がある。
【0009】
デジタル式に設計された総補綴物を製造するために、従来技術では以下の可能性が存在する。
【0010】
1.歯肉色の基部をミリングまたは印刷し、人工歯、択一的にはミリングまたは印刷された歯色セグメントに接着する。この場合に欠点であり得るのは:不正確な製造、時間の浪費、過剰な接着剤もしくは縁部ギャップの充填不足に基づく審美的な課題、アンダカットに基づくキャビティのミリング加工性に関する制限である。
【0011】
2.二相の構造が組み込まれた、予め製造されたミリング用ディスクをミリングする。この場合、移行部の的確な配置により、自然な審美性を達成することが試みられる。この場合の欠点は、歯肉色から歯色への移行部の位置であり、この位置は、常に妥協点であり、審美的に満足のいくものではない。
【0012】
3.既製の歯が既に組み込まれた、予備成形された成形体をミリングする。これらの方法では主として、補綴物の基底部側のみが個別に製造されるだけに過ぎない。この場合の欠点は、個々の患者のケースとの適合性が極度に制限されており、多数のバリエーションの予備成形された成形体を提供せねばならない点にある。
【0013】
4.複数回のミリング加工と、削り出したキャビティへの再充填とにより、複数の歯色の個別層と補綴物基部とから成る補綴物を層状に形成する。この場合の欠点は、材料損失が大きいことと、時間がかかることとにある。
【0014】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することにある。特に、互いに固く結合された2つの異なる材料から成る歯科用成形体を製造するための方法およびミリング用ボディを提供する可能性を見つけようとするものであり、これらの方法およびミリング用ボディにより、サブトラクティブ式のCAM法を用いた歯科用成形体の迅速かつ資源効率的な製造が可能になる。材料の結合は、付着促進剤としての接着剤なしで行われることが望ましい。特に、2つの材料が、本方法の枠内で直接、互いに接合され得ることが望ましい。このためには、ミリング用ボディが既に適切な特徴を有していることが望ましく、これにより、本方法を可能な限り簡単に手間なく実行することができる。本方法は、歯科技工士にとって可能な限り簡単に手間なく実行可能であり、ミリング用ボディは、本方法の実行に適した特徴を有していることが望ましい。特に、CAD/CAM技術等の全自動化された、または可能な限り十分に自動化された技術が使用されかつ使用可能であることが望ましい。
【0015】
本発明の課題は、請求項1記載のミリング用ボディ、請求項11記載のセット、請求項12記載の方法および請求項25記載の歯科用成形体により解決される。好適な変化形は、従属請求項2~10および13~24により請求される。
【0016】
つまり本発明の課題は、歯科用成形体を製造するためのミリング用ボディであって、ミリング用ボディは、第1の材料から成る中実体を有しており、第1の材料は生体適合性であり、ミリング用ボディの上面には、流動性の重合可能なプラスチックを収容するための中空室が配置されており、中空室は、底部を有しておりかつ中空室は、底部の縁部を起点として、側方を環状の壁により画定されており、環状の壁はリング形であり、第1の材料は底部を形成しており、中実体は、ミリング用ボディの上面とは反対側に配置された、ミリング用ボディの下面まで延びている、ミリング用ボディにより解決される。
【0017】
理論的には、ミリング用ボディの下面に、部分的または全面的に第2の材料が被着されており、この場合、第2の材料が表面的に、ミリング用ボディの外側の下面を形成している、ということが想定されていてもよい。特に、壁は、ミリング用ボディの下面まで延在し、そこから僅かに突出していてもよい。ただし本発明に基づき好適には、ミリング用ボディの下面の表面は、少なくとも部分的に、または特に好適には完全に第1の材料により形成され、この場合、他の材料によっては被覆されない。なぜならば、このことはミリング用ボディの適用を容易にすると共に、構造体を廉価にするからである。
【0018】
理論的には、製造方法の適用の直前もしくは最中に初めて中実体に被せ嵌められ、このとき中実体に固く結合されるか、または別の方法で中実体に固く結合される別個の環状片または別個の管片により、環状の壁を実現することが可能である。これにより、このような構成は、本発明によるもの、または少なくとも等価物と見なされる。
【0019】
第1の材料は、プラスチックであるか、またはプラスチック組成物であり、好適にはポリメチルメタクリレート(PMMA)またはPMMA含有プラスチック組成物および/または高温ポリマーである、ということが想定されていてよい。
【0020】
本発明の意味での環状の壁は、凹部を有しており、凹部は、この凹部の幾何学的な中心点を取り囲んでいる。好適には、凹部はアンダカットなしで形成されておりかつ/または凹部内の任意の点は、直線で、この直線が環状の壁の内側に延びることなしに、凹部内の任意の別の点に結び付くことができる。好適には、凹部はコンパクトな幾何学形状体である。
【0021】
中空室は、好適には歯科用成形体を製造する方法により加工される前は、製造しようとする歯科用成形体の外側表面により直接に規定される表面を有してはいない。特に、歯の輪郭、歯列弓および/または補綴物基部の輪郭はない。寸法のみが、好適には歯科用成形体の典型的なまたは最大のサイズに合わせて調整されていてよい。
【0022】
本発明の意味でのミリング用ボディとは、ミリング工具を用いたサブトラクティブ式の加工に適しており、かつその幾何学形状の寸法がCAMミリング機械における取扱いに適した固形体を意味する。
【0023】
本発明によるミリング用ボディでは、環状の壁は、最大20mm、好適には最大10mm、特に好適には最大5mmの壁厚さを有している、ということが想定されていてよい。また、環状の壁の高さは、少なくとも5mm、好適には少なくとも15mmである、ということが想定されていてもよい。
【0024】
環状の壁の高さは、中空室の底部の平面からの、環状の壁の上縁部の距離に関係する。
【0025】
好適には、環状の壁は、均一な壁厚さおよび/または均一な高さを有している。
【0026】
これにより、ミリング用ボディは、その寸法に関して、歯科用成形体を製造するための半製品として使用するために良好に適している。
【0027】
ミリング用ボディは、50mm~150mmの外寸を有しており、特に50mm~150mmの直径を有している、ということが想定されていてもよい。このような寸法は、歯科用成形体にとって有意であり、十分である。
【0028】
さらに、環状の壁の、中空室を画定する少なくとも1つの内面に、中空室内の充填レベルを測定するためのマーキングが配置されており、この場合、好適には、マーキングは、等間隔の目盛り線および/または数値を備えたスケール、特に好適には中空室内の流動性の重合可能なプラスチックの充填高さまたは体積を測定するための縦型スケールを有している、ということが想定されていてよい。
【0029】
これにより、ユーザが的確に、適正な所望量の流動性の重合可能なプラスチックを中空室内に充填することができる。これにより、材料を浪費しないようにすると同時に、ミリング用ボディを後でサブトラクティブ式に加工する時間が短縮され、これにより、場合によってはミリング工具も保護されることになる。
【0030】
マーキングとしては、環状の壁の内面に刻み目が配置されていてよいか、または本発明による方法の最中に形成されてもよく、刻み目は、流動性の重合可能なプラスチックを充填することができる充填高さを測定するために使用され得る。刻み目には、周面を越す延長部として適当な長さを有するロッドまたはガイドが挿入されてもよい。ガイドは、CAM装置におけるミリング用ボディの再位置決めを容易にすることができる。
【0031】
さらに、中空室の底部は平らでありかつ/または環状の壁は、中空室の内部に対して円筒形の表面を有しており、この場合、好適には、環状の壁は管状である、ということが想定されていてよい。
【0032】
これにより、特に簡単かつ廉価に製造され得るミリング用ボディが提供される。
【0033】
ミリング用ボディの環状の壁は、中実体に固定された管片またはリング体により形成されており、この場合、好適には、ミリング用ボディは、第1の材料と、管片またはリング体とから成るか、またはミリング用ボディの環状の壁は、第1の材料から成り、この場合、好適には、中実体と環状の壁とは一体に形成されており、これにより、ミリング用ボディは第1の材料から成っている、ということが想定されていてもよい。
【0034】
両手段は、ミリング用ボディの簡単かつ安価な製造を可能にする。
【0035】
好適には、管片またはリング体は、中実体に液密に結合されている、ということが想定されていてよい。同様に、管片またはリング体は、中実体に全面的にかつ/または周方向において接着されている、ということが想定されていてよい。
【0036】
好適には、第1の材料は、第1のプラスチック材料であり、この場合、好適には、第1のプラスチック材料は最終硬化させられている、ということが想定されていてもよい。
【0037】
プラスチック材料は廉価に製造され得る。最終硬化させられた第1のプラスチック材料を使用することにより、第1のプラスチック材料の後硬化による、第1のプラスチック材料のミリング後の形状変化を防ぐことができる。
【0038】
さらに、第1の材料は、異なる色調の複数の層を備えた、積層された第1のプラスチック材料であり、この場合、層の層平面は、好適には中空室の底部に対して平行に配置されているか、または環状の壁に対して垂直に、特に環状の壁の円筒形の内壁の基底面に対して平行に配置された平面に対して平行に配置されている、ということが想定されていてよい。
【0039】
この手段により、第1の材料から審美的に魅力的な歯科用成形体を製造することができる。このことは特に、第1の材料から義歯を製造する場合に重要である。したがって、第1の材料は、本発明では好適には、それぞれ異なる歯色の色調の層を備えた歯色の積層材料であり、この場合、好適には中空室に向かって、より暗色の層が配置されている傾向にある。好適には、第1の材料は、それぞれ異なる色の歯色の層から成る多層材料である。
【0040】
さらに、ミリング用ボディは、円筒形の外周部を備えた円形ブランクであり、この場合、環状の壁は、円筒形の外周部の部分領域を形成しており、この場合、好適には、円筒形の外周部の外面に、円形ブランクをCAM装置に固定するための保持部が配置されており、この場合、特に好適には、保持部は、円筒形の外周部を包囲している突出したリングである、ということが想定されていてよい。
【0041】
これにより、ミリング用ボディを、任意の軸線方向においてCAM装置に固定することができる。さらに、このようにしてミリング用ボディを再位置決めすることもできる。
【0042】
中実体は追加的に、円筒形の外周部に段部を有しており、この段部に環状の壁が被せ嵌められており、段部に環状の壁が取り付けられているかまたは取付け可能である、ということが想定されていてもよい。
【0043】
1つの好適な構成では、ミリング用ボディは、中空室の外側の表面に、外部から見える少なくとも1つの位置マーキングを有しており、位置マーキングは、CAM装置におけるミリング用ボディの位置および向きの特定を可能にしており、この場合、少なくとも1つの位置マーキングは、好適にはミリング用ボディの上面および/または下面の方向から見える、ミリング用ボディの少なくとも1つの縁部の領域に配置されており、この場合、特に好適には、ミリング用ボディの上面からも下面からも見える少なくとも2つの位置マーキングが設けられている、ということが想定されていてよい。
【0044】
これにより、CAM装置におけるミリング用ボディの位置および向きを、カメラを用いてまたは別のセンサを用いて(例えば磁気的に)測定し、これにより検査することができる。
【0045】
また、環状の壁の材料の体積は、最大で中空室の容積の1/2であり、好適には、環状の壁の材料の体積は、最大で中空室の容積の1/3であり、特に好適には、環状の壁の材料の体積は、最大で中空室の容積の1/5である、ということが想定されていてもよい。
【0046】
これにより、より多くの材料削減が達成される。さらにこのようにして、充填されるべき流動性の重合可能なプラスチック用に、より大きな容積を提供する可能性が開かれる。これにより、流動性の重合可能なプラスチックの硬化により形成される、硬化させられたプラスチック材料から、歯科用成形体の、より大きなもしくはよりかさばる部分を製造することができる。
【0047】
さらに、中実体は、環状の段部を有しており、この段部に環状の壁が被せ嵌められており、これにより、環状の壁は、内面で中実体に面一に接触しており、この場合、好適には、環状の壁は全面的に周方向において中実体に接着されている、ということが想定されていてよい。
【0048】
これにより、製造が簡略化されると共に、環状の壁を再使用することができる。好適には、この目的のために、中実体は少なくとも1つの段状の環状縁部を、環状の壁としてのリング体または管片の接触用に有している、ということが想定されていてもよい。
【0049】
本発明の根底を成す課題は、上述の本発明によるミリング用ボディと、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックおよび/または少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを製造するための出発成分とを含む歯科用成形体を製造するためのセットであって、好適にはこのセットは追加的に、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを充填しかつ/または少なくとも流動性の重合可能なプラスチックを製造しかつ混合する少なくとも1つの装置を有している、セットにより解決される。
【0050】
流動性の重合可能なプラスチックは、極めて粘性であってもよいが、ただしこの場合は、室温または使用温度において少なくともペースト状であり、原型製作可能でなければならない。ただし好適には低粘度である。低粘度のプラスチックは、室温での水または菜種油の範囲の粘度を有している。
【0051】
本セットは、2つの異なる材料から成る歯科用成形体の完全な製造を可能にし、このようにして、この装置を完璧にする。
【0052】
本発明の根底を成す課題はさらに、上述のミリング用ボディを使用して、またはこのようなセットを使用して歯科用成形体を製造する方法により解決され、本方法では、歯科用成形体を、本方法において互いに結合される少なくとも2つの異なる材料から製造し、本方法は、以下の時系列的なステップを特徴とする。すなわち:
A)歯科用成形体の外形および少なくとも2つの異なる材料の結合表面の形状の仮想三次元モデルに応じてサブトラクティブ式のCAM法により、ミリング用ボディの中空室の底部と、ミリング用ボディの第1の材料とに、少なくとも2つの異なる材料の間の結合表面と、製造しようとする歯科用成形体の表面の部分領域のネガ型とを形成し、このとき、結合表面とネガ型とは相接しており、ミリング用ボディの環状の壁は維持したままにするステップ、
B)少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、ミリング用ボディの中空室内と、ステップA)において除去したミリング用ボディの底部における容積内とに充填し、このとき、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、所定の充填レベルで中空室内に充填し、これにより、環状の壁が、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの、少なくとも最後に充填された、または外側に被着された流動性の重合可能なプラスチックと接触することになり、中空室内および凹部内の少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを硬化させ、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの硬化時に、ミリング用ボディの中空室内に、ミリング用ボディの第1の材料に固く面一に結合された、硬化させられたプラスチック材料を生ぜしめるステップ、
C)硬化させられたプラスチック材料を、ミリング用ボディの上面の方向からCAM法により、歯科用成形体の仮想モデルの基底部表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、かつ第1の材料を、ミリング用ボディの下面の方向からCAM法により、歯科用成形体の仮想モデルの咬合表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、これにより、硬化させられたプラスチック材料と、この硬化させられたプラスチック材料に結合された第1の材料とから、歯科用成形体をサブトラクティブ式に製作するステップ。
【0053】
本発明では、ステップC)において、ミリング用ボディの上面の方向から、硬化させられたプラスチック材料の基底部のサブトラクティブ加工を行い、ミリング用ボディの下面の方向から第1の材料の咬合部のサブトラクティブ加工を行う、ということが想定されていてよい。
【0054】
第1の材料は、本発明に基づき好適には、流動性の重合可能なプラスチックの重合により生じる硬化させられたプラスチック材料よりも大きな耐摩耗性を有している。
【0055】
歯科用成形体とは、歯科医学または歯科医療において使用され、その外形が、患者の口腔内の解剖学的に特有の表面に関係している成形体を意味する。これに関する例は、歯科用補綴物、歯科用部分補綴物、個々の歯または歯の部分を備えた歯科用総補綴物、ナイトガード、顎矯正ブレース、および様々な成形体の部分である。
【0056】
本発明では好適には、ミリング用ボディから製造しようとする歯科用成形体は、歯科用補綴物である。ミリング用ボディは、歯科用補綴物の製造に特に良好に適しているか、もしくは本発明の利点は、ミリング用円形ブランクを用いて歯科用補綴物を製造する場合に、特に強い影響を及ぼす。同じことは、同様に歯科用補綴物の製造に特に良好に適した本発明による方法にも当てはまる。
【0057】
少なくとも2つの異なる材料の間の違いは、少なくとも2つの異なる材料のそれぞれ異なる色調にあってよいが、しかしまた択一的または追加的には、例えば耐摩耗性、硬度、透明度、弾性変形性および/または弾性等の、他の様々な物理的な特性により実現されていてもよい。
【0058】
サブトラクティブ式の方法とは、例えば本発明では好適にはミリング法等の材料除去方法を意味する。このようなミリング法は、特に好適にはCAM装置としてのコンピュータ制御式の多軸ミルにより実施され得る。
【0059】
硬化させられたプラスチック材料は、好適には少なくとも歯科用成形体の表面において生体適合性である。
【0060】
ステップC)の前かつ好適にはステップB)の後に、ミリング用ボディをCAM装置に、特にミリング用ボディの保持部を介して固定する、ということが想定されていてよい。
【0061】
硬化は、流動性の重合可能なプラスチックに圧力を加えるプレスラムを用いて行うことができる。
【0062】
本発明による方法では、ステップA)においてミリング用ボディの中空室の底部と、ミリング用ボディの第1の材料とに製造される、歯科用成形体の表面の部分領域のネガ型を、オフセットを備えて形成し、この場合、オフセットは、歯科用成形体の仮想モデルの体積を、歯科用成形体が第1の材料から成るべきではない領域において拡大する、ということが想定されていてよい。
【0063】
歯科用成形体の表面の部分領域のネガ型用のオフセットとは、歯科用成形体の体積をより大きくする、成形体の表面の拡張、特に歯科用成形体の表面の均一な拡張を意味する。これにより、引き続くサブトラクティブ加工を、ミリング用ボディの下面の方向(特に歯科用成形体の咬合部の方向)から、仮想モデルに相応してオフセットなしで、硬化させられたプラスチックにおいて行う、ということが達成される。これにより、ミリング用ボディの下面の方向からミリング用ボディをサブトラクティブ加工した後は、歯科用成形体の表面にも第1の材料の残留物が残ることはなく、このようにして、本方法により製造された歯科用成形体の審美的な外観および/または物理的な特性にはネガティブな影響が及ぼされない、ということが保証され得る。オフセットは、例えば本発明では好適には、ミリング用ボディの下面の方向に向けられた、歯科用成形体の仮想モデルの、第1の材料から成るべきではない表面が、計算により、所定の距離ベクトルを補足されることにより達成され得る。この場合、距離ベクトルは、ミリング用ボディの下面の方向に向けられていてよく、これにより、歯科用成形体の仮想モデルの、第1の材料から成るべきではない表面の平行移動が行われる。択一的に、距離ベクトルは、歯科用成形体の仮想モデルの表面に対して垂直に配置されてもよく、これにより、仮想モデルの当該表面は均一に拡張されることになる。オフセットを生ぜしめるための距離ベクトルまたは他の計算方法の使用に対する他の同等のまたは類似の手段は、当業者には容易に想定可能かつ実現可能である。
【0064】
さらに、歯科用成形体は、ナイトガードであって、この場合、第1の材料は、硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度を有しているか、または歯科用成形体は、歯科用の部分補綴物または総補綴物の形態の歯科用補綴物であり、この場合、歯科用補綴物は、補綴物基部と少なくとも1つの義歯とを有しており、この場合、少なくとも1つの義歯は、第1の材料から製造され、かつ補綴物基部は、硬化させられたプラスチック材料から製造され、この場合、第1の材料は歯色であり、硬化させられたプラスチック材料は歯肉色であり、この場合、好適には、第1の材料は、硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度および/または耐摩耗性を有している、ということが想定されていてよい。
【0065】
これにより、歯科用成形体の使用時に特に強く負荷される咬合表面もしくは義歯は、歯科用成形体の、歯および/または口腔粘膜と接触することになる基底部表面よりも大きな硬度および/または耐摩耗性を有している、もしくは義歯を支持する補綴物基部は、その時々の目的に適した別の物理的な特性を有している、ということが達成される。
【0066】
より大きな硬度としては、特により大きなビッカース硬度が想定されていてよい。耐摩耗性は、摩擦作用(歯のすり減り)による材料損失(歯の摩耗)に対する耐久性を表す。人工歯の耐摩耗性は、歯科医学において人工歯の摩耗挙動を調査したものである。同じことは、咬合面において使用される他の材料にも当てはまる。それらの測定方法は、歯科技術分野の当業者には、例えば国際公開第2016/008857号およびそこに引用された出典から公知である。
【0067】
さらに、ステップB)において、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックのうちの少なくとも1つが、充填時に少なくとも、ステップA)において第1の材料に形成された表面を全面的に濡らす、ということが想定されていてよい。
【0068】
これにより、第1の材料と、硬化させられたプラスチック材料との間に安定的な結合が生ぜしめられる、ということが達成される。
【0069】
好適には、ステップC)において、ミリング用ボディの下面の方向からCAM法により、歯科用成形体の仮想モデルの咬合表面に応じて、第1の材料および硬化させられたプラスチック材料のサブトラクティブ加工を行う、ということが想定されていてもよい。
【0070】
また、ステップC)において、ミリング用ボディの上面の方向からCAM法により、歯科用成形体の仮想モデルの基底部表面に応じて、硬化させられたプラスチック材料および第1の材料のサブトラクティブ加工を行う、ということが想定されていてもよい。
【0071】
特に歯科用の部分補綴物または総補綴物の製造において有利なのは、ステップC)において、第1の材料の咬合部をサブトラクティブ加工する他に、硬化させられたプラスチック材料も、ミリング用ボディの下面の方向からCAM法により咬合部を加工することであり、これにより、歯科用の部分補綴物または総補綴物の補綴物基部は、少なくとも見えている表面または咬合表面全体において、硬化させられたプラスチック材料から成っており、ひいては歯肉色であり、歯科用の部分補綴物または総補綴物の審美的な外観を損なう恐れのある歯色の箇所を有することはない。
【0072】
歯のない顎または口腔粘膜における支持面では、理論的に歯色の第1の材料も見えていてよい。
【0073】
別の歯科用成形体に関しても、ミリング用ボディの下面(咬合方向)からの、硬化させられたプラスチック材料の加工、およびミリング用ボディの上面(基底部方向)からの第1の材料の加工が有意であってよい。
【0074】
さらに、ステップA)において、環状の壁の、ミリング用ボディの中空室を画定する内面に、少なくとも1つのマーキングを取り付け、特に少なくとも1つのマーキングを、サブトラクティブ式のCAM法により環状の壁の内面に形成し、この場合、少なくとも1つのマーキングの、中空室の底部からの距離を、歯科用成形体の仮想モデルに応じて決定し、この場合、好適には、少なくとも1つのマーキングは、少なくとも1つの目盛り線であり、この場合、ステップB)において、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、中空室内の少なくとも1つのマーキングの高さまで充填する、ということが想定されていてよい。
【0075】
これにより、少なくとも1つの流動性プラスチックの材料を節約することができ、より少ない廃棄物が生じ、引き続く、ミリング用ボディの上面からの、硬化させられたプラスチック材料のサブトラクティブ加工をより迅速に実施することができ、この場合、このために使用されるCAM装置の工具が保護されることになる。
【0076】
この場合、少なくとも1つのマーキングは、環状の壁の内面において、少なくとも1つのスケール等の、少なくとも1つの既存のマーキングの領域内に形成される、ということが想定されていてよい。この場合、このマーキングまたはスケールに基づき、ユーザは場合により、充填すべき体積の量を見積もることができる。このことは特に、ユーザが、ステップA)において第1の材料から除去された体積を知っているか、もしくはこの体積がディスプレイ上でユーザに表示される場合に上手くいく。この体積は、第1の材料から製造すべき部分を差し引き、場合によりオフセットを加えた歯科用成形体の仮想モデルに基づき、かつ第1の材料におけるネガ型の位置から容易に算出され得る。
【0077】
ステップA)の前に、またはステップB)の前かつステップA)の後に、リング体または管片を中実体に取り付け、これにより、リング体または管片が環状の壁を形成し、この場合、好適にはリング体または管片を、ステップB)の後かつステップC)の前に再び除去する、ということが想定されていてよい。
【0078】
これにより、別の方法に適したリング体または管片を使用することができるようになっている。さらにこのようにして、ミリング用ボディのために特に簡単な構造を選択することができる。リング体または管片を中実体に接着し、この場合、接着剤を周方向においてかつ/または全面的に、結合表面に被着し、これにより、リング体または管片を中実体に液密に結合する、ということが想定されていてよい。これにより、流動性の重合可能なプラスチックがステップB)において中空室から流出する恐れがある、ということが防がれる。
【0079】
さらに、ステップC)の前に、ステップB)で形成された、硬化させられたプラスチック材料の表面の平面を確定するためにゼロ点シフトを計算し、この場合、ステップC)において、サブトラクティブ加工が硬化させられたプラスチック材料の表面の平面内で始まるように、ゼロ点シフトを考慮する、ということが想定されていてよい。
【0080】
これにより、本方法を短縮することができる。それというのも、工具が、空の空間内で案内されてサブトラクティブ加工を実施するのではなく、硬化させられたプラスチック材料が存在する領域内で-または少なくともそのすぐ近くで-開始するからである。
【0081】
さらに、ステップC)において少なくとも一回、CAM装置内に固定されたミリング用ボディのポジションおよび位置を、ミリング用ボディに設けられた少なくとも1つのマーキングに基づき特定し、CAM装置の制御時にミリング用ボディのポジションおよび位置を考慮し、この場合、好適には、CAM装置内に固定されたミリング用ボディのポジションおよび位置の特定は、全自動で特定される、ということが想定されていてよい。
【0082】
これにより、歯科用成形体が所望の形式で、ミリング用ボディと、硬化させられたプラスチック材料とから製作される、ということが保証される。これは特に、ミリング用ボディがステップC)の最中に新たにCAM装置内に取り付けられる場合に重要かつ有益である。
【0083】
好適には、ステップA)の後かつステップB)の前に、ステップA2)が行われる、ということが想定されていてもよい。
【0084】
ステップA2)は、結合表面、または結合表面およびネガ型、または結合表面およびネガ型を含む、中空室の底部における第1の材料の自由にアプローチ可能な表面全体を洗浄しかつ/または前処理し、好適には前処理時に、第1の材料の表面の化学処理を行い、特に好適にはモノマー液による第1の材料の表面の化学的膨張を行うステップであり、この場合、第1の材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有するか、またはPMMAから成るプラスチック組成物である。
【0085】
これにより、第1の材料と、硬化させられたプラスチック材料との間に特に安定的な結合が生ぜしめられる。
【0086】
さらに、ステップB)における少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に標準圧力を上回る圧力、好適には少なくとも150kPaの圧力、特に好適には少なくとも200kPaの圧力、極めて特に好適には少なくとも200kPaかつ最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、ということが想定されていてよい。
【0087】
これにより、第1の材料と、充填された流動性の重合可能なプラスチックとの間に封入された空気を排出することができ、このようにして、歯科用成形体における脆弱箇所または表面損傷を回避もしくは減らすことができる。このためには、例えば「パラマートエリート」圧力重合ユニットを使用することができる。さらに、ステップB)における少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの充填時に詰め込んだ場合、または過剰圧力を使用した場合には、例えばMMAを基礎としたプラスチックにおいて生じるような沸騰泡を回避することができる。
【0088】
ステップB)における少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に最高1000kPaの圧力、好適には最高500kPaの圧力、特に好適には最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、ということが想定されていてよい。
【0089】
さらに、ステップB)における少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、好適には少なくとも100kPaかつ最高1000kPaの圧力、特に好適には少なくとも150kPaかつ最高500kPaの圧力、極めて特に好適には少なくとも200kPaかつ最高400kPaの圧力で実施する、ということが想定されていてもよい。
【0090】
また、ステップB)における流動性の重合可能なプラスチックの硬化を、熱および/または圧力の作用により行い、この場合、好適には、硬化を10分~120分、特に好適には30分~60分の時間にわたり行う、ということが想定されていてよい。
【0091】
これにより、硬化させられたプラスチック材料の良好な強度を達成することができる。流動性の重合可能なプラスチックから製造される硬化させられたプラスチック材料として、好適には高温ポリマーまたは低温ポリマーが使用されるか、もしくは流動性の重合可能なプラスチックとして、高温ポリマーまたは低温ポリマーの出発成分が使用される。これにより、硬化させられたプラスチック材料もしくは歯科用成形体は、アレルギー患者にも適している。したがって、第1の材料用にも高温ポリマーまたは低温ポリマーが適しているが、ただし好適には既に最終硬化させられている。
【0092】
本発明の根底を成す課題は、上述の方法により製造された歯科用成形体、特に歯科用補綴物またはナイトガードによっても解決される。
【0093】
本発明の根底を成す意外な知見は、歯科用成形体を製造するためのミリング用ボディの上面に、第2の材料としての流動性の重合可能なプラスチックを充填するための中空室を設けて使用することにより、対応するCAM法のCAD計算時に歯科用成形体の咬合側の位置を的確に選択することで、サブトラクティブ式に削り出さねばならない、もしくは除去せねばならない第1の材料の量を減らすことに成功している、という点にある。つまりこの場合、より耐摩耗性の義歯または歯科用成形体の咬合部分の基底部表面を、中空室の底部の領域内に置くことで十分である。この場合、補綴物基部もしくは基底部分を製造するための、より軽量でより簡単にミリング可能なプラスチックを、形成された中空室内に簡単に充填することができると同時に、所望の高さまでしか中空室内に充填せずに済むため、ここでも第2のプラスチック材料の材料節約が生ぜしめられる。この場合、特に、如何なる材料節約も、特に耐摩耗性の材料を加工しようとする場合には、自動的に時間の節約および使用工具の保護につながる。
【0094】
本発明により、特にミリング用ボディ、セット、および本発明による方法により、最終形態を直接ミリングすることにより、歯科用成形体の高い適合精度が達成される。義歯の接着時に手間が生じることはなく、歯科用成形体に、接合プロセスによる不均一性が生じることもない。同時に、第1の材料から成る中実体を完全に硬化させることにより、義歯用の特に耐摩耗性の材料を得ることができ、積層された第1の材料を使用することにより、特に審美的に魅力的な義歯材料を得ることができる。歯科用補綴物では、歯肉色から歯色への自然な色移行が適正な箇所で生じており、この場合、妥協せずに済む。この場合、特に高い審美性は、歯色の中実体として多層ミリングディスクを使用することにより達成され得る。
【0095】
本発明によるミリング用ボディから本発明による方法で製造することは、二段階のみの製造プロセスにおいて行うことができる。つまり、歯科用成形体を製造するために二段階の方法が使用され得る。さらに、様々な形状バリエーションのブランクもしくはミリング用ボディは不要である。しかしまた、それぞれ異なる大きさのミリング用ブランクの極小さなセットを使用することもできるか、もしくはこのような極小さなセットが有利であってよい。
【0096】
ミリング用ボディの中空室は、より少ない所要材料除去量と、工具摩耗もしくはミル摩耗とを伴う、ミリング手間の低減を可能にする。ユーザは、流動性の重合可能なプラスチックの色調自体を決定すると共に変更することができ、例えば、変更された外観を選択もしくは形成することができる。既に設けられていてよい、または第1のミリング過程で形成され得る、内側に位置する充填量マーキングが、第2のミリング過程前の確実なプロセスでの充填を可能にする。
【0097】
歯科用補綴物(歯科用成形体としての歯科用総補綴物または歯科用部分補綴物)を製造する、本発明による1つの例示的な方法は、以下の順序を有していてよい。
【0098】
1.補綴作業をデジタル設計し、複数のデータセグメントに分ける。必要とされるのは、歯科用補綴物の咬合もしくは口腔上面、基底部の下面に関するデータ、ならびに歯色部分の基底部面と歯肉色部分の上面(口腔側)とから成る、結合表面としての中間表面データである。咬合または口腔上面に関するデータの作成に際して、場合によりCAD内に、歯肉色部分に対する追加的なオフセットが設けられる。
【0099】
2.個々のプロセスステップを処理するための適切なミリング戦略を開発する。必要とされるのは、下面の片側加工、ならびに使用されるミリング用ボディに適合するゼロ点シフト、ならびに好適には、上面と下面とに対する、互いに別個の相応するゼロ点シフトを伴う、両面加工用の別のゼロ点シフトである。
【0100】
3.ミリング機械に、サイズが少なくとも歯色の部分に相応するミリング用ボディまたはミリング用ボディの歯色の中実体を固定し、中間面データと、補綴物基部の咬合もしくは口腔上面に関するデータとを、基底部から、場合により(補綴物基部の)歯肉色の部分を口腔方向に僅かにオフセットさせてミリングする。ミリング用ボディまたは歯色の中実体には、好適には、位置決め前に、再位置決めを可能にする位置マーキングを設けることができる。
【0101】
4.部分ミリングされたブランクを取り出し、ミリング用ボディが既に環状の壁により画定された中空室を上面に有していない場合には、削り出された領域と、所要の追加的な容積とにより簡単に充填するように上面に中空室を形成するために、ミリング用ボディの環状の壁として円筒状のリング体を任意に載置し、この場合、環状の壁は、好適にはミリング用ボディの中実体と一体に形成されている。
【0102】
5.中空室に、流動性の重合可能なプラスチックの形態の補綴物材料(好適には粉末-液体系)を充填するかまたは部分的に充填し、アナログ製造法で重合させる。その後、場合により支持リングを除去し、場合により、例えば水中保管等により、硬化させられたプラスチック材料の所要の後処理を行う。
【0103】
6.ミリング機械において、充填され部分ミリングされたブランクを再位置決めし、最終的な補綴物設計に従って外側幾何学形状を基底部と口腔部とにおいてミリングする。
【0104】
ミリングの手間を減じるために、いっぺんに歯色の中実体と、片面に形成された中空型とを備えたミリング用ボディが使用される場合には、4.で述べた、円筒形のリング体の取付けを省くことができる。
【0105】
中空型内に、ステップ3.の最中に充填マークまたは別の適切な表示を取り付けることができ、これにより、ステップ5.における、ユーザによる流動性の重合可能なプラスチックの十分な、ただし過度に遅くはない充填を検査可能に保証することができる。
【0106】
本方法の終了として、歯科用補綴物の研磨および/または化学処理による表面調質を行うことができる。
【0107】
次に、本発明の実施例を、概略的に示された11の図に基づいて説明するが、この場合、本発明を限定することはない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】本発明による第1のミリング用ボディの上面を示す概略的な斜視図である。
図2】本発明による第2のミリング用ボディの側面を示す概略的な斜視透過図である。
図3】本発明によるミリング用ボディを用いて本発明による方法により製造された歯科用補綴物の咬合側を示す概略的な斜視図である。
図4図2に示したミリング用ボディを、このミリング用ボディを用いて製造しようとする、図3に示した歯科用補綴物の横断面と位置と共に概略的に示す側面図である。
図5図2および図4に示したミリング用ボディを、このミリング用ボディを用いて製造しようとする、図3に示した歯科用補綴物の別の断面における横断面と位置と共に概略的に示す側面図である。
図6図2図4および図5に示したミリング用ボディ内の、図3に示した歯科用補綴物の位置を概略的に示す斜視図である。
図7図2および図4図6に示したミリング用ボディの上面を、図3に示した歯科用補綴物の補綴物基部の、中空室の底部から突出した基底部部分と共に概略的に示す斜視図である。
図8図2および図4図7に示したミリング用ボディを、このミリング用ボディを用いて製造しようとする、図3に示した歯科用補綴物の横断面と、咬合表面の位置と共に概略的に示す側面図である。
図9】結合表面および補綴物基部の口腔側用のネガ型をサブトラクティブ式に製作した後の、図2および図4図8に示したミリング用ボディの上面を概略的に示す図である。
図10】予め充填され、次いで硬化させられたプラスチック材料からサブトラクティブ式に製作された後の歯科用補綴物の基底部側を概略的に示す図である。
図11】第1の材料と、予め充填され、重合して硬化させられたプラスチック材料とからサブトラクティブ式に製作された後の歯科用補綴物の咬合側もしくは口腔側を概略的に示す図である。
【0109】
図1には、本発明による第1のミリング用ボディ1の上面(図1の上部)を示す概略的な斜視図が示されている。ミリング用ボディ1は、第1の材料から成る中実体2を有している。中実体2は、ミリング用ボディ1の上面とは反対側に位置する下面(図1では見えない)まで延びている。第1の材料は、完全に重合された歯色のプラスチックであってよく、このプラスチックは、義歯の製造に適しており、このために必要な耐摩耗性を有している。第1の材料は、患者の口腔内での適用に適しているようにするために、ミリング用ボディ1において、好適には既に生体適合性であることが望ましい。
【0110】
ミリング用ボディ1の上面には、底部6を備えた中空室4が配置されており、この場合、中空室4は、側方において環状の壁8により画定されている。底部6は、(好適には完全に)中実体2により形成される。環状の壁8は、第1の材料から成っていてよいか、または別の材料から成っていてよい。特に環状の壁8は、中実体2に被せ嵌められ、そこで中実体2に固く結合されたリング体または管片であってよい。結合は、接着により行われてよい。中実体2は、円筒形に形成されていてよい。中実体2は、環状の壁8としてリング体または管片を被せ嵌めるために、外周に段部を有していてよく、この段部にリング体または管片が面一に被せ嵌められている。環状の壁8は、特に円筒形の管片であってよい。環状の壁8は、金属リング体であってもよい。
【0111】
環状の壁8の、中空室4に面した内面には、中空室4内の充填レベルを測定するためのマーキング9が配置されていてよい。しかしまた、マーキング9は、歯科用成形体を製造する方法の進行中に初めて、環状の壁8に取り付けられても、例えば削り込まれてもよい。マーキング9に基づき、中空室4内に充填されるべき流動性の重合可能なプラスチック(図1には図示せず)を、適正な高さまで充填することができる。
【0112】
ミリング用ボディ1の少なくとも1つの外壁には、ミリング用ボディ1をCAM装置内に固定するための少なくとも1つの保持部10が配置されていてよい。保持部10は、ミリング用ボディ1の外壁から、被せ嵌められた、矩形の横断面を有するトーラスとして突出していてよい。図1に示す保持部10に対して択一的に、保持部は別の形式で、例えば突出した突起により、または側面に設けられた凹部により実現されてもよい。保持部10は、CAM装置(図示せず)内での固定に用いられる。
【0113】
図1に示すミリング用ボディ1は、本発明による方法では、以下のように使用され得る。ミリング用ボディ1は、コンピュータ制御式の多軸ミル等のサブトラクティブ式のCAM装置内に保持部10を介して固定される。形成しようとする歯科用成形体の仮想CADモデルを用いて、底部6に、仮想CADモデルに応じた、第1の材料と、流動性の重合可能なプラスチックから製造されるべき硬化させられたプラスチック材料との間の結合表面に相当する表面が形成される。さらに、硬化させられたプラスチック材料から成る表面の咬合表面もしくは口腔表面が、サブトラクティブ式のCAM装置により、ネガ型として中実体2から製作される。この場合、オフセットを用いることができ、これにより、ネガ型は、咬合表面もしくは口腔表面がCADモデルに基づき直接的なネガ型において硬化させられたプラスチック材料のために必要とするであろうよりもやや深く、好適には少なくとも数十分の1ミリメートル深く、中実体2内に製作される。追加的に、このステップにおいて初めてマーキング9を環状の壁8に形成することができる。次いで、このようにして新たに中実体2の底部6に形成された表面を洗浄することができる。
【0114】
その後、流動性の重合可能なプラスチック(図示せず)を中空室4内に、つまり、硬化させられたプラスチック材料から成る歯科用成形体の部分を、仮想CADモデルに相応して基底部側において完全に、硬化させられたプラスチック材料から製作することができるようにするために十分な高さまで、充填することができる。流動性の重合可能なプラスチックは、圧力および熱の作用下で硬化可能であり、硬化させられたプラスチック材料を形成する。次いで、中間生成物を再びサブトラクティブ式のCAM装置内に取り付け、歯科用成形体をCAM装置により、歯科用成形体の仮想CADモデルの咬合もしくは口腔表面および基底部表面に基づき製作することができる。この場合、歯科用成形体(例えば義歯)の第1の部分は、成形体の第1の材料から成り、歯科用成形体の第2の部分(例えば補綴物基部)は、硬化させられたプラスチック材料から成る。
【0115】
歯科用補綴物に対して択一的に、本方法を用いて同様に、ナイトガードを製造することができ、このナイトガードの咬合表面は、第1の材料から成り、かつナイトガードの、患者の歯に接触する基底部表面は、硬化させられたプラスチック材料から成る。このことは、適切な材料特性を組み合わせかつ/または審美的に魅力的なカラーグラデーションを生ぜしめるために利用され得る。
【0116】
図2には、本発明による第2のミリング用ボディ11の側面を示す概略的な斜視透過図が示されている。ミリング用ボディ11は、第1の材料から成る中実体12を有している。中実体12は、ミリング用ボディ11の上面21とは反対の側に配置された下面19まで延びている。第1の材料は、完全に重合された歯色のプラスチックであってよく、このプラスチックは、義歯の製造に適しており、このために必要な耐摩耗性を有している。第1の材料は、患者の口腔内での適用に適しているようにするために、ミリング用ボディ1において既に生体適合性であることが望ましい。
【0117】
ミリング用ボディ11の上面21には、底部16を備えた中空室14が配置されており、この場合、中空室14は、側方において環状の壁18により画定されている。底部16は、好適には完全に中実体12により形成される。環状の壁18は、第1の材料から成っていてよいか、または別の材料から成っていてよい。特に環状の壁18は、中実体12に被せ嵌められ、そこで中実体12に固く結合されたリング体または管片であってよい。結合は、接着により行われてよい。中実体12は、円筒形に形成されていてよい。環状の壁18は、円筒形の管片であってよい。環状の壁18は、金属リング体であってもよい。
【0118】
環状の壁18の、中空室14に面した内面には、中空室14内の充填レベルを測定するためのマーキング(図2では見えない)が配置されていてよい。しかしまた、マーキングは、本発明による方法の進行中に初めて、環状の壁18に取り付けられても、例えば削り込まれてもよい。マーキングに基づき、中空室14内に充填されるべき流動性の重合可能なプラスチック(図2には図示せず)を、適正な高さまで充填することができる。
【0119】
ミリング用ボディ11の少なくとも1つの外壁には、ミリング用ボディ11をCAM装置内に固定するための少なくとも1つの保持部20が配置されていてよい。保持部20は、ミリング用ボディ11の外壁から突出していてよい。保持部20は、突出した環状のリングにより形成されていてよい。
【0120】
図3には、本発明によるミリング用ボディ1,11を用いて本発明による方法により製造された歯科用補綴物22を示す概略的な斜視図が示されている。歯科用補綴物22は、歯肉色の硬化させられたプラスチック材料から成る補綴物基部24を有している。複数の義歯26が、一体的な歯列として補綴物基部24に結合されていてよい。義歯26は、第1の材料から成り、かつ歯色であり、特に良好な審美的外観を保証するために、好適には色的に積層されて構造化されている。義歯26と補綴物基部24とは、これらが本発明による方法により製造された場合には、互いに直接に結合されている。図3では、歯科用補綴物22の咬合もしくは口腔表面28が認められる。歯科用補綴物22は、予め周知の形式で患者データと、場合により別の処理とに基づき設計された仮想CADモデルを用いて形成され、この場合、仮想CADモデルは、本発明による方法を実行するために、計算により、義歯26用の歯色の部分と、補綴物基部24用の歯肉色の部分とに分けられる。歯科用補綴物22の咬合もしくは口腔表面28に関するデータの他に、仮想CADモデルは、歯科用補綴物22の、咬合もしくは口腔表面28とは反対側の基底部側(図3では見えない)に関するデータ、ならびに義歯26と補綴物基部24との間の結合表面に関するデータを含む。この場合、結合表面は、好適には歯科用補綴物22の内部に位置している。つまり、図3に示した図は、仮想CADモデルの外形にも相応している。
【0121】
以下に、図4図10を用いて例示的に、図2に示したミリング用ボディ11と、図3に示した歯科用補綴物22の仮想CADモデルとを使用した本発明による方法の流れを説明する。
【0122】
このために図4には、図2に示したミリング用ボディ11を、このミリング用ボディ11を用いて製造しようとする、図3に示した歯科用補綴物22の横断面および位置と共に概略的に示す側面図が示されている。つまり、歯科用補綴物22の仮想CADモデルが、ミリング用ボディ11における所望の位置で、ミリング用ボディ11上に、またはミリング用ボディ11内に書き込まれている。このことは、いくつかの後続の図面においても、製造しようとする歯科用補綴物22が製作前にミリング用ボディ11内にどのように位置しているのかを想像することができる、という点で役立つ。この場合、義歯26は、第1の材料から成る中実体12の領域内に完全に含まれているように、ミリング用ボディ11内に位置決めされる。このことは、図5に示す横断面図において、図4におけるよりもやや良好に認められる。それというのも図5では、歯科用補綴物22の仮想CADモデルが、義歯26を断面されて示されているからである。これに対して、歯科用補綴物22の仮想CADモデルの基底部表面30は、後に流動性の重合可能なプラスチックで満たされる中空室14内に部分的に配置される。このことは、図6に示す斜視図と、とりわけ図7に示したミリング用ボディ11の上面の概略斜視図とにおいて、やや良好に認められ、図7では、歯科用補綴物22の補綴物基部24の、中空室14の底部16から突出した基底部部分が認められる。
【0123】
最初に、補綴物基部24の咬合もしくは口腔表面28および義歯26と補綴物基部24との間の結合表面が、コンピュータ制御式の多軸ミル等のサブトラクティブ式のCAM装置により、仮想CADモデルに基づきミリング用ボディ11の中実体12に形成される。このためには、仮想CADモデルを用いて、底部16に、仮想CADモデルに応じた、第1の材料と、流動性の重合可能なプラスチックから製造されるべき硬化させられたプラスチック材料との間の結合表面に相当する表面が形成される。さらに、硬化させられたプラスチック材料から成る表面の咬合もしくは口腔表面28が、サブトラクティブ式のCAM装置により、ネガ型31として中実体12から製作される。この場合、オフセットを用いることができ、これにより、ネガ型31は、咬合もしくは口腔表面28が硬化させられたプラスチック材料のために本来必要とするであろうよりも、少なくとも数10分の1ミリメートル深く、中実体12内に製作される。つまりネガ型31は、補綴物基部24の咬合もしくは口腔側を製造するための注型用型として用いられる。このようにして第1の材料に形成された表面は、図9に示す、このように加工されたミリング用ボディ11の上面を概略的に示す図において良好に認められる。義歯26と補綴物基部24との間の結合表面は、図9では、中実体12の領域により形成された表面に相当し、この表面は、義歯26の一部であり、図9では既に義歯26として特徴付けられている。義歯26のこの結合表面内には、複数の凹部27が位置しており、凹部27内には、より安定的な結合のために、流動性の重合可能なプラスチックが充填される。
【0124】
追加的に、環状の壁18にマーキングを形成することができる。次いで、このようにして新たに形成された表面を洗浄することができる。その後、図9に示した中空室14を、マーキングまで、流動性の重合可能なプラスチックで満たすもしくは塞ぐことができる。次いで、流動性の重合可能なプラスチックを(好適には圧力下でかつ/または室温に比べて高められた温度で)硬化させてよく(好適には30~60分間)、これにより、硬化させられたプラスチック材料32(図10参照)を形成し、このプラスチック材料32から補綴物基部24を製造する。
【0125】
硬化後に、このようにして得られた中間生成物を再びサブトラクティブ式のCAM装置(多軸ミル)内に緊締し、歯科用補綴物22の咬合もしくは口腔表面28(ここではオフセットなし)ならびに歯科用補綴物22の基底部表面30を、歯科用補綴物22の仮想CADモデルに相応して、中間生成物からサブトラクティブ式に製造する。このために図10には、咬合もしくは口腔側28の加工が完了し、歯科用補綴物22が残りのミリング用ボディ11から外される前の、重合して硬化させられたプラスチック材料32からサブトラクティブ式に製作された後の歯科用補綴物22の基底部側30を概略的に示す図が示されている。最後に図11には、環状の壁18から外された歯科用補綴物22が示されている。最終的に完成させるために、後処理として、歯科用補綴物22の洗浄、研磨および/または表面処理が行われてよい。
【0126】
上記の説明、ならびに請求項、図面および実施例に開示された本発明の特徴は、個別でも、如何なる任意の組合せにおいても、本発明を様々な実施形態において実現するために重要であり得る。
【符号の説明】
【0127】
1,11 ミリング用ボディ
2,12 中実体
4,14 中空室
6,16 底部
8,18 壁
9 マーキング
10,20 保持部
19 下面
21 上面
22 歯科用補綴物
24 補綴物基部
26 義歯
27 凹部
28 咬合表面/口腔表面
30 基底部表面
31 ネガ型
32 プラスチック材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用成形体を製造するためのミリング用ボディ(1,11)であって、当該ミリング用ボディ(1,11)は、第1の材料から成る中実体(2,12)を有しており、前記第1の材料は、生体適合性である、ミリング用ボディ(1,11)において、
当該ミリング用ボディ(1,11)の上面(21)には、流動性の重合可能なプラスチックを収容するための中空室(4,14)が配置されており、該中空室(4,14)は、底部(6,16)を有しておりかつ前記中空室(4,14)は、前記底部(6,16)の縁部を起点として、側方を環状の壁(8,18)により画定されており、該環状の壁(8,18)はリング形であり、前記第1の材料は前記底部(6,16)を形成しており、前記中実体(2,12)は、当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)とは反対側に配置された、当該ミリング用ボディ(1,11)の下面(19)まで延びていることを特徴とする、ミリング用ボディ(1,11)。
【請求項2】
前記環状の壁(8,18)は、最大20mm、好適には最大10mm、特に好適には最大5mmの壁厚さを有しており、かつ/または
前記環状の壁(8,18)の高さは、少なくとも5mm、好適には少なくとも15mmである、
請求項1記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項3】
前記環状の壁(8,18)の、前記中空室(4,14)を画定する少なくとも1つの内面に、前記中空室(4,14)内の充填レベルを測定するためのマーキング(9)が配置されており、好適には、該マーキング(9)は、等間隔の目盛り線および/または数値を備えたスケールを有しており、特に好適には、前記中空室(4,14)内の前記流動性の重合可能なプラスチックの充填高さまたは体積を測定するための縦型スケールを有している、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項4】
前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)は平らであり、かつ/または前記環状の壁(8,18)は、前記中空室(4,14)の内部に対して円筒形の表面を有しており、好適には、前記環状の壁(8,18)は管状である、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項5】
当該ミリング用ボディ(1,11)の前記環状の壁(8,18)は、前記中実体(2,12)に固定された管片またはリング体により形成されており、好適には、当該ミリング用ボディ(1,11)は、前記第1の材料と、前記管片または前記リング体とから成るか、または
当該ミリング用ボディ(1,11)の前記環状の壁(8,18)は、前記第1の材料から成り、好適には、前記中実体(2,12)と前記環状の壁(8,18)とは一体に形成されており、これにより、当該ミリング用ボディ(1,11)は前記第1の材料から成っている、
請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項6】
前記第1の材料は、第1のプラスチック材料であり、好適には、該第1のプラスチック材料は最終硬化させられており、かつ/または
前記第1の材料は、異なる色調の複数の層を備えた、積層された第1のプラスチック材料であり、前記層の層平面は、好適には前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)に対して平行に配置されているか、または前記環状の壁(8,18)に対して垂直に、特に前記環状の壁(8,18)の円筒形の内壁の基底面に対して平行に配置された平面に対して平行に配置されている、
請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項7】
当該ミリング用ボディ(1,11)は、円筒形の外周部を備えた円形ブランクであり、前記環状の壁(8,18)は、前記円筒形の外周部の部分領域を形成しており、好適には、前記円筒形の外周部の外面に、前記円形ブランクをCAM装置に固定するための保持部(10,20)が配置されており、特に好適には、該保持部(20)は、前記円筒形の外周部を包囲している突出したリングである、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項8】
当該ミリング用ボディ(1,11)は、前記中空室(4,14)の外側の表面に、外部から見える少なくとも1つの位置マーキングを有しており、該位置マーキングは、CAM装置における当該ミリング用ボディ(1,11)の位置および向きの特定を可能にしており、前記少なくとも1つの位置マーキングは、好適には当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)および/または前記下面(19)の方向から見える、当該ミリング用ボディ(1,11)の少なくとも1つの縁部の領域に配置されており、特に好適には、当該ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)からも前記下面(19)からも見える少なくとも2つの位置マーキングが設けられている、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項9】
前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/2であり、好適には、前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/3であり、特に好適には、前記環状の壁(8,18)の前記材料の体積は、最大で前記中空室(4,14)の容積の1/5である、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項10】
前記中実体(2,12)は、環状の段部を有しており、該段部に前記環状の壁(8,18)が被せ嵌められており、これにより、該環状の壁(8,18)は、内面で前記中実体(2,12)に面一に接触しており、好適には、前記環状の壁(8,18)は全面的に周方向において前記中実体(2,12)に接着されている、請求項1または2記載のミリング用ボディ(1,11)。
【請求項11】
請求項記載のミリング用ボディ(1,11)と、少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックおよび/または少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを製造するための出発成分とを含む歯科用成形体を製造するためのセットであって、好適には、当該セットは追加的に、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを充填しかつ/または前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを製造しかつ混合する少なくとも1つの装置を有している、セット。
【請求項12】
請求項記載のミリング用ボディ(1,11)を使用して、または請求項11記載のセットを使用して歯科用成形体を製造する方法であって、当該方法では、前記歯科用成形体を、当該方法において互いに結合される少なくとも2つの異なる材料から製造する、方法において、
当該方法は、以下の時系列的なステップ、すなわち:
A)前記歯科用成形体の外形および前記少なくとも2つの異なる材料の結合表面の形状の仮想三次元モデルに応じてサブトラクティブ式のCAM法により、前記ミリング用ボディ(1,11)の中空室(4,14)の底部(6,16)と、前記ミリング用ボディ(1,11)の第1の材料とに、前記少なくとも2つの異なる材料の間の前記結合表面と、製造しようとする前記歯科用成形体の表面の部分領域のネガ型(31)とを形成し、前記結合表面と前記ネガ型(31)とは相接しており、前記ミリング用ボディ(1,11)の環状の壁(8,18)は維持したままにするステップ、
B)少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)内と、ステップA)において除去した、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記底部(6,16)における容積内とに充填し、このとき、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、所定の充填レベルで前記中空室(4,14)内に充填し、これにより、前記環状の壁(8,18)が、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの、少なくとも最後に充填された、または外側に被着された流動性の重合可能なプラスチックと接触することになり、前記中空室(4,14)内および凹部内の前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを硬化させ、該少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの硬化時に、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)内に、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記第1の材料に固く面一に結合された、硬化させられたプラスチック材料を生ぜしめるステップ、
C)前記硬化させられたプラスチック材料を、前記ミリング用ボディ(1,11)の上面(21)の方向からCAM法により、前記歯科用成形体の仮想モデルの基底部表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、かつ前記第1の材料を、前記ミリング用ボディ(1,11)の下面(19)の方向からCAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの咬合表面に応じてサブトラクティブ式に加工し、これにより、前記硬化させられたプラスチック材料と、該硬化させられたプラスチック材料に結合された前記第1の材料とから、前記歯科用成形体をサブトラクティブ式に製作するステップ
を特徴とする、方法。
【請求項13】
ステップA)において前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)と、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記第1の材料とに製造される、前記歯科用成形体の表面の部分領域の前記ネガ型(31)を、オフセットを備えて形成し、該オフセットは、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの体積を、前記歯科用成形体が前記第1の材料から成るべきではない領域において拡大する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記歯科用成形体は、ナイトガードであり、前記第1の材料は、前記硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度を有しているか、または
前記歯科用成形体は、歯科用の部分補綴物または総補綴物の形態の歯科用補綴物(22)であり、該歯科用補綴物(22)は、補綴物基部(24)と少なくとも1つの義歯(26)とを有しており、該少なくとも1つの義歯(26)は、前記第1の材料から製造され、かつ前記補綴物基部(24)は、前記硬化させられたプラスチック材料から製造され、前記第1の材料は歯色であり、前記硬化させられたプラスチック材料は歯肉色であり、好適には、前記第1の材料は、前記硬化させられたプラスチック材料よりも大きな硬度および/または耐摩耗性を有している、
請求項12記載の方法。
【請求項15】
ステップB)において、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックのうちの少なくとも1つが、充填時に少なくとも、ステップA)において前記第1の材料に形成された表面を全面的に濡らす、請求項12記載の方法。
【請求項16】
ステップC)において、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記下面(19)の方向から前記CAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの前記咬合表面に応じて、前記第1の材料および前記硬化させられたプラスチック材料のサブトラクティブ加工を行い、かつ/または
ステップC)において、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記上面(21)の方向から前記CAM法により、前記歯科用成形体の前記仮想モデルの前記基底部表面に応じて、前記硬化させられたプラスチック材料および前記第1の材料のサブトラクティブ加工を行う、請求項12記載の方法。
【請求項17】
ステップA)において、前記環状の壁(8,18)の、前記ミリング用ボディ(1,11)の前記中空室(4,14)を画定する内面に、少なくとも1つのマーキング(9)を取り付け、特に該少なくとも1つのマーキング(9)を、サブトラクティブ式の前記CAM法により前記環状の壁(8,18)の前記内面に形成し、前記少なくとも1つのマーキング(9)の、前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)からの距離を、前記歯科用成形体の前記仮想モデルに応じて決定し、好適には、前記少なくとも1つのマーキング(9)は、少なくとも1つの目盛り線であり、
ステップB)において、前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックを、前記中空室(4,14)内の前記少なくとも1つのマーキング(9)の高さまで充填する、
請求項12記載の方法。
【請求項18】
ステップA)の前に、またはステップB)の前かつステップA)の後に、リング体または管片を前記中実体(2,12)に取り付け、これにより、前記リング体または前記管片が前記環状の壁(8,18)を形成し、好適には前記リング体または前記管片を、ステップB)の後かつステップC)の前に再び除去する、請求項12記載の方法。
【請求項19】
ステップC)の前に、ステップB)で形成された、前記硬化させられたプラスチック材料の表面の平面を確定するためにゼロ点シフトを計算し、ステップC)において、前記サブトラクティブ式の加工が前記硬化させられたプラスチック材料の前記表面の前記平面内で始まるように、前記ゼロ点シフトを考慮する、請求項12記載の方法。
【請求項20】
ステップC)において少なくとも一回、CAM装置内に固定された前記ミリング用ボディ(1,11)のポジションおよび位置を、前記ミリング用ボディ(1,11)に設けられた少なくとも1つのマーキングに基づき特定し、前記CAM装置の制御時に前記ミリング用ボディ(1,11)の前記ポジションおよび前記位置を考慮し、好適には、前記CAM装置内に固定された前記ミリング用ボディ(1,11)の前記ポジションおよび前記位置の特定を、全自動で特定する、請求項12記載の方法。
【請求項21】
ステップA)の後かつステップB)の前に、ステップA2)を行い、
ステップA2)は、前記結合表面、または前記結合表面および前記ネガ型(31)、または前記結合表面および前記ネガ型(31)を含む、前記中空室(4,14)の前記底部(6,16)における前記第1の材料の自由にアプローチ可能な表面全体を洗浄しかつ/または前処理し、好適には前処理時に、前記第1の材料の前記表面の化学処理を行い、特に好適には、モノマー液による前記第1の材料の前記表面の化学的膨張を行うステップであり、前記第1の材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有するか、またはPMMAから成るプラスチック組成物である、
請求項12記載の方法。
【請求項22】
ステップB)における前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの前記充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に標準圧力を上回る圧力、好適には少なくとも150kPaの圧力、特に好適には少なくとも200kPaの圧力、極めて特に好適には少なくとも200kPaかつ最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、請求項12記載の方法。
【請求項23】
ステップB)における前記少なくとも1つの流動性の重合可能なプラスチックの前記充填を、詰込みにより行い、かつ/または過剰圧力で、特に最高1000kPaの圧力、好適には最高500kPaの圧力、特に好適には最高400kPaの圧力を有する圧力ポットまたは圧力室内で実施する、請求項12記載の方法。
【請求項24】
ステップB)における前記流動性の重合可能なプラスチックの前記硬化を、熱および/または圧力の作用により行い、好適には、前記硬化を10分~120分、特に好適には30分~60分の時間にわたり行う、請求項12記載の方法。
【請求項25】
請求項12記載の方法により製造された歯科用成形体、特に歯科用補綴物(22)またはナイトガード。
【国際調査報告】