(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】デジタルインク印刷積層体のための接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20250204BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250204BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J7/30
B32B27/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544668
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022080652
(87)【国際公開番号】W WO2023146700
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】グオ、インゾン
(72)【発明者】
【氏名】ジャウック、アミラ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、クリスティ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK42
4F100AK51B
4F100AK69
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100EH46B
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4J004AA14
4J004AB05
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4J040JA01
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4J040JA09
4J040JA13
4J040JB02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA21
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
イソシアネート成分及びポリオール成分を含む、改善されたデジタルインク積層特性を有する積層用接着剤。イソシアネート成分は、イソシアネートプレポリマーと、脂肪族ポリイソシアネートとを含む。ポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含む。イソシアネート成分中のイソシアネートプレポリマーは、イソシアネートとポリアルキレングリコールポリマーとの反応生成物を含む。積層構造は、基材の少なくとも一部を接着剤でコーティングし、第1の基材を第2の基材と接触させることによって作製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分無溶剤接着剤組成物であって、
a.イソシアネートプレポリマー及び脂肪族ポリイソシアネートを含む、少なくとも1つのイソシアネート成分であって、前記イソシアネートプレポリマーが、イソシアネートとポリアルキレングリコールポリマーとの反応生成物を更に含む、少なくとも1つのイソシアネート成分、
b.ヒマシ油、ポリプロピレングリコール、及びホスフェート接着促進剤と反応した芳香族ポリエステルポリオールから作製されたエステル交換ポリエステルポリオールを含む、少なくとも1つのポリオール成分、を含む、二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項2】
コーティングされたフィルムであって、
a.基材、
b.二成分無溶剤接着剤組成物であって、前記二成分無溶剤接着剤が、前記基材の表面の少なくとも一部に配置され、前記二成分無溶剤接着剤組成物が、
i.イソシアネートとポリアルキレングリコールとの反応生成物及び脂肪族ポリイソシアネートを含む、少なくとも1つのイソシアネート成分、
ii.芳香族ポリエステルポリオール及びヒマシ油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含む、少なくとも1つのポリオール成分、を含む、二成分無溶剤接着剤組成物、を含む、コーティングされたフィルム。
【請求項3】
積層構造体であって、
a.第1の基材、
b.第2の基材、
c.二成分無溶剤接着剤組成物であって、前記二成分無溶剤接着剤が、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置され、前記二成分無溶剤接着剤組成物が、
i.イソシアネートプレポリマー及び脂肪族ポリイソシアネートを含む、少なくとも1つのイソシアネート成分であって、前記イソシアネートプレポリマーが、イソシアネートとポリアルキレングリコールポリマーとの反応生成物を更に含む、少なくとも1つのイソシアネート成分、
ii.芳香族ポリエステルポリオール及びヒマシ油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含む、少なくとも1つのポリオール成分、を含む、二成分無溶剤接着剤組成物、を含む、積層構造体。
【請求項4】
前記脂肪族ポリイソシアネートの量が、前記イソシアネート成分の重量を基準として0.1~5重量パーセントである、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物又は請求項2に記載のコーティングされたフィルム。
【請求項5】
前記天然油がヒマシ油である、請求項1~4のいずれか一項。
【請求項6】
結合強度が、200g/in超である、請求項3に記載の積層構造体。
【請求項7】
3日間の硬化後、PAA濃度が、0.200ppb未満である、請求項3に記載の積層構造体。
【請求項8】
ヒートシール抵抗結合強度が、3,000~6,000g/inである、請求項3に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記ホスフェート接着促進剤の量が、前記少なくとも1つのポリオール成分の重量を基準として、0.1~20重量パーセントである、請求項1~8のいずれか一項。
【請求項10】
積層構造体を形成する方法であって、
a.イソシアネートプレポリマー及び脂肪族ポリイソシアネートを含む、少なくとも1つのイソシアネート成分を提供する工程であって、前記イソシアネートプレポリマーが、イソシアネートとポリアルキレングリコールポリマーとの反応生成物を更に含む、提供する工程と、
b.芳香族ポリエステルポリオール及びヒマシ油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含む、少なくとも1つのポリオール成分を提供する工程と、
c.前記少なくとも1つのイソシアネート成分と前記少なくとも1つのポリオール成分とを混合して、無溶剤接着剤組成物を形成する工程と、
d.前記無溶剤接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、
e.前記接着剤の前記層を第2の基材の表面と接触させて、ラミネータにより積層構造体を形成する工程と、
f.前記接着剤組成物を硬化させて、前記第1の基材の前記表面と前記第2の基材の前記表面とを一緒に結合させる工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層用接着剤に関し、より具体的には、イソシアネート成分とポリオール成分とを含むデジタルインク印刷積層体のための二成分積層用接着剤であって、イソシアネート成分が、ポリアルキレングリコールと反応させた変性イソシアネートの反応生成物と、脂肪族ポリイソシアネートとを含み、ポリオール成分が、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含む、二成分積層用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル又はインクジェット印刷は、カスタムのパーソナライズされた包装のための経済的な短期印刷ジョブを可能にする。非インクジェット印刷方法では、経済的な短期印刷ジョブが可能でないため、経済的なパーソナライズされた包装の作製が事実上不可能である。
【0003】
包装の大部分は、様々な接着剤を使用して一緒に積層されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、又はセロファン基材を使用して創出される。積層用接着剤は、概して、溶剤系、水系、又は無溶剤のいずれかに分類される。
【0004】
無溶剤積層用接着剤は、塗布時に接着剤から水又は有機溶剤を乾燥させる必要がないので、高速で塗布することができる。これにより、短期インクジェットパーソナライズ包装印刷ジョブなどの迅速な接着剤塗布を必要とする用途において、無溶剤接着剤が好ましいものになる。
【0005】
しかしながら、現在の積層用接着剤は、接着性能を低下させるデジタルインクと適合しない。このため、デジタルインクに適合し、それによってインクジェット印刷を可能にする積層用接着剤は、満たされていない必要性である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、イソシアネート成分及びポリオール成分を含む、二成分無溶剤接着剤組成物に関する。イソシアネート成分は、ポリアルキレングリコールと反応させた変性イソシアネートの反応生成物と、脂肪族ポリイソシアネートとを含み得る。ポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含み得る。基材と、基材の表面の少なくとも一部に配置された二成分無溶剤接着剤組成物と、を含むコーティングされたフィルムも開示される。基材の片側の表面の少なくとも一部に配置された接着剤は、イソシアネート成分及びポリオール成分を含み得る。イソシアネート成分は、ポリアルキレングリコールと反応させた変性イソシアネートの反応生成物と、脂肪族ポリイソシアネートとを含み得る。ポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含み得る。
【0007】
上述したように、本開示による二成分無溶剤接着剤組成物は、イソシアネート成分及びポリオール成分を含む。
【0008】
イソシアネート成分:
イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。少なくとも1つのイソシアネートは、イソシアネートプレポリマー、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート(例えば、ダイマー、トリマーなど)、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択することができる。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含む任意の化合物である。イソシアネートプレポリマーは、少なくとも1つのイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールを含む反応物の反応生成物である。本明細書で使用される場合、「イソシアネートプレポリマー」は、ポリイソシアネート自体であり得る。
【0009】
少なくとも1つのイソシアネートは、1.5~10、又は1.8~5、又は2~3の官能価を含む。イソシアネート成分に関して使用される場合、「官能価」は、1分子当たりのヒドロキシル反応部位の数を指す。イソシアネート成分などのイソシアネート基を有する化合物は、化合物の重量を基準とした重量によるイソシアネート基の量であるパラメータ「NCO%」によって特徴付けることができる。パラメータNCO%は、ASTM D 2572-97(2010)の方法によって測定される。開示されるイソシアネート成分は、NCO%が、少なくとも3%、又は少なくとも6%、又は少なくとも10%である。好ましくは、イソシアネート成分は、NCO%が、25%、又は18%、又は14%を超えない。
【0010】
更に、少なくとも1つのイソシアネートは、遊離モノマー含有量が、0~50%、又は5~40%、又は10~30%である。更に、少なくとも1つのイソシアネートは、平均分子量が、200~6,000g/mol、又は500~5,000g/mol、又は1000~4,000g/molである。なお更に、イソシアネート成分は、ASTM D2196の方法によって測定して、25℃での粘度が、300~40,000mPa・s、又は500~20,000mPa・s、又は1,000~10,000mPa・sである。
【0011】
イソシアネート成分のイソシアネートは、メチレンジフェニルジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate、「MDI」)の芳香族異性体、例えば、限定されないが、4-4-MDI、2,2-MDI、2,4-MDI、及びトルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)であり得る。本明細書で使用される場合、芳香族イソシアネートは、1つ以上の芳香環を含むイソシアネートである。
【0012】
接着剤組成物中の少なくとも1つのイソシアネートの量は、接着剤組成物の重量を基準とした重量(すなわち、イソシアネート成分とポリオール成分との総重量)により、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%である。接着剤組成物中の少なくとも1つのイソシアネートの量は、接着剤組成物の重量を基準とした重量により、100重量%を超えない、又は75重量%を超えない、又は50重量%を超えない。
【0013】
イソシアネート成分は、NCO末端基を有するイソシアネートと反応させたポリアルキレングリコールを含むこともできる。本明細書で使用される場合、ポリアルキレングリコールは、限定されないが、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はエチレン/プロピレンコポリマーグリコールであり得る。イソシアネート成分は、脂肪族ポリイソシアネートを含むこともできる。脂肪族ポリイソシアネートの量は、イソシアネート成分の重量を基準として、0.1~10又は0.1~5重量パーセントである。脂肪族ポリイソシアネートは、本明細書で使用される場合、芳香族環を含まないイソシアネートである。使用に好適なものとして開示される脂肪族ポリイソシアネートの例としては、限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、「HDI」)、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、又はそれらのブレンドの異性体が挙げられる。
【0014】
ポリオール成分:
ポリオール成分は、天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールを含み得る。天然油は、限定されないが、ヒマシ油、加水分解エポキシ化大豆油、加水分解エポキシ化亜麻仁油、又はこれらの混合物であり得る。エステル交換芳香族ポリエステルポリオールは、当量が、100~600g/molであり得る。本開示による使用に好適なエステル交換芳香族ポリエステルポリオールの市販の例としては、限定されないが、Dow Chemical Companyから入手可能な商品名MOR-FREE(商標)C-156として販売されている製品が挙げられる。ポリオール成分はまた、MOR-FREE(商標)88-138などのホスフェート接着促進剤を含むことができる。
【0015】
エステル交換芳香族ポリエステルポリオールの含有量は、5~50重量%、又は10~40重量%、又は20~35重量%であり得る。ポリプロピレングリコールの含有量は、40~80%、又は50~70%、又は55~65%であり得る。リン酸エステル接着促進剤は、全ポリオール成分中0.1~20%、又は1~15%、又は5~10%であり得る。
【0016】
本開示の二成分無溶剤積層用接着剤組成物を作製するためのプロセスには、イソシアネート成分とポリオール成分とを混合、混和、又はブレンドすることが含まれ得る。イソシアネート成分は、変性イソシアネートとポリアルキレングリコールとの反応生成物と、脂肪族ポリイソシアネートとを含み得る。ポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含み得る。
【0017】
接着剤配合成分は、任意の既知の混合プロセス及び機器によって一緒に混合してもよい。イソシアネート成分及びポリオール成分は、当該技術分野で知られているように、互いに別々に調製及び貯蔵することができる。これらの成分は、塗布中又は塗布直前に互いに混合することができる。
【0018】
本開示の二成分無溶剤接着剤組成物を使用して積層構造体を形成するための方法は、(1)接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、(2)接着剤の層を第2の基材の表面と接触させて、ラミネータによって積層構造体を形成する工程と、(3)接着剤組成物を硬化させて、周囲温度又は必要に応じて昇温で、第1の基材の表面と第2の基材の表面とを一緒に結合させる工程と、を含み得る。
【0019】
積層構造体を形成するための方法が、本明細書に開示される。本開示の方法では、イソシアネート成分をポリオール成分と混合することができる。イソシアネート成分は、変性イソシアネートとポリアルキレングリコールポリオール又は2つ以上のポリアルキレングリコールの混合物との反応生成物と、脂肪族ポリイソシアネートとを含み得る。ポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリオール及び天然油から作製されたエステル交換ポリエステルポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ホスフェート接着促進剤とを含み得る。
【0020】
このようにして形成された積層接着剤は、少なくとも1つの基材の表面の少なくとも一部に塗布することができ、次いでこれを少なくとも1つの第2の基材の表面と接触させて、ラミネータによって積層構造体を形成することができる。次いで、接着剤組成物を硬化させ、基材を一緒に結合させることができる。
【0021】
本開示の二成分無溶剤積層用接着剤組成物は、25℃で液体又は半固体状態であり得る。25℃で半固体状態である場合、本開示の無溶剤積層用接着剤は、無溶剤積層用接着剤が液体状態になるまで加熱することができる。混合接着剤組成物の層を、ポリマーフィルムなどの第1の基材の表面に塗布することができる。「フィルム」は、1つの寸法が2ミリメートル(mm)以下であり、他の2つの寸法が両方とも1センチメートル(cm)以上である任意の構造体である。「ポリマーフィルム」は、単一のポリマー又は2つ以上のポリマーの混合物から作製されるフィルムである。加えて、フィルムは、金属化ポリマーフィルム及びホイルであり得る。硬化性接着剤混合物中のイソシアネート成分とポリオール成分との重量比は、1:1.5~2:1であり、NCO指数は、1.6~1である。
【0022】
第2の基材又はフィルムの表面を、接着剤の硬化前に第1の基材上の硬化性接着剤混合物の層と接触させて、未硬化の積層体を形成することができる。未硬化の積層体は、例えば加熱されている場合もされていない場合もあるニップローラに通すことによって、加圧することができる。未硬化の積層体を加熱して、硬化反応を加速させてもよい。
【0023】
本開示による使用に好適な基材(例えば、第1の基材及び第2の基材)としては、限定されないが、フィルム、例えば、紙、織布及び不織布、金属ホイル、ポリマーフィルム、並びに金属コーティングしたポリマーフィルムが挙げられる。フィルムは、任意選択で、上に画像がインクで印刷される表面を有する。インクを接着剤組成物と接触させてもよい。
【0024】
積層体は、一緒に結合させた二重基材であってもよく、一緒に結合させた三重基材であってもよく、接着剤で一緒に結合させた多重基材であってもよい。
【0025】
概して、本開示の無溶剤積層用接着剤組成物を使用した基材の結合は、大量の積層製品の製造のために工業規模で実施することができる。有利には、2つの成分は、成分が使用される準備ができるまで、ドラム又はホボック(hob bocks)などの別々の容器に充填され、貯蔵される。上述のように、接着剤組成物の塗布前に、2つの成分は別々に貯蔵され、接着剤の塗布中又は塗布直前にのみ、2つの成分が互いに混合される。塗布の間、成分は、供給ポンプを用いて貯蔵容器から押し出され、工業生産において二成分接着剤の混合に一般的に使用されるような混合装置へと供給ラインを介して計量される。例えば、2つの成分の混合は、スタティックミキサを介して、又はダイナミックミキサによって行うことができる。2つの成分を混合するとき、2つの成分が可能な限り均質に混合されることを確実にするように注意する。2つの成分が十分に混合されなければ、有利な混合比からの局所的な偏りが存在することになり、これは、接着剤を使用して作製される、結果として得られる製品の機械的特性の悪化に関して影響を有し得る。混合品質を視覚的にチェックするために、2つの成分が2つの異なる色を有する場合、有利であり得る。混合は、混合された接着剤が目に見える縞又はシミのない均質な混合色を有する場合に良好とみなされる。接着剤の所望の目標性能を達成するために、2つの成分の混合比を制御及び維持することが好ましい。
【0026】
本開示の二成分ポリウレタン接着剤は、例えば、フィルムとフィルム又はフィルムとホイル複合体又はフィルムと紙の積層体を含む全てのクラスの積層体に使用することができ、接着剤は、3つの性能レベル、すなわち、「汎用」、「中等性能」、及び「高性能」積層体を必要とする包装用途に使用することができる。典型的には、最終包装製品及びその充填プロセスが、様々な用途で使用される接着材料のタイプを決定する。例えば、汎用積層体は、フィルムとフィルム又はフィルムと紙複合体を含み、典型的には、室温で貯蔵される乾燥食品を包装するために使用される。中等性能積層体は、典型的には、脂肪又は酸性食品の包装、低温殺菌温度までの温度処理、及びホイル上において使用される。高性能積層体は、典型的には、ボイルインバッグ用途、熱間充填、140℃までなどの昇温での滅菌プロセス、医薬品などに使用される。
【実施例】
【0027】
全ての原料及びデジタルインク印刷フィルムを表1に列挙する。
【0028】
【0029】
プレポリマー1:
プレポリマー1の配合を以下の表2に示す。プレポリマー1を、コンデンサ、オーバーヘッドミキサ、熱電対温度調節器、及び窒素の窒素バブラーに接続した乾燥させた2Lの3つ口フラスコを最初にパージすることによって調製する。次いで、ISONATE(商標)125M及びISONATE(商標)143Lを、45℃に予熱した反応器に充填した後、VORANOL(商標)232-034N及びVORANOL CP-1055ポリオールをロードする。次いで、窒素を少なくとも2分間システム全体に継続してバブリングした後、反応器を徐々に78℃に加熱する。反応器温度を78℃で2時間維持した後、反応を停止させ、生成物をガラス瓶に注ぐ。プレポリマー1は、NCO%が、全重量を基準として11%である。
【0030】
【0031】
共反応物1:
表3の成分を、高速ミキサを使用して1,800rpmで2分間混合することによって、共反応物1を調製する。
【0032】
【0033】
プレポリマー2:
プレポリマー1を、プレポリマー1の重量を基準として2重量%のC-33脂肪族ポリイソシアネートと、高速ミキサを用いて1,800rpmで2分間混合することによって、プレポリマー2を調製する。
【0034】
プレポリマー3を、プレポリマー1を5重量%のC-33脂肪族ポリイソシアネートと混合することによって調製する。
【0035】
プレポリマー4を、プレポリマー1を10重量%のC-33脂肪族ポリイソシアネートと混合することによって調製する。
【0036】
以下の表中の実施例1は、プレポリマー1を共反応物1と、混合、コーティング、次いで積層の後に、室温で反応させることによって調製する。実施例2は、プレポリマー2を共反応物1と、混合、コーティング、次いで積層の後に室温で反応させることによって調製する。実施例3は、プレポリマー3を共反応物1と、混合、コーティング、次いで積層の後に室温で反応させることによって調製する。実施例4は、プレポリマー4を共反応物1と、混合、コーティング、次いで積層の後に室温で反応させることによって調製する。
【0037】
比較例1はMOR-FREE(商標)L75-164/C-411であり、比較例2はPACACEL(商標)L75-191/CR88-141である。NCO%を、周囲温度でASTM D2572-70に従う滴定法によって決定する。
【0038】
本開示の二成分ポリウレタン接着剤のポットライフを、スピンドル27を有するDV II Brookfield Viscometerを20rpmの運転速度、40℃で用いて、硬化時間に伴う粘度変化を測定することによって決定する。接着剤のポットライフは、粘度が混合粘度の2倍に達する硬化時間、又は混合接着剤の粘度が4000MPa・sに達するときの硬化時間として定義される。混合粘度は、混合し40℃で安定させた後の接着剤の最低粘度と定義される。
【0039】
表4は、本開示の接着剤の混合粘度、ポットライフ(2倍した混合粘度の硬化時間)を示す。
【0040】
【0041】
【0042】
実施例に見られるように、4つのより高いレベルの脂肪族ポリイソシアネートは、ごくわずかな性能増加でより長い硬化時間を生じる。接着性能は、デジタルインク印刷されたBOPP//GF-19及びデジタルインク印刷されたPET//EVOH-PEを用いたハンド積層試験とパイロットラミネータ試験との両方によって評価する。デジタルインク印刷されたBOPP//GF-19構造体において、ホットオイルハンドラミネータを用いて、27in/分の速度、150°Fのニップ温度、及び40psiのニップ圧力で、ハンドラミネーション試験を行う。Nordmeccanica Groupから市販されているLABO-COMBI(商標)400ラミネータ上で、デジタルインク印刷されたPET//EVOH-PEを用いて、100ft/分、120°Fのニップ温度、及び100°Fの計量ロール温度で、パイロットラミネータ試験を行う。
【0043】
硬化の1日後、6日後、及び14日後に、200N荷重セルのThwing-Albert引張試験機上で、1インチの試料ストリップ及び10インチ/分の速度を使用して、T型剥離結合強度を測定する。各積層体につき3つのストリップを試験し、破壊モードとともに高強度及び平均強度を記録する。フィルム引裂、フィルム伸張、及びインク転移(全体的又は部分的なインク転移)については、平均高値を報告する。一方、他の破壊モード(接着剤転移、接着破壊、及び接着剤分離)については、平均T型剥離結合強度を報告する。典型的な破壊モードには、以下が含まれる。
AF-接着破壊(一次上の接着剤)。
AT-接着剤転移(二次上の接着剤)。
AS-接着剤分離(接着剤の粘着性破壊)。
FT-フィルム引裂(結合の壊滅)。
IT-全体的なインク転移。
PIT-部分的なインク転移。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
9日間硬化させた後、積層体を320°F、圧力40psi、シール時間1.0秒でヒートシールする。ヒートシール抵抗を、1.5インチにつき12in/分の引っ張り速度で1インチ幅のストリップを引っ張ることによって決定される。三連データの平均を以下に報告する。
【0048】
【0049】
PAAの濃度を比色分析によって決定できるように、模擬食品の存在下でPAAをジアゾ化することによって、試料を25℃、相対湿度50%で2日間及び3日間硬化させた後に、PAAの崩壊を試験する。試験溶液中に存在する芳香族アミンを塩化物溶液中でジアゾ化し、続いてN-(1-ナフチル)-エチレンジアミンジヒドロクロリドとカップリングさせて、紫色の溶液を得る。色の濃縮は、固定相抽出カラムを用いて行われる。PAAの量は、550nmの波長での光度測定により決定する。
【0050】
積層体を上記のように調製する。パウチは、積層体の中央部分から約30.5cm×16.5cm幅のストリップを切断することによって形成する。各ストリップを14cm×16.3cmの表面積を形成するように折り畳み、折り畳んだストリップの開いた長手方向の各縁に沿って約1cmの縁をヒートシールして、14cm×14.3cmの内表面積を有するパウチを形成する。縁をヒートシールするために使用する機器は、Brugger HSG-Cである。積層体のシール条件は、1.3~1.5バール及び130~160℃である。
【0051】
この試験の例示的な各フィルムに、約14.0cm×14.3cmの内表面積を各々有する4つのパウチ(2つのブランク及び2つの試験パウチ)を使用する。それぞれの積層体の形成時から2日後に、各パウチを形成する。周囲雰囲気下の室温で積層体を貯蔵した後、パウチを形成する。
【0052】
各パウチに、模擬食品として使用する、100mlの3%酢酸水溶液を充填する。パウチを、空気循環オーブン内70℃で2時間貯蔵する。パウチを室温に冷却した後、100mlの試験溶液を12.5mlの塩酸溶液(1N)及び2.5mlの亜硝酸ナトリウム溶液(100mlの溶液当たり0.5g)と混合し、内容物を10分間反応させる。スルファミン酸アンモニウム(5ml、水溶液100ml当たり2.5g)を加え、10分間反応させる。カップリング試薬(5ml、水溶液100g当たり1gのN-(1-ナフチル)-エチレンジアミン二塩酸塩)を加え、2時間反応させる。加えるたびに、得られた混合物をガラス棒で撹拌する。ブランクパウチには、亜硝酸ナトリウムを除いた100mlの試験溶液を上で考察した誘導試薬と混合する。
【0053】
溶液を、ODS固相抽出カラム(ODS逆相、C18エンドキャップ)を通して溶出することによって濃縮し、吸光をSpectrophotometer Lambda(Perkin Elmer製)を使用して550nmで測定する。
【0054】
まず10mlのメタノール、次いで10mlの溶出溶剤、次いで10mlの塩酸水溶液(0.1N)を使用して、カラムを調整する。あらかじめ3mlの塩酸水溶液(0.1N)で2回すすいだガラスビーカーを使用して、各誘導体化試料をカラムに加える。カラムに1分間真空(約2.5mm Hg)引きを施して、全てのすすぎ液を除去する。次いで、5mlの溶出溶剤をカラムに加え、10mlの溶出液が収集されるまでこの工程を繰り返す。
【0055】
PAAの濃度を測定するために、反応生成物の吸光を、試薬ブランク溶液及び並行して処理する既知濃度の塩酸アニリンを有する一連の標準物質に対して、5cmセルにおいて550nmで測定する。
【0056】
以下の表に見られるように、PAAの崩壊は、比較例1よりも実施例2において有意に速い。
【0057】
【国際調査報告】