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特表2025-504566抗CD228抗体およびその薬物コンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】抗CD228抗体およびその薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20250204BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250204BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20250204BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250204BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20250204BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20250204BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C07K5/06
C07K19/00
A61P35/00
A61K47/68
A61K38/07
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544844
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2023096155
(87)【国際公開番号】W WO2023231877
(87)【国際公開日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】202210605505.5
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211657261.1
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202310420427.6
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521442039
【氏名又は名称】山東博安生物技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG BOAN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.39, Keji Avenue, High-Tech Zone, Yantai, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宋徳勇
(72)【発明者】
【氏名】韓静
(72)【発明者】
【氏名】劉紅
(72)【発明者】
【氏名】沈楠
(72)【発明者】
【氏名】矯▲じぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】王巧平
(72)【発明者】
【氏名】馮建霞
(72)【発明者】
【氏名】李敏
(72)【発明者】
【氏名】宗夢▲ち▼
(72)【発明者】
【氏名】李瑩
(72)【発明者】
【氏名】竇昌林
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA10
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA41
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD228に結合する抗体もしくはその抗原結合断片、および上記抗体もしくはその抗原結合断片を含む抗体薬物コンジュゲートに関し、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、CD228タンパク質に対して強い親和性およびADCCを媒介する能力を有し、上記薬物コンジュゲートは、様々な腫瘍に対して阻害効果を示す。本発明はさらに、上記抗体もしくはその抗原結合断片をコードする核酸と、上記核酸を含む細胞と、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記細胞または上記抗体薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、キットと、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記抗体薬物コンジュゲートまたは上記医薬組成物のCD228に関連する疾患の予防、治療、検出または診断における応用とに関する。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片であって、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、3つの軽鎖相補性決定領域および3つの重鎖相補性決定領域を含み、そのうち
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号13に示されるLCDR1、配列番号14に示されるLCDR2、および配列番号15に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号18に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号22に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号23に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号22に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号29に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号30に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号31に示されるLCDR1、配列番号14に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号32に示されるHCDR3を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号44に示されるLCDR2、および配列番号45に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号49に示されるHCDR3を含み、あるいは、
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号46に示されるLCDR1、配列番号47に示されるLCDR2、および配列番号48に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含む、
抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号1に示される軽鎖可変領域および配列番号2に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号3に示される軽鎖可変領域および配列番号4に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号5に示される軽鎖可変領域および配列番号6に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域および配列番号8に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号9に示される軽鎖可変領域および配列番号10に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号11に示される軽鎖可変領域および配列番号12に示される重鎖可変領域を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号38に示される軽鎖可変領域および配列番号37に示される重鎖可変領域を含み、あるいは
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号40に示される軽鎖可変領域および配列番号39に示される重鎖可変領域を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体は、配列番号33に示される重鎖定常領域を含み、および/または配列番号34に示される軽鎖定常領域を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片をコードする、
核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、
細胞。
【請求項6】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって、前記ADCの構造は、以下の式1によって示され、
式中、Abは、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片であり、
LUはリンカーであり、
Dは薬物であり、
pは、抗体-薬物コンジュゲートの平均DAR値に対応し、pは、1~10、好ましくは1~8、好ましくは1~4または4~8から選ばれる値であり、より好ましくはpは4である、
ことを特徴とする抗体薬物コンジュゲート。
【請求項7】
前記LU-Dの構造はVcMMAEであり、Vcはバリン-シトルリンであり、MMAEはモノメチルauristatin Eである、
ことを特徴とする請求項6に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項8】
前記LU-Dの構造は、以下に示すような構造である、
ことを特徴とする請求項6に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項9】
前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、ならびに前記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、
好ましくは、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域および配列番号8に示される重鎖可変領域を含み、
より好ましくは、前記抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号33であり、および/または軽鎖定常領域の配列は、配列番号34である、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項4に記載の核酸、請求項5に記載の細胞、または請求項6~9のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む、
医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片、請求項4に記載の核酸、請求項6~9のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート、または請求項10に記載の医薬組成物を含む、
キット。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片、請求項4に記載の核酸、請求項6~9のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項10に記載の医薬組成物、または請求項11に記載のキットの、CD228に関連する疾患の予防、治療、検出または診断のための試薬の製造における応用であって、好ましくは、前記CD228に関連する疾患は、黒色腫、肺癌、胃癌、結腸癌、中皮腫、膵臓癌および乳癌のうちの1つまたは複数を含む、
応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学またはバイオ医薬品技術の分野に関し、特に抗CD228抗体およびその薬物コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
CD228(メラノトランスフェリン、MTF、黒色腫関連抗原p97、MFI2、又はMAP97とも称される)は、トランスフェリンファミリーの90~97 kDaの唾液糖タンパク質メンバーである。CD228は通常、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを介して細胞膜に結合しており、少量の可溶性タンパク質しか検出されないことが見出される。
【0003】
CD228は、細胞の増殖、遊走および腫瘍形成に対して一定の役割を果たし、CD228の発現増加は黒色腫腫瘍の成長を加速させることができ、細胞モデルでは、CD228の高発現は細胞の増殖を増加させ得るが、CD228のダウンレギュレーションは細胞増殖の減少をもたらす。
【0004】
CD228は、種々の腫瘍、例えば黒色腫、中皮腫、膵臓癌、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌などにおいてすべて発現され、適応症が広い。CD228は、72%の黒色腫および79%の膵臓癌で発現され、一方で83%の中皮腫および100%の結腸癌、57%の乳癌、69%の扁平上皮癌で発現され、臨床的に大きな必要性がある。
【0005】
抗体-薬物コンジュゲートは、リンカーを介して抗体を小分子化学療法薬とカップリングし、抗体の高い標的化を有し、さらに化学療法薬の細胞毒性も十分に発揮し、腫瘍細胞を効率的に殺傷する効果を達成し、現在、複数の抗体-薬物コンジュゲートが上市に成功し、開発中の製品も増えており、技術は成熟している。CD228は、多くの腫瘍組織で高発現、正常組織で低発現または非発現であり、その発現の相違に基づいて、CD228は、理想的な抗体-薬物コンジュゲート標的である可能性がある。
【0006】
従って、新規なCD228抗体-薬物コンジュゲートは効果的な抗癌剤として提供され、医療分野で幅広い応用価値がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、CD228タンパク質に結合することができる抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片を提供し、本発明はさらに、上記抗体もしくはその抗原結合断片をコードする核酸と、上記核酸を含む細胞と、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記細胞を含む医薬組成物と、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記医薬組成物を含むキットと、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記医薬組成物のCD228に関連する疾患の予防、治療、検出または診断における応用と、CD228抗体もしくはその抗原結合断片の抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における応用と、抗CD228抗体薬物コンジュゲートとを提供する。
【0008】
本発明の一態様は、抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片を提供し、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、下記3つの軽鎖相補性決定領域および/または3つの重鎖相補性決定領域を含み、
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号13に示されるLCDR1、配列番号14に示されるLCDR2、および配列番号15に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号18に示されるHCDR3を含み、
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号22に示されるHCDR3を含み、
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号23に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号22に示されるHCDR3を含み、
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号29に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号30に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、あるいは
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号31に示されるLCDR1、配列番号14に示されるLCDR2、および配列番号21に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号32に示されるHCDR3を含み、あるいは
上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号44に示されるLCDR2、および配列番号45に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号49に示されるHCDR3を含み、あるいは、上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号46に示されるLCDR1、配列番号47に示されるLCDR2、および配列番号48に示されるLCDR3を含み、および/または上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含む。
【0009】
本発明の一具体的な実施形態において、本発明は、CD228に結合する時、配列番号41に示される以下の残基:E312A、L313A、R282A、R275Aのうちの少なくとも1つに結合する、抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片を提供する。
【0010】
本発明の一具体的な実施形態において、本発明は、抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片を提供し、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号1に示される軽鎖可変領域および配列番号2に示される重鎖可変領域を含むこと、
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号3に示される軽鎖可変領域および配列番号4に示される重鎖可変領域を含むこと、
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号5に示される軽鎖可変領域および配列番号6に示される重鎖可変領域を含むこと、
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域および配列番号8に示される重鎖可変領域を含むこと、
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号9に示される軽鎖可変領域および/または配列番号10に示される重鎖可変領域を含むこと、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号11に示される軽鎖可変領域および/または配列番号12に示される重鎖可変領域を含むこと、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号38に示される軽鎖可変領域および/または配列番号37に示される重鎖可変領域を含むこと、あるいは
上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号40に示される軽鎖可変領域および配列番号39に示される重鎖可変領域を含むこと、を含む。
【0011】
本発明の一具体的な実施形態において、上記抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号33である。
【0012】
さらに、上記抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖定常領域の配列は、配列番号34である。
【0013】
本発明の態様において、本発明の上記抗体もしくはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、またはdsFv断片などを含む。
【0014】
本発明の第2の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片をコードする上記核酸を含むベクターを提供する。上記ベクターは、上記抗体もしくはその抗原結合断片を発現するために使用され得る。好ましくは、上記ベクターはウイルスベクターであり得、好ましくは、上記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターなどを含むが、これらに限定されなく、好ましくは、上記ベクターは非ウイルスベクターであり得、好ましくは、上記ベクターは哺乳細胞発現ベクターであり得、好ましくは、上記発現ベクターは細菌発現ベクターであり得、好ましくは、上記発現ベクターは真菌発現ベクターであり得る。
【0016】
本発明の第4の態様は細胞を提供し、上記細胞は上記核酸または上記ベクターを含み、上記細胞は上記抗体もしくはその抗原結合断片を発現し得る。好ましくは、上記細胞は細菌細胞であり、好ましくは、上記細菌細胞は大腸菌細胞などであり、好ましくは、上記細胞は真菌細胞であり、好ましくは、上記真菌細胞は酵母細胞であり、好ましくは、上記酵母細胞は、ピキア酵母細胞などであり、好ましくは、上記細胞は哺乳動物細胞であり、好ましくは、上記哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胎児腎臓細胞(293)、B細胞、T細胞、DC細胞、またはNK細胞などである。
【0017】
本発明の第5の態様は、(a)上記CD228抗体もしくはその抗原結合断片、および(b)上記抗体部分にカップリングするカップリング部分を含み、上記カップリング部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種および酵素の1つまたは複数から選ばれることを特徴とする、抗CD228抗体複合体を提供する。
【0018】
別の好ましい例において、上記抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、以下の式1に表される。
【0019】
式中、式1中におけるAbは、本発明の抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片であり、LUはリンカー(linkerとも称される)であり、Dは薬物であり、下付き文字pは、抗体-薬物コンジュゲートの平均DAR値に対応し、pは、1~10、好ましくは1~8、好ましくは1~4または4~8から選ばれる値であり、より好ましくはpは4である。
【0020】
そのうち、上記薬物は、化学療法薬、放射線療法薬、ホルモン療法薬または免疫療法薬から選ばれる。選択的には、上記薬物は、タキサン(taxane)、メイタンシノイド(maytansinoid)、カンプトテシン(Camptothecin)、チューブリシン(tubulysin)、オリスタチン(auristatin)、カリケアミシン(calicheamicin)、アントラサイクリン(anthracycline)、ドセタキセル(docetaxel)、カテプシン(cathepsin)、リシン(ricin)、ゲロニン(gelonin)、緑膿菌外毒素(Pseudomonas exotoxin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、リボヌクレアーゼ(RNase)または放射性同位体(radioisotope)からなる群より選ばれる。
【0021】
さらに、リンカーLUは、一般式R’-L1-L2-L3からなり、
この一般式において、上記L3は、
であり、式中、L3は、a末端が上記薬物Dに接続し、b末端が上記L2に接続し、
R1は、水素、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基、スルホニル基、ハロゲン基であり、またはR1は、
R2~R6は、それぞれ独立的に
nは0~8であり、
当該一般式において、上記L2は、
式中、Aは、それぞれ独立的に、フェニルアラニン残基、グリシン残基、アラニン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、ヒスチジン残基、リシン残基、プロリン残基、またはバリン、シトルリン残基、β-グリシン残基、βアラニン残基であり、Xは、
nは0~8であり、
当該一般式において、上記L1は、
および/または
当該一般式において、R’は、
式中、R’は、c末端がL1に接続し、d末端がAに接続し、
一好ましい例において、上記抗体薬物コンジュゲート(ADC)の式1におけるLU-DはVcMMAEであり、式中、LUはVc(バリン-シトルリンリンカー)であり、DはMMAE(モノメチルauristatin E)であり、VcMMAEは、MC-Val-Cit-PAB-MMAEまたはMC-vc-PAB-MMAEと書き込まれてもよい。
【0022】
一好ましい例において、上記抗体薬物コンジュゲート(ADC)の式1におけるLU-DはBNLD11であり、式中、LUはMC-β-Ala-(glucuronide)PABであり、DはMMAEであり、上記BNLD11の構造は、
によって示され、上記BNLD11のExact Massは1322.690であり、上記BNLD11は、従来技術の通常の方法で合成して得られ、一好ましい例において、上記BNLD11は、図30に示す合成経路を用いて得られる。
【0023】
一好ましい実施例において、上記ADCの式1における抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片(Ab)の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、ならびに上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、好ましくは、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域および配列番号8に示される重鎖可変領域を含み、より好ましくは、上記抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号33であり、および/または軽鎖定常領域の配列は、配列番号34である。
【0024】
一好ましい実施例において、上記ADCの式1におけるLU-DはVcMMAEであり、pは4であり、Abは抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片であり、上記抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、ならびに上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、より好ましくは、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域、および配列番号8に示される重鎖可変領域を含み、より好ましくは、上記抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号33であり、および/または軽鎖定常領域の配列は、配列番号34である。
【0025】
一好ましい実施例において、上記ADCの式1におけるLU-DはBNLD11構造であり、pは4であり、上記BNLD11の構造は、
によって示され、Abは、抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片であり、上記抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域は、配列番号24に示されるLCDR1、配列番号25に示されるLCDR2、および配列番号26に示されるLCDR3を含み、ならびに上記抗体もしくはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域は、配列番号16に示されるHCDR1、配列番号27に示されるHCDR2、および配列番号28に示されるHCDR3を含み、より好ましくは、上記抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号7に示される軽鎖可変領域および配列番号8に示される重鎖可変領域を含む。
【0026】
本発明の第6の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、または抗体薬物コンジュゲートを含む医薬組成物を提供し、好ましくは、上記医薬組成物は、薬学的に許容されるベクターをさらに含み、好ましくは、上記薬学的に許容されるベクターは、薬学的に許容される溶媒、分散剤、添加剤、可塑剤、または他の薬用補助材料のうちの1つもしくは複数を含む。
【0027】
本発明の第7の態様は、本発明の上記抗体もしくはその抗原結合断片を含み、または抗体もしくはその抗原結合断片をコードする核酸を含み、上記医薬組成物を含み、または上記抗体薬物コンジュゲートを含むキットを提供する。
【0028】
本発明の第8の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、または抗体薬物コンジュゲートの、疾患の治療または予防のための医薬組成物の製造における応用を提供する。
【0029】
本発明の第9の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片または核酸の、診断、検出キットの製造における応用を提供する。
【0030】
本発明の第10の態様は、疾患を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の上記抗体もしくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、医薬組成物、または抗体薬物コンジュゲートを投与することを含む方法を提供する。
【0031】
本発明の第11の態様は、それを必要とする対象またはサンプルに、本発明の上記抗体もしくは抗原結合断片、核酸、キット、または医薬組成物を投与することを含む、診断、検出方法を提供する。
【0032】
本発明の第12の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、医薬組成物、または抗体薬物コンジュゲートの、疾患の治療および予防のための用途を提供する。
【0033】
本発明の第13の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片、核酸、キット、または医薬組成物の、検出、診断のための用途を提供する。
【0034】
本発明の第14の態様は、上記抗体もしくはその抗原結合断片、上記核酸、上記医薬組成物、または抗体薬物コンジュゲートの、CD228に関連する疾患の予防、治療、検出または診断のための製剤の製造における応用を提供する。
【0035】
本発明の態様において、上記CD228に関連する疾患は、黒色腫、肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、結腸癌、結腸腺癌、中皮腫、膵臓癌、乳癌の1つまたは複数を含む。
【0036】
本発明の第15の態様は、本発明のCD228抗体もしくはその抗原結合断片の、抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における応用をさらに提供する。
【0037】
本発明によって提供される抗CD228抗体およびその抗体薬物コンジュゲートは、以下の利点のうちの1つまたは複数を有する:
1、本発明により提供される抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片は、CD228タンパク質およびCD228タンパク質を発現する細胞に対して良好な親和性を有する。
【0038】
2、本発明により提供される抗CD228抗体薬物コンジュゲートは、ヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に対して良好な殺傷能力を有する。
【0039】
3、本発明により提供される抗CD228抗体薬物コンジュゲートは、SK-MEL-5、NCI-H226、CALU-1、NUGC4動物モデルのいずれに対しても良好な癌抑制効果を有し、CD228関連疾患に対して安定な薬効データを示す。
【0040】
4、本発明により提供される抗CD228抗体薬物コンジュゲートは、マウスインビボにおいて良好な薬物動態を有する。
【0041】
5、本発明により提供される抗CD228抗体薬物コンジュゲートは、副作用および毒性が小さく、安全性が高い。
【0042】
6、本発明の抗CD228抗体は、市販の既知の抗体、例えばSeagen社のCD228を標的とする抗体hL49と比較して、より良好な内在化効果および内部殺傷効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1におけるCD228のTMAチップ上の発現レベルである。
図2】実施例2におけるCD228免疫マウスの血清力価をである。
図3】実施例4における各抗CD228抗体のヒトCD228タンパク質への結合である。
図4】実施例5における各抗CD228抗体のCD228タンパク質を発現するヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に対する結合活性である。
図5A】実施例6における各抗CD228抗体のヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく内在化実験の結果であり、
図5B】実施例6における各抗CD228抗体のヒト肺癌細胞株A549-CD228細胞に基づく内在化実験の結果である。
図6】実施例7における各抗CD228抗体のヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づくADCC実験結果である。
図7】実施例8における全長hCD228と可溶性抗原sMFI2の配列アラインメント結果の模式図である。
図8】実施例9におけるCA149-BNLD11 HIC-HPLCのパターンである。
図9A】実施例10におけるCA13-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果であり、
図9B】実施例10におけるCA67-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果であり、
図9C】実施例10におけるCA149-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果であり、
図9D】実施例10におけるBA352-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果であり、
図9E】実施例10におけるCA518-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果であり、
図9F】実施例10におけるCA185-VcMMAEのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果である。
図10】各抗CD228 ADCのSK-MEL-5動物モデルにおける薬効データ(3 mg/kg)を示す。
図11】各抗CD228 ADCのSK-MEL-5動物モデルにおける薬効データ(5 mg/kg)を示す。
図12】実施例11における各抗CD228 ADC(3 mg/kg)のNCI-H226動物モデルにおける薬効データである。
図13】実施例11における各抗CD228 ADC(5mg/kg)のNCI-H226動物モデルにおける薬効データである。
図14】実施例12における各抗-CD228 ADCによるマウスインビボ薬物動態曲線である。
図15A】実施例13におけるCA149-BNLD11のMC38-CD228細胞に対する増殖阻害活性の評価であり、
図15B】実施例13におけるCA149-BNLD11のA375-CD228細胞に対する増殖阻害活性の評価であり、
図15C】実施例13におけるCA149-BNLD11のSK-MEL-5細胞に対する増殖阻害活性の評価であり、
図15D】実施例13におけるCA149-BNLD11のA549-CD228細胞に対する増殖阻害活性の評価であり、
図15E】実施例13におけるCA149-BNLD11のA375-CD228細胞に対する増殖阻害活性の評価である。
図16】実施例14における抗体薬物コンジュゲートのCalu-1肺癌モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線である。
図17】実施例14における抗体薬物コンジュゲートの抗体薬物コンジュゲート群のCalu-1肺癌モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムである。
図18】実施例15における抗体薬物コンジュゲート群のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5ヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線である。
図19】実施例15における抗体薬物コンジュゲート群のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5ヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムである。
図20】実施例16における抗体薬物コンジュゲート群のヒト胃癌細胞NUGC4 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線である。
図21】実施例16における抗体薬物コンジュゲート群のヒト胃癌細胞NUGC4 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムである。
図22】実施例17におけるヒト肺扁平上皮癌細胞NCI-H226 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍体積増殖曲線である。
図23】実施例18におけるヒト黒色腫細胞SK-MEL-5 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍体積増殖曲線である。
図24】実施例18におけるヒト黒色腫細胞SK-MEL-5 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍重量増殖曲線である。
図25】実施例19における抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のマウスインビボにおける代謝曲線である。
図26】実施例20における抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11の雄マウスにおける毒性研究である。
図27】実施例20における抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11の雌マウスにおける毒性研究である。
図28】実施例21における中用量群6 mg/kgおよび高用量群10 mg/kgの投与後のカニクイザルの体重変化である。
図29】実施例21における中用量群6 mg/kgおよび高用量群10 mg/kgの初回投与後の毒物動態検出である。
図30】BNLD11の合成回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。記載された実施例は本発明の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように利用するかについて、本発明が属する技術分野の当業者に完全な開示および説明を提供するために挙げられたものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本発明における実施例に基づき、当業者が、創造的労力せずに得た他の実施例のすべては、本発明の請求の範囲に属する。
【0045】
実施例1. CD228発現実験
胆嚢癌、結腸癌、乳癌、黒色腫、肺癌、胆管癌、膵臓癌、子宮頸癌、肉腫、食道癌および胃癌のPDXサンプルチップは、いずれも、中米冠科生物技術有限公司(Crown Biotechnology Co., Ltd. )から購入した。12例の中皮腫患者の組織未染色切片は、上海立迪生物技術有限公司(Shanghai Lidi Biotechnology Co., Ltd.)(4例)および上海芯超生物技術有限公司(Shanghai Xinchao Biotechnology Co., Ltd.)(8例)から購入した。すべてのPDXサンプル組織チップおよび8例の上海芯超生物技術有限公司から購入した中皮腫組織未染色切片に対するCD228免疫組織化学染色を、中米冠科生物技術有限公司に委託した。4例の中皮腫組織未染色切片に対するCD228の免疫組織化学染色を、上海立迪生物技術有限公司に委託した。CD228免疫組織化抗体は、Novus Biologicals(カタログ番号:NBP1-85777)から購入し、一次抗体の希釈濃度は1:200であった。
【0046】
免疫組織化学実験は、IHC自動染色機(Bond RX automatic IHC&ISH system、Leica)により行った。免疫組織化学染色の結果は、H-score値を使用して評価した。
piは陽性細胞百分率を表し、iは染色強度(0:陰性、1:弱い染色、2:中程度の染色、3:強い染色)を表した。各サンプルは独立して3回採点され、最終的なH-score値は3回の平均値となった。すべてのサンプルのIHCスコア結果を図1に示した。図1に示されたCD228のTMAチップ上の発現レベルと表1に示されたCD228発現率から、CD228は胆嚢癌、結腸癌、乳癌、黒色腫、肺癌、胆管癌、膵臓癌および子宮頸癌において中程度発現および高発現の割合が高いことがわかった。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例2. 抗CD228モノクローナル抗体の製造
1.1 タンパク質の製造
3種類のタンパク質のアミノ酸配列(表2を参照)を江蘇ジェンスクリプト生物科技公司(Jiangsu GenScript Biotechnology Company)に送り、遺伝子を合成した。次いでCHO細胞にトランスフェクトし、37℃、8% CO2、125 rpmシェーカーで培養し、10日間の一過性発現後に上清を回収した。発現上清をNi(ジェンスクリプト、L00250)カラムで精製し、次いでSPカラム(GE、17-1087-01)で精製し、ヒトCD228、マウスCD228、サルCD228タンパク質を得た。
【0049】
【表2】
【0050】
1.2 マウス免疫方法
免疫実験用マウスは、山東博安生物技術有限公司(Shandong Boan Biotechnology Co., Ltd.)が独自に開発した完全ヒト抗体トランスジェニックマウス(合計10匹免疫した)であった。免疫は、山東博安生物技術有限公司が独自に製造したCD228(0.23 mg/mL、Boan、20200924、配列番号41)抗原タンパク質を用いて免疫した。
【0051】
免疫方式は腹部皮下および鼠径部多点注射のいずれでもよく、抗原タンパク質の免疫量はいずれも20 μg/匹であった。1回目の免疫では抗原を完全フロイントアジュバントで乳化し、2回目から4回目の免疫では抗原を不完全フロイントアジュバントで乳化した。第1バッチのマウスは3回の免疫と1回の追加免疫を行い、第2バッチのマウスは4回の免疫と1回の追加免疫を行った。各免疫間の間隔は14日であり、2回目の免疫から各免疫後の7日目に末梢血血清を採取して抗体力価を検出して、力価が不合格のマウスを除外した。マウスを免疫した後、マウス血清力価を検出した結果を図2に示し、2500X、12500Xおよび62500Xは希釈率を表した。免疫増強3日後、マウスを安楽死させ、脾臓を採取して単細胞にしてライブラリー構築を行った。
【0052】
1.3 ファージライブラリーの構築
マウスを殺し、脾臓を解剖により取り出し、脾臓をシリンジ栓で粉砕し、フィルターで濾過し、濾過した脾細胞を凍結し、RNAを抽出した後にcDNAを取得し、ファージライブラリーの構築は通常の方法に従って行った。構築されたライブラリーのライブラリー容量データを表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
1.4 2つの方法によるスクリーニング
1.4.1 プレートスクリーニングを行い、プレートをCD228-Hisタンパク質(自作)でコーティングした。翌日、ファージライブラリーを添加して2 hインキュベートし、4~10回洗浄した後、特異的に結合したファージを溶出緩衝液で溶出した。
【0055】
1.44.2 磁気ビーズスクリーニングを行い、CD228-Hisタンパク質をキットの手順に従ってビオチン化し、そしてThermoの磁気ビーズに結合し、BSAで密閉した後、ファージライブラリーと2 hインキュベートし、4~10回洗浄した後、特異的に結合したファージを溶出緩衝液で溶出した。スクリーニングにより得られた抗体のクローンおよび供給源を表4に示した。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例3. 完全抗体の分子構築および製造
133個の陽性クローンIgG1を構築してシークエンシングし、8個のlead抗体可変領域アミノ酸配列は以下の表5に示された(CDR領域は下線で表示し、分析システムはIMGTシステムであった)。本出願の実施例における各抗体の可変領域配列を表5に示し、重鎖および軽鎖定常領域配列を表6に示した。
【0058】
【表5】
【0059】
抗体可変領域遺伝子を通常の分子生物学的技術PCR(2×Phanta Max Master Mix、メーカー:Vazyme、カタログ番号:P515-P1-AA、ロット番号:7E512E1)により増幅し、抗体重鎖可変領域遺伝子を、抗体重鎖定常領域配列を持つ核酸配列のベクターpCDNA3.4(Life Technology)に、抗体軽鎖可変領域遺伝子を、抗体軽鎖定常領域配列を持つ核酸配列のベクターpCDNA3.4に、それぞれ相同組換えにより連結した。
【0060】
【表6】
【0061】
シークエンシングした陽性クローンからプラスミドを抽出した後、HEK293細胞に同時トランスフェクトし、37℃、8% CO2、125 rpmシェーカーで培養し、7日間の一過性発現後に上清をProtein Aアフィニティークロマトグラフィーで精製し、抗体を得て、UV280を通過させて理論消衰係数を組み合わせて抗体濃度を決定した。
【0062】
対照抗体Hl49配列は、特許US20200246479A1に記載された配列に従って合成され、アミノ酸配列は下記の表7に示された。
【0063】
【表7】
【0064】
実施例4. 抗CD228モノクローナル抗体分子の特徴付け
4.1 抗-hCD228抗体のヒトCD228タンパク質への結合
ヒトCD228(博安自作、20201014、配列番号41)タンパク質を、pH9.6炭酸塩緩衝液(以下、CBSと略した)で0.1 μg/mLに希釈し、酵素標識プレートでコーティングし、100 μL/ウェルで、4℃で一晩インキュベートし、プレート洗浄後、脱脂粉乳で密閉した。プレート洗浄後、PBST(リン酸緩衝生理食塩水、Solarbio P1010、+0.05% tween20)で希釈した抗体をウェルごとに100 μL添加し(希釈した抗体は、PBSTで勾配希釈した完全抗体であり、完全抗体はFcおよびFab領域を含み、定常領域を有する抗体であり、初期濃度は0.1 ug/mLであり、3倍希釈8勾配)、プレート洗浄後、ヒツジ抗ヒトIgG(H+L)/HRP(1:5000希釈、KPL、474~1006)を100 μL/ウェルで添加し、37℃で1 hインキュベートした。プレート洗浄後、1ウェル当たり100 μLのTMB(北京梅科万徳(Beijing Meike Wande)、1001)を添加して発色させ、10 min後、1ウェル当たり50 μLの2 MのH2SO4を添加して発色を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD450を読み取った。本実験および以下の実験は、いずれも対照抗体として、Seagen社のCD228を標的とする抗体hL49を使用した。図3は、各抗体のヒトCD228タンパク質に対する結合曲線であった。表8は、図3から計算された抗体のEC50値を示し、ELISAレベルで6個の抗体が同様の結合活性を示し、対照抗体であるHL49よりも優れていたことがわかった。
【0065】
【表8】
【0066】
4.2 抗体のCD228ヒト、サル、マウスタンパク質に対する親和性の検出
【0067】
【表9】
【0068】
抗体の各CD228タンパク質に対する結合ダイナミクスは、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SRP)技術に基づくBIAcore 8K機器を使用して測定された。ProAチップは、CD228抗体を2 μg/mL捕捉し、各CD228抗体のヒト、サル、マウスCD228に対する結合活性を分析した。ヒト、サル、マウスCD228タンパク質をHBS-EP+緩衝液で2倍勾配で5濃度希釈し、初期濃度は50 nMであった。BiacoreによりCD228タンパク質結合ダイナミクスを行い、親和性活性KD値を算出するためにフィッティングした。
【0069】
【表10】
【0070】
表10から明らかなように、示される抗体は、ヒトCD228タンパク質およびサルCD228タンパク質に対して同様の親和性を有し、マウスCD228とは結合しない。
【0071】
4.3 抗-hCD228抗体エピトープ分析
Hisチップは、10 μg/mLのCD228タンパク質を0.5 nmの閾値で捕捉した。まず第1個目のCD228抗体(30 μg/mL)に結合し、次に第2個目のCD228抗体(30 μg/mL)の競合結合状況を分析した。Octet 8Kにより抗体2の応答状況を分析し、抗体1と抗体2が競合関係にあるか否かを分析した。表11は、Octet抗体エピトープ応答値を示した。
【0072】
【表11】
【0073】
最終的な競合分析は、1-応答値/ブランク値の計算方法を使用しており、結果は表12に示すように、BA352とhL49のエピトープは類似しており、残りの抗体は互いに競合し、エピトープは類似している(数値は75%より高く、エピトープに関連性がある)ことがわかった。
【0074】
【表12】
【0075】
実施例5. フローサイトメトリーによるanti-hCD228抗体の細胞レベル結合活性の検出
96ウェルのラウンドボトムプレートに、50 μLのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞(ATCC、HTB-70)を添加し、細胞数は7E4/ウェルであり、各抗体をFACS緩衝液(PBS、BOSTER Biological、カタログ番号PYG0021)で勾配希釈し、96ウェルのラウンドボトムプレートに50 μL/ウェルで添加し、4℃で1 hインキュベートした。400 gで4 min遠心分離した後に上清を捨て、FACS緩衝液で1回洗浄し、100 μL/ウェルの蛍光二次抗体(Jackson、109545-008)を添加し、4℃で光を避けて30 minインキュベートし、400 gで4 min遠心分離した後に上清を捨て、FACS緩衝液で1回洗浄し、さらに100 μL/ウェルのFACS緩衝液で再懸濁させ、フローサイトメーター(Eisen、NovoCyte 2060)で検出した。結果を図4に示し、図4は、各抗CD228抗体のヒト黒色腫SK-MEL-5細胞(CD228タンパク質を発現する細胞)に対する結合を示し、6種の抗体は、すべてSK-MEL-5細胞に対して高い結合活性を有し、かつhL49よりも優れていることがわかった。図4におけるアイソタイプ対照抗体は、上記実験群の抗CD228抗体と同じ定常領域、異なる可変領域を有する、他の標的に対する無関係な抗体であった。
【0076】
実施例6. 抗-hCD228モノクローナル抗体分子の内在化実験
1. SK-MEL-5細胞
96ウェルのラウンドボトムプレートに、緩衝液(PBS、BOSTER Biological、カタログ番号PYG0021)で希釈したヒト黒色腫SK-MEL-5細胞を50 μL/ウェルで添加し、細胞数は5E4/ウェルであった。次に抗体を緩衝液で希釈し、最終濃度は20 μg/mLであった。50 μL/ウェルの細胞を含むラウンドボトムプレートに、20 μg/mLの抗体を50 μL/ウェルで添加し、30 minインキュベートした後、400 g、4 min遠心分離し、上清を捨てた。予備冷却した緩衝液で2回洗浄し、さらに100 μL/ウェルの緩衝液を添加し、37℃、4℃の2つの温度条件下でそれぞれインキュベートし、異なる時点で終止させ、400 gで4 min遠心分離し、上清を捨てた。さらに4℃の予備冷却した蛍光二次抗体(Jackson、109-545-008)を100 μL/ウェルで添加し、4℃で光を避けて30 minインキュベートした。予備冷却したFACS緩衝液で1回洗浄し、さらに100 μL/ウェルのFACS緩衝液で再懸濁し、フローサイトメーター(Eisen、NovoCyte 2060)で検出した。結果を図5Aに示し、図5Aは、各抗CD228抗体のヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく内在化実験の結果を示し、図5Aから、対照hL49と比較してCA13、CA149およびBA352の内在化率が高いことがわかった。
【0077】
2. A549-CD228細胞
対数増殖期にある外因性CD228遺伝子を安定的に発現するヒト肺癌細胞株A549-CD228細胞(康源博創(Kangyuan Bochuang)、KC-2150)を消化処理した後、血清含有培地で消化を終止させて希釈し、96ウェルのラウンドボトムプレート(NEST、カタログ番号701111)に50 μL/ウェル、1E5/ウェルで添加した。抗体を血清含有培地で希釈し、抗体と標識試薬(invitrogen、Z25611)を、1:3のモル比(抗体濃度40 nM、標識試薬120 nM)で混合し、室温で5 minインキュベートした後、標識抗体混合物を、各ウェルに50 μLずつ、細胞を含むウェルプレートに添加した。37℃の条件下で0 h、2 h、6 h、24 hインキュベートした後、PBSで1回洗浄し、さらに100 μL/ウェルのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー(Eisen、NovoCyte 2060)によってMFI値を読み取った。結果は、CA149抗体の内在化が経時的に増加することを示し、図5Bから、CA149が対照抗体hL49と比較して、より優れた内在化活性を有することがわかった。
【0078】
実施例7. 抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ルシフェラーゼレポーター遺伝子エフェクター細胞)
ADCC作動液(1%FBSを含むRPMI1640培地)を準備し、Bioassay Effector Cells(Promega、G7011)を収集し、ADCC作動液を用いて細胞密度を2.4×106に調節し、Target Cells SK-MEL-5(ATCC、HTB-70)を収集し、ADCC作動液を用いて細胞密度を8×105に調整し、ADCC作動液を用いて被験サンプルを希釈し、5 ug/mLの初期濃度から開始して、4倍希釈で8濃度に希釈し、エフェクター細胞、標的細胞、および被験サンプルをそれぞれ25 uLずつ反応ホワイトプレート(Costar、3917)に添加し、総反応体積を75 uLとし、この反応系を37℃で6 hインキュベートし、各ウェルに75 uLを添加し、Bio-Glo Luciferase System(Promega、G7940)で、15 min反応した後、マイクロプレートリーダー(BioTek、synergy neo2)を用いて化学発光値を読み取った。結果を図6に示し、図6は、各抗CD228抗体のヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づくADCC実験結果を示し、図6から、抗体サンプルの濃度が増加するにつれてシグナルが徐々に増加し、SK-MEL-5細胞に対してADCC効果があることを示していることがわかった。
【0079】
実施例8. CA149抗体のCD228への結合のエピトープ研究
本発明者らは、全長抗原CD228および抗体Fab複合体(CA149-Fab)をそれぞれ調製し、抗原抗体の構造分析を行うように水木未来(杭州)科学技術有限公司のクライオ電子顕微鏡センターに委託した。実験者らは、3次元モデルのエピトープにおけるアミノ酸の種類と側鎖の相互作用を分析した結果、CA149抗体Fabは、7個の水素結合および1個の塩橋を介して抗原に結合することが示された。具体的な相互作用部位を表13に示し、上付き文字*は、CA149 Fab軽鎖上のアミノ酸であり、上付き文字のないイタリック体は、CA149 Fab重鎖上のアミノ酸であった。
【0080】
【表13】
【0081】
同時に、発明者らは、エピトープの結果に基づいて、山東博安生物技術有限公司が独自に製造したCD228(配列は配列番号41に示すようであった)抗原について部位特異的変異検証を行い、hCD228(R275A)、hCD228(R282A)、hCD228(E312A)、hCD228(L313A)の一点変異およびhCD228(E312A、L313A)、hCD228(R282A、E312A)、hCD228(R275A、R282A)の二点変異のhCD228抗原をそれぞれ構築し、親和性分析を行った。親和性の結果は、突然変異後の抗原のCA149抗体への結合活性の低下または結合の喪失を示し、上記E312A、L313A、R282A、R275Aの4つの部位が抗体と抗原の結合に主要な部位であることも示した。親和性の検出結果を表14に記載した。
【0082】
【表14】
【0083】
また、別の可変剪断生成物である可溶性MFI2、すなわちsMFI2も同時に人体内に存在し、さらに文献(J Neurochem. 2002 Nov;83(4):924-33.doi: 10.1046/j.1471-4159.2002.01201.x.;J Cereb Blood Flow Metab. 2019 Oct;39(10):2074-2088.doi: 10.1177/0271678X18772998)によりsMFIがLRPタンパク質を介して血液脳関門を通過し得ることが示された。したがって、可能なオフターゲットのリスクを低減するために、CD228を標的とする抗体は、sMFI2に結合するべきではない。エピトープの結果および全長hCD228と可溶性抗原sMFI2の配列アラインメントの結果(図7)により、発明者らは、上記4つの結合主要部位はsMFI2抗原上にない、すなわちCA149抗体はsMFI2に結合しないことがわかった。
【0084】
実施例9. 抗-hCD228抗体と薬物のカップリング実験
以下の分子式で示される抗体薬物コンジュゲートを製造し、
【0085】
式中、Abは上記抗CD228抗体もしくはその抗原結合断片のいずれかであり、LUはリンカー(linkerとも称される)であり、Dは薬物であり、下付き文字pは、抗体-薬物コンジュゲートの平均DAR値であった。
【0086】
9.1 抗-hCD228抗体-vcMMAE抗体薬物コンジュゲートの製造
抗体(5~10 mg/mL)を含むリン酸緩衝液(pH7.5、11 mMのDTPAを含む)を、2当量のTCEPで処理した後、25℃で約2 hインキュベートし、5当量のvcMMAEのDMSO溶液を、還元抗体のPBS溶液に添加し、25℃で約1 hインキュベートし、次いで、10当量のn-アセチルシステイン(NAC)を混合物に添加して25℃で5 minインキュベートして、未反応のリンカー-薬物をすべてクエンチし、限外濾過により緩衝液を置換し、遊離小分子を除去した。そして、HIC-HPLC分析に供した。分析結果を表15に示し、本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートの平均DAR値は、4.01~4.42の範囲にあることがわかった。
【0087】
【表15】
【0088】
9.2 CA149-BNLD11抗体薬物コンジュゲートの製造
抗CD228抗体CA149を例として、均一薬物負荷(DAR)が約4のADC組成物を製造した。抗体(5~10 mg/mL)を含むリン酸緩衝液(pH7.5、11 mMのDTPAを含む)を、2当量のTCEPで処理し、25℃で約2 hインキュベートした。5当量のBNLD-11のDMSO溶液を、還元抗体のPBS溶液に添加し、25℃で約1 hインキュベートし、次いで、10当量のn-アセチルシステイン(NAC)を混合物に添加して25℃で5 minインキュベートして、未反応のリンカー-薬物をすべてクエンチした。HIC-HPLC分析を用いて、抗体薬物コンジュゲートの薬物負荷を定量した。分析結果を図8および表16に示し、本実施例で製造して得られた抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11の平均DAR値は約4であることがわかった。
【0089】
【表16】
【0090】
実施例10. 抗-hCD228 ADCのインビトロ細胞殺傷実験
96ウェル平底プレート(Corning、カタログ番号3917)に、SK-MEL-5細胞を50 μL/ウェルで添加し、細胞数は1E4/ウェルであり、培地は10% FBS/EMEMであった。各抗CD228-ADCを上記培地で、初期濃度1 μg/mL、4倍濃度勾配希釈で合計6濃度で希釈した。希釈したADCを50 μL/ウェルで96ウェルの平底プレートに添加し、37℃、5% CO2条件下で4日間培養した後、CellTiter-Gloキット(Promega、G7571、使用過程中に光を避ける必要があった)を室温に平衡化し、キット中の緩衝液をSubstrateと均一に混合し、1 h静置した。細胞生存率検出試薬を96ウェルプレートに100 μL/ウェルで添加し、300 rpmレベルで2 min振盪した後、10 min静置した。マイクロプレートリーダー(BioTek、SYNERGY neo、USA)で検出した。
【0091】
結果を図9A図9Fに示し、図9A図9Fは、各抗CD228 ADCのヒト黒色腫SK-MEL-5細胞に基づく殺傷実験の結果を示し、2つの抗-hCD228 ADC:CA13-vcMMAEおよびCA67-vcMMAEは、hL49-vcMMAEと同様のインビトロ細胞殺傷活性を示し、4つの抗-hCD228 ADC CA149-vcMMAE、CA352-vcMMAE、CA518-vcMMAE、およびCA185-vcMMAEは、対照群hL49-vcMMAEよりも優れたインビトロ細胞殺傷活性を示し、図9A図9Fにおけるアイソタイプ対照抗体は、上記6つの抗体定常領域と同じ、可変領域が異なる、他の標的に対する無関係な抗体であった。
【0092】
実施例11. 抗-CD228 ADCのマウス移植腫瘍におけるインビボ薬効実験
11.1 ヒト黒色腫細胞SK-MEL-5マウス移植腫瘍モデルにおける薬効データ
ヒト黒色腫細胞SK-MEL-5はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むEMEM培地であった。NOD/SCIDマウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から購入した。50% Matrigelを含むEMEM培地でSK-MEL-5細胞濃度を2.5×107個/mLに調整し、NOD/SCIDマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が約76 mm3に達した時、マウス腫瘍体積と体重に応じて5匹ずつ8つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始し、投与量は3 mg/kgであった。図10は各抗CD228 ADCのSK-MEL-5動物モデルにおける薬効データ(3 mg/kg)、すなわち投与後のマウス腫瘍体積変化を示し、6種の抗体の投与後に腫瘍体積がすべて小さくなることがわかった。図10は、表17の体積変化データに基づいて作成した図であった。表17に示すように、CA13-vcMMAE、CA67-vcMMAE、CA149-vcMMAE、CA185-vcMMAE、BA352-Vc-MMAE、CA518-vcMMAE、hL49-vcMMAEの各群の腫瘍体積増殖阻害率TGI%は、それぞれ55.4%、60.3%、56.9%、56.1%、69.8%、63.9%、49.0%であり、腫瘍重量阻害率IR%は、それぞれ59.8%、65.9%、61.4%、55.4%、68.2%、65.7%、56.1%であり、ヒト黒色腫細胞SK-MEL-5マウス移植腫瘍モデルは、3 mg/kgの投与条件下で、腫瘍体積増殖阻害率TGI%および腫瘍重量阻害率IR%のいずれにおいても、本項目で製造された6つの抗-CD228-vcMMAEは、いずれも対照群hL49-vcMMAEよりも優れていることがわかった。
【0093】
【表17】
【0094】
図11は、各抗CD228 ADCのSK-MEL-5動物モデルにおける薬効データ(5 mg/kg)を示し、NCGマウスは、江蘇集萃薬康生物科技有限公司(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co., Ltd.)から購入した。50% Matrigelを含むEMEM培地でSK-MEL-5細胞濃度を3×107個/mLに調整し、NCGマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が約83 mm3に達した時、マウス腫瘍体積と体重に応じて6匹ずつ8つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始し、投与量は5 mg/kgであった。スクリーニングした抗体は、対照hL49と比較して、比較的良好な薬効を有した。図11は、表18の体積変化データに基づいて作成した図であった。表18に示すように、実験評価項目CA13-vcMMAE、CA149-vcMMAE、CA518-vcMMAE、CA523-vcMMAE、CA579-vcMMAE、hL49-vcMMAEの各群の腫瘍体積増殖阻害率TGI%は、それぞれ82%、84%、81%、80%、81%、74%であり、腫瘍重量阻害率は、それぞれ77.7%、79.0%、75.5%、75.2%、72.0%、69.1%であり、ヒト黒色腫細胞SK-MEL-5マウス移植腫瘍モデルは、5 mg/kgの投与条件下で、腫瘍体積増殖阻害率TGI%および腫瘍重量阻害率IR%のいずれにおいても、本項目で製造された各抗-CD228-vcMMAEは、いずれも対照群hL49-vcMMAEよりも優れていることがわかった。
【0095】
【表18】
【0096】
11.2 ヒトNCI-H226肺癌細胞/マウス移植腫瘍モデルにおける薬効データ
ヒト肺癌細胞NCI-H226はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むRPMI 1640培地であった。CB-17/SCIDマウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から購入した。
【0097】
50% Matrigelを含むRPMI 1640培地でNCI-H226細胞濃度を5.0×107個/mLに調整し、CB-17/SCIDマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が約156 mm3に達した時、マウス腫瘍体積と体重に応じて5匹ずつ8つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始し、投与量は3 mg/kgであった。図12は、各抗CD228 ADCのNCI-H226動物モデルにおける薬効データ(3 mg/kg)を示した。6種の抗体の投与後、腫瘍体積がすべて小さくなり、HL49と同様のインビボ薬効を示すことがわかった。図12は、表20の体積変化データに基づいて作成した図であった。表19に示すように、実験評価項目CA13-vcMMAE、CA67-vcMMAE、CA149-vcMMAE、CA185-vcMMAE、CA352-vcMMAE、CA518-vcMMAE、hL49-vcMMAEの各群の腫瘍体積増殖阻害率TGIは、それぞれ46.7%、55.2%、45.3%、50.5%、47.7%、63.4%、55.1%であり、腫瘍重量阻害率は、それぞれ39.7%、44.5%、46.9%、43.1%、41.6%、47.8%、49.8%であった。
【0098】
【表19】
【0099】
図13は、各抗CD228 ADCのNCI-H226動物モデルにおける薬効データ(5 mg/kg)を示し、NCGマウスは、江蘇集萃薬康生物科技有限公司から購入した。50% Matrigelを含むRPMI 1640培地でNCI-H226細胞濃度を5×107/mLに調整し、NCGマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が約108 mm3に達した時、マウス腫瘍体積と体重に応じて6匹ずつ8つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始し、投与量は5 mg/kgであった。スクリーニングした抗体は、対照HL49と比較して、比較的良好な薬効を有した。図13は、表20の体積変化データに基づいて作成した図であった。表16に示すように、実験評価項目CA13-vcMMAE、CA149-vcMMAE、CA518-vcMMAE、CA523-vcMMAE、CA579-vcMMAE、hL49-vcMMAEの各群の腫瘍体積増殖阻害率TGIは、それぞれ94.4%、92.3%、94.6%、98.3%、103.9%、75.6%であり、腫瘍重量阻害率は、それぞれ73.1%、69.2%、72.1%、75.5%、77.4%、56.7%であった。
【0100】
【表20】
【0101】
実施例12. 抗-CD228 ADCによるマウスインビボ薬物動態実験
各ADCはBalb/cマウス3匹を選択して皮下注射により投与し、用量は10 mg/kgであり、投与前0 h、投与後1 h、4 h、10 hおよび1 d、2 d、3 d、4 d、5 d、7 d、10 d、14 dに血清を採取して検出抗体濃度を検出し、血清検出法はElisa法であった。
【0102】
図14は、CA13-vcMMAE、CA67-vcMMAE、CA149-vcMMAEの薬物動態曲線を記載し、具体的な検出結果を図14に示し、CA149-vcMMAEが、CA13、CA67抗体によって構築されたCA13-vcMMAE、CA67-vcMMAEよりも良好な薬物動態レベルを有することがわかった。
【0103】
実施例13. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11の細胞増殖阻害活性
13.1 CA149-BNLD11のMC38-CD228細胞、A375-CD228細胞に対する増殖阻害活性
対数増殖期にあるMC38-CD228(康源博創、KC-2023)、A375-CD228細胞(康源博創、KC-2110)を消化処理した後、10% FBS/1640培地で希釈して再懸濁し、96ウェル平底プレート(SARSTED、カタログ番号94.6120.096)に50 μL/ウェル、1E4/ウェルで添加した。実施例8の8.2部分で製造して得られた抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11を取って血清含有培地で希釈し、初期濃度はそれぞれ60 μg/mL、12 μg/mLであり、5倍濃度勾配希釈をし、CN202180003751.7中の抗体IDがCA521の抗体を選択して、実施例8と同じ方法で製造したnCov-CA521-vcMMAEを対照群(Isotype)とした。希釈後のCA149-BNLD11を、上記96ウェル平底細胞培養プレートに50 μL/ウェルで添加し、37℃、5% CO2条件下で96 h培養し、CellCounting-Lite(登録商標)2.0キット(Vazyme、DD1101-01)の使用過程中に光を避け、室温に平衡化し、上下逆に均一に混合し、96ウェルプレートに100 μL/ウェルで添加し、300 rpmレベルで2 min振盪した後、10 min静置した。マイクロプレートリーダー(BioTek、SYNERGY neo、USA)で細胞生存率を検出した。
【0104】
その結果、CA149-BNLD11は、MC38-CD228、A375-CD228細胞に対して優れた増殖阻害活性を有し、表21に示すように、IC50がそれぞれ101.5 ng/mLおよび61.8 ng/mLであることが示された。図15A~15Bは、縦軸が生細胞率%、すなわち、ブランク群の生細胞数に対する投与群の生細胞数の比であった。図15A~15Bから分かるように、CA149-BNLD11は、対照群(Isotype)と比較して、CD228を発現する細胞に対して顕著な増殖阻害活性を有した。
【0105】
【表21】
【0106】
13.2 CA149-BNLD11のSK-MEL-5細胞、A549-CD228細胞、A375-CD228細胞に対する増殖阻害活性
対数増殖期にあるSK-MEL-5(ATCC、HTB-70)、A549-CD228(康源博創、KC-2150)、A375-CD228細胞(康源博創、KC-2110)を消化処理した後、血清含有培地で消化を終止させて希釈し、96ウェル平底プレート(SARSTED、カタログ番号94.6120.096)に50 μL/ウェル、1E4/ウェルで添加した。CA149-BNLD11を血清含有培地で希釈し、初期濃度はそれぞれ1.2 μg/mL、60 μg/mL、6 μg/mLであり、それぞれ5倍、6倍、5倍勾配希釈した。希釈後のADCを、上記96ウェル平底細胞培養プレートに50 μL/ウェルで添加し、37℃、5% CO2条件下で96 hまたは120 h培養し、CellCounting-Lite(R)2.0キット(Vazyme、DD1101-01、使用過程中に光を避け)を室温に平衡化し、上下逆に均一に混合し、96ウェルプレートに100 μL/ウェルで添加し、300 rpmレベルで2 min振盪した後、10 min静置した。マイクロプレートリーダー(BioTek、SYNERGY neo、USA)で細胞生存率を検出した。その結果、CA149-BNLD11は、SK-MEL-5、A549-CD228、A375-CD228細胞に対して優れた増殖阻害活性を有する(IC50がそれぞれ11.48 ng/mL、15.25 ng/mLおよび13.86 ng/mLである)ことが示され、図15C~15Eから明らかなように、CA149-BNLD11は、対照群(Isotype)と比較して、CD228を発現する細胞に対して顕著な増殖阻害活性を有した。
【0107】
【表22】
【0108】
実施例14. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のヒト肺癌細胞CaLu-1ヌードマウス移植腫瘍に対する薬効評価
CaLu-1ヒト肺癌細胞はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むMcCoy’s 5A培地であった。Balb/c nudeヌードマウスは、江蘇集萃薬康生物有限公司から購入した。50% Matrigelを含む無血清McCoy’s 5A培地でCaLu-1細胞濃度を5.0×107個/mLに調整し、Balb/c nudeヌードマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が135 mm3に達した時、マウス腫瘍体積に応じて、5匹ずつ5つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始した。本実験は、単回投与を採用し、投与後28日間観察した。
【0109】
結果を図16~17に記載し、図16は、抗体薬物コンジュゲート群のCalu-1肺癌モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線であり、図17は、抗体薬物コンジュゲート群のCalu-1肺癌モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムであった。
【0110】
図16に示すように、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、各抗体薬物コンジュゲート投与群は、すべて腫瘍体積の増加を顕著に阻害し得、すべて統計学的差異を有し(Pがすべて0.05未満)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の腫瘍阻害効果は、nCov-CA521-vccMMAE群よりも顕著に優れており(P値はそれぞれ0.0001、0.0016、0.0006である)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxdの3つの群の間に有意差は見られなく(Pはすべて0.05より大きい)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍体積増殖阻害率TGI(%)は、それぞれ103.1%、93.9%、97.3%、48.5%であった。
【0111】
図17に示すように、実験評価項目時、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の平均腫瘍重量は、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)より顕著に低く、統計学的差異を有し(Pはすべて0.05未満)、nCov-CA521-vcMMAE群は対照群の腫瘍重量と統計学的差異がなく(P=0.3250)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxdの3つの群の間に有意差は見られなく(Pはすべて0.05より大きい)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍重量阻害率は、それぞれ96.3%、87.3%、87.6%、44.3%であった。
【0112】
実験過程中、実験動物は投与期間の活動および摂食状態が良好であり、体重がすべてある程度増加しており、被験体に対する動物の耐性が良好であることを示した。各群間での比較は、すべて有意差を示さなかった(P>0.05)。
【0113】
実施例15. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5ヌードマウス移植腫瘍に対する薬効評価
SK-MEL-5ヒト黒色腫細胞はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むEMEM培地であった。Balb/c nudeヌードマウスは、江蘇集萃薬康生物有限公司から購入した。50% Matrigelを含む無血清EMEM培地でSK-MEL-5細胞濃度を5.0×107個/mLに調整し、Balb/c nudeヌードマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が98 mm3に達した時、マウス腫瘍体積に応じて、5匹ずつ4つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始した。本実験は、単回投与を採用し、投与後28日間観察した。
【0114】
結果を図18~19に記載し、図18は、抗体薬物コンジュゲート群のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5ヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線であり、図19は、抗体薬物コンジュゲート群のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5ヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムであった。図18に示す腫瘍増殖曲線は、実験評価項目時、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、各投与群は、すべて腫瘍体積の増加を顕著に阻害し得、すべて統計学的差異を有し(Pはすべて<0.0001)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の腫瘍阻害効果は、nCov-CA521-vcMMAE群よりも顕著に優れており(Pはすべて<0.0001)、かつCA149-BNLD11群では2/5のマウスで腫瘍が完全に消失し、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxdの3つの群の間に統計学的差異は見られなく(Pはすべて0.05より大きい)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍体積増殖阻害率TGI(%)は、それぞれ95.4%、99.5%、99.2%、58.3%であった。
【0115】
図19に示すように、実験評価項目時、すべての投与群の平均腫瘍重量は、いずれも溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)よりも顕著に低く、統計学的差異を有し(Pはすべて0.05未満)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAEの4つの群の間に有意差はなく(Pはすべて0.05より大きい)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍重量阻害率は、それぞれ88.3%、90.7%、90.5%、58.7%であった。
【0116】
実験過程中、実験動物は投与期間の活動および摂食状態が良好であり、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)を除き、残りの各群の体重がすべてある程度増加しており、被験体に対する動物の耐性が良好であることを示した。各群間での比較は、すべて有意差を示さなかった(P>0.05)。
【0117】
実施例16. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のヒト胃癌細胞NUGC4 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍に対する薬効評価
NUGC4ヒト胃癌細胞は、康源博創生物技(北京)有限公司から購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むRMPI-1640培地であった。Balb/c nudeヌードマウスは、江蘇集萃薬康生物有限公司から購入した。50% Matrigelを含む無血清RMPI-1640培地でNUGC4細胞濃度を1.8×107個/mLに調整し、Balb/c nudeヌードマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が108 mm3に達した時、マウス腫瘍体積に応じて、5匹ずつ4つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始した。本実験は、単回投与を採用し、投与後23日間観察した。
【0118】
結果を図20~21に記載し、図20は、抗体薬物コンジュゲート群のヒト胃癌細胞NUGC4 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害曲線であり、図21は、抗体薬物コンジュゲート群のヒト胃癌細胞NUGC4 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍モデルにおける腫瘍重量のヒストグラムであった。
【0119】
図20の腫瘍増殖曲線に示すように、実験評価項目時、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群は、すべて腫瘍体積の増加を顕著に阻害し得、すべて統計学的差異を有し(Pはすべて<0.0001)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の腫瘍阻害効果は、nCov-CA521-vcMMAE群よりも顕著に優れており(Pはすべて<0.0001)、CA149-BNLD11群の腫瘍阻害効果は、CA149-GGFG-Dxd群よりも顕著に優れており(P=0.0225)、CA149-vcMMAE群とCA149-GGFG-Dxd群の間に有意差はなく(P=0.1902)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍体積増殖阻害率TGI(%)は、それぞれ104.2%、97.7%、81.0%、23.0%であった。
【0120】
図21に示すように、実験評価項目時、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の平均腫瘍重量は、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)よりも顕著に低く、統計学的差異を有し(Pはすべて0.0001以下)、nCov-CA521-vcMMAE群は対照群の腫瘍重量と統計学的差異がなく(P=0.8144)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd群の腫瘍重量は、すべてnCov-CA521-vcMMAE群よりも顕著に小さく(Pはすべて0.05より小さい)、CA149-BNLD11、CA149-vcMMAE、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍重量阻害率は、それぞれ95.7%、87.1%、79.4%、14.8%であった。
【0121】
実験過程中、実験動物は投与期間の活動および摂食状態が良好であり、体重がすべてある程度増加しており、被験体に対する動物の耐性が良好であることを示した。各群間での比較は、すべて有意差を示さなかった(P>0.05)。
【0122】
実施例17. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のヒト肺扁平上皮癌細胞NCI-H226 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍に対する薬効評価
NCI-H226ヒト肺扁平上皮癌細胞はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むRMPI-1640培地であった。Balb/c nudeヌードマウスは、江蘇集萃薬康生物有限公司から購入した。50% Matrigelを含む無血清RMPI-1640培地を用いてNCI-H226細胞濃度を4.0×107個/mLに調整し、Balb/c nudeヌードマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が145 mm3に達した時、マウス腫瘍体積に応じて、6匹ずつ4つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始した。投与量は、それぞれ3.3 mg/kgで単回投与であった。結果分析は平均数と標準誤差で表し(Mean±SEM)、Graphpad 8.0ソフトウェアを用いてデータ分析と処理を行い、腫瘍体積、体重は二因子分散分析を用いて各時点での各群間の差異を比較し、腫瘍重量は、単一因子分散分析を使用して統計的差異分析を行い、両群の間はT-testを使用して比較を行い、P<0.05は、差異が統計的有意性を有することを示した。
【0123】
試験は、群分け投与24日目に終了した。図22に記載されたヒト肺扁平上皮癌細胞NCI-H226 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍体積増殖曲線に示すように、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、CA149-vcMMAE、CA149-BNLD11、CA149-GGFG-Dxd群は、すべて腫瘍体積増殖を顕著に阻害し得、すべて統計学的差異を有し(Pはすべて0.05未満)、nCov-CA521-vcMMAE群は腫瘍阻害効果がなく(P4>0.05)、CA149-vcMMAE、CA149-BNLD11、CA149-GGFG-Dxd群の間に統計学的差異が見られなく(P>0.05)、CA149-vcMMAE、CA149-BNLD11、CA149-GGFG-Dxd、nCov-CA521-vcMMAE群の腫瘍体積増殖阻害率TGI(%)は、それぞれ86.6%、81.1%、93.5%、19.1%であった。
【0124】
実施例18. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍に対する複数用量の薬効評価
SK-MEL-5ヒト黒色腫細胞はATCCから購入し、細胞を37℃、5% CO2のインキュベーター中で培養し、培地成分は10% FBSを含むEMEM培地であった。Balb/c nudeヌードマウスは、江蘇集萃薬康生物有限公司から購入した。50% Matrigelを含む無血清EMEM培地でSK-MEL-5細胞濃度を3.0×107個/mLに調整し、Balb/c nudeヌードマウスの右側皮下に0.1 mL/匹体積で接種した。平均腫瘍体積が約103 mm3に達した時、マウス腫瘍体積に応じて6匹ずつ4つの実験群に分け、群分け当日に投与を開始し、投与量はそれぞれ1.0 mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kgであり、すべて単回投与であった。結果分析は平均数と標準誤差で表し(Mean±SEM)、Graphpad 8.0ソフトウェアを用いてデータ分析と処理を行い、腫瘍体積、体重は二因子分散分析を用いて各時点での各群間の差異を比較し、腫瘍重量は、単一因子分散分析を使用して統計的差異分析を行い、両群の間はT-testを使用して比較を行い、P<0.05は、差異が統計的有意性を有することを示した。
【0125】
群分け投与21日目に試験を終了した。図23のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍体積増殖曲線に示すように、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg群は、すべて腫瘍体積増殖を顕著に阻害し得、すべて統計学的差異を有し(Pは0.05未満)、1.0 mg/kg群は、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して有意差はなく(P=0.4030)、CA149-BNLD11の1.0 mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg群の腫瘍体積増殖阻害率TGI(%)は、それぞれ25.1%、72.1%、91.1%であった。CA149-BNLD11による腫瘍阻害活性は用量依存性を示すことがわかった。
【0126】
試験終了時、図24のヒト黒色腫細胞SK-MEL-5 Balb/c nudeヌードマウス移植腫瘍の腫瘍重量増殖曲線に示すように、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg群の腫瘍重量は顕著に減少し、統計学的差異を有し(Pはすべて0.05未満)、1.0 mg/kg群は溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して有意差はなく(P=0.7086)、CA149-BNLD11の1.0 mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg群の腫瘍体積増殖阻害率は、それぞれ21.9%、66.7%、76.6%であった。
【0127】
実験過程中、実験動物は投与期間の活動および摂食状態が良好であり、各群の体重がすべてある程度増加しており、被験体に対する動物の耐性が良好であることを示した。各群間での比較は、すべて有意差を示さなかった(P>0.05)。
【0128】
実施例19. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のマウスインビボにおける代謝研究
3匹のICRマウスをそれぞれ選択し、それぞれCA149-BNLD11およびCA149-vcMMAEを尾静脈注射により投与し、投与量は10 mg/kgであり、投与前、投与後1 h、6 h、24 h、3 d、5 d、7 d、10 d、14 d、21 d、28 dに血清を採取し、ELISA法により血清抗体濃度を測定し、具体的な検出結果を下記表に示した。
【0129】
【表23】
【0130】
表23および図25に示されるマウスのインビボ代謝研究から、CA149-BNLD11はCA149-vcMMAEよりも半減期が長いことがわかった。CA149-BNLD11の総抗体の曝露量はCA149-vcMMAEの1.4倍であり、CA149-BNLD11の総ADCの曝露量はCA149-vcMMAEの2.3倍であった。また、代謝曲線(図25)からも明らかなように、マウスインビボにおいてBNLD11の排出率はmc-vcMMAEよりもかなり低かった。以上により、CA149-BNLD11は、マウスインビボにおいて代謝がより安定していた。
【0131】
実施例20. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のマウスインビボにおける毒性研究
Balb/cマウスは、済南朋悦実験動物繁育有限公司(Jinan Pengyue Experimental Animal Breeding Co., Ltd.)から購入した。マウスを性別、体重に応じて、3匹ずつ6つの実験群に分け、体重および食物の重量を群分け当日に測定し、2日後に投与を開始した。投与レジメンを表24に示した。
【0132】
【表24】
【0133】
投与14日目に試験を終了した。結果分析は平均数と標準誤差で表し(Mean±SEM)、Graphpad 8.0ソフトウェアを用いてデータ分析と処理を行い、体積と摂餌は、いずれもT-testを使用して比較を行い、P<0.05は、差異が統計的有意性を有することを示した。
【0134】
図26~27に示すように、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、50 mg/kgのCA149-vcMMAE、CA149-BNLD11は、すべてマウス体重を顕著に減少させることができた。最大体重減少幅は、すべて投与後4日目に現れた。雌性最大体重減少はそれぞれ17.44%および10.04%であり、雄性最大体重減少はそれぞれ17.97%および5.24%であり、CA149-vcMMAE群の雌/雄マウスは、投与後4、6日目でそれぞれ異なる程度の毛立つ、萎れ症状を示し、投与後8日目に正常に戻り、一方、CA149-BNLD11群のマウスはすべて正常であり、異常反応はなかった。投与後4日目、6日目において、CA149-vcMMAEの毒性はCA149-BNLD11よりも顕著に強く(雌性:Pはすべて0.05未満、雄性:Pはすべて0.05未満)、溶媒対照群(PBSリン酸緩衝液)と比較して、50 mg/kgのCA149-vcMMAE、CA149-BNLD11はすべてマウスの摂餌量を顕著に低下させることができ、CA149-vcMMAEおよびCA149-BNLD11の2つの群の間に有意差はなかった。
【0135】
実施例21. 抗体薬物コンジュゲートCA149-BNLD11のカニクイザルインビボにおける予備毒性実験およびトキシコキネティクス研究
カニクイザルを4匹選別し、雌雄各半、投与開始時の雄性の体重は3.1~3.7 kg、雌性の体重は2.9~3.7 kgであり、合計3群に分け、それぞれCA149-BNLD11低用量群(2 mg/kg)、CA149-BNLD11中用量群(6 mg/kg)、CA149-BNLD11高用量群(10 mg/kg)とし、そのうち、CA149-BNLD11低用量群(2 mg/kg)は雌性、雄性動物各1匹、CA149-BNLD11中用量群(6 mg/kg)は雄性動物1匹、CA149-BNLD11高用量群(10 mg/kg)は雌性動物1匹とした。投与量は各群5 mg/mLであり、対応する投与濃度は、それぞれ0.4 mg/mL、1.2 mg/mL、2 mg/mLであり、低用量群および高用量群は各2回ずつ投与し、中用量群は単回投与し、30 min/動物で静脈内注射した。
【0136】
投与後、臨床観察、摂食体重測定、血液学的および血液生化学的測定に加えて、トキシコキネティック研究をさらに行い、採血時間は、中用量6 mg/kgと高用量10 mg/kg群の初回投与前および投与開始後0.5 h、2 h、6 h、24 h、72 h、120 h、168 h、240 h、336 h、504 hを含んだ。
【0137】
実験期間において、各群には動物の瀕死、死亡がなく、各用量群の動物に異常は見られなかった。各群の動物の体重全体の変動幅は大きくなく、被験体投与に関する異常は見られなかった。各群の動物の摂餌量は不規則に変化し、被験体投与に関する異常は見られなかった。図28に示すように、投与前と比較して、6 mg/kgおよびそれ以上の用量のCA149-BNLD11の投与後5~14日にカニクイザル血液学的指標WBC、#NEUT、%NEUTが低下し、投与後21日には回復傾向が見られた。それ以外、各群の動物の各測定時点における他の血液学的指標は、ほぼ正常範囲内にあり、用量効果および時効相関性に変化はなかった。被験体投与に関する異常は見られなかった。投与前と比較して、10 mg/kgの用量のCA149-BNLD11は、投与後5日にカニクイザルの血清ASTを向上させる傾向をもたらすことができ、投与後8日には回復することができた。それ以外、各群の動物の各測定時点における他の血液生化学項指標はほぼ正常範囲内にあり、被験体投与に関する異常は見られなかった。
【0138】
図29に示すように、トキシコキネティック測定の結果は、カニクイザルにおいて10 mg/kg用量群の毒素排出率が2 mg/kg用量群よりも顕著に低いことを示した。10 mg/kg用量群の毒素排出率は、6 mg/kg用量群と類似していた。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【配列表】
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【国際調査報告】