(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】光核反応のための制動放射を生じさせるための高出力コンバータ・ターゲット・アセンブリ、関係する設備及び方法
(51)【国際特許分類】
G21G 1/12 20060101AFI20250204BHJP
G21K 5/08 20060101ALI20250204BHJP
G21K 5/04 20060101ALI20250204BHJP
G21G 4/08 20060101ALN20250204BHJP
【FI】
G21G1/12
G21K5/08 R
G21K5/04 C
G21K5/08 C
G21G4/08 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544857
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022084449
(87)【国際公開番号】W WO2023104729
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520017801
【氏名又は名称】ウニベルズィテート ベルン
(71)【出願人】
【識別番号】524280348
【氏名又は名称】アイジェネッシシェス インスティトゥート フューア メトロロジー メタス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チューラー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァグァイアン、メヘラン
(72)【発明者】
【氏名】ルティ、マティアス
(57)【要約】
光核照射に基づく放射線核種の生成のための設備であって、電子ビーム2を生成する電子加速器1と、電子ビーム2を制動放射光子15に変換するコンバータ・ターゲット20を含むコンバータ・ターゲット・アセンブリ21と、制動放射光子15によって照射され、それによって前記放射線核種を生成する生成ターゲット17とを備える設備。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光核照射の原理に基づく放射線核種の、特に診断用及び治療用の放射線核種の生成のための設備であって、
・電子ビーム(2)を生成する、電子加速器(1)と、
・前記電子ビーム(2)を制動放射光子(15)に変換するコンバータ・ターゲット(20)を含むコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)と、
・前記制動放射光子(15)によって照射され、それによって前記放射線核種を生成するいくつかの生成ターゲット(17)と
を備え、
前記コンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)は、封止されたハウジング(9)を有し、前記ハウジング(9)は、
・前記コンバータ・ターゲット(20)を保持する空洞(19)を取り囲み、
・前記電子ビーム(2)のための窓ディスク(23)を含む入口窓、及び前記制動放射光子(15)のための出口窓(22)を有し、
・前記空洞(19)を通る冷却流を確立するための冷却回路(11)の一部である冷却媒体ポート(10)を有し、それにより、前記コンバータ・ターゲット(20)及び前記窓ディスク(23)を冷却し、
・前記コンバータ・ターゲット(20)は、いくつかの回転式コンバータ・ディスク(12)を有し、
・前記電子ビーム(2)は、それぞれのコンバータ・ディスク(12)に対して中心をずらして設定されており、
前記それぞれのコンバータ・ディスク(12)は、前記設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、前記電子ビーム(2)の焦点を、コンバータ・ディスク(12)の環状エリア(14)にわたって拡散させる、設備。
【請求項2】
前記電子加速器(1)が、パルス状電子ビーム(2)又は連続波電子ビーム(2)を発生させ、前記パルス状電子ビーム(2)が、ミリ秒以上の範囲内の衝撃時間及び周期時間を有する、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
電子ビーム・パルスの時間構造と同期させた前記それぞれのコンバータ・ディスク(12)の回転スピードを維持する制御ユニット(24)を備える、請求項1又は2に記載の設備。
【請求項4】
単一のビーム・パルスにさらされた前記それぞれのコンバータ・ディスク(12)上のエリアは、完全リング(14)又はそのセクタを描き、ビーム・パルス時間に対する前記コンバータ・ディスク(12)のレボリューション時間の比は、好ましくは、全てのセクタが、複数の照射サイクルにわたって均一に照射されるように選択される、請求項3に記載の設備。
【請求項5】
前記それぞれのコンバータ・ディスク(12)の前記回転スピードが、1分あたり数千から数万レボリューションの範囲内に設定される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項6】
前記窓ディスク(23)は、回転可能であり、入口窓ホルダ(8)によって保持又は支持されており、前記電子ビーム(2)は、前記窓ディスク(23)に対して中心をずらして設定されており、前記窓ディスク(23)は、前記設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、前記電子ビーム(2)の前記焦点を、前記窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散させる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項7】
前記入口窓ホルダ(8)が、好ましくは、ベリリウム箔、又は低い原子番号の任意の他の高強度材料である、好ましくは円形の窓ディスク(23)を有し又は保持し、前記入口窓ホルダ(8)が、ロータリ真空フィードスルーの一部である中空シャフト(30)上に/内に/に装着されている、又は中空シャフト(30)の一部である、請求項6に記載の設備。
【請求項8】
前記入口窓ホルダ(8)及び前記装着された窓ディスク(23)、又は前記ロータリ真空フィードスルーが、磁気流体封止(31)によって、ビーム転写ライン(3)に対して封止されている、請求項7に記載の設備。
【請求項9】
制御ユニット(25)が、前記電子ビーム・パルスの前記時間構造と同期された前記入口窓ホルダ(8)及び前記装着された窓ディスク(23)の回転スピードを維持する、請求項6から8までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項10】
単一のビーム・パルスにさらされた前記窓ディスク(23)上のエリアは、完全リング又はそのセクタを描き、前記ビーム・パルス時間に対する前記窓ディスク(23)のレボリューション時間の比は、好ましくは、全てのセクタが、複数の照射サイクルにわたって均一に照射されるように選択される、請求項9に記載の設備。
【請求項11】
前記窓ディスク(23)の前記回転スピードが、1分あたり数百から数千レボリューションの範囲内に設定される、請求項6から10までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項12】
前記ビーム転写ライン(3)が、異なるFWHMへの前記電子ビーム(2)のフォーカス又はデフォーカスを可能にする光学要素(5a~c)を含み、少なくとも2mmのFWHMが設定される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項13】
前記コンバータ・ターゲット(20)が、複数の好ましくは円形コンバータ・ディスク(12)、特に、4枚のコンバータ・ディスク(12)を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項14】
前記コンバータ・ディスク(12)が共通シャフト(13)上に積み重ねられている、請求項13に記載の設備。
【請求項15】
前記コンバータ・ディスク(12)は、平行なシャフトの方向に見て部分的に重なり合うように、前記平行なシャフト上に配置されており、各シャフト(13)は、前記電子ビーム(2)の方向に平行に整合されている、請求項13に記載の設備。
【請求項16】
前記それぞれのコンバータ・ディスク(複数可)(12)がロータリ・ドライブ(27)に結合されている、請求項1から15までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項17】
前記コンバータ・ディスク(12)がテスラ・ポンプを形成するように構成されている、請求項1から16までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項18】
前記コンバータ・ディスク(12)が、前記冷却流によって駆動されるように設計されている、請求項1から17までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項19】
前記コンバータ・ディスク(12)がテスラ・タービンを形成するように構成されている、請求項18に記載の設備。
【請求項20】
冷却媒体が冷却ガスである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項21】
ミリメートルの範囲内の振幅を有する何らかの任意選択の振れは別にして、出現する制動放射光子(15)の発生の領域が空間内で固定されている、請求項1から20までのいずれか一項に記載の設備。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の設備のためのコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)であって、封止されたハウジング(9)を備え、前記ハウジング(9)は、
・前記コンバータ・ターゲット(20)を保持する空洞(19)を取り囲み、
・電子ビーム(2)のための装着された入口窓ディスク(23)を含む入口窓ホルダ(8)、及び制動放射光子のための出口窓(22)を有し、
・前記空洞(19)を通る冷却流を確立するための冷却回路(11)に接続されるように示されている冷却媒体ポート(10)を有し、それによって、前記コンバータ・ターゲット(20)、及びその装着された入口窓ディスク(23)を含む前記入口窓ホルダ(8)を冷却し、
前記コンバータ・ターゲット(20)は、いくつかの回転式コンバータ・ディスク(12)を有し、それぞれのコンバータ・ディスク(12)は、前記設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、入射電子ビーム(2)の焦点を、前記コンバータ・ディスク(12)の環状エリアにわたって拡散させる、コンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)。
【請求項23】
前記入口窓ホルダ(8)は回転式窓ディスク(23)を有し、前記窓ディスク(23)は、前記設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、入射電子ビーム(2)の焦点を、前記窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散させる、請求項22に記載のコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)。
【請求項24】
やがて、電子ビーム(2)の焦点が、それぞれのコンバータ・ディスク(12)の環状エリアにわたって拡散されるように、前記電子ビーム(2)が、いくつかの回転コンバータ・ディスク(12)を含むコンバータ・ターゲット(20)上に案内され、それによって、生成ターゲット(17)の照射のために制動放射光子(15)のビームが生成され、前記コンバータ・ターゲット(20)は、冷却媒体、特に、ガス状のヘリウムの流れによって冷却される、放射線核種を生成する方法。
【請求項25】
前記コンバータ・ターゲット(20)がハウジング(9)の内部に構成され、やがて、前記電子ビーム(2)の焦点が、装着された入口窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散されるように、前記電子ビーム(2)が、前記ハウジング(9)の前記装着された入口窓ディスク(23)を含む回転入口窓ホルダ(8)を通って導かれる、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光核照射の原理に基づく放射線核種の、より詳細には、診断用及び治療用の放射線核種の生成のための設備に関する。本発明はまた、そのような設備における使用のためのコンバータ・ターゲット・アセンブリに関する。本発明はさらに、そのような設備を操作する方法、及び放射線核種を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光核反応は、核医学における用途のための診断用及び治療用放射線核種の生成に非常に適していると確認されている。高エネルギー光子(≧8MeV)を用いて、タイプ(γ,n)、(γ,2n)、(γ,p)、及び(γ,pn)の核反応を誘起することができる。光核反応は、巨大な双極子共鳴(GDR:giant dipole resonance)領域においてかなりの断面積を示し、それは、ある特定の事例では、(陽子、重陽子、3He及び4Heなどの)帯電粒子誘起反応に対するよりも著しく小さいわけではない。帯電粒子と比較した高エネルギー光子の透過特性により、高エネルギー光子による放射線核種の全生成収量は、帯電粒子反応と比較して欠けている断面積が、はるかに厚いターゲットによって過剰補償され得るので、非常に高くなり得る。一般に、光核反応断面積は原子番号とほぼ比例する。
【0003】
需要が高く、光核反応を用いて生成され得る放射線核種の有望な候補は、
100Mo(γ,n)反応で生成された(
99Mo/
99mTc放射線核種ジェネレータ向けの)
99Moであるか、又は、
66Zn(γ,np)反応で生成される、陽電子放出断層撮影法のための陽電子エミッタ
64Cuである。さらに、
111Inのかなり大きい活性が、光核反応
112Sn(γ,n)
111Sn
【数1】
Inで生成され得る。
【0004】
現在容易に利用できないものの、需要が高く、高い収量で生成することができる放射線核種治療のために用いられる放射線核種の有望な候補は、(光核反応226Ra(γ,n)で形成される225Raの崩壊による)アルファ粒子エミッタ225Ac、(反応68Zn(γ,p)で生成された)ベータマイナス・エミッタ67Cu、及び(反応48Ti(γ,p)で生成された)47Scである。さらに、光核反応150Nd(γ,n)で生成された半減期53.1hのベータマイナス・エミッタ149Pmは、治療用放射線核種としての有望な化学的特性及び崩壊特性を有する。さらに、通常用いられるビートマイナス・エミッタ90Y又は177Luは、それぞれ、91Zr(γ,p)又は178Hf(γ,p)反応で生成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1,061,206号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根本的な目的は、希少であるが高需要の放射線核種、特に、例えば、225Ac又は99Moなどの診断用及び治療用放射線核種の工業規模の生成を可能にする設備を提供することである。設備は、運転中の高い信頼性、高い安全マージン、及び未加工材料の消費の最小化を伴いつつ、建設及び運転するための費用効率を高くすべきである。さらに、そのような設備における使用のためのコンバータ・ターゲット・アセンブリが提供されるべきである。対応する操作方法及び放射線核種の生成のための方法もまた、授けられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、最初に述べた目的が、請求項1による設備によって満たされる。
【0008】
本発明は、光核照射の原理に基づく放射線核種の、特に診断用及び治療用の放射線核種の生成のための設備を提供するものであり、設備は、
・電子ビーム、及び、必要な場合、ビーム転写ラインを生成する、電子加速器と、
・電子ビームを制動放射光子に変換するコンバータ・ターゲットを含むコンバータ・ターゲット・アセンブリと、
・制動放射光子によって照射され、それによって前記放射線核種を生成するいくつかの生成ターゲットとを備え、
コンバータ・ターゲット・アセンブリは、封止されたハウジングを有し、ハウジングは、
・コンバータ・ターゲットを保持する空洞を取り囲み、
・電子ビームのための入口窓及び制動放射光子のための出口窓を有し、
・空洞を通る冷却流を確立するための冷却回路の一部である冷却媒体ポートを有し、それによって、コンバータ・ターゲット及び入口窓を冷却し、
・コンバータ・ターゲットは、いくつかの回転式コンバータ・ディスクを有し、
・電子ビームは、それぞれのコンバータ・ディスクに対して中心をずらして設定されており、
それぞれのコンバータ・ディスクは、設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて電子ビームの焦点を、コンバータ・ディスクの環状エリアにわたって拡散又は分散させる。
【0009】
本発明は、比較的高い電子エネルギー及び高いビーム出力を有する電子ビームが、好適な点源、高出力のコンバータ・ターゲット上に案内されて、制動放射を生成し、次いで、制動放射を用いて好適な生成ターゲットを照射する場合、光核照射の原理に従って上述の種類の高い収量の放射線核種が生成され得るとの考察に基づくものである。コンバータ・ターゲットを、そのような高強度の電子ビームに関連する熱負荷に持ちこたえられるようにすると同時に、出現する光子放射の点源特質を維持する、1つの重要な要素は、照射中に、いくつかの積み重ねられたコンバータ・ディスクを回転させることによって、コンバータ・ターゲットの比較的大きなエリアにわたってビーム・エネルギーを分散させ、同時に、冷却媒体、特に、冷却ガスの流れがコンバータ・ディスクの表面と直接接触することにより過度な熱を取り除くことである。電子ビームのインパクト点又は焦点は、何らかの(ターゲット・サイズと比較して)小さな振れが、許容され得、又は、さらに強いられ得ようとも、空間内で本質的に固定されており、一方、それぞれのコンバータ・ディスクは、この固定点に対して相対的に移動する。
【0010】
他の言及される目的は、請求項22によるコンバータ・ターゲット・アセンブリによって、及び、請求項24以降で規定された対応する方法によってかなえられる。
【0011】
さらなる特徴、実施例、目的、及び関係する利点は、同時係属の独立請求項及び従属請求項、並びに添付図面に関連する対応する記述に関連付けられる。
【0012】
先行及び後続の記述に鑑みて、以下の非限定的な実例は、その多くが、それ自体で発明性があると考えられると企図される。
【0013】
1.光核照射の原理に基づく放射線核種の、特に診断用及び治療用の放射線核種の生成のための設備であって、設備は、
・電子ビーム(2)、及び、必要な場合、ビーム転写ライン(3)を生成する、電子加速器(1)と、
・電子ビーム(2)を制動放射光子(15)に変換するコンバータ・ターゲット(20)を含むコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)と、
・制動放射光子(15)によって照射され、それによって前記放射線核種を生成する生成ターゲット(17)とを備え、
コンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)は、封止されたハウジング(9)を有し、ハウジング(9)は、
・コンバータ・ターゲット(20)を保持する空洞(19)を取り囲み、
・電子ビーム(2)のための装着された窓ディスク(23)を含む入口窓ホルダ(8)、及び制動放射光子(15)のための出口窓(22)を有し、
・空洞(19)を通る冷却流を確立するための冷却回路(11)の一部である冷却媒体ポート(10)を有し、それにより、コンバータ・ターゲット(20)、及び、その装着された窓ディスク(23)を含む入口窓ホルダ(8)を冷却し、
・コンバータ・ターゲット(20)は、いくつかの回転式コンバータ・ディスク(12)を有し、
・電子ビーム(2)は、それぞれのコンバータ・ディスク(12)に対して中心をずらして設定されており、
それぞれのコンバータ・ディスク(12)は、設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、電子ビーム(2)の焦点を、コンバータ・ディスク(12)の環状エリアにわたって拡散させる、設備。
【0014】
2.電子加速器(1)が、20MeVを超える電子エネルギーを発生させるように設計されている、実例1による設備。
【0015】
3.電子加速器(1)が、20kWを超えるビーム出力を発生させるように設計されている、実例1又は2による設備。
【0016】
4.電子加速器(1)が、パルス状電子ビーム(2)又は連続波電子ビーム(2)を発生させる、先行する実例のいずれかによる設備。
【0017】
5.パルス状電子ビーム(2)が、ミリ秒以上の範囲内の衝撃時間及び周期時間を有する、実例4による設備。
【0018】
6.電子加速器(1)がロードトロンである、実例4又は5による設備。
【0019】
ロードトロンは、メートル波で共鳴する単一同軸空洞の連続した直径を通じてビームを再循環させる原理に基づく電子加速器である。1回の加速フェーズの後、ビームは磁石によって元の空洞に向け直される。出現パターンは、バラの花の花びらの配置に似ている(ロゼットのような粒子経路のため、バラに対するギリシア語の「rhodon」から)。
【0020】
7.電子加速器(1)が超伝導線形加速器である、実例4から5による設備。
【0021】
8.電子ビーム・パルスの時間構造と同期させたそれぞれのコンバータ・ディスク(12)の回転スピードを維持する制御ユニット(24)を備える、実例4から7のいずれかによる設備。
【0022】
制御ユニットは、好ましくは、このタスクに適したセンサ、アクター、及びコントローラを含む。
【0023】
例えば、テスラ・タービン(下記参照)の回転スピードは、接線入力ノズルと流出との間の圧力差を制御することによって制御することができ、それによって、コンバータ・ディスクとインタラクションするガス速度を制御することができる。
【0024】
9.単一のビーム・パルスにさらされたそれぞれのコンバータ・ディスク(12)上のエリアは、完全リング(14)又はそのセクタを描き、ビーム・パルス時間に対するコンバータ・ディスク(12)のレボリューション時間の比は、好ましくは、全てのセクタが、複数の照射サイクルにわたって均一に照射されるように、選択される、実例8による設備。
【0025】
10.それぞれのコンバータ・ディスク(12)の回転スピードが、1分あたり数千から数万レボリューションの範囲内に設定されている、実例8又は9による設備。
【0026】
理想的には、1つのビーム・パルス間隔は、1回の全レボリューションにマッピングされるが、実際には、最高回転速度は、高い遠心力下でのコンバータ・ディスク材料の耐ストレス性又は耐バースト性によって制限され得る。
【0027】
11.入口窓ホルダ(8)は回転式窓ディスク(23)を有し、電子ビーム(2)は、窓ディスク(23)に対して中心をずらして設定されており、窓ディスク(23)は、設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、電子ビーム(2)の焦点を、窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散させる、先行する請求項のいずれかによる設備。
【0028】
これは、本発明の別の重要な実施例であり、コンバータ・ディスクに類似して、入口窓のより大きなエリアにわたって効率的な熱分布を可能にする。
【0029】
窓ディスク(23)は、好ましくは、中空シャフト(30)内に/上に/に装着される。中空シャフト(30)の回転は、好ましくは、ロータリ・ドライブ(26)によって促進される。
【0030】
12.入口窓ホルダ(8)はロータリ・ドライブ(26)に結合される、実例11による設備。
【0031】
ロータリ・ドライブは、ハウジングの外部に装着されたステッピング・モータとすることができ、それによって、中空磁気流体封止真空フィードスルーは、ギア・ドライブによって駆動される。
【0032】
13.入口窓ホルダ(8)が、ベリリウム箔又は低い原子番号の任意の他の高強度材料である、窓ディスク(23)を有する、実例11又は12による設備。
【0033】
14.入口窓ホルダ(8)が、ロータリ真空フィードスルーの一部である中空シャフト上に/内に/に装着されている、実例11から13のいずれかによる設備。
【0034】
15.入口窓ホルダ(8)及び装着された窓ディスク(23)が、磁気流体封止によって、ビーム転写ライン(3)に対して封止されている、実例14による設備。
【0035】
入口真空窓の必要とされる薄い厚さ並びに入口真空窓がさらされる機械的及び熱的ストレスのため、40mmの好ましい直径が検討された。市販の中空シャフト磁気流体封止真空フィードスルーは、3,100rpmの最大回転スピードを許容する。ギア・ドライブによって駆動するための中空シャフトに対する手だてが市販されている。
【0036】
16.制御ユニット(25)が、電子ビーム・パルスの時間構造と同期された入口窓ホルダ(8)及び装着された窓ディスク(23)の回転スピードを維持する、実例11から15のいずれかによる設備。
【0037】
17.単一のビーム・パルスにさらされた窓ディスク(23)上のエリアは、完全リング又はそのセクタを描き、ビーム・パルス時間に対する窓ディスク(23)のレボリューション時間の比は、好ましくは、全てのセクタが、複数の照射サイクルにわたって均一に照射されるように、選択される、実例16による設備。
【0038】
18.窓ディスク(23)の回転スピードが、1分あたり数百から数千レボリューションの範囲内に設定されている、実例16又は17による設備。
【0039】
理論的には、窓ディスクはコンバータ・ディスクと同じ速さで回転し得、理想的には、1つのビーム・パルス間隔を1回の全レボリューションにマッピングするが、実際には、現在利用可能な真空フィードスルーが最大回転速度を制限する。
【0040】
19.ビーム転写ライン(3)が、異なるFWHMへの電子ビーム(2)のフォーカス又はデフォーカスを可能にする光学要素(5a~c)を含む、先行する実例のいずれかによる設備。
【0041】
20.少なくとも2mmのFWHMが設定されている、実例19による設備。
【0042】
21.ビーム転写ライン(3)は、入口窓箔(23)上及びそれぞれのコンバータ・ディスク(複数可)(12)上の電子ビーム(2)の焦点の周期的な移動を可能にするビーム・ウォブラ(6、7)を含む、先行する実例のいずれかによる設備。
【0043】
22.ウォブル振幅が、コンバータ・ディスク(複数可)(12)上でミリメートルの範囲内である、実例21による設備。
【0044】
23.ウォブル周波数が、101から106Hzの範囲内である、実例21又は22による設備。
【0045】
24.ビーム転写ライン(3)は、コンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)の真空割れから電子加速器(1)を防護するために、下流側圧力センサによってトリガされるスラマー・バルブ(4)を有する、先行する実例のいずれかによる設備。
【0046】
25.コンバータ・ターゲット(20)が、複数のコンバータ・ディスク(12)、特に、4枚のコンバータ・ディスク(12)を含む、先行する実例のいずれかによる設備。
【0047】
26.コンバータ・ディスク(12)が共通シャフト(13)上に積み重ねられている、実例25による設備。
【0048】
好ましくは、コンバータ・ディスクは、冷却媒体の流れがディスクのうちのいずれのディスクも両側から冷却することができるように、それらの間に隙間を空けてシャフト上に一枚ずつ順番に(同心で)積み重ねられて又は置かれている。他方、コンバータ・ターゲットをコンパクトに保つため、及び出現する光子照射のきわめて重要な点源特質を破壊しないように、隙間は十分小さい。
【0049】
27.コンバータ・ディスク(12)は、シャフトの方向に見て部分的に重なり合うように、平行シャフト上にではあるが連続して一枚ずつ順番に配置されている、実例25による設備。
【0050】
28.各シャフト(13)が、電子ビーム(2)の方向に平行に整合されている、実例26又は27による設備。
【0051】
29.それぞれのコンバータ・ディスク(12)がロータリ・ドライブ(27)に結合されている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0052】
ロータリ・ドライブは、好ましくは、遮蔽された位置でハウジングの外部に装着される。コンバータ・ディスクは、好ましくは、ギア・ドライブ及びロータリ・フィード・スルーを介してステッピング・モータによって駆動される。
【0053】
30.コンバータ・ディスク(12)が、テスラ・ポンプを形成するように構成されている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0054】
31.コンバータ・ディスク(12)が、冷却流によって駆動されるように設計されている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0055】
これは、一般に、ある種のタービン構成を意味する。例えば、コンバータ・ディスクは、冷却流内に置かれたアキシャル・タービン又はラジアル・タービンに結合され得る。
【0056】
32.コンバータ・ディスク(12)がテスラ・タービンを形成するように構成されている、実例31による設備。
【0057】
このように、本質的に、それぞれのコンバータ・ディスク自体はタービンを形成する。
【0058】
テスラ・タービンは、1913年にニコラ・テスラによって特許権が得られた羽根なし求心流タービンである。それは羽根なしタービンと称される。
【0059】
テスラ・タービンは、従来のタービンのように、流体が羽根に衝突するのではなく、境界層効果を利用するので、境界層タービン、粘着タイプ・タービン、又は(ルートヴィヒ・プラントルにちなんで)プラントル層タービンとしても知られている。
【0060】
テスラ・タービンは、移動流体をディスクのエッジに当てるノズルを備える滑らかなディスクのセットを含む。流体の表面層の粘性及び粘着性によって、流体はディスク上を引きずられる。流体は、遅くなりエネルギーをディスクに加えるにつれて、らせん状に中央排出部の中に進む。ロータは突起部がないので、非常に頑丈である。1分あたり最大数万レボリューションの非常に高い回転スピードに到達することができる。
【0061】
33.コンバータ・ディスク(12)の回転スピードが、差圧調節器を用いて、冷却流の接線流速によって制御される、実例31から32による設備。
【0062】
34.コンバータ・ディスク(12)が、主に、タンタル又はタングステンで作られている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0063】
35.それぞれのコンバータ・ディスク(12)が、その外周に、いくつかの半径方向に整合されたスロット又はくぼみを有する、先行する実例のいずれかによる設備。
【0064】
36.出口窓は、光子エネルギー≦8MeVの光子の大部分を吸収し、好ましくは、残った電子を吸収する、及び/又は減速させる平坦化フィルタ(22)を有する、先行する実例のいずれかによる設備。
【0065】
37.平坦化フィルタ(22)が、水冷式アルミニウム・カラムを含む、実例36による設備。
【0066】
38.平坦化フィルタ(22)を含む出口窓が、中性子吸収器(16)を含む、先行する実例のいずれかによる設備。
【0067】
39.冷却媒体が冷却ガスである、先行する実例のいずれかによる設備。
【0068】
40.冷却ガスがヘリウムである、実例39による設備。
【0069】
41.塊状の、及び、好ましくは、水冷のビーム・ストップ(18)が生成ターゲット(17)の後ろに配置されている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0070】
放射線核種の生成に加えて、本発明はさらに、電子加速器ベースの中性子源として光中性子を生成する際に使用するための設備などを操作する方法に関する。生成された光中性子は、材料の特質評価、原子力科学、中性子写真術などの科学及び工学の異なる分野での様々な適用例があり得、放射性廃棄物の管理の問題を含め、リアクタベースの中性子源に優るいくつかの利点を提供することができる。高い収量の光中性子は、比較的高い電子エネルギー及び高いビーム出力を有する電子ビームが、好適な点源、高出力の電子光子コンバータ・ターゲット(第1のコンバータ・ターゲット)上に案内されて、制動放射を生成し、次いで、制動放射を用いて、(9Be(γ,n)8Be反応を通じて)1つ(又は複数)の厚いベリリウム・ターゲット(複数可)などの好適な要素(第2のコンバータ・ターゲット)を光子中性子コンバータ・ターゲットとして照射する場合、光核照射の原理に従って生成され得る。したがって、本発明は、光核反応の原理に基づいて、新たな革新的コンバータ・ターゲット・アセンブリ一式において2つ(以上)のタイプのコンバータ・ターゲット材料を用いた高い収量の光中性子の生成のための設備を提供するものである。
【0071】
42.ミリメートルの範囲内の振幅を有する何らかの任意選択の振れは別にして、出現する制動放射光子の発生の領域が空間内で固定されている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0072】
43.生成ターゲット(17)が、主に、以下の同位元素、226Ra、178Hf、150Nd、112Sn、100Mo、91Zr、66Zn、68Zn、48Ti、48Caのうちの1つで作られている、先行する実例のいずれかによる設備。
【0073】
44.先行する請求項のいずれかによる設備向けのコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)であって、封止されたハウジング(9)を備え、ハウジング(9)は、
・コンバータ・ターゲット(20)を保持する空洞(19)を取り囲み、
・電子ビーム(2)のための装着された入口窓ディスク(23)を含む入口窓ホルダ(8)、及び制動放射光子のための出口窓(22)を有し、
・空洞(19)を通る冷却流を確立するための冷却回路(11)に接続されるように示されている冷却媒体ポート(10)を有し、それにより、コンバータ・ターゲット(20)、及び、その装着された入口窓ディスク(23)を含む入口窓ホルダ(8)を冷却し、
コンバータ・ターゲット(20)は、いくつかの回転式コンバータ・ディスク(12)を有し、それぞれのコンバータ・ディスク(12)は、設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、入射電子ビーム(2)の焦点を、コンバータ・ディスク(12)の環状エリアにわたって拡散させる、コンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)。
【0074】
45.入口窓ホルダ(8)は回転式窓ディスク(23)を有し、窓ディスク(23)は、設備の動作中に回転するように設計されており、以て、やがて、入射電子ビーム(2)の焦点を、窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散させる、実例44によるコンバータ・ターゲット・アセンブリ(21)。
【0075】
46.少なくとも以下の放射線核種、225Ra、224Ra、225Ac、213Bi、212Pb、177Lu、149Nd、149Pm、111Sn、111In、90Y、99Mo、67Cu、64Cu、47Ca、47Scが生成される、先行する実例のいずれかによる設備を操作する方法。
【0076】
47.やがて、電子ビーム(2)の焦点が、それぞれのコンバータ・ディスク(12)の環状エリアにわたって拡散されるように、電子ビーム(2)が、いくつかの回転コンバータ・ディスク(12)を含むコンバータ・ターゲット(20)上に案内され、それによって、生成ターゲット(17)の照射のために制動放射光子のビームが生成され、コンバータ・ターゲット(20)は、冷却媒体、特に、ガス状のヘリウムの流れによって冷却される、放射線核種を生成する方法。
【0077】
48.コンバータ・ターゲット(20)がハウジング(9)の内部に構成され、やがて、電子ビーム(2)の焦点が、入口窓ディスク(23)の環状エリアにわたって拡散されるように、電子ビーム(2)が、ハウジング(9)の装着された入口窓ディスク(23)を含む回転入口窓ホルダ(8)を通って導かれる、実例47による方法。
【0078】
本発明の詳細な説明が引き続き添付図面に関して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】光核照射一式のアセンブリを概略的に示す図である。
【
図2】磁気流体封止を用いた回転中空シャフト真空フィードスルーの概略を示す図である。真空窓ディスクは回転シャフトの上流側に装着されている。ビーム軸は回転軸に対して中心がずれている。
【
図3】回転ディスク上の角度ビーム・パターンの例示的な図解を示す図である。
【
図4】線形加速器(2.4mA)によって生成された電子ビームの時間構造と、同様のビーム出力によるロードトロン(3.125mA)によって生成された電子ビームの時間構造との比較を示す図である。
【
図5】例えば、ベリリウム(Be)真空箔上のエネルギー堆積の効果を、ビームの半値全幅(FWHM:full width at half maximum)の関数として示す図である。
【
図6】ロータリ真空フィードスルーの中空シャフト上に/内に装着された、例えば、ベリリウム(Be)真空窓箔上のエネルギー堆積の効果を示す図である。
【
図7】回転する、例えば、ベリリウム(Be)真空窓箔の照射の提案された方式を示す図である。
【
図8】125kWのビーム出力を有する40MeVの電子のビームが回転真空窓アセンブリを通り抜けるとき、箔の厚さ及びビームのFWHMに依存して到達する最大温度を示す図である。
【
図9】移動する表面上の揺動電子ビームの堆積パターンを示す図である。
【
図10】回転ディスク、例えば、1.125mm厚のタンタル・ディスク上のビーム・パルスの分布の概略を示す図である。
【
図11】24,000rpmで回転させ、高速流のヘリウム・ガスによって冷却された1.125mm厚コンバータ・ディスクを通り抜ける40MeV電子及び125kWビーム出力のビームの通過によって到達する最大温度を示す図である。
【
図12】テスラ・タービン/ポンプ・タイプの回転ディスク・コンバータの設計の図解を示す図である。
【
図13】コンバータ・ターゲットとしての、4枚の部分的に重なり合うディスクの構成を示す図である。左部分は斜視図を提供する。右部分では、電子ビーム方向視が与えられる。
【
図14a】
図13に関連して採用されるべき様々なディスク構成を示す図である。
【
図14b】
図13に関連して採用されるべき様々なディスク構成を示す図である。
【
図15】大きい熱負荷によるゆがみを回避するためのスロット付きディスクの実例を示す図である。
【
図16】出口窓及び平坦化フィルタとして機能して、電子及び低エネルギー光子によるサンプル・ターゲットの照射を防ぐ、水冷式アルミニウム・カラムの位置を示す図である。さらに、複数の生成ターゲットを同じ光子ビームで同時に照射し得ることも示されている。
【
図17】表1が、点源コンバータ・アセンブリにおいて125kWビーム出力を有する40MeV電子ビームの計算されたエネルギー堆積を示している図である。計算では、想定上のタンタル(Ta)コンバータは、より優れた冷却のため、各1.125mm厚の4つの部分に再分割された。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明によると、医療的放射線核種生成のための光核反応の工業的実装形態に対する鍵は、以下の構成要素である。
1.)利用可能な約20MeVを超える電子エネルギー及び約20kWを超えるビーム出力を有する高出力加速器。
2.)電子ビームを、高い強度の電子ビームによって送り出された出力を吸収することができる制動放射(制動放射:braking radiation)光子に変換する高出力コンバータ・ターゲット。GDR領域内の光子フラックスが高くなればなるほど、到達され得る特定の活性がますます高くなる(すなわち、99Mo生成のために)、又は生成ターゲットのために利用されなければならないターゲット材料がますます少なくなる。ターゲット材料は、ほとんどが、貴重な同位体的濃縮材料(すなわち、67Cu生成のための68Zn)又は、有害な高放射性材料(すなわち、226Ra)である。
3.)高エネルギーで高強度の光子フラックスに持ちこたえることができると同時に、安全に、有害な及び/又は放射性ターゲット材料(すなわち、226Ra)を封じ込めることができる生成ターゲット設計。
4.)医療用途に適した質及び量の所望の放射線核種を抽出するために自動化された化学的手順。
【0081】
追加1):電子加速器のいくつかの設計が、過去に主に、医療器材の殺菌又はポリマーの硬化のために、最大10MeVの制動放射を発生させるために開発されてきた。現在は、30~40MeVのビーム・エネルギー及び100kW以上のビーム出力を有する加速器が市販されている。
【0082】
追加2):20MeVを超え、100kWのビーム出力を超える電子ビームを制動放射に変換することができる高出力の点源コンバータ・ターゲットは開発されてこなかった。このことは、医療的放射線核種の大規模な生成のための光核反応の使用を効果的に妨げてきた。そのようなコンバータ・ターゲットの記述は、現在の適用例の主なトピックである。
【0083】
追加3):ターゲット材料が、比較的厚い、高強度の高温の材料内に封じ込められ得るので、現行の方法はタスクに適合することができる。
【0084】
追加4):上述の放射線核種の多くにとって、ターゲット材料から所望の生成物を分離するための化学的分離手順が、すでに開発されている、又は現行の手順から適合することができる。
【0085】
上記で提示された評価に基づいて、光核反応のための制動放射を生成するために、高出力コンバータ・ターゲットの設計及び構築がきわめて重要である。きわめて重要な好ましい構成要素、それらの機能及びそれらの技術的な実現が、添付図面1にスケッチされ下記に記述される。
【0086】
図1は、電子加速器1によって提供される高出力電子ビーム2と、真空ビーム・ライン3と、ビーム・ライン3内に配置された高速作動真空バルブ4(スラマー・バルブ)と、ビーム2を異なる半値全幅(FWHM)にフォーカスする又はデフォーカスするためのいくつかのビーム光学要素(5a~c)と、ビーム偏向ユニット6及び7を含むビーム・ウォブラと、回転式真空窓ディスク23を含む回転真空窓ホルダ8と、関連する制御ユニット25を含む、真空窓のためのロータリ・ドライブ26と、回転コンバータ・ターゲット20のためのハウジング9と、手だて、すなわち、ハウジング9を通って流れる冷却媒体を供給するためのインレット及びアウトレット・ポート10と、ハウジング9によって取り囲まれたいくつか(ここでは1つ)の回転コンバータ・ディスク12を含む回転コンバータ・ターゲット20とを有する光核照射一式の好ましいアセンブリを概略的に示している。さらに示されているのは、回転コンバータ・ディスク(複数可)12上の分散されたビーム・スポット14(経時的なトレース)と、関連する制御ユニット24を含むロータリ・ドライブ27に結合された、コンバータ・ディスク(複数可)12の回転軸13と、制動放射光子の出現コーン15と、平坦化フィルタ及び中性子吸収器16と、生成ターゲット(複数可)17と、塊状高密度ビーム・ストップ18とである。
【0087】
図1から及び下記の詳細な説明から明らかになるように、ハウジング9内に配置された装着された真空窓ディスク23を含む真空窓ホルダ8は、ハウジング9によって取り囲まれた空洞19に進入する電子ビーム2のためのインレット又は入口窓として働く。電子ビーム2は、空洞19内に配置されたコンバータ・ターゲット20に衝突し、制動放射光子15を発生する。ハウジング9内に配置された平坦化フィルタ22及び中性子吸収器16は、もう一方の側で空洞から出る光子コーン15のためのアウトレット又は出口窓22として働く。光子コーン15は、電子ビーム軸の延長を中心とする。空洞19は、外部環境に対して気密様式でハウジング9によって封止される。すなわち、入口窓8及び平坦化フィルタ出口窓22は、気密バリアを提供するものの、電子放射又は光子放射それぞれにとっては透明である。空洞19内の冷却媒体、特に冷却ガスの流れは、空洞19の内部の内面にわたって流れることによって、コンバータ・ターゲット20に対して、さらに、回転真空窓ディスク23を含む真空窓ホルダ8に対して冷却を行う。この冷却流は、ハウジング壁に配置された冷却媒体インレット及びアウトレット・ポート10を通ることによって空洞19に進入し、空洞19から出る。ハウジング壁はさらに、好適な流路を通る冷却液、特に冷却水の流れによって冷却され得る。
【0088】
空洞19を通る冷却流は冷却回路11の一部であり、このことは
図1において概略的にのみ示されている。有利には、ガス状ヘリウムは冷却媒体として用いられる。空洞19の内部の冷却ガスの圧力は、管理できる範囲内で入口窓8上と平坦化フィルタ出口窓22上との差圧を維持するために、好ましくは、大気圧の範囲内にある。しかしながら、さらに下記で説明されるコンバータ・ディスク12によって形成されたテスラ・タービンの場合には、冷却ガス・インレット・ポートは、最大数bar(10
5Pa)の吐出圧向けに設計されており冷却ガスを接線様式でコンバータ・ディスク12の外周に導く、ノズルを含むことができる。
【0089】
下記でより詳しく認識されることとなるように、コンバータ・ディスク12の回転軸13は、電子ビーム2の軸に対して中心をずらして(平行にシフトされて)配置される。
【0090】
さらに、電子ビーム2のための入口窓ホルダ8は、好ましくは、電子ビーム2の軸に対して中心をずらして(平行にシフトされて)その回転軸もまた配置されている回転式窓ディスク23を含む。
【0091】
冷却ガス・インレット・ポート及びアウトレット・ポート10を含むハウジング9と、電子ビーム2の入口のための装着された真空窓ディスク23を含む真空窓ホルダ8と、光子コーン15の出口にある平坦化フィルタ22及び中性子吸収器16と、一体式コンバータ・ターゲット20とを含み、-必要な場合、真空窓ディスク23を含む真空窓ホルダ8及び/又はコンバータ・ターゲット20のための関係するロータリ・ドライブを含む-ユニットは、コンバータ・ターゲット・ユニット又はコンバータ・ターゲット・アセンブリ21と呼ばれてもよい。
【0092】
単一の平坦化フィルタ22及び中性子吸収器16の代わりに、1つは平坦化のため(下記参照)、1つは中性子吸収のためである、2つ(以上)の別個のフィルタがあってもよい。これらの機能がハウジング9の単一の出口窓22に一体化されるのが便利であるが、高エネルギー光子のための出口窓22に加えて、上述の種類のいくつかの追加フィルタがあって、1つのアセンブリに一体化されるか、又は別個の構成要素として実現されてもよい。例えば、外部環境に対して気密様式でハウジング9を封止する単純な出口窓22、次いで、平坦化フィルタ及び中性子吸収器が任意の順序で(光子が通過する方向に見たとき)、又は後者のうちの一方のみ若しくはどちらもなし、であってもよい。
【0093】
より具体的には、光核反応を用いた工業的放射線核種生成設備は、好ましくは、以下を備える。
・高出力電子加速器。
・抽出された電子ビームを真空中で運搬する真空にされたビーム転写ライン。
・好ましくは、真空割れから加速器を防護する、下流の圧力センサを含む高速作動バルブ(スラマー・バルブ)。
・好ましくは、例えば、四極子三重項の形態でビームの異なるFWHMへのフォーカス又はデフォーカスを可能にするビーム光学要素。
・好ましくは、高周波数でx及びy軸方向にビームの高速移動を可能にする、「ビーム・ウォブラ」と呼ばれるビーム光学要素。
・加速器及びビーム・ラインの真空をコンバータ・ターゲット・アセンブリから分離する真空窓。
・コンバータ・ターゲット・アセンブリを含むハウジング。
・冷却ガス及び/又は冷却液のための手だて及び接続部。
・(理想的には完全に)電子ビームを停止させ、電子ビームを様々なエネルギーの制動放射光子に変換する冷却されたコンバータ・ターゲット・アセンブリ。コンバータ・ターゲットは、好ましくは、いくつかのディスクを有し、それによって、個々の熱負荷を低減し、効率的な冷却のために最適なやり方で構成される。
・好ましくは、ビームのビーム構造と同期させて、コンバータ・ディスクを回転させることによって、入射ビーム・パケットは、コンバータ・ディスクの大きなエリアにわたって分散される。
・好ましくは、生成ターゲットの加熱のみに寄与するが光核反応を誘起しない低エネルギー光子の大部分を吸収する平坦化フィルタ。
・好ましくは、望まれない副生成物の生成に寄与する低エネルギー及び高エネルギーの光中性子向けであり、したがって、所望の生成物の放射線核種の純度を高める中性子フィルタ。
・少なくとも1つの生成ターゲット、好ましくは複数の生成ターゲットのスタックと、好ましくは、生成ターゲットを、遠隔に追加する、又は回復するための手だてとを保持する冷却されたアセンブリ。
・光中性子を発生させるための(任意選択の)ベリリウムの冷却されたブロック。
・貴石着色のための補助的な(任意選択の)照射位置を含む冷却された塊状ビーム・ストップ。
・冷却ループ、特に、好ましくは、コンバータ・ターゲット・アセンブリを冷却するためにポンプ、リザーバ、熱交換器、及びフィルタを含むガス冷却ループ。
【0094】
図2は、回転真空窓アセンブリを概略的に示している。電子ビーム2は、中心がずれたベリリウム真空窓ディスク23に衝突している。ベリリウム真空窓ディスクは、回転中空シャフト30真空フィードスルー30に取り付けられたリングのようなホルダ8内に装着される。代替的に、ホルダ8は、中空シャフト3の一体部品であってもよい。左側では、回転真空窓アセンブリがビーム転写ライン3に接続されている。右側には、空洞19がある。その磁気流体シール31及びベアリング32を有する中空シャフト30は、ハウジング9の冷却ガス雰囲気から加速器1及びビーム転写ライン3の真空を分離する。中空シャフトは、ロータリ・ドライブ26及び対応する制御ユニット25によって駆動される(
図1で概略的に示される)。
【0095】
添付の表1では、個々の構成要素の熱負荷及び要求される冷却能力を予測するため、ベリリウム真空窓及び分配された4つの部分のタンタル(Ta)コンバータ並びに水冷式アルミニウム平坦化フィルタを用いて、125kWビーム出力を有する40MeV電子ビームのエネルギー堆積が計算されている。
【0096】
以下の節では、個々の構成要素の好ましい実施例及び基本的な概念がより詳細に説明される。
【0097】
「1)回転真空窓及びコンバータ・ターゲットのビーム構造との同期」
提示された手法では、固定ビーム・スポットが回転ディスク(真空窓又はコンバータ・ターゲット)上に案内される。熱負荷をディスク上に分散させるため、これらの構成要素のレボリューション時間がビーム構造と同期される。ビーム時間構造は、時間に関してビームを記述するビーム衝撃時間t
I、周期時間t
Pとして示される2つのパルス間の時間間隔を用いてモデル化することができる。デューティ因子D=t
I/t
Pは、2つの時間間隔に関係し、0と1との間で変動し得る。ディスク回転は、単一のパラメータ、レボリューション時間t
Rによって記述することができ、レボリューション・スピード(rad/s単位で)ω=2π/t
Rに対応する。このように記述された系は、固定ディスク及び回転ビームと等価である。(半径成分r及び角度成分
【数2】
の)極座標を用いて、ディスク上のビーム・スポット経路の中心の時間的な進展は、
【数3】
r(t)=r
0
を用いて記述することができる。但し、簡単のため、半径成分は一定に保たれる。関数δ(t)は、ビーム変調を記述しており、以下の形態をとる。
【数4】
例示目的で、ディスク上の照射軌道経路の開始角s
k及び終点角e
kは、それぞれの別個の周期kに対して計算され得、
【数5】
比α=t
I/t
R及びβ=t
P/t
Rを用いて、上記の等式は無次元にすることができる
s
k=2πβ
e
k=(kβ+α)。
【0098】
したがって、照射されるビーム経路によってカバーされる角度は、
Δ=ek-sk=2πα
によって与えられる。
【0099】
レボリューション時間が複数の衝撃時間として選択される場合、この式から、比αが、ディスク上のセグメント数を規定していることが明らかになる(例えば、α=1/3の場合、Δ=2π/3なので、ディスクは3つのセクタに分割される)。さらに、2つの連続する開始点と終点との間の距離は、
Δs=sk+1-sk=2πβ
Δe=ek+1-ek=2πβ
と記述することができる。
【0100】
これらの関係式から、β=1、2、3、..が回避されるべきであることが明らかである。これらの場合、2つの連続する開始点間の角度は、1回又は複数回の完全回転であるので、開始点は常に同じ位置である。これは、α=1であって、とにかく、ディスク上にはたった1つのセクタのみが存在する場合にのみ許容できる。関係式β=α/Dと一緒に、上記の関係式が使用されて、照射パターンを最適化するために所与のデューティ因子に対してレボリューション時間を選択することができる。例として、照射パターンは、様々なαに対してデューティ因子D=1/5の場合が
図3に描かれている。
【0101】
より具体的には、
図3は、1/5のデューティ因子及び様々なαに対して回転ディスク上の角度ビーム・パターンの例示的な図解を示している。例示目的で、それぞれの連続する照射経路の半径は、段階的に増大される。バツ印及びドットは開始及び終点をそれぞれ示している。各αに対してそれぞれのセクタもまた示されている。
【0102】
「2)電子ビーム加速器及び仕様」
光核反応を誘起するのに適した電子加速器は、電子ビーム・エネルギー、ビーム強度(ビーム出力)、ビームの時間構造、及びビームの幅に関するいくつかの要件を満たさなければならない。医療用途での有益な放射線核種生成にとって必要条件であるが、現在、20MeVよりも大きいエネルギー及び20kWを超えるビーム出力を有する電子ビームを送り出すことができるいくつかのタイプの加速器が市販されている。
【0103】
電子エネルギーが35MeVと100MeVを超える値との間であり、最大ビーム出力が35kWと120kWとの間である線形加速器が市販されている。200mAから300mAまでのピーク電流強度は、最大800Hzの可変反復レートで利用可能であり、その結果、最大4mAの平均ビーム電流となる。1つのパルス長は、最大16μsとすることができる[1a]。電子ビームは、ビーム光学要素の使用により、異なる半値全幅(FWHM)に形づくることができる。ビーム・プロファイルは、非ガウス形(すなわち、フラットトップ・プロファイル)であるように選択することができる。
【0104】
40MeVの電子エネルギー及び125kWの最大ビーム出力を有するタイプ・ロードトロンの加速器が市販されている。ロードトロン加速器は、1%から12.5%のデューティ・サイクルで10Hzから50Hzで動作し、結果として、25mAの最大ピーク電流強度及び3.125mAの平均ビーム電流で、最大2.5msのパルス長がもたらされる[1b]。電子ビームは、ビーム光学要素の使用により、異なるFWHMに形づくることができる。ビーム・プロファイルは、非ガウス形(すなわち、フラットトップ・プロファイル)であるように選択することができる。
【0105】
線形加速器と比較して、ロードトロンは、点源コンバータ・ターゲットと一緒に動作させると有利である。異なるビーム構造のため、線形加速器と比較して、ビーム・パルスははるかに長く、およそ10分の1に低減したピーク強度である。したがって、ビーム出力は、真空窓及びコンバータ・アセンブリの構成要素を素早く移動させる、より大きなエリアにわたって広がることができ、以て、強力な電子ビームの通過によって誘起されるピーク温度を著しく低下させることができる。この状況は、
図4に概略的に例示されている。
【0106】
より具体的には、
図4は、線形加速器によって生成された電子ビームの時間構造と、ロードトロンによって生成された電子ビームの時間構造との比較を示している。この例では、線形加速器は、持続時間15μs、及び800ppsのパルス反復レートでピーク電流200mAのビーム・パルスを生成するように想定された。これにより、1.2%デューティ・サイクルで2.4mAの平均ビーム電流がもたらされる。ロードトロンは、50Hzで動作させられ、ピーク電流25mAで、持続時間2.5msのビーム・パルスを生成する。これにより、12.5%デューティ・サイクルで3.125mAの平均ビーム電流がもたらされる。より低いピーク電流でのより長いパルス持続時間により、コンバータ内に堆積されたエネルギーは、コンバータ・ディスクが2.5ms内で1回(すなわち、24,000rpmで)回転させられる場合、コンバータ・ディスクのまるまる1回の回転に沿って分散させられ得る。
【0107】
原則的に、線形電子加速器はさらに、超伝導に構築することができ、それにより、さらに長い最大100%のデューティ・サイクル及び非常に高いビーム電流が可能になるはずである。したがって、上述のロードトロンの長いデューティ・サイクルの利点は、超伝導線形加速器にも当てはまる。コンバータ・ターゲットの本発明は、超伝導線形加速器にも適用できるはずである。しかしながら、現在、市販の超伝導線形加速器はなく、工業生産のみが初期投資を商業的に許容できるレベルまで低減させることになる。さらに超伝導加速器は、約4.5Kまで冷却するために関連するインフラを必要とするので、それにより、ある程度、加速器のより低い出力消費の利点が相殺される。
【0108】
「3)高速作動バルブ(スラマー・バルブ)」
加速器及びビーム・ラインを、真空窓の割れ及び材料の加速器空洞(複数可)への移動から防護するため、真空窓の前に且つビーム・ラインの下流に配置された圧力センサによってトリガされる高速作動バルブが据え付けられる。真空窓の割れの事例では、高速作動バルブは、貫入衝撃波の最前部が加速器に到達する前に、ミリ秒以内にビーム・ラインの断面積を物理的に閉鎖する。
【0109】
「4)真空窓」
加速器からの電子ビームは、コンバータの冷却回路から加速器の真空を分離する真空窓を通り抜けなければならない。この窓は、その機械的安定性が損なわれないまま、電子ビーム強度に持ちこたえなければならない。したがって、この窓は、エネルギー低下が小さい電子ビームの通過を可能にするため、高融点及び良好な機械的強度を有し、低い原子番号の材料からならなければならない。さらに真空窓の材料は、化学的に比較的不活性であるべきであり、冷却回路の成分又は微量成分と反応すべきでない。真空窓に適した材料は、ベリリウムから作られた箔である。真空窓及びコンバータ・ターゲット材料は、強力な電子ビームによって堆積されたエネルギーのために、冷却されなければならない。黒体輻射は、堆積されたエネルギーを発散させるには圧倒的に不十分である。
【0110】
厚さが20~100μmであるベリリウム箔から作られた真空窓を検討した。この厚さでは、Be箔を通り抜けることによって失われる1MeVよりも大きい電子の数は2%未満である。箔に堆積されるエネルギーは、箔の厚さに依存するが、100μm厚の窓では80ワットを超えない。ビーム・スポットの中心における温度の変化は、ビームのFWHMに大きく依存する。FWHMが1mmのビームが、20μmの薄いBe窓を通り抜ける場合、約250℃の温度ばらつきが50Hzの時定数で観測され、結果として、箔の著しい機械的ストレスがもたらされる。堆積されたエネルギーは、真空窓厚とほとんど直線的に比例するので、FWHMが1mmのビーム幅及び100μm厚は、真空窓の割れにつながる。
図5に示されるように、ビーム・プロファイルの拡幅化により、温度ばらつきは著しく低減され得るが、しかし、コンバータ・ターゲットによって放射された高エネルギー光子のコーンの角度を拡げる代償として、生成ターゲットの照射部位においてもたらされるのは、より低いフラックス強度となる。
【0111】
より具体的には、
図5は、Be真空箔上のエネルギー堆積の効果を、ビームのFWHMの関数として示す。1mm、3mm、及び5mmのFWHM値が示されている。
【0112】
温度ばらつきをさらに低減するために、エントランス真空窓は回転できるようにされる(
図6参照)。すなわち、真空窓はロータリ・ドライブに結合される。実例として、直径4cmのBe箔が、好ましくは磁気流体封止を用いたロータリ真空フィードスルーの一部である中空シャフト上に装着される。市販の4cmのロータリ真空フィードスルーを、約3100rpmの最大スピードで回転させることができる。我々の考察では、ビームは、縁から0.5cmの距離で、直径4cmのディスクの周辺をたたいていたので、直径3cmのインパクト・ゾーンとなった。
【0113】
より具体的には、
図6は、ロータリ真空フィードスルーの中空シャフト上に装着された直径4cmのBe箔の概略を示している。一方の側が、流れるHeガスによって冷却される。
【0114】
回転スピードは2,666rpmとして選択された。このようにして9つのセグメントが形成され、各セグメントは、2.5msの間照射され、9回の20msの冷却期間が続き、次いで同じセグメントが再び照射される。概略が
図7に示されている。提案された一式を用いて、箔に堆積されたエネルギーは、箔のより大きなエリアにわたって分散され、最後の照射以来、クール・ダウンするのに著しくより大きな時間を要したエリアに次のビーム・パルスが照射する。
【0115】
より具体的には、
図7は、回転Be箔真空窓の照射の提案された方式を示している。箔は時計回りに回転している。50Hz及び12.5%デューティ・サイクルのビーム構造での提案された方式の照射では、照射された部分の冷却期間は最大化される。
【0116】
提案された一式により、より厚さが大きく、したがって真空窓の割れを受けにくいBe箔の使用が可能になる。Be箔の厚さ及びビームのFWHMに依存して到達した最大温度が、
図8に表示されている。見ることができるように、最大温度は著しく低減される。100μmの窓厚及びビームの2mm以上のFWHMでは、到達する最大温度は130℃未満である。
【0117】
より具体的には、
図8は、125kWのビーム出力を有する40MeVの電子のビームが回転真空窓アセンブリを通り抜けるとき、箔の厚さ及びビームのFWHMに依存して到達する最大温度を示している。ビームは、直径3cmのリング内に堆積され、アセンブリは、2666rpmのスピードで回転している。
【0118】
実際の経験では、2mmFWHMを超えるFWHMをいつでも保証するのは困難である。ビームのより優れたフォーカスには、真空窓を破壊する可能性があり、それにより設備の予定外の操業停止が生じるおそれがある。したがって、ビーム・ウォブラ・システムを据え付けることが有利である。この最も単純な構成では、それは、電場が印加される2つのセットの平行なプレート(ビーム・ディフレクタ)からなる。1つのセットの平行プレートは、ビームをx方向に向け、もう一方は、ビームをy方向に向ける。正弦波変動電圧を両方のセットのプレートに印加することにより、ビームを円運動に移行させることができる。これにより、より矩形のビーム・プロファイル、及び、
図9に描かれたように、移動する軌跡上のビームの堆積パターンがもたらされる。このようにして、出現する制動放射コーンの角度をわずかに大きく拡げることを代償とするけれども、ビームの偶発的な真空窓上又はコンバータ・ターゲット上へのフォーカスが回避され得る。ビームの円運動はまた、電気モータの固定子を用いることによって磁気的に成し遂げることができる。リサジューの図形として知られるより複雑なパターンが、偏向プレートに印加される電圧の周波数に応じて実現可能である。
【0119】
「5)光子コンバータに対する電子、ハウジング、及び冷却」
次いで、電子ビームはコンバータ材料に衝突する。コンバータは、高い融点及び良好な機械的安定性を有する材料でなければならない。さらに、材料は、効果的に電子ビームを制動放射に変換するために、高い原子番号からなり、高い密度のものでなければならない。高い原子番号及び高い密度は、制動放射の比較的理想的な点源発生に寄与する。保守及び放射性廃棄物管理の理由で、コンバータ材料は、電子ビームによってほんのわずかだけ活性化されるべきである。さらに、コンバータの材料は、化学的に比較的不活性であるべきであり、冷却回路の成分又は微量成分と反応すべきでない。コンバータの厚さは、コンバータ材料内の電子の範囲に適合させなければならない。良好なコンバータ材料は、4から5mm厚のタングステン又はタンタルである。
【0120】
電子のコンバータ材料とのインタラクションは、多数の物理プロセスによって記述することができるが、かなり複雑である。光核反応における放射線核種の生成では、約8MeVを超えるエネルギーを有する制動放射光子が重要である。しかしながら、コンバータ材料内に堆積されたエネルギーを考慮するため、全ての物理プロセスが含まれなければならない。重要なことは、照射されるターゲット材料との関係でコンバータ材料の構成である。8MeVよりも大きい制動放射光子は、ある特定の広がり角度を有するコーンの形態で、前方方向(ビーム方向)に主に放射される。
【0121】
真空窓及びコンバータ・ターゲット材料は、強力な電子ビームによって堆積されたエネルギーのために、冷却されなければならない。黒体輻射は、堆積されたエネルギーを発散させるには圧倒的に不十分である。したがって、真空窓及びコンバータは、液体又はガスによって冷却されなければならない。我々の考察では、流れるヘリウム・ガスによる冷却が提案される。ヘリウムには、制動放射光子によって活性化され得ず劣化もされ得ない、高い粘性を有し低い原子番号を有する材料である利点がある。
【0122】
真空窓アセンブリの構築に当てはまる同様の原則が、コンバータ・ターゲットに適用され得る。上記で論じたように、コンバータは高いZ、高融点材料でなければならず、良好な熱伝導性を提供しなければならない。コンバータは、高速回転のために機械的安定性を実現しなければならず、活性化されなければならないほんのわずかだけである。我々の考察では、3017℃のその高い融点及びその機械加工性のため、コンバータ材料としてタンタルを選択する。さらに、天然のタンタルは、2つの同位元素、すなわち天然の存在量99.98799%の天然の存在量の181Ta、及び天然の存在量0.01201%の180mTaのみからなる。181Taに関する(γ,n)又は(γ,2n)反応では、それぞれ、180Taそのもの、又は半減期665dで安定的な179Hfになる179Taのどちらか一方を形成することになる。後者の核種は、ガンマ線の放射がない状態で電子捕獲によって崩壊する。半減期8.15hの180Taの形成には調査が必要であるが、その崩壊により、安定的な180W又は安定的な180Hfのどちらか一方がもたらされる。Taに関する(γ,pxn)反応では、安定的なHf同位元素が形成されている。中性子捕獲反応からの182Taの形成は、Taコンバータ材料の軽微な活性化のみに寄与すると予測される。
【0123】
さらに、タングステンは、3422℃のその高い融点のため、良好なコンバータ材料と考えることができる。さらに、天然のタングステンは、5つの同位元素、すなわち天然の存在量0.12%の180W、天然の存在量26.50%の182W、天然の存在量14.31%の183W、天然の存在量30.64%の184W、及び、天然の存在量28.43%の186Wからなる。180Wに関する(γ,n)又は(γ,2n)反応では、それぞれ、半減期665dで崩壊して安定的な179Hfになる179Ta、又は、崩壊して178Taになる比較的短命の178W(T1/2=22d)のどちらか一方を形成する。182W及び183Wに関する(γ,n)又は(γ,2n)反応では、半減期121.2dの181Wが形成され、それが、X線及び非常に低いエネルギーのガンマ線の放射の下、電子捕獲によって崩壊して、安定的な181Taになる。186Wに関する(γ,n)反応では、半減期75.1dの185Wが形成され、それが、ベータマイナス放射(0.4MeV)及び125keVのガンマ線によって低い分岐比で崩壊して、安定的な185Reになる。183W及び184Wに関する(γ,p)又は(γ,pn)反応において、半減期114.43dの182Taの形成は調査される必要があり、その線量率は、拡張された崩壊期間の後であっても、著しく全線量率に寄与する。大きな関心がないのは、様々なW同位元素に関する(n,γ)反応である。一般に、Wは、コンバータ材料として多くの有利な特性を有するが、その活性化は、Taに対するよりもはるかに高いと予想される。
【0124】
コンバータ・ターゲット・アセンブリは、最小の広がり角度を有する高い光子フラックスを可能にするように、非常にコンパクトであるべきである。エネルギー窓において8から30MeVのガンマ線の形成のための理想的な厚さは4mmと5mmとの間にある。
【0125】
約45kWのエネルギー堆積を4.5mm厚のTaコンバータ・スラブ内に分散させるために(表1)、コンバータ・ターゲットは、複数のディスクに、特に、例えば、1.125mm厚及び直径が約18cmの4枚のディスクに分割される。2.5msの長さのビーム・パルスのエネルギーは、15cmの直径を想定した回転ディスクの外周の周りに分散される。上記で論じたように、ディスクの回転スピードは、好ましくは、24,000rpmの回転スピードとなるビームの時間構造と同期する(特に、ビーム・パケットごとの特定の回転において)(
図10参照)。
【0126】
より具体的には、
図10は、1.125mm厚の回転タンタル・ディスク上のビーム・パルスの分布の概略を示している。
【0127】
厚さ全体を4.5mmと5mmとの間の最適な値に調整しながら、ディスクの枚数を増やすことができる。
【0128】
到達される最高温度は電子ビームのFWHMに依存する。
図11では、ビームのFWHMに依存して、1.125mm厚のTaディスクにおいて到達される最高温度が表示されている。実際のコンバータ内に堆積されるエネルギーは約45kWに達する。この熱を取り除くため、ヘリウム・ガスの出口温度がエントランス温度よりも200℃高いと想定して、標準温度及び圧力(STP:standard temperature and pressure)で、約250L/sのヘリウム・ガスの流れが必要となる。このかなり高いHeの流量は、市販の中間サイズのポンプによって実現することができる。
図11で見ることができるように、コンバータ・ディスクの高速回転にもかかわらず、温度は、1mmFWHMビームに対して、Taの融点に接近する。しかしながら、2mmよりも大きいビームFWHMでは、生じているのは1500℃未満の管理できる温度である。静止ターゲットでは、温度は、5又は2mmのビームFWHMに対して、それぞれ、20,000から40,000℃の範囲内にあるはずであることに留意されたい。
【0129】
より具体的には、
図11は、40MeV電子及び125kWビーム出力のビームが(直径15cmのリング内にエネルギーが堆積された)24,000rpmで回転されている1.125mm厚コンバータ・ディスクを通過することによって到達され、ヘリウム・ガスを急速に流すことによって冷却された最高温度を示している。2mm以上のFWHMでは、最高温度は、1500℃未満の実験的に管理できる温度に到達することに留意されたい。
【0130】
回転コンバータ・ディスク及びHe冷却ガスの関連する流れが、3つの異なる特に有利な構成のうちの1つにおいて構成され得る。
【0131】
構成1&2
コンバータ・ディスクは、共通シャフト上に(ミリメートル(以下)の桁の)小さな隙間によって分離されて積み重ねられる。ディスクの枚数及びその厚さは、最大制動放射変換効率を達成するために、電子ビーム・エネルギーに合わせて最適化される。上記で論じたように、ディスクは、好ましくは、電子ビーム・パルス持続時間の倍数(又は約数)であるスピードで回転する(例えば、2.5msのパルス持続時間では24,000rpm)。ディスクは、ディスクと壁との間に小さな隙間がある状態で水冷ハウジング内に密封される。上述のように粒子ビームによって加熱されるディスクを冷却するため、冷却ガス(例えば、ヘリウム)は、ディスク同士の間の隙間を通って循環させられる。シャフトと同心のオリフィスが、シャフトに沿った軸方向のガス流を容易にすると予見される。ハウジングには、ディスクの外側エッジへの、又は、からのガス循環をできるようにするため、開口が組み込まれる。この構成は、テスラ・タービン/ポンプとも呼ばれる粘着タイプ・タービン/ポンプを記述しており、このことは元々、本明細書に参照によって組み込まれている特許文献1に記述されている。
【0132】
ディスク同士の間のガス流は、ガスと、ディスクに対するその粘着性と、内部粘性との相互作用により、らせん流(渦巻き)を描いていた。タービン構成では、インレットとアウトレットとの差圧が、壁摩擦によりディスクの回転を駆動し、ここでは、ガスは、ディスクの周辺から中心に向かって流れる。誘起された高速回転のため、ガスのディスク表面との接触時間は長引き、冷却ガスへの熱伝達は最適化される。ポンプ構成では、シャフトは外部的に駆動されており、ガス流は反転されて、シャフトからディスクの外縁に向かって流れる。
【0133】
両方の流れパターンに対して、冷却ガスの支配的に半径方向の流れが、ディスクの均一な冷却を可能にする。さらに、ディスクの枚数が増大するにつれて、冷却のために利用できる全表面積が増大することになる。この構成におけるシステムの全熱負荷は、上記で提示された数値に、コンバータ材料内に吸収された出力であるおおよそ45kWに匹敵することになるが(表1参照)、ディスクあたりの負荷は低減することができる。
図12は、タービン(左)及びポンプ(右)構成の設計の図を示している(ハウジングは示されていない)。
【0134】
より具体的には、
図12は、テスラ・コンバータ設計の図を示している。左側では、ディスク・アセンブリ全体が、シャフト及び複数のディスクを含むタービン構成で示されており、(青い)粒子ビームは、ディスクに外側エッジ近傍(電子ビームの円形トレースに対応する加熱されたエリアが示されている)で衝突する。右側では、単一のディスク上の冷却ガス流パターンのスケッチが、ポンプ構成のコンバータに対して描かれている。流れパターンの方向は、タービン構成では逆である。
【0135】
構成3
この構成では、
図13に表示されるように、ディスクは、部分的に重なり合う円の形態で配置される。このように、エネルギーの一部は、黒体輻射によって、コンテナ容器の壁に発散させることができ、大きなエリアの急速に流れる冷却ガスへの暴露が達成される。ディスクは外部的に駆動され、全て、時計回り又は反時計回りのどちらか同じ方向に、好ましくは、上記で論じたように、電子ビーム・パルス持続時間の倍数(又は約数)であるスピードで回転する(例えば、2.5msのパルス持続時間で24,000rpm)。
【0136】
より具体的には、
図13は、コンバータ・ターゲットとしての4枚の(例えば、Ta)ディスクの構成を示している。ディスクは、1.125mm厚であり、ディスク間が1mmの距離で間隔を空けて配置されている(左)。右部分では、電子ビーム方向視が与えられる。ディスクは、24,000rpmで回転しており、外部的に駆動される。Heの流れが、構成体を冷却するために使用される。
【0137】
原則的に、ディスクの枚数もまた
図14aに例示されるように低減される。
【0138】
図14bは、2つのベアリングを含む軸上にディスクを装着できるようにするコンバータ・ディスクの構成を示している。
【0139】
熱膨張によるディスクのゆがみを防止するために、
図15の実例のように示されるように、切断ホイール、又はブレーキ・ロータ・ディスクに使用されるとき、スロット付きディスクを使用することができる。
図13に示されるように、いくつかのディスクが採用される場合、電子ビームの全吸収を保証するため、ディスクはジグザグに配置され得る(スロットの重なり合いはない)。
【0140】
「6)平坦化フィルタ及び中性子吸収器」
コンバータ・ターゲット・アセンブリの出口窓は、ターゲットを電子、X線、及び低エネルギーのガンマ線による照射から防護するために、ベリリウム箔から作られ得るか、又は平坦化フィルタとして構築され得る。平坦化フィルタは、例えば、1mm壁厚の矩形アルミニウム・プロファイルから作られている(
図16参照)。プロファイルの内部は、冷却流体で、特に冷却水でフラッシュされる、例えば3mm厚の流路を実現した。このユニットのタスクは、光核反応に寄与していない低エネルギー光子のフラックスをフィルタ・アウトして、かなり低減させることである。平坦化フィルタの導入による、ソース電子の個数と比較した電子の個数の減少は20.8%に達しており、エネルギー領域における最大の減少は0~8MeVからの11.2%である。
【0141】
高エネルギー電子によるコンバータ材料の照射では、さらに光中性子が、(γ,xn)光核反応において発生する。これらの中性子は、生成ターゲットにおいて、望まれない中性子捕獲反応を誘起し、望まれない副生物をもたらし、生成物の放射線核種純度を減少させることがある。1つのそのような実例は、226Raに関する(n,γ)反応での長寿命227Ac(T1/2=21.773a)の生成である。227Ac副生物は、重大な廃棄物問題及び放射線防護問題を引き起こすものであり、しかも、225Acと比較したその活性パーセントに依存して、生成物を不安定にすることがある。中性子吸収器として、ガドリニウム、カドミウム、若しくはホウ素、又はそれらの組合せなどの異なる材料を利用することができる。
【0142】
より具体的には、
図16では、出口窓及び平坦化フィルタとして機能して、電子及び低エネルギー光子によるサンプル・ターゲットの照射を防ぐ、水冷式アルミニウム・カラムの位置が示されている。
【0143】
図16は、
図13により知られる重ね合わせディスク・タイプのコンバータ・ターゲットを示しているが、これは単なる実例である。もちろん、上述の冷却手だて及び
図16のビーム・ストップもまた、他のコンバータ・タイプと組み合わせることができる。
【0144】
「7)生成ターゲット(複数可)」
ターゲット材料は、効果的に照射されるべき光子の出現コーン内に置かなければならない。ターゲット材料の量が制限される場合(すなわち、226Ra、又は、限定するものではないが、48Ca、48Ti、68Zn、100Mo、112Sn、若しくは150Ndなどの同位体的に高度に濃縮された材料)、ターゲットは、コンバータに対して可能な限り近くに置かれる必要がある。コンバータの近接した幾何学的構成により、可能な限り高い光子フラックス密度が達成される。(γ,n)反応における100Moから99Moの生成により、ターゲット材料100Moから化学的に分離することができない「キャリアが加わった」99Moがもたらされる。この材料からの99mTc放射線核種ジェネレータを使用するように生成を容易にするために、99Moの特定の活性は、Moの約5Ci/gを超えるべきである。これは、高密度光子フラックスによる、高度に濃縮された100Moの照射によってのみ成し遂げることができ、但し、光子は、コンバータ源のような点から出現するものである。8MeV以上のエネルギーの光子はきわめて透過性が高いので、ターゲット材料のスタックは同時に照射されることが可能である。照射中、ターゲット材料は光子を吸収し、エネルギーはターゲット内に堆積させられる。したがって、ターゲットは、例えば、冷却水を流すことによって冷却されなければならない。高い光子エネルギーには、すなわち、その放射性、毒性、又は化学的反応性のために取り扱いが難しいターゲット材料が、照射に適した材料内に安全に封じ込められ得るという利点がある。したがって、ターゲット材料の割れが冷却水回路に入り込むことを回避することができる。さらに、複数の生成ターゲットの同じ光子ビームによる同時照射が実行でき、それにより、いくつかの放射線核種の同時生成が可能になる。例として、比較的薄い226Raがコンバータ・アセンブリに最も近く光子フラックスが最も高い位置に付加され、それに続くのは、例えば、高い生成速度を可能にするが濃縮材料としては比較的高価な112Sn又は150Ndであり、さらに、68Zn又は48Tiの塊状ターゲットが続く。但し、大量のターゲット材料を取り扱う際にはすでに化学的分離及び再生手順が存在する。好ましくは、ターゲットを処理高温セルに遠隔に付加し、取り出し、及び運搬する手だてがなされる。
【0145】
「8)塊状ビーム・ストップ」
高エネルギー光子のほとんどは、全てのターゲット材料を透過するので、塊状の、好ましくは、すなわち鉛でできた水冷式ビーム・ストップによって、止められなければならない。表1によると、ビーム・ストップ内に堆積されたエネルギーは約68kWに達する。遮蔽のため、塊状ビーム・ストップの周りの追加遮蔽として接地を用いた、電子ビーム、コンバータ、及び生成ターゲットの鉛直構成を想像することができる。別の場合、ガンマ線の線量を許容レベルに低減するため、追加遮蔽(すなわち、コンクリート)が適所に付けられなければならない。
【0146】
塊状ビーム・ストップの内部には、人工貴石に照射する手だてが予見され得る。高エネルギー・ガンマ放射は、人工的に生成された貴石の格子内に欠陥を誘起しており、それが色中心として働くことによって、トパーズなどの人工的に生成された貴石の恒久的な着色が可能になる。
【0147】
「9)冷却回路」
その低原子番号及び密度、その化学的不活性、及び理にかなった熱容量のため、好ましくは、冷却媒体としてヘリウム・ガスが選択されてきた。さらに、Heは、高エネルギー制動放射光子と反応していない。200℃の温度増加を想定すると、STPにおいて約250L/sのHeが、コンバータ・ターゲット・アセンブリ内に堆積されたエネルギーを取り除くために必要となる。ヘリウム・ガスは、室温でコンバータ・アセンブリに進入すると予見される。ヘリウム・ガスは好ましくはガス・ループ内を循環させられる。したがって、冷却回路は、好ましくは、高流量ポンプと、高流量熱交換器と、リザーバ・タンクと、酸素、水蒸気、及び粒子などの微量成分のためのフィルタと、回路をヘリウム・ガスで満たす及び回路を空にするための手だてとを備える。Heタンク内の圧力(高圧側)は、圧力センサに接続されたバタフライ・バルブによって調節され得る。高流量のインターチラー又はラジアル・コンプレッサなどの、冷却回路のいくつかの構成要素は、自動車産業から調達することができる。100kW以上の桁の熱を取り除くことができるチラーは、建築物の空調ユニットにおいて入手可能である。
【0148】
放射線核種の計算される収量(実例):
上述のような点源高出力コンバータ・ターゲット・アセンブリ、及び、概略的な
図16に表示されたような生成ターゲットの構成を用い、40MeVの電子エネルギー及び125kWのビーム出力を想定して、以下の収量を得ることができる。
【0149】
226Raからの225Raの生成
100mg/cm2のターゲット厚、及び、ターゲット・アセンブリの位置1における2cmのターゲット直径により、照射の10.65GBq225Ra/日の生成が算出された。これは、14から15日の内部成長期間後の225Acの約5GBqに相当する。化学的分離手順数を制限するため、より長い照射時間、例えば2週間を選択するのが有利である。数日の待ち時間後、225Acの最初のバッチは、照射されたターゲットから分離することができる。すぐその後から、約17日の最適な待ち時間により、半減期14.9dの225Raの崩壊による225Acの内部成長のおかげで、いわゆる2番目及び3番目の機会の225Acが、照射されたターゲットから分離することができる。そのような生成方式及び患者1人あたり10MBqの線量を想定すると、1つの226Raターゲットから1日あたり約500人の患者線量を生成することができる。
【0150】
100Moからの99Moの生成
1g/cm2のターゲット厚、及び、ターゲット・アセンブリの位置1における2cmのターゲット直径により、照射の約650GBq99Mo/日の生成が算出された。これは、約17.5Ci/日/ターゲットに相当する。1g/cm2では、ターゲット厚はまだ比較的薄い。
【0151】
算出された収量は、光核反応が、医療的放射線核種のための実用的な生成方法であることを示している。上述の点源高出力コンバータ・ターゲット・アセンブリは、最大125kWの莫大なビーム出力を吸収することができ、ロードトロン・タイプの電子加速器の使用による日常的な放射線核種生成を可能にする。
【0152】
リファレンス
以下のリファレンスは、参照により本明細書に組み込まれる。
[1a]MEVEX 加速器技術会社。同位元素生成のための高出力線形加速器(Linacs)。http://www.mevex.com/Brochures/Brochure_High_Energy.pdf[2019年5月17日にアクセスされた]
[1b]イオンビーム適用、IBA産業、Rhodotron(登録商標)TT300-HE高エネルギー電子ジェネレータ、www.iba-industrial.com[2018年6月26日にアクセスされた]
【符号の説明】
【0153】
1 電子ビーム源(電子加速器)
2 電子ビーム
3 電子ビーム転写ライン(真空パイプ)
4 真空バルブ(スラマー・バルブ)
5a~c ビーム光学要素(四極子三重項)
6、7 ビーム偏向ユニット(鉛直及び水平操縦磁石)
8 真空窓のための入口窓ホルダ
9 ハウジング
10 冷却媒体ポート(インレット及びアウトレット・ポート)
11 冷却ループ(冷却回路)
12 コンバータ・ディスク
13 回転軸
14 投射された焦点ビーム・スポット(時間におけるトレース)
15 制動放射光子のコーン(光子フィールド)
16 中性子吸収器
17 生成ターゲット
18 ビーム・ストップ
19 空洞
20 コンバータ・ターゲット
21 コンバータ・ターゲット・アセンブリ
22 平坦化フィルタ/出口窓
23 真空窓ディスク
24 真空窓制御ユニット
25 コンバータ・ディスク制御ユニット
26 真空窓ロータリ・ドライブ
27 コンバータ・ディスク・ロータリ・ドライブ
30 中空シャフト
31 磁気流体シール
32 ベアリング
33 回転軸
【国際調査報告】