(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-13
(54)【発明の名称】GLP-1及びGDF15の融合タンパク質並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250205BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250205BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20250205BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250205BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250205BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250205BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20250205BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20250205BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20250205BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250205BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250205BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250205BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250205BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20250205BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20250205BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250205BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250205BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20250205BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250205BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250205BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250205BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250205BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/13 ZNA
C12N15/16
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/575
C07K16/00
C07K14/47
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 C
A61K38/26
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61P13/12
A61P1/16
A61K47/68
A61K38/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539702
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 CN2022143676
(87)【国際公開番号】W WO2023125881
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111678485.6
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】燕 江雨
(72)【発明者】
【氏名】肖 琳
(72)【発明者】
【氏名】曾 君南
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ ▲慶▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲暁▼莉
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲暁▼▲瑩▼
(72)【発明者】
【氏名】李 文佳
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA18
4C084DA01
4C084DB35
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、GLP-1及びGDF15の融合タンパク質並びにその使用に関する。融合タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端まで順次接続されている第1のポリペプチド断片、第2のポリペプチド断片、及び第3のポリペプチド断片を含み、3つのポリペプチド断片は、順次GLP-1ポリペプチド、免疫グロブリンFc領域、及びGDF15活性ドメインを含む。提供される融合タンパク質は、GLP-1及びGDF15デュアルターゲット活性を有する。融合タンパク質は全体として、優れた物理化学的特性及び安定性を有しており、GLP-1及びGDF15という2つのターゲット分子は、良好な活性及び薬物動態バランスを有しており、これがデュアルターゲット効果の発揮を促進している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLP-1ポリペプチドを含む第1のポリペプチド断片、免疫グロブリンFc領域を含む第2のポリペプチド断片、及びGDF15活性ドメインを含む第3のポリペプチド断片を含む、融合タンパク質であって、第1のポリペプチド断片、第2のポリペプチド断片、及び第3のポリペプチド断片が、アミノ末端からカルボキシル末端の方向に沿って、リンカーペプチドを介して順次連結されている、融合タンパク質。
【請求項2】
GLP-1ポリペプチドが、以下のアミノ酸配列:配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4の1つを含むか、又は
GLP-1ポリペプチドが、以下の配列:配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は
GLP-1ポリペプチドが、変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4に対して6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
GLP-1ポリペプチドが、以下の変異: A8G、G22E、I29V、A30E、A30Q、R36Gの1つを含むか、又は2つの以上の変異の組み合わせを異なる位置で含み、
好ましくは、GLP-1ポリペプチドが、以下の変異:A8G、G22E、R36G;又はA8G、G22E、A30E、R36G;又はA8G、G22E、A30Q、R36G;又はA8G、G22E、I29V、A30Q、R36Gの1つを含み、
好ましくは、変異を有するGLP-1ポリペプチドが、以下のアミノ酸配列:配列番号5、配列番号6、配列番号7、若しくは配列番号8の1つ、又は以下のアミノ酸配列:配列番号5、配列番号6、配列番号7、若しくは配列番号8の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
免疫グロブリンFc領域が、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、及びIgG4 Fcの1つから選択され、
好ましくは、免疫グロブリンFc領域が、IgG1 Fc及びIgG4 Fcの1つから選択され、
好ましくは、免疫グロブリンFc領域が、ヒト免疫グロブリンFc領域である、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
免疫グロブリンFc領域が、天然の免疫グロブリンFc領域又は免疫グロブリンFc領域バリアントである、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
免疫グロブリンFc領域が、配列番号9若しくは配列番号10のアミノ酸配列を含むか、又は、免疫グロブリンFc領域が、以下の配列:配列番号9、配列番号10の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、免疫グロブリンFc領域が、変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号9、配列番号10に対して6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
免疫グロブリンFc領域バリアントが、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの356位にあるアミノ酸が、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、及びシステイン(C)以外のアミノ酸で置換されている、を含み
好ましくは、IgG Fcの356位にあるアミノ酸が、EUナンバリングに従って、以下の1つ:グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、スレオニン(T)、バリン(V)、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)、プロリン(P)、メチオニン(M)、リジン(K)、及びアルギニン(R)で置換されており
更に好ましくは、IgG Fcの356位にあるアミノ酸が、EUナンバリングに従って、以下の1つ:アラニン(A)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)で置換されている、
請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域バリアントが、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの439位にあるアミノ酸が、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、及びシステイン(C)以外のアミノ酸で置換されている、を含み、
好ましくは、IgG Fcの439位にあるアミノ酸が、EUナンバリングに従って、以下の1つ:グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、スレオニン(T)、バリン(V)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、メチオニン(M)で置換されており
更に好ましくは、IgG Fcの439位にあるアミノ酸が、EUナンバリングに従って、以下の1つ:アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)で置換されている、
請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
免疫グロブリンFc領域バリアントが、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの234位及び235位のアミノ酸がアラニン(A)でそれぞれ置換されている、並びに/又は、447位のアミノ酸が欠失している、を更に含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
免疫グロブリンFc領域バリアントが、以下のアミノ酸配列:配列番号11~37の1つ、又は、以下の配列:配列番号11~37の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
GDF15活性ドメインが、以下の群:
配列番号38、又は
配列番号38に対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号38のN末端での1~14個のアミノ酸のトランケーション、及び/若しくは、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する配列番号38
の1つから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号38におけるアミノ酸変異の位置が、5位、6位、21位、26位、30位、47位、54位、55位、57位、67位、69位、81位、94位、107位の1つ、2つ、又は3つから選択され、
好ましくは、配列番号38におけるアミノ酸変異が、以下の異なる位置:D5E、H6D、H6E、R21Q、R21H、D26E、A30S、A47D、A54S、A55E、M57T、R67Q、K69R、A81S、T94E、K107Q
の1つ、任意の2つ又は3つから選択される
請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
GDF15活性ドメインが、以下のアミノ酸配列:配列番号38~58の1つ、又は、以下の配列:配列番38~58の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
リンカーペプチドが、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドを含み、
好ましくは、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドの各々が、配列番号78~81から選択されるアミノ酸配列を独立して含み、
更に好ましくは、第1のリンカーペプチドのN末端がGLP-1ポリペプチドのC末端と接続しており、第1のリンカーペプチドのC末端が免疫グロブリンFc領域のN末端と接続しており、第2のリンカーペプチドのN末端が免疫グロブリンFc領域のC末端と接続しており、そして第2のリンカーペプチドのC末端がGDF15活性ドメインのN末端と接続している、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
融合タンパク質が、以下のアミノ酸配列:配列番号59~77の1つ、又は、以下の配列:配列番号59~77の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、ホモダイマー融合タンパク質。
【請求項17】
(i)請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、
(ii)(i)の核酸を含むベクター、
(iii)(i)の核酸及び/又は(ii)のベクターを含む宿主細胞
のいずれか1つである、生物学的材料。
【請求項18】
融合タンパク質の発現に適した条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養する工程、及び宿主細胞によって発現された融合タンパク質を精製する工程を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質を調製する方法。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質及び/又は請求項16に記載のホモダイマー融合タンパク質を活性成分として含む医薬組成物であって、融合タンパク質及び/又はホモダイマー融合タンパク質が医薬組成物中に治療有効量で存在し、
好ましくは、医薬組成物がまた、薬学的に許容可能な担体も含む、
医薬組成物。
【請求項20】
(iv)代謝疾患、好ましくはII型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患を好ましくは含む代謝疾患を処置するための医薬の製造、及び
(v)対象における食物摂取量、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、又はグルコースレベルを低下させるための医薬の製造
のいずれかにおける、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項16に記載のホモダイマー融合タンパク質、又は請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
代謝疾患の処置、又は、対象における食物摂取量、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、若しくはグルコースレベルの低下において使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項16に記載のホモダイマー融合タンパク質、請求項19に記載の医薬組成物であって、
好ましくは、代謝疾患が、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患を含む、
融合タンパク質、ホモダイマー融合タンパク質、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項16に記載のホモダイマー融合タンパク質、又は請求項19に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、代謝疾患を処置する、又は、対象における食物摂取量、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、若しくはグルコースレベルを低下させる方法であって、
好ましくは、代謝疾患が、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の技術分野に、特に、GLP-1及びGDF15の融合タンパク質並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖分化因子15(GDF15)は、マクロファージ抑制性サイトカイン-1(MIC-1)、胎盤トランスフォーミング増殖因子-β(PTGF-β)、胎盤骨形成因子(PLAB)、前立腺由来因子(PDF)、非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子(NAG-1)としても知られているが、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)スーパーファミリーの分岐メンバーである。成熟GDF15ポリペプチドは112のアミノ酸を有するが、インビボで循環する生物学的に活性なGDF15は、鎖間ジスルフィド結合を介して2つのポリペプチドによって形成されているホモ二量体タンパク質(24.5kD)である。
【0003】
循環GDF15レベルの上昇は、進行がんを有する患者における食物摂取量の減少及び体重の減少と関連していることが報告されている(Johnen Hら、Nat Med、2007)。更に、GDF15の発現が高いトランスジェニックマウス及び組換えGDF15を投与されたマウスの両方が、体重及び食物摂取量の減少を示し、耐糖能レベルが改善し(Xiong Yら、Sci Transl Med、2017)、このことは、GDF15が、肥満、II型糖尿病(T2D)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等の疾患を処置する能力を有することを示している。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、腸のL細胞によって分泌されるペプチドホルモンであり、これは、インスリン分泌を促進することによって血中グルコースを低下させることができ、また、食欲を抑制し胃内容排出を遅らせることによって体重を減少させることもできる。GLP-1の主な生物活性断片は、グルカゴンペプチドの翻訳後プロセシングから派生する、30又は31アミノ酸からなるペプチド断片である(GLP-1のアミノ酸7~36又は7~37)。上記の生物学的効果に基づいて、GLP-1類似体は、臨床診療において、II型糖尿病及び肥満の処置のために成功裏に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Johnen Hら、Nat Med、2007
【非特許文献2】Xiong Yら、Sci Transl Med、2017
【非特許文献3】Edelmanら、The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、1969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GDF15及びGLP-1は食欲を抑制することによって体重を減少させ得、メタボリックシンドロームを改善し得るが、これらの2つの分子の経路は、作用メカニズムに関して重複し得ない。したがって、これら2つの分子の役割を同時に発揮させて、より大きな体重減少を達成し、メタボリックシンドロームに対する有効性を向上させるために、改善された技術的解決法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、GLP-1及びGDF15の融合タンパク質並びにその使用を提供することであり、本発明は、GLP-1及びGDF15のデュアルターゲット活性を有する融合タンパク質を構築し、当該融合タンパク質は優れた物理化学的特性及び安定性を有しており、GLP-1及びGDF15という2つのターゲット分子は、良好な活性及び薬物動態学のバランスを有しており、これがデュアルターゲット効果の発揮を促す。
【0009】
この目的のために、本発明の第1の態様は、a)グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ポリペプチドを含む第1のポリペプチド断片、b)免疫グロブリンFc領域を含む第2のポリペプチド断片、c)増殖分化因子15(GDF15)活性ドメインを含む第3のポリペプチド断片を含む、融合タンパク質を提供し、第1のポリペプチド断片、第2のポリペプチド断片、及び第3のポリペプチド断片は、アミノ末端からカルボキシル末端の方向に沿って、リンカーペプチドを介して順次連結されている。
【0010】
更に、GLP-1ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4の1つを含むか、又は
GLP-1ポリペプチドは、以下の配列:配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は
GLP-1ポリペプチドは、変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4に対して6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する。
【0011】
一部の実施形態では、GLP-1ポリペプチドは、以下の変異:A8G、G22E、I29V、A30E、A30Q、R36Gへいの1つを含むか、又は2つの以上の変異の組み合わせを異なる位置で含む。この場合、変異部位の位置は、配列番号1(GLP-1(1~37))における位置のナンバリングに従う。
【0012】
一部の実施形態では、GLP-1ポリペプチドは、以下の変異:A8G、G22E、R36G;又はA8G、G22E、A30E、R36G;又はA8G、G22E、A30Q、R36G;又はA8G、G22E、I29V、A30Q、R36Gの1つを含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、変異を有するGLP-1ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:配列番号5、配列番号6、配列番号7、又は配列番号8を含む。
【0014】
別の実施形態では、GLP-1ポリペプチドは、以下の配列:配列番号5、配列番号6、配列番号7、又は配列番号8の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
【0016】
注記:Table 1(表1)において、アミノ酸位置のナンバリングは、配列番号1(GLP-1(1~37))における位置番号に従い、すなわち、配列番号1のN末端にある最初のアミノ酸が最初の位置であり、番号は、C末端の方に向かって順次ナンバリングされている。
【0017】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域はIgG Fcであり、更に、これは、IgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、及びIgG4 Fcの1つから選択される。
【0018】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、ヒト免疫グロブリンFc領域である。一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG Fc、例えばヒトIgG1 Fc又はヒトIgG4 Fc等である。
【0019】
更に、免疫グロブリンFc領域は、天然の免疫グロブリンFc領域又は免疫グロブリンFc領域バリアントである。
【0020】
一実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、配列番号9若しくは配列番号10のアミノ酸配列を含むか、又は、免疫グロブリンFc領域は、以下の配列:配列番号9、配列番号10の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、免疫グロブリンFc領域は、変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号9、配列番号10に対して6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する。
【0021】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの356位にあるアミノ酸が、D、E、及びC以外のアミノ酸で置換されている、を含む。例えば、IgG Fcの356位にあるアミノ酸は、G、S、A、T、V、N、L、I、Q、Y、F、H、P、M、K、Rの1つで置換されている。
【0022】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの439位にあるアミノ酸が、R、H、K、及びC以外のアミノ酸で置換されている、を含む。例えば、IgG Fcの439位にあるアミノ酸は、G、S、A、T、V、D、N、L、I、E、Q、Y、F、P、Mの1つで置換されている。
【0023】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、EUナンバリングに従って、IgG Fcに以下の変異:E356G、E356S、E356A、E356T、E356V、E356N、E356L、E356I、E356Q、E356Y、E356F、E356H、E356P、E356M、E356K、E356Rの1つ、及び/又は、K439G、K439S、K439A、K439T、K439V、K439D、K439N、K439L、K439I、K439E、K439Q、K439Y、K439F、K439H、K439P、K439Mの1つ、を含む。
【0024】
好ましい実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、EUナンバリングに従って、IgG Fcに以下の変異:E356K、E356R、E356Q、E356A、E356Nの1つ、及び/又は、K439D、K439E、K439Q、K439A、K439Nの1つ、を含む。
【0025】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、以下の変異:EUナンバリングに従って、IgG Fcの234位及び235位のアミノ酸がAAで置換されている、並びに/又は、447位のアミノ酸が欠失している。例えば、IgG1 Fcでは、以下の変異も含まれる:L234A及びL235A、並びに/又は447位のアミノ酸が欠失している。IgG4 Fcでは、以下の変異も含まれる:F234A及びL235A、並びに/又は447位のアミノ酸が欠失している、を更に含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、EUナンバリングに従って、IgG Fcに以下のアミノ酸置換:
EUナンバリングに従って356位でのアミノ酸置換、
EUナンバリングに従って439位でのアミノ酸置換、
EUナンバリングに従って356位及び439位でのアミノ酸置換、
EUナンバリングに従って234位及び235位でのアミノ酸置換位、
EUナンバリングに従って356位、234位、及び235位でのアミノ酸置換、
EUナンバリングに従って439位、234位、及び235位でのアミノ酸置換、
EUナンバリングに従って356位、439位、234位、及び235位でのアミノ酸置換、
の1つのみを有し、それぞれの位置で記載されているアミノ酸置換は、本発明で記載されている意味を有する。
【0027】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントのアミノ酸配列は、以下の配列:配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37の1つを含む。
【0028】
別の実施形態では、免疫グロブリンFc領域バリアントは、以下の配列:配列番号11~37の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
注記:Table 2(表2)では、アミノ酸位置のナンバリングは、EUナンバリングシステムに従っている。
【0034】
更に、GDF15活性ドメインは、以下の群:
配列番号38、又は
配列番号38に対して少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
変異前のポリペプチドの基本的な生物学的活性を保持しながら、配列番号38のN末端での1~14個のアミノ酸のトランケーション、及び/若しくは、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有する配列番号38
の1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
更に、配列番号38のN末端でのアミノ酸トランケーションの数は、1個、個、3個、4個個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、又は14個である。
【0036】
更に、配列番号38におけるアミノ酸変異の位置は、5位、6位、21位、26位、30位、47位、54位、55位、57位、67位、69位、81位、94位、107位の1個、2個、又は3個から選択される。
【0037】
更に、配列番号38におけるアミノ酸変異は、以下の異なる位置:D5E、H6D、H6E、R21Q、R21H、D26E、A30S、A47D、A54S、A55E、M57T、R67Q、K69R、A81S、T94E、K107Qの1個、任意の2個又は3個から選択される。
【0038】
一部の実施形態では、GDF15活性ドメインは、配列番号38で示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
他の実施形態では、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号38のN末端にある1~14個のアミノ酸がトランケートされたアミノ酸配列を含む。
【0040】
更に他の実施形態では、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号38における5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有するアミノ酸配列を含み、配列番号38におけるアミノ酸変異は、本発明で記載されている意味を有している。
【0041】
更に他の実施形態では、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号38のN末端での1~14個のアミノ酸トランケーション及び配列番号38における5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の変異を有するアミノ酸配列を含み、配列番号38におけるアミノ酸置換は、本発明で記載されている意味を有している。
【0042】
ある特定の実施形態では、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58の1つを含む。
【0043】
別の実施形態では、GDF15活性ドメインは、以下の配列:配列番号38~58の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
【0045】
【0046】
注記:Table 3(表3)では、アミノ酸位置を示すためのナンバリング方法は、以下の通りである:配列番号38のN末端にある最初のアミノ酸が最初の位置であり、番号はC末端の方に向かって順次付けられている。
【0047】
一部の実施形態では、第1のポリペプチド断片及び第2のポリペプチド断片は第1のペプチドリンカーを介して接続されており、並びに/又は、第2のポリペプチド断片及び第3のポリペプチド断片は第2のペプチドリンカーを介して接続されている。
【0048】
更に、第1のペプチドリンカー及び第2のペプチドリンカーの各々は、柔軟なペプチドリンカー、堅固なペプチドリンカーの一方又は組み合わせから独立して選択される。
【0049】
一部の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び第2のペプチドリンカーはそれぞれ、(G4X)n、(X'P)m、(EAAAK)p、Gqの1つ又は組み合わせから独立して選択され、式中、n、m、p、qの各々は整数1~10から独立して選択され、Xはセリン(S)又はアラニン(A)であり、そしてX'はアラニン(A)、リジン(K)、又はグルタミン酸(E)である。
【0050】
ある特定の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、(G4X)n及び(X'P)mの組み合わせを含み、式中、n、m、X、X'は、本発明で記載されている意味を有している。
【0051】
ある特定の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、(G4X)n1-(X'P)m-(G4X)n2を含み、式中、n1、m、n2の各々は整数1~10から独立して選択され、XはS又はAであり、X'はA、K、又はEである。
【0052】
ある特定の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、(G4X)n1-(X'P)m-(G4X)n2を含み、式中、n1は2であり、mは10であり、n2は2である。
【0053】
別の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、Gq及び(X'P)mの組み合わせを含み、式中、q、m、X'は、本発明で記載されている意味を有している。
【0054】
ある特定の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、Gq1-(X'P)m-Gq2を含み、式中、q1、m、及びq2の各々は整数1~10から独立して選択され、X'はA、K、又はEである。
【0055】
ある特定の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、Gq1-(X'P)m-Gq2を含み、式中、q1は4であり、mは10であり、q2は4である。
【0056】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、(G4X)n、(X'P)m、及びGqの組み合わせを含み、式中、n、m、q、X、X'は、本発明で記載されている意味を有している。
【0057】
一部の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、(G4X)n1-Gq1-(X'P)m-(G4X)n2-Gq2を含み、式中、n1、q1、m、n2、q2の各々は整数1~10から独立して選択され、XはS又はAであり、X'はA、K、又はEである。
【0058】
一部の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び/又は第2のペプチドリンカーは、(G4X)n1-Gq1-(X'P)m-(G4X)n2-Gq2を含み、式中、n1は1であり、q1は4であり、mは10であり、n2は1であり、q2は4である。
【0059】
一部の実施形態では、第1のペプチドリンカー及び第2のペプチドリンカーの各々は、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号78)、GGGGAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPGGGG(配列番号79)、GGGGSGGGGSAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPGGGGSGGGGS(配列番号80)、GGGGSGGGGSEPEPEPEPEPEPEPEPEPEPGGGGSGGGGS(配列番号81)からなる群から選択されるアミノ酸配列を独立して含む。
【0060】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、以下:配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77の1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0061】
別の実施形態では、融合タンパク質は、以下の配列:配列番号59~77の1つに対して少なくとも85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
【0063】
【0064】
注記:Table 4(表4)では、GLP-1ポリペプチドにおけるアミノ酸位置を示すためのナンバリング方法は、以下の通りである:配列番号1のN末端にある最初のアミノ酸が最初の位置であり、番号はC末端の方に向かって順次付けられている。免疫グロブリンFc領域におけるアミノ酸位置のナンバリングは、EUナンバリングに従う。GDF15活性ドメインにおけるアミノ酸位置を示すためのナンバリング方法は、以下の通りである:配列番号38のN末端にある最初のアミノ酸が最初の位置であり、番号はC末端の方に向かって順次付けられている。
【0065】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様で記載されている融合タンパク質を含むホモ二量体融合タンパク質を提供する。
【0066】
第3の態様では、本発明は生物学的材料を提供し、ここで、生物学的材料は、(i)、(ii)、及び(iii)のいずれか1つである:
(i)本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、
(ii)(i)の核酸を含むベクター、
(iii)(i)の核酸及び/又は(ii)のベクターを含む宿主細胞。
【0067】
第4の態様では、本発明は、融合タンパク質の発現に適した条件下で本発明の第3の態様の宿主細胞を培養する工程、及び宿主細胞によって発現された融合タンパク質を精製する工程を含む、融合タンパク質を調製するための方法を提供する。
【0068】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の融合タンパク質及び/又は第2の態様のホモ二量体融合タンパク質を活性成分として含む医薬組成物を提供し、融合タンパク質及び/又はホモ二量体融合タンパク質は、医薬組成物中に治療有効量で存在する。
【0069】
更に、医薬組成物はまた、薬学的に許容可能な担体も含む。
【0070】
第6の態様では、本発明は、代謝疾患を処置するための医薬の製造における、融合タンパク質、ホモ二量体融合タンパク質、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0071】
更に、代謝疾患は、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、糖尿病性腎症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患等を含む。
【0072】
第7の態様では、本発明は、対象における食物摂取量、体重、インスリンレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、又はグルコースレベルを低下させるための医薬の製造における、融合タンパク質、ホモ二量体融合タンパク質、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0073】
第8の態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質、ホモ二量体融合タンパク質、又は医薬組成物を対象に投与する工程を含む、代謝疾患を処置するための方法を提供する。
【0074】
更に、代謝疾患は、本発明で記載されている意味を有する。
【0075】
先行技術と比較して、本発明は、以下の利点を有する。
【0076】
本発明は、長時間作用型のGLP-1/GDF15デュアルターゲット融合タンパク質を構築し、変異による形質転換を介して、融合タンパク質は、著しく改善された物理化学的特性及び安定性を有している。本明細書で提供されるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質では、GLP-1及びGDF15という2つのターゲット分子は、インビボ及びインビトロで、よりバランスの取れた生物学的活性を有しており、これらがデュアルターゲット効果の発揮をより促し、2つのターゲットの体重減少の重畳効果又は相乗効果及び代謝異常を改善させる他の効果を有する。
【0077】
様々な他の利点及び利益は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことで当業者に明らかとなろう。図面は、好ましい実施形態を例示することのみを目的としており、本発明を限定すると捉えられるものではない。図面では、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】Fc-GDF15融合タンパク質の概略図である。
【
図2】本発明によって提供されるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の概略図である。
【
図3】高脂肪飼料を与えたob/obマウスの体重に対する、14日間にわたるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【
図4】高脂肪飼料を与えたob/obマウスの食物摂取量に対する、14日間にわたるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【
図5】ob/obマウスの体重に対する、28日間にわたるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【
図6】ob/obマウスの食物摂取量に対する、28日間にわたるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【
図7】DIOマウスの体重に対するGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【
図8】DIOマウスの食物摂取量に対するGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示の典型的な実施形態を、添付の図面を参照して、以下でより詳細に記載する。本開示の典型的な実施形態が図面で示されているが、本開示は様々な形態で実施され得、本明細書で示される実施形態によって限定されないことが理解されるべきである。むしろ、これらの実施形態は、本開示がより完全に理解されるために提供されており、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるであろう。
【0080】
別段の定義がない限り、本発明で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。実施形態で使用される具体的な方法、装置、及び材料に加えて、当業者による先行技術の熟知及び本発明の記載に従って、本発明の実施形態で記載されている方法、装置、及び材料に類似又は同等の、先行技術における任意の方法、装置、及び材料もまた、本発明を実施するために使用することができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「天然」、「野生型」、又は「WT」という用語は、いかなる遺伝的に操作された変異も有さない、すなわち天然に生じる、又は環境から単離され得る、タンパク質又はポリペプチドを指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「基本的な生物学的活性」という用語は、ポリペプチドの、変異後にその変異前の生物学的活性の少なくとも一部(例えば、約20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、若しくは90%以上)又は全てを保持する能力を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、アミノ酸の「置換」又は「変異」は、ポリペプチド内の1個のアミノ酸の、別のアミノ酸での置き換えを指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、アミノ酸置換は、最初の文字と、それに続く数字と、それに続く2番目の文字とによって示される。最初の文字は、野生型タンパク質におけるアミノ酸を指す。数字は、アミノ酸が置換されているアミノ酸位置を指す。2番目の文字は、野生型アミノ酸を置き換えるために使用されたアミノ酸を指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端の欠失は、ΔNとそれに続く数字によって示され、この場合、数字は、アミノ末端で欠失しているアミノ酸の数を表している。
【0086】
グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)は、463のアミノ酸から構成されるGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。GLP-1Rは、GLP-1(1~37)、GLP-1(7~37)、GLP-1(1~36)、及びGLP-1(7~36)を含む内因性GLP-1ポリペプチド、並びに外因性ポリペプチドであるエキセンディン-4によって調節される。一部の実施形態では、本明細書で提供される融合タンパク質において、GLP-1ポリペプチドは、GLP-1(1~37)(アミノ酸配列は配列番号1である)、GLP-1(7~37)(アミノ酸配列は配列番号2である)、GLP-1(1~36)(アミノ酸配列は配列番号3である)、及びGLP-1(7~36)(配列番号4)から選択され得る。又は、他の実施形態では、融合タンパク質において、GLP-1ポリペプチドは、以下の変異:A8G、G22E、I29V、A30E、A30Q、R36Gの1つ、又は異なる位置の任意の2つの以上の組み合わせ(変異点の位置は、GLP-1(1~37)におけるナンバリングに従う)を有し得、例えば、変異を有するGLP-1は、GLP-1(7~37、A8G、G22E、R36G)(アミノ酸配列は配列番号5である)、GLP-1(7~37、A8G、G22E、A30E、R36G)(アミノ酸配列は配列番号6である)、GLP-1(7~37、A8G、G22E、A30Q、R36G)(アミノ酸配列は配列番号7である)、GLP-1(7~37、A8G、G22E、I29V、A30Q、R36G)(アミノ酸配列は配列番号8である)であり得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「増殖分化因子15」、「GDF15」、又は「GDF15活性ドメイン」は、一部の実施形態では、天然の成熟ヒトGDF15又はそのドメインであり、他の実施形態では、GDF15の変異体又はそのドメインを指す。成熟GDF15は、シグナルペプチド及びプロペプチドを除く全部で308のアミノ酸(UniProt Q99988)のアミノ酸197(A)から308(I)(GDF15(197~308)(配列番号46))、又は、GDF15の固有の活性及び構造を維持する範囲内の、上記アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、99%の配列同一性を有するポリペプチドからなる。変異体は、トランケーション、及び/又は1個若しくは複数のアミノ酸変異を含む。一部の実施形態では、トランケート型GDF15は、N末端欠失バリアント、例えば、N末端に1~14個のアミノ酸トランケーションを有する配列、又は、上記トランケート型アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、99%の配列同一性を有するポリペプチドであり得る。一部の実施形態では、GDF15バリアントは、それがGDF15タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性、例えば、食物摂取量、血中グルコースレベル、インスリン抵抗性、体重等に対するその効果を維持する限りの、成熟GDF15又はトランケート型GDF15と比較して少なくとも1個のアミノ酸位置の置換、挿入、又は欠失を指し、これらバリアントは全て本発明の範囲内である。
【0088】
GDF15バリアントはまた、1個若しくは複数の保存的な若しくは非保存的なアミノ酸置換をGDF15ポリペプチドの特定の位置に導入し、天然に生じる若しくは天然に生じないアミノ酸を使用することによって、又は特異的な残基若しくは残基のセグメントを欠失させることによって、作製することができる。
【0089】
「保存的なアミノ酸置換」は、天然のアミノ酸残基(すなわち、野生型GDF15ポリペプチド配列内の所与の位置で見られる残基)が、その位置にあるアミノ酸残基の極性又は電荷に対して影響がほとんど又は全くないように、天然に生じない残基(すなわち、野生型GDF15ポリペプチド配列内の所与の位置で見られる残基ではない)によって置換されることを伴い得る。保存的なアミノ酸置換は、生物学的システムでの合成によってよりもむしろ化学的ペプチド合成によって典型的に組み込まれている、天然に生じないアミノ酸残基(本明細書で定義される)も包含する。これらは、ペプチド模倣体及び他の逆方向形態又は反転形態のアミノ酸部分を含む。
【0090】
天然に生じるアミノ酸残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下のクラスにグループ分けすることができる:
(1)疎水性残基:Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性残基:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性残基:Asp、Glu、
(4)アルカリ性残基:His、Lys、Arg、
(5)鎖の方向に影響する残基:Gly、Pro、及び
(6)芳香族残基:Trp、Tyr、Phe。
【0091】
一部の保存的なアミノ酸置換を以下の表に示す。
【0092】
【0093】
保存的な置換は、これらのカテゴリーのうちの1つのあるメンバーを同一のカテゴリーの別のメンバーで交換することを伴い得る。非保存的な置換は、これらのカテゴリーのうちの1つのメンバーを別のカテゴリーのメンバーで交換することを伴い得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「同一性」又は「相同性」は一般に、2つのペプチド若しくはタンパク質の間、又は2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。「同一性」又は「相同性」パーセントは、比較対象の分子内のアミノ酸又はヌクレオチドの間の同一の残基のパーセンテージを指し、比較対象の分子における最も小さい分子のサイズに基づいて計算される。
【0095】
本発明のFcバリアントと天然の成熟ヒトGDF15又はそのバリアントとによって形成された融合タンパク質は、本発明の目的を達成することができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「Fc」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を有する抗体の重鎖のC末端領域を規定するために使用される。Fc領域は、天然の配列のFc領域又はバリアントFc領域であり得る。当業者には、Fc領域が2つの定常ドメイン:CH2及びCH3を通常含んでいること、並びにFc領域の境界が変化し得ることは公知である。本明細書で使用される場合、Fc領域のC末端は、抗体の重鎖のC末端である。一方、Fc領域のN末端は変化し得る。一部の実施形態では、Fc領域のN末端は、例えば、231位(EUナンバリング)又は233位(EUナンバリング)又は236位(EUナンバリング)又は237位(EUナンバリング)から始まり得る。他の実施形態では、本発明のFc領域のN末端は、ヒンジ領域を含まない。更に他の実施形態では、本発明のFc領域のN末端は、ヒンジ領域を含む。本明細書で使用される場合、Fc領域内のアミノ酸残基のナンバリングは、Edelmanら、The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、1969に記載されているような、EUインデックスとしても知られているEUナンバリングシステムに従う。
【0097】
本明細書で提供される融合タンパク質では、天然の免疫グロブリンFc領域又は免疫グロブリンFc領域バリアントが使用され、好ましい実施形態では、Fc領域バリアントが使用される。GDF15は、その活性を行うために二量体を形成する必要がある。本発明の研究プロセスの間に、IgG Fcは二量体を天然に形成し得るが、IgG Fc二量体内の2つの単量体Fcのカルボキシル末端の間の空間的距離はGDF15単量体のアミノ末端の間の空間的距離と著しく異なることが分かった。柔軟な又は堅固なペプチドリンカーが使用されたとしても、IgG FcのC末端及びGDF15のN末端によって形成された融合タンパク質は、アセンブリの際の不安定性及び低い発現量等の問題を依然として有している。本発明によって提供されるFcバリアントは、Fc-GDF15分子の安定性を著しく向上させ、Fc-GDF15融合タンパク質の効率的なアセンブリを実現し、発現量を増大させる。製造プロセスは単純であり、融合タンパク質はホモ二量体を形成する能力を保持している。本発明の好ましい実施形態では、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質はFc領域バリアントに基づいて得られ、そのため、融合タンパク質は、天然のFc領域を使用した融合タンパク質と比較して著しく向上した物理化学的特性及び安定性を有し、この場合、2つのターゲット分子は、良好な活性及び薬物動態学のバランスを有しており、これがデュアルターゲット効果を更に促す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「二量体」は、2つのタンパク質(ポリペプチド)分子から構成され、タンパク質の四次構造である、タンパク質二量体を指す。二量体を形成する2つのタンパク質(ポリペプチド)分子は、二量体の単量体分子又は単量体タンパク質と呼ぶことができる。二量体は、「ホモ二量体」及び「ヘテロ二量体」の両方を含み得、ホモ二量体は、2つの同一の単量体分子の組み合わせによって形成されており、ヘテロ二量体は、2つの異なる単量体分子の組み合わせによって形成されている。ホモ二量体は、コードされる必要のあるペプチドが1つのみであるため、ヘテロ二量体よりも調製が簡単であると一般に考えられている。本発明では、本発明によって提供されるFcバリアントは、ホモ二量体を形成する能力を有している。本発明によって提供されるFcバリアントとGDF15活性ドメインとの融合タンパク質もまた、ホモ二量体を形成する能力を有している。
図1を参照すると、融合タンパク質によって形成されたホモ二量体では、ホモ二量体化は、2つの単量体Fcバリアントの間、及び2つの単量体GDF15活性ドメインの間で、それぞれ存在している。これに基づいて、
図2を参照すると、GLP-1、Fc領域バリアント、及びGDF15を含む、本発明によって提供される融合タンパク質もまた、ホモ二量体を形成し得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「リンカーペプチド」又は「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を繋ぎ合わせる単一のアミノ酸配列又はポリペプチド配列を指す。ペプチドリンカーの長さは、例えば約1~40アミノ酸であり得、例えば反復したアラニン、グリシン、及びセリンを含む。一般的なペプチドリンカーに含まれるものとしては、柔軟なペプチドリンカー、例えばグリシン及びセリンの組み合わせ、例えば(GGGGS)nであり、これは、接続されるタンパク質の間の距離をペプチドリンカー内の反復単位の数によって調節することができる;グリシンのみから構成されるペプチドリンカー、例えば、一般的なものとしてはG6、G8等が含まれるGn;堅固なペプチドリンカー、例えば、(EAAAK)n配列を有するα-ヘリックスペプチドリンカー;プロリンに富んだ(XP)n(式中、Xは任意のアミノ酸を特定し得る)を有するペプチドリンカーであり、一般的なものとしてはアラニン、リジン、又はグルタミン酸を含み、(XP)n配列はらせん構造を有しておらず、ペプチドリンカー内のプロリンの存在が骨格の剛性を増大させ得、ドメインを効果的に分離し得る、がある。プロリンに富んだ配列を有する構造は、骨格筋タンパク質のN末端にある(AP)7の構造等、身体内に広く存在する。ペプチドリンカーの選択は、通常の実験に基づいて、例えば、柔軟なペプチドリンカーのみを使用して、堅固なペプチドリンカーのみを使用して、柔軟なペプチドリンカー及び堅固なペプチドリンカーの組み合わせを使用して、及びこれらに類する方法で、当業者によって決定され得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、それが連結しているものに別の核酸を伝達することができる核酸分子を指し、ベクターには、自己複製性の核酸構造であるベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある特定のベクターは、それらが機能可能に連結している核酸の発現を指示することができ、このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、外因性核酸が導入されている細胞を指し、宿主細胞には、このような細胞の子孫が含まれる。宿主細胞には、最初に形質転換された細胞及びそれに由来する子孫(継代数に関係なく)が含まれる。子孫は、核酸の内容が親細胞と同一ではないかもしれず、変異を有し得る。オリジナルの形質転換細胞でスクリーニング又は選択されたものと同一の機能又は生物学的活性を有する変異体子孫は、本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の融合タンパク質を作製するために使用され得るあらゆるタイプの細胞系である。宿主細胞としては、培養された哺乳動物細胞、例えばCHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/O細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)、昆虫細胞、及び植物細胞等が含まれ、また、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養された植物組織若しくは動物組織が有する細胞も含まれる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、それが含有する活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、且つ医薬組成物が投与される対象に対して許容し難く毒性である追加の成分を有さない、製剤を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「治療有効量の」は、例えば疾患の副作用の排除、低減、遅延、最小化、又は予防を含む、所望の治療的又は予防的結果を達成するために有効な量を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、対象に対して毒性ではない、医薬組成物内の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定はしないが、バッファー、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれる。
【0105】
本明細書で使用される場合、「処置」は、処置される個体における天然の疾患経過を変えるための試みを指し、臨床的な病理経過の間に行われる予防又は臨床的介入のためのものであり得る。処置の所望の効果としては、限定はしないが、疾患の発生若しくは再発の予防、症候の軽減、疾患の何らかの直接的若しくは間接的な病理学的結果の低減、疾患の進行速度の低下、病状の改善若しくは排除、及び予後の逆行若しくは改善が含まれる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定はしないが、霊長類(例えばヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)又は他の哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、並びに齧歯動物、例えばマウス及びラット)が含まれる。特に、個体又は対象はヒトである。
【0107】
本明細書で使用される場合、以下の、天然アミノ酸の従来の1文字コード又は3文字コードが使用される。
【0108】
【0109】
(実施例1)
Fcバリアントの設計
この実施例では、Fcの構造的特性に対する、異なる変異の導入の効果を試験し、一部の変異体の試験結果をTable 5(表7)に示す。試験の工程は、以下を含む。
【0110】
分子クローニング方法を使用して、Fc核酸配列を哺乳動物細胞発現ベクターに挿入し、ExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)を使用して、一過性トランスフェクション及びCHO-S細胞での発現を行った。プロテインAカラムによる精製の後、標的タンパク質を得、標的タンパク質をサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。SEC分析の主な原理は、分析物(例えばタンパク質)の分子量及び三次元構造に基づく。一般に、分析物の分子量が大きいほどクロマトグラフィーカラムを速く通過し、そのため、分析物の分子量が大きいほどカラム保持時間が短い。逆に、分析物の分子量が小さいほど保持時間は長い。したがって、SECは、タンパク質分子の凝集の分析に使用することができる。
【0111】
天然の免疫グロブリンFc断片は、ホモ二量体構造を天然に形成する。融合タンパク質の安定性を改善するためにはFc分子は変異される必要があり、当該変異はFcホモ二量体の構造を破壊し得る。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、439位で変異を導入した後のFc分子(K439D又はK439E)が、SEC分析において、変異を有さないFc分子と同一の保持時間を有していることを見出し、このことは、導入された変異がFc二量体の形成を妨害しなかったことを示している。先行特許文献WO2019195091で報告されている、Fc二量体の形成を妨害する変異体分子(F405Q、Y407E)に従ったコントロールとして、この実施例はまた、配列番号82のアミノ酸配列を有するFc分子も試験し、これが著しく延びた保持時間を有していることを見出したが、このことは、Fc分子が単量体形態で存在していることを示している。
【0112】
【0113】
(実施例2)
Fc-GDF15構築物の調製
発現ベクターの構築:Table 6(表8)で示されているFc-GDF15融合タンパク質をコードする遺伝子配列を、哺乳動物細胞ベクターpXC17.4のポリクローナル酵素切断部位に挿入して、Table 6(表8)で示されているFc-GDF15を発現する発現ベクターを構築し、細胞トランスフェクションのために、Fc-GDF15の発現ベクターを、エンドトキシンフリーのプラスミド抽出キット(OMEGA社)によって抽出した。
【0114】
【0115】
【0116】
細胞のトランスフェクション及び培養:CHO-S細胞を回収し、継代培養し、そして、密度が約6×106細胞/mLとなったときに、細胞のトランスフェクションのために細胞を回収した。細胞を、ExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)を使用してトランスフェクトし、これにおいて、Fc-GDF15発現ベクターの最終濃度は1μg/mLであった。トランスフェクションの約20時間後、ExpiCHO Fectamine CHOエンハンサー及びExpiCHO Feedを添加して、トランスフェクト細胞の増殖を維持した。細胞の生存能力が約80%に低下したときに、細胞培養培地を採取した。
【0117】
タンパク質の精製:細胞培養培地を遠心分離した後、上清を回収し、0.22μmのフィルターで濾過して、細胞培養上清を得た。細胞培養上清を、2工程のクロマトグラフィー方法を使用して精製した。クロマトグラフィーの第1の工程:細胞培養上清を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化したATプロテインAダイアモンドカラム(Borgron Corporation社)にアプライした。標的タンパク質が結合した後、3CV(カラムボリューム)を超える平衡溶液で混合物を洗浄して、未結合の不純物を除去し、100mMの酢酸-酢酸ナトリウム(pH3.0)バッファーで溶出した。標的タンパク質を回収し、次いで、回収した試料のpHを1.0MのTris-HCl(pH8.0)溶液で7.2~7.6に素早く調整し、そして、pH調整された試料を、その伝導性の値が5ms/cmを下回るまで精製水で希釈して、第1の試料を得た。クロマトグラフィーの第2の工程:最初の層クロマトグラフィーによって得られた第1の試料を、Bestarose Q HPカラムを使用して更に精製し、これを20mMのTris-HClバッファーで平衡化した。第1の試料をロードし、3CVの20mMのTris-HClバッファー及び3CVを超える20mMのPBバッファーで洗浄して、バッファー系を置き換え、最後に、PBSで溶出した。溶出画分を回収して、標的タンパク質試料を得た。標的タンパク質試料の性質及び純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及び質量分析によって評価した。標的タンパク質試料を、マイクロ核酸プロテインアナライザー(NanoDrop 2000/2000c分光光度計)によって定量した。
【0118】
(実施例3)
Fc-GDF15融合タンパク質の発現量に対するFcバリアントの効果
Table 6(表8)で記載されているFc-GDF15融合タンパク質を、実施例2で記載した方法によって発現させ、Fc-GDF15融合タンパク質の発現量に対する異なるFcバリアントの適用の効果を比較した。試験の結果をTable 7(表9)に示す。
【0119】
試験結果によると、FcのK439(EUナンバリング)又はE356(EUナンバリング)で変異していなかったFc-GDF15融合タンパク質、例えばM1(配列番号83の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M14(配列番号96の配列を有する単量体でのホモ二量体)は発現量が低かったが、FcのK439及び/又はE356が変異していたFc-GDF15融合タンパク質、例えばM2(配列番号84の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M3(配列番号85の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M4(配列番号86の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M5(配列番号87の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M6(配列番号88の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M7(配列番号89の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M8(配列番号90の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M9(配列番号91の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M10(配列番号92の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M11(配列番号93の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M15(配列番号97の配列を有する単量体でのホモ二量体)、M39(配列番号120の配列を有する単量体でのホモ二量体)は、融合タンパク質の発現量が改善していたことが見出され、このことは、356位(EUナンバリング)又は439位(EUナンバリング)でのアミノ酸の変異がFc-GDF15融合タンパク質のまとめられた発現に更に適していることを示している。
【0120】
【0121】
(実施例4)
Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性
タンパク質分子の物理化学的特性、例えばそれらの凝集及び分解の傾向は、分子のドラッガビリティに影響し、そのため、理想的な薬剤分子は、安定な単一成分を有すること、すなわち、凝集及び分解の発生が少ないことを必要とする。
【0122】
Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性を試験するために、Fc-GDF15融合タンパク質を、実施例2で記載されている方法によって発現させ、精製し、次いで、融合タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。具体的には、Waters Xbridge BEH 200A、3.5μm(7.8×300mm)クロマトグラフィーカラムをSEC分析に使用し、移動相は(150mMのリン酸バッファー:アセトニトリル=9:1、pH6.5)であり、流量は0.5ml/分であった。試験結果では、高分子量(HMW)成分の割合は凝集の割合に相当し、低分子量(LMW)成分の割合は分解の割合に相当する。試験結果をTable 8(表10)に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
Table 8(表10)の結果は、FcのK439(EUナンバリング)又はE356(EUナンバリング)での変異を含まないFc-GDF15融合タンパク質、例えばM1及びM14は、50.2%及び67.6%の高分子量(HMW)凝集物をそれぞれ有しているが、FcのK439(EUナンバリング)及び/又はE356(EUナンバリング)で変異しているFc-GDF15融合タンパク質は全て、有意に低いHMW凝集物率を有しており、ほとんどの融合タンパク質は5%を下回るHMW凝集物を有していることを示しており、このことは、K439(EUナンバリング)又はE356(EUナンバリング)でのFcの変異がFc-GDF15融合タンパク質のより良好なドラッガビリティをもたらし得ることを示している。
【0126】
(実施例5)
GLP-1-Fc-GDF15構築物の調製
Fc-GDF15のN末端でGLP-1配列を融合することによって、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質を構築した。この実施例では、Table 4(表4)で示されているGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質を、以下の工程に従って調製した。
【0127】
発現ベクターの構築:Table 4(表4)で示されているGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質をコードする遺伝子配列を、哺乳動物細胞ベクターpXC17.4のポリクローナル酵素切断部位に挿入して、Table 4(表4)で示されているGLP-1-Fc-GDF15を発現する発現ベクターを構築し、細胞トランスフェクションのために、GLP-1-Fc-GDF15の発現ベクターを、エンドトキシンフリーのプラスミド抽出キット(OMEGA社)によって抽出した。
【0128】
細胞のトランスフェクション及び培養:CHO-S細胞を回収し、継代培養し、そして、密度が約6×106細胞/mLとなったときに、細胞のトランスフェクションのために細胞を回収した。細胞を、ExpiCHO Fectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientific社)を使用してトランスフェクトし、これにおいて、GLP-1-Fc-GDF15発現ベクターの最終濃度は1μg/mlであった。トランスフェクションの約20時間後、ExpiCHO Fectamine CHOエンハンサー及びExpiCHO Feedを添加して、トランスフェクト細胞の増殖を維持した。細胞の生存能力が約80%に低下したら、細胞培養培地を採取した。
【0129】
タンパク質の精製:細胞培養培地を遠心分離した後、上清を回収し、0.22μmのフィルターで濾過して、細胞培養上清を得た。細胞培養上清を、2工程のクロマトグラフィー方法を使用して精製した。クロマトグラフィーの第1の工程:細胞培養上清を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化したATプロテインAダイアモンドカラム(Borgron Corporation社)にアプライした。標的タンパク質が結合した後、3CV(カラムボリューム)を超える平衡溶液で混合物を洗浄して、未結合の不純物を除去し、100mMの酢酸-酢酸ナトリウム(pH3.0)バッファーで溶出した。標的タンパク質を回収し、次いで、回収した試料のpHを1.0MのTris-HCl(pH8.0)溶液で7.2~7.6に素早く調整し、そして、pH調整された試料を、その伝導性の値が5ms/cmを下回るまで精製水で希釈して、第1の試料を得た。クロマトグラフィーの第2の工程:最初の層クロマトグラフィーによって得られた第1の試料を、Bestarose Q HPカラムを使用して更に精製し、これを20mMのTris-HClバッファーで平衡化した。第1の試料をロードし、3CVの20mMのTris-HClバッファー及び3CVを超える20mMのPBバッファーで洗浄して、バッファー系を置き換え、最後に、PBSで溶出した。溶出画分を回収して、標的タンパク質試料を得た。標的タンパク質試料の性質及び純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及び質量分析によって評価した。標的タンパク質試料を、マイクロ核酸プロテインアナライザー(NanoDrop 2000/2000c分光光度計)によって定量した。
【0130】
(実施例6)
GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性
GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の物理化学的特性を試験するために、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質を、実施例5で記載されている方法によって発現させ、精製し、次いで、融合タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。具体的には、Waters Xbridge BEH 200A、3.5μm(7.8×300mm)クロマトグラフィーカラムをSEC分析に使用し、移動相は(150mMのリン酸バッファー:アセトニトリル=9:1、pH6.5)であり、流量は0.5ml/分であった。試験結果では、高分子量(HMW)成分の割合は凝集の割合に相当し、低分子量(LMW)成分の割合は分解の割合に相当する。試験結果をTable 9(表11)に示す。
【0131】
【0132】
結果は、デュアルターゲット融合タンパク質の総凝集及び分解率が5%未満であることを示しており、このことは、デュアルターゲットタンパク質が良好な物理化学的特性を有していることを示している。
【0133】
(実施例7)
GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質のインビトロ活性
GLP-1は、その受容体GLP-1Rを活性化することによって機能するが、GLP-1は、上記受容体に結合し、細胞内の下流のシグナル伝達経路を活性化し、そしてcAMPを産生するため、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質のインビトロGLP-1活性は、細胞内のcAMPレベルを検出することによって評価することができる。GDF15はインビボで機能し、その特異的受容体GFRAL及び共受容体RETを介するシグナル伝達を要する。GDF15は細胞表面受容体に結合し、下流のシグナル伝達経路を活性化するが、当該伝達経路の1つはERK1/2のリン酸化である。したがって、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質のインビトロ活性は、細胞内のERK1/2リン酸化レベルを測定することによって評価することができる。
【0134】
GLP-1R発現が高いHEK293細胞系、並びにGFRAL及びRETの発現が高いHEK293T細胞系を、遺伝子操作によって構築した。GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質のGLP-1及びGDF15のインビトロ活性を、cAMP Gs HiRangeキット(cisbio社)及びAdvanced phospho-ERK1/2(Thr202/Tyr204)キット(cisbio社)をそれぞれ使用して評価した。キットのマニュアルに従ってアッセイすることによって、インビトロ活性のEC50値を得た。
【0135】
【0136】
結果は、本明細書で提供されるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質がGLP-1及びGDF15の高いインビトロ活性を同時に保持していることを示している。
【0137】
(実施例8)
高脂肪飼料ob/ob(HFD-ob/ob)マウスにおけるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与のインビボ有効性
この実施例は、HFD-ob/obマウスにおける食欲抑制及び体重減少に対するGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を試験した。高脂肪飼料の導入の2週間後、ob/obマウスを体重に従った群にランダムに分け、次いで、ビヒクル、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質D8及びD9(1nmol/kg、初回投与の7日後から週に2回投与)、GLP-1-Fc融合タンパク質(デュラグルチド、1nmol/kg、初回投与の7日後から週に2回投与)、又はFc-GDF15融合タンパク質(M39)(1nmol/kg、週に1回投与)を皮下投与し、マウスの体重及び食物摂取量の変化を連続的にモニタリングした。初回投与後14日目のマウスの体重及び食物摂取量の結果をTable 11(表13)、
図3、及び
図4に示す。
【0138】
【0139】
注記:値は、各群9~10頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。***-ビヒクルと比較してp<0.001。###-デュラグルチドと比較してp<0.001。統計分析方法:テューキーの補正を伴う一元配置ANOVA。
【0140】
結果は、GLP-1/GDF15デュアルターゲット分子D8及びD9が肥満マウスモデルの食物摂取量を有意に低減させ得ることを示している。更に重要なことに、GLP-1シングルターゲット薬デュラグルチド及びGDF15シングルターゲット分子M39と比較して、デュアルターゲット分子D8及びD9は、より強力な体重減少効果を有しており、このことは、本発明で設計されたGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質が2つのターゲットの体重減少効果の重畳効果又は相乗効果を発揮し得ることを示している。
【0141】
(実施例9)
ob/obマウスモデルにおけるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の有効性
この実施例は、ob/obマウスにおける食物摂取量の減少、体重減少、血液の生化学的指標の改善、並びに肝機能及び肝臓病理の改善に対するGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を試験した。ob/obマウスが新たな飼料に適応した後、これらマウスを体重に従った群にランダムに分け、次いで、ビヒクル、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質D13及びD14(2つの用量群:0.3nmol/kg及び1nmol/kg)、GLP-1-Fc融合タンパク質(デュラグルチド、3nmol/kg)、又はFc-GDF15融合タンパク質(M39)(2つの用量群:0.3nmol/kg及び3nmol/kg)を皮下投与し、初回投与の7日後から週に2回投与し、総処置期間は4週間であった。体重及び食物摂取量の変化を連続的にモニタリングした。28日目に剖検を行って肝臓の病理学的指標を検出し、剖検の前に、血液を回収して血清中の脂質及び様々な生化学的指標を検出した。体重及び食物摂取量の結果を
図5、
図6、及びTable 12(表14)にそれぞれ示す。グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、及び肝臓の病理(脂肪肝)の改善の結果をTable 13(表15)及びTable 14(表16)にそれぞれ示す。
【0142】
【0143】
注記:体重変化の値は、各群8頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。***-ビヒクルと比較してp<0.001。###-デュラグルチドと比較してp<0.001。&-M39(3nmol/kg)と比較してp<0.05。統計分析方法:テューキーの補正を伴う一元配置ANOVA。
【0144】
【0145】
注記:値は、各群8頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。***-ビヒクルと比較してp<0.001。###-デュラグルチドと比較してp<0.001。統計分析方法:テューキーの補正を伴う一元配置ANOVA。
【0146】
【0147】
注記:値は、各群8頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。*-ビヒクルと比較してp<0.05、***-ビヒクルと比較してp<0.001。#-デュラグルチドと比較してp<0.05、###-デュラグルチドと比較してp<0.001。統計分析方法:テューキーの補正を伴う一元配置ANOVA。
【0148】
結果は、GLP-1/GDF15デュアルターゲット融合タンパク質D13及びD14がob/ob肥満マウスモデルの食物摂取量及び体重を有意に低減させ得ること、並びに同一用量での効果がシングルターゲットGLP-1薬デュラグルチド及びGDF15シングルターゲット分子M39よりも有意に良好であることを示している。同時に、D13及びD14はまた、マウスにおける血中グルコース、肝機能の指標、及び脂肪肝を有意に改善し得、その効果はここでもシングルターゲット薬のそれよりも良好であり、このことは、本明細書で提供されるデュアルターゲット融合タンパク質が2つのターゲットの薬力学的効果を同時に発揮し得ることを更に説明している。
【0149】
(実施例10)
飼料誘発肥満(DIO)マウスモデルにおけるGLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の有効性
この実施例は、DIOマウスにおける食欲抑制、体重減少、及び様々な代謝指標の改善に対する、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質の反復投与の効果を試験した。4か月間の高脂肪飼料導入の後、C57BL/6マウスを体重に従った群にランダムに分け、次いで、ビヒクル(PBS、週に2回)、GLP-1-Fc-GDF15融合タンパク質D13(3nmol/kg、週に2回;10nmol/kg、週に1回)、又はセマグルチド(10nmol/kg、1日に1回)を、4週間にわたり皮下投与した。同時に、正常マウスの並行の制御を行った。試験の間、体重及び食物摂取量の変化を連続的にモニタリングした。初回投与後28日目に剖検を行って、様々な血清の生化学的指標及び肝臓の病理学的指標を検出した。
【0150】
体重及び食物摂取量の結果を
図7、
図8、及びTable 15(表17)に示す。血清中の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)、ALT、AST、及び脂肪肝スコアのパラメータを、Table 16(表18)に示す。
【0151】
【0152】
注記:値は、各群7~8頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。***-ビヒクルと比較してp<0.001。###-セマグルチドと比較してp<0.001。統計分析方法:テューキーの補正を伴う二元配置ANOVA。
【0153】
【0154】
注記:値は、各群7~8頭の動物から得られたデータの平均±SEMを表す。***-ビヒクルと比較してp<0.001。統計分析方法:テューキーの補正を伴う一元配置ANOVA。
【0155】
結果は、デュアルターゲット融合タンパク質D13がDIO肥満マウスモデルにおける体重及び食物摂取量を有意に低減させ得ることを示しており、効果は、同一用量のセマグルチドよりも有意に良好である。同時に、D13はまた、マウスにおける低密度リポタンパク質コレステロール、肝機能指標、及び脂肪肝も有意に低減させ得、このことは、デュアルターゲット分子が肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患、高脂血症、及び他の代謝疾患の処置に使用され得る可能性があることを示している。
【0156】
上記のものは本発明の1つの好ましい実施形態を表しているにすぎないが、本発明の保護範囲はこれに限定されず、いかなる当業者も、技術の範囲内の変更又は置換を容易に考え付くことができ、これらは本発明の保護範囲に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に記載の請求項の保護範囲内にある。
【配列表】
【国際調査報告】