(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-14
(54)【発明の名称】メタアラミド及びポリビニルピロリドンのポリマーブレンドを含む糸を有する耐火性衣服及び耐火性生地
(51)【国際特許分類】
D02G 3/04 20060101AFI20250206BHJP
A41D 31/08 20190101ALI20250206BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20250206BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
D02G3/04
A41D31/08
A41D13/005
A41D19/015 130Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544521
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 US2023060972
(87)【国際公開番号】W WO2023147257
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン マーク ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】アロンソン マーク ティー
(72)【発明者】
【氏名】ワイズマン ビー リン
(72)【発明者】
【氏名】ズー レイヤオ
【テーマコード(参考)】
3B033
3B211
4L036
【Fターム(参考)】
3B033AB05
3B211AC14
4L036MA06
4L036MA35
4L036MA39
4L036PA33
4L036UA06
(57)【要約】
それぞれ糸を含む耐火性生地を含む耐火性衣服、及び耐火性生地であって、この糸は、この糸の下記のa)及びb)の総量を基準として、a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維とを含み、メタアラミド繊維構成成分は、
このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であり、このポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
である、耐火性衣服、及び耐火性生地。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を含む耐火性生地を含む耐火性衣服であって、前記糸は、
前記糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、
a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含み、
前記メタアラミド繊維構成成分は、
前記メタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であり、前記ポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
である、耐火性衣服。
【請求項2】
前記糸は、
a)93~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~7重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含む、請求項1に記載の耐火性衣服。
【請求項3】
前記メタアラミド繊維構成成分ii)は、モダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物をさらに含む、請求項1又は2に記載の耐火性衣服。
【請求項4】
前記糸は、
前記糸中のa)、b)、及び下記のc)の総量を基準として、
c)1~3重量パーセントの帯電防止繊維
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項5】
前記メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドは、90~93重量パーセントのメタアラミドポリマーと、7~10重量パーセントのPVPポリマーとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項6】
前記メタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項7】
前記パラアラミドポリマーは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項8】
前記衣服中の前記生地は、着色されているか、染色されているか、又は疑似染色されている生地である、請求項1~7のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項9】
前記生地は、坪量が1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の耐火性衣服。
【請求項10】
前記衣服は、ASTM F1930(2018)により測定した場合の3秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されている前記メタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくとも20パーセント低く、前記コントロール生地の前記メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、請求項9に記載の耐火性衣服。
【請求項11】
前記衣服は、ASTM F1930(2018)により測定した場合の4秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されている前記メタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくと15パーセント低く、前記コントロール生地の前記メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、請求項9に記載の耐火性衣服。
【請求項12】
前記衣服は、ASTM F1930(2018)により測定した場合の5秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されている前記メタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくと10パーセント低く、前記コントロール生地の前記メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、請求項9に記載の耐火性衣服。
【請求項13】
糸を含む耐火性生地であって、前記糸は、
前記糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、
a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含み、
前記メタアラミド繊維構成成分は、
前記メタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であり、前記ポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
である、耐火性生地。
【請求項14】
前記糸は、
a)93~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~7重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含む、請求項13に記載の耐火性生地。
【請求項15】
前記メタアラミド繊維構成成分ii)は、モダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物をさらに含む、請求項13又は14に記載の耐火性生地。
【請求項16】
前記糸は、
前記糸中のa)、b)、及び下記のc)の総量を基準として、
c)1~3重量パーセントの帯電防止繊維
をさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項17】
前記メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドは、90~93重量パーセントのメタアラミドポリマーと、7~10重量パーセントのPVPポリマーとを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項18】
前記メタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項13~17のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項19】
前記パラアラミドポリマーは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である、請求項13~18のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項20】
前記生地は、染色されているか、又は疑似染色されている、請求項13~19のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項21】
前記生地は、坪量が1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)である、請求項13~20のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項22】
火炎による収縮が、a)及びb)で説明されている前記メタアラミド繊維構成成分及び前記パラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地の火炎による収縮と比べて少なくとも10%少なく、前記コントロール生地の前記メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、請求項13~21のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【請求項23】
火炎による収縮が、a)及びb)で説明されている前記メタアラミド繊維構成成分及び前記パラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地の火炎による収縮と比べて少なくとも20%少なく、前記コントロール生地の前記メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、請求項13~21のいずれか一項に記載の耐火性生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野。本発明は、爆発的火炎(flash fire)等の火炎に曝露された場合に予測される保護性能が驚くほど改善されている耐火性(flame-resistant)衣服に関する。本発明はまた、そのような衣服で使用され得る、火炎中での寸法収縮が驚くほど少ない耐火性生地にも関する。この保護性能の改善は驚くべきことであり、その理由の1つは、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維を、メタアラミドポリマーとポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーとのブレンドから形成された繊維に置き換えることにより達成されることである。メタアラミドポリマーのみから形成された繊維は、耐火性であることが知られているが、添加剤であるPVPポリマーは、耐火性ポリマーとは見なされていない。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明。米国特許第7,744,999号明細書;同第8,069,642号明細書;及び同第8,133,584号明細書(これらは全て、Zhuに対するものである)では、ASTM F1930に従う4秒間の爆発的火炎曝露に曝露された場合に着用者が65パーセント未満の予測される身体熱傷を経験するような爆発的火炎保護の改善を有する繊維組成物が開示されている。さらに、NFPA 2112規格に従う爆発的火炎防護服に要求される最低性能は、3秒間の火炎曝露による50%未満の身体熱傷である。爆発的火炎は、一部の産業では、作業者にとって非常に現実的な脅威であり、個人が火炎に包み込まれる時間がどれくらいかを完全に予測することは不可能であることから、防護服の生地及び衣服の爆発的火炎性能のあらゆる改善には、命を守る可能性がある。爆発的火炎は、作業者が経験し得る最も極端なタイプの熱的脅威の内の1つを表しており、そのような脅威は、単なる火炎への曝露と比べてはるかに深刻である。従って、消防士、工場労働者、及び火炎に曝露される可能性がある他の者は、耐火性及び耐熱性の繊維から形成された防護服及び防護用品を必要としており、これらの防護用品の効果のあらゆる向上が歓迎されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、糸を含む耐火性生地を含む耐火性衣服であって、糸は、
この糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、
a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含み、
メタアラミド繊維構成成分は、
このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であり、ポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
である、耐火性衣服に関する。
【0004】
本発明はまた、糸を含む耐火性生地であって、糸は、
この糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、
a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と
を含み、
メタアラミド繊維構成成分は、
このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であり、ポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
である、耐火性生地にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】サーマルマネキン試験装置を使用する火炎への4秒間曝露後の火炎損傷をそれぞれ示す、本発明の衣服及びコントロール衣服の写真であり、衣服の明るい領域は、火炎による損傷を受けた領域である。
【
図2】サーマルマネキン試験装置を使用する火炎への5秒間曝露後の火炎損傷をそれぞれ示す、本発明の衣服及びコントロール衣服の写真であり、衣服の明るい領域は、火炎による損傷を受けた領域である。
【
図3】織られた生地であって、この生地中のメタアラミド繊維構成成分の100%が、メタアラミドポリマー(具体的には、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド))とPVPポリマーとのブレンドから形成された繊維である、織られた生地を比較した、織られた生地であって、この生地中のメタアラミド繊維構成成分の100%が、ポリビニルピロリドン(PVP)を含まないメタアラミドポリマー(具体的には、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド))のみから形成された繊維である、織られた生地への3、4、及び5秒間曝露の火炎曝露に対する測定された火炎による収縮率のグラフである。このグラフに含まれているのは、これら2種の繊維のブレンドから形成された織られた生地の予想される性能を示す点線であり、即ち、織られた生地であって、この生地中のメタアラミド繊維構成成分の50%が、ポリビニルピロリドン(PVP)を含まないメタアラミドポリマーのみで形成された繊維であり、この生地中のメタアラミド繊維構成成分の50%が、メタアラミドポリマーとPVPポリマーとのブレンドから形成された繊維である、織られた生地の予想される性能を示す点線である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、糸を含む耐火性生地を含む耐火性衣服であって、糸は、この糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維とを含む、耐火性衣服に関する。メタアラミド繊維構成成分は、このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維と、ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維とである。具体的には、このポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む。
【0007】
本明細書で説明されている、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドを含むメタアラミド繊維から形成された耐火性衣服は、このメタアラミドポリマー/PVPポリマーブレンドを含まず、他の点では、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維として本明細書で既知であるメタアラミド繊維から形成された衣服と比較した場合に、火炎事象における驚くほど高い予測される全身熱傷保護をもたらすことが発見された。具体的には、「メタアラミドポリマーのみから形成された繊維」という語句は、この繊維が、メタアラミドポリマーを含むが、メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドを含まず;この繊維が、メタアラミドポリマーの耐火性が損なわれない限り、添加剤、顔料、及び同類のもの等の他の非ポリマー構成成分を含み得、且つ他のブレンドポリマーを含み得ることを意味する。好ましくは、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維中の唯一のポリマー構成成分は、メタアラミドポリマーであり、最も好ましくは、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維中の唯一のポリマー構成成分は、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)を含み、これは、ポリ(メタルフェニレンイソフタルアミド)ホモポリマーの形態であり得る。
【0008】
火炎事象における衣服の予測される性能を決定する一方法は、DuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキンとして既知のもの等の計装サーマルマネキンの使用によるものである。そのような装置は、このマネキンの表面上に多数のセンサーを備えており、このセンサーにより、火炎事象中に、このマネキンの表面上の多数の点で温度を記録し得る。衣服の火炎性能を試験するために、この衣服を着用したサーマルマネキンを、このマネキンを取り囲む多数の火炎ノズルを使用して、一定時間にわたり火炎に包み込む。これらのセンサーは、このマネキンの表面上の様々な点で温度履歴を記録し、このデータを使用して、予測される総身体熱傷(火傷)を算出する。この試験を、試験方法ASTM F1930(2018)で実行する。NFPA Standard 2112では、3秒間の火炎曝露時間でのASTM F1930(2018)に従う衣服の試験が義務付けられているが、ASTM F1930を、必要に応じて、より深刻な火炎事象を反映するより長い火炎曝露時間(例えば、4又は5秒)で実行し得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本耐火性衣服は、本明細書で説明されている組成を有しており且つ坪量が1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)である生地を含む。特に単層衣服で使用される場合には、約135gpm(4osy)未満の生地重量は、作業者が使用する典型的な衣服での所望の保護を提供するのに十分な強度が得られない場合がある。単層衣服での生地重量が約270gpm(8osy)を超えると、着心地が悪くなる。たとえ410gpm(12osy)程度のより高い坪量であっても、火炎保護は得られるが、生地の重量が増加するにつれて、剛性及び通気性等の他の問題、並びに作業者の熱ストレスの可能性が増加し、そのため、よい高い坪量は、最も危険な環境でのみ望ましくなるか、又は例えば消防士のコート及びズボンで使用される多層システムでのみ望ましくなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている組成を有する、1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)の生地から、耐火性単層衣服であって、ASTM F1930(2018)により測定した場合の3秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されているメタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくとも20パーセント低く、このコントロール生地のメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、耐火性単層衣服が得られる。
【0011】
別の実施形態では、本明細書で説明されている組成を有する、1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)の生地から、耐火性単層衣服であって、ASTM F1930(2018)により測定した場合の4秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されているメタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくとも15パーセント低く、このコントロール生地のメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、耐火性単層衣服が得られる。
【0012】
さらに他の実施形態では、本明細書で説明されている組成を有する、1平方メートル当たり135~270グラム(1平方ヤード当たり4~8オンス)のこの生地から、耐火性単層衣服であって、ASTM F1930(2018)により測定した場合の5秒間曝露に対する予測される全身熱傷性能が、a)及びb)で説明されているメタアラミド繊維構成成分及びパラアラミド繊維を同一の割合で含む等重量のコントロール生地から形成された衣服と比べて少なくとも10パーセント低く、このコントロール生地のメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、耐火性単層衣服が得られる。
【0013】
図1は、サーマルマネキン試験装置(DuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキン)を使用する火炎への4秒間曝露後の2つの衣服10及び15への火炎損傷の写真であり、これらの衣服の明るい領域は、火炎による損傷を受けた領域である。衣服10は、本発明の衣服であって、メタアラミド繊維構成成分が、本明細書で説明されているメタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維を含む、衣服への火炎損傷の一例である。10と並んで写っているのは、コントロール衣服15であって、メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミド繊維のみであり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、コントロール衣服15である。試験前に、衣服は両方とも、同一のサイズであった。試験後では、示されているように、衣服10は、コントロール衣服15と比べて、はるかに損傷が少なく、且つ火炎による収縮が相当に少なかった。衣服15は、火炎損傷の大きな広がりを示す明るい領域の割合が高く、この衣服の火炎による収縮は、衣服10と比べてはるかに激しい。
【0014】
同様に、
図2は、同様にサーマルマネキン試験装置(DuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキン)を使用する火炎への5秒間曝露後の2つの衣服20及び25への火炎損傷の写真であり、これらの衣服の明るい領域も先と同様に、火炎による損傷を受けた領域である。衣服20は、本発明の衣服であって、メタアラミド繊維構成成分が、本明細書で説明されているメタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維を含む、衣服への火炎損傷の一例である。20と並んで写っているのは、コントロール衣服25であって、メタアラミド繊維構成成分は、メタアラミド繊維のみであり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない、コントロール衣服25である。試験前に、衣服は両方とも、同一のサイズであった。試験後では、示されているように、衣服20は、コントロール衣服25と比べて、はるかに損傷が少なく、且つ火炎による収縮が相当に少なかった。衣服25は、火炎損傷の大きな広がりを示す明るい領域の割合が高く、この衣服の火炎による収縮は、衣服20と比べてはるかに激しい。また、5秒間の火炎事象に曝露された衣服20及び25は両方とも、4秒間の火炎事象に曝露された
図1の衣服10及び15と比べて大きい損傷を示しており、このことから、火炎への1秒間の曝露であっても重大であり得ることが示される。
【0015】
耐火性の衣服及び生地で使用される糸は、メタアラミド繊維構成成分a)と、パラアラミドポリマーから形成された繊維b)とを含む。このメタアラミド繊維構成成分は、i)メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドを含む繊維をさらに含み、ii)メタアラミドポリマーのみから形成された繊維(即ち、メタアラミドポリマー/PVPポリマーブレンドを含まないメタアラミド繊維)を含んでもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アラミド」は、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合しているポリアミドを意味する。メタアラミドポリマーは、アミド結合が互いに対してメタ位にあるアラミドポリマーである。パラアラミドポリマーは、アミド結合が互いに対してパラ位にあるアラミドポリマーである。このアラミドと共に、非ポリマー添加剤を使用し得、且つアラミドのジアミンを置換する約10パーセントもの他のジアミン、又はアラミドの二酸塩化物を置換する約10パーセントもの他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用し得る。好適なアラミド繊維が、Man-Made Fibers-Science and Technology,Volume 2,Section titled Fiber-Forming Aromatic Polyamides,page 297,W.Black et al.,Interscience Publishers,1968で説明されている。アラミド繊維はまた、米国特許第3,869,429号明細書、同第3,819,587号明細書、同第3,354,127号明細書、及び同第3,094,511号明細書でも説明されている。
【0017】
本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、a)ii)メタアラミドポリマーのみから形成された繊維を含んでもよいメタアラミド繊維構成成分(即ち、メタアラミドポリマーを含むが、メタアラミドポリマー/PVポリマーブレンドのブレンドを含まない繊維)を有する糸を含む。そのようなメタアラミドポリマーの1つは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)であり、ホモポリマーポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)が、好ましいメタアラミドポリマーである。有用なメタアラミド含有繊維(例えば、MPD-I含有繊維)は、限界酸素指数(Limiting Oxygen Index)(LOI)が約26以上である。メタアラミドポリマーのみから形成された繊維(例えば、MPD-Iを含むか又はMPD-Iホモポリマーからなる繊維)を製造する様々なプロセスとして、例えば、米国特許第3,063,966号明細書及び同第5,667,743号明細書が挙げられる。MPD-I含有繊維の様なメタアラミド繊維を製造するさらなる有用な方法として、米国特許第7,771,636号明細書、同第7,771,637号明細書、同第7,771,638号明細書、同第7,780,889号明細書、及び同第7,998,575号明細書が挙げられる。これらの特許では、加熱ガス雰囲気を有する紡糸セルを使用するメタアラミドフィラメントの乾式紡糸が開示されており、加熱ガスが紡糸セルに供給されて溶媒が除去される。
【0018】
本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維を含む糸を含む。いくつかの実施形態では、この耐火性衣服及び生地で使用される糸は、3~7重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維を含む。パラアラミドポリマーから形成された好ましい繊維の1つとして、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)ポリマーを含むか又はからなる繊維が挙げられる。有用なPPD-T含有繊維は、限界酸素指数(LOI)が26超である。いくつかの実施形態では、パラアラミド繊維を形成するために使用されるパラアラミドポリマーは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)ホモポリマーからなる。パラアラミド繊維(例えば、PPD-Tを含むか又はPPD-Tホモポリマーからなる繊維)を製造する様々なプロセスとして、例えば、米国特許第3,414,645号明細書、同第3,767,756号明細書、同第3,869,429号明細書、及び同第3,869,430号明細書が挙げられる。
【0019】
本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、a)i)メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドを含む繊維を含むメタアラミド繊維構成成分を有する糸を含む。本明細書で使用される場合、ポリビニルピロリドンポリマー又はPVPポリマーとは、N-ビニル-2-ピロリドンのモノマー単位の線形重合から生じ、且つPVPポリマーとメタアラミドポリマーとのブレンドを妨げない濃度で存在し得る少量のコモノマーを含み得るポリマーのことである。PVPポリマーの分子量は、1モル当たり約5000~約1,000,000グラムの範囲である。分子量が非常に高いPVPは、高粘度の紡糸ドープを生成する。多くの実施形態では、分子量が約10,000~約360,000であるPVPポリマーが好ましい。PVPポリマーは、空気中で燃えることから耐火性ポリマーではない。
【0020】
メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから繊維を製造する一方法は、第1の溶媒中のメタアラミドポリマーの第1の等方性ポリマー溶液と、第2の溶媒中のPVPポリマーの第2の等方性溶液とを形成し、次いで、これら2種の等方性ポリマー溶液を組み合わせて、これら2種のポリマーのブレンドを有する単一ポリマー紡糸溶液を形成することである。必要に応じて、これらのポリマー溶液は、無機塩を含み得、そのような塩として、カルシウム、リチウム、マグネシウム、又はアルミニウムからなる群から選択される陽イオンを有する塩化物又は臭化物が挙げられ得る。塩化カルシウム塩又は塩化リチウム塩が、好ましい。本明細書で使用される場合、「塩」という単語は、選択された溶媒中でのポリマーの溶解性を増加させるか又は安定した紡糸溶液を供給することを促進する化合物を含むこと、及び塩であり得るがポリマーの限界酸素指数を増加させるために単に添加される任意の添加剤(特に耐火性添加剤)を除外することを意味する。塩を、塩化物若しくは臭化物として添加し得るか、又は重合溶液にカルシウム、リチウム、マグネシウム、若しくはアルミニウムの酸化物若しくは水酸化物を添加することにより、アラミドの重合からの副生成物の酸を中和することによって生成し得る。また、所望の塩濃度は、ハロゲン化物を中和溶液に添加して、中和の結果生じた塩含量を紡糸に望まれる塩含量まで増加させることによっても達成され得る。
【0021】
溶媒は、好ましくは、プロトン受容体としても機能する溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、及び同類のもの)からなる群から選択される。ジメチルアセトアミド(DMAc)が、好ましい溶媒の1つである。好ましくは、別々のメタアラミドポリマー溶液及びPVPポリマー溶液のそれぞれで使用される溶媒は、同一の溶媒であり、この溶媒は、好ましくはDMAcである。好ましくは、別々のメタアラミドポリマー溶液及びPVPポリマー溶液のそれぞれは、等方性溶液である。
【0022】
メタアラミドポリマー溶液が、MPD-I及びDMAcから形成される場合には、好ましくは、ポリマー溶液は、ポリマー溶液の安定性を改善するために、重量で少なくとも4パーセントの無機塩をさらに含む。一般に、PVP及びDMAcから形成されたポリマー溶液には、追加の安定性添加剤が必要とされない。
【0023】
2種のポリマー溶液(各ポリマー溶液は、同一の溶媒を使用して形成されている)を組み合わせる好ましい一方法は、メタアラミドポリマー溶液を運ぶパイプに、ギアポンプによりPVPポリマー溶液を中心線で注入し、続いて、静的ミキサーにより、これら2種のポリマー溶液を混合することによるものである。これにより、連続したメタアラミドポリマー溶液中にPVPポリマー溶液が分散している繊維紡糸可能な等方性ポリマー溶液が形成される。ギアポンプを使用して、メタアラミドポリマー溶液に添加されるPVPポリマー溶液の量を制御することにより、最終繊維中におけるメタアラミドポリマー中のPVPポリマーのブレンド濃度を制御し得る。
【0024】
次いで、複数の紡糸口金孔を有する紡糸口金を通って紡糸溶液を押し出すことにより、ドープフィラメントを形成し、続いて溶媒を除去し、洗浄、乾燥、及び任意選択的な当技術分野で既知の加熱処理等の他の処理を行なうことにより、連続フィラメントが形成される。
【0025】
メタアラミド及びPVPポリマーのブレンドを含む所望の繊維を得るためのフィラメントの押出し又は紡糸の好ましい一方法は、本明細書で前述されているメタアラミド又はMPD-Iフィラメントの乾式紡糸でのような「乾式紡糸」によるものである。フィラメントを「乾式紡糸する」プロセスは、当技術分野で公知であり、紡糸口金を通して、窒素等の不活性ガスを含む加熱ガス雰囲気を有する紡糸セルとして既知のチャンバにポリマー溶液を押し出すことを含む。紡糸口金孔は、ドープフィラメントの連続流を形成し、このドープフィラメントが紡糸セルを通って移動するにつれて、加熱ガス雰囲気により、このドープフィラメントから溶媒の大部分が除去され、さらに処理され得るのに十分な物理的完全性を有する半固体フィラメントが残る。半固体フィラメントの形成後、これを、さらなる液体で処理して、このフィラメントを冷却し、場合によっては、このフィラメントから溶媒がさらに抽出される。その後の洗浄、延伸、及び加熱処理により、糸中のフィラメントから溶剤がさらに抽出され得、任意の所望の繊維特性が発現され得る。次いで、このフィラメントを、連続フィラメントとしてボビンに巻き付け、この連続フィラメントは、好ましくは、認識可能な空隙がない密な中心(即ち、密な断面)を有しており、次いで、このフィラメントを、必要に応じて、密で堅い断面を有するステープルファイバーへと切断し得る。
【0026】
本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分を含む糸を含む。このメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維のみからなり得るか、又はこのメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維と、メタアラミドポリマーを含むが、メタアラミドポリマー及びPVPポリマーのポリマーブレンドを含まない繊維とを含む繊維のブレンドである。いくつかの実施形態では、本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、a)93~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、b)3~7重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維とを含む糸を含む。
【0027】
本メタアラミド繊維構成成分は、
このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)及びii)の総量を基準として、
i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維であって、このポリマーブレンドは、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマー、及び5~12重量パーセントのPVPポリマーを含む、繊維と、
ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と
を含む。
【0028】
いくつかの他の実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のi)は、90~93重量パーセントのメタアラミドポリマーと、7~10重量パーセントのPVPポリマーとのポリマーブレンドから形成された繊維を含む。次いで、いくつかの実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のi)は、100重量パーセントの、88~95重量パーセントのメタアラミドポリマーと、5~12重量パーセントのPVPポリマーとから形成された繊維ということになり、さらに、いくつかの実施形態では、この100重量パーセントの繊維は、90~93重量パーセントのメタアラミドポリマーと、7~10重量パーセントのPVPポリマーとのポリマーブレンドから形成されるということになる。
【0029】
いくつかの他の実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のii)は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維に加えて、モダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物をさらに含み得る。
メタアラミド構成成分のii)に関する重量パーセントを算出するために、メタアラミド繊維構成成分のii)の量は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維の総量に、ii)中に存在するあらゆるモダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、又はリヨセル繊維の総量を加えたものであると理解される。
【0030】
メタアラミド繊維構成成分のii)が、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、1種又は複数種の他の繊維との両方を含む、いくつかの実施形態では、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維は、ii)中の少数の構成成分である。即ち、これらの実施形態では、ii)の50重量パーセント未満は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、このことは、メタアラミド構成成分中のi)及びii)の総量の25重量パーセント未満が、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であることを意味する。
【0031】
メタアラミド繊維構成成分のii)が、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、モダクリル繊維との両方を含む、いくつかの実施形態では、ii)の少なくとも60重量パーセントは、モダクリル繊維である。この実施形態では、ii)は、1~40重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、60~99重量パーセントのモダクリル繊維とを含むということになる。好ましい一実施形態では、ii)は、20~40重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、60~80重量パーセントのモダクリル繊維とを含む。
【0032】
メタアラミド繊維構成成分のii)が、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、耐火性(FR)レーヨン繊維、又はリヨセル繊維、又は耐火性レーヨン繊維及びリヨセル繊維の混合物のいずれかとの両方を含む、さらに他の実施形態では、ii)の少なくとも40重量パーセントは、FRレーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物である。この実施形態では、ii)は、1~60重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、40~99重量パーセントのFRレーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物とを含むということになる。好ましい一実施形態では、ii)は、20~60重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維と、40~80重量パーセントのFRレーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物とを含む。
【0033】
従って、メタアラミド繊維構成成分が、i)及びii)を含み、i)繊維は、50重量パーセント~100重量パーセント未満の量で存在しており、同時に、ii)繊維が、0重量パーセント超~50重量パーセントの量で存在している、実施形態が存在することが理解される。さらに、ii)の繊維は、1種又は複数種のメタアラミドポリマーから形成され得るが、これらのメタアラミドポリマーはいずれも、いかなるPVPポリマーも含まず、これらはPVPポリマーフリーであることが理解される。好ましくは、ii)は、単一のメタアラミドポリマーから形成された繊維であり、この好ましい単一のメタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、好ましくはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)ホモポリマーである。
【0034】
さらに他の実施形態では、本耐火性衣服、又はこの耐火性衣服で使用される耐火性生地は、糸であって、この糸中の下記のa)、b)、及びc)の総量を基準として、
a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、
b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維と、
c)1~3重量パーセントの帯電防止繊維と
を含む糸を含む。
【0035】
加えて、本明細書で前述されたa)及びb)を含む様々な実施形態に関連する可能な特徴及び説明は全て、a)、b)、及びc)を含む実施形態にも等しく適用されるが、冗長さを低減するために、本明細書では繰り返されていないことが意図されている。
【0036】
好適な帯電防止繊維の1つは、De Howittに対する米国特許第4,612,150号明細書、及び/又はHullに対する米国特許第3,803,453号明細書で説明されているカーボンコアナイロン繊維等の溶融紡糸熱可塑性帯電防止繊維である。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態では、本耐火性衣服で使用される耐火性生地は、着色されているか、染色されているか、又は疑似染色されている(mock-dyed)生地である。必要に応じて、メタアラミド繊維の結晶化レベルを、化学的処理により高め得、いくつかの実施形態では、この化学的処理として、生地に組み込まれる前に繊維を着色するか、染色するか、又は疑似染色する方法が挙げられる。いくつかのそのような化学的処理方法は、例えば、米国特許第4,668,234号明細書;同第4,755,335号明細書;同第4,883,496号明細書;及び同第5,096,459号明細書で開示されている。染料キャリアとしても既知の染色助剤を使用して、アラミド繊維の染料ピックアップを増加させるのを助け得る。有用な染料キャリアとして、アリールエーテル、ベンジルアルコール、又はアセトフェノンが挙げられる。本明細書で使用される場合、「疑似染色」という用語は、いかなる染色又は追加の着色も行なうことなく、液体化学薬品(典型的には、前述されている染色助剤又は染料キャリア)で生地を処理することを意味しており、疑似染色処理は、生地を染色するか又は着色する目的ではなく、糸中の繊維の結晶化により生地を安定化させるためだけのものである。
【0038】
耐火性衣服は、火炎からの保護のために身体に着用されるように設計されたあらゆるタイプの物品又衣料品を意味する。いくつかのそのような衣服は、消防士に有用な出動用コート及び出動用装備として既知であり、他の衣服は、火炎からの保護が必要な環境に作業者が曝露される可能性がある産業用途で使用される。好ましい実施形態では、耐火性衣服は、耐火性生地から形成されている。本明細書で使用される場合、生地は、この生地が、ASTM D6413-15の垂直燃焼試験により4インチ(100mm)以下の炭化長及び2秒以下の残炎を有する場合に、耐火性とみなされる。
【0039】
耐火性衣服として、コート、ジャケット、ジャンプスーツ、カバーオール、ズボン、袖、フード、エプロン、手袋、及び火炎からの保護が必要な他のタイプの衣料品が挙げられ得る。カバーオール等のいくつかの用途では、この衣服は、本明細書で説明されている耐火性生地の1つの層を本質的に有し得る。他の用途では、この衣服は、消防士の出動用コート等の多重層を有し得、このコートの層の内の1つ又は複数は、本明細書で説明されている耐火性生地を含む。
【0040】
耐火性衣服を、所望のタイプの衣服を製造するのに適した方法を使用して、耐火性生地から製造し得る。例えば、単層カバーオールの場合には、ガイドとして好ましいパターンを使用して、耐火性生地の層を切断し、この衣服の様々な部分を形成するためのピースを生成する。次いで、このピースを、典型的には裁縫により、互いにつなぎ合わせて、実際の衣服を形成する。一般的に、産業生産では、生地の多くの層を裁断台の上に重ね、次いで、一度に切断して複数の衣服用の複数のピースを形成し、次いで、個々に組立てて裁縫して、複数の衣服を製造する。消防士の出動用コート等のより複雑な衣服は、複数の保護素材の層を必要とするが、ほぼ同じ方法で製造される。そのような多重層の衣服では、本明細書で説明されている耐火性生地は、インナー層又はエクステリアシェル(exterior shell)のいずれかで特に適用される。
【0041】
「生地」は、糸から形成されたあらゆる織物又は編まれた層構造を意味する。「織り」生地とは、平織り、千鳥綾織り、篭目織り、サテン織り、綾織り等の任意の織られた生地を生成するために、縦糸又は長さ方向の糸を、横糸又は横方向の糸と互いに織り合わせることによって織機で通常形成される生地を意味する。平織り及び綾織りは、業界で使用される最も一般的な織り方であると考えられており、多くの実施形態において好ましい。「編まれた」は、縦編み(例えば、トリコット、ミラニーズ、又はラッセル)及び横編み(例えば、円形又は扁平)等の、針又はワイヤによって1本又は複数本の糸の一連のループを連結することによって製造可能な構造が意図されている。多くの場合、編み生地を製造するために、紡糸されたステープルヤーンは、その糸を生地へと変換する編み機に供給される。必要に応じて、複数の端部又は糸を、撚糸又は単糸のいずれかで編み機に供給し得、即ち、糸の束又は撚の束を編み機に同時に供給し、従来の技術を使用して、生地へと編み得るか、又は手袋等の生地を含む衣料品へ編み得る。編み物の締まり具合を、任意の具体的な要求を満たすように調節し得る。シングルジャージニット及びテリーニットは、防護服に非常に効果的な特性の組み合わせを提供し得る。
【0042】
「糸」とは、一緒に紡糸されるか又は撚り合わされて連続ストランドを形成する繊維の集合体を意味する。本明細書で使用される場合、糸は、一般に、織り及び編み等の作業に適した繊維製品材料の最も単純なストランドである、当技術分野で単糸として既知のもの;又は諸撚糸(ply yarn又はplied yarn)を指す。紡糸されたステープルヤーンを、多少の撚りを有するステープルファイバーから製造し得る。単糸に撚りが存在する場合、それは全て同じ方向である。本明細書で使用される場合、「諸撚糸」及び「撚糸」という語句は、同義で使用され得る、2本以上の糸を指しており、即ち、一緒に撚り合わせられたか又は撚られた単糸を指す。典型的には、2本の単糸を撚り合わせて諸撚糸を形成する場合には、この諸撚糸の撚り方向は、単糸の撚り方向と逆である。
【0043】
本明細書での目的のために、「繊維」という用語は、長さに垂直な断面積の幅に対するその長さの比率が大きい、比較的柔軟で巨視的に均一な物体として定義される。繊維の断面は、ポリマー及びその処理に応じて任意の形状であり得るが、典型的には丸形又は豆形の形状である。また、そのような繊維は、好ましくは、繊維製品用途における十分な強度のために、概して密な断面を有しており、即ち、この繊維には、好ましくは、認識可能な空隙がないか、又は多量の好ましくない空隙がない。フィラメント紡績工程から直接得られ、典型的にはパッケージのボビンに集められる繊維は、連続繊維又はフィラメントと称される。そのような連続繊維又はフィラメントは、ステープルファイバーと呼ばれる短い長さに変換され得、ステープルファイバーは、所望の長さに切断されているか又は伸長により切断されている繊維を指す。ステープルファイバーは、連続フィラメントと比較した場合に、長さに垂直な断面積の幅に対するその長さの比率が低い。人工ステープルファイバーは、例えば、綿、羊毛、又は梳毛糸の紡糸装置での加工に適した長さに切断されるか又は製造される。ステープルファイバーは、(a)実質的に均一な長さ、(b)可変の若しくはランダムな長さ、又は(c)実質的に均一な長さの分布を有し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、繊維は、線密度が1~3dtex(0.9~2.7デニール)であり、この線密度は、織物及び編み物の製造に特に有用な繊維サイズである。この線密度範囲により、本質的に、繊維上の任意の点で測定された最小断面直径が約5ミクロンを超える繊維が得られる。
【0045】
本明細書で使用される場合、繊維は、この繊維のみで形成された生地が、ASTM D6413-15の垂直燃焼試験により4インチ(100mm)以下の炭化長及び2秒以下の残炎を有する場合に、耐火性とみなされる。加えて、本明細書で使用される場合、ポリマー、又はこのポリマーから形成された繊維は、このポリマーの限界酸素指数が21超である場合に、耐火性であるとみなされる。
【0046】
様々なステープルファイバーのブレンドを糸で使用する場合には、ブレンドは、ステープルファイバーの均質ブレンドであることが好ましい。この均質ブレンドを、様々な繊維のストランド若しくはトウをカッターブレンドすることにより製造し得るか、又は繊維の様々なベールをブレンドすること、及び均質ブレンドを形成する分野で既知の他の手段により製造し得る。例えば、2種以上の異なるステープルファイバーの種類のスライバーを、様々なステープルファイバーがステープルヤーンの束の中の均質ブレンドとして均一に分布するようにステープルファイバーヤーンが紡糸される前に又は最中にブレンドし得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、好適なステープルファイバーは、1~30センチメートル(0.39~12インチ)のカット長を有する。いくつかの実施形態では、好適なステープルファイバーは、2.5~20cm(1~8インチ)の長さを有する。いくつかの好ましい実施形態では、短いステープル法によって製造されたステープルファイバーは、6cm(2.4インチ)以下のカット長を有する。いくつかの好ましい実施形態では、短いステープル法によって製造されたステープルファイバーは、1.9~5.7cm(0.75~2.25インチ)のステープルファイバー長を有し、3.8~5.1cm(1.5~2.0インチ)のステープルファイバー長が特に好ましい。長いステープル、梳毛糸、又は紡羊毛システム紡績のためには、16.5cm(6.5インチ)以下の長さを有する繊維が好ましい。
【0048】
ステープルファイバーを、任意の方法により製造し得る。例えば、ステープルファイバーを、真っすぐな(すなわち、捲縮なしの)ステープルファイバーをもたらす回転カッター又はギロチン・カッターを用いて連続の真っすぐな繊維から切断し得るか、又はさらに、好ましくは1センチメートル当たり8以下の捲縮(若しくは繰り返し屈曲)頻度で、ステープルファイバーの長さに沿って鋸歯形状の捲縮を有する捲縮連続繊維から切断し得る。好ましくは、ステープルファイバーは、捲縮を有する。
【0049】
ステープルファイバーを、連続繊維のけん切によっても形成し得、結果として、捲縮として作用する変形部分を有するステープルファイバーが得られる。けん切されたステープルファイバーを、所定の距離の1つ以上のけん切ゾーンを有するけん切作業中にトウ又は連続フィラメントの束を破断することによって製造し得、破断ゾーン調整によって制御される平均切断長を有する繊維のランダムな可変の塊が形成される。
【0050】
紡糸されたステープルヤーンは、当技術分野で公知の従来の長及び短ステープルリング紡糸法を使用して、ステープルファイバーから製造し得る。しかしながら、エアジェット紡糸、オープンエンド紡糸、及びステープルファイバーを利用可能な糸へと変換する他の多くの種類の紡糸を使用しても糸を紡糸し得ることから、糸の製造は、リング紡糸に限定することを意図していない。紡糸されたステープルヤーンを、けん切トウ紡糸ステープルプロセスを使用するけん切によっても直接製造し得る。従来のけん切プロセスによって形成された糸の中のステープルファイバーは、典型的には、最大18cm(7インチ)の長さを有する。しかしながら、例えばPCT出願国際公開第0077283号で説明されているような方法によって、けん切により製造された紡糸されたステープルヤーンは、最大長さ約50cm(20インチ)のステープルファイバーも有し得る。けん切プロセスはある程度の捲縮を繊維に付与することから、けん切されたステープルファイバーは、通常は捲縮を必要としない。
【0051】
本発明は、さらに、糸を含む耐火性生地であって、この糸は、この糸中の下記のa)及びb)の総量を基準として、a)85~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、b)3~15重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維とを含む、耐火性生地に関する。いくつかの実施形態では、この耐火性生地は、a)93~97重量パーセントのメタアラミド繊維構成成分と、b)3~7重量パーセントの、パラアラミドポリマーから形成された繊維とを含む糸を含む。この耐火性生地中のb)繊維で使用される好ましいパラアラミドポリマーは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)から形成されている。このメタアラミド繊維構成成分は、このメタアラミド繊維構成成分中の下記のi)繊維及びii)繊維の総量を基準として、i)50~100重量パーセントの、メタアラミドポリマー及びポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維と、ii)0~50重量パーセントの、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維とを含む。具体的には、メタアラミド繊維構成成分のi)は、88~95重量パーンセトのメタアラミドポリマーと、5~12重量パーセントのPVPポリマーとを含むポリマーブレンドから形成されている繊維を含む。いくつかの好ましい実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のi)は、90~93重量パーセントのメタアラミドポリマーと、7~10重量パーセントのPVPポリマーとを含むポリマーブレンドから形成された繊維を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のii)は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維からなる。いくつかの実施形態では、メタアラミド繊維構成成分のii)は、少なくとも2種の繊維を含み、これらの内の1種は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維である。いくつかの実施形態では、メタアラミド繊維構成成分ii)は、モダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、リヨセル繊維、又はこれらの混合物をさらに含み得る。メタアラミド構成成分のii)に関する重量パーセントを算出するために、メタアラミド繊維構成成分のii)の量は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維の総量に、ii)中に存在するあらゆるモダクリル繊維、耐火性レーヨン繊維、又はリヨセル繊維の総量を加えたものであると理解される。
【0053】
実施形態の内のいくつかでは、生地で使用される糸は、この糸中のa)、b)、及び下記のc)の総量を基準として、c)1~3重量パーセントの帯電防止繊維をさらに含む。
【0054】
メタアラミドポリマー及びPVPのポリマーブレンドから形成された繊維を含むメタアラミド繊維構成成分i)では、この繊維中においてPVPとブレンドされた好ましいメタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。メタアラミドポリマーのみから形成された繊維を含むメタアラミド繊維構成成分ii)では、好ましいメタアラミドポリマーは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)ホモポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、耐火性生地は、染色されているか、又は疑似染色されていて、前述されたメタアラミド繊維構成成分の結晶化度が高められている。
【0055】
本耐火性生地は、本明細書で前述された耐火性衣服で有用であることが理解されており、且つ本明細書で既に提供された耐火性衣服の説明で使用される衣服、生地、又は糸の様々な実施形態に関する可能な特徴及び説明は、本明細書での耐火性生地にも等しく適用される(逆もまた同様)が、冗長さを低減するために、本明細書では繰り返さないことが意図されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、耐火性生地は、メタアラミド繊維構成成分a)及びパラアラミド繊維b)(即ち、a)及びb))を同一の割合で含む等重量のコントロール生地の火炎による収縮と比べて、火炎による収縮が少なくとも10%少なく、このコントロール生地のメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない。いくつかの他の実施形態では、耐火性生地は、メタアラミド繊維構成成分a)及びパラアラミド繊維b)(即ち、a)及びb))を同一の割合で含む等重量のコントロール生地の火炎による収縮と比べて、火炎による収縮が少なくとも20%少なく、このコントロール生地のメタアラミド繊維構成成分は、メタアラミドポリマーのみから形成された繊維であり、メタアラミド及びポリビニルピロリドン(PVP)のポリマーブレンドから形成された繊維を含まない。
【0057】
試験方法
生地の火炎による収縮性能を、伝熱性能(HTP)を決定する方法を使用して、NFPA 2112-2018に基づく改変方法を使用して測定した。試験手順及び装置は、NFPA 2112 HTP試験で記載されている通りであり、2.00cal/cm
2・秒の曝露が必要であり、センサーホルダ内の銅製ディスクは、試料プレートの2インチ四方の孔を通して完全に見えている。試験する生地の切断サンプルは、幅が2インチであり、長さが10インチであった。再現性のために、3つのサンプルを縦糸方向で切断し、3つのサンプルを横糸方向で切断した。それぞれのサンプル長を、試験前に、10分の1インチ単位で測定した。次いで、孔全体が覆われるように、各サンプルを、試料試験プレート上に平らにテープで貼り付けた。次いで、試料試験プレートを試験スタンド上に置き、続いて、底から約1/2インチでサンプル上に10グラムの重りを置いて、試料試験プレート上に保持した。次いで、火炎暴露時間を入力し(この場合、サンプルを、3、4、及び5秒間曝露した)、試料試験プレートを、試験装置に取り付けた。次いで、サンプルを火炎に曝露し、試験が完了した場合には、曝露されたサンプルを試験プレートから取り出し、10分の1インチ単位で再度測定する。火炎による収縮率を、下記式:
【数1】
を使用して算出する。
【0058】
衣服の予測される全身熱傷性能を、DuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキンを使用して、ASTM F1930(2018)に従って決定した。
【実施例】
【0059】
実施例1
95重量パーセントのPVP含有メタアラミド繊維と、5重量パーセントのパラアラミド繊維とのピッカーブレンドスライバの形態のステープルファイバーの均質ブレンドを調製しており、このメタアラミド繊維は、90重量パーセントのMPD-Iホモポリマーと、10重量パーセントのPVPポリマーとのポリマーブレンドから形成されている。このパラアラミド繊維を、PPD-Tホモポリマーから形成した。次いで、この均質ブレンドから、綿システム加工及びエアジェット紡績フレームを使用して、紡績ステープルヤーンを形成した。この得られた糸は、18.4テックス(32綿番手)の単糸であった。次いで、2本の単糸を、撚糸機で撚り合わせて、10回転/インチのプライツイストを有する双糸を形成した。
【0060】
次いで、この糸を、縦表の2×1の綾織り構成でシャトル織機により織られる生地の縦糸及び横糸で使用した。生機綾織布は、1cm当たり約31エンド×18ピック(1インチ当たり77エンド×52ピック)の構造、及び186g/m2(5.5oz/yd2)の坪量を有した。次いで、この生地を染色して、坪量が約237g/m2(7oz/yd2)である生地を得た。
【0061】
比較例A
コントロールとして、ピッカーブレンドスライバの形態のステープルファイバーの均質ブレンドを、実施例1と同様に調製したが、このブレンドは、いかなるPVPポリマーも含まずMPD-Iホモポリマーのみを含む95重量パーセントのメタアラミド繊維を含んだ。5重量パーセントのパラアラミド繊維も、PPD-Tホモポリマーから形成した。次いで、このブレンドを使用して実施例1を繰り返し、紡糸されたステープルヤーン、諸撚糸、及び坪量が186g/m2(5.5oz/yd2)である同一の構造の縦表の2×1の綾織り構成で織られた生地を形成した。実施例1と同様に、次いで、この生地を染色して、坪量が約237g/m2(7oz/yd2)である生地を得た。
【0062】
実施例2
次いで、実施例1及び比較例Aの織られた生地を使用して、サーマルマネキンへの炎症試験用のカバーオールを形成した。このカバーオールを、サーマルマネキン試験に関してASTM F1930-00で示されている衣服のサイズ及び詳細を使用して形成し、次いで、この衣服を、ASTM F1930-00に従ってDuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキンで個別に試験して、爆発的火炎中での性能を測定した。実施例1の生地から2着の衣服を形成し、比較例Aの生地から2着の衣服を形成した。
【0063】
図1は、実施例1の生地から形成された本発明の衣服10と、比較例Aの生地から形成されたコントロール衣服15とをそれぞれ並べて撮影した写真であり、サーマルマネキン試験装置を使用する火炎への4秒間曝露後の火炎による損傷を示す。この写真におけるこれらの衣服の明るい領域は、火炎による損傷を受けた領域である。
図2は、実施例1の生地から形成された本発明の衣服20と、比較例Aの生地から形成されたコントロール衣服25とをそれぞれ並べて撮影した写真であり、サーマルマネキン試験装置を使用する火炎への5秒間曝露後の火炎による損傷を示す。この場合も先と同様に、この写真におけるこれらの衣服の明るい領域は、火炎による損傷を受けた領域である。
図1及び2に示すように、実施例1の生地から形成されたカバーオール(10、20)は、比較例Aの生地から形成されたカバーオール(15、25)と比べて、目に見える収縮が少ない。これらの衣服のDuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキンの予測される全身熱傷率を、表1に示す。
【0064】
【0065】
実施例1の生地を使用する本発明の衣服は、爆発的火炎中での身体の熱傷率を顕著に低下させた。このことは、本発明の衣服において、この生地に使用されるメタアラミド繊維中の耐火性であり且つより熱的に短繊維のメタアラミドポリマーの10パーセントが、非耐火性ポリマーである(即ち、耐火性ポリマーではない)ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーに置き換えられたことを考慮すると、特に驚くべきことである。
【0066】
実施例3及び比較例B
95重量パーセントのPVP含有メタアラミド繊維(具体的にはMPD-I/PVP繊維)と、5重量パーセントのパラアラミド繊維(具体的にはPPD-T繊維)とのピッカーブレンドスライバの形態のステープルファイバーの均質ブレンドを再度使用して、実施例1を繰り返したが、得られた二重に紡糸されたステープルヤーンは、16.3テックス(36綿番手)の糸であり、このことは、生機綾織生地は坪量が159g/m2(4.7oz/yd2)であったことを意味する。次いで、この生地を染色して、坪量が169.5g/m2(5oz/yd2)である染色生地を得た。
【0067】
同様に、いかなるPVPも含まない95重量パーセントのメタアラミド繊維(具体的には、MPD-Iのみ)と5重量パーセントのパラアラミド繊維(具体的には、PPD-T繊維)とのピッカーブレンドスライバの形態のステープルファイバーの均質ブレンドを再度使用して、比較例Aを繰り返してコントロール生地を形成したが、得られた二重に紡糸されたステープルヤーンは、16.3テックス(36綿番手)の糸であり、生機綾織生地は、坪量が159g/m2(4.7oz/yd2)であった。次いで、この生地を染色して、坪量が169.5g/m2(5oz/yd2)である染色生地を得た。
【0068】
次いで、本発明(実施例3)の生地及びコントロール(比較例B)の生地の両方のサンプルを、NFPA 2112 HTP試験に基づく、本命細書で開示されている改変試験方法を使用して、4秒間の火炎への曝露後の火炎による収縮に関して試験した。得られた生地の特性を、表2に示す。
【0069】
【0070】
表2に示すように、本発明の生地は、コントロールと比べて、縦糸方向及び横糸方向の両方において、火炎による収縮が少なかった(火炎中での収縮が少なかった)。
【0071】
実施例4
次いで、染色された本発明(実施例1)の生地及び染色された(比較例A)の生地の両方のサンプルを、NFPA 2112 HTP試験に基づく、本命細書で開示されている改変試験方法を再度使用して、その火炎による収縮に関してさらに試験したが、火炎曝露時間を変化させた。
図3は、3、4、及び5秒間曝露の火炎曝露に対する生地の測定された火炎による収縮率のグラフである。
図3のグラフに同様に含まれているのは、全体的な割合が同一の実施例1及び非核例Aで使用されるメタアラミド繊維及びパラアラミド繊維から形成された、織られた生地の予測される性能を表す点線であるが、均質ブレンドは、メタアラミド構成成分として、50重量パーセントの、MPD-Iのみで形成された繊維と、50重量パーセントの、90重量パーセントのMPD-Iポリマー及び10重量パーセントのPVPポリマーのポリマーブレンドから形成された繊維とを含む。メタアラミド/PVPポリマーブレンドで形成された繊維を含む生地は、メタアラミド/PVPポリマーを有しない繊維を含む生地と比べて、火炎による収縮が少ない。
【0072】
実施例5
実施例1を繰り返したが、ピッカーブレンドスライバの形態のステープルファイバーの均質ブレンドは、93重量パーセントのPVP含有メタアラミド繊維(具体的には、MPD-I/PVP繊維)、5重量パーセントのパラアラミド繊維(具体的には、PPD-T繊維)を含んでおり、この均質ブレンドは、2重量パーセントのカーボンコアナイロン帯電防止繊維をさらに含んだ。得られた、紡糸されたステープルヤーンは、21テックス(36綿番手)の単糸であった。次いで、2本の単糸を、撚糸機で撚り合わせて、10回転/インチのプライツイストを有する双糸を形成した。
【0073】
次いで、この糸を、綾織り構成でシャトル織機により織られる生地の縦糸及び横糸として使用した。この生機生地は、1cm当たり約28エンド×15ピック(1インチ当たり7769エンド×52 44ピック)の構造、及び142g/m2(4.2oz/yd2)の坪量を有した。次いで、この生地を染色して、坪量が約163g/m2(4.8oz/yd2)である生地を得た。
【0074】
比較例C
実施例5を繰り返してコントロール生地を形成したが、均質ブレンドは、93重量パーセントの、MPD-Iポリマーのみを含み且ついかなるPVPポリマーも含まないメタアラミド繊維と、5重量パーセントのパラアラミド繊維(具体的には、PPD-T繊維)と、2重量パーセントのカーボンコアナイロン帯電防止繊維とからなった。実施例5と同様に、紡糸されたステープルヤーン、及び諸撚糸を形成し、坪量が142g/m2(4.2oz/yd2)である、実施例5と同一の構成の平織りで織られた生地を形成した。次いで、実施例5と同様に、この生地を染色して、坪量が約149g/m2(4.4oz/yd2)である生地を得た。
【0075】
実施例6
次いで、実施例5及び非核例Cの織られた生地を使用して、サーマルマネキンによる火炎試験用のカバーオールを形成した。このカバーオールを、サーマルマネキン試験に関してASTM F1930-00で示されている衣服のサイズ及び詳細を使用して形成し、次いで、この衣服を、爆発的火炎中での性能に関して、ASTM F1930-00に従って、DuPont(商標)Thermo-Man(登録商標)サーマルマネキンで個別に試験した。実施例5の生地から3着の衣服を形成し、比較例Cの生地から3着の衣服を形成した。次いで、データを平均化し、名目上153g/m2(4.5oz/yd2)に正規化し、これらの衣服に関する予測される全身熱傷率を表3に示す。
【0076】
【表3】
*名目上153 g/m
2 (4.5 oz/yd
2)に正規化されている
【0077】
実施例5の生地を使用する本発明の衣服は、その非常に低い坪量にもかかわらず、コントロールと比較した場合に、爆発的火炎中での全身熱傷率を顕著に減少させた。
。このことは、本発明の衣服において、その生地で使用されるメタアラミド繊維中の耐火性であり且つより熱的に安定なメタアラミドポリマーの10パーセントが、非耐火性ポリマーである(即ち、耐火性ポリマーではない)ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーに置き換えられていたことを考慮すると、特に驚くべきことである。
【国際調査報告】