(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ポリアミド6を含む漁網からのイプシロン-カプロラクタムの回収のための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 223/04 20060101AFI20250206BHJP
C08J 11/20 20060101ALI20250206BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C07D223/04
C08J11/20 ZAB
C08J11/24
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024544623
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2023052069
(87)【国際公開番号】W WO2023144338
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517161577
【氏名又は名称】セーアーペー ドリー ベスローテン ヴェンノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】CAP III B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】フェルデュック,ヤスペル
(72)【発明者】
【氏名】ロース,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ケイト エミリー
(72)【発明者】
【氏名】バウア,ヘンリキュス アンナ クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】フ,ヴェニング
(72)【発明者】
【氏名】ティンヘ,ヨハン トーマス
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401AC20
4F401AD20
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401DC10
4F401EA27
4F401EA47
4F401EA54
4F401EA55
4F401EA59
4F401FA01Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド6を含む漁網から精製されたε-カプロラクタムを回収するための方法およびプラントを提供し、前記プラントは、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]を備える。本発明は、特に低い製品カーボンフットプリントを有し、漁網からポリアミド6の解重合を介して得られる精製されたε-カプロラクタムも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおいて、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から精製されたε-カプロラクタムを回収するための方法であって、前記プラントは、
-解重合セクション[B]、
-回収セクション[C]、および
-精製セクション[D]
を備え、
前記方法は、
a)ポリアミド6を含む漁網由来の材料を前記解重合セクション[B]に投入する工程と;
b)ε-カプロラクタムを含む流れが得られるように、180℃~400℃の範囲の温度で、前記解重合セクション[B]において、ポリアミド6を含む漁網由来の前記材料を解重合する工程と;
c)前記解重合セクション[B]から前記ε-カプロラクタムを含む流れを排出し、前記回収セクション[C]において、前記流れから粗精製ε-カプロラクタムを回収する工程と;
d)前記精製セクション[D]において前記粗精製ε-カプロラクタムを精製して、精製されたε-カプロラクタムを得る工程であって、前記精製は、
(i)前記粗精製ε-カプロラクタムを有機溶媒で抽出する工程であって、有機相が得られ、前記有機相は、前記有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む、工程と;
(ii)前記有機溶媒を少なくとも部分的に水で置き換えることによって前記溶媒を交換する工程であって、水と、ε-カプロラクタムと、ε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物とを含む水相が得られ、溶媒交換工程(ii)は、水による逆抽出に基づく方法および前記有機溶媒が留去され、水が投入される溶媒切り替え蒸留に基づく方法から選択される、工程と;
(iii)前記水相からε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物の蒸留除去によって精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含む、
精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程b)における前記解重合が水の存在下で行われ、前記ε-カプロラクタムを含む流れが、1:2~1:15の重量対重量比でε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流であり、工程d)(i)における前記抽出において、水相および有機相の両方が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)(iii)における蒸留除去の前に、工程d)における前記精製が、
20℃~85℃の範囲の温度で、水溶液中の酸化剤で酸化する工程であって、前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムおよび過酸化水素ならびにそれらの組み合わせからなる群、特に過マンガン酸カリウムから選択される、工程も含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において存在する前記水が、220℃~575℃、好ましくは275℃~500℃の範囲の温度を有する過熱された水蒸気として工程b)において前記解重合セクション[B]に投入される水蒸気の形態である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程d)(ii)における前記溶媒交換が、水による逆抽出に基づく方法である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)(ii)における前記溶媒交換が、溶媒切り替え蒸留に基づく方法である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程d)(i)における前記有機溶媒が、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、4メチル-2-ペンタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)における前記酸化が、5:1~1:5の重量対重量比で水およびε-カプロラクタムを含む水溶液中で行われる、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)における前記解重合が触媒の非存在下または存在下で行われ、前記触媒が酸および塩基触媒から選択され、前記酸触媒がオルトリン酸、ホウ酸、硫酸、有機酸、有機スルホン酸、前述の酸の塩、Al
2O
3およびSiO
2ならびにそれらの組み合わせからなる群、特にオルトリン酸から選択され、前記塩基触媒が、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物およびアルカリ土類塩、有機塩基および固体塩基ならびにそれらの組み合わせからなる群、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)における前記解重合が、触媒の非存在下またはオルトリン酸の存在下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の前に、ポリアミド6を含む漁網由来の前記材料が、前処理セクション[A]での前処理、特に清掃セクション[α]における清掃および/または機械的サイズ縮小セクション[β]における機械的サイズ縮小および/または高密度化セクション[γ]におけるかさ密度を増加させる、生成物として得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-工程d)(i)の後に、工程d)(i)において得られた有機相が水もしくはアルカリ水溶液で洗浄され、および/または
-工程d)(ii)における前記蒸留除去の前に、アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHが前記水相に添加される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリアミド6を含む漁網由来の材料から精製されたε-カプロラクタムを生産するためのプラントであって、前記プラントは、
-解重合セクション[B]と、
-回収セクション[C]と、
-精製セクション[D]と
を備え、
前記プラントは、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、プラント。
【請求項14】
前記プラントが、
-機械的サイズ縮小セクション[β]、および
-清掃セクション[α]および
-場合によって高密度化セクション[γ]
を備える前処理セクション[A]をさらに備える、請求項13に記載のプラント。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によってポリアミド6を含む漁網から誘導されたポリアミド6の解重合を介して得られる精製されたε-カプロラクタムであって、前記ε-カプロラクタムは、精製されたε-カプロラクタム1kg当たり2kg未満のCO
2相当量の製品カーボンフットプリントを有する、精製されたε-カプロラクタム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド6を含む廃漁網からのε-カプロラクタムの回収のための方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリアミド6を含む廃漁網からのε-カプロラクタムの回収のための方法であって、高品質のε-カプロラクタムが得られる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漁網は、漁獲のために使用される網である。網は、格子状構造で織られた繊維から作られた器具である。漁網は、通常、比較的細い糸を結び合わせることによって形成された網目状構造物である。現代の網は、通常、人工繊維(ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンなど)で作られている。
【0003】
漁網は、漁師によって、海および海洋に放置されたり、または紛失されたりすることがあり得る。ゴーストネットとして知られているこれらの網は、魚および他の動物にとって大きな問題を引き起こす。一般に、人工繊維で作られた漁網の(生)分解速度は極めて低いことが多い。したがって、これらの網は、長年にわたって海洋生態系に留まり、膨大な量のゴーストネットの蓄積をもたらす。
【0004】
FAOおよび国連環境計画(UNEP)による最新の推定値は、放棄された、紛失された、および廃棄された漁具の量が年間約6億4000万キログラムであることを示唆している。
【0005】
近年、港湾内の廃棄された漁網を回収したり、さらにはボランティアのダイバーの助けを借りて海底から漁網を除去したりするなど、ゴーストギアが環境に侵入するのを防ぐための多くの取り組みが開始されている。
【0006】
ポリアミド6を含む漁網を含む、回収された廃漁網の運命は、埋め立て、焼却(場合によって熱の回収を伴う)、再造粒および混練から解重合にわたる。再造粒および混練は、廃プラスチックが溶融され(場合によって、固体不純物を除去するためにその後濾過され)、次いで押出物に転化されるかまたは金型に直接注入されるリサイクリングプロセスである。解重合は、ポリマーがそのモノマー成分(ポリマーがポリアミド6である場合にはε-カプロラクタム)に転化される技術である。
【0007】
機械的リサイクリング(別名、材料リサイクリングまたはバックツープラスチックリサイクリング)は、機械的プロセス(粉砕、洗浄、分離、乾燥、再造粒および混練)によってプラスチックを回収することを目的とし、これにより、プラスチック製品に転化することができ、バージンプラスチックの代わりになるリサイクル可能材料を生成する操作を指す。現在、ほとんどのバージンプラスチックは、以前に使用または加工されたことがない、天然ガス、石炭または原油などの石油化学原料から製造されている。機械的リサイクリングプロセスでは、ポリマー鎖は多かれ少なかれ無傷の状態を保つ。機械的リサイクリングは、リサイクルされた材料の品質および機能性が元の材料より劣るため、廃棄物のダウンサイクリングの一形態である。
【0008】
解重合または化学的リサイクリングは、ポリマーがそのモノマー成分に転化される技術である。回収されたモノマーの仕様が、あらゆる用途またはほんの限られた量の用途のためにバージンモノマーを代替することができるかどうかを決定する。バージンモノマーは、以前に使用または加工されたことがない、天然ガス、石炭または原油などの石油化学原料から製造されている。
【0009】
1938年に、Paul Schlackは、ナイロン6、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ヘキサノ-6-ラクタム)、ポリ(6-アミノヘキサン酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)またはポリ[イミノ(1-オキソヘキサン-1,6-ジイル)]としても知られるポリアミド6(CAS番号:25038-54-4)を発明した。
【0010】
一般に、ポリアミド6(別名、ナイロン6またはポリカプロラクタム)は、不活性雰囲気中、約260℃の温度でのε-カプロラクタムの開環重合によって合成される:
【化1】
【0011】
バージンε-カプロラクタムの製造方法は、例えばhttps://doi.org/10.1002/14356007.a05_031.pub3を介して電子的に入手可能なUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(2018年5月25日)、Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,Germanyの「Caprolactam」の章に記載されている。
【0012】
ポリアミド6の製造方法は、例えば、https://doi.org/10.1002/14356007.a21_179.pub3を介して電子的に入手可能な、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(2013年1月15日)、Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,Germanyの「Polyamides」の章に記載されている。
【0013】
ポリアミド6のε-カプロラクタムへの解重合は、ε-カプロラクタムの開環重合の逆反応である:
【化2】
【0014】
ポリアミド6の解重合のための方法は公知である。このような方法は、バッチ式操作モード、半連続モード(一般に、解重合反応器へのポリアミド6のバッチ式(再)投入を伴う)または連続モードで操作され得る。
【0015】
L.A.Dmitrieva,A.A.Speranskii,S.A.Krasavin and Y.N.Bychkov,“Regeneration of ε-Caprolactam From Wastes In the Manufacture of Polycaproamide Fibres and Yarns”,Fibre Chemistry,pp.229-241,March 1986,(Khimicheskie Volokna,No.4,pp.5-12,July-August,1985から翻訳)は、触媒を使用するおよび使用しない、ポリアミド6を解重合するための方法を記載した文献総説である。
【0016】
https://doi.org/10.1002/app.1984.070291227を介して電子的に入手可能な、A.A.Ogale,“Depolymerization of Nylon 6:Some Kinetic Modeling Aspects”,Journal of Applied Polymer Science,vol.29,1984,pp.3947-3954は、ポリアミド6の解重合速度論を記載した論文である。
【0017】
米国特許第5929234号は、ポリカプロラクタム含有廃棄物からε-カプロラクタムを回収するための方法を記載している。解重合は、添加された触媒の非存在下において、過熱された水蒸気を用いて、約250℃~約400℃の温度で、および約1atm~約100atmの範囲内かつε-カプロラクタム含有蒸気流が形成される温度での水の飽和蒸気圧より実質的に低い圧力で行われる。
【0018】
ポリアミド6を含む漁網の解重合は、過去に実施されてきた。しかしながら、ポリアミド6のリサイクリングの長い歴史にもかかわらず、これらの方法によって得られたモノマーε-カプロラクタムの品質は、特に低かった。その結果、ポリアミド6を含む漁網の解重合によって得られるε-カプロラクタムは、エンジニアリングプラスチックおよびカーペットのような要求が厳格でない用途にのみ適用される(ダウンサイクリング)。漁網の解重合から得られたε-カプロラクタムを要求がより厳格な用途に使用する場合、漁網の解重合から得られたε-カプロラクタムのかなり粗悪な品質を隠すために、多量のより高いおよびより純粋な等級のε-カプロラクタムと混合する必要がある。細い織物繊維を製造するためのポリアミド6の高速融解紡糸は、原料として高品質のε-カプロラクタムを必要とする。これらの用途のための高品質ε-カプロラクタムの等級は極めて純粋であるだけでなく、それらの特性は時間とともに変化するべきでない。
【0019】
総合すると、ポリアミド6を含む漁網からε-カプロラクタムを回収するための従来技術の方法は、要求が厳しい用途のために、バージンε-カプロラクタム等級を置き換えるために使用することができる高品質ε-カプロラクタム等級を生産することができない。
【0020】
現在、ポリアミド6を含む漁網から高純度ε-カプロラクタムを回収するための方法は、このような方法の切迫した必要性にもかかわらず利用可能ではない。特に、織物繊維製造中の高速融解紡糸などの要求が高い用途のために、バージンε-カプロラクタム等級を置き換えることができる高純度ε-カプロラクタム回収方法が緊急に必要とされている。
【0021】
さらに、経済的に合理的な様式でポリアミド6を含む漁網から高純度ε-カプロラクタムを回収することを可能にする方法が必要とされている。回収された高純度ε-カプロラクタムの生産コストは、高純度バージンε-カプロラクタムの生産コストと同じ価格帯であるか、またはそれより低くなければならない。
【0022】
さらに、例えばシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位による新規合成によって得られたバージンε-カプロラクタムを使用する方法によって生産されたε-カプロラクタムよりも有意に低いカーボンフットプリントを有する高純度等級ε-カプロラクタムを、ポリアミド6を含む漁網から提供する必要がある。
さらに、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から高純度等級ε-カプロラクタムを生産するためのプラントが必要とされている。
【0023】
最後に、毎年廃棄される莫大な量の、ポリアミド6を含む漁網を処理するために、ポリアミド6を含む漁網から産業規模でε-カプロラクタムを回収することを可能にする方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0024】
上述の必要性のうちの1つまたは複数を満たすこと、および従来技術の方法に付随する欠点を克服することが本発明の目的である。
【0025】
特に、ポリアミド6を含む漁網から高純度ε-カプロラクタムを回収するための方法を提供することが本発明の目的である。これに関して、細い織物繊維の生産のためのポリアミド6の高速融解紡糸を含むあらゆる用途のために、高純度バージンε-カプロラクタムを置き換えることができる高純度ε-カプロラクタムを、ポリアミド6を含む漁網から回収するための方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0026】
産業規模で、ポリアミド6を含む漁網から高純度等級ε-カプロラクタムを回収するための方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0027】
経済的に責任のある様式で、ポリアミド6を含む漁網から高純度等級ε-カプロラクタムを回収するための方法を提供することも、本発明の目的である。特に、高純度バージンε-カプロラクタムの生産コストを超えない、ポリアミド6を含む漁網から高純度等級ε-カプロラクタムを回収するのに適した方法を提供することが、本発明の目的である。
【0028】
例えばシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位による新規合成によって得られたバージンε-カプロラクタムを使用する方法によって生産されたε-カプロラクタムより有意に低いカーボンフットプリントを特徴とする高純度等級ε-カプロラクタムを、ポリアミド6を含む漁網から提供することが本発明のさらなる目的である。
【0029】
したがって、本発明は、ポリアミド6を含む廃漁網の環境負荷を低減する方法を提供することも目的とする。
ポリアミド6を含む漁網由来の材料から高純度等級ε-カプロラクタムを生産するためのプラントを提供することも本発明の目的である。
1つまたは複数のさらなる目的は、説明の残りの部分から明らかになり得る。
【0030】
上述の目的のすべて、いくつか、または少なくとも1つは、請求項1に記載の方法、請求項13に記載のプラントおよび請求項15に記載の生成物によって解決される。
【0031】
本発明は、プラントにおいて、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から精製されたε-カプロラクタムを回収するための方法であって、前記プラントは、
-解重合セクション[B]、
-回収セクション[C]、および
-精製セクション[D]
を備え、
前記方法は、
a)ポリアミド6を含む漁網由来の材料を前記解重合セクション[B]に投入する工程と;
b)ε-カプロラクタムを含む流れが得られるように、180℃~400℃の範囲の温度で、前記解重合セクション[B]において、ポリアミド6を含む漁網由来の前記材料を解重合する工程と;
c)前記解重合セクション[B]から前記ε-カプロラクタムを含む流れを排出し、前記回収セクション[C]において、前記流れから粗精製ε-カプロラクタムを回収する工程と;
d)前記精製セクション[D]において前記粗精製ε-カプロラクタムを精製して、精製されたε-カプロラクタムを得る工程であって、前記精製は、
(i)前記粗精製ε-カプロラクタムを有機溶媒で抽出する工程であって、有機相が得られ、前記有機相は、前記有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む、工程と;
(ii)前記有機溶媒を少なくとも部分的に水で置き換えることによって前記溶媒を交換する工程であって、水と、ε-カプロラクタムと、ε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物とを含む水相が得られ、溶媒交換工程(ii)は、水による逆抽出に基づく方法および前記有機溶媒が留去され、水が投入される溶媒切り替え蒸留に基づく方法から選択される、工程と;
(iii)前記水相からε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物の蒸留除去によって精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含む、
精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含む、方法を提供する。
【0032】
本発明に従って処理工程および方法条件の特別な順序、すなわち上記の解重合、回収および精製工程の順序を組み合わせることにより、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から、高収率でおよび簡単かつ経済的に合理的な様式で、高等級ε-カプロラクタムを回収することが可能になることは、驚くべきことであった。本発明の方法は、経済的に合理的であり、いくつかの観点から有利である。第1に、本発明の方法は、例えば、全体的な組成および/またはポリアミド6含有量が異なり得る、ポリアミド6を含む漁網材料由来の極めて多様な材料に適している。第2に、本発明の方法は、細い織物繊維の生産のためのポリアミド6の高速融解紡糸を含むあらゆる用途のために、高純度バージンε-カプロラクタムを置き換えることができる高純度等級ε-カプロラクタムを得ることができるように、ε-カプロラクタムを非ε-カプロラクタム化合物から効果的に分離することを可能にする。第3に、本発明の方法は、ε-カプロラクタムを高収率で得ることができるほど効果的である。第4に、本発明の方法は、現在廃棄されている莫大な量の、ポリアミド6を含む漁網を処理するために、ポリアミド6を含む漁網から産業規模でε-カプロラクタムを回収することを可能にする。最後に、本発明の方法は、ε-カプロラクタムのデノボ合成によって、例えばシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって生産されるε-カプロラクタムと比較して、有意に低いカーボンフットプリントを有するε-カプロラクタムを生産することを可能にする。本発明の方法は、ポリアミド6を含む漁網由来の材料を効率的に処理すること、および前記製品の環境負荷を低減することを可能にする。特に、本発明の方法は、精製されたε-カプロラクタム1kg当たり2kg未満のCO2相当量のカーボンフットプリントを有する精製されたε-カプロラクタムの生産を可能にし、これはシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位から得られた「バージン」ε-カプロラクタムの生産に伴うε-カプロラクタム1kg当たり6.5~7.5kg CO2当量(ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータに基づく;場所:ヨーロッパ)と比較して大幅な改善である。本明細書に記載されている製品カーボンフットプリントの値は、別段の記載がなければ、ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータおよび場所としてヨーロッパに基づいている。
【0033】
本発明の方法の次に、本発明は、プラントにおいて、ポリアミド6を含む漁網から精製されたε-カプロラクタムを生産するためのプラントであって、前記プラントは、
解重合セクション[B]と、
回収セクション[C]と、
精製セクション[D]と
を備え、
前記プラントは、本発明の方法を実施するように構成されている、プラントも提供する。
【0034】
本発明は、本発明の方法に従って、ポリアミド6を含む漁網から生産されたポリアミド6の解重合を介して得られた精製されたε-カプロラクタムであって、前記ε-カプロラクタムは精製されたε-カプロラクタム1kg当たり2kg未満のCO2相当量の製品カーボンフットプリントを有する(ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータに基づく;場所:ヨーロッパ)、精製されたε-カプロラクタムも提供する。
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に示されており、以下でより詳細に説明される。
【発明の詳細な説明】
【0035】
ポリアミド6を含む漁網
本発明の方法は、ポリアミド6を含む漁網またはそれ由来の材料を出発材料として使用する。ポリアミド6を含む漁網は、典型的には固体材料であり、特に、ポリアミド6を含む漁網は、通常、比較的細い、ポリアミド6を含む糸を結び合わせることによって形成された網目状構造物である。本明細書で使用されるポリアミド6を含む漁網由来の材料は、例えば粉砕、洗浄、選別、圧縮、ペレット化などの後に、ポリアミド6を含む漁網由来の材料を意味する。本明細書で使用されるポリアミド6を含む漁網由来の材料は、例えば粉砕、洗浄、選別、圧縮、ペレット化などによって前処理されていない、ポリアミド6を含む漁網も含む。本開示は、「(1つまたは複数の)漁網材料」も指すために「漁網」という用語を使用する、すなわち、これらの用語は本明細書で同義的に使用され、「ポリアミド6を含む漁網由来の材料」という用語によって置き換えることもできる。本開示および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、特に「1つまたは複数の(one or more)」という意味での複数形を含む。
【0036】
ポリアミド6を含む漁網およびポリアミド6を含む漁網由来の材料は、それらの重合中に、糸の形成中に、またはその後に様々な特性変動を達成するために添加される多種多様な化合物を含有することができる。これらの化合物としては、例えば、光沢剤、硬化剤、帯電防止潤滑剤、着色剤、光沢剤、スピン仕上げ剤、表面平滑化剤、酸化防止剤、UV安定剤などが挙げられる。漁網およびポリアミド6を含む漁網由来の材料の組成は、それらの正確な用途にも依存する。したがって、養魚用の網、巾着網および底引き網漁用の網は、異なる化学組成を有する。
【0037】
海水中に浸された表面は急速に海洋生物で覆われ、海洋生物付着または生物付着と呼ばれる。生物付着群集は、いくつかのプロセスから生じる複雑な現象であり、その速度および程度は、表面に密接する多数の物理的、化学的および生物学的要因によって影響を受け、湿った表面のほとんどに影響を与え、多大な金銭的コストをもたらす。藻類およびフジツボの蓄積は、船の摩擦抵抗を増加させ、保護および水産養殖に使用される機器を破壊する。
【0038】
今日では、付着性海洋生物の増殖を防止するために、防汚塗料が有毒な銅または他の殺生物剤とともに配合されている。銅は、有効な、依然として広く使用されている殺生物剤である。しかしながら、その有効性は比較的短く、多くの場合数ヶ月に過ぎないので、清掃および塗料の再塗布が頻繁に必要とされる。経済的問題に加えて、銅または他の殺生物剤の浸出は、海水の汚染および標的でない生物に対する問題を引き起こす。
【0039】
本発明の方法は、例えば、カーペットのようなかなり純粋なポリアミド6含有材料、およびPA6を含む紡糸廃棄物に限定された従来技術の方法とは異なり、本発明の方法はそのように限定されず、特に、ポリアミド6を含む漁網および任意の種類の、ポリアミド6を含む漁網由来の材料にも極めて首尾よく適用することができるという利点を有する。
【0040】
可能な前処理工程
本発明の方法の工程a)に供される前に、ポリアミド6を含む漁網由来の材料は、好ましくは前処理セクション[A]において前処理、特に機械的サイズ縮小セクション[β]においてサイズ縮小および/または清掃セクション[α]において清掃を受ける。これは、解重合セクション[B]に投入されるポリアミド6を含む漁網由来の材料が非ポリアミド6材料でより汚染されにくく、本発明の化学プラントにおいて生産されるε-カプロラクタムの収率および純度を改善するという利点を有する。別の利点は、サイズが縮小されたポリアミド6を含む漁網はより容易に取り扱われ得ることである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「清掃」という用語は、ポリアミド6を含む漁網に付着した、またはポリアミド6を含む漁網と混合された非ナイロン6材料を除去する任意のプロセスとして定義される。除去された一切の非ナイロン6材料が、その結果、本発明の方法の次の工程を乱すことがないので、清掃は有利である。
【0042】
(廃棄された)ポリアミド6を含む漁網は、岩石、金属材料(例えば、針金、鎖、錨)、有機材料(例えば、死んだ魚およびイガイ)および他の(海洋)ごみ(例えば、ロープ、(発泡スチロール)浮遊物およびシンクライン(sink lines))のようなあらゆる種類の他の材料と混合され得る。さらに、(廃棄された)ポリアミド6を含む漁網は、ポリアミド6,6、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)で作られた非ポリアミド6漁網と混合され得る。(廃棄された)ポリアミド6を含む漁網はまた、例えば、銅などの金属をベースとする防汚コーティングで、または金属を含有しない防汚コーティングでコーティングされ得る。
【0043】
(廃棄された)ポリアミド6を含む漁網の寸法は、正確な用途に極めて大きく依存する。(廃棄された)ポリアミド6を含む漁網は、数平方メートルから20万平方メートルを超える範囲である。そのような巨大な網は、例えば、巾着網および上縁部に取り付けられた浮き具と、下縁部に取り付けられた錘と、その中をパーシングケーブルが通る一連の輪とを有する、水中に垂直に設置される網であり、1.5kmもの長さ、および150mを超える深さであり得る。
【0044】
好ましくは、ポリアミド6を含む漁網は、工程a)で解重合セクション[B]において解重合されるより前に、細片に破砕される。この機械的前処理、すなわちポリアミド6を含む漁網の機械的粉砕または破砕は、例えば切断、細断、ミリング、グラインディングおよび/またはチッピングによって達成することができる。好ましい実施形態では、ポリアミド6を含む漁網は、0.005グラム~100kg、好ましくは0.01グラム~10kg、最も好ましくは0.02グラム~1kgの範囲の重量を有する細片の形態で工程a)に投入される。上述の重量を有するポリアミド6を含む漁網由来の材料の細片を使用することは、溶媒で洗浄することによって片をより容易に取り扱いおよび/または清掃することができるという利点を有する。
【0045】
場合によって、ポリアミド6を含む漁網の機械的粉砕または破砕の前に、機械的粉砕または破砕のために使用される装置の著しい摩耗を引き起こす大きな金属断片、岩石およびその他の妨害材料は除去される。好ましくは、漁網などの、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリアミド6,6を含む材料などの、非ポリアミド6を含む材料は、さらに後述されているように、ポリアミド6を含む漁網の機械的粉砕または破砕の前にまたは後に除去される。異物の除去は、機械的にまたは手作業で行われ得る。これらの妨害材料の除去は、機械的粉砕または破砕のために使用される装置のメンテナンスコストを大幅に削減することができるという利点を有する。さらに、機械的粉砕または破砕後に得られる材料のポリアミド6含有量は、妨害材料を除去しない場合より高い。特に、ポリアミド6,6はポリアミド6の解重合を妨害し、反応器自体を閉塞させ、ε-カプロラクタムの回収収率を低下させ、回収されたε-カプロラクタムのその後の精製を妨害するので、ポリアミド6,6の除去は有利である。
【0046】
好ましくは、Cu系防汚コーティングを有する(ポリアミド6を含む)漁網もまた、ポリアミド6を含む漁網の機械的粉砕または破砕の前に除去される。より好ましくは、Cu系防汚コーティングを有する漁網は、Cu系防汚コーティングが除去されるように追加の別個の洗浄工程において洗浄される。次いで、この洗浄された網材料は、同様の組成を有する材料に添加され得る。
【0047】
場合によって、機械的に粉砕または破砕されたポリアミド6を含む漁網から異物が分離される。この目的のために、密度分離および磁気分離を含むがこれらに限定されない様々な分離プロセスを適用することができる。密度分離では、異なる密度の材料が中間密度の液体中に配置され、密度がより低い材料が浮遊し、密度がより高い沈降する材料から分離する。実際には、密度分離は、多くの場合、一連の密度分離段階によって行われる。例えば、1つの段階では、岩石、砂および金属(鉄および鉛を含む)のような高密度材料が分離され、別の段階では、ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリエチレンのような低密度材料が分離される。磁気分離は、磁石を使用して磁性材料を引き付けることによって混合物の成分を分離するプロセスである。磁気分離のために典型的に使用されるプロセスは、非磁性材料を磁性材料から分離する。粉砕または破砕されたポリアミド6を含む漁網中の異物は、ポリアミド6の解重合を妨害し、ε-カプロラクタムの回収収率を低下させ、回収されたε-カプロラクタムのその後の精製を妨害し得るので、粉砕または破砕されたポリアミド6を含む漁網中の異物の除去は有利である。
【0048】
場合によって、ポリアミド6を含む漁網は、解重合セクション[B]に投入される前に、溶媒、好ましくは水で洗浄することによって清掃される。好ましくは、改善された洗浄効率のために、溶媒に対して0~20重量%の濃度の範囲の洗浄剤を溶媒に添加する。NaOHが好ましい洗浄剤である。好ましくは、0~10重量%のNaOH、さらにより好ましくは0~5重量%のNaOHを含有する水溶液が洗浄工程において使用される。好ましくは、Cu系防汚コーティングは、1~5重量%のNaOH、好ましくは1.5~3重量%のNaOH、より好ましくは約2重量%のNaOHを含有する水溶液で洗浄することによって除去される。NaOHの増強された洗浄効果は、バイオポリマーおよび非バイオポリマーを含む分子の増強された加水分解によってほぼ確実に引き起こされる。さらに、NaOHは、ポリエチレン-酢酸ビニル(PEVA、別名EVA)のような、Cu系防汚コーティング中で使用されるコポリマーを加水分解することが知られている。好ましくは、洗浄溶媒は、洗浄プロセスをさらに増強させるために加熱される。別の好ましい実施形態において、洗浄プロセスは、ポリアミド6を含む漁網に付着している洗浄剤の残留物および存在する汚れを除去するために、洗浄剤を含まない(清浄な)洗浄溶媒を用いた最終すすぎ工程を含む。
【0049】
洗浄は、好ましくは、摩擦下で行われる。高速摩擦洗浄機など、様々な種類の産業用洗浄システムが市場で入手可能である。
あらゆる(付着)汚れが除去され、その結果、本発明の方法の次の工程を妨害しないので、ポリアミド6を含む漁網、特に機械的に粉砕または破砕されたポリアミド6を含む漁網の洗浄は有利である。
【0050】
場合によって、ポリアミド6を含む漁網は、清掃工程の後、および解重合セクション[B]に投入される前に乾燥される。これは、清掃されたポリアミド6を含む漁網の重量が低下し、次のプロセス工程が洗浄溶媒による希釈または汚染の影響を受けないという利点を有する。
【0051】
場合によって、好ましくは洗浄され、サイズが縮小したポリアミド6を含む漁網は、溶融炉(例えば、押出機)に投入される。溶融炉では、ポリアミド6を含む漁網は溶融される。好ましくは、得られたポリマー溶融物は濾過される。これは、固体不純物が除去されるという利点を有する。溶融され、場合によって濾過されたポリマー溶融物は、次いで、冷却され、ペレット製造機に供給される。ペレット製造機は、生成物をペレットに切断する。好ましくは、ペレットまたは溶融され、場合によって濾過されたポリマー溶融物は、解重合セクション[B]に直接投入される。
【0052】
ペレット(しばしば、顆粒とも呼ばれる)の寸法および形状は、広い制限内で選択することができる。一般に、ペレットは、(細片に細断される細いストランドに由来する)円筒形状である。しかしながら、(不完全な)球体のような他の形状も可能である。ペレットの寸法は、広い限界内で選択され得る。通常、ペレットは、1~10mm、好ましくは2~7mm、より好ましくは3~5mmの範囲の直径を有する。好ましい実施形態では、ペレットは、1~50mm、好ましくは2~25mm、より好ましくは3~15mmの範囲の長さを有する。
【0053】
好ましくは洗浄され、サイズが縮小されたポリアミド6を含む漁網のペレット化は、前処理が異なる場所で行われる場合に中間体の貯蔵および輸送のコストを削減する増加したかさ密度という利点を有する(以下を参照)。密度の増加とは別に、ペレット化は、解重合セクション[B]への(自動化された)供給のために有利である、処理されるべき材料の均一な形状および構造などの他の利点も提供する。
【0054】
ポリアミド6を含む漁網の前処理が行われる部位と解重合セクション[B]が位置する部位は、同一であり得る。しかしながら、好ましくは、前処理工程の1つまたは複数は、異なる場所、例えば、ポリアミド6を含む廃漁網が収集される港の近く、および/または廃漁網の前処理に特化した場所で行われる。次いで、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から精製されたε-カプロラクタムを生産するために、様々な場所で前処理されたポリアミド6を含む漁網を本発明の(化学)プラントの解重合セクション[B]に投入することができる。
【0055】
投入工程a)
本発明の工程a)では、場合によってサイズが縮小され、および/または洗浄されたポリアミド6を含む漁網由来の材料が、解重合セクション[B]に投入される。解重合セクション[B]は、順番におよび/または並行して操作される1つまたは複数の解重合反応器を備える。
【0056】
一実施形態において、ポリアミド6を含む漁網は、解重合セクション[B]に投入される前に、より小さい体積に機械的に圧縮される。これは、中間貯蔵および輸送のためにより小さな体積が必要とされ、解重合セクション[B]への投入を容易にすることもできるという利点を有する。
【0057】
別の実施形態では、ポリアミド6を含む漁網は、解重合セクション[B]に投入される前に、例えば、機械的圧縮によって、または溶融した材料の押出しとその後の冷却およびサイズへの切断によって、増加した密度を有する粒子に圧縮される。同じく、これは、中間貯蔵および輸送のためにより小さな体積が必要とされ、解重合セクション[B]への投入を容易にすることができるという利点を有する。
【0058】
さらに好ましい実施形態では、ポリアミド6を含む漁網は、解重合セクション[B]に投入される前に、特に、ポリアミド6を含む漁網を清掃工程に供した後に乾燥される。これは、より少ない溶媒が解重合セクション[B]に導入されるか、または溶媒が全く導入されないという利点を有する。解重合セクション[B]に導入された溶媒は、解重合プロセスに悪影響を及ぼすことが予想される(例えば、低下した解重合反応速度、触媒の消費量の増加、エネルギー消費の増加、ならびに解重合セクション[B]において得られるε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流はより多くの不純物を含有することが予想される。)。
【0059】
ポリアミド6を含む漁網由来の材料は、好ましくは固相としてまたは溶融物として(1つまたは複数の)解重合反応器に供給される。好ましくは、ポリアミド6を含む漁網由来の材料は、溶融物として投入される。溶融物としての供給は、押出機、歯車ポンプ、または当業者に公知の他の手段を使用することによって達成され得る。
【0060】
ポリアミド6を含む漁網由来の材料の(1つまたは複数の)解重合反応器への供給は、ポリアミド6を含む漁網由来の材料の連続的または断続的な投入によって実現され得る。
【0061】
解重合工程b)
解重合セクション[B]では、ポリアミド6を含む漁網由来の材料は、ε-カプロラクタムを形成するために解重合される。形成されたε-カプロラクタムは、ε-カプロラクタムを含む流れとして解重合セクション[B]から排出される。
【0062】
ポリアミド6を含む漁網由来の材料の解重合は、解重合セクション[B]において、ポリアミド6を含む漁網由来の材料の温度を少なくとも180℃の、但し400℃より高くない温度まで上昇させることによって達成される。解重合反応のための好ましい温度範囲は、200℃~350℃、より好ましくは220℃~340℃、最も好ましくは240℃~325℃である。
【0063】
一般に、ε-カプロラクタム形成の速度は、高温で増加する。400℃を超える温度では、より多様な不純物のセットの形成をもたらすポリアミド6の副反応および不純物の反応がより頻繁に起こるので、400℃未満の温度が好ましい。これらの不純物の一部は、(1つまたは複数の)解重合反応器から排出されるε-カプロラクタムを含む生成物流になる。本発明の好ましい実施形態では、ポリアミド6を含む漁網の解重合は、220℃~340℃または240℃~325℃の範囲の温度で行われる。実験は、この温度範囲が特に純粋なε-カプロラクタムの生産を可能にすることを示している。
【0064】
解重合セクション[B]内の圧力は変動し得、1kPa~100MPa、好ましくは10kPa~5MPa、より好ましくは25kPa~2MPa、最も好ましくは50kPa~1MPaの範囲であり得る。実験は、この圧力範囲が特に純粋なε-カプロラクタムの生産を可能にすることを示している。
【0065】
ポリアミド6を含む漁網由来の材料の解重合は、溶媒の存在下または非存在下で達成され得る。好ましくは、ポリアミド6を含む漁網由来の材料の解重合は、溶媒としての水の存在下で達成される。この場合には、水は、好ましくは蒸気、特に過熱された水蒸気の形態である。
好ましくは、解重合は、0.1時間~24時間、より好ましくは0.5時間~6時間で完了する。
【0066】
水を水蒸気として解重合反応器に供給することにより、場合によってさらなる加熱なしに、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流を得ることができる。この水蒸気流中のε-カプロラクタム対水の重量対重量比は、解重合セクション[B]においてポリアミド6を含む漁網由来の材料に供給される蒸気の量を修正することによって調整され得る。好ましい実施形態では、工程b)における解重合は水の存在下で行われ、ε-カプロラクタムを含む流れは、1:1~1:50、好ましくは1:2~1:15、より好ましくは1:2~1:10、最も好ましくは1:3~1:8の重量対重量比でε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流である。
【0067】
好ましくは、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流中のε-カプロラクタムは、5kPa~1MPa、より好ましくは10kPa~0.5MPa、最も好ましくは15kPa~0.1MPaの分圧を有する。
【0068】
解重合反応中に、ε-カプロラクタムの直鎖状オリゴマーおよびε-カプロラクタムの環状オリゴマーを含む分解生成物が形成され得る。さらに、ポリアミド6を含む漁網由来の材料の供給流は、他の成分、すなわち非ポリアミド6化合物などの不純物、および解重合条件下で安定した状態を保つ、反応する、または分解する前処理において適用された(1つまたは複数の)溶媒の残留物も含有し得る。したがって、水が溶媒として使用される場合には、解重合セクション[B]から除去される蒸気流は、水およびε-カプロラクタムのみならず、不純物も含む。
【0069】
好ましくは、100℃~600℃の温度を有する過熱された水蒸気が(1つまたは複数の)解重合反応器に投入される。好ましくは、(1つまたは複数の)解重合反応器に投入される過熱された水蒸気は、少なくともポリアミド6の溶融温度の温度を有する。好ましくは、(1つまたは複数の)解重合反応器に投入される過熱された水蒸気のエネルギー含有量は、解重合反応を実施し、形成されたε-カプロラクタムを蒸発させるために他の熱入力が必要とされないように十分に高い。別の好ましい実施形態において、解重合セクション[B]には、220℃~575℃の範囲の温度を有する過熱された水蒸気が投入される。さらにより好ましい実施形態では、解重合セクション[B]には、275℃~500℃の範囲の温度を有する過熱された水蒸気が投入される。
【0070】
一般に、解重合セクション[B]から除去される蒸気流の質量は、解重合セクションへの総供給物の質量より小さい。解重合セクション[B]への総供給物は、ポリアミド6を含む漁網由来の材料ならびに場合によって溶媒、触媒、追加の因子および/または解重合剤を含む。したがって、追加の措置がなければ、解重合セクション[B]に材料の蓄積(しばしば、「残留材料」と呼ばれる)が存在するであろう。好ましくは、別の流れが解重合セクション[B]から排出される。これは、解重合セクション[B]における材料の蓄積が低減または回避されるという利点を有する。追加の流れは、ポリアミド6を含む漁網由来の材料中に存在する不純物、解重合されなかったポリアミド、蒸発しなかったε-カプロラクタム、(1つまたは複数の)触媒、ならびにリン酸が解重合触媒として使用される場合におけるリン酸モノ、ジおよび/またはトリアンモニウムのような、解重合条件下で形成された化合物を含むことができる。好ましい実施形態において、リン酸モノ-、ジ-および/またはトリアンモニウムを含む流れは、解重合セクション[B]から排出される。さらにより好ましくは、解重合セクション[B]から断続的にまたは連続的に排出されるこの流れは、0.01~50重量%、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは0.5~10重量%、最も好ましくは0.5~5重量%の重量分率でリン酸モノ-、ジ-および/またはトリアンモニウムを含む。
【0071】
水蒸気の存在下でのポリアミド6を含む漁網由来の材料の解重合は、アンモニアなどの追加の解重合剤の存在下で実施され得る。解重合セクション[B]におけるアンモニアの濃度は変化し得る。したがって、アンモニアが解重合セクション[B]に存在する場合には、解重合セクション[B]から除去される蒸気流は、ε-カプロラクタムおよび不純物を含むのみならず、アンモニアも含み得る。
【0072】
最も好ましくは、解重合は触媒の存在下で行われる。好ましくは、使用される触媒は、(ルイスまたはブレンステッド)酸または塩基である。酸触媒は、特に、オルトリン酸、p-トルエンスルホン酸、ホウ酸、硫酸、有機酸、キシレンスルホン酸を含む有機スルホン酸、4-スルホイソフタル酸および他のスルホン化芳香族炭化水素、固体酸、上述の酸の塩、Al2O3およびSiO2、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。塩基触媒は、例えば、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物およびアルカリ、例えば土類塩、有機塩基および固体塩基、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、オルトリン酸、ホウ酸、有機酸、アルカリ水酸化物およびアルカリ塩が触媒として使用される。より好ましくは、オルトリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが触媒として使用される。さらに好ましくは、オルトリン酸、p-トルエンスルホン酸、ホウ酸および水酸化ナトリウムが触媒として使用される。特に好ましい一実施形態では、オルトリン酸が解重合のための触媒として使用され、別の実施形態では、p-トルエンスルホン酸が使用される。
【0073】
しかしながら、別の好ましい実施形態では、ポリアミド6を含む漁網由来の材料の解重合のために触媒は使用されない。これは、(触媒および触媒廃棄物の処分の両方のための)コストがより低いという利点を有する。しかしながら、通常、より高い温度(および圧力)が必要とされる。
【0074】
触媒(特にオルトリン酸)を使用する利点は、解重合反応が既により低い温度で開始し、大気条件下で行われ得ることである。ポリアミド6由来の材料のε-カプロラクタムへの解重合のために使用される触媒の適切な濃度は当業者に公知であり、日常的な実験によって容易に決定され得る。使用する触媒の濃度が低すぎると、反応速度が遅くなる。逆に、使用される触媒の濃度が高すぎると、反応は速いが、(1つまたは複数の)副反応も増加する。さらに、触媒コストが増大し、経済的に不利である。好ましくは、触媒含有量は、解重合反応器中に含有されるポリアミド6に対して0.01~100重量%である。さらにより好ましくは、触媒含有量は0.1~50重量%である。最適な触媒濃度は、ポリアミド6の解重合のために適用される触媒の種類に依存する。触媒オルトリン酸の場合、好ましい含有量は0.1~25%、より好ましくは1~20重量%である。触媒p-トルエンスルホン酸の好ましい含有量は10~35重量%であり、より好ましい含有量は15~30重量%である。
【0075】
ポリアミド6の解重合は、バッチモード、半連続モードまたは連続モードで行うことができ、これらはすべて当業者に公知である。本明細書で使用される「バッチモード」、「半連続モード」および「連続モード」という用語は、ポリアミド6を含有する原料、すなわちポリアミド6を含む漁網由来の材料および場合によって触媒が解重合反応器に投入されるモード、ならびに残留材料が解重合反応器から排出されるモードを指す。
【0076】
好ましい実施形態では、ポリアミド6の解重合はバッチモードで行われる。バッチモードでは、原料、すなわちポリアミド6を含む漁網由来の材料および場合によって触媒が、最初に解重合反応器に投入される。続いて、過熱された水蒸気が解重合反応器に投入され、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流として、ε-カプロラクタムが解重合反応器から排出される。次に、過熱された水蒸気の解重合反応器への投入を中断する。場合によって解重合反応器から残留材料を除去した後、原料(および場合によって触媒)を解重合反応器に投入することによって新しいサイクルを開始する。好ましい実施形態では、残留材料は、すべてのサイクルの間に除去されない。
【0077】
特定の有利な実施形態では、ポリアミド6の解重合は連続モードで行われる。連続モードでは、ポリアミド6を含有する原料由来の材料(および場合によって触媒)は、解重合反応器に連続的に投入される。同時に、過熱された水蒸気が解重合反応器に連続的に投入され、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流として、ε-カプロラクタムが解重合反応器から連続的に排出される。場合によって、触媒が、解重合反応器に連続的または断続的に投入される。さらに、残留材料は、解重合反応器から連続的に排出される。好ましくは、ポリアミド6を含む漁網由来の材料は、溶融物として投入される。好ましくは、触媒は、溶融物、スラリーまたは溶液として投入される。
【0078】
別の好ましい実施形態では、ポリアミド6の解重合は半連続モードで行われる。半連続モードでは、ポリアミド6を含有する原料由来の材料(および場合によって触媒)は解重合反応器に断続的に投入されるのに対して、過熱された水蒸気は解重合反応器に連続的に投入され、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流として、ε-カプロラクタムが解重合反応器から連続的に排出される。残留材料は、ポリアミド6解重合の半連続モードでは、解重合反応器から断続的に排出される。
【0079】
回収工程c)
回収セクション[C]において、ε-カプロラクタムは、解重合セクション[B]から排出されるε-カプロラクタムを含む流れから回収される。この流れは、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む。好ましくは、この回収は、ε-カプロラクタムを含む流れの(部分的な)凝縮によって行われる。
【0080】
好ましくは、溶媒が解重合セクション[B]に投入されない場合には、凝縮によって得られたε-カプロラクタムは水に溶解され、ε-カプロラクタムに富む相が得られる。このε-カプロラクタムに富む相も不純物を含む。
【0081】
好ましくは、水が溶媒として解重合セクション[B]に投入される場合には、解重合セクション[B]から排出されるε-カプロラクタムを含む流れは、ε-カプロラクタム、水および不純物を含む。蒸気流を解重合反応器、好ましくは塔頂から(好ましくは部分的)凝縮器に送ってε-カプロラクタムを含有する凝縮物を得ることによって、ε-カプロラクタムは、蒸気流の残りの成分から分離され得る。好ましくは、ε-カプロラクタムは、生成物流を解重合反応器、好ましくは塔頂から蒸留塔に送ることによって蒸気流の残りの成分から分離され、水に富む相は蒸留塔から塔頂生成物として得られ、ε-カプロラクタムに富む相は塔底生成物として得られる。
【0082】
回収セクション[C]で回収されたε-カプロラクタムは、ポリアミド6分解生成物またはポリアミド6を含む漁網由来の材料の非ポリアミド6成分に由来するその他の不純物などの不純物を含有するので、粗精製である。工程c)において回収される粗精製ε-カプロラクタムは、水およびε-カプロラクタムを含み、好ましくはε-カプロラクタムを含む水溶液である。したがって、回収セクション[C]において回収された粗精製ε-カプロラクタムは、高純度ε-カプロラクタムを得るためにさらなる精製を必要とする。したがって、本明細書で使用される「粗精製」は、本発明の方法の生成物として得られる精製されたε-カプロラクタムより低い純度であること、すなわちより少ない不純物を含有することと定義することができる。
【0083】
好ましくは、粗精製ε-カプロラクタムは、6~95重量%、より好ましくは20~90重量%、最も好ましくは35~80重量%の範囲のε-カプロラクタムを含む。残りは主に水である。
【0084】
精製工程d)
工程d)では、回収セクション[C]において得られた粗精製ε-カプロラクタムを精製セクション[D]において精製して、高純度ε-カプロラクタムを得る。
【0085】
場合によって、粗精製ε-カプロラクタムは、精製セクション[D]に投入される前に濾過される。濾過は、除去しなければさらなる精製プロセスを妨げることがあり得る非溶解不純物を確実に除去する。
【0086】
場合によって、精製セクション[D]に投入される前に、油が粗精製ε-カプロラクタムから分離される。油分離は、分離しなければさらなる精製プロセスを妨げることがあり得る不純物を確実に除去する。
【0087】
精製されたε-カプロラクタムは、まず工程(i)において粗精製ε-カプロラクタムを有機溶媒で抽出し、それにより、水相と有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相とを得ることによって、粗精製ε-カプロラクタムから得られる。粗精製ε-カプロラクタムを抽出する有機溶媒は、好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素および/またはC4~C10脂肪族もしくは脂環式アルコールである。場合によって、粗精製ε-カプロラクタムを抽出する有機溶媒は、好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素および/またはC4~C10脂肪族もしくは脂環式アルコール、およびC5~C8アルカンまたはC5~C8シクロアルカンからなる混合抽出剤である。粗精製ε-カプロラクタムを抽出するための有機溶媒が、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、4メチル-2-ペンタノール(別名、MIBC、メチルイソブチルカルビノール)、1-オクタノール、2-エチルヘキサノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されれば、特に良好な精製結果が達成される。より好ましくは、粗精製ε-カプロラクタムの抽出のための有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、粗精製ε-カプロラクタムの抽出のための有機溶媒は、トルエン、1-オクタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルヘキサノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、有機溶媒とε-カプロラクタムの重量比は、0.01:1~40:1、好ましくは0.05:1~10:1、より好ましくは0.1:1~5:1である。
【0088】
場合によって、粗精製ε-カプロラクタムの抽出のための有機溶媒は、混合された抽出剤が形成されるように、アルカン、CmH2m+2(式中、mは5~8である)、シクロアルカンまたはCmH2m(式中、mは5~8である)と混合される。アルカンまたはシクロアルカンが混合された抽出剤の総重量の5~90重量%、好ましくは25~75重量%の範囲で混合された抽出剤中に存在すれば、特に良好な結果が達成される。
【0089】
有機溶媒が粗精製ε-カプロラクタムより低い密度を有する別の実施形態では、工程d)(i)における有機溶媒による抽出は向流駆動式抽出塔において行われ、精製されるべき粗精製ε-カプロラクタムは塔の上部に導入され、有機溶媒は塔の下部に導入される。抽出は、水および不純物を含む水相と、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相とをもたらす。抽出は、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相をもたらし、不純物対ε-カプロラクタムの重量比は、粗精製ε-カプロラクタムにおける不純物対ε-カプロラクタムの重量比と比較して低下している。したがって、この抽出の結果として、ε-カプロラクタムは抽出前より純粋である。
【0090】
有機溶媒が粗精製ε-カプロラクタムより高い密度を有する本発明の別の実施形態では、工程d)(i)における有機溶媒による抽出は向流駆動式抽出塔において行われ、精製されるべき粗精製ε-カプロラクタムは塔の下部に導入され、有機溶媒は塔の上部に導入される。抽出は、水および不純物を含む水相と、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相とをもたらす。抽出は、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相をもたらし、不純物対ε-カプロラクタムの重量比は、粗精製ε-カプロラクタムにおける不純物対ε-カプロラクタムの重量比と比較して低下している。したがって、この抽出の結果として、ε-カプロラクタムは抽出前より純粋である。
【0091】
場合によって、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相は、工程d)(ii)に入る前に水またはアルカリ水溶液で洗浄される。洗浄がアルカリ水溶液で行われる場合、アルカリ溶液は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属炭酸塩、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む水溶液である。前記アルカリ金属水酸化物溶液は、好ましくは、0.5~2.0重量%の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む。
【0092】
当業者は、日常的な実験により、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相の効率的な洗浄のために必要な水またはアルカリ水溶液の量を決定することができる。好ましくは、この量は、洗浄されるべき有機相中に溶解したε-カプロラクタムを除く有機溶媒の量に対して0.1~5重量%である。別の好ましい実施形態では、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相の水またはアルカリ水溶液による洗浄は、向流駆動式洗浄塔において行われ、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相は塔の下部に導入され、水またはアルカリ水溶液は塔の上部に導入される。洗浄は、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む洗浄された有機相と、水性残留物含有相とをもたらす。通常、水性残留物含有相は、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む。洗浄の結果として、洗浄された有機相の不純物含有量は、洗浄前の有機相の不純物含有量と比較して低下する。
【0093】
続いて、本発明の方法の工程d)(ii)に従って、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含み、場合によって水またはアルカリ水溶液で洗浄された得られた有機相は溶媒交換され、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相中の有機溶媒は水によって置き換えられ、それによって水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相が得られ、溶媒交換プロセスは、水による逆抽出(別名、再抽出)に基づくプロセスおよび溶媒切り替え蒸留に基づくプロセスから選択され、それによって有機溶媒が留去され、水が投入される。
【0094】
本明細書で使用される「置き換えられた」という用語は、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相中に存在する有機溶媒の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90、95または98重量%が水によって置き換えられていることを意味する。
【0095】
溶媒交換は、水による逆抽出に基づくプロセスであり得、それにより、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相が得られる。好ましくは、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含むこの水相は、残留有機溶媒を除去するためにストリッピングおよび/または蒸留される。ε-カプロラクタムの逆抽出のために使用される水の量は様々であり得るが、使用される水の量は、回収されたε-カプロラクタムに対して、重量で好ましくは0.3~20倍、より好ましくは0.4~10倍、最も好ましくは0.5~6倍である。
好ましくは、水による逆抽出は、向流駆動式抽出塔において行われ得る。
【0096】
有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含み、場合によって洗浄された有機相が水より低い密度を有する別の好ましい実施形態では、有機相は抽出塔の下部に導入され、水は抽出塔の上部に導入される。逆抽出は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相ならびに不純物を含む有機溶媒相をもたらす。逆抽出は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相をもたらし、不純物対ε-カプロラクタムの重量比は、逆抽出前の有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相中の不純物対ε-カプロラクタムの重量比と比較して低下している。したがって、逆抽出のために、より純粋なε-カプロラクタムが得られる。好ましくは、不純物を含む有機溶媒相は、場合によって(好ましくは蒸留による)精製後に、再使用される。
【0097】
有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相が水より高い密度を有する別の好ましい実施形態では、有機相は抽出塔の上部に導入され、水は抽出塔の下部に導入される。逆抽出は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相ならびに不純物を含む有機溶媒相をもたらす。逆抽出は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相をもたらし、不純物対ε-カプロラクタムの重量比は、逆抽出前の有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相中の不純物対ε-カプロラクタムの重量比と比較して低下している。したがって、逆抽出のために、ε-カプロラクタムは逆抽出前より純粋である。好ましくは、不純物を含む有機溶媒相は、場合によって(好ましくは蒸留による)精製後に、再使用される。
【0098】
したがって、本発明の特定の有利な実施形態によれば、工程d)(i)における粗精製ε-カプロラクタムの抽出後に、工程d)における精製は、(ii)水による逆抽出に基づく溶媒交換の工程も含む。
【0099】
溶媒交換プロセスは、溶媒切り替え蒸留に基づくプロセスでもあり得、それによって有機溶媒が留去され、水が投入される。好ましい実施形態では、溶媒交換プロセスは、単一段階プロセスとして行われる溶媒切り替え蒸留に基づくプロセスであり、それによって有機溶媒が有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相から留去され、水が投入される。より好ましくは、溶媒交換は、水の添加を伴う共沸蒸留として行われ、この場合、有機溶媒は、有機溶媒および水を含む共沸混合物として蒸発される。共沸蒸留の目的は、有機溶媒を除去し、水を加えることである。好ましくは、実質的にすべての有機溶媒が除去される。この文脈における「実質的にすべての」とは、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相中に存在する有機溶媒の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98または99重量%が除去されることを意味する。好ましくは、水は液体として添加される。より好ましくは、液体状態の水は、還流として蒸留塔の上部に添加される。さらにより好ましくは、還流として添加される水の一部は、蒸留塔において留去される共沸混合物の凝縮によって得られる。
【0100】
任意の適切な容器、例えばカラム、好ましくは連続モードで操作される蒸留塔が、溶媒交換プロセスのために使用され得る。蒸留塔は、トレイ、充填物またはそれらの組み合わせを含み得る。
別の好ましい実施形態では、溶媒切り替え蒸留は2段階プロセスとして実施される。第1の段階は予備濃縮段階であり、第2の段階は実際の溶媒切り替え蒸留である。
【0101】
有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相が、第1の段階に投入される。第1の段階では、有機溶媒の第1の留分が、蒸留塔の上部において、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相から蒸留によって除去される。好ましくは、この蒸留は還流下で行われる。還流下とは、液相中の有機溶媒が蒸留塔の上部に投入されることを意味する。より好ましくは、蒸留塔の上部で蒸留により除去された有機溶媒の一部は、凝縮後、蒸留塔の上部に液体として投入される。有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む残存する有機相は、第1の段階から排出され、第2の段階に投入される。第1の段階での蒸留により、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む残存する有機相の化学組成は、第1の段階に投入される有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相とは異なる。一般に、第1の段階に投入される有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相と比較して、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む残存する有機相は、重量パーセントでより多量のε-カプロラクタムとε-カプロラクタムより高い沸点を有する化合物とを含有し、重量でより少ないパーセントの、ε-カプロラクタムより低い沸点を有する化合物を含有する。
【0102】
第2の段階では、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む残存する有機相から残存する有機溶媒を留去し、水を充填する。より好ましくは、第2の段階では、溶媒交換は、水の添加を伴う共沸蒸留として行われ、この場合には、有機溶媒は、有機溶媒と水を含む共沸混合物として蒸発される。
【0103】
共沸蒸留の目的は、有機溶媒を除去し、水を加えることである。好ましくは、実質的にすべての有機溶媒が除去される。この文脈における「実質的にすべての」とは、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む残存する有機相中に存在する有機溶媒の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%または99重量%が除去されることを意味する。好ましくは、水は液体として添加される。より好ましくは、液体状態の水は、還流として蒸留塔の上部に添加される。さらにより好ましくは、還流として添加される水の一部は、蒸留塔において留去される共沸混合物の凝縮によって得られる。
【0104】
任意の適切な容器、例えば塔、好ましくは連続モードで操作される蒸留塔が、溶媒交換のために各段階において使用され得る。蒸留塔は、トレイ、充填物またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0105】
溶媒切り替え蒸留(1段階プロセスまたは2段階プロセスのいずれかとして実施される)は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含み、場合によって残留有機溶媒を含む水相をもたらす。好ましくは、この水相のε-カプロラクタム含有量は、水相全体に対して25~99.9重量%、より好ましくは50~99.5重量%、最も好ましくは85~99重量%である。
【0106】
したがって、本発明の特定の有利な実施形態によれば、工程d)(i)における粗精製ε-カプロラクタムの抽出後に、工程d)における精製は、(ii)溶媒切り替え蒸留に基づく溶媒交換の工程も含む。
【0107】
本発明の方法の工程d)(iii)では、工程d)(ii)における溶媒交換によって得られる、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相は、前記水相からε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を除去するために蒸留される。
【0108】
好ましくは、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相から、まず水を蒸発させる。水の蒸発後、ε-カプロラクタムを蒸留して高純度ε-カプロラクタムを回収する。好ましくは、蒸留は減圧下で行われる。さらにより好ましくは、蒸留は、50kPa未満、より好ましくは20kPa未満、最も好ましくは10kPa未満の圧力で行われる。一般に、温度は90℃~210℃である。好ましくは、温度は100℃~200℃、より好ましくは110℃~180℃である。これらの温度は、蒸留が行われる蒸留塔の塔底における温度を指す。
【0109】
蒸留は、ε-カプロラクタムから(ε-カプロラクタムより低い沸点を有する)低沸点有機不純物の分離および/または(ε-カプロラクタムより高い沸点を有する)有機高沸点不純物をε-カプロラクタムから分離することを含む。蒸留は、好ましくは、第1の工程において、塔頂生成物としてのε-カプロラクタムから低沸点不純物を分離すること、および塔底生成物としての、高沸点不純物を含有するε-カプロラクタムの生産を含む。第2の工程では、高純度ε-カプロラクタムが塔頂生成物として分離され、ε-カプロラクタムおよび高沸点不純物を含む蒸留残留物が塔底生成物として得られる。
【0110】
好ましい実施形態では、工程d)(iii)における蒸留除去の前に、アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHを、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相に添加する。好ましくは、添加されるNaOHの量は、ε-カプロラクタム1kg当たり0.5~100mmol、より好ましくはおよび最も好ましくは2~80mmolの範囲である。実験は、アルカリ金属水酸化物、特にNaOHの添加が、ε-カプロラクタムより低いおよび高い沸点を有する不純物の特定の効果的な蒸留除去を可能にすることを示している。
【0111】
別の好ましい実施形態では、工程d)(iii)における蒸留除去の前に、酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムおよび/または過酸化水素が、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相に添加される。最も好ましくは、過マンガン酸カリウムが酸化剤として使用される。
【0112】
酸化剤は、希薄水溶液が得られるように、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相に固体として、またはスラリーとして、または水溶液の形態で添加され得る。当業者は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相の効率的な酸化のために必要な酸化剤の量を日常的な実験によって決定することができる。酸化剤の正確な量は、とりわけ、本発明の方法において原料として使用されるポリアミド6を含む廃漁網由来の材料の組成に極めて大きく依存する。好ましくは、酸化剤の量は、酸化されるべき水相に溶解したε-カプロラクタムの量に対して0.01~5重量%である。
【0113】
本発明の方法における水溶液の酸化のために使用される温度は変化し得る。好ましくは、工程d)(iii)における蒸留除去の前の、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水溶液の酸化剤による酸化は、20℃~85℃の範囲、より好ましくは30℃~80℃の範囲の温度で行われ、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムおよび過酸化水素ならびにそれらの組み合わせからなる群、特に過マンガン酸カリウムから選択される。
【0114】
酸化剤による酸化のために使用される時間の長さは変化し得る。好ましくは、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水溶液の酸化剤による酸化は、1分~24時間、より好ましくは2分~6時間、最も好ましくは5分~2時間行われる。
【0115】
酸化剤による酸化のために使用される、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相中のε-カプロラクタムの濃度は変化し得る。好ましくは、酸化のために使用される水溶液は、5:1~1:5、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2のε-カプロラクタム対水の重量対重量比を含む。場合によって、酸化剤を水相に添加する前に、ε-カプロラクタム対水の重量対重量比は、適合される。好ましくは、ε-カプロラクタム対水の重量対重量比は、水の添加または水の除去のいずれかによって適合される。
【0116】
過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウムが酸化剤として使用される場合、固体酸化マンガン(IV)(MnO2)粒子が反応生成物として形成される。当業者は、日常的な実験によって、酸化後に水相から固体酸化マンガン(IV)粒子を効率的に除去するための最適な固液濾過手順を決定することができる。濾過手順を改善するために活性炭または珪藻土粒子などの濾過助剤を使用することは、これに関して一般的な慣行である。
【0117】
本発明の方法により得られた高純度ε-カプロラクタムは、当業者に周知の方法を用いてポリアミド6を製造するために使用され得る。次いで、このポリアミド6は、工学材料、繊維およびフィルムを含むすべての公知の材料において使用され得る。ポリアミド6を含む漁網由来の材料から生産されるこのポリアミド6は、スパンデックス(エラスタンとしても知られる)を含有する衣類を含む高速紡糸用途に特に適している。
【0118】
プラント
本発明は、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]を含むプラント、すなわち化学プラントであって、本発明の上述のプロセスを実施するように構成されている、プラント、すなわち化学プラントも提供する。以下でプラントに関連して具体的に記載されているすべてのプラントの特徴は、本発明の方法の特定の実施形態にも対応し、その逆も同様である。したがって、プラントは、本発明の方法を実施するのに適しており、本発明の方法に関連して記載されたことは、プラントの実施形態にも等しく適用されることを理解されたい。
【0119】
プラントは、実施例におけるように実験室設備とすることができる。しかしながら、好ましくは、プラントは工業規模のプラントである。「工業規模」とは、プラントが、常時運転されていれば、少なくとも500トン/年のε-カプロラクタムの生産能力を有する(すなわち、原理上、上記量のε-カプロラクタムを生産することができる)ことを意味する。
【0120】
本発明のプラントは、ポリアミド6を含む漁網からの精製されたε-カプロラクタムの生産に適しており、少なくとも以下の3つのセクション:解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]を含む。これらのセクション、したがってプラントは、上述の本発明の方法を実行するように構成される。
【0121】
さらに、本発明のプラントは前処理セクション[A]を備えることができ、前処理セクション[A]は、ポリアミド6を含む漁網を細片に破砕するための機械的サイズ縮小セクション[β]および/またはポリアミド6を含む漁網を洗浄するための清掃セクション[α]および/またはナイロン6を含む漁網のかさ密度を増加させるための高密度化セクション[γ]を備えることができる。清掃は、洗浄およびポリアミド6を含む漁網からの異物の分離の両方を含む。異物の分離は、手作業(手作業での選別)および機械式(例えば、密度分離および磁気分離)のいずれによっても行うことができる。ブラシのような手動の装置および機械的装置のいずれもが、清掃セクション[α]における洗浄プロセスで役立ち得る。洗浄は、好ましくは、追加の摩擦効果によって行われる。高速摩擦洗浄機など、様々な種類の産業用洗浄システムが市場で入手可能である。機械的サイズ縮小セクション[β]は、ポリアミド6を含む漁網を細片に機械的に破砕するための装置を備える。この破砕装置の非限定的な例は、カッター、シュレッダ、ミル、グラインダおよびチッパーである。高密度化セクション[γ]は、ナイロン6を含む漁網を構成する材料の高密度化のための装置を備える。より高いかさ密度を有する材料を得るための高密度化は、当業者に公知のいくつかの技術によって行うことができる。高密度化装置の周知の例には、電気および油圧式コンパクタ機およびプレス機、ならびに例えば単軸および二軸押出機などの、フィードが最初に溶融され、その後冷却によって凝固される装置が含まれる。
【0122】
解重合セクション[B]は、順番におよび/または並行して操作される1つまたは複数の解重合反応器を備える。ポリアミド6を含む漁網は、固体としてまたは溶融物として、好ましくは溶融物として反応器に供給される。この供給は、押出機、歯車ポンプ、または当技術分野で公知の他の手段によって達成され得る。
【0123】
生産中、解重合反応器は、ポリアミド6含有原料、残留材料、ε-カプロラクタム(および場合によって触媒)で少なくとも部分的に充填される。解重合反応器は、任意の望ましい形態を有することができる。好ましい反応器のタイプは、撹拌および非撹拌気泡塔反応器、撹拌反応器および押出機型反応器である。
【0124】
解重合反応器は、ポリアミド6を含む漁網由来の材料、ならびに場合によって過熱された水蒸気および触媒を供給するための設備を備えなければならない。さらに、解重合反応器は、ε-カプロラクタムを含む流れおよび残留材料を排出するための設備を備えている。
【0125】
水蒸気と反応器内容物の間での良好な接触は、効果的な操作のために不可欠である。このような接触は、当業者に公知の様々な手段によって達成され得る。一例として、多数の入口を使用して、例えば水蒸気分配器を使用して、材料を通して蒸気を散布することができる。例えば、回転するパドルと静止したフィンの組み合わせを使用して、反応器内に機械的撹拌を含めることによって、さらに改善された接触を達成することができる。
好ましくは、解重合は0.5~6時間で完了する。
【0126】
高温の過熱された水蒸気が生産場所において利用できなければ、いわゆる過熱器内でボイラーからの利用可能な蒸気を過熱することによって、高温の加熱された蒸気を意図的に作らなければならない。
【0127】
回収セクション[C]は、ε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流の形態のε-カプロラクタムを含む流れが投入される1つまたは複数の(好ましくは部分的な)凝縮器を備えることができる。このような(部分的な)凝縮器は、任意の望ましい形態を有することができる。好ましくは、凝縮器は、そこから水に富む相が塔頂生成物として得られ、粗精製ε-カプロラクタムが塔底生成物として得られる蒸留塔である。
【0128】
精製セクション[D]は、1つまたは複数の抽出装置、1つまたは複数の溶媒交換装置、酸化セクションおよび1つまたは複数の蒸留装置を備え、これらに粗精製ε-カプロラクタムが投入され、高純度ε-カプロラクタムが排出される。
【0129】
抽出装置に、粗精製ε-カプロラクタムおよび有機溶媒が投入され、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相、ならびに水および不純物を含む水相が排出される。抽出装置は、ミキサ・セトラ抽出器、抽出塔、遠心抽出器およびそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、抽出装置は、KARR(R)カラム、SCHEIBEL(R)カラム、回転円盤接触器(RDC)、パルスカラム、多孔板塔(静的)カラム、不規則充填(静的)カラム、および構造化充填(SMVP)(静的)カラムなどの静的なまたは撹拌された抽出塔である。
【0130】
溶媒交換装置に、水ならびに有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相が投入され、有機溶媒ならびに水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含むε-カプロラクタム-水相が排出される。逆抽出に基づくプロセスのための溶媒交換装置は、ミキサ・セトラ抽出器、抽出塔、遠心抽出器およびそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、逆抽出のための装置は、KARR(R)カラム、SCHEIBEL(R)カラム、回転円盤接触器(RDC)、パルスカラム、多孔板塔(静的)カラム、不規則充填(静的)カラム、および構造化充填(静的)カラムなどの静的なまたは撹拌された抽出塔である。
【0131】
溶媒切り替え蒸留に基づくプロセスのための溶媒交換装置は、多孔板塔蒸留塔、不規則充填蒸留塔および構造化充填蒸留塔から選択される。好ましくは、蒸留塔は、再沸器、凝縮器および還流のための装置を備える。蒸留塔は、大気圧、大気圧より低い圧力または大気圧より高い圧力で操作され得る。好ましくは、水が蒸留塔の上部に充填され、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相が蒸留塔の下部から排出される。
【0132】
酸化セクションは、順番におよび/または並行して操作される1つまたは複数の酸化反応器を備える。酸化剤ならびに水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含むε-カプロラクタム-水相が酸化セクションに投入される。通常、酸化剤は、固体として、またはスラリーとして、または水溶液として投入される。過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウムが酸化剤として適用される場合には、酸化セクションは濾過セクションも備える。酸化反応器は、任意の望ましい形態を有することができる。好ましい反応器のタイプは、撹拌および非撹拌反応器ならびに充填されたカラム型反応器である。酸化反応器は、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相、ならびに酸化剤を供給するための設備を備えなければならない。さらに、酸化反応器は、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相、ならびに場合によって形成された固体酸化マンガン(IV)(MnO2)粒子を排出するための設備を備えなければならない。好ましくは、酸化は、20℃~85℃の範囲の温度および大気条件で行われる。
【0133】
場合によって存在する固体酸化マンガン(IV)(MnO2)粒子は、沈降によってまたは固液濾過によって、好ましくは固液濾過によって除去され得る。濾過手順を改善するために活性炭粒子または珪藻土などの濾過助剤を使用することは、一般的な慣行である。固体酸化マンガン(IV)粒子の分離に適したフィルタシステムは当業者に公知である。このような濾過システムに、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相の懸濁液、ならびに固体酸化マンガン(IV)粒子が投入され、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む濾過された酸化されたε-カプロラクタム-水相が排出される。一般に、固体酸化マンガン(IV)粒子はフィルタシステム内に保持される。好ましくは、このようなフィルタシステムは半連続モードで操作され、懸濁液および濾過された相は連続的に投入され、連続的に排出されるのに対して、分離された固体はフィルタシステムに収集される。時々、懸濁液の投入が中断され、収集された固体がフィルタシステムから除去される。
【0134】
蒸留装置に、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含むε-カプロラクタム-水相が投入され、高純度ε-カプロラクタム、水および不純物(すなわち、(ε-カプロラクタムより低い沸点を有する)低沸点有機不純物および(ε-カプロラクタムより高い沸点を有する)有機高沸点不純物)が排出される。蒸留装置は、多孔板塔蒸留塔、不規則充填蒸留塔、構造化充填蒸留塔、ならびに水平および垂直(落下および上昇)膜式蒸発器から選択される。好ましくは、蒸留塔は、再沸器、凝縮器および還流のための装置を備える。蒸留装置は、大気圧、大気圧より低い圧力または大気圧より高い圧力で、好ましくは大気圧より低い圧力で操作され得る。
【0135】
好ましくは、蒸留は、ε-カプロラクタムからの水、(ε-カプロラクタムより低い沸点を有する)低沸点有機不純物および/または(ε-カプロラクタムより高い沸点を有する)有機高沸点不純物の分離を含む。好ましくは、蒸留は、第1の工程において、塔頂生成物としての水を分離すること、ならびに塔底生成物としての、低沸点不純物および高沸点不純物を含有するε-カプロラクタムの生産を含む。第2の工程では、低沸点不純物が塔頂生成物として分離され、高沸点不純物を含有するε-カプロラクタムが塔底生成物として得られる。第3の工程では、高純度ε-カプロラクタムが塔頂生成物として分離され、塔底生成物として、ε-カプロラクタムおよび高沸点不純物を含む蒸留残留物が生産される。場合によって、第1の工程と第2の工程は統合される。
【0136】
好ましくは、水および不純物の蒸留除去の前に、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相に、アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHが添加される。好ましくは、添加されるNaOHの量は、ε-カプロラクタム1kg当たり0.5~100mmol、より好ましくはε-カプロラクタム1kg当たり2~80mmolの範囲である。これは、後続の蒸留において、ε-カプロラクタムより低いおよびより高い沸点を有する不純物の特に効果的な蒸留除去をもたらす。
【0137】
本発明の方法は、連続的、半連続的またはバッチ方式で操作され得る。したがって、本発明のプラントも、これらの操作モードのうちの1つまたは複数を可能にするように構成され得る。好ましい実施形態では、プラントは、連続的または半連続的な様式で本発明の方法を操作するように構成される。しかしながら、不連続な方法も可能である。例えば、本発明のプラントは、本明細書に記載されているすべてのセクションを1つの場所に含有する必要はない。場合によって、セクションまたはその一部は、2つ以上の場所に位置する。特に、前処理セクション[A]は第1の位置に位置することができるのに対して、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]は第2の位置に位置することができる。同様に、前処理セクション[A]の一部としての機械的サイズ縮小セクション[β]も、第1の位置に位置することができ、一方、前処理セクション[A]の一部としての清掃セクション[α]は、第2の位置に位置することができ、一方、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]は、第3の位置に位置する。場合によって、清掃セクション[α]は、場合によってすべて異なる場所に位置する2つ以上のセグメントに分割される。例えば、前処理セクション[A]の一部としての清掃セクション[α]の第1のセグメントは、第1の位置に位置することができ、前処理セクション[A]の一部としての機械的サイズ縮小セクション[β]は、第2の位置に位置することができ、一方、前処理セクション[A]の一部としての清掃セクション[α]の第2のセグメントは、第3の位置に位置することができ、一方、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]は、第4の位置に位置する。高密度化セクション[γ]は、前処理セクション[A]の1つもしくは複数の他のセグメントと同じ位置に位置することができるか、または解重合セクション[B]と同じ位置に位置することができる。
【0138】
生成物
本発明は、本発明の方法に従ってポリアミド6を含む漁網由来の材料から生産される、ポリアミド6の解重合を介して得られるε-カプロラクタムを新たな生成物として提供する。このε-カプロラクタムは、特に、精製されたε-カプロラクタム1kg当たり2kg未満のCO2相当量の製品カーボンフットプリントを有することを有利に特徴とする(ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータに基づく;場所:ヨーロッパ)。本発明により得られるε-カプロラクタムは、「精製されたε-カプロラクタム」と呼ばれることもある。本明細書で使用される「精製された」とは、ε-カプロラクタムが本発明の方法に従ってポリアミド6を含む漁網から生産され、その結果、ε-カプロラクタムが精製された形態で得られることを意味する。この意味で、ε-カプロラクタムは、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から得られ、精製される。
【0139】
本発明の方法は、要求の高い用途のための仕様を満たす高純度の、したがって高品質のε-カプロラクタムを生産することを可能にし、同時に、この方法は、その低下した製品カーボンフットプリントのために、および出発材料として廃棄物を使用するために特に経済的に優しい。好ましい実施形態では、本発明の方法によって得られるε-カプロラクタムは、以下の仕様の1つまたは複数を満たし、パラメータおよび測定方法は、本明細書の以下の実施例セクションにおけるように定義される。
PAN:最大5
E290:最大0.05
VB:最大0.5mmol/kg
アルカリ度:最大0.1mmol/kg。
【0140】
本発明の方法によって生産されるε-カプロラクタムはまた、特に経済的であり、環境に優しい。これは、(例えば、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって)古典的に製造されたε-カプロラクタムと比較して、本発明の方法によって生産されたε-カプロラクタムのはるかに低いカーボンフットプリントから明らかである。
【0141】
製品の環境への影響は、一般に「製品カーボンフットプリント」として表される。製品のカーボンフットプリントは、製品1トン当たりの二酸化炭素換算トンとして表される、その製品の形成によって引き起こされる総排出量として定義される。製品のカーボンフットプリントは、とりわけ、原料、補助材料、エネルギー消費、エネルギー源、生産プロセスおよびプロセス効率に依存する。製品のカーボンフットプリントの定量化は、例えば、欧州規格EN ISO 14040:2006(「Environmental management-Life cycle assessment-Principles and framework」)に記載されているように行うことができる。
【0142】
製品カーボンフットプリントの計算は、社内で行われてもよく、または外部の(好ましくは)認定された組織によって行われてもよい。これらの組織は、例えばLCA規格ISO 14040に基づいて製品カーボンフットプリントの計算を検証および認証する。
【0143】
J.HongおよびX.Xu(“Environmental impact assessment of caprolactam production-a case study in China”;J.of Cleaner production 27(2012)103-108;DOI:10.1016/j.jclepro.2011.12.037)は、石炭ベースの電気および水蒸気発生が関与する場合において、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位を介して得られた「バージン」ε-カプロラクタムの地球温暖化に対する潜在的な影響は、ε-カプロラクタム1トン当たり7.5トンのCO2相当量(これは、ε-カプロラクタム1kg当たり7.5kgのCO2相当量に等しい)であることを報告した。天然ガスベースの電気および水蒸気発生が関与する場合には、ε-カプロラクタム生産プロセスの地球温暖化に対するバージンε-カプロラクタムの潜在的な影響は、ε-カプロラクタム1トン当たり6.4トンのCO2相当量(これは、ε-カプロラクタム1kg当たり6.4kgのCO2相当量に等しい)に低減される。
【0144】
本発明の方法に従って得られるε-カプロラクタムの製品カーボンフットプリントは、デノボ合成された、すなわち「バージン」ε-カプロラクタムの製品カーボンフットプリントよりはるかに低い。本発明の方法において得られるε-カプロラクタムの製品カーボンフットプリントは、ε-カプロラクタム1kg当たり4kg未満、より好ましくは3kg未満のCO2、最も好ましくは2kg以下のCO2相当量である(ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータに基づく;場所:ヨーロッパ)。
【図面の簡単な説明】
【0145】
以下では、本発明の特定の実施形態を図示する図面を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明は、特許請求の範囲において定義され、本明細書に一般的に記載されている通りである。本発明は、以下の図において例示目的で示されている実施形態に限定されるべきではない。
【
図1】
図1は、場合によって設けられる前処理セクション[A]、解重合セクション[B]、回収セクション[C]および精製セクション[D]において行われる処理工程を含む本発明の方法の概略図である。
【
図2】
図2は、前処理セクション[A]の2つの実施形態を例示し、ポリアミド6を含む漁網は、異物の除去によっておよび洗浄溶媒での洗浄によって清掃セクション[α]において清掃され、機械的サイズ縮小セクション[β]において破砕されて、ポリアミド6を含む漁網の清掃および破砕された細片が得られる。
【
図2A】
図2Aは、前処理セクション[A]の一実施形態を図示し、ポリアミド6を含む漁網は、まず、異物の除去によっておよび洗浄溶媒での洗浄によって清掃セクション[α]において清掃され、次いで、機械的サイズ縮小セクション[β]において破砕されて、ポリアミド6を含む漁網の清掃および破砕された細片が得られる。
【
図2B】
図2Bは、前処理セクション[A]の一実施形態を図示し、ポリアミド6を含む漁網は、まず、機械的サイズ縮小セクション[β]において破砕され、次いで、異物の除去によっておよび溶媒での洗浄によって清掃セクション[α]において清掃されて、ポリアミド6を含む漁網の清掃および破砕された細片が得られる。
【
図3】
図3は、精製セクション[D]の2つの実施形態を例示し、粗精製ε-カプロラクタムが精製されて高純度ε-カプロラクタムを得る。
【
図3A】
図3Aは、抽出セクション[γ]、場合によって洗浄セクション[δ]、逆抽出セクション[ε]、場合によって酸化セクション[θ]および蒸留セクション[λ]を備える、本発明の方法の精製セクション[D]の一実施形態を図示する。
【
図3B】
図3Bは、抽出セクション[γ]、場合によって洗浄セクション[δ]、溶媒切り替え蒸留セクション[μ]、場合によって酸化セクション[θ]および蒸留セクション[λ]を備える、本発明の方法の精製セクション[D]の一実施形態を図示する。
【0146】
[図面の詳細な説明]
本発明の方法を
図1に概略的に例示する。本方法は、以下のプラントセクションにおいて実行される。
【0147】
場合によって、ポリアミド6を含む漁網[1]は、前処理セクション[A]において異物の除去によっておよび洗浄溶媒[2]での洗浄によって清掃され、それによって、汚染された洗浄溶媒[3]が得られる。次に、ポリアミド6を含む漁網は、機械的サイズ縮小によって破砕される。清掃および破砕されたポリアミド6を含む漁網[6]が、前処理セクション[A]から排出される。場合によって、ポリアミド6を含む漁網[1]は、前処理セクション[A]において異物の除去によってさらに清掃される。異物の除去は、ポリアミド6を含む漁網の破砕の前および/または後に行われ得る。場合によって、場合によって清掃および破砕されたナイロン6を含む漁網は、解重合セクション[B]においてε-カプロラクタムに解重合される前に高密度化される(
図1には示されていない。)。
【0148】
場合によって清掃および破砕されたポリアミド6を含む漁網[6]は、解重合セクション[B]においてε-カプロラクタムに解重合される。ε-カプロラクタムを含む流れ[7]が、解重合セクション[B]から排出される。さらに、残留材料[8]が排出される。場合によって、過熱された水蒸気[9]および触媒[10]が解重合セクション[B]に投入される。
【0149】
粗精製ε-カプロラクタム[11]が、回収セクション[C]において、解重合セクション[B]から排出されるε-カプロラクタムを含む流れ[7]から回収される。さらに、解重合セクション[B]に水または過熱された水蒸気[9]が投入された場合には、回収セクション[C]から水相[12]が排出される。
【0150】
回収セクション[C]から排出される粗精製ε-カプロラクタム[11]が、精製セクション[D]において精製されて高純度ε-カプロラクタム[26]が得られる。水および不純物[25]も精製セクション[D]から排出される。
【0151】
図2Aは、前処理セクション[A’](破線によって囲まれた領域)の一実施形態を図示し、ポリアミド6を含む漁網[1’]は、まず、異物の除去によっておよび洗浄溶媒[2’]での洗浄によって清掃セクション[α’]において清掃され、それによって異物、汚染された洗浄溶媒[3’]および清掃されたポリアミド6を含む漁網[4’]が得られる。続いて、清掃されたポリアミド6を含む漁網[4’]は、機械的サイズ縮小セクション[β’]において破砕されて、ポリアミド6を含む漁網の清掃および破砕された細片[6’]を得る。次いで、清掃および破砕された細片は排出される。場合によって、清掃および破砕されたナイロン6を含む漁網は、解重合セクション[B]においてε-カプロラクタムに解重合される前に高密度化される(
図2Aには示されていない)。
【0152】
図2Bは、前処理セクション[A’’](破線によって囲まれた領域)の一実施形態を図示し、ポリアミド6を含む漁網[1’’]は、まず、機械的サイズ縮小セクション[β’’]において破砕されて、ポリアミド6を含む漁網の破砕された細片[5’’]を得る。続いて、ポリアミド6を含む漁網の破砕された細片[5’’]は、異物の除去によっておよび洗浄溶媒[2’’]での洗浄によって清掃セクション[α’’]において清掃されて、異物、汚染された洗浄溶媒[3’’]ならびに排出される、ポリアミド6を含む漁網の清掃および破砕された細片「6’’]を得る。場合によって、清掃および破砕されたナイロン6を含む漁網は、解重合セクション[B]においてε-カプロラクタムに解重合される前に高密度化される(
図2Bには示されていない)。
【0153】
図3Aは、以下のセクションを備える精製セクション[D’’’](破線によって囲まれた領域)の一実施形態を図示する。
【0154】
抽出セクション[γ’’’]において、粗精製ε-カプロラクタム[11’’’]を有機溶媒[13’’’]で抽出して、水および不純物を含む水相[14’’’]ならびに有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相[15’’’]を得る。両相は、抽出セクション[γ’’’]から排出される。
【0155】
場合によって設けられる洗浄セクション[δ’’’]において、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相[15’’’]を水またはアルカリ水溶液[16’’’]で洗浄して、水性残留物包含相[17’’’]ならびに有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む洗浄された有機相[18’’’]を得る。両相は、洗浄セクション[δ’’’]から排出される。
【0156】
逆抽出セクション[ε’’’]において、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって洗浄された有機相[18’’’]を水[19’’’]で逆抽出して、不純物を含む有機溶媒相[20’’’]ならびに水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相[22’’’]を得る。両相は、逆抽出[ε’’’]から排出される。場合によって、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相[22’’’]からのストリッピングおよび/または蒸留によって残留有機溶媒が除去される(
図3Aには示されていない)。
【0157】
場合によって設けられる酸化セクション[θ’’’]において、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含み、ストリッピングおよび/または蒸留によって場合により存在する残留有機溶媒がそこから除去された水相[22’’’]を酸化剤[23’’’]で酸化して、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’]を得る。この相は、酸化セクション[θ’’’]から排出される。場合によって、酸化セクション[θ’’’]から排出される前に、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’]を濾過して固体酸化マンガン(IV)粒子を除去する(
図3Aには示されていない)。
【0158】
蒸留セクション[λ’’’]において、場合によって固体酸化マンガン(IV)粒子が濾過によってそこから除去された、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’]を蒸留して、水および不純物[25’’’](すなわち、主に水、低沸点有機不純物および高沸点有機不純物)および高純度ε-カプロラクタム[26’’’]を得る。蒸留生成物のすべては、蒸留セクション[λ’’’]から排出される。場合によって、蒸留セクション[λ’’’]における蒸留の前に、アルカリ金属水酸化物が、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’]に投与される(
図3Aには示されていない)。
【0159】
図3Bは、以下のセクションを備える精製セクション[D’’’’](破線によって囲まれた領域)の一実施形態を図示する。
【0160】
抽出セクション[γ’’’’]において、粗精製ε-カプロラクタム[11’’’’]を有機溶媒[13’’’’]で抽出して、水および不純物を含む水相[14’’’’]ならびに有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相[15’’’’]を得る。両相は、抽出セクション[γ’’’’]から排出される。
【0161】
場合によって設けられる洗浄セクション[δ’’’’]において、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む有機相[15’’’’]を水またはアルカリ水溶液[16’’’’]で洗浄して、水性残留物包含相[17’’’’]ならびに有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む洗浄された有機相[18’’’’]を得る。両相は、洗浄セクション[δ’’’’]から排出される。
【0162】
溶媒切り替え蒸留セクション[μ’’’’]において、有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって洗浄された有機相[18’’’’]は、水[19’’’’]の添加により溶媒切り替え蒸留されて、有機溶媒[21’’’’]ならびに水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含む水相[22’’’’]を得る。両方の蒸留生成物は、溶媒切り替え蒸留セクション[μ’’’’]から排出される。
【0163】
場合によって設けられる酸化セクション[θ’’’’]において、水、ε-カプロラクタムおよびε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物を含み、ストリッピングおよび/または蒸留によって場合により存在する残留有機溶媒がそこから除去された水相[22’’’’]を酸化剤[23’’’’]で酸化して、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’’]を得る。この相は、酸化セクション[θ’’’’]から排出される。場合によって、酸化セクション[θ’’’’]から排出される前に、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’’]を濾過して固体酸化マンガン(IV)粒子を除去する(
図3Bには示されていない)。
【0164】
蒸留セクション[λ’’’’]において、場合によって固体酸化マンガン(IV)粒子が濾過によってそこから除去された、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’’]を蒸留して、水および不純物[25’’’’](すなわち、主に水、低沸点有機不純物および高沸点有機不純物)および高純度ε-カプロラクタム[26’’’’]を得る。蒸留生成物のすべては、蒸留セクション[λ’’’’]から排出される。場合によって、蒸留セクション[λ’’’’]における蒸留の前に、アルカリ金属水酸化物が、蒸留セクション[λ’’’’]に投入される、水、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む場合によって酸化されたε-カプロラクタム-水相[24’’’’]に投与される(
図3Bには示されていない)。
【実施例】
【0165】
以下の実施例は、特に本発明の特定の形態に関して、本発明をより詳細に説明する役割を果たす。しかしながら、これらの実施例は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0166】
より純粋な品質のε-カプロラクタムでの希釈なしに、すべての主要なポリアミド6重合用途のために使用することができるε-カプロラクタムは、以下の仕様のすべてを満たす:
PAN:最大5
E290:最大0.05
VB:最大0.5mmol/kg
アルカリ度:最大0.1mmol/kg。
パラメータおよび測定方法は、以下のように定義される。
【0167】
PAN:ISO DIS 8660 工業用カプロラクタム-カプロラクタムの過マンガン酸塩指数の決定-分光法、第一版ISO 8660の改訂;1988、
E290:ISO 7059-工業用カプロラクタム-290nmの波長での吸光度の決定、1982
揮発性塩基(VB)ISO 8661-工業用カプロラクタム-揮発性塩基含有量の決定-蒸留後の滴定法、1988。
【0168】
ε-カプロラクタム生成物のアルカリ度:アルカリ度は、その終点で灰色である、1:2の比の0.1重量/vエタノール%メチレンブルー:0.1重量/vエタノール%メチルレッドでタシロ指示薬を使用して、25℃の温度での滴定によって決定される。まず、水および指示薬を含有するフラスコを灰色になるまで滴定し、次いでY重量%のε-カプロラクタム(屈折率によって決定される)を含有するXグラムのε-カプロラクタム水溶液を添加し、0.01N H2SO4溶液を用いて、灰色になるまで溶液を逆滴定する。次いで、アルカリ度は以下によって与えられる。
アルカリ度(mmol/kgε-カプロラクタム)=v*t*1000/(X*Y)
式中、
v=添加されたH2SO4溶液の体積(ml)
t=H2SO4溶液の規定度(=0.01N)
X=試料の重量(g)
Y=ε-カプロラクタムの濃度(重量%)
【0169】
実施例および比較実験で使用したポリアミド6を含むペレットは、廃棄された漁網から作製された。前処理は、異物の除去、洗浄、粉砕、溶融およびチップ/ペレットへの変換を含んでいた。ペレットは、中国の漁網リサイクリング会社から入手した。
ペレットは棒状であり、約3mmの平均直径、約4mmの平均長さを有し、ほとんどのペレットの重量は20~30mgであった。
【0170】
示差走査熱量測定(DSC)からの定性的情報と組み合わせた熱重量分析(TGA)により、ペレットのポリアミド6含有量が(乾燥状態で)98重量%より大きいことが明らかになった。
【0171】
[実施例1]
ポリアミド6の解重合およびε-カプロラクタムの回収
48グラムの、ポリアミド6を含むチップ/ペレットおよび14グラムの20重量%リン酸をPremex高圧オートクレーブに投入した。最初に、反応器の内容物を窒素下で加熱し、続いて、120分間の反応中に、4グラム/分の速度で、過熱された水蒸気を連続的に注入した。反応器内の温度および圧力を、それぞれ260℃および0.11MPaに維持した。反応中、蒸気流を反応器から連続的に排出し、約20℃まで冷却して、ε-カプロラクタムおよび水を含む凝縮物を得た。
【0172】
約44グラムのε-カプロラクタムから構成され、残りの大部分は水であった凝縮物を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap(ロータリーエバポレーター)中での蒸発によって、49.7重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。(この混合物、粗精製ε-カプロラクタムが、精製されるべき混合物である。)
粗精製ε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった:
PAN:16
E290:2.33
【0173】
本実施例は、ポリアミド6を含む廃棄された漁網由来のポリアミド6の解重合によって粗精製ε-カプロラクタムを得ることができることを示す。極めて低品質のため、この粗精製ε-カプロラクタムを、すべての主要なポリアミド6重合用途にそのまま使用することはできない。
【0174】
[比較実験1]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収および蒸留精製
実施例1の手順に従った。その後、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液を添加した。次いで、バッチ式で操作される蒸留装置中での減圧下での蒸留によって、水およびε-カプロラクタムより低い沸点を有する不純物を頂部生成物として除去し、圧力を段階的に低下させた。ε-カプロラクタムを300Paで蒸留したが、ε-カプロラクタムと比較してより高い沸点を有する不純物は蒸留装置に底部生成物として残存した。蒸留されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった:
PAN:5
E290:0.09
VB:0.34mmol/kg
アルカリ度:0.25mmol/kg。
【0175】
本比較実験は、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から得られたε-カプロラクタムの品質は、主要な重合用途のために必要とされる仕様のほとんどを満たさないため、極めて低いことを示している。
【0176】
[比較実験2]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収および酸化による精製
実施例1の手順に従った。続いて、50℃で2時間、ε-カプロラクタムに関して0.2重量%のKMnO4で粗精製ε-カプロラクタムを処理した。次いで、濾過によって、形成された固体を酸化された反応生成物から除去した。精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった。
PAN:30
E290:3.62
【0177】
本比較実験は、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、酸化によって精製されたポリアミド6の解重合から得られたε-カプロラクタムの品質は極めて低く、すべての主要なポリアミド6重合用途にはそのまま使用することができないことを示す。
【0178】
[比較実験3]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収、ならびに酸化および蒸留による精製
次いで、比較実験2で得られた酸化によって精製されたε-カプロラクタム水溶液を、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液の添加後に、比較実験1に記載されている手順に従って蒸留した。得られた精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった。
PAN:3
E290:0.09
VB:0.84mmol/kg
アルカリ度:0.35mmol/kg。
【0179】
本比較実験は、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、酸化および蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から得られたε-カプロラクタムの品質は低く、すべての主要なポリアミド6重合用途にはそのまま使用することができないことを示す。
【0180】
[比較実験4]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収ならびに酸化、炭素処理および蒸留による精製
実施例1の手順に従った。続いて、50℃で2時間、ε-カプロラクタムに関して0.2重量%のKMnO4で粗精製ε-カプロラクタムを処理した。次いで、得られた酸化された溶液を、50℃で0.5時間、0.4重量%の粉末化された活性炭で処理した。その後、形成された固体および活性炭粒子を濾過によってε-カプロラクタム水溶液から除去した。次いで、この活性炭で処理されたε-カプロラクタム水溶液を、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液の添加後に、比較実験1に記載されている手順に従って蒸留した。得られた精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった:
PAN:3
E290:0.08
VB:0.43mmol/kg
アルカリ度:0.29mmol/kg。
【0181】
本比較実験は、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、酸化、炭素処理および蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から得られたε-カプロラクタムの品質は低く、すべての主要なポリアミド6重合用途にはそのまま使用することができないことを示す。
【0182】
[実施例2]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収ならびに抽出、逆抽出、酸化および蒸留による精製。
実施例1の手順に従った。44.5グラムのε-カプロラクタムから構成され、残りの大部分は水であった凝縮物を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、50.2重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。(この混合物、粗精製ε-カプロラクタムが、精製されるべき混合物である。)
【0183】
約25℃の温度で、4-メチル-2-ペンタノール(50重量%)/シクロヘキサン(50重量%)の溶媒混合物で、粗精製ε-カプロラクタムを10回バッチ式に抽出した。使用された抽出溶媒の総量は、粗精製ε-カプロラクタム1グラム当たり8.05グラムの4メチル-2-ペンタノール/シクロヘキサンであった。7グラムの2重量%NaOH水溶液で、合わせた有機抽出物をバッチ式に洗浄した。得られた洗浄された有機抽出物を真空条件下での蒸留によって約40重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮し、次いで、新鮮なシクロヘキサンを添加した。得られた混合物のε-カプロラクタム濃度は約27重量%であり、溶媒混合物4-メチル-2-ペンタノール/シクロヘキサンの重量比は50重量%:50重量%であった。約25℃の温度で、この混合物を7回水でバッチ式に抽出した。使用された水の総量は、回収されたε-カプロラクタム1g当たり5.75グラムの水であった。
【0184】
次いで、得られたε-カプロラクタム水溶液を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、45.9重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。50℃で2時間、ε-カプロラクタムに関して0.04重量%のKMnO4で得られた混合物を処理した。次いで、濾過によって、形成された固体を酸化された反応生成物から除去した。得られた水溶液中のε-カプロラクタムを、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液の添加後に、比較実験1に記載されているように蒸留によってさらに精製した。得られた精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった。
PAN:1.5
E290:0.032
VB:0.082mmol/kg
アルカリ度:0.1mmol/kg。
【0185】
本実験から、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、抽出、逆抽出、酸化および蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から、主要な重合用途のために必要とされるすべての仕様を満たす精製されたε-カプロラクタムを得ることができると結論付けることができる。
【0186】
[実施例3]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収ならびに抽出、逆抽出および蒸留による精製。
実施例1の手順に従った。
得られたε-カプロラクタム水溶液を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、50.7重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。(この混合物、粗精製ε-カプロラクタムが、精製されるべき混合物である。)
【0187】
約25℃の温度で、粗精製ε-カプロラクタムを11回トルエンでバッチ式に抽出した。使用された抽出溶媒の総量は、粗精製ε-カプロラクタム1グラム当たり12.5グラムのトルエンであった。真空条件下での蒸留によって、合わせた有機抽出物を30重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。続いて、約25℃の温度で、得られた濃縮された有機抽出物を水で4回バッチ式に抽出した。使用された水の総量は、合わせた有機抽出物1グラム当たり1.79グラムの水であった。得られた合わせたε-カプロラクタム水溶液を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、52.2重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。
【0188】
得られた水溶液中のε-カプロラクタムを、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液の添加後に、比較実験1に記載されているように蒸留によってさらに精製した。得られた精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった。
PAN:4
E290:0.04
VB:0.2mmol/kg
アルカリ度:0.1mmol/kg。
【0189】
本実験から、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、抽出、逆抽出および蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から、主要な重合用途のために必要とされるすべての仕様を満たす精製されたε-カプロラクタムを得ることができると結論付けることができる。
【0190】
[実施例4]
ポリアミド6の解重合、ε-カプロラクタムの回収ならびに抽出、逆抽出および蒸留による精製。
実施例1の手順に2回従った。
両方の得られたε-カプロラクタム水溶液を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、それぞれ70.2重量%および67.6重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。次いで、両方の濃縮されたε-カプロラクタム水溶液を一緒に添加した。得られた混合物、すなわち粗精製ε-カプロラクタムの1/3をさらなる精製のために使用する。
【0191】
粗精製ε-カプロラクタムを65.0重量%に希釈し、約25℃の温度で、5回ベンゼンでバッチ式に抽出した。使用された抽出溶媒の総量は、粗精製ε-カプロラクタム1グラム当たり10.7グラムのベンゼンであった。3.1グラムの2重量%NaOH水溶液で、合わせた有機抽出物をバッチ式に洗浄した。真空条件下での蒸留によって、得られた洗浄された有機抽出物を約17重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。続いて、約25℃の温度で、得られた濃縮された有機抽出物を水で4回バッチ式に抽出した。使用された水の総量は、濃縮された合わせた有機抽出物1グラム当たり1.19グラムの水であった。得られた合わせたε-カプロラクタム水溶液を、真空下(9.5kPa;水浴温度は約65℃であった。)で操作されたrotavap中での蒸発によって、56.3重量%のε-カプロラクタム濃度に濃縮した。
【0192】
得られた水溶液中のε-カプロラクタムを、ε-カプロラクタム1kg当たり75mmolの水酸化ナトリウム水溶液の添加後に、比較実験1に記載されているように蒸留によってさらに精製した。得られた精製されたε-カプロラクタムの仕様は以下の通りであった。
PAN:3
E290:0.01
VB:<0.02mmol/kg
アルカリ度:0.1mmol/kg。
【0193】
本実施例から、ポリアミド6を含む廃棄された漁網に由来し、抽出、逆抽出および蒸留によって精製されたポリアミド6の解重合から、主要な重合用途のために必要とされるすべての仕様を満たす精製されたε-カプロラクタムを得ることができると結論付けることができる。
【0194】
[実施例5]
精製されたε-カプロラクタムのカーボンフットプリントの計算
プラントにおいて、ポリアミド6を含む漁網から精製されたε-カプロラクタムを生産するための本発明による連続的方法をシミュレートした。この方法は、
-ポリアミド6を含む漁網からの異物の機械的除去;
-ポリアミド6を含む漁網を小さな細片に切断すること;
ポリアミド6を含む漁網の細片の水による洗浄;
-ポリアミド6を含む漁網の洗浄された細片および水性抽出物の遠心分離による分離;
-ポリアミド6を含む漁網の洗浄された細片の乾燥;
-ポリアミド6を含む漁網の洗浄された細片の溶融およびペレット化;
-H3PO4および過熱された水蒸気の影響下でのポリアミド6の解重合;
-解重合反応器から排出された蒸気の部分的凝縮による粗精製ε-カプロラクタム(75重量%のε-カプロラクタム)の回収;
-トルエンによる濃縮された粗精製ε-カプロラクタムの向流抽出;
-希釈された苛性溶液による有機抽出物の洗浄;
-洗浄された有機抽出物の水による向流逆抽出;
-水性抽出物の蒸発濃縮;
-KMnO4による濃縮された水性抽出物の酸化;
-苛性物質の添加;ならびに
-真空蒸留による純粋なε-カプロラクタムの回収
を含んだ。
【0195】
原材料の消費量の数値に基づいて、精製されたε-カプロラクタムのカーボンフットプリントが計算され、上記の方法の有用性は、ecoinventバージョン3.7.1に由来するデータに基づいている。
【0196】
結果は、ポリアミド6を含む漁網から得られた精製されたε-カプロラクタムの製品カーボンフットプリントが、ε-カプロラクタム1トン当たり2.0トン未満のCO2相当量であることを明らかにした(場所ヨーロッパ)。
【0197】
その特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、その精神および範囲から逸脱することなく、その中で(半)連続的操作および産業的規模への規模拡大を含む様々な変更および修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおいて、ポリアミド6を含む漁網由来の材料から精製されたε-カプロラクタムを回収するための方法であって、前記プラントは、
-解重合セクション[B]、
-回収セクション[C]、および
-精製セクション[D]
を備え、
前記方法は、
a)ポリアミド6を含む漁網由来の材料を前記解重合セクション[B]に投入する工程と;
b)ε-カプロラクタムを含む流れが得られるように、180℃~400℃の範囲の温度で、前記解重合セクション[B]において、ポリアミド6を含む漁網由来の前記材料を解重合する工程と;
c)前記解重合セクション[B]から前記ε-カプロラクタムを含む流れを排出し、前記回収セクション[C]において、前記流れから粗精製ε-カプロラクタムを回収する工程と;
d)前記精製セクション[D]において前記粗精製ε-カプロラクタムを精製して、精製されたε-カプロラクタムを得る工程であって、前記精製は、
(i)前記粗精製ε-カプロラクタムを有機溶媒で抽出する工程であって、有機相が得られ、前記有機相は、前記有機溶媒、ε-カプロラクタムおよび不純物を含む、工程と;
(ii)前記有機溶媒を少なくとも部分的に水で置き換えることによって前記溶媒を交換する工程であって、水と、ε-カプロラクタムと、ε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物とを含む水相が得られ、溶媒交換工程(ii)は、水による逆抽出に基づく方法および前記有機溶媒が留去され、水が投入される溶媒切り替え蒸留に基づく方法から選択される、工程と;
(iii)前記水相からε-カプロラクタムより低いまたはより高い沸点を有する不純物の蒸留除去によって精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含む、
精製されたε-カプロラクタムを得る工程と
を含
み、
-工程d)(i)の後に、工程d)(i)において得られた有機相が水もしくはアルカリ水溶液で洗浄され、および/または
-工程d)(iii)における前記蒸留除去の前に、アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOHが前記水相に添加される、
方法。
【請求項2】
工程b)における前記解重合が水の存在下で行われ、前記ε-カプロラクタムを含む流れが、1:2~1:15の重量対重量比でε-カプロラクタムおよび水を含む蒸気流であり、工程d)(i)における前記抽出において、水相および有機相の両方が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)(iii)における蒸留除去の前に、工程d)における前記精製が、
20℃~85℃の範囲の温度で、水溶液中の酸化剤で酸化する工程であって、前記酸化剤は、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムおよび過酸化水素ならびにそれらの組み合わせからなる群、特に過マンガン酸カリウムから選択される、工程も含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において存在する前記水が、220℃~575℃、好ましくは275℃~500℃の範囲の温度を有する過熱された水蒸気として工程b)において前記解重合セクション[B]に投入される水蒸気の形態である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程d)(ii)における前記溶媒交換が、水による逆抽出に基づく方法である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)(ii)における前記溶媒交換が、溶媒切り替え蒸留に基づく方法である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程d)(i)における前記有機溶媒が、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、4メチル-2-ペンタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)における前記酸化が、5:1~1:5の重量対重量比で水およびε-カプロラクタムを含む水溶液中で行われる、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)における前記解重合が触媒の非存在下または存在下で行われ、前記触媒が酸および塩基触媒から選択され、前記酸触媒がオルトリン酸、ホウ酸、硫酸、有機酸、有機スルホン酸、前述の酸の塩、Al
2O
3およびSiO
2ならびにそれらの組み合わせからなる群、特にオルトリン酸から選択され、前記塩基触媒が、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物およびアルカリ土類塩、有機塩基および固体塩基ならびにそれらの組み合わせからなる群、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)における前記解重合が、触媒の非存在下またはオルトリン酸の存在下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の前に、ポリアミド6を含む漁網由来の前記材料が、前処理セクション[A]での前処理、特に清掃セクション[α]における清掃および/または機械的サイズ縮小セクション[β]における機械的サイズ縮小および/または高密度化セクション[γ]におけるかさ密度を増加させる、生成物として得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】