(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ヘパリン依存性血小板活性化を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20250206BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20250206BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
G01N33/53 K
C12N5/078 ZNA
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544797
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2023052029
(87)【国際公開番号】W WO2023144318
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508328800
【氏名又は名称】ディアグノスチカ・スタゴ
(71)【出願人】
【識別番号】506189113
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・トゥール
(71)【出願人】
【識別番号】522460265
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ レジオナル ユニヴェルシテール ドゥ トゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イブ・ジャン・ユベール・グリュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ノエミ・オーレリー・リュディヴィーヌ・シャリュエル
(72)【発明者】
【氏名】クレール・ポプラール
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BD50
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA50
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA24
(57)【要約】
本発明は、特定の工程を含む、ポリアニオン修飾血小板第4因子(PF4)、好ましくはPF4/ヘパリン複合体に対して指向する抗体によって誘導される血小板活性化を分析するための方法、及び患者におけるヘパリン誘導性血小板減少症のin vitro診断又はヘパリン誘導性血小板減少症の除外診断の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニオン修飾抗血小板第4因子(PF4)抗体によって誘導される血小板減少症を有する疑いがある患者においてヘパリン依存性血小板活性化を分析するための分析方法であって、
1)検証及び標準化に必要な試験のシリーズ、以下検証/標準化シリーズ(VS)と記載する、の調製であり、前記検証/標準化シリーズが:
- 混合物1aを得るために、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料を、外来の血小板第4因子(PF4)、及びポリアニオン、好ましくはヘパリンによって修飾された前記血小板第4因子に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片のうちの1つの存在下で混合する工程と;
- 少なくとも1つの混合物1bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び0.01~1IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合物と;
- 少なくとも1つの混合物1cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び10~200IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合物とを含む調製;
2)患者試験(PT)シリーズの調製であり、前記患者試験シリーズが:
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料を血小板活性化因子又は強力なアゴニストと混合して、混合物Agoを得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料を混合して、混合物基礎を得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料をPF4と混合して、混合物2aを得る工程と;
- 混合物2bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1bに使用した前記濃度に等しい濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合と;
- 混合物2cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1cに使用した濃度に等しい濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合とを含む調製;
3)前記VS及びTPシリーズの全ての混合物のインキュベーション、その後各混合物における前記血小板集団の標識、前記集団中の前記活性化された血小板の特異的標識;並びに
4)工程3)において得られた全ての混合物の分析、を含む方法。
【請求項2】
前記患者が、ヘパリン修飾PF4に対する抗体によって誘導される血小板減少症を有する疑いがある、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
工程1)における少なくとも2つの混合物1b、好ましくは2つの混合物1b(即ち、混合物1b'及び1b'')の前記調製が、一方では前記第1の混合物1b'の場合に0.01~0.1IU/mL、好ましくは0.02~0.08IU/mL含まれるヘパリン濃度、他方では、前記第2の混合物1b''の場合に0.2~1IU/mL、好ましくは0.3~0.8IU/mL含まれるヘパリン濃度で実施される工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程4)の後に、前記シリーズの前記活性化比の前記計算及び前記同じシリーズの前記阻害比の前記計算により前記VSシリーズを検証する追加の工程5)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記VSシリーズが:
- ヘパリンの非存在下及び/又は低濃度ヘパリンの存在下で前記ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向する抗体若しくは抗体断片によって誘導される前記シリーズの前記試料中の血小板の活性化、並びに
- 高濃度ヘパリンの存在下での活性化の阻害
が観察される場合に検証される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フローサイトメトリー分析方法である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程5)の後に、前記TPシリーズの前記混合物Ago、2a、2b及び2cの前記抗体依存性血小板活性化レベル(APAと呼ばれる)を算出する工程5')を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用される前記患者の全血の全ての試料が、生理的食塩水中に1/10に希釈される、好ましくは1/2~1/10、好ましくは1/4に希釈される、請求項1から7のいずれか一項に記載される方法。
【請求項9】
ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向する前記モノクローナル抗体が:
- VH可変領域として、配列番号2にコードされるアミノ酸配列、及び
- VL可変領域として、配列番号1にコードされるアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程3)の前記血小板の標識が、前記血小板集団に特異的な少なくとも1つのマーカー及び前記血小板の活性化の前記状態に特異的な少なくとも1つのマーカーを使用して、好ましくは前記血小板集団に特異的な少なくとも1つのマーカー、場合により前記血小板の活性化状態に特異的な2つのマーカーを使用して実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程3)の前記血小板の標識化が、CD41マーカー、CD61マーカー及びCD41/CD61マーカーの組合せから選択される少なくとも1つの血小板集団特異的マーカー、並びにP-セレクチン及びホスファチジルセリンから選択される前記血小板の活性化の前記状態に特異的な少なくとも1つ、好ましくは2つのマーカーを使用して実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者においてヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)を除外する診断の方法であり、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法、及びHIT除外の診断のためにTPシリーズの各混合物における算出された抗体依存性血小板活性化(APA)率を解釈する工程6)を含む、方法。
【請求項13】
前記患者のTPシリーズにおいて低濃度ヘパリンの前記存在下で血小板の活性化が観察されない場合に、HIT除外の診断が行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
疾病を有する疑いがある患者においてHITの診断を確定する方法であり、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法、及びHITの診断のためにTPシリーズの各混合物における算出された抗体依存性血小板活性化(APA)率を解釈する工程6)を含む、方法。
【請求項15】
前記患者の前記TPシリーズの血小板の活性化が、低濃度ヘパリンの存在下で観察され、血小板の活性化の阻害が、高濃度ヘパリンの存在下で観察される場合に、前記疾病を有する疑いがある患者においてHITの診断が確定される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の工程を含む、ポリアニオン修飾血小板第4因子(PF4)、好ましくはPF4/ヘパリン複合体に対して指向する抗体によって誘導される血小板活性化を分析するための方法、及び患者におけるヘパリン誘導性血小板減少症のin vitro診断又はヘパリン誘導性血小板減少症の除外診断の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)は、ヘパリン療法の重篤な合併症である。HITは、ポリアニオン修飾血小板第4因子(PF4)、例えばヘパリン(H)に対して特異的に指向するIgGクラス抗体の合成によって特徴付けられる例外的な免疫応答の結果である。抗ポリアニオン修飾PF4抗体は、FcγRIIa受容体を介して血小板を活性化する。
【0003】
ヘパリンは、血液透析、特に体外循環(ECC)による心臓手術、体外式膜型人工肺(ECMO)手順及び集中治療に広く使用されている。一般には、HITは、ヘパリンで処置された入院患者においてしばしば疑われるが、その診断は、非分画ヘパリン(UFH)療法を受けた患者のおよそ1~3%でしか確定されず、低分子量ヘパリン(LMWH)で処置された患者においては更にまれである。
【0004】
ヘパリンで処置された患者の中でも、一部は、血小板活性化を誘導しない抗ポリアニオン修飾PF4抗体を生じる点に注意することが重要である。その抗体は、病原性ではなく、それ故、HITに関与しない。それらは、特にECMO又はCEC手順の間の場合であり、その間、患者のほぼ50%が抗ポリアニオン修飾PF4抗体を生じるが、抗体が血小板を活性化するのは、2~3%の場合しかない。
【0005】
HITは、臨床及び生物学的症候群と実際のところ考えられており、その完全な診断は:
1. HIT(血小板減少症、血栓症、等)と関連する1つ又は複数の臨床事象の出現、並びに
2.ヘパリン存在下での患者の血漿又は血清中のポリアニオン修飾抗PF4抗体及びin vitroで血小板を活性化する傾向の実証に基づく。
【0006】
2つの型の試験:
- 細胞を活性化する能力に関係なく、抗ポリアニオン修飾PF4抗体の存在を検出する免疫学的試験;及び
- 抗体による血小板のヘパリン依存性活性化を実証する機能的試験が、HITの生物学的診断に使用される。実際には、血小板活性化は、治療濃度のヘパリン(即ち、0.1~1IU/mLヘパリンが含まれる)の存在下で実証されるが、その活性化は、高濃度ヘパリン(即ち、10~100IU/mL含まれる)によって完全に阻害される。
【0007】
免疫学的試験の主な優位性は、その高い感度(及び優れた陰性予測値)であり、大多数の場合において陰性の結果は、疾患を除外するのに役立つことを説明する。にもかかわらず、その陽性予測値は不十分であるため、圧倒的多くの場合において、陽性結果は、抗体の病原性、従ってHITの診断を確定する又は確定しないための機能的試験と関連付けられるべきである。2つの型の試験の組合せは、HITを確定する、又は生物学的診断の特異性を少なくともかなり改善するのに必要である。
【0008】
現在まで、利用可能な機能的試験は全て、健康なドナーからの新しい血小板又は血液を必要とする。血小板活性化に対する患者の血漿又は血清の効果は、ヘパリンの存在下で研究される。一部の試験も、病原性抗体によって誘導される血小板活性化の検出をより高感度にするために外来のPF4を添加する。
【0009】
最も強力な試験は、放射性標識セロトニン放出アッセイ(SRA)及びヘパリン誘導性血小板凝集アッセイ(HIPA)であり、両方が、1名又は複数名の健康なドナーから得られる新しい洗浄された血小板を用いて実行される。SRA及びHIPAの感度並びに特異性は、95%より高い。
【0010】
また、健康な対象由来の血小板を使用する他の機能的試験も、利用可能だが、成績はより劣る。現在まで、2つの商業的な試験は、フローサイトメトリー技術を使用する:Emo-Test HIT Confirm(登録商標)(5-Diagnostics社、バーゼル、スイス)及びHITAlert(商標) KIT(IQ products社、DLフローニンゲン、オランダ)。
【0011】
今日利用可能な機能的試験の成績は様々であり、異なる方法の使用、健康なドナー由来の洗浄された血小板の変動性、及びHITを確定するための異なる陽性基準のため、結果が不均一である。
【0012】
加えて、多くの研究が、HIT抗体に対する血小板の様々な反応性を実証しており、そのことは、患者の陰性の結果を確実に結論する前に複数の健康な対象の血小板を用いて試験を実行することがしばしば必要であることを意味する。健康な対象の血小板の使用には、複数の落し穴:
- 健康な対象の事前合意が、試料採取前に得られなければならないこと;
- 健康なドナーに接近することが大変困難であること;
- 対象毎の血小板応答の高い変動性による、ドナー選択;及び
- 血小板の活性に影響が有りうる洗浄工程
が実際にある。
【0013】
結局、今日利用可能な試験の大多数は、血小板単離工程後に実施される。しかしながら、HITは、病原性抗PF4/H抗体によって誘導される多細胞性活性化をもたらす。それにより、単球及び好中球も、抗体によって刺激され、血小板活性化を高める可能性がある。現在のところ、HIT診断のための唯一の機能的試験は、全血に対して実行され(HIMEA:ヘパリン誘導性多極電極凝集測定法)、その試験も健康な対象の試料を必要とする。
【0014】
従って、より具体的には止血研究室にとって、健康なドナーの試料採取を必要とせず、血小板単離工程も必要としない高感度で特異的な機能的試験の必要性が、非常に高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Journal of Thrombosis and Haemostasis、15: 2065~2075頁、2017年、5B9、a monoclonal antiplatelet factor 4/heparin IgG with a human Fc fragment that mimics heparin-induced thrombocytopenia antibodies
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
HITのための機能的診断試験が標準化されていないことも、大きな落し穴である。止血研究室は、結果の解釈が標準化されており、結果の所要時間が非常に短い(例えば、週末以外の24時間~48時間未満等)機能的試験を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、そのような期待を満たすことを可能にする。
【0018】
そのため、本発明の更なる主題は、抗ポリアニオン修飾PF4抗体、より具体的にはヘパリン修飾PF4に対する抗体によって誘導される血小板減少症を有する疑いがある患者における血小板活性化を分析するための方法である。
【0019】
本発明は、HITのin vitro診断、又はHITを有する疑いがある患者においてHITの診断を確定するための方法にも関する。
【0020】
本発明は、HITを有する疑いがある患者においてin vitroでHITの除外を診断するための方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態によると、本発明の主題は、抗ポリアニオン修飾PF4抗体、特にヘパリン修飾PF4因子に対して指向する抗体によって誘導される血小板減少症を有する疑いがある患者においてヘパリン依存性血小板活性化を分析するための方法であって、
1)検証及び標準化に必要な試験のシリーズ、以下検証/標準化シリーズ(VS)と記載する、の調製であり、前記検証/標準化シリーズが:
- 混合物1aを得るために、許容可能な緩衝液に希釈した患者由来の全血試料を、外来の血小板第4因子(PF4)、及びポリアニオン、好ましくはヘパリンによって修飾された血小板第4因子に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片のうちの1つの存在下で混合する工程と;
- 少なくとも1つの混合物1bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び0.01~1IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合物と;
- 少なくとも1つの混合物1cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び10~200IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合物とを含む調製;
2)患者試験(PT)シリーズの調製であり、前記患者試験シリーズが:
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料を血小板活性化因子又は強力なアゴニストと混合して、混合物Agoを得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料を混合して、混合物基礎を得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料をPF4と混合して、混合物2aを得る工程と;
- 混合物2bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1bに使用した濃度に等しい濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合と;
- 混合物2cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1cに使用した濃度に等しい濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合とを含む調製;
3)VS及びTPシリーズの全ての混合物のインキュベーション、その後各混合物における血小板集団の標識、前記集団中の活性化された血小板の特異的標識;並びに
4)工程3)において得られた全ての混合物の分析、を含む方法である。
【0022】
本発明による方法は、in vitroの方法である。
【0023】
好ましくは、工程3)において得られた全ての混合物を分析する工程4)は、VSシリーズ(1a~1c)及びTPシリーズ(Ago、基礎、及び2a~2c)の各混合物の血小板集団中の活性化血小板の特異的標識強度を測定する工程を含む。
【0024】
好ましくは、本発明の方法は、フローサイトメトリー分析方法である。
【0025】
好ましくは、本発明の方法は、上述した工程1)~4)、及び工程4)の後に以下の追加の工程5)を含む:
5)VSシリーズの検証。
【0026】
本発明によると、VSシリーズは
- ヘパリンの非存在下及び/又は低濃度ヘパリンの存在下でポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向する抗体若しくは抗体断片によって誘導される前記シリーズの試料中の血小板の活性化、並びに
- 高濃度ヘパリンの存在下での活性化の阻害
が観察される場合に検証されると考えられる。
【0027】
好ましくは、工程5)は、VSシリーズの活性化比の計算及び同じシリーズの阻害比の計算によりVSシリーズを検証することで構成される。
【0028】
本発明の目的のために、ヘパリン依存性血小板活性化とは、抗ポリアニオン修飾PF4抗体(又は抗体断片)、又は抗ポリアニオン修飾PF4抗体を模倣する抗体(又は抗体断片)によって誘導される血小板活性化のことを指し、その活性化は、ヘパリンの非存在下及び/又は低濃度ヘパリンの存在下で観察され、高濃度ヘパリンの存在下で阻害される。
【0029】
用語「低濃度ヘパリン」は、0.01~1IU/mL一般に含まれる濃度を意味する。
【0030】
用語「高濃度ヘパリン」は、10~200IU/mL一般に含まれる濃度を意味する。
【0031】
工程5)の後、本発明の方法は、TPシリーズの混合物Ago、2a、2b及び2cの抗体依存性血小板活性化レベル(APAと呼ばれる)を計算する工程5')を好ましくは含む。
【0032】
有利には、本発明の方法は、HITの除外診断、又は疾患を有する疑いがある患者においてHITの診断を確定するために実施される。
【0033】
このような場合、本発明の方法は、上述した工程1)~5')、並びにHIT又はHITの除外の診断を確立するためにTPシリーズにおいて得られた結果を解釈する工程を含む。
【0034】
前記出願の特定の実施形態によると、本発明の方法は、上述した工程1)~5')、及び工程6)を含み、工程6)は以下の通りである:
6)HITの診断又はHITの除外診断を確立するために各TPシリーズ混合物において算出される抗体依存性血小板活性化(APA)率の解釈(好ましくは比較)。
【0035】
本発明、工程及びその動作条件は、以下の指標に従ってここに詳細に記載されることになる。
【0036】
本方法は、患者由来の全血試料を使用する。「全血」とは、血漿及び固形成分(赤血球、白血球及び血小板並びに派生微小粒子)を含む血液試料を意味する。
【0037】
患者の全血の使用は、健康なドナーの血小板のHIT抗体に対する応答の変動をなくすのに役立つ。それにより、患者抗体の真の活性化因子の特徴が、患者自身の血小板において直接査定される。
【0038】
更に、患者の全血を使用することにより、HITの間にしばしば関係する多細胞性協調の有益性がもたらされる。
【0039】
要するに、患者自身の血小板において抗ポリアニオン修飾PF4抗体に誘導されるヘパリン依存性及び多細胞性活性化の結果が、査定される。
【0040】
好ましくは、各試料は、血液が凝固することを防ぐ化合物の存在下で採集した血液試料から得られる。一般的に使用される化合物は、クエン酸ナトリウムであるが、ヒルジン又はクエン酸-クエン酸3ナトリウム-グルコース(ACD)等他の化合物もそのような目的に使用されうる。そのような化合物は、血小板機能の研究に役立つことが先行技術において長く公知であった。
【0041】
好ましくは、患者からの全血の試料の合計容量は、500μL~2mL含まれる。
【0042】
全血の試料は、任意の生理的に許容可能な緩衝液に希釈されてもよい。生理的食塩水(即ち、水性NaCl 9g/L溶液)が、好ましくは使用されるが、例えば異なる組成物(例えば、NaN3 10×、又はクエン酸NaN3 10×)を含むPBS緩衝液等、他の緩衝液も血液試料の希釈に使用されうる。
【0043】
本発明による方法に使用される患者全血の全ての試料は、無希釈又は生理的食塩水中に1/10まで希釈され、好ましくは1/2~1/10、好ましくは1/4の割合に希釈されて使用される。そのような希釈は、血小板減少性の血液(即ち、150Giga/L未満の血小板の量)を使用することを可能にする。
【0044】
一般に、本発明の方法の工程1)及び2)の混合物(VS及びTPシリーズ)の全ては、同じ緩衝液で得られる。
【0045】
検証/標準化シリーズ(VS、工程1)の組成物及び調製
VSシリーズは、少なくとも3つの混合物:
- 許容可能な緩衝液に希釈された患者の全血の試料と、外来のPF4及びポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体又はその断片との混合物である混合物1a;
- 許容可能な緩衝液に希釈した患者の全血試料と外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び0.01~1IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの混合物に対応する少なくとも1つの混合物1b;及び
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片のうちの1つ、及び10~200IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの混合物に対応する混合物1c、を含む。
【0046】
好ましくは、混合物1a~1cのそれぞれは、20~200μL含まれる容量を有する。
【0047】
実際には、上記の抗体は、患者によって生じたHIT抗体の効果を完全に模倣する。それは、内部陽性の品質対照として使用され、それにより試験の技術的検証及び結果の標準化された表現に役立ち、本発明の革新的な特徴に寄与する。
【0048】
好ましくは、VSシリーズの調製は、少なくとも4つの混合物:
- 混合物1aを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4及びポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片のうちの1つとの混合物;
- 少なくとも2つの混合物1bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び0.01~1IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの少なくとも2つの混合物であり、ヘパリンの濃度は各混合物で異なる;並びに
- 混合物1cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した患者の全血試料と、外来のPF4、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体、又はその断片、及び10~200IU/mLで含まれる濃度のヘパリンとの混合物
の調製を含む。
【0049】
優先的には、2つの混合物1b(即ち混合物1b'及び1b'')は、一方で第1の混合物1b'が0.01~0.1IU/mL含まれるヘパリン濃度、他方で第2の混合物1b''が0.2~1IU/mL含まれるヘパリン濃度で実施される。より優先的には、2つの混合物1bは、第1の混合物1b'が0.02~0.08IU/mL、好ましくは約0.05IU/mL含まれるヘパリン濃度;第2の混合物1b''が0.3~0.8IU/mL、好ましくは約0.5IU/mL含まれるヘパリン濃度で実施される。
【0050】
混合物1cは、50~150IU/mL、好ましくは80~120IU/mL、好ましくは約100IU/mL含まれるヘパリン濃度でより優先的に得られる。
【0051】
混合物1b(1b'及び1b'')は、低濃度ヘパリンの効果を模倣し、混合物1cは、高濃度ヘパリンの効果を模倣する。
【0052】
ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体
「ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体又はその断片」とは、(I)ポリアニオン修飾PF4に結合し、PF4単独には結合しない又はわずかに結合し、(ii)ヘパリンの非存在並びに/又は低濃度での存在下で血小板の活性化及び凝集を誘導し、高濃度ヘパリンの存在下で阻害される抗体若しくはその活性断片のことを指す。好ましくは、そのような抗体又はその活性断片は、(I)PF4/ヘパリン複合体(「PF4/H複合体」)に結合し、PF4単独には結合しない又はわずかに結合し、(ii)ヘパリンの非存在並びに/又は低濃度での存在下で血小板の活性化及び凝集を誘導し、その作用は、高濃度ヘパリンの存在下で阻害される。
【0053】
本発明の説明において以下で記載されることになるように、低濃度ヘパリンの存在下でそのような抗体が血小板を活性化するヘパリンは、一般に0.01~1IU/mL含まれる。高濃度ヘパリンの存在下で前記抗体の活性化効果の阻害が観察されるヘパリンは、一般に10~200IU/mL、一般におよそ100IU/mL含まれる。
【0054】
好ましくは、抗体は全抗体である。好ましくは、抗体は、IgG、好ましくはIgG1である。抗体は、キメラ、ヒト化又はヒトでもよい。優先的には、抗体はヒトFcを含む。
【0055】
「抗体」とは、懸垂線内及び間のジスルフィド架橋によって連結されている、それぞれ50~70kDaの2本の重鎖(重鎖はH鎖と呼ばれる)並びにそれぞれ約25kDaの2本の軽鎖(軽鎖はL鎖と呼ばれる)で構成される4量体のことを指し、互いに同一である。4量体は、各鎖のN末端側終端に少なくとも2つの可変領域(軽鎖ではVL、重鎖ではVHと呼ばれる)、並びにC末端側終端に軽鎖ではCLと呼ばれる単一ドメイン及び重鎖ではCH1、CH2、CH3、適切な場合には、CH4と呼ばれる3つ又は4つのドメインからなる定常領域を有する。抗原に対する抗体の特異性を決定する領域は、可変部分VH及びVLに保有され、前記部分が抗原の認識に関与する。各VH及びVL可変領域では、3つのループが組み合わさって、抗原結合部位を形成している。各ループは、相補性決定領域(又は、CDR)と呼ばれる。
【0056】
抗体を構成する鎖の集合体は、特徴的な3次元Y型構造を定義するのに役立ち、
- Yの基部は、定常領域Fc又はFc断片に対応し:基部は、補体タンパク質及びFc受容体によって認識されて、抗体のエフェクター機能を媒介し、
- Yの腕の端部は、軽鎖のVL可変領域及び重鎖のVH可変領域のそれぞれの集合体に対応し、前記端部は、領域Fabを形成し、抗原に対する抗体の特異性を決定する。
【0057】
Fab断片は、抗原に対して完全抗体と同じ親和性を有する。Fab断片は、軽鎖全体(VL+CL)及び重鎖の一部(VH+CH1)で形成される。これは一価である。
【0058】
好ましくは、ポリアニオン修飾PF4、好ましくはPF4/H複合体に対して特異的に指向するモノクローナル抗体(又はその断片のうちの1つ)は、以下の核酸配列:
【0059】
VL可変領域(VJ)をコードする核酸配列:
【0060】
【0061】
VH可変領域(VDJ)をコードする核酸配列:
【0062】
【0063】
によりコードされるVH及びVL配列を含む。
【0064】
好ましくは、本発明によるポリアニオン修飾PF4、好ましくはPF4/H複合体に対して特異的に指向するモノクローナル抗体(又はその断片のうちの1つ)は:
- VH可変領域として、配列番号2にコードされるアミノ酸配列、及び
- VL可変領域として、配列番号1にコードされるアミノ酸配列を含む。
【0065】
そのような抗体は、特に抗体5B9であり、Kizlik-Massonらにおいてより具体的に記載されている(Journal of Thrombosis and Haemostasis、15: 2065~2075頁、2017年、5B9、a monoclonal antiplatelet factor 4/heparin IgG with a human Fc fragment that mimics heparin-induced thrombocytopenia antibodies)。
【0066】
上に示した通り、そのような抗体は、陽性の内部品質対照として本発明による方法に使用され、それは、抗体を用いて測定された血小板活性化を考慮した結果の標準化された表現を可能にする。
【0067】
患者試験シリーズの組成物及び調製(PT、工程2)
患者試験(TP)シリーズは5つの混合物を含み、そのうちの2つは、検証/標準化シリーズに追加される:Ago混合物及び基礎混合物である。
【0068】
混合物2a、2b(任意選択で2b'及び2b'')及び2cは、それぞれ混合物1a、1b(任意選択で1b'及び1b'')及び1cと類似している(即ち、同じ量、同じ含有物及び同じ容量)。しかしながら、患者試験(PT)シリーズの5つの混合物は、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体又はその断片の追加を含まない。
【0069】
患者試験シリーズは、患者血液中のポリアニオン修飾抗PF4抗体が、(I)ヘパリン非存在下及び/又は低濃度ヘパリン存在下で血小板の活性化、並びに(ii)高濃度ヘパリン存在下で血小板の不活性化を誘導する能力を評価する。
【0070】
Ago混合物中の血小板活性化因子又は強力なアゴニストの存在は、全ての血小板集団を活性化することを意図するものであり、血小板活性化マーカーの陽性閾値を定義する非特異的血小板活性化対照である。
【0071】
強力なアゴニストは、先行技術において公知である。異なる強力なアゴニストの中でも、TRAP(トロンビン受容体活性化因子ペプチド、6又は14個のアミノ酸を含む)、カルシウムイオノフォアA23187(以下に化学式)、アラキドン酸、アデノシン二リン酸(ADP)、又はトロンビン及びその誘導体について述べることができる。好ましくは、強力なアゴニストの2つの型は、血小板活性化の最終的な標識により使用され:好ましくは、強力なアゴニストは、TRAP(トロンビン受容体活性化因子ペプチド、6又は14個のアミノ酸を含む)又はその化学式が、以下の通りであるカルシウムイオノフォアA23187から選択される:
【0072】
【0073】
基礎混合物は、血小板活性化の基礎レベルを得るために作られた対照である。基礎混合物の緩衝液は、先行技術から公知の緩衝液である。好ましくは、基礎混合物の緩衝液は、PBS緩衝液、PBS-BSA 1%緩衝液、タイロードHEPES-BSA 1%緩衝液、PBS-BSA-NaN3 10×緩衝液、PBS-クエン酸-NaN3 10×緩衝液又はPBS 10×NaN3緩衝液等の生理食塩緩衝液である。
【0074】
2つの対照(ago及び基礎)は、抗体依存性血小板活性化レベルを決定するために使用されるマーカーの陽性閾値を位置付けるのに役立つ。
【0075】
好ましくは、患者試験シリーズの調製は:
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料を強力なアゴニストと混合して、Ago混合物を得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料を緩衝液と混合して、基礎混合物を得る工程と;
- 許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料をPF4と混合して、混合物2aを得る工程と;
- 混合物2bを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1bに使用した濃度に等しい濃度のヘパリンとの少なくとも1つの混合とを含む。好ましくは、少なくとも2つの2b混合物(2b'及び2b'')を得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及びヘパリンとの少なくとも2つの混合物であり、各2b混合物のヘパリンの濃度は、各1b混合物の濃度と等しく;
- 混合物2cを得るための、許容可能な緩衝液に希釈した前記患者由来の全血試料と、PF4及び混合物1cに使用した濃度に等しい濃度のヘパリンとの混合を含む。
【0076】
好ましくは、本発明による方法の工程1)及び2)は、患者から全血試料を得た4時間後、好ましくは12時間後、好ましくは24時間後に実施される。好ましくは、本発明による方法の工程1)及び2)は、患者から全血試料を得た72時間後、好ましくは48時間後までに実施される。
【0077】
それにより、本発明による方法は、患者の全血において患者の自身の血小板に対して直接評価される、ヘパリン依存性血小板活性化の生成に役立つ。本発明は、本発明より前の試験においてこれまで必要とされてきた供給である健康なドナーの血小板のバッチ供給に関連する制約をなくすので、上記は、先行技術において提案された試験に対して相当な優位性を本発明に与える。
【0078】
インキュベーション及び標識(工程3)
各シリーズが調製されたら、工程1)及び2)の混合物の全てはインキュベートされ、次いで、活性化血小板が標識される。
【0079】
インキュベーションは、18℃~37℃に含まれる温度で10分間~4時間一般に実施される。
【0080】
好ましくは、血小板の標識は、血小板集団に特異的な少なくとも1つのマーカー及び血小板の活性化状態に特異的な少なくとも1つのマーカーを使用して実行される。血小板の標識は、血小板集団に特異的な少なくとも1つのマーカー、場合により血小板の活性化状態に特異的な2つのマーカーを使用して実行されてもよい。
【0081】
血小板の活性化状態の特異的マーカーによるそのような標識は、任意の化合物又は分子の存在を明らかにし、定量化することで構成され、その発現、合成若しくは活性化は、血小板が活性化状態にある場合に誘導され、その合成若しくは活性化のレベルは、血小板活性化のレベルを評価するために使用されうる。
【0082】
好ましくは、化合物は、P-セレクチン(又はCD62P)、ホスファチジルセリン(PS)、LAMP-3(又はCD63)タンパク質、ADP、ATP、リン酸化タンパク質又はその組合せ等、血小板の表面上に発現される分子若しくは抗原から選択される。好ましくは、標識に使用される化合物は、P-セレクチン(又はCD62P)及びホスファチジルセリン(PS)である。この化合物を同定及び/又は定量化するために、後者を対象とする抗体若しくは抗体断片、又は選択した化合物を特異的に認識する傾向にあり、認識を実証する分子が、好ましくは使用される。
【0083】
一般に、CD62P(又はP-セレクチン)は、血小板活性化を評価するのに妥当な候補である。CD62Pは、血小板アルファ顆粒に含有されるタンパク質であり、血小板活性化の間に血小板の表面で発現される。
【0084】
従って抗CD62P抗体は、CD62Pの発現を標識するために優先的に使用される。
【0085】
CD62Pに加えて、又はCD62Pの代わりとして、アネキシンV(又はAnxV)タンパク質も、血小板の活性化を実証することができる。アネキシンVは、最初は休止細胞の細胞質シート内に位置しており、活性化した血小板の表面に露出されるホスファチジルセリン(PS)に対して強力な親和性を有する。
【0086】
アネキシンVがマーカーとして使用される場合、本発明による方法(工程1及び2)に使用される全ての混合物は、トロンビン阻害物質を添加することによって得られる。そのようなトロンビン阻害物質は、好ましくは直接のトロンビン阻害物質、好ましくはヒルジン又はアルガトロバンである。阻害物質の添加は、トロンビンの形成、二次的にフィブリンの形成を妨げる。更に、アネキシンVがマーカーとして使用される場合、本発明による方法(工程1及び2)に使用される全ての混合物は、カルシウム緩衝液を添加することによって実施される。実際、カルシウム緩衝液の添加は、ホスファチジルセリンの露出、それ故アネキシンVによる標識に不可欠である。
【0087】
同時に、全ての血小板によって表面で発現される化合物を標的する血小板集団の特異的標識が、使用される。そのような化合物は、例えば、CD41マーカー、CD61マーカー又はCD41/CD61マーカーの組合せである。好ましくは、抗CD41抗体が、試料中の血小板を特異的に標識するために使用される。
【0088】
好ましくは、使用される標識は、蛍光色素、例えば蛍光タンパク質と結合される。そのような蛍光色素は先行技術において周知であり、例えばアロフィコシアニン(APC)、フィコエリトリン(PE)、フィコエリトリン(PE)-Cy5若しくはCy7、PerCP、PerCP-Cy5.5、フルオレセイン(FITC)又は他のアレクサフルオール染料である。
【0089】
2つの血小板活性化対照(例えばCD62P及びPS)の使用は、本方法の成績を、より具体的には特異性及び感度の点で最適化することができる。
【0090】
好ましくは、優先的にはフローサイトメーターによる、全ての混合物の分析の前に、一般に100μL~5mL含まれる大量の許容可能な緩衝液が、各混合物に添加される。最後の工程は、分析前に工程1と2の間に誘導される血小板の活性化を減速する。緩衝液は、P-セレクチン、又はアネキシンVを用いてホスファチジルセリンを標識するために特に使用される緩衝液と好ましくは同じである。
【0091】
マーカーとインキュベートした混合物の分析及び各混合物の血小板集団中の活性化血小板の特異的標識強度の測定からの血小板活性化レベルの計算(工程4及び5')
血小板に印を付けたら、活性化血小板は、好ましくはフローサイトメトリーによって分析される。実際、フローサイトメトリー技術は、数が減少した細胞性エレメントの存在下で血小板活性化を評価するのに特に有効なツールである。HITの疑いがある患者の血液は、ほとんどの場合血小板減少性なので、この場合上記は、大きな関心事である。
【0092】
そのため、そのような好ましい実施形態によると、工程3)において得られた全ての混合物を分析する工程4)は、各混合物のCD62Pの発現レベル及び/又は血小板表面へのホスファチジルセリンの露出(アネキシンVで標識することによる)を測定することを含む。
【0093】
任意選択で、本方法は、混合物のそれぞれにおいて抗体依存性血小板活性化レベル(APA)を計算する工程5')を更に含む。
【0094】
好ましい実施形態によると、2つの検証/標準化及び患者試験シリーズのそれぞれの混合物の血小板分析(工程4)並びにTPシリーズのAgo、2a、2b及び2c混合物の抗体依存性血小板活性化(APA)レベルの計算(工程5')が、例に示される窓割り戦略により実施され、その説明は、以下でより詳細に提供される。
【0095】
簡潔には、提案される窓割り戦略は:
- a)第1の選別が、各混合物の血液の他のエレメントから血小板だけを選択するために血小板集団に特異的な化合物の標識の強度の測定に基づいて第1のヒストグラムのピークに対して実施される工程と;
- b)選択された血小板集団において、活性化血小板によって発現される化合物(即ち血小板の活性化の状態に特異的なマーカー)、例えばCD62P、及び/又はアネキシンVを用いる標識を介したPSの標識強度の中央値が、第2のヒストグラムのピークに対して各シリーズの全ての混合物に対して測定される工程と;
- c)閾値が、第3のヒストグラムにおいて非活性化血小板と活性化血小板とを区別するために決定され、前の工程b)におけるAgo混合物(即ち、血小板の最大活性化状態)で得られるピークと基礎混合物(即ち、血小板活性化の基礎状態)で得られるピークの間の交点に置かれる工程と;
- d)第2のヒストグラムにおいて閾値を動かした後、2重に印を付けられた活性化血小板のパーセンテージ(即ち、閾値の右側の細胞事象)が、2つのシリーズそれぞれの混合物のそれぞれに対して算出される工程とを含む。
【0096】
結果の表現の好ましい様式によると、活性化血小板によって発現される化合物(即ち、血小板の活性化状態の特異的マーカー)の合計標識強度の中央値は工程b)の間に算出される。標識は、蛍光マーカーで好ましくは実施されるので、従って蛍光強度の中央値(MFI)が測定される。
【0097】
そのような場合、条件のそれぞれに対して、結果は、血小板集団のマーカーと血小板活性化状態に特異的なマーカーに対して2重陽性(例えばCD41+/CD62P+)の細胞のパーセンテージ(%)に、血小板集団中の血小板活性化状態に特異的なマーカーの合計MFIを乗じることによって表される(即ち、CD62P/CD41のMFI+合計標識)(%×MFI)。結果は、任意単位(AU)で表される。
【0098】
検証/標準化シリーズの技術的検証(工程5)
好ましくは、本発明の方法は、上に述べた工程1)~5')を含む。
【0099】
本発明によると、VSシリーズは:
- ヘパリンの非存在下及び/又は低濃度ヘパリンの存在下でポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向する抗体若しくは抗体断片によって誘導されるシリーズの試料中の血小板の活性化、並びに
- 高濃度ヘパリンの存在下での活性化の阻害
が観察された場合に検証されると考えられる。
【0100】
好ましくは、工程5)は、シリーズの活性化比及び同じシリーズの阻害比の計算によりVSシリーズを検証することで構成される。それにより、前記実施形態によると、2つの基準を考慮して、検証/標準化シリーズを技術的に検証する:
【0101】
VSシリーズにおいて、活性化は、ヘパリンの非存在下並びに/又は低濃度での存在下で、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体若しくはその断片、好ましくは抗体5B9、及びPF4の添加により最初に観察されるべきである。それにより、VSシリーズの活性化比は、ヘパリン及びPF4の非存在下の基礎混合物と、混合物1bと示される試験した低濃度ヘパリンの存在下で得られた最大血小板活性化との間で算出される。VSシリーズの活性化比は、以下の式で算出される:
【0102】
【0103】
第2に、ポリアニオン修飾PF4に対して特異的に指向するモノクローナル抗体又はその断片のうちの1つ、好ましくは抗体5B9によって誘導される血小板活性化のヘパリン依存性は、試験した高濃度ヘパリン存在下での阻害比を算出することによって評価される。VSシリーズの阻害比は、以下の式で算出される:
【0104】
【0105】
検証/標準化シリーズは、前の2つの基準:
- 活性化比VSシリーズ≧閾値、前記閾値は、試料集団で得られる平均から、外れ値を除外することによって定義される;並びに
- 閾値以上のVSシリーズ阻害比、前記閾値は、0.3~0.7に含まれ、好ましくは、0.4~0.6に含まれ、好ましくは約0.5である、
が満たされる場合のみ検証される。
【0106】
好ましくは、VS活性化比の陽性閾値は、CD62Pプロトコールの場合少なくとも5であり、アネキシンVプロトコールの場合少なくとも4である。
【0107】
ヘパリン誘導性血小板減少症の診断又は除外診断のための患者試験シリーズの結果の解釈(工程5'及び6)
検証/標準化シリーズの検証済み結果を使用して、患者試験シリーズの基礎、2a、2b及び2c混合物の抗体依存性血小板活性化レベル(APAと称される)を算出する(工程5')。パーセンテージとして本明細書において表される前記比は、2つのシリーズにおいて得られたAUで表される生の結果(%×MFI)から以下の式を用いて算出される:
【0108】
【0109】
計算により、患者試験シリーズで得られる結果の表現を標準化することによって患者毎及び操作毎の血小板の反応性の変動をなくすことが可能になる。
【0110】
同時に、最大APAが、定義された閾値より高い場合、以下の式に従ってTPシリーズのパーセンテージ阻害を算出することも可能になる:
【0111】
【0112】
それにより算出される活性化及び阻害のパーセンテージは、陽性及び陰性対照試料のコホートから確立された陽性並びに阻害の閾値と比較され、その閾値は、熟考されたマーカー及び血小板表面におけるその発現レベルの関数である。
【0113】
そのような実施形態によって得られる結果によると、従って、本発明は、患者においてHITを診断する又は疾病を有する疑いがある患者においてHITの診断を除外するのに役立つ。好ましくは、患者のTPシリーズにおいて低濃度ヘパリンの存在下で血小板の活性化が観察されない場合に、HIT除外の診断は確立される。好ましくは、患者のTPシリーズの血小板の活性化が、低濃度ヘパリンの存在下で観察され、血小板の活性化の阻害が、高濃度ヘパリンの存在下で観察される場合に、疾病を有する疑いがある患者においてHITの診断が確定される。
【0114】
それによって得られる分析結果は、以下の通り解釈される(工程6):
【0115】
I/以下の2つの条件が、患者試験シリーズに満たされる場合、HITの陽性診断が確定される:
- 高い血小板活性化(陽性閾値以上の値)が、低濃度ヘパリン存在下(混合物2b)で観察されるべきであり;
- 血小板の活性化の阻害(阻害閾値以上の値)が、試験した高濃度ヘパリンの存在下(混合物2c)で観察されるべきである。2つめの条件は、患者血液中に存在する抗ポリアニオン修飾PF4抗体によって誘導される血小板活性化のヘパリンに対する依存性を検証するのに役立つ。
【0116】
II/ HIT除外の診断は、以下の2つの場合に確立される:
・APAが低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で陽性閾値未満ある場合;又は
・APAが陽性閾値を越えるが、パーセンテージ阻害が陰性閾値未満である場合。
【0117】
III/ APAは、低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で陽性閾値以上であるが、高濃度ヘパリン(混合物2c)でパーセンテージ阻害が、グレーゾーンにある、即ち陰性閾値と陽性閾値の間に含まれる場合、試験は疑わしいとみなされる。このような場合、試験は、新たな試料に対して好ましくは繰り返されるべきである。
【0118】
本方法が、CD62P標識又はアネキシンVと使用される場合、結果は以下の通り解釈される:
【0119】
CD62Pプロトコール:
I/ APAが、低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値以上であり、高濃度ヘパリンの存在下(混合物2c)でパーセンテージ阻害が、50%以上である場合、試験は陽性とみなされる。
【0120】
APA陽性の閾値は、血小板減少症又はヘパリン療法開始後の血小板数の低下が40%以上であるヘパリン療法を受けているn名の患者集団に対して定義されることになる。
2つの異なる方法が使用されうる:
- APAの陽性閾値は、ROC曲線を使用して定義されえ、95%より大きい特異性が好ましい。この理由から、陰性ELISA及び陰性SRAの患者は、疾病が無いとみなされ、陽性ELISA及び陽性SRAの患者は、疾病を有するとみなされる。そのような方法は、抗体依存性血小板活性化20%におけるAPA maxの陽性閾値を定義するのに役立つ。
- APA陽性閾値は、陰性ELISA並びに陰性SRAでHITが疑われる患者の集団において測定されるAPA値の平均及び標準偏差によっても定義されうる。
【0121】
II/試験は、以下の2つの場合に陰性とみなされる:
・APAが低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値未満ある場合;又は
・APAが、低濃度ヘパリン(混合物2b)の閾値を越えるが、パーセンテージ阻害が、陰性閾値未満である場合。
【0122】
III/ APAが、低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値以上であるが、高濃度ヘパリン(混合物2c)でのパーセンテージ阻害が、30~50%に含まれる場合、試験は疑わしいとみなされる。このような場合、試験は、新たな試料に対して好ましくは繰り返されるべきである。
【0123】
アネキシンVプロトコール:
I/ APAが、低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値以上であり、高濃度ヘパリンの存在下(混合物2c)でパーセンテージ阻害が、50%以上である場合、試験は陽性とみなされる。
【0124】
APA陽性の閾値は、血小板減少症又はヘパリン療法開始後の血小板数の低下が40%以上であるヘパリン療法を受けているn名の患者集団に対して定義されることになる。2つの異なる方法が使用されうる:
- APAの陽性閾値は、ROC曲線を使用して定義されえ、95%より大きい特異性が好ましい。この理由から、ELISA陰性及びSRA陰性の患者は、疾病が無いとみなされ、ELISA陽性及びSRA陽性の患者は、疾病を有するとみなされる。そのような方法は、抗体依存性血小板活性化27%におけるAPA maxの陽性閾値を定義するのに役立つ。
- APA陽性閾値は、陰性ELISA並びに陰性SRAでHITが疑われる患者の集団において測定されるAPA値の平均及び標準偏差によっても定義されうる。
【0125】
II/試験は、以下の2つの場合に陰性とみなされる:
・APAが低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値未満ある場合;又は
・APAが、低濃度ヘパリン(混合物2b)の閾値を越え、パーセンテージ阻害が、陰性閾値未満である場合。
【0126】
III/ APAが、低濃度ヘパリンの存在下(混合物2b)で定義された閾値以上であるが、高濃度ヘパリン(混合物2c)でのパーセンテージ阻害が、30~50%に含まれる場合、試験は疑わしいとみなされる。このような場合、試験は、新たな試料に対して好ましくは繰り返されるべきである。
【0127】
本発明は、以下の例と共に次に例示され、その例は、マーカーCD62P及びアネキシンVを用いるフローサイトメトリーによる本発明の実施形態について記載し、HIT除外診断又はHIT確定診断を確立するための窓割り戦略並びに上に示した結果を解釈する方法に従う。
【実施例】
【0128】
本発明による方法の実施
1/使用した試薬:
【0129】
【0130】
2/試験の説明(本発明による方法)
本発明による試験は、クエン酸ナトリウム(3.2%、1:9、0.109mmol/L)に採取された患者の全血を用いて実施され、生理的食塩水(NaCl 9g/L)に希釈される。
【0131】
患者血液から、2セットの試験が実行され:
- 検証/標準化シリーズは、患者の全血に患者によって生じるHIT抗体を模倣するキメラモノクローナル抗体5B9を添加した後に実施される。そのようなシリーズは:
・低濃度ヘパリンの存在下でモノクローナル抗体5B9によって活性化される患者の血小板の能力を査定することによって技術を検証し;
・同時に実施された患者試験シリーズの結果の発現を標準化するのに役立ち;
- 患者試験シリーズは、患者の血液中に存在する抗PF4/H抗体が、低及び高濃度ヘパリンの存在下で血小板活性化を誘導する能力を評価するのに役立つ。
【0132】
例をより良く理解するために、以下のTable 2(表2)~Table 14(表14)において、第1列のチューブ1及び7は、検証/標準化(VS)及び患者試験(TP)シリーズの混合物1a及び2aにそれぞれ対応し、チューブ2~3及び8~9は、混合物1b及び2bに対応し、チューブ4及び10は、混合物1c及び2cに対応し、チューブ5は、Ago混合物に対応し、チューブ6は、基礎混合物に対応することが指定される。
【0133】
3/実験手順:
- P-セレクチン(CD62P)の発現の標識:
第1の検証/標準化シリーズは、モノクローナル抗体5B9の添加後に希釈された(希釈1/4)患者の血液で実施され、外来の血小板第4因子(PF4)(10μg/mL)及び異なる濃度のヘパリン(0、0.05、0.5及び100IU/mL)とインキュベートされる(VSシリーズ、工程1)。
【0134】
試験の第2のシリーズ(患者試験)は、同じ条件下で実施されるが、抗体5B9のいかなる添加もない(TPシリーズ、工程2)。TPシリーズの間、非特異的血小板活性化対照(Ago混合物)は、強力なアゴニスト(TRAP、50μm)で実行される。PBS生理食塩水緩衝液の存在下の対照(基礎混合物)も、患者の血小板活性化の基礎レベルを得るために実行される。2つの対照は、使用される蛍光マーカーの陽性閾値を置くのに役立つ。
【0135】
インキュベーション後、活性化された血小板は、抗CD41-APC及び抗CD62P-PE標識抗体で標識される(工程3)。抗CD41抗体の使用は、試料中の血小板の特異的標識を可能にし、抗CD62P抗体は、血小板活性化を評価するために認識されているマーカーである。
【0136】
試験の2つのシリーズは、フローサイトメトリーによって次いで分析される(工程4)。
【0137】
- アネキシンVによりホスファチジルセリンの露出を標識する:
第1の検証/標準化シリーズは、モノクローナル抗体5B9の添加後に希釈された(希釈1/4)患者の血液で実施され、外来の血小板第4因子(PF4)(10μg/mL)、異なる濃度のヘパリン(0; 0.05; 0.5及び100IU/mL)、トロンビン阻害剤(ヒルジン又はアルガトロバン)、TRAP(100μM)及びカルシウム緩衝液とインキュベートされる(VSシリーズ、工程1)。
【0138】
試験の第2のシリーズは、同じ条件下で実施されるが、モノクローナル抗体5B9の非存在下である(TPシリーズ、工程2)。非特異的血小板活性化の対照(Ago混合物)は、強力なアゴニスト(カルシウムイオノフォアA23187、5μM)で実行される。PBS生理食塩水緩衝液の存在下の対照(基礎混合物)も、血小板活性化の基礎レベルを得るために実施される。2つの対照は、使用される蛍光マーカーの陽性閾値を置くのに役立つ。
【0139】
インキュベーション後、抗体標識抗-CD41-APC及びアネキシンV-FITCが添加される(工程3)。アネキシンVは、活性化血小板の表面におけるホスファチジルセリンの露出を実証する。
【0140】
試験の2つのシリーズは、フローサイトメトリーによって次いで分析される(工程4)。
【0141】
CD62P又はアネキシンVについて実行される実験的設計の例が、Table 2(表2)に示される:
【0142】
【0143】
4/窓割り戦略(例えば、CD62Pを標識する):
最初に、第1のCD41-APC対カウントヒストグラムにおいて、閾値が、血小板(CD41+)とマーカーを発現しない他の血液細胞(CD41-)とを区別するために置かれる:
→血小板分析
【0144】
次いで、第2のヒストグラムにおいて、全CD41+細胞の中からCD62Pマーカーの合計蛍光強度中央値(MFI)が、測定される:
→CD41+/CD62P細胞のMFIの測定
【0145】
CD41+/CD62P-細胞(非活性化血小板)とCD41+/CD62P+二重陽性細胞(活性化血小板)とを区別するための閾値は、第3のCD62P-PE対カウントヒストグラムにおけるTRAPによる活性化条件(チューブ5)と静止条件(チューブ6)との間に含まれる2つのピークの交点に置かれる。第2のヒストグラムに対する閾値を動かした後、CD41+/CD62P+二重陽性細胞のパーセンテージが、試験した各条件について算出される:
→二重陽性CD41+/CD62P+細胞のパーセンテージの測定
【0146】
5/結果の表現:
上記の説明において提案された結果の計算及び表現の方法のうちの1つによると、以下のことが想起される:
【0147】
a/条件のそれぞれに対して、結果は、活性化CD41+/CD62+細胞のパーセンテージにそのMFI(MFI CD62P)を乗算することによって表される。積は、「%×MFI」によって示され、任意単位(AU)で表される;
【0148】
b/患者毎及び操作毎の血小板反応性の変動をなくすために、検証/標準化シリーズにおいて得られた生の結果(%×MFI)は、各チューブに対して以下の計算を実行することによって患者試験シリーズにおいて得られた結果の表現を標準化する:
【0149】
【0150】
c/ TPシリーズのパーセンテージ阻害も、式:
【0151】
【0152】
で算出される。
【0153】
6/ HITが疑われる患者2名において得られた結果の例:
以下の表と上式によって与えられる計算との間に含まれる注目されうるわずかな差異は、自動値調整を実行する使用されるデバイスに固有である。
【0154】
A/ CD62P標識で得られた結果:
患者1のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0155】
【0156】
患者2のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0157】
【0158】
b/アネキシンV(AnxV)マーカーで得られた結果:
アネキシンVが標識では、窓割り戦略及びCD62Pプロトコールで示されたものと類似の結果の表現が適用される。
【0159】
患者1のアネキシンVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0160】
【0161】
患者2のアネキシンVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0162】
【0163】
c/ CD62P及びアネキシンVの結果の解釈:
2名の患者では、検証/標準化(SV)シリーズは、研究した2つのマーカーについて基礎条件(PBS、チューブ6、基礎混合物)と比較して、PF4及び低濃度ヘパリンの存在下[0.05及び/又は0.5IU/mL、それぞれチューブ2及び3(混合物1b)]ではAUで表される「%×MFI」パラメータの増大、並びに100IU/mLヘパリンの存在下(チューブ4、混合物1c)では血小板活性化の阻害を具体化する。
【0164】
P-セレクチン(CD62P)標識の場合、患者1及び2それぞれのVS活性化比299.8及び13.2は、低濃度ヘパリン存在下での血小板の活性化を実証する(陽性閾値5)。
【0165】
2名の患者の場合、VS阻害比0.88及び0.9がそれぞれ得られ、高濃度ヘパリン存在下での、5B9抗体誘導性活性化の阻害を実証した(閾値≧0.5)。
【0166】
アネキシンVによるホスファチジルセリン露出の標識の場合、患者1及び2それぞれのVS活性化比95.9及び11.3は、低濃度ヘパリン存在下での血小板活性化を実証する(陽性閾値4)。2名の患者の場合、それぞれ0.85及び0.65と等しいVSシリーズの阻害の比が得られ、高濃度ヘパリン存在下での、抗体5B9によって誘導される活性化の阻害を実証した(閾値≧0.5)。
【0167】
モノクローナル抗体5B9の存在下で、VSシリーズで得られた結果は、本発明による方法が、試験した患者の血液における抗ポリアニオン修飾PF4活性化因子抗体の存在によって誘導される血小板活性化を実証することを可能にし、TPシリーズの結果を解釈するのに役立つことを実証する。
【0168】
患者1におけるTPシリーズCD62P発現の標識の場合、低濃度ヘパリン存在下(0.05及び/又は0.5IU/mL、混合物2b)で算出された(上に記載の数3による)最大抗体依存性血小板活性化(APA)は、28%(陽性閾値≧20%)であり、試験した高濃度ヘパリン存在下(100IU/mL、混合物2c)では94%阻害した(閾値≧50%)。そのようなパラメータでは、ヘパリン依存性血小板活性化を示すTPシリーズは陽性である。
【0169】
他方、患者2の場合、血小板活性化は、低濃度ヘパリン存在下(0.05及び/又は0.5IU/mL、混合物2b)で具体化されず: 最大APAは1%であり、従って試験の陽性閾値未満である。このパラメータの場合、TPシリーズは陰性である。機能的試験の結果は、HITの診断を支持しない。
【0170】
患者1におけるTPシリーズアネキシンVによるホスファチジルセリン露出標識の場合、算出された抗体依存性血小板活性化パーセンテージは、215%(陽性閾値≧27%)であり、試験した高濃度ヘパリン存在下(100IU/mL、混合物2c)で96%阻害(閾値≧50%)である。前記パラメータの場合、TPシリーズは陽性である。機能的試験の結果は、HITの診断を支持する。
【0171】
他方、患者2の場合、血小板活性化は、低濃度ヘパリン存在下(0.05及び/又は0.5IU/mL、混合物2b)で具体化されず:最大APAは16%であり、従って試験の陽性閾値未満である。このパラメータの場合、TPシリーズは陰性である。機能的試験の結果は、HITの診断を支持しない。
【0172】
結果(患者1及び2)は、HITを診断するための参照血小板活性化試験:セロトニン放出アッセイ(SRA)で確定された。
【0173】
注意点として、SRAは、HITを診断するための機能的試験である。アッセイは、密顆粒に事前に組み込まれた放射性標識セロトニン(14C-セロトニン)の、血小板活性化中の放出の測定に基づく。血小板洗浄工程は、血漿基材の除去に役立つ。異なる濃度のヘパリンの添加は、健康なドナーの血小板表面でPF4/H複合体の形成をもたらす。病原性抗体は、そのFab断片によって巨大分子PF4/H複合体を認識し、FcγIIA受容体に結合するFc断片を介して血小板を活性化する。顆粒の内容物は、反応培地中へと放出され、上清中で測定される放射活性は、血小板の活性化と正比例する。
【0174】
7/ HITが疑われる患者4名(患者3~6)において得られた結果の例:
以下の表と上式によって与えられる計算との間に含まれる注目されうるわずかな差異は、自動値調整を実行する使用されるデバイスに固有である。
【0175】
A/ CD62P標識で得られた結果:
患者3のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0176】
【0177】
患者4のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0178】
【0179】
患者5のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0180】
【0181】
患者6のCD62Pマーカーについて得られた結果は、以下の通りである:
【0182】
【0183】
B/アネキシンVマーカーで得られた結果:
患者3名のAnxVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0184】
【0185】
患者4名のAnxVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0186】
【0187】
患者5名のAnxVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0188】
【0189】
患者6名のAnxVマーカーに対して得られた結果は、以下の通りである:
【0190】
【0191】
c/ CD62P及びアネキシンVの結果の解釈:
患者3~6の場合、VSシリーズは:
- 基礎条件(PBS、チューブ6、基礎混合物)と比較して、閾値を越えたVSシリーズの活性化比による、PF4存在下及び低濃度ヘパリン存在下(0.05及び/又は0.5IU/mL、それぞれチューブ2及び/又は3、混合物1b)でAUとして表されるパラメータ「%×MFI」の増大、並びに
- 閾値を超えるVSシリーズの阻害比により、研究した2つのマーカーについて100IU/mLヘパリン存在下(チューブ4、混合物1c)での血小板活性化の阻害、を具体化する。高濃度ヘパリン存在下における血小板活性化の阻害は、HIT抗体に特徴的である。
【0192】
モノクローナル抗体5B9の存在下で、VSシリーズで得られた結果は、本発明による方法が、試験した患者の血液における抗PF4/H活性化因子抗体の存在によって誘導される血小板活性化を実証するのに役立つことを実証する。
【0193】
患者3及び5の血液を用いてTPシリーズについて得られた結果に関して、基礎条件(チューブ6、PBS、基礎混合物)と比較して、APAの増大が、低濃度ヘパリン存在下(0.05及び/又は0.5IU/mL、それぞれチューブ8及び/又は9、即ち混合物2b)で観察される。100IU/mLヘパリン存在下(チューブ10、混合物2c)で血小板活性化の阻害が、研究した2つのマーカーについて観察される。この結果は、試料中の活性化因子(病原体)及びヘパリン依存性抗PF4抗体の存在の証明である。患者3及び5について得られた結果は、HITの診断を支持する。生物学的試験の結果は、ヘパリン誘導性血小板減少症の診断を確定又は除外するために臨床データと比較されるべきである。
【0194】
他方、患者4及び6の場合、使用したマーカーに関係なく、血小板の活性化は具体化されず、それは、前記患者の血液中に活性化因子抗体(病原体)が存在しないことを実証する。患者4及び6について得られた結果は、HITの診断を支持しない。
【0195】
結果(患者3~6)は、参照アッセイ(SRA、セロトニン放出アッセイ)で確定された。
【配列表】
【国際調査報告】