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特表2025-504706運動機能を改善する方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-17
(54)【発明の名称】運動機能を改善する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20250207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537409
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022000033
(87)【国際公開番号】W WO2023121689
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/291,858
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517023378
【氏名又は名称】メジオン ファーマ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524057511
【氏名又は名称】イェーガー,ジェームズ,エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ジェームズ,エル.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
(57)【要約】
フォンタン手術を受けたフォンタン循環を有する患者(フォンタン患者)を含む単心室心臓病(SVHD)患者を処置して、運動機能を改善するための、特に、サブスーパーフォンタン集団、即ち予測の80%未満(<80%)のベースラインピークまたは最大VOを有するフォンタン患者のサブ群におけるピークまたは最大VOでの運動機能を改善し、スーパーフォンタン集団、即ち予測の80%より大きい(>80%)のベースラインピークまたは最大VOを有するフォンタン患者と、サブスーパーフォンタン集団の両方における換気性無酸素閾値(「VAT」)での運動機能を改善するための、様々な方法および組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能する一つの心室およびフォンタン手術後のフォンタン生理機能を有し(フォンタン患者)、最大労作またはピークVOでの酸素消費量により測定される前記フォンタン患者の運動能力を改善するための処置を必要としている単心室心臓病(SVHD)患者を処置する方法であって、前記フォンタン患者が、予測の80%未満(<80%)のベースラインピークまたは最大VOを有し、前記フォンタンの運動能力が、前記フォンタン手術後の前記フォンタン患者の心機能の低下により悪影響を受け、前記方法が、
ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を前記フォンタン患者に毎日投与して、最大労作またはピークVOでの酸素消費量により測定される前記フォンタン患者の運動能力を改善する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記有効量が、約125mgから175mgの間の量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1日分の有効量が、約175mgの量のウデナフィルまたは薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1日分の総投与量が、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の2回の個別の用量からなり、それぞれの前記個別の用量が、約87mgのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
それぞれの前記個別の用量が経口固形剤形である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が経口固形剤形である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記経口固形剤形が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フォンタン患者が少なくとも12歳である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フォンタン患者の
(a)心筋パフォーマンス指数(MPI)により測定される前記フォンタン患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)換気性無酸素閾値(VAT)での酸素消費量により測定される運動能力、
(c)VATでの仕事率、および
(e)VATでのVE/VCO2を、単独で、またはあらゆる組み合わせで更に改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
機能する一つの心室およびフォンタン手術後のフォンタン生理機能を有し(スーパーフォンタン患者)、最大労作またはピークVOでの酸素消費量により測定される前記スーパーフォンタン患者の運動能力を改善するための処置を必要としている単心室心臓病(SVHD)患者を処置する方法であって、前記スーパーフォンタン患者が、予測の80%より大きい(≧80%)ベースラインピークまたは最大VOを有し、前記スーパーフォンタンの運動能力が、前記フォンタン手術後の前記スーパーフォンタン患者の心機能の低下により悪影響を受け、前記方法が、
ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を前記スーパーフォンタン患者に毎日投与して、換気性無酸素閾値(VAT)での酸素消費量により測定される前記スーパーフォンタン患者の運動能力を改善する工程を含む、方法。
【請求項12】
前記有効量が、約125mgから175mgの間の量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量が、約175mgの量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1日分の総投与量が、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の2回の個別の用量からなり、それぞれの前記個別の用量が、約87mgのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
それぞれの前記個別の用量が経口固形剤形である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が経口固形剤形である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記経口固形剤形が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スーパーフォンタン患者が少なくとも12歳である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記スーパーフォンタン患者の
(a)心筋パフォーマンス指数(MPI)により測定される前記スーパーフォンタン患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)VATでの仕事率、および
(c)VATでのVE/VCO2を、単独で、またはあらゆる組み合わせで更に改善する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益についての意見
本研究は、少なくとも一部は、米国国立衛生研究所の国立心肺血液研究所(NHLBI)からの助成金により資金が提供された。主な助成金支援は、New England Research Institutes,Inc.へのNHLBI助成金U24 HL135691および/またはU01 HL068270によるものであった。Pediatric Heart Networkの臨床現場への助成金(UG1 HL135685、UG1 HL135680、UG1 HL135683、UG1 HL135689、UG1 HL135682、UG1 HL135665、UG1 HL135646、UG1 HL135678、UG1 HL135666)。政府は、本明細書に開示されたデータおよび発明の一定の権利を有しうる。
【0002】
関連出願
本仮出願は、2021年12月20日に出願された仮出願番号第63/291,858号からの優先権を主張する。関連する仮出願は、2019年9月24日に出願された仮出願番号第62/905,350号、2019年11月16日に出願された仮出願番号第62/936,497号、および2020年5月11日に出願された仮出願番号第63/023,070号を含む。
【0003】
フォンタン生理機能を有するSVHD患者(フォンタン患者)を含む単心室心臓病(「SVHD」)患者における運動機能を改善して、特に、サブスーパーフォンタン集団、即ち予測の80%未満(<80%)のベースラインピークまたは最大VOを有するフォンタン患者のサブ群におけるピークまたは最大VOでの運動機能を改善し、スーパーフォンタン集団、即ち予測の80%より大きい(≧80%)のベースラインピークまたは最大VOを有するフォンタン患者と、サブスーパーフォンタン集団の両方における換気性無酸素閾値(「VAT」)での運動機能を改善する方法。
【背景技術】
【0004】
心臓は、循環系の血管によって血液をポンピングする筋肉性の臓器である。ヒトでは心臓は肺と胸郭の間に配置され、左側および右側に分けられる。正常なヒトの心臓は、左側の左心房および左心室、ならびに右側の右心房および右心室の4つの部屋を有する。酸素に乏しい血液(「青い血液」)が右心房を通って右側に入り、新たに酸素化された血液(「赤い血液」)が左心室を通って左側から出る。心臓は、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁および大動脈弁の4つの弁を有する。これらの弁は、心臓内での血液の逆流を防ぎ、血液を肺および身体へと順方向に流れさせる。
【0005】
ヒトの心臓は、1日当たり約100,000回鼓動(拡張および収縮)し、毎分5~6クオート、または1日当たり約2,000ガロンの血液をポンピングする。心臓の主な、ポンピングを行う部屋である左心室は、新たに酸素化された血液(赤い血液)を、大動脈弁を通って身体へとポンピングする。次いで、血液は、動脈および細動脈を通って身体の全ての部分へと循環し、酸素および栄養素を届ける。血液は循環により流れながら、酸素および栄養素を二酸化炭素および代謝廃棄物と交換する。このプロセスにおいて、血液は、酸素に富む血液(赤い血液)から酸素に乏しい血液(青い血液)へと移行する。次いで、酸素に乏しい血液は、身体の静脈を通って右心房へと戻る。青い血液は、三尖弁を通って右心房から右心室へと入り、次いで、右心室により肺にポンピングされ、二酸化炭素を酸素と交換する。ここで新たに酸素化された血液(赤い血液)は、肺静脈により肺から左心房に戻る。血液は、僧帽弁を通って左心房から左心室へと入り、次いで、身体にポンピングされて再び循環を開始する。
【0006】
従って、正常なヒトの心臓血管系は、順次つながっており右心室および左心室のポンピングを動力源とした肺循環および体循環からなる。
【0007】
Gewillig M.: Congenital heart disease. THE FONTAN CIRCULATION. Heart, 91:839-846 (2005)。
【0008】
単心室心臓病(SVHD)は、心臓の先天性異常の一群を含むまれな小児科疾患であり、そのそれぞれが単一の機能性心室(ポンピングを行う部屋)のみの存在をもたらす。言い換えれば、正常な心臓(4つの部屋および2つの心室)を持って生まれた新生児とは異なり、SVHDの新生児は、1つのみの機能している心室(1つの、ポンピングを行う部屋)、即ち単心室の心臓を持って生まれる。機能していないかまたは存在しない心室(ポンピングを行う部屋)は、十分に機能しないような、単心室よりも小さいものであることもあり、全く存在しないこともあり、または循環により正常の血流に寄与することができないように構成されていることもある。SVHDの例は、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、両房室弁左室挿入等を含む。
【0009】
典型的には、酸素に乏しい血液(青い血液)および酸素に富む血液(赤い血液)の混合物は単心室で一緒に混ざることから、SVHDの新生児はチアノーゼで青色をしている。心臓から出る血液混合物内の酸素量は、SVHD心臓欠損の種類、重症度および場所に大きく依存する。SVHDの新生児は軽度のチアノーゼの場合もあるが、重度のチアノーゼの場合もあり、身体の酸素要求量を満たして生存するために早期介入を必要とする。残念なことに、外科的介入なしでは、SVHDを持って生まれたほとんどの新生児は生存できない。
【0010】
SVHDは、2つの基本のサブタイプを有すると考えることができる。第1のサブタイプでは、左心室および大動脈(身体へ向かう主な動脈)が発育不全であり、心臓は介入手順なしで血液を身体にポンピングすることができない。第2のサブタイプでは、右心室および肺動脈(肺へ向かう主な動脈)が発育不全であり、心臓は血液を肺にポンピングすることができない。
【0011】
第1のサブタイプである発育不全の左心室および大動脈を持って生まれたそれらの幼児については、身体への血流を安定化させるために、人生の最初の数日または数週間以内に緊急介入が必要とされる。この介入はノーウッド手術と呼ばれ(図5参照)、肺動脈弁および肺動脈をパッチ材料と共に用いる大動脈(身体へ向かう主な動脈)の再構築を含む。ノーウッド手術は、血液を身体に供給するように、目的を変更して肺動脈を用いることから、肺に到達する血液の経路も含む必要がある。これは、大動脈循環から肺循環への血液の「シャント」を含めることにより達成される。このシャントは、一般的に、右鎖骨下動脈(血液を右腕に供給する動脈)と右肺動脈の間に配置される管の移植片である。ノーウッド手術は新生児に幼年期を生き延びさせるが、永続的な解決策ではない。この一時的な手術は、心臓の単一の、ポンピングを行う部屋に、身体および肺の両方に血液をポンピングすることを強いて、ストレスを受ける状態にさせる。このストレスを軽減するため、2つの更なる手術が行われる。これらのうちの最初のものであるグレンシャントまたはヘミフォンタン(図6参照)は、4~6ヵ月に起こり、上大静脈(上半身の主な静脈)を直接肺動脈につなぐことを含む。これは、心室ポンプを必要とすることなく、酸素充満のために上半身からの青い血液を肺に戻すことを可能にする。最後の手術であるフォンタン手術(図1Aおよび図7参照)は、典型的には、生後18~48ヵ月に起こり、下大静脈(下半身の主な静脈)を直接肺動脈につなぐことを含む。これは、心室ポンプ、特に血液を肺にポンピングすることを必要とすることなく、酸素充満のために下半身からの青い血液を肺に戻すことを可能にする。フォンタン手術後、全ての青い血液は肺に戻り、全ての赤い血液は肺から心臓に戻るが、これは、正常な4つの部屋の心臓のような肺を通って心臓まで血液をポンピングするのに専念する心室ポンプの援助なしで達成される。
【0012】
第2のサブタイプである発育不全の右心室および肺動脈を持って生まれたそれらの幼児については、緊急の新生児介入は必要とされないことが多い。この群の赤ん坊は、肺へ向かう血流が少なすぎるのか、肺へ向かう血流が多すぎるのか、または成長および発達を可能にするための適量の血流があるのかどうかを決定するために綿密なモニタリングを必要とする。肺へ向かう血流が少なすぎる場合、ノーウッド手術の一部として行われたものと同様にシャントが配置されることが多い。肺へ向かう血流が多すぎる場合、肺へ向かう血流量を減少させてうっ血性心不全の進行を防ぐために、肺動脈の周りに制限器が配置されうる。肺へ向かう血流量が適切である場合、発育不全の右心室および肺動脈を持って生まれた幼児は、外科的介入の必要性なしに彼らの人生の初期の数ヵ月を経験しうる。肺へ向かう血流が少なすぎようと、多すぎようと、または適量であろうと、この種類のSVHDを持って生まれた幼児は、心臓から負担を軽減し、赤い血液から青い血液を分離するために生後4~6ヵ月でグレンシャントまたはヘミフォンタンを、生後18~48ヵ月でフォンタンをやはり必要とする。
【0013】
フォンタン手術後は、全ての患者に共通の生理機能である(i)心臓を迂回する、下大静脈および上大静脈から直接肺へ向かう受動的血流、ならびに(ii)血液を身体にポンピングする単心室が残されることから、単心室心臓病のサブタイプはそれほど重要ではない。この「フォンタン循環」は、多くの何千もの患者のこの40~50年にわたる生存を可能にしているが、それは正常とは程遠い。血液を肺へと押して心臓に戻す心室ポンプがない場合、フォンタン循環は、この課題を成し遂げるために身体の静脈内に生成される圧力に頼る必要がある。これは、静脈内の非常に上昇した「血圧」をもたらし、所定の時間に身体中を循環することのできる流量も制限する。これは減少した心拍出量と呼ばれる。
【0014】
経時的に、上昇した静脈圧力と減少した心拍出量の組み合わせは、予測どおりの一連の長期にわたる合併症を引き起こし、最終的には大きく減少した生存期間をもたらす。フォンタン循環に関連する合併症は、腎臓および肝臓への損傷、肺または消化管でのタンパク質の損失を引き起こすリンパ循環の過負荷、脳卒中のリスクを含む出血性および血液凝固性の障害、ならびに心臓自体のポンピングを行う能力の進行性機能障害を含む。
【0015】
運動を行う能力は、循環の健康のマーカーとして心臓病の多くの形態で用いられる。フォンタン循環の人たちにとって、運動は同様に健康の重要な尺度であり、転帰の良い予測因子である。運動能力は、小児期にはフォンタン循環の人たちに維持されることが多いが、典型的には、青年期および早期成人期には低下し始める。この悪化は、フォンタン循環自体の合併症に起因することの多い、心不全症状の有病率、入院、および死亡率の増加と相関する。いくつかの場合には、心臓移植が依然として治療選択肢でありうるが、心臓移植はそれ自体一連のリスクを伴い、フォンタン循環の患者は、多くの臓器系の慢性進行性機能障害に起因して心臓移植の対象にならないことが多い。
【0016】
この長期にわたる非常に深刻な先天性心臓病にもかかわらず、現在まで、米国食品医薬品局(FDA)または世界中のいずれかの他の同等の機関によっても、フォンタン患者を含むSVHD患者の処置のための薬物療法は承認されていない。従って、SVHDおよびフォンタン循環の合併症に関連し、フォンタン患者を含むSVHD患者の寿命を増大させることを目的として、疾患の進行および心臓移植の必要性を回避または遅延させる、フォンタン患者を含むSVHD患者に対する新たな薬物療法の実際の必要性および要求がある。
【0017】
(i)心筋パフォーマンス指数(「MPI」)を改善し、(ii)単心室機能を改善し、(iii)換気性無酸素閾値(VAT)および/もしくは最大有酸素量(最大VOまたはVO最大値)での運動能力を改善し、(iv)VATでの仕事率を改善し、(v)VATでの二酸化炭素の換気当量(VE/VCO)を改善し、ならびに/または(vi)単心室の心臓機能を改善するための、フォンタン患者を含むSVHD患者に対する新たな薬物療法の実際の必要性および要求もある。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の現在の処置に関連する上述した欠点および不利益を、フォンタン患者を含むSVHD患者を処置する新たな方法の発見によって克服する。
【0019】
概して言えば、本発明の方法は、フォンタン患者を含むSVHD患者を処置するためのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0020】
より具体的には、本発明の方法は、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与して、特にそれらの患者のMPIおよび運動能力または運動機能を改善する工程を含む。
【0021】
概して、本発明の方法は、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に毎日投与して、
(a)MPIにより測定されるSVHD患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)VATでの酸素消費量により測定される運動能力、
(c)最大労作または最大VOでの酸素消費量により測定される運動能力、
(d)VATでの仕事率、
(e)VATでのVE/VCO
(f)安静時の拡張期血圧、および
(g)安静時の酸素飽和度(%)を、それぞれ個別に、集合的にまたはそれらのあらゆる組み合わせで改善する工程を含む。
【0022】
好ましくは、本発明の方法は、上記に挙げた(a)~(g)を、個別に、集合的にまたはそれらのあらゆる組み合わせを含めて改善する。好ましくは、本発明の方法は、少なくとも上記に挙げた(a)~(e)の組み合わせを改善する。最も好ましくは、上記に挙げた(a)~(g)が、個別に、集合的にまたはそれらのあらゆる組み合わせを含めて、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に毎日投与することにより本発明に従って改善される。
【0023】
本発明の方法に従う単心室機能の改善は、収縮機能および拡張機能の両方の改善を含む。これらは、血液プールMPI、組織ドップラーMPI、心拍出量(ドップラー由来流出曲線下の積分と心拍数との積により推定される)、および単心室心臓機能の他の尺度の改善により実証することができるが、これらに限定されない。本発明の方法に従う運動能力または運動機能の改善は、無酸素閾値(「VAT」)での運動能力もしくは運動機能の改善、および/または最大労作もしくは最大VOでの運動能力もしくは運動機能の改善を含むが、これらに限定されない。また、本発明に従い、本発明の方法がフォンタン患者を含むSVHD患者に関して行われる場合、VATでの仕事率、VATでの二酸化炭素の換気当量(VE/VCO)、安静時の拡張期血圧、および/または安静時の酸素飽和度(%)が改善する。
【0024】
一般的に、「有効量」は、処置を制限する副作用を引き起こすことなく、治療的または薬理学的な効果を生じさせるかまたは誘発するのに十分なウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の量を意味するために本明細書で用いられる。
【0025】
より具体的には、「有効量」は、処置を制限する毒性、PDE6および/もしくはPDE11の阻害と関連する処置を制限する副作用、ならびに/またはいずれの他の処置を制限する副作用も引き起こすことなく、フォンタン患者を含むSVHD患者において治療的または薬理学的な効果を生じさせるかまたは誘発するのに十分なウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の量を意味するために本明細書で用いられる。
【0026】
本発明に従うウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の「有効量」の例は、約87.5mg~約175mgを含むがこれらに限定されない範囲の1日分の総量を含む。より好ましくは、本発明に従うウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の「有効量」は、約125mg~約175mgの範囲の1日分の総量を含む。更により好ましくは、本発明に従うウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の「有効量」は、1日に1回または2回投与される約75mgまたは87.5mgの単回投与量、および1日に1回投与される約125mgの単回投与量を含む、毎日投与される単回投与量を含むがこれらに限定されない経口投与量を含む。
【0027】
本発明はまた、処置を制限する副作用、例えば視覚伝達または視覚機能、背部痛、筋肉痛、精子の濃度または質の障害を引き起こすことなく、特に、MPI、心室機能、心拍出量、VATでの運動能力または運動機能、最大労作またはVO最大値での運動能力または運動機能、VATでの仕事率、VATでのVE/VCO、安静時の拡張期血圧、ならびに安静時の酸素飽和度(%)を、個別に、集合的にまたはあらゆる組み合わせで改善するために、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含む方法について検討する。言い換えれば、本発明は、ホスホジエステラーゼ-6(「PDE6」)および/またはホスホジエステラーゼ-11(「PDE11」)の阻害と関連する処置を制限する副作用を引き起こすことのない、効果的なPDE5阻害剤、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量による、フォンタン患者を含むSVHD患者の好ましくは毎日の処置について検討する。本明細書で使用される場合、PDE6は、あらゆるアイソザイム、バリアント、PDE6の触媒サブユニットおよび/または阻害サブユニット、例えばPDE6a、PDE6P、PDE6Y、PDE6Rおよび/またはPDE6Cを、個別に、集合的にまたはあらゆる組み合わせで含み、本明細書で使用される場合、PDE11は、ホスホジエステラーゼ-11A(PDE11A)ならびにあらゆるアイソザイム、バリアント、PDE11の触媒サブユニットおよびまたは阻害サブユニット、例えばPDE11A1、PED11A2、PDE11A3および/またはPDE11A4を含むPDE11Aを、個別に、集合的にまたはあらゆる組み合わせで含む。
【0028】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者のMPIを改善する方法に関する。本明細書で使用される場合、MPIは、大域的な心機能の評価のために収縮機能および拡張機能の両方を測定する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0029】
本発明に従うMPIに関して、「改善する(improve)、改善する(improving)、改善または改善された」により、本明細書においては、単心室機能を改善すること、即ち機能する一つの心室の拡張機能および収縮機能を改善することを意味することが理解される。言い換えれば、機能する一つの心室は、心拍ごとにより良好にまたはより効率的に圧力をかける。結果として、心拍出量、および本発明の方法に従って行うかまたは処置されるフォンタン患者を含むSVHD患者の身体中を所定の時間に循環することのできる血流量は、特に本発明の方法に従って処置されないフォンタン患者を含むSVHD患者と比較して、増大または改善される。従って、本発明の方法は、本発明の方法を欠く(例えば、ウデナフィル投与がない)MPI、または単心室機能の他の開示された尺度と比較して、フォンタン患者を含むSVHD患者においてMPI、または心室機能の他の開示された尺度の改善をもたらす。例えば、改善は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)血液プールMPI、または単心室機能の他の開示された尺度と比較して、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30%以上になりうる。
【0030】
本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0031】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室の収縮機能を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、SVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0032】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室の拡張機能を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、SVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0033】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室の心拍出量を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、SVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0034】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室の圧力をかける能力を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の静脈圧の上昇を低下させることにより静脈圧を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0036】
1つの実施形態において、本発明は、所定の時間にフォンタン患者を含むSVHD患者の身体中を循環することのできる血流量を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0037】
従って、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室の大域的な単心室機能を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、SVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0038】
更に別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の安静時の拡張期血圧を改善する方法に関し、それによりフォンタン患者を含むSVHD患者の安静時の拡張期血圧が有意に低下する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0039】
更に別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の安静時の酸素飽和度(%)を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0040】
更に別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の運動機能または運動能力を改善する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の換気性無酸素閾値(「VAT」)での運動機能または運動能力を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法で処置されないかまたは本発明の方法を実行しない(例えば、本発明の方法に従った毎日のウデナフィル投与がない)フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでのVOと比較して、フォンタン患者を含むSVHD患者においてVATでの改善したVOをもたらす。例えば、改善は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)VATでのVOと比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30%以上になりうる。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者の最大労作または最大VOでの運動機能または運動能力を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)最大労作でのVOと比較して、フォンタン患者を含むSVHD患者の最大労作での改善したVOをもたらす。例えば、改善は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)最大労作でのVOと比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30%以上になりうる。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでの仕事率を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)VATでの仕事率と比較して、フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでの改善した仕事率をもたらす。例えば、改善は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)VATでのVOと比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30%以上になりうる。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでのVATでの二酸化炭素の換気当量(「VE/VCO」)を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)VATでのVE/VCOと比較して、フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでの改善したVE/VCOをもたらす。例えば、改善は、本発明の方法を欠く(例えば、毎日のウデナフィル投与がない)VATでのVOと比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30%以上になりうる。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0045】
1つの実施形態において、本発明は、異常なSVHD心臓の心臓再構築を受けたフォンタン患者を含むSVHD患者を処置する改善された方法であって、本発明の毎日の方法が、そのようなフォンタン患者を含むSVHD患者を処置する従来の方法と比較して、より少ない重度の有害事象をもたらす、方法に関する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、たとえあったとしても、重度の有害事象、中程度の有害事象、または軽度の有害事象をほとんどもたらさない。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン手術を受けたSVHD患者を処置する改善された方法に関する。1つのそのような実施形態において、フォンタン患者は、左心低形成症候群(HLHS)と診断されるが、まずノーウッド手術(例えば図5参照)を受け、続いてヘミフォンタン手術または両方向性グレン手術(例えば図6参照)を受け、その後、フォンタン手術(例えば図1Aおよび図7参照)を受ける。別のそのような実施形態において、フォンタン患者は、まずヘミフォンタン手術または両方向性グレン手術を受け、その後、フォンタン手術を受ける。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0048】
1つの実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者を処置する改善された方法であって、SVHD患者が、房室管欠損(AV管)、両房室弁左室挿入(DILV)、両大血管右室起始症(DORV)、エプスタイン奇形、HLHS、僧帽弁閉鎖(通常はHLHSと関連する)、純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)、左室性単心室、三尖弁閉鎖症、および狭窄を伴う三尖弁閉鎖症を有する患者からなるSVHDの群から選択される、方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。例となる実施形態において、本発明の方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に1日に1回投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
別の実施形態において、本発明の方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に1日に2回投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0050】
別の実施形態において、本発明の方法は、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に1日に3回以上投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0051】
別の実施形態において、フォンタン患者を含むSVHD患者は、約2~約18歳の小児患者である。成人患者の処置もまた本発明の方法に包含される。
【0052】
更に別の実施形態において、本発明は、フォンタン患者を含むSVHD患者を処置する改善された方法であって、本発明の方法が、非ウデナフィル薬物を処方されたフォンタン患者を含むSVHD患者と比較して、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の投薬スケジュールにより、フォンタン患者を含むSVHD患者のコンプライアンスの改善を示す、方法に関する。
【0053】
最後に、更に別の実施形態において、本発明の方法は、独特で特徴のある薬物動態プロファイルをもたらすことができる。薬物動態プロファイルは、300から700ng/mlの間、より具体的には約500ng/mlのCmax、1から1.6時間の間、より具体的には約1.3時間のTmax、2550から4150ng・hr/ml以上の間、具体的には約3350ng・hr/mlのAUC、および5110から8290ng・hr/ml以上の間、具体的には約6701ng・hr/mlのAUC0-24を含みうる。
【0054】
本発明が、本発明のウデナフィル薬物製品と治療的に同等なウデナフィル薬物製品について検討することが理解される。言い換えれば、本発明は、(i)治療的に同等であり、(ii)生物学的に同等であり、(iii)交換可能であり、(iv)本発明の方法に従ってフォンタン患者を含むSVHD患者に投与された場合に、本発明の目的の実行または実施において効果的なバイオアベイラビリティを有する、ウデナフィル薬物製品について検討する。
【0055】
従って、本発明の1つの実施形態に従い、本発明は、平均の比率が約0.8から約1.25の間の範囲内にある薬物動態プロファイルについて90%信頼区間(90%CI)を有する薬物製剤について検討する。本発明に従う別の実施形態において、本発明は、平均の比率が約0.8から約1.2の間の範囲内にある薬物動態プロファイルについて90%信頼区間(90%CI)を有する交換可能なウデナフィル薬物製剤について検討する。本発明は、従って、薬物動態プロファイル、例えばそれらのCmax、TmaxおよびAUCの約45%(即ち-20~+25%)まで変化しうるウデナフィル血しょう濃度を有する、本発明の方法で処置されるかまたは本発明の方法を行うフォンタン患者を含むSVHD患者について検討する。より好ましくは、本発明は、薬物動態プロファイル、例えばそれらのCmax、Tmax、AUCおよびAUC0-24の約40%(即ち-20~+20%)まで変化しうるウデナフィル血しょう濃度を有する、本発明の方法で処置されるかまたは本発明の方法を行うフォンタン患者を含むSVHD患者について検討する。例として、本発明は、ウデナフィル薬物動態プロファイル:
(a)約500ng/mlの約-20~約+25%のCmax血しょう濃度、より好ましくは約500ng/mlの約-20~約+20%のウデナフィルCmax血しょう濃度、
(b)約1.3時間の約-20~約+25%のTmax、より好ましくは1.3時間の約-20~約+20%のウデナフィルTmax
(c)約3350ng・hr/mlの約-20~約+25%のAUC、より好ましくは約3350ng・hr/mlの約-20~約+20%のウデナフィルAUC、および
(d)約6701ng・hr/mlの約-20~約+25%のAUC0-24、より好ましくは約6701ng・hr/mlの約-20~約+20%のウデナフィルAUC0-24を、個別に、集合的またはあらゆる組み合わせで有する、本発明の方法で処置されるかまたは本発明の方法を行うフォンタン患者を含むSVHD患者について検討する。
【0056】
従って、本発明は、本発明の方法に従って用いられる生物学的に同等で交換可能なウデナフィル薬物製品について検討する。更に、本発明は、本発明の方法に従ってフォンタン患者を含むSVHD患者に投与された場合に、フォンタン患者を含むSVHD患者において上記で言及したCmax、Tmax、AUCおよび/またはAUC0-24を生じるウデナフィル薬物製品について検討する。
【0057】
本発明の方法は以下を含むが、これらに限定されない。
1.機能する一つの心室およびフォンタン手術後のフォンタン生理機能を有し(フォンタン患者)、最大労作またはピークVOでの酸素消費量により測定されるフォンタン患者の運動能力を改善するための処置を必要としている単心室心臓病(SVHD)患者を処置する方法であって、フォンタン患者が、予測の80%未満(<80%)のベースラインピークまたは最大VOを有し、フォンタンの運動能力が、フォンタン手術後のフォンタン患者の心機能の低下により悪影響を受け、その方法が、
ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量をフォンタン患者に毎日投与して、最大労作またはピークVOでの酸素消費量によりされるフォンタン患者の運動能力を改善する工程を含む、方法。
【0058】
2.有効量が、約125mgから175mgの間の量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項1に記載の方法。
【0059】
3.1日分の有効量が、約175mgの量のウデナフィルまたは薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項1に記載の方法。
【0060】
4.1日分の総投与量が、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の2回の個別の用量からなり、それぞれのその個別の用量が、約87mgのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の方法。
【0061】
5.それぞれのその個別の用量が経口固形剤形である、請求項4に記載の方法。
【0062】
6.ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項5に記載の方法。
【0063】
7.ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が経口固形剤形である、請求項1に記載の方法。
【0064】
8.経口固形剤形が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項7に記載の方法。
【0065】
9.フォンタン患者が少なくとも12歳である、請求項1に記載の方法。
【0066】
10.フォンタン患者の
(a)心筋パフォーマンス指数(MPI)により測定されるフォンタン患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)換気性無酸素閾値(VAT)での酸素消費量により測定される運動能力、
(c)VATでの仕事率、および
(e)VATでのVE/VCO2を、単独で、またはあらゆる組み合わせで更に改善する、請求項1に記載の方法。
【0067】
11.機能する一つの心室およびフォンタン手術後のフォンタン生理機能を有し(スーパーフォンタン患者)、最大労作またはピークVOでの酸素消費量により測定されるスーパーフォンタン患者の運動能力を改善するための処置を必要としている単心室心臓病(SVHD)患者を処置する方法であって、スーパーフォンタン患者が、予測の80%より大きい(≧80%)ベースラインピークまたは最大VOを有し、スーパーフォンタンの運動能力が、フォンタン手術後のスーパーフォンタン患者の心機能の低下により悪影響を受け、その方法が、
ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量をスーパーフォンタン患者に毎日投与して、換気性無酸素閾値(VAT)での酸素消費量により測定されるスーパーフォンタン患者の運動能力を改善する工程を含む、方法。
【0068】
12.有効量が、約125mgから175mgの間の量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項11に記載の方法。
【0069】
13.有効量が、約175mgの量のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量である、請求項11に記載の方法。
【0070】
14.1日分の総投与量が、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の2回の個別の用量からなり、それぞれのその個別の用量が、約87mgのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項13に記載の方法。
【0071】
15.それぞれのその個別の用量が経口固形剤形である、請求項14に記載の方法。
【0072】
16.ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項15に記載の方法。
【0073】
17.ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩が経口固形剤形である、請求項11に記載の方法。
【0074】
18.経口固形剤形が、錠剤、カプセル、ゲル、液体、分散液、丸薬、粉末、および懸濁液からなる群より選択される経口固形または半固形剤形である、請求項17に記載の方法。
【0075】
19.スーパーフォンタン患者が少なくとも12歳である、請求項11に記載の方法。
【0076】
20.スーパーフォンタン患者の
(a)心筋パフォーマンス指数(MPI)により測定されるスーパーフォンタン患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)VATでの仕事率、および
(d)VATでのVE/VCO2を、単独で、またはあらゆる組み合わせで更に改善する、請求項11に記載の方法。
【0077】
本発明の上記の概要が本発明のそれぞれの開示された実施形態または全てのインプリメンテーションを説明することを意図されないことが、更に理解されるべきである。上述の記載は、更に、実例となる実施形態を示し、特許請求される本発明の説明を提供する。明細書を通していくつかの場所においては、実施例により助言が提供され、それらの実施例は様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの場合において、実施例は代表的な群としての役目のみを果たし、排他的な実施例として解釈されるべきではない。
【0078】
前述のならびに他の本発明の目的、利点、および特徴、ならびにそれらが行われる様式は、実施形態を例示する以下の図面の簡単な説明、発明を実施するための形態、および実施例から当業者であればすぐに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1-1】図1Aは、例示的なフォンタン生理機能の概略図である。
図1-2】図1Bは、実施例1~2に記載するフォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)トライアルのために使用されるスクリーニングプロセス(参加者の無作為化および処置)である。ピークVO(VO最大)は、ピーク運動時の酸素消費量を示す。RERは、呼吸交換比を示す。
図2-1】図2Aは、ベースラインから26週までの平均ピークまたは最大VOの変化における差、および各処置治療群に関する標準偏差を実証する。
図2-2】図2Bは、ピークVOにおいて参照パーセンテージ以上の改善(x軸)が実証された対象のパーセンテージ(y軸)を実証する。
図3-1】図3Aは、ベースラインから26週までのVAT時の平均VOの変化における差および各処置治療群に関する標準偏差を実証する。
図3-2】図3Bは、VAT時のVOにおいて参照パーセンテージ以上の改善(x軸)が実証された対象のパーセンテージ(y軸)を実証する。
図4-1】図4Aは、ベースラインから26週までのVAT時の平均仕事率の変化における差および各処置治療群に関する標準偏差を実証する。
図4-2】図4Bは、仕事率において参照パーセンテージ以上の改善(x軸)が実証された対象のパーセンテージ(y軸)を実証する。
図5図5は、左心臓低形成症候群(HLHS)を呈する再構築されたSVHD心臓の例示的なNorwood手順(ステージ1)の概略図である。
図6図6は、左心臓低形成症候群(HLHS)を呈する再構築されたSVHD心臓の例示的なBidirectional Glenn手順(ステージ2)の概略図である。
図7図7は、左心臓低形成症候群(HLHS)を呈する再構築されたSVHD心臓の例示的なフォンタン手順(ステージ3)であるExtracardiac Fenestratedフォンタン手順の概略図である。
図8図8は、ピーク酸素消費量の変化により階層化した主要転帰および副次的転帰の累積発生率プロットを示す(Cunningham 2017)。
図9図9は、死亡または移植のその後の主要臨床転帰により階層化した場合のCPETパフォーマンスを示す(Cunningham, 2017)。
図10図10は、フォンタン対象における一連のCPET試験の予後値を示す。
図11図11は、処置群によるピークVOの改善を示す。FUELトライアルのITT分析。
図12図12は、処置群によるピークVOの改善を示す。80%未満のベースラインでの予測ピークVO2を有するフォンタン対象のサブ集団の分析。
図13図13は、処置群によるピークVOの改善を示す。80%より大きいベースラインでの予測ピークVOを有するフォンタン対象のサブ集団であるスーパーフォンタンの分析。
図14図14は、処置群およびFUEL分析によるピークVOのパーセント変化を示す。
図15図15は、処置群によるピークVOの年間変化を示す。80%未満のベースラインでの予測ピークVOを有するフォンタン対象のサブ集団の分析。
図16図16は、運動訓練後のピークVOの変化を示す。
図17図17は、FUEL ITT分析における処置群によるVAT時のVOの改善を示す。
図18図18は、FUEL ITT分析における処置群によるVAT時のVOのパーセント変化を示す。
図19図19は、FUELおよびFUEL OLEにおけるピークまたは最大VOのベースラインからの平均変化(mL/分)を示す。プラセボ=プラセボに無作為化された参加者に関するFUELトライアルの結果。ウデナフィルなし=FUELトライアルにおいてプラセボに無作為化された参加者およびFUEL OLEの患者に新たに登録された参加者に関するFUEL OLEの結果。ウデナフィル=FUELトライアルにおいてウデナフィルに無作為化され、FUEL OLEへと継続した者に関するFUELおよびFUEL OLEの結果。
図20図20は、統計的エンドポイントに対する「スーパーフォンタン」対象のFUELトライアルの効果を示す。
図21図21は、全ての副次的エンドポイントに対するFUELトライアルの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
I.フォンタン生理機能
フォンタン生理機能は、機能性単心室の共通の特徴を共有する、それらのクラスの先天性心臓欠陥のための最終的な緩和である。それらは、形成不全の(機能不全の)左心室または右心室をもたらす欠陥を含む。通常、一連の2回または3回の手術により、体循環および肺循環は分離され、先天性心臓欠陥により引き起こされる酸素化された血液と酸素化されていない血液の混合を大いに排除する。これは、上大静脈および下大静脈を肺動脈に直接取り付けること、即ち両大静脈肺動脈吻合法により達成される。これは、以下のように機能するフォンタン生理機能をもたらす。(1)単一の全身性の心室が、酸素化された血液(赤い血液)を動脈から身体の全身性の動脈血管床へとポンピングし、(2)次いで、全身静脈血(青い血液)が大静脈により戻り、青い血液が、青い血液を酸素化するための肺下の心室の援助なしに、肺における酸素取り込みのために肺血管床中を受動的に流れ、(3)ここで酸素化された血液(赤い血液)が次いで、通常の全身性の機能している心房を介して、機能している単一の全身性の心室ポンプに戻り、赤い血液-青い血液の循環サイクルが繰り返される。この解剖学的構造を図1Aおよび図7に説明する。
【0081】
両大静脈肺動脈吻合を生ずるフォンタン手術は、体循環および肺循環を分離し、低酸素血症および心室体積の過負荷の両方を排除する。
【0082】
しかしながら、フォンタン手術後、青い血液を肺動脈へと押し出す心室ポンプは存在しない。代わりに、青い血液は、体静脈の受動的な流れにより肺に戻る。従って、この種類の緩和の主な生理学的影響は、肺の青い血流量が、体静脈床から心房への圧力勾配に完全に依存することである。肺血管床中の正常な循環流量は、右心室により生成される増大する圧力により増加する。健康な青年期の若者において、これは、安静時に肺動脈の圧力の約20~25mmHgの増大をもたらし、これは運動により2倍になりうる。フォンタン生理機能では肺下の心室がなく、従って、青い血液が肺動脈に入る際に圧力の増加がない。安静時、肺血管床にわたる圧力勾配はかなり小さい。運動によりこの圧力勾配を増大させる能力は、次第に上昇した中心静脈圧に耐える身体の能力により、極めて制限される。
【0083】
肺血流量を操作するために静脈圧の受動的な低下に全体として依存していることの結果として、フォンタン生理機能は肺血管抵抗の変化に対して極めて感度が高い。正常な生理機能において肺抵抗の正常な範囲内である増大でさえ、フォンタン生理機能には有害な影響を及ぼす。ウデナフィルの使用は、このクラスの緩和された先天性心臓欠陥に独特な潜在的な治療を提供する。PDE-5阻害剤の他の使用とは異なり、この治療は、上昇した肺血管抵抗または肺血管圧のない集団において肺血管抵抗を下げる。これは、(i)構造的に正常な心臓および肺血管疾患、例えば肺動脈性肺高血圧症(PAH)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者、(ii)心不全、例えばうっ血性心臓病を有する患者、または(iii)2つの心室の修復により緩和された(従って、肺下の心室を有する)先天性心臓病および関連する肺血管疾患を有する非常にまれな患者と比較して、明らかに異なるこのクラスの薬剤の使用である。
【0084】
II.フォンタン患者に妥当な臨床的測定
機能性単心室または単心室先天性心臓病を持って生まれた子どもにとって、フォンタン手術は現在の標準治療である。フォンタン手術は、治癒的というより一時的なものであり、機能性単心室心臓病の小児対象の生存を大きく増大させてきたが、手術はまた、患者の疲弊を引き起こしうる一連の副作用および合併症をもたらし、合併症は例えば不整脈、心室機能障害、ならびにタンパク喪失性腸症(PLE)と鋳型気管支炎の異常な臨床的症候群、ならびに肝、ならびに腎合併症である。
【0085】
一定の実施形態において、開示された本発明は、フォンタン手術後の患者の健康を示す特定の臨床的に妥当な生理学的測定の低下を改善または抑制することに関する。そのような測定は、運動試験、血管機能試験、および心室機能の心エコー評価を含むが、これらに限定されない。
【0086】
III.運動試験
運動試験は、最大労作の間または換気性無酸素閾値(VAT)でのVO値の評価を含みうる。VO最大値、または最大酸素消費量は、個体が激しい運動の間に利用することのできる酸素の最大量を言う。この測定は、一般的に、心臓血管の健康および有酸素持続性の信頼できる指標であると考えられている。高レベルの運動の間に人が使用できる酸素が多いほど、その人が生成することのできるエネルギーが多くなる。長時間の(有酸素の)運動のために筋肉は酸素が必要であり、血液は酸素を筋肉に運び、心臓は有酸素運動の要求を満たすのに十分な量の血液をポンピングする必要があることから、この試験は心肺の健康の標準となっている。
【0087】
VOは、対象にマスクを付け、吸入および吐き出された空気の体積およびガス濃度を測定することにより測定されることが多い。この測定は、臨床環境および研究の両方で用いられることが多く、最も正確であると考えられている。試験は一般的に、疲労するまで強度を上げてトレッドミルで運動するかまたは自転車エルゴメーターに乗るかのいずれかを含み、対象の最大労作および/または対象の無酸素閾値で読み取りを行うように設計される。
【0088】
以前にフォンタン手術を受けたSVHD患者を含むSVHD患者は、一般的に、経時的にVO測定の低下を経験する。しかしながら、フォンタン患者を含むSVHD患者への実施または処置が本発明に従う方法で処置される場合、VO測定が(i)同様のレベルに維持され、VO測定の更なる低下がなかったことを実証するかまたは(ii)治療により改善され、VOの増大がありおよび/もしくはVO測定の低下の速度が減少し、従って改善されることを実証し、これらはそれぞれ本発明の処置または方法が臨床的に有益であることを示す。いくらかのSVHD患者において、本発明に従った処置は、運動の間のVO測定の低下を大きく遅延または低下させうる。
【0089】
1つの実施形態において、本発明は、SVHD患者または以前にフォンタン手術を受けた対象のVO測定を改善または維持する方法に関する。本発明の方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。本発明のいくつかの実施形態において、VOは最大労作で測定され、一方で他の実施形態において、VOは対象の無酸素閾値(VAT)で測定される。
【0090】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者を含むSVHD患者に投与されて、経時的に運動能力の低下をもたらさないかまたは最小限の低下をもたらす。より具体的には、開示された本発明の方法および組成物は、経時的に約40未満、約35未満、約30未満、約35未満、約20未満、約15未満、約10未満、または約5%未満の運動能力の低下をもたらしうる。運動能力の低下を計算するために用いられる第1の測定と第2の測定の間の期間は、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、もしくは約12ヵ月;約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、もしくは約15年、またはそれらのあらゆる組み合わせ、例えば1年、3ヵ月;4年、7ヵ月等でありうる。
【0091】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者を含むSVHD患者に投与されて、運動能力の改善をもたらしうる。より具体的には、開示された本発明の方法および組成物は、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以上の最大労作でのVOの改善をもたらしうる。別の方法として、開示された本発明の方法および組成物は、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以上のフォンタン患者を含むSVHD患者の換気性無酸素閾値(VAT)でのVOの改善をもたらしうる。
【0092】
IV.血管機能試験
血管内皮機能不全は、介入研究において血管の健康を評価するための重要な転帰である。血管内皮機能不全が伝統的な心臓血管疾患(CVD)の危険因子とポジティブに関連しており、1~6年の間隔をおいた心臓血管系の事象を独立して予測することが現在では確立されている。
【0093】
血管機能を評価するためのFDAに承認された方法であるパルス振幅トノメトリー(PAT)は、反応性充血に応答する内皮に依存する拡張および血流依存性血管拡張反応(FMD)の代替的尺度としてますます用いられている。PATデバイスは、指先プレチスモグラフィーを用いてデジタルパルス波振幅(PWA)を記録する。PWAは、静かなベースライン期間、5分の前腕の閉塞、および反応性充血の3つの段階の間に連続して測定することができ、その後、血圧バンドを取り外す。FMDとは異なり、PAT試験は高度な技術を有する専門家に依存せず、試験後の分析もほとんど自動化されている。最も重要なのは、少なくとも1つの縦断研究が、内皮機能のPAT測定が6年の追跡期間にわたってCVD事象を予測することを示したことである。これらの重大な利点は、予後的重要性および信頼性を実証できる場合にPAT試験を臨床業務に適したものにしうる。
【0094】
以前にフォンタン手術を受けたSVHD患者を含むSVHD患者は、一般的に、経時的に血管機能の低下を経験する。フォンタン患者を含むSVHD患者の血管機能の更なる低下を改善または抑制するフォンタン患者を含むSVHD患者の処置は、処置が臨床的に有益であり、フォンタン患者を含むSVHD患者のクオリティ・オブ・ライフを改善しうるかまたは心臓血管機能の低下を抑制しうることを示す。
【0095】
1つの実施形態において、本発明は、以前にフォンタン手術を受けたSVHD患者を含むSVHD患者の血管機能を改善または維持する方法に関する。本方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、血管機能はPAT指数を用いて測定される。
【0096】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者を含むSVHD患者に投与されて、経時的に血管機能の低下をもたらさないかまたは最小限の低下をもたらす。血管機能は、パルス振幅トノメトリー測定、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガム(RHI)、最大値-閉塞/対照までの曲線下面積、最大値-閉塞/対照までの平均値、および他の公知のEndoPAT指数を含むがこれらに限定されない、あらゆる従来知られている技術を用いて測定することができる。本発明のいくつかの実施形態において、血管機能はPAT指数を用いて測定される。より具体的には、開示された本発明の方法および組成物は、経時的に約40未満、約35未満、約30未満、約35未満、約20未満、約15未満、約10、または約5%未満の血管機能の低下をもたらしうる。血管機能の低下を計算するために用いられる第1の測定と第2の測定の間の期間は、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、もしくは約12ヵ月;約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、もしくは約15年、またはそれらのあらゆる組み合わせ、例えば1年、3ヵ月;4年、7ヵ月等でありうる。
【0097】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者を含むSVHD患者に投与されて、血管機能の改善をもたらしうる。血管機能は、パルス振幅トノメトリー測定、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガムRHI、最大値-閉塞/対照までの曲線下面積、最大値-閉塞/対照までの平均値、および他の公知のEndoPAT指数を含むがこれらに限定されない、あらゆる従来知られている技術を用いて測定することができる。本発明のいくつかの実施形態において、血管機能はPAT指数を用いて測定される。より具体的には、開示された方法および組成物は、パルス振幅トノメトリー測定、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガムRHI、最大値-閉塞/対照までの曲線下面積、最大値-閉塞/対照までの平均値、および他の公知のEndoPAT指数を含むがこれらに限定されない血管機能の1つまたは複数の測定において、約1、約2、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、または約50%以上の改善をもたらしうる。
【0098】
V.心室機能の心エコー評価
心室機能および心臓収縮性は、明らかな心不全が存在する前に心臓血管の健康の障害を明らかにすることのできる重要な測定である。心室機能は、心エコー法を用いて評価し、心筋パフォーマンス指数またはMPIにより定量化することができる。MPIは収縮機能および拡張機能を合わせた指標である。
【0099】
具体的には、MPIは、駆出時間で割った等容収縮時間および等容弛緩時間の合計として定義される。
【0100】
MPIの様々なバージョンが当該分野で知られており、心室機能を評価するためにMPIのそれぞれのバージョンを用いることができる。例えば、MPI指数は、血液プールMPIおよび組織ドップラーMPIを含みうるがこれらに限定されない。MPIは、パルス波組織ドップラー心エコー検査(TDE)を用いることにより測定することができる。TDEを用いてMPIを計算するために、機能している単心室の等容収縮時間(IVCT)、等容弛緩時間(IVRT)および駆出時間(ET)が測定される。次いで、IVCTおよびIVRTを合計し、合計をETで割ることによりMPIが決定される。
【0101】
以前にフォンタン手術を受けた患者は、一般的に、経時的に心室機能の低下を経験する。患者の心室機能が維持され、経時的に最小限の低下を示し、または増大するように患者を処置することは、処置が臨床的に有益であり、患者のクオリティ・オブ・ライフを改善しうるかまたは心臓血管機能の低下を抑制しうることを示す。
【0102】
1つの実施形態において、本発明は、以前にフォンタン手術を受けた対象の心室機能を維持し、最小限の低下を生じさせ、または増大させる方法に関する。本発明の方法は、効果的なPDE5阻害剤の有効量を、患者に好ましくは毎日投与する工程を含み、ここでPDE5阻害剤は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である。本発明のいくつかの実施形態において、心室機能は心筋パフォーマンス指数(MPI)を用いて測定される。いくつかの実施形態において、MPIは血液プールMPIでありえ、一方で他の実施形態において、MPIは組織ドップラーMPIでありうる。
【0103】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者に投与されて、経時的に心室機能の低下をもたらさないかまたは最小限の低下をもたらしうる。心室機能は、心筋パフォーマンス指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドップラーMPI、平均等容収縮および弛緩、ならびに他の公知の心室機能指数を含むがこれらに限定されない、あらゆる従来から知られている技術を用いて測定することができる。より具体的には、開示された本発明の方法および組成物は、経時的に約40未満、約35未満、約30未満、約35未満、約20未満、約15未満、約10未満、または約5%未満の心室機能の低下をもたらしうる。心室機能の低下を計算するために用いられる第1の測定と第2の測定の間の期間は、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、もしくは約12ヵ月;約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、もしくは約15年、またはそれらのあらゆる組み合わせ、例えば1年、3ヵ月;4年、7ヵ月等でありうる。
【0104】
いくつかの実施形態において、開示された本発明の方法および組成物は、フォンタン患者を含むSVHD患者に投与されて、経時的に心室機能の改善をもたらしうる。心室機能は、心筋パフォーマンス指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドップラーMPI、平均等容収縮および弛緩、ならびに他の公知の心室機能指数を含むがこれらに限定されない、あらゆる従来から知られている技術を用いて測定することができる。例えば、開示された本発明の方法および組成物は、心筋パフォーマンス指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドップラーMPI、平均等容収縮および弛緩、ならびに他の公知の心室機能指数を含むがこれらに限定されない、あらゆる公知の技術により測定される約1、約2、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、または約50%以上の心室機能の改善をもたらしうる。
【0105】
VI.本発明の方法
開示された本発明の方法は、フォンタン患者を含む、運動能力および/または心室機能の改善を必要としているSVHD患者の運動機能および心室機能の改善に関する。概して、本方法は、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩としての効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に毎日投与して、
(a)MPIにより測定されるSVHD患者の機能する一つの心室の心室機能、
(b)VATでの酸素消費量により測定される運動能力、
(c)最大労作または最大VOでの酸素消費量により測定される運動能力、
(d)VATでの仕事率、
(e)VATでのVE/VCO(それぞれ個別に、またはあらゆる組み合わせで)、
(f)安静時の拡張期血圧、および
(g)安静時の酸素飽和度(%)
を、それぞれ個別に、集合的にまたはあらゆる組み合わせで改善する工程を含む。
【0106】
好ましくは、本発明の方法は、上記に挙げた(a)~(g)を、個別に、集合的にまたはそれらのあらゆる組み合わせを含めて改善する。より好ましくは、上記に挙げた(a)~(g)が、個別に、集合的にまたはそれらのあらゆる組み合わせを含めて、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を、フォンタン患者を含むSVHD患者に毎日投与することにより本発明に従って改善される。
【0107】
上記で議論されたように、本明細書で使用される場合、効果的なPDE5阻害剤は、血液を様々な組織に供給する血管を覆っている平滑筋細胞においてサイクリックGMPに対するcGMP特異的ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)の分解作用を阻害する。
【0108】
上記でも議論されたように、本明細書で使用される場合、MPIは、焦点心エコー図により決定される、心室の収縮機能および拡張機能の尺度、ならびに様々な心臓病の予後および進行のマーカーである。この数値は、駆出時間(ET)で割った等容収縮時間(ICT)および等容弛緩時間(IRT)の合計として定義され、単心室について計算することができる。心筋パフォーマンス指数の変化は、機能する一つの心室の流入路および流出路の血液プールドップラー評価から得られる速度により決定される。言い換えれば、MPIは、大域的な心機能不全および心室機能を評価するための大域的な収縮時間間隔および拡張時間間隔の尺度である。更に、MPIはドップラー指数であることから、心室形状とは無関係であり、SVHD患者においてどの心室が機能する一つの心室であるかに応じて左心室機能および右心室機能のいずれかに適用することができる。
【0109】
より具体的には、本方法は、光受容体ホスホジエステラーゼ酵素(PDE6)の阻害による失明または視力低下、PDE11、例えば11A1(PDE11A1)の阻害による背部痛および/もしくは筋肉痛、ならびに/またはPDE11、例えば11A3(PDE11A3)の阻害による精子濃度の低下を含むがこれらに限定されない処置を制限する副作用を引き起こすことなく、上記の改善のうちの1つまたは複数をもたらすために、効果的なPDE5阻害剤またはその薬学的に許容される塩、好ましくはウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の有効量を毎日投与する工程を含む。Kayik, G. et al.: Investigation of PDE5/PDE6 and PDE5/PDE11 selective potent tadalafil-like PDE5 inhibitors using combination of molecular modeling approaches, molecular fingerprint-based virtual screening protocols and structure-based pharmacophore development. Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry, 32(1):311-330 (2017); Pomara G. and Morelli G.: Inhibition of phosphodiesterase 11 (PDE11) impacts on sperm quality. Int J Impot Res, 17:385-386 (2005)、およびHuang S.A. and Lie, J.D.: Phosphodiesterase-5 (PDE5) Inhibitors. In the Management of Erectile Dysfunction. Pharmacy and Therapeutics, 38(7):407-419 (July 2013)。
【0110】
非常に独特で驚くべきことに、本発明の方法は、換気性無酸素閾値(VAT)および最大労作または最大VOでの酸素消費量を増大および/または最大化させて、運動能力を改善し、フォンタン患者を含むSVHD患者のVATでの仕事率およびVATでのVE/VCOを増大および/または最大化させる。
【0111】
また、非常に独特で驚くべきことに、本発明の方法は、SVHD患者、即ちフォンタン患者のMPIを改善する。言い換えれば、本発明の方法は、機能する一つの心室の収縮機能および拡張機能の両方ならびに大域的な心機能を改善する。言い換えれば、本発明の方法は、機能する一つの心室を満たして空にする特性、即ち圧力をかける能力、ならびにフォンタン患者を含むSVHD患者の再構築された異常なSVHD心臓の新たに酸素化された血液を末梢組織の必要性のために身体にポンピングする全体的な能力を改善する。
【0112】
MPI改善の臨床値は、FUEL試験の間にプラセボで処置されたSVHD患者、即ちフォンタン患者と比較した、本発明の方法で処置されたSVHD患者、特にフォンタン患者の統計的に有意なMPIの改善により証明される。
【0113】
MPI改善の臨床値はまた、上記で議論されたように、TDEを用いて等容収縮時間、等容弛緩時間、および駆出時間により測定される単心室機能の改善によっても証明される。
【0114】
「等容収縮時間」(IVCT)により、本明細書においては、収縮の早期に生じる単心室の事象を意味することが意図され、この間に単心室は体積変化することなく(等積で)収縮する。心周期のこの期間、圧力をかける事象が行われるが、全ての心臓弁は閉じている。
【0115】
「等容弛緩時間」(IVRT)により、本明細書においては、心周期、即ち圧力をかけて弛緩する周期の間隔期間を意味することが意図され、これは弁の閉鎖により生じる第2心音から、弁の開放に続く機能している単一の心室の充填開始に関する。IVRTは、機能している単一の心室の拡張機能障害を示しうる。
【0116】
「駆出時間」(ET)により、本明細書においては、弁の開閉により決定される再構築された異常な心臓の単心室駆出時間(UVET)を意味することが意図され、この間に弁を越える圧力差が測定される。
【0117】
「1回拍出量」により、本明細書においては、機能する一つの心室が1回の収縮で循環系にポンピングすることのできる新たに酸素化された血液の量を意味することが意図される。
【0118】
「心拍出量」により、本明細書においては、フォンタン患者を含むSVHD患者の機能する一つの心室が1分で循環系にポンピングすることのできる血液量を意味することが意図される。1回拍出量および心拍数が心拍出量を決定する。
正常な成人は、1分当たり平均で約4.7リットル(5クオート)の血液の心拍出量を有する。)
【0119】
本発明の方法に従ったフォンタン患者を含むSVHD患者の処置の改善のそれぞれは個別に独特で驚くべきことであるが、フォンタン患者を含むSVHD患者の処置の改善の組み合わせは特に独特で驚くべきことである。
【0120】
別の実施形態において、非ウデナフィルPDE5阻害剤、例えばシルデナフィルまたはタダラフィルを用いた以前の非常に限定的な研究と比較して、本発明の方法が、ウデナフィルが投与される場合に改善された結果を示すことは驚くべきことであった。更に別の実施形態において、非ウデナフィルPDE5阻害剤、例えばシルデナフィルまたはタダラフィルを用いた他の以前の処置と比較して、本発明の方法が、ウデナフィルが投与される場合により少ない副作用、および/またはより重大でない副作用を示すことは驚くべきことであった。
【0121】
いくつかの実施形態において、フォンタン患者は成人のヒトでありえ、一方で他の実施形態において、フォンタン患者は青年期のヒトでありうる。いくつかの実施形態において、フォンタン患者は約12歳から約19歳の間でありえ、一方で他の実施形態において、フォンタン患者は約12歳から18歳の間でありうる。更に他の実施形態において、フォンタン患者は約12歳~約16歳でありうる。更に他の実施形態において、フォンタン患者は約6歳から成人でありうる。1つの実施形態において、フォンタン患者は18歳未満でありうる。
【0122】
VII.用量および剤形
ウデナフィルの構造を以下に示す。
【0123】
【化1】
【0124】
いくつかの実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、約0.01~約150mg/kgの1日分の総投与量で投与することができる。別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、約0.01mg/kg~約30mg/kgの1日分の総用量で投与することができる。別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、あらゆるそのような個別の投与量が、薬物製品が市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおいて、約2.5mg~約275mg、例えば約2.5mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約12.5mg、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約27.5mg、約30mg、約32.5、約35mg、約37.5mg、約40mg、約42.5mg、約45mg、約47.5mg、約50mg、約52.5mg、約55mg、約57.5mg、約60mg、約62.5mg、約65mg、約67.5mg、約70mg、約72.5mg、約75mg、約77.5mg、約80mg、約82.5mg、約85mg、約87.5mg、約90mg、約92.5mg、約95mg、約97.5mg、約100mg、約102.5mg、約105mg、約107.5mg、約110mg、約112.5mg、約115mg、約117.5mg、約120mg、約122.5mg、約125mg、約127.5mg、約130mg、約132.5mg、約135mg、約137.5mg、約140mg、約142.5mg、約145mg、約147.5mg、約150mg、約152.5mg、約155mg、約157.5mg、約160mg、約162.5mg、約165mg、約167.5g、約170mg、約172.5mg、約175mg、約180mg、約182.5mg、約185mg、約187.5mg、約190mg、約192.5mg、約195mg、約197.5mg、約200mg、約202.5mg、約205mg、約207.5mg、約210mg、約212.5mg、約215mg、約217.5mg、約220mg、約222.5mg、約225mg、約227.5mg、約230mg、約232.5mg、約235mg、約237.5mg、約240mg、約242.5mg、約245mg、約247.5mg、約250mg、約252.5mg、約255mg、約257.5mg、約260mg、約262.5mg、約265mg、約267.5mg、約270mg、約272.5mgまたは約275mgの投与量で投与することができる。更に別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、あらゆるそのような個別の1日分の総用量が、1日分の総用量が市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおいて、約5mg~約275mg、例えば約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約27.5mg、約30mg、約32.5、約35mg、約37.5mg、約40mg、約42.5mg、約45mg、約47.5mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約87.5mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、または約275mgの1日分の総用量で投与することができる。
【0125】
更に別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、あらゆるそのような個別の1日分の総用量が、1日分の総用量が市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおいて、約25mg~約700mg、例えば約25mg、約37.5mg、約50mg、約75mg、約87.5mg、125mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、または約700mgの1日分の総用量で投与することができる。
【0126】
更なる実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、約37.5mg、約75mg、約87.5mg、125mg、または約175mgの1日分の総用量で投与することができる。更なる実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、約37.5mg~約175mgの1日分の総用量範囲、好ましくは75mg~約175mgの1日分の総用量範囲、より好ましくは約87.5mg~約175mgの1日分の総用量範囲、最も好ましくは125mg~約175mgの1日分の総用量範囲で投与することができる。好ましい実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、あらゆる選択された個別の投与量またはあらゆる選択された個別の1日分の総用量が、1日分の総用量が市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおいて、あらゆる投与量またはあらゆる1日分の総用量でフォンタン患者に投与することができる。
【0127】
従って、本発明は、あらゆるそのような投与量、1日分の総用量、処置レジメン、または剤形が選択される場合に、それらが市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおける、あらゆる投与量、あらゆる1日分の総用量、あらゆる処置レジメン、およびあらゆる剤形でのフォンタン患者を含むSVHD患者へのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の投与について検討する。特に、本発明は、治療有効量が、薬物製品が市場に承認されない程度まで処置を制限する毒性、PDE6および/もしくはPDE11の阻害と関連する処置を制限する副作用、ならびに/または処置を制限する副作用を引き起こさない限りにおける、未処置のSVHD患者と比較して、MPI、単心室機能、収縮機能および/もしくは拡張機能、心室の圧力をかける能力、心拍出量、VATおよび/もしくは最大VOでの運動能力もしくは運動機能、VATでの仕事率、VATでのVE/CO2、安静時の拡張期血圧、安静時の酸素飽和度(%)、ならびに/またはSVHDの進行低下の速度の減少を改善するための、フォンタン患者を含むSVHD患者への有効量でのウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の投与について検討する。
【0128】
1つの実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、1日に1回投与することができる。
【0129】
別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、1日に1回、または分割された複数の投与で、例えば1日に2回、1日に3回、1日に4回以上投与することができる。
【0130】
更に別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、治療有効血中レベルが24時間の投与期間のうちの少なくとも約1.5~約24時間、より具体的には少なくとも約1.5、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23または約24時間の間維持されるように、1日に2回投与することができる。従って、本発明はそれにより、24時間の投与期間のうちのいずれかの期間有効血中レベルを維持するウデナフィルおよび/またはあらゆるウデナフィルの活性代謝物、例えばDA8164活性代謝物について検討する。
【0131】
いくつかの実施形態において、1日に2回投与されるウデナフィルまたは薬学的に許容される塩の1日分の総投与量は、1日に1回投与されるウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量より少ないものでありうる。
【0132】
いくつかの実施形態において、1日に2回投与されるウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量は、1日に1回投与される場合のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩よりも高用量で、24時間のうちの同じ時間数の間、治療有効血中レベルを維持することができる。別の実施形態において、1日に2回投与されるウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日分の総投与量は、1日に1回投与される場合のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩と同用量で、24時間のうちのより長い時間数の間、治療有効血中レベルを維持することができる。従って、本発明は、24時間を通して治療有効血中レベルを維持するための、1日に1回、または1日に複数回の分割された用量、例えば1日に2回、1日に3回、1日に4回以上のウデナフィルまたはそのあらゆる許容される塩のあらゆる1日分の総投与量の投与について検討する。
【0133】
1つの実施形態において、1日に2回のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の投与が、1日に1回のウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の投与より少ない副作用をもたらすことは驚くべきことである。別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩の1日に2回の投与が、1日に1回の投与より少ない1日分の総投与量でウデナフィルの治療有効レベルに達することができることは驚くべきことである。
【0134】
いくつかの実施形態において、ウデナフィルの薬学的に許容される塩は、酸付加塩でありうる。1つの実施形態において、ウデナフィルの酸付加塩は、無機酸付加塩、例えば塩酸付加塩、臭化水素酸付加塩、硫酸付加塩、またはリン酸付加塩でありうる。別の実施形態において、酸付加塩は、有機酸付加塩、例えばクエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、グリコール酸塩、コハク酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ガラクツロン酸塩、エンボン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、シュウ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、アジピン酸塩、またはシクラミン酸塩でありうる。特定の実施形態において、ウデナフィルの薬学的に許容される塩は、シュウ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、アジピン酸塩、またはシクラミン酸塩でありうる。
【0135】
いくつかの実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物として投与することができる。1つの実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、臨床応用の多種多様な経口または非経口の剤形へと製剤化することができる。剤形のそれぞれは、様々な崩壊剤、界面活性剤、充填剤、増粘剤、結合剤、希釈剤、例えば湿潤剤、または他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0136】
ウデナフィル組成物は、あらゆる薬学的に許容される方法、例えば鼻腔内、頬、舌下、経口、直腸内、眼内、非経口(静脈内、皮内、筋肉内、皮下、嚢内、腹腔内)、肺内、膣内、部分投与、局所投与、乱切後の局所投与、粘膜投与、エアロゾルを用いて、または頬用もしくは鼻用ゲルまたは噴霧製剤を用いて投与することができる。
【0137】
更に、ウデナフィル組成物は、あらゆる薬学的に許容される剤形、例えば、錠剤、丸薬、トローチ剤、カプセル、カプレットを含むがこれらに限定されない固形剤形、経口崩壊剤形、舌下剤形、頬剤形、液体、分散液、懸濁液、溶液、エアロゾル、肺用エアロゾル、鼻用エアロゾル、および半固体、即ち軟膏、クリーム、薄膜、およびゲル、ならびにパッチ、例えば経皮パッチへと製剤化することができる。更に、組成物は、放出制御製剤、徐放製剤、即効性製剤、放出調節製剤またはそれらのあらゆる組み合わせでありうる。
【0138】
更に、組成物は、経皮送達システムでありうる。
【0139】
別の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、経口投与用の固形剤形へと製剤化することができ、固形剤形は、粉末、顆粒、カプセル、錠剤、カプレット、カシェ、経口崩壊剤形、舌下剤形、頬剤形、トローチ剤、または丸薬でありうる。更に別の実施形態において、固形剤形は、1つまたは複数の賦形剤、例えば炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、ラクトース、微結晶性セルロース、またはゼラチンを含むことができる。更に、固形剤形は、賦形剤に加えて、滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。いくつかの実施形態において、固形剤形は、即効性製剤、または放出調節製剤でありうる。放出調節剤形は、放出制御、徐放、放出調節または持続放出、腸内放出等を含む。放出調節剤形に用いられる賦形剤は、当業者に一般的に知られている。
【0140】
例えば、固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、防腐剤、経口剤形崩壊剤、または封入材料としても作用する1つまたは複数の物質でありうる。経口剤形、例えば粉末、顆粒、カプセル、錠剤、カプレット、カシェ、トローチ剤、または丸薬は、好ましくは5%~70%のウデナフィルを含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、ペクチン、デキストリン、デンプン(例えば、コーンスターチ)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化ケイ素(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、低融点ワックス、ココアバター等である。用語「製剤」は、封入材料を含んでいても含んでいなくてもよいウデナフィルの固体、液体、または半固体基質の製剤を含むことを意図される。
【0141】
液体形態の製剤は、溶液、懸濁液、およびエマルション、例えば水溶液または水/プロピレングリコール溶液を含む。非経口注射剤として、液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液中で製剤化することができる。例えば、経口使用に適した水溶液は、ウデナフィルを水に溶解させ、必要とされる適切な着色剤、香味料、安定化剤、および増粘剤を添加することにより調製することができる。別の例において、経口使用に適した水性懸濁液は、細かく分離されたウデナフィルを粘性材料、例えば天然または合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他のよく知られている懸濁化剤と共に水に分散させることにより作製することができる。
【0142】
使用直前に経口投与用の液体形態の製剤に変換されることを意図される固体形態の製剤もまた含まれる。そのような液体形態は、溶液、懸濁液、およびエマルションを含む。1つの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用の液体剤形、例えば懸濁液、エマルション、またはシロップへと製剤化することができ、ウデナフィルに加えて、着色剤、香味料、安定化剤、緩衝剤(例えば、pHを静脈内使用のために望ましい範囲に調整するための緩衝剤、例えば無機酸の塩、例えばリン酸塩、ホウ酸塩、および硫酸塩)、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含むことができる。他の実施形態において、液体剤形は、一般的に用いられる単純な希釈剤、例えば水および流動パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば保湿剤、甘味料、芳香族化合物、または防腐剤を含むことができる。特定の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物は、小児患者への投与に適切となるように製剤化することができる。
【0143】
1つの実施形態において、医薬組成物は、非経口投与用の剤形、例えば滅菌の水溶液、懸濁液、エマルション、または非水溶液へと製剤化することができる。他の実施形態において、非水溶液または非水懸濁液は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、または注射可能なエステル、例えばオレイン酸エチルを含むことができる。別の方法として、医薬組成物は、直腸内投与用または膣内投与用の剤形へと製剤化することができる。座薬の基材としては、ウイテプゾール、マクロゴール、tween61、カカオ脂、ラウリンオイル、またはグリセリン処理されたゼラチンを用いることができる。
【0144】
医薬品は、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒を必要としうる。そのような共溶媒は、ポリソルベート20、60、および80、プルロニック(登録商標)F-68、F-84、およびP103、シクロデキストリン、ならびにポリオキシル35ヒマシ油を含む。そのような共溶媒は、典型的には、約0.01重量%から約2重量%の間のレベルで用いられる。単純な水溶液の粘度よりも大きい粘度は、製剤分注時の変動を減らし、製剤の懸濁液もしくはエマルションの成分の物理的分離を減らし、および/またはその他に製剤を改善するために望ましいものでありうる。そのような粘度を形成する物質は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびに上述の組み合わせを含む。そのような薬剤は、典型的には、約0.01重量%から約2重量%の間のレベルで用いられる。
【0145】
医薬品は、好ましくは単位剤形である。そのような形態において、製剤は、ウデナフィルまたはそのあらゆる許容される薬学的な塩の適量を含む単位用量に更に分割される。単位剤形は、包装された製剤、例えばサシェでありえ、包装は、個別の量の製剤、例えば小包にされた錠剤、カプレット、カプセル、経口崩壊剤形、舌下剤形、頬剤形、およびバイアルまたはアンプル中の粉末を含む。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カプレット、丸薬、経口崩壊剤形、舌下剤形、頬剤形、カシェ、もしくはそれ自身のトローチ剤でありうるかまたは包装された形態の適切な数のこれらのうちのいずれかでありうる。
【0146】
医薬組成物は、即効性、徐放、持続放出、放出調節、便利さおよび/または快適さを提供するための成分を含むことができる。そのような成分は、高分子量アニオン性粘液模倣性ポリマー、ゲル化多糖、および細かく分離された薬物担体基質を含む。
【0147】
更なる実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、経口崩壊剤形、舌下剤形または頬剤形として製剤化することができる。そのような剤形は、舌の下に投与される舌下錠組成物または舌下溶液組成物、および頬と歯茎の間に配置されるバッカル錠を含む。
【0148】
医薬品は、コーティング剤、例えばUV光によりフリーラジカルを発生することのできる遮光剤、金属酸化物、例えば記載された酸化チタン等、およびフリーラジカルスカベンジャー、例えば有機酸、例えば安息香酸等を更に含むことにより調製することができる。更に、コーティング剤は、水溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、セラック、酢酸コハク酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼイン、アルギン酸ナトリウム、およびマンニトールを含む腸溶性コーティング層、ならびに/または例えばエチルセルロース、中鎖脂肪酸トリグリセリドオレイン酸、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸を含む腸溶性コーティング水溶液を更に含むことができるが、これらに限定されない。
【0149】
更に更なる実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、鼻用剤形として製剤化することができる。本発明のそのような剤形は、鼻送達用の溶液、懸濁液、エマルション、およびゲル組成物を含む。
【0150】
1つの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用の液体剤形、例えば溶液、懸濁液、エマルション、またはシロップへと製剤化することができる。他の実施形態において、液体剤形は、一般的に用いられる単純な希釈剤、例えば水および流動パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば保湿剤、甘味料、芳香族化合物、または防腐剤を含むことができる。特定の実施形態において、ウデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物は、小児患者への投与に適切となるように製剤化することができる。
【0151】
医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、投与回数および様式、排せつ率、および疾患の重症度に応じて変化しうる。
【0152】
VIII.運動試験
運動試験は、最大労作の間または換気性無酸素閾値(「VAT」)でのVO値の評価を含みうる。VO最大値(「ピークVO」)、または最大(「ピーク」)酸素消費量は、個体が激しい運動の間に利用することのできる酸素の最大量を言う。この測定は、一般的に、心臓血管の健康および有酸素持続性の信頼できる指標であると考えられている。理論上は、運動の間に人が使用できる酸素が多いほど、その人が生成することのできるエネルギーが多くなる。長時間の(有酸素の)運動のために筋肉は酸素が必要であり、血液は酸素を筋肉に運び、心臓は有酸素運動の要求を満たすのに十分な量の血液をポンピングする必要があることから、この試験は心肺の健康のために用いられることが多い。しかしながら、ピークVOは多くの心臓血管疾患の状態の代用物として有用でありうるが、フォンタン手術後のエンドポイントとしてそれほど妥当ではない場合がある。この独特の生理機能においては、右心室収縮(ポンピング)よりも中心静脈圧が、肺血流量および従って心拍出量の基本の促進因子である。Gewillig M and Goldberg DJ. Failure of the fontan circulation. Heart Fail Clin. 10(1):105-116 (Jan 2014); Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017); Gewillig M, Brown SC, Eyskens B, Heying R, Ganame J, Budts W, La Gerche A and Gorenflo M. The Fontan circulation: who controls cardiac output? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 10(3):428-433 (Mar 2010); およびGoldberg DJ, Avitabile CM, McBride MG and Paridon SM. Exercise capacity in the Fontan circulation. Cardiol Young. 23(6):824-830 (Dec 2013)。心拍出量の要求は労作とともに増大することから、フォンタン循環における中心静脈圧は、上昇してその要求を満たす必要があるが、最終的にはそれを越えて更には上昇できない臨界上限に到達する。Navaratnam D, Fitzsimmons S, Grocott M, Rossiter HB, Emmanuel Y, Diller GP, Gordon-Walker T, Jack S, Sheron N, Pappachan J, Pratap JN, Vettukattil JJ and Veldtman G. Exercise-Induced Systemic Venous Hypertension in the Fontan Circulation. Am J Cardiol. 117(10):1667-1671 (May 15, 2016)。準最大労作では、中心静脈圧の上昇はこの生理学的上限には到達せず、従って、このレベルの運動での結果は、肺血管系の薬学的処置に対してより感度が高いことがある。
【0153】
VOは、対象にマスクを付け、吸入および吐き出された空気の体積およびガス濃度を測定することにより測定されることが多い。この測定は、臨床環境および研究の両方で用いられることが多く、最も正確であると考えられている。試験は一般的に、疲労するまで強度を上げてトレッドミルで運動するかまたは自転車エルゴメーターに乗るかのいずれかを含み、対象の最大労作および/または対象の無酸素閾値で読み取りを行うように設計される。
【0154】
以前にフォンタン手術を受けた患者は、一般的に、経時的にVO測定の低下を経験する。患者のVO測定が同様のレベルに維持され、VO機能の更なる低下がなかったことを実証するかまたは治療により改善されるかのいずれかとなるように本明細書に開示された方法で患者を処置することは、処置が臨床的に有益であり、心臓血管機能を改善しうるかまたは心臓血管機能の低下の速度を抑制もしくは遅延させうることを示す。
【0155】
IX.心筋パフォーマンス指数(MPI)
一般的に言えば、MPI(ドップラー由来指数またはTei Indexとも呼ばれる)は、焦点心エコー図により決定される心室の収縮機能および拡張機能の尺度である。それは収縮時間間隔および拡張時間間隔を合わせて心機能を評価する。より具体的には、MPIは、心臓の時間間隔を用いて数値で示される心室機能を評価するために用いることができる。この数値は、駆出時間(ET)で割った等容収縮時間(ICT)および等容弛緩時間(IRT)の合計に等しく、左心室または右心室のいずれかについて決定することができる。Pellett, A. A., et al.: The Tei Index: Methodology and Disease. State Values. Echocardiography: A Jrnl. of CV Ultrasound & Allied Tech. 21(7):669-672 (2004); および Ulugay, A., Tatli E.: Myocardial performance index. Anadolu Kardiyol Derg. 8(2):143-8 (April, 2008)、これらは両方とも全体が参照により本明細書に組み込まれる。FUEL試験において、MPIは、機能する一つの心室の機能を測定した。従って、FUEL試験に起因するMPIは、機能している単一の心室の流入路および流出路の血液プールドップラー評価から得られる速度により決定された。言い換えれば、FUEL試験のMPIは、機能する一つの心室の心室流入および心室流出のパルス波ドップラー速度スペクトルを用いて心臓の時間間隔を測定することにより決定された。
【0156】
X.心エコー図試験
このプロトコールの特殊な訓練を受けている超音波検査者により心エコー図を実施した。目的の一次転帰は、流入期間および流出期間のドップラー由来尺度を用いたMPIであった。主要な心室への流入および主要な半月弁を通る流出の期間を測定し、標準の式を用いてMPIを計算するために用いた。Tei C, Ling LH, Hodge DO, et al.: New index of combined systolic and diastolic myocardial performance: a simple and reproducible measure of cardiac function-a study in normals and dilated cardiomyopathy. J Cardiol, 26(6):357-66 (1995); and Pellet AA et al.: The Tei Index: Methodology and Disease State Values. Echocardiography: A Jrnl Of CV Ultrasound & Allied Tech, 21(7):669-672 (2004)。更なる組織ドップラー画像を得て、既に記載されたような組織ドップラーに基づくMPIを計算するために用いた。Harada K, Tamura M, Toyono M et al.: Comparison of the right ventricular Tei index by tissue Doppler imaging to that obtained by pulsed Doppler in children without heart disease. Am J Cardiol, 90(5):566-9 (2002)。できる限り3回の測定を行い、平均期間を計算に用いた。
【0157】
XI.80%以上のベースライン予測最大またはピークVO%を有するスーパーフォンタン患者、および80%未満のベースライン予測最大またはピークVO%を有するサブ群フォンタン患者
以下の実施例1のFUELトライアルは、有酸素運動能力(ピークまたは最大VO)の上限に基づいてフォンタン患者を除外しなかった。このトライアル設計は、相当な数の、正常またはほぼ正常な運動能力を有する対象である80%以上のベースラインピークVOを有する参加者(分析可能なITTコホートの20%)の登録につながった。最近になってようやく、このスーパーフォンタン患者のサブ群が学術的に正式に認められ、それらは「高機能を有する者」または「スーパーフォンタン」と呼ばれた(Powell 2020およびWeinreb 2020)。FUELトライアルの設計時、これらのフォンタン高機能を有する者またはスーパーフォンタン患者が存在することは十分に認められていなかった。更に、運動に対するそれらの独特な制限についての生理学的な説明は十分に理解されていなかった。従って、肺動脈血管拡張剤による治療は、これらのフォンタン対象において、既に高い肺血管リザーブを増大させない場合がある(即ちベースラインで十分な血管拡張状態)。従って、この高機能を有する者のサブ群を含めることは、ITTコホート全体におけるピークVOに対する肺動脈血管拡張剤の測定可能な臨床的影響を薄める働きをする場合がある。以下の発見は、この主張、およびフォンタン循環へと緩和されたSVHDを呈する患者におけるウデナフィルの有効性の結論を裏付ける:1.フォンタン高機能を有する者を含めたにもかかわらず、全般的なITT結果は、それでもなお驚くべきことに、臨床改善、およびピークVOに対するウデナフィルの効果におけるほぼ統計的な有意性を実証した(ピークVOがml/kg/分として表される場合はp=0.092、ml/分として表される場合はp=0.071)。
【0158】
ベースライン予測ピークまたは最大VO%は処置反応に影響を及ぼした。図2参照。ウデナフィル群であるがベースライン予測最大またはピークVO%が80%未満であるフォンタン患者についてのみ、強い反応が明らかである。ベースラインピークVOが80%より大きい患者については、ピークまたは最大VO運動時にほとんど反応がないように思われる。プラセボ群の反応は、全てのベースライン階層にわたって無視できるほどであることに留意する。低機能を有する者におけるウデナフィル薬物効果のこの集中は、驚くべきことに、有害臨床事象について非常にリスクのあるフォンタン患者に、ピークまたは最大運動能力の薬理学的改善についての非常に多くの機会を提供する。
【0159】
高機能フォンタンサブ群(予測の80%以上のピークVO)を除外することで、ウデナフィル薬物についてピークVOの臨床的および統計的に有意な改善のあるコホートを生ずる(ピークVOがml/kg/分として表される場合はp=0.023、ml/分として表される場合はp=0.030)。このフォンタンサブ群は、FUELトライアルに登録した対象の大部分(分析可能なITTコホートの80%)に相当し、短期的な有害臨床転帰(表1)リスクに最も晒されているサブ群である。これらの発見は、FUELトライアルが計画された時点では入手できなかった情報により強力に裏付けられる。正常な肺血管拡張リザーブを有する患者において肺血管拡張を改善することは、とても実行可能ではなく、そのような患者をFUELトライアルに含めることで、処置効果が薄まったであろう。
【0160】
注目すべきことに、VAT時のVOが、ITTコホート全体(p=0.012)、および高機能フォンタン対象を除外したフォンタンサブ群(p=0.022)において、臨床的および統計的に有意な改善と関連した。この発見は、フォンタン循環におけるウデナフィルの有効性についての機序に関する洞察および確証を提供する:肺動脈血管拡張剤による治療は、好気的な代謝から嫌気的な代謝への移行を変える(遅らせる)ことができるが、上記に詳述した理由のため、スーパーフォンタン患者のピーク運動能力を更に改善することはできない場合がある。
【0161】
時間と共に、高機能フォンタン対象でさえ悪化し、ピークまたは最大VOが低下して異常な範囲となる。従って、肺動脈血管拡張剤の治療による処置は、正常またはほぼ正常な(高機能を有する者)場合は、必ずしもピークまたは最大VOを改善しない場合もあるが、そのような処置は、全てのフォンタン患者の自然歴研究において示されたピークVOの免れない低下を遅らせるかまたは軽減することができたと考えることが妥当である。
【0162】
本方法は、以下の非限定的な実施例により更に理解することができる。
【0163】
[実施例1]
フォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)トライアル
FUELトライアルは、世界中の30カ所の施設で行った。FUELトライアルは、フォンタン緩和(Fontan palliation)を受けたSVHDを呈する青年におけるウデナフィルの第3相無作為化二重盲検プラセボ対照トライアルであった。(Mezzion Pharma Co.Ltd.により資金提供され、米国国立心肺血液研究所が資金提供するPediatric Heart Networkにより行われた;ClinicalTrials.gov number NCT02741115。)
【0164】
主な目的は、6ヵ月間にわたって、フォンタン生理機能を呈する青年における運動能力に対するウデナフィルの効果を決定することである。主要転帰は、ベースラインから26週の訪問までのピーク運動時の酸素消費量(最大またはピークVO)における変化であった。運動の副次的転帰には、最大労作時の追加の測定値における変化、ならびに換気性無酸素閾値(VAT)での準最大運動の測定値における変化が含まれていた。臨床的副次的目的に関する主要転帰には、収縮期および拡張期心室機能の心エコー検査由来測定値である心筋パフォーマンス指数(MPI)における変化、末梢血管機能のPAT由来測定値である対数変換された反応性充血指数(lnRHI)における変化、および対数変換された血清BNPレベルにおける変化が含まれていた。安全性を、研究コーディネーターアウトリーチの事前に指定されたプロトコールに従って収集された有害事象報告、ならびに各施設における研究チームのメンバーとのその場限りの患者および家族コミュニケーションを介してモニターした。
【0165】
トライアル集団
フォンタン手順を受けており、PDE5阻害剤を用いた処置は受けておらず、40kg以上であり、サイクルエルゴメトリーに関する最低身長必須要件(132cm以上)を満たす12歳から18歳の間の(両端の年齢を含む)個体が登録に関して適格であった。運動パフォーマンスに対するウデナフィルの効果を抜き出すため、重度の心室機能不全、重度の房室弁閉鎖不全を呈する患者、または以前の臨床的運動試験でピーク酸素消費量が年齢および性別に関する予測値の50%未満であったものを除外した。選択基準および除外基準の全てのリストを表1に挙げる。
【0166】
【表1】
【0167】
より具体的には、FUELトライアルを、ウデナフィル対プラセボに無作為化した患者の運動能力の26週の変化を評価するように設計した。研究の着想時、非常に制限された運動能力(予測の50%未満のベースラインピークまたは最大VO)を有するフォンタン患者はトライアルから除外されることが受け入れられた。この除外の論理的根拠は、(1)安全性、および(2)このサブセット集団は有効な心肺の最大運動試験データを与えそうにないという理解に基づいていた。FUELトライアル設計時、予測ピークVOの上限についても、ベースラインで高い運動能力を有する患者を除外する可能性についても考慮されず、それはこれらの独特な高い運動機能を有する者の範囲が同定または評価されなかったためである。
【0168】
重要なことに、FUELトライアルおよびそのプロトコール設計以後に状況の変化があった。FUELトライアルを開始して盲検解除した後に新たな情報が明らかになった。特に、高い運動能力を有するフォンタン患者のサブセットが存在することを認めた4つの刊行物が浮上した(Cordina 2018、Powell, 2019、Weinreb, 2020、およびGoldberg, 2021)。Cordina et alは、14/133(11%)のフォンタン患者が80%より大きい予測ピークVO2の運動能力を有したことを示した。同様に、Powellは、22/112(25%)の、80%より大きい予測ピークVOとして定義される高い運動能力を有するフォンタン患者を同定した。後から考えると、「高機能を有する者」は、少なくともピークまたは最大VOの試験に関してFUELトライアルから除外される必要があり、それはそのようなベースラインで高い運動能力を有するフォンタン患者がピーク心肺運動機能により評価される処置から恩恵を受けそうにないためである。そのような高いフォンタン機能を有する者は、典型的なフォンタン集団に相当しない。フォンタン「高機能を有する者」を除外するITT集団のサブセットの分析は、それ以外はプロトコールごとに分析され、主要ピークまたは最大VOエンドポイント(p=0.023)および臨床的関連性について統計的に有意な結果を与える。
【0169】
無作為化および研究手順
登録された参加者を、無作為に順序を変更されたブロックを使用し、1:1の比率でウデナフィルまたはプラセボに割り当て、心室の形態(左心室対右心室または混合)によって階層化した。無作為化割り当てを、トライアルの適格性および承諾を確認後にウェブベースのアルゴリズムによって生成した。
【0170】
薬物開始前に完了したベースライン臨床試験には、脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを測定するための採血、規格化されたサイクルエルゴメーターランププロトコールを使用した心肺運動試験(CPET)、規格化された心エコー図、およびフィンガーカフ(EndoPAT;Itamar Medical、Israel)によって測定される末梢動脈圧測定法(PAT)を使用した末梢血管機能の評価が含まれていた。CPET中のピーク運動時の呼吸交換比(RER)が1.10以上と定義される最大努力を達成した参加者は、無作為化および被験薬物開始に関して適格であった。最大努力を達成しなかった参加者は、最初の試みから2週以内に運動試験を繰り返すその後の機会が与えられた。研究終了後の臨床試験には、血清BNP、CPET、心エコー図、およびPATの繰り返し測定値が含まれていた。
【0171】
統計分析
ベースラインから26週の試験までの最大VOの変化における平均処置の差を10%検出するために90%のパワーを考慮し、第1種過誤を0.05とするために、1治療群あたり200名の参加者のサンプルサイズを選択した。以下の仮定を行った:ベースライン標準偏差は7.235ml/kg/分であり、最大VO測定値間の相関は0.33であり、脱落率および試験未完了率は10%であり、26週目の運動試験で最大努力に達することができなかった参加者は15%である。これらの仮定は過去のデータに基づくものであり、参加者内の相関および最大努力に達することができなかったことを評価するための保守的なアプローチを反映するものであった。
【0172】
一次分析では、処置の意図の集団を使用して、処置治療群間の主要転帰の変化における差を評価した。心室の形態(左単一対右単一または混合)および処置群を固定因子とし、ベースライン最大VOを連続的な共変量とし、共分散分析(ANCOVA)を用いてこの差を評価した。26週の訪問時のデータがないものに関しては、この値をベースライン値に等しい(変化なし)としてインピュテーションした。副次的分析には、プロトコールを完了することに成功し、それぞれの副次的エンドポイントで測定可能な値を有する参加者が含まれていた。連続的なデータポイントの副次的転帰を主要転帰に記載した様式で分析した。換気性無酸素閾値における所見の一般化可能性を評価するために、人口統計学的および臨床的特性をVATデータにおいてVOが対になっていない参加者とコホートの残りを含む参加者との間で比較した。
【0173】
トライアル結果
2016年7月から2018年5月まで、30カ所の施設で1376名の患者をスクリーニングした。図1B。これらのうち、200名をウデナフィルに無作為に割り当て、200名をプラセボに割り当てた。無作為化時の平均年齢は15.5歳であり、平均身長は163.6cmであり、平均体重は58.1kgであった。参加者の60パーセントは男性であり、81%が自身の人種的アイデンティティを白人と述べた。プラセボ群におけるものは、ウデナフィル群におけるものと比較して身長が高かったが、それ以外のベースラインの特性は群間で類似していた。
【0174】
主な目的 - 運動測定
ベースライン試験時の全ての参加者および26週目の試験時の379名の参加者(ウデナフィル群189名、プラセボ群190名)に関する最大運動データ(VO最大)が利用可能であった。
【0175】
26週目の試験時にデータが存在しない理由には、患者の脱落またはデータ捕捉におけるエラー(n=14)、および参加者がRER1.10以上を生成できないこと(n=7)が含まれていた。ウデナフィルとプラセボ群との間では、安静時心拍数、呼吸数、または収縮期血圧におけるベースラインから26週の試験までの変化における差は認められなかった。ウデナフィル群において、安静時酸素飽和度における統計的に有意な増加、および拡張期血圧における統計的に有意な減少がわずかではあるが認められた。
【0176】
安静時データおよび運動パフォーマンスの結果を表2に提供する。
【0177】
【表2】
【0178】
安静時の拡張期血圧の分析によって、プラセボ群(+0.2増加、改善なし)(p=0.003)と比較して、ウデナフィル群(-2.9減少、改善)の拡張期血圧において統計的に有意な変化(減少は改善を示す)が実証された。
【0179】
安静時の酸素飽和度(%)の分析によって、プラセボ群(-0.3減少、改善なし)と比較して、ウデナフィル群(+0.5増加、改善)(=0.002)の酸素飽和度(%)において統計的に有意な変化(増加は改善を示す)が実証された。
【0180】
最大運動時の分析によって、プラセボ群における3.7mL/分の減少(-0.2%)と比較して、ウデナフィル群のVO最大において44mL/分(2.8%)の増加が実証されたが、差は統計的有意性には到達しなかった(p=0.071)。
【0181】
更に、VAT時のVOを計算するための代謝データは、上記の表2で示すように317名の参加者;ウデナフィル群において170名およびプラセボ群において181名に関して利用可能であった。より大きなコホートと比較して、このサブ群のベースラインの人口統計学的または臨床的特性において差は認められなかった。VATデータにおいて対のVOを有するものに関しては、プラセボ群における8mL/分(-0.7%)の減少と比較して、ウデナフィル群において30mL/分(1.92%)の統計的に有意な改善が認められた(p=0.023)。VAT時に測定された二酸化炭素の換気当量(VE/VCO)は、プラセボ群(p=0.011)における0.05(0.2%)と比較して、ウデナフィル群において0.8(2.1%)有意に減少し(換気性効率が改善され)、同時に仕事率は、プラセボ群における0.31ワット(0.78%)と比較して、ウデナフィル群において3.5ワット(5.5%)有意に改善された(p=0.029)。従って、87.5mgを用いた1日2回のフォンタン患者の処置によって、換気性無酸素閾値における運動パフォーマンスの複数の測定において統計的に有意な改善が実証された。
【0182】
副次的目的の測定
MPIの測定値に関する対の心エコーデータは、250名の参加者(63%);ウデナフィル群において122名およびプラセボ群において128名で利用可能であった。表3。プラセボ群(+0.01増加、改善なし)と比較して、ウデナフィル処置群(-0.02減少、改善)のMPIにおいて統計的に有意な変化(減少は改善を示す)が認められた(p=0.028)。
【0183】
対のPAT由来血管機能データは、328名の参加者(81%);ウデナフィル群において163名およびプラセボ群において165名で利用可能であった。ウデナフィルとプラセボ群の両方のlnRHIにおいて有意な改善は認められなかった(0.07対0.05、p=0.59)。血清BNPレベルの対の測定値は、378名の参加者(95%);ウデナフィル群において187名およびプラセボ群において191名で利用可能であった。log血清BNPレベルにおける変化は、群間で有意ではなかった(p=0.18)。対の心エコーデータ、対のPAT由来血管機能データ、および血清BNPレベルの対の測定値を表3に提供する。
【0184】
【表3】
【0185】
【表4】
【0186】
安全性および耐容性
【0187】
【表5】
【0188】
ウデナフィルおよびプラセボは、研究参加者によって十分な耐容性が示された。研究コホートにおける死亡者は認められなかった。合計24名の参加者(6%);ウデナフィル群において14名およびプラセボ群において10名が重篤な有害事象を経験した。ウデナフィル群において3件の事象、プラセボ群において2件の事象が認められ、これらは被験薬物と可能性がある、ほぼ確実な、または明確な関連を有すると考えられた。ウデナフィル群において発生したものには、片側網膜動脈および静脈血栓症、一過性の下肢両麻痺、ならびに一過性の呼吸困難が含まれていた。いずれの処置群においても参加者の少なくとも5%において発生した被験薬物と可能性がある、ほぼ確実な、または明確な関連を有すると考えられる頻繁で非重篤な有害事象を表4に提供する。頭痛、顔面潮紅、腹痛、鼻出血、および勃起(男性参加者)は、ウデナフィル群においてより一般的であった。全ての他の有害事象は、群間で類似の頻度で発生した。
【0189】
[実施例2]
追加のFUELトライアル結果
以下の例では、Goldberg, DJ, et al.: Results of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) Trial. Circulation, 141(8):141:641-651 (2020)において参照されている上述のFUELトライアルを更に記載しており、これは、本明細書によってその全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0190】
フォンタン手術は、肺血管抵抗性の重要性が強調される循環である両大静脈肺動脈吻合を作成する。経時的に、この循環は運動パフォーマンスの減少と関連する心血管効率の悪化につながる。
【0191】
生理機能の改善および薬物療法の指導を目的とする厳密な臨床トライアルが不足している。
【0192】
FUELトライアルは、30カ所の施設で行った第III相臨床トライアルであった。参加者を1:1の比率でウデナフィル、87.5mg、1日2回、またはプラセボに無作為に割り当てた。主要転帰は、ピーク運動時の酸素消費量の変化における群間の差であった。副次的転帰には、換気性無酸素閾値(VAT)での準最大運動、心筋パフォーマンス指数(MPI)、反応性充血指数の自然対数(lnRHI)、および血清脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の変化における群間の差が含まれていた。
【0193】
2017年から2019年の間、北米および韓国の30カ所の臨床施設でフォンタン生理機能を呈する400名の参加者が無作為化された。無作為化時の平均年齢は15.5±2歳であり;参加者の60%は男性であり、81%は白人であった。400名の対象全員が一次分析に含まれており、欠測データを伴う21名の参加者に関しては26週のエンドポイントでインピュテーションが行われた(ウデナフィルに11名およびプラセボに10名に無作為化した)。無作為化された参加者のうち、ピーク酸素消費量はウデナフィル群において44±245mL/分(2.8%)増加し、プラセボ群(p=0.071)において3.7±228mL/分(-0.2%)減少した。VAT時の分析によって、ウデナフィル群対プラセボ群において、酸素消費量(+33±185(3.2%)対-9±193(-0.9%)mL/分、p=0.012)、二酸化炭素の換気当量(-0.8対-0.06、p=0.014)、および仕事率(+3.8対+0.34ワット、p=0.021)で統計的に有意な改善が実証された。MPIの分析によっても、同じ期間にわたってプラセボを摂取した群と比較して、ウデナフィル処置群において統計的に有意な改善が実証された(p=0.028)。lnRHI、または血清BNPレベルの変化における差は認められなかった。
【0194】
FUELトライアルにおいて、ウデナフィル(87.5mg1日2回)を用いた処置は、ピーク運動時の酸素消費量における改善(p=0.071)、(i)換気性無酸素閾値(VAT)での運動パフォーマンスの複数の測定値、(ii)MPI、(iii)安静時の拡張期血圧、および(iv)安静時の酸素飽和度(%)における統計的に有意な改善と関連していた。
【0195】
FUELトライアルはMezzion Pharma Co.Ltd.により資金提供され、米国国立心肺血液研究所が資金提供するPediatric Heart Networkにより行われた。ClinicalTrials.gov numberはNCT02741115であり、本明細書によってその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
臨床的視点
新規の態様
・Circulation誌では、先天性の心疾患における最大の医学的介入トライアルであるフォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)トライアルの結果が記載されている。Goldberg D.J. et al.: Results of the FUEL Trial. Circulation, 141(8):141:641- 651 (2020)
【0197】
・Circulation errata to Goldberg D.J. et al.: Results of the FUEL Trial. Circulation, 141(8):141:641-651 (2020)では、例4において組み込まれているように、FUELトライアルの訂正済みのMPI結果が記載されている。
【0198】
・ウデナフィルを用いた処置は、ピーク酸素消費量において統計的に有意な増加をもたらすことはなかったが、ピーク酸素消費量において顕著な増加をもたらした。
【0199】
・ウデナフィルを用いた処置は、換気性無酸素閾値(VAT)での運動パフォーマンス、VAT時の仕事率、VAT時の二酸化炭素の換気当量(VE/VCO)、MPI、安静時の拡張期血圧、および安静時の酸素飽和度の測定において統計的に有意な改善をもたらした。
【0200】
・ウデナフィルは、FUELトライアル対象によって十分な耐容性が示されており、副作用は、ホスホジエステラーゼ5型阻害薬と関連することが既に既知のものに限定されている。
【0201】
臨床的な示唆
・ウデナフィルは、フォンタン緩和後の青年における運動能力の測定において定量化可能な利点を実証するための、大規模第III相臨床トライアルにおいて評価された最初の医薬である。
【0202】
・これらの発見は、ウデナフィルを用いた治療法が、生理機能、運動能力、仕事率、VE/VCO、MPI、心拍出量、スクイージングパフォーマンス、所与の時間で体内を循環することができる流量、安静時の拡張期血圧および/または酸素飽和度、および両大静脈肺動脈吻合が行われた患者のコホートの単機能の心室のパフォーマンスを改善しうることを示唆する。
【0203】
・継続中のサーベイランスは、単心室性先天性心疾患を呈する生存者の長期的な臨床経過に対するウデナフィルを用いた慢性的な処置の効果を決定するために必要とされる。
【0204】
単心室性先天性心疾患(SVHD)を持って生まれた小児は、自身の欠損のある心臓を再構築して長期生存するために、一連の段階的な外科的介入を必要とする。フォンタン手術は、心臓を再構築するためのこの一連の段階的な外科的介入において最終的に計画された緩和的手順であり、両大静脈肺動脈吻合を生成することによって全身循環および肺循環を分離する。Fontan F and Baudet E. Surgical repair of tricuspid atresia. Thorax. 26(3):240-248 (May 1971);およびKreutzer G, Galindez E, Bono H, De Palma C and Laura JP. An operation for the correction of tricuspid atresia. The Journal of thoracic and cardiovascular surgery. 66(4):613-621 (Oct 1973)。
【0205】
しかし、肺下ポンプ非存在下では、得られたフォンタン循環は、受動的肺血流量、中心静脈圧の慢性的な上昇、および心拍出量の低下によって特徴付けられる。Gewillig M and Goldberg DJ. Failure of the fontan circulation. Heart Fail Clin. 10(1):105-116 (Jan 2014);Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017);Gewillig M, Brown SC, Eyskens B, Heying R, Ganame J, Budts W, La Gerche A and Gorenflo M. The Fontan circulation: who controls cardiac output? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 10(3):428-433 (Mar 2010);およびGoldberg DJ, Avitabile CM, McBride MG and Paridon SM. Exercise capacity in the Fontan circulation. Cardiol Young. 23(6):824-830 (Dec 2013)。フォンタン生理機能は、小児期には十分に耐えられることが多いが、心血管効率は、青年期から成人期にわたって低下する。Dennis M, Zannino D, du Plessis K, Bullock A, Disney PJS, Radford DJ, Hornung T, Grigg L, Cordina R, d'Udekem Y and Celermajer DS. Clinical Outcomes in Adolescents and Adults After the Fontan Procedure. J Am Coll Cardiol. 71(9):1009-1017 (Mar 6 2018);Fernandes SM, McElhinney DB, Khairy P, Graham DA, Landzberg MJ and Rhodes J. Serial cardiopulmonary exercise testing in patients with previous Fontan surgery. Pediatr Cardiol. 31(2):175-180 (Feb 2010);Giardini A, Hager A, Pace Napoleone C and Picchio FM. Natural history of exercise capacity after the Fontan operation: a longitudinal study. Ann Thorac Surg. 85(3):818-21 (Mar 2008);Jenkins PC, Chinnock RE, Jenkins KJ, Mahle WT, Mulla N, Sharkey AM and Flanagan MF. Decreased exercise performance with age in children with hypoplastic left heart syndrome. J Pediatr. 152(4):507-512 (Apr 2008);Paridon SM, Mitchell PD, Colan SD, Williams RV, Blaufox A, Li JS, Margossian R, Mital S, Russell J, Rhodes J and Pediatric Heart Network I. A cross-sectional study of exercise performance during the first 2 decades of life after the Fontan operation. J Am Coll Cardiol. 52(2):99-107 (Jul 8 2008);およびAtz AM, Zak V, Mahony L, Uzark K, D ’Agincourt N, Goldberg DJ, Williams RV, Breitbart RE, Colan SD, Burns KM, Margossian R, Henderson HT, Korsin R, Marino BS, Daniels K, McCrindle BW and Pediatric Heart Network I. Longitudinal Outcomes of Patients With Single Ventricle After the Fontan Procedure. J Am Coll Cardiol. 69(22):2735-2744 (Jun 6 2017)。この悪化は、運動能力、全体的な心パフォーマンス、単心室のパフォーマンスの低下、ならびに心不全症候の有病率、入院、および死亡率の増加と相関する。Diller GP, Dimopoulos K, Okonko D, Li W, Babu-Narayan SV, Broberg CS, Johansson B, Bouzas B, Mullen MJ, Poole-Wilson PA, Francis DP and Gatzoulis MA. Exercise intolerance in adult congenital heart disease: comparative severity, correlates, and prognostic implication. Circulation. 112(6):828-35 (Aug 9 2005);Diller GP, Giardini A, Dimopoulos K, Gargiulo G, Muller J, Derrick G, Giannakoulas G, Khambadkone S, Lammers AE, Picchio FM, Gatzoulis MA and Hager A. Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients. Eur Heart J. 31(24):3073-3083 (Dec 2010);Downing TE, Allen KY, Glatz AC, Rogers LS, Ravishankar C, Rychik J, Faerber JA, Fuller S, Montenegro LM, Steven JM, Spray TL, Nicolson SC, Gaynor JW and Goldberg DJ. Long-term survival after the Fontan operation: Twenty years of experience at a single center. The Journal of thoracic and cardiovascular surgery. 154(1):243-253 e2 (Jul 2017);Khairy P, Fernandes SM, Mayer JE, Jr., Triedman JK, Walsh EP, Lock JE and Landzberg MJ. Long-term survival, modes of death, and predictors of mortality in patients with Fontan surgery. Circulation. 117(1):85-92 (Jan 1 2008);Pundi KN, Johnson JN, Dearani JA, Pundi KN, Li Z, Hinck CA, Dahl SH, Cannon BC, O'Leary PW, Driscoll DJ and Cetta F. 40-Year Follow-Up After the Fontan Operation: Long-Term Outcomes of 1,052 Patients. J Am Coll Cardiol. 66(15):1700-1710 (Oct 13 2015);Cunningham JW, Nathan AS, Rhodes J, Shafer K, Landzberg MJ and Opotowsky AR. Decline in peak oxygen consumption over time predicts death or transplantation in adults with a Fontan circulation. Am Heart J. 189:184-192 (Jul 2017);およびUdholm S, Aldweib N, Hjortdal VE and Veldtman GR. Prognostic power of cardiopulmonary exercise testing in Fontan patients: a systematic review. Open Heart. 5(1):e000812 (Jul 2018)。
【0206】
フォンタン手術後の肺血流量は、中心静脈圧と肺血管抵抗性と全身心房圧との間の関係に依存する。この構築物では、肺血流量および単心室の前負荷のモジュレーターとしての肺血管抵抗性の役割が強調されており、循環効率にとって重要である。Gewillig M and Goldberg DJ. Failure of the fontan circulation. Heart Fail Clin. 10(1):105-116 (Jan 2014);Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017);Gewillig M, Brown SC, Eyskens B, Heying R, Ganame J, Budts W, La Gerche A and Gorenflo M. The Fontan circulation: who controls cardiac output? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 10(3):428-433 (Mar 2010);およびGoldberg DJ, Avitabile CM, McBride MG and Paridon SM. Exercise capacity in the Fontan circulation. Cardiol Young. 23(6):824-830 (Dec 2013)。以前の報告では、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬を含む肺血管拡張薬の投与が検討されており、結果はまちまちであった。Agnoletti G, Gala S, Ferroni F, Bordese R, Appendini L, Pace Napoleone C and Bergamasco L. Endothelin inhibitors lower pulmonary vascular resistance and improve functional capacity in patients with Fontan circulation. The Journal of thoracic and cardiovascular surgery. 153(6): 1468-1475 (Jun 2017); Goldberg DJ, French B, McBride MG, Marino BS, Mirarchi N, Hanna BD, Wernovsky G, Paridon SM and Rychik J. Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial. Circulation. 123(11):1185-1193 (May 22 2011); Hebert A, Mikkelsen UR, Thilen U, Idorn L, Jensen AS, Nagy E, Hanseus K, Sorensen KE and Sondergaard L. Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo- Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study. Circulation. 130(23):2021-2030 (Dec 2 2014);Mori H, Park IS, Yamagishi H, Nakamura M, Ishikawa S, Takigiku K, Yasukochi S, Nakayama T, Saji T and Nakanishi T. Sildenafil reduces pulmonary vascular resistance in single ventricular physiology. Int J Cardiol. 221:122-127 (Oct 15 2016);Rhodes J, Ubeda-Tikkanen A, Clair M, Fernandes SM, Graham DA, Milliren CE, Daly KP, Mullen MP and Landzberg MJ. Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept. Int J Cardiol. 168(3):2435-2440 (Oct 3 2013);Schuuring MJ, Vis JC, van Dijk AP, van Melle JP, Vliegen HW, Pieper PG, Sieswerda GT, de Bruin-Bon RH, Mulder BJ and Bouma BJ. Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial. Eur J Heart Fail. 15(6):690-698 (Jun 2013); Tunks RD, Barker PC, Benjamin DK, Jr., Cohen-Wolkowiez M, Fleming GA, Laughon M, Li JS and Hill KD. Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery. Pediatr Crit Care Med. 15(1):28-34 (Jan 2014);Van De Bruaene A, La Gerche A, Claessen G, De Meester P, Devroe S, Gillijns H, Bogaert J, Claus P, Heidbuchel H, Gewillig M and Budts W. Sildenafil improves exercise Hemodynamics in Fontan patients. Circ Cardiovasc Imaging. 7(2):265-273 (Mar 2014);Goldberg DJ, French B, Szwast AL, McBride MG, Marino BS, Mirarchi N, Hanna BD, Wernovsky G, Paridon SM and Rychik J. Impact of sildenafil on echocardiographic indices of myocardial performance after the Fontan operation. Pediatr Cardiol. 33(5):689-696 (Jun 2012);およびGiardini A, Balducci A, Specchia S, Gargiulo G, Bonvicini M and Picchio FM. Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients. Eur Heart J. 29(13):1681-1687 (Jul 2008)。
【0207】
長時間作用型PDE5阻害剤であるウデナフィル(Mezzion Pharma Co.Ltd.、ソウル、韓国)の第I/II相研究は、フォンタン生理機能を呈する青年において既に完了しており、試験した全ての投薬レジメンで耐容性が実証されている。Goldberg DJ, Zak V, Goldstein BH, Chen S, Hamstra MS, Radojewski EA, Maunsell E, Mital S, Menon SC, Schumacher KR, Payne RM, Stylianou M, Kaltman JR, deVries TM, Yeager JL, Paridon SM and Pediatric Heart Network I. Results of a phase I/II multi-center investigation of udenafil in adolescents after fontan palliation. Am Heart J. 188:42-52 (Jun 2017)。87.5mg、1日2回の用量は、最も高い平均血清濃度と関連しており、用量を制限する有害事象とは関連していなかった。Pediatric Heart Network(PHN)のフォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)トライアル(NCT02741115)において、本発明者らはフォンタン緩和が行われた青年期の若者において6ヵ月間にわたって、運動機能ならびに他の心血管および機能の転帰に対するウデナフィルの効果を評価した。
【0208】
方法
FUELトライアルは、フォンタン緩和を受けたSVHDを呈する青年における、標準的なケアに加えたウデナフィルの国際的な多施設無作為化二重盲検プラセボ対照トライアルであった。トライアルは、食品医薬品局によるSpecial Protocol Assessmentに基づき、National Heart,Lung,and Blood Institute(NHLBI)が資金提供するPHNによって、規制スポンサーであるMezzion Pharma Co.Ltd.との提携で支援された。FUELプロトコールおよび承諾書およびその後の全ての修正は、DSMB、各研究施設の機関審査委員会または同等のもの、ならびに米国、カナダ、および韓国の規制当局によって承認された。承諾は、研究参加者、または18歳未満の年齢のものに関しては法的保護者から得た。同意は、年齢18歳を超える参加者から得た。トライアルデザインは既に発表されている。Goldberg DJ, Zak V, Goldstein BH, McCrindle BW, Menon SC, Schumacher KR, Payne RM, Rhodes J, McHugh KE, Penny DJ, Trachtenberg F, Hamstra MS, Richmond ME, Frommelt PC, Files MD, Yeager JL, Pemberton VL, Stylianou MP, Pearson GD, Paridon SM and Pediatric Heart Network I. Design and rationale of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) trial. Am Heart J. 201:1-8 (Jul 2018)。
【0209】
トライアル集団
フォンタン手順を受けており、PDE5阻害剤を用いた処置は受けておらず、40kg以上であり、サイクルエルゴメトリーに関する最低身長必須要件(132cm以上)を満たす12歳から18歳の間の(両端の年齢を含む)個体が登録に関して適格であった。運動パフォーマンスに対するウデナフィルの効果を抜き出すため、重度の心室機能不全、重度の房室弁閉鎖不全を呈する患者、または以前の臨床的運動試験でピーク酸素消費量が年齢および性別に関する予測値の50%未満であったものを除外した。選択基準および除外基準の全てのリストを、研究プロトコールのために上記の表1に挙げる。
【0210】
無作為化および研究手順
登録された参加者を、無作為に順序を変更されたブロックを使用し、二重盲検様式で1:1の比率でウデナフィルまたはプラセボに割り当て、心室の形態(左心室対右心室または混合)によって階層化した。無作為化割り当てを、トライアルの適格性および承諾を確認後にウェブベースのアルゴリズムによって生成した。
【0211】
薬物開始前に完了したベースライン臨床試験には、脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを測定するための採血、規格化されたサイクルエルゴメーターランププロトコールを使用した心肺運動試験(CPET)(children and adolescents with Fontan physiology, Sleeper LA, Anderson P, Hsu DT, Mahony L, McCrindle BW, Roth SJ, Saul JP, Williams RV, Geva T, Colan SD, Clark BJ and Pediatric Heart Network I. Design of a large cross-sectional study to facilitate future clinical trials in children with the Fontan palliation. Am Heart J. 152(3):427-433 (Sep 2006)において以前に記載されている)、規格化された心エコー図、およびフィンガーカフ(EndoPAT;Itamar Medical、Israel)によって測定される末梢動脈圧測定値法(PAT)を使用した末梢血管機能の評価が含まれていた。CPET中のピーク運動時の呼吸交換比(RER)が1.10を超えるとして定義される最大努力を達成した参加者は、無作為化および被験薬物開始に関して適格であった。最大努力を達成しなかった参加者は、最初の試みから2週以内に運動試験を繰り返すその後の機会が与えられた。研究終了後の臨床試験には、血清BNP、CPET、心エコー図およびPATの繰り返し測定値が含まれていた。
【0212】
主要および副次エンドポイント
主な目的は、6ヵ月間にわたって、フォンタン生理機能を呈する青年における運動能力に対するウデナフィルの効果を決定することであった。主要転帰は、ベースラインから26週の訪問までのピーク運動時の酸素消費量(ピークVO)における変化における群間の差であった。運動の副次的転帰には、最大労作時の追加の測定値における変化、ならびに換気性無酸素閾値(VAT)での準最大運動の測定値における変化における群間の差が含まれていた。運動試験に関する値の全ての測定を、個々の参加施設における運動生理学者および医師によって最初に行った。その後これらを、終了前に施設の運動チームと共同で、訓練済みの2名のレビュアーのうちの1名によって、各施設において盲検様式で正確性に関してレビューした(MGM、SMP)。ピークVOとVAT時のVOの両方に関しては、身体習慣における短期変化に基づく交絡の導入を回避するために、指数化されていない酸素消費量を評価した。体重に関して補正した酸素消費量の分析は表5に含まれている。
【0213】
【表6】
【0214】
臨床的副次的目的に関する主要転帰には、収縮期および拡張期心室機能の心エコー検査由来測定値である心筋パフォーマンス指数(MPI)における変化における群間の差、末梢血管機能のPAT由来測定値である対数変換された反応性充血指数(lnRHI)における変化、および対数変換された血清BNPレベルにおける変化が含まれていた。これらの副次的転帰は、それぞれに関する測定をコアラボで行った。安全性を、研究コーディネーターアウトリーチの事前に指定されたプロトコールに従って収集された有害事象報告、ならびに各施設における研究チームのメンバーとのその場限りの患者および家族コミュニケーションを介してモニターした。
【0215】
統計分析
ベースラインから26週の試験までのピークVOの変化における平均処置の差を10%検出するために90%のパワーを考慮し、第1種過誤を0.05とするために、1治療群あたり200名の参加者のサンプルサイズを選択した。本発明者らは、ベースライン標準偏差が7.235ml/kg/分であり、ピークVO測定値間の相関が0.33であり、脱落および試験未完了率が10%であり、26週目の運動試験で最大努力に達することができなかった参加者が15%であると仮定した。これらの仮定は過去のデータに基づくものであり、参加者内の相関および最大努力に達することができなかったことを評価するための保守的なアプローチを反映するものであり、分析は2つのサンプルの独立平均t検定を使用して行った。一次分析では、処置の意図の集団を使用して、処置治療群間の主要転帰の変化における差を評価した。心室の形態(左単一対右単一または混合)および処置群を固定因子とし、ベースラインピークVOを連続共変量とし、共分散分析(ANCOVA)を用いてこの差を評価した。26週の訪問時のデータがないものに関しては、この値をベースライン値に等しい(変化なし)としてインピュテーションした。アルファレベルを0.05で設定し、両側検定を行った。全ての統計的分析を、SAS統計ソフトウェア9.4(SAS Institute,Inc.、ケアリー、ノースカロライナ州)を使用して行った。副次的分析には、プロトコールを完了することに成功し、それぞれの副次的エンドポイントで測定可能な値を有する参加者が含まれていた。連続的なデータポイントの副次的転帰を主要転帰に記載した様式で分析した。換気性無酸素閾値における所見の一般化可能性を評価するために、人口統計学的および臨床的特性をVATにおいてVOデータが対になっていない参加者とコホートの残りを含む参加者との間でスチューデントt検定およびフィッシャーの正確検定を使用して比較した。フィッシャーの正確検定は、ウデナフィルとプラセボコホートとの間の有害事象を比較するために使用した。
【0216】
結果
参加者:2016年7月から2018年5月まで、30カ所の施設で1376名の患者をスクリーニングした。図1B。これらのうち、200名をウデナフィルに無作為に割り当て、200名をプラセボに割り当てた。無作為化時の平均年齢は15.5歳であり、平均身長は163.6cmであり、平均体重は58.1kgであった。参加者の60パーセントは男性であり、81%が自身の人種的アイデンティティを白人と述べた。プラセボ群におけるものは、ウデナフィル群におけるものと比較して身長が高かったが、それ以外のベースラインの特性は表6において群間で類似していた。
【0217】
【表7】
【0218】
運動測定値
安静時、準最大および最大運動測定値を表2に示す。ベースライン試験時の全ての参加者および26週目の試験時の379名の参加者(ウデナフィル群189名、プラセボ群190名)に関する最大運動データは利用可能であった。26週目の試験時にデータが存在しない理由には、患者の脱落またはデータ捕捉におけるエラー(n=14)および参加者がRER1.10以上を生成できないこと(n=7)が含まれていた。ウデナフィルとプラセボ群との間では、安静時心拍数、呼吸数、または収縮期血圧におけるベースラインから26週の試験までの変化における差は認められなかった。ベースライン時(薬物曝露前)のピーク分換気量は、プラセボ群において多かったが、群間の分換気量の変化における差は認められなかった。ウデナフィル群において、安静時酸素飽和度におけるわずかではあるが統計的に有意な増加および拡張期血圧におけるわずかではあるが統計的に有意な減少が認められた。
【0219】
最大運動時の分析によって、プラセボ群におけるピークVOの3.7mL/分の減少(-0.2%)と比較して、ウデナフィル群における44mL/分(2.8%)の増加が実証されたが、差は統計的有意性までには到達しなかった。図2A~2B、p=0.071。351名の参加者;ウデナフィル群において170名およびプラセボ群において181名に関する、VAT時のVOを計算するための代謝データが利用可能であった。より大きなコホートと比較して、このサブ群のベースラインにおける人口統計学的または臨床的特性に差は認められなかった。表7。VATデータにおいて対のVOを有する者に関しては、プラセボ群における9mL/分(-0.8%)の減少と比較して、ウデナフィル群において29.7mL/分(2.85%)の統計的に有意な改善が認められた。図3A~3B、p=0.023。VAT時に測定された二酸化炭素の換気当量(VE/VCO)は、プラセボ群における0.05と比較して、ウデナフィル群において0.8に有意に減少し(換気性効率が改善され)(p=0.0114)、同時に仕事率は、プラセボ群における0.31ワット(0.5%)と比較して、ウデナフィル群において3.5ワット(5.2%)有意に改善された。図4A~4B、p=0.029。
【0220】
【表8】
【0221】
副次的目的
250名の参加者(63%);ウデナフィル群において122名およびプラセボ群において128名で、MPIの測定値に関する対の心エコーデータが利用可能であった。表3。プラセボ群(+0.01増加、改善なし)と比較して、ウデナフィル処置群(-0.02減少、改善)のMPIにおいて統計的に有意な変化(減少は改善を示す)が認められた(p=0.028)。対のPAT由来血管機能データは、328名の参加者(81%);ウデナフィル群において163名およびプラセボ群において165名で利用可能であった。ウデナフィルとプラセボ群の両方のlnRHIにおいて有意な改善は認められなかった(0.07対0.05、p=0.59)。血清BNPレベルの対の測定値は、378名の参加者(95%);ウデナフィル群において187名およびプラセボ群において191名で利用可能であった。log血清BNPレベルにおける変化は群間で違いはなかった(p=0.18)。
【0222】
安全性および耐容性
ウデナフィルおよびプラセボは、研究参加者によって十分な耐容性が示された。研究コホートにおける死亡者は認められなかった。合計24名の参加者(6%);ウデナフィル群において14名およびプラセボ群において10名が重篤な有害事象を経験した。ウデナフィル群において3件の事象、プラセボ群において2件の事象が認められ、これらは被験薬物と可能性がある、ほぼ確実な、または明確な関連を有すると考えられた。ウデナフィル群において発生したものには、片側網膜動脈および静脈血栓症、一過性の下肢両麻痺、ならびに一過性の呼吸困難が含まれていた。被験薬物と可能性がある、ほぼ確実な、または明確な関連を有すると考えられる頻繁で非重篤な有害事象を表4に挙げる。頭痛、顔面潮紅、腹痛、鼻出血、および勃起(男性参加者)は、ウデナフィル群においてより一般的であった。持続勃起症のエピソードは報告されなかった。全ての他の有害事象は、群間で類似の頻度で発生した。
【0223】
考察
FUELトライアルは、フォンタン手術が行われたSVHDを呈する小児におけるウデナフィルの第III相臨床的トライアルであった。ウデナフィル群のピークVOにおける相対的な改善は、処置治療群間で比較した場合に統計的有意性に到達しなかったが、ウデナフィルを用いた処置は、事前に指定された副次的成果測定値である準最大運動において統計的に有意な改善につながった。ウデナフィルに無作為化された参加者は、酸素消費量、仕事率、無酸素閾値での換気性効率、および心筋パフォーマンス指数において優れた増加を有していた。PAT由来反応性充血指数における相対的な改善は認められなかった。全体的に、ウデナフィルは、PDE5阻害剤療法と関連することが既知のものに限定される重篤な有害事象および副作用をほぼ伴わずに十分な耐容性が示された。Goldberg DJ, French B, McBride MG, Marino BS, Mirarchi N, Hanna BD, Wernovsky G, Paridon SM and Rychik J. Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial. Circulation. 123(11):1185-1193 (May 22 2011);Goldberg DJ, Zak V, Goldstein BH, McCrindle BW, Menon SC, Schumacher KR, Payne RM, Rhodes J, McHugh KE, Penny DJ, Trachtenberg F, Hamstra MS, Richmond ME, Frommelt PC, Files MD, Yeager JL, Pemberton VL, Stylianou MP, Pearson GD, Paridon SM and Pediatric Heart Network I. Design and rationale of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) trial. Am Heart J. 201:1-8 (Jul 2018);およびChang HJ, Song S, Chang SA, Kim HK, Jung HO, Choi JH, Lee JS, Kim KH, Jeong JO, Lee JH and Kim DK. Efficacy and Safety of Udenafil for the Treatment of Pulmonary Arterial Hypertension: a Placebo-controlled, Double-blind, Phase IIb Clinical Trial. Clin Ther. 41(8):1499-1507 (Aug 2019)。
【0224】
フォンタン手術およびその改良は、別の面では終末期のSVHDを呈する多数の患者の生存につながったが、その手順によって作成された循環には固有の生理学的欠陥があり:中心静脈圧は慢性的に上昇し、心拍出量は慢性的に低下する。Gewillig M and Goldberg DJ. Failure of the fontan circulation. Heart Fail Clin. 10(1):105- 116 (Jan 2014); Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017);およびGewillig M, Brown SC, Eyskens B, Heying R, Ganame J, Budts W, La Gerche A and Gorenflo M. The Fontan circulation: who controls cardiac output? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 10(3):428-433 (Mar 2010)。フォンタン循環における心血管効率の基本的な制限は多く、通常、肺血管抵抗性における異常、単心室の拡張期機能、全身および肺血管内皮の機能不全、病理学的血管リモデリングなどを含む。Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017);Averin K, Hirsch R, Seckeler MD, Whiteside W, Beekman RH, 3rd and Goldstein BH. Diagnosis of occult diastolic dysfunction late after the Fontan procedure using a rapid volume expansion technique. Heart. 102(14):1109-1114 (Jul 15 2016);Goldstein BH, Connor CE, Gooding L and Rocchini AP. Relation of systemic venous return, pulmonary vascular resistance, and diastolic dysfunction to exercise capacity in patients with single ventricle receiving fontan palliation. Am J Cardiol. 105(8):1169-1175 (Apr 15 2010);Hays BS, Baker M, Laib A, Tan W, Udholm S, Goldstein BH, Sanders SP, Opotowsky AR and Veldtman GR. Histopathological abnormalities in the central arteries and veins of Fontan subjects. Heart. 104(4):324-331 (Feb 2018);Khambadkone S, Li J, de Leval MR, Cullen S, Deanfield JE and Redington AN. Basal pulmonary vascular resistance and nitric oxide responsiveness late after Fontan-type operation. Circulation. 107(25):3204-3208 (Jul 1 2003);Mitchell MB, Campbell DN, Ivy D, Boucek MM, Sondheimer HM, Pietra B, Das BB and Coll JR. Evidence of pulmonary vascular disease after heart transplantation for Fontan circulation failure. J Thorac Cardiovasc Surg. 128(5):693-702 (Nov 2004);およびSarkola T, Jaeggi E, Slorach C, Hui W, Bradley T and Redington AN. Assessment of vascular remodeling after the Fontan procedure using a novel very high resolution ultrasound method: arterial wall thinning and venous thickening in late follow-up. Heart Vessels. 28(1):66-75 (Jan 2013)。
【0225】
循環の各病理学的特徴は潜在的な治療標的を表しうるが、肺血管抵抗性を低下させるように設計された薬剤を用いた薬物療法は、その広範な耐容性、肺高血圧の処置に関するその有効性、およびフォンタン後の心拍出量のモジュレーターとしての肺血管抵抗性の特有の役割を考慮すると、直感的に理にかなっている。Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017)。
【0226】
フォンタン循環を有するものにおける他の肺血管拡張薬を用いた以前の研究は曖昧であった。Agnoletti G, Gala S, Ferroni F, Bordese R, Appendini L, Pace Napoleone C and Bergamasco L. Endothelin inhibitors lower pulmonary vascular resistance and improve functional capacity in patients with Fontan circulation. J Thorac Cardiovasc Surg. 153(6):1468- 1475 (Jun 2017);Goldberg DJ, French B, McBride MG, Marino BS, Mirarchi N, Hanna BD, Wernovsky G, Paridon SM and Rychik J. Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo- controlled, crossover trial. Circulation. 123(11):1185-1193 (May 22 2011);Hebert A, Mikkelsen UR, Thilen U, Idorn L, Jensen AS, Nagy E, Hanseus K, Sorensen KE and Sondergaard L. Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study. Circulation. 130(23):2021-2030 (Dec 2 2014);Mori H, Park IS, Yamagishi H, Nakamura M, Ishikawa S, Takigiku K, Yasukochi S, Nakayama T, Saji T and Nakanishi T. Sildenafil reduces pulmonary vascular resistance in single ventricular physiology. Int J Cardiol. 221:122-127 (Oct 15 2016);Rhodes J, Ubeda-Tikkanen A, Clair M, Fernandes SM, Graham DA, Milliren CE, Daly KP, Mullen MP and Landzberg MJ. Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept. Int J Cardiol. 168(3):2435-2440 (Oct 3 2013);Schuuring MJ, Vis JC, van Dijk AP, van Melle JP, Vliegen HW, Pieper PG, Sieswerda GT, de Bruin-Bon RH, Mulder BJ and Bouma BJ. Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial. Eur J Heart Fail. 15(6):690-698 (Jun 2013); Tunks RD, Barker PC, Benjamin DK, Jr., Cohen-Wolkowiez M, Fleming GA, Laughon M, Li JS and Hill KD. Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery. Pediatr Crit Care Med. 15(1):28-34 (Jan 2014);Van De Bruaene A, La Gerche A, Claessen G, De Meester P, Devroe S, Gillijns H, Bogaert J, Claus P, Heidbuchel H, Gewillig M and Budts W. Sildenafil improves exercise Hemodynamics in Fontan patients. Circ Cardiovasc Imaging. 7(2):265-273 (Mar 2014);Goldberg DJ, French B, Szwast AL, McBride MG, Marino BS, Mirarchi N, Hanna BD, Wernovsky G, Paridon SM and Rychik J. Impact of sildenafil on echocardiographic indices of myocardial performance after the Fontan operation. Pediatr Cardiol. 33(5):689-696 (Jun 2012);およびGiardini A, Balducci A, Specchia S, Gargiulo G, Bonvicini M and Picchio FM. Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients. Eur Heart J. 29(13):1681-1687 (Jul 2008)。肺血管拡張薬の様々なクラスにわたる多数の小規模単一施設研究によって単回用量後の急性的な改善が実証されてきたが、これらの持続性の効果または慢性的な使用は検討されていなかった。Rhodes J, Ubeda-Tikkanen A, Clair M, Fernandes SM, Graham DA, Milliren CE, Daly KP, Mullen MP and Landzberg MJ. Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept. Int J Cardiol. 168(3):2435-2440 (Oct 3 2013);Tunks RD, Barker PC, Benjamin DK, Jr., Cohen-Wolkowiez M, Fleming GA, Laughon M, Li JS and Hill KD. Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery. Pediatr Crit Care Med. 15(1):28-34 (Jan 2014);Van De Bruaene A, La Gerche A, Claessen G, De Meester P, Devroe S, Gillijns H, Bogaert J, Claus P, Heidbuchel H, Gewillig M and Budts W. Sildenafil improves exercise Hemodynamics in Fontan patients. Circ Cardiovasc Imaging. 7(2):265-273 (Mar 2014);およびGiardini A, Balducci A, Specchia S, Gargiulo G, Bonvicini M and Picchio FM. Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients. Eur Heart J. 29(13):1681-1687 (Jul 2008)。フォンタン後、青年および成人におけるエンドセリン受容体拮抗薬の使用を評価した2つの中規模研究が存在したが、これら2つのトライアルによって矛盾する結果が実証されており、このコホートにおける第I相試験は行われなかった。Hebert A, Mikkelsen UR, Thilen U, Idorn L, Jensen AS, Nagy E, Hanseus K, Sorensen KE and Sondergaard L. Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study. Circulation. 130(23):2021-2030 (Dec 2 2014);およびSchuuring MJ, Vis JC, van Dijk AP, van Melle JP, Vliegen HW, Pieper PG, Sieswerda GT, de Bruin-Bon RH, Mulder BJ and Bouma BJ. Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial. Eur J Heart Fail. 15(6):690-698 (Jun 2013)。更に、利点を示唆する研究においてこの利点はヘモグロビンレベルの低下と関連しており、これは薬物の推定される利点を相殺する可能性が高い副作用であった。Hebert A, Mikkelsen UR, Thilen U, Idorn L, Jensen AS, Nagy E, Hanseus K, Sorensen KE and Sondergaard L. Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study. Circulation. 130(23):2021-2030 (Dec 2 2014)。FUELトライアルは、フォンタン緩和後のSVHDを呈する青年期の若者における第I相臨床試験によって決定された用量での特定の肺血管拡張薬の使用と関連する生理学的利点を示唆するための最初の大規模多施設研究である。
【0227】
フォンタン生理機能を伴う生活の課題は、運動パフォーマンスの評価によって十分に実証された。フォンタン生理機能を呈する青年は、健常な同世代のものと比較して運動能力が低下しており、差は経時的に強調され、入院率および心不全症候の増加と関連している。Fernandes SM, McElhinney DB, Khairy P, Graham DA, Landzberg MJ and Rhodes J. Serial cardiopulmonary exercise testing in patients with previous Fontan surgery. Pediatr Cardiol. 31(2):175-180 (Feb 2010);Giardini A, Hager A, Pace Napoleone C and Picchio FM. Natural history of exercise capacity after the Fontan operation: a longitudinal study. Ann Thorac Surg. 85(3):818-21 (Mar 2008);Jenkins PC, Chinnock RE, Jenkins KJ, Mahle WT, Mulla N, Sharkey AM and Flanagan MF. Decreased exercise performance with age in children with hypoplastic left heart syndrome. J Pediatr. 152(4):507-512 (Apr 2008);Paridon SM, Mitchell PD, Colan SD, Williams RV, Blaufox A, Li JS, Margossian R, Mital S, Russell J, Rhodes J and Pediatric Heart Network I. A cross-sectional study of exercise performance during the first 2 decades of life after the Fontan operation. J Am Coll Cardiol. 52(2):99-107 (Jul 8 2008);Atz AM, Zak V, Mahony L, Uzark K, D'Agincourt N, Goldberg DJ, Williams RV, Breitbart RE, Colan SD, Burns KM, Margossian R, Henderson HT, Korsin R, Marino BS, Daniels K, McCrindle BW and Pediatric Heart Network I. Longitudinal Outcomes of Patients With Single Ventricle After the Fontan Procedure. J Am Coll Cardiol. 69(22):2735-2744 (Jun 6 2017);Diller GP, Dimopoulos K, Okonko D, Li W, Babu-Narayan SV, Broberg CS, Johansson B, Bouzas B, Mullen MJ, Poole-Wilson PA, Francis DP and Gatzoulis MA. Exercise intolerance in adult congenital heart disease: comparative severity, correlates, and prognostic implication. Circulation. 112(6):828-35 (Aug 9 2005);Diller GP, Giardini A, Dimopoulos K, Gargiulo G, Muller J, Derrick G, Giannakoulas G, Khambadkone S, Lammers AE, Picchio FM, Gatzoulis MA and Hager A. Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients. Eur Heart J. 31(24):3073-3083 (Dec 2010);Cunningham JW, Nathan AS, Rhodes J, Shafer K, Landzberg MJ and Opotowsky AR. Decline in peak oxygen consumption over time predicts death or transplantation in adults with a Fontan circulation. Am Heart J. 189:184-192 (Jul 2017);およびUdholm S, Aldweib N, Hjortdal VE and Veldtman GR. Prognostic power of cardiopulmonary exercise testing in Fontan patients: a systematic review. Open Heart. 5(1):e000812 (Jul 2018)。年齢および性別に関して予測される50%を下回る運動能力は、循環関連の病的状態が一般的になるおよその閾値であり、典型的には30代の間に生じるが、それより早く生じる場合がある。Diller GP, Giardini A, Dimopoulos K, Gargiulo G, Muller J, Derrick G, Giannakoulas G, Khambadkone S, Lammers AE, Picchio FM, Gatzoulis MA and Hager A. Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients. Eur Heart J. 31(24):3073-3083 (Dec 2010)。運動能力を改善する能力は、改善されたより一般的な循環機能のマーカーとして、フォンタン手順が行われたものの長期健康にとって重要である可能性が高い。このトライアルは、ウデナフィルが、フォンタン患者における薬理学的介入後の運動能力の重要な測定値を改善する助けとなる場合があることを示唆する。
【0228】
FUELトライアルでは、ピークVOの測定が比較的容易であり、ピークVOが心イベントに関して許容される代用物として以前のトライアルにおいて使用されていたため、ピークVOにおける変化を検出するように検出力を設定した。Dallaire F, Wald RM and Marelli A. The Role of Cardiopulmonary Exercise Testing for Decision Making in Patients with Repaired Tetralogy of Fallot. Pediatr Cardiol. 38(6):1097- 1105 (Aug 2017);Mancini D, LeJemtel T and Aaronson K. Peak VO(2): a simple yet enduring standard. Circulation. 101(10):1080-1082 (Mar 2000);Okonko DO, Grzeslo A, Witkowski T, Mandal AK, Slater RM, Roughton M, Foldes G, Thum T, Majda J, Banasiak W, Missouris CG, Poole-Wilson PA, Anker SD and Ponikowski P Effect of intravenous iron sucrose on exercise tolerance in anemic and nonanemic patients with symptomatic chronic heart failure and iron deficiency FERRIC-HF: a randomized, controlled, observer-blinded trial. J Am Coll Cardiol. 51(2):103-112 (Jan 15 2008);およびRedfield MM, Chen HH, Borlaug BA, Semigran MJ, Lee KL, Lewis G, LeWinter MM, Rouleau JL, Bull DA, Mann DL, Deswal A, Stevenson LW, Givertz MM, Ofili EO, O'Connor CM, Felker GM, Goldsmith SR, Bart BA, McNulty SE, Ibarra JC, Lin G, Oh JK, Patel MR, Kim RJ, Tracy RP, Velazquez EJ, Anstrom KJ, Hernandez AF, Mascette AM, Braunwald E and Trial R. Effect of phosphodiesterase-5 inhibition on exercise capacity and clinical status in heart failure with preserved ejection fraction: a randomized clinical trial. JAMA. 309(12):1268-1277 (Mar 27 2013)。しかし、ピークVOは、多くの心血管病態の代用物として有用でありうるが、フォンタン手術後のエンドポイントとしてそれほど妥当ではない場合がある。この特有の生理機能において、右心室の収縮というよりはむしろ中心静脈圧が経肺血流量の、従って心拍出量の主なドライバーである。Gewillig M and Goldberg DJ. Failure of the fontan circulation. Heart Fail Clin. 10(1):105-116 (Jan 2014);Egbe AC, Connolly HM, Miranda WR, Ammash NM, Hagler DJ, Veldtman GR and Borlaug BA. Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease. Circ Heart Fail. 10(12): e004515 (Sept. 2017);Gewillig M, Brown SC, Eyskens B, Heying R, Ganame J, Budts W, La Gerche A and Gorenflo M. The Fontan circulation: who controls cardiac output? Interact Cardiovasc Thorac Surg. 10(3):428-433 (Mar 2010);およびGoldberg DJ, Avitabile CM, McBride MG and Paridon SM. Exercise capacity in the Fontan circulation. Cardiol Young. 23(6):824-830 (Dec 2013)。心拍出量の要求は労作とともに増大することから、フォンタン循環における中心静脈圧は上昇してその要求を満たす必要があるが、最終的にはそれを越えて更には上昇できない臨界上限に到達する。Navaratnam D, Fitzsimmons S, Grocott M, Rossiter HB, Emmanuel Y, Diller GP, Gordon-Walker T, Jack S, Sheron N, Pappachan J, Pratap JN, Vettukattil JJ and Veldtman G. Exercise-Induced Systemic Venous Hypertension in the Fontan Circulation. Am J Cardiol. 117(10):1667-1671 (May 15, 2016)。準最大労作では、中心静脈圧の上昇はこの生理学的上限に到達せず、従ってこのレベルでの運動での結果は、肺血管系の薬理学的操作に対して感度がより高いことがある。これは、ピーク運動と比較して無酸素閾値での酸素消費量と仕事率の両方の比較的高い比率によって実証され、運動中の中心静脈圧の変化が極めて少なく、VAT時のVOおよびピークVOにおける改善または減少が通常同等である傾向にある肺下心室を伴うものに関する生理機能とは異なっている。
【0229】
ここで報告された所見の重要性にもかかわらず、このトライアルには限界がある。第1に、参加者の負担を最小限にするため、研究デザインには、血液動態の詳細な測定値、例えば、心臓磁気共鳴イメージングまたは侵襲的カテーテル法研究で得ることができるものが含まれていなかった。更に、PAT成果の評価では、ウデナフィルのプラセボに対する利点は示されなかった。更にこれらの研究によって提供された複数の測定値の検証は、この初回分析では行われなかったが、将来の分析の対象となるであろう。最後に、FUELトライアルの期間が安全性の長期評価の妨げとなったが、これは継続中のFUEL非盲検延長研究によって取り組まれているところである。
【0230】
標準的な治療法に加えてウデナフィルを用いた処置(87.5mg1日2回)は、ピーク運動時の酸素消費量における統計的に有意な改善と関連しなかったが、換気性無酸素閾値における運動パフォーマンスの複数の測定において統計的に有意な改善を実証した。フォンタン患者に関する測定可能な生理学的利点を実証するための最初の大規模多施設プラセボ対照無作為化トライアルとして、FUELトライアルは50年近くにわたるフォンタン循環の経験において画期的な出来事を表し、官民パートナーシップによって先天性の心疾患における科学を進展させることができる方法のモデルとして役割を果たす。更に研究は、ウデナフィルがSVHDを呈するより大きなコホート内の部分集団に選択的に有益であるかどうかを決定し、処置の長期耐容性および安全性を評価することを保証する。
【0231】
この実施例2に挙げられる本開示は、本明細書において完全に述べられたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0232】
[実施例3]
ウデナフィル錠剤の製剤
87.5mgのウデナフィルを含む錠剤の例示的な製剤を表11に詳述する。表11に報告するウデナフィル製剤を、上記実施例1および2で論じたFUELトライアルにおいてに登録されたフォンタン患者に使用した。
【0233】
【表9】
【0234】
[実施例4]
フォンタン緩和を伴うSVHD対象における心筋パフォーマンスの心エコーインデックスに対するウデナフィルの効果
FUELトライアルの目的は、フォンタン外科手術後の機能的単心室生理機能を呈する約12歳から約18歳の青年における心筋パフォーマンスの心エコー測定値に対するウデナフィルの効果を決定することである。FUELトライアルは、無作為化二重盲検プラセボ対象トライアルであり、米国(26)、カナダ(2)、および韓国(2)にある30カ所の様々な施設で、フォンタン手術後の約12歳から約18歳の青年において行われた。フォンタン患者は、プラセボまたはウデナフィル(87.5mg1日2回)を26週間受けるように無作為化した。
【0235】
各対象は、開始時および26週の最後に心エコー図を受けた。MPIの測定値に関する対の心エコーデータは、250名の参加者(63%);ウデナフィル群において122名およびプラセボ群において128名で利用可能であった。表3。プラセボ群(+0.01増加、改善なし)と比較して、ウデナフィル処置治療群(-0.02減少、改善)のMPIにおいて統計的に有意な変化が認められた(p=0.028)。MPIにおける変化は、単機能優位心室の流入路および流出路の血液プールドップラー評価から得られた速度によって決定した。全ての測定は、ウィスコンシン州の小児病院のコアラボでの心エコー法によって行った。ウデナフィルで処置された対象によって、同じ期間にわたってプラセボを摂取した対象と比較して、自身の心筋パフォーマンス指数(MPI)における統計的に有意な改善(減少は改善を示す)が実証された、p=0.028。
【0236】
これらのデータによって、プラセボ群と比較して、ウデナフィル群のMPIにおける改善が実証される(-0.02対+0.01、p=0.028)。心筋パフォーマンスは、フォンタン外科手術を受けたSVHDを呈するものを含む、SVHDを呈するものの長期健康における重要な因子であり、生理機能のこの態様における改善は、運動パフォーマンスで言及された改善を補完し、ウデナフィルを用いた処置の利点が多因子性でありうることを示唆する。
【0237】
米国特許出願第14/788,211号明細書、米国特許公開第2019/0030037号明細書、米国特許第10,137,128号明細書、および米国特許出願第15/887,523号明細書、米国特許公開第2018/0169103号明細書、米国特許第10,653,698号明細書、Goldberg, D.J. et al.: Results of the FUEL Trial. Circulation. 141:641-651 (February 25, 2020)、およびGoldberg, D.J. et al.: Correction to: Results of the FUEL Trial. Circulation. 142:e31 (July, 14, 2020)を含む、本明細書において言及する、または挙げる全ての特許、特許文書、論文、抄録、正誤表、および刊行物を含む全ての開示は、それぞれが本明細書において個々におよび完全に組み込まれ記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0238】
「関連出願」で挙げられる他の関連する先に提出された出願と矛盾する場合、定義を含むこの本明細書を優先するべきである。
【0239】
本発明への様々な改良および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者であれば明らかになるであろう。例示の実施形態および実施例は、例としてのみ提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本発明の範囲は、以下に示す特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0240】
[実施例5]
この実施例5は、予測の80%未満のベースラインピークまたは最大VOを有するサブスーパーフォンタン集団についてのウデナフィルの有効性、サブスーパーフォンタン患者およびスーパーフォンタン患者の両方についてのウデナフィルの副次的ポイントの有効性、予測の80%以上のベースラインピークVOを有するスーパーフォンタン患者およびサブスーパーフォンタン集団を含む、全てのフォンタン患者におけるVAT時のVOの重要性、ならびにウデナフィルによるフォンタン集団の処置の臨床的利点についてのFUEL OLEトライアルの確認について実証する。
【0241】
(a)80%未満のベースラインパーセント予測ピークVOを有するサブスーパーフォンタン患者についてのピークVO2
以下は、FUELトライアルの全登録集合の75%に相当する、予測の80%未満のベースラインピークVOを有するフォンタン集合が、深刻で生命を脅かす満たされていない必要性を有する希少小児集団であるフォンタン患者の運動能力を改善するためのピーク運動時のウデナフィルの薬物効果を分析するための適切な集合であることについて実証する。
【0242】
FUELトライアルの開始時、科学界において、フォンタン集合のサブセット、いわゆる「スーパーフォンタン」患者が、二心室(正常な)心臓を有する者についての正常レベルまたは正常レベル近くのピーク運動レベルに達することができることはまだ確立されていなかった。FUELトライアルが2018年6月の登録完了近くになって初めて、予測の80%以上のピークVOを有する者として定義される「スーパーフォンタン」の概念が医学文献中に現れ始めた。Cordina 2018、Powell 2019およびWeinrab 2020参照。このスーパーフォンタンサブセットの妥当性、またはその存在さえも、FUELトライアルの臨床試験設計の間は基本的に知られておらず、FUELトライアルが設計されてレビューおよび合意のためにFDAに提示された時点で予測することはできなかった。
【0243】
スーパーフォンタン患者についての理解の出現と並行して、フォンタン循環におけるピーク運動の生理学的上限についての理解が増した。スーパーフォンタン患者が運動のピークレベルに達する際、心拍出量の促進因子である中心静脈圧は最大に近い生理学的値であり、従って、更に意味のある上昇は不可能である。(Goldberg 2021)および(Navaratnam 2016)。中心静脈圧のこの生理学的上限は、この集団におけるピーク運動を更に増加させる能力を制限すると考えられる。しかしながら、ピーク運動を改善する能力のこの制限にもかかわらず、換気性無酸素閾値(「VAT」)時の運動の増加がスーパーフォンタン患者については予想外に実現され、それは換気性無酸素閾値が中心静脈圧の生理学的上限より下で起こることが考えられるためである。
【0244】
上記に示したこのサブ群分析についての臨床的正当化に照らせば、ウデナフィル処置に対する個々の対象の反応は、ある程度、トライアル参加時のそれらのピークまたは最大運動能力に依存した。ベースラインピーク運動能力サブセット(80%未満対80%以上のパーセント予測ピークVOのサブ群;カットポイントはフォンタン医学文献に定義される)およびサブセットによる処置群の相互作用について、処置群(ウデナフィル対プラセボ)についての固定因子を用いた共分散分析を行った。ピークまたは最大VO、ならびに換気性無酸素閾値(「VAT」)時の運動の測定および心筋パフォーマンス指数(MPI)についてこの分析を行った。結果を表1に示す。
【0245】
【表10】
【0246】
固定因子を用いたANCOVA分析は、ピークVOの転帰測定について処置群とベースラインピーク運動能力サブセットの間の有意な相互作用を確認したが(p=0.037)、換気性無酸素閾値時の運動転帰(全てのpは0.58以上)およびMPI(p=0.17)については処置群とサブセットの間の有意な相互作用は実証しなかった。これらの結果は、ベースラインピーク運動能力はピークまたは最大VOについての薬物処置効果に有意に影響を与え、一方でベースライン運動能力は他の(副次的)転帰測定に対する薬物処置効果には有意に影響しないことを確認するものであると考えられる。まとめると、これらの結果は、2018年に医学文献に初めて公開されたフォンタン生理機能の新たな理解を裏付け、特にFUELトライアルにおけるピークまたは最大VOの主要転帰に80%以上のベースラインパーセント予測ピークVOを有するフォンタン患者を含めることの悪影響(例えばトライアルコホートを薄めること)を明らかにする。
【0247】
(b)臨床的有効性の証拠
FUELトライアルにおいて、主要転帰測定であるピークVOの改善についてのp値は0.092であり、統計的にもう一歩であるがそれでもなお効果的であった。FUELトライアル設計以後のフォンタン生理機能の新たな科学知識(例えば「スーパーフォンタン」および上限効果)、ならびに上記の分析におけるその理解の確認を考慮すると、ウデナフィルは、80%未満のベースラインパーセント予測ピークVOを有するサブスーパーフォンタン患者について統計的に有意であった。実際、分析は、トライアル設計の間に新たな医学知識があったなら(例えば80%以上のベースラインピークVOについてのトライアル除外基準の追加により)FUELトライアルにおいて プロスペクティブに研究されたであろう集団を正確に捉えている。重要なことに、このサブ群分析は、低下したピーク運動機能を有するフォンタン患者、正確には死亡、移植または心不全のための入院を含む短期的有害転帰について非常にリスクのある患者を組み込んでいる(Udholm 2018;Giardini 2007;Diller 2010;Fernandes 2011、Ohuchi 2015)。このサブ群分析のサンプルサイズ全体がn=301であったことに留意すべきである。
【0248】
表2に示すように、80%未満のベースラインパーセント予測ピークVOを有する者のサブ群分析は、ピークまたは最大VOの有意な改善について実証する。ピークまたは最大VOのこの改善は、ITTコホートと、VAT時の運動および心室機能の主要転帰であるMPIを含む全ての副次的転帰測定におけるサブ群分析においての両方について示された統計的に有意な改善と一致する。これらの準最大の発見は、上記に示した新たな分析に基づいて予測され、VAT時の改善は、(例えばITTコホートにおいて「スーパーフォンタン」患者を含める場合であっても)ベースラインピーク運動能力にかかわらず見られる。
【0249】
【表11】
【0250】
ベースラインで予測の80%未満のピークまたは最大VOを有するサブスーパーフォンタン患者についてのウデナフィルの利点が明らかである一方で、予測の80%以上のピークまたは最大VOを有するスーパーフォンタン患者についての結果は、ネガティブであるように思われた。実際、この小さいサブ群(n=77)におけるピークまたは最大VOの26週の変化は、有意なウデナフィル処置効果を明らかにしなかった(表1、p=0.32)。このスーパーフォンタンサブ群におけるウデナフィルのわずかにネガティブな処置効果の出現は、ある程度は小さいサンプルサイズを反映して統計的に有意ではなく、全ての副次的運動測定が研究集団全体にわたって肯定的なウデナフィル処置効果を実証しているので、十分に検出力があったとしても、有意になることは予測されなかった。この議論は図6に関連して以下の欄で継続される。
【0251】
(c)予測の80%未満のベースラインピークVOを有する患者の処置の意図のある分析および事後サブ集団分析におけるウデナフィル処置効果の臨床的意義
フォンタン患者における死亡および心臓移植の短期的および中期的リスクに運動機能(ピークVO、mL/kg/分)の変化を関連付ける最近の文献がある(Cunningham, 2017およびEgbe, 2017)。CunninghamおよびEgbeの研究は、FUEL転帰(ピークVO、mL/kg/分)が非常に臨床的に有意であり、予想外であり、妥当であるという強力な裏付けを与える。
【0252】
(1)臨床的意義:フォンタン集団におけるピークVO(mL/kg/分)の変化
ボストン小児病院の2017年の研究において、Cunninghamおよび同僚らは、1.4±0.5年離れた対になっている心肺運動試験(CPET)研究により、130名の青年期の若者および若年成人のフォンタン患者(平均年齢26.8±9.4歳)において、短期的臨床転帰に対するピークVOの変化の影響について調べた。ピークVOの変化を連続変数として評価した場合、2回目のCPETでのより高いピークVO(mL/kg/分)は、死亡または移植の短期的リスクの減少と大きく関連した。特に、ピークVOの1mL/kg/分の増加は、死亡または移植についての0.79のHR(95% CI 0.68~0.92、p=0.004)と関連した。更に、ピークVOの10%ごとの低下につき、死亡または移植の危険が倍増した(HR 1.96、95% CI 1.2~3.1、p=0.004)。ピークVOを二値転帰として評価した場合、図8(増加したVO[青系列]対不変であった/減少したVO[赤系列])に示すように、ピークVOのあらゆる低下は、a)死亡または移植(p=0.027)、b)死亡、移植、または心不全入院(p=0.024)、およびc)死亡、移植、または非選択的心臓血管入院のほぼ有意なリスク(p=0.14)という有意に増加した短期的リスクと関連した。
【0253】
更に、(Cunningham(2017)は、死亡または移植というその後の主要臨床転帰により階層化したCPETパフォーマンスを評価した。図9参照。フォンタン生存者(灰色)は、CPET研究間での予測ピークVO%(左)およびピークVOの変化%(右)の増加を示し、一方でその後に主要臨床転帰を満たしたフォンタン患者(黒)は、両方の運動測定の低下を示した。
【0254】
Egbe et al (2017)は、事前にフォンタン手術を受けた若年成人において一連のCPET試験の予後値を調べた。145名の平均年齢24±3歳のフォンタン患者を含むメイヨークリニックによるこの重要な研究において、調査者は3.8±0.3年離れたCPET試験を評価した。心臓血管系有害事象が、8±3年の中期的な経過観察中に患者の37%で生じた。心臓血管系有害事象についての多数の危険因子を考慮した。図10は、3%以上(青)または3%未満(赤)の予測ピークVO%の年間の低下により階層化された、心臓血管系有害事象のなさを示す。心臓血管系有害事象の5年のリスクの唯一の予測因子は、1年当たり3%以上の予測ピークVO%の低下であった(p=0.03)。
【0255】
図11の、欠測データのインピュテーションのないFUELトライアルの処置の意図のある(ITT)分析において、ウデナフィル患者の46%(n=86)がピークVOの増加を示し、一方でプラセボ患者の36%(n=68)のみがピークVOの増加を示した。この差は統計的有意性にはもう一歩であり(p=0.075)、治療必要数(NNT)10に相当し、これは1名の患者がピークVOの増加を経験するために10名の患者がウデナフィルによる処置を必要とすることを意味する。あるいは、Cunninghamの研究により提供された転帰データを考慮して言えば、NNT10は、1名の患者が死亡または移植の短期的リスクの実質的な減少を示すために10名の患者がウデナフィルによる処置を必要とすることを意味する。
【0256】
図12のFUELトライアルの(予測の80%以上のベースラインピークVO2を有する患者を除外する)事後サブ群分析では、ウデナフィル患者の50%(n=75)がピークVOの増加を示し、一方でプラセボ患者の38%(n=57)のみがピークVOの増加を示した。この差は統計的に有意であり(p=0.037)、治療必要数(NNT)8.2に相当し、これは1名の患者がピークVOの増加を示すために約8名の患者がウデナフィルによる処置を必要とすることを意味する。Cunningham et alによる転帰データを考慮すると、1名の患者が死亡または移植の短期的リスクの実質的な減少を示すために約8名の患者がウデナフィルによる処置を必要とする。
【0257】
スーパーフォンタンコホートにおけるネガティブなウデナフィル処置効果の可能性についてLate Cycle Meetingで示された懸念を考慮して、FUELトライアルにおける予測の80%以上のベースラインピークVOを有する患者の事後サブ群について、この同じ分析をまた行った。図13参照。我々は、患者のうちの同等の低いパーセンテージである、それぞれの処置群の28~29%が、ポジティブな変化を示し、一方で患者のうちの同等の高いパーセンテージである、それぞれの処置群の71~72%が、ネガティブな変化を示し、処置治療群の間に差がなかった(p>0.99)ことを見出した。これらの発見は、ベースラインピークVOサブ群が処置群との重要な相互作用を有する(例えば、高いベースライン運動能力が薬物に対する更なる利益を不可能にした)という固定効果分析によるANCOVAの結果と一致する。より重要なことには、このスーパーフォンタンサブ群において、ウデナフィル処置が、ピークVOの転帰測定に対する(有益または有害な)有意な短期的影響を与えないように思われることを認識することが重要である。
【0258】
次に、我々は、図14にITTコホート(左)と事後サブ群(予測の80%以上のベースラインピークVO2を有する患者を除外する、右)の両方についての26週のFUELトライアルにわたるピークVOの変化%を示す。ITT分析において、ウデナフィル治療群においてはるかに少ない程度ではあるが、両群がネガティブなピークVOの変化%を示し、群間に統計的な差はない(p=0.072)。しかしながら、事後サブ群分析では、ウデナフィル群のピークVOに対する平均効果はポジティブであり、一方でプラセボ群はやはり悪化を示す。この差は統計的に有意である(p=0.037)。Cunninghamの研究の発見を考慮すると、我々のデータにより、事後サブ群分析のフォンタン患者について、ウデナフィルが死亡または移植の短期的リスクの減少と関連することが推定される。
【0259】
ここで、図15に予測ピークVO%の年間変化を示し、これはITTコホート(左)および事後サブ群(予測の80%以上のベースラインピークVO2を有する患者を除外する、右)について、6ヵ月のFUELトライアルの間の変化を倍にすることにより決定される。FUELにおける6ヵ月の変化を年率に換算することで、Egbeによるフォンタンコホートとの直接的な比較が容易となる。ITT分析において、プラセボ群のみが、Egbe et alによる、心臓血管系有害事象の5年リスクの増加と関連する3%の年間低下の閾値を超えるが、両群が予測ピークVO%の減少を示す。この差は統計的に有意ではない(p=0.077)。しかしながら、事後サブ群分析において、ウデナフィル群は予測ピークVO%の増加を示し、一方でプラセボ群はやはり低下を示す。この差は統計的に有意である(p=0.009)。更に、プラセボ群のみが、心臓血管系有害事象の5年リスクの増加と関連する3%の年間低下の閾値を超える(Egbe 2017)。
【0260】
最後に、フォンタン緩和後のSVHD患者の処置のための既存の薬物療法がない場合、FUELの処置効果を、この集団の運動能力の改善を目指す非薬物療法的な処置選択肢と比較するのが賢明である。わずかしか存在しないが、身体運動訓練または心臓リハビリテーションが最も合理的な非薬物療法であり、レビューのために利用可能な、利用可能な証拠を有している。近年、Scheffers et al 2021は、平均年齢層が8.7~31歳の264名のフォンタン患者を含む22の刊行物に報告された16研究の系統的レビューに着手した。この系統的レビューにおいて、著者は、9研究(56%)のみでの訓練後ピークVOの有意な増加を報告しており、利益を実証した研究の平均増加は+1.72ml/kg/分である。注目すべきことに、この報告された増加は、プラセボにより調整された処置効果を反映しておらず、むしろ単に運動訓練を受けた患者の平均増加である。しかしながら、図16に示す全ての研究がピークVOの変化の計算に含まれる場合、平均増加は0ml/kg/分よりわずかに大きいのみであった。フォンタン患者の運動能力の維持または改善のための処置としての均衡周辺身体訓練(equipoise surrounding physical training)の持続的な存在を考慮して、青年期の若者および成人のフォンタン患者の無作為化多施設対照研究であるFontan Fitness Intervention Trial(F-FIT)が、オーストラリアで現在進行中である(Tran 2022)。
【0261】
運動機能(ピークVO、mL/kg/分)の変化を有害臨床転帰(死亡および心臓移植を含む)の中短期的リスクと関連付ける、近年の関連するフォンタン文献のこのレビューは、FUELトライアルの一次分析および事後サブ群分析の結果の解釈に関連する。これらのデータおよび分析は、FUEL転帰(ピークVO、mL/kg/分)が非常に臨床的に有意であり、予想外であり、妥当であるという強力な裏付けを与える。更に、フォンタン循環の処置のために指示される利用可能な薬物療法がない場合、代替療法が比較される必要がある。フォンタン集団において、得られる利益が約半分の時間で明らかであるのみであり、ピークVOに対する影響全体が分析コホートの全体にわたって無視できるほどである身体訓練(心臓リハビリテーション)が、繰り返し試されている。最後に、死亡および移植を含むこれらのリスクの短期性は、フォンタン集団における有効な処置選択肢のリアルタイムの必要性を示唆する。毎年の有効な処置選択肢の利用の遅れは、必然的に、死亡率または心臓移植という進行中の危険につながるフォンタン患者の大きな集団の損失をもたらす。
【0262】
(d)スーパーフォンタン患者を含むフォンタン集団の臨床管理におけるVAT時のVOの重要性
ピークVOは、全般的な心臓血管の健康の重要なマーカーであって、心臓有害事象の予測因子ではあるが、患者の日常生活で得られることはほとんどない。他方、VAT時のVOは、継続的な身体活動のうちの上のレベルであり、個々の患者が日常的な身体活動を行うことのできる限界を設定する。この基準は、漸進的な身体活動の間の、運動している筋肉の代謝要求が、酸素運搬のための十分な血流量を維持するための心臓血管系の能力を超え、それにより代謝が好気的な代謝から嫌気的な代謝へと変換するポイントである。健康な10代の若者および子どもにおいて、このポイントは、通常、対象の最大VOの約55~60%で生じ、無制限に継続することのできる身体活動の限界である。FUELトライアルにおいて、ウデナフィルによる処置は、処置の意図のある集団全体、およびスーパーフォンタン患者の分析におけるプラセボと比較したVAT時のVOの確固たる増加をもたらした。
【0263】
この発見の臨床的妥当性は非常に重要である。個体は、仮に機能するとしても、それらの日常活動の間、最大VOの近くではめったに機能しない。そのため、ピークVOは、全般的な心臓血管の健康の重要なマーカーであって、心臓有害事象の十分に説明された予測因子ではあるが、患者が彼らの日常生活においてどの程度感じるかまたは機能するかということに対して制限された影響を有する。他方、VAT時のVOは、個々の患者が日常的に機能する必要のある限界を設定する。これらの限界は、仕事、学校、および娯楽を含む日常活動のための能力を決定する。VAT時のVOのあらゆる改善は、必然的に、これらの日常活動の耐性の改善をもたらす。
【0264】
VAT時のVOは、非常に臨床的に妥当なエンドポイントであるが、得ることが課題となりうる。正確および精密にVATを測定するために、呼吸数および一回換気量は一貫している必要がある。臨床業務では、嫌気的代謝の開始時の不安定な呼吸は、行われる約15%~20%の運動試験において正確な評価を妨げる。この測定の難しさは、予測されるデータ損失を補償するためにサンプルサイズ計算を大きくする必要があることから、VAT時のVOをエンドポイントとする臨床試験を設計する場合に、特に懸念される。データの利用可能性、およびこの希少疾病の空きに参加者を補充するのは課題であったという理解に対する懸念を考慮して、Pediatric Heart Networkは、副次的エンドポイントとしてVAT時のVOを用いることを選択した。しかしながら、予測された対になっているVATデータはコホートの約80%で利用可能であったが、この測定はそれでもなお、全体の集団にわたって臨床的および統計的に有意な反応を示した。
【0265】
エンドポイントとしてのVAT時のVOの重要性は、McCrindle et alによる2007年の報告において強調され(McCrindle 2007)、彼らは、平均年齢が11.6歳(7~18.4歳の範囲)の147名のフォンタン患者において、機能的健康状態の親/患者の見解と運動機能の測定の間の関係性を調べた。そのコホートにおいて、平均パーセント予測ピークVOは67%±15%であり、これはFUELコホートの機能と直接比較可能である。著者は、より大きな運動機能が、全体的な健康、身体機能、身体的制約の影響、肉体的苦痛のなさ、全般的な健康の見解、および身体機能要約スコアについてのより高いスコアと関連することを見出した(それぞれp<0.05)。実際、全体的な健康、身体機能、身体的制約の影響、および自尊心を含む機能的状態のいくつかの重要な基準について、運動能力の測定との相関は、ピークVOよりもVAT時のパーセント予測VOで強力であった。VAT時のパーセント予測VOと全体的な健康(R 0.45、p<0.05)および自尊心(R 0.28、p<0.05)のそれぞれの間の臨床的に妥当な相関を考慮すると、適度な薬物効果でさえ、患者および親に認知可能な機能的利益を生ずると予測される。実際、図17に示すように、その差は統計的に有意ではなかったが(p=0.311)、プラセボよりもウデナフィル処置においてVAT時のVOのポジティブな変化を経験したより多くの患者が存在する。より重要なことには、図18に示すように、ITTコホート全体(p=0.026)、およびスーパーフォンタン患者を除外するサブ群分析(p=0.052)の両方において、プラセボと比較してウデナフィル処置において、VAT時のVOが実質的により良く維持される。McCrindleのデータに照らせば、これは、治療を受けていない(例えば、プラセボまたはフォンタン自然歴の)機能的状態の免れない低下と比較した場合、ウデナフィル治療が既存の機能的状態のより良い維持と関連することを示唆する。これらの発見は、ピークVOの改善に加えて、VAT時のVOのウデナフィルに介される改善が、機能的健康状態の多数の領域で臨床的に有意な改善と関連するという考えを裏付ける。
【0266】
(e)FUEL OLE(非盲検延長)トライアルによるフォンタン集団の臨床的利益の確認
FUELにおいて実証したウデナフィルの利益の確認として、我々は、FUEL OLEトライアルの患者からの利用可能な臨床データを評価した。多くの延長研究と同様に、FUEL非盲検延長トライアルはプラセボ対照トライアルではなかったが、代わりに、薬物曝露のより長期間の安全性プロファイルを確立するために設計され、FUELから独立したデータ源である。この延長研究には内在する制限があるにもかかわらず、FUEL OLEは、以下の図19にFUELおよびFUEL OLEの18ヵ月にわたって示すように、ウデナフィルの有効性を裏付ける証拠を提供する。FUELトライアルでウデナフィルにより処置された者では利益の持続があり、一方でウデナフィルを摂取していない者については、FUELトライアルにおいてプラセボに対して観察されたものを要約する新たな利益がある。26~78週のOLE研究では、全ての患者群が、ウデナフィル処置による実質的な臨床的利益を示す。
【0267】
FUELおよびFUEL OLEトライアルは、予想外で驚くべきことに、ウデナフィルが、少なくとも12歳のフォンタン緩和患者において運動能力を改善するために安全で効果的であることを実証した。これらのトライアルにより得られたデータは、説得力のあるものであり、承認された薬物療法の選択肢を欠く集団であるこの希少疾病集団にとって意味のある臨床的利益を示す。最も治療を必要とするフォンタンサブ群-運動能力が正常より低い、即ち80%以下のベースラインパーセント予測ピークVOを有する者-の有効性データの分析によれば、このサブ集団に見られるウデナフィルの薬物効果は、極めて臨床的に妥当である。更に、FUELトライアルで測定された、全ての重要な運動機能の副次的測定、および心筋パフォーマンス指数において観察された改善は、ウデナフィルの有効性の実質的な証拠を構成し、スーパーフォンタン患者を含むフォンタン集団におけるウデナフィル治療の臨床的利益を裏付けることが考えられる。フォンタン集団におけるこの重要な臨床的利益は、非常に低い安全性リスクと共に、優れた予想外の結果を証明する。
【0268】
(2)参考文献、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0269】
【表12-1】
【0270】
【表12-2】
【0271】
本明細書に記載されたあらゆる論文、参考文献、特許文書および開示は、本明細書において完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0272】
本開示は、例示的な実施形態を参照して記載された。前述した詳細な説明を読んで理解した際、他の者が修正および変更を思い付くであろう。本開示が、添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲内で生ずる限りにおいて全てのそのような修正および変更を含むものと見なされることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
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【国際調査報告】