(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-18
(54)【発明の名称】修飾細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20250210BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250210BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250210BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20250210BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20250210BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20250210BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250210BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250210BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250210BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250210BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250210BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20250210BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/113 140Z
C07K14/705
C12N5/078
C12N15/85 Z
A61K35/17
A61P37/06
A61P35/00
A61P31/00
A61P9/00
A61P3/00
C12N5/0789
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544543
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2023073331
(87)【国際公開番号】W WO2023143443
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/073625
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522021985
【氏名又は名称】上海邦耀生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BRL Medicine Inc.
【住所又は居所原語表記】Floor 1, Building 14 No. 3699, Yuanjiang Road, Minhang District Shanghai 201109 CN
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】タン,ビンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】シ,シュジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ジキン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ミンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】シ,ザイシ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
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4C087AA01
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4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、修飾免疫細胞、PD-L1変異体をコードするタンパク質、及びPD-L1変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらを含む医薬組成物、及び、疾患の治療方法もまた提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾細胞又はその集団であって、前記修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、
内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、かつ
前記欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられている、
修飾細胞又はその集団。
【請求項2】
前記リガンドは、同族リガンドの変異体であり、前記同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の修飾細胞。
【請求項3】
修飾細胞又はその集団であって、前記修飾細胞は、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、前記リガンドは、同族リガンドの変異体であり、前記同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している、
ことを特徴とする、前記修飾細胞又はその集団。
【請求項4】
前記細胞は、前記リガンドに対応する阻害チェックポイント分子を欠損している、
請求項3に記載の修飾細胞。
【請求項5】
前記細胞は、
a)動物細胞若しくはヒト細胞であり、
b)免疫細胞であり、
c)幹細胞、若しくは、前記幹細胞から分化した細胞であり、
d)移植に適しており、
e)前記細胞に対する、意図するレシピエントに関して同種異系であり、又は
f)これらの任意の組み合わせである、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項6】
a)前記細胞は免疫細胞であり、前記免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単核細胞、樹状細胞(DC細胞)、好中球、若しくはγδT細胞であり、又は
b)前記細胞は、幹細胞、若しくは、前記幹細胞から分化した細胞であり、前記幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である、
請求項5に記載の修飾細胞。
【請求項7】
前記T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、末端エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発キラー(CIK)T細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球からなる群から選択され、任意選択的に、活性化T細胞である、
請求項6に記載の修飾細胞。
【請求項8】
a)前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、かつ/又は
b)前記リガンドは、PD-L1、PD-L2、HMGB1、Ceacam-1、ホスファチジルセリン(PS)、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、アデノシン、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)、CD28、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、PVR(CD155)、MHCクラスI、シアロ糖タンパク質、CD112、CD113、ガレクチン9、CD24、及びCD47からなる群から選択される、
請求項1、2、又は4~7のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項9】
a)前記阻害チェックポイント分子はPD-1であり、前記リガンドは、PD-L1若しくはその変異体、若しくは、PD-L2若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
b)前記阻害チェックポイント分子はTIM3であり、前記リガンドは、ガレクチン9、HMGB1、Ceacam-1、若しくはホスファチジルセリン(PS)、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
c)前記阻害チェックポイント分子はLAG-3であり、前記リガンドは、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、若しくはFGL1、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
d)前記阻害チェックポイント分子はTIGITであり、前記リガンドは、CD155、CD113、若しくはCD112、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
e)前記阻害チェックポイント分子は、アデノシンA2A受容体(A2AR)であり、前記リガンドはアデノシンを含み、
f)前記阻害チェックポイント分子はBTLAであり、前記リガンドは、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)若しくはその機能的等価物を含み、
g)前記阻害チェックポイント分子はCTLA-4であり、前記リガンドはCD28若しくはその機能的等価物を含み、
h)前記阻害チェックポイント分子は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)であり、前記リガンドは、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A、HLA-B以外の)、若しくはその機能的等価物を含み、
i)前記阻害チェックポイント分子は、VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子)であり、前記リガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
j)前記阻害チェックポイント分子は、SIGLEC-7(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7、CD328)であり、前記リガンドは、シアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含み、又は
k)前記阻害チェックポイント分子は、SIGLEC-9(CD329)であり、前記リガンドは、シアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含む、
請求項8に記載の修飾細胞。
【請求項10】
a)前記細胞はT細胞であり、前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、
b)前記細胞はナチュラルキラー(NK)細胞であり、前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、IDO1、IDO2、KIR、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、
c)前記細胞は樹状細胞(DC細胞)であり、阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びTDOからなる群から選択され、又は
d)前記細胞はマクロファージであり、前記阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びCD24からなる群から選択される、
請求項8に記載の修飾細胞。
【請求項11】
前記変異体は、前記同族リガンドの、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている、
請求項2~10のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項12】
前記変異体は、前記同族リガンドが免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む、
請求項11に記載の修飾細胞。
【請求項13】
前記少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む、
請求項12に記載の修飾細胞。
【請求項14】
前記少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む、
請求項13に記載の修飾細胞。
【請求項15】
前記同族リガンドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む、
請求項2~14のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項16】
前記少なくとも1つの変異は、前記同族リガンドの前記細胞内ドメイン内、若しくは、前記同族リガンドの前記膜貫通ドメイン内、若しくは、前記同族リガンドの前記細胞外ドメイン内、又はこれらの任意の組み合わせにある、
請求項15に記載の修飾細胞。
【請求項17】
前記変異体は、PD-L1変異体又はPD-L2変異体である、
請求項9~16のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項18】
前記PD-L1変異体は、前記細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、前記膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、前記細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内に、又は、これらの任意の組み合わせに、少なくとも1つの変異を含み、前記少なくとも1つの変異は、前記PD-L1が免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、
請求項17に記載の修飾細胞。
【請求項19】
前記PD-L1変異体は、PD-L1の前記細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含む、
請求項17又は18に記載の修飾細胞。
【請求項20】
前記PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、前記PD-L1変異体は、配列番号11のアミノ酸配列を含まない、
請求項17~19のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項21】
前記PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む、
請求項19に記載の修飾細胞。
【請求項22】
前記修飾細胞は、a)前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の、コード配列若しくは調節配列内の第1の変異であって、前記第1の変異は、前記阻害チェックポイント分子の発現若しくは活性を低下させる、前記第1の変異、又は、b)前記阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする、第1の干渉オリゴヌクレオチドであって、前記第1の干渉オリゴヌクレオチドは、前記阻害チェックポイント分子の発現を低下させる、前記第1の干渉オリゴヌクレオチド、c)前記阻害チェックポイント分子の前記発現及び/若しくは活性を阻害する、導入されたタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を含む、
請求項1~2、4~21のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項23】
前記修飾細胞は、前記リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含む、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項24】
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、前記リガンドに対する前記コード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む、
請求項23に記載の修飾細胞。
【請求項25】
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、前記リガンドに対する前記コード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む、
請求項23又は24に記載の修飾細胞。
【請求項26】
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである、
請求項24又は25に記載の修飾細胞。
【請求項27】
前記修飾細胞には、前記リガンドの発現が導入されている、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項28】
前記細胞は、a)MHCクラスIタンパク質、又はb)MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子、又はc)a)とb)の両方、を更に欠損している、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項29】
前記MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、若しくはHLA-B、HLA-C、B2M、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、前記細胞は、HLA-A及びHLA-Bの両方を更に欠損している、
請求項28に記載の修飾細胞。
【請求項30】
前記MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、前記細胞は、HLA-DRを更に欠損している、
請求項28~29のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項31】
前記MHCクラスIIトランス活性化因子はCIITAであり、任意選択的に、前記細胞は、CIITAを欠損している、
請求項28~30のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項32】
前記細胞は、内因性TCRを更に欠損しており、任意選択的に、前記細胞は、T細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)、T細胞受容体β定常1(TRBC1)、T細胞受容体β定常2(TRBC2)、又はこれらの任意の組み合わせを更に欠損している、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項33】
前記修飾細胞は、a)前記MHCクラスIタンパク質のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列の第2の変異であって、前記第2の変異は、前記MHCクラスIタンパク質の発現若しくは活性を低下させる、前記第2の変異、又は、b)前記MHCクラスIタンパク質のmRNAを標的とし、これにより、前記MHCクラスIタンパク質の、中での発現を低下させる、第2の干渉オリゴヌクレオチドを含む、
請求項28~30のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項34】
前記修飾細胞は、a)前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第3の変異であって、前記第3の変異は、前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の発現若しくは活性を低下させる、前記第3の変異、又は、b)前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のmRNAを標的とし、これにより、前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の、中での発現を低下させる、第3の干渉オリゴヌクレオチドを含む、
請求項28~31のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項35】
前記修飾細胞は、a)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第4の変異であって、前記第4の変異は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の発現若しくは活性を低下させる、前記第4の変異、又は、b)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のmRNAを標的とし、これにより、TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の、中での発現を低下させる、第4の干渉オリゴヌクレオチドを含む、
請求項28~34のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項36】
前記第2の変異、若しくは前記第3の変異、若しくは前記第4の変異、又はこれらの任意の組み合わせは、遺伝子編集により導入される、
請求項33~35のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項37】
前記修飾細胞は修飾されており、又は、更に修飾されて、対象となるポリペプチドに対するコード配列を含む第2の外因性ポリヌクレオチドが導入され、任意選択的に、前記修飾細胞は、前記対象となるポリペプチドを発現する、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項38】
前記対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、又は、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含む、
請求項37に記載の修飾細胞。
【請求項39】
前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、更に任意選択的に、前記CARは、共刺激シグナル領域を更に含む、
請求項38に記載の修飾細胞。
【請求項40】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRシグナル伝達ドメインを含む、
請求項39に記載の修飾細胞。
【請求項41】
前記組換えTCRは、組換え抗原結合ドメインを含む、
請求項38に記載の修飾細胞。
【請求項42】
前記修飾細胞は、修飾T細胞であり、任意選択的に、前記修飾T細胞は、内因性T細胞受容体を更に欠損する、
請求項37~41のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項43】
前記CAR又は前記組換えTCRの前記抗原結合ドメインは、標的抗原、任意選択的に、標的細胞抗原に結合可能である、
請求項37~41のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項44】
前記標的細胞抗原は、腫瘍抗原、炎症関連抗原、自己免疫関連抗原、又は、感染体関連抗原を含む、
請求項43に記載の修飾細胞。
【請求項45】
前記標的細胞抗原は、癌、自己免疫疾患、感染症、代謝性疾患、及び遺伝病からなる群から選択される疾患と関連している、
請求項44に記載の修飾細胞。
【請求項46】
前記腫瘍抗原は、BCMA、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD 179b、CEA、CLEC12A、クローディン18.2、CS-l、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、GPC3、HER2、HM1.24、LGR5、メソセリン、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、又はROR1である、
請求項44に記載の修飾細胞。
【請求項47】
前記細胞は、エクスビボで増殖する、
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞。
【請求項48】
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の集団であって、前記修飾細胞の前記集団は、前記内因性阻害チェックポイント分子、及び、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドの両方を発現する、対応する細胞、又は、自然細胞(即ち、自然免疫細胞)である、対応する細胞の、比較集団と比較して、
a)自己抑制の低下、
b)エフェクター細胞機能の改善、並びに/又は
c)細胞活性化及び/若しくは増殖の改善、
のうちの1つ以上の特徴を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の集団。
【請求項49】
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の産生方法であって、
a)出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低減し、前記内因性阻害チェックポイント分子の前記リガンドの発現又は活性を増大させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含む、
方法。
【請求項50】
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の産生方法であって、
a)前記内因性阻害チェックポイント、及び、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドを発現する出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含む、
方法。
【請求項51】
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の産生方法であって、
a)前記内因性阻害チェックポイント分子を欠損する出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドの発現又は活性を増大させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含む、
方法。
【請求項52】
前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させるステップは、
a)前記出発細胞に、前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列に対する第1の変異を導入することにより、前記阻害チェックポイント分子が、前記出発細胞内で発現の低下若しくは活性の低下を引き起こすようにすること、又は
b)前記出発細胞に、前記阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする第1の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、前記阻害チェックポイント分子が、前記出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにすることを含む、
請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の変異は、遺伝子編集により導入される、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記遺伝子編集は、
a)前記細胞に、i)配列標的化タンパク質、又は、前記配列標的化タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び、ii)前記コード配列内の標的配列、又は、前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の調節配列に相補的なオリゴヌクレオチドを導入することを含む、
請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記配列標的化タンパク質は、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、任意選択的にCas9を含む、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記オリゴヌクレオチドは、前記標的配列に相補的なガイドRNA配列を含む、
請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記出発細胞を修飾して、前記阻害チェックポイント分子の前記リガンドの発現又は活性を増大させるステップは、
a)前記出発細胞に、前記リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することにより、前記出発細胞からの前記リガンドの発現を引き起こすこと、
b)1つ以上の抑制転写因子をノックアウト若しくはノックダウンすること、
c)前記リガンドをコードする遺伝子の発現のために、1つ以上の調節配列を編集すること、又は
d)前記リガンドをコードする遺伝子をノックインすること、を含む、
請求項49~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、前記リガンドに対する前記コード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む、
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA、発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、またはRNAベクターである、
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記発現ベクターは、ウイルス発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、
請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記出発細胞は、自然細胞若しくは分化細胞、又は、自然細胞若しくは分化細胞から遺伝子組換えされた、組換え細胞である、
請求項49~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記分化細胞は、幹細胞から分化している、
請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である、
請求項62に記載の方法。
【請求項64】
請求項1~48のいずれか1項に記載の修飾細胞と、薬学的に許容される媒体と、を含む、
医薬組成物。
【請求項65】
請求項1~48のいずれか1項に記載の修飾細胞を含む、
キット。
【請求項66】
必要とする対象における状態又は疾患の治療方法であって、
前記対象に、治療有効量の、請求項1~48のいずれか1項に記載の修飾細胞を投与することを含む、
方法。
【請求項67】
前記対象は、癌、自己免疫疾患、感染症、加齢、代謝性疾患、及び心臓血管疾患から選択される疾患を有する、
請求項66に記載の方法。
【請求項68】
PD-L1変異体を含むタンパク質であって、前記変異体は、自然PD-L1と比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している、
ことを特徴とする、タンパク質。
【請求項69】
前記PD-L1変異体は、自然PD-L1の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている、
請求項68に記載のタンパク質。
【請求項70】
前記PD-L1変異体は、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む、
請求項68に記載のタンパク質。
【請求項71】
前記少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む、
請求項70に記載のタンパク質。
【請求項72】
前記少なくとも1つの変異は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内、又はこれらの任意の組み合わせにある、
請求項71に記載のタンパク質。
【請求項73】
前記少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む、
請求項70~72のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項74】
前記欠失は、PD-L1の前記細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含む、
請求項73に記載のタンパク質。
【請求項75】
前記PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号11のアミノ酸配列を含まない、
請求項74に記載のタンパク質。
【請求項76】
前記PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む、
請求項75に記載のタンパク質。
【請求項77】
前記PD-L1変異体は、任意選択的に、リンカーを介して、対象となるポリペプチドに連結される、
請求項68~76のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項78】
前記リンカーは切断可能である、請求項77に記載のタンパク質。
【請求項79】
前記対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含む、
請求項78に記載のタンパク質。
【請求項80】
前記タンパク質は、シグナルペプチドを更に含む、請求項78に記載のタンパク質。
【請求項81】
請求項68~80のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項82】
請求項81に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項83】
請求項82に記載の発現ベクターを含む、組換え細胞。
【請求項84】
請求項83に記載の組換え細胞の産生方法であって、出発細胞に、請求項82に記載の発現ベクターを、請求項81に記載のポリヌクレオチドを前記細胞内で発現させるのに適した条件下で導入することを含む、
方法。
【請求項85】
請求項84に記載の方法によりエクスビボで産生される、細胞集団。
【請求項86】
前記細胞集団の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、検出可能なレベルの、請求項68~80のいずれか1項に記載のタンパク質を発現する、
請求項85に記載の細胞集団。
【請求項87】
免疫寛容が増大した組換え細胞の産生方法であって、前記細胞内で、請求項81に記載ポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で、前記細胞に、請求項82に記載の発現ベクターを導入することにより、前記組換え細胞の免疫寛容を増大させることを含む、
方法。
【請求項88】
免疫拒絶のリスクを下げて、細胞を対象に移植する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項83に記載の組換え細胞の移植組織を、又は、請求項1~47のいずれか1項に記載の修飾細胞を、前記対象に投与することを含み、前記組換え細胞又は修飾細胞は、前記対象に対して同種異系である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、その医薬組成物、並びに、疾患を予防及び/又は処置するための、そのようなものの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己由来の、患者由来のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、いくつかの癌(例えば、血液癌)の処置において、顕著な有効性を示している。しかし、自己由来のCAR-T療法では、個別化された療法の必要性により、製造課題、及び、財政的負担が生じる。したがって、同種異系のT細胞又は「オフザシェルフ」T細胞を用い、自己由来生成物に対して同様の臨床的有効性プロファイルを有する、同種異系のCAR-T療法が注目されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
同種異系のCAR-T療法は、製品のコスト、及びロット毎のばらつきを下げる可能性があるが、同種異系の免疫細胞は、宿主免疫系による認識及び拒絶を受けやすい傾向にあり、それ故に、CAR-T細胞の治療有効性が損なわれる。更に、同種異系のCAR-T療法は、免疫抑制を更に被る可能性があり、これにより、CAR-T細胞のエフェクター機能及び細胞毒性が低下する可能性がある。したがって、エフェクター機能が増加し、免疫原性が低下した、新規の適応性細胞療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は、修飾細胞又はその集団を提供し、修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられている。ある特定の実施形態では、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下していることを特徴とする。
【0005】
一態様では、本開示は、修飾細胞又はその集団を提供し、修飾細胞は、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下していることを特徴とする。ある特定の実施形態では、細胞は、リガンドに対応する阻害チェックポイント分子を欠損している。
【0006】
いくつかの実施形態では、細胞は、a)動物細胞若しくはヒト細胞であり、b)免疫細胞であり、c)幹細胞、若しくは、幹細胞から分化した細胞であり、d)移植に適しており、e)細胞に対する、意図するレシピエントに関して同種異系であり、又は、f)これらの任意の組み合わせである。
【0007】
いくつかの実施形態では、細胞は、a)免疫細胞であり、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単核細胞、樹状細胞(DC細胞)、好中球、若しくはγδT細胞であり、又は、b)細胞は、幹細胞、若しくは、幹細胞から分化した細胞であり、幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である。このような実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、末端エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発キラー(CIK)T細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球からなる群から選択され、任意選択的に、活性化T細胞である。
【0008】
いくつかの実施形態では、a)阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、並びに/又は、b)リガンドは、PD-L1、PD-L2、HMGB1、Ceacam-1、ホスファチジルセリン(PS)、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、アデノシン、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)、CD28、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、PVR(CD155)、MHCクラスI、シアロ糖タンパク質、CD112、CD113、ガレクチン9、CD24、及びCD47からなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、a)阻害チェックポイント分子はPD-1であり、リガンドは、PD-L1若しくはその変異体、若しくは、PD-L2若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、b)阻害チェックポイント分子はTIM3であり、リガンドは、ガレクチン9、HMGB1、Ceacam-1、若しくはホスファチジルセリン(PS)、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、c)阻害チェックポイント分子はLAG-3であり、リガンドは、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、若しくはFGL1、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、d)阻害チェックポイント分子はTIGITであり、リガンドは、CD155、CD113、若しくはCD112、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、e)阻害チェックポイント分子は、アデノシンA2A受容体(A2AR)であり、リガンドはアデノシンを含み、f)阻害チェックポイント分子はBTLAであり、リガンドはHVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)若しくはその機能的等価物を含み、g)阻害チェックポイント分子はCTLA-4であり、リガンドはCD28若しくはその機能的等価物を含み、h)阻害チェックポイント分子は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)であり、リガンドは、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A、HLA-B以外の)、若しくはその機能的等価物を含み、i)阻害チェックポイント分子は、VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子)であり、リガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、j)阻害チェックポイント分子はSIGLEC-7(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7、CD328)であり、リガンドはシアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含み、又は、k)阻害チェックポイント分子はSIGLEC-9(CD329)であり、リガンドは、シアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、a)細胞はT細胞であり、阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、b)細胞はナチュラルキラー(NK)細胞であり、阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、IDO1、IDO2、KIR、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、c)細胞は樹状細胞(DC細胞)であり、阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びTDOからなる群から選択され、又は、d)細胞はマクロファージであり、阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びCD24からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、変異体は、同族リガンドの、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。いくつかの実施形態では、変異体は、同族リガンドが免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの実施形態では、同族リガンドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、同族リガンドの細胞内ドメイン内、若しくは、同族リガンドの膜貫通ドメイン内、若しくは、同族リガンドの細胞外ドメイン内、又はこれらの任意の組み合わせにある。
【0012】
いくつかの実施形態では、変異体は、PD-L1変異体又はPD-L2変異体である。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内に、又は、これらの任意の組み合わせに、少なくとも1つの変異を含み、少なくとも1つの変異は、PD-L1が免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、PD-L1変異体は、配列番号11のアミノ酸配列を含まない。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、修飾細胞は、a)阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の、コード配列若しくは調節配列内の第1の変異であって、当該第1の変異は、阻害チェックポイント分子の発現若しくは活性を低下させる、上記第1の変異、又は、b)阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする、第1の干渉オリゴヌクレオチドであって、当該第1の干渉オリゴヌクレオチドは、阻害チェックポイント分子の発現を低下させる、上記第1の干渉オリゴヌクレオチド、c)阻害チェックポイント分子の発現及び/若しくは活性を阻害する、導入されたタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、修飾細胞は、リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。このような実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクターであり、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである。
【0015】
いくつかの実施形態では、修飾細胞には、リガンドの発現が導入されている。いくつかの実施形態では、細胞は更に、MHCクラスIタンパク質を欠損しているか、又は、MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子を欠損しているか、又は、これら両方を欠損している。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、若しくはHLA-B、HLA-C、B2M、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、細胞は、HLA-A及びHLA-Bの両方を更に欠損している。ある特定の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、細胞は、HLA-DRを更に欠損している。ある特定の実施形態では、MHCクラスIIトランス活性化因子はCIITAであり、任意選択的に、細胞は、CIITAを欠損している。いくつかの実施形態では、細胞は、内因性TCRを更に欠損しており、任意選択的に、細胞は、T細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)、T細胞受容体β定常1(TRBC1)、T細胞受容体β定常2(TRBC2)、又はこれらの任意の組み合わせを更に欠損している。
【0016】
いくつかの実施形態では、修飾細胞は、a)MHCクラスIタンパク質のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列の第2の変異であって、当該第2の変異は、MHCクラスIタンパク質の発現若しくは活性を低下させる、上記第2の変異、又は、b)MHCクラスIタンパク質のmRNAを標的とし、これにより、MHCクラスIタンパク質の、中での発現を低下させる、第2の干渉オリゴヌクレオチド、を含む。いくつかの実施形態では、修飾細胞は、a)MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第3の変異であって、当該第3の変異は、MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の発現若しくは活性を低下させる、上記第3の変異、又は、b)MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のmRNAを標的とし、これにより、MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の、中での発現を低下させる、第3の干渉オリゴヌクレオチド、を含む。いくつかの実施形態では、修飾細胞は、a)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第4の変異であって、当該第4の変異は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の発現若しくは活性を低下させる、上記第4の変異、又は、b)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のmRNAを標的とし、これにより、TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の、中での発現を低下させる、第4の干渉オリゴヌクレオチド、を含む。ある特定の実施形態では、第2の変異、若しくは第3の変異、若しくは第4の変異、又はこれらの任意の組み合わせは、遺伝子編集により導入される。
【0017】
いくつかの実施形態では、修飾細胞は修飾されており、又は、更に修飾されて、対象となるポリペプチドに対するコード配列を含む第2の外因性ポリヌクレオチドが導入され、任意選択的に、修飾細胞は、対象となるポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、又は、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、更に任意選択的に、CARは、共刺激シグナル領域を更に含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、組換えTCRは、組換え抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、修飾細胞は、修飾T細胞であり、任意選択的に、修飾T細胞は、内因性T細胞受容体を更に欠損する。いくつかの実施形態では、CAR又は組換えTCRの抗原結合ドメインは、標的抗原、任意選択的に、標的細胞抗原に結合可能である。いくつかの実施形態では、標的細胞抗原は、腫瘍抗原、炎症関連抗原、自己免疫関連抗原、又は、感染体関連抗原を含む。いくつかの実施形態では、標的細胞抗原は、癌、自己免疫疾患、感染症、代謝性疾患、及び遺伝病からなる群から選択される疾患と関連している。このような実施形態では、腫瘍抗原は、BCMA、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD 179b、CEA、CLEC12A、クローディン18.2、CS-l、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、GPC3、HER2、HM1.24、LGR5、メソセリン、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、又はROR1である。いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボで増殖する。
【0018】
別の態様では、本出願は、修飾細胞の集団であって、修飾細胞の集団は、内因性阻害チェックポイント分子、及び、内因性阻害チェックポイント分子に対するリガンドの両方を発現する、対応する細胞、又は、自然細胞(即ち、自然免疫細胞)である、対応する細胞の、比較集団と比較して、a)自己抑制の低下、b)エフェクター細胞機能の改善、並びに/又は、c)細胞活性化及び/若しくは増殖の改善のうちの1つ以上の特徴を有する、修飾細胞の集団について開示する。
【0019】
更に別の態様では、本出願は、a)出発細胞を提供することと、b)出発細胞を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させ、内因性阻害チェックポイント分子のリガンドの発現又は活性を増大させることにより、修飾細胞を入手することと、を含む、本明細書で提供する修飾細胞の産生方法について開示する。
【0020】
更に別の態様では、本出願は、a)内因性阻害チェックポイント、及び、内因性阻害チェックポイント分子に対するリガンドを発現する出発細胞を提供することと、b)出発細胞を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させることにより、修飾細胞を入手することと、を含む、本明細書で提供する修飾細胞の産生方法について開示する。
【0021】
更に別の態様では、本出願は、a)内因性阻害チェックポイント分子を欠損する出発細胞を提供することと、b)出発細胞を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子に対するリガンドの発現又は活性を増大させることにより、修飾細胞を入手することと、を含む、本明細書で提供する修飾細胞の産生方法について開示する。
【0022】
いくつかの実施形態では、出発細胞を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させるステップは、a)出発細胞の阻害チェックポイント分子のゲノム領域内のコード配列又は調節配列に第1の変異を導入することにより、阻害チェックポイント分子が、出発細胞内で発現の低下若しくは活性の低下を引き起こすようにすること、又は、b)出発細胞に、阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする第1の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、阻害チェックポイント分子が、出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにすること、を含む。いくつかの実施形態では、第1の変異は、遺伝子編集により導入される。
【0023】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、a)細胞に、i)配列標的化タンパク質、又は、それをコードするポリヌクレオチド、及び、ii)コード配列内の標的配列、又は、阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の調節配列に相補的なオリゴヌクレオチドを導入すること、を含む。いくつかの実施形態では、配列標的化タンパク質は、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、任意選択的にCas9を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的配列に相補的なガイドRNA配列を含む。いくつかの実施形態では、出発細胞を修飾して、阻害チェックポイント分子のリガンドの発現又は活性を増大させるステップは、a)出発細胞に、リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することにより、出発細胞からのリガンドの発現を引き起こすこと、b)1つ以上の抑制転写因子をノックアウト若しくはノックダウンすること、c)リガンドをコードする遺伝子の発現のために、1つ以上の調節配列を編集すること、又は、d)リガンドをコードする遺伝子をノックインすること、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA、発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、またはRNAベクターである。このような実施形態では、発現ベクターは、ウイルス発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。
【0025】
いくつかの実施形態では、出発細胞は、自然細胞若しくは分化細胞、又は、自然細胞若しくは分化細胞から遺伝子組換えされた、組換え細胞である。いくつかの実施形態では、分化細胞は、幹細胞から分化している。いくつかの実施形態では、幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である。
【0026】
更に別の態様では、本出願は、本明細書で提供する修飾細胞を含むキットについて開示する。
【0027】
更に別の態様では、本出願は、必要とする対象における状態又は疾患の治療方法であって、上記対象に、治療有効量の、本明細書で提供する修飾細胞を投与することを含む、方法について開示する。このような実施形態では、対象は、癌、自己免疫疾患、感染症、加齢、代謝性疾患、及び心臓血管疾患から選択される疾患を有する。
【0028】
更に別の態様では、本出願は、PD-L1変異体を含むタンパク質について開示し、変異体は、自然PD-L1と比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下していることを特徴とする。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、自然PD-L1の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内、又はこれらの任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、欠失は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号11のアミノ酸配列を含まない。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1変異体は、任意選択的に、リンカーを介して、対象となるポリペプチドに連結される。このような実施形態では、リンカーは切断可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、シグナルペプチドを更に含む。
【0031】
更に別の態様では、本出願は、本明細書で開示するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0032】
更に別の態様では、本出願は、本明細書で開示するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0033】
更に別の態様では、本出願は、本明細書で開示する発現ベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0034】
更に別の態様では、本出願は、出発細胞に、本明細書で提供する発現ベクターを、細胞内でポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で導入することを含む、本明細書で提供する組換え細胞の産生方法を提供する。
【0035】
更に別の態様では、本出願は、本明細書に記載される方法により、エクスビボで産生される細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞集団の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、検出可能なレベルの、本明細書で提供するタンパク質を発現する。
【0036】
更に別の態様では、本出願は、免疫寛容が増大した組換え細胞の産生方法であって、細胞内で、本明細書で提供するポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で、細胞に、本明細書で提供する発現ベクターを導入することにより、組換え細胞の免疫寛容を増大させることを含む、方法を提供する。
【0037】
更に別の態様では、本出願は、免疫拒絶のリスクを下げて、細胞を対象に移植する方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で提供する組換え細胞の移植組織を、又は、本明細書で提供する修飾細胞を、対象に投与することを含み、組換え細胞又は修飾細胞は、対象に対して同種異系である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】キメラ抗原受容体(CAR)発現構築物の概略図を示す。
【
図1B】CAR発現構築物をレンチウイルスベクターに組み込む概略図を示す。
【
図2】様々な量のウイルス(即ち、1μL/ウェル、10μL/ウェル、20μL/ウェル、30μL/ウェル、又は50μL/ウェル)で、CD19 CAR-P2A-TrPD-L1のレンチウイルス発現でトランスフェクトした293T細胞において、フローサイトメトリーによって検出されるCD19 CAR発現を示す。
【
図3B】TrPD-L1の発現を示す。これらは共に、CD19 CAR-P2A-TrPD-L1に対する発現カセットを含有するレンチウイルスをトランスフェクトした、TrPDL1-CART細胞内でのフローサイトメトリーにより検出される。
【
図3C】フローサイトメトリーにより確認される、PD-L1 CARTにおける、CD19-CAR、及び完全長wtPD-L1の発現を示す。
【
図4A】異なるエフェクター:標的(E:T)比における、24時間(
図4A)のインキュベーション後の、ルシフェラーゼを発現する細胞(Raji-Luci)における、TrPDL1-CART細胞及びTrPDL1-UCART細胞の細胞溶解効果を示す。天然T細胞を対照として使用した。
【
図4B】異なるエフェクター:標的(E:T)比における、48時間(
図4B)のインキュベーション後の、ルシフェラーゼを発現する細胞(Raji-Luci)における、TrPDL1-CART細胞及びTrPDL1-UCART細胞の細胞溶解効果を示す。天然T細胞を対照として使用した。
【
図5A】24時間の、ルシフェラーゼを発現するRaji細胞(Raji-Luci)によるインキュベーション後の、TrPDL1-CART細胞及びTrPDL1-UCART細胞からの、TNFα(
図5A)の放出を示す。
【
図5B】24時間の、ルシフェラーゼを発現するRaji細胞(Raji-Luci)によるインキュベーション後の、TrPDL1-CART細胞及びTrPDL1-UCART細胞からの、IFNγ(
図5B)の放出を示す。
【
図7】CD3/CD28ビーズ及び組換えPD-1による処理後の、PDL1-UCART細胞及びTrPDL1-UCART細胞における、p-P38及びp-AKTのレベルを示す。
【
図8】組換えPD-1及び組換えPD-L1の存在下で、PD-1がノックアウトされ、TrPD-L1を発現する、又は、PD-1がノックアウトされ、PD-L1を発現する、又は、PD-1及びTrPD-L1を発現する、又は、PD-1及びPD-L1を発現するT細胞の、CD3/CD28ビーズによる活性化後の、T活性化を示す、FACSの結果を示す。
【
図9A】PSMA標的化UCAR-T細胞、及び、PSMA標的化CAR-T細胞の細胞毒性を示す。
【
図9B】PSMA標的化UCAR-T、及びPSMA標的化CAR-T細胞における、サイトカインIFNγ放出を誘導する活性を示す。
【
図10-1】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-2】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-3】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-4】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-5】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-6】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-7】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-8】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-9】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-10】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-11】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-12】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-13】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-14】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-15】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-16】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【
図10-17】本開示で開示される配列のいくつかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の以下の説明は、本発明の様々な実施形態を単に示すためのものである。そのため、論ずる特定の変更が、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。本発明の範囲を逸脱することなく、様々な等価物、変化、及び変更を加えることができることが、当業者には明らかとなり、このような等価な実施形態は、本明細書に含まれることができることが理解される。公報、特許、及び特許出願を含む、本明細書で列挙される全ての参考文献は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
本開示の様々な技術的特徴が、単独の実施形態に記載されるものの、特徴は、個別に、及び/又は、任意の好適な組み合わせでもまた提供することができる。逆に、本開示の様々な技術的特徴は、明確性のため、別個の実施形態で本明細書に記載され、これらの特徴のいずれかは、単独の実施形態でもまた実装可能である。
【0041】
定義
本明細書で使用される場合、用語又は技術用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を意図するものではない。
【0042】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別の意味を示さない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「細胞(a cell)」への言及は、1つ以上の細胞を意味し、「方法(the method)」への言及は、本明細書で開示する、及び/又は、当業者に周知の、等価なステップ及び方法などへの言及を含む。同様に、「又は」という語句は、文脈が明確に別の意味を示さない限り、「及び」を含むことを意図する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び物質を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び物質を以下に記載する。略語の「例えば(e.g.)」は、ラテン語の「exempli gratia」に由来し、本明細書では、非限定例を示すために用いられる。したがって、略語「例えば(e.g.)]は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0043】
本出願において、一連の数値が列挙される場合は全て、列挙される数値のいずれかが、数値の範囲の上限又は下限であり得ることと理解することができる。本発明は、このような数の範囲、即ち、上限数値及び下限数値の組み合わせを有する範囲を全て包含し、上限及び下限のそれぞれに対する数値が、本明細書で引用される任意の数値であることができることと、更に理解することができる。本明細書で提供する範囲は、当該範囲内の全ての値を含むことと理解することができる。例えば、1~10は、値1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10、並びに、必要に応じて分数値の全てを含むことと理解される。同様に、「少なくとも」により定められる範囲は、提供されるより低い値、及び全てのより高い数を含むものと理解される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「約」とは、平均の3標準偏差以内、又は特定の技術において許容される標準範囲内を含むものと理解される。ある特定の実施形態では、約とは、0.5以下の変動を含むものと理解される。
【0045】
「含む」という用語は、「を含むがこれらに限定されない」という語句を意味するように本明細書で用いられ、この語句と同じ意味で用いられる。同様の、「など」という用語は、「限定されるものではないが、例えば」という語句を意味するように本明細書で用いられ、この語句と同じ意味で用いられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「を含む(comprising)」又は「を含む(comprises)」という用語は、方法又は組成物にとって不可欠である、組成物、方法、及び、対応するその構成要素を指して用いられ、なおかつ、不可欠であるか否かに関係なく、明記されていない要素を包含する余地がある。
【0047】
「からなる」という用語は、本明細書に記載する組成物、方法、及び、対応するその構成要素を意味し、実施形態の当該記載で列挙されないあらゆる要素を排除する。
【0048】
「作動可能に連結する」、又は「作動可能に連結した」という用語は、スペーサー又はリンカーの有無にかかわらず、2つ以上の、対象となる生物学的配列が、目的の方法で機能することを可能にする関係となるように、、並置されることを意味する。タンパク質に関して使用される場合、タンパク質配列が、連結した生成物に、目的の生物学的機能を付与することを可能にするように連結されることを意味することが意図される。この用語はまた、ポリヌクレオチドに関しても用いることができる。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列など)に作動可能に連結される場合、ポリヌクレオチド配列が、タポリヌクレオチドからのタンパク質の発現の制御を可能にするように連結されることを意味することを目的としている。
【0049】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において同じ意味で用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する自然に存在するアミノ酸の人工キメラ模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに、自然に存在するアミノ酸ポリマー及び自然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」、「核酸」、又は「ポリヌクレオチド」という用語は、オリゴヌクレオチド(即ち、短いポリヌクレオチド)を含む。これらはまた、合成、及び/又は自然に存在しない核酸分子(例えば、ヌクレオチド類似体、又は修飾主鎖残基若しくは結合を含む)を意味する。この用語はまた、一本鎖又は二本鎖の形態のいずれかにおける、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドオリゴヌクレオチドを意味する。この用語は、自然ヌクレオチドの類似体を含有する核酸を包含する。この用語は、合成骨格を有する核酸に似た構造もまた包含する。特に示さない限り、特定のポリヌクレオチド配列はまた、明示された配列だけでなく、保存的に改変されたその変異体(例えば縮重コドン置換)、アレル、オーソログ、SNP、及び相補的配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第三の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を産生させることによって達成することができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.,19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605~2608(1985);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994)を参照されたい)。
【0051】
「パーセント(%)配列同一性」とは、配列をアラインし、かつ必要に応じてギャップを導入し、最大数の同一アミノ酸(又は、核酸)を達成した後の、参照配列内のアミノ酸(又は、核酸)残基と同一の候補配列内における、アミノ酸(又は、核酸)残基の割合として定義される。言い換えれば、アミノ酸配列(又は、核酸配列)のパーセント配列同一性は、比較されている参照配列と同一のアミノ酸残基(又は、塩基)の数を、候補配列中、又は参照配列中(いずれか短いほう)における、アミノ酸残基(又は、塩基)の総数によって除することにより計算することができる。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基とはみなされない。パーセントアミノ酸(又は、核酸)配列同一性を測定するためのアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(米国国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトで入手可能、Altschul S.F.et al,J.Mol.Biol.,215:403~410(1990);Stephen F.et al,Nucleic Acids Res.,25:3389~3402(1997)もまた参照されたい)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所のウェブサイトで入手可能、Higgins D.G.et al,Methods in Enzymology,266:383~402(1996);Larkin M.A.et al,Bioinformatics(Oxford,England),23(21):2947-8(2007)もまた参照されたい)、及び、ALIGN又はMegalin(DNASTAR)ソフトウェアなどの、一般に入手可能なツールを用いて達成することができる。当業者は、ツールにより提供されるデフォルトのパラメーターを用いることができるか、又はパラメーターを、例えば、好適なアルゴリズムを選択することにより、アラインメントに適したパラメーターにカスタマイズすることができる。
【0052】
アミノ酸配列を言及しての「保存的置換」とは、アミノ酸残基を、同様の生理化学的性質を持つ側鎖を有する、異なるアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、Ala、Val、Leu、及びIle)間で、中性の親水性側鎖を有する残基(例えば、Cys、Ser、Thr、Asn、及びGln)間で、酸性側鎖を有する残基(例えば、Asp、Glu)間で、塩基性側鎖を有するアミノ酸間(例えば、His、Lys、及びArg)間で、又は芳香族側鎖を有する残基(例えば、Trp、Tyr、及びPhe)間で、行うことができる。当技術分野において周知のとおり、保存的置換は通常、タンパク質コンホメーション構造の顕著な変化を引き起こさず、故に、タンパク質の生物学的活性を保持することができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「機能的等価物」という用語は、アミノ酸配列、又は化学構造が異なる断片にもかかわらず、依然として、親分子の実質的な生物学的活性を維持している、親分子の様々な形態(変異体、、融合物、誘導体、及び模倣物など)を意味する。本明細書で使用される場合、「実質的な生物学的活性を維持する」という表現は、親分子の生物学的活性の、少なくとも一部(例えば、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%未満)、又は、全てを示すことを意味する。親タンパク質の機能的等価物は、組換え法又は化学合成により得られたものなどの、自然に存在する変異体形態と、自然に存在しない形態の両方を含むことができる。機能的等価物は、非天然アミノ酸残基を含有することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「欠損」という用語は、活性又はレベルの不十分さを意味し、例えば、通常の活性若しくはレベルを下回っていること、又は、活性若しくはレベルが存在しない、若しくはゼロであることを挙げることができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」という用語と同じ意味で用いることができる、「CAR」という用語は、組換え受容体若しくは人工受容体、又はこれをコードするポリヌクレオチドを意味する。組換え受容体又は合成受容体は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞外ドメインを含み、これらは互いに結合し、又は、互いに作動可能に連結され、免疫エフェクター細胞上で抗原に対する特異性を付与し、MHCクラスI及びクラスII制限をバイパスする。
【0056】
「CAR-T細胞」又は「CART細胞」という用語と同じ意味で用いられる、「キメラ抗原受容体T細胞」という用語は、T細胞表面上でCARを発現するように、(例えば、遺伝子組換えにより)組換えられている、T細胞又はその集団を意味する。CAR-T細胞は、TヘルパーCD4+、及び/又はTエフェクターCD8+細胞であることができる。CAR-T細胞は、標的抗原を発現する標的細胞に結合し、標的細胞に対して免疫反応を開始することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」という用語、又は「TCR複合体」という用語と同じ意味で用いることができる「TCR」という用語は、自然(若しくは、内因性)TCR、又は組換えTCRを意味する。TCRとは、通常、高度に可変性であり、1つのCD3γ、1つのCD3δ、並びに2つのCD3ε及びCD3ζ連鎖と複合体化した、α鎖及びβ鎖を含む、ジスルフィド結合した膜結合ヘテロ二量体のタンパク質複合体を意味する。α連鎖及びβ鎖のアミノ酸配列は、異なるT細胞間で変化する。α鎖及びβ鎖の膜貫通領域は、オープンバレル内のCD3膜貫通領域によって囲まれている。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε分子の細胞内テールはそれぞれ、免疫受容体チロシン型活性化モチーフ(ITAM)と呼ばれる単一の保存モチーフを含有し、これは、TCR複合体のシグナル伝達能力に重要であり、また、抗原MHC複合体への結合時のシグナル形質導入を開始するのに重要である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「TCR-T」という用語と同じ意味で用いられる、「T細胞受容体T細胞」という用語は、T細胞表面上でTCRを発現するように、生物学的方法(例えば、遺伝子組換え)によって組換えられている、T細胞又はその集団を意味する。TCR-T細胞は、TヘルパーCD4+、及び/又はTエフェクターCD8+細胞であることができる。TCR-Tは、MHC結合細胞を識別し、免疫反応を開始させることができ、故に、標的細胞の細胞内標的を標的とすることができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「β-2-マイクログロブリン」という用語と互換的に用いられる「B2M」という用語は、クラスI主要組織適合複合体(MHC)の構成成分であるタンパク質を意味し、これは、免疫制御活性を保持する、UniProtKB受託番号P61769又はその変異体で記載されるアミノ酸配列を含む、又は、上述したタンパク質をコードするポリヌクレオチドを意味する。B2Mは、MHCクラスIの、細胞表面での発現に、及びペプチド結合溝の安定性のために、必要である。MHCクラスI分子のほとんどは、B2Mが存在しない細胞表面では検出することができない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「主要組織適合性複合体」という用語と互換的に用いられる「MHC」という用語は、抗原として、細胞表面上に細胞内ペプチドを提示することができ、細胞表面上に存在する抗原と複合体を形成可能なタンパク質をコードする、タンパク質又はポリヌクレオチドを意味する。MHCと抗原の複合体は、TCR、及びその共受容体と相互作用し、免疫応答(例えば、T細胞の活性化)を誘発することができる。MHCは、MHCクラスI、MHCクラスII、及びMHCクラスIIIにカテゴライズすることができる。有核細胞及び血小板の全てにおいて発現するMHCクラスI分子は、細胞内病原体(例えば、ウイルス及び細菌)に対する細胞免疫を支える。ヒトにおいては、MHCクラスIは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIと呼ばれ、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLE-F、及びHLA-G分子を含む。一般に、マクロファージ、B細胞、及び樹状細胞においてのみ生じるMHCクラスIIは、ある特定の条件下で、抗原の免疫寛容に対する免疫付与を媒介することができる。ヒトにおいて、MHCクラスIIは、HLAクラスIIと呼ばれる。MHC(又は、HLA)分子は、移植手順において、抗原としての役割を果たし、レシピエントにおいて免疫反応を惹起し、移植拒絶反応を引き起こすことができる(Abbas AB,Lichtman AH(2009).「Ch.10 Immune responses against tumors and transplant」.Basic Immunology.Functions and disorders of the immune system(3rd ed.).Saunders(Elsevier).ISBN 978-1-4160-4688-2)。
【0061】
本明細書で使用される場合、「クラスII、主要組織適合性複合体、トランス活性化因子」という用語と互換的に用いられる「CIITA」という用語は、NCBI受託番号NP_001273331.1若しくはその機能的断片に対して、少なくとも約80%の配列同一性を有しながら、依然として免疫制御活性を維持するアミノ酸配列を含むタンパク質を意味する、又は、上述したタンパク質をコードするポリヌクレオチドを意味する。CIITAは、転写共活性化因子として分類され、これは、転写因子RFX5を活性化することにより、MHCクラスII遺伝子の発現を正に制御するように機能する。
【0062】
本明細書で使用される場合、免疫細胞に関する「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊機能、例えば、食細胞活性、細胞溶解活性、又はT細胞に対するサイトカインの分泌を含むヘルパー活性を意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、状態を「治療すること」、又は、状態の「治療」とは、状態を緩和すること、状態の開始若しくは進行速度を遅くすること、状態の進行リスクを軽減すること、状態と関連する症状の進行を予防する若しくは遅らせること、状態と関連する症状を軽減する若しくは終わらせること、状態の完全な若しくは部分的な退行を生み出すこと、状態を治癒すること、又は、これらのいくつかの組み合わせを含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、当該タンパク質の発現をもたらすように、作動可能に挿入され得る、ビヒクルを意味する。ベクターを使用して、宿主細胞内で、ベクター運搬する遺伝エレメントの発現をもたらすように、宿主細胞の形質転換、形質導入、又はトランスフェクションを行うことができる。ベクターの例としては、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来の人工染色体(PAC)などの人工染色体;ラムダファージ又はM13ファージなどのバクテリオファージ;及び動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして用いられる動物ウイルスのカテゴリーとしては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能エレメント、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御するための様々なエレメントを含有することができる。加えて、ベクターは、複製起点を含有することができる。ベクターは、限定されるものではないが、ウイルス粒子、リポソーム、又はタンパク質コーティングを含む、細胞への、ベクターの導入を補助するための物質もまた含むことができる。ベクターは、発現ベクター又はクローニングベクターであってもよい。本開示は、融合タンパク質をコードする、本明細書で提供する核酸配列、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、及び、少なくとも1つの選択マーカーを含有するベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。ベクターの例としては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)、ラムダファージ、及びM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR 2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bosなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という語句は、外因性ポリヌクレオチド及び/又はベクターが導入されている細胞を意味する。
【0066】
「薬学的に許容される」という用語は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩が一般的に、化学的に、及び/又は、物理的に、配合物に含まれる他の成分と適合し、そのレシピエントと生理学的に適合することを示す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象」、又は「個体」、又は「動物」、又は「患者」という用語は、疾患又は障害の診断、予後、軽減、予防。及び/又は処置を必要とする、哺乳類又は霊長類を含む、ヒト又は非ヒト動物を意味する。哺乳類対象には、ヒト、飼育動物、家畜、及び動物園、スポーツ、又は愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ブタ、ウシ、クマなどが含まれる。
【0068】
I.概要
養子細胞療法は、自己由来細胞(即ち、レシピエント自身に由来する細胞)、又は同種異系細胞(即ち、レシピエントとは異なるドナーに由来する細胞)の、養子移植を伴う。例えば、免疫細胞、又はより具体的には、T細胞に、非常に治療上の関心が集まっている。免疫細胞又はT細胞をエクスビボで修飾し、細胞表面上でCAR又はTCRを発現させ、ある特定の標的抗原を発現する標的細胞(例えば、癌細胞)に対して特異的な免疫応答を媒介させることができる。
【0069】
同種異系細胞は、オフザシェルフ細胞療法を上手くもたらすものと、臨床上の設定において非常に望まれている一方で、同種異系細胞はまた、同種異系細胞の表面で発現するMHCクラスI分子の認識による、宿主の免疫系による拒絶が原因で、移植片対宿主拒絶反応(GVHD)のリスクとも関連している。
【0070】
加えて、治療用免疫細胞(CAR-T又はTCR-T細胞など)は、治療用免疫細胞のエフェクター機能の低下、及び故に、治療効果の低下をもたらす免疫抑制を受ける可能性がある。免疫抑制は、例えば、これらの免疫細胞に存在するPD-1などの免疫チェックポイントと、腫瘍細胞などの標的細胞で発現するPD-L1などの免疫チェックポイントリガンドとの相互作用により誘発されることができる。
【0071】
本発明は、一方では、同種異系のレシピエントからの、免疫が媒介する認識及び破壊を受けにくく、他方では、治療される標的細胞に対する望ましい治療効果(例えば、細胞毒性)を維持する修飾細胞を提供する。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0072】
II.修飾細胞
一態様では、本開示は、修飾細胞又はその集団を提供し、修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、i)内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、ii)欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられている。ある特定の実施形態では、細胞は免疫細胞である。
【0073】
宿主免疫系からの免疫拒絶を軽減する、又は回避するために、同種異系免疫細胞を修飾して、発現したリガンドが、宿主免疫細胞に発現した阻害チェックポイント分子(例えば、PD-1)と相互作用することで、同種異系免疫細胞を、宿主免疫系による免疫拒絶から保護することができるように、阻害チェックポイント分子のリガンド(例えば、PD-L1)を発現することができる。しかし、本発明者らによって、修飾した同種異系免疫細胞自体が、阻害チェックポイント分子(例えば、PD-1)を内因的に発現する場合、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)に存在する内因性阻害チェックポイント分子が、別の修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)に存在するそのリガンドと相互作用する可能性がある自己免疫抑制を、潜在的にもたらす可能性があることが、予想外に発見されている。したがって、本発明者らは、一方では、内因性阻害チェックポイント分子を欠損し、他方では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられた修飾細胞を想到した。このような修飾細胞は、本開示では、自己免疫抑制を抑制し、顕著に向上した治療効果を付与するのに有用であることが示されている。
【0074】
別の態様では、本開示は、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、変異体は、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下していることを特徴とする、修飾細胞又はその集団を提供する。ある特定の実施形態では、変異体リガンドは、同族リガンドの、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。
【0075】
同種異系細胞での、阻害チェックポイント分子の同族リガンド(例えば、PD-L1)の発現は、免疫拒絶を避けるのに有用である可能性がある一方で、本発明者らによって、細胞(例えば、免疫細胞)での、このようなリガンドの発現は、おそらくは、同族リガンド固有の免疫阻害シグナル伝達ドメインによって、リガンドを発現する細胞での免疫抑制もまた誘発可能であることが、予想外に発見されている。阻害チェックポイント分子のある特定のリガンドは、膜貫通型タンパク質(例えば、PD-L1)であり、免疫阻害シグナル伝達を媒介することができる細胞質ドメインを含有することが、見出されている。宿主免疫細胞での、リガンドのその対応する阻害チェックポイント分子との相互作用の後で、リガンド自体もまた、リガンドを発現する細胞(例えば、免疫細胞)で免疫阻害シグナル伝達を媒介するように、活性化されることができる。したがって、本発明の別の態様は、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下した変異体リガンドを発現するように組換えられ、故に、リガンドを発現する同種異系細胞での免疫抑制の可能性を著しく低減する、又は最小限に抑える、修飾細胞を提供する。
【0076】
更に別の態様では、本開示は、修飾細胞又はその集団を提供し、修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、i)内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、ii)欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、(例えば、同族リガンドの機能的な免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠く)同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している。
【0077】
更に別の態様では、本開示は、修飾細胞又はその集団を提供し、修飾細胞は、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下していることを特徴とし、細胞は、リガンドに対応阻害チェックポイント分子を欠損している。
【0078】
細胞に関して、本明細書で使用される場合、「修飾された」という用語は、細胞が、構造的又は機能的のいずれかに変化していることを意味する。例えば、細胞は、核酸、又は生物学的活性剤を導入することで修飾することができる。
【0079】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、動物細胞又はヒト細胞である。
【0080】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、免疫細胞、又は細胞溶解活性若しくはエフェクター機能などの細胞活性を保持するのが望ましい、任意の他の種類の細胞である。ある特定の実施形態では、修飾細胞は免疫細胞である。本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、活性化されると、標的抗原に対して免疫反応を誘発することができる細胞を意味する。例示的な免疫細胞としては、限定されるものではないが、T細胞(例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、末端エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発キラー(CIK)T細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、Tヘルパー細胞(例えば、Tヘルパー1(Th1)、Tヘルパー2(Th2)細胞、又はCD4を発現するヘルパーT細胞(CD4+T細胞)))、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単核細胞、樹状細胞、好中球、及びγδT細胞が挙げられる。
【0081】
免疫細胞は、免疫細胞が対象に存在する任意の場所、例えば、血液、臍帯血、胸腺、胸水、リンパ節、脾臓、脾臓組織、腫瘍、及び骨髄などから入手することができる。単離された免疫細胞は、直接組換え可能であるか、又は、一定期間(例えば、凍結により)保存することができる。
【0082】
ある特定の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単核細胞、樹状細胞、好中球、若しくはγδT細胞であることができる。
【0083】
ある特定の実施形態では、免疫細胞はT細胞であり、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、末端エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発キラー(CIK)T細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、T細胞は活性化T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、当該技術分野において周知の様々な技術、例えば、アフェレーシスを用いて、対象から収集した血液から入手することができる。いくつかの実施形態では、CD4+ヘルパー及びCD8+細胞傷害性T細胞が単離される。
【0084】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、幹細胞、又は幹細胞から分化した細胞である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、そのゲノム内に1つ以上の遺伝子組換え(例えば、ヌクレオチド挿入、欠失、及び置換)を含む。遺伝子組換えは維持され、分化、増殖、継代、及び/又は移植後に誘導される細胞(例えば、本明細書で提供する組換え細胞)においても機能的なままである。幹細胞(例えば、iPSC)を組換え、組換え幹細胞を分化させて機能的な分化細胞を得る方法についての詳細の説明は、例えば、WO2021011919に見出すことができ、当該開示は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0085】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である。
【0086】
ある特定の実施形態では、細胞は、移植に適している。細胞は、移植に有用な、又は宿主からの免疫拒絶を低減するのに望ましい、任意の種類の細胞であってもよい。
【0087】
一実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞は、対象、例えば、特定の疾患若しくは状態を有することが疑われる対象、特定の疾患若しくは状態に罹りやすい対象、又は、特定の疾患若しくは状態の治療を受ける予定の、受けている、若しくは受けた対象などのヒト対象から単離された細胞(例えば、免疫細胞)に由来することができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、細胞(例えば、健常なボランティア、若しくは健常なドナーである対象から単離された免疫細胞)、又は血液バンクに由来する。したがって、本明細書で提供する修飾細胞は、目的の対象に対して自己由来又は同種異系であってもよい。
【0088】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)に対する、意図するレシピエントに関して同種異系である。
【0089】
ある特定の実施形態では、細胞は、エクスビボで増殖する。ある特定の実施形態では、細胞は、目的の対象への移植前に活性化される。ある特定の実施形態では、細胞は、ある特定のマーカー(例えば、CD3)の有無に対して濃縮される。
【0090】
ある特定の実施形態では、本開示は、上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の集団を提供する。上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の集団は、対応する細胞(例えば、対応する免疫細胞)の比較集団に対して、1)自己抑制の低下、2)エフェクター細胞機能の改善、並びに、3)細胞活性化及び/又は増殖の改善のうちの1つ以上の特徴を有する。
【0091】
一実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞は、同種異系環境において免疫原性が低下しており、また、抑制されていないエフェクター機能を維持する。
【0092】
i)内因性阻害チェックポイント分子の欠損
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、内因性阻害チェックポイント分子が欠損している。
【0093】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、内因性阻害チェックポイント分子が欠損している。本明細書で使用される場合、「対応する細胞」という用語は、細胞が、修飾細胞と同じ細胞型であることを意味する。対応する細胞は、修飾細胞と同じ個体から入手することができるか、又は異なる個体から入手することができる。本明細書で使用される場合、「未修飾」という用語とは、対応する細胞が、修飾細胞と同じ修飾を有しない、又は代わりに、修飾を全く有しないことを意味する。ある特定の実施形態では、未修飾の対応する細胞は、修飾細胞と同じ型で、修飾されていない天然又は自然細胞であってもよい。ある特定の実施形態では、未修飾の対応する細胞(例えば、対応する免疫細胞)は、内因性阻害チェックポイント分子を欠損している。ある特定の実施形態では、未修飾の対応する細胞は、自然免疫細胞である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「阻害チェックポイント分子」という用語は、宿主の免疫系に阻害効果を有する免疫系の阻害性制御因子を意味する。免疫チェックポイント分子の活性化により、免疫反応、例えば、サイトカインの分泌、NK細胞の活性化、T細胞の増殖、及び抗体の産生などを阻害することができる。阻害チェックポイント分子は、そのような阻害チェックポイント分子の阻害性チェックポイントリガンドを発現する特定の癌細胞の免疫回避を媒介する。
【0095】
ある特定の実施形態では、阻害チェックポイント分子は、未修飾細胞に対して内因性である。タンパク質に対して本明細書で使用される「内因性」とは、タンパク質が、細胞内で自然に、又は天然に発現することを意味する。
【0096】
例示的な阻害チェックポイント分子としては、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
「PD-1」とは、プログラム細胞死1(PD-1)受容体の略語である。ヒトPD-1の例示的な配列は、ヒトPD-1タンパク質及びヒトPD-1遺伝子を含む。より詳細な説明は、例えば、Philips et al.,(January 1,2015).「Therapeutic uses of anti-PD-1 and anti-PD-L1 antibodies」.Int Immunol.27(1):39~46に見出すことができる。
【0098】
「TIM3」は、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Zhu et al.,(August 11,2010).TIM-3 and its regulatory role in immune responses.Curr Top Microbiol Immunol.Current Topics in Microbiology and Immunology.350.pp.1~15に見出すことができる。
【0099】
「TIGIT」は、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Yu et al.,(Jan 2009).「The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells」.Nat Immunol.10(1):48~57.doi:10.1038/ni.1674に見出すことができる。
【0100】
「LAG3」は、リンパ球活性化遺伝子3の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Huang et al.,(October 1,2004).「Role of LAG-3 in regulatory T cells」.Immunity.21(4)::503-13;Grosso et al.(November 1,2007).「LAG-3 regulates CD8+T cell accumulation and effector function in murine self- and tumor-tolerance systems」.J Clin Invest.117(11):3383-92.に見出すことができる。
【0101】
「A2AR」は、アデノシンA2A受容体の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Leone et al.,(April 8,2015).「A2aR antagonists:Next generation checkpoint blockade for cancer immunotherapy」.Comput Struct Biotechnol J.13:265-72に見出すことができる。
【0102】
「BTLA」は、B及びTリンパ球アテニュエーターの略語であり、「CD272」という用語と同じ意味で用いられ、より詳細な説明は、例えば、Derre et al.,(January 1,2010).「BTLA mediates inhibition of human tumor-specific CD8+ T cells that can be partially reversed by vaccination」.J Clin Invest.120(1):157-67.に見出すことができる。
【0103】
「CTLA-4」は、細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質4の略語であり、CD152とも呼ばれ、より詳細な説明は、例えば、Kolar et al.,(January 1,2009).「CTLA-4(CD152) controls homeostasis and suppressive capacity of regulatory T cells in mice」.Arthritis Rheum.60(1):123-32に見出すことができる。
【0104】
「IDO1」及び「IDO2」は、それぞれ、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1、及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Prendergast et al.,(July 1,2014).「Indoleamine 2,3-dioxygenase pathways of pathogenic inflammation and immune escape in cancer」.Cancer Immunol Immunother.63(7):721-35に見出すことができる。
【0105】
「TDO」は、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼの略語である。
【0106】
「KIR」は、ナチュラルキラー細胞での、MHCクラスI分子に対する受容体である、キラー細胞免疫グロブリン様受容体の略語である。
【0107】
「NOX2」は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートNADPHオキシダーゼアイソフォーム2の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Martner et al.,(October 1,2018).「NOX2 in autoimmunity,tumor growth and metastasis」.J Pathol.247(2):151~154に見出すことができる。
【0108】
「VISTA」は、T細胞の活性化のVドメインIg抑制因子の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Wang et al.,(March 14,2011).「VISTA,a novel mouse Ig superfamily ligand that negatively regulates T cell responses」.J Exp Med.208(3):577-92及びLines et al.,(April 1,2014).「VISTA is an immune checkpoint molecule for human T cells」.Cancer Res.74(7):1924-32に見出すことができる。
【0109】
PVR(CD155)は、ポリオウイルス受容体の略語であり、タンパク質のネクチン様ファミリーのメンバーである。PVRは、細胞外領域内での、免疫グロブリンドメインV、C1様ドメイン、及びC2ドメインの存在により定義される、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。
【0110】
「SIGLEC7」は、CD328とも示される、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7の略語である。「SIGLEC9」は、CD329とも示される、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン9の略語であり、より詳細な説明は、例えば、Varki et al.,(2007).「Siglecs and their roles in the immune system」.Nature Reviews Immunology.7(4):255~266に見出すことができる。
【0111】
ある特定の実施形態では、阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択される。
【0112】
ある特定の実施形態では、細胞はT細胞であり、内因性阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択される。
【0113】
ある特定の実施形態では、細胞はNK細胞であり、内因性阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、IDO1、IDO2、KIR、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択される。
【0114】
ある特定の実施形態では、細胞はDC細胞であり、内因性阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びTDOからなる群から選択される。
【0115】
ある特定の実施形態では、細胞はマクロファージであり、内因性阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びCD24からなる群から選択される。
【0116】
本明細書で使用される場合、「欠損」という用語は、修飾細胞内の内因性阻害チェックポイント分子が、活性若しくはレベルが存在しない若しくはゼロであるか、又は未修飾の対応する細胞における活性若しくはレベルと比較して、通常の活性若しくはレベルを下回るいずれかであることを意味する。例えば、修飾細胞内の、内因性阻害チェックポイント分子の遺伝子を欠失又は変異させて、機能喪失表現型を付与することができる。別の例としては、内因性阻害チェックポイント分子は、修飾細胞内で、低下したレベルで、又は活性が低下した形態で発現することができる。内因性阻害チェックポイント分子のレベル及び/活性は、免疫組織化学法、ウェスタンブロット、免疫蛍光顕微鏡法、及び定量フローサイトメトリーなどの、当該技術分野において周知の様々な技術を用いて測定することができる。
【0117】
例えば、遺伝子編集により、内因性阻害チェックポイント分子の発現と干渉させることにより、又は内因性阻害チェックポイント分子若しくはそのコードmRNAの分解を促進することにより、任意の好適な方法を使用して細胞を修飾し、内因性阻害チェックポイント分子を欠損させることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の、コード配列又は調節配列内の第1の変異を含み、この変異は、阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする第1の干渉オリゴヌクレオチドを含み、干渉オリゴヌクレオチドは、阻害チェックポイント分子の発現を低下させる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、阻害チェックポイント分子の発現及び/又は活性を阻害する、導入されたタンパク質、ポリペプチド、又は低分子を含む。
【0118】
ある特定の実施形態では、阻害チェックポイント分子は、PD-1である。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、内因性PD-1を欠損している。
【0119】
PD-1のレベルは、免疫組織化学法、ウェスタンブロット、免疫蛍光顕微鏡法、及び定量フローサイトメトリーなどの、当該技術分野において周知の方法により測定することができる。
【0120】
PD-1の活性(即ち、PD-1が媒介する免疫阻害)は、活性化版のPD-1(例えば、PD-1阻害機能の送達に不可欠な、リン酸化Y248を有するPD-1などの、リン酸化PD-1(Kankana et al.,Phosphorylation of PD-1-Y248 is a marker of PD-1-mediated inhibitory function in human T cells,Scientific Reports |(2019)9:17252))の発現量を測定することにより、決定することができる。PD-1の活性はまた、グリコスフィンゴリピド濃縮マイクロドメイン1(PAG)と関連するリン酸化リンタンパク質などの、免疫細胞内でのPD-1の阻害機能に寄与する、PD-1の下流にある活性化版のタンパク質の発現量を測定することにより測定することができる(Marianne et al.,Transmembrane adaptor protein PAG is a mediator of PD-1 inhibitory signaling in human T cells,COMMUNICATIONS BIOLOGY|(2021)4:672)。
【0121】
ii)阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させるための組換え
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞を組換えて、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させる。
【0122】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞を組換えて、本明細書で提供する欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させる。
【0123】
本明細書で使用される場合、阻害チェックポイント分子に関する「リガンド」という用語は、阻害チェックポイント分子に結合し、阻害チェックポイント分子を活性化して、免疫抑制効果を発揮することができる分子を意味する。ある特定の実施形態では、リガンドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む膜貫通型タンパク質を含む。
【0124】
リガンドは、阻害チェックポイント分子の同族リガンドであってもよく、又は代わりに、同族リガンドの変異体であってもよく、又は代わりに、阻害チェックポイント分子の任意のアゴニストであってもよい。本明細書で使用される場合、「同族リガンド」という用語は、タンパク質の内因性リガンド又は天然リガンドを意味する。
【0125】
任意の好適な方法を用いて、細胞を組換え、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである。
【0126】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)には、リガンドの発現が導入されている。本明細書で使用される場合、リガンドに関する「導入される発現」という用語は、リガンドに対する核酸(例えば、コード配列)を細胞に提供することによる、リガンドの発現を意味する。核酸は、細胞のゲノムに組み込まれてもよく、又は細胞に一過的に提供されてもよい。
【0127】
ある特定の実施形態では、リガンドは、PD-L1、PD-L2、HMGB1、Ceacam-1、ホスファチジルセリン(PS)、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、アデノシン、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)、CD28、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、PVR(CD155)、MHCクラスI、シアロ糖タンパク質、CD112、CD113、ガレクチン9、CD24、及びCD47からなる群から選択される。これらのリガンドは、当該技術分野において周知であり、コード遺伝子は、国立生物工学情報センター(NCBI)、アメリカ国立医学図書館の遺伝子データベースなどの、公的なデータベースから、例えば、それぞれの遺伝子ID:PD-L1(遺伝子ID:29126)、PD-L2(遺伝子ID:80380)、HMGB1(遺伝子ID:3146)、Ceacam-1(遺伝子ID:634)、LSECtin(遺伝子ID:339390)、a-シヌクレイン(遺伝子ID:6622)、FGL1(遺伝子ID:2267)、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)(遺伝子ID:8764)、CD28(遺伝子ID:940)、B7-H3(CD276)(遺伝子ID:80381)、B7-H4(VTCN1)(遺伝子ID:79679)、PVR(CD155)(遺伝子ID:5817)、MHCクラスI、CD112(遺伝子ID:5819)、CD113(遺伝子ID:25945)、Galectin9(遺伝子ID:16859)、CD24(遺伝子ID:100133941)、及びCD47(遺伝子ID:961)で入手可能である。
【0128】
a)発現されたリガンドは、欠損型内因性阻害チェックポイント分子と対形成される
【0129】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞は、内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、一方では、組換えられ、そのような内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現する。換言すれば、欠損型阻害チェックポイント分子、及び発現されたリガンドが対形成される。
【0130】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はPD-1であり、発現されたリガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、又は、その機能的等価物、若しくはその変異体のうちの少なくとも1つを含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はTIM3であり、発現されたリガンドは、ガレクチン9、HMGB1、Ceacam-1、若しくはホスファチジルセリン(PS)、又はTIM3に結合可能なその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はLAG-3であり、発現されたリガンドは、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、若しくはFGL1、又はLAG-3に結合可能なその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はTIGITであり、発現されたリガンドは、CD155、CD113、若しくはCD112、又はTIGITに結合可能なその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はアデノシンA2A受容体(A2AR)であり、リガンドはアデノシンを含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はBTLAであり、発現されたリガンドは、ヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)、又はBTLAに結合可能なその機能的等価物を含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はCTLA-4であり、発現されたリガンドは、CD28、又はCTLA4に結合可能なその機能的等価物を含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)であり、発現したリガンドは、MHCクラスI、又はKIRに結合可能なその機能的等価物を含む。
【0138】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子は、VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子)であり、発現されたリガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、又はVISTAに結合可能なその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含む。
【0139】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子は、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7(SIGLEC-7、CD328)であり、リガンドは、SIGLEC-7に結合可能なシアロ糖タンパク質又はその機能的等価物を含む。
【0140】
ある特定の実施形態では、欠損型内因性阻害チェックポイント分子はSIGLEC-9(CD329)であり、リガンドは、SIGLEC-9に結合可能なシアロ糖タンパク質又はその機能的等価物を含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、そのゲノムに、阻害チェックポイント分子のコード配列若しくは調節配列内の第1の変異、及び/又は阻害チェックポイント分子のリガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含み、第1の変異は、阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させ、第1の外因性ポリヌクレオチドは、阻害チェックポイント分子のリガンドの導入された発現をもたらす。
【0142】
ある特定の実施形態では、細胞は、1つ以上の追加の内因性阻害チェックポイント分子を、更に欠損している。
【0143】
ある特定の実施形態では、阻害チェックポイント分子がPD-1である場合、リガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、又は機能的等価物であってもよい。PD-L1若しくはPD-L2、又は機能的等価物をPD-1に結合させることによって、ホスファターゼ1及び2を含有するSrc相同性2ドメイン(SHP-1/SHP-2)が、PD-1のチロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)に動員され、これは、CD3ζ、PKCθ、及びZAP70などのシグナル伝達キナーゼの脱リン酸化に繋がり、T細胞増殖の、全体的な阻害作用がもたらされる(Yokosuka et al.,Programmed cell death 1 forms negative costimulatory microclusters that directly inhibit T cell receptor signaling by recruiting phosphatase SHP2.J Exp Med 2012;209:1201-17)。
【0144】
上述したリガンドは、リガンドの変異体のライブラリーを生成し、その阻害チェックポイント分子への結合親和性、加えて、変異体固有の免疫阻害シグナル伝達を試験することによりスクリーニングすることができる。阻害チェックポイント分子に対して高い結合親和性を維持するこれらの変異体は、依然として、固有の免疫阻害シグナル伝達の減少が、本開示の修飾細胞(例えば、免疫細胞)のリガンドとして選択されることを示す。固有の免疫阻害シグナル伝達は、当該技術分野において周知の様々な技術、例えば、FACS、PCR、ウェスタンブロットにより、又は細胞内のシグナル伝達タンパク質若しくはその修飾物の発現を検出することにより、測定することができる。
【0145】
ある特定の実施形態では、リガンドは、阻害チェックポイント分子を活性化可能な、分泌されたアゴニスト又は細胞表面アゴニストを含む。例えば、PD-1アゴニストは、PD-1が媒介する阻害性シグナル伝達を導入するために、PD-1に結合可能であり、それ故に、改変して、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の表面から放出されることができる、又は修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の表面に発現することができる。例示的なPD-1アゴニストとしては、限定されるものではないが、計算により設計可能であり、PD-1と相互作用してT細胞の活性化を阻害することができる、PD-1結合タンパク質又はミニタンパク質が挙げられる(Cassie et al.,Computational design of a synthetic PD-1 agonist.PNAS July 20,2021 118(29) e2102164118)。タンパク質組換え技術、例えば、PD-1アゴニストを、膜貫通ドメイン、及び表面に結合している間に細胞表面の外側でPD-1アゴニストを発現させるために必要な他のエレメントに融合させることにより、これらのPD-1アゴニストを、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の表面に組換えることができる。
【0146】
b)阻害チェックポイント分子のリガンドの変異体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供するリガンドは、内因性阻害チェックポイント分子の同族リガンドの変異体である。
【0147】
本明細書で使用される場合、リガンドの「変異体」という用語は、同族又は自然リガンドと異なるが相同であり、同族又は自然リガンドが結合パートナー(例えば、免疫チェックポイント分子)に結合する能力を実質的に維持しているタンパク質を意味する。変異体は、親ペプチドと、1つ以上のアミノ酸残基が異なっている場合がある。例えば、変異体は、親タンパク質の1つ以上のアミノ酸残基の、保存的置換、欠失、又は挿入を有することができる。ある特定の実施形態では、変異体は、同族リガンドに対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の配列同一性を有しながら、実質的に、同族リガンドが、その結合パートナー(例えば、免疫チェックポイント分子)に結合する能力を維持する。。天然又は自然リガンド(例えば、自然PD-L1)の「変異体」は、自然に存在する、又は自然リガンドの、断片、変異体、融合物、又はこれらの任意の組み合わせを含む、異なる形態であってもよいが、これらに限定されない。変異体リガンドは、完全長の自然リガンドを含有しない。しかし、変異体は、自然リガンドの断片若しくは部分、又はこのような断片若しくは部分を含む融合タンパク質を含有することができる。変異体リガンドは、完全長の自然リガンドの変異形態、若しくは、自然リガンドの断片の変異形態、又はこのような変異形態を含む融合タンパク質もまた含むことができる。
【0148】
変異体リガンドは、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している。
【0149】
阻害チェックポイント分子の少なくともいくつかの同族リガンドは、免疫阻害シグナル伝達を媒介可能なシグナル伝達ドメインを有することが見出されている。同族リガンドの、その対応する阻害チェックポイント分子との相互作用に続いて、同族リガンド自体もまた、同族リガンドを発現する修飾細胞内で免疫阻害シグナル伝達を媒介するように活性化可能である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、同族リガンドの免疫阻害シグナル伝達ドメインの変異又は欠失によって、リガンドを発現する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)での「バックシグナル伝達」が低減することが想到される。リガンドの、対応する阻害チェックポイント分子(例えば、レシピエントの免疫細胞に存在するもの)への結合の際に。これは、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)のエフェクター機能を損なう可能性のある修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)における阻害性シグナル伝達を低下させるのに役立ち得、したがって、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)のエフェクター機能を増加させることができる。
【0150】
ある特定の実施形態では、変異体リガンドは、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下している。ある特定の実施形態では、変異体の免疫阻害シグナル伝達は、同族リガンドの免疫阻害シグナル伝達の、通常、又は基準レベルを、実質的に下回る(例えば、少なくとも20%下回る、少なくとも40%下回る、少なくとも60%下回る、又は少なくとも80%下回る)ように低下している。
【0151】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞を組換えて、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させ、ここで、リガンドは、同族リガンドの変異体であり、同族リガンドの機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。
【0152】
ある特定の実施形態では、変異体は、同族リガンドが免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、少なくとも1個のアミノ酸残基の欠失、例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個のアミノ酸残基、又はそれ以上の欠失を含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、同族リガンドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む膜貫通型タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの変異は、同族リガンドの細胞内ドメイン内、若しくは、同族リガンドの膜貫通ドメイン内、若しくは、同族リガンドの細胞外ドメイン内、又はこれらの任意の組み合わせにある。
【0155】
ある特定の実施形態では、免疫阻害シグナル伝達ドメインは、同族リガンドの細胞内ドメイン又は膜貫通ドメイン内に存在する。例えば、阻害チェックポイント分子のいくつかのリガンドは、膜貫通型タンパク質(例えば、PD-L1)であり、免疫阻害シグナル伝達を媒介することができる細胞質ドメインを含有することが、見出されている。
【0156】
ある特定の実施形態では、変異体は、免疫阻害性チェックポイント分子の同族リガンドの変異体であり、同族リガンドは、PD-L1、PD-L2、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、PVR(CD155)、MHCクラスI、シアロ糖タンパク質、CD112、CD113、ガレクチン9、CD24、及びCD47からなる群から選択され、変異体は、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下しており、及び/又は対応する同族リガンドの機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。
【0157】
細胞を、上述した方法を用いて、即ち、修飾細胞に、リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することで、組換え、阻害チェックポイント分子の変異体リガンドを発現することができる。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、変異体リガンドに対するコード配列を含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、変異体リガンドに対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、変異体リガンドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、変異体リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0158】
c)PD-L1変異体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する阻害チェックポイント分子の変異体リガンドは、PD-L1変異体又はPD-L2変異体である。
【0159】
PD-L1は、約40kDaのサイズを有するI型膜貫通型タンパク質であり、IgV様及びIgC様細胞外ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、並びに30~31個のアミノ酸で作製される短い細胞質テールで構成される。(Kythreotou et al.,PD-L1.J.Clin.Pathol.71,189~194(2018); Dong et al.,B7-H1,a third member of the B7 family,costimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion.Nat Med 1999;5:1365-9; and Chen et al.,Regulation of PD-L1: a novel role of pro-survival signalling in cancer.Ann Oncol 2016;27:409-16.)。PD-L1は、ヒトの染色体9の位置p24.1において見出されるPDCDL1遺伝子によりコードされる(NCBI gene resource CD274 molecule [Homo sapiens(human)]-gene-NCBI.2017 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/ gene(accessed 29 Jun 2017).)。PD-L1の完全長は、7つのエクソンによりコードされ、これは、そのシグナルペプチドを含む290個のアミノ酸のタンパク質に対応する。最近の研究は、PD-L1の関与によって、活性化の際に、PD-1の細胞内シグナル伝達に類似する細胞内シグナル伝達を誘発することで、T細胞アポトーシスが誘発されたことを見出し、これは、「バックシグナル伝達」と名付けられた(Brian et al.,PD-L1 engagement on T cells promotes self-tolerance and suppression of neighboring macrophages and effector T cells in cancer,Nature Immunology | VOL 21 442 | April 2020 | 442~454)。
【0160】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体又はPD-L2変異体は、安定して発現することができる。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体又はPD-L2変異体は、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下しているが、依然として、PD-1への結合能力、又はPD-1に対する結合親和性を実質的に維持している。
【0161】
PD-L1変異体又はPD-L2変異体の結合能力及び/又は親和性は、ELISA、ウェスタンブロット、フローサイトメトリーアッセイ、及び他の結合アッセイなどの、任意の好適なアッセイにより測定することができる。ある特定の実施形態では、結合能力及び/又は親和性は、フローサイトメトリーにより測定される。一般に、PD-L1発現細胞を、一定範囲の濃度の、PD-1発現細胞又は可溶性PD-L1(例えば、任意選択的に、Fcが融合したPD-1細胞外ドメイン)でインキュベートし、続いて、蛍光標識した二次抗体でインキュベートした後、蛍光シグナル強度を分析することができる。
【0162】
PD-L1変異体又はPD-L2変異体の免疫阻害シグナル伝達は、任意の好適なアッセイによって測定することができる。例えば、PD-1ノックアウト(PD-1-/-)T細胞を組換え、PD-L1、又は本明細書で提供するPD-L1変異体を発現させることができ、得られた組換えT細胞を、PD-1発現細胞又は可溶性PD-1(例えば、任意選択的に、Fcが融合したPD-1細胞外ドメイン)でインキュベートし、続けて、T細胞の活性化又は増殖又は分化を検出することができる。組換えT細胞が完全長PD-L1を発現する場合、PD-1が関与することで、組換えT細胞の活性化又は増殖又は分化を阻害することができる一方で、本明細書で提供するPD-L1変異体を発現する組換えT細胞は、PD-1の関与によって、はるかに低い阻害を示す。
【0163】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供するPD-L1変異体又はPD-L2変異体は、完全長野生型PD-L1の、免疫阻害シグナル伝達80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%又は5%以下の、免疫阻害シグナル伝達を有する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供するPD-L1変異体又はPD-L2変異体は、検出不可能な免疫阻害シグナル伝達を有する。
【0164】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、上記自然PD-L1の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。ある特定の実施形態では、PD-L2変異体は、上記自然PD-L2の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、完全長PD-L1を含有しない。PD-L1変異体は、完全長の自然PD-L1を含有しない。PD-L2変異体は、完全長の自然PD-L2を含有しない。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、切断型自然PD-L1、又は、切断型変異体PD-L1を含む。ある特定の実施形態では、切断型変異体は、C末端切断型PD-L1を含む。
【0165】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、自然PD-L1と比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、又はこれらの任意の組み合わせに、少なくとも1つの変異を含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内に少なくとも1つの変異を含み、これは、PD-L1の260番目から290番目のアミノ酸残基までまたがり、少なくとも1つの変異は、268番目から271番目のアミノ酸残基にまたがるモチーフ内にある。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、PD-L1の268番目の残基、269番目の残基、270番目の残基、及び/又は271番目の残基において少なくとも1つの変異を含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン、例えば、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなるドメイン内に、少なくとも1つの変異を含む。他の実施形態では、少なくとも1つの変異は、免疫阻害シグナル伝達の形質導入に関与する1つ以上のドメインの外に変異を含むが、依然として、免疫阻害シグナル伝達の形質導入を妨害する、構造上の変化をもたらす。
【0166】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン、例えば、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又はこれからなるドメインの少なくとも一部の欠失を含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、自然PD-L1の配列番号1のアミノ酸配列に対応する領域内に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、又は少なくとも31個のアミノ酸残基の欠失を含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、PD-L1の、組換え細胞内ドメイン及び/又は組換え膜貫通ドメインは、配列番号2の位置1~21にまたがる領域内に、自然PD-L1の配列番号2のアミノ酸配列に対応する領域内に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、又は少なくとも21個のアミノ酸残基の欠失を含む。
【0169】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、自然PD-L1の配列番号5のアミノ酸配列に対応する領域内に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個のアミノ酸残基、又は少なくとも51個のアミノ酸残基の欠失を含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、C末端欠失を有する、C末端切断型変異体である。
【0171】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体(例えば、C末端切断型変異体)は、自然PD-L1(例えば、配列番号11)、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含みながら、依然として、PD-1への結合能力を実質的に維持する。PD-L1変異体は、配列番号11のアミノ酸配列を含まない。
【0172】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体(例えば、C末端切断型変異体)は、自然PD-L1(例えば、配列番号7)、又は、配列番号7と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含みながら、依然として、PD-1への結合能力を実質的に維持する。
【0173】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、切断型PD-L1(例えば、C末端切断型PD-L1)を含む。切断型PD-L1は、切断版の自然PD-L1、又は切断版の変異体PD-L1であってもよい。ある特定の実施形態では、切断型PD-L1は、271アミノ酸残基未満、270アミノ酸残基未満、265アミノ酸残基未満、260アミノ酸残基未満、255個アミノ酸残基未満、250アミノ酸残基未満、245アミノ酸残基未満、240アミノ酸残基未満、235アミノ酸残基未満、230アミノ酸残基未満、225アミノ酸残基未満、220アミノ酸残基未満(例えば、220~272、220~271、220~270、220~269、220~268、220~267、220~265、220~264、220~263、220~262、220~261、220~260、220~259、220~258、220~257、220~256、220~255、220~254、220~253、220~252、220~251、220~250、220~249、220~248、220~247、220~246、220~245、220~244、220~243、220~242、220~241、241~272、241~271、241~270、241~269、241~268、241~267、241~265、241~264、241~263、241~262、241~261、241~260、241~259、241~258、241~257、241~256、241~255、241~254、241~253、241~252、241~251、241~250、241~249、241~248、241~247、241~246、241~245、241~244、241~243、241~242アミノ酸残基)の長さを有する。
【0174】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体のアミノ酸配列は配列番号7である。
【0175】
上述した方法を用いて、即ち、修飾細胞に、PD-L1変異体に対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することで、細胞を組換え、PD-L1変異体を発現させることができる。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、PD-L1変異体に対するコード配列を含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、PD-L1変異体に対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、PD-L1変異体に対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである。
【0176】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、PD-L1変異体に対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0177】
d)PD-L1変異体をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む細胞
別個の態様では、本開示は、自然PD-L1と比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下したPD-L1変異体を含むタンパク質を更に提供する。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、自然PD-L1の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いている。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含む。他の態様のPD-L1変異体は、上記のセクションで記載したものと同じである。
【0178】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、対象となるポリペプチドに連結したPD-L1変異体を含む。ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、細胞表面上に発現されてもよく、又は分泌されてもよい。ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、本明細書で提供する標的抗原(例えば、標的細胞抗原)に結合することができる。ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、又は組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドである。対象となるポリペプチド、CAR、及び組換えTCRの更なる詳細は、以下に記載され、本明細書における実施形態に適用可能である。
【0179】
ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、リンカーを介して、対象となるポリペプチドに連結される。ある特定の実施形態では、リンカーは切断可能である。ある特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、自己切断ペプチド、例えば、2Aペプチド、例えば、P2A(例えば、配列番号16)、T2A、又はF2Aである。ある特定の実施形態では、P2Aをコードするヌクレオチド配列は、配列番号15のヌクレオチド配列を有する。
【0180】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、シグナルペプチドを更に含む。ある特定の実施形態では、PD-L1変異体は、シグナルペプチドを更に含む。
【0181】
ある特定の実施形態では、タンパク質は、リンカー、任意選択的に、切断可能なリンカーに連結された、PD-L1変異体を含む。ある特定の実施形態では、タンパク質は、P2Aに連結されたPD-L1変異体を含む。ある特定の実施形態では、タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0182】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを更に提供する。ある特定の実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、任意選択的に、同じタンパク質をコードするか、又は、少なくとも90%、若しくは95%、若しくは99%の配列同一性を有するタンパク質変異体をコードする、配列番号13、14、若しくは18を含むヌクレオチド配列、又は、少なくとも50%の配列同一性を有する、その相同配列を有する。
【0183】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを更に提供する。
【0184】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供する発現ベクターを含む組換え細胞を更に提供する。ある特定の実施形態では、組換え細胞は、動物細胞又はヒト細胞である。ある特定の実施形態では、組換え細胞は免疫細胞である。ある特定の実施形態では、組換え細胞は、幹細胞、又は幹細胞から分化した細胞である。ある特定の実施形態では、細胞は、移植に適している。ある特定の実施形態では、組換え細胞は、組換え細胞に対する、意図するレシピエントに関して同種異系である。
【0185】
別の態様では、本開示は、PD-L1変異体又はPD-L2変異体を発現するように組換えられた、組換え細胞又はその集団を提供する。
【0186】
別の態様では、本開示は、上述した方法により、エクスビボで産生される組換え細胞の集団もまた提供する。ある特定の実施形態では、細胞集団の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、検出可能なレベルの、本明細書で提供するPD-L1変異体を発現する。
【0187】
別の態様では、本開示は、同種異系宿主において免疫寛容が増大した組換え細胞の産生方法であって、細胞内で、本明細書で提供するポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で、細胞に、本明細書で提供する発現ベクターを導入することにより、組換え細胞の免疫寛容を増大させることを含む、方法を提供する。本明細書で使用される場合、「免疫寛容」という用語は、同種異系宿主の免疫系による、組換え細胞の免疫拒絶を寛容する又は低減する能力を意味する。ある特定の実施形態では、組換え細胞は、MHC Iクラスタンパク質(例えば、HLAクラスI)、及び/又はMHC IIクラスタンパク質(例えば、HLAクラスIタンパク質)若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)などの、抗原提示タンパク質を更に欠損している。
【0188】
iii)他の対象となるポリペプチドの発現
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)又はその集団は、対象となる別のポリペプチドを更に発現する。
【0189】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)若しくはその集団は修飾されているか、又は、更に修飾されて、対象となるポリペプチドに対するコード配列を含む第2の外因性ポリヌクレオチドが導入され、任意選択的に、修飾細胞は、対象となるポリペプチドを発現する。
【0190】
ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、上記細胞表面上に発現されてもよく、又は分泌されてもよい。ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、標的細胞抗原などの標的抗原に結合することができる。
【0191】
標的細胞抗原は、対象となる疾患又は状態と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーであってもよい。ある特定の実施形態では、標的細胞抗原は、腫瘍抗原、炎症関連抗原、又は、感染体関連抗原(例えば、ウイルス抗原)を含む。ある特定の実施形態では、標的細胞抗原は、癌、自己免疫疾患、又は感染症からなる群から選択される疾患と関連している。
【0192】
腫瘍抗原の例としては、限定されるものではないが、BCMA、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD 179b、CEA、CLEC12A、クローディン18.2、CS-l、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、GPC3、HER2、HM1.24、LGR5、メソセリン、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、及びROR1が挙げられる。
【0193】
任意の好適な方法を使用して細胞を組換え、対象となるポリペプチドを更に発現させることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、対象となる他のポリペプチドに対するコード配列を含む、第2の外因性ポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、第2の外因性ポリヌクレオチドは、対象となる他のポリペプチドに対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。ある特定の実施形態では、第2の外因性ポリヌクレオチドは、対象となる他のポリペプチドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。ある特定の実施形態では、第2の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである。
【0194】
ある特定の実施形態では、対象となる他のポリペプチドは、内因性阻害チェックポイント分子のリガンドと共発現する。ある特定の実施形態では、対象となる他のポリペプチドは、リガンド又は変異体リガンドとの融合タンパク質として発現する。ある特定の実施形態では、対象となる他のポリペプチドは、任意選択的に、リンカー、例えば、切断可能なリンカーを介して、内因性阻害チェックポイント分子のリガンド(又は、同族リガンドの変異体)に連結される。
【0195】
ある特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、2Aペプチドなどの自己切断ペプチドである。2Aペプチドは、18~22個のアミノ酸残基の長さを有するウイルスオリゴペプチドであり、真核細胞の翻訳中に、ポリペプチドの切断を媒介する。様々なウイルス2Aペプチドは一般的に、それらが由来するウイルスから名付けられており、例えば、F2Aは、手足口病ウイルスに由来し、E2Aはウマ鼻炎Aウイルスに由来し、P2Aはブタテッショウウイルス-1 2Aに由来し、T2Aは、ゾセア・アシグナウイルス2Aに由来する(詳細については、Liu,Z et al,Scientific Reports,volume 7,Article number:2193(2017)を参照されたい)。高度に保存された配列GDVEXNPGP(配列番号6、配列中、Xは任意のアミノ酸残基であってもよい)は、C末端において異なる2Aによって分かち合われており、立体障害及びリボソームスキッピングの生成に不可欠である。2Aペプチドは、複数遺伝子の共発現のための、高レベルの下流タンパク質発現を誘導するのに有用であり、これらは、サイズが小さく、故に、共発現した遺伝子の機能に干渉するリスクが低い。2Aペプチドは、ポリシストロニック及びバイシストロニック多重遺伝子発現に、上手く利用されている。ある特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、P2A(例えば、配列番号16)、F2A(例えば、配列番号9、GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP)、T2A(例えば、配列番号71、GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP)、及びE2A(例えば、配列番号72、GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGP)を含む。ある特定の実施形態では、P2Aをコードするヌクレオチド配列は、配列番号15のヌクレオチド配列を有する。
【0196】
このような実施形態では、第2の外因性ポリヌクレオチド及び第1の外因性ポリヌクレオチドは、内因性阻害チェックポイント分子の対象となるポリペプチド及びリガンド(例えば、同族リガンドの変異体)を含む融合タンパク質をコードする、1つの組み合わされたポリヌクレオチドである。組み合わされたポリヌクレオチドは、融合タンパク質に対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含み得る。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、組み合わされたポリヌクレオチドは、融合タンパク質に対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含み得る。
【0197】
ある特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、又は組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドである。
【0198】
ある特定の実施形態では、CAR又は組換えTCRは、上述した標的細胞表面抗原などの、標的細胞抗原に結合可能である。
【0199】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、修飾T細胞であり、任意選択的に、修飾T細胞は、内因性T細胞受容体を更に欠損する。詳細は、以下のセクションでより詳細に説明される。
【0200】
a)キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原結合ドメインを、免疫細胞活性化のための1つ以上のシグナル伝達ドメインと組み合わせる、組換えキメラ受容体である。標的抗原に結合する際に、CARは、修飾免疫細胞(例えば、T細胞及びNK細胞)での、抗原特異的細胞免疫活性を媒介することができ、このようなCAR発現免疫細胞が、標的抗原を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)を排除することを可能にする。CARにより媒介される細胞免疫活性としては、CAR発現免疫細胞の増殖、細胞毒性因子、例えば、パーフォリン、グランザイム、及びグラニュリシンの放出、並びに、標的細胞の細胞崩壊及び/又はアポトーシスの開始もまた挙げることができる。
【0201】
ある特定の実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRシグナル伝達ドメインを含む。
【0202】
ある特定の実施形態では、CARは、共刺激シグナル領域を更に含む。共刺激シグナル領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを、任意選択的に、適した長さ、例えば、2~10アミノ酸などを有する、短いペプチドリンカー(例えば、グリシン-セリンダブレットリンカー)により、無作為に、又は、特定の順序で、互いに連結することができる。
【0203】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、標的抗原に対する抗体に由来する、1つ以上の抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に用いられるのと同じ種に由来することが有益である。例えば、ヒトで使用するためには、ヒト抗体又はヒト化抗体に由来するCARで用いられる抗原結合ドメインを有することが、有益であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、例えば、Fv、Fab、及び(Fab’)2、並びに二機能性(即ち、二重特異的)ハイブリッド抗体断片を含む様々な他の形態で存在することができる(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol.17,105(1987))。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、Fab又はscFvを含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、CARは、CARの細胞外抗原結合ドメインに融合した膜貫通ドメインを含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR内のドメインの1つと自然に関連するように、選択することができる。場合によっては、膜貫通ドメインを、T細胞受容体複合体の他のメンバーの膜貫通ドメインと結合しないように、選択又は修飾することができる。
【0205】
本明細書で提供するCARの膜貫通ドメインは、例えば、T細胞受容体のα、β、又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154などの、任意の自然膜結合又は膜貫通型タンパク質の膜貫通ドメインに由来することができる。いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインはまた、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジなどの、様々なヒトヒンジを使用することができる。ある特定の実施形態では、CARは、抗体のヒンジ領域を更に含む。例えば、ヒンジ領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の実施形態では、CARは、配列番号26のアミノ酸配列を任意選択的に含む、CD8α膜貫通ドメイン(TM)を更に含む。
【0206】
あるいは、本明細書で提供するCARの膜貫通ドメインは、合成のものであることができ、例えば、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主に含むことができる。一実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に含まれる。任意選択的に、2~10アミノ酸長の、短いオリゴ又はポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間で連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレットが、特に好適なリンカーをもたらす。
【0207】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを発現する免疫細胞を活性化し、免疫細胞の通常のエフェクター機能の1つ、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルパー活性を発揮することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、完全長の、天然の細胞内シグナル形質導入ドメイン、又は、エフェクター機能シグナルを形質導入するのに十分な、その断片のいずれかであることができる。
【0208】
本明細書で提供するCARにおいて有用な、例示的な細胞内シグナル伝達ドメインとしては、抗原受容体が関与した後にシグナル形質導入を共同して開始する、T細胞受容体(TCR)及びコレセプターの細胞質配列、加えて、これらの配列の任意の誘導体又は変異体、及び、同じ機能上の能力を有する合成配列が挙げられる。
【0209】
ある特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRシグナル伝達ドメインを含む。刺激によって機能するTCRシグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られている、シグナル伝達モチーフを含有し得る。本明細書で提供するCARにおいて有用なTCRシグナル伝達ドメインを含有するITAMの例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。ある特定の実施形態では、TCRシグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。ある特定の実施形態では、CARは、アミノ酸配列の配列番号28を含むCD3ζシグナル形質導入ドメインを更に含む。
【0210】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供するCARは、共刺激シグナル伝達領域を更に含む。共刺激シグナル伝達領域は、抗原とは独立して機能し、CARシグナル伝達又は活性化を媒介することができ、リンパ球の、抗原に対する効率的な応答のために必要な共刺激分子に由来することができる。例示的な共刺激分子としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、CARは、配列番号27のアミノ酸配列を含む、4-1BB共刺激シグナル領域を更に含む。
【0211】
CARの一例としては、例えば、CD3ζ膜貫通及びエンドドメインに融合したモノクローナル抗体に由来する、一本鎖可変断片(scFv)が挙げられる。このようなCARは、scFvの、その標的への特異的結合に応じて、ゼータシグナルの伝達をもたらす。CARの調製方法は、一般に入手可能である(例えば、本明細書中に、それぞれの全体が参照により組み込まれる、Grupp et al.,N Engl J Med.,368:1509~1518,2013;Park et al.,Trends Biotechnol.,29:550~557,2011;Haso et al.,(2013) Blood,121,1165~1174;Han et al.,J.Hematol Oncol.6:47,2013;WO2012/079000;米国公報第2012/0213783号;及びWO2013/059593を参照されたい)。CARについての詳細の説明は、例えば、Cheng et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research(2017) 5:22;Yang et al.,Challenges and Opportunities of Allogeneic Donor-Derived CAR T cells.Curr Opin Hematol.2015 November; 22(6):509~515にもまた見出すことができる。
【0212】
ある特定の実施形態では、CARは、抗CD19scFvを含む。抗CD19 scFvは、任意選択的に、リンカー(例えば、配列番号23のアミノ酸配列を含む)を介して連結した、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、を含むCD19抗体FMC63に由来する。
【0213】
ある特定の実施形態では、CARは、抗PSMA scFvを含む。抗PSMA scFvは、任意選択的に、リンカー(例えば、配列番号23のアミノ酸配列を含む)を介して連結した、配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、を含むCD19抗体J591に由来する。
【0214】
ある特定の実施形態では、CARは、任意選択的に、リンカー、例えば、切断可能なリンカーを介して、本明細書で提供するPD-L1変異体に連結される。ある特定の実施形態では、CARは、P2Aリンカーを介して、PD-L1変異体に連結される。ある特定の実施形態では、CARは、P2Aリンカーを介してPD-L1変異体に連結された抗CD19 CARを含み、このようなタンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、CARは、P2Aリンカーを介してPD-L1変異体に連結された抗PSMA CARを含み、このようなタンパク質は、配列番号83のアミノ酸配列を含む。
【0215】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを更に提供する。ある特定の実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、任意選択的に、同じタンパク質をコードする、又は、少なくとも90%、若しくは95%、若しくは99%の配列同一性を有するタンパク質変異体をコードする、配列番号20、配列番号84を含むヌクレオチド配列、又は、少なくとも50%の配列同一性を有する、その相同配列を有する。ある特定の実施形態では、CARは、そのN末端にシグナルペプチドを更に含む。
【0216】
b)組換えT細胞受容体(TCR)
ある特定の実施形態では、組換えTCRは、組換え抗原結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、組換えTCRの、細胞表面抗原に対する親和性は、野生型TCRにおける親和性よりも高い。他の実施形態では、TCRは、修飾α又はβ鎖などの修飾鎖を含むことができる。このような修飾としては、N-脱グリコシル化、変化したドメイン(特異的抗原を標的とするか、又は親和性を増大させる、組換え可変領域など)、1つ以上のジスルフィド結合の付加、異なる種に由来する鎖全体又は断片、及び、これらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0217】
TCRを組換え、発現させるための技術は、当該技術分野において周知である。例えば、TCRを、対応するサブユニットと会合する自然ジスルフィド結合を含むTCRヘテロ二量体として産生することが可能である。例えば、Garboczi,et al.,(1996),Nature 384(6605):134-41;Garboczi,et al.,(1996),J Immunol 157(12):5403-10;Chang et al.,(1994),PNAS USA 91:11408~11412;Davodeau et al.,(1993),J.Biol.Chem.268(21):15455~15460;Golden et al.,(1997),J.Imm.Meth.206:163~169;米国特許第6,080,840号を参照されたい。組換えTCRについての詳細の説明は、例えば、Ping et al.,T-cell receptor-engineered T cells for cancer treatment:current status and future directions.Protein Cell 2018,9(3):254~266にもまた、見出すことができる。
【0218】
iv)抗原提示タンパク質及び他のタンパク質を更に欠損している修飾細胞
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、限定されるものではないが、β-2-マイクログロブリン(B2M)、クラスII主要組織適合性複合体トランス活性化因子(CIITA)、及びICP47ポリペプチドを含む、抗原処理、抗原提示、抗原認識、及び/又は抗原応答に関与する1つ以上のタンパク質を更に欠損している。
【0219】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、MHCクラスIタンパク質を更に欠損しているか、又は、MHCクラスIIタンパク質(若しくは、MHCクラスIIトランス活性化因子)を更に欠損しているか、又は、これら両方を欠損している。
【0220】
ある特定の実施形態では、修飾細胞は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、又はこれらの任意の組み合わせを含む、MHCクラスIタンパク質を更に欠損している。ある特定の実施形態では、修飾細胞は、HLA-AとHLA-Bの両方を欠損している。
【0221】
ヒト白血球抗原(HLA)は、「非自己」抗原に対して、「自己」抗原を認識する免疫系に対する主要マーカーの1つである(Hudson et al.,Leukocyte Ig-like receptors-a model for MHC class I disease associations.Front Immunol(2016)7:281.doi:10.3389/fimmu.2016.00281)。HLAクラスI分子は、同種異系移植の間に、宿主対移植片病(HVGD)を誘発する主要抗原である。同種異系細胞上のHLAクラスI分子を組換えるか、又はノックダウンすることによって、同種異系細胞の免疫原性を低減することができる。例えば、それらの開示全体が本明細書に組み込まれている、WO2021050601、WO2021062227、WO2021011919を参照されたい。
【0222】
MHCクラスI分子は、高度可変α鎖及び定常β鎖で構成されるヘテロ二量体であり、定常β鎖は、βマイクログロブリン(B2M)とも呼ばれる。MHCクラスI分子のα鎖及びβ鎖は、アセンブリのために、細胞内の抗原ペプチドに結合して集合し、集合したHLA抗原ペプチド複合体は、細胞表面上に輸送される。MHCクラスI分子にロードされた抗原ペプチドは、サイトゾル内で生成され、抗原処理と関連するトランスポーター(TAP)によって小胞体(ER)に輸送される(Michalek et al.,(1993)A role for the ubiquitin-dependent proteolytic pathway in MHC class I-restricted antigen presentation.Nature 363(6429):552~554)。ER内で、抗原ペプチドは、アミノペプチダーゼERAP1及びERAP2によって、更にトリミングすることができる(Saveanu et al.,(2005) Concerted peptide trimming by human ERAP1 and ERAP2 aminopeptidase complexes in the endoplasmic reticulum.Nat Immunol 6(7):689~697.)。したがって、MHCクラスI分子のα鎖若しくはβ鎖、又は、MHCの、ペプチドへの集合に関与するタンパク質(例えば、TAPタンパク質)の欠損は、MHCクラスI分子の、抗原ペプチドへのアセンブリ、及び、その細胞表面発現に悪影響を及ぼす。加えて、タパシンなどの抗原処理機構(APM)のタンパク質の調節異常は、MHCクラスI細胞表面発現量の低下もまたもたらす(Camilla et al.,HLA class I is most tightly linked to levels of tapasin compared with other antigen-processing proteins in glioblastoma.British Journal of Cancer(2015)113,952~962)。
【0223】
任意の好適な方法を用いて、例えば、遺伝子編集により、MHCクラスIタンパク質の発現を干渉することにより、又は、MHCクラスIタンパク質若しくはそのコードmRNAの分解を促進することにより、細胞をMHCクラスIタンパク質欠損型にすることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、MHCクラスIタンパク質又はB2Mのゲノム領域内のコード配列又は調節配列内に第2の変異を含み、この変異(例えば、欠失、置換、挿入)は、MHCクラスIタンパク質又はB2Mの発現又は活性を低下させる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、MHCクラスI又はB2MのmRNAを標的とし、これにより、MHCクラスIタンパク質又はB2Mにおける発現を低下させる、第2の干渉オリゴヌクレオチドを含む。
【0224】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、又はこれらの任意の組み合わせを含むMHCクラスIIタンパク質を更に欠損している。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、CIITAであるMHCクラスIIトランス活性化因子を欠損している。
【0225】
任意の好適な方法を用いて、例えば、遺伝子編集により、MHCクラスIIタンパク質の発現を干渉することにより、又は、MHCクラスIIタンパク質若しくはそのコードmRNAの分解を促進することにより、細胞をMHCクラスIIタンパク質欠損型にすることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、MHCクラスIIタンパク質又はMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列又は調節配列内の第3の変異を含み、この変異(例えば、欠失、置換、挿入)は、MHCクラスIIタンパク質又はMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の発現又は活性を低下させる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、MHCクラスIIタンパク質又はMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のmRNAを標的とする第3の干渉オリゴヌクレオチドを含み、これにより、MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の、中での発現を低下させる。
【0226】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞、修飾T細胞)は、内因性T細胞受容体を更に欠損している。
【0227】
「内因性T細胞受容体を欠損している」とは、修飾細胞(例えば、修飾T細胞)に存在する内因性TCRのレベル、又は内因性TCR分子の数が、高用量(例えば、免疫原の投与を受ける対象において、T細胞の上述の機能を誘発するための飽和付近の用量)の免疫原においてさえも、T細胞の機能(例えば、増殖する、サイトカインを産生する、及び/又は溶解作用を誘発するなど)を誘発しないか、又はは機能の10%未満しか誘発しないことを意味する。T細胞に存在するTCRのレベル、又はTCR分子の数を、例えば、Davis et al.,(1998).Determination of CD4 antigen density on cells:role of antibody valency,avidity,clones,and conjugation.Cytometry 33,197~205;Labrecque et al.,How much TCR does a T cell need? Immunity.2001;15:71~82 and James et al.,Mathematical modeling of chimeric TCR triggering predicts the magnitude of target lysis and its impairment by TCR downmodulation.Journal of Immunology.2010;184:4284-94;Wei et al.,(1999).Mapping the sensitivity of T cells with an optical trap:polarity and minimal number of receptors for Ca(2+)signaling.Proc.Natl.Acad.Sci.96,8471~8476.に記載のとおりに、定量フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及び光学トラップなどの方法によって測定することができる。例えば、マウスでの高用量免疫原にて、インビボでの免疫付与にT細胞が応答するには、約1000個以下(例えば、200~400、450個)の表面TCR分子が必要であることが、研究により示されている(Labrecque et al.,How much TCR does a T cell need?Immunity.2001;15:71~82;Wei et al.,(1999).Mapping the sensitivity of T cells with an optical trap:polarity and minimal number of receptors for Ca(2+)signaling.Proc.Natl.Acad.Sci.96,8471~8476)。
【0228】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞、修飾T細胞)は、T細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)、T細胞受容体β定常1(TRBC1)、T細胞受容体β定常2(TRBC2)、又はこれらの任意の組み合わせを更に欠損している。
【0229】
任意の好適な方法を用いて、例えば、遺伝子編集により、内因性TCRの発現を干渉することにより、又は、内因性TCR若しくはそのコードmRNAの分解を促進することにより、細胞を内因性TCR欠損型とすることができる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2、又はこれらの任意の組み合わせのゲノム領域内の、コード配列又は調節配列内に第4の変異を含み、この変異(例えば、欠失、置換、挿入)は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2、又はこれらの任意の組み合わせの発現又は活性を低下させる。ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2、又はこれらの任意の組み合わせのmRNAを標的とする第4の干渉オリゴヌクレオチドを含むことにより、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2、又はこれらの任意の組み合わせの、中での発現の低下を引き起こす。
【0230】
ある特定の実施形態では、第2の変異、若しくは第3の変異、若しくは第4の変異、又はこれらの任意の組み合わせは、限定されるものではないが、例えば遺伝子編集により、当該技術分野において周知の任意の好適な手段により導入される。好適な方法を、本開示の以下のセクションでより詳細に記載する。
【0231】
v)修飾細胞内での修飾の組み合わせ
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する修飾細胞、又はその集団は、分子の組み合わせ、例えば、内因性免疫阻害チェックポイント分子とMHCクラスIタンパク質の組み合わせ;又は、内因性免疫阻害チェックポイント分子とMHCクラスIIタンパク質(若しくは、MHCクラスIIトランス活性化因子)の組み合わせ;又は、内因性免疫阻害チェックポイント分子と、MHCクラスIタンパク質と、MHCクラスIIタンパク質(若しくは、MHCクラスIIトランス活性化因子)の組み合わせを欠損するように修飾される。ある特定の実施形態では、修飾細胞がT細胞である場合、それらは、内因T細胞受容体を欠損するように更に修飾される。
【0232】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、欠損した免疫阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように、更に組換えられる。
【0233】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A及びHLA-Bを欠損している。
【0234】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A、HLA-B、及びCIITAを欠損している。
【0235】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、B2M、CIITA、及びPD-1を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、PD-L1又はPD-L2を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、PD-L1は、本明細書で提供するPD-L1変異体である。ある特定の実施形態では、PD-L2は、PD-L2変異体である。
【0236】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、B2M、CIITA、及びTIM-3を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、TIM3のリガンド(例えば、ガレクチン9)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、TIM3 9のリガンド(例えば、ガレクチン9)は、自然リガンド(例えば、自然ガレクチン9)と比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0237】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、B2M、CIITA、及びLAG-3を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、LAG3のリガンド(例えば、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、又はMHCII)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、LAG3のリガンドは、LAG3の自然リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0238】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、B2M、CIITA、及びTIGITを欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、TIGITのリガンド(例えば、CD155、CD112、又はCD113)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、TIGITのリガンドは、TIGITの自然リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0239】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、PD-L1又はPD-L2を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、PD-L1は、本明細書で提供するPD-L1変異体である。ある特定の実施形態では、PD-L2は、PD-L2変異体である。
【0240】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びTIM3を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、TIM3 9のリガンド(例えば、ガレクチン9)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、TIM3 9のリガンド(例えば、ガレクチン9)は、自然リガンド(例えば、自然ガレクチン9)と比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0241】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びLAG3を欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、LAG3のリガンド(例えば、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、又はMHCII)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、LAG3のリガンドは、LAG3の自然リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0242】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びTIGITを欠損している。ある特定のこれらの実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、未修飾の対応する細胞と比較して、TIGITのリガンド(例えば、CD155、CD112、又はCD113)を発現するように、更に組換えられている。ある特定の実施形態では、TIGITのリガンドは、TIGITの自然リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達が低下した変異体である。
【0243】
ある特定の実施形態では、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又はその集団は、対象となるポリペプチド(例えば、CAR若しくは組換えTCR、又は他の細胞表面受容体若しくはリガンド)を発現するように、更に組換えられている。
【0244】
修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の産生方法
出発細胞を提供することと、出発細胞を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低減し、内因性阻害チェックポイント分子のリガンドの発現又は活性を増大させることにより、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)を得ることと、を含む、上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の産生方法もまた、本明細書で提供する。内因性阻害チェックポイント分子及びそのリガンドは、上記セクションで記載したものと同じであってもよい。ある特定の実施形態では、出発細胞は、免疫細胞、例えば、内因性阻害チェックポイント分子を発現する免疫細胞である。ある特定の実施形態では、出発細胞は、免疫細胞、例えば、内因性阻害チェックポイント分子と、内因性阻害チェックポイント分子に対するリガンドの両方を発現する免疫細胞である。
【0245】
内因性阻害チェックポイント分子、及び、内因性阻害チェックポイント分子を発現する出発細胞(例えば、免疫細胞)を提供することと、出発細胞(例えば、免疫細胞)を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させることにより、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)を得ることと、を含む、上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の産生方法もまた、本明細書で提供する。内因性阻害チェックポイント分子及びそのリガンドは、上記セクションで記載したものと同じであってもよい。
【0246】
内因性阻害チェックポイント分子を欠損する出発細胞(例えば、免疫細胞)を提供することと、出発細胞(例えば、免疫細胞)を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子に対するリガンドの発現又は活性を増大させることにより、修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)を得ることと、を含む、上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の産生方法もまた、本明細書で提供する。内因性阻害チェックポイント分子及びそのリガンドは、上記セクションで記載したものと同じであってもよい。
【0247】
出発細胞を提供することと、出発細胞を修飾して阻害チェックポイント分子のリガンドを発現させることであって、リガンドは、同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している同族リガンドの変異体である、発現させることと、を含む、上述した修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)の産生方法もまた、本明細書で提供する。同族リガンドの変異体は、上記セクションで記載したものと同じであってもよい。
【0248】
ある特定の実施形態では、出発細胞(例えば、免疫細胞)を修飾して、内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低減させるステップは、a)出発細胞に、阻害チェックポイント分子のゲノム領域内のコード配列又は調節配列に対する第1の変異を導入することにより、阻害チェックポイント分子が、出発細胞内で発現の低下若しくは活性の低下を引き起こすようにすること、又は、b)出発細胞(例えば、免疫細胞)に、阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする第1の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、阻害チェックポイント分子が、出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにすること、又は、c)出発細胞(例えば、免疫細胞)に、阻害チェックポイント分子の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を導入すること、又は、d)出発細胞(例えば、免疫細胞)を、阻害チェックポイント分子の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子と接触させること、を含む。
【0249】
ある特定の実施形態では、方法は、a)出発細胞、若しくは、出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIタンパク質(例えば、HLA-A、HLA-B、若しくはB2M)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列に対する第2の変異を導入することにより、MHCクラスIタンパク質が、出発細胞内で発現の低下又は活性の低下を引き起こすようにするステップ、又は、b)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIタンパク質(例えば、HLA-A、HLA-B、若しくはB2M)のmRNAを標的とする第2の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、MHCクラスIタンパク質が、出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにするステップ、又は、c)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIタンパク質(例えば、HLA-A、HLA-B、若しくはB2M)の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を導入するステップ、又は、d)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞を、MHCクラスIタンパク質の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子と接触させるステップ、を含む、出発細胞(例えば、免疫細胞)、又は、出発細胞から修飾された細胞を修飾して、MHCクラスIタンパク質の発現又は活性を低下させるステップを更に含むことができる。
【0250】
ある特定の実施形態では、方法は、a)出発細胞、若しくは、出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIIタンパク質(又は、MHCクラスIIトランス活性化因子、例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列に対する第3の変異を導入することにより、MHCクラスIIタンパク質が、出発細胞内で発現の低下又は活性の低下を引き起こすようにするステップ、又は、b)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIIタンパク質(又は、MHCクラスIIトランス活性化因子、例えば、CIITA)のmRNAを標的とする第2の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、MHCクラスIIタンパク質が、出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにするステップ、又は、c)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、MHCクラスIIタンパク質(例えば、CIITA)の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を導入するステップ、又は、d)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞を、MHCクラスIIタンパク質の発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子と接触させるステップ、を含む、出発細胞(例えば、免疫細胞)、又は、出発細胞から修飾された細胞を修飾して、MHCクラスIIタンパク質の発現又は活性を低下させるステップを更に含むことができる。
【0251】
ある特定の実施形態では、方法は、a)出発細胞、若しくは、出発細胞から修飾した細胞に、内因性TCR(例えば、TRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列に対する第4の変異を導入することにより、内因性TCRが、出発細胞内で発現の低下又は活性の低下を引き起こすようにするステップ、又は、b)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、内因性TCR(例えば、TRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2)のmRNAを標的とする第3の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、内因性TCRが、出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにするステップ、又は、c)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞に、内因性TCRの発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を導入するステップ、又は、d)出発細胞(例えば、免疫細胞)、若しくは出発細胞から修飾した細胞を、内因性TCRの発現及び/若しくは活性を阻害するタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子と接触させるステップ、を含む、出発細胞(例えば、免疫細胞)、又は、出発細胞から修飾された細胞を修飾して、内因性TCRの発現又は活性を低下させるステップを更に含むことができる。
【0252】
ある特定の実施形態では、第1の変異、第2の変異、第3の変異、及び/又は第4の変異は、遺伝子編集により導入される。多くの、核酸ベースの組成物及び方法は、例えば、アンチセンスRNA、アンタゴミールRNA、siRNA、shRNA、及びCRISPRシステムなどの、遺伝子編集に対して有用である。
【0253】
ある特定の実施形態では、遺伝子編集は、免疫細胞に、i)配列標的化タンパク質、又は、配列標的化タンパク質をコードするポリヌクレオチド、並びに、ii)コード配列内の標的配列、又は、阻害チェックポイント分子(例えば、阻害チェックポイント分子、MHCクラスIタンパク質、及び/若しくはMHCクラスIIタンパク質、若しくは内因性TCR)のゲノム領域内の調節配列に相補的なオリゴヌクレオチドを導入することを含む。ある特定の実施形態では、配列標的化タンパク質は、Cas9、T7、Cas3、Cas8a、Cas8b、Cas10d、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Cas10、Csm2、Cmr5、及びFok1などの、配列ガイドDNAエンドヌクレアーゼを含む。
【0254】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ガイド核酸を含む。ガイド核酸配列は、RNA配列、DNA配列、これらの組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)、又は、合成ヌクレオチドを含む配列を含む。ガイド核酸配列は、単一分子、又は二重分子であってもよい。一実施形態では、ガイド核酸配列は、シングルガイドRNAを含む。一実施形態では、ガイド核酸配列は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又はそれ以上のヌクレオチド長である。
【0255】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、a)MHCクラスIタンパク質(例えば、HLA-A、HLA-B、若しくはB2M)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列、b)MHCクラスIIタンパク質(若しくは、MHCクラスIIトランス活性化因子、例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列、c)阻害チェックポイント分子(例えば、PD-1、TIM3、LAG3、若しくはTIGIT)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列、又は、d)内因性TCR(例えば、TRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列、を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含む。
【0256】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、HLA-Aのゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号63又は64の断片に相補的である。
【0257】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、HLA-Bのゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号65又は66の断片に相補的である。
【0258】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、B2Mのゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号67の断片に相補的である。
【0259】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、CIITAのゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号68の断片に相補的である。
【0260】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、PD-1のゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号69の断片に相補的である。
【0261】
ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、TRACのゲノム領域を標的とする1つ以上のガイド核酸(例えば、ガイドRNA)を含み、配列番号70の断片に相補的である。
【0262】
ある特定の実施形態では、出発細胞(例えば、免疫細胞)を修飾して、阻害チェックポイント分子のリガンドの発現又は活性を増大させるステップは、a)出発細胞(例えば、免疫細胞)に、リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することにより、出発細胞からのリガンドの発現を引き起こすこと、b)1つ以上の抑制転写因子をノックアウト若しくはノックダウンすること、c)リガンドをコードする遺伝子の発現のために、1つ以上の調節配列を編集すること、又は、d)リガンドをコードする遺伝子をノックインすること、を含む。例えば、Keisuke et al.は、PD-L1転写物の3’-未翻訳(3’-UTR)の切断が、様々な癌におけるPD-L1の発現増加に繋がることを見出した(Keisuke et al.Aberrant PD-L1 expression through 3’-UTR disruption in multiple cancers.Nature.2016 Jun 16;534(7607):402-6.)。したがって、PD-L1転写物の3’UTR領域において切断を含む修飾免疫細胞は、PD-L1の発現増加をもたらすと予想することができる。PD-L1転写物の3’-UTR領域の破壊方法は、例えば、Keisuke et al.Aberrant PD-L1 expression through 3’-UTR disruption in multiple cancers.Nature.2016 Jun 16;534(7607):402-6に見出すことができる。
【0263】
ある特定の実施形態では、出発細胞(例えば、免疫細胞)を修飾して、同族リガンドの変異体を発現させる方法は、a)出発細胞(例えば、免疫細胞)に、変異体に対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することにより、由来する変異体の発現を引き起こすこと、又は、b)変異体をコードする遺伝子をノックインすること、を含む。
【0264】
ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対する、又は、リガンドの変異体に対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。
【0265】
ある特定の実施形態では、リガンドに対する、又は、リガンドの変異体に対するコード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含む。
【0266】
ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、リガンドに対するコード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含む。
【0267】
ある特定の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA、発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、又はRNAベクターである。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、ウイルス発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。
【0268】
ある特定の実施形態では、出発細胞は自然細胞又は分化細胞である。ある特定の実施形態では、出発細胞は、自然細胞から遺伝子組換えされた、又は、分化細胞から遺伝子組換えされた、組換え細胞である。
【0269】
ある特定の実施形態では、分化細胞は、幹細胞から分化している。ある特定の実施形態では、幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である。幹細胞はまず、阻害チェックポイント分子のリガンドの発現又は活性を増大するように修飾することができ、続いて、内因性阻害チェックポイント分子での遺伝子編集により、内因性阻害チェックポイント分子、MHCクラスIタンパク質、及び/又はMHCクラスIIタンパク質、及び/又は内因性TCRの発現又は活性を低下させることができる。幹細胞を修飾又は組換えた後で、修飾又は組換え幹細胞を、適した条件下で分化させ、本開示の修飾細胞を得ることができる。組換えTCR又はCARを発現するように遺伝子組換えされた、分化した造血性リネージ細胞に対して、細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号に記載されている方法を用いて活性化し、増殖させることができる。ある特定の実施形態では、出発細胞及び/又は修飾細胞は、輸液前に、エクスビボで増殖する、及び/又は活性化させることができる。
【0270】
本明細書で提供する方法は、源から出発細胞を得ること、細胞を培養すること、細胞を活性化すること、及び細胞を増殖させることを更に含むことができる。
【0271】
本明細書で提供する方法は、当該技術分野において周知の様々な技術、例えば、フローサイトメトリーを用いて、出発細胞(例えば、免疫細胞)を単離するステップもまた伴うことができる。簡潔に述べると、出発細胞(例えば、免疫細胞)のマーカーに対する親和性を有する、蛍光標識された抗体を使用して、試料中の出発細胞を標識する。マーカーを発現する細胞に適したゲーティング戦略を使用して、細胞を分離する。例えば、CD4、CD8、CD28、及びCD45などの細胞マーカーに特異的な、蛍光標識抗体、並びに対応するゲーティング方法を使用することにより、T細胞を、試料中の他の細胞から分離することができる。ある特定の実施形態では、CD3を欠損するT細胞が分離されるか、又は濃縮される。
【0272】
ポリヌクレオチド及びベクター
好適な組換え技術を使用して、阻害チェックポイント分子に対するリガンドをコードする、又は、変異体リガンドをコードする、又は、PD-L1変異体をコードするなどの、本明細書で提供する核酸又はポリヌクレオチドを構築することができる。必要に応じて、1種以上のリンカーをコードするポリヌクレオチド配列もまた作動可能に連結され、所望の生成物の発現を可能にする。
【0273】
コードするポリヌクレオチド配列はmRNAであることができ、mRNAはインビトロ転写することができ、任意選択的に、脂質ナノ粒子などの好適な送達ビヒクルに封入することができる。
【0274】
コードポリヌクレオチド配列は、当該技術分野において周知の組換え技術を用いて、更なるクローニング(DNAの増幅)のために、又は発現のために、ベクターに挿入することができる。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成成分としては一般的に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、T7、T7lac、Sp6、araBAD、trp、lac、tac、pLm、A3、lac、lpp、npr、pac、syn、trc、及びT3などの原核細胞プロモーター、又は、SV40、CMV、及びEF-1αなどの真核細胞プロモーター)、並びに、転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0275】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する発現ベクターは、発現のための、十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞により提供されることができるか、又は、インビトロ発現系に提供されることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する発現ベクターは、例えば、核局在化、核小体局在化、又はミトコンドリア局在化のためのシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列もまた含む。
【0276】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する発現ベクターは、本開示のリガンドをコードするポリヌクレオチド、及び、1種以上のCAR又はTCRをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0277】
本明細書で提供する発現ベクターは、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)をコードするポリヌクレオチド、及び、1つ以上の核局在化配列、及び任意選択的に、1つ以上のデアミナーゼもまた含むことができる。
【0278】
本開示の発現ベクターは、任意の好適な数の制御/調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、内部リボソーム侵入部位(IRES)、又はペプチド2A(P2A)配列もまた含むことができる。これらのエレメントは、当該技術分野において周知である。
【0279】
発現ベクターは、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、又はRNAベクターからなる群から選択することができる。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、ウイルス発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。一般的に、ウイルスベクターは、少なくとも1つの生体において機能的な複製起点、プロモーター、制限エンドヌクレアーゼ部位、及び、1種以上の選択可能なマーカーを含む。
【0280】
本明細書で提供する発現ベクターは、レンチウイルスベクターであることができ、これは、CARをコードするポリヌクレオチドを、非増殖細胞のゲノムに長期的に安定して組み込むことで、宿主細胞、例えば、宿主T細胞においてCARの安定した発現をもたらすのに有利である。レンチウイルスは、有糸分裂、及び有糸分裂後細胞の両方において感染し、これらの遺伝子を発現可能な、複雑なレトロウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、最も一般的なレンチウイルスとして知られており、他のウイルスのエンベロープ糖タンパク質を用いて、広範囲の細胞型を標的とする。レンチウイルスの調製については、Gustabo et al.,Production and purification of lentiviral vectors.Nature Protocols volume 1,pages 241~245(2006)に記載されている。
【0281】
プラスミドベクター、ファージミドベクター、ファージ誘導体ベクター、コスミドベクター、トランスポゾンベクター、部分特異的挿入ベクター(例えば、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN)、インビトロ転写RNAベクター、及びスーサイド発現ベクターなどの、他の発現ベクターもまた、本開示の意図の範囲内である。
【0282】
本明細書で提供する発現ベクターを、当該技術分野において周知の様々な技術を用いて、例えば、物理的、化学的、又は生物学的手段により、宿主細胞に送達することができる。発現ベクターを宿主細胞に形質導入するための物理的方法としては、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、粒子衝突法、マイクロインジェクション、及び電気穿孔法が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的方法としては、遺伝子を宿主細胞に挿入するための、ウイルスベクター(特に、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。化学的手段としては、コロイド状分散体系(例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ)、並びに、脂質ベースの系(例えば、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソーム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0283】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、本明細書で提供する組換え細胞、本明細書で提供するタンパク質、又は、本明細書で提供するポリヌクレオチド、及び、薬学的に許容される媒体を含む医薬組成物もまた提供する。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、医薬品用途のために製剤化される組成物を意味する。
【0284】
「薬学的に許容される」という用語は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩が一般的に、化学的に、及び/又は、物理的に、配合物に含まれる他の成分と適合し、そのレシピエントと生理学的に適合することを示す。
【0285】
「薬学的に許容される媒体」とは、対象にとって許容される生体活性を有し、無毒である活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。本明細書で開示する医薬組成物で使用するための、薬学的に許容される媒体としては、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル、若しくは固体担体、水性若しくは非水性ビヒクル、抗菌剤、緩衝剤、酸化防止剤、等張剤、懸濁/分散剤、金属イオン封鎖若しくはキレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、若しくは無毒性補助物質、又は、これらの様々な組み合わせを挙げることができる。
【0286】
本開示の医薬組成物は、当該技術分野において周知の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(21st ed.2005)を参照されたい。簡潔に述べると、修飾細胞/組換え細胞、又はその集団を、使用又は保存前に、適した媒体と混合する。好適な、薬学的に許容される媒体は一般に、1)医薬組成物の、対象への投与、2)医薬組成物の、送達可能な調製物への加工、及び/又は、3)投与前の医薬組成物の保管に役立つ、不活性物質を含む。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される媒体は、製剤の形態、コンシステンシー、粘度、pH、薬物動態、及び/又は溶解度を、安定化させ、最適化させ、又は変化させることができる剤を含む。このような剤としては、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、希釈剤、カプセル化剤、及び皮膚浸透促進剤、例えば、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、アルギニン、スクロース、水、グリセロール、エタノール、ソルビトール、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0287】
例示的な、薬学的に許容される媒体としては、糖類(例えば、乳糖、グルコース、及びスクロース)、デンプン(例えば、コーンスターチ及びバレイショデンプン)、セルロース及びその誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、及び酢酸セルロース)、トラガント粉末、麦芽、ゼラチン、平滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルク)、賦形剤(例えば、カカオバター及び坐剤ワックス)、油類(例えば、ピーナッツオイル、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油)、グリコール類(例えば、プロピレングリコール)、ポリオール類(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール(PEG))、エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、発熱性物質除去水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、pH緩衝溶液、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ無水物、充填剤(例えば、ポリペプチド及びアミノ酸)、血清アルコール(例えば、エタノール)、(滅菌)リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、並びに、薬物製剤で用いられる他の無毒性で相溶性の物質が挙げられる。
【0288】
本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的又は生理学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載する修飾細胞を含むことができる。このような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などといった緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチド、又はグリシンなどのアミノ酸;酸化防止剤;EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び、防腐剤を含むことができる。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために製剤化される。
【0289】
キット
別の態様では、本開示は、自己抑制が低下した、エフェクター細胞機能が改善された、並びに、細胞活性化及び/又は増殖が改善された、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)、又は組換え細胞を含むキットもまた提供する。別の態様では、本開示は、本明細書で提供するタンパク質、自己抑制が低下した、エフェクター細胞機能が改善された、並びに、細胞活性化及び/又は増殖が改善された、CARを発現する、又はTCRを発現する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)又は組換え細胞の生成で使用するための、本明細書で提供するポリヌクレオチド又は発現ベクターを含むキットもまた提供する。
【0290】
いくつかの実施形態では、本開示のキットは、キットを使用するための、書面による取扱説明書を含む。ある特定の実施形態では、取扱説明書は、以下のうちの少なくとも1つ:臨床研究、注意事項、警告、及び/又は参考文献を含む。取扱説明書は、容器に直接印刷されるか(存在する場合)、又は、容器に貼り付けられるラベルとして、若しくは、別個のシート、パンフレット、若しくはフォルダとして、容器内に、又は容器と共に提供されるかの、いずれかであることができる。好適な容器としては、例えば、ボトル、シリンジ、バイアル、及び試験管が挙げられる。容器は、プラスチック又はガラスなどの様々な材料から形成することができる。ある特定の実施形態では、容器は、本明細書で提供する医薬組成物を保持し、滅菌したアクセスポートを有する。
【0291】
ある特定の実施形態では、キットは、上述した薬学的に許容される媒体を含む第2の容器を更に含む。ある特定の実施形態では、キットは、他の希釈剤、緩衝剤、針、フィルター、シリンジ、及び、使用のための取扱説明書を含む添付文書などの、商業的に望ましい、又はユーザーフレンドリーな他の材料を更に含む。
【0292】
治療方法
別の態様では、本開示は、必要とする対象における状態又は疾患の治療方法であって、上記対象に、治療有効量の、本明細書で提供する修飾細胞(例えば、修飾免疫細胞)を投与することを含む、方法を提供する。
【0293】
ある特定の実施形態では、対象は、癌、自己免疫疾患、感染症、加齢、代謝性疾患、及び心臓血管疾患から選択される疾患を有する。細胞療法は、癌を治療するために認可されており、多くの他の異なる状態及び疾患の治療において有用であることが見出されている。更なる詳細は、Chu E.T.et al.,Cells.2020 Mar;9(3):563;Rurik J.G.et al,CAR T cells produced in vivo to treat cardiac injury,Science 375,91~96(2022);Aghajanian H.et al.,Targeting cardiac fibrosis with engineered T cells,Nature,573,430~433(2019);Amor C.et al.,Senolytic CAR T cells reverse senescence-associated pathologies,Nature,583,127~132(2020);Wagner V.et al, T cells engineered to target senescence,Nature,583,37~38(2020),Nezhad,M.S et al,Chimeric Antigen Receptor Based Therapy as a Potential Approach in Autoimmune Diseases:How Close Are We to the Treatment? Front.Immunol.,26 November 2020,Stewart et al.,Infectious complications of CAR T-cell therapy: a clinical update,Ther Adv Infect Dis. 2021 Jan-Dec;8:20499361211036773などの出版物で確認されており、これら全体が、本明細書に組み込まれている。
【0294】
ある特定の実施形態では、癌は、血液学的癌又は充実性腫瘍である。
【0295】
ある特定の実施形態では、状態又は疾患は血液学的癌である。ある特定の実施形態では、血液学的癌はB細胞癌である。ある特定の実施形態では、血液学的癌は、白血病、骨髄腫、リンパ腫、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、血液学的癌は、T細胞急性リンパ性白血病、菌状息肉症、セザリー症候群、末梢性Tリンパ腫、NK/T細胞リンパ腫、未分化の大型細胞リンパ腫ALK+、原発性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、T細胞大型顆粒リンパ性白血病(T-LGLL)、血管免疫芽球性T/NK細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD30+リンパ増殖症候群、結節外NK/T細胞リンパ腫(ENKTL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、皮下脂肪層炎様T細胞リンパ腫(SPTCL)、原発性皮膚γδT細胞リンパ腫(PCGD-TCL)、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)、及び、腸疾患関連T細胞リンパ腫(EATL)からなる群から選択される。
【0296】
ある特定の実施形態では、状態又は疾患は、充実性腫瘍である。ある特定の実施形態では、充実性腫瘍は、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、膠腫及びリンパ腫、頭頸腫瘍、神経内分泌腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、胸腫瘍、肺腫瘍(小細胞及び非小細胞肺腫瘍など)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸腫瘍、腎臓腫瘍、脳腫瘍、肝臓腫瘍、カポジ肉腫、CNS腫瘍、神経芽細胞腫、毛細血管芽腫、髄膜腫、脳転移、黒色腫、胃腸及び腎臓癌/肉腫(例えば、胃癌)、横紋筋肉腫、グリア芽腫、好ましくは多形性膠芽腫、平滑筋肉腫、悪性ケラチノサイト(例えばヒト悪性ケラチノサイト)の増殖を抑圧することにより処置可能な扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、及び皮膚癌からなる群から選択される。
【0297】
ある特定の実施形態では、自己免疫疾患は、エリテマトーデス、関節リウマチ、及びGVHDからなる群から選択される。
【0298】
ある特定の実施形態では、感染症は、真菌感染症、寄生生物/原生動物感染症、マラリア、コクシジオイデス・イミチス、ヒストプラスマ症、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ・アルビカンス、パラコクシジオイオミセス症、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミイヤ(Cochliomyia)感染症、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、包虫症、象皮病、蟯虫症、肝蛭病、肥大吸虫症、フィラリア症、ランブル鞭毛虫症、顎口虫症、膜様条虫疾患、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、メタゴニムス症、蝿幼虫症、オンコセルカ症、シラミ症、SARS-CoV感染症、SARS-CoV-2感染症、疥癬、住血吸虫症、嗜眠性脳炎、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、鞭虫症、トリパノゾーマ症、蠕虫感染症、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バールウイルス、HIV-1、HIV-2、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、ヒトパピローマ・ウイルス、アデノウイルス、カポジウエスト肉腫関連ヘルペスウイルス流行病、薄型リングウイルス(Torquetenovirus)、ヒトTリンパ増殖性ウイルスI、ヒトTリンパ増殖性ウイルスII、水疱瘡帯状疱疹、JCウイルス及びBKウイルスの感染症からなる群から選択される。
【0299】
ある特定の実施形態では、レシピエントは、移植片対宿主拒絶反応(GVHD)を有するか、又はGVHDが進行する性質を有する。
【0300】
ある特定の実施形態では、レシピエントは腫瘍形成(例えば、白血病)を有するか、又は腫瘍形成(例えば、白血病)が進行する性質を有する。
【0301】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する方法は、対象に、1種以上の追加の修飾免疫細胞若しくはその集団、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体)、1種以上のサイトカイン(例えば、IL-2、IFN-α、IFN-γ、若しくはこれらの組み合わせ)、又は、1種以上の化学療法剤(例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、ベンダムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イブルチニブ、メトトレキサート、シタラビン、デキサメタゾン、シスプラチン、ボルテゾミブ、フルダラビン、イデラリシブ、アカラブルチニブ、レナリドマイド、ベネトクラクス、シクロホスファミド、イホスファミド、エトポシド、ペントスタチン、メルファラン、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、ダラツムマブ、エロツズマブ、サリドマイド、レナリドマイド、若しくはポマリドミド、若しくはこれらの組み合わせ)などの、1種以上の追加の治療剤を投与することを更に含む。上述した1種以上の追加の治療剤を、本明細書で提供する組換え細胞又は修飾細胞の投与前、投与と同時、又は投与後に、投与することができる。
【0302】
別の態様では、本開示は、対象に、治療有効量の、本明細書で提供する組換え細胞又は修飾細胞の移植組織を投与することにより、レシピエントの免疫反応を低減することを含む、細胞の移植に対するレシピエントの免疫反応を低減する方法もまた提供する。
【0303】
別の態様では、本開示は、免疫拒絶のリスクを下げて、細胞を対象に移植する方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で提供する組換え細胞の移植組織を、又は、本明細書で提供する修飾細胞を投与することを含み、組換え細胞又は修飾細胞は、対象に対して同種異系である、方法もまた提供する。
【0304】
いくつかの実施形態では、レシピエントに投与される本開示の修飾細胞又は組換え細胞は、インビボで増殖し、長期間にわたり、対象に留まることができる。修飾細胞が修飾免疫細胞である場合、修飾免疫細胞は、メモリー免疫細胞に成熟し、レシピエント内で循環して留まり、その後、修飾免疫細胞のCARにより認識されるマーカーを発現する、病気の、又は異常な細胞の再発に積極的に応答可能な細胞集団を生成することができる。
【0305】
ある特定の実施形態では、レシピエントには、少なくとも1×104個の細胞、少なくとも5×104個の細胞、少なくとも1×105個の細胞、少なくとも5×105個の細胞、少なくとも1×106個の細胞、少なくとも5×106個の細胞、少なくとも1×107個の細胞、少なくとも5×107個の細胞、少なくとも1×108個の細胞、少なくとも5×108個の細胞、少なくとも1×109個の細胞、少なくとも2×109個の細胞、少なくとも3×109個の細胞、少なくとも4×109個の細胞、少なくとも5×109個の細胞、又は、少なくとも1×1010個の細胞が投与される。ある特定の実施形態では、レシピエントには、少なくとも1×103個の細胞/体重1kg、少なくとも5×103個の細胞/体重1kg、少なくとも1×104個の細胞/体重1kg、少なくとも5×104個の細胞/体重1kg、少なくとも1×105個の細胞/体重1kg、少なくとも5×105個の細胞/体重1kg、少なくとも1×106個の細胞/体重1kg、少なくとも5×106個の細胞/体重1kg、少なくとも1×107個の細胞/体重1kg、少なくとも5×107個の細胞/体重1kg、少なくとも1×108個の細胞/体重1kg、少なくとも2×108個の細胞/体重1kg、少なくとも3×108個の細胞/体重1kg、少なくとも4×108個の細胞/体重1kg、少なくとも5×108個の細胞/体重1kg、又は、少なくとも6×108個の細胞/体重1kgが投与される。
【0306】
本明細書で提供する医薬組成物の用量は、サイズ、年齢、性別、体重、及び状態などの、レシピエントの各種因子に基づいて決定可能であることを、当業者は理解するであろう。用量は、本開示、及び、当該技術分野における知識から、当業者によって容易に決定することができる。
【0307】
同業者は容易に、修飾/組換え細胞の数、並びに、組成物における、及び、本開示の方法で投与可能な、任意の添加剤、ビヒクル、媒体、及び/又は担体の量を決定することができる。典型的には、添加剤は、存在する場合、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001~50%(重量)溶液の量で存在し、活性成分(例えば、本明細書で提供する修飾/組換え細胞)は、マイクログラム~ミリグラムのオーダー、例えば、約0.0001~約5重量%、好ましくは約0.0001~約1重量%、更により好ましくは約0.0001~約0.05重量%又は約0.001~約20重量%、好ましくは約0.01~約10重量%、及び更により好ましくは、約0.05~約5重量%で存在する。
【0308】
適した動物モデル(例えば、マウス)において、例えば、致死量(LD)及びLD50を測定することにより、ある特定の用量における毒性を測定するのが好ましいであろう。好適な応答を誘発する、組成物の投与タイミングを決定することもまた、好ましいであろう。このような測定には、当業者及び本開示の知識からの、過度な実験を必要としない。
【0309】
本明細書で提供する医薬組成物の投与は、注入、輸液、又は非経口投与を含むが、これらに限定されない、様々な従来技術を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、非経口投与は、血管内、腫瘍内、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、経気管内、髄腔内、腹腔内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、及び胸骨内輸液又は注入を含む。
【0310】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物は、疾患部位(例えば、腫瘍部位)に局所投与される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物は、対象に、注射により、カテーテルにより、座薬により、又は、(例えば、多孔性、非多孔性、若しくはゼラチン状材料、例えば、シアラスティック膜などの膜の)インプラントにより投与される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物は、制御放出系で送達される。
【0311】
本明細書で提供する治療方法は、ヒト対象が、本明細書で提供する医薬組成物で治療されていない場合に予想される、レシピエント(例えば、ヒト対象)の生存時間と比較して、レシピエント(例えば、ヒト対象)の生存時間の増大をもたらす。別の実施形態では、ヒト対象の生存時間の増大は、少なくとも30日である。ヒト対象の生存時間の増大は、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年であってもよい。ある特定の実施形態では、レシピエント(例えば、ヒト対象)は、疾患及び/又は状態(例えば、癌)の、1回以上の他の治療に対して、不耐性及び/又は不応性である。ある特定の実施形態では、レシピエント(例えば、ヒト対象)は、本開示の治療方法の前に、疾患及び/又は状態(例えば、癌)の治療及び/又は治療法が、少なくとも1回は失敗に終わっていた。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する方法の治療を受けることができるレシピエント(例えば、ヒト対象)は、子ども(例えば、0~18歳)、又は、成人(例えば、18歳以上)である。
【0312】
ある特定の実施形態では、本開示の治療方法は、CARを発現する修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)の使用に関する。CARは特異的に、宿主の望ましくない細胞(例えば、癌細胞)に存在する抗原標的に向けることができる。ある特定の実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は、その標的に対する細胞毒性応答が増強されている。ある特定の実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は、参照細胞(例えば、自然T細胞)と比較して、その標的に対する、増強された細胞毒性応答を誘発する。
【0313】
ある特定の実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は、参照細胞(例えば、自然T細胞)と比較して、少なくとも1.2倍、1.4倍、1.6倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍又はそれ以上の強化された細胞毒性応答を示す。
【0314】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は、参照細胞(例えば、自然T細胞)よりも、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、又は少なくとも2000%以上の標的細胞を殺傷することができる。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は同種異系宿主に投与され、修飾免疫細胞(例えば、修飾T細胞)は、宿主による拒絶が軽減しているか、又は、拒絶がない(若しくは、無視できるか、若しくは最小限である)。
【実施例】
【0315】
本開示は、特定の実施形態(そのいくつかは、好ましい実施形態である)を参照して具体的に図示及び説明されているものの、本明細書で開示する本開示の精神と範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に様々な変化を加えることができることが、当業者によって理解されなければならない。
【0316】
実施例1:sgRNA設計
それぞれ、HLA-A、HLA-B、TRAC、CIITA、及びPD-1を標的とするsgRNA配列を、全エクソンスケール(https://portals.broadinstitute.org/gpp/public/analysis-tools/sgrna-design)にて、GPP sgRNA Designer(Broad Institute、USAのオンラインデザインツール)を用いて、ゲノム配列に基づき設計した。「CRISPRko」、「SpyoCas9 NGG」、及び「Human GRCh38」を含むツールを選択し、これらの遺伝子に対する、可能性のあるsgRNAを全て生成し(表1~表4)、各遺伝子の上位10種類のsgRNAを、優先順位に従い、好ましい配列として選択した。
【0317】
標的遺伝子配列における「NGG」の特徴に従い、それぞれ、HLA-A及びHLA-B遺伝子(表1)、CIITA(表2)、並びに、TRAC(表3)の上流及び下流配列中の標的DNA配列を標的とするように、複数のセットのsgRNA配列を設計した。下表1は、sgRNAにより標的とされる、HLA-A(「AU」と名付ける)の上流の、HLA-A(「AD」と名付ける)の下流の、HLA-B(「BU」と名付ける)の上流の、及び、HLA-B(「BD」と名付ける)の下流の、標的DNA配列を一覧に示す。
【0318】
表1 標的遺伝子(HLA-A及びHLA-B)、並びに、標的DNA配列
【表1】
【0319】
表2 標的遺伝子(CIITA)及び標的DNA配列
【表2】
【0320】
表3 標的化遺伝子(TRAC)及び標的DNA配列
【表3】
【0321】
表4 標的化遺伝子(PD-1)及び標的DNA配列
【表4】
【0322】
表A 標的化遺伝子(B2M)及び標的DNA配列
【表5】
【0323】
上記表1~表4に列挙する標的DNA配列に基づき、sgRNA配列を設計し、以下のとおりに合成した。本出願の各sgRNAは、5’標的化断片及び3’Cas結合断片で構成される。5’標的化断片は、ゲノム内の標的部位に相補的であり、チミン(T)が全て、ウラシル(U)で置き換えられていることを除いて、PAM配列NGGの上流の20ヌクレオチド配列(即ち、上記表1~表4、及び表Aにおける標的DNA配列)と同一である。3’Cas結合断片は、コンセンサスモチーフであり、以下のとおりのヌクレオチド配列を有する:
GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号59)。
【0324】
PD-1を標的とするsgRNAを例に取ると、5’標的DNA配列は、TのUへの置換を除いて、CGACTGGCCAGGGCGCCTGT(配列番号60)の配列を有し、これは、3’末端で、配列番号59のコンセンサスモチーフに連結する。PD-1を標的とする完全sgRNA配列(5’ー3’)を、以下に示す:
CGACUGGCCAGGGCGCCUGUGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号61)。
【0325】
本実施例の各sgRNAは化学修飾されており、具体的な修飾としては、5’末端の最初の3つのヌクレオチド、加えて、sgRNAの3’末端の、2番目、3番目、及び4番目のヌクレオチドにおける、ホスホロチオエート間結合、及び、2’-O-メチル(2-OMe修飾)リボース糖修飾が挙げられたことに留意すべきである。最終的な化学修飾sgRNA配列を以下に記載し、配列中、修飾ヌクレオチドは太字かつ斜体字フォーマットであり、アスタリスク記号(*)を付している:
C*G*A*CUGGCCAGGGCGCCUGUGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU*U*U*U(配列番号62)
【0326】
別途記載のない限り、(表1~表4における)標的DNA配列から転換されたsgRNA配列は全て、上記規則により合成され、sgRNAは化学合成により調製される。
【0327】
実施例2.キメラ抗原受容体(CAR)発現ベクターの構築
本実施例は、P2Aにより切断型PD-L1(配列番号19)に連結したCARを発現するCAR発現カセットを含む、発現ベクターの構築物(
図1A)について示す。
【0328】
CARは、抗体FMC63(CD19-scFv)に由来する抗CD19一本鎖Fv(scFv)、続いて、CD8a膜貫通領域(CD8aTM)、4-1BB、及びCD3ζを含有する。
【0329】
野生型PD-L1(1~290、配列番号12)と比較して、切断型PD-L1(本明細書では、TrPD-L1と略す)は、C末端の位置260~290の配列を欠いている。
【0330】
CAR発現カセットを構築するために、以下のエレメントをコードするDNA配列を合成し、5’から3’の順にライゲーションした:シグナルペプチド(アミノ酸配列配列番号21)、CD19抗体FMC63(アミノ酸配列配列番号22)の軽鎖可変領域、リンカー(アミノ酸配列配列番号23)、CD19抗体FMC63(アミノ酸配列配列番号24)の重鎖可変領域、ヒンジ領域(アミノ酸配列配列番号25)、CD8α膜貫通ドメイン(TM)(アミノ酸配列配列番号26)、4-1BB共刺激シグナル領域(アミノ酸配列配列番号27)、CD3ζシグナル形質導入ドメイン(アミノ酸配列配列番号28)、P2A(アミノ酸配列配列番号16)、及び、切断型PD-L1(TrPD-L1)(アミノ酸配列配列番号8)。得られる発現カセットは、配列番号19の完全長アミノ酸配列を有する融合タンパク質CD19 CAR-P2A-TrPD-L1をコードし、ポリヌクレオチド配列を、配列番号20に示す。
【0331】
上述したCD19 CAR-P2A-TrPD-L1発現カセット内のTrPD-L1配列を、野生型PD-L1配列で置き換え、対照CD19 CAR-P2A-wtPD-L1発現カセットを作製することにより、対照CAR発現カセットもまた構築した。
【0332】
上述した、CD19 CAR-P2A-TrPD-L1発現カセット又はCD19 CAR-P2A-wtPD-L1対照発現カセットを、それぞれ、pELPSレンチウイルスベクター(Kingsley Biotechnologyから購入)の、5及び3末端LTR配列の間に組み込み(
図1B)、CAR発現マスタープラスミドCD19DL1-01、又は対照プラスミドCD19wtL1を構築し、これをその後、供給元により提供される取扱説明書に従い、レンチウイルス内にパッケージングした。
【0333】
実施例3.レンチウイルスのパッケージング及び検出
CD19DL1-01プラスミドを、レンチウイルスパッケージングプラスミドPMDLG/PRRE、PRSV/rev(Wuxi Shengji Medical Technology Co.,Ltd.から購入)、及び、レンチウイルスエンベローププラスミドpMD2.G(Wuxi Shengji Medical Technology Co.,Ltd.)と共に、トランスフェクション試薬PEI(ポリエーテルイミド、Polysciences,Incから購入)を用いて、293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた293T細胞を培養し、培養液の上清を回収し、限外ろ過及び超遠心分離によって濃縮して、CD19 CAR-P2A-TrPD-L1を発現させるためのレンチウイルスを得た。
【0334】
ウイルス力価は、フローサイトメトリーにより検出した。具体的には、CD19 CAR-P2A-TrPD-L1を発現させるためのレンチウイルス溶液を100倍希釈し、1μL/ウェル、10μL/ウェル、20μL/ウェル、30μL/ウェル、又は50μL/ウェルで、24ウェルプレートで8時間培養した293T細胞に添加した。24時間後、ウイルス感染した293T細胞を遠心分離にかけ、再懸濁して、1×106/mLの細胞密度に調整し、続けて、1μg/mLの終濃度のビオチン-CD19抗原を添加した後、二次抗体APC-ストレプトアビジン(BDから購入)でインキュベートし、その後、フローサイトメトリーにより、293T細胞でのCD19 CARの発現を検出した。
【0335】
本実施例のウイルスパッケージング系により調製されたウイルス溶液は、293T細胞の感染に成功し、良好な感染能力を有することを、実験結果(
図2)は示した。CD19 CARは、ウイルスがトランスフェクトされた293T細胞でもまた発現し、CD19抗原を認識可能であった。ウイルス力価が2.79×10
8TU/mL(形質導入単位/mL)であったことを、計算結果は示す。
【0336】
同様の方法で、実施例2で調製した対照プラスミドCD19wtL1を用いて、レンチウイルスのパッケージングを行い、CD19 CAR-P2A-wtPD-L1を発現させるための対照ウイルスを得て、試験した。対照ウイルスもまた、293T細胞においてCD19 CARの発現を誘発可能であることを、結果は示した(データは図示せず)。
【0337】
実施例4.T細胞の単離及び活性化
PBMC細胞を液体窒素タンクから取り出して回収し、計数した。PBMC細胞の総量を、細胞計数に従い計算した。インキュベーション系もまた調製した。CD4及びCD8磁気選別ビーズを、選別のために添加した。最後に、選別したT細胞の総量に従い、IL-2及び10% FBSを含有するx-vivo培養培地を添加した。T細胞TransAct磁気ビーズを添加した。混合後、これらを37℃、5% CO2インキュベーターに配置し、活性化して2日間培養した。
【0338】
実施例5.活性化T細胞のウイルストランスフェクション
CD19ーCAR、及び切断型PD-L1 TrPD-L1を発現するT細胞を調製するために、実施例4に従い、(活性化の48時間後に)T細胞を活性化し、1×10
6/mLの密度に調節し、続けて、実施例3から得られたCD19 CAR-P2A-TrPD-L1レンチウイルスで、15の感染多重度(MOI)にてトランスフェクトした。ウイルス感染の24時間後に細胞を収集し、CD19-CAR及び切断型PD-L1(TrPD-L1)の発現を、フローサイトメトリーにより検出した。結果は、CD19-CAR(
図3Aを参照)及び切断型PD-L1(TrPD-L1)(
図3Bを参照)は両方とも、感染したT細胞により高度に発現することができ、2つの割合は同期していた(CD19-CAR及びTrPD-L1の、正の発現割合はそれぞれ、37.42%及び41.49%であった)ことを示し、このことは、用いた遺伝子過剰発現系が効率的であり、安定しており、一貫性があることを示している。CD19-CAR及び切断型PD-L1(TrPD-L1)を発現する、得られたT細胞は、本出願では、TrPDL1-CART細胞とも呼ぶ。
【0339】
対照として、48時間活性化させたT細胞に、同じ方法を用いて、実施例3から得られたCD19 CAR-P2A-wtPD-L1レンチウイルスを感染させ、CD19-CAR及び得られた完全長wtPD-L1を発現するT細胞は、本出願では、PDL1-CART細胞と呼び、そしてCD19-CAR及び完全長wtPD-L1の発現は、フローサイトメトリーにより確認した(
図3Cを参照)。
【0340】
実施例6.T細胞電気穿孔法(S1-S7)及びフローサイトメトリーのための、ユニバーサルCARTの調製
ユニバーサルCAR-T細胞(UCARTとしても知られている)を調製するために、標的遺伝子TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1を、実施例5で調製したTrPDL1-CART細胞又はPDL1-CART細胞でノックアウトした。
【0341】
TrPDL1-CART細胞又はPDL1-CART細胞を収集して計数し、電気穿孔緩衝液及びRNP(リボ核タンパク質、リボ核タンパク質複合体:主成分は、実施例1で調製したCas9タンパク質とsgRNAにより形成される複合体である)で穏やかに混合した後、電気穿孔法を開始した。具体的には、HLA-Aを標的とするsgRNAは、配列番号74及び29の配列を有し、HLA-Bを標的とするsgRNAは、配列番号38及び44の配列を有し、CIITAを標的とするsgRNAは配列番号53の配列を有し、TRACを標的とするsgRNAは配列番号57の配列を有し、PD-1を標的とするsgRNAは配列番号58の配列を有する。電気穿孔法の後、混合物を、予め温めた培地で培養した。電気穿孔法の後、細胞をサンプリングして2日毎に計数し、細胞生存率、総生存細胞数、及び細胞直径などの、重要なパラメーターを記録した。7日間培養した後、関連する遺伝子のノックアウト効率を検出した。
【0342】
上記標的遺伝子(TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1)がノックアウトされた、得られたTrPDL1-CART細胞を、TrPDL1-UCART細胞と呼んだ。上記標的遺伝子(TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1)がノックアウトされた、得られたPDL1-CART細胞を、PDL1-UCART細胞と呼んだ。
【0343】
電気穿孔法の7日後、十分な数の自然T細胞、実施例5から得られたTrPDL1-CART、及び、本実施例から得られたTrPDL1-UCART細胞を、HLA-A、HLA-B、HLA-DR(CIITAのノックアウトを検証するため)、及び、CD3(TRACのノックアウトを検証するため)の発現に関して、フローサイトメトリーにより検出した。検出抗体を、下表に示す、推奨される希釈比に従い、染色緩衝液を用いて、暗所で希釈した。
【0344】
【0345】
結果は、上記遺伝が、TrPDL1-UCART細胞内で効率的にノックアウトされており、HLA-A、HLA-B、HLA-DR、及びCD3発現の陽性比率はそれぞれ、25.38%、4.67%、23.85%、及び23.83%まで低下したことを示した。実験結果を、表6に以下のとおりに示す。PD-1発現もまた、効率的にノックアウトされた(データは図示せず)。PDL1-UCART細胞は、TrPDL1-UCART細胞と同様の、CD3、HLA-A、HLA-B、HLA-DR発現割合を有した。
【0346】
表6.細胞内での、HLA-A、HLA-B、HLA-DR、及びCD3発現の陽性割合
【表7】
【0347】
実施例7.CD3陰性細胞の濃縮
CD3陰性細胞を濃縮するために、実施例6から得られたTrPDL1-UCART細胞を、適切な密度で、適量の濃縮緩衝液に再懸濁し、その後、細胞の総数に比例して、抗ヒトCD3磁気ビーズを添加し、磁気ビーズカラムクロマトグラフィーにより、CD3陰性細胞を濃縮した。適量の精製細胞を、CD3の陽性割合を検出するためのフローサイトメトリーのために採取し、残りの細胞を、37℃、5% CO2インキュベーターに一晩静置した。以下の表7は、フローサイトメトリーにより検出された濃縮結果を示す。
【0348】
【0349】
結果は、CD3の陽性割合が、濃縮前は25.6%であり(即ち、TrPDL1-UCART細胞の25.6%がCD3を発現した)、濃縮後には0.36%まで低下した(即ち、濃縮TrPDL1-UCART細胞のわずか0.36%がCD3を発現した)ことを示した。これは、CD3陰性TrPDL1-UCART細胞の純度が、大幅に改善されたことを示した。
【0350】
実施例8.TrPDL1-CART及びTrPDL1-UCARTの細胞毒性の検出
TrPDL1-UCARTの細胞毒性を試験するために、実施例7で得られた濃縮CD3陰性TrPDL1-UCARTをエフェクター細胞として、及び、ルシフェラーゼ発現Raji細胞を標的細胞として用いて、細胞殺傷実験を行った。対照として、自然T細胞、又は、実施例5から得られたTrPDL1-CART細胞を、同じ標的細胞を用いる平行対照実験において、エフェクター細胞として用いた。
【0351】
十分なエフェクター及び標的細胞を得て、エフェクター細胞を、4.0×106/mLの密度まで希釈し、標的細胞を、2.0×105/mLの密度まで希釈した。TrPDL1-CARTは、63.05%の抗CD19 CAR発現率を有することが測定され、TrPDL1-UCARTは、75.58%の抗CD19 CAR発現率を有することが測定された。これらの細胞の抗CD19 CARのレベルが確実に、同等であるようにするために、TrPDL1-UCARTに対して、1:1.19で希釈されるように、TrPDL1-CART細胞及びTrPDL1-UCART細胞の体積を更に調節した。
【0352】
次に、TrPDL1-CART及びTrPDL1-UCARTのエフェクター細胞を、以下の勾配:20:1、15:1、10:1、5:1、2:1、及び1:1に従い、X-VIVO完全培地に更に希釈した。
【0353】
エフェクター細胞(自然T細胞、TrPDL1-CART、又はTrPDL1-UCART)を、50uL/ウェル:50uL/ウェルで、標的細胞と混合した。培養の24時間及び48時間後に、100uL/ウェルの、ルシフェラーゼの基質を添加し、OD値をマイクロプレートリーダによって読み取り、細胞内でのルシフェラーゼ活性を検出した。
【0354】
結果(
図4A及び4B)は、TrPDL1-CART及びTrPDL1-UCARTが標的細胞を有意に殺傷することができ、殺傷効果が、エフェクター:標的(E:T)比の増大に伴い向上したことを示した。このことは、本発明に従って構築した、切断型PD-L1を発現するCART及びUCART細胞が、標的細胞にて良好な細胞毒性を有したことを示した。
【0355】
実施例9.TrPDL1-CART及びTrPDL1-UCARTにより分泌された、IFN-γ及びTNF-αのELISA検出
細胞毒性を試験するために、TrPDL1-UCARTをエフェクター細胞として使用して、ルシフェラーゼを発現するRaji細胞を標的細胞として使用し、サイトカインTNF-α及びIFN-γの放出を、エフェクター細胞の、標的細胞によるインキュベーションの24時間後に検出した。対照として、自然T細胞、又は、実施例5から得られたTrPDL1-CART細胞を、平行対照実験においてエフェクター細胞として試験した。
【0356】
共培養の24時間後に、細胞上清を新たな遠心管に移し、遠心分離にかけて細胞破片を除去し、上清を採取して、ELISAによりTNF-α及びIFN-γを検出した。
【0357】
結果は、TrPDL1-CARTとTrPDL1-UCARTの両方が、標的細胞との共培養後に、TNF-αとIFN-γを有意に放出することができることを示し(
図5)、このことは、本発明に従って構築したユニバーサルCAR-T細胞が、通常のサイトカイン発現能を有したことを示した。
【0358】
実施例10.同種異系PBMCを用いるMLR(混合リンパ球反応)実験
切断型PD-L1 TrPDL1を発現するCAR-T細胞が、インビボで同種異系宿主免疫系由来の免疫拒絶を軽減することができるか否かを評価するために、混合リンパ球反応実験を行い、ここでは、同種異系個体由来の末梢血単核球細胞(PBMC)をエフェクター細胞として用い、切断型PD-L1 TrPDL1を発現するCAR-T細胞を標的細胞として用いた。
【0359】
1)天然T細胞、2)TrPDL1-B2M-/- -CART細胞、3)TrPDL1-CART細胞(実施例5で調製)、4)TrPDL1-UCART細胞(実施例6で調製し、実施例7でCD3陰性に対して濃縮)を含む、異なる標的細胞を試験した。
【0360】
TrPDL1-B2M-/- -CART細胞を、実施例6に記載するものと同様の方法を用いて調製した。簡潔に述べると、実施例5から得られたTrPDL1-CART細胞を、B2Mを標的とするsgRNA(実施例1を参照)を用いてノックアウトし、ノックアウト効率を、実施例6に示すものと同様の方法によって検出した。結果は、TrPDL1-B2M-/- -CART細胞におけるB2Mの発現率は2.25%であったことを示した。
【0361】
上記標的細胞と同種異系PBMCとの、混合リンパ球反応を、以下のとおりに実施した。
【0362】
エフェクター細胞の調製:同種異系単球及びPBMC細胞を、1200rpmで遠心分離にかけて計数し、PBSで洗浄して再懸濁した。将来の使用のために、細胞密度を、2×105/mLに調節した。
【0363】
標的細胞の調製:自然T細胞、TrPDL1-B2M-/- -CART細胞、TrPDL1-CART細胞、及びTrPDL1-UCART細胞に、2Gyを照射して、それらの増殖能力を破壊した後、5μMの細胞増殖色素CFSEで、15分間室温で染色し、将来の使用のために、細胞密度を、2×105/mLに調節した。
【0364】
混合リンパ球反応:染色した標的細胞及び同種異系PBMCを、96ウェルプ培養プレートにて、適切な割合で共培養し、24時間の培養後に細胞を収集した。
【0365】
CD45+CFSE+二重陽性細胞の割合をフローサイトメトリーにより測定し、混合リンパ球反応における、標的細胞の除去効率を計算した。同種異系PBMC細胞が標的細胞にて免疫拒絶を有する場合、標的細胞が溶解して細胞膜が破壊されることで、標的細胞表面でのCFSE蛍光は検出されない。CD45は汎白血球マーカーであり、白血球を局在化するために使用され、PBMC中の非白血球を除外することで、標的細胞をより正確に局在化する。
【0366】
実験結果を以下の表8に示す。結果は、TrPDL1-UCARTを、同種異系個体由来のPBMCと共培養した場合、同種異系PBMC由来の免疫拒絶を著しく阻害することができ、同種異系PBMCによって除去されないことを示した。対照的にTrPDL1-B2M-/- -CART細胞及びTrPDL1-CART細胞は依然として、同種異系PBMCにより除去された。このことは、TrPDL1-UCARTは、同種異系細胞に対する免疫拒絶を顕著に低減することができ、B2MがノックアウトされただけのユニバーサルCAR-T細胞よりも顕著に効率的であったことを示唆している。
【0367】
【0368】
実施例11.TrPDL1-UCART及びPDL1-UCART細胞に対するPD-1関与の影響
PD-1及びPD-L1の両方が、T細胞への阻害性シグナル伝達を媒介することができる。完全長PD-L1配列は、細胞内ドメインを含有する。PD-L1の細胞内ドメインの切断が、PD-L1活性化の際にT細胞に伝達される阻害性シグナル伝達を低減することができるか否かを検証するために、PD-1発現細胞の存在下で、完全長wtPD-L1を発現するUCAR-T細胞と、切断型PD-L1 TrPDL1を発現するUCAR細胞の、細胞増殖及び細胞毒性を比較した。
【0369】
エフェクター細胞の調製:CD19結合TrPDL1-UCART細胞及びPDL1-UCART細胞を、実施例6に従い調製し、続いて15分間室温で、5μMの細胞増殖色素CFSEで染色し、将来の使用のために、2×105/mL細胞密度に調節した。
【0370】
標的細胞の調製:実施例8で提供するRaji-ルシフェラーゼ細胞に、ヒトPD-1を組換え発現させることにより、PD-1を発現するRaji-ルシフェラーゼ細胞を得た。Raji-ルシフェラーゼ細胞はまた、CD19も自然に発現する。将来の使用のために、細胞密度を、2×105/mLに調節した。
【0371】
混合リンパ球反応:上記で調製したエフェクター細胞及び標的細胞を1:1の比で混合して、96ウェル培養プレートで培養し、細胞をそれぞれ、0時間、24時間、48時間、及び72時間後に収集した。
【0372】
フローサイトメトリーによって、CFSE+陽性細胞及びCD19陽性細胞の割合を測定することにより、混合リンパ球反応での、エフェクター細胞の増殖、及び、標的細胞の除去効率を評価した。
【0373】
結果を、以下の表9及び表10に示す。結果は、PD-1を発現する細胞の存在下において、完全長PD-L1を発現するPDL1-UCART細胞は、増殖及び標的細胞の細胞毒性の両方において顕著な阻害を被ることを示し、72時間における増殖はわずか1倍であり、標的細胞における殺傷効果はわずか40%未満であった。対照的に、切断型PD-L1 TrPDL1を発現するUCARTは、高い細胞増殖(72時間の時点において、17を上回る倍数増殖)を維持しただけでなく、顕著な標的細胞の殺傷(72時間の時点で、標的細胞の99%の殺傷が観察された)もまた示した。このことは、切断型PD-L1 TrPDL1が、PD-1関与の後に、PD-L1が媒介する阻害を顕著に低減することができ、UCART細胞増殖及び細胞殺傷効果の両方を大いに改善することができることを示唆している。
【0374】
【0375】
【0376】
実施例12.PD-1ノックアウトなしのUCARTの評価
PD-1がノックアウトされた、又はされていない、PD-L1を発現したUCAR-T細胞の増殖及び細胞毒性を、更に試験した。
【0377】
エフェクター細胞の調製:実施例6に示される方法に従いTrPDL1-UCARTを調製し、ここで、PD-1がノックアウトされ、切断型PD-L1 TrPDL1が発現した。実施例6に記載されるものと同様の方法を用いて、PD-1及び切断型PD-L1の両方を発現する、PD-1がノックアウトされていないTrPDL1-UCARTの変異体細胞を調製し、PD-1+TrPDL1-UCARTと呼んだ。TrPDL1-UCART及びPD-1+TrPDL1-UCARTの両方を、15分間室温で、5μMの細胞増殖色素CFSEで染色し、将来の使用のために、細胞密度を、2×105/mLに調節した。
【0378】
標的細胞の調製:実施例8に示されるRaji-ルシフェラーゼ細胞の細胞密度を、将来の使用のために、2×105/mLに調節した。この細胞は、CD19もまた自然に発現する。
【0379】
混合リンパ球反応:上記エフェクター細胞及び標的細胞を、1:1の比で96ウェル培養プレートで混合し、100μLの標的細胞及びエフェクター細胞懸濁液を、各群に3とおりのウェルで、各ウェルに添加した。細胞を、5% CO2インキュベーター内で37℃で培養し、細胞を0時間、24時間、48時間、及び72時間後に収集した。
【0380】
CFSE陽性エフェクター細胞及びCD19陽性標的細胞の比率をフローサイトメトリーにより測定し、混合リンパ球反応における、エフェクター細胞の増殖、及び、標的細胞クリアランスの効率を評価した。結果を、以下の表11及び12に示す。
【0381】
【0382】
【0383】
結果は、UCART細胞がPD-1及びPD-L1の両方を発現した場合、これらの細胞増殖及び細胞毒性は著しく阻害され、72時間における増殖は1.88倍であり、標的細胞に対する細胞毒性はわずか50%を下回っていたことを示した。本実験で用いた標的細胞はPD-1を発現しないため、UCART細胞で発現したPD-1と、別のUCART細胞で発現したPD-L1の相互作用は、PD-1及びPD-L1の両方を発現するUCART細胞の、増殖及び細胞毒性の自己阻害に繋がると推測される。
【0384】
対照的にPD-L1を発現したUCART細胞がPD-1でPD-1がノックアウトした場合、これらは、高い細胞増殖を維持し、72時間における増殖が11倍を上回っていただけでなく、72時間において、標的細胞の99%の殺傷効果という、細胞毒性の顕著な増加もまた示した。このことは、UCART細胞にて、ノックアウトされたチェックポイントに対するリガンドを発現しながらの、内因性阻害チェックポイント分子のノックアウトは、UCART細胞の増殖及び細胞毒性を顕著に改善し、UCART細胞間での自己阻害を回避することができることを示唆している。
【0385】
実施例13.ウェスタンブロットによる、完全長PD-L1及び切断型PD-L1を発現するUCARTの評価
UCAR-T細胞における、切断型PD-L1 TrPDL1と完全長PD-L1の違いを評価するために、実施例6に従いUCAR-T細胞を調製した。ここで、TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1を含む標的遺伝子が、Cas9タンパク質、及び、これらの標的遺伝子に対して向けられるsgRNAを用いてノックアウトされた。切断型PD-L1 TrPDL1(本明細書では、TrPDL1-UCART細胞と呼ばれる)を発現するか、又は、完全長PDL1(本明細書では、PDL1-UCARTと呼ばれる)を発現するような、このようなUCAR-T細胞もまた作製した。UCAR-T細胞の2つの群は、同じドナーに由来した。
【0386】
TrPDL1-UCART細胞及びPDL1-UCART細胞を、CD3/CD28ビーズ(20μL×108個の細胞)及び組換え(Hisタグ付き)ヒトPD-1タンパク質(10μg/1×108個の細胞、SinoBiological,Cat:10377-H08H-B)で2時間で処理した。処理後、細胞を収集して溶解し、続いてウェスタンブロットにより、リン酸化p38(p-P38)タンパク質及びリン酸化AKTタンパク質(p-AKT)を分析した。T細胞の活性化は、P38及びAKTのリン酸化をもたらすが故に、p-P38及びp-AKTのレベルは、CD3/CD28及び組換えヒトPD-1タンパク質の処理後の、T細胞の活性化のレベルを示すことができる。
【0387】
図7に示されるように、完全長PD-L1を発現するPDL1-UCART細胞において、CD3/CD28の処理後の、p-P38及びp-AKTのレベルは、組換えヒトPD-1タンパク質の存在によって顕著に阻害された。対照的に、組換えヒトPD-1タンパク質が存在するにもかかわらず、PD-1の存在を示唆するCD3/CD28ビーズの処理後に、良好なレベルのp-P38及びp-AKTを維持した切断型PD-L1を発現するTrPDL1-UCART細胞は、切断型PD-L1を発現するT細胞の作用を顕著に阻害しなかった。このことは、完全長PD-L1は、PD-1との相互作用の後に免疫阻害シグナルを媒介することができるものの、切断型PD-L1は、PD-1が存在するにもかかわらず、このような免疫阻害シグナルを伝達しないことを示唆している。したがって、TrPDL1-UCART細胞は、T細胞の活性化有効性において、PDL1-UCART細胞よりも効果的である。
【0388】
実施例14.FACSによる、完全長PD-L1及び切断型PD-L1を発現するT細胞の評価
T細胞における、PD-1発現とPD-L1発現の違いを評価するために、自然T細胞を得て、1人のドナーから精製した。
【0389】
T細胞を、4つの群に分けた。群1及び群2の細胞では、Cas9タンパク質、及び、PD-1に向けられるsgRNAを用いて、PD-1をノックアウトした。実施例3に記載されるとおり、群1の細胞に、PD-L1をコードするベクターを更にトランスフェクトし、群2の細胞に、TrPD-L1をコードするベクターを更にトランスフェクトした。PD-1のノックアウト、及び、PD-L1又はTrPD-L1の発現を、FACSを用いて確認した。得られた群1の細胞を、PD1-/- +TrPD-L1細胞と呼び、得られた群2の細胞を、PD1-/- +PD-L1細胞と呼ぶ。
【0390】
実施例3に記載されるとおり、群3の細胞に、PD-L1をコードするベクターをトランスフェクトし、群4の細胞に、TrPD-L1をコードするベクターを更にトランスフェクトした。群3又は群4の細胞には、他の修飾を加えなかった。PD-L1又はTrPD-L1の発現を、FACSを用いて確認した。得られた群3の細胞を、PD1+/+ +TrPD-L1細胞と呼び、得られた群4の細胞を、PD1+/+ +PD-L1細胞と呼ぶ。
【0391】
細胞の4つの群を、CD3/CD28ビーズ(20μL/1×108個の細胞)、及び組換え(Hisタグ付き)ヒトPD-1タンパク質(100μg/1×108個の細胞、SinoBiological、Cat:10377-H08H-B)で処理し、15分後に、組換えPD-L1タンパク質(200μg/1×108個の細胞)(SinoBiological、Cat:10084-H02H)を細胞に添加した。野生型T細胞を対照として使用し、CD3/CD28ビーズ(20μL/1×108個の細胞)のみで処理した。処理の6時間後に細胞を収集し、透過処理をして固定し、続いてFACSにより、リン酸化p38(p-P38)タンパク質及びリン酸化AKTタンパク質(p-AKT)を分析した。
【0392】
結果は、CD3/CD28ビーズ、組換えヒトPD-1タンパク質、及び組換えヒトPD-L1タンパク質の存在下では、群1の細胞(PD1
-/- +TrPD-L1 T細胞)におけるp-P38及びp-AKTの発現量は、対照T細胞の発現量に匹敵したことを示し、このことは、TrPD-L1が発現したにもかかわらず、免疫阻害がこのような細胞では観察されなかったことを示している。対照的に、群2(PD1
-/- +PD-L1 T細胞)及び群4の細胞(PD1
+/+ +PD-L1 T細胞)において、p-P38及びp-AKTの発現量は有意に低下し(
図8を参照)、群4の細胞では、p-P38及びp-AKTの発現量が最低であり、このような細胞が最も強力な免疫阻害を有することを示している。
【0393】
実施例15.PSMA標的化UCAR-Tの調製及び評価
【0394】
抗CD19 scFvを、抗PSMA抗体J591の軽鎖可変領域(アミノ酸配列配列番号81)、及び、抗PSMA抗体J591の重鎖可変領域(アミノ酸配列配列番号82)を有する、抗体J591に由来する抗PSMA scFv(PSMA-scFv)によって置き換えたことを除いて、実施例2で概略を述べたのと同様の手順に従い、PSMA標的化CAR発現カセットを構築した。得られる発現カセットは、配列番号83の完全長アミノ酸配列を有する融合タンパク質PSMA CAR-P2A-TrPD-L1をコードし、ポリヌクレオチド配列を、配列番号84に示す。
【0395】
実施例3、4、及び5に記載されるものと同じ手順に従い、PSMA標的化CAR-T細胞を調製し、抗PSMA CAR及びTrPD-L1を発現するCAR-T細胞を得た。これらの細胞は、PSMA標的化CAR-T細胞と呼ばれ、対照として用いる。
【0396】
ユニバーサルCAR-T細胞を調製するために、実施例6に記載のとおり、PSMA標的化CAR-T細胞を、Cas9タンパク質、並びに、TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1を標的とするsgRNAで更に処理し、これらの標的遺伝子をノックアウトした。
【0397】
上記標的遺伝子(TRAC、HLA-A、HLA-B、CIITA、及びPD-1)がノックアウトされた、得られたPSMA標的化ユニバーサルCAR-T細胞を、PSMA標的化UCART細胞と呼んだ。実施例7に記載のとおり、PSMA標的化UCAR細胞を処理し、CD3陰性細胞を濃縮した。結果は、上記遺伝子はPSMA標的化UCAR T細胞内で効率的にノックアウトされており、HLA-A、HLA-B、HLA-DR、及びCD3発現の陽性比率はそれぞれ、98.00%、97.3%、67.6%、及び98.9%まで低下したことを示した。実験結果を、表13に以下のとおりに示す。PD-1発現もまた、効率的にノックアウトされた(データは図示せず)。
【0398】
【0399】
PSMA標的化UCAR T細胞の細胞毒性を試験するために、実施例8に記載されるものと同じ手順に従い、0.25:1、0.5:1、1:1、及び2:1の、様々なエフェクター標的比で、細胞殺傷実験を、エフェクター細胞及び標的細胞(ルシフェラーゼ発現前立腺癌PC3細胞である)を用いて実施した。濃縮されたCD3陰性PSMA標的化UCAR T細胞、抗PSMA CAR及びTrPD-L1を発現し、標的遺伝子をノックアウトしていない対照PSMA標的化CAR-T細胞、並びに、自然T細胞を含む、3種類のエフェクター細胞を平行して研究した。
【0400】
培養の24時間後に、ルシフェラーゼの基質を添加し、OD値をマイクロプレートリーダによって読み取り、細胞内でのルシフェラーゼ活性を検出した。これは標的細胞の生存能を示したため、細胞崩壊割合に変換した。結果(
図9A)は、PSMA標的化UCAR T及びPSMA標的化CAR-Tは共に、有意に標的細胞を殺傷し、殺傷効果は、エフェクター:標的(E:T)比の増大に伴い向上したことを示した。このことは、PSMA標的化UCAR-T及びPSMA標的化CAR-Tが、標的細胞にて良好な細胞毒性を有したことを示す。PSMA標的化UCAR-Tは、同じエフェクター:標的(E:T)比の下で、PSMA標的化CAR-Tよりも良好な細胞毒性を示した。
【0401】
細胞毒性を試験するために、実施例9に記載されるとおり、エフェクター細胞を標的細胞でインキュベーションした24時間後に、サイトカインIFN-γ放出をELISAによって検出した。
【0402】
結果は、PSMA標的化UCAR-T及びPSMA標的化CAR-Tの両方が、標的細胞との共培養の後に、IFN-γを有意に放出することができることを示し(
図9B)、このことは、抗PSMA CAR-T細胞及び抗PSMA UCART細胞が、通常のサイトカイン発現能を有したことを示している。
【0403】
実施例15.PD-L1変異体
少なくとも1つの変異(特に、欠失)が、PD-L1の細胞内ドメイン、特に、完全長PD-L1に対応する268番目から271番目のアミノ酸残基にまたがるモチーフに、導入されているPD-L1変異体を調製する。268番目から271番目のアミノ酸残基のモチーフは、ベータシートであり、PD-L1の細胞内ドメインの生物学的活性にとって重要な、三次構造を含有するか、又は、三次構造の一部であると考えられている。このモチーフ内の変異又は欠失は、PD-L1の細胞内シグナル伝達を破壊することができ、場合により、免疫阻害シグナル伝達を低下させることができる。
【0404】
完全長のPD-L1に対応する、268番目、269番目、270番目、及び/又は271番目のアミノ酸残基に欠失が導入されたPD-L1変異体の群を作製する。PD-L1変異体は、ヒトドナーから単離されたT細胞においてそれぞれ発現する。PD-L1変異体を発現するT細胞は、His-PD-1タンパク質の存在下、又は不存在下にて、CD3/CD28ビーズを用いて活性化され、続いてウェスタンブロット(実施例13に記載される手順に類似する)を用い、又は、FACS(実施例14に記載される手順に類似する)により、P38及びAKTのリン酸化を検出する。結果は、PD-L1の、268番目から271番目のアミノ酸残基の断片内の欠失及び変異は、PD-L1の細胞内シグナル伝達を低下させることができることを示す。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾細胞又はその集団であって、
(1)前記修飾細胞は、未修飾の対応する細胞と比較して、
内因性阻害チェックポイント分子を欠損しており、かつ
前記欠損型内因性阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられて
おり、
好ましくは、前記リガンドは、同族リガンドの変異体であり、前記同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している、ことを特徴とする、
または
(2)前記修飾細胞は、阻害チェックポイント分子のリガンドを発現するように組換えられており、前記リガンドは、同族リガンドの変異体であり、前記同族リガンドと比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下している、ことを特徴と
しており、
好ましくは、前記細胞は、前記リガンドに対応する阻害チェックポイント分子を欠損している、
修飾細胞。
【請求項2】
前記細胞は、
a)動物細胞若しくはヒト細胞であり、
b)免疫細胞であり、
c)幹細胞、若しくは、前記幹細胞から分化した細胞であり、
d)移植に適しており、
e)前記細胞に対する、意図するレシピエントに関して同種異系であり、又は
f)これらの任意の組み合わせである、
または
好ましくは、
a)前記細胞は免疫細胞であり、前記免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単核細胞、樹状細胞(DC細胞)、好中球、若しくはγδT細胞であり、又は
b)前記細胞は、幹細胞、若しくは、前記幹細胞から分化した細胞であり、前記幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞であ
り、
好ましくは、前記T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、末端エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発キラー(CIK)T細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球からなる群から選択され、任意選択的に、活性化T細胞である、
または
a)前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、KIR、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、かつ/又は
b)前記リガンドは、PD-L1、PD-L2、HMGB1、Ceacam-1、ホスファチジルセリン(PS)、LSECtin、a-シヌクレイン、FGL1、アデノシン
、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)、CD28、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、PVR(CD155)、MHCクラスI、シアロ糖タンパク質、CD112、CD113、ガレクチン9、CD24、及びCD47からなる群から選択され
、または
好ましくは、
a)前記阻害チェックポイント分子はPD-1であり、前記リガンドは、PD-L1若しくはその変異体、若しくは、PD-L2若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
b)前記阻害チェックポイント分子はTIM3であり、前記リガンドは、ガレクチン9、HMGB1、Ceacam-1、若しくはホスファチジルセリン(PS)、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
c)前記阻害チェックポイント分子はLAG-3であり、前記リガンドは、ガレクチン-3、LSECtin、a-シヌクレイン、若しくはFGL1、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
d)前記阻害チェックポイント分子はTIGITであり、前記リガンドは、CD155、CD113、若しくはCD112、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
e)前記阻害チェックポイント分子は、アデノシンA2A受容体(A2AR)であり、前記リガンドはアデノシンを含み、
f)前記阻害チェックポイント分子はBTLAであり、前記リガンドは、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエータ)若しくはその機能的等価物を含み、
g)前記阻害チェックポイント分子はCTLA-4であり、前記リガンドはCD28若しくはその機能的等価物を含み、
h)前記阻害チェックポイント分子は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)であり、前記リガンドは、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A、HLA-B以外の)、若しくはその機能的等価物を含み、
i)前記阻害チェックポイント分子は、VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子)であり、前記リガンドは、PD-L1若しくはPD-L2、若しくはその機能的等価物のうちの少なくとも1つを含み、
j)前記阻害チェックポイント分子は、SIGLEC-7(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7、CD328)であり、前記リガンドは、シアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含み、又は
k)前記阻害チェックポイント分子は、SIGLEC-9(CD329)であり、前記リガンドは、シアロ糖タンパク質若しくはその機能的等価物を含む、
または
a)前記細胞はT細胞であり、前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、CTLA-4(CD152)、IDO1、IDO2、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、
b)前記細胞はナチュラルキラー(NK)細胞であり、前記阻害チェックポイント分子は、PD-1、TIM3、TIGIT、LAG3、A2AR、BTLA(CD272)、IDO1、IDO2、KIR、TDO、NOX2、VISTA、SIGLEC7(CD328)、PVR(CD155)、及びSIGLEC9(CD329)からなる群から選択され、
c)前記細胞は樹状細胞(DC細胞)であり、阻害チェックポイント分子は、A2AR、CD47、IDO1、IDO2、及びTDOからなる群から選択され、又は
d)前記細胞はマクロファージであり、前記阻害チェックポイント分子は、A2AR、
CD47、IDO1、IDO2、及びCD24からなる群から選択される、
請求項
1に記載の修飾細胞
又はその集団。
【請求項3】
前記変異体は、前記同族リガンドの、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いて
おり、且つ/又は、 前記同族リガンドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、前記少なくとも1つの変異は、好ましくは、前記同族リガンドの前記細胞内ドメイン内、若しくは、前記同族リガンドの前記膜貫通ドメイン内、若しくは、前記同族リガンドの前記細胞外ドメイン内、又はこれらの任意の組み合わせにあり、
好ましくは、前記変異体は、前記同族リガンドが免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含
み、
前記少なくとも1つの変異は、
好ましくは、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含
み、
例えば、前記少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む、
請求項
1に記載の修飾細胞。
【請求項4】
前記変異体は、PD-L1変異体又はPD-L2変異体であり、
前記PD-L1変異体又は前記PD-L2変異体は、1以上の以下の条件を満たす、
請求項
2に記載の修飾細胞
:
(i)前記PD-L1変異体は、
細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、
膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、
細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内に、又は、これらの任意の組み合わせに、少なくとも1つの変異を含み、前記少なくとも1つの変異は、前記PD-L1が免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、
(ii)前記PD-L1変異体は、PD-L1の前記細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含
み、前記PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む、
(iii)前記PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、前記PD-L1変異体は、配列番号11のアミノ酸配列を含まない
。
【請求項5】
前記修飾細胞は、以下の条件の1以上を満たす、請求項1に記載の修飾細胞:
(I)前記修飾細胞は、a)前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の、コード配列若しくは調節配列内の第1の変異であって、前記第1の変異は、前記阻害チェックポイント分子の発現若しくは活性を低下させる、前記第1の変異、又は、b)前記阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする、第1の干渉オリゴヌクレオチドであって、前記第1の干渉オリゴヌクレオチドは、前記阻害チェックポイント分子の発現を低下させる、前記第1の干渉オリゴヌクレオチド、c)前記阻害チェックポイント分子の前記発現及び/若しくは活性を阻害する、導入されたタンパク質、ポリペプチド、若しくは低分子を含む、
(II)前記修飾細胞は、前記リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを含
み、
好ましくは、前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、前記リガンドに対する前記コード配列に作動可能に連結されたシグナルペプチドに対するコード配列を更に含
み、且つ/又は
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、前記リガンドに対する前記コード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含
み、且つ/又は
前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA又は発現ベクター、任意選択的に、ウイルス発現ベクターである
。
【請求項6】
前記修飾細胞は、以下の条件の1以上を満たす、請求項1に記載の修飾細胞:
(A)前記修飾細胞には、前記リガンドの発現が導入されている、
(B)前記細胞は、a)MHCクラスIタンパク質、又はb)MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子、又はc)a)とb)の両方、を更に欠損して
おり、
好ましくは、前記MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、若しくはHLA-B、HLA-C、B2M、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、前記細胞は、HLA-A及びHLA-Bの両方を更に欠損して
おり、且つ/又は
前記MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、又はこれらの任意の組み合わせを含み、任意選択的に、前記細胞は、HLA-DRを更に欠損して
おり、且つ/又は
前記MHCクラスIIトランス活性化因子はCIITAであり、任意選択的に、前記細胞は、CIITAを欠損して
おり、且つ/又は
(C)前記細胞は、内因性TCRを更に欠損しており、任意選択的に、前記細胞は、T細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)、T細胞受容体β定常1(TRBC1)、T細胞受容体β定常2(TRBC2)、又はこれらの任意の組み合わせを更に欠損して
おり、
好ましくは、(B)において、前記修飾細胞は、a)前記MHCクラスIタンパク質のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列の第2の変異であって、前記第2の変異は、前記MHCクラスIタンパク質の発現若しくは活性を低下させる、前記第2の変異、又は、b)前記MHCクラスIタンパク質のmRNAを標的とし、これにより、前記MHCクラスIタンパク質の、中での発現を低下させる、第2の干渉オリゴヌクレオチドを含
み、且つ/又は
前記修飾細胞は、a)前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第3の変異であって、前記第3の変異は、前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の発現若しくは活性を低下させる、前記第3の変異、又は、b)前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)のmRNAを標的とし、これにより、前記MHCクラスIIタンパク質若しくはMHCクラスIIトランス活性化因子(例えば、CIITA)の、中での発現を低下させる、第3の干渉オリゴヌクレオチドを含
み、且つ/又は
前記修飾細胞は、a)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列内の第4の変異であって、前記第4の変異は、内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の発現若しくは活性を低下させる、前記第4の変異、又は、b)内因性TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2のmRNAを標的とし、これにより、TCR若しくはTRAC若しくはTRBC1若しくはTRBC2の、中での発現を低下させる、第4の干渉オリゴヌクレオチドを含
み、
より好ましくは、(B)において、前記第2の変異、若しくは前記第3の変異、若しくは前記第4の変異、又はこれらの任意の組み合わせは、遺伝子編集により導入され
、
(D)前記修飾細胞は修飾されており、又は、更に修飾されて、対象となるポリペプチドに対するコード配列を含む第2の外因性ポリヌクレオチドが導入され、任意選択的に、前記修飾細胞は、前記対象となるポリペプチドを発現
し、
好ましくは、前記対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、又は、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含
み、且つ/又は、前記修飾細胞は、修飾T細胞であり、任意選択的に、前記修飾T細胞は、内因性T細胞受容体を更に欠損し、
より好ましくは、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、更に任意選択的に、前記CARは、共刺激シグナル領域を更に含み、且つ/又は、前記組換えTCRは、組換え抗原結合ドメインを含み、且つ/又は、前記CAR又は前記組換えTCRの前記抗原結合ドメインは、標的抗原、任意選択的に、標的細胞抗原に結合可能であり、前記標的細胞抗原は、腫瘍抗原、炎症関連抗原、自己免疫関連抗原、又は、感染体関連抗原を含み、
さらに好ましくは、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRシグナル伝達ドメインを含
み、且つ/又は、
前記標的細胞抗原は、癌、自己免疫疾患、感染症、代謝性疾患、及び遺伝病からなる群から選択される疾患と関連して
おり、且つ/又は
前記腫瘍抗原は、BCMA、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD 179b、CEA、CLEC12A、クローディン18.2、CS-l、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、GPC3、HER2、HM1.24、LGR5、メソセリン、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、又はROR1であ
り、且つ/又は
前記細胞は、エクスビボで増殖
し、且つ/又は
前記修飾細胞の前記集団は、前記内因性阻害チェックポイント分子、及び、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドの両方を発現する、対応する細胞、又は、自然細胞(即ち、自然免疫細胞)である、対応する細胞の、比較集団と比較して、
a)自己抑制の低下、
b)エフェクター細胞機能の改善、並びに/又は
c)細胞活性化及び/若しくは増殖の改善、
のうちの1つ以上の特徴を有する
。
【請求項7】
請求項
1に記載の修飾細胞の産生方法であって、
(1):
a)出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低減し、前記内因性阻害チェックポイント分子の前記リガンドの発現又は活性を増大させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含
み、
(2):
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の産生方法であって、
a)前記内因性阻害チェックポイント、及び、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドを発現する出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含む、
(3):
先行請求項のいずれか1項に記載の修飾細胞の産生方法であって、
a)前記内因性阻害チェックポイント分子を欠損する出発細胞を提供することと、
b)前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子に対する前記リガンドの発現又は活性を増大させることにより、前記修飾細胞を得ることと、を含
み、
好ましくは、前記出発細胞を修飾して、前記内因性阻害チェックポイント分子の発現又は活性を低下させるステップは、
a)前記出発細胞に、前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内のコード配列若しくは調節配列に対する第1の変異を導入することにより、前記阻害チェックポイント分子が、前記出発細胞内で発現の低下若しくは活性の低下を引き起こすようにすること、又は
b)前記出発細胞に、前記阻害チェックポイント分子のmRNAを標的とする第1の干渉オリゴヌクレオチドを導入することにより、
好ましくは、前記第1の変異は、遺伝子編集により導入され、前記阻害チェックポイント分子が、前記出発細胞内で発現の低下を引き起こすようにすることを含む、
より好ましくは、前記遺伝子編集は、
a)前記細胞に、i)配列標的化タンパク質、又は、前記配列標的化タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び、ii)前記コード配列内の標的配列、又は、前記阻害チェックポイント分子のゲノム領域内の調節配列に相補的なオリゴヌクレオチドを導入することを含
み、
好ましくは、前記配列標的化タンパク質は、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、任意選択的にCas9を含
み、
好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは、前記標的配列に相補的なガイドRNA配列を含む、
方法。
【請求項8】
前記出発細胞を修飾して、前記阻害チェックポイント分子の前記リガンドの発現又は活性を増大させるステップは、
a)前記出発細胞に、前記リガンドに対するコード配列を含む第1の外因性ポリヌクレオチドを導入することにより、前記出発細胞からの前記リガンドの発現を引き起こ
し、前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、好ましくは、前記リガンドに対する前記コード配列作動可能に連結されたプロモーターを更に含み、
b)1つ以上の抑制転写因子をノックアウト若しくはノックダウンすること、
c)前記リガンドをコードする遺伝子の発現のために、1つ以上の調節配列を編集すること、又は
d)前記リガンドをコードする遺伝子をノックインすること、を含
み、
好ましくは、前記第1の外因性ポリヌクレオチドは、mRNA、発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、またはRNAベクターであ
り、前記出発細胞は、自然細胞若しくは分化細胞、又は、自然細胞若しくは分化細胞から遺伝子組換えされた、組換え細胞であり、
さらに好ましくは、前記発現ベクターは、ウイルス発現ベクター、任意選択的にレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、
且つ/又は
前記分化細胞は、幹細胞から分化して
おり、
好ましくは、前記幹細胞は、造血前駆細胞(例えば、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、マクロファージ前駆細胞)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、胚幹細胞の細胞株、間葉系幹細胞、若しくはiPSC細胞である、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項
1に記載の修飾細胞と、薬学的に許容される媒体と、を含む、
医薬組成物
又はキット。
【請求項10】
対象は、癌、自己免疫疾患、感染症、加齢、代謝性疾患、及び心臓血管疾患から選択される疾患を有する、
状態又は疾患の治療における使用のための請求項
1に記載の
修飾細胞。
【請求項11】
PD-L1変異体を含むタンパク質であって、前記変異体は、自然PD-L1と比較して、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力が低下して
おり、
好ましくは、前記PD-L1変異体は、自然PD-L1の、機能的免疫阻害シグナル伝達ドメインを欠いて
おり、且つ/又は
前記PD-L1変異体は、免疫阻害シグナル伝達を誘発する能力を低下させる、少なくとも1つの変異を含
み、
好ましくは、前記少なくとも1つの変異は、置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含
み、
より好ましくは、前記少なくとも1つの変異は、PD-L1の細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)内、若しくは、PD-L1の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)内、若しくは、PD-L1の細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)内、若しくは、細胞外ドメインと細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)内、又はこれらの任意の組み合わせ
であり、且つ/又は
前記少なくとも1つの変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含
み、
好ましくは、前記欠失は、PD-L1の前記細胞内ドメイン(例えば、配列番号1)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記膜貫通ドメイン(例えば、配列番号2)の少なくとも一部の欠失、若しくは、PD-L1の前記細胞外ドメイン(例えば、配列番号3)の少なくとも一部の欠失、若しくは、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインにまたがるドメイン(例えば、配列番号5)の少なくとも一部の欠失、又はこれらの任意の組み合わせを含
み、
より好ましくは、前記PD-L1変異体は、配列番号11、又は、配列番号11と等しい長さの部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号11のアミノ酸配列を含ま
ず、
前記PD-L1変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を含
み、
例えば、前記PD-L1変異体は、任意選択的に、リンカーを介して、対象となるポリペプチドに連結され
、
好ましくは、前記リンカーは切断可能であ
り、
より好ましくは、前記対象となるポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、組換えTCR、又は他の細胞表面受容体、又はリガンドを含
み、
前記タンパク質は、シグナルペプチドを更に含む
、タンパク質。
【請求項12】
請求項
11に記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む、発現ベクター
、又は
前記発現ベクターを含む、組換え細胞。
【請求項13】
(1)組換え細胞が、請求項
12に記載の組換え細胞
であり、出発細胞に、発現ベクターを、ポリヌクレオチドを前記細胞内で発現させるのに適した条件下で導入すること
、
(2)組換え細胞は免疫寛容が増大した組換え細胞であり、前記細胞内で、ポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で、前記細胞に、発現ベクターを導入することにより、前記組換え細胞の免疫寛容を増大させることを含
み、
前記ポリヌクレオチド及び前記発現ベクターは、請求項12で定義されたものである、
組換え細胞の産生方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法によりエクスビボで産生される、細胞集団
であって、
前記組換え細胞が、請求項
12に記載の組換え細胞
であり、出発細胞に、発現ベクターを、ポリヌクレオチドを前記細胞内で発現させるのに適した条件下で導入し
、
好ましくは、前記細胞集団の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、検出可能なレベルの、請求項
11に記載のタンパク質を発現する
、
細胞集団。
を含む、
方法。
【請求項15】
免疫拒絶のリスクを下げて、細胞を対象に移植する
ことにおける使用のための請求項12に記載の組換え細胞の移植組織
、又は、請求項1
に記載の修飾細胞であって、前記組換え細胞又は修飾細胞は、前記対象に対して同種異系である、
移植組織又は修飾細胞。
【国際調査報告】