(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】神経疾患の予防または治療のためのイオン液体ベースの製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20250212BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250212BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250212BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K9/08
A61P25/16
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539747
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2023050671
(87)【国際公開番号】W WO2023144742
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510283535
【氏名又は名称】ウニベルシダージ デ アベイロ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DE AVEIRO
(71)【出願人】
【識別番号】519442520
【氏名又は名称】ウニベルシダージ ダ ベイラ インテリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】マーラ グアダルーペ フレイレ マルティンス
(72)【発明者】
【氏名】アナ カタリーナ アルメイダ ソウサ
(72)【発明者】
【氏名】ムケシュ シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン マヌエル コスタ アラウージョ ペレイラ コウチーニョ
(72)【発明者】
【氏名】アナ クララ ブラズ クリストヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ジナ ペレイラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC44
4C076DD50E
4C076FF15
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
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4C086MA17
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZA15
4C086ZA94
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、神経疾患、特にパーキンソン病の治療、処置、または予防のための、NADPHオキシダーゼ酵素(Nox)、好ましくはアイソフォーム1および4の阻害剤、特に特異的阻害剤3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインを含む、イオン液体(IL)ベースの製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
を有するアニオンを含むイオン液体であって、
Rは、アルキル基またはシクロアルキル基であり、かつ、
カチオンは、コリニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、または1‐アルキル‐3‐メチルイミダゾリウムカチオンファミリーからなるリストから選択される、イオン液体。
【請求項2】
前記アニオンと前記カチオンのモル比が1:2~2:1(mol:mol)、好ましくは1:1.5~1.5:1(mol:mol)の範囲である、請求項1に記載のイオン液体。
【請求項3】
前記アニオンと前記カチオンのモル比が1:1(mol:mol)である、請求項2に記載のイオン液体。
【請求項4】
Rは、C3~C7のシクロアルキル基である、請求項1~3のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項5】
Rは、C3~C7からの非置換シクロアルキル基である、請求項1~4のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項6】
Rは、シクロヘキシル基である、請求項1~5のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項7】
前記カチオンは、コリニウムである、請求項1~6のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項8】
3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインまたは3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインを含む、請求項1~7のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項9】
医薬品または薬剤として使用するための、請求項1~8のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項10】
中枢神経系の疾患または障害の予防、進行を遅らせる、または治療における使用のための、請求項1~9のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項11】
神経変性疾患、認知機能障害、認知症、または多系統萎縮症の予防または治療における使用のための、請求項1~10のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項12】
前記神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項11に記載の使用のための、イオン液体。
【請求項13】
パーキンソン病の進行を遅らせるのに使用するための、請求項1~12のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項14】
パーキンソン病の運動機能障害を予防するのに使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項15】
筋萎縮性側索硬化症の予防または治療に使用するための、請求項1~11のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項16】
神経血管疾患、好ましくは脳卒中の予防または治療における使用のための、請求項1~9のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項17】
治療有効量の請求項1~16のいずれかに記載のイオン液体および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容される担体が、生理食塩水緩衝液、PBS、または水、またはそれらの混合物である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
0.005mM~10mM、好ましくは0.1~5mMの範囲の量のイオン液体を含む、請求項17または18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
注射可能な形態、鼻腔内形態、くも膜下腔内形態または脳室内形態、好ましくは鼻腔内形態、脳室内形態またはくも膜下腔内形態である、請求項17~19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
中枢神経系の疾患または障害を有する人に、好ましくは30日間以上、1日量を投与するための、請求項17~20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記投与の量が1000mg/日以下である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記投与の量が0.05~1000mg/日の範囲である、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、神経疾患、特にパーキンソン病(PD)の治療、処置、または予防のための、NADPHオキシダーゼ酵素(Nox)の阻害剤(インヒビター)、好ましくはアイソフォーム1および4、特に特異的阻害剤3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインを含むイオン液体(IL)製剤(イオン性液体製剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
神経疾患は、障害の主要な原因であり、世界中で2番目に多い死因である。
Journal Lancet Neurology(2019; 18(5): 459-80)に発表された「Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study (GBD)」の2016年のデータによれば、神経疾患は、障害調整生存年数(DALY)の最大の原因(2億7,600万)であり、死亡原因の第2位(900万)であった。
【0003】
Dorseyらの「The Emerging Evidence of the Parkinson Pandemic」と題した研究(Journal of Parkinson's Disease 2018; 8: S3-S8)によると、神経学的障害の中でも、パーキンソン病(PD)は最も急速に増加している病気であり、患者数は1990年から2015年の間に倍増して600万人を超えている。また、同調査では、人口の高齢化により、2040年までに1200万人以上に達することが明らかになっている。さらに、同じ著者が強調しているように、他の要因(例:寿命の延長、喫煙率の低下、工業化の進展)を考慮すると、PDに伴う負担は2040年までに1700万を超える可能性がある。したがって、PDに関連するコストは相当なものである。
【0004】
Yang et alら(U.S. npj Parkinson's Disease 2020; 6(1): 15における「Current and projected future economic burden of Parkinson’s disease」)によると、2017年、米国のみで、PDの経済的なコスト総額は519億ドルであり、直接医療費254億ドル、間接医療費および非医療費265億ドルが含まれていた。
【0005】
現在のところ、PDに対する治療法はなく、利用可能な治療法は対症療法であり、症状の管理のみが可能である。PD療法の現在のシナリオは、ドーパミンの異化経路における重要な酵素を阻害する目的で、ドーパミン前駆体、ドーパミンアゴニストまたは薬物として作用する薬物の処方に主として基づいている。しかしながら、このような治療法の有効性は、疾患がより消耗性の段階に進行するにつれて経時的に低下し、限られた治療選択肢の患者が利用可能になる。従って、疾患進行の予防は、PD患者のための有望な解決法であるとますます考えられている。しかし、PDの進行を止めるための予防治療がないことは、Research and Marketsが実施した市場調査(「The Parkinson's Disease Market: Pipeline Review, Developer Landscape and Competitive Insights」, pp. Report ID: 4586296)が強調しているように、この領域における最も重要なアンメットニーズの一つである。したがって、PD進行に対する予防治療の開発は不可欠である。
【0006】
中枢神経系(CNS)において、酸化ストレスはいくつかの疾患およびエージングと関連し、パーキンソン病の強力な寄与因子であり、したがって、神経疾患の進行を止めるための適切な標的となる可能性がある。
【0007】
最近まで、ミトコンドリアはCNSにおけるROSの主な供給源と考えられていたが、最近の研究は、NADPHオキシダーゼ(Nox)酵素の相同体がCNSにも位置し、それらは、発達(development)、記憶、神経性信号および血管止血のようなプロセスに必要な、ROSの産生において決定的な役割を果たすることを明らかにした。しかしながら、これらの酵素によって産生されるROSは、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのいくつかの神経疾患の病理学的過程に関連する細胞死を導く原因となっている。この分野では、これまでの研究により、Nox1を介した酸化ストレスがPDにおけるドーパミン作動性ニューロンの変性に決定的な役割を果たし、PDの実験モデルにおいてNox(窒素酸化物)の役割が検証されたことが示されている(Cristovao et al. The role of NADPH oxidase 1-derived reactive oxygen species in paraquat-mediated dopaminergic cell death. Antioxidants & redox signaling 2009; 11: 2105-2118; Choi et al. NADPH Oxidase 1-Mediated Oxidative Stress Leads to Dopamine Neuron Death in Parkinson's Disease. Antioxidants & redox signaling 2012; 16(10):1033-1045; Cristovao et al. NADPH oxidase 1 mediates alpha-synucleinopathy in Parkinson's disease. Journal of Neuroscience 2012; 32: 14465-14477)。これらの研究は、Noxの非特異的阻害剤であるアポシニン(Apo)を用いることにより、ニューロンにおけるNoxのいくつかのアイソフォームによって生じる酸化ストレスの負の影響を低減することが可能であることをさらに実証した。しかし、Apoはジメチルスルホキシド(DMSO)にのみ溶解し、その結果、Hanslick et al.(Dimethyl sulfoxide (DMSO) produces widespread apoptosis in the developing central nervous system; Neurobiology of Disease 2009; 34: 1-10)および Yuan et al.(Dimethyl sulfoxide damages mitochondrial integrity and membrane potential in cultured astrocytes; PLoS One 2014; 9: e107447)によって以前に示されたように、直接的または間接的な神経毒性を誘発することができる。Noxを阻害する性能を持ついくつかの抗酸化分子やその他の化合物は、不溶性という共通の問題を抱えており、バイオアベイラビリティが低いため、治療効果や適用に影響を及ぼす。この問題は、一般に固体状態で使用される他の医薬品有効成分(API)にも共通している。固体状態のAPIは多形性やや水への溶解度が低く、バイオアベイラビリティや治療効率が大きく損なわれるという再発性の問題があり、タフツ医薬品開発研究センターによれば、臨床試験のフェーズ2で薬剤候補分子が失敗する主な理由となっている(Trial watch: Phase II failures: 2008-2010. Nature Reviews Drug Discovery 2011; 10: 328-329)。さらに、特にCNS指向性薬物との関連では、血液脳関門(BBB)を通過するそれらの性能が低いことも大きな問題である。このため、鼻腔内送達経路は、脳への医薬品の送達に強い関心の経路となりつつある。しかし、これは、大部分の薬物の伝統的な固体製剤では達成できない。したがって、PDのような神経変性疾患に特に関連するBBBの浸透に関する懸念を避けるために、これらの薬物の多型性および低い溶解度に関連する問題を防止すると同時に、鼻腔内送達を容易にする新しい製剤を開発する必要がある。
【0008】
ILは有機カチオンと有機または無機アニオンからなる塩である。イオンのサイズが大きいため、これらの塩は規則的な結晶構造をもたず、通常の塩よりも低い温度で液体である。既知のILの大部分は室温および体温で液体であり、融解エンタルピーに関連するエネルギーを克服する必要がないので、ほとんどの薬物の多型シナリオを克服し、APIの溶解度を改善するのに寄与する。加えて、それらはイオンからなる塩であるため、水との強い相互作用が確立され、それらの溶解度の著しい増加につながる。薬理学的応用のためのAPIを含むILの開発は、既に示唆されており、治療戦略のための新しい時代として現れている(Shamshina et al. Chemistry: Develop ionic liquid drugs. Nature 2015; 528: 188-189; Egorova et al. Biological Activity of Ionic Liquids and Their Application in Pharmaceutics and Medicine. Chemical Reviews 2017; 117(10): 7132-7189; Pedro et al. Ionic Liquids in Drug Delivery. Encyclopedia 2021; 1: 324-339)。
【0009】
これまでの研究では、抗生物質、鎮痛・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)など、様々な種類のAPIをILに変換することの報告に成功している(Pedro et al. Ionic Liquids in Drug Delivery. Encyclopedia 2021; 1: 324-339)。
【0010】
鎮痛薬(リドカイン)および抗炎症薬(NSAID)の二重機能ILへの変換により、鎮痛薬および抗炎症前駆体と比較して、細胞傷害性プロファイルに影響を与えることなく、水溶性を470倍まで増加させることができた(Abednejad et al. Polyvinylidene fluoride-Hyaluronic acid wound dressing comprised of ionic liquids for controlled drug delivery and dual therapeutic behavior. Acta Biomaterialia 2019; 100: 142-157)。同様に、異なるNSAIDのILへの変換、すなわちイブプロフェン、ケトプロフェン、および(S)‐ナプロキセンは、それらの水溶解度を100倍に改善することにより、それらのバイオアベイラビリティを増加させることを可能にした(Chantereau et al. Design of Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drug-Based Ionic Liquids with Improved Water Solubility and Drug Delivery. ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2019; 7: 14126-14134)。
【0011】
これらのAPIの他に、フェノール系酸化防止剤はすでにILへの変換に成功した。「Enhancing the antioxidant characteristics of phenolic acids by their conversion into cholinium salts」(ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2015; 3: 2558-2565)の研究において、抗酸化および抗炎症特性を有する5つのアニオン、すなわち、ガレート、カフェレート、バニレート、シリンゲート、およびエラゲートを、コリニウムカチオンと結合させた。得られた塩類は、対応するフェノール酸類よりも水溶性が有意に高かった(約3桁高い)。さらに、それらは一般的に、それらの前駆体よりも高い酸化防止および抗炎症活性、ならびに同等の細胞毒性および低い生態毒性プロファイルを示した。
【0012】
これらの有望な結果に基づき、本発明の概念の証明として、「Testing the application of new antioxidant chemical formulations to prevent neuronal degeneration」(Afonso, 2017, MSc thesis, University of Beira Interior)と題する研究に開示されているように、Nox's(ノックス)の非特異的阻害剤、アポシニン(Apo)を、コリニウムアポシネート([Chol][Apo])に再製剤(再処方)化した。再製剤化されたイオン液体は、水溶解度が50倍増加し、Apoの低い溶解度を克服した。PDモデルにおいて、ドーパミン作動性ニューロンにおける6OHDA誘発毒性の有意な減少により、PDとの関連における新製剤の神経保護能がさらに確認された。これらの有望な結果は、神経変性疾患およびPDにおいて、新しいILベースの医薬製剤の使用の可能性を強調するものである。しかしながら、Apoは、p47phoxおよびp67phoxとgp91phoxとの会合を遮断することにより、いくつかのNoxアイソフォームを阻害することが可能であるNADPHオキシダーゼ酵素の広範な阻害剤である(Stolk et al. Characteristics of the inhibition of NADPH oxidase activation in neutrophils by apocynin, a methoxy-substituted catechol. American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 1994; 11: 95-102)。1のアイソフォームを特異的に阻害しないため、研究目的でNADPHオキシダーゼ阻害剤として使用されることがほとんどである(Bedard & Krause. The NOX family of ROS-generating NADPH oxidases: physiology and pathophysiology. Physiological Reviews 2007; 87: 245-313)。この標的特異性の欠如は、治療アプローチとしての使用の強い制限である。なぜなら、それは、異なるセルタイプにおいて、複数のNoxアイソフォームの抑制により、望ましくない、制御できない生物学的効果をもたらす可能性があり、高いバイオアベイラビリティおよび有効性を示す特異的Nox阻害剤を開発する必要度を強調するからである。いくつかの病態に対してNoxを標的とすることの潜在的な治療的役割を考慮すると、それらの酵素に対する特異的阻害剤の合成が大きな注目を集めている。以前の研究(Bae et al. Synthesis and biological evaluation of 3-substituted 5-benzylidene-1-methyl-2-thiohydantoins as potent NADPH oxidase (NOX) inhibitors, Bioorganic & Medicinal Chemistry 2016; 24: 4144-4151)は、Nox1(4)を阻害するためのいくつかの3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン系化合物の製剤を報告した。3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)は、ショウジョウバエにおけるルシゲニンベース化学ルミネセンスアッセイを通してNox1とNox4の部分的阻害剤の有効な阻害剤であることを示した。
【0013】
[Chol][Apo]で以前に生成された知見は、PDの文脈におけるILの適用に関する概念の否定できない証拠を構築するのに役立ち、Noxの特異的阻害剤に対するアプローチを外挿することを可能にした。
【0014】
Nox1(4)特異的阻害剤である3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)は、刊行物「Synthesis and biological evaluation of 3-substituted 5-benzylidene-1-methyl-2-thiohydantoins as potent NADPH oxidase (NOX) inhibitors” (Bioorganic & Medicinal Chemistry 2016; 24: 4144-4151)に記載されており、PDの実験モデルにおいて、高い神経保護作用を示した(Cristovao et al. Nox1/Nox4 inhibitor protects dopaminergic neurons from degeneration: new candidate for Parkinson disease therapeutic? 14th International Conference on Alzheimer’s and Parkinson’s Diseases and related neurological disorders AD/PDTM 2019)。しかしながら、N1(4)inhは、緩衝液、エタノールおよびトリトン‐Xで構成される溶媒にのみ可溶性であり、それ自体がドーパミン作動性ニューロンに対して細胞毒性作用を有しており、神経変性疾患との関連において、この非常に有望な阻害剤の将来の治療戦略としての使用の可能性を排除する。
【0015】
技術水準に記載された問題の識別、並びに、それに取り組むためにとられたアプローチは、本発明が解決しようとする問題をよく説明する。
【0016】
文献KR20080051246(A)「Pharmaceutical composition for prevention of treatment of neurodegenerative disease and inhibition of NADPH OXIDASE」は、神経変性疾患の予防および治療に有用であり、ミクログリア減少毒性を介してドーパミン作動性ニューロンの死を防止することができる、フルオキセチンまたはノルフルオキセチンを含むNADPHオキシダーゼ阻害剤を指す。本発明は、本発明と同じ標的酵素についてであるにもかかわらず、本発明の阻害剤は、3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインをベースとするイオン液体であるため、異なる製剤を示す。
【0017】
以下の一連の文献は、化学分子または遺伝子を使用することにより、酸化ストレス予防を含む種々の病理学的細胞メカニズムの変調/阻害を介して、神経疾患を予防または治療することを目的としているが、医薬製剤も分子標的も本発明と同じではない。例えば、US2020289671(A1)‐Pharmaceutical Composition Comprising Aimp2-Dx2 For Preventing Or Treating Neuronal Diseases And Use Thereof;US2020385342(A1)‐Methods of Making Deuterium-Enriched N-acetylcysteine Amide (D-NACA) and (2R, 2R')-3,3'-Disulfanediyl BIS(2-Acetamidopropanamide) (DINACA) and Using D-NACA and DINACA to Treat Diseases Involving Oxidative Stress;WO2018129421(A1)‐A Promising Drug Candidate For Parkinson's Disease;US2013109714(A1)‐Neurodegenerative Disease Therapeutic Agent。
【0018】
文献CN111138376(A)‐3,5-Disubstituted Phenyl-1,2,4-Oxadiazole Derivative, And Preparation Method And Application Thereof は、3,5‐2置換フェニル‐1,2,4‐オキサジアゾール誘導体、並びに、その調製方法および用途を開示している。
【0019】
文献: WO2020205937(A1)‐Hyaluronic Acid Nanoparticles Comprising NADPH Oxidases Inhibitors And Uses In Treating CancerおよびUS2019048001(A1)‐Iodonium Analogs As Inhibitors Of NADPH Oxidases And Other Flavin Dehydrogenases; Formulations Thereof; And Uses Thereof despite comprehending NADPH oxidases inhibitors には、異なる処方および適用が含まれる。これらの場合、上記の文献は、癌治療に使用されるヒアルロン酸またはヨードニウム類似体などの異なるAPIを用いてNADPHオキシダーゼを阻害することを目的としている。当該文書は、我々の分子の使用、さらには神経変性疾患における使用にすら言及していない。
【0020】
以下に挙げる文献は、種々のNADPHオキシダーゼ阻害剤の種々の合成方法を、化学的または非化学的方法のいずれかを用いて記載し、代謝および神経学的障害のような広範囲の病理学を標的とすることを目的とする。それにもかかわらず、これらの阻害剤は、化学的および処方方法の両方において、我々の[Chol][N1(4)inh]とは異なる。NADPHオキシダーゼ酵素を標的とするにもかかわらず、それらは、本開示と比較するとき、阻害剤の点で分岐し、異なるNoxを使用し、多様な用途および処方を有する:例えば、US2020270214(A1)‐NADPH Oxidase Inhibitors and Uses Thereof;JP2020063283(A)‐Nox Inhibitor And Nfκb Inhibitor Including Methoxy Flavone;KR20200022193(A)‐Pharmaceutical composition for preventing or treating tuberculous pleural fibrosis, comprehending a different NOX。
【0021】
文献SG10201808940W(A)‐NOX Inhibitor And NFКB Inhibitor Containing Methoxyflavone aims at providing NOX inhibitors and NFKB inhibitors having superior actions, as well as agents for preventing or treating Nox- or NFicB-associated diseases that utilize such inhibitors。この目的のために、特定のメトキシフラボンを使用する。
【0022】
以下の文献は、PDを標的とするILベースの製剤を開示する:MX2016011152(A)‐Pramipexole-Containing Transdermal Patch For Treatment Of Neurodegenerative Disease, which discloses a different compound when compared to our disclosure and is not targeted to NOX’s;およびWO2010078258(A1)‐Compounds Comprising Two Or More Biologically Functional Ions And Method Of Treating Parkinson's Disease, which comprises an active compound totally different and with completely different therapeutic target from the one used in our disclosure。文献WO2010078258(A1)のILで使用されているAPIは、2‐(ジエチルアミノ)‐N‐(2,6‐ジメチルフェニル)アセトアミド(リドカイン)、(2S,3S)‐5‐[2‐(ジメチルアミノ)エチル]‐2‐(4‐メトキシフェニル)‐オキソ‐2,3,4,5‐テトラヒドロベンゾ[b][l,4]チアゼピン‐3‐イルアセテート、2‐(2,6‐ジクロロ‐3‐メチルフェニルアミノ)安息香酸(メクロフェナメート)、5‐エチル‐8‐オキソ‐5,8‐ジヒドロ‐[l,3]ジオキソロ[4,5‐g]キノリン‐7‐カルボン酸(オキソリネート)、および(2S,5R,6R)‐6‐((R)‐2‐アミノ‐2‐フェニルアセトアミド)‐3,3‐ジメチル‐7‐オキソ‐4‐チア‐l‐アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン‐2‐カルボン酸(アンピシリネート);一方、我々のものは3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインである。さらに、我々のILおよび製剤は、Nox1およびNox4アイソフォームを特に標的としている。
【0023】
技術水準における公知のソリューションは、本開示によって解決されるべき技術的課題を示す。
【0024】
これらの事実は、本開示によって対処される技術的課題を説明するために開示される。
【発明の概要】
【0025】
本開示は、特定のNOX阻害剤の新しいILベース製剤の開発に関する。それらの水系の溶媒への無視できる溶解度は、Noxを阻害することができるいくつかの化合物によって共有されている問題であり、この低い溶解度は、それらのバイオアベイラビリティに負の影響を与え、それらの有効性および治療可能性を低下させる。本開示は、水溶液中でのNox阻害剤の改善された可溶化を可能にし、従って、バイオアベイラビリティ、有効性および治療可能性を改善する、非毒性の代替製剤の開発を意図している。本開示の目的の1つは、神経疾患への適用のために、特定のNox阻害剤の溶解性およびその結果としてのバイオアベイラビリティおよび有効性を増大させることである。
【0026】
先行技術の欠点を考慮して、本発明の基礎となる技術的課題は、神経学的疾患への適用、特にパーキンソン病(PD)の予防、疾患進行を遅らせるための処置、または治療における使用のための、N1(4)inhのILベース製剤を開発することであった。
【0027】
Noxは、特定の抗酸化治療戦略のための理想的な標的であるので、本開示は、PDを含む、時間の経過に伴って神経変性疾患の進行を減少/停止することを目的とする新しい治療アプローチの開発に有用である。
【0028】
一実施形態では、N1(4)inhの新しいIL製剤は、以下の方法:(1)特異的阻害剤3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)のILベース製剤、すなわちコリニウム3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナート([Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh)への合成および化学的特性化、および(2)in vitroでのドーパミン作動性ニューロンにおけるその生物学的効果の評価を用いて開発された。
【0029】
【0030】
一実施形態では、阻害剤のIL製剤は、非改質阻害剤(non-reformulated inhibitor)(前駆体)と比較して、PDの文脈において高い溶解性、神経毒性、および高い神経保護ポテンシャルを示した。このように、本開示の化合物および製剤は、Nox阻害剤の水系の溶媒への溶解性の問題を克服し、その結果、PD進行を遅らせる神経保護療法としてのポテンシャルを増大させ、特異的抗酸化療法の分野における関連する進歩を示す。
【0031】
本開示の1つの態様は、ILおよび製剤へのNoxの特異的阻害剤、ならびに神経疾患、すなわちPDへのその治療的適用に関する。
【0032】
一実施形態では、本明細書に開示されている阻害剤は、NADPHオキシダーゼ酵素のアイソフォーム1および4に特異的である。従って、本開示は、神経学的障害に取り組むために使用される、すなわち、それが診断された後にPD進行を減少/停止させるために使用される、阻害によりNADPHオキシダーゼ1および4を特異的に標的とする新しい医薬製剤に関する。
【0033】
本開示の一態様は、式:
【化2】
のアニオンであって、Rはアルキル基またはシクロアルキル基である、アニオンと、
コリニウム(cholinium)、テトラルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、または1‐アルキル‐3‐メチルイミダゾリウムカチオンファミリーからなるリストから選択されるカチオンと、
を含むイオン液体に関する。
【0034】
一実施形態では、アニオンとカチオンのモル比は、1:2~2:1(mol:mol)、好ましくは1:1.5~1.5:1(mol:mol)の範囲である。
【0035】
一実施形態では、アニオンとカチオンのモル比は1:1(mol:mol)である。
【0036】
一実施形態では、RはC3~C7のシクロアルキル基である。
【0037】
一実施形態では、RはC3~C7からの非置換シクロアルキル基である。
【0038】
一実施形態では、Rはシクロヘキシル基である。
【0039】
一実施形態では、カチオンはコリニウムである。
【0040】
一実施形態では、化合物は、3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインまたは3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインである。
【0041】
本開示の別の態様は、本開示のイオン性塩の使用、好ましくは医薬品中のイオン液体および製剤の使用、または薬剤としての使用に関する。
【0042】
一実施形態では、本開示のイオン液体、好ましくはイオン液体および製剤(配合物)は、中枢神経系の疾患、障害または状態の予防または治療に使用することができる。
【0043】
一実施形態では、本開示のイオン液体および製剤は、神経変性、認知機能障害、認知症、または多系統萎縮症の予防または治療に使用することができる。
【0044】
一実施形態では、本開示のイオン液体および製剤、好ましくはイオン液体および配合物は、パーキンソン病の予防または治療に使用することができる。
【0045】
一実施形態では、本開示のイオン液体および製剤は、パーキンソン病の進行をスローダウンさせるまたは遅らせるために使用することができる。
【0046】
本開示の別の態様は、治療有効量の本開示のイオン液体および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0047】
一実施形態では、薬学的に薬学的に許容可能な担体は、生理食塩水緩衝液、PBS、水またはそれらの混合物である。
【0048】
一実施形態では、イオン液体の量は、0.005mM~10mM、好ましくは0.1~5mM、より好ましくは1~2mMの範囲である。
【0049】
一実施形態では、組成物は、注射可能な形態、鼻腔内投与形態、くも膜下腔内形態または脳室内形態であり、好ましくは、組成物は、鼻腔内形態、脳室内形態またはくも膜下腔内投与形態である。
【0050】
一実施形態では、組成物は、中枢神経系の神経変性疾患または障害を有する人に、好ましくは30日間以上、毎日投与することを含む。一実施形態では、投与量は1000mg/日以下、好ましくは0.05~1000mg/日の範囲、より好ましくは0.05~5mg/日の範囲、特に鼻腔内形態またはくも膜下腔の(脳室内)である。
【0051】
一実施形態では、毎日の投与形態は、本開示の組成物の医薬有効量を含む、錠剤、坐剤、アンプルまたは鼻腔内形態、またはクモ膜下腔内形態からなり、その全体は、デイリーレジメンにおいて単回投与として投与されることが意図されている。
【0052】
本開示はまた、以下の工程を含む、Nox1およびNox4(N1(4)inh)の特異的阻害剤の新規製剤の開発に関する:
1)特異的阻害剤[N1(4)inh]のIL系製剤への転換、すなわち、コリニウム3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントネート(thiohydantonate)および3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントネート(thiohydantonate)の混合物(1:1)([Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh、1:1)であって、以下の手順をを含む:
1a)ILアニオンとカチオンの選択。
1b)陽イオン源としてコリニウム塩、および、陰イオン源として3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)を用いたメタセシス反応による[Chol]2[N1(4)inh]の合成。
1c)核磁気共鳴(1H NMRおよび13C NMR)による[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhおよびN1(4)inhの純度のキャラクタリゼーション、水およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液への溶解度、熱重量分析(TGA)による熱安定性。
2)以下の手段による、ドーパミン作働性ニューロンにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的作用のin vitroおよびin vivoでの評価:
2a)不死化ラットドーパミン作動性神経細胞株(N27)における[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの細胞毒性の評価。
2b)in vitroモデルにおけるPDのドーパミン作動性神経保護能を評価することによる、PDの治療との関連における再形成の生物学的効果の評価
2c)マウスの黒質における[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh神経ドーパミン作働性毒性の評価。
2d)マウスおよびラットにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性の評価。
2e)PDのin vivoモデルにおいて、そのドーパミン作動性神経保護作用および運動機能障害の進行を予防するその能力を評価することにより、PDの治療との関連における再形成の生物学的効果の評価。
【0053】
一実施形態では、PDおよび他の神経疾患におけるNox酵素に由来する酸化ストレスの病理学的役割を考慮すると、これらの酵素の活性の阻害剤の使用は、時間の経過とともにこの疾患の進行の速度および障害を低下させることを目的とする将来の治療法の開発において主要な役割を果たす。しかしながら、これらの阻害剤の全てではないとしてもほとんどは、水溶液への溶解度が無視できる程度であり、そのため、バイオアベイラビリティが低いために効力が低下し、また、溶媒として有機溶媒を使用する必要性があり、その結果、高い細胞毒性を有する。さらに、これらの阻害剤の液状化合物への再調製は、鼻腔内投与にとって重要であり、血液脳関門(BBB)の高い選択性を回避し、脳(標的臓器)におけるそれらの濃度を可能にする。
【0054】
本開示はまた、神経疾患、特にパーキンソン病において治療薬として使用される、NADPHオキシダーゼ酵素の阻害剤(Nox)、特にNox1およびNox4に特異的な阻害剤(Nox1(4))の新しいILベースの製剤の開発に関するものである。
【0055】
本開示はまた、Nox1(4)の特異的阻害剤の新しいILベース製剤に関し、以下の工程を含む:
1)N1(4)inhのILベース製剤、すなわち、コリニウム酸3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナートおよび3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナート[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhへの変換であって、以下の手順をを含む:
1a)ILアニオンとカチオンの選択。
1b)[Chol]2[N1(4)inh]の合成。
1c)[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhおよびN1(4)inhの化学的キャラクタリゼーション、すなわち純度、溶解性および熱安定性。
2)in vitroおよびin vivoでの、ドーパミン作働性ニューロンにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的作用の評価であって、以下を含む:
2a)不死化ラットドーパミン作動性神経細胞株(N27)における[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの細胞毒性の評価。
2b)PDの治療に関連した再形成の生物学的効果の検証、in vitroモデルでのPDにおけるそのドーパミン作動性神経保護能力の評価。
2c)マウスの黒色皮下(SN)における、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh神経ドーパミン作働性毒性の評価。
2d)マウスおよびラットにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性の評価。
2e)PDのin vivoモデルにおいて、そのドーパミン作動性神経保護効果および運動機能障害の進行を予防するその性能を評価することにより、PDの治療との関連における再形成の生物学的効果の評価。
【0056】
一実施形態では、本方法の第1の部分に関して、カチオン源としてコリニウム塩を、アニオン源として3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)を用いた。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhをメタセシス反応により合成し、純度、熱安定性および溶解度の観点から特性化した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhおよびN1(4)inhの純度は、
1Hおよび
13C NMR(
図1~2)によって確認された。溶解度の結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhがその前駆体単独‐N1(4)inhよりも水およびPBSに溶けやすいことを明らかにしている(
図3~4)。熱安定性の結果から、規定された条件下では、製剤の分解温度は200℃であることが示されている(
図5)。室温(約23℃)では、ILベースの製剤は高粘性液体であり、その融解温度は室温以下であることを意味する。従って、ILベースの製剤は、良好に秩序化された結晶構造を示さず、固相製剤の多型に関連する課題を克服することを可能にする。
【0057】
一実施形態では、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的影響の評価に関して、得られた結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhへの特定のNox1(4)阻害剤の再製剤化(再フォーミュレーション)が、ドーパミン作動性神経細胞株N27細胞のバイアビリティの変化を引き起こさないことを開示し、これらの細胞に対して、細胞有害性の可能性がないことを示す(
図6)。そのドーパミン作動性神経保護能に関して、N27細胞を[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで前処理すると、6OHDAの神経毒性効果が大幅に抑制され、この神経保護効果は[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの合成に使用された陽イオンであるコリニウムで前処理しても促進されなかった(
図7)。さらに、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhによるN27細胞の前処理は、MPP+毒素の神経毒性作用を有意に予防することもでき、この神経保護作用は、塩化コリニウムによる前処理では促進されなかった(
図8)。6OHDAとMPP+は異なる細胞内病理学的機序を誘導することによりドーパミン作動性神経毒性を誘導するので、これらの結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhが2つの異なる毒素によって誘導される神経細胞死を防止することができるため、2つの異なる病理学的機序を調節することができるという指標である。これらのデータは、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを病理学的機序の観点から多因子性疾患の進行を止めるための治療法として用いることが目標であるため、重要である。
【0058】
一実施形態では、6OHDA10μgの線条体内注射により誘発したPDの動物モデルにおける[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhのドーパミン作動性神経保護能を評価した。
図9に示すように、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.2mg/kg/日の7日間右心室への注入は、マウスのSNにおいてドーパミン神経毒性を誘発しなかった。さらに、この用量の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhは、SNにおけるドーパミン作働性ニューロンの6OHDA誘発性変性を予防することができた(
図10)。
【0059】
一実施形態では、鼻腔内経路を介してマウスに投与した場合の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性を評価した。これらの投与はマウスにおいて毒性作用を誘発しなかった。
図11および12に示されるように、14日間の異なる用量のILベース製剤の1日あたりの鼻腔内投与は、動物の体重の変化(
図11)も運動能力の変化(
図12)も誘発しなかった。さらに、
図13に示すように、試験した高用量(0.16mg/kg/日)の1日あたりの投与は嗅覚機能障害を誘発しなかった。
【0060】
一実施形態では、脳室内経路を介してラットに投与した場合の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性を評価した。0.007mg/kg/日に暴露したラットに毒性影響は認められなかった。
図14および15に示されるように、動物の体重および運動能力の変化はそれぞれ観察されなかった。
【0061】
一実施形態では、鼻腔内経路を介してラットに投与した場合の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを毒性を評価した。これらの投与はラットにおいて毒性作用を誘発しなかった。
図16、
図17に示されるように、ILベース製剤を、1日あたり0.062mg/kg/日で30日間鼻腔内投与した場合、動物の体重の変化(
図16)や運動能力の変化は認められなかった(
図17)。さらに、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毎日の投与は、
図18に示されるように、嗅覚障害を誘発しなかった。
【0062】
一実施形態では、低用量(2.5mg/kg/日)のパラコート(PQ)へのラットの長期曝露によって誘発されたPDの動物モデルにおいて、脳室内経路を介して投与した場合のPD状況における運動機能障害を予防することができる[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護作用を評価した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.007mg/kg/日を30日間右心室に注入したところ、PQによって誘発される運動機能障害の進行を予防することができた(
図19、20および21)。
【0063】
一実施形態では、、ラットの低用量(2.5mg/kg/日)のパラコート(PQ)への長期曝露により誘発されたPDの動物モデルにおいて、鼻腔内経路により投与した場合にPD状況における運動機能障害を防止することができる[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護作用を評価した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.062mg/kg/日の30日間の投与は、PQにより誘発される運動機能障害の進行を予防することができた(
図22)。
【0064】
これらの結果は、ILベース製剤へのNox阻害剤の新しい処方がPDまたは他の神経病理学への新しい治療アプローチとして使用でき、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhがPDまたは他の神経病理学への新しい治療アプローチとして使用でき、これらの酵素が重要な病理学的役割を果たすことのよい指標である。
【0065】
以下の図は、開示を説明するための好ましい実施形態を提供するものであり、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、a)特異的Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)およびb)特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のIL製剤の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図2】
図2は、a)特異的Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)およびb)特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のIL製剤の
13C NMRスペクトルを示す。
【
図3】
図3は、Nox1(4)阻害剤N1(4)inhの水およびPBSへの溶解度を、そのILベース製剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)に対してmg/mLで示す。
【
図4】
図4は、Nox1(4)阻害剤N1(4)inhの水およびPBSへの溶解度を、そのイオン液体ベースの製剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)に対してmol/Lで示す。
【
図5】
図5は、熱重力解析(TGA)により評価した[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの分解温度を示す。
【
図6】
図6は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの2種の濃度がN27ドーパミン作動性ニューロン細胞の生存率に及ぼす影響を示している。(1)未処理細胞;(2)20μMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhにさらされた(expeosed)細胞;(3)30μMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhにさらされた(expeosed)細胞。
【
図7】
図7は、ドーパミン作動性神経細胞(N27)を[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで前処理すると、6OHDAの神経毒性作用が有意に抑制されることを示している。(1)未処理細胞;(2)20mMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhに曝露された細胞;(3)50mMの6OHDAに曝露された細胞;(4)50mMの6OHDAおよび20mMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhに曝露された細胞;(5)50mMの6OHDAおよび20mMのコリン‐クロリド(Choline-cloride)に曝露された細胞。
【
図8】
図8は、ドーパミン作動性神経細胞(N27)を[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで前処理すると、神経毒MPP+の神経毒性作用が有意に抑制されることを示す。(1)未処理細胞、(2)20mMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhに曝露した細胞、(3)10mMのMPP
+に曝露した細胞、(4)10mMのMPP
+および20mMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhに曝露した細胞、(5)10mMのMPP+および20mMコリン‐クロリドに曝露した細胞。
【
図9】
図9は、マウス黒質(SN)のドーパミン作働性ニューロンバイアビリティ(生存能)における、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを脳室内注入の効果を示す。(1)未処置マウス、(2)0.2mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)に7日暴露したマウス。
【
図10】
図10は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入が、パーキンソン病の動物モデルである6OHDAの静注によって誘導された黒質(SN)におけるドーパミン作動性ニューロンの死滅を防止したことを示す。(1)未処置マウス、(2)10mgの6OHDAに曝露したマウス、(3)10mgの6OHDAおよび0.2mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)に曝露したマウス。
【
図11】
図11は、0.02、0.04、0.08、0.16mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日2回、14日間の鼻腔内投与のマウス体重への効果を示す。
【
図12】
図12は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの(1)ビヒクル(溶媒)、(2)0.02、(3)0.04、(4)0.08、(5)0.16mg/kg/日の1日2回、14日間の鼻腔内投与のマウス運動能力への効果を示す。
【
図13】
図13は、0.16mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日2回、14日間の鼻腔内投与のマウス嗅覚機能への効果を示す。(1)ビヒクル(未処置群)、(2)0.16mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。
【
図14】
図14は、0.007mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の脳室内投与のラット体重への効果を示す。
【
図15】
図15は、0.007mg/kg/dayの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の脳室内投与のラット運動能力への効果を示す。
【
図16】
図16は、0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の鼻腔内投与のラット重量への効果を示す。
【
図17】
図17は、0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の鼻腔内投与のラットの運動能力に対する効果を示す。(1)ビヒクル(未処置群)、(2)0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。
【
図18】
図18は、0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の鼻腔内投与のラット嗅覚機能への効果を示す。(1)ビヒクル(未処置群)、(2)0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。
【
図19】
図19は、0.007mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の脳室内投与により、PDの動物モデルであるラットにおいてPQにより誘発される運動機能障害の進行を防止することを示す。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ投与群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共投与群。
【
図20】
図20は、0.007mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の脳室内投与により、PDの動物モデルであるラットにおいてPQにより誘発される移動距離の減少を防止することを示す。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ投与群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共投与群。
【
図21】
図21は、0.007mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の脳室内投与により、PDの動物モデルであるラットにおいてPQにより誘発される動物速度の低下が防止されることを示す。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ投与群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共投与群。
【
図22】
図22は、0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの1日1回、30日間の鼻腔内投与により、PDの動物モデルであるラットにおいてPQにより誘発される運動機能障害の進行を防止することを示す。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ投与群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共投与群。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本開示は、NADPHオキシダーゼ酵素(Nox)の特異的阻害剤、特にパーキンソン病(PD)または他の神経学的疾患における治療適用のためのNox1およびNox4のILベース製剤の開発に関する。使用したストラテジーは、Nox1(4)特異的阻害剤3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)を、コリニウム3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナートおよび3‐シクロヘキシル‐5‐(2、4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナート([Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh、1:1)を含む製剤に転換(コンバージョン)することからなる。
【0068】
本明細書は、PDおよび他の神経疾患との関連で使用される、Nox1(4)特異的阻害剤の、ILベース製剤、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhのへの転換を意味し、次の工程を含む:(1)特異的阻害剤N1(4)inhのILベース製剤、すなわち、コリニウム3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナートおよび3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントナート([Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh、1:1、mol:mol)への転換、であって、以下の手順を含む:a)ILカチオン源の選択とアニオン源の選択;b)カチオン源としてコリニウム塩およびアニオン源として3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)を用いたメタセシス反応による[Chol]2[N1(4)inh]の合成;c)核磁気共鳴(1H NMRおよび13C NMR)による[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh純度の特性化(キャラクタリゼーション);d)[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの水およびPBSへの溶解度の決定;e)熱重量分析(TGA)による[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの熱安定性のキャラクタリゼーション。(2)以下の手段による、in vitroでのドーパミン作動性ニューロンにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的影響の評価:a)不死化ラットドーパミン作動性神経細胞株(N27)における[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの細胞毒性の評価;b)in vitroモデルでのPDにおける、そのドーパミン作動性神経保護能の評価による、PDの治療における再製剤化(reformulation)の生物学的効果の評価。
【0069】
特に明記しない限り、本明細書の実施例で使用される[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh混合物は、1:1(mol:mol)[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの割合であった。
【0070】
本開示では[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhは、[Chol]2[N1(4)inh]+Nox1(4)inhまたは[Chol]2[N1(4)inh]+Nox1(4)とも呼ぶことができる。
【0071】
特異的阻害剤N1(4)inhのILベース製剤への変換:
一実施形態では、ILベースの製剤の合成は、成分、すなわち、カチオン源およびアニオン源の選択から始まる。
【0072】
一実施形態では、カチオン源は、コリニウム塩、好ましくは、コリニウム重炭酸塩のクラスに属すべきである。
【0073】
一実施形態では、アニオン源は、3‐置換5‐ベンジリデン‐1‐メチル‐2‐チオヒダントインを系化合物の群に属すべきであり、好ましくは、3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)であるべきである。
【0074】
一実施形態では、ILベースの製剤([Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh)を、最小量の絶対エタノール中で調製した、モル比1:1のコリニウム重炭酸塩(水中80%(m/v))およびN1(4)inh溶液のメタセシス反応(複分解反応)によって合成した。
【0075】
一実施形態では、N1(4)inhは、暗いおよび冷却条件下(~5℃の氷浴を用いて)で、連続的に撹拌しながら、コリニウム重炭酸塩溶液に滴下的に添加することによって混合された。
【0076】
一実施形態では、反応混合物は、2時間連続撹拌下で~5℃にさらに保たれた。
【0077】
一実施形態では、過剰の溶媒および水は、完全な乾燥(IL含有バイアルを氷冷水浴(~10℃)に維持した状態で、約2~3時間の窒素ガスの流れ)まで、窒素ガスの連続的な流れの下で除去された。
【0078】
一実施形態では、合成された[Chol]2[N1(4)inh]およびN1(4)inhを含む混合物を最終的に氷冷水浴から収集し、乾燥、冷却および暗条件下で保存した。
【0079】
一実施形態では、[Chol]
2[N1(4)inh]およびN1(4)inhの純度は、それぞれ、
図1および
図2に開示されているように、
1H NMRおよび
13C NMRによって評価された。
【0080】
一実施形態では、得られたNMRスペクトルは、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhが正常に合成され、それが純粋であることを確認することを可能にした。
【0081】
一実施形態では、水およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液中の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh溶解度を測定した。
【0082】
一実施形態では、溶質N1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhを含む混合物を、一定容量(500μL)以上の水およびPBS溶液に添加した。これらの混合物を、Eppendorf Thermomixer Comfort機器を用いて、37℃、一定の攪拌下1150rpm、および最低72時間インキュベートした。このプロセスを通して、必要に応じて、すなわち溶液飽和に至るまで、溶質を混合物に添加した。すべての試料をシリンジフィルター(0.45mm)を用いて濾過し、可能な懸濁固体粒子を除去した。
【0083】
一実施形態では、N1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]の定量は、416nmと480nm波長で、それぞれ、UV分光光度法(SYNERGY|HT microplate reader, BioTek)を用いてUV分光法によって行った。PBSと定量法の干渉も確認し、ブランク対照試料を常に使用した。
【0084】
一実施形態では、混合物[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの水への溶解度は0.405±0.053mg/mLであり、これはN1(4)inh単独(0.011±0.002mg/mL)よりも36高い。ILベースの製剤の溶解度の増加もPBSにおいて顕著であり、21倍の増加(0.008±0.001mg/mLから0.168±0.002mg/mLへ)が認められた(
図3)。mol/Lで提供された溶解度の増加についても同様の結果が得られた(
図4)。
【0085】
これらの結果は、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhへのN1(4)inhの再製剤化(reformulation)が、Noxの特異的阻害剤に関連する最も重要な問題の1つ、すなわち低溶解度を克服し、PDおよび他の神経疾患に関連して使用されるこの新しい再製剤化の可能性を強化することを明らかに示した。
【0086】
一実施形態では、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの分解温度は熱重量分析(TGA)によって評価され、その結果は、
図5に開示されるように、混合物が200℃まで熱的に安定であることを開示している。
【0087】
(2)in vitroでのドーパミン作働性ニューロンにおける[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的作用の評価
一実施形態では、不死化ラットドーパミン作動性神経細胞株(N27)における[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの細胞毒性を評価した。
【0088】
細胞を20および30μMの[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhまたは20μMの塩化コリニウム(cholinium chloride)に曝露した。塩化コリニウムを生理食塩水に溶解し、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhをPBS 1x(リン酸塩‐生理食塩水緩衝液)に溶解した。
【0089】
細胞を刺激下で24時間保持し、細胞生存性(セルバイアビリティ)をCCK‐8キット(Cell Counting Kit-CCK-8; Dojindo Molecular Technologies)を用いて評価した。
【0090】
[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhは、未処理細胞(CTR
図6(1))と比較して[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(20μM
図6(2)または30μM
図6(3))に曝露された培養において、細胞生存率の間に統計的有意差が観察されなかったことから、混合物の20または30μMに曝露されたとき、N27ドーパミン作動性細胞に対して毒性作用を示さなかった。
【0091】
一実施形態では、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhのドーパミン作動性神経保護能を、in vitorモデルにおいてPDで評価した。
【0092】
神経保護作用がILベース製剤ではなくコリニウム塩によるものである可能性を除外するために、20μMの[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhまたは20μMの塩化コリニウムを用いて神経保護作用を評価した。
【0093】
ニューロトキシン(神経毒)6‐ヒドロキシドーパミン(6OHDA)および1‐メチル‐4‐フェニルピリジニウム(MPP+)を、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhまたは塩化コリニウムの後に個別に2時間30分後に添加し、刺激を24時間維持した後、CCK‐8キットを用いて細胞生存性を評価した。
【0094】
[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhのワーキング濃度は、非再製剤化阻害剤(N1(4)inh)で以前に得られた結果に基づいて、20μMとした。
【0095】
一実施形態では、6OHDAで処理した細胞の状態を比較すると、ドーパミン作動性ニューロンの生存率が45%低下することが観察され、これは対照条件(CTR(1))(
図7)とは統計的に異なる。50μMの6OHDAへの曝露前の2.5時間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhによる前処理は、に毒素誘発性神経毒性を防止し、CTR対6OHDA +[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの条件の間で細胞生存率値を比較した場合、統計的有意差はなかったが、後者と6OHDA条件のみの間ではむしろ有意差があった(
図7)。
【0096】
一実施形態では、6OHDAによって誘導されるN27のバイアビリティの低下は、20μMの塩化コリニウムによる前処理によって妨げられないことも
図7に結果が示されており、これは、上述した[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの保護作用が、Nox1阻害剤アニオンの特異的有効性によるものであり、製剤中のコリニウムの存在によるものではないことを示している。
【0097】
一実施形態では、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhは、このニューロトキシン(神経毒)に曝露されたN27細胞バイアビリティの45%の喪失を有意に抑制したことから、MPP+ドーパミン作動性神経毒性の予防においても神経保護作用を果たしている(
図8)。6OHDAで確認されたように、塩化コリニウムによる前処理はMPP+に対して何ら保護作用を示さず、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの存在下で観察される保護作用は、阻害剤の作用から生じ、コリニウムの作用からではないことが強調された(
図8)。
【0098】
次に、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生物学的影響をin vivo(生体内)で評価した。すべての動物実験は、施設内の動物飼育場、国および欧州共同体の規則(86/609/ECC;2010/63/EU)に従って実施した。
【0099】
最初に、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)の毒性を、2つの異なる投与経路:1)0.2mg/kg/日の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh、7日間、脳室内注入、2)0.16、0.08、0.04、または0.02mg/kg/日の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh、14日間、1日2回鼻腔内投与、を用いて、健康なマウスにおいて評価した。
【0100】
一実施形態では、8~12週齢の雄型C57BL/6マウスを、水および食物に自由にアクセスできる12時間の光/暗サイクルの下で、温度/湿度制御環境中に収容した。1)マウスを、ケタミン(マウス重量の1kgあたり0.67mL)およびキシラジン(マウス重量の1kgあたり0.33mL)入り生理食塩水で腹腔内(i.p.)注射して麻酔した後、デジタル定位フレーム(51900 Stoelting)に入れた。いったんマウス頭蓋骨が露出され、デジタル座標システムを用いて、注入部位をブレグマ点(bregma point)でゼロに設定して決定した。0.2mg/kg/日の用量の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)の送達は、Alzetカテーテル(ref. Brain infusion Kit 3)に接続されたAlzet浸透圧ポンプ(ref. 1007D)を用いて、座標:内側(medial)‐外側(lateral)(ML):‐1.1mm;前側‐後側(AP):0.5mm、および背腹側(DV):‐2.5で実施された、7日間のその直接心室内注入によって実施した。7日目に、ケタミン(マウス重量の1kgあたり0.67mL)およびキシラジン(マウス重量の1kgあたり0.33mL)入り生理食塩水で腹腔内(i.p.)注射し、最初に生理食塩水で、次に緩衝ホルマリン(実験エンドポイント)で経心臓潅流した後、動物を麻酔した。脳を液体窒素で凍結し、‐80℃に保った。その後、脳を理想的な切断温度(OCT)のゲルに組み込み、クライオスタット(Leica CM 3050S、Leica Microsystems)で切断した。前極(front pole)から中脳末端までの厚さ30μmの冠状面(coronal section)を‐20°Cで採取した。各動物のSTおよびSNに対応する切片を採取し、30%グリセロール(v/v)および30%(v/v)エチレングリコール入りリン酸緩衝液(PB)の凍結保存溶液を含む、フリーフローティング24ウェルプレートコンパートメント(Orange Scientific)に順次保存した。特異的細胞マーカーチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対して免疫陽性のニューロンの立体的計数によって黒質(SN)におけるドーパミン作動性ニューロンの数を評価するために、後の免疫組織化学での使用のために適切に同定されたプレートを‐20℃に維持した。
図9に示した結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの投与が[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.2mg/kg/日の脳室内注入の7日後に黒質(SN)におけるドーパミン作動性(TH+)ニューロンの数を有意に減少させなかったことを示した。ILベース製剤の非毒性プロファイルを示す。2)マウスに鼻腔内投与した場合の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの一般的な推定毒性を評価するために、3~4%(v/v)イソフルランを4分間吸入して全身麻酔を誘導し、マウスに1日2回、14日間、4つの異なる用量(0.16、0.08、0.04または0.02mg/kg/日)の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを鼻腔内投与できるようにした。インラインで、鼻を高くして仰向けに横たわっているマウスに、マウス体重30g当たり6μLの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを50μLのマイクロリットルシリンジ(Hamilton(登録商標)、米国)に取り付けたポリウレタンカテーテル(Introcan Safety(登録商標)、24G、0.7×19 mm)を用いて注入した。カテーテルを鼻孔の1つに深さ約0.3mm挿入し、鼻腔のルーフに向かって製剤を送達できるようにした。動物は、ILベース製剤が気道に入ることを防止し、鼻腔により長く留まるように、起き上がるまで上記の位置に保たれた。初回投与日を1日目とした。運動協調、バランスおよび握力を、マウスロータロッド装置モデル47600(Ugo Basile, Comerio, Italy)を用いて分析した。すべてのマウスをロータロッドで予備訓練し、学習し、一貫した性能に達した。訓練は、初回投与の前に2日間連続で実施し、各4日目の試験試行を評価し、各試行は5分間継続した。マウスは1日目に12RPM(固定モード)で訓練し、24RPM(固定モード)で2回のテストトライアル、4~40RPM(加速モード)で実施された。各試験の間の約30分間、動物を休ませた。ロータロッド試験を加速プロトコル(4~40RPM)下で5分間実施し、落下までの待機時間(待ち時間)を特定のソフトウェアを用いて記録した。トライアルは、マウスが落下したとき(タイマーを自動的に停止するスイッチを起動したとき)、または5分が経過したときに停止した。ストレスと疲労を軽減するために、各動物に約30分間の試験間期間を設けた4つの独立した試験を実施した。嗅覚機能を調べるために、食品発見試験(FFT)嗅覚パラダイムを行った。マウスは、試験前16時間、食物から制限された。試験日に、動物は、30~40分間(水なし、食物なし)の習慣化のために、ケージ全体に均等に、約4cmの清潔な床敷きを有する、フィルター上蓋のみの清潔なケージに入れた。慣れの後、動物は自宅のケージに戻された。そして、1つの食物ペレットをケージの片側に埋め、床敷きで覆った。試験を開始するために、埋設ペレットの反対側に動物を置き、タイマーを開始し、上蓋を置いた。動物がペレットの覆いを取り外し、それを食べ始めたとき、タイマーは止められた。動物が5分以内にペレットを見つけられなかった場合、試験は5分のスコアで終了した。試験終了後、動物はホームケージに戻された。要約すると、マウスに鼻腔内経路で投与した[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性は、動物の体重、運動能力、および食物ペレットを見つける能力を分析することによって評価した。インラインで、マウスを14日間、毎日体重測定し、14日目にロータロッド運動挙動アッセイを行い、14日目に嗅覚試験を行った。
図11、12および13に示されるように、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを鼻腔内経路で投与したマウスでは、体重、モータおよび嗅覚能力の変化は観察されず、このことは、ILベース製剤の非毒性プロファイルを強化した。
【0101】
第二に、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの毒性を、2つの異なる投与経路を用いて、健常ラットにおいてを評価した:1)30日間の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.007mg/kg/日の脳室内注入、および、2)30日間の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.062mg/kg/日の鼻腔内投与。
【0102】
一実施形態では、8~12週齢の雄ウィスターラットを、水および食物に自由にアクセスできる12時間の光/暗サイクル下で、温度/湿度制御環境中に収容した。1)ラットを、ケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)入り生理食塩水中を腹腔内(i.p.)注射して麻酔した後、デジタル定位フレーム(51900 Stoelting)に入れた。一旦、ラット頭蓋を曝露し、デジタル座標システムを用いて、注入部位をブレグマ点でゼロに設定して決定した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)の送達を0.007mg/kg/日の用量で、30日間の直接脳室内注入により、Alzetカテーテル(Ref. Brain infusion Kit 2)に接続したAlzet浸透圧ポンプ(ref. 2004)を用いて、内側‐外側(ML):1.5mm;前側‐後側(AP):‐1.0mmおよび背腹(DV):‐4.0の座標で実施した。毒性は、0日目と30日目の動物の体重と21日目の行動運動能力を分析することにより評価した。ラットロータロッド装置モデル47700(Ugo Basile, Comerio, Italy)を用いて、運動協調、バランスおよび握力を分析した。すべてのラットをロータロッドで予備訓練し、学習し、一貫した性能に達した。訓練は2日連続で実施し、各4日目にテストトライアルを評価し、各試行は5分間継続した。ラットを最初に12RPM(固定モード)で訓練し、24RPM(固定モード)で2回のテストトライアルし、次に4~40RPM(加速モード)で別の2回のトライアルをした。各トライアル間の約30分間、動物を休ませた。ロータロッド試験を加速プロトコル(4~40RPM)下で5分間実施し、落下までの待機時間を特定のソフトウェアを用いて記録した。トライアルは、マウスが落下したとき(タイマーを自動的に停止するスイッチを起動したとき)、または5分が経過したときに停止した。ストレスと疲労を軽減するために、各動物に約30分間のトライアル間の期間を設けた4つの独立した試験を実施した。
図14および15に示された結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの投与が、体重および運動能力の有意な変化を誘発せず、ILベース製剤の非毒性プロファイルを示した。2)ラットに[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを鼻腔内経路で投与したときの一般的な推定毒性を評価するために、3~4%(v/v)イソフルランの4分間の吸入により全身麻酔を誘導し、1日1回、14日間ラットに0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを鼻腔内投与することを可能にした。インラインで、鼻を高くして仰向けに横たわっているラットに、ポリウレタンカテーテル(Introcan Safety(登録商標)、24G、0.7×19 mm)を用いて、50μLのマイクロリットルシリンジ(Hamilton(登録商標)、米国)入り[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhをラットの体重260g当たり40μLで注入した。カテーテルは、約1.7mmの深さで左右の鼻孔に挿入され、鼻腔の屋根に向かって製剤の送達を可能にした。動物は、ILベースの製剤が気道に入ることを防止し、鼻腔により長く留まるように、起き上がるまで上記の位置で飼育した。ラットロータロッド装置モデル47700(Ugo Basile, Comerio, Italy)を用いて、運動協調、バランスおよび握力を分析した。すべてのラットをロータロッドで予備訓練し、学習し、一貫した性能に達した。訓練は2日連続で実施し、各4日目に試験試行を評価し、各試行は5分間継続した。ラットを最初に12RPM(固定モード)で訓練し、24RPM(固定モード)で2回のテストトライアルし、次に4~40RPM(加速モード)で別の2回のトライアルをした。各試験間の約30分間、動物を休ませた。ロータロッド試験を加速プロトコル(4~40RPM)下で5分間実施し、落下までの持続時間を特定のソフトウェアを用いて記録した。トライアルは、マウスが落下したとき(タイマーを自動的に停止するスイッチを起動したとき)、または5分が経過したときに停止した。ストレスと疲労を軽減するために、各動物に約30分間の試験間の期間を設けた4つの独立した試験を実施した。嗅覚機能を調べるために、食品発見試験(FFT)嗅覚パラダイムを行った。ラットは、試験前16時間、食物から制限された。試験日に、動物は、30~40分間(水なし、食物なし)の習慣化(慣れ)のために、ケージ全体に均等に、約4cmの清潔な床敷きを有する、フィルター上蓋のみの清潔なケージに入れた。習慣化の後、動物は自宅のケージに戻された。そして、1つの食物ペレットをケージの片側に埋め、床敷きで覆った。試験を開始するために、埋設ペレットの反対側に動物を置き、タイマーを開始し、上蓋を置いた。動物がペレットの覆いを取り、それを食べ始めたとき、タイマーは止められた。動物が5分以内にペレットを見つけられなかった場合、試験は5分のスコアで終了した。試験後、動物はホームケージに戻された。全般的に、毒性は、ラットの体重、行動運動能力、ケージに隠され食物ペレットを見つける能力を分析することによって評価した。インラインで、ラットを30日間、毎日軽量し、30日目にロータロッド運動挙動アッセイを行い、30日目に嗅覚試験を行った。
図16、
図17および
図18に示すように、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを鼻腔内投与したラットでは、体重、運動能力および嗅覚能力にそれぞれ変化は認められず、ILベース製剤の非毒性プロファイルが強化された。
【0103】
一実施形態では、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhのin vivo毒性に関連して得られた全体的な結果は、ILベースの製剤が脳室内経路を介して投与されても鼻腔内経路を介して投与されても毒性がないことを証明する。
【0104】
その後、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護能を、6OHDAの脳内注射によって誘導されたPDと慢性低用量パラコート(PQ)への曝露によって誘導されたPDの2つのin vivoモデルで評価した。
【0105】
一実施形態では、脳室内注入経路を介して投与した場合の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生体神経保護作用を、6OHDAの脳内注入によって誘導されたPDに対するマウスモデルで評価し、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの数を計数した。
【0106】
一実施形態では、雄C57BL/6マウスを麻酔し、デジタル定位フレームに入れた。いったんマウス頭蓋骨を露出させ、デジタル座標システムを用いて、注射部位および注入部位を、ブレグマ点でゼロに設定した。このことに関して、各動物の右線条体(ST)に6‐OHDA(10μg/2μLのアスコルビン酸0.1% v/v)の注射を、座標:内側‐外側(ML):‐2mm;前側‐後側(AP):0.6mm;背腹(DV):‐3.0mmを用い、ハミルトンシリンジを0.2μL/分の速度で使用した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.2mg/kg/日の送達は、上記のように行った。7日目に、ケタミン(マウス体重あたり0.67mL/kg)およびキシラジン(マウス体重あたり0.33mL/kg)入り生理食塩水を腹腔内(i.p.)注射して動物を麻酔し、最初に生理食塩水で、次に緩衝ホルマリン(実験エンドポイント)で経心臓潅流した。脳を液体窒素で凍結し、‐80℃に保った。その後、脳を理想的な切断温度(OCT)のゲルに組み込み、クライオスタット(Leica CM 3050S、Leica Microsystems)で切断した。前頭極(front pole)から中脳末端までの厚さ30μmの冠状断を‐20°Cで採取した。各動物のSTおよびSNに対応する切片を採取し、30%(v/v)グリセロールおよび30%(v/v)エチレングリコール入りリン酸緩衝液(PB)の凍結保存液を含む、フリーフローティング24ウェルプレートコンパートメント(Orange Scientific)に順次保存した。プレートは、TH+ニューロンの立体的計数によってSN中のドーパミン作動性ニューロンの数を評価するために、後の免疫組織化学での使用のために適切に同定された‐20℃に保たれた。2つの実験群を用いた:1)右線条体に6‐OHDAを注入し、左線条体に生理食塩水(0.9% m/v NaCl)を注入したマウス、2)右線条体に6‐OHDAを注入し、左側に生理食塩水を注入し、側脳室に[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを注入したマウス。生理食塩水を注入した半球は、第1群の6OHDAと第2群の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhについての対照とした。第2群では、脳室内および定位手術が同日に実施された。
図10に示すように、6‐OHDAへの曝露は、対照群と比較した場合、SNドーパミン作動性ニューロン数の45%の統計的に有意な減少を誘導した(
図10、(1)対(2))。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhのドーパミン作働性神経保護効果に関しては、マウスSNにおいて、ILベース製剤の存在が、6‐OHDAによって誘発されるSNドーパミン作働性ニューロン変性の37%を阻止することから、神経保護性能を有することが結果に示された(
図10、(3)対(2))。
【0107】
一実施形態では、脳室内注入経路を介して投与した場合の[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生体神経保護作用を、行動機能障害の進行の分析により、低用量PQへの曝露によって誘発されたPDのラットモデルにおいて評価した。このモデルでは、動物を30日間(4週間)毒素に曝露し、その後さらに30日間生存させて病状を進行させる(計8週間)。[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの投与は、脳室内または鼻腔内経路によるPQへの最初の30露光後に開始し、2回目の30日間持続した。8週目に動物を安楽死させた。
【0108】
一実施形態では、雄Wistarラット8~12週齢を、水および食物に自由にアクセスできる12時間の光/暗サイクル下で温度/湿度制御環境下に収容し、浸透圧ミニポンプ(Alzet Durect, Cupertino, CA)を用いて、2.5mg/kg/日の用量で0.25μL/hrの流体送達速度で4週間、PQの皮下慢性投与を行った(Alzet model 2004, large pumps)。対照群には、PQを溶解するために用いたビヒクルである滅菌生理食塩水を充填したミニポンプを埋め込んだ。ラットにケタミン(90mg/kg)とキシラジン(10mg/kg)を腹腔内(i.p.)注射で麻酔し、ポンプを背部、肩甲骨(背板肩甲部)のわずか後方に皮下に移植した。PQに曝露した4週間後、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの心室内注入を開始し、さらに4週間持続した。実験パラダイムは合計8週間、最初の4週間はPQ暴露、最後の4週間はILベース製剤投与である。そのラットを麻酔し、デジタル定位フレーム(51900 Stoelting)に入れた。一旦、ラット頭蓋を曝露し、デジタル座標システムを用いて、注入部位をブレグマ点でゼロに設定して決定した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(1:1)を0.007mg/kg/日の用量の送達を、さらに4週間(30日間)の間に直接脳室内注入により送達し、これは、Alzetカテーテル(Ref. Brain infusion Kit 2)に接続したAlzet浸透圧ポンプ(ref. 2004)を用いて、内側‐外側(ML):1.5mm;前‐後(AP):‐1.0mmおよび背腹(DV):‐4.0の座標で実施した。脳室に注入したときのILベース製剤の神経保護機能を評価するために、行動機能を評価した。ラットロータロッド装置モデル47700(Ugo Basile, Comerio, Italy)を用いて、運動協調、バランスおよび握力を分析した。すべてのラットをロータロッドで予備訓練し、学習し、一貫した性能に達した。訓練は2日連続で実施し、各4日目にテストトライアルを評価し、各トライアルは5分間継続した。ラットを最初に12RPM(固定モード)で訓練し、24RPM(固定モード)で2回のテストトライアルし、次に4~40RPM(加速モード)で別の2回のトライアルをした。各トライアル間の約30分間、動物を休ませた。ロータロッド試験を加速プロトコル(4~40RPM)下で5分間実施し、落下までの待機時間を特定のソフトウェアを用いて記録した。トライアルは、マウスが落下したとき(タイマーを自動的に停止するスイッチを起動したとき)、または5分が経過したときに停止した。ストレスと疲労を軽減するために、各動物に約30分間のトライアル間の期間を設けた4つの独立した試験を実施した。オープンフィールドテストを用いて、探索行動と一般活動を測定した。動物を試験室に搬送し、試験前に30分~1時間、攪乱せずに放置した。アリーナの周りにはビーム破断システムがあり、アリーナ内の動物の動きによって中断される。この情報は、特定のソフトウェアで処理され、距離、速度、リア(rear)などのいくつかのパラメータを分析し、センターで入力することができる。各動物を長方形のアリーナの中心に置き、10分間自由に探索させた。タイマーは、動物がアリーナに置かれたのと正確に同時に開始された。操作者は部屋を出た。各動物の間にアリーナを70%(v/v)エタノールで拭き、次の動物を置いた。すべての挙動試験は8週目に実施した。提示された結果は、脳室内への[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh投与は、運動機能障害(
図19)、並びに、PQにより誘導される移動距離(
図20)と速度(
図21)の低下を有意に予防したことを示した。これらは、ILベース製剤がPDに関連する運動機能障害の進行を低下させることが可能であることを強調する。
【0109】
図19に示されているように、PQへの曝露は、対照群と比較して、PQに曝露された動物の転倒潜伏期間を統計的に有意に43%短縮させた(
図19、(2)対(1))。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護作用については、結果は、PQのみに曝露された動物と比較して、PQに曝露された動物の転倒潜伏期間が37%増加したことから、運動機能障害の発症を防ぐ能力があることを示している(
図19、(3)対(2))。
【0110】
図20と
図21に示したラットの移動距離と速度の結果については、PQは移動距離の55%の低下(
図20、(2)対(1))と速度の50%の低下(
図21、(2)対(1))を誘導した。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護作用については、結果は、PQのみに曝露された動物と比較して、PQに曝露された動物の移動距離が50%(
図20、(3)対(2))増加し、速度が37%(
図21、(3)対(2))増加したことから、運動機能障害の発症を防ぐ能力があることを示している。
【0111】
一実施形態では[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの生体神経保護作用を、鼻腔内経路を介して投与した場合に、ラットモデルにおいて、低用量の慢性投与のPQへの曝露によって誘発されるPDについて評価し、行動機能障害の進行の分析を行った。このモデルでは、動物を30日間(4週間)毒素に曝露し、その後さらに30日間生存させて病状を進行させる(計8週間)。[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの投与は、脳室内または鼻腔内経路により、PQへの最初の30回曝露後に開始し、2回目の30日間続けた。8週目に動物を安楽死させた。
【0112】
一実施形態では、浸透圧ミニポンプ(Alzet Durect, Cupertino, CA)を用いて、2.5mg/kg/日の用量で、0.25μL/hrの流体送達速度で、4週間(Alzet model 2004, large pumps)、8~12週齢雄WistarラットをPQの皮下慢性投与に供した。対照群には、PQを溶解するために用いたビヒクルである滅菌生理食塩水を充填したミニポンプを埋め込んだ。ポンプはケタミン(90mg/kg)とキシラジン(10mg/kg)で誘発した麻酔下で、背部、肩甲骨(背板肩甲部)のわずか後方の皮下に移植した。PQに曝露した4週間後に、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与を開始し、さらに4週間にわたって毎日投与を行った。実験的パラダイムは合計8週間、最初の4週間はPQ曝露、最後の4週間はILベースの製剤投与である。全身麻酔は3~4%(v/v)イソフルランを4分間吸入により誘発し、ラットに0.062mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回、追加の4週間(30日間)鼻腔内投与した。インラインで、ラットは鼻を高くして仰向けに横たわらせて配置し、50μLのマイクロリットルシリンジ(Hamilton(登録商標), USA)に取り付けたポリウレタンカテーテル(Introcan Safety(登録商標)、24G、0.7×19 mm)を用いて、ラットの体重260g当たり40μLの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで注入した。カテーテルは、約1.7mmの深さで左右の鼻孔に挿入され、鼻腔の屋根に向かって製剤の送達を可能にした。動物は、ILベースの製剤が、気道に入るのを防止し、鼻腔に長く留まるように、起き上がるまで上記の位置を維持した。以下の実験群を用いた:1)生理食塩水に曝露したラット(対照群);2)PQに曝露したラットおよび3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhに曝露したラット。鼻腔内経路で投与した場合のILベース製剤の神経保護機能を評価するために、行動機能を評価した。ラットロータロッド装置モデル47700(Ugo Basile, Comerio, Italy)を用いて、運動協調、バランスおよび握力を分析した。すべてのラットをロータロッドで予備訓練し、学習し、一貫した性能に達した。訓練は2日連続で実施し、各4日目に試験トライアルを評価し、各トライアルは5分間継続した。ラットを最初に12RPM(固定モード)で訓練し、24RPM(固定モード)で2回のテストトライアルし、次に4~40RPM(加速モード)で別の2回のトライアルをした。各トライアル間の約30分間、動物を休ませた。ロータロッド試験を加速プロトコル(4~40 RPM)下で5分間実施し、落下までの待機時間を特定のソフトウェアを用いて記録した。トライアルは、マウスが落下したとき(タイマーを自動的に停止するスイッチを起動したとき)、または5分が経過したときに停止した。ストレスと疲労を軽減するために、各動物に約30分間のトライアル間の期間を設けた4つの独立したトライアルを実施した。行動試験は8週目に実施した。結果は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与は運動機能障害を有意に抑制したことを示す(
図22)。これらは、ILベース製剤がPD状態における運動機能障害の進行を低下させることが可能であることを強調する。
【0113】
図22に示されているように、PQへの曝露は、対照群と比較して、PQに曝露された動物の転倒潜伏期間を統計的に有意に47%短縮させた(
図22、(2)対(1))。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの神経保護作用については、結果は、PQのみに曝露された動物と比較して、PQに曝露された動物の転倒潜伏期間が40%増加したことから、運動機能障害の発症を防ぐ能力があることを示している(
図22、(3)対(2))。
【0114】
一実施形態では、これらの結果は、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhがその不溶分前駆体とは異なり毒性ではないが、PDとの関連においてN1(4)inh単独によって発揮されるのと同じ神経保護効果を発揮することを証明する。
【0115】
一実施形態では、これらの結果は、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhが、PDとの関連において運動機能障害の進行を減少させることを証明する。
【0116】
これらの結果は、本開示が、毒性分子を非毒性混合物に変換することを可能にすることを明確に示す。この再製剤化(reformulation)は前駆体の有効性を妨げず、PDに関連する病理学的状態の進行を減少/停止させ、時間の経過に伴う障害の程度の速度増加を減少させる、差別化治療アプローチとして、それらの潜在的利用可能性を根本的にトランスフォームした。
【0117】
本開示は、症状を調節する現在利用可能な治療法が、より長い時間、よりコンスタントに効果をもたらし、患者およびその家族のクオリティオブライフを大幅に増加させるとともに、疾患が有する負の社会経済的影響を減少させることを可能にする。
【0118】
実施例:中枢神経系(CNS)において、酸化ストレスは、疾患およびエイジングの発生に対する主な寄与因子の1つである。最近の研究は、その唯一の機能が活性酸素種(ROS)を産生することである、NADPHオキシダーゼ(Nox)酵素のいくつかのアイソフォームがCNSにもあることを明らかにしている。そこでは、それらは、ROS依存性細胞機構の調節に重要な役割を果たしているが、高いレベルである場合には、細胞機能不全および細胞死をもたらし、神経変性疾患の病理学的過程に特徴的なエイジングプロセスを加速する。
【0119】
以前の研究は、PD、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および脳卒中の場合と同様に、各種神経疾患におけるニューロン喪失の誘導におけるNoxの仲介酸化ストレスの重要性を実証している。これらの研究は、これらの酵素に特異的な阻害剤を開発することの重要性を強調しており、今後の治療応用のためにNox阻害剤の開発に専念するスイスのGenKyoTex社のような製薬会社の目標と同様に、いくつかの研究室の目標を強化している。例えば、Noxのアイソフォーム1および4を特異的に阻害する阻害剤の合成(Bae et al., Synthesis and biological evaluation of 3-substituted 5-benzylidene-1-methyl-2-thiohydantoins as potent NADPH oxidase (NOX) inhibitors. Bioorg Med Chem 2016; 24: 4144-4151)が最近報告されているが、これはTriton‐X/エタノール/PBSを含む溶媒にのみ可溶であり、ドーパミン作動性ニューロンにおいて毒性を誘導するビヒクルであることがわかった。本開示は、イオン液体の技術およびNoxの抑制を総合し、神経変性の病理学的プロセスに関与する特定の有害なROS製造を標的とする新しい治療戦略を開発するものである。以下は、本発明の利用可能である3つの実施例である:
【0120】
実施例1:パーキンソン病(PD)
一実施形態では、PDは610万人を超える人々に影響を及ぼす慢性神経変性疾患であり、疾患がより衰弱性の段階に進行するにつれてその有効性は低下する傾向があり、治療選択肢が減少する。PDに関する2018年と2020年の報告書(The Parkinson's Disease Market: Pipeline Review, Developer Landscape and Competitive Insights, 2018, pp. Report ID: 4586296. Global Parkinson's Disease Market and Competitive Landscape”, 2020, pp. Report ID: 5023386)によれば、PDの進行を止めるための予防療法が存在しないことは、この分野における主要な満たされていないニーズの一つである。この観点から、疾患に対する進行予防治療の探索/開発に向けたパラダイムシフトが起こっている。実際、製薬会社が開発中の薬剤の53%はPDの進行を予防することを目的とした疾患修飾薬であり、対症療法薬はわずか32%である。PDの病因は酸化ストレスの影響を強く受ける。Nox1‐ROS 生成は、この疾患で起こるドーパミン作動性細胞死およびアルファシヌクレイン病のプロセスにおいて重要な役割を果たしており、文献に記載されているように、動物モデルでその阻害により疾患の進行を防ぐことができる。(Cristovao et al., The role of NADPH oxidase 1-derived reactive oxygen species in paraquat-mediated dopaminergic cell death. Antioxidants & redox signaling 2009; 11:9: 2105-18. Choi et al., NADPH Oxidase 1-Mediated Oxidative Stress Leads to Dopamine Neuron Death in Parkinson's Disease. Antioxidants & redox signaling 2012; 16(10):1033-45. Cristovao et al., NADPH oxidase 1 mediates α-synucleinopathy in Parkinson's disease. Journal of Neurosciences 2012; 32(42):14465-77)。さらに、PDに関連する海馬歯状回でのNox4の発現増加がAβ発現とオリゴマーA11産生を誘導し、それにより認知機能を低下させることを示している文献「The Role of NOX4 in Parkinson’s Disease with Dementia」(Choi et al. International Journal of Molecular Sciences 2019; 20(3):696)に示されているように、Nox4はPD認知症にきわめて重要な関与をしている。これらの文書は、Nox1およびNox4を、この疾患に対する新たな治療アプローチの開発のための重要な標的として検証した。この文脈において、本開示は、Nox1‐Nox4特異的阻害剤の再製剤化へのその可能な適用のための利益であり、それは、現在利用可能であるが、溶解性が低く、したがって薬理学的利用可能性が低い。それらの溶解度を増加させると、それらはより生物学的利用性を増し、したがってPDに対するより高い治療効果をもたらす。
【0121】
実施例2:脳卒中(Stroke)
一実施形態では、神経血管疾患は、世界における主要な死因である。コスト面では、脳卒中のみで年間641億ユーロ(ヨーロッパ)と442億ユーロ(アメリカ合衆国)のコストが発生する。脳卒中は、脳への血流を抑制するために起こり、虚血や出血によって引き起こされる。患者の約20%が脳卒中後1ヶ月以内に死亡する一方で、生存者はしばしば重度の神経機能障害および慢性障害を発症し、これは重大な社会経済的負担を課す。現在の治療法は少数の患者にしか影響を及ぼさず、重大な副作用を引き起こす可能性がある。
【0122】
アスピリンなどの抗凝固薬の投与は予防力に限界がある一方、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)などの血栓溶解療法は治療域が狭く、Suzuki et al.(Novel situations of endothelial injury in stroke--mechanisms of stroke and strategy of drug development: intracranial bleeding associated with the treatment of ischemic stroke: thrombolytic treatment of ischemia-affected endothelial cells with tissue-type plasminogen activator. Journal of pharmacological sciences 2011, 116, 25-29)が述べるように脳出血、浮腫、虚血性細胞死を誘発する可能性がある。血管形成術のような外科的処置の有益な効果はまだ不明であり、これらの患者を治療するためのより効率的で安全な治療法を開発することの重要性と必要性を強調している。
【0123】
文献「Oxidative stress and pathophysiology of ischemic stroke: novel therapeutic opportunities」(CNS & neurological disorders drug targets 2013, 12, 698-714)では、酸化ストレスレベルの上昇は虚血性脳卒中後に生じる脳障害と関連していることが実証されている。さらに、文献「Biochemistry, physiology, and pathophysiology of NADPH oxidases in the cardiovascular system」(Circulation research 2012, 110(10), 1364-1390)では、Noxの異なったアイソフォーム、すなわちアイソフォーム1、2、4および5が関与していることが明らかになっている。脳卒中において、Nox’s由来のROSは、提案されたように関与するアイソフォームに依存して、保護的または有害な機能を有する可能性がある(Kleikers et al. NADPH oxidases as a source of oxidative stress and molecular target in ischemia/reperfusion injury. Journal of molecular medicine 2012, 90(12), 1391-1406. Gray et al. Reactive Oxygen Species Can Provide Atheroprotection via NOX4-Dependent Inhibition of Inflammation and Vascular Remodeling. Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology 2016 36(2), 295-307)。これを考慮し、脳卒中に関連する病理学的プロセスに関与するアイソフォームを特異的に阻害することを考慮すると、Noxの阻害による本疾患に対する抗酸化療法の開発は、この病理に対処するための大きな治療可能性を有するものとして提示される。従って、本開示の別の潜在的適用がある。
【0124】
実施例3:筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、診断後3~5年の間に、運動ニューロンの進行性変性とそれに続くグリア細胞の活性化により、筋力低下と障害、最終的には致死的な呼吸障害と心臓障害の発生を引き起こすのが特徴である。これまで集中的な研究が行われてきたにもかかわらず、ALSの治療薬(リルゾール)として承認されている薬剤は1剤のみであり、生存率に対する効果はわずかである(de Jongh ADet al. Evidence for a multimodal effect of riluzole in patients with ALS? Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 2019; 90:1183-1184)。この病態の発現の根底にある病理学的機序は未だ不明な点が多い。しかし、酸化ストレスの寄与は再び疾患の発症を促進する因子であり、この過程へのNoxの関与も立証されている(Harraz et al. SOD1 mutations disrupt redox-sensitive Rac regulation of NADPH oxidase in a familial ALS model. The Journal of clinical investigation 2008, 118(2), 659-670)。
【0125】
ALS患者における窒素酸化物の役割を調査した以前の研究では、末梢血中のアイソフォーム2活性が低い患者は生存期間の有意な増加を示した(Marrali et al. NADPH oxidase (NOX2) activity is a modifier of survival in ALS. Journal of neurology 2014, 261(11), 2178-2183)。同じことがMarden et al.(Redox modifier genes in ALS in mice. The Journal of clinical investigation 2007, 117(10), 2913-2919)によってALSマウスで観察された。しかし、Noxのアイソフォーム1および2のノックアウトは、生存を増加させ、疾患の発症を遅らせることを示した。一方、ALSのin vitroモデルにおける広域阻害剤アポシニン(Apo)による治療は、疾患の発症に関連する突然変異を担う星状細胞と共培養した場合、運動ニューロンの生存を改善し(Marrali et al. NADPH oxidase (NOX2) activity is a modifier of survival in ALS. Journal of neurology 2014, 261(11), 2178-2183)、さらにNoxの阻害がALSにおいて神経保護的役割を果たしている可能性があることを強調した。また、Noxの薬理学的阻害は、ALSの動物モデルにおいて利益を示した。生存期間をほぼ50%延長させるとともに、脊髄の運動ニューロン数を増加させる(Harraz et al. SOD1 mutations disrupt redox-sensitive Rac regulation of NADPH oxidase in a familial ALS model. The Journal of clinical investigation 2008, 118(2), 659-670)。この場合、Nox阻害剤の再製剤化は、その有効性の増加につながり、Apoで既に記載されている神経保護作用を拡大することができるため、本開示の潜在的適用はさらに強くなる。
【0126】
表1は、本開示のアッセイにおいて使用される試料を示す。
【0127】
【0128】
一実施形態では、[Chol]2[N1(4)inh]の合成のために、カチオン源としてコリニウム塩を、陰イオン源として3‐シクロヘキシル‐5‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐1‐メチル‐2‐チオヒダントイン(N1(4)inh)を用いた。[Chol]2[N1(4)inh]は、重炭酸コリニウム(水中80%、m/v)および最低量の無水エタノール中で調製したN1(4)inh溶液の1:1.05モル比との複分解反応(メタセシス反応)によって合成した。N1(4)inhを暗冷条件下(~5°Cの氷浴を用いて)で連続撹はんしながら、重炭酸コリニウム溶液に滴下して混合した。反応混合物をさらに~5℃で2時間連続撹拌下に保った。過剰の溶媒および水は、完全な乾燥(氷冷水浴(~10℃)に保持されたIL含有瓶で窒素ガス流量約2~3時間)まで、窒素ガスの連続流下で除去された。合成した[Chol]2[N1(4)inh]およびN1(4)inh混合物(1:1、mol:mol)を最終的に氷冷水浴から回収し、乾燥、冷却および暗条件下で貯蔵した。
【0129】
一実施形態では、
図1は、以下の
1 H NMRスペクトルを示す:2a)特異的Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)および2b)特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のILベース製剤。
【0130】
[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの純度を
1 H NMRで評価した。
図1aは、
1 H NMRスペクトルおよび特異的Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)のそれぞれのピークの同定を開示し、
図1bは、
1 H NMRスペクトルおよび特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のILベース製剤のそれぞれのピークの同定を明らかにし、[Chol]
2[N1(4)inh]が成功裏に合成されたことを開示する。
【0131】
一実施形態では、
図2は、以下の
13 C NMRスペクトルを示す:3a)特異的Nox1(4)阻害剤(+N1(4)inh)および3b)特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のILベース製剤。
【0132】
[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhおよびN1(4)inhの純度も
13 C NMRで評価した。
図2aは、
13 C NMRスペクトルおよび特異的Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)のそれぞれのピークの同定を開示し、
図2bは、
13 C NMRスペクトルおよび特異的Nox1(4)阻害剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)のILベース製剤のそれぞれのピークの同定を明らかにし、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhが成功裏に合成されたことを開示する。
【0133】
一実施形態では、
図3は、Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)およびILベースの製剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)の水およびPBS中における溶解度をmg/mLで示す。
【0134】
一実施形態では、溶質(N1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh)を一定容量(500μL)以上の水およびPBS溶液に添加した。これらの混合物を、Eppendorf Thermomixer Comfort機器を用いて、37℃、一定の攪拌下1150rpm、および最低72時間インキュベートした。このプロセスを通して、必要に応じて、即ち、溶液飽和に達するまで、溶質を混合物に添加した。すべての試料をシリンジフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、可能な懸濁固体粒子を除去した。それぞれ416nmと480nmの波長で、UV分光光度法(SYNERGY|HT microplate reader, BioTek)を用いて、紫外分光法によりN1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの定量を行った。PBSと定量法の干渉も確認し、ブランク対照試料を常に使用した。得られた結果は、水中のILベース製剤の溶解度が36倍増加し、PBS中の溶解度が21倍増加したことを明らかにした。
【0135】
一実施形態では、
図4は、Nox1(4)阻害剤(N1(4)inh)およびILベースの製剤([Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh)、のmol/Lにおける、水およびPBSにおける溶解度を示す。
【0136】
一実施形態では、溶質(N1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhを一定容量(500μL)以上の水およびPBS溶液に添加した。これらの混合物を、Eppendorf Thermomixer Comfort機器を用いて、37℃、一定の攪拌下1150rpm、および最低72時間インキュベートした。このプロセスを通して、必要に応じて、即ち、溶液飽和に達するまで、溶質を混合物に添加した。すべての試料をシリンジフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、可能な懸濁固体粒子を除去した。それぞれ416nmと480nmの波長で、UV分光光度法(SYNERGY|HT microplate reader, BioTek)を用いて、紫外分光法によりN1(4)inhおよび[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの定量を行った。PBSと定量法の干渉も確認し、ブランク対照試料を常に使用した。得られた結果は、水中のILベース製剤の溶解度が28倍増加したのに対し、PBS中の溶解度は16倍増加したことを明らかにする。
【0137】
一実施形態では、
図5は、熱重量分析(TGA)によって評価される[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの分解温度を示す。
【0138】
一実施形態では、分解温度は熱重量分析(TGA)によって決定された。TGA曲線は200°C付近で分解温度の急激な低下することを示しており、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの分解が200°Cで始まり、前駆体(percursor)によっても示された。
【0139】
一実施形態では、
図6は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhのN27ドーパミン作動性ニューロン細胞の生存能に対する効果を示す。
【0140】
一実施形態では、N27ドーパミン作動性ニューロンに対する[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの潜在的毒性を、20μMまたは30μMの[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhへの曝露の24時間後に評価した。処理細胞と対照細胞(CTR/未処理細胞)との間に統計的有意差は観察されず、ILベースの製剤である[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhはドーパミン作動性ニューロンに対して毒性を示さないことが実証された。データはCTRの割合で表され、3つの独立した実験(n=3)の少なくとも5回の反復の平均±SEMとして示される。統計解析はone-way ANOVA(ノンパラメトリック解析)を用い、続いてKruskal‐Wallis検定を行った後、Dunnの多重比較検定を行った。(1)コントロール細胞、。(2)20μM [Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhに暴露された細胞、(3)30μM [Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhに暴露された細胞。
【0141】
一実施形態では、
図7は、ドーパミン作動性ニューロン細胞(N27)を[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで前処理すると、6OHDAの神経毒性作用が有意に抑制されることを示している。(1)対照群未処理細胞。(2)コリニウム対照。(3)6OHDAは、対照細胞と比較して、ドーパミン作動性ニューロンの生存性を有意に低下させた(4)[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhによる前処理は、(3)の6OHDA処理細胞と比較して、6OHDAにより誘導されたドーパミン作動性神経毒性を有意に減少させた。(5)塩化コリニウムは、(3)の6OHDA処理細胞と比較して、6OHDA誘発神経毒性を防止しなかった。20μMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhまたは塩化コリニウムで2.5時間前処理し、次いで50μMの6OHDAに24時間曝露したN27細胞中のWST‐8アッセイを用いて細胞生存率を測定した。データはコントロールの割合として示し、3つの独立した実験(n=3)の少なくとも5回の反復の平均±SEMとして示した。統計解析はone-way ANOVA(ノンパラメトリック解析)を用い、続いてKruskal‐Wallis検定を行い、Dunnの多重比較検定を行った。CTRまたは塩化コリニウムのみに曝露した細胞群と比較して**p<0.01、6OHDAと比較して+++p<0.001。(B)。(1)対照細胞、(2)塩化コリニウム(20μM)に曝露した細胞、(3)6OHDA(50μM)に曝露した細胞、(4)6OHDAおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(20μM)に曝露した細胞、(5)6OHDA(50μM)および塩化コリニウム(20μM)に曝露した細胞。
【0142】
一実施形態では、
図8は、ドーパミン作動性神経細胞(N27)を[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで前処理すると、神経毒MPPの神経毒性作用が有意に抑制されることを示している。(1)対照群未処理細胞。(2)塩化コリニウム対照。。(3)MPP+はドーパミン作動性ニューロンの生存率を有意に低下させた。(4)[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhによる前処理は、MPP+誘発ドーパミン神経毒性を有意に低下させた。(5)塩化コリニウムはMPP+誘発神経毒性を予防しなかった。20μMの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhまたは塩化コリニウムで2.5時間前処理した後、10μMのMPP+で24時間曝露したN27細胞において、WST‐8アッセイを用いて細胞生存率を測定した。データは、3つの独立した実験(n=3)の少なくとも5回の反復の平均±SEMとして、対照の割合として示した。統計解析はone-way ANOVA(ノンパラメトリック解析)、Kruskal‐Wallis検定を用い、その後Dunnの多重比較検定を行った。CTR(未処理細胞)と比較した場合、**p<0.01、MPP+で処理した細胞群と比較した場合、+++p<0.001、CTRまたは塩化コリニウムのみに曝露した細胞群と比較した場合、*** p<0.001。(1)対照細胞、(2)塩化コリニウム(20μM)に曝露された細胞、(3)MPP+(10μM)に曝露された細胞、(4)MPP+(10μM)および[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh(20μM)に曝露された細胞、(5)MPP+(10μM)およびコリニウムクロリド(20μM)に曝露された細胞。
【0143】
一実施形態では、
図9は、マウス黒質(SN)に対する、ドーパミン作働性ニューロン生存率における[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh脳室内注入の効果を示す。
【0144】
一実施形態では、マウスSN、0.2mg/kg/日[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入の7日後における、チロシン水酸化酵素(TH)免疫反応性ニューロンの数の変化。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inh投与群。[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhで処理したマウスのSNにおけるTH陽性ニューロンの数は、対照群のSNで定量化したものと統計的に異ならず((1)と比較した(2))、[Chol]2[N1(4)inh]+N1(4)inhのILベース製剤がin vivoでドーパミン作動性ニューロンに対して毒性でないことを示した。結果は、生理食塩水のパーセンテージで表され(生理食塩水のみに曝露された動物である群(1))、少なくとも3つの独立した実験(n=3~4)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。両群間に統計学的な差は認められなかった。
【0145】
一実施形態では、
図10は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入が、パーキンソン病の動物モデルである6OHDAの静注によって誘導される黒質(SN)におけるドーパミン作動性ニューロンの死を予防することを示している。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの有または無における、6OHDA処理7日後のマウスSNにおけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫反応性ニューロン数の変化。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)6‐OHDA処理群、(3)6OHDAおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共処理群。TH陽性ニューロンの数は、6OHDAで処理した動物で有意に減少した((1)と比較した(2))。この減少は、6OHDAと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを同時処置したマウスでは((2)と比較した(3))有意に抑制された。6OHDAと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを共処置したマウスのSNにおけるTH陽性ニューロンの数は、対照群で観察されたものと統計的に異ならなかった((1)と比較した(3))。結果は、生理食塩水のパーセンテージで表され(生理食塩水のみに曝露された動物である群(1))、少なくとも3つの独立した実験(n=3~4)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。対照動物群と比較した場合((1)と比較した(2))**p<0.01、6OHDAのみに曝露した動物群と比較した場合((2)と比較した(3))##p<0.01。
【0146】
実施形態の
図11では、14日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与がマウスの体重に及ぼす影響を示す。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの4種の異なる用量、すなわち0.02、0.04、0.08、0.16mg/kg/日を1日2回、14日間の鼻腔内投与によって誘発される体重変動の経時変化。結果は、少なくとも5つの独立した実験(n=5~6)の平均として表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Tukey試験を用いて多重比較解析を行った。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0147】
図12は、マウスの運動能力に対する14日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与の効果を示している。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの4種の異なる用量、すなわち(1)溶媒、(2)0.02、(3)0.04、(4)0.08、(5)0.16mg/kg/日、1日2回、14日間の鼻腔内投与により誘発される運動性能変化。結果は、少なくとも5つの独立した実験(n=5~6)の平均±SEMで表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0148】
図13に、マウス嗅覚機能に対する14日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与の効果を示す。[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの0.16mg/kg/dayを1日2回、14日間鼻腔内投与することにより誘発される嗅覚機能変化。(1)溶媒(無処置群)、(2)0.016mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。結果は、少なくとも5つの独立した実験(n=5~6)の平均±SEMで表される。Unpaired Student T検定を用いて統計解析を実施した。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0149】
図14は、ラット体重に対する30日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh脳室内投与の効果を示している。0.007mg/kg/dayの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回、30日間脳室内注入により誘発した体重変動経時変化。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~5)の平均として表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。群間に統計学的な差は認められなかった。
図15は、ラットの運動能力に対する30日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh脳室内投与の効果を示している。0.007mg/kg/日の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回、30日間脳室内注入により誘発される運動性能変化。(1)溶媒(無処置群)、(2)0.007mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~5)の平均として表される。Unpaired Student T検定を用いて統計解析を実施した。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0150】
図16は、ラット体重に対する30日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与の効果を示している。0.062mg/kg/day[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回30日間鼻腔内投与することにより誘発される体重変動。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~5)の平均として表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Tukey試験を用いて多重比較解析を行った。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0151】
図17は、ラットの運動能力に対する30日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与の効果を示している。0.062mg/kg/day[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回、30日間鼻腔内投与することにより誘発される運動性能変化。(1)溶媒(無処置群)、(2)0.062mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~5)の平均として表される。Unpaired Student T検定を用いて統計解析を実施した。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0152】
図18は、ラット嗅覚機能に対する30日間の[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与の効果を示す。0.062mg/kg/dayの[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを1日1回30日間鼻腔内投与することにより誘発される嗅覚機能変化。(1)溶媒(無処置群)、(2)0.062mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh処置群。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=5~6)の平均±SEMで表される。Unpaired Student T検定を用いて統計解析を実施した。群間に統計学的な差は認められなかった。
【0153】
図19は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入が、PDの動物モデルであるラットにおいて、PQによって誘発される運動機能障害の進行を抑制したことを示している。0.007mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの存在下または非存在下で、PQに30日間暴露した動物の転倒潜時(落下までの待ち時間)の変化を、ロータロッド試験を用いて30日間記録した。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ処理群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共処理群。PQを投与した動物では、転倒までの潜伏期間(落下までの待ち時間)が有意に減少した((1)と比較した(2))。この減少は、PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを同時処理したラットでは有意に防止された((3)と比較した(2))。PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを共処理したラットの転倒潜時は、対照群で観察されたものと統計的に異ならなかった((3)と比較した(1))。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~6)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。対照動物群と比較した場合、***p<0.001((2)対(1))、PQのみに曝露された動物群と比較した場合、###p<0.001((3)対(2))。
【0154】
図20は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入が、PDの動物モデルであるラットにおいて、PQによって誘発される運動機能障害の進行を抑制したことを示している。0.007mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの存在下または非存在下で、30日間PQに曝露された動物の移動距離の変化を、オープンフィールド試験を用いてさらに30日間記録した。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ処理群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共処理群。移動距離はPQで処理した動物で有意に減少した((1)と比較した(2))。この減少は、PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを同時処理したラットでは有意に防止された((3)と比較した(2))。PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで共処理したラットの移動距離は、対照群で観察されたものと統計的に異ならなかった((3)と比較した(1))。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~6)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。対照動物群と比較した場合、**p<0.01((2)対(1))、PQのみに曝露した動物群と比較した場合、#p<0.05((3)対(2))。
【0155】
図21は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの脳室内注入が、PDの動物モデルであるラットにおいて、PQによって誘発される運動機能障害の進行を抑制したことを示している。0.007mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの存在下または非存在下で30日間PQに暴露した動物の速度の変化を、オープンフィールド試験を用いてさらに30日間記録した。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ処理群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共処理群。速度はPQで処理した動物で有意に低下した((1)と比較した(2))。この減少は、PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを同時処理したラットでは有意に防止された((3)と比較した(2))。PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhで共処理したラットの速さは、対照群で観察されたものと統計的に異ならなかった((3)と比較した(1))。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~6)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。対照動物群と比較した場合((2)対(1))、**p<0.01、PQのみに曝露した動物群と比較した場合((3)対(2))、#p<0.05。
【0156】
図22は、[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの鼻腔内投与が、PDの動物モデルであるラットにおいて、PQによって誘発される運動機能障害の進行を抑制したことを示している。0.062mg/kg/日[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhの存在下または非存在下で、PQに30日間暴露した動物の転倒潜時(落下までの待ち時間)の変化を、Rotarod試験を用いてさらに30日間記録した。(1)対照群(生理食塩水のみ)、(2)PQ処理群、(3)PQおよび[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inh共処理群。PQを投与した動物では、低下までの潜伏期間(転倒潜時)が有意に減少した((1)と比較した(2))。この減少は、PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを同時処理したラットでは有意に防止された((3)と比較した(2))。PQと[Chol]
2[N1(4)inh]+N1(4)inhを共処理したラットの転倒潜時は、対照群で観察されたものと統計的に異ならなかった((3)と比較した(1))。結果は、少なくとも4つの独立した実験(n=4~6)の平均±SEMとして表される。one-way ANOVAを用いて統計解析を行い、その後Bonferroni試験を用いて多重比較解析を行った。対照動物群と比較した場合((2)対(1))、**p<0.01;PQのみに曝露した動物群と比較した場合((3)対(2))、#p<0.05。
【0157】
この文書において使用されるときはいつでも、「含む」という用語は、記述された特徴、整数、工程、構成要素の存在を示すことを意図しているが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらのグループの存在または付加を排除するものではない。
【0158】
特許請求の範囲の説明において要素または特徴の単数形が使用される場合、その複数形も含まれ、特に除外されない場合にはその逆も含まれる。例えば、「1つのイオン液体」または「前記イオン液体」という用語は、複数の形態の「イオン液体」または「前記イオン液体」も含み、その逆もまた同様である。特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」などの冠詞は、そうではないように記載されている場合、または、そうでなければ、文脈から明らかである場合を除いて、1または1超を意味し得る。あるグループの1または複数のメンバー間で「または」を含む特許請求の範囲または明細書は、そうではないように記載されている場合、または、そうでなければ、文脈から明らかである場合を除いて、グループメンバーの1、1超、または全てが所定のプロダクトもしくはプロセスに存在するか、使用されるか、またはそうでなければ関連する場合に、満たされると考えられる。本発明は、グループのちょうど1つのメンバーが所定のプロダクトもしくはプロセスに存在するか、使用されるか、またはそうでなければ関連する、実施形態を含む。また、本発明は、グループメンバーの2つ以上またはすべてが、所定の製品または方法に存在し、使用され、または、そうでなければ関連する、実施形態を含む。
【0159】
さらに、特許請求の範囲が組成物を記載する場合、本明細書中に開示される目的のいずれかについてその組成物を使用する方法が含まれること、および、本明細書中に開示される作製方法のいずれかまたは当該分野において公知の他の方法に従ってその組成物を作製する方法が含まれることが、そうでないように記載される場合を除いて、または、矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかである場合を除いて、理解される。
【0160】
本開示は、記載された実施形態に限定されるものではなく、当業者は、その改変に対する多くの可能性を予見する。
【0161】
上述の実施形態は、組み合わせ可能である。
【0162】
以下の特許請求の範囲は、本開示の特定の実施形態をさらに記載する。
【国際調査報告】