(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】保温シート及びその用途
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20250212BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20250212BHJP
D04H 1/542 20120101ALI20250212BHJP
B32B 5/06 20060101ALI20250212BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20250212BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20250212BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
D04H1/4374
D04H1/542
B32B5/06
A41D31/00 502E
A41D31/06 100
A47C27/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540891
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2022111950
(87)【国際公開番号】W WO2023134164
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210041416.2
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黄 乃科
(72)【発明者】
【氏名】▲ビェン▼ ▲チェン▼霞
【テーマコード(参考)】
3B096
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B096AD06
4F100AJ05C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100BA03
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4F100GB72
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
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4L047BA03
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047CA07
4L047CB04
4L047CC01
4L047CC06
4L047EA02
4L047EA12
4L047EA14
(57)【要約】
【課題】優れた柔軟性、嵩高性及び圧縮回復性を有する保温シートを提供すること。
【解決手段】
本発明は保温シート及びその用途に関するものである。当該保温シートは、2層以上の不織布ウェブと充填物を含み、前記充填物が不織布ウェブの間に分布され、前記充填物が非低融点繊維のみからなることで、低融点繊維の熔融接着を抑えて、保温シートの圧縮回復性、柔軟性及び嵩高性を大幅に向上し、特にアパレル、ベット用品、アウトドア用品、鞄と装飾材料等の制作に好適に用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の不織布ウェブと充填物を含み、前記充填物が不織布ウェブの間に分布される保温シートであって、前記充填物は非低融点繊維のみからなることを特徴とする保温シート。
【請求項2】
前記不織布ウェブと充填物は固定点により固定され、且つ任意隣接固定点間の距離が4mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の保温シート。
【請求項3】
前記不織布ウェブの充填物と接触する接触面に、1cm
2範囲あたり、長さ10mm以上の繊維が1本以上あることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温シート。
【請求項4】
前記不織布ウェブは目付が8~25g/m
2であることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項5】
前記不織布ウェブは低融点繊維と非低融点繊維から構成され、且つ前記低融点繊維は融点が140℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項6】
前記低融点繊維はポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン複合繊維とポリエステル/ポリプロピレン複合繊維中の1種又は数種であることを特徴とする請求項5に記載の保温シート。
【請求項7】
前記非低融点繊維はポリエステル繊維、ポリアミド繊維とセルロース繊維中の1種又は数種であることを特徴とする請求項5に記載の保温シート。
【請求項8】
前記充填物はファイバーボールであることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項9】
前記充填物は開繊された綿であることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項10】
前記不織布ウェブと充填物はキルティング法で形成した固定点により固定されることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項11】
前記不織布ウェブと充填物は熱プレス法で形成した固定点により固定されることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項12】
前記不織布ウェブと充填物は粘着剤接着で形成した固定点により固定されることを特徴とする請求項3に記載の保温シート。
【請求項13】
アパレル、ベット用品、アウトドア用品、鞄と装飾材料の中に請求項1~12のいずれかに記載した保温シートの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保温シート及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活水準の継続的な向上に伴い、保温服に対する人々の期待はますます高まっている。優れた保温性と着用感を得るために、人々は保温服に使われる保温シートの探索と研究を努力している。例えば、特許文献1(中国特許CN108474155A)には断熱シート材料及びその製造方法並びに断熱製品が開示された。具体的には、断熱シート材料は複数の単繊維ウェブと球状繊維集合体を含有し、球状繊維集合体は少なくとも隣接する単繊維ウェブの一部の間に分布され、単繊維ウェブを構成する繊維は少なくとも一部が低融点繊維であり、かつ、球状繊維集合体を構成する繊維は少なくとも一部が低融点繊維であって、圧縮弾性、(保温)洗濯耐久性に優れる。しかしながら、球状繊維集合体と単繊維ウェブの両方とも低融点繊維を含有するため、熱処理後に低融点繊維が融着し、得られた断熱シート材料は、風合いが硬く、嵩高性が足りなくなる。
【0003】
また、特許文献2(日本特許第6669755号)には、繊維球充填材及び充填材を含有する製品が開示された。具体的には、充填材は不織布ウェブと繊維球を含有し、不織布ウェブと繊維球の両方とも繊維混合物から構成され、繊維混合物は40~95重量%の合成繊維と5~40重量%のバインダー繊維を含有し、バインダー繊維は接着溶融温度が合成繊維の軟化温度より低く、得られた充填材は柔らかさと成形性が良いという特徴を有するが、不織布ウェブと繊維球を構成する繊維混合物にはバインダー繊維を含有するため、熱処理後にバインダー繊維が溶融して接着し、製品の嵩高性と風合いに影響を与える。
【0004】
また、特許文献3(中国CN106906571A)には、弾性通気性を有する多層の繊維複合体構造及び用途が開示された。具体的に、弾性通気性を有する構造は、主に多層の繊維ウェブ層及び繊維ウェブの間に挟まれた繊維球層から構成され、繊維ウェブ層と繊維球層の両方とも短繊維から構成され、低融点短繊維と三次元捲縮中空短繊維が短繊維として用いられて、軽くて柔らかく、通気性が良く、圧縮後の形状保持性が良いという特徴がある。しかしながら、嵩高性が劣るという問題があり、かつ繊維球層中に溶融した低融点繊維が中空短繊維の捲縮状態を阻害したので、製品の圧縮回復性に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許CN108474155A
【特許文献2】日本特許第6669755号
【特許文献3】中国特許CN106906571A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた柔軟性、嵩高性及び圧縮回復性を有する保温シートを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、前記保温シートの用途を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)保温シートであり、前記保温シートは2層以上の不織布ウェブと充填物を含み、充填物は不織布ウェブの間に分布され、前記充填物は非低融点繊維のみからなる。
(2)前記(1)の保温シートにおいて、前記不織布ウェブと充填物は固定点により固定され、且つ任意隣接する固定点の間の距離が4mm以上である。
(3)前記(1)又は(2)の保温シートにおいて、前記不織布ウェブは充填物との接触する面に、1cm2範囲あたり、長さ10mm以上の繊維が1本以上ある。
(4)前記(3)の保温シートにおいて、前記不織布ウェブの目付が8~25g/m2である。
(5)前記(3)の保温シートにおいて、前記不織布ウェブは低融点繊維と非低融点繊維から構成され、且つ前記低融点繊維の融点が140℃以下である。
(6)前記(5)の保温シートにおいて、前記低融点繊維はポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン複合繊維とポリエステル/ポリプロピレン複合繊維中の1種又は数種である。
(7)前記(5)の保温シートにおいて、前記非低融点繊維はポリエステル繊維、ポリアミド繊維とセルロース繊維中の1種又は数種である。
(8)前記(3)の保温シートにおいて、前記充填物はファイバーボールである。
(9)前記(3)の保温シートにおいて、前記充填物は開繊綿である。
(10)前記(3)の保温シートにおいて、不織布ウェブと充填物はキルティング法で形成した固定点により固定される。
(11)前記(3)の保温シートにおいて、不織布ウェブと充填物は熱プレス法で形成した固定点により固定される。
(12)前記(3)の保温シートにおいて、不織布ウェブと充填物は粘着剤接着法で形成した固定点により固定される。
(13)アパレル、ベット用品、アウトドア用品、鞄と装飾材料の中に前記(1)~(12)の保温シートの応用。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保温シートは、2層以上の不織布ウェブと充填物を含み、前記充填物が不織布ウェブの間に分布され、前記充填物が非低融点繊維のみからなることで、低融点繊維の熔融接着を抑えて、保温シートの圧縮回復性、柔軟性及び嵩高性を大幅に向上させ、特にアパレル、ベット用品(例えば布団、マットレス、ラグなど)、アウトドア用品(例えばテントなど)、鞄と装飾材料(例えば保温材料、隔音材料など)等の製造に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の直線キルティング法で作られた保温シートの構造図である。その中、1と2は不織布ウェブ、3は充填物、4は固定点、5は不織布ウェブが充填物と接触する接触面に露出した繊維、6は隣接する固定点の間の距離である。
【
図2】
図2は本発明の超音波熱プレス法で作られた保温シートの構造図である。その中、1と2は不織布ウェブ、3は充填物、4は固定点、5は不織布ウェブが充填物と接触する接触面に露出している繊維、7は隣接する固定点の間の距離である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の保温シートにおいて、不織布ウェブの設置、充填物の分布、充填物の組成がいずれも非常に重要である。まず、不織布ウェブを設けないと、洗濯時の充填物偏り、絡み合い、塊り等の問題が発生する。よって、不織布ウェブの設置が非常に必要となる。不織布ウェブの層数は、特に限定されないが、少なくとも2層が要求される。2層の不織布ウェブの間に充填物が分布されて、充填物がずれやすいという問題を解決しつつ、シートの保温性にも悪影響を与えない。次に、充填物中に低融点繊維を含有すると、低融点繊維は熱処理により熔融され、周囲の非低融点繊維と固着して接着点を形成し、充填物を構成する繊維の動きの自由度が抑えられて、保温シートの柔軟性、嵩高性及び圧縮回復性に影響する。よって、本発明の充填物は非低融点繊維のみで構成されることが要求される。
【0012】
好ましくは、保温シートにおける不織布ウェブと充填物は固定点により固定される。不織布ウェブと充填物は部分的に固定されるので、保温シートにおける充填物は自由に動く空間が小さくなり、洗濯偏りの改善ができると考えられる。しかしながら、任意の隣接固定点の間の距離が4mm未満であると、充填物の自由な動きが十分に抑えられるものの、保温シートの嵩高性や風合いが低下する傾向にある。
【0013】
好ましくは、不織布ウェブが充填物と接触する接触面において、1cm2あたりの面積内長さが10mm以上の不織布ウェブの繊維数は1本以上である。10mm以上の不織布ウェブの繊維が充填物表面の繊維と効果的に絡み合うことで、充填物のずれを抑制すると考慮される。より好ましくは、不織布ウェブが充填物と接触する接触面において、1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維数が5本以上である。さらに好ましくは、不織布ウェブが充填物と接触する接触面において、1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維数が5~15本である。
【0014】
ここで、長さ10mm以上の繊維は捲縮構造を有することが好ましい。繊維の捲縮率が大きければ大きいほど、繊維同士の絡み合い強度が強くなる。本発明における捲縮構造を有する長さ10mm以上の繊維は、充填物表面に露出した繊維と効果的に絡み合うことができ、充填物の偏り及び塊りを抑制することができ、また、捲縮繊維により、不織布ウェブの嵩高性を効果的に向上させることができる。
【0015】
捲縮構造を形成する方法は特に限定されず、下記のいずれかの方法を使える。(一)繊維の熱可塑性を利用し、トウを連続的に捲縮装置に送り、一定の圧力及び温度でクリンパーローラーにより捲縮構造を付与し、次にカットして、短繊維が得られ、その捲縮数は3~18個/25mm、捲縮率は3~14%であることが好ましい。(二)非対称の異形断面の紡糸口金を利用し、快速冷却の方法で紡糸し、繊維に残留した収縮応力で、単繊維1本1本にスパイラル状捲縮構造が形成され、延伸セットしてから、三次元捲縮中空糸が得られる。その捲縮数は3~18個/25mmであり、捲縮率は5~15%であることが好ましい。(三)異なる成分のポリマーを同一の紡糸ノズルから吐出させて一本の繊維を形成し、各成分の収縮率が異なることにより、よい嵩高性と捲縮性を有する三次元スパイラル状捲縮繊維が得られ、捲縮数は3~20個/25mm、捲縮率は6~18%であることが好ましい。
【0016】
好ましくは、前記不織布ウェブの目付が8~25g/m2である。不織布ウェブの目付が8g/ m2未満であると、不織布ウェブが薄くなり、強度が低く、充填物上の繊維同士の絡み合う強度が弱く、保温シートの洗濯耐久性が低下する傾向にあり、不織布ウェブの目付が25g/ m2を超えると、同じ目付の保温シート製品において充填物の量が比較的に少なく、保温シートの柔軟性と嵩高性が低下する傾向がある。
【0017】
好ましくは、前記不織布ウェブを形成する繊維が、低融点繊維と非低融点繊維である。前記低融点繊維の融点は140℃以下であり、好ましくは、110℃~140℃である。低融点繊維の融点が140℃を超えると、熱風法加工プロセスのエネルギー消費が大きく、低融点繊維の融点が110℃未満であると、生産の安定性に懸念がある。非低融点繊維は、融点が140℃以下の繊維以外のものであり、すなわち低融点繊維以外の全ての繊維である。
【0018】
好ましくは、不織布ウェブ中の低融点繊維の含有量が10~50重量%である。同条件で低融点繊維の含有量が10重量%未満であると、熱処理後の融着点が少なく、不織布ウェブと充填物との接着強度が弱く、洗濯耐久性が低下する傾向にあり、低融点繊維の含有量が50重量%を超えると、熱処理後に融着点が多くなり、保温シートの風合いが硬くなる傾向にある。
【0019】
本発明において、低融点繊維の種類は特に限定されず、単成分繊維であってもよいし、二成分複合繊維等であってもよい。低融点繊維は、捲縮構造を有する繊維であってもよく、捲縮構造を有さない通常の繊維であってもよい。それは、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン二成分複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン二成分複合繊維及びポリエステル/ポリプロピレン二成分複合繊維のうちの1種又は複数種であることが好ましい。ここで、低融点ポリエステル繊維、低融点ポリアミド繊維は、重合反応時に第3成分を加えて改質したものである。ポリエステル/ポリエチレン二成分複合繊維は、比較的低い加熱条件下での熱融着が可能であり、不織布ウェブの風合いへの影響が小さいことから、より好ましい。
【0020】
低融点繊維の繊度が低すぎると、不織布ウェブの引張強度が低下する傾向にあり、低融点繊維の繊度が高すぎると、熱処理後の不織布ウェブの単位面積当たりの接着点が減少する傾向にあるため、低融点繊維の繊度が1.0~3.0デニール(D)であることが好ましい。また、ウェブの均一性を考慮すると、本発明で用いられる低融点繊維の長さは32~64mmであることが好ましく、38~51mmであることがより好ましい。
【0021】
本発明において、非低融点繊維の種類は特に限定されないが、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及び再生セルロース繊維のうちの1種又は複数種であることが好ましい。ここでのポリエステル繊維は、三次元捲縮中空ポリエステル繊維であることが好ましい。三次元捲縮中空ポリエステル繊維の含有量が多いほど、不織布ウェブの嵩高性と圧縮回復性が良くなることを考慮すると、三次元捲縮中空ポリエステル繊維の含有量は20~70重量%であることが好ましい。ここでの再生セルロース繊維は、特に限定されないが、レーヨン、モダール、竹繊維等が挙げられる。
【0022】
本発明において、充填物はファイバーボールであることが好ましい。ここでのファイバーボールは、公知の技術により得られてもよいし、自ら作製されたものであってもよい。2種以上の異なる捲縮数と捲縮率とを有する繊維から構成されることが好ましく、繊維間の捲縮差により、ファイバーボールがより柔らかく、より優れた嵩高性を有するだけでなく、より優れた圧縮回復性を持たせることができ、洗濯可能という目的を達成することが可能である。本発明において、ファイバーボールの嵩高性(FP値)は300~600inch3/30gであることが好ましい。
【0023】
本発明において、充填物は開繊綿であることが好ましい。開繊綿は具体的に、開綿機で原綿を開繊させ、ふわふわの状態に得られた綿をいう。開繊綿は、繊維原料の単位体積当たりの重量が低減され、充填物がより優れた嵩高性を有するとともに、開繊した繊維原料の表面には多くの微繊維があり、不織布ウェブ上の露出繊維と絡み合って、充填物のずれによる塊り形成の問題を効果的に抑制し、また、開繊綿の生産工程が短く、コストも比較的安い。本発明において、開繊綿の嵩高性(FP値)は、400~800inch3/30gであることが好ましい。
【0024】
好ましくは、本発明の保温シートにおいて、キルティング加工方法により固定点を形成し、不織布ウェブと充填物を固定する。キルティング加工方法は、一般的にキルティングマシンを利用し、取り扱いが簡単である上、保温シートの嵩高性などが維持できる。本発明は、任意の隣接固定点の間の距離が4mm未満であると、保温シートの生産効率が低下する傾向にあり、また、保温シートの風合いに悪影響を及ぼす可能性がある。任意の隣接固定点間の距離が20mmより大きいと、充填物の移動空間が大きく、充填物の動きによる均一性及び充填物の洗濯偏りが悪化する問題がある。従って、キルティング法で固定点を形成する場合、任意の隣接固定点間の距離は4~20mmであることが好ましく、4~10mmであることがより好ましい。また、本発明においてステッチは特に限定されず、シートの長手方向における直線又は曲線であってもよく、格子、円形又はその他の不規則な形状であってもよい。もちろん、縫い目は連続的であっても非連続的であってもよい。縫い目が直線である場合、隣接する2本のステッチ間のピッチが狭すぎると、保温シートの嵩高性が低下する傾向にあり、ピッチが広すぎると、充填物を固定する効果が低下する傾向にある。従って、本発明において隣接するキルトピッチの幅は、50~200mmであることが好ましく、50~100mmであることがより好ましい。
【0025】
好ましくは、本発明の保温シートにおいて、熱プレス法により固定点を形成し、不織布ウェブと充填物を固定する。熱プレス法は、超音波接着法であることが好ましく、具体的な加工条件として、気圧0.1~0.3MPa、電流0.4~0.8A、パターンローラー圧力1.5~3Kg、超音波パワー1400~1600Wであることが好ましい。
【0026】
好ましくは、本発明の保温シートにおいて、粘着剤接着法により固定点を形成し、不織布ウェブと充填物を固定する。粘着剤接着法は、具体的に、ロールコーティング、ナイフコーティング、スプレー等の方法により、不織布ウェブ上に接着剤を塗布し、冷却固化してから、固定点を形成する。ここでの粘着剤は、特に限定されず、ポリ酢酸エチル系粘着剤、アクリル酸系粘着剤等であってもよい。
【0027】
熱プレス法や粘着剤接着法は、キルティング法と比べて生産効率が高く、しかも形成された固定点が強固である。本発明では熱プレス法や粘着剤接着法により固定点を形成する場合、任意の隣接固定点間の距離が50~200mmであることが好ましく、50~100mmであることがより好ましい。
【0028】
また、本発明は、ニードルパンチやスパンレース等の方式で、不織布ウェブと充填物を固定してもよく、特に限定されず、必要に応じて選択すればよい。不織布ウェブと充填物に使われる繊維原料は、同一であってもよく、異なっていてもよく、特に限定されない。
【0029】
本発明の保温シートの製造方法は特に限定されなく、下記の方法で保温シートが得られる。まず、いくつかの不織布ウェブ及び充填物を準備し、次いで、シート加工設備の下フィードローラーに裏層とした不織布ウェブ1を投入した後、その上に充填物のシートを敷いて、次いで、上フィードローラーに表層とした不織布ウェブ2を投入し、充填物を不織布ウェブ1と2の間に分布させ、最後に不織布ウェブ1、2と充填物を固定して、本発明の保温シートが得られる。不織布ウェブは、単層であってもよいし、複数層であってもよく、必要に応じて選択すればよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
【0031】
本発明にかかる各パラメータの測定方法は以下の通りである。
【0032】
(1)隣接する固定点間の距離
大きさ50cm×50cmのサンプルを1枚用意し、張力が掛からない状態で机の上に平置きする。サンプルに隣接する2つの固定点を任意に選んで、固定点の中心を端点とし、両端点間の距離を定規で測定し、更に10箇所を測定し、合計10組のデータに対して平均値を算出し、本発明の隣接固定点間の距離とする。
【0033】
(2)不織布ウェブの接触面に長さ10mm以上の繊維本数
a.サンプリング
無張力状態で不織布ウェブを保温シートから軽く分解した後、長さ1cm×横1cmの不織布ウェブを裁断して試験片とする。
【0034】
b.測定準備
充填物と接触する不織布ウェブ接触面を上にして、試験片を黒台紙に貼り付け、試験台の上に固定する。
【0035】
c.測定
不織布ウェブの接触面に露出した繊維をピンセットで軽く伸ばし、その長さを定規で測定し、長さが10mmを超える繊維の本数を数える。
【0036】
d.計算
以上の手順を繰り返し、合計10個の試験片を採取し、長さ10mm以上の繊維本数を測定し、算出した平均値を本発明における不織布ウェブの長さ10mm以上の繊維本数とする。
【0037】
(3)繊維融点
不織布ウェブ又は充填物から2~3gの短繊維を分解して、測定試料が得られる。示差走査熱量計(DSC)を用いて、開始温度30℃、昇温速度20℃/min、最終温度300℃で測定し、得られた溶解吸熱曲線の極値(最高値)の温度を繊維の融点とする。
【0038】
(4)繊維原料の種類
「JIS L1030-1:2012規格の第1部:繊維鑑別」により判定する。該規格における6.1燃焼試験法を参照し、繊維原料が天然繊維又は化学繊維に属するかを判定する。さらに、該規格における6.4顕微鏡試験法及び6.8赤外吸収スペクトル試験法を参照し、繊維原料が具体的にどの天然繊維又は化学繊維に属するかを鑑別する。
【0039】
(5)充填物の洗濯偏り率
a.大きさ30cm×30cmの保温シート試験片1枚、及びJIS L0803:2011規格に規定された標準白綿布2枚を用意し、試験片を2枚の白綿布の間に挟み、試験片の経方向と白綿布の経方向とが平行になり、白綿布の緯方向に沿って、10cmの間隔で2本縫いミシンを行い、更に4辺をオーバーロックで縫合し、正方形の座布団を得る。同様の方法で合計3つの座布団を作製する。
【0040】
b.ISO 6330:2012(E)4Mに規定された洗濯コースにより、前記座布団の1つを洗濯処理し、洗濯後に、「A-吊干し」の乾燥コースにより乾燥する。乾燥した座布団を解体し、洗濯試験後の保温シート試験片が得られる。下方にD65光源が付いた透明ガラス板の上に平置きし、デジタルカメラで試験片の透かし写真を撮影する(カメラと試験片となるべく水平)。写真を印刷し、色の濃淡で充填物があるところとないところを区別し手で描き、その後ハサミでそれぞれカットし、それぞれの重量をW1とW2と記録し、下記の式で洗濯偏り率を算出する。
【0041】
洗濯偏り率=W1/(W1+W2)×100%。
【0042】
c.同様の方法で、残りの2つの座布団を洗濯、乾燥させ、保温シートの洗濯偏り率を算出し、3回の試験の平均値を最終結果とする。
【0043】
(6)保温率
「GB/T 35762-2017平板法」により測定する。保温率の数値が大きいほど保温性が良好である。
【0044】
(7)目付
無張力状態で不織布ウェブを保温シートから軽く分解し、50cm×50cmの大きさの不織布ウェブを秤量し、重量をmとする。不織布ウェブの目付(g/m2)=m×4。上記の手順で不織布ウェブ2枚を取って測定し、3回の結果の平均値を最終結果とする。
【0045】
(8)保温シートの嵩高性
FZ/T 64003-2011(付録A)の基準により測定する。
【0046】
(9)圧縮回復率
FZ/T 64003-2011(付録A)の基準により測定する。
【0047】
(10)風合い
保温シートの風合いについては、10人が官能評価し、優(柔らかい)、良、一般、悪(硬い)の4レベルと判定される。8人以上が風合いよいと評価する場合、レベル「優」と判定する。6~7人が風合いよいと判断する場合、レベル「良」と判定する。3~5人が風合いよいと判断する場合、レベル「一般」と判定する。2人以下が風合いよいと判断する場合、レベル「悪」と判定する。
【0048】
(11)ファイバーボール、開繊綿の嵩高性(FP値)
a.分解した保温シートから、ファイバーボール(または開繊綿)30gをサンプルとして取り出す。
【0049】
b. IDFB基準のフィルパワー(FP)試験機を用いて測定する。まず、サンプルを軽く振ってから測定筒にゆっくりと投入し、その後、木製攪拌棒で5回攪拌してゆっくりと荷重円盤を置き、荷重円盤とサンプルが接触したときに手を離し、1分間経過後綿の高さを読み取り、データをH1(測定精度が0.1cm)と記録する。次いで荷重円盤を取り出し、攪拌棒で5回攪拌して嵩高性を回復させ、上記試験手順を3回繰り返し、測定で読み取ったデータをそれぞれH2、H3とし、3回の平均値をHとする。
【0050】
c.計算:嵩高性FP値=39.73*H (単位:inch3/30g)。FP数値が高いほど、嵩高性が良好である。
【0051】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
【0052】
実施例と比較例に用いられた繊維原料は以下の通りである。
低融点繊維1:低融点ポリエステル繊維、融点120℃、繊度2.0D、長さ51mm、東レ株式会社製;
低融点繊維2:低融点ポリエステル繊維、融点120℃、繊度2.0D、長さ38mm、東レ株式会社製;
低融点繊維3:低融点ポリエチレン繊維、融点110℃、繊度3.0D、長さ51mm、東レ株式会社製;
低融点繊維4:低融点ポリエステル/ポリエチレン複合繊維、融点110℃、繊度2.0D、長さ51mm、東レ株式会社製;
低融点繊維5:低融点ポリエチレン繊維、融点110℃、繊度1.0D、長さ32mm、東レ株式会社製;
非低融点繊維1:シリコーンオイルで処理された3次元捲縮中空ポリエステル繊維、融点260℃、繊度3.0D、長さ38mm、捲縮数8個/25mm、捲縮率10%、中空率20%、東レ株式会社製;
非低融点繊維2:シリコーンオイルで処理された3次元捲縮中空ポリアミド繊維、融点230℃、繊度2.0D、長さ38mm、捲縮数8個/25mm、捲縮率13%、中空率20%、東レ株式会社製;
非低融点繊維3:レーヨン繊維、繊度1.0D、長さ51mm、捲縮数4個/25mm、捲縮率8%、日本大和紡績株式会社製。
【0053】
(実施例1)
非低融点繊維1をファイバーボール生産設備の原綿供給口に投入し、開繊、カーディング、球状体形成の工程を経て、嵩高性(FP値)が450inch3/30gのファイバーボールを得た。
【0054】
低融点繊維1を15kg、非低融点繊維1を35kg、前記2種類の繊維を同時に混綿機に投入し、フィード速度20m/min、出力速度20m/min、混綿、開繊、カーディング、熱風法クロスウェブ(プレスロール圧力50N)、熱融着(オーブン温度150℃)、巻取りの工程を通し、目付15g/m2の不織布ウェブ1と不織布ウェブ2を得た。不織布ウェブ1と2の片面に、1cm2あたりの面積中に長さ10mm以上の繊維本数が8本であった。
【0055】
保温シート加工設備の下フィードローラーに、裏層とした不織布ウェブ1を供給し、その上に前記ファイバーボールを均一なシート状に供給し(ファイバーボールシートの目付が70 g/m2)、次いで、上フィードローラーに表層とした不織布ウェブ2を供給し、ファイバーボールシートを不織布ウェブ1と2の間に挟みこみ、キルティングマシンで保温シートを長さ方向に直線的に固定し、任意の隣接固定点間の距離が6mmであり、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0056】
(実施例2)
キルティング法で固定する際、任意の隣接固定点間の距離が3mmに変更した以外は、実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0057】
(実施例3)
不織布ウェブ1と2を作製する際、15kgの低融点繊維2と、35kgの非低融点繊維1を原料とし、クロスウェブ工程におけるプレスロール圧力を90Nに設定し、得られた不織布ウェブ1と2の片面に、1cm2あたりの面積内に長さ10mm以上の繊維数を0本とし、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0058】
(実施例4)
混綿機において、フィード速度10m/min、出力速度20m/minで、得られた不織布ウェブ1と2の目付は5g/m2であり、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0059】
(実施例5)
50kgの非低融点繊維1を用いて、スパンレース法(スパンレース圧力30×105Pa)で不織布ウェブ1と2を作製し、その片面に長さ10mm以上の繊維数1cm2当たり8本とし、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0060】
(実施例6)
ダウンを充填物とし、不織布ウェブ1と2間に挟みこみ、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0061】
(実施例7)
速度10m/minでニードルパンチ加工して不織布ウェブとファイバーボールを固定し、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0062】
(実施例8)
非低融点繊維1を用いて、開繊工程を経て嵩高性(FP値)620inch3/30gの開繊綿を得た。前記開繊綿を充填物とし、他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的パラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0063】
(実施例9)
混綿機において、フィード速度15m/min、出力速度20m/minで加工し、得られた不織布ウェブ1と2の目付が8g/m2であり、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表1に示す。
【0064】
(実施例10)
非低融点繊維2をファイバーボール生産設備の原綿供給口に投入し、開繊、球状体形成の加工工程を通し、嵩高性(FP値)470inch3/30gのファイバーボールを得た。
【0065】
低融点繊維3を17.5kg、非低融点繊維1を32.5kg、前記2種類の繊維を同時に混綿機に投入し、フィード速度18m/min、出力速度20m/min、混綿、開繊、カーディング、クロスウェブ(プレスロール圧力50N)、熔融接着(オーブン温度150℃)等の加工工程を経て、目付10g/m2の不織布ウェブ1と2を得た。その不織布ウェブの片面に、1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維本数が8本であった。
【0066】
保温シート加工設備の下フィードローラーに不織布ウェブ1を裏層として供給し、その上に上記ファイバーボールを均一なシート状に供給し(ファイバーボールシートの目付70 g/m2)、次いで上フィードローラーに不織布ウェブ2を表層として供給し、不織布ウェブ1と2の間にファイバーボールシートを挟み込み、超音波熱プレス法により不織布ウェブ1と2及びファイバーボールシートを固定し、任意の隣接固定点間の距離を100mmとし、本発明の保温シートを得た。超音波熱プレス法の具体的な条件は:気圧0.2MPa、電流0.5A、パターンローラーの圧力1.5kg、超音波パワー1400W、任意の隣接固定点間の距離が100mmである。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0067】
(実施例11)
熱風法不織布ウェブ生産時、クロスウェブ工程のプレスロール圧力を75Nに設定し、不織繊維ウェブ1と2を得た。その不織布ウェブの片面に、1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維本数を4本とし、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0068】
(実施例12)
不織布ウェブ1と2の原料として、30kgの低融点繊維1及び20kgの非低融点繊維1を用い、その他は実施例8と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的パラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0069】
(実施例13)
不織布ウェブ1と2の原料を15kgの低融点繊維4及び35kgの非低融点繊維1とし、その他は実施例8と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0070】
(実施例14)
不織布ウェブ1と2の原料を17.5kgの低融点繊維5及び32.5kgの非低融点繊維1とし、その他は実施例10と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0071】
(実施例15)
8kgの非低融点繊維1と2kgの非低融点繊維3を用いてファイバーボールを作製した。
【0072】
低融点繊維4を15kg、非低融点繊維1を15kg及び非低融点繊維3を15kgとし、不織繊維ウェブ1と2を熱風法で作成し、その片面に1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維本数を6本とした。不織布ウェブ1と2の製造時、クロスウェブ工程のプレスロール圧力は70Nに設定された。
【0073】
不織布ウェブ1と2とファイバーボールシートをサンドイッチ構造で挟み、長さ方向に波状でキルティングにより固定し、任意の隣接固定点間の距離を10mmとし、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0074】
(実施例16)
不織布ウェブ1と2のファイバーボールと接触する接触面にアクリル酸系粘着剤(山東華宇化学技術有限公司製)を20m/minの速度で10g/m2の塗布量で点状塗布し、次いで温度150℃で乾燥キュアさせ、最後に冷却固化して固定点を形成し、任意の隣接固定点間の距離を50mmとし、その他は実施例10と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0075】
(実施例17)
熱風法不織布ウェブ製造時、クロスウェブ工程のプレスロール圧力を80Nに設定し、不織布ウェブ1と2を得た。その不織布ウェブの片面に、1cm2あたりの面積内長さ10mm以上の繊維本数を2本とし、その他は実施例1と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0076】
(実施例18)
熱風法不織布ウェブ製造時、フィード速度30m/min、出力速度20m/minで、得られた不織布ウェブ1と2の目付が20g/m2であり、その他は実施例8と同様にし、本発明の保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0077】
実施例1-18の保温シートは、アパレル、ベッド用品、アウトドア用品、鞄又は装飾材料の制作に用いられる。
【0078】
(比較例1)
ファイバーボール生産設備の原綿供給口に3kg低融点繊維3及び7kg非低融点繊維1を投入し、開繊、球状体形成の工程を通し、嵩高性(FP値)が450inch3/30gのファイバーボールを得た。
【0079】
ファイバーボールを、不織布ウェブ1と2の間に挟みこみ、キルティング加工を行わず、そのままオーブンで加熱処理し、オーブン温度を150℃に設定し、その他は実施例1と同様にし、保温シートを得た。具体的なパラメータ及び評価結果は表2に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
表1及び表2によれば、
(1)実施例1と実施例2から見ると、同じ条件で、任意の隣接固定点間の距離が6mmで作られた保温シートは、任意の隣接固定点間の距離が3mmで作られた保温シートと比べて、両者の洗濯耐久性(洗濯偏り)が同等であったが、前者の圧縮回復性及び保温性が後者よりやや良く、嵩高性及び風合いは後者より明らかに優れることが分かった。
【0083】
(2)実施例17と実施例3から見ると、同じ条件で、不織布ウェブの充填物と接触する接触面に1cm2の面積内長さ10mmの繊維本数が2本で作られた保温シートは、不織布ウェブの充填物と接触する面に1cm2の面積内長さ10mmの繊維本数が0本で作られた保温シートと比べて、両者の嵩高さ、圧縮回復性、保温性及び風合いが共に同等であったが、前者の洗濯耐久性(洗濯偏り)は後者より優れることが分かった。
【0084】
(3)実施例9と実施例4から見ると、同じ条件で、不織布ウェブの目付8g/m2で作られた保温シートは、不織布ウェブの目付5g/m2で作られた保温シートと比べて、両者の風合い、嵩高性、圧縮回復性及び保温性が共に同等であったが、前者の洗濯耐久性(洗濯偏り)は後者より優れることが分かった。
【0085】
(4)実施例1と実施例5から見ると、同じ条件で、低融点繊維と非低融点繊維からなる不織布ウェブで作られた保温シートは、非低融点繊維のみからなる不織布ウェブで作られた保温シートと比べて、両者の風合いが同等であったが、前者の嵩高性、圧縮回復性、保温性及び洗濯耐久性(洗濯偏り)はいずれも後者より優れることが分かった。
【0086】
(5)実施例1と実施例6から見ると、同じ条件で、ファイバーボールの充填物で作られた保温シートは、ダウンの充填物で作られた保温シートと比べて、両者の保温性及び風合いが同等であったが、前者の嵩高性、圧縮回復性及び洗濯耐久性(洗濯偏り)はいずれも後者より優れることが分かった。
【0087】
(6)実施例1と実施例7から見ると、同じ条件で、直線キルティング法で作られた保温シートは、ニードルパンチ法で作られた保温シートと比べて、両者の保温性及び洗濯耐久性(洗濯偏り)が同等であったが、前者の嵩高性、圧縮回復性及び風合いはいずれも後者より明らかに優れることが分かった。
【0088】
(7)実施例1と実施例11から見ると、同じ条件で、不織布ウェブの充填物と接触する接触面に1cm2当たりの面積内長さ10mmの繊維本数が8本で作られた保温シートは、不織布ウェブの充填物と接触する接触面に1cm2当たりの面積内長さ10mmの繊維本数が4本で作られた保温シートと比べて、両者の風合いが同等であったが、前者の嵩高性、圧縮回復性及び保温性が後者よりやや良く、洗濯耐久性(洗濯偏り)は後者より明らかに優れることが分かった。
【0089】
(8)実施例8と実施例12から見ると、同じ条件で、低融点繊維30重量%を含有する不織布ウェブで作られた保温シートは、低融点繊維60重量%を含有する不織布ウェブで作られた保温シートと比べて、両者の嵩高性、洗濯耐久性(洗濯偏り)、保温性及び圧縮回復性が共に同等であったが、前者の風合いは後者より良好であることが分かった。
【0090】
(9)比較例1及び実施例1から見ると、同じ条件で、低融点繊維と非低融点繊維からなるファイバーボールで作られた保温シートは、非低融点繊維のみからなるファイバーボールで作られた保温シートと比べて、前者の嵩高性、圧縮回復性、洗濯耐久性(洗濯偏り)、保温性及び風合いはともに劣ることが分かった。
【符号の説明】
【0091】
1 不織布ウェブ
2 不織布ウェブ
3 充填物
4 固定点
5 不織布ウェブが充填物と接触する接触面に露出した繊維
6 隣接する固定点の間の距離
7 隣接する固定点の間の距離
【国際調査報告】