(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びそのホットスタンピング方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/12 20060101AFI20250212BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20250212BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20250212BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20250212BHJP
C22C 21/18 20060101ALI20250212BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20250212BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20250212BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20250212BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20250212BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C23C2/12
C22C38/00 301T
C22C38/60
C22C18/04
C22C21/18
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C21D9/46 J
C23C2/40
B21D22/20 H
B21D22/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541691
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2023071554
(87)【国際公開番号】W WO2023134665
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210025589.5
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畢 文 珍
(72)【発明者】
【氏名】王 凱
(72)【発明者】
【氏名】史 良 權
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲シン▼ ▲ヤン▼
【テーマコード(参考)】
4E137
4K027
4K037
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA08
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4K042DC03
4K042DD01
(57)【要約】
本発明は、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びそのホットスタンピング方法を開示し、ホットスタンピング前、このAl-Zn-Mg-Siめっき層の初期組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、MgZn2相、MgSi2相及びFe-Al-Si合金層からなり、ホットスタンピング後、めっき層の組織が保持時間t≦3minの場合、めっき層は上下2層からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相及びMgZn2相からなり、且つZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層はFeAl3相とZnリッチ相からなり、且つZnリッチ相の体積百分率は5%を超えなく、保持時間t>3min場合、めっき層は単層合金層からなり、合金層の主要な組成はFeAl3相であり、FeAl3相の間にZnリッチ相とMgZn2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百分率は5%~50%であり、また、本発明はホットスタンピング方法にも関する。ホットスタンピング後、本発明の鋼板は、めっき層が良好な耐食性を持ち、また、液体金属脆性による基材の割れを回避することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上にめっきされたAl-Zn-Mg-Siめっき層とを含むAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板であって、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層は、厚さ方向に表層の酸化層と、表層の下に位置する合金層という2つの構造からなり、前記合金層の厚さは15~45umであり、その内、
前記合金層は上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相からなり、且つZnリッチ相とFeAl
3相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層の組織はFeAl
3相、MgZn
2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn
2相とZnリッチ相の体積百比率は5%を超えなく、又は
前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl
3相であり、FeAl
3相の間にZnリッチ相とMgZn
2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn
2相の2相の合計の体積百比率は5%~50%であることを特徴とする、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項2】
ホットスタンピング前、前記ホットスタンピング鋼板のAl-Zn-Mg-Siめっき層の初期組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、FeAl
3相、MgSi
2相及びFe-Al-Si合金層からなり、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の厚さは8-30umであることを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項3】
前記酸化層にはZn酸化物、Al酸化物、Mg酸化物、及びSi酸化物が含まれ、且つ前記酸化層の厚さは3um以内であることを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項4】
前記合金層は上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相からなり、且つZnリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相の3相の合計の体積百分率は50%~100%であり、第2層の組織はFeAl
3相、MgZn
2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn
2相とZnリッチ相の体積百比率は5%を超えないことを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項5】
前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl
3相であり、FeAl
3相の間にZnリッチ相とMgZn
2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn
2相の2相の合計の体積百比率は15%~40%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項6】
前記Znリッチ相とMgZn
2相が前記めっき層の厚さの1/3~1/2に集中することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項7】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.1-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であり、好ましくは、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.5-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項8】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項9】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項8に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項10】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、及びB:0.001%~0.01%を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項8に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項11】
Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に使用されるホットスタンピング方法であって、当該ホットスタンピング方法の操作ステップは以下の通りであり、
(1)加熱:Al-Zn-Mg-Siめっき層を有する鋼板を加熱炉内に搬送し、5℃/s以上1000℃/s以下の昇温速度Vで、鋼板をAc3より高い温度T
Ac3まで加熱し、加熱温度Tの範囲は下記の関係式を満足する必要があり、
【数1】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、Vは加熱過程中の昇温速度であり、単位は℃/sであり、
(2)温度保持:オーステナイト化鋼板を保持し、保持時間tの設定は以下の関係を満たし、
【数2】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、単位はminであり、
(3)ホットスタンピング成形と型内焼入れ:加熱された鋼板をホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクが形成され、このブランクをまず金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却することを特徴とする、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項12】
ステップ(1)において、前記ホットスタンピング鋼板のオーステナイト化温度を、930℃以下、Ac3より高い温度に制御し、及び/又は
ステップ(2)において、オーステナイト化中の前記ホットスタンピング鋼板の保持時間を1分~7分に制御し、又は前記保持時間を1分より大きく3分未満に制御し、及び/又は
ステップ(3)において、ホットスタンピングの圧力保持時間は3~15秒であり、スタンピング圧力は300~1000トンであることを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項13】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.5-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であることを特徴とする、請求項12に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項14】
前記ホットスタンピング鋼板の基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であり、好ましくは、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であり、より好ましくは、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、及びB:0.001%~0.01%を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項15】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板は、
1)鋼板製造用原料を製錬する、
2)連続鋳造してビレットを鋳造する、
3)熱間圧延:ビレットを1100~1250℃に加熱した後、圧延開始温度950~1150℃、最終圧延温度750~900℃、熱間圧延板の厚さ20mm以下になるように圧延を制御する、
4)圧延後、500~850℃で巻き取り、室温まで冷却した後、組織はフェライトとパーライトになる、
5)熱間圧延時に発生するスケールを除去するために酸洗する、
6)冷間圧延:スチールコイルを2.0mm以下の厚さに冷間圧延し、冷間圧延圧下量≧35%である、
7)連続焼鈍と溶融めっき:得られた硬圧延ストリップを巻き戻し、洗浄し、均熱温度780~850℃に加熱し、30~200s保持し、そのうち、加熱速度は1~20℃/sであり、加熱部及び保持部の雰囲気はN
2-H
2の混合ガスを採用し、そのうち、H
2の体積含有量は0.5~20%であり、焼鈍雰囲気の露点は-40~10℃であり、その後、鋼板を亜鉛ポットに浸漬して溶融めっきし、めっき液の温度範囲は565~605℃であり、めっき液から出た後、鋼板を段階的に冷却して、基材にAl-Zn-Mg-Siめっき層を施しためっき鋼板を得ること、というステップを含む方法で製造され、
好ましくは、前記段階的冷却は、めっき液から出てから480℃までの範囲で、鋼板の冷却速度を15~25℃/sに制御し、480~280℃の範囲で、鋼板の冷却速度を40~60℃/sに制御し、280℃以下まで冷却し、鋼板を水焼入れ槽に入れて室温まで冷却することを含むことを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間成形技術の分野に関し、特にAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びそのホットスタンピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化技術は、現代の自動車の安全、省エネ、環境保護のトレンドに適応するための重要な技術の一つである。スタンピング成形プロセスについて、薄肉化と高強度化が成形性を悪化させる二重の要因であり、成形時に車体部品が割れやすくなるだけでなく、過度のスプリングバックが発生しやすく、その後の車体組立に影響を及ぼす。熱処理によって最終部品の高強度を実現するのは、その方法の一つであるが、ホットスタンピング成形技術は、熱処理と高温成形を組み合わせて部品の高強度を実現することであり、高強度と冷間成形の矛盾を適切に解決できる。
【0003】
熱成形技術によって製造された部品は超高強度、高成形精度、スプリングバック無しなどの利点がある。Aピラー、Bピラー、自動車バンパー、衝突防止ビーム、ドア衝突防止ビームなど、熱成形技術を採用する自動車車体部品がますます増えている。従来のめっき層無しのホットスタンピング部品は、加熱過程にスタンピング鋼板の表面に脱炭や酸化剥離が起こってしまい、ホットスタンピング鋼板の表面の酸化や脱炭を避け、ホットスタンピング鋼板が耐熱性や耐食性を有するために、ホットスタンピング鋼板に適しためっき技術が開発された。現在、ホットスタンピングのめっき層には、主にアルミニウムケイ素(Al-10Si)めっき層、溶融純亜鉛(GI)めっき層、合金化亜鉛鉄(GA)めっき層、電気めっき亜鉛ニッケル(Zn-10Ni)めっき層などが含まれる。
【0004】
直接ホットスタンピングの過程では、陰極腐食保護を提供できる亜鉛ベースめっきホットスタンピング用鋼は、液体金属脆性(LME)の作用により鋼板のマトリックスに微小割れ(10um~100um)を引き起こし、さらに板厚方向全体に及ぶ巨視的割れが発生することがあるため、亜鉛ベースホットスタンピングめっき鋼板の適用と発展の妨げとなっている。現在広く使用されているアルミニウム/ケイ素めっき層は、陰極腐食保護を提供できなく、めっき層の耐食性を更に向上させるために、亜鉛めっき材料も純亜鉛から亜鉛合金へと進化してきた。Inland Steelが、ZnにAlとMgを適量添加することで耐食性を更に向上できるという3つの特許出願GB1125965A、US3505043A、US3505042Aを提案して以来、人々はこのようなZn-Al-Mg系めっき鋼板について様々な開発と研究を行われ、主に、他の様々な添加元素を混合したり、製造プロセスパラメータを制限したりすることで、耐食性を更に向上させ、或いは製造を容易にして製造コストを削減することに注目する。
【0005】
また、CN100334250では、耐食性に優れたZn-Al-Mg-Si合金めっき鋼材及びその製造方法を提案しており、主にZn-Al系めっき層に添加するMgとSiの含有量を制御し、耐食性向上効果のあるMgSi2相の析出量と析出形態を制御することで、塗装後の切断面の耐エッジクリープ性の問題を解決できるだけでなく、特に優れた性能の合金めっき層を提供することもできる。特許CN103805930Bは、Galvalumeめっき層(Zn-55Al)にMg及び/又はCrを添加し、界面合金層中のCrの分布を研究し、加工性及び耐食性ともに優れた溶融Zn-Al-Mg-Crめっき鋼板を提供している。しかしながら、上記既存の技術は、冷間成形鋼板に使用されるZn-Al-Mg系めっき層のみについての技術であり、ホットスタンピングAl-Zn-Mg-Siめっき鋼板及びそのホットスタンピング方法に関する研究はまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びそのホットスタンピング方法を提供することを目的とする。本発明の方法によって製造されたホットスタンピング部品は、優れた耐食性を有し、Al-Zn-Mg-Siめっき板のホットスタンピング成形中の局部応力及び液体金属脆性(LME)による基材割れを効果的に回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の発明目的を達成するために、本発明が提供する技術的解決策は以下の通りである。
【0008】
基材と、基材上にめっきされたAl-Zn-Mg-Siめっき層とを含むAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板であって、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層は、厚さ方向に表層の酸化層と、表層の下に位置する合金層という2つの構造からなり、前記合金層の厚さは15~45umであり、その内、前記合金層は、上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn2相及びFeAl3相からなり、且つZnリッチ相とFeAl3相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層の組織はFeAl3相、MgZn2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn2相とZnリッチ相の体積百分率は5%を超えなく、又は、前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl3相であり、FeAl3相の間にZnリッチ相とMgZn2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百分率は5%~50%であることを特徴とする、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【0009】
幾つかの実施態様において、前記合金層は上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn2相及びFeAl3相からなり、且つZnリッチ相、MgZn2相及びFeAl3相の3相の合計の体積百分率は50%~100%であり、第2層の組織はFeAl3相、MgZn2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn2相とZnリッチ相の体積百比率は5%を超えない。
【0010】
幾つかの実施態様において、前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl3相であり、FeAl3相の間にZnリッチ相とMgZn2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百比率は15%~40%である。
【0011】
幾つかの実施態様において、本発明は、基材と、基材上にめっきされたAl-Zn-Mg-Siめっき層とを含むAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板を提供し、ホットスタンピング後、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層は、厚さ方向に表層の酸化層と下部の合金層という2つの組織構造からなり、且つ前記合金層の厚さは15~45umであり、この合金層の組織は、オーステナイト化過程中の保持時間tと次の関係がある。
【0012】
(1)保持時間t≦3minの場合、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の合金層は上下2層からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、及びFeAl3相からなり、且つZnリッチ相とFeAl3相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層はFeAl3相とZnリッチ相からなり、且つZnリッチ相の体積百比率は5%を超えない。
【0013】
(2)保持時間t>3minの場合、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl3相であり、Znリッチ相とMgZn2相がFeAl3相の間に存在し、且つZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百比率は5%~50%である。
【0014】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、ホットスタンピング前、前記鋼板のAl-Zn-Mg-Siめっき層の初期組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、FeAl3相、MgSi2相及びFe-Al-Si合金層からなり、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の厚さは8-30umである。
【0015】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、ホットスタンピング後、前記鋼板のめっき層表面の酸化層は(Zn、Al、Mg、Si)酸化物を含み、且つAl-Zn-Mg-Siめっき層の酸化層の厚さは3um以内、例えば0.5~3umである。
【0016】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.1-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物である。
【0017】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.5-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物である。
【0018】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物である。
【0019】
幾つかの実施態様において、本発明に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、その基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01%~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物である。
【0020】
幾つかの実施態様において、本発明に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、その基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、及びB:0.001%~0.01%を含み、残りはFe及び不可避的不純物である。
【0021】
本発明に係る鋼板における各化学元素の設計原理は下記に示される通りである。
C:0.1%~0.5%
C含有量は、鋼板の強度、硬さ等の力学的性質を決定する最も重要な要素であり、C含有量の増加に従い鋼板の強度、硬さは増加し、鋼板の塑性、靭性は低下し、鋼板の低温脆性傾向、時効傾向は増加する。また、C含有量は、焼入れ直後の力学的性質にも大きな影響を与えるため、本発明では、鋼板が一定の塑性と靭性を有するように、C含有量の上限を0.5%、好ましくは0.35%と規定し、鋼板が一定の強度を有するように、下限を0.1%と規定する。幾つかの実施態様において、Cの含有量は0.1~0.3%である。
【0022】
Si:0.05%~2.0%
Siは、置換型固溶合金元素であり、オーステナイト中のCの濃縮を促進し、オーステナイトの安定性を高め、鋼板の強度を向上させ、その靭性をある程度向上させることができるため、本発明では、Si含有量の下限を0.05%と規定するが、Si含有量が多いと、熱間圧延時に赤スケールという表面欠陥が発生する確率が高くなり、且つ圧延力が増大するため、熱延鋼板の延性が劣化してしまう。そのため、本発明ではSi含有量の上限を1.0%と規定する。鋼板のめっき性を確保するためには、Siの上限は、好ましくは1.0%である。幾つかの実施態様において、Siの含有量は0.05~0.5%であり、幾つかの実施態様において、Siの含有量は0.05~0.3%である。
【0023】
Mn:0.5%~3.0%
Mnは、鋼板の焼入れ性を向上させ、オーステナイト相領域を拡大し、焼入れ後の鋼板の強度を効果的に確保する元素であると同時に、Mnはオーステナイト相領域を拡大する元素として、Ac3とAc1の温度を低下させ、パーライト相変態を遅延させることで、ホットスタンピングの加熱温度を低下することができる。Ac3は炭素鋼を加熱したときの相変態の実際の温度を指し、Ac1は鋼を加熱したときにオーステナイトが形成され始める温度を指す。Mn含有量が0.5%未満では、鋼板の焼入れ性を向上させる能力が不十分である。一方、Mn含有量が3%を超えると偏析が生じ、母材鋼板やホットスタンピング部品の性能均一性が低下してしまう。幾つかの実施態様において、Mnの含有量は0.5~2.0%である。幾つかの実施態様において、Mnの含有量は0.8~1.5%である。
【0024】
P:≦0.1%
鋼中のPは、鋼の可塑性と靭性を著しく低下させ、特に低温で「低温脆性」現象を引き起こすため、厳密に管理し、0.1%未満に制限する必要がある。幾つかの実施態様において、P:≦0.01%。
【0025】
S:≦0.05%
S含有量は低レベルに維持される。SからFeSが生成すると熱脆性の問題を引き起こすため、S含有量は0.05%以下に制限される。下限は規定しないが、同じ理由でS含有量は低いほど好ましい。幾つかの実施態様において、S:≦0.0005%。
【0026】
N:≦0.01%
N含有量が0.01%を超えると、熱間圧延時にAlNの窒化物が生成し、鋼板の打ち抜き性及び焼入れ性が低下する。従って、N含有量は低いほど好ましく、≦0.01%に設定される。幾つかの実施態様において、N:≦0.005%。
【0027】
Al:0.01%~0.05%
Alには脱酸素作用がある。Sol.Al(有効Al)含有量<0.01%の場合、添加効果は明らかでなく、Sol.Al含有量>0.05%の場合、脱酸素作用は飽和し、コストが増加する。従って、本発明ではAl含有量を0.01%~0.05%に限定する。
【0028】
Nb:0.01%~0.1%
Nbは、鋼中の重要なマイクロ合金元素であり、鋼に微量のNbを添加すると、炭素当量が低い場合、その炭素、及び窒化物の質点(サイズ5nm未満)の拡散析出とNb固溶を通じて、鋼の結晶粒を微細化させ、鋼の強度と靭性、特に低温靭性を大幅に向上させ、同時に鋼に良好な冷間曲げ特性と溶接性を与える。従って、本発明は、Nbの含有量を0.01%~0.1%に制限することで、熱間成形後の部品の靭性と冷間曲げ特性を向上させる目的で、鋼基材の本来のオーステナイト粒を効果的に微細化することができる。
【0029】
V:0.01%~1.0%
Vは炭化物を形成することで組織を微細化する元素である。鋼板をAc3点以上に加熱すると、微細なVの炭化物が再結晶と結晶粒の生成を抑制し、オーステナイト粒を微細化し、靱性を向上させる。V含有量<0.01%の場合、添加効果は明らかでなく、V含有量>1.0%の場合、添加効果は飽和し、コストが増加する。
【0030】
Mo:0.01%~1.0%
MoはVと同様にオーステナイト微細化元素であり、Mo含有量<0.01%の場合、添加効果は明らかでなく、Mo含有量>1.0%の場合、添加効果は飽和し、コストが増加する。
【0031】
B:0.001%~0.01%
Bは、鋼中の粒界偏析が激しい元素であり、オーステナイトの粒界エネルギーを低下させ、初析フェライト結晶核の形成を抑制することができ、鋼の焼入れ性を向上させることについて3つの特徴があり、即ち、焼入れ性を向上させる能力は非常に強く、ごく少量のB元素の添加は、他の様々な貴重な合金元素の添加に相当し、B元素は、鋼中の含有量が増加するにつれて焼入れ性向上の効果が増大する一般的な合金元素とは異なり、焼入れ性を向上させるのに最適な含有量があり、且つ非常に少量である。従って、本発明におけるB元素の含有量は0.001%~0.01%に限定される。
【0032】
本発明において、鋼板基材の化学成分は、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%のうちの少なくとも1種を含むこともできる。
【0033】
Ti:0.01%~0.1%
Tiは、窒化物を形成することで前述のBの役割を安定的に果たすため、有効に利用できる元素である。このため、0.01%以上の添加が必要であるが、過剰に添加すると窒化物が過剰となり、靭性の劣化を招くため、上限を0.10%と規定する。
【0034】
Cr:0.01%~1.0%
Crは鋼の焼入れ性を高めることができ、且つ二次硬化の効果がある。クロムと鉄は連続固溶体を形成し、オーステナイト相領域を縮小させ、また、クロムはパーライトの炭素濃度及びオーステナイト中の炭素の最終溶解度を低下させることができる。また、クロムは鋼の耐酸化性と耐食性を向上させることもできる。Cr含有量<0.01%の場合、添加効果は明らかでなく、Cr含有量>1.0%の場合、添加効果は飽和し、コストが増加する。幾つかの実施態様において、Crの含有量は0.1~0.5%、例えば0.1~0.4%である。
【0035】
Ni:0.01%~1.0%
Niは鋼のオーステナイト領域を拡大することができ、オーステナイトを形成及び安定化させるための主要な合金元素であり、また、ニッケルはフェライトを強化し、パーライトを微細化して増加させ、鋼の強度を向上させることができる。その添加効果は0.01%以上で顕著であるが、高価な元素であるため、1.0%以下に抑制される。
【0036】
本発明はまた、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法に関し、鋼板を限られたプロセス範囲内でオーステナイト化した後、ホットスタンピング成形と型内焼入れを行うことで、ホットスタンピング部品に良好な耐食性を持たせると同時に、熱間成形過程中の局部応力及び液体金属脆性による基材割れを回避することができる。このホットスタンピング成形方法の操作ステップは次の通りである。
【0037】
(1)加熱:Al-Zn-Mg-Siめっき層を有する鋼板を加熱炉内に搬送し、5℃/s以上1000℃/s以下の昇温速度Vで、鋼板をAc3より高い温度TAc3まで加熱し、加熱温度Tの範囲は下記の関係式を満足する必要があり、
【0038】
【0039】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、Vは加熱過程中の昇温速度であり、単位は℃/sである。
【0040】
(2)温度保持:オーステナイト化鋼板を保持し、保持時間tの設定は以下の関係を満たし、
【0041】
【0042】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、単位はminである。
【0043】
(3)ホットスタンピング成形と型内焼入れ:加熱された鋼板を素早くホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクが形成され、このブランクをまず金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却する。
【0044】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、前記ステップ(1)における昇温速度Vは、5℃/sより大きく1000℃/s未満である。
【0045】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、前記ステップ(1)における昇温速度Vは5~200℃/sである。幾つかの実施態様において、前記昇温速度Vは5~50℃/sである。幾つかの実施形態において、前記昇温速度Vは10~50℃/sである。
【0046】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、前記ステップ(1)において、鋼板のオーステナイト化温度を、930℃以下、且つAc3より高い温度に制御する。
【0047】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、前記ステップ(2)において、オーステナイト化中の前記鋼板の保持時間を、1分~7分の間に制御する。
【0048】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、ステップ(2)として更に、前記保持時間を1分より大きく3分未満に制御し、即ち、最適化態様では、保持時間を1分より大きく3分未満に制御する。
【0049】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法において、前記ステップ(3)において、ホットスタンピングのスタンピング圧力は300~1000トンであり、圧力保持時間は3~15秒である。
【0050】
幾つかの実施態様において、本発明に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法は、本明細書の何れかの実施態様に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板の製造に使用される。
【0051】
幾つかの実施態様において、本明細に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法は、以下のステップを有する方法を用いて前記Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板を製造するステップも含む。
【0052】
1)鋼板製造用原料を製錬する。
2)連続鋳造してビレットを鋳造する。
【0053】
3)熱間圧延:ビレットを1100~1250℃に加熱した後、圧延開始温度950~1150℃、最終圧延温度750~900℃、熱間圧延板の厚さ20mm以下になるように圧延を制御する。
【0054】
4)圧延後、500~850℃で巻き取り、室温まで冷却した後、組織はフェライトとパーライトになる。
【0055】
5)熱間圧延時に発生するスケールを除去するために酸洗する。
6)冷間圧延:スチールコイルを2.0mm以下の厚さに冷間圧延し、冷間圧延圧下量≧35%である。
【0056】
7)連続焼鈍と溶融めっき:得られた硬圧延ストリップを巻き戻し、洗浄し、均熱温度780~850℃に加熱し、30~200s保持し、そのうち、加熱速度は1~20℃/sであり、加熱部及び保持部の雰囲気はN2-H2の混合ガスを採用し、そのうち、H2の体積含有量は0.5~20%であり、焼鈍雰囲気の露点は-40~10℃であり、その後、鋼板を亜鉛ポットに浸漬して溶融めっきし、めっき液の温度範囲は565~605℃であり、めっき液から出た後、鋼板を段階的に冷却して、基材にAl-Zn-Mg-Siめっき層を施しためっき鋼板を得る。
【0057】
好ましくは、前記段階的冷却は、めっき液から出てから480℃までの範囲で、鋼板の冷却速度を15~25℃/sに制御し、480~280℃の範囲で、鋼板の冷却速度を40~60℃/sに制御し、280℃以下まで冷却し、鋼板を水焼入れ槽に入れて室温まで冷却することを含む。
【0058】
上記の技術的解決策に基づき、本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びホットスタンピング方法が実用化され、以下の有益な効果を達成した。
【0059】
1、本発明は、限られたプロセス範囲内で、ホットスタンピングされた部品が良好な耐食性を有する、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング成形方法を提供する。加熱過程では、まずAl-Fe拡散が優先的に起こり、この時元のめっき層中のZnリッチ相(η-Zn)とMgZn2相は、めっき層の厚さ方向における表層の1/3~1/2に集中し、表層がZnリッチ相(η-Zn)、MgZn2相及びAlリッチ相からなり、界面層がAlFe3相からなる二層合金相構造は、腐食性媒体にある場合、表層のZnリッチ相又はMgZn2相の電位がより低いため、界面合金層又はマトリックスと一次電池を形成することができ、その結果、マトリックスに対して犠牲陽極の保護機能を果たす。
【0060】
2、本発明は、本発明によって限定されるプロセス範囲内で、液体金属脆性(Liquid Metal Embrittlement、LME)による基材割れを回避することができ、ホットスタンピングされためっき層に良好な耐食性を持たせる、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング成形方法を提供する。
【0061】
3、本発明に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板は、加熱過程でまずAl-Fe拡散が優先的に起こり、この時元のめっき層中のZnリッチ相(η-Zn)とMgZn2相がめっき層の厚さ方向における表層の1/3~1/2に集中し、もし加熱温度が高すぎると、Al-Feが十分に拡散した後、Zn-Fe拡散の駆動力により、めっき層中のZnリッチ相がAlFe3相の粒界に拡散し、鋳型成形過程では、低融点のZnリッチ相が依然として液体であるため、応力の作用により、AlFe3相の結合力が低下し、液体金属脆性による巨視的割れを引き起こす。そのため、加熱温度を1.03TAc3+2×V×[Al]/[Zn]以下に限定する。
【0062】
4、本発明に係るAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板は、ホットスタンピング成形用鋼板の保持時間を詳細に限定しており、保持時間が1min未満であれば、鋼板を完全にオーステナイト化することができなく、保持時間が長すぎると、同様にめっき層が(Al、Fe)相とZnリッチ相が共存する単層合金層構造に変化し、液体金属脆性(Liquid Metal Embrittlement、LME)による巨視的割れを引き起こす。そのため、保持時間を2.7×[Al]/[Zn]以下に限定する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】ホットスタンピング前の本発明の実施例1のミクロ組織である。
【
図2】ホットスタンピング後の本発明の実施例1のミクロ組織である。
【
図3】ホットスタンピング後の本発明の実施例2のミクロ組織である。
【
図4】ホットスタンピング後の本発明の実施例5のミクロ組織である。
【
図5】ホットスタンピング後の本発明の実施例6のミクロ組織である。
【
図6】ホットスタンピング後の本発明の実施例8の断面形態である。
【
図7】ホットスタンピング後の本発明の比較例4のLME特徴及び高倍率でのめっき層の断面形態である。
【
図8】本発明の比較例の
図7における位置Aの高倍率での形態である。
【
図9】本発明の比較例の
図7における位置Bの高倍率での形態である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
【0065】
本発明は、基材と、基材上にめっきされたAl-Zn-Mg-Siめっき層とを含む、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンプ鋼板に関する。ホットスタンピング前、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の初期組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、FeAl3相、MgSi2相及びFe-Al-Si合金層からなり、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の厚さは8-30umである。ホットスタンピング後、前記めっき層の組織は、厚さ方向に2つの構造からなり、即ち、表層の酸化層と表層下部の合金層からなり、前記合金層の厚さは15~45umであり、この合金層の組織は、オーステナイト化過程中の保持時間tと次の関係がある。
【0066】
(1)保持時間t≦3minの場合、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の合金層は上下2層からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、及びFeAl3相からなり、且つ全組織に対するZnリッチ相とFeAl3相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層はFeAl3相とZnリッチ相からなり、且つ全組織に対するZnリッチ相の体積百比率は5%を超えない。
【0067】
(2)保持時間t>3minの場合、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl3相であり、Znリッチ相とMgZn2相がFeAl3相の間に存在し、且つ全組織に対するZnリッチ相とMgZn2相の2相の合計の体積百比率は5%~50%である。
【0068】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.1-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物である。
【0069】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、ホットスタンピング後、前記鋼板のめっき層表面の酸化層は(Zn、Al、Mg、Si)酸化物を含み、且つめっき層の酸化層の厚さは3um以内である。(Zn、Al、Mg、Si)酸化物とは、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、及びケイ素酸化物の混合物である。
【0070】
本発明のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板において、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物である。
【0071】
上記のホットスタンピング成形用のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板の製造工程は以下の通りである。
【0072】
1)鋼板製造用原料を製錬する。
2)連続鋳造してビレットを鋳造する。
【0073】
3)熱間圧延:ビレットを1100~1250℃に加熱した後、圧延開始温度950~1150℃、最終圧延温度750~900℃、熱間圧延板の厚さ20mm以下になるように圧延を制御する。
【0074】
4)圧延後、500~850℃で巻き取り、室温まで冷却した後、組織はフェライトとパーライトになる。
【0075】
5)熱間圧延時に発生するスケールを除去するために酸洗する。
6)冷間圧延:スチールコイルを2.0mm以下の厚さに冷間圧延し、冷間圧延圧下量≧35%である。
【0076】
7)連続焼鈍と溶融めっき:得られた圧延硬化ストリップを巻き戻し、洗浄し、均熱温度780~850℃に加熱し、30~200s保持し、その内、加熱速度は1~20℃/sであり、加熱部及び保持部の雰囲気はN2-H2の混合ガスを採用し、その内、H2体積含有量は0.5~20%であり、焼鈍雰囲気の露点は-40~10℃であり、その後、鋼板を急冷し、亜鉛ポットに浸漬して溶融めっきし、めっき液の温度範囲は565-605℃であり、めっき液から出た後、鋼板を段階的に冷却して、基材にAl-Zn-Mg-Siめっき層を施しためっき鋼板を得る。
【0077】
上記ホットスタンピング鋼板の製造工程において、ステップ7)においてめっき液の温度を565~605℃に制御するのは、めっき液の温度が565℃より低いと、亜鉛ポット内でのめっき液の流動性が低下し、めっき層の厚さの制御が困難となり、その結果、めっき層の均一性を確保することが困難となり、特にめっき層の厚さが薄い場合には、均一性がさらに悪化するためである。亜鉛ポットの温度が605℃より高いと、亜鉛ポットでの鋼板の溶解や亜鉛ポット表面のめっき液の酸化が激しくなり、溶融めっきの過程でめっき液の底スラグや表面スラグが増加する。また、めっき液の温度が605℃より高いと、グレート等の溶融めっき装置中のZnの蒸発が激しくなり、鋼板表面の亜鉛灰等の欠陥が増加するようになる。
【0078】
特に、本発明は、異なる保持時間でのホットスタンピング後のめっき鋼板のめっき層組織の異なる相組成を明確に定義する。これは、発明者が広範な研究の結果、めっき層の組織中の各相の組成がオーステナイト化過程中の保持時間と最も大きな関係があり、且つホットスタンピング後のめっき層内の異なる相の組成が、その後の耐食性に大きな影響を及ぼすことを発見したためである。従って、多くの実験に基づいて、その後のホットスタンピング方法に合わせて、最適な耐食性組織を生成するホットスタンピング方法も定義する。
【0079】
本発明はまた、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング方法に関し、鋼板を限られたプロセス範囲内でオーステナイト化した後、ホットスタンピング成形と型内焼入れを行うことで、ホットスタンピング部品に良好な耐食性を持たせ、このホットスタンピング方法には、オーステナイト化段階、ホットスタンピング成形と型内焼入れ段階が含まれ、
オーステナイト化段階:基材として使用される鋼板を、Ac3より高い温度の加熱炉に搬送し、鋼板を完全にオーステナイト化して保温し、
ホットスタンピング成形と型内焼入れ段階:加熱された鋼板を素早くホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクが形成され、このブランクをまず金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却する。
【0080】
先のオーステナイト化段階において、ホットスタンピング成形用鋼板の加熱温度と加熱時間を詳細に限定したのは、発明者が鋭意研究の結果、オーステナイト化過程中の加熱温度と保持時間が、加熱後のめっき層の組織組成に影響を与え、それによって材料の耐食性に影響を及ぼすことを見出したからである。加熱温度が鋼板のAc3温度より低い場合、鋼板はオーステナイト単相域に入ることができなく、その後の焼入硬化過程でマルテンサイト変態を完了することができない。加熱過程でまずAl-Fe拡散が優先的に起こり、この時元のめっき層中のZnリッチ相(η-Zn)とMgZn2相がめっき層の厚さ方向における表層の1/3~1/2に集中する。表層がZnリッチ相(η-Zn)、MgZn2相及びAlリッチ相からなり、界面層がAlFe3相からなる二層合金相構造は、腐食性媒体にある場合、表層のZnリッチ相又はMgZn2相の電位がより低いため、界面合金層又はマトリックスと一次電池を形成することができ、その結果、マトリックスに対して犠牲陽極の保護機能を果たす。もし加熱温度が高すぎると、Al-Feが十分に拡散した後、Zn-Fe拡散の駆動力により、めっき層中のZnリッチ相がAlFe3相の粒界に拡散し、めっき層の耐食性が大きく低下するため、本発明では、加熱温度を930℃以下Ac3より高い温度に限定する。
【0081】
先のオーステナイト化段階では、ホットスタンピング成形用鋼板のオーステナイト化中の保持時間を1分~7分に制御する。オーステナイト化過程中の保持時間を詳細に限定し、その基本原理は前述の加熱温度の選択と同じである。保持時間が1min未満であれば、鋼板を完全にオーステナイト化することができなく、保持時間が長すぎると、同様にめっき層がAlFe3相とZnリッチ相が共存する単層合金層構造に変化し、耐食性が低下するため、保持時間を7min以内に限定し、さらに保持時間を3min以内に制御することを推奨する。
【0082】
尚、Al-Zn-Mg-Siめっき鋼板の熱間成形過程中の局部応力と液体金属脆性(Liquid Metal Embrittlement、LMEと略記)による基材割れを回避するために、本発明は、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に適用されるホットスタンピング成形方法を鋭意検討し、鋼板を限られた加熱温度と保持時間で加熱し、完了した後、ホットスタンピング成形と型内焼入れを行うことで、基材割れを回避することを目的とし、このホットスタンピング成形方法の操作ステップは次の通りであり、
(1)加熱:Al-Zn-Mg-Siめっき層を有する鋼板を加熱炉内に搬送し、5℃/s以上1000℃/s以下の昇温速度Vで、鋼板をAc3より高い温度TAc3まで加熱し、加熱方法には多くの選択肢があり、従来の技術に属し、加熱温度Tの範囲は下記の関係式を満足する必要があり、
【0083】
【0084】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、Vは加熱過程中の昇温速度であり、単位は℃/sである。
【0085】
(2)温度保持:オーステナイト化鋼板を保持し、保持時間tの設定は以下の関係を満たし、
【0086】
【0087】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、単位はminである。
【0088】
(3)ホットスタンピング成形と型内焼入れ:加熱された鋼板を素早くホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクが形成され、このブランクをまず金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却する。当該ステップにおけるホットスタンピングのスタンピング圧力は300~1000トンに設定され、圧力保持時間は3~15秒に設定される。
【0089】
以下、本発明に係る耐食性に優れたAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板及びそのホットスタンピング方法について、明細書の添付図面及び具体的な実施例と併せて更に解釈し説明する。
【0090】
以下の実施例1~13及び比較例1~5で用いたホットスタンピング鋼板の基材は、以下の元素組成(質量%)を有する。
【0091】
残りはFe及び不可避的不純物からなる。
これらのホットスタンピング鋼板の製造工程は以下の通りである。
【0092】
(1)上記の成分に従って鋼板製造用原料を製錬する。
(2)連続鋳造してビレットを鋳造する。
【0093】
(3)熱間圧延:ビレットを1250℃に加熱した後、圧延開始温度1050℃、最終圧延温度880℃、熱間圧延板の厚さ20mm以下になるように圧延を制御する。
【0094】
(4)圧延後、550℃で巻き取り、室温まで冷却した後、組織はフェライトとパーライトになる。
【0095】
(5)熱間圧延過程に発生するスケールを除去するために酸洗する。
(6)冷間圧延:スチールコイルを2.0mm以下の厚さに冷間圧延し、冷間圧延圧下量≧35%である。
【0096】
(7)連続焼鈍と溶融めっき。
上記鋼板を更に処理してめっき層を形成し、ホットスタンピング鋼板として使用する。その工程は、以下の通りである。
【0097】
1)基材前処理:基材として厚さ1.2mmの硬圧延板を使用し、脱脂処理後、780℃で120s保持し、加熱部及び保持部の雰囲気はN2-5%H2の混合ガスを採用し、焼鈍雰囲気の露点は-40℃である。
【0098】
2)基材をめっき液に浸漬して溶融めっきし、前記めっき液の温度は565~605℃であり、各実施例で使用されるめっき液の化学成分の配合割合の詳細を表1に示す。
【0099】
3)3秒間の溶融めっき後、鋼板がめっき液から出て、エアナイフパージの強さによってめっき層の厚さを制御する。その後、段階的冷却を行い、めっき液から出てから480℃までの範囲で、鋼板の冷却速度を15~25℃/sに制御し、480~280℃の範囲で、鋼板の冷却速度を40~60℃/sに制御し、280℃以下まで冷却し、鋼板を水焼入れ槽に入れて室温まで冷却する。
【0100】
(8)上記の工程で製造された成分の配合割合の異なるAl-Zn-Mg-Siめっき鋼板をブランキングし、ブランキングした鋼板を鋼板のオーステナイト化温度(即ち、Ac3温度)より高い加熱炉に搬送する。
【0101】
(9)めっき鋼板を素早く金型に移してホットスタンピング成形を行い、焼入硬化する。
【0102】
ホットスタンピング処理の加熱温度と保持時間をそれぞれ表1、表2に示す。
実施例1-7と比較例1-3
表1に記載の比較例1はAlSiめっき鋼板であり、比較例2は純亜鉛めっきホットスタンピング鋼板であり、比較例3はめっき層無しの鋼板であり、それぞれ930℃に加熱し、3min保持した後、金型に移してホットスタンピング成形を行い、焼入硬化した。
【0103】
実施例1-7と比較例1-3のサンプルをサンプリングし、Zeiss走査型電子顕微鏡を用いてめっき層の表面組織を分析し、EBSDを用いて相組織の割合を解析した。Gamry Reference 600ポテンシオスタットで電気化学試験を行い、各サンプルの自己腐食電位を測定した。参照電極は飽和カロメル電極であり、補助電極は白金電極であり、試料は作用電極であり、試験面積は1cm2であった。試験は室温の3.5wt% NaCl溶液中で行われた。試験前に、安定した開回路電位を得るために、作用電極を電解液に固定して30min浸漬した。得られた動電位分極曲線を、ポテンシオスタットに付属するGamry Echem Analystソフトウェアを用いてTafelフィッティングし、めっき層の自己腐食電位を取得した。
【0104】
図1は、ホットスタンピング前の本発明の実施例1のめっき鋼板のミクロ組織であり、
図1に示すように、ホットスタンピング前のめっき層のミクロ組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、Mg-Zn合金相、Mg-Si合金相、及びFe-Al-Si合金層からなる。
図2は加熱温度930℃、保持時間3分後の本発明の実施例2のめっき鋼板のミクロ組織であり、
図2に示すように、めっき層は、80%のη-Zn+MgZn
2と20%のAlFe
3である第1層と、2%のη-Zn+MgZn
2と98%のAlFe
3である第2層という2層からなる。
図3は、加熱温度930℃、保持時間7分後の本発明の実施例3のめっき鋼板のミクロ組織であり、
図3に示すように、保持時間が増加するにつれて、めっき層が2層から、20%のη-Zn+MgZn
2と80%のAlFe
3からなる単層に変化することが分かる。
図4は、加熱温度900℃、保持時間3分後の本発明の実施例6のめっき鋼板のミクロ組織であり、
図4に示すように、めっき層は、43%のη-Zn+MgZn
2、37%のAlリッチ相、及び20%のAlFe
3相からなる第1層と、100%のAlFe
3である第2層という2層からなる。
図5は、加熱温度900℃、保持時間7分後の本発明の実施例7のめっき鋼板のミクロ組織であり、
図5に示すように、めっき層も2層の組織から、35%のη-Zn+MgZn
2相と65%のAlFe
3相に変化する。上記の
図1~
図5のミクロ組織の相の割合は、すべてEBSDを用いて測定した。
【0105】
【0106】
表1によれば、本発明に記載の実施例1-7と比較して、比較例1-3のホットスタンピング鋼板の自己腐食電位は、実施例よりも高いことが分かる。特に、比較例3のめっき層無しの基材電位(-531mV)と比較すると、従来のAlSiめっき層の電位(-505mV)の方がより高いため、腐食性媒体にある場合、基材はAlSiめっき層よりも早く腐食され、めっき層の保護効果が失われることが分かる。比較例2の純亜鉛めっきホットスタンピング鋼板は、めっき層無しの基材よりも電位が-772mVと低いため、効果的に一次電池を形成することができ、犠牲陽極としての保護の役割を果たすことができる。しかしながら、本発明の実施例1-7と比較すると、その電位は依然として比較的に高いため、本発明の実施例のめっき層サンプルは、ホットスタンピング後により良好な基材を腐食から保護する効果を有する。特に、実施例1(-1117mV)、実施例3(-1097mV)、実施例4(-1013mV)、実施例5(-1105mV)、実施例6(-1145mV)のように、オーステナイト化保持時間がより短い場合に腐食電位が最も低く、従って、短い保持温度が推奨されることに留意すべきである。
【0107】
実施例8-13と比較例4-5
本発明の研究に基づいて、成形段階で溶融亜鉛とオーステナイトとの接触をできるだけ避けなければならないことが分かり、本発明のホットスタンピング成形プロセスの具体的な工程は以下の通りである。
【0108】
(1)加熱:Al-Zn-Mg-Siめっき鋼板を加熱炉内に搬送し、5℃/s以上1000℃/s以下の昇温速度Vで、鋼板又は鋼帯をAc3より高い温度TAc3まで加熱し、加熱温度Tの範囲は下記の関係式を満足する必要があり、
【0109】
【0110】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、Vは加熱過程中の昇温速度であり、単位は℃/sである。
【0111】
(2)温度保持:オーステナイト化鋼板を保持し、保持時間tの設定は以下の関係を満たし、
【0112】
【0113】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、単位はminである。
【0114】
(3)ホットスタンピング成形と型内焼入れ:加熱された鋼板を素早くホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクを金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却することができる。
【0115】
実施例8-13と比較例4-5のサンプルをサンプリングし、Zeiss走査型電子顕微鏡を用いてめっき層の断面組織を分析し、基材のLME割れを調べた。
図6は、ホットスタンピング後の本発明の実施例8のめっき鋼板の断面金属組織を示し、基材にLME割れがないことが分かる。
図7は、ホットスタンピング後の本発明の比較例4のめっき鋼板の断面金属組織を示し、基材位置に約700μmの深さのLME割れがあることが分かる。
図8は
図7における位置Aの高倍率での形態であり、Znリッチ相が基材に拡散していることが分かる。
図9は
図7における位置Bの高倍率での形態であり、めっき層の組織が実施例(
図6)と明らかに異なることが分かる。実施例ではめっき層は2層構造であり、マトリックスに近いのは高融点のAlFe
3相であり、Znリッチ相がめっき層の表層に集中しているのに対して、比較例では低融点のZnリッチ相がFeAl
3相の粒界に凝集している。その主な理由は、比較例の対応する設計基材のAc3温度が825℃であり、加熱炉の昇温速度がV=5℃/sであり、表2のめっき液成分の[Al]/[Zn]比によれば、実施例8-13の保持温度がT
Ac3<T<1.03T
Ac3+2×V×[Al]/[Zn]の範囲であり、保持時間が1≦t<2.7×[Al]/[Zn]の範囲であることが分かる。比較例の加熱温度と保持時間がいずれも本発明で規定する範囲を超えたため、ホットスタンピング成形過程に激しいLME割れが発生した。
【0116】
【0117】
本発明に記載のホットスタンピングプロセスは、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のスタンピング成形後の液体金属脆性(Liquid Metal Embrittlement、以下LMEと表記する)によるマトリックス割れを回避することができ、Al-Zn-Mg-Siめっきホットスタンピング用鋼の開発にとって重要な意義がある。
【0118】
本発明の幾つかの好ましい実施形態を参照して本発明を図示し説明したが、当業者であれば、上記の内容は具体的な実施形態と組み合わせて本発明を更に詳細に説明したものであり、本発明の具体的な実施形態がこれらの説明のみに限定されるとは想定できないことを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、幾つかの簡単な推論又は置換を行うことを含め、形態及び詳細において様々な変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上にめっきされたAl-Zn-Mg-Siめっき層とを含むAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板であって、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層は、厚さ方向に表層の酸化層と、表層の下に位置する合金層という2つの構造からなり、前記合金層の厚さは15~45umであり、その内、
前記合金層は上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相からなり、且つZnリッチ相とFeAl
3相の2相の合計の体積百分率は20%~80%であり、第2層の組織はFeAl
3相、MgZn
2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn
2相とZnリッチ相の体積百比率は5%を超えなく、又は
前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl
3相であり、FeAl
3相の間にZnリッチ相とMgZn
2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn
2相の2相の合計の体積百比率は5%~50%であることを特徴とする、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項2】
ホットスタンピング前、前記ホットスタンピング鋼板のAl-Zn-Mg-Siめっき層の初期組織は、Znリッチ相、Alリッチ相、FeAl
3相、MgSi
2相及びFe-Al-Si合金層からなり、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の厚さは8-30umであることを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項3】
前記酸化層にはZn酸化物、Al酸化物、Mg酸化物、及びSi酸化物が含まれ、且つ前記酸化層の厚さは3um以内であることを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項4】
前記合金層は上下2層の組織からなり、第1層の組織はAlリッチ相、Znリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相からなり、且つZnリッチ相、MgZn
2相及びFeAl
3相の3相の合計の体積百分率は50%~100%であり、第2層の組織はFeAl
3相、MgZn
2相及びZnリッチ相からなり、且つMgZn
2相とZnリッチ相の体積百比率は5%を超えないことを特徴とする、請求項1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項5】
前記合金層は単層合金層からなり、前記単層合金層の主要な組成はFeAl
3相であり、FeAl
3相の間にZnリッチ相とMgZn
2相が存在し、且つZnリッチ相とMgZn
2相の2相の合計の体積百比率は15%~40%であることを特徴とする、請求項
1に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項6】
前記Znリッチ相とMgZn
2相が前記めっき層の厚さの1/3~1/2に集中することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項7】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.1-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であり、好ましくは、前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.5-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項8】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項9】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項8に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項10】
前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、及びB:0.001%~0.01%を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項8に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板。
【請求項11】
Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板に使用されるホットスタンピング方法であって、当該ホットスタンピング方法の操作ステップは以下の通りであり、
(1)加熱:Al-Zn-Mg-Siめっき層を有する鋼板を加熱炉内に搬送し、5℃/s以上1000℃/s以下の昇温速度Vで、鋼板をAc3より高い温度T
Ac3まで加熱し、加熱温度Tの範囲は下記の関係式を満足する必要があり、
【数1】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、Vは加熱過程中の昇温速度であり、単位は℃/sであり、
(2)温度保持:オーステナイト化鋼板を保持し、保持時間tの設定は以下の関係を満たし、
【数2】
ただし、[Al]はめっき層中のAlの含有量%であり、[Zn]はめっき層中のZnの含有量%であり、単位はminであり、
(3)ホットスタンピング成形と型内焼入れ:加熱された鋼板をホットスタンピング金型に移動してスタンピング成形と焼入れを行い、ホットスタンピング成形が完了すると、ブランクが形成され、このブランクをまず金型内で焼入硬化・冷却し、その後金型内で室温まで冷却し、又は金型から取り出して室温まで冷却することを特徴とする、Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項12】
ステップ(1)において、前記ホットスタンピング鋼板のオーステナイト化温度を、930℃以下、Ac3より高い温度に制御し、及び/又は
ステップ(2)において、オーステナイト化中の前記ホットスタンピング鋼板の保持時間を1分~7分に制御し、又は前記保持時間を1分より大きく3分未満に制御し、及び/又は
ステップ(3)において、ホットスタンピングの圧力保持時間は3~15秒であり、スタンピング圧力は300~1000トンであることを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項13】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層の化学成分の質量百分率は、Al:45-65%、Mg:0.2-5%、Si:0.5-3%であり、残りはZn及びその他の不可避的不純物であることを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項14】
前記ホットスタンピング鋼板の基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.5%、Si:0.05%~2.0%、Mn:0.5%~3.0%、P:≦0.1%、S:≦0.05%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.01%~1.0%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であり、好ましくは、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下を含み、更に、Nb:0.01%~0.1%、V:0.01%~1.0%、Mo:0.01%~1.0%、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、Ni:0.01%~1.0%、及びB:0.001%~0.01%の少なくとも1種を含み、残りはFe及び不可避的不純物であり、より好ましくは、前記基材の組成成分は、質量百分率で、C:0.1%~0.3%、Si:0.05~0.3%、Mn:0.8~1.5%、P:≦0.01%、S:≦0.0005%、Al:0.01~0.05%、N:0.01%以下、Ti:0.01%~0.1%、Cr:0.1~0.4%、及びB:0.001%~0.01%を含み、残りはFe及び不可避的不純物であることを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【請求項15】
前記Al-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板は、
1)鋼板製造用原料を製錬する、
2)連続鋳造してビレットを鋳造する、
3)熱間圧延:ビレットを1100~1250℃に加熱した後、圧延開始温度950~1150℃、最終圧延温度750~900℃、熱間圧延板の厚さ20mm以下になるように圧延を制御する、
4)圧延後、500~850℃で巻き取り、室温まで冷却した後、組織はフェライトとパーライトになる、
5)熱間圧延時に発生するスケールを除去するために酸洗する、
6)冷間圧延:スチールコイルを2.0mm以下の厚さに冷間圧延し、冷間圧延圧下量≧35%である、
7)連続焼鈍と溶融めっき:得られた硬圧延ストリップを巻き戻し、洗浄し、均熱温度780~850℃に加熱し、30~200s保持し、そのうち、加熱速度は1~20℃/sであり、加熱部及び保持部の雰囲気はN
2-H
2の混合ガスを採用し、そのうち、H
2の体積含有量は0.5~20%であり、焼鈍雰囲気の露点は-40~10℃であり、その後、鋼板を亜鉛ポットに浸漬して溶融めっきし、めっき液の温度範囲は565~605℃であり、めっき液から出た後、鋼板を段階的に冷却して、基材にAl-Zn-Mg-Siめっき層を施しためっき鋼板を得ること、というステップを含む方法で製造され、
好ましくは、前記段階的冷却は、めっき液から出てから480℃までの範囲で、鋼板の冷却速度を15~25℃/sに制御し、480~280℃の範囲で、鋼板の冷却速度を40~60℃/sに制御し、280℃以下まで冷却し、鋼板を水焼入れ槽に入れて室温まで冷却することを含むことを特徴とする、請求項11に記載のAl-Zn-Mg-Siめっき層を有するホットスタンピング鋼板のホットスタンピング方法。
【国際調査報告】