(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】GPRC5Dを標的とするキメラ抗原受容体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250212BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250212BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250212BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250212BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20250212BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20250212BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250212BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20250212BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20250212BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20250212BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250212BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250212BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250212BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20250212BHJP
A61K 35/17 20250101ALN20250212BHJP
A61K 35/15 20250101ALN20250212BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0735
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/0789
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K47/68
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C07K16/18
A61K35/17
A61K35/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541709
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2023071869
(87)【国際公開番号】W WO2023134718
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210044655.3
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520358863
【氏名又は名称】オリセル セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ ジンツァイ
(72)【発明者】
【氏名】シー ヂョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シーイエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユエ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本願は、キメラ抗原受容体に関する。当該キメラ抗原受容体は、Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質を標的とする第1抗原結合ドメインと、GPRC5Dタンパク質を標的とする第2抗原結合ドメインと、を含む。本願は、前記キメラ抗原受容体を含む細胞及びその使用を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、
Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質を標的とする第1抗原結合ドメインと、GPRC5Dタンパク質を標的とする第2抗原結合ドメインと、を含む、
キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記第1抗原結合ドメイン及び/又は前記第2抗原結合ドメインは、抗体若しくはその抗原結合断片を含む、
請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)
2、Fv断片、F(ab’)
2、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含む、
請求項2に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記抗原結合断片はVHHを含む、
請求項2~3の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記第1抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~4の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~5の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~6の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号34(IX
1X
2X
3X
4GX
5T、但し、X
1はN又はT、X
2はS又はW、X
3はG又はS、X
4はD又はG、X
5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む、
請求項1~7の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む、
請求項1~8の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項1~9の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項1~10の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34(IX
1X
2X
3X
4GX
5T、但し、X
1はN又はT、X
2はS又はW、X
3はG又はS、X
4はD又はG、X
5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~11の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
前記第1抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む、
請求項1~12の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項14】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むH-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結する、
請求項10~13の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項15】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むH-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する、
請求項10~14の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項16】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する、
請求項8~15の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項17】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むH-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結する、
請求項6~16の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項18】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHを含む、
請求項1~17の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである、
請求項1~18の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項20】
前記第2抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~19の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項21】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~20の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項22】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~21の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項23】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号34(IX
1X
2X
3X
4GX
5T、但し、X
1はN又はT、X
2はS又はW、X
3はG又はS、X
4はD又はG、X
5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む、
請求項1~22の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む、
請求項1~23の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項1~24の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項26】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項1~25の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項27】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34(IX
1X
2X
3X
4GX
5T、但し、X
1はN又はT、X
2はS又はW、X
3はG又はS、X
4はD又はG、X
5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、
請求項1~26の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項28】
前記第2抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む、
請求項1~27の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項29】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むH-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結する、
請求項25~28の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項30】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むH-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する、
請求項25~29の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項31】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する、
請求項23~30の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項32】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むH-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結する、
請求項21~31の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項33】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHを含む、
請求項1~32の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項34】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである、
請求項1~33の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項35】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3の配列は、
(1)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(2)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(3)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(4)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(5)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(6)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(7)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(8)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(9)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(10)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(11)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(12)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(13)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(14)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(15)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、並びに
(16)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列である、
請求項1~34の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項36】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、GPRC5Dの同じエピトープを標的とする、
請求項1~35の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項37】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、同じ又は異なるアミノ酸配列を含む、
請求項1~36の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項38】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、直接的又は間接的に連結される、
請求項1~37の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項39】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、リンカーを介して連結される、
請求項1~38の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項40】
前記リンカーは(GGGGS)nのアミノ酸配列を含み、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である、
請求項39に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項41】
前記リンカーは(EAAAK)nのアミノ酸配列を含み、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である、
請求項39に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項42】
共刺激シグナル領域を含み、前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40及びMyD88からなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含む、
請求項1~40の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項43】
前記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域である、
請求項41に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項44】
前記共刺激シグナル領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項42~43の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項45】
細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内シグナル領域を含む、
請求項1~44の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項46】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである、
請求項45に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項47】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項45~46の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項48】
膜貫通領域を含み、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154及びSLAMからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む、
請求項1~47の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項49】
前記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域である、
請求項48に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項50】
前記膜貫通領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項48~49の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項51】
ヒンジ領域を更に含み、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30及びLIGHTからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む、
請求項1~50の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項52】
前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である、
請求項51に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項53】
前記ヒンジ領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項51~52の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項54】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含む、
請求項1~53の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項55】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、前記細胞内シグナル領域のC末端に位置する、
請求項54に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項56】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びその機能的断片からなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、
請求項54~55の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項57】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である、
請求項54~56の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項58】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項54~57の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項59】
シグナルペプチドを更に含む、
請求項1~58の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項60】
前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する、
請求項59に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項61】
前記シグナルペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項59~60の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項62】
1種又は複数種の単離された核酸分子であって、
請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体をコードする、
核酸分子。
【請求項63】
プロモーターを更に含む、
請求項62に記載の核酸分子。
【請求項64】
前記プロモーターは構成的プロモーターである、
請求項63に記載の核酸分子。
【請求項65】
前記プロモーターはEF1αプロモーターである、
請求項63~64の何れか1項に記載の核酸分子。
【請求項66】
ベクターであって、
請求項62~65の何れか1項に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項67】
ウイルスベクターである、
請求項66に記載のベクター。
【請求項68】
レンチウイルスベクターである、
請求項66~67の何れか1項に記載のベクター。
【請求項69】
請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項62~65の何れか1項に記載の核酸分子、及び/又は請求項66~68の何れか1項に記載のベクターを含む、
細胞。
【請求項70】
免疫エフェクター細胞である、
請求項69に記載の細胞。
【請求項71】
T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ前駆細胞及び/又は多能性幹細胞を含む、
請求項69~70の何れか1項に記載の細胞。
【請求項72】
T細胞である、
請求項69~71の何れか1項に記載の細胞。
【請求項73】
請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体を製造する方法であって、
請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体を発現可能な条件下で、請求項69~72の何れか1項に記載の細胞を培養することを含む、
方法。
【請求項74】
修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法であって、
免疫エフェクター細胞に請求項66~68の何れか1項に記載のベクターを導入することを含む、
方法。
【請求項75】
医薬組成物であって、
請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項62~65の何れか1項に記載の核酸分子、請求項66~68の何れか1項に記載のベクター、及び/又は請求項69~72の何れか1項に記載の細胞、並びに選択可能な薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項76】
疾患及び/又は病状を予防、治療及び/又は緩和するための薬物の製造における、請求項1~61の何れか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項62~65の何れか1項に記載の核酸分子、請求項66~68の何れか1項に記載のベクター、請求項69~72の何れか1項に記載の細胞、及び/又は請求項75に記載の医薬組成物の使用。
【請求項77】
前記疾患及び/又は病状は、GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状を含む、
請求項76に記載の使用。
【請求項78】
前記GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状は腫瘍を含む、
請求項77に記載の使用。
【請求項79】
前記腫瘍は固形腫瘍を含む、
請求項78に記載の使用。
【請求項80】
前記腫瘍は非固形腫瘍を含む、
請求項78に記載の使用。
【請求項81】
前記腫瘍は血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含む、
請求項79~80の何れか1項に記載の使用。
【請求項82】
前記腫瘍は骨髄腫を含む、
請求項78~81の何れか1項に記載の使用。
【請求項83】
前記骨髄腫は難治性/再発性多発性骨髄腫を含む、
請求項82に記載の使用。
【請求項84】
疾患及び/又は病状を予防、治療及び/又は緩和する方法であって、
必要とする対象に、請求項69~72の何れか1項に記載の細胞、及び/又は請求項75に記載の医薬組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項85】
前記疾患及び/又は病状は、GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状を含む、
請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記GPRC5D異常発現に関連する疾患又は病状は腫瘍を含む、
請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記腫瘍は固形腫瘍を含む、
請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記腫瘍は非固形腫瘍を含む、
請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記腫瘍は血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含む、
請求項87~88の何れか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記腫瘍は骨髄腫を含む、
請求項87~89の何れか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記骨髄腫は難治性/再発性多発性骨髄腫を含む、
請求項90に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医薬分野に関し、具体的には、新型抗GPRC5Dのキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を含む細胞、及び腫瘍の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(Multiple Myeloma、MM)は、2番目の一般的な悪性血液疾患であり、そしてがんによる死亡率では第2位にランクされている。MMは形質細胞の悪性腫瘍であり、多くの場合、多発性溶骨性損傷、腎臓機能損傷、骨髓浸潤、高カルシウム血症及び貧血を伴っている。MMの現在の主な治療法は全身化学療法であるが、重篤な副作用があり、そして完全に治癒することができない。
【0003】
Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質は、非典型的な表面オーファン受容体である。GPRCD5は、他のC5ファミリー受容体と同様に、アミノ末端が短すぎるため、構造的にはC4ファミリーと非常に類似している。正常組織におけるその発現は毛包に限定されているが、MM患者の骨髓においても特異的に高発現され、形質細胞腫瘍負荷及び遺伝子変異と高度に相関する。
【0004】
プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)及びモノクローナル抗体(mAb)などの新薬の介入により、MMの治療法も拡大しているが、依然として再発率が極めて高いと共に、薬剤耐性が発生している。一方、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)による治療は、MMにおいて顕著な治療効果及び制御可能な毒性をもたらし、その中で、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする主流のCAR-T細胞療法は、BCMA陰性又はBCMA低発現のMM患者において、標的回避の問題がある。GPRC5Dは、形質細胞において特異的に高発現されるため、MMの理想的な治療標的となっているが、これを標的とする薬物治療製品は、まだ成熟していない。
【発明の概要】
【0005】
[発明の内容]
本願は、何れもGPRC5Dを標的とすることができる2つの抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体を提供する。本願は、前記キメラ抗原受容体を含む細胞を更に提供する。前記細胞は、(1)増幅能力が強いこと、(2)GPRC5Dを発現する標的細胞を殺傷することができること、(3)標的細胞の刺激下でサイトカインを分泌すること、(4)標的細胞の刺激下で増殖能力が比較的強いこと、(4)腫瘍の成長を抑制すること、及び(5)安全性が良好であること、といった性質の1種又は複数種を有する。
【0006】
一態様によれば、本願は、Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質を標的とする第1抗原結合ドメインと、GPRC5Dタンパク質を標的とする第2抗原結合ドメインと、を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び/又は前記第2抗原結合ドメインは、抗体若しくはその抗原結合断片を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記抗原結合断片はVHHを含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むH-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結される。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むH-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むH-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結される。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2且つ、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むH-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結される。
【0035】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むH-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する。
【0036】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むH-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結される。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである。
【0040】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3の配列は、
(1)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(2)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(3)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(4)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(5)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(6)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(7)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(8)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(9)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(10)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(11)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(12)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(13)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(14)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(15)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、並びに
(16)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列である。
【0041】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、GPRC5Dの同じエピトープを標的とする。
【0042】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、同じ又は異なるアミノ酸配列を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、直接的又は間接的に連結される。
【0044】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、リンカーを介して連結される。
【0045】
幾つかの実施形態において、前記リンカーは(GGGGS)nのアミノ酸配列を含み、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である。
【0046】
幾つかの実施形態において、前記リンカーは(EAAAK)nのアミノ酸配列を含み、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である。
【0047】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は共刺激シグナル領域を含み、但し、前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40及びMyD88からなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域である。
【0049】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記共刺激シグナル領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内シグナル領域を含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである。
【0052】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は膜貫通領域を含み、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154及びSLAMからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域である。
【0055】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体はヒンジ領域を更に含み、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30及びLIGHTからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である。
【0058】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、前記細胞内シグナル領域のC末端に位置する。
【0061】
幾つかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びその機能的断片からなる群より選ばれる1種又は複数種を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である。
【0063】
幾つかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドを更に含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する。
【0066】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記シグナルペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0067】
別の態様によれば、本願は、1種又は複数種の単離された核酸分子であって、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸分子を更に提供する。
【0068】
幾つかの実施形態において、前記核酸分子はプロモーターを更に含む。
【0069】
幾つかの実施形態において、前記プロモーターは構成的プロモーターである。
【0070】
幾つかの実施形態において、前記プロモーターはEF1αプロモーターである。
【0071】
別の態様によれば、本願は、前記核酸分子を含む担体を更に提供する。
【0072】
幾つかの実施形態において、前記担体はウイルス担体である。
【0073】
幾つかの実施形態において、前記担体はレンチウイルス担体である。
【0074】
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、及び/又は前記担体を含む細胞を更に提供する。
【0075】
幾つかの実施形態において、前記細胞は免疫エフェクター細胞である。
【0076】
幾つかの実施形態において、前記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ前駆細胞及び/又は多能性幹細胞を含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、前記細胞はT細胞である。
【0078】
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体を製造する方法であって、前記キメラ抗原受容体を発現可能な条件下で、前記細胞を培養することを含む方法を更に提供する。
【0079】
別の態様によれば、本願は、修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法であって、免疫エフェクター細胞に前記担体を導入することを含む方法を更に提供する。
【0080】
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、及び/又は前記細胞、並びに選択可能な薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を更に提供する。
【0081】
別の態様によれば、本願は、疾患及び/又は病状を予防、治療及び/又は緩和するための薬物の製造における、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、前記細胞、及び/又は前記医薬組成物の使用を更に提供する。
【0082】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/又は病状は、GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状を含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、前記GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状は腫瘍を含む。
【0084】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍を含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は非固形腫瘍を含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は非固形腫瘍を含む。
【0087】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含む。
【0088】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は骨髄腫を含む。
【0089】
幾つかの実施形態において、前記骨髄腫は難治性/再発性多発性骨髄腫を含む。
【0090】
別の態様によれば、本願は、疾患及び/又は病状を予防、治療及び/又は緩和する方法であって、必要とする対象に、前記細胞、及び/又は前記医薬組成物を投与することを含む方法を更に提供する。
【0091】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/又は病状は、GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状を含む。
【0092】
幾つかの実施形態において、前記GPRC5D異常発現に関連する疾患及び/又は病状は腫瘍を含む。
【0093】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍を含む。
【0094】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は非固形腫瘍を含む。
【0095】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は非固形腫瘍を含む。
【0096】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含む。
【0097】
幾つかの実施形態において、前記腫瘍は骨髄腫を含む。
【0098】
幾つかの実施形態において、前記骨髄腫は難治性/再発性多発性骨髄腫を含む。
【0099】
当業者は、後述の詳細な説明から本願の他の態様及び利点を容易に認識することができる。後述の詳細な説明は、本願の例示的な実施形態を示し、説明するものに過ぎない。当業者に認識されるように、本願の内容によれば、当業者は、本願に関わる発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態を変更することができる。対応的には、本願の図面及び明細書における説明は、例示的なものに過ぎず、制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
本願に関する発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。以下に詳細に説明する例示的な実施形態及び図面を参照することによって、本願に関する発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【
図1】本願に記載されるキメラ抗原受容体の各部の要素及び連結順序を示す図である。
【
図2A】二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CARレンチウイルス感染後のT細胞の陽性率を示す。
【
図2B】単一V
HH CARレンチウイルス感染後のT細胞の陽性率を示す。
【
図3】単一V
HH CAR-T細胞の体外増幅曲線を示す。
【
図4A】二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞のCD107a発現を示す。
【
図4B】単一V
HH CAR-T細胞のCD107a発現を示す。
【
図5A】二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞の特異的殺傷を示す。
【
図5B】単一V
HH CAR-T細胞の特異的殺傷を示す。
【
図6A】二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-Tサイトカインの分泌レベルを示す。
【
図6B】単一V
HH CAR-Tサイトカインの分泌レベルを示す。
【
図7A】二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞の標的増殖倍数を示す。
【
図7B】単一V
HH CAR-T細胞の標的増殖倍数を示す。
【
図8】CAR-T細胞の記憶表現型フローサイトメトリーチャートを示す。
【
図10】CD3
+ CAR-T細胞の活性化marker発現を示す。
【
図11】CD3
+ CAR-T細胞の枯渇性marker発現を示す。
【
図12】CAR-T細胞の免疫シナプスの共焦点画像を示す。
【
図13】MTOCとシナプスとの距離の定量的分析を示す。
【
図14】NSGマウス体内腫瘍抑制実験のフローチャートを示す。
【
図15A-15D】皮下腫瘍モデルNSGマウスの体内腫瘍抑制効果を示す図である。
【
図16】同所性移植モデルNSGマウスの体内腫瘍抑制効果を示す図である。
【
図19】G5V
HH1とG5V
HH2との競合的結合のフローチャートを示す。
【
図20】二重結合ドメインV
HH-hFc抗体と異なる種の標的抗原との交差結合活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、特定の具体的な実施例により本願の発明の実施形態を説明し、当業者であれば、本明細書に開示された内容から、本願の発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0102】
用語の定義
使用される「抗体」という用語は、完全抗体及びその結合断片を含む。一般的には、断片は、その由来する完全抗体と抗原への特異的結合を競合する。任意選択的には、抗体又はその結合断片は、他のタンパク質と化学結合するか、又は他のタンパク質と融合タンパク質の形態で発現することができる。例えば、前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体であってもよい。例えば、前記抗体又はその結合断片の結合タンパク質は、GPRC5Dを含んでもよい。例えば、前記抗体又はその結合断片は、GPRC5Dに特異的であってもよい。
【0103】
「抗原結合断片」という用語は、完全抗体の一部を指し、また完全抗体の抗原決定可変領域を指す。例えば、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片及び一本鎖Fv断片、タンデムFv断片、VHH、二重特異性抗体を含んでもよい。例えば、前記抗原結合断片は、VHHであってもよい。例えば、前記抗原結合断片は、GPRC5Dに結合することができる。例えば、前記抗原結合断片は、GPRC5Dに特異的であってもよい。
【0104】
本願において、「VHH」又は「VHH」という用語は互換的に使用され、一般的には、重鎖抗体の可変抗原結合ドメインを含む抗体を指す。VHHは、ナノ抗体(Nanobody)(Nb)及び/又は単一ドメイン抗体とも呼ばれる。例えば、前記VHHは、GPRC5Dに結合することができる。例えば、前記VHHは、GPRC5Dに特異的であってもよい。
【0105】
本願において、前記抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結される少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含んでもよい。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域からなる。「重鎖定常領域」という用語は、CH1、CH2及びCH3という3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域からなる。「軽鎖定常領域」という用語は、1つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で、アミノ末端からカルボキシ末端へ配置された3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0106】
本願において、「Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質」という用語は、非典型的な表面オーファン受容体である。GPRCD5は、他のC5ファミリー受容体と同様に、アミノ末端が短すぎるため、構造的にはC4ファミリーと非常に類似している。正常組織におけるその発現は毛包に限定されているが、MM患者の骨髓においても顕著に発現され、形質細胞腫瘍負荷及び遺伝子変異と高度に相関する。例えば、本願におけるGPRC5Dは、特にMM患者の体内で発現されるGPRC5Dを指してもよい。
【0107】
本願において、「キメラ抗原受容体」(CAR)という用語は、一般的には、少なくとも抗原又は標的に特異的に結合する細胞外ドメイン、膜貫通領域及び細胞内ドメインを含む組換えポリペプチドを指す。例えば、前記細胞外ドメインと前記膜貫通領域との間にヒンジ領域を含む。例えば、前記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドを含んでもよい。標的細胞の表面上の標的抗原へのCARの細胞外ドメインの結合によって、CARクラスター化を引き起こし、活性化刺激をCAR含有細胞に伝達する。CARは、免疫エフェクター細胞の特異性を方向転換し、そして増殖、サイトカイン産生、主要組織適合性(MHC)に依存しない方法で標的抗原を発現する細胞死を媒介することができる分子の食作用及び/又は産生を引き起こすことができる。例えば、前記細胞外構造は、GPRC5Dに特異的に結合することができる。
【0108】
本願において、「細胞内ドメイン」という用語は、活性化シグナルを伝達するのに十分な細胞内ドメインの任意の切断された部分を含むことを意味する。前記細胞内ドメインは、細胞内シグナル領域及び/又は共刺激シグナル領域を含んでもよい。「細胞内シグナル領域」という用語は、CAR含有細胞(例えば、CART細胞又はCARを発現するNK細胞)の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成することができる細胞内領域を指す。例えば、前記細胞内シグナル領域は、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質の細胞内シグナル領域を含んでもよい。例えば、前記細胞内シグナル領域は、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであってもよい。「共刺激シグナル領域」という用語は、エフェクターシグナルを伝達することができる前記細胞内シグナル領域のCARの一部を指す。例えば、前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40及びMyD88からなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含んでもよい。例えば、前記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域であってもよい。
【0109】
本願において、「膜貫通領域」という用語は、細胞質膜を貫通することができるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のドメインを指す。これらのドメインを用いて細胞外ドメインを細胞膜に固定することができる。例えば、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154及びSLAMからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質の膜貫通ドメインを含んでもよい。例えば、前記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域であってもよい。
【0110】
本願において、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインとCH2ドメインとを連結される抗体重鎖ポリペプチドの一部、例えば、KabatのEU番号付けシステムに従う約216位~約230位を表す。ヒンジ領域は、一般的には、同じアミノ酸配列を有する2つのポリペプチドからなる二量体分子である。ヒンジ領域は、一般的には、約25アミノ酸残基を含み、柔軟性があり、抗原結合領域の独立した移動が可能である。ヒンジ領域は、上部、中間、下部のヒンジドメインという3つのドメインに細分することができる。例えば、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30及びLIGHTからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来するヒンジ領域を含んでもよい。例えば、前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域であってもよい。
【0111】
本願において、「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(Low-density lipoproteinreceptor-related protein)という用語は、生体内で広く分布され、非常に大きな組織間差異性があり、細胞増殖並びにステロイドホルモン及び胆汁酸塩の合成のためにコレステロールを細胞内に摂取することを主な機能とする、エンドサイトーシス受容体に属する細胞表面タンパク質を指す。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、任意の脊椎動物に由来することができる。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片可以は、前記細胞内シグナル領域のC末端に位置する。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びその機能的断片からなる群より選ばれる1種又は複数種を含んでもよい。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6又はその断片であってもよい。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5又はその断片であってもよい。
【0112】
本願において、「シグナルペプチド」という用語は、翻訳中又は翻訳後に新生タンパク質を小胞体に誘導し、後続で表面発現される新生CARタンパク質のアミノ末端(N-末端)にあるリーダー配列を指す。例えば、前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する。
【0113】
本願において、「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含む。1つの核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。「プロモーター」という用語は、一般的には、プロモーターと操作可能に連結可能な選択されるDNA配列の発現を調節することによって、細胞内の選択されるDNA配列の発現に影響を与えるDNA配列を指す。例えば、前記核酸分子は、対応する抗原結合タンパク質及び/又は前記キメラ抗原受容体をコードすることができる。例えば、前記核酸分子は、プロモーターを含んでもよい。例えば、前記プロモーターは、構成的プロモーターであってもよい。例えば、前記プロモーターは、EF1αプロモーターであってもよい。
【0114】
本願において、「担体」という用語は、一般的には、本願の1種又は複数種の核酸分子を付着することができる分子を指す。例えば、前記担体は、ウイルス担体であってもよい。例えば、前記担体は、レンチウイルス担体であってもよい。
【0115】
本願において、「細胞」という用語は、核酸がトランスフェクトされる細胞を指し、「細胞」という用語は、プラスミドの繁殖に用いられる原核細胞、及び発現の核酸及びコードされたポリペプチドの産生に用いられる真核細胞を含む。例えば、細胞は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子及び/又は前記担体を含んでもよい。例えば、前記細胞は、免疫エフェクター細胞であってもよい。「免疫エフェクター細胞」という用語は、一般的には、免疫応答に関与し、エフェクター機能を実行する免疫細胞を指す。例えば、前記エフェクター機能の実行は、異物抗原の除去又は免疫エフェクター応答の促進などを含んでもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ前駆細胞及び/又は多能性幹細胞を含んでもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞であってもよい。
【0116】
本願において、「医薬組成物」という用語は、一般的には、哺乳動物個体への投与に適する化学的又は生物学的組成物を指す。例えば、前記医薬組成物は、前記抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド、前記核酸分子、前記担体及び/又は前記細胞、並びに選択可能な薬学的に許容される担体を含んでもよい。前記医薬組成物は、GPRC5D異常発現に関連する疾患又は病状の予防、治療及び/又は緩和に使用できる。例えば、前記GPRC5D異常発現に関連する疾患又は病状は、腫瘍を含んでもよい。例えば、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は非固形腫瘍を含んでもよい。例えば、前記腫瘍は、血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含んでもよい。例えば、前記腫瘍は、骨髄腫を含んでもよい。
【0117】
発明の詳細
一態様によれば、本願は、Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質を標的とする第1抗原結合ドメインと、GPRC5Dタンパク質を標的とする第2抗原結合ドメインと、を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0118】
幾つかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び/又は前記第2抗原結合ドメインは、抗体若しくはその抗原結合断片を含んでもよい。例えば、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHH及び/又はdAbを含む。例えば、前記抗原結合断片はVHHを含む。
【0119】
本願において、前記CDRは、IMGT分割方法によって分割することができる。
【0120】
第1抗原結合ドメイン
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、GPRC5Dタンパク質を標的とすることができる。
【0121】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含んでもよく、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0122】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0123】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2を含んでもよい。
【0124】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1を含んでもよい。
【0125】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR3を含んでもよい。
【0126】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもく、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む。
【0127】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR1を含んでもよく、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結される。
【0128】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR2を含んでもよく、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する。
【0129】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR3を含んでもよく、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する。
【0130】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含んでもいH-FR4を含んでもよく、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結される。
【0131】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいVHを含んでもよい。
【0132】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいVHHであってもよい。
【0133】
第2抗原結合ドメイン
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、GPRC5Dタンパク質を標的とすることができる。
【0134】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含んでもよく、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0135】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0136】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2を含んでもよい。
【0137】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1を含んでもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1を含んでもよい。
【0138】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR1、配列番号34(IX1X2X3X4GX5T、但し、X1はN又はT、X2はS又はW、X3はG又はS、X4はD又はG、X5はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列を含んでもよいHCDR3を含んでもよい。
【0139】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもよく、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(5)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(6)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(7)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(8)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む。
【0140】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR1を含んでもよく、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に連結される。
【0141】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号12、配列番号28及び配列番号23の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR2を含んでもよく、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置する。
【0142】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR3を含んでもよく、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置する。
【0143】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含んでもよいH-FR4を含んでもよく、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に連結される。
【0144】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいVHを含んでもよい。
【0145】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含んでもよいVHHであってもよい。
【0146】
キメラ抗原受容体
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含んでもよい。
【0147】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0149】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0150】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0151】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0152】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0153】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0154】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0155】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0156】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0157】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0158】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0159】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0160】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0161】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0162】
例えば、第1抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、第2抗原結合ドメインにおいて、前記HCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0163】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、GPRC5Dの同じエピトープを標的とすることができる。本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、GPRC5Dの異なるエピトープを標的とすることができる。
【0164】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、同じ又は異なるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0165】
本願において、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、直接的又は間接的に連結されることができる。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、リンカーを介して連結されることができる。
【0166】
本願において、前記リンカーは(GGGGS)nのアミノ酸配列を含んでもよく、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である。例えば、前記nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよい。
【0167】
本願において、前記リンカーは(EAAAK)nのアミノ酸配列を含んでもよく、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である。例えば、前記nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよい。
【0168】
本願において、前記キメラ抗原受容体は、共刺激シグナル領域を含んでもよく、但し、前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40及びMyD88からなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含む。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記共刺激シグナル領域は、4-1BBに由来する細胞内共刺激シグナル領域であってもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記共刺激シグナル領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0169】
本願において、前記キメラ抗原受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよく、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内シグナル領域を含む。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであってもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0170】
本願において、前記キメラ抗原受容体は膜貫通領域を含んでもよく、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154及びSLAMからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通領域は、CD8に由来する膜貫通領域であってもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0171】
本願において、前記キメラ抗原受容体はヒンジ領域を更に含んでもよく、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30及びLIGHTからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域であってもよい。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0172】
本願において、前記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含んでもよい。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、前記細胞内シグナル領域のC末端に位置する。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12及びその機能的断片からなる群より選ばれる1種又は複数種を含む。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5及び/又は6或いはその断片である。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0173】
本願において、前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドを更に含んでもよい。例えば、前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する。例えば、前記キメラ抗原受容体の前記シグナルペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0174】
本願において、前記キメラ抗原受容体における前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、自己切断ペプチド(例えば、T2A、P2A、E2Aなどの2Aペプチド)によってCARのC末端に連結されることができる。例えば、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片は、T2Aによって細胞内シグナル領域のC末端に連結されることができる。
【0175】
本願において、N末端からC末端へ、前記キメラ抗原受容体は、GPRC5Dタンパク質に結合する抗原結合ドメイン、前記ヒンジ領域、前記膜貫通ドメイン、前記共刺激シグナル領域及び前記細胞内シグナル領域を順に含んでもよい。例えば、N末端からC末端へ、前記キメラ抗原受容体は、前記抗原結合ドメイン、CD8に由来するヒンジ領域、CD8に由来する膜貫通領域、4-1BBに由来する共刺激シグナル領域、及びCD3ζに由来する細胞内シグナル領域を順に含んでもよい。
【0176】
本願において、N末端からC末端へ、前記キメラ抗原受容体は、GPRC5Dタンパク質に結合する抗原結合ドメイン、前記ヒンジ領域、前記膜貫通ドメイン、前記共刺激シグナル領域、前記細胞内シグナル領域及び前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を順に含んでもよい。例えば、N末端からC末端へ、前記キメラ抗原受容体は、前記抗原結合ドメイン、CD8に由来するヒンジ領域、CD8に由来する膜貫通領域、4-1BBに由来する共刺激シグナル領域、CD3ζに由来する細胞内シグナル領域及び前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を順に含んでもよい。
【0177】
例えば、前記キメラ抗原受容体は、配列番号31又は配列番号32に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0178】
本願において、前記キメラ抗原受容体は、下記の表に示される構造を含んでもよい。
【0179】
但し、Aは(GGGGS)nを表し、Bは(EAAAK)nを表す。但し、nは1~10の任意の正の整数である。
【0180】
例えば、3B5のHCDR1は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、3B5のHCDR2は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、3B5のHCDR3は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、3B5のVHHは配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。
【0181】
例えば、3E7のHCDR1は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、3E7のHCDR2は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、3E7のHCDR3は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、3E7のVHHは配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む。
【0182】
例えば、4A2のHCDR1は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、4A2のHCDR2は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、4A2のHCDR3は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、4A2のVHHは配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む。
【0183】
例えば、4B3のHCDR1は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、4B3のHCDR2は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、4B3のHCDR3は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、4B3のVHHは配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。
【0184】
例えば、前記CD8αシグナルペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0185】
例えば、前記CD8αヒンジ領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0186】
例えば、前記CD8α膜貫通領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0187】
例えば、前記4-1BB共刺激シグナルは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0188】
例えば、前記CD3ζ細胞内シグナル領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0189】
例えば、前記Oriは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0190】
核酸分子
別の態様によれば、本願は、任意の長さの単離されたヌクレオチド、デオキシヌクレオチド及び/リボヌクレオチドであり得る1種又は複数種の核酸分子であって、前記キメラ抗原受容体をコードすることができる核酸分子を更に提供する。
【0191】
例えば、前記核酸分子は、プロモーターを含んでもよい。例えば、前記プロモーターは、構成的プロモーターであってもよい。例えば、前記プロモーターは、EF1αプロモーターであってもよい。
【0192】
担体
別の態様によれば、本願は、前記核酸分子を含んでもよい担体を更に提供する。前記担体は、宿主細胞を形質転換、形質導入又はトランスフェクトして、その保有する遺伝物質の要素を宿主細胞において発現することができる。例えば、担体は、プロモーター、転写物、エンハンサー、レプリコン、選択要素及びレポーター遺伝子を含んでもよい。例えば、担体は、細胞への侵入を助ける成分を含んでもよい。前記核酸分子を担体内で複製させるために、前記核酸分子の5’末端及び3’末端は、長末端反復配列を更に含んでもよい。
【0193】
例えば、前記担体は、ウイルス担体であってもよい。例えば、前記担体は、レンチウイルス担体であってもよい。
【0194】
細胞
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子及び/又は前記担体を含んでもよい細胞を更に提供する。前記細胞は、単一細胞の子孫を含んでもよい。自然、偶発的又は意図的な変異により、子孫は元の親細胞(総DNA相補体の形態又はゲノムにおいて)と必ずしも同一でなくてもよい。
【0195】
幾つかの実施形態において、前記細胞は、免疫エフェクター細胞であってもよい。幾つかの実施形態において、前記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ前駆細胞及び/又は多能性幹細胞を含んでもよい。例えば、前記細胞は、T細胞であってもよい。
【0196】
医薬組成物
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体及び/又は前記細胞、及び任意選択的に薬学的に許容されるアジュバントを含んでもよい医薬組成物を更に提供する。
【0197】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、1種又は複数種の(薬学的に効果的な)キャリア、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤及び/又は防腐剤の適切な製剤を更に含んでもよい。組成物の許容される成分は、使用される用量及び濃度において、好ましくは受容者に対して無毒である。本発明の医薬組成物は、液体、凍結組成物及び凍結乾燥組成物を含んでもよい。
【0198】
幾つかの実施形態において、前記薬学的に許容されるアジュバントは、薬物の投与に適合し、一般的に安全で、無毒であり、且つ生物学的にもその他の点でも望ましくない、任意及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤を含んでもよい。
【0199】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、腸胃外、経皮、管腔内、動脈内、くも膜下腔内及び/又は鼻腔内投与或いは組織への直接注射を含んでもよい。例えば、前記医薬組成物は、注入又は注射により患者又は対象に投与することができる。幾つかの実施形態において、前記医薬組成物の投与は、静脈内、腹膜内、皮下、筋肉内、局所又は真皮内投与などの、様々な方法によって行うことができる。
【0200】
製造方法
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体を製造する方法を更に提供する。前記方法は、前記キメラ抗原受容体を発現可能な条件下で、前記細胞を培養することを含んでもよい。
【0201】
本願は、修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を更に提供する。前記方法は、免疫細胞に前記担体を導入することを含んでもよい。
【0202】
使用
別の態様によれば、本願は、腫瘍の予防、緩和及び/又は治療に使用できる薬物の製造における、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の使用を更に提供する。
【0203】
別の態様によれば、本願は、腫瘍を予防、緩和及び/又は治療する方法であって、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい方法を更に提供する。
【0204】
別の態様によれば、本願は、腫瘍の予防、緩和及び/又は治療に使用される前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を更に提供する。
【0205】
本願において、前記腫瘍は、GPRC5D異常発現の腫瘍を含んでもよい。
【0206】
本願において、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は非固形腫瘍を含んでもよい。
【0207】
本願において、前記腫瘍は、血液腫瘍及び/又はリンパ腫を含んでもよい。
【0208】
本願において、前記腫瘍は、骨髄腫を含んでもよい。本願において、前記骨髄腫は、難治性/再発性多発性骨髄腫を含んでもよい。
【0209】
本願において、前記対象は、ヒト又は非ヒト動物を含んでもよい。
【0210】
別の態様によれば、本願は、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記担体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を含む試薬キット又は投与装置を提供する。
【0211】
任意の理論に制限されることなく、後述する実施例は、本願の発明の各技術的解決手段を解釈するものにすぎず、本願の発明の範囲を制限するものではない。
【0212】
実施例
実施例1人工合成ナノ抗体ライブラリーNanoOri_1.0を利用した抗GPRC5D抗体のスクリーニング
PDBデータバンク(Protein Data Bank)における反復配列のない296本のナノ抗体及びその構造をアラインメントし、CDRs変異ポリシーを決定し、ここで、CDR3の長さは、14、17及び21アミノ酸である。市販されているナノ抗体カラシズマブ(Caplacizumab)を骨格として選択し、Caplacizumabのヌクレオチド配列の完全遺伝子合成を行い、次にそれをHP153ファージベクターにクローンした後、HP153の一本鎖DNAを抽出し、Kunkel Mutagenesis法によってナノ抗体のCDRsを変異させ、二本鎖DNAを得た。M13KO7ヘルパーファージを事前感染させたコンピテント大腸菌SS320に二本鎖DNAをエレクトロポレーションし、一晩培養した後にファージ上清を収集し、最終的に多様性1.44×1010の人工合成ナノ抗体ライブラリーNanoOri_1.0(原啓生物科技(上海)有限責任公司)を構築し、シードバンクとして抗体配列のスクリーニングを行った。
【0213】
Sino Biological社から購入したGPRC5D完全長配列(cat:HG24447-UT)を、同社の既存のレンチウイルスベクターに構築し、レンチウイルス形質導入を行い、標的細胞CHO-GPRC5D及び標的細胞HEK293-GPRC5Dの過剰発現細胞株を製造した。標的細胞CHO-GPRC5D及びHEK293-GPRC5Dを利用して人工合成ナノ抗体ライブラリー(原啓生物科技(上海)有限責任公司)を交互にパンニングし、合計4ラウンドのパンニングを行った。
【0214】
人工合成ナノ抗体ライブラリーNanoOri_1.0から1つのチューブを取り出し、PEG/NaClを加え、再沈殿させて使用した。標的細胞CHO-GPRC5D及びHEK293-GPRC5Dを選択して細胞パンニングの交互的なスクリーニングに使用された。500μLのファージ及び500μLの10%のFBS/PBS緩衝液を取って最終体積が1mLになるまで混合し、2mLの低吸着EP管に入れ、4℃で穏やかに回転するか、又は定期的に均一に混合して1時間ブロックした。140gで10min遠心分離し、CHO-GPRC5D細胞を取得し、10mLのPBSで1回洗浄した。カウントし、生存細胞数が95%以上に達すると、5%のFBS/PBS緩衝液でCHO-GPRC5D細胞を3回洗浄した。次に、細胞数が1×107個になるように1mLの5%のFBS/PBS緩衝液に再懸濁させた。その間に細胞を氷上に置いた。4℃でCHO-GPRC5D細胞を140gで2min遠心分離し、ブロックされた1mLのファージ抗体ライブラリーに再懸濁させ、4℃又は室温で穏やかに回転するか、又は定期的に均一に混合して2時間結合し、上清を除去し、取得した細胞を1mLの5%のFBS/PBS緩衝液に再懸濁させ、洗浄を2回繰り返し、最後に細胞を再懸濁させた後、EP管に非特異的に吸着したファージの溶出を回避するために、新しい2mLの低吸着EP管に交換した。
【0215】
1mLの100nMのGly-HCl(pH2.2)で細胞を再懸濁させ、室温で10minインキュベートした後、4℃で140gで2min遠心分離し、上清を新しいEP管に移し、25μLの2MのTris中和液を加えた。約1mLの中和液を、約500μLの7.5%のFBS/PBS緩衝液で更に中和した。
【0216】
3部の同じ吸着細胞CHOを遠心分離し、処理方法はCHO-GPRC5D細胞と同じであった。溶出後に中和したファージをCHO細胞に再懸濁させた。4℃で穏やかに回転するか、又は定期的に均一に混合して30min結合した。4℃で140gで2min遠心分離し、上清を取り、次の吸着プロセスに使用され、合計3回行った。最後のファージ上清はTG1細胞の感染に使用された。標的細胞CHO-GPRC5Dの数を5×106とし、洗浄回数を3回とするように、同じ方法を用いて2ラウンド目の細胞パンニングを行った。標的細胞をHEK293-GPRC5Dに交換し、細胞数を1×106とし、洗浄回数を10回まで増加させるように、同じ操作方法を用いて3ラウンド目及び4ラウンド目の細胞パンニングを行った。
【0217】
4ラウンドのパンニング後、標的細胞に対する輸出されたファージの顕著な特異的濃縮が観察された。細胞に基づいた単一ファージELISA(Cell-based mono phage ELISA)を利用してパンニングして得られたファージ抗体クローンを同定した。96ウェルELISAプレートに、3×104細胞/ウェルでCHO-GPRC5D標的細胞をコーティングし、4℃で一晩置いた。次に5%の脱脂粉乳を用いて非特異的結合部位をブロックし、十分に洗浄した後、モノクローナルファージ上清(脱脂粉乳と混合済み)を96ウェルプレートに加え、2時間インキュベートし、十分に洗浄した後、Anti-M13-HRPを加え、45min反応させ、十分に洗浄した後、TMBを加えて発色させ、室温で5~10min作用した後、2Mの硫酸で反応を停止させ、450nmで各ウェルのOD値を測定した。
【0218】
パンニング後、ELISAによって、ヒトGPRC5Dに特異的に結合することができる34個のファージ抗体クローンを同定し、配列決定後に一本鎖VHH遺伝子配列を得た。
【0219】
例示的には、3B5 VHH(VHHのアミノ酸配列は配列番号15に示される)、3E7 VHH(VHHのアミノ酸配列は配列番号19に示される)、4A2 VHH(VHHのアミノ酸配列は配列番号24に示される)及び4B3 VHH(VHHのアミノ酸配列は配列番号30に示される)抗体配列を選択し、フローサイトメトリー蛍光選別技術(FACS)によって、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)を使用し、0.1%のBSAを含むPBSを緩衝液として、細胞表面標的抗原(GPRC5D)と抗体の細胞結合活性を検出した。
【0220】
緩衝液を使用して濃度1×106細胞/mLの標的細胞(即ちMM1S骨髄腫細胞)を調製し、30μL/ウェルで円錐底96ウェルプレート(corning 3894)に加え、緩衝液を使用して検出抗体濃度が10μg/mLになるように調製し、3倍の比率で抗体を希釈し、8濃度勾配を形成し、調製された異なる濃度の抗体を、播種された標的細胞に30μL/ウェルで加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートし、150μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離し、上清を捨てた後に、細胞を緩めるように振とうし、洗浄を1回繰り返し、緩衝液を使用して1:200の配合比で蛍光二次抗体(ab98593)を調製し、30μL/ウェルで細胞に加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で30分間インキュベートし、150μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離し、上清を捨てた後に、細胞を緩めるように振とうし、洗浄を1回繰り返し、35μL/ウェルで緩衝液を加えて均一に混合した後、フローサイトメーターによって検出した。抗GPRC5D抗体と細胞表面GPRC5Dタンパク質の結合活性は表1に示された。ここで、ET150-5scFvは、配列が特許出願CN107428829Aに示されている陽性対照抗体であり、3B5VHHのアミノ酸配列は配列番号15に示され、3E7VHHのアミノ酸配列は配列番号19に示され、4A2VHHのアミノ酸配列は配列番号24に示され、4B3VHHのアミノ酸配列は配列番号30に示された。結果は、本願に記載の抗GPRC5D VHHが何れも、細胞表面のGPRC5Dに結合することができ、且つ結合能力が陽性対照ET150-5 scFvに相当し、更に陽性対照よりも高いことを示した。
【0221】
【0222】
実施例2CARレンチウイルス発現担体の構築
より強い親和性及びより優れた抗腫瘍効果を有する抗GPRC5D CAR-T細胞製品を得るために、発明者らは、体外機能検証において比較的優れた標的細胞殺傷活性、比較的高い標的増殖能力及び比較的低いtonicシグナルレベルを有する3B5VHH、3E7VHH、4A2VHH及び4B3VHHという4つの抗体配列を、異なるペプチドリンカーを介してCAR構造に結合して、二重結合ドメインGPRC5D double VHH CARを構築した。例示的な二重結合ドメインdouble VHH CAR構築物は表1に示された。構築物の製造ステップは以下の通りであった。具体的には、(GGGGS)n又は(EAAAK)n(但し、nは正の整数であってもよい)によって2つのVHH配列を融合し、次にSphI及びNotIエンドヌクレアーゼ(NEBから購入)を使用してCARレンチウイルスコア空プラスミド(原啓生物科技(上海)有限責任公司が自己構築し、Ori新しい要素を含み、以下にCARレンチウイルス空担体と略称)を二重酵素消化して8992bp線形化断片を生成し、ゲル切断及び回収後に融合により得られたdouble VHH断片とモル比1:3で混合し、相同組換えを行った後、DH5αコンピテント細胞を形質転換した。単一コロニーを選択し、配列決定を同定した。二重結合ドメインdouble VHH CAR構造の連結順序は表2に詳しく示された。
【0223】
二重結合ドメインdouble V
HH CAR構造の32種類の異なる組み合わせについて、CAR-T細胞体外増殖活性、標的殺傷能力、サイトカイン分泌レベルなどを含むCAR-T体外生物学的機能を検証することによって、そのうちの1種のdouble V
HH CAR構造の組み合わせを例示的に選択し、OriCAR-017(即ちoriCAR-DG508M)と命名し、次いで単一ドメインのG5V
HH1 CAR(但し、標的部分のG5V
HH1のアミノ酸配列は配列番号19に示される(3E7))及びG5V
HH2 CAR(但し、標的部分のG5V
HH2のアミノ酸配列は配列番号30に示される(4B3))、陽性対照ET150-8(そのアミノ酸配列は特許番号US10633426B2に示される)と共にCAR-T体外生物学的機能実験を行い、各CARレンチウイルス担体の各部分の要素及び連結順序は
図1に詳しく示された。但し、CD8αシグナルペプチドのアミノ酸配列は配列番号1に示され、CD8αヒンジ領域のアミノ酸配列は配列番号2に示され、CD8α膜貫通領域のアミノ酸配列は配列番号3に示され、4-1BB共刺激シグナルのアミノ酸配列は配列番号4に示され、CD3ζ細胞内シグナル伝達領域のアミノ酸配列は配列番号5に示され、Ori新しい要素のアミノ酸配列は配列番号7に示された。リンカーAの例示的な選択配列は(GGGGS)5であり、リンカーBの例示的な選択配列は(EAAAK)3であった。
【0224】
【0225】
A:(GGGGS)n、但し、nは0以上の整数であり、GGGGSのアミノ酸配列は配列番号39に示される
B:(EAAAK)n、但し、nは0以上の整数であり、EAAAKのアミノ酸配列は配列番号40に示される
【0226】
実施例3 レンチウイルスのパッケージング及びウイルス力価の測定
例として、本発明の構築に使用されるレンチウイルス担体システムは第3世代に属し、当該システムは、Gag-Polタンパク質をコードするパッケージングプラスミドpRH1、Revタンパク質をコードするパッケージングプラスミドpVH3、エンベロープタンパク質VSV-GをコードするpMH2プラスミド、及びコアプラスミドといった、VHH配列を含む上記実施例2における各CARレンチウイルスプラスミドである、合計4つのプラスミドで構成された。各CARレンチウイルスプラスミドにおけるCAR遺伝子の発現は、伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターによって調節された。
【0227】
3.1レンチウイルスのパッケージング:
(1)成長状態が良好である約2.5×106個の293T細胞を5mLの293T細胞の完全培地(10%のFBSを含む高糖DMEM)に入れ、均一に混合した後、6cmの培養皿に接種し(20~24h後の細胞のコンフルエンスが80~90%になるように確保)、37℃、5%のCO2のインキュベーターに一晩培養した。
(2)約20~24h後、300uLのOpti-MEM培地を取り、合計6.9ugの3種類のプラスミド(質量比pRH1:pMH2:pVH3:CARレンチウイルスコアプラスミド=1:1:2:2の比率で加える)を加え、均一に混合した後、20.7uLのFuGENEHDトランスフェクト試薬(Promega、E2311)を加え、慎重に均一に混合した後、室温で15~20min静置し、次に混合液を6cmの培養皿に慎重に滴下し、培養皿を慎重に振とうし、37℃、5%のCO2のインキュベーターに一晩培養した。
(3)約20~24hトランスフェクトした後、6cmの培養皿内の上層液体を慎重に捨て、次に5mLの293T細胞完全培地をゆっくりと加えた。
(4)約48hトランスフェクトした後、6cmの培養皿内の上層液体(死細胞と破片を含む)を収集し、3000gで5min遠心分離した後、細胞破片が除去された上層ウイルス液を新しい遠心分離管に移し、分注後、-80℃に保存した。
【0228】
3.2レンチウイルス力価の検出:
(1)上記で製造されたウイルス液を速やかに解凍した。
(2)成長状態が良好である293T細胞(一般に20世代以内の培養細胞)を取り、上層の廃液を捨て、PBSで細胞を洗浄した後、0.25%のトリプシン(GIBCO)を使用して37℃で約3min消化し、細胞が完全に消化した後、一定の体積の293T細胞完全培地を加えて反応を停止させ、サンプリングしてカウントし、次に細胞密度を2.0×105/mLに調整し、そして最終濃度10ug/mLのpolybreneを加え、更に2.5mL/ウェルの接種量で細胞を6ウェルプレートに接種した。
(3)次に6ウェルプレートに上記ウイルス液をそれぞれ加え、一般に各ウイルス液を、2uL、5uL及び10uLの3つのサンプルロード勾配を作成し、そしてウイルス液を加えない1~2個のブランクウェルをフローサイトメトリーの陰性対照として追加する必要がある。
(4)細胞培養板を37℃、5%のCO2インキュベーターにおいて静置培養した。
(5)細胞を48h静置培養した後、上層の廃液を捨て、PBSで細胞を洗浄した後、0.25%のトリプシン(GIBICO)を使用して37℃で約3分間消化し、細胞が完全に消化した後、一定の体積の293T細胞完全培地を加えて反応を停止させ、サンプリングしてカウントし、次に約5×105個の細胞を1.5mlの無菌遠心分離管に入れ、マークを付けた。
(6)NBS溶液(1%のウシ新生児血清を含むPBS溶液)を用いて1.2~1.5mLに補充し、4℃で、500gで5min遠心分離し、上清を捨てた。
(7)各管に1mLのNBSを加え、軽く吹いて均一に混合し、4℃で、500gで5min遠心分離し、上清を十分に捨てた。
(8)各管に50μLのNBS及び0.8μgのBiotin-Goat anti-human F(ab)2抗体(109-066-006)を加え、ピペットで軽く吹いて均一に混合し(陰性対照に一次抗体を加えない)、4℃で60minインキュベートした。
(9)インキュベート完了後、1mlのNBSを直接加えて細胞を再懸濁させ、4℃で、500gで5min遠心分離し、上清を捨てた。
(10)各管に50μLのNBS及び0.5μgのAPC streptavidin(554067)蛍光二次抗体(陰性対照にこのタンパク質を加えない)を加え、4℃で30minインキュベートした。
(11)ステップ(9)を繰り返した。
(12)各管に200μLのNBSを加えて細胞を再懸濁させた。
(13)BD FACS CantoIIフローサイトメーター上で蛍光発現百分率を検出し、FlowJo-V10ソフトウェアを用いてデータを処理した。
【0229】
各試験管の陽性率-陰性対照の陽性率が5%~20%である場合でのみ、結果は利用可能であり、ウイルス力価の計算式は以下の通りである:
【0230】
【0231】
検出により、上記のVHHを含む各CARウイルス力価の範囲は1~10×106TU/mLであった。
【0232】
実施例4T細胞の感染及びGPRC5D CAR-T細胞の体外増幅
各組み合わせの二重結合ドメインGPRC5D double VHH CAR抗体配列及び単一VHH GPRC5D抗体配列のCAR-T細胞の製造方法は以下の通りである:
(1)Ficoll密度勾配遠心分離法により、アフェレーシス装置で採取した血液サンプルからヒト末梢血単核細胞(PBMC)を分離して得た(アフェレーシス装置は、上海原能細胞集団方舟計画ボランティアにより提供される)。
(2)PBMCは、CD3陽性磁気ビーズによる選別後、純度>95%のCD3+T細胞を得た。T細胞選別の具体的な方法は、製品の取扱説明書(MACS、DS130-050-101)に示された。
(3)T細胞完全培地(X-VIVO15(Lonza)+5%FBS+サイトカイン)でCD3+T細胞を再懸濁させ、更に3倍の比率で既に洗浄したCD3/CD28 Dynabeads(Gibco、40203D)を加え、次にT細胞完全培地を補充し、細胞密度が1.0~1.2×106細胞/mLになるように調整し、37℃、5%のCO2インキュベーターに置いて活性化培養した。
(4)一般的には、T細胞を20~24h活性化した後、レンチウイルスを形質導入した。
(5)20~24h活性化したT細胞を収集し、500gで5min遠心分離した後、一定の体積のT細胞完全培地で細胞を再懸濁させた後、サンプリングしてカウントし、ウイルス感染多重度(MOI)が3の比率で、実施例3で力価が既に測定されたウイルス液をそれぞれ加え、次に最終濃度が5μg/mLになるようにpolybreneを加え、更にT細胞完全培地を補充し、細胞密度が0.6~1.0×106/mLになるように調整し、更に細胞を37℃、5%のCO2のインキュベーターに置いて培養し、別のT細胞を取ってレンチウイルス感染を行わず、陰性対照群とした。
(6)ウイルスを約20~24h形質導入した後、各群のT細胞を収集し、500gで5min遠心分離した後、一定の体積のT細胞完全培地で細胞を再懸濁させた後、サンプリングしてカウントし、T細胞完全培地を補充し、細胞密度が0.5~0.7×106細胞/mLになるように調整した。
(7)その後、1~2日ごとに、CAR-T細胞に対するカウント処理を行い、実際の状況に応じてT細胞完全培地を補充し、細胞密度が0.5~1.0×106細胞/mLになるように調整した。
(8)一般的には、5日目培養する時、Dynabeadsを除去し、総培養周期は12日程度であった。
【0233】
実験結果は
図2A~2Bに示され、活性化及び培養増幅後、二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CARレンチウイルス感染後のT細胞CARの陽性率は55%~75%の間に介在し、単一V
HH GPRC5D CARの陽性率は80%~90%の間に介在し、CAR遺伝子はT細胞上で安定して発現され、且つ各群の間に有意差がなかった。
図3に示すように、体外CD3/CD28刺激後、CAR-T細胞は安定して増殖し、特に共培養の9日目から、G5V
HH1 CART及びOriCAR-017細胞は、G5V
HH2 CAR-T及び陽性対照ET150-8 CAR-T細胞よりも優れた増殖の可能性を示し、累積増幅倍数はそれぞれ1000倍及び200倍であり、細胞学的機能実験に使用できた。
【0234】
実施例5GPRC5D CAR-T細胞の脱顆粒分子CD107aの発現レベルの測定
CAR-T細胞による細胞毒性の発揮の重要な経路の1つは、パーフォリン及びグランザイムの放出であり、CAR-T細胞の脱顆粒エフェクターもCART細胞活性化の重要な表現であるため、細胞脱顆粒機能分子CD107aの発現レベルは、CAR T殺傷エフェクターを評価する重要な指標であった。標的細胞に対するCAR-Tの活性化能力を検出するために、発明者らは、同時インキュベートウェル内のCD3陽性細胞におけるCD107aの発現含有量を検出し、含有量によってCAR-Tの活性化及び殺傷能力を判断した。
【0235】
図4A~4Bに示すように、異なる二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞と標的細胞は、1:1であるエフェクターと標的の比率で4h共培養した後、各群のCAR-T細胞によるCD107aの発現レベルが均一ではなく、何れもMock T対照細胞のCD107aの発現よりも高く、但し、OriCAR-017のCD107a発現の陽性率は28%程度であり、2つの単一ドメイン抗体CART細胞群及び陽性対照ET150-8群と比べて、比較的高いCD107a発現の陽性率を有し、実験は、OriCAR-017が特異的標的細胞に対して明らかな脱顆粒エフェクターを有することを示し、良好な活性化及びエフェクター殺傷の可能性があることを示唆した。
【0236】
実施例6GPRC5D CAR-T細胞の体外エフェクター殺傷活性の評価
標的細胞に対するCAR-T細胞の殺傷能力を正確に検出するために、発明者らは、レンチウイルスによりGPRC5D遺伝子をCHO細胞に導入し、更にフローソーターによりGPRC5D陽性細胞、即ちCHO-GPRC5D細胞を選別した。標的細胞はCHO-GPRC5D細胞で、陰性細胞はCHO陰性細胞であった。エフェクターと標的の比率が3:1である比率で、9日目培養したエフェクター細胞をそれぞれ、標的細胞と共に20時間インキュベートし、LDH法により、標的細胞の生存状況(即ちCAR-T細胞の殺傷力)を判断した。
【0237】
細胞の殺傷毒性は、下記の式により計算された。
【0238】
【0239】
図5A~5Bに示すように、ブランクエフェクター細胞はT細胞と比べて、結果は、二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞が標的細胞に対して明らかな殺傷効果を有し、単一V
HH CAR-T細胞が標的細胞に対して明らかな殺傷効果を有し、Mock T細胞と比べて、単一ドメイン抗体G5V
HH1 CAR-T、単一ドメイン抗体G5V
HH2 CAR-T、ダブルエピトープ標的のOriCAR-017及び陽性対照ET150-8が何れも標的細胞に対する顕著な殺傷効果を有することを示した。特に、エフェクターと標的の比率が1:9である場合、MM.1S標的細胞に対するOriCAR-017の殺傷率は、単一ドメイン抗体CAR-T及び陽性対照ET150-8よりも明らかに高く、70%に達した。
【0240】
実施例7GPRC5D CAR-T細胞の体外殺傷後のサイトカイン分泌
実施例6を参照し、96ウェルプレートにおいて標的細胞の殺傷実験を行い、エフェクター細胞と標的細胞の比率は1:1であり、次に各96ウェルのエフェクター細胞数を2×104個に固定し、標的細胞及びエフェクター細胞を順に加え、各群ではエフェクターと標的の各比率で2つの平行ウェルを設定し、また、各群では2つの単独のエフェクター細胞ウェルを設定する必要があり、エフェクター細胞のバックグラウンド因子の分泌量を検出した。
【0241】
標的細胞殺傷後の約24時間に、96ウェルプレートを遠心分離し、各ウェルの上清液を収集し、エフェクター細胞を遠心分離して上清を捨て、X-VIVOで3×105細胞/mLに希釈し、各ウェルから100μLを取って使用した。標的無しの細胞(即ち腫瘍細胞と共培養しないCAR-T細胞)及びMM.1S細胞の両方をエフェクターと標的の比率が1:1の比率で丸底96ウェルプレートに混合し、24時間同時インキュベートした後、上清を吸引し、R&D Cytokine Kitにより上清液中のIL-2及びIFN-γの含有量を検出した。
【0242】
図6A~6Bに示すように、MM.1S標的細胞の刺激下で、二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞のIL-2及びIFN-γの分泌レベルは何れもMock T細胞群より高く、各CAR-T群のIFN-γ分泌は何れもMock T細胞群より明らかに高く、且つ2つの単一ドメイン抗体CAR-T細胞群及び陽性対照ET150-8群と比べて、ダブルエピトープ標的のOriCAR-017は、より高いIFN-γ分泌レベルを有し、OriCAR-017が比較的強い抗原特異的活性化効果を有することを示した。また、各CAR-T群のIL-2分泌は何れもMock T細胞より明らかに高いが、OriCAR-017のIL-2分泌レベルは単一ドメイン抗体CAR-T細胞と比べて比較的低く、これも、OriCAR-017は一定の活性化増殖特性を有することを示した。
【0243】
実施例8GPRC5D CAR-T細胞の標的増殖能力
この実施例のCAR-T細胞の標的増殖能力の検出には、処理されていないMM.1S細胞を活性化標的細胞として選択した。
【0244】
一般的には、CAR-T細胞を9~12日程度培養する時に行われ、各群のCAR陽性率を事前に検出し、更にブランクエフェクターT細胞で各群のCAR陽性率を一致にするように調整する必要がある(培地は、任意の添加物を含有しないX-VIVO15培地である)。
【0245】
CAR-T細胞及びMM.1S細胞に対して、エフェクターと標的の比率が1:1である比率で1ラウンド目の標的刺激を行い、5日間同時インキュベートした後、全ての細胞を収集し、サンプリングしてカウントし、更に1:3(全CAR-T細胞:新MM.1S細胞)の比率で、2ラウンド目の標的刺激を行い、更に4~5日間同時インキュベートした後、3ラウンド目の標的刺激を行った(2種類の細胞間の比率は2ラウンド目の標的刺激と同じである)。3ラウンドの標的刺激の期間に、細胞成長状況に応じて1~2日ごとに、適量のX-VIVO15培地を補充した。
【0246】
図7Aに示すように、二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞は、標的細胞に刺激された後、異なる程度の標的増殖能力があり、2ラウンドの繰り返し刺激の増殖倍数は50~200倍の間であり、対照Mock T細胞と比べて有意差があり、二重結合ドメインGPRC5D double V
HH CAR-T細胞が生体内で特異的腫瘍に対して効率的且つ迅速に増幅できることを示唆した。
図7Bに示すように、各群のCAR-T細胞は、MM.1S標的細胞に刺激された後、強い細胞増殖能力が示され、3ラウンドの標的細胞の刺激後の増殖倍数は1000~3500倍に達することができ、対照mock T細胞と比べて、増殖活性が明らかに増加し、ここでG5V
HH1 CAR T細胞は標的細胞の刺激下で増幅効率が最も高かった。また、OriCAR-017細胞の標的増殖の増幅効率は、陽性対照ET150-8 CAR T細胞より高かった。この結果は、OriCAR-017 CAR T細胞が標的細胞の刺激によって迅速に増殖し、それが生体内で特異的腫瘍に対して効率的且つ迅速に増幅できることを示した。
【0247】
実施例9 GPRC5D CAR-T細胞の細胞表現型の分析
レンチウイルス感染によって活性化されたCD3+ T細胞がGPRC5D CAR発現の検出で陽性結果を得た後、共培養後の12日目に細胞の記憶表現型、活性化表現型、枯渇表現型の検出を行った。4群のエフェクターCAR T細胞(G5VHH1 CAR-T、G5VHH2 CAR-T、OriCAR-017細胞、陽性対照ER150-8を含む)をそれぞれ収集し、フローサイトメトリーにより、CD45RO、CCR7、CD62Lの細胞比率を含む各群のCD3+T細胞内の記憶Markersを検出し、CD25、CD69の細胞比率を含む各群のCD3+T細胞内の活性化markersを検出し、PD-1、LAG-3、TIM-3の細胞比率を含む各群のCD3+T細胞内の枯渇markersを検出した。
【0248】
表3及び
図8、
図9に示すように、CAR-T細胞を12日目培養する時、G5V
HH2(T
SCM:7.79%、T
CM:51.1%)及びET150-8 CAR-T細胞(T
SCM:3.91%、T
CM:43.1%)と比べて、OriCAR-017(T
SCM:22.7%、T
CM:25.7%)及びG5V
HH1 CAR-T細胞(T
SCM:22.8%、T
CM:34.4%)は、比較的高い幹細胞記憶(T
SCM)表現型、比較的低い中央記憶T細胞(T
CM)表現型が示され、T細胞分化の程度が低かった。
図10に示すように、CAR T細胞を12日目培養する時、OriCAR-017及びG5V
HH1 CAR T細胞の活性化marker CD25及びCD69の発現レベルは、G5V
HH2及びET150-8 CAR T細胞より低く、即ちT細胞の活性化の程度が比較的低く、OriCAR-017 T細胞は、活性化細胞表現型より低いという利点を有した。
図11に示すように、CAR-T細胞を12日目培養する時、OriCAR-017 T細胞枯渇marker LAG-3及びTIM-3の発現レベルは、G5V
HH2及びET150-8 CAR-T細胞より低く、即ちT細胞の枯渇の程度が比較的低く、OriCAR-017 T細胞は、枯渇細胞表現型が低いという利点を有した。
【0249】
【0250】
実施例10GPRC5D CAR-T細胞の免疫シナプスメカニズムの研究
免疫シナプス(Immune synapse、IS)は、特定の活性化受容体と連結した後に形成された構造であり、CAR-T細胞識別抗原であり、増殖及び活性化の重要なステップであり、体の細胞免疫反応及び体液免疫反応の重要な構成部分であり、免疫シナプスの形成は、CAR-T細胞のエフェクター機能に関連し、CAR-Tレベルでは、免疫シナプス構造の微小管組織中心(MTOC)の分極を測定して、CAR-T細胞の機能の利点を更に評価した。CAR-T細胞と標的細胞は、1:1の比率で5分間共培養した後、Nunc chamber slidesに移し、20分間インキュベートし、4%のPFAで室温で固定し、PBSで3回洗浄した後、免疫染色透過化溶液(Triton X-100)、室温でインキュベートし、10%のウマ血清/免疫染色透過化溶液(Triton X-100)、室温でインキュベートし、2%のウマ血清/免疫染色透過化溶液(Triton X-100)で希釈した一次抗体を加えて室温でインキュベートし、2%のウマ血清/免疫染色透過化溶液(Triton X-100)で希釈した二次抗体を加えて室温でインキュベートし、スライドを分離し、ProLong Diamondでシールし、乾燥して凝固させた後、レーザー共焦点100倍のオイルレンズ、紫外線、488nm、543nm、1024×1024、Z軸スキャン0.4μmを利用し、重ね合わせて3D画像及びビデオを取得した。
【0251】
図12に示すように、G5V
HH1、G5V
HH2及びOriCAR-017 CAR T細胞の共焦点イメージングが行われ、但し、細胞核は青色に染色され、γ-微小管タンパク質は緑色に染色され、T細胞は赤色に染色され、白い矢印はISの微小管組織中心MTOCの分極位置を表し、MTOCとISとの距離が近いほど、IS構造が安定した。
図13に示すように、G5V
HH1及びG5V
HH2 CAR-T細胞と比べて、ISに対するOriCAR-017細胞のMTOC分極レベルが明らかに増加し、MTOCとISとの距離の減少として現れ、それによって、より優れた、より安定したIS構造が得られるため、より優れた機能上の利点を有し、OriCAR-017細胞媒介性細胞毒性が単一標的のGPRC5D V
HH1及びGPRC5DV
HH2 CAR-T細胞よりも優れることを示した。
【0252】
実施例11.GPRC5D CAR-T細胞のマウス体内実験
発明者らは、NSGマウス体内でOriCAR-017 CAR-T細胞の腫瘍除去と腫瘍抑制作用を更に検証した。具体的には、実験は、各群5匹のマウスで、Mock T細胞、G5VHH1 CAR-T、G5VHH2 CAR-T、ET150-8 CAR-T及びOriCAR-017 CAR-T細胞群といった5群に分けられた。まず、NSGマウス皮下に、1×107細胞/匹の用量でMM1S細胞を接種し、約2週間後(腫瘍サイズが50~150mm3)、尾静脈に10~12日間培養したCAR-T(又はT)細胞を注射し、用量は何れも1.6×106CAR-T細胞/匹の用量であった(各マウスに接種された細胞の総数はT細胞と一致するように調整された)。CAR-T(又はT)細胞の接種後、CAR-T(又はT)細胞接種後の7日目及び14日目に、マウス末梢血中のサイトカイン分泌を検出し、マウス腫瘍サイズ及び体重を週に3回測定し、3週間観察した。
【0253】
NSGマウス体内腫瘍抑制の実験フローは
図14に示された。
図15Aに示すように、注射後の7日目に分泌されたサイトカインIFN-γを検出し、OriCAR-017 CAR-T細胞群で産生されたIFN-γはG5V
HH1 CAR-T、G5V
HH2 CAR-T及び陽性対照ET150-8 CAR-Tより顕著に高かった。安全性に関しては、
図15Bに示すように、マウス体重は時間の経過と共に安定した増加傾向を示し、全てのCAR-T細胞実験群はMock T群のマウスの体重曲線の傾向と一致した。また、OriCAR-017注射後のマウスの毛皮は明るく、マウスの行動などのバイタルサインは正常であり、OriCAR-017はマウス体内で良好な安全性を有することを実証した。体内腫瘍抑制効果に関しては、
図15Cに示すように、単一結合ドメインのG5V
HH1 CAR-T及びG5V
HH2 CAR- T細胞、並びに陽性対照ET150-8 CAR-T細胞と比べて、OriCAR-017細胞群は、非常に顕著な抗腫瘍効果を示し、腫瘍抑制率は100%近く達することができた。
図15Dに示すように、OriCAR-017細胞群は、研究期間中にマウスの生存率が100%に達し、そのマウス生存率は単一結合ドメインのV
HH CAR T細胞群及びPositive control陽性対照ET150-8 CAR-T細胞よりもはるかに高く、OriCAR-017が臨床的に比較的優れた抗腫瘍活性を示す可能性があることを示した。
【0254】
人体内の血液腫瘍の分布を更にシミュレーションするために、発明者らは、生体内イメージング技術に基づいて、B-NSGマウス体内でOriCAR-017細胞の腫瘍除去、腫瘍抑制作用を更に検証した。B-NSGマウスの尾静脈にMM1S-Luciferase標的細胞を注射し、マウスの生物発光強度に応じて、各群5匹でランダムに群分けし、事前に凍結保存された、異なる用量のOriCAR-017 CAR-T又はMock T細胞を尾静脈に注射し、CAR-Tの再注入後、毎週火曜日及び木曜日に動物生体内イメージングシステムを用いてマウス体内の生物発光変化を観察し、マウスの体重及び健康状態を観察し、観察期間中、サイトカインを検出するためにマウスの眼球又は尾静脈から3回採血し、BDフローサイトメトリーによりCD3+CD8+T細胞比率を検出した。
【0255】
図16に示すように、Mock Tと比べて、異なる用量のOriCAR-017凍結保存細胞は何れも、明らかな抗腫瘍活性を示し、マウスの腫瘍負荷を大幅に軽減した。但し、低用量群は再注入後の7日目に効率的な腫瘍除去効果を示したが、OriCAR-017中程度用量及び高用量群は再注入後の短期間内(4日目)に明らかな腫瘍抑制活性を示し、特に高用量群では、再注入後に腫瘍を迅速に除去すると共に、腫瘍成長を継続的に抑制することができ、21日目に高用量群の腫瘍の完全除去率は60%に達することができた。
【0256】
実施例12.難治性/再発性多発性骨髄腫患者におけるOriCAR-017 CAR-Tの臨床研究
難治性又は再発性多発性骨髄腫(「r/r MM」)と診断されたヒト患者の治療におけるOriCAR-017 CAR-T細胞の安全性及び有効性を決定するために、単群、非盲検、第I相多施設臨床研究を行った。臨床試験登録情報は、www.clinicaltrials.govであり、識別子はNCT05016778であった。
【0257】
この研究では、患者の自己T細胞に由来するOriCAR-017 CAR-T細胞を用いて難治性/再発性多発性骨髄腫患者を治療した。1×106/kg、3×106/kg、6×106/kgのCAR+ T細胞用量は静脈内注射により各患者に投与された。この研究の1日目~30日目に、患者の有害事象を監視し、評価のために患者サンプルを取得した。CAR T投与後、全ての患者に対して少なくとも36か月間追跡調査した。研究の主要結果は、OriCAR-017 CAR-T細胞注射後1~30日以内の、有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events、CTCAE)v4.0によって評価された治療関連の有害事象の発生を測定し、副次的な結果は、CAR-T誘発性抗骨髄腫応答を評価し、例えばOriCAR-017 CAR-T細胞の投与前及び投与後に血清中の異常免疫グロブリンレベル及び患者骨髓中の多発性骨髄腫細胞の数を測定した。研究の有効性の目標は、病理学的完全応答の比率、3年間の無病生存率、3年間の無増悪生存率を含む。2022年のASCO年次総会(2022 ASCO Annual Meeting、https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.8004)でこの研究を詳細に紹介した。2022年4月30日の時点で、12例の患者がこの研究に登録され、アフェレーシスを受け、10例の患者がOriCAR-017 CAR-T注入が完了し、年齢中央値は64歳(範囲、41~71)、以前の治療ライン数の中央値は5.5(範囲、3~17)であった。5例(50.0%)の患者が以前に抗BCMA CAR-T治療を受けた。用量制限性毒性は発生しなかった。最も一般的な治療中に発生した有害事象(TEAE)は、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、リンパ球減少症及び貧血であった。神経毒性は報告されていなかった。全患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を発症し、9例がグレード1、1例がグレード2であった。従来の介入(トシリズマブ及びステロイド)の後、全てのCRSが迅速に緩和した。発症までの時間の中央値は2日(範囲、1~9)、持続期間の中央値は6日(範囲、3~9)であった。客観的奏効率(ORR)は100%、MRDは100%陰性、完全奏功/厳密に完全奏効(CR/sCR)率は60%であった。以前に抗BCMA CAR-T治療を受けた5例の患者に対して治療効果を評価することができ、2例はsCRを達成し、2例はVGPRを達成し、1例はPRを達成し、具体的には表4及び5に示された。
【0258】
【0259】
【0260】
ORR=(CR+sCR+VGPR+PR例数)/治療効果を評価できる集団内の対象の例数×100%。
DCR=(CR+sCR+VGPR+PR+MR例数)/治療効果を評価できる集団内の対象の例数×100%。
百分率は、治療効果を評価できる集団内の各用量群に登録した対象の例数に基づいて計算された。
[1]Clopper Pearson法に基づいて両側対応CIを計算した。
【0261】
実施例13.GPRC5D CAR-T細胞における2つのVHHドメインの異なるエピトープの結合実験
OriCAR-017 CAR-TのGPRC5D VHHドメインのエピトープを同定した。GPRC5Dに特異的に結合する異なるエピトープの2つの異なる抗GPRC5D VHHドメインを有する例示的な二価GPRC5D CARを構築した。G5VHH1及びG5VHH2を含む二価/ダブルエピトープCARをOriCAR-017として命名し、例示的な表2に列挙された二重結合ドメインのGPRC5D double VHH CARであった。
【0262】
13.1FORTEBIO抗体測定
G5V
HH1及びG5V
HH2抗体配列を、ヒトIgG1 Fc断片(hIgG1Fc)配列を含むp3.4-hIgG1Fcの真核担体にクローンし、GPRC5D V
HH-hIgG1Fcの組換え発現を促進して組換えタンパク質を取得し、精製した。G5V
HH1-hIgG1Fc及びG5V
HH2-hIgG1Fcの、GPRC5Dに対する親和性及びN末端ペプチド(Biotin)に対する親和性を測定した。簡単に言えば、ビオチン(EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin、Pierce、21327)を用いてヒトGPRC5DのN末端ペプチド(>sp|Q9NZD1|1~27:MYKDCIESTGDYFLLCDAEGPWGIILE)タンパク質を標識した。バイオレイヤー干渉法(BLI)により、分子間相互作用解析装置fortebiooctetRED384(PALL)を用いて抗原と抗体の間の結合動態分析を行った(抗原、抗体は何れも、0.1%のBSA及び0.02%のTween20のPBS緩衝液で希釈した)。ビオチン結合された濃度20nMの抗原を用いてSAセンサに固定し、3min結合した後、倍率希釈された抗体(即ちG5V
HH1及びG5V
HH2抗体)溶液に5min結合し、最後に5min解離した。得られた結果は、Octet Data Analysis 9.0ソフトウェア(fortebio)によってデータ分析を行うことで、抗原と抗体の結合強度を算出し、KD値、Ka(1/Ms)値及びKd(1/s)値を得た。G5V
HH1-hIgG1FcとG5V
HH2-hIgG1Fcの結合親和性結果は
図17に示され、G5V
HH1抗体検出の回帰方程式では、サンプルデータポイントのフィッティング適合度R2値(0.7914)が低く、モデルは信頼できなかった。G5V
HH1がGPRC5DのN末端ペプチドに結合しないが、G5V
HH2抗体がN末端ペプチドに結合し、KDが7.69E-08Mであることが分かった。G5V
HH1、G5V
HH2がGPRC5D標的に結合するエピトープに違いがあることを更に示した。
【0263】
13.2競合性結合の測定
細胞に基づいた競合的結合測定によってG5VHH1及びG5VHH2の異なるエピトープ結合を更に検証した。ヒトGPRC5Dを過剰発現する安定的なCHO細胞株(CHO-GPRC5D)は測定に使用された。簡単に言えば、G5VHH1及びG5VHH2を、ヒトIgG1 Fc断片(hIgG1Fc)配列を含むp3.4-hIgG1Fcの真核担体及び6×Hisラベルを含む発現担体にクローンし、GPRC5D VHH-hIgG1Fc及びGPRC5D VHH-Hisの組換え発現を促進して精製し、G5VHH1-hIgG1Fc、G5VHH2-hIgG1Fc、G5VHH1-His、G5VHH2-His組換えタンパク質を取得した。
【0264】
PBS緩衝液を使用して濃度1×10
6細胞/mLのCHO-GPRC5D標的細胞を調製し、30μL/ウェルで円錐底96ウェルプレート(corning 3894)に加え、PBS緩衝液を使用して濃度が30μg/mLとなるように検出抗体G5V
HH1-hIgG1Fc、G5V
HH2-hIgG1Fcを調製し、3倍の比率で抗体を希釈し、8濃度勾配(最終濃度0)を形成し、調製された異なる濃度の抗体を、播種された標的細胞に30μL/ウェルで加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートし、150μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、緩衝液を使用して1:200の配合比でヤギ抗ヒトIgG(Fc特異性、ab98593)蛍光二次抗体を調製し、30μL/ウェルで細胞に加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で30分間インキュベートし、170μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、35μL/ウェルで緩衝液を加えて均一に混合した後、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)により検出された。フローサイトメトリー親和性結合実験の分析結果により、G5V
HH1-hIgG1Fc、G5V
HH2-hIgG1Fcの結合活性EC80値が分かり、
図18に示された。
【0265】
EC80に対応する抗体濃度に従って、0.65ng/mLのG5VHH2-hIgG1Fcは細胞総数3×104のCHO-GPRC5D細胞と共に1hインキュベートし、PBS緩衝液を用いて濃度が80μg/mLとなるように検出抗体G5VHH1-Hisを調製し、3倍の比率で抗体を希釈し、12濃度勾配(最終濃度0)を形成し、次に連続希釈したG5VHH1-His組換え抗体をウェルプレートに加え、そして4℃で更に1hインキュベートした。インキュベート後、140μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、緩衝液を使用して1:200の配合比でヤギ抗ヒトIgG(Fc特異性、ab98593)蛍光二次抗体を調製し、30μL/ウェルで細胞に加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で30分間インキュベートし、170μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、35μL/ウェルで緩衝液を加えて均一に混合した後、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)により検出された。測定対照として、上記と同じ手順に従って、G5VHH2-hIgG1Fcの非存在下でCHO-GPRC5D細胞で直接インキュベートし、連続希釈したG5VHH1-Hisは、G5VHH1-HisとCHO-GPRC5D細胞の結合の検出に使用された。
【0266】
図19に示すように、G5V
HH2-hIgG1Fcと細胞が飽和して結合する場合、G5V
HH1-Hisは依然として抗体勾配依存性を有し、且つG5V
HH2-hIgG1Fcの非存在下でのG5V
HH1-His結合活性と近く、即ちG5V
HH2-hIgG1Fcの存在はG5V
HH1-Hisへの結合に影響を与えなかった。また、G5V
HH2-hIgG1Fcと細胞が飽和して結合する場合、同時にG5V
HH1-Hisを加えて標的細胞に結合すると、G5V
HH2-hIgG1Fcは、G5V
HH1-Hisの非存在下でのG5V
HH2-hIgG1Fc結合活性と近く、即ちG5V
HH1-Hisの存在はG5V
HH1-Hisへの結合に影響を与えなかったことが分かった。以上から分かるように、G5V
HH1及びG5V
HH2がGPRC5D標的に結合するエピトープに違いがあり、両者は互いに影響しなかった。
【0267】
実施例14.CAR抗体配列と異なる種の標的抗原の交差結合の研究
ヒトGPRC5D、カニクイザルGPRC5D(配列番号36)、マウスGPRC5D(配列番号37)、ヒトGPRC5D対照サブタイプGPRC5A(配列番号38)を発現する安定的なトランスフェクトCHO細胞を使用し、フローサイトメトリー同定により、ヒト、カニクイザル及びマウスGPRC5Dへの異なる抗GPRC5D抗体の結合を評価した。簡単に言えば、PBS緩衝液を使用して濃度1×106細胞/mLのCHO-HuGPRC5D、CHO-CyGPRC5D、CHO-MuGPRC5D、CHO-HuGPRC5A標的細胞を調製し、30μL/ウェルでV型底96ウェルプレートに加え、PBS緩衝液を用いて濃度が30μg/mLとなるように検出抗体Double-VHH hFcを調製し、3倍の比率で抗体を希釈し、8濃度勾配(最終濃度0)を形成し、調製された異なる濃度の抗体を、播種された標的細胞に30μL/ウェルで加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートし、150μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、緩衝液を使用して1:200の配合比でDyna650-ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異性、ab98593)蛍光二次抗体を調製し、30μL/ウェルで細胞に加えて均一に混合し、4℃の冷蔵庫で30分間インキュベートし、170μL/ウェルで緩衝液を加え、300gで5分間遠心分離して上清を捨て、洗浄を1回繰り返し、35μL/ウェルで緩衝液を加えて均一に混合した後、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)により検出された。
【0268】
フローサイトメトリー結合活性検出結果は
図20に示され、結合特性のまとめは表6に示された。二重結合ドメインV
HH-hFc抗体では、二重結合ドメインV
HH-hFc抗体がヒトGPRC5Dとの結合活性が強く、マウスGPRC5D、カニクイザルGPRC5Dとの結合活性が比較的弱いことを示し、ブランクCHO細胞への二重結合ドメインV
HH-hFc抗体の結合が検出されず、ヒトGPRC5Dと同一ファミリーの異なるサブタイプを発現するGPRC5AのCHO細胞への二重結合ドメインV
HH-hFc抗体の結合が検出されず、本製品に適用される二重結合ドメインV
HH-hFc抗体の高度特異性が様々なオフターゲット副作用の発生リスクを低減できることが分かった。
【0269】
【0270】
前述の詳細な説明は、解釈や例示的な方法により提供され、添付される特許請求の範囲を制限するものではない。現在、本願に列挙された実施形態の様々な変化は、当業者にとって明らかであり、且つ添付される特許請求の範囲及びその同等方法の範囲内に保留されている。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、
Gタンパク質共役型受容体クラスCのグループ5メンバーD(GPRC5D)タンパク質を標的とする第1抗原結合ドメインと、GPRC5Dタンパク質を標的とする第2抗原結合ドメインと、を含
み、前記第1抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域VHのうちの少なくとも1つのCDRを含み、前記VHは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記第1抗原結合ドメイン及び/又は前記第2抗原結合ドメインは、抗体若しくはその抗原結合断片を含
み、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHH及びdAbを含む、
請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
、配列番号34(IX
1
X
2
X
3
X
4
GX
5
T、但し、X
1
はN又はT、X
2
はS又はW、X
3
はG又はS、X
4
はD又はG、X
5
はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、並びに配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記第1抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記第1抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
、配列番号34(IX
1
X
2
X
3
X
4
GX
5
T、但し、X
1
はN又はT、X
2
はS又はW、X
3
はG又はS、X
4
はD又はG、X
5
はN、S又はT)に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、並びに配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号10、配列番号18、配列番号22及び配列番号27の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR3
、配列番号9、配列番号17、配列番号21及び配列番号26の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、並びに配列番号8、配列番号16、配列番号20及び配列番号25の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
前記第2抗原結合ドメインはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記HCDR1、HCDR2、HCDR3は、
(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(2)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
(3)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、並びに
(4)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、且つ配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列を含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
前記第2抗原結合ドメインは、配列番号15、配列番号19、配列番号24及び配列番号30の何れか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHHである、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3の配列は、
(1)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(2)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(3)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(4)前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(5)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(6)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(7)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(8)前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(9)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(10)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(11)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(12)前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(13)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(14)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
(15)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、並びに
(16)前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第1抗原結合ドメイン、前記HCDR1が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む第2抗原結合ドメイン、
からなる群より選ばれる任意の一組のアミノ酸配列である、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
前記第1抗原結合ドメイン及び前記第2抗原結合ドメインは、リンカーを介して連結され
、前記リンカーは(GGGGS)nのアミノ酸配列及び/又は(EAAAK)nのアミノ酸配列を含み、但し、前記nは1~10の任意の正の整数である、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
共刺激シグナル領域
、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通領域、ヒンジ領域及び/又はシグナルペプチドを含み、前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40及びMyD88からなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル領域を含
み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、Epstein-Barrウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12及び少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する細胞内シグナル領域を含み、前記膜貫通領域は、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154及びSLAMからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含み、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30及びLIGHTからなる群より選ばれる1種又は複数種のタンパク質に由来するヒンジ領域を含み、前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質のシグナルペプチドに由来する、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項14】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質又はその断片を更に含む、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項15】
1種又は複数種の単離された核酸分子であって、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体をコードする、
核酸分子。
【請求項16】
ベクターであって、
請求項
15に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項17】
請求項
15に記載の核酸分
子を含む、
細胞。
【請求項18】
T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核細胞、胚性幹細胞、リンパ前駆細胞及び/又は多能性幹細胞を含む免疫エフェクター細胞である、
請求項1に記載のキメラ抗原受容体を含む、細胞。
【請求項19】
医薬組成物であって、
請求項
1に記載のキメラ抗原受容体
及び薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項20】
腫瘍の予防、治療及び/又は緩和
に使用するための、請求項
1に記載のキメラ抗原受容体
を含む、医薬組成
物。
【国際調査報告】