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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】官能化生体触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20250212BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250212BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20250212BHJP
   C12N 11/06 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 11/14 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P3/00
A61P1/00
A61K38/46
A61K38/43
A61K38/38
A61P37/08
A61P11/00
A61K9/14
A61K9/00
A61K47/34
A61K47/36
A61K9/50
A61K47/69
C12N11/06
C12N11/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542314
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2023051194
(87)【国際公開番号】W WO2023139150
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22152486.1
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523396901
【氏名又は名称】ペルセオ ファーマ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラプレヴォット, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】デュダル, イヴ ヴィクトール ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ブリオン, マノン
(72)【発明者】
【氏名】シャハガルディアン, パトリック
【テーマコード(参考)】
4B033
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B033NA22
4B033NA27
4B033NA42
4B033NB22
4B033NB32
4B033NC05
4B033ND12
4C076AA31
4C076AA61
4C076AA62
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC47
4C076DD29
4C076EE27
4C076EE30
4C076FF02
4C076FF21
4C076GG21
4C084AA01
4C084BA42
4C084BA44
4C084DA37
4C084DC02
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA691
4C084ZA692
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC191
4C084ZC192
4C084ZC211
4C084ZC212
(57)【要約】
本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物。
【請求項2】
各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーが、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2及びアミノ基を含む重合シランからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーが、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2及び重合APTESからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーが、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はそれらの誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミンである、請求項1から3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーが、チオール基を含む重合シラン、ポリカルボフィル-システインコンジュゲート、重合シラン-PEG-チオール及びポリシステインからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーが、重合MPTSである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
官能性成分が、非共有結合又は共有結合によって保護層の表面に固定化される、請求項1から6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
タンパク質又はその断片が、酵素又はその断片である、請求項1から7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
タンパク質又はその断片が、血清アルブミン又はその断片、リパーゼ又はその断片、パンクレアチン、及びパンクレアチンに含まれるタンパク質又はその断片からなる群から選択される、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
タンパク質又はその断片が、血清アルブミン又はその断片、リパーゼ又はその断片、及びパンクレアチンからなる群から選択される、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
タンパク質又はその断片が、リパーゼ又はその断片である、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
保護層が固体担体を包埋し、かつ固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片を包埋する、請求項1から11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
保護層の表面に固定化された官能性成分が保護層によって包埋されていない、請求項1から12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
キレート剤を更に含み、キレート剤が放射性標識又は発光標識を含んでいてもよい、請求項1から13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1から14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法に使用するための、又は、膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、ファブリー病及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患又は障害の予防、進行遅延又は治療のための方法に使用するための、請求項1から14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項17】
固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物を製造する方法であって、次の工程:
(a)固体担体を提供する工程;
(b)タンパク質又はその断片を固体担体に固定化する工程;
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片を保護する工程;
(d)保護層の表面に官能性成分を固定化する工程であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、官能性成分を固定化する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素などのタンパク質は、例えば工業用途、診断、又は治療的使用で頻繁に必要とされる。タンパク質を安定化し、及び/又は様々なタイプのストレスに対する耐性を与えるために、タンパク質を担体の表面に固定化し、それらを保護材料の層で保護することが先行技術において示唆されている。そのようなアプローチ法は、例えば、固体担体、酵素のような官能性成分及び官能性成分を包埋することによって官能性成分を保護するための保護層を含む生体触媒組成物と、そのような生体触媒組成物を製造する方法を開示する国際公開第2015/014888号に記載されている。しかしながら、例えば国際公開第2015/014888号に記載されている生体触媒組成物は、それらの生体適合性及びバイオアベイラビリティの欠如のために治療用途に使用することができない。従って、治療用途に適合し、有用である生体触媒組成物を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物を提供する。
【0004】
本発明はまた、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む前記組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物を製造する方法であって、次の工程:
(a)固体担体を提供する工程;
(b)タンパク質又はその断片を固体担体に固定化する工程;
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体に固定化された酵素又はその断片を保護する工程;
(d)保護層の表面に官能性成分を固定化する工程であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、工程
を含む、方法を提供する。
【0005】
本発明により提供される組成物が、治療に適用された場合、予想外に高い生体内分布特異性と、インビトロ及びインビボでの驚くほど高い粘膜付着性を有し、低い細胞傷害性を示し、胃腸管内に局在しても腸管バリアを破壊せず、よって、治療用途、特に酵素補充療法(ERT)における治療用途にそれらを極めて有望なものにすることが、本出願の発明者によって驚くべきことに見出された。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の組成物を製造するための方法の概略図を示す:a)タンパク質又は断片が固体担体に固定化される;b)及びc)保護層が、固定化されたタンパク質又はその断片の周囲に成長し、固定化されたタンパク質又はその断片を包埋する;及びd)官能性成分が保護層の表面に固定化される。
図2A-2B】キトサンによるナノ粒子の官能化を示す。(A)遮蔽ナノ粒子(NP-1)を、400rpmで撹拌しながら20℃において30分間、FITC-キトサンと反応させた。ヒストグラムは、遮蔽(NP-1)ナノ粒子と反応した(NP-2)ナノ粒子の蛍光強度(lex:489nm、lem:515nm)を表す。(B)エチニル修飾シリカナノ粒子(SNP)と3-アジド-7-ヒドロキシクマリンの間のCu(II)触媒アジド-アルキン環化付加反応の速度論。
図2C】(C)ジベンゾシクロオクチン-マレイミドと3-アジド-7-ヒドロキシクマリンの間の銅フリーアジド-アルキン環化付加反応の速度論。
図3】ナノ粒子の表面官能化レベルに依存する、キトサン官能化遮蔽ナノ粒子の粘液層とのエクスビボ相互作用を示す。蛍光遮蔽ナノ粒子(NP-1)及び蛍光部分的(NP-3)又は完全(NP-2)キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(500μg/mL)をブタ粘液層に1時間添加した。粘液へのナノ粒子の結合を、蛍光(lex:489nm、lem:515nm)の測定によって評価した。ヒストグラムは、粘液に結合したナノ粒子のパーセンテージを表す。
図4】ナノ粒子の表面に固定化されたキトサンの分子量(MW)に依存する、キトサン官能化遮蔽ナノ粒子の粘液層とのエクスビボ相互作用を示す。蛍光キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(500μg/mL)をブタ粘液層に1時間加えた。(A)画像は、洗浄後に粘液層に結合したナノ粒子(円内の暗い領域)を示す。(B)粘液層に結合したナノ粒子の定量化を表に示す。評価したナノ粒子の異なる製剤は次の通りである:NP-4:蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子;NP-6:静電相互作用によって中MWキトサンで部分的に官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子;NP-7:クリックケミストリーにより中MWキトサンで部分的に官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子、NP-8:クリックケミストリーにより低MWキトサンで部分的に官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子。
図5】アミノ基を含む異なるポリマーで官能化されたナノ粒子の粘液層とのエクスビボ相互作用を示す。蛍光遮蔽ナノ粒子(500μg/mL)をブタ粘液層に1時間添加した。(A)画像は、洗浄後に粘液層に結合したナノ粒子(円内の暗い領域)を示す。(B)粘液層に結合したナノ粒子の定量化を表に示す。異なるナノ粒子製剤は次の通りである:NP-4:蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子;NP-9:表面が重合APTESの追加層で官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子;NP-5:静電相互作用により中MWキトサンで完全に官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子、及びNP-10:表面が重合シラン-PEG-NH2で官能化された蛍光ヒト組換えリパーゼ遮蔽ナノ粒子。
図6】キトサン官能化遮蔽ナノ粒子の腸管バリアモデルとの相互作用を示す。(A)分化Caco-2及び分化Caco-2/HT29-MTX-E12共培養物をアルシアンブルーで染色し、ZEISS光学顕微鏡で画像化した。暗い領域はアルシアンブルーで染色した粘液である。代表的な画像を示す。(B)蛍光完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)を、分化腸管モデルバリアの頂端側に24時間添加した。画像は、腸細胞を洗浄した後の粘液に結合したナノ粒子(暗い領域)を示す。
図7A】マウスにおける完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子の生体内分布を示す。放射性完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)をマウスに経管栄養により経口投与した。最終時点で、消化管(A)と血液及び臓器(B)を採取し、ガンマカウンターで計数した。データは臓器1グラム当たりの注入量のパーセンテージ(%ID/臓器)として表す。
図7B】(上記)
図8】ナノ粒子のインビトロ細胞傷害性評価を示す。Caco-2(A-B)及びHT29-MTX-E12(C-D)細胞を、24時間(A-C)及び48時間(B-D)にわたり、濃度を増加させたナノ粒子(NP-1又はNP-2)に曝した。細胞損傷を、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用して評価した。細胞生存率を、対照細胞(未処置細胞)のパーセンテージとして表す。トリトン(1mg/mL)を陰性対照として使用する。エラーバーは標準偏差を示す。
図9】ナノ粒子曝露の経上皮電気抵抗(TEER)への影響を示す。分化Caco-2(A-B)及び分化Caco-2/HT29-MTX-E12共培養物(C-D)を、24時間(A-C)及び48時間(B-D)の間、ナノ粒子(NP-1又はNP-2)に曝し、細胞表面の100%を覆った。TEERの測定によりバリアの完全性を評価した。「NP-1w/o細胞」及び「NP-2w/o細胞」は、TEER測定値へのナノ粒子の存在の影響を評価するための細胞の存在しないトランズウェルシステムへのナノ粒子の添加を意味する(バックグラウンドシグナル)。EGTA(2.5mM)は、タイトジャンクションを破壊するカルシウムキレート剤であり、バリアの完全性の喪失の対照として使用される。未処置状態(「未処置」)は、何も処置せずにトランズウェルシステムに播種された細胞を指し、TERR値の参照として使用される。エラーバーは標準偏差を示す。
図10】腸管バリアを通過するルシファーイエローの転位置に対するナノ粒子曝露の影響を示す。分化Caco-2(A-B)及び分化Caco-2/HT29-MTX-E12共培養物(C-D)を24時間(A-C)及び48時間(B-D)の間、ナノ粒子(NP-1又はNP-2)に曝し、細胞表面の100%を覆った。バリアの完全性を、ルシファーイエロー(LY)のドナーコンパートメントからアクセプターコンパートメントへの転位置を90分間測定することで評価した。ヒストグラムは、ルシファーイエロー(LY)の累積透過率のパーセンテージを表す。EGTA(2.5mM)は、タイトジャンクションを破壊するカルシウムキレート剤で、バリアの完全性の喪失の対照として使用される。未処置状態(「未処置」)は、何も処置せずにトランズウェルシステムに播種された細胞を指し、LYの拡散の参照として使用される。エラーバーは標準偏差を示す。
図11A】腸管バリアモデルにおけるナノ粒子の細胞取り込みの評価を示す。(A)分化Caco-2/HT29-MTX-E12共培養物を、蛍光完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)と共に24時間インキュベートした。細胞を、ファロイジン-TRITC(細胞膜)及びDAPI(核)で染色した。腸管バリアにおけるナノ粒子の局在性を共焦点顕微鏡で評価した。XY画像の交差線は、XZ(下)及びYZ(右)側面視の位置を示している。
図11B】(B)分化Caco-2/HT29-MTX-E12共培養物及びM0マクロファージに分化したTHP-1をNP-2で24時間処置し、フローサイトメトリーで解析した。ヒストグラムは、未処置細胞(破線)とNP-2処置細胞(実線)の蛍光を表す。THP-1は、ナノ粒子の内部移行の陽性対照として使用される。
図12】遮蔽組成物に依存する、完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子上の固定化及び遮蔽パンクレアチンの活性を示す。固定化及び遮蔽パンクレアチンを含む完全キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-12、NP-14、及びNP-16)の生体触媒活性を37℃において24時間評価し、遊離パンクレアチンと比較した。パンクレアチンに含まれる各酵素、すなわちプロテアーゼ(A)、リパーゼ(B)及びアミラーゼ(C)の活性を評価した。曲線は、初期活性と比較した残存酵素活性のパーセンテージを表す。使用したナノ粒子は次の通りである:NP-14:APTES及びTEOSからなる保護層を持ち、キトサンで官能化されたパンクレアチン部分遮蔽ナノ粒子(A);NP-12:APTES、TEOS、及びベンジルトリエトキシシランからなる保護層を持ち、キトサンで官能化されたパンクレアチン完全遮蔽ナノ粒子(B);NP-16:APTESとTEOSからなる保護層を持ち、キトサンで官能化されたパンクレアチン完全遮蔽ナノ粒子(C)。
図13】プロテアーゼ活性に対するキトサンの保護効果を示す。固定化及び遮蔽パンクレアチンナノ粒子のプロテアーゼ活性を、酸性条件(酢酸溶液、pH:4)下、37℃において1時間評価し、塩基性条件(pH8)下で固定化及び遮蔽パンクレアチンナノ粒子の活性と比較した。ヒストグラムは、初期活性と比較した残存活性のパーセンテージを表す。使用したナノ粒子は次の通りである:NP-13:APTESとTEOSからなる保護層を持つパンクレアチン部分遮蔽ナノ粒子;NP-14:APTESとTEOSからなる保護層を持ち、キトサンで官能化されたパンクレアチン部分遮蔽ナノ粒子。
図14A】ナノ粒子の表面のチオール官能化のパーセンテージに依存する、チオール官能化遮蔽ナノ粒子の粘液層とのエクスビボ相互作用を示す。蛍光チオール官能化遮蔽ナノ粒子(500μg/mL)をブタ粘液層に1時間添加した。(A)画像は、洗浄後に粘液層に結合したナノ粒子(円内の暗い領域)を示す。粘液層に結合したナノ粒子の定量化を表(B)及びヒストグラム(C)に示す。評価したナノ粒子の異なる製剤は次の通りである:NP-17:MPTSで部分的に(5%)官能化された蛍光BSAナノ粒子;NP-18:MPTSで部分的に(10%)官能化された蛍光BSAナノ粒子;NP-19:MPTSで部分的に(20%)官能化された蛍光BSAナノ粒子;NP-20:MPTSで部分的に(50%)官能化された蛍光BSAナノ粒子;NP-21:MPTSで完全に(100%)官能化された蛍光BSAナノ粒子。
図14B-14C】(上記)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物に関する。
【0008】
この明細書を解釈する目的には、次の定義が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は、複数形をまた含み、その逆も同様である。ここで使用される専門用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0009】
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物は、それと不適合でない限り、ここに記載される任意の他の態様、実施態様又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。この明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴及び/又は工程のうちの少なくとも幾つかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、任意の前述の実施態様の詳細には限定されない。
【0010】
「含む(comprise)」という用語及びその変形語、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、一般に、含む(include)という意味で、すなわち「含むが限定されない」、すなわち一又は複数の特徴又は構成要素の存在を可能にするものとして使用される。
【0011】
単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」及び「その(the)」は、内容が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0012】
「約」という用語は、特定された値の±10%の値の範囲を指す。例えば、「約200」という語句は、200の±10%、又は180から220を含む。
【0013】
ここで使用される「固体担体」という用語は、通常、粒子を指す。好ましくは、固体担体は、単分散粒子又は多分散粒子であり、より好ましくは単分散粒子である。固体担体は、通常、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己集合性有機粒子、シリカ粒子、金粒子、チタン粒子を含み、好ましくはシリカ粒子、より好ましくはシリカナノ粒子(SNP)である。固体担体の粒径は、通常1nmと1000μmの間、好ましくは10nmと100μmの間、特に約50nmである。
【0014】
ここで同義的に使用される「リンカー」又は「架橋剤」という用語は、特定の官能基(例えば、第一級アミン、スルフヒドリルなど)に結合することができる基を含む任意の連結試薬を指す。本発明の文脈におけるリンカーは、通常、固体担体の表面を酵素と連結する。例えば、リンカーを固体担体の表面、例えば担体材料としてのシリカ表面に固定化し、ついで酵素をリンカーの非占有結合部位に結合させうる。或いは、リンカーは、最初に酵素に結合し得、ついで酵素に結合したリンカーが、その非占有結合部位で固体担体に結合しうる。様々なタイプのリンカーが当該技術分野で知られており、限定されないが、直鎖又は分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、ペプチドリンカー、ポリエーテルリンカー及びタグとして当該技術分野で知られているリンカーが含まれる。
【0015】
ここで使用される「保護層」という用語は、固体担体の表面に固定化されているタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片の機能的特性を保護するための層を指す。本発明の保護層は、通常、その少なくとも一部が、通常は共有結合によって互いに、かつ通常は非共有結合によって固定化酵素と、相互作用することができるモノマーである、構成要素を用いて構築される。保護層は、固体担体の表面に形成されて、固体担体上に固定化されたタンパク質又はその断片を保護する。保護層は、通常、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%のタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片が保護層に包埋されている均一な層である。
【0016】
ここで使用される「タンパク質又はその断片」という用語は、通常100個と1500個の間のアミノ酸、好ましくは100個と800個の間のアミノ酸、より好ましくは100個と500個の間のアミノ酸を含むタンパク質を含む。ここに記載されるタンパク質の断片は、通常、その由来となるタンパク質と同じ機能特性を有する。好ましいタンパク質又はその断片は、酵素又はその断片である。
【0017】
「酵素又はその断片」という用語は、天然に存在する酵素又はその断片を含み、人工的に操作された酵素又はその断片をまた含む。人工的に操作された酵素又はその断片は、例えば、酵素のバリアント又は機能的に活性な断片である。本発明の酵素に関して「そのバリアント又は機能的に活性な断片」とは、断片又はバリアント(アナログ、誘導体又は変異体など)が酵素と同じ生理的機能を発揮することができることを意味する。そのようなバリアントには、天然に存在する対立遺伝子バリアント及び天然に存在しないバリアントが含まれる。修飾が断片又はバリアントの機能活性の喪失をもたらさない限り、アミノ酸のうちの一つ又は複数の付加、欠失、置換及び誘導体化が企図される。好ましくは、機能的に活性な断片又はバリアントは、酵素の関連部分に対して少なくとも約80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも約98%の配列同一性を有する。ここに記載される酵素の断片は、通常、それが由来する酵素と同じ機能特性を有する。
【0018】
ここで使用される「部分的に包埋されたタンパク質」とは、タンパク質が保護層によって完全には覆われておらず、従って、タンパク質が保護層に完全には包埋されていないことを意味するものとする。一実施態様では、目的のタンパク質の50%未満が保護層によって覆われるが、典型的には少なくとも70%以上が覆われ、従ってタンパク質の保護が改善される。好ましい実施態様では、目的のタンパク質の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が保護層によって覆われている。別の好ましい実施態様では、目的のタンパク質の約70%から約95%、より好ましくは約80%から約95%、更により好ましくは約90%から約95%、最も好ましくは約90%から約95、96、97、98又は99%が保護層によって覆われている。特に好ましい実施態様では、目的のタンパク質の約70%、特に約80%、より特定的には約90%、最も特定的には約95%が保護層によって覆われている。より特定的に好ましい実施態様では、目的のタンパク質の約70%、特に約80%、より特定的に約90%、最も特定的に約95%が保護層によって覆われており、活性部位は覆われていない。
【0019】
ここで使用される「完全に包埋されたタンパク質」という用語は、本発明に係る目的のタンパク質が完全に、すなわち100%、保護層によって覆われていること、すなわち活性部位もまた覆われていることを意味するものとする。
【0020】
ここで使用される「少なくとも部分的に包埋されたタンパク質」という用語は、タンパク質が、保護層によって少なくとも部分的に包埋され、かつ完全に包埋されうることを意味するものとする。よって、「少なくとも部分的に包埋されたタンパク質」は、保護層がタンパク質又はその断片の約30%から100%、好ましくは約50%から約100%、より好ましくは約80%から約100%、更により好ましくは約90%から約100%、最も好ましくは約95%から約100%を覆い、活性部位が好ましくは覆われていることを意味する。
【0021】
ここで使用される「部分的に包埋された酵素」とは、酵素が保護層によって完全には覆われておらず、従って、酵素が保護層に完全には包埋されていないことを意味するものとする。一実施態様では、目的の酵素の50%未満が保護層によって覆われるが、典型的には少なくとも70%以上が覆われ、従って酵素の保護が改善される。好ましい実施態様では、目的の酵素の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が保護層によって覆われている。別の好ましい実施態様では、目的の酵素の約70%から約95%、より好ましくは約80%から約95%、更により好ましくは約90%から約95%、最も好ましくは約90%から約95、96、97、98又は99%が保護層によって覆われている。特に好ましい実施態様では、目的の酵素の約70%、特に約80%、より特定的には約90%、最も特定的には約95%が保護層によって覆われている。より特定的に好ましい実施態様では、目的の酵素の約70%、特に約80%、より特定的に約90%、最も特定的に約95%が保護層によって覆われており、活性部位は覆われていない。
【0022】
ここで使用される「完全に包埋された酵素」という用語は、本発明に係る目的の酵素が完全に、すなわち100%、保護層によって覆われていること、すなわち活性部位もまた覆われていることを意味するものとする。
【0023】
ここで使用される「少なくとも部分的に包埋された酵素」という用語は、酵素が保護層によって少なくとも部分的に包埋され、かつ完全に包埋されうることを意味するものとする。よって、「少なくとも部分的に包埋された酵素」は、保護層が酵素又はその断片の約30%から100%、好ましくは約50%から約100%、より好ましくは約80%から約100%、更により好ましくは約90%から約100%、最も好ましくは約95%から約100%を覆い、活性部位が好ましくは覆われていることを意味する。
【0024】
ここで使用される「官能性成分」という用語は、保護層の表面に固定化された後、その特徴、官能特性を保持する成分を指す。本発明の意味における官能性成分は、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである。
【0025】
ここで使用される「各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基を含む繰り返し単位を含むポリマー」という用語は、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基を含む多数の繰り返し単位(モノマー)を含むポリマーを指す。好ましいポリマーは、各繰り返し単位が一つのアミノ基、特に一つの第一級アミノ基を含む多数の繰り返し単位(モノマー)を含む。
【0026】
ここで使用される「各繰り返し単位が少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマー」という用語は、各繰り返し単位が少なくとも一つのチオールを含む多数の繰り返し単位(モノマー)を含むポリマーを指す。好ましいポリマーは、各繰り返し単位が一つのチオール基を含む多数の繰り返し単位(モノマー)を含む。
【0027】
ここで使用される「ポリカルボフィル-システインコンジュゲート」は、ポリカルボフィルに共有結合したシステインを含むコンジュゲートを指す。そのようなコンジュゲートは、例えば、Bernkop-Schnurch及びThaler,2000,Journal of Pharmaceutical Sciences 89(7):901-9に記載されているように製造することができる。
【0028】
ここで使用される「ポリリジン」という用語は、α-ポリリジン及び/又はε-ポリリジン(ε-ポリ-L-リジン、EPL)、好ましくはε-ポリリジンを指す。α-ポリリジンは合成ポリマーであり、L-リジン又はD-リジンの何れかから構成されうる。ε-ポリリジン(ε-ポリ-L-リジン、EPL)は、典型的には、約25~30個のL-リジン残基のホモポリペプチドとして生成される。
【0029】
ここで使用される「ポリシステイン」という用語は、L-システイン又はD-システインの何れかから構成されうるが、好ましくはL-システインから構成され、好ましくは2から30個のシステイン残基、より好ましくは2から5個のシステイン残基を含む。
【0030】
ここで使用される「ポリグルコサミン」という用語は、(1-4)グリコシド結合によって連結されたD-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミン単位からなる線状アミノ多糖類を指す。ポリグルコサミンは遊離アミン(-NH2)基を含み、N-アセチル-D-グルコサミン単位及びD-グルコサミン単位の割合によって特徴付けられ得、これは完全にアセチル化されたポリマーキチンの脱アセチル化度(DDA)として表される。本発明の好ましいポリグルコサミンは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はそれらの誘導体からなる群から選択される。最も好ましいのはキトサン又はその誘導体である。
【0031】
ここで使用される「キトサン又はその誘導体」という用語は、好ましくは2000Da以上、好ましくは25000~2000000Daの範囲、より好ましくは約50000~350000Da、最も好ましくは約50000~190000Da又は190000~310000Daの分子量を有するキトサン又はその塩を含むそのキトサン誘導体を指す。キトサン誘導体という用語には、アシル基又はアルキル基とOH基との反応によって形成されるエステル、エーテル又は他の誘導体が含まれる。例は、キトサンのO-アルキルエーテル、キトサンのO-アシルエステルである。適切な誘導体は、例えば、G.A.E.Roberts,Chitin Chemistry,MacMillan Press Ltd,London,1992に与えられている。キトサンの適切な塩には、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、キサントゲン酸塩、塩酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、酢酸塩が含まれる。
【0032】
第一の態様では、本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、組成物を提供する。
【0033】
タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、非共有結合又は共有結合によって固体担体の表面に固定化することができる。非共有結合には、p-p(芳香族)相互作用、ファンデルワールス相互作用、H結合相互作用、及び静電相互作用、例えばイオン相互作用が含まれる。好ましくは、タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、共有結合又はリンカーを介した共有結合によって固体担体の表面に固定化される。
【0034】
一実施態様では、固体担体は、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己集合性有機粒子、シリカ粒子、金粒子、チタン粒子の群から選択され、好ましくはシリカ粒子、より好ましくはシリカナノ粒子(SNP)である。粒径は、通常、粒子の直径を測定することによって測定され、通常、1nmと1000nmの間、好ましくは10nmと100nmの間、特に約50nmである。固体担体が単分散粒子である場合、粒径は、通常、1nmと1000nmの間、好ましくは10nmと100nmの間、特に約50nmである。固体担体が多分散粒子である場合、粒径は、通常、1nmと1000μmの間、好ましくは10nmと100μmの間、特に50nmと50μmの間である。
【0035】
通常、単分散粒子又は多分散粒子、好ましくは単分散粒子が本発明における固体担体として使用される。好ましい実施態様では、単分散粒子は、球状単分散粒子である。更に好ましい実施態様では、多分散粒子は、非球状多分散粒子である。
【0036】
固体担体は、通常、懸濁体で提供される。固体担体の懸濁体は、例えば、水、バッファー若しくは非イオン性界面活性剤又はそれらの混合物、好ましくは水と非イオン性界面活性剤の混合物でありうる。本発明の方法において使用されうるバッファーは、ホスフェート、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸、N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、ジグリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸である。
【0037】
一実施態様では、固体担体の表面は、アンカーポイントとして、すなわちタンパク質、例えば酵素或いはタンパク質、例えば酵素を固体担体に連結するリンカーのアンカーポイントとして、分子又は官能性化学基を導入するように修飾される。好ましくは、前記アンカーポイントは、アミン官能性化学基又は部分である。非限定的な例として、固体担体のアミノ修飾表面、例えばアミノ修飾シリカ表面は、修飾固体担体として使用されうる。固体担体のそのようなアミノ修飾表面は、シリカ表面を有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られうる。従って、好ましい実施態様では、固体担体は、アミノ修飾表面を有するシリカ表面を有する固体担体、より好ましくはシリカ表面を有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られる固体担体である。そのような修飾担体は、担体材料の表面でタンパク質、例えば酵素とアミン基との間にアミド結合を形成してもよく、又は担体材料の表面でリンカーとアミン基との間にアミド結合を形成してもよい。一実施態様では、アンカーポイントとして導入された分子又は官能性化学基は、固体担体の表面上に均一に分配されている。
【0038】
幾つかの実施態様では、保護層は、約1から約200nm、通常1から約100nm、好ましくは約1から約50nm、より好ましくは約1から約25nm、更により好ましくは約1から約20nm、特に約1から約15nmの定まった厚さを有する。最も好ましい定まった厚さは、約1から約15nmである。幾つかの実施態様では、層は、約5から約100nm、好ましくは約5から約50nm、より好ましくは約5から約25nm、更により好ましくは約5から約20nm、特に約5から約15nmの定まった厚さを有する。最も好ましい定まった厚さは、約5から約15nmである。保護層は、通常、多孔質であり、孔径は、1nmと100nmの間、好ましくは1nmと20nmの間である。
【0039】
一実施態様では、タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、保護層によって部分的に包埋される。好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、保護層によって少なくとも部分的に包埋される。より好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、保護層によって完全に包埋される。
【0040】
一実施態様では、保護層は、固体担体を包埋し、固体担体の表面に固定化されているタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片を包埋する。一実施態様では、保護層の表面に固定化されている官能性成分は、保護層に包埋されない。好ましくは、保護層は、固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されているタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片を完全に包埋する。より好ましくは、保護層は、固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されているタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片を完全に包埋し、保護層の表面に固定化されている官能性成分は、保護層に包埋されない。保護層が固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されているタンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片を完全に包埋する場合、タンパク質又はその断片、例えば酵素又はその断片は、完全に、すなわち100%、保護層によって覆われ、すなわち、活性部位もまた覆われ、固体担体は、完全に、すなわち100%、保護層によって覆われる。
【0041】
好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片は酵素又はその断片である。
【0042】
より好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片は、血清アルブミン又はその断片、リパーゼ又はその断片、パンクレアチン、及びパンクレアチンに含まれるタンパク質又はその断片からなる群から選択される。パンクレアチンに含まれるタンパク質又はその断片は、通常、プロテアーゼ、アミラーゼ、及びリパーゼからなる群から選択されるタンパク質又はその断片である。
【0043】
更により好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片は、血清アルブミン又はその断片、リパーゼ又はその断片、及びパンクレアチンからなる群から選択される。
【0044】
特に好ましい実施態様では、タンパク質又はその断片はリパーゼ又はその断片である。
【0045】
一実施態様では、酵素又はその断片は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスペプチダーゼ、若しくはリガーゼ、又はそれらの断片及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましいのは、ヒドロラーゼ又はその断片、より特定的には、リパーゼ又はその断片である。
【0046】
保護層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、光散乱法などの顕微鏡を使用することによって、又は偏光解析法によって測定することができる。
【0047】
本発明の組成物は、通常、反応器のような反応容器中で製造される。保護層の形成は、通常、構成要素によってそれぞれの保護層を形成することによって実施され、構成要素が、重縮合反応で保護層を構築する。重縮合は、異なる溶媒中、好ましくは水溶液中で行われうる。重縮合は容易に制御し、必要に応じて停止させることができ、保護層の規定の厚さの達成が可能になる。保護層を構築するために使用することができる構成要素の選択は、最適な及び/又は所望のパラメータに従って保護層の親和性を適合させるための、タンパク質、例えば酵素の既知の構造に依存しうる。保護層の構成要素として、通常、構造構成要素及び保護構成要素が、保護層を構築するために使用される。使用することができる構造構成要素は、例えばオルトケイ酸テトラエチル(ここでは「TEOS」又は「T」と命名される)である。使用することができる保護構成要素は、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ここでは「APTES」又は「A」と命名される)、プロピルトリエトキシシラン(ここでは「PTES」又は「P」と命名される)、イソブチルトリエトキシシラン(「IBTES」と命名される)、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン(ここでは「HTMEOS」又はHと示される)、ベンジルトリエトキシシラン(ここでは「BTES」と命名される)、ウレイドプロピルトリエトキシシラン(「UPTES」と命名される)、又はカルボキシエチルトリエトキシシラン(ここでは「CETES」と命名される)である。構造構成要素は、通常、形成された層に4つの共有結合を形成することができる無機シリカの前駆体である。保護構成要素は、通常、タンパク質、例えば酵素(例えば、酵素)と相互作用する能力を備えた有機部分を有するオルガノシランである。好ましい構造構成要素は、四価シラン、特にテトラアルコキシシランである。好ましい保護構成要素は、三価シラン、特にトリアルコキシシランである。より好ましい構造構成要素は、四価シランと三価シランの混合物、特にテトラアルコキシシランとトリアルコキシシランの混合物である。更により好ましい構造構成要素は、オルトケイ酸テトラエチル、テトラ-(2-ヒドロキシエチル)シラン、及びオルトケイ酸テトラメチルからなる群から選択される。更により好ましい保護構成要素は、カルボキシエチルシラントリオール、ベンジルシラン、プロピルシラン、イソブチルシラン、n-オクチルシラン、ヒドロキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルシラン、アミノプロピルシラン、ウレイドプロピルシラン、(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルシラン、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシランからなる群から選択され、特に、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランから選択されるか、又はベンジルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ヒドロキシルネチルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランから選択されるか、又はベンジルトリヒドロキシエトキシシラン、プロピルトリヒドロキシエトキシシラン、イソブチルトリヒドロキシエトキシシラン、n-オクチルトリヒドロキシエトキシシラン、ヒドロキシメフィリルトリヒドロキシエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリヒドロキシエトキシシラン、アミノプロピルトリヒドロキシエトキシシラン、ウレイドプロピルトリヒドロキシエトキシシラン(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリヒドロキシメトキシシランから選択される。
【0048】
特に好ましい構成要素は、構造構成要素としてのTEOS、並びに保護構成要素としてのAPTES、PTES及び/又はHTMEOS、好ましくはAPTESである。特に、構造構成要素としてのTEOS及び保護構成要素としてのAPTESが、保護層を構築するために使用される。
【0049】
構成要素と固体担体との反応時間は、リンカーが使用される場合、リンカーの長さ、及びタンパク質、例えば酵素のサイズに依存する。反応は、通常、0.5から10時間の間、好ましくは1時間と5時間の間、より好ましくは1時間と4時間の間、更により好ましくは2時間と4時間の間、好ましくは水溶液中で、好ましくは約5から約25℃又は約20℃の室温において実施される。保護層の形成は、重縮合反応を能動的に停止させることによって、例えば未反応の構成要素を、例えば洗浄工程によって除去することによって、又は限られた量の構成要素によって引き起こされる重縮合反応の自己停止によって、停止させることができる。
【0050】
更により好ましい実施態様では、タンパク質、例えば酵素は、タンパク質、例えば酵素について上に記載されるように分子をアンカーポイントとして導入することによって、並びにリンカー、好ましくはアンカーポイントとタンパク質、例えば酵素に結合する架橋剤を使用することによって、固体担体の表面を少なくとも部分的に修飾することによって、固体担体に固定化される。
【0051】
一実施態様では、アンカーポイントとして導入された分子及び/又はリンカーは、固体担体の表面上に均一に分配されている。
【0052】
好ましい実施態様では、架橋剤は、グルタルアルデヒド、酒石酸ジスクシンイミジル、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、ジメチルアジプイミデート、ジメチルピメルイミデート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、活性化スルフヒドリル、スルフヒドリル反応性2-ピリジルジチオール、BSOCOES(ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、DSP(ジチオビス[スクシンイミジル]プロピオネート])、DTSSP(3,3’-ジチオビス[スルホスクシンイミジル]プロピオネート)、DTBP(ジメチル3,3’-ジチオビスプロピオンイミデート・2HCl)、DST(ジスクシンイミジルタルタレート)、スルホ-LC-SMPT(4-スルホスクシンイミジル-6-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、LC-SPDP(スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-a-[2-ピリジルジチオ]トルエン)、DPDPB(1,4-ジ-[3’-(2’-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン)、DTME(ジチオ-ビスマレイミドエタン)、BMDB(1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン)からなる群から選択される。より好ましくは、前記架橋剤は、グルタルアルデヒド、ジスクシンイミジルタルトレート、ジスクシンイミジルスベレート、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、ジメチルアジピイミデート、ジメチルピメルイミデート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、活性化スルフヒドリル(例えば、スフルヒドリル反応性2-ピリジルジチオ)から選択される。最も好ましいものはグルタルアルデヒドである。
【0053】
保護層が形成された後、タンパク質、例えば酵素と保護層を含む固体担体を保存することができる。保存は、通常、例えば形成された組成物を例えばバッファーで洗浄し、所望の期間そのバッファーに懸濁又は溶解させて保存することによって達成される。好ましい実施態様では、タンパク質、例えば酵素と保護層を含む固体担体は、2から25℃の一定温度で保存される。更に好ましい実施態様では、酵素と保護層を含む固体担体は、5から48時間、好ましくは10から30時間保存される。より好ましくは、タンパク質、例えば酵素と保護層を含む固体担体は、2から25℃の一定温度、好ましくは室温において10から30時間保存される。
【0054】
一実施態様では、官能性成分は粘液に結合する。
【0055】
一実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基を含む繰り返し単位を含むポリマーである。
【0056】
一実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、各繰り返し単位が少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである。
【0057】
一実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2及びアミノ基を含む重合シランからなる群から選択される。好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2及び重合APTESからなる群から選択される。
【0058】
より好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はそれらの誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミン;重合シラン-PEG-NH2;及びアミノ基を含む重合シラン、好ましくは重合APTESからなる群から選択される。更により好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、好ましくはキチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はそれらの誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミン、より好ましくはキトサン又はその誘導体である。本発明の好ましいポリグルコサミンは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はそれらの誘導体からなる群から選択される。最も好ましいのは、キトサン又はその誘導体である。重合シラン-PEG-NH2の好ましいシラン-PEG-NH2は、シラン-PEG4-NH2、シラン-PEG2000-NH2、及びシラン-PEG5000-NH2からなる群から選択される。アミノ基を含む好ましい重合シランは、APTES、アミノ-ブチル-TES、アミノ-ペンチル-TES、アミノ-ヘキシル-TES、アミノ-ヘプチル-TES、及びアミノ-オクチル-TESからなる群から選択され、特にAPTESである。
【0059】
更なる実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2、アミノ基を含む重合シラン、チオール基を含む重合シラン、ポリカルボフィル-システインコンジュゲート、重合シラン-PEG-チオール及びポリシステインからなる群から選択される。更により好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はその誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミン;重合シラン-PEG-NH2;チオール基を含む重合シラン、好ましくは重合MPTS;ポリカルボフィル-システインコンジュゲート;重合シラン-PEG-チオール;及びポリシステインからなる群から選択される。更により好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン又はチオール基を含む重合シランであり、好ましくはキチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はその誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミンであり、より好ましくはキトサン又はその誘導体又はチオール基を含む重合シラン、ポリカルボフィル-システインコンジュゲート、及び重合シラン-PEG-チオール、好ましくはチオール基を含む重合シランである。
【0060】
特定の実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラチン、デルマタン又はその誘導体、特にキトサン又はその誘導体、重合シラン-PEG4-NH2、重合シラン-PEG2000-NH2、重合シラン-PEG5000-NH2からなる群から選択される重合シラン-PEG-NH2、好ましくは重合APTESであるアミノ基を含む重合シラン、及び好ましくは重合MPTSであるチオール基を含む重合シランからなる群から選択される。
【0061】
一実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2、アミノ基を含む重合シラン、及びチオール基を含む重合シランからなる群から選択される。好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルコサミン、重合シラン-PEG-NH2、重合APTES、及び重合MPTSからなる群から選択される。
【0062】
より好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン及びデルマタン又はその誘導体からなる群から選択されるポリグルコサミン;重合シラン-PEG-NH2;アミノ基を含む重合シラン、好ましくは重合APTES;及びチオール基を含む重合シラン、好ましくは重合MPTSからなる群から選択される。特定の実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、キチン、キトサン、ポリグルコサミノグリカン、コンドロイチン、ヘパリン、ケラチン、デルマタン又はその誘導体、特にキトサン又はその誘導体、重合シラン-PEG4-NH2、重合シラン-PEG2000-NH2、重合シラン-PEG5000-NH2からなる群から選択される重合シラン-PEG-NH2、APTESであるアミノ基を含む重合シラン、及びMPTSであるチオール基を含む重合シランからなる群から選択される。
【0063】
一実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、チオール基を含む重合シラン、ポリカルボフィル-システインコンジュゲート、重合シラン-PEG-チオール及びポリシステインからなる群から選択され、好ましくはチオール基を含む重合シラン、ポリカルボフィル-システインコンジュゲート及び重合シラン-PEG-チオールからなる群から選択され、より好ましくはチオール基を含む重合シランであり、最も好ましくは重合MPTSである。一実施態様では、チオール基を含む重合シランは好ましくは重合MPTSである。
【0064】
一実施態様では、保護層の表面の5%から100%、好ましくは10%から100%、より好ましくは50%から100%が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーで覆われる。
【0065】
一実施態様では、官能性成分は、結合、好ましくは共有結合によって保護層の表面に固定化される。好ましい実施態様では、官能性成分は、非共有結合、好ましくは静電相互作用によって保護層の表面に固定化される。より好ましい実施態様では、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーは、共有結合によって保護層の表面に固定化される。
【0066】
一実施態様では、官能性成分は、保護層の表面と官能性成分とに結合するスペーサーを使用して保護層の表面に固定化される。従って、一実施態様では、本発明は、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含む組成物を含み、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーであり、官能性成分がスペーサーによって保護層の表面に固定化される、組成物を含む。そのようなスペーサーの例には、PEG4、PEG2000、PEG5000などのポリエチレンが含まれる。スペーサーによって保護層の表面に固定化された官能性成分は、通常、先ずスペーサーを官能性成分と反応させてスペーサーを官能性成分に結合させ、次にスペーサーに結合した官能性成分を保護層の表面と反応させることによって生成される。
【0067】
保護層の表面への官能性成分の固定化は、通常、例えば、水、バッファー若しくは非イオン性界面活性剤又はそれらの混合物中、好ましくは水と非イオン性界面活性剤の混合物中に、上記の保護層に包埋されたタンパク質、例えば酵素を担持する固体担体を懸濁させることによって、反応器のような反応容器中で実施される。ついで、官能性成分を懸濁液に添加し、通常は撹拌下で保護層の表面と反応させて、官能性成分を保護層の表面に固定化する。通常、そのような得られた組成物は洗浄され、水、バッファー若しくは非イオン性界面活性剤又はそれらの混合物に再懸濁される。固定化は、官能性成分の非共有結合、例えば静電結合又は共有結合によって起こる。官能性成分は、例えば、銅触媒クリックケミストリー(銅触媒アジド-アルキン環化付加、例えば、Kolb等(2001)Angew.Chem.40(11)2004-2021を参照)又は銅フリークリックケミストリー(Wittig G,A Chem Ber,1961,94,3260)などの「クリックケミストリー」を使用して保護層の表面と官能性成分を化学的に修飾することによって固定化され得、例えば、上記のように保護層に包埋されたタンパク質、例えば酵素を担持する固体担体が、最初にエチニル化合物のような反応性化合物と反応させられ、官能性成分が、反応性化合物、例えばアジド残基を添加することによって修飾され、ついで両成分が反応させられて、保護層の表面に官能性成分が固定化される。
【0068】
更なる実施態様では、組成物は、キレート剤を更に含み、キレート剤は、任意選択的に、放射性標識又は発光標識を含む。好ましくは、キレート剤は、DOTA、DTPA、NOTA、TETA、AAZTA、TRAP、NOPO及びHEHAからなる群から選択される。より好ましくは、DOTA又はHEHAが使用される。更により好ましくは、放射性標識又は発光標識を含むキレート剤が使用され、特にp-SCN-Bn-DOTA又はルテチウム-177-放射性標識-DOTAが使用される。組成物がキレート剤を更に含む場合、保護層に包埋されたタンパク質、例えば酵素を担持する固体担体が、通常、キレート剤で前処理され、放射性標識又は発光標識を含む異なるキレート剤がそのような前処理された組成物に添加される。
【0069】
好ましくは放射性標識が使用され、より好ましくはランタニド族の化合物、更により好ましくはガドリニウム、ルテチウム、又はユーロピウムが使用される。
【0070】
更なる態様では、本発明は、医薬として使用するための上記の組成物を提供する。
【0071】
更なる態様では、本発明は、酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法で使用される組成物、又は膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、嚢胞性線維症、及び/又はゴーシェ病、ファブリー病、及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患若しくは障害の予防、進行遅延、又は治療の方法で使用される組成物を提供する。
【0072】
また提供されるのは、対象における膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、嚢胞性線維症、及び/又はゴーシェ病、ファブリー病及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患若しくは障害の予防、進行遅延又は治療のための医薬の製造におけるここに記載の組成物の使用である。また提供されるのは、対象における膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、嚢胞性線維症、及び/又はゴーシェ病、ファブリー病及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患若しくは障害の予防、進行遅延又は治療のためのここに記載の組成物の使用である。また提供されるのは、対象における膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、嚢胞性線維症、及び/又はゴーシェ病、ファブリー病及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患若しくは障害の予防、進行遅延又は治療のための方法であって、ここに記載の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法である。また提供されるのは、酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法のための医薬の製造におけるここに記載の組成物の使用である。また提供されるのは、対象の酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法におけるここに記載の組成物の使用である。また提供されるのは、対象における酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法であって、ここに記載の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法である。
【0073】
ここで使用される「有効量」又は「治療有効量」という表現は、本発明の組成物を投与された対象において、所望の効果の一又は複数を引き起こすことができる量を指す。治療有効量の決定は、特にここで提供される詳細な開示を考慮すると、当業者の能力の範囲内である。
【0074】
好ましい実施態様では、本発明は、膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、ペプチドアレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、及び嚢胞性線維症の予防、進行遅延又は治療の方法に使用される組成物を提供し、より好ましくは、膵外分泌不全(EPI)、ラクターゼ欠損症、スクラーゼ・イソマルターゼ欠損症、二糖類不耐症、炎症性腸疾患(IBD)、及び嚢胞性線維症の予防、進行遅延又は治療の方法に使用される組成物を提供する。
【0075】
更に好ましい実施態様では、本発明は、酵素補充療法(ERT)、好ましくは胃腸酵素補充療法の方法に使用するための組成物を提供する。
【0076】
更に好ましい実施態様では、本発明は、ゴーシェ病、ファブリー病及びムコ多糖症(MPS)からなる群から選択される肺疾患又は障害の予防、進行遅延又は治療のための方法に使用するための組成物を提供する。
【0077】
ここで使用される「治療」/「治療する」という用語は、(1)病態、障害若しくは状態に罹患しているか、又はかかりやすいが、病態、障害又は状態の臨床症状又は無症候性症状をまだ経験又は示していない動物、特に哺乳動物、特にヒトにおいて発症する病態、障害又は状態の臨床症状の出現を遅延させること;(2)病態、障害又は状態を阻害すること(例えば、少なくとも一つのその臨床的又は無症候性の症状の、疾患の発症、又は維持処置の場合にはその再発を制止させること、減少させること、若しくは遅延させること);及び/又は(3)状態を軽減すること(すなわち、病態、障害若しくは状態、又はその臨床的若しくは無症候性の症状のうちの少なくとも一つの退縮を引き起こすこと)を含む。治療される患者に対する利点は、患者又は医師にとって統計的に有意であるか、又は少なくとも知覚可能である。しかしながら、疾患を治療するために医薬が患者に投与される場合、結果は必ずしも有効な治療であるとは限らないことが理解されよう。
【0078】
ここで使用される場合、「進行遅延」とは、例えば肺疾患若しくは障害又は嚢胞性線維症の症状、又は例えば肺疾患若しくは障害又は嚢胞性線維症に関連する兆候が出現するまでの時間を増加させること、又は例えば肺疾患若しくは障害又は嚢胞性線維症の症状の重症度の増大を遅らせることを意味する。更に、ここで使用される「進行遅延」には、疾患進行の逆転又は阻害が含まれる。対象における疾患進行又は疾患合併症の「阻害」とは、対象における疾患進行及び/又は疾患合併症を予防又は低減することを意味する。
【0079】
予防的(preventive)治療は予防(prophylactic)治療を含む。予防的用途では、本発明の薬学的合剤は、上記の疾患又は障害、例えば肺疾患若しくは障害又は嚢胞性線維症を有すると疑われるか、又は発症するリスクがある対象に投与される。治療的用途では、薬学的合剤は、上記の疾患又は障害、例えば肺疾患若しくは障害又は嚢胞性線維症に既に罹患している患者などの対象に、疾患の症状を治癒し又は少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で投与される。この用途に有効な量は、疾患の重症度及び経過、以前の治療法、対象の健康状態及び薬剤に対する反応、並びに治療する医師の判断に依存するであろう。
【0080】
対象の状態が改善しない場合、本発明の薬学的合剤は、対象の疾患又は状態の症状を改善するか、さもなければ制御するか、又は制限するために、対象の寿命の全期間を含む長期間にわたる慢性的に、投与されうる。
【0081】
対象の状態が改善する場合、薬学的合剤は、連続的に投与され得;或いは、投与される薬物の用量が一時的に低減されるか、又は所定の長さの時間(すなわち、「休薬期間」)一時的に中断されうる。患者の状態の改善が起こると、本発明の薬学的合剤の維持量が必要に応じて投与される。その後、投与量若しくは投与頻度、又はその両方を、症状の関数として、改善された疾患が保持されるレベルまで任意選択的に減少させる。
【0082】
更なる態様では、本発明は、上記のような組成物、例えば、固体担体、固体担体の表面に固定化されたタンパク質又はその断片、タンパク質又はその断片を包埋することによってタンパク質又はその断片を保護する保護層、及び保護層の表面に固定化された官能性成分を含み、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである組成物を製造する方法であって、
次の工程:
(a)固体担体を提供する工程;
(b)タンパク質又はその断片を固体担体に固定化する工程;
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体に固定化されたタンパク質又はその断片を保護する工程;
(d)保護層の表面に官能性成分を固定化する工程であって、保護層の表面に固定化された官能性成分が、各繰り返し単位が少なくとも一つのアミノ基及び/又は少なくとも一つのチオール基を含む繰り返し単位を含むポリマーである、工程
を含む、方法を提供する。
【0083】
工程(a)は、通常、固体担体を水又はバッファー中に懸濁させて提供することにより実施される。懸濁液は、例えば400rpm、20℃で30分間撹拌することができる。本方法の工程(b)における固体担体へのタンパク質、例えば酵素の固定化は、通常、タンパク質、例えば酵素の溶液を固体担体の懸濁体に添加することによって実施される。好ましい実施態様では、タンパク質、例えば酵素の固体担体への固定化は、固体担体の懸濁体を提供し、タンパク質、例えば酵素の溶液を添加することにより実施され、タンパク質、例えば酵素の添加溶液と共に懸濁体を、酵素が固体担体の表面に結合できるようにインキュベートする。好ましい実施態様では、固体担体の表面は、タンパク質、例えば酵素の固体担体への固定化を改善するために少なくとも部分的に改変される。特に、固体担体の表面は、タンパク質、例えば酵素が固定化される前に少なくとも部分的に改変される。固体担体の表面は、上述のように、固体担体の表面にタンパク質、例えば酵素のアンカーポイントとして分子を導入することによって少なくとも部分的に改変することができる。本方法の工程(c)による保護層の形成は、通常、それぞれの保護層を構成要素で形成することによって実施され、構成要素は、上述のように、重縮合反応で保護層を構築する。本方法の工程(d)による保護層の表面への官能性成分の固定化は、通常、上述のように実施される。
【0084】
一実施態様では、保護層は構成要素によって形成され、構成要素として、構造構成要素及び保護構成要素が保護層の形成に使用され、構造構成要素は、形成された層内で4つの共有結合を形成できる無機シリカの前駆体であり、保護構成要素は有機シランである。
【0085】
一実施態様では、保護層は、タンパク質、例えば酵素の約30%から約100%を包埋する。
【0086】
一実施態様では、固体担体は、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己組織化有機粒子、シリカ粒子、金粒子、磁性粒子及びチタン粒子の群から選択される。
【実施例
【0087】
材料と方法:
試薬:
- オルトケイ酸テトラエチル99%(TEOS)、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTES)、水酸化アンモニウム(ACSグレード、28~30%)、低分子量キトサン(50000~190000Da)、中分子量キトサン(190000~310000Da)、エタノール(ACSグレード、無水)、グルタルアルデヒド(グレードI、水中25%)、硫酸銅、アスコルビン酸ナトリウム、Chelex(登録商標)100ナトリウム形態、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、組換えヒト膵臓リパーゼ(HRL、認証標準物質)、パンクレアチン(4xUSP仕様)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-mal、銅フリークリックケミストリー用)、1,2-ジ-O-ラウリル-rac-グリセロ-3-(グルタル酸6-メチルレゾルフィンエステル)、硫酸銅五水和物、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸(氷酢酸、ACS試薬、≧99.7%)、トリス塩基、カゼイン(牛乳由来)、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム、トリクロロ酢酸、炭酸ナトリウム、フォリン-チオカルト試薬、アミラーゼ活性アッセイキット、ジメチルスルホキシド(DMSO)、MTT((3-[4,5-ジメチルチアゾル-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)、トリトンX、アルシアンブルー8GX、酢酸、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、ルシファーイエローCHジリチウム塩、EGTA(エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N′,N′-テトラ酢酸)、PMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート)、ファロイジン-テトラメチルローダミンBイソチオシアネート、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(MPTS、≧80%GC、テクニカル)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0088】
- p-SCN-Bn-DOTAは、Macrocyclicsから購入した。
- ベンジルトリエトキシシラン(B、96%)は、abcr GmbHから購入した。
- 3-アジド-7-ヒドロキシクマリンは、Biosynth Carbosynthから購入した。
- トリエトキシエチニルシラン(ETES)は、Toronto Research Chemicalsから購入した。
- 1-イソチオシアナト-PEG3-アジドは、BroadPharmから購入した。
- シラン-PEG-NH2は、Nanocsから購入した。
- Caco-2(ヒト結腸直腸腺癌細胞株)及びHT29-MTX-E12(ヒト結腸がん細胞株)は、欧州認証細胞培養コレクション(ECACC)から購入した。
- THP-1(ヒト急性単球性白血病細胞株)は、LGCから購入した。
【0089】
- ウシ胎仔血清、ペニシリン/ストレプトマイシン(10’000U/ml ペニシリン/10’000μg/ml ストレプトマイシン)、MEM非必須アミノ酸(100x)、L-グルタミン200mM(100x)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水DPBS(1X)、0.25%トリプシン-EDTA(1X)、RPMI1640培地、DMEM、HEPES、ピルビン酸ナトリウム、D-グルコース、β-メルカプトエタノールは、Gibcoから購入した。
- PierceTM BCAタンパク質アッセイキットは、ThermoFisher Scientificから購入した。
- DAPIを含むVECTASHIELD褪色防止用マウンティングメディウムは、Vector Laboratoriesから購入した。
- ThinCertTM細胞培養インサートプレート(1.0μm膜)は、Greiner bio-oneから購入した。
【0090】
合成シリカナノ粒子:
シリカナノ粒子(50nm)を、国際公開第2015/014888A1号に記載された本来のStober法に従って合成した。簡単に言うと、エタノール、蒸留水(6M)及び水酸化アンモニウム(0.13M)を混合し、400rpmで1時間撹拌した。TEOS(0.28M)を添加し、溶液を20℃において400rpmで22時間撹拌した。ついで、溶液を20000gで20分間遠心分離し、エタノール及び水で逐次的に洗浄した。粒径測定は、画像解析ソフトウェアOlympus stream motionを使用して、150000×の倍率で取得したSEM顕微鏡写真で実施した。
【0091】
酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽:
水-ポリソルベート80(8mg/L)中のシリカナノ粒子を、撹拌下(400rpm)、20℃において30分間、APTES(2.75mM)と反応させた。未反応試薬を、300kDaのNMWL、Biomaxポリエーテルスルホン限外濾過ディスクを有するアミコン撹拌細胞を使用してナノ粒子懸濁液から除去した(以下、「洗浄工程」と呼ぶ)。これらのナノ粒子を更にアミノ修飾ナノ粒子と呼ぶ。ついで、アミノ修飾ナノ粒子を、撹拌下(400rpm)、20℃において30分間、0.1%(v/v)のグルタルアルデヒド水溶液と共にインキュベートした。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁し、撹拌下(400rpm)、20℃において1時間、酵素(組換えヒトリパーゼ)(348μg/mL)又はパンクレアチン(276μg/mL))又はタンパク質(ウシ血清アルブミン、BSA)(374μg/mL)と反応させた(更に固定化酵素/タンパク質-ナノ粒子と呼ぶ)。固定化酵素/タンパク質の表面でのシランの重縮合からなる遮蔽工程の前に、ナノ粒子を洗浄し、H2O-ポリソルベート80(8mg/L)溶液に再懸濁させた。ここで更に「タンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子」と呼ばれる異なる遮蔽組成物は次の通りである:
- APTESとTEOSからなる遮蔽(AT):
固定化酵素/タンパク質ナノ粒子にTEOS(7,75mM)を加え、撹拌(400rpm)下、20℃において1時間反応させた。その後、APTES(0,74mM)を反応混合物に加えた。完全な保護層を得るために、ナノ粒子懸濁液を洗浄することにより21時間後にシラン重縮合を停止させた。
【0092】
重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されたウシ血清アルブミンタンパク質を含むシラン重縮合後に得られたシリカナノ粒子を、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造し、ここでは「完全遮蔽ナノ粒子」、「タンパク質完全遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子1」又は「NP-1」と更に呼ぶ。
【0093】
重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含むシラン重縮合後に得られたシリカナノ粒子を、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造し、ここでは「完全遮蔽ナノ粒子」、「酵素完全遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子15」又は「NP-15」と更に呼ぶ。
【0094】
重縮合シランを含む保護層によって部分的に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含むシラン重縮合後に得られたシリカナノ粒子を、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造し、ここでは「部分遮蔽ナノ粒子」、「酵素部分遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子13」又は「NP-13」と更に呼ぶ。部分的な保護層を得るために、ナノ粒子懸濁液を洗浄することにより、5時間後にシラン重縮合を停止させた。
【0095】
- APTES、TEOS、及びベンジルトリエトキシシラン(ATB)からなる遮蔽:
固定化酵素/タンパク質ナノ粒子にTEOS(3,87mM)を加え、撹拌(400rpm)下、20℃において1時間反応させた。その後、APTES(0,74mM)及びベンジルトリエトキシシラン(3,34mM)を反応混合物に加えた。21時間後、ナノ粒子懸濁液を洗浄してシラン重縮合を停止させた。
【0096】
重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化された組換えヒトリパーゼを含むシラン重縮合後に得られたシリカナノ粒子を、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造し、ここでは「完全遮蔽ナノ粒子」、「酵素完全遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子4」又は「NP-4」と更に呼ぶ。
【0097】
重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含むシラン重縮合後に得られたシリカナノ粒子を、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造し、ここでは「完全遮蔽ナノ粒子」、「酵素完全遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子11」又は「NP-11」と更に呼ぶ。
【0098】
粒径測定は、画像解析ソフトウェアOlympus stream motionを使用して、150000×の倍率で取得したSEM顕微鏡写真で実施した。
【0099】
酵素/タンパク質遮蔽後に得られた異なるナノ粒子を以下の表1にまとめる。
【0100】
ナノ粒子の標識化:
ナノ粒子の標識化について、「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに記載したナノ粒子のプロセスに追加の工程を追加した。
【0101】
- ルテチウム177(177Lu)での放射性標識化:
全ての使用したバッファーをChelex(登録商標)で前処理した。
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたアミノ修飾ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むリン酸バッファー(0.1M、pH7.4)に再懸濁させ、p-SCN-Bn-DOTA(1mg/mL)を添加して、撹拌(400rpm)下、20℃において1時間反応させた。洗浄工程の後、DOTA標識ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁させ、上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに記載のように、酵素をこれらのDOTA標識ナノ粒子上に固定化し遮蔽した。次に、ナノ粒子を177Lu(2500μCi)及び酢酸ナトリウム(250mM、pH5.4)と共に45℃において12時間インキュベートした。ポリソルベート80(8mg/L)を含む酢酸ナトリウム(20mM、pH5.0)での洗浄工程後、ナノ粒子をEDTA(1mM)中に再懸濁させ、室温(RT)において一晩インキュベートした。次に、ナノ粒子を洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む0.9%塩化ナトリウム中に再懸濁させた。
【0102】
- FITCでの標識化:
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたアミノ修飾ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むホウ酸バッファー(50mM、pH8.5)に再懸濁させ、FITC(50μg/mL)を添加して、撹拌(400rpm)下、20℃において1時間反応させた。洗浄工程の後、FITC標識ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁させ、上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに記載のように、酵素をこれらのDOTA標識ナノ粒子上に固定化し遮蔽した。
【0103】
ナノ粒子の表面官能化:
- タンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子へのキトサンの静電結合(キトサン官能化遮蔽ナノ粒子)
ポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O中の上記「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子を、0.1M酢酸中のキトサン(500μg/mL)溶液と撹拌(400rpm)下、20℃において30分間反応させた。洗浄工程の後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むH2Oに再懸濁させた。キトサンによる完全な官能化(「完全官能化」)を、アンカーポイントの数の理論計算に基づいてキトサン濃度を適用することによって達成した。キトサンによる部分的な官能化(「部分的官能化」)は、このアンカーポイントの数の一部(10%と80%の間)を適用することによって達成した。
【0104】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含む中MWキトサンの静電結合による完全官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子2」又は「NP-2」と呼ぶ。
【0105】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として部分的な中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで部分的に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含む中MWキトサンの静電結合による部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子3」又は「NP-3」と呼ぶ。
【0106】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された組換えヒトリパーゼを含む中MWキトサンの静電結合による完全官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子5」又は「NP-5」と呼ぶ。
【0107】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで部分的に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された組換えヒトリパーゼを含む中MWキトサンの静電結合による部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子6」又は「NP-6」と呼ぶ。
【0108】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含む中MWキトサンの静電結合による完全官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子12」又は「NP-12」と呼ぶ。
【0109】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって部分的に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含む中MWキトサンの静電結合による完全官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子14」又は「NP-14」と呼ぶ。
【0110】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたパンクレアチンを含む中MWキトサンの静電結合による完全官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子16」又は「NP-16」と呼ぶ。
【0111】
- クリックケミストリーCu++
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の溶液(250μL、10mg/mL)に、エチルトリエトキシシラン(ETES)(0.8μmol)を添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで15分間撹拌し、エチニル修飾ナノ粒子を得た。ついで、酢酸(0.1M)中3-アジド-7-ヒドロキシクマリン(0.8μmol)、ポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O中のCuSO4(83μL、20mM)及びH2O/PS80中のアスコルビン酸ナトリウム(208μL、100mM)の溶液を、ナノ粒子懸濁液に逐次的に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで22時間撹拌した。異なる反応時間で試料を収集し、蛍光(λex:404nm、λem:477nm)を測定することにより、環化付加反応速度をモニターした。
【0112】
- クリックケミストリーCu++フリー
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子(1mL、10mg/mL)のpHを、NaOH(5M、1μL)を添加することによってpH9に調整した。ついで、DMSO中のジベンゾシクロオクチン-マレイミド(238μL、1mg/mL)の溶液をナノ粒子懸濁液に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子をポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O(1mL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む1mLのH2Oに再懸濁させて、ジベンゾシクロオクチン修飾ナノ粒子(ナノ粒子-DBCO)を得た。
【0113】
ナノ粒子-DBCO(100μL、10mg/mL)に、酢酸(0.1M)中の3-アジド-7-ヒドロキシクマリン(4.75μL、1mg/mL)の溶液を添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで6時間撹拌した。ついで、ナノ粒子をH2O/PS80(100μL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む100μLのH2Oに再懸濁させた。2mg/mLのナノ粒子懸濁液100μLを使用して定常状態蛍光測定を実施した(λex:404nm、λem:477nm)。
【0114】
- クリックケミストリーによるキトサンでのタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の官能化(キトサン官能化遮蔽ナノ粒子)
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子(200μL、10mg/mL)のpHを、NaOH(5M、1μL)を添加することによってpH9に調整した。ついで、DMSO中のジベンゾシクロオクチン-マレイミドの溶液をナノ粒子懸濁液に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子をポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O(200μL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む200μLのH2Oに再懸濁させて、ジベンゾシクロオクチン修飾ナノ粒子(ナノ粒子-DBCO)を得た。ついで、酢酸中のアジド修飾キトサン(0.1M)をナノ粒子-DBCO懸濁液に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで6時間撹拌した。ついで、ナノ粒子をポリソルベート80(200μL)を含むH2Oで三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む200μLのH2Oに再懸濁させた。
【0115】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として中MWキトサンを更に含む、すなわち中MWキトサンで部分的に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された組換えヒトリパーゼを含むクリックケミストリーによる中MWキトサンによる部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子7」又は「NP-7」と呼ぶ。
【0116】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として低MWキトサンを更に含む、すなわち低MWキトサンで部分的に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された酵素組換えヒトリパーゼを含むクリックケミストリーによる低MWキトサンによる部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子8」又は「NP-8」と呼ぶ。
【0117】
- シラン-PEG-NH2によるタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の官能化(重合シラン-PEG-NH2官能化遮蔽ナノ粒子)
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の溶液(2mL、10mg/mL)のpHを、NaOH(5M)を添加することによってpH9に調整した。ついで、シラン-PEG-NH2(567μL、10mg/mL)をナノ粒子懸濁液に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子をH2O/PS80(2mL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む2mLのH2Oに再懸濁させた。
【0118】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合シラン-PEG-NH2を更に含む、すなわちシラン-PEG-NH2で完全に官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された酵素組換えヒトリパーゼを含むシラン-PEG-NH2による官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子10」又は「NP-10」と呼ぶ。
【0119】
- APTESによるタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の官能化(重合APTES官能化遮蔽ナノ粒子)
上記の「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の溶液(2mL、10mg/mL)のpHを、NaOH(5M)を添加することによってpH9に調整した。ついで、APTES(2.21μL)をナノ粒子懸濁液に添加した。得られた混合物を20℃において400rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O(2mL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む2mLのH2Oに再懸濁させた。
【0120】
重縮合シラン(ATB)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合APTESを更に含む、すなわち重合APTESで官能化された、シリカ粒子の表面に固定化された組換えヒトリパーゼを含むAPTESによる官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子9」又は「NP-9」と呼ぶ。
【0121】
- MPTSによるタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の官能化(重合MPTS官能化遮蔽ナノ粒子)
リン酸バッファー(10mM、pH8)中の上記「酵素遮蔽及びタンパク質遮蔽」のセクションに従って生成されたタンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子の溶液(1mL、10mg/mL)に異なる量のMPTSを添加し、異なる比:0.23μmol、0.46μmol、0.91μmol、2.3μmol及び4.6μmolでナノ粒子表面を官能化して、それぞれ、NP-17、NP-18、NP-19、NP-20及びNP-21を生成した。得られた混合物を20℃において400rpmで90分間撹拌した。ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むH2O(1mL)で三回洗浄し、ポリソルベート80(8mg/L)を含む1mLのH2Oに再懸濁させた。部分的/完全官能化を、次のように機能する化学量論モデル計算を使用して理論的に決定した:純粋なシリカナノ粒子の表面上の単一シラノール(R-Si-OH)官能基に対応する単位表面積を、シリカ分子構造に基づいて計算した。官能基の化学量論数を計算する式は、次の通りである:
n(-OH):シラノールのモルで表されるナノ粒子表面にある官能基の数;
m:ミリグラムで表される試料の質量;
R:nmで表される単一ナノ粒子の半径;
:mol-1で表されるアボガドロ数;
d:mg.nm-3で表されるシリカナノ粒子の密度;
V:nmで表される単一ナノ粒子の体積;
:nmで表される、ナノ粒子表面にある単一シラノール官能基の単位表面積。
【0122】
ナノ粒子サイズを測定すると、単一ナノ粒子の表面積の計算が可能になる。一つの官能基の単位表面積とナノ粒子の表面積を組み合わせると、単一ナノ粒子上の利用可能な官能基の全数が導き出される。この結果が、ナノ粒子官能化に関する全ての化学量論的計算の基礎となる。
【0123】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合MPTSを更に含む、すなわち、重合MPTSで部分的に(タンパク質遮蔽ナノ粒子の表面の5%)官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含むMPTSでの5%の部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子17」又は「NP-17」と呼ぶ。
【0124】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合MPTSを更に含む、すなわち、重合MPTSで部分的に(タンパク質遮蔽ナノ粒子の表面の10%)官能化された、シリカナノ粒子の表面に固定化されたBSAを含むMPTSでの10%の部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子18」又は「NP-18」と呼ぶ。
【0125】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合MPTSを更に含む、すなわち、重合MPTSで部分的に(タンパク質遮蔽ナノ粒子の表面の20%)官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含むMPTSでの20%の部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子19」又は「NP-19」と呼ぶ。
【0126】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合MPTSを更に含む、すなわち、重合MPTSで部分的に(タンパク質遮蔽ナノ粒子の表面の50%)官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含むMPTSでの50%の部分的官能化後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子20」又は「NP-20」と呼ぶ。
【0127】
重縮合シラン(AT)を含む保護層によって完全に包埋され、保護層の表面に固定化された官能性成分として重合MPTSを更に含む、すなわち、重合MPTSで完全に(タンパク質遮蔽ナノ粒子の表面の100%)官能化された、シリカ粒子の表面に固定化されたBSAを含むMPTSでの完全官能化(100%)後に得られたシリカナノ粒子を、ここでは更に「ナノ粒子21」又は「NP-21」と呼ぶ。
【0128】
以下に概説する実験において得られ、使用された異なるナノ粒子を表1にまとめる。
【0129】
タンパク質定量:
酵素の固定化収率を、間接的Lowryタンパク質定量法を使用して定量した。既知濃度のタンパク質を用いた標準回帰曲線を、ウシ血清アルブミン標準を使用して構築した。酵素固定化後のナノ粒子の上清を採取し、20krcfで3分間遠心分離した。ついで、1mLのLowry溶液を200μLの試料及び標準物質に添加し、ボルテックスし、室温において15分間インキュベートした。その後、ボルテックスしながら100μLのフォリン試薬1Nを添加し、室温において30分間インキュベートした。最後に、Biotek Synergy H1リーダーを使用して吸光度を750nmで読み取った。
【0130】
細胞培養:
全ての実験について、細胞は37℃、5%CO2においで培養した。
Caco2(ヒト結腸直腸腺癌細胞株)及びHT29-MTX-E12(ヒト結腸がん細胞株)細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、1%非必須アミノ酸、及び100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で培養した。
【0131】
腸管バリアモデルの開発では、細胞をトランズウェルPETインサート(孔径1μm)に2.6×10細胞/cmの密度で播種した。全ての細胞モデルを21日目に実験に使用した。単培養では、Caco-2細胞を使用した。共培養では、Caco-2細胞とHT-29-MTX-E12細胞を75%~25%の比で使用した。
【0132】
THP-1(ヒト単球性白血病細胞株)細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、及び100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI1640中での培養で維持した。
【0133】
THP-1をマクロファージに分化させるために、THP-1細胞を、分化培地、すなわち、10%熱不活化ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン、10mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、2.5g/L グルコース、50pM β-メルカプトエタノールを補充したRPMI1640中で培養した。THP-1は、150nMのホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)と共に24時間インキュベートし、続いて分化培地中で24時間インキュベートすることでM0マクロファージに分化した。
【0134】
粘液染色:
分化した細胞単層を4%ホルマリンで15分間室温において固定し、その後PBSで洗浄した。3%酢酸(pH2.5)中の1%アルシアンブルー溶液を添加した。室温における30分間のインキュベーション後、細胞をPBSで徹底的に洗浄し、細胞を含むインサート膜をプラスチックインサートホルダーから切り取って、ガラススライドに取り付けた。
【0135】
ナノ粒子の粘液への結合:
官能化遮蔽ナノ粒子と粘液の相互作用のエクスビボ評価のために、地元の屠殺場から屠殺されたばかりのブタの腸を採取した。小腸を縦に切開し、スライドガラスでこすり取って粘液を採取した。1gの粘液に5mLの0.1M塩化ナトリウムを添加し、40rpmで1時間撹拌した。ついで、懸濁液を13125gで2時間遠心分離した。ペレットのきれいな部分を保持し、このプロセスをもう一度繰り返した。33.6mmの表面積のトランズウェルインサートを50mgのブタ粘液で覆った。アクセプターチャンバーを500μLのHBSS pH7.4で満たした。ドナーチャンバーを、HBSS pH6.4で希釈した250μLのFITC標識ナノ粒子で満たした。ついで、プレートを37℃において1時間、振盪(300rpm)しながらインキュベートした。インキュベーション後、逐次的な洗浄工程を、HO、0.9%の塩化ナトリウム、0.01%のトリトンX100で実施した。粘液に結合したナノ粒子のパーセンテージを、各コンパートメントにおける蛍光(λex:489nm、λem:515nm)の測定によって評価した。
【0136】
官能化遮蔽ナノ粒子と粘液の相互作用のインビトロ評価では、分化細胞培養物を、DMEM中のFITC標識ナノ粒子に24時間、振盪(300rpm)しながら曝した。PBSでの洗浄後、官能化遮蔽ナノ粒子と粘液の結合を光学的に評価した。
【0137】
生体内分布:
CD-1マウスに、一晩の絶食後、100mg/kgの放射性キトサン官能化遮蔽ナノ粒子を経管栄養法により経口投与した。終了時点で、ケタミン塩酸塩(50mg/kg)とキシラジン塩酸塩(10mg/kg)の混合物の腹腔内注射によって動物に麻酔をかけ、ついで、心臓内穿刺による瀉血によって速やかに屠殺した。目的の臓器を摘出し、精密天秤を使用して秤量した。代謝ケージに個別に収容したマウスから、投与後24時間で尿(膀胱内の尿を含む)と糞便を採取し、その放射能を分析した。試料の放射能のカウンティングは、ルテチウム-177放射性核種について較正された自動ガンマカウンター(Wallace Wizard 2470-Perkin Elmer)で実施した(効率:13.8%、LLOQ:500cpm)。サンプリングした組織中の放射能を、組織1グラム当たりのIDのパーセンテージ(%ID/g)として表した。
【0138】
生存率アッセイ:
細胞を96ウェル平底細胞培養プレートに2×10細胞/ウェルの密度で播種した。24時間後、培養培地を交換し、細胞を増加濃度の遮蔽又は官能化遮蔽ナノ粒子(0~1000μg/mL)で24時間及び48時間処理した。細胞単層を培地ですすぎ、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)溶液(1mg/mL)を各ウェルに添加した。細胞培養物を37℃において2時間インキュベートした。インキュベーション期間中に生成されたホルマザン結晶をDMSOに溶解させた。完全な可溶化後、Synergy H1マルチモードマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments)を使用して、570nmと680nm(参照波長)で吸光度を測定した。最後に、MTT結果を生存率のパーセンテージとして表した:[(試料吸光度-細胞フリー試料ブランク)*100/(未処理試料吸光度-細胞フリー試料ブランク)]。未処理対照細胞の生存率を恣意的に100%と定義した。
【0139】
バリア完全性:
- TEER
細胞バリアの完全性を、CellZscopeシステム(NanoAnalytics)を使用して経上皮電気抵抗(TEER)の測定により評価した。細胞培養培地のリフレッシュとナノ粒子による処理の後、TEER測定の前に細胞を37℃において一晩平衡化させた。細胞を含まないインサートと2.5mMのEGTA(エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N′,N′-テトラ酢酸)で処理した細胞単層を陰性対照として使用した。
【0140】
- ルシファーイエロー転位置
ナノ粒子曝露後、ルシファーイエロー(LY)を使用して細胞層の完全性をまた評価した。Caco-2単培養及びCaco-2/HT-29-MTX-E12共培養の培地を除去し、HBBSに置き換えた。LY(100μM)を37℃において90分間、細胞の頂端に添加し、基底外側培地を採取し、Synergy H1マルチモードマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments)を使用して蛍光(λex:428nm;λem:540nm)を分析した。
【0141】
内部移行:
- 共焦点
FITC標識キトサン官能化遮蔽ナノ粒子と共にインキュベートした後、フィルターインサート上で増殖させた細胞単層をPBSで洗浄し、室温において15分間4%のホルマリンで固定した。細胞を洗浄し、室温において15分間トリトン0.1%で透過処理し、PBSで三回洗浄し、室温において30分間BSA1%でブロックした。その後、細胞を室温において1時間、ファロイジン-TRITC(テトラメチル-ローダミンB-イソチオシアネート)と共にインキュベートした。最後の洗浄工程後、DAPIを含む退色防止封入剤を1滴塗布して、細胞を顕微鏡ガラススライド上にマウントした。蛍光顕微鏡分析を、共焦点レーザー走査顕微鏡(Fluoview FV3000、オリンパス)で実施した。
【0142】
- FACS
フローサイトメトリー解析では、FITC標識キトサン官能化遮蔽ナノ粒子で前処理した、又は前処理していない分化細胞培養物をトリプシンで剥離し、PBSで洗浄した。ついで、フローサイトメーターCell Sorter SH800Z(ソニー)を使用して細胞を処理し、データを取得した。データはFlowjo10ソフトウェアを使用して解析した。
【0143】
ヒト組換えリパーゼ活性アッセイ:
トリスバッファー(0.1M、pH8.4)中のリパーゼを含む遮蔽ナノ粒子とリパーゼを含むキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(60μL、3.3mg/mL)の溶液に、1,2-ジ-O-ラウリル-rac-グリセロ-3-(グルタル酸6-メチルレゾルフィンエステル)(60μL、100μM)を添加した。リパーゼ活性動態を37℃において30分間、ダーク96ウェルプレートで定常状態蛍光測定(λex/λem=529/600nm)によってモニターした。
【0144】
パンクレアチンからのリパーゼの活性アッセイ:
トリスバッファー(0.1M、pH8.4)中のパンクレアチンを含む遮蔽ナノ粒子とパンクレアチンを含むキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(125μL、3.33mg/mL)の溶液に、1,2-ジ-O-ラウリル-rac-グリセロ-3-(グルタル酸6-メチルレゾルフィンエステル)(125μL、50μM)を添加した。得られた混合物を暗所で37℃において750rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子を遠心分離し、反応生成物を含む上清を収集した。100μLの得られた溶液について、ダーク96ウェルプレートで定常状態蛍光測定値(λex/λem=529/600nm)を測定した。
【0145】
プロテアーゼ活性アッセイ:
リン酸バッファー(50mM、pH7)中のパンクレアチンを含む遮蔽ナノ粒子とパンクレアチンを含むキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(50μL、10mg/mL)の溶液に、リン酸バッファー(50mM、pH7)中のカゼイン(250μL、0.65%w/v)の溶液を添加した。得られた混合物を37℃において750rpmで30分間撹拌した。ナノ粒子を遠心分離し、反応生成物を含む上清を収集した。上清(200μL)にH2O中のTCA(110mM、167μL)の溶液を添加し、未消化カゼインを沈殿させた。得られた混合物を37℃において750rpmで30分間撹拌した。得られた溶液を遠心分離し、カゼインの消化断片を含む上清を収集した。この上清(200μL)に炭酸ナトリウム溶液(500mM、500μL)と、続いてフォリン・チオカルト試薬(0.5M、100μL)を添加した。得られた混合物を37℃において750rpmで30分間撹拌した。200μLの得られた溶液について、660nmで吸光度を測定した。
【0146】
酸性条件でのプロテアーゼ活性アッセイ:
酢酸(0.1M、pH4)中のパンクレアチンを含む遮蔽ナノ粒子の表面にキトサンをコーティングした。キトサンのプロテアーゼ安定性に対する影響を評価するために、パンクレアチンを含む遮蔽ナノ粒子を酢酸(0.1M、pH4)中で30分間インキュベートした。酢酸(0.1M、pH4)中でのインキュベーション後のパンクレアチンを含む遮蔽ナノ粒子とパンクレアチンを含むキトサン官能化遮蔽ナノ粒子の両方の活性を、塩基性pH(pH8)でのパンクレアチン活性を含む遮蔽ナノ粒子と比較した。
【0147】
アミラーゼ活性アッセイ:
活性バッファー(51μL)中のパンクレアチンを含むキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(2μL、10mg/mL)の溶液に、活性バッファー(107μL)中の4-ニトロフェニル-4,6-エチリデン-a-D-マルトヘプタオシドの溶液を添加した。得られた混合物を25℃において750rpmで15分間撹拌した。ナノ粒子を遠心分離し、反応生成物を含む上清を収集した。150μLの得られた溶液について、405nmで吸光度を測定した。
【0148】
結果:
実施例1:キトサンによるナノ粒子の表面官能化(比較実験)
粘膜付着性ナノ粒子を作製するために、国際公開第2015/014888A1号に記載されているように製造された遮蔽ナノ粒子の保護層の表面をキトサンで官能化した。非共有結合と共有結合という異なる表面修飾戦略を評価した。遮蔽ナノ粒子(NP-1)へのキトサンの静電結合を、FITC標識キトサンを使用して評価した。遮蔽ナノ粒子(NP-1)と比較した、反応したナノ粒子(NP-2)へのコンジュゲーション後の蛍光の増加(それぞれ6632対2556)が、ナノ粒子の表面でのFITC-キトサンの結合を証明している(図2A)。NP-1へのキトサンの共有結合は、銅IIフリー及び銅II依存クリックケミストリーによって実施した。結合戦略を検証するために、アジド蛍光染料である3-アジド-7-ヒドロキシクマリンを使用した。反応したナノ粒子上の蛍光の増加は、両方のクリック反応を使用した遮蔽ナノ粒子の官能化を証明している(図2B~C)。アジド-キトサン(N-キトサン)を、遮蔽ナノ粒子の表面でのその共有結合を促進するために合成した。これらの結果は、キトサンでナノ粒子を官能化する戦略を検証している。
【0149】
実施例2:キトサン官能化ナノ粒子と粘液層とのエクスビボ相互作用:ナノ粒子の表面官能化レベルの影響(比較実験)
官能化ナノ粒子は粘液と相互作用する必要があるため、トランズウェルインサートにブタ腸粘液層を添加することによってエクスビボ試験モデルを設定した。ついで、キトサンによるナノ粒子表面の完全被覆(NP-2)又は10%被覆(NP-3)(部分的官能化)の何れかの異なる官能化レベルを示す蛍光ナノ粒子を用いて粘液結合研究を実施した。非官能化ナノ粒子(NP-1)と比較して、ナノ粒子の表面にキトサンが存在すると粘液との相互作用が増加する。更に、図3は、キトサンで完全に官能化されたナノ粒子(NP-2)が、表面官能化が10%のみのナノ粒子(NP-3)よりも高い度合いで相互作用することを示している(それぞれ、適用量の93%対49%)。非官能化ナノ粒子(NP-1)は、弱い相互作用しか示さない。これらの結果は、キトサン官能化ナノ粒子の粘膜接着特性を実証し、表面官能化の度合いを調整することで、ナノ粒子と粘液の相互作用レベルを調節できることを強調している。
【0150】
実施例3:キトサン官能化ナノ粒子と粘液層とのエクスビボ相互作用:固定化プロセスとキトサンのサイズ(比較実験)
ナノ粒子の表面にあるキトサンは、粘液との相互作用を促進する。キトサン固定化プロセスと糖のサイズが粘液との相互作用に与える影響を評価した。
【0151】
キトサン固定化の異なる戦略、すなわち、静電相互作用(非共有結合)とクリックケミストリー(共有結合)を評価した。図4は、キトサンの静電結合(NP-6)とクリックケミストリー(NP-7とNP-8)によって修飾されたナノ粒子が粘液層と相互作用するのに対し、非官能化ナノ粒子(NP-1)は弱い相互作用しか示さないことを示している。これは、両方の戦略を使用して、生物学的挙動に影響を与えることなくナノ粒子を官能化できることを示している。
【0152】
更に、様々な分子量(低分子量:50000~190000Da(NP-8)又は中分子量:190000~310000Da(NP-7))のキトサンをクリックケミストリーによってナノ粒子の表面に固定化した。結果は、ナノ粒子と粘液の相互作用が両方の場合で維持されていることを示している。NP-7とNP-8の粘液上のナノ粒子の保持の違いは、表面に固定化された糖残基の量によって説明できる(NP-7の23キトサンと、NP-8の47キトサン)。
【0153】
実施例4:アミノ基を含む異なるポリマーで修飾されたナノ粒子と粘液層とのエクスビボ相互作用。
我々は、官能化ナノ粒子と粘液との相互作用はキトサンによるだけでなく、より一般的にはアミノ基を含むポリマーによるものであるという仮説を立てた。この仮説を評価するために、異なる官能基を持つ遮蔽ナノ粒子を作製した。アミノ基を含む様々なポリマーを示す遮蔽ナノ粒子を用いてエクスビボ粘液結合研究を実施し、粘液層との相互作用をImageJソフトウェアで定量した。図5は、使用されたアミノ基を含む全てのポリマーを含む遮蔽ナノ粒子の表面官能化(NP-9:表面に重合APTES層を添加;NP-5:キトサンによる表面官能化、NP-10:シラン-PEG4-NH2による表面官能化)により、粘液層でのナノ粒子の保持が驚くほど増加することを示している。
【0154】
全体として、これらの結果は、ナノ粒子と粘液の相互作用のプロセスにおいて、アミノ基を含むポリマーが重要な役割を果たすことを浮き彫りにしている。
【0155】
実施例5:キトサン官能化ナノ粒子と腸管バリアモデルとのインビトロ相互作用
キトサン官能化ナノ粒子と腸粘液との相互作用を確認するために、腸管バリアのインビトロモデル、すなわち粘液を生成しないバリア(Caco-2単培養)と粘液を生成するバリア(Caco-2/HT29-MTX-E12共培養)を開発した。細胞層表面の上部の粘液を可視化するために、分化細胞をアルシアンブルーで染色した。共培養細胞層では青色の粘液の存在が検出されたが、単培養では検出されなかった(図6A)。両方の腸管バリアモデルの頂端を蛍光キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)に24時間曝露し、ナノ粒子とバリアの相互作用を光学的に観察した。図6Bは、粘液が存在すると、単培養と比較して共培養バリアの表面でのNP-2の保持が増加することを示している。これらの結果は、キトサン官能化ナノ粒子の特異的粘液標的化を実証し、これらのナノ粒子の粘膜付着特性を確認している。
【0156】
実施例6:マウスにおけるキトサン官能化ナノ粒子の生体内分布(比較実験)
インビボでのナノ粒子の胃腸粘液との相互作用能力を評価するために、放射性標識キトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)を経管栄養によってCD-1マウスに経口投与した。異なる時点(1から24時間)において、組織、血液、糞便、尿の放射能を測定した。消化器系におけるナノ粒子(NP-2)の分布は、NP-2が胃腸管を通過していることを示している。マウスの胃における食物塊の滞留時間(1時間)と比較すると、キトサン官能化ナノ粒子の滞留時間は増加しており、経管栄養後3時間でNP-2の初期量の60%が胃に残っている(図7A)。更に、代謝ケージに収容されたマウスの尿と糞便を採取して排泄バランスを追跡した。24時間後、投与されたナノ粒子の初期量の95%が回収された。これは、マウスの腸粘液のターンオーバー時間に相当する(図7A)。これらの結果は、インビボでのキトサン官能化遮蔽ナノ粒子の驚くべき粘膜接着性と特異的分布特性を実証している。
【0157】
NP-2の消化器系における特異的局在化を確実にするために、異なる時点(1から24時間)で全生物での生体内分布を実施した。結果は、経口投与されたNP-2は胃腸管に留まり、全身性レベルでは放射性シグナルが検出されなかったため、腸管バリアを通過していないことを示している(図7B)。この結果は、NP-2の予想外の高度の安全性を示しており、ナノ粒子が腸管バリアの完全性を破壊しないことを示唆している。
【0158】
総合すると、これらのインビボデータから、キトサンでの遮蔽ナノ粒子の表面官能化により、腸粘液を特異的ターゲティングが可能になることが明らかになり、何らの毒性なしにナノ粒子を腸壁上に一過性に移植できる可能性を示唆している。
【0159】
実施例7:ナノ粒子のインビトロ細胞傷害性評価(比較実験)
ナノ粒子の安全性を評価するために、ヒト結腸腺癌細胞Caco-2(図8A-B)及びHT-29-MTX-E12(図8C-D)を、増加濃度の非官能化(NP-1)及びキトサン官能化(NP-2)遮蔽ナノ粒子(5から1000mg/mL)で24時間(図8A-C)及び48時間(図8B-D)処理した。細胞生存率を、MTTアッセイによるミトコンドリア脱水素酵素の活性測定によって評価した。結果は、両方のナノ粒子が細胞生存率に有意な影響を与えないことを示しており、ナノ粒子と腸上皮細胞の生体適合性を裏付けている。
【0160】
実施例8:経上皮電気抵抗(TEER)に対するナノ粒子曝露の影響(比較実験)
経上皮電気抵抗(TEER)値は、細胞単層の完全性と生存率をモニターするために一般的に使用されるパラメーターである。21日目に、分化したCaco-2-(図8A-B)及びCaco-2/HT-29-MTX-E12-(図8C-D)単層の頂端を、非官能化(NP-1)及びキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)に24時間(図9A-C)及び48時間(図9B-D)曝露し、CellZscopeシステムを使用してTEER値を記録した。EGTAによるタイトジャンクションの開放により、未処理単層と比較してTEER値の減少が誘導された。図6は、未処理の単層と比較して、ナノ粒子への曝露が単培養又は共培養のTEER値に影響を与えないことを示している。これらの結果は、腸管バリアのモデルを用いたキトサン官能化遮蔽ナノ粒子の安全性と生体適合性を実証している。
【0161】
実施例9:腸管バリアを通るルシファーイエローの転位置に対するナノ粒子曝露の影響
ナノ粒子による腸管バリアの破壊がないことを確認するために、バリア完全性のマーカーであるルシファーイエロー(LY)を使用して転位置研究を評価した。21日目に、分化Caco-2-(図10A-B)及びCaco-2/HT-29-MTX-E12-(図10C-D)単層の頂端を、非官能化(NP-1)及びキトサン官能化遮蔽ナノ粒子(NP-2)に24時間(図10A-C)及び48時間(図10B-D)曝露した。次に、90分間にわたってLYの基底外側区画への漏出を測定した。結果は、EGTAによるタイトジャンクションの開放によりLYの透過性が増加する一方で、蛍光染料の透過性は両方のモデルでナノ粒子に曝露されても一定のままであることを示している。この転位置研究は、腸管バリアのモデルを用いてキトサン官能化遮蔽ナノ粒子の安全性と生体適合性を検証している。
【0162】
実施例10:腸管バリアモデルにおけるナノ粒子の細胞取り込みの評価
潜在的毒性とリスク評価を更に評価するために、ナノ粒子の細胞取り込みを、共培養単層を蛍光NP-2と24時間曝露した後、共焦点顕微鏡とフローサイトメトリーによって評価した。共焦点顕微鏡で得られた三次元(3D)再構成z-スライドで観察されたように、ナノ粒子はCaco-2/HT-29-MTX-E12共培養の表面にのみ見出された(図11A)。キトサン官能化遮蔽ナノ粒子は細胞上にコーティングを形成するが、これはNP-2と粘液の相互作用によって説明できる。細胞取り込みがないことはフローサイトメトリーによって確認された。蛍光NP-2に曝露された腸細胞の蛍光は、陽性対照として使用されたマクロファージに分化したTHP-1の蛍光とは対照的に、未処理の細胞と比較して増加しなかった(図11B)。全体として、これらのデータは、腸管バリア上でのキトサン官能化遮蔽ナノ粒子の安全性を証明している。
【0163】
実施例11:ナノ粒子上に固定化されて保護されたパンクレアチンの活性の安定化
固定化されて保護されたパンクレアチンの生体触媒活性を評価し、37℃において24時間、遊離パンクレアチンと比較した。図12に示される結果は、遊離パンクレアチンと比較して、それぞれNP-14、NP-12、NP-16のプロテアーゼ(A)、リパーゼ(B)、アミラーゼ(c)活性の半減期が増加していることを示している。これらの結果は、NP-12、NP-14、NP-16の生体触媒活性の安定化に対するオルガノシランの保護層の利点を強調している。
【0164】
実施例12:キトサンのプロテアーゼ活性に対する保護効果
消化管に近い環境においてキトサンで官能化された、又は官能化されていないパンクレアチン遮蔽ナノ粒子のリパーゼ活性を評価するために、我々は、酸性条件(pH4)においてリパーゼ活性アッセイを評価した。意外なことに、図13は、酸性条件において、キトサン官能化遮蔽パンクレアチンナノ粒子(NP-14)のリパーゼ活性が未官能化遮蔽パンクレアチンナノ粒子(NP-13)と比較してより高いことを示している(それぞれ残存活性の82%と58%)。この結果は、その粘膜接着特性に加えて、キトサンが固定化酵素に対して予想外の保護効果を発揮することを証明している。
【0165】
実施例13:様々な比のチオール基含有化合物で官能化されたナノ粒子の粘液層とのエクスビボ相互作用
我々は、官能化されたナノ粒子の粘液との相互作用がまたチオール官能基によって引き起こされる可能性があるとの仮説を立てた。この仮説を評価するために、上記の「タンパク質遮蔽及び/又は酵素遮蔽ナノ粒子のMPTSでの官能化(重合MPTS官能化遮蔽ナノ粒子)」のセクションに従って、ナノ粒子の表面に増加した比のチオール官能基を含む遮蔽ナノ粒子を作製した。様々な比のチオール官能基をそれらの表面に示す遮蔽ナノ粒子を用いてエクスビボ粘液結合研究を実施し、粘液層とのそれらの相互作用をImageJソフトウェアで定量した。図14は、ナノ粒子の表面のチオール官能基の量に応じて、ナノ粒子の粘液層との相互作用レベルが増加することを示している。
【0166】
これらの結果は、様々な比のチオール官能基含有ポリマーで官能化されたナノ粒子が粘液への濃度依存的な結合を示し、よってこの官能化ナノ粒子がERTなどの治療用途に適したものになっていることを証明している。
図1
図2A-2B】
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B-14C】
【国際調査報告】