(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】架橋イミド延長化合物を含む熱硬化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 39/00 20060101AFI20250212BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250212BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250212BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20250212BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250212BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20250212BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20250212BHJP
C08K 5/28 20060101ALI20250212BHJP
C08K 5/315 20060101ALI20250212BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250212BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20250212BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C08L39/00
H05K1/03 610N
C08J5/18 CEZ
C08J5/04
C08K3/36
C08K9/04
C08K5/14
C08K5/28
C08K5/315
C08K5/3492
H01M4/66 A
B32B27/34
B32B5/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543002
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 US2023010450
(87)【国際公開番号】W WO2023141035
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エー・クース
(72)【発明者】
【氏名】ナジーフ・アザム
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ・セートゥマドハヴァン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F072
4F100
4J002
5H017
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA22
4F071AA51
4F071AA69
4F071AA75
4F071AA78
4F071AB26
4F071AC08
4F071AC12
4F071AC19
4F071AF19
4F071AF20
4F071AF40
4F071AF47
4F071AF62
4F071AG05
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH13
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB04
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD05
4F072AD11
4F072AD42
4F072AE02
4F072AF06
4F072AF24
4F072AF32
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AJ04
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL11
4F072AL13
4F100AA13B
4F100AA14B
4F100AA16B
4F100AA18B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AA34B
4F100AB17A
4F100AC03B
4F100AC05B
4F100AC10B
4F100AD00A
4F100AD00B
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AK02B
4F100AK04B
4F100AK17A
4F100AK47A
4F100AK47B
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100AK53A
4F100AK54A
4F100AL05B
4F100AS00A
4F100AS00B
4F100BA02
4F100CA08B
4F100CA23B
4F100DG01C
4F100DG12B
4F100DG15B
4F100GB41
4F100JA02
4F100JG05
4F100JK06
4F100YY00B
4J002BH021
4J002DJ017
4J002EK008
4J002EK038
4J002EK058
4J002EK068
4J002EK088
4J002EQ018
4J002EQ038
4J002EU186
4J002EU196
4J002FB087
4J002FD017
4J002FD206
4J002FD208
4J002GF00
4J002GQ00
5H017BB08
5H017CC01
5H017DD03
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH01
5H017HH03
(57)【要約】
一態様では、熱硬化性組成物は、イミド延長化合物と、イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーと、を含む。熱硬化複合材料は、熱硬化性組成物に由来し得、多層物品は、層の形態の熱硬化複合材料を含むことができる。物品は、アンテナ、ボンドプライ、半導体基板の堆積/再配線層の誘電体フィルム、回路板、樹脂付き銅箔(RCC)、又はフレキシブルコアであってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造:
【化1】
(式中、R及びQはそれぞれ独立して、二価の置換若しくは非置換の脂肪族基、アルケニル基、芳香族基、複素環式芳香族基、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのR
2は独立して、反応性アルケニル末端基を含む)
のイミド延長化合物と、
イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーと
を含む熱硬化性組成物。
【請求項2】
それぞれのR
2が独立して、マレイミド基、シトラコンイミド基、スチリル基、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基、アルキニル基、プロパルギルエーテル基、シアノ基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキサゾリン基、ベンゾオキサジン基、又はメチルノルボルネン基を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
イミド延長化合物が、次の式:
【化2】
のビスマレイミド化合物を含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
イミド延長化合物が、次の式:
【化3】
のビススチリル化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
イミド延長化合物が、次の式:
【化4】
のビスビニルベンジル化合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
イミド延長化合物が、次の式:
【化5】
のビスビニル化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
イミド延長化合物が、次の式:
【化6】
のビスアリル化合物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
イミド延長化合物が、式:
【化7】
(式中、nは、1~100、又は2~10の整数である)
を有する化合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項9】
組成物が、組成物の全体積に基づき、10~90体積パーセント、又は25~75体積パーセント、又は30~50体積パーセントのイミド延長化合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
反応性モノマーが(イソ)シアヌル酸トリアリルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項11】
組成物が、組成物の全体積に基づき、1~40体積パーセント、又は10~35体積パーセント、又は20~30体積パーセントの反応性モノマーを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項12】
フリーラジカル開始剤を更に含み、
フリーラジカル開始剤が、任意選択で、ジクミルペルオキシド、ジメチルジフェニルヘキサン、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、α,α'-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、若しくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、オクタノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、α,α'-アゾビス(イソブチロニトリル)、レドックス開始剤、アセチルアジド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、若しくはポリ(1,4-ジイソプロピルベンゼン)のうちの少なくとも1つを含み、かつ/あるいは、
組成物が、組成物の全体積に基づき、0.1~10体積パーセント、若しくは2~8体積パーセントのフリーラジカル開始剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項13】
溶融シリカを更に含み、溶融シリカが、任意選択で、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項14】
架橋ネットワークに化学的にカップリングすることができる官能化溶融シリカを更に含み、官能化溶融シリカが、任意選択で、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項15】
組成物が、組成物の全体積に基づき、10~70体積パーセント、又は20~60体積パーセント、又は30~55体積パーセントの溶融シリカを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項16】
組成物が、組成物の全体積に基づき、10~70体積パーセント、又は20~60体積パーセント、又は30~55体積パーセントの官能化溶融シリカを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項17】
溶融シリカが、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、スチリル基、又はビニルベンジル基のうちの少なくとも1つを含む官能基で官能化されており、好ましくは、官能化溶融シリカの官能基が、(メタ)アクリレート基を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項18】
組成物の全体積に基づき、5~25体積パーセント、又は8~20体積パーセントの難燃剤を更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項19】
セラミック充填剤を更に含み、セラミック充填剤が、任意選択で、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba
2Ti
9O
20、中空セラミック球体、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、又は水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項20】
式:
【化8】
を有する、10~90体積パーセントのイミド延長ビスマレイミドと、
1~40体積パーセントの(イソ)シアヌル酸トリアリルと、
0.1~10体積パーセントのフリーラジカル開始剤と、
10~70体積パーセントのメタクリレート官能化溶融シリカと
を含み、
前記体積は熱硬化性組成物の全体積に基づく、請求項1から19のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物に由来する、熱硬化複合材料。
【請求項22】
1センチメートル当たり0.35キログラム以上の銅に対する剥離強度、
摂氏-50~150度で、摂氏1度当たり40百万分率以下、又は摂氏1度当たり35百万分率以下のz-方向の平均熱膨張率、
10ギガヘルツにて2.5~3.5の誘電率、又は
10ギガヘルツにて、0.0025以下、若しくは0.0020以下、若しくは0.001~0.0025の誘電損失
のうちの少なくとも1つを有する、請求項21に記載の熱硬化複合材料。
【請求項23】
補強布を更に含み、
補強布が、任意選択で、NEガラス繊維、Lガラス繊維、又は石英繊維のうちの少なくとも1つを含み、
補強布が、任意選択で、熱硬化複合材料の総質量に基づき、5~40質量パーセント、又は15~25質量パーセントの量で存在する開繊織り補強布である、請求項21又は22に記載の熱硬化複合材料。
【請求項24】
補強織布又は補強不織布を更に含み、
補強布又は補強不織布が、任意選択で、液晶性ポリマー(LCP)繊維、アラミド繊維、環状オレフィンコポリマー(COC)繊維又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維のうちの少なくとも1つを含み、
補強布又は補強不織布が、熱硬化複合材料の総質量に基づき、5~40質量パーセント、又は15~25質量パーセントの量で存在する、請求項21から23のいずれか一項に記載の熱硬化複合材料。
【請求項25】
請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物から形成される層を硬化させる工程
を含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の複合材料を製造する方法。
【請求項26】
硬化させる工程が、層の温度を上昇させる工程、又は層を電子ビーム照射に曝露する工程、又は層を紫外線(UV)照射に曝露する工程のうちの少なくとも1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
組成物を剥離ライナーの上にキャストすることによって層を形成する工程を更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
組成物を銅又はアルミニウム等の金属箔の上にキャストすることによって層を形成する工程を更に含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
硬化させる工程に先行して補強層を組成物に含浸させる工程を更に含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項21から24のいずれか一項に記載の複合材料を含む、多層物品。
【請求項31】
銅層、ガラス層、液晶性ポリマー(LCP)層、超低CTEポリイミドフィルム層、フッ素ポリマー層、セラミック層、ポリアラミド層、エポキシ層、又はポリエーテル層のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項30に記載の多層物品。
【請求項32】
請求項21から24のいずれか一項に記載の複合材料を含む、物品。
【請求項33】
アンテナ、ボンドプライ、半導体基板の堆積/再配線層の誘電体フィルム、回路板、樹脂被覆銅箔(RCC)、又はフレキシブルコアである、請求項32に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月19日に出願された米国特許仮出願第63/300,676号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
高性能材料は、その他の望ましい特性の中でも、低損失、低ラミネート温度、及び良好な流動性を有することにより利益を得ることができる。例えば、回路ボンドプライ又は堆積薄膜のための望ましい属性は、基準を満たす取り扱い性を有する薄い厚さを有すること、無粘着性であること、無臭性から低臭性を有すること、室温にて十分な品質保持期間を有すること、低減されたラミネート温度を有すること、セミアディティブプロセスを含む従来の回路生産プロセスに適すること、十分なラミネート圧力及び温度ランプ速度を使用して、満足な樹脂の充填性及び流動性を有すること、低いz軸の熱膨張率を有すること、及び/又は銅に対する良好な剥離強度を有することである。1つの特性を改良するために成分組成を変更すると、他の特性に不都合となることがしばしばあるため、かかる材料を開発することは困難である。
【0003】
上記を考慮して、調節可能な範囲の特性を有する改良された高性能誘電体複合材料の必要性が依然として存在する。具体的には、他の所望の電気的、熱的、及び物理的特性の中でも金属箔に対する高い剥離強度及び低い散逸損失を含む、特性の改良された組み合わせを有する材料が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Split Post Dielectric Resonator (SPDR) Technique for Precise Measurements of Laminar Dielectric Specimens」(IEEE Xplore Conference Paper、2000年2月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱硬化複合材料、製造する方法、及びそれらに由来する物品が本明細書に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、熱硬化性組成物は、次の構造:
【0007】
【0008】
(式中、R及びQはそれぞれ独立して、二価の置換若しくは非置換の脂肪族、アルケニル、芳香族、複素環式芳香族基、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのR2は独立して、反応性アルケニル末端基を含む)
のイミド延長化合物と、
イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーと
を含む。
【0009】
上記及び他の特質は、次の図、詳細な説明、及び特許請求の範囲によって例示される。
【0010】
図は実施例の例証であり、本開示に従って製造される装置を、本明細書において言及される材料、条件、又はプロセスパラメータに制限することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】テーブル上に平坦に横たわる実施例1のイミド延長複合材料の写真画像である。
【
図2】曲げられている実施例2のPPO複合材料の写真画像である。
【
図3】実施例3の3つのガラス基板の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
イミド延長化合物及び反応性モノマーを含む、熱硬化性組成物に由来する複合材料が開発された。複合材料は優良な特性のバランスを呈することができ、プリプレグ、樹脂付き導電性(RCC)層、回路板、ボンドプライ、被覆フィルム、堆積材料、堆積フィルム、又はフレキシブルコアを含む種々の適用において使用されるように変化させることができる。
【0013】
イミド延長化合物は、式(1)又は式(2):
【0014】
【0015】
(式中、それぞれのRは独立して、二価の置換若しくは非置換の脂肪族基、アルケニル基、芳香族基、若しくは複素環式芳香族基であるか、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのQは独立して、二価の若しくは四価の置換若しくは非置換の脂肪族、アルケニル、芳香族、若しくは複素環式芳香族基、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのR2は独立して、反応性アルケニル末端基を含む)
のうちの少なくとも1つの構造を有する化合物を含むことができる。
【0016】
Rは直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。Rは炭化水素基であってよい。Rは、1~100個の炭素原子、又は10~90個の炭素原子、又は20~40個の炭素原子を含んでよい。Rは、例えば、20~40個の炭素原子を有する、分岐状アルキレン基又は分岐状脂肪族基であってよい。Rは、C1~50、又はC30~40二価炭化水素基であってよい。Rは、置換又は非置換のC1~50、又はC30~40二価アルカンであってよく、任意選択で、1つ以上の環状アルカン部位を含み、任意選択で、0~3の不飽和を含有する。Rが分岐状アルキレン基又は分岐状脂肪族基を含む場合、複合材料の可撓性が改良され得る。
【0017】
Qは、1~100個の炭素原子、2~50個の炭素原子、又は4~10個の炭素原子を有する炭化水素基であり得る。Qは、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、又はジフェニルシロキサンに由来する、置換又は非置換のシロキサン基であり得る。Qは、例えば、アシル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキニル基、アミド基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、カルバメート基、カルボキシル基、シアノ基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、複素環式基、ヘテロアリール基、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、-C(O)H、-NRxC(O)-N(Rx)2、-OC(O)-N(Rx)2、オキシアシル基、又はスルホンアミド基のうちの少なくとも1つで置換され得、ここで、Rxは水素原子又はアルキル基であり得る。Qは、1~100個の炭素原子、又は2~50個の炭素原子、又は4~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の四価の有機基であり得る。
【0018】
Qは、例えば、式Q1を有する繰り返し基を生じる四価のアリール基であり得る。Q1は、非芳香族基と比較して増加した機械的強度を有する複合材料を生じ得る。Q1は無水ピロメリット酸に由来し得る。Qは、例えば、式Q2を有する繰り返し基を生じる四価のアリールオキシ基であり得る。Q2は、4,4'-オキシジフタル酸無水物に由来し得る。
【0019】
【0020】
R2は、マレイミド基、シトラコンイミド基、スチリル基、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基、アルキニル基、プロパルギルエーテル基、シアノ基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキサゾリン基、ベンゾオキサジン基、又はメチルノルボルネン基であり得る。
【0021】
イミド延長化合物は、式(3)のビスマレイミド化合物を含むことができる。
【0022】
【0023】
イミド延長化合物は、式(4)のビススチリル化合物を含むことができる。
【0024】
【0025】
イミド延長化合物は、式の(5)ビスビニルベンジル化合物を含むことができる。
【0026】
【0027】
イミド延長化合物は、式(6)のビスビニル化合物を含むことができる。
【0028】
【0029】
イミド延長化合物は、式(7)のビスアリル化合物を含むことができる。
【0030】
【0031】
イミド延長化合物は、式(8)を有する化合物を含むことができる。
【0032】
【0033】
イミド延長化合物は、1~100、又は2~10の重合度(例えば、式8中に例示されたn)を有し得る。
【0034】
熱硬化性組成物は、組成物の全体積に基づき、10~90体積パーセント(vol%)、又は25~75vol%、又は30~50vol%のイミド延長化合物を含み得る。
【0035】
熱硬化性組成物は、イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーを含む。反応性モノマーは、(イソ)シアヌル酸トリアリルを含み得る。(イソ)シアヌル酸トリアリルは、式(A)及び式(B)中でそれぞれ例示されている、イソシアヌル酸トリアリル及びシアヌル酸トリアリルのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
【0037】
組成物は、組成物の全体積に基づき、1~40vol%、又は10~35vol%、又は20~30vol%の反応性モノマーを含み得る。
【0038】
他の共重合性モノマーは、ビニル芳香族モノマー類、例えばスチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、アルファ-メチルスチレン、アルファ-メチルビニルトルエン、パラヒドロキシスチレン、4-アセトキシスチレン、パラメトキシスチレン、アルファ-クロロスチレン、アルファ-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレン等の置換及び非置換のモノビニル芳香族モノマー類、並びにジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の置換及び非置換のジビニル芳香族モノマー類を含むが、これらに制限されない。前述の共重合性モノマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせも、使用することができる。
【0039】
なお他の任意の架橋剤は、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP TMA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)又はイソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)エステル(THEICトリアクリレート)、ジアリルフタル酸、及び他の多官能性(メタ)アクリレートモノマー(例えば、Sartomer社、USA、Exton、PAから入手可能なSARTOMER樹脂)、並びに全てが市販されている前述のもののうちの少なくとも1つを含む組み合わせである。
【0040】
熱硬化性組成物は、フリーラジカル開始剤を含むことができ、フリーラジカル開始剤は熱分解してフリーラジカルを形成することができ、次いで、そのフリーラジカルが組成物内でエチレン性不飽和二重結合の重合を開始する。これらの開始剤は、弱い結合、例えば、小さな解離エネルギーを有する結合を一般的に提供する。フリーラジカル開始剤は、過酸化物開始剤、アゾ開始剤、炭素-炭素開始剤、過硫酸塩開始剤、ヒドラジン開始剤、ヒドラジド開始剤、ベンゾフェノン開始剤、又はハロゲン開始剤のうちの少なくとも1つを含むことができる。フリーラジカル開始剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、又はポリ(1,4-ジイソプロピルベンゼン)を含むことができる。開始剤は、有機過酸化物、例えば、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、α,α'-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンのうちの少なくとも1つを含むことができる。開始剤は、例えば、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシル酸、ベンジルジメチル-ケタール、α-アミノケトン、モノアシルホスフィン(MAPO)、ビスアシルホスフィン(BAPO)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)、ホスフィンオキシド、又はメタロセンを含み、光感受性であってよい。
【0041】
フリーラジカル開始剤は、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、オクタノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、α,α'-アゾビス(イソブチロニトリル)、レドックス開始剤、又はアセチルアジドのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0042】
フリーラジカル開始剤は、熱硬化性の組成物の総質量に基づき、0.1~5質量パーセント(wt%)又は0.1~1.5wt%の量で存在することができる。フリーラジカル開始剤は、組成物の全体積に基づき、0~10vol%、又は2~8vol%、又は0.1~3vol%の量で存在することができる。
【0043】
熱硬化性組成物は溶融シリカを含むことができる。溶融シリカの全て又は一部は、架橋ネットワークに化学的にカップリングすることができる。例えば、溶融シリカを疎水化するために、溶融シリカは表面処理を含むことができる。表面処理は、溶融シリカ上にシランをグラフトすることによって形成され得る。シランは、架橋ネットワークに化学的にカップリングすることができる反応性末端基を含むことができる。
【0044】
シランは、フェニルシラン又はフルオロシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。フェニルシランは、p-クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニル-トリス-(4-ビフェニリル)シラン、(フェノキシ)トリフェニルシラン、又は官能化フェニルシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。官能化フェニルシランは、式R'SiZ1R2Z2を有することができ、ここで、R'は、1~3個の炭素原子を有するアルキル、-SH、-CN、-N3又は水素であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立して、塩素、フッ素、臭素、6個以下の炭素原子を有するアルコキシ、NH、-NH2、-NR2'であり、R2は、
【0045】
【0046】
であり、ここで、S-置換基、S1、S2、S3、S4及びS5のそれぞれは独立して、水素、1~4個の炭素原子を有するアルキル、メトキシ、エトキシ、又はシアノであるが、ただし、S-置換基のうちの少なくとも1つは水素以外であり、メチル又はメトキシのS-置換基が存在する場合、その時は、(i)少なくとも2つのS-置換基は水素以外であり、(ii)2つの隣接するS-置換基は、フェニル核とともにナフタレン若しくはアントラセン基を形成し、又は(iii)3つの隣接するS-置換基はフェニル核と一緒にピレン基を形成し、Xは-(CH2)n-基であり、ここで、nは0~20であり、若しくはnが0ではない場合、10~16であり、言い換えると、Xは任意のスペーサー基である。基又は化合物に関する「低級」という用語は、1~7個及び/又は1~4個の炭素原子を意味する。
【0047】
フッ素原子は全原子の中で最も低い分極率を有するので、フルオロシランは、他のシランと比較して有益であり得、そのため、フッ素化分子は非常に弱い分子間分散力を呈する。結果として、フッ素化分子は著しく、疎水性であり同時に疎油性の両方である。複合材料中のフッ素化化合物の疎水化能力を十分に利用するために、複合材料中で溶融シリカをインサイチュでシラン化する代わりに、複合材料を形成するのに先行して、溶融シリカをフッ素化シランで前処理し得る。溶融シリカの前処理は、複合材料中のフッ素化シランの疎油性(非混和性)のために優先的であり得る。複合材料を形成するのに先行して溶融シリカをフッ素化シランで前処理することが有益であり得るのと同様に、溶融シリカを他の疎水性シランで前処理することも同様に有益であり得ることに留意されたい。
【0048】
フルオロシランコーティングは、式:CF3(CF2)n-CH2CH2SiX(式中、Xは加水分解性官能基であり、n=0又は整数全体である)を有する過フッ素化アルキルシランから形成され得る。フルオロシランは、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメチルクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルジクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-ジメチルクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル)-1-メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル)-1-トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロドデシル)-1-ジメチルクロロシラン、(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルメチルジクロロシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリクロロシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)、又はプロピルトリエトキシシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。フルオロシランは、ペルフルオロオクチルトリエトキシシランを含むことができる。
【0049】
シランは、アミノシラン、又はアクリル若しくはメタクリル基等の重合性官能基を含有するシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。アミノシラン類の例としては、N-メチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-β-アミノエチルトリメトキシシラン、N-メチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-N-メチルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(γ-アミノプロピル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(2-エチルピペリジノ)(5-ヘキセニル)メチルクロロシラン、2-エチルピペリジノジメチルヒドリドシラン、2-エチルピペリジノトリメチルシラン、2-エチルピペリジノメチルフェニルクロロシラン、2-エチルピペリジノジシクロペンチルクロロシラン、モルホリノビニルメチルクロロシラン、N-(γ-アミノプロピル)-N-メチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-アミノプロピルエチルジエトキシシランアミノエチルアミノトリメトキシシラン、又はn-メチルピペラジノフェニルジクロロシランのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0050】
溶融シリカは、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、スチリル基、又はビニルベンジル基のうちの少なくとも1つを含む官能基で官能化され得、好ましくは、官能化溶融シリカの官能基が、(メタ)アクリレート基を含む。重合性官能基を含むシランは、式Ra
xSiRb
(3-x)Rのシランを含み、その式において、それぞれのRaは、同一又は異なり(例えば、同一)、ハロゲン(例えば、Cl又はBr)、C1~4のアルコキシ(例えば、メトキシ若しくはエトキシ)、又はC2~6のアシルであり、それぞれのRbは、C1~8のアルキル又はC6~12のアリール(例えば、Rbは、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニルであり得る)であり、xは、1、2又は3(例えば、2又は3)であり、Rは、-(CH2)nOC(=O)C(Rc)=CH2であり、ここで、Rcは水素又はメチルであり、nは1~6、又は2~4の整数である。シランは、メタクリルシラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)又はトリメトキシフェニルシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0051】
溶融シリカは、1~50マイクロメートル、1~10マイクロメートル、又は1マイクロメートル未満のメジアン径を有する球状構造形態を有し得る。溶融シリカは、1~20マイクロメートル、又は5~15マイクロメートルのD90粒径を有し得る。本明細書で使用される場合、粒径は動的光散乱を使用して決定することができる。
【0052】
組成物は、組成物の全体積に基づき、10~70vol%、又は20~60vol%、又は30~55vol%の溶融シリカを含むことができる。組成物は、組成物の全体積に基づき、10~70vol%、又は20~60vol%、又は30~55vol%の官能化溶融シリカを含むことができる。
【0053】
熱硬化性組成物は、溶融シリカの他に、又はそれに加えて、セラミック充填剤を含むことができる。セラミック充填剤は、ヒュームドシリカ、シラン処理ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球体、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、又は水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含むことができる。セラミック充填剤の表面もまた、物理的蒸着(PVD)及び/又は、化学蒸着(CVD(これらに制限されないが、原子層堆積(ALD)等)を使用して変性され得る。セラミック充填剤は、組成物の全体積に基づき、溶融シリカの10~70vol%、又は20~60vol%、又は30~55vol%の量で存在することができる。組成物は、組成物の全体積に基づき、10~70vol%、又は20~60vol%、又は30~55vol%の官能化溶融シリカを含むことができる。
【0054】
熱硬化性組成物は、10~90vol%の式8のイミド延長ビスマレイミドと、1~40vol%の(イソ)シアヌル酸トリアリルと、0.1~10vol%のフリーラジカル開始剤と、10~70vol%のメタクリレート官能化溶融シリカとを含むことができ、それらの体積は熱硬化性組成物の全体積に基づく。同様に、熱硬化複合材料は、10~90vol%の式8のイミド延長ビスマレイミドと、1~40vol%の(イソ)シアヌル酸トリアリルと、0.1~10vol%のフリーラジカル開始剤と、10~70vol%のメタクリレート官能化溶融シリカとを含むことができ、それらの体積は複合材料の全体積に基づく。
【0055】
熱硬化性組成物は難燃剤を含むことができる。難燃剤は、金属水和物、有機難燃剤、有機金属難燃剤又はハロゲン化難燃剤のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0056】
金属水和物は、金属、例えば、Mg、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu、又はNiのうちの少なくとも1つの水和物を含むことができる。Mg、Al、又はCaの水和物として、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化ニッケル、又はアルミン酸カルシウム、二水石膏、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、又はメタホウ酸バリウムの水和物のうちの少なくとも1つを使用することができる。これらの水和物の複合材料として、例えば、Mgと、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu、又はNiのうちの少なくとも1つとを含有する水和物を使用することができる。複合材料金属水和物は、式MgMx(OH)y(式中、MはCa、Al、Fe、Zn、Ba、Cu、又はNiであり、xは0.1~10であり、yは2~32である)を有し得る。金属水和物は、1~500ナノメートル(nm)、又は1~200nm、又は5~200nm、又は10~200nmの体積平均粒径を有し得、或いは、体積平均粒径は、500nm~15マイクロメートル、例えば、1~5マイクロメートルであり得る。
【0057】
有機難燃剤は、シアヌル酸メラミン、リン含有化合物(例えば、ポリリン酸メラミン、脂肪族又は芳香族ホスフィン酸、ジホスフィン酸、ホスホン酸、ホスファゼン、亜リン酸、ホスフィン、若しくはホスフェート)、ポリシルセスキオキサン、又はシロキサンのうちの少なくとも1つを含むことができる。有機又は有機金属難燃剤のいずれかは、ハロゲンを含まなくてよい。
【0058】
ハロゲン化難燃剤は、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(HET酸)、テトラブロモフタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ビス-ペンタブロモフェニルエタン(SAYTEX 8010として市販されている)、エチレンビステトラブロモフタルイミド(SAYTEX BT93Wとして市販されている)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(SAYTEX 120として市販されている)、又はデカブロモジフェニルオキシド(SAYTEX 102として市販されている)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0059】
難燃剤は相乗剤と組み合わせて使用され得、例えば、ハロゲン化難燃剤は、三酸化アンチモン等の相乗剤と組み合わせて使用され得、リン含有難燃剤は、メラミン等の窒素含有化合物と組み合わせて使用され得る。
【0060】
難燃剤粒子は、分散及び他の特性を改良するために、コーティング、又はそうでなければ処理され得る。難燃剤は、組成物の全体積に基づき、5~25vol%、又は8~20vol%の量で存在することができる。組成物は難燃剤を含まなくてよく、例えば、組成物の全体積に基づき、0~0.5vol%、又は0vol%の難燃剤を含む。
【0061】
熱硬化性組成物は溶媒を含むことができる。溶媒は、熱硬化性の成分を溶解し、粒子状添加剤及び存在し得るあらゆる他の任意の添加剤を分散し、形成、乾燥、及びb-ステージングに都合の良い蒸発速度を有するように選択され得る。溶媒は、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘキサン、高級の液状直鎖状アルカン(例えば、ヘプタン、オクタン、又はノナン)、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、イソホロン、グリコールエーテルPM、グリコールエーテルPMアセテート、乳酸エチル、又はテルペン系溶媒のうちの少なくとも1つを含むことができる。溶媒は、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はヘキサンのうちの少なくとも1つを含むことができる。溶媒は、キシレン又はトルエンのうちの少なくとも1つを含むことができる。溶媒は、溶媒を含む熱硬化性の組成物の総質量に基づき、2~80wt%、又は40~60wt%、又は2~5wt%の量で存在することができる。熱硬化性の組成物は、溶媒を含む熱硬化性の組成物の総質量に基づき、20~98wt%の固形物質(溶媒以外の全ての成分)、又は40~60wt%、又は95~98wt%の固形物質を含むことができる。結果として得る複合材料は溶媒を含まなくてよく、例えば、硬化させる工程後の残留量のみを含む。複合材料は、溶媒を含む複合材料の総質量に基づき、0~0.5wt%、又は0~0.05wt%、又は0wt%の溶媒を含むことができる。
【0062】
熱硬化性組成物から形成された複合材料は、補強布(布地又は補強層とも称される)を含むことができる。布地は、複数の熱安定性の繊維を含む繊維層を含むことができる。布地は、織布又はフェルト等の不織布であってよい。布地により、硬化中の複合材料の複合材料の平面内での収縮を低減させることができる。加えて、布地の使用は、複合材料が相対的に高い寸法安定性及び機械的強度(弾性率)を有するのを助け得る。かかる材料は、商業的使用における方法、例えば、ロールツーロールラミネートを含むラミネートによって、より容易に処理され得る。
【0063】
布地は熱安定性の繊維を含むことができる。熱安定性の繊維は、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維、又はNEガラス繊維、Lガラス繊維、又は石英繊維等のより低い比誘電率、より低い散逸損失の繊維のうちの少なくとも1つ等のガラス繊維を含むことができる。例えば、日東紡績株式会社、東京都、日本から市販されているNITTOBO NE等のより低い比誘電率で、より低い散逸係数の、熱安定性の繊維又はAGY社、Aiken、South Carolinaから市販されているLガラス繊維又は信越化学工業株式会社、東京都、日本から市販されているShin-Etsu SQX等。熱安定性の繊維は、高温ポリマー繊維、パルプ又はフィブリル化パルプ等のポリマー系繊維を含むことができる。ポリマー系繊維は、Kuraray America Inc.社、Fort Mill、SCから市販されているVECTRAN等の液晶ポリマーを含むことができる。ポリマー系繊維は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES又はPESU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリm-アラミド(繊維又はフィブリド)、ポリp-アラミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)又はポリエステル(PET等)のうちの少なくとも1つを含むことができる。ポリマー系繊維は、液晶性ポリマー(LCP)繊維、アラミド繊維、環状オレフィンコポリマー(COC)繊維又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0064】
ガラス繊維を含む熱安定性の布地は平織又は開繊織りであってよく、バランスを取ることができる。開繊織りにより信号スキュー及びクロストークが低減され得、インピーダンス制御、導電性陽極フィラメント(CAF)成長に対する耐性、寸法安定性、プリプレグ収率を強化し得、回路生産中のレーザ穿孔により適し得る。布地は、より低い比誘電率で、より低い散逸係数の開繊織り布地を含むことができる。
【0065】
熱硬化性組成物を、布地の一方若しくは両方の側面にコーティングすることができ、及び/又は補強層に浸透させることができ、それにより硬化させる工程で形成される複合材料層に統合する。布地は、5~100マイクロメートル、又は10~60マイクロメートルの厚さを有し得る。布地は、複合材料の総質量に基づき、5~40wt%、又は15~25wt%の量で存在することができる。
【0066】
複合材料は、「金属クラッド積層体の剥離強度」(IPC-TM-650 2.4.8)に従って決定される、1センチメートル当たり0.35キログラム以上の銅に対する剥離強度を有し得る。
【0067】
複合材料は、「高密度相互接続(HDI)とマイクロビアに使用される材料のガラス転移温度と熱膨張-TMA法」(IPC-TM-650 2.4.24.5)に従って決定される、-50~150℃により、摂氏1度当たり40百万分率以下(ppm/℃)、又は35ppm/℃以下、又は25~90ppm/℃、又は60~85ppm/℃のz-方向の平均熱膨張率を有し得る。
【0068】
複合材料は、23~25℃の温度、50%の相対湿度及び10ギガヘルツ(GHz)の周波数にて、「層状誘電体標本の精密測定値のためのスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)法」(IEEE Xplore Conference Paper、2000年2月)に従って測定される、2.5~3.5の誘電率を有し得る。
【0069】
複合材料は、23~25℃の温度、50%の相対湿度及び10ギガヘルツ(GHz)周波数にて、「層状誘電体標本の精密測定値のためのスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)法」(IEEE Xplore Conference Paper、2000年2月)に従って測定される、0.0025以下、又は0.0020以下、又は0.001~0.0025の誘電損失を有し得る。
【0070】
複合材料は、Underwriter's Laboratory UL 94の安全性基準「機器の部品に使用されるプラスチック材料の燃焼性試験」に従って決定される、84~760マイクロメートルの厚さにてUL94のV0等級を有し得る。
【0071】
複合材料は、「高密度相互接続(HDI)とマイクロビアに使用される材料のガラス転移と弾性率-DMA法」(IPC-TM-650 2.4.24.4)に従って決定される、4ギガパスカル(GPa)以下、又は2GPa以下、又は0.4~1.5GPaの弾性率を有し得る。
【0072】
複合材料は、毎分10℃の昇温で平行板の振動レオロジーを使用して決定される、100~3,000ポアズ、又は1,000~3,000ポアズ、又は2,000~2,900、又は150~300ポアズの最小溶融粘度を有し得る。
【0073】
複合材料を製造する方法は、熱硬化性組成物から形成される層を硬化させる工程を含むことができる。硬化させる工程は、層の温度を上昇させる工程、又は層を電子ビーム照射に曝露する工程、又は層を紫外線(UV)照射に曝露する工程のうちの少なくとも1つを含むことができる。方法は、組成物を剥離ライナーの上にキャストすることによって層を形成する工程、組成物を銅又はアルミニウム等の金属箔の上にキャストする工程、又は硬化させる工程に先行して補強層に組成物を含浸させる工程のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。
【0074】
プリプレグは、熱硬化性の組成物で布地を処理する工程、及び熱硬化性の組成物を部分的に硬化させる工程(b-ステージング)によって、形成され得る。本明細書で使用される場合、用語b-ステージングとは、(1)溶媒担体中に任意選択で存在する熱硬化性の組成物が(2)表面、例えば、織られた繊維ガラスに適用され、それに続いて、(3)重合の開始温度未満で任意の溶媒担体の蒸発が生じ、それに続いて、(4)更に熱を印加して、(5)熱硬化性の組成物を部分的に重合(又は部分的に硬化)させ、それに続いて、(6)熱硬化性の組成物を完全に重合しないように冷却することを指すことができる。熱硬化性の組成物を部分的に硬化させる工程は、熱及び圧力がb-ステージの系に印加される場合に生じる樹脂流の量を調節することが重要である用途に、特に有益であり得る。b-ステージの系を形成した後、b-ステージの系を追加の熱に曝露することができ、部分的に硬化させた熱硬化性の組成物を完全に硬化させることができる。この最終の重合は、しばしばc-ステージングと称される。部分的に硬化された複合材料を介する複合材料の形成の例としては、最初にb-ステージ語の熱硬化組成物(他にはプリプレグとして公知である)を作製し、次いで、同一設備中でプリプレグをラミネートすることによりc-ステージの積層体を形成するか、又は異なる設備中でプリプレグをラミネートすることが挙げられる。ラミネートは通常、熱及び圧力の両方の印加を含み、しばしば多層構造の形成が行われる。
【0075】
熱硬化性の組成物は、あらゆる順序で、任意選択で溶融体中又は不活性溶媒中で、種々の成分を混合することによって形成され得る。混合は、ブレンド、ミキシング、又は撹拌等のあらゆる好適な方法によることができる。熱硬化性の組成物を形成するのに使用される成分は、溶媒中に成分を溶解させるか又は懸濁させることによって混合されて、コーティング混合物又は溶液を提供することができる。プリプレグの形成は、処理された布地を、上昇させた温度で、配合溶媒を蒸発させて、熱硬化性の組成物を少なくとも部分的に硬化させる(b-ステージ)のに十分な時間保持することを含むことができる。プリプレグを形成した後、プリプレグは、一定期間保管することができ、その後、例えば、回路積層体又は他の回路サブアセンブリ作製中に材料を完全に硬化させることができる。1つの種類の構造では、多層の積層体は、導電層間に2つ以上のプリプレグのプライを含むことができる。
【0076】
熱硬化性の組成物で布地を処理するための方法は、制限されることなく、例えば、ディップコーティング又はロールコーティングによって、任意選択で温度を上げて行うことができる。単一プライのプリプレグは、10~200マイクロメートル、又は30~150マイクロメートルの厚さを有し得る。単一プライのクラッドされていない材料が望ましい場合、その時は、熱硬化性の組成物を完全に硬化して複合材料を形成することができることに留意されたい。
【0077】
熱硬化性の組成物を含む堆積フィルム又はボンドプライ等の、補強布を含まない非補強フィルム層をキャストするための方法は、制限されることなく、例えば、スロットダイ又はナイフオーバーロールの適用技術によって行うことができる。熱硬化性の組成物は、熱にロバストで適切な引張強度の担体フィルム上に水平にキャストすることができる。例えば、ロールツーロールコンベア式のプロセスでは、担体フィルムは非補強フィルム層を搬送してオーブンを通過させ、巻き取り時には非補強フィルム層のためのインターリーフとして機能する。担体フィルムは、後続のシーティング、パネリング及び最終の使用取り扱いに至るまで、非補強フィルム層を支持することもできる。担体フィルムは、剥離ライナーとも称されることがあり、熱硬化性の組成物の無欠陥液体フィルムコーティング、得られる非補強フィルム層のオーブンを介した担体フィルムへの固定(付着)(非補強フィルム層が乾燥及び/又は潜在的にb-ステージ化されているため)、及び最終使用直前の非補強フィルム層の担体フィルムからの容易な剥離、を確実にする特殊な表面エネルギー範囲を呈し得る。
【0078】
2つ以上のプリプレグ及び/又は2つ以上の非補強フィルム層が一緒にラミネートされて複合素材を形成することができる。複合材料を含む回路材料は、少なくとも1つのプリプレグのプライ及び/又は1つの非補強フィルム層のプライ並びに少なくとも1つの導電層をラミネートすることによって同様に形成され得る。
【0079】
ラミネートは、1つ以上のプリプレグの誘電体スタックを含む層構造及び/又は1つ以上の非補強フィルム層の誘電体スタックを含む層構造、導電層、並びに誘電体スタックと導電層の間の任意の中間層をラミネートして積層体を形成することを伴うことができる。同様に、それが望ましい場合、層構造は導電層を有さない誘電体スタックを含むことができる。導電層は、中間層なしで、誘電体スタックと直接接触してよい。誘電体スタックは、1~200のプライ、又は2~50、又は5~100のプライを含むことができ、少なくとも1つの導電層は、誘電体スタックの最外側に配置され得る。次いで、層を接着するに好適な圧力と温度の下、それに好適な時間、プレス、例えば、真空プレス中に層構造を置くことができ、積層体を形成する。任意選択で、層構造は、ロールツーロールラミネートされ得るか、又はオートクレーブされ得る。
【0080】
ラミネート及び任意の硬化させる工程は、例えば、真空プレスを使用する一工程のプロセスによることができ、又は多工程のプロセスによることができる。一工程のプロセスでは、層構造はプレス中に置くことができ、ラミネート圧力に供され得、ラミネート温度まで加熱され得る。ラミネート温度は、100~390℃、又は100~250℃、又は100~240℃、又は100~175℃、又は150~170℃であってよい。ラミネート圧力は、1~3メガパスカル(MPa)、又は1~2MPa、又は1~1.5MPaであってよい。ラミネート温度及び圧力は、所望の滞留(浸漬)時間、例えば、5~150分、又は5~100分、10~50分維持され得、その後、任意選択で、制御された冷却速度で(印加圧力の有無にかかわらず)、例えば、150℃以下まで冷却され得る。
【0081】
導電層は、レーザ直接構造化によって適用され得る。ここで、複合素材はレーザ直接構造化添加剤を含むことができ、レーザ直接構造化は、レーザを使用して基板の表面を照射すること、レーザ直接構造化添加剤の通路を形成すること、及びその通路に導電性金属を適用することを含むことができる。レーザ直接構造化添加剤は、金属酸化物粒子(酸化チタン及び銅クロム酸化物等)を含むことができる。レーザ直接構造化添加剤は、銅スピネル等のスピネル系無機金属酸化物粒子を含むことができる。金属酸化物粒子は、例えば、スズ及びアンチモンを含む組成物(例えば、コーティングの総質量に基づき、50~99wt%のスズ及び1~50wt%のアンチモン)でコーティングされ得る。レーザ直接構造化添加剤は、100部の組成物に対して2~20部の添加剤を含むことができる。照射は、10ワットの出力電力、80キロヘルツの周波数、及び3メートル毎秒の速度の下、1,064ナノメートルの波長を有するYAGレーザで行うことができる。導電性金属は、例えば、銅を含む無電解及び/又は電解めっき浴において、セミアディティブプレーティング法(semi-additive plating process)を使用して適用され得る。
【0082】
導電層は、ステンレススチール、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、ニッケル、又はパラジウム等の遷移金属のうちの少なくとも1つを含むことができる。導電層の厚さに関して特定の制限はなく、導電層の形状、寸法、又は表面の質感に関するあらゆる制限もない。導電層は、3~200マイクロメートル、又は9~180マイクロメートルの厚さを有し得る。2つ以上の導電層が存在する場合、2つの層の厚さは同一でも異なっていてもよい。導電層は銅層を含むことができる。好適な導電層は、回路の形成において現在使用されている銅箔等の導電性金属の薄層、例えば、JX金属株式会社、東京都、日本から市販されているHA、HA-V2及びHG等の、屈曲可撓性(高屈曲疲労性)を呈する高度に立体配向した粒状構造アニール銅箔等の電着又はアニール銅箔を含むが、これらに制限されない。
【0083】
銅箔は、5マイクロメートル以下、又は0.1~3マイクロメートル、又は0.05~0.7マイクロメートルの二乗平均平方根(RMS)の粗さを有し得る。本明細書で使用される場合、導電層の粗さは、接触モードにおいて原子間力顕微鏡法によって決定することができ、測定された5つの最も高いピーク値の合計から5つの最も低い谷の値の合計を差し引き、次いで、5で除して決定することによって計算されたRzをマイクロメートル単位で報告し(JIS(日本工業規格)-B-0601)、又は、粗さは、非接触モードにおいて白色光走査干渉法を使用して決定することができ、処理された側面の表面のトポグラフィー及び質感を特徴付けるためにスティッチング技術(ISO 25178)を使用して、Sa、Sq、Szの高さパラメータとしてマイクロメートル単位で報告される。銅箔は、例えば、0.05~0.4のSa、0.01~1のSq、0.5~10のSz、又は0.5~30%のSdrのうちの少なくとも1つを有する、亜鉛を含まない低プロファイルの処理された側面の粗さを有する電池箔層であり得る。
【0084】
物品は複合材料を含むことができる。物品は、複合材料層及び少なくとも1つの追加の層を含むことができる多層物品を含むことができる。複合材料層は、5~200マイクロメートル、又は5~75マイクロメートルの厚さを有し得る。多層物品は、銅層、ガラス層、液晶性ポリマー(LCP)層、超低CTEポリイミドフィルム層、フッ素ポリマー層、セラミック層、ポリアラミド層、エポキシ層、又はポリエーテル層のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。
【0085】
物品は、プリプレグ、樹脂付き導電性(RCC)層、回路板、ボンドプライ、被覆フィルム、堆積材料、堆積フィルム、又はフレキシブルコアであってよい。複合材料は、非クラッド又はデクラッド誘電層、単一クラッド誘電層、又は二重クラッド誘電層であってよい。物品は半導体基板の堆積/再配線層の誘電体フィルムであってよい。
【0086】
二重クラッド積層体は、複合材料のそれぞれの側面に1つずつ、2つの導電層を有する。回路材料は複合材料を含むことができる。回路材料は、複合材料に固定して取り付けられた導電層、例えば、銅を有する一種の回路サブアセンブリである。例えば、プリント及びエッチングによって導電層をパターニングすることにより、回路を提供することができる。多層回路は複数の導電層を含むことができ、そのうちの少なくとも1つは導電性配線パターンを含有する。典型的には、多層回路は、熱又は圧力を印加しながらボンドプライを使用して2つ以上の材料を適切なアラインメントで一緒にラミネートすることによって形成され、そのうちの少なくとも1つは回路層を含有する。回路材料はそれ自体がアンテナとして機能し得る。
【0087】
ボンドプライは非補強であってよく、その結果、補強布を含まない。ボンドプライは、例えば、プリントされた回路材料中に使用される接着剤であってよい。ボンドプライは、2つの隣接する層を結合するのに使用することができる。ボンドプライは、15マイクロメートル未満の厚さを有する層を形成できるように良好な流動特性を有し得る。ボンドプライは可撓性であり得、フレックス又はリジッドフレックスの用途に使用することができる。
【0088】
堆積材料は、1つ以上の再配線層(RDL)形成等の半導体の適用に使用され得るが、これらに制限されない。例えば、複合材料は、アンテナインパッケージ(AiP)、システムインパッケージ(SiP)及び/又はシステムオン集積チップ(system on an integrated chip)(SoIC)等のガラスコアを含む高度なパッケージング基板に特に好適である。複数の集積チップが、パッケージオンパッケージ(PoP)の一部として1つ以上のチップ担体パッケージに封入され得る。かかるパッケージは、高周波(RF)、アナログ、又はデジタル機能を一体化し、単一モジュール中に能動系及び受動系の構成要素を含む。かかる装置のための適用は、超高速大容量(eMBB)、超高信頼低遅延通信(URLLC)、超多数同時接続通信(mMTC)及び高周波数、高速スピードのマシンからクラウドへの通信を含む。かかる装置のための基板は、典型的には、低温同時焼成セラミック(LTCC)、プリプレグ及び銅クラッド積層体(FR4エポキシ等)を含む多層状有機物、ファンアウトウエハレベル(FOWLP)エポキシモールディング化合物、又はガラスを含む。堆積材料は、そのために、ガラス、ケイ素に匹敵する超低等方性CTEを呈するポリイミドフィルム層、補強層(例えば、アラミド繊維補強ポリイミド又はガラス繊維補強エポキシ)、セラミック層、かなりの量のセラミック充填剤を含有する有機フィルム層又は非補強エポキシ層のうちの少なくとも1つを含む、安定化コア層に配置された複合材料を含む層を含むことができる。
【0089】
多層材料、例えば、堆積材料はガラス基板を含むことができる。ガラス基板は、高い弾性率、優良な寸法安定性、最小限の反り、及び相対的に低いコストを呈するために、改良されたプロセスの精密性を実現するのに特に適する。ガラスはまた、極端に平滑で平面的なトポグラフィーを呈する。ガラスの組成物はまた、ケイ素に匹敵する熱膨張率(CTE)を達成するために配合され得、また写真画像が形成可能であり、それにより全体的な設計中のビア及び戦略的に置かれた空洞の写真による定義が実現する。写真により定義可能な薄いガラス基板と合わせた複合材料層により低誘電損失、誘電体材料としての空気の戦略的組み込み、GPU、ロジック及び/若しくはメモリチップレットを収容するための空洞の戦略的組み込みの最適な組み合わせが実現でき、並びに/又は冷却、堆積再配線複合材料層並びにガラス基板の両方に写真により定義されるビアを含む多層状配線密度、精密プロセス、適合性のあるアセンブリ、及び後続の信頼性を実現できる。
【0090】
本明細書に開示されているとおり、熱硬化性組成物は、式1又は式2のうちの少なくとも1つのイミド延長化合物と、イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーとを含むことができる。式1又は式2において、それぞれのRは独立して、二価の置換若しくは非置換の脂肪族基、アルケニル基、芳香族基、若しくは複素環式芳香族基であってよく、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのQは独立して、二価の若しくは四価の置換若しくは非置換の脂肪族基、アルケニル基、芳香族基、若しくは複素環式芳香族基、又は二価のシロキサン基であってよく、それぞれのR2は独立して、反応性アルケニル末端基を含むことができる。式(1)又は式2において、それぞれのR2は独立して、マレイミド基、シトラコンイミド基、スチリル基、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基、アルキニル基、プロパルギルエーテル基、シアノ基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキサゾリン基、ベンゾオキサジン基、又はメチルノルボルネン基を含むことができる。イミド延長化合物は、式(3)のビスマレイミド化合物を含むことができる。イミド延長化合物は、式(4)のビススチリル化合物を含むことができる。イミド延長化合物は、式(5)のビスビニルベンジル化合物を含むことができる。イミド延長化合物は、式(6)のビスビニル化合物を含むことができる。イミド延長化合物は、式(7)のビスアリル化合物を含むことができる。イミド延長化合物は、式(8)を有する化合物を含むことができる。イミド延長化合物の重合度は、1~100又は2~10であり得る。熱硬化性組成物は、組成物の全体積に基づき、10~90体積パーセント、又は25~75体積パーセント、又は30~50体積パーセントのイミド延長化合物を含むことができる。反応性モノマーは、(イソ)シアヌル酸トリアリルを含み得る。組成物は、組成物の全体積に基づき、1~40体積パーセント、又は10~35体積パーセント、又は20~30体積パーセントの反応性モノマーを含むことができる。
【0091】
熱硬化性組成物は、フリーラジカル開始剤、溶融シリカ、官能化溶融シリカ、難燃剤、又はセラミック充填剤のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。熱硬化性組成物は、フリーラジカル開始剤を含むことができる。フリーラジカル開始剤は、ジクミルペルオキシド、ジメチルジフェニルヘキサン、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、α,α'-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、オクタノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、α,α'-アゾビス(イソブチロニトリル)、レドックス開始剤、アセチルアジド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、又はポリ(1,4-ジイソプロピルベンゼン)のうちの少なくとも1つを含むことができる。組成物は、組成物の全体積に基づき、0.1~10体積パーセント、又は2~8体積パーセントのフリーラジカル開始剤を含むことができる。熱硬化性組成物は溶融シリカを含むことができる。溶融シリカは、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有し得る。熱硬化性組成物は、架橋ネットワークに化学的にカップリングすることができる官能化溶融シリカを含むことができる。官能化溶融シリカは、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有し得る。官能化溶融シリカの官能基は、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、スチリル基、又はビニルベンジル基のうちの少なくとも1つを含むことができる。官能化溶融シリカの官能基は、(メタ)アクリレート基を含むことができる。熱硬化性組成物は、組成物の全体積に基づき、10~70体積パーセント、又は20~60体積パーセント、又は30~55体積パーセントの溶融シリカ及び/又は官能化溶融シリカを含むことができる。熱硬化性組成物は難燃剤を含むことができる。難燃剤は、組成物の全体積に基づき、5~25体積パーセント、又は8~20体積パーセントの難燃剤の量で存在することができる。熱硬化性組成物は、セラミック充填剤を含むことができる。セラミック充填剤は、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球体、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、又は水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0092】
熱硬化性組成物は、式(8)の10~90体積パーセントのイミド延長ビスマレイミドと、1~40体積パーセントの(イソ)シアヌル酸トリアリルと、0.1~10体積パーセントのフリーラジカル開始剤と、10~70体積パーセントのメタクリレート官能化溶融シリカとを含むことができ、その体積は熱硬化性組成物の全体積に基づく。
【0093】
熱硬化複合材料は、熱硬化性組成物由来であってよい。複合材料は、1センチメートル当たり0.35キログラム以上の銅に対する剥離強度を有し得る。複合材料は、摂氏-50~150度で、摂氏1度当たり40百万分率以下、又は摂氏1度当たり35百万分率以下のz-方向の平均熱膨張率を有し得る。複合材料は10ギガヘルツにて2.5~3.5の誘電率を有し得る。複合材料は、10ギガヘルツにて0.0025以下、又は0.0020以下、又は0.001~0.0025の誘電損失を有し得る。複合材料は、補強織又は不織布を含むことができる。補強布は、NEガラス繊維、Lガラス繊維、又は石英繊維のうちの少なくとも1つを含むことができる。補強布は、液晶性ポリマー(LCP)繊維、アラミド繊維、環状オレフィンコポリマー(COC)繊維又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維のうちの少なくとも1つを含むことができる。補強布は、開繊織り補強布であり得る。補強布は、熱硬化複合材料の総質量に基づき、5~40質量パーセント、又は15~25質量パーセントの量で存在することができる。
【0094】
複合材料を製造する方法は、組成物から形成される層を硬化させる工程を含むことができる。硬化させる工程は、層の温度を上昇させる工程、又は層を電子ビーム照射に曝露する工程、又は層を紫外線(UV)照射に曝露する工程のうちの少なくとも1つを含むことができる。方法は、組成物を剥離ライナーの上にキャストすることによって層を形成する工程を含むことができる。方法は、組成物を銅又はアルミニウム等の金属箔の上にキャストすることによって層を形成する工程を含むことができる。方法は、硬化させる工程に先行して、補強層に組成物を含浸させる工程を含むことができる。
【0095】
物品は複合材料を含むことができる。物品は多層物品であってよい。多層物品は、銅層、ガラス層、液晶性ポリマー(LCP)層、超低CTEポリイミドフィルム層、フッ素ポリマー層、セラミック層、ポリアラミド層、エポキシ層、又はポリエーテル層のうちの少なくとも1つを含むことができる。物品は、アンテナ、ボンドプライ、堆積フィルム、回路板、樹脂付き銅箔(RCC)、又はフレキシブルコアであってよい。
【0096】
次の実施例は、本開示を説明するために提供される。実施例は例示に過ぎず、本開示に従って製造される装置を、本明細書で言及される材料、条件、又はプロセスパラメータに制限することは意図されない。
【実施例】
【0097】
本実施例では、誘電率(Dk)及び誘電損失(Df)(損失正接とも称される)は、23~25℃の温度、50%の相対湿度及び10ギガヘルツ(GHz)周波数にて、「層状誘電体標本の精密測定値のためのスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)法」(IEEE Xplore Conference Paper、2000年2月)に従って測定された。
【0098】
湿式及び乾式フィルムの等級は恣意的、相対的に割り当てられ、0が最低等級であり、3が最高等級である。
【0099】
z-方向の熱膨張率(CTE)は、「高密度相互接続(HDI)とマイクロビアに使用される材料のガラス転移温度と熱膨張-TMA法」(IPC-TM-650 2.4.24.5)に従って決定された。単位は、摂氏1度当たり百万分率(ppm/℃)で報告される。
【0100】
弾性率は、「高密度相互接続(HDI)とマイクロビアに使用される材料のガラス転移と弾性率-DMA法」(IPC-TM-650 2.4.24.4)に従って決定された。単位はギガパスカル(GPa)で報告される。
【0101】
剥離強度は、「金属クラッド積層体の剥離強度」(IPC-TM-650 2.4.8)に従って決定された。単位は、ポンド毎インチ(lbs/in)で報告される。
【0102】
難燃性は、Underwriter's Laboratory UL 94の安全性基準「機器の部品に使用されるプラスチック材料の燃焼性試験」に従って決定され、V0の難燃性は、達成するのが最も困難であり、試験材料の5つの試験片が5秒以下の平均消炎時間を有し、滴下することなく自己消火することが求められる。6ミル(0.15ミリメートル)厚の試験片について試験を行った。
【0103】
高温炉を使用して試験試料内の全ての有機物質を完全に分解し、酸化させ、残留無機物質の質量に基づく量を決定して、灰分含量が決定された。
【0104】
最小溶融粘度(MMV)は、毎分10℃の昇温で平行板の振動レオロジーを使用して決定された。フィルムが最小の溶融状態になり、架橋剤が分子量を増加させ始める前にフィルムが軟化し始める粘度及び温度が、最小溶融粘度及び対応する温度として取得される。
【0105】
本実施例では、1オンス銅箔という専門用語は、1オンス(29.6ミリリットル)の銅が平坦にプレスされ、一平方フィート(929平方センチメートル)の面積に均一に広げられる場合に達成される銅層の厚さを指す。相当する厚さは1.37ミル(0.0347ミリメートル)である。1/2オンス銅箔は、それに応じ0.01735ミリメートルの厚さを有する。
【0106】
本実施例において使用した成分を、Table 1(表1)に示す。
【0107】
【0108】
(実施例1)
イミド延長複合材料の調製
Table 2(表2)に記載されるとおりの55wt%の固形物質をトルエン中に含む熱硬化性のイミド延長組成物を形成した。
【0109】
【0110】
ナイフオーバーロール技術を使用して、熱硬化性の組成物を2ミル(50.8マイクロメートル)のポリ(テレフタル酸エチレン)基板の上にキャストした。キャストする工程を、180°F(82℃)、220°F(104℃)、220°F(104℃)、及び300°F(149℃)の上昇する温度で4つの加熱区間を通して、9ft/分(2.7メートル/分)のラインスピードで行った。次いで、キャストされた複合材料を、360°F(182℃)の温度にて2時間、0.7ポンド毎平方インチ(4.8キロパスカル)の圧力でラミネートした。
【0111】
(実施例2)
ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)複合材料の調製
Table 3(表3)に記載されるとおりのPPOを含有する熱硬化性の組成物を形成した。
【0112】
【0113】
ナイフオーバーロール技術を使用して、熱硬化性の組成物を2ミルのポリ(テレフタル酸エチレン)基板の上にキャストした。キャストする工程を、150°F(66℃)、200°F(93℃)、220°F(104℃)、及び220°F(104℃)の上昇する温度で4つの加熱区間を通して、10ft/分(3メートル/分)のラインスピードで行った。次いで、キャストされた複合材料を、450°F(232℃)の温度にて2時間、0.7ポンド毎平方インチ(4.8キロパスカル)の圧力でラミネートした。
【0114】
(実施例3)
イミド延長複合材料とPPO複合材料の比較
実施例1及び2の複合材料の種々の特性を測定し、Table 4(表4)に提供する。
【0115】
【0116】
Table 4(表4)は、イミド延長複合材料が、実施例2のPPO複合材料と比較して、低減した誘電損失、低減したz-方向の熱膨張率、より低い弾性率、及び改良された難燃性を有することを示す。
【0117】
加えて、PPO複合材料はたわみが観察され、すなわち、硬化させる工程の後、平坦なままではなく応力亀裂が入り、観測可能な応力亀裂がなく平坦なままである実施例1のイミド延長複合材料と比較して、より熱酸化していることが見出された。これらの結果は、
図1、
図2、及び
図3中で観察することができる。
図1は、テーブル上に平に横たわる実施例1のイミド延長複合材料の写真画像である。
図2は、高いコーナーを指す矢印によって表示されるように、折り曲げられている実施例2のPPO複合材料の写真画像である。
図3は、3つのガラス基板の写真画像であり、基板0は参照用として非コーティングであり、基板1は実施例1のイミド延長複合材料がラミネートされ、基板2は実施例2のPPOがラミネートされていた。基板1は応力亀裂がない一方、他方では、基板2は顕著な応力亀裂を呈する。
【0118】
(実施例4~5)
イミド延長複合材料へのメタクリレート溶融シリカの体積充填率の効果
Table 5(表5)に示すとおりの熱硬化性の組成物を使用して、2つのイミド延長複合材料を実施例1に従って調製し、入手したままのガラス基板、及び1.05グラムの濃硫酸(95~98%)を取得し100mLまで希釈することによって調製した1%の硫酸水溶液で処理された、圧延アニール銅(1/2オンスRLD、超超低プロファイル)の光沢側面に、熱硬化性の組成物をラミネートした。種々の特性を測定し、Table 5(表5)に示す。
【0119】
【0120】
これらの結果は、メタクリレート溶融シリカの高い体積充填率が結果として得られる熱膨張率を低減させる効果を説明する。
【0121】
(実施例6~10)
得られるイミド延長複合材料のCTE-zへのイミド延長化合物の効果
Table 6(表6)に示すとおりの異なる二官能性イミド延長化合物を使用して、5つの複合材料を調製した。得られる特性が決定され、更にTable 6(表6)に示す。
【0122】
【0123】
Table 6(表6)は、イミド延長化合物-1を含有するものと比較して、イミド延長化合物-2を含有する熱硬化された複合材料は、CTE-z値がより大きかったことを示す。これらの結果は、結果として得られる熱膨張率へのイミド延長化合物の効果を説明する。
【0124】
本開示の種々の非限定的な態様が以下に言及される。
【0125】
態様1:次の構造:
【0126】
【0127】
のイミド延長化合物(式中、R及びQはそれぞれ独立して、二価の置換若しくは非置換の脂肪族基、アルケニル基、芳香族基、複素環式芳香族基、又は二価のシロキサン基であり、それぞれのR2は独立して、反応性アルケニル末端基を含む)と、イミド延長化合物の反応性末端基とフリーラジカル架橋性であって架橋ネットワークを生成する反応性モノマーとを含む熱硬化性組成物。
【0128】
態様2:それぞれのR2が独立して、マレイミド基、シトラコンイミド基、スチリル基、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基、アルキニル基、プロパルギルエーテル基、シアノ基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキサゾリン基、ベンゾオキサジン基、又はメチルノルボルネン基を含む、態様1に記載の熱硬化性組成物。
【0129】
態様3:イミド延長化合物が次の式:
【0130】
【0131】
のビスマレイミド化合物を含む、態様1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【0132】
態様4:イミド延長化合物が、次の式:
【0133】
【0134】
のビススチリル化合物を含む、態様1から3のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
【0135】
態様5:イミド延長化合物が、次の式:
【0136】
【0137】
のビスビニルベンジル化合物を含む、態様1から4のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
【0138】
態様6:イミド延長化合物が、次の式:
【0139】
【0140】
のビスビニル化合物を含む、態様1から5のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
【0141】
態様7:イミド延長化合物が、次の式:
【0142】
【0143】
のビスアリル化合物を含む、態様1から6のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
【0144】
態様8:イミド延長化合物が、式:
【0145】
【0146】
を有する化合物(式中、nは、1~100、又は2~10の整数である)を含む、態様1から7のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
【0147】
態様9:組成物が、組成物の全体積に基づき、10~90体積パーセント、又は25~75体積パーセント、又は30~50体積パーセントのイミド延長化合物を含む、態様1から8のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0148】
態様10:反応性モノマーが(イソ)シアヌル酸トリアリルを含む、態様1から9のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0149】
態様11:組成物が、組成物の全体積に基づき、1~40体積パーセント、又は10~35体積パーセント、又は20~30体積パーセントの反応性モノマーを含む、態様1から10のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0150】
態様12:フリーラジカル開始剤を更に含み、フリーラジカル開始剤が、任意選択で、ジクミルペルオキシド、ジメチルジフェニルヘキサン、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、α,α'-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、若しくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、オクタノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、α,α'-アゾビス(イソブチロニトリル)、レドックス開始剤、アセチルアジド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、若しくはポリ(1,4-ジイソプロピルベンゼン)のうちの少なくとも1つを含み、及び/又は組成物が、組成物の全体積に基づき、0.1~10体積パーセント、若しくは2~8体積パーセントのフリーラジカル開始剤を含む、態様1から11のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0151】
態様13:溶融シリカを更に含み、溶融シリカが、任意選択で、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有する、溶融シリカを更に含む、態様1から12のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0152】
態様14:架橋ネットワークに化学的にカップリングすることができる官能化溶融シリカを更に含み、官能化溶融シリカが、任意選択で、1~50マイクロメートル、又は1~10マイクロメートルのメジアン径を有する球状構造形態を有する、態様1から13のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0153】
態様15:組成物が、組成物の全体積に基づき、10~70体積パーセント、又は20~60体積パーセント、又は30~55体積パーセントの溶融シリカを含む、態様1から14のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0154】
態様16:組成物が、組成物の全体積に基づき、10~70体積パーセント、又は20~60体積パーセント、又は30~55体積パーセントの官能化溶融シリカを含む、態様1から15のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0155】
態様17:溶融シリカが、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、スチリル基、又はビニルベンジル基のうちの少なくとも1つを含む官能基で官能化されており、好ましくは、官能化溶融シリカの官能基が、(メタ)アクリレート基を含む、態様1から16のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0156】
態様18:組成物の全体積に基づき、5~25体積パーセント、又は8~20体積パーセントの難燃剤を更に含む、態様1から17のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0157】
態様19:セラミック充填剤を更に含み、セラミック充填剤が、任意選択で、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球体、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、又は水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、態様1から18のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0158】
態様20:式:
【0159】
【0160】
を有する、10~90体積パーセントのイミド延長ビスマレイミドと、1~40体積パーセントの(イソ)シアヌル酸トリアリルと、0.1~10体積パーセントのフリーラジカル開始剤と、10~70体積パーセントのメタクリレート官能化溶融シリカとを含み、体積が熱硬化性組成物の全体積に基づく、態様1から19のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物。
【0161】
態様21:態様1から20のいずれか1つ以上に記載の熱硬化性組成物に由来する、熱硬化複合材料。
【0162】
態様22:複合材料が、1センチメートル当たり0.35キログラム以上の銅に対する剥離強度、摂氏-50~150度で、摂氏1度当たり40百万分率以下、又は摂氏1度当たり35百万分率以下のz-方向の平均熱膨張率、10ギガヘルツにて2.5~3.5の誘電率、又は10ギガヘルツにて、0.0025以下、若しくは0.0020以下、若しくは0.001~0.0025の誘電損失のうちの少なくとも1つを有する、態様21の熱硬化複合材料。
【0163】
態様23: 補強布を更に含み、補強布が、任意選択で、NEガラス繊維、Lガラス繊維、又は石英繊維のうちの少なくとも1つを含み、補強布が、任意選択で、熱硬化複合材料の総質量に基づき、5~40質量パーセント、又は15~25質量パーセントの量で存在する開繊織り補強布である、補強布を更に含む、態様21又は22に記載の熱硬化複合材料。
【0164】
態様24:補強織布又は補強不織布を更に含み、補強布又は補強不織布が、任意選択で、液晶性ポリマー(LCP)繊維、アラミド繊維、環状オレフィンコポリマー(COC)繊維又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維のうちの少なくとも1つを含み、補強布又は補強不織布が、熱硬化複合材料の総質量に基づき、5~40質量パーセント、又は15~25質量パーセントの量で存在する、態様21から23のいずれか1つに記載の熱硬化複合材料。
【0165】
態様25:態様1から19のいずれか1つ以上に記載の組成物から形成される層を硬化させる工程を含む、態様21から24のいずれか1つに記載の複合材料を製造する方法。
【0166】
態様26:硬化させる工程が、層の温度を上昇させる工程、又は層を電子ビーム照射に曝露する工程、又は層を紫外線(UV)照射に曝露する工程のうちの少なくとも1つを含む、態様25に記載の方法。
【0167】
態様27:組成物を剥離ライナーの上にキャストすることによって層を形成する工程を更に含む、態様25から26のいずれか1つ以上に記載の方法。
【0168】
態様28:組成物を銅又はアルミニウム等の金属箔の上にキャストすることによって層を形成する工程を更に含む、態様25から27のいずれか1つ以上に記載の方法。
【0169】
態様29:硬化させる工程に先行して補強層に組成物を含浸させる工程を更に含む、態様25から28のいずれか1つ以上に記載の方法。
【0170】
態様30:態様21から24のいずれか1つ以上に記載の複合材料を含む、多層物品。
【0171】
態様31:銅層、ガラス層、液晶性ポリマー(LCP)層、超低CTEポリイミドフィルム層、フッ素ポリマー層、セラミック層、ポリアラミド層、エポキシ層、又はポリエーテル層のうちの少なくとも1つを更に含む、態様30に記載の多層物品。
【0172】
態様32:態様21から24のいずれか1つ以上に記載の複合材料を含む、物品。
【0173】
態様33:アンテナ、ボンドプライ、半導体基板の堆積/再配線層の誘電体フィルム、回路板、樹脂被覆銅箔(RCC)、又はフレキシブルコアである、態様32に記載の物品。
【0174】
組成物、方法、及び物品は、本明細書に開示されるあらゆる適切な材料、工程、又は成分を代替的に含む、それらからなる、又はそれらから本質的になることができる。組成物、方法、及び物品の機能又は目的を達成するのに、そうでなければ必要ではないあらゆる材料(又は種類)、工程、又は成分を欠いているか、又はそれらが実質的にないように、追加的に、又は代替的に考案することができる。
【0175】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「少なくとも1つの」は、量の制限を表すのではなく、別様に文脈が明確に表示されていなければ、単数及び複数の両方を対象にすることが意図される。例えば、「1つの要素(an element)」は、別様に文脈が明確に表示されていなければ、「少なくとも1つの要素」と同一の意味を有する。用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を包含する。更には、「~のうちの少なくとも1つ」は、列挙された物が、それぞれの要素を個々に、並びに列挙された物の2つ以上の要素の組み合わせ、及び列挙された物のうちの少なくとも1つの要素と列挙されていない同様の要素との組み合わせを包含することを意味する。
【0176】
用語「又は」は、文脈によって、別様に明確に表示されていなければ、「及び/又は」を意味する。明細書全体にわたる「態様」、「別の態様」、「一部の態様」、その他の参照は、本態様に関連して記載された特定の要素(例えば、特質、構造、工程、又は特徴)が、本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様中に存在してもしなくてもよいことを意味する。加えて、記載された要素は、種々の態様におけるあらゆる好適な方法で混合してよいと理解されるべきである。
【0177】
層、フィルム、領域、又は基板等のある要素が、別の要素の「上に」あると称される場合、他の要素の直接上にあることができ、又は介在する要素が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上に」あると称される場合、介在する要素は存在しない。
【0178】
本明細書に特に断りのない限り、全ての試験基準は、本出願の出願日現在の、又は、優先権が主張される場合、試験基準が出現する最初の優先権出願の出願日の有効な最新の基準である。
【0179】
あらゆる溶媒を差し引いた熱硬化性組成物の成分の量は、結果として得る複合材料におけるそれらの個別の量に直接的に対応し得ることに留意されたい。例えば、25vol%の溶融シリカを含む熱硬化性組成物に由来する複合材料は、それ自体が、複合材料の全体積に基づき25vol%の溶融シリカを含むであろう。本明細書に表示される量は、あらゆる溶媒又は補強布を差し引いた組成物又は複合材料の、総質量又は全体積に基づくことにも留意されたい。
【0180】
同一成分又は特性を指す全ての範囲の端点は端点を包含し、独立して組み合わせ可能であり、全ての中間点及び範囲を含む。例えば、「最大で25vol%、又は5~20vol%」の範囲は、端点及び10~23vol%他等の「5~25vol%」の範囲の全ての中間値を包含する。
【0181】
別様に定義されなければ、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって共通して理解されるのと同一の意味を有する。
【0182】
化合物は標準的な命名法を使用して記載されている。例えば、表示された基によって置換されない配置は、表示された結合、又は水素原子によって充填されたその原子価を有すると理解される。2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の連結の点を表示するために使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を介して連結されている。本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル基の両方を包含する。
【0183】
全ての引用された特許、特許出願、及び他の参照文献は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願における用語が、組み込まれた参照文献における用語と矛盾する又は相反する場合、本出願からの用語が、組み込まれた参照文献からの相反する用語よりも優先する。
【0184】
特定の実施形態が記載されているが、今あるか、又は現在予見できない代替法、修正、変更、改良、及び実質的な等価物が、本出願人又は他の当業者に生じ得る。したがって、付随する特許請求の範囲は、出願時及びそれらが補正される際に、全てのかかる代替法、修正変更、改良、及び実質的な等価物を包含することが意図される。
【国際調査報告】