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特表2025-504868媒体を能動的に減衰する補償要素、方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】媒体を能動的に減衰する補償要素、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/04 20060101AFI20250212BHJP
   F16L 55/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
F16L55/04
F16L55/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543171
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2023050609
(87)【国際公開番号】W WO2023138972
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】102022101448.7
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515263738
【氏名又は名称】インテグレイテッド ダイナミクス エンジニアリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Integrated Dynamics Engineering GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermannstrasse 9-13, 65479 Raunheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ハルトゲアス
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ヴェーホフ
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025CB21
3H025CB34
(57)【要約】
本発明は、媒体(24)、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素(1,10~16)に関する。補償要素は、内部容積(23)を有する中空体(20)であって、内部容積(23)内に補償容積(41)が形成され、中空体(20)が、補償容積(41)を、媒体(24)の供給および排出のために使用される流体管路(51,52)に接続する少なくとも2つの開口(21,22)をさらに有しており、補償要素(1,10~16)が、流体管路(51,52)から破壊することなく取外し可能である中空体(20)と、運転中に補償容積(41)を拡大または縮小させることができる少なくとも1つのアクチュエータ(30)と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素であって、
-内部容積を有する中空体であって、
前記内部容積内に補償容積が形成され、前記中空体が、前記補償容積を周囲に接続する少なくとも2つの開口をさらに有している、中空体と、
-運転中に前記補償容積を拡大または縮小させることができる少なくとも1つのアクチュエータと、
を備える補償要素。
【請求項2】
前記媒体が、気体状または液状の形態の流体、特に0.1MPaの基準圧力および10℃の温度で、少なくとも1.0・10Pa、好ましくは少なくとも1.5・10Pa、特に好ましくは少なくとも2.0・10Paの体積弾性係数を有する液状の流体を含む、請求項1記載の補償要素。
【請求項3】
前記流体が、侵食性または腐食性を有する気体または液体、例えば1~50μS/cmの導電率、好ましくは0.1~1μS/cmの導電率、特に好ましくは0.055~0.1μS/cmの導電率を有する脱塩水、特に半導体産業において使用されるような超純水または例えば誘電性液体も含む、請求項1または2記載の補償要素。
【請求項4】
前記媒体が、流体管路、管路系統、液圧区間、圧力管路または適切な容器もしくは入れ物に含まれている、請求項1から3までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項5】
前記補償要素の前記開口が、前記流体管路に力結合式および/または形状結合式に接続されており、運転中に粘性の前記媒体が前記流体管路から前記補償容積内に到達するかまたは流入することができる、請求項1から4までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項6】
前記補償要素が、破壊することなく前記流体管路から取り外し可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項7】
前記補償要素が直接に、機械、設備部分または機器に接続可能であるかまたは接続されており、該接続が好適には破壊することなく取外し可能に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項8】
補償要素と流体管路との間の前記接続が、流体密に形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項9】
前記中空体の第1の開口が、前記流体管路の、圧力変動にさらされている少なくとも1つの区分に接続されている、かつ/または、前記中空体の第2の開口が、前記流体管路に接続されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項10】
前記アクチュエータが、前記内部容積外に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項11】
前記アクチュエータが、前記中空体の前記内部容積内に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項12】
前記アクチュエータが、運転中に、好適には前記流体管路内の圧力変動に依存した運動により、好適にはストローク運動により、前記補償容積の大きさを変化させることができる、請求項1から11までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項13】
前記アクチュエータが、磁気、圧電または静電原理に基づく駆動装置、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項14】
前記アクチュエータが、圧電材料を備えた駆動装置を含み、前記アクチュエータが、侵食性または腐食性を有する流体から好適にはコーティングにより保護されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項15】
前記内部容積が、可撓性のダイヤフラムにより2つの部分容積に分割されており、これにより前記補償容積の他に付加的な平衡容積が形成される、請求項1から14までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項16】
押圧体が設けられており、該押圧体が前記アクチュエータによって移動され、かつ前記可撓性のダイヤフラムに作用することができる、請求項1から15までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項17】
好適には前記中空体の少なくとも1つの開口内に、かつ/または前記流体管路内に、全圧を特定するための少なくとも1つの圧力センサが設けられている、請求項1から16までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項18】
前記補償要素により前記アクチュエータに作用する力を測定する少なくとも1つの力センサが設けられている、請求項1から17までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項19】
前記補償要素の調整を、「フィードバック制御」法に従って、または外乱値入力を有する「フィードフォワード制御」法に従って行う、請求項1から18までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項20】
前記補償要素の前記調整のために、前記媒体の流速を考慮する、請求項1から19までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項21】
前記内部容積を有する前記中空体が、前記流体管路により提供される、請求項1から20までのいずれか1項記載の補償要素。
【請求項22】
容積変化が、前記アクチュエータによる前記流体管路全体の実質的に半径方向の変位により、または前記流体管路の単に1つの壁の変位により運転中に引き起こされる、請求項21記載の補償要素。
【請求項23】
前記流体管路が長さ方向で可撓に形成されており、前記容積変化が、前記流体管路の軸方向の長さ変化により引き起こされる、請求項21記載の補償要素。
【請求項24】
媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する方法であって、
-補償要素を準備するステップと、
-圧力センサにより流体管路内の媒体の全圧を検出するステップと、
-予め規定された圧力Pに対する入口側の圧力差ΔΡΕを求めるステップと、
-アクチュエータのための電気的なパラメータ、特に電圧のための設定値を計算し、この設定値をアクチュエータに伝送するステップと、
-容積の変化により圧力差を補償することができるように、補償容積を縮小または拡大するための前記設定値に基づいて、前記アクチュエータを用いて前記補償容積を変化させるステップと、
を含む方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法を実施するために構成されており、かつ/または、請求項1から24までのいずれか1項記載の補償要素を含む、粘性の媒体、特に流体の振動を能動的に減衰するシステム。
【請求項26】
請求項1から24までのいずれか1項記載の補償要素を含む、媒体、特に流体の質量流を制御するシステム。
【請求項27】
前記システムを流体の調量または流体の混合のために使用する、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
請求項1から24までのいずれか1項記載の補償要素を含む、特に半導体産業分野の機械、設備またはその他の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、媒体、特に流体の揺動(Schwingung)を能動的に減衰する補償要素ならびに方法およびシステムに関する。この補償要素により、例えば管路系統における圧力変動を補償することができる。
【背景技術】
【0002】
媒体、特に流体による揺動の伝達は、以前から問題となっている。液体が非圧縮性である場合には、伝播時に揺動が僅かにしか減衰されないので、揺動は遠くまで伝播してしまう。このことは、例えば液体が満たされた管路系統であって、敏感な機械および設備が接続されており管路系統内における一定の圧力に対して対応して高い要求が課されている管路系統にも該当する。起こり得る圧力変動を低減するために、様々な解決手段が開発されている。
【0003】
したがって、例えば、いわばフレキシブルな補償器として膨張容器が知られている。膨張容器は、閉じられた管路系統内において圧力上昇時には管路容積を拡大し、かつ逆に圧力降下時には管路容積を減じることを可能にする。しかし、これは、この補償器または容器の下流側の圧力が低くなることにつながる。
【0004】
特定の用途のために、例えば一定の圧力状況に対して極めて高い要求を課している精密機器では、圧力変化を効果的に補償するために、膨張容器のために比較的大きな容積が必要となることがある。圧力変化は、特に例えば水のような非圧縮性の流体の場合、揺動をもたらすことがあり、この揺動は、管路系統内で複数回反射され、ひいては長距離にわたって伝達され得る。この場合、例えば敏感な機器、例えば電子線機器、またはセンサも、妨害されるか、またはそれどころか損傷される恐れがある。容積変化も発生してしまい、この容積変化は、接続された機器または設備に不都合に作用を及ぼし得る。
【0005】
さらに、圧力変化は変形につながり、この変形は、さらなる損傷、またはそれどころか損傷をもたらし得る。
【0006】
このような背景から、このような解決手段は、どちらかというと、比較的低い要求が課されている用途のために使用される。したがって、このような膨張容器は、例えば、加熱循環路内の圧力を一定に保つために、または家庭の水循環路におけるウォータハンマを阻止するために使用される。通常、このような膨張容器は、特定の周波数範囲に合わせて調整されている。
【0007】
別の解決手段は、流れにおけるヘルムホルツに似た共鳴器の組み合わせによって、様々な周波数における圧力変動を補償するか、または少なくとも低減することを規定している。共鳴器は、周波数特性を適合させるために、減衰すべき容積および管長に依存して対応して選択される。
【0008】
圧力管路内の揺動を減衰するこのような減衰要素は、自動車のクラッチの例において独国特許出願公開第102013217119号明細書に記載されている。この場合、ヘルムホルツ共鳴器に基づいて作動する中空円筒形の減衰器が提案され、この減衰器は、減衰器容積を形成するための二重壁のハウジングを備えている。このような共鳴器は、典型的には正確に特定の周波数場に合わせて適合されており、次いで、この周波数場を効果的にフィルタリングすることができる。周波数スペクトルがより大きな場合には、減衰器容積を拡大させなければならない。
【0009】
液圧式の減衰要素は、同じく自動車のパワートレーンに設けられたクラッチの液圧式のレリーズシステムの例において、独国特許出願公開第102011081538号明細書に記載されている。この減衰要素は、回転可能に支承された減衰質量体を備えており、この減衰質量体は、流体管路を通る体積流によって回転させられる。
【0010】
このような減衰要素は信頼性があるかもしれないが、構造は極めて複雑であり、さらに一般に、例えば管路直径に比べて比較的大きい。さらに、これらの減衰要素は、容積および管路系統に合わせて個別に調整する必要がある。
【0011】
別の減衰システムは、例えば本出願人の欧州特許第2759735号明細書から公知であるような、電気粘性流体または磁気粘性流体を用いて作動する。この場合、減衰は、調整回路を介して個別に、かつ継続的に調節することができる。これは比較的手間がかかり、さらに、遅延する応答特性に起因して時間制約が厳しくなってしまう。
【0012】
したがって、これらの欠点を有していない補償要素または減衰要素が望ましい。
【0013】
補償要素または減衰要素は、できるだけ小さい構造サイズであることが望ましい。
【0014】
さらに、補償要素または減衰要素を少なくとも部分的に柔軟に、容積および管路系統の具体的な特徴に適合させることができ、つまり、各容積または各管路系統のために特別な補償要素または減衰要素を提供する必要がないと好都合である。
【0015】
さらに、設けられている管路系統に簡単に組み付けられると好都合である。
【0016】
さらに、補償要素または減衰要素が、様々な媒体、特に様々な流体と一緒に使用可能であることが望ましい。この媒体には例えば、例えば半導体産業において使用され得るような、高い腐食性を有する超純水(UPW)を含む媒体、侵食性および/もしくは腐食性を有する別の媒体、または例えば誘電性液体のような液体、例えば多量のフッ素を含有する液体が含まれる。
【0017】
この課題のために発明者は尽力した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題は、独立請求項の1つに記載の、媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素、ならびに媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する方法およびシステムによって意想外に簡単に解決される。本発明の好適な実施形態または改良形は、それぞれの従属請求項から判る。
【0019】
したがって、本発明の対象は、媒体の揺動を能動的に減衰する補償要素であって、
-内部容積を有する中空体であって、
内部容積内に補償容積が形成され、中空体が、補償容積を周囲に接続することができる少なくとも2つの開口をさらに有している、中空体と、
-運転中に補償容積を拡大または縮小させることができる少なくとも1つのアクチュエータと、
を備えている補償要素である。
【0020】
アクチュエータは、本発明の好ましい実施形態によれば、内部容積内に配置されていてよいが、内部容積外に配置されていてもよい。
【0021】
媒体は、特に、気体状または液状の形態で存在し得る流体を含んでよい。補償要素は、特に好都合には、圧縮性の低い流体、または非圧縮性の流体、特に液体と一緒に使用することができる。このような流体は、0.1MPaの標準圧力および10℃の温度で、少なくとも1.0・10Pa、好ましくは少なくとも1.5・10Pa、特に好ましくは少なくとも2.0・10Paの体積弾性係数(圧縮率)を有する流体であると理解される。したがって、本発明にとって特に適した流体は、油、水または油・水混合物を含む。
【0022】
本発明の一実施形態では、媒体として脱塩水を使用する、つまり補償要素を浄化および/または脱塩された液体で運転することも規定されている。脱塩水は、導電率に基づいて、1~50μS/cmの導電率を有する浄化された塩分の少ない水(精製水「Purified Water」)、0.1~1μS/cmの導電率を有する純粋な水(純水「Pure Water」)、および0.055~0.1μS/cmの導電率を有する高純度の水(超純水「Ultrapure Water」)に分類することができる。
【0023】
本発明は、特に、半導体産業において要求されかつ使用されるような浄化された、純粋なまたは高純度の水または「超純水」(UPM)での運転のために適している。これらの液体では、例えば酸化可能な全炭素(TOC)、粒子または溶解ガスのようなさらに別のパラメータおよび量が検査され、減じられていてよい。したがって、本発明は、一態様において、塩分の少ない水、純粋な水および高純度の水で使用するために構成された補償要素にも関する。
【0024】
本発明の別の実施形態では、工業用流体または誘電性流体、特に液体、例えばフッ素を含有した流体、例えばフッ素を含有した液体を使用することも規定されている。一般に媒体は、浸食性または腐食性を有する液体または気体を含んでよい。
【0025】
媒体は、例えば、管路系統、流体管路、液圧区間、圧力管路内に含まれていてもよく、または一般にその他の適切な容器もしくは入れ物内に含まれているか、その内部に案内されていてもよい。
【0026】
以下では簡略的に流体管路のみに言及するが、液圧区間、圧力管路、管路系統または一般に、媒体、特に流体を収容するために適したその他の容器または入れ物も含まれるものとする。本発明の趣旨において、この流体管路は、運転中に、減衰すべき媒体、特に流体によって少なくとも部分的に満たされている。
【0027】
特定の実施形態では、中空体が、流体管路自体によって提供され得る。換言すれば、流体管路の所定の区間の内部容積が、補償容積として機能することができる。
【0028】
補償要素の開口は、流体管路に力結合式および/または形状結合式に接続されていてよい。このために、流体管路と開口との間に力結合式かつ/または形状結合式の接続部を形成するために適した接続手段または継手が設けられていてよい。有利には、これら接続手段または継手は、簡単な組付けおよび好適には破壊なしの取外しを可能にすることができるように選択されている。このようにして、補償要素を簡単に取り付けることができ、例えば溶接シームを省くことができ、これは、生じ得る変形または亀裂形成に関しても有利であり得る。起こり得る故障時には、補償要素を簡単に交換し、置き換えることができる。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、補償要素を、例えば水により冷却されるべき、かつ/または減衰されるべき設備部分または機器に直接に接続することも可能であり、かつ考えられる。当然ながら、例えばより大きな面積または領域を冷却するために、1つの設備または1つの機器に複数の補償要素が設けられていてもよい。
【0030】
このように取り付けられた補償要素は、流体管路に接続されていてよく、このことは、線形構造だけではなく、網目構造においても可能であり得る。このようにして、例えばより大きな面積も特に有利に冷却することができる。
【0031】
流体管路との接続を、補償要素の組付け後に形成することもできる。したがって、本発明は、一態様では、設備部分または機器に直接に接続可能であるか、または接続されている補償要素にも関する。このために適した取付け手段が補償要素に設けられていてもよいことは自明である。取付けは、例えば接着によって行うことができる。しかし、別の実施形態では、接続が破壊することなしに解除可能に構成されている場合も好都合であり得る。
【0032】
揺動を能動的に減衰するために、補償要素は、流体管路に固定的にかつ流体密に接続されていてよい。流体密とは、通常の運転時、つまり予め規定された圧力状況または温度状況において、補償要素と流体管路との間の接続個所において媒体または流体が流出しないことであると理解されたい。
【0033】
流体管路の、潜在的な圧力変動にさらされている区分を、中空体の第1の開口に接続することができる。さらに、第2の開口も、有利には同様に流体管路に接続されている。
【0034】
第1の開口は、以下では、入口または入口開口とも称され、第2の開口は、出口または出口開口とも称される。この場合、第1の開口と第2の開口との区別は、開口または開口に接続される流体管路の機能性に関するものであり、その技術的な構成に関しては当てはまらない。
【0035】
したがって、中空体の第2の開口は、入口を介して中空体の内部容積内、特に補償容積内に到達することができる媒体のための出口を提供する。流体管路内の入口側の圧力変動は、補償要素によって少なくとも低減されるか、または好適には補償されることができる。換言すると、入口側の圧力変動は、出口側では単に低減されて伝達されるか、または理想的にはもはや伝達されない。
【0036】
圧力変動とは、特に、流体管路内の粘性の媒体の動的な圧力変化に基づいて発生し得る圧力サージまたは圧力差であると理解されたい。これは、例えば、遮断水栓の迅速な閉開時に発生し得る、管路内の圧力上昇であってよく、または流体管路内のポンプの始動および停止であってもよい。特定の場合、動的な圧力変化は圧力衝撃または水撃とも称される。
【0037】
圧力サージの大きさは種々異なり、様々な要因に依存し、例えば流体管路の容積または媒体の圧縮率に依存し得る。一般に、圧縮性が低い液状の流体における圧力サージの大きさは、気体状の媒体の場合よりも高く、ここでは、流体の質量慣性も重要である。
【0038】
圧力変化は、本発明の枠内において圧力変動とも呼ばれる圧力波によって伝達される。圧力波は縦波である。流体管路内の流体の制動または加速は、ニュートンの第2法則を用いて特定することができる幾らかの力を必要とする。圧力変化または圧力変動により、特に水のような非圧縮性の流体では、流体管路に関する揺動が引き起こされ得る。
【0039】
揺動は、流体管路によって伝えられることもあり、流体管路によってより大きな区間にわたって伝えられることもあるので、ここでも減衰が必要となり得る。
【0040】
流体管路または設備あるいは個別の継手において揺動を切り離すかまたは減衰させるために、境界条件によって許容される限りは、例えばゴム、またはゴム状の構造要素、刻み目を有する構造要素、U字形管路、またはベローズのような構造要素を使用することも可能である。
【0041】
流体管路のこれらの揺動は、複数の不所望な効果をもたらし得る。例えば、変形および容積変化によって、冷却すべき設備または冷却すべき機器に対する間隔が変化してしまい、これによって冷却すべき設備または機器において応力が発生する可能性がある。これにより、冷却すべき領域の変形が生じ得る。
【0042】
さらに、圧力サージにより、該当するシステムにおいて、または該当するシステム内に損傷が生じ得る。例えば、敏感な機器、例えば電子ビーム機器、またはセンサも阻害されるか、またはそれどころか損傷される可能性がある。
【0043】
したがって、管路が最悪の場合には破裂し、または管路のホルダが損傷される可能性がある。流体管路に接続された継手、ポンプまたは基礎も、圧力サージによって損傷される可能性がある。これらの損傷は、比較的小さな損傷の場合、通常は直ちに視認することができないので、後続的な損傷が生じ得ることが問題である。
【0044】
特に、圧力サージまたは圧力変動は、高度に敏感な装置、機械もしくは設備、例えばナノテクノロジの分野における設備もしくは機器、または例えば高度に敏感な光学装置を備えた電子ビーム装置において、特に危機的であり得る。
【0045】
これは、例えば、半導体産業または半導体設備の機械、設備または装置が接続されている水冷循環路であって、水冷循環路内の圧力変動に高度に敏感に反応するかまたは敏感な部分を有する水冷循環路に関する。この場合に、1Paを著しく下回る範囲の圧力変動、例えば0.1Paを下回る範囲またはさらに0.01Paを下回る範囲の圧力変動が既に、プロセスを妨害するかまたは損ない得る偏差をもたらす恐れがあり、または、この圧力変動により、要求される精度をもはや維持することができないかつ/または損傷が生じる恐れがある。
【0046】
水は、例えば油の圧縮率よりも著しく高い圧縮率を有しているので、ほぼ非圧縮性であると云え、これによって圧力変化が、迅速かつ高い力で流体管路内に伝播し得る。
【0047】
本発明による補償要素は、流体管路内の圧力サージを低減するかまたは補償する働きをし、これによって、流体システム内の圧力変動または揺動を減衰させ、低減させ、または理想的には完全に補償することができる。したがって、本発明による補償要素は、流体管路内の圧力を所定のレベルに維持すると同時に、その値からの偏差が極めて小さくなることを可能にする。
【0048】
これに関連して、減衰とは、閉じられた液体循環路からの圧力に関するエネルギの除去であるとみなすことができる。この趣旨において減衰とは、機械的な揺動の減衰という意味での減衰よりも、媒体における圧力変動の低減である。このエネルギを除去するために、100%の効率を有しない、発熱につながる作業が必要である。補償要素の構造では、圧力変動が解消される媒体に、特筆すべき熱が供給されないことが確実にされることが望ましい。
【0049】
これは、理想的には、揺動の入口振幅が、出口側で測定してゼロにまで弱められるので、発生する揺動の完全な補償が得られる。しかし、本発明の趣旨において、減衰とは、減衰すべき揺動の入口振幅が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、またはそれどころか90%、99%以上、例えば99.5%以上減少することであるとも理解することができる。したがって、補償要素の出口側における出口振幅は、好適には、入口振幅に関して50%以下、40%以下、30%以下、10%以下、またはそれどころか1%以下、例えば0.5%以下である。さらに、本発明の趣旨において、この減衰は可能な限り短い時間で行われることが規定されている。
【0050】
これは、約0.01Hz~約20kHz、好適には0.1Hz~100Hzの周波数範囲に関する。
【0051】
質量流量制御器(「Mass Flow Controller」、MFC)を用いて、確かに質量流量を目標値に調整することができる。しかし、これらの制御器は、通常、質量流量がどちらかといえば慣性であるので、極めて確かかまたは極めて大きな質量流量を制御および調整するために要求される動的な範囲を有していない。
【0052】
スイッチオン時に、時間的に遅延したオーバシュートが生じる可能性があり、すなわち目標値を上回るかまたは過剰に制御される、あるいは目標値を下回るかまたは過小に制御される可能性があり、これは、極めて敏感なプロセスを扱う本発明には不都合である。
【0053】
したがって、本発明による補償要素は、本発明の別の態様においても、スイッチオンからスイッチオフまでの流体の極めて正確な一定の質量流量を提供する働きをすることができ、この場合、スイッチオンおよびスイッチオフ時の慣性は低い。
【0054】
本発明の趣旨において、このために、中空体の内部容積の一部、特に補償容積を利用することができ、この補償容積を、流体管路内で発生する圧力変動を補償するか、または少なくとも最小限にするために、能動的に拡大または縮小することができる。
【0055】
この補償容積は、流体管路内の圧力変動を補償するために、運転中にアクチュエータによって意図的かつ能動的に変化させることができる容積を提供する。補償容積を、本発明の趣旨において、アクチュエータの能動的な運動、例えばストローク運動によって、縮小または拡大することができる。換言すれば、アクチュエータは、運転中に補償容積を変化させ、これにより流体管路内の圧力変動を補償するために構成されている。
【0056】
アクチュエータは、磁気、圧電または静電原理に基づく駆動装置を含んでいてよい。このようなアクチュエータは、その予め規定された、または適切な使用領域に対する直接的かつ迅速な応答挙動の点で優れており、さらにその機械的な運動を、対応する電気的な駆動制御によって極めて正確に取り扱うことができる。本発明の改良形では、複数の組み合わせも想定されており、使用範囲を拡張するために、様々な原理に基づく駆動装置を互いに組み合わせることができる。
【0057】
一般に、制御器によって調整可能な電圧を印加することにより、中空体内の駆動装置の体積変化をもたらし得る駆動装置の変形を引き起こすことができる。中空体内に残っている補償容積を拡大することによって、正の圧力サージをいわば受け止めることができる。補償容積の減少によって、負の圧力変化を受け止めることができる。
【0058】
本発明の一実施形態では、アクチュエータのために、液状の流体において作業することができるか、または液状の流体に対して耐性を有する圧電材料を備えた駆動装置を選択することが規定されている。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、アクチュエータは、侵食性または腐食性を有する流体、特に「超純水」および/またはフッ素を含有する流体と一緒に、またはこれらの流体に接触して運転することができるように、保護されていてよい。したがって、例えば、流体に対して耐性のあるコーティングまたは保護層を設けることができる。例えば塩分の少ない純水または高度に純粋な水のような侵食性または腐食性を有する流体の場合には、例えば、タンタル、インコネル、モリブデンまたはそれらの組み合わせをベースとするか、またはこれらを含むような適切な腐食防止コーティングが考えられる。例えばPVDコーティングも考えられる。残りの継手および/または設備部分も対応して保護されていることが望ましいことは自明である。
【0060】
このようにして、アクチュエータを直接に内部容積内に配置することが可能である。本発明のこの実施形態の利点は、圧電活性の材料または圧電駆動装置を直接に中空室内に配置することができ、駆動装置を保護するための付加的な組込み部材が不要であることである。なぜならば、圧電駆動装置が、流体管路からの流体に直接に接触することができるからである。このようにして、補償要素を極めて簡単かつコンパクトに保持することができる。
【0061】
圧電材料の幾何学形状の適切な選択および中空体の内部容積内における配置により、圧電材料の体積変化またはストローク運動が補償容積の所望の変化をもたらすことを保証することができる。補償容積は、本発明の一実施形態によれば、アクチュエータが中空体の内部容積内に静止位置で、つまり電気的な影響を受けていない通常の大きさで配置されている場合に生じる容積に関する。
【0062】
本発明の改良形では、中空体の入口側におけるアクチュエータの運動は、出口側における運動よりも大きいことが規定されている。これによって、揺動の減衰または吸収が改善され、全体として改善された出力を達成することができる。これは、例えば、開口が中空体の一方の側に配置されており、圧電材料が中空体内で反対に位置する側に配置されている場合に達成することができる。この場合、入口開口に対する圧電材料の間隔は、出口開口に対する圧電材料の間隔よりも短い。中空体が矩形の横断面形状を有している場合、これは、例えば極めて簡単に、圧電材料の本体の、開口に向かって対応して傾斜した面によって実現することができる。傾斜により、好適には少なくとも1°、好ましくは少なくとも5°、特に好ましくは少なくとも10°であってよい角度αが生じ得る。
【0063】
本発明の同様に好ましい実施形態では、内部容積を可撓性ダイヤフラムによって2つの部分容積に分割し、これによって補償容積の他に、以下において平衡容積(Ausgleichsvolumen)とも呼ばれる第2の容積を形成することができる。補償容積は、開口に隣接する空間に対応配置されているので、補償容積は、媒体を流体管路から収容することができる。したがって、中空体内の補償容積は、可撓性ダイヤフラムにより取り囲まれており、このために媒体は流出することができない。このために、アクチュエータも、有利には同様に、補償容積外に配置されていてよい。
【0064】
可撓性ダイヤフラムは、例えばベローズを含んでいるか、またはベローズとして形成されていてもよい。材料として、例えば必要な変形に対して十分な弾性を有しているエラストマーが考慮される。
【0065】
しかしながら、真空または低真空下での使用時に、特定の材料は問題となり得、したがって特に侵食性または腐食性のある媒体と一緒に使用することができない。したがって、本発明のために、特に別の材料、または適切な構造形態の固い、あまり弾性でない材料、例えばステンレス鋼または特殊鋼のような特に金属製の材料も使用される。運転中に、補償容積は、媒体、例えば流体管路からの流体を収容することができる。
【0066】
このような配置の利点は、アクチュエータが可撓性のダイヤフラムによって媒体から保護されていることにある。これは、流体管路の媒体に対して耐性がないか、または耐性がなく形成可能な別の材料またはアクチュエータの使用を可能にする。さらに、補償容積は、アクチュエータの対応する運動によって、上述したように変化することができる。
【0067】
本発明の改良形では、押圧体が設けられており、この押圧体は、アクチュエータにより移動され、可撓性のダイヤフラムに作用することができる。これにより、アクチュエータから可撓性のダイヤフラムへの力導入を改善するかまたは容易にすることができる。
【0068】
アクチュエータの運動、ひいては補償容積の大きさは、電子的な計算ユニットにより監視されかつ調整可能な制御器によって制御することができる。計算ユニットを用いて、アクチュエータのための設定値を求め、補償を制御するためにアクチュエータに伝達することができる。これにより、補償容積の大きさを変更するために、アクチュエータに印加される電圧を制御することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、アクチュエータの調整、ひいては計算ユニットによる補償容積の大きさの調整は、入口開口における現在の圧力と、予め規定された圧力との偏差に基づいて行われる。したがって、入口開口では、予め規定された圧力Pと圧力差ΔΡΕとから構成される全圧を調節することができる。
【0070】
したがって、入口側の全圧は、PE=P+ΔΡΕとなる。代替的または付加的に、流体管路の1つまたは複数の箇所における全圧も、潜在的な圧力変動にさらされている側で測定することができる。
【0071】
このために、中空体の入口開口および/または流体管路内に、対応するセンサまたは圧力測定器が設けられていてもよい。この圧力測定器については以下でさらに詳しく説明する。
【0072】
したがって、計算ユニットは、流体管路内に占める圧力状況に関するデータを利用することができ、次いで、計算ユニットは、アクチュエータの電圧のための設定値を計算することができる。したがって、設定値は、圧力差を補償することができる補償容積の容積変化を生じさせるために、アクチュエータに印加されるべき電圧に相当する。このようにして、アクチュエータは、圧力の偏差ΔΡΕに適合された運動を実施することができ、この運動は、中空体内における補償容積の変化によって圧力差を減じ、または理想的には完全に補償することができる。したがって、流体管路内で発生する圧力変動を最小限にするか、または理想的には完全に補償することができるので、出口開口における全圧Pに関しては、P≒Pまたは理想的にはP=Pが成り立つ。
【0073】
換言すれば、本発明のこの実施形態では、中空体の出口において圧力のための予め規定された値が生じ、これによって圧力変動がゼロまたはほぼゼロになるように、補償容積を、流体管路内の圧力変動に基づくアクチュエータの対応する運動によって変化させることが規定されている。
【0074】
補償要素の調整は、圧力変動を低減するために、「フィードバック制御」法に従って、またはフィードバックされた調整(閉ループ制御)として構成されていてよい。アクチュエータの必要な運動は、制御装置における適切なフィルタによって決定される。調整の設計時には、オーバシュート、つまり過度に強い減衰を排除するために、アクチュエータ、例えば圧電材料の非線形効果および/またはヒステリシス効果を考慮すると有利である。
【0075】
本発明の改良形では、補償要素の調整時に媒体、特に流体の流速も考慮することが規定されている。このために、流体管路内の適切な箇所に、対応する測定装置またはセンサ、例えばピトー管が設けられていてよい。
【0076】
このフィードバックされた調整に対して代替的または付加的には、本発明の別の実施形態では、効率をさらに高めるために、「フィードフォワード」法または外乱値入力を調整に組み込むこともできる。このために、圧力変動が下流側、つまり、中空体の出口開口に接続されている流体管路内で測定され、対応してフィルタリングされて調整回路に供給される。
【0077】
本発明の別の実施形態は、調整パラメータとして、アクチュエータに作用する圧縮力を先行制御パラメータとして考慮することが規定されている。この調整ストラテジの目的は、圧縮力の変化が最小限にされるかまたは補償されるように、アクチュエータを制御することである。したがって、アクチュエータに作用する力は、可能な限り一定に保持される。付加的に、アクチュエータに力センサまたは力変換器が設けられていてもよく、この力センサまたは力変換器は、アクチュエータと補償容積との間に配置されていてよく、力センサまたは力変換器は、補償容積の変化に基づく圧縮力の変化を検出する。
【0078】
本発明のこの実施形態では、アクチュエータ、例えば圧電駆動装置は、圧電ベースの力センサと組み合わせることができる。
【0079】
圧電ベースの力センサの利点は、一定の直流圧力を測定することができず、力変化のみ認識することにある。このような圧電セラミック素子では、力作用によって電荷分布が発生し、この電荷分布は力に比例し、測定されることができる。圧電ベースの力センサを、圧力または剪断力を測定するために使用することもできる。圧電ベースの力変換器の使用時の利点は、これらの力変換器が高いダイナミクスで測定できることある。
【0080】
この調整ストラテジの利点は、流体管路内または流体管路に設けられた圧力センサが不要であるという点にある。これらのセンサは、極めて敏感であり得るので、運転時には、これらのセンサの機能性の手間のかかる監視が必要となることがある。
【0081】
全圧を測定するために、本発明の一実施形態では、特別な圧力センサが設けられている。これは、高い圧力、例えば50kPa以上、好ましくは100kPa以上の圧力の場合でも、全圧における変動または差を、0.1Pa、またはより良好な、好ましくは0.05Paまたは0.01Paの精度で測定することを可能にする。
【0082】
本発明による圧力センサは、相対圧力を検出するように構成されている。このような圧力センサでは、センサ素子の2つの側における圧力差が評価される。両側で平均圧が同じである場合、mPa範囲の変動を測定することができる。圧力センサの入口は、直接に流体管路に接続されていてよい。これにより、この側で全ての圧力変動が検出されることを確実にすることができる。しかし、この側にも高い全圧が占めている。流体管路の下流で正確に選択された距離から、圧力センサの別の入口に圧力フィードバックを与えることができる。適切な長さおよび適切な直径を有する毛管の使用および圧力センサにおける容積の利用により、特定の周波数を上回る圧力変動が、圧力センサのこの側に到達することができないことが確実になる。このようにして、毛管通路の幾何学形状および圧力センサの容積により決定されるカットオフ周波数を有するローパスフィルタを構成することができる。この構成により、圧力センサが一定の圧力を測定するのではなく、ローパスフィルタのカットオフ周波数を上回る変動のみを検出するようになる。この原理は、毛管を圧力アクチュエータの下流側に接続することにより、フィードフォワードセンサのために使用することができる。フィードバックセンサのために、メイン接続部も毛管も、圧力アクチュエータの下流側に接続されている。
【0083】
媒体の揺動を能動的に減衰する補償要素のための上述の実施形態の他に、特にアクチュエータおよびセンサに関して様々な別の実施形態が可能であり、かつ考えられ、この実施例については以下に幾つかを紹介する。当然ながら、これらの実施形態を相互に組み合わせることも可能であり、かつ考えられる。さらに、このような列挙は限定的なものとして見なされるべきではないことは自明である。
【0084】
本発明の有利な実施形態では、
補償要素は、3つの能動的な要素、すなわち、
-上流に位置する側で、補償要素内に進入する外乱を測定する、補償要素の入口側に設けられた任意選択的な圧力センサと、
-媒体中の圧力変動に影響を与えることができるように補償容積の大きさを変化させるように構成されたアクチュエータと、
-フィードバックセンサとして使用可能な、下流側で補償要素の出口側に設けられた任意選択的な圧力センサと、
を備えていてよい。
【0085】
ほとんどの実施形態にとって、少なくとも1つの圧力センサが設けられているか、上述したような2つの圧力センサが使用され、これらは性能を改善する働きをすることができる。これらの3つの要素を組み合わせて1つのユニットを形成することができ、または3つの別個の要素として使用することもでき、これらの要素を必要に応じて(短い)線路、ホースまたは管要素に接続することができる。
【0086】
補償容積の変化は、本発明の重要な観点である。この変化は、上下に運動するピストン状の要素により行うことができるが、液体を含む閉じられた補償容積の変形によっても行うことができる。補償容積としては、意図的かつ制御可能に変形可能な可撓性のホースもしくは可撓性の管、または所望の容積変化を生ぜしめるために圧縮もしくは伸張される一種のベローズ要素を使用することもできる。
【0087】
したがって、本発明の改良形では、媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素が提供され、内部容積を有する中空体が、既に流体管路によって提供される。
【0088】
したがって、流体管路の内部容積は、運転中にアクチュエータによって拡大または縮小可能である補償容積を提供する。アクチュエータは、内部容積外に配置されていてよい。流体管路は、少なくとも部分的に湾曲していてよく、湾曲部を有して形成されていてもよい。アクチュエータは、流体管路の、互いに反対の側に位置する2つの湾曲した区分間に配置されていてよく、これらの区分の外部に固定的に結合されていてよい。運転中、アクチュエータは、流体管路の両区分に引張運動または押圧運動を与えることができ、これによって、これらの区分を収縮させるか、または互いに押し離すことができる。
【0089】
このようにして、流体管路によって提供される内部容積の大きさを変化させることができる。アクチュエータによる運動を支援するために、流体管路が対応して弾性的に形成されていてよいことは自明である。
【0090】
流体管路は、このために、例えば弾性のプラスチックから製造されていてよい。
【0091】
しかし、真空下または低真空下で、リソグラフィ分野または電子線機器における用途で、かつ/または浸食性または腐食性のある媒体での使用時に、プラスチックが問題となり得、したがって使用することはできないことがある。それゆえ、金属材料、例えばステンレス鋼または特殊鋼も規定されており、あるいは、代替的または補足的に、コーティング、例えばPVDコーティングが設けられている。
【0092】
湾曲部は、流体管路の全円または完全な巻線として形成されていてもよい。1つよりも多くの巻条、例えば2つ、3つまたは4つの巻条が設けられている場合に、効果をさらに増大させることができる。
【0093】
本発明のこの実施形態のさらに別の改良形では、媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素が提供され、内部容積を有する中空体が、同様に流体管路によって提供される。したがって、流体管路の内部容積は、アクチュエータによって運転中に拡大または縮小可能な補償容積を提供する。アクチュエータは、内部容積外に配置されていてよい。
【0094】
流体管路は、この実施形態によれば真っ直ぐに形成されてよい。流体管路は、互いに離間して配置された少なくとも2つの支承点を介して位置固定されていてよく、アクチュエータは、好適には、これら2つの支承点間の真ん中に配置されていてよい。アクチュエータは、流体管路の外側、好適には両支承点のほぼ真ん中において、これらの支承点とは反対側に位置して結合されている。
【0095】
アクチュエータが運転中に流体管路に引張力または圧縮力を加えた場合、これによって、2つの支承点間で流体管路の半径方向の運動を引き起こすことができるので、この区分における流体管路の変位を引き起こすことができ、この変位によっても同様に補償容積を変化させ、圧力変動を補償するために適合させることができる。
【0096】
さらに別の改良形では、流体管路の、アクチュエータの作用側とは反対に位置する側を位置固定することが規定されている。アクチュエータによる押圧力は、流体管路の壁を、アクチュエータに面した側で、流体管路の、反対側に位置する壁の方向に運動させることができ、これによって補償容積を同様に縮小することができる。この実施形態では、2つの支承点だけを有する上述した実施形態に比べ、アクチュエータによるより高い押圧力が必要である。
【0097】
これらの実施形態でも、流体管路のある程度の可撓性または弾性に留意すべきであることは自明である。
【0098】
したがって、本発明は、別の態様では、媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素に関し、内部容積を有する中空体は、既に流体管路自体によって提供される。揺動を能動的に減衰するために要求される容積変化を、流体管路全体としての実質的に半径方向の変位により、またはアクチュエータを用いた流体管路の単に一方の壁の変位により、運転中に引き起こすことができる。
【0099】
さらに別の改良形では、流体管路をその長手方向で可撓に形成することが規定されている。このために、流体管路は、例えば一種のベローズを含んでいてよく、これにより、半径方向の変位の代わりに、流体管路の軸方向の長さ変化が可能にされる。このためにアクチュエータは、軸平行に配置されていてよく、対応する引張力または押圧力により、ベローズの領域における流体管路の長手方向変化を引き起こすことができ、これにより同じく体積変化を生じさせることができる。
【0100】
したがって、本発明は、別の態様では、媒体、特に流体の揺動を能動的に減衰する補償要素に関し、内部容積を有する中空体は、既に流体管路自体によって提供され、揺動を能動的に減衰するために要求される体積変化は、流体管路の長手方向変化によって生じさせることができる。
【0101】
本発明により、本発明の別の態様では、媒体、特に流体の振動(Vibration)を能動的に減衰する方法であって、以下のステップ、すなわち、
-補償要素を準備するステップと、
-圧力センサにより流体管路内の媒体の全圧を検出するステップと、
-予め規定された圧力Pに対する入口側の圧力差ΔΡΕを求めるステップと、
-アクチュエータのための電気的なパラメータ、特に電圧のための設定値を計算し、この設定値をアクチュエータに伝送するステップと、
-容積の変化により圧力差を補償することができるように、補償容積を縮小または拡大するための設定値に基づいて、アクチュエータを用いて補償容積を変化させるステップと、
を含む。
【0102】
本発明の好適な実施形態では、方法は、上述したような補償要素を備えている。
【0103】
本発明の別の態様では、媒体、特に流体の振動または揺動を能動的に減衰するシステムも含まれており、このシステムは、上述したような媒体、特に流体の振動または揺動を能動的に減衰する方法を実施するように構成されている。このシステムは、上述したような補償要素を備えていてよい。
【0104】
本発明によるシステムは、極めて有利には、機械、設備またはその他の装置を冷却するために使用されてよく、これらの機械、設備または装置は、圧力変動、ひいては圧力変動に関連する揺動から保護されている。
【0105】
一般に、本発明による補償要素または本発明によるシステムは、媒体の振動(Vibration)または揺動(Schwingung)を能動的に減衰するために、質量流量を可能な限り正確かつ/または迅速に目標値に調整することが望ましく、かつ/または流体の時間的に制限された質量流量を、例えば流体を混合するため保証することが望ましい様々な設備またはプロセスにおいても使用することもできる。
【0106】
これらは例えば、化学産業、半導体産業、リソグラフィの分野における様々なプロセスまたは設備であってもよく、または例えば電子ビーム機器、反応器チャンバ等であってもよい。
【0107】
システムは、少なくとも部分的に媒体、特に流体、例えば水または油が満たされた流体管路を備えていてよく、運転中に、例えば1Pa、100Pa、1kPa、10kPaまたは100kPaの規定された全圧を調節することができる。
【0108】
本発明による補償要素は、このシステムにおける運転中の圧力変動を保証することを可能にし、圧力変動は、+/-10mPa以下、好ましくは+/-5mPa以下、特に好ましくは+/-5mPa以下であってよい。
【0109】
これにより、本発明は、流体管路、または流体管路に接続された、例えば半導体産業分野の、圧力変動および/または温度変動に高度に敏感に反応する機械、設備またはその他の装置において使用することができる。こうして、例えば、例えば半導体産業分野の機械、装置、またはその他の装置内または機械、装置、またはその他の装置における変形を防止することもできる。
【0110】
ここで、例えば、半導体産業または半導体設備の装置が接続されていて、かつ水冷循環路における圧力変動および/または温度変動に反応するかまたは敏感な部分を有する水冷循環路が考えられる。
【0111】
1つの態様では、本発明は、上述したような本発明による補償要素を含む、媒体、特に流体の質量流量を制御するためのシステムにも関する。
【0112】
このシステムは、本発明の別の態様では、流体の調量または流体の混合のために使用することができる。
【0113】
この質量流量は、例えば反応器チャンバ内で循環路内を循環する流体に関してよい。これにより、あらゆる種類のブロックフローまたは質量流量を、柔軟に定義し、より良好に実現することができる。なぜなら、システムの慣性が極めて小さいからである。
【0114】
本発明のさらなる詳細は、図示の実施例および添付の特許請求の範囲の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明による補償要素の基本構造を示す断面図である。
図2】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明による補償要素の基本構造を、内部容積が補償容積および平衡容積に分割されている実施形態に基づく断面図で示す図である。
図3】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明による補償要素の基本構造を、内部容積が補償容積および平衡容積に分割されている実施形態に基づき、アクチュエータに設けられた力センサを含む別の実施形態で示す断面図である。
図4】補償要素によって媒体の振動を能動的に減衰するシステムの実施例を示す図である。
図5】補償要素に特に適した圧力センサの基本構造を示す図である。
図6】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明による別の補償要素の基本構造を示す側面図であって、中空体が既に流体管路によって提供され、流体管路は、少なくとも区分的に湾曲している。
図7】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明によるさらに別の補償要素の基本構造を示す側面図であって、中空体が既に流体管路により提供され、流体管路は、少なくとも1つの真っ直ぐな区分を含んでいる。
図8】少なくとも直線的な区分における流体管路の連続的な支承を伴う、図7に示した実施形態に基づく、媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明によるさらに別の補償要素の基本構造を示す側面図である。
図9】媒体の揺動を能動的に減衰するための本発明によるさらに別の補償要素の基本構造を示す側面図であり、中空体は既に流体管路により提供され、容積変化が流体管路の長手方向で行われる。
図10】本発明による調整の応答挙動を比較において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明では、明瞭性のために、これらの実施形態において実質的に同一の部分には同一の参照番号を付してある。しかし、本発明をより明確にするために、図面に図示された好ましい実施形態は、必ずしも縮尺通りに示されていない。
【0117】
図1は、一実施例における、媒体(明瞭にするために図中では単に屈折線24により示されている)、特に流体の揺動を能動的に減衰するための本発明による補償要素1の基本構造を断面図で示している。
【0118】
図1に示した実施例における補償要素1は、中空体20の内部容積23内に配置されているアクチュエータ30を備えた補償要素10として形成されている。
【0119】
以下の図面では、本発明による補償要素1の、符号11,12,13,14,15および16が付されている別の好ましい構成および実施形態が示されている。
【0120】
補償要素1,10,11,12,13,14,15および16は、
-内部容積23を有する中空体20であって、
内部容積23内に補償容積41が形成され、中空体20が、少なくとも2つの開口21,22をさらに有しており、これらの開口21,22が、補償容積41を周囲に接続することができる、中空体20と、
-内部容積23内に配置されており、かつ運転時に補償容積41を拡大または縮小することができる少なくとも1つのアクチュエータ30と、
を備えている。
【0121】
補償要素1,10,11,12,13,14,15および16の設計時には、補償要素自体によっても引き起こされ得る乱流を可能な限り回避することに留意すべきである。
【0122】
媒体24は、気体状または液状の形態で存在していてよく、本実施形態では、低い圧縮性を有する液状の流体、例えば油または水を含む。媒体24は、管路系統、流体管路、液圧区間、圧力管路内に含まれているか、または一般にその他の適切な容器もしくは入れ物内に含まれている。
【0123】
流体管路51,52,53は、純粋に例示として明瞭にするために図4に記入されており、図4は、媒体24、特に流体の振動を能動的に減衰するシステム100の実施例を示しており、この場合、補償要素11が使用されている。流体管路51は、媒体24が供給される流体管路を表している。このために、流体管路51は、例えば、単に明瞭にするために図4に記入されているポンプ54に接続されていてよい。
【0124】
この配置は、補償すべき圧力変動が流体管路51内で生じるように行われ、これにより流体管路51は流れ方向で供給管路を成す。図1図2図3および図4に示した実施形態では、流れ方向で補償要素11の下流側に配置されており、補償要素11から離れるように案内されている流体管路に、参照符号52が付されている。図4に示したシステム100については、以下で詳細に説明する。
【0125】
図1には、見易くするために流体管路は記入されていない。運転中、流体管路および補償容積41は、粘性の媒体24、この例では液状の流体によって満たされている。実施例では、流体管路および補償容積41は、完全に流体によって満たされている。
【0126】
媒体24は、特に塩分の少ない水、純水ならびに高度に純粋な水、または特に半導体産業のために要求され規定されている「超純水」を含んでよい。補償要素を、フッ素を含有する媒体、特に流体、例えばフッ素を含有する液体、特に水と一緒に使用することも可能である。
【0127】
一般に、媒体24は、侵食性かつ/または腐食性を有する流体、つまり液体および気体を含んでよい。
【0128】
補償要素10の開口21,22は、運転中に、流体管路51,52に摩擦結合式かつ/または形状結合式に接続されている。このために、流体管路51,52と開口21,22との間に摩擦結合式および/または形状結合式の接続を形成するための適切な接続手段、例えばスリーブ、ねじ締結部またはその他の適切な継手が設けられている。
【0129】
実施例では、これらの接続部は破壊することなく取外し可能であるので、補償要素の簡単な組付けだけでなく、簡単な交換も行われる。揺動を能動的に減衰するために、補償要素は、流体管路51,52に機械的に固定され流体密に接続されている。機械的に固定とは、この文脈では、接続部が運転中の引き抜きや振動に対して十分な耐性を有するものと理解され、これは、接合相手の適切な構造寸法と材料の選択によって用途に対して確保されている。
【0130】
対応する流体管路51,52が組み付けられている場合、第1の開口21は、運転中に、媒体24を供給するための入口または入口開口として、かつ別の開口22は、媒体24を導出するための出口または出口開口として使用される。
【0131】
したがって、中空体20の開口22は、運転中に、入口21を介して中空体20の内部容積23内に流入することができる媒体24のための出口を提供する。流体を供給する流体管路51内の圧力変動は、補償要素によって少なくとも低減されるか、または理想的には完全に補償することができる。換言すれば、入口側の圧力変動は、出口22に接続される流体管路52において、または流体管路52内に、単に低減されて伝達されるか、または理想的にはもはや伝達されない。
【0132】
入口21において入口振幅で発生する揺動は減衰されるので、出口22における出口振幅は入口振幅よりも小さくなる。したがって、補償要素の出口22における出口振幅は、好適には、入口振幅を基準として、50%以下、40%以下、30%以下、10%以下またはそれどころか1%以下、例えば0.5%以下である。
【0133】
図1には、参照符号71で、入口側に加えられている圧力P+ΔΡΕが記入されており、参照符号72で、出口側に加えられている圧力Pが視覚的に記入されている。
【0134】
動的な圧力変化に基づいて圧力変動または圧力サージが発生する可能性があり、流体管路51内の媒体24によって伝達される可能性がある。過度に高い圧力サージにより、該当するシステム100、または例えば半導体産業分野においてシステム100に接続される機械50、設備、またはその他の装置に損傷が生じてしまう。流体管路51,52に直接に接続された継手、ポンプ54または基礎も、圧力サージによって損傷される可能性がある。
【0135】
中空体20の内部容積23の少なくとも一部は、流体管路51,52内で発生する圧力変動を補償するか、または少なくとも最小限にするために、能動的に拡大または縮小することができる補償容積41として使用されるために規定されている。この圧力サージに起因する、粘性の媒体24内の縦波は、補償容積41によっていわば受け止めることができる。
【0136】
この補償容積41は、運転中に流体管路51,52内のこの圧力変動を補償するためにアクチュエータ30によって意図的かつ能動的に変化させることができる容積を提供する。このために、アクチュエータ30は、運動、例えばストローク運動によって補償容積41を縮小または拡大することができる。
【0137】
図1に示した実施例では、アクチュエータ30が、中空体20の内部容積23内で内壁に配置されている。これは、特に簡単な構造を可能にする。この場合、アクチュエータ30の幾何学形状、ひいてはアクチュエータ30により占められる容積の選択は、アクチュエータ30が中空体20内に静止位置で配置されている場合に、補償容積41が残留容積に基づいて生じるように選択されている。
【0138】
本発明のこの実施形態では、アクチュエータ30のために、圧電材料を備えた駆動装置が設けられている。この駆動装置は、液状の媒体内で作業することができるか、または媒体24に対して耐性を有している。
【0139】
このために、駆動装置は、例えばタンタル、インコネル、モリブデンまたはこれらの組合せを含む材料をベースとする腐食耐性のコーティングを有している。PVDコーティングも可能である。また、例えばPVDF-HP、ECTFEを含む特定の高純度のプラスチック、またはセラミック材料、例えばSiCも適切な材料である可能性がある。
【0140】
この実施の形態では、特に有利には、例えばアクチュエータ30を保護するための別の組込み部材を省略することができる。このようにして、補償要素10を極めて簡単かつコンパクトに保持することができる。アクチュエータ30の幾何学形状および材料は、運転中に圧電材料の運動が補償容積41の所望の変化をもたらすように選択されている。
【0141】
一般に、アクチュエータ30が別の幾何学形状を有していてもよいし、別の材料から製造されていてもよく、磁気、圧電、または静電原理に基づいていてよい。アクチュエータ30が直接的かつ迅速な応答挙動を有していると有利である。
【0142】
電圧を印加することにより、アクチュエータ30の変形が引き起こされ、この変形は、中空体20内のアクチュエータ30の体積変化をもたらす。補償容積41の拡大により、正の圧力サージをいわば受け止めることができる。補償容積の減少は、負の圧力変化または負圧を受け止めることができる。
【0143】
本発明の、図1に示した実施形態では、入口側、つまり開口21の領域におけるアクチュエータ30の運動および/または入口側に対するアクチュエータ30の間隔が、出口側、つまり開口22の領域における間隔よりも大きくなっている。これは、減衰特性を改善する。
【0144】
本実施例では、このことは、圧電材料本体の傾斜面31によって達成される。図1において角度αで示された傾斜により、両開口21,22に対して互いに異なる大きさの間隔が生じる。角度αは、少なくとも1°、好ましくは少なくとも5°、特に好ましくは少なくとも10°である。図示した実施形態では、角度αは約5°である。
【0145】
本発明の別の実施形態では、内部容積23を2つの部分容積に分割することが規定されている。図2および図3は、粘性の媒体24の揺動を能動的に減衰するための本発明による2つの補償要素11,12の基本構造を、内部容積23が補償容積41と平衡容積(Ausgleichsvolumen)42とに分割されている2つの実施形態に基づいて断面図で示している。
【0146】
補償容積41を分ける可撓性のダイヤフラム43が設けられており、これにより内部容積23内に平衡容積42が生じる。補償容積41は、同様に開口に隣接している空間に対応配置されているので、補償容積41は、媒体24を流体管路51,52から収容することができる。したがって、補償容積41は、中空体20内で可撓性のダイヤフラム43によって取り囲まれており、このために媒体24は流出することができない。
【0147】
この実施形態の利点は、例えばアクチュエータ30が補償容積41外に保護されて配置されており、これにより媒体24による直接的な作用から保護されていることである。これは、粘性の媒体24に対して耐性のない別の材料またはアクチュエータの使用も可能にする。補償容積41は、さらにアクチュエータ30の対応する運動によって変化させることができる。
【0148】
可撓性のダイヤフラム43は、例えば、ベローズを含むか、または図2および図3に示唆したようにベローズとして形成されてよい。材料として、一般に、必要な変形のために十分な弾性を有するエラストマー、例えばゴム、または対応する構造形式でのステンレス鋼もしくは特殊鋼のような金属製の材料も考慮される。選択時には、必要となる運転中に発生する圧力値を維持できることが留意される。
【0149】
運転中に、補償容積41は、媒体24、例えば流体管路51からの流体を収容する。図2に示した本発明の補償要素11の実施形態では、アクチュエータ30によって移動され、その際に可撓性のダイヤフラム43に作用することができる押圧体44が設けられている。これにより、アクチュエータ30から可撓性のダイヤフラム43への力の導入を改善するか、または簡単にすることができる。
【0150】
アクチュエータ30の運動、ひいては補償容積41の大きさは、電子的な計算ユニット95により監視されかつ調整される制御器94によって制御される。
【0151】
この場合、計算ユニットは、格納されたプログラムまたは値テーブルに基づいて、アクチュエータ30のための設定値を求め、この設定値は補償を制御するためにアクチュエータ30に伝送される。このために、制御器、または制御に適した別の要素も使用することもできる。設定値は、少なくとも1つの電気的なパラメータ、本実施例ではアクチュエータ30に印加される電圧に関する。アクチュエータ30の運動またはその延在長さは、印加される電圧によって制御される。これにより、補償容積41の大きさに対応して影響が与えられ、調節される。
【0152】
本発明の好ましい実施形態では、アクチュエータ30の調整(閉ループ制御)、ひいては補償容積41の大きさの調整が、計算ユニットにより、入口開口21における予め規定された圧力からの現在の圧力の偏差に基づいて行われる。したがって、入口開口21には、運転中に、予め規定された圧力Pと圧力差ΔΡΕとから構成されている全圧が加えられる。
【0153】
したがって、入口側の全圧は、PΕ=P+ΔΡΕとなる。代替的もまたは補足的に、流体管路51内の1つまたは複数の箇所における全圧を、潜在的な圧力変動にさらされている側で測定することもできる。
【0154】
図4には、このことが2つの圧力センサ61,62によって概略的に示されており、これらの圧力センサ61,62は、一方では入口21に対応配置されており、他方では流体管路51に対応配置されている。流体管路51の圧力センサ62が、開口21に対して十分な間隔を置いて配置されている場合には、運転中に下流側で発生する圧力変化を、まずは圧力センサ62によって、かつ時間をずらして圧力センサ61によって検出することに基づいて生じる幾らかのリードタイムを設定することができる。このことは、アクチュエータ30を事前に制御することを可能にするので、圧力差をさらに良好に補償することができる。アクチュエータ30の駆動制御は、リアルタイムで行われる。このようにして、圧力差をリアルタイムで補償することができる。
【0155】
このために、調整が、有利には、広い帯域幅で構成されており、したがって、調整が、例えば0.01Hz未満の範囲の極めて緩慢な変化にも、10kHzまでの高い周波数にも反応することができる。これは、アナログにもデジタルでも行うことができる。基本的に適切な調整は、本出願人の欧州特許出願公開第1840681号明細書から読み取ることができ、当該明細書は完全に本発明の対象とされ、したがって完全に組み込まれる。
【0156】
計算ユニットは、格納されているアルゴリズムを用いて、圧力センサ61,62のデータに基づいて、アクチュエータ30に印加されるべき電圧のための設定値を求める。
【0157】
補償要素を制御(開ループ制御)または調整(閉ループ制御)するための、固定的にプログラミングされたアルゴリズムの代わりに、本発明の改良形では、「機械学習」法または人工的なニューラルネットワークを調整のために補助的に使用することも考えられる。
【0158】
このことは、例えば、複数の補償要素が複数のアクチュエータが一緒に制御および調整することが望ましい場合、および/または複数の補償要素が纏められてより大きく、複雑な流体管路複合体または流体管路網を形成している場合に有用であり得る。本発明のさらに別の改良形では、制御または調整ストラテジのために、複合体に接続された別の設備、機械またはシステムの別のデータまたはパラメータ、例えば、設備もしくは機械50における、または設備もしくは機械50内の室温または温度を考慮することができる。
【0159】
調整のために、PID制御器を使用することもできる。
【0160】
このようにして、アクチュエータ調整を自己学習モードに移行させることができ、例えば、圧力変化における特定の構造を識別することができるので、補償をより迅速にかつより正確に行うことができる。このために、流体管路51,52,53内の複数の箇所、例えば上流側でポンプ、弁または類似の継手の下流側に圧力センサが配置されていてもよく、これにより、圧力変化に関する情報を極めて早期に検出することができる。
【0161】
したがって、本発明の一実施形態では、媒体41の、特に流体の流速を補償要素の調整時に考慮することも規定されている。
【0162】
アクチュエータ30は、圧力ΔΡΕの偏差に適合された運動を実施するので、中空体20内では、補償容積41の適合によって圧力差が減少するか、または理想的には完全に補償される。したがって、流体管路51内に発生する圧力変動を最小限にするか、または理想的には完全に補償することができるので、出口開口22における全圧PAについて、P≒Pまたは理想的にはP=Pであり、したがってΔΡΕ≒0PaまたはΔΡΕ=0Paが成り立つ。
【0163】
調整は、本発明の一実施形態によれば、「フィードバック制御」法にしたがって、またはフィードバックされた調整として行われる。アクチュエータ30の必要となる運動は、制御装置における適切なフィルタによって決定される。調整の設計時に、オーバシュート、つまり過度に強い減衰を排除するために、アクチュエータ30、例えば圧電材料の非線形および/またはヒステリシス効果が既に考慮されている。
【0164】
このフィードバックされた調整に対して代替的または付加的に、本発明の別の実施形態では、効率をさらに高めるために、「フィードフォワード」法または外乱値入力を調整に組み込むこともできる。このために、圧力変動が、下流側でも測定され、つまりこの実施例では、中空体20の出口開口22に接続されている流体管路52内でも測定される。図4には、これに関して別の圧力センサ63が純粋に例示的に記入されている。
【0165】
これらの実施形態では、圧力センサが、媒体24を案内する構成部品、つまり入口21,22または流体管路51,52に対応配置されている一方で、図3には、図2に示した実施形態に基づく補償要素12の1つの実施形態が示されているが、付加的にアクチュエータ30に設けられた力センサまたは力変換器32を備えており、したがって、力センサまたは力変換器32は、アクチュエータ30と補償容積41との間に配置されている。
【0166】
この実施例では、力センサ32が、アクチュエータ30と押圧プレート44との間に配置されている。本発明のこの実施形態では、調整パラメータとして、アクチュエータ30に作用する圧縮力が、先行制御パラメータとして使用される。力差ΔFはこの場合、ΔF=ΔΡΕ*Aであり、ここでAは作用面の大きさである。この場合、調整の目的は、アクチュエータ30に作用する力差を最小限にするか、または理想的には完全に補償することであり、これにより、ΔF≒0NまたはΔF=0Nが成り立つ。
【0167】
運転中の補償容積41の変化は、アクチュエータ30に作用する圧縮力に依存して行われる。この方法の利点は、流体管路51,52内または流体管路51,52に設けられた圧力センサが不要であることにある。
【0168】
全圧を測定するために、本発明の一実施形態では、特別な圧力センサ70が設けられている。この圧力センサ70は、補償要素と一緒に特に良好に使用することができる。この圧力センサ70は、図5には、基本構造で概略的に示されている。
【0169】
圧力センサ70は、流体管路51内の相対圧力を検出し、この場合、センサ素子の2つの側における圧力差が評価される。両側で平均圧が同じである場合、mPa範囲の変動を測定することができる。
【0170】
圧力センサ70の入口は、供給管路73を介して直接に流体管路51に接続されている。これにより、この側では全ての圧力変動を検出できることが確実になる。流体管路51の下流側において特定の間隔を空けて、圧力センサ70の第2の入口側への圧力フィードバックが行われる。適切な長さおよび適切な直径を有する毛管74および圧力センサ70における容積の使用により、特定の周波数を上回る圧力変動が圧力センサのこの側に到達できないことが確実になる。このようにして、毛管通路74の幾何学形状および圧力センサ70の容積により決定されるカットオフ周波数を有するローパスフィルタが構成される。このような構造により、圧力センサ70は、一定の圧力を測定するのではなく、ローパスフィルタのカットオフ周波数を上回る変動のみを検出するようになる。この原理は、フィードフォワード法のために使用することができる。
【0171】
このようにして、例えば50kPa以上、好ましくは100kPa以上の高圧の場合でも圧力の場合でも、全圧における変動または差を、0.1Paまたはより良好な、好ましくは0.05Paまたはそれどころか0.01Paの精度で測定することが可能になる。
【0172】
適切な別の圧力測定方法は、流体管路内においても、半径方向および/または軸方向に圧力差を測定するためのレーザ干渉計または加速度センサを備えていてよい。
【0173】
本発明に特に適しているのは、圧力差の測定を可能にする測定方法またはセンサである。
【0174】
図6は、媒体24の揺動を能動的に減衰するための本発明による別の補償要素13の基本構造を側面図で示しており、中空体は既に流体管路51によって提供されている。この流体管路51は、少なくとも部分的に湾曲して形成されている。
【0175】
したがって、流体管路51,52の内部容積23は、アクチュエータ30によって運転中に拡大または縮小可能な補償容積41を提供する。アクチュエータ30は、この実施形態では、内部容積23外に配置されている。流体管路51は、少なくとも部分的に湾曲しているか、または湾曲部を有して形成されている。
【0176】
このアクチュエータ30は、流体管路51の、互いに反対の側に位置する湾曲した2つの区分56の間に配置されていて、これらの区分56に固く接続されている。運転中に、アクチュエータ30は、引張運動または押圧運動を流体管路51の2つの区分56に及ぼすことができるので、これらの区分56を収縮させるか、または互いに押し離すことができる。このために、別の力伝達要素34、例えばロッドまたは管が設けられていてよい。
【0177】
このようにして、流体管路51,52によって提供される内部容積23の大きさを変化させることができる。流体管路51が、対応して弾性的に構成されており、かつ例えば弾性プラスチックから製造されていてよいことは自明である。本実施例では、ホースが設けられている。
【0178】
湾曲部は、実施例に示すように、全円として、または流体管路51の完全な巻線として形成されていてよい。1つよりも多くの巻条、例えば2つ、3つまたは4つの巻条が設けられている場合に、効果をさらに高めることができる。
【0179】
図7は、媒体24の揺動を能動的に減衰するための、本発明によるさらに別の補償要素14の基本構造を側面図で示しており、中空体は同様に既に流体管路51によって提供されている。湾曲した区分の代わりに、この実施形態による流体管路51は、少なくとも1つの真っ直ぐな区分を含んでいる。
【0180】
アクチュエータ30は同様に、内部容積23外に配置されている。流体管路51は、互いに離間して配置された2つの支承点57を介して位置固定されており、アクチュエータ30の力作用点は、これら2つの支承点57間のほぼ真ん中に配置されている。アクチュエータ30は、流体管路51の外部に固く接続されている。
【0181】
アクチュエータが運転中に引張力または押圧力を流体管路51に加えた場合、これによって、2つの支承点57間で流体管路51を半径方向に運動させることができ、これによって、この区分における流体管路51の変位を引き起こすことができる。このようにして、補償容積41を、圧力変動を補償するために変化かつ適合させることができる。参照符号58を用いて、アクチュエータ30により押圧力が加えられた場合の流体管路51の可能な変位が具体的に記入されている。
【0182】
図8は、図7に示した実施形態に基づく、媒体24の揺動を能動的に減衰するための、本発明によるさらに別の補償要素15の基本構造を側面図で示している。図7に示した実施形態の場合とは異なり、流体管路51の、アクチュエータ30の作用側とは反対に位置する側が固定されている。このために、本実施例では、複数の支承点57が設けられている。
【0183】
アクチュエータ30による押圧力は、流体管路51の壁を、アクチュエータ30に面した側で、流体管路51の、反対側に位置する壁の方向に運動させることができるので、補償容積41を同様に縮小することができる。この実施形態では、2つの支承点57のみを備えた上述した実施形態に比べ、アクチュエータ30による、より高い押圧力が必要である。参照符号59を用いて、アクチュエータ30により押圧力が加えられた場合の流体管路51の可能な変位が具体的に記入されている。
【0184】
補償要素13,14および15のこれらの実施形態では、流体管路51のある程度の可撓性または弾性に注意しなければならない。
【0185】
図9は、媒体24の揺動を能動的に減衰するための、本発明によるさらに別の補償要素16の基本構造を側面図で示しており、中空体は既に流体管路51によって提供されている。容積変化は流体管路51の長手方向で行われる。本発明のこの実施形態では、流体管路51は、その長手方向で可撓に形成されている。
【0186】
このために、ベローズ60が設けられているので、流体管路51の軸方向の長さ変化が可能にされる。アクチュエータ30は、このために軸平行に配置されており、対応する引張力または押圧力によってベローズ60の領域における流体管路51の長さ変化を引き起こすことができ、これによって同様に補償容積41の容積変化を引き起こすことができる。
【0187】
流体管路は、一般にプラスチックから製造されていてよく、例えばエラストマーを含んでよい。
【0188】
侵食性または腐食性を有する流体、例えば超純水との接触が要求される用途、および/または真空もしくは低真空において作業する用途のために、流体に対して耐性のある特別な材料および/またはコーティングまたは保護層が提供される。
【0189】
例えば塩分の少ない純水または特に高度に純粋な水のような浸食性または腐食性のある流体の場合には、例えば、タンタル、インコネル、モリブデンまたはそれらの組み合わせをベースとするかまたはこれらを含む適切な腐食防止コーティングが考えられる。例えば、PVDコーティングも考えられる。流体管路については、ステンレス鋼または特殊鋼を含む金属製の材料も適している可能性がある。
【0190】
さらに、例えば真空に適した特定のプラスチック、例えばPVDF-HP、ECTFE、またはセラミック材料、例えばSiCが適切な材料であり得る。
【0191】
本発明により、本発明の別の態様では、媒体24、特に流体の振動を能動的に減衰する方法が含まれており、この方法は以下のステップ、すなわち、
-補償要素1,10,11,12,13,14,15,16を準備するステップと、
-圧力センサ61,62,63,70によって流体管路51,52,53内の媒体24の全圧を検出するステップと、
-予め規定された圧力Pに対する入口側の圧力差ΔΡΕを求めるステップと、
-アクチュエータ30のための電気的なパラメータ、特に電圧のための設定値を計算し、この設定値をアクチュエータ30に伝送するステップと、
-容積の変化により圧力差を補償することができるように、補償容積41を縮小または拡大するための設定値に基づいて、アクチュエータ30を用いて補償容積41を変化させるステップと、
を含む。
【0192】
本発明の別の態様では、粘性の媒体24、特に流体の振動を能動的に減衰するシステム100も含まれており、このシステム100は、上述したような媒体24、特に流体の振動を能動的に減衰する方法を実施するように構成されている。
【0193】
システム100は、補償要素1を備えている。図4は、例示的に本発明による補償要素11のみを用いた、粘性の媒体の振動を能動的に減衰するこのようなシステム100の一実施例を示しており、ここで、補償要素11の代わりに、別の補償要素10,12,13,14,15,16使用することもできる。
【0194】
システム100は、純粋に例示的に図示された機械50、設備または装置のための供給管路として流体管路51,52を備えており、この流体管路51,52は、媒体24、例えば冷却循環路用の脱塩水によって完全に満たされている。運転中に、システム100内では、例えば1Pa、100Pa、1kPa、10kPa、またはそれどころか100kPaの全圧を調節することができる。
【0195】
図4は、機械50から離れて延びる流体管路53をさらに示している。流れ方向は符号55で記入されている。
【0196】
補償要素は、このシステム100における運転中の圧力変動を保証することを可能にし、圧力変動は、+/-10mPa以下、好ましくは+/-5mPa以下、特に好ましくは+/-5mPa以下であってよい。
【0197】
図4に図示した、補償要素によって媒体の振動を能動的に減衰するシステム100の実施例では、2L/minの公称流量が規定されている。この場合、内径8mmのホースが使用される。公称圧力は1.3barである。補償容積は、25mmのストローク面積33を備えて提供され、このストローク面積33は、アクチュエータ30によって±5μmだけ移動させることができる。これを用いて、例えば、3Hzで約50Pa~150Pa、例えば100Paの範囲内の圧力サージを補償することができる。
【0198】
例えば30Hzの周波数では、約1000Paの圧力サージを、同様の昇降運動によって補償することができる。これは、要求の多い多数の用途における圧力変動を低減するにために既に十分である。補償要素1を別の運転パラメータで運転させ、利用可能な構造空間または選択された駆動技術に適合させるために、ストローク面積および/またはストローク運動を対応して適合させることができることは自明である。
【0199】
これにより、圧力変動に極めて敏感であり、例えば冷却が必要な、例えば半導体産業の分野における機械50、設備もしくはその他の装置において、またはそれらとともに本発明を使用することが可能になる。
【0200】
図10は、本発明による調整の応答挙動を、簡単な例を使用して比較して示している。
【0201】
参照符号91を用いて、時間経過tにわたる所望の圧力変化が示されている。
【0202】
参照符号92を用いて、従来の質量流量制御器(「Mass Flow Controller」、MFC)の応答挙動が示されている。時間経過にわたって、部分的に圧力pの目標値からの比較的大きな偏差が示されており、質量流qも代替的に想定することができる。
【0203】
最後に、参照符号93を用いて、補償要素1,10,11,12,13,14,15,16によって達成することができる応答挙動が記入されている。
【0204】
調整におけるより高いダイナミクス、つまり目標値へのより迅速な到達と、時間にわたる、目標値からの僅かな偏差とが示されている。
【0205】
したがって、流体の所望の質量流量を、極めて迅速かつ正確に調節することができ、時間的に遅延したオーバシュートが大幅に低減される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】