IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ムネモ・セラピューティクスの特許一覧 ▶ アンスティテュ・クリーの特許一覧 ▶ アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)の特許一覧

特表2025-504882RNAによるSUV39H1発現の調節
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】RNAによるSUV39H1発現の調節
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20250212BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20250212BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250212BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20250212BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20250212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/86 Z
A61K35/17
A61K35/545
A61K35/28
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543355
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2023051593
(87)【国際公開番号】W WO2023139269
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,845
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522029822
【氏名又は名称】ムネモ・セラピューティクス
(71)【出願人】
【識別番号】509181699
【氏名又は名称】アンスティテュ・クリー
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・アミゴレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・サイタキス
(72)【発明者】
【氏名】シェイラ・ロペス-コボ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・ロドリゴ・フェンテアルバ
(72)【発明者】
【氏名】アリアーヌ・ビカン
(72)【発明者】
【氏名】キリアキ・トゥサルキツィ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、長鎖非コードRNA又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)の配列に基づく阻害性又は活性化ポリヌクレオチドを用いて、SUV39H1の発現を調節するための組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸を含む細胞であって、前記第1の核酸が、
(a)[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する異種核酸;
(b)[配列番号5]のヌクレオチド配列(AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む異種核酸;
(c)[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する核酸であって、前記核酸が、異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結された、核酸;又は
(d)[配列番号5]のヌクレオチド配列(AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む、異種発現制御配列に作動可能に連結された核酸であって、前記核酸が、異種発現制御配列に作動可能に連結された、核酸;
(e)配列番号13~17及び26~30のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する異種核酸;
(f)配列番号32~36及び45~49のヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む異種核酸;
(g)配列番号13~17及び26~30のいずれか1つを発現する核酸若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片であって、前記核酸が、異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結された、核酸若しくはその断片;又は
(d)配列番号32~36及び(ane)45~49のヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む、異種発現制御配列に作動可能に連結された核酸であって、前記核酸が、異種発現制御配列に作動可能に連結された、核酸
である、細胞。
【請求項2】
前記第1の核酸が、配列番号5~9、13~17及び26~30のいずれかのヌクレオチド配列又はその断片を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記第1の核酸が、[配列番号2](lncRNA AF196970.3エクソン1)若しくは配列番号13~17及び26~30のうちのいずれか1つの核酸塩基配列を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
前記第1の核酸が、[配列番号3]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3エクソン2)を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する、請求項1又は3に記載の細胞。
【請求項5】
前記第1の核酸が、[配列番号4]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3エクソン3)を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する、請求項1又は3又は4に記載の細胞。
【請求項6】
前記第1の核酸が、少なくとも約12~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、350~400、400~450、450~500、500~550、550~600、600~650、650~700、700~750、750~800、800~850、850~900、250~750、500~750又はそれ以上の塩基長のRNAを発現する、請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項7】
細胞であって、
(a)[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)若しくは配列番号13~17及び26~30のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を含む異種ポリヌクレオチド;又は
(b)[配列番号5](ゲノム配列)により、若しくは配列番号32~36及び45~49のうちのいずれかにより発現されるRNAの核酸塩基配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能な前記RNAの断片の核酸塩基配列を含む異種ポリヌクレオチド
を含む、細胞。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも約12~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、350~400、400~450、450~500、500~550、550~600、600~650、650~700、700~750、750~800、800~850、850~900、250~750、500~750又はそれ以上の塩基長である、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞が、改変型免疫細胞である、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
前記細胞が、T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4+及びCD8+ T細胞、NK細胞、Treg細胞、Tm細胞、メモリー幹T細胞(TSCM)、TCM細胞、TEM細胞、単球、樹状細胞、又はマクロファージ、T細胞前駆体、NK細胞前駆体、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)、骨髄又はリンパ系統の多能性幹細胞である、請求項1から9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
1つ若しくは複数、2種以上、又は3種以上の操作型受容体を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
1つ又は複数の操作型受容体を発現する第2の異種核酸を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
前記操作型受容体が:
a)抗体重鎖可変領域及び/又は抗体軽鎖可変領域を任意により含み、任意により二重特異性又は三重特異性である、抗原に特異的に結合する細胞外抗原結合性ドメイン;
b)T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD34、CD137、又はCD154、NKG2D、OX40、ICOS、2B4、DAP10、DAP12、CD40の膜貫通ドメインの断片を任意により含む、膜貫通ドメイン;並びに
c)任意により、4-1BB、CD28、ICOS、OX40、DAP10又はDAP12、2B4、CD40、FCER1G由来の1つ又は複数の共刺激ドメイン;
d)CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、若しくはCD66d、2B4由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、又はそのいずれかの断片を含む、細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、請求項11又は12に記載の細胞。
【請求項14】
前記操作型受容体が:
a)細胞外抗原結合性ドメイン、任意によりscFv、
b)任意によりCD28、CD8又はCD3ζ由来の、膜貫通ドメイン、
c)任意により4-1BB、CD28、ICOS、OX40又はDAP10由来の、1つ又は複数の共刺激ドメイン、並びに
d)任意によりITAM2及びITAM3が不活性化されている、CD3ζ由来の細胞内シグナル伝達ドメイン
を含むキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
前記操作型受容体が:
a)抗体の重鎖可変領域(VH)の抗原結合性断片を含む第1の抗原結合性鎖;及び
b)抗体の軽鎖可変領域(VL)の抗原結合性断片を含む第2の抗原結合性鎖
を含む改変型TCRであり;
前記第1及び第2の抗原結合性鎖が各々、TRACポリペプチド又はTRBCポリペプチドを含み、任意により前記TRACポリペプチド及び前記TRBCポリペプチドのうちの少なくとも一方が内因性であり、任意により前記内因性TRAC及びTRBCポリペプチドのうちの一方又は両方が不活性化される、請求項13に記載の細胞。
【請求項16】
前記操作型受容体が、(a)任意によりCD80由来の、共刺激リガンドの細胞外ドメイン、(b)任意によりCD80由来の、膜貫通ドメイン、及び(c)共刺激分子、任意によりCD28、4-1BB、OX40、ICOS、DAP10、CD27、CD40、NKGD2、又はCD2、好ましくは4-1BBの細胞内ドメインを含むキメラ共刺激受容体である、請求項13に記載の細胞。
【請求項17】
前記細胞外抗原結合性ドメインが、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下、又は約1×10-12以下のKD親和性を伴って抗原に結合する、請求項13から15のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
前記抗原が、細胞当たり約10,000分子未満、又は約5,000分子未満、又は約2,000分子未満の細胞表面上での低密度を有する、請求項13から15のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
前記細胞外抗原結合性ドメインが、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、p95HER2、LI-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、クローディン18.2、B型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD70、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、3、若しくは4、FBP、FcRH5、胎児アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、BCMA、Lewis Y、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、癌胎児抗原、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSMA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、MAGE A3、CE7、若しくはウィルムス腫瘍1(WT-1)に結合し、又は任意により、前記細胞外抗原結合性ドメインが、国際公開公報第WO2021/043804号に開示される腫瘍新生抗原性ペプチドのうちのいずれかに結合する、請求項13から18のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項20】
異なる抗原に各々結合する2つの操作型抗原受容体を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項21】
自家又は同種である、請求項1から20のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
SUV39H1発現が、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%、低減又は阻害される、請求項1から21のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項23】
前記細胞が、がんに罹患しているか又はがんに罹患するリスクを有する被験体から単離される、請求項1から22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
少なくとも約12塩基長の[配列番号1~4]のうちのいずれかからの核酸塩基配列を含む修飾型オリゴヌクレオチドであって、前記修飾型オリゴヌクレオチドが、修飾型骨格連結、修飾型糖部分、修飾型リン酸部分、修飾型核酸塩基、又は化学的にコンジュゲート化された部分のうちの1つ又は複数を含む、修飾型オリゴヌクレオチド。
【請求項25】
少なくとも約12~50、50~75又は50~100塩基長である、請求項24に記載の修飾型オリゴヌクレオチド。
【請求項26】
前記修飾型骨格連結が、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、チオホスホノアセテート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、又はホスホロジチオエートを含む、請求項24又は25に記載の修飾型オリゴヌクレオチド。
【請求項27】
前記修飾型糖が、別の基、任意によりH、-OR、-R(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、ハロ、-F、-Br、-Cl若しくは-I、-SH、-SR(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、-アラビノ、F-アラビノ、アミノ(アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であり得る);若しくはシアノ(-CN);任意により2'-O-メトキシ、2'-O-メトキシエチル修飾、2'-フルオロ、2'-デオキシ、又はそれらの組み合わせによって、2'OH基を置き換えるために修飾される、請求項24から26のいずれか一項に記載の修飾型オリゴヌクレオチド。
【請求項28】
前記修飾型核酸塩基が、1つ又は複数の5-メチルシトシン、修飾型ウリジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、及び5-ブロモウリジン、修飾型アデノシン及びグアノシン、例えば、8位での修飾を含むもの、例えば、8-ブロモグアノシン、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザアデノシン、又はO-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシン、又は多環式(例えば、三環式)である修飾型ヌクレオチド;及び「アンロックド」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNA又はS-GNAであって、リボースはホスホジエステル結合に連結されたグリコール単位により置き換えられる)、又はトレオース核酸(TNAであって、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3'→2')によって置き換えられる)を含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の修飾型オリゴヌクレオチド。
【請求項29】
異種発現制御配列に作動可能に連結された核酸であって、前記核酸が、(a)[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)若しくは配列番号13~17若しくは26~30のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片をコード若しくは発現するヌクレオチド配列;又は(b)[配列番号5](AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは配列番号32~36及び45~49のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む、核酸。
【請求項30】
配列番号5~9、13~17、26~30、32~36及び45~49のいずれかのヌクレオチド配列又はその断片若しくは断片群を含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
前記異種制御配列が、構成的、誘導性、又は組織特異的プロモーター、任意によりEF1α、CMV、SFFV、hPGK、RPBSA、又はCAGである、請求項29又は30に記載の核酸。
【請求項32】
請求項29又は30に記載の核酸及び1つ又は複数の追加の発現制御配列を含むベクター。
【請求項33】
ウイルスベクター、任意によりアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、パピローマウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フォーミーウイルス(foamivirus)、又はセムリキ森林ウイルスベクターであり、及び偽型化ウイルスを含む、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
送達ビヒクル、任意によりリポソーム、脂質含有複合体、ナノ粒子、金粒子、又はポリマー複合体中の、請求項29から33のいずれか一項に記載の核酸又はベクター。
【請求項35】
(a)(i)請求項28から30若しくは33のいずれか一項に記載の核酸又は(ii)請求項30から33のいずれか一項に記載のベクターを細胞中へと導入する工程、及び任意により(b)抗原特異的受容体をコードする核酸を細胞中へと導入する工程を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞を生成する方法。
【請求項36】
[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)若しくは配列番号13~17及び26~30のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する内因性核酸、任意により[配列番号5](AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは配列番号32~36及び45~49のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列又はその対立遺伝子バリアントを含む核酸にそれが作動可能に連結される様式で、異種発現制御配列を細胞中へと導入する工程を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞を生成する方法。
【請求項37】
疾患を治療するために請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞を用いる方法であって、前記疾患、任意によりがん、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、又はアレルギー疾患を治療するために有効な量の前記細胞を、それを必要とする被験体に投与する工程を含み、前記細胞が、疾患に関連付けられる抗原に結合する1つ又は複数の抗原特異的受容体を発現する、方法。
【請求項38】
がんに罹患した被験体を治療するための方法であって、(1)請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞又は請求項24から28のいずれか一項に記載の修飾型オリゴヌクレオチド又は請求項29から31のいずれか一項に記載の核酸又は請求項31から33のいずれか一項に記載のベクター;及び(2)第2のがん治療剤を前記被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項39】
前記第2のがん治療剤が、免疫チェックポイント調節剤、がんワクチン、化学療法剤又は血管新生阻害剤(anti-angiogen)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
がんに罹患した被験体を治療するための方法であって、(1)請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞であって、前記細胞が、遺伝子操作型抗原受容体を含むT細胞、NK細胞、リンパ系前駆細胞又は骨髄系前駆細胞であり、SUV39H1遺伝子の発現が阻害され、SUV39H1遺伝子の阻害が前記免疫細胞の増強された抗がん活性をもたらす、細胞;及び(2)免疫チェックポイント調節剤を前記被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項41】
前記免疫チェックポイント調節剤が、PD1、CTLA4、LAG3、BTLA、0X2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、EP2/4アデノシン受容体、又はA2ARの阻害剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫チェックポイント調節剤が、抗PD-1阻害剤又は抗PDL-1阻害剤である、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、RNAを用いてSUV39H1の発現を調節するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
長鎖非コードRNA(lncRNA)は、遺伝子発現の調節因子であり、且つ多数の細胞プロセスに関与する。それらの発現は、特に組織特異的又は発生段階特異的であることが見出されてきた(Ahmad等、2021)。
【0003】
小型ヘアピンRNA(shRNA)は、ヘアピン構造をつくり出す内部ハイブリダイゼーションの領域を含む、典型的には約80塩基対長のRNAの配列である。shRNA分子は、細胞内でプロセシングされて、siRNAを形成し、次にこれが遺伝子発現をノックダウンする。shRNAの利益は、プラスミドベクター中へと取り込ませることができ、且つ長期的又は安定的発現、及びしたがって標的mRNAの長期ノックダウンのために、ゲノムDNAへとインテグレートされ得ることである。
【0004】
ヒストンメチルトランスフェラーゼは、ヌクレオソームでのヒストン分子のその翻訳後修飾を介して、ユークロマチン(オープン、活発に転写されるクロマチン)及びヘテロクロマチン(クローズド、不活性クロマチン)へのクロマチン再構成を促進する。ヒストンメチルトランスフェラーゼは、遺伝子発現及び細胞の運命を活発に制御する。SUV39H1は、特定された最初のメチルトランスフェラーゼのうちの1つであった(Aagaard等、1999)。SUV39H1は、特に免疫系における、多数の発生プロセスに関与することが示されてきた(Rao等、2017;Nicetto&Zaret、2019;Allan等、2012;Pace等、2018)。
【0005】
Pace等、2018及び国際公開第2018/234370号は、T細胞及びNK細胞におけるSUV39H1の発現の阻害が、それらのメモリー潜在力を増強し、且つ生存能を増大させることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/234370号
【特許文献2】国際公開第2019/157454号
【特許文献3】国際公開第2021/043804号
【特許文献4】国際公開第2022/189620号
【特許文献5】国際公開第2022/189626号
【特許文献6】国際公開第2022/189636号
【特許文献7】国際公開第2017/062451号
【特許文献8】国際公開第2017/180989号
【特許文献9】国際公開第2014/055668号
【特許文献10】国際公開第2018/132506号
【特許文献11】国際公開第2019/133969号
【特許文献12】国際公開第2018/067993号
【特許文献13】国際公開第2000/014257号
【特許文献14】国際公開第2013/126726号
【特許文献15】国際公開第2012/129514号
【特許文献16】国際公開第2014/031687号
【特許文献17】国際公開第2013/166321号
【特許文献18】国際公開第2013/071154号
【特許文献19】国際公開第2013/123061号
【特許文献20】米国特許出願公開第2002131960号
【特許文献21】米国特許出願公開第2013287748号
【特許文献22】米国特許出願公開第20130149337号
【特許文献23】米国特許第6,451,995号
【特許文献24】米国特許第7,446,190号
【特許文献25】米国特許第8,252,592号
【特許文献26】米国特許第8,339,645号
【特許文献27】米国特許第8,398,282号
【特許文献28】米国特許第7,446,179号
【特許文献29】米国特許第6,410,319号
【特許文献30】米国特許第7,070,995号
【特許文献31】米国特許第7,265,209号
【特許文献32】米国特許第7,354,762号
【特許文献33】米国特許第7,446,191号
【特許文献34】米国特許第8,324,353号
【特許文献35】米国特許第8,479,118号
【特許文献36】欧州特許出願公開第2537416号
【特許文献37】国際公開第2021/016174号
【特許文献38】国際公開第2011/009173号
【特許文献39】国際公開第2012/135854号
【特許文献40】米国特許出願公開第20140065708号
【特許文献41】米国特許第5,399,346号
【特許文献42】米国特許出願公開第2003/0170238号
【特許文献43】米国特許第4,690,915号
【特許文献44】国際出願第PCT/EP2020/070845号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】genome-euro.ucsc.edu
【非特許文献2】SMITH及びWATERMAN、Ad. App. Math.、vol.2、482頁、1981
【非特許文献3】NEEDLEMAN及びWUNSCH、J. Mol. Biol、vol.48、443頁、1970
【非特許文献4】PEARSON及びLIPMAN、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、vol.85、2444頁、1988
【非特許文献5】Edgar、Robert C、Nucleic Acids Research、vol.32、1792頁、2004
【非特許文献6】Moore CB、Guthrie EH、Huang MT、Taxman DJ. Short hairpin RNA (shRNA): design、delivery、and assessment of gene knockdown. Methods Mol Biol. 2010;629:141~58頁
【非特許文献7】Taxman DJ. siRNA and shRNA design. In: Helliwell TDC、editor. RNA Interference Methods for Plants and Animals. Vol.10. CABI;Oxfordshire、UK:2009.228~253頁
【非特許文献8】Liu及びLim、EMBO Reports(2018)19:e46955
【非特許文献9】Yin等、Cell Stem Cell.2015年5月7日;16(5):504~16頁
【非特許文献10】Yang等、(2013)Mol Cell 49:1083~1096頁
【非特許文献11】Lu等、(2018)Mol Ther Nucleic Acids 10:387~397頁
【非特許文献12】Zhang等、Overexpression of lncRNAs with endogenous lengths and functions using a lncRNA delivery system based on transposon. J Nanobiotechnol 19、303頁(2021)
【非特許文献13】Rankin等、Overexpressing Long Noncoding RNAs Using Gene-activating CRISPR. J Vis Exp.2019;(145):10.3791/59233
【非特許文献14】Wilbie等、Acc Chem Res ;52(6):1555~1564頁、2019
【非特許文献15】Wang等、Proc Natl Acad Sci USA.;113(11):2868~2873頁、2016
【非特許文献16】Chang等、Acc.Chem.Res.、52、665~675頁、2019
【非特許文献17】Ulitsky等、(2011)Cell、147(7):1537~1550頁
【非特許文献18】Torikai等、Blood、119(2):5697~705頁(2012)
【非特許文献19】Eyquem等、Nature.2017年3月2日;543(7643):113~117頁
【非特許文献20】Fedorov等、Sci. Transl. Medicine、5(215)(2013年12月)
【非特許文献21】Sadelain M、Brentjens R、Riviere I. The basic principles of chimeric antigen receptor (CAR) design. Cancer discovery.2013;3(4):388~398頁
【非特許文献22】Bridgeman等、Clin. Exp. Immunol. 175(2):258~67頁(2014)
【非特許文献23】Zhao等、J. Immunol. 183(9):5563~74頁(2009)
【非特許文献24】Feucht等、Nat Med. 25(l):82~88頁(2019)
【非特許文献25】Parkhurst等、(2009) Clin Cancer Res. 15:169~180頁
【非特許文献26】Cohen等、(2005) J Immunol. 175:5799~5808頁
【非特許文献27】Varela-Rohena等、(2008) Nat Med. 14:1390~1395頁
【非特許文献28】Li(2005) Nat Biotechnol. 23:349~354頁
【非特許文献29】Janeway等、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease、第3版、Current Biology Publications社、4:33頁、1997
【非特許文献30】Jores等、Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. 87:9138頁、1990
【非特許文献31】Chothia等、EMBO J. 7:3745頁、1988
【非特許文献32】Lefranc等、Dev. Comp. Immunol. 27:55頁、2003
【非特許文献33】Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Dept. Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版
【非特許文献34】Baeuerle等、Synthetic TRuC receptors engaging the complete T cell receptor for potent anti-tumor or response. Nat Commun 10、2087頁(2019)
【非特許文献35】Sadelain等、Cancer Discov. 2013年4月;3(4):388~398頁
【非特許文献36】Davila等、(2013) PLoS ONE 8(4):e61338
【非特許文献37】Turtle等、Curr. Opin. Immunol.、2012年10月;24(5):633~39頁
【非特許文献38】Wu等、Cancer、2012年3月、18(2):160~75頁
【非特許文献39】Saez等、Clinical Cancer Research、12:424~431頁(2006)
【非特許文献40】Chicaybam等、(2013) PLoS ONE 8(3):e60298
【非特許文献41】Van Tedeloo等、(2000) Gene Therapy 7(16):1431~1437頁
【非特許文献42】Manuri等、(2010) Hum Gene Ther 21(4):427~437頁
【非特許文献43】Sharma等、(2013) Molec Ther Nucl Acids 2、e74
【非特許文献44】Huang等、(2009) Methods Mol Biol 506:115~126頁
【非特許文献45】Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York. N.Y.
【非特許文献46】Johnston、Nature、346:776~777頁(1990)
【非特許文献47】Brash等、Mol. Cell Biol.、7:2031~2034頁(1987)
【非特許文献48】Miller、Hum. Gene Ther. 1 (1):5~14頁(1990)
【非特許文献49】Friedman、Science 244:1275~1281頁(1989)
【非特許文献50】Eglitis等、BioTechniques 6:608~614頁(1988)
【非特許文献51】Tolstoshev等、Current Opin. Biotechnol. 1:55~61頁(1990)
【非特許文献52】Sharp、Lancet 337:1277~1278頁(1991)
【非特許文献53】Cornetta等、Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 36:311~322頁(1989)
【非特許文献54】Anderson、Science 226:401~409頁(1984)
【非特許文献55】Moen、Blood Cells 17:407~416頁(1991)
【非特許文献56】Miller等、Biotechnology 7:980~990頁(1989)
【非特許文献57】Le Gal La Salle等、Science 259:988~990頁(1993)
【非特許文献58】Johnson、Chest 107:77S~83S(1995)
【非特許文献59】Rosenberg等、N. Engl. J. Med. 323:370頁(1990)
【非特許文献60】Scholler等、Sci. Transl. Med. 4:132~153頁(2012)
【非特許文献61】Parente-Pereira等、J. Biol. Methods 1(2):e7(1~9)(2014)
【非特許文献62】Lamers等、Blood 117(1):72~82頁(2011)
【非特許文献63】Reviere等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6733~6737頁(1995)
【非特許文献64】Wang等、Gene Therapy 15:1454~1459頁(2008)
【非特許文献65】Wanisch等、Mol. Ther. 17(8):1316~1332頁(2009)
【非特許文献66】Hisano Y、Sakuma T、Nakade S等、Precise in-frame integration of exogenous DNA mediated by CRISPR/Cas9 system in zebrafish. Sci Rep. 2015;5:8841頁
【非特許文献67】Szymczak等、Expert Opin. Biol. Therapy 5(5):627~638頁(2005)
【非特許文献68】Mansilla-Soto、J.、Eyquem、J.、Haubner、S.等、HLA-independent T cell receptors for targeting tumors with low antigen density. Nat Med 28、345~352頁(2022)
【非特許文献69】Jasper、G. A.、Arun、I.、Venzon、D.、Kreitman、R. J.、Wayne、A. S.、Yuan、C. M.、Marti、G. E.、& Stetler-Stevenson、M. (2011). Variables affecting the quantitation of CD22 in neoplastic B cells. Cytometry. Part B、Clinical cytometry、80(2)、83~90頁
【非特許文献70】Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577~85頁
【非特許文献71】Themeli等、(2013) Nat Biotechnol. 31 (10):928~933頁
【非特許文献72】Tsukahara等、(2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1):84~9頁
【発明の概要】
【0008】
本発明の概要
本開示は、RNAを用いてSUV39H1の発現を調節するための組成物及び方法を提供する。
【0009】
本発明は、[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する異種核酸;[配列番号5]のヌクレオチド配列(AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む異種核酸;[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する核酸であり、異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結された、核酸;又は異種発現制御配列に作動可能に連結された、[配列番号5]のヌクレオチド配列(AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む、異種発現制御配列に作動可能に連結された核酸であり、異種発現制御配列に作動可能に連結された、核酸である第1の核酸を含む細胞に関する。第1の核酸は、配列番号5~9のうちのいずれかのヌクレオチド配列又はその断片を含んでもよい。第1の核酸は、[配列番号2]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3エクソン1)を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現することができる。第1の核酸は、[配列番号3]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3エクソン2)を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現することができる。第1の核酸は、[配列番号4]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3エクソン3)を含むRNA又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現することができる。上述の実施形態のうちのいずれかでは、第1の核酸は、少なくとも約12~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、350~400、400~450、450~500、500~550、550~600、600~650、650~700、700~750、750~800、800~850、850~900、250~750、500~750又はそれ以上の塩基長のRNAを発現することができる。
【0010】
本発明はまた、配列番号13~17若しくは配列番号26~30のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むRNAを発現する異種核酸若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくは誘導体;又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片;配列番号13~17若しくは配列番号26~30のいずれか1つのヌクレオチド配列含むRNAを発現する核酸若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片であって、典型的には異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結されている核酸である、核酸を含む細胞にも関する。核酸は、配列番号13~17若しくは配列番号26~30のうちのいずれかのヌクレオチド配列又はその断片を含んでもよい。
【0011】
本発明はまた、配列番号32~36及び45~49のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む異種ポリヌクレオチド又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を含む細胞にも関する。一部の実施形態では、前記核酸は、異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結され得る。
【0012】
細胞は、改変型(modified)免疫細胞であり得る。
【0013】
細胞は、以下の細胞タイプ:T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4+及びCD8+ T細胞、NK細胞、Treg細胞、Tm細胞、メモリー幹T細胞(TSCM)、TCM細胞、TEM細胞、単球、樹状細胞、又はマクロファージ、T細胞前駆体、NK細胞前駆体、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)、骨髄又はリンパ系統の多能性幹細胞のうちのいずれかであり得る。
【0014】
細胞は、1つ若しくは複数、2種以上、又は3種以上の操作型(engineered)受容体を含んでもよい。
【0015】
細胞は、1つ又は複数の操作型受容体を発現する第2の異種核酸を含んでもよい。操作型受容体は、a)抗体重鎖可変領域及び/又は抗体軽鎖可変領域を任意により含み、任意により二重特異性又は三重特異性であり得る、抗原に特異的に結合する細胞外抗原結合性ドメイン;b)T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD34、CD137、又はCD154、NKG2D、OX40、ICOS、2B4、DAP10、DAP12、CD40の膜貫通ドメインの断片を任意により含む、膜貫通ドメイン;c)任意により、4-1BB、CD28、ICOS、OX40、DAP10又はDAP12、2B4、CD40、FCER1G由来の1つ又は複数の共刺激ドメイン;並びにd) CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、若しくはCD66d、2B4由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、又はそのいずれかの断片を含んでもよい。操作型受容体が、細胞外抗原結合性ドメイン、任意によりscFv、任意によりCD28、CD8又はCD3ζ由来の、膜貫通ドメイン、任意により4-1BB、CD28、ICOS、OX40又はDAP10由来の、1つ又は複数の共刺激ドメイン、並びに任意によりITAM2及びITAM3が不活性化されている、CD3ζ由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であり得る。
【0016】
操作型受容体はまた、改変型TCRでもあり得る。
【0017】
改変型TCRは、(a)抗体の抗原結合性断片又はCDR、好ましくは重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)のうちの全3種のCDRを含む、細胞外ドメイン、並びに(b)α鎖、β鎖、γ鎖又はδ鎖の生来型又はバリアント定常領域を含んでもよい。例えば、改変型TCRは、1つ又は複数の異種ポリペプチド、例えば、(a)TRBC1(典型的にはヒト又はネズミTRBC1)若しくはTRBC2(典型的にはヒト又はネズミTRBC2)、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するTRBC1若しくはTRBC2の断片若しくはバリアントに融合された、抗体のVH又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくはバリアント、及び(b)TRAC(ヒト又はネズミTRAC配列)、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するTRACの断片若しくはバリアントに融合された、抗体のVL又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくはバリアントを含んでもよい。改変型TCRは、任意により、生来型又はバリアントCD3ζポリペプチド、例えば、その中でITAMドメイン(例えば、ITAM2及びITAM3)のうちの1つ又は2つが欠失されている改変型CD3ζポリペプチドを更に含んでもよい。
【0018】
HLA非依存的様式で対象となる抗原に結合する、組み換え型HLA非依存性(又は非HLA拘束)改変型TCR(「HI-TCR」と称される)は、典型的には、国際公開第2019/157454号に記載される。そのようなHI-TCRは、(a)HLA非依存的様式で抗原に結合する異種抗原結合性ドメイン、例えば、免疫グロブリン可変領域の抗原結合性断片;及び(b)CD3ζポリペプチドと会合(及び結果としてそれを活性化)することが可能な定常ドメインを含む、抗原結合性鎖を含む。好ましくは、抗原結合性ドメイン又はその断片は、(i)抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は(ii)抗体の軽鎖可変領域(VL)を含む。TCRの定常ドメインは、例えば、生来型若しくは改変型TRACポリペプチド(典型的にはヒト又はネズミTRAC配列)、又は生来型若しくは改変型TRBCポリペプチド(典型的にはヒト又はネズミTRBC配列)である。TCRの定常ドメインは、例えば、(ヒト又はネズミ)生来型TCR定常ドメイン(α又はβ)又はその断片である。典型的にはそれ自体が細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体とは異なり、HI-TCRは、活性化シグナルを直接的に生成せず;むしろ、抗原結合性鎖は、CD3ζポリペプチドと会合し、且つ結果としてそれを活性化する。組み換え型TCRを含む免疫細胞は、抗原が、細胞当たり約10,000分子未満、例えば、細胞当たり約5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500、250又は100分子未満の細胞表面上での低密度(典型的には中間密度)を有する場合、優れた活性を提供する。
【0019】
したがって、操作型受容体は、典型的には、抗体の重鎖可変領域(VH)の抗原結合性断片を含む第1の抗原結合性鎖;及び抗体の軽鎖可変領域(VL)の抗原結合性断片を含む第2の抗原結合性鎖を含む改変型TCRであり得、第1及び第2の抗原結合性鎖が、TRACポリペプチド又はTRBCポリペプチドを各々含み、任意により、TRACポリペプチド及びTRBCポリペプチドのうちの少なくとも一方が内因性であり、任意により内因性TRAC及びTRBCポリペプチドのうちの一方又は両方が不活性化される。
【0020】
細胞は、(a)CD86、41BBL、CD275、CD40L、OX40L、PD-1、TIGIT、2B4、若しくはNRP1の細胞外及び膜貫通ドメイン、又はその断片若しくはバリアント、及び(b)CD28、4-1BB、0X40、ICOS、CD27、CD40、若しくはCD2の細胞内共刺激分子、又はその断片若しくはバリアントを含む、キメラ共刺激受容体を更に含んでもよい。一部の実施形態では、キメラ共刺激受容体は、(a)任意によりCD80由来の、共刺激リガンドの細胞外ドメイン、(b)任意によりCD80由来の、膜貫通ドメイン、及び(c)共刺激分子、任意によりCD28、4-1BB、OX40、ICOS、DAP10、CD27、CD40、NKGD2、又はCD2、好ましくは4-1BBの、細胞内ドメインを含む。
【0021】
細胞の細胞外抗原結合性ドメインは、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下、又は約1×10-12以下のKD親和性(より低い数がより高い親和性を示す)を伴って、抗原に結合することができる。細胞外抗原結合性ドメインにより結合された抗原は、細胞当たり約10,000分子未満、又は約5,000分子未満、又は約2,000分子未満の細胞表面上での低密度を有し得る。
【0022】
細胞外抗原結合性ドメインは、抗原に対して結合することができる、例えば:
【0023】
オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、p95HER2、LI-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、クローディン18.2、B型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD70、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、3、若しくは4、FBP、FcRH5、胎児アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、BCMA、Lewis Y、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、癌胎児抗原、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSMA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、MAGE A3、CE7、又はウィルムス腫瘍1(WT-1)。一部の実施形態では、抗原は、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる国際公開第2021/043804号、同第2022/189620号、同第2022/189626号、同第2022/189636号に開示される腫瘍新生抗原性ペプチドのうちのいずれかであり得る。
【0024】
細胞は、異なる抗原に各々結合する2つの操作型抗原受容体を含んでもよい。
【0025】
細胞は、自家又は同種であり得る。
【0026】
SUV39H1発現は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%、細胞において低減又は阻害され得る。
【0027】
細胞は、がんに罹患しているか、又はがんに罹患するリスクを有する被験体から当初単離され得る。
【0028】
本発明はまた、少なくとも約12塩基長の[配列番号1~4]のうちのいずれかからの核酸塩基配列を含む修飾型オリゴヌクレオチドであって、修飾型骨格連結、修飾型糖部分、修飾型リン酸部分、修飾型核酸塩基、又は化学的にコンジュゲート化された部分のうちの1つ又は複数を含む、修飾型オリゴヌクレオチドにも関する。修飾型オリゴヌクレオチドは、少なくとも約12~50、50~75又は50~100塩基長であり得る。修飾型オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、チオホスホノアセテート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、又はホスホロジチオエート部分を含む修飾型骨格連結を含み得る。修飾型オリゴヌクレオチドは、別の基、任意によりH、-OR、-R(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、ハロ、-F、-Br、-Cl若しくは-I、-SH、-SR(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、-アラビノ、F-アラビノ、アミノ(アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であり得る);若しくはシアノ(-CN);任意により2'-O-メトキシ、2'-O-メトキシエチル修飾、2'-フルオロ、2'-デオキシ、又はそれらの組み合わせによって、2'OH基を置き換えるために修飾される修飾型糖を含み得る。修飾型オリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の5-メチルシトシン、修飾型ウリジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、及び5-ブロモウリジン、修飾型アデノシン及びグアノシン、例えば、8位での修飾を含むもの、例えば、8-ブロモグアノシン、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザアデノシン、又はO-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシン、又は多環式(例えば、三環式である修飾型ヌクレオチド;及び「アンロックド」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNA又はS-GNAであって、リボースはホスホジエステル結合に連結されたグリコール単位により置き換えられる)、又はトレオース核酸(TNAであって、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3'→2')によって置き換えられる)を含む、修飾型核酸塩基を含み得る。
【0029】
本発明はまた、異種発現制御配列に作動可能に連結された核酸であって、(a)[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)若しくは配列番号13~17及び26~30のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含むRNA若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片をコード若しくは発現するヌクレオチド配列、又は(b)[配列番号5](AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828))若しくは(of)配列番号32~36及び45~49のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なRNAを発現するその断片を含む、核酸にも関する。核酸は、配列番号5~9、32~36、42~49のうちのいずれかのヌクレオチド配列又はその断片若しくは断片群を含み得る。異種制御配列は、構成的、誘導性、又は組織特異的プロモーター、任意によりEF1α、CMV、SFFV、hPGK、RPBSA、又はCAGであり得る。
【0030】
本発明はまた、本明細書中に記載される通りの核酸及び1つ又は複数の追加の発現制御配列を含むベクターにも関する。ベクター、ウイルスベクター、任意によりアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、パピローマウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フォーミーウイルス(foamivirus)、セムリキ森林ウイルスベクター、及び偽型化ウイルスを含む。
【0031】
本発明はまた、上記の核酸又はベクターを含む、送達ビヒクル、任意によりリポソーム、脂質含有複合体、ナノ粒子、金粒子、又はポリマー複合体にも関する。
【0032】
本発明はまた、(a)(i)本明細書中に記載される通りの核酸又は(ii)本明細書中に記載される通りのベクターを細胞中へと導入する工程、及び任意により(b)抗原特異的受容体をコードする核酸を細胞中へと導入する工程を少なくとも含む、本明細書中に記載される細胞を生成する方法にも関する。
【0033】
本発明はまた、[配列番号1]の核酸塩基配列(lncRNA AF196970.3)若しくは配列番号13~17、26~30のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含むRNA、又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片を発現する内因性核酸、任意により[配列番号5](AF196970.3をコードするゲノム配列(ENSG00000232828)若しくはその対立遺伝子バリアント又は配列番号32~36及び45~49のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸に作動可能に連結される様式で、異種発現制御配列を細胞中へと導入する工程を少なくとも含む、本明細書中に記載される通りの細胞を生成する方法にも関する。
【0034】
本発明はまた、疾患、任意によりがん、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、又はアレルギー疾患を治療するために有効な量の細胞を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、疾患を治療するために本明細書中に記載される通りの細胞を用いる方法であって、細胞が、疾患に関連付けられる抗原に結合する1つ又は複数の抗原特異的受容体を発現する、方法にも関する。
【0035】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を治療するための方法であって、(1)本明細書中に記載される通りの細胞;及び(2)第2のがん治療剤を被験体に投与する工程を含む、方法にも関する。第2のがん治療剤は、免疫チェックポイント調節剤、がんワクチン、化学療法剤又は血管新生阻害剤(anti-angiogen)であり得る。
【0036】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を治療するための方法であって、(1)本明細書中に記載される通りの細胞であり、遺伝子操作型(genetically engineered)抗原受容体を含むT細胞、NK細胞又はT細胞前駆体で、SUV39H1遺伝子の発現が阻害され、SUV39H1遺伝子の阻害が前記免疫細胞の増強された抗がん活性をもたらす、細胞;及び(2)免疫チェックポイント調節剤を被験体に投与する工程を含む、方法にも関する。免疫チェックポイント調節剤は、PD1、CTLA4、LAG3、BTLA、0X2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、EP2/4アデノシン受容体、又はA2ARの阻害剤であり得る。免疫チェックポイント調節剤は、抗PD-1阻害剤又は抗PDL-1阻害剤であり得る。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、UCSCのゲノムブラウザ(genome-euro.ucsc.edu)においてlncRNA AF196970.3をコードする(発現する)遺伝子ENSG00000232828を含むSUV39H1遺伝子の遺伝子座を示す。
図2図2Aは、その3つのエクソンを含むlncRNA AF196970.3を示し、図2Bは、ゲノム領域中の重複及びlncRNA AF196970.3エクソン2とSUV39H1エクソン3との間の共有ヌクレオチド、並びにC)ゲノム領域中の重複及びlncRNA AF196970.3エクソン3とSUV39H1エクソン2との間の共有ヌクレオチドを示す。
図3図3Aは、AF196970.3に対するバルク組織遺伝子発現を示し、図3Bは、SUV39H1に対するバルク組織遺伝子発現を示し、図3Cは、異なる組織中でのAF196970.3に関する単一細胞発現を示し、図3Dは、異なる組織中でのSUV39H1に関する単一細胞発現を示し、図3Eは、異なる組織中でのAF196970.3の転写産物ENST00000416061.1の発現を示す。
図4図4A図4B及び図4Cは、それぞれ、神経膠腫、頭頸部扁平上皮細胞癌、及び肝細胞癌からの単一細胞RNAseq由来クラスターにおけるAF196970.3及びSUV39H1の発現レベルを示す。
図5図5は、GFPピューロマイシンレポーターを有し、且つCMVプロモーターを含むlncRNA SUV39H1エクソン配列(5A)、又はhPKGプロモーターを含むlncRNA SUV39H1エクソン配列(5B)を含むPiggy Bac骨格を表すプラスミドマップを示す。
図6図6Aは、図5の2種類のプラスミド構築物を用いるHEK293 FT細胞におけるPiggy Bacトランスフェクションの実験手順の模式図を示す。図6Bは、フローサイトメトリーによるGFP発現レベル及び未トランスフェクション細胞と空のPiggy Bac構築物又はlncRNA SUV39H1 Piggy Bacプラスミドのうちの1つのいずれかを用いてトランスフェクションされた細胞との比較を示す。図6Cは、細胞におけるウエスタンブロッティングによるSUV39H1及びアクチンの発現を示す。アクチンに対して正規化されたSUV SUV39H1タンパク質レベルの定量化。図6Dは、CD8+ T細胞におけるlncRNA SUV39H1発現の実験手順の模式図を図示する。
図7図7Aは、SUV39H1遺伝子上のshRNA標的配列の表示を示す。図7Bは、SUV39H1を標的化する異なるshRNAの標的及びループ配列を示す。図7Cは、U6プロモーター及びEGFPレポーターを用いる細胞においてshRNA発現に対して用いたレンチウイルス構築物のプラスミドマップを示す。
図8図8Aは、HEK293 FT細胞におけるshRNA発現の実験手順を図示する。図8Bは、フローサイトメトリーによるGFP発現レベル:未形質導入細胞と、スクランブルshRNA又はSUV39H1に対する5種類のshRNAのうちの1つのいずれかを用いて形質導入された細胞との比較を示す。図8Cは、細胞におけるウエスタンブロッティングによるSUV39H1及びアクチンの発現を示す。
図9図9Aは、CD8+ T細胞におけるshRNA発現の図示される実験手順を示す。図9Bは、フローサイトメトリーによるGFP発現レベル:未形質導入細胞と、スクランブルshRNA又はSUV39H1に対する5種類のshRNAのうちの1つのいずれかを用いて形質導入された細胞との比較を示す。結果は、代表的ドナーに関して示される。図9Cは、細胞におけるウエスタンブロッティングによるSUV39H1及びアクチンの発現を示す。SUV39H1標的化gRNAの非存在下での対照細胞(モック)又は存在下(gRNA SUV)。図9Dは、T細胞におけるフローサイトメトリーによるH3K9のトリメチル化のレベル(幾何平均蛍光強度)を示す。結果は、代表的ドナーに関して示される。図9E図9Fは、7日目でのT細胞におけるメモリーマーカーCD27のフローサイトメトリーによる発現:3名のドナーに関するshRNA 1に対するスクランブル配列の比較(2回反復の平均)を示す。図9Fは、14日目でのT細胞におけるメモリーマーカーCD27のフローサイトメトリーによる発現:2名のドナーに関するshRNA 1に対するスクランブル配列の比較(2回反復の平均)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の詳細な説明
SUV39H1は、エフェクターCD8+ T細胞の最終分化中にメモリー及び幹細胞プログラムのサイレンシングにおいて機能するH3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼである。SUV39H1のサイレンシングは、今度は、長期的メモリー潜在力を増強し、且つ生存能を増大させることが示されてきた。ヒトSUV39H1、UniProt登録番号O43463を参照されたい。
【0039】
本開示は、ヒト細胞においてSUV39H1に対するサイレンシング機能を有し、SUV39H1発現を阻害し、したがって細胞中のSUV39H1タンパク質のレベルを低下させる、アンチセンスlncRNAであるAF196970.3の特定に関する。AF196970.3は、SUV39H1の発現パターンに非常に類似の発現パターンを有する。AF196970.3は、多数の異なる細胞タイプにおいて検出され、SUV39H1と同様に、例えば、内皮細胞、線維芽細胞及び筋細胞での最高レベルを伴う。AF196970.3は、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌及び肝細胞癌を含む少なくとも3種類の異なるタイプのがんにおいて、ヒト腫瘍浸潤性リンパ球中で発現される。AF196970.3発現レベルはSUV39H1レベルと相関し、SUV39H1と同様に増殖中のT細胞において比較的高かった。
【0040】
本開示はまた、配列番号13~17のうちのいずれか1つに記載される通りの標的配列のうちのいずれか1つを含む(本明細書中で記載される場合、shRNA1~5)か、又は配列番号26~30の配列のうちのいずれか1つを含む(shRNAを形成するための標的配列、ループ配列及びガイド配列を含む)、短鎖ヘアピンRNAの特定にも関する。
【0041】
本開示は、阻害性ポリヌクレオチド及びその使用を提供する。細胞におけるSUV39H1発現は、このアンチセンスlncRNA配列、又は本明細書中に開示される通りのこの配列に基づくshRNA若しくは類似ポリヌクレオチド、そのバリアント及び/若しくは断片の異所性又は内因性発現を増加させることにより阻害することができる。細胞において低下したSUV39H1レベルは、最終分化に対する細胞の関与に影響を及ぼし、且つ/又は生存を延長する。このlncRNA配列、又はlncRNA配列に基づくより短いRNA若しくは類似のポリヌクレオチドをはじめとするその断片若しくはバリアント、並びに典型的には配列番号13~17の標的配列のうちの1つ含むか、又は配列番号26~30のうちのいずれか1つを含む本明細書中に記載される通りのshRNAは、SUV39H1転写の局所的阻害剤として機能し、且つ/又はその重複するアンチセンスエクソンを介してのいずれかで機能することができた。これらの実施形態のうちのいずれかでは、SUV39H1の阻害は、SUV39H1発現が調節されていない野生型細胞と比較して、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、若しくは80%又はそれ以上、SUV39H1発現及び/又は活性を低減させる。一部の実施形態では、本明細書中に記載される通りのRNA阻害剤は、SUV39H1発現が調節されていない野生型細胞と比較して、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、若しくは80%又はそれ以上、H3K9トリメチル化を低減させた(例示的アッセイに関して、結果セクションもまた参照されたい)。
【0042】
本開示は、活性化ポリヌクレオチド及びその使用もまた提供する。細胞におけるSUV39H1発現は、lncRNA配列であるAF196970.3の発現を阻害するか又はその分解を増加させることにより、増加する。RNAの発現を阻害するか又はその分解を減少させるために、RNA干渉(RNAi)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いることができる。
【0043】
SUV39H1の発現が阻害された免疫細胞、特にT細胞又はNK細胞は、増強されたセントラルメモリー表現型、養子移入後の増強された生存率及び持続性、並びに低減された疲弊を示す場合がある。特に、そのような細胞は、蓄積し、且つ長寿命セントラルメモリーT細胞へと増加した効率を伴ってリプログラミングする。そのような細胞は、腫瘍細胞拒絶を誘導する上でより効率的であり、且つがんを治療するための増強された有効性を示す。
【0044】
定義
本明細書中で用いる場合、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を同様に含むことが意図される。
【0045】
本明細書中で用いる場合にはまた、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のいずれかの及び全ての考えられる組み合わせ、並びに選択肢において解釈される場合(「又は」)には組み合わせの欠如を意味し、且つこれを包含する。
【0046】
用語「約」は、測定可能な値、例えば、ポリペプチドの量、用量、時間、温度、酵素活性又は他の生物学的活性等を参照する際に本明細書中で用いる場合、明記された量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更に±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0047】
本明細書中での用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、且つ無傷の抗体並びに断片抗原結合性(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組み換え型IgG(rIgG)断片、抗原に特異的に結合することが可能な可変重鎖(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)をはじめとする単鎖抗体断片、及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片をはじめとする機能的(抗原結合性)抗体断片をはじめとする、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む。この用語は、免疫グロブリンの組み換え型及び/又はそれ以外の様式で改変された形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ型抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。別途明記されない限り、用語「抗体」は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。用語はまた、IgG並びにそのサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、IgA、及びIgDをはじめとする、いずれかのクラス又はサブクラスの抗体をはじめとする、無傷の又は全長抗体も包含する。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0048】
「抗体断片」とは、無傷の抗体が結合する抗原に結合する、無傷の抗体の一部分を含む無傷の抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例としては、限定するものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖抗体;可変重鎖(VH)領域、VHH抗体、単鎖抗体分子、例えば、scFv及び単一ドメインVH単一抗体;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。特定の実施形態では、抗体は、可変重鎖領域及び/又は可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片、例えば、scFvである。
【0049】
遺伝子の「不活性化」又は「破壊」とは、遺伝子発現の低減若しくは除去を引き起こすか、又は非機能的遺伝子産物の発現を引き起こす、ゲノムDNAの配列における変化を意味する。例示的な方法としては、遺伝子サイレンシング、ノックダウン、ノックアウト、及び/又は遺伝子破壊技術、例えば、例えば切断の導入及び/又は相同組み換えを介する、遺伝子編集が挙げられる。そのような遺伝子破壊の例は、遺伝子全体の欠失をはじめとする、遺伝子又は遺伝子の一部分の挿入、フレームシフト及びミスセンス変異、欠失、ノックイン、及びノックアウトである。そのような破壊は、例えば、終止コドンの挿入により、コード領域中で、例えば、1つ又は複数のエクソン中で起こることができ、全長生成物、機能的生成物、又はいずれかの生成物を生成できないことをもたらす。そのような破壊はまた、遺伝子の転写を妨げるために、プロモーター若しくはエンハンサー又は転写の活性化に影響を及ぼす他の領域中での破壊により起こる場合もある。遺伝子破壊としては、相同組み換えによる標的遺伝子不活性化をはじめとする、遺伝子ターゲティングが挙げられる。
【0050】
本明細書中で用いる場合、遺伝子産物の「阻害」とは、阻害又は抑制されない野生型の活性又は発現レベルと比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%又はそれ以上のその活性及び/又は遺伝子発現の低下を意味する。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「発現する」又は「発現」とは、遺伝子配列が転写され、且つ任意により、翻訳されることを意味する。遺伝子が非コードRNAを発現する場合、発現は、典型的には、転写及び、任意により、スプライシング後にRNAを生じるであろう。遺伝子がコード配列である場合、発現は、典型的には、転写及び翻訳後にポリペプチドの生成を生じるであろう。
【0052】
本明細書中で用いる場合、「発現制御配列」とは、関連するヌクレオチド配列の転写、RNAプロセシング、RNA安定性、又は翻訳に影響するヌクレオチド配列を意味する。例としては、限定するものではないが、プロモーター、エンハンサー、イントロン、翻訳リーダー配列、ポリアデニル化シグナル配列、転写開始因子並びに転写及び/又は翻訳終結領域(すなわち、終結領域)が挙げられる。
【0053】
本明細書中で用いる場合、「断片」とは、全長配列の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の長さを有する、参照される配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド)の一部分を意味する。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「異種」とは、天然には互いに同じ関係性においては見出されない配列を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。例えば、異種配列は、別の生物種に由来するか、又は同じ生物種若しくは生物由来であるが、その元来の形態若しくは細胞中で主に発現される形態のいずれかから改変されているかのいずれかである。したがって、異種ポリヌクレオチドは、同じ天然の元来の細胞タイプに由来し且つその中へと挿入されたが、非天然状態、例えば、異なるコピー数で存在し、且つ/又は天然に見出されるものとは異なる調節配列の制御下にあり、且つ/若しくは元来配置された位置とは異なる位置(異なるヌクレオチド配列に隣接する)に配置されるヌクレオチド配列を含む。
【0055】
本明細書中で用いる場合、「核酸」、「ヌクレオチド配列」、及び「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、相互に交換可能に用いられ、且つcDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば、化学合成)DNA又はRNA並びにRNA及びDNAのキメラをはじめとする、RNA及びDNAの両方を包含する。ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、又は核酸との用語は、鎖の長さに関係なく、ヌクレオチドの鎖を意味する。核酸は、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖である場合、核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。核酸は、オリゴヌクレオチドアナログ又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を用いて合成することができる。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、変化した塩基対形成能又はヌクレアーゼに対する増大した耐性を有する核酸を調製するために用いることができる。本開示は、本明細書中に記載される核酸、ヌクレオチド配列、又はポリヌクレオチドの相補体(完全相補体又は部分相補体のいずれかであり得る)である核酸を更に提供する。修飾型塩基(修飾型核酸塩基)、例えば、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチン及びその他もまた、アンチセンス、dsRNA、及びリボザイム対形成のために用いることができる。例えば、ウリジン及びシチジンのC-5プロピンアナログを含有するポリヌクレオチドが、高親和性を有してRNAと結合し、且つ遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが示されてきた。他の修飾、例えば、ホスホジエステル骨格、又はRNAのリボース糖基中の2'-ヒドロキシに対する修飾もまた行うことができる。
【0056】
本明細書中で用いる場合、「作動可能に連結された」とは、エレメント、例えば、発現制御配列が、対象となるヌクレオチド配列に対してその通常の機能を発揮するように構成されていることを意味する。例えば、対象となるヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターは、対象となるヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすことが可能である。発現制御配列は、その発現に向かわせるために機能する限り、対象となるヌクレオチド配列と連続的である必要はない。
【0057】
本明細書中で用いる場合、2つの配列間の表現「同一性パーセンテージ」は、当該配列の最良アライメントを用いて取得される、比較対象である2つの配列間での同一の塩基又はアミノ酸のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計学的であり、これら2つの配列間での差異は、2つの配列全体にわたって無作為に広がる。標準条件下でハイブリダイズする場合、塩基は相補的であると見なされる。例えば、修飾型核酸塩基は、それがハイブリダイゼーションパターンを模倣する塩基と同様の様式でアライメントすることができる。本明細書中で用いる場合、「最良アライメント」又は「最適アライメント」とは、決定される同一性パーセンテージ(上記を参照されたい)が最高であるアライメントを意味する。2つの核酸配列(本明細書中でヌクレオチド配列又は核酸塩基配列とも称される)間での配列比較は、通常、最良アライメントに従って前もってアライメントされたこれらの配列を比較することにより実現される。この比較は、類似性のある局所領域を特定及び比較するために、比較セグメントに対して実現される。比較を行うための最良配列アライメントは、手動による他に、SMITH及びWATERMAN(Ad. App. Math.、vol.2、482頁、1981)により開発された大域的相同性アルゴリズムを用いることにより、NEEDLEMAN及びWUNSCH(J. Mol. Biol、vol.48、443頁、1970)により開発された局所的相同性アルゴリズムを用いることにより、PEARSON及びLIPMAN(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、vol.85、2444頁、1988)により開発された類似性の方法を用いることにより、そのようなアルゴリズム(Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ中のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI、USA)を用いてコンピュータソフトウェアを用いることにより、MUSCLE多重アライメントアルゴリズム(Edgar、Robert C、Nucleic Acids Research、vol.32、1792頁、2004)を用いることにより、実現することができる。最良局所アライメントを取得するために、好ましくは、BLASTソフトウェアを用いることができる。2つの配列間での同一性パーセンテージは、最適にアライメントされたこれら2つの配列を比較することにより決定され、配列は、これら2つの配列間での最適アライメントを取得するために、参照配列に対する付加又は欠失を含んでもよい。同一性パーセンテージは、これら2つの配列間での同一位置の個数を決定し、且つ比較された位置の総数によってこの個数を除算することにより、並びに得られた結果に100を乗算し、これら2つの配列間での同一性パーセンテージを取得することにより、算出される。
【0058】
本明細書中で用いる場合、「治療」、又は「治療すること」は、疾患、例えばがん、又は疾患(例えば、がん)のいずれかの症状を治癒させるか、癒すか、緩和するか、軽減させるか、変化させるか、是正するか、改善させるか(ameliorate、improve)又は影響を及ぼす目的での、それを必要とする患者に対する本開示の細胞又は細胞を含む組成物の適用を含む。特に、用語「治療する」又は「治療」とは、疾患に関連付けられる少なくとも1種の有害な臨床症状を低減又は緩和することを意味する。がん治療を参照して、用語「治療する」又は「治療」はまた、新生物性に制御不能な細胞増殖の進行を減速又は逆転させること、すなわち、既存の腫瘍を縮小すること及び/又は腫瘍成長を停止させることも意味する。用語「治療する」又は「治療」はまた、被験体においてがん又は腫瘍細胞でのアポトーシスを誘導することも意味する。
【0059】
本明細書中で用いる場合、「バリアント」とは、その全長にわたって又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、若しくは1100個のヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたって、参照される配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である、変異(欠失、置換又は挿入)を有する配列(ポリヌクレオチド又はポリペプチド)を意味する。ポリヌクレオチド配列に関して、バリアントはまた、参照される配列又はその相補体に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
【0060】
本明細書中で用いる場合、「ベクター」は、細胞への移入又は細胞中での核酸の発現のためのいずれかの核酸分子である。用語「ベクター」は、インビトロ、エクスビボ、及び/又はインビボで細胞へと核酸を導入するためのウイルス性及び非ウイルス性(例えば、プラスミド)の両方の核酸分子を含む。ベクターは、発現制御配列、制限部位、及び/又は選択マーカーを含んでもよい。「組み換え型」ベクターとは、1つ又は複数の異種ヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。
【0061】
SUV39H1発現を阻害する阻害性ポリヌクレオチド
SUV39H1の遺伝子座は、X染色体上に位置する(p11.23、48695554~48709016位、GRCh38.p13アセンブリ中)。同じ遺伝子座には、逆行性の向きで、注釈付けされていない遺伝子ENSG00000232828が、48698963位~48737163位に位置する(図1)。両方の遺伝子が、注釈付けされたプロモーター領域を有する。
【0062】
AF196970.3(配列番号1)は、転写及びスプライシング後に、ENSG00000232828(配列番号5)から発現される予測上のRNA配列である。配列番号1は、3つのエクソンを含む925塩基の配列である(図2A)。AF196970.3エクソン1(配列番号2)は125塩基長であり、SUV39H1遺伝子に対して顕著な相補性を有しない。AF196970.3エクソン2(配列番号3)は、600塩基長であり、100%の類似性を有してSUV39H1遺伝子のエクソン3の実質的部分に対して逆行性である(図2B)。AF196970.3エクソン3(配列番号4)は、200塩基長であり、SUV39H1遺伝子のエクソン2の一部分(42.5%類似性)、並びに隣接するイントロンの一部分に対して逆行性である(図2C)。
【0063】
本開示の細胞及び方法中での使用のための本開示の阻害性ポリヌクレオチドとしては、AF196970.3(配列番号1)又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。そのような断片は、約12~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、350~400、400~450、450~500、500~550、550~600、600~650、650~700、700~750、750~800、800~850、850~900、250~750、500~750又はそれ以上の塩基長の配列番号1~4のうちのいずれかの断片を含む。バリアントとしては、配列番号1又は配列番号1の上述の断片が、欠失、置換、修飾(化学修飾を含む)、又は挿入をはじめとして、変異されているポリヌクレオチド、又は化学修飾型ポリヌクレオチドが挙げられる。そのようなバリアントは、配列番号1~4のうちのいずれか又はそのいずれかの断片、例えば、上述の長さの配列番号1の断片に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一である核酸塩基配列を有することができる。バリアントとしては、例えば、5'末端若しくは3'末端又はその両方のいずれかで追加のヌクレオチドに連結された配列番号1の上述の断片のうちのいずれかが挙げられる。バリアントとしてはまた、ENSG00000232828(配列番号5)の選択的スプライシングにより生成されるRNA又はENSG00000232828(配列番号5)の対立遺伝子バリアントにより生成されるRNAも挙げられる。
【0064】
本開示の通りの阻害性RNAとしてはまた、本明細書中に記載される通りのshRNAも挙げられる。shRNAの原理及び設計は、例えば、Moore CB、Guthrie EH、Huang MT、Taxman DJ. Short hairpin RNA (shRNA): design、delivery、and assessment of gene knockdown. Methods Mol Biol. 2010;629:141~58頁に記載されているが、Taxman DJ. siRNA and shRNA design. In: Helliwell TDC、editor. RNA Interference Methods for Plants and Animals. Vol.10. CABI;Oxfordshire、UK:2009.228~253頁もまた参照されたい。RNAiのメカニズムは、標的配列に対して同一である二本鎖RNA(dsRNA)の細胞質送達を介する宿主mRNAの配列特異的分解に基づく。shRNAは、異種(hetorologous)プロモーターにより転写されるshRNAをコードするプラスミドベクターとしてトランスフェクションされる場合があるが、ウイルス的に生成されたベクターを用いる細胞の感染を介して哺乳動物細胞へと送達することもできる。shRNAは、DNAインテグレーションが可能であり、典型的には、天然に存在するmiRNA中で見出されるヘアピンと類似の4~11ntの短いループにより連結された2つの相補的な19~22bpのRNA配列からなる。例示的ループ配列はまた、本明細書中にも記載されるが、当業者の標準的な知識に基づくそのいずれかのバリエーションを用いることができる(shRNAの設計に関して、上記の参考文献もまた参照されたい)。典型的には、shRNAは、それぞれ、配列番号13~17及び26~30並びに配列番号32~36及び45~49の配列のうちの1つを含むヌクレオチド配列を含むか又はこれによりコードされる。
【0065】
化学修飾としては、修飾型骨格連結、修飾型糖部分、修飾型リン酸部分、修飾型核酸塩基、又は化学的にコンジュゲート化された部分のうちの1つ又は複数が挙げられる。そのような化学修飾は、ポリヌクレオチド全体を通して、又は交互のパターンで存在することができる。化学修飾は、5'末端若しくは3'末端又はその両方に存在することができ、例えば、5'末端及び/又は3'末端の5~10塩基が、修飾型骨格連結、修飾型糖部分、修飾型リン酸部分、修飾型核酸塩基、又は化学的にコンジュゲート化された部分のうちの1つ又は複数を含む。
【0066】
そのような阻害性ポリヌクレオチドは、異種RNA又は異種ポリヌクレオチド、例えば、その血清半減期及び/又は親和性を増大させるために修飾された化学修飾ポリヌクレオチドとして、直接的に送達することができる。代替的に、そのような阻害性ポリヌクレオチドは、そのような阻害性ポリヌクレオチドを発現するDNA又はベクターから異所的に発現させることができる。また別の選択肢では、そのような阻害性ポリヌクレオチドの内因性発現を、例えば、発現制御配列、例えば、構成的、誘導性、強力又は組織特異的プロモーターを挿入することにより、上方調節することができる。
【0067】
SUV39H1発現を増加させる活性化ポリヌクレオチド
活性化ポリヌクレオチドとしては、その各々がlncRNA配列に対して相補的なセグメントを含む、RNA干渉(RNAi)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、又はリボザイムをはじめとする、このlncRNA配列の発現を阻害するか又はその分解を増加させるための、当技術分野で知られている薬剤が挙げられる。各々がlncRNAに対して相補的なセグメントを含むガイドRNA又はlncRNAをコード若しくは発現する遺伝子を含む、ZF若しくはZFN、TALE若しくはTALEN、又はCRISPRシステム、例えば、CRISPR-Cas9若しくはCRISPR-Cas13もまた考慮される。相補的な領域は、少なくとも約12~20、12~18又は15~18塩基長であり得る。
【0068】
典型的には、siRNAのトランスフェクション又はshRNAの発現後、RNAiは、RNA誘導型サイレンシング複合体により媒介される、直接的な相補性を介する標的RNA分子の分解を引き起こす。lncRNAの分解に関するRNAiの代替物は、ASOである(図2B)。ASOは、ノックダウンの有効性を増加させ且つインビボ毒性を低下させるために典型的には化学修飾されている、15~20ヌクレオチド一本鎖DNAオリゴマーである。特に、2'-MOE及びLNAギャップマー修飾は、標的RNA転写産物に対する親和性を増大させ且つヌクレアーゼに対する耐性を付与し、それによりこれらの修飾型ASOがインビボで数日間から数週間の半減期を有することを可能にすることが示されてきた。ASOは、相補性を介して標的RNA転写産物とハイブリダイズし、且つ標的転写産物のRNアーゼH媒介型分解を誘導する。
【0069】
CRISPR-Cas13もまた、標的RNAに対して相補的なsgRNAを用いて提供される場合にRNA標的を効率的に切断することができる。Cas13は、哺乳動物細胞においてlncRNAをノックダウンするために用いられてきた。dCas9、TALE及び/又はZFが直接的又は間接的に抑制因子及び/又は阻害因子に連結されているCRISPRi又はジンクフィンガー(ZF)又はTALEタンパク質もまた、RNAの発現を抑制することが可能である。最後に、lncRNAの発現は、例えば、CRISPR-Cas9、ZFヌクレアーゼ(ZFN)又はTALEヌクレアーゼ(TALEN)遺伝子編集を通して、コード遺伝子の全部又は一部分を欠失させるか又は置き換えることにより、取り除くことができる。Liu及びLim、EMBO Reports(2018)19:e46955を参照されたい。
【0070】
阻害性ポリヌクレオチド又は活性化ポリヌクレオチドの発現
本開示はまた、AF196970.3(配列番号1)、又は配列番号13~17及び26~30のうちのいずれか1つ又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントをコード又は発現する(例えば、その産生のための鋳型である)核酸も提供する。一部の実施形態では、核酸は、細胞に対して異種であり、且つ発現制御配列に作動可能に連結される。他の実施形態では、核酸は、細胞に対して生来型であるが、異種発現制御配列に作動可能に連結される。そのような核酸の例としては、ENSG00000232828(配列番号5)又は配列番号6、若しくは配列番号32~36及び45~49のcDNA又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。他の例としては、エクソン1~3(配列番号2~4)のうちのいずれか、又はその断片若しくはバリアントをコードする核酸が挙げられる。そのような核酸のまた他の例としては、配列番号6~9、32~36及び45~49のcDNAのうちのいずれか又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。そのような核酸は、プラスミド又はベクター又はトランスポザーゼシステムの一部であり得る。
【0071】
一部の実施形態では、AF196970.3(配列番号1)若しくは本明細書中に記載される通りのshRNA(配列番号13~17又は26~30)のうちのいずれか1つ又はSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントをコード又は発現する内因性核酸の発現は、例えば、内因性核酸を異種発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)に作動可能に連結することにより、細胞において上方調節される。一部の実施形態では、内因性遺伝子又はその対立遺伝子バリアント、例えば、ENSG00000232828(配列番号5)の発現は、例えば、内因性核酸を異種発現制御配列に作動可能に連結することにより、細胞において上方調節される。
【0072】
ポリヌクレオチド、例えば、RNAを発現させるための手段及びベクターは、当技術分野で周知であり、且つ市販されている。知られているベクターとしては、ウイルスベクター及び偽型化ウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴(AAV)、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、EBV、及び単純ヘルペスウイルスパピローマウイルス、フォーミーウイルス(foamivirus)、又はセムリキ森林ウイルスベクター、又はトランスポザーゼシステム、例えば、Sleeping Beautyトランスポザーゼベクターが挙げられる。細胞への裸のプラスミドの送達のための非ウイルスシステムとしては、脂質、カチオン性脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、金粒子、又はポリマー複合体、ポリリジンコンジュゲート、合成ポリアミノポリマー及び人工ウイルスエンベロープが挙げられる。
【0073】
短鎖非コードRNA、例えば、shRNAを発現させるために、ポリメラーゼIIIプロモーターが一般的に用いられる。例としては、U6、H1、又は7SKプロモーターが挙げられる。
【0074】
長鎖RNA、例えば、mRNA又は長鎖非コードRNAを発現させるために、ポリメラーゼIIプロモーターが一般的に用いられる。例としては、CMV、EF-1a、hPGK及びRPBSAが挙げられる。CAGプロモーターは、lncRNAを過剰発現させるために用いられてきた。Yin等、Cell Stem Cell.2015年5月7日;16(5):504~16頁。活性化型T細胞からのシグナルにより駆動される誘導性プロモーターとしては、活性化型T細胞の核因子(NFAT)プロモーターが挙げられる。RNAのT細胞発現のための他のプロモーターとしては、CIFTキメラプロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーの一部分、コアインターフェロンγ(IFN-γ)プロモーター、及びTリンパ向性ウイルス長鎖末端反復配列(TLTR)を含む)、内因性TRACプロモーター又はTRBCプロモーターが挙げられる。誘導性、構成的、又は組織特異的プロモーターが考慮される。
【0075】
ウイルスベクターが、lncRNAを過剰発現させるために用いられてきており、Yang等、(2013)Mol Cell 49:1083~1096頁;Lu等、(2018)Mol Ther Nucleic Acids 10:387~397頁を参照されたい。加えて、lncRNAは、レンチベクター及びSBトランスポザーゼシステムから発現されてきた。例えば、Zhang等、Overexpression of lncRNAs with endogenous lengths and functions using a lncRNA delivery system based on transposon. J Nanobiotechnol 19、303頁(2021)を参照されたい。
【0076】
CRISPR-Cas9に基づく活性化システムもまた、lncRNAの内因性発現を上方調節するために用いられてきた。Rankin等、Overexpressing Long Noncoding RNAs Using Gene-activating CRISPR. J Vis Exp.2019;(145):10.3791/59233。
【0077】
一部の実施形態では、dsRNA、例えば、RNAiは、dsRNAを発現する(その一方又は両方の鎖に対する鋳型である)ヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含むベクターにより、細胞において産生される。更なる実施形態では、プロモーターは、鋳型ヌクレオチド配列のいずれかの末端に隣接することができ、このとき、プロモーターは各個別のDNA鎖の発現を駆動し、それにより、2つの相補的(又は実質的に相補的な)RNAを生成し、これらがハイブリダイズして、dsRNAを形成する。他の実施形態では、dsRNAは、shRNAを発現するベクターにより細胞において産生され、shRNAがプロセシングされて、干渉性dsRNAを形成する。
【0078】
核酸又はポリヌクレオチドの送達
宿主細胞中へと外来性核酸(例えば、DNA及びRNA)を導入するための当技術分野で認識される技術としては、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、微小注入、DNA積載リポソーム、リポフェクタミン-DNA複合体、細胞超音波処理、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子ボンバードメント、バイオリスティック、及びウイルス媒介トランスフェクションが挙げられる。核酸を含む組成物はまた、界面活性剤、キノンアナログ、ベシクル、例えば、スクアレン及びスクアレン、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、レシチンリポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリ-L-グルタメートをはじめとするポリカチオン、又はナノ粒子、金粒子、又は他の知られている薬剤をはじめとする、トランスフェクション促進剤も含んでもよい。送達ビヒクルとしては、リポソーム、脂質含有複合体、ナノ粒子、金粒子、又はポリマー複合体が挙げられる。
【0079】
脂質材料は、後期エンドソームの低下したpHではカチオン性電荷を示し、それにより、それらの構造中の第3級アミンを原因として、エンドソーム脱出を誘導する、イオン化可能カチオン性脂質に基づく脂質ナノ粒子(LNP)をつくり出すために用いられてきた。これらのLNPは、例えば、RNA干渉(RNAi)成分、並びに遺伝子構築物又はCRISPR-Casシステムを送達するために用いられてきた。例えば、Wilbie等、Acc Chem Res ;52(6):1555~1564頁、2019を参照されたい。Wang等、Proc Natl Acad Sci USA.;113(11):2868~2873頁、2016は、生分解性カチオン性LNPの使用を記載する。Chang等、Acc.Chem.Res.、52、665~675頁、2019は、LNPを生成するための、コレステロール、DSPC、及びPEG化脂質と併せたイオン化可能脂質の使用を記載する。
【0080】
ポリマーに基づく粒子は、脂質と同様の様式で、遺伝子構築物送達のために用いることができる。多数の材料が、核酸の送達のために用いられてきた。例えば、カチオン性ポリマー、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)は、核酸に対して複合体化することができ、且つ、カチオン性脂質と同様に、エンドソーム取り込み及び放出を誘導することができる。ポリ(アミド-アミン)(PAMAM)のデンドリマー構造もまた、トランスフェクションのために用いることができる。これらの粒子は、そこからポリマーが分岐するコアからなる。これらは、その表面上にカチオン性第1級アミンを提示し、これは核酸に対して複合体化することができる。イミダゾールの架橋を助ける亜鉛に基づくネットワークは、後期エンドソームの低pHに依存して送達法として用いられてきており、この低pHが、取り込みに際して、ゼオライト型イミダゾール骨格(ZIF)の解離に起因してカチオン性電荷をもたらし、その後に、成分がサイトゾルへと放出される。コロイド状金ナノ粒子もまた用いられてきた。Wilbie等、上掲を参照されたい。
【0081】
阻害性ポリヌクレオチド又は活性化ポリヌクレオチドの生成及び化学修飾
インビトロ転写されたか、化学合成されたか、又は部分的に化学合成されたRNAを送達することができる。例えば、RNAは、インビトロ転写し、且つ5'末端及び/又は3'末端で化学合成されたRNAに化学的に連結することができる。インビトロ転写されたlncRNAの直接的注入又はトランスフェクションが、lncRNA機能を実証するために行われてきた。Ulitsky等、(2011)Cell、147(7):1537~1550頁。
【0082】
オリゴヌクレオチド(ポリヌクレオチドとも称される)に対する化学修飾は、分解に対するそれらの耐性を改善し、それにより半減期を増加させ、且つ/又は相補的ポリヌクレオチドに対する親和性を増大させることができる。修飾型オリゴヌクレオチド(例えば、RNAオリゴヌクレオチド)は、修飾型骨格連結、修飾型リン酸部分、修飾型糖部分、修飾型核酸塩基、若しくは化学的にコンジュゲート化された部分、又はそれらのいずれかの組み合わせのうちの1つ又は複数をはじめとする化学修飾を含む。任意により1、2、3、4、5、10、15、20箇所以上の別のタイプの修飾、又は修飾のパターンと組み合わせた、1、2、3、4、5、10、15、20箇所以上の同じタイプの修飾が考慮される。パターンとしては、オリゴヌクレオチド全体にわたる交互の修飾、例えば、2'-フルオロ若しくは2'-メトキシ、又は、例えば、オリゴヌクレオチドの5'末端及び/若しくは3'末端の塩基、糖、若しくは連結のうちの1、2、3、4、5箇所、若しくはそれ以上が修飾されている、末端修飾が挙げられる。
【0083】
修飾型骨格連結の例としては、ホスホロチオエート、ホスホチオエート(PhTx)基若しくはホスホノアセテート、チオホスホノアセテート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、又はホスホロジチオエートが挙げられる。他のヌクレオチド間架橋性修飾型ホスフェート、例えば、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート及びホスホルアミデートを用いることができる。例えば、ヌクレオチド間架橋性ホスフェート残基のうちの全部又は1つおきを、記載される通りに修飾することができる。
【0084】
修飾型糖部分の例としては、デオキシリボース、又は別の基による2'OH基の置き換えが挙げられる。糖アナログ変更のうちの大多数は2'位に位置するが、4'位をはじめとする他の部位が修飾を受けることができる。置き換え基の例としては、H、-OR、-R(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、低級アルキル部分(例えば、C1~C4、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、及びイソプロピル)、ハロ、-F、-Br、-Cl若しくは-I、-SH、-SR(式中、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、-アラビノ、F-アラビノ、アミノ(アミノは、例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であり得る);又はシアノ(-CN)が挙げられる。具体例としては、2'-フルオロ糖、2'-O-メチル糖、2'-O-メトキシエチル糖、又はロックド核酸(LNA)ヌクレオチドが挙げられる。修飾型2'-糖の具体例としては、2'-F又は2'-O-メチルアデノシン(A)、2'-F又は2'-O-メチルシチジン(C)、2'-F又は2'-O-メチルウリジン(U)、2'-F又は2'-O-メチルチミジン(T)、2'-F又は2'-O-メチルグアノシン(G)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2'-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)、及びそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。例えば、ヌクレオチドのうちの全部又は1つおきを、記載される通りに修飾することができる。
【0085】
修飾型核酸塩基の例としては、限定するものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられる。
【0086】
ポリヌクレオチドはまた、脂質又はリポソームに対して複合体化することにより安定化することもできる。一部の実施形態では、リポソームは、l,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)を含む。特定の実施形態では、脂質粒子は、コレステロール、l,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、PEG-cDMA又はPEG-cDSA、及び1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N,N-ジメチル)アミノプロパン(DLinDMA)を含む。
【0087】
調節されたSUV39H1発現を有する細胞
本開示に従う細胞は、SUV39H1発現の調節、好ましくは阻害を示す。細胞は、典型的には、哺乳動物細胞、又は細胞株、例えば、マウス、ラット、ブタ、非ヒト霊長類、又は好ましくはヒトである。そのような細胞としては、血液、骨髄、リンパ、又はリンパ器官(特に胸腺)に由来する細胞が挙げられ、好ましくは、免疫系の細胞(すなわち、免疫細胞)、例えば、生得又は適応免疫の細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はリンパ球、典型的にはT細胞及び/又はNK細胞をはじめとする、骨髄系又はリンパ系細胞である。免疫細胞又はその前駆体はまた、好ましくは、本明細書中に記載される通りの1つ若しくは複数、又は2種以上、又は3種以上の抗原特異的受容体(CAR及び/又はTCR)を含み、且つ任意により、1つ又は複数の共刺激受容体を含む。本開示に従う抗原特異的受容体の中でも、組み換え型修飾型T細胞受容体(TCR)及びその成分、並びに機能的非TCR抗原特異的受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)である。
【0088】
本開示に従う細胞は、免疫細胞前駆体、例えば、リンパ系前駆細胞及びより好ましくはT細胞前駆体でもあり得る。T細胞前駆体の例としては、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、ヒト胚性幹細胞(ESC)、脂肪由来幹細胞(ADSC)、多能性前駆細胞(MPP);リンパ系感作多能性前駆細胞(LMPP);共通リンパ系前駆細胞(CLP);リンパ系前駆細胞(LP);胸腺定着前駆細胞(TSP);又は初期胸腺前駆細胞(ETP)が挙げられる。造血幹細胞及び前駆細胞は、例えば、臍帯血から、又は末梢血から取得することができ、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を用いる動員処理後の末梢血由来CD34+細胞であり得る。T細胞前駆体は、典型的には、CD44、CD117、CD135、及び/又はSca-1をはじめとするコンセンサスマーカーのセットを発現する。
【0089】
一部の実施形態では、細胞としては、T細胞又は他の細胞タイプのうちの1つ又は複数のサブセット、例えば、T細胞集団全体、CD4+及び/又はCD8+ T細胞、並びにそれらの部分集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化に対する潜在能力、拡大増殖、再循環、局在化、及び/若しくは持続能、抗原特異性、抗原特異的受容体のタイプ、特定の器官若しくは区画中での存在、マーカー若しくはサイトカイン分泌プロフィール、並びに/又は分化の程度により規定されるものが挙げられる。一部の実施形態では、細胞としては、骨髄系由来細胞、例えば、樹状細胞、単球又はマクロファージが挙げられる。
【0090】
T細胞並びに/又はCD4+及び/若しくはCD8+ T細胞のサブタイプ並びに部分集団の中でも、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞及びそのサブタイプ、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、又は最終分化型エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在し且つ適応性の調節T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/βT細胞、及びδ/γT細胞である。幹/メモリー特性及びSUV39H1の阻害に起因するより高い再構成能を有するTEFF細胞、並びにTN細胞、TSCM、TCM、TEM細胞及びそれらの組み合わせが、本明細書中で具体的に考慮される。
【0091】
一部の実施形態では、T細胞集団のうちの1つ又は複数は、1つ若しくは複数の特定のマーカー、例えば、表面マーカーについて陽性であるか若しくはその高レベルを発現するか、又は1つ若しくは複数のマーカーについて陰性であるか若しくはその比較的低レベルを発現する細胞に関して富化されるか、又はそれを枯渇する。一部の場合には、そのようなマーカーは、T細胞の特定の集団(例えば、非メモリー細胞)上で非存在であるか又は比較的低レベルで発現するが、T細胞の特定の他の集団(例えば、メモリー細胞)上に存在するか又は比較的高レベルで発現されるものである。一実施形態では、細胞(例えば、CD8+細胞又はT細胞、例えば、CD3+細胞)は、CD117、CD135、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、及び/若しくはCD62Lについて陽性であるか若しくはその高い表面レベルを発現する細胞に関して富化され(すなわち、それに関して陽性選択され)、且つ/又はCD45RAについて陽性であるか若しくはその高い表面レベルを発現する細胞を枯渇する(例えば、それに関して陰性選択される)。一部の実施形態では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、及び/若しくはIL7-Ra(CD127)について陽性であるか又はその高い表面レベルを発現する細胞に関して富化されるか又はそれを枯渇する。一部の例では、CD8+ T細胞は、CD45ROについて陽性(又はCD45RAについて陰性)であり且つCD62Lについて陽性である細胞に関して富化される。CCR7+、CD45RO+、CD27+、CD62L+細胞である細胞のサブセットは、セントラルメモリー細胞サブセットを構成する。
【0092】
例えば、本開示に従えば、細胞は、CD4+ T細胞集団及び/又はCD8+ T細胞部分集団、例えば、セントラルメモリー(TCM)細胞に関して富化された部分集団を含んでもよい。代替的に、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然リンパ球(ILC)及びB細胞をはじめとする、リンパ球の他のタイプであり得る。
【0093】
細胞としては、被験体から取得された生物学的サンプルから直接的に単離され、且つ任意により凍結された初代細胞が挙げられる。一部の実施形態では、被験体は、細胞療法(養子細胞療法)を必要とし、且つ/又は細胞療法を受けるであろう被験体である。細胞療法を用いて治療される対象である被験体に関連して、細胞は、同種及び/又は自家であり得る。自家免疫細胞療法では、免疫細胞は、患者から収集され、本明細書中に記載される通りに改変され、且つ患者に戻される。同種免疫細胞療法では、免疫細胞は、患者ではなく健康ドナーから収集され、本明細書中に記載される通りに改変され、且つ患者に投与される。典型的には、これらは、宿主による拒絶の可能性を低減させるために、HLA適合される。免疫細胞はまた、免疫原性を低減させるための改変、例えば、HLAクラスI分子、HLA-A遺伝子座、及び/又はβ-2マイクログロブリン(B2M)の破壊又は除去を含むこともできる。
【0094】
汎用「既製品」免疫細胞は、典型的には、移植片対宿主病を低減させるために設計された改変、内因性TCRのそのような破壊又は欠失を含む。β鎖(TRBC)をコードする2つの遺伝子ではなく、単一遺伝子がα鎖(TRAC)をコードするので、TRAC遺伝子座は、内因性TCR発現を除去又は破壊するための一般的な標的である。
【0095】
サンプルとしては、組織若しくは器官由来の組織サンプル、又は流体サンプル、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、若しくは滑液が挙げられる。サンプルは、被験体から直接的に取得することができるか、又は1つ若しくは複数の加工工程、例えば、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターを用いる形質導入)、洗浄、及び/若しくはインキュベーションから生じることができる。血液又は血液由来サンプルは、アフェレーシス又は白血球除去生成物から誘導され得る。例示的なサンプルとしては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、骨髄由来細胞、及び/又はそれらから誘導される細胞が挙げられる。
【0096】
細胞を生成させるための方法
調節されたSUV39H1発現を有する本開示の細胞を生成させる方法が、本明細書中に提供される。阻害されたSUV39H1発現を有する細胞に関して、そのような方法は、本明細書中に開示される阻害性ポリヌクレオチドのうちの1つ若しくは複数、又は2種以上、又は3種以上を、そのような細胞中へと導入する工程を含む。より具体的には、そのような方法は、SUV39H1発現を増加させるために有効な量及び条件下で、本明細書中に記載される通り、AF196970.3の核酸塩基配列(配列番号1)又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントを含むポリヌクレオチドを細胞中へと導入する工程を含む。他の例は、エクソン1~3(配列番号2~4)のいずれかの核酸塩基配列、又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントを含むポリヌクレオチドを含む。そのようなポリヌクレオチドは、分解を低減させ且つ/又は親和性を増大させるために、化学修飾することができる。
【0097】
そのような方法はまた、SUV39H1発現を増加させるために有効な量及び条件下で、好ましくは発現制御配列に作動可能に連結された、AF196970.3(配列番号1)若しくは本明細書中に記載される通りのshRNA(本明細書中に記載される通りの配列番号13~17又は26~30の配列のうちの1つを含む)又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントをコード又は発現する、核酸、プラスミド、ベクター又はトランスポザーゼシステムを、細胞中へと導入することも含む。そのような核酸の例としては、ENSG00000232828(配列番号5)又は配列番号6、32~36及び45~49のcDNA又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。他の例としては、エクソン1~3(配列番号2~4)のうちのいずれかをコードする核酸、又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。そのような核酸のまた他の例としては、配列番号6~9のcDNAのうちのいずれか又はその断片若しくはバリアントが挙げられる。
【0098】
そのような方法はまた、核酸に作動可能に連結された異種発現制御配列(例えば、構成的、誘導性又は組織特異的な、プロモーター、エンハンサー、他の調節配列)を細胞のゲノム中へと挿入することにより、AF196970.3(配列番号1)若しくは本明細書中に記載される通りのshRNA(本明細書中に記載される通りの配列番号13~17及び26~30のうちのいずれか1つを含む)又は細胞においてSUV39H1の発現を阻害することが可能なその断片若しくはバリアントをコード又は発現する核酸の内因性発現を上方調節する工程も含む。一部の実施形態では、内因性遺伝子又はその対立遺伝子バリアント、例えば、ENSG00000232828(配列番号5)の発現が、細胞において上方調節される。
【0099】
異種発現制御配列は、例えば、知られているヌクレアーゼシステム、例えば、ZFN、TALEN又はガイドRNAを含むCRISPRシステム(例えば、CRISPR-Cas9)を用いる切断後に、ドナー鋳型を用いる相同組み換えにより、細胞中へと挿入することができる。
【0100】
増加したSUV39H1発現を有する細胞に関して、そのような方法は、SUV39H1発現を増加させるために有効な量及び条件下で、本明細書中に記載される活性化ポリヌクレオチド、例えば、RNAi、shRNA、ASO、リボザイム、又はZFN若しくはTALEN又はガイドRNAを含むCRISPRシステムのうちの1つ若しくは複数、又は2種以上、又は3種以上をそのような細胞中へと導入する工程を含む。
【0101】
抗原特異的受容体
調節されたSUV39H1発現を有する本開示の細胞は、その表面上に1つ若しくは複数、又は2種以上、又は3種以上の抗原特異的受容体、及び任意により1つ又は複数の共刺激受容体を発現する免疫細胞を含む。抗原特異的受容体としては、組み換え型若しくは改変型T細胞受容体(TCR)及びその成分、並びに/又はキメラ抗原受容体(CAR)が挙げられる。例えば、少なくとも2種のCAR、少なくとも2種のTCR、又は少なくとも1種のTCRを伴う少なくとも1種のCARが考慮される。抗原特異的受容体は、同じか又は異なる抗原に結合することができる。一部の実施形態では、2種以上の抗原特異的受容体は、異なるシグナル伝達ドメインを有する。一部の実施形態では、細胞は、活性化シグナル伝達ドメインを含む抗原特異的受容体及び阻害性シグナル伝達ドメインを含む抗原特異的受容体を含む。典型的には、そのような抗原特異的受容体は、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M以下のKd結合親和性(より低い数がより高い結合親和性を示す)を伴って、標的抗原に結合する。
【0102】
したがって、細胞は、任意により異種調節制御配列に作動可能に連結された、1つ又は複数の抗原特異的受容体をコードする1つ又は複数の核酸を含んでもよい。典型的には、核酸は、異種である(すなわち、例えば、操作されている細胞中及び/又はそこからそのような細胞が誘導される生物中に通常見出されない)。一部の実施形態では、核酸は、天然に存在せず、多数の異なる細胞タイプ由来の様々なドメインをコードする核酸のキメラ的組み合わせが挙げられる。核酸とそれらの調節制御配列とは、典型的には異種である。例えば、抗原特異的受容体をコードする核酸は、免疫細胞に対して異種であり、且つT細胞受容体の内因性プロモーターに作動可能に連結されていることができ、それにより、その発現は内因性プロモーターの制御下にある。一部の実施形態では、CARをコードする核酸は、内因性TRACプロモーターに作動可能に連結される。
【0103】
免疫細胞は、特に異種である場合、細胞が不活性化された(例えば、破壊又は欠失された)内因性TCRを含むように、移植片対宿主病を低減させるために設計することができる。β鎖をコードする2つの遺伝子ではなく、単一遺伝子がα鎖(TRAC)をコードするので、TRAC遺伝子座は、TCR受容体発現を低減させるための典型的な標的である。したがって、抗原特異的受容体(例えば、CAR又はTCR)をコードする核酸は、機能的TCRα鎖の発現を著しく低減させる位置で、好ましくは第1エクソン(配列番号3)の5'領域中で、TRAC遺伝子座へとインテグレートされ得る。例えば、Jantz等、国際公開第2017/062451号;Sadelain等、同第2017/180989号;Torikai等、Blood、119(2):5697~705頁(2012);Eyquem等、Nature.2017年3月2日;543(7643):113~117頁を参照されたい。内因性TCRαの発現は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、及び99%低減させることができる。そのような実施形態では、抗原特異的受容体をコードする核酸の発現は、任意により、内因性TCRαプロモーターの制御下にある。
【0104】
キメラ抗原受容体(CAR)
一部の実施形態では、操作型抗原特異的受容体は、活性化若しくは刺激CAR、共刺激CAR(国際公開第2014/055668号を参照されたい)、及び/又は阻害性CAR(iCAR、Fedorov等、Sci. Transl. Medicine、5(215)(2013年12月)を参照されたい)をはじめとするキメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0105】
キメラ抗原受容体(CAR)(キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体としても知られる)は、任意の特異性を免疫エフェクター細胞(T細胞)に対して移植する、操作型抗原特異的受容体である。典型的には、これらの受容体は、レトロウイルスベクターにより促進されるそれらのコード配列の移動を伴って、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に対して移植するために用いられる。
【0106】
CARは一般的に、一部の態様ではリンカー及び/又は膜貫通ドメインを介して、1つ又は複数の細胞内シグナル伝達成分に連結された細胞外抗原(又はリガンド)結合性ドメインを含む。そのような分子は、典型的には、天然の抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介するシグナル、及び/又は共刺激受容体単独を介するシグナルを模倣するか又はこれに近似する。
【0107】
CARは、(a)細胞外抗原結合性ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、(c)任意により、共刺激ドメイン、及び(d)細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0108】
一部の実施形態では、CARは、特定の抗原(又はマーカー若しくはリガンド)、例えば、養子細胞療法により標的化される対象の特定の細胞タイプにおいて発現される抗原、例えば、がんマーカーに対する特異性を伴って構築される。CARは、典型的には、その細胞外部分において、1つ又は複数の抗原結合性分子、例えば、抗体の1つ又は複数の抗原結合性断片、ドメイン、又は一部分、典型的には1つ又は複数の抗体可変ドメインを含む。例えば、細胞外抗原結合性ドメインは、典型的にはscFvとして、軽鎖可変ドメイン若しくはその断片及び/又は重鎖可変ドメイン若しくはその断片を含んでもよい。一部の実施形態では、CARは、抗体重鎖可変ドメイン又は抗原に特異的に結合するその断片を含む。
【0109】
抗原に結合するために用いられる部分は、3種類の一般的なカテゴリー、抗体から誘導される単鎖抗体断片(scFv)、ライブラリーから選択されたFab、又はそれらの同族受容体に嵌合する天然リガンド(第1世代CARに関して)のいずれかを含む。これらのカテゴリーの各々における上首尾の例は、特に、Sadelain M、Brentjens R、Riviere I. The basic principles of chimeric antigen receptor (CAR) design. Cancer discovery.2013;3(4):388~398頁に記載され(特にtable 1(表1)を参照されたい)、本開示中に含められる。
【0110】
抗体としては、キメラ、ヒト化又はヒト抗体が挙げられ、且つ上記に記載される通りに更に親和性成熟及び選択される。げっ歯類免疫グロブリン(例えば、マウス、ラット)から誘導されたキメラ又はヒト化scFvが、十分に特性決定されたモノクローナル抗体から容易に誘導されるので、一般的に用いられる。ヒト化抗体は、げっ歯類配列由来CDR領域を含む。典型的には、げっ歯類CDRがヒトフレームワーク中へと移植され、ヒトフレームワーク残基のうちの一部を、親和性を保存するために元のげっ歯類フレームワーク残基へと戻し変異することができ、且つ/又はCDR残基のうちの1個若しくは数個を、親和性を増大させるために変異させることができる。完全ヒト抗体は、ネズミ配列を有さず、且つ典型的にはヒト抗体ライブラリーのファージディスプレイ技術、又はその生来型免疫グロビン(immunoglobin)遺伝子座がヒト免疫グロブリン遺伝子座のセグメントを用いて置き換えられているトランスジェニックマウスの免疫化を介して生成される。生来型アミノ酸配列中に1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を有する抗体のバリアントを生成させることができ、このとき、抗体は、その特異的結合機能を保持するか又は実質的に保持する。アミノ酸の保存的置換が周知であり、且つ上記に記載される。抗原に対する改善された親和性を有する更なるバリアントもまた生成させることができる。
【0111】
一部の実施形態では、改変型TCR又はCARは、MHCペプチド複合体として細胞表面上に提示された、細胞内抗原、例えば、腫瘍関連抗原を特異的に認識する、抗体の断片又は抗原結合性断片(例えば、scFv、又は可変重鎖(VH)領域若しくは可変軽鎖(VL)領域又はそのようなVH及び/若しくはVLの1個、2個、若しくは3個のCDR)を含む。一般的に、ペプチド-MHC複合体に対するTCR様特異性を示す抗体又は抗原結合性断片を含有するCARは、TCR様CARとも称される場合がある。
【0112】
一部の実施形態での膜貫通ドメインは、天然供給源から又は合成供給源からのいずれかで誘導される。膜貫通ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインと同じ受容体、又は異なる受容体から誘導することができる。膜貫通領域としては、T細胞受容体のα鎖、β鎖若しくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS若しくはGITR、又はNKG2D、OX40、2B4、DAP10、DAP12、又はCD40から誘導される(すなわち、少なくともその膜貫通領域を含む)ものが挙げられる。T細胞に関して、CD8、CD28、CD3εが好ましい場合がある。NK細胞に関して、NKG2D、DAP10、DAP12が好ましい場合がある。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD8又はCD3ζから誘導される。一部の例では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために選択されるか、又は同じか若しくは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対するそのようなドメインの結合性を回避するためのアミノ酸置換により改変される。
【0113】
一部の実施形態では、短いオリゴ又はポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のリンカーが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成する。
【0114】
CARは、一般的に、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達成分(単数又は複数)を含む。第1世代CARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの主な伝達因子であるCD3ζ鎖由来の細胞内ドメインを有した。第2世代CARは、典型的には、T細胞に対して追加のシグナルを提供するために、CARの細胞質テイルに対する様々な共刺激タンパク質受容体由来の細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。共刺激ドメインとしては、ヒトCD28、4-1BB(CD137)、ICOS、CD27、OX40(CD134)、DAP10、DAP12、2B4、CD40、FCER1G又はGITR(AITR)由来のドメインが挙げられる。T細胞に関して、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、ICOSが好ましい場合がある。NK細胞に関して、DAP10、DAP12、2B4が好ましい場合がある。2つの共刺激ドメインの組み合わせ、例えば、CD28及び4-1BB、又はCD28及びOX40が考慮される。第3世代CARは、効力を増強するために複数のシグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ζ-CD28-4-1BB又はCD3ζ-CD28-OX40を組み合わせる。
【0115】
T細胞活性化は、一部の態様では、細胞質シグナル伝達配列の2つのクラス:TCRを介して抗原依存的な一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、及び二次又は共刺激シグナルを提供するために抗原非依存的様式で機能するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)により媒介されると説明される。一部の態様では、CARは、そのようなシグナル伝達成分のうちの一方又は両方を含む。
【0116】
一部の態様では、CARは、刺激性様式、又は阻害性様式のいずれかでのTCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激性様式で機能する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでもよい。一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dから誘導されるものが挙げられる。一部の実施形態では、CAR中の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ζから誘導される細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部分、又は配列を含む。CARはまた、共刺激受容体、例えば、CD28、4-1BB(CD137)、ICOS、CD27、OX40(CD134)、DAP10、DAP12、2B4、CD40、FCER1G又はGITR(AITR)のシグナル伝達ドメイン及び/又は膜貫通部分を含むこともできる。一部の態様では、同じCARが、活性化成分と共刺激成分の両方を含むか;代替的に、活性化ドメインが1つのCARにより提供される一方で、共刺激成分は別の抗原を認識する別のCARにより提供される。
【0117】
細胞内シグナル伝達ドメインは、TCR複合体の細胞内成分、例えば、T細胞活性化及び細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えば、CD3ζ鎖に由来し得る。代替的な細胞内シグナル伝達ドメインとしては、FcεRIγが挙げられる。細胞内シグナル伝達ドメインは、その3つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)のうちの1つ又は2つを欠く改変型CD3ζポリペプチドを含んでもよく、ITAMは、ITAM1、ITAM2及びITAM3(N末端からC末端へと番号付け)である。CD3ζの細胞内シグナル伝達領域は、配列番号10の残基22~164である。ITAM1はアミノ酸残基61~89付近に位置し、ITAM2はアミノ酸残基100~128付近に位置し、且つITAM3は残基131~159付近に位置する。したがって、改変型CD3ζポリペプチドは、不活性化された、例えば、破壊又は欠失されたITAM1、ITAM2、及びITAM3のうちのいずれか1つを有することができる。代替的に、改変型CD3ζポリペプチドは、不活性化されたいずれか2つのITAM、例えば、ITAM2及びITAM3、又はITAM1及びITAM2を有することができる。好ましくは、ITAM3が不活性化され、例えば、欠失される。より好ましくは、ITAM2及びITAM3が不活性化され、例えば、ITAM1を残して欠失される。例えば、1つの改変型CD3ζポリペプチドはITAM1のみを保持し、残余のCD3ζドメインは欠失される(残基90~164)。別の例として、ITAM1がITAM3のアミノ酸配列を用いて置換され、残余のCD3ζドメインは欠失される(残基90~164)。例えば、Bridgeman等、Clin. Exp. Immunol. 175(2):258~67頁(2014);Zhao等、J. Immunol. 183(9):5563~74頁(2009);Maus等、国際公開第2018/132506号;Sadelain等、同第2019/133969号、Feucht等、Nat Med. 25(l):82~88頁(2019)を参照されたい。
【0118】
したがって、一部の態様では、抗原結合性分子は、1つ又は複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。一部の実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールとしては、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/又は他のCD膜貫通ドメインが挙げられる。CARはまた、1つ又は複数の追加の分子、例えば、Fc受容体g、CD8、CD4、CD25、又はCD16の一部分を更に含むこともできる。
【0119】
一部の実施形態では、CARのライゲーションに際して、CARの細胞質ドメイン又は細胞内シグナル伝達ドメインは、対応する非操作型免疫細胞(典型的にはT細胞)の正常なエフェクター機能又は応答のうちの少なくとも1つを活性化する。例えば、CARは、T細胞の機能、例えば、細胞溶解活性若しくはTヘルパー活性、サイトカインの分泌又は他の要素を誘導することができる。
【0120】
CAR又は他の抗原特異的受容体はまた、阻害性CAR(例えば、iCAR)でもあり得、且つ応答、例えば、免疫応答を弱めるか又は抑制する細胞内成分を含む。そのような細胞内シグナル伝達成分の例は、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、又はA2ARをはじめとするEP2/4アデノシン受容体をはじめとする免疫チェックポイント分子上に見出されるものである。一部の態様では、操作型細胞は、細胞の応答を弱めるために機能するように、そのような阻害性分子のシグナル伝達ドメインを含むか又はそれから誘導される阻害性CARを含む。そのようなCARは、例えば、活性化受容体、例えば、CARにより認識される抗原が、正常細胞の表面上でもまた発現されるか、又は発現されることもできる場合に、標的外作用の可能性を低減させるために用いられる。
【0121】
TCR
一部の実施形態では、抗原特異的受容体としては、組み換え型改変型T細胞受容体(TCR)及び/又は天然に存在するT細胞からクローニングされたTCRが挙げられる。TCRをコードする核酸は、様々な供給源から、例えば、天然に存在するTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及びそれに続く抗体可変領域の発現、及びそれに続いて抗原に対する特異的結合性に関して選択することにより、取得することができる。一部の実施形態では、TCRは、患者から単離されたT細胞から、又は培養されたT細胞ハイブリドーマから取得される。一部の実施形態では、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、又はHLA)を用いて操作されたトランスジェニックマウスにおいて生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst等、(2009) Clin Cancer Res. 15:169~180頁及びCohen等、(2005) J Immunol. 175:5799~5808頁を参照されたい)。一部の実施形態では、標的抗原に対するTCRを単離するために、ファージディスプレイが用いられる(例えば、Varela-Rohena等、(2008) Nat Med. 14:1390~1395頁及びLi(2005) Nat Biotechnol. 23:349~354頁を参照されたい)。
【0122】
「T細胞受容体」又は「TCR」とは、可変α鎖及びβ鎖(それぞれ、TCRα及びTCRβとしても知られる)又は可変γ鎖及びδ鎖(それぞれ、TCRγ及びTCRδとしても知られる)を含み、且つMHC受容体に結合した抗原ペプチドに対して特異的に結合することが可能である分子を意味する。一部の実施形態では、TCRの抗原結合性ドメインは、約1×10-7以下、約5×10-8以下、約1×10-8以下、約5×10-9以下、約1×10-9以下、約5×10-10以下、約1×10-10以下、約5×10-11以下、約1×10-11以下、約5×10-12以下、又は約1×10-12以下のKD親和性(より低い数がより高い親和性を示す)を伴って、その標的抗原に結合する。一部の実施形態では、TCRは、αβ形態にある。典型的には、αβ形態及びγδ形態で存在するTCRは、概ね構造的に類似であるが、それらを発現するT細胞は、異なる解剖学的局在又は機能を有し得る。TCRは、細胞の表面上で又は可溶性形態で見出すことができる。一般的に、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面上に見出され、この場合、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を広く担う。一部の実施形態では、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン及び/又は短い細胞質テイルを含むこともできる(例えば、Janeway等(et ah)、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease、第3版、Current Biology Publications社、4:33頁、1997を参照されたい)。例えば、一部の態様では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、及びC末端での短い細胞質テイルを保有することができる。一部の実施形態では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合する。別途明記されない限り、用語「TCR」は、その機能的TCR断片を包含することが理解されるべきである。この用語はまた、αβ形態又はγδ形態でのTCRをはじめとする、無傷又は全長改変型TCRも包含する。用語「TCR」はまた、抗体のVH及び/又はVLを含むために改変されたTCRも含む。
【0123】
したがって、本明細書中の目的に関して、TCRに対する参照は、いずれかの改変型TCR又はその機能的断片、例えば、MHC分子、すなわち、MHC-ペプチド複合体中に結合した特異的抗原性ペプチドに結合するTCRの抗原結合性部分を含む。相互に交換可能に用いることができるTCRの「抗原結合性部分」又は「抗原結合性断片」とは、TCRの構造ドメインの一部分を含むが、それに対して全長TCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子を意味する。一部の場合には、抗原結合性部分は、TCRの可変ドメイン、例えば、特異的MHC-ペプチド複合体に対する結合性のための結合部位を形成するために十分な、例えば、一般的には、各鎖が3つの相補性決定領域を含む場合の、TCRの可変α鎖及び可変β鎖を含む。
【0124】
一部の実施形態では、TCR鎖の可変ドメインは、会合して、抗原認識を付与し、且つTCR分子の結合部位を形成することによりペプチド特異性を決定し且つペプチド特異性を決定する、ループ、又は免疫グロブリンに対して相似の相補性決定領域(CDR)を形成する。典型的には、免疫グロブリンと同様に、CDRは、フレームワーク領域(FR)により隔てられる(例えば、Jores等、Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. 87:9138頁、1990;Chothia等、EMBO J. 7:3745頁、1988を参照されたく;Lefranc等、Dev. Comp. Immunol. 27:55頁、2003もまた参照されたい)。一部の実施形態では、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識を担う主なCDRであるが、α鎖のCDR1もまた、抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されてきており、一方で、β鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられる。一部の実施形態では、β鎖の可変領域は、更なる超可変性(HV4)領域を含んでもよい。
【0125】
一部の実施形態では、TCR鎖は、定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外部分(例えば、α鎖、β鎖)は、N末端での可変ドメイン(例えば、Vα又はVβ;典型的にはKabatナンバリングKabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Dept. Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版に基づいてアミノ酸1~116)、及び細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメイン又はCα若しくはTRAC、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸117~259、β鎖定常ドメイン又はCβ若しくはTRBC、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸117~295)の2つの免疫グロブリンドメインを含んでもよい。例えば、一部の場合には、2つの鎖により形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、及びCDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それにより2つの鎖間での連結をつくり出す、短い連結性配列を含む。一部の実施形態では、TCRは、α鎖及びβ鎖の各々に追加のシステイン残基を有することができ、それにより、TCRが定常ドメイン中に2箇所のジスルフィド結合を含む。
【0126】
一部の実施形態では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含んでもよい。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、正に荷電している。一部の場合には、TCR鎖は、細胞質テイルを含む。一部の場合には、構造は、TCRがCD3等の他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域と共に定常ドメインを含むTCRは、細胞膜中にタンパク質を係留することができ、且つCD3シグナル伝達装置又は複合体のインバリアントサブユニットと会合することができる。
【0127】
一般的に、CD3は、3種類の異なる鎖(ガンマ(γ)、デルタ(δ)、及びイプシロン(ε))及びζ鎖を保有し得る複数タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物では、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、及びCD3ζ鎖のホモ二量体を含んでもよい。CD3γ鎖は、単一免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ鎖、CD3δ鎖、及びCD3ε鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、このことはこれらの鎖が正に荷電したT細胞受容体鎖と会合し、且つTCRから細胞へのシグナルの伝搬において役割を果たすことを可能にする特徴である。CD3γ鎖、CD3δ鎖、及びCD3ε鎖の細胞内テイルは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られる単一の保存されたモチーフを各々含み、一方で、各CD3ζ鎖は、3つのITAMを有する。一般的に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に関与する。CD3γ鎖、δ鎖、ε鎖及びζ鎖は一緒になって、T細胞受容体複合体として知られるものを形成する。
【0128】
本開示の改変型TCRは、異種抗原結合性ドメイン及び生来型TCR定常ドメイン(α又はβ)又はその断片を含んでもよく、このとき、改変型TCRは、CD3ζポリペプチドを活性化することが可能である。本明細書中でHI-TCR又はHIT-CARと記載される例示的な改変型TCRは、(a)抗体の重鎖可変領域(VH)の抗原結合性断片を含む第1の抗原結合性鎖;及び(b)抗体の軽鎖可変領域(VL)の抗原結合性断片を含む第2の抗原結合性鎖を含み;このとき、第1及び第2の抗原結合性鎖は、生来型若しくはバリアントTRAC(定常領域)若しくはその断片、又は生来型若しくはバリアントTRBC(定常領域)若しくはその断片を各々含む。一部の実施形態では、TRACポリペプチド及びTRBCポリペプチドの少なくとも一方、典型的にはTRACポリペプチドは内因性であり、且つ任意により、内因性TRAC及びTRBCポリペプチドのうちの一方又は両方が不活性化される。
【0129】
一部の設計では、HI-TCRは、(a)任意によりVH(又はTRAC)のアミノ酸が除去されている、生来型若しくはバリアントTRAC又はその断片に融合されたVH又はその断片を含む、キメラTCRα鎖、及び(b)任意によりVL(又はTRBC)のアミノ酸が除去されている、生来型若しくはバリアントTRBC又はその断片に融合されたVL又はその断片を含む、キメラTCRβ鎖を含む。他の設計では、HI-TCRは、(a)任意によりVL(又はTRAC)のアミノ酸が除去されている、生来型若しくはバリアントTRAC又はその断片に融合されたVL又はその断片を含む、キメラTCRα鎖、及び(b)任意によりVH(又はTRBC)のアミノ酸が除去されている、生来型若しくはバリアントTRBC又はその断片に融合されたVH又はその断片を含む、キメラTCRβ鎖を含む。また他の設計では、HI-TCRは、任意によりVH(又はTRAC若しくはTRBC)のアミノ酸が除去されている、生来型若しくはバリアントTRAC若しくはその断片に融合されているか、又は生来型若しくはバリアントTRBC若しくはその断片に融合された、VH又はその断片のみを含む。HI-TCR(HIT-CAR)は、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる、国際公開第2019/157454号に記載されている。また他の改変型TCRは、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる、国際公開第2018/067993号、及びBaeuerle等、Synthetic TRuC receptors engaging the complete T cell receptor for potent anti-tumor or response. Nat Commun 10、2087頁(2019)に開示されている。例えば、α鎖、β鎖、γ鎖又はε鎖のうちのいずれか1つ若しくは複数、又は2つ以上が、抗体可変領域、例えば、VH及び/又はVL、例えば、scFvに融合され得る。
【0130】
一部の実施形態では、異種抗原結合性ドメイン(例えば、VH若しくはそのバリアント若しくは断片、又はVL若しくはそのバリアント若しくは断片)をコードする核酸が、免疫細胞の内因性TRAC遺伝子座及び/又はTRBC遺伝子座へと挿入される。任意により、キメラTCRα(又はβ)鎖をコードする核酸は、その発現が内因性プロモーターの制御下になるように、T細胞受容体の内因性プロモーターに作動可能に連結される。核酸配列の挿入はまた、生来型TCRα鎖及び/又は生来型TCRβ鎖を含むTCRの内因性発現を不活性化又は破壊することもできる。核酸配列の挿入は、内因性TCR発現を、少なくとも約75%、80%、85%、90%又は95%低減させ得る。
【0131】
組み換え型TCRを含む免疫細胞は、典型的には、抗原が細胞当たり約10,000分子未満、例えば、細胞当たり約5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、500、250又は100分子未満の細胞表面上での低密度を有する場合、優れた活性を提供する。一部の実施形態では、抗原は、標的細胞により低密度、例えば、細胞当たり約6,000分子未満の標的抗原で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約5,000分子未満、約4,000分子未満、約3,000分子未満、約2,000分子未満、約1,000分子未満、又は約500分子未満の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約2,000分子未満、例えば、約1,800分子未満、約1,600分子未満、約1,400分子未満、約1,200分子未満、約1,000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満等の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約1,000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満等の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約5,000~約100分子の範囲の標的抗原、例えば、細胞当たり約5,000~約1,000分子、約4,000~約2,000分子、約3,000~約2,000分子、約4,000~約3,000分子、約3,000~約1,000分子、約2,000~約1,000分子、約1,000~約500分子、約500~約100分子等の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、組み換え型TCR T細胞療法は、野生型細胞での密度と比較して、低密度で発現される抗原を標的とする。
【0132】
CAR及び組み換え型改変型TCRをはじめとする抗原特異的受容体、並びに受容体を操作及び細胞中へと導入するための方法の他の例としては、例えば、国際公開第2000/014257号、同第2013/126726号、同第2012/129514号、同第2014/031687号、同第2013/166321号、同第2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、及び同第8,479,118号、並びに欧州特許出願公開第2537416号に記載されるもの、並びに/又はSadelain等、Cancer Discov. 2013年4月;3(4):388~398頁;Davila等、(2013) PLoS ONE 8(4):e61338;Turtle等、Curr. Opin. Immunol.、2012年10月;24(5):633~39頁;Wu等、Cancer、2012年3月、18(2):160~75頁に記載されるものが挙げられる。一部の態様では、抗原特異的受容体としては、米国特許第7,446,190号に記載される通りのCAR、及び国際公開第2014/055668号A1に記載されるものが挙げられる。
【0133】
共刺激受容体
変化したSUV39H1発現を含む本開示の細胞は、少なくとも1種又は少なくとも2種の外因性共刺激リガンドを更に含んでもよい。共刺激リガンドとしては、CD80、CD86、4-1BBL、CD275、CD40L、OX40L又はそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、共刺激リガンドは、CD80又は4-1BBLである。
【0134】
一部の実施形態では、細胞は、少なくとも1種又は少なくとも2種の共刺激受容体を含む。そのような共刺激受容体としては、少なくとも1種又は少なくとも2種の共刺激分子に融合された共刺激リガンドを含むキメラ受容体が挙げられる。共刺激リガンドとしては、CD80、CD86、4-1BBL、CD275、CD40L、OX40L又はそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、共刺激リガンドは、CD80又は4-1BBLである。例示的な共刺激分子は、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、DAP-10、CD27、CD40、NKG2D、CD2、又はそれらのいずれかの組み合わせである。一部の実施形態では、キメラ受容体は、4-1BBである第1の共刺激分子及びCD28である第2の共刺激分子を含む。
【0135】
一部の実施形態では、細胞は、CD80の細胞外ドメイン、CD80の膜貫通ドメイン、及び細胞内4-1BBドメインを含む共刺激受容体を含む。例示的な共刺激リガンド、分子及び受容体(又は融合ポリペプチド)は、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる、国際公開第2021/016174号に記載されている。
【0136】
調節されたSUV39H1発現を含む本開示の細胞はまた、T細胞特異的嵌合体、例えば、BiTE、又は所望の抗原のみならず活性化T細胞抗原、例えば、CD3εにも結合する二重特異性抗体も含んでもよい。一部の実施形態では、BiTEは、T細胞認識性ドメイン、例えば、抗CD3抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインに連結された抗原結合性ドメイン、例えば、scFvを含む。
【0137】
抗原
抗原としては、増殖性、新生物性、及び悪性疾患及び障害、特にがんをはじめとする疾患又は障害に関連付けられる抗原が挙げられる。感染性疾患及び自己免疫、炎症性又はアレルギー疾患もまた考慮される。
【0138】
がんは、固形がん又は「液体腫瘍」、例えば、特に白血病及びリンパ腫をはじめとする、造血系及びリンパ系組織の腫瘍としても知られる血液、骨髄及びリンパ系を侵すがんであり得る。液体腫瘍としては、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)(様々なリンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、胆嚢胆管がん、網膜のがん、例えば、網膜芽細胞腫を含む)が挙げられる。
【0139】
固形がんとしては、特に、結腸、直腸、皮膚、子宮内膜、肺(非小細胞肺癌を含む)、子宮、骨(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、巨細胞腫瘍、アダマンチノーマ、及び脊索腫)、肝臓、腎臓、食道、胃、膀胱、膵臓、子宮頸部、脳(例えば、髄膜腫、膠芽腫、低悪性度星細胞腫、乏突起膠腫、下垂体腫瘍、神経鞘腫、及び転移性脳がん)、卵巣、乳房、頭頸部領域、精巣、前立腺及び甲状腺からなる群より選択される器官のうちの1つを侵すがんが挙げられる。
【0140】
がんとしては、上記の通りの血液、骨髄及びリンパ系を侵すがんが挙げられる。一部の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫であるか、又は多発性骨髄腫に関連付けられる。多発性骨髄腫に関連付けられる抗原としては、CD38、CD138、及び/又はCS-1が挙げられる。他の例示的な多発性骨髄腫抗原としては、CD56、TIM-3、CD33、CD123、及び/又はCD44が挙げられる。
【0141】
疾患はまた、感染性疾患又は状態、例えば、限定するものではないが、ウイルス性、レトロウイルス性、細菌性、原生動物又は寄生虫感染症、HIV免疫不全、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスも包含する。ウイルス抗原としては、HIV、HCV、HBVの抗原が挙げられる。
【0142】
一部の実施形態では、細胞外抗原結合性ドメインは、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる、国際公開第2021/043804号に開示される腫瘍新生抗原性ペプチドのうちのいずれかに結合する。例えば、抗原結合性ドメインは、国際公開第2021/043804号の配列番号1~117のペプチドのうちのいずれか又は配列番号118~17492のうちのいずれか1つの融合転写産物配列のうちのいずれかのオープンリーディングフレーム(ORF)の一部分によりコードされる少なくとも8、9、10、11若しくは12アミノ酸を含む新生抗原性ペプチドに結合する。
【0143】
疾患はまた、自己免疫又は炎症性疾患又は状態、例えば、関節炎、例えば、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、及び/又は移植に関連付けられる疾患若しくは状態も包含する。そのような状況では、T調節細胞は、SUV39H1が阻害されている細胞であり得る。
【0144】
一部の実施形態では、抗原はポリペプチドである。一部の実施形態では、抗原は炭水化物又は他の分子である。一部の実施形態では、抗原は、正常又は非標的化細胞又は組織と比較した場合に、疾患又は状態の細胞、例えば、腫瘍又は病原性細胞上で選択的に発現されるか又は過剰発現される。他の実施形態では、抗原は、正常細胞上で発現され且つ/又は操作型細胞上で発現される。一部のそのような実施形態では、本明細書中に提供される通りの多重標的化及び/又は遺伝子破壊アプローチが、特異性及び/又は有効性を改善するために用いられる。
【0145】
一部の実施形態では、抗原は、普遍性腫瘍抗原である。用語「普遍性腫瘍抗原」とは、一般的に、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞において高レベルで発現され、且つ異なる起源の腫瘍においても発現される免疫原性分子、例えば、タンパク質を意味する。一部の実施形態では、普遍性腫瘍抗原は、ヒトがんのうちの30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%超又はそれ以上で発現される。一部の実施形態では、普遍性腫瘍抗原は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ又はそれ以上の異なるタイプの腫瘍で発現される。一部の場合には、普遍性腫瘍抗原は、非腫瘍細胞、例えば正常細胞で発現される場合があるが、腫瘍細胞において発現されるよりも低レベルである。一部の場合には、普遍性腫瘍抗原は、非腫瘍細胞で全く発現されず、例えば、正常細胞では発現されない。例示的な普遍性腫瘍抗原としては、例えば、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、サバイビン、マウス二重微小染色体2ホモログ(MDM2)、シトクロムP450 1 B1(CYP1 B)、HER2/neu、p95HER2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、リビン、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、ムチン16(MUC16)、MUC1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、p53又はサイクリン(D1)が挙げられる。普遍性腫瘍抗原をはじめとする腫瘍抗原のペプチドエピトープは、当技術分野で知られており、且つ一部の態様では、MHC拘束型抗原特異的受容体、例えば、TCR又はTCR様CARを生成させるために用いることができる(例えば、国際公開第2011/009173号又は同第2012/135854号及び米国特許出願公開第20140065708号を参照されたい)。
【0146】
一部の実施形態では、がんは、HER2又はp95HER2の過剰発現を伴うか、又はそれに関連付けられる。p95HER2は、全長HER2受容体をコードする転写産物のメチオニン611での翻訳の選択的開始により生成される、HER2の構成的に活性なC末端断片である。p95HER2のアミノ酸配列は配列番号11に示され、細胞外ドメインのアミノ酸配列は配列番号12である。
【0147】
HER2又はp95HER2は、乳がん、並びに胃がん、胃食道がん、食道がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸がん、膀胱がん、肺がん、及び頭頸部がんで過剰発現されることが報告されてきた。p95HER2断片を発現するがんを有する患者は、HER2の完全型を主に発現する患者よりも高い転移発症の可能性及び不良な予後を有する。Saez等、Clinical Cancer Research、12:424~431頁(2006)。
【0148】
他の抗原としては、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、p95HER2、LI-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、クローディン18.2、B型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD70、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、3、若しくは4、FBP、FcRH5胎児アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、Lewis Y、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp1OO、癌胎児抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、p95HER2、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、及びMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、例えば、サイクリンA1(CCNA1)、及び/又はHIV、HCV、HBV若しくは他の病原体により発現される分子が挙げられる。
【0149】
一部の実施形態では、以前に記載される通りの抗原受容体をコードする組み換え型核酸は、エレクトロポレーションを介してT細胞中へと移入される(例えば、Chicaybam等、(2013) PLoS ONE 8(3):e60298及びVan Tedeloo等、(2000) Gene Therapy 7(16):1431~1437頁を参照されたい)。一部の実施形態では、組み換え型核酸は、転位を介してT細胞中へと移入される(例えば、Manuri等、(2010) Hum Gene Ther 21(4):427~437頁;Sharma等、(2013) Molec Ther Nucl Acids 2、e74;及びHuang等、(2009) Methods Mol Biol 506:115~126頁を参照されたい)。免疫細胞中に遺伝物質を導入及び発現させる他の方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York. N.Y.に記載される通り)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進型微粒子ボンバードメント(Johnston、Nature、346:776~777頁(1990));及びリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash等、Mol. Cell Biol.、7:2031~2034頁(1987))が挙げられる。
【0150】
相同組み換え媒介標的化のための導入遺伝子ベクター化を提供する標的構築物を生成させるための特に有用なベクターとしては、限定するものではないが、組み換え型アデノ随伴ウイルス(rAAV)、組み換え型非インテグレーション性レンチウイルス(rNILV)、組み換え型非インテグレーション性γ-レトロウイルス(rNIgRV)、一本鎖DNA(直鎖状又は環状)等が挙げられる。そのようなベクターは、標的化構築物を作製することにより、本発明の免疫細胞中へと導入遺伝子を導入するために用いることができる(例えば、Miller、Hum. Gene Ther. 1 (1):5~14頁(1990);Friedman、Science 244:1275~1281頁(1989);Eglitis等、BioTechniques 6:608~614頁(1988);Tolstoshev等、Current Opin. Biotechnol. 1:55~61頁(1990);Sharp、Lancet 337:1277~1278頁(1991);Cornetta等、Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 36:311~322頁(1989);Anderson、Science 226:401~409頁(1984);Moen、Blood Cells 17:407~416頁(1991);Miller等、Biotechnology 7:980~990頁(1989);Le Gal La Salle等、Science 259:988~990頁(1993);及びJohnson、Chest 107:77S~83S(1995);Rosenberg等、N. Engl. J. Med. 323:370頁(1990);Anderson等、米国特許第5,399,346号;Scholler等、Sci. Transl. Med. 4:132~153頁(2012;Parente-Pereira等、J. Biol. Methods 1(2):e7(1~9)(2014);Lamers等、Blood 117(1):72~82頁(2011);Reviere等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6733~6737頁(1995);Wang等、Gene Therapy 15:1454~1459頁(2008)を参照されたい)。
【0151】
一部の実施形態では、外因性核酸又は標的化構築物は、ヌクレアーゼ切断部位での細胞ゲノム中への核酸配列の組み換えを促進するために、5'相同性アーム及び3'相同性アームを含む。
【0152】
一部の実施形態では、外因性核酸は、一本鎖DNA鋳型を用いて細胞中へと導入することができる。一本鎖DNAは、外因性核酸を含んでもよく、好ましい実施形態では、相同組み換えによるヌクレアーゼ切断部位への核酸配列の挿入を促進するために、5'及び3'相同性アームを含んでもよい。一本鎖DNAは、5'相同性アームの5'上流の5'AAV逆位末端反復(ITR)配列、及び3'相同性アームの3'下流の3'AAV ITR配列を更に含んでもよい。他の特定の実施形態では、標的化構築物は、5'から3'へと順番に:第1のウイルス配列、左側相同性アーム、ポリシストロン性発現カセットをつくり出すエレメントをコードする核酸配列(例えば、様々なウイルス性及び非ウイルス性内部リボソーム侵入部位(IRES、例えば、FGF-1 IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコマウイルス(picomavirus)IRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)及び切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)、好ましくは、切断可能リンカー)、導入遺伝子、ポリアデニル化配列、右側相同性アーム及び第2のウイルス配列を含む。好ましい実施形態では、標的化構築物は、5'から3'へと順番に:第1のウイルス配列、左側相同性アーム、自己切断性リンカーをコードする核酸配列(例えば、ブタテシオウイルス2A)、CAR又は改変型TCR(例えば、Hi-CTR)をコードする核酸配列、ポリアデニル化配列、右側相同性アーム及び第2のウイルス配列を含む。別の好適な標的化構築物は、インテグレーション欠損型レンチウイルス由来の配列を含んでもよい(例えば、Wanisch等、Mol. Ther. 17(8):1316~1332頁(2009)を参照されたい)。
【0153】
一部の実施形態では、ウイルス性核酸配列は、インテグレーション欠損型レンチウイルスの配列を含む。利用される相同組み換え系と適合性のいずれかの好適な標的化構造物(construction)を用いることができることが理解される。標的化構築物の一部分として機能するAAV核酸配列は、いくつかの天然又は組み換え型AAVカプシド又は粒子中にパッケージングすることができる。特定の実施形態では、AAV粒子はAAV6である。特定の実施形態では、AAV2に基づく標的化構築物は、AAV6ウイルス粒子を用いて標的細胞へと送達される。特定の実施形態では、AAV配列は、AAV2、AAV5又はAAV6配列である。
【0154】
一部の実施形態では、本発明の外因性核酸配列をコードする遺伝子は、直線化DNA鋳型を用いるトランスフェクションにより細胞中へと導入することができる。一部の例では、外因性核酸配列をコードするプラスミドDNAは、左側相同性アームの両側にヌクレアーゼ切断部位(例えば、クラスII、II、V又はVI型Casヌクレアーゼ)を含んでもよく、それにより、環状プラスミドDNAが直線化され、且つ骨格ベクター配列を含まない外因性DNAの正確なインフレームインテグレーションを可能にする(例えば、Hisano Y、Sakuma T、Nakade S等、Precise in-frame integration of exogenous DNA mediated by CRISPR/Cas9 system in zebrafish. Sci Rep. 2015;5:8841頁を参照されたい)。
【0155】
一部の実施形態では、ベクターは、内因性プロモーター、例えば、TCRプロモーターを組み込む。そのようなベクターは、内因性プロモーター、例えば、TCRプロモーターにより提供されるものと同様の様式での発現を提供し得るであろう。そのようなベクターは、例えば、インテグレーションの部位が導入遺伝子の効率的な発現を提供しない場合、又は内因性プロモーターにより制御される内因性遺伝子の破壊がT細胞に対して有害であるか、若しくはT細胞療法におけるその有効性の低下を生じるであろう場合に有用であり得る。好ましい実施形態では、そのようなベクターは、例えば、インテグレーションの部位がCAR又は改変型TCRをコードする核酸配列の効率的な発現を提供しない場合に有用であり得る。プロモーターは、誘導性プロモーター又は構成的プロモーターであり得る。内因性又はベクターに伴うプロモーターの制御下での核酸配列の発現は、細胞が核酸を発現するために好適な条件下、例えば、生育条件下で、又は誘導性プロモーターと共に誘導因子の存在下等で起こる。そのような条件は、当業者により十分理解される。
【0156】
標的化構築物は、任意により、導入遺伝子をコードする核酸配列のすぐ上流にポリシストロン性発現カセットをつくり出すエレメント(限定するものではないが、様々なウイルス性及び非ウイルス性内部リボソーム侵入部位(IRES、例えば、FGF-1 IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-kB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコマウイルス(picomavirus)IRES、ポリオウイルスIRES及び脳心筋炎ウイルスIRES)及び切断可能リンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2A及びF2Aペプチド)が挙げられる)を含むように設計することができる。好ましい実施形態では、標的化構築物は、任意により、治療的タンパク質(例えば、操作型抗原受容体)をコードする核酸配列のすぐ上流に、切断可能連結(例えば、P2A、T2A等)配列を含むように設計することができる。P2A及びT2Aは、タンパク質配列の二重シストロン性又は多重シストロン性発現のために用いることができる、自己切断性ペプチド配列である(Szymczak等、Expert Opin. Biol. Therapy 5(5):627~638頁(2005)を参照されたい)。
【0157】
本出願に従う免疫応答性細胞におけるHIT発現のためのよく適したAAV構築物は、例えば、Mansilla-Soto、J.、Eyquem、J.、Haubner、S.等、HLA-independent T cell receptors for targeting tumors with low antigen density. Nat Med 28、345~352頁(2022)に記載され、且つ特にインビボ実験のために、本明細書中に含められる結果において用いられてきた。
【0158】
典型的なよく適した構築物は、典型的には、TRBC又はTRAC配列(本明細書中に記載される通りのネズミ配列をはじめとする、生来型又は改変型TRBC又はTRAC配列であり得る)、切断可能リンカー配列(上記に規定される通りであるが、例えば、2A配列)、TRAC又はTRBC配列(本明細書中に記載される通りのネズミ配列をはじめとする、生来型又は改変型TRBC又はTRAC配列であり得る)を含む。TRBC及び/又はTRAC配列は、典型的には、上記の通りの抗体断片をコードする配列(例えば、VH、VH、scFv、単一ドメイン抗体、VHH等)に融合される(好ましくは、5'で)。一部の実施形態では、ブースター(共刺激リガンド)配列が構築物中に含められ、それにより、好ましい実施形態では、構築物は切断可能リンカー配列(例えば、2A配列)及びブースター(共刺激リガンド)配列を更に含む。典型的には、構築物の3'末端のTRAC又はTRBC配列は、切断可能リンカーに融合され、これはブースター(共刺激リガンド及び/又は共刺激受容体CCR)配列にも融合される(図11、並びに図29図30を参照されたい)。ブースター(共刺激リガンド及び/又は共刺激受容体CCR)配列は、本明細書中に記載される通りのいずれか1つであり得、且つ特に、本明細書中に記載される通りのCD80配列又はCD80_4-1BB配列であり得る(例えば、配列番号32~33及び52~53を参照されたい)。
【0159】
所望の場合、標的化構築物は、任意により、レポーター、例えば、形質導入された細胞の特定を提供するレポータータンパク質を含むように設計することができる。例示的なレポータータンパク質としては、限定するものではないが、蛍光タンパク質、例えば、mCherry、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質、例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、及びmKalamal、シアン色蛍光タンパク質、例えば、ECFP、Cerulean、及びCyPet、並びに黄色蛍光タンパク質、例えば、YFP、Citrine、Venus、及びYPetが挙げられる。典型的には、標的化構築物は、導入遺伝子の3'にポリアデニル化(poly A)配列を含む。好ましい実施形態では、標的化構築物は、CAR及び/又は改変型TCR(例えば、Hi)-TCR)をコードする核酸配列の3'にポリアデニル化(poly A)配列を含む。
【0160】
治療的使用
本開示の細胞、修飾型オリゴヌクレオチド、核酸、又はベクターは、養子細胞療法(特に、養子T細胞療法又は養子NK細胞療法)において用いることができる。一部の実施形態では、使用は、それを必要とする被験体におけるがんの治療でのものであるが、使用はまた、感染性疾患及び自己免疫、炎症性又はアレルギー疾患の治療も含む。一部の実施形態では、被験体は、がんに罹患しているか又はがんに罹患するリスクを有する。本開示の修飾型オリゴヌクレオチド、核酸、又はベクターは、任意により、リポソーム、脂質含有複合体、ナノ粒子、金粒子、又はポリマー複合体をはじめとする、本明細書中に開示される通りの送達ビヒクル又は組成物内である。そのような組成物は、安定化剤又はトランスフェクション促進剤、例えば、界面活性剤、キノンアナログ、ベシクル、例えば、スクアレン及びスクアレン、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、レシチンリポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリ-L-グルタメートをはじめとするポリカチオン、又はナノ粒子、金粒子、又は他の知られている薬剤を更に含んでもよい。
【0161】
そのような方法では、被験体は、疾患又は障害を治療するために有効な量で、それを必要とする被験体に対して、本明細書中に記載される1つ又は複数の細胞、修飾型オリゴヌクレオチド、核酸、又はベクターを投与される。例えば、1つ又は複数の抗原特異的受容体を発現する細胞は、抗原に関連付けられる疾患又は障害を治療するために有効な用量で投与される。「抗原」セクションの下で上記に列記される疾患のうちのいずれかの治療が考慮される。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される通りの抗原受容体(例えば、Hi T細胞抗原受容体)を発現する免疫細胞は、細胞当たり約6,000分子未満の標的抗原の中央値を有する患者の治療に対して用いることができる。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約5,000分子未満、約4,000分子未満、約3,000分子未満、約2,000分子未満、約1,000分子未満、又は約500分子未満の標的抗原の密度(典型的には中央値)で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約2,000分子未満、例えば、約1,800分子未満、約1,600分子未満、約1,400分子未満、約1,200分子未満、約1,000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満等の標的抗原の密度(典型的には中央値)で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約1,000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満等の標的抗原の密度で発現される。一部の実施形態では、抗原は、細胞当たり約5,000~約100分子の範囲の標的抗原、例えば、細胞当たり約5,000~約1,000分子、約4,000~約2,000分子、約3,000~約2,000分子、約4,000~約3,000分子、約3,000~約1,000分子、約2,000~約1,000分子、約1,000~約500分子、約500~約100分子等の標的抗原の密度で発現される。細胞当たりの標的抗原密度の定量化は、Jasper、G. A.、Arun、I.、Venzon、D.、Kreitman、R. J.、Wayne、A. S.、Yuan、C. M.、Marti、G. E.、& Stetler-Stevenson、M. (2011). Variables affecting the quantitation of CD22 in neoplastic B cells. Cytometry. Part B、Clinical cytometry、80(2)、83~90頁に記載される通りに達成することができる。
【0163】
細胞は、特定の用量で投与することができる。例えば、SUV39H1が阻害されている免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)は、約108細胞未満、約5×107細胞未満、約107細胞未満、約5×106細胞未満、約106細胞未満、約5×105細胞未満又は約105細胞未満の用量で、成人に対して投与することができる。小児患者に対する用量は、約100倍少なくすることができる。代替的な実施形態では、本明細書中に記載される免疫細胞(例えば、T細胞)のうちのいずれかは、約105~約109細胞、又は約105~約108細胞、又は約105~約107細胞、又は約106~約108細胞の範囲の用量で患者に対して投与することができる。
【0164】
被験体(すなわち、患者)は、哺乳動物、典型的には霊長類、例えば、ヒトである。一部の実施形態では、霊長類は、サル又は類人猿である。被験体は、雄性又は雌性であり得、且つ、幼児、若年、青年、成体、及び老年被験体をはじめとするいずれかの好適な年齢であり得る。一部の実施形態では、被験体は非霊長類哺乳動物、例えば、げっ歯類である。一部の例では、患者又は被験体は、疾患、養子細胞療法に関する、及び/又は毒性転帰、例えば、サイトカイン放出症候群(CRS)を評価するための、有効性が検証された動物モデルである。一部の実施形態では、前記被験体は、がんを有するか、がんを有するリスクがあるか、又はがんの寛解中である。
【0165】
一部の実施形態では、細胞又は組成物は、被験体、例えば、がん若しくは上記に言及される通りの疾患のうちのいずれか1つを有するか又はそれに対するリスクを有する被験体に投与される。一部の態様では、したがって、方法は、例えば、がんに関して、操作型細胞により認識される抗原を発現するがんにおける腫瘍量を低下させることにより、疾患又は状態を治療し、例えば、その1つ又は複数の症状を改善する。
【0166】
養子細胞療法のための細胞の投与のための方法は知られており、且つ提供される方法及び組成物に関連して用いることができる。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenberg等に対する米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenberg等に対する米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577~85頁)に記載されている。例えば、Themeli等、(2013) Nat Biotechnol. 31 (10):928~933頁;Tsukahara等、(2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1):84~9頁;Davila等、(2013) PLoS ONE 8(4):e61338を参照されたい。
【0167】
それを必要とする被験体への本開示に従う少なくとも1種の細胞の投与は、同時又はいずれかの順序で逐次的のいずれかで、1つ若しくは複数の追加の治療剤と組み合わせるか、又は別の治療介入と関連して組み合わせることができる。一部の文脈では、細胞は、細胞集団が1つ若しくは複数の追加の治療剤の効果を増強するか、又はその逆であるように、時間的に十分近接して別の療法と共投与される。一部の実施形態では、細胞集団は、1つ又は複数の追加の治療剤に先立って投与される。一部の実施形態では、細胞集団は、1つ又は複数の追加の治療剤の後に投与される。
【0168】
がん治療に関して、併用がん治療としては、限定するものではないが、がん化学療法剤、細胞傷害剤、ホルモン、血管新生阻害剤(anti-angiogen)、放射標識化合物、免疫療法、外科手術、凍結療法、及び/又は放射線療法が挙げられる。
【0169】
慣用のがん化学療法剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及びB-raf酵素阻害剤が挙げられる。
【0170】
アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブシル)、エチレンアミン及びメチレンアミン誘導体(例えば、アルトレタミン、チオテパ)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、エストラムスチン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド)、及び白金含有抗新生物剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)が挙げられる。
【0171】
代謝拮抗剤としては、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド(Alimta(登録商標))が挙げられる。
【0172】
アントラサイクリンとしては、ダウノルビシン、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、エピルビシンが挙げられる。イダルビシン。他の抗腫瘍抗生物質としては、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロンが挙げられる。
【0173】
トポイソメラーゼ阻害剤としては、トポテカン、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(VP-16)、テニポシド又はミトキサントロンが挙げられる。
【0174】
微小管阻害剤としては、エストラムスチン、イクサベピロン、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル及びカバジタキセル)、及びビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン及びビンフルニン)が挙げられる。
【0175】
B-raf酵素阻害剤としては、ベムラフェニブ(ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(タフィンラー)、及びエンコラフェニブ(ビラフトビ)が挙げられる。
【0176】
免疫療法としては、限定するものではないが、免疫チェックポイント調節剤(すなわち、阻害剤及び/又はアゴニスト)、サイトカイン、免疫調節性モノクローナル抗体、がんワクチンが挙げられる。
【0177】
好ましくは、本開示に従う養子T細胞療法における細胞の投与は、免疫チェックポイント調節剤の投与と組み合わせられる。例としては、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、0X2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、及び/又はA2ARをはじめとするEP2/4アデノシン受容体の阻害剤(例えば、これらに特異的に結合し且つその活性を阻害する抗体)が挙げられる。好ましくは、免疫チェックポイント調節剤は、抗PD-1及び/又は抗PDL-1阻害剤(例えば、抗PD-1及び/又は抗PDL-1抗体)を含む。
【0178】
本開示はまた、被験体においてがん、感染性疾患若しくは状態、自己免疫疾患若しくは状態、又は炎症性疾患若しくは状態を治療するための医薬の製造のための、本明細書中に記載される通りの細胞を含む組成物の使用にも関する。
【実施例
【0179】
(実施例1)
ヒト組織におけるlncRNA AF196970.3の発現
lncRNA AF196970.3の発現を、様々なヒト組織において調べた。AF196970.3は、多数の異なる健康組織中で発現され、部分的にはSUV39H1発現(図3B)と同様に、子宮頸部、脳、卵巣、及び子宮における比較的高い発現を伴う(図3A)。AF196970.3は、多数の異なる細胞タイプにおいても検出され、部分的にはSUV39H1(図3D)と同様に、内皮細胞、線維芽細胞及び筋細胞において最高レベルを伴う(図3B)。1種類のみのAF196970.3転写産物(ENST00000416061.1)が、GTExプロジェクトにおいて発現されることが見出された(図3C)。
【0180】
lncRNA AF196970.3の発現を、特にがんの文脈で、ヒトT細胞において調べた。AF196970.3は、3件の異なるプロジェクトにおいて、腫瘍浸潤性リンパ球中で発現されることが見出された:神経膠腫(Wang等、2020)(図4A)、頭頸部扁平上皮細胞癌(Cillo等、2020)(図4B)、及び肝細胞癌(Zhang等、2019)(図4C)。AF196970.3の発現レベルはSUV39H1レベルと相関し、増殖中のT細胞において比較的高かった(図4B図4C)。
【0181】
両方ともインビトロで活性化されたか又は活性化されていない、PBMCから新鮮に単離されたヒトT細胞、及び腫瘍由来のT細胞中でのAF196970.3発現をRT-PCRにより測定するために、プライマーが設計される。発現パターンが検出された。
【0182】
(実施例2)
HEK293細胞におけるlncRNA AF196970.3の過剰発現
CMVプロモーター又はhPKGプロモーターと共にlncRNA SUV39H1エクソン配列を含むGFP-ピューロマイシンレポーターを伴うPiggy Bac骨格が、それぞれ、図5a図5b中に図示される。lncRNA AF196970.3は、SUV39H1発現及び活性に対するその効果を評価するために、HEK293 FT細胞において過剰発現された。
【0183】
簡潔には、0日目に、HEK293細胞を5.105細胞でプレーティングした。1日目に、Piggy Bac(PB)構築物及びSuper PiggyBacトランスポザーゼ発現ベクター(Purefectionトランスフェクション試薬の使用)を用いて細胞をトランスフェクションした。4日目に、残余の試薬を除去するために培地を交換した。7日目から、ピューロマイシン1pg/mLを用いて、トランスフェクションされた細胞を選択した。23日目に、細胞を回収し、GFP及びSUV39H1の発現に関して分析した。図6bは、フローサイトメトリーによるGFP発現レベル、及びPiggy Bac空構築物又は上記で参照される通りのlncRNA SUV39H1 Piggy Bacプラスミドのうちの1つのいずれかを用いてトランスフェクションされた細胞との未トランスフェクション細胞の比較を示す。図6dは、アクチンに対して正規化されたSUV SUV39H1タンパク質レベルの定量化を示す。結果は、トランスフェクション後のD23には、PB空ベクターと比較した場合に両方のlncRNA構築物に関してSUV39H1タンパク質レベルが低下していることを示す。
【0184】
(実施例3)
ヒトT細胞に対するlncRNA AF196970.3過剰発現の効果
PB-CAG-BGHpA(Addgene #92161)を含むlncRNA発現ベクター中へと、AF196970.3がクローニングされる(Yin等、2015、Cell Stem Cell)。代替的ベクターシステムとしては、ELECTSトランスポゾンシステムが挙げられる(Zhang等、Overexpression of lncRNAs with endogenous lengths and functions using a lncRNA delivery system based on transposon. J Nanobiotechnol. 19、303頁(2021)を参照されたい)。
【0185】
CD8+ T細胞におけるlncRNA Suv39h1(AF196970.3)過剰発現のための実験手順が、図6dに記載される。簡潔には、0日目にT細胞活性化を行う。2日目にIL-2の添加。3日目に、Piggy Bac(PB)構築物及びSuper PiggyBacトランスポザーゼ発現ベクターを用いて、細胞をヌクレオフェクションする。Cas9リボ核粒子(RNP)ヌクレオフェクションを行って、対照としてSUV39H1-KO細胞を取得する。7日目に、GFP陽性細胞を選別し、続いて、SUV39H1(ウエスタンブロット)、及びメモリーマーカーCD27の発現、並びにH3K9のトリメチル化(FACS)について分析する。残余の細胞を、14日目に、新たな分析のためにtransactを用いて再刺激する。
【0186】
別のアプローチでは、遺伝子活性化CRISPR(Rankin等、Overexpressing Long Noncoding RNAs Using Gene-activating CRISPR. J. Vis. Exp.(145)、e59233(2019))に記載される通りに、遺伝子活性化CRISPRを用いて、細胞においてAF196970.3を上方調節する。
【0187】
これらのアプローチを用いて、ヒトT細胞においてAF196970.3又はその一部分を過剰発現させる。AF196970.3のレベルを、例えば、RT-PCRにより定量化する。1)SUV39H1タンパク質レベル(ウエスタンブロットによる)、2)H3K9me3レベル(FACSによる)、3)T細胞表現型(FACSによるCD27、CCR7、CD62L発現)に対するAF196970.3過剰発現の効果を観察し、CRISPRノックアウトによるSUV39H1阻害と比較する。
【0188】
AF196970.3過剰発現は、SUV39H1タンパク質のレベル、SUV39H1活性のレベル、H3K9のトリメチル化のレベル、又はT細胞表現型(国際出願第PCT/EP2020/070845号に記載される通りの増加したメモリー表現型により測定される場合のSUV39H1発現を阻害する。簡潔には、CD8+ T細胞のメモリー表現型に関して重要なセントラルメモリーT細胞表面マーカーの発現を観察するために、AF196970.3を過剰発現するT細胞を、1週間にわたってaCD3+aCD28ビーズを用いて刺激し、続いてフローサイトメトリーにより分析することができる。セントラルメモリーT細胞マーカーCCR7、CD27及びCD62Lは、Suv39h1がT細胞においてサイレンシングされる場合に、典型的には増大した発現レベルを示す。加えて、セントラルメモリー細胞サブセットを構成するCCR7+CD45RO+CD27+CD62L+細胞の画分もまた、Suv39h1がT細胞においてサイレンシングされる場合に、典型的には増加する。典型的には、Suv39h1サイレンシングは、セントラルメモリー細胞の画分を増加させる。
【0189】
異種マウスモデルにおけるヒトCAR T細胞有効性に対するAF196970.3過剰発現の効果は、CRISPR KOによるSUV39H1阻害に対して比較することもできる。
【0190】
(実施例4)
ヒトT細胞に対するlncRNA AF196970.3阻害の効果
AF196970.3の発現は、ヒトT細胞に対するその効果を研究するために阻害される。遺伝子は、AF196970.3の第1エクソン(配列番号2)又はプロモーターを標的化するために設計されたgRNAを用いて、CRISPR-Cas9により不活性化される。
【0191】
AF196970.3 RNA(RT-PCRによる)及びSUV39H1タンパク質(ウエスタンブロットによる)のレベルを定量化する。1)H3K9me3レベル(FACSによる)、及び2)T細胞表現型(FACSによるCD27、CCR7、CD62L発現)に対するAF196970.3阻害の効果を観察する。
【0192】
AF196970.3の阻害は、hSUV39H1のレベルを上昇させることが予期される。
【0193】
(実施例5)
Suv39h1遺伝子をサイレンシングするshRNAの設計及びヒト細胞における過剰発現
SUV39H1ヒストンメチルトランスフェラーゼの破壊は、増強されたT細胞メモリー表現型並びに幹細胞性及びメモリー関連遺伝子の抑制の欠如に起因するインビボ持続性をもたらす。ノックアウトは、養子T細胞療法の文脈で用いることができ、CAR T細胞活性の長期増強をもたらし得、それにより前臨床モデルにおける増加した生存率が生じる。この知識及び先行する実施例に示される通りにlncRNAを用いて得られた結果に基づいて、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が、Suv39h1遺伝子発現をサイレンシングし、且つSUV39H1タンパク質レベル及び/若しくは活性を阻害又は低減させるために設計されてきた。
【0194】
図7aは、SUV39H1遺伝子上のshRNA標的配列の表示を示す。図7bは、SUV39H1を標的化する異なるshRNA(1~5)の標的及びループ配列を示す。図7cは、U6プロモーター及びEGFPレポーターを用いる細胞においてshRNA発現のために用いられるレンチウイルス構築物のプラスミドマップを示す。実験進行が、図8aに図示される。簡潔には、HEK293細胞を、0日目に2.105細胞でプレーティングした。1日目に、ポリブレン(5pg/mL)と共にMOI=5でレンチウイルス粒子を用いて細胞を形質導入し、24時間後に除去した。4日目に、細胞を分割した。8日目に、細胞を回収し、GFP及びSUV39H1の発現に関して分析した。スクランブルshRNA又はSUV39H1に対する5種類のshRNAのうちの1つのいずれかを用いて形質導入された細胞との未形質導入細胞におけるGFP発現レベルのフローサイトメトリーによる比較が、図8bに図示される。図8cに図示される通り、8日目に行われたウエスタンブロットは、HEK293対照と比較したshRNA形質導入細胞、及びスクランブルshRNA形質導入細胞に関するアクチン染色と比較したSUV39H1染色の顕著な減少を明らかにし、したがって、本明細書中に開示される通りの1つのshRNA(1~5)を過剰発現する場合の、顕著なSuv39Hlタンパク質レベルの基礎となる。
【0195】
(実施例6)
ヒトT細胞に対するSuv39h1 shRNA過剰発現の効果
CD8+ T細胞におけるshRNA(上記に記載される通りのSuv39h1を阻害する)過剰発現のための実験手順が、図9aに記載される。簡潔には、0日目にT細胞活性化を行った。1日目に、ポリブレン(4μg/mL)と共にMOI=5でレンチウイルス粒子を用いて細胞を形質導入し、24時間後に除去し、IL-2を添加した。Cas9リボ核粒子(RNP)ヌクレオフェクションを3日目に行い、対照としてSUV39H1-KO細胞を取得した。7日目に、細胞を回収し、SUV39H1、メモリーマーカーCD27の発現、並びにH3K9のトリメチル化について分析した。
【0196】
スクランブルshRNA又はSUV39H1に対する5種類のshRNAのうちの1つのいずれかを用いて形質導入された細胞との未形質導入細胞におけるGFP発現レベルのフローサイトメトリーによる比較が、図9bに図示される。図9cに図示される通り、7日目に行われたウエスタンブロットは、HEK293対照と比較したshRNA形質導入細胞、及びスクランブルshRNA形質導入細胞に関するアクチン染色と比較したSUV39H1染色の顕著な減少を明らかにし、したがって、本明細書中に開示される通りの1つのshRNA(1~5)を過剰発現する場合の、顕著なSuv39Hlタンパク質レベルの基礎となる。それに合致して、図9dは、5種類のshRNAのうちのいずれか1つ用いて形質導入された細胞において、H3K9トリメチル化のレベルは、スクランブルshRNAを用いて形質導入された細胞と比較した場合に、且つSuv39h1 KO細胞において取得されるレベルと同様の程度まで、顕著に低下したことを図示している。図9E図9fは、shRNAを用いて形質導入された細胞が、スクランブルshRNAを用いて形質導入された細胞と比較した場合に、D7及びD14でのCD27の増加した発現により示される通り、増大したメモリー表現型を示すことを更に図示する。
【0197】
全ての特許、特許出願、及び刊行物は、全ての目的のために、且つ各々の個別の刊行物がいずれか及び全ての目的のためにその全体で参照により組み入れられることが具体的且つ個別に示されている場合と同じ程度まで、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる。
【0198】
本開示の上記の物品及び方法が好ましい実施形態及び任意的な特徴に関して記載されてきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、変更又は組み合わせを適用し得ることが、当業者には明らかであろう。そのような変更及び組み合わせは、特許請求の範囲により規定される通りの本開示の意味及び範囲内に入ることが意図される。本開示の広がり及び範囲は、上記の例示的態様のうちのいずれかにより限定されるべきではないが、下記の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ規定されるべきである。用いられてきた用語及び表現は、説明の用語として用いられ、制限の用語として用いられず、且つそのような用語及び表現の使用において、示され且つ記載される特徴のいずれかの等価物又はその一部分を除外する意図はない。
【0199】
参考文献
【表1】
【0200】
配列
配列番号1
lncRNA AF196970.3 RNA配列
【化1】
【0201】
配列番号2
lncRNA AF196970.3エクソン1 RNA配列
【化2】
【0202】
配列番号3
lncRNA AF196970.3エクソン2 RNA配列
【化3】
【0203】
配列番号4
lncRNA AF196970.3エクソン3 RNA配列
【化4】
【0204】
配列番号5
ゲノムDNA配列
【化5A】
【化5B】
【化5C】
【化5D】
【化5E】
【化5F】
【化5G】
【化5H】
【化5I】
【化5J】
【化5K】
【化5L】
【化5M】
【0205】
配列番号6
lncRNA AF196970.3 cDNA配列
【化6】
【0206】
配列番号7
lncRNA AF196970.3エクソン1 cDNA配列
【化7】
【0207】
配列番号8
lncRNA AF196970.3エクソン2 cDNA配列
【化8】
【0208】
配列番号9
lncRNA AF196970.3エクソン3 cDNA配列
【化9】
【0209】
【表2】
【0210】
【化10】
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
【配列表】
2025504882000001.xml
【国際調査報告】