(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】低レベルのアルキルフェノールを含む硫化添加剤
(51)【国際特許分類】
C10M 159/22 20060101AFI20250212BHJP
C10M 135/30 20060101ALI20250212BHJP
C10M 133/08 20060101ALI20250212BHJP
C10M 133/42 20060101ALN20250212BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20250212BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20250212BHJP
C10N 10/06 20060101ALN20250212BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20250212BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20250212BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20250212BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20250212BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
C10M159/22
C10M135/30
C10M133/08
C10M133/42
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:06
C10N40:04
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:08
C10N40:25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543963
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-10
(86)【国際出願番号】 US2023060977
(87)【国際公開番号】W WO2023147258
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンドラッキ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】スタンデファー、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ピーター
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA13R
4H104AA18R
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BE04C
4H104BE28R
4H104BG16C
4H104BH03A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA03
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA43
4H104PA44
(57)【要約】
本開示は、高硫化比及び低レベルの未硫化アルキルフェノールを達成するために、清浄剤添加剤、及び硫化アルキルフェネート生成物を調製するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物及び式IIの化合物を含む、硫化金属フェネート清浄剤であって、
【化1】
式中、
各R
1が、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基であり、
R
2が、水素、アルキル基、アルキルアミノ基、又はヒドロキシアルキル基であり、
xが、1~4の整数であり、
nが、1~3の整数であり、
mが、0又は1の整数であり、
M
2+が、二価金属イオンである、硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項2】
R
1が、C8~C20アルキル基であり、かつ/又はR
2が、メチルであるか、若しくはR
2が、-R
4N(R
5)(R
5)の構造を有し、式中、R
4が、C1~C10ヒドロカルビル基であり、各R
5が、独立して、C1~C4アルキル基である、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項3】
前記清浄剤が、約0.01~約0.5重量パーセントの式IIの前記化合物を含む、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項4】
約0.5重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノールを更に含む、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項5】
前記清浄剤が、ASTM D-2896の方法によって測定される場合、0~300mg KOHのTBNを有する、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項6】
式Iの前記化合物、式IIの前記化合物、又は両方の各々が、オルト位に約15重量パーセント未満のR
1置換を有する、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項7】
前記清浄剤が、最大約100,000ppmのアルカリ金属若しくはアルカリ性金属によって提供された前記金属及び最大約65,000ppmの硫黄を含み、かつ/又は前記アルカ金属若しくはアルカリ性金属が、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つである、請求項1に記載の硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項8】
硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセスであって、
アルキルフェノールを硫黄源で硫化して、硫化アルキルフェノールを提供することであって、前記アルキルフェノールが、フェノールのアルキル化から誘導される、硫化することと、前記硫化アルキルフェノールを溶媒の存在下で中和及び任意選択的に過塩基化して、硫化アルキルフェネート及び残留未硫化アルキルフェノールの混合物を含む硫化アルキルフェネート組成物を提供することであって、前記硫化、前記中和、及び任意選択的な過塩基化が、任意の順序で行われ得る、中和及び任意選択的に過塩基化することと、
前記硫化アルキルフェネート組成物を後処理して、前記硫化アルキルフェネート生成物を得ることであって、前記後処理が、前記硫化アルキルフェネート組成物をトリアジン化合物と反応させることを含む、後処理することと、を含む、プロセス。
【請求項9】
前記硫黄源が、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄、硫化物水和物、若しくはそれらの組み合わせを含み、かつ/又は前記硫黄源対前記アルキルフェノールのモル比が、約0.1~約3.5である、請求項8に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項10】
前記中和及び/又は任意選択的な過塩基化が、前記硫化アルキルフェノールをアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と接触させることを含む、請求項8に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項11】
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、又はそれらの組み合わせである、請求項10に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項12】
前記トリアジン化合物が、式IIIの構造を有し、
【化2】
式中、各R
3が、独立して、水素、ヒドロカルビル基、アルキル基、アミノ基、ポリアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキル基、C1~C10ヒドロカルビル基、又は-R
4N(R
5)(R
5)基であり、R
4及びR
5の各々が、独立して、C1~C10ヒドロカルビル基である、請求項8に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項13】
約0.5重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノールを更に含み、かつ/又は前記硫化アルキルフェネート生成物が、式Iの化合物及び式IIの化合物を含み、
【化3】
式中、
各R
1が、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基であり、
R
2が、アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、
xが、1~4の整数であり、
nが、1~3の整数であり、
mが、0又は1の整数であり、
M
2+が、二価金属イオンである、請求項8に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項14】
R
1が、C8~C20アルキル基であり、かつ/又はR
2が、メチルであるか、若しくは-R
4N(R
5)(R
5)の構造を有し、式中、R
4が、C1~C10ヒドロカルビル基であり、各R
5が、独立して、C1~C4アルキル基である、請求項13に記載の硫化金属フェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項15】
請求項8に記載のプロセスによって調製された、硫化金属フェネート清浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、潤滑油組成物、及び低レベルの未硫化アルキルフェノールを含むそのための硫化添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化アルキルフェノールの金属塩は、そうでなければアルキルフェネートとして知られ、有用な潤滑油添加剤である傾向がある。これらの添加剤は、例えば、清浄剤、摩擦調整剤、及び/又は分散剤として機能し得る一方で、自動車用途における潤滑剤中で使用されるとき、自動車運転中に生成される酸の中和を補助するためのアルカリ性塩基を提供する。アルキルフェネート又はフェノールの未硫化バリアントは、低減した有用性を有し、多くの理由で潤滑剤においてあまり望ましくない傾向がある。そのようなものとして、添加剤製造業者は、それらの添加剤中の未硫化アルキルフェネート及び/又はアルキルフェノールのレベルを最小限にしようとしている。しかしながら、現在の方法は、添加剤も過塩基化されるとき未硫化アルキルフェネート/フェノールバリアントのレベルを最小限にしようとするときに1つ以上の欠点を有する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態によれば、式Iの化合物及び式IIの化合物を含む硫化金属フェネート清浄剤が本明細書に記載される。アプローチでは、式I及びIIの化合物は、以下を含む構造を有し、
【0004】
【化1】
式中、各R
1は、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基のうちの1つであり、R
2は、水素、アルキル基、アルキルアミノ基、又はヒドロキシアルキル基のうちの1つであり、xは、1~4の整数であり、nは、1~3の整数であり、mは、0又は1の整数であり、M
2+は、二価金属イオンである。
【0005】
他の実施形態又はアプローチでは、前段落に記載される硫化金属フェネート清浄剤は、任意選択的な特徴又は実施形態を含む。これらの任意選択的な特徴又は実施形態は、任意の組み合わせで、以下を含み得、式中、R1は、C8~C20アルキル基であり、かつ/又はR2は、メチルであり、かつ/又はR2は、-R4N(R5)(R5)の構造を有し、式中、R4は、C1~C10ヒドロカルビル基であり、各R5は、独立して、C1~C4アルキル基であり、かつ/又は清浄剤は、約0.01~約0.5重量パーセントの式IIの化合物を含み、かつ/又は約0.5重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノールを更に含み、かつ/又は清浄剤は、ASTM D-2896の方法によって測定される場合、0~300mg KOHのTBNを有し、かつ/又は式Iの化合物、式IIの化合物、若しくは両方の各々は、約15重量パーセント未満のR1置換をオルト位に有し、かつ/又は清浄剤は、最大約100,000ppmのアルカリ金属若しくはアルカリ性金属によって提供された金属及び最大約65,000ppmの硫黄を含み、かつ/又はアルカリ金属若しくはアルカリ性金属は、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つである。
【0006】
別の実施形態では、潤滑油組成物は、先の2つの段落の任意の実施形態の金属フェネート清浄剤と、潤滑粘度の1つ以上の基油と、を含む。
【0007】
更に別の実施形態では、硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセスが記載される。アプローチでは、プロセスは、任意の順序で、アルキルフェノールを硫黄源で硫化して、硫化アルキルフェノールを提供することであって、アルキルフェノールが、フェノールのアルキル化から誘導される、硫化することと、硫化アルキルフェノールを溶媒の存在下で中和及び任意選択的に過塩基化して、硫化アルキルフェネート及び残留未硫化アルキルフェノールの混合物を含む硫化アルキルフェネート組成物を提供することであって、硫化、中和、及び任意選択的な過塩基化が、任意の順序で行われ得る、中和及び任意選択的に過塩基化することと、硫化アルキルフェネート組成物を後処理して、硫化アルキルフェネート生成物を得ることであって、硫化アルキルフェネート組成物をトリアジン化合物と反応させることを含む、後処理することと、を含む。
【0008】
更に他の実施形態又はアプローチでは、前段落のプロセスは、任意選択的な特徴又は実施形態を含み得る。これらの任意選択的な特徴は、以下の実施形態のうちの1つ以上を、任意の組み合わせで含み得、硫黄源は、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄、硫化物水和物、若しくはそれらの組み合わせを含み、かつ/又は硫黄源対アルキルフェノールのモル比は、約0.1~約3.5であり、かつ/又は中和及び/若しくは任意選択的な過塩基化は、硫化アルキルフェノールをアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩と接触させることを含み、かつ/又はアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、若しくはそれらの組み合わせであり、かつ/又はトリアジン化合物は、式IIIの構造を有し、
【0009】
【化2】
式中、各R
3は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、アルキル基、アミノ基、ポリアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキル基、C1~C10ヒドロカルビル基、又は-R
4N(R
5)(R
5)基であり、R
4及びR
5の各々は、独立して、C1~C10ヒドロカルビル基であり、かつ/又は約0.5重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノールを更に含み、かつ/又は硫化アルキルフェネート生成物は、式Iの化合物及び式IIの化合物を含み、
【0010】
【化3】
式中、各R
1は、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基であり、R
2は、アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、xは、1~4の整数であり、nは、1~3の整数であり、mは、0若しくは1の整数であり、M
2+は、二価金属イオンであり、かつ/又はR
1は、C8~C20アルキル基であり、かつ/又はR
2は、メチルであるか、若しくは-R
4N(R
5)(R
5)の構造を有し、式中、R
4は、C1~C10ヒドロカルビル基であり、各R
5は、独立して、C1~C4アルキル基である。
【0011】
更に他の実施形態では、先の2つの段落の任意の実施形態のプロセスによって調製された硫化金属フェネート清浄剤が本明細書に記載される。
【0012】
なお更なる実施形態では、清浄剤としての硫化金属フェネート組成物の使用が本明細書に記載され、硫化金属フェネート組成物は、この概要に記載されるような任意の実施形態である。
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供される。
【0014】
「油組成物」、「潤滑性組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、及び「潤滑剤」という用語は、同義の完全に互換的な用語と考えられ、主要量の基油と少量の添加剤組成物と、を含む完成した潤滑生成物を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、及び「添加剤組成物」という用語は、主要量の基油ストック混合物を除外する潤滑油組成物の一部分を指す、同義の完全に互換性のある用語であると考えられる。
【0016】
別段特定されない限り、「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、及び/又はフェネートの金属塩などの、金属塩を指す。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「標準塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、スルホネート、及び/又はフェノールの塩であってもよい。
【0017】
「アルカリ土類金属」という用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムに関し、「アルカリ金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、別段特定されない限り、「ヒドロカルビル」又は「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に存在する。
【0019】
本明細書で使用される場合、別段特定されない限り、「ヒドロカルビレン置換基」又は「ヒドロカルビレン基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基から独立して選択され、置換二価炭化水素置換基は、ハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビレン基中の炭素原子10個毎に存在する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、別段明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0021】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0022】
本明細書で用いられるような「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される場合、全アルカリ価をmg KOH/gで示すために使用される。
【0023】
本明細書で用いられるような「石灰」という用語は、例えば、消石灰又は水和石灰としても知られる、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び同様の化合物を指す。
【0024】
本明細書で用いられるような「アルキル」という用語は、別段特定されない限り、約1~約100個の炭素原子の直線状、分岐状、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アルケニル」という用語は、別段特定されない限り、約3個~約10個の炭素原子の直線状、分岐状、環状、及び/又は置換不飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アリール」という用語は、別段特定されない限り、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、並びに/又は限定されないが、窒素、酸素、及び硫黄を含むヘテロ原子を含むことができる単環式及び多環式の芳香族化合物を指す。
【0025】
本明細書における任意の実施形態の分子量は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)が提供され得る。GPC操作条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、及び100~10000Åの範囲の細孔径)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流速で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC方法は、分子量分布情報を追加的に提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0026】
本開示の追加の詳細及び利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/又は本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成し得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明が、両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、低レベルの残留又は未硫化アルキルフェノールを含む少なくとも硫化アルキルフェネートを含む組成物又は混合物の形態の清浄剤添加剤、そのような清浄剤添加剤を含む潤滑油組成物、並びに以下で更に考察されるように、少なくとも約0、少なくとも約20、少なくとも約50、少なくとも約100、及びそうでなければ約100~約500のTBNを含む清浄剤などの、中性から過塩基性の添加剤の文脈において清浄剤添加剤を調製するための方法を提供する。
【0028】
1つのアプローチ又は実施形態では、本開示は、概して、式Iaの化合物、任意選択的に式Ibの化合物、及び式IIの化合物を含む少なくとも硫化金属フェネート清浄剤を含む清浄剤添加剤又は清浄剤組成物に関し、
【0029】
【化4】
式中、各R
1は、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基であり(好ましくは、R
1は、C8~C20アルキル又はヒドロカルビル基、最も好ましくは、C12線状又は分岐状アルキル又はヒドロカルビル基であり)、R
2は、水素、アルキル基、アルキルアミノ基、又はヒドロキシアルキル基のうちの1つであり、xは、1~4の整数であり、nは、1~3の整数であり、各mは、独立して、0又は1の整数であり、M
2+は、二価金属イオンである。好ましくは、R
1基は、以下により詳細に考察されるように、主に芳香環上のパラ位に位置する。式Ia、式Ib、及び/又は式IIの化合物を生成する後反応物アミン(以下により考察される)を形成するマンニッヒ反応は、芳香族環上の任意の開いたオルト位、メタ位、又はパラ位を通したものであってもよいが、反応するアミンは、好ましくは、上記構造に示されるオルト位に位置する。上にも示されるように、式Ia又はIb中の硫黄架橋は、主にオルト位にあるが、用途及び/又は反応条件に依存して芳香環上の他の位置にあってもよい。後反応物アミンを形成するマンニッヒ反応はまた、用途に依存して、芳香族環への二付加(例えば、オルト及びパラ、オルト及びメタ、又はメタ及びパラ)を生成し得る。
【0030】
過塩基性硫化アルキルフェネートは、硫化、中和、及び/又は炭酸化によって作製される。これらの反応は、用途に応じて、任意の順序で、同時に、又は特定の順序で行うことができる。硫化及び中和は、例えば、任意の順序内で、又は同時に、通常、炭酸化の前に完了される。一般に、本明細書における清浄剤添加剤又は組成物は、まずアルキルフェノールを中和することから得られ、次いで中和されたアルキルフェノールは、硫黄源で硫化されて、硫化及び中和されたアルキルフェノールを提供する。次いで、硫化及び中和されたアルキルフェノールは、任意選択的に、溶媒の存在下で過塩基化されて、中性から任意選択的な過塩基化及び硫化アルキルフェネート添加剤又は組成物を提供する。次いで、この添加剤/組成物の後処理は、未硫化又は残留アルキルフェノール/フェネートバリアントのレベルを、約0.5重量パーセント以下(いくつかのアプローチでは、約0.2重量パーセント以下、他のアプローチでは、約0.1重量パーセント以下)の低レベル又は超低レベルに低減するのに有効な量のトリアジン化合物の存在下で行われる。トリアジン化合物は、マンニッヒ反応を介してフェネート及び/又は未硫化アルキルフェノールと反応し、代替的に、アミン及びホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド後反応物を介したインサイチュ生成を通したものであり得る。添加剤及びそのような添加剤を生成する方法の更なる詳細は、以下で考察される。
【0031】
フェノールのアルキル化
本明細書における清浄剤組成物の硫化アルキルフェネートは、まず好適なフェノール(又はヒドロキシ芳香族)化合物の1つ以上のオレフィン及び/又はオレフィンから誘導されたオリゴマーでのアルキル化を通して得られる。好適なフェノール又はヒドロキシ芳香族化合物は、1~4個、いくつかのアプローチでは、1~3個のヒドロキシル基を有するモノヒドロキシ及び/又はポリヒドロキシ芳香族炭化水素を含む。好適な化合物としては、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなど、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい出発化合物には、フェノールが含まれる。
【0032】
アルキル化剤としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、又はこれらの混合物から選択される1つ以上のオレフィン及び/又はオレフィンから誘導されるオリゴマーが挙げられる。好適なオレフィンとしては、ほんの数例を示せば、イソブチレン、プロピレン三量体及び/又は四量体、ブチレン三量体及び/又は四量体が挙げられるが、オリゴマー又はアルキル基中に他のオレフィン、例えば、線状オレフィン、環状オレフィン、プロピレンオリゴマー以外の分岐状オレフィン、例えば、ブチレン又はイソブチレンオリゴマー、アリールアルキレンなど、及びこれらの混合物が存在していてもよい。アルキル化は、ルイス酸触媒、固体酸触媒、トリフルオロメタンスルホン酸、及び他の酸性分子ふるい触媒などの触媒の存在下で行われ得る。例示的なルイス酸触媒は、当業者に知られており、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などを含み得る。いくつかのアプローチでは、フェノール又はヒドロキシ芳香族化合物対1つ以上のオレフィン又はオリゴマーのモル比は、約10:1~約0.5:1であり、他のアプローチでは、約5:1~約2:1であり得る。オリゴマーアルキル基は、一般的に、オルト位及び/又はパラ位、好ましくはパラ位でフェノール又はヒドロキシ芳香族化合物に結合しているが、用途に依存して他の置換基が存在していてもよい。例えば、オリゴマーアルキル基(すなわち、本明細書における式中のR1置換基)は、芳香族環上のパラ位において約85~約100パーセント、芳香族環のオルト位において約0~約15パーセント、いくつかのアプローチでは、約0~約5パーセントの二置換であり得る。
【0033】
中和
中和は、金属塩基と反応するアルキルフェノールによって行われる。1つのアプローチでは、中和は、アルキルフェノールを金属塩基と反応性条件下、いくつかのアプローチでは、促進剤を含む液体炭化水素希釈剤中で接触させることによって行われ、アルキルヒドロキシ芳香族化合物のフェネート又は塩を提供する。場合によっては、反応は、窒素などの不活性ガス下で行うことができる。金属塩基は、特定の用途に必要である場合、反応中の様々な時点で、単回の添加又は複数回の添加のいずれかで添加され得る。中和は、以下に示される例示的な反応スキームIを介して生じ得るが、硫化、中和、及び/又は過塩基化の選択された順序、並びに様々な用途、材料、及び条件に依存して、必要に応じて他の反応が進行し得る。
【0034】
【0035】
例示的な金属塩基反応物としては、アルカリ水酸化物、アルカリ酸化物、若しくはアルカリアルコキシドから選択される金属塩基から誘導されるアルカリ金属塩、又はアルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物、若しくはアルカリ土類アルコキシドから選択される金属塩基から誘導されるアルカリ土類金属塩などであるがこれらに限定されない、金属の水酸化物、酸化物、又はアルコキシドが挙げられる。好適な金属塩基化合物としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、及び/又は水酸化アルミニウムが挙げられる。金属塩基性化合物の他の例としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化バリウムが挙げられる。好ましい例において、アルカリ土類金属塩基は、石灰又は水酸化カルシウムである。添加剤は、用途及び使用に依存して必要に応じてホウ酸化されてもよい。
【0036】
任意選択的なアプローチでは、中和溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び/又はデカノール、並びに同様の溶媒などの、記載される圧力で約100℃以上の沸点を有する溶媒などの、より高い沸点である。本明細書において、そのような任意選択的なアプローチでは、使用される場合、そのような化合物を欠く又は含まないとは、溶媒が、約15重量パーセント未満、約5重量パーセント未満、約2重量パーセント未満を有することを意味する。
【0037】
金属塩基とアルキルフェノールとの間の中和反応は、高温で維持するのに有効な条件で行われる。1つのアプローチでは、中和は、少なくとも100℃、いくつかのアプローチでは、少なくとも約120℃、他のアプローチでは、少なくとも約150℃、更に好ましいアプローチでは、約180℃以下の温度で起こる。中和反応は、約1時間~約5時間起こり得る。
【0038】
硫化
中和されたアルキルフェノール又はアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、高度の硫化を達成するのに有効な様式で硫黄源と接触させることによって硫化され得る。アプローチでは、硫化は、概して、アルキルフェノール又はアルキルヒドロキシ芳香族部分間に硫黄架橋基を導入する。いくつかのアプローチでは、硫黄架橋は、-Sy-又は-Sx-基であり(以下の例示的構造に示される)、式中、y又はxは、独立して、1~4、他のアプローチでは、1~3、いくつかのアプローチでは、1~2の整数であり、かつ/又は最大約5パーセントの添加剤によって提供された総硫黄レベルを有する。硫黄源は、任意の好適な硫黄、例えば、元素硫黄又はそのハロゲン化物、例えば、一塩化硫黄又は二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄、及び硫化ナトリウム水和物であり得る。硫黄は、溶融硫黄として、又は固体(粉末若しくは微粒子)として、又は炭化水素液体中の固体懸濁液としてのいずれかで使用することができる。硫化の例示的な反応スキームは、以下の反応スキームIIに示すが、他の反応は、用途、材料、及び条件に依存して必要に応じて進行し得る。
【0039】
【0040】
硫化は、例えば、約200℃~約250℃、他のアプローチでは、約225℃~約245℃の温度で、約1~約8時間、約2~約7時間、又は約4~約7時間であり得る、所望のレベルの硫化を達成するのに有効な時間にわたって起こり得る。
【0041】
過塩基化
次に、過塩基化は、任意選択的であるが、いくつかの実施形態では好ましく、上述の中和及び/若しくは硫化の間に、又は代替的に、その後のいずれかに行われる。1つのアプローチでは、硫化アルキルフェノール/アルキルフェネートは、過剰の金属塩基と反応させることによって、及び/又は酸性過塩基化化合物、例えば、二酸化炭素若しくはホウ酸と反応させることによって、過塩基化される。1つのアプローチでは、過塩基化は、溶媒、例えば、中和を伴う上述される溶媒系からの溶媒のうちのいずれかの存在下での炭酸化(二酸化炭素との反応)を介する。1つの好都合な炭酸化反応は、ガス状二酸化炭素を反応混合物に通すことである。過剰な溶媒及び過塩基化反応中に形成される任意の水は、以下で更に考察されるように反応中又は後のいずれかで蒸留によって必要に応じて除去することができる。
【0042】
一実施形態では、例示的な過塩基化反応は、硫化アルキルフェノール又はその塩を、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、石灰と、二酸化炭素及び既に上で考察された溶媒系の存在下で反応させることであり得る。好都合には、反応は、ガス状二酸化炭素を反応及び溶媒系混合物に通してバブリングすることによって行われ得る。1つのアプローチでは、過塩基化は、少なくとも約50℃、いくつかのアプローチでは少なくとも約100℃、他のアプローチでは少なくとも約165℃、更に好ましいアプローチでは約185℃以下の温度で起こる。過塩基化の程度は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の量、反応混合物に添加される二酸化炭素及び他の反応物(存在する場合)の量、並びに炭酸化プロセス中に使用される反応条件によって制御され得る。アプローチでは、過塩基化又は炭酸化を介した過塩基化は、所望の過塩基化度又はTBNを達成するのに十分な時間にわたって起こり、いくつかのアプローチでは、記載される温度で約30分~約180分であり得る。
【0043】
任意選択的な過塩基化の後、過塩基化硫化アルキルフェネート、例えば、本明細書における清浄剤組成物は、少なくとも約0、少なくとも約20、少なくとも約50、少なくとも約100、又は他のアプローチでは、約100~約500、約100~約400、又は約150~約400、更に他のアプローチでは、約200~約300、更なるアプローチでは、約220~約275のTBNを有し得る。好ましくは、本明細書における組成物のTBNは、ASTM D-2896によって測定される約100~約300mg KOHであり得る。得られた生成物はまた、任意選択的な過塩基化、中和、及び硫化後に、約1.0重量パーセント以上、他のアプローチでは、約1.5重量パーセント以上、更に他のアプローチでは、約0.5重量パーセント以上の残留又は未硫化アルキルフェノールのレベルを有し得る。以下に更に考察されるように、本発明における後処理は、本明細書における清浄剤中の残留又は未硫化アルキルフェノール含有量のこのようなレベルを低減するのに有効である。
【0044】
後処理
任意選択的な過塩基化の後、組成物は、多くの場合、最終硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのいくつものステップに供される。後処理の例としては、真空ストリッピング、蒸留、スパージング、濾過、脱気、蒸発、ワイプドフィルム蒸発、遠心分離、希釈、液液抽出、膜分離、クロマトグラフィ、吸収、超臨界抽出、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を挙げることができる。
【0045】
上記のように、硫化、中和、及び任意選択的な過塩基化後の添加剤及び組成物は、望ましくない多量の未硫化又は残留アルキルフェノール又はフェネートを含み得る。本明細書における1つの好ましい後処理ステップは、組成物内の残留又は未硫化アルキルフェノール/フェネートのいずれかを最小限にし、更に低減するために、トリアジン後処理反応物を用いて、以前に考察された任意の実施形態において、並びに硫化、中和、及び任意選択的な過塩基化後に、硫化アルキルフェネート組成物を更に反応させるか、又は後処理することである。
【0046】
アプローチでは、後処理のための好適なトリアジン反応物は、フェノール化合物と反応することができる任意のトリアジン又は置換トリアジン(又はそれらの混合物)、特に、フェノール化合物と反応することができる以下の式IIIのトリアジンを含み得、
【0047】
【化7】
式中、各R
3は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、アルキル基、アミノ基、ポリアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基であり、C1~C20ヒドロカルビル基(任意選択的に、C1~C10又はC1~C4基)又は-R
4N(R
5)(R
5)基であり得、R
4及びR
5の各々は、独立して、C1~C10ヒドロカルビル基である(好ましくは、R
4は、C1~C3基であり、各R
5は、C1~C3基であり、より好ましくは、メチル基である)。式IIIのトリアジンは後反応物として添加され得るが、トリアジンは、任意選択的にインサイチュで形成され得るか、又は上の反応生成物は、後反応物として添加されるアミン及びホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドからインサイチュで形成され得る。代替的に、トリオキサンは、ホルムアルデヒド均等物として使用され得る。
【0048】
理論によって限定されることを望むものではないが、トリアジンは、組成物中の未硫化アルキルフェノール(又は硫化フェネート)と反応して、例えば、アミノ、ポリアミノ、及び/又はアルキルアミノ置換を有するアルキルフェノール誘導体を形成すると考えられる。例えば、以下の簡略化された反応スキームIIIは、式IIIのトリアジン化合物が硫化フェネート清浄剤/組成物の未硫化/残留アルキルフェノールと反応して、式IIのアルキルフェノール誘導体を形成する、本明細書における添加剤で起こると考えられる例示的な後処理を示し、
【0049】
【化8】
式中、各R
1は、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基(好ましくは、C8~C20線状若しくは分岐状ヒドロカルビル若しくはアルキル基、又はC12線状若しくは分岐状アルキル若しくはヒドロカルビル基)であり、R
2は、水素、アルキル基(好ましくはC1~C4基、最も好ましくはC1基)、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキル基、又は-R
4N(R
5)(R
5)であり、R
4は、C1~C10アルキル又はヒドロカルビル基であり、各R
5は、独立して、C1~C4アルキル基であり、R
3は、上で考察される通りであり、mは、0又は1の整数である。いくつかのアプローチでは、好適なトリアジンとしては、トリメチルトリアジン、(トリス)ジメチルアミノプロピルトリアジン、(トリス)モノエチルトリアジン、又はこれらの混合物が挙げられる。一般に、好適なトリアジンは、任意の一級アミン及びホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド均等物(例えば、トリオキサンなど)から得られ得る。トリアジン後反応物はまた、同様の反応スキームにおいてフェネートと反応して、残留量の上記式Ibの化合物を形成し得る。
【0050】
アプローチでは、トリアジンによる後処理は、最大約10重量パーセントのトリアジン、又は約0.5~約10重量パーセントのトリアジン(他のアプローチでは、約1~約8重量パーセント、又は約2約6重量パーセントの所望のトリアジン)を、硫化、中和、及び任意選択的に過塩基化されたフェネート組成物に添加し、約100℃~約230℃(他のアプローチにでは、約130℃~約150℃)の温度で、約1~約5時間、又は所望のレベルの未硫化フェノール/フェネートを達成するのに有効な時間にわたって反応させることを含み得る。更に他のアプローチでは、後反応は、約10:1~約20:1、他のアプローチでは、約15:1~約18:1のフェネート反応質量対トリアジンの重量比であり得る。しかしながら、トリアジンの量は、反応混合物の残留未硫化フェノール含有量に依存して変動し得る。過剰なトリアジンは、必要に応じて、真空下で約230℃以上に加熱することによって、及び/又は他の好適な手順を通して除去され得る。
【0051】
アプローチでは、後処理後に、本明細書における組成物は、約75重量パーセント以上の上で考察される式Iの化合物(例えば、約80重量パーセント以上、約90重量パーセント以上、いくつかのアプローチでは、約80~約95重量パーセント)及び約5重量パーセント以下の式IIの化合物(例えば、約0.01~約5重量パーセント、約0.1~約4重量パーセント、又は約0.5~約3重量パーセント)を含み得、しかしながら、そのような量は、状況、反応物、及び出発材料に依存して変動し得る。本明細書における方法、清浄剤組成物、及びこのような清浄剤を含む潤滑油組成物は、低~超低レベルの未硫化又は残留アルキルフェノール/フェネートを有する。アプローチでは、本明細書における清浄剤組成物及び方法は、約0.5重量パーセント未満、約0.2重量パーセント未満、約0.1重量パーセント未満、約0.08重量パーセント未満、若しくは約0.05重量パーセント未満の未硫化アルキルフェネート/アルキルフェノール、又は約0.01~約0.5重量パーセント若しくはその中の任意の範囲の未硫化アルキルフェネート/アルキルフェノールを有する。例えば、後処理は、本明細書における清浄剤組成物が、少なくとも約0.01重量パーセント、少なくとも約0.02重量パーセント、少なくとも約0.04重量パーセント、少なくとも約0.05重量パーセント、又は少なくとも約0.08重量パーセント~約0.5重量パーセント以下、約0.2重量パーセント以下、約0.16重量パーセント以下、約0.12重量パーセント以下、約0.1重量パーセント以下、約0.08重量パーセント以下、又は更には0.05重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノール又はフェネートの範囲の量の未硫化アルキルフェネート/アルキルフェノールを含むように有効である。同時に、本明細書における洗浄剤組成物は、約75~約95重量パーセントの式Iの硫化アルキルフェネート及び約0.01~約5重量パーセントの式IIの化合物(又はこのような終点内の他の範囲)を含み、しかしながら、様々な化合物の量は、用途及び/又は状況に依存して変動し得る。
【0052】
本明細書における清浄剤組成物及び方法に特有なことは、本明細書における方法ステップが、任意の未硫化アルキルフェノールを消費及び/若しくは最小化し、様々なプロセスステップのうちのいずれか内で未硫化アルキルフェネート若しくはアルキルフェノールを再生せず、かつ/又はむしろ、任意の残留未硫化アルキルフェノールをトリアジンで後処理して、任意の残留アルキルフェノールを本明細書におけるフェネートプロセスの様々な反応生成物とタイアップ若しくは結合させるので、未硫化アルキルフェネート又はアルキルフェノールが一般に(例えば、硫化後又は任意の中間ステップ後)除去される必要がないことである。そのようなものとして、本明細書における方法は、したがって、プロセスの中間又は後処理ステップ中のいずれかで残留及び/又は未硫化アルキルフェネート/フェノールの除去を必要とした従来の方法の費用及び複雑さを回避する。追加的に、硫化アルキルフェネート並びに式I、式IIの化合物、及び/又は残留量の式IIIのうちの1つ以上の本明細書における清浄剤組成物はまた、最大約100,000ppmのアルカリ金属又はアルカリ性金属によって提供された金属及び最大約65,000ppmの硫黄並びに上で考察される約0.5重量パーセント以下の低レベルの未硫化アルキルフェノール/フェネートを含み得る。
【0053】
潤滑油組成物
本明細書に記載される任意選択的に過塩基化及び硫化されたアルキルフェネート生成物は、1つ以上の更なる任意選択的な添加剤との組み合わせで、主要量の潤滑粘度の基油又は基油ブレンド(以下に記載されるような)と組み合わされて、潤滑油組成物を生成し得る。アプローチでは、潤滑油組成物は、約50重量パーセント以上の基油、約60重量パーセント以上、約70重量パーセント以上、又は約80重量パーセント以上~約95重量パーセント以下、約90重量パーセント以下、約85重量パーセント以下の以下に更に考察される基油を含む。
【0054】
アプローチでは、本明細書における潤滑油組成物は、基油又は基油ブレンド中に、約0.02~約5重量パーセント、他のアプローチでは、約0.2~約3重量パーセント、更に他のアプローチでは、約0.2~約2重量パーセントの任意選択的に過塩基化及び硫化されたアルキルフェネート生成物を含み得る。
【0055】
いくつかのアプローチでは、本明細書における添加剤は、酸を中和するため、かつ/又は錆、腐食、及び堆積物の制御を助けるために、潤滑油中の清浄剤として使用することができる。加えて、本明細書に記載される清浄剤はまた、スパーク、圧縮、及びハイブリッドエンジンのための、ガソリン、ディーゼル、バイオディーゼルを含むがこれらに限定されない燃料において使用されてもよい。
【0056】
本明細書の潤滑剤、成分の組み合わせ、分散剤阻害剤パッケージ、及び/又は個々の成分は、自動車用潤滑剤及び/又はグリース、内燃エンジン油、ハイブリッドエンジン油、ハイブリッドエンジン油、電気エンジン潤滑剤、ドライブトレイン潤滑剤、トランスミッション潤滑剤、ギア油、油圧潤滑剤、トラクタ油圧流体、金属作動流体、タービンエンジン潤滑剤、定置エンジン潤滑剤、トラクタ潤滑剤、オートバイ潤滑剤、パワーステアリング流体、クラッチ流体、車軸流体、湿式ブレーキ流体などといった様々なタイプの潤滑剤における使用のために好適であり得る。
【0057】
好適なエンジンのタイプとしては、重荷重ディーゼル、乗用車、軽荷重ディーゼル、中速ディーゼル、又は船舶用エンジンが挙げられ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料-燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料-燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(compressed natural gas、CNG)燃料エンジン、又はそれらの混合物であってもよい。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、火花点火エンジンであり得る。内燃エンジンはまた、電力又はバッテリ電源と組み合わせて使用され得る。そのように構成されたエンジンは、一般的に、ハイブリッドエンジンとして知られている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、又はロータリエンジンであり得る。好適な内燃エンジンとしては、船舶用ディーゼルエンジン(内陸用船舶など)、航空ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、並びにオートバイ、自動車、機関車、及びトラックのエンジンが挙げられる。エンジンをターボチャージャと連結させてもよい。
【0058】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、又は硫酸灰分(ASTM D-874)含有量に関係なく、任意のエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下、又は約0.3重量%以下、又は約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、又は約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であってもよい。リン含有量は、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下、又は約0.085重量%以下、又は約0.08重量%以下、又は更に約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、又は約0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppm、又は約325ppm~約850ppmであってもよい。硫酸灰分の総含有量は、約2重量%以下、又は約1.5重量%以下、又は約1.1重量%以下、又は約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、又は0.1重量%若しくは約0.2重量%~約0.45重量%であってもよい。別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.4重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.08重量%以下であってもよく、硫酸灰分は、約1重量%以下である。更に別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.3重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.05重量%以下であり、硫酸灰分は、約0.8重量%以下であってもよい。
【0059】
更に、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、SN PLUS、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、A7/B7、C1、C2、C3、C4、C5、C6、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの1つ以上の業界仕様要件、又はDexos1(商標)、Dexos2(商標)、MB-Approval 229.1、229.3、229.5、229.51/229.31、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1、228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW 501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01 FE、Longlife-04、Longlife-12 FE、Longlife-14 FE+、Longlife-17 FE+、Porsche A40、C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2294、B71 2295、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Renault RN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、Fiat 9.55535 G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などの元々の設備製造業者の仕様、又は本明細書に記載されていない過去若しくは今後のPCMO又はHDDの仕様を満たすのに好適であってもよい。乗用車用モータ油(passenger car motor oil、PCMO)用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体中のリンの量は、1000ppm以下、又は900ppm以下、又は800ppm以下である。
【0060】
基油又は基油ブレンド:本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、潤滑粘度の油であり得、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に指定されているように、グループI~Vにおける基油のうちのいずれかから選択される。5つの基油グループを一般的に以下の表1に示す。
【0061】
【0062】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であってもよい。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0063】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0064】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源から誘導されるものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製工程で処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技法の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得るか、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0065】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技法によって追加的に処理される。
【0066】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られた油を含み得る。例えば、そのような油には、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、大豆油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理又は酸処理された鉱物潤滑油が含まれてもよいが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0067】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0068】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製され得る。
【0069】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要な量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0070】
存在する潤滑粘度の油の量は、粘度指数改良剤及び/又は流動点降下剤及び/又は他の上面処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後の残りの残量であってもよい。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超などの、主要量であってもよい。
【0071】
任意選択的な添加剤:
本明細書における潤滑油組成物はまた、性能基準を満たすために必要に応じて、任意選択的な過塩基化及び硫化アルキルフェネート生成物と組み合わされたいくつもの任意選択的な添加剤を含み得る。それらの任意選択的な添加剤は、以下の段落で説明する。
【0072】
分散剤:潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の分散剤又はそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰型の分散剤と呼ばれている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合していることを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0073】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(pentaethylamine hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0074】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%を超える(例えば、>32重量%)の総窒素と、1g当量当たり120~160グラムの当量の重量の一級アミン基と、を含む。
【0075】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0076】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成し得る。
【0077】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより判定される場合に、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1種のポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンが含まれる場合、そのポリイソブチレンは、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(highly reactive PIB、「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより判定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0079】
GPCにより判定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。HR-PIBが上記熱エン反応で使用されるとき、そのHR-PIBは、反応性の増加に起因して、反応中のより高い変換率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0080】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「polyisobutylene succinic anhydride、PIBSA」)から誘導された少なくとも1種の分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0081】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィ技法を使用して判定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0082】
ポリオレフィンの変換パーセントは米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0083】
別段述べられていない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により判定される数平均分子量である。
【0084】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。ある実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導され得る。
【0085】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0086】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0087】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。好適な分散剤はまた、従来の方法により様々な薬剤のうちのいずれかとの反応によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理され得る。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号);有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号);五硫化リン;既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号);カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号);エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号);アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号);二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号);グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号);尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号);有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号);シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号);ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号);ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号);アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号);1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号);アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号);環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号);環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号);窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号);ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号);ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号);環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号);窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号);ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号);ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号);環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号);酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号);五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号);カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号);ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号);アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号);アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号);ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号);ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号);リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号);有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号);アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号);アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号);環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0089】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0090】
更に他の実施形態では、任意選択的な分散添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であり得る。いくつかのアプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤に由来し得るが、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定した場合、約250~約5,000の数平均分子量を有する線状又は分岐状ヒドロカルビル基である。
【0091】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式:
【0092】
【化9】
(式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R
1及びR
2は、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子とともに、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択的に融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である)を有する。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0093】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比の2つ以上の種類の分散剤の混合物が使用され得る。
【0094】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0095】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得るが、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導された付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得るが、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0096】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。ある実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。ある実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0097】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0098】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0099】
別の代替的な実施形態では、酸化防止剤組成物は、上で考察されるフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール対アミン対モリブデン含有の比は、(0~2):(0~2):(0~1)である。
【0100】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在してもよい。
【0101】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、以下に限定されないが、チオリン酸金属;金属ジアルキルジチオホスフェート;リン酸エステル若しくはその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなどの、チオカルバメート含有化合物;並びにそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により完全に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり得る。
【0102】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有し得るが、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0103】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0104】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1種以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化清浄剤、及び例えばホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0105】
追加の清浄剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性清浄剤、低塩基性清浄剤、又は過塩基性清浄剤、及びこれらの混合物を更に含んでもよい。好適な清浄剤基質としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0106】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有し得る。好適な清浄剤としては、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が挙げられ得る。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、硫黄含有石炭酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、サリチル酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸カルシウム、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、硫黄含有石炭酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸マグネシウム、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、硫黄含有石炭酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸ナトリウム、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0108】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホン酸、カルボン酸、及び石炭酸の金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「標準塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。それらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0109】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mg KOH/グラム以上、又は更なる例として、約250mg KOH/グラム以上、若しくは約350mg KOH/グラム以上、若しくは約375mg KOH/グラム以上、若しくは約400mg KOH/グラム以上の全アルカリ価(TBN)を有し得る。TBNは、ASTM D-2896の方法によって測定されている。
【0110】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサレート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサレート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0111】
過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D-2896の方法により測定される場合、少なくとも約150mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g、少なくとも約225~約400mg KOH/g、少なくとも約225~約350mg KOH/g、又は約230~約350mg KOH/gの全アルカリ価を有する。かかる清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えば、プロセス油、多くの場合、鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0112】
過塩基性清浄剤は、1.1:1以上、又は2:1以上、又は4:1以上、又は5:1以上、又は7:1以上、又は10:1以上の金属対基質比を有し得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。清浄剤は、約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%より大きく約8重量%までで潤滑組成物中に存在し得る。
【0113】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1種以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(Extreme Pressure、EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化ディールス・アルダー付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド;硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0114】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1種以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれ得るが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0115】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得るが、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0116】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されたエステルを含み得、概して、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、概して、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,723,685号に記載される。
【0117】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。そのような化合物は、線状で、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、線状で、飽和、不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0118】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載される。
【0119】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在してもよい。
【0120】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態にあり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0121】
使用することができるモリブデン化合物の好適な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のMolyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)及びMolyvan 855(商標)、並びにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商品名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363(E1)号、同第38,929(E1)号、及び同第40,595(E1)号に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブデート、ナトリウムモリブデート、カリウムモリブデート、及び他のアルカリ金属モリブデート、及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブデート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、有機基が化合物を油中に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0124】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0125】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0126】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能し得る。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。本開示の技術における油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物;硫化チタン(IV);硝酸チタン(IV);チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド;及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート;チタンカルボキシレート、例えば、チタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミノ)イソプロポキシドがある。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸材料との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技法によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0127】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製され得る。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用され得るか、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤;(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(若しくはアルキル)無水コハク酸及びポリアミン;(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、若しくはそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつもの材料のうちのいずれかと反応され得る。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応され得るが、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用され得るか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応され得る。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応され得る。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0128】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC6~C25カルボン酸との反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式:
【0129】
【化10】
(式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である)によって表され得るか、又は以下の式:
【0130】
【化11】
(式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、R
4は、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、R
1は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2及びR
3は、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得るか、又は、チタン化合物は、以下の式:
【0131】
【化12】
(式中、xは、0~3の範囲であり、R
1は、約6個~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2、及びR
3は、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
4は、H、C
6~C
25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される)によって表され得る。
【0132】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0133】
ある実施形態では、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35重量ppm~約500重量ppmのチタン、又は約50ppm~約300ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0134】
粘度指数改良剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改良剤を含有してもよい。好適な粘度指数改良剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改良剤は星型ポリマーを含み得るが、好適な例は米国特許出願公開第20120101017(A1)号に記載されている。
【0135】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改良剤に加えて、又は粘度指数改良剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改良剤も含有し得る。好適な粘度指数改良剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0136】
粘度指数改良剤及び/又は分散剤粘度指数改良剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であってもよい。
【0137】
他の任意選択的な添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0138】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択的に他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であり得るが、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改良剤、清浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食抑制剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改良剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有することになる。
【0139】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0140】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0141】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在してもよい。
【0142】
好適な防錆剤は、鉄金属表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用なタイプの酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。
【0143】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0144】
一般的に言えば、本明細書の中性から過塩基性の硫化アルキルフェネート生成物を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲の添加剤成分を含んでもよい。
【0145】
【0146】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1種以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全配合潤滑剤は、その配合物において必要とされる特性を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【実施例】
【0147】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比、部、及びパーセンテージは、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定することは意図されないということが意図される。
【0148】
約0.3重量パーセント以上の未硫化アルキルフェノール/フェネートレベルを有する試料について、未硫化アルキルフェノール/フェネートの濃度は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)によって決定した。例示的なHPLC方法では、約80~120mgを10mlメスフラスコに秤量し、塩化メチレンでレベルマークまで希釈し、試料が完全に溶解されるまで混合することによって、試料を調製した。HPLC方法で使用されるHPLCシステムは、HPLCポンプ、サーモスタット付きHPLCカラムコンパートメント、HPLC蛍光検出器、及びPCベースのクロマトグラフィデータ収集システムを含んでいた。例示的なシステムは、ChemStationソフトウェアを備えたAgilent 1200 HPLC又は均等物である。HPLCカラムは、Phenomenex Luna C8(2)150×4.6mm 5μm 100Å又は均等物であった。以下のシステム設定を使用して分析を行った:ポンプ流量=1.0ml/分、最大圧力=200バール、蛍光波長:225励起313発光:ゲイン=9、カラムサーモスタット温度=25℃、注入サイズ=1μLの希釈試料、溶出タイプ:勾配、逆相、勾配:0~7分85/15メタノール/水から100%メタノール線形勾配に切り替え、実行時間:17分。
【0149】
低レベル又は超低レベルの未硫化アルキルフェネート/フェノール(例えば、0.2重量パーセント未満のもの)を有する本発明の試料について、上記の方法は、概して、そのような低レベルの未硫化アルキルフェネート/アルキルフェノールを測定するのに十分に感受性ではない。むしろ、測定は、上記の方法と一致するが、5mg/mlの目標フェネート濃度を有する試料を使用して、並びに以下のように、Supelco Ascentis Express RP Amide 2.7u、100mm×2.1mmIDカラムなどの、Agilent 1260 LCカラムを備えたAgilent MS 6420 QQQ及びAgilent MSD XT又は均等装置を介して、シングルクワッド若しくはトリプルクワッドMS又は均等物を使用する液体クロマトグラフィ-質量分析(liquid chromatography-mass spectrometry、LC-MS)を使用して修正された。本発明の試料測定のために、以下のシステム設定を分析において使用した:カラム温度45℃、流速0.3ml/分、注入量3μl、及び実行時間22分。MSシステム設定及び条件は、以下の通りである:イオン源:ESIネガティブ、モードSIM、ガス温度300℃、ガス流量13l/分、ネブライザ35psi、キャピラリ3000(v)、フラグメンタ135、及びピーク幅0.07。未硫化アルキルフェノール/アルキルフェネートのパーセンテージを、MassHunter Quant Program又は均等物を使用して決定して、較正曲線を生成し、次いで試料中の未硫化アルキルフェノール/フェネートのパーセンテージを計算した。
【0150】
実施例1
250のTBN及び約1.5重量パーセントの未硫化テトラプロピレンフェノール(tetrapropylene phenol、TPP)の残留レベルを有する市販のカルシウムフェネート(Afton Chemical)を、以下の手順を使用してメチルトリアジンで後処理した:500グラムのカルシウムフェネート(出発TPP 1.5%)を2リットルの反応器に入れ、次いで温度を約120℃に上昇させた。次いで、約125グラムのメチルトリアジンを添加し、混合物を約150℃で約4時間反応させた。分析結果は、いかなる残留又は未硫化TPPの存在も検出しなかった。
【0151】
実施例2
まず、カルシウムフェネート生成物を以下のように調製した:約509グラムのテトラプロピレンフェノール(TPP)、約336グラムの、Ca(OH)2及び基油から作製されたスラリー、約60グラムのエチレングリコール、並びに約85グラムの再循環基油を、2リットル反応器に入れた。次いで、反応器温度を約135℃に上昇させ、約4時間保持した。次いで、約125グラムの元素硫黄を反応器に入れ、温度を約230℃に上昇させ、約7時間保持した。7時間の加熱後、反応物を約165℃に冷却し、次いで、約27グラムの中性スルホン酸カルシウムを添加し(150のTBN及び約2.6重量パーセントのカルシウムを提供する)、約438グラムのCa(OH)2及び基油から作製されたスラリーを添加した。最後に、二酸化炭素を約0.5リットル/分の速度で約5時間30分にわたって導入することによって、組成物を過塩基化した。得られた生成物は、約1.5%の残留又は未硫化TPP含有量を有する。
【0152】
次いで、上記カルシウムフェネート生成物の約半分を、2リットル反応器に入れ、約150℃に加熱し、次いで約20グラムのメチルトリアジンを添加した。次いで、混合物を約150℃で約2時間、窒素掃引しながら反応させた。その後、温度を約200℃に上昇させ、最大真空及び窒素下で約1~2時間保持し、約200℃に冷却し、真空によって及びセライトHyfloスーパーセルを用いて濾過した。得られた生成物は、約0.23%の残留又は未硫化TPP含有量を有する。
【0153】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的別形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を排除するものではないように、非限定的であることを意図する。
【0154】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0155】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0156】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0157】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内における終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0158】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲における任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0159】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセスであって、
アルキルフェノールを硫黄源で硫化して、硫化アルキルフェノールを提供することであって、前記アルキルフェノールが、フェノールのアルキル化から誘導される、硫化することと、前記硫化アルキルフェノールを溶媒の存在下で中和及び任意選択的に過塩基化して、硫化アルキルフェネート及び残留未硫化アルキルフェノールの混合物を含む硫化アルキルフェネート組成物を提供することであって、前記硫化、前記中和、及び任意選択的な過塩基化が、任意の順序で行われ得る、中和及び任意選択的に過塩基化することと、
前記硫化アルキルフェネート組成物を後処理して、前記硫化アルキルフェネート生成物を得ることであって、前記後処理が、前記硫化アルキルフェネート組成物をトリアジン化合物と反応させることを含む、後処理することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記硫黄源が、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄、硫化物水和物、若しくはそれらの組み合わせを含み、かつ/又は前記硫黄源対前記アルキルフェノールのモル比が、0.1~3.5である、請求項1に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項3】
前記中和及び/又は任意選択的な過塩基化が、前記硫化アルキルフェノールをアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と接触させることを含む、請求項1に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項4】
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、又はそれらの組み合わせである、請求項3に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項5】
前記トリアジン化合物が、式IIIの構造を有し、
【化1】
式中、各R
3が、独立して、水素、ヒドロカルビル基、アルキル基、アミノ基、ポリアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキル基、C1~C10ヒドロカルビル基、又は-R
4N(R
5)(R
5)基であり、R
4及びR
5の各々が、独立して、C1~C10ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項6】
約0.5重量パーセント以下の未硫化アルキルフェノールを更に含み、かつ/又は前記硫化アルキルフェネート生成物が、式Iの化合物及び式IIの化合物を含み、
【化2】
式中、
各R
1が、独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基であり、
R
2が、アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、
xが、1~4の整数であり、
nが、1~3の整数であり、
mが、0又は1の整数であり、
M
2+が、二価金属イオンである、請求項1に記載の硫化アルキルフェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項7】
R
1が、C8~C20アルキル基であり、かつ/又はR
2が、メチルであるか、若しくは-R
4N(R
5)(R
5)の構造を有し、式中、R
4が、C1~C10ヒドロカルビル基であり、各R
5が、独立して、C1~C4アルキル基である、請求項6に記載の硫化金属フェネート生成物を調製するためのプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスによって調製された、硫化金属フェネート清浄剤。
【請求項9】
請求項8に記載の金属フェネート清浄剤と、潤滑粘度の1つ以上の基油と、を含む、潤滑油組成物。
【国際調査報告】