(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電極及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20250212BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250212BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20250212BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/136
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/38 A
H01M4/40
H01M4/66 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544502
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2023001366
(87)【国際公開番号】W WO2023146376
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0013757
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0031451
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハク-ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン-ユン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ムン-ス・パク
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017DD05
5H050AA12
5H050AA19
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA04
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA02
5H050EA03
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA12
5H050EA26
5H050EA28
5H050FA02
5H050FA13
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA09
(57)【要約】
本発明による電極は、複数の単位電極活物質層が積層されて形成された多層構造の電極に関する。前記電極は、各単位電極活物質層が電極材料を含むグラニュールが集積されて形成されたものであって、各単位電極活物質層に使用される電極活物質が異なっても単位電極活物質層の界面付近で電極活物質の混入が発生しないため、異種の電極活物質間の電気化学的特性の干渉が少ない。また、前記電極活物質層は、集電体付近により近く配置された単位層に比べて電極表面付近により近く配置された単位電極活物質層の気孔度が高い。これによって、電極の電解液の濡れ性及びイオン伝導度が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された電極活物質層を含む電気化学素子用の電極であって、
前記電極活物質層が、電極活物質及び電極バインダーを含む複数のグラニュールが集積した単位電極活物質層を含み、前記集電体の表面から第1単位電極活物質層~第n単位電極活物質層が順次に積層されており、ここで、nは2以上の整数であり、
前記電極活物質層に含まれた単位電極活物質層のうち最上部に配置された第n単位電極活物質層の気孔度が最も高い、電気化学素子用の電極。
【請求項2】
前記nが3以上かつ10以下である、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項3】
前記電極活物質層のうち最上層である第n単位電極活物質層の気孔度が40vol%以下である、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項4】
前記第1単位電極活物質層の気孔度が20vol%以上である、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項5】
各単位電極活物質層は、集電体の表面から遠くなるほど気孔度が高い、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項6】
各単位電極活物質層が、複数種類の電極活物質を含み、各単位電極活物質層において複数の電極活物質の成分の組合せが同一であるが、各単位電極活物質層において各成分間の含量比が相異なる、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項7】
各単位電極活物質層に含まれるグラニュールが、複数種類の電極活物質を含み、各単位電極活物質層毎のグラニュールにおいて複数の電極活物質の成分の組合せが同一であるが、各単位電極活物質層においてグラニュール毎の成分の含量比が相異なる、請求項6に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項8】
各単位電極活物質層が、単位電極活物質層の高さの1/2を基準にして、上部と下部において、上部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)と下部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)との差が10wt%以下である、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項9】
前記nが3以上であり、最下部である第1単位電極活物質層の気孔度と最上部である第n単位電極活物質層の気孔度との差が、5vol%~20vol%である、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項10】
前記電極が負極であり、前記電極活物質が、天然黒鉛、人造黒鉛及びリチウム(Li)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、リチウム合金、ケイ素合金、スズ合金、ケイ素酸化物、スズ酸化物、含リチウム化合物、含ケイ素化合物及び含スズ化合物からなる群より選択された一種以上を含む、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項11】
前記グラニュールが電極導電材を含む、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項12】
前記集電体は、少なくとも一面に表面の全部または少なくとも一部を被覆するプライマー層が形成されており、前記プライマー層は、導電材及びバインダーを含む、請求項1に記載の電気化学素子用の電極。
【請求項13】
電気化学素子用電極の製造方法であって、集電体の一面に電極用粉体を塗布して加圧することで所定の厚さを有する層状構造の第1単位電極活物質層を形成する段階を含み、その後、以前の段階で形成された各単位電極活物質層の表面に追加的に電極用粉体を塗布して加圧することで単位電極活物質層を形成する段階をn-1回反復してn個の単位電極活物質層が含まれた電極を製造し、前記電極は、請求項1に記載の電気化学素子用の電極の構造を有し、前記nが2以上の整数である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質と電極バインダーを含む複数のグラニュールを圧着する乾式方法で製造された電極及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2022年1月28日出願の韓国特許出願第10-2022-0013757号及び2022年3月14日出願の韓国特許出願第10-2022-0031451号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急増につれ、代替エネルギーや清浄エネルギーの使用に対する要求が増加しつつあり、その一環として最も研究が盛んでいる分野が電気化学を用いた発電、蓄電分野である。現在、このような電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例としては二次電池が挙げられ、ますますその使用領域が拡大している。このような二次電池として代表的なリチウム二次電池は、モバイル機器のエネルギー源のみならず、最近は大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両を代替できる電気自動車、ハイブリッド電気自動車の動力源としての使用が実現されつつあり、グリッド(Grid)化による電力補助電源などの用途としても使用領域が拡がっている。
【0004】
最近は、電池性能の向上のために複数の電極活物質を適用する電池開発に関わり、多様な研究が行われている。複数の電極活物質を混合して単一の電極活物質層を形成する場合、かえって活物質種類間の干渉効果によって電池性能が低下する問題が発生した。そこで、電池の製造時において、電極活物質層を多層で構成して各層別に機能を特化して電極特性及び電池性能の向上を図る方法が考えられている。
【0005】
しかし、従来に通常使用されていた電極活物質層形成用スラリーのコーティング方式が適用された電極製造方式によっては多層電極製造による効果改善の目的を達成しにくいという問題がある。スラリーコーティング方式による多層電極の製造工程では工程特性上、主に下部スラリーが乾燥する前に、塗布されたスラリーの表面に上部スラリーを塗布するウェットオンウェット(wet on wet)方式が適用され、この際、スラリーが流動性を示すため層間界面で上下部のスラリーが混合され、活物質間の干渉を完全に遮断しにくい。一方、電極スラリーの乾燥後には、電極の厚さや気孔度などの既に設計されたターゲット寸法に合うように加圧工程が行われる。前記のようにスラリーのウェットオンウェット塗布によって電極が製造される場合には、圧力が電極の表面を介して印加される方式で加圧工程が行われ、この場合、他の部分に比べて電極の表面近所に圧力が集中して電極の表面近所の気孔度が過度に低下し得る。このように電極の表面の気孔度が低下する場合には、電解液の濡れ性やイオン伝導度が低下する恐れがある。
【0006】
そこで、上述の問題を解決するために、単位電極活物質層が積層された多層電極において、層間界面における上下部の電極活物質の混入が少なく、かつ電解液の流入やイオン伝導度を改善する面で電極上部の気孔度が適切に維持される電極が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、層間電極活物質の混入が少ない電気化学素子用の多層電極を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、電極上部の気孔度が高い多層電極を提供することを他の目的とする。
【0009】
また、本発明は、層間電極活物質の混入が少なく、かつ電極上部の気孔度が高い多層電極としてグラニュール粒子を含む乾式電極を提供するさらに他の目的とする。
【0010】
なお、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1面によれば、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された電極活物質層を含む電気化学素子用の電極に関し、
前記電極活物質層は、電極活物質及び電極バインダーを含む複数のグラニュールが圧着によって集積した単位電極活物質層を含み、前記集電体の表面から第1単位電極活物質層~第n単位電極活物質層が順次に積層されており、ここで、nは2以上の整数であり、
前記電極活物質層に含まれた単位電極活物質層のうち最上部に配置された第n単位電極活物質層の気孔度が最も高い。
【0012】
本発明の第2面によれば、前記第1面において、前記nは3以上かつ10以下である。
【0013】
本発明の第3面によれば、前記第1面または第2面において、前記電極活物質層のうち最上層である第n単位電極活物質層の気孔度は40vol%以下である。
【0014】
本発明の第4面によれば、前記第1面から第3面のいずれか一面において、前記第1単位電極活物質層は、気孔度が20vol%以上である。
【0015】
本発明の第5面によれば、前記第1面から第4面のいずれか一面において、各単位電極活物質層は、集電体の表面から遠くなるほど気孔度が高い。
【0016】
本発明の第6面によれば、前記第1面から第5面において、各単位電極活物質層は、複数種類の電極活物質を含み、各単位電極活物質層において複数の電極活物質の成分(種類)の組合せは同一であるが、各単位電極活物質層において各成分間の含量比が相異なる。
【0017】
本発明の第7面によれば、前記第1面から第6面のいずれか一面において、各単位電極活物質層に含まれるグラニュールは、複数種類の電極活物質を含み、各単位電極活物質層毎のグラニュールにおいて複数の電極活物質の成分(種類)の組合せは同一であるが、各単位電極活物質層においてグラニュール毎の成分の含量比が相異なる。
【0018】
本発明の第8面によれば、前記第1面から第7面のいずれか一面において、各単位電極活物質層は、単位電極活物質層の高さの1/2を基準にして、上部と下部において、上部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)と下部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)との差が10wt%以下である。
【0019】
本発明の第9面によれば、前記第1面から第8面のいずれか一面において、前記nが3以上であり、最下部である第1単位電極活物質層の気孔度と最上部である第n単位電極活物質層の気孔度との差が、5vol%~20vol%である。
【0020】
本発明の第10面によれば、前記第1面から第9面のいずれか一面において、前記電極は負極であり、前記電極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛及びリチウム(Li)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、リチウム合金、ケイ素合金、スズ合金、ケイ素酸化物、スズ酸化物、含リチウム化合物、含ケイ素化合物及び含スズ化合物からなる群より選択された一種以上を含む。
【0021】
本発明の第11面によれば、前記第1面から第10面のいずれか一面において、前記グラニュールは電極導電材を含む。
【0022】
本発明の第12面によれば、前記第1面から第11面のいずれか一面において、前記集電体の少なくとも一面に表面の全部または少なくとも一部を被覆するプライマー層が形成されており、前記プライマー層は、導電材及びバインダーを含む。
【0023】
本発明の第13面によれば、前記第1面から第12面のいずれか一面による電極を製造する方法に関し、前記方法は、集電体の一面に電極用粉体を塗布して加圧することで所定の厚さを有する層状構造の第1単位電極活物質層を形成する段階を含み、その後、以前の段階で形成された各単位電極活物質層の表面に追加的に電極用粉体を塗布して加圧することで単位電極活物質層を形成する段階をn-1回反復してn個の単位電極活物質層が含まれた電極を製造する方法であって、前記電極は、前記第1面による構造を有し、前記nは2以上の整数である。
【発明の効果】
【0024】
本発明による電極は、複数の単位電極活物質層が積層されて形成された多層構造の電極に関する。前記電極は、各単位電極活物質層が電極材料を含むグラニュールが集積されて形成されたものであって、各単位層に使用される電極活物質が異なっても単位層の界面付近で電極活物質の混入が発生しないため、異種の電極活物質間の電気化学的特性の干渉が少ない。また、前記電極活物質層は、集電体側により近く配置された単位層よりも電極の表面側により近く配置された単位層の気孔度が高い。これによって、電極の電解液の濡れ性及びイオン伝導度が改善される。また、本発明による電極は、各単位電極活物質層の形成のためのカレンダリング工程時に圧力調節が不要であり、同じ圧力を維持しても各層に含まれる材料の性質によって電極が各単位電極活物質層毎に気孔度の勾配を有することができる。
【0025】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施態様を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施様態による電極の断面を概略的に示した図である。
【
図2】各実施例及び比較例の電池のナイキスト線図(Nyquist Plot)である。
【
図3】本発明の一実施様態によるグラニュール100において表面部と中心部を図式化して示した図である。
【
図4】前記製造によって得られた第1グラニュールのSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳しく説明する。しかし、本発明は、下記の内容のみによって限定されず、必要に応じて各構成要素が多様に変形されるか、または選択的に混用され得る。したがって、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変形例、均等物または代替物が組み込まれることを理解されたい。
【0028】
明細書の全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、特に明記しない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「約」、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0030】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、もしくはこれら全部」を意味する。
【0031】
本明細書で使用された特定の用語は便宜のためのものであり、制限的でない。「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「内」及び「外」のような用語は、絶対的な位置ではなく、構成要素相互間の相対的な位置や方向を説明するために使用されるか、または参照される図面における位置や方向を示し得る。前記用語は、それら以外にもこれらを含む単語、その派生語及び類似な意味の単語を含む。
【0032】
本明細書で使用された「ガラス転移温度Tg」とは、当業界に知られた通常の方法によって測定されており、例えば、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry;DSC)によって測定されたものであり得る。
【0033】
本明細書において、用語「気孔度(porosity)」は、ある構造体において全体体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位として%を使い、空隙率、多孔度などの用語と相互交換的に使用し得る。本発明において、前記気孔度の測定は特に限定されず、本発明の一例では、例えば、窒素気体を用いたBET(Brunauer-Emmett- Teller)測定法または水銀浸透法(Hg porosimeter)及びASTM D-2873によって測定できる。または、測定対象の密度(見掛け密度)と、測定対象に含まれた材料の組成比及び各成分の密度から測定対象の真密度を計算し、見掛密度(apparent density)と真密度(net density)との差から気孔度を計算することができる。
【0034】
前記明細書で使用された「平均粒径D50」とは、粒径による粒子個数累積分布の50%地点における粒径を意味し、前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定されたものであり得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過するときに粒子サイズによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%になる地点における粒子直径を算出することで、D50粒径を測定することができる。
【0035】
本明細書において、電極に含まれる各層(layer)の「厚さ」とは、厚さを測定する公知の方法によって測定された値を示し得る。厚さの測定方法がこれに制限されることではないが、例えば、厚さ測定器(Mitutoyo社、VL-50S-B)を用いて測定した値であり得る。
【0036】
本明細書で使用された「比表面積」とは、比表面積を測定する公知の方法によって測定された値であり得る。比表面積の測定方法は、これに制限されないが、例えば、流動式または固定式の方法によって測定された値であり得る。
【0037】
本発明は、電気化学素子用の電極に関する。前記電極は、電極の極性によって正極または負極であり得る。本発明の電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的に例えば、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタ(capacitor)などが挙げられる。本発明において、望ましくは、前記電気化学素子は二次電池であり、より望ましくはリチウムイオン二次電池であり得る。本発明の具体的な一実施様態において前記電気化学素子は、本発明による正極または負極またはこれらを共に含み得る。
【0038】
本発明の一面による電極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された電極活物質層を含む。
【0039】
前記電極活物質層は、電極活物質及び電極バインダーを含むグラニュールが導入されて形成されたものである。本発明の具体的な一実施様態において、前記電極活物質層は前記複数のグラニュールが圧着されて形成された単位電極活物質層(以下、単位層とも指称される)を二つ以上含む。
【0040】
本発明の一実施様態において、前記電極活物質層は、グラニュールに由来するものであるか、またはグラニュールの形成に関与しなかった遊離状態の電極活物質粒子、バインダー粒子、導電材粒子などがさらに含まれていてもよい。本発明の具体的な一実施様態において、望ましくは、前記電極活物質層は、電極活物質層100wt%に対して前記グラニュールが80wt%以上、90wt%以上または95wt%以上または99wt%以上含まれ得る。また、各単位層は、単位層100wt%に対して前記グラニュールが80wt%以上、90wt%以上または95wt%以上または99wt%以上含まれ得る。
【0041】
前記電極は、前記集電体の表面から第1単位電極活物質層~第n単位電極活物質層が順次に積層されており、ここで、nは2以上の整数であり、前記電極活物質層に含まれた単位電極活物質層のうち最上部に配置された第n単位電極活物質層の気孔度が最も高い。
【0042】
本発明において、前記電極活物質層は、集電体の表面からn個の単位層が順次に積層されている多重層構造を有する。ここで、nは2以上の整数であり、前記n個の単位層のうち集電体の表面に配置された単位層を第1単位層とし、集電体から最も遠く配置された単位層を第n単位層とする。
【0043】
本発明において、前記電極活物質層は、各単位層のうち電極の最上部に配置された最上層(第n単位層)の気孔度が最も高い。前記最上層とは、単位層のうち集電体から最も遠く配置されたものであって、電極の製造時に分離膜と面対向する単位層を意味する。
【0044】
前記電極活物質層は、単位層が2個以上、3個以上または5個以上であり得る。前記単位層の数は特に限定されないが、20個以下、または10個以下、または7個以下、または5個以下であり得る。
【0045】
一方、本発明の一実施様態において、前記電極活物質層において各単位層の厚さは、全体活物質層の厚さ100%に対して20%~80%の範囲を有し得る。
【0046】
前記電極活物質層において、最上層は20~80%の厚さ範囲を有し得る。
【0047】
前記電極活物質層において、最下層は80~20%の厚さ範囲を有し得る。
【0048】
前記電極活物質層は、前記グラニュール間の空間であるインタースティシャルボリュームによって提供される気孔を有し、このような構造に由来した多孔性特性を示し得る。本発明の一実施様態において、前記電極活物質層は、電解液含浸性、形態安定性及びイオン伝導度などの面を考慮したとき、20vol%~40vol%の気孔度を有することが望ましい。
【0049】
一方、本発明において、面接触する各単位層間の気孔度の差は1vol%以上、望ましくは2vol%以上である。一方、各単位層同士の気孔度の差は、20vol%以下であることが望ましい。具体的な例で、10vol%以下、または5vol%以下であり得る。本発明の一実施様態において、前記電極活物質層は、層間気孔度の差が過度に急激にならないように3枚以上の単位層を含むことが望ましい。
【0050】
本発明の一実施様態において、各単位層は、集電体の表面から遠くなるほど気孔度が順次に増加し得、単位層のうち最上層の気孔度が最も高い。このように最上層へ進むほど気孔度が増加することで、リチウムイオンの移動が円滑になり、電極活物質層の厚さ方向において均一な電気化学反応が起こるようにすることができる。
【0051】
一方、本発明の具体的な一実施様態において、前記第n単位層(最上層)の気孔度は50vol%以下、40vol%以下、35vol%以下、または30vol%以下であり得る。一実施様態において、前記第n単位層は、気孔度が30vol%~40vol%であってもよく、33vol%~37vol%であり得る。また、前記第1単位層は、気孔度が20vol%以上であり得る。最上層の気孔度が過度に高いか、または第1単位層の気孔度が過度に低い場合には、全体の電極活物質層の気孔度を適切な範囲に制御しにくいため、最上層と第1単位層の気孔度を前記範囲にすることが望ましい。
【0052】
本発明の一実施様態において、前記電極活物質層は3枚以上の単位層を含んでもよく、この際、第1単位層の気孔度と最上層の気孔度との差は5vol%~20vol%、望ましくは8vol%~12vol%、より望ましくは8vol%~12vol%である。
【0053】
また、本発明の一実施様態において、前記各単位層は、厚さ方向を基準にしてバインダーの分布が均一である。具体的な一実施様態において、前記各単位層は、単位層の高さの1/2を基準にして上部と下部において、上部100wt%中のバインダーの含量(wt%)と下部100wt%中のバインダーの含量(wt%)との差が、10wt%以下の値を示し得る。このようなバインダーの分布は、本発明による電極活物質層がグラニュールの圧着によって製造されることに起因し得る。後述するように、本発明の電極の製造方法は、電極材料を含むグラニュール粒子を製造した後、グラニュール粒子を集電体などに塗布して加圧することでグラニュールが層状構造に集積されるようにしたことを特徴とする。スラリー製造を伴う電極の製造方法の場合には、スラリーの乾燥時、溶媒の蒸発によってバインダーのマイグレーションが誘導され、バインダーが電極の表面部に集中的に分布するようになる。しかし、本発明においては、溶媒を使用せず、乾燥状態のグラニュールを圧着して集積する方法を適用するため、バインダーのマイグレーション現象が起こらない。そのため、各単位層において厚さ方向にバインダーが均一な分布を示す。
【0054】
本発明において、前記グラニュールは、電極活物質及び電極バインダー、そして必要に応じて添加される任意の成分を含む複合粒子の形態を有し得る。具体的には、前記グラニュールは、二つ以上の電極活物質粒子が前記電極バインダーによって結着して造粒されることで二次粒子化したものであり得る。本発明において、前記電極活物質とは、粒子の集合物を意味し得る。ここで、前記電極活物質の各粒子の直径は0.05μm~2μmであり得る。
【0055】
本発明の具体的な一実施様態において、グラニュール総重量100wt%に対して電極活物質が80wt%以上または90wt%以上であってもよく、前記電極バインダーは、20wt%以下または10wt%以下で含まれ得る。本発明の一実施様態において、前記グラニュールは、必要に応じて任意の成分として電極導電材をさらに含み得る。前記電極導電材は、グラニュール100wt%に対して、0.1wt%~20wt%、望ましくは0.1wt%~10wt%の範囲で含まれ得る。例えば、前記グラニュールのにおいて導電材は約0.1~5wt%の範囲で含まれ得る。
【0056】
本発明の一具現例によれば、前記グラニュール中の電極活物質の含量は85wt%~98wt%であり得る。前記範囲内において、前記電極バインダーの含量は0.5~10wt%であり、前記電極導電材の含量は0.5wt%~5wt%であり得る。さらに他の具現例によれば、前記電極活物質の含量は90wt%~98wt%であり、前記電極バインダーの含量は0.5wt%~5wt%であり、前記電極導電材の含量は0.5wt%~5wt%であり得る。
【0057】
一方、本発明の一実施様態において、前記電極活物質層は、各単位層に含まれる電極材料が同一であっても、同一でなくてもよい。例えば、電極活物質層の各単位層は全て異なる電極活物質を含むか、または少なくとも電極活物質層に含まれた単位層のうち少なくとも面接触する二つの単位層は各々異なる電極活物質を含み得る。本発明の一実施様態において、前記電極活物質層が総3個の単位層から構成された場合、前記第1単位層と第2単位層は各々相異なる電極活物質を含み得る。これと共に、またはこれとは独立的に、第2単位層と第3単位層は各々相異なる電極活物質を含み得る。
【0058】
互いに対向する二つの単位層において各々異なる種類の電極活物質を使用する場合には、単位層間の界面で電極活物質間の電気化学的反応の干渉が発生しないため、多層電極による効果をさらに極大化することができる。
【0059】
さらに他の一実施様態において、各単位層は、複数種類の電極活物質を含み、各単位層における複数の電極活物質の成分(種類)の組合せは同一であるが、各単位層における各成分間の含量比は相違し得る。
【0060】
より望ましくは、各単位層に含まれるグラニュールは、複数種類の電極活物質を含み、各単位層のグラニュールは、複数の電極活物質の成分(種類)の組合せは同一であるが、各単位層のグラニュール別の成分の含量比は相違し得る。
【0061】
具体的な一実施様態において、前記電極が負極である場合、前記電極活物質層は、負極活物質として人造黒鉛及び/または天然黒鉛を含み得る。本発明の一実施様態において、グラニュール中の人造黒鉛と天然黒鉛の含量は、単位層毎に相異し得る。具体的には、第1単位層から第n単位層へ進むほど、グラニュール中の人造黒鉛の含量が増加し得る。これとは独立的に、またはこれと共に、第1単位層から最上層である第n単位層へ進むほどグラニュール中の天然黒鉛の量が減少し得る。このように最上層へ進むほどグラニュールに含まれた人造黒鉛の含量が増加し、天然黒鉛の含量が減少し、これと共にまたはこれとは独立的に、最下層へ進むほどグラニュール中の人造黒鉛の含量が減少して天然黒鉛の含量が増加する場合、各層別の同一または類似水準の圧力で加圧するとしても各グラニュールの固有の押されの差によって各単位層の気孔度が異なる、特に最上層が最も高い気孔度を有する電極活物質層が得らえる。
【0062】
本発明の具体的な一実施様態において、電極活物質層のうち最下層である第1単位層は複数の第1グラニュールを含み、前記第1グラニュールは、電極活物質が天然黒鉛及び人造黒鉛を含み、前記第1グラニュールにおいて、電極活物質100wt%に対して天然黒鉛の含量が50wt%以上、または70wt%以上であり得る。望ましくは、前記第1単位層は、単位層100wt%に対して前記第1グラニュールの含量が90wt%以上、より望ましくは99wt%以上含まれ得る。
【0063】
また、本発明の具体的な一実施様態において、電極活物質層のうち最上層である第n単位層は、複数の第nグラニュールを含み、前記第nグラニュールは、電極活物質が人造黒鉛のみを含むか、または天然黒鉛及び人造黒鉛を含み、前記第nグラニュールにおいて、電極活物質100wt%に対して人造黒鉛の含量が80wt%以上、望ましくは90wt%以上または99wt%以上含まれ得る。望ましくは、前記第n単位層は、単位層100wt%中に第nグラニュールの含量が90wt%以上、望ましくは99wt%以上含まれ得る。
【0064】
前記第1層と第n層との間に配置される第2層、第3層、…n-2層、n-1層では、第n層方向へ進むほどグラニュール中の人造黒鉛の含量が増加し、第1層方向へ進むほどグラニュール中の天然黒鉛の含量が増加し得る。
【0065】
本発明の具体的な一実施様態において、電極活物質層は、第1単位層、第2単位層及び第3単位層が順次に積層されている形態を有し得る。
【0066】
本発明の具体的な一実施様態において、電極活物質層のうち最下層である第1単位層は複数の第1グラニュールを含み、前記第1グラニュールは電極活物質が天然黒鉛及び人造黒鉛からなり、前記第1グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対して天然黒鉛の含量(Nc1)が50wt%以上、または70wt%以上であり得る。望ましくは、前記第1単位層は、単位層100wt%に対して前記第1グラニュールの含量が90wt%以上、より望ましくは99wt%以上含まれ得る。
【0067】
また、前記第2単位層は、複数の第2グラニュールを含み、前記第2グラニュールは、電極活物質が天然黒鉛及び人造黒鉛からなり、前記第2グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対して天然黒鉛の含量(Nc2)は30wt%~70wt%、望ましくは30wt%~50wt%の範囲で調節され得、Nc1より小さい。望ましくは、前記第2単位層は、単位層100wt%に対して前記第2グラニュールの含量が90wt%以上、より望ましくは99wt%以上含まれ得る。
【0068】
そして、前記第3単位層は、複数の第3グラニュールを含み、前記第3グラニュールは、電極活物質として人造黒鉛のみを含むか、または天然黒鉛及び人造黒鉛からなり、前記第3グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対して人造黒鉛の含量(Ac3)が70wt%超過、80wt%以上、望ましくは90wt%以上または99wt%以上含まれ得る。望ましくは、前記第3単位層は、単位層100wt%中に第3グラニュールの含量が90wt%以上、望ましくは99wt%以上含まれ得る。また、前記第1グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対する人造黒鉛の含量(Ac1)、第2グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対する人造黒鉛の含量(Ac2)、第3グラニュールにおいて電極活物質100wt%に対する人造黒鉛の含量(Ac3)は、Ac1<Ac2<Ac3であることが望ましい。
【0069】
図1は、本発明の一実施様態によるものであって、3個の単位層を含む電極の断面を図式化して示したものである。前記電極100は、集電体120の表面に電極活物質層110が配置されており、前記電極活物質層は、集電体の表面から第1単位層111、第2単位層112及び第3単位層113が順次に積層されている。ここで、前記電極活物質層は、気孔度が20vol%~40vol%の範囲を有し、前記第1単位層の気孔度は20vol%以上であり、第3単位層の気孔度は40vol%であり、第1単位層の気孔度と第3単位層の気孔度との差が5vol%~15vol%であり得る。一方、前記第1及び第2単位層の気孔度の差及び第2単位層と第3単位層との気孔度の差は、各々独立的に1vol%以上であり得る。
【0070】
また、第1単位層から第3単位層の各々において、単位電極活物質層の高さ1/2を基準にして上部と下部において、上部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)と下部100wt%におけるバインダーの含量(wt%)との差が10wt%以下であり得る。
【0071】
本発明において、前記グラニュールは、前記グラニュール100の中心部101に含まれた電極バインダーの量よりも、グラニュールの表面部102に含まれた電極バインダーの量が多くてもよい。前記バインダーの量は、重量または体積を意味し得る。
図3は、本発明の一実施様態によるグラニュール100における表面部と中心部を図式化して示したものである。
【0072】
それと共に、またはそれとは独立的に、前記グラニュールは、グラニュールの総重量100wt%に対してグラニュールの中心部に含まれた電極バインダーの含量(wt%)Bc/Gtよりもグラニュールのグラニュールの表面部に含まれた電極バインダーの含量(wt%)Bs/Gtが高くてもよい。ここで、前記Bcは中心部に含まれたバインダーの重量であり、Bsは表面部に含まれたバインダーの重量であり、Gtはグラニュール粒子の全体重量を意味する。
【0073】
それと共に、またはそれとは独立的に、前記グラニュールは、グラニュールの総体積100vol%に対するグラニュールの中心部に含まれた電極バインダーの含量(vol%)Bc/Gtよりもグラニュールの表面部に含まれた電極バインダーの含量vol%Bs/Gtが高くてもよい。ここで、前記Bcは中心部に含まれたバインダーの体積であり、Bsは表面部に含まれたバインダーの体積であり、Gtはグラニュール粒子の全体積を意味する。
【0074】
ここで、前記表面部とは、グラニュールの表面からグラニュール中心方向へ所定の深さまでのグラニュールの表面付近の領域であり得る。前記中心部とは、表面部以外の部分を意味する。本発明の一実施様態において、前記表面部とは、より詳しくはグラニュールの表面から内側に向かって、具体的には、グラニュールの中心方向へ半径の30%までの表面領域を意味し得る。本発明の一実施様態において、前記表面部とは、グラニュールの表面から半径の30%までの表面領域、20%までの表面領域、15%までの表面領域、10%までの表面領域または5%までの表面領域を意味し得る。望ましくは、前記表面部とは、グラニュールの表面から半径の20%までの表面領域を意味し得る。
【0075】
一方、本発明の一実施様態において、前記表面部は、前記グラニュールの中心からグラニュールの外側に向かって半径の70%以上のラニュール表面までの領域を意味し得る。本発明の一実施様態において、前記表面部とは、例えば、半径80%以上、85%以上、90%以上または95%以上のグラニュール表面までの領域を意味し得る。
【0076】
本発明の一実施様態において、前記グラニュールの中心は、グラニュールの最長直径の1/2地点を意味し得る。本発明において、前記半径は、前記グラニュールの中心からグラニュール表面の各地点までの距離を意味し得る。本発明の一実施様態において、各半径に沿ってグラニュールの各表面から距離が同じ地点、具体的には、表面から当該半径の30%までの地点、20%までの地点、10%までの地点、5%までの地点または1%までの地点を基準にして前記表面部と中心部を区分し得る。
【0077】
本発明の一実施様態において、グラニュールの中心から半径90%以上のグラニュールの表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総重量100wt%に対する電極バインダーの含量は、50wt%以上、60wt%以上、70wt%以上、80wt%以上または90wt%以上であり得る。
【0078】
本発明のさらに他の一実施様態において、グラニュールの中心から半径95%以上のグラニュール表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総重量100wt%に対する電極バインダーの含量は、50wt%以上、60wt%以上、70wt%以上、80wt%以上または90wt%以上であり得る。
【0079】
本発明のさらに他の一実施様態において、グラニュールの中心から半径99%以上のグラニュール表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総重量100wt%に対する電極バインダーの含量は、50wt%以上、60wt%以上、70wt%以上、80wt%以上または90wt%以上であり得る。
【0080】
本発明の一実施様態において、グラニュールの中心から半径90%以上のグラニュール表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総体積100vol%に対する電極バインダーの含量は、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上または90vol%以上であり得る。
【0081】
本発明のさらに他の一実施様態において、グラニュールの中心から半径95%以上のグラニュール表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総体積100vol%に対する電極バインダーの含量は、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上または90vol%以上であり得る。
【0082】
本発明のさらに他の一実施様態において、グラニュール中心から半径99%以上のグラニュール表面までの領域において、当該領域におけるグラニュールの総体積100vol%に対する電極バインダーの含量は、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上、または90vol%以上であり得る。
【0083】
前記グラニュールをより詳細に説明すると、前記グラニュールは、複数の電極活物質を含む中心部と、前記中心部の外側の全部または一部に位置して前記電極活物質を結着している電極バインダーを含む表面部と、を備え得る。即ち、前記グラニュールの中心部では、複数の電極活物質が互いに、面接触、線接触、点接触またはこれらの二つ以上の接触をして凝集体を形成し、前記グラニュールの表面部では、このような凝集体の外側の一部または全部に電極バインダーが位置し、グラニュール中心部の複数の電極活物質を互いに固定して結着させ得る。
【0084】
本発明の一具現例によれば、前記中心部にも少量の電極バインダーがさらに含まれ、中心部の複数の電極活物質を互いに接続及び固定する役割を果たし得る。しかし、前述したように、中心部よりも表面部で電極バインダーの含量の割合が高いことが望ましい。
【0085】
一方、本発明の一実施様態において、前記グラニュールは0.5~1.0、望ましくは0.75~1.0の縦横比を有し得る。前記縦横比は、グラニュールの短軸の長さと長軸の長さとの割合を意味し得る。本発明のさらに他の一実施様態において、前記グラニュールの平均縦横比は、0.5~1.0、望ましくは0.75~1.0の値を有してもよく、この場合、前記平均縦横比は、グラニュール粒子の短縮の平均長さと長軸の平均長さとの割合を意味し得る。この際、短縮の平均長さとは、グラニュールの最も短い長さを有する軸方向における長さの平均値を示し、長軸の平均長さとは、グラニュールの最も長い長さを有する軸方向における長さの平均値を示し得る。前記グラニュールの縦横比がこのような範囲の満たす場合、工程に適する十分な流動性を有する面で有利である。
【0086】
一方、本発明の一実施様態において、前記グラニュールの粒径粒子の最長径を基準にして0.1~1,000μmの範囲を有し得る。本発明のさらに他の一実施様態において、前記グラニュールの平均粒径D50は、0.1~1,000μmの範囲を有し得る。
【0087】
本発明の一実施様態において、前記電極が負極である場合、前記電極活物質は、負極活物質として、例えば、易黒鉛化炭素及び/または難黒鉛化炭素などの炭素材料;天然黒鉛及び/または人造黒鉛など黒鉛系炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素;ケイ素系合金;スズ;スズ系合金;SiO、SiO/C、SiO2などのシリコン系酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使用し得る。しかし、これらのみに限定されることではない。
【0088】
一方、本発明の一実施様態において、前記電極が正極である場合、前記電極活物質は、正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4、LiMnO2など)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である。)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である。)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルミニウムイオンで置換されたLi1+x(NiaCobMncAld)1-xO2(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、d=0.001~0.03、a+b+c+d=1);ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3のうち一種または二種以上の混合物を含み得る。
【0089】
前記電極バインダーは粘着性を有するものであって、電気化学反応に安定的であり、前記電極活物質と電極導電材などの電極素材を結着してグラニュール形態を維持でき、かつ圧着によってグラニュールが相互に結着することで層状構造で集積して安定的な形態を維持できるものであれば、特定の成分に限定されない。このような電極バインダーの非制限的な例には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンスチレンブロック重合体(SBS)、スチレンエチレンブタジエンブロック重合体(SEB)、スチレン-(スチレンブタジエン)-スチレンブロック重合体、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレンジエン三元共重合体(EPDM)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)(Poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbornene)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVdF)、ポリビニルクロリド(polyvinyl chloride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyetylexylacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリプロピレンオキシド(polypropylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)またはこれらのうち二つ以上を含み得る。具体的には、前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyetylexylacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)が挙げられる。具体的な一実施様態において、前記電極バインダーは、これらより選択された一種または二種以上を含み得る。
【0090】
前記電極導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されない。その非制限的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック系炭素化合物;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉体などの金属粉体;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。具体的な一実施様態において、前記電極導電材は、これらより選択された一種または二種以上を含み得る。
【0091】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。前記集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅またはアルミニウムやステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われ得る。また、集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して活物質の接着力を高めることも可能であり、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。一方、本発明の一実施様態において、前記集電体は10μm~50μmの厚さを有し得るが、これに特に限定されることではない。前記集電体は、例えば、10μm~20μmの厚さを有し得る。
【0092】
一方、本発明において、前記集電体は、少なくとも一面に、表面の全部または少なくとも一部を被覆するプライマー層が形成され得る。前記プライマー層は集電体と電極活物質層との結着力及び電気伝導度を改善する面で導入され得る。前記プライマー層は、第2導電材と第2バインダー樹脂を含み得る。前記第2導電材については、前述した電極導電材の内容を援用し得る。また、第2バインダー樹脂は、前述した電極バインダーの内容を援用し得る。
【0093】
一方、本発明のさらに他の一実施様態において、前記プライマー層は、次のような構成的特徴を有し得る。
【0094】
前記プライマー層は、プライマー層用のバインダー(以下、第2バインダー)及びプライマー層用の導電材(以下、第2導電材)を含み、前記プライマー層中の前記第2バインダーと第2導電材の含量の和が90wt%以上であり得る。
【0095】
本発明の一具現例による電極は、グラニュールを含む電極活物質層を含み、この際、第2バインダー及び第2導電材を含むプライマー層として第2バインダーと第2導電材の含量の和が90wt%以上であるものを含むことで、プライマー層の経時安定性を確保し、これによって、接着力、寿命特性などの物性が優秀な特性を示し得るが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0096】
本発明の一実施様態によれば、前記プライマー層は、第2バインダー及び第2導電材を含み、分散剤をさらに含み得る。
【0097】
本発明の他の実施様態によれば、前記プライマー層は、第2バインダー及び第2導電材を含むが、分散剤を実質的に含まなくてもよい。
【0098】
本発明の一具現例によれば、前記第2バインダーは、プライマー層に使用される公知のバインダーであれば、特に制限なく使用され得る。
【0099】
本発明の他の具現例によれば、前記第2バインダーは、プライマー層の経時安定性が確保可能な高分子を使用することが望ましい。具体的には、前記第2バインダーは、45℃以下のガラス転移温度Tgを有するものであり得る。
【0100】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第2バインダーは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンスチレンブロック重合体(SBS)、スチレンエチレンブタジエンブロック重合体(SEB)、スチレン-(スチレンブタジエン)-スチレンブロック重合体、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)(Poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbornene)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVdF)、ポリビニルクロリド(polyvinyl chloride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexylacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリプロピレンオキシド(polypropylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)またはこれらの二種以上を含み得る。具体的には、前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyetylexylacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)またはこれらの二種以上を含み得る。
【0101】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第2バインダーは、上述したガラス転移温度値を有し、かつ前述した種類より選択される一種または二種以上の混合物であり得る。
【0102】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第2バインダーは、-40℃~45℃のガラス転移温度Tgを有するスチレンブタジエンゴム(SBR)、-40℃~45℃のガラス転移温度Tgを有するニトリルブタジエンゴム(NBR)またはこれらの混合物であり得る。
【0103】
本発明の一具現例によれば、前記第2導電材の比表面積がまたは30m2/g~1,400m2/gであり、球状であり得る。この際、球状の導電材の一次粒子の大きさは、例えば、10nm~100nm、具体的には15nm~70nmであり得るが、これに制限されない。
【0104】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第2導電材は、比表面積が10m2/g~400m2/gの管状(tube type)であり得る。この際、管状の導電材は、長手方向に直交する方向の断面の直径が0.1~3nm、具体的には0.3~1.5nmであり得るが、これに制限されない。
【0105】
前記第2導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック系炭素化合物;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉体などの金属粉体;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得るが、詳しくは、導電材の均一な混合と伝導性の向上のために、活性炭、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブまたはこれらの二種以上の混合物を含んでもよく、より詳しくは、活性炭を含み得る。
【0106】
本発明の一具現例によれば、前記プライマー層は前述した組成を含み、その厚さが300nm~1.5μm、具体的には700nm~1.3μmであり得るが、これに制限されない。
【0107】
次に、本発明による電極を製造する方法について説明する。
【0108】
まず、電極材料を含むグラニュールを製造する。前記グラニュールの製造は、電極活物質及び電極バインダーを溶媒と混合して流動状のスラリーを製造し、前記スラリーを噴霧乾燥させる方法を適用して得られ得る。本発明の一実施様態において、前記グラニュールの製造は、必要に応じて電極導電材をさらに含み得る。また、性能改善のためのその他の添加剤がさらに含まれ得る。
【0109】
まず、前記電極活物質及び電極バインダーと選択的に追加の添加剤を分散媒(電極バインダーに対しては溶媒)に分散または溶解し、電極活物質及び電極バインダーが分散または溶解されてなるスラリーを得る。
【0110】
前記スラリー得るために用いる分散媒には、最も望ましくは水が使用されるが、有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリムなどのエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPともいう。)、ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの硫黄系溶剤;などが挙げられるが、アルコール類が望ましい。水よりも沸点の低い有機溶媒を併用すると、流動造粒時に乾燥速度を早め得る。また、負極バインダーの分散性または溶解性が変わり得るため、スラリーの粘度や流動性を分散媒の量または種類に応じて調整可能であるため、生産効率を向上させることができる。
【0111】
前記スラリー調剤するときに使用する分散媒の量は、スラリーの固形分の濃度が通常1~50wt%、または5~50wt%、または10~30wt%の範囲になる量であり得る。
【0112】
前記電極活物質及び電極バインダーなどを分散媒に分散または溶解する方法または順序は特に限定されず、例えば、分散媒に電極活物質及び電極バインダーを添加して混合する方法、分散媒に電極バインダーを溶解または分散させた後、最後に電極活物質を添加して混合する方法などが挙げられる。導電材または添加剤が含まれる場合には、電極活物質の投入時にこれらの成分が投入され得る。混合手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、ストーンミル、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどの混合機器が挙げられる。混合は、例えば、室温~80℃の範囲で10分~数時間行われ得る。
【0113】
次に、前記スラリーを噴霧乾燥させる。噴霧乾燥法は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥させる方法である。噴霧乾燥法に用いる装置の噴霧方式としては、回転円盤方式やノズル加圧方式などが挙げられる。前記回転円盤方式とは、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤から外れるた時に霧状に噴霧して乾燥させる方式である。円盤の回転速度は、円盤の大きさに依存するが、通常は5,000~35,000rpm、望ましくは、15,000~30,000rpmである。一方、加圧方式は、スラリーを加圧してノズルから霧状で噴霧して乾燥させる方式である。
【0114】
一方、噴霧されるスラリーの温度は、室温で行われ得るが、表面に電極バインダーの含量の高いグラニュール構造を形成する面では、加温して室温以上にすることが望ましい。本発明の一実施様態において、噴霧乾燥時の熱風温度(反応器入口の温度基準)は、通常80℃~250℃、望ましくは100℃~220℃である。より望ましくは180℃~220℃である。噴霧乾燥法において、熱風の吸入方法は特に制限されず、例えば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔の最上部から噴霧されて熱風と共に下降する方式、噴霧された液滴と熱風が向流接触する方式、噴霧された液滴が最初の熱風と並流した後、重力によって落下して向流接触する方式などが挙げられる。一方、本発明の一実施様態において前記噴霧乾燥時、反応器の出口温度(反応器から排出される熱風温度)は90℃~130℃に制御され得る。
【0115】
なお、選択的に噴霧乾燥させて得た結果物、即ち、グラニュールの表面を硬化させるために加熱処理してもよく、この際、熱処理温度は通常80℃~300℃であり得る。
【0116】
次に、電極集電体の表面に前記グラニュールを散布して加圧し、所定の厚さを有する層状構造の第1単位層を形成する。その後、前記第1単位層が形成されると、その上部に追加的にグラニュールを塗布及び加圧して単位層をさらに形成し、所定の個数の単位層が積層された電極活物質層が得られるまで前記塗布及び加圧工程を反復する。各単位層の形成時、印加される圧力は、前述したように各単位層が適切な気孔度を有するように制御され得る。一方、本発明の一実施様態において、各単位層別に成分や電極活物質の含量(及び/または含量比)が相異なるグラニュールを準備し、各単位層の特性に合わせてグラニュールが選択されて導入され得る。各単位層の形成は、下記のような方法で行われ得る。
【0117】
前記集電体の少なくとも一面の全部または一部には、前述したように第2導電材と第2バインダーを含むプライマー層が備えられ得る。
【0118】
本発明の一具現例によれば、準備した複数のグラニュールをスクリューフィーダーなどの供給装置を用いてロール式加圧成形装置に供給して単位層を成形し得る。第1単位層の形成時には、集電体をグラニュールの供給と同時に加圧成形装置のロールに送ることで、集電体上に第1単位層を直接積層し得る。または、グラニュールを集電体上に散布し、前記グラニュールをブレードなどで均一にして厚さを調整した後、加圧装置で成形して第1単位層を形成し得る。第1単位層形成以降の工程では集電体の代わりに下部単位層の表面にグラニュールを散布し、前記グラニュールをブレードなどで均一にして厚さを調整した後、加圧装置によって成形する方法で各単位層を形成する。
【0119】
これらの方法においてロール加圧成形時の温度は通常0℃~200℃であって、負極バインダーの融点またはガラス転移温度よりも高いことが望ましく、融点またはガラス転移温度よりも20℃以上高いことがより望ましい。ロール加圧成形における成形速度は通常0.1~20m/分、または1~10m/分であり得る。また、ロール間のプレスの線圧は通常0.2~30kN/cm、または0.5~10kN/cmであり得る。
【0120】
成形した各単位層で厚さのばらつきをなくし、単位層及び電極活物質層の密度を高めて高容量化を図るために、必要に応じて加圧がさらに行われ得る。後加圧方法は、ロールによるプレス工程が一般的である。ロールプレス工程においては、二つの円柱状のロールを狭い間隔で平行に立てて、各々を反対方向へ回転させて、その間に電極を挟んで加圧する。ロールは、加熱または冷却などの温度調節が可能であり得る。
【0121】
以上、本発明の実施例及び図面を参照して説明したが、本発明が属する分野における通常の知識を持つ者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【0122】
実施例1
(1)プライマー層付き集電体の準備
カーボンブラック(比表面積:30m2/g、粒子サイズ:70nm)、30重量部、第2バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)(Tg:-15℃)69重量部、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部を分散媒にして水に混合してプライマー層用スラリーを準備した。この際、スラリー中の導電材、バインダー及び分散剤の含量比は、後に形成されるプライマー層中の導電材、バインダー及び分散剤の含量比と同一であった。プライマー層用スラリーの固形分の割合は7wt%であった。
【0123】
準備したプライマー層用スラリーを銅集電体(厚さ:10μm)の一面に塗布し、130℃条件で乾燥させてプライマー層を前記銅集電体の表面に形成した。
【0124】
(2)負極活物質層用グラニュールの準備
第1グラニュール、第2グラニュール及び第3グラニュールを準備し、各グラニュール中の天然黒鉛と人造黒鉛の含量比は下記の表1のとおりである。
【0125】
【0126】
各グラニュールは、以下のような方法で製造された。負極活物質と、カーボンブラック(SuperC65)と、カルボキシメチルセルロース(daicel2200、水溶液、固形分濃度1.5wt%)と、変性スチレンブタジエン共重合体(Grade NameはAX-B119)とを、95.6:1.0:1.1:2.3の重量比で分散媒である水と共に混合してホモジナイザーで粘度が約1,000cPs水準であるスラリーを製造した。この際、スラリー中の固形分の含量は30wt%であった。前記重量比において、カルボキシメチルセルロースは固形分を基準にして計算した。製造されたスラリーを熱風と共に噴霧乾燥器の内部へ-40mmH
2Oの圧力範囲条件で投入して乾燥させた。この際、噴霧乾燥器の条件は、入口温度を約180℃、出口温度を約90℃、回転速度を約18,000rpmに制御した。前記得られたグラニュールを工業用ふるいを用いて150μm以上の粗粉を除去し、さらに40μm未満の微粉を分離した。分離した微粉を、粗粉のみを除去したグラニュールと混合して、以前のグラニュールよりも微粉が多量含まれた負極用グラニュールを最終的に準備した。得られた各グラニュールの平均粒径D50が約66.5μmであり、縦横比は約0.96であった。
図4は、前記製造によって得られた第1グラニュールのSEMイメージであり、矢印で示された明るい部分がバインダー樹脂を示す。前記得られた第1グラニュールをOsO
4を用いて各グラニュール中のバインダーを染色した。OsO
4結晶または水溶液を用いて各ガラス容器に入れた後、試薬を蒸発させて反応させた。その後、エポキシ樹脂と混合してシリコンモールドに固定して硬化させてグラニュールマトリクス(granule matrix)を得た。次に、前記グラニュールマトリクスをイオンミリング(ion milling)装備(Hitachi IM5000加速電圧:6kV)を使用して断面サンプルを製作した後、SEMイメージを得た。
【0127】
(3)負極の製造
前記プライマー層を備える集電体の一面に厚さ調節バーを用いて第1グラニュールを集電体25cm2当たり120mgの量で均一に塗布し、ロール・ツー・ロール熱間圧延して第1層を形成した。その後、第2グラニュールを前記第1層の表面に25cm2当たり120mgの量で均一に塗布し、ロール・ツー・ロール熱間圧延して第2層を形成した。その後、第3グラニュールを前記第2層の表面に25cm2当たり120mgの量で均一に塗布し、ロール・ツー・ロール熱間圧延して第3層を形成した。前記第1、第2及び第3層の形成時、各圧延は約60℃でcm当たり0.7tonの圧力が印加され、分当たり2mの速度で加圧された。
【0128】
比較例1
負極活物質として平均球形度が0.95である天然黒鉛と平均球形度が0.9である人造黒鉛を準備した。
【0129】
次に、第1層、第2層及び第3層を形成するためのスラリーを準備した。前記各スラリーは、負極活物質、カーボンブラック(Super-C 65)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、カボキシメチルセルロース(CMC)及び水を混合して準備し、スラリー中の固形分は約47wt%の濃度であった。前記負極活物質、カーボンブラック、SBR及びCMCは、重量比を基準にして約95.6:1.0:2.3:1.1の割合で混合した。各層における人造黒鉛と天然黒鉛の含量比は、下記の表2に示したように準備された。
【0130】
【0131】
次に、実施例1で準備した集電体にスロットダイを用いて第1層形成用スラリー、第2層形成用スラリー及び第3層形成用スラリーを順次に塗布した。その後、熱風機とIR(赤外線)ヒーターを備える乾燥装置を用いて、第1層形成用スラリー、第2層形成用スラリー及び第3層形成用スラリーを乾燥させ、ロールプレス(roll pressing)方式で圧延して負極活物質層を備えた負極を製造した。前記負極活物質層のロード量は、単位面積当たり360mg/25cm2であった。前記電極活物質層の圧延は、約60℃でcm当たり0.7tonの圧力が印加され、分当たり2mの速度で加圧された。
【0132】
比較例2
比較例1と同様の方法で、第1層形成用スラリー、第2層形成用スラリー及び第3層形成用スラリーを準備した。次に、実施例1で準備した集電体にスロットダイを用いて第1層形成用スラリーを塗布して乾燥させて第1層を形成した。次に、前記第1層の上部に第2層形成用スラリーを塗布して乾燥させて第2層を形成した。その後、前記第2層の上部に第3層形成用スラリーを塗布して乾燥させた。前記乾燥は、熱風機とIR(赤外線)ヒーターを備える乾燥装置を用いて行われた。その後、ロールプレス方式で圧延して負極活物質層を備えた負極を製造した。前記負極活物質層のロード量は、単位面積当たり360mg/25cm2であった。前記電極活物質層の圧延は、約60℃下で、cm当たり0.7tonの圧力が印加され、分当たり2mの速度で加圧された。
【0133】
比較例3
実施例1で準備した第1グラニュールを用いて単層電極を製造した。実施例1のように準備した集電体の一面に、厚さ調節バーを用いて第1グラニュールを集電体25cm2当たり360mgの量で均一に塗布し、ロール・ツー・ロール熱間圧延して電極活物質層を形成した。、前記圧延は、約60℃下でcm当たり0.7tonの圧力が印加され、分当たり2mの速度で加圧された。
【0134】
比較例4
実施例1で準備した第1、第2及び第3グラニュールを用いて電極を製造した。集電体の表面に第3グラニュールを塗布して第1層を形成し、その後、第2グラニュールを用いて第2層を形成し、前記第2層の表面に第1グラニュールを塗布して最上層を形成することを除いては、実施例1と同様の方法で電極を製造した。
【0135】
気孔度の測定
各実施例1、実施例2及び比較例1~4の電極活物質層の気孔度を測定した。単層電極は、電極活物質層全体の気孔度を測定し、多層電極は、全体電極活物質層の全体気孔度を測定し、各層別に気孔度を測定した。
【0136】
全体電極活物質層の厚さ及び各単位層の厚さは、電極活物質層断面のSEMイメージから求めた。前記気孔度の測定は、電極活物質層に含まれた材料の組成比と各成分の密度から電極活物質層を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)の差から算出することができる。具体的には、下記の式1によって気孔を算出することができる。
【0137】
[式1]
気孔度(vol%)={1-(見掛け密度/真密度)}×100
【0138】
一方、前記式において、見掛け密度は、下記の式2から算出可能である。
【0139】
[式2]
見掛け密度(g/cm3)={電極活物質層の重量[g]/(電極活物質層の厚さ[cm]×電極活物質層の面積[cm2])}
【0140】
各実施例及び比較例から算出された気孔度は、下記の表3のとおりである。
【0141】
【0142】
電池の製造
実施例1及び比較例1~4で得られた負極を用いて電池を製造した。LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、PVdF及びカーボンブラックを、97.0:1.5:1.5の重量比で混合した後、2-メチル-2-ピロリドンに分散させて正極スラリーを製造し、それをアルミニウム集電体にコーティングした後、乾燥及び圧延して正極を製造した。前記負極と正極との間にポリエチレン素材の多孔性フィルムを介在して電池を製造した。電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートを1:2(体積比)で混合し、LiPF6を1Mの濃度で添加したものを使用した。
【0143】
容量維持率の評価
実施例1及び比較例1~4の各電池に対して、0.33Cで電圧が0.01V(Vs.Li)に至るまで充電し、さらに同じ電流で電圧が3Vに至るまで放電した。続いて、同じ電流と電圧区間で充電及び放電を200回反復した。前記充放電は、周辺温度約45℃で行われた。
【0144】
前記容量維持率は、下記式3によって算出可能である。
【0145】
[式3]
容量維持率(%)=[200thサイクルの放電容量/2ndサイクルの放電容量]×100
【0146】
【0147】
実施例1の電池は、容量維持率が非常に優秀であることが確認された。一方、比較例2の電池は、上層の気孔度が高いが、非常に低い容量維持率を示した。これは、層間界面で発生する抵抗によって上層部の急激な劣化が発生し、これによって容量維持率が低下したことが説明される。一方、比較例3及び比較例4のように電極表面の気孔度が低い場合、容量維持率が低下することが確認された。
【0148】
EIS特性評価
Solatonの1470E cell test system及びFrequency response analyzer 1255Bを用いて、25℃でamplitude 10mV、scan range 2000Hz~0.1Hzの条件で電気化学的インピーダンス分光分析結果から抵抗を測定し、そのナイキスト線図(Nyquist Plot)を
図2に示した。これを参照すると、実施例1の電池は追加の抵抗が発生しないことを確認することができた。一方、比較例2の電池及び比較例4の電池は、追加の抵抗が発生することが確認された。比較例2は、電極表面の気孔度は高いが、乾燥した各単位層の上部にスラリーが塗布されて下部単位層へ上部スラリーのバインダー成分が下部単位層の気孔に流入して気孔が閉塞され、これによって界面抵抗特性が低下した。一方、比較例4は、電極内への電解液の流入が容易ではないことから、抵抗特性が低下した。
【国際調査報告】