(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタピロロピラジノン化合物の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20250212BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20250212BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20250212BHJP
C07D 209/02 20060101ALI20250212BHJP
C07D 209/42 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C07D487/04 140
A61K31/4985
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/00
C07D209/02 CSP
C07D209/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544764
(86)(22)【出願日】2023-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2023073516
(87)【国際公開番号】W WO2023143491
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210113331.0
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512278054
【氏名又は名称】ハチメド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ボ
(72)【発明者】
【氏名】グ、チョンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チェングアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チュアングオ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン化合物およびそのアナログを合成する方法に関する。本方法は、その単純な工程、単純かつ安全な反応操作、および容易に単離されかつ精製される関連する中間体のため、大規模工業生産によく適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中:R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素、C
1-6アルキル、またはハロゲンから選ばれ;
R
3は水素またはC
1-6アルキルから選ばれ;
mおよびnは独立して0、1または2であり、およびm + nは2、3または4であり;および
R
4は水素またはC
1-6アルキルから選ばれる。)
の化合物を合成する方法であって、
以下の工程:
a)化合物M1
【化2】
(式中R
1、R
2、R
3、m、およびnは上記で定義した通りであり、およびXはハロゲンまたは-OTf、-Ots、または-Omsなどの容易に脱離する活性エステル基であり、好ましくはハロゲンである。)
を化合物M2
【化3】
(式中R
a、R
b、およびR
cはそれぞれ独立してC
1-6アルキルから選ばれる。)
との環化反応に供して、化合物M3
【化4】
(式中R
1、R
2、R
3、m、n、R
a、R
b、およびR
cは上記で定義した通りである。)
を得る工程、
b)化合物M3をアンモノリシス反応に供して化合物M4
【化5】
(式中R
1、R
2、R
3、R
4、m、n、R
a、およびR
bは上記で定義した通りである。)
を得る工程、
c)化合物M4を酸性条件下で反応に供して式(I)の化合物を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程b)が以下の通りの工程b')で置き換えられる、請求項1に記載の方法:
化合物M3を加水分解反応に供して化合物M5
【化6】
(式中R
1、R
2、R
3、m、n、R
a、およびR
bは請求項1で定義した通りである。)
を得、次いで化合物M5をR
4NH
2(ここでR
4は水素またはC
1-6アルキルから選ばれる。)との反応に供して化合物M4を得る。
【請求項3】
R
1およびR
2がそれぞれ独立してC
1-6アルキルまたは水素から選ばれ、好ましくはメチルまたは水素であり、およびより好ましくはメチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R
3がHである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
R
aおよびR
bがそれぞれ独立してメチルまたはエチルから選ばれ、好ましくはメチルである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
R
cがメチルまたはエチルであり、好ましくはエチルである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
mが0または1であり、およびnが1または2であり;および好ましくは、mが1であり、およびnが1である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
R
4がHである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)における環化反応がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチルピロリドン(NMP)などの非極性溶媒中、またはそれらの混合溶媒中で行われ;および反応が加熱条件下、好ましくは、100℃~150℃に制御された温度で、好ましくは110℃~130℃で、およびより好ましくは115℃~125℃で行われる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)におけるアンモノリシス反応が、有機溶媒メタノールまたはエタノール中、R
4NH
2(ここでR
4は水素またはC
1-6アルキルから選ばれる。)などの対応するアンモノリシス剤を用いるなどの当該分野で通常の反応条件下で行われ;例えば、アンモノリシス反応がメタノール中のアンモニアの溶液中で行われ得る、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b')における加水分解反応が、反応溶媒、例えば有機溶媒および水中などの強無機塩基の存在下、および50℃~100℃で行われ得;特に、強無機塩基が水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化リチウムから選ばれ得る、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b')における化合物M5を、アルカリ条件下、任意の縮合剤の存在下、および溶媒中でR
4NH
2と反応させ;好ましくは、塩基が、トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、DBUなどを含むが、これらに限定されず;および好ましくは、縮合剤が、HBTU、DCC、EDCI、DIC、またはCDIを含むが、これらに限定されない、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程c)における酸が、酢酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸から選ばれ;および好ましくは、反応が、70℃~120℃で制御された温度、例えば95℃~105℃で行われる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
化合物M3
【化7】
(式中R
1、R
2、R
3、m、n、R
a、R
b、およびR
cは請求項1で定義した通りである。)
を調製する方法であって、
以下の工程:
化合物M1
【化8】
(式中R
1、R
2、R
3、X、m、およびnは請求項1で定義した通りである。)
を化合物M2
【化9】
(式中R
a、R
b、およびR
cは請求項1で定義した通りである。)
との環化反応に供して、化合物M3を得る工程
を含む、方法。
【請求項15】
環化反応が請求項9に従って行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
【化10】
(式中R
1、R
2、R
3、R
4、m、n、R
a、R
b、およびR
cは請求項1で定義した通りである。)
から選ばれる化合物またはその塩。
【請求項17】
【化11】
から選ばれる化合物またはその塩。
【請求項18】
請求項1に記載の式(I)の化合物の調製における請求項16または17に記載の化合物またはその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、医薬品中間体および医薬品化学の分野に属する。特に、本発明は、7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン化合物およびそのアナログを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン化合物およびそのアナログは、新規な種類の医薬品中間体である。
【0003】
炎症、免疫疾患および癌の治療に用いるための種々の活性化合物、ならびにこれらの化合物の調製のための中間体、例えば以下の構造を有する化合物が中国特許出願CN 104125959 Aに提供される:
【0004】
【0005】
この特許出願は、上記化合物を調製する以下の方法をさらに開示する:
方法1:
【0006】
【0007】
ウィッティヒ反応は、本方法の第1合成工程において行われる。反応は、通常、非プロトン性溶媒および強塩基の存在下、および無水かつ無酸素条件下などで行われ、そして非常に不安定なウィッティヒ試薬を生成し、これは単離に供されず、アルデヒドと直接反応させて化合物107aを生成する。本方法は、ウィッティヒ反応の厳しい条件のせいで工業生産に適さない。ナトリウムアジドは、本方法の第2工程において用いられ、アミノ基(化合物107b)を導入し、そしてその毒性が高く爆発性の性質のせいで、この経路は工業生産における重大な隠れた安全上の危険をもたらす。
方法2:
【0008】
【0009】
本方法はまた、毒性が高く爆発性の試薬であるナトリウムアジドを用い、これにより工業生産における使用に適さなくなる。
【0010】
さらに、上記の方法1および2は、長い反応経路を有し、これは工業生産につながらない。
【0011】
本発明は、7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン化合物およびそのアナログ(式(I)の化合物)を合成する新規の方法を提供する。本方法は、その単純な工程、単純かつ安全な反応操作、および関連する中間体が容易に単離されかつ精製されるため、大規模工業生産によく適している。本発明はまた、新規の中間体化合物を提供し、これは種々の小分子阻害剤またはその中間体の調製のために使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨:
本発明は、7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン化合物およびそのアナログ(すなわち、式(I)に示す化合物)を合成する方法(本明細書中以下、「本発明の方法」と呼ぶ)を提供する。
【0013】
【0014】
(式中:R1およびR2はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはハロゲンから選ばれ;
R3は水素またはC1-6アルキルから選ばれ;
mおよびnは独立して0、1または2であり、およびm + nは2、3または4であり;および
R4は水素またはC1-6アルキルから選ばれる。)
【0015】
1つの局面において、本発明は以下の合成経路を提供する:
【0016】
【0017】
(式中、変数は以下で定義した通りである。)。
【0018】
別の局面において、本発明はまた、以下の特定の実施態様を提供する。
【0019】
実施態様1:式(I)
【0020】
【0021】
(式中:R1およびR2はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはハロゲンから選ばれ;
R3は水素またはC1-6アルキルから選ばれ;
mおよびnは独立して0、1または2であり、およびm + nは2、3または4であり;および
R4は水素またはC1-6アルキルから選ばれる。)
の化合物を合成する方法であって、
以下の工程:
a)化合物M1
【0022】
【0023】
(式中R1、R2、R3、m、およびnは上記で定義した通りであり、およびXはハロゲンまたは-OTf、-Ots、または-Omsなどの容易に脱離する活性エステル基であり、好ましくはハロゲンである。)
を化合物M2
【0024】
【0025】
(式中Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立してC1-6アルキルから選ばれる。)
との環化反応に供して、化合物M3
【0026】
【0027】
(式中R1、R2、R3、m、n、Ra、Rb、およびRcは上記で定義した通りである。)
を得る工程、
b)化合物M3をアンモノリシス反応に供して化合物M4
【0028】
【0029】
(式中R1、R2、R3、R4、m、n、Ra、およびRbは上記で定義した通りである。)
を得る工程、
c)化合物M4を酸性条件下で反応に供して式(I)の化合物を得る工程
を含む、方法。
【0030】
実施態様2:工程b)が以下の通りの工程b')で置き換えられる、実施態様1に記載の方法:
化合物M3を加水分解反応に供して化合物M5
【0031】
【0032】
(式中R1、R2、R3、m、n、Ra、およびRbは上記で定義した通りである。)
を得、次いで化合物M5をR4NH2(ここでR4は水素またはC1-6アルキルから選ばれる。)との反応に供して化合物M4を得る。
【0033】
実施態様3:R1およびR2がそれぞれ独立してC1-6アルキルまたは水素から選ばれ、好ましくはメチルまたは水素であり、およびより好ましくはメチルである、実施態様1または2に記載の方法。
【0034】
実施態様4:R3がHである、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施態様5:RaおよびRbがそれぞれ独立してメチルまたはエチルから選ばれ、好ましくはメチルである、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施態様6:Rcがメチルまたはエチルであり、好ましくはエチルである、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施態様7:mが0または1であり、およびnが1または2であり;および好ましくは、mが1であり、およびnが1である、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施態様8:R4がHである、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施態様9:工程a)における環化反応がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチルピロリドン(NMP)などの非極性溶媒中、またはそれらの混合溶媒中で行われ;および反応が加熱条件下、好ましくは、100℃~150℃に制御された温度で、好ましくは110℃~130℃で、およびより好ましくは115℃~125℃で行われる、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施態様10:工程b)におけるアンモノリシス反応が、有機溶媒メタノールまたはエタノール中、R4NH2(ここでR4は水素またはC1-6アルキルから選ばれる。)などの対応するアンモノリシス剤を用いるなどの当該分野で通常の反応条件下で行われ;例えば、アンモノリシス反応がメタノール中のアンモニアの溶液中で行われ得る、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
実施態様11:工程b')における加水分解反応が、反応溶媒(例えば有機溶媒および水)中などの強無機塩基の存在下、および50℃~100℃(例えば、75℃~85℃)で行われ得;特に、強無機塩基が水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化リチウムから選ばれ得る、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施態様12:工程b')における化合物M5を、アルカリ条件下、任意の縮合剤の存在下、および溶媒中でR4NH2と反応させ;好ましくは、塩基が、トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、DBUなどを含むが、これらに限定されず;および好ましくは、縮合剤が、HBTU、DCC、EDCI、DIC、またはCDIを含むが、これらに限定されない、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
実施態様13:工程c)における酸が、酢酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸から選ばれ;および好ましくは、反応が、70℃~120℃で制御された温度、例えば95℃~105℃で行われる、先行する実施態様のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施態様14:化合物M3
【0045】
【0046】
(式中R1、R2、R3、m、n、Ra、Rb、およびRcは上記で定義した通りである。)
を調製する方法であって、
以下の工程:
化合物M1
【0047】
【0048】
(式中R1、R2、R3、X、m、およびnは上記で定義した通りである。)
を化合物M2
【0049】
【0050】
(式中Ra、Rb、およびRcは上記で定義した通りである。)
との環化反応に供して、化合物M3を得る工程
を含む、方法。
【0051】
実施態様15:環化反応が実施態様9に従って行われる、実施態様14に記載の方法。
【0052】
実施態様16:
【0053】
【0054】
(式中R1、R2、R3、R4、m、n、Ra、Rb、およびRcは上記1で定義した通りである。)
から選ばれる化合物またはその塩。
【0055】
実施態様17:
【0056】
【0057】
から選ばれる化合物またはその塩。
【0058】
実施態様18:式(I)の化合物の調製における実施態様16または17に記載の化合物またはその塩の使用。
【0059】
定義:
本願において使用される用語または記号は、特に指定のない限り、以下に示す意味を有する。本明細書中で使用され具体的に定義されない技術的および科学的用語は、本発明が属するPOSITAによって通常理解される意味を有する。
【0060】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、1~6個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する直線または分岐の飽和の1価ヒドロカルビル、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直線または分岐の飽和の1価ヒドロカルビルをいう。1~6個の炭素原子を有するアルキルは、単純に「C1-6アルキル」として表され、1~4個の炭素原子を有するアルキルは、単純に「C1-4アルキル」として表され、そして他の数の炭素原子を有するアルキルもまた、同様の様式で表され得る。アルキルの例は:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書中で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)、好ましくは塩素および臭素、およびより好ましくは塩素を意味する。
【0062】
本明細書中、工程b')で使用される用語「強無機塩基」は、カルボン酸エステルを加水分解してカルボキシレートまたはカルボン酸を生成し得る無機塩基をいい、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化リチウムを含むがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書中で使用される用語「容易に脱離する活性エステル基」は、アルコールから調製されるエステル基をいい、これは、アミンなどの求核剤によって容易に置換されて安定な結合を形成し得る。本発明の用語「容易に脱離する活性エステル基」は、好ましくはp-CH3-Ph-SO3-(-OTs)、CF3SO3-(-OTf)またはCH3SO3-(-OMs)であり、式中Phはフェニルをいい、Tsはp-トルエンスルホニルをいい、Tfはトリフルオロメタンスルホニルをいい、そしてMsはメチルスルホニルをいう。
【0064】
本明細書中で使用される用語「縮合剤」は、アミドの形成を容易にし得る一般的に使用される縮合剤をいい、HBTU、DCC、EDCI、DIC、またはCDIを含むがこれらに限定されない。
【0065】
DBUは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンをいう。
HBTUはベンゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェートをいう。
DCCはN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドをいう。
EDCIは1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩をいう。
DICはN,N'-ジイソプロピルカルボジイミドをいう。
CDIはN,N'-カルボニルジイミダゾールをいう。
【0066】
後者の実施態様または技術的解決法が前者の実施態様または技術的解決法を参照し、そしてそこに記載された変数または特徴をさらに定義しない場合、後者の実施態様または技術的解決法における変数または特徴は、特に指定のない限り、または文脈によって明示的に矛盾しない限り、前者の実施態様または技術的解決法の対応する変数または特徴と同じ意味または定義を有することが理解されるべきである。
【0067】
本発明の反応が当該分野で公知の一般的な反応条件下で行われ得ることもまた理解されるべきである。例えば、反応温度および圧力は、反応が完了するまで、反応物の特性に従ってある程度まで制御され得る。
【0068】
通常、反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘプタン、トルエン、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルオキソラン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテルなどの有機溶媒、ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない溶媒中で行われ得る。適切な場合には、有機溶媒と水との混合溶媒が用いられ得る。いくつかの反応は、追加の溶媒なしで行われ得、そして反応試薬自体が溶媒として用いられ得る。例えば、工程c)において用いられる酢酸などの酸は、溶媒として用いられ得、または他の溶媒が反応に添加され得る。
【0069】
反応は、適切な温度で、例えば、-78℃~0℃、-20℃~20℃、-10℃~10℃、10℃~130℃、20℃~100℃、40℃~100℃、50℃~100℃、60℃~100℃、50℃~80℃、70℃~120℃、60℃~90℃、110℃~130℃、110℃~120℃、100℃~150℃、または100℃~200℃などの-78℃~200℃で行われ得る。
【0070】
反応は、必要に応じて、常圧下、高圧化、または減圧下で行われ得る。
【0071】
POSITAは反応プロセスを容易に検出し、そしてそれによって反応時間または実際の状況に応じて反応の終点を決定し得ることが理解されるべきである。
【0072】
本明細書中、化合物の名前と構造とが一致しない場合、化合物に対してこれら2つが両方とも与えられている場合、文脈から化合物の構造が誤っており、名前が正しいことが示されない限り、化合物の構造に従う。
【0073】
本発明によって提供される式(I)の化合物を合成するためのプロセス経路は、以下の有益な効果を有する:
【0074】
1.全体のプロセス経路において反応の工程が3つしか存在せず、各工程は単一の反応部位を有し、そして副反応がほとんどない;
2.反応条件は穏和であり、そして操作は単純であり、毒性が高い試薬および可燃性で爆発性の試薬などの危険な試薬を用いず、これはプロセス経路を工業生産によく適したものにする;
3.製造プロセスは単純であり、そしてコストは低い;および/または
4.関連する中間体は、単離しそして精製するのが容易であり、精製なしで続く反応に直接用いることさえでき、これはプロセス経路を大規模工業生産によく適したものにする。
【発明を実施するための形態】
【0075】
実施態様の詳細な説明
以下の実施例は、単に例示であることを意図し、いかようにも限定すると見なされるべきではない。用いた数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力がなされたが、当業者は、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきであることを理解すべきである。特に指定のない限り、部は重量部であり、温度はセ氏であり、そして圧力は大気圧または大気圧近傍である。全てのHNMRデータは、Varian 400-MRを用いて生成された。本発明の実施例において用いた試薬は市販されている。
【0076】
実施例1
エチル1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボキシレートの合成
【0077】
【0078】
2000 L反応ケトルに化合物1(50.0 kg)、化合物2(150.0 kg)、およびDMF(N,N-ジメチルホルムアミド、950 kg)を加えた。混合物を攪拌しそして加熱し、そして反応が完了するまで温度を115℃~125℃で制御した。反応液体を室温まで冷却し、次いで水に加えた。酢酸エチルを加え、そして得られた混合物を攪拌し、次いで液体分離のために静置した。有機相を集め、そして飽和NaCl水溶液で洗浄し、そして液体分離のために静置した。有機相を集めた。有機相を、留出物がなくなるまで減圧下で濃縮した。
【0079】
n-ヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒を加えて蒸留残渣を溶解し、そして溶液をシリカゲルパッドを通して濾過し、少量の不溶物を除去した。フィルターケーキをn-ヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒で洗浄した。濾液を合わせた。濾液を、液体が明らかに滴らなくなるまで減圧下で濃縮し、薄黄色オイル42.8 kg、(化合物3、エチル 1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボキシレート)(含有量: 57.2%、収率: 26.3%、MS (m/z) = 264.0 [M-OMe]+)を得た。生成物を精製なしで次の工程に直接用いた。
【0080】
少量のサンプルを精製のためにとり、そして生成物について測定したHNMRデータは以下の通りであった:
1HNMR (400MHz, CDCl3) δ 6.73 (s, 1H), 4.54 (t, J = 5.3Hz, 1H), 4.28 - 4.18 (m, 4H), 3.35 (s, 6H), 2.54 (s, 2H), 2.42 (s, 2H), 1.32 (t, J = 7.1Hz, 3H), 1.20 (s, 6H)。
【0081】
実施例2
1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボン酸の合成
【0082】
【0083】
500 L反応ケトルにエタノール(99.0 kg)、水(125.0 kg)、化合物3(25.0 kg)、およびLiOH.H2O(14.2 kg)を加えた。混合物を75℃~85℃に加熱し、そして反応が完了するまで温度を一定に維持しながら攪拌した。反応液体を減圧下で濃縮し、エタノールの大部分を除去した。メチルtert-ブチルエーテルを加え、そして得られた混合物を攪拌し、次いで液体分離のために静置した。下の水相を集め、そして水相を塩酸水溶液でpH 5~6に調整し、そして大量の固体が沈殿した。反応混合物を濾過し、そしてフィルターケーキを水で洗浄し、そして乾燥してオフホワイト固体19.8 kg、(化合物4、1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボン酸)(純度: 91.97%、含有量: 91%、収率: 79.6%、MS (m/z) = 236.0 [M-OMe]+)を得た。
【0084】
生成物のHNMRデータは以下の通りであった:
1HNMR (400MHz, CDCl3) δ 6.86 (s, 1H), 4.55 (t, J = 5.3Hz, 1H), 4.21 (d, J = 5.3Hz, 2H), 3.36 (s, 6H), 2.56 (s, 2H), 2.44 (s, 2H), 1.21 (s, 6H)。
【0085】
実施例3
1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボキサミドの合成
【0086】
【0087】
反応ケトルにDMF(102.6 kg)、化合物4(19.8 kg)、およびトリエチルアミン(13.6 kg)を加えた。混合物を-5℃~5℃に冷却した。HBTU(ベンゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート、30.6 kg)を10℃未満の制御された温度で数回に分けて加えた。添加後、混合物を、化合物4の反応が完了するまで-5℃~5℃の一定温度で攪拌した。アンモニア水を10℃未満の制御された温度で反応液体に滴下し、そして得られた混合物を、反応が完了するまで-5℃~5℃の一定温度で攪拌した。反応液体を水に注ぎ、そして酢酸エチルを加えた。混合物を攪拌し、次いで液体分離のために静置した。有機相を集め、そして飽和NaCl水溶液で洗浄し、そして液体分離のために静置した。有機相を集めた。有機相を減圧下で濃縮し、そして、液体が明らかに滴らなくなるまで蒸留し、明赤色固体18.6 kg、(化合物5、1-(2,2-ジメトキシエチル)-5,5-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[b]ピロール-2-カルボキサミド)(純度: 94.6%、含有量: 94.1%、収率: 97.8%、MS (m/z) = 235.1 [M-OMe]+)を得た。生成物を精製なしで次の工程に直接用いた。
【0088】
少量のサンプルを精製のためにとり、そして生成物について測定したHNMRデータは以下の通りであった:
1HNMR (400MHz, CDCl3) δ 6.40 (s, 1H), 5.42 (s, 2H), 4.61 (t, J = 5.2Hz, 1H), 4.23 (d, J = 5.2Hz, 2H), 3.36 (s, 6H), 2.55 (s, 2H), 2.42 (s, 2H), 1.20 (s, 6H)。
【0089】
実施例4
7,7-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン
【0090】
【0091】
実施例3で得られた中間体化合物5(17.5 kg)を酢酸(147 kg)で溶解し、次いで200 L反応ケトルに加えた。温度を、反応が完了するまで95℃~105℃で制御した。反応溶液を室温に冷却し、次いで水に注いだ。酢酸エチルとエタノールとの混合溶媒を攪拌下で加えた。反応液体と水との混合溶液を抽出し、次いで液体分離のために静置した。有機相を集めた。有機相を減圧下で少量になるまで濃縮し、そして大量の固体が沈殿した。反応ケトルにn-ヘプタンおよび酢酸エチルを加えた。得られた混合物を40℃~50℃に加熱し、そして温度を一定に維持しつつ攪拌した。反応混合物を熱時濾過に供し、そしてフィルターケーキをn-ヘプタンと酢酸エチルとの混合溶媒で洗浄し、そして乾燥してオフホワイト固体11.1 kg、(化合物6、7,7-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H-シクロペンタ[4,5]ピロロ[1,2-a]ピラジン-1(6H)-オン)(純度: 99.8%、含有量: 98.4%、収率: 83.5%、MS (m/z) = 203.0 [M+H]+)を得た。
【0092】
生成物のHNMRデータは以下の通りであった:
1HNMR (400MHz, CDCl3) δ 10.92 (s, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.74 (d, J = 5.6Hz, 1H), 6.51 (t, J = 4.5Hz, 1H), 2.63 (s, 2H), 2.60 (s, 2H), 1.26 (s, 6H)。
【国際調査報告】