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2025-504958負極活物質、これを含む負極、これを含む二次電池、および負極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】負極活物質、これを含む負極、これを含む二次電池、および負極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20250212BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544990
(86)(22)【出願日】2023-09-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2023013549
(87)【国際公開番号】W WO2024080573
(87)【国際公開日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0131448
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イルグン・オ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ブムギ・ホ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA09
5H050AA12
5H050BA15
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA17
5H050CB01
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA12
5H050EA15
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA24
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、負極活物質、これを含む負極、これを含む二次電池、および負極活物質の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO(0<x<2)およびLi化合物を含むシリコン系粒子、
前記シリコン系粒子表面の少なくとも一部に備えられた炭素層、
LiF、および
CF(0<a<4)、
を含む、負極活物質。
【請求項2】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるFの含量は10at%以上であり、
Liの含量は、10at%以上である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記LiF及び前記CF(0<a<4)は、前記シリコン系粒子上に備えられる、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析による前記Fの含量は、10at%以上50at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析による前記Liの含量は、10at%以上30at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるOの含量は15at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるSiの含量は5at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるCの含量は20at%以上である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項9】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるO対比Fの原子比(F/O ratio)は、1以上6以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるLi対比Cの原子比(C/Li ratio)は、0.8以上4以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記LiFの含量は、前記CF(0<a<4)の含量よりも多い、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項12】
SiF(0<b<4)をさらに含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項13】
前記負極活物質総100重量部を基準にして、Liを0.1重量部~40重量部で含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項14】
前記炭素層は、前記負極活物質総100重量部を基準として、0.1重量部~50重量部で含まれる、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項15】
SiO(0<x<2)およびLi化合物を含み、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられたシリコン系粒子を形成する段階、および
前記シリコン系粒子にフッ素プラズマ処理をする段階、
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記フッ素プラズマ処理段階は、
前記シリコン系粒子をプラズマチャンバに入れた後、CFガスを注入する段階、
前記チャンバ内部の圧力を上昇させる段階、および
前記チャンバにプラズマを形成させる段階、
を含む、請求項15に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の負極活物質を含む負極。
【請求項18】
請求項17に記載の負極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、これを含む負極、これを含む二次電池、および負極活物質の製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2022年10月13日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0131448号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など、電池を用いる電子器具の急速な普及に伴い、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大されている。特に、リチウム二次電池は、軽量で、かつ高エネルギー密度を有しているので、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これによって、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発の努力が活発に進められている。
【0004】
一般に、リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ、電解液、および有機溶媒などを含む。また、正極および負極には集電体上に正極活物質および負極活物質をそれぞれ含む活物質層が形成されることができる。一般に、前記正極には、LiCoO、LiMnなどのリチウム含有金属酸化物が正極活物質として用いられ、負極にはリチウムを含まない炭素系活物質、シリコン系活物質が負極活物質として用いられている。
【0005】
負極活物質において、シリコン系活物質の場合、炭素系活物質に比べて高い容量を有し、優れた高速充電特性を有する点で注目されている。しかしながら、シリコン系活物質は、充放電による体積膨脹/収縮の程度が大きく、不可逆容量が大きいため、初期効率が低いという短所がある。
【0006】
一方、シリコン系活物質において、シリコン系酸化物、具体的には、SiOx(0<x<2)で表されるシリコン系酸化物の場合、シリコン(Si)などの他のシリコン系活物質対比充放電による体積膨脹/収縮の程度が低いという点で長所がある。しかしながら、依然としてシリコン系酸化物も不可逆容量の存在によって初期効率が低下するという短所がある。
【0007】
これに関して、シリコン系酸化物にLi、Al、Mgなどの金属をドーピングまたは挿入させることによって不可逆容量を減少させ、初期効率を向上させようとする研究が持続されてきた。しかしながら、金属ドーピングされたシリコン系酸化物が負極活物質として含まれた負極スラリーの場合、金属がドーピングされて形成された金属酸化物が水分と反応して負極スラリーのpHを高め、粘度を変化させるという問題があり、それによって製造された負極の状態が不良になり、負極の充放電効率が低下するという問題がある。
【0008】
これによって、シリコン系酸化物を含む負極スラリーの相安定性を向上させ、これから製造された負極の充放電効率を向上させることができる負極活物質の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2013-0045212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、負極活物質、これを含む負極、これを含む二次電池、および負極活物質の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含むシリコン系粒子;前記シリコン系粒子表面の少なくとも一部に備えられた炭素層;LiF;およびCF(0<a<4)を含む、負極活物質を提供する。
【0012】
本発明の一実施態様は、前記負極活物質を含む、負極を提供する。
本発明の一実施態様は、前記負極を含む、二次電池を提供する。
【0013】
本発明の一実施態様は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含み、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられたシリコン系粒子を形成する段階;および前記シリコン系粒子にフッ素プラズマ処理をする段階;を含む、前記負極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施態様による負極活物質は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含むシリコン系粒子;前記シリコン系粒子表面の少なくとも一部に備えられた炭素層;LiF;およびCF(0<a<4)を含むもので、前記負極活物質を用いる場合、スラリーの水系工程性を顕著に改善するという効果を奏する。具体的には、LiFは水によく溶けず、水系スラリーでシリコン系粒子を効率的にパッシベーション(passivation)することができ、電池の駆動時に、人工SEI被膜(Artificial SEI layer)として作用して、電池の寿命性能を向上させるという効果を奏する。CF(0<a<4)は、炭素層の疎水性(hydrophobicity)を増加させ、水系スラリー内で水分と負極活物質との反応を抑制することができて、効果的に粒子をパッシベーションすることができる。
【0015】
したがって、本発明の一実施態様による負極活物質を含む負極および前記負極を含む二次電池は、電池の放電容量、初期効率、抵抗性能および/または寿命特性が改善されるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書についてより詳しく説明する。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0017】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」に位置しているという場合、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、2つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本明細書で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0019】
本明細書で用いられる用語の単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0020】
本明細書において、負極活物質内に含まれた構造の結晶性は、X線回折分析によって確認することができ、X線回折分析は、X-ray diffraction(XRD)分析機器(製品名:D4-endeavor、製造社:bruker)を利用して実行してもよく、前記機器以外にも当業界で用いられる機器を適切に採用してもよい。
【0021】
本明細書において、負極活物質内の元素の有無および元素の含量は、ICP分析によって確認することができ、ICP分析は、誘導結合プラズマ発光分析分光器(ICPAES、Perkin-Elmer 7300)を利用して実行することができる。
【0022】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒度分布曲線(粒度分布図のグラフ曲線)において、体積累積量の50%基準での粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を利用して測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施態様を詳しく説明する。しかしながら、本発明の実施態様は多様な形態に変形されてもよく、本発明の範囲が以下で説明する実施態様に限定されない。
【0024】
<負極活物質>
本発明の一実施態様は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含むシリコン系粒子;前記シリコン系粒子表面の少なくとも一部に備えられた炭素層;LiF;およびCF(0<a<4)を含む、負極活物質を提供する。
【0025】
本発明の一実施態様による負極活物質は、シリコン系粒子を含む。前記シリコン系粒子は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含む。
【0026】
前記SiO(0<x<2)は、前記シリコン系粒子内でマトリックス(matrix)に対応し得る。前記SiO(0<x<2)は、Siおよび/またはSiOが含まれた形態であってもよく、前記Siは、相(phase)をなしていてもよい。例えば、前記SiO(0<x<2)は、非晶質SiOおよびSi結晶を含む複合体であってもよい。すなわち、前記xは、前記SiO(0<x<2)内に含まれたSiに対するOの個数比に対応する。前記シリコン系粒子が前記SiO(0<x<2)を含む場合、二次電池の放電容量が改善されることができる。具体的には、前記SiO(0<x<2)は、活物質の構造的安定面においてSiO(0.5≦x≦1.5)で表される化合物であってもよい。
【0027】
前記Li化合物は、前記シリコン系複合粒子内でマトリックス(matrix)に対応し得る。前記Li化合物は、前記シリコン系粒子内でリチウム原子、リチウムシリケート、シリサイド、リチウム酸化物の少なくとも1つの形態で存在し得る。前記シリコン系粒子がLi化合物を含む場合、初期効率が改善されるという効果を奏する。
【0028】
前記Li化合物は、前記シリコン系粒子にドーピングされた形態で前記シリコン系粒子の表面および/または内部に分布されることができる。前記Li化合物は、シリコン系粒子の表面および/または内部に分布されて、シリコン系粒子の体積膨脹/収縮を適切な水準に制御することができ、活物質の損傷を防止する役割を果たすことができる。また、前記Li化合物は、シリコン系酸化物粒子の非可逆相(例えば、SiO)の比率を低減して、活物質の効率を増加させるための側面で含有されることができる。
【0029】
本発明の一実施態様において、Li化合物は、リチウムシリケート形態で存在してもよい。前記リチウムシリケートは、LiSi(2≦a≦4、0<b≦2、2≦c≦5)で表され、結晶質リチウムシリケートと非晶質リチウムシリケートに分けられることができる。前記結晶質リチウムシリケートは、前記シリコン系粒子内で、LiSiO、LiSiOおよびLiSiからなる群より選択された少なくとも1種のリチウムシリケートの形態で存在してもよく、非晶質リチウムシリケートは、LiSi(2≦a≦4、0<b≦2、2≦c≦5)の形態の複雑な構造(complex)からなってもよく、前記形態に限定されない。
【0030】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質の総100重量部を基準として、Liは、0.1重量部~40重量部または0.1重量部~25重量部で含まれてもよい。具体的には、1重量部~25重量部で含まれてもよく、より具体的には、2重量部~20重量部で含まれてもよい。Liの含量が増加するにつれて、初期効率は増加するが、放電容量が減少するという問題点があるので、前記範囲を満たす場合、適切な放電容量および初期効率を具現することができる。
【0031】
前記Li元素の含量は、ICP分析によって確認することができる。具体的には、一定量(約0.01g)の負極活物質を分取した後、白金ルツボに移し、硝酸、フッ酸、硫酸を添加してホットプレートにて完全分解する。その後、誘導プラズマ発光分光分析装置(ICPAES、Perkin-Elmer 7300)を用いて、分析しようとする元素の固有波長において、標準溶液(5mg/kg)を用いて調製された標準液の強度を測定して基準検量線を作成する。その後、前処理された試料溶液および空試料を機器に導入し、それぞれの強度を測定して実際の強度を算出し、前記作成された検量線と対比して各成分の濃度を計算した後、全体の和が理論値となるように換算して、製造された負極活物質の元素含量を分析することができる。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記シリコン系粒子は、追加の金属原子を含んでもよい。前記金属原子は、前記シリコン系粒子内で金属原子、金属シリケート、金属シリサイド、金属酸化物の少なくとも1つの形態で存在してもよい。前記金属原子は、Mg、Li、Al、およびCaからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。これによって、前記負極活物質の初期効率が改善されることができる。
【0033】
本発明の一実施態様において、前記シリコン系粒子は、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられている。この時、前記炭素層は、表面の少なくとも一部、すなわち粒子表面に部分的に被覆されているか、粒子表面の全体に被覆された形態であってもよい。前記炭素層によって前記負極活物質に導電性が付与され、二次電池の初期効率、寿命特性、および電池容量特性が向上されることができる。
【0034】
本発明の一実施態様において、前記炭素層は非晶質炭素を含む。
また、前記炭素層は結晶質炭素をさらに含んでもよい。
【0035】
前記結晶質炭素は、前記負極活物質の導電性をより向上させることができる。前記結晶質炭素は、フルオレン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0036】
前記非晶質炭素は、前記炭素層の強度を適切に保持し、前記シリコン系粒子の膨脹を抑制させることができる。前記非晶質炭素は、タール、ピッチ、およびその他有機物からなる群より選択される少なくとも1つの炭化物、または炭化水素を化学気相蒸着法のソースとして用いて形成された炭素系物質であってもよい。
【0037】
前記その他有機物の炭化物は、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、マンノース、リボース、アルドヘキソースまたはケトヘキソースの炭化物、およびこれらの組み合わせから選択される有機物の炭化物であってもよい。
【0038】
前記炭化水素は、置換もしくは非置換の脂肪族または脂環式炭化水素、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素であってもよい。前記置換もしくは非置換の脂肪族または脂環式炭化水素の前記脂肪族または脂環式炭化水素は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、またはヘキサンなどが挙げられる。前記置換もしくは非置換の芳香族炭化水素の芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、またはフェナントレンなどが挙げられる。
【0039】
本発明の一実施態様において、前記炭素層は非晶質炭素層であってもよい。
本発明の一実施態様において、前記炭素層は、前記負極活物質の総100重量部を基準として、0.1重量部~50重量部、0.1重量部~30重量部または0.1重量部~20重量部で含まれてもよい。より具体的には、0.5重量部~15重量部、1重量部~10重量部または1重量部~5重量部で含まれてもよい。前記範囲を満たす場合、負極活物質の容量と効率の減少を防止することができる。
【0040】
本発明の一実施態様において、前記炭素層の厚さは、1nm~500nmであってもよく、具体的には、5nm~300nmであってもよい。前記範囲を満たす場合、負極活物質の導電性が改善され、負極活物質の体積変化が容易に抑制され、電解液と負極活物質との副反応が抑制されて、電池の初期効率および/または寿命が改善されるという効果を奏する。
【0041】
具体的には、前記炭素層は、メタン、エタン、およびアセチレンからなる群より選択された少なくとも1種の炭化水素ガスを用いる化学気相蒸着法(CVD)によって形成されることができる。
【0042】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質は、LiF;およびCF(0<a<4)を含んでもよい。
【0043】
具体的には、負極活物質の製造時に、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられたシリコン系粒子を形成した後、前記粒子の表面にフッ素(Fluorine)プラズマ処理を通じてFを導入することができる。この過程で、シリコン系粒子にLiをドーピングする時に生成されたリチウム副産物にFが導入されてLiFを形成されることができ、シリコン系粒子表面に備えられた炭素層の炭素にFが導入されて、CF(0<a<4)の形態で存在してもよい。
【0044】
前記のように形成されたLiFは水によく溶けず、水系スラリーでシリコン系粒子を効率的にパッシベーション(passivation)することができ、シリコン系粒子に含まれたLi化合物が溶出されることを防止して、スラリーが塩基性を帯びることを防止して、水系工程性が改善されるという効果を奏する。また、LiFは、電池の駆動時に、人工SEI被膜(Artificial SEI layer)として作用して、電池の寿命性能を向上させるという効果を奏する。本発明の一実施態様において、前記LiFおよびCF(0<a<4)は、前記シリコン系粒子上に備えられてもよい。
【0045】
前記LiFは、前記シリコン系粒子の表面、炭素層の内部または炭素層の表面に備えられてもよい。具体的には、前記LiFは、前記炭素層上の少なくとも一部に備えられるか、前記シリコン系粒子表面のうち、炭素層が備えられていない領域の少なくとも一部に備えられてもよい。これに限定されず、前記LiFは、負極活物質内でリチウム副産物またはリチウムシリケートが存在する位置に形成されてもよい。前記LiFは表面に部分的に被覆されているか、前記表面の全体に被覆された形態であってもよい。前記LiFの形状としては、島状(island type)または薄膜状などが挙げられるが、LiFの形状はこれに限定されない
【0046】
また、前記LiFは、前記シリコン系粒子に含まれるLi化合物にFが導入されることにより、前記シリコン系粒子の表面上に備えられてもよい。
【0047】
前記CF(0<a<4)は、前記炭素層の内部または炭素層の表面に備えられてもよい。
【0048】
具体的には、前記CF(0<a<4)は、前記炭素層の表面にFが導入されて形成されたもので、C-F結合を含む構造である。すなわち、前記CF(0<a<4)は、炭素層の内部に位置するか、炭素層の表面に位置してもよく、具体的には、炭素層の表面付近に主に位置してもよい。
【0049】
前記炭素層の表面にFが導入されてCF(0<a<4)が形成されることによって、炭素層の疎水性(hydrophobicity)が増加して水系スラリー内で水分と負極活物質との反応が抑制されるので、効果的に粒子をパッシベーションすることができる。
【0050】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質は、SiF(0<b<4)をさらに含んでもよい。前記シリコン系粒子の表面にフッ素(fluorine)プラズマ処理によってFを導入する際にシリコン系粒子内にもFを導入されることができ、粒子内シリコンとSi-F結合を形成して、SiF(0<b<4)の形態で存在してもよい。前記SiF(0<b<4)は、前記シリコン系粒子の内部に位置するか、前記シリコン系粒子の表面に位置してもよく、具体的には、シリコン系粒子の表面付近に主に位置してもよい。
【0051】
前記負極活物質に含まれる成分は、X線回折分析法(XRD)またはX線光電子分光法(XPS)によって確認することができる。
【0052】
本発明において、前記負極活物質表面の元素含量および原子比は、XPS(Nexsa ESCA System、Thermo Fisher Scientific(ESCA-02))によって確認することができる。また、前記XPS分析によってLiFおよびCF(0<a<4)の存在を確認することができる。
【0053】
具体的には、各試料に対して、サーベイスキャンスペクトル(survey scan spectrum)とナロースキャンスペクトル(narrow scan spectrum)を得た後、深さプロファイル(depth profile)を行いながらサーベイスキャンスペクトル(survey scan spectrum)とナロースキャンスペクトル(narrow scan spectrum)を得ることができる。深さプロファイル(depth profile)は、単原子Arイオン(Monatomic Ar ion)を用いて3000秒まで行うことができ、測定およびデータ処理(data processing)条件は、以下のとおりである。
【0054】
-X-ray source:Monochromated Al K α(1486.6eV)
-X-ray spot size:400μm
-Sputtering gun:Monatomic Ar(energy:1000eV、current:low、raster width:2mm)
-Etching rate:0.09nm/s for Ta
-Operation Mode:CAE(Constant Analyzer Energy)mode
-Survey scan:pass energy 200eV、energy step 1eV
-Narrow scan:scanned mode、pass energy 50eV、energy step 0.1eV
-Charge compensation:flood gun off
-SF:Al THERMO1
-ECF:TPP-2M
-BG subtraction:Shirley
【0055】
本発明の一実施態様において、前記X線光電子分光法(XPS)の深さプロファイル(Depth profile)は、単色化Al Kα(Monochromated Al Kα)のX線ソース下で0.09nm/sで3000秒まで行って測定することができる。
【0056】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法によって前記負極活物質の表面を分析すると、Li、Si、C、N、OまたはFなどが検出される。
【0057】
以下、X線光電子分光法による元素含量は、100s基準で測定された全体元素の和100at%を基準としたものである。
【0058】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるFの含量は、10at%以上であってもよい。具体的には、前記Fの含量は、10at%以上50at%以下、12at%以上40at%以下、または15at%以上35at%以下であってもよい。前記Fの含量の下限は、10at%、12at%、14at%、15at%、16at%、18at%または20at%であってもよく、上限は、50at%、45at%、40at%、35at%、30at%、または25at%であってもよい。
【0059】
負極活物質の表面でF元素が前記のような含量を満たす場合、負極活物質にFが十分に導入されてリチウム副産物を除去し、炭素層にFを効果的に導入することができ、水系スラリーで負極活物質が水分と反応したりリチウム副産物が溶出されたりすることを防止して、水系工程性が改善されるという効果を奏する。
【0060】
Fの含量が前記範囲の下限以上である場合、負極活物質の表面部にFの導入量が適切で、パッシベーション効果が現れ、Fの含量が前記範囲の上限以下である場合、不安定なC-F、Si-FなどのF結合が多数発生することを防止して、水系スラリーでのHF発生およびHFによるCMCのような成分の分解を抑制して、粘度の低下を防止することができる。
【0061】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるLiの含量は、10at%以上であってもよい。具体的には、前記Liの含量は、10at%以上30at%以下、15at%以上25at%以下、18at%以上25at%以下、または20at%以上23at%以下であってもよい。前記Liの含量の下限は、10at%、12at%、15at%、18at%または20at%であってもよく、上限は、30at%、28at%、25at%、24at%または23atであってもよい。
【0062】
負極活物質表面でLi元素が前記のような含量を満たす場合、シリコン系粒子内部までリチウムシリケートが均一に形成されることにより、適切な容量および効率が具現されることができる。Liの含量が前記範囲の下限以上である場合、シリコン系粒子と十分な量のLiが反応して適切な効率を具現することができる。Liの含量が前記範囲の上限以下である場合、過度なLi副産物の残留を抑制することにより、スラリーのpHの過度な上昇を防止し、Siとの反応によるガスの発生を最小化することができる。
【0063】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるSiの含量は、5at%以下であってもよい。具体的には、前記Siの含量は、0.1at%以上5at%以下、1at%以上5at%以下、2at%以上4at%以下、2.5at%以上4at%以下、または3at%以上3.5at%以下であってもよい。前記Siの含量の下限は、0.1at%、1at%、2at%、2.5at%または3at%であってもよく、上限は、5at%、4at%または3.5at%であってもよい。
【0064】
負極活物質の表面でSi元素が前記のような含量を満たす場合、パッシベーションの役割を果たすLiFやCF(0<a<4)などの物質が適切な量で存在することにより、パッシベーション効果に優れ、水系ミキシングシステムでガスの発生を防止することができ、電池の駆動時に、パッシベーションの役割を果たす物質が抵抗体として作用して、円滑な電池駆動効果を示すことができる。Siの含量が前記範囲の下限以上である場合、パッシベーションの役割を果たす物質の過度な形成に伴う抵抗増加を防ぐことができ、Siの含量が前記範囲の上限以下である場合、パッシベーションの役割をする物質が均一に形成されるようにして、水系工程におけるガス発生問題を防止することができる。
【0065】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるCの含量は、20at%以上であってもよい。具体的には、前記Cの含量は、20at%以上70at%以下、30at%以上60at%以下、または35at%以上55at%以下であってもよい。前記Cの含量の下限は、20at%、25at%、30at%、または35at%であってもよく、上限は、70at%、65at%、60at%または55at%であってもよい。
【0066】
負極活物質の表面でC元素が前記のような含量を満たす場合、炭素層に適切な量のC-F官能基が導入されるので、炭素層の疎水性(hydrophobicity)が増加されて、水との反応性が抑制され、ガスの発生も抑制されるという効果を奏する。Cの含量が前記範囲の下限以上である場合、炭素層が均一に形成されて、露出されるSiを最小化し、これによってガス発生問題を最小化することができ、Cの含量が前記範囲の上限以下である場合、適切な炭素層の量で電池の駆動時に抵抗の過度の増加による電池性能の低下を防ぐことができる。
【0067】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるOの含量は、15at%以下であってもよい。具体的には、前記Oの含量は、2at%以上15at%以下、2at%以上12at%以下、または5at%以上10at%以下であってもよい。前記Oの含量の下限は、2at%、4at%または5at%であってもよく、上限は、15at%、14at%、12at%または10at%であってもよい。
【0068】
負極活物質の表面でO元素が前記のような含量を満たす場合、親水性が低下して、スラリーガスの低減効果、および電池駆動時のO官能基による効率低下を防止することができる。Oの含量が前記範囲の下限以上である場合、酸素の含量を減少するための過度な還元がなかったため、水系工程で不安定なF元素の結合によるHF発生を抑制することができ、これによって、スラリー内のCMCなどの物質の分解反応を抑制して、粘度の急激な低下を防止することができる。Oの含量が前記範囲の上限以下である場合、親水性が減少して、水と容易に反応しないため、ガスの発生を防止することができる。
【0069】
本発明の負極活物質が前記元素の含量範囲を満たすことにより、負極活物質にFが十分に導入されてリチウム副産物が容易に除去されるとともにLiFが形成され、炭素層にFが効果的に導入されてCFを形成し、生成されたLiFおよびCFの量が適切で、水系スラリーで負極活物質が水分と反応したり、リチウム副産物が溶出されたりすることを防止して、水系工程性が改善されるという効果を奏する。
【0070】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるO対比Fの原子比(F/O ratio)は、1以上6以下であってもよい。具体的には、1.2以上5以下または1.5以上4.5以下であってもよい。前記範囲を満たす場合、負極活物質の表面部にFが適切に導入されて、LiFおよびCFが容易に形成されて、スラリー内でシリコン系粒子を容易にパッシベーションし、電池の駆動時に、LiFが人工SEI被膜として作用して、スラリー工程性および寿命性能が顕著に改善されるという効果を奏する。前記範囲の下限以上である場合、負極活物質の表面部にFの導入量が十分になって、パッシベーション効果に有利であり、前記範囲の上限以下である場合、不安定なC-F、Si-FなどのF結合が多数発生することを防止して、水系スラリーでHFの発生およびHFによるスラリー内のCMCのような成分の分解を抑制して、顕著な粘度低下を防止することができる。
【0071】
本発明の一実施態様において、X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるLi対比Cの原子比(C/Li ratio)は、0.8以上4以下であってもよい。具体的には、1以上3.5以下、1.5以上3以下、または1.7以上2.5以下であってもよい。前記範囲を満たす場合、負極活物質の表面部に位置するLiFおよびCFの含量が適切で、スラリー内でシリコン系粒子を容易にパッシベーションすることができ、電池の駆動時に、LiFが人工SEI被膜として作用して、スラリーの工程性および寿命性能が顕著に改善されるという効果を奏する。前記範囲の下限以上である場合、炭素層が均一になって、パッシベーション効果が増加して水と反応せず、前記範囲の上限以下である場合、電池の駆動時に、抵抗増加に伴う電池性能低下を防止することができる。
【0072】
本発明の一実施態様において、前記LiFの含量は、CF(0<a<4)の含量よりも多くてもよい。通常、前記シリコン系粒子上に炭素層を形成した後、リチウムをシリコン系粒子内にドーピングさせる過程で、前記リチウム副産物が炭素層上に主に存在するようになる。したがって、前記シリコン系粒子をフッ素プラズマ処理する場合、リチウム副産物に優先的にFが導入されるため、LiFの含量がCF(0<a<4)の含量よりも多いことがある。
【0073】
本発明の一実施態様において、前記シリコン系粒子上にリチウム副産物が存在してもよい。具体的には、前記リチウム副産物は、前記シリコン系粒子の表面上に存在してもよく、前記炭素層の表面上に存在してもよい。
【0074】
具体的には、前記リチウム副産物は、シリコン系粒子を製造した後、シリコン系粒子または炭素層の表面付近に残っているリチウム化合物を意味してもよい。前述のように、酸処理工程を経た後にも、酸と未反応のリチウム副産物が残っている可能性がある。
【0075】
前記リチウム副産物は、LiO、LiOH、およびLiCOからなる群より選択された1以上を含んでもよい。前述の反応のように、リチウム副産物にフッ素プラズマ処理時にLiFが形成され、未反応のリチウム副産物がシリコン系粒子上に存在してもよい。
【0076】
前記リチウム副産物が存在するか否かは、X線回折分析法(XRD)またはX線光電子分光法(XPS)によって確認することができる。
【0077】
前記リチウム副産物は、負極活物質の総100重量部を基準として、5重量部以下で含まれてもよい。具体的には、0.01重量部~5重量部、0.05重量部~2重量部または0.1重量部~1重量部で含まれてもよい。より具体的には、0.1重量部~0.8重量部または0.1重量部~0.5重量部で含まれてもよい。リチウム副産物の含量が前記範囲を満たす場合、スラリー内の副反応を減らすことができ、粘度の変化を低下して、水系工程性特性を改善させることができる。前記範囲の上限以下である場合、スラリーの形成時に塩基性を帯びることを防止して、副反応の発生、または粘度変化による水系工程性イシューの発生を最小化することができる。
【0078】
前記リチウム副産物の含量は、滴定装置を用いて前記負極活物質を含む水溶液をHCl溶液で滴定する過程でpHが変化する特定区間でのHCl溶液の量を測定した後、リチウム副産物の量を計算することができる。
【0079】
前記負極活物質の平均粒径(D50)は、0.1μm~30μmであってもよく、具体的には、1μm~20μmであってもよく、より具体的には、1μm~10μmであってもよい。前記範囲を満たす場合、充放電時の活物質の構造的安定を図り、粒径が過度に大きくなって、体積膨脹/収縮水準も大きくなる問題を防止し、粒径が過度に小さくなって、初期効率が減少するという問題を防止することができる。
【0080】
前記負極活物質のBET比表面積は1m/g~100m/gであってもよく、具体的には、1m/g~70m/gであってもよく、より具体的には、1m/g~50m/g、例えば、2m/g~30m/gであってもよい。前記範囲を満たすとき、電池の充電および放電時に、電解液との副反応が減少することができて、電池の寿命特性が向上されることができる。
【0081】
<負極活物質の製造方法>
本発明の一実施態様は、SiO(0<x<2)およびLi化合物を含み、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられたシリコン系粒子を形成する段階;および前記シリコン系粒子にフッ素プラズマ処理をする段階;を含む、前記負極活物質の製造方法を提供する。
【0082】
前記シリコン系粒子は、Si粉末およびSiO粉末を真空で加熱して気化させた後、前記気化された混合気体を蒸着させて予備粒子を形成する段階;形成された予備粒子の表面に炭素層を形成させる段階;および前記炭素層が形成された予備粒子とLi粉末とを混合した後、熱処理する段階;によって形成されることができる。
【0083】
具体的には、前記Si粉末およびSiO粉末の混合粉末は、真空下で1300℃~1800℃、1400℃~1800℃または1400℃~1600℃で熱処理することができる。
【0084】
形成された予備粒子は、SiOの形態を有してもよい。
前記炭素層は、炭化水素ガスを用いる化学気相蒸着法(CVD)を利用するか、炭素ソース(carbonSource)となる物質を炭化させる方法で形成することができる。
【0085】
具体的には、形成された予備粒子を反応炉に投入した後、炭化水素ガスを600℃~1200℃で化学気相蒸着(CVD)して形成することができる。前記炭化水素ガスは、メタン、エタン、プロパン、およびアセチレンを含む群で選択された少なくとも1種の炭化水素ガスであってもよく、900℃~1000℃で熱処理することができる。
【0086】
炭素層が形成された予備粒子とLi粉末とを混合した後に熱処理する段階は、700℃~900℃で4時間~6時間行ってもよく、具体的には、800℃で5時間行ってもよい。
【0087】
前記シリコン系粒子は、前記のLi化合物で、Liシリケート、LiシリサイドまたはLi酸化物などを含んでもよい。
【0088】
前記シリコン系粒子の粒度は、ボールミル(ball mill)、ジェットミル(jet mill)または気流分級のような方法によって粒度を調節することができ、これに限定されるのではない。
【0089】
前記のように、炭素層が備えられたシリコン系粒子の表面の少なくとも一部には、リチウム化合物(リチウム副産物)が備えられる。具体的には、前記SiO(0<x<2)を含む予備粒子を形成し、前記予備粒子上に炭素層を形成した後、Liをドーピングして前記のシリコン系粒子を製造する過程で、シリコン系粒子の表面付近にリチウム化合物、すなわち未反応のリチウムによって形成されたリチウム副産物が残留する。
【0090】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質の製造方法は、前記シリコン系粒子にフッ素プラズマ処理をする段階を含む。
【0091】
前記フッ素プラズマ処理段階は、前記シリコン系粒子をプラズマチャンバ内に入れた後、CFガスを注入する段階;前記チャンバ内部の圧力を上昇させる段階;および前記チャンバにプラズマを形成させる段階;を含む。
【0092】
前記プラズマ処理は、RFプラズマを用いて行ってもよい。
具体的には、前記チャンバにCFガスを注入する前のチャンバ内圧力を0.01torr~0.1torrに調整してもよい。好ましくは、前記圧力を0.05torr~0.09torrまたは0.07torrに調整してもよい。
【0093】
その後、前記チャンバ内部の圧力を上昇させる段階において、チャンバ内部の圧力を0.1torr~0.5torrに調整してもよい。具体的には、前記圧力を0.15torr~0.3torrまたは0.2torrに調整してもよい。
【0094】
前記チャンバにプラズマを形成させる段階は、前記チャンバにパワーを印加して実行してもよい。具体的には、前記パワーは、50W~300W、80W~250W、または100W~200Wであってもよい。
【0095】
前記プラズマは、1分~10分間保持してもよい。好ましくは、3分~8分、5分~7分または6分間保持してもよい。
【0096】
前記範囲を満たしてプラズマ処理を行う場合、前記炭素層を備えたシリコン系粒子にFが適切な含量で導入されることができる。
【0097】
前記チャンバにプラズマを形成させて、前記炭素層が備えられたシリコン系粒子にFを導入した後、常圧で真空を解除してから試料を回収することができる。
【0098】
前記フッ素プラズマ処理段階は、1回以上繰り返して行ってもよい。好ましくは、2回以上繰り返して行ってもよく、より好ましくは、2回または3回行ってもよい。
【0099】
本発明のように、プラズマを用いて負極活物質にFを乾式方法で導入する場合、Li化合物を含むシリコン系粒子内部のリチウムが溶けず、パッシベーション特性がさらに向上される。一方、水熱合成法(hydrothermal synthesis)や溶媒熱合成法(Solvothermal synthesis)などの方法でFを導入する場合、シリコン系粒子の表面が多孔性となり、パッシベーション効果が低下される。
【0100】
前記のように、フッ素プラズマ処理によって、シリコン系粒子にリチウムをドーピングする時に形成されたリチウム副産物にFが導入されてLiFが形成され、形成されたLiFは、水とリチウム化合物またはシリコン系粒子との反応を容易に遮断し、電池の駆動時に、人工SEI被膜(Artificial SEI layer)として作用して、寿命性能が改善されるという効果を奏する。
【0101】
また、前記炭素層の表面にFが導入されてCF(0<a<4)が形成されることにより、炭素層の疎水性(hydrophobicity)が増加し、水系スラリー内で水分と負極活物質との反応が抑制されるので、効果的に粒子をパッシベーションすることができる。
【0102】
<負極>
本発明の一実施態様による負極は、前記の負極活物質を含んでもよい。
具体的には、前記負極は、負極集電体、および前記負極集電体上に配置された負極活物質層を含んでもよい。前記負極活物質層は、前記負極活物質を含んでもよい。さらに、前記負極活物質層は、バインダー、増粘剤、および/または導電材をさらに含んでもよい。
【0103】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、増粘剤、および/または導電材を含む負極スラリーを集電体の少なくとも一面に塗布した後、乾燥および圧延して形成されることができる。
前記負極スラリーは、追加の負極活物質をさらに含んでもよい。
【0104】
前記追加の負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離可能な化合物が用いられることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素纎維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料は、低結晶炭素および高結晶性炭素など何れも用いられてもよい。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または纎維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素纎維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)、および石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0105】
前記追加の負極活物質は、炭素系負極活物質であってもよい。
本発明の一実施態様において、前記負極スラリーに含まれる負極活物質と追加の負極活物質との重量比は、10:90~90:10であってもよく、具体的には、10:90~50:50であってもよい。
【0106】
前記負極スラリーは、負極スラリー形成用溶媒を含んでもよい。具体的には、前記負極スラリー形成用溶媒は、成分の分散を容易にする側面で、蒸溜水、エタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選択された少なくとも1種、具体的には、蒸溜水を含んでもよい。
【0107】
本発明の一実施態様による負極活物質を含む負極スラリーは、25℃でのpHは7~11であってもよい。負極スラリーのpHが前記範囲を満たすことにより、スラリーのレオロジー特性が安定されるという効果を奏する。負極スラリーのpHが前記範囲内である場合、増粘剤として用いるカルボキシメチルセルロース(CMC)の分解を抑制して、スラリーの粘度低下を防止し、スラリー内に含まれている活物質の分散度を保持することができる。
【0108】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであればよく、特に制限されない。例えば、前記集電体としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。具体的には、銅、ニッケルのような炭素をよく吸着する遷移金属を集電体として用いてもよい。前記集電体の厚さは6μm~20μmであってもよいが、前記集電体の厚さはこれに制限されるものではない。
【0109】
前記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、およびこれらの水素がLi、Na、またはCaなどで置換された物質からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよく、また、これらの多様な共重合体を含んでもよい。
【0110】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0111】
前記導電材は、前記負極活物質層100重量%を基準として、0.01重量%以上30重量%以下で含まれてもよく、好ましくは、0.1重量%以上20重量%以下で含まれてもよい。
【0112】
前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよく、これに限定されず、本技術分野で用いる増粘剤を適切に採用してもよい。
【0113】
本発明の一実施態様において、前記負極スラリーに含まれた負極活物質および追加の負極活物質の重量比は、1:99~30:70であってもよく、具体的には、5:95~30:70または10:90~20:80であってもよい。
【0114】
本発明の一実施態様において、前記負極スラリーに含まれた全体負極活物質は、前記負極スラリーの固形分の総100重量部を基準として、60重量部~99重量部、具体的には、70重量部~98重量部で含まれてもよい。
【0115】
本発明の一実施態様において、前記バインダーは、前記負極スラリーの固形分の総100重量部を基準として、0.5重量部~30重量部、具体的には、1重量部~20重量部で含まれてもよい。
【0116】
本発明の一実施態様において、前記導電材は、前記負極スラリーの固形分の総100重量部を基準として、0.5重量部~25重量部、具体的には、1重量部~20重量部で含まれてもよい。
【0117】
本発明の一実施態様において、前記増粘剤は、前記負極スラリーの固形分の総100重量部を基準として、0.5重量部~25重量部、具体的には、0.5重量部~20重量部、より具体的には、1重量部~20重量部で含まれてもよい。
【0118】
本発明の一実施態様による負極スラリーは、負極スラリー形成用溶媒をさらに含んでもよい。具体的には、前記負極スラリー形成用溶媒は、成分の分散を容易にする側面で、蒸留水、エタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選択された少なくとも1種、具体的には、蒸留水を含んでもよい。
【0119】
本発明の一実施態様において、前記負極スラリーの固形分の重量は、前記負極スラリーの総100重量部を基準として、20重量部~75重量部、具体的には、30重量部~70重量部であってもよい。
【0120】
<二次電池>
本発明の一実施態様による二次電池は、前述した一実施態様による負極を含んでもよい。具体的には、前記二次電池は、負極、正極、前記正極と前記負極との間に介在したセパレータ、および電解液を含んでもよく、前記負極は、前述した負極と同様である。前記負極に対しては前述したので、具体的な説明は省略する。
【0121】
前記正極は、正極集電体、および前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含んでもよい。
【0122】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質との接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0123】
前記正極活物質は、通常用いられる正極活物質であってもよい。具体的には、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2-c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-c2c2(ここで、MはCo、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、およびGaからなる群より選択された少なくとも1つであり、0.01≦c2≦0.3を満たす)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-c3c3(ここで、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、およびTaからなる群より選択された少なくとも1つであり、0.01≦c3≦0.1を満たす)、またはLiMnMO(ここで、MはFe、Co、Ni、Cu、およびZnからなる群より選択された少なくとも1つである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどが挙げられるが、これに限定されない。前記正極は、金属リチウム(Li-metal)であってもよい。
【0124】
前記正極活物質層は、前述した正極活物質と共に、正極導電材および正極バインダーを含んでもよい。
【0125】
この際、前記正極導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素含有物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0126】
また、前記正極バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0127】
セパレータとしては、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造された多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0128】
前記電解液としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これに限定されない。
【0129】
具体的には、前記電解液は、非水系有機溶媒および金属塩を含んでもよい。
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が用いられてもよい。
【0130】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として、誘電率が高く、リチウム塩をよく解離させるため好ましく用いることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の直鎖状カーボネートを適切な割合で混合して用いると、高い導電率を有する電解液を作製することができるためさらに好ましく用いることができる。
【0131】
前記金属塩としては、リチウム塩を用いてもよく、前記リチウム塩は、前記非水電解液に溶解しやすい物質であり、例えば、前記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN、および(CFCFSOからなる群より選択される1種以上を用いてもよい。
【0132】
前記電解液には、前記電解液の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、または三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0133】
本発明のまた他の実施態様によれば、前記二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュールおよび電池パックは、高容量、高いレート特性、およびサイクル特性を有する前記二次電池を含むので、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車、および電力貯蔵用システムからなる群より選択される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【実施例
【0134】
<実施例および比較例>
実施例1
SiおよびSiOを1:1モル比で混合した粉末94gを反応炉で混合した後、1400℃の昇華温度で真空加熱した。その後、気化されたSi、SiO混合気体を800℃の冷却温度を有する真空状態の冷却領域(cooling zone)で反応させて固相に凝結させた。その次、凝結された粒子をボールミルで3時間粉碎して、大きさ6μmの粒子を製造した。その後、Arガスを流して不活性雰囲気を保持しながら、CVD装置のホットゾーン(hot zone)に前記粒子を位置させ、キャリアガスとしてArを用いて、メタンを900℃のホットゾーンに吹き入れて、5時間10-1torrで反応させて、前記粒子の表面に炭素層を形成する。その後、炭素層が形成された粒子に6gのLi金属粉末(Li metal powder)を追加して混合した後、不活性雰囲気、800℃の温度で追加熱処理を行ってLi化合物を含むシリコン系粒子を製造した。
【0135】
10gの前記シリコン系粒子をRFプラズマチャンバに3mm以内の厚さに薄く広げて入れた後、0.07torr下でCFガスを注入して、チャンバ内部の圧力を0.2torrに上昇させた。その後、チャンバに150Wのパワーを印加してプラズマを形成させた後、6分間保持し、常圧で真空を解除した後、試料を回収した。前記の過程をさらに2回繰り返して(総3回)実施例1の負極活物質を得た。
【0136】
実施例2
プラズマを形成する際に印加されるパワーの強度を200Wとしたことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、実施例2の負極活物質を得た。
【0137】
実施例3
プラズマを形成する際に印加されるパワーの強度を100Wとたことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、実施例3の負極活物質を得た。
【0138】
比較例1
プラズマ処理をしないことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、比較例1の負極活物質を得た。
【0139】
比較例2
プラズマ処理をしないことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、Li化合物を含むシリコン系粒子を得た。
0.1M Al(SO溶液と0.1M HPO溶液の混合溶液と前記シリコン系粒子とを5:1の重量比で混合した後1時間攪拌し、その後、ろ過および乾燥して前記シリコン系粒子上にリン酸アルミニウムを含む無機物コーティング層を形成した。
【0140】
比較例3
プラズマ処理をしないことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、Li化合物を含むシリコン系粒子を得た。
前記シリコン系粒子を反応炉に投入した後、炭化水素ガスとしてプロパンを700℃で4時間化学気相蒸着(CVD)して、シリコン系粒子上に追加の炭素層を形成して、負極活物質を製造した。
【0141】
比較例4
プラズマ処理をしないことを除いては、実施例1と同様の方法で製造して、Li化合物を含むシリコン系粒子を得た。
前記シリコン系粒子と0.1M HF溶液を1:7重量比で混合した後、1時間攪拌し、その後、ろ過および乾燥した後、300℃の熱処理によって表面にLiF層が導入された負極活物質を製造した。
【0142】
<炭素層の含量測定>
前記炭素層の含量は、CS-analyzer(CS-800、Eltra)を利用して分析した。
【0143】
<負極活物質に含まれたLi含量測定>
前記Li原子含量は、誘導結合プラズマ発光分析分光器(Perkin-Elmer 7300社のICP-OES、AVIO 500)を利用したICP分析によって確認した。
【0144】
<X線光電子分光法(XPS)による元素含量および原子比測定>
負極活物質表面の元素含量(at%)をXPS(Nexsa ESCA System、Thermo Fisher Scientific(ESCA-02))によって確認した。
【0145】
具体的には、各試料に対して、サーベイスキャンスペクトル(survey scan spectrum)とナロースキャンスペクトル(narrow scan spectrum)を得、次に、深さプロファイル(depth profile)を行いながらサーベイスキャンスペクトル(survey scan spectrum)とナロースキャンスペクトル(narrow scan spectrum)を得た。深さプロファイル(depth profile)は、単原子Arイオン(Monatomic Ar ion)を用いて3000秒まで行った。測定およびデータ処理(data processing)条件は、以下のとおりである。
【0146】
-X-ray source:Monochromated Al Kα(1486.6eV)
-X-ray spot size:400μm
-Sputtering gun:Monatomic Ar(energy:1000eV、current:low、raster width:2mm)
-Etching rate:0.09nm/s for Ta
-Operation Mode:CAE(Constant Analyzer Energy)mode
-Survey scan:pass energy 200eV、energy step 1eV
-Narrow scan:scanned mode、pass energy 50eV、energy step 0.1eV
-Charge compensation:flood gun off
-SF:Al THERMO1
-ECF:TPP-2M
-BG subtraction:Shirley
【0147】
前記条件下で、100s基準で測定された元素の総含量100at%に基づいて各元素の含量を算出した。
前記実施例および比較例で製造した負極活物質の構成は、下記表1のとおりである。
【0148】
【表1】
【0149】
<実験例1:放電容量、初期効率、寿命(容量維持率)特性評価>
負極の製造
負極材として実施例1で製造された負極活物質と炭素系活物質として黒鉛(平均粒径(D50):20μm)を10:90の重量比で混合したものを用いた。
前記負極材、バインダーとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、導電材として、Super C65、および増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を96:2:1:1の重量比で混合し、これを負極スラリー形成用溶媒として蒸留水に添加して負極スラリーを製造した。
【0150】
負極集電体として、銅集電体(厚さ:15μm)の一面に前記負極スラリーを3.6mAh/cmのローディング量でコーティングし、圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで10時間乾燥して負極活物質層(厚さ:50μm)を形成して、これを実施例1による負極とした(負極の厚さ:65μm)。
また、実施例1の負極活物質の代わりに実施例2、3および比較例1~4の負極活物質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例2、3および比較例1~4の負極を製造した。
【0151】
二次電池の製造
正極としてリチウム金属箔を用意した。
前記で製造された実施例1~3および比較例1~4の負極と正極との間に多孔性ポリエチレンセパレータを介在させ、電解液を注入して実施例1~3および比較例1~4のコイン型のハーフセルをそれぞれ製造した。
【0152】
前記電解液としては、エチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)を体積比7:3で混合した溶液に、0.5重量%でビニレンカーボネート(VC)を溶解させ、LiPFを1M濃度で溶解させたものを用いた。
【0153】
放電容量、初期効率、寿命(容量維持率)特性評価
実施例1~3および比較例1~4で製造した二次電池に対して、電気化学充放電機を用いて放電容量、初期効率、およびサイクル容量維持率を評価した。
サイクル容量維持率は、25℃の温度で行われ、1サイクル目および2サイクル目は0.1Cで充放電し、3サイクル目からは0.5Cで充放電を行った(充電条件:CC/CV、5mV/0.005cut-off、放電条件:CC、1.5Vcut-off)。
1回目充放電時の結果によって、放電容量(mAh/g)および初期効率(%)を導出した。
【0154】
容量維持率は、以下のように計算した。
容量維持率(%)={(Nサイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)}×100
(前記式において、Nは、1以上の整数である。)
50サイクル目の容量維持率(%)を下記表2に示す。
【0155】
<実験例2:工程性(スラリーガス発生量)特性評価>
負極材として、前記実施例および比較例で製造した負極活物質と炭素系活物質として黒鉛(平均粒径(D50):20μm)を10:90の重量比で混合したものを用いた。
【0156】
前記負極材、バインダーとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、導電材として、Super C65、および増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を96:2:1:1の重量比で混合し、これを負極スラリー形成用溶媒として蒸留水に添加して、負極スラリーを調製した。
【0157】
前記負極スラリーを体積7mLのアルミニウムパウチに入れて密封した。
前記負極スラリーを入れたアルミニウムパウチの大気中での重量および23℃の水中での重量の差を求め、これを23℃での水の密度で割って、負極スラリーを製造した直後のガスの体積を測定した。
【0158】
次に、前記負極スラリーが入っているアルミニウムパウチを60℃で3日間保管した後、前記負極スラリーが入っているアルミニウムパウチの大気中での重量と60℃の水中での重量の差を求め、これを60℃での水の密度で割って、負極スラリーを3日間保管した後のガスの体積を測定した。
【0159】
負極スラリーを3日間保管した後に測定されたガスの体積と負極スラリーを製造した直後に測定されたガスの体積の差をガス発生量と定義し、下記表2に示す。
【0160】
【表2】
【0161】
本発明に係る負極活物質は、シリコン系粒子、LiF、およびCF(0<a<4)を含むもので、本発明の負極活物質を用いた実施例1~3は、放電容量、初期効率、および容量維持率に優れ、スラリー内ガス発生量がないか、顕著に低いことが確認できた。これは、本発明の負極活物質に含まれたLiFおよびCF(0<a<4)がスラリーでシリコン系粒子を効率的にパッシベーション(passivation)し、前記負極活物質の表面がLiおよびFを前記範囲で含むことにより、LiFが粒子表面に適切に分布してスラリー内の副反応を効果的に抑制できるからであると思われる。
【0162】
一方、比較例1は、負極活物質がLiFおよびCF(0<a<4)を含まず、スラリー内水分とシリコン系粒子とが容易に反応してガスを発生し、放電容量、初期効率、および容量維持率が低下することが確認できた。
【0163】
比較例2および3は、負極活物質がLiFおよびCF(0<a<4)を含まない代わりに、負極活物質の表面に無機物コーティング層または追加の炭素層をコーティングしたもので、比較例1よりガスの発生量が若干低下するものの、依然としてガスの発生量が大きく、放電容量、初期効率、および容量維持率が低下することが確認できた。
【0164】
比較例4は、負極活物質の表面にLiFをコーティングしたもので、LiFによってシリコン系粒子がパッシベーションされるもの、その程度が低くて、依然としてガスの発生量が大きく、放電容量、初期効率、および容量維持率が改善されないことが確認できた。
【0165】
したがって、本発明では、シリコン系粒子、LiF、およびCF(0<a<4)を含む負極活物質を提供することにより、全体的な水系工程性、放電容量、効率、および容量維持率を顕著に改善することができた。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO(0<x<2)およびLi化合物を含むシリコン系粒子、
前記シリコン系粒子表面の少なくとも一部に備えられた炭素層、
LiF、および
CF(0<a<4)、
を含む、負極活物質。
【請求項2】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるFの含量は10at%以上であり、
Liの含量は、10at%以上である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記LiFは、前記シリコン系粒子の表面、前記炭素層の内部または前記炭素層の表面に備えられ、前記CF (0<a<4)は、前記炭素層の内部または前記炭素層の表面に備えられる、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析による前記Fの含量は、10at%以上50at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析による前記Liの含量は、10at%以上30at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるOの含量は15at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるSiの含量は5at%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるCの含量は20at%以上である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項9】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるO対比Fの原子比(F/O ratio)は、1以上6以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
X線光電子分光法による負極活物質の表面分析によるLi対比Cの原子比(C/Li ratio)は、0.8以上4以下である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記LiFの含量は、前記CF(0<a<4)の含量よりも多い、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項12】
SiF(0<b<4)をさらに含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項13】
前記負極活物質総100重量部を基準にして、Liを0.1重量部~40重量部で含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項14】
前記炭素層は、前記負極活物質総100重量部を基準として、0.1重量部~50重量部で含まれる、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項15】
SiO(0<x<2)およびLi化合物を含み、表面の少なくとも一部に炭素層が備えられたシリコン系粒子を形成する段階、および
前記シリコン系粒子にフッ素プラズマ処理をする段階、
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記フッ素プラズマ処理段階は、
前記シリコン系粒子をプラズマチャンバに入れた後、CFガスを注入する段階、
前記チャンバ内部の圧力を上昇させる段階、および
前記チャンバにプラズマを形成させる段階、
を含む、請求項15に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の負極活物質を含む負極。
【請求項18】
請求項17に記載の負極を含む二次電池。
【国際調査報告】